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特表2023-529616リチウム二次電池の活性金属の回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】リチウム二次電池の活性金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 26/12 20060101AFI20230704BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20230704BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230704BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20230704BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20230704BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20230704BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C22B26/12
H01M10/54
C22B7/00 C
C22B3/06
C22B3/22
C22B23/00 102
C22B47/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574224
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2021006646
(87)【国際公開番号】W WO2021246721
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0065753
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Denka Black
2.デンカ ブラック
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ホン スク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジ ユン
(72)【発明者】
【氏名】ソン スン レル
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA16
4K001DB02
4K001DB07
4K001DB25
4K001HA09
5H031RR02
(57)【要約】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法は、リチウム複合酸化物を含む正極活物質混合物を加圧条件で還元性反応ガスと反応させ、水洗処理を行うことができる。この場合には、短縮された工程時間内に多量の正極活物質混合物を処理することができ、高収率および高効率で活性金属を回収することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池の廃正極からリチウム複合酸化物を含む正極活物質混合物を準備するステップと、
前記正極活物質混合物を3bar~25barの加圧条件で還元性反応ガスと反応させて予備前駆体混合物を形成するステップと、
前記予備前駆体混合物を水洗処理してリチウム前駆体を回収するステップとを含む、リチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項2】
前記還元性反応ガスとの反応温度は420℃~500℃である、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項3】
前記還元性反応ガスとの反応は、5~50mL/min/正極活物質gで1時間未満の反応時間で前記還元性反応ガスを反応器内に供給することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項4】
前記還元性反応ガスとの反応は、固定層反応器または流動層反応器で行われる、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項5】
前記還元性反応ガスは、水素およびキャリアガスを含み、
前記還元性反応ガス中の水素の濃度は10~40体積%である、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項6】
前記キャリアガスは、窒素またはアルゴンを含む、請求項5に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項7】
前記正極活物質混合物を準備するステップは、前記廃正極を乾式粉砕することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項8】
前記リチウム複合酸化物は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含有する、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項9】
前記予備前駆体混合物は、予備リチウム前駆体粒子および遷移金属含有粒子を含み、
前記遷移金属含有粒子は、Ni含有粒子、Co含有粒子およびMn含有粒子を含む、請求項7に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項10】
前記水洗処理によって前記遷移金属含有粒子を沈殿させることをさらに含む、請求項9に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項11】
前記遷移金属含有粒子を選択的に酸溶液で処理し、酸塩の形態の遷移金属前駆体を回収するステップをさらに含む、請求項9に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の活性金属の回収方法に関する。より詳しくは、リチウム二次電池の廃正極からリチウム等を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電と放電の繰り返しが可能な電池であり、情報通信およびディスプレイ産業の発展につれてカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器に広く適用されてきた。
【0003】
二次電池としては、例えば、リチウム二次電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池などが挙げられる。中でもリチウム二次電池は、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利な点で積極的に開発及び適用されてきた。
【0004】
リチウム二次電池は、正極、負極及び分離膜(セパレーター)を含む電極組立体と、前記電極組立体を含浸させる電解質とを含むことができる。前記リチウム二次電池は、前記電極組立体および電解質を収容する、例えば、パウチ状の外装材をさらに含むことができる。
【0005】
前記リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物を用いることができる。前記リチウム複合酸化物は、さらにニッケル、コバルト、マンガンなどの遷移金属を含有することができる。
【0006】
前記正極活物質としてのリチウム複合酸化物は、リチウム前駆体と、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有するニッケル-コバルト-マンガン(NCM)前駆体とを反応させて製造することができる。
【0007】
前記正極活物質に前述した高コストの有価金属が用いられることにより、正極材の製造にリチウム二次電池の製造コストの20%以上がかかっている。
【0008】
また、近年、環境保護への関心が高まることによって、正極活物質のリサイクル方法の研究が進められている。前記正極活物質のリサイクルのためには、廃正極から前記リチウム前駆体を高効率、高純度で再生する必要がある。
【0009】
従来は硫酸のような強酸に廃正極活物質を浸出させて有価金属を順次回収する方法が利用されていたが、前記の湿式工程の場合は、再生選択性、再生時間などの面で不利であり、環境汚染を引き起こす可能性がある。
【0010】
例えば、韓国公開特許第2015-0002963号公報では、湿式方法を用いたリチウムの回収方法を開示しているが、コバルト、ニッケルなどを抽出して残りの廃液から湿式抽出によってリチウムを回収しているので、回収率が過度に低下し、廃液から多くの不純物が発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、正極活物質混合物から高収率及び高効率でリチウム二次電池の活性金属を回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法は、リチウム二次電池の廃正極からリチウム複合酸化物を含む正極活物質混合物を準備するステップと、前記正極活物質混合物を3bar~25barの加圧条件で還元性反応ガスと反応させて予備前駆体混合物を形成するステップと、前記予備前駆体混合物を水洗処理してリチウム前駆体を回収するステップとを含むことができる。
【0013】
一実施形態では、前記還元性反応ガスとの反応温度は、420℃~500℃であってもよい。
【0014】
一実施形態では、前記還元性反応ガスとの反応は、5~50mL/min/正極活物質gで1時間未満の反応時間で前記還元性反応ガスを反応器内に供給することを含むことができる。
【0015】
一実施形態では、前記還元性反応ガスとの反応は、固定層反応器または流動層反応器で行うことができる。
【0016】
一実施形態では、前記還元性反応ガスは、水素およびキャリアガスを含み、前記還元性反応ガス中の水素の濃度は10~40体積%であってもよい。
【0017】
一実施形態では、前記キャリアガスは、窒素またはアルゴンを含むことができる。
【0018】
一実施形態では、前記正極活物質混合物を準備するステップは、前記廃正極を乾式粉砕することを含むことができる。
【0019】
一実施形態では、前記リチウム複合酸化物は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含有することができる。
【0020】
一実施形態では、前記予備前駆体混合物は、予備リチウム前駆体粒子および遷移金属含有粒子を含み、前記遷移金属含有粒子は、Ni含有粒子、Co含有粒子およびMn含有粒子を含むことができる。
【0021】
一実施形態では、前記水洗処理によって前記遷移金属含有粒子を沈殿させることをさらに含むことができる。
【0022】
一実施形態では、前記遷移金属含有粒子を選択的に酸溶液で処理し、酸塩の形態の遷移金属前駆体を回収するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
例示的な実施形態によれば、リチウム二次電池の廃正極から得られた正極活物質混合物を加圧条件で還元性ガスと反応させてリチウム前駆体を回収することができる。この場合には、工程時間が短縮されて時間当たりの処理量が増加できるので、リチウム前駆体を高収率および高効率で得ることができる。
【0024】
例示的な実施形態によれば、廃正極活物質から乾式ベースの工程によってリチウム前駆体を回収することができる。この場合には、湿式ベースの工程とは異なり、付加工程を必要とせずに高純度でリチウム前駆体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の正極を説明するための概略断面図である。
図2図2は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
図3図3は、いくつかの実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
例示的な実施形態は、リチウム複合酸化物を含む正極活物質混合物を加圧条件で還元性反応ガスと反応させ、水洗処理する、リチウム二次電池の活性金属の回収方法を提供するものである。この場合には、短縮された工程時間内に多量の正極活物質混合物を処理することができ、高収率および高効率で活性金属を回収することができる。
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。但し、これらの実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0028】
本明細書で使用される用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために、前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すものとして使用される。
【0029】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の正極を説明するための概略断面図である。また、図2は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。説明の都合上、図2は、工程のフローと共に反応器の模式図を併せて示している。例えば、例示的な固定層反応器を用いたリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【0030】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法は、リチウム二次電池の廃正極からリチウム複合酸化物を含む正極活物質混合物を準備するステップを含むことができる(例えば、S10)。
【0031】
例えば、前記正極活物質混合物は、廃リチウム二次電池から得ることができる。前記廃リチウム二次電池は、実質的に再使用(充放電)ができないリチウム二次電池を含み、例えば、寿命が尽きて充放電効率が大幅に低下したリチウム二次電池、または衝撃や化学反応により破壊されたリチウム二次電池を含むことができる。
【0032】
本明細書で使用される用語「正極活物質混合物」とは、前記廃正極から正極集電体が実質的に除去された後、後述する還元性反応処理に投入される原料物質を指すことができる。また、例えば、前記正極活物質混合物は、実質的にリチウム二次電池の負極物質を含まなくてもよい。
【0033】
図1を参照すると、廃リチウム二次電池から分離された正極100は、正極集電体110と、正極集電体110上に形成される正極活物質層150とを含むことができる。
【0034】
正極活物質層150は、バインダー140内に分散された正極活物質120および導電材130を含むことができる。
【0035】
正極集電体110は、例えば、アルミニウム箔(foil)のような金属箔を含むことができる。前記バインダーは、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの樹脂物質を含むことができる。前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系物質を含むことができる。
【0036】
一実施形態では、バインダー140としてPVDFを使用し、導電材130としてカーボンブラックを使用することができる。
【0037】
一実施形態では、前記正極活物質層150に含まれる正極活物質120は、リチウムおよび遷移金属を含有する酸化物を含むことができる。前記正極活物質混合物は、リチウム複合酸化物を含むことができる。
【0038】
一実施形態では、前記リチウム複合酸化物は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)系、リチウムコバルトニッケルマンガン酸化物(LiCoxNiyMnzO2、x+y+z=1)系、リチウムコバルトニッケル酸化物(LiCoxNiyO2、x+y=1)系、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2)系、リチウムマンガンリン酸酸化物(LiMnPO4)系、リチウム鉄リン酸酸化物(LiFePO4)系、リチウムニッケルアルミニウム酸化物(LiNixAlyO2、x+y=1)系、およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNixCoyAlzO2、x+y+z=1)の少なくとも1つを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記リチウム複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むNCM系リチウム複合酸化物であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0041】
[化学式1]
LixM1aM2bM3cOy
【0042】
化学式1中、M1、M2及びM3は、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、GaおよびBから選択されるいずれか1つであってもよい。化学式1中、0<x≦1.2、2≦y≦2.02、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<a+b+c≦1であってもよい。
【0043】
例えば、正極活物質120は、正極集電体110、バインダー140および導電材130から分離して選択的に回収することができる。例えば、後述する水素還元工程により回収された正極活物質120からリチウム前駆体を再生することができる。
【0044】
正極集電体110が完全に分離されずに前記リチウム前駆体の再生工程に混合されると、高温処理工程において、例えばアルミニウム-リチウム(Al-Li)合金が生成してリチウム前駆体の回収率が低下することがある。また、導電材130およびバインダー140が除去されずに前記リチウム前駆体の再生工程に混合されると、炭酸リチウムが生成して所望の化合物の形態(例えば、リチウム水酸化物)のリチウム前駆体の生成が困難となることがある。
【0045】
一実施形態では、回収された前記廃正極を乾式粉砕して正極活物質混合物を生成することができる。例えば、前記正極活物質混合物は、粉末状に製造することができる。この場合、前記正極集電体、バインダーおよび導電材が実質的に除去された状態で前記水素還元処理が行われるので、Li-Al合金化合物、炭酸リチウム等の不純物または副反応の発生を抑制し、高純度のリチウム前駆体を得ることができる。
【0046】
例えば、前記正極集電体から完全に分離された正極を準備し、前記正極を熱処理した後、熱処理された前記正極を粉砕することにより、前記正極に含まれている正極活物質を分離することができる。しかし、本発明の実施形態では、前記乾式粉砕工程によって正極活物質混合物を生成するだけでなく、化学的溶媒処理による正極活物質の回収方法を適用することもできる。前記正極活物質混合物は、前述のように、リチウム-遷移金属酸化物の粉末を含み、例えば、NCM系リチウム酸化物粉末(例えば、Li(NCM)O2)を含むことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記粉砕処理の前に、回収された前記正極を熱処理することもできる。これにより、前記粉砕処理時の正極集電体の脱着を促進することができ、前記バインダーおよび導電材を効率よく除去することができる。前記熱処理の温度は、例えば、約100~500℃、好ましくは約350~450℃であってもよい。前記範囲内では、実質的に前記不純物が除去され、リチウム-遷移金属酸化物の分解、損傷を防止することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質混合物の平均粒径(D50)は5~100μmであってもよい。前記範囲内では、前記正極活物質混合物に含まれる正極集電体、導電材、およびバインダーから、回収の対象となるLi(NCM)O2のようなリチウム-遷移金属酸化物を容易に分離することができる。
【0049】
前述の工程により、前記正極活物質混合物からアルミニウムのような正極集電体成分を実質的に分離・除去することができる。また、前述の工程により、導電材およびバインダに由来する成分の含有量が減少するか、または前記導電材およびバインダが実質的に除去された正極活物質混合物を得ることができる。
【0050】
例えば、前述の工程により、リチウム二次電池の廃正極からリチウム複合酸化物を含む正極活物質混合物を準備することができる(例えば、S10)。
【0051】
例えば、前記正極活物質混合物を加圧条件で還元性反応ガスと反応させることができる(例えば、S20)。
【0052】
例えば、前記正極活物質混合物と還元性反応ガスとの反応は、固定層反応器または流動層反応器で行うことができる。しかし、本発明の反応器の種類はこれらに限定されず、当分野で使用される反応器をいずれも使用することができる。
【0053】
一実施形態では、固定層反応器200は、反応器チャンバー230と、反応器チャンバー230内に前記正極活物質混合物をロードするローディングステージ250と、反応器チャンバー230内の圧力を調整する圧力調整部204とを含むことができる。また、固定層反応器200は、ヒーターなどの加熱手段を含むか、または加熱手段と一体化することができる。
【0054】
例えば、固定層反応器200を用いる場合には、前記正極活物質混合物をローディングステージ250にロードした後、前記還元性反応ガスを注入して、前記予備前駆体混合物を形成することができる。例えば、バッチ(batch)式反応器または管状反応器内に正極活物質混合物を予めロードしてから還元性反応ガスを供給する固定式反応を行うことができる。前記固定層反応器は、還元性反応ガス及び/又はキャリアガスを通過させる注入口を含むことができる。
【0055】
例えば、固定層反応器200を用いる場合には、流動層反応器よりも高圧の条件で、前記正極活物質混合物と前記還元性反応ガスの還元反応を行うことができ、最終的に回収される活性金属の収率を増加させることができる。
【0056】
一実施形態では、前記正極活物質混合物を3bar~25barの加圧条件で還元性反応ガスと反応させ、予備前駆体混合物を形成することができる。好ましくは、5bar~21barの加圧条件で前記予備前駆体混合物を形成することができる。より好ましくは、10bar~15barの加圧条件で前記予備前駆体混合物を形成することができる。
【0057】
例えば、前述した圧力範囲内では、前記正極活物質混合物と前記還元性反応ガスとの反応を促進することができる。これにより、反応時間をより短縮することができ、低い反応性を有する正極活物質混合物を処理する場合でも工程時間を短縮することができる。また、リチウム前駆体を高収率および高効率で得ることができる。
【0058】
例えば、前記加圧条件の圧力が3bar未満であると、前記正極活物質混合物の時間当たりの処理量が減少し、リチウム前駆体の回収率が低下することがある。また、前記加圧条件の圧力が25barを超えると、生成物の凝集が発生してリチウム前駆体の回収率が低下し、工程コストの増加を引き起こすことがある。
【0059】
一実施形態では、前記正極活物質混合物と前記還元性反応ガスとの反応は、420℃~500℃の温度で行うことができる。
【0060】
前記正極活物質混合物と前記還元性反応ガスとの反応温度が420℃未満であると、前記予備前駆体混合物が実質的に生成されないことがある。本明細書で「実質的に生成されない」というのは、リチウム複合酸化物100重量部に対して、当該物質が1重量部以下に形成されることを意味し得る。
【0061】
前記正極活物質混合物と前記還元性反応ガスとの反応温度が500℃を超えると、遷移金属が過剰還元されて金属凝集体が発生しすぎることがある。このため、前記金属凝集体が反応器本体の内壁に付着して予備前駆体粒子の生成を妨げ、リチウム前駆体の回収率が低下することがある。
【0062】
一実施形態では、前記還元性反応ガスとの反応は、5~50mL/min/正極活物質gで1時間未満の反応時間で前記還元性反応ガスを反応器内に供給することを含むことができる。この場合には、短時間で高純度のリチウム前駆体を回収することができる。
【0063】
一実施形態では、前記還元性反応ガスは、水素およびキャリアガスを含むことができる。例えば、前記キャリアガスは、窒素またはアルゴンなどの不活性気体を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
例えば、前記キャリアガスが反応器に供給されることにより、前記反応器内の反応物および生成物が前記反応器の上部に移動し、前記キャリアガスによるサイクロンの形成を促進することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記還元性反応ガスは、実質的に酸素および二酸化炭素を含まなくてもよい。これにより、リチウム前駆体としてリチウム酸化物(Li2O)またはリチウム水酸化物(LiOH)を高選択比で再生する方法を提供することができる。また、二酸化炭素気体とリチウム成分の反応によって炭酸リチウムなどが形成されるような副生成物の形成を抑制することができる。
【0066】
一実施形態では、前記還元性反応ガス中の水素の濃度は、約10~40体積%(vol%)であってもよい。前述のように、前記還元性反応ガスは、水素とキャリアガスの混合ガスであってもよく、前記水素の濃度は、前記混合ガスの全体積中の水素の体積%であってもよい。この場合には、前記正極活物質混合物と前記還元性反応ガスとの反応を促進することができ、反応器の圧力および温度条件によって工程時間および収率を考慮して水素濃度を設計することができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記予備前駆体混合物は、予備リチウム前駆体粒子および遷移金属含有粒子を含むことができる。
【0068】
例えば、前記リチウム複合酸化物が還元され、予備リチウム前駆体粒子(例えば、リチウム酸化物(LiO2)粒子など)を生成することができる。また、遷移金属含有粒子(例えば、遷移金属粒子および遷移金属酸化物粒子)を共に生成することができる。例えば、還元反応により、リチウム酸化物粒子と共に、Ni、Co、Mn、NiO、CoO、およびMnOの少なくとも1つを生成することができる。
【0069】
例えば、前記遷移金属含有粒子の遷移金属成分は、前記リチウム複合酸化物に由来するものであってもよい。例えば、前記リチウム複合酸化物は、リチウム酸化物に変換される反応で前記遷移金属成分が分離され、前記遷移金属含有粒子を形成することができる。
【0070】
例えば、前記還元反応は、約420~500℃で行うことができる。前記反応温度の範囲内では、前記予備リチウム前駆体粒子および前記遷移金属含有粒子の再凝集、再結合を招くことなく還元反応を促進することができる。
【0071】
一実施形態では、前記予備前駆体混合物を水洗処理してリチウム前駆体を回収することができる(例えば、ステップS30)。例えば、前記水洗処理により、前記予備前駆体混合物中の前記リチウム酸化物粒子を分離し、リチウム前駆体として提供することができる。
【0072】
一実施形態では、前記水洗処理は、前記リチウム酸化物粒子の少なくとも一部を水に溶解し、リチウム水酸化物に変換することができる。例えば、リチウム水酸化物は、水溶性としてリチウム水酸化物水溶液を生成することができる。この場合には、前記予備前駆体混合物からリチウム酸化物粒子を選択的に分離することができる。
【0073】
例えば、前記水洗処理により、前記遷移金属含有粒子を沈殿させることができる。例えば、前記予備前駆体混合物中のリチウム酸化物粒子を除いた成分は、前記水溶液の底部に沈殿し得る。例えば、前記遷移金属含有粒子を含む遷移金属含有混合物が沈殿し得る。
【0074】
例えば、ろ過処理により、前記遷移金属含有混合物を分離し、高純度のリチウム水酸化物を含むリチウム前駆体を得ることができる。例えば、前記リチウム水酸化物水溶液を分離し、水を蒸発させたり、再結晶、分別結晶等によって結晶化して、リチウム水酸化物粒子またはリチウム酸化物粒子の形態のリチウム前駆体を回収することができる。
【0075】
一実施形態では、沈殿分離された前記遷移金属含有粒子を選択的に酸溶液で処理し、酸塩の形態の遷移金属前駆体を回収することができる。例えば、前記酸溶液としては、硫酸を用いることができる。この場合には、前記遷移金属前駆体としてNiSO4、MnSO4、およびCoSO4などを回収することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、前記水洗処理は、二酸化炭素(CO2)が排除された条件で行うことができる。例えば、CO2フリー雰囲気(例えば、CO2が除去された空気(air)雰囲気)で前記水洗処理を行うので、リチウム炭酸化物の再生成を防止することができる。例えば、前記水洗処理時に提供される水をCO2欠乏ガスを用いてパージ(例えば、窒素パージ)して、CO2フリー雰囲気を組成することができる。
【0077】
前述のように、リチウム前駆体は、乾式工程によって収集した後、遷移金属前駆体は、酸溶液を利用して選択的に抽出するので、各金属前駆体の純度および選択比が向上し、湿式工程のロードが減少して廃水および副産物の増加を減らすことができる。
【0078】
図3は、いくつかの例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。説明の都合上、図3は工程のフローと共に反応器の模式図を併せて示している。図2で説明したものと実質的に同一または類似のステップ、構成については、詳細な説明を省略する。
【0079】
図3を参照すると、流動層反応器300は、反応器本体330、反応器下部310、および反応器上部350に区分することができる。反応器本体330は、さらに圧力調整部304を含むことができ、ヒーターなどの加熱手段を含むか、または加熱手段と一体化することができる。
【0080】
前記正極活物質混合物(例えば、廃正極活物質混合物)は、供給流路306a,306bを介して反応器本体330に供給することができる。前記正極活物質混合物は、反応器上部350に接続されている第1供給流路306aを介して滴下するか、または反応器本体330の底部に接続されている第2供給流路306bを介して投入することができる。
【0081】
一実施形態では、第1及び第2供給流路306a,306bを共に使用して前記正極活物質混合物を供給することもできる。
【0082】
例えば、反応器本体330と反応器下部310との間に支持部320を配置し、前記正極活物質混合物の粉末を定着することができる。支持部320は、後述する還元性反応ガス及び/又はキャリアガスを通過させる気孔または噴射口を含むことができる。
【0083】
反応器下部310に接続されている還元性反応ガス流路302を介して、反応器本体330内に、前記正極活物質混合物を予備前駆体に変換するための還元性反応ガスを供給することができる。例示的な実施形態によれば、前記還元性反応ガスは、反応源として水素(H)を含むことができる。
【0084】
前記還元性反応ガスが流動層反応器300の下部から供給されて前記正極活物質混合物と接触するので、前記正極活物質混合物が反応器上部350に移動しながら、または反応器本体330内に滞留しながら前記還元性反応ガスと反応して前記予備前駆体に変換され得る。
【0085】
前記還元性反応ガスが注入されると、反応器本体330内で流動層が形成され得る。このため、還元性反応器300は流動層反応器であってもよい。前記流動層内で正極活物質混合物と還元性反応ガスが接触し、上昇、滞留、下降を繰り返すことにより、反応接触時間が増加し、粒子の分散が促進され、均一なサイズの予備前駆体混合物80を得ることができる。例えば、予備前駆体混合物は、予備リチウム前駆体粒子60および遷移金属含有粒子70を含むことができる。
【0086】
例えば、遷移金属含有粒子70は、ニッケル、コバルトおよびマンガンのうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、遷移金属含有粒子70は、相対的に予備リチウム前駆体粒子60よりも重いので、予備リチウム前駆体粒子60を排出口360a,360bを介して先に収集することができる。
【0087】
一実施形態では、反応器上部350に接続されている第1排出口360aを介して、予備リチウム前駆体粒子60を排出することができる。この場合、重量勾配による予備リチウム前駆体粒子60の選択的回収を促進することができる。
【0088】
一実施形態では、反応器本体330に接続されている第2排出口360bを介して、予備リチウム前駆体粒子60および遷移金属含有粒子70を含む予備前駆体混合物80を収集することができる。この場合には、流動層形成領域において予備前駆体混合物80が直接回収され、収率を増加させることができる。
【0089】
一実施形態では、第1及び第2排出口360a,360bを介して共に予備前駆体混合物80を収集することができる。
【0090】
例えば、排出口360を介して回収された予備リチウム前駆体混合物80に対して、前述の水洗処理を行うことができる。
【0091】
以下、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0092】
実施例1
廃リチウム二次電池から正極を分離した後、前記正極内の集電体を除去して正極活物質混合物を準備した。
【0093】
前記正極としては、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2の正極活物質、デンカブラック(Denka Black)導電材およびPVDFバインダーを92:5:3の重量比で含む正極活物質層を含むものを用いた。
【0094】
前記正極活物質混合物1kgを450℃で1時間熱処理した。熱処理した前記正極活物質混合物を小さな単位で切断し、ミリングにより粉砕処理して、Li-Ni-Co-Mn酸化物正極活物質試料を採取した。
【0095】
固定層反応器内に前記正極活物質試料10gをロードし、水素(反応ガス)25vol%および窒素(キャリアガス)75vol%混合ガスを100ml/minの流量で20分間注入した。前記反応器の内部温度は450℃、圧力は21barに維持した。
【0096】
還元反応後、試料を回収し、回収した試料の重量に対して19倍の水を加えた後、水に溶けたリチウムの濃度を分析して最終のリチウム回収率を測定した。
【0097】
実施例2
前記水素混合ガスを10分間注入した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0098】
実施例3
前記水素混合ガスを5分間注入した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0099】
実施例4
前記反応器の内部圧力を10barに維持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0100】
実施例5
前記水素混合ガスを10分間注入した以外は、実施例4と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0101】
実施例6
前記反応器の内部圧力を24barに維持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0102】
実施例7
前記反応器の内部圧力を15barに維持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0103】
実施例8
前記反応器の内部圧力を5barに維持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0104】
実施例9
前記反応器の内部圧力を3barに維持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0105】
実施例10
流動層反応器内に前記正極活物質試料20gを投入し、前記反応器下部から水素(反応ガス)15vol%および窒素(キャリアガス)85vol%の混合ガスを400ml/minの流量で40分間注入した。前記反応器の内部温度は450℃、圧力は5barに維持した。これ以外は実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0106】
実施例11
酸素25vol%および窒素75vol%の混合ガスを100ml/minの流量で20分間注入した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0107】
実施例12
二酸化炭素25vol%および窒素75vol%の混合ガスを100ml/minの流量で20分間注入した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0108】
実施例13
酸素75vol%および二酸化炭素25vol%の混合ガスを100ml/minの流量で20分間注入した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0109】
比較例1
前記反応器の内部圧力を1barに維持し、水素混合ガスを30分間注入した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0110】
比較例2
水素混合ガスを120分間注入した以外は、比較例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0111】
比較例3
水素混合ガスを180分間注入した以外は、比較例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0112】
比較例4
水素混合ガスを260分間注入した以外は、比較例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0113】
比較例5
前記反応器の内部圧力を1barに維持し、水素混合ガスを60分間注入した以外は、実施例10と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0114】
比較例6
水素混合ガスを240分間注入した以外は、比較例5と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0115】
比較例7
前記反応器の内部圧力を26barに維持した以外は、実施例1と同様にしてリチウムの回収率を測定した。
【0116】
実施例および比較例の実験結果を下記表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
表1を参照すると、前述した本発明の例示的な実施形態による範囲内で反応条件が調節された場合には、比較例と比較して顕著に高いリチウム回収率が得られた。
図1
図2
図3
【国際調査報告】