(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】扁平管熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20230704BHJP
F28F 1/22 20060101ALI20230704BHJP
F28D 1/06 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
F28D7/16 A
F28F1/22 A
F28D1/06 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574574
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2021056656
(87)【国際公開番号】W WO2021244783
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509322247
【氏名又は名称】ベーエス-ベルメプロツェステクニーク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム アー.ビューニング
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA37
3L103BB25
3L103BB26
3L103CC12
3L103CC26
3L103CC27
3L103DD02
3L103DD32
3L103DD33
3L103DD42
3L103DD64
(57)【要約】
本発明は、扁平管熱交換器、特にガス状の媒体用の高温扁平管熱交換器に関するものであって、管束室(50)を備えた閉じたハウジング(5)と、ハウジング(5)の管束室(50)内に配置された、複数の扁平管(2)を備えた管束を有し、その場合に扁平管(2)内及び扁平管(2)の間の管束室(50)内に、扁平管(2)の長手方向に延びる波の山(30,60)と波の谷(31、61)を備えた波状帯(3、6)が配置されており、その場合に波の山(30、60)と波の谷(31、61)が扁平管(2)の平坦な側面(200)の内側もしくは外側に接し、かつその場合に、ハウジング(5)に、少なくとも管束室(50)の領域内で、外側から面圧を加えるために装置が設けられており、その面圧は、扁平管(2)内又は扁平管(2)のまわりで案内される媒体の圧力(p1、p2)よりも高い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にガス状の媒体用の、扁平管熱交換器であって、管束室(50)を備えた、閉じたハウジング(5)と、前記ハウジング(5)の前記管束室(50)内に配置されている、複数の扁平管(2)を有する管束とを有する、ものにおいて、
前記扁平管(2)内及び前記扁平管(2)の間の前記管束室(50)内に、前記扁平管(2)の長手方向に延びる波の山(30、60)と波の谷(31、61)を有する波状帯(3、6)が配置されており、前記波の山(30、60)と前記波の谷(31、61)が前記扁平管(2)の平坦な側面(200)の内側もしくは外側に接し、かつ
少なくとも前記管束室(50)の領域内で、前記ハウジング(5)に、外側から面圧を加えるのに適し、かつ配置された装置が設けられており、前記面圧が、前記扁平管(2)内又は前記扁平管(2)のまわりを案内される媒体の圧力(p1、p2)よりも高い、
ことを特徴とする扁平管熱交換器。
【請求項2】
前記装置によって面圧が前記ハウジング(5)に加えられ、前記面圧は、前記扁平管(2)内又は前記扁平管(2)のまわりを案内される媒体の圧力(p1、p2)よりも、約0.1MPa(1 bar)~約0.4MPa(4 bar)高い、ことを特徴とする請求項1に記載の扁平管熱交換器。
【請求項3】
前記波状帯(3、6)が、正弦曲線形状、三角形状又は鋸歯形状の波形を有している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の扁平管熱交換器。
【請求項4】
前記扁平管(2)内に配置されている前記波状帯(3)の幅が、前記扁平管(2)の前記平坦な側面(200)の幅に少なくとも等しい、ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の扁平管熱交換器。
【請求項5】
前記波状帯(3、6)の前記波の山(30、60)と前記波の谷(31、61)が、前記扁平管(2)の前記平坦な側面(200)に自由に接する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の扁平管熱交換器。
【請求項6】
前記装置が、前記ハウジング(5)を収容するジャケットハウジング(7)を有し、前記ジャケットハウジング(7)が前記ハウジング(5)を、少なくとも前記管束室(50)の領域内で、圧力室(70)の負荷がかかるように、間隔をもって包囲している、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の扁平管熱交換器。
【請求項7】
前記ジャケットハウジング(7)が、媒体供給及び/又は媒体排出のための接続端(72)を備えた圧力容器として形成されており、前記圧力容器内の圧力(p)が、媒体供給及び/又は媒体排出によって調節可能である、ことを特徴とする請求項6に記載の扁平管熱交換器。
【請求項8】
前記装置が、互いに対して移動可能な、曲げ剛性が高く、連結棒(82)によって結合された2つのビーム(80)又はプレートを備えたビームの組かつ/又はプレートの組(8)を有し、前記ハウジング(5)の少なくとも一部が、前記ビームの組及び/又は前記プレートの組(8)の前記ビーム(80)又は前記プレートの間に配置されている、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の扁平管熱交換器。
【請求項9】
前記装置がジャケットハウジング(7)を有し、前記ジャケットハウジング(7)が前記ハウジングを、少なくとも前記管束室(50)の領域内で間隔をもって包囲し、かつ、好ましくは、前記ジャケットハウジング(7)と前記ハウジング(5)の間に、力を伝達するための圧縮ラム(84)が配置されている、ことを特徴とする請求項8に記載の扁平管熱交換器。
【請求項10】
前記ジャケットハウジング(7)と前記ハウジング(5)の間に、断熱材(88)が設けられている、ことを特徴とする請求項9に記載の扁平管熱交換器。
【請求項11】
扁平管熱交換器(1)が、直方体形状の管束室(50)を有し、かつ列と行で配置された複数の扁平管(2)を有する、矩形状の配置として構築されている、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の扁平管熱交換器。
【請求項12】
前記波状帯(3、6)が、少なくとも部分的に、触媒として作用する材料によってコーティングされている、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の扁平管熱交換器。
【請求項13】
前記扁平管(2)内に、長手方向に見て、それぞれ少なくとも2つの波状帯(3)が逆向きに配置されている、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の扁平管熱交換器。
【請求項14】
2つの隣接する波状帯(3)の間に、横リブ(34)が配置されている、ことを特徴とする請求項13に記載の扁平管熱交換器。
【請求項15】
前記扁平管(2)が、それぞれ少なくとも2つの、それぞれ長手方向(L)に延びる扁平管片(2a、2b)から組み立てられている、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の扁平管熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平管熱交換器、特にガス状の媒体用の高温扁平管熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平管熱交換器は、一般に知られている。たとえば、特許文献1はガス状の媒体用の高温扁平管熱交換器を記述しており、それは、閉じたハウジングを有し、そのハウジングが互いに対向する2つの側に2つの管底を有し、それらがハウジングを、入口側収集室、チューブバンドル室及び出口側収集室に仕切っており、チューブバンドルを有し、そのチューブバンドルが少なくとも主に、円形の、あるいは多角形の端部を備えた、まっすぐに形成された扁平管からなり、チューブバンドル室は3つのゾーン、すなわちチューブバンドル室接続端の領域内に形成された2つの横流れゾーンとこれら横流れゾーンの間に形成された縦流れゾーン、を有している。特許文献1に記述されている扁平管熱交換器は、温度の開きが大きく、かつ温度変化が頻繁である場合に、応力亀裂の危険なしで使用することができる。この種の扁平管熱交換器は、特に1100℃までのガス流入温度において、多方面で実証されている。
【0003】
扁平管熱交換器の効率は、特に、使用される扁平管の数に依存している。典型的に、約75%の効率で、扁平管熱交換器は使用される。従来の扁平管熱交換器においては、同じ流量において約75%の効率を約90%にさらに増加させるためには、扁平管の数は約3倍にしなければならない。これは、通常、経済的な意義で、不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2584301号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2584201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、改良された効率を有する扁平管熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、特にガス状の媒体用の、扁平管熱交換器によって、解決され、それは、管束室を備えた、閉じたハウジングと、ハウジングの管束室内に配置されている、複数の扁平管を備えた管束とを有し、扁平管内及び扁平管の間の管束室内に、扁平管の長手方向に延びる波の山と波の谷を有する波状帯が配置されており、波の山と波の谷が扁平管の平坦な側面の内側もしくは外側に接し、かつ、少なくとも管束室の領域内でハウジングに外側から面圧を加えるために、装置が設けられており、その面圧は、扁平管内又は扁平管のまわりを案内される媒体の圧力よるも高く、特に約0.1MPa(1 bar)~約0.4MPa(4 bar)高い。
【0007】
波状帯によって、扁平管から、あるいは扁平管内へ案内される媒体の熱伝達用の面、熱伝達面(UEbertragungsflaeche)とも称される、は、2倍以上とすることができる。同時に、扁平管を通る流れと扁平管のまわりの流れのための水力直径が減少され、その結果、向流駆動(Gegenstrombetrieb)における熱伝達係数は、逆比例で増大される。
【0008】
ハウジングに面圧を加えるための装置によって、場合によっては、たとえばその中で案内される媒体の温度又は圧力に起因して接触損失をもたらす、扁平管の変形が、確実に阻止される。したがって扁平管熱交換器は、扁平管内で案内される媒体と扁平管のまわりを案内される媒体の間の高い圧力差で駆動するのにも、たとえば起動時及び停止時の高い温度変動で駆動するのにも、適している。
【0009】
出願に関連して、「扁平管内」という表現は、「すべての扁平管内」と解釈すべきではない。むしろ、扁平管の一部のみが波状帯を有する形態も、すべての扁平管が波形パイプを有する形態も、考えられる。同様に「一つ」、「一つの」などの単数の言葉は、単に不定冠詞としてのみ使用され、数を表す語として解釈すべきではない。
【0010】
ハウジングは、通常2つの収集室を有しており、それらは第1の媒体が扁平管内へ流入することを可能にし、第1の媒体が扁平管から流出することを可能にする。収集室は、管束が1方向に貫流される場合に、管束室の対向する端部に配置されている。第2の媒体を管束室へ供給し、かつそこから排出するために、管束室接続端が、流れ方向に見て対向する端部に、あるいはハウジングの側に、設けられている。
【0011】
扁平管と称されるのは、少なくとも2つの端部の間に位置する中央のセクションがフラットであるパイプ、すなわち2つの互いに対向する平坦な側面と、平坦な側面を結合する2つの幅狭側面とを有する、パイプである。扁平管の中央のセクションは、ある形態においては、2つの互いに対して平行な平坦な側面と、平坦な側面を結合する2つの湾曲した、たとえば半円形状に湾曲した幅狭側面とを有するスタジアム形状の横断面を有している。その場合に、一定の高さを有する波状帯を使用することができ、その波の谷と波の山が平坦な側面に接触する。扁平管の長手方向に対向する端部は、いくつかの形態において、収集室に接続するために、中央のセクションとは異なる横断面、特に円形の横断面、多角形の横断面などを有している。
【0012】
扁平管熱交換器は、ある形態においては、直方体形状の管束室及び列と行で配置された複数の扁平管を有する矩形状の配置の形で構成されている。他の形態において、扁平管熱交換器は、円筒状の管束室を有する円形の配置で構成されており、その管束室が円形又は多角形状の横断面を有している。ある形態において、熱交換器は円形の配置内でリング熱交換器として構成されており、扁平管は、異なる直径を有する複数の同心の円環に沿って配置されている。
【0013】
ある形態において、波状帯は正弦曲線形状、三角形状又は鋸歯形状の波形を有している。これらの波形に共通に、波の山と波の谷が、長手方向に沿って延びる幅狭の細片に沿ってのみ、平坦な側面に、理想的には線状に接する。それによって接触箇所において、熱伝達にマイナスの影響を与える材料の累積が回避され、あるいは少なくとも最小限に抑えられる。波形は、それぞれ適用場合に応じて当業者によって適切に選択可能であって、それによって伝達面の所望の拡大が得られる。その場合に、扁平管熱交換器の標準モデルを形成することも可能であって、その場合に適切な波状帯を選択することによって、様々に寸法設計された伝達面を有する扁平管熱交換器が形成される。
【0014】
それぞれ波状帯の材料と材厚に応じて、波状帯は同時に、扁平管のまわりを案内される媒体に対する、扁平管内で案内される媒体の負圧に起因して扁平管が変形しないようにする支持手段としても用いられる。扁平管熱交換器の形態において、波状帯の幅は、扁平管の平坦な側面の幅に少なくとも等しい。
【0015】
扁平管内に配置されている波状帯の高さは、扁平管の高さにほぼ等しく、波状帯と扁平管は、たとえば約2mmから約4mmの高さを有している。ある形態においては、扁平管は波状帯を挿入するために圧力及び/又は温度によって伸張され、圧力もしくは温度がなくなった後に、波状帯が扁平管の平坦な側面に接する。ある形態において、扁平管の間に配置されている波状帯の高さは、隣接する扁平管の間隔にほぼ等しいので、この波状帯の波の山と波の谷が隣接する扁平管の平坦な側面に接する。
【0016】
波の山と波の谷は、ある形態において、扁平管の平坦な側面に自由に接し、すなわち波状帯は扁平管と溶接も半田付けもされず、あるいは他のやり方で材料結合で結合されない。それによって特に煩雑で、したがってコストのかかる溶接結合が省かれる。さらに、溶接できない、又は半田付けできない材料からなる波状帯又は扁平管を設けることが、可能である。本発明によれば、ハウジングに、少なくとも管束室の領域内で外側から面圧を加えるために装置が設けられており、その面圧が扁平管内あるいは扁平管のまわりを案内される媒体の圧力よりも高いので、駆動中の扁平管と波状帯の接触は、波状帯と扁平管の材料結合がなくても、保証されている。
【0017】
この装置は、ある形態において、ハウジングを収容するジャケットハウジングを有しており、ジャケットハウジングはハウジングを、少なくとも管束室の領域内で、圧力室の負荷をかけながら間隔をもって包囲している。ジャケットハウジングは次のように、すなわち圧力室内に流体が収容可能であって、その圧力がハウジングの内部空間内の媒体の圧力よりも高く、特に約0.1MPa(1 bar)~約0.4MPa(4 bar)高くなるように、形成され、かつ設計されている。その場合にジャケットハウジングの設計は、それぞれ適用に応じて当業者によって適切に行われる。その場合にハウジングのまわりに、ある形態において、断熱材が設けられており、それによって圧力室内でハウジングとジャケットハウジングとの間に存在する流体の加熱を回避し、あるいは少なくとも減少させることができる。
【0018】
ある形態において、ジャケットハウジングは、媒体供給及び/又は媒体排出用の接続端を有する圧力容器として形成されており、圧力容器内の圧力は、媒体供給及び/又は媒体排出によって制御可能である。本出願に関連して、圧力容器と称されるのは、変形なし、あるいは少なくとも実質的な変形なしで、圧力下にある流体を収容するための閉じた容器であって、圧力容器の内部の圧力は、周囲圧よりも大きい。
【0019】
代替的な形態において、装置は、互いに対して移動可能で、曲げ剛性が高く、連結棒によって結合された2つのビーム及び/又はプレートを備えた一組のビーム及び/又は一組のプレートを有しており、ハウジングの少なくとも1つの部分が、一組のビーム及び/又は一組のプレートのビーム及び/又はプレートの間に配置されている。一組のビームもしくは一組のプレートのビーム又はプレートは、連結棒によって結合されており、かつ適切な装置を用いて定められた力によって互いに対して支持することができる。すでに上で述べたように、本出願に関連して、「一つ」、「一つの」などの単数の言葉は、単に不定冠詞としてのみ使用され、数を表す語として解釈すべきではない。その場合に装置は、ビームの組及び/又はプレートの組を複数有することができる。ビームの組及び/又はプレートの組の数は、それぞれ適用場合に応じて当業者によって適切に選択可能である。それによって装置に面圧を加えるためのコスト的に好ましい装置が提供され、それは特に、扁平管内と扁平管のまわりに過圧が存在せず、あるいは適度な過圧のみが存在するような用途に適している。たとえば、この種の装置を有する扁平管熱交換器は、汚染された空気又は排ガスを熱的に再燃焼する場合に使用することができる。
【0020】
ある形態において、ビームの組及び/又はプレートの組は、ハウジングに直接作用する。好ましい形態において、装置はさらにジャケットハウジングを有しており、ジャケットハウジングはハウジングを、少なくとも管束室の領域内で、間隔をもって包囲する。ビームの組及び/又はプレートの組によってジャケットハウジングへもたらされる力が、ハウジングへ転送される。これは、ある形態においては、ジャケットハウジング内に存在する圧縮不可能な流体によって行われる。好ましい形態において、ジャケットハウジングとハウジングの間に、力を伝達するための圧縮ラムが配置されている。ジャケットハウジングは、外側からビームの組及び/又はプレートの組によって負荷をかけることができ、その場合に負荷は、圧縮ラムによってハウジングへ伝達される。その場合に、ある形態においては、ジャケットハウジングとハウジングの間に付加的に、断熱材が設けられている。
【0021】
ある形態において、波状帯は、少なくとも部分的に、触媒として作用する材料によってコーティングされている。この種のコーティングは、たとえば、吸熱プロセスのため、たとえば炭化水素の改質のため、あるいは発熱プロセスのため、たとえば人工燃料を合成するために、リアクター内で扁平管熱交換器を使用する場合に、効果的である。特に波状帯が扁平管に自由に接する場合に、コーティングは、溶接可能性に関する限定なしで可能である。その場合に扁平管熱交換器のいくつかの形態において、扁平管内に配置される波状帯のみ、あるいは扁平管の外部に配置される波状帯のみがコーティングされている。他の形態においては、扁平管内に配置される波状帯と扁平管の外部に配置される波状帯は、異なるコーティングを有する。
【0022】
ある形態においては、扁平管内に正確に1つの波状帯が設けられており、波状帯の長さは扁平管の長手方向において、扁平管の中央のセクションの長さより短いか、等しい。その場合に波状帯を有する扁平管を通る流れは、他の措置が介入しない限りにおいて、層状である。
【0023】
代替的な形態において、扁平管内に、長手方向に見てそれぞれ少なくとも2つの波状帯が逆向きに配置されている。その場合に逆向きの配置というのは、180°位相シフトされた配置であるので、1つの波状帯の波の山と波の谷は、隣接する波状帯の波の谷もしくは波の山に対して整合して配置されている。この措置によって、扁平管を通る流れに乱流を生じさせ、熱伝達を向上させる。
【0024】
その場合に、ある形態においては、隣接する2つの波状帯の間に横リブが配置されている。横リブによって他の乱流が得られる。波状帯と横リブは、ある形態において、互いに結合されている。他の形態においては、波状帯が横リブに自由に接する。
【0025】
ある形態において、扁平管はそれぞれ少なくとも2つの、それぞれ長手方向に延びる扁平管片から構成されている。扁平管片は、ある形態において、パイプから形成され、そのパイプは、円形横断面とより小さい直径を有する短いセクションと、円形の断面とより大きい直径を有するセクションとを有している。より大きい直径を有するセクションは、成形プロセス、たとえば圧延プロセスにおいて、特に円筒ローラの間で平坦に押圧することができる。次いで、成形されたセクション内へ波状帯を挿入し、かつ2つの鏡面対称に配置された扁平管片を互いに結合し、特に溶接することができる。その場合に、特に、たとえば1000℃までの大きい温度幅をもって使用する場合に、扁平管を種々の材料からなる扁平管片から構成することが、可能である。
【0026】
本発明の他の利点と視点が、請求項から、そして本発明の実施形態についての以下の説明から明らかにされ、以下図式的な図を用いて実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、扁平管熱交換器用の扁平管を縦断面で示しており、その場合に扁平管内に、扁平管の長手方向に延びる波の山と波の谷を有する波状帯が配置されている。
【
図2】
図2は、
図1に示す扁平管を、
図1の切断線II-IIに沿って横断面で示している。
【
図3】
図3は、
図1に示す扁平管を、
図1の切断線III-IIIに沿って横断面で示している。
【
図4】
図4は、
図1に示す扁平管を複数有する扁平管熱交換器の管束室を縦断面で示している。
【
図6】
図6は、
図4に示す管束室を、
図4の切断線VI-VIに沿って横断面で示している。
【
図7】
図7は、複数の扁平管を有する扁平管熱交換器の第1の形態を縦断面で示しており、その場合に扁平管熱交換器のハウジングが、圧力容器として形成されたジャケットハウジングによって包囲されている。
【
図8】
図8は、
図7に示す扁平管熱交換器を、
図7の切断線VIII-VIIIに沿って横断面で示している。
【
図9】
図9は、複数の扁平管を有する扁平管熱交換器の第2の形態を縦断面で示しており、その場合に扁平管熱交換器のハウジングがジャケットハウジングによって包囲されており、その上に複数のビームの組によって面圧がもたらされる。
【
図11】
図11は、波状帯の代替的な配置を斜視図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態についての以下の説明において、同一又は類似の構成部分には、統一的な参照符号が使用される。
【0029】
図1から3は、
図1から3には示されていない扁平管熱交換器1(
図7から10を参照)のための扁平管2を縦断面で、かつ
図1の切断線II-II及びIII-IIIに沿って2つの横断面で示している。
【0030】
扁平管2は、2つの端部21、22及び2つの端部21、22の間に位置する中央のセクション20を有している。中央のセクション20の横断面は、2つの互いに平行な平坦な側面200と、平坦な側面200を結合する湾曲した、図示される実施形態においては半円形状に湾曲した、2つの幅狭側面201とを備えたスタジアム形状を有している。端部21、22は、図示されない扁平管熱交換器1のハウジングの収集室に接続するために、中央のセクション20とは異なる横断面、たとえば円形の横断面、を有している。
【0031】
扁平管2内に、もっと正確には扁平管2の中央のセクション20内に、扁平管の長手方向Lに延びる波の山30と波の谷31を有する2つの波状帯3(
図2と3を参照)が配置されている。図示される実施形態において、2つの波状帯3は、正弦曲線形状の波形を有している。波の山30と波の谷31は、同一形状である。波の山30とは、波状帯3の、図面平面内で上方へ張り出す振幅であり、その場合に同様に、図面平面内で下方へ張り出す振幅を、波の山と称することも、考えられる。
【0032】
図示される波状帯3は、それぞれ一定の高さを有し、かつ波の山30と波の谷31は、扁平管2の平坦な側面200の対向する内側に接触する。波状帯3の幅は、平坦な側面200の幅にほぼ等しい。
【0033】
図1に示す扁平管2は、それぞれ長手方向Lに延びる2つの扁平管片2a、2bから構成されている。扁平管片2a、2bは、鏡面対称に配置されており、かつ溶接継目4に沿って互いに溶接されている。図示される実施形態において、扁平管片2a、2bは、少なくとも実質的に同一の長さを有している。扁平管片2a、2bは、ある形態においては、異なる材料から形成されており、各扁平管片2a、2bは、付属の扁平管熱交換器の温度ゾーンのために最適化することができる。これら扁平管片は、溶接継目4に沿って互いに溶接されている。
【0034】
図示される実施形態において、扁平管片2a、2b内にそれぞれ波状帯3が設けられており、波状帯3の波の形状は同一であり、かつ波状帯3は互いに整合して配置されている。他の形態においては、扁平管片2a、2b内に配置されている波状帯3は、波の形状又は波の数において異なる。さらに他の形態においては、2つの扁平管片2a、2bにわたって延びる波状帯3が設けられている。
【0035】
図4から6は、
図4から6には示されていない扁平管熱交換器1(
図7から10を参照)の、部分的にのみ示す、閉じたハウジング5の管束室50を、縦断面、上面、もしくは
図5の切断線V1-V1に沿った横断面で示している。
【0036】
図示される管束室50は、直方体形状である。管束室50内に、
図1に示す扁平管2を複数有する管束が配置されており、図示される実施形態において、扁平管2の矩形状の配置が設けられている。管束は、50本の扁平管2を有しており、それらは、それぞれ並んで配置された5つの扁平管からなる10列で配置されており、その扁平管の平坦な側面200は、共通の平面内に位置する。その場合に列の数と列あたりの扁平管2の数は、例であって、他の形態においては、より多い、あるいはより少ない列が設けられる。扁平管2の端部21、22は、管板52内に固定されている。
【0037】
扁平管2内、もっと正確にはその中央のセクション20(
図1を参照)内に、上述した波状帯3が配置されている。さらに、扁平管2の列の間にも、同様に波状帯6が設けられており、その波の山60と波の谷は、扁平管2の平坦な側面200の外側に接している。扁平管2の間に配置されている波状帯6は、図示される実施形態において、同様に正弦曲線形状の波形を有している。この波状帯6の高さは、少なくとも、2列の扁平管2の間の間隔にほぼ相当する。図示される実施形態において、波状帯6はそれぞれ列全体にわたって延びている。他の形態においては、列毎に2つ又はそれより多い波状帯が設けられている。
【0038】
図6に矢印で示唆されるように、ハウジング5は管束室50の領域内で、面圧を受ける。面圧は、扁平管2内又は扁平管2のまわりに供給される媒体の圧力よりも、高く、特に約0.1MPa(1 bar)~約0.4MPa(4 bar)だけ高い。この面圧によって、駆動中に波状帯3、6が扁平管2の内側と外側に接触することが維持され続けることが保証され、そのために扁平管2と波状帯3、6との間に材料結合、特に溶接結合又は半田結合が必要とされることはない。この面圧は、適切な装置によってもたらすことができる。
【0039】
図7と8は、複数の扁平管2を有する扁平管熱交換器1の第1の実施形態を、縦断面で、もしくは
図7の切断線VIII-VIIIに沿った横断面で示しており、ハウジング5は、圧力容器として形成されたジャケットハウジング7によって包囲されている。
【0040】
ハウジング5は、管束室50、入口側の収集室54、出口側の収集室56及び2つの管束室接続端58を有している。管束室50は、管板52によって収集室54、56から分離されている。管板52は、図式的に示される扁平管2用の接続端を有しているので、入口側の収集室54へ供給される、圧力p1を有する媒体が、入口側の収集室54から扁平管2内へ、そして扁平管2から出口側の収集室56内へ流れることができる。
【0041】
図示される扁平管熱交換器1は、好ましくは向流で駆動され、扁平管2のまわりを案内される、圧力p2を有する媒体が、図面平面内で上に示される管束室接続端58を介して供給され、かつそこから管束室50内へ流入する。
【0042】
圧力容器として形成されているジャケットハウジング7が、ハウジング5を、圧力室70を若干の間隔を空けて包囲している。図式的に
図8に示すように、ジャケットハウジング7は媒体供給及び/又は媒体排出用の接続端72を有しているので、ジャケットハウジング7内の圧力pは、媒体供給及び/又は媒体排出を用いて制御可能である。その場合に、圧力容器として形成されているジャケットハウジング7の圧力室70内の圧力pは、扁平管2内又は扁平管2のまわりを案内される媒体の圧力p1、p2よりも高く、特に約0.1MPa(1 bar)~約0.4MPa(4 bar)高くなるように、選択される。それによってハウジング5は、外側から面圧が加えられ、その面圧によって、
図7と8には示されていない波状帯3、6(
図1から6を参照)が材料結合の結合なしでも扁平管2に接することが、保証される。
【0043】
図7と8に示される扁平管2の矩形状の配置は、単なる例である。他の形態においては、異なる配置、特に、特許文献2に記述されるような、リング配置が設けられている。これをもって特許文献2の開示を全範囲において参照する。
【0044】
図9と10は、複数の扁平管2を有する扁平管熱交換器1の第2の形態を、縦断面で、もしくは
図9の切断線X-Xに沿った横断面で示している。
図9と10に示す扁平管熱交換器1は、図式的に示す、熱的後燃焼(TNV)する設備の一部であって、汚染された空気又は排ガスが、入口側の収集室54を介して扁平管2内へ供給されて、そこから図式的に示す燃焼室9内へ達する。燃焼室9から、燃焼された排ガスが管束室50内へ流入し、かつ管束室接続端58を介して周囲へ放出される。その場合に排ガスと燃焼された排ガスは、通常、適度な過圧においてのみ、扁平管2内とそのまわりを流れる。
【0045】
扁平管2内及びそれぞれ形態に応じて付加的に扁平管2のまわりにも、
図9と10に示されていない波状帯3、6(
図1から6を参照)が配置されており、扁平管と波状帯3、6の間の接触を保証するために、ハウジング5へ面圧をもたらす装置が設けられている。
【0046】
図9と10に示す実施形態において、この目的のために、扁平管熱交換器1のハウジング5は、同様にジャケットハウジング7によって包囲されている。さらに複数の、図示される実施形態においては4つの、ビームの組8が設けられている。ビームの組8は、それぞれ、連結棒82によって結合された2つのビーム80を有している。ある形態において、ばね部材が連結棒82に設けられており、そのばね部材によってビーム80が定められた力で互いに付勢されている。この目的のために、他の形態においては、代替的又は付加的に、手動又は動力で調節可能な操作部材、特に操作ねじが設けられている。ビームの組8によって、ジャケットハウジング7に面圧が加えられる。この面圧の加圧は、ハウジング5へ伝達される。図示される実施形態において、この目的のために、ジャケットハウジング7とハウジング5の間に圧縮ラム84が配置されており、その圧縮ラムは、ハウジング5に均一に面圧を加えるように、設計されている。
【0047】
図示される実施形態において、扁平管2は矩形状に配列されている。したがって、扁平管2とその中に配置されている波状帯3との間及び扁平管2と列の間に配置されている波状帯6との間の接触を保証するためには、扁平管2の列の方向に対して垂直の方向に力を加えることで充分である。それに対して、リング配置(Ringanordnung)を有する扁平管熱交換器の場合には、リング配置の径方向に作用する力をもたらすことのできる装置が設けられている。
【0048】
ハウジング5とジャケットハウジング7の間には、図示される実施形態において、断熱材88が設けられている。
【0049】
代替的な形態においては、ジャケットハウジング7が省かれ、その場合にビームの組8によって直接的にハウジング5へ面圧が加えられる。
【0050】
図1から6に示す実施形態においては、扁平管2内にそれぞれ、波の山30と波の谷が互いに揃えられた2つの波状帯3が配置されている。
【0051】
図11は、波状帯3の代替的な配置を、斜視図で示している。
図11の配置においては、長手方向Lに見て、長手方向Lに延びる波の山30と波の谷31を備えた複数の波状帯3が交互に逆向きに配置されている。言い換えると、互いに連続する波状帯3の波の山30と波の谷31は、それぞれ180°位相シフトされている。さらに、互いに連続する波状帯3の間には、横リブ34が配置されている。
【0052】
図12は、
図11に示す波状帯3の配置を有する扁平管2が、横断面で示されている。
【0053】
図11と12に示す、波状帯3を交互に逆向きに配置することによって、改良された熱伝達のために流れの乱流が得られる。
【0054】
本発明によれば、扁平管2内及び付加的に扁平管2の外側にも、波状帯3を配置することによって、熱伝達のための伝達面のサイズが増加され、それによって扁平管熱交換器1の効率が向上する。その場合に、扁平管熱交換器1のハウジング5へ面圧をかけることにより、駆動の間も、波状帯3、6と扁平管2の間の接触が保証されるので、波状帯3、6と扁平管2の間の溶接結合及び/又は半田結合を省くことができる。
【国際調査報告】