(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】少なくとも1つの電池セル用のセルホルダ及びセルモジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/289 20210101AFI20230703BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230703BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230703BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20230703BHJP
H01M 10/6572 20140101ALI20230703BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20230703BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20230703BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230703BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20230703BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20230703BHJP
H01M 50/244 20210101ALI20230703BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/615
H01M10/6572
H01M10/6551
H01M10/617
H01M50/204 401H
H01M50/211
H01M50/293
H01M50/244 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575479
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-07
(86)【国際出願番号】 EP2021065365
(87)【国際公開番号】W WO2022002541
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102020003892.1
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】アンセルム・ミュールベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・ローテンブルガー
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK03
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY05
5H040LL01
5H040NN03
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの電池セル(12)用のセルホルダ(10)に関するものであり、少なくとも1つの電池セル(12)を収容可能な収容部(22)を提供し、及び別のセルホルダ(10)と共にモジュールフレーム(26)内に積重ね可能であり、それにより複数の電池セル(12)を含む電池を提供可能である、セルホルダ(10)において、セルホルダ(10)は案内具(26)を有し、それを使用してセルホルダ(10)は、モジュールフレームに対してモジュールフレーム内で案内されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電池セル(12)用のセルホルダ(10)であって、前記少なくとも1つの電池セル(12)を収容可能な収容部(22)を提供し、及び別のセルホルダ(10)と共にモジュールフレーム内に積重ね可能であり、それにより複数の電池セル(12)を含む電池を提供可能である、前記セルホルダ(10)において、
前記セルホルダ(10)は案内具(26)を有し、それを使用して前記セルホルダ(10)は、前記モジュールフレームに対して前記モジュールフレーム内で案内されることができることを特徴とする、セルホルダ(10)。
【請求項2】
折曲げ縁部(30)が設けられており、収容される前記電池セル(12)のセルタブ(32)が、前記折曲げ縁部(30)において折曲げ可能であることを特徴とする、請求項1に記載のセルホルダ(10)。
【請求項3】
前記折曲げ縁部(30)に金属差込口(34)が設けられており、前記セルタブ(32)は、前記金属差込口(34)に当接可能であり、前記セルタブ(32)は、前記金属差込口(34)を介して前記セルホルダ(10)と材料接続式に接続可能であることを特徴とする、請求項2に記載のセルホルダ(10)。
【請求項4】
前記案内具(26)は、ダブテールガイドとして形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のセルホルダ(10)。
【請求項5】
前記収容部(22)を画定する少なくとも1つの壁が、金属部材(36、38)によって提供されており、前記電池セル(12)は、前記収容部(22)に収容されている状態で前記金属部材(36、38)に当接可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のセルホルダ(10)。
【請求項6】
前記収容部(22)を画定する少なくとも1つの壁に発熱体が配置されており、前記電池セル(12)が前記収容部(22)に収容されている状態で前記発熱体に当接可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のセルホルダ(10)。
【請求項7】
少なくとも1つの案内収容部(26)を有するモジュールフレームと、請求項1から6のいずれか一項に記載の少なくとも2つのセルホルダ(10)と、を備える、セルモジュールであって、前記少なくとも2つのセルホルダ(10)は、積重ね方向(24)に上下に積み重ねられて前記モジュールフレームに保持され、前記セルホルダ(10)は、その案内具(26)を使用して、前記モジュールフレームに対して前記積重ね方向(24)に沿って前記少なくとも1つの案内収容部に案内されることができ、それぞれの前記セルホルダ(10)には、少なくとも1つの電池セル(12)が収容されることができる、セルモジュール。
【請求項8】
前記金属部材(36)は、第1のセルホルダ(10)の後壁(14)の第1の側に当接するものであり、第2のセルホルダ(10)に収容されている電池セル(12)は、前記後壁(14)の前記第1の側に対向する第2の側に当接可能であることを特徴とする、請求項5に従属する場合の請求項7に記載のセルモジュール。
【請求項9】
冷却装置が、積み重ねられた前記セルホルダ(10)に当接しており、前記冷却装置を使用して、前記セルホルダ(10)の熱を吸収可能であることを特徴とする、請求項7又は8に記載のセルホルダ。
【請求項10】
前記金属部材(38)は、前記冷却装置に対向する、前記セルホルダ(10)の底壁(16)に配置されていることを特徴とする、請求項5に従属する場合の請求項9に記載のセルモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の少なくとも1つの電池セル用のセルホルダ、及びセルモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平坦面に配置されたセルタブを備える単一セルを収容するためのセルホルダが開示されている。セルホルダの外側面には、折り曲げられたセルタブを支持するための支持要素が設けられている。この単一セルは、いわゆるコーヒーバッグ構造又はパウチセル構造のフラットセルである。この場合、電気化学的に活性なセル内部は、セルケースとして電気的に絶縁する複合フィルムによって取り囲まれている。複合フィルムのため比較的不安定なセルケースを有するこれらの単一セルを機械的に固定するために、セルホルダが設けられている。このセルホルダは、2つの単一セルの間に配置されて、これらの単一セルを縁側で包囲し、単一セル及びセルホルダは、電池の構成要素であるセルブロックを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE 10 2014 019 092 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、収容される電池セルの特に有利な保護を可能にする、少なくとも1つの電池セル用のセルホルダ、及びセルモジュールを作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する少なくとも1つの電池セル用のセルホルダ、及び請求項7の特徴を有するセルモジュールによって解決される。本発明の適切な展開を有する有利な実施形態は、それぞれの従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0006】
本発明は、少なくとも1つの電池セル用のセルホルダであって、少なくとも1つの電池セルを収容可能な収容部を提供するセルホルダに関する。この収容部は、少なくとも1つの方向に開いているように形成されており、これにより、収容部に収容される電池セルの容積変化が可能になる。更に、セルホルダは、別のセルホルダと共にモジュールフレーム内で積重ね可能であり、これにより、複数の電池セルを含む電池を提供可能である。電池は、特に、車両用電池であり、車両用電池を使用して、電気で動作可能な自動車を駆動可能である。電池セルは、特に、いわゆるパウチセルである。その場合、パウチセルという名称は、単に電池セルの技術的構造のみを説明している。パウチセルの場合、積み重ねられた又は折り畳まれた活性層が可撓性外装フィルムによって封入されている。複数の個別の電気パウチセルは、積み重ねて、直列接続又は並列接続で一緒に相互接続することができる。接続用電極としてのセルタブは、それぞれのパウチセルの外装フィルムから突き出している。電池セル、特に電池セルの外装フィルムに関する損傷の危険を、特に低く抑えるために、電池セルには、特に機械的応力がほとんどかからないことが企図されている。一方では、それぞれの電池セルの特に有利な保護を可能にするため、他方では、電池セルの容積変化を電池セルのライフサイクル又は電池セルの充電サイクルにわたって可能にするために、本発明により、セルホルダは案内具を有し、それを使用してセルホルダは、モジュールフレーム対してモジュールフレーム内で案内されることができることが企図されている。案内具を介してモジュールフレームに対してセルホルダを案内可能であることにより、セルホルダを使用して収容されている少なくとも1つの電池セルの容積変化を、モジュールフレームに対するセルホルダの相対移動を介して調整することが可能になり、これにより、容積変化時に電池セルの機械的応力を、特に低く抑えることが可能になる。特に、それぞれ少なくとも1つの電池セルが収容されている複数のセルホルダが、積み重ねられて配置されている場合、セルホルダは、その案内具を介して、相互に無関係にモジュールフレームに対して相対移動することができ、これにより、セルホルダは、相互に相対移動することができる。この場合、第1のセルホルダの第1の収容部に収容されている電池セルは、第1のセルホルダ上に積み重ねられた第2のセルホルダの壁に当接している。第2のセルホルダのこの壁は、第1のセルホルダの収容部の開放側を覆っている。したがって、収容部に配置されている電池セルは、セルホルダの積重ね方向に沿って、第1の方向には第1のセルホルダによって覆われ、第2の方向には第2のセルホルダによって覆われている。少なくとも1つのセルホルダに収容されている少なくとも1つの電池セルが膨張する場合、電池セルが更に膨張することによって、その電池セルを収容するセルホルダ及びその電池セルに当接している別のセルホルダは、押されて互いに離れる場合がある。セルホルダが押されて互いに離れた結果として、セルホルダの相対移動が相互に行われ、この相対移動は、セルホルダのそれぞれの案内具によって可能になり、案内具を介して、セルホルダはそれぞれ、モジュールフレームに対して移動可能である。容積増加の結果としての電池セル内の圧力上昇は、セルホルダの相対移動を介して相互に限定することができる又は少なくとも弱めることができる。したがって、セルホルダに収容されている少なくとも1つの電池セルの圧力負荷を、特に低く抑えることができる。これにより、セルホルダに収容されている少なくとも1つの電池セルに対する損傷の危険を、特に低く抑えることができる。
【0007】
本発明の一発展形態では、折曲げ縁部が設けられており、収容される電池セルのセルタブは、この折曲げ縁部において折曲げ可能である。折り曲げたセルタブは、別の電池セルのセルタブに結合することができ、この場合、電池セルを直列又は並列に接続することができる。セルタブを折り曲げることによって、複数のセルホルダ及び複数の電池セルを含む電池の特にコンパクトな構造を実現することができる。
【0008】
この関連において、折曲げ縁部に金属差込口が設けられており、セルタブは金属差込口に当接可能であり、セルタブは、金属差込口を介してセルホルダに材料接続式に接続可能である場合に、特に有利であることが明らかである。これは、折曲げ縁部には、金属差込口が配置されており、少なくとも1つのセルタブが、折曲げ縁部の回りで折り曲げるときに金属差込口に当接可能であることを意味する。セルホルダにそれぞれの少なくとも1つの電池セルを特に確実に保持するために、セルタブは、金属差込口と材料接続式に接続可能である、特に溶接可能である。材料接続式の接続によって、セルタブをセルホルダ上の正確な位置に確実に固定することができる。これにより、異なるセルホルダに収容されている複数の電池セルを特に簡単に、確実に接続することができる。
【0009】
本発明の更なる実施形態では、案内具がダブテールガイドとして形成されている場合に有利であることが示されている。ダブテールガイドは、モジュールフレームと滑り案内部を形成するように設けられている。この滑り案内部に関して、ダブテールガイドは、モジュールフレームでダブテールを受容するように形成されている。ダブテールの接続を介して、セルホルダとモジュールフレームとの間で形状接続式の接続を提供することができる。したがって、ダブテールガイドを介して、一方では、セルホルダを特に確実にモジュールフレームに保持することができ、他方では、ダブテールガイドは、モジュールフレームに対するセルホルダの相対移動の特に精確な案内を可能にする。
【0010】
本発明の更なる実施形態では、収容部を画定する少なくとも1つの壁が、金属部材によって提供されており、電池セルがその収容部に受け入れられている状態で金属部材に当接可能である場合に有利であることが示されている。したがって、収容部に収容されている電池セルは、金属部材と当接可能である。金属部材は、特に高い熱伝導率を有し、セルホルダの収容部に収容されている少なくとも1つの電池セルの熱の特に有利な放出を可能にする。これにより、セルホルダの収容部に収容されている少なくとも1つの電池セルは、金属部材を使用して、特に簡単に冷却可能である。更に、金属部材を使用して、収容部に収容されている少なくとも1つの電池セルの過熱を少なくとも実質的に防止することができる。金属部材を使用して、例えば、上下に積み重ねられたセルホルダに収容されている複数の電池セルのそれぞれの温度を相互に一様にし、及び/又はセルホルダの収容部に収容されている少なくとも1つの電池セルの熱を放出して、冷却装置に送出することができる。したがって、少なくとも1つの金属部材により、セルホルダの収容部に収容されている電池セルの特に有利な温度調整が可能になる。
【0011】
本発明の一発展形態では、収容部を画定する少なくとも1つの壁に発熱体、特にペルティエ素子が配置されており、電池セルがその収容部に収容されている状態で発熱体に当接可能である場合に有利であることが示されている。発熱体を使用して、電池セルは、その収容部に配置されている状態で加熱可能である。それにより、収容部に配置されている電池セルの最低温度を特に簡単に調整することができ、これにより、電池セルに対する損傷の危険を特に低く抑えることができる。更に、発熱体によって、電池セルの始動時に、電池セルの使用温度の特に迅速な調整が可能になり、これにより、電池セルを特にエネルギーの効率的かつ迅速な方法で使用することができる。動作温度の迅速な調整により、セルホルダの発熱体を使用して、電池セルに対する損傷の危険を特に低く抑えることができ、これにより、電池セルの特に長い耐用期間を達成することができ、更に、収容部に収容されている少なくとも1つの電池セルの特に有利な動作を可能にすることができる。
【0012】
本発明は、更に、少なくとも1つの案内収容部を有するモジュールフレームと、本発明によるセルホルダに関連して既に説明されたとおりの少なくとも2つのセルホルダと、を備えるセルモジュールに関する。セルホルダは、積重ね方向に上下に積み重ねられてモジュールフレームに保持されている。セルホルダは、その案内具を使用して、モジュールフレームに対して積重ね方向に沿ってモジュールフレームの少なくとも1つの案内収容部に案内可能である。それぞれのセルホルダの収容部には、少なくとも1つの電池セルを収容可能である。モジュールフレームではセルホルダが積み重ねられて配置されているために、第1のセルホルダに収容されている電池セルは、第1のセルホルダ上に積重ね方向に積み重ねられた第2のセルホルダの後壁に当接している。したがって、少なくとも1つの電池セルは、第1のセルホルダの収容部に配置されており、積重ね方向に第2のセルホルダの後壁によって覆われている。したがって、少なくとも1つの電池セルは、第1のセルホルダの収容部に電池セルが配置されているとき、第1のセルホルダ及び第2のセルホルダによって少なくとも実質的に取り囲まれ、少なくとも積重ね方向に沿って上側及び下側に向かって覆われている。
【0013】
案内具は、案内収容部と共に、例えば、滑り案内部、特にダブテール接続部を形成する。案内収容部として、モジュールフレームは、少なくとも1つの案内溝を有してもよく、案内溝にセルホルダの案内具のそれぞれの案内部材を係合することができる、特に形状接続的に係合することができる。セルホルダは、案内具を介して、積重ね方向に沿ってモジュールフレームに対して個別に移動可能であり、これにより、セルホルダの間の間隔が調整可能である。積重ね方向のそれぞれのセルホルダの間の間隔は、セルホルダに収容されている電池セルのそれぞれの容積に応じて調整することができ、電池セルの圧力負荷を特に低く抑えることができる。特に、セルホルダの相対移動により、相互に積重ね方向に沿って、少なくとも1つの電池セルの容積増加時にセルホルダを変位させることが可能になり、これにより、セルホルダに収容されている電池セルに対する損傷の危険を特に低く抑えることができる。したがって、特に電池セルの機械的応力がわずかである場合にセルモジュールが電池セルの容積変化を可能にすることによって、セルモジュールは、電池セルの特に長い耐用期間を可能にする。
【0014】
金属部材が第1のセルホルダの後壁の第1の側に当接している場合に、特に有利であることが明らかであり、第2のセルホルダに収容されている電池セルは、後壁の第1の側に対向する第2の側に当接可能である。これは、金属部材が積重ね方向にセルホルダの少なくとも1つの収容部を覆うように配置されており、これにより、セルホルダの収容部に配置されている電池セルを、積重ね方向に金属部材で覆い、かつ金属部材に当接して配置可能であることを意味する。金属部材により、金属部材によって画定された収容部に収容され、金属部材に当接している電池セルの熱の伝導が可能になる。金属部材を使用して吸収された熱は、後壁を経由して、積重ね方向に収容部又は電池セルから放出することができる。積重ね方向に相互に配置されている複数のセルホルダに、それぞれ少なくとも1つの電池セルが配置されている場合、積重ね方向にそれぞれの電池セルの間に配置されている少なくとも1つの金属部材を介して、電池セルの間の温度調整を行うことができる。これにより、セルモジュール内部の温度ピークを少なくとも実質的に防止することができる、又は特に迅速に調整して均等化することができる。したがって、セルモジュールの過熱は、特に有利に防止することができる。これにより、セルモジュールに対する損傷の危険を特に低く抑えることができる。
【0015】
本発明の更なる実施形態では、冷却装置が設けられている場合に特に有利であることが示されており、冷却装置は、積み重ねられたセルホルダに当接し、冷却装置を使用してセルホルダの熱を吸収可能である。冷却装置は、特に積重ね方向に積み重ねられたセルホルダ全てに同時に当接している。そのために、冷却装置は、セルホルダの収容部を積重ね方向に垂直に画定するそれぞれの底壁に当接することができる。冷却装置を使用して、それぞれのセルホルダから直に熱を吸収することによって、セルモジュールは、特に有利に冷却可能である。冷却装置により、セルモジュールを特に有利に均一に冷却することが可能となり、これにより、セルモジュールでの過熱及び温度ピークを少なくとも実質的に防止することができる。冷却装置の代わりに又はそれに追加して、積み重ねられた全てのセルホルダに加熱装置を同時に当接することができ、加熱装置を使用して、セルホルダは、加熱可能であり、これにより、セルホルダのそれぞれの収容部に収容されている電池セルは、加熱可能である。これにより、セルホルダの収容部に収容されている電池セルを動作温度及び/又は最低温度に加熱することができ、これにより、セルモジュールに収容されている電池セルに対する損傷の危険を特に低く抑えることができる。
【0016】
セルホルダのうちの少なくとも1つの、冷却装置に対向する底壁に、金属部材が配置されている場合に特に有利であることが明らかである。この場合、収容部に対向している、底壁の第1の側に、金属部材が当接している。第1の側に対向する、底壁の外側の第2の側では、冷却装置は、セルホルダに当接している。あるいは、底壁を金属部材によって形成してもよい。金属部材は、収容部に収容されている少なくとも1つの電池セルの熱の冷却装置への特に有利な伝導を可能にし、これにより、収容部に収容されている少なくとも1つの電池セルの特に効率的な冷却を達成することができる。
【0017】
本発明の更なる利点、特徴、及び詳細は、以下の好ましい実施例の記述及び図面を用いて明らかとなる。上記の説明において挙げた特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下で図面の説明で挙げる、及び/又は図に単独で示す特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ記載されている組み合わせでのみならず、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせ又は単独でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】少なくとも1つの電池セル用のセルホルダの概略斜視図であり、セルホルダは、別のセルホルダと共に積重ね可能であり、セルモジュールに接続可能である。
【
図2】複数の積み重ねられたセルホルダの概略斜視図であり、セルホルダにはそれぞれ少なくとも1つの電池セルが収容されており、積み重ねられたセルホルダは、セルブロックとしてモジュールフレーム内に収容可能であり、セルホルダは、モジュールフレームと共に1つのセルモジュールを形成している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、セルホルダ10が示されており、セルホルダ10を使用して少なくとも1つの電池セル12を収容可能である。したがって、セルホルダ10は、少なくとも1つの電池セル12用のセル外被を提供し、少なくとも1つの電池セル12を固定するために設けられている。セルホルダ10は、本明細書では、ポリマーで形成されており、したがって、ポリマーセルケースとも称される。本明細書では、セルホルダ10は、射出成形法で製造されているため、セルホルダ10は、射出成形部品である。セルホルダ10は、後壁14、底壁16、天壁18、及び共に収容部22を画定する2つの側壁20を有する。底壁16及び天壁18は、相互に対向するそれぞれの側に対して収容部22を画定する。更に、側壁20は、相互に対向する側に対して収容部22を画定する。収容部22は、後壁14に対向する側が開放するように形成されている。収容部22には、少なくとも1つの電池セル12が収容可能であり、少なくとも1つの電池セル12は、壁14、16、18、20によって安定化され、損傷から保護される。
【0020】
セルモジュールを設けることができるようにするために、複数のセルホルダ10が、
図2に示されているように、積重ね方向24に上下に積重ね可能である。それぞれのセルホルダ10には、少なくとも1つの電池セル12が収容可能である。セルホルダ10を積重ね方向24に積み重ねることによって、第1のセルホルダ10のそれぞれ収容部22を、第1のセルホルダ10の第1の後壁14に対向する側で、積重ね方向24に第1のセルホルダ10上に積み重ねられている第2のセルホルダ10の第2の後壁14によって画定することができる。これにより、セルホルダ10の積重ね状態では、第1のセルホルダ10の第1の収容部22に収容されている電池セル12を、特に有利には、第1のセルホルダ10及び第2のセルホルダ10によって取り囲むことができる。セルホルダ10を上下に積み重ねて保持することができるようにするために、セルモジュールは、複数のセルホルダ10に加えてモジュールフレーム(図示せず)を含み、セルホルダ10は、モジュールフレームに保持されている。モジュールフレームは、特に金属から形成されている。セルホルダ10は、収容部22に収容されている電池セル12をモジュールフレームに対して案内する役割を担う。複数のセルホルダ10は、モジュールフレームを用いてセルモジュールに結合されており、更に、複数のセルモジュールを1つの電池に結合することができる。そのために、複数の電池セル12をセルモジュール内で一緒に相互接続することができ、更に、複数のセルモジュールを一緒に相互接続することができる。
【0021】
セルホルダ10に収容可能な電池セル12は、本明細書では、リチウムイオン電池セルである。電池セル12の内部にある電気化学的に活性な電極材料は、その充電状態及び耐用期間を通してその厚みが変化する。リチウム金属アノードを用いる電池セル12の充電時の厚み増大に関する典型値は、充電状態0%から100%に充電するとき、約15%である。固体セル化学物質又は従来型のリチウムイオンセル化学物質を用いる電池セル12の経年劣化での厚み増大に関する典型値は、その耐用期間全体を通して約5%である。したがって、全体として、例えば、電池セル12の約20%の厚み変化を補償する必要がある。
【0022】
電池セル12の厚み変化のこのような補償のために、先行技術では、フォームマット又はコイルばねといった弾性ばね要素が、電池セル12の中、及び/又は電池セル12の間に配置されている。不利なことには、この場合、電池セル12が膨張するとき、ばね要素のばね特性曲線によって押圧力が原理的に増大するため、電池セル12又はセルモジュール全体を、厚み変化の方向に軸線方向の特に大きな力がかかるように設計する必要がある。
【0023】
セルホルダ10によって収容されている電池セル12の厚み変化を可能にし、その場合、電池セル12及び/又はセルモジュール全体に対する力を、積重ね方向24に特に低く抑えることができるようにするために、それぞれのセルホルダ10は、案内具26を有する。この案内具26によって、セルホルダ10は、モジュールフレームに対して積重ね方向24に移動可能にモジュールフレームに保持される。更に、セルホルダ10の案内具26により、セルホルダ10の積重ね方向24への相対移動が相互に可能になり、これにより、それぞれのセルホルダ10の後壁14に対向する、収容部22の開放側によって、収容部22に収容されている電池セル12の厚み変化が可能になる。本明細書では、それぞれの案内具26は、セルホルダ10のそれぞれの側壁20に配置されている、それぞれ2つの案内部材28を含む。側面20に配置されているそれぞれの案内部材28は、共にダブテール形状になっており、ダブテール形状により、モジュールフレームの案内収容部での案内具26のダブテールガイドが可能になる。このダブテールガイドにより、案内具26は、モジュールフレームの案内収容部において熱膨張時に固着せず、熱膨張時に固着する前に緩んで、ひいては、案内具26を案内収容部から解除することが可能になる。
【0024】
電池セル12がそれぞれのセルホルダ10に収容されることによって、電池セル12は、例えば、充電又は放電の結果として、その容積変化時に、セルホルダ10に対してのみ接して相対移動が行われる。これにより、電気化学的に活性な電極材料を取り囲むパウチフィルムを損傷から保護することができる。
【0025】
それぞれの電池セル12をセルモジュール内で特に有利に一緒に結合することができるようにするため、それぞれのセルホルダ10は、少なくとも1つの折曲げ縁部30を有し、少なくとも1つの折曲げ縁部30の周囲では、収容部22に配置されている電池セル12の少なくとも1つのセルタブ32が折曲げ可能である。折曲げ縁部30の周囲でセルタブ32を折り曲げることによって、相互に異なるセルホルダ10に収容されている様々な電池セル12のそれぞれのセルタブ32は、一緒に覆われて、電気的に相互に接する。これにより、セルモジュールにおいてそれぞれのセルホルダ10に収容されている電池セル12を相互接続することができる。それぞれの収容部22に収容されている電池セル12をセルホルダ10に特に確実に固定することができるようにするために、折曲げ縁部30には、側面金属差込口34が設けられている。電池セル12の少なくとも1つのセルタブ32は、セルホルダ10の金属差込口34に溶接可能であり、これにより、セルタブ32は、折曲げ縁部30に固定可能である。それぞれのセルタブ32を介して、積み重ねられたセルホルダ10に収容されている電池セル12を、特に簡単に一緒に結合して相互接続することができ、電池セル12は、直列接続又は並列接続で相互接続することができる。
【0026】
セルホルダ10の収容部22に収容されている電池セル12を特に有利に温度調整することができるようにするために、収容部22に対向する側の後壁14には、第1の金属部材36が配置されている。本明細書では、第1の金属部材36は、収容部22に向かって後壁14全体を覆っている。したがって、第1の金属部材36は、収容部22を画定する。第1の金属部材36を使用して、収容部22に配置されており、第1の金属部材36に当接している電池セル12の熱を吸収可能である、又は放熱可能である。熱は、第1の金属部材36を使用して、第1のセルホルダ10の第1の収容部22に配置されている電池セル12から、第1のセルホルダ10の第1の後壁14を経由して、積重ね方向24に第1のセルホルダ10上に積み重ねられている第2のセルホルダ10の第2の収容部22に配置されている、第1の後壁14に当接している別の電池セル12に放出される。これにより、第1の金属部材36を介して、第1のセルホルダ10によって収容されている電池セル12と第2のセルホルダ10によって収容されている電池セル12との間で熱交換を行うことができる。第1の金属部材36の代わりに又はそれに追加して、収容部22の後壁14に対向して、少なくとも1つの、特に複数の発熱体、本明細書ではペルティエ素子を備えるフィルムを配置してもよい。この場合、フィルムは、収容部22に向かって後壁14を完全に覆うことができる。発熱体を使用して、収容部22を加熱可能であり、その結果、収容部22に収容されている電池セル12を加熱可能である。したがって、ペルティエ素子によって、収容部22に収容されている電池セル12を加熱することが可能となり、これにより、収容部22に配置されている電池セル12は、特に有利な伝導率の領域に置くことが可能である。
【0027】
セルホルダ10は、本明細書では、収容部22の底壁16に対向して配置されている第2の金属部材38を有する。本明細書では、第2の金属部材38は、収容部22に向かって底壁16を完全に覆う。第2の金属部材38を使用して、それぞれの金属部材の特に高い伝導率に基づいて、特に有利には、収容部22に配置されている電池セル12の熱を吸収可能であり、底壁16を経由して放出可能である。特に、セルモジュールは、冷却装置を含むことができ、冷却装置は、セルホルダ10において、収容部22とは反対側の底壁16の側に当接する。特に、冷却装置は、積み重ねられたセルホルダ10全体において、そのそれぞれの底壁16に当接している。第2の金属部材38により、収容部22に収容されている電池セル12から底壁16を経由して冷却装置への、特に有利な放熱が可能になる。冷却装置を使用して、セルモジュールは、特に均一に冷却可能である。第2の金属部材38を使用して、収容部22に収容されている電池セル12と底壁16との間で特に有利な熱結合を達成することができる。これにより、第2の金属部材38によって、収容部22に収容されている電池セル12と冷却装置との間で特に有利な熱接触が可能になり、この冷却装置は、特に底部冷却である。
【0028】
セルホルダ10により、電池セル12の容積変化によって引き起こされる電池セル12の相対移動の緩和が可能になり、これにより、それぞれの電池セル12のパウチフィルムを保全することができる。これにより、電池セル12のパウチフィルムの、パウチフィルムを穿孔するおそれがある摩耗を、少なくとも実質的に防止することができる。したがって、セルホルダ10を使用して、収容部22に収容されている電池セル12のそれぞれのパウチフィルムは、摩擦及び材料摩耗から保護される。金属部材36、38を介して、電池セル12と冷却装置との熱結合を確立することがきる。発熱体を含むフィルムを介してセルヒータをセルホルダ10に組み込むことができ、このことは特に、最低使用温度を必要とする、電池セル12のセル化学材料に有利である。それぞれのセルホルダ10の折曲げ縁部30により、セルタブ32をセルホルダ10において直に折り曲げることができ、これにより、折曲げのための組立て手順を特にほとんど必要としないことが可能になる。収容部22に収容されているそれぞれの電池セル12のセルタブ32は、側壁20にはめ込まれている金属差込口34に直に溶接することができ、この金属差込口34は、本明細書では、メタルプレート片である。これにより、セルタブ32をセルホルダ10と直に結合し、セルホルダ10に固定することができる。セルクリップは、これにより、省略することができる。セルホルダ10により、セルモジュールの複数の電池セル12を特に簡単かつ安価に一緒に結合することができ、更に、割り当てられているそれぞれのセルホルダ10に、特に簡単かつ安価に固定することができることが可能になる。
【0029】
全体として、本発明では、案内具、タブ固定具、熱利用部、及びヒータを備えるセルケースを提供することができる方法が示されている。
【符号の説明】
【0030】
10 セルホルダ
12 電池セル
14 後壁
16 底壁
18 天壁
20 側壁
22 収容部
24 積重ね方向
26 案内具
28 案内部材
30 折曲げ縁部
32 セルタブ
34 金属差込口
36 第1の金属部材
38 第2の金属部材
【国際調査報告】