(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】電子式吸入器及びその調整方法
(51)【国際特許分類】
A61M 11/00 20060101AFI20230704BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61M11/00 F
A61M15/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562786
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 NL2021050243
(87)【国際公開番号】W WO2021210980
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522402427
【氏名又は名称】ギルバート テクノロジーズ ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハーシュバッハ,ゲオルギウス ヨセフス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ミースターズ,ガブリエル マリヌス ヘンリクス
(72)【発明者】
【氏名】ホダダディ,シェイラ
(57)【要約】
本発明は、液状医薬製剤を吸入するための吸入器を調整する方法、及び前記方法によって使用するためのノズルを備える吸入器に関する。吸入器を調整するための方法。吸入器は、ルーメンを備えるマウスピース部分と、結合された本体部分とを含む。本体部分は、ルーメンに対面するベースを備える本体を含む。本体は、さらに、ベースからルーメン中へと延在する、前記医薬製剤を放出するための出口を備えるノズルと、ベースに、ノズル出口から対向電極距離で対向電極と、ノズル出口から放電電極距離で放電電極とを含む。吸入器は、さらに、電力供給装置及び空気入口を含む。方法は、吸入器のノズル出口に対して1つ又は複数の電極を調整するステップを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状医薬製剤を吸入するための吸入器(100)を調整するための方法であって、前記吸入器(100)を調整するための方法は、吸入器(100)を使用し、前記吸入器(100)は:
- 吸入開口部の縁から延在する周囲壁(102a、102b)を含むマウスピース部分(102)であって、前記周囲壁(102a、102b)はルーメン(104)を包囲する、マウスピース部分(102)と、
- 前記マウスピース部分(102)に結合された本体部分(101)であって、前記本体部分(101)は、ベース(160)を備える本体(112)を含み、前記ベース(160)は、前記ルーメン(104)に対面し、及び前記マウスピース部分(102)の前記ルーメン(104)の限界を規定し、前記本体(112)は、さらに:
i) ノズル(133)であって、前記ノズル(133)の第1の端部に、液状医薬製剤を受け入れるためのノズル入口(134)と、前記ノズル(133)の第2の端部に、前記医薬製剤を放出するためのノズル出口(139)とを含み、前記ノズル(133)は前記ベース(160)を通過し、及び前記ノズル出口(139)を含む前記ノズル(133)の一部分は、前記ルーメン(104)中へと延在する、ノズル(133)、
ii) 前記ノズル出口(139)から対向電極距離で、前記ノズル(133)の比較的に近くで、前記ベース(160)に配置された対向電極(152)であって、前記対向電極距離は電場経路を規定する、対向電極(152)、
iii) 前記対向電極(152)と比べて前記ノズル(133)から比較的遠くに配置された、放電部分(176a、176b、176c、176d、176e、176f)を含む放電電極(175)であって、前記放電部分(176a、176b、176c、176d、176e、176f)は、前記ノズル出口(139)から放電電極距離にあり、前記放電電極距離は前記対向電極距離よりも長い、放電電極(175)
を含む、本体部分(101)と
を含み、
前記吸入器(100)は、さらに:
- 前記ノズル(133)、前記対向電極(152)及び前記放電電極(175)のうちの少なくとも1つに電気的に接続された電力供給装置、及び
- 吸入用空気が前記ルーメン(104)に入ることを可能にする空気入口
を含む、方法において、
前記方法は、前記放電電極距離を調整するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記吸入器(100)は、さらに、前記ノズル(133)と前記放電電極(175)を互いに対して動かすことができる放電電極アクチュエータを含み;及び
前記方法では、前記放電電極距離を調整する前記ステップは、前記ノズル(133)と放電電極(175)を互いに対して動かすことによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸入器(100)は、さらに、前記放電電極(175)に対してある位置に前記ノズル(133)を固定するための放電電極固定手段を含み;及び
前記方法は、さらに、前記放電電極(175)に対してある位置に前記ノズル(133)を固定するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対向電極距離を調整する前記ステップは、前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズル(133)の部分の先端を切り取ることによって実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸入器(100)は、さらに、前記ノズル(133)と前記対向電極(152)を互いに対して動かすことができる対向電極アクチュエータ(142)を含み;及び
前記方法では、前記対向電極距離を調整する前記ステップは、前記ノズル(133)と前記対向電極(152)を互いに対して動かすことによって実施される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記吸入器(100)は、さらに、前記対向電極(152)に対してある位置に前記ノズル(133)を固定するための対向電極固定手段(144)を含み;及び
前記方法は、さらに、前記対向電極(152)に対してある位置に前記ノズル(133)を固定するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記吸入器(100)の前記ノズル(133)は、取り外し自在なノズル(133)であり;及び
前記方法では、前記対向電極距離を調整する前記ステップは、前記取り外し自在なノズル(133)を交換用ノズルと交換することによって実施され、前記交換用ノズルは、前記取り外し自在なノズル(133)と比べてより短い若しくは長い、又は前記取り外し自在なノズル(133)と同じサイズである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ノズル(133)は、好ましくは前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズルの前記部分において、マーキングを含み;及び
前記対向電極距離を調整する前記ステップの最中、前記マーキングを使用して前記調整をガイドする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
液状医薬製剤を吸入するための吸入器(100)であって、前記吸入器(100)は:
- 吸入開口部の縁から延在する周囲壁(102a、102b)を含むマウスピース部分(102)であって、前記周囲壁(102a、102b)はルーメン(104)を包囲する、マウスピース部分(102)と、
- 前記マウスピース部分(102)に結合された本体部分(101)であって、前記本体部分(101)は、ベース(160)を備える本体(112)を含み、前記ベース(160)は、前記ルーメン(104)に対面し、及び前記マウスピース部分(102)の前記ルーメン(104)の限界を規定し、前記本体(112)は、さらに:
i) ノズル(133)であって、前記ノズル(133)の第1の端部に、液状医薬製剤を受け入れるためのノズル入口(134)と、前記ノズル(133)の第2の端部に、前記医薬製剤を放出するためのノズル出口(139)とを含み、前記ノズル(133)は、前記ベース(160)を通過し、前記ノズル出口(139)を含む前記ノズル(133)の一部分は、前記ルーメン(104)中へと延在する、ノズル(133)、
ii) 前記ノズル(133)の比較的に近くに、前記ノズル出口(139)から対向電極距離で、前記ベース(160)に配置された対向電極(152)であって、前記対向電極距離は電場経路を規定する、対向電極(152)、
iii) 前記ノズル(133)から比較的遠くに配置された、放電部分(176a、176b、176c、176d、176e、176f)を含む放電電極(175)であって、前記放電部分(176a、176b、176c、176d、176e、176f)は、前記ノズル出口(139)から放電電極距離にあり、前記放電電極距離は前記対向電極距離よりも長い、放電電極(175)
を含む、本体部分(101)と
を含み;
前記吸入器(100)は、さらに:
- 前記ノズル(133)、前記対向電極(152)及び前記放電電極(175)のうちの少なくとも1つに電気的に接続された電力供給装置、及び
- 吸入用空気が前記ルーメン(104)に入ることを可能にする空気入口
を含む、吸入器(100)において;
前記放電電極距離は調整可能であることを特徴とする、吸入器(100)。
【請求項10】
前記放電電極(175)は複数の放電部分(176a、176b、176c、176d、176e、176f)を、好ましくは少なくとも3個、一層好ましくは少なくとも4個、及びさらに一層好ましくは少なくとも6個含み、前記放電部分(176a、176b、176c、176d、176e、176f)は、前記ノズル出口(139)から等しい放電電極距離にあり、及び前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズル(133)の部分の長手方向軸の周りに均一に広がっている、請求項9に記載の吸入器(100)。
【請求項11】
前記ノズル(133)と前記放電電極(175)は、前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズル(133)の前記部分の前記長手方向軸の方向に沿って、互いに対して可動である、請求項9又は10に記載の吸入器(100)。
【請求項12】
前記放電部分(176a、176b、176c、176d、176e、176f)は、前記ルーメン(104)の外部に位置する、請求項9~11のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項13】
前記放電部分(176a、176b、176c、176d、176e、176f)の遠位端は、前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズル(133)の前記部分の前記長手方向軸に向けられている、請求項9~12のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項14】
前記ノズル(133)は、好ましくは前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズルの前記部分に、マーキングを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項15】
前記対向電極距離は調整可能である、請求項9~14のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項16】
前記吸入器(100)は、さらに、前記ノズル(133)と前記対向電極(152)を互いに対して動かすことができる対向電極アクチュエータ(142)を含む、請求項9~15のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項17】
前記ノズル(133)と前記対向電極(152)は、前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズル(133)の前記部分の前記長手方向軸の方向に沿って、互いに対して可動である、請求項9~16のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項18】
前記ノズル出口(139)は、前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズル(133)の前記部分の前記長手方向軸に対して垂直な円すい底面と一致し、及び前記ノズル(133)に対面する前記円すい底面の側面はまた、前記対向電極(152)に対面する、請求項9~17のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項19】
前記対向電極(152)は、環状であり、並びに前記ルーメン(104)中へと延在する前記ノズル(133)の前記部分の長手方向軸に垂直に及びそこを中心にして配置される、請求項9~18のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項20】
前記ノズル(133)及び/又は対向電極(152)及び/又は前記対向電極アクチュエータ(142)は、個別の方法で前記対向電極距離を変える構成にされる、請求項9~19のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項21】
前記吸入器(100)は、さらに、前記対向電極(152)に対してある位置に前記ノズル(133)を固定するための対向電極固定手段(144)を含む、請求項9~20のいずれか一項に記載の吸入器(100)。
【請求項22】
液状医薬製剤を吸入するための吸入器(100)を調整するための方法における、又は液状医薬製剤を吸入するための吸入器(100)における、ノズル(133)の使用であって、前記方法は、請求項1~7のいずれか一項に記載であり、及び/又は前記吸入器(100)は、請求項8~19、20又は21のいずれか一項に記載であることを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状医薬製剤を吸入するための吸入器を調整する方法であって、吸入器を調整する方法は、吸入器を使用し、前記吸入器は:
- 吸入開口部の縁から延在する周囲壁を含むマウスピース部分であって、前記周囲壁はルーメンを包囲する、マウスピース部分と、
- マウスピース部分に結合された本体部分であって、本体部分は、ベースを備える本体を含み、前記ベースは、ルーメンに対面し、及びマウスピース部分のルーメンの限界を規定し、前記本体は、さらに:
i)ノズルの第1の端部に、液状医薬製剤を受け入れるためのノズル入口と、ノズルの第2の端部に、前記医薬製剤を放出するためのノズル出口とを含む、ノズルであって、ノズルはベースを通過し、及びノズル出口を含むノズルの一部分は、ルーメン中へと延在する、ノズル、
ii)ノズル出口から対向電極距離で、ノズルの比較的近くで、ベースに配置された対向電極あって、前記対向電極距離は電場経路を規定する、対向電極、
iii)対向電極と比べてノズルから比較的遠くに配置された、放電部分を含む放電電極であって、前記放電部分は、ノズル出口から放電電極距離にあり、放電電極距離は対向電極距離よりも長い、放電電極
を含む、本体部分と
を含み、
吸入器は、さらに:
- ノズル、対向電極及び放電電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続された電力供給装置、及び
- 吸入用空気がルーメンに入ることを可能にする空気入口
を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子式吸入器は、液状医薬製剤を霧化することができ、且つ当業界でよく知られており、これには、前記吸入器の生産及びチューニングを伴う。手動吸入器と比べたそれらの利点は、多種多様であり、とりわけ、霧化を通して比較的均質の粒径であることであり、結果として、機械式又は加圧式吸入器と比べてより良好な送給、及びより正確な投薬である。
【0003】
これらの電子式吸入器は、空気ストリームが通過し得る空気入口の設けられた本体部分を含む。空気入口は、本体部分に隣接して配置された吸入開口部を含むマウスピース部分内のルーメンに流体接続される。前記ルーメン内で、液状医薬製剤は霧化され得、及び空気ストリームによって運ばれる、霧化された医薬製剤は、吸入開口部を通して使用者によって吸入され得る。ノズルの端部にあるノズル出口が、マウスピース部分のルーメン中へと出ており(debouches)、及びルーメン内へ液状医薬組成物を霧化するように配置される。一般に、ノズルは、細いキャピラリ針であり、一方の端部にノズル入口を有し、リザーバ内に入れられている液状医薬製剤がノズルに入ることを可能にする。リザーバは、ノズル入口に流体接続された吸入器を備え得るが、リザーバはまた、後に、例えば交換用充填部として提供されてもよい。ポンプが提供されてもよいが、その機能には必須ではなく、ノズル又は加圧リザーバによって発生された毛細管力が、ノズルを通る液状医薬製剤の好適な流れも提供し得る。ポンプが好ましいこともある。ノズルはまた、医薬製剤が通過させられるノズル出口を有し、及びノズル出口から、医薬製剤がマウスピース部分のルーメン中へと霧化される。一般に、使用者は、吸入によってルーメンを通る空気ストリームを生じさせ、前記空気ストリームは、使用者の呼吸系の標的組織へ、霧化された医薬製剤を運ぶ。
【0004】
ルーメン中へと液状医薬製剤を霧化するために、ノズルと対向電極との間の電位によって、ノズル出口にテイラーコーン(Taylor cone)が確立される。これは、一般に、単一ジェットの安定したテイラーコーンであるが、一時的なテイラーコーンとしてもよい。テイラーコーンは、液体の典型的なコーン形状の体積部である。テイラーコーンには、ジェットが出現する先端部がある。テイラーコーンから少し離れて、ジェットは、医薬製剤を吸入するための0.1~10マイクロメートル程度の荷電液体粒子で分散し、これら粒子は、テイラーコーンから離れるように動く。対向電極とノズル出口との間の電場強度は、とりわけ、ジェットから霧化する粒径の重要な決定因である。これらの霧化された粒子は一緒に、マウス部分のルーメン内の空気中にスプレーを作り出し、及びスプレーは、使用者の吸入によって生じた空気ストリームと一緒に吸入され得る。選択した呼吸系組織に効率的に送給されるために、スプレーが、広範囲に放出され、及び粒径が比較的均質の分配を含むことが、重要である。スプレー中の粒子の放出は、放電部分の機能を果たす鋭い先端部を有する放電電極によって達成され、そこから、スプレー粒子と反対の電荷を有する放電部分のコロナ粒子が、発せられ得る。これらのコロナ粒子は、スプレー中の粒子と衝突して融合し、それゆえ、スプレーの放出を生じる。
【0005】
従来技術の電子式吸入器の欠点は、それらが、呼吸系の特定の組織へ特定の医薬製剤を送給することに応じて設計及び製造されており、各製剤が、異なる仕様の異なる吸入器の製造を必要とすることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、呼吸系の選択した組織への選択した医薬製剤の送給用に製造した後で、電子式吸入器を調整するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的に向けて、前段による方法は、方法が、放電電極距離を調整するステップを含むことを特徴とする。
【0008】
このようにして、吸入器は、単一モデルの生産のため安価に製造され得、及び製造後、吸入器は、選択した液状医薬製剤との使用に必要な仕様に調整され得る。それゆえ、生産を停止して構成要素を変更する必要なく、同一のバッチの吸入器を作製する単一の生産ラインが必要とされる。これはまた、間違った構成要素が吸入器に組み込まれる可能性がある、製造プロセスにおけるエラーを減らし得る。当業者は、呼吸系の選択した組織へ送給するための所望の粒径及びスプレー形状をもったスプレーに、選択した液状医薬製剤を霧化するために、どの対向電極距離が必要かを決定できる。
【0009】
放電電極から適切な距離にノズル出口を設定することによって、粒径が確実に均質のままとなるのに十分な幅であるスプレーを生じ得るが、スプレーはまた、吸入器のマウス部分の周囲壁での霧化された医薬製剤の損失を減らすために十分に細いようにし、呼吸系の任意の選択した標的組織への吸入器による液状医薬製剤の送給を向上させる。
【0010】
方法はまた、対向電極距離を調整するステップを含み得る。
【0011】
対向電極の比較的近くにノズル出口を設定することによって、肺胞組織への送給を改善させるためのスプレーを生じ得る。対向電極からの距離を増大させてノズル出口を設定することによって、それぞれ肺胞、細気管支、気管支又は気管から選択された任意の組織への送給を改善させるためのスプレーを生じ得る。
【0012】
霧化された医薬製剤を、呼吸系の特定の組織へ対象を絞って送給するために、対向電極及び/又は放電電極から適切な距離にノズル出口を設定することは、異なる医薬製剤に普遍的なわけではなく、濃度の変化も霧化に影響を及ぼす。それぞれの異なる液状医薬製剤に適切な設定を決定することが必要であり、その決定は、いずれかの当業者により、スプレーの粒径を決定することによって行われ得る。これらの設定は、ノズル、対向電極及び放電電極に電位が確立されることを含み、その場合、対向電極は、0ボルトに設定されることが多く、及びさらに、本発明によれば、対向電極距離及び/又は放電電極距離が、生産後に、所望の液状医薬製剤と一緒に使用するために、吸入器を微調整するために設定され得ることを含む。
【0013】
米国特許出願公開第2019209791号には、空気の電気絶縁破壊を回避するために、吸入器を製造している間に放電電極距離が選択され得る吸入器が説明されているが、スプレーの幅を制御するために放電電極距離が製造後に調整され得る吸入器は開示されていない。
【0014】
好都合な実施形態によれば、吸入器は、さらに、ノズルと放電電極を互いに対して動かすことができる放電電極アクチュエータを含み;及び
方法では、放電電極距離を調整するステップは、ノズルと放電電極を互いに対して動かすことによって実施される。
【0015】
このようにして、より正確な調整が可能である。吸入器は、呼吸系の選択した組織へ選択した液状医薬製剤を送給するために適切な設定に調整が従っていないことが検出される場合に、調整され得、及び再調整され得る。スプレーの広がりがマウスピース部分部品には大きすぎて、その周囲壁の内面で失われる場合、スプレーの放出は、寸法、それにより、標的組織への送給の効率を調整する。
【0016】
好都合な実施形態によれば、吸入器は、さらに、放電電極に対してノズルをある位置に固定する放電電極固定手段を含み;及び
方法は、さらに、放電電極に対してある位置にノズルを固定するステップを含む。
【0017】
このようにして、方法は、一貫した性能の吸入器を提供する。放電電極距離は、最終的には、ルーメン中へと延在するノズルの部分の調整後、所望の距離にしっかりと固定され得、所望の特性を維持し及び偶発的な再調整又は改ざんの傾向が少ない吸入器を提供する。それゆえ、方法は、さらに、放電電極距離を調整又は再調整するステップの後に、放電電極に対してある位置にノズルを固定するステップを含み得る。好ましくは、放電電極固定手段は、吸入器の販売承認が認可された人によってのみ操作され得るため、その機能は、要件に準拠しており、及び準拠したままである。
【0018】
好都合な実施形態によれば、対向電極距離を調整するステップは、ルーメン中へと延在するノズルの部分の先端を切り取る(truncating)ことによって、実施される。
【0019】
このようにして、ノズルの比較的長い部分が安価に修正され得、及びルーメン中へと延在するノズルの部分を調整するための調整手段を必要とせずに、放電電極距離が短くされる。これにより、非常に安価な吸入器の製造を可能にし、この吸入器は、生産後、所望のニーズのために修正され得る。ノズル部分の先端を切り取ることによって、古いノズル出口を除去し、及び対向電極から所望の対向電極距離に新しいノズル出口を作り出す。当業者は、当業者の、一般的によく知られている常識を使用して、所望の特性のために、ルーメン中へと延在する部分の先端が切り取られるべき長さを決定できる。ひとたび決定されたら、このステップは、同じ組織を標的とする同じ液状医薬製剤に使用される全ての吸入器に実行され得る。
【0020】
好都合な実施形態によれば、吸入器は、さらに、ノズルと対向電極を互いに対して動かすことができる対向電極アクチュエータを含み;及び
方法では、対向電極距離を調整するステップは、ノズルと対向電極を互いに対して動かすことによって、実施される。
【0021】
このようにして、より正確な調整が可能になる。吸入器は、調整が、呼吸系の選択した組織への選択した液状医薬製剤の送給に適切な設定に従っていないことが検出される場合、調整され得、及び再調整され得る。
【0022】
好都合な実施形態によれば、吸入器は、さらに、対向電極に対してある位置にノズルを固定するための対向電極固定手段を含み;及び
方法は、さらに、対向電極に対してある位置にノズルを固定するステップを含む。
【0023】
このようにして、方法は、一貫した性能の吸入器を提供する。対向電極距離は、最終的に、ルーメン中へと延在するノズルの部分を調整した後、所望の距離にしっかりと固定され得、所望の特性を維持し及び偶発的な再調整又は改ざんの傾向が少ない吸入器を提供する。それゆえ、方法は、さらに、対向電極距離を調整又は再調整するステップの後に、対向電極に対してある位置にノズルを固定するステップを含み得る。好ましくは、対向電極固定手段は、吸入器の販売承認が認可された人によってのみ操作され得るため、その機能は、要件に準拠しており、及び準拠したままである。
【0024】
好都合な実施形態によれば、吸入器のノズルは取り外し自在なノズルであり;及び
方法では、対向電極距離を調整するステップは、取り外し自在なノズルを交換用ノズルと交換することによって実施され、前記交換用ノズルは、取り外し自在なノズルと比べて短い若しくは長い、又は取り外し自在なノズルと同じサイズである。
【0025】
このようにして、1つの目的に好適であるように生産された吸入器が、単に取り外し自在なノズルを交換用ノズルと交換することによって、1種の異なる液状医薬製剤の送給に及び/又は呼吸系の1つの異なる組織を標的とするために好適であるような吸入器に変換され得、前記交換用ノズルは、挿入後、取り外し自在なノズルと比べてより遠くに又はより近くにルーメン中へと延在する部分を含む。それゆえ、生産者は、例えば、吸入器を迅速に及び安価に変換することによって、市場のニーズの変化に迅速に対応できる。吸入器はまた、このようにして、長期間の使用後に、汚れや液状医薬製剤の構成成分がノズルに若しくはノズル内に又はノズル出口に蓄積することによって、又はノズルやノズルコーティングのすり減りによって、機能が変化した可能性があるとき、同一の交換用ノズルによって、一新され得る。それゆえ、同一のサイズのきれいで未使用の交換用ノズルとの吸入器の一新は、元の所望の設定への吸入器の調整を可能にする。
【0026】
好都合な実施形態によれば、ノズルは、好ましくは、ルーメン中へと延在するノズルの部分に、マーキングを含み;及び
対向電極距離を調整するステップの最中、マーキングを使用して前記調整をガイドする。
【0027】
このようにして、目視検査によって、吸入器の適切な組み立て及び設定をチェックすることを可能にする。ノズルは、マーキングのロケーション又はマーキングでの切断の目視検査による簡単な調整を可能にする。対向電極が配置されたベースに対するマーキングの目視検査はまた、ノズルがノズル部品と適切に係合されておらず、不十分又は不適切な機能を生じていることを示し得る。例えば、マーキングは、ノズル出口距離又はベースまでの距離を示し得る。マーキングは、ノズルへのエッチング若しくは彫刻、又はノズルへのマーキングの塗布若しくはマーキングのコーティングからなる。
【0028】
本発明はまた、液状医薬製剤を吸入するための吸入器に関し、前記吸入器は:
- 吸入開口部の縁から延在する周囲壁を含むマウスピース部分であって、前記周囲壁はルーメンを包囲する、マウスピース部分と、
- マウスピース部分に結合された本体部分であって、本体部分は、ベースを備える本体を含み、前記ベースは、ルーメンに対面し、及びマウスピース部分のルーメンの限界を規定し、前記本体は、さらに:
i)ノズルの第1の端部に、液状医薬製剤を受け入れるためのノズル入口と、ノズルの第2の端部に、前記医薬製剤を放出するためのノズル出口とを含むノズルであって、ノズルはベースを通過し、及びノズル出口を含むノズルの一部分は、ルーメン中へと延在する、ノズル、
ii)ノズル出口から対向電極距離で、ノズルの比較的近くで、ベースに配置された対向電極であって、前記対向電極距離は電場経路を規定する、対向電極、
iii)ノズルから比較的遠くに配置された、放電部分を含む放電電極であって、前記放電部分は、ノズル出口から放電電極距離にあり、放電電極距離は対向電極距離よりも長い、放電電極
を含む、本体部分と
を含み;
吸入器は、さらに:
- ノズル、対向電極及び放電電極のうちの少なくとも1つに電気的に接続された電力供給装置、及び
- 吸入用空気がルーメンに入ることを可能にする空気入口
を含む。
【0029】
本発明はまた、請求項1の前段に記載の電子式吸入器に関する。簡単にするために、これらの吸入器は、請求項1の前段に述べられているものと同じ欠点を抱えていることが述べられている。
【0030】
本発明の目的は、製造後に、呼吸系の選択した組織への選択した液状医薬製剤の送給を改善するために調整可能である吸入器を提供することにある。
【0031】
この目的に向けて、前段による吸入器は、放電電極距離が調整可能であることを特徴とする。
【0032】
このようにして、安価な吸入器が提供され、及び製造後、選択した液状医薬製剤との使用に必要な仕様に調整可能である。吸入器は、それを行うのに熟練した、認可された又は資格のある人によって、調整され得る。本発明による吸入器の調整は、製造直後に製造所で実施され得るか、又は適切な投薬、及び呼吸系の選択した組織への液状医薬製剤の対象の絞り込みを保証するために、例えば販売承認された提供者、一般開業医又は薬剤師によって、後で実施され得る。
【0033】
好都合な実施形態によれば、放電電極は、複数の放電部分を、好ましくは少なくとも3個、一層好ましくは少なくとも4個、及びさらに一層好ましくは少なくとも6個含み、前記放電部分は、ノズル出口から等しい放電電極距離にあり、及びルーメン中へと延在するノズルの部分の長手方向軸の周りに均一に広がっている。
【0034】
このようにして、スプレーの放出は、より一様になる。
【0035】
好都合な実施形態によれば、ノズルと放電電極は、ルーメン中へと延在するノズルの部分の長手方向軸の方向に沿って、互いに対して可動である。
【0036】
このようにして、放電電極距離は単軸に沿って調整され得、ノズル、対向電極及び放電電極の三次元配置構成に関してあまり心配のないことにより、調整を簡単にする。
【0037】
好都合な実施形態によれば、放電部分は、ルーメンの外部に位置する。
【0038】
このようにして、テイラーコーン、ジェット、及び/又は放電電極によるスプレー形成との干渉は、少なくされ、及び医薬製剤の送給効率を改善し得る。
【0039】
好都合な実施形態によれば、放電部分の遠位端は、ルーメン中へと延在するノズルの部分の長手方向軸に向けられる。
【0040】
このようにして、スプレーの放出は改善され得る。コロナ放電粒子は、遠位端から離れるように、前記遠位端が向いている方向に動くため、遠位端を、ジェット及びスプレーが形成されるノズル出口に関連付けられたルーメンの体積部の方へ向けることが好ましい。好ましくは、遠位端とベースとの間の角度は、25°~85°、より好ましくは、30~80、及びさらにより好ましくは35~75である。
【0041】
好都合な実施形態によれば、好ましくは、ルーメン中へと延在するノズルの部分にあるノズルは、マーキングを含む。
【0042】
このようにして、目視検査によって、吸入器の適切な組み立て及び設定をチェックすることを可能にする。ノズルは、マーキングのロケーション又はマーキングでの切断の目視検査による、簡単な調整を可能にする。対向電極が配置されたベースに対するマーキングの目視検査はまた、ノズルがノズル部品と適切に係合されておらず、不十分又は不適切な機能を生じていることを示し得る。例えば、マーキングは、ノズル出口距離又はベースまでの距離を示し得る。マーキングは、ノズルへのエッチング若しくは彫刻、又はノズルへの、塗布されたマーキング若しくはマーキングによるコーティングからなり得る。
【0043】
好都合な実施形態によれば、対向電極距離は調整可能である。
【0044】
このようにして、吸入器の単一モデルは、異なる液状医薬製剤と一緒に使用するために調整され得る。スプレーの特性、例えばスプレーの量、スプレーの形状、スプレーの平均粒子荷電は、霧化される液状医薬製剤の特性に依存する。そのため、対向電極距離の調整性(adjustability)は、1つのモデルを生産して、異なる液状医薬製剤に使用することを可能にし、より安価な生産を可能にする。
【0045】
好都合な実施形態によれば、吸入器は、さらに、ノズルと対向電極を互いに対して動かすことができる対向電極アクチュエータを含む。
【0046】
このようにして、対向電極距離の設定は、ノズルに触れることなく、制御され得る。ノズルに触れることは、損傷又はその表面に堆積する汚れによって、その特性に影響を及ぼし得る。例えば、ラックピニオン装置が素早い調整を可能にする。ウォームを備えるエンドレススクリューは、エンドレススクリューのピッチに依存して、調整性の精度向上を提供し得る。
【0047】
好都合な実施形態によれば、ノズルと対向電極は、ルーメン中へと延在するノズルの部分の長手方向軸の方向に沿って、互いに対して可動である。
【0048】
このようにして、対向電極距離は、ノズル出口と対向電極との間に確立された電場に対して実質的に線形応答で調整可能であるため、呼吸系の選択した組織へ送給するために選択された液状医薬と一緒に使用するための電子式吸入器の設定は、簡単になる。ノズル及び対向電極の三次元形態は、単軸に沿った調整時は、あまり心配がない。
【0049】
このようにして、放電電極距離は単軸に沿って調整され得、ノズル、対向電極及び放電電極の三次元配置構成に関してあまり心配のないことにより、調整を簡単にする。
【0050】
好都合な実施形態によれば、ノズル出口は、ルーメン中へと延在するノズルの部分の長手方向軸に対して垂直な円すい底面に一致し、及びノズルに対面する前記円すい底面の側面はまた、対向電極に対面する。
【0051】
このようにして、対向電極は、使用中、スプレーからの粒子が対向電極の方へ動かないで、そこに堆積してしまわないように位置決めされ、そのような医薬製剤による対向電極の湿潤及び汚れ(fouling)は、電場に干渉して、標的組織への、スプレーに含まれる医薬製剤が次善の送給を生じることがあり、それゆえ、本発明による吸入器と比べて、時間が経つにつれてより多くの湿潤及び汚れが発生する従来技術では、意図したものを下回る投薬がもたらされる。
【0052】
好都合な実施形態によれば、対向電極は、環状であり、且つルーメン中へと延在するノズルの部分の長手方向軸に対して垂直に並びにそれを中心にして配置される。
【0053】
このようにして、吸入器は、スプレーを生成できるとし得、その大きな部分が、標的組織へ送給され得、吸入器をより効率的にする。
【0054】
好都合な実施形態によれば、ノズル及び/又は対向電極及び/又は対向電極アクチュエータは、別々の方法で対向電極距離を変える構成にされる。
【0055】
個別の(すなわち段階的な)調整性に起因して、事前設定された設定が吸入器に提供され、例えば製造者、一般開業医、薬剤師又は使用者が、簡単に及び少ないエラーで吸入器を調整することを可能にし、使用中、意図した組織に医薬製剤を信頼性高く送給するスプレーを提供する。ノズル又は対向電極アクチュエータ又はラチェット若しくはビード型形状の個別の位置に型形状のロックを行うこと(Form shape locks)が、個別の調整性をもたらし得る。これはまた、設定を所望の位置にわずかにロックする。
【0056】
好都合な実施形態によれば、吸入器は、さらに、対向電極に対してある位置にノズルを固定するための対向電極固定手段を含む。
【0057】
このようにして、製造者、一般開業医、薬剤師、又は使用者は、吸入器の設定を、所望の位置に設定させた後、固定して、それにより、医薬製剤の信頼性の高い送給を保証することができる。事前設定された吸入器は、例えば使用者による偶発的な操作、振動又は不適切な使用によって、不注意に変更される傾向が少ない。
【0058】
最後に、本発明は、液状医薬製剤を吸入するための吸入器を調整するための方法における、又は液状医薬製剤を吸入するための吸入器における、ノズルの使用に関し、方法は、請求項1~7のいずれか一項に記載であり、及び/又は吸入器は、請求項8~19、20又は21のいずれか一項に記載である。
【0059】
このようにして、吸入器は、市場の需要に合わせて調整され、及び/又は選択した液状医薬製剤と一緒に使用するために、安価に及び簡単に一新され得る。
【0060】
本発明を、ここで、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1b】
図1aによる実施形態の長手方向軸に沿った断面図を示す。
【
図2】
図1aによる実施形態の吸入器本体の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
例示的な実施形態は、チューブ状形状の吸入器100であり、この吸入器は、2つの解放自在に結合された部分、すなわち、本体部分周囲壁及び開口端を備える第1のシリンダー状部品101aで構成された本体部分101と、第3のシリンダー状部品102bにも解放自在に結合された第2のシリンダー状部品102a(双方共、周囲壁及び開口端を同様に備える)で構成されたマウスピース部分102とを含む。本体部分は本体部分ルーメン103を包囲し、及びマウス部分はマウス部分ルーメン104を包囲する。吸入器100は、3つのシリンダー状部品101a、102a及び102bの中心線を通って延びるその長さに沿って、長手方向軸を有する。ルーメン103及び104は空気導管を形成し、その中を通って、空気は、本体部分101の吸入器入口108を覆う空気入口蓋105にある空気入口開口部106から吸入器出口110の方へ向かって流れ得、使用者が空気の流れを吸入することを可能にする。空気入口蓋105はスロット107も含み、そのスロットを通って、電気を供給するための配線、又は液状医薬製剤を供給するためのチューブが通過し得、吸入器の動作によって多かれ少なかれ空気が吸入器100の空気導管中を通って流れる必要がある場合に、空気入口蓋105を取り除くか又はそれを異なる空気入口蓋と交換することを可能にする。空気入口蓋105の除去はまた、後述するように、吸入器100の調整手段へのアクセスを可能にする。閉鎖されている出口蓋111は、吸入器100の保管に適し得、及び使用前に取り外され得る。吸入器出口蓋111は、汚れが、空気導管に、吸入器出口110を通ってマウスピース部分102のルーメン105中へと入るのを防止する。
【0063】
本体部分101は吸入器本体112を保持する。吸入器本体112の形状もシリンダー状である。吸入器本体112の中心線は、吸入器100の長手方向軸に沿って位置合わせされる。吸入器本体112は、3個のボルト、ボルト113a、ボルト113b及びボルト113c(省略されているため図示せず)によって、それらのネジ山が本体部分101のシリンダー状壁115にあるネジ付き貫通孔のネジ山とかみ合って係合されて、本体部分101の内部に締結される。ボルト頭部114a、ボルト頭部114b及びボルト頭部114c(省略されているため図示せず)は、本体部分101の外部に位置して、ボルト113a、113b及び113cを締め付けたり又は緩めたりすることを可能にする。ボルトの長さ部分は、本体部分101のルーメン104中へと延在する。ボルト113a、113b及び113cは、それらそれぞれの遠位先端部116a、116b及び116c(後者の2つは吸入器本体112によって見えない)によって、吸入器本体112のシリンダー状壁132の外面に存在する溝131と係合され、吸入器本体112を吸入器100内で空気導管の中心に保持するようにする。そのようにして、空気は、吸入器入口108から、本体部分ルーメン103の中心に吊るされている吸入器本体112に沿って空気導管中を、その後、マウス部分ルーメン104を通過し、使用者によって、吸入器出口110を経由して吸入され得る。動作時、空気流は、霧化された医薬製剤を含み得る。吸入器本体に関するさらなる詳細が
図1bに説明されている。
【0064】
図1bは、
図1aによる実施形態の長手方向軸に沿った断面図を示す。吸入器本体112は、形状がシリンダー状の3つの部品、ノズル部品130、対向電極部品150及び放電電極部品170によって形成される。個々の吸入器本体部品130、150及び170の中心線も、長手方向軸に沿って位置合わせされる。ノズル部品130、対向電極部品150及び放電電極部品170は、吸入器の長手方向軸に沿って互いに対して可動である。
【0065】
ノズル部品130は、ノズル部品シリンダー状壁132の外表面に設けられた溝131に係合された3つのそれぞれのボルト113a、113b及び113cの遠位先端部116a、116b及び116cによって適所に保持され、前記ノズル部品130を本体部分101の中心に吊っている。ノズル部品130は、雌型ルアーロック継手135に関連付けられたノズル入口134を備えるキャピラリーノズル133を含む。雌型ルアーロック継手135を備えるノズルは、ノズル部品の中心線を通って、貫通孔に取り外し自在に載置される。雌型ルアーロック継手135及びノズル133は、保持要素136によって適所に保持される。保持要素136には貫通孔があり、そこを通して雄型ルアーロック継手137が雌型ルアーロック継手135中へと挿入される。リザーバが、雄型ルアーロック継手137に、直接又はその代わりにチューブによって、接続され得る。保持要素136にある貫通孔が、雄型ルアーロック継手136に設けられた溝138に嵌合することによって、前記継手上のスナップロックの機能を果たす。これにより、液状医薬製剤がノズル133に入って、そこを通過することを可能にする。ノズル入口134とは反対側のノズル133の他方の端部には、ノズル出口139が設けられており、そこから、液状医薬製剤は、使用者によって吸入可能なスプレー中へと霧化され得る。ノズル133は、壊れやすいノズルを保護する硬質のノズルスリーブ140によって部分的に囲まれ、ノズル出口139に近いノズル133のノズル終端セクション141は、ノズルスリーブ140によって覆われていない。
【0066】
シリンダー状形状であり且つフランジ151を備える対向電極部品150は、対向電極152及びノズルシャフト153を含む。ノズルシャフト153は、ノズルスリーブ140を保持し、及びノズル部品130に対して長手方向軸沿って対向電極部品150の摺動自在な動きを可能にする。ノズルシャフト153は、その端部にノズル用開口部154を提供し、そこを終端ノズルセクション141が通過する。ノズル部品130はまた、ノズル部品130と自由に回転自在に係合されるエンドレススクリュー142を含み、ボルト頭部143及びナット144が、エンドレススクリューウォームシャフト145を適所に保持し、エンドレススクリュー142及びウォーム146の回転を可能にする。エンドレススクリュー142は、対向電極部品150に設けられたフランジ151にあるネジ付き貫通孔155と係合される。エンドレススクリュー142の回転は、ノズル部品130に対して対向電極部品150を長手方向軸に沿って両方向に動かすことを可能にする。ナット144はまた、エンドレススクリュー142が回転するのを防止するために締められて、対向電極152に対するノズル出口139の位置、それゆえ距離を効果的にロックし得る。対向電極部品150はまた、ベース開口部161、及びマウスピースルーメン104に対面する表面を備えるベース160を示す。ベースの表面には、環状対向電極152が、長手方向軸を中心にして設けられ、その軸に沿って、ノズル133は、ベース開口部161を通ってマウスピースルーメン104中へと延在し、そのノズル出口139が前記ルーメン中へと出ている。環状である対向電極152は、幅が2mmであり、及びその内径が長手方向軸から6mmの距離に位置決めされている。ノズル出口139は、対向電極152及びベース160と一致するベース平面に対して第2の部分のルーメン中へと10mm延在するが、ルーメンから離れる方向に前記ベース平面から5mm~ルーメンの方へ向かう方向に前記ベース平面から25mmの範囲で調整可能である。好ましい範囲の調整は、ルーメンの方へ向かう方向に前記ベース平面から0~20mmの範囲であり、対向電極139の湿潤を減らす。
【0067】
放電電極部品170は、対向電極部品150を収納するための対向電極用シャフト171を含み、及び前記シャフト171によって対向電極部品150の周りに摺動自在に配置される。
【0068】
放電電極部品170は、ノズル部品130の貫通孔内で自由に回転自在であるウォームシャフトを備えていてナットで固定される第2のエンドレススクリューを使用して、ノズル部品130に対して動かされ得る。前記エンドレススクリューのウォームは、対向電極部品150のフランジ151内での自由な回転を可能にする貫通孔を通って延在する。前記ウォームは、放電電極部品170にある、かみ合うネジ穴に係合され、ノズル部品130に対して放電電極部品170を動かすことを可能にする(図示せず)。この実施形態では、ノズルに対して長手方向軸に沿った、ノズル出口139から離れる方向に0~50mmの放電電極の調整性を可能にする。別の実施形態では、放電電極部品が、同じ効果のために、対向電極部品に対して調整可能とし得ることが予測される。
【0069】
放電電極部品170は、長手方向軸に中心がある環状リングの形にある放電電極175を示し、及び複数の尖った突起176、放電部分176a、放電部分176b、放電部分176c及び放電部分176dを備え、それらの遠位端から荷電粒子が発せられ得る。放電部分176a、176b、176c及び176d(合計6個のうちの2個は図示していない)は、それらの遠位端が、対向電極175に対してマウスピースルーメン104の方へ向けられており、ノズル出口139の近くの体積部の方に向いており、そこで、スプレーが形成される。放電部分176a、176b、176c及び176dの遠位端は、吸入器100の長手方向軸から13mmの距離に、並びに対向電極152と一致するベース平面であって、第2の部分のマウスピースルーメン104から離れる側に向いたベース160の平面から5mmの距離に位置する。放電電極に含まれる遠位端は、第2のエンドレススクリューを作動させることによって、ノズル出口139に対して動かされ得る。長手方向軸の方向に沿った放電電極部品170のサイズは、対向電極部品150のサイズと比べて比較的短く、これにより、放電部分を、ベース平面の両側面においてノズル出口139に対してある範囲の距離に位置決めすることを可能にする。特定の液状医薬製剤によって火花が発生すると、ノズル出口139に対する放電電極152の距離は、火花を減らすために長くされ得る。スプレーがマウスピース部分102の内面に堆積するとき、前記距離を短くすることによって、スプレー内での粒子の放電を改善することを可能にし得、それゆえ、使用者の標的組織へ、霧化された医薬製剤を、より効率的に送給し得る。
【0070】
対向電極部品150は対向電極回路部品キャビティ180を含み、及び放電電極部品170は放電電極回路部品キャビティ181を含む。ノズル部品130は電気導管185を含み、対向電極部品150は、そのフランジ151内に電気導管186、及びその主要本体中を通る電気導管187を含み、並びに放電電極部品170はまた、電気導管188を含む。これらのキャビティ及び導管は、対向電極152を地面に接続し及び放電電極175を電力供給部に接続する電気部品を収納し得、それにより、使用中の、本体部分ルーメン103を通る空気流による前記電子部品及び配線の干渉、又は調整時の、ノズル部品130と、対向電極部品150と、放電電極部品170との間の相対運動を減らす。ノズル出口139での電位の確立は、配線又は液状医薬溶液によってノズル133を電力供給部に接続することによって、達成される。
【0071】
図2は、マウスピース部分102のルーメンからの吸入器本体112の図を示す。ノズル出口139は、見る人の側に面しており、及び吸入器100の長手方向軸に中心がある。ノズル133は、対向電極部品150のベース160にあるベース開口部161を通って突出しており、ベース開口部161は、ベース160を通るノズル133の動きを可能にし、及びそれら2つを互いに電気的に絶縁する。ベース開口部161は、その表面に組み込まれた対向電極152を含むベース160に隣接する。ベース160は、対向電極部品150にある回路部品キャビティ180の周囲壁にある溝へベース160の外縁の形がぴったり合うスナップロックによって保持される。放電電極部品170は、6個の尖った突起176を備える放電電極175を含み、機能しているときには、その放電部分176a、176b、176c、176d、176e、176fから、放電粒子が出てき得る。
図1aには図示しない放電部分176e及び放電部分176fを含む6個の突起176は、動作中にノズル133が液状医薬製剤をスプレーとして放出する体積部の方へ向かう吸入器の長手方向軸の方へ向けられている。6個の放電部分176a~176fの遠位端は、ノズル出口から等距離に位置し、及びノズル出口の周りに均一に広がっており、ノズル出口139からスプレーの対称的な放出を形成することを可能にする。放電電極175はまた、放電電極部品170にある回路部品キャビティ181の周囲壁にある溝へその外縁の形がぴったり合うスナップロックによって保持される。放電電極175は、対向電極部品150の外壁から少し離れた位置にあり、放電電極175を対向電極部品150から電気的に絶縁する間隙190を生み出す。
【国際調査報告】