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特表2023-529629酸素炎の存在下で炭素源および水素源から合成ガスを生成するための方法および反応器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】酸素炎の存在下で炭素源および水素源から合成ガスを生成するための方法および反応器
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/02 20060101AFI20230704BHJP
【FI】
C01B3/02 Z ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574558
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 CA2021050761
(87)【国際公開番号】W WO2021243462
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】3,081,971
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド ラブレック
(72)【発明者】
【氏名】ロバート シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル ヴィエノウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャルマン ラロック
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140BA03
4G140BB02
4G140BB03
(57)【要約】
本技術は、一酸化炭素(CO)および水素(H)を含む合成ガスを生成する方法に関し、合成ガスは、酸素炎と接触する、炭素源および過剰の水素を含む第1フローの還元反応によって生成される。水素は還元流に由来し、その第1部分は最終的に第1フローになり、その第2部分は、酸素(O)を含む第2フローの存在下で水素を燃焼させることにより酸素炎を発生させるために使用され、第2フローは酸化流に由来する。第1フローおよび第2フローは、酸素炎が炭素源と水素との間の反応をサポートするように、互いに一定の距離がある。本方法を実装するために、様々な構成を有し得る反応器も提案されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素(CO)および水素(H)を含む合成ガスを生成する方法であって、前記合成ガスは、酸素炎と接触する、炭素源および過剰の水素を含む第1フローの還元反応によって生成され、
前記水素は還元流に由来し、その第1部分は最終的に前記第1フローになり、また、第2部分は、酸素(O)を含む第2フローの存在下での水素の燃焼によって前記酸素炎を発生させるために使用され、前記第2フローは酸化流に由来し、
前記第1フローおよび前記第2フローは、前記酸素炎が前記炭素源と前記水素との間の反応をサポートするように、互いに一定の距離をとるものとする、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記還元反応は、固体触媒の非存在下で実行される、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記酸素炎は、前記炭素源のCOへの転化を促進するイオン種およびフリーラジカルを発生させる、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法において、前記炭素源は、
・CO、または、
・式Cαβγで表される、少なくとも1種の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)、または、
・1つ以上の炭化水素、または、
・上記炭素源のうちの少なくとも2つの混合物、
を含む、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法において、前記炭素源はCOを含み、前記還元反応はガスから水への逆反応、すなわち「逆水性ガスシフト」を含む、方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、前記還元流は水素である、方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、前記還元流は水素および前記炭素源を含む、方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、前記還元流は水素およびCOを含む、方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法において、前記還元流は、水素、CO、および式Cαβγで表される、少なくとも1種の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)を含む、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法において、前記酸化流は酸素である、方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法において、前記酸化流は酸素およびCOを含む、方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法において、前記還元流は水素のみを含み、前記酸化流は酸素のみを含み、前記炭素源は独立流によって供給される、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記独立流はCOを含む、方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法において、前記独立流はCOおよびメタンを含む、方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法において、前記酸素は水電解反応に由来する、方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法において、前記水素は水電解反応に由来する、方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法において、前記炭素源は、バイオマスのガス化または熱分解プロセスから生じるガス混合物に由来する、方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法において、前記還元反応は、少なくとも600℃の平均温度で実行される、方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法において、前記還元反応は、少なくとも1200℃の平均温度で実行される、方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法において、前記還元反応は、最大で2200℃の平均温度で実行される、方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法において、前記第1フローおよび前記第2フローは、互いに0.1mm~100mmの間の距離をとる、方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法において、前記第1フローおよび前記第2フローは、互いに0.3mm~50mmの間の距離をとる、方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法において、前記第1フローおよび前記第2フローは、互いに0.6mm~30mmの間の距離をとる、方法。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の方法において、前記炭素源はCOを含み、前記還元反応は、2~7のH/COモル比を使用して実行される、方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載の方法において、前記炭素源はCOを含み、前記還元反応は、0.35~0.9のO/COモル比を使用して実行される、方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の方法において、前記還元反応は、0.1~0.3のO/Hモル比を使用して実行される、方法。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の方法において、生成された前記合成ガスは、少なくとも1.8のH/COモル比を有する、方法。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法において、生成された前記合成ガスは、少なくとも2のH/COモル比を有する、方法。
【請求項29】
請求項1~27のいずれか一項に記載の方法において、生成された前記合成ガスは、1.8~5.0のH/COモル比を有する、方法。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の方法において、生成された前記合成ガスはさらにCOを含む、方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、生成された前記合成ガスは、(H-CO)/(CO+CO)≧2となるようなH、COおよびCOのモル比を有する、方法。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項に記載の方法において、冷却合成ガスを形成するために、前記合成ガスの冷却ステップをさらに含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、前記冷却合成ガスに含有される水を凝縮し、該水を回収するステップをさらに含む、方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、回収された前記水の少なくとも一部は、前記冷却ステップに再循環される、方法。
【請求項35】
化学製品または燃料の製造のための、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法によって生成された合成ガスの使用。
【請求項36】
メタノールまたは合成炭化水素の製造のための、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法によって生成された合成ガスの使用。
【請求項37】
一酸化炭素(CO)および水素(H)を含む合成ガスを生成するための反応器であって、
酸素炎と接触する、炭素源および過剰の水素を含む第1フローの還元反応によって合成ガスが生成される、反応チャンバーと、
水素を含む還元流を前記反応チャンバーに供給するための少なくとも1つの第1の手段であって、前記還元流の第1部分は最終的に第1フローになり、また、第2部分は、酸素(O)を含む第2フローの存在下での水素の燃焼によって燃焼する前記チャンバー内で前記酸素炎を発生させるために使用される、第1の手段と、
前記第2フローを形成する酸化流を前記反応チャンバーに供給するための少なくとも1つの第2の手段と、
を備え、
前記第1フローおよび前記第2フローは、前記酸素炎が前記炭素源と前記水素との間の反応をサポートするように、互いに一定の距離をとるものとする、
反応器。
【請求項38】
請求項37に記載の反応器において、前記還元反応は、固体触媒の非存在下で実行される、反応器。
【請求項39】
請求項37または38に記載の反応器において、前記酸素炎は、前記炭素源のCOへの転化を促進するイオン種およびフリーラジカルを発生させる、反応器。
【請求項40】
請求項37~39のいずれか一項に記載の反応器において、前記炭素源は、
・CO、または、
・式Cαβγで表される、少なくとも1種の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)、または、
・1つ以上の炭化水素、または、
・上記炭素源のうちの少なくとも2つの混合物、
を含む、反応器。
【請求項41】
請求項37~40のいずれか一項に記載の反応器において、前記炭素源はCOを含み、前記還元反応はガスから水への逆反応、すなわち「逆水性ガスシフト」である、反応器。
【請求項42】
請求項37~41のいずれか一項に記載の反応器において、前記還元流は水素である、反応器。
【請求項43】
請求項37~41のいずれか一項に記載の反応器において、前記還元流は水素および前記炭素源を含む、反応器。
【請求項44】
請求項37~41のいずれか一項に記載の反応器において、前記還元流は水素およびCOを含む、反応器。
【請求項45】
請求項37~41のいずれか一項に記載の反応器において、前記還元流は、水素、CO、および式Cαβγで表される、少なくとも1種の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)を含む、反応器。
【請求項46】
請求項37~45のいずれか一項に記載の反応器において、前記酸化流は酸素である、反応器。
【請求項47】
請求項37~45のいずれか一項に記載の反応器において、前記酸化流は酸素およびCOを含む、反応器。
【請求項48】
請求項37~47のいずれか一項に記載の反応器において、前記還元流を供給するための前記第1の手段および前記酸化流を供給するための前記第2の手段は、チューブである、反応器。
【請求項49】
請求項37~47のいずれか一項に記載の反応器において、前記反応チャンバー内への前記酸化流の注入を可能にする複数のチューブからなる複数の第2の手段、および前記反応チャンバー内への前記還元流の注入を可能にする複数の開口部からなる複数の第1の手段を含む、反応器。
【請求項50】
請求項49に記載の反応器において、各開口部は、前記複数のチューブのうちの1つのチューブの外径によって区切られ、また、該チューブの外壁から垂直に延在する環状空間によって画定される、反応器。
【請求項51】
請求項50に記載の反応器において、分離壁によって前記反応チャンバーから分離された還元流の分配チャンバーをさらに備え、前記分配チャンバーおよび前記分離壁は、前記複数のチューブによって横切られており、各チューブの前記外壁から垂直に延在する前記環状空間もまた、該分離壁を横切っている、反応器。
【請求項52】
請求項37~42のいずれか一項に記載の反応器において、前記還元流は第1のチューブからなる前記第1の手段によって前記反応チャンバーに供給される水素であり、前記酸化流は第2のチューブからなる前記第2の手段によって前記反応チャンバーに供給される酸素であり、および、前記炭素源は、前記反応チャンバーの壁に配置された少なくとも1つの開口部を通して該反応チャンバーに注入される独立流によって供給される、反応器。
【請求項53】
請求項52に記載の反応器において、前記開口部は、前記第1のチューブおよび前記第2のチューブと同心の第3のチューブによって形成され、前記第2のチューブは内側チューブを形成し、前記第1のチューブは中間チューブを形成し、前記第3のチューブは外側チューブを形成する、反応器。
【請求項54】
請求項53に記載の反応器において、前記開口部は、前記第3のチューブの内径と前記第1のチューブの外径とによって区切られた環状空間によって形成される、反応器。
【請求項55】
請求項52~54のいずれか一項に記載の反応器において、分離壁によって前記反応チャンバーから分離された分配チャンバーをさらに備え、前記分配チャンバーは、前記炭素源を含む前記独立流を供給するのに役立ち、かつ前記第1のチューブおよび前記第2のチューブによって横切られている、反応器。
【請求項56】
請求項52~55のいずれか一項に記載の反応器において、前記独立流はCOを含む、反応器。
【請求項57】
請求項52~56のいずれか一項に記載の反応器において、前記独立流はCOおよびメタンを含む、反応器。
【請求項58】
請求項37~57のいずれか一項に記載の反応器において、前記酸素は水電解反応に由来する、反応器。
【請求項59】
請求項37~58のいずれか一項に記載の反応器において、前記水素は水電解反応に由来する、反応器。
【請求項60】
請求項37~59のいずれか一項に記載の反応器において、前記炭素源は、バイオマスのガス化または熱分解プロセスから生じるガス混合物に由来する、反応器。
【請求項61】
請求項37~60のいずれか一項に記載の反応器において、前記反応チャンバーは、前記還元反応中に少なくとも600℃の温度に達する、反応器。
【請求項62】
請求項37~61のいずれか一項に記載の反応器において、前記反応チャンバーは、前記還元反応中に少なくとも1200℃の温度に達する、反応器。
【請求項63】
請求項37~62のいずれか一項に記載の反応器において、前記反応チャンバーは、前記還元反応中に最大で2200℃の温度に達する、反応器。
【請求項64】
請求項37~63のいずれか一項に記載の反応器において、前記第1フローおよび前記第2フローは、互いに0.1mm~100mmの間の距離をとる、反応器。
【請求項65】
請求項37~64のいずれか一項に記載の反応器において、前記第1フローおよび前記第2フローは、互いに0.3mm~50mmの間の距離をとる、反応器。
【請求項66】
請求項37~65のいずれか一項に記載の反応器において、前記第1フローおよび前記第2フローは、互いに0.6mm~30mmの間の距離をとる、反応器。
【請求項67】
請求項37~66のいずれか一項に記載の反応器において、前記炭素源はCOを含み、前記還元反応は、2~7のH/COモル比を使用して実行される、反応器。
【請求項68】
請求項37~67のいずれか一項に記載の反応器において、前記炭素源はCOを含み、前記還元反応は、0.35~0.9のO/COモル比を使用して実行される、反応器。
【請求項69】
請求項37~68のいずれか一項に記載の反応器において、前記還元反応は、0.1~0.3のO/Hモル比を使用して実行される、反応器。
【請求項70】
請求項37~69のいずれか一項に記載の反応器において、生成された前記合成ガスは、少なくとも1.8のH/COモル比を有する、反応器。
【請求項71】
請求項37~70のいずれか一項に記載の反応器において、生成された前記合成ガスは、少なくとも2のH/COモル比を有する、反応器。
【請求項72】
請求項37~69のいずれか一項に記載の反応器において、生成された前記合成ガスは、1.8~5.0のH/COモル比を有する、反応器。
【請求項73】
請求項37~72のいずれか一項に記載の反応器において、生成された前記合成ガスは、さらにCOを含む、反応器。
【請求項74】
請求項73に記載の反応器において、生成された前記合成ガスは、(H-CO)/(CO+CO)≧2となるようなH、COおよびCOのモル比を有する、反応器。
【請求項75】
冷却合成ガスを形成するための合成ガスの冷却デバイスに結合された、請求項37~74のいずれか一項に記載の反応器を備えるシステム。
【請求項76】
請求項75に記載のシステムにおいて、前記冷却デバイスは直接接触冷却器である、システム。
請求項75または76に記載のシステムにおいて、前記冷却合成ガスから水を回収するための水の凝縮装置をさらに備える、システム。
【請求項77】
請求項77に記載のシステムにおいて、前記凝縮装置は冷却-凝縮器である、システム。
【請求項78】
請求項77または78に記載のシステムにおいて、回収した前記水の少なくとも一部を前記冷却デバイスに再循環するための器機をさらに備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先する出願]
本出願は、2020年6月4日に出願されたカナダ出願CA3.081.971の優先権を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、炭素および水素(H)の供給源から合成ガスを生成するための方法および反応器に関する。より具体的には、合成ガス生成方法は、酸素炎の直接存在下で実行され、炭素および水素の供給源を含むフローを合成ガスに変換する。
【背景技術】
【0003】
気候変動との闘いにおいては、とりわけ、温室効果ガス(GHG)排出量、特にCOおよびメタンの排出量を大幅に削減する必要がある。これを行うには、漸進的な改善に関連するあらゆる手段を超えた、GHG排出量の削減という点で目標を達成できる抜本的な手段が求められる。現在、エネルギー源としての、およびいくつかの化学合成の基本成分としての、化石資源の消費を最小限に抑えるために多大な労力が払われている。原子組成に炭素を含有する製品の製造については、炭素源を提供するための基本的な試薬としてCOを使用することが有望な解決策である。COは、大気中に見られるが、COを排出する工業プロセス(セメント工場、アルミニウム工場、鉄鋼工場など)からの大気排出物にも見られる。周囲の空気由来のCOまたは産業プロセスによって排出されるCOを捕捉して後で使用するためにリサイクルするプロセスは、「炭素捕捉利用」(CCU)としても知られている。このように捕捉されたCOは、カーボンニュートラル(つまり、その生産および使用のサイクルには実質的に温室効果ガスの正味の排出が含まれない)と見なすことができる幅広い製品の生産のための炭素源として使用することができる。したがって、既存のインフラストラクチャーで使用できるカーボンニュートラルな合成燃料を生成することが可能である。
【0004】
炭素を提供するための基本試薬としてCOを使用する方法はいくつかある。最も実用的な方法は、「逆水性ガスシフト(Reverse Water Gas Shift)」すなわち、RWGSと呼ばれる反応(A)に従って、COを一酸化炭素(CO)に変換することにある。
CO2 + H2 a CO + H2O (vapor) (A)
【0005】
COを過剰の水素(H)と反応させることにより、水素およびCOベースの混合物を生成することができる。このような混合物は、「合成ガス」または「シンガス」と呼ばれる。これら合成ガスは、残留COも含み得る。
【0006】
合成ガスは、様々な汎用化学品の生成に使用できる。これらの製品の中には、自動車のガソリン、ディーゼル、灯油などに含まれるメタノールおよび炭化水素が特に見られる。
【0007】
メタノールは、ホルムアルデヒドなどの他の多くのベース製品の原料として使用できるプラットフォーム分子である。メタノールは、フロントガラスのウォッシャー液用、および工業用溶剤としての使用でも知られている。また、燃料としても使用できる。メタノールは合成炭化水素に変換することさえ可能である。最終的にメタノールは、それ自体が化学中間体であるジメチルエーテル(DME)に変換できる。DMEは、とりわけ、エアロゾルの噴射剤として使用される。DMEは、ディーゼルエンジンの燃料として、またはプロパンの代替燃料として使用できる。
【0008】
合成ガスからメタノールを生成するための既知である基本的な反応は、以下の反応(B)である:
CO + 2 H2 a CH3OH (B)
【0009】
合成炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ反応(C)に従って、合成ガスから生成できる:
n CO + 2n H2 a -(CH2)n- + n H2O (C)
【0010】
生成される化学製品に応じて、これらの製品について合成ガスとして有用なCO/Hベースの混合物はバランスが取れていなければならない。つまり、HおよびCOを適切な比率で含有していなければならない。反応(B)および(C)を考慮すると、理論的には、合成ガス(シンガス)は、2に近いH/COモル比に従って、HおよびCOを本質的に含有しなければならないことに注意されたい。より正確には、合成ガス中に残留COが存在する可能性を考慮すると、反応(B)または(C)を実行できるガスのモル比は、一般に、以下の式(D)および(E)の比率R1またはR2に対応する:
(D) R1 = H2/CO ≧ 2
(E) R2 = (H2-CO2) / (CO + CO2) ≧ 2
【0011】
R1またはR2のモル組成基準を満たし得る合成ガスを使用して、非常に多くの化学合成および炭化水素合成を実行できる。また、合成ガスからメタン(CH)を生成できることにも留意されたい。1モルのCOおよび3モルのHから1モルのメタンを生成できる。
【0012】
RWGS(A)の反応は吸熱反応である(室温で41kJ/モルの反応エンタルピー)。この反応の化学量論によれば、1kgのCOを生成するには、1.57kgのCOおよび0.07kgのHが必要であり、また、1465kJもしくは0.4kWhの熱エネルギーを準備する必要がある。この反応を実行するために、一般に触媒層(catalytic bed)反応器を用いる。しかしながら、反応(A)を実行するための従来の触媒の使用では、高い転化率を得ることはできない。これは、ワンパスあたりの(per pass)転化率、つまりCOが触媒層を通過する間の転化率がかなり低いことを意味する。その理由は、触媒層を備えた反応器の場合、動作温度がかなり制限されているためであり、600℃未満であることがしばしばである。しかしながら、熱力学的に、反応(A)はより高い温度レベルでかなり有利になることが知られている。これは、温度(大気圧で)の関数として平衡定数の値を提示する表1によって示される。
【0013】
【表1】
【0014】
特に興味深いのは、炭素源および水素源から合成ガスを生成する方法である。従来の固体触媒の使用を必要とせずに、例えばCOから、および水素から合成ガスを生成する方法も特に興味深い。様々な化学製品の製造に有用な合成ガスの調製を可能にする方法も魅力的である。このような方法について以下に説明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、本技術は、一酸化炭素(CO)および水素(H)を含む合成ガスを生成する方法であって、合成ガスは、酸素炎と接触する、炭素源および過剰の水素を含む第1フローの還元反応によって生成され、
水素は還元流に由来し、その第1部分は最終的に第1フローになり、また、第2部分は、酸素(O)を含む第2フローの存在下での水素の燃焼によって酸素炎を発生させるために使用され、第2フローは酸化流に由来し、
第1フローおよび第2フローは、酸素炎が炭素源と水素との間の反応をサポートするように、互いに一定の距離をとるものとする、
方法に関する。
【0016】
一実施形態によれば、該方法は、還元反応が固体触媒の非存在下で実行されるような方法である。
【0017】
別の実施形態によれば、該方法は、酸素炎が、炭素源のCOへの転化を促進するイオン種およびフリーラジカルを発生させるような方法である。
【0018】
別の実施形態によれば、該方法は、炭素源が、
・CO、または、
・式Cαβγで表される、少なくとも1種の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)、または、
・1つ以上の炭化水素、または、
・上記炭素源のうちの少なくとも2つの混合物、
を含むような方法である。
【0019】
別の実施形態によれば、炭素源はCOを含み、還元反応はガスから水への逆反応、すなわち「逆水性ガスシフト」を含む。
【0020】
別の実施形態において、該方法は、還元流が水素であるような方法である。別の実施形態において、還元流は水素および炭素源を含む。別の実施形態において、還元流は水素およびCOを含む。
【0021】
別の実施形態によれば、該方法は、還元流が、水素、CO、および式Cαβγで表される、少なくとも1種の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)を含むような方法である。
【0022】
別の実施形態によれば、該方法は、酸化流が酸素であるような方法である。別の実施形態において、酸化流は酸素およびCOを含む。
【0023】
別の実施形態によれば、該方法は、還元流が水素のみを含み、酸化流が酸素のみを含み、炭素源が独立流(independent stream)によって供給されるような方法である。別の実施形態によれば、独立流はCOを含む。別の実施形態によれば、独立流はCOおよびメタンを含む。
【0024】
別の実施形態によれば、該方法は、酸素が水電解反応に由来するような方法である。
【0025】
別の実施形態によれば、該方法は、水素が水電解反応に由来するような方法である。
【0026】
別の実施形態によれば、該方法は、炭素源がバイオマスのガス化または熱分解プロセスから生じるガス混合物に由来するような方法である。
【0027】
別の実施形態によれば、該方法は、還元反応が少なくとも600℃の平均温度で実行されるような方法である。別の実施形態によれば、該方法は、還元反応が少なくとも1200℃の平均温度で実行される。別の実施形態によれば、該方法は、還元反応が最大で2200℃の平均温度で実行される。
【0028】
別の実施形態によれば、該方法は、第1フローおよび第2フローが互いに0.1mm~100mmの間の距離をとるような方法である。別の実施形態によれば、第1フローおよび第2フローは、互いに0.3mm~50mmの間の距離をとる。別の実施形態によれば、第1フローおよび第2フローは、互いに0.6mm~30mmの間の距離をとる。
【0029】
別の実施形態によれば、該方法は、炭素源がCOを含み、還元反応が2~7のH/COモル比を使用して実行されるような方法である。
【0030】
別の実施形態によれば、該方法は、炭素源がCOを含み、還元反応が0.35~0.9のO/COモル比を使用して実行されるような方法である。
【0031】
別の実施形態によれば、該方法は、還元反応が0.1~0.3のO/Hモル比を使用して実行されるような方法である。
【0032】
別の実施形態によれば、該方法は、生成された合成ガスが少なくとも1.8のH/COモル比を有するような方法である。別の実施形態によれば、生成された合成ガスは、少なくとも2のH/COモル比を有する。別の実施形態によれば、生成された合成ガスは、1.8~5.0のH/COモル比を有する。
【0033】
別の実施形態によれば、該方法は、生成された合成ガスがさらにCOを含むような方法である。
【0034】
別の実施形態によれば、該方法は、生成された合成ガスが、(H-CO)/(CO+CO)≧2となるようなH、COおよびCOのモル比を有するような方法である。
【0035】
別の実施形態によれば、該方法は、合成ガスを冷却して冷却合成ガスを形成するステップをさらに含む。
【0036】
別の実施形態によれば、該方法は、冷却合成ガスに含有される水を凝縮し、水を回収するステップをさらに含む。別の実施形態によれば、回収水の少なくとも一部が冷却ステップに再循環される。
【0037】
別の態様によれば、本技術は、化学製品または燃料の製造のための、本技術に係る方法によって生成された合成ガスの使用に関する。
【0038】
別の態様によれば、本技術は、メタノールまたは合成炭化水素の製造のための、本技術に係る方法によって生成された合成ガスの使用に関する。
【0039】
別の態様によれば、本技術は、一酸化炭素(CO)および水素(H)を含む合成ガスを生成するための反応器であって、
酸素炎と接触する、炭素源および過剰の水素を含む第1フローの還元反応によって合成ガスが生成される、反応チャンバーと、
水素を含む還元流を反応チャンバーに供給するための少なくとも1つの第1の手段であって、還元流の第1部分は最終的に第1フローになり、また、第2部分は、酸素(O)を含む第2フローの存在下での水素の燃焼によって燃焼するチャンバー内で酸素炎を発生させるために使用される、第1の手段と、
第2フローを形成する酸化流を反応チャンバーに供給するための少なくとも1つの第2の手段と、
を備え、
第1フローおよび第2フローは、酸素炎が炭素源と水素との間の反応をサポートするように、互いに一定の距離をとものとする、反応器に関する。
【0040】
一実施形態によれば、反応器は、還元反応が固体触媒の非存在下で実行されるような反応器である。
【0041】
別の実施形態によれば、反応器は、酸素炎が、炭素源のCOへの転化を促進するイオン種およびフリーラジカルを発生させるような反応器である。
【0042】
別の実施形態によれば、反応器は、炭素源が以下のもの、すなわち、
・CO、または、
・式Cαβγで表される、少なくとも1種の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)、または、
・1つ以上の炭化水素、または、
・上記炭素源のうちの少なくとも2つの混合物、
を含むような反応器である。
【0043】
別の実施形態によれば、反応器は、炭素源がCOを含み、還元反応がガスから水への逆反応、すなわち「逆水性ガスシフト」であるような反応器である。
【0044】
別の実施形態において、反応器は、還元流が水素であるような反応器である。別の実施形態において、還元流は水素および炭素源を含む。別の実施形態において、還元流は水素およびCOを含む。
【0045】
別の実施形態によれば、反応器は、還元流が水素、CO、および式Cαβγで表される、少なくとも1種の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)を含むような反応器である。
【0046】
別の実施形態によれば、反応器は、酸化流が酸素であるような反応器である。別の実施形態によれば、酸化流は酸素およびCOを含む。
【0047】
別の実施形態によれば、反応器は、還元流を供給するための第1の手段および酸化流を供給するための第2の手段がチューブであるような反応器である。
【0048】
別の実施形態によれば、反応器は、反応チャンバー内への酸化流の注入を可能にする複数のチューブからなる複数の第2の手段、および反応チャンバー内への還元流の注入を可能にする複数の開口部からなる複数の第1の手段を含む。別の実施形態によれば、各開口部は、複数のチューブのうちの1つのチューブの外径によって区切られ(delimited)、また、チューブの外壁から垂直に延在する環状空間によって画定される。別の実施形態によれば、反応器は、分離壁によって反応チャンバーから分離された還元流分配チャンバーをさらに備え、前記分配チャンバーおよび前記分離壁は、複数のチューブによって横切られており、各チューブの外壁から垂直に延在する環状空間もまた、分離壁を横切っている。
【0049】
別の実施形態によれば、反応器は、還元流が第1のチューブからなる第1の手段によって反応チャンバーに供給される水素であり、酸化流が第2のチューブからなる第2の手段によって反応チャンバーに供給される酸素であり、および、炭素源が反応チャンバーの壁に配置された少なくとも1つの開口部を通して反応チャンバーに注入される独立流によって供給されるような反応器である。別の実施形態によれば、開口部は、第1のチューブおよび第2のチューブと同心の第3のチューブによって形成され、第2のチューブは内側チューブを形成し、第1のチューブは中間チューブを形成し、第3のチューブは外側チューブを形成する。別の実施形態によれば、開口部は、第3のチューブの内径と第1のチューブの外径とによって区切られた環状空間によって形成される。別の実施形態によれば、反応器は、分離壁によって反応チャンバーから分離された分配チャンバーをさらに備え、前記分配チャンバーは、炭素源を含む独立流を供給するのに役立ち、かつ第1のチューブおよび第2のチューブによって横切られている。別の実施形態によれば、反応器は、独立流がCOを含むような反応器である。別の実施形態によれば、反応器は、独立流がCOおよびメタンを含むような反応器である。
【0050】
別の実施形態によれば、反応器は、酸素が水電解反応に由来するような反応器である。
【0051】
別の実施形態によれば、反応器は、水素が水電解反応に由来するような反応器である。
【0052】
別の実施形態によれば、反応器は、炭素源がバイオマスのガス化または熱分解プロセスから生じるガス混合物に由来するような反応器である。
【0053】
別の実施形態において、反応器は、反応チャンバーが還元反応中に少なくとも600℃の温度に達するような反応器である。別の実施形態において、反応チャンバーは、還元反応中に少なくとも1200℃の温度に達する。別の実施形態において、反応チャンバーは、還元反応中に最大で2200℃の温度に達する。
【0054】
別の実施形態において、反応器は、第1フローおよび第2フローが互いに0.1mm~100mmの間の距離をとるような反応器である。別の実施形態によれば、第1フローおよび第2フローは、互いに0.3mm~50mmの間の距離をとる。別の実施形態によれば、第1フローおよび第2フローは、互いに0.6mm~30mmの間の距離をとる。
【0055】
別の実施形態において、反応器は、炭素源がCOを含み、還元反応が2~7のH/COモル比を使用して実行されるような反応器である。別の実施形態によれば、炭素源は、COを含み、還元反応が0.35~0.9のO/COモル比を使用して実行される。
【0056】
別の実施形態によれば、反応器は、還元反応が0.1~0.3のO/Hモル比を使用して実行されるような反応器である。
【0057】
別の実施形態によれば、反応器は、生成された合成ガスが少なくとも1.8のH/COモル比を有するような反応器である。別の実施形態によれば、生成された合成ガスは、少なくとも2のH/COモル比を有する。別の実施形態によれば、生成された合成ガスは、1.8~5.0のH/COモル比を有する。
【0058】
別の実施形態によれば、反応器は、生成された合成ガスがさらにCOを含むような反応器である。
【0059】
別の実施形態によれば、反応器は、生成された合成ガスが、(H-CO)/(CO+CO)≧2となるようなH、COおよびCOのモル比を有するような反応器である。
【0060】
さらに別の実施形態によれば、本技術は、冷却合成ガスを形成するための合成ガスの冷却デバイスに結合された、本技術に従って定義される反応器を備えるシステムに関する。
【0061】
一実施形態によれば、システムは、冷却デバイスが直接接触冷却器であるようなシステムである。
【0062】
別の実施形態によれば、システムは、冷却合成ガスから水を回収するための水の凝縮装置をさらに備える。
【0063】
別の実施形態によれば、システムは、凝縮装置が冷却-凝縮器であるようなシステムである。
【0064】
別の実施形態によれば、システムは、回収水の少なくとも一部を冷却デバイスに再循環するための器機をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】合成ガスを生成するための本方法の一般的な動作原理の概略図である。
図2】第1の実施形態に係る合成ガスを生成する方法を実行するために使用することができる反応器の垂直面に沿った断面図を示す。
図3】合成ガス生成方法の一実施形態に係る、異なるフロー間および/または反応器の異なる要素間における特定の距離パラメーターを示す。
図4】別の実施形態に係る合成ガス生成方法を実行するために使用することができる反応器の垂直面に沿った断面図を示す。
図5】別の実施形態に係る合成ガスを生成する方法を実行するために使用することができる反応器の垂直面に沿った断面図を示す。
図6a】別の実施形態に係る合成ガス生成方法を実行するために使用することができる反応器の垂直面に沿った断面図を示す。
図6b図6aの反応器の上面断面図を示す(この実施形態に係る距離パラメーターを説明するために、2つの同心チューブの拡大図も示されている)。
図7】さらに別の実施形態に係る合成ガス生成プロセスの図を示す。
図8】実施例に使用される、一般的なチューブの配置であるミニ反応器の垂直面に沿った概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語および表現は、本技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。そうではあるが、使用される特定の用語および表現の定義を以下に示す。
【0067】
本明細書で使用される「約(about)」という用語は、おおよそ、その領域内、およびその周辺を意味する。「約」という用語が数値に関連して使用される場合、例えば、公称値と比較して10%の変動で上下に修正される。この用語は、例えば、測定デバイスの実験誤差または値の丸めも考慮に入れることができる。
【0068】
本出願において値の間隔(interval)が言及される場合、特に明記しない限り、間隔の下限および上限は常に定義に含まれる。
【0069】
ここで説明される化学構造は、本分野の慣習に従って描かれている。また、描画された炭素原子などの原子が不完全な原子価を含むように見える場合、明示的に描画されていなくても、原子価は1つ以上の水素原子によって満たされているものと見なされる。
【0070】
本明細書において、用語「合成ガス(synthesis gas)」および「シンガス(syngas)」は、少なくとも一酸化炭素(CO)および水素(H)を含むガス混合物を識別するために交換可能に使用される。いくつかの実施形態において、合成ガスまたはシンガスはCOを含むことができる。一実施形態によれば、合成ガス中のH/COモル比は1以上である。他の実施形態において、合成ガスは、少なくとも1.8、例えば1.8~5.0の間のH/COモル比を有し得る。別の実施形態によれば、合成ガス中のH/COモル比は2以上である。したがって、合成ガス中のH/COモル比は、1.8または1.9または2.0または2.1または2.2または2.3または2.4または2.5または2.6または2.7または2.8または2.9または3.0または3.1または3.2または3.3または3.4または3.5または3.6または3.7または3.8または3.9または4.0または4.1または4.2または4.3または4.4または4.5または4.6または4.7または4.8または4.9または5.0であり得る。しかしながら、H/COのモル比の種々異なる合成ガスを得ることができる。
【0071】
「流れ(stream)」という用語は、合成ガスの形成が行われる反応チャンバーに給送する様々なガス流を表すために使用される。以下でより詳細に説明するように、方法は、水素(H)を含む少なくとも1つの流れ、および酸素(O)を含む少なくとも1つの流れを用いる。該方法で使用される炭素源は、その性質に応じて、独立流によって、またはO含有流によって、またはH含有流によって給送され得る。反応チャンバーに入る流れは気体状態である。必要に応じて、液体状態の試薬を蒸発させて、気体の形態で反応チャンバーに到達させることができる。
【0072】
「フロー(flow)」という用語は、反応チャンバー内での合成ガス生成反応の実行に関与する様々なガスフローを表すために使用される。以下でより詳細に説明するように、反応は、互いに反応して合成ガスを形成することになる水素(H)および炭素源を含む還元流と、水素(H)と反応して酸素炎を形成することになる酸素(O)を含む酸化流と、を伴う。
【0073】
「炭素源(carbon source)」という用語は、最終的に生成される合成ガスになる炭素を提供するために使用される化合物を表す。したがって、炭素源は、生成される一酸化炭素(CO)に最終的に至る、少なくとも炭素を提供する。様々な化合物を炭素源として使用できる。一実施形態によれば、炭素源はCOを含み得る。別の実施形態によれば、炭素源は、式Cαβγで表される、1種以上の含酸素炭素系分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)を含み得る。炭素源はまた、例えばアルカン、アルケンおよび/または芳香族などの1つ以上の炭化水素を含み得る。合成ガスを生成するために使用される炭素源は、上記の異なる源の2つ以上の組み合わせとすることも可能である。したがって、特定の実施形態によれば、炭素源は、COおよびCαβγ型の1つ以上の含酸素分子を含み得る。他の実施形態によれば、炭素源は、COおよび1つ以上の炭化水素、例えばCOおよびメタンを含み得る。炭素源が炭化水素のみを含有する場合、酸素原子の摂取が必要になる。この酸素はCOによって供給されるが、水蒸気の形態で供給されることもあり得る。いくつかの実施形態によれば、炭素源は、1つ以上の炭化水素、COおよび水蒸気を含み得る。水蒸気は、必要に応じて、酸素炎を発生させる反応(以下の反応(G)を参照)を由来とし得、および/または反応チャンバーに給送され得る。
【0074】
したがって、本明細書は、炭素源から合成ガスを生成するための革新的な方法を提示する。前述のように、炭素源は様々である。いくつかの実施形態において、炭素源は、一般に、2つの主要な供給源カテゴリー、すなわち、人間の活動に関連する人為的供給源、およびいわゆる生物起源の自然供給源を導き出すことができるCOを含む。本方法は、上記両方のタイプの発生源に由来するCOを用いることができ、純粋なCOを用いることもできる。別の実施形態によれば、CO、および式Cαβγで表される、1種以上の含酸素分子(式中、αが1~5であり、βが2~10であり、γが1~4である)を用いることができる。あるいは、炭素源は、単純に1種以上のCαβγ分子を含み得る。別の実施形態によれば、COと、アルカン(例えば、メタン)、アルケンおよび/または芳香族分子などの炭化水素と、を含むガス混合物を用いることもできる。しかし、炭化水素のみを炭素源として使用することも可能である。いくつかの実施形態によれば、炭素源は、CO、1種以上のCαβγ分子、および1種以上の炭化水素を含み得る。炭素源を提供するガス混合物中には、任意に硫黄を含有し得る化石源由来の生成物を含む、広範囲の有機分子が存在する可能性がある。
【0075】
より具体的には、合成ガスを生成する方法は、酸素炎と接触させて、炭素源を過剰の水素と反応させることによって実行される。本技術によれば、「酸素炎(Oxy-flame)」は、以下の反応(F)に従って、酸素(O)などの酸化剤の存在下で水素が燃焼することによって生成される炎を意味する:
H2 + 1/2 O2 a H2O (vapor) + Heat (F)
【0076】
この炎は、明るく光り輝くものであり、また炭素源から合成ガスを生成する反応をサポートするために必要な熱を供給する。この炎は、炭素源からCOへの転化を触媒できるイオン種およびフリーラジカルを発生させ得る。特定の実施形態によれば、酸素炎は、反応チャンバー内で、少なくとも約600℃の平均温度に到達することを可能とし得る。他の実施形態によれば、反応チャンバー内で到達する平均温度は少なくとも約1200℃である。反応チャンバー内で到達する温度は、約2200℃ まで上昇し得る。したがって、反応チャンバー内で合成ガスを生成する反応は、少なくとも600℃~約2200℃までの平均温度で実行することができる。酸素炎は、水素と酸素との燃焼反応が、過剰な水素の存在下で起こるため、「還元性酸素炎」と見なすことができる。一実施形態において、酸素炎を生成するために使用される酸化剤は、酸素(O)ベースの混合物、好ましくは純粋酸素(pure oxygen)であり得る。「純粋な」酸素とは、これが必ずしも100%の純度を意味するわけではなく、酸素ベースの混合物が実質的にOを含み、例えばN、HOなどの特定の不純物を伴う可能性があることを理解されたい。
【0077】
上述のように、合成ガスを形成するための反応は、過剰の水素の存在下で実行される。「過剰な水素(excess of hydrogen)」とは、水素(H)の量が、一方では燃焼反応(F)により酸素炎を生成するのに十分であり、また他方では炭素源の合成ガスへの転化反応を実行することができるのに十分でなければならないことであることを理解されたい。必要な水素の量は、使用する炭素源に応じて、および関与する反応の化学量論を考慮して決定され得る。
【0078】
以下でより詳細に説明される別の実施形態によれば、本方法で必要とされる水素ならびに酸素炎を生成するために使用される酸素は、少なくとも部分的に水電解反応から生じ得る。水電解システムが再生可能電力で駆動されている場合、これはさらに有利になり得る。酸素炎を生成する燃焼は、電気アーク、白熱線、または他の既知のエネルギー源などの点火デバイスを用いて開始することができる。
【0079】
特定の実施形態によれば、本方法は、2に近いH/COモル比でHおよびCOを本質的に含有する合成ガスを生成することができる。特定の実施形態によれば、本方法は、上述した式(D)および(E)によって示される条件を満たす組成を有する合成ガスの生成に適している。これは、酸化流および還元流を生成する異なるガス流の割合を変えることによって可能となる。
【0080】
図1は、該方法の操作の一般的な原理を示している。少なくとも水素および炭素源を含む還元流(図の右側)は、最終的に反応チャンバー(10)に入る。炭素源をCOに転化するために必要な熱は、酸素炎と呼ばれる高温の炎によって提供され、その炎は酸素などの酸化剤の存在下で水素を燃焼させることによって生成される(図の左側)。反応チャンバーに供給される水素の一部は、酸素炎(図の下の矢印)を生成するために使用され得る。反応チャンバーに供給される水素の別の部分は、合成ガスを生成するためにそのまま使用される。酸素炎は、炭素源からCOへの転化反応に必要な熱を提供することに加えて、この転化を促進できるイオン種およびフリーラジカルを発生させ得る。水素は過剰に反応チャンバーに導入され、一部分COとともに抜かれて合成ガスを形成する。全体として、プロセス全体は「オートサーマル」プロセスとして認めることができる。
【0081】
したがって、反応チャンバー(10)には、2つの別個のフローが存在し、第1のフローは、酸化流と呼ばれる純粋な酸素を有する酸化ガスを由来とするものであり、またもう一方のフローは還元流と呼ばれ、水素ベースの還元ガス混合物から生じ、炭素源を含有する。この2つのフローは近接している。一実施形態によれば、この2つのフローは、0.1mm≦d≦100mmとなるように、互いに距離「d」だけ分離され得る。別の実施形態によれば、2つのフローを分離する距離dは、0.3mm≦d≦50mmであってもよい。この距離は、好ましくは0.6mm≦d≦30mmであり得る。したがって、この2つの流れを分離する距離dは、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、5mm、10mm、15mm、20mm、25mm、35mm、40mm、45mm、50mm、55mm、60mm、65mm、70mm、75mm、80mm、85mm、90mm、95mm、100mm、または上記の値の間の任意の距離をとり得る。反応チャンバー内に最終的に入る還元フローおよび酸化フローは、様々な流れを由来とし得ることに留意されたい。実際のところ、還元フローは少なくともHを含む還元流を由来とし、酸化フローは少なくとも酸素を含む酸化流を由来とする。しかしながら、反応チャンバー内の還元フローに最終的に入る炭素源は、還元流もしくは独立流、またはこの炭素源がCOのみを含む場合は酸化流のいずれかによって供給され得る。
【0082】
合成ガス生成方法の第1の実施形態を図2に示す。この実施形態は、炭素源としてCOから合成ガスを生成するのに特に適している。酸素を含む流れ(1)がCOを含む流れ(2)と混合され、OおよびCOの混合物を含む酸化流(3)を生成する。酸化流(3)は、反応器の反応チャンバー(10)内にOおよびCOの混合物を注入することができるチューブ(4)を通って運ばれる。反応チャンバー(10)の内部では、OおよびCOの混合物が酸化フロー(6)を形成し、そのうちのOは酸素炎(9)の生成に使用される。水素を含む流れ(5)は、チューブ(4)の外壁と反応チャンバーの入口にある開口部(7)の円周部との間に画定された環状空間を通して反応チャンバー内に注入される。水素流(5)は還元流を構成し、チャンバー内に入ると、それ自体が2つの部分に分かれる還元フローを形成することとなる。還元フローの第1部分(8a)は、水素燃焼反応(F)に従って酸化フロー(6)と反応して、酸素炎(9)を生成することとなる。
【0083】
水素フローの第2部分(8b)は、RWGS反応(A)の試薬成分として使用される。この反応に必要な熱は、酸素炎(9)を由来とする。
【0084】
反応(F)および(A)は、反応チャンバー(10)内で起こり、水素、一酸化炭素、二酸化炭素および水蒸気からなるガス混合物(12)を形成する。ガス混合物(12)は湿式合成ガスとも呼ばれる。このガス混合物(12)は、反応器の開口部(13)を通して排出される。
【0085】
この実施形態に使用される反応器は、耐火材料および断熱(insulating)材料(11)で満たすことができる壁(14)を備える。反応チャンバー(10)の体積は、長さLおよび直径Dによって画定される円筒形空間によって決定される。反応器内では、例えば電気アーク、白熱線(図示せず)などの従来の点火デバイスを使用して燃焼を開始することができる。一実施形態によれば、反応器は、反応チャンバー内の温度を測定することを可能にするデバイスを備えることができる。このようなデバイスは、例えば熱電対(図示せず)であり得る。酸化流(3)の注入チューブ(4)は、デバイス(15)によって固定することができる。いくつかの実施形態によれば、固定デバイス(15)は、注入チューブ(4)のガイドとして、および封止システムとして使用することができる。固定デバイス(15)は、例えば、ケーブルグランドパッキンを有するクランプを備えることができる。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、反応チャンバーの長さLは、1cm~300cmの間、好ましくは10cm~100cmの間であり得る。反応チャンバーの直径Dは、例えば、0.3cm~100cmの間、好ましくは1cm~50cmの間であり得る。いくつかの実施形態によれば、反応チャンバーの長さおよび直径の上記の値は、図2図5に示される反応器にも適用することができる。
【0087】
特定の実施形態によれば、異なるガスフローは、以下に定義される特定のパラメーターによって特徴付けることができる。これらのパラメーターの一部は、例えば図3に示された、様々な距離に依存する。
【0088】
酸化フロー(6)は、以下の式(G)による速度パラメーターv1によって特徴付けることができる:
v1 = V1/ ((π/4)●D1^2) (G)
式中、V1は、反応チャンバー内の温度および圧力条件における酸化流(3)の体積流量に対応し、Dは、酸化流(3)の入口チューブ(4)の内径である。式中の記号「●」は「乗算」を意味し、記号「^2」は「二乗」を意味する。
【0089】
直径D1は、酸化フロー(6)を特徴付ける速度v1が、体積流量V1に基づいて少なくとも1m/秒となるようなものである。別の実施形態によれば、直径D1は、速度v1が5m/秒~150m/秒の間、好ましくは5m/秒~100m/秒の間となるようなものである。したがって、速度v1は、例えば、5m/秒~90m/秒の間、5m/秒~80m/秒の間、5m/秒~70m/秒の間、5m/秒~60m/秒の間、5m/秒~50m/秒の間、5m/秒~40m/秒の間、5m/秒~30m/秒の間、5m/秒~20m/秒の間、または5m/秒~10m/秒の間であり得る。
【0090】
還元フロー(8a、8b)の流れは、下記式(H)による速度パラメーターv2によって特徴付けられる:
v2 = V2 / ((π/4)●(D^2-D’1^2)) (H)
式中、V2は、反応チャンバー内の温度および圧力条件での還元フロー(8a、8b)の体積流量であり、Dは反応器の内径であり、D'は酸化流(3)の入口チューブ(4)の外径である。
【0091】
(D/2-D'/2)によって特徴付けられる開口部(7)は、チューブ(4)の外壁と該開口部(7)の円周部との間に画定される環状空間を流れる還元流の速度v2が、体積流量V2に基づいて少なくとも1m/秒になるようにすることができる。別の実施形態によれば、開口部(7)(D/2-D'/2)は、速度v2が5m/秒~150m/秒、好ましくは10~100m/秒となるような開口部である。したがって、速度v2は、例えば、10m/秒~90m/秒の間、10m/秒~80m/秒の間、10m/秒~70m/秒の間、10m/秒~60m/秒の間、10m/秒~50m/秒の間、または10m/秒~40m/秒の間であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、還元フロー(8a、8b)と酸素炎(9)を生成するフローとの間の近接レベルを特徴付けるパラメーターを定義することが可能である。上記パラメーターは、以下の式(I)に従って距離dによって定義できる:
d = (D - D’1)/4 (I)
【0093】
先に示したように、距離dは、0.1mm~100mmの間、好ましくは0.3mm~50mmの間、好ましくは0.6mm~30mmの間であり得る。距離dは、これらの値の範囲内の任意の距離にすることもできる。
【0094】
一実施形態によれば、反応器の反応チャンバー(10)の体積は、反応チャンバー(10)内のすべての反応物に対して特定の滞留時間を少なくとも0.01秒とすることが可能である。この滞留時間は、以下の式(J)に従って定義できる:
t = ((π/4)●D^2●L) / (V1 + V2) (J)
式中、Lは、反応チャンバー(10)の長さ、すなわち、図2の例に示すように、反応器の内部体積の長さである。
【0095】
特定の実施形態によれば、V1は、2L/分(3.33E-5m/秒)~100000L/分(1.67m/秒)の間、好ましくは5L/分(8.33E-05m/秒)~50000L/分(0.84m/秒)の間であり得る。いくつかの実施形態によれば、V2は、10L/分(1.67E-04m/秒)~300000L/分(5m/秒)の間、好ましくは25L/分(4.17E-04m/秒)~200000L/分(3.33m/秒)であり得る。
【0096】
特定の実施形態によれば、合成ガスを生成する方法は、2~7の間のH/COモル比を用いて実行することができる。O/COモル比は、例えば、0.35~0.9の間であり得る。合成ガスの生成は、例えば、0.1~0.3の間のO/Hモル比を用いて実行することができる。
【0097】
特定の実施形態によれば、合成ガスを生成する方法は、以下のモル比の異なる試薬、
・2~7の間のH/COモル比
・0.35~0.9の間のO/COモル比
・0.1~0.3の間のO/Hモル比
を用いて実行することができる。
【0098】
合成ガス生成中に反応チャンバー内での到達温度は、少なくとも600℃になり得る。この温度は最大で2200℃であり得る。したがって、温度は600℃~2200℃の値の間で変化させることができることから、例えば1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃、1500℃、1600℃、1700℃、1800℃、1900℃、2000℃、2100℃および2200℃、またはこれらの値の間の任意の温度であり得ることが理解されるであろう。反応チャンバー内では、反応中に温度プロファイルが確立されることが理解される。したがって、温度は、反応チャンバー内の別のスポットに対してあるスポットで必ずしも同じであるとは限らない。換言すれば、反応チャンバー内により温度の高い領域とより温度の低い領域とがある。したがって、反応チャンバー内で到達温度について述べるときは、代表的な平均温度について述べていることになる。
【0099】
温度は、合成ガス生成反応中の反応チャンバー内の圧力に応じて変化し得る。合成ガス生成反応を行うための圧力は、少なくとも0.5気圧であり得る。いくつかの実施形態によれば、合成ガスの生成は、3気圧以下の圧力で実行することができる。したがって、いくつかの実施形態によれば、圧力は、0.5気圧、1気圧、1.5気圧、2気圧、2.5気圧、もしくは3気圧、またはこれらの値の間の任意の圧力でさえあり得る。例えば、圧力は1気圧~3気圧の間であり得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、COおよびHの所与の流量について、RWGS反応を操作するための反応器内の温度および熱の所望のレベルを得るために、O供給速度を調節することができる。さらに、Hの流量は、開口部(13)によって排出されるガス混合物(12)について好適な、式(E)によって定義されるH/CO比またはR2比が得られるように調整することができる。
【0101】
図4は、合成ガス生成方法およびこの生成のために使用できる反応器の別の考え得る実施形態を示す。この実施形態は、任意の考え得る炭素源からの合成ガスの生成に適合する。この場合、炭素源を含む流れ(2)が水素の流れ(5a)と混合して、その後に反応器に送られる還元流(5b)を形成する。しかし、炭素源が酸化剤であるCOを含む場合でも、COを含むガスと水素とを混合することによって形成される混合物(5b)は、主に水素から構成されるため、還元性混合物である。いくつかの実施形態において、炭素源はCOであり、還元流中のH/COモル比は、少なくとも約2、好ましくは少なくとも3であり得る。反応チャンバー(10)に入ると、還元流(stream)(5b)は還元フロー(flow)(8a、8b)になる。Oを含む酸化流(1)は、チューブ(4)によって反応器に給送され、酸化フロー(6)を形成する。還元フローの第1部分(8a)は、酸化フロー(6)と反応して酸素炎(9)を生成する。炭素源をも含有する水素フローの第2部分(8b)は、酸素炎(9)からの熱を用いて反応する。該フロー(8b)が過剰の水素を含むとすると、反応器の出口で形成されるガス混合物(12)は、水素、一酸化炭素、二酸化炭素および水蒸気から構成される。このガス流または湿式合成ガスは、反応器の開口部(13)を通して排出される。
【0102】
一実施形態によれば、流れ(2)を形成する炭素源は本質的にCOを含み得、また、反応チャンバー内で生じる反応はRWGS反応(A)である。
【0103】
別の実施形態によれば、流れ(2)を形成する炭素源は、化学式Cαβγで表される、有機分子(式中、αが1~5の間で変化し得、βが2~10の間で変化し得、γが1~4の間で変化し得る)を含み得る。アルカン(例えば、メタン)、アルケン、芳香族といった炭化水素など、他の種類の有機分子も流れ(2)を形成することができる。これらの有機分子は、任意に流れ(2)中のCOと混合され得る。
【0104】
炭素源がCαβγタイプの有機分子を含む場合、反応チャンバー内で以下の反応が起こり:
・式(K)による合成ガス生成;
CαHβOγ + a’ H2 + Q a c H2 + d CO + e’ H2O + f CO2 (K)
・式(L)による水素燃焼;
a’’ H2 + b O2 a e’’ H2O + Q (L)
式中、a’、a’’、b、c、d、e’、e’’、およびfは、その値が関与する分子および合成ガスの生成を達成するために考慮される操作条件に依存する化学量論係数であり、また、Qはプロセス中に含まれる熱である。
【0105】
したがって、a=a’+a’’およびe=e’+e’’の時、方程式(K)および(L)の合計は、以下の化学量論方程式(M)を与える:
CαHβOγ + a H2 + bO2 a c H2 + d CO + e H2O + f CO2 (M)
【0106】
化学量論係数は、炭素源として使用される有機化合物の化学式から決定できる。
【0107】
例えば、α=1の場合、係数は以下の値、
・aは、1~5の間
・a’’は、0.5~2の間
・bは、0.25~1の間
・cは、2~3の間
・dは、0.5~1の間
・eは、0.5~2.5の間
・e’’は、0.5~2の間
・fは、0.15~0.75の間
を有し得る。
【0108】
上述のように、流れ(2)は、COと式Cαβγの有機分子との混合物を含み得る。この場合、反応(A)および(M)の両方が反応チャンバー内で起こり、合成ガスを形成し得る。
【0109】
炭素源が炭化水素を含む場合、合成ガスの生成が、反応チャンバー内において炭化水素の酸化を可能にする酸化剤の存在下で起こり得る。そのような酸化剤は、水蒸気および/またはCOを含み得る。水蒸気は、酸素炎の形成中にH燃焼反応(F)によって発生し得、および/または独立して反応チャンバーに給送され得る。
【0110】
炭素源が炭化水素としてメタンを含む場合、関与する酸化剤(水蒸気、CO)に応じて、反応チャンバー内で以下の反応が起こり得る:
CH4 + H2O a CO + 3 H2 (N)
CH4 + CO2 a 2 CO + 2 H2 (O)
【0111】
炭素源が式Cの炭化水素を含む場合、反応チャンバー内で以下の反応が起こり得る:
CnHm + n H2O = n CO + (n + 1/2 m) H2 (P)
【0112】
したがって、合成ガスを生成する本方法は、様々な炭素源の使用可能性を提供する。例えば、炭素源は、バイオマスのガス化または熱分解プロセスなどの工業プロセスによって生成されるガス混合物であり得る。
【0113】
図3に関して上述した様々な反応パラメーター(圧力、温度、距離、直径、速度、体積流量、滞留時間など)は、図4に関連して提示された様々な炭素源を包含する実施形態にも適用できることに留意されたい。
【0114】
図5は、合成ガスを生成する方法の別の実施形態、および、とりわけこの実施形態に使用できる反応器の別の実施形態を示す。図4に示される実施形態の場合と同様に、図5の実施形態は、任意の考え得る炭素源(例えば、CO、式Cαβγの分子、炭化水素またはそれらの混合物)由来の合成ガスの生成に適合される。図5に示すように、酸素炎(9)は、2つの別個の同心チューブ(4aおよび4b)の手段を用いて酸素および水素を注入することによって生成でき、これについては、以下でさらに詳しく説明する。この実施形態では、反応器は、その下部に、より大きな直径の第2チューブ(4b)に適合する中心の(central)チューブ(4a)を備える。中心のチューブ(4a)は、封止デバイスなどの固定デバイス(15b)によって、より大きなチューブ(4b)に取り付けることができる。第2のより広いチューブ(4b)自体は、前記固定デバイス(15b)と同様であることが好ましい固定デバイス(15a)によって反応器の壁(14)に取り付けることができる。反応器の内部は2つの区画(10aおよび10b)に分けられる。2つの区画(10a、10b)は、開口部(7b)を備えた壁(16)によって分離されている。第1区画(10a)は、反応器の反応チャンバーを構成する。
【0115】
図5に見られるように、酸素ベースの酸化流(1)が中心のチューブ(4a)に注入され、水素を含む流れ(5)が第2のチューブ(4b)に注入される。水素流(5)は、中央の(median)チューブ(4b)の内壁と中心のチューブ(4a)の外壁との間の環状空間(7a)によって画定される開口部を通過する。炭素源を含む流れ(2)は、分配チャンバーとして認めることのできる区画(10b)内に注入され、次いで開口部(7b)を通過して反応チャンバー(10a)に入る。反応器内で、Oの流れ(1)は酸化フロー(6)になり、Hの流れ(5)は水素フロー(8c)になり、炭素源を含む流れ(2)は最終的に第3フロー(8d)になる。酸素フロー(6)および水素フローの一部(8c)は、酸素炎(9)の生成に使用され、過剰の、すなわち燃焼されない水素は、炭素源を含むフロー(8d)と反応する。反応チャンバーのちょうど入口で、炭素源を含むフロー(8d)とは異なるHフロー(8c)があったとしても、これらの2つのフロー(8c)および(8d)は、反応チャンバーに入るとすぐに完全分離したフローを構成することはなく、反応チャンバーに入ると、それぞれ各フローがHと炭素源との両方を含むことができる。
【0116】
図5に示される実施形態では、炭素源(2)を含む流れはCOであり得る。しかしながら、該流れ(2)はまた、COを含まないが、上記の有機分子および/または炭化水素などの他の化合物を含み得る。さらに、いくつかの実施形態によれば、流れ(2)は水素も含み得る。したがって、ある特定の量の水素を使用される中央のチューブ(4b)に給送して水素フロー(8c)を形成することができ、一方、水素の別の部分をCOおよび/または有機および/または炭化水素蒸気と混合してフロー(8c)を形成することができる。
【0117】
図3に関して上述した様々な反応パラメーター(圧力、温度、速度、直径、体積流量、滞留時間など)は、ちょうど図5に関連して提示された様々な炭素源を包含する実施形態にも適用できることに留意されたい。
【0118】
図6aおよび6bは、大容量反応器を使用する合成ガス生成方法の実施形態を示す。図2に関連して提示された実施形態に関して、図6aおよび6bの実施形態は、炭素源としてのCO由来の合成ガスの生成に特に適している。この実施形態によれば、反応器は、反応チャンバー(10a)を保護するために、壁(14)並びに、断熱および耐火材料(11)を備え得る。分配チャンバー(10b)は、反応チャンバー(10a)と連通して反応器の下部に配置される。分配チャンバーは、水素を含む還元流(5)を反応チャンバーに入る前に受け取る。反応チャンバー(10a)は、壁によって還元流分配チャンバー(10b)から分離されている。壁は、断熱材を備えた耐火材料で作ることができ、プレート(16)で支持することができる。プレート(16)は、例えば金属プレートとすることができる。区画(10b)は、区画(10b)の下部で反応器壁(14)に固定することができる多数の同心チューブ(4)によって横切られ得る。チューブ(4)は、封止デバイス(15)によって壁(14)に固定することができる。固定および封止デバイス(15)は、チューブ(4)の位置を維持するためのガイドとしても使用できる。同心チューブ(4)は、分配チャンバー(10b)を通って反応チャンバー(10a)の下部まで延在し、多数の入口ポート(7b)を形成し、そのポートを通過して酸化流(3)が反応チャンバーに注入される。さらに、分配チャンバーと反応チャンバーとの間の壁には、半径rの多数の入口ポート(7a)を形成する開口部が設けられ、そこを通過して還元流(5)が反応チャンバー内に入り込むことができる。好ましい実施形態によれば、開口部(7a)は、図6bに見られるように、チューブ(4)の周りに環状空間を形成する。半径rの入口ポート(7b)は、入口ポート(7a)に対して同心であり得る。還元流(5)は、2つ以上の入口ポートを通して分配チャンバー(10b)に注入することができる。図6bでは、反応器には、還元流(5)のための少なくとも4つの入口ポートを設けることができることがわかる。さらに、図6aに示すように、反応器は、酸化流(3)を反応チャンバー(10a)に注入するための多数のチューブ(4)を備えることができる。最終的に、この実施形態に係る反応器はまた、反応チャンバー内で生成された合成ガスを排出することを可能にする出口(13)も備える。
【0119】
この実施形態によれば、複数の酸素炎が反応チャンバー内に形成し得る。この実施形態の還元フローと酸化フロー(酸素炎)との間の距離パラメーターは、以下のように定義することができる:
d = (r1 -r2)/2 (Q)
【0120】
すべての実施形態に関して、距離dは、好ましくは、0.1mm~100mmの間であり得る。別の実施形態によれば、2つのフローを分離する距離dは、0.3mm~50mmの間、または好ましくは0.6mm~30mmの間であり得る。距離 d は、これらの値の範囲内の任意の距離でもあり得る。
【0121】
上述のように、いくつかの実施形態によれば、還元流で必要とされ、また合成ガスを得るために使用される水素は、再生可能な資源から生成され得る。特に、水素は、再生可能エネルギー源からの電気で駆動する水電解システムから生成することができる。試薬としても必要とされる炭素源(例えば、CO)を含む流れは、それ自体、上述のバイオマスのガス化または熱分解技術から生じるガス混合物であり得る。したがって、全体として、捕捉された炭素源、水および再生可能な資源由来の電気から合成ガスを生成することが可能である。
【0122】
再生可能資源から合成ガスを生成する方法のこの実施形態は、図7の一部に示されている。図7はまた、例えば合成ガス生成反応中に形成された水の回収を含む追加のステップも示す。したがって、図7は以下のステップ、
・再生可能資源(E)からの電気によって供給される水(HO-a)の電解ステップ(20);
・上述の実施形態の1つによる合成ガスの生成ステップ(30);
・例えば直接接触冷却による、生成されたガスの冷却ステップ(40);
・凝縮ステップ(50)による水(HO-c)の回収;
を示している。
【0123】
具体的には、図7に見られるように、電解システム(20)に水(HO-a)を給送して、水素(H)および酸素を生成する。電気分解によって生成された水素(H)を、COおよび/または別の炭素源、好ましくはCOを含むガスと混合する。COおよび/または別の炭素源を含むこのガスは、バイオマスのガス化または熱分解のプロセスに少なくとも部分的に由来し得る。得られた混合物(G0)は、その後に合成ガスの生成ステップ(30)に使用できる還元流を形成する。電気分解(20)によって生成された酸素の一部(O-a)は、合成ガスの生成ステップ(30)に送られ、そこで酸素炎の発生に使用することができる。電気分解(20)によって生成された酸素の残りの部分(O-b)は、排出することができる。
【0124】
次いで、反応(A)の逆反応の発生を制限/防止するために、合成ガスの生成ステップ(30)から生じるガス(G1)を急速に冷却する(40)。冷却は従来の方法により行うことができる。好ましい実施形態によれば、冷却ステップ(40)は、水流(HO-b)との直接接触冷却器によって実行することができる。一実施形態によれば、ガス(G1)は、高温ガスの露点より高く、250℃を超えない温度まで冷却される。いくつかの実施形態によれば、高温ガス(G1)の露点は大気圧で90℃未満である。例えば、高温ガス(G1)の露点は大気圧で60℃~90℃である。いくつかの実施形態によれば、該ガス(G1)は、90℃~250℃の間の温度に冷却することができる。
【0125】
冷却(40)後に得られる冷却されたガス(G2)は湿式ガスである。次いで、このガス(G2)は、凝縮ステップ(50)によって実行できる第2の冷却を受け得る。いくつかの実施形態によれば、この凝縮ステップは、冷却-凝縮器を使用して実行することができる。好ましい実施形態によれば、凝縮ステップ(50)は、ガス(G2)が35℃以下の温度に冷却されるように実行することができる。冷却-凝縮器の出口では、一方で合成ガス(G3)が得られ、他方で凝縮水(HO-c)が得られる。凝縮水(HO-c)の一部は冷却段階(40)に再循環することができ(HO-bフロー)、凝縮水の残りの部分は排出することができる(HO-dフロー)。いくつかの実施形態によれば、HO-bフローは、少なくとも部分的に、電解システム(20)に水を供給するために使用することができる。
【0126】
前述のように、本明細書に記載の合成ガス生成方法は、COおよびHをベースとするバランスがとれた、すなわちCOおよびHの適切な比率を有して、その後、従来の化学合成によって様々な生成物の生成を可能にするガス混合物(合成ガス)を生成することを可能にし得る。このように、使用される試薬の性質および量(例えば、ガス流の流量)を制御することによって、混合物がその後の化学合成で直接使用できるようにCOおよびHの割合が適合された合成ガスを生成することが可能である。反応チャンバー内の温度、圧力、およびO供給速度を制御することにより、合成ガス中のCOおよびHの割合を操作することも可能である。また、反応器内の温度は、供給される酸素の流量によって制御することができる。一実施形態によれば、生成される合成ガスは、H/CO≧2のモル比でHおよびCOを含有する。記載された方法によって生成された合成ガスはまた、COも含有し得る。この場合、合成ガス中のH、CO、およびCOのモル比は、(H-CO)/(CO+CO)≧2となり得る。
【0127】
これらのモル比を遵守することにより、本方法によって生成された合成ガスを使用して、多数の汎用化学物質を生成することができる。これらの製品の中でいくつかの例を挙げると、特に自動車のガソリン、ディーゼル、灯油などに含まれるメタノールおよび炭化水素を見つけることができる。
【0128】
したがって、上述の合成ガス生成方法およびこの方法を実施するために使用できる反応器は、いくつかの利点を有する。試薬は簡単に入手でき、再生可能な資源から得ることができる。固体触媒の使用に頼る必要がない。反応物の転化率は、触媒の存在下で従来の方法で実行されるRWGS反応の場合に観察される転化率よりも大きくなり得る。最後に、本方法は、用途が広く、実装が簡単であるという点において、その堅牢性によって特徴付けられる。したがって、これらの利点により、例えばCOなどの炭素源をリサイクルするという有益な環境効果に加えて、生成コストを削減することが可能になる。
【実施例
【0129】
[実施例1]
本実施例は、図8に模式的に示されている小さな反応器に基づいている。このミニ反応器は、事前に混合されたOおよびCOを内側チューブの内部、つまり空間Aに同時注入し、環状空間BにHを注入するというシナリオに従って動作する。反応器は、Inconel600(商標)の小さなチューブから構築した。以下の寸法を、ミニ反応器のジオメトリ(I.D.=内径、E.D.=外径)を特徴付けるために使用し、式中、Lは反応ゾーンの開始点からの長さに対応する(寸法はmm):
・外側チューブ:内径=10.41、外径=12.7、L=371.83
・中央のチューブ:内径=7.752、外径=9.53、L≒0(反応ゾーンの開始)
・内側チューブ:内径=3.048、外径=6.35、L≒0(反応ゾーンの開始)
【0130】
パルス反応器(pulsoreactor)を点火するために使用される点火システム、つまり20kVで点火するスパークプラグを、内側チューブおよび中央のチューブの上端に非常に近い、反応器内に挿入した。スパークプラグを挿入できるように穴を開けている(明確にするため図には示されていない)。反応器内の温度レベルの変化を、熱電対を使用してモニタリングした。ミニ反応器内の反応ゾーンの下部および上部で温度を測定した。つまり、反応ゾーン(ガスを注入する場所)の基部付近で反応ゾーンの開始点のライン(図8を参照)より具体的に13mm高い位置の1つの温度の読み取り、および反応ゾーンの開始点のライン(図8を参照)より89mm高い位置のもう1つの読み取りを実行した。熱電対を、Tコネクター(図には示していない)によって取り付けた。
【0131】
実験のセットアップには、以下、反応器自体、反応器を出るガスの急速冷却を可能にするチューブおよびジャケット熱交換器、凝縮液回収タンク、ガス相対湿度(RH)分析システム、また最後に、ガス冷却システムの出口で、CO、CO、炭化水素(CxHy)の含有量、並びに生成されたガスの酸素含有量を測定できる分析システム(CO/CO/CxHy/O)を含む。
【0132】
自動制御バルブを備えた質量流量計のシステムもセットアップする。該システムには、反応器に導入されるガス混合物の組成の変化をプログラミングするためのソフトウェアが備わっている。最終的に、手動バルブを用いて、各ガスを目的の反応チューブに送る。
【0133】
点火時のフラッシュバックを避けるために、点火は段階的に(約1秒間持続して)実行する。点火シーケンスの主な段階としては、以下のステップ、すなわち、1)Hの注入を開始するステップと、2)数秒後、連続する段階において各段階を数秒間継続しながら、目的の流量まで酸素を注入するステップと、3)COの注入を開始するステップと、を含む。
【0134】
点火させると、分析ステップに進むことができる。これら各段階の持続時間は60秒である。この期間の後、様々な測定を実行する。入力流量(25℃、1気圧/分での標準リットル(SL))は次のとおり、
・CO:1.3SL/分
・O:0.93SL/分
・H:6.1SL/分
である。
【0135】
COおよびOのフローはあらかじめ混合している。作動圧力はほぼ1気圧である。
【0136】
以下の結果、
・ガス中のCOモル濃度:22.2%
・ガス中のCOモル濃度:8.1%
・炭化水素のモル濃度:微量(trace)
・生成ガス中のCO/COモル比:2.74
・COからCOへの転化率:73%
・反応チャンバー内の平均温度:686℃
・入口でのO/CO混合物の速度(平均温度、1気圧):16.4m/秒
・入口でのHの速度(平均温度):21.1m/秒
・反応器内の滞留時間(秒):<0.06秒
・比率R2=(H-CO)/(CO+CO):2.26
が得られた。
【0137】
R2比の計算では、H濃度を原子収支から計算した。原子収支自体は、すべての入力(CO、H、O)を考慮し、また、排出ガスの組成(COおよびCO含有量、CH換算で表される炭化水素含有量、ガス湿度、残留酸素含有量)を考慮して実行した。水素原子の原子収支により、反応器の出口でのガスの水素組成を計算することができる。
【0138】
[実施例2]
この実施例では、実施例1と同じデバイスを使用するが、内側チューブ(空間A)へのOの注入、中央のチューブと内側チューブとの間の環状空間(空間B)へのHの注入、および外側チューブと中央のチューブとの間の環状空間(空間C)へのCO/CHの等モル混合物の注入を行った。入力流量(25℃、毎分1気圧での標準リットル)は次のとおり、
・CO:0.40SL/分
・CH:0.40SL/分
・O:0.9SL/分
・H:3.3SL/分
である。
【0139】
上記3つのフローをミニ反応器に別々に注入する。以下の結果、
・乾燥ガス中のCO濃度:13.3%
・ガス中のCOモル濃度:10.2%
・ガス中の炭化水素のモル濃度:2135ppm
・生成ガス中のCO/CO比:1.30
・CO転化率:13.1%
・CH転化率:98.2%
・平均温度:855℃
・入口でのOの速度(平均温度、1気圧):7.77m/秒
・入口でのHの速度(平均温度、1気圧):13.4m/秒
・入口でのCO/CH混合物の速度(平均温度、1気圧):7.46m/秒
・試薬の滞留時間:<0.07秒
・R2=(H-CO)/(CO+CO):2.87
が得られた。
【0140】
比率R2の計算では、H濃度を原子収支から計算した。
【0141】
[実施例3]
この実施例では、実施例1と同じ反応器を使用するが、外側のInconel(商標)チューブを石英チューブに置き換える。反応チャンバーの長さは同じである。この実施例では、COおよびOのフローはあらかじめ混合している。得られた混合物を内側チューブ内(空間A)に注入し、水素を空間B内に注入する。作動圧力はほぼ1気圧である。温度は直接測定できないため、使用される温度は、測定されたものと同じCO/CO比を有するガスを取得するために計算された熱力学的平衡温度値である。
【0142】
入力流量(25℃、毎分1気圧での標準リットル)は次のとおり、
・CO:1.3SL/分
・O:0.93SL/分
・H:6.2SL/分
である。
【0143】
入力流量(25℃、毎分1気圧での標準リットル)は次のとおり、
・ガス中のCO濃度:22.9%
・ガス中のCO濃度:7.30%
・炭化水素のモル濃度:微量(trace)
・生成ガス中のCO/CO比:3.14
・COからCOへの転化率:75.8%
・平衡温度T:1230℃
・入口でのO/CO混合物の速度(温度T、1気圧):25.6m/秒
・入口でのHの速度(温度Tおよび1気圧):33.7m/秒
・試薬の滞留時間:<0.04秒
・R2=(H-CO)/(CO+CO):2.34
である。
【0144】
比率R2の計算のために、反応器を出るガスのH濃度を原子収支から計算する。実施例1の結果と実施例3の結果との比較は、反応器の材料の性質(Inconel(商標)に対して石英)がCO転化率に有意な影響を及ぼさないことを示している。
【0145】
[実施例4]
この実施例では、実施例3と同じ器機を使用、つまり、外側チューブとして石英チューブを使用することを基礎としている。この実施例では、空間AにOを注入し、空間BにHを注入し、空間CにCOを注入する。温度は直接測定できないため、使用される温度は、測定されたものと同じCO/CO比を有するガスを取得するために計算された熱力学的平衡温度値である。入力流量(25℃、1気圧/分での標準リットル(SL))は次のとおり、
・CO:1.3SL/分
・O:0.93SL/分
・H:6.1SL/分
である。
【0146】
以下の結果、
・ガス中のCO濃度:18.21%
・ガス中のCO濃度:11.5%
・炭化水素の濃度:微量(trace)
・ガス中のCO/CO比:1.58
・COからCOへの転化率:61.2%
・平衡温度T:877℃
・Oの速度(温度T):8.20m/秒
・Hの速度(温度T、1気圧):25.4m/秒
・COの速度(温度T、1気圧):9.02m/秒
・反応器内の滞留時間:<0.05秒
・R2=(H-CO)/(CO+CO):2.26
が得られた。
【0147】
比率R2の計算のために、反応器を出るガスのH濃度を原子収支から計算する。
【0148】
合成ガス生成プロセスの適用可能性は、とりわけ、炭素源としてのCOの使用に基づいて、上記の実施例で実証された。COは化学的に非常に安定した分子であり、αが1~5のCαβγ分子よりもはるかに安定している。上記の実施例は、Cαβγタイプの分子よりも化学的に変換するのが難しいことが明らかであるCOに本プロセスが適用できることを示しているため、本方法はCαβγタイプの分子にも適用可能であると結論付けるのが妥当である。
【0149】
本方法、およびこの方法を実施するために使用できる反応器のいくつかの実施形態を上述したが、方法および反応器はこれらのみの実施形態に限定されない。企図される本技術の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態の一方または他方に対して複数の修正を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
【国際調査報告】