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特表2023-529610自家脂肪移植片を増強するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】自家脂肪移植片を増強するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/35 20150101AFI20230704BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 41/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230704BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230704BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230704BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
A61K35/35
A61P9/14
A61P17/02
A61P19/04
A61P41/00
A61K9/08
A61K9/02
A61K47/42
C12N5/10 ZNA
C12N5/071
C07K14/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574163
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021035823
(87)【国際公開番号】W WO2021247952
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/035,173
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ ステファン
(72)【発明者】
【氏名】チルコティ アシュトッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クリッツマン ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ホレンベック スコット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA11
4C076AA36
4C076BB11
4C076BB32
4C076CC50
4C076EE41
4C076FF32
4C076FF67
4C076GG11
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA05
4C087MA16
4C087MA27
4C087MA34
4C087MA66
4C087MA67
4C087NA05
4C087NA06
4C087ZA44
4C087ZA96
4C087ZC80
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
自家脂肪組織移植のための組成物および方法が本明細書に記載される。1つの実施形態において、組成物は、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)または「フラクトマー」、および対象由来の脂肪組織を含む。1つの態様において、フラクトマーは、[(GXGVP)n-α-ヘリックス]mの一般構造を有する(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり得、α-ヘリックスは、約5~50個のアラニン残基を有する任意のポリアラニンベースのα-ヘリックスである)。別の態様において、フラクトマーは、構造[(GXGVP)n-GX1(A)251mを有する(式中、XはAまたはVであり;X1はKまたはDであり;nは10~20の整数であり;mは4~8の整数である)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー);および
脂肪組織
を含む組織マトリックス組成物。
【請求項2】
フラクトマーは、
複数の無秩序ドメイン;および
複数の構造化ドメイン
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
無秩序ドメインは、複数の(GXGVP)n(配列番号1)のアミノ酸配列を含み(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり、nは1よりも大きいまたは1に等しい整数である);
構造化ドメインはポリアラニンドメインを含む、
請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
無秩序ドメインは、複数の(GXGVP)n(配列番号2)のアミノ酸配列を含む(式中、XはVal(配列番号3)もしくはAla(配列番号4)、またはAlaとValとの混合物であり、nは1~50の整数である)、
請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
Xは、10:1~1:10(Ala:Val)の比のAlaおよびValの交互反復である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
Xは、1:1(配列番号5)または1:4(配列番号6)の比のAlaおよびValの交互反復である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ポリアラニンドメインは(Ala)mを含む(式中、mは5~50の整数である)、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
ポリアラニンドメインは、
(A)25 (配列番号7);
K(A)25K (配列番号8);
D(A)25K (配列番号9);
GD(A25)K (配列番号10);または
GK(A25)K (配列番号11)
のうちの1種または複数を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
ポリペプチドは、
[(GXGVP)n-GX1(A)251m
を含む(式中、XはAまたはVであり;X1はKまたはDであり;nは10~20の整数であり;mは4~8の整数である)([(配列番号2)n-(配列番号10または11)]m)、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
ポリペプチドは、
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]6-GWP (配列番号12);
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]4-GWP (配列番号13);
M[(GVGVP)15-GK(A25)K]6-GWP (配列番号14);
M[(GVGVP)15-GK(A25)K]4-GWP (配列番号15);
M[(G[A1:V1]GVP)16-GD(A25)K]6-GWP (配列番号16);
M[(G[A1:V1]GVP)16-GD(A25)K]4-GWP (配列番号17);
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]6-GWP (配列番号18);または
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]4-GWP (配列番号19)
のうちの1種または複数を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
ポリペプチドは、
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号12);または
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号18)
うちの1種または複数を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項12】
フラクトマーは、加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
冷却の転移温度(Tt-冷却)は濃度非依存的である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)は約10℃~約45℃に及ぶ、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
フラクトマーは、Tt-加熱より上で固体凝集体を形成する、請求項12~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
固体凝集体は、Tt-冷却より下に冷却された場合に再可溶化する、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
固体凝集体は安定な3次元マトリックスである、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
固体凝集体は複数の微小孔を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
複数の微小孔は、サイズが約1μm~約150μmに及ぶ、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
約200μM~約2mMのフラクトマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
脂肪組織は吸引脂肪組織を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
約10容積%~約90容積%の範囲の吸引脂肪組織を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
約25容積%~約75容積%の範囲の吸引脂肪組織を含む、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
約50容積%の吸引脂肪組織を含む、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
約1:9~約9:1に及ぶ比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項26】
約1:3~約3:1に及ぶ比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
約1:1の比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
成形可能な液体または半固体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項29】
注射可能または埋め込み可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
2または3次元の形状、エリア、または容積部に成形可能または成型可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項31】
フラクトマーは、細胞浸潤および脂肪組織の血管新生を可能にする、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
自家脂肪移植片が対象において増強されるように、請求項1に記載の組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む、対象において自家脂肪移植片を増強する方法。
【請求項33】
組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)の治療有効量および脂肪組織の治療有効量を対象に共投与する工程を含む、対象において自家脂肪移植片を増強する方法。
【請求項34】
脂肪組織は吸引脂肪組織を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
フラクトマーおよび脂肪組織は同時にまたは逐次的に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
フラクトマーおよび脂肪組織は逐次的に投与され、フラクトマーは脂肪組織の投与の前に投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
フラクトマーおよび脂肪組織は逐次的に投与され、脂肪組織はフラクトマーの投与の前に投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
フラクトマーおよび脂肪組織は、インビトロで組み合わされ、2または3次元の形状、エリア、または容積部に成形されまたは成型され、対象においてインサイチューで埋め込まれる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
フラクトマーおよび脂肪組織は、投与の前に、成形可能な液体、半固体、または成型された半固体であり、投与の後に、固体凝集体を形成する、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
フラクトマーおよび脂肪組織は、フラクトマーのTt-加熱より下で対象に共投与され、フラクトマーおよび脂肪組織は、対象の体温への曝露後に固体を形成する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
フラクトマーは、細胞浸潤および脂肪組織の血管新生を可能にする、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
(a)対象から脂肪組織を得る工程;および
(b)組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)と工程(a)の脂肪組織とをフラクトマーのTt-加熱より下で組み合わせて混合物を形成する工程
を含む、自家脂肪移植片組成物を調製するための方法。
【請求項43】
(c)混合物を形状、エリア、または容積部に成形する工程
をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項44】
(d)注射または埋め込みによって対象に混合物を共投与する工程
をさらに含む、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
混合物は、フラクトマーのTt-加熱より上の温度で固体凝集体を形成する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)と、組み合わせのための容器、特異的な容積寸法のための型、または脂肪組織吸引および/もしくは投与のための手段のうちの1種または複数とを含むキット。
【請求項47】
それを必要とする対象における自家脂肪移植のための、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)の治療有効量および脂肪組織の治療有効量の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月5日に出願された米国仮特許出願第63/035,173号に対する優先権を主張するものであり、それは本明細書における参照によりその全体として組み入れられる。
連邦支援による研究
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号1R41CA244110-01A1の下で政府援助により行われた。政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
配列表への言及
本出願は、米国特許規則1.821(c)に従って、コンピューター可読形式の配列表とともに出願される。EFSによって提出されるテキストファイル「028193-9366-WO01_sequence_listing_2-JUN-2021_ST25.txt」は、2021年6月2日に作成され、23種の配列を含有し、37.4キロバイトのファイルサイズを有し、参照によりその全体として本明細書によって組み入れられる。
【0002】
自家脂肪組織移植のための組成物および方法が本明細書に記載される。1つの実施形態において、組成物は、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー(Fractomer))または「フラクトマー」、および対象由来の脂肪組織を含む。1つの態様において、フラクトマーは、[(GXGVP)n-α-ヘリックス]mの一般構造を有する(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり得、α-ヘリックスは、約5~50個のアラニン残基を有する任意のポリアラニンベースのα-ヘリックスである)。別の態様において、フラクトマーは、構造[(GXGVP)n-GX1(A)251mを有する(式中、XはAまたはVであり;X1はKまたはDであり;nは10~20の整数であり;mは4~8の整数である)。
【背景技術】
【0003】
自家脂肪移植は、再建形成手術を受ける毎年600万人近くの米国人において、輪郭の不規則および容積欠損を治療するための貴重な選択肢である。それらの永続性および固有の生体適合性のために好まれるものの、脂肪移植片、とりわけ、乳房切除後の患者において使用されるもの等の大容積の移植片は、収集される組織の不十分な使用可能容積に起因して、複数回の手術を日常的に要する。それゆえ、組織移植片に関する新規の革新の必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載される1つの実施形態は、組み換え部分的秩序(partially ordered)ポリペプチド(フラクトマー);および脂肪組織、を含む組織マトリックス組成物である。1つの態様において、フラクトマーは、複数の無秩序(disordered)ドメイン;および複数の構造化(structured)ドメインを含む。別の態様において、無秩序ドメインは、複数の(GXGVP)n(配列番号1)のアミノ酸配列を含み(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり、nは1よりも大きいまたは1に等しい整数である);構造化ドメインはポリアラニンドメインを含む。別の態様において、無秩序ドメインは、複数の(GXGVP)n(配列番号2)のアミノ酸配列を含む(式中、XはVal(配列番号3)もしくはAla(配列番号4)、またはAlaとValとの混合物であり、nは1~50の整数である)。別の態様において、Xは、10:1~1:10(Ala:Val)の比のAlaおよびValの交互反復である。別の態様において、Xは、1:1(配列番号5)または1:4(配列番号6)の比のAlaおよびValの交互反復である。別の態様において、ポリアラニンドメインは(Ala)mを含む(式中、mは5~50の整数である)。別の態様において、ポリアラニンドメインは、(A)25(配列番号7);K(A)25K(配列番号8);D(A)25K(配列番号9);GD(A25)K(配列番号10);またはGK(A25)K(配列番号11)のうちの1種または複数を含む。別の態様において、ポリペプチドは[(GXGVP)n-GX1(A)251mを含む(式中、XはAまたはVであり;X1はKまたはDであり;nは10~20の整数であり;mは4~8の整数である)([(配列番号2)n-(配列番号10または11)]m)。別の態様において、ポリペプチドは、M[(GVGVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号12);M[(GVGVP)15-GD(A25)K]4-GWP(配列番号13);M[(GVGVP)15-GK(A25)K]6-GWP(配列番号14);M[(GVGVP)15-GK(A25)K]4-GWP(配列番号15);M[(G[A1:V1]GVP)16-GD(A25)K]6-GWP(配列番号16);M[(G[A1:V1]GVP)16-GD(A25)K]4-GWP(配列番号17);M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号18);またはM[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]4-GWP(配列番号19)のうちの1種または複数を含む。別の態様において、ポリペプチドは、M[(GVGVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号12);またはM[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号18)うちの1種または複数を含む。別の態様において、フラクトマーは、加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)を有する。別の態様において、冷却の転移温度(Tt-冷却)は濃度非依存的である。別の態様において、加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)は約10℃~約45℃に及ぶ。別の態様において、フラクトマーは、Tt-加熱より上で固体凝集体を形成する。別の態様において、固体凝集体は、Tt-冷却より下に冷却された場合に再可溶化する。別の態様において、固体凝集体は安定な3次元マトリックスである。別の態様において、固体凝集体は複数の微小孔を含む。別の態様において、複数の微小孔は、サイズが約1μm~約150μmに及ぶ。約200μM~約2mMのフラクトマーを含む、項目1の組成物。別の態様において、脂肪組織は吸引脂肪組織(lipoaspirate)を含む。別の態様において、組成物は、約10容積%~約90容積%の範囲の吸引脂肪組織を含む。別の態様において、組成物は、約25容積%~約75容積%の範囲の吸引脂肪組織を含む。別の態様において、組成物は、約50容積%の吸引脂肪組織を含む。別の態様において、組成物は、約1:9~約9:1に及ぶ比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む。別の態様において、組成物は、約1:3~約3:1に及ぶ比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む。別の態様において、組成物は、約1:1の比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む。別の態様において、組成物は、成形可能な液体または半固体である。別の態様において、組成物は、注射可能または埋め込み可能である。別の態様において、組成物は、2または3次元の形状、エリア、または容積部に成形可能または成型可能である。別の態様において、フラクトマーは、細胞浸潤および脂肪組織の血管新生を可能にする。
【0005】
本明細書に記載される別の実施形態は、対象において自家脂肪移植片を増強する方法であって、方法は、自家脂肪移植片が対象において増強されるように、本明細書に記載される、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー);および脂肪組織、を含む組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む方法である。
【0006】
本明細書に記載される別の実施形態は、対象において自家脂肪移植片を増強する方法であって、方法は、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)の治療有効量および脂肪組織の治療有効量を対象に共投与する工程を含む方法である。1つの態様において、脂肪組織は吸引脂肪組織を含む。別の態様において、フラクトマーおよび脂肪組織は同時にまたは逐次的に投与される。別の態様において、フラクトマーおよび脂肪組織は逐次的に投与され、フラクトマーは脂肪組織の投与の前に投与される。別の態様において、フラクトマーおよび脂肪組織は逐次的に投与され、脂肪組織はフラクトマーの投与の前に投与される。別の態様において、フラクトマーおよび脂肪組織は、インビトロで組み合わされ、2または3次元の形状、エリア、または容積部に成形されまたは成型され、対象においてインサイチューで埋め込まれる。別の態様において、フラクトマーおよび脂肪組織は、投与の前に、成形可能な液体、半固体、または成型された半固体であり、投与の後に、固体凝集体を形成する。別の態様において、フラクトマーおよび脂肪組織は、フラクトマーのTt-加熱より下で対象に共投与され、フラクトマーおよび脂肪組織は、対象の体温への曝露後に固体を形成する。別の態様において、フラクトマーは、細胞浸潤および脂肪組織の血管新生を可能にする。
【0007】
本明細書に記載される別の実施形態は、自家脂肪移植片組成物を調製するための方法であって、方法は、(a)対象から脂肪組織を得る工程;および(b)組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)と工程(a)の脂肪組織とをフラクトマーのTt-加熱より下で組み合わせて混合物を形成する工程を含む方法である。別の態様において、方法は、(c)混合物を形状、エリア、または容積部に成形する工程をさらに含む。別の態様において、方法は、(d)注射または埋め込みによって対象に混合物を共投与する工程をさらに含む。1つの態様において、混合物は、フラクトマーのTt-加熱より上の温度で固体凝集体を形成する。
【0008】
本明細書に記載される別の実施形態は、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)と、組み合わせのための容器、特異的な容積寸法のための型、または脂肪組織吸引および/もしくは投与のための手段のうちの1種または複数とを含むキットである。
本明細書に記載される別の実施形態は、それを必要とする対象における自家脂肪移植のための、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)の治療有効量および脂肪組織の治療有効量の使用である。
【0009】
本特許または出願ファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面を有する本特許または特許出願公開のコピーは、請求および必要な料金の支払いがあれば該庁によって提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】再注射のための、組み換え部分的秩序ペプチドまたは「フラクトマー」(マトリックス)と収集された脂肪(吸引脂肪組織)とを組み合わせる提案される方法を示した図である。収集された吸引脂肪組織は、フラクトマー溶液と組み合わされかつ混合され、混合物は、対象の欠損エリアに注射される。体温は、封入された吸引脂肪組織を有するフラクトマー足場形成を開始して、移植片を安定化する。
図2】未処理の脂肪対吸引脂肪組織の構造的な差の例を示した図である。脂肪吸引および処理の後、脂肪は、その固体様特性を喪失し、形状または容積を維持するための機械的完全性を有しない。
図3A-B】フラクトマー(配列番号12)は熱に反応性であり、加熱された場合に多孔質ネットワークを形成することを示した図である。図3Aは、調整可能な閾値温度(例えば、20℃~37℃)で、フラクトマーは、多孔質の固体ネットワークへの相分離を受ける(左および中央のパネル)。3次元の再建された共焦点画像は、フラクトマーが加熱された場合の複雑なエラスチン様ネットワークを明らかにしている(右のパネル)。図3Bは、5質量%のフラクトマー溶液への緑色蛍光タンパク質(GFP)の添加により、多孔性が、伝統的な(例えば、ヒアルロン酸)ヒドロゲルと比較して、より大きな栄養素の流れを可能にすることが示されることを示している。
図4A-B】フラクトマー(配列番号12)転移温度およびタンパク質分解に対する保管の効果を示した図である。図4Aは、凍結乾燥ならびに1、2、5、および6カ月間の-20℃での保管の後に再懸濁されたフラクトマーの光学密度(OD)測定結果を示している。フラクトマー転移温度の変化は、どの時点においても観察されなかった。図4Bは、凍結乾燥ならびに1、5、および6カ月間の-20℃での保管の後に再懸濁されたフラクトマーのSDS-PAGE分析を示している。フラクトマータンパク質レベルの変化または分解の兆しは、どの時点においても観察されなかった。
図5A-C】フラクトマーは、健常な脂肪細胞をカプセル化し得、形状および突出を向上させ得ることを示した図である。図5Aは、吸引脂肪組織単独(上のパネル)、50容積%の吸引脂肪組織:フラクトマー溶液(配列番号12)(250μM)(中央のパネル)、および50容積%の吸引脂肪組織:フラクトマー溶液(配列番号12)(750μM)(下のパネル)の混合物についての共焦点顕微鏡法分析を示している。1:1の比で種々のフラクトマー濃度(低=250μM、高=750μM)と混合されかつLipidTOX(赤色、フラクトマーも染色する)およびDAPI(青色)で染色された吸引脂肪組織は、脂肪細胞の大きなエリアを結び付ける、個々の脂肪細胞の細胞周辺のフラクトマーの存在を示す。図5Bは、脂肪単独についての組織学的H&E染色分析を示しており、図5Cは、フラクトマー(配列番号18)(250μM)と混合された吸引脂肪組織についての組織学的H&E染色分析を示している。図5Cにおいて、フラクトマーは、より濃縮された脂肪細胞のエリアの間に散在して見られ得る。
図6A-D】フラクトマー単独および脂肪+フラクトマーを使用して3Dの型を創出する、例となる方法および分析を示した図である。図6Aは、3Dプリントされた型に注射され、37℃に置いてフラクトマーを凝集させた、脂肪:フラクトマー(配列番号12)の混合物の図解を示している。図6Bは、低(500μM、左のパネル)、中(750μM、中央のパネル)、および高(2mM、右のパネル)濃度のフラクトマー単独(配列番号12)の例となる成型形状を示しており、増加するフラクトマー濃度とともに形状保護の増加を示す。図6Cは、脂肪(ヒト吸引脂肪組織)+フラクトマー溶液(配列番号12)混合物のエクスビボの型を示している。種々の比の吸引脂肪組織とフラクトマー溶液(750μM)との混合物は、フラクトマー:吸引脂肪組織比の増加が、脂肪単独と比較して、型の形状および突出維持をかなり増加させることを実証している。図6Dは、3Dプリントされた型に注射され、37℃に置いてフラクトマーを凝集させた、豚脂肪単独と豚脂肪+フラクトマー溶液(配列番号18)の混合物との間の比較を示している。豚吸引脂肪組織とフラクトマーとの混合物は、豚脂肪単独と比較して、型からの取り外し後に、形状保持を向上させることが見出された。
図7】フラクトマーの形状は注射時に制御され得ることを示した図である。マウスに、3種の異なる形状パターン:球体(左の列)、分散した点(中央の列)、および細長い棒(右の列)、の赤外標識されたフラクトマー(配列番号12)を後部脇腹に注射した。注射後1カ月(上のパネル)および4カ月(下のパネル)の時点におけるIVISスペクトルイメージングは、3種すべての注射形状パターンに関して形状保護を示す。
図8A-C】フラクトマー(配列番号12)タンパク質安定性および分解は、濃度で制御可能であることを示した図である。図8Aは、種々のフラクトマー溶液濃度(低=250μM、中=750μM、高=1500μM)に関する、BL/6マウスにおける注射後6カ月の時点における標識されたフラクトマーの正規化された蛍光強度を示している。図8Bは、6カ月の間にわたる、種々のフラクトマー濃度製剤(低=250μM、中=750μM、高=1500μM)を注射されたBL/6マウスの例となる蛍光分光法画像を示している。高いフラクトマー濃度を有する製剤の注射は、インサイチューで6カ月時点終わりまで持続することが見出された(下の行のパネル)。図8Cは、注射後の長期フラクトマー再吸収プロファイルを示している。低(250μM)、中(750μM)、および高(1500μM)濃度のフラクトマー注射物に関して、正規化された蛍光強度(左の軸)および容積(右の軸)を測定した。低フラクトマー濃度を有する製剤の注射は、数カ月後に完全に再吸収されるように見え、一方で、中および高フラクトマー濃度を有する製剤の注射は、蛍光および容積の両方に関して長期持続性を示した。
図9A-F】フラクトマー(配列番号12)は脂肪容積保持を向上させることを示した図である。図9Aは、nu/nuマウスへの注射のために実験群において使用された、例となる脂肪:フラクトマー溶液(250μM)比の図解である。図9Bは、nu/nuマウスへの注射後の経時的な容積保持に対する脂肪:フラクトマー比の効果を示している。1週間の期間にわたる容積分布は、フラクトマーの使用に伴う容積保持の増加を示している。図9Cは、各脂肪:フラクトマー溶液(マトリックス)混合物比に関する、1週間の時点における容積分布のスナップ写真を示している。図9Dは、種々の脂肪:フラクトマー混合物に関する、注射後6週間の時点における正規化された容積を示している。安定化フラクトマーマトリックスの内包なしで、低下した脂肪量(50容積%の脂肪)を使用した場合、容積保持は有意に低かった。図9Eは、3カ月の期間にわたる、脂肪単独および50容積%の脂肪+フラクトマー溶液(750μM)注射物の容積保持を示している。フラクトマーは、このより長い期間にわたって脂肪容積保持を向上させることが見出された。図9Fは、脂肪単独の注射と脂肪+フラクトマー(750μM)の注射との間の、移植された脂肪の有効容積を示している。注射される脂肪のmLあたり、より高い濃度のフラクトマー製剤(750μM)は、脂肪単独移植片の有効容積の3倍になることが見出された。
図10A-C】血管系供給は、脂肪単独から作製された移植片と比較して、フラクトマー(配列番号12)とともに作製された脂肪移植片内で高いことを示した図である。図10Aは、脂肪単独移植片(上のパネル)対1:1比の脂肪:フラクトマー溶液(250μM)移植片(下のパネル)についての組織学的分析を示しており、脂肪細胞の群の間の、フラクトマーの持続性および支持的フラクトマー区域における血管系(CD31+)区域の高い普及を示す。図10Bは、脂肪単独と1:1の脂肪:フラクトマー溶液(250μM)混合物との間の、注射後1カ月の時点における脂肪分布についての組織学的比較を示している。50容積%弱の脂肪が脂肪+フラクトマー実験群において使用されたにもかかわらず、2種の異なる移植片群の間で、細胞組成の差は観察されなかった。図10Cは、30日の時点における、吸引脂肪組織とフラクトマー溶液(250μM)との1:1混合物の拡大された写真を示している。実線の矢印は、残余のフラクトマーの証拠を指し示し、点線の矢印は、移植片内の新しく形成された血管供給を指し示す。
図11A-B】脂肪単独を注射されたマウスにおいて嚢胞が形成され、一方で、脂肪+フラクトマー(配列番号12)の混合物を注射されたマウスにおいては嚢胞形成は観察されないことを示した図である。図11Aは、3カ月の期間にわたる、脂肪単独を注射されたマウスにおける嚢胞形成を示している。脂肪単独、または吸引脂肪組織とフラクトマー溶液(750μM)との1:1混合物を含む移植片の超音波を3カ月間にわたって捕捉した。矢印は、脂肪単独群における大きな油嚢胞の発達を指し示す(上の行、中央右および一番右のパネル)。脂肪単独を注射されたマウスの50%を上回る割合が嚢胞を発達させ、一方で、脂肪+フラクトマーの混合物を注射されたマウスの0%が嚢胞を形成した。図11Bは、注射後3カ月の時点における、脂肪単独および1:1の脂肪:フラクトマー溶液(750μM)移植片からの細胞組成についての代表的な組織学的比較を示している。脂肪単独群は、嚢胞形成の明確な証拠を示しており、一方で、脂肪:フラクトマー群においては嚢胞形成は観察されなかった。フラクトマーは、脂肪細胞を支持すると見られ得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
別様に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションと関連して使用される任意の命名法ならびにその技法は、当技術分野において周知でありかつよく使用される。矛盾する場合には、定義を含む本開示が支配するであろう。例示的な方法および材料が下で記載されるが、とはいえ、本明細書に記載されるものと同様または等価の方法および材料が、本明細書に記載される実施形態および態様の実践または試験において使用され得る。
【0012】
本明細書において使用するとき、「アミノ酸」、「ヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、「ベクター」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、当技術分野における通常の技能を有する生化学者によって理解されるであろうそれらの共通の意味を有する。標準的な1文字ヌクレオチド(A、C、G、T、U)および標準的な1文字アミノ酸(A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはY)が本明細書において使用される。
【0013】
本明細書において使用するとき、「含む(include)」、「含む(including)」、「含有する(contain)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」等の用語は、「含む(comprising)」を意味する。本開示は、明示的に記載されるか否かにかかわらず、本明細書において提示される実施形態または要素を「含む」、「からなる」、および「から本質的になる」他の実施形態も企図する。
本明細書において使用するとき、本開示の文脈において(とりわけ特許請求の範囲の文脈において)使用される「a」、「an」、「the」という用語、および同様の用語は、本明細書において別様に示されないまたは文脈によってはっきりと否定されない限り、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。加えて、「a」、「an」、または「the」は、別様に指定されない限り、「1つまたは複数」を意味する。
【0014】
本明細書において使用するとき、「または」という用語は、接続的または離接的であり得る。
本明細書において使用するとき、「実質的に」という用語は、大きなまたは相当な程度にではあるが完全にではないことを意味する。
本明細書において使用するとき、関心対象の1つまたは複数の値に適用される「約」または「およそ」という用語は、記述された参照値と同様である、または当業者によって決定される、特定の値に対して許容される誤差域内にある値を指し、それは一部には、測定システムの制限等、値がどのように測定されるまたは決定されるかに依存するであろう。1つの態様において、「約」という用語は、「約」という用語によって修飾される値の最高±10%の変動内にある整数および分数の構成要素の両方を含めた、任意の値を指す。代替的に、「約」とは、当技術分野における実践を通じて、3以上の標準偏差以内を意味し得る。代替的に、生物学的システムまたは過程等に関して、「約」という用語は、値の1桁以内、一部の実施形態では5倍以内、および一部の実施形態では2倍以内を意味し得る。本明細書において使用するとき、「~」という記号は、「約」または「およそ」を意味する。
【0015】
本明細書に開示されるすべての域は、個別の値としての終点と、域内に指定されるすべての整数および分数との両方を含む。例えば、0.1~2.0という域は、0.1、0.2、0.3、0.4...2.0を含む。終点が「約」という用語によって修飾される場合、指定される域は、域内の任意の値の最高±10%、または終点を含めた3以上の標準偏差以内の変動分拡張される。
本明細書において使用するとき、「活性成分」または「活性薬学的成分」という用語は、薬理学的な、しばしば有益な、効果を提供する、薬学的作用物質、活性成分、化合物、もしくは物質、組成物、またはその混合物を指す。
本明細書において使用するとき、「対照」または「参照」という用語は、本明細書において互換可能に使用される。「参照」または「対照」レベルは所定の値または域であり得、それをベースラインまたはベンチマークとして採用して、それに対して、測定された結果を査定する。「対照」とは、対照実験または対照細胞も指す。
【0016】
本明細書において使用するとき、「用量」という用語は、少なくとも1回または複数の投与を用いて治療効果を起こすまたはもたらすのに十分な量を含有する、細胞を含めた、任意の形態の活性成分製剤または組成物を表す。「製剤」および「組成物」は、本明細書において互換可能に使用される。
本明細書において使用するとき、「予防」という用語は、統計的に有意な程度まで、または当業者によって検出可能な程度まで、障害の進行を阻止することまたは低下させることを指す。
【0017】
本明細書において使用するとき、「有効量」または「治療有効量」という用語は、経験されている疾患もしくは病態の症状の1種もしくは複数をある程度阻止する、治療する、もしくは改善するであろう、または対象が縮小を起こしやすい、対象に投与される作用物質、組成物、または細胞の実質的に非毒性であるが十分な量を指す。結果は、疾患の兆候、症状、もしくは原因の低下もしくは軽減、または生物学的システムの任意の他の所望の変更であり得る。有効量は、対象の年齢、サイズ、疾患のタイプまたは程度、疾患のステージ、投与の経路、使用される補足的療法のタイプまたは程度、進行中の疾患過程、および所望される治療のタイプを含むがそれらに限定されない、各対象にとって個々の因子に基づき得る。
【0018】
本明細書において使用するとき、「対象」という用語は動物を指す。典型的に、対象は哺乳類である。対象は、霊長類(例えば、ヒト、男性または女性;幼児、青年、または成人)、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、魚類、鳥類等も指す。1つの実施形態において、対象は霊長類である。1つの実施形態において、対象はヒトである。
本明細書において使用するとき、対象は、そのような対象がそのような治療から生物学的に、医学的に、または生命の質において利益を得るであろう場合、「治療の必要がある」。治療の必要がある対象は、特に阻止的または予防的な(prophylaxis)治療の場合、必ずしも症状を提示するわけではない。
【0019】
本明細書において使用するとき、「治療」、「療法」、および/または「治療レジメン」とは、患者によって示される、または患者がかかりやすくあり得る疾患、障害、または生理学的病態に応じて行われる臨床的介入を指す。治療の目的は、症状の軽減もしくは阻止、疾患、障害、もしくは病態の進行もしくは悪化を遅らせることもしくは止めること、および/または疾患、障害、もしくは病態の寛解を含む。一部の実施形態において、疾患、障害、または病態は、自家脂肪移植片の増強を要する。適切な治療/病態は、根本的な乳房切除術後および乳腺腫瘤摘出術後の乳房再建、美容的増強、顔面再建/インプラント、鼻形成術、ならびに足の脂肪体萎縮、手の再建、パリー・ロンベルグ(Parry-Romberg)症候群、および頭蓋顔面外傷等、自家脂肪移行の使用を要する他の治療を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0020】
本明細書において使用するとき、「阻害する」、「阻害」、または「阻害すること」という用語は、所与の生物学的過程、病態、症状、障害、もしくは疾患の低下もしくは抑制、または生物学的活性もしくは過程のベースライン活性の有意な減少を指す。
本明細書において使用するとき、「治療」または「治療すること」とは、障害もしくは疾患を含めた生物学的過程の進行の予防、それを阻止すること、抑制すること、抑えること、好転させること、軽減すること、改善すること、もしくは阻害すること、または疾患を完全に排除することを指す。治療は、急性または慢性のやり方で実施され得る。「治療」という用語は、疾患に伴う苦痛の前に、疾患またはそのような疾患と関連した症状の重症度を低下させることも指す。疾患、障害、またはその症状を「抑えること」または「改善すること」は、そのような疾患、障害、またはその症状の臨床的出現の後に、対象に本明細書に記載される細胞、組成物、または化合物を投与することを伴う。疾患、障害、またはその症状「の予防」またはそれを「阻止すること」は、疾患、障害、またはその症状の発生の前に、対象に本明細書に記載される細胞、組成物、または化合物を投与することを伴う。疾患または障害を「抑制すること」は、疾患またはその障害の誘導の後であるが、その臨床的出現またはその症状が現れる前に、対象に本明細書に記載される細胞、組成物、または化合物を投与することを伴う。
【0021】
本明細書に記載される「アミノ酸」とは、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸とは、遺伝子コードによってコードされるものである。アミノ酸は、本明細書において、それらの一般に知られる3文字記号によって、またはlUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨される1文字記号によって言及され得る。アミノ酸は、側鎖およびポリペプチド骨格部分を含む。
【0022】
「発現ベクター」という用語は、所望のタンパク質をコードする核酸配列が挿入され得るまたは導入され得る、当技術分野において公知のプラスミド、ウイルス、または別の媒体を示す。
「宿主細胞」という用語は、核酸構築物または発現ベクターを用いた形質転換、トランスフェクション、形質導入、コンジュゲーション等を受けやすい細胞である。
宿主細胞は、植物、細菌、酵母、真菌、昆虫、動物等に由来し得る。一部の実施形態において、宿主細胞は大腸菌(Escherichia coli)を含む。
【0023】
「対照」、「参照レベル」、および「参照」という用語は、本明細書において互換可能に使用される。参照レベルは所定の値または域であり得、それをベンチマークとして採用して、それに対して、測定された結果を査定する。本明細書において使用される「対照群」とは、対照の対象の群を指す。所定のレベルは、対照群からのカットオフ値であり得る。所定のレベルは、対照群からの平均であり得る。カットオフ値(または所定のカットオフ値)は、適応的指標モデル(AIM)方法論によって決定され得る。カットオフ値(または所定のカットオフ値)は、患者群の生物学的サンプルからの受信者操作曲線(ROC)分析によって決定され得る。生物学の技術分野において一般的に知られるように、ROC分析は、一方の条件ともう一方とを識別する、例えばCRCを有する患者を同定することにおける各マーカーの性能を決定する、検査の能力の決定である。代替的に、カットオフ値は、患者群の生物学的サンプルについての四分位分析によって決定され得る。例えば、カットオフ値は、25~75パーセンタイル域における任意の値に相当する値、好ましくは25パーセンタイル、50パーセンタイル、または75パーセンタイルに相当する値、より好ましくは75パーセンタイルに相当する値を選択することによって決定され得る。そのような統計分析は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して実施され得、任意の数の市販のソフトウェアパッケージにより遂行され得る。標的に対するまたはタンパク質活性に対する健常なまたは通常のレベルまたは域は、標準的な実践に従って規定され得る。
対照は、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)なしの作用物質または細胞であり得る。対照は、本明細書に詳述されるフラクトマーとは異なるポリペプチドまたはポリマーを有する、それとコンジュゲートした、またはその中にカプセル化された、分子または分子を含むサンプルであり得る。対照は、疾患状態が既知である対象またはそれ由来のサンプルであり得る。対象またはそれ由来のサンプルは、健常、罹患した、治療前に罹患した、治療中に罹患した、もしくは治療後に罹患した、またはその組み合わせであり得る。対照は、例えば作用物質または細胞単独またはそれだけを含み得る。
【0024】
本明細書において使用される「ポリヌクレオチド」は、一本鎖もしくは二本鎖であり得る、または二本鎖および一本鎖配列の両方の部分を含有し得る。ポリヌクレオチドは、核酸、天然もしくは合成DNA、ゲノムDNA、cDNA、RNA、またはハイブリッドであり得、ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドの組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、およびイソグアニンを含めた塩基の組み合わせを含有し得る。ポリヌクレオチドは、化学合成法によってまたは組み換え法によって得ることができる。
【0025】
「ペプチド」または「ポリペプチド」とは、ペプチド結合によって連結された2個以上のアミノ酸の連結された配列である。ポリペプチドは、天然、合成、もしくは改変、または天然と合成との組み合わせであり得る。ペプチドおよびポリペプチドは、結合タンパク質、受容体、および抗体等のタンパク質を含む。「ポリペプチド」、「タンパク質」、および「ペプチド」という用語は、本明細書において互換可能に使用される。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列を指す。「二次構造」とは、ポリペプチド内の局所的に秩序立った3次元構造を指す。これらの構造は、ドメイン、例えば酵素的ドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、ポアドメイン、および細胞質尾部(tall)ドメインとして一般に知られている。「ドメイン」とは、ポリペプチドの小型ユニットを形成し、典型的に15~350アミノ酸長である、ポリペプチドの部分である。例示的なドメインは、酵素活性またはリガンド結合活性を有するドメインを含む。典型的なドメインは、一続きのベータ-シートおよびアルファ-ヘリックス等のより低い組織化の区域から作り上げられる。「三次構造」とは、ポリペプチド単量体の完全な3次元構造を指す。「四次構造」とは、独立した三次ユニットの非共有結合性会合によって形成される3次元構造を指す。「モチーフ」は、ポリペプチド配列の一部分であり、少なくとも2個のアミノ酸を含む。モチーフは、長さが2~20、2~15、または2~10個のアミノ酸であり得、一部の実施形態において、モチーフは、3、4、5、6、または7個の逐次的アミノ酸を含む。ドメインは、同様であり得るまたは異なり得る一連のモチーフから構成され得る。
【0026】
「組み換え」とは、例えば細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターを参照して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入、または天然核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、あるいは細胞が、そのように改変された細胞に由来することを示す。ゆえに、例えば、組み換え細胞は、天然(非組み換え)形態の細胞内に見出されない遺伝子を発現する、または別様に異常に発現される、低発現される、もしくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0027】
本明細書において使用される「サンプル」または「試験サンプル」とは、標的の存在および/もしくはレベルが検出されるもしくは決定される対象となる任意のサンプル、または本明細書に記載される作用物質、細胞、もしくはフラクトマーを含む任意のサンプルを意味し得る。サンプルは、液体、溶液、乳濁液、または懸濁液を含み得る。サンプルは医学的サンプルを含み得る。サンプルは、血液、全血、血漿および血清等の血液の画分、筋肉、間質液、汗、唾液、尿、涙液、滑液、骨髄、脳脊髄液、鼻汁、痰、羊水、気管支肺胞洗浄液、胃洗浄物、嘔吐、糞便物質、肺組織、末梢血単核細胞、総白血球、リンパ節細胞、脾臓細胞、扁桃腺細胞、癌細胞、腫瘍細胞、胆汁、消化液、皮膚、またはその組み合わせ等、任意の生物学的流体または組織を含み得る。一部の実施形態において、サンプルはアリコートを含む。他の実施形態において、サンプルは生物学的流体を含む。サンプルは、当技術分野において公知の任意の手段によって得ることができる。サンプルは、患者から得られるものとして直接使用され得る、または本明細書において論じられるようにもしくはそうでなければ当技術分野において公知であるように、ある様式でサンプルの特徴を改変するために、濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、妨害構成要素の不活性化、試薬の添加等によって前処理され得る。
【0028】
「実質的に同一の」とは、第1および第2のアミノ酸配列が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100個のアミノ酸の領域にわたって、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%であることを意味し得る。
【0029】
ポリヌクレオチドを参照して本明細書において使用される「変種」とは、(i)参照ヌクレオチド配列の一部分もしくはフラグメント;(ii)参照ヌクレオチド配列もしくはその一部分の相補体;(iii)参照ポリヌクレオチドもしくはその相補体と実質的に同一であるポリヌクレオチド;または(iv)参照ポリヌクレオチド、その相補体、もしくはそれと実質的に同一な配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、を意味する。
【0030】
「変種」とは、アミノ酸の挿入、欠失、または保存的置換によってアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1種の生物学的活性を保持するペプチドまたはポリペプチドとしてさらに定義され得る。「生物学的活性」の代表的な例は、特異的抗体もしくはポリペプチドによって結合される能力、または免疫反応を促進する能力を含む。変種は、実質的に同一な配列を意味し得る。変種は、その機能的フラグメントを意味し得る。変種は、ポリペプチドの多コピーも意味し得る。多コピーは、直列にあり得るまたはリンカーによって分離され得る。変種は、少なくとも1種の生物学的活性を保持するアミノ酸配列を有する参照ポリペプチドと実質的に同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドも意味し得る。アミノ酸の保存的置換、すなわちアミノ酸を同様の特性(例えば、親水性、荷電領域の程度または分布)の異なるアミノ酸で置き換えることは、わずかな変化を典型的に伴うものとして当技術分野において認識される。これらのわずかな変化は、一部には、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮することによって同定され得る。Kyte et al., J. Mol, Biol. 157: 105-132 (1982)を参照されたい。アミノ酸のハイドロパシー指数は、その疎水性および電荷の考慮に基づく。同様のハイドロパシー指数のアミノ酸が置換され得、タンパク質機能を依然として保持し得ることは当技術分野において公知である。1つの態様において、±2のハイドロパシー指数を有するアミノ酸は置換される。アミノ酸の疎水性を使用して、生物学的機能を保持するポリペプチドをもたらすであろう置換を明らかにもし得る。ポリペプチドの背景におけるアミノ酸の親水性の考慮は、参照により本明細書に完全に組み入れられる米国特許第4,554,101号において論じられるように、抗原性および免疫原性とよく相関することが報告されている有用な評価基準である、そのポリペプチドの最大局所平均親水性の算出を可能にする。同様の親水性値を有するアミノ酸の置換は、当技術分野において理解されるように、生物学的活性、例えば免疫原性を保持するポリペプチドをもたらし得る。置換は、互いの±2以内の親水性値を有するアミノ酸を用いて実施され得る。アミノ酸の疎水性指数および親水性値の両方とも、そのアミノ酸の特定の側鎖によって影響される。その観察結果と符号して、生物学的機能と適合するアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズ、および他の特性によって明らかにされる、アミノ酸の、特にそうしたアミノ酸の側鎖の相対的類似性に依存すると理解される。
【0031】
変種は、遺伝子配列全体の全長またはそのフラグメントにわたって実質的に同一であるポリヌクレオチド配列であり得る。ポリヌクレオチド配列は、遺伝子配列の全長またはそのフラグメントにわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、88%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり得る。変種は、アミノ酸配列の全長またはそのフラグメントにわたって実質的に同一であるアミノ酸配列であり得る。アミノ酸配列は、アミノ酸配列の全長またはそのフラグメントにわたって80%、81%、82%、83%、84%、85%、88%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり得る。
【0032】
本明細書において使用するとき、「増強された」とは、自家脂肪組織または脂肪移植片の容積、形状、生存期間の向上、血液供給の向上、および壊死の低下を指す。1つの態様において、自家脂肪組織または脂肪移植片は、脂肪組織とフラクトマーとの組み合わせによって増強され、それは、脂肪移植片の容積および形状の保存、血管新生の向上、生存期間の増進、ならびに壊死の低下を含めた、脂肪移植片の長期維持および生存期間の増進につながる。
本明細書において使用するとき、「同時に投与される」とは、フラクトマーと脂肪組織または吸引脂肪組織との組み合わせ、フラクトマーのTt-加熱点より下で混合すること、対象に組み合わせを投与することを指し、次いで、フラクトマーのTt-加熱点より上への対象の身体からの加熱があると、フラクトマーは、吸引脂肪組織をインサイチューで取り囲みかつカプセル化する。
本明細書において使用するとき、「共投与される」とは、フラクトマーおよび脂肪組織または吸引脂肪組織の投与を指す。共投与は、「同時投与」(本明細書に記載されるように、投与前のフラクトマーと脂肪組織との組み合わせ)または「逐次的投与」であり得る。本明細書において使用するとき、「逐次的投与」とは、フラクトマーまたは脂肪組織のいずれかが最初に投与され、その後にそれぞれ脂肪組織またはフラクトマーのいずれかの投与が続く投与を指す。逐次的(sequence)投与において、フラクトマーと脂肪組織との組み合わせは、投与後にインサイチューで生じる。
【0033】
本明細書において使用するとき、「成形可能な」とは、様々な2または3次元の形状、エリア、または容積部に成形されるまたは成型されるフラクトマーおよび脂肪組織組成物の能力、ならびに長期間にわたってこの形状、エリア、または容積部を維持する能力を指す。具体的な例示的な形状または容積部は、乳房、臀部、手、膝、皮膚もしくは皮膚移植片の下に置くための2次元層、または対象の身体に存在する他の不規則なもしくは不定の形状もしくは容積部を含む。
【0034】
組成物
本明細書に記載される1つの実施形態は、自家脂肪移植片を増強するための注射可能な組織マトリックス組成物であって、組成物は、組み換え部分的秩序ポリペプチドまたは「フラクトマー」および脂肪組織を含む、それからなる、またはそれから本質的になる、注射可能な組織マトリックス組成物である。一部の実施形態において、脂肪組織は吸引脂肪組織を含む。1つの実施形態において、組成物は、指定される域内のすべての整数を含めた、約10~90容積%の吸引脂肪組織を含む。別の実施形態において、組成物は、指定される域内のすべての整数を含めた、約25~90容積%の吸引脂肪組織を含む。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも25容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも35容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも45容積%の吸引脂肪組織を含む。さらに他の実施形態において、組成物は、少なくとも50容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも60容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも70容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも80容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも90容積%の吸引脂肪組織を含む。脂肪または吸引脂肪組織の容積部を、特異的濃度のフラクトマーの溶液と組み合わせて、本明細書に記載される様々な脂肪:フラクトマー比を提供する。例として、100μLのフラクトマー溶液と組み合わされた900μLの脂肪または吸引脂肪組織は、容積で9:1比または容積で90%脂肪であろう。
【0035】
本明細書において使用される「フラクトマー」という用語は、熱に反応性であり、それらが液体として注射され、しかし体温で多孔質の固体ネットワークを迅速に形成することを可能にする、天然エラスチンを模倣するように設計された組み換え人工タンパク質のクラスを指す。例示的なフラクトマーは、本明細書における参照によりその全体として組み入れられる国際特許出願公開第WO2019006374号に記載される。一部の実施形態において、フラクトマーは、組み換え部分的秩序ポリペプチド(POP)を含む。各POPは、複数の無秩序ドメインおよび複数の構造化ドメインを含み得る。POPは、溶解度を変化させることによる相転移挙動、および温度に伴う凝集体溶解/形成を呈し得る。
【0036】
フラクトマーは、完璧なα-ヘリックスを形成し、(GXGVP)nペンタペプチドモチーフ(約30~50kDa)(配列番号1)(式中、Xはプロリンを除く任意の標準的アミノ酸である)の典型的に80~120個の総繰り返しから構成される非構造化エラスチン様ポリペプチド(ELP)に周期的に挿入される、オリゴアラニンアミノ酸(5~500個、しかし典型的にはA25)の構造化ドメインからなる。1つの態様において、非構造化ポリペプチドまたは「無秩序ドメイン」は、(GXGVP)nモチーフ(配列番号2)である(式中、XはVal(配列番号3)もしくはAla(配列番号4)、またはAlaとValとの混合物であり、nは1~50の整数である)。1つの態様において、Xは、10:1~1:10(Ala:Val)の比のAlaおよびValの交互反復である。別の態様において、Xは、1:1(配列番号5)または1:4(配列番号6)の比のAlaおよびValの交互反復である。フラクトマーは、フラクトマーをコードするプラスミド媒介性遺伝子の過剰発現によって、大腸菌において組み換えで合成される。
【0037】
フラクトマーは、伝統的なヒドロゲルと比べていくつかの利点を有する。α-ヘリックス(Ala)25ドメイン間の疎水性相互作用だけを介して、皮下注射時に自然発生的に架橋するフラクトマーの能力は大きい。ヒドロゲルにエラスチン様ポリペプチド(ELP)または他の合成ポリマーを架橋するために要される化学的架橋技法の大多数は、大きな短所を有する。小分子架橋剤はしばしば有毒であり得、注射されたポリマー溶液の化学的または酵素的架橋の反応速度論をインサイチューで制御することは困難である。さらに、ほとんどのヒドロゲルは無孔質である、またはインビボでの材料組み込みに必要な多孔性を導入するために、ポロゲン(porogen)もしくは鋳型法の使用を要する。これらの材料は、その後、所望の部位に埋め込まれなければならない。これらの障壁は乗り越えられ得るものの、物理的架橋の簡潔性、および体熱の単純な作用の下での機械的に安定な多孔質ネットワークの自然発生的形成は、他の注射可能な材料と比較して、脂肪移植におけるフラクトマーの使用の、先例がない利点である。
【0038】
フラクトマーの無秩序ドメインおよび構造化ドメインは、任意の数の考え得るやり方で編成され得、一部の実施形態において、1つまたは複数の無秩序ドメインは、フラクトマーの少なくとも2つの隣接する構造化ドメインの間に置かれる。一部の実施形態において、フラクトマーは、直列に繰り返した複数の構造化ドメインおよび直列に繰り返した複数の無秩序ドメインを含み、一部の実施形態において、直列に繰り返した複数の構造化ドメインは、直列に繰り返した複数の無秩序ドメインに対してC末端に置かれ、一部の実施形態において、直列に繰り返した複数の構造化ドメインは、直列に繰り返した複数の無秩序ドメインに対してN末端に置かれる。一部の実施形態において、フラクトマーは、[無秩序ドメイン]q-[構造化ドメイン]r[無秩序ドメイン]s-[構造化ドメイン]tとして編成される(式中、q、r、s、およびtは、独立して、1~100、2~100、1~50、または2~50等、0~100の整数である)。一部の実施形態において、フラクトマーは、[無秩序ドメイン]q-[構造化ドメイン]rとして編成される(式中、qおよびrは、独立して1~100の整数である)。一部の実施形態において、q、r、s、およびtは、独立して、0~10、0~20、0~30、0~40、0~50、0~60、0~70、0~80、0~90、0~100、1~10、1~20、1~30、1~40、1~150、1~60、1~70、1~80、1~90、または1~100の整数である。
【0039】
フラクトマーは、複数の無秩序ドメインを含み得る。無秩序ドメインは、CDによって観察される最小限の二次構造を有するまたは二次構造を有しない任意のポリペプチドを含み得、相転移挙動を有し得る。無秩序ドメインは、繰り返しのアミノ酸、繰り返さないアミノ酸、またはその組み合わせのアミノ酸配列を含み得る。
一部の実施形態において、フラクトマーの約25%~約97%、約35%~約95%、または約50%~約94%等の約20%~約99%は、無秩序ドメインを含む。フラクトマーの少なくとも約2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%は、無秩序ドメインを含み得る。
【0040】
一部の実施形態において、無秩序ドメインは、(GXGVP)n(配列番号1)のアミノ酸配列を含む(式中、Xは任意のアミノ酸であり、nは1よりも大きいまたは1に等しい整数である)。一部の実施形態において、mは1~500の整数である。一部の実施形態において、mは、少なくとも、多くとも、またはちょうど1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、または500である。一部の実施形態において、mは、500未満、400未満、300未満、200未満、または100未満であり得る。一部の実施形態において、mは、1~500、1~400、1~300、1~200、または60~180である。一部の実施形態において、mは、60、120、または180である。一部の実施形態において、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である。一部の実施形態において、Xは、ValもしくはAla、またはAlaおよびValの交互反復である。一部の実施形態において、XはValである。一部の実施形態において、XはAlaである。一部の実施形態において、Xは、AlaおよびValの交互反復である。一部の実施形態において、Xは、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1の比のAlaおよびValの交互反復である。一部の実施形態において、Xは、1:1または1:4の比のAlaとValとの混合物である。一部の実施形態において、Xは、5:1~1:5または1:1~1:4等、10:1~1:10(Ala:Val)の比のAlaおよびValの交互反復である。
【0041】
構造化ドメイン
フラクトマーは、複数の構造化ドメインを含み得る。構造化ドメインは、例えばアルファヘリックス等、CDによって観察される二次構造を有し得る。構造化ドメインは、ポリプロリンドメインおよびポリアラニンドメインの少なくとも一方を含み得、一部の実施形態において、フラクトマーは、交互の無秩序ドメインおよび構造化ドメインを含む。一部の実施形態において、構造化ドメインは、ポリアラニンドメインのみを含む。一部の実施形態において、構造化ドメインは、ポリプロリンドメインのみを含む。
【0042】
一部の実施形態において、フラクトマーの約5%~約70%、約6%~約60%、または約7%~約50%等の約4%~約75%は、構造化ドメインを含む。フラクトマーの少なくとも約2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%は、構造化ドメインを含み得る。
【0043】
一部の実施形態において、構造化ドメインはポリアラニンドメインを含む。各ポリアラニンドメインは、少なくとも5個のアラニン残基を含み得る。各ポリアラニンドメインは、アルファ-ヘリックス立体構造におけるアミノ酸の少なくとも約60%を有し得る。1つの態様において、構造化ドメインは、ポリアラニンドメイン(Ala)mを含む(式中、mは5~500の整数である)。別の態様において、ポリアラニンドメインは、(A)25(配列番号7);K(A)25K(配列番号8);D(A)25K(配列番号9);GD(A25)K(配列番号10);またはGK(A25)K(配列番号11)のうちの1種または複数を含む。
【0044】
1つの実施形態において、フラクトマーは、それぞれが、PG、P(X)nG(配列番号20)、および(B)mP(X)nG(Z)p(配列番号21)、またはその組み合わせから選択されるアミノ酸配列を含むPGモチーフを含む(式中、m、n、およびpは、独立して1~15の整数であり、B、X、およびZは、独立して任意のアミノ酸である)、複数の無秩序ドメインと;それぞれがポリアラニンドメインを含み、各ポリアラニンドメインが、少なくとも5個のアラニン残基を含み、α-ヘリックス立体構造におけるアミノ酸の少なくとも約50%を有する、複数の構造化ドメインとを含み;フラクトマーは相転移挙動を呈する。1つの態様において、少なくとも1つの無秩序ドメインは、(GXGVP)n(配列番号1)のアミノ酸配列を含む(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり、nは1よりも大きいまたは1に等しい整数である)。別の態様において、各ポリアラニンドメインにおけるアミノ酸の少なくとも約60%はα-ヘリックス立体構造にある。別の態様において、各ポリアラニンドメインは、[Bp(A)qrn(配列番号22)または[(BAstZr]n(配列番号23)のアミノ酸配列を含む(式中、Bは、Lys、Arg、Asp、またはGluであり;AはAlaであり;Zは、Lys、Arg、Asp、またはGluであり;nは1~50の整数であり;pは0~2の整数であり;qは1~50の整数であり;rは0~2の整数であり;sは1~5の整数であり;tは1~50の整数である)。別の態様において、構造化ドメインは、(A)25(配列番号7);K(A)25K(配列番号8);D(A)25K(配列番号9);GD(A25)K(配列番号10);またはGK(A25)K(配列番号11)うちの1種または複数を含む。別の態様において、フラクトマーの約4%~約75%は、構造化ドメインを含む。別の態様において、フラクトマーは、下限臨界溶液温度(lower critical solution temperature)(LCST)より下で可溶性である。別の態様において、フラクトマーは、加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)を有し、加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)は同一である、または加熱の転移温度(Tt-加熱)は、冷却の転移温度(Tt-冷却)よりも大きい。
【0045】
別の実施形態において、フラクトマーは、複数の無秩序ドメイン;および複数の構造化ドメインを含む。1つの態様において、フラクトマーは、[(GXGVP)n-α-ヘリックス]mの一般構造を有する(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり得、α-ヘリックスは、約5~50個のアラニン残基を有する任意のポリアラニンベースのα-ヘリックスである)。別の態様において、フラクトマーは、構造[(GXGVP)n-GX1(A)251mを有する(式中、XはAまたはVであり;X1はKまたはDであり;nは10~20の整数であり;mは4~8の整数である)(例えば、[(配列番号2)n-(配列番号10または11)]m)。別の態様において、フラクトマーは、以下の構造:
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]6-GWP (配列番号12);
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]4-GWP (配列番号13);
M[(GVGVP)15-GK(A25)K]6-GWP (配列番号14);
M[(GVGVP)15-GK(A25)K]4-GWP (配列番号15);
M[(G[A1:V1]GVP)16-GD(A25)K]6-GWP (配列番号16);
M[(G[A1:V1]GVP)16-GD(A25)K]4-GWP (配列番号17);
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]6-GWP (配列番号18);または
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]4-GWP (配列番号19)
のうちの1種または複数を含む。
【0046】
1つの態様において、フラクトマーは、以下の構造:
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号12);または
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号18)
を含む。
本明細書に記載される例示的な配列、配列モチーフ、およびフラクトマー構築物が下の表1に示されている。
【0047】
【表1】



【0048】
フラクトマーは、UV架橋可能なアミノ酸誘導体等、天然に存在しないアミノ酸誘導体も含み得る。非天然アミノ酸誘導体を使用して、異なるフラクトマー間および同じフラクトマー内に共有結合性架橋を導入し得る。例えば、UV架橋可能なアミノ酸誘導体を含むフラクトマーはUV光に曝露され得、それは、アミノ酸誘導体と別のフラクトマーのアミノ酸の側鎖との間に形成される、または同じフラクトマー(アミノ酸誘導体を有する)のアミノ酸の側鎖を用いて形成される、共有結合性架橋をもたらし得る。UV架橋可能なアミノ酸誘導体は、アジド基で官能化されている任意のアミノ酸であり得る。一部の実施形態において、アミノ酸誘導体はパラ-アジドフェニルアラニンである。
UV架橋可能なアミノ酸誘導体は、種々の温度で転移するフラクトマーの能力に影響を及ぼすことなく、様々な量で含まれ得る。例えば、UV架橋可能なアミノ酸誘導体は、(フラクトマーの)約0.5%~約15%または約1%~約10%等、(フラクトマーの)約0.1%~約20%でフラクトマー内に含まれ得る。
フラクトマーは、溶解度を変化させることによる相転移挙動、および温度に伴う凝集体形成を示し得る。フラクトマーの相転移挙動は、フラクトマーの無秩序ドメインの相転移挙動に由来し得る。「相転移」または「転移」とは、特異的温度で急激に生じる、ポリペプチドの凝集を指し得る。相転移は可逆的であり得るが、とはいえ、溶解の特異的温度は、凝集の特異的温度と同じであり得るまたは異なり得る。
【0049】
一部の実施形態において、フラクトマーは、下限臨界溶液温度(LCST)より下で可溶性である。LCSTは、それより下でポリペプチドが混和性である温度である。
転移温度(Tt)とは、フラクトマーが一方の状態から別の状態に変化する温度である。状態は、例えば可溶性ポリペプチド、ゲル、ならびに様々なサイズおよび寸法の凝集体を含み得る。フラクトマーは、加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)を有し得る。一部の実施形態において、加熱の転移温度(Tt-加熱)は濃度依存的である。一部の実施形態において、冷却の転移温度(Tt-冷却)は濃度非依存的である。Tt-加熱は、主として無秩序ドメインによって決定され得る。Tt-冷却は、主として構造化ドメインによって決定され得る。
【0050】
転移温度(LCSTまたはTt)より下で、フラクトマーは高度に可溶性であり得る。転移温度より上に加熱すると、フラクトマーは疎水的に崩壊し得かつ凝集し得、別個の相を形成する。
フラクトマーは、様々な温度で相転移し得る。フラクトマーは、約0℃~約100℃、約10℃~約50℃、または約20℃~約42℃の転移温度(Tt)を有し得る。加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)は同一であり得る。本明細書において使用するとき、温度が互いの2.0℃、1.0℃、0.5℃、または0.1℃以内にある場合、温度は「同一」であり得る。一部の実施形態において、加熱の転移温度(Tt-加熱)は、冷却の転移温度(Tt-冷却)よりも大きい。フラクトマーが、Tt-冷却よりも大きいTt-加熱を有する実施形態において、2種の転移温度間の差はヒステリシス(hysteresis)と称され得、一部の実施形態において、フラクトマーは、約5℃~約60℃または約10℃~約50℃等、約5℃~約70℃のヒステリシスを有する。
【0051】
フラクトマーの可逆的な相転移挙動を使用して、可溶性および不溶性の相で溶液を循環させる「逆転移循環(inverse transition cycling)」と称される方法に従ったフラクトマーの精製において、フラクトマーの相転移挙動は利用され得る。相転移は、例えば硫酸アンモニウムまたは塩化ナトリウム等のコスモトロピック塩を使用しても誘発され得る。コスモトロピック塩は、フラクトマーを含む溶液に添加され得、コスモトロピック塩は、フラクトマーが凝集体を形成するまたは溶液から沈殿するまで添加される。凝集体は、遠心分離によってペレットにされ得、第2の溶液またはバッファーに再懸濁され得る。フラクトマーの凝集体は、それらのTtより下に冷却されるとまたはコスモトロピック塩が溶液から取り除かれた場合、溶液に再可溶化し得る。一部の実施形態において、フラクトマーは、いかなるクロマトグラフィー精製もなしで精製される。一部の実施形態において、フラクトマーは、組み換えで作出され、例えば大腸菌等の細菌培養物から精製される。
【0052】
一部の実施形態において、温度がTt-加熱よりも大きい場合、フラクトマーは凝集体を形成し得る。Tt-冷却未満の温度に冷却された場合、凝集体は再可溶化し得る。
複数のフラクトマーによって形成される凝集体は、フラクトマーの構造から生じ得る有利な特性を有し得る。例えば、凝集体は、物理的な非共有結合性架橋を有し得る。これらの物理的な非共有結合性架橋は、互いと相互作用する構造化ドメインのヘリックス束から生じ得る。凝集体は、物理的な非共有結合性架橋に加えて、共有結合性架橋(例えば、化学的架橋)も有し得る。共有結合性架橋を凝集体に含めて、それらの多孔質アーキテクチャーを変更することなく、それらの機械的安定性を増加させ得、一部の実施形態において、凝集体は複数のフラクトマーから形成され得、次いで共有結合性架橋によってさらに安定化され得る(凝集体の形成の後)。共有結合性架橋は、本明細書に記載される、アジド官能性を有するUV架橋可能なアミノ酸誘導体を介して導入され得る。凝集体に組み入れられ得る架橋のさらなる例は、小分子架橋およびシステインジスルフィド橋を含むが、それらに限定されるわけではない。化学的な小分子架橋の例はテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド(TMPC)であり、それはフラクトマー内のリジンを架橋し得る。
【0053】
加えて、複数のフラクトマーによって形成される凝集体は、それと液体様コアセルベート構造とを区別する固体様特性を有し得る。例えば、凝集体は、その損失弾性率(loss modulus)(G’’)よりも2×大きい、5×大きい、10×大きい、15×大きい、20×大きい、25×大きい、30×大きい、35×大きい、50×大きい、または100×大きいG’を有する等、そのG’’よりも大きい貯蔵弾性率(storage modulus)(C)を有し得る。一部の実施形態において、凝集体は、そのG’’よりも10×大きい~50×大きいまたは20×大きい~35×大きい等、そのG’’よりも2×大きい~100×大きいG’を有する。
【0054】
複数のフラクトマーから形成される凝集体は、多様なサイズおよび寸法であり得る。一部の実施形態において、凝集体は安定な3次元マトリックスである。一部の実施形態において、凝集体はフラクタル様であり、一部の実施形態において、凝集体はゲル様であり、一部の実施形態において、凝集体は、空隙容積を有した多孔質、例えば凝集体の非タンパク質に富む相である。一部の実施形態において、空隙容積は調整可能である。例えば、凝集体は、(凝集体の容積の)約60%~約90%の空隙容積を有し得、加えて、凝集体は、約1μm~約10μm、約3μm~約5μm、約25μm~約60μm、約30μm~約50μm、または約3μm~約50μm等、約1μm~約100μmの直径を有する細孔を含み得る。
【0055】
本明細書に記載されるフラクトマーをコードするポリヌクレオチドがさらに提供される。ベクターは、本明細書に詳述されるフラクトマーをコードするポリヌクレオチドを含み得る。ポリペプチドの発現を得るために、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、転写を指揮するプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、およびタンパク質をコードする核酸に関する場合には翻訳開始のためのリボソーム結合部位、を含有する発現ベクターにサブクローニングし得る。ベクターの例はpET24である。適切な細菌プロモーターは当技術分野において周知である。本明細書に記載されるフラクトマーをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを用いて形質転換されたまたはトランスフェクトされた宿主細胞がさらに提供される。タンパク質を発現させるための細菌発現システムは、例えば大腸菌、バチルス(Bacillus)種、およびサルモネラ(Salmonella)において使用可能である。Paiva et al., Gene 22: 229-235 (1983);Mosbach et al., Nature 302: 543-545 (1983)を参照されたい。そのような発現システムのためのキットは市販されている。哺乳類細胞、酵母、および昆虫細胞に対する真核生物発現システムは、当技術分野において周知であり、また市販されている。レトロウイルス発現システムが本発明において使用され得る。
【0056】
フラクトマーは、当業者に従って宿主細胞において組み換えで発現され得る。フラクトマーは、当業者に公知の任意の手段によって精製され得る。例えば、フラクトマーは、液体クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、もしくはアフィニティークロマトグラフィー、またはその組み合わせ等のクロマトグラフィーを使用して精製され得、一部の実施形態において、フラクトマーは、クロマトグラフィーなしで精製され、一部の実施形態において、フラクトマーは、逆転移循環を使用して精製される。
他の実施形態において、本開示は、複数のフラクトマーを含む足場を本明細書においてさらに提供する。ポリペプチドが凝集体を形成するように、足場は、フラクトマーの転移温度よりも大きい温度で形成され得る。足場は注射可能であり得る。
【0057】
細胞性足場が、1つの実施形態に従ってさらに提供される。細胞性足場は、足場および複数の細胞を含む。細胞は、多様なタイプを含み得る。一部の実施形態において、細胞は、幹細胞、細菌細胞、もしくはヒト組織細胞、またはその組み合わせを含む。
足場は、低い免疫原性もしくは低い抗原性、またはその両方を有し得る。足場は、細胞成長、細胞動員、および細胞分化、またはその組み合わせのうちの少なくとも1種を促進し得る。足場または細胞性足場は、細胞移植術、組織再生、細胞培養、および細胞ベースのインビトロアッセイに適切であり得る。加えて、足場および/または細胞性足場は、血管系の形成、創傷治癒、またはその組み合わせを促進し得る。
【0058】
薬物送達組成物が、1つの実施形態に従ってさらに提供される。薬物送達組成物は、Tt-加熱より上で凝集体に自己会合される本明細書に詳述される複数のフラクトマー、および凝集体内にカプセル化された作用物質を含み得る。作用物質は治療薬であり得る。一部の実施形態において、作用物質は、小分子、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、脂質、およびその組み合わせから選択される。一部の実施形態において、作用物質は脂肪組織を含む。一部の実施形態において、脂肪組織は吸引脂肪組織を含む。1つの実施形態において、薬物送達組成物は、指定される域内のすべての整数を含めた、約10~90容積%の吸引脂肪組織を含む。別の実施形態において、組成物は、指定される域内のすべての整数を含めた、約25~90容積%の吸引脂肪組織を含む。一部の実施形態において、組成物は、少なくとも25容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも35容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも45容積%の吸引脂肪組織を含む。さらに他の実施形態において、組成物は、少なくとも50容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも60容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも70容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも80容積%の吸引脂肪組織を含む。他の実施形態において、組成物は、少なくとも90容積%の吸引脂肪組織を含む。
【0059】
さらに他の実施形態において、上で詳述されるフラクトマーおよび/または薬物送達組成物は、薬学の技術分野における当業者に周知の標準的技法に従って薬学的組成物に製剤化され得る。したがって、組成物は、1種または複数の薬学的に許容される担体、賦形剤、または活性薬学的成分(API)とともに、フラクトマーもしくはその凝集体、および/またはフラクトマーもしくはその凝集体、ならびに有効量の脂肪組織(例えば、吸引脂肪組織)を含み得る。組成物は、対象への投与のために調製され得る。そのような組成物は、特定の対象の年齢、性別、質量、および病態、ならびに投与の経路等の因子を考慮に入れて、医学の技術分野における当業者に周知の投薬量でかつ技法によって投与され得る。
【0060】
組成物は、予防的にまたは治療的に投与され得る。予防的投与において、それらは、反応を誘導するのに十分な量で投与され得る。治療的適用において、それらは、治療効果を引き出すのに十分な量で、それを必要とする対象に投与される。これを成し遂げるのに充分な量は、「治療有効用量」と定義される。この使用に有効な量は、例えば投与されるフラクトマーレジメンの特定の組成物、投与の様式、疾患のステージおよび重症度、患者の健康の全般的状態、ならびに処方医師の判断に依存すると考えられ、一部の実施形態において、フラクトマーは、作用物質、細胞、脂肪組織(例えば、吸引脂肪組織)、またはその組み合わせとともに共投与され得る。
【0061】
本明細書において提供される組成物は、そのすべてについての内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられる、Donnelly et al., Ann. Rev. Immunol. 15: 617-648 (1997);FeLgnerら、米国特許第5,580,859号;Feigner、米国特許第5,703,055号;およびCarsonら、米国特許第5,679,647号に記載される当技術分野において周知の方法によって投与され得る。フラクトマーは、例えばワクチン銃(vaccine gun)を使用して個体に投与され得る粒子またはビーズに複合され得る。当業者であれば、生理学的に許容される化合物を含めた薬学的に許容される担体の選定は、例えば投与の経路に依存することを承知しているであろう。
組成物は、多様な経路を介して送達され得る。典型的な送達経路は、非経口投与、例えば皮内、筋肉内、または皮下送達を含む。他の経路は、経口投与、鼻腔内、膣内、経皮、静脈内、動脈内、腫瘍内、腹腔内、および表皮経路を含む。一部の実施形態において、フラクトマーは、対象へ、静脈内に、動脈内に、または腹腔内に投与される。
【0062】
方法
本明細書において提供される方法は、数々の方法において使用され得る。本開示の1つの態様は、対象において自家脂肪移植片を増強する方法であって、方法は、自家脂肪移植片が対象において増強されるように、本明細書において提供される組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む、それからなる、またはそれから本質的になる方法を提供する。
本開示のさらに別の態様は、対象において自家脂肪移植片を増強する方法であって、方法は、本明細書において提供されるフラクトマーの治療有効量および脂肪組織の治療有効量を含む、それからなる、またはそれから本質的になる方法を提供する。一部の実施形態において、脂肪組織は吸引脂肪組織を含む。1つの実施形態において、フラクトマーおよび脂肪組織は同時に投与される。別の実施形態において、フラクトマーは、脂肪組織の前に投与される。別の実施形態において、フラクトマーは、脂肪組織の後に投与される。
【0063】
任意の実施形態またはその態様の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物、製剤、方法、過程、および適用にとって適切な改変および適応がなされ得ることは関連する技術分野における当業者に明らかであろう。提供される組成物および方法は例示的であり、指定される実施形態のいずれかの範囲を限定することを意図されるわけではない。本明細書に開示される様々な実施形態、態様、および選択肢のすべては、任意のバリエーションまたは反復で組み合わされ得る。本明細書に記載される組成物、製剤、方法、および過程の範囲は、本明細書に記載される実施形態、態様、選択肢、実施例、および選好性の実際のまたは潜在的なすべての組み合わせを含む。本明細書に記載される例示的な組成物および製剤は、任意の構成要素を省略し得る、本明細書に開示される任意の構成要素を置換し得る、または本明細書における他の箇所に開示される任意の構成要素を含み得る。製剤における任意の他の構成要素の質量に対する、または製剤における他の構成要素の総質量に対する、本明細書に開示される組成物または製剤のいずれかの任意の構成要素の質量の比は、あたかもそれらが明示的に開示されるかのように、本明細書によって開示される。参照により組み入れられる特許または刊行物のいずれかにおける任意の用語の意味が、本開示において使用される用語の意味と矛盾すれば、本開示における用語または語句の意味が支配的である。さらに、先の記述は、単に例示的な実施形態を開示しかつ記載するにすぎない。本明細書において引用されるすべての特許および刊行物は、その具体的な教示に関して、本明細書における参照により組み入れられる。
【0064】
本明細書に記載される本発明の様々な実施形態および態様は、以下の項目によって要約される。
項目1.組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー);および
脂肪組織
を含む組織マトリックス組成物。
項目2.フラクトマーは、
複数の無秩序ドメイン;および
複数の構造化ドメイン
を含む、項目1に記載の組成物。
項目3.無秩序ドメインは、複数の(GXGVP)n(配列番号1)のアミノ酸配列を含み(式中、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸であり、nは1よりも大きいまたは1に等しい整数である);
構造化ドメインはポリアラニンドメインを含む、
項目2に記載の組成物。
項目4.無秩序ドメインは、複数の(GXGVP)n(配列番号2)のアミノ酸配列を含む(式中、XはVal(配列番号3)もしくはAla(配列番号4)、またはAlaとValとの混合物であり、nは1~50の整数である)、
項目2に記載の組成物。
【0065】
項目5.Xは、10:1~1:10(Ala:Val)の比のAlaおよびValの交互反復である、項目4に記載の組成物。
項目6.Xは、1:1(配列番号5)または1:4(配列番号6)の比のAlaおよびValの交互反復である、項目5に記載の組成物。
項目7.ポリアラニンドメインは(Ala)mを含む(式中、mは5~50の整数である)、項目3に記載の組成物。
項目8.ポリアラニンドメインは、
(A)25 (配列番号7);
K(A)25K (配列番号8);
D(A)25K (配列番号9);
GD(A25)K (配列番号10);または
GK(A25)K (配列番号11)
のうちの1種または複数を含む、項目3に記載の組成物。
項目9.ポリペプチドは、
[(GXGVP)n-GX1(A)251m
を含む(式中、XはAまたはVであり;X1はKまたはDであり;nは10~20の整数であり;mは4~8の整数である)([(配列番号2)n-(配列番号10または11)]m)、項目3に記載の組成物。
【0066】
項目10.ポリペプチドは、
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]6-GWP (配列番号12);
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]4-GWP (配列番号13);
M[(GVGVP)15-GK(A25)K]6-GWP (配列番号14);
M[(GVGVP)15-GK(A25)K]4-GWP (配列番号15);
M[(G[A1:V1]GVP)16-GD(A25)K]6-GWP (配列番号16);
M[(G[A1:V1]GVP)16-GD(A25)K]4-GWP (配列番号17);
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]6-GWP (配列番号18);または
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]4-GWP (配列番号19)
のうちの1種または複数を含む、項目3に記載の組成物。
【0067】
項目11.ポリペプチドは、
M[(GVGVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号12);または
M[(G[V4:A1]GVP)15-GD(A25)K]6-GWP(配列番号18)
うちの1種または複数を含む、項目3に記載の組成物。
項目12.フラクトマーは、加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)を有する、項目1~11のいずれか1項に記載の組成物。
項目13.冷却の転移温度(Tt-冷却)は濃度非依存的である、項目12に記載の組成物。
項目14.加熱の転移温度(Tt-加熱)および冷却の転移温度(Tt-冷却)は約10℃~約45℃に及ぶ、項目12に記載の組成物。
【0068】
項目15.フラクトマーは、Tt-加熱より上で固体凝集体を形成する、項目12~14のいずれか1項に記載の組成物。
項目16.固体凝集体は、Tt-冷却より下に冷却された場合に再可溶化する、項目15に記載の組成物。
項目17.固体凝集体は安定な3次元マトリックスである、項目15に記載の組成物。
項目18.固体凝集体は複数の微小孔を含む、項目15に記載の組成物。
項目19.複数の微小孔は、サイズが約1μm~約150μmに及ぶ、項目18に記載の組成物。
【0069】
項目20.約200μM~約2mMのフラクトマーを含む、項目1に記載の組成物。
項目21.脂肪組織は吸引脂肪組織を含む、項目1に記載の組成物。
項目22.約10容積%~約90容積%の範囲の吸引脂肪組織を含む、項目21に記載の組成物。
項目23.約25容積%~約75容積%の範囲の吸引脂肪組織を含む、項目21または22に記載の組成物。
項目24.約50容積%の吸引脂肪組織を含む、項目22または23に記載の組成物。
【0070】
項目25.約1:9~約9:1に及ぶ比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む、項目21に記載の組成物。
項目26.約1:3~約3:1に及ぶ比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む、項目21に記載の組成物。
項目27.約1:1の比のフラクトマーと吸引脂肪組織との混合物を含む、項目21に記載の組成物。
項目28.成形可能な液体または半固体である、項目1に記載の組成物。
項目29.注射可能または埋め込み可能である、項目1に記載の組成物。
【0071】
項目30.2または3次元の形状、エリア、または容積部に成形可能または成型可能である、項目1に記載の組成物。
項目31.フラクトマーは、細胞浸潤および脂肪組織の血管新生を可能にする、項目1に記載の組成物。
項目32.自家脂肪移植片が対象において増強されるように、項目1に記載の組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む、対象において自家脂肪移植片を増強する方法。
項目33.組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)の治療有効量および脂肪組織の治療有効量を対象に共投与する工程を含む、対象において自家脂肪移植片を増強する方法。
項目34.脂肪組織は吸引脂肪組織を含む、項目33に記載の方法。
項目35.フラクトマーおよび脂肪組織は同時にまたは逐次的に投与される、項目33に記載の方法。
項目36.フラクトマーおよび脂肪組織は逐次的に投与され、フラクトマーは脂肪組織の投与の前に投与される、項目35に記載の方法。
項目37.フラクトマーおよび脂肪組織は逐次的に投与され、脂肪組織はフラクトマーの投与の前に投与される、項目35に記載の方法。
項目38.フラクトマーおよび脂肪組織は、インビトロで組み合わされ、2または3次元の形状、エリア、または容積部に成形されまたは成型され、対象においてインサイチューで埋め込まれる、項目35に記載の方法。
項目39.フラクトマーおよび脂肪組織は、投与の前に、成形可能な液体、半固体、または成型された半固体であり、投与の後に、固体凝集体を形成する、項目33に記載の方法。
【0072】
項目40.フラクトマーおよび脂肪組織は、フラクトマーのTt-加熱より下で対象に共投与され、フラクトマーおよび脂肪組織は、対象の体温への曝露後に固体を形成する、項目39に記載の方法。
項目41.フラクトマーは、細胞浸潤および脂肪組織の血管新生を可能にする、項目33に記載の方法。
項目42.(a)対象から脂肪組織を得る工程;および
(b)組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)と工程(a)の脂肪組織とをフラクトマーのTt-加熱より下で組み合わせて混合物を形成する工程
を含む、自家脂肪移植片組成物を調製するための方法。
項目43.(c)混合物を形状、エリア、または容積部に成形する工程
をさらに含む、項目44に記載の方法。
項目44.(d)注射または埋め込みによって対象に混合物を共投与する工程
をさらに含む、項目42または43に記載の方法。
【0073】
項目45.混合物は、フラクトマーのTt-加熱より上の温度で固体凝集体を形成する、項目44に記載の方法。
項目46.組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)と、組み合わせのための容器、特異的な容積寸法のための型、または脂肪組織吸引および/もしくは投与のための手段のうちの1種または複数とを含むキット。
項目47.それを必要とする対象における自家脂肪移植のための、組み換え部分的秩序ポリペプチド(フラクトマー)の治療有効量および脂肪組織の治療有効量の使用。
【実施例
【0074】
(実施例1)
フラクトマーと脂肪組織(脂肪)とを混合する方法
脂肪移植は、患者の身体の一方の部分から脂肪組織を取り出し、同じ処置の間に、再建または美容的増進のために、その材料を新しいエリアへ注射する、脂肪吸引を使用する臨床的工程である。脂肪吸引された脂肪を処理して、過度の血液、油、および非脂肪組織を取り除き、処理された組織(吸引脂肪組織と呼ばれる)は、患者への(別の身体エリアにおける)戻し注射のためにシリンジに回収される。
【0075】
精製された吸引脂肪組織は、再建されるエリアへの注射のために液体フラクトマーと組み合わされ得る。図1は、安定化された脂肪移植片の再注射のために、フラクトマーと収集された脂肪とを組み合わせる提案される方法を示している。収集された吸引脂肪組織は、フラクトマーマトリックス溶液と混合され、次いで吸引脂肪組織:フラクトマー混合物は、患者の欠損エリアに注射される。体温の増加は、フラクトマーに固体足場構造を形成させ、それは移植片安定化につながる。精製された吸引脂肪組織は、また、加熱されたエクスビボの型において液体フラクトマーと組み合わされ得、加熱された場合にフラクトマーは凝集し、成型された脂肪形状を安定化し、それは次いで、患者の所望のエリアに埋め込まれ得る。
図2は、未処理の脂肪と処理された吸引脂肪組織との間の構造的な差を図解する。脂肪吸引および処理の後、脂肪は、その固形様特性を喪失し、形状または容積を維持するための機械的完全性を有しない。吸引脂肪組織とフラクトマーとを混合することによって、脂肪移植片の形状および容積保持を維持するように、構造的および機械的完全性が強化され得る。
【0076】
フラクトマー(配列番号12)は熱に反応性であり、加熱された場合に固体の多孔質エラスチン様ネットワークを形成する(図3A)。フラクトマーは、室温で液体でありかつ注射可能であるが、体温で凝集しかつ固体の多孔質ネットワークを形成し、より高い温度ほど、封入された吸引脂肪組織を有するフラクトマー足場形成を開始する。フラクトマーが、固体の多孔質ネットワークへの相分離を受ける閾値温度は調整可能である。フラクトマーの組成およびセグメント組織化を調整することによって、高い表面対容積比、および天然エラスチンと同様のフラクタル次元を有する、機械的に安定なネットワークを設計することが可能である。より高い温度でのフラクトマー(配列番号12)の多孔質ネットワークは、伝統的なヒドロゲルと比較して、より大きな栄養素の流れを可能にもする(図3B)。
【0077】
(実施例2)
フラクトマーは、いくつかの保管条件において常温貯蔵可能(shelf-stable)である
フラクトマーの貯蔵寿命を評価するために、高精製フラクトマー(配列番号12)の少なくとも3つのバッチ(再現性を確保するため)を、アリコートに解剖し(parse)、3種の異なる条件下で保管した:(1)凍結乾燥し、室温で保管する、(2)凍結乾燥し、-20℃で保管する、(3)PBSに再懸濁し、-20℃で保管する。6カ月終わりまでの周期的な時点で、タンパク質分解の発生を、UV分光測色法光学密度およびSDS-PAGEを使用して評価した(図4A~B)。フラクトマータンパク質は非常に無秩序であり、それゆえ常に機能的に変性しているため、それらは、ほとんどのタンパク質と比較して、著しく低下した保管要件を有する。凍結乾燥されかつ-20℃で保管されたフラクトマーサンプルは、精確なTt-加熱またはTt-冷却相転移のシフトを経時的に示さず(図4A)、他の2種の条件下で保管されたサンプルは、同様の結果を示した。付加的に、標的フラクトマータンパク質バンドの喪失またはシフトは、どの時点においてもSDS-PAGEによって観察されず、短縮/分解産物、不純物、または他の付加的なバンドは観察されなかった(図4B)。
【0078】
(実施例3)
フラクトマーは、健常な脂肪細胞をカプセル化し得、形状および突出を向上させ得る
廃棄されたヒト吸引脂肪組織を、種々のフラクトマー濃度と混合し、共焦点顕微鏡法および組織学を使用して分析した(図5A~C)。すべての場合において、吸引脂肪組織は、脂肪吸引カニューラを通過するのに十分に小さなフラグメントである、50~500個細胞の群に塊になった>90%の大きな脂肪細胞から構成された。250μM~1mMに及ぶフラクトマー濃度を吸引脂肪組織と1:1比で室温にて混合し、次いで37℃のインキュベーターに30分間置き、その後、(a)染色、および共焦点顕微鏡法を使用したイメージング、または(b)10%ホルマリン中での一晩の固定、それに続く組織学的分析のためのパラフィン包埋およびH&E染色。
【0079】
図5Aは、吸引脂肪組織:フラクトマー(配列番号12)混合物についての共焦点顕微鏡法分析を示している。吸引脂肪組織を、1:1の比で種々のフラクトマー濃度(低=250μM、高=750μM)と混合し、LipidTOX(赤色、フラクトマーも染色する)およびDAPI(青色)で染色した。イメージングは、脂肪細胞の構造または生存率の変化を示さなかった。フラクトマーは、個々の脂肪細胞の間の小さな間隙に観察されたものの、フラクトマーは、主として、脂肪細胞の塊を結び付ける高度に多孔質の「のり」の1タイプとして機能する。
図5B~Cは、吸引脂肪組織:フラクトマー(配列番号18)の1:1比の混合物と比較した、脂肪単独についての組織学的分析を示している。吸引脂肪組織単独、およびフラクトマー(250μM)と混合された吸引脂肪組織を固定し、H&Eで染色した。フラクトマーは、より濃縮された脂肪細胞のエリアの間に散在して見られ得る。
【0080】
(実施例4)
フラクトマー単独および脂肪+フラクトマーを使用して3Dの型を創出する
脂肪と共注射された場合に形状および突出を維持するフラクトマーの能力も、3Dプリントされた半球状の型を使用して評価した。フラクトマー(配列番号12)を液体状態で型に注射し、型からの取り出しの前に、37℃で5分間凝集させた(図6A)。200μM~2mMに及ぶ濃度のフラクトマー単独(配列番号12)を使用した場合、突出維持がスケーリングされ、約500μMの最小濃度が、形状を保護するために必要とされた(図6B)。図6Bは、低(500μM)、中(750μM)、および高(2mM)濃度のフラクトマー単独を成型することが、増加する濃度とともに形状保護の増加を示すことを実証している。フラクトマー溶液(750μM)(配列番号12)を様々な比でヒト吸引脂肪組織とさらに混合して、脂肪形状安定性に対するその効果を決定した(図6C)。フラクトマーは、単独では単に油性液体として挙動するにすぎない吸引脂肪組織の形状保護を著しく向上させ得た(図6C)。フラクトマー溶液(750μM)(配列番号18)を、3Dプリントされた型において、脂肪吸引された豚脂肪と1:1比で混合し、37℃に置いてフラクトマーを凝集させた場合に、等価の結果が観察された(図6D)。これらの結果は、脂肪をフラクトマーと混合した場合の驚くべきかつ予想外の相補的な機械的相互作用を示唆する。
【0081】
全体として、吸引脂肪組織とフラクトマーとの混合物は、型からの取り外し後に、形状保持を向上させることが見出された。最も驚くべきかつ予想外の発見は、脂肪+フラクトマー混合物の成形可能性であった。形成した後でさえ、カプセル化された脂肪は、構造的完全性の喪失なく、成型され得、成形され得、切断され得、かつ概して操作され得る。この材料をインビボで所望の形状に操作する能力は、患者における欠陥を埋めかつ再構築するために吸引脂肪組織を使用する外科医に、先例がない量の制御を提供する。
【0082】
(実施例5)
フラクトマーの形状は注射時に制御され得る
フラクトマー注射物の形状は、注射物のパターンに基づいても制御され得る。蛍光標識されたフラクトマー溶液(750μM)(配列番号12)を、3種の異なる形状パターンでマウスの後部脇腹に注射し、注射後1カ月および4カ月の時点で、形状をIVISスペクトルイメージングを使用してモニターした。球体、細長い棒、および分散した点という3種すべての形状に関して、注射物は、注射物の存続期間を通じてそれらの所望の形状を維持した(図7)。
【0083】
(実施例6)
フラクトマーは長期安定性を示し、その分解は濃度で制御可能である
脂肪移植を増強するために使用される場合、フラクトマーは、脂肪増殖と同調するスケジュールで分解しかつ再吸収するように設計されるべきであり、脂肪細胞がフラクトマー容積部を、それが非毒性のアミノ酸に壊れていくにつれて置き換えることを可能にする。フラクトマーは永続的な埋め込みであることを意図されないことから、完全に患者自身の組織から構成される組織移植片を最終的にもたらす制御された分解は、異物反応の長期リスクを回避する。
【0084】
フラクトマーの長期安定性を評価するために、フラクトマー(配列番号12)の種々の製剤を近赤外色素で蛍光標識し、免疫能力のあるBL/6マウスに注射した。BL/6マウスの使用は、免疫調節性の分解を、存在する場合には捕捉するであろうことを確保した。その後、フラクトマータンパク質の分解の速度およびインビボ安定性を、IVISスペクトルインビボイメージングを使用して10カ月間にわたって追跡した。6カ月の時点における蛍光保持のスナップ写真は、蛍光強度が、低濃度と比較して中および高濃度のフラクトマーに関して有意に高かったことから、フラクトマー分解が濃度(低=250μM、中=750μM、高=1500μM)で制御され得ることを実証している(図8A)。種々のフラクトマー濃度製剤を注射されたBL/6マウスにおける代表的な蛍光分光法画像は図8Bに示されている。
フラクトマー(250μM)の低濃度製剤の使用は、3カ月終わりまで再吸収され続けた(図8C)。フラクトマーの存在は、蛍光スキャンにおいて明白であったものの、目に見えるまたは触知可能な容積部は明白ではなかった(図8C)。フラクトマーの中(750μM)および高(1500μM)濃度製剤は、より長いインビボ持続性を有してより安定であることが見出された(図8C)。
【0085】
(実施例7)
フラクトマーは脂肪生存性および容積保持を向上させる
フラクトマー(配列番号12)の低濃度(250μM)溶液を使用して、脂肪:フラクトマー比を最初にスクリーニングして、移植片において脂肪を低下させる効果を決定した。脂肪単独(100%脂肪)、90容積%の脂肪+フラクトマー溶液、75容積%の脂肪+フラクトマー溶液、50容積%の脂肪+フラクトマー溶液、および50容積%の脂肪+PBS対照、の注射混合物をnu/nuマウス系統において6週間にわたって評価した。ヒト脂肪組織の拒絶を阻止するために、nu/nuマウスを選択した。nu/nuマウスへの注射のために実験群において使用された種々の脂肪:フラクトマー溶液(250μM)混合物の例となる図式が図9Aに示されている。
【0086】
注射後、50容積%の脂肪+PBS対照群に関して、最初の24時間以内に最大の容積喪失が観察された(図9B)。これは、診療所においてよく見られる、手術室における脂肪精製工程の間に取り除かれなかった脂肪混合物における残余の油の存在に起因する可能性があった。脂肪移植片は、種々の比のフラクトマーマトリックスと混合された場合、1週間にわたる容積保持の向上を示した(図9B~C)。注射後6週間の時点で、少なくとも50%弱の脂肪組織を使用して、脂肪単独と同じ最終容積を達成し得た(図9D)。安定化フラクトマーマトリックスの内包なしで、低下した脂肪量(50容積%の脂肪)を使用した場合、容積保持は有意に低かった(図9D)。
脂肪容積保持向上をさらに調べるために、より高い濃度(750μM)のフラクトマーを使用し、観察時間を延長した(図9E)。50容積%の脂肪+フラクトマー溶液の注射を、脂肪単独注射と3カ月間にわたって比較し、その時点で、脂肪単独対照群における有害な嚢胞形成に起因して実験を中止した。フラクトマーのこのより高い濃度製剤の使用は、より高い容積保持を示した(図9E)。注射された初回脂肪の量に対して正規化すると、脂肪とフラクトマーとを組み合わせることによって、3カ月の時点における移植された脂肪の有効容積は3倍になった(図9F)。
【0087】
埋め込み物についての組織学的分析は、血管系供給が、脂肪単独から作製された移植片と比較して、フラクトマー(250μM)とともに作製された脂肪移植片内で高いことを明らかにした(図10A)。脂肪細胞の群の間の支持的フラクトマー区域においてCD31+血管系マーカーの高い普及が観察された(図10A、小さな赤色の矢印)。CD31+染色は、生存する脂肪細胞群および移植片のフラクトマーの多い区域の両方において、血管形成の高い普及を明らかにし、フラクトマーが、埋め込まれた脂肪の生存を向上させ得る可能性があることを示唆する。
【0088】
脂肪単独と1:1の脂肪:フラクトマー(250μM)混合物との間の、注射後1カ月の時点における脂肪分布についての組織学的比較は、脂肪+フラクトマー実験群において使用される50容積%弱の脂肪にもかかわらず、移植片細胞組成の差を示さなかった(図10B)。これは、脂肪:フラクトマー移植片の良好な組み入れを示し、脂肪増殖がフラクトマーマトリックス内で高レベルで生じている可能性があることを示唆する。さらに、残余のフラクトマーの証拠が、異物反応なしで注射後30日目に観察され、それは慢性炎症を暗示するであろう(図10C)。インビトロ混合物からの組織学的結果と同様に、新しいECM、細胞浸潤物、および血管新生は形成するのに時間を取られるものの、フラクトマーは、脂肪細胞群の間で容積を維持する「のり」タンパク質の1タイプとして持続するように見える。
【0089】
(実施例8)
脂肪単独注射における嚢胞形成および壊死は、脂肪+フラクトマー混合物においては観察されない
脂肪組織の有効容積を増加させることは、フラクトマーを使用する場合の成功の主要な測定基準であるが、その増加した脂肪容積の正確な生物学的組成は等しく重要である。例えば、嚢胞形成、石灰化、および壊死の回避は、健常な脂肪組織の発達に非常に重要である。健常な脂肪形成におけるこれらの異常の証拠を、超音波、組織学、およびマイクロ-CTの組み合わせを使用することによってスクリーニングした。脂肪移植片の超音波を、脂肪単独、または吸引脂肪組織とフラクトマー溶液(750μM)(配列番号12)との1:1混合物を注射されたマウスにおいて3カ月間にわたって捕捉した(図11A)。脂肪壊死の主要なマーカーである大きな油嚢胞の形成が、脂肪単独群の移植片において、注射後1カ月および3カ月の時点で観察され(図11A、上の行のパネル、白い矢印)、一方で、脂肪+フラクトマー溶液を注射されたどのマウスに関しても嚢胞形成は観察されなかった(図11A、下の行のパネル)。これらの嚢胞は、脂肪単独を注射されたマウスの>50%において1カ月までに観察された。付加的に、これらの嚢胞は、3カ月間の時間経過を通じて容積が拡張することが見出され、数匹のマウスにおいて、嚢胞は、注射物全体の容積を独占した。さらに、3カ月の時点における、脂肪単独、および1:1の脂肪:フラクトマー溶液(750μM)移植片の細胞組成についての組織学的比較は、脂肪単独群における大きな油嚢胞形成の明確な証拠を示している(図11B、左のパネル)。しかしながら、組織学的分析によってどのフラクトマー移植片においても嚢胞形成は観察されなかった(図11b、右のパネル)。目立ったことには、より高い濃度のフラクトマー溶液(750μM)ほど、3カ月の時点でフラクトマーのより高い保持につながり、フラクトマーは脂肪細胞を支持すると見られ得る。これらの結果は、より高い濃度のフラクトマーを使用した再吸収調査からのデータと符号している。
【0090】
脂肪単独群における嚢胞の形成は、ヒトにおける脂肪壊死の臨床観察と符号している。50容積%の脂肪+フラクトマー溶液の注射物は、脂肪細胞と残余のフラクトマーとの不均一な混合物であり、造影CT下で血管新生のはっきりとした兆候を有する(脂肪単独では見られない)。さらに、マウスにおいて点状の白い印として出現するであろう石灰化は、脂肪+フラクトマー移植片において観察されなかった。フラクトマーを用いた移植片の健常性の向上は、使用される脂肪組織の量の低下によるものである可能性があり得、それはより少ない初回代謝要求を要する。付加的に、フラクトマーの多孔質の性質および迅速な血管新生は、脂肪細胞生存および成長のための栄養素を急速に提供し得る。
【0091】
(実施例9)
自家脂肪移植の豚モデルにおけるフラクトマー
齧歯類モデルは主要な変数の最適化に十分であるが、小動物は皮下脂肪組織をほとんど所有せず、それらの軟組織構造はヒトと解剖学的に異なる。加えて、ヌードマウスは免疫不全であり、ヒト細胞を許容し得るものの、ヒト脂肪の使用は、身体反応および注射物の使用可能な容積の両方において、自家移植からの重要な差異である。それゆえ、ミニブタモデルにおける長期フラクトマー増進脂肪移植がさらに評価されるであろう。この提案される実験は、フラクトマーが、自家脂肪移植の認められた豚モデルにおいて、容積を拡張させ得、臨床的に関連する容積で健常な脂肪組織を創出し得ることを実証するであろう。
【0092】
ミニブタは麻酔され、脊椎に3~4cm隣接した背部高くに小さな正中切開がもたらされるであろう。皮下脂肪蓄積は、4mmカニューラを用いて電動アシスト式脂肪吸引を使用して吸引されるであろう。目標は、およそ50cm3の脂肪組織を収集することである。必要な場合には、後部脇腹近くの脂肪吸引を可能にするために、付加的な切開がもたらされるであろう。脂肪は、移植のためのヒト脂肪を調製するために使用されるRevovle(商標)システムを使用して洗浄されかつ処理されるであろう。次いで、吸引脂肪組織は、それぞれ約25cm3容積の4種の異なる注射製剤混合物に分けられ、それは、乳房再建形状のための外科的修正および小さな乳腺腫瘤摘出術に臨床的に使用される可能性があるであろう:100容積%の吸引脂肪組織(脂肪単独)、50容積%の吸引脂肪組織+フラクトマー溶液、25容積%の吸引脂肪組織+フラクトマー溶液、またはフラクトマー単独。各25cm3混合物は、乳房脂肪における固有の部位に注射されるであろう。これらの群は、非乳房適用におけるフラクトマーの使用を模倣するために、ブタの脇腹に沿って約3mLの注射物を用いて重複して行われるであろう。この仕事の非常に重要な構成要素は、診療所を模倣する環境におけるフラクトマーの「使用しやすい」分析であると考えられ、既存の外科的実践との両立性を確保する、最終産物送達技法のタイプについての洞察を可能にする。次いで、ブタは回復し、収容され、モニターされる。
【0093】
目標は、フラクトマーを用いて安定化された脂肪移植片の容積保持、およびその容積の細胞健康状態/組成を決定することである。自家脂肪移植片に関する臨床的な脂肪容積保持は、埋め込みの技法に応じて、6カ月の時点で30~60%であることが報告されており、同様の保持がミニブタモデルにおいて見られている。フラクトマーと組み合わされた脂肪の容積は、初回注射液の継続的生存能力、ならびに注射された脂肪細胞の増殖または肥大により長期間維持されるであろう。脂肪がフラクトマーマトリックスに希釈された場合、注射液の単位容積あたりの酸素および他の栄養素の消費は、純粋な脂肪よりも低いであろうため、これは合理的期待である。単位容積あたりの消費が低いほど、拡散が、注射された脂肪細胞に対して要される栄養性滋養を充分に送達するであろう可能性を増加させるであろう。これらの成果は、3D超音波および定期的生検の組み合わせを使用して評価されているところである。イメージングは、移植片による嚢胞形成の可能性の決定を可能にするであろう。10、60、および180日目に、細胞組成、線維症、新血管形成、壊死、および慢性炎症についての組織学的検討のために、組織は、針生検を使用して抽出されるであろう(または180日目に全切除)。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
【配列表】
2023529610000001.app
【国際調査報告】