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特表2023-529618SQUID磁気センサを使用する貯留層モニタリングのためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】SQUID磁気センサを使用する貯留層モニタリングのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/08 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
G01V3/08 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574249
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 US2021033654
(87)【国際公開番号】W WO2021252166
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/038,007
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522468032
【氏名又は名称】テクノイメージング、エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】504117958
【氏名又は名称】独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジダーノフ、マイケル、エス.
(72)【発明者】
【氏名】コックス、レイフ、エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】グリベンコ、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】伴 英明
(72)【発明者】
【氏名】千葉 洋
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB05
2G105DD02
2G105EE01
2G105LL07
(57)【要約】
掘削孔中の垂直なバイポール・ソースは垂直なバイポール流を発生させる。垂直なバイポール流は、互いに直交する時間領域のBフィールド・データを発生させる。地表位置における磁気受信機は、時間領域Bフィールド・データを受信し、3次元電磁インバージョン技術を使用して炭化水素貯留層の成分を決定する。垂直なバイポール・ソースは掘削孔中に伸びていても、貯留層上方の地表位置に配置された仮想バイポール・ソースであってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下貯留層モニタリング方法であって、
垂直な電気バイポール・ソースにおいて、
前記貯留層を貫く垂直な電流の流れと、岩石層中の流体に対する対応する時間領域の磁気Bフィールド応答とを発生させるステップと、
前記貯留層の範囲内にある少なくとも1つの磁場受信機において
地表位置又は掘削孔中に配置された時間領域磁気Bフィールド・データの少なくとも1つの磁場受信機を使用して、垂直な電気バイポール・ソースによって地下の地層中に発生させられた時間領域磁気Bフィールド・データを取得するステップと、
前記取得された時間領域Bフィールド・データに適用される3次元電磁インバージョン技術を使用して、前記岩石層の電磁パラメータの体積画像を決定するステップと、
前記取得された時間領域Bフィールド・データから決定された前記岩石層の前記電磁パラメータの変化をモニタリングするステップと、
地下貯留層のモニタリングのために前記体積画像の変化を既知の地層と関連付けるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記時間領域Bフィールド・データが、地表位置上又は掘削孔中に配置された時間領域磁気Bフィールド・データの少なくとも1つの受信機を使用することによって、垂直な電気バイポール・ソースによって地下の地層に発生させられた時間領域磁場Bx(t)、By(t)、Bz(t)のうちの少なくとも1つの互いに直交する成分から取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受信機が、SQUID(Superconducting Quantum Interference Device)受信機又はSQUID能力と同等の磁場感度をもつ代替の磁場受信機のいずれかである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記垂直な電気バイポール・ソースが掘削孔中に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記垂直な電気バイポール・ソースが、地表電極接地点と、坑井ケーシングで接地されるケーシング電極とを含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記垂直電気バイポール・ソースが、地表電極接地点と、掘削孔の内部で接地された掘削孔電極とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記垂直な電気バイポール・ソースが、接地電極構成によって模擬された仮想の垂直なバイポール・ソースである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記仮想の垂直なバイポール・ソースが、接地十字形電極構成によって形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記仮想の垂直なバイポール・ソースが、接地星形電極構成によって形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記仮想の垂直なバイポール・ソースが、接地円形電極構成によって形成される、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記仮想の垂直なバイポール・ソースが、接地四角形電極構成によって形成される、請求項5記載の方法。
【請求項12】
前記仮想の垂直なバイポール・ソースが、接地多角形電極構成によって形成される、請求項5記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの磁場受信機の各々が、対象貯留層から動作可能に近接した位置にアレイ状に配置された複数のセンサを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記貯留層が炭化水素産出岩石によって形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記貯留層が地熱資源を産出する地層によって形成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記貯留層が二酸化炭素(CO2)の回収及び貯留に使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記3次元電磁インバージョン技術が、時間領域Bフィールド・データの正則化3次元収束非線形インバージョンに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの磁場受信機が、前記貯留層上の地表位置に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの磁場受信機が、前記岩石層中の前記貯留層と交差する掘削孔中に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
地下貯留層モニタリングの方法であって、
時間領域磁場の少なくとも1つの互いに直交する成分から時間領域Bフィールド・データを受信するステップと、
前記時間領域Bフィールド・データに適用される3次元電磁インバージョン技術を使用して、岩石層の電磁パラメータの体積画像を決定するステップと、
前記電磁パラメータの変化をモニタリングするステップと、
前記変化を既知の地層と関連付けるステップと
を含む方法。
【請求項21】
前記時間領域Bフィールド・データが、時間領域磁気Bフィールド・データの少なくとも1つのSQUID受信機を使用して受信される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記時間領域Bフィールド・データが、垂直な電気バイポール・ソースからの垂直な電流の流れから発生させられる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
地下貯留層モニタリングの方法であって、
岩石層の時間領域磁気Bフィールド・データを取得するステップと、
前記時間領域磁気Bフィールド・データを使用して、前記岩石層の電磁パラメータの体積画像を作るステップと、
前記体積画像の変化を既知の地層と関連付けるステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月11日に出願した米国仮出願63/038,007号に関連し、その利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、地表及び掘削孔の地球物理学的データを使用する貯留層の画像化及びモニタリングに関する。
【背景技術】
【0003】
炭化水素(HC)貯留層の生産過程における挙動のモニタリング及び制御、又は二酸化炭素回収・貯留(CCS:carbon capture and storage)プロジェクトにおける深層貯留層への二酸化炭素(CO2)注入、又は地熱のフィールド調査は、貯留層の性能及び生産戦略の最適化における重要な技術の典型である。これまで、この問題を解決するために使用された主な方法は、地震波のフィールド測定に基づいていた。しかし、地震データのモニタリングへの利用は、地震波速度の時間的変動が小さく、調査の再現性が難しいため、非常に困難である。
【0004】
過去数十年にわたり、貯留層モニタリングのための電磁(EM)法の使用に対する高い関心があり、これは地震法の補完として使用され得、多くの場合、地震データよりも貯留層内の流体の動きに対して高い感度を示した(例えば、Strackによる米国特許第6,739,165号、Constableによる米国特許第7,109,717号、Hendrixによる米国特許第9,983,328号に記載されている)。
【0005】
StolieとDvergsten(EP1,803,001B1)は、地層の比抵抗とは異なる比抵抗を有するトレーサ流体の注入に基づいて炭化水素(HC)貯留層を比抵抗マッピングする方法を紹介した。しかし、掘削プロセスで使用される注入液はそれ自体が、非常に導電性が高く、導電性粒子を添加しても観測される電磁データにほとんど影響を与えないことがあるという事実によって、この方法の使用は制限される。
【0006】
貯留層のモニタリングのために電磁法を適用する場合の主な困難は、深い貯留層からの応答が通常非常に弱いという事実に関連し、このため地上に配置された従来の磁気的及び/又は電気的センサを使用することによってこの応答を検出し、貯留層内の流体の動きに関して意味ある情報を得ることは困難である。
【0007】
本願は、以下の出版物を参照によりその全体が組み込まれる:Zhdanov,M.S.著,2015,Inverse theory and applications in geophysics、Elsevier社刊;Zhdanov,M.S.著,2018,Foundations of geophysical electromagnetic theory and methods、Elsevier社刊。その他の引用文献:米国特許第6,739,165号、Strack;EP1,803,001B1、Stolie及びDvergsten;米国特許第7,109,717号、Constable;米国特許第9,983,328号、Hendrix。
【0008】
本開示のデバイス、システム、及び方法は、流体(例えば、水、石油及びガス)で満たされた貯留層から増強された応答を発生させることができる特定の送受信機構成を使用し得る。
【0009】
本開示のデバイス、システム、及び方法は、磁気Bフィールドの時間微分dB/dtの代わりに磁気Bフィールドを測定することによって地表電磁調査を用いた調査の深度を拡大し、従来の誘導コイル式磁気センサ又は電場センサの使用による場合より大深度に対応する後の時刻における電磁応答を確実に記録する。この目標は、貯留層岩石中の流体の動きによって発生させられる極めて微小な磁場の変化を測定する超伝導量子干渉デバイス(SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)センサを用いることによって達成され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,739,165号
【特許文献2】米国特許第7,109,717号
【特許文献3】米国特許第9,983,328号
【特許文献4】EP1,803,001B1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Zhdanov、M.S.、「Inverse theory and applications in geophysics」、(2015)、Elsevier社刊
【非特許文献2】Zhdanov、M.S.、「Foundations of geophysical electromagnetic theory and methods」、(2018)、Elsevier社刊
【発明の概要】
【0012】
本明細書に開示する方法の少なくとも1つの実施例は、例えば、掘削孔中又は地上に配置された電源によって地下貯留層中に発生させられ、深い貯留層上方領域中の地表上又は掘削孔中に配置された一式のSQUID受信機から取得される磁場の時間減衰を測定するためにSQUIDセンサを使用する、地下の貯留層モニタリングに適用され得る。
【0013】
本明細書に開示する方法の実施例は、炭化水素を産出する貯留層中の流体の動きのモニタリングに使用され得る。
【0014】
本発明の方法の別の実施例は、二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトにおける深層貯留層中の二酸化炭素(CO2)注入をモニタリングするために使用され得る。
【0015】
炭酸塩貯留層では、例えば、母岩自体が比較的抵抗が高いことがあり、炭化水素産出貯留層とその母岩との間の比抵抗コントラストが弱いことを意味する。塩分濃度の低い帯水層の存在はこの比抵抗のコントラストをさらに低下させ、したがって従来の誘導コイル式磁気受信機又は電気受信機の適用を限定する。
【0016】
本発明の方法の別の実施例は、地熱資源をモニタリングするために使用され得る。
【0017】
実験的研究によれば、電流の垂直方向の流れを生成することは、現在使用されている地上に配置された水平な電気バイポール・ソースよりも、深くに設置された貯留層と良好に結合する。
【0018】
この方法の少なくとも1つの実施例は、掘削孔中に物理的に設置された垂直方向に長い(数百メートルから数キロメートル)バイポール・ソースによって、掘削孔中に電流のパルスを注入することに基づき得る。注入された電流によって貫通された貯留層岩石の体積は、電気的ソース・パルス後の異なる時間瞬間に地上又は掘削孔に設置された磁気SQUIDセンサのアレイによって測定された磁場の分布の著しい異常によって特徴付けられ得る。
【0019】
この発明のさらに別の実施例では、電流電極は、垂直なバイポールを模擬するようなやり方(例えば、地上に十字形、星形、円形、又は四角形の電極構成)で地上に設置され得る。貯留層の時間領域磁気応答は、貯留層上の領域中の地上に、及び/又は貯留層近くを通過するか交差する掘削孔中に配置された一式のSQUID磁場受信機によって測定される。
【0020】
本明細書に開示する方法の少なくとも1つの実施例は、記録された時間領域磁場データから貯留層の層内の電磁特性の分布を決定するために使用され得る。この分布は貯留層内に注入された流体の動きをモニタリングするために使用される。
【0021】
大略、本開示は、貯留層岩石中の流体の存在による強い磁場異常を引き起こす、実際の又は仮想の垂直な電気バイポール・ソースによる電気パルス電流の注入を使用して地下貯留層をモニタリングするための方法を示す。この方法は、a)少なくとも1つの実際の垂直な電気バイポール・ソースを掘削孔中に設置するか、又は仮想の垂直な電気バイポールを模擬する水平な電気バイポールのシステムを地上に設置するステップと、b)少なくとも1つの磁場受信機又は受信機のアレイを貯蔵層上の地上に設置するステップと、c)少なくとも1つの磁場受信機又は受信機のアレイを、貯蔵層の近く又は交差して通る少なくとも一つの掘削孔中に設置するステップとを含み得る。注入された垂直電流に貫通された貯留層によって引き起こされた異常な時間領域磁場データは、調査ラインに沿った、又は調査領域にわたる、少なくとも1つの受信機によって記録され得る。少なくとも1つの受信機において又は調査領域にわたって測定された記録データは、貯留層の層中の電磁特性の数値を再構成するために使用され、地下の地層中の流体の動きのモニタリングを提供し得る。
【0022】
本発明の例示的な実施例は、添付の図面と合わせて、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるであろう。これらの図面は例示的な実施例のみを描いており、したがって、本発明の範囲を限定するものとはみなされないことを理解した上で、本発明の例示的な実施例は、添付の図面の使用を通じて、さらなる具体性及び詳細性をもって説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実際の垂直な電流源を使用して貯留層岩石からの磁気B(t)フィールド応答を測定するための貯留層モニタリング・システムの実施例を示す図である。
図2】貯留層モニタリング・システムの地表電極構成の本発明の実施例を示す図であり、仮想の垂直な電気バイポール・ソースを模擬するものである。
図3】仮想の垂直な電気バイポール・ソースを使用して、貯留層岩石からの磁気B(t)フィールド応答を測定するための貯留層モニタリング・システムの実施例を示す図である。
図4】仮想の垂直な電気バイポール・ソースを使用して、貯留層岩石からの磁気B(t)フィールド応答を測定するための貯留層モニタリング・システムのさらに別の実施例を示す図である。
図5】本開示によるSQUID磁気センサを使用して地下貯留層をモニタリングする方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、実際の垂直な電流源を使用して貯留層岩石からの磁気B(t)フィールド応答を測定するための貯留層モニタリング・システムの実施例を示す図である。このシステムは、1つの地表の接地点である電極1及び坑井ケーシングにおいて又は掘削孔内側で接地された電極2の2つの電極点からなる送信用の垂直な電気バイポールと、掘削孔の周囲に分布する一式の磁場受信機3とによって形成される。金属製ケーシングをもつ掘削孔4も、もたない掘削孔4も、対象貯留層5を貫通し得る。
【0025】
図2は、貯留層モニタリング・システムの地表電極構成の本発明の実施例を示す図であり、仮想の垂直な電気バイポール・ソースを模擬するものである。図2は、(6)十字形電極、(7)星形電極、(8)円形電極、(9)四角形電極の4つの適している地表電極の配置を示す。全ての構成において、地表接地点(10)は送信電極を表し、地表接地点(11)は受信電極を表す。
【0026】
図3は、仮想の垂直な電気バイポール・ソースを使用して、貯留層岩石からの磁気B(t)フィールド応答を測定するための貯留層モニタリング・システムの実施例を示す図である。このシステムは、垂直な電気バイポール12を模擬する星形電極システム10及び11と、対象貯留層5上の地上に分布する一式の磁場受信機3とによって形成される。
【0027】
図4は、仮想の垂直な電気バイポール・ソースを使用して、貯留層岩石からの磁気B(t)フィールド応答を測定するための貯留層モニタリング・システムのさらに別の実施例を示す図である。このシステムは、垂直な電気バイポール12を模擬する星形電極システム10及び11と、対象貯留層5上の地上及び/又は掘削孔4内の地中に分布する一式の磁場受信機3とによって形成される。
【0028】
図5は、本開示によるSQUID磁気センサを使用して地下貯留層をモニタリングする方法を示すフローチャートである。
【0029】
磁気時間領域応答を測定するデータ取得システムを使用する地下貯留層モニタリングのための方法の一実施例が、本発明のSQUID調査システムの一実施例を説明する図1に示される。このシステムは、地表の一接地点である電極1及び坑井ケーシングにおいて又は掘削孔内側で接地された電極2の2つの電極点からなる送信用のバイポールと、掘削孔の周辺に分布する一式の磁気受信機3とを含み得る。
【0030】
図示の実施例では、磁場センサ3は、掘削孔4中に配置された電極1及び2によって形成された垂直な電気バイポール・ソースによって地下の地層中に発生させられた時間領域磁場の互いに直交する3つの成分Bx(t)、By(t)、Bz(t)のいずれか1つ又はすべてを記録し得る。次いで、貯留層内の電磁パラメータの体積分布は、Zhdanov(2018)によって説明されるように、3次元電磁インバージョン技術を使用して、記録されたBフィールド・データから導出され得る。回復された貯留層内の電磁パラメータの分布は、地下の地層中の流体の動きのモニタリングに使用され得る。
【0031】
本開示の実施例に従って、地下貯留層をモニタリング、測定、及び/又は定量化するために、垂直なバイポール・ソースが掘削孔に挿入され得る。いくつかの実施例では、垂直なバイポール・ソースは、掘削作業中にドリルストリング中に挿入され得る。いくつかの実施例では、垂直なバイポール・ソースは、生産坑井中に挿入され得る。いくつかの実施例では、垂直なバイポール・ソースは、垂直なバイポールの長さに沿って垂直な電流の流れを発生させるように構成された電流発生器を含み得る。長さに沿って垂直な電流を発生させることは、数十メートル、数百メートル、又は数千メートルの長さの垂直なバイポールに沿って電流を発生させることを含み得る。いくつかの実施例では、垂直なバイポールは、バイポールの長さに沿って延びる導電性要素を含み得る。第1の電極1は垂直なバイポールの上端に配置され得る。例えば、第1の電極は地表位置に配置され、地表に接地され得る。いくつかの実施例では、第2の電極2は垂直なバイポールの下端に配置され得る。例えば、第2の電極2は、掘削孔内側の坑井ケーシングにおいて接地されたケーシング電極であり得る。第1の電極1と第2の電極2との間に電流が流され、時間領域のBフィールド(例えば、磁場)が発生させられ得る。
【0032】
いくつかの実施例において、垂直なバイポールは地層を通って延び、貯留層と交差し得る。いくつかの実施例では、垂直なバイポールは貯留層の全体を貫いて延び得る。いくつかの実施例では、垂直なバイポールは、貯留層の一部を貫いて延び得る。
【0033】
垂直な電流の流れを発生させると、垂直なバイポールは、対応する時間領域のBフィールド(例えば、磁場)を発生させ得る。Bフィールドは、掘削孔を取り囲む地層に電場を誘起することがある。地層及び/又は貯留層の成分は、先に述べた3次元電磁インバージョン技術を使用して、地層及び/又は貯留層による応答に基づいて決定され得る。いくつかの実施例では、3次元電磁インバージョン技術は、時間領域Bフィールド・データの正則化3次元収束非線形インバージョン(regularized 3D focusing nonlinear inversion)を含む。
【0034】
時間領域Bフィールド・データを受信するために、少なくとも1つの磁気受信機3は、貯留層5上の地表位置に配置され得る。磁気受信機3は、岩石層中の任意の流体に対する時間領域磁気Bフィールド応答を受信し得る。時間領域Bフィールド・データは、Bx(t)(例えば、第1の水平成分)、By(t)(例えば、第2の水平成分)、及びBz(t)(例えば、垂直成分)を含む時間領域磁場の互いに直交する成分を含み得る。時間領域Bフィールドの互いに直交する成分は、地下の地層中に発生させられ得る。いくつかの実施例では、磁気受信機3は、SQUID受信機であり得る。いくつかの実施例において、磁気受信機3は、アレイ状に配置された複数のセンサを含み得る。アレイは、対象貯留層5に動作可能に近接した範囲内にあり得る。いくつかの実施例では、動作可能な近接は鉛直上方に配置されることを含み得る。いくつかの実施例では、動作可能な近接は、磁気受信機3が時間領域Bフィールド・データを受信及び/又は測定できる任意の場所に配置されることを含み得る。
【0035】
その互いに直交する成分を含む受信した時間領域Bフィールド・データを使用すると、岩石層の電磁パラメータの体積画像は、上述のように、時間領域Bフィールド・データに適用される3次元電磁インバージョン技術を使用して決定され得る。
【0036】
生成された電磁パラメータは、変化をモニタリングされ得る。例えば、電磁パラメータはある時間期間モニタリングされ得る。電磁パラメータの変化は、識別され、追跡され得る。次に、電磁パラメータの体積画像に変化があれば、既知の地層の画像と比較され得る。電磁パラメータを既知の地層の既知の画像と比較することによって、貯留層のパラメータ、変化及び他の要素が識別され、モニタリングされ、追跡され得る。
【0037】
磁気時間領域応答を測定するデータ取得システムを使用する地下貯留層のモニタリングのための方法の別の実施例では、垂直な電気バイポール・ソースが仮想であり得る。例えば、仮想の垂直な電気バイポール・ソースは、図2に示すような地表電極配置によって模擬され得る。この図は、(6)十字形電極、(7)星形電極、(8)円形電極、(9)四角形電極の4つの異なる接地電極の配置を紹介している。これらの構成は、地下の貯留層に対する感度が高い順に並んでいるが、フィールドのロジスティックスがより複雑な順にもなっている。全ての構成において、地表接地点(10)は送信電極を表し、地表接地点(11)は受信電極を表している。円形及び四角形の構成の場合、地表の円形又は四角形の電極10全体が接地される(又は、実用的な適用では、図2のドットによって示されるように、密着して配置された複数の接地電極で代表される)。
【0038】
図3によって示される実施例において、磁場センサ3は、地上に配置されたスター電極10及び11によって形成された仮想の電気バイポール・ソース12によって地下の地層中に発生させられた時間領域磁場の互いに直交する3つの成分Bx(t)、By(t)、Bz(t)のいずれか1つ又はすべてを記録し得る。この実施例における仮想の垂直な電気バイポール・ソースは、図2に示すように十字形、円形、四角形の接地電極によって形成されることもあり得ることに留意されたい。次いで、Zhdanov(2015,2018)によって記述されているように、3次元電磁インバージョン技術を使用して、記録された磁場データから貯留層岩石及び貯留層中の流体の電磁特性の体積分布が導出され得る。回復された貯留層内の電磁パラメータの分布は、地下の地層中の流体の動きのモニタリングに使用され得る。
【0039】
図4によって示される、さらに別の実施例では、時間領域磁場の互いに直交する3つの成分Bx(t)、By(t)、Bz(t)のいずれか1つ又はすべてを記録する磁場センサ3が、対象貯留層5上の地上、及び/又は掘削孔4中の地下に配置され得る。したがって、Zhdanov(2015,2018)によって記述されているように、3次元電磁インバージョン技術を使用して、記録された磁場データから貯留層岩石及び貯留層中の流体の電磁特性の体積分布が導出され得る。回複された貯留層内の電磁パラメータの分布は、地下の地層中の流体の動きのモニタリングに使用され得る。
【0040】
より具体的には、地下貯留層中の流体の動きのモニタリングは、以下のステップを含む方法によって実施され得る。
a) 実際の垂直な電気バイポール送信機を掘削孔中に設置するか、又は図2に具体的に述べられた十字形、星形、円形、四角形の電極配置によって模擬された仮想の垂直な電気バイポール・ソースを設置し、SQUID磁気Bフィールド受信機のアレイを調査の領域とともに動作可能に設置するステップ;
b) 実際の又は仮想の垂直な電気バイポール・ソースと、地表及び/又は掘削孔中に配置されたSQUID磁気Bフィールド受信機のアレイを使用して、時間領域磁気Bフィールド・データを取得するステップ;
c) 記録されたSQUID磁気Bフィールド・データに適用される3次元電磁インバージョン技術を使用して、岩石層の電磁パラメータの体積画像を決定するステップ;
d) 観測された磁気Bフィールド・データから決定される地層の電磁パラメータの変化をモニタリングするステップ;
e) 地下の貯留層をモニタリングするために前記画像の変化を既知の地層に関連付けるステップ。
【0041】
図5は本発明の方法のフローチャートを示す。このフローチャートによれば、実際の垂直な電気バイポール送信機が掘削孔中に設置されるか、或いは、地上の電極構成によって模擬された仮想の垂直な電気バイポール・ソースが、貯留層を通る著しい垂直な電流の流れと、対応する貯留層岩石中の流体の存在に対する時間領域磁気Bフィールド応答とを発生させるために使用される。時間領域磁気Bフィールド・データは、SQUID磁場受信機を調査の領域とともに動作可能に設置することによって取得される。SQUID受信機は、従来の誘導コイル式磁気センサ又は電場センサの使用による場合より、大深度に対応する広範囲の時間間隔の時間領域磁気Bフィールドを記録する。
【0042】
岩石層の電磁パラメータの体積画像を作るために、当業者は、受信機で観測された時間領域磁気Bフィールド・データの解釈のために、3次元インバージョン技術を使用し得る。インバージョンの目的は、観測された電磁データから電磁パラメータの空間分布の体積画像を得ることであり得る。この問題を解く数値計算法はよく開発されており、この分野の熟練者に知られている(例えば、Zhdanov,2018)。
【0043】
塩水及び貯留層流体によって占有される体積の間に鮮鋭なコントラストをもつ画像を生成するために、Zhdanov(2015)に記述されているように、記録されたBフィールド・データの収束(focusing)インバージョンを使用し得る。本発明の具体的な実施例及び適用が例示及び説明されたが、本発明は本明細書に開示された厳密な構成及び構成要素に限定されないことは理解されるべきである。当業者には明らかな様々な改変、変更、及び変形が、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明の方法及びシステムの配置、動作、及び詳細においてなされ得るであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】