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特表2023-529485E-セレクチン標的化を介して微小環境媒介耐性を克服するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(54)【発明の名称】E-セレクチン標的化を介して微小環境媒介耐性を克服するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230703BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20230703BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20230703BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230703BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALN20230703BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALN20230703BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/496
A61K45/06
A61K31/706
A61K31/7034
A61P35/04
C12Q1/6883 Z
C12Q1/6851 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576447
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2021036992
(87)【国際公開番号】W WO2021257398
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/038,856
(32)【優先日】2020-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/060,605
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/198,856
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506167421
【氏名又は名称】グリコミメティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マグナニ, ジョン エル.
(72)【発明者】
【氏名】フォグラー, ウィリアム イー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス, セオドア
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QR08
4B063QR36
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA19
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086EA09
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
がん(例えば、急性骨髄白血病など)を処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを対象(例えば、少なくとも1つの抗腫瘍薬および/または少なくとも1つの低メチル化剤を含む治療に対する耐性を獲得した対象など)に投与することを含み、対象は少なくとも1つの抗腫瘍薬(例えば、ベネトクラクスなど)および/または少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される方法が開示される。いくつかの実施形態では、E-セレクチンアンタゴニストは、E-セレクチンの活性を阻害するか、または1もしくはそれを超えるE-セレクチンリガンドへのE-セレクチンの結合を阻害する(これはE-セレクチンの生物学的活性を阻害し得る)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを前記対象に投与することを含み、前記対象はベネトクラクスをさらに投与される、方法。
【請求項2】
がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを前記対象に投与することを含み、前記対象は少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される、方法。
【請求項3】
がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを前記対象に投与することを含み、前記対象は少なくとも1つの抗腫瘍薬および少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される、方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの低メチル化剤が、5-アザシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)、グアデシタビン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、ゼブラリン、CP-4200、RG108およびナナオマイシンAから選択される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの低メチル化剤が5-アザシチジンである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの低メチル化剤がデシタビンである、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの抗腫瘍薬が標的化治療薬から選択される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの抗腫瘍薬がベネトクラクスである、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、1日当たり10mgから1000mgの固定用量のベネトクラクスを前記対象に投与することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの抗腫瘍薬が化学療法剤から選択される、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストが、E-セレクチンリガンドの炭水化物模倣物から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストが、
【化89】
およびその薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、1日当たり20mgから4000mgの固定用量の前記少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを前記対象に投与することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記がんが液体がんから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが固形がんから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記がんがFLT3変異がんから選択される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記がんがFLT3-ITD変異がんから選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、肺がん、脳がん、腎臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、乳がん、膵臓がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫、黒色腫、色素嫌性腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、胸腺腫、精巣胚細胞性腫瘍、および頭頸部扁平上皮癌から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、黒色腫、白血病、色素嫌性腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、リンパ腫、胸腺腫、精巣胚細胞性腫瘍および頭頸部扁平上皮癌から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記白血病が、急性骨髄白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病から選択される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記リンパ腫が、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫から選択される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項22】
前記骨髄腫が多発性骨髄腫である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項23】
前記黒色腫が、ぶどう膜黒色腫および皮膚黒色腫から選択される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、少なくとも1つの抗腫瘍薬を含む治療に対する耐性を獲得している、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、少なくとも1つの低メチル化剤を含む治療に対する耐性を獲得している、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、少なくとも1つの抗腫瘍薬と少なくとも1つの低メチル化剤とを含む併用療法に対する耐性を獲得している、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、1またはそれを超えるFLT3の変異変化を有する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、がん患者の少なくとも55%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4を発現する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、がん患者の少なくとも55%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子B3GNT5を発現する、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、がん患者の少なくとも55%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子FUT7を発現する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、(a)前記対象または前記対象から得られた試料中の1またはそれを超える遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、またはすでに測定していること、および、(b)前記対象または前記対象から得られた試料から得られた芽球細胞の少なくとも10%が前記1またはそれを超える遺伝子を発現する場合に、処置のために前記対象を選択すること、を含む方法によって処置する前記対象を選択することをさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記1またはそれを超える遺伝子が、ST3GAL4、B3GNT5およびFUT7から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、(a)前記対象から得られた芽球細胞を含む生物学的試料を得ること、またはすでに得ていること、(b)前記生物学的試料に対してアッセイを実施するか、またはすでに実施していることで、前記試料中の1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、および、(c)前記試料中の少なくとも10%の前記芽球細胞が前記1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子を発現する場合に、処置のために前記対象を選択すること、を含む方法によって処置する前記対象を選択することをさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子がグリコシル化遺伝子である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子が、ST3GAL4およびFUT7から選択される、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、(a)前記対象または前記対象から得られた試料中の1またはそれを超える遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、(b)(a)から得られた前記遺伝子発現レベルを、がんを有さない対象、新たに診断されたがん対象、または前記対象と同じがんと診断された対象から得られた対照試料と比較すること、および、(c)前記遺伝子発現レベルが前記対照試料の遺伝子発現レベルを超える場合に、処置のために前記対象を選択すること、を含む方法によって処置する前記対象を選択することをさらに含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記1またはそれを超える遺伝子が、ST3GAL4、B3GNT5およびFUT7から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記投与が、前記対象が寛解している日数を延長し、寛解するまでの日数を短縮し、がん細胞の転移を阻害し、または生存を改善する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象がヒトである、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月14日に出願された米国仮出願第63/038,856号、2020年8月3日に出願された米国仮出願第63/060,605号、および2020年11月17日に出願された米国仮出願第63/198,856号の優先権の利益を主張し、これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
がん(例えば、急性骨髄白血病(AML)など)の処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを対象に投与することを含み、対象は少なくとも1つの抗腫瘍薬(例えば、ベネトクラクスなど)および/または少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、対象は再発がん患者である。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗腫瘍薬および/または少なくとも1つの低メチル化剤を含む治療に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、対象の芽球細胞は、非がん対象、新たに診断されたがん対象、または患者と同じがんを有する対象からの対照試料と比較して、FUT7および/またはST3GAL4の遺伝子発現レベルが上昇している。
【背景技術】
【0003】
セレクチンは、白血球ホーミングにおいてよく特徴付けられた役割を有する細胞接着分子のクラスである。これらの細胞接着分子は、1型膜タンパク質であり、アミノ末端レクチンドメイン、上皮増殖因子(EGF)様ドメイン、可変数の補体受容体関連リピート、疎水性ドメインスパン領域および細胞質ドメインから構成される。結合相互作用は、セレクチンのレクチンドメインと様々な炭水化物リガンドとの接触によって媒介されるように見える。
【0004】
3つの既知のセレクチン、すなわち、E-セレクチン、P-セレクチン、およびL-セレクチンが存在する。血管接着分子E-セレクチンは、IL-1、リポ多糖、TNF-α、またはIFNγに応答して内皮細胞によって発現され(Bevilacquaら、1987)、E-セレクチンの欠失または遮断は、造血幹細胞(HSC)の静止、自己再生能、および化学療法耐性を促進する(Winklerら、2012)。E-セレクチンは、炭水化物シアリル-Lewis(sLe)に結合し、これは特定の白血球(単球および好中球)の表面上に糖タンパク質または糖脂質として提示され、これらの細胞が、周囲の組織が感染または損傷している領域の毛細血管壁に付着するのを助ける。具体的には、E-セレクチンは、血管周囲内皮骨髄ニッチ細胞上の白血球のテザリングおよびローリングを担う。さらに、E-セレクチンは、多くの腫瘍細胞上に発現するシアリル-Lewis(sLe)に結合する。白血病では、E-セレクチンおよびそのリガンド結合は、骨髄ホーミングおよび生着において重要な役割を果たす(Krauseら、2006)。
【0005】
P-セレクチンは、炎症を起こした内皮および血小板上に発現し、sLeおよびsLeも認識するが、P-セレクチンは、硫酸化チロシンと相互作用する第2の部位を含む。E-セレクチンおよびP-セレクチンの発現は、一般に、毛細血管に隣接する組織が感染または損傷した場合に増加する。L-セレクチンは白血球上に発現される。
【0006】
多くのがんは、がんが原発部位を越えて移動する前に処置可能である。しかしながら、がんが原発部位を超えて広がると、処置選択肢が制限される場合があり、生存統計が劇的に低下する場合がある。最近の研究は、がん細胞が免疫刺激性であり、セレクチンと相互作用して血管外に出て転移することを示唆している。
【0007】
推定発生率データに基づいて、最も一般的なタイプのがんには、前立腺がん、乳がん、肺がん、結腸直腸がん、黒色腫、膀胱がん、非ホジキンリンパ腫、腎臓がん、甲状腺がん、白血病、子宮内膜がん、および膵臓がんが含まれる。予想される発生率が最も高いがんは前立腺がんである。最も死亡率が高いのは肺がん患者である。金銭的および人的資源の莫大な投資にもかかわらず、結腸直腸がんなどのがんは依然として主要な死因である。実例として、結腸直腸がんは、男性および女性の両方に影響を及ぼすがんの中で、米国におけるがん関連死の第2の主因である。過去数年にわたって、結腸直腸がんを有する50,000人を超える患者が毎年死亡している。
【0008】
4つの最も一般的な血液がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)および急性骨髄性白血病(AML)である。白血病ならびに血液、骨髄およびリンパ系の他のがんは、小児の10倍多く成人に罹患する。ただし、白血病は最も一般的な小児がんの1つであり、小児白血病の75%がALLである。
【0009】
急性骨髄白血病(AML)は、骨髄および血液における異常な前駆細胞(芽球)の急速な成長を特徴とする侵攻性の不均一な血液学的疾患であり、正常な血球産生を妨げる。AMLは成人において最も一般的な白血病であり、AMLの発生率は近年増加している。世界中で300,000人を超える人々が毎年AMLと診断されており、AMLによる150,000人を超える死亡が毎年報告されている。診断時の年齢の中央値は66歳であり、治癒率は10%未満であり、生存期間の中央値は1年未満である(Burnettら、2010)。60歳未満の患者の70~80%が完全寛解を達成するが、ほとんどは最終的に再発し、全生存率は5年でわずか40~50%である(Fernandezら、2009、Mandelliら、2009、Ravandiら、2006)。
【0010】
AMLは、急速に進行する可能性があり、処置せずに放置した場合、典型的には数週間または数ヶ月以内に命取りになる。AMLの症状として、疲労、息切れ、あざや出血が起こり易い、ならびに感染のリスクの増加を挙げることができる。AMLの第一選択処置は、主にアントラサイクリン/シタラビンの組み合わせによる化学療法からなり、2つの段階、すなわち、誘導療法および寛解後(または地固め)療法に分けられる。誘導療法の目標は、白血病細胞の数を検出不能なレベルまで減少させることによって完全寛解を達成することであり、地固め療法の目標は、検出不可能な残留疾患を排除し、治癒を達成することである。がん細胞内に存在する特定の遺伝子変異は、治療を導くことができるだけでなく、その人がどのくらい長く生存する可能性があるかを決定し得る。
【0011】
強力な化学療法がより若いAML患者のための標準的なケアであるが、高齢患者はしばしば処置に関連して病的状態になったり死亡したりしやすい。近年、低メチル化剤(HMA)アザシチジンおよびデシタビンが、低用量シタラビンと組み合わせて、集中化学療法に適格でない患者を処置するために使用されている。より最近では、臨床研究により、FDA承認のBcl-2阻害剤ベネトクラクスと低メチル化剤との組み合わせがAMLの高齢患者において非常に有効であることが示された(DiNardoら、2019)。
【0012】
これらの進歩にもかかわらず、応答期間は依然として短く、生存期間の中央値はほとんどの患者にとって依然として満足のいくものではない。導入療法後に完全寛解(CR)を達成した患者の大部分は、診断後3年以内に再発する。再発を経験したAML患者の予後は極めて不良である。
【0013】
したがって、抗腫瘍薬に対する微小環境媒介耐性を克服するための新規な方法を含む、がん、例えば、AMLを処置する新規な方法が必要とされている。
【0014】
近年、様々な再発機序が広く研究されており、AML患者における処置の失敗の主な原因は、骨髄(BM)微小環境における治療耐性白血病幹細胞(LSC)の生存(Konopleva&Jordan、2011)および高い代替抗アポトーシスタンパク質、Mcl-1(Konoplevaら、2016)であると現在考えられている。
【0015】
骨髄微小環境は、白血病の発症、進行、および薬剤耐性において重要な役割を果たす。骨髄ニッチへの接着は、AMLの発症および進行ならびに導入療法後のLSC生存にとって重要であり、その後の再発の一因となる。例示的には、骨髄に存在するAML細胞は、化学療法剤の細胞傷害性効果からの大きな保護を受ける。対照的に、循環白血病細胞は、典型的には、骨髄ニッチに埋め込まれたものと比較してより化学感受性である。AML細胞の骨髄ホーミングは、内皮上のE-セレクチンに結合するがん細胞上のシアリル化糖タンパク質によるものをそれぞれ含む、複数の接着性およびケモキネシスの相互作用によって媒介される。
【0016】
AML患者におけるFms様チロシンキナーゼ3(FLT3-ITD)変異は、E-セレクチンの発現と有意に関連している(Kupsaら、2016)。具体的には、AML細胞においてFLT3-ITD変異を含む患者におけるより高いE-セレクチン発現の相関は、強く有意である(p=0.0010)(Kupsaら、2016)。FLT3-ITDにおける内部タンデム重複は、成人AML症例の30%を占め、予後不良をもたらす(Nakaoら、1996、Kottaridisら、2003、Thiedeら、2002)。FLT3遺伝子に変異を含むAML細胞の特徴は、これらのがん細胞の構成的キナーゼ活性化である。
【0017】
E-セレクチンリガンドのグリコシル化遺伝子であるFUT7の遺伝子発現は、患者のAML細胞の表面上のE-セレクチンリガンド(シアリルLe)の発現と相関する。FUT7は、E-セレクチンリガンドの結合活性に必要な末端フコースを付加するフコシルトランスフェラーゼをコードする。NCIが提供するTCGA(がんゲノムアトラス)として知られている、全生存と対になった151のデータを含むAML患者の公開データベースの分析では、FUT7発現によって判定したときに、E-セレクチンリガンドを発現するFLT3-ITD AML患者でのみ不良な生存が観察された(参照により本明細書に組み込まれるPCT国際公開第2021/011435号を参照されたい)。FLT3-ITD患者におけるFUT7発現によって確認されるE-セレクチンリガンドの発現と生存不良との相関は統計学的に有意であり(P=0.015)、AML細胞のE-セレクチンへの結合が、FLT3変異を有するAML患者で観察される生存不良に至らせることを示唆する。さらに、別のE-セレクチンリガンドを形成するグリコシル化遺伝子であるFUT7およびST3GAL4の高発現を伴うFLT3 ITD変異を有するAML患者は、FUT7およびST3GAL4の低発現を有する患者と比較して低い生存率を経験する(国際公開第2021/011435号を参照されたい)。
【0018】
可溶性E-セレクチンレベルの上昇もまた、再発性AMLにおいて検出されている(Arefら、2002)。E-セレクチンへの接着は化学療法耐性をもたらし、その後の再発の一因になる可能性が高い。本明細書に記載の研究では、ヒトAML細胞株および患者由来AML異種移植片(PDX)モデルを使用してAML生存におけるE-セレクチンの役割を解明した。報告された実験では、E-セレクチン結合は、インビトロでCDK4およびCDK6の発現を減少させ、AML細胞の休眠を増加させた。さらに、E-セレクチンを標的化すると、ヒトAML細胞が動員され、それらがベネトクラクス/HMA療法に感作された。
【0019】
したがって、抗腫瘍薬(例えば、ベネトクラクスなど)および/または低メチル化剤と組み合わせたE-セレクチンアンタゴニストの投与は、化学療法に対する微小環境媒介耐性を克服するために、および/またはがん(例えばAMLなど)を処置するために有用であり得る。血管ニッチへの白血病細胞ホーミングを妨げる化合物AのようなE-セレクチンアンタゴニストは、細胞傷害性および標的療法に対する感受性を増加させ、抗腫瘍薬および/またはHMAに対する強力な補助剤となり得る。
【化1】
【0020】
化合物Aは、sLea/xの生物活性配座を模倣し、高親和性(K約0.45μM)でE-セレクチンに結合する。化合物AによるE-セレクチンの薬理学的阻害は、HUVEC共培養AMLにおけるCDK4、CDK6、サイクリンD1およびサイクリンD2を含む細胞周期調節タンパク質の発現を増加させた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下の説明では、様々な実施形態の完全な理解を提供するために、ある特定の詳細について記載する。しかしながら、当業者は、開示された実施形態がこれらの詳細なしで実施され得ることを理解するであろう。他の例では、実施形態の説明が不必要に不明瞭になるのを避けるために、周知の構造は詳細に図示または説明していない。これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。
【0022】
少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを使用する、対象であって、少なくとも1つの抗腫瘍薬(例えば、ベネトクラクスなど)および/または少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される対象における処置方法(例えば、がん、例えば、AMLを処置する方法)への本明細書での言及は、
-対象における、例えば、がん、例えば、AMLなどを処置する方法における使用のための、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストと少なくとも1つの抗腫瘍薬(例えば、ベネトクラクスなど)および/または少なくとも1つの低メチル化剤;ならびに/あるいは、
-対象であって、少なくとも1つの抗腫瘍薬(例えば、ベネトクラクスなど)および/または少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される対象における、例えば、がん、例えば、AMLなどを処置する方法における使用のための少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニスト;ならびに/あるいは、
-対象における、例えば、がん、例えば、AMLなどを処置するための医薬の製造における、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストと少なくとも1つの抗腫瘍薬(例えば、ベネトクラクスなど)および/または少なくとも1つの低メチル化剤の使用;ならびに/あるいは、
-対象であって、少なくとも1つの抗腫瘍薬(例えば、ベネトクラクスなど)および/または少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される対象における、例えば、がん、例えば、AMLなどを処置するための医薬の製造における少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストの使用、
への言及としても解釈されるべきであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、最初にベネトクラクス/HMA療法に応答し、次いで再発したFLT3-ITD、NRAS、およびGATA2変異を有するAML患者に由来するインビボPDX-AML(Ven/HMA耐性)モデルを示す概略図である。
【0024】
図2図2は、化合物A、ベネトクラクス/HMA、または組み合わせで処置したAML-PDXマウスのカプラン・マイヤー生存曲線を示す図である。
【0025】
図3図3は、ビヒクル対照、化合物A、ベネトクラクス/HMA、または組み合わせによる3週間の処置中のマウスの末梢血循環中のヒトCD45細胞の割合を示すチャートである。
【0026】
図4図4は、ビヒクル対照、化合物A、ベネトクラクス/HMA、または組み合わせによる3週間の処置中のマウスの末梢血循環中のヒトCD45細胞の絶対数を示すチャートである。
【0027】
図5図5は、正常なNSC対照マウス、および白血病細胞浸潤物を注射し、次いでビヒクル対照、化合物A、ベネトクラクス/HMA、またはそれらの組み合わせで処置したNSCマウスの骨髄、脾臓、肺、および肝臓の代表的な組織学的画像を示す。
【0028】
図6A図6Aは、ヒトCD45細胞の全てのクラスターについてのCyTOFを使用した単一細胞プロテオミクスの結果を示すt分布確率的近傍埋め込み(TSNE)プロットである。
【0029】
図6B図6Bは、ビヒクル対照、化合物A、ベネトクラクス/HMAまたは組み合わせによる3週間の処置後のマウスから単離された細胞についてのCyTOFを使用した単一細胞プロテオミクスの結果を示すTSNEプロットである。
【0030】
図7A図7Aは、単一細胞プロテオミクス(CyTOF)によって評価した場合の、ヒトCD45細胞の全てのクラスターについてのE-セレクチンリガンド発現を示すTSNEプロットである。
【0031】
図7B図7Bは、ビヒクル対照、化合物A、ベネトクラクス/HMAまたは組み合わせによる3週間の処置後にマウスから単離された細胞についてのCyTOFによって評価されるE-セレクチンリガンド発現を示すTSNEプロットである。
【0032】
図8A図8Aは、ビヒクル対照、化合物A、ベネトクラクス/HMAまたは組み合わせによる3週間の処置後のマウスにおけるE-セレクチンリガンドおよびBcl-2のレベルを示すヒートマップである。各注釈付き表現型について、マーカー発現の強度の中央値を各処置群について計算し、タンパク質発現の違いを示すためにヒートマップで可視化した。スケールは、arcsinh変換された値の平均強度である。
【0033】
図8B図8Bは、ビヒクル対照、化合物A、ベネトクラクス/HMAまたは組み合わせによる3週間の処置後のマウスにおけるc-Myc、Ki67およびIdUのレベルを示すヒートマップである。各注釈付き表現型について、マーカー発現の強度の中央値を各処置群について計算し、タンパク質発現の違いを示すためにヒートマップで可視化した。スケールは、arcsinh変換された値の平均強度である。
【0034】
図9A図9A図9Cは、E-セレクチン阻害がAML芽球の増殖およびAML生存促進シグナル伝達シグネチャを変化させることを示す単一細胞プロテオミクスヒートマップを示す。
図9B図9A図9Cは、E-セレクチン阻害がAML芽球の増殖およびAML生存促進シグナル伝達シグネチャを変化させることを示す単一細胞プロテオミクスヒートマップを示す。
図9C図9A図9Cは、E-セレクチン阻害がAML芽球の増殖およびAML生存促進シグナル伝達シグネチャを変化させることを示す単一細胞プロテオミクスヒートマップを示す。
【0035】
図10図10は、E-セレクチン阻害がAML BM微小環境におけるシグナル伝達変化を媒介することを示す単一細胞プロテオミクスの結果(左:UMAP結果、右:ヒートマップ)を示す。
【0036】
図11図11は、食塩水、5-アザシチジン単独、化合物A単独、または化合物Aと組み合わせた5-アザシチジンで処置したマウスのKG1 AMLモデルにおけるカプラン・マイヤー生存曲線を示す図である。
【0037】
図12A図12Aは、5-アザシチジン処置KG1細胞のE-セレクチンに対する接着の代表的な免疫蛍光画像を示す。
【0038】
図12B図12Bは、5-アザシチジン処置KG1細胞の蛍光測定を使用してE-セレクチンに対する接着を定量化するチャートを示す。
【0039】
図13図13は、KG1細胞へのPEコンジュゲートE-セレクチン結合についてのフローサイトメトリー分析結果を示すチャートである。
【0040】
図14図14は、KG1細胞における包括的DNAメチル化に対する5-アザシチジンの効果を示すチャートである。
【0041】
図15図15は、様々な濃度の5-アザシチジンの存在下で培養したKG1細胞についてのFUT7プロモーターメチル化分析の結果を示すチャートである。
【0042】
図16図16は、食塩水、ベネトクラクス単独、化合物A単独、または化合物Aと組み合わせたベネトクラクスで処置したマウスのMV4.11AMLモデルにおけるカプラン・マイヤー生存曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
定義:
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用される全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。参考文献の用語または議論が本開示と矛盾する範囲においては、後者が優先されるものとする。
【0044】
本明細書における用語が範囲(例えば、C1~4アルキル)または「~の範囲」として特定されるときはいつでも、その範囲は独立してその範囲の各要素を開示し、含む。非限定的な例としては、C1~4アルキル基は、独立して、Cアルキル基、Cアルキル基、Cアルキル基、およびCアルキル基を含む。別の非限定的な例として、「nは0から2の範囲の整数である」は、独立して、0、1、および2を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、単語の単数形はその単語の複数形も含む。例えば、本明細書で使用される場合、「a」または「an」実体は、1またはそれを超えるその実体を指し、例えば、「a compound(化合物)」は、そうでないことを明記しない限り、1またはそれを超える化合物または少なくとも1つの化合物を指す。したがって、「a」(または「an」)、「1またはそれを超える」、および「少なくとも1」という用語は、本明細書では互換的に使用される。例えば、「少なくとも1つのC1~4アルキル基」という用語は、1つのC1~4アルキル基、2つのC1~4アルキル基などの1またはそれを超えるC1~4アルキル基を指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、特定の文脈がそうでないことを示さない限り、「および/または」を意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、飽和の直鎖、分枝鎖、および環状(シクロアルキルとしても識別される)の、第一級、第二級、および第三級の炭化水素基を含む。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、secブチル、イソブチル、tertブチル、シクロブチル、1-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、イソヘキシルおよびシクロヘキシルが挙げられる。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、アルキル基は必要に応じて置換されていてもよい。置換アルキル基の非限定的な例としては、重水素化アルキル基、例えば、CDおよびCDCDが挙げられる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む直鎖、分岐および環状炭化水素基を含む。アルケニル基の二重結合は、非共役であってもよく、または別の不飽和基と共役していてもよい。アルケニル基の非限定的な例としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2-エチルヘキセニルおよびシクロペンタ-1-エン-1-イルが挙げられる。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、アルケニル基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0049】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含む直鎖および分岐炭化水素基を含む。アルキニル基の三重結合は、非共役であってもよく、または別の不飽和基と共役していてもよい。アルキニル基の非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルが挙げられる。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、アルキニル基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0050】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、少なくとも6つの炭素原子および少なくとも1つの芳香環を含む炭化水素環系基を含む。アリール基は、単環式、二環式、三環式または四環式の環系であり得、縮合環系または架橋環系を含み得る。アリール基の非限定的な例としては、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランテン、フルオレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレンおよびトリフェニレンから誘導されるアリール基が挙げられる。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、アリール基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキル」という用語は、本明細書で定義される少なくとも1つのハロゲンで置換された本明細書で定義されるアルキル基を含む。ハロアルキル基の非限定的な例としては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピルおよび1,2-ジブロモエチルが挙げられる。例えば、「フルオロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲンがフルオロであるハロアルキルである。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、ハロアルキル基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ハロアルケニル」という用語は、本明細書で定義される少なくとも1つのハロゲンで置換された、本明細書で定義されるアルケニル基を含む。ハロアルケニル基の非限定的な例としては、フルオロエテニル、1,2-ジフルオロエテニル、3-ブロモ-2-フルオロプロペニルおよび1,2-ジブロモエテニルが挙げられる。「フルオロアルケニル」は、少なくとも1つのフルオロ基で置換されたハロアルケニルである。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、ハロアルケニル基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ハロアルキニル」という用語は、本明細書で定義される少なくとも1つのハロゲンで置換された、本明細書で定義されるアルキニル基を含む。非限定的な例としては、フルオロエチニル、1,2-ジフルオロエチニル、3-ブロモ-2-フルオロプロピニルおよび1,2-ジブロモエチニルが挙げられる。「フルオロアルキニル」は、少なくとも1つのハロゲンがフルオロであるハロアルキニルである。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、ハロアルキニル基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0055】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」または「複素環式環」という用語は、2から23個の環炭素原子と、N、OおよびSからそれぞれ独立して選択される1から8個の環ヘテロ原子とを含む3から24員の飽和または部分不飽和非芳香族環基を含む。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、ヘテロシクリル基は、単環式、二環式、三環式または四環式の環系であってよく、縮合環系または架橋環系を含んでいてもよく、部分的または完全に飽和していてもよく、ヘテロシクリル基中の任意の窒素、炭素または硫黄原子は、必要に応じて酸化されていてもよく、ヘテロシクリル基中の任意の窒素原子は、必要に応じて四級化されていてもよい。複素環式環の非限定的な例としては、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニルおよび1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられる。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、ヘテロシクリル基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0056】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、1から13個の環炭素原子、ならびにN、OおよびSからそれぞれ独立して選択される1から6個の環ヘテロ原子、ならびに少なくとも1つの芳香環を含む、5から14員の環基を含む。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式または四環式の環系であり得、縮合または架橋環系を含み得、ヘテロアリールラジカル中の窒素、炭素または硫黄原子は、必要に応じて酸化されていてもよく、窒素原子は、必要に応じて四級化されていてもよい。非限定的な例としては、アゼピニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、フラノニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、オキシラニル、1-オキシドピリジニル、1-オキシドピリミジニル、1-オキシドピラジニル、1-オキシドピリダジニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、キヌクリジニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルおよびチオフェニル(すなわち、チエニル)が挙げられる。本明細書で別段の具体的な記載がない限り、ヘテロアリール基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0057】
本明細書で別段の具体的な記載がない限り、置換基は必要に応じて置換されていてもよい。
【0058】
「置換された」という用語は、上記の基のいずれかにおいて、少なくとも1つの水素原子が、例えば、重水素原子;F、Cl、BrおよびIなどのハロゲン原子;水酸基、アルコキシ基およびエステル基などの基における酸素原子;チオール基、チオアルキル基、スルホン基、スルホニル基およびスルホキシド基などの基における硫黄原子;アミン、アミド、アルキルアミン、ジアルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン、ジアリールアミン、N-オキシド、イミドおよびエナミンなどの基における窒素原子;トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基およびトリアリールシリル基などの基におけるケイ素原子;ならびに、様々な他の基における他のヘテロ原子などの非水素原子で置き換えられている状況を含む。「置換された」はまた、上記の基のいずれかにおいて、少なくとも1つの水素原子が、オキソ基、カルボニル基、カルボキシル基およびエステル基における酸素、ならびにイミン、オキシム、ヒドラゾンおよびニトリルなどの基における窒素などのヘテロ原子へのより高次の結合(例えば、二重結合または三重結合)によって置き換えられている状況を含む。
【0059】
本出願は、本明細書に開示される化合物の全ての異性体を想定している。本明細書で使用される「異性体」には、光学異性体(例えば、立体異性体、例えば、エナンチオマーおよびジアステレオ異性体)、幾何異性体(例えば、Z(zusammen)またはE(entgegen)異性体)、および互変異性体が含まれる。本開示は、その範囲内に、本化合物の全ての可能な幾何異性体、例えば、ZおよびE異性体(シスおよびトランス異性体)、ならびに本化合物の全ての可能な光学異性体、例えば、ジアステレオマーおよびエナンチオマーを含む。さらに、本開示は、その範囲内に、個々の異性体およびそれらの任意の混合物、例えば、ラセミ混合物の両方を含む。個々の異性体は、出発物質の対応する異性体形態を用いて得ることができ、または従来の分離方法に従って最終化合物の調製後に分離してもよい。光学異性体、例えば、エナンチオマーをそれらの混合物から分離するために、従来の分割方法、例えば、分別晶出を使用することができる。
【0060】
本開示は、その範囲内に、全ての可能な互変異性体を含む。さらに、本開示は、その範囲内に、個々の互変異性体およびそれらの任意の混合物の両方を含む。本明細書に開示される各化合物は、その範囲内に、全ての可能な互変異性形態を含む。さらに、本明細書に開示される各化合物は、その範囲内に、個々の互変異性形態およびそれらの任意の混合物の両方を含む。本出願の方法、使用および組成物に関して、1または複数の化合物への言及は、その化合物をその可能な異性体形態のそれぞれおよびそれらの混合物に包含することを意図している。本出願の化合物が1つの互変異性形態で示されている場合、その示されている構造は、他の全ての互変異性形態を包含することが意図されている。
【0061】
「急性骨髄白血病」、「急性骨髄性白血病」、「急性骨髄芽球性白血病」、「急性顆粒球性白血病」および「急性非リンパ性白血病」および「AML」という用語は互換的に使用され、本明細書で使用される場合、骨髄性幹細胞の異常な増殖を特徴とする骨髄のがんを指す。本明細書で使用されるAMLは、限定するものではないが、AMLの世界保健機関(WHO)2016分類によって分類されるサブタイプ、例えば、骨髄異形成関連変化を伴うAMLまたは骨髄性肉腫、および、French-American-British(FAB)分類系によって分類されるサブタイプ、例えば、M0(急性骨髄芽球性白血病、低分化型)またはM1(成熟なしの急性骨髄芽球性白血病)(Faliniら、2010、Leeら、1987)などが挙げられる、疾患の任意のまたは全ての既知のサブタイプを指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、患者への化合物の「投与」は、活性医薬成分を患者に導入または送達する任意の経路(例えば、経口送達)を指す。投与には、自己投与および他者による投与が含まれる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」および「さらに投与される」という用語は、2またはそれを超える化合物、薬剤、または追加の活性医薬成分を指す場合、2またはそれを超える化合物、薬剤、または活性医薬成分を、お互いに対して、その前に、それと同時に、またはその後に患者に投与することを意味する。2またはそれを超える化合物、薬剤、または活性医薬成分は、同じ医薬組成物または異なる医薬組成物で投与されてもよい。
【0064】
本明細書で使用される場合、「抗腫瘍薬」という用語は、腫瘍の発生を予防、阻害、または停止する活性医薬成分を指す。抗腫瘍薬は、標的療法薬(すなわち、がんの成長、進行または拡大に関与する特定の分子を妨害することによってがんの成長または拡大を阻止する薬物)または従来の化学療法剤であり得る。標的療法の非限定的な例としては、ホルモン療法、シグナル伝達阻害剤、遺伝子発現調節剤、アポトーシス誘導剤、血管形成阻害剤、免疫療法、および毒性分子を送達するモノクローナル抗体が挙げられる。さらに、多数の化学療法剤が腫瘍学分野で使用されており、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイドおよびトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられる。化学療法のために投与される治療薬の例は、当業者に周知である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「芽球」および「芽球細胞」という用語は、未分化前駆血液幹細胞を指すために互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「芽球数」という用語は、試料中の芽球細胞の数を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「有効用量」は、単回または複数回投与時に、病状に罹患している患者を処置する化合物の量を指す。有効量は、担当診断医が公知の技術を使用し、同様の状況下で得られた結果を観察することによって決定することができる。有効量を決定する際に、限定するものではないが、患者の体格、年齢、および全般的な健康状態;関与する特定の病状、障害、または疾患;病状、障害または疾患の程度または関与または重症度、個々の患者の応答;投与される特定の化合物;投与様式;投与される調製物のバイオアベイラビリティ特性;選択された用量レジメン;併用薬の使用;ならびに他の関連状況などが挙げられるいくつかの要因が主治医によって考慮される。
【0067】
いくつかの実施形態では、有効用量は、処置されている障害/疾患状態に関連する少なくとも1つの症状を部分的または完全に緩和する(すなわち、排除または低減する)用量、障害/疾患状態の発症または進行を遅らせ、遅延させ、または防止する用量、障害/疾患状態の進行を遅らせ、遅延させ、または防止する用量、疾患の程度を減少させる用量、1またはそれを超える症状を好転させる用量、疾患の寛解(部分的または全体)をもたらす用量、および/または生存を延長する用量である。処置のために企図される疾患状態の例を本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、患者は、現在がんを有しているか、がんの処置をかつて受けて寛解しているか、またはがんの処置後に再発するリスクがある。
【0068】
本明細書で使用される場合、「E-セレクチンアンタゴニスト」という用語は、E-セレクチンのみのアンタゴニスト、ならびにE-セレクチンおよびP-セレクチンまたはL-セレクチンのいずれかのアンタゴニスト、ならびにE-セレクチン、P-セレクチンおよびL-セレクチンのアンタゴニストを含む。「E-セレクチンアンタゴニスト」および「E-セレクチン阻害剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0069】
いくつかの実施形態では、E-セレクチンアンタゴニストは、E-セレクチンの活性を阻害するか、または1もしくはそれを超えるE-セレクチンリガンドへのE-セレクチンの結合を阻害する(これはE-セレクチンの生物学的活性を阻害し得る)。
【0070】
E-セレクチンアンタゴニストには、本明細書に記載される糖模倣化合物が含まれる。E-セレクチンアンタゴニストには、E-セレクチン上の結合部位またはその近傍に結合して、シアリルLe(sLe)またはシアリルLe(sLe)とのE-セレクチン相互作用を阻害する抗体、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣体、およびアプタマーも含まれる。
【0071】
開示される方法に適したE-セレクチンアンタゴニスト(例えば、化合物および組成物)に関するさらなる開示は、2016年2月9日に発行された米国特許第9,254,322号および2016年11月8日に発行された米国特許第9,486,497号に見出すことができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、E-セレクチンアンタゴニストは、参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月18日に発行された米国特許第9,109,002号に開示されているE-セレクチンアンタゴニストから選択される。いくつかの実施形態では、E-セレクチンアンタゴニストは、参照により本明細書に組み込まれる、2013年4月2日に発行された米国特許第8,410,066号および2019年12月31日に発行された米国特許第10,519,181号に開示されているヘテロ二機能アンタゴニストから選択される。開示された方法および化合物に適したE-セレクチンアンタゴニストに関するさらなる開示は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月1日に公開された米国特許出願公開第2019/0233458号、2019年7月4日に公開された国際公開第2019/133878号、2020年7月2日に公開された国際公開第2020/139962号、2020年10月29日に公開された国際公開第2020/219419号、および2020年10月29日に公開された国際公開第2020/219417号に見出すことができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、開示される方法に適したE-セレクチンアンタゴニストには、汎セレクチンアンタゴニストが含まれる。例えば、E-セレクチンおよびE-セレクチン阻害剤-リンカー-CXCR4ケモカイン受容体阻害剤を含むCXCR4ケモカイン受容体の阻害のためのヘテロ二機能化合物が当技術分野で公知である。非限定的な例は、例えば、米国特許第8,410,066号に開示されている。
【0073】
本明細書で使用される場合、「[X]およびその薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つの化合物のmg」の表現で表される量は、遊離塩基および/または[X]の1またはそれを超える薬学的に許容され得る塩の形態で存在する[X]の遊離塩基の総重量に基づく。当業者は、本明細書に記載される化合物の1日投与量および個々の用量に等しい薬学的に許容され得る誘導体(例えば、薬学的に許容され得る塩)の量を理解するであろう。すなわち、例えば、1600mgの化合物Aの固定された1日用量の上記開示を考える場合、当業者は、化合物Aの薬学的に許容され得る塩の等価な固定された1日用量を求める方法を理解するであろう。
【0074】
本明細書で使用される場合、「増加する」という用語は、少なくとも1%正に変化することを指し、限定するものではないが、少なくとも5%(例えば、5%)正に変化すること、少なくとも10%(例えば、10%)正に変化すること、少なくとも25%(例えば、25%)正に変化すること、少なくとも30%(例えば、30%)正に変化すること、少なくとも50%(例えば、50%)正に変化すること、少なくとも75%(例えば、75%)正に変化すること、または、100%正に変化すること、5%から10%正に変化すること、5%から15%正に変化すること、5%から25%正に変化することなどが挙げられる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、正または負に変化することを指す。調節の非限定的な例としては、少なくとも1%(例えば、1%)の変化、少なくとも2%(例えば、2%)の変化、少なくとも5%(例えば、5%)の変化、少なくとも10%(例えば、10%)の変化、少なくとも25%(例えば、25%)の変化、少なくとも50%(例えば、50%)の変化、少なくとも75%(例えば、75%)の変化、100%の変化、5%から10%の変化、5%から15%の変化、5%から25%の変化などが挙げられる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「患者」および「対象」という用語は互換的に使用される。いくつかの実施形態では、患者または対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、患者または対象はヒトである。
【0077】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの活性医薬成分と、少なくとも1つの薬学的に許容され得る添加剤との混合物または組み合わせを指す。医薬組成物は、医療分野の当業者によって決定されるように、処置される疾患または障害に適切な任意の様式で投与され得る。適切な用量ならびに適切な投与期間および投与頻度は、患者の病状、患者の疾患の種類および重症度、有効成分の具体的な形態、ならびに投与方法が挙げられる本明細書で論じられる要因によって決定される。一般に、適切な用量(または有効用量)および処置レジメンは、治療的および/または予防的利益(例えば、より頻繁な完全寛解もしくは部分寛解、またはより長い無病生存率および/もしくは全生存率、または症状の重症度の低下、または本明細書に詳細に記載される他の利益などの臨床転帰の改善)を提供するのに十分な量の医薬組成物を提供する。
【0078】
本明細書に記載の医薬組成物は、有効量の化合物を効果的に送達することができるいくつかの経路のうちのいずれかによって、それを必要とする対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は非経口投与される。非経口投与の非限定的な適切な経路としては、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、空洞内、髄腔内、および尿道内注射および/または注入が含まれる。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は静脈内(IV)投与される。IV投与の非限定的な適切な経路としては、末梢ライン経由、中心カテーテル経由、および末梢から挿入された中心ラインカテーテル(PICC)経由が挙げられる。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は皮下投与される。
【0079】
本明細書に記載の医薬組成物は、滅菌水性または滅菌非水性の溶液、懸濁液、またはエマルジョンであり得、少なくとも1つの薬学的に許容され得る添加剤または希釈剤(すなわち、活性成分の活性を妨害しない非毒性物質)をさらに含み得る。そのような組成物は、固体、液体、または気体(エアロゾル)の形態であり得る。液体医薬組成物は、例えば、以下に挙げる、注射用水などの滅菌希釈剤、生理食塩水溶液(例えば、生理食塩水)、リンゲル液、等張塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒として機能し得る固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の溶媒、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、緩衝剤および等張性を調整するための薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースのうちの少なくとも1つを含み得る。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数回投与バイアルに封入され得る。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は生理食塩水を含む。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は注射可能な医薬組成物であり、いくつかの実施形態では、注射可能な医薬組成物は滅菌されている。
【0080】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、固体医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、経口投与用の医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、単回投与単位形態である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、複数回投与単位形態である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は錠剤組成物である。いくつかの実施形態では、本医薬組成物はカプセル組成物である。
【0081】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は液体として製剤化される。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、静脈内投与用の液体として製剤化される。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、非経口投与用の液体として製剤化される。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、皮下(subQ)投与用の液体として製剤化される。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、筋肉内(IM)投与用の液体として製剤化される。いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、骨内投与用の液体として製剤化される。
【0082】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る添加剤」は、医薬組成物を調製するのに有用な担体または添加剤を指す。例えば、薬学的に許容され得る添加剤は、一般に安全であり、哺乳動物の薬学的使用に一般に許容され得ると考えられる担体および添加剤を含む。非限定的な例として、薬学的に許容され得る添加剤は、凝集物中で活性成分のためのビヒクルまたは媒体として機能することができる固体、半固体または液体材料であり得る。薬学的に許容され得る添加剤のいくつかの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences and the Handbook of
Pharmaceutical Excipientsに見られ、例としては、希釈剤、ビヒクル、担体、軟膏基剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、甘味剤、香味剤、ゲル基剤、徐放性マトリックス、安定化剤、保存剤、溶媒、懸濁化剤、緩衝剤、乳化剤、染料、噴霧剤、コーティング剤などが挙げられる。
【0083】
一般に、添加剤または希釈剤の種類は、投与様式ならびに有効成分(複数可)の化学組成に基づいて選択される。非限定的な例として、非経口投与用の医薬組成物は、水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックス、および緩衝液のうちの1またはそれを超えるものをさらに含み得る。
【0084】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る塩」という用語は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。薬学的に許容され得る酸付加塩の非限定的な例としては、塩化物塩、臭化物塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩およびアスコルビン酸塩が挙げられる。薬学的に許容され得る塩基付加塩の非限定的な例としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム(置換および非置換)、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガンおよびアルミニウムの塩が挙げられる。薬学的に許容され得る塩は、例えば、医薬品の分野で周知の標準的な手順を使用して得ることができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、例えば、生理学的条件下または加溶媒分解によって、本明細書に記載の生物学的に活性な化合物に変換され得る化合物を含む。したがって、「プロドラッグ」という用語は、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容され得る代謝前駆体を含む。プロドラッグの議論は、例えば、Higuchi,T.ら、’’Pro-drugs as Novel Delivery Systems,’’A.C.S.Symposium Series,Vol.14,and in Bioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987に見出される。「プロドラッグ」という用語はまた、そのようなプロドラッグが対象に投与されたときにインビボで本明細書に記載の活性化合物(複数可)を放出する共有結合した担体を含む。プロドラッグの非限定的な例としては、本明細書に記載の化合物中のヒドロキシ官能基、カルボキシ官能基、メルカプト官能基およびアミノ官能基のエステルおよびアミド誘導体が挙げられる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「低減する」という用語は、少なくとも1%負に変化することを指し、限定するものではないが、少なくとも5%(例えば、5%)負に変化すること、少なくとも10%(例えば、10%)負に変化すること、少なくとも25%(例えば、25%)負に変化すること、少なくとも30%(例えば、30%)負に変化すること、少なくとも50%(例えば、50%)負に変化すること、少なくとも75%(例えば、75%)負に変化すること、100%負に変化すること、5%から10%負に変化すること、5%から15%負に変化すること、5%から25%負に変化することなどが挙げられる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置すること」または「処置」という用語は、障害または病状に関連して使用される場合、障害または病状の改善をもたらす任意の効果、例えば、軽減、減少、調節、改善、または排除を含む。その効果は、疾患またはその症状の発生を最初に完全にまたは部分的に予防するという点において予防的であり得、かつ/あるいは疾患および/または疾患に起因する有害作用の部分的または完全な治癒という点において治療的であり得る。非限定的な例として、本明細書で使用される「処置」などの用語は、哺乳動物、例えば、ヒトにおける、例えば、AMLまたはそのサブタイプのいずれかおよび関連する血液がんなどのがんの任意の処置を包含し、(a)対象、例えば、疾患にかかりやすいことが確認されたか、または疾患にかかるリスクがあるが、それを有するとまだ診断されていない対象において疾患が発生するのを予防すること、(b)例えば、処置の非存在下での疾患の予想される発症または進行と比較して、疾患の発症または進行を遅延させること、(c)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を止めること、および/あるいは(d)疾患を軽減すること、すなわち、その疾患の退縮を引き起こすことを含む。障害または病状の任意の症状の改善または重症度の低減は、当技術分野で公知の標準的な方法および技術に従って容易に評価することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、「処置すること」とは、組成物、例えば、本明細書に開示されるような、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを含む組成物の有効用量または有効複数回用量を、AMLまたは別の関連するがんに罹患していることが疑われるか、またはすでに罹患している動物(ヒトを含む)に、例えば、皮下的に投与することを指す。
【0089】
いくつかの実施形態では、「処置すること」はまた、疾患の1もしくはそれを超える症状ならびに/または疾患および/もしくはその合併症に関連する1もしくはそれを超える症状を軽減すること、排除すること、または少なくとも部分的に停止させること、ならびに任意の有益な効果を及ぼすことを指すことができる。
非限定的な実施形態例1:
【0090】
限定するものではないが、本開示のいくつかの例示的な実施形態例は、以下を含む。
1. 急性骨髄白血病(AML)の処置を必要とする対象において急性骨髄白血病を処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチン阻害剤をベネトクラクスおよび少なくとも1つの低メチル化剤と組み合わせて対象に投与することを含む方法。
2. 少なくとも1つのE-セレクチン阻害剤が、E-セレクチンリガンドの炭水化物模倣物から選択される、実施形態1に記載の方法。
3. 少なくとも1つのE-セレクチン阻害剤が、
【化2】
およびその薬学的に許容され得る塩から選択される、実施形態1または2に記載の方法。
4. 少なくとも1つの低メチル化剤が5-アザシチジンである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5. 対象が、ベネトクラクスおよび少なくとも1つの低メチル化剤とを含む併用療法に対する耐性を獲得している、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
非限定的な実施形態例2:
【0091】
限定するものではないが、本開示のいくつかの例示的な実施形態/項は、以下を含む。
1. がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを対象に投与することを含み、対象はベネトクラクスをさらに投与される、方法。
2. がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを対象に投与することを含み、対象は少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される、方法。
3. がんの処置を必要とする対象においてがんを処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを対象に投与することを含み、対象は少なくとも1つの抗腫瘍薬および少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される、方法。
4. 少なくとも1つの低メチル化剤が、5-アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、ゼブラリン、CP-4200、RG108およびナナオマイシンAから選択される、項2または3に記載の方法。
5. 少なくとも1つの低メチル化剤が5-アザシチジンである、項2~4のいずれか一項に記載の方法。
6. 少なくとも1つの低メチル化剤がデシタビンである、項2~4のいずれか一項に記載の方法。
7. 少なくとも1つの抗腫瘍薬が標的化治療薬から選択される、項3~6のいずれか一項に記載の方法。
8. 少なくとも1つの抗腫瘍薬がベネトクラクスである、項3~7のいずれか一項に記載の方法。
9. 方法が、1日当たり10mgから1000mg(例えば、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、例えば、20mgから400mg)の固定用量のベネトクラクスを対象に投与することを含む、項1~8のいずれか1つに記載の方法。
方法が、該対象に1日当たり400mgの固定用量のベネトクラクスを投与することを含む。
10. 少なくとも1つの抗腫瘍薬が化学療法剤から選択される、項3~6のいずれか一項に記載の方法。
11. 少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストが、E-セレクチンリガンドの炭水化物模倣物から選択される、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
12. 少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストが、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)、(IVa/Va)、(IVb/Vb)、(VI)、(VII)および(VIII)の化合物ならびに前述のいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される、項1~11のいずれか1つに記載の方法。
13. 少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストが、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、および前述のいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される、項1~12のいずれか1つに記載の方法。
14. 少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストが、
【化3】
およびその薬学的に許容され得る塩から選択される、項1~13のいずれか1つに記載の方法。
15. 方法が、1日当たり20mgから4000mg(例えば、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mgなど、例えば、800mgから3200mg、1000mgから2000mg)の固定用量の少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを対象に投与することを含む、項1~14のいずれか1つに記載の方法。
16. 方法が、5mg/kgから100mg/kg(例えば、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kgなど、例えば、5mg/kgから50mg/kg、10mg/kgから30mg/kg、10mg/kgから50mg/kgなど)の範囲の用量の少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを対象に投与することを含む、項1~14のいずれか1つに記載の方法。
17. がんが液体がんから選択される、項1~16のいずれか一項に記載の方法。
18. がんが固形がんから選択される、項1~16のいずれか一項に記載の方法。
19. がんがFLT3変異がんから選択される、項1~18のいずれか一項に記載の方法。
20. がんがFLT3-ITD変異がんから選択される、項1~19のいずれか一項に記載の方法。
21. がんが、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、肺がん、脳がん、腎臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、乳がん、膵臓がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫、黒色腫、色素嫌性腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、胸腺腫、精巣胚細胞性腫瘍、および頭頸部扁平上皮癌から選択される、項1~20のいずれか一項に記載の方法。
22. がんが、黒色腫、白血病、色素嫌性腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、リンパ腫、胸腺腫、精巣胚細胞性腫瘍および頭頸部扁平上皮癌から選択される、項1~21のいずれか一項に記載の方法。
23. 白血病が、急性骨髄白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病から選択される、項21または22に記載の方法。
24. がんがAMLである、項1~17および19~23のいずれか1つに記載の方法。
25. がんが再発性/難治性AMLである、項1~17および19~24のいずれか1つに記載の方法。
26. がんがFLT3-ITD変異AMLである、項1~17および19~25のいずれか1つに記載の方法。
27. リンパ腫が、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫から選択される、項21または22に記載の方法。
28. 骨髄腫が多発性骨髄腫である、項21または22に記載の方法。
29. 黒色腫が、ぶどう膜黒色腫および皮膚黒色腫から選択される、項21または22に記載の方法。
30. 対象が、少なくとも1つの抗腫瘍薬を含む治療に対する耐性を獲得している、項1~29のいずれか一項に記載の方法。
31. 対象が、ベネトクラクスを含む治療に対する耐性を獲得している、項1~30のいずれか1つに記載の方法。
32. 対象が、ソラフェニブを含む治療に対する耐性を獲得している、項1~31のいずれか1つに記載の方法。
33. 対象が、少なくとも1つの低メチル化剤を含む治療に対する耐性を獲得している、項1~32のいずれか一項に記載の方法。
34. 対象が、少なくとも1つの抗腫瘍薬と少なくとも1つの低メチル化剤とを含む併用療法に対する耐性を獲得している、項1~33のいずれか一項に記載の方法。
35. 対象が、ベネトクラクスおよび少なくとも1つの低メチル化剤とを含む併用療法に対する耐性を獲得している、項1~34のいずれか1つに記載の方法。
36. 対象が、1またはそれを超えるFLT3の変異変化を有する、項1~35のいずれか1つに記載の方法。
37. 変異変化が、FLT3のチロシンキナーゼドメイン活性化ループ内の内部タンデム重複およびミスセンス変異から選択される、項36に記載の方法。
38. 変異変化が、FLT3のチロシンキナーゼドメイン活性化ループ内の内部タンデム重複から選択される、項36または37に記載の方法。
39. 変異変化が、FLT3のチロシンキナーゼドメイン活性化ループ内のミスセンス変異から選択される、項36または37に記載の方法。
40. 対象が、がん患者の少なくとも55%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%など)の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4を発現する、項1~39のいずれか一項に記載の方法。
41. 対象が、がん患者の少なくとも55%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%など)の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子B3GNT5を発現する、項1~40のいずれか一項に記載の方法。
42. 対象が、がん患者の少なくとも55%(例えば、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%など)の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子FUT7を発現する、項1~41のいずれか一項に記載の方法。
43. 方法が、(a)対象または対象から得られた試料中の1またはそれを超える遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、またはすでに測定していること、および、(b)対象または対象から得られた試料から得られた芽球細胞の少なくとも10%が1またはそれを超える遺伝子を発現する場合に、処置のために対象を選択すること、を含む方法によって処置する対象を選択することをさらに含む、項1~42のいずれか一項に記載の方法。
44. 遺伝子発現レベルがmRNAの量によって測定される、項43に記載の方法。
45. 遺伝子発現レベルが、対象から得られた試料中のタンパク質の量によって測定される、項43に記載の方法。
46. 対象から得られた試料が末梢血である、項43~45のいずれか1つに記載の方法。
47. 1またはそれを超える遺伝子が、ST3GAL4、B3GNT5およびFUT7から選択される、項43~46のいずれか一項に記載の方法。
48. 方法が、(a)対象から得られた芽球細胞を含む生物学的試料を得ること、またはすでに得ていること、(b)生物学的試料に対してアッセイを実施するか、またはすでに実施していることで、試料中の1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、および、(c)試料中の少なくとも10%の芽球細胞が1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子を発現する場合に、処置のために対象を選択すること、を含む方法によって処置する対象を選択することをさらに含む、項1~42のいずれか一項に記載の方法。
49. 生体試料が骨髄試料である、項48に記載の方法。
50. 生体試料が末梢血試料である、項48に記載の方法。
51. 1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子がグリコシル化遺伝子である、項48~50のいずれか一項に記載の方法。
52. 1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子が、ST3GAL4およびFUT7から選択される、項48~51のいずれか一項に記載の方法。
53. 方法が、(a)対象または対象から得られた試料中の1またはそれを超える遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、(b)(a)から得られた遺伝子発現レベルを、がんを有さない対象、新たに診断されたがん対象、または対象と同じがんと診断された対象から得られた対照試料と比較すること、および、(c)遺伝子発現レベルが対照試料の遺伝子発現レベルを超える場合に、処置のために対象を選択すること、を含む方法によって処置する対象を選択することをさらに含む、項1~42のいずれか一項に記載の方法。
54. 遺伝子発現レベルがmRNAの量によって測定される、項53に記載の方法。
55. 遺伝子発現レベルが、対象から得られた試料中のタンパク質の量によって測定される、項53に記載の方法。
56. 1またはそれを超える遺伝子が、ST3GAL4、B3GNT5およびFUT7から選択される、項53~55のいずれか1つに記載の方法。
57. 対象が2またはそれを超える化学療法剤(例えば、ミトキサントロン、エトポシド、およびシタラビンまたはフルダラビン、シタラビン、およびイダルビシンなど)を投与されているか、投与されたことがあるか、または投与される予定である、項1~56のいずれか1つに記載の方法。
58. 対象が、ベラフェルミン、パリフェルミン、サリドマイドおよび/またはサリドマイド誘導体を投与されているか、投与されたことがあるか、または投与される予定である、項1~57のいずれか1つに記載の方法。
59. 対象が、MMP阻害剤、炎症性サイトカイン阻害剤、肥満細胞阻害剤、NSAID、NO阻害剤、MDM2阻害剤、または抗微生物化合物を投与されているか、投与されたことがあるか、または投与される予定である、項1~58のいずれか1つに記載の方法。

60. 投与が、対象が寛解している日数を延長し、寛解するまでの日数を短縮し、がん細胞の転移を阻害し、または生存を改善する、項1~59のいずれか一項に記載の方法。
61. 対象がヒトである、項1~60のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態は、がんを処置することを必要とする対象においてがんを処置する方法であって、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを対象に投与することを含み、対象は少なくとも1つの抗腫瘍薬および/または少なくとも1つの低メチル化剤をさらに投与される方法に関する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、E-セレクチンリガンドの炭水化物模倣物から選択される。
【0093】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、化合物Aおよびその薬学的に許容され得る塩から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、化合物Aである。
【0095】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(I)の化合物:
【化4】
式(I)の異性体、式(I)の互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択され、式中、
は、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から選択され、
は、H、-M、および-L-Mから選択され、
は、-OH基、-NH基、-OC(=O)Y基、-NHC(=O)Y基および-NHC(=O)NHY基から選択され、式中、Yは、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、C6~18アリール基およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、
は、-OH基および-NZ基から選択され、式中、ZおよびZは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から選択され、式中、ZおよびZは一緒になって環を形成していてもよく、
は、C3~8シクロアルキル基から選択され、
は、-OH基、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から選択され、
は、-CHOH基、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から選択され、
は、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から選択され、
Lは、リンカー基から選択され、
Mは、ポリエチレングリコール、チアゾリル、クロメニル、-C(=O)NH(CH1~4NH基、C1~8アルキル基、および-C(=O)OY基から選択される非糖模倣部分であり、Yは、C1~4アルキル基、C2~4アルケニル基、およびC2~4アルキニル基から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、非糖模倣部分がポリエチレングリコールを含む式(I)の化合物から選択される。
【0097】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、Lが-C(=O)NH(CH1~4NHC(=O)-であり、非糖模倣部分がポリエチレングリコールを含む式(I)の化合物から選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(Ia)の化合物:
【化5】
およびその薬学的に許容され得る塩から選択され、式中、nは1から100の範囲の整数から選択される。いくつかの実施形態では、nは、4、8、12、16、20、24および28から選択される。いくつかの実施形態では、nは、12である。
【0099】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、化合物A:
【化6】
およびその薬学的に許容され得る塩から選択される。
【0100】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(II)の化合物:
【化7】
式(II)の異性体、式(II)の互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択されるE-セレクチンおよびCXCR4の少なくとも1つのヘテロ二機能阻害剤であり、式中、
は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から選択され、
は、-OH基、-NH基、-OC(=O)Y基、-NHC(=O)Y基および-NHC(=O)NHY基から選択され、式中、Yは、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、C6~18アリール基およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、
は、-CN基、-CHCN基および-C(=O)Y基から選択され、Yは、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、-OZ基、-NHOH基、-NHOCH基、-NHCN基および-NZ基から選択され、式中、ZおよびZは、同一でも異なっていてもよく、独立して、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から選択され、ZおよびZは一緒になって環を形成していてもよく、
は、C3~8シクロアルキル基から選択され、
は、H、ハロ基、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から独立して選択され、
nは、1から4の範囲の整数から選択され、
Lは、リンカー基から選択される。
【0101】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(IIa)の化合物:
【化8】
およびその薬学的に許容され得る塩から選択される。
【0102】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、化合物B:
【化9】
およびその薬学的に許容され得る塩から選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(III)の化合物:
【化10】
式(III)の異性体、式(III)の互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択されるヘテロ二機能汎セレクチンアンタゴニストであり、式中、
は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、
【化11】
基から選択され、
は、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、-OH基、-OX基、ハロ基、-NH基、-OC(=O)X基、-NHC(=O)X基および-NHC(=O)NHX基から選択され、式中、Xは、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、C2~12ヘテロシクリル基、C6~18アリール基およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、
は、-CN基、-CHCN基および-C(=O)X基から選択され、式中、Xは、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、-OY基、-NHOH基、-NHOCH基、-NHCN基および-NY基から選択され、式中、YおよびYは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基およびC4~16シクロアルキルアルキル基から独立して選択され、式中、YおよびYは、一緒に結合して環を形成してもよく、
は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基および-C(=O)R基から選択され、
各Rは、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、
【化12】
【化13】
基から独立して選択され、 式中、各Xは、H、-OH基、Cl、F、N、-NH基、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C6~14アリール基、-OC1~8アルキル基、-OC2~8アルケニル基、-OC2~8アルキニル基、および-OC6~14アリール基から独立して選択され、式中、上記の環化合物のいずれかは、Cl、F、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C6~14アリール基、および-OY基から独立して選択される1から3個の基で置換されていてもよく、式中、Yは、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、およびC6~14アリール基から選択され、
nは、0から2の範囲の整数から選択され、
pは、0から3の範囲の整数から選択され、
Lは、リンカー基から選択され、
Zは、ベンジルアミノスルホン酸基から選択される。
【0104】
ベンジルアミノスルホン酸(BASA)は、セレクチンと相互作用する能力を有する低分子量硫酸化化合物である。その相互作用は、セレクチン媒介機能(例えば、細胞間相互作用)を調節(例えば、阻害または増強)するかまたはこの調節を補助する。それらは、それらのプロトン化酸形態として、またはナトリウム塩としてのいずれかで存在するが、ナトリウムはカリウムまたは任意の他の薬学的に許容され得る対イオンで置き換えられ得る。
【0105】
開示された化合物に適したBASAに関するさらなる開示は、2014年2月25日に発行された米国再発行特許第RE44,778号および2018年12月27日に公開された米国特許出願公開第US2018/0369205号に見出すことができ、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0106】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(IIIa)の化合物:
【化14】
式(IIIa)の互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択されるヘテロ二機能汎セレクチンアンタゴニストである。
【0107】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、化合物C:
【化15】
化合物Cの互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択されるヘテロ二機能汎セレクチンアンタゴニストである。
【0108】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(II)および/または式(III)のリンカー基は、スペーサー基を含む基、例えば、-(CH-および-O(CH-(式中、pは1から30の範囲の整数から選択される)などのスペーサー基から独立して選択される。いくつかの実施形態では、pは、1から20の範囲の整数から選択される。
【0109】
スペーサー基の他の非限定的な例としては、カルボニル基および、例えば、アミド基などのカルボニル含有基が挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(II)および/または式(III)のリンカー基は、
【化16】
から選択される。
【0111】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(II)および/または式(III)のリンカー基は、
【化17】
から選択される。
【0112】
例えば、ポリエチレングリコール(PEG)および-C(=O)-NH-(CH-C(=O)-NH-(式中、pは1から30の範囲の整数から選択され、またはpは1から20の範囲の整数から選択される)などの他のリンカー基は、当業者および/または本開示を十分に把握している者にはよく知られているであろう。
【0113】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(II)および/または式(III)のリンカー基は、
【化18】
から選択される。
【0114】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(II)および/または式(III)のリンカー基は、
【化19】
から選択される。
【0115】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(II)および/または式(III)のリンカー基は、
【化20】
から選択される。
【0116】
いくつかの実施形態では、式(I)、式(II)および/または式(III)のリンカー基は、-C(=O)NH(CHNH-、-CHNHCH-および-C(=O)NHCH-から選択される。いくつかの実施形態では、リンカー基は、-C(=O)NH(CHNH-である。
【0117】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(IV)の化合物:
【化21】
式(IV)のプロドラッグ、式(IV)の異性体、式(IV)の互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択され、式中、
各Rは、同一でも異なっていてもよく、H、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、および-NHC(=O)R基から独立して選択され、式中、各Rは、同一でも異なっていてもよく、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から独立して選択され、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、ハロ基、-OY基、-NY基、-OC(=O)Y基、-NHC(=O)Y基、および-NHC(=O)NY基から独立して選択され、式中、各Yおよび各Yは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、C1~12ハロアルキル基、C2~12ハロアルケニル基、C2~12ハロアルキニル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から独立して選択され、式中、YおよびYは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成してもよく、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、
【化22】
から独立して選択され、
式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~12アルキルおよびC1~12ハロアルキル基から独立して選択され、式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、-OY基、-NHOH基、-NHOCH基、-NHCN基および-NY基から独立して選択され、式中、各Yおよび各Yは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から独立して選択され、式中、YおよびYは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成してもよく、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、-CN基、C1~4アルキル基、およびC1~4ハロアルキル基から独立して選択され、
mは、2から256の範囲の整数から選択され、
Lは、リンカー基から選択される。
【0118】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(V)の化合物:
【化23】
式(V)のプロドラッグ、式(V)の異性体、式(V)の互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択され、式中、
各Rは、同一でも異なっていてもよく、H、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、および-NHC(=O)R基から独立して選択され、式中、各Rは、同一でも異なっていてもよく、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から独立して選択され、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、ハロ基、-OY基、-NY基、-OC(=O)Y基、-NHC(=O)Y基、および-NHC(=O)NY基から独立して選択され、式中、各Yおよび各Yは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、C1~12ハロアルキル基、C2~12ハロアルケニル基、C2~12ハロアルキニル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から独立して選択され、式中、YおよびYは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成してもよく、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、
【化24】
から独立して選択され、
式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~12アルキルおよびC1~12ハロアルキル基から独立して選択され、式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、-OY基、-NHOH基、-NHOCH基、-NHCN基および-NY基から独立して選択され、式中、各Yおよび各Yは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から独立して選択され、式中、YおよびYは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成してもよく、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、-CN基、C1~4アルキル基、およびC1~4ハロアルキル基から独立して選択され、 mは2であり、
Lは、
【化25】
から選択され、
式中、Qは、
【化26】
から選択され、
式中、Rは、H、C1~8アルキル基、C6~18アリール基、C7~19アリールアルキル基、およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、各pは、同一であっても異なっていてもよく、0から250の範囲の整数から独立して選択される。
【0119】
いくつかの実施形態では、式(IV)または式(V)の少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、下記の式(IVa/Va)の化合物から選択される(上記の式(IV)または(V)についてのLおよびmの定義を参照のこと)。
【化27】
【0120】
いくつかの実施形態では、式(IV)または式(V)の少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、下記の式(IVb/Vb)の化合物から選択される(上記の式(IV)または(V)についてのLおよびmの定義を参照のこと)。
【化28】
【0121】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、化合物D:
【化29】
である。
【0122】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(VI)の化合物
【化30】
式(VI)のプロドラッグ、式(VI)の異性体、式(VI)の互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択されるE-セレクチンおよびガレクチン-3のヘテロ二機能阻害剤であり、式中、
は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、
【化31】
【化32】
基から選択され、
式中、nは、0から2の範囲の整数から選択され、Rは、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、および-C(=O)R基から選択され、各Rは、独立して、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、
は、-OH基、-OY基、ハロ基、-NH基、-NY基、-OC(=O)Y基、-NHC(=O)Y基、および-NHC(=O)NHY基から選択され、式中、YおよびYは、同じであっても異なっていてもよく、独立して、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、C2~12ヘテロシクリル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、式中、YおよびYは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成してもよく、
は、-CN基、-CHCN基および-C(=O)Y基から選択され、式中、Yは、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、-OZ基、-NHOH基、-NHOCH基、-NHCN基および-NZ基から選択され、式中、ZおよびZは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基およびC7~12アリールアルキル基から独立して選択され、式中、ZおよびZは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成してもよく、
は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基およびC6~18アリール基から選択され、
は、-CN基、C1~8アルキル基およびC1~4ハロアルキル基から選択され、
Mは、
【化33】
基から選択され、式中、Xは、OおよびSから選択され、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、独立して、C6~18アリール基、C1~13ヘテロアリール基、C7~19アリールアルキル基、C7~19アリールアルコキシ基、C2~14ヘテロアリールアルキル基、C2~14ヘテロアリールアルコキシ基、および-NHC(=O)Y基から選択され、式中、Yは、C1~8アルキル基、C2~12ヘテロシクリル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、
Lは、リンカー基から選択される。
【0123】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、以下の式:
【化34】
【化35】
を有する化合物から選択される。
【0124】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、以下の式:
【化36】
【化37】
を有する化合物、並びに
前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される。
【0125】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、以下の式:
【化38】
【化39】
を有する化合物から選択される。
【0126】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、以下の式:
【化40】
【化41】
を有する化合物、並びに
前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される。
【0127】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、化合物Eである。
【化42】
【0128】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(VII)の化合物:
【化43】
式(VII)のプロドラッグ、式(VII)の異性体、式(VII)の互変異性体、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択され、式中、
は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、
【化44】
【化45】
基から選択され、式中、nは、0から2の範囲の整数から選択され、Rは、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、および-C(=O)R基から選択され、各Rは、独立して、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、
は、-OH基、-OY基、ハロ基、-NH基、-NY基、-OC(=O)Y基、-NHC(=O)Y基、および-NHC(=O)NHY基から選択され、式中、YおよびYは、同じであっても異なっていてもよく、独立して、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、C2~12ヘテロシクリル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、または、YおよびYは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成し、
は、-CN基、-CHCN基および-C(=O)Y基から選択され、式中、Yは、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、-OZ基、-NHOH基、-NHOCH基、-NHCN基および-NZ基から選択され、式中、ZおよびZは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基およびC7~12アリールアルキル基から独立して選択され、または、ZおよびZは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成し、
は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基およびC6~18アリール基から選択され、
は、-CN基、C1~8アルキル基およびC1~4ハロアルキル基から選択され、
Mは、
【化46】
基から選択され、
式中、
Xは、-O-、-S-、-C-、および-N(R10)-から選択され、式中、R10は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、およびC2~8ハロアルキニル基から選択され、
Qは、H、ハロ基および-OZ基から選択され、式中、Zは、HおよびC1~8アルキル基から選択され、
は、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、C6~18アリール基、C1~13ヘテロアリール基、C7~19アリールアルキル基、およびC2~14ヘテロアリールアルキル基から選択され、ここでC1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、C6~18アリール基、C1~13ヘテロアリール基、C7~19アリールアルキル基、およびC2~14ヘテロアリールアルキル基は、必要に応じて、ハロ基、C1~8アルキル基、C1~8ヒドロキシアルキル基、C1~8ハロアルキル基、C6~18アリール基、-OZ基、-C(=O)OZ基、-C(=O)NZ基および-SO基から独立して選択される1またはそれを超える基で置換されており、式中、ZおよびZは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基およびC1~8ハロアルキル基から独立して選択され、またはZおよびZは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成し、
は、C6~18アリール基およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、ここでC6~18アリール基およびC1~13ヘテロアリール基は、必要に応じて、R11、C1~8アルキル基、C1~8ハロアルキル基、-C(=O)OZおよび-C(=O)NZ基から独立して選択される1またはそれを超える基で置換されており、式中、R11は、必要に応じて、ハロ基、C1~8アルキル基、-OZ基、-C(=O)OZ基および-C(=O)NZ基から独立して選択される1またはそれを超える基で置換されたC6~18アリール基から独立して選択され、式中、Z、Z、ZおよびZは、同一であっても異なっていてもよく、HおよびC1~8アルキル基から独立して選択され、またはZおよびZは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成し、かつ/またはZおよびZは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成し、
式中、Z、Z、Z、Z、Z、ZおよびZのそれぞれは、必要に応じて、ハロ基および-OR12基から独立して選択される1またはそれを超える基で置換されており、式中、R12は、HおよびC1~8アルキル基から独立して選択され、
Lは、リンカー基から選択される。
【0129】
式(VII)のいくつかの実施形態では、Mは、
【化47】
基から選択される。
【0130】
式(VII)のいくつかの実施形態では、Mは、
【化48】
基から選択される。
【0131】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、スペーサー基、例えば、-(CH2)-および-O(CH2)-(式中、tは1から20の範囲の整数から選択される)などのスペーサー基を含む基から選択され得る。スペーサー基の他の非限定的な例としては、カルボニル基および、例えば、アミド基などのカルボニル含有基が挙げられる。スペーサー基の非限定的な例は、
【化49】
である。
【0132】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化50】
から選択される。
【0133】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、ポリエチレングリコール(PEG)、-C(=O)NH(CHO-基、-C(=O)NH(CHNHC(=O)基、-C(=O)NHC(=O)(CH)NH-基、および-C(=O)NH(CHC(=O)NH-基から選択され、式中、vは、2から20の範囲の整数から選択される。いくつかの実施形態では、vは、2から4の範囲の整数から選択される。いくつかの実施形態では、vは、2である。いくつかの実施形態では、vは、3である。いくつかの実施形態では、vは、4である。
【0134】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化51】
である。
【0135】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化52】
である。
【0136】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化53】
である。
【0137】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化54】
である。
【0138】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化55】
である。
【0139】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化56】
である。
【0140】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化57】
である。
【0141】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化58】
である。
【0142】
式(VII)のいくつかの実施形態では、リンカー基は、
【化59】
である。
【0143】
式(VII)の化合物の合成を示す図および例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT国際出願公開第2020/139962号に示されている。
【0144】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは、式(VIII)の化合物:
【化60】
式(VIII)のプロドラッグ、および前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される、E-セレクチン、ガレクチン-3、および/またはCXCR4の多量体阻害剤であり、式中、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基、C2~8ハロアルキニル基、
【化61】
基から独立して選択され、
式中、各nは、同一であっても異なっていてもよく、0から2の範囲の整数から選択され、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、および-C(=O)R基から独立して選択され、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基、C6~18アリール基、およびC1~13ヘテロアリール基から独立して選択され、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、非糖模倣部分およびリンカー-非糖模倣部分から独立して選択され、ここで、各非糖模倣部分は、同一であっても異なっていてもよく、ガレクチン-3阻害剤、CXCR4ケモカイン受容体阻害剤、ポリエチレングリコール、チアゾリル、クロメニル、C1~8アルキル、R、C6~18アリール-R、C1~12ヘテロアリール-R
【化62】
基から独立して選択され、
式中、各Yは、同一であっても異なっていてもよく、C1~4アルキル基、C2~4アルケニル基およびC2~4アルキニル基から独立して選択され、式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、-OH基、-OSOQ基、-OPO基、-COQ基および-SOQ基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたC1~12アルキル基、ならびに-OH基、-OSOQ基、-OPO基、-COQ基および-SOQ基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されたC2~12アルケニル基から独立して選択され、式中、各Qは、同一であっても異なっていてもよく、Hおよび薬学的に許容され得るカチオンから独立して選択され、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、-CN基、-CHCN基、および-C(=O)Y基から独立して選択され、式中、各Yは、同一であっても異なっていてもよく、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、-OZ基、-NHOH基、-NHOCH基、-NHCN基、および-NZ基から独立して選択され、式中、各ZおよびZは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、C1~12ハロアルキル基、C2~12ハロアルケニル基、C2~12ハロアルキニル基、およびC7~12アリールアルキル基から独立して選択され、式中、ZおよびZは、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよく、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~12アルキル基、C2~12アルケニル基、C2~12アルキニル基、C1~12ハロアルキル基、C2~12ハロアルケニル基、C2~12ハロアルキニル基、C4~16シクロアルキルアルキル基およびC6~18アリール基から独立して選択され、
各Rは、同一であっても異なっていてもよく、-CN基、C1~12アルキル基、およびC1~12ハロアルキル基から独立して選択され、
各Xは、同一であっても異なっていてもよく、-O-、および-N(R)-から独立して選択され、式中、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、H、C1~8アルキル基、C2~8アルケニル基、C2~8アルキニル基、C1~8ハロアルキル基、C2~8ハロアルケニル基およびC2~8ハロアルキニル基から独立して選択され、
mは、2から256の範囲の整数から選択され、
Lは、リンカー基から独立して選択される。
【0145】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのリンカー基は、スペーサー基、例えば-(CH2)z-および-O(CH2)z-(式中、zは1から250の範囲の整数から選択される)などのスペーサー基を含む基から選択される。スペーサー基の他の非限定的な例としては、カルボニル基および、例えば、アミド基などのカルボニル含有基が挙げられる。スペーサー基の非限定的な例は、
【化63】
である。
【0146】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのリンカー基は、
【化64】
【化65】
【化66】
基から選択される。
【0147】
式(VIII)のある特定の実施形態のための他のリンカー基、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)および-C(=O)-NH-(CH-C(=O)-NH-(式中、zは1から250の範囲の整数から選択される)は、当業者および/または本開示を十分に把握している者によく知られているであろう。
【0148】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのリンカー基は、
【化67】
である。
【0149】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのリンカー基は、
【化68】
である。
【0150】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのリンカー基は、
-C(=O)NH(CHNH-、-CHNHCH-、および-C(=O)NHCH-である。式(VIII)のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのリンカー基は、-C(=O)NH(CHNH-である。
【0151】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、デンドリマーから選択される。式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、ポリアミドアミン(「PAMAM」)デンドリマーから選択される。式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、コハク酸を含むPAMAMデンドリマーから選択される。式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、四量体を生成するPAMAM GOである。式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、八量体を生成するPAMAM G1である。式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、16量体を生成するPAMAM G2である。式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、32量体を生成するPAMAM G3である。式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、64量体を生成するPAMAM G4である。いくつかの実施形態では、Lは、128量体を生成するPAMAM G5である。
【0152】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、mは2であり、Lは、
【化69】
基から選択され、
式中、Uは、
【化70】
基から選択され、
式中、R14は、H、C1~8アルキル、C6~18アリール、C7~19アリールアルキル、およびC1~13ヘテロアリール基から選択され、各yは、同一でも異なっていてもよく、0から250の範囲の整数から独立して選択される。式(VIII)のいくつかの実施形態では、R14はC1~8アルキルから選択される。式(VIII)のいくつかの実施形態では、R14はC7~19アリールアルキルから選択される。式(VIII)のいくつかの実施形態では、R14はHである。式(VIII)のいくつかの実施形態では、R14はベンジルである。
【0153】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化71】
【化72】
から選択され、
式中、yは、0から250の範囲の整数から選択される。
【0154】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化73】
基から選択され、
式中、yは、0から250の範囲の整数から選択される。
【0155】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化74】
である。
【0156】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化75】
基から選択され、
式中、yは、0から250の範囲の整数から選択される。
【0157】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化76】
基から選択され、
式中、yは、0から250の範囲の整数から選択される。
【0158】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化77】
から選択される。
【0159】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化78】
である。
【0160】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化79】
基から選択され、
式中、yは、0から250の範囲の整数から選択される。
【0161】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化80】
である。
【0162】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化81】
である。
【0163】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化82】
である。
【0164】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化83】
【化84】
から選択される。
【0165】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化85】
である。
【0166】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化86】
基から選択され、
式中、各yは、同一であっても異なっていてもよく、0から250の範囲の整数から独立して選択される。
【0167】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化87】
から選択され、
式中、各yは、同一であっても異なっていてもよく、0から250の範囲の整数から独立して選択される。
【0168】
式(VIII)のいくつかの実施形態では、Lは、
【化88】
から選択される。
【0169】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物は、式(VIII)の化合物から選択され、式中、各Rは同一であり、各Rは同一であり、各Rは同一であり、各Rは同一であり、各Rは同一であり、各Xは同一である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの化合物は、式(VIII)の化合物から選択され、当該化合物は対称性である。
【0170】
式(VIII)の化合物の合成を示す図および例は、参照により本明細書に組み込まれるPCT国際出願公開第2020/219417号に示されている。
【0171】
併せて、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)、(IVa/Va)、(IVb/Vb)、(VI)、(VII)および(VIII)の化合物から選択される少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを含む医薬組成物も提供される。これらの化合物および組成物は、本明細書に記載の方法で使用され得る。いくつかの実施形態では、化合物A、化合物B、化合物C、化合物Dおよび化合物Eから選択される少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを含む医薬組成物が提供される。これらの化合物および組成物は、本明細書に記載の方法で使用され得る。
【0172】
併せて、少なくとも1つの薬学的に許容され得る添加剤と、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)、(IVa/Va)、(IVb/Vb)、(VI)、(VII)および(VIII)の化合物、ならびに前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストとを含む医薬組成物も提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容され得る添加剤と、化合物A、化合物B、化合物C、化合物Dおよび化合物E、ならびに前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストとを含む、医薬組成物が提供される。これらの化合物および組成物は、本明細書に記載の方法で使用され得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストが、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)、(IVa/Va)、(IVb/Vb)、(VI)、(VII)および(VIII)の化合物ならびに前述のもののいずれかの薬学的に許容され得る塩から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストが、式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(V)、(IVa/Va)、(IVb/Vb)、(VI)、(VII)および(VIII)の化合物から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは化合物Aである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは化合物Bである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは化合物Cである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは化合物Dである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストは化合物Eである。
【0174】
いくつかの実施形態では、本方法は、5mg/kgから100mg/kg(例えば、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kgなど、例えば、5mg/kgから50mg/kg、10mg/kgから30mg/kg、10mg/kgから50mg/kgなど)の範囲の用量の少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、5mg/kgから100mg/kg(例えば、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、55mg/kg、60mg/kg、65mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、85mg/kg、90mg/kg、95mg/kg、100mg/kgなど、例えば、5mg/kgから50mg/kg、10mg/kgから30mg/kg、10mg/kgから50mg/kgなど)の範囲の用量の化合物Aを投与することを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、本方法は、1日当たり20mgから4000mg(例えば、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mgなど、例えば、800mgから3200mg/日、1000mgから2000mg/日)の固定用量の少なくとも1つのE-セレクチンアンタゴニストを投与することを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、本方法は、1日当たり20mgから4000mg(例えば、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mgなど、例えば、800mgから3200mg/日、1000mgから2000mg/日)の固定用量の化合物Aを投与することを含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬は、化学療法剤から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬は、ミトキサントロン、エトポシド、およびシタラビンから選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬は、ミトキサントロン、エトポシド、およびシタラビンである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬はミトキサントロンである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬はエトポシドである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬はシタラビンである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬はダウノマイシンである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬はイダルビシンである。
【0178】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬は、標的化治療薬から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬は、トレチノイン、メシル酸イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、イブルチニブ、イデラリシブ、ブリナツモマブ、ベネトクラクス、ポナチニブ塩酸塩、ミドスタウリン、メシル酸エナシデニブ、イノツズマブオゾガマイシン、チサゲンレキュセル、ゲムツズマブオゾガマイシン、リツキシマブおよびヒアルロニダーヒト、イボシデニブ、デュベリシブ、モキセツモマブパスドトックス-tdfk、マレイン酸グラスデギブ、ジルテリチニブ、タグラクソフスプ-エルズ、ならびにアカラブルチニブから選択される。
【0179】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗腫瘍薬はベネトクラクスである。
【0180】
いくつかの実施形態では、本方法は、1日当たり10mgから1000mg(例えば、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、1000mg、例えば、20mgから400mg)の固定用量のベネトクラクスを投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、400mg/日の固定用量のベネトクラクスを投与することを含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの低メチル化剤は、5-アザシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジン(デシタビン)、グアデシタビン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、ゼブラリン、CP-4200、RG108およびナナオマイシンAから選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの低メチル化剤は、5-アザシチジン、デシタビン、グアデシタビン、5-フルオロ-2’-デオキシシチジン、およびゼブラリンから選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの低メチル化剤は、5-アザシチジンおよびデシタビンから選択される。
【0182】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの低メチル化剤は5-アザシチジンである。
【0183】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの低メチル化剤はデシタビンである。
【0184】
E-セレクチンリガンドグリコシル化遺伝子、FUT7およびST3GAL4は、大部分のがんサブタイプにおいて一貫して発現される。平均発現に基づく上位5つのがん型:
・FUT7:急性骨髄白血病(LAML)、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DBLC)、胸腺腫(THYM)、精巣胚細胞性腫瘍(TGCT)、および頭頸部扁平上皮癌(HNSC)
・ST3GAL4:ぶどう膜黒色腫(UVM)、皮膚の皮膚黒色腫(SKCM)、色素嫌性腎細胞(KICH)、副腎皮質癌(ACC)および膀胱尿路上皮癌
【0185】
E-セレクチンリガンドグリコシル化遺伝子FUT7およびST3GAL4はまた、がん細胞株百科事典データベースを構成する腫瘍細胞株において一貫して発現される。平均発現に基づく上位5つのがん型:
・FUT7:T細胞リンパ腫、AML、B細胞急性リンパ芽球性白血病、他の白血病および慢性骨髄性白血病(CML)
・ST3GAL4:黒色腫、AML、CML、膵臓および乳房
【0186】
いくつかの実施形態では、がんは液体がんから選択される。
【0187】
いくつかの実施形態では、がんは固形がんから選択される。
【0188】
いくつかの実施形態では、がんは、AML、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胸腺腫、精巣胚細胞性腫瘍、および頭頸部扁平上皮癌から選択される。
【0189】
いくつかの実施形態では、がんは、T細胞リンパ腫、AML、B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病から選択される。
【0190】
いくつかの実施形態では、がんは、ぶどう膜黒色腫、皮膚の皮膚黒色腫、色素嫌性腎細胞、副腎皮質癌、および膀胱尿路上皮癌から選択される。
【0191】
いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、AML、CML、膵臓がん、および乳がんから選択される。
【0192】
いくつかの実施形態では、がんは、結腸直腸がん、肝臓がん、胃がん、肺がん、脳がん、腎臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、子宮内膜がん、乳がん、膵臓がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫、黒色腫、色素嫌性腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、胸腺腫、精巣胚細胞性腫瘍、および頭頸部扁平上皮癌から選択される。
【0193】
いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、白血病、色素嫌性腎細胞癌、副腎皮質癌、膀胱尿路上皮癌、リンパ腫、胸腺腫、精巣胚細胞性腫瘍および頭頸部扁平上皮癌から選択される。
【0194】
いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病および慢性骨髄性白血病から選択される。
【0195】
いくつかの実施形態では、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫から選択される。
【0196】
いくつかの実施形態では、骨髄腫は多発性骨髄腫である。
【0197】
いくつかの実施形態では、黒色腫は、ぶどう膜黒色腫および皮膚黒色腫から選択される。
【0198】
いくつかの実施形態では、がんはFLT3変異がんから選択される。いくつかの実施形態では、がんはFLT3-ITD変異がんから選択される。
【0199】
いくつかの実施形態では、がんはAMLである。いくつかの実施形態では、がんは再発性/難治性AMLである。いくつかの実施形態では、がんはFLT3-ITD変異AMLである。
【0200】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗腫瘍薬を含む治療に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、対象は、ベネトクラクスを含む治療に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、対象は、ソラフェニブを含む治療に対する耐性を獲得している。
【0201】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの低メチル化剤を含む治療に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、対象は、5-アザシチジンを含む治療に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、対象は、デシタビンを含む治療に対する耐性を獲得している。
【0202】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1つの抗腫瘍薬と少なくとも1つの低メチル化剤とを含む併用療法に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、対象は、ベネトクラクスおよび少なくとも1つの低メチル化剤とを含む併用療法に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、対象は、ベネトクラクスと5-アザシチジンとを含む併用療法に対する耐性を獲得している。いくつかの実施形態では、対象は、ベネトクラクスとデシタビンとを含む併用療法に対する耐性を獲得している。
【0203】
いくつかの実施形態では、対象は、1またはそれを超えるFLT3の変異変化を有する。いくつかの実施形態では、変異変化は、FLT3のチロシンキナーゼドメイン活性化ループ内の内部タンデム重複およびミスセンス変異から選択される。いくつかの実施形態では、変異変化は、FLT3のチロシンキナーゼドメイン活性化ループ内の内部タンデム重複から選択される。いくつかの実施形態では、変異変化は、FLT3のチロシンキナーゼドメイン活性化ループ内のミスセンス変異から選択される。
【0204】
いくつかの実施形態では、対象は、がん患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、がん患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子B3GNT5を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、がん患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子FUT5を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、がん患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子FUT7を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、がん患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4およびFUT5を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、がん患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4およびFUT7を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、がん患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子FUT5およびFUT7を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、がん患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4、FUT5およびFUT7を発現する。
【0205】
いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性AML患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性AML患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルより高い発現レベルで遺伝子B3GNT5を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性AML患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子FUT5を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性AML患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子FUT7を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性AML患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルより高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4およびFUT5を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性AML患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルより高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4およびFUT7を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性AML患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子FUT5およびFUT7を発現する。いくつかの実施形態では、対象は、再発性/難治性AML患者の55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の発現レベルよりも高い発現レベルで遺伝子ST3GAL4、FUT5およびFUT7を発現する。
【0206】
遺伝子発現はまた、患者の試料中のタンパク質の量によって測定され得る。タンパク質の量を測定するための非限定的例の方法としては、免疫染色、免疫組織化学、親和性精製、質量分析、ウェスタンブロッティングおよび酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0207】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、mRNAの量によって測定される。
【0208】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、患者の試料中のタンパク質の量によって測定される。
【0209】
いくつかの実施形態では、本方法は、(a)対象または対象から得られた試料中の1またはそれを超える遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、またはすでに測定していること、および、(b)対象または対象から得られた試料から得られた芽球細胞の少なくとも10%が1またはそれを超える遺伝子を発現する場合に、処置のために対象を選択すること、を含む方法によって処置する対象を選択することをさらに含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える遺伝子は、ST3GAL4、B3GNT5およびFUT7から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、mRNAの量によって測定される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、高カバレッジ一本鎖mRNAシーケンシングによって測定される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、対象から得られた試料中のタンパク質の量によって測定される。いくつかの実施形態では、対象から得られた試料は末梢血である。
【0210】
いくつかの実施形態では、本方法は、(a)対象から得られた芽球細胞を含む生物学的試料を得ること、またはすでに得ていること、(b)生物学的試料に対してアッセイを実施するか、またはすでに実施していることで、試料中の1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、および、(c)試料中の少なくとも10%の芽球細胞が1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子を発現する場合に、処置のために対象を選択すること、を含む方法によって処置する対象を選択することをさらに含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、生物学的試料は骨髄試料である。いくつかの実施形態では、生物学的試料は末梢血試料である。
【0212】
いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子はグリコシル化遺伝子である。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子は、ST3GAL3、ST3GAL4、FUCA2、FUT5およびFUT7から選択される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子は、ST3GAL4、FUT5およびFUT7から選択される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子は、ST3GAL4およびFUT7から選択される。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子のうちの少なくとも1つはST3GAL4である。いくつかの実施形態では、1またはそれを超えるE-セレクチンリガンド形成遺伝子のうちの少なくとも1つはFUT7である。
【0213】
いくつかの実施形態では、本方法は、(a)対象または対象から得られた試料中の1またはそれを超える遺伝子の遺伝子発現レベルを測定すること、(b)(a)から得られた遺伝子発現レベルを、がんを有さない対象、新たに診断されたがん対象、または対象と同じがんと診断された対象から得られた対照試料と比較すること、および、(c)遺伝子発現レベルが対照試料の遺伝子発現レベルを超える場合に、処置のために対象を選択すること、を含む方法によって処置する対象を選択することをさらに含む。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える遺伝子は、ST3GAL4、B3GNT5およびFUT7から選択される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、mRNAの量によって測定される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、高カバレッジ一本鎖mRNAシーケンシングによって測定される。いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、対象から得られた試料中のタンパク質の量によって測定される。いくつかの実施形態では、対象から得られた試料は末梢血である。
【0214】
いくつかの実施形態では、上記方法は、1またはそれを超えるFLT3の変異変化の存在を判定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、変異変化は、FLT3のチロシンキナーゼドメイン活性化ループ内の内部タンデム重複およびミスセンス変異から選択される。
【実施例
【0215】
以下の実施例は、例示を意図しており、いかなる形であれ、本開示の範囲を限定することを意図していない。
実施例1
【0216】
E-セレクチンが骨髄ニッチ構成細胞において不可欠な効果を有するかどうかを調べるために、健常ドナー由来間葉系間質細胞(MSC)を漸増濃度のE-セレクチンに曝露した。可溶性E-セレクチンは、ヒトMSCにおいて最も強力なE-セレクチンリガンドであるCD44の表面発現を上方制御した。化合物AによるE-セレクチン結合の解除は、インビトロでのCD44発現を減少させた。
【0217】
E-セレクチンを化合物A(50mg/kg)で標的化すると、AML細胞と共培養したHUVECにおいて酵素eNOSのリン酸化が減弱し、E-セレクチン阻害がAML進行中のBM血管系の破壊を保護し得ることが示唆された。
実施例2
【0218】
骨髄ニッチにおいてベネトクラクス/HMA療法に耐性の白血病細胞を選択的に根絶するためにE-セレクチンを化合物Aで標的化することの有効性を評価するために、最初にベネトクラクス/HMA療法に応答し、次いで再発した、FLT3-ITD、NRAS、およびGATA2変異を有するAML患者に由来するインビボPDX-AMLモデルを使用した(図1)。このモデルは、多くの高齢AML患者の現在の状況、すなわち、初期の感受性、その後のベネトクラクス/HMAに対する耐性と再発、を反映している。
【0219】
AML患者由来の患者由来PDX細胞(2.5×10細胞/マウス)を、尾静脈を介してNSGマウスに移植した。AML細胞が生着し始めたら、マウスを4つの群、すなわち、ビヒクル処置のみ、40mg/kgの化合物A、50mg/kgのベネトクラクス+5.5mg/kgの5-アザシチジン、および、40mg/kgの化合物Aと50mg/kgのベネトクラクス+5.5mg/kgの5-アザシチジンとの組み合わせ、に分けた。薬物処置を移植後60日目から82日目まで行った。
【0220】
白血病の進行および腫瘍量を、フローサイトメトリー分析を使用して末梢血中のヒトCD45細胞の頻度および絶対数を求めることによって、処置期間中(22日間)毎週評価した。AML-PDXマウスの生存に対する組み合わせ処置の相乗効果を、カプラン・マイヤー分析によって調べた(図2)。化合物Aとベネトクラクス/HMAの組み合わせは、ビヒクル対照(p=0.015)ならびにベネトクラクス/HMA(p=0.0009)および化合物A群(p=0.03)と比較して、マウスの生存を統計学的に有意に延長した。ビヒクル対照、化合物A、ベネトクラクス/HMA、および組み合わせの処置(化合物A+ベネトクラクス/HMA)群のマウスの生存期間中央値は、それぞれ86、91、81.5、および106.5日であった。
【0221】
マウスの対照群の全てが瀕死の時点(23日間の処置後)で、単一細胞プロテオミクス(CyTOF)および免疫組織化学分析のために、1群当たり3匹のマウスを屠殺した。
【0222】
E-セレクチンを化合物Aで標的化すると、ヒトAML細胞が動員され、それらがベネトクラクス/HMAに感作された。循環白血病細胞の数は、ベネトクラクス/HMA単独と比較して、ベネトクラクス/HMAによる化合物Aの併用処置によって有意に減少した(p<0.05)(図3図4)。
【0223】
骨髄、脾臓、肺および肝臓の組織学的分析は、白血病細胞浸潤の違いを示し、併用処置の抗白血病効果の増強が確認された(図5)。正常なNSC対照マウスと比較して、白血病細胞浸潤は、ビヒクル対照または化合物Aのみで処置したマウスの臓器において増加した。しかし、化合物Aとベネトクラクス/HMAの組み合わせで処置したマウスは白血病細胞浸潤の減少を示し、E-セレクチンの阻害がこの薬剤耐性AML-PDXモデルにおけるベネトクラクス/HMAの治療有効性を改善することを示している。
【0224】
E-セレクチン阻害によって誘導される増強された効力に関連する内因性および外因性分子機構を同定するために、CyTOFを使用する単一細胞プロテオミクスを行った。図6Aは、ヒトCD45細胞の全てのクラスターを示す。
【0225】
LSC集団を4つの表面マーカー(CD34、CD123、CD45およびCD38)によって同定した。CD45CD34CD38CD123LSC集団は、クラスター20および25によって表した。E-セレクチンおよびBcl-2をHMA処置と共標的化すると、クラスター20および25のLSC集団が効率的に排除された(図6B)。
【0226】
高いE-セレクチン結合能(高いE-セレクチンリガンド発現によって表される)によって、化学療法耐性AML芽球が区別される。この実験では、ほとんどのベネトクラクス/HMA耐性細胞は、LSCクラスターを含むより高レベルのE-セレクチンリガンドを発現した。化合物Aのインビボ投与は、クラスター全体のTSNEマップにおける高いE-セレクチンリガンド発現(図7A)および併用処置群におけるAML細胞の排除(図7B)によって示されるように、ベネトクラクス/HMAの抗白血病効果を増強した。
【0227】
AML増殖の程度も処置群にわたって評価した。c-Myc、Ki67、およびIdU陽性のレベルは全て、併用療法処置マウスにおいて減少し、E-セレクチンの阻害が、ベネトクラクス/HMA処置後の残存細胞の増殖をさらに減少させることを示唆した(図8B)。
実施例3
【0228】
AMLシグナル伝達シグネチャの薬物媒介変化の開始時のE-セレクチンの機構を描写するために、別のPDXモデルを使用した(Flt3-ITDおよびWT1変異、ソラフェニブ耐性)。
【0229】
進行したAML(末梢血中の20%を超えるヒトAML細胞循環)を有するPDXマウスに、ビヒクル対照、ベネトクラクス(25mg/kg)/HMA(5.5mg/kg)、化合物A(200mg/kg)、または併用療法を2日間投与した。2日間のボーラス薬物投与後、マウスを屠殺し、CyTOF分析に供した(図9A図9C)。CyTOFによる単一細胞プロテオミクス分析により、ベネトクラクス/HMAによる化合物Aの併用処置は、ビヒクル対照またはベネトクラクス/HMA単独と比較して、Ki67、IDUおよびpRbのレベルを減少させ、AML芽球の増殖を減少させることが確認された。
【0230】
ベネトクラクス耐性AML細胞は、代替の抗アポトーシスタンパク質であるMcl-1およびBcl-xlに対する増加した依存性を示すことが最近報告されている(Konoplevaら、2016)。この実施例では、化合物Aおよびベネトクラクス/HMAによるインビボでの同時処置が、Ven/HMA単独と比較して、AML芽球におけるBcl-xlおよびMcl-1の発現をさらに減少させ、薬剤耐性を克服する際のE-セレクチンアンタゴニストの重要な役割を示唆した。
【0231】
AML芽球におけるE-セレクチン結合能および焦点接着キナーゼ活性は、薬理学的E-セレクチン阻害剤の急性投与時に減少した。MAPK、p-S6、およびSTAT3を含む調査された他の発癌性シグナル伝達経路は全て、ベネトクラクス/HMAへの化合物Aの添加によって阻害された。
【0232】
PI3K/AKTキナーゼを介して一酸化窒素(NO)を産生するためのeNOSの活性化は、悪性細胞におけるクローン原性細胞増殖を維持する。最近の刊行物は、化学療法と組み合わせたNOS遮断薬の導入が、化学療法単独とは対照的に、より遅い白血病進行およびより長い寛解をもたらしたことを示している(Passaroら、2017年)。
【0233】
この実験では、化合物A処置PDXモデルのAML芽球ならびにBM CD31+EC細胞においてPI3KおよびAKTの活性化の低下が観察された(図10)。その後、eNOSリン酸化はECで減少し、E-セレクチンの阻害がNOの産生を遮断することによってBM血管系を保護し得ることを示唆した。さらに、E-セレクチンを標的化すると、AML由来MSCにおいてシグナル伝達変化が示された(図10)。E-セレクチンアンタゴニストの投与は、AML-PDX由来のMSCにおけるmTOR発現を増加させた。化合物Aとベネトクラクス/HMAとの併用処置は、より高いKi67陽性、ならびにインビボでのMSCにおけるpRbおよびp-S6の過剰活性化を誘導した。
【0234】
まとめると、実施例1~3の結果は、限定するものではないが化合物AなどのE-セレクチンアンタゴニストを用いたE-セレクチン標的化戦略が、骨髄血管ニッチにおけるがん細胞自律的機構および非細胞自律的機構による(例えば、シグナル伝達経路を破壊することによる)AMLにおけるベネトクラクス/HMAに基づく治療に対する微小環境耐性を克服し得るという第1の証拠を提供する。さらに、これらの結果は、E-セレクチンの阻害が、内皮細胞におけるPI3K-AKT-eNOSリン酸化の減少を介してNO産生を遮断することによって、および、非悪性HSCを支援し得るMSC生存促進シグナル伝達経路を促進することによって骨髄ニッチを保護し得、その結果、ベネトクラクス/HMA処置後のより速い回復およびより長い寛解持続時間をもたらす可能性があることを示唆する。
実施例4
【0235】
KG1 AMLマウスモデルも使用して、E-セレクチンアンタゴニスト化合物Aが5-アザシチジンの抗腫瘍効果を増強することができるかどうかを調べた。雌NSGマウス(コホート当たり10、6週齢)に、1マウス当たり5×10個のKG1 AML腫瘍細胞のi.v.注射を行った。注射後7日目から、マウスを4つのコホートに無作為化し、食塩水(i.p.(腹腔内)、qdx14(14日間にわたり1日1回))、化合物A(40mg/kg i.p. qdx14)、5-アザシチジン(5mg/kg i.p.q3dx5)、または化合物Aと5-アザシチジンの組み合わせのいずれかで処置した。生存に対する処置の有効性をカプラン・マイヤー推定量によって決定し、ログランク統計を使用して生存の有意差を試験した(図11)。5-アザシチジンで処置したマウスの生存期間中央値(MST)は88日であり、食塩水(MST=69.5日)または化合物A単独(MST=69日)で処置したマウスの生存期間中央値と統計的に異なっていた。食塩水または化合物A単独で処置した全てのマウスは、進行性の腫瘍増殖により死亡した。実験の結論として、(腫瘍注射後104日目の)5-アザシチジンで処置したマウスの20%が生存したままであった。重要なことに、5-アザシチジンの治療活性は、化合物Aと組み合わせた場合に有意に増強された(MST>104日、5-アザシチジン単独と比較してp=0.0140)。これらの結果は、KG1モデルにおけるAML芽球とE-セレクチンとの間の相互作用が、白血病細胞を5-アザシチジンの抗腫瘍活性から部分的に保護し、化合物Aがこの保護を減弱させることを示唆している。
実施例5
【0236】
この仮説をさらに調べるために、化合物AがKG1 AML細胞のE-セレクチンへの接着を妨害する能力を、インビトロアッセイを使用して評価した。組換えヒトE-セレクチン-Fcキメラは、R&D Systems(724-ES)から購入した。KG1 AML細胞株をATCC(CRL-8031)から購入し、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したRPMI-1640培地で培養した。Costar 96ウェルポリスチレン培地結合アッセイプレートをCorning(9017)から購入した。5-アザシチジン(5-AZA)は、Sigma-Aldrich(A2386)から購入した。カルセインAMは、Molecular Probes(C3100MP)から購入した。皮膚リンパ球抗原(HECA-452-FITC)と反応性のFITCコンジュゲート化抗体は、BD Pharmingen(555947)から購入した。
【0237】
96ウェルポリスチレンプレートのウェルを100μLの2μg/mL組換えヒトE-セレクチン-Fcキメラで37℃で2時間コーティングし、次いでハンクス平衡食塩水(HBSS)で3回洗浄した。KG1細胞を、3μMのカルセインAMを含む培養培地中で37℃で60分間蛍光標識し、250×gで10分間の遠心分離によってペレット化し、次いで2.5×10細胞/mLに至るまでHBSSに再懸濁した。次に、各ウェルに2.5×10個の細胞を添加し、細胞を室温で45分間接着させた。場合によっては、細胞を100nMの5-アザシチジンで96時間毎日処置した後、カルセインAMで標識し、E-セレクチンに接着した。適切なウェルに10mMの化合物A(ウェル中の最終濃度:100μM)1μLを入れ、30分後、ウェルを蛍光顕微鏡で観察し、FlexStationプレートリーダー(励起485nm、発光538nm、カットオフ530nm)を用いて洗浄前の蛍光測定を行った。その後、ウェルをHBSSで静かに3回洗浄し、蛍光顕微鏡による観察および蛍光読み取りを繰り返した。
【0238】
図12Aおよび図12Bに示すように、AML細胞を5-AZAとインキュベーションすると、E-セレクチンに対する接着が増強された。以前に5-AZAで処置していない接着細胞の蛍光単位は357.6であったが、100nMの5-AZAで96時間処置した細胞の蛍光単位は560.6であり、57%の増加であった。注目すべきことに、以前に結合した細胞を化合物Aで処置すると、有意な細胞放出がもたらされた(蛍光単位=55.2、p=0.001)。これらの結果は、低メチル化試薬5-AZAによるKG1 AML細胞株の処置が、E-セレクチンに対する細胞の接着を増強し、接着した細胞が、E-セレクチンアンタゴニスト化合物Aによる処置によって放出され得ることを示している。
【0239】
5-AZAで処置した後のE-セレクチンに対するKG1細胞の接着の増加を、フローサイトメトリーによってさらに調べた。細胞を100nMの5-AZAの存在下または非存在下で96時間培養した。細胞へのE-セレクチン-PEの結合(R-フィコエリトリンとコンジュゲートしたE-セレクチン-Fcキメラ)をフローサイトメトリーによって測定した。さらに、シアリルルイスA/X炭水化物構造と特異的に反応し、E-セレクチンリガンドの代用マーカーであるHECA-452モノクローナル抗体との細胞の反応性をフローサイトメトリーによって測定した。
【0240】
具体的には、KG1細胞を250×gで10分間遠心分離し、0.1%ウシ血清アルブミンを含有するHBSS(HBSS/BSA)で洗浄し、約3×10細胞/mLに至るまでHBSS/BSAに再懸濁した。これらの細胞をFc受容体遮断薬(Miltenyi Biotech)で処置し、100μLのアリコート(3×10細胞)を12×75mmファルコンポリプロピレンチューブに添加した。細胞を5μLのE-セレクチン-Fc-PE試薬または20μLのHECA-452-FITC抗体のいずれかで処置し、4℃で45分間置き、2mLのHBSS/BSAで洗浄し、次いで再び1mLのHBSS/BSAで洗浄した。最終細胞ペレットを500μlのHBSS/BSAに再懸濁し、Attune NxTフローサイトメーターで分析した。E-セレクチンを、PE/R-フィコエリトリン結合キット-Lightning-Link(Abcam ab102918)を使用してR-フィコエリトリンとコンジュゲートさせた。
【0241】
5-AZAによる細胞の処置は、E-セレクチン-PEとおよびHECA-452-FITCとの反応性の増加によって示されるように、E-セレクチンリガンドの細胞表面発現を増加させた(図13)。5-AZAでの処置は、E-セレクチン-PEと反応性の細胞の割合(38.4%から52.9%)および蛍光強度の中央値(MFI、940から1299)の両方において38%の増加をもたらした。同様に、5-AZAによる処置は、HECA-452と反応性の細胞の割合の27%の増加(37.8%から47.9%)およびMFIの26%の増加(621から783)をもたらした。
【0242】
5-AZAによる処置後に観察された細胞表面上のE-セレクチンリガンドの増加は、5-AZAの低メチル化活性が、シアリルルイスA/X炭水化物の生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を増強し得ることを示唆している。特異的遺伝子発現に対する5-AZAの効果を評価する前に、包括的DNAメチル化に対するその効果を、比色ELISA様反応における5-メチルシトシン(5-mC)のレベルを特異的に測定することによって評価した。細胞および組織用DNA単離キット(Rocheカタログ番号11 814 770 001)を使用して、細胞ペレットからDNAを単離した。DNA定量アッセイキット(BioVisionカタログ番号K539-200)を用いてDNAを定量した。Methyl Flash(商標)Global DNA Methylation(5-mC)ELISA Easy Kit(EpiGentekカタログ番号P-1030)を使用して、包括的DNAメチル化を測定した。
【0243】
KG1細胞をビヒクルで処置するか、または100nMの5-AZAの存在下で96時間培養した。DNAを単離し、細胞ペレットから精製し、5-mCレベルについて評価した。図14に示すように、未処置KG1細胞における5-mCのレベルは0.33%であったが、5-AZAで処置した細胞における5-mCのレベルは0.12%であった。この結果は、100nMの5-AZAによる処置が実質的な低メチル化効果をもたらしたことを示している。
【0244】
低メチル化がグリコシルトランスフェラーゼの発現増強をもたらしたという仮説に取り組むために、KG1細胞を100nMの5-AZAの存在下または非存在下で96時間培養し、続いて関連するグリコシルトランスフェラーゼをコードするmRNAのリアルタイムqPCR分析を行った。新鮮な5-AZAを毎日培養物に添加した。約1×10個の細胞を250×gで10分間の遠心分離によってペレット化し、次いでドライアイス上で急速凍結した。全RNAを抽出し、オンカラムDNase処置工程(QIAGENカタログ番号74104)を備えたQIAGEN RNeasy(登録商標)Kitを使用して精製した。変化倍率(2^(-デルタCt))は、対照試料における正規化遺伝子発現(2^(-デルタCt))で除算した5-AZA処置試料における正規化遺伝子発現(2^(-デルタCt))である。
【0245】
ルイス抗原の生合成に関与するいくつかの遺伝子は、100nMの5-AZAで96時間処置した後に発現増強を示した(表1)。表1において、制御倍率は、生物学的に意味のある方法での変化倍率の結果を表す。1より大きい変化倍率の値は、正または上方制御を示し、制御倍率は変化倍率に等しい。1未満の変化倍率の値は、負または下方制御を示し、制御倍率は、変化倍率の負の逆数である。さらに、表1のp値を、対照群および処置群の各遺伝子についての複製2^(-デルタCt)値のスチューデントのt検定に基づいて計算した。
【表1】
【0246】
sLeX合成の最後の工程を触媒する酵素であるα(1,3)-フコシルトランスフェラーゼVIIをコードする遺伝子であるFUT7は、5-AZAで処置していない対照試料と比較して、10.15倍上方制御された(p=0.000040)。ヒト骨髄細胞上のE-セレクチンリガンドの合成を調節する主要なシアリルトランスフェラーゼであるα(2,3)-シアリルトランスフェラーゼIVをコードするST3GAL4は、2.78倍上方制御された(p=0.000027)。β(1,3)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼファミリーのメンバーをコードするB3GNT5は、2.36倍上方制御された(p=0.013)。このように、5-AZAによるKG1細胞の処置は、E-セレクチンリガンドシアリルルイスXの生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現を上方制御した。
【0247】
5-AZAで処置したKG1細胞におけるFUT7 mRNAの発現の増加がFUT7プロモータの低メチル化に起因し得るかどうかを試験するために、FUT7プロモータ領域の標的化次世代バイサルファイトシーケンシングを行った。転写開始部位を囲む101個のCpG部位のメチル化状態を調べた。具体的には、KG1細胞を100nMの5-AZAの存在下で培養し、新鮮な低メチル化試薬を培養物に毎日添加した。96時間の処置後に細胞を回収し、細胞ペレットを調製した。抽出したDNA試料(500ng)を、EZ-96 DNA Methylation-Direct Kit(ZymoResearch、アーバイン、カリフォルニア州、カタログ番号D5023)を使用して、若干修正した製造業者のプロトコルに従ってバイサルファイトで修飾した。バイサルファイト修飾DNA試料を、46μLのM溶出緩衝液を用いて溶出した。DNA抽出およびバイサルファイト修飾の後、転写開始部位を囲む26個の領域をPCR/NGSによって評価して、101個のCpG部位のメチル化状態を評価した。全てのバイサルファイト修飾DNA試料を、別個のマルチプレックスPCRまたはシンプレックスPCRを用いて増幅した。PCRは、0.5単位のHotStarTaq(Qiagen、ヒルデン、ドイツ、カタログ番号203205)、0.2μMのプライマー、および20μLの反応液中の3μLのバイサルファイト処置DNAを含んでいた。
【0248】
これらの結果(図15)は、転写開始部位(TSS)の3928bp上流からTSSの6054bp下流までの領域における複数のCpG部位の用量および時間依存性脱メチル化を示した。図15は、5-AZA処置の非存在下で50%またはそれより高いメチル化を示した19個のCpG部位のメチル化率を強調している。5-AZAによる処置は、これらの部位の脱メチル化をもたらし、プロモータ領域の低メチル化が、FUT7のより高い発現と、それに続くKG1細胞の表面上のより高いレベルのE-セレクチンリガンドシアリルルイスXをもたらしたことを示唆した。
【0249】
まとめると、実施例4および5のデータは、KG1 AML細胞のHMA処置が、E-セレクチンの炭水化物リガンドであるシアリルルイスX(sLex)の合成に関与するグリコーゲンの発現を上方制御したことを示している。より高レベルの遺伝子発現が観察されただけでなく、E-セレクチンとの反応性の増強によって証明されるように、HMA処置後により高レベルのE-セレクチンリガンドが細胞表面に示された。したがって、標準治療の集中的誘導化学療法に適さない患者を処置するためにHMA療法が診療所で使用される場合、白血病性芽球上のE-セレクチンリガンドの発現増強が起こり得、これは化学療法耐性および疾患の再発をもたらし得る。このシナリオは、骨髄血管系上のE-セレクチンへの芽球接着を阻害し、したがって化学療法耐性および再発を減少させることについての、化合物AなどのE-セレクチンアンタゴニストの潜在的有用性を強調する。
実施例6
【0250】
ベネトクラクスと組み合わせた化合物AによるE-セレクチン標的化の有効性を評価するために、インビボMV4.11 AMLモデルを使用した(図16)。
【0251】
luc-MV4.11細胞(5×10細胞/マウス)をNSGマウスに移植した。マウスを4つの群、すなわち、ビヒクル処置のみ、40mg/kgの化合物A(腹腔内、14日間1日1回)、100mg/kgのベネトクラクス(経口、1日1回14日間)、ならびに40mg/kgの化合物Aおよび100mg/kgのベネトクラクスの組み合わせ、に分けた。薬物処置を移植後10日目に開始した。
【0252】
ベネトクラクス単独または化合物Aと組み合わせたベネトクラクスで処置したマウスの生存期間中央値(MST)は、それぞれ46日または54.5日であり、両方とも食塩水(MST=39.5日)または化合物A単独(MST=39日)で処置したマウスの生存期間中央値と統計的に異なっていた。
参考文献
【0253】
以下の参考文献は、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0254】
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【0271】
当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書に記載の本開示の特定の実施形態に対する多くの均等物を理解し、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】