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特表2023-529574第1の金属部品及び有機マトリックス複合材料製の第2の部品を備える部品を組み立てるための構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】第1の金属部品及び有機マトリックス複合材料製の第2の部品を備える部品を組み立てるための構造
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/00 20210101AFI20230704BHJP
   B29C 65/64 20060101ALI20230704BHJP
   F02K 9/62 20060101ALI20230704BHJP
   F02K 9/34 20060101ALI20230704BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230704BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20230704BHJP
【FI】
B22F10/00
B29C65/64
F02K9/62
F02K9/34
B33Y80/00
B22F10/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571337
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 FR2021050812
(87)【国際公開番号】W WO2021234245
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2005274
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516257464
【氏名又は名称】アリアーヌグループ ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】アルノー フォンテーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アルバン デュ テルトル
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ ギシャール
【テーマコード(参考)】
4F211
4K018
【Fターム(参考)】
4F211AD03
4F211AD19
4F211AD24
4F211AG03
4F211AG07
4F211AH31
4F211TA06
4F211TC11
4F211TD11
4F211TN72
4F211TN78
4K018AA03
4K018AA08
4K018AA24
4K018BA02
4K018BA13
4K018BA20
4K018KA07
(57)【要約】
本発明は、第1の金属部品12及び有機マトリックス複合材料製の第2の部品14を備える部品であって、第1の部品12は第1の接続部12Aを有し、第2の部品14が第2の接続部14Aを有し、前記第2の接続部14Aは、少なくとも1つの止まり穴14B1、14B2を有し、前記第2の接続部14Aは、第1の接続部12Aと金属締結要素16との間に全体的又は部分的に挟持され、締結要素16は、第1の部品12の第1の接続部12A以外の部分12Dで締結され、かつ、少なくとも1つの止まり穴14B1、14B2の中に延びており、第1の金属部品12と第2の部品14は互いに締結されている、部品に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属部品(12)と有機マトリックス複合材料製の第2の部品(14)とを備える部品において、
前記第1の金属部品(12)は第1の接続部(12A)を有し、前記第2の部品(14)は第2の接続部(14A)を有し、前記第2の接続部(14A)は、少なくとも1つの止まり穴(14B1、14B2)を有し、前記第2の接続部(14A)は、前記第1の接続部(12A)と金属製の締結要素(16)との間に全体的又は部分的に挟持され、前記締結要素(16)は、前記第1の金属部品(12)の前記第1の接続部(12A)以外の部分(12D)で締結され、かつ、前記少なくとも1つの止まり穴(14B1、14B2)の中に延びており、前記第1の金属部品(12)と前記第2の部品(14)は互いに締結されている、部品。
【請求項2】
前記部品は、少なくとも2列(R1、R2)の止まり穴(14B1)を有し、各列(R1、R2)の前記止まり穴(14B1)が、隣接する前記列(R1、R2)の前記止まり穴(14B1)に対して千鳥状に配置されている、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記部品は、第1の深さ(P1)を有する少なくとも1つの第1の止まり穴(14B1)と、第2の深さ(P2)を有する少なくとも1つの第2の止まり穴(14B2)とを有し、前記第2の深さ(P2)が前記第1の深さ(P1)よりも小さい、請求項1又は2に記載の部品。
【請求項4】
前記部品は、複数の前記第1の止まり穴(14B1)を有し、前記第1の止まり穴(14B1)は全てが同じ第1の最大直径(D1)を有し、隣接する前記第1の止まり穴(14B1)の中心(C1)は、互いから前記第1の最大直径(D1)の少なくとも2倍の距離にある、請求項3に記載の部品。
【請求項5】
前記部品は、前記第1の最大直径(D1)よりも小さい、全てが同じ第2の最大直径(D2)を有する、複数の第2の止まり穴(14B2)を有し、前記第1の深さ(P1)は、前記第2の深さ(P2)よりも少なくとも2倍大きく、例えば3倍大きく、前記第2の止まり穴(14B2)は、複数の前記第1の止まり穴(14B1)の間に配置されている、請求項3又は4に記載の部品。
【請求項6】
複数の前記第1の止まり穴(14B1)は、複数の列(R1、R2)に配置されておりかつ千鳥状に配置されており、前記第1の止まり穴(14B1)は、全てが同じ第1の最大直径(D1)を有し、2つの隣接する列(R1、R2)の前記第1の止まり穴(14B1)の間の間隔(EE)は、2つの第1の最大直径(D1)以下であり、前記間隔(EE)は、前記第1の止まり穴(14B1)の中心(C1)が配置されている各隣接する列(R1、R2)の線(LI)の間で測定されている、請求項2及び請求項3~5のいずれか一項に記載の部品。
【請求項7】
前記第1の接続部(12A)及び前記第2の接続部(14A)は、それぞれ、第1の方向(DA)及び第2の方向(DB)に延びている板を形成し、前記第1の方向(DA)及び前記第2の方向(DB)に直交する第3の方向(DC)における厚さを有し、前記第1の接続部(12A)及び前記第2の接続部(14A)は、前記第1の方向(DA)に並んで配置され、前記少なくとも1つの止まり穴(14B1)は前記第3の方向(DC)に延びており、前記締結要素(16)は、前記第1の金属部品(12)の前記第1の接続部(12A)以外の部分(12D)のみにわたって延びている、第1の締結部(16A)であって、前記第1の方向(DA)で測定された幅(L)を有する第1の締結部(16A)と、前記第2の接続部(14A)のみにわたって延びている、第2の締結部(16B)であって、前記第2の締結部(16B)は、前記第3の方向(DC)で測定された厚さを有し、前記幅(L)の最小値が前記厚さの最小値(Emin)以上でありかつ前記厚さの前記最小値(Emin)の3倍以下である、第2の締結部(16B)とを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の部品。
【請求項8】
前記締結要素(16)が、冷ガスによって混入された金属粉末の噴霧堆積による付加製造によって形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の部品。
【請求項9】
前記部品は、前記締結要素(16)と前記第2の接続部(14A)との間に配置される保護層(18)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の部品。
【請求項10】
前記部品は、ロケットエンジンの燃焼室ジャケット(10)を形成している、請求項1~9のいずれか一項に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、共に組み立てられる、金属部品と、有機マトリックス複合材料製の部品とを備える部品に関する。例えば、このような部品は、ロケットエンジンの燃焼室ジャケットとしうるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
共に組み立てられる、金属部品と有機マトリックス複合材料製の部品とを備える部品が知られている。しかしながら、これら2つの部品の組立ては、非常に多くの場合、改善可能であり、例えば、ロケットエンジンの燃焼室ジャケットなどの構成要素に常に適しているとは限らない。したがって、この点において必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態は、第1の金属部品及び有機マトリックス複合材料製の第2の部品を備える部品において、第1の金属部品は第1の接続部を有し、第2の部品は第2の接続部を有し、第2の接続部は、少なくとも1つの止まり穴を有し、第2の接続部は、第1の接続部と金属製の締結要素との間に全体的又は部分的に挟持され、締結要素は、第1の部品の第1の接続部以外の部分に締結され、かつ、少なくとも1つの止まり穴の中に延びており、それによって、第1の金属部品と第2の部品は互いに締結されている、部品に関する。
【0004】
1つの部品の接続部は、他の部品と接触しておりかつ直接的に協働する部分であることが理解される。従って、他の部品と協働しない部分、例えば、重ね合わない又は重なり合わない部分は、当該他の部品の接続部の一部ではない。
【0005】
また、第2の接続部は、1つ又は複数の止まり穴を有することも理解されたい。以下において、特に断らない限り、「止まり穴(blind hole)」又は「穴(hole)」とは、「少なくとも1つの止まり穴(at least one blind hole)」を意味するものとする。
【0006】
例えば、締結要素は、必須ではないが、第1の部品のそれと同一の等級の金属で作ることができる。
【0007】
締結要素は、第2の接続部の少なくとも一部を包囲することによって第1の部品に締結される。したがって、第2の接続部は、第1の接続部と締結要素との間に固定される。
【0008】
締結要素は、第1の部品の第1の接続部以外の部分にわたって直接的に締結される。さらに、締結要素は、止まり穴に係合してこれを全体的に又は部分的に満たす突出部を有する。この突出部は、第2の接続部を固定保持するためのラグを形成する。このように、第2の接続部は、第1の接続部と締結要素との間に挟持されており、第1の部品にそれ自体が直接的に締結される締結要素の突出部によってこの挟持された部分の中で締結される。
【0009】
従来技術から知られている部品と比較して、上記の組立構造により、締結要素上の力を吸収するための領域を増やすことができ、したがって、受ける機械的力をよりよく分散させることができる。さらに、第2の接続部を全体的又は部分的に挟持することによって、第1の接続部と締結要素との間の第2の接続部の挟持された部分は、特に屈曲に対して完全に固定される。これは、従来技術から知られている部品と比較して、本開示による組立構造を補剛し、機械的に補強するという効果を有する。特に、曲げ変形を低減することによって、締結要素によって受ける引張り力は低減される。
【0010】
例えば、これらの部品は平坦又は湾曲した板とすることができ、締結部は平坦又は湾曲したフランジを形成する。
【0011】
例えば、前記第1の接続部及び前記第2の接続部は、それぞれ、第1の方向及び第2の方向に延びている板であって、前記第1の方向及び第2の方向に直交する第3の方向において厚さを有する板を形成し、第1の部品と第2の部品が前記第1の方向に並んで配置され、少なくとも1つの止まり穴は前記第3の方向に延びており、前記第1の接続部及び前記第2の接続部は、第1の方向及び第2の方向に互いに重なり合い、締結要素及び前記第1の接続部は、前記第3の方向における前記第2の接続部の両側にそれぞれ配置されている。第1の方向及び/又は第2の方向は、例えば、直交座標系、円筒座標系、又は球面座標系において定義される方向と同様又は同等の方法で、直線状又は曲線状とすることができる。
【0012】
特定の実施形態において、前記少なくとも1つの止まり穴は、入口と、底部と、前記入口と前記底部との間に延びている側壁と、幾何学的軸線とを有し、前記少なくとも1つの止まり穴の前記側壁は、前記入口から前記底部に向かって収束するように、前記幾何学的軸線に対して傾いている。
【0013】
言い換えると、止まり穴の側壁は、止まり穴の幾何学的軸線に対して傾斜しておりかつ締結要素とは反対にあるように方向付けられている、少なくとも1つの部分を有する。これにより、締結要素と第2の接続部との間の協働面を増すことができ、これにより力がより良好に分散される。さらに、このような構成は、締結要素が冷間付加金属堆積によって形成される場合に特に好適である。例えば、上記の止まり穴は、入口から底部に向かって収束する円錐形又は円錐台形の穴を形成する。
【0014】
特定の実施形態において、前記部品は、少なくとも2列の止まり穴を有し、各列の止まり穴は、隣接する列の止まり穴に対して千鳥状に配置されている。
【0015】
第1の列の止まり穴は、同一の列内の止まり穴の整列の方向において、第1の列に隣接する第2の列の止まり穴に対してオフセットされていることが理解される。言い換えると、第1の列の止まり穴は、同一の列内の止まり穴の整列の方向に垂直な方向で見て、第1の列に隣接する第2の列の2つの穴の間の間隔とは反対側にある。
【0016】
このような千鳥状の配置とすることにより、特に剪断力を吸収する場合に、第2の接続部の機械的及び構造的完全性を保持するように、止まり穴同士の間の最小間隔を保証しつつ、単位表面積当たりの止まり穴の数を増加させることが可能となる。
【0017】
特定の実施例では、少なくとも1つの第1の止まり穴は第1の深さを有し、少なくとも1つの第2の止まり穴は第1の深さよりも小さい第2の深さを有する。
【0018】
第2の接続部は、1つ又は複数の第1の止まり穴と、1つ又は複数の第2の止まり穴と、選択的に、1つ又は複数の第3の止まり穴や第4の止まり穴などとを有することができ、第3の止まり穴や第4の止まり穴などは、それぞれ、互いに異なりかつ第1の深さ及び第2の深さとは異なる、第3の深さや第4の深さなどを有することが理解される。以下において、特に断りのない限り、「第1の、第2の等の穴(first/second/etc. hole)」とは、「少なくとも1つの第1の、第2の等の止まり穴(at least one first/second/etc. blind hole)」を意味する。
【0019】
この深さは、止まり穴の幾何学的軸線に沿って延びる、又は、例として上述した第3の方向に延びることが理解される。
【0020】
異なる深さを有する止まり穴が存在することにより、これらの止まり穴を異なる主要機能のために構成することが可能となる。例えば、より深い第1の止まり穴は、主に第2の接続部と締結要素との間の剪断力を吸収するように構成され、より浅い第2の止まり穴は、締結要素と第2の接続部との間の密着性を保証するように主に構成される。
【0021】
特定の実施形態において、前記部品は、複数の第1の止まり穴を有しており、前記第1の止まり穴は、全てが同じ第1の最大直径を有しており、隣接する第1の止まり穴の中心は、少なくとも第1の最大直径の2倍だけ互いに離れている。
【0022】
このような分散により、特に剪断力の吸収中に、第2の接続部の機械的及び構造的完全性を保証する。
【0023】
特定の実施形態において、前記部品は、前記第1の最大直径よりも小さい、全てが同じ第2の最大直径を有する複数の第2の止まり穴を有し、前記第1の深さは、前記第2の深さよりも少なくとも2倍大きく、例えば3倍大きく、前記第2の止まり穴は、複数の前記第1の止まり穴の間に配置されている。
【0024】
最大直径は、止まり穴の幾何学的軸線に沿った穴の最大直径である。例えば、厳密に円柱形状を有する穴の場合、最大直径がこの一定直径と等しくなるように、直径が穴の幾何学的軸線に沿って一定である。別の例によれば、底部に向かって収束する円錐形又は円錐形台の穴の場合、穴の幾何学的軸線に沿った最大直径は、穴の入口における直径である。
【0025】
剪断力を吸収する主な機能を有していない第2の穴は、特に剪断力の吸収中に、第2の接続部の機械的及び構造的完全性に対する何らのリスクなしに、1つ又は複数の第2の穴を2つの隣接する第1の穴の間に配置することができる。これにより、さらに、第2の接続部と締結要素との密着性を向上させることができる。
【0026】
特定の実施形態において、複数の前記第1の止まり穴は、複数の列で配置されておりかつ千鳥状に配置されており、前記第1の止まり穴は、全てが同じ第1の最大直径を有しており、2つの隣接する列の前記第1の止まり穴の間の間隔は、2つの第1の最大直径以下であり、前記間隔は、前記第1の止まり穴の中心が配置されている各隣接する列の線の間で測定されている。
【0027】
このような分散により、特に剪断力の吸収中に、第2の接続部の機械的及び構造的完全性を保証する。例えば、このような構成では、隣接する第1の止まり穴の中心は、互いから第1の最大直径の少なくとも2倍の距離だけ離すことができる。
【0028】
特定の実施形態において、前記第1の接続部及び前記第2の接続部は、それぞれ、第1の方向及び第2の方向に延びている板を形成し、前記第1の方向及び第2の方向に垂直な第3の方向における厚さを有し、前記第1の接続部及び前記第2の接続部は、前記第1の方向に並んで配置され、少なくとも1つの止まり穴は前記第3の方向に延びており、締結要素は、前記第1の部品の前記第1の接続部以外の部分のみに延びている第1の締結部であって、前記第1の方向で測定された幅を有する第1の締結部と、前記第2の接続部のみにわたって延びている第2の締結部であって、前記第2の締結部は、前記第3の方向で測定された厚さを有し、前記幅の最小値は、前記厚さの最小値以上であり、前記厚さの最小値の3倍以下である、第2の締結部とを有する。
【0029】
このような締結要素の構成により、特に様々な力を吸収する間、その機械的及び構造的強度を保証する。
【0030】
特定の実施形態において、第1の接続部は、第2の接続部と協働するように構成された肩部を備える。
【0031】
肩部は、第1の部品と第2の部品との間においてさらなる協働面を提供し、組立の堅実性を強化する。例えば、第1の接続部は、肩部を形成する段差を形成する。例えば、肩部は第2の方向及び第3の方向に延びている。
【0032】
特定の実施形態において、締結要素は、冷ガス噴霧(CGS)としても知られる、冷ガスによって混入された金属粉末の噴霧堆積による付加製造によって形成される。
【0033】
冷ガスによって混入された金属粉末の噴霧堆積による付加製造は、金属がその溶融温度よりも低い温度で堆積される付加製造の一種であると理解される。このようなタイプの堆積は、堆積中の金属の温度が第2の部品の有機マトリックス複合材料の劣化温度未満に留まることを保証するので、部品に特に適している。
【0034】
このような締結要素は、特に製造が容易であり、従来技術の溶接又はボルト締めの段階を不要にすることを可能にし、従って、比較的に質量を減らすことができる。
【0035】
特定の実施形態において、保護層が、締結要素と第2の接続部との間に配置される。
【0036】
このような保護層は、第2の接続部を保護することができ、特に、例えば、冷ガスによって混入された金属粉末の噴霧堆積を介した付加製造によって締結要素が形成される場合には、穴の側壁を保護することができる。これにより、第2の接続部の機械的完全性を保証することができ、したがって、組立の機械的強度を保証することができる。例えば、保護層は、第2の部品と締結要素との間の界面全体にわたって延びうる。
【0037】
特定の実施形態において、上記部品は、回転対称性を有する全体的な形状を有する。
【0038】
本開示による組立構造は、環状部品に特に適している。
【0039】
特定の実施形態では、上記部品はロケットエンジンの燃焼室ジャケットを形成する。
【0040】
本開示による組立構造は、ロケットエンジンの燃焼室ジャケットに特によく適している。
【0041】
また、一実施形態は、本開示に記載される実施形態のいずれかによる部品を備えるロケットエンジン、特に、本開示に記載される実施形態のいずれかによる燃焼室ジャケットに関する。
【0042】
本開示の目的及びその利点は、非限定的な例として提示される様々な実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。この説明では、図の添付内容を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、ロケットエンジンを示す。
図2図2は、図1のロケットエンジンの燃焼室のジャケットを示す。
図3図3は、燃焼室のジャケットの金属部品と有機マトリックス複合材料製の部品の間の組立構造を、図2の断面IIIで示したものである。
図4図4は、第2の接続部の止まり穴の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示を明瞭にするために、図1図4の図は非常に概略的なものであることに留意されたい。図1は、噴出口20に開口した燃焼室ジャケット10を備えるロケットエンジン100を示す。図2は、第1の金属部品12と、有機マトリックス複合材料製の第2の部品14と、第1の金属部品12を第2の部品14に締結するための締結要素16とを備えている、燃焼室ジャケット10を示している。この例では、環状フランジを形成する締結要素16がただ1つ存在する。別の例によれば、例えば環状フランジ部分を各締結要素が形成する、複数の別個の締結要素16が存在しうる。この例において、燃焼室ジャケット10は、軸線Xを中心とした回転対称性を有する全体的な形状を有する部品であり、第1の部品12及び第2の部品14は、それぞれ、略環状板の形状を有する。一般に、この例において、軸線方向は、部品10の幾何学的軸線Xの方向に対応し、半径方向Rは、軸線Xに直交する方向である。方位角又は周方向Cは、軸線方向Xの周りのリングを記載する方向に対応する。軸線方向、半径方向、方位角の3つの方向は、それぞれ、円筒座標系の高さ、半径、角度で定義される方向に対応する。
【0045】
第1の部品12及び第2の部品14は、第1の方向DA(本例では、第1の方向は軸線方向Xに対して傾斜している)及び第2の方向DB(本例では、第2の方向DBは周方向Cに対して平行である)に延びている板を形成し、第1の方向DA及び第2の方向DBに対して直角な第3の方向DCにおける厚さを有する。この例では、DA、DB及びDCの基準座標系は、X、C、Rの基準座標系における局所的基準座標系を形成する。
【0046】
この例において、第1の部品12は、金属合金、例えばニッケル基合金製であり、第2の部品14は、例えば熱可塑性又は熱硬化性のタイプの有機マトリックス複合材料製であり、締結要素16は、鋼又はニッケル基の金属合金製である。他の材料も可能である。
【0047】
図3は、締結要素16を用いた第1の部品12と第2の部品14との組立構造の図2の平面IIIにおける断面図を示す。図4は、第2の部品14の第2の接続部14Aの分解図を示す。
【0048】
第1の部品12は、肩部12Cを有する第1の接続部12Aを備える。肩部12Cは、第1の方向DAに対して横断方向に延びている。つまり、本例では、肩部12Cは、第2の方向DB及び第3の方向DCに延びている。このように、第1の接続部12Aは、第2の部品14の後述する第2の接続部14Aを受ける段差を形成しており、第2の部品14は、肩部12Cと軸線方向X(かつ第1の方向DA)において当接するように協働する。第1の部品12と第2の部品14は、第1の方向DAにおいて並んで配置されている。
【0049】
第2の部品14は、複数の止まり穴、この例ではいくつかの第1の止まり穴14B1といくつかの第2の止まり穴14B2とを有する(図4も参照)を有する第2の接続部14Aを有する。
【0050】
穴14B1及び14B2は、それぞれ、第3の方向DCに延びる幾何学的軸線Atを有し、それぞれ、側壁14B11、14B21を有する。
【0051】
この例において、穴14B1及び14B2は円錐形状であり、側壁14B11、14B21は、軸線Atに対して一様に傾斜しており、締結要素16(又は穴の入口)から第1の接続部12A(又は穴の底部)に向かって収束する。当然のことながら、他のどのような形態の止まり穴も可能である。この例において、第1の穴14B1は全て同一であり、全て、特に、同じ最大の第1の直径D1及び同じ第1の深さP1を有する。同様に、この例では、第2の穴14B2は全て同一であり、全て、特に、同じ最大の第2の直径D2及び同じ第2の深さP2を有する。第1の深さP1は第2の深さP2よりも大きく、この例では第1の深さP1は第2の深さP2の3倍に等しい(すなわちP1=3×P2)。第1の直径D1は第2の直径D2よりも大きく、この例では第1の直径D1は第2の直径D2の3倍に等しい(すなわちD1=3×D2)。
【0052】
図4から分かるように、隣接する第1の穴14B1の中心C1は、最小距離Dだけ離れており、この例では第1の穴14B1の直径D1の2倍よりも大きく、例えば第1の穴14B1の直径D1の4倍に等しい。
【0053】
複数の第1の穴14B1は、複数の列で配置されている。この例では、第1の穴14B1の2つの隣接する列R1及びR2があり、各列R1及びR2の内部で、第1の穴14B1の中心C1が線LI上に整列している。一方の列の第1の穴14B1は、他方の列の第1の穴14B1に対して千鳥状に配置されている。2つの列R1と列R2の間の間隔EEは、直径D1の2倍未満であり、この例では、間隔EEは、直径D1の1.5倍に等しい(すなわち、EE=1.5×D1)。
【0054】
第2の穴14B2は、第1の穴14B1同士の間に配置されている。この例では、同じ列内の複数の第1の穴14B1の間に、及び、第1の穴14B1の列R1、R2の間に、複数の第2の穴14B2が存在する。
【0055】
第2の接続部14Bには保護層18が設けられている。より詳細には、この実施例では、保護層18は、締結要素16との第2の部品14の界面全体にわたって延びている。換言すれば、この例では、保護層18は、穴14B1及び14B2の側壁14B11、14B21にわたって延びているだけでなく、締結要素16に対向する第2の部品14の壁にわたって延びている。
【0056】
例えば、保護層18は、金属シートによって、又は、金属アークワイヤによる付加製造金属堆積によって形成される。
【0057】
この例では、保護層18に用いられる金属は銅であるが、他のいかなる金属材料も可能である。
【0058】
この例では、締結要素16は、冷ガスによって混入された金属粉末の噴霧堆積による付加製造によって形成される。保護層18は、締結要素16の形成中に第2の接続部14Bを、特に金属粉末の噴霧から生じ得る磨耗から保護する。この例において、締結要素16は、第1の部品12と共に、第2の接続部14Aの全体を、第3の方向DCにおいて包囲する。締結要素16は、止まり穴14B1及び14B2の中に延びている。締結要素16は、第1の接続部12Aの別個の部分、この例では第1の接続部12Aに隣接する部分12Dにわたって第1の部品12に締結される。
【0059】
締結要素16は、部分12Dのみにわたって延びている第1の締結部16Aを有する。第1の締結部16Aは、第1の方向DAで測定された幅Lを有している。この例において、第1の締結部16Aの幅Lは、第3の方向DCにおいて一定である。締結要素16は、第2の接続部14Aのみにわたって延びている第2の締結部16Bを有する。第2の締結部16Bは、最小の厚さEmin(すなわち、第2の締結部16Bの厚さの最小値)を有し、その厚さは第3の方向DCで測定される。この例では、幅Lの最小値は最小厚さEminより大きく、最小厚さEminの3倍未満である。この例では、幅Lの最小値は、最小厚さEminの2倍に等しい(すなわち、L=2×Emin)。
【0060】
締結要素16は、第2の接続部14Aを固定し、組立を補剛することができ、これにより、特に、組立の(半径方向R、周方向Cにおける)曲げ変形Fを低減する。この例では、周方向Cの全域にわたって延びる環状のフランジを形成する締結要素16によって、組立の軸線方向Xの周りの曲げ変形の低減を向上させることができる。したがって、これらのいくつかの締結点は、力を受けにくく、機械的強度が強化される。
【0061】
以上、具体的な実施例を挙げて本発明を説明してきたが、特許請求の技術的範囲に規定する発明の一般的な技術的範囲を超えることなく、これらの例に変化や変更を加えることができることは明らかである。特に、図示又は言及される異なる実施形態の個々の特徴は、さらなる実施形態で組み合わせることができる。したがって、明細書及び図面は、限定するものではなく、図示するものとみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】