(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】二段の密閉シール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/08 20060101AFI20230703BHJP
C03C 27/06 20060101ALI20230703BHJP
E06B 3/663 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C03C27/08 Z
C03C27/06 101D
E06B3/663 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576423
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 US2020049700
(87)【国際公開番号】W WO2021252000
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522480333
【氏名又は名称】ヴイ-グラス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ペティ,ピーター
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016BA02
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC02
2E016EA01
4G061AA06
4G061BA01
4G061CB04
4G061CB14
4G061CC03
4G061CD02
4G061CD24
4G061CD25
(57)【要約】
真空ガラスアセンブリは、第1及び第2の間隔をあけた非金属基板をシール要素で互いに接続して、その間に排気可能な内部空間を形成する。シール要素は、霊感溶接により、金属ブリッジ要素を少なくとも1つの基板に接合して第1段シールを形成し、該第1段シールに少なくとも部分的に接触して第2段シールを形成することによって形成される。シール要素は、内部空間を周囲の環境から密閉するように構成されており、第1段シールと第2段シールとの両方がシール要素の密閉性に寄与する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけた第1及び第2の基板をシール要素によって相互に接続して間に排気可能な内部空間を形成する真空ガラスアセンブリであって、
前記シール要素は、第1段シールを形成するように冷間溶接を用いて金属ブリッジ要素を少なくとも1つの基板に接合し、前記第1段シールに少なくとも部分的に接触する第2段シールを形成することによって形成され、
前記シール要素は、前記内部空間を周囲の環境から密閉的に隔離するように構成される、真空ガラスアセンブリ。
【請求項2】
前記第2段シールを形成することは、少なくとも部分的に前記第1段シールと接触するシール材を供給することを含む、請求項1に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項3】
前記シール材は、はんだガラスを含む、請求項2に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項4】
前記シール材は、金属はんだを含む、請求項2に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項5】
前記シール材は、有機シール材を含む、請求項2に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項6】
前記第2段シールを形成することは、前記真空ガラスアセンブリを加熱することをさらに含む、請求項2に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項7】
前記第2段シールを形成することは、前記第1段シールの少なくとも一部を溶接することを含む、請求項1に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項8】
前記冷間溶接は、金属ブリッジ要素を振動ソノトロードと接触させることを含む、請求項1に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項9】
前記金属ブリッジ要素は、前記第1の基板に接合された第1のセグメントと、前記第2の基板に接合された第2のセグメントとを含む、請求項1に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項10】
前記第1のセグメントは、前記第2のセグメントに溶接されている、請求項9に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項11】
前記第1のセグメントは、接続材料を使用して前記第2のセグメントに接着されている、請求項9に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項12】
第1の基板と、
前記第1の基板と間を空けて、前記第1の基板との間に内部空間を画定する第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されて前記内部空間を周囲の環境から密閉的に隔離するように構成されたシール要素と、を備え、
前記シール要素は、接合された金属ブリッジ要素と前記第1の基板との間の冷間溶接結合によって形成される第1段シールと、前記第1段シールと少なくとも部分的に接触する第2段シールとを含む、真空ガラスアセンブリ。
【請求項13】
前記第1段シールは、前記金属ブリッジ要素と前記第1の基板との間の金属又は無機の中間層を含む、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項14】
前記第2段シールは、前記第1段シールと少なくとも部分的に接触するよう供給されたシール材を含む、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項15】
前記第2段シールは、前記金属ブリッジ要素の溶接部分を含む、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項16】
前記第1段シールは、前記金属ブリッジ要素と、該金属ブリッジ要素の引張強さよりも大きなせん断強さを持つ前記第1の基板との間の構造的接続を画定する、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項17】
前記第1段シールと前記第2段シールの両方が前記シール要素の密閉性に寄与する、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項18】
前記第2段シールは、前記第1段シールの欠陥を埋めるように構成されている、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項19】
前記第1の基板は、非金属材料で作られている、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項20】
前記第2の基板は、非金属材料で作られている、請求項19に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項21】
真空ガラスアセンブリの二枚の基板間を密閉的にシールするためのシール要素を形成する方法であって、
金属ブリッジ要素を二枚の基板のそれぞれに結合して第1の密閉段階シールを形成することと、
前記第1の密閉段階シールに少なくとも部分的に接触するようにシール材を供給することと、
第2の密閉段階シールを形成するためにシール材を加熱することと、を含むシール要素を形成する方法。
【請求項22】
前記金属ブリッジ要素を前記基板の二つのそれぞれに結合することは、冷間溶接によって達成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記シール材は、はんだガラス、金属、及び有機シール材料からなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[連邦政府が支援する研究または研究に関する声明]
[沿革]
本発明は、米国エネルギー省から授与されたSBIR支援協定DE-SC0017841に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0002】
[関連する出願への相互参照]
本出願は、2020年6月11日に出願された同時係属中の米国仮特許出願No.63/038,102の優先権を主張しており、その全内容は参照によりここに組み込まれる。
【0003】
本発明は、環境から隔離された内部領域を有するエンベロープ用の二段の密閉シール要素を作成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0004】
多くの既存の真空ガラスアセンブリ(例えば、真空断熱ガラス(VIG)アセンブリ)には、スペースによって互いに離された2枚以上のガラス板(例えば、ガラス窓)が含まれている。アセンブリ間の温度差は、アセンブリの構造に大きな影響を与え、場合によってはアセンブリの故障の原因となる。例えば、温度制御及び/又は断熱された建物の外壁に真空ガラスアセンブリが設置されている場合、外側のガラス板の温度は、通常、外気温(寒さにさらされると収縮し、熱にさらされると膨張する)に近づく。内部のガラス板は、通常、内部の気温と一致する比較的一定の温度のままで保たれる。内部のガラス板に対する外部のガラス板(すなわち収縮又は膨張)の動きは「異なるガラス板の動き(Differential pane movement)」として知られており、異なるガラス板の動きが大きすぎると、ひび割れ、シールの故障、又はその他のメカニズムにより、真空ガラスアセンブリを破損させる恐れが生じる。
【発明の概要】
【0005】
真空ガラスアセンブリのガラス板間をシールするために使用できる密閉シール要素の一つのタイプには、ガラス板に堆積された金属接着層に溶接される金属ブリッジ要素(例えば、金属箔)が含まれる。このような密閉シール要素の例は、2019年11月15日に提出された米国仮出願No.62/936,140に記載されており、その全内容は参照によりここに組み込まれている。
【0006】
密閉シール要素は、金属ブリッジ要素とガラスの間の界面に沿った微小漏れ経路、金属ブリッジ要素の欠陥(例えば、引っかき傷、しわ、微細構造の損傷、溶接の端部を貫通する又はそれに沿った穿孔、金属ブリッジ要素を構成する個別セグメント間の接合、等)、ガラスの欠陥(例えば、引っかき傷)、制御されていないプロセスパラメータの変動(例えば、ソノトロードに付着した「トランプ」金属に起因する)による欠陥、及びそれらが重なる溶接セグメントの不整合、等、さまざまな異なるメカニズムを介して故障する(すなわち、リークする)可能性がある。これらの故障メカニズムは、厳しく制御された製造プロセスを使用して最小限に抑えることができるが、コスト効率の高い方法でより信頼性の高い密閉性を提供できるシール構成が必要とされている。
【0007】
本発明は、一態様において、間隔をあけた第1及び第2の基板をシール要素によって互いに接続し、その間に排気可能な内部空間を形成する、真空ガラスアセンブリを提供する。シール要素は、金属ブリッジ要素を冷間溶接によって少なくとも1つの基板に結合して第1段シールを形成し、該第1段シールに少なくとも部分的に接触させて第2段シールを形成することによって形成される。シール要素は、該シール要素が内部空間を周囲の環境から効果的に隔離するように構成されているという点で密閉性がある。
【0008】
本発明は、他の態様において、第1の基板と、該第1の基板と間をあけて間に内部空間を画定する第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間に配置されて内部空間を周囲の環境から密閉的に隔離するシール要素と、を含む真空ガラスアセンブリを提供する。シール要素は、接合された金属ブリッジ要素と第1の基板との間の冷間溶接結合によって形成される1段シールと、該第1段シールと少なくとも部分的に接触する第2段シールとを含む。
【0009】
本発明は、他の態様において、真空ガラスアセンブリの二枚の基板間を密閉的にシールするためのシール要素を形成する方法を提供する。この方法は、金属ブリッジ要素を二枚の基板のそれぞれに結合して第1の密閉段階シールを形成し、該第1段階の密閉シールに少なくとも部分的に接触するようにシール材を供給し、第2段階の密閉シールを形成するために該シール材料を加熱することを含む。
【0010】
本発明の他の特徴及び側面は、以下の説明及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】内部空間と、内部空間を周囲の環境から隔離するシール要素を含む、例示的な真空ガラスアセンブリの部分断面図である。
【
図2】基板に結合された
図1のシール要素の第1段と第2段とを示す部分断面図である。
【
図3】別の実施形態によるシール要素の第1段と第2段とを示す部分断面図である。
【
図4】別の実施形態によるシール要素の第1段と第2段とを示す部分断面図である。
【
図5】別の実施形態によるシール要素の第1段と第2段とを示す部分断面図である。
【
図6】別の実施形態によるシール要素の第1段と第2段とを示す部分断面図である。
【
図7】別の実施形態によるシール要素を含む、
図1の真空ガラスアセンブリの部分断面図である。
【
図8】別の実施形態によるシール要素を含む、
図1の真空ガラスアセンブリの部分断面図である。
【
図9】本開示の態様を具体化するシール要素の第1段及び第2段を示す写真である。
【
図10】基板に結合された箔のリボンを示す上面図である。
【
図11】本開示の一実施形態による封止プロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のいずれかの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明又は上記の図面に示された構成要素の構成及び配置の詳細にその適用が限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、本発明の精神から著しく逸脱することなく、様々な方法で実施又は実行することができる。
【0013】
ここで使用される「ガラス板(pane)」という用語は、密閉的にシールされた平坦なエンクロージャアセンブリにおける壁要素又は基板として使用することを目的としたガラス要素を指す。
【0014】
「異なるガラス板の動き(Differential pane movement)」は、一方のガラス板の温度が他方のガラス板の温度に対して変化するときに発生する、隣接する二枚のガラス板間の相対的なガラス板の移動を指す。また、機械的な影響又は他の影響(例えば、取り扱いや使用時の衝撃)の下で発生する相対的なガラス板移動を指す場合もある。
【0015】
「密閉度(Hermeticity)」又は「密閉度のレベル(level of hermeticity」とは、シールが可能な最大漏れ率の測定値を指し、例えば、ヘリウムの標準立方センチメートル/秒/シール長センチメートル(sccs/cm)又は同等の測定結果を示す。一般に、密閉度が高いほど漏れ率の値が低くなり、逆も同様である。
【0016】
「密閉(Hermetic)」とは、その用途に適した、又は指定された密閉度を達成することができるシールを指す。ここに記載及び図示されている段階のシールのような多段シールの各段階は、各段階の密閉度が同じであることを推論することなく、密閉として記述されている可能性があることを認識すべきである。
【0017】
「高可鍛性(highly-malleable」という用語は、降伏応力が1万psi以下(例えば5,500以下)の物体又は材料を指す。
【0018】
溶接又はコーティングに関する「固体(solid-state)」という語句は、接合されている材料の溶融を伴わない接合プロセスを意味する。
【0019】
「冷間溶接(cold weld)」という用語は、二つ以上の部品を接合するための固体プロセスを意味する。
【0020】
「ソノトロード(sonotrode)」という用語は、超音波ボンディング装置によって溶接される基板のアセンブリに並進運動を伝達する振動工具を意味する。
【0021】
「メクトロード(mechtrode)」又は「メカトロード(mechatrode)」という用語は、圧力下での相対運動によって材料の固体接合又はコーティングのために、通常は超音波振動を含まないプロセスで使用されるマンドレル又はその他のエンドエフェクターツールを意味する。
【0022】
「内側(inboard)」という用語は、一般に平面的な形状を持つアセンブリ上の第2のフィーチャーに対する第1のフィーチャーの位置に関して、一般に平面的な形状の中心に近い第2のフィーチャー側にある第1のフィーチャーの位置を指す。
【0023】
「外側(outboard)」という用語は、一般に平面的な形状を持つアセンブリ上の第2のフィーチャーに対する第1のフィーチャーの位置に関して、一般に平面的な形状の中心から遠い第2のフィーチャー側にある第1のフィーチャーの位置を指す。
【0024】
「ブリッジ要素(bridge element」という用語は、基板に結合され、内部空間を環境から分離する密閉シール要素の一部を形成する要素を意味する。
【0025】
図1は、第1の基板14(例えば、第1のガラス板)と、該第1の基板14から間隔をあけた第2の基板16(例えば。第2のガラス板)と、を含む例示的な真空ガラスアセンブリ10(例えば、建物の外壁に取り付けるように構成されたウィンドウアセンブリ)であって、これら基板が該真空ガラスアセンブリ10を囲む環境から密閉及び隔離される内部空間18(排気可能な隙間又は内部領域とも称する)を画定する真空ガラスアセンブリの一部を示す。非圧縮性又は実質的に非圧縮性の材料(例えば、コンポジット、プラスチック、ガラス、金属、等。)から形成された一つ以上のスペーサー20を、基板14,16間で一定のギャップを維持するために、基板14,16間の内部空間18に配置することができる。図示された実施形態の基板14,16は、非金属(例えば、焼なましガラスや強化ガラス等のガラス)である。他の実施形態では、基板14,16の一方又は両方が金属であってもよい。基板14,16のそれぞれにシール要素22が取り付けられ、内部空間18を周囲環境からシールする。
【0026】
引き続き
図1を参照すると、シール要素22は、金属ブリッジ要素30とシール材34を含む。ブリッジ要素30は、一層以上の金属箔(例えば、アルミホイル)で形成することができる。図示された実施形態では、ブリッジ要素30は、二つのセグメント30a,30bから形成され、それぞれが固体溶接プロセス(例えば、ソノトロードを用いた摩擦溶接プロセス)を介してそれぞれの基板14,16に直接取り付けられ、溶接部36を形成する。図示された実施形態では、二つのセグメント30a,30bは、接続溶接部42(例えば、レーザー溶接、MicroTIG溶接、抵抗溶接、等の溶融溶接、又は溶接部42は、固体溶接を含むことができる)によって互いに接続されている。他の実施形態では、ブリッジ要素30のセグメント30a,30bは、単一片の材料から一体的に形成されてもよく、セグメント30a,30bは、他の方法で互いに接続されてもよい。
【0027】
図2を参照すると、ブリッジ要素30は、溶接部36によって基板14に取り付けられている。ブリッジ要素30は、その周囲境界(すなわち、基板14,16の間に)に沿って内部空間18を横切って延び、内部空間18を密閉的にシールする。溶接部36は、シール要素22の第1段シール38(第1段階シール又は主段シールとも呼ばれる)を画定する。第1段シール38は密封性であり、ブリッジ要素30と基板14との間の構造的接続も提供する。すなわち、第1段シール38は、熱膨張又は異なるガラス板の移動によるせん断力に抵抗するように構成される。いくつかの実施形態では、第1段シール38によって画定されるブリッジ要素30と基板14との構造的接続は、ブリッジ要素30自体の引張強度よりも大きなせん断強度を有する。
【0028】
図3を参照すると、いくつかの実施形態では、シール要素22は、さらに中間層37を含み、これは金属(例えば、アルミニウム)又は無機材料でできていてもよい。特に、中間層37は、基板14の端部(例えば、外縁周り)に堆積又は他の方法で配置されるコーティングとして形成される。例えば、いくつかの実施形態では、中間層37は、メカトロードを使用して基板14上に堆積させることができる。ブリッジ要素30は、中間層37上で基板14に取り付けられ、溶接部36(例えば、ソノトロードを用いた摩擦溶接プロセスのような固体溶接プロセスによって)を形成し、それによって第1段シール38を形成する。中間層37は、第1段シール38の機械的強度及び/又は密閉性を向上させることができる。
【0029】
図2~3を参照すると、シール材34は、少なくとも部分的に第1段シール38と接触しており、シール要素22の第2段シール40(第2段階シール又は次段シールとも呼ばれる)を画定する。シール材34は、ブリッジ要素30及び/又は基板14に結合し、必要な密閉性のシールを形成するのに適したはんだガラス、金属はんだ、又はその他の材料で構成されている。典型的には、欠陥を含む第1段シール38の密閉性は、対応する第2段シール40の密閉性よりも低い(すなわち、より多くリークする)。対照的に、欠陥のない第1段シール38の密閉性は、対応する第2段シール40の密閉性と典型的に類似している。これに対応して、結合された二段のシール要素22の密閉性は、第2段シール40の密閉性と同程度である。
【0030】
いくつかの実施形態では、シール材34は、有機シール材料であってもよい。このような実施形態では、有機シール材料は、低ガス放出及び低浸透率の有機シール材料であることが望ましい。有機シール材料は、これまで、パッシブ(すなわち、積極的にポンピングされない)真空ガラスアセンブリにおいて、長時間持続する密閉シール性能を提供することができなかった。しかし、二段のシール要素22は、密閉用の第1段シール38が第2段シール40の外部環境への暴露を最小限にするため、第2段のシール要素40に有機シール材料を使用することを可能にする。つまり、第1段シール38は、第2段シール40を通過する潜在的なガス透過を低減し、これにより、シール要素22の全体的な密閉性を損なうことなく、より多様な材料を第2段シール40に使用することができる。
【0031】
図示された実施形態において、シール材34は、第1段シール38全体を覆っている。他の実施形態では、シール材34は、第1段シール38の一部(例えば、第2段シール40は、第1段シール38の内側端部に接して、第1段シール38と基板14との界面接合部を覆ってもよい。)のみに接触するように適用することができる。シール材34は、基板14とブリッジ要素30の一方又は両方に接着することができる。
【0032】
シール材34は、基板14,16、及び真空ガラスアセンブリ10の他の部分の溶融温度よりも低い溶融及び/又は硬化温度を有する。いくつかの実施形態では、加熱装置を用いて、シール材34を含む製品10の少なくとも一部を加熱することにより、シール材34を溶融及び/又は硬化させ、基板14及びブリッジ要素30との結合を形成する。いくつかの実施形態では、加熱装置(例えば、オーブン)を使用してアセンブリ10全体を加熱し、シール材34を溶融及び/又は硬化させ、それによって第2段シール40を形成することができる。
【0033】
図2を参照すると、第1段シール38は第2段シール40の外側に配置されているため、ブリッジ要素30と基板14,16の間の溶接部36によって形成される構造的接続は、シール要素22に加えられる可能性のあるせん断応力の実質的にすべてを負担する。つまり、シール要素22に力F(例えば、不均等な熱膨張及び/又は異なるガラス板の移動による)が加えられた場合、実質的にすべてのせん断応力は、第2段シール40ではなく、第1段シール38の高強度溶接部36によって負担される。第2段シール40は、第1段シール38によって機械的応力から遮蔽されるため、第2段シール40の密閉性はより長い期間保持される可能性がある。しかし、他の実施形態では、第2段シール40は、少なくとも部分的に第1段シール38の外側に配置することができる。
【0034】
図4~6は、第2段シール40の様々な構造を示している。例えば、第2段シール40は、第1段シール38の領域内のブリッジ要素30の内側端部(
図4)及び/又はブリッジ要素30の中間部分(
図5)を溶融することによって形成することができる。このような実施形態では、第2段シール40は、レーザー溶接によって形成することができる。
図6を参照すると、第2段シール40は、第1段シールの領域内のブリッジ要素30の内側端部及び/又はブリッジ要素30の中間部分を冷間溶接することによって形成することができる。
図4~6に示す第2段シール40の実施形態は、第2段シール40を第1段シール38の前又は後のいずれかに形成することを可能にし、製造プロセスにさらなる柔軟性を提供する。
【0035】
図2~6には基板14のみが示されているが、シール要素22は、ブリッジ要素30と第2の基板16(
図1)の間の界面における実質的に同一の第1段シール及び第2段シールと段階を含む。
図1に戻ると、接続溶接部42をブリッジ要素30の外側の範囲に設けて、ブリッジ要素30のセグメント30a,30bを一緒に結合することができる。
図7を参照すると、同様の真空ガラスアセンブリ10Aの別の実施形態では、接続溶接部42は、ブリッジ要素30のセグメント30a,30bを接合する接続材料43に置き換えてもよい。接続材料43は、例えば、金属はんだ又ははんだガラス材料であってもよい。接続溶接部42の代わりに接続材料43を使用すると、適用時にシール要素22及び基板14,16への入熱が低くなる可能性がある。さらに他の実施形態では、接続材料43は接着剤であってもよい。
【0036】
図8を参照すると、同様の真空ガラスアセンブリ10Bの別の実施形態では、ブリッジ要素30は、単一の概ね平面的なセグメントから形成される。そのため、それぞれ
図1及び
図7の実施形態に示された接続溶接部42及び接続材料43は省略することができる。図の実施形態では、基板14,16の周縁は、第1の基板14の外縁が第2の基板16の外縁から離れるようにオフセットされている。オフセット配置は、外側の段のシール38,40を形成するためのアクセスを提供する。
【0037】
図11は、
図1~8を参照して上述したシール要素22の実施形態のような2段シール要素を製造し、基板14,16に対してシール要素22を配置して取り付けるための四つの主要なステップを有する例示的なプロセスを示す。
図11は、一般的なプロセスを包含しており、基板14,16上へのシール要素22の配置と取り付けと同様に、シール要素22の形成を容易にするために追加のステップをプロセスに組み込むことができることが理解されよう。一般的なプロセスには、i)非金属基板を準備すること(ステップS100)、ii)金属ブリッジ要素を基板に取り付けて第1段シールを形成すること(ステップS104)、iii)第1段シールに少なくとも部分的に接触してシール材を供給して第2段シールを形成すること(ステップS108)、及びiv)さらなる処理をすること(ステップS112)が含まれる。これらの主要なステップは、連続して実行することも、一つ以上のステップを同時に実行することもできる。
【0038】
最初の主要なステップ(ステップS100)では、基板14,16が準備されるが、これには、基板14,16のクリーニング(例えば、いくつかの実施形態ではプラズマクリーニングによって)及び/又は基板14,16への中間層(例えば、
図3の中間層37)の供給が含まれる。いくつかの実施形態では、中間層37は、基板14,16を加熱するためのオーブンを含まず、真空チャンバー(すなわち、オーブンを使わず、真空チャンバーフリーのプロセス)を使用しないプロセス又は方法(すなわち、オーブンを使わず、真空槽不要のプロセス)を使用して、基板14,16に供給される。例えば、いくつかの実施形態では、可鍛性金属(例えば、アルミニウム)が摩擦表面加工を使用して非金属基板に塗布される。摩擦表面加工には、可鍛性金属で形成された金属消耗品(例えば、メカトロード)を非金属基板の表面に押しつけ、金属消耗品と基板の一方又は両方を移動させて(すなわち相対運動をさせることで)可鍛性金属を表面に堆積または移動させ、これによりシール要素の一部である金属層が形成される。一部の構造では、摩擦表面加工の過程で酸素を排除するために安定したガス(例えば、アルゴン)を使用することができる。
【0039】
第二の主要なステップ(ステップS104)では、金属ブリッジ要素30は、冷間溶接プロセスによって、直接又は追加としての中間層37を介してかのいずれかで基板14,16に取り付けられる。特に、超音波シーム溶接機のソノトロードを使用して金属ブリッジ要素30を溶接し、第1段シール38を定義する溶接部36を形成することができる。
【0040】
第三の主要なステップ(ステップS108)では、シール材34を少なくとも部分的に第1段シール38に接触させて適用する。いくつかの実施形態では、シール材34は粉末(例えば、粉末状のはんだガラス)として提供され、これが第1段シール38に分配される。いくつかの実施形態では、シール材34は、ゲル等として提供することができる。さらに他の実施形態(例えば
図4~6)では、シール材34は、金属ブリッジ要素30自体の一部とすることができ、レーザー溶接、冷間溶接、又は他の同様のプロセスによって溶融又は変形させて、第2段シール40を形成する。
【0041】
最後に、第五の主要なステップ(ステップS112)では、第2段シール40を形成するためのシール材34の溶融及び/又は硬化等のためのさらなる処理(例えば、オーブンやその他の熱源を使用する)が行われる場合がある。追加の処理には、内部空間18を真空にすることが含まれる場合がある。アセンブリのさらなる処理には、内部空間でゲッターに点火することや、場合によっては、内部空間を排気又は恒久的に密閉できるようにするために必要となる可能性のある二次溶接又は密封ステップなど、多くの形態がある。
【0042】
ここに記載及び図示された実施形態に係る二段のシール要素22は、単段のシール要素よりも多くの利点を提供する。例えば、第2段シール40は、微小漏洩、溶接端を貫通する又は溶接端に沿った穿孔、金属ブリッジ要素30の欠陥(例えば、傷やしわ等)、基板14,16の欠陥(例えば、傷)、及び不整合を含む様々な異なるメカニズムのいずれかを介して第1段シール38の密閉性が低下した場合に、シール要素22の完全性を維持することができる冗長性又は第二の密閉シールを提供する。そのため、第1段シール38は、効果的な全体的な密閉性能に貢献しつつ、より安価な方法(例えば、製造公差が低い、品質管理テストが少ない等の方法)で製造することができる。いくつかの実施形態では、二段のシール要素22は、密閉された製品により長い耐用年数を提供することもできる。
図9に示すように、第2段シール40は、第1段シール38に存在する可能性のある欠陥50を修復する(例えば、空隙やマイクロリークなどを埋めることによって)こと(すなわち、漏れを無くすこと)もできることを認識すべきである。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2段シール40は、少なくとも部分的に第1段シール38の内側にあってもよく、それらの間又はブリッジ要素30と基板14,16との界面にトラップされる可能性のあるガスは、排気される内部空間18と連通できない。これにより、内部空間18のポンプダウンがより速くなるという利点がある。さらに、シール材34としてはんだガラスを使用すると、第2段シール40は、基板14,16上の一般的に使用される特定のコーティング(低放射率コーティング等)の隣接部分を溶解させることができ、コーティングに沿って発生する恐れのある腐食の進行に対するバリアを提供し、それによって排気された内部空間18を保護する。
【0044】
ここに記載及び図示されている実施形態に係る二段のシール要素22の重要な利点は、金属ブリッジ要素30が非金属基板と物理的及び接着接触の両方にあることである。これにより、シール性能が向上する。
【0045】
いくつかの実施形態では、二段のシール要素22は、排気された内部空間から残留ガスを除去するゲッターリボンまたはゲッター粒子を収容するための便利なチャンバーを提供することができる。このようなチャンバーは、ゲッターが反応した後、ゲッター材料が製品の可視領域に移動するのを阻害する可能性がある。
【0046】
いくつかの実施形態(例えば、
図1)では、第2段シール40は、金属ブリッジ要素30の対向する部分の間に隙間を維持し、それによって金属ブリッジ要素30を介した伝導によって生じえる二つの基板14,16間の熱伝達が阻害できる可能性がある。
【0047】
いくつかの実施形態では、二段のシール要素22は、後にシール要素22の内側にトリミングされる全面箔を使用するよりも、箔のリボンセグメント(
図10に示すように)を使用して金属ブリッジ要素30を形成することを有利に可能にする。箔のリボンは、溶接ジョイント54を使用してコーマ又は他の遷移で接続されるため、第1段シール38は、溶接ジョイント54の領域で局所的な密閉性の低下を引き起こす欠陥を発生させる可能性が高くなる。第2段シール40は、シール要素の全体的な密閉性を改善するために、そのような欠陥をシールすることができる。
【0048】
図1~8は、二段のシール要素を含む例示的な製品の一部を示しているが、他の製品にもシール要素(例えば、フラットパネルディスプレイ)を含めることができることが理解されよう。したがって、ここに記載され請求される発明は、ウィンドウアセンブリのみを含むと解釈されるべきではない。
【0049】
本発明は、本発明の精神又は特性から逸脱することなく、他の特定の形態を具体化し、又は本発明に記載される実施形態の組み合わせを組み込んでもよいことが理解される。特定の実施形態が例示及び記載されているが、本発明の精神から著しく逸脱することなく、他の変更が加えられてもよい。
【0050】
本発明の様々な特徴は、以下の請求項に記載されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけた第1及び第2の基板をシール要素によって相互に接続して間に排気可能な内部空間を形成する真空ガラスアセンブリであって、
前記シール要素は、第1段シールを形成するように冷間溶接を用いて金属ブリッジ要素を少なくとも1つの基板に接合し、前記第1段シールに少なくとも部分的に接触
し、前記第1及び第2の基板の少なくともいずれかに対して少なくとも部分的に直接的に接合されるように前記第1段シールから少なくとも横方向に部分的にオフセットして配置される第2段シールを形成することによって形成され、
前記第2段シールは前記第1段シールを密閉的にシールするように構成され、
前記シール要素は、前記内部空間を周囲の環境から密閉的に隔離するように構成される、真空ガラスアセンブリ。
【請求項2】
前記第2段シールを形成することは、少なくとも部分的に前記第1段シールと接触するシール材を供給することを含む、請求項1に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項3】
前記シール材は、はんだガラスを含む、請求項2に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項4】
前記シール材は、金属はんだを含む、請求項2に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項5】
前記シール材は、有機シール材を含む、請求項2に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項6】
前記第2段シールを形成することは、前記真空ガラスアセンブリを加熱することをさらに含む、請求項2に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項7】
前記第2段シールを形成することは、前記第1段シールの少なくとも一部を溶接することを含む、請求項1に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項8】
前記冷間溶接は、金属ブリッジ要素を振動ソノトロードと接触させることを含む、請求項1に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項9】
前記金属ブリッジ要素は、前記第1の基板に接合された第1のセグメントと、前記第2の基板に接合された第2のセグメントとを含む、請求項1に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項10】
前記第1のセグメントは、前記第2のセグメントに溶接されている、請求項9に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項11】
前記第1のセグメントは、接続材料を使用して前記第2のセグメントに接着されている、請求項9に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項12】
第1の基板と、
前記第1の基板と間を空けて、前記第1の基板との間に内部空間を画定する第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置されて前記内部空間を周囲の環境から密閉的に隔離するように構成されたシール要素と、を備え、
前記シール要素は、接合された金属ブリッジ要素と前記第1の基板との間の冷間溶接結合によって形成される第1段シールと、前記第1段シールと少なくとも部分的に接触する第2段シールとを含む、真空ガラスアセンブリ。
【請求項13】
前記第1段シールは、前記金属ブリッジ要素と前記第1の基板との間の金属又は無機の中間層を含む、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項14】
前記第2段シールは、前記第1段シールと少なくとも部分的に接触するよう供給されたシール材を含む、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項15】
前記第2段シールは、前記金属ブリッジ要素の溶接部分を含む、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項16】
前記第1段シールは、前記金属ブリッジ要素と、該金属ブリッジ要素の引張強さよりも大きなせん断強さを持つ前記第1の基板との間の構造的接続を画定する、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項17】
前記第1段シールと前記第2段シールの両方が前記シール要素の密閉性に寄与する、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項18】
前記第2段シールは、前記第1段シールの欠陥を埋めるように構成されている、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項19】
前記第1の基板は、非金属材料で作られている、請求項12に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項20】
前記第2の基板は、非金属材料で作られている、請求項19に記載の真空ガラスアセンブリ。
【請求項21】
真空ガラスアセンブリの二枚の基板間を密閉的にシールするためのシール要素を形成する方法であって、
金属ブリッジ要素を二枚の基板のそれぞれに結合して第1の密閉段階シールを形成することと、
前記第1の密閉段階シールに少なくとも部分的に接触するようにシール材を供給することと、
第2の密閉段階シールを形成するためにシール材を加熱することと、を含むシール要素を形成する方法。
【請求項22】
前記金属ブリッジ要素を前記基板の二つのそれぞれに結合することは、冷間溶接によって達成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記シール材は、はんだガラス、金属、及び有機シール材料からなる群から選択された少なくとも一つを含む、請求項21に記載の方法。
【国際調査報告】