(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】油圧回路におけるアキュムレータ診断方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
E21B 1/26 20060101AFI20230703BHJP
E21B 7/02 20060101ALI20230703BHJP
E21B 6/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E21B1/26
E21B7/02
E21B6/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575488
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 SE2021050455
(87)【国際公開番号】W WO2021251862
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398056193
【氏名又は名称】エピロック ロック ドリルス アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ペーション,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブソン,エリク
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA04
2D129AB05
2D129AB09
2D129AB16
2D129AB20
2D129BA28
2D129CB06
2D129DB01
2D129DC13
2D129JA01
(57)【要約】
本発明は、衝撃式削岩リグにおける油圧回路内の少なくとも一つのアキュムレータの機能を診断するためのコンピュータに実装された診断方法及び診断システムに関する。油圧回路は、ドリル工具(106)に応力波を発生させるための往復衝撃ピストン(115)を備えた衝撃装置(105)に動力を与えるために油圧流体を提供する。衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)の往復運動は、油圧回路内に圧力変動及び流量変動を生じさせ、少なくとも一つのアキュムレータは、油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動を低減するように構成されている。本方法は、掘削中に、衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)の往復運動の周波数の少なくとも二倍の周波数で、一つ以上の時間期間にわたって複数の圧力測定値を得るステップを有する。本方法は、一つ以上の時間期間にわたる衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)の往復運動によって引き起こされる油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の表現を決定するステップと、油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の決定した表現と油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の基準表現に基づいて、少なくとも一つのアキュムレータの機能を診断するステップをさらに含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃式岩石掘削における油圧回路内の少なくとも一つのアキュムレータ(112、208、224)の機能を診断するためのコンピュータ実装診断方法であって、
前記油圧回路が、ドリル工具(106)内に応力波を発生するための衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)を備えた衝撃装置(105)に動力を供給するために油圧流体を提供し、
衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)の往復運動が、油圧回路内に圧力変動及び流量変動を生じさせ、
少なくとも一つのアキュムレータ(112、208、224)が、油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動を低減するように構成されている
前記診断方法において、
該診断方法が、掘削中に、
・一つ又は複数の期間にわたって複数の圧力測定値を得るステップであって、前記複数の圧力測定値が、衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)の往復運動の周波数の少なくとも二倍である周波数で得られるステップと、
・前記一つ又は複数の期間にわたる前記衝撃ピストン(115)及び/又は前記減衰ピストン(220)の往復運動によって引き起こされる油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の表現を決定するステップと、
・ 油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現と、油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の基準表現とに基づいて、少なくとも一つのアキュムレータ(112,208,224)の機能を診断するステップと
を有することを特徴とする診断方法。
【請求項2】
前記油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の表現が、油圧回路における圧力又は流量の最大値と最小値との差の表現であることを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
油圧回路における最大及び/又は最小の圧力又は流量の表現が、
・油圧回路の圧力変動又は流量変動の上側包絡線と下側包絡線との差分、及び
・圧力変動及び/又は流量変動の一つ以上の高調波の振幅であって、フーリエ変換に基づく圧力変動及び/又は流量変動の信号処理のような、圧力変動及び/又は流量変動の信号処理を用いて決定される前記高調波の振幅
一つ又はそれ以上を用いて決定される
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記診断が、前記少なくとも一つのアキュムレータ(112、208、224)の不適切な機能を示す時に、障害を示す信号を生成するステップ
をさらに有することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つのアキュムレータ(112、208、224)の機能を診断する際に、さらに、
・油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現を、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の基準表現と比較するステップと、
・油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動に関する決定された表現が、圧力変動及び/又は流量変動に関する基準表現から所定の差で逸脱した場合に、故障を示す信号を生成するステップと
を有することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
・油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現の値が、圧力変動及び/又は流量変動の基準表現の値を所定の程度だけ超える場合に、故障を示す信号を生成するステップ
をさらに含むことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
・油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現の最小値が、圧力変動及び/又は流量変動の基準表現の最大値を所定の程度超えた 場合に、故障を示す信号を生成するステップ
をさらに含むことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
・ 油圧流体を供給する油圧ポンプ(116、221)の下流に配置された圧力センサを使用して、圧力変動及び/又は流量変動の表現を決定するステップ
をさらに有することを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の基準表現が、衝撃圧力及び/又は供給圧力に依存して設定及び/又は決定される
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
・掘削中に、少なくとも一つのアキュムレータ(112、208、224)を連続する時間帯及び/又は所定の間隔で診断し、診断が障害を示す場合、障害を示す信号を生成して掘削オペレータ及び/又は掘削を制御する制御システムに警告するステップをさらに含む
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
プログラムがコンピュータによって実行されるときにコンピュータに請求項1~10の何れか一項に記載の方法を実行させる命令を含む
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータによって実行されるときに請求項1~10の何れか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる命令を含む
ことを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
衝撃式岩石掘削における油圧回路内の少なくとも一つのアキュムレータ(112、208、224)の機能を診断するシステムであって、
前記油圧回路が、ドリル工具(106)内に応力波を発生するための衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)を備えた衝撃装置(105)に動力を供給するために油圧流体を提供し、
衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)の往復運動が、油圧回路内に圧力変動及び流量変動を生じさせ、
少なくとも一つのアキュムレータ(112、208、224)が、油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動を低減するように構成されている
前記システムにおいて、
該システムが、
・一つ又は複数の期間にわたって、衝撃ピストン(115)及び/又は減衰ピストン(220)の往復運動の周波数の少なくとも二倍である周波数で複数の圧力測定値を獲得し、
・掘削中、前記一つ又は複数の期間の少なくとも一つにわたる前記衝撃ピストン(115)及び/又は前記減衰ピストン(220)の往復運動によって引き起こされる油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の表現を決定し、
・油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現と、油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の基準表現とに基づいて、少なくとも一つのアキュムレータ(112,208,224)の機能を診断する
ように構成された処理回路を有する
ことを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記油圧回路の少なくとも一つのアキュムレータ(112、208、224)が、
・ 油圧を供給する油圧ポンプ(116、221)の下流で、衝撃装置(105)の上流に配置されたアキュムレータ(112)、
・衝撃装置(105)の下流に配置されたアキュムレータ(208)、及び
・衝撃装置(105)の減衰回路に配置されたアキュムレータ(224)
の一つ又は複数である
ことを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のシステムを備えた削岩リグ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃式岩石掘削に関し、より具体的には、油圧回路におけるアキュムレータを診断する方法及びシステムに関する。また、本発明は、削岩リグ、及び本発明による方法を実施するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
削岩リグは、様々な分野で使用され得る。例えば、削岩リグは、トンネル掘削、地表採掘、地下採掘、岩盤補強、レイズボーリングに利用され得、また、例えば、ブラスト孔、グラウト孔、ロックボルト設置用孔、水井戸、その他の井戸、パイル及び基礎の掘削等にも使用され得る。従って、削岩リグの用途は非常に広い。
【0003】
実際の岩盤の破壊は、様々な異なる技術に従って行われ得、多くの場合、岩盤に接触するドリル工具によって行われ、ドリル工具は、一般的にはドリルストリングによって掘削装置に接続される。掘削は、様々な掘削技術に従って実行され得、例えば、回転掘削の場合、ドリル工具は高圧で岩盤に向かって押圧され、回転力及び印加圧力によって岩盤を粉砕する。
【0004】
また、掘削は衝撃式の掘削でもあり得、この場合、衝撃ピストンが、直接又はドリルストリングを介してドリル工具を繰り返し打撃して、衝撃パルス及び応力波をドリル工具、さらに、岩盤に伝達する。衝撃式掘削は、回転と組み組み合わせて、ドリル工具のボタンやインサートが各ストロークで新しい岩盤を打撃する掘削を行い、それによって、掘削効率を高めることができる。
【0005】
衝撃装置の往復運動は油圧流体によって駆動され得、この場合、衝撃ピストンは油圧流体によって加速されドリル工具に衝突させられる。また、油圧流体は、衝撃ピストンを、該ピストンが再び次のストロークでドリルストリングに衝撃を与えるために加速されることになる位置まで戻るストロークを実行させ得る。衝撃ピストンの往復運動は、多くの場合、油圧回路の圧力及び/又は流量を変化させる油圧流の開閉によって行われる。
【0006】
衝撃ピストンは一つの油圧回路で駆動され得、衝撃装置に設けられた減衰ピストンはさらに別の油圧回路で駆動され得、減衰ピストンは反動を低減するために用いられる。衝撃ピストンの往復運動(及び減衰ピストンの往復運動)による変動は有害である可能性があり、このため、油圧流体供給及び戻り経路には、典型的には、このような圧力及び流体変動を低減するための一つ又は複数のアキュムレータが含まれる。アキュムレータが正常に動作しない場合、長期間気づかれないまま、過剰な摩耗を引き起こすことがある。
【0007】
掘削装置のアキュムレータの状態を監視するための従来の方法及びシステムが、米国特許US4,967,553号及び米国特許公開第US2014/0060932号に開示されている。開示されているアキュムレータ診断の解決手段は、少なくとも部分的にはプロセッサでの信号処理を介して実行されるが、診断は絶対圧測定値、例えば、複数のストロークに亘って平均化された感知ピーク圧に基づいて行われる。掘削装置の衝撃圧力及び衝撃周波数は、特に低圧アキュムレータの診断及び正しい診断の実施能力に影響を与える。従って、アキュムレータの状態の診断のさらなる改良が求められている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、油圧回路における少なくとも一つのアキュムレータの機能を診断することが可能な方法及びシステムを提供することにある。この目的及び他の目的は、添付の特許請求の範囲に定義された方法及びシステムによって達成される。
【0009】
本発明の第一の態様によれば、衝撃式削岩機における油圧回路内の少なくとも一つのアキュムレータの機能を診断するためのコンピュータ実装方法が提供される。油圧回路は、ドリル工具に応力波を発生させるために往復運動する衝撃ピストンを備えた衝撃装置に動力を供給するために油圧流体を供給する。衝撃ピストン及び/又は減衰ピストンの往復運動は、油圧回路に圧力変動及び流量変動を生じさせ、少なくとも一つのアキュムレータは、油圧回路の圧力変動及び/又は流量変動を低減するように構成されている。
【0010】
本方法は、一つ又は複数の期間に亘って複数の圧力測定値を得るステップを備え、ここで複数の圧力測定値は、衝撃装置及び/又は減衰ピストンの往復運動の周期の少なくとも二倍である周期で取得される。本方法は、掘削中に、一つ又は複数の時間期間に亘る衝撃ピストン及び/又は減衰ピストンの往復運動によって引き起こされる油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動を表現するパラメータ(以下、「表現」と称する)を決定するステップを更に含む。本方法はまた、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現と、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の基準表現とに基づいて、少なくとも一つのアキュムレータの機能を診断するステップを含む。
【0011】
掘削は、削岩リグを用いて実施され得、その場合、削岩リグは、キャリアを備え、掘削中、キャリアによって支持される衝撃装置は、一つ以上のドリルロッドを備えたドリルストリングによって、岩盤を破壊するために使用されるドリル工具に接続され得る。掘削は、油圧式トップハンマのような油圧式衝撃装置又は任意の他の形式の油圧式衝撃装置を用いて行われる。本開示の実施形態は、任意のそのような油圧式衝撃装置に関し、従って、ドリルビットを直接又はドリスストリングを介して繰り返し打撃し、ドリルビットに、さらには岩石に衝撃パルス及び応力波を伝達して、それを破壊又は粉砕する衝撃装置に関する。
【0012】
前述したように、衝撃式削岩機にはアキュムレータが使用されることがある。アキュムレータには様々な設計があり得、例えば油圧流体をアキュムレータチャージ媒体(例えば、窒素ガス)から分離するダイヤフラムを有し得る。アキュムレータは、衝撃装置の正常な作動を確保し、油圧回路内の圧力及び流量の変動による過度の摩耗を避けるために、油圧流体に圧力を加えて圧力のピークを減衰させる。また、アキュムレータは、油圧ポンプによる油圧流体の供給が一時的に不足しても、アキュムレータ内の油圧流体で補うことができる油圧流体量を含んでいる。
【0013】
衝撃ピストンの往復運動は、衝撃ピストンの対向する表面に作用する油圧流体を交互に供給して、ピストンを所望の方向(ドリルストリングに向かってストロークを行う方向及び次のストロークを行う位置に戻る方向)に付勢することで実現される。ピストンの往復運動は、例えば、油圧流体の選択的な供給が、しばしば衝撃ピストンの位置に応じて開閉され得る油圧流体導管の開閉によって行われることにより、油圧回路に圧力及び流量の変動を生じさせる。上記したことは、減衰ピストンが存在する場合、減衰ピストンにも同様のことが言える。減衰ピストンは、多くの場合、衝撃ピストンを駆動する油圧回路とは別の回路である減衰ピストンを駆動する油圧回路における圧力及び流量の変動を生じさせることがある。
【0014】
しかし、システムにおける過度のストレスや摩耗を回避しながら効率的な掘削プロセスを得るためには、上述のように、システム内で一つ以上のアキュムレータが適切に動作している必要がある。しかし,故障したアキュムレータは発見が困難であり,故障したまま掘削を行うと,早期に発見できていれば回避できたはずの摩耗や破損が生じる可能性がある。
【0015】
本発明によれば、一つ以上のアキュムレータが、例えば、削岩リグの制御システムによって診断され得る。本発明によれば、圧力変動及び/又は流量変動の表現が決定される。これは、さまざまな方法で実行することができる。例えば、油圧回路内の圧力の連続した複数の測定値を用いて、圧力変動の表現が決定され得る。代わりに、例えば、流量計などを利用して、流量変動を判断してもよい。また、流量変動は、連続した流量測定を使用してもよく、この場合、流量は、例えば、圧力センサ間の流量の既知の絞り込み量を伴う油圧回路内の二つの圧力センサからの圧力測定を使用して決定されることになる。このような流量の決定は、当技術分野で公知である。そして、決定された油圧回路の圧力変動及び/又は流量変動の表現と、油圧回路の圧力変動及び/又は流量変動の基準表現とに基づいて、少なくとも一つのアキュムレータの機能が診断される。基準表現は、例えば、掘削リグの構築中又は製造中に予め経験的に決定しておくことができる。また、油圧回路のモデルから基準表現を算出してもよい。基準表現は、テーブルルックアップを使用して決定することもでき、テーブルには、例えば、掘削で利用される様々な衝撃圧力及び/又は供給圧力の基準表現が含まれ得る。さらに、例えば掘削リグの制御システムは、アキュムレータが適切に動作していることが確認された掘削中に測定し、例えば一つ以上の異なる衝撃圧力で掘削するように装置を設定することによって、基準表現、例えば、基準最大値及び基準最小値を決定するように構成され得る。これは、また、流量変動に関しても実施することができる。
【0016】
圧力変動又は流量変動の表現は、一つ又は複数の値、例えば、最大値及び/又は最小値で構成され得、同様に、基準表現は、一つ又は複数の値で構成され得る。
【0017】
本発明の実施形態によれば、診断が少なくとも一つのアキュムレータの不適切な機能を示す時に、故障を示す信号が生成され得、その結果、例えば、掘削リグのオペレータ、及び/又は掘削リグの制御システム、及び/又は遠隔制御場所が、故障について警告されて適切な措置を取ることができるようにされ得る。
【0018】
本発明の実施形態によれば、少なくとも一つのアキュムレータの機能を診断する時、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現が、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の基準表現と比較され、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現が圧力変動及び/又は流量変動の基準表現から所定の差で逸脱すると故障を示す信号が生成されてもよい。例えば、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現の値が、圧力変動及び/又は流量変動の基準表現の値を所定程度超えているかどうかを判断することができる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の決定された表現の最小値が、圧力変動及び/又は流量変動の基準表現の最大許容値を、例えば、所定の程度だけ超えた場合に、故障を示す信号が生成される。
【0020】
本発明の実施形態によれば、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の表現は、油圧回路における圧力又は流量の最大値と最小値との差の表現である。これにより、圧力や流量の変動の増加を検出することができ、アキュムレータが正常に動作しているかどうかを判断するために使用することができる。
【0021】
本発明の実施形態によれば、油圧回路における圧力又は流量の最大値及び/又は最小値の表現は、油圧回路における圧力変動又は流量変動の上側包絡線と下側包絡線との間の差を用いて決定される。また、例えば、上側包絡線のみを利用することも想定される。
【0022】
本発明の実施形態によれば、流体の圧力の変動の一つ以上の高調波の振幅は、油圧回路内の最大圧力及び/又は最小圧力又は流量を表すものとして利用される。高調波は、圧力変動又は流量変動の任意の適切な信号処理を用いて決定され得、ここで、適切な処理アルゴリズムは、フーリエ変換、高速フーリエ変換(FFT)、パワースペクトル密度(PSD)又は他の任意の適切なアルゴリズムなどの信号処理に使用され得る。そして、予想される高調波からの逸脱に基づいて、例えば振幅の観点から、アキュムレータを診断することができる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、油圧回路における圧力変動及び/又は流量変動の表現は、油圧回路における圧力変動又は流量変動の波形、即ち曲線形状であり得、前記波形は、波形が基準波形から逸脱しているかどうかを判定するために、例えば微分及び/又は振幅の観点から分析に供され得る。
【0024】
前述のとおり、圧力変動及び/又は流量変動の表現は、診断における圧力変動及び/又は流量変動の基準表現と比較される圧力又は流量の複数の測定値に基づいて決定され得る。
【0025】
圧力の複数の測定値は、少なくとも一つの圧力センサを用いて得ることができ、変動は、少なくとも一つの圧力センサの複数の連続した圧力測定値を用いて決定され得る。圧力センサは、例えば、掘削リグのキャリア上に配置され得る。従って、場合にもよるが、圧力センサは衝撃装置の近傍に配置する必要がない。圧力センサは、油圧回路内の圧力変動を十分に分解できるように、衝撃装置の衝撃周波数の少なくとも2倍、例えば2~1000倍(又はそれ以上)の間隔で任意の周波数で圧力信号を送信するように構成され得る。
【0026】
圧力センサは、加圧された油圧流体流を供給する油圧ポンプの下流に配置され得る。圧力センサは、例えば、衝撃装置の下流に配置することもできる。また、圧力センサは、衝撃装置の減衰回路に配置してもよい。
【0027】
一つ又はそれ以上の油圧回路は、前記油圧を供給する油圧ポンプの下流側で、かつ、前記衝撃装置の上流側に配置されたアキュムレータ、前記衝撃装置の下流側に配置されたアキュムレータ及び前記衝撃装置の減衰回路に配置されたアキュムレータの一つ又は複数のアキュムレータを有し得る。
【0028】
また、単一の圧力センサを複数のアキュムレータの診断に使用することもできる。又は、例えば、(油圧を供給する油圧ポンプの下流であって、衝撃装置の上流にある)高圧経路の圧力センサを利用してこの経路のアキュムレータを診断し、(衝撃装置の下流にある)低圧経路の圧力センサを利用して低圧経路のアキュムレータを診断することもできる。これは、衝撃ピストンを駆動する油圧経路と、減衰ピストンを駆動する油圧経路の両方に適用される。減衰回路に関しては、例えば供給(高圧)経路にのみアキュムレータを利用することができる。
【0029】
本発明の実施形態によれば、センサ間の距離が既知の二つの圧力センサが、油圧回路の同じ経路、例えば油圧ポンプから衝撃装置までの経路で利用される。二つの圧力センサからの信号とセンサ間の既知の距離との組み合わせが、油圧回路における任意の位置の圧力を決定するために使用され得る。これは2マイクロホン方式と呼ばれる方法である。これにより、実際の圧力センサの位置と異なる油圧回路内の位置で最大値又は最小値が発生した場合でも、油圧回路内の最大圧力及び最小圧力を正確に把握することができる。
【0030】
少なくとも一つのアキュムレータの診断は、掘削中に連続的に及び/又は所定の間隔で実行されるように構成され得る。これにより、故障が発生すると同時に、又は故障発生後すぐに故障の発生が検出され、発生した故障に気づかないまま長時間打撃が作動して過剰な摩耗が生じる前に適切な処置を行うことができる。
【0031】
本開示の方法の態様に関連して説明された実施形態は、すべて本発明のシステムの態様にも適用可能であることが理解されるであろう。即ち、システムは、上述した実施形態のいずれかに定義される方法を実行するように構成され得る。さらに、本方法は、例えば、掘削リグの一つ以上の制御装置において実施され得るコンピュータ実装方法であってもよい。
【0032】
本発明の更なる特徴及びその利点は、以下に記載される例示的な実施形態の詳細な説明及び添付図面に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態が利用され得る例示的な掘削リグを示す図である。
【
図2】
図1による掘削リグの例示的な油圧回路を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に従った例示的な方法を示す図である。
【
図4】アキュムレータが正常に機能している場合の掘削時の油圧回路の圧力変化を示す図である。
【
図5】アキュムレータに故障が発生した場合の圧力変動の時間変化を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態を、特定の種類の掘削リグを考慮して以下に説明する。ここで、掘削は、トップハンマの形態の衝撃装置の使用を通じて行われる。掘削リグは、岩石を破壊するためのドリル工具に応力波を伝達するための油圧式衝撃装置を使用して掘削を行う他の種類の掘削リグであってもよい。
【0035】
図1は、アキュムレータを診断する本発明の方法を説明するための例示的な実施形態に従った削岩リグ100を示している。削岩リグ100は、穴の掘削中であり、現在掘削が深さxに達している。
【0036】
本実施例による削岩リグ100は、地表用掘削リグを構成しているが、掘削リグは、例えば地下掘削を主目的とするタイプ、又は他の任意の用途の掘削リグであってもよいことは理解される。削岩リグ100は、従来の方法でブーム102を支持するキャリア101を備えている。さらに、ブーム102には、送りビーム103が取り付けられている。送りビーム103は、キャリッジ104を支持しており、キャリッジ104は送りビーム103に沿って摺動可能に配置され、キャリッジ104を送りビーム103に沿って走行させることができるように構成されている。キャリッジ104は、例えば回転ユニット(図示していないが、回転は符号119で示される)も備えた衝撃装置105を支持し、従って、衝撃装置105は、キャリッジ104を摺動させることによって送りビーム103に沿って走行することができる。
【0037】
衝撃装置105は、使用時には、本実施例によるドリルビット106のようなドリル工具に、ドリルストリング107によって接続される。実用的な理由から(おそらく非常に短い穴を除いて)、一般にドリルストリング107は一体の一つのドリルストリングでは構成されてなく、複数のドリルロッドで構成されている。ドリルロッドの長さに相当する距離だけ掘削が進むと、新しいドリルロッドを、既にねじ込まれている一本以上のドリルロッドと一緒にねじ込んでドリルストリングを形成し、それによって新しいドリルロッドが既存のドリルロッドと一緒にねじ込まれる前に別のドリルロッド長まで掘削を進行させることができる。開示された種類のドリルロッドは、掘削が進むにつれて、本質的に任意の所望の長さまで延長され得る。
【0038】
使用中、衝撃装置105の衝撃ピストン115は、衝撃波エネルギーをドリルストリング107、ひいてはドリルビット106及び破壊すべき岩に伝達するためにドリルロッドを繰り返し打撃する。穿孔中にドリルストリング、ひいてはドリルビット106の回転を提供することに加えて、衝撃装置105及び/又はキャリッジ104は、穿孔方向に作用する力を受けることによって、ドリルストリング107に作用する送り力を提供して、それによってドリルビット106を穿孔中の岩の表面に押し付ける。
【0039】
図示実施例によれば、衝撃装置105、特に衝撃ピストン115には、キャリア101上に配置された油圧ポンプ116と適切なホース118とによって衝撃装置に供給される油圧流体によって動力が供給される。また、キャリア101は、油圧流体タンク119を備え、この油圧流体タンク119から、衝撃装置に動力を与える油圧回路を使用して油圧流体が取り去られ、そして戻される。さらに、例えば減衰回路(下記参照)のような一つ以上の追加の油圧回路に油圧流体を供給するために使用される別の油圧回路が設けられ得る。
【0040】
図示実施例によれば、圧縮空気は、ドリルストリング107内の通路(図示せず)を介してドリルビット106に導かれ、ここで、圧縮空気は、それ自体既知の方法で適切な連結具110及びホース113又は他の適切な手段を介してタンク109からドリルストリング107に供給される。圧縮空気は、圧縮機(図示せず)によって生成され、前記圧縮機は、そこから圧縮空気がドリルストリングに供給されるタンク109をチャージし得る。圧縮空気は、ドリルビット106の孔から排出され得、ドリル孔の掘削残骸を清掃するために使用されてもよい。圧縮空気は、例えば、圧縮空気及び水の混合物であってもよく、また、他の適切な種類のものであってもよい。
【0041】
油圧ポンプ116及び圧縮機は、例えば、ディーゼルエンジンなどの内燃機関、又は例えば電気モータなどの任意の他の適切な動力源、又は複数の動力源の組み合わせの形態から成る動力源111によって駆動される。また、
図1には、衝撃装置105に動力を与える油圧回路におけるアキュムレータ112が模式的に示されている。衝撃装置に動力を与える油圧回路は、さらに別のアキュムレータ及び/又は他のアキュムレータを有し得、同様に、他の油圧回路も、本発明に従って診断され得る一つ又は複数のアキュムレータを有し得る。また、
図1には、油圧ポンプ116から衝撃ピストン115に油圧流体を供給する供給経路の圧力を測定するために使用される圧力センサ108が示されている。
【0042】
削岩リグ100は、少なくとも一つの制御ユニット120を備えたリグ制御システムをさらに有する。制御ユニット120は、掘削プロセスの制御など、掘削リグ100の機能を制御するように構成されている。掘削リグ100が手動で操作される場合、制御ユニット120は、例えば、ジョイスティックなどのオペレータが制御可能な手段、及び様々な動作を要求する他の手段を通じてオペレータキャビン114に存在するオペレータから制御信号を受信し得る。ここで、オペレータが与えたジョイスティックの偏向及び/又は他の手段の操縦などの制御信号は、制御システムによって適切な制御コマンドに変換され得る。制御ユニット120は、例えば、ブーム102やフィーダ103を操縦するため、及び衝撃装置105を制御するため、さらに、様々な多の機能を実行するために、シリンダ/モータ/ポンプなどの各種アクチュエータによって実行されるべき動作を要求するように構成され得る。ここで説明される制御及び他の機能は、代替的に、制御ユニット120によって部分的又は完全に自律的に実行され得る。
【0043】
本明細書に開示された種類の掘削リグは、複数の制御ユニット、例えば、各制御ユニットが、掘削リグ100の様々な機能の監視及び実行を担当するように配置され得る複数の制御ユニットを有し得る。ただし、以下の説明では、簡略化のため、制御ユニット120によって様々な機能が制御されると仮定する。
【0044】
本明細書に開示された種類の制御システムは、データバス(図示せず)をさらに有し得、その場合、前記データバスは、CANバス、又は任意の他の適切な種類のデータバスであり得る。前記データバスは、掘削リグ100の様々なユニット間の通信を可能にするために使用され得、また、通信において、例えば、CAN open及び/又は同様のプロトコル又は任意の他の適切なプロトコルを利用することができる。例えば、制御ユニット120は、例えば、掘削プロセスに関する様々なデータを表示するために、オペレータキャビン114内の一つ以上のディスプレイと通信し、及び/又はその一部を形成してもよく、本発明の実施形態によれば、例えば、アキュムレータが故障していると診断されたときにオペレータに警告するために視覚的に及び/又は音声的に警告を提供することができる。
【0045】
また、制御ユニット120は、一つ以上のアキュムレータの診断に使用され得る圧力信号を受信するために、例えば、CANバス又は他のインターフェースを介して、一つ以上の圧力センサと通信し得る。圧力センサはまた、圧力信号を処理する手段を含むインターフェース、例えばI/Oインターフェース又は同様のインターフェイスと通信し得、この場合、I/Oは、例えば、圧力変動又は流量変動の表現を生成し、例えば、これらの信号を制御ユニット120に提供し得る。
【0046】
本発明の実施形態によれば、診断は、
図1の制御ユニット120などの掘削リグの制御ユニットによって実行されるが、診断は、遠隔制御センターなどの掘削リグの外部コンピュータ手段によって行われるように構成されてもよい。また、診断は、例えば、I/O インターフェース内で実行され得る。そして、掘削リグは、圧力信号を遠隔コンピュータ手段に送信する手段を有し得る。また、掘削リグが遠隔制御されている場合などには、遠隔制御センターでアラートを発生させることもできる。さらに、アキュムレータが故障していると診断された場合、掘削リグの制御システムは掘削を停止するか、又は、少なくとも衝撃力を低下させ、アキュムレータの故障による損害が発生するリスクを低減させることができる。
【0047】
図2は、
図1の掘削リグの例示的な油圧回路を示す図である。
図2には、繰り返し加速されてドリルストリング107を打撃することで衝撃パルス及び応力波を発生させ、衝撃パルス及び応力波をドリルストリング107によってドリルビット106及び岩盤に伝達する衝撃装置105及び衝撃ピストン115を示している。衝撃ピストン115の表面201及び202をそれぞれ交互に加圧及び減圧することで往復運動を発生させる。
【0048】
油圧流体は、油圧ポンプ116によって供給され、油圧流体は、選択的に、弁205の使用を通じて高圧供給経路(油圧ポンプ116から衝撃装置まで)を介して圧力室203及び204に供給され、弁205の状態は、例えば、衝撃装置105のチャンバ206の圧力によって任意の適切な方法で制御され得、その場合、前記チャンバ206の圧力は衝撃ピストン115の現在の位置に依存する。圧力室203及び204の一方が加圧されると、他方は減圧され、油圧流体は衝撃装置105からの低圧戻り経路を通ってタンク119に戻される。この加圧及び減圧、並びに圧力チャンバの開閉により、油圧回路の油圧流体に圧力変動及び流量変動が生じる。
【0049】
このような圧力変動による悪影響を低減するために、高圧供給路、及び本実施例では低圧戻り経路にも一つ又は複数のアキュムレータが設けられている。アキュムレータは、衝撃装置に直接設けてもよいし、衝撃装置の近傍に設けてもよい。これを模式的に示したのが、
図1のアキュムレータ112である。アキュムレータ112及び208は、システム内で生じるピーク圧力サージを減衰させるために使用され、また、油圧ポンプ116からの流量が適切な動作に不十分となる場合に、システム内の油圧流体の圧力を維持することもできる。戻り(低圧)経路上のアキュムレータ208に関して、アキュムレータ208は、圧力及び流量を安定させ、そうでなければ発生する可能性があり、有害である可能性がある油圧流体中のキャビテーションを回避することができる。アキュムレータは、しばしば、加圧されたアキュムレータ充填媒体(例えば、窒素ガス)から油圧流体を分離するダイヤフラム209、210を含む。加圧充填媒体は、ダイヤフラムを介して油圧流体に作用し、油圧回路の圧力変動を打ち消す。
【0050】
さらに、
図2には、衝撃ピストン115に動力を供給する油圧回路に加えて、衝撃装置105の減衰ピストン220に動力を供給する油圧回路も示されている。減衰ピストン220は、衝撃装置105から伝達される衝撃波の岩石衝突に続いてドリルストリング107を介して戻ってくるエネルギーの有害な反射を吸収するように構成されている。減衰チャンバ222は、油圧ポンプ116又は別の油圧ポンプであり得る油圧ポンプ221によって加圧される。ドリルストリングの反射により減衰チャンバ222の圧力が上昇し、戻り経路223を介してタンクに油圧流体を排出させることになる。衝撃ピストン105に動力を供給する油圧回路と同様に、減衰ピストン220に動力を供給する油圧回路は、圧力変動を低減し、減衰チャンバ222への油圧流体の適切な供給を確保し、適切な減衰を補償するアキュムレータ224を有する。
【0051】
本発明の実施形態によれば、アキュムレータ112、208及び224の各々は、適切な動作を確保し、可能な故障を検出するために個別に診断され得る。本実施例によれば、診断は、油圧流体の圧力変動及び/又は流量変動を用いて行われる。本実施例によれば、圧力変動の利用によりアキュムレータ112、208及び224が診断される。圧力変動は、一つ以上の圧力センサ231~233の使用を通じて決定され、本実施例によれば、アキュムレータを備えた各経路(供給又は戻り)の圧力センサが使用される。本発明の実施形態によれば、圧力センサ231などの単一の圧力センサが、例えば、アキュムレータ112及び208を診断するために利用され得る。圧力センサは、油圧ポンプ116及び221の近傍、ひいては例えばキャリア101上に配置され、診断を実行するのに十分な速度で圧力信号を送出し得る。例えば、圧力センサは、衝撃装置の(例えば60~80Hzのオーダーであり得る)最大掘削周波数の少なくとも2倍で圧力信号を送信するように構成され得るが、好ましくは、さらに高いレート、例えば最大掘削周波数又は油圧流体の変動で生じる最大周波数の2~1000倍の間隔における任意のレートで圧力信号を送信する設計とすることができる。圧力センサ231~233は、本発明の実施形態に従った処理のために、圧力信号を制御ユニット120又は他の処理ユニットに送信する。
【0052】
本発明の実施形態による例示的な方法300を、
図3を参照して以下に説明する。方法300は、任意選択的にステップ301から始まり、このステップでは、油圧回路の一つ以上のアキュムレータ112、208及び224の診断をすべきかどうかが決定される。診断をすべきである場合、方法はステップ302に進み、そうでなければ、方法はステップ301に留まる。一つ又はそれ以上のアキュムレータ112、208及び224の診断、ひいてはステップ301からステップ302への移行は、例えば、掘削が進行しているときに連続的に行われるように、又は、例えば、ある期間が経過したときなど適切な間隔で実行されるようにしてもよい。本発明の実施形態によれば、診断は、掘削が開始されると直ぐに、又は孔の掘削が開始されてから所定期間内に実行され、その後、孔の掘削中に継続的に行われ得る。本発明の実施形態によれば、ステップ301からステップ302への移行に関する別の要件も存在し得る。前記要件としては、例えば、掘削圧力に関する要件、即ち、掘削が通常の掘削圧力、例えば衝撃装置に動力を与える油圧流体の圧力に達した状態に達していることなどがあり得る。しかしながら、本発明の実施形態によれば、そのような追加の要件はなく、掘削が開始されたときに診断が行われてもよい。
【0053】
ステップ302では、圧力センサ231からの複数の圧力測定値が検索される、即ち、取得される。複数の圧力測定値は、一つ又は複数の期間にわたって、衝撃ピストン及び/又は減衰ピストンの往復運動の周波数の少なくとも2倍の周波数で取得される。好ましくは、一つ又は複数の高帯域幅圧力センサを衝撃ピストン及び/又は減衰ピストンから離して設置し、センサが往復運動による振動や機械的露出から保護されるようにして、圧力測定値の取得が実施される。本方法は、さらに、ステップ303において、一つ以上の時間期間にわたる衝撃ピストン及び/又は減衰ピストンの往復運動によって引き起こされる油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の表現、例えば、油圧回路内の圧力変動及び/又は流量変動の包絡線表現を決定することを含む。本実施例によれば、この表現は、結果として、圧力センサ231からの複数の連続した圧力測定値を用いて決定され、ここで、上述したように、圧力測定値は、打撃周波数の少なくとも2倍、好ましくはより高いレートで提供され、圧力センサからの信号は、例えば、制御ユニット120における処理のために、例えば、データバスを使用して又は直接接続して制御ユニット120に供給され得る。
【0054】
圧力変動の表現は、任意の適切な種類、例えば、包絡線表現であってもよい。
図4は、時間の関数として、圧力センサ231からの信号を使用して決定される例示的な圧力変動の一例を示している。油圧回路の圧力の振幅は、200バールをわずかに超える最小圧力から約250バールの最大圧力まで変化し、二つの最大値の間の変動は、衝撃ピストン105のフルストロークサイクルに対応する。
図4のグラフは、アキュムレータ112が正常に動作している状況を表している。ステップ302で決定される油圧回路内の圧力変動の表現は、上述したように、様々な異なる種類のものであり得、例えば、油圧回路内の最大圧力と最小圧力との差の表現を構成するものであり得る。これは、任意の適切な方法で決定することができる。例えば、
図4に示したように、油圧回路内の圧力変動の上限401及び下限402の包絡線の差として決定してもよい。上限401及び下限402の包絡線は、周知の信号処理に従って素直に決定してもよく、連続的又は所定期間に決定して、油圧回路における最小値と最大値の差の代表的な表現を決定してもよい。例えば、包絡線間の差の最大値及び最小値を、例えば一定期間中に決定してもよく、これらの値の一方又は両方を、油圧回路内の圧力変動の表現として利用することができる。
【0055】
次に、方法はステップ304に移り、油圧回路における圧力変動の決定された表現が、油圧回路における圧力変動の基準表現との関係で評価される。例えば、決定された油圧回路の圧力変動の表現は、油圧回路の圧力変動の基準表現と比較され得る。ステップ304において、油圧回路における圧力変動の表現が、圧力変動の基準表現から所定の程度以上逸脱せず、従って限界偏差未満であると判断される限り、該方法は、アキュムレータ112の後続の診断において圧力変動の表現をさらに決定するためにステップ301に戻る。診断は、連続的に行うようにしてもよく、また、適当な間隔で行うようにしてもよい。
【0056】
他方、ステップ304において、油圧回路における圧力変動の決定された表現が圧力変動の基準表現から所定の程度以上逸脱していると判断された場合、方法はステップ305に進み、そこで故障を示す信号が発生される。
【0057】
図5は、故障発生時の油圧回路の圧力変動、並びに対応する包絡線501及び502の展開を例示している。時刻t
0 から時刻t
damageまで、アキュムレータ112は正常に動作している。時刻t
damageに故障が発生する。例えば、ダイヤフラム209に漏れが発生し、その結果、アキュムレータガスが油圧流体中に混入する可能性がある。そうでなければ、アキュムレータ112は圧力低下を受ける可能性がある。また、アキュムレータ112には、アキュムレータの適切な動作を妨げる他の故障が発生する可能性もある。アキュムレータの動作不良により、圧力変動が望ましい程度に抑制されなくなり、アキュムレータのガス圧が低下すると圧力変動が大きくなり始める。時刻t
1では、例えば、アキュムレータが所望の減衰機能を発揮できなくなるので、状況はそれ以上悪化しない。
【0058】
ステップ304で実行される評価において、油圧回路における圧力変動の決定された表現が、圧力変動の基準表現の値を所定の程度だけ超えているかどうかが判断され得る。本実施例によれば、上包絡線と下包絡線との差が所定の差を所定程度超えているか、即ち、許容変動幅を超えているかが判断され得る。本発明の幾つかの実施形態によれば、
図5における上側包絡線と下部包絡線との間の最小差のような油圧回路における圧力変動の決定された表現の最小値が、例えばある期間中に、圧力変動の基準表現に従った最大許容値を超えているかどうかをさらに判断することが可能である。本実施例では、上側及び下部包絡線の差の最小値が、上側及び下部包絡線の差の最大許容値を超えているか否かを判断し、超えている場合には故障を示す信号を発生させることができる。
図5の例では、これは時刻t
1 に発生している。
【0059】
ステップ305で生成されるこの信号は、例えば、掘削リグのオペレータに可聴及び/又は可視信号によって警告するために使用され得、オペレータが適切な行動、例えば、誤作動しているアキュムレータに対処するために進行中の掘削を停止することができるようにされ得る。例えば、掘削リグが自律的に動作している場合、掘削を制御する制御システムの一部に信号を発生させ、それによって掘削を自動的に停止させることができるようにすることができる。また、監視員及び/又は他の要員に故障を知らせ、修理などの適切な処置を行えるように、信号を、例えば、遠隔制御センターに送信することもできる。アキュムレータ208及び224に関しても、全く同じ方法で、アキュムレータ112の診断と並行して診断することができる。また、アキュムレータを順番に診断していくことも可能である。本発明の実施形態によれば、圧力センサ231又は圧力センサ232は、両方のアキュムレータ112及び208を診断するために使用される。
【0060】
一般に、ステップ304で使用されている基準表現は、例えば、掘削リグ及び衝撃装置に関する特定の構成について経験的に決定されてもよく、ここで、値は、製造されるそのような構成の組み合わせごとに決定されてもよい。また、基準値は様々な衝撃圧力に対して決められ得、その結果、掘削に異なる衝撃圧力を使用する場合にも診断を実行することができるようにされ得る。また、基準値は、例えば油圧システムのモデル表現から計算されることも想定される。基準値は、例えば、アキュムレータが正常に動作している状況での圧力変動を測定することによって、システム自体によって確立することもでき、このような測定値は、その後の診断で使用するための基準値として保存され得る。
【0061】
以上例示した実施形態によれば、圧力変動はアキュムレータの状態の診断に利用される。本発明の実施形態によれば、油圧回路内の異なる位置にある二つの圧力センサが、圧力変動を決定するために使用される。例えば、高圧供給源に二つの圧力センサを使用することができる。これは、破線で示された追加の圧力センサ230によって
図2に示されている。二つの圧力センサからの信号とセンサ間の既知の距離とを組み合わせが、油圧回路の最大値と最小値とを決定し、代表値を診断に使用することを保証し、かつ、油圧回路内の定在波の圧力最小値に対して測定が行われることを避けるために利用され得る。油圧回路内の任意の位置の圧力を決定することができ、これは当技術分野では2マイクロホン方式と呼ばれている。しかし、一般的には、一つの圧力センサで十分な診断が可能である。
【0062】
本発明の実施形態によれば、圧力変動の代わりに流量変動が診断に使用される。流量も圧力と同様の方法で変動するので、圧力変動の代わりに流量変動を利用してもよい。流量は、流量計を用いて決定してもよいが、例えば、二つの圧力センサを用い、それらの間でそれ自体既知の方法で流量を絞り込むことによって決定してもよい。
【0063】
また、圧力変動や流量変動は、他の適切な方法で決定してもよい。例えば、圧力変動又は流量変動は、一つ又は複数の高調波の振幅を決定するための信号処理に供され得、一つ又は複数の高調波の振幅の変化は、アキュムレータの状態を診断するために利用され得る。
【0064】
このように、一種類の掘削リグで、異なるハンマー、異なる直径のドリル工具及び/又は異なるドリルビットインサート構造のドリル工具、並びに異なる種類のドリルロッドを使用することができる。圧力又は流量の基準表現は、前記したような一つ又は複数の組み合わせに対して有効であるが、様々な組み合わせを考慮し、様々な基準表現を決定する必要がある場合がある。あるいは、制御システムが、現在の組み合わせに対して、基準変動そのものを決定してもよい。生成された基準表現は、予め決定された場合、例えば、基準表現が適用される全ての掘削リグの耐用年数の間、利用される特定の組み合わせに対してアキュムレータが診断されるように、掘削リグの制御システムに記憶され得る。従って、異なるタイプの掘削リグ、及び/又は、掘削リグ、衝撃ハンマー及びドリルビットなどの異なる組み合わせに対して、異なる基準表現を生成することができる。
【0065】
本発明は、油圧衝撃式掘削が利用される本質的にあらゆる種類の掘削リグに利用され得る。また、本発明は、地上の掘削リグだけでなく、地下の掘削リグにも適用可能である。
【国際調査報告】