IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミンフイ ファーマシューティカル (シャンハイ) リミテッドの特許一覧 ▶ ミンフイ ファーマシューティカル (ハンチョウ) リミテッドの特許一覧

特表2023-529633抗B7-H3抗体ならびにその調製および適用
<>
  • 特表-抗B7-H3抗体ならびにその調製および適用 図1
  • 特表-抗B7-H3抗体ならびにその調製および適用 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】抗B7-H3抗体ならびにその調製および適用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230704BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230704BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20230704BHJP
   C07D 491/22 20060101ALN20230704BHJP
   C07H 17/04 20060101ALN20230704BHJP
   C07D 498/18 20060101ALN20230704BHJP
   C07D 519/04 20060101ALN20230704BHJP
   C07D 305/14 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61P35/00
A61P35/04
A61P35/02
A61P37/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/00
A61P21/04
A61P3/10
A61P37/06
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K31/4745
A61K31/7048
A61K31/537
A61K31/475
A61K31/337
G01N33/531 A
C07D491/22
C07H17/04
C07D498/18
C07D519/04
C07D305/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574578
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2021098018
(87)【国際公開番号】W WO2021244590
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】202010491448.3
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521320209
【氏名又は名称】ミンフイ ファーマシューティカル (シャンハイ) リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522362109
【氏名又は名称】ミンフイ ファーマシューティカル (ハンチョウ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュー リュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェンイ
(72)【発明者】
【氏名】ラング グオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ドン ミン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C057
4C072
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC07
4C050DD02
4C050EE02
4C050FF02
4C050GG03
4C050HH01
4C057BB02
4C057DD01
4C057KK03
4C072AA03
4C072AA06
4C072BB03
4C072BB06
4C072CC02
4C072CC12
4C072DD09
4C072EE06
4C072FF15
4C072GG06
4C072GG07
4C072QQ00
4C072UU01
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA21
4C085AA25
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086CB21
4C086CB22
4C086EA11
4C086FA06
4C086MA01
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC35
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045EA51
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
抗B7-H3抗体ならびにその調製および適用を提供する。当該抗体を含む薬物コンジュゲートおよび組換えタンパク質をさらに提供する。本発明の抗体は、細胞によって効果的にエンドサイトーシス化され、本発明の抗体を用いて調製した抗体薬物コンジュゲートは、腫瘍阻害効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の重鎖可変領域であって、
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:3nに示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:3n+1に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:3n+2に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、各nは、独立して、11、12、13、14、15、16、または17であり、
または、前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:36に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:55に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:56に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:57に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:40に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:41に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:51に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:52に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:58に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:51に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:59に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:60に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、前記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含むことを特徴とする、前記抗体の重鎖可変領域。
【請求項2】
抗体の重鎖であって、
前記重鎖は、請求項1に記載の重鎖可変領域を有することを特徴とする、前記抗体の重鎖。
【請求項3】
抗体の軽鎖可変領域であって、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:3m+1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:3m+2に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3m+3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、各mは、独立して、0、1、2、3、4、5、6、または7であり、
または、前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:25に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:26に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:27に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:5に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:6に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:27に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:28に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:6に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:29に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:11に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:12に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:30に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:23に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:31に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:30に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:23に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:32に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、上記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含むことを特徴とする、前記抗体の軽鎖可変領域。
【請求項4】
抗体の軽鎖であって、
前記軽鎖は、請求項3に記載の軽鎖可変領域を有することを特徴とする、前記抗体の軽鎖。
【請求項5】
抗体であって、
前記抗体は、
(1)請求項1に記載の重鎖可変領域、および/または
(2)請求項3に記載の軽鎖可変領域を有するか、
または、前記抗体は、請求項2に記載の重鎖、および/または請求項4に記載の軽鎖を有し、
ここで、前記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含むことを特徴とする、前記抗体。
【請求項6】
前記抗体は、請求項1に記載の重鎖可変領域および請求項3に記載の軽鎖可変領域を有し、
ここで、前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、次のとおりであり、
【表1】
ここで、前記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含むことを特徴とする
請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体は、請求項1に記載の重鎖可変領域および請求項3に記載の軽鎖可変領域を有し、ここで、
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:26に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:2に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:34に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:25に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含むことを特徴とする
請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
組換えタンパク質であって、
前記組換えタンパク質は、
(i)請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5~7のいずれか1項に記載の抗体、および
(ii)発現および/または精製を補助する任意選択のタグ配列を含むことを特徴とする、前記組換えタンパク質。
【請求項9】
抗体コンジュゲートであって、
当該抗体コンジュゲートは、
(a)請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5~7のいずれか1項に記載の抗体、またはその組み合わせからなる群から選択される抗体部分、および
(b)検出可能な標識、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはその組み合わせからなる群から選択される前記抗体部分とカップリングされるカップリング部分を含むことを特徴とする、前記抗体コンジュゲート。
【請求項10】
有効成分の用途であって、
前記有効成分は、請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、請求項5~7のいずれか1項に記載の抗体、請求項8に記載の組換えタンパク質、または請求項9に記載の抗体コンジュゲート、またはその組み合わせからなる群から選択され、ここで、前記有効成分は、(a)診断試薬またはキットの調製、および/または(b)B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製に使用されることを特徴とする、前記有効成分の用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、生物医学の分野に関し、より具体的には、抗B7-H3抗体ならびにその調製および適用に関する。
【0002】
[背景技術]
腫瘍の成長および転移は、宿主の免疫監視を回避し、かつ宿主の防御を克服する能力に大きく依存する。ほとんどの腫瘍は、宿主の免疫系によって様々な程度で識別される抗原を発現するが、多くの場合、エフェクターT細胞の非効率的な活性化により、不十分な免疫応答を誘発する。
【0003】
CD4+T-リンパ球は、ほとんどの哺乳動物の免疫応答および自己免疫応答の主要な主催者である。CD4+ヘルパーT-細胞の活性化は、抗原提示細胞とナイーブCD4+T-リンパ球との間の共刺激によって媒介されることが分かり、当該プロセスには、2種類の細胞間の相互作用が必要される。最初の相互作用において、抗原提示細胞は、ナイーブCD4+T-リンパ球のT-細胞受容体(「TCR」)に結合できるように、主要組織適合性複合体(MHC)を介して、関連する標的抗原を細胞表面に提示する必要がある。2番目の相互作用において、抗原提示細胞のリガンドは、CD4+T-リンパ球の表面にあるCD28受容体に結合する必要がある。CD4ヘルパーT-細胞は、共刺激シグナルを受け取った後、サイトカイン(例えば、インターロイキン-2およびインターロイキン-12)に応答することにより、Th1細胞にさらに発達する。これらの細胞は、インターフェロン-γ(IFN-γ)および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を生成することができ、標的抗原を発現する標的細胞に対する炎症反応をさらに媒介する。B-細胞活性化および増殖も同様に起こることにより、標的抗原に対する特異性抗体を生成する。T-細胞の活性化中に、任意の一つの共刺激シグナルの欠失により、T細胞は、クローン性アネルギー状態になる。病理学的条件下で、Th1細胞は、I型糖尿病、関節リウマチおよび多発性硬化症等の様々な臓器特異的な自己免疫疾患の主要な関与者である。
【0004】
B7ファミリーメンバーは、免疫グロブリン-V様ドメインおよび免疫グロブリン-C様ドメイン(例えば、IgV-IgC)を有する免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーである。B7ファミリーメンバーのIgVおよびIgCのドメインは、それぞれ単一のエクソンによってコードされ、別のエクソンは、リーダー配列、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードする。細胞質ドメインは、短く、長さは、19~62個のアミノ酸残基の範囲内であり、かつ複数のエクソンによってコードされることができる。
【0005】
B7-H3は、その主にヒト型が二つの細胞外タンデムIgV-IgCドメイン(即ち、IgV-IgC-IgV-IgC)を含むという点で独特である。B7ファミリーのメンバーは、細胞表面で背中合わせ、非共有結合のホモ二量体を形成すると予測され、これらの二量体は、B7-1(CD80)およびB7-2(CD86)に関連することが分かる。四つの免疫グロブリン細胞外ドメインのバリアント(「4Ig-B7-H3」)が同定され、かつより一般的なヒトタンパク質形態であることが分かる。天然的なマウス形態(2Ig)およびヒト4Ig形態は、同様の機能を示すため、これらの二つの形態の間に機能的な違いが観察されなかった。4Ig-B7-H3分子は、ナチュラルキラー細胞によって媒介される癌細胞の溶解を阻害する)。ヒトB7-H3(2Ig形態)は、活性化T細胞上の特定の受容体に結合することにより、T-細胞の活性化およびIFN-γの生成を促進することが分かる。
【0006】
B7-H3がT細胞の共刺激および共抑制を媒介する場合、当該タンパク質の作用方法は、複雑である。B7-H3は、(TREM)-様転写物2(TLT-2)に結合し、かつT細胞の活性化を共刺激し、今まで確認されなかった受容体につけ合してT細胞の共抑制を媒介する。さらに、未知の受容体と相互作用することにより、B7-H3は、ナチュラルキラー細胞および骨芽細胞の阻害因子として機能し、当該阻害は、ほとんどのシグナル伝達経路のメンバーとの相互作用を通じて発生し、T細胞受容体(TCR)は、これらのシグナル伝達経路を介して遺伝子転写(例えば、NFTA、NF-κBまたはAP-1因子)を調節する。B7-H3は、CD4+およびCD8+T-細胞の増殖を共刺激する。B7-H3は、IFN-γの生成およびCD8+の溶解活性をさらに刺激する。しかしながら、当該タンパク質は、NFAT(活性化に使用されるT細胞の核因子)、NF-κB(核因子κB)およびAP-1(活性化タンパク質-1)因子を介して、T細胞の活性化を阻害することができる。B7-H3は、インビボでTh1、Th2またはTh17を阻害できると思われる。
【0007】
複数の独立した研究は、ヒト悪性腫瘍細胞がB7-H3タンパク質発現における顕著な増加を示し、かつこのような発現の増加が疾患の重症度の増加に関連していることを示し、B7-H3が、免疫回避経路として腫瘍によって利用されていることを示す。ヒトB7-H3は、神経芽細胞腫細胞に発現するだけでなく、様々な他の癌細胞(例えば、胃がん、卵巣がんおよび非小細胞肺がん)でも発現することが分かる。B7-H3とその受容体との結合をブロックするか、またはB7-H3を高度に発現した腫瘍抗原として使用して、対応する標的治療製品を開発することは、様々な異なる腫瘍を治療する潜在的な手段である。
【0008】
現在、先行技術におけるB7-H3に対して開発した腫瘍標的治療製品には、まだ多くの欠陥があり、当技術分野で新しい治療用抗体関連製品を開発する必要がある。
【0009】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明の目的は、抗B7-H3抗体ならびにその調製および適用を提供することである。
【0010】
[課題を解決するための手段]
本発明の第1の態様は、抗体の重鎖可変領域を提供し、前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:3nに示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:3n+1に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:3n+2に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、各nは、独立して、11、12、13、14、15、16、または17であり、
または、前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:36に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:55に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:56に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:57に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:40に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:41に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:51に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:52に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:58に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:51に示されるVH-CDR1
SEQ ID NO:59に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:60に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、上記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含む。
【0011】
別の好ましい例において、前記重鎖可変領域は、次のような三つの相補性決定領域CDRを含む。
【0012】
【表1】
【0013】
別の好ましい例において、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:79~96のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を有する。
本発明の第2の態様は、抗体の重鎖を提供し、前記重鎖は、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域を有する。
【0014】
別の好ましい例において、前記重鎖は、重鎖定常領域をさらに含む。
別の好ましい例において、前記重鎖定常領域は、ヒト由来である。
別の好ましい例において、前記重鎖定常領域は、ヒト抗体重鎖IgG1またはIgG4定常領域である。
【0015】
本発明の第3の態様は、抗体の軽鎖可変領域を提供し、前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:3m+1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:3m+2に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3m+3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、各mは、独立して、0、1、2、3、4、5、6、または7であり、
または、前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:25に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:26に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:27に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:5に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:6に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:27に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:28に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:6に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:29に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:11に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:12に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:30に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:23に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:31に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:30に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:23に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:32に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、上記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含む。
【0016】
別の好ましい例において、前記軽鎖可変領域は、次のような三つの相補性決定領域CDRを含む。
【0017】
【表2】
【0018】
別の好ましい例において、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:61~78のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を有する。
本発明の第4の態様は、抗体の軽鎖を提供し、前記軽鎖は、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域を有する。
【0019】
別の好ましい例において、前記軽鎖は、軽鎖定常領域をさらに含む。
別の好ましい例において、前記軽鎖定常領域は、ヒト由来である。
別の好ましい例において、前記軽鎖定常領域は、ヒト抗体軽鎖kappa定常領域である。
【0020】
本発明の第5の態様は、抗体を提供し、前記抗体は、
(1)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、および/または
(2)本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域を有するか、
または、前記抗体は、本発明の第2の態様に記載の重鎖、および/または本発明の第4の態様に記載の軽鎖を有し、
ここで、上記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含む。
【0021】
別の好ましい例において、上記CDRのいずれか一つのアミノ酸配列は、1、2または3個のアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換された誘導CDR配列を含み、前記誘導CDR配列を含むVHおよびVLで構成される誘導抗体は、B7-H3に対する結合親和性を保持することができる。
【0022】
別の好ましい例において、前記誘導抗体のB7-H3に対する結合親和性F1と、対応する非誘導抗体のB7-H3に対する結合親和性F0との比(F1/F0)は、0.5~2、好ましくは0.7~1.5、より好ましくは0.8~1.2である。
【0023】
別の好ましい例において、前記付加、欠失、修飾および/または置換されたアミノ酸の数は、1~5個(例えば、1~3個、好ましくは1~2個、より好ましくは1個)である。
【0024】
別の好ましい例において、前記少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換的され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列は、相同性または配列同一性が少なくとも96%であるアミノ酸配列である。
【0025】
別の好ましい例において、前記抗体は、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域をさらに含む。
別の好ましい例において、前記重鎖定常領域は、ヒト由来であり、および/または前記軽鎖定常領域は、ヒト由来である。
【0026】
別の好ましい例において、前記重鎖定常領域は、ヒト抗体重鎖IgG1またはIgG4定常領域であり、前記軽鎖定常領域は、ヒト抗体軽鎖kappa定常領域である。
【0027】
別の好ましい例において、前記抗体は、動物由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0028】
別の好ましい例において、ヒトにおける前記キメラ抗体の免疫原性Z1と、ヒトにおける非キメラ抗体(例えば、マウス由来抗体)の免疫原性Z0との比(Z1/Z0)は、0~0.5、好ましくは0~0.2、より好ましくは0~0.05(例えば、0.001~0.05)である。
【0029】
別の好ましい例において、前記抗体は、部分的または完全ヒト化、または完全ヒトモノクローナル抗体である。
別の好ましい例において、前記抗体は、二本鎖抗体、または一本鎖抗体である。
【0030】
別の好ましい例において、前記抗体は、抗体の全長タンパク質、または抗原結合フラグメントである。
別の好ましい例において、前記抗体は、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。
【0031】
別の好ましい例において、前記抗体は、以下からなる群から選択される一つまたは複数の特性を有し:
(a)腫瘍細胞の移動または転移を阻害し、
(b)腫瘍の成長を阻害し、および
(c)T細胞に対する腫瘍の免疫阻害を解除する。
【0032】
別の好ましい例において、前記抗体は、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域および本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域を有し、
ここで、前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、次のとおりであり、
【0033】
【表3】
【0034】
ここで、上記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含む。
【0035】
別の好ましい例において、前記抗体は、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域および本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域を有し、ここで、
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:26に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:26に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:2に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:34に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:25に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含む。
【0036】
別の好ましい例において、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:79~96のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含み、および/または前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:61~78のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
別の好ましい例において、前記抗体は、ヒト化抗体であり、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:83に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:64に示されるアミノ酸配列を含むか、
または、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:83に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:62に示されるアミノ酸配列を含むか、
または、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:81に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:63に示されるアミノ酸配列を含む。
【0038】
別の好ましい例において、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列表におけるSEQ ID NO:79~96のいずれか一つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列相同性または配列同一性を有する。
【0039】
別の好ましい例において、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列表におけるSEQ ID NO:61~78のいずれか一つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列相同性または配列同一性を有する。
【0040】
組換えタンパク質であって、前記組換えタンパク質は、
(i)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、および
(ii)発現および/または精製を補助する任意選択のタグ配列を含む。
【0041】
別の好ましい例において、前記タグ配列は、6Hisタグを含む。
別の好ましい例において、前記組換えタンパク質(またはポリペプチド)は、融合タンパク質を含む。
【0042】
別の好ましい例において、前記組換えタンパク質は、単量体、二量体、または多量体である。
本発明の別の態様は、B7-H3を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を提供し、前記CARの抗原結合ドメインは、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、または本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域を含む。
【0043】
別の好ましい例において、前記CARの構造は、以下の式Iに示されたとおりであり、
式(I):L-scFv-H-TM-C-CD3ζ
式において、
各「-」は、独立して、結合ペプチドまたはペプチド結合であり、
Lは、なしまたはシグナルペプチド配列であり、
Hは、なしまたはヒンジ領域であり、
TMは、膜貫通ドメインであり、
Cは、共刺激シグナル分子であり、
CD3ζは、CD3ζ由来の細胞質シグナル伝達配列である。
【0044】
本発明の第7の態様は、ポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは、
(1)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、および
(2)本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。
【0045】
本発明の第8の態様は、ベクターを提供し、前記ベクターは、本発明の第7の態様に記載のポリヌクレオチドを含む。
別の好ましい例において、前記ベクターは、細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、例えば、アデノウイルスおよびレトロウイルス等の哺乳動物細胞ウイルス、または他のベクターを含む。
【0046】
本発明の第9の態様は、遺伝子操作された宿主細胞を提供し、前記宿主細胞は、本発明の第8の態様に記載のベクターを含むか、またはゲノムには本発明の第7の態様に記載のポリヌクレオチドが組み込まれる。
【0047】
本発明の第10の態様は、抗体コンジュゲートを提供し、当該抗体コンジュゲートは、
(a)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、またはその組み合わせからなる群から選択される抗体部分、および
(b)検出可能な標識、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはその組み合わせからなる群から選択される前記抗体部分とカップリングされるカップリング部分を含む。
【0048】
別の好ましい例において、前記抗体部分は、化学結合またはリンカーを介して前記カップリング部分にカップリングされる。
別の好ましい例において、前記抗体薬物コンジュゲートADCは、以下の分子式に示されたとおりであり、
【0049】
【化1】
【0050】
ここで、
Abは、抗B7-H3の抗体であり、
LUは、リンカー(linkerと呼ばれる)であり、
Dは、薬物であり、
下付き文字pは、1~10、好ましくは1~8から選択される値である。
【0051】
別の好ましい例において、前記薬物は、化学療法薬、放射線療法薬、ホルモン療法薬または免疫療法薬からなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記毒素は、タキサン(taxane)、メイタンシノイド(maytansinoid)、アウリスタチン(auristatin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、アントラサイクリン(anthracycline)、ドセタキセル(docetaxel)、カテプシン(cathepsin)、リシン(ricin)、ゲロニン(gelonin)、シュードモナス毒素(Pseudomonas exotoxin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)、リボヌクレアーゼ酵素(RNase)およびラジオアイソトープ(radioisotope)からなる群から選択される。
【0052】
本発明の第11の態様は、免疫細胞を提供し、前記免疫細胞は、本発明の第5の態様に記載の抗体を発現するか、または細胞膜の外側で露出する。
【0053】
別の好ましい例において、前記免疫細胞は、NK細胞、T細胞を含む。
別の好ましい例において、前記免疫細胞は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)に由来する。
【0054】
本発明の第12の態様は、医薬組成物を提供し、前記医薬組成物は、
(i)本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、本発明の第10の態様に記載の抗体コンジュゲート、本発明の第11の態様に記載の免疫細胞、またはその組み合わせからなる群から選択される有効成分、および
(ii)薬学的に許容されるベクターを含む。
【0055】
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、液体製剤である。
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、注射剤である。
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、0.01~99.99%の本発明の第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、本発明の第10の態様に記載の抗体コンジュゲート、本発明の第11の態様に記載の免疫細胞、またはその組み合わせならびに0.01~99.99%の医薬ベクターを含み、前記パーセンテージは、前記医薬組成物の質量パーセンテージである。
【0056】
別の好ましい例において、前記医薬組成物は、第2の有効成分をさらに含み、前記第2の有効成分は、第2の抗体、または化学療法剤を含む。
別の好ましい例において、前記第2の抗体は、CTLA4抗体、PD-1抗体、PD-L1抗体、VEGF抗体、B7-H4抗体、HER2抗体、LAG3抗体、TIM-3抗体、4-1BB抗体、CD3抗体、TIGIT抗体からなる群から選択される。
【0057】
別の好ましい例において、前記化学療法剤は、ドセタキセル、カルボプラチン、またはその組み合わせからなる群から選択される。
本発明の第13の態様は、有効成分の用途を提供し、前記有効成分は、本発明の第1の態様に記載の重鎖可変領域、本発明の第2の態様に記載の重鎖、本発明の第3の態様に記載の軽鎖可変領域、本発明の第4の態様に記載の軽鎖、または本発明の第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、本発明の第10の態様に記載の抗体コンジュゲート、本発明の第11の態様に記載の免疫細胞、またはその組み合わせからなる群から選択され,ここで、前記有効成分は、(a)B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製、および/または(b)診断試薬またはキットの調製に使用される。
【0058】
別の好ましい例において、前記診断試薬は、検出シートまたは検出プレートである。
別の好ましい例において、前記B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患は、腫瘍および自己免疫性疾患からなる群から選択される。
【0059】
別の好ましい例において、前記腫瘍は、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺がん、乳がん、肝臓がん、膵臓胃食道がん、線がん、頭頸部がん、滑膜肉腫、結腸直腸がん、腎臓がん、膀胱がん、前列線がん、卵巣がん、慢性C型肝炎ウイルス感染症、進行性固形がん、消化器悪性腫瘍、子宮内膜がん、再発性黒色腫、頭頸部扁平上皮がん、皮膚T細胞リンパ腫、卵管がん、腹膜腫瘍、筋層浸潤性膀胱がん、進展期小細胞肺がん、成人急性骨髄性白血病、非定型慢性骨髄性白血病、卵巣上皮細胞がん、B細胞慢性リンパ球白血病、皮膚B細胞非ホジキンリンパ腫、眼内リンパ腫、精巣絨毛がん、神経芽細胞腫、食道がんからなる群から選択される。
【0060】
別の好ましい例において、前記自己免疫性疾患は、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、強直性脊椎炎、強皮症、結節性多発動脈炎、ウェゲナー(Wegener)肉芽腫症、甲状腺機能亢進症、インスリン依存性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、移植拒絶からなる群から選択される。
【0061】
別の好ましい例において、前記診断試薬またはキットは、サンプル中のB7-H3タンパク質を検出するために使用される。
別の好ましい例において、前記診断試薬またはキットは、B7-H3関連疾患を診断するために使用される。
【0062】
本発明の第14の態様は、サンプル中のB7-H3タンパク質をインビトロ検出(診断性または非診断性を含む)するための方法を提供し、前記方法は、
(1)前記サンプルを本発明の第5の態様に記載の抗体とインビトロで接触させる段階と、および
(2)抗原-抗体複合体が形成されるかどうかを検出する段階とを含み、ここで、複合体の形成は、サンプル中にB7-H3タンパク質が存在することを示す。
【0063】
本発明の第15の態様は、本発明の第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、本発明の第10の態様に記載の抗体コンジュゲート、本発明の第11の態様に記載の免疫細胞、またはその組み合わせを有効成分として使用する、サンプル中のB7-H3タンパク質をインビトロ検出するための組成物を提供する。
【0064】
本発明の第16の態様は、検出プレートを提供し、前記検出プレートは、基板(支持プレート)および試験片を含み、前記試験片は、本発明の第5の態様に記載の抗体、本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、本発明の第10の態様に記載の抗体コンジュゲート、本発明の第11の態様に記載の免疫細胞、またはその組み合わせを含む。
【0065】
本発明の第17の態様は、キットを提供し、前記キットは、
(1)本発明の抗体を含む第1の容器、および/または
(2)本発明の抗体に対する二次抗体を含む第2の容器を含み、
または、
前記キットは、本発明の第16の態様に記載の検出プレートを含む。
【0066】
本発明の第18の態様は、組換えポリペプチドの調製方法を提供し、当該方法は、
(a)発現に適した条件下で、本発明の第9の態様に記載の宿主細胞を培養する段階と、
(b)培養物から組換えポリペプチドを分離する段階を含み、前記組換えポリペプチドは、本発明の第5の態様に記載の抗体または本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質である。
【0067】
本発明の第19の態様は、必要とする対象に有効量の本発明の第5の態様に記載の抗体、または本発明の第6の態様に記載の組換えタンパク質、または本発明の第10の態様に記載の抗体コンジュゲート、または本発明の第11の態様に記載の免疫細胞、または本発明の第12の態様に記載の医薬組成物、またはその組み合わせを投与する段階を含む、B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患を治療するための方法を提供する。
【0068】
別の好ましい例において、前記B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患は、癌である。
[発明の効果]
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施例)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】NCI-H1975皮下異種移植腫瘍の相対腫瘍体積(平均値±標準誤差)を示す。
図2】NCI-H1975皮下異種移植腫瘍の担癌マウスの相対動物体重(平均値±標準誤差)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明者らは、広範囲かつ綿密な研究の結果、抗B7-H3抗体を発見した。本発明は、当該抗体の調製方法および関連する適用をさらに提供する。本発明の抗体は、標的タンパク質B7-H3に対して高親和性および高選択性を有し、細胞によって効果的にエンドサイトーシス化され、発現および精製が容易である。本発明の抗体を用いて調製されたADCは、動物モデルにおいて明らかな腫瘍阻害効果を示す。これに基づいて、本発明を完成させた。
【0071】
具体的には、本発明は、B7-H3-hisタンパク質およびB7-H3を過剰発現するCHO-K細胞をそれぞれ使用し、皮下および腹腔内多点注射によって健康なBalb/cマウスを免疫氏、3~4回免疫した後、血清力価の最も高いマウスを摘出し、安楽死させた後、脾臓を摘出してファージディスプレイライブラリーを構築する。液相スクリーニングを3回行った後、B7-H3-Hisでマイクロタイタープレートをコーティングし、抗B7-H3のFab上清を加え、ELISAスクリーニングによりB7-H3に特異的に結合する陽性クローンを取得する。陽性クローンをシーケンシングし、細胞レベルでの結合検証およびサルB7-H3の交差結合検証を行い、細胞レベルでのB7-H3とサルB7-H3との両方に同時に結合できる候補抗体の全長抗体構築を行う。
【0072】
同時に、4000を超えるヒトPBMC試料をRNA抽出に使用し、IMGTデータベースに従って様々な生殖細胞株(germline)のプライマーとして設計し、文献で報告されたヒト由来遺伝子の比率に従って、ライブラリー構築計画を立て、生殖細胞株の比率が異なる合計四つの数百億のライブラリーを確立し、数千億の抗体ライブラリーに統合する。液相スクリーニングを3回行った後、Anti-Fdでマイクロタイタープレートをコーティングし、次いで抗B7-H3のFab上清を加え、サンドイッチ法ELISAスクリーニングによってB7-H3に特異的に結合する陽性クローンを取得する。得られた陽性クローンをシーケンシングし、得られたモノクローナルを細胞レベル結合およびサルB7-H3結合について検証し、細胞レベルB7-H3およびサルB7-H3に結合できる候補抗体について全長抗体構築を行う。
【0073】
上記マウス免疫ライブラリーおよびヒトライブラリーからスクリーニングした抗体軽鎖および重鎖を含むプラスミドをExpiCHO-S細胞に同時にトランスフェクトし、7日間発現した後、細胞発現上清を収集し、プロテイン(Protein)A親和性クロマトグラフィーカラムによって精製し、精製後にSDS-PAGEおよびSECにより抗体の純度を確認する。
【0074】
精製後の抗体は、タンパク質レベルの結合、種交差検出、細胞レベルの結合およびエンドサイトーシスまたは活性の検出を受ける。すべての実験結果を要約すると、最終的に八つのマウス免疫ライブラリーおよび三つのヒトライブラリーの候補抗体を取得する。さらに、マウス免疫ライブラリーの候補抗体から、ヒト化のために二つの抗体を選択する。CDR移植によって、マウス由来抗体のCDRを対応するヒト抗体骨格に移植し、次いで3D構造シミュレーションによって軽鎖と重鎖の突然変異体のいくつかの対を設計し、一過性発現後に抗体の活性を検証する。
【0075】
B7-H3
細胞免疫応答において、T細胞の増殖および活性化は、T細胞受容体TCRがAPCまたは腫瘍細胞の表面のMHCによって提示された第1のシグナルを識別する必要があるだけでなく、共刺激分子によって提供された第2のシグナルをさらに必要とする。B7-CD28スーパーファミリーは、これまでに発見された共刺激分子ファミリーの一つであり、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。B7ファミリー分子は、T細胞免疫応答を増強および維持するための刺激シグナルを提供することができ、T細胞免疫応答を制限および弱体化させるための阻害シグナルを生成することもできる。従って、当該ファミリーは、腫瘍疾患、臓器移植および自己免疫疾患において重要な役割を果たす。
【0076】
機能に従って、B7ファミリーは、三つのカテゴリーに分けられる。
第1のグループ:B7-1(CD80)およびB7-2(CD86)。
第2のグループ:B7-H1(PD-L1)およびB7-DC(PD-L2)
第3のグループ:B7-H3(CD276)およびB7-H4(B7x)で構成される。それらの受容体は、特定されていないが、共刺激および共抑制の経路に関与していると考えられる。
【0077】
CD276とも呼ばれるB7-H3(B7 homolog 3 protein)は、B7-CD28ファミリーの重要な免疫チェックポイント分子である。これは、2001年にChapovalらによってヒト樹状細胞cDNAライブラリーで同定されたB7ファミリーメンバーである。B7-H3は、主に膜タンパク質および可溶型で存在し、可溶型B7-H3(soluble B7-H3、sB7-H3)は、メタロプロテアーゼによって膜タンパク質から切断される。さらに、エキソソームおよび他の細胞外小胞にもB7-H3タンパク質を発見した。
【0078】
B7-H3は、部分的な共刺激機能を有するT細胞共抑制分子である。B7-H3は、T細胞およびNK細胞の機能を効果的に阻害でき、骨の発達にも影響を与える。
【0079】
B7-H3は、様々な悪性腫瘍で発現し、悪性腫瘍の成長、転移、再発、予後不良等の要素に密接に関連する。B7-H3は、Tヘルパータイプ1によって媒介される免疫応答をダウンレギュレートし、CD4+T細胞の活性化を阻害し、サイトカインの生成を阻害するため、癌細胞の免疫逃避を促進する役割を果たす可能性がある。
【0080】
B7-H3は、分子量45~66kDaの316個のアミノ酸で構成されるI型膜貫通糖タンパク質であり、B7-H1(PD-L1)と同様の分子構造を有する。これは、一つの推定の28AAシグナルペプチド、免疫グロブリン定常(IgC)および可変(IgV)構造で構成される一つの217AA細胞外領域、一つの膜貫通領域ならびに45個のアミノ酸の細胞質ドメインを含む。当該遺伝子は、10個のエクソンで構成され、ここで、4~7個のエクソンは、細胞外IgV-IgCドメインをコードする。
【0081】
現在、B7-H3は、2Ig-B7-H3および4Ig-B7-H3の二つの形態で存在することが分かる。2Ig-B7-H3は、マウスおよびヒトの細胞で発現し、細胞外IgV-IgC構造を有し、4Ig-B7-H3は、ヒト細胞でのみ発現し、タンデム反復IgV-IgC-IgV-IgC構造で構成される。ヒトB7-H3の主な存在形態は、4IgB7-H3であり、染色体15に位置する。マウスB7-H3遺伝子は、染色体9に位置する。B7-H3は、B7ファミリーの最も進化的に保存されたメンバーの一つであり、硬骨魚から哺乳類に至る種で遍在的に発現する。
【0082】
B7-H3転写産物は、心臓、肝臓、胎盤、前立腺、精巣、子宮、膵臓、小腸および結腸等の組織で広く発現する。B7-H3タンパク質の発現は、活性化された樹状細胞、単球、T細胞、B細胞およびNK細胞等の細胞表面により限定される。
【0083】
B7-H3は、胃がん、肺がん、前列線がん、腎臓がん、膵線がん、卵巣がん、乳がん、子宮内膜がん、肝臓がん、結腸直腸がん、口腔がん、膀胱がん、骨肉腫および血液系悪性疾患を含む、様々な癌細胞または組織で異常に高発現される。
【0084】
B7-H3の発現を調節する分子メカニズムは、不明であるが、B7-H3タンパク質の発現は、miR-29のレベルに反比例し、B7-H3上のmiR-29結合部位は、進化において保存される。
【0085】
抗体
本明細書で使用されるように、「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は、二つの同一の軽鎖(L)および二つの同一の重鎖(H)で構成される、同じ構造的特徴を有する約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、一つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に結合し、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間でのジスルフィド結合の数は、異なる。各重鎖および軽鎖は、規則的な感覚で配置された鎖内ジスルフィド結合もある。各重鎖は、一単位可変領域(VH)があり、その後に複数の定常領域が続く。各軽鎖は、一端に可変領域(VL)を有し、別の端に定常領域を有し、軽鎖の定常領域は、重鎖の第1の定常領域に対向し、軽鎖の可変領域は、重鎖の可変領域に対向する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖との可変領域間で界面を形成する。
【0086】
本明細書で使用されるように、「可変」という用語は、抗体中の可変領域の特定の部分の配列が異なることを表し、それは、特定の抗原に対する様々な特定の抗体の結合および特異性を形成する。しかしながら、可変性は、抗体可変領域全体に均等に分散されていない。これは、軽鎖および重鎖の可変領域の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる三つのフラグメントに集中する。可変領域のより保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変領域は、それぞれ、四つのFR領域を含み、それらは、接続環を形成する三つのCDRによって接続された大抵β-フォールディング構成にあり、場合によっては部分的なβフォールディング構造を形成することができる。各鎖のCDRは、FR領域によって緊密に近接され、かつ別の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位を形成する(Kabatら、NIH Publ.No.91-3242、巻I、647~669ページ(1991)を参照する)。定常領域は、抗体の抗原への結合に直接関与するが、それらは、抗体の抗体依存性細胞毒性に関与する等、様々なエフェクター機能を示す。
【0087】
脊椎動物の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、その定常領域のアミノ酸配列に従って、二つの異なるクラス(κおよびλと呼ばれる)のいずれかに割り当てることができる。その重鎖の定常領域のアミノ酸配列に従って、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの五つの主なクラスがあり、そのうちのいくつかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)にさらに分類できる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元構成は、当業者に周知である。
【0088】
一般に、抗体の抗原結合特性は、可変領域(CDR)と呼ばれる重鎖および軽鎖の可変領域に位置する三つの特定の領域によって説明でき、当該セクションを四つのフレームワーク領域(FR)に分割され、四つのFRのアミノ酸配列は、比較的に保存され、結合反応に直接関与しない。これらのCDRは、環状構造を形成し、その間のFRによって形成されたβフォールディングは、空間構造的に近接し、重鎖のCDRおよびそれに対応する軽鎖のCDRは、抗体の抗原結合部位を構成する。同種の抗体のアミノ酸配列を比較することにより、FRまたはCDR領域を構成するアミノ酸を決定することができる。
【0089】
本発明は、完全な抗体だけでなく、免疫学的活性を有する抗体のフラグメントまたは抗体および他の配列によって形成された融合タンパク質も含む。従って、本発明は、前記抗体のフラグメント、誘導体および類似体をさらに含む。
【0090】
本発明において、抗体は、当業者に周知の技術を使用して調製されたマウス、キメラ、ヒト化または完全ヒトの抗体を含む。組換え抗体は、標準的なDNA組換え技術によって取得できる、ヒトおよび非ヒト部分を含む、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体等の有用な抗体である。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子であり、例えば、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有するキメラ抗体である(米国特許4816567および米国特許4816397を参照し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ヒト化抗体とは、非ヒト種に由来する一つまたは複数の相補性決定領域(CDRs)およびヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する非ヒト種に由来する抗体分子を指す(米国特許5585089を参照し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。これらのキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野で主知のDNA組換え技術を使用して調製することができる。
【0091】
本発明において、抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、またはより多くの多重特異性であり得る。
本発明において、本発明の抗体は、その保存的変異体をさらに含み、これは、本発明の抗体のアミノ酸配列と比較して、最大で10個、好ましくは最大で8個、より好ましくは最大で5個、最も好ましくは最大で3個のミノ酸が類似または同様のアミノ酸によって置換されてポリペプチドを形成することを指す。これらの保存的変異ポリペプチドは、好ましくは、表Aによるアミノ酸によって置換されて生成される。
【0092】
【表4】
【0093】
抗B7-H3抗体
本発明は、重鎖および軽鎖を含む、B7-H3に対して高特異性および高親和性を有する抗体を提供し、前記重鎖は、重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列を含み、前記軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含む。
【0094】
別の好ましい例において、前記抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
ここで、前記重鎖可変領域は、次のような三つの相補性決定領域CDRを含み、
【0095】
【表5】
【0096】
前記軽鎖可変領域は、次のような三つの相補性決定領域CDRを含む。
【0097】
【表6】
【0098】
別の好ましい例において、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:79~96のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含み、および/または前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:61~78のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0099】
別の好ましい例において、前記抗体は、次のような配列を含む。
【0100】
【表7】
【0101】
好ましい実施形態において、前記抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで、
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:26に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含むか、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:2に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含むか、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:34に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:25に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含む。
【0102】
別の好ましい例において、前記抗体は、ヒト化抗体であり、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:83に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:64に示されるアミノ酸配列を含むか、
または、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:83に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:62に示されるアミノ酸配列を含むか、
または、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:81に示されるアミノ酸配列を含み、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:63に示されるアミノ酸配列を含む。
【0103】
別の好ましい例において、上記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含む。
【0104】
別の好ましい例において、前記少なくとも一つのアミノ酸を付加、欠失、修飾および/または置換することによって形成された配列は、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の相同性を有するアミノ酸配列である。より好ましくは、前記付加、欠失、修飾および/または置換されたアミノ酸の数は、1~7個、より好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個、より好ましくは1~2個であり得る。
【0105】
本発明の抗体は、二本鎖または一本鎖抗体であり得、動物由来抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体から選択されることができ、より好ましくはヒト化抗体、ヒト-動物キメラ抗体、より好ましくは完全ヒト化抗体である。
【0106】
本発明に記載の抗体誘導体は、一本鎖抗体、および/または抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’、(Fab’)2または当該分野における他の既知の抗体誘導体等、ならびにIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体または抗体の他のサブタイプの任意の一つまたは複数の種であり得る。
【0107】
ここで、前記動物は、好ましくは、マウス等の哺乳動物である。
本発明の抗体は、ヒトB7-H3を標的とするキメラ抗体、ヒト化抗体、CDR移植および/または修飾抗体であり得る。
【0108】
抗体の調製
本発明の抗体またはそのフラグメントのDNA分子の配列は、PCR増幅またはゲノムライブラリースクリーニング等の従来の技術によって得られることができる。さらに、軽鎖および重鎖のコード配列を融合させて、一本鎖抗体を形成することができる。
【0109】
関連する配列を得られたら、組換え法を使用して、関連する配列を大量に得ることができる。通常、これは、それをベクターにクローニングし、次に細胞に形質転換し、次に従来の方法によって増殖した宿主細胞から関連する配列を分離することによって得られる。
【0110】
さらに、特にフラグメントの長さが比較的短い場合、人工合成によって関連配列を合成することもできる。通常、まず複数の小さなフラグメントを合成し、次いでライゲーションすることによって、非常に長い配列を有するフラグメントを取得する。
【0111】
現在、完全に化学的合成によって前記本発明の抗体(またはそのフラグメントまたはその誘導体)をコードするDNA配列を得ることができる。次に、当該DNA配列を当技術分野で知られている様々な既存のDNA分子(またはベクター等)および細胞に導入することができる。さらに、化学的合成によって突然変異を本発明のタンパク質配列に導入することができる。
【0112】
本発明は、前記適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターにさらに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現できるように適切な宿主細胞に形質転換するために使用されることができる。
【0113】
宿主細胞は、例えば、細菌細胞等の原核細胞、または例えば、酵母細胞等の下等真核細胞、または例えば、哺乳動物細胞等の上等真核細胞であり得る。好ましい動物細胞は、CHO-S、HEK-293細胞を含む(これらに限定されない)。
【0114】
通常、形質転換されて得られる宿主細胞は、本発明の抗体の発現に適した条件下で培養される。次いでプロテインA-セファロース(Sepharose)、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、モレキュラーシーブクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィー等の当業者に周知の従来の分離および精製手段等の従来の免疫グロブリン精製段階によって精製して、本発明の抗体を取得する。
【0115】
得られたモノクローナル抗体は、従来の手段によって同定することができる。例えば、モノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合試験(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着測定(ELISA))によって測定されることができる。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munsonら、Anal.Biochem.、107:220(1980)のScatchard分析によって測定されることができる。
【0116】
本発明の抗体は、細胞内、または細胞膜で発現されるか、または細胞外に分泌されることができる。必要に応じて、その物理的、化学的および他の特性を利用して、様々な分離方法によって、組換えタンパク質を分離および精製することができる。これらの方法は、当業者に周知である。これらの方法の例としては、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧滅菌、超音波処理、超遠心分離、モレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)および他の様々な液体クロマトグラフィー技術ならびにこれらの方法の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0117】
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)
本発明は、本発明の抗体に基づく抗体薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate、ADC)を提供する。
【0118】
典型的には、前記抗体薬物コンジュゲートは、前記抗体およびエフェクター分子を含み、前記抗体は、前記エフェクター分子にカップリングし、好ましくは化学的にカップリングする。ここで、前記エフェクター分子は、好ましくは、治療活性を有する薬物である。さらに、前記エフェクター分子は、毒素、毒性タンパク質、化学療法薬、小分子薬または放射性核種のうちの一つまたは複数の種であり得る。
【0119】
本発明の抗体は、カップリング剤を介して前記エフェクター分子にカップリングされることができる。前記カップリング剤の例としては、非選択的カップリング剤、カルボキシル基を使用するカップリング剤、ペプチド鎖、ジスルフィド結合を使用するカップリング剤のいずれか一つまたはいくつかの種であり得る。前記非選択的カップリング剤とは、エフェクター分子と抗体とを共有結合させる化合物、例えば、グルタルアルデヒド等を指す。前記カルボキシル基を使用するカップリング剤は、シスアコニット酸無水物カップリング剤(例えば、シスアコニット酸無水物)、アシルヒドラゾンカップリング剤(カップリング部位は、アシルヒドラゾンである)のいずれか一つまたはいくつかの種であり得る。
【0120】
抗体上の特定の残基(例えば、CysまたはLys等)は、イメージング試薬(例えば、発色団および蛍光団)、診断試薬(例えば、MRI造影剤およびラジオアイソトープ)、安定剤(例えば、グリコールポリマー)および治療剤を含む、様々な官能基と結合するために使用される。抗体を機能剤にカップリングして、抗体-機能剤のコンジュゲートを形成することができる。機能剤(例えば、薬物,検出試薬,安定剤)は、抗体にカップリング(共有結合)される。機能剤は、抗体に直接、またはリンカーを介して間接的に結合することができる。
【0121】
抗体を薬物にカップリングして、抗体薬物コンジュゲート(ADCs)を形成することができる。典型的には、ADCは、薬物と抗体との間に位置するリンカーを含む。リンカーは、分解性または非分解性リンカーであり得る。分解性リンカーは、典型的には、細胞内環境、例えば、リンカーが分解する目的の部位で分解を受けやすく、それによって抗体から薬物を放出する。適切な分解性リンカーは、例えば、細胞内プロテアーゼ(例えば、リソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼ)によって分解可能なペプチジル含有リンカーを含む酵素的に分解可能なリンカー、またはグルクロニダーゼによって分解可能なグルクロニド含有リンカー等の糖リンカーを含む。ペプチジルリンカーは、例えば、バリン-シトルリン、フェニルアラニン-リジンまたはバリン-アラニン等のジペプチドを含むことができる。他の適切な分解性リンカーは、例えば、pH感受性リンカー(例えば、pHが5.5未満である場合加水分解するリンカー、例えば、ヒドラゾンリンカー)および還元条件下で分解するリンカー(例えば、ジスルフィド結合リンカー)を含む。非分解性リンカーは、典型的には、抗体がプロテアーゼによって加水分解される条件下で薬物を放出する。
【0122】
抗体に結合する前に、リンカーは、特定のアミノ酸残基と反応できる活性反応基を有し、結合は、活性反応基を介して実現される。スルフヒドリル基特異的活性反応基が好ましく、かつ例えば、マレイミド化合物、ハロゲン化アミド(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロエステル(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロメチルケトン(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロゲン化ベンジル(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ビニルスルホン,ピリジルジスルフィド、例えば3,6-ビス-(水銀メチル)ジオキサン等の水銀誘導体を含み、対イオンは、酢酸塩、塩素イオンまたは硝酸塩、およびポリメチレンジメチルスルフィドチオスルホネートである。リンカーは、例えば、チオスクシンイミドを介して抗体に結合したマレイミドを含むことができる。
【0123】
薬物は、任意の細胞毒性、細胞成長阻害性または免疫阻害性薬物であり得る。実施形態において、リンカーは、抗体と薬物とを結合し、薬物は、リンカーと結合形成できる官能基を有する。例えば、薬物は、隣家との結合を形成できるアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基またはケト基を有することができる。薬物がリンカーに直接結合する場合、薬物は、抗体に結合する前に、反応性活性基を有する。
【0124】
別の好ましい例において、前記薬物は、化学療法薬、放射線療法薬、ホルモン療法薬または免疫療法薬からなる群から選択される。具体的には、有用な薬物のクラスは、例えば、抗チューブリン薬、DNA副溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化試薬、抗生物質、葉酸拮抗物、代謝拮抗物、化学療法増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド等を含む。特に有用な細胞毒性薬物のクラスの例としては、例えば、DNA副溝結合試薬、DNAアルキル化試薬、およびチューブリン阻害剤を含み、典型的な細胞毒性薬物は、例えば、アウリスタチン(auristatins)、カンプトテシン(camptothecins)、デュオカルマイシン/デュオカルマイシン(duocarmycins)、エトポシド(etoposides)、メイタンシン(maytansines)およびメイタンシノイド化合物(maytansinoids)(例えば、DM1およびDM4)、タキサン(taxanes)、ベンゾジアゼピン(benzodiazepines)またはベンゾジアゼピン含有薬物(benzodiazepine containing drugs)(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBDs)、インドリノベンゾジアゼピン(indolinobenzodiazepines)およびオキサゾリジノベンゾジアゼピン(oxazolidinobenzodiazepines))ならびにビンカアルカロイド(vinca alkaloids)を含む。
【0125】
本発明の好ましい毒素は、タキサン(taxane)、メイタンシノイド(maytansinoid)、アウリスタチン(auristatin)、カリケアマイシン(calicheamicin)、アントラサイクリン(anthracycline)、ドセタキセル(docetaxel)、カテプシン(cathepsin)、リシン(ricin)、ゲロニン(gelonin)、シュードモナス毒素(Pseudomonas exotoxin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)、リボヌクレアーゼ酵素(RNase)およびラジオアイソトープ(radioisotope)からなる群から選択される。
【0126】
本発明において、薬物-リンカーを使用して、簡単な1段階でADCを形成することができる。別の実施形態において、二官能性リンカー化合物を使用して、2段階または多段階の方法でADCを形成することができる。例えば、最初の段階でシステイン残基がリンカーの反応性活性部分と反応し、次の段階で、リンカー上の官能基が薬物と反応することにより、ADCを形成する。
【0127】
通常、薬物部分上の適切な反応活性基との特定の反応を促進するように、リンカー上の官能基を選択する。非限定的な例として、アジドベースの部分を使用して、薬物部分上の反応性アルキニル基と特異的に反応させることができる。薬物は、アジドとアルキニル基との間の1,3-双極性環状付加を介して、リンカーに共有結合される。他の有用な官能基は、ケトンおよびアルデヒド(ヒドラジドおよびアルコキシアミンとの反応に適する)、ホスフィン(アジドとの反応に適する)、イソシアネートおよびイソチオシアネート(アミンおよびアルコールとの反応に適する)、例えばN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(アミンおよびアルコールとの反応に適する)等の活性化エステルを含む。「Bioconjugate techniques」、第2版(Elsevier)に記載されるようなこれらおよび他の結合戦略は、当業者に周知である。当業者は、薬物部分およびリンカーの選択的反応ために、反応活性官能基の相補対を選択する場合、当該相補対の各メンバーは、リンカーと薬物との両方に使用できることを理解されたい。
【0128】
本発明は、抗体コンジュゲート(ADC)を形成するのに十分な条件下で、抗体と薬物-リンカー化合物とを結合させる段階をさらに含み得る、ADCを調製するための方法を提供する。
【0129】
特定の実施形態において、本発明は、抗体-リンカーコンジュゲートを形成するのに十分な条件下で、抗体と二官能性リンカー化合物とを結合させる段階を含む。これらの実施形態において、本発明の方法は、リンカーを介して薬物部分を抗体に共有結合させるのに十分な条件下で、抗体リンカーコンジュゲートと薬物部分とを結合させる段階をさらに含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、抗体薬物コンジュゲートADCは、以下の分子式を有し、
【0131】
【化2】
【0132】
ここで、
Abは、抗体であり、
LUは、リンカーであり、
Dは、薬物であり、
下付き文字pは、1~8から選択される値である。
【0133】
適用
本発明は、診断製剤の調製または薬物の調製に使用される、本発明の抗体、抗体コンジュゲートADC、組換えタンパク質、および/または免疫細胞の用途をさらに提供する。
【0134】
好ましくは、前記薬物は、B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物である。
本発明の抗体、ADC、組換えタンパク質、および/または免疫細胞の用途は、以下を含む(これらに限定されない)。
【0135】
(i)腫瘍の発生、成長および/または転移、特にB7-H3の高発現を伴う腫瘍の診断、予防および/または治療に使用される。前記腫瘍は、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺がん、乳がん、肝臓がん、滑膜肉腫、転移性結腸がん、腎臓がん、膀胱がん、前列線がん、卵巣がん、慢性C型肝炎ウイルス感染症、進行性固形がん、消化器悪性腫瘍、子宮内膜がん、再発性黒色腫、頭頸部扁平上皮がん、皮膚T細胞リンパ腫、卵管がん、腹膜腫瘍、筋層浸潤性膀胱がん、進展期小細胞肺がん、成人急性骨髄性白血病、非定型慢性骨髄性白血病、卵巣上皮細胞がん、B細胞慢性リンパ球白血病、皮膚B細胞非ホジキンリンパ腫、眼内リンパ腫、精巣絨毛がん、神経芽細胞腫、食道がんを含む(これらに限定されない)。
【0136】
(ii)自己免疫性疾患の診断、予防および/または治療に使用され、前記自己免疫性疾患は、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、強直性脊椎炎、強皮症、結節性多発動脈炎、ウェゲナー(wegener)肉芽腫症、甲状腺機能亢進症、インスリン依存性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、移植拒絶を含む(これらに限定されない)。
【0137】
検出用途およびキット
本発明の抗体またはそのADCは、試料の検出等の検出適用に使用されることにより、診断情報を提供することができる。
【0138】
本発明において、使用される試料(サンプル)は、細胞、組織試料および生検標本を含む。本発明で使用される「生検」という用語は、当業者に知られているすべての種類の生検を含むべきである。従って、本発明で使用される生検は、腫瘍の切除試料、内視鏡法または臓器穿刺または針生検によって調製される組織試料を含み得る。
【0139】
本発明で使用される試料は、固定または保存された細胞または組織試料を含む。
本発明は、本発明の抗体(またはそのフラグメント)を含むキットをさらに提供し、本発明の好ましい例において、前記キットは、容器、取扱説明書、緩衝剤等をさらに含む。好ましい例において、本発明の抗体は、検出プレートに固定化されることができる。
【0140】
医薬組成物
本発明は、組成物をさらに提供する。好ましい例において、前記組成物は、上記の抗体またはその活性フラグメントまたはその融合タンパク質またはそのADCまたは対応する免疫細胞、および薬学的に許容されるベクターを含む、医薬組成物である。通常、これらの物質を無毒で、不活性で、薬学的に許容される水性ベクター媒体で調製することができ、ここで、pHは、通常約5~8であり、好ましくはpHは、約6~8であり、pH値は、調製される物質の性質および治療される状態によって変化することができる。
【0141】
調製された医薬組成物は、腫瘍内、腹腔内、静脈内、または局所投与を含む(これらに限定されない)従来の経路によって投与されることができる。典型的には、本発明に記載の医薬組成物の投与経路、好ましくは注射投与または経口投与である。前記注射投与は、好ましくは、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮内注射または皮下注射等の経路を含む。前記医薬組成物は、当技術分野での慣用の様々な剤形、好ましくは固体、半固体または液体の形態であり、水溶液、非水溶液または懸濁液、より好ましくは錠剤、カプセル、顆粒剤、注射剤または点滴剤等であり得る。
【0142】
本発明に記載の抗体は、細胞治療に使用されるヌクレオチド配列によって細胞内で発現させることもでき、例えば、前記抗体は、キメラ抗原受容体T細胞免疫療法(CAR-T)等に使用される。
【0143】
本発明に記載の医薬組成物は、B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患を予防および/または治療するための医薬組成物である。
本発明の医薬組成物は、B7-H3タンパク質分子に直接結合されることができ、腫瘍等の疾患を予防和治療するために使用されることができる。
【0144】
本発明の医薬組成物は、安全かつ有効量(例えば、0.001~99wt%、好ましくは0.01~90wt%、より好ましくは0.1~80wt%である)の本発明に記載のモノクローナル抗体(またはそのコンジュゲート)および薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤を含む。このようなベクターは、生理食塩水、緩衝液、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組み合わせを含む(これらに限定されない)。薬物製剤は、投与方法と一致する必要がある。本発明の医薬組成物は、注射剤形態、例えば、生理食塩水またはデキストロースおよびその補助剤を含む水溶液を用いて、従来の方法によって調製されることができる。注射剤および溶液等の医薬組成物は、無菌条件下で調製されることが好ましい。有効成分の投与量は、治療有効量、例えば、1日当たり約1μg/kg体重~約5mg/kg体重で投与される。さらに、本発明のポリペプチドは、他の治療剤とともに使用されることもできる。
【0145】
本発明において、好ましくは、本発明に記載の医薬組成物は、一つまたは複数の種の医薬ベクターをさらに含む。前記医薬ベクターは、当技術分野における従来の医薬ベクターであり、前記医薬ベクターは、任意の適切な生理学的または薬学的に許容される薬物アジュバントであり得る。前記医薬アジュバントは、好ましくは薬学的に許容される賦形剤、充填剤または希釈剤等を含む、当技術分野における従来の医薬アジュバントである。より好ましくは、前記医薬組成物は、0.01~99.99%の上記タンパク質および0.01~99.99%の医薬ベクターを含み、前記パーセンテージは、前記医薬組成物の質量パーセンテージである。
【0146】
本発明において、好ましくは、前記医薬組成物の投与量は、有効量であり、前記有効量は、疾患、変性または損傷性病症の進行を緩和または遅延できる量である。前記有効量は、個体の基礎によって決定されることができ、治療する状態および求められる結果に基づいて考慮する。当業者は、個体の基礎等の上記要素および従来の実験のみを使用することによって有効量を決定することができる。
【0147】
医薬組成物を使用する場合、安全かつ有効量の免疫コンジュゲートを哺乳動物に投与し、ここで、当該安全かつ有効量は、通常、少なくとも約10μg/kg体重であり、ほとんどの場合、約50mg/kg体重以下であり、好ましくは当該投与量は、約10μg/kg体重-約20mg/kg体重である。もちろん、具体的な投与量は、投与経路、患者の健康状態等の要素を考慮されるべきであり、これらは、熟練した医師の記述の範囲内である。
【0148】
本発明は、B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製における上記医薬組成物の適用を提供する。好ましくは、前記B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患は、癌および自己免疫性疾患である。
【0149】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
(a)本発明の抗体は、標的タンパク質B7-H3に対して高親和性および高選択性を有する。
【0150】
(b)細胞実験において、本発明の抗体は、標的タンパク質に結合した後、細胞によって効果的にエンドサイトーシスされることができる。
(c)本発明の抗体は、発現および精製が容易である。
【0151】
(d)本発明の抗体をADCに調製した後、担癌マウス動物モデルにおいて、単回投与は、明らかな腫瘍阻害効果を有する。
以下、本発明は、具体的実施例と併せてされに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量パーセンテージおよび重量部数で計算される。
【0152】
実施例1.マウス免疫
健康なBalb/cマウスを選択し、皮下、腹腔内に複数回注射して免疫し、2週間に1回免疫する。マウスの一つのグループをB7-H3hisタンパク質で免疫し、B7-H3を過剰発現するCHOK細胞でマウスの別のグループを免疫する。最初の免疫にフロイントの完全アジュバントを使用し、続いてフロイントの不完全アジュバントを使用して免疫する。3~4回免疫した後、ELISAでマウスの血清力価を検出し、力価が最も高いマウスを犠牲にした後に脾臓を取ってファージディスプレイライブラリー構築する。
【0153】
実施例2.マウス免疫ライブラリーの構築およびスクリーニング
免疫後の合格的力価を有するマウス脾臓を採取し、マウス脾臓の総RNAをクロロホルムで抽出し、次いで逆転写PCRによってcDNAライブラリーを調製する。Sanyou Bio独自のコンビネーションプライマーでマウスの軽鎖および重鎖の可変領域遺伝子を増幅し、組み合わされたFabフラグメントは、Fab抗体ライブラリーを構築するためにファージミドベクターに挿入される。ライブラリーをファージディスプレイライブラリーとして調製し、液相スクリーニング方法を使用して、B7-H3hisbiotinを磁性ビーズにコーティングして、3回の液相スクリーニングを行う。3回の液相スクリーニング後、B7-H3Hisでマイクロタイタープレートをコーティングし、次いで抗B7-H3のFab上清を加えて、ELISAスクリーニングによって、B7-H3に特異的に結合する陽性クローンを取得する。
【0154】
得られた陽性クローンをシーケンシングし、得られたモノクローナルを細胞レベル結合およびサルB7-H3結合について検証し、細胞レベルB7-H3およびサルB7-H3に結合できる候補抗体について完全長抗体を構築する。
【0155】
本実施例で構築された一部の抗体の名称およびその配列番号は、表1に示されたとおりである。
【0156】
【表8】
【0157】
実施例3.全人天然ライブラリー構築およびスクリーニング
Sanyou Bio数千億レベルの抗体ライブラリーの構築:4000を超えるヒトPBMC試料をRNA抽出に使用し、IMGTデータベースに従って様々な生殖細胞株(germline)のプライマーとして設計し、文献で報告されたヒト由来遺伝子の比率に従って、ライブラリー構築計画を立て、生殖細胞株の比率が異なる合計四つの数百億のライブラリーを確立し、数千億の抗体ライブラリーに統合する。
【0158】
液相スクリーニングの方法を使用して、B7-H3hisbiotinを磁気ビーズにコーティングして、3回の液相スクリーニングを行う。3回の液相スクリーニングの後、マイクロタイタープレートをAntiFdでコーティングし、次いで抗B7-H3のFab上清を加え、1時間インキュベートした後、2μg/mLのB7-H3Hisbiotinを加えて1時間インキュベートし、最後にNeutravidinHRPでシグナルを検出する。サンドイッチ法ELISAスクリーニングによってB7-H3に特異的に結合する陽性クローンを取得する。
【0159】
得られた陽性クローンをシーケンシングし、得られたモノクローナルを細胞レベル結合およびサルB7-H3結合について検証し、細胞レベルB7-H3およびサルB7-H3に結合できる候補抗体について完全長抗体構築を行う。
【0160】
本実施例で構築された一部の抗体の名称およびその配列番号は、表2に示されたとおりである。
【0161】
【表9】
【0162】
実施例4.全長抗体の発現および精製、ならびにマウス由来抗体のヒト化
抗体の軽鎖および重鎖を有するプラスミドをExpiCHOS細胞に同時トランスフェクトし、7日間発現した後に細胞発現上清を収集し、プロテインA親和性クロマトグラフィーカラムを使用して精製し、具体的な実験段階については、AKTAのマニュアルを参照する。精製抗体を透析によりPH7.2のPBS緩衝液に交換する。合計23のマウス免疫ライブラリーおよび39のヒトライブラリーの抗体に対して発現および精製し、正常に発現および精製した合計57の抗体を最終的に取得し、ここで、19は、マウス免疫ライブラリーに由来し、38は、ヒトライブラリーに由来する。
【0163】
結果は、実施例2および3に列挙された具体的な抗体がすべてExpiCHOS細胞において正常に発現したことを示す。
CDR移植により、マウス由来抗体(IL-P7-C05、IL-P5-C06)のCDRは、対応するヒト抗体骨格に移植され、次いで3D構造シミュレーションによって軽鎖および重鎖の突然変異体のいくつかの対を設計し、一過性発現後に抗体の活性を検証する。
【0164】
本実施例で構築された一部の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域およびその配列番号は、表3に示されたとおりである。
【0165】
【表10】
【0166】
上記重鎖可変領域および軽鎖可変領域を任意に組み合わせて、新しいヒト化抗体を形成することができる。
実施例5.タンパク質レベル結合および種交差検出
ヒトB7-H3his、マウスB7-H3hisおよびサルB7-H3hisをPBSで2μg/mLに希釈し、マイクロタイタープレートの各ウェルに30μLを加え、次いでマイクロタイタープレートを4℃の冷蔵庫で16~20時間インキュベートする。翌日、洗浄液(0.05%Tween20を含むPBS)でマイクロタイタープレートを1回洗浄し、次いで5%脱脂粉乳を加えて1時間ブロッキングする。ブロッキング完了後、マイクロタイタープレートを1回洗浄し、次いで勾配希釈した抗B7-H3抗体を加え、室温下で1時間インキュベートする。インキュベートした後、マイクロタイタープレートを3回洗浄し、次いでヤギ抗ヒト抗を標識二次抗体を加え、室温下で1時間インキュベートする。インキュベートした後、マイクロタイタープレートを3回洗浄し、次いでTMBを加えて5~15分間発色させ、最後に2M硫酸で停止させ、マイクロプレートリーダーでデータを記録する。
【0167】
種交差検出の結果は、表4に示されたとおりであり、ほとんどすべての抗体は、すべてヒトとサルとの交差を有し、ほとんどの抗体は、ヒトとマウスとの交差を有する。
【0168】
続いて、実施例4で構築されたヒト化抗体、ならびに一部のマウス由来抗体および完全ヒト抗体に対して、ヒトB7-H3タンパク質レベル結合を検証し、結果は、表5に示されたとおりであり、列挙された抗体は、すべてヒトB7-H3に対して高親和性を有する。
【0169】
【表11】
【0170】
【表12】
【0171】
実施例6.細胞レベルの結合検出
B7-H3を過剰発現するCHOK細胞またはB7-H3を内因的に発現するNCIH322細胞を丸底96ウェルプレートにウェルあたり100000細胞で加え、遠心分離して上清を除去し、次いで勾配希釈した抗B7-H3抗体を加え、4℃下で1時間インキュベートする。インキュベートした後、FACS緩衝液(2%FBSを含むPBS)で細胞を2回洗浄し、次いで蛍光標識したヤギ抗ヒト二次抗体(Abcam、ab98596)を加え、30分間インキュベートする。インキュベートした後にFACS緩衝液で細胞を2回洗浄し、FACS緩衝液で細胞を再懸濁した後にフローサイトメーター(Beckman、cytoFlex)で検出する。
【0172】
結果は、表6に示されたとおりであり、表に列挙された抗体は、B7-H3を人工的に発現させたCHO細胞、およびB7-H3タンパク質を高発現するヒト由来非小細胞肺がん細胞(NCI-H322)の両方に対して、高い結合能を有することを示す。
【0173】
【表13】
【0174】
実施例7.候補抗体のエンドサイトーシスの活性検出
B7-H3を過剰発現するCHOK細胞またはB7-H3を内因的に発現するNCIH322細胞を96ウェルプレートに播種し、37℃下でインキュベーター一晩培養する。まず毒素を含む二次抗体(ATS、IT51)で抗B7-H3抗体を標識し、次いで抗体を細胞に加え、37℃下でインキュベーターで3日間培養する。抗体がエンドサイトーシスされる場合、抗体に標識された毒素は、抗体のエンドサイトーシスとともに細胞に入り、細胞に毒性を引き起こし、細胞の生存率を低下させ、最後に細胞毒性検出キット(Promega、G3581)で細胞の活性を検出する。
【0175】
結果は、表7に示されたとおりであり、列挙された抗体は、すべて、B7-H3を発現するCHO細胞によって効果的にエンドサイトーシスされる可能性があり、一部の選択された抗体は、ヒト由来非小細胞肺がん細胞(NCI-H322)エンドサイトーシス実験でも、高いエンドサイトーシス活性を示す。
【0176】
【表14】
【0177】
実施例10.インビトロ薬力学評価
カップリングエフェクター分子としてMMAE(Monomethyl auristatin E)を使用し、前述で調製した抗体IL-P7-C05-H4L3を使用して抗体薬物コンジュゲートIL-P7-C05-H4L3-MMAEを構築し、インビトロ薬力学評価を実施する。
【0178】
CellTiter-Glo方法を使用して、B7-H3陽性ヒト由来腫瘍細胞株NCI-H1975、BxPC-3およびB7-H3陰性ヒト由来腫瘍細胞株Rajiに対するIL-P7-C05-H4L3-MMAEの72時間インキュベーションの阻害活性を検出する。
【0179】
結果は、表8に示されたとおりであり、IL-P7-C05-H4L3-MMAEは、高発現のB7-H3腫瘍細胞(NCI-H1975およびBxPC-3)に対して強力な殺傷能力を有するが、B7-H3陰性腫瘍細胞に対して殺傷活性が低い。
【0180】
【表15】
【0181】
CellTiter-Glo方法を使用して、B7-H3陽性ヒト由来腫瘍細胞株Calu-6、BxPC-3およびB7-H3陰性ヒト由来腫瘍細胞株Rajiに対するIL-P7-C05-H4L3-MMAEおよびアイソタイプ対照Isotype-MMAEの5日間インキュベーションの阻害活性を検出する。
【0182】
結果は、表9に示されたとおりであり、IL-P7-C05-H4L3-MMAEは、高発現のB7-H3腫瘍細胞(Calu-6およびBxPC-3)に対して強力な殺傷能力を有するが、B7-H3陰性腫瘍細胞に対して殺傷活性が低い。Isotype-MMAE対照は、IL-P7-C05-H4L3-MMAEよりもはるかに低い細胞殺傷活性を有する。
【0183】
【表16】
【0184】
実施例11.インビボ薬力学評価
ヒト非小細胞肺がんNCI-H1975細胞BALB/cヌードマウス皮下移植腫瘍モデルにおいて、IL-P7-C05-H4L3-MMAEおよびアイソタイプ対照Isotype-MMAEの単回投与による腫瘍増殖の阻害効果を検出する。
【0185】
腫瘍体積および動物の体重は、図1および図2に示されたとおりである。
結果は、1mg/kgおよび3mg/kgの用量で尾静脈から1回投与されたIL-P7-C05-H4L3-MMAEは、NCI-H1975皮下移植腫瘍の増殖に対して有意な阻害効果を示し(P<0.01)、実験終了後(投与後21日)の腫瘍成長阻害率(TGI)は、それぞれ78.4%および101.8%であり、二つの投与群の相対腫瘍増殖率(%T/C)は、それぞれ26.2%および4.2%であり、3mg/kg投与群の腫瘍は、縮小し、消失する。3mg/kgの投与量下でアイソタイプ対照Isotype-MMAEを尾静脈から単回投与した後、溶媒対照群と比較して腫瘍成長に統計学的差はない(P>0.05)。1mg/kgおよび3mg/kgの用量でのIL-P7-C05-H4L3-MMAEの単回投与、および3mg/kgの用量でのアイソタイプ対照Isotype-MMAEの単回投与は、動物の体重変化に有意な影響を及ぼさず、明らかな異常な臨床徴候は見られず、動物は十分に耐える。
【0186】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【0187】
本出願に言及される配列
【0188】
【表17】
【0189】
【表18】
【0190】
【表19】
【0191】
【表20】
図1
図2
【配列表】
2023529633000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の重鎖可変領域であって、
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:3nに示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:3n+1に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:3n+2に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、各nは、独立して、11、12、13、14、15、16、または17であり、
または、前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:36に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:55に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:56に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:57に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:40に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:41に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:51に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:52に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:58に示されるVH-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:51に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:59に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:60に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、前記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含むことを特徴とする、前記抗体の重鎖可変領域。
【請求項2】
抗体の重鎖であって、
前記重鎖は、請求項1に記載の重鎖可変領域を有することを特徴とする、前記抗体の重鎖。
【請求項3】
抗体の軽鎖可変領域であって、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:3m+1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:3m+2に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3m+3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、各mは、独立して、0、1、2、3、4、5、6、または7であり、
または、前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:25に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:26に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:27に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:5に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:6に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:27に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:28に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:6に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:29に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:11に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:12に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:30に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:23に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:31に示されるVL-CDR3、
もしくは
SEQ ID NO:30に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:23に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:32に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
ここで、上記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含むことを特徴とする、前記抗体の軽鎖可変領域。
【請求項4】
抗体の軽鎖であって、
前記軽鎖は、請求項3に記載の軽鎖可変領域を有することを特徴とする、前記抗体の軽鎖。
【請求項5】
抗体であって、
前記抗体は、
(1)請求項1に記載の重鎖可変領域、および/または
(2)請求項3に記載の軽鎖可変領域を有するか、
または、前記抗体は、請求項2に記載の重鎖、および/または請求項4に記載の軽鎖を有し、
ここで、前記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含むことを特徴とする、前記抗体。
【請求項6】
前記抗体は、請求項1に記載の重鎖可変領域および請求項3に記載の軽鎖可変領域を有し、
ここで、前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、次のとおりであり、
【表1】
ここで、前記アミノ酸配列におけるいずれか一つのアミノ酸配列は、任意選択で少なくとも一つのアミノ酸が付加、欠失、修飾および/または置換され、かつB7-H3結合親和性を保持できる誘導配列をさらに含むことを特徴とする
請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体は、請求項1に記載の重鎖可変領域および請求項3に記載の軽鎖可変領域を有し、ここで、
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:26に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:97に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:54に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:2に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
または
前記重鎖可変領域は、
SEQ ID NO:33に示されるVH-CDR1、
SEQ ID NO:34に示されるVH-CDR2、および
SEQ ID NO:35に示されるVH-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含み、
前記軽鎖可変領域は、
SEQ ID NO:1に示されるVL-CDR1、
SEQ ID NO:25に示されるVL-CDR2、および
SEQ ID NO:3に示されるVL-CDR3の三つの相補性決定領域CDRを含むことを特徴とする
請求項5に記載の抗体。
【請求項8】
組換えタンパク質であって、
前記組換えタンパク質は、
(i)請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5~7のいずれか1項に記載の抗体、および
(ii)発現および/または精製を補助する任意選択のタグ配列を含むことを特徴とする、前記組換えタンパク質。
【請求項9】
抗体コンジュゲートであって、
当該抗体コンジュゲートは、
(a)請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、または請求項5~7のいずれか1項に記載の抗体、またはその組み合わせからなる群から選択される抗体部分、および
(b)検出可能な標識、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、またはその組み合わせからなる群から選択される前記抗体部分とカップリングされるカップリング部分を含むことを特徴とする、前記抗体コンジュゲート。
【請求項10】
有効成分の、(a)診断試薬またはキットの調製、および/または(b)B7-H3の発現または機能異常に関連する疾患を予防および/または治療するための薬物の調製における使用方法であって、
前記有効成分は、請求項1に記載の重鎖可変領域、請求項2に記載の重鎖、請求項3に記載の軽鎖可変領域、請求項4に記載の軽鎖、請求項5~7のいずれか1項に記載の抗体、請求項8に記載の組換えタンパク質、または請求項9に記載の抗体コンジュゲート、またはその組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする使用方法
【国際調査報告】