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特表2023-529660エクストラドメイン-Bフィブロネクチン標的プローブを用いた診断及びモニタリング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】エクストラドメイン-Bフィブロネクチン標的プローブを用いた診断及びモニタリング
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/14 20060101AFI20230704BHJP
   A61K 49/06 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230704BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20230704BHJP
   A61B 5/055 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
A61K49/14
A61K49/06
A61P35/00
C07K7/06 ZNA
A61B5/055 383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574846
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 US2021035852
(87)【国際公開番号】W WO2021247967
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/034,520
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/170,746
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500429332
【氏名又は名称】ケース ウェスタン リザーブ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】CASE WESTERN RESERVE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジョンロン
(72)【発明者】
【氏名】アヤット,ナディア
(72)【発明者】
【氏名】ホール,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイディア,アミタ・エム.
(72)【発明者】
【氏名】チアオ,ピーター
【テーマコード(参考)】
4C085
4C096
4H045
【Fターム(参考)】
4C085HH01
4C085HH07
4C085KA07
4C085KA09
4C085KB02
4C085KB07
4C085KB11
4C085KB12
4C085KB15
4C085KB37
4C085KB82
4C085LL18
4C096AA03
4C096AA11
4C096AC01
4C096AC04
4C096AC05
4C096AC07
4C096AD14
4C096AD19
4C096BA41
4C096DC22
4C096DC33
4C096FC14
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA50
4H045CA40
4H045EA51
(57)【要約】
【課題】本開示は、被験者体内の薬剤耐性癌の検出方法について説明する。
【解決手段】被験者の組織と有効量の分子プローブとを接触させ、組織中に存在する分子プローブの量を検出し、検出された分子プローブの量を対照値と比較し、組織中に存在する前記分子プローブの量が対照値よりも高い場合に、被験者体内の薬剤耐性癌を検出する。前記分子プローブは、式P-L-Cを含み、PがEDB-FN標的ペプチドであり、Cが造影剤であり、Lが前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合する非ペプチドリンカーである。また、本開示は、薬剤耐性癌の治療のモニタリング方法についても説明する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者体内の薬剤耐性癌の検出方法であって、
被験者の組織を、式:P-L-C
(式中、Pは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであり、
Cは、造影剤であり、
Lは、前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合する非ペプチドリンカーであり、前記リンカーは、前記ペプチドのアミンと共に反応してカルボキサミドを形成するカルボン酸、前記ペプチドのシステイン残基と共に反応してチオエステル結合を形成するマレイミド、又は前記ペプチドのシステイン残基と共に反応してチオエステルを形成するマレイミドを含む。)を含む分子プローブの有効量に接触させること、
前記組織中に存在する前記分子プローブの量を検出すること、
検出された前記分子プローブの量を対照値と比較すること、及び
前記組織中に存在する前記分子プローブの量が前記対照値よりも大きい場合には、前記被験者体内の薬剤耐性癌を検出すること、を含む方法。
【請求項2】
前記癌は、乳癌、口腔癌、膵癌又は前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分子プローブは、磁気共鳴イメージング剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
インビボで前記組織を接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分子プローブは、癌に罹患している又は癌罹患の疑いがある被験者に全身投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分子プローブの非ペプチドリンカーは、非ペプチド脂肪族又はヘテロ脂肪族リンカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記分子プローブの非ペプチドリンカーは、前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合させる場合に、アルキレンジカルボキサミドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分子プローブの造影剤は、金属キレート剤又は金属フラーレンのうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分子プローブの前記造影剤は、
ジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA)又はその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザドデカンテトラアセテート(DOTA)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザドデカン-1,4,7-トリアセテート(DO3A)及びその誘導体、
エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン四酢酸(TRITA)及びその誘導体、
1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザドデカンテトラメチルアセテート(DOTMA)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザドデカン-1,4,7-トリメチルアセテート(DO3MA)及びその誘導体、
N,N’,N’’,N’’’-テトラホスホナトメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DOTP)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアゼシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンメチルホスホン酸)(DOTMP)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンフェニルホスホン酸)(DOTPP)及びその誘導体、又は、
N,N’-エチレンジ-L-システイン及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する金属キレート剤を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
前記分子プローブは、下記の式:
【化1】
又は、
【化2】
(上式中、Pは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドであり、
は、存在してもしなくてもよいスペーサーであり、
は、前記ペプチドP又は前記スペーサーのアミノ基であり、
Mは、Gd+3、Eu+3、Tm+3、Dy+3、Yb+3、Mn+2、Fe+355Co、64Cu、67Cu、47Sc、66Ga、68Ga、90Y、97Ru、99mTC、111h、109Pd、153Sm、177Lu、186Re、及び188Reからなる群より選ばれる金属又はその塩である。)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
は、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、共重合(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリオキシエチレン(POE)、ポリウレタン、ポリフォスファゼン、多糖、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレートのうちの少なくとも1種を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
薬剤耐性癌の治療をモニタリングする方法であって、
薬剤耐性癌治療中の被験者の組織を、式:P-L-C
(式中、Pは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであり、
Cは、造影剤であり、
Lは、前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合する非ペプチドリンカーであり、前記リンカーは、前記ペプチドのアミンと反応してカルボキサミドを形成するカルボン酸、前記ペプチドのシステイン残基と反応してチオエステル結合を形成するマレイミド、又は前記ペプチドのシステイン残基と反応してチオエステルを形成するマレイミドを含む。)を含む分子プローブの有効量と1回目接触させること、
前記組織中に存在する前記分子プローブの第1の量を検出すること、
前記被験者の組織を、前記式:P-L-Cを含む分子プローブの有効量と2回目接触させること、
前記組織中に存在する前記分子プローブの第2の量を検出すること、及び
前記分子プローブの前記第1の量と前記第2の量とを比較することにより、前記被験者体内の薬剤耐性癌の治療をモニタリングすること、を含む方法。
【請求項13】
前記癌は、乳癌、口腔癌、膵癌又は前立腺癌である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記分子プローブは、磁気共鳴イメージング剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
インビボで前記組織を接触させる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤耐性癌は、化学療法剤で治療されている、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記分子プローブの非ペプチドリンカーは、非ペプチド脂肪族又はヘテロ脂肪族リンカーである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記分子プローブの非ペプチドリンカーは、前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合させる場合に、アルキレンジカルボキサミドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記分子プローブの造影剤は、金属キレート剤又は金属フラーレンのうちの少なくとも1種を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
分子プローブの造影剤は、
ジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA)又はその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザドデカンテトラアセテート(DOTA)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザドデカン-1,4,7-トリアセテート(DO3A)及びその誘導体、
エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン四酢酸(TRITA)及びその誘導体、
1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザドデカンテトラメチルアセテート(DOTMA)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザドデカン-1,4,7-トリメチルアセテート(DO3MA)及びその誘導体、
N,N’,N’’,N’’’-テトラホスホナトメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DOTP)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアゼシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンメチルホスホン酸)(DOTMP)及びその誘導体、
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンフェニルホスホン酸)(DOTPP)及びその誘導体、又は、
N,N’-エチレンジ-L-システイン及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する金属キレート剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記分子プローブは、下記の式:
【化3】
又は、
【化4】
(上式中、Pは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドであり、
は、存在してもしなくてもよいスペーサーであり、
は、前記ペプチドP又は前記スペーサーのアミノ基であり、
Mは、Gd+3、Eu+3、Tm+3、Dy+3、Yb+3、Mn+2、Fe+355Co、64Cu、67Cu、47Sc、66Ga、68Ga、90Y、97Ru、99mTC、111h、109Pd、153Sm、177Lu、186Re、及び188Reからなる群より選ばれる金属又はその塩である。)を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
は、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、共重合(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリオキシエチレン(POE)、ポリウレタン、ポリフォスファゼン、多糖、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレートのうちの少なくとも1種を含む、請求項21に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(政府の資金提供)
本出願は、米国国立衛生研究所から授与されたCA211762及びCA194518の政府の支援を得て行われた。政府は、本出願における権利を保有している。
【0002】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2020年6月4日に出願された米国仮出願第63/034,520号、2021年4月5日に出願された米国仮出願第63,170,746号の優先権を要求し、これらの2つの出願は、参照によってこの記事に組み込まれた。
【0003】
(配列表)
この出願には、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表が含まれており、これにより全体が参照されて組み込まれている。2021年3月31日に作成されたASCIIコピーは、CWR-029593 WO ORD_ST25.txtと呼ばれ、サイズが7841バイトである。
【背景技術】
【0004】
癌とは、USで合成された男女の生死の第2の最も一般的な原因である。癌の早期診断は、正確にパーソナライズ・治療介入を開始し、疾病で診断された患者の生存や品質を向上させるために重要である。また、化学療法や手術では早期に治療が可能であるが、薬剤耐性の発達により、非硬化性である再燃や遠方のメタスタを導入することができる。治療部位において早期に治療効果を非侵襲的に評価することにより、癌のサバイバビリティを高めることができ、ケアのコストを低減することができる。PET-CT、MRI、超音波のような血液マーカやイメージングモダリティは、疾患の診断や評価に一般的に用いられているが、薬剤耐性腫瘍及び感受性腫瘍を区別することはできない。
【0005】
エクストラドメイン-Bフィブロネクチン(Extradomain-B Fibronectin;EDB-FN)は、フィブロネクチンの癌胚イソフォームである。この細胞外マトリックスオンコタンパク質は、大腸癌を含むNEOP-SMSのpERAに有意に増殖しており、腫瘍攻撃性を反映した上皮間質転換(EMT)、癌細胞の蒸れ、増殖、血管新生、転移に関連している。臨床研究では、肺癌、脳癌、大腸癌、卵巣癌の患者において、EDB-FNの存在が示されている。また、EDB-FNの過剰発現は、乳腺腫瘍の組織学的勾配にも相関しており、口腔癌患者の生存が悪く、複数のネットのマーカーとしての役割を示唆している。
【0006】
複雑さの別の層は、EDB-FN発現プロファイルは、同じ癌タイプでも異なっており、細胞又は組織の分子及び機能特性に特異性を有する。例えば、EDB-FN特異的なペプチドプローブZD2-Cy5.5を用いて、本発明者らは、浸潤的な癌細胞株、例えば、LNCaP(前立腺)及びMCF7(ホルモン受容体陽性乳癌)は、EDB-FNレベルが有意に低い。このEDB-FNの特異的な発現を利用し、EDB-FN-標的MRI造影剤、特にMT218[ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)]を用いて、非浸潤的な異種移植片と区別させるように、浸潤性前立腺癌及び乳癌腫瘍を診断した。しかし、薬剤耐性の非侵襲的な評価、治療反応のモニタリング、薬剤耐性癌の積極的なモニタリングが依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、浸潤性の高い大腸癌(CRC)細胞及び腫瘍において、EDB-FNが過剰発現していると判断した。これにより、MT218を用いてEDB-FNを行ったMRMIは,薬剤耐性CRC異種移植モデルの効果的で非侵襲的な検出と鑑別診断を促進することができる。また、MT218によるMRMIは、MK2206.HCl、パクリタキセル等を含む標的薬物の薬剤耐性CRC腫瘍に対する治療効果をモニタリングするためにも使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本発明は、被験者体内の薬剤耐性癌の検出方法を提供する。該方法は、被験者の組織と、前記一般式P-L-Cからなる分子プローブの有効量とを接触させる工程を含み、ここで、Pは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであり;Cは、造影剤であり;及びLは、前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合する非ペプチドリンカーであり、前記リンカーは、前記ペプチドのアミンとカルボキサミドを形成するカルボン酸と、又は前記ペプチドのシステイン残基とチオエステル結合を形成するマレイミドと、又は前記ペプチドのシステイン残基とチオエステルを形成するマレイミドを含み、前記組織中に存在する前記分子プローブの量を検出することと、検出された前記分子プローブの量と対照値とを比較することと、及び前記組織中に存在する前記分子プローブの量が前記対照値よりも多い場合には、前記被験者体内の薬剤耐性癌を検出することとの工程を含む。
【0009】
また、別の態様では、本発明は、薬剤耐性癌の治療をモニタリングする方法を提供する。該方法は、薬剤耐性癌治療中の被験者の組織と、式P-L-Cからなる分子プローブの有効量とを初めて接触させ、ここで、Pは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであり;Cは、造影剤であり;及びLは、前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合する非ペプチドリンカーであり、前記リンカーは、前記ペプチドのアミンとカルボキサミドを形成するカルボン酸と、又は前記ペプチドのシステイン残基とチオエステル結合を形成するマレイミドと、又は前記ペプチドのシステイン残基とチオエステルを形成するマレイミドを含み、前記組織中に存在する前記分子プローブの第1の量を検出することと、薬剤耐性癌治療中の被験者の組織と、式P-L-Cからなる分子プローブの有効量とを第2回目で接触させることと、前記組織中に存在する前記分子プローブの第2の量を検出することと、及び前記分子プローブの前記第1の量と前記第2の量とを比較することにより、前記被験者体内の薬剤耐性癌の治療をモニタリングすることとの工程を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記癌は、乳癌、口腔癌、膵癌、前立腺癌である。他の実施形態では、生体内で前記組織を接触させる。また、追加の本実施形態では、前記薬剤耐性癌は、化学療法剤で治療されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記分子プローブは、磁気共鳴イメージング剤である。追加の実施形態では、前記分子プローブの非ペプチドリンカーは、非ペプチド脂肪族又はヘテロ脂肪族リンカーである。他の実施形態では、前記分子プローブの非ペプチドリンカーは、前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合させる際に、アルキレンジカルボキサミドを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記分子プローブの造影剤は、金属キレート剤又は金属フラーレンの少なくとも1種を含む。他の実施形態では、前記分子プローブの前記造影剤は、ジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA)又はその誘導体、1,4,7,10-テトラアザドデカンテトラアセテート(DOTA)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザドデカン-1,4,7-トリアセテート(DO3A)及びその誘導体、エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン四酢酸(TRITA)及びその誘導体、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザドデカンテトラメチルアセテート(DOTMA)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザドデカン-1,4,7-トリメチルアセテート(DO3MA)及びその誘導体、N,N’,N’’,N’’’-テトラホスホナトメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DOTP)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアゼシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンメチルホスホン酸)(DOTMP)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンフェニルホスホン酸)(DOTPP)及びその誘導体、又は、N,N’-エチレンジ-L-システイン及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する金属キレート剤を含む。
【0013】
前記分子プローブは、下記の式
【化1】
又は、
【化2】
を有し、ここで、Pは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドであり;Lは、任意のスペーサーであり;Lは、前記ペプチドP又は前記スペーサーのアミノ基であり;Mは、Gd+3、Eu+3、Tm+3、Dy+3、Yb+3、Mn+2、Fe+355Co、64Cu、67Cu、47Sc、66Ga、68Ga、90Y、97Ru、99MTC、111H、109Pd、153Sm、177Lu、186Re、188Reからなる群より選ばれる金属又はその塩である。
【0014】
他の実施形態では、Lは、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、共重合(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリオキシエチレン(POE)、ポリウレタン、ポリフォスファゼン、多糖、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレートのうちの少なくとも1種を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本明細書の一部を構成する添付図面は、発明のいくつかの実施形態を示すものであり、発明の原理を説明するためのものである。
【0016】
図1A-1H】獲得性薬剤耐性は、CRC細胞の遊走及び浸潤を増強することを示す画像である。A.親DLD1細胞による5’-FUの獲得性薬剤耐性を有するDLD1-DR細胞における2D単層及び3D腫瘍スフェロイド培養物の形態学的変化。B.親RKO細胞による5’-FU及びCB-839の獲得性薬剤耐性を有するRKO-DR細胞における2D単層及び3D腫瘍スフェロイド培養物の形態学的変化。タンパク質ブロッティングとqRT-PCRのタンパク質及びmRNAレベルでのC. D. DLD1-DR及びE. F. RKO-DR細胞における薬剤耐性マーカータンパク質MDR1の発現の増加とEMTマーカーN-cad及びE-cadのレベルの変化をそれぞれ使用する。タンパク質ブロットバンド強度は、アクチン対照に基づき正規化され、タンパク質レベルの変化は、それぞれのレーンに隣接する感受性と耐性の比率として表されている。親細胞と比較して、transwell測定法を用いて薬剤耐性G. DLD1-DR及びH. RKO-DR細胞におけるマトリゲルによる浸潤及び遊走の増加を測定した。細胞は、0.1%結晶性紫で染色した。棒グラフは、平均値±semを示している。ペアなしtで検定し、*p<0.05である。スケールゲージ=100μm。
【0017】
図2A-2F】獲得の薬剤耐性を、CRC細胞におけるEDB-FN式に対応付けたことを示すグラフ及び画像である。3Dマトリゲル中で培養したCRC細胞を、EDB-FN特定ペプチドプローブZP2-Cy5.5、核染色剤Hoechstで染色した。2D単層培養物で増殖したCRC細胞を、RNA抽出及びmRNA発現のQRT-PCR解析のために採取した。DLD-1細胞と比較して、耐性DLD1-DR細胞はAを示した。ZD2-Cy5.5結合の増加、B. EDB-FN及びC. FN1のmRNAレベルを3倍に高めた。RKO細胞と比較して、耐性RKO-DR細胞は、D. ZD2-Cy5.5結合の増加、E. EDB-FN及びF.FN1のmRNAレベルは、4倍と1.5倍に増加した。棒グラフは、平均値±semを示している。ペアなしtで検定し、*p<0.05である。スケールゲージ=100μm(100x)と50μm(200x)。
【0018】
図3A-3J】MT218を用いたEDB-FNの造影MRMIは、CRC腫瘍の薬剤耐性の非侵襲的な評価に役立ったことを示すグラフ及び画像である。CRC異種移植マウスにMT218の40μmol/kg用量を注射した前後(25分)にT強調FSE冠状断(coronal)像及び軸位断(axial)像を得た。MRIの代表的な冠状断像及び軸位断像表示は、非耐性DLD-1及びRKO腫瘍と比較して、A-Bであった。DLD1-DR及びC-D. RKO-DR腫瘍の固体シグナル増強(白い矢印:腫瘍)。薬剤耐性E-F. DLD1-DR及びG-H. RKO-DR腫瘍は、それぞれDLD-1及びRKO腫瘍に対して有意に高いCNRを示した。(n=各群5匹のマウス)。棒形は、平均値±semを表し、点は、個々のマウスCNRを表している。ペアなしtで検定し、*p<0.05である。解剖後の組織学的に低分化のH&Eによる有糸分裂活性細胞、及び薬剤耐性Iを示した。DLD1-DR及びJ.RKO-DR腫瘍切片におけるそれぞれの非薬剤耐性対応物よりも強い抗-EDB-FN抗体G4の染色(赤色及び黒色の矢印は、それぞれ腫瘍細胞及び線維芽細胞におけるEDB-FNを示す)。
【0019】
図4A-4C】薬剤耐性DLD1-DRホルママウスにおける治療レジメンのタイムラインと治療効果の非侵襲的なモニタリングを示すグラフである。薬剤耐性DLD1-DR腫瘍皮下を胸腺nu/nu雌マウスの側腹に移植した。腫瘍の体積は、毎週マーカーでモニタリングされた。腫瘍体積が100mm3に達すると、MT218を用いたEDB-FNベースラインMRMIが第1週に行われる。マウスは、DMSO処理の「ビークル」群とMK2206処理の「処理」群にランダムに分類した。第4週では、MT218を用いたEDB-FNに対する終点MRMIを行い、実験を終了した。B.各群の平均腫瘍体積は、第1週から第4週に増加した。C.第1週から第4週にかけて、ビークル群及び治療群の単一マウス(番号TM1-TM10)の腫瘍体積が徐々に増加した(n=各群の5匹のマウス)。棒形は、平均値±semを表し、点は、個々のマウスの腫瘍体積を表している。ペアなしtで検定し、*p<0.05である。
【0020】
図5A-5E】MT218を用いたEDB-FNのMRMIは、薬剤耐性CRC腫瘍を運ぶビークル治療マウスの非侵襲的な治療モニタリングに寄与することを示すグラフ及び画像である。DMSOで処理したDLD1 DRマウスでは、MT218の40μmol/kg用量でA.ベースライン(第1週)とB.エンドポイント(第4週)で行ったMRMIのT1強調2Dスピンエコー軸位断像(TM:ビークル群における単一マウスの番号)。MT218の注射前と注射後25分で撮影。C.1週目と4週目の個々のマウスのCNRをプロットした。D.キャリア群の平均CNRは、第1週から第4週において有意に変化しなかった。E.4週間後に行われた解剖組織学は、分化が悪いDLD1-DR腫瘍切片を示した。 抗EDB-FN抗体G4の免疫組織化学は、TM3がTM10よりも強く染色された(n=各群の5匹のマウス)ことを示した。棒形は、平均値±semを表し、点は、個々のマウスの腫瘍体積を表している。ペアなしtで検定し、*p<0.05である。
【0021】
図6A-6E】図6A~6 Eは、MT218を用いたEDB-FNのMRMIは、MK2206 HCl処理に耐性CRC腫瘍を運ぶマウスの非侵襲的な治療モニタリングに寄与することを示すグラフ及び画像である。100mg/kg MK2206 HClで処理したDLD1 DRマウスにおいて、MT218の40μmol/kg用量でA.ベースライン(第1週)とB.エンドポイント(第4週)は、行われたMRMIのT1強調2Dスピンエコー軸位断像(TM:ビークル群の個々のマウスの番号)を示す。MT218の注射前と注射25分後に画像を撮影した。C.1週目と4週目の個々のマウスのCNRをプロットした。D.治療群の平均CNRは、第1週から第4週まで有意に増加した。E.4週間後に行われた解剖組織学は、分化が悪いDLD1-DR腫瘍切片を示した。抗EDB FN抗体G4の免疫組織化学は、TM7がTM9よりも強く染色された(n=各群の5匹のマウス)ことを示した。棒形は、平均値±semを表し、点は、個々のマウスの腫瘍体積を表している。ペアなしtで検定し、*p<0.05である。
【0022】
図7A-7F】ヒト大腸腺癌においてEDB-FNを過剰発現させ、生存不良に相関した場合のグラフ及び画像を示すである。EDP-FN特異的抗体G4を用いた免疫組織化学染色は、A.未治療患者とB.治療患者からの代表的な原発性大腸腺癌組織ではEDB-FN発現が強いが、対応する正常隣接組織(NAT)ではEDB-FN発現は無視される。代表的な転移性肝臓標本の免疫組織化学染色は、C. 未治療患者と D. 治療した患者ではEDB-FN発現が異なり、治療した患者ではEDB-FN発現が異なり,対応する正常隣接肝組織(NAT)には発現はなかったことを示した。黒と赤の矢印は、それぞれ線維芽細胞と腫瘍細胞を示している。Kaplan-Meier曲線は、高EDB-FNレベルが大腸腺癌患者の不良総生存率(OS)と望ましくない無進行生存率(PFS)と関連していたことを示す。E.不良総生存率(OS)とF.不良無進行生存率(PFS)相関(対数ランク検定、すなわちMantel-Cox検定を用いて、OSの危険比*p=0.018と*p=0.02、PFSの危険比*p=0.025と*p=0.028)。
【0023】
図8A-8H】浸潤性乳癌におけるEDB-FNの過剰発現を示すグラフ及び画像である。A.TCGA及びGTEXデータベースから患者データに対して行った差動遺伝子発現解析は、通常の乳房組織サンプル(NOR、N=291)と比較して、乳腫瘍サンプル(BRCA、n=1084)におけるEDB-FNのイソフォーム(ENST0000043207.6)の過剰発現を示す。ブロック図は、分散分析、*p=6.57e-69 を使用して、100万値あたりのlog2(TPM+1)転写物と四分位数範囲の中央値を表した。B.Kaplan-Meier曲線は、EDB-FN発現乳癌患者の全体的な生存分析を示す(*p<0.05;対数ランク検定、すなわちMantel-Cox検定を用いて、危険比の*p=0.022)。C.原発性乳房腫瘍におけるEDB-FNの免疫組織化学染色パターンは、線維芽細胞(緑)、癌細胞(紫)及び腫瘍マトリックス(赤)における発現を示す。正常隣接組織(NAT)、E.リンパ節転移及びF.肺及び脳転移と比べて、患者1と2のD. 乳房腫瘍では強いEDB-FN染色が認められた。ホルモン受容体陽性MCF7細胞と比較して、G.qRT-PCR分析は、三陰性MDA-MB-468、BT549、MDA-MB-231及びHs578T細胞におけるEDB-FN mRNAレベルの有意な上昇を示した。18S表現を標準として採用。棒形は、平均値±sem(n=3)を表した。Kruskal-Wallis検定、**p=0.0013を使用した。H.transwellアッセイにより乳癌細胞株の異なるサブタイプの浸潤ポテンシャルを比較した。EDB-FN過発現三陰性癌細胞はEDB-FNの低いMCF7細胞よりも浸潤性であり、マトリガーコーティングされたtranswell insertsによって浸潤する結晶性紫染色の細胞数の増加が示された。
【0024】
図9A-9E】TGF-β治療及び薬剤耐性を有する乳癌細胞における改変された特徴を示す画像及び増強された遊走を示す画像である。MCF7及びMDA-MB-468細胞を5ng/mLのTGF-βで7日間培養し、MCF7-TGF-β及びMDA-MB-468-TGF-β細胞をそれぞれ得た。MCF7-DR及びMDA-MB-468-DR細胞は、それぞれ500nMパボキシニ(Palbociclib)及び100nMパクリタキセルに対する耐性を誘導することによって得られる。A.2D培養では、MCF7-TGFβ及びMCF7-DR細胞は、親株と比較して明らかな形態学的変化を示し、より多くの間充填表現型を有し、MDA-MB-468-TGFβ及びMDA-MB-468-DR細胞は、目に見える形態学的変化を示さなかった。B.3Dマトリックスゲル培養では、MCF7-TGFβ及びMCF7-DR細胞は、それぞれの親細胞と比較してスフェロイドを形成する能力の増強を示し、MDA-MB-468-TGFβ及びMDA-MB-468-DR細胞は、同様の増殖ネットワークを形成する。EMTマーカー物のタンパク質ブロット分析は、親MCF7及びMDA-MB-468細胞と比較して、E-cadherin、N-cadherin及びSlugがそれぞれC.MCF7-TGFβ及びMCF7-DR及びD.MDA-MB-468-TGFβ及びMDA-MB-468-DR細胞におけるタンパク質発現であったことを示した。E.transwellアッセイは、TGF-β処理された薬剤耐性を有するMCF7及びMDA-MB-468細胞のより高い浸潤ポテンシャルを示し、結晶性紫染色による遊走細胞の数の増加によって実証された。スケールゲージ=100μm。
【0025】
図10A-10F】TGF-β処理された薬剤耐性を有する乳癌細胞におけるEDB-FN増加の発現量を示すグラフ及び画像である。A.乳癌細胞の3D培養物のZD2-Cy5.5染色は、親MCF7及びMDA-MB-468細胞と比較して、A.MCF7-TGF-βとMCF7-DR及びB.MDA-MB-468-TGF-βとMDA-MB-468-DRを有意に増加させた。EDB-FNに結合したZD2ペプチドは、FIJIにおいて、Hoechstの画素強度に対するZD2-Cy5.5の画素強度の比として定量化され、親MCF7及びMDA-MB-468細胞と比較して、C.MCF7-TGF-βとMCF7-DR及びD.MDA-MB-468-TGF-β及びMDA-MB-468-DR細胞におけるEDB-FNレベルの増加を示す。バーは、平均値±semを表し、ポイントは、独立した繰り返しサンプルを表した。Mann-Whitney U検定を使用して、*p<0.05である。qRT-PCR分析では、親MCF7及びMDA-MB-468細胞と比較して、EDB-FNがそれぞれE.MCF7-TGFβ及びMCF7-DR及びF.MDA-MB-468-TGFβ及びMDA-MB-468-DR細胞におけるmRNA発現の有意な増加を示す。ドットは、3つの独立した実験からの3つの技術サンプルを表し、ラインは、平均値±semである。Mann-Whitney U検定を使用して、*p<0.05である。スケールゲージ=100μm。
【0026】
図11A-11H】TGF-β処理された薬剤耐性を有する浸潤性乳癌細胞におけるAktの治療用アブレーション、浸潤及びEDB-FNの過剰発現が低減されていることを示すグラフ及び画像である。A.TGF-β処理及び薬剤耐性は、MCF7及びMDA-MB-468細胞におけるリン酸化AKTシグナル伝達及びSRp55のリン酸化を増加させた。B.AKT阻害剤MK2206-HCl(MCF7細胞では2μM、MDA-MB-468細胞では4μM)で2日間細胞を処理し、浸潤性乳癌細胞株におけるAKTリン酸化シグナル伝達を抑制した。MK2206-HClを介したリン酸化AKTシグナル伝達の枯渇は、EDP-FNエクトンを含むSRp55の潜在的な役割を示唆するSRp55の増加を減少させる。MK2206-HClによるリン酸化AKTシグナル伝達の阻害は、浸潤的C.MCF7及びD.MDA-MB-468細胞誘導体の浸潤ポテンシャルの低下、ならびにE.及びF.mRNAレベル及びG.及びH.3D培養におけるEDB-FNの発現の低下を示した。ドットは、3つの独立した実験から2つの技術サンプルを表し、ラインは、平均値±semである。G~H.EDB-FNに結合したZD2ペプチドは、FIJIにおいて、Hoechstの画素強度に対するZD2-Cy5.5の画素強度の比として定量化される。バーは、平均値±semを表し、ポイントは、独立した繰り返しサンプルを表している。
【0027】
図12A-12G】TGF-βで処理された薬剤耐性を有する乳癌細胞におけるEDB-FN及びSRp55の枯渇は、浸潤を抑制していることを示す画像である。TGF-βで処理した耐性MCF7及びMDA-MB-468細胞は、100 nM[siRNA]和N/P=10的ECO/siNC(siN)及びECO/siEDB(siE)和ECO/siSRSF6(siS)ナノ粒子治療した。A.EDB-FN及びSRSF6のノックダウンは、EDB-FN発現及びSRp55レベルの低下をもたらし、TGF-βで処理された、薬剤耐性を有する浸潤性B.MCF7及びC.MDA-MB-468細胞の浸潤ポテンシャルを低減した。浸潤的なMDA-MB-468-DR細胞D.をMK2206-HClで処理し、EDB-FN発現及びE.浸潤を減少させた。これらのMK2206で処理された細胞におけるTGF-βの過剰発現は、EDB-FNの発現及びこれらの細胞の浸潤ポテンシャルを救った。浸潤的なMDA-MB-468-DR細胞D.をMK2206-HClで処理し、EDB-FN発現及びE.浸潤を減少させた。これらのMK2206で処理された細胞におけるTGF-βの過剰発現は、EDB-FNの発現及びこれらの細胞の浸潤ポテンシャルを救った。浸潤的なMCF7-DR細胞FをMK2206-HClで処理し、EDP-FN発現とG.浸潤を減少させた。TGF-βは、これらのMK2206で処理された細胞における過剰発現がEDB-FNの発現又はその浸潤的可能性を救わない。スケールゲージ=100μm。
【0028】
図13A-13D】ヒト組織中のEDB-FNに対するEDB-FN特異的G4抗体による免疫組織化学染色を示す画像である。(a)正常舌試料中では弱い(n=3)、(b)未治療の原発性OSCC試料では強い(n=7)、(c)OSCC転移試料では強い(n=2)、(d)新規補助原発性OSCC試料では中程度(n=4)。全パネルのスケールは、200μmである。
【0029】
図14A-14B】(a)2D及び3D培養で増殖した細胞(n=3)がHSC3及びSCC4細胞において高リスク特性を示したが、CAL27細胞には示さなかったことを示している。(b)Transwell移行及び浸潤試験(n=3)は、HSC3及びSCC4細胞に対する高い浸潤ポテンシャルを確認したが、CAL27細胞は存在しなかったことを示す画像である。
【0030】
図15A-15E】(a)QRT-PCR mRNAの分析(n=3)及び(b)タンパク質ブロット分析(n=3)は、浸潤的HSC3及びSCC4細胞におけるEDB-FNの違いと発現の増加を明らかにした。(c)EDB FN特異性ZD2-Cy5.5(n=3)スフェロイドのペプチド結合に関する研究は、HSC3及びSCC4スフェロイドにおける強い染色を示したが、CAL27スフェロイドには存在しなかった。共焦点画像を定量化したところ、(d)大きなスフェロイド、(e)HSC3、SCC4スフェロイドでは、そのEDb-FN発現量に応じて強いZD2-Cy5.5染色が認められた。データは、一方向ANOVA(One-Way ANOVA)及びFisherの少なくとも有意差後試験(※、P<0.05;**、P<0.01;**、P<0.001、N.S.S、P>0.05)で解析したことを示すグラフ及び画像である。
【0031】
図16A-16C】(a)MT218対CAL27腫瘍(n=5)の増強は、ガドテルデロール(gadoteridol)よりもわずかに低かった。(b)MT218によるHSC3腫瘍(n=4)の増強は、ガドテリドールよりもわずかに高かった。(c)MT218によるSCC4腫瘍(n=4)の増強は、ガドテリドールよりも有意に高かった。MT218及びガドテリドールの投与量は、それぞれ0.04mmol/kg及び0.10mmol/kgであったことを示す画像である。
【0032】
図17A-17I】造影性腫瘍のCNR解析において、(a)EDB-FN発現によれば、MT218はCAL27、HSC3及びSCC4腫瘍の増強に有意差を有し、(b)3つのモデル間のガドテリドールの増強に差はなかった。 MT218の増強(c)は、CAL27腫瘍では一般的にガドテリドールよりも低く、(d)HSC3腫瘍では一般的にガドテリドールよりも高く、(e)SCC4腫瘍ではガドテリドールよりも有意に高かった。MT218被験者の最大CNR増強(f)は、CAL27腫瘍においてガドテリドール(p=0.0957)よりわずかに低く、(g)HSC3腫瘍ではガドテリドール(p=0.0639)よりわずかに高く、(h)SCC4腫瘍ではガドテリドールよりも有意に高かった。(f-h)一致するマウスごとのデータを実線で結ぶオープン点と、点線で接続された実線点でキューの平均値を表す。(i)MT218によるEDB-FN発現により、3つの腫瘍モデル間の平均最大CNR増強は有意に異なるが、ガドテリドールは用いなかったことを示すグラフである。双方向分散分析(Two-Way ANOVA)とフィッシャー最小有意差事後検定(a-e,i)とペアなしt(f-h)でデータを検定し、解析した(*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001;n.s.,p>0.05)。
【0033】
図18】OSCC異種移植片のH&E染色(左側、n=3)は、分化の種々の形態特徴と段階を示す画像である。また、EDB-FN特異的G4抗体(右、N=3)によるEDB-FNの免疫組織化学は、CAL27、HSC3、及びSCC4腫瘍の上皮領域において、それぞれ、弱い、中程度、強染色を示した。スケールバーは、H&E画像用600μm、免疫組織化学画像用200μmである。
【0034】
図19A-19C】標的造影剤ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)(MT218)の構造(A)、結合親和性測定(B)及び緩和性(C)が提供される。
【0035】
図20A-20C】ヒト膵臓癌(A)、癌前膵上皮内腫症(PanIN)(B)及び正常膵臓組織(C)で10x(スケール:200 μm)の倍率でZD2-Cy5.5(赤)及びDAPI(青)で染色したエクストラドメイン-Bフィブロネクチンで発現した蛍光共焦点画像を提供する。
【0036】
図21A-21C】BxPC3-GFP-Luc(BxPC3)、Capan-1及びPANC-1-GFP-Luc(PANC-1)ヒトPaCa細胞におけるエクストラドメイン-Bフィブロネクチン(EDB-FN)のタンパク質ブロットは、密度定量(A)、PaCa細胞由来の腫瘍異種移植片(B)と、(NAC)G4抗-EDB-FNモノクローナル抗体を有し、有しないPaCa異種移植片におけるEDB-FNの免疫組織化学染色(C、スケール200μm、倍率10倍)。また、腫瘍検体の正常組織及びヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色のウェスタンブロットを参考として示した。
【0037】
図22】MT218(n=7)又はGd(HP-DO3A)(GTDL)(n=5)を注射する前と後の異なる時点でCapan-1側腹異種移植片を有するマウスの代表的なT1強調2DスピンエコーMR像が提供され、対応する差分画像(造影後マイナス造影前)が造影前画像に覆われている。減影画像における腫瘍シグナルの変化が大きい領域は白/赤で表され、腫瘍シグナルの変化が小さい領域は黒/青で表されている。腫瘍は、白い矢印でマークされ、スケールは、5mmである。
【0038】
図23A-23B】BxPC3-GFP-Luc膵臓内腫瘍を移植したマウスの生物発光像(A)を提供した。MT218又はGd(HP-DO3A)(GTDL)の0.1mmol/kg注射の前後の異なる時点で、膵内腫瘍の代表的なT1強調2DスピンエコーMR像と、事前比較画像にオーバーレイされた対応する減影画像(n=3)。スケールは、5mmである(B)。矢印は膵臓内のBxPC3-GFP-Luc-PaCa腫瘍へ指す。
【0039】
図24A-24B】PANC-1-GFP-Luc膵内腫瘍を移植したマウスの生物発光画像(A)と、0.1mmol/kg MT218又はGd(HP-DO3A)(GTDL)を注入する前及び後の10分間の膵臓内腫瘍の代表的なT1強調2DスピンエコーMR像(n=6)と、造影前画像上に覆われた差分画像を提供する。スケールは、5mmである(B)。腫瘍の位置は、矢印でマークされた。
【0040】
図25A-25C】MT218又はGd(HP-DO3A)(キトノール)の注射前後の異なる時点におけるMRI画像から計算されたCapan-1側腹異種移植片(A)、BxPC-GFP-Luc膵臓腫瘍(B)及び肝臓の対照雑音比(CNR)が提供される。MT218及びGd(HP-DO3A)(ガドテリドール)の注射前後で得られたMRI画像から算出したPANC-1-GFP-Luc膵臓内のPaCa腫瘍のCNR(C)**p<0.01;*p<0.05であった。
【0041】
図26A-26C】前立腺癌細胞の性状を示す画像である。LNCaP-CXCR2、C4-2及びC4-2-DR細胞は、A.低リスクLNCaP細胞と比較して、Matrigelコーティングによるトランスウェルインサートの浸潤性の増加、B.EMTマーカーN-カドヘリンの発現の増加、及びC.EDB-FN特異的ZD2-Cy5.5ペプチドプローブで染色した3D培養におけるEDB-FNの発現増強を示した。
【0042】
図27A-27B】MT218のEDB-FNの造影増強MRMIは、0.04mmol Gd/kg用量を使用して前立腺癌の非侵襲的な評価に寄与することを示すグラフ及び画像である。T強調2Dスピンエコー軸位断像は、MT218を無胸腺nu/nuマウスに注入する20分前と後に得られた。LNCaP-CXCR2、C4-2及びC4-2-DR異種移植片は、低リスクLNCaP腫瘍と比較して、A.堅牢なシグナル増強及びB.高いCNRを示した。
【0043】
図28A-28D】MT218のEDB-FNの造影増強MRMIは、0.04mmol Gd/kg用量を使用して、浸潤性薬剤耐性前立腺癌の鑑別診断に役立つことを示すグラフ及び画像である。PC3-DR細胞は、A.Matrigelコーティングによるtranswell insertsの浸潤減少を示し,B.EDB-FN特異的ZD2-Cy5.5ペプチドプローブで染色した3D培養におけるEDB-FNの発現が低下した。T強調2Dスピンエコー軸位断像は、MT218を無胸腺nu/nuマウスに注入する20分前と後に得られた。EDB FNが豊富な浸潤性PC3異種移植片は、浸潤性の小さいPC3-DR腫瘍と比較して、C.堅牢なシグナル増強とD.高いCNRを示した。
【0044】
図29A-29D】MT218の0.04mmol Gd/kg用量を使用したEDB-FNの造影増強MRMIは、前立腺癌の非侵襲的なアクティブモニタリングに役立つことを示すグラフ及び画像である。C4-2腫瘍を持ち胸腺なしnu/nuマウスでMT218を注射する前と後の20分後に、T強調2D軸位断スピンエコー像を得た。2つの独立したマウスは、21日目から60日目までのC4-2腫瘍の進行は、A-B.シグナル増強及びC-D.CNRの着実な増加を伴った。
【0045】
図30A-30D】RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の特性を示すグラフ及び画像である。動的光散乱法動的光散乱により、RGD-PEG-ECO/miR-200c及びRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子のサイズ分布及びζ電位(A)を測定した;遊離RNA対照と比較して、RGD-PEG-ECO/miR-200c及びRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子のアガロースゲル遅延アッセイは、高い封入効率を示した(B);蛍光共焦点顕微鏡画像は、GSD-PEG-ECO/miR-200c-Cy5.5ナノ粒子をMDA-MB-231細胞の4時間トランスフェクションで効果的に摂取し(C)、かつ、未処理細胞と比較してFACS定量ナノ粒子(D)。バーは、ペアなしtで検定し、平均値±semを示し、***p<0.005である。
【0046】
図31A-31P】RTBC細胞におけるmiR-200 cナノ粒子の堅牢性及び持続性と、下流GTD-PEG-ECO/siNSと比較して、トランスフェクションRGD-PEG-ECO/miR-200c後のMDA-MB-231細胞におけるmiR-200cは、14日間(A)及びZEB1を7日間下方修正した(B);RGD-PEG-ECO/siNSと比較して、100nM miR-200cでRGD-PEG-ECO/miR-200cをトランスフェクションしてから48時間後、MDA-MB-231(C)及びHs578T(I)のmiR-200cレベル、及び2つの細胞株におけるZEB1(D、J)、BMI1(E、K)、サバイビン(F、L)、FN1(G、M)及びEDB-FN(H、N)mRNAレベルでのダウングレード;側標的遺伝子のダウングレードとをそれぞれ示すグラフ及び画像である。タンパク質ブロットは、MDA-MB-231(O)及びHs578T(P)細胞媒介下流ZEB1、BMI1、サバイビン、及びEDB-FNタンパク質におけるRGD-PEG-ECO/miR-200cのダウングレードを、RGD-PEG-ECO/siNS及び非特異的なコントロールと比較して示した。バーは、平均値±semを示してる。ペアなしtで検定し、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.005である。
【0047】
図32A-32C】TNBC細胞の遊走、浸潤及びスフェロイド形成を阻害するRGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子を示す画像である。MDA-MB-231及びHs578T細胞をRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子と比較する、GRGD-PEG-ECO/miR-200cで処理すると、傷損傷測定に示されるそれらのマイグレーション(A)、例えば、transwellアッセイに示される浸潤(B)及び3D培養における腫瘍スフェロイドの形成(C)を抑制した。
【0048】
図33A-33G】RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の全身投与は、TNBC腫瘍異種移植の原発性腫瘍の進行を有意に抑制したことを示すグラフ及び画像である。RTD-PEG-ECO/siNS及びRGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子(N/P=8,1.0mg/kg RNA用量、2.5mol% MAL-PEG-RGD、5%スクロース)のバッチを調製し、使用まで-80°Cで保存した。A)ナノ粒子治療スケジュールの模式図に従ってマウスを治療した。MDA-MB-231及びHs578T腫瘍異種移植の腫瘍増殖は、BLI(B-E)及びキャリパー測定(F、G)によって毎週モニタリングされる。バーと線は、平均値±semを示している。ペアなしtで検定し、*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.005である。キャリパー測定値は、第1週と比較した。
【0049】
図34A-34D】RRD-PEG-ECO/miR-200cで処理したTNBC腫瘍におけるEDN-FN発現MRMI。MDA-MB-231(A、B)及びHs578T(C、D)腫瘍は、MT218の静脈内投与前後の異なる時点におけるT強調軸位断スピンエコー像及びCNRである。なお、MR画像は、RGD-PEG-ECO/miR-200c及びRGD-PEG-ECO/siNSを毎週処理する6週目以降に取得された。線は、平均値±semを示している。ペアなしtで検定し、*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.005である。
【0050】
図35A-35G】RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の全身投与は、miR-200cの上昇とEDB-FNの減少につながったことを示すグラフ及び画像である。QRT-PCR及び免疫組織化学的アッセイにより、ECO/miR-200c及びRGD-PEG-ECO/siNSで処理したMDA-MB-231及びHs578T腫瘍におけるZEB1及びEDB-FNのmiR-200c及びmRNAレベル(A、B、C、D、E、F)及びEDB-FNタンパク質レベル(G)を測定し、腫瘍を7週目に切断した。
【0051】
図36A-36D】RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の全身投与は、処理されたマウスにおいて顕著な副作用を誘発していないことを示すグラフ及び画像である。A)RTD-PEG-ECO/miR-200c及びRGD-PEG-ECO/siNSで処理したマウスは,6週間の処理中に体重に有意差を示さなかった。肝臓(B)、膵臓(C)及び腎臓(D)の組織学的評価は、H&E染色による明らかな組織損傷を示さなかった。(スケール=100μm)
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明は、被験者体内の薬剤耐性癌の検出方法を提供する。該方法は、被験者の組織と有効量の分子プローブとを接触させ、組織中に存在する分子プローブの量を検出し、検出された分子プローブの量と対照値とを比較し、組織中に存在する分子プローブの量が対照値よりも高い場合に、被験者体内の薬剤耐性癌を検出することを含む。前記分子プローブは、下記式P-L-Cを含み、ここで、PがEDB-FN標的ペプチドであり、Cが造影剤であり、Lがペプチドと造影剤とを共有結合する非ペプチドリンカーである。また、薬剤耐性癌の治療をモニタリングする方法も提供される。
【0053】
また、本明細書に記載された技術用語及び科学技術用語は、何ら規定していない限り、これらの発明が属する技術分野において一般的に知られているものと同様の意味を有するものである。本明細書の記載において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。なお、特許請求の範囲及び特許請求の範囲の記載において、「一」、「一つ/一種」及び「該」は、特にそうでない旨明示した場合を除き、複数の形態も同様に含む。
【0054】
本発明の広い範囲を規定する数値範囲及びパラメータは、ある場合においてては近似値である。ただし、各具体例に記載された数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値であっても、本来の試験測定で求められた標準偏差に起因して、必ず一定の誤差が含まれている。本明細書に示される各数値範囲には、この狭い数値範囲が明示的にここに書かれているかのように、この広い数値範囲に収まるすべての狭い数値範囲が含まれる。
【0055】
本明細書において、「診断」とは、被験者の疾病の性質を判定し、疾病又は疾病の発症の重症度と可能な結果及び/又は回復の見通し(予後)の可能性を判定することを含むことができる。また、「診断」には、合理的な治療の文脈での診断を含むことができ、ここで、診断指導治療は、治療の初期選択、治療の修正(例えば、線量及び/又は線量の調整)等を含む。
【0056】
また、本明細書中で使用されている「治療」、「処理」等は、癌等の病症又は疾患に罹患しているリスクがあり、或は癌等の病症又は疾患に罹患している被験者に特典を与える何らの行為であり、少なくとも1つの症状の緩和や抑制することによって条件を改善、疾患の進行を遅らせ、疾患の発症を予防又は遅れらせること等を含む。被験者は、発癌化剤への暴露による危険性があるため、遺伝子的に不要で急激な細胞増殖等を特徴とする疾患にかかりやすい。
【0057】
本明細書において、「被験者」及び「患者」とは、交換可能に使用される用語であり、一般に哺乳動物であり、類人猿とヒトを含む霊長類動物、ウマ(例えば、ウマ)類、イヌ(例えば、イヌ)類、ネコ類、各種家畜類(例えば、豚、ブタ、ヤギ、ヒツジ等の有蹄類動物等)、飼いならされたペットや動物園で飼われている動物等を含むがこれらに限定されるものではない。人間の診断に対して特に注目されている。
【0058】
本明細書において、「有機基」とは、脂肪族基、環式基、又は脂肪族基と環式基との組み合わせ(例えば、アルカン基、芳香族炭化水素基)に分類される炭化水素基を意味する。本発明において、本発明の化合物の好適な有機基は、化合物の抗癌活性を阻害しないものである。本明細書において、「脂肪族基」とは、飽和又は不飽和の直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を包含するものとする。
【0059】
本明細書において、「アルキル基」、「アルケニル基」及び「アルキニル部」とは、直鎖状の基及び分岐鎖状の基を包含するものとする。これらの基は、特に断りがない限り、炭素数が1~20であり、アルケニル基の炭素数が2~20である。これらの基は、炭素数が10以下、炭素数が8以下、炭素数が6以下、又は炭素数が4以下であることが好ましい。以下、炭素数4以下のアルキル基を低級アルキル基ともいう。アルキル基は、炭素数(即ち、C-Cアルキル基は炭素数1~4のアルキル基である)で表すこともできる。
【0060】
ここで説明するいずれの式又はスキームにおいて、基が1回以上存在する場合には、明示的に記載されているか否かに関わらず、各基(又は置換基)は、それぞれ独立して選択される。例えば、C-C(O)-NRとしては、R基がそれぞれ独立して選択される。
【0061】
本明細書において、「ポリペプチド」とは、単一の「ポリペプチド」及び複数の「ポリペプチド」を含み、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖を含むものである。したがって、本明細書において、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」の用語又は2つ以上のアミノ酸の1つ以上の鎖を指す何れかの他の用語が含まれるが、これらに限定されるものではなく、「ポリペプチド」の定義には、「ポリペプチド」という用語がこれらの用語に代わるものであってもよいし、これらの用語と交換可能に用いられてもよい。また、該用語は、翻訳後に修飾されたポリペプチドを更に含み、例えば、糖鎖修飾、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護・ブロック基による誘導体化、タンパク質分解開裂、非天然のアミノ酸による修飾等が挙げられる。
【0062】
「アミノ酸」とは、一般式がNH-CRH-COOHの化合物であり、ここで、側鎖RがH又は有機基である。Rが有機である場合に、Rは変化し、極性又は非極性(即ち疎水性)である。アプリケーション全体において、A=Ala=アラニン、T=Thr=トレオニン、V=Val=バリン、C=Cys=システイン、L=Leu=ロイシン、Y=Tyr=チロシン、I=Ile=イソロイシン、N=Asn=アスパラギン、P=Pro=プロリン、Q=Gln=グルタミン、F=Phe=フェニルアラニン、D=Asp=アスパラギン酸、W=Trp=トリプトファン、E=Glu=グルタミン酸、M=Met=メチオニン、K=Lys=リジン、G=Gly=グリシン、R=Arg=アルギニン、S=Ser=セリン、H=His=ヒスチジンの略語が使用される。なお、本明細書において「アミノ酸」とは、特に断りがない限り、一般式を保持するアミノ酸誘導体を更に含む。
【0063】
薬剤耐性癌の検出方法
一態様では、本発明は、被験者体内の薬剤耐性癌の検出方法を提供する。該方法は、被験者の組織と有効量の分子プローブとを接触させ、組織中に存在する分子プローブの量を検出し、検出された分子プローブの量と対照値とを比較し、組織中に存在する分子プローブの量が対照値よりも高い場合に、被験者体内の薬剤耐性癌を検出するステップを含む。
【0064】
前記分子プローブは、被験者の臓器、組織、又は体領域におけるEDB-FNを発現する薬剤耐性癌細胞の存在、位置及び/又は分布を検出及び/又は判定する方法に用いることができる。動物の組織、例えば、前立腺組織における分子プローブの存在、位置及び/又は分布は、可視化(例えば、本明細書において説明する生体内撮像モダリティ)することができる。本明細書において「分布」とは、ある領域又は体積に分散られる空間特性を指すことである。この場合、「癌細胞の分布」とは、癌細胞が被験者の組織(例えば前立腺組織)中の領域又は体積に分散られる空間特性である。そして、分子プローブの分布は、該組織中の薬剤耐性癌細胞の有無と相関していてもよい。
【0065】
一態様では、分子プローブは、被験者に投与されることによって、被験者体内の薬剤耐性癌細胞の分布を評価し、その分布を特定の位置に関連付けることができる。外科医は、手術切除で、定位テクニックと術中MRI(iMRI)が日常的に使用されている。これにより、腫瘍の異なる領域(例えば、腫瘍の縁或いは腫瘍の中心)から組織を特異的に識別し、サンプリングすることができる。また、腫瘍の縁の外側である腫瘍の周辺の組織領域をサンプリングし、これらの領域は、一般的に正常に見えるが、組織学的に検査する際に分散した腫瘍細胞により浸潤させる。
【0066】
「癌」又は「悪性腫瘍」は、同義語として使用され、細胞が非制御及び異常に増殖し、影響を受けた細胞が局所的に拡散するか、血流とリンパ系を経由して身体の他の部分(即ち、転移)に拡散する能力、及び複数の特徴的な構造及び/又は分子特徴のいずれかを特徴とする複数の疾患を指す。「癌細胞」とは、多段階の腫瘍進行の早期、中期、又は後期を経験する細胞である。なお、腫瘍進行の早期、中期と後期の特徴については、顕微鏡法を用いて説明した。腫瘍進行の3つの段階において、各段階の癌細胞は、一般に、経地、反転、欠失、等腕染色体、単性体及び追加染色体を含む異常な核型を有している。癌細胞は、「増殖細胞」、即ち悪性進行の早期の細胞と、「発育不全細胞」、即ち腫瘍進行の中期の細胞と、「腫瘍細胞」、即ち腫瘍進行の後期の細胞とを含む。癌の例としては、肉腫、乳癌、肺癌、脳癌、骨癌、肝臓癌、腎臓癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌等が挙げられる。いくつかの実施形態では、癌は、乳癌、口腔癌、膵癌又は前立腺癌である。腫瘍は、被験者の体内の癌の物理的な症状である。
【0067】
本発明は、薬剤耐性癌の検出及びモニタリングの方法を提供する。薬剤耐性癌は、抗癌剤による治療耐性を有する癌の一種である。薬剤耐性の各種ファセットは、当業者に知られている。Vasanなどを参照し,Nature volume 575, 299-309 (2019)。薬剤耐性癌は、固有薬剤耐性及び後天性薬剤耐性を含むことができる。薬剤耐性に寄与する因子としては、腫瘍の負担、腫瘍の不均一性、腫瘍による物理的な障壁の発生や使用、免疫抑制、治療不可能なゲノムドライバーが挙げられる。
【0068】
この方法は、被験者の組織を接触させる工程を含む。本明細書において、接触とは、2つの項目を物理的に隣接させて接触させたり、妥当な短時間で接触が発生する環境で接触させたりすることである。例えば、組織と分子プローブとを接触させるとは、分子プローブを被験者から採取した生検試料等の組織に直接適用することを含む。接触には、インビボ、エクスビボ、インビトロでの接触を含むことができる。しかし、接触には、循環で媒介される接触によって分子プローブと組織との間の接触を引き起こす全身投与を更に含む。そこで、本実施形態では、生体内で組織を接触させる。
【0069】
分子プローブは、癌に罹患している又は疑いがある被験者に全身投与されることが好ましい。癌に関連する一般的な標識や症状としては、疲労、垂直変化、又は皮膚下に感じ可能なしこりや肥厚領域が挙げられる。癌が発生した組織には、最も癌の兆候や症状が特異的である。例えば、頭痛や焼き付きは、脳癌の兆候であってもよいし、排尿困難は、膀胱癌の兆候であってもよい。しかしながら、癌の各種の兆候や症状は、当業者にはよく知られており、国立癌研究所のウェブサイトに記載されている。癌の症状は、被験者が癌に罹患している、又は、癌に疑いがあることを示すことができるが、遺伝的易感性や放射線照射などの他のリスク要因によっても、癌の疑いがあることを示すことができる。
【0070】
組織領域とは、治療及び/又は解析中の被験者体内の組織の領域である。一般に、組織領域は、癌が特定された組織内にあるか、又は癌が転移によって広がった疑いがある組織内にある。組織領域は、心臓、肺、血管等の被験者の臓器とすることができる。他の実施形態では、組織領域は、腫瘍、又は転移経路によって腫瘍に連結された組織領域、又は原発性腫瘍組織と同様の特徴を有する組織などの疾患組織又は疑いがある組織であり得る。転移経路としては、例えば、経体腔内経路(腹腔内表面の浸透、胸膜、心膜、くも膜下腔の表面を浸透する)、リンパルート(腫瘍細胞がリンパ節に転移し、リンパ節から身体の他の部分へ移る)、及び、造血経路(肉腫及び癌に使用する)等が挙げられる。組織領域の大きさは、広く変化することができ、例えば、約1cm~約500cmの寸法範囲で変化させることができる。
【0071】
分子プローブは、分子プローブに含まれる撮像基に応じて、種々の異なる撮像技術を用いて検出することができる。撮影方法としては、例えば、ガンマイメージング、ポジトロンエミッショントモグラフィ(Positron Emission Tomography PET)イメージング、コンピュータ断層(Computer Tomography CT)イメージング、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging MRI)、近赤外線イメージング、蛍光イメージングなどが挙げられる。
【0072】
分子プローブは、磁気共鳴イメージング剤として好適な撮像基を含むことが好ましい。MRIを用いた疾病検出は、周囲の健常組織に比べてシグナル強度が近いため、疾患の検出が困難な場合が多い。磁気共鳴イメージングの場合には、造影剤とも呼ぶことができる。ランタノイド元素は、造影剤として有用であることが知られている。ランタノイド元素は、原子番号57~71の15種の金属元素を含み、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを更に含む。好ましいランタノイド元素としては、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウムが挙げられる。これらの希土類金属をより容易に扱うためには、ランタノイド元素がキレート化されていることが好ましい。また、撮像基として選択されるランタニド元素は、ガドリニウムであることが好ましく、ガドリニウム(III)であることがより好ましい。
【0073】
分子プローブ
本発明は、分子プローブの投与及び検出を含む。本明細書において、分子プローブは、一般に下記の式を含み、
P-L-C
Pは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドであり;
Cは、造影剤であり;及び
Lは、前記ペプチドと前記造影剤とを共有結合する非ペプチドリンカーであり、前記リンカーは、前記ペプチドのアミンとカルボキサミドを形成するカルボン酸と、又は前記ペプチドのシステイン残基とチオエステル結合を形成するマレイミドと、又は前記ペプチドのシステイン残基とチオエステルを形成するマレイミドを含む。
【0074】
ここに記載される分子プローブには、特異的にドメイン外のフィブロネクチン(EDB-FN)に結合するペプチド配列を有する標的ペプチドが含まれる。癌、特に薬剤耐性癌は、癌細胞の生存、増殖、転移が容易な特異的な腫瘍マイクロ環境を有する。EDB-FNの高発現は、薬剤耐性癌の存在と相関している。
【0075】
標的ペプチドを含む分子プローブは、静脈内投与や非経口投与等の被験者に対して全身投与することができ、細胞外マトリックスタンパク質EDB-FNを容易に標的とすることにより、被験者体内の腫瘍細胞の位置、分布、及び/又は浸潤性、及び腫瘍細胞の限界を決定する。分子プローブ及びその製造方法の説明については、米国特許第10925980号明細書を参照し、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、分子プローブは、一般に下記の式を含み、
P-L-C
ここで、Pは、標的ペプチドであり、Cは、造影剤であり、Lは、ペプチドと造影剤とを共有結合する非ペプチドリンカーである。前記リンカーは、前記ペプチドのアミンとカルボキサミドを形成するカルボン酸と、又は前記ペプチドのシステイン残基とチオエステル結合を形成するマレイミドとを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、標的ペプチドは、EDB-FNに特異的に結合することができる。EDB-FNを特異的に結合させる標的ペプチドとしては、例えば、TVRTSAD(配列番号1)、NWGDRL(配列番号2)、NWGKPIK(配列番号3)、SGVKSAF(配列番号4)、GVKSYNE(配列番号5)、IGKTNATL(配列番号6)、IGNSNTL(配列番号7)、IGNTIPV(配列番号8)、及び、LYANSPF(配列番号9)のアミノ酸配列を有する線状ペプチド、CTVRTSADC(配列番号10)、CNWGDRILC(配列番号11)、CNWGKPIKC(配列番号12)、CSGVKSAC(配列番号13)、CGVKSYNEC(配列番号14)、CIGKTNTLC(配列番号15)、CIGNSNTLC(配列番号16)、CIGNTIPVC(配列番号17)、又は、CLYANSPFC(配列番号18)のアミノ酸配列を有する環状ペプチド、CTVRTSAD(配列番号31)、CNWGDRIL(配列番号32)、CNWGKPIK(配列番号33)、CSGVKSAF(配列番号34)、CGVKSYNE(配列番号35)、CIGKTNATL(配列番号36)、CIGNSNTL(配列番号37)、CIGNTIPV(配列番号38)、及び、CLYANSPF(配列番号39)のアミノ酸配列を有する線状ペプチドを挙げることができる。他の実施形態では、前記標的ペプチドは、EDATA-FNに特異的に結合することができる。EDA-FNを特異的に結合するペプチドとしては、WNYPFRL(配列番号19)、SNTSYVN(配列番号20)、SFSYTSG(配列番号21)、WSPAPMS(配列番号22)、TREHPAQ(配列番号23)、ARIIDNA(配列番号24)のアミノ酸配列を有する鎖状ペプチド、CWNYPFRLC(配列番号25)、CSNTSYVNC(配列番号26)、CSFSYTSGC(配列番号27)、CWSPMAPMSC(配列番号28)、CTREHPAQC(配列番号29)、CARIDNAC(配列番号30)のアミノ酸配列を有する環状ペプチド、CTVRTSAD(配列番号40)、CNWGDRIL(配列番号41)、CNWGKPIK(配列番号42)、CSGVKSAF(配列番号43)、CGVKSYNE(配列番号44)、CIGKTNATL(配列番号45)、CIGSNTL(配列番号46)、CIGNTIPV(配列番号47)、及び、CLYANSPF(配列番号48)のシステインリンカーを有する線状ペプチドを挙げることができる。
【0078】
標的ペプチドは、様々な変更、置換、挿入、欠失を行うことができ、これらの変化は、その使用に特定の利点を提供する。ここで、EDB-FNと結合及び/又は錯化する標的ペプチドは、同一ではなく、1つ以上の変化が生じ、かつ、EDB-FNと特異的に結合及び/又は錯化として機能する能力を保持し、上記のペプチドの配列と実質的に相同とすることができる。
【0079】
前記標的ペプチドは、アミド、タンパク質とのコンジュゲート、環化ポリペプチド、重合ポリペプチド、アナログ、フラグメント、化学修飾ポリペプチド等の種々の形態のポリペプチド誘導体のいずれであってもよい。
【0080】
「アナログ」とは、本明細書に特に示される配列と実質的に同一のアミノ酸残基配列を有し、そのうちの1つ以上の残基が機能的に類似する残基で保存的に置換された任意のペプチドと、本明細書で説明するようなEDB-FNと特異的に結合及び/又は錯化する任意のペプチドとを含む。保存的置換の例としては、一方の非極性(疎水性)残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニン)が他方に置換され、一方の極性(親水性)残基が他方(例えば、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンアミドとの間、グリシンとセリンとの間)に置換され、一方のアルカリ残基(例えば、リジン、アルギニン又はヒスチジン)が他方に置換され、一方の酸性残基(例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸)が他方に置換されることを含む。
【0081】
また、「保存的置換」は、このようなペプチドが必要な結合活性を示すものであれば、誘導体化されていない残基の代わりに、化学誘導体化された残基を用いることを更に含む。
【0082】
「化学誘導体」とは、機能的側基の反応により化学的に誘導体化された1つ以上の残基を有する被験ペプチドをいう。このような誘導体化された分子としては、例えば、遊離アミノ基を誘導体化してアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基、ホルミル基等を形成した分子が挙げられる。また、遊離カルボキシルを誘導体化して塩、メチル、エチルエステル等のエステル類又はヒドラジド類を形成してもよい。また、遊離水酸基を誘導体化してO-アシル基又はO-アルキル誘導体を形成してもよい。ヒスチジンのイミダゾール窒素を誘導体化してN-ベンジルヒスチジンを形成してもよい。また、化学誘導体として20種の標準アミノ酸のうちの1種以上の天然由来のアミノ酸誘導体を含有するポリペプチドを更に含む。例えば、プロリンに4-ヒドロキシプロリンが置換されていてもよく、リジンに5-ヒドロキシリジンが置換されていてもよく、ヒスチジンに3-メチルヒスチジンが置換されていてもよく、セリンにホモセリンが置換されていてもよく、リジンにオルニチンが置換されていてもよい。本明細書に記載のペプチドには、必要な結合特異性又は活性が維持されていれば、本明細書に記載されているペプチドの配列に対して、1つ以上の付加及び/又は欠失又は残基を有するペプチドを更に含む。
【0083】
「フラグメント」とは、アミノ酸残基配列がここに示されるポリペプチドよりも短いアミノ酸残基配列を有する任意の被験ペプチドをいう。
【0084】
また、「リンカー」を提供するために、ペプチドのいずれかの末端に追加残基を添加することもでき、このリンカーにより、他のポリペプチド、タンパク質、検出可能部分、標識、固体マトリックス、又は担体に簡便に結合及び/又は固定することができる。
【0085】
アミノ酸残基のリンカーは、通常、少なくとも1個残基であり、40個以上の残基であることが好ましく、一般的には1~10個残基であることがより好ましい。連結に用いられる典型的なアミノ酸残基としては、グリシン、チロシン、システイン、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。また、被験者標的ペプチド剤は、末端-NHアシル化(例えば、アセチル化、チオグリコール酸アミド化)又は末端-カルボキシアミド化(例えばアンモニア、メチルアミン等の末端修飾)により修飾された配列によって異なる。末端修飾は、公知のようにプロテイナーゼ消化の感受性を低下させるために有用で、溶液中のポリペプチド、特にプロテアーゼが存在し得る体液中のポリペプチドの半減期を長くする働きをする。なお、ポリペプチドの環化も有用な末端修飾であり、ここで説明するような環状ペプチドで観測される生物活性を考慮して環化して形成した安定構造であることからも特に好ましい。
【0086】
いくつかの実施形態では、前記非ペプチドリンカーは、非ペプチド脂肪族又はヘテロ脂肪族リンカーである。前記非ペプチドリンカーは、前記ペプチドと造影剤とを共有結合するアルキレングリコールカルボキサミドを含むことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、非ペプチドリンカーは、長さ1~10程度の第1部分と、スペーサーとして作用する第2部分とを含むことができる。スペーサーとして作用するリンカーの部位としては、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、共重合(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリオキシエチレン(POE)、ポリウレタン、ポリフォスファゼン、多糖、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレート、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸、ヘパリンを含む非ペプチド系ポリマーを挙げることができる。非ペプチドリンカー用のスペーサーのより詳細な説明については、本明細書に組み込まれ、例えばWO/2006/107124号公報を参照される。このようなリンカーは、典型的には分子量が1kDa~50kDa程度であり、特定のコネクタによって異なる。例えば、典型的なPEGの分子量は、1kDa~5kDa程度であり、ポリエチレングリコールの分子量は、5kDa~50kDa程度であり、より好ましくは10kDa~40kDa程度である。
【0088】
造影剤は、リンカーを介して標的ペプチドに直接結合している。造影剤の役割は、標的ペプチドを含む分子プローブをEDB-FNに結合させて形成された錯化体を可視化することにより、検出又は診断方法の検出工程を容易にすることである。造影剤は、解析対象の組織に結合した分子プローブの量に関連し(好ましくは比例する)且つ測定可能な強度を有するシグナルを生成するように選択することができる。
【0089】
ある実施形態では、前記造影剤は、キレート剤及び金属イオンを含む。キレート剤は、一般に前記リンカーと共有結合を形成する基を1つ以上有している。本明細書において、従来公知の様々なキレート剤を用いることができる。一態様では、キレート剤は、イメージング剤と配位可能なローンペア電子を有する少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、リン等)を含有する非環状又は環状の化合物を含む。非環状キレート剤としては、例えば、エチレンジアミンが挙げられる。環状キレート剤としては、ジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA)又はその誘導体、1,4,7,10-テトラアザドデカンテトラアセテート(DOTA)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザドデカン-1,4,7-トリアセテート(DO3A)及びその誘導体(例えば、HP-DO3A)、エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン四酢酸(TRITA)及びその誘導体、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザドデカンテトラメチルアセテート(DOTMA)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザドデカン-1,4,7-トリメチルアセテート(DO3MA)及びその誘導体、N,N’,N’’,N’’’-テトラホスホナトメチル-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(DOTP)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアゼシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンメチルホスホン酸)(DOTMP)及びその誘導体、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンフェニルホスホン酸)(DOTPP)及びその誘導体、又は、N,N’-エチレンジ-L-システイン及びその誘導体等が挙げられる。本明細書において、「誘導体」は、キレート剤の塩及びそのエステルとして定義される。
【0090】
金属イオンの選択は、検出技術(例えば、MRI、PET等)によって異なる。磁気共鳴イメージングに有用な金属イオンとしては、Gd+3、Eu+3、Tm+3、Dy+3、Yb+3、Mn+2、Fe+355Co、64Cu、67Cu、47Sc、66Ga、68Ga、90Y、97Ru、99mTC、111h、109Pd、153Sm、177Lu、186Re、188Reを挙げることができる。いくつかの実施形態では、前記分子プローブの造影剤は、金属キレート剤又は金属フラーレンの少なくとも1種を含む。いくつかの実施形態では、前記造影剤は、例えば、Gd3N@C80等の金属フラーレンを用いることができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、前記分子プローブは、下記式を有することができ、
【化3】
、又は
【化4】
は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドであり;
は、任意のスペーサーであり;
は、前記ペプチドP又は前記スペーサーのアミノ基であり;及び
Mは、Gd+3、Eu+3、Tm+3、Dy+3、Yb+3、Mn+2、Fe+355Co、64Cu、67Cu、47Sc、66Ga、68Ga、90Y、97Ru、99mTC、111h、109Pd、153Sm、177Lu、186Re、188Reからなる群から選択される金属又はその塩である。
【0092】
いくつかの実施形態では、Lは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、共重合(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリオキシエチレン(POE)、ポリウレタン、ポリフォスファゼン、多糖、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリシアノアクリレートの少なくとも1種を挙げることができる。
【0093】
他の実施形態では、前記分子プローブは、下記式を有することができ、
【化5】
、又は
【化6】
は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドであり;
は、前記ペプチドPのアミノ基であり;及び
Mは、Gd+3、Eu+3、Tm+3、Dy+3、Yb+3、Mn+2、Fe+355Co、64Cu、67Cu、47Sc、66Ga、68Ga、90Y、97Ru、99mTC、111h、109Pd、153Sm、177Lu、186Re、188Reからなる群から選択される金属又はその塩である。
【0094】
いくつかの実施形態では、癌細胞の除去を認識し、促進するために、顕微鏡法におけるイメージング(IOI)技術は、全身投与又は局所投与の本明細書で説明する分子プローブと組み合わせることができる。被験者に投与された分子プローブは、患者の臓器又は身体領域内の薬剤耐性癌細胞(即ち、EDB-FN発現に関連する癌細胞)の存在、位置、及び/又は分布を標的と検出及び/又は判定することができる。一例では、分子プローブをIOIと組み合わせることにより、腫瘍の周辺に浸潤及び/又は浸潤し始める悪性細胞を認識させることができる。この方法は、手術中にリアルタイムで行うことができる。該方法は、PET、蛍光、MRI等の検出可能な部分などを含む前記分子プローブに局所的又は全身投与されることを含む。そして、撮像モダリティを用いて画像データの検出及び収集を行うことができる。得られた画像データは、外科及び/又は放射線治療の少なくとも一部を判定するために用いられてもよい。あるいは、この画像データを用いて、自動手術装置(例えば、レーザー、メス、マイクロマシン等)を制御してもよいし、手術の手動誘導を補助してもよい。また、画像データは、治療薬の受け渡しを計画及び/又は制御するために用いられてもよい(例えば、マイクロ電子機械又はマイクロマシン)。
【0095】
薬剤耐性癌の治療のモニタリング方法
薬剤耐性癌の治療中の被験者の組織と、有効量の分子プローブとを接触させ、前記組織中に存在する前記分子プローブの第1の量を検出し、前記被験者の組織と有効量の式P-L-Cを含む分子プローブとを接触させ、前記組織中に存在する前記分子プローブの第2の量を検出し、前記分子プローブの前記第1の量と前記第2の量とを比較することで、前記被験者体内の薬剤耐性癌の治療をモニタリングすることを含む薬剤耐性癌の治療のモニタリング方法。
【0096】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法及び分子プローブは、薬剤耐性癌の治療効果を測定するために用いることができる。該実施形態では、治療の前、中、又は後に、被験者に分子プローブを投与することができ、且つ癌細胞の分布をイメージングして治療の有効性を判定することができる。一例では、前記治療は、転移癌の外科手術の切除を含み、分子プローブは、転移前と転移後の転移癌の分布を定義することで、外科手術の有効性を判定するために使用することができる。また、前記方法及び分子プローブは、外科手術中の癌細胞の質量や体積をより容易に定義及び/又は画像化するために、外科手術の腫瘍切除等の術中の外科手術の過程に用いることができる。
【0097】
治療は、癌治療剤又は他のタイプの癌治療の投与を更に含む。本明細書において、「癌治療」は、癌細胞を死滅させ、癌細胞のアポトーシスを誘発し、癌細胞の増殖速度を低下させ、転移の発生率又は数を減少させ、腫瘍の大きさを減少させ、腫瘍の増殖を抑制し、腫瘍又は癌細胞への血液の供給を減少させ、癌細胞又は腫瘍に対する免疫応答を促進し、癌の進行を予防又は阻害し、癌に罹患した動物の寿命を増加させることにより、動物の癌に悪影響を与えることが可能な任意の薬剤を含むことができる。癌治療としては、例えば、化学療法、放射線治療、ホルモン療法及び/又は生物学治療法/免疫療法等が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、被験者体内の癌の体積、成長、マイグレーション、及び/又は拡散の減少は、所定の治療の有効性を示すことができる。これにより、癌の治療の直接的な臨床的な端点測定を提供することができる。したがって、その一方で、癌治療剤の有効性をモニタリングする方法を提供する。より具体的には、本出願の実施形態は、癌治療の有効性をモニタリングする方法を提供する。
【0098】
治療剤は、抗腫瘍性、化学療法、抗ウイルス、抗ミトティック、腫瘍抑制、及び/又は免疫療法効果を発揮する抗増殖剤、例えば、細胞抑制又は細胞殺傷作用によって腫瘍細胞の発達、成熟、又は拡散を直接防止し、生物学的反応修飾などのメカニズムを介して間接的に阻止されるものではない。商業使用、臨床評価及び前臨床開発のための抗増殖剤が多数存在している。また、説明の便宜上、抗増殖剤は、下記のカテゴリ、サブタイプ及びタイプに分類され、ACE阻害剤、アルキル化剤、血管新生抑制剤、アンジオテンシン、アンスラサイクリン/DNAインターカレーター、抗癌性抗生物質又は抗生物質系剤、代謝拮抗剤、代謝拮抗化合物、アスパラギナーゼ、ビスホスフェート、cGMPフォスフォジエステラーゼ阻害薬炭酸カルシウム、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DHA誘導体、DNAトポイソメラーゼ、エンドセリン阻害剤、エピポロチン、ゲンステイン、ホルモン系抗癌剤、親水性胆汁酸(URSO)、免疫調節剤又は免疫製剤、インテグリンアンタゴニスト、インターフェロンアンタゴニスト又は剤、MMP阻害剤、その他の抗悪性腫瘍剤、モノクローナル抗体、ニトロソリアン、NSAID、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、pBATTS、放射線/化学増感剤や放射線/化学保護剤、レチノイド、内皮細胞の増殖及び遊走の選択阻害剤、セレン、ストロメシン阻害剤、タタキサン、ワクチン、及びニチニチソウアルカロイド。
【0099】
薬剤耐性癌の治療には、特殊な方法を用いることができる。薬剤耐性癌の治療法としては、非重畳作用の機構を有する複数の化学療法剤を併用する併用療法が挙げられる。BOSlなど、N.ENG.J.MED.、405-410(1986)を参照する。薬剤耐性癌は、投与量の強度を変化させたり、化学療法の高ドーズ量で処理したりすることもできる。Sternbergなど、J.CLin.Oncol.、19,2638-2646(2001)を参照する。その他の方法としては、具体的には、標的チロシンキナーゼ、核受容体又はエストロゲン受容体などの薬剤耐性癌の特性を有効とする治療法が挙げられる。Hanahan D.,Weinberg R.A.,Cell,144,646-674 (2011)を参照する。免疫学的方法は、特に免疫検査を無効にするためのモノクローナル抗体の使用も、薬剤耐性癌の治療に用いることができる。Ribas A.,Wolchok J.D.,Science,359,1350-1355(2018)を参照する。
【0100】
本明細書に記載の方法及び分子プローブは、薬剤耐性癌を有する被験者の治療をモニタリングするために用いることができる。本実施形態では、治療レジメンの投与前、投与中、又は投与後に、被験者の組織を分子プローブの有効量に初めて接触させ、癌細胞の量及び/又は分布をイメージングして治療の有効性を判定することができる。次に、後の時刻において、被験者の組織と分子プローブの有効量とを2回目に接触させ、組織中に存在する分子プローブの第2量及び/又は分布を検出する。そして、分子プローブの第1量及び第2量(及び/又はその分布)を比較し、被験者体内の薬剤耐性癌の治療をモニタリングする。
【0101】
投与及び処方
本明細書に記載の分子プローブは、例えば、全身、局所及び/又は非経口投与法等により、被験者に投与することができる。これらの方法としては、例えば、注入法、輸液法、沈着法、インプラント又は局所投与法等が挙げられ、分子プローブによる組織へのアクセスが求められる他の投与方法が挙げられる。一例では、分子プローブの投与は、被験者体内の分子プローブを静脈注射することにより行うことができる。プローブの投与は、単数であってもよいし、複数であってもよい。本明細書において、「投与」は、被験者の癌細胞の量及び期間を効果的に標識することで、分子プローブを提供又は配送することである。
【0102】
本明細書に記載の標的ペプチドを含む分子プローブは、分子プローブ又はその薬学的に許容される水溶性塩を有効量含む医薬組成物で被験者に投与することができる。
【0103】
「有効量」とは、投与される分子プローブの量が、癌細胞又は癌細胞マイクロ環境における癌細胞等の細胞で発現されるEDB-FN及び/又はEDA-FNとのプローブの結合又は錯化を検出可能で十分な量である。「イメージング有効量」は、癌細胞又は癌細胞マイクロ環境における癌細胞等のEDB-FN及び/又はEDA-FNとの分子プローブの結合又は錯化をイメージングすることが可能な量である。
【0104】
投与される分子プローブの処方は、選択された投与経路(例えば、溶液、エマルション、カプセル等)に応じて変化する。適切な薬学的に許容される担体には、化合物の生物活性を過度に阻害しない不活性成分が含まれていてもよい。薬学的に許容される担体は、被験者に投与した際に、非毒性、非炎症性、非免疫原性、且つその他の不要な反応を含まなく、生体適合性を有する担体であればよい。Remington’s Pharmaceutical Sciences(同上)で説明されているように、標準的な医薬製剤技術を用いることができる。非経口投与のための好適な医薬担体としては、例えば、无菌水、生理食塩水、殺菌性生理食塩水(約0.9%mg/mLベンジルアルコールを含む食塩水)、リン酸緩衝生理食塩水、Hank溶液、リン酸乳酸塩等が挙げられる。
【0105】
有効成分が溶解又は分散された薬理学的組成物の調製は、当業者にとって周知である。通常、このような組成物は、典型的には、液体の溶液又は懸濁液の形態で注射剤として調製されるが、溶液、懸濁液に適した固体形態のものを調製することもできる。処方は、選択された投与経路(例えば、溶液、エマルション、カプセル等)に応じて変化する。
【0106】
いずれのポリペプチド又は化合物は、薬学的に許容される塩の形態で使用されてもよい。ポリペプチドと塩を形成することができる酸は、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸(HCl)、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アントラニル酸、ケイ皮酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸等の無機酸が挙げられる。
【0107】
ポリペプチドと塩を形成することができる塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等の無機塩基、モノ、ジ、トリ-アルキル、アリールアミン等の有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン等)、及び必要に応じてアミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0108】
以下の実施例は、例示を目的とするものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【実施例
【0109】
実施例1:エクストラドメイン-BフィブロネクチンのMR分子イメージングによる薬剤耐性大腸癌の非侵襲的な評価及び治療モニタリング
大腸癌(CRC)は、米国の男性と女性の癌死亡の2番目に、一般的な原因である。2013年目のCRCケースの5年生存率は、段階Iの8.1%から段階IVの12.6%に減少した。複数回の研究や臨床試験は、予防スクリーニングがCRCモル度が大幅に低減されていることが判明した。化学療法や手術は初期段階で高度に治療可能であるが、転移性CRCの80~90%は診断時に手術できず、新しい補助化学療法が必要である。また、多薬剤耐性の発達は、再発や遠方転移にもつながり、これらは治癒不可能である。CRC処理モニタリングの現在の基準は、RECIST(ソリッド腫瘍の応答評価基準)ガイドライン(Eisenhauer, E.A.等、 Eur J Cancer, 2009. 45(2): p. 228-47)に従い、腫瘍の解剖学的サイズへの依存、主観的な意見につながる病変の不規則性、及び治療応答の負の腫瘍の検出の遅れのために制限されている。化学治療法又は標的治療法の結果を向上させるとともに、適応的な介入の意思決定を可能とするために、非侵襲的な且つ反復の撮影の正確なモニタリング、浸潤性、薬剤耐性の腫瘍集団のモニタリングが不可欠である。
【0110】
臨床的なCRC診断では、癌胎児性抗原(CEA)やグアイAC系FeAl(GOBT)のように、感度や特異性が低い血液型マーカーが利用されている。循環腫瘍DNA(ctDNA)の変異負荷を測定する液体バイオプラスチックは、患者間、腫瘍間及び腫瘍内の不均一性を反映し、診断・予後診断において運動量が速いが、腫瘍性病変に関する空間的な情報を提供することができず、診断画像化が不可欠である。一般的なCRC治療モニタリングのための撮影モダリティは、PET-CT(Positron Emission Tomography-コンピュータ断層撮影)であり、通常、機能や代謝データを提供する[18F]-フルオロ-2-デオキシグルコース(18F-FDG)放射性を有しているが、細胞密度、高血糖、分解能のような放射線露光及び交絡因子によって制限される。造影磁気共鳴イメージング(MRI)では、組織のTの基を短くするGd(III)系造影剤(GBCA)が用いられ、CRCの診断やモニタリングにはT強調撮影も日常的に用いられている。Jhaveri, K.S.和H. Hosseini-Nik, AJR Am J Roentgenol, 2015. 205(1): p. W42-55。この現在の臨床的評価は、臨床的な非標的のGBCASが非特異的であり、かつ、攻撃的な薬剤耐性腫瘍と感受性腫瘍から区別することができないという重大な課題となっており、GBCAの繰り返し投与は、Gd系の毒性や脳沈着の潜在的安全性に関連している。CRC腫瘍の広範な分子及び表現型可塑性を有することを考えると、個々の腫瘍や腫瘍の生体関連マイクロ環境特性の変化に基づいて、腫瘍治療中のCRCの軌跡を正確に特定することができる分子イメージング剤及び戦略を開発することが必須である。
【0111】
これまで分子癌イメージングの分野は、限られた数で研究され、信頼性の高いバイオマーカーの発見に起因する可能性がある。大腸癌分泌タンパク質2(CCSP-2)は、原発性腫瘍、患者由来の異種移植片、及び肝転移の近赤外蛍光イメージングの分子マーカーとして使用されているが、、このマーカーは大腸明細胞腫にのみ特異的である。広く報告されている磁性ナノ粒子(MNP)研究では、ヒト腫瘍抗原低グリコシル化ムチン1(uMUC1)を標的とするMRIによる酸化鉄ナノ粒子の検出と、アポトーシス促進システイン(caspases)特異的プローブステントのナノ凝集とが、大腸異種移植片の化学療法反応をモニターするために用いられている。Zhou,Z.ら,Adv Mater,2019.31(8):p.e1804567。また、血管体積分率(VVF)、K-RAS変異、及びEGFRは、CRC MRIの代替マーカーとしても使用されているが、成功率が限定的である。しかし、薬剤耐性CRCの非侵襲的な評価及び治療モニタリングのためのMR分子イメージング(MRMI)は、従来は全く行われていない。この課題を解決するために、MNPの免疫及び翻訳のハードルを回避し、より広範囲の薬剤耐性癌を標的とし、腫瘍細胞外マトリックス(ECM)中の多量に発現する癌タンパク質エクストラドメイン-Bフィブロネクチン(EDB-FN)を標的とするMRMI戦略が開発されている。Han, Z.及びZ.R. Lu, J Mater Chem B, 2017. 5(4): p. 639-654;Lu, Z.R., Curr Opin Biomed Eng, 2017. 3: p. 67-73。
【0112】
EDB-FNは、癌胚型フィブロネクチンサブタイプを多数の癌で過剰発現させている。Han,Z.ら, Bioconjug Chem,2017.28(4):p.1031-1040;Han,Z.ら,Nat Commun,2017.8(1):p.69。また、EDB-FNは、CRCにおいても上昇し、血管新生、成長、組織の再造形に関連している。Santimaria,M.ら,Clin Cancer Res,2003.9(2):p.571-9。特許文献の研究では、同じ癌タイプであっても、不活性フィブロネクチンに比べて、EDB-FNがより浸潤的な細胞及び腫瘍サブタイプでも優先的に上昇することが示されている。Han,Z.ら,Magn Reson Med,2018.79(6):p.3135-3143。悪性腫瘍におけるEDB-FNの特異的空間的と時間的発現及び健康な組織におけるその欠損は、分子イメージング及び標的治療のための引力的な標的となる。Han,Z.ら,Bioconjug Chem,2019.30(5):p.1425-1433。EDB-FN特異的ペプチドZD2と臨床GBCA Gadoteriolとの結合によって、EDB-FN標的GBCA、ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)(MT218)(Han,Z.ら,Bioconjug Chem,2015.26(5):p.830-8))を設計し開発し、20μmol/kg(臨床線量の1/5)のような低線量であっても、EDB-FNが豊富な前立腺と乳癌のリスク成層化のための効率的なMRMの使用を促進し、その翻訳用途と優れた安全プロファイルを強調することが証明されている。独立したグループは、EDP-FNに関連するこれらの研究を行ったが、薬剤耐性のあるCRCにおけるEDB-FNの発現プロファイルについては検討されていない。また、薬剤耐性のあるCRCの治療応答を評価するための分子マーカーとしてEDB-FNを用いることの可能性は、未踏である。
【0113】
ここで、第1回目に、EDB-FNとMT218のMRMIが、EDB-FNレベルが著しく上昇した薬剤耐性CRC腫瘍の効果的で非侵襲的な評価及び治療応答モニタリングを促進することを初めて実証した。皮下に移植した薬剤耐性のCRCエノットは、それぞれの薬物感受性と比較して、MT218の40μmol/kgの線量でロバストなシグナル増強を示した。また、EDB-FNのMRMIは、標的汎-AKT阻害剤MK2206 HClに対する薬剤耐性CRC腫瘍の陰性反応のモニタリングを正常なモニタリングのためにも使用されることで(Agarwal,E.ら,BMC Cancer,2014).14:p.145)、治療予測マーカーとしてのEDB-FNの可能性を示す。また、EDB-FNの上昇は、大腸癌患者の予後不良に相関した。これまで、CRCイメージング及び治療モニタリングの分子マーカーとして薬剤耐性媒介EDB-FNのアップリッページを使用する説得力の生体内証拠を提供する最初で唯一の報告書のみである。
【0114】
略語
COAD:大腸腺癌、CNR:コントラスト対ノイズ比、CRC:大腸癌、ECM:細胞外マトリックス、EDB-FN:エクストラドメイン-Bフィブロネクチン、EMT:上皮間葉転換、GBCA:ガドリニア系造影剤、5’-FU:5’-フルオロウラシル、GTEx:GenotyPE-組織式、MDR1:多重薬剤耐性1、MRMI:磁気共鳴分子イメージング、PET-CT:PositronEmissionTomography-コンピュータ断層撮影;TCGA:癌ゲノムアトラス。
【0115】
方法
細胞培養
CRC細胞系DLD-1とRKOとは、ATCC(MANASAS、VA)から購入した。これらのそれぞれの薬剤耐性誘導体、DLD1-DR、及びRKO-DRは、Zenghe WANG(CWRU、Cleveland、OH)の研究所からの寛大な贈り物である。DLD1-DR細胞は、5’-フルオロウラシル(5’-FU)(Millipore-Sigma,St.Louis,MO)に対して薬剤耐性を産生し、そのIC50は、210.6μMであり、DLD-1細胞のIC50は、2.5μMである。 Zhu,H.ら,Mol Cancer Ther,2005.4(3):p.451-6。RKO-DR細胞は、10 μM 5’-FU及び15 μM CB-839(グルタミナーゼ阻害剤、Selleck Chemicals,Houston,TX)の併用療法に対して耐性を生じる。DLD-1及びDLD1-DR細胞をMcCoy’s 5A培地(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)で培養した。RKO及びROD-DR細胞をRPMI1640培地(Sigma)中で培養した。両方の培地に10%ウシ胎児血清、100ユニット/mLペニシリン/ストレプトマイシンを添加した。全ての細胞を37℃、5%COで成長させた。
【0116】
ウェスタンブロット
全タンパク質抽出は、細胞ペレットを細胞溶解バッファー(PBSにおけるプロテアーゼ阻害剤とLaemmli緩衝液との1:1混合物)で処理した後、100℃で10分間インキュベートした後、15000rpmで15分間、4℃で遠心分離して行った。抽出液の蛋白質濃度は、製造者の指示(Bio-Rad、Hercules、CA)に従って、Lowryのアッセイキットを用いて求めた。同量のタンパク質抽出物(40μg)をSDS-PAGEに装填し、電気泳動を行い、ニトロセルロース膜上に転写した。一次抗体(1:1000希釈、4℃で一晩インキュベート)は、抗-MDR1、抗-E-カドヘリン及び抗-β-アクチン(Cell Signaling Technology,Danvers,MA)及び抗-N-カドヘリン(1:500希釈、Abcam,Cambridge,MA)を用いた。二次抗体をインキュベートした後(1:12000で2h希釈)、Signal Fire Plus ECLキット(Cell Signaling Technology)を用いて膜を展開し、ChemiDocTMXRS+イメージャー(Bio-Rad)上に撮影した。バンド強度の定量は、FIJI及びImageLab(Bio-Rad)ソフトウェアを用いて行った。
【0117】
qRT-PCR
CRC細胞からの全RNA抽出は、メーカーのプロトコルに従い、RNeasy Plus Miniキット(Qiagen,Germantown,MD)を用いて行った。cDNAは、miScript II RTキット(QIAGEN)と逆転写して生成し、QPCRは、SyBr Green PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を用いて行った。相対遺伝子発現は、2-ΔΔCT法により測定した。ハウスキーピング遺伝子としては、β-アクチンを用いた。
【0118】
浸潤・遊走試験
標準的なtranswell実験を行い、CRC細胞の遊走・浸潤を評価した。遊走をテストする場合には、100000個のCRC細胞(空腹一晩)をtranswell inserts(VWR、Radnor、PA)に入れた。翌日、小室は、内部で拭き取られ、未遊走の細胞を除去した。小室底部の泳動細胞を10%ホルマリン(10分)で固定した後、0.1%クリスタルバイオレットで染色し(20分)固定した。過剰の汚れを洗浄し、transwellを乾燥させ、10倍対物レンズを用いてMoticam T2カメラで撮影する。侵入入をテストするために、transwell insertsは、1mg/mL CorningTM MatrigelTM膜マトリックス(Corning,NY)でコーティングされ、CRC細胞がマトリゲル層及び小室多孔質膜に侵入する能力を評価するために使用される。この測定のために約200000個のCRC細胞(空腹一晩)を行い、上記と同様の処理を行った。なお、侵入及び移行細胞の定量は、FIJI(FIJI is Just ImageJ)ソフトウェアを用いて行った。
【0119】
3D培養及びZD2-Cy5.5染色
3D培養におけるCRC細胞の増殖能を、Matrigel培養を用いて試験した。約900000個のCRC細胞を、CorningTM MatrigelTM膜マトリックスの厚い層でコーティングされた4ウェルマイクロスライド(Ibidi,Fitchburg,WI)に入れた。10X対物レンズ付きMoticam T2カメラを用いて、腫瘍スフェロイド/類器官形成を4日間モニタリングし、撮影した。EDB-FN発現を試験するために、腫瘍スフェロイドを100nM ZD2-Cy5.5と5μg/mL Hoechst-33342で30分間インキュベートした。過剰の色素をPBSで3回洗浄し、10X及び20X対物レンズのOlympus FV1000共焦点顕微鏡(Japan)で蛍光イメージングを行った。画像処理は、FIJIを用いて行った。
【0120】
マウスモデル
ジャクソン研究所(The Jackson Laboratory,Bar Harbor,MA)から裸の胸なし腺マウス(6週のnu/nu雌性)を購入し、CWRUの動物施設に収納した。全ての動物実験は、CWRU IACCにより承認されたプロトコルに従って実施した。薬剤耐性を評価するために、2個薬剤耐性及び2種類の非薬剤耐性モデルを設定した。Matrigel-PBS混合物(1:1)に懸濁した約3~4×10個DLD-1、RKO、DLD1-DR、及びRKO-DR細胞をヌードマウスの左側面(各マウス100μL、各群5匹×4モデル=20匹)腹に皮下注射した。腫瘍が100~200mmに到達した9日後に、40μmol/kg線量のMT218を用いて4つの異種移植モデルにMRMIを投与した。その後、動物を安楽死させ、解剖組織学とIHCのために腫瘍を採取した。
【0121】
治療モニタリングのために、Matrigel-PBS混合物(1:1)に懸濁した3~4×10個DLD1-DR細胞を10匹ヌードマウスの左側面(各マウス100μL、Tm1~Tm10に標識したマウス)に皮下注射した。ノギスを用いて、腫瘍体積を週に1回モニタリングし、測定した。平均腫瘍体積が100mmに達すると、マウスは、各群5匹でビークル群(マウス#TM1、TM3、TM4、TM5及びTM10)及び処理群(マウス#TM2、TM6、TM7、TM8及びTM9)の2つのグループに分けられる。週に1回、治療群のマウスは、MK2206-HCl(100mg/kg)を受け、ビークル群のマウスは、前述のように同量のDMSOを注射した。Smith, J.A., L.J. StallonsとR.G. Schnellmann, Am J Physiol Renal Physiol, 2014. 307(4): p. F435-44。3週間の処理後に、腫瘍体積が1000mmを超えて増加し、実験を終了した。その後、動物を安楽死させ、腫瘍を採取し解剖組織学とIHCを行う。腫瘍体積は、[(幅)2×長さ]/2として算出した。
【0122】
MT218を用いたEDB-FNのMRMI
MT218は、前述と同様にして合成した。Ayat,N.R.ら,ACS Med Chem Lett,2018.9(7):p.730-735。簡潔に説明すると、室温でCuSO及びアスコルビン酸ナトリウムの存在下で、アルキニルーZD2とN3-Gd(HP-DO3A)とのクリック反応を行い、MALDI-TOF質量分析(m.w.1443)により、FLASHクロマトグラフィー精製及びMT218の検証を行った。薬剤耐性及び治療用モニタリングを評価するために、マウスショートクワッドコイル(mouse short quad coil)を備えた3T MRS 3000スキャナ(MR Solutions,Surrey,UK)でMRMIを行った。マウスをイソフルオランで麻酔し、尾静脈カテーテルを設定した。T1-強調MR画像は、MT218[ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)]の40μmol/kg用量を注射する前(比較前)と25分後(比較後)を求めた。次の2つのシーケンスが呼吸同期に使用され、軸位断高速スピンエコー(FSE)(TR=305ms、TE=11ms、FA=90°、FOV=40mm×40mm、スライス厚さ=1mm、スライス番号=15、Nav=2、マトリックス=256×256)、及びコロナルFSE(TR=305ms、TE=11ms、FA=90°、FOV=90mm×90mm、スライス厚さ=1mm、スライス番号=20、Nav=1、マトリックス=248×512)の2つのシーケンスを用いた。治療モニタリングのために、DLD1-DR腫瘍を有する10匹のマウスにおいて、ベースラインMRMI(第1週)及びエンドポイントMRMI(4週間)は、上記の配列の40μmol/kg MT218用量を用いて行った。コントラスト対ノイズ比(CNR)は、(平均腫瘍強度-平均筋強度)/ノイズ標準偏差として計算される。FIJIソフトウェアを用いた画像・CNR解析ROIは、腫瘍全体、2~4筋肉領域及び背景の周りに描かれる。CNR分析は、2個体により独立して行い、バイアスを回避した。
【0123】
ヒト及びマウス組織における免疫組織化学
CWRUにおけるヒト組織調達設備(Human Tissue Procurement Facility)から、識別及び分類された原発性大腸腺癌(n=6)、肝臓転移(n=4)、及びそれに対応する正常な隣接組織(n=6+4)を含む組織試料を取得した。剥離したマウス腫瘍組織を10%中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、1μmスライスに切断した。染色及びIHCのサービスは、症例総合癌中心組織資源コア施設(Tissue Resources Core Facility of the Case Comprehensive Cancer Center)、及びクリーブランド大学病院(University Hospitals of Cleveland)により提供された。スライドをH&Eで染色し、形態学を可視化した。免疫組織化学は、前述したように、抗EDB-FN抗体G4クローン(1:100希釈、Absolute Antibody,UK)免疫組織化学を用いて行った。全てのスライドについて、認定医によって検討される。IHC画像は、40X対物レンズ付けBx61VSスライド走査顕微鏡(Olympus)を用いて得られ、OlyVIAソフトウェアで処理される。
【0124】
遺伝子データ及び統計解析
GePIA2には、EDP-FN発現に関する総生存率(OS)と増殖なし生存率(PFS)データ(転写物ID:ENST00000432072.6)のKaplan-Meier曲線がGEPIA2に導出された。Tang,Z.ら,Nucleic Acids Res,2017.45(W1):p.W98-W102。該Webサーバは、TCGA及びGTExデータベースから、腫瘍/正常データ及び正常組織データ(100万回あたりの転写スクリプト)をそれぞれ評価し、対数ランク(Log-rank)又はMantel-Cox検定を用いて統計的生存分析を行い、Cox-PHモデルを用いてハザード比(HR)計算を行った。
【0125】
なお、何ら規定しない限り、すべての実験は、少なくとも3回(n=3)独立して繰り返した。 データは、平均値±s.e.mとして表される。GraphPad Prismバージョン7.03を使用して統計分析を行う。ペアなしtで検定し、2つのグループ間のデータ(正規分布)を比較する。それ以外の場合は、関連する凡例で説明されているように、非パラメトリック テスト (Mann-Whitney Uテスト)を使用する。複数の細胞系の時間プロセスMRMIデータは、Tukey補正を有する双方向分散分析(ANOVA)によって解析される。p<0.05は、統計的に重要であると考えられる。
【0126】
結果
獲得性薬剤耐性は、CRC細胞の遊走及び浸潤を増強する。
独立した2種の薬剤耐性のCRC線が作製され、DLD-1細胞における5’-FU療法の長期使用によって産生されたDLD1-DR及びRKO-DR細胞における5’-FU及びCB-839併用療法によるRKO-DRの生成、及び生物学的特性の評価。2D及び3D培養で増殖した細胞の形態を、位相差顕微鏡で観察した。DDL-1細胞は、2D培養で規則的な上皮形態を示し、3D培養では多細胞ブドウ様クラスター(図1A)を示したが、DLD1-DR細胞は、2D培養で列島状体を形成し、3D培養では緻密なスフェロイドを形成した。RKOとROD-DR細胞の単層培養では、明らかな形態学的差異を示さなかった(図1B)。一方、3D培養では、RKO-DR細胞は、緻密で凝集した腫瘍スフェロイドを形成しやすく、RKO細胞はスフェロイドを形成することができない。これらの結果は、単層培養、3D培養におけるCRC細胞株間の異なる形態学的変化を示す。
【0127】
次に、ウエスタンブロッティング及びqRT-PCRにより、CRC細胞のシグナル伝達経路における薬剤耐性誘導の分子変化を解析した。薬剤流出ポンプ及び上皮間葉系転移(EMT)は、薬剤耐性の発現と関連しているため、複数薬剤耐性タンパク質1(MDR1)及びEMTマーカー(E-カドヘリン及びN-カドヘリン)のタンパク質及びmRNAの発現が決定された。タンパク質レベルでは、DLD1-DR細胞は、DLD-1細胞よりも、MDR-1の有意な上昇と適度なEMTを示し、E-cadレベルは、適度に低下し、N-cadレベルは、増加した(図1C)。mRNAレベルにおいて、DLD1-DR細胞は、MDR-1において4倍の増加を示し、E-cad及びN-cadのmRNAレベルの変化がなかった(図1D)。一方、RKO-DRは、RKO細胞に比べて、タンパク質(図1E)及びmRNA(図1F)の両方において、大きく隆起したMDR1及びE-cadを示した。また、RFO-DR細胞においてもN-cad蛋白質発現が上昇し、ROD-DR細胞における上皮細胞と間葉系細胞との混合物又は部分/ハイブリッドE-M表現型の存在が示している。
【0128】
CRC細胞の遊走ポテンシャルを試験することにより、CRC細胞における獲得性薬剤耐性による機能的影響を評価した。図1G-H及び図S1B-Cに示すように、DLD1-DR及びRKO-DR細胞は、トランスウェル膜を通過することによっての移行の増加と、トランスウェル膜上に塗布された追加のMatrigel層を通過することによっての浸潤の増加とを示す。要約すると、これらの結果は、CRC細胞が薬剤耐性の獲得による明らかな形態学的及び分子的変化にかかわらず、親細胞よりも有意な浸潤的優位性を得たことを示している。
【0129】
獲得性薬剤耐性は、CRC細胞における向上したEDB-FN発現に関連する。
先に述べたように、EDB-FNは、薬剤耐性、浸潤性乳癌(Han,Z.ら,Nat Commun,2017.8(1):p.692)及び積極的な前立腺癌に過剰発現していることが分かった。Han,Z.ら,Bioconjug Chem,2017.28(4):p.1031-1040。ここでは、qRT-PCRとEDB-FN-特異的ペプチドプローブZD2-Cy5.5(Han,Z.ら,Bioconjug Chem,2015.26(5):p.830-8)を用いて、薬剤耐性の発現は、CRC細胞におけるEDB-FN発現増加の有無を評価した。
【0130】
図2Aに示すように、DLD-1とDLD1-DR細胞ともにEDB-FNを表しており、ZD2-Cy5.5結合で明らかになった。しかしながら、DLD1-DR細胞は、より明るい蛍光シグナルを示し、ZD2-Cy5.5がより高い結合を示し、これはDLD-1細胞におけるEDB-FN mRNAレベルの3倍の増加によって確認された(図2B)。また、DLD1-DR細胞(Ca)において、全FN1発現は、薬剤耐性とともに増加することも確認された(約3倍、図形2C)。同様に、RKOとRKO-DR細胞の両方がEDB-FNを分泌するのに対し、後者ではその発現が著しく高く、これは明暗度の強いZD2-Cy5.5染色(図2D)及び、EDB-FN mRNA(図2E)の約4.5倍の増加(図2E)に反映されている。全Fn1は、RFO-DR細胞(図2F)において1.5倍に増加しただけであった。これらの結果から、CRC細胞における得られた薬剤耐性は、EDB-FN過剰発現に関与していることが確認された。
【0131】
MT218を用いたEDB-FNの造影増強MRMIは、薬剤耐性のあるCRC腫瘍の効果的な鑑別診断に寄与する。
非耐性と薬剤耐性のCRC腫瘍を区別するための分子マーカーとしてEDB-FN過剰発現を使用することができるか否かを判断するには、DLD-1、DLD1-DR、RKO、ROD-DRの皮下脂肪組織を持つ胸腺欠損マウスnu/nuにおいて、EDB-FNターゲティング標的造影剤MT218を用いてMRMを行う。40μmol/kgのMT218を射出する前の25分間と射出した後の25分間にT1-強調クラウン及びアキシャル画像を取得した。MT218のサブ臨床線量は、MT218の標準線量(0.1mmol/kg)及び臨床造影剤ガドテリドールと同じ有効であることを示している。Ayat,N.R.ら,Front Oncol,2019.9:p.1351。
【0132】
予備タイムコース分析は、DLD-1及びRKO腫瘍モデルのいずれにおいても、MT218の注射後の35分後にCNRを大幅に向上させ、増加させたことを示す。また、20~35分の間にピークの増強が見られたため、その後の薬剤耐性の評価には25分間の時点が選択された。MT218を用いたEDB-FNのMRMI-FNは、非薬剤耐性DLD-1及びRKO腫瘍(図3A~D)でのシグナルを増強し、CNRは、それぞれ比較前より1.53倍、1.4倍増加した(図3E~F)。薬剤耐性のDLD1-DR及びROD-DR腫瘍は、シグナルの増強が非常に強く、CNRは、それぞれ比較前より3.3倍と2.6倍高いことに反映されていた(図3A~F)。重要なことから、このシグナル強調は、このシグナル増強は、非薬剤耐性対応よりも強く、CNRは、それぞれ非薬剤耐性DLD-1及びRKO腫瘍よりも2.2倍及び1.8倍高い(すなわち、120%及び84%の増加)(図3E~H)。イメージング後にマウスを安楽死後、H&E染色及びEDB-FN免疫組織化学(IHC)ための腫瘍組織をG4抗体で処理した。図3(I-J)に示すように、H&E染色は、薬剤耐性と非薬剤耐性のCRC腫瘍との有意差を示しておらず、高レベル、低分化、有糸分裂活性を有する多形癌細胞を示した。EDB-FNのIHCは、それぞれDLD-1、RKO腫瘍に比べて、DLD1-DR(図3I)及びRKO-DR(図3J)腫瘍で強い染色を示した。EDB-FN染色は、腫瘍細胞と長尺紡錘形状で散在する癌関連線維芽細胞(CAF)との両方に局在しており、それぞれ赤色及び黒色の矢印で示した。このIHCデータは、この4つのモデルで観測されたシグナルの強調及びCNRと関連して、MT218のEDB-FNのMRMIの投与量を減少させることは、CRCモデルにおける薬剤耐性の非侵襲的な評価を促進することを示している。
【0133】
MT218を用いたEDB-FNのMRMIは、薬剤耐性のあるCRC腫瘍の治療応答モニタリングを容易にする。
薬剤耐性のCRC腫瘍の鑑別診断に続いて、MKN2206-HCl(汎-AKT阻害剤)で治療したDLD1-DRマウスにおいて、非侵襲的な評価治療反応におけるEDB-FNのMRMIの可能性を測定した。図4Aは、有効性モニタリングのための治療レジメンとMRMIのタイムラインを示す模式図である。腫瘍注入後1週間後、ベースラインMRMIを行い、マウスを無作為にビークル群(DMSO処理:TM1、TM3、TM4、TM5、TM10)と治療群(MK2206処理:TM2、TM6、TM7、TM8、TM9)に分けた。マウスは、週に1回治療し、3週間持続し、腫瘍負荷が高いため、第4週目にMRMIを終了し、その後、死体解剖組織学的検査を行った。腫瘍の体積は、週に1回モニタリングされる。図4(b)は、4週間の期間における腫瘍の増殖の進行を示している。ビークル群及び治療群の平均腫瘍体積は、97.7±8.14mm以上813.4±259.7mm以下、及び110.5±11.97mm以上1249.7±199.3mm以下に有意に増加した。ビークル群と治療群の最終的な平均腫瘍体積に有意な差(p=0.22)は、認められなかったが、後群の単一マウスは、有意に重篤と大きな腫瘍を示し、薬剤耐性腫瘍は、治療に反応しなかったことを示した。また、単一マウスの腫瘍体積(図4C)もモニタリングされ、終点MRMIシグナル及びEDB-FN発現に関連していた。各マウス(TM1-TM10から標識)は、腫瘍体積が多かれ少なかれ有意に増加したことを示した。
【0134】
腫瘍の成長は、MT218を用いて、EDB-FNの終点MRMIでモニタリングした。図5Aに示すように、ベースラインMRMIを行った場合に、ビークル群の各マウスは、比較前と比較してシグナル増強を示した。DMSOの注射の3週間後、すべての5匹のマウスは、エンドポイントMRMIでシグナル増強を示した。他の3匹のマウス(TM1、TM4及びTM10)と比較して、マウス#TM3及びTM5は、シグナル増強及び腫瘍サイズの増加を示し、(図5B)。このデータの定量化は一貫した傾向を示し、TM3及びTM5マウスは、第1~第4週でCNRの増加を示し、TM1、TM4及びTM10マウスは、第1~第4週でCNRの減少を示した(図5C)。MRMIシグナルは、腫瘍体積の増加にも相関しており、TM3及びTM5マウスがTM1、TM4及びTM10マウスと比較して腫瘍体積の急速な増加を示す(図4C)。また、1週目から4週目までのビークル群の平均値CNR間に有意な差は、見られなかった(図5D)。EDB-FNの解剖組織学とIHCは、TM3においてTM10よりも強いG4染色を示し、MT218によるEDB-FNのMRMIは、内因性腫瘍EDB-FN発現と相関していることを示した(図5E)。
【0135】
治療群について、ベースラインMRMIの間、5匹のマウスのそれぞれは、比較前よりも高いシグナル増強を示した(図6A)。3週間の治療にもかかわらず、薬剤耐性DLD1-DR腫瘍は、治療に反応せず、その大きさは、シグナル増強の増加とともに対照前に増加し(図6B)、第1週から第4週の個体マウスのCNR上昇に反映された(図6C)。5匹のマウスのうち、マウス#TM7は、最高のシグナル増強、CNR、及び最大腫瘍体積を示した(図4C)。一方、マウス#TM2、TM6、TM8及びTM9は、第1週から第4週におけるCNR及び腫瘍体積の増加を示したが、両者間の相関パターンは検出されなかった。治療群の平均腫瘍CNRは、第1週から第4週(図6D)に増加し、薬剤耐性腫瘍が治療に反応せず、ビークル群よりも劣っていたことが確認された。EDB-FNの解剖組織学及びIHCは、TM9(図6E)及びビークル治療ののマウス#TM3及びTM10(図5E)と比較して、マウス#TM7腫瘍の強力なG4染色を示し、EDB-FN発現とMRMIに基づくモニタリングとの直接的な相関を更に確認した。治療群の第4週の平均CNRは、ビークル群よりも高かったが、統計的に意味はなかった(p=0.055、図S4)。要約すると、これらの結果は、MT218のEDB-FNを用いたMRMIが薬剤耐性CRC腫瘍の非侵襲的な治療モニタリングを促進可能であることを示している。
【0136】
EDB-FNは、ヒト大腸腺癌において過剰発現しており、患者の生存不良に関連する。
CRC患者におけるEDB-FNのMRMIの使用可能性を評価するために、大腸腺癌(COAD)の代表的なヒト検体、転移型肝臓、及びそれに対応する正常な隣接する組織において、EDB-FNの発現を解析した。原発性COAD腫瘍は、未治療患者(図7A)及び治療患者(図7B)の両方において強いEDB-FN発現を示し、対応する正常隣接組織における発現は、無視できることがわかった。一方、COAD肝転移は、EDB-FNレベルが異なっており、未治療患者では中等度染色(図7C)、治療患者では中強染色(図7D)、正常隣接肝臓では染色されなかった。パターンについては、大部分のEDB-FN染色は、マトリックスの線維芽細胞及び癌関連線維芽細胞(黒色の矢印)で観察され、一部は、腫瘍細胞(灰色の矢印)で、原発及び転移部位で観察された。また、TCGA及びGTExデータベースのRNA-Seqデータの分析は、EDB-FNレベルの増加がCOAD患者の全体的な生存率(OS)差(図7E)と進行しない生存率差(図7F)と相関していることを示し、EDB-FNの過剰発現がCOADの予後指標となり得ることが示された。
【0137】
議論
この作業は、非耐性の相手に比べて、ECMタンパク質EDB-FNを過剰発現する薬剤耐性のある浸潤性CRC腫瘍が存在することを示している。標的治療に対してネガティブな反応を示す薬剤耐性のCRC腫瘍EDB-FNに上昇した。これらの治療圧力誘発EDB-FNレベルの変化により、MT218のサブ臨床用量でもMRMIによる耐性CRCの効果的で非侵襲的な評価及び治療応答モニタリングが可能になる。
【0138】
分子的に多様なCRCの風景は、診断、予後、治療予測値を提供することができる堅牢なオロッカーを必要とする。ここで、初めて、EDB-FNの過剰発現は、CRC患者の生存率と負の相関があることを示している。以前の研究では、FDC-6抗体を使用した高oncFN1レベルの術後CRC患者は、FN1の別の癌胚と同型に結合する予後不良であった。Inufusa,H.ら,Cancer,1995.75(12):p.2802-8。患者試料の免疫組織化学分析は、G4抗体が原発性及び転移性CRC部位において強いEDB-FN特異的染色を有することを示した。EDB-FNは、ストロマ、ストロマ線維芽細胞、腺癌細胞、及びこれらの腫瘍細胞の周囲に点在している線維芽細胞に局在していることがわかった。これらの結果から、すなわち、腫瘍環境における複数の細胞型発現EDB-FN(Midulla,M.ら,Cancer Res,2000.60(1):p.164-9)は、腫瘍微小環境における細胞と細胞外成分との多面的な相互作用を示す。正常な隣接結腸及び肝臓組織におけるG4染色の完全な欠損は、EDB-FNの深遠な腫瘍特異的発現を示し、EDB-FNがCRCの魅力的な候補マーカーであることを意味する。EDB-FNレベルの上昇は、筋肉浸潤性膀胱癌患者の尿試料で300%以上上昇し、その臨床結果と負の相関を示し、他の癌診断マーカーとしての可能性も証明した。Arnold, S.A.ら,Clin Exp Metastasis,2016.33(1):p.29-44。
【0139】
これらの2D培養及び3D培養はいずれも、薬剤耐性のCRC細胞の浸潤性と内因性のEDB-FN式との関連性が正であることが示された。2つの非薬剤耐性モデルの間で、DLD-1細胞は、RKO細胞よりも高いEDB-FN発現を示した。これは、Duke C型、p53変異、CEAを発現する腺癌由来のDLD-1細胞が、p53-、K-Ras-野生型原発癌部位に由来するRKO細胞よりも浸潤的で遊走性であるモデルの固有生物学的特性と一致している。Gu, C.ら,Cell Death Dis,2018.9(6):p.654。DLD-1細胞が5’-FUに対する薬剤耐性及びRKO細胞が5’-FU+CB-839に対する薬剤耐性の発展は、EMT様DLD1-DR及びハイブリダイゼーションE-M RKO-DR細胞の動的変化をもたらし、治療ストレス誘発のクローン選択後の2つの細胞株の異なる軌道を強調する。両薬剤の難治性細胞株は、ATP結合カセット(ABC)トランスポーターMDR-1の強い過剰発現を示しており、細胞流出増強が5’-FU耐性の一般的なメカニズムであることを考えると驚くべきことではない。Skarkova,V.ら,Cells,2019.8(3)。E-M表現型誘導可塑性増強がRKO-DR細胞CB-839に耐性を与えるヘテロ接合である可能性が高い。CB-839耐性乳癌では、CRCにおけるグルタミナーゼ阻害耐性の正確なメカニズムは不明であるが、以前に増強された可塑性及び代謝冗長性が観察された。 Reis,L.M.D.ら,J Biol Chem,2019.294(24):p.9342-9357。
【0140】
また、異種分子の変化やEMT状態に関わらず、薬剤耐性細胞株の両方による浸潤的及び遊走性の取得は、EDB-FNの有意なアップレギュレーションと関連付けられていた。このアップレギュレーションは、薬剤耐性のDLD1-DRとRKO-DR異種移植片において再現され、それぞれの非薬剤耐性対応物と比較して、EDB-FN標的造影剤MT218を用いたMRMIにおいて強力なシグナル増強及び有意に高いCNRを示し、EDB-FNが有望な診断腫瘍マーカーとしての可能性を示唆した。先に、薬剤耐性乳癌細胞におけるEDB-FNの過剰発現を示した。また、他の群は、CRC細胞や腫瘍においても、EDB-FNが高くなっていることが確認された。El-Emir, E. et al.、 Br J Cancer, 2007. 96(12): p. 1862-70。本発明者らの知見によれば、このことは、薬物難治性CRCにおいて、EDB-FNを過剰発現させる第1報告である。これらの上昇したEDB-FNレベルは、腫瘍の進行の非浸潤的なモニタリングを目的としたZD2目標のMRMIを対象とすることができ、薬剤耐性の発現に先行する危険事象や段階を特定することができた。
【0141】
薬剤耐性は、腫瘍治療及び癌放射治療の悩みの種である。これらの薬剤耐性細胞及び腫瘍が腫瘍治療にどのように反応するかを正確かつ非侵襲的に評価することは(治療の数日の早い段階で)、現代の癌治療パラダイムに革命をもたらす可能性がある。複数の臨床証拠は、治療応答の評価が腫瘍サイズの変化のみに基づくことができないことを示している。このため、疾患の攻撃的な性質に相関し、腫瘍の大きさに依存せずに豊富に過剰発現されたEDB-FNの分子イメージングを行うことで、治療法に対する正確な腫瘍の応答を得ることができると推測される。本発明の処理槽では、MK2206 HCl療法に対する薬剤耐性の高いDLD1-DR腫瘍の障害が、その増加されたEDB-FNレベル、MT218の取り込みが増加することに反映され、これは、ロバストなシグナル強調と、MRMIにおけるCNRが増大したことによって証明される。これらの腫瘍もビークル腫瘍と同様に大型化しているが、後者は、被処理腫瘍としてEDB-FN及びMT218取り込みが同程度に増加することはなく、MRMIは、固有のEDB-FN発現に基づくものであり、解剖学的な腫瘍サイズではないことが示唆された。なお、MK2206-HClに対する陰性応答は、乳癌細胞におけるEDB-FN規制におけるリン-AKTシグナルの役割についての本発明の知見を考慮していないが、薬剤流出ポンプMDR-1の可塑性増強及び過剰発現が、DLD1-DR腫瘍がMK2206HClに反応しない可能性があることが推測される。また、5’-FUで治療されたDLD-1細胞において、置換AKT非依存性発癌シグナル伝達(例えば、NF-κβ)の補償活性化も示されている[62]。腫瘍の負担が大きいため、治療は、第4週で終了し、他の適応介入又はイメージング検査が除外された。この研究は、原発性腫瘍のイメージングに限定されているが、有望な結果はさらなる研究に値し、他のパラメータとイメージングパターンを分析し、腫瘍体積をモニタリングすることで、様々な治療における腫瘍反応を検証し、関連させる。
【0142】
125I標識L19-SIP抗体を用いたCRC中のEDB-FN系放射免疫療法の2つ前の報告のみが存在することから、それは、CRC異種移植片(El-Emir,E.ら,Br J Cancer,2007 96(12):p. 1862-70)及びCRC患者(Santimaria,M.ら,Clin Cancer Res,2003.9(2):p.571-9)中の選択的腫瘍摂取と腫瘍増殖抑制を証明した。しかしながら、薬剤耐性のCRCのEDB-F系MRMI評価は、従来は全く行われていない。本発明の予備データは、EDB-FNN標的分子撮像のみを形質転換するための土台となるデータであり、他のスクリーニング用モダリティへの付属品として、臨床的にはCRC管理のための生技術となっている。CRCイメージングにおけるMRIの課題の1つは、肝臓のCRC転移を正確に検出することであり、患者の予後指標が出ようとする。そこで、患者の転移性肝臓試験片において、独立研究者と独立研究者とを観察した結果、これらの回避性NCHESを正確かつタイムリーに検出することで、治療内容の治療中に致命的な診断効果を得ることができた。MRIは、直腸癌をステージングするための主要な選択であるが、腫瘍治療後の腫瘍再発におけるその性能が不整合である。そのため、手術中の介入を計画する前に、「待ち及び観察」期間中に、ネジュバント療法に対する患者の応答性を判定する際に、MT218でMRMIの薬効を評価することが関心となる。
【0143】
造影増強のMRIは、診断上重要であるが、造影剤、特にリニアGBCAsへの累積被曝は、患者の脳、骨、及び皮膚へのGdの堆積・長期的な蓄積の結果である。MT218は、安定性が高く、安全性が良好な臨床大環状の造影剤ガドテリドールの小さいペプチド結合体である。最近では、乳癌モデルにおいて、0.1mmol/kgの標準臨床線量と比較して、MT218は、40μmol/kgの低下用量で、MTMIにおける腫瘍特異的増強が強く発現していることが明らかとなった。Ayat,N.R.ら,Front Oncol,2019.9:p.1351。また、MT218の用量を減少させるMRMIの割引されていない有効性は、Gd関連及び用量依存毒性の潜在的なリスクを最小限に抑えることができる。この低線量でも、この検討において、CRCと薬剤耐性のあるCRC腫瘍を効果的に評価することが可能であった。MT218の高T1緩和性能(3Tでの6.13mM-1-1))、亜臨床用量での有効MRMI、及び腫瘍微小環境における豊富なEDB-FNがMT218と容易に結合するため、Gd曝露減少MRMIは、CRCの能動的な監視及び治療モニタリングに期待できると推測される。腫瘍細胞の可塑性は、腫瘍進行及び治療応答の患者間ばらつきが大きいことから、同じ癌種であっても、EDB-FNの腫瘍準位に基づくMT218のMRMIは、化学療法期間中に早期に薬剤耐性の発現を検出することができ、当該患者の治療部位を補助し、治療の成功性を向上させることができた。
【0144】
また、EDB-FN特定のZD2ペプチド特有の利点は、PET/MRIやPET/CTなどの多パラメトリック分子イメージング用の統合撮像システムの開発にも応用できる。実際には、PET及びSPECTプローブは、既に、前立腺癌、膵島癌及び乳癌の検出を向上させるために、EDB-FN特異的なZD2ペプチドを放射性トレーサー(64CuDOTA、68Ga NOTA、と99MTc-HYNIC型キレート)に結合させることにより生成されている。Han,Z.ら,ACS Omega,2019.4(1):p.1185-1190;Gao,S.ら,Am J Nucl Med Mol Imaging,2019.9(5):p.216-229。これらのシステムにおいても、原発性腫瘍切除後の転移モニタリング、化学療法処理の同遺伝子モデルにおけるCRCのイメージング、免疫療法における腫瘍反応の評価など、CRCのいくつかの側面に関する洞察を提供することができた。また、ZD2以外にも、APT-FN-EDB、L19、BC1、及びNJB2を含む他のEDB-FN標的配位子、抗体及びナノ体も、腫瘍ECM及び血管システムへの治療剤及び撮像剤の受け渡しに使用され、有望な腫瘍マーカーとしてのEDB-FNの役割が検証された。Tijink,B.M.ら,Eur J Nucl Med Mol Imaging,2009.36(8):p.1235-44;Jailkhani,N.ら,Proc Natl Acad Sci USA,2019.116(28):p.14181-14190。
【0145】
以上をまとめると、大腸腺癌(COAD)検体では腫瘍特異的なEDB-FN発現が示され、EDB-FNのレベルが高いCOAD患者の予後は不良であることが明らかとなった。本来、CRC細胞や腫瘍異種移植片は、EDB-FNを固有に発現しているが、その発現は、更に薬剤耐性に優れている。MT218の線量が有意に低減されたEDB-FNのMRMIは、薬剤耐性のあるCRCの効果的な非侵襲的な評価及び治療モニタリングを促進し、MT218媒介EDB-FN標的MRMIの積極的なモニタリング及び薬剤耐性腫瘍における変換の可能性を強調する。
【0146】
実施例2:エクストラドメイン-Bフィブロネクチンの過剰発現と、乳癌細胞の浸潤性との関連性
乳癌(BCA)は、壊滅的な病気であり、米国では毎年41,000人が死亡している。局所的なBCa患者の生存率は99%に近いが、遠隔転移及び薬剤耐性患者では生存率が急激に低下した。この疾患の臨床治療における主要な障害は、腫瘍異質性であり、BCaの進行の動的性質において機能する。全ゲノムシーケンシング及びプロファイリング研究は、同じ組織学的サブタイプの乳房腫瘍が、異なる段階のBCa患者において異なる分子画像及び離散軌道を示すことが実証されている。ランダム変異、ゲノムの不安定性、遺伝的、エピジェネティックな、環境的、治療的刺激からの選択的圧力によるクローニングの進化は、有意な成長と浸潤の利点を有するリスクの高い腫瘍集団の出現をもたらす。原発性及び転移性腫瘍における広範な空間的及び時間的差異は、診断、治療及び予後結果に直接影響する。腫瘍転移及び浸潤特性の特異的マーカーの欠如のために、現在のイメージング方法(MRI、PET及びCTを含む)は、低リスク及び高リスク腫瘍の検出及び区別において限られた能力を有する。これらの事実は、非侵襲的な検出、リスクの階層化、乳房腫瘍の積極的なモニタリングを促進し、動的であるにもかかわらず、治療応答をタイムリーに評価する適切な分子マーカーを発見し、特徴付ける必要性を強調している。
【0147】
腫瘍細胞外マトリックス(ECM)は、腫瘍細胞と腫瘍微小環境(TME)の間で発癌シグナルを伝達し、成長、アポトーシス脱出、遊走、炎症及び免疫回避をサポートすることにより、腫瘍の進行のあらゆる側面において重要な役割を果たしている。フィブロネクチン(FN1)は、正常なECM及び腫瘍ECMの必須成分であり、接着、運動性、成長及び発達を調節する重要な糖タンパク質である。しかし、その別のせん断変異体は、エクストラドメイン-Bフィブロネクチン(EDB-FN)と呼ばれ、悪性形質転換中に発現することが知られているが、通常、健常成人組織には存在しない。Han, Z.とLu, Z. R., J Mater Chem B 5, 639-654 (2017)。EDB-FNが上皮間プライミング(EMT)、癌細胞の乾燥、増殖、血管新生及び転移に関連していることを示唆している。Hanら,Magn Reson Med 79,p.3135-3143(2018).臨床研究は、EDB-FNが肺癌、脳癌、大腸癌及び卵巣癌の患者に存在することを証明している。Santimariaら,Clin Cancer Res 9,p.571-579(2003)。また、EDB-FNの過剰発現は、乳腺腫瘍の組織学的勾配(Loridon-Rosaら,Cancer Res 50,p.1608-1612 (1990))と口腔癌患者の生存率の不良(Lyonsら,Br J Oral Maxillofac Surg 39,p.471-477(2001))にも相関があり、多発性腫瘍のマーカーとしてのその潜在的な役割を示す。
【0148】
さらに複雑なことは、同じ癌種であっても、EDB-FN発現プロファイルが明確であり、細胞や組織の分子や機能特性に特異的である。例えば、EDB-FN特異的ペプチドプローブZD2-Cy5.5を用いて、PC3(前立腺)及びMDA-MB-231(ホルモン受容体陰性乳癌)などの浸潤性癌細胞株がEDB-FNを豊富に含み、浸潤性の低い癌細胞株(例えば、LNCaP(前立腺))及びMCF7(ホルモン受容体陽性乳癌)が有意に低いEDB-FNレベルを示すことが分かった。Hanら,Bioconjug Chem 26,830-838(2015)、Hanら,Nat Commun 8,692(2017)。このEDB-FNのこの差異発現は、EDB-FN標的MRI造影剤を用いて非浸潤的異種移植片から浸潤性前立腺癌及び乳癌腫瘍を鑑別診断するために用いられた。Ayatら, ACS Med Chem Lett 9,730-735 (2018)。また、他の独立した研究グループは、EDB-FNを標的イメージング及び治療のための様々な癌の分子標的として利用している。Sunら,Theranostics 4,845-857(2014);Yeら,ACS Omega 2,2459-2468(2017)。
【0149】
腫瘍の可塑度が高いことから、異なる選択圧力、環境、実験的刺激により、TMEとEDB-FNの発現が明確に変化し、EDB-FN標的イメージング及び治療介入の臨床結果に影響を与えることが明らかとなった。ここでは、非浸潤的、低EDB-FN発現乳癌細胞に2つの異なる選択圧力を加えた後のEDB-FNの発現パターンの変化と、それらがその後浸潤性リスクの高い集団に進化することを決定しようとする。このため、2つの乳癌細胞株MCF7及びMDA-MB-468は、サイトカインTGF-β及び化学療法薬で処理することにより、ランダム交互及びクローニングの進化を誘導することによって、顕著な生存上の利点を得た。得られた集団も高度に特異的なAKT阻害剤で処理し、EDB-FNレベルの変化と高リスク細胞が標的治療に対する反応との相関を更に評価した。
【0150】
結果
EDB-FNの発現は、乳癌中に有意に増加する。
重要なECM成分としては、複数の癌種でFN1が過剰発現している。Han, Z.とLu, Z. R. (2017), J Mater Chem B 5, 639-654。ここで、TCGAとGTExデータベースにおける1084個の乳腺腫瘍と291個の正常乳腺試料における癌胚同種型EDB-FN(転写物ID:ENST0000432072.6)の発現を評価した。差分EDB-FN発現解析と生存相関データは、ネットワークサーバGEPIA228から取得される。図8Aに示すように、乳房腫瘍は、正常乳房組織(中央値2.410転写物/百万(TPM))と比較して、EDB-FNの有意な過剰発現[中央値36.319 TPM]を示し、乳癌が正常組織よりも3.452の非常に有意な対数(log)倍成長(調整されたP値=6.57e-69)を有することを意味する。また、EDB-FNの高発現は、乳癌患者の全体的な生存率差と有意に相関していた(図8B)、リスク比は、1.9[p(HR)=0.022]であり、その予後値が証明された。
【0151】
臨床検体中のEDB-FN発現の位置及びパターンを深く理解するために、乳房腫瘍標本及び正常隣接組織をEDB-FN特異的G4抗体で染色した。 図8Cに示すように、EDB-FNは、癌細胞関連線維芽細胞(緑)、マトリックス及びマトリックス線維芽細胞(赤)、及び乳癌の有糸分裂腫瘍細胞(紫色)に多量に発現する。また、EDB-FNの発現は、隣接する組織(図8D)に比べて、乳腫瘍組織の方が有意に高かった。また、原発組織以外にも、EDB-FNは、リンパ節(図8E)、肺、及び脳のメタステーブル(図8F)においても高度に発現されており、癌胚EDB-FN同型が悪性乳房表現型において高度に発現していることが示された。
【0152】
次に、乳癌の多分子サブタイプを表す細胞株群におけるEDB-FN mRNAの内因性レベルとその浸潤的特性との相関を測定した。図8G-Hに示すように、最小浸潤性ホルモン受容体陽性(HR+)MCF7細胞は、EDB-FNの最低発現を示した。より浸潤的な3倍陰性(HR)乳癌ラインは、EDB-FNレベルの有意性が顕著であり、MDA-MB-468及びBT549が約9~10倍に増加し、MDA-MB-231細胞が14倍に増加し、Hs578T細胞が700倍以上に増加した。これらの結果から、乳癌の分子マーカーとして、EDB-FNの過剰発現のポテンシャルが示されている。
【0153】
TGF-β処理と薬剤耐性により、2D及び3D培養された乳癌細胞の成長及び形態を変化させる。
乳癌細胞の細胞増幅率が有意な生存効果を有する場合のEDB-FN発現量の変化を評価するために、FDB-FN発現が最も低い2つの細胞株、すなわちMCF7、MDA-MB-468細胞を選択した。2つの選択的圧力を適用し、1)TGF-β(5 ng/mL)を用いた長期処理によるEMT30誘導は、MCF7-TGFβ及びMDA-MB-468-TGFβ細胞を生成する。2)細胞周期タンパク質依存性キナーゼ(CDK)阻害剤であるパボキシニ(Palbociclib)と、マイクロチューブ剤パクリタキセルに対する化学的耐性を得て、それぞれMCF7-DR及びMDA-MB-468-DR細胞を生成する。MCF-DR及びMDA-MB-468-DR細胞におけるP-糖タンパク質1又は多剤耐性タンパク質(MDR1)の有意な過剰発現は、薬剤耐性の獲得を確認した。母体及び由来細胞株の形態、分子及び機能表現型を特徴としている。
【0154】
図9Aに示すように、MCF7細胞は、2D培養における典型的な上皮形態を示している。TGF-βでの長期的な処理と、掌への耐性の発現は、MCF7-TGFβ細胞よりもMCF7-DR細胞で顕著である間葉系表現型に形態的に変化した。一方、MDA-MB-468の細胞は、TGF-β処理による明らかな形態変化及びパクリタキセルに対する耐性の発達変化を示さなかった。しかし、MDA-MB-468-TGFβは、母体MDA-MB-468に比べて成長速度が向上した。
【0155】
また、9D培養に加えて、細胞は基底膜(Matrigel)で増殖し、有利なECMの確立を促進する。図9Bに示すように、9D培養では、低リスクHR+MCF7細胞は無視可能な腫瘍スフェロイド形成を示し、より浸潤的なMDA-MB-468細胞は増殖性ネットワーク形成を示した。MCF7-TGFβ及びMCF7-DR細胞は、母体MCF7細胞とは異なり、腫瘍のスフェロイドが形成されているのに対し、MDA-MB-468-TGFβ及びMDA-MB-468-DR細胞は、その母体と同様の増殖性ネットワークを形成している。これらの結果は、各癌細胞の種類と、外部のミトゲン刺激に対する応答性とが異なっていることを示している。
【0156】
TGF-β処理された薬剤耐性を有する乳癌細胞の遊走の向上
次に、TGF-β処理された薬剤耐性を有する乳癌細胞の分子量及び官能変化を解析した。TGF-βは、EMTの有力なインデューサであり、転移開始に向かってクリティカルなステップである。同様にEMTのシグナリングプログラムや薬剤耐性は、複雑に関係しており、EMT様分子マーカーは、乳癌の化学療法を拮抗させることができる。Huang,J.,Li,H.とRen,G.(2015),Int J Oncol 47,840-848。これにより、一般的なEMTマーカーN-カド、E-カルシトニン及びスラッグ(侵入マーカー)の発現が誘導細胞株で試験された。図9Cに示すように、MCF-TGFβ及びMCF7-DR細胞は、いずれもE-cad及びN-cad発現の増加を示し、Slug発現は中程度のみ増加し、MCF7細胞がTGF-β処理及び薬剤耐性の発達によって部分的なEMTサンプル表現型を得たことを示している。一方、MDA-MB-468-TGFβ細胞は、親細胞と比較してE-cad及びN-cadの変化を示さず、Slugレベルは、中等度に増加し、MDA-MB-468-DR細胞は、E-cad、N-cad及びSlug発現の増加を示した(図9D)。これらの結果は、MDA-MB-468-TGFβ及びMDA-MB-468-DR細胞が遊走タンパク質Slugを過剰発現しているにもかかわらず、前者は、TGF-β処理されていないEMTであり、後者は、薬剤耐性を有するヘテロE-M表現型を得る可能性があることを示している。
【0157】
処理した細胞集団を、トランスウェルインサート(transwell inserts)に被覆されたマトリゲルの層に侵入させる能力を分析した。図9Eに示すように、TGF-β処理及び薬剤耐性は、MCF7及びMDA-MB-468細胞に有意な浸潤的利点を与え、結晶性紫染色の遊走細胞数の増加に示されるように、親細胞よりも活力を与える。確かに、近年の研究では、部分的又はハイブリッドE-Mの表現型が腫瘍細胞の可塑性に起因するものであり、転移性が極めて良好であることが明らかとなった。Saitoh, M. (2018), J Biochem 164, 257-264。
【0158】
TGF-β処理された薬剤耐性を有する乳癌細胞におけるEDB-FN発現の向上
次に、乳癌細胞浸潤性の分子マーカーとしてのEDB-FNの潜在的な役割は、TGF-β処理及び薬剤耐性MCF7及びMDA-MB-468細胞において決定される。蛍光標識EDB-FN特異的ペプチドZD2-Cy5.521を用いて、3D培養細胞におけるEDB-FNの発現を分析した。図3A-Bに示すように、内因性EDB-FN発現は、MDA-MB-468細胞においてMCF7細胞よりも高く、図8GのmRNAレベルと一致しており、その浸潤能は、図8H及び図9Eに示される。TGF-β処理及び獲得性薬剤耐性は、図10A-BにおけるZD2-Cy5.5結合の増加と図10C-DのHoechst正規化したZD2-Cy5.5%画素強度の増加に反映された3D培養MCF7及びMDA-MB-468細胞におけるEDB-FN発現の有意な増加をもたらした。また、qRT-PCR分析は、MCF7-TGFβ及びMCF7-DR細胞におけるEDB-FNの発現が17倍及び8.5倍増加したことを示すペプチド結合結果を確認した(図10E)。MDA-MB-468-TGFβ及びMDA-MB-468-DR細胞におけるEDB-FN発現は3倍以上に増加した(図10F)。
【0159】
また、ZD2-Cy5.5プローブのEDB-FN特異的結合は、MDA-MB-468-DR細胞において、EDB-FNのノックアウト実験により確認したところ、ECO/siEDBナノ粒子治療では、ZD2-Cy5.5結合(S図9A)を管理し、かつ、消音されたEDB-FN mRNAの発現量は、70%を超えていることが確認された(S図9B)。これらの結果は、ヘテロ接合E-M様変化が得られるかどうかにかかわらず、乳癌細胞の浸潤性の増加がEDB-FNの有意な増加につながることを示している。したがって、EDB-FNの過剰発現は、浸潤性乳癌細胞及び低リスク乳癌細胞から進化した乳癌細胞と関連している。
【0160】
浸潤性乳癌細胞におけるAKTの治療用アブレーションは、浸潤及びEDB-FN発現を低減する。
癌抑制薬に対する腫瘍の非侵襲的な治療モニタリングは、意思決定とタイムリーな介入を促進するために不可欠である。EDB-FNが治療予測マーカーであるかどうか、及びその発現が乳癌細胞の浸潤ポテンシャルの変化と関連しているかどうかをテストするために、TGF-β処理された薬剤耐性を有するMCF7及びMDA-MB-468細胞をMK2206-HCl(非常に特異的なパン-AKT阻害剤)で処理し、PI3K/AKTシグナル伝達によって誘導される腫瘍細胞の増殖を阻害することが示された。PI3K/AKTシグナル伝達は、複数の癌の進行、転移及び薬剤耐性に関連する主要なシグナル伝達カスケードである。
【0161】
リン酸化AKT(T308及びS473)及び総AKTレベルの試験により、TGF-β処理された薬剤耐性を有する浸潤性MCF7及びMDA-MB-468細胞集団における糸分裂を促進するAKTシグナル伝達軸の上昇が初めて確認された(図11A)。TGF-β処理された薬剤耐性を有するMCF7及びMDA-MB-468細胞におけるリン酸-AKT-T308及びリン酸-AKT-S473の平均水は、それぞれの親細胞と比較して有意に上昇した。また、総AKTは、TGF-β処理された細胞において、2つの薬剤耐性細胞株で上昇した。更に、以前の研究は、選択的せん断媒介EDB-FN発現調節におけるリン酸化AKT-SRp40経路の役割を示した。(Bordeleauら,(2015),Proc Natl Acad Sci USA 112,8314-8319。TGF-βの上昇EDB-FNのメカニズムと薬剤耐性を決定するために、リン酸化SRタンパク質(SRp55及びSRp40)の発現を検出した。より浸潤的なMCF7-TGFβ、MCF7-DR、MDA-MB-468-TGFβ及びMDA-MB-468-DR細胞は、それぞれの親細胞と比較して、MCF7-TGF-β及びMDA-MB-468-TGFβのみがSRp40を引き上げた。浸潤的な細胞誘導体をMK2206-HClで処理すると、図4Bに示すように、AKTのリン酸化(T308及びS473)が強く抑制される。MK2206-HCl処理の4つの細胞株において、リン酸化SRp55の上昇も弱まり、これらの浸潤的な細胞におけるEDB-FNの上昇は、少なくとも部分的にリン酸化AKT-SRp55シグナル伝達経路によって制御できることを示している(図11B)。
【0162】
機能的には、MK2206-HCl媒介のリン酸化AKT枯渇は、TGFβ処理された、薬剤耐性を有する細胞誘導体の浸潤ポテンシャルを減少させる(図11C-D)。これは、TGF-β処理された薬剤耐性を有するEDB-FN過剰発現のMCF7及びMDA-MB-468細胞におけるEDB-FNの発現の有意な低下を伴い、対応するDMSO処理の対照と比較してmRNAレベルが有意に低下したという証拠(図11E-F)、3D培養におけるZD2-Cy5.5染色強度の低下(図11G-H)。具体的には、MDA-MB-468-DR細胞では、EDB-FN mRNAは適度な減少(約10~15%)を示したが、3Dスフェロイド発現のインプレースEDB-FNは有意に減少し、MK2206-HCl処理の浸潤の大幅な減少に寄与する可能性がある。これらの結果は、EDB-FNが乳癌細胞株の浸潤性と正の相関を示し、EDB-FN発現変化と治療介入反応との潜在的な相関を示す。
【0163】
SR55-EDB-FN経路と浸潤性との関連を更に探求するために、TGF-β処理された薬剤耐性を有するMCF7及びMDA-MB-468細胞をsiEDB-FN又はsiSRSF6を含有するナノ粒子でトランスフェクションすることで、細胞運動に対する機能喪失の影響を評価した。図12Aに示すように、siEDB-FN(siE)及びsiSRSF6(siS)処理は、それぞれNC(siN)と比較して、4つの誘導細胞株におけるEDB-FN及びSRp55の発現の低下をもたらす。更に、SRp55(siSRSF6)のダウングレードはEDB-FNレベルのダウングレードにもつながり、EDB-FN発現の調節におけるSRp55の役割を確認した。また、EDB-FN及びSRp55のレベル低下は、TGF-β処理された薬剤耐性を有するMCF7及びMDA-MB-468細胞の浸潤ポテンシャルの低下と相関しており(図12B-C)、EDB-FNが乳癌細胞浸潤パターンの調節に直接的又は間接的な役割を果たしていることを示している。MK2206-HCl処理されたMDA-MB-468-DR細胞をTGF-βで処理すると、これらの細胞におけるEDB-FNの過剰発現を救うことができることが分かった(図12D)。一方、MK2206-HClの処理は、MCF7-DR細胞のEDB-FN発現(図12F)及び浸潤(図12G)を減少させたが、TGF-βの添加は、EDB-FNの発現又は浸潤ポテンシャルを救わなかった。可能なのは、TGF-β及びAKTシグナル伝達経路が癌で密接に絡み合い、pAKTがTGF-β誘導腫瘍促進反応を阻害することが示されているので、TGF-βに対するpAKT欠失変化ER MCF7-DR細胞の反応である。それにもかかわらず、この結果は、EDB-FN発現パターンと細胞の浸潤ポテンシャルとの間に強い正の相関関係を示し、乳癌細胞の浸潤分子マーカーとしてのEDB-FNの可能性を示す。
【0164】
議論
CA15.3、癌胚抗原(CEA)、CA125、超音波、マンモグラム、MRI、PET、CTなどのイメージングを含む多くの血液バイオマーカーは、通常、原発性乳房腫瘍疾患及び再発を検出し、治療応答を評価するために使用される。Bayoら,(2018)Clin Transl Oncol 20,467-475.しかし、疾患の鑑別診断とリスク階層化能力は、限られており、偽陽性の診断率が高く、高浸潤性及び転移性乳房腫瘍を正確に検出し、低リスクの不活性腫瘍と区別するために特異的マーカーの必要性を強調している。また、乳房腫瘍は、多くの場合に、化学療法及び標的薬に対する内天性又は後天性耐性を示す。適切な分子マーカーがない場合に、化学療法介入の有効性を積極的に監視及びモニタリングし、薬剤耐性表現型の出現をタイムリーに検出し、患者の治療に別の障害を形成する。
【0165】
これらの問題を解決するために、本研究では、ECM癌タンパク質EDB-FNの動的変化と乳癌細胞浸潤ポテンシャルの動的変化について検討した。低リスク癌細胞から進化した浸潤的な細胞が部分的なE-M表現型を示し、EDB-FNを過剰発現することができることを発見した。代わりに、標的薬によるこれらの高リスク癌細胞の浸潤能力の阻害は、EDB-FNの過剰発現を排除し、EDB-FNレベルと乳癌細胞の浸潤力との直接的な関係を証明する。また、乳癌細胞の薬剤耐性の発達に伴いEDB-FNが上昇したと報告されたのは今回が初めてである。
【0166】
本研究で用いた2つの異なる乳癌細胞株の間では、両細胞株とも上皮表現型を示したが、最も浸潤性の低いHR MCF7細胞の内因性EDB-FNレベルは、浸潤性の高い三陰性MDA-MB-468細胞よりも有意に低かった。誘導耐性及び長期TGF-β処理は、異なるシグナル伝達機構によって2つの細胞株の分子表現型に顕著な変化をもたらす可能性がある。新たに出現した侵入集団は、その親細胞よりも攻撃的であり、転移前のヘテロE-M表現型及びリン酸化AKTシグナル伝達の増加を有する。実際に、近年の研究では、E-Mスペクトル上の異なる位置に沿って癌細胞のサブ集団が存在することにより、腫瘍に可塑性が認められ、進行、転移、蒸れが促進されることが示唆されている。これらの細胞株のそれぞれは、他の未研究のメカニズムを介して生存の利点を獲得可能性もある。しかし、シグナル伝達機構にかかわらず、得られた浸潤性を有するすべての細胞はEDB-FN発現の増加を示した。逆に、標的治療で浸潤性細胞を処理すると、その浸潤性が低下し、EDB-FN発現が低下する。その後のTGF-β処理がMCF7-DR細胞ではなくMDA-MB-468-DR細胞におけるEDB-FNの発現を上方修正した場合にのみ、浸潤性が回復し、乳癌の積極的なモニタリング及びモニタリングのための治療予測マーカーとしてのEDB-FNの役割を示す。
【0167】
浸潤的な細胞におけるEDB-FNの上昇の正確なメカニズムは謎のままである。遺伝的レベルでは、EDB-FNは、選択的なせん断イベントによって生成され、FN1転写物にEDBエクセルを含むプロセスをもたらし、このプロセスは、ファミリーのSR(セリン及びアルギニンが豊富な含有される)タンパク質のせん断調節によって制御される。選択的せん断は、EDB-FN同種の形成に不可欠であるため、SRタンパク質がこのプロセスに関与することは避けられない。しかし、腫瘍改質中のEDBエキネトトロジーの優先順位と差異に含まれる潜在的なメカニズムに関する研究は限られている。以前の研究は、組織硬度の増加がPI3K/AKT媒介SRp40リン酸化に直接上昇し、乳癌細胞のエクチックイントイント及びEDB-FN分泌を増加させることが示されている。Bordeleauら,(2015),Proc Natl Acad Sci USA 112,8314-8319。本研究では,MCF7及びMDA-MB-468細胞における薬剤耐性の発達とTGF-β処理がSRp55リン酸化,ならびにリン酸化-AKTの増加を持続的に上昇させた。RNAiを直接使用するか、MK2206-HClを間接的に使用することでSRp55をノックアウトすると、EDB-FN発現及び侵入の可能性が大幅に低下した。SRp55は、通常、乳癌及び大腸癌で変異し、KIT、CD44及びFGFR147などの複数の腫瘍関連遺伝子の選択的切断パターンに影響を与えるため、SRp55の欠失が乳癌細胞の浸潤を減少させるのは驚くべきことではない。しかし、SR55の枯渇によるEDB-FN発現の低下を報告したのは初めてである。SRp55及び他のSRタンパク質が切断体におけるアンタゴニストhnRNPsとどのように相乗的に作用するかは、様々な内的及び外的刺激に応答して複雑な選択的せん断プロセスを調節するために、まだ検討されていない。更に、MK2206-HCl処理は、リン酸化AKTの高い特異性ノックダウン及びSRp40/SRp55レベルのその後の細胞特異的なダウングレードを示した。MK2206-HCl処理は、EDB-FNの発現及び浸潤を有意に減少させたが、完全には排除されず、他の有糸分裂タンパク質(AKT3など)又は腫瘍発生に関与するEDA-FN同型の代償的活性化も示した。Han, Z.とLu, Z. R. (2017), J Mater Chem B 5, 639-654。乳房悪性腫瘍における複雑な成分と分子シグナル伝達を考えると、異なる薬物処理後のEDB-FN発現及び機能の異なる空間的及び時間的変化を評価することは興味深いである。
【0168】
EDB-FNは、乳癌、口腔癌、肺癌、前立腺癌など、さまざまな種類の癌で過剰に発現する。Khanら,(2005),Exp Lung Res 31,701-711;Albrechtら,(1999),Histochem Cell Biol 112,51-61。Exp肺胞子31、701-711;ALBCCHTら(1999)、組織化細胞BIOL 112、51-61。本来、癌に関連する線維芽細胞(CAFS)や内皮細胞のみで分泌されると考えられるが、腫瘍細胞、特に低浸潤の腫瘍細胞では、EDB-FNが豊富に産生されることが知られている。EDB-FNは、胚発生時に上昇し、創傷治癒、組織修復、血管新生の間に一時的に活性化されるが、健康な成人組織ではほとんど欠失する。Whiteら,(2008),J Pathol 216,1-14。実際に、本研究における免疫組織化学的分析は、EDB-FNが有糸分裂乳腺腫瘍細胞において強く発現し、マトリックス、マトリックス線維芽細胞と癌細胞との間の線維芽細胞において、原発性腫瘍標本及び転移部位において拡散性染色され、正常な乳房組織における発現が無視できることを示し、悪性腫瘍の進行におけるEDB-FNの複雑な構造及び機能的役割を示す。TCGA/GTEx試料では、EDB-FNは乳癌で有意に過剰発現し、患者の生存率と負の相関を示した。更に、EDB-FNは、細胞外位置とアクセス性のために、新しい診断及び治療レジメンを設計するための魅力的なターゲットとなっている。以前の研究は、抗体媒介EDB-FN標的(L19、BC-1を使用)が血管新生、炎症及び癌幹細胞治療に及ぼす可能性を実証している。Marianiら,(1997),Cancer 80,2378-2384。ZD2、APTTEDBのようなEDB-FNN特異的ペプチドは、小型で免疫原性が低く、組織の浸透性が高いことから、抗原性ECMを標的とした場合に有利である。Zahndら,(2010),Cancer Res 70,1595-1605。また、EDB-FN用のZD2プローブの特異性及び優れた結合性は、直翻訳の衝撃性を有する。本発明者らは、ZD2標的型MRI造影剤を用いたマウスモデルにおいて、非浸潤かつ低浸潤の乳房及び前立腺癌の差動診断に成功した。Hanら,(2017),Bioconjug Chem 28,1031-1040。この検討結果は、分子イメージングに基づく検出、リスク層化、乳癌の積極的な監視とモニタリング、化学療法及び未化学療法の場合の疾患の進行を追跡するためにEDB-FNが使用される可能性を特定するための新しい道を開いた。
【0169】
以上のことから、この研究では、高浸潤の乳癌と、危険度の高いものに進化する低リスク細胞とに、EDB-FN式が対応付けられていることが示されている。癌細胞は可塑性であるが、この相関は確立され、乳癌細胞の浸潤特性の動的変化はEDB-FN発現レベルの対応する変化をもたらす。EDB-FNの得能性耐性の初めての証明に加えて、この増強発現部分は、AKT-SRp55シグナル伝達経路のリン酸化によって起こることを示した。これらの観察結果は、EDB-FNが診断イメージングと治療介入の文脈で乳癌の進行をモニタリングする有望な分子マーカーであることを示している。
【0170】
材料及び方法
細胞株及び培養
MCF7、MDA-MB-231、BT549、及びHs578T細胞は、ATCC(Manassas、VA)から購入した。MCF7-DR細胞(500 nM PALICIB耐性)、MDA-MB-468、MDA-MB-468-DR(100 nMのパタキセル耐性)細胞は、DR.Ruth Keri(CWRU、Cleveland、OH)の一種である。MCF7-TGF-β、MDA-MB-468-TGF-β細胞は、母体を5 ng/mLのTGF-β(RnD Systems,Minneapolis,MN)で少なくとも7~10日間処理することにより得た。乳癌細胞株は、10%ウシ血清(FBS)と100単位/mLペニシリン/ストレプトアビジン(P/s)を補充したDulbecco改良Eagle培地(DMEM)で培養した。MCF7、MCF7-DR及びHs578T細胞は、更に0.01mg/mLヒトインスリン(シグマAldrich、St. Louis、MO)を補充した。 すべての細胞は37°C及び5%CO2で増殖する。MycAlertTMマイコプラズマ検出キット(Lonza,Allendale,NJ)を用いて細胞株にマイコプラズマがないか試験した。細胞株は、また、ゲネカDNA研究所(Burlington、NC)によって同定された。
【0171】
MK2206-HCl処理
TGF-β処理された、薬剤耐性を有する浸潤性MCF7、MDA-MB-468の集団を、MK2206-HCl(汎-AKT阻害剤、SelleckChem(Boston,MA)から購入した)で処理した。この処理のために、8×10細胞を6ウェルプレートに置いた。24時間付着後、細胞をMK2206-HClで2日間処理した(MCF7細胞2μM用量、MDA-MB-468細胞4μM用量)。等量のDMSOで処理した細胞を対照として用いた。処理後、関連する章で説明したように、細胞をカウントし、侵入及び3D成長アッセイのためにMatrigel及びtranswell insertsに同数の細胞を配置した。処理された細胞と未処理細胞を同様のカウントし、タンパク質ブロットとqRT-PCRのそれぞれに使用されるタンパク質及びRNA抽出を収穫する。
【0172】
遺伝子データ解析
遺伝子発現解析及び生存曲線データは、TCGA(腫瘍及び正常)及びGTEx(正常)データベース(1084個BRCA及び291正常組織サンプル)から、EDB-FNトラスクリプト(ENST0000043207.6)の乳房腫瘍-正常比較及び全体生存曲線を提供したWebサーバGEPIA228から導出した。表現データは、差分解析のために変換された第1のlog2(TPM+1)であり、logFCは、中央値(腫瘍)-中央値(正常)と定義される。GEPIA2は、ログランク試験、又はMantel-Cox試験を用いて、生存解析の仮説検定、Coxのハザード比計算のためのCox PHモデル、差動遺伝子の発現解析のためのANOVA又はLIMMAを使用する。
【0173】
ヒト組織標本及びIHC
ヒト組織調達設備から、ヒト組織標本(乳房原発性腫瘍、正常な隣接組織、肺、リンパ節、脳の転移点)を、ケース西予備大学(CWRU)のヒト組織調達設備(Human Tissue Procurement Facility)から取得した。すべてのサンプルは、識別され、分類される。組織スライスとIHCサービスは、CWRU統合がんセンター組織リソースコア施設(Tissue Resources Core Facility of the Comprehensive Cancer Center)とクリーブランド大学病院(University Hospitals of Cleveland)によって提供される(P30 CA43703助成金)。短時間の抗原修復工程(クエン酸緩衝液中125°Cで30秒)の後、1:100希釈抗EDB-FN抗体G4クローン(Absolute antibody,UK)を用いてEDB-FNのIHCを行った。スライドは、証明された病理学者によって見直される。画像は、Bx61VSスライド走査顕微鏡(Olympus、Waltham、MA)で40X対物レンズでキャプチャされ、OlyVIAソフトウェアで処理される。
qRT-PCR
メーカーの指示に従い、RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen,Germantown,MD)を使用して、細胞及び組織から総RNAを抽出する。miScript II RTキット(Qiagen)を用いてRNA濃度を測定し、1 ug RNAを用いて逆転写を確立し、SyBr Green PCR Master Mix(Applied Biosystems,CA)を用いてqPCRを行った。18S又はβ-アクチン発現を対照として、2-ΔΔCt法により遺伝子発現を分析した。
【0174】
3D腫瘍スフェロイドの成長及びZD2-Cy5.5染色
Matrigel成長法では、5×10個の乳癌細胞を5%のMatrigel含有培地に懸濁し、CorningTM MatrigelTM膜マトリックスの厚層に広げた。10X対物レンズを備えたMoticam T2カメラを使用して、最大5日間、3Dマトリックスで腫瘍スフェロイドを形成する細胞の能力をモニタリングし、撮影した。2~4日後、Hoechst-33342(5μg/mL)及びZD2-Cy5.5(100nM)で37℃で30分間細胞を染色した。PBSを3回洗浄した後、新しい培地を添加し、Olimpus FV1000共焦点レーザー走査顕微鏡(10X対物レンズ)で細胞をイメージングし、Z-スタック画像を得た。FIJIソフトウェアによる画像解析では、ZD2ペプチドとEDB-FNの結合は、Hoechst 33342の画素強度に対するZD2-Cy5.5の画素強度の比として定量化される。
【0175】
ウェスタンブロット
以上のようにして全細胞蛋白質を抽出した。Vaidyaら,(2019)Bioconjug Chem 30,907-919。タンパク質濃度をLowryにより測定し、等濃度のタンパク質抽出液(40g)をSDS-PAGEゲル上に展開し、ニトロセルロース膜に移し、一次抗体で一晩免疫ブロッティングした。抗EDB-FN抗体(G4クローン)は、1:1000希釈で用いた。以下の一次抗体(1:1000希釈)、抗E-カドヘリン(Cat#3195)、抗-Slug(Cat#9585)、抗-リン酸化-T308-AAKT(Cat#13038)、抗-リン酸化-S473-AKT(Cat#4060)、抗-汎-AKT(Cat#4691)、抗-MDR1(Cat#12683S)は、Cell Signaling Technology(Danvers,MA)から購入された。抗-ヒストンH3(Cat#4499)及び抗-β-アクチン(Cat#4970)を負荷対照として用いた。抗-リン酸エピトープ(Phosphoepitope)SRタンパク質(Cat#MABE50、クローン1H4)及び抗-SRp40(Cat#06-1365)抗体は、Miriipore Sigma(Temecula,CA)から購入され、1:500希釈で使用されている。抗N-カドヘリン抗体(Cat#76057)は、Abcam(Cambridge,MA)から購入され、1:500希釈で使用されている。
【0176】
Transwell測定
侵入アッセイでは、乳癌細胞を血清欠失培地で一晩空腹にした。翌日、0.3mg/mL CorningTM MatrigelTM膜マトリックス(Corning,NY)でコーティングされたtranswell inserts(VWR,Radnor,PA)に1-2×10細胞を入れた。1~2日後、Q-綿棒で小さい室を拭き取り、舗装された細胞を除去した。小室底部の侵入細胞を4%ポリアセタールで固定し、0.1%結晶性紫で20分間染色した。余分な染色剤を水道水で洗浄し、10X対物レンズを備えたMoticam T2カメラを使用して紫色の遊走細胞の画像を撮影した。
【0177】
遺伝子ノックアウト測定
ECO/siRNAのナノ粒子は、前述したように配合した。Gujratiら,(2016),Adv Healthc Mater 5,2882-2895。簡潔に説明すると、アミノ脂質ECO(エタノール中の5mM原液)とsiLuc(陰性対照NCとして)又はsiEDB-FN又はsiSRSF6を100nMの最終siRNA濃度とN/P=10で30分間混合し、ECO/siNC、ECO/siEDB又はECO/siSRSF6ナノ粒子の自己組織化をそれぞれ実現した。トランスフェクションの場合は、ナノ粒子製剤を培地と混合し、細胞に添加する。24~48時間後、細胞を採取し、transwell実験を行い、又はMatrigelに添加し、上記のようにZD2-Cy5.5で染色した。siRNA二本鎖は、Dharmacon(Lafayette,CO)から購入した。
【0178】
統計解析
特に断りのない限り、すべての実験は、独立して3回行った(n=3)。棒グラフは、平均±s.e.mとして表され、1つのドットは、繰り返しを表した。Graphpad Prismバージョン7.03を使用して統計分析を行った。ペアなし学生のt検定とMann-Whitney U検定を使用して、2つのグループ間のデータを比較した。Kruskal-Wallis試験を用いて乳癌細胞株間のEDB-FN mRNAデータを分析した。p<0.05は、統計的に重要であると考えられている。
【0179】
実施例3:エクストラドメイン-Bフィブロネクチンの磁気共鳴分子イメージングによる口腔癌の検出と同定の有効性の前臨床評価
口腔扁平上皮癌(OSCC)は、口腔内の最も一般的な悪性腫瘍であり、口腔悪性腫瘍の90%以上を占める。治療計画の改善にもかかわらず、OSCC患者の5年間の生存率は、50%程度であり、ほとんど改善していない。この望ましくない予後は、末期診断、局所浸潤及び転移、切除後の再発、及び早期及び正確な検出のための標的バイオマーカーの欠如から生じる。患者の60%以上が進行腫瘍と診断され、総生存率は、20%に低下した。従来の組織学的グレーディングスキームは、患者の予後を確実に予測できないため、臨床予後を改善するためのOSCC診断方法の開発が必要である。
【0180】
OSCC患者の定期的な検査は、病気の境界をよりよく描写するために、健康診断と診断画像が含まれている。ほとんどの患者は、診断が困難な局所又は地域浸潤性疾患を有し、局所リンパ節の微小転移は望ましくない結果と非常に関連している。口腔の物理的な検査は、可能であるが、ルーチン検査は、一貫してすべての生物学的に関連する前駆体病変を識別しないし、補助スクリーニング技術は、広く使用される正当化するために適切な感受性及び特異性を欠いている。OSCCの一般的な診断イメージング方法には、コンピュータ断層撮影(CT)と磁気共鳴画像法(MRI)が含まれる。いずれも有価診断情報を提供するが、MRIは優れた軟部組織対比を提供し、原発性腫瘍の境界、局所浸潤、転移検出をより正確に描写した。したがって、MRIは、通常、外科的切除の範囲、その後の組織再建、及び治療効果及び再発の治療モニタリングを計画するために使用される。Palaszら,(2017),Pol J Radiol 82:193-202。最も一般的に用いられているMRI造影剤は、ガドリニア系の造影剤(GBCA)である。しかし、現在のGBCAは非標的であり、疾患の同定を行うことができない非特異的造影増強を提供する。Zhou Z, Lu ZR (2013), Wiley Interdiscip Rev Nanomed Nanobiotechnol 5:1-18。そのため、したがって、診断を増強し、タイムリーで正確な治療を導くために、正確な検出、描画、及び特性評価のためのOSCCの正確なイメージングを可能にするターゲットGBCAの開発に対する臨床的ニーズは、満たされていない。
【0181】
腫瘍細胞外マトリックス(ECM)タンパク質は腫瘍細胞と密接に相互作用し、腫瘍の進行に関連する多くの生物学的プロセスを媒介する。ECMフィブロネクチンの増加は、腫瘍の浸潤、転移及び治療耐性と関連している。エクストラドメイン-Bフィブロネクチン(EDB-FN)は、膵臓癌、乳癌及び口腔癌を含む多くの浸潤性癌において、正常な成人組織においてほとんど発現しない新生血管形成に関与するフィブロネクチン切断変異体である。Han Z, Lu ZR (2017), J Mater Chem B 5:639-654。上皮腫瘍細胞におけるEDB-FNの存在は、マトリックス細胞によって産生されるEDB-FNと結合してタンパク質を産生する固有の能力を示す。最近の研究では、前立腺癌と乳癌におけるEDB-FNの差発現が腫瘍の浸潤性と正の相関を示した。Ayat等人 (2018), ACS Med Chem Lett 9:730-735;Ayat等人 (2019), Front Oncol 9:1351。OSCCでは、EDB-FNは100%以上の原発性腫瘍及び63-96%の子宮頸転移において可変発現を示し、浸潤性OSCCの診断画像においてその可能性を示唆した。Birchler等人 (2003), Laryngoscope 113:1231-1237。
【0182】
腫瘍微小環境におけるEDB-FNを選択的に標的とする小ペプチドZD2を開発したHanら,(2015),Bioconjug Chem 26:830-838。ZD2と臨床GBCAガドテリドールの組み合わせは、腫瘍微小環境を磁気共鳴分子イメージング(MRMI)することができる新しいEDB-FN標的造影剤ZD2-Gd(HP-DO3A)を生成した。Hanら,(2017),Bioconjug Chem 28:1031-1040。ZD2-Gd(HP-DO3A)のさらなる最適化により、T1緩和性を向上させるより効果的な標的造影剤ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)(MT218)が生成された。標的薬を有するMRMIは、前立腺癌及び三陰性乳癌の浸潤性を有意に増強する。用量研究は、MT218がGd(HP-DO3A)又はガドテリドール(0.1mmol/kg)の推奨臨床用量の20%で使用される場合でも、三陰性乳癌におけるかなりの造影増強(大きいものではないにしても)を提供することを示した。15. Ayatら,(2018),ACS Med Chem Lett 9:730-735。ここで、EDB-FNを発現する浸潤性OSCCをMRMIを用いて診断画像化を行う際のMT218の投与量の低下の有効性を実証した。
【0183】
方法
細胞培養
ヒトOSCICセル線CAL27、SCC4は、アメリカンタイプのカルチャー・コレクション(American Type Culture Collection,ATCC,Manassas,VA,USA)から購入した。OSCC細胞株HSC3は、日本生物資源研究センター細胞バンク(Japanese Collection of Research Bioresources Cell Bank,Ibaraki City, Japan)CAL27及びHSC3を介して、10%の胎児ウシ血清(FBS,Corning)を補充した Inc., Corning, NY, USA)及び1%ペニシリンストレプトマイシン(PS,Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)のダルベコ改良Eagle培地(DMEM,ATCC)で培養した。SCC4は、10%FBS、1%PS、及び400ng/mLのヒドロコルチゾン(Sigma-Aldrich,St-Lout,MO,USA)を添加したDMEMで培養した。安定した緑色蛍光タンパク質(GFP)及びホタルルシフェリンを発現させた細胞株を、CMV-Luciferas-2A-GFPレンチウイルスを用いた細胞を導入し、GFP発現のために蛍光活性化細胞の選別を行って生成した。各親細胞株の完全培地では、CAL27-GFP、SCC4-GFP、HSC3-GFP細胞株を培養した。全細胞を37℃で5%COでインキュベートした。
【0184】
半定量リアルタイムPCR
細胞ペレットからRNAをRNeasyキット(Qiagen,Hilden,Germany)で抽出した。RNA試料を、miScript II逆転写キット(Qiagen)を用いて、cDNAに逆転写した。半定量リアルタイムPCRは、製造者の推奨に従ってSYBR Green Master Mix(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を用いて行った。相対mRNAレベルは、標準的な2-ΔΔCT法を用いて計算され、対照遺伝子として18Sで発現される。BioRad CFX ConnectリアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad Laboratories、Hercules,CA,USA)を用いてcDNA合成とqRT-PCRを行った。プライマーは、Integrated DNA Technologies(IDT,Coralville,IA,USA)から購入された。
【0185】
タンパク質ブロット
細胞溶解液は、2x Laemmliサンプル緩衝液(Bio-Rad Laboratories)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Holding AG,Basel,Switzerland)を用いて、細胞塊からメーカーの推奨に従って調製した。溶解物を沸騰させ、4℃及び15000rpmで15分間遠心分離した。上清を回収し、Lowry(Bio-Rad社)を介して蛋白質濃度を測定した。SDS-PAGEを用いてタンパク質抽出物(50μg)を解析し、氷下でニトロセルロース膜(セルシグナリングテクノロー、ダンバース、MA、USA)に移した。Bio-Rad Mini-PROTAN Tetraシステム(Bio-Rad Laboratories)を用いてSDS-PAGE及び転送を行う。5%牛乳で膜を閉じ、洗浄し、抗-EDB-FN(G4、Absolute Antibody、Oxford、UK)及び抗-β-アクチン(CST)一次抗体(1:2000)で5%ウシ血清アルブミン(BSA、シグマアルドリッチ)で一晩インキュベートした。膜を洗浄し、室温でスパイシーな根ペルオキシダーゼと結合させた抗-マウス及び抗-ウサギIgG二次抗体(1:1000、CST)を5%BSAで1時間インキュベートした。洗浄後、SignalFire Plus ECL試薬(CST)で膜を活性化し、BioRad Molecular Imager ChemiDoc XRS+システム(Bio-Rad Laboratories)でイメージングした。
【0186】
スフェロイドの形成及びペプチド結合に関する検討
カバープレート(4-ウェル、Ibidi GmbH,Martinsried,Germany)は、Cultrex基底膜マトリックス(350μL、Trevigen,Gaithersburg,MA,USA)でコーティングされている。スフェロイドを形成するために、2×10個OSCC細胞を準備ウェルに接種し、2日間インキュベートし、モティカムT2カメラ(Motic、Hong Kong、China)で撮影した。ペプチド結合について、1×10細胞を調製したウェルに接種し、2日間インキュベートした。スフェロイドを上記のようにして合成したZD2-Cy5.5(125nM)とHoechst(1:2000で希釈)(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)染料で15分間染色し、DPBS(Thermo Fisher Scientific)で3回洗浄し、Olympus FV1000システム(OlympusLife Science, Tokyo, Japan)は、共焦点レーザー走査顕微鏡で画像化される。
【0187】
得られた共焦点蛍光画像を、FIJIを用いて解析した。定量のために、画像に閾値処理を施し、2種類の染色剤のROIを生成する。スフェロイドサイズの場合、Hoechst ROIの平均寸法が計算された。染色強度について、ZD2-Cy5.5とHoechst ROIの平均信号強度と、平均強度との比率を算出した。
【0188】
Transwellの遊走及び浸潤アッセイ
OSCC細胞を一晩空腹にし、無血清培地(1×10個細胞)にTranswell ThinCert 小室(Greiner Bio One,Kremsmunster,Austria)の中に接種し、100 μL 1.0 mg/mL Matrigel(Corning)でコーティング(浸潤)又は塗布(移行)せず、完全な培地の上に置いた。移行と浸潤のための小室は、それぞれ1日と2日間インキュベートされた。小室の下側の細胞を10%ホルマリンで固定し、0.1%結晶性紫で染色し、Moticam T2カメラで撮影した。
【0189】
動物モデル
動物実験は、ケース西予約大学(CWRU,Cleveland,OH,USA)動物保護・利用委員会(IACUC)が承認した動物プログラムに従って行われる。Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME,USA)から購入した雌4週の胸のない裸のマウスは、CWRUの動物コア研究所に収容された。麻酔した後のマウスは、右腹皮下に4×10GFP/ルシフェラーゼ発現OSCC細胞(各細胞株n=5)を接種し、これらの細胞を100 μL Matrigel HC(Corning)とDPBSの1:1混合物に投与した。腫瘍のサイズをキャリパーで測定し、モニタリングする。成長の4週間後、腫瘍は、MRI実験を行うのに十分な大きかった。
【0190】
MR分子イメージング
MRIの実験は、3T MRS-3000システム(MR Solutions,Surrey,UK)を用いて行った。標的造影剤MT218(Molecular Theranotics、LLC、Cleveland、OH、USA)を注射する前と後の10分、20分及び30分間、0.04mmol/kgの用量で、呼吸ゲート制御を備えたT1強調高速スピンエコー軸位断シーケンスを使用した(TR=305ms、TE=11ms、FOV=40×40mm、スライス厚さ=1mm、スライス数=15、Nav=2、行列=256×248)。2日後、同じマウスで0.10mmol/kgの臨床用量を有する非標的臨床薬ガドテリドールを用いて該プロトコルを繰り返した。
【0191】
画像は、DICOM形式でエクスポートし、FIJIを用いて解析した。各時点のコントラスト対ノイズ比(CNR)は、平均腫瘍強度と平均筋強度の差をノイズの標準偏差で割った値として計算された。
【0192】
異種移植組織学的分析
マウスは、IACUC指針に従って安楽死させた。異種移植腫瘍は、10%ホルマリンで固定され、パラフィンで包埋され、カバーガラス上に5μmのスライスに切断された。組織は、1:100希釈EDB-FN特異的抗体G4を用いて、組織形態学的従来のH&E染色及び免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学の前に、クエン酸緩衝液を用いて125℃の圧力鍋で30秒間抗原修復を行った。組織調製及び染色は、CWRU組織資源センターによって行われる。
【0193】
ヒト組織の取得と組織学的分析
CWRUのヒト組織調達施設(Human Tissue Procurement Facility)から5μmスライスのヒト正常舌及びOSCC試料を得た。組織試料は、CWRUの機関審査委員会(Institutional Review Board)が承認した非ヒト被験者研究プログラムに従って完全に同定された。前述のように、EDB-FNの免疫組織化学染色は、組織資源センターによって行われる。
【0194】
統計解析
特に断らない限り、全ての実験を独立して3回複製した。また、2つのグループ間の統計的な意味は、ペアリングを行っていないT検定を用いて算出した。そして、単一因子分散分析と双方向分散分析を使用して、2つのグループと1つの独立変数を持つグループ間の統計的有意性を計算し、Fisherの最小有意差事後テストを実行した。P値が0.05未満は、統計的に重要であると考えられる。すべてのデータは、平均±標準誤差で表されている。
【0195】
結果
ヒト組織におけるEDB-FNの発現
患者のOSCCに対する標的EDB-FNの臨床的相関を評価するために、EDP-FN特異的G4モノクローナル抗体を用いて、免疫組織化学的にヒト組織試料中のEDB-FNの発現を評価した。正常舌組織は、EDB-FNの弱点状染色が主に間質であることを示しているが、未処理原発性OSCC及び転移性試料は、悪性上皮細胞及び周囲間質の強い染色を示した(図13a-c)。これらの結果は,先に報告したヒトOSCCにおけるEDB-FN表現の結果と一致した。興味深いことに、新しい補助化学療法後の腫瘍は、未治療の腫瘍と比較して染色の減少を示し、処理後のEDB-FNの下方調整を示している可能性がある(図13d)。これらの結果は、原発性及び転移性OSCC分子イメージングにおける癌タンパク質標的としてのEDB-FNの可能性を探求することを強調する。
【0196】
OSCC細胞株の同定
3種類のヒトOSCC細胞株を用いてEDB-FNのMRMIのOSCC診断イメージングに対する有効性を評価した。CAL27とSCC4は、それぞれ治療前と治療後に舌の主要部位から分離された。CAL27は、上皮、玉石様の細胞レイアウトを維持し、SCC4は、多倍体巨細胞で満たされている(図14a)。興味深いことに、多倍体巨細胞は、通常、処理圧力による形態学的変化を示し、腫瘍の再発、薬剤耐性及び不均一性と関連している。一方、HSC3は、頸部リンパ節転移から分離され、腫瘍モデルにおいて高い転移ポテンシャルを有する。
【0197】
CAL27は、基底膜抽出物上に培養してスフェロイドを形成する際に、多数の小さな点状スフェロイドを形成し、HSC3及びSCC4は、ゲル全体にわたって大きな密なネットワークを形成する(図14a)。また、Trranswellアッセイは、細胞株の浸潤及び遊走能力をそれぞれ特徴付けるために、Matrigelコーティングを使用及び使用せずに行われた。2つの実験において、CAL27は、限られた移行又は侵入能力を示し、HSC3及びSCC4は重大な侵入の可能性を示した(図14b)。これらのデータは、転送HSC3及び処理後SCC4が浸潤性の高リスクOSCCを表し、CAL27が浸潤性の低リスクOSCCを表していることを示している。
【0198】
EDB-FNは、高リスクOSCCに関連する標的可能な癌タンパク質である。
EDB-FN発現を分析し、OSCC浸潤性との相関を決定した。qRT-PCR分析は、EDB-FN mRNAが非浸潤的なCAL27と比較して浸潤的HSC3(21倍)及びSCC4(234倍)細胞で有意に上昇したことを示している(図15a)。更に、SCC4は、HSC3の11倍高いEDB-FN mRNAのアップセンブルを示した。この結果は、タンパク質レベルでタンパク質ブロットによって確認され、EDB-FNが浸潤的なOSCCで発現及び上昇することが示された(図15b)。
【0199】
スフェロイドをEDB-FN特異的蛍光プローブZD2-Cy5.5で染色することにより、OSCC分子イメージングの標的EDB-FNを評価した。浸潤性HSC3及びSCC4細胞はCAL27よりも大きなスフェロイドを形成し、ZD2-Cy5.5染色は、有意に強かった(図15c-d)。染色強度の定量も、SCC4の染色強度がHSC3より約2倍強く、EDB-FN発現分析と一致していることを示している(図15e)。このデータは、ZD2ペプチドがOSCCの分子イメージングのために異なる発現EDB-FNを標的とするのに有効であることを示している。
【0200】
MRMIで発見したMT218によるEDB-FN発現OSCCに対する差別的な増強
マウス側腹異種移植モデルにおいて、OSCCにおけるEDB-FNに対するMT218のMRMIの有効性と腫瘍浸潤性との相関をサブ臨床用量で決定し、臨床薬ガドテリドールを非標的対照として用いた。低リスク、低EDB-FN CAL27腫瘍は、0.04mmol/kgのMT218で中程度の増強を示し、注射後30分後に消失した。0.1mmol/kgガドテリドールの増強効果は、CAL27腫瘍でMT218よりもわずかに大きいようである(図16a)。高リスク、中等度EDB-FN HSC3腫瘍は、MT218注射後10分後に強い増強を示し、30分後に有意に減少した。MT218の投与量は、減少したが、HSC3腫瘍におけるガドテリドールの増強作用は、MT218よりもやや小さいように見えるが、全体的にはMT218に匹敵する(図16b)。高リスク、高EDB-FN SCC4腫瘍は、すべての時点でMT218の有意な増強を示した。SCC4腫瘍におけるガドテリドールの増強効果は、MT218よりもはるかに弱い(図16c)。これらの画像は、MT218がEDB-FNの発現の違いに応じてサブ臨床用量で高リスクOSCC腫瘍を増強することを示しており、これは臨床造影剤では達成できない特性である。
【0201】
造影増強の半定量分析
腫瘍のコントラスト対ノイズ比(CNR)は、MT218及びガドテリドールを用いた腫瘍増強の半定量分析のために算出した。MT218は、そのEDB-FN発現に基づいて3種の腫瘍モデルの違いを全時点で増強したが、ガドテリドールはどの時点でも差増強を示さなかった(図17a-b)。注射後の10分を除いて、低リスク、低EDB-FN CAL27腫瘍のMT218増強は、ガドテリドールよりも有意に低かった(図17c)。高リスク、中等度EDB-FN HSC3腫瘍は、注射後の10分後にMT218の増強がガドテリドールよりも有意に高く、残りの時点で上昇傾向を示した(図17d)。高リスク、高EDB-FN SCC4腫瘍は、すべての時点で、MT218のCNR増強は、ガドテリドールよりも有意に高かった(図17e)。CAL27のMT218とガドテリドールの平均最大増強値は、臨界値(CNRMT218=1.80±0.17、CNRgad=2.27±0.18、p=0.0957)よりも有意に低く、HSC3のは、臨界値(CN RMT218=2.61±0.17、CNRgad=2.18±0.07、p=0.0639)よりも有意に高かく、SCC4のは、臨界値(CNRMT218=3.81±0.25,CNgad=2.57±0.28,p=0.0170)を大幅に上回った(図17f-h)。EDB-FNの発現によると、MT218の平均最大増強は、3種の腫瘍モデル間で有意に異なるが、ガドテリドールに有意な差はなかった(図17i)。これらのデータは、MT218のサブ臨床用量の違いが、EDB-FNの高リスクOSCC腫瘍をMRMIで発現するユニークな能力を高めることを確認する。
【0202】
異種移植腫瘍の組織学的分析
腫瘍は、組織学的・免疫組織学的分析のためにイメージング後に体から切除された。低リスク、中程度に分化したCAL27腫瘍は、腫瘍境界付近での天体染色が増加し、上皮領域では弱いEDB-FN染色を示した(図18)。高リスク、低分化HSC3腫瘍は、CAL27腫瘍の対応する領域よりも強いEDB-FN染色を示し、説明のためのほとんど基質を示していない(図18)。高リスクで分化の良いSCC4腫瘍は、上皮領域内及び周囲のEDB-FN膜性染色を示し、これは3種の腫瘍モデルの中で最も強く、大きな角化基質領域はほとんど染色されていない(図18)。上皮腫瘍領域のEDB-FN染色強度は、インナトロEDB-FN発現分析及びMRMIデータのCNR分析と一致しており、OSCCのMT218を用いたMRMIにおける造影増強は、EDB-FN発現の増加とともに増加し、浸潤性と非浸潤性OSCCを区別するために使用できることを示した。
【0203】
議論
MRIは、一般に、OSCCの診断に使用され、原発性及び転移性疾患を描写し、治療計画に役立つ比類のない軟部組織対照及び高解像度を提供する。更に、MRIは、患者を有害な放射線にさらさないし、GBCAの臨床線量は通常ヨウ素基のCT造影剤より腎毒性が少ない。本研究では、標的造影剤MT218を用いたMRMIは、高リスクOSCC腫瘍における臨床用量の40%で強力な増強を提供した。同様の結果は、臨床用量のわずか20%の浸潤性三陰性乳癌で観察された。Ayatら,(2019),Front Oncol 9:1351。増強された増加は、主に腫瘍ECMにおけるEDB-FNとのMT218の選択的結合に起因し、MT218が腫瘍に蓄積し、保持することを可能にする。浸潤性腫瘍に対するサブ臨床用量MT218の有効MRMIはGBCAの臨床安全性を大幅に改善し、ガドテリドール投与に関連する潜在的な用量依存性副作用を軽減する。
【0204】
リンパ節転移は、OSCCの最も重要な予後指標の1つであり、頸部臨床及び放射線陰性患者の20~40%が潜伏転移を示した。領域転送を識別するための標準的なプラクティスには、健康診断と診断イメージングが含まれるが、多くの転送は、そのサイズが非常に小さいため、見過ごされたり、認識されない。選択的頸部解剖は、潜在的に影響を受けるリンパ節を除去するが、その後の組織学的検査は、多くの不要な解剖学を示した。以前、非常に特異的な標的GBCAが微小転移性乳癌を検出できることを証明した。Zhouら,(2015),Nat Commun 6:7984。また、転移性OSCC試料や細胞におけるEDB-FNの強い発現も観察され、これまでの研究と一致した。したがって、EDB-FN標的造影剤MT218を用いたMRMIは、OSCC転移をより正確に検出し、診断し、疾患の正確な管理と個別化治療を改善するための有望な新しい戦略を提供する。
【0205】
抗癌治療は、ECMタンパク質の発現に直接影響し、腫瘍の開始、進行及び治療効果を媒介する動的ECMを生成することができる。Harisi R, Jeney A (2015), Onco Targets Ther 8:1387-1398。化学療法耐性は、AKTシグナル伝達の増加と下流フィブロネクチン及びEDB-FN発現の増加に規則的に関連している。治療後の長期暴露により、新しい補助OSCC検体におけるEDB-FN発現の減少、OSCC細胞における発現の増加が認められた。更に、頭頸部扁平上皮癌患者の20%以上が局所腫瘍の再発を発症し、その後5年間で生存率は、30%までに低下した。MT218を用いたMRMIは、治療反応とEDB-FN発現の変化を関連し可視化し、医師に薬剤耐性などの高リスク特性を得るための洞察を提供し、適時かつ個別化された治療を改善し、腫瘍切除後の再発をモニタリングし、疾患を正確に管理することができる。
【0206】
この事前検討には、いくつかの制約がある。癌生物学におけるEDB-FNの役割は大きく不明であり、分子、前臨床及び臨床レベルでさらなる研究が必要である。浸潤性OSCCの実行可能なバイオマーカーであるEDB-FNを総合的に評価するには、さらなる研究が必要である。本研究で用いたMRI技術は、半定量であるが,MR指紋認識などの定量MRI技術ではMT218を用い,腫瘍浸潤性や治療反応に関するOSCCにおけるEDB-FN発現のより正確な測定を提供することができる。今後の作業は、OSCCとしてのEDB-FNのイメージング可能なバイオマーカーの検証と、OSCCの正確なイメージングのためのMT218によるMRMIの臨床トランス翻訳に着目している。
【0207】
結論
EDP-FN発現とヒトOSCC細胞の浸潤性,腫瘍モデルと患者標本との予備的な相関を示した。 MT218を用いたEDB-FNのMRMIはOSCC腫瘍モデルにおいて実質的かつ差の造影増強を提供し、その固有のEDB-FN発現及びサブ臨床用量における浸潤性と関連している。同時に、ガドテリドールは、臨床用量で適度な未分化増強を提供する。これらの結果から、EDB-FN標的造影剤MT218を用いたMRMIは、OSCCの臨床管理において正確な診断、リスク評価、描写、治療効果のモニタリングを提供することができる。
【0208】
実施例4:MR分子イメージングを用いて膵癌の早期発見のためのECM癌タンパク質を標的とすることによる間質バリアの克服
膵臓癌(PaCa)は、癌の大量かつ急速な成長の原因である。PaCaの予後は、不良であり、5年の生存率は、9%に過ぎない。患者は、通常、後期PaCaとして現れ、転移又は外科的切除を受けることができない。術後の結果を解析することにより、早期疾患の検出・除去は、生存や疾患の硬化が飛躍的に向上することを示唆している。しかし、PaCa診断のための現在の戦略は、前段の疾患に対しては敏感ではない。造影されたコンピュータ断層撮影(CE-CT)は、PaCaのイメージングに最も一般的に利用されているが、治癒可能な腫瘍、リンパ節転移や肝臓転移には、困難である。造影増強磁気共鳴イメージングは、優れた軟部組織対照と優れた空間分解能を示し、PaCa診断にますます使用されている。しかし、既存の臨床造影剤は、腫瘍特異性ではなく、小さな腫瘍を検出する際に感度が低い。腫瘍特異的造影剤の開発は、腫瘍内造影剤の蓄積を改善し、早期PaCaの正確な検出と描写におけるMRIの利点を最大化する。早期PaCaを検出できる安全で効果的な標的MRI造影剤の必要性は満たされていない。
【0209】
膵癌は、標的細胞表面分子を標的細胞表面分子とする分子イメージング剤の結合を阻害する緻密な腫瘍ストロマを有し、有効分子イメージングや癌の検出のための大きな障害を提供する。しかし、そのユニークな細胞外マトリックス(ECM)分子特性は、正確な分子イメージングと小さな腫瘍検出のための画像コントラストを生成するために使用することができる。ドメイン外Bフィブロネクチン(EDB-FN)は、悪性腫瘍で再建されたが、ほとんどの正常組織で欠失したフィブロネクチンの癌胚せん断変異体である。Hanら,Bioconjugate Chemistry 26,830-838(2015)。腫瘍ECMのEDB-FNは、PaCa腫瘍の有効分子イメージング用の撮像剤を特異的に結合させるために容易にアクセス可能である。浸潤性腫瘍におけるその豊富さは、磁気共鳴分子イメージング(MRMI)における強力なシグナル増強を生成するために、適切な標的造影剤の迅速な結合を可能にする。したがって、EDB-FNは、有望な標的分子イメージング及びMRMIを用いたPaCaの早期検出方法である。
【0210】
EDB-FN17に高い特異性で結合するオリゴペプチド、TVRTSAD(ZD2)を先に開発した。ZD2標的MRI造影剤は、浸潤性乳癌及び前立腺癌モデルにおけるEDB-FNのMRMIを開発し、テストした。Hanら,Nature Communications 8,692(2017)。標的造影剤ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)(MT218)は、ZD2ペプチドと臨床大環造影剤Gd(HP-DO3A)17,21とを配合して開発された。 MT218はGd(HP-DO3A)よりも高いT1緩和性を有し、浸潤性乳癌及び前立腺癌における優れた造影増強を示す。Ayatら,ACS Medicinal Chemistry Letters,9(7):730-735(2018)。MT218とPaCa腫瘍ECMの豊富なEDB-FNの組み合わせは、緻密な腫瘍間質バリアを克服し、強力な造影増強を生成し、MRMIによるPaCaイメージングを改善することができる。
【0211】
材料及び方法
細胞及び試薬
ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)は、Molecular Theranotics(Cleveland,OH)から求めた。ProHance(登録商標)Gd(HP-DO3A)は、Bracco Diagnostics(Monroe Township, NJ)から購入した。ZD2-Cy5.5を先に説明したように合成した。Hanら,Nature Communications 8,692(2017)。Capan-1、BxPC3、PANC-1(ATCC、Manassas,VA)ヒトPaCa細胞を推奨培地及び条件で培養した。BxPC3及びPANC-1細胞に、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びルシフェラーゼの発現のためのレンチウィルスビークル(Amsbio,Cambridge,MA)を導入した。
【0212】
緩和性測定
MT218及びGd(HP-DO3A)溶液のT及びT値は、3T MRS 3000スキャナ(MR solutions,Guildford,UK)を使用して測定される。濃度0、0.25、0.5、1及び2mMのMT218溶液をDPBSバッファー(Gibco,Gaithersburg,MD)で調製した。T値(μ=10ms、TE=4ms、FA=8°、エコー/フレーム=128、FOV=40mm×40mm、スライス厚さ=2mm、平均数=1、時間遅延=4000ms、サンプリング期間=200、行列=256×128)は、反転回復高速低角度撮影(IR-FLASH)シーケンスを用いて測定した。T値は、マルチエコー多層スライス(MEMS)シーケンスを用いて求めた(TE=15ms、繰り返し時間=15ms、エコー=10、FOV:40mm×40mm、スライス厚さ=1mm、平均=1、行列=256×192)。r1及びr2緩和性は、それぞれ1/T及び1/T及びGd濃度マップの傾きに基づいて算出される。
【0213】
結合親和性測定
MT218の結合親和性は、NanotemperTM Monolith NT.115機器(NanoTemper Technologies,Munich,Germany)を用いて、マイクロスケール熱泳動(MST)により求めた。また、FNのEDB断片は、大腸菌(E. coli)で発現し、精製し、アミン活性色素NT-647で標識した。MT218をアッセイバッファー(50 mM PBS w/0.05%トウェイン-20)に溶解した。この溶液を更にアッセイバッファーで希釈し、一連のMT218作動溶液を得た。次に、各MT218作動溶液を蛍光標識EDBフラグメントの固定濃度と混合した。次に、MT218とEDBの混合物を標準キャピラリーにロードし、25℃で20%~80%の発光ダイオードパワーと40%の赤外レーザーパワーを使用して、異なる濃度のMT218でMST測定を行った。
【0214】
動物モデル
側腹異種移植モデルの場合、100 μL 6 mg/mL Matrigel (Corning,Corning,NY)溶液中の4×10個Capan-1細胞皮下を8週齢の雌ヌ/ヌマウスの側腹に注入した。腫瘍体積が300mmを超えた後、腫瘍マウスをイメージングした。インプレース膵臓内モデルの場合、手術は4週齢の雌nu/nuマウスの膵臓を暴露し、100 μL Matrigel溶液(6mg/mL)に懸濁した1×10個BxPC3-GFP-Luc又はPANC-1-GFP-Luc細胞を膵臓組織に注入した。腫瘍の増殖は、IVIS Spectrumシステム(Perkin-Elmer、Waltham、MA)の腹腔内注射d-ルシフェリンのバイオ発光イメージングによって画像化される前に検証される。
【0215】
ヒト組織のZD2-Cy5.5染色
PaCa患者(症例総合がんセンター(Case Comprehensive Cancer Center)Cleveland,OH)の組織切片をキシレン、エタノールで脱ろうし,水で洗浄した。 10%ヤギ血清のPBS溶液(Invitrogen、Carlsbad、CA)と0.1%トウェイン20(PBS-T)で30分間閉鎖し、37℃で500 nM ZD2-Cy5.5のPBS-T溶液で1時間インキュベートした。PBS-Tで3回洗浄した後、Fluoroshieldインストールメディア(Abcam,Cambridge,UK)を使用してスライスをインストールした。あらかじめプログラムされたCy5.5(励起:635nm、発光:693nm)とDAPI(励起:405nm、発光:461nm)の発光及び励起フィルタを用いて、10X対物レンズを用いてFV1000(Olympus,Waltham,MA)共焦点顕微鏡上で画像を取得した。すべての組織試料は、同じレーザーパワーとセンサーゲインでイメージングされた。FIJIソフトウェアを用いて、シングルチャンネルグレースケール画像から画像を生成した。
【0216】
細胞及び組織のタンパク質ブロット分析
cOmpleteTMプロテアーゼ阻害剤混合液(Roche,Basel,Switzerland)を補充したRIPA緩衝液中のCapan-1、BxPC3及びPANC-1細胞及び組織を溶解した。サンプルは、ローターステータホモジナイザー(IKA,Wilmington,NC)で更に均質化された。溶解物を遠心分離し、BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を用いて上清の総タンパク質濃度を測定した。全タンパク質(30μg)をLaemliバッファー(Bio-Rad,Hercules,CA)で5分間混合し、煮沸した。サンプルをSDS-PAGE(5-20%)で分離し、ニトロセルロースフィルム(Cell Signaling Technologies,Danvers,MA)に移した。使用される一次抗体は、5%ウシ血清アルブミンで希釈された抗-EDB-FN抗体BC-1(1:500、Abcam,Cambridge,MA)及び5%牛乳で希釈された抗-β-アクチン抗体(1:1000、Cell Signaling Technologies,Danvers,MA)の細胞溶解に使用された。5%ウシ血清アルブミン中のG4抗体(1:1000、Absolute Absolute,Boston,MA)と5%牛乳中の抗GAPDH抗体(1:10000、セルシグナリングTechnologies、Danvers、MA)を組織溶解物に用いた。一晩抗体のインキュベーションを行う。二次抗-マウスHRP(1:1000、Cell Signaling Technologies,Danvers,MA)及び抗-ウサギHRP(1:1000、Cell Signaling Technologies,Danvers,MA)抗体を室温で5%牛乳のTBS-T溶液で1時間振とうインキュベートした。SignalFire Plus ECLキット(Cell Signaling Technologies,Danvers,MA)で染色膜を開発し、ChemiDoc XRS+システム(Bio-Rad,Hercules,CA)を用いてイメージングした。FIJIソフトウェアによる密度を測定した。
【0217】
マウス腫瘍組織の免疫組織化学染色及び組織化学染色
安楽死したマウスからPaCa腫瘍組織及び正常膵臓組織を採取し、10%緩衝ホルマリンで24時間固定した。パラフィンブロックにサンプルを埋め込み、RM2235スライサー(Leica,Buffalo Grove,IL)を使用して5μmスライスに切断した。標準条件でヘマトキシリン/エオシン染色を行った。抗原修復は、pH6.0のクエン酸緩衝液中で125℃で30秒間行い、次いで3%Hペルオキシダーゼブロッキング(8分)とげっ歯類のブロックM(Rodent Block M、20分)(Biocare Medical,Pacheco,CA)を行った。抗-EDB-FN G4モノクローナル抗体(1:100)を組織切片でRT下で1時間振動インキュベートした。HRPポリマー検出溶液(Biocare Medical、Pacheco、CA)を用いて検出した。3,3’-ジアミノビフェニルアミンで5分間可視化し、ヘマトキシリンで5秒間精染した。Bx61VS(Olympus、Waltham、MA)スライドスキャナで画像をキャプチャし、OlyVIAソフトウェアで処理した。組織学的解釈は、委員会によって認定された病理学者によって行われた。
【0218】
ZD2ペプチドの結合特異性を評価するために、腫瘍と正常組織のフラッシュ凍結サンプルを安楽死した腫瘍ベアリングマウスから採取し、最適な切削温度培地に包埋した。その後、包埋したサンプルを、液体窒素中に5分間浸漬し、凍結乾燥前の保管用-80℃に移送した。組織切片を0.05%トウェイン-20及び10%正常ヤギ血清(Gibco,Gaithersburg,MD)を含むPBSで1時間ブロックし、その後、BC-1一次モノクローナル抗体(1:400)又はZD2-Cy5.5(500nM)で4°Cで2.5時間染色し、PBS-T緩衝液で洗浄した。二次Alexa Fluor 594抗-ウサギをBC-1で処理したスライスを室温(1:1000)で1時間インキュベートした。ブロッキング実験は、まず、組織切片を過剰のBC1抗体で4°Cで一晩インキュベートし、次いでPBS-Tで3回洗浄した。その後、ZD2-Cy5.5でスライスし、室温で2.5時間インキュベートした。染色したスライスをPBS-Tバッファーで洗浄し、Cy5.5(励起:635nm、放出:693nm)及びDAPI(励起:405nm、グロー:461nm)の事前プログラムされた発光及び励起フィルタは、10X対物レンズを使用して、Olampus FV1000(Waltham,MA)共焦点顕微鏡で画像を取得した。
【0219】
造影増強MRI
麻酔側腹腫マウスを尾静脈カテーテルに挿入した。MR画像取得は、体積RFコイルを備えた7T Biospin(Bruker,Billerica,MA)前臨床小型動物スキャナで行った。マルチスピンマルチエコー(MSME)MRIシーケンス(500msTR、8.1msTE、90°FA、4.50cm×4.50cmFOV、1.50mmスライス厚さ、16スライス、2つ平均値、200×200マトリックス、0.0225×0.0225cm/画素解像度)を得た。造影剤を尾静脈カテーテルに0.1mmol/kg(100μL)の用量で注射し、その後、生理食塩水洗浄を行った。腫瘍画像は、造影剤の投与前及び投与後の異なる時点で採取した。Gd(HP-DO3A)は、対照として使用された。
【0220】
膵臓内腫瘍を運ぶマウスを麻酔し、尾静脈カテーテルに挿入した。マウスRFコイルを用いたMR Solutions 3T MRS 3000スキャナで画像取得を行った。高速スピンエコー(FSE)MRIシーケンス(305 ms TR、11ms TE、90°FA、4cm×4cm FOV、1mmスライス厚さ、10つスライス、エコー列長=4、エコー間隔=11ms、4つ平均値、256×256マトリックス、0.0156×0.156cm/画素解像度)、及び呼吸ゲートを使用して軸位断像を得た。造影前と造影後の異なる時点で0.1mmol/kg(100μL)の線量で画像を取得した。競合結合実験では、5:1モル比の遊離のZD2ペプチドとMT218を、0.1mmol MT218/kg(100μL)の線量で、膵臓内のBxPC3腫瘍異種移植片を運ぶマウスに注入した(n=3)。提供されたSurscalereader.exe(MR Solutions,Guildford,UK)プログラムを用いてMR Solutions 3Tスキャナ上で得られた画像を正規化した。
【0221】
イメージファイルは、Horusソフトウェアでエクスポート及び解析された。ROIは、腫瘍、肝臓、腎臓、筋肉に描出された。筋肉ROIは、筋肉から採取し、他の構造(肝臓、腎臓、腫瘍)を公開画像と比較し、解剖学的なランドマークや生体発光イメージングと比較した後に決定される。画像解析のために描画されたROIのサイズを補助テーブルS1にまとめる。腫瘍のコントラスト対ノイズの比(CNR)は、以下の式を用いて算出し、ここで、σノイズがマウスのインビトロからプロットされたROI強度の標準偏差である。

CNR=平均強度 腫瘍 -平均強度 筋肉
σノイズ
【0222】
肝臓のノイズ(CNR)に対するコントラストの比は、以下の式を用いて算出した。

CNR=平均強度 肝臓 -平均強度 筋肉
σノイズ
【0223】
FIJIオープンソースソフトウェアでは、同じウィンドウとレベルに調整された画像の画像を影を引いた。RGB虹色ルックアップテーブルを使用して、イメージの減算の結果を探しした。
【0224】
統計分析
画像コントラストは、造影前画像に対する造影後画像のコントラスト対ノイズの比の倍数増強値として報告されており、その中、倍数増強値=CNRpost/CNRpreを用いて通知された。CNRの統計分析は、Minitab Express(Minitab Inc,State College,PA)で行った。単一因子分散分析とフィッシャー個人平均差検定を行い、2つ以上の平均間の統計的有意性を決定した(p<0.05)。学生T検定は、2つの平均間の統計的有意性を決定するために使用された(p<0.05)。
【0225】
結果
MT218の結合親和性と緩和性
標的造影剤MT218の化学構造、結合親和性、及び緩和性を図19に示す。MT218は、大環状臨床MRI造影剤GD(HP-DO3A)に対する、ZD2ペプチドの小さな分子結合物である。また、MT218とEDB-FNの結合親和性は、3.2±0.2μmであった。3Tの場合に、MT218のT及びT緩和性は、それぞれ6.07±1.13s-1mM-1及び8.20±0.18s-1mM-1であった。
【0226】
ヒトPaCaにおけるEDB-FNの発現
図20は、ヒトPaCa、膵上皮内腫瘍(PanIN)及び正常膵組織標本におけるZD2ペプチドとEDB-FNとの結合を標的蛍光プローブZD2-Cy5.5で示す。ZD2-Cy5.5は、ヒトPaCa組織において高く結合し、癌前のPanIN組織では中程度であり、正常膵臓組織では低い。悪性組織及び癌前組織におけるZD2-Cy5.5の結合の分布は、不均一である。PaCa検体では組織不良のカテーテル構造に強い蛍光強度が認められたが、PanIN組織では中間染色が認められ、染色は、管腔構造を持たない細胞クラスターに集中していた。異なるヒト膵臓組織におけるZD2-Cy5.5結合の蛍光強度は、EDB-FNが悪性PaCa組織において高発現し、癌前PanIN中で中程度、正常膵臓で低発現していることを示している。
【0227】
PaCaマウスモデルにおけるEDB-FNの発現
また、Capan-1、BxPC3-GFP-Luc及びPANC-1-GFP-LucヒトPaCa細胞及びこれらの細胞由来の腫瘍異種移植片におけるEDB-FNの発現も評価した。EDB-FN特異的G4抗体によるタンパク質ブロットは、3つのPaCa株すべてにおいて、2つの220+kDaバンドの発現がEDB-FNタンパク質の大きさと一致していることを明らかにした(図21A)。PaCa異種移植片を運ぶマウスからの肝臓、膵臓及び腫瘍タンパク質抽出物のタンパク質ブロットは、3つのPaCaモデルすべてにおいて220+kDaバンドを示し、正常な肝臓及び膵臓組織では、腫瘍におけるEDB-FN発現の増加を示し、正常組織及び器官には発現しなかった(図21B)。膵腫瘍異種移植片のヘマトキシリンとエオシン染色切片は、PaCaの外観と一致する低分化癌大結節を明らかにした(図21C)。すべての腫瘍は、細胞核に対する細胞質の比率が低い緻密な細胞を示した。G4抗-EDB-FN抗体の免疫組織化学染色は、抗体がない場合には染色が認められなかった3つのPaCaモデルの全ての組織切片において強い染色を示した(図21C)。高速凍結組織切片をEDB-FN特異的モノクローナル抗体BC-1又はZD2-Cy5.5で染色した結果,BxPC3,Capan-1及びPANC-1組織におけるEDB-FNの染色パターンが類似していた。染色は、正常膵臓及び筋肉組織に見出されず、EDB-FNが発現していないことを示した。ZD2-Cy5.5結合は、抗-EDB-FN抗体の存在下でブロックされる。その結果、EDB-FNは、ヒト膵臓癌細胞とそのマウス腫瘍異種移植片において過剰に発現し、正常組織では発現しなかった。
【0228】
膵臓癌側腹異種移植片のMRMI
標的造影剤MT218を用いたEDB-FNのMRMIのPaCa検出における有効性は、まず皮下Capan-1側腹腫瘍異種移植片を運ぶマウスにおいて評価した。同じ用量(0.1mmol/kg)の臨床試薬Gd(HP-DO3A)を対照として用いた。Gd(HP-DO3A)と比較して、MT218の注射後5分後、腫瘍周辺でより強い造影増強が認められた(図22)。そして、MT218を注射したマウスでは、腫瘍コアのコントラストが徐々に高まった(図22)。Gd(HP-DO3A)を投与したマウスは、有意な腫瘍コア増強を示さなかった。同じマウスの異なる時点の比較画像から比較前画像を減算すると、MT218投与後の初期時点(比較後5~15分)において、腫瘍周囲に強い初期増強が現れ、その後、後期時点(対照後25~35分)において、腫瘍全体に堅牢な腫瘍造影増強が出現した(図22)。これに対し、Gd(HP-DO3A)を投与したマウスの影軽減像は、注射後の早期時点で適度な末梢造影増強を生じ、全時点で腫瘍内対比がほとんどなかった。結果は、MT218が効果的に腫瘍全体で堅牢なシグナル増強を生成し、効果的な分子イメージングとMRMIによるPaCaの検出に有効であることを示している。
【0229】
膵内腫瘍異種移植片のMRMI
膵臓内のヒトPaCa腫瘍異種移植片を投与したマウスにおいて、MT218を用いたMRMIの有効性について更に検討した。バイオ発光イメージングは、腫瘍細胞を移植した3匹のマウスの左上腹部にルシフェラーゼ標識BxPC3-GFP-Luc腫瘍異種移植片の存在を確認した(図23A)。MT218投与10分以内に、腫瘍マウスのMT218 MRMIは、強い造影増強を有する小さな病巣を明瞭に描写した(図23B)。腫瘍造影増強はその後20分で低下し、MT218注射後30分後にバックグラウンドレベルに戻った。臨床薬Gd(HP-DO3A)は、注射後10分後に腫瘍に中等度の造影増強を生じ、Gd(HP-DO3A)注射後20分間のシグナル増強を背景レベルまで低下させた(図23B)。また、比較後の画像から比較前の画像を減算すると、T強調MR画像では、注射後10分間、標的造影剤による膵内腫瘍の強い増強と鮮明な描写が、Gd(HP-DO3A)による腫瘍内シグナル増強が少ないことが更に証明された(図23B)。PaCaのMRMIに対するMT218の特異性を更に証明するために、膵臓内のBxPC3異種移植片を運ぶマウスにおいて競合結合実験が行われ、そのうち5倍の遊離ZD2ペプチド及びMT218が過剰に投与された。過剰な遊離ペプチドの共注射は、MT218と腫瘍との結合を遮断することで、遊離ZD2ペプチドを注射したMT218の腫瘍マウスと比較して腫瘍画像における造影増強が有意な減少した。
【0230】
PANC-1-GFP-Luc細胞由来の別の膵臓内PaCaモデルにおいて、MTMIにおけるMTFの改善が再生可能であるか否かを判定するために、MT218 MRMIを試験した。PANC-1-GFP-Luc膵臓内の異種移植片を備えるマウスの生物発光像は、癌細胞が接種した左上腹部領域に大量のルシフェラーゼシグナルが存在することを示し、腫瘍の存在を示す(図24A)。腫瘍マウスのMT218 MRMIは、腫瘍組織に有意な造影増強を生じ、注射後10分後に腫瘍を明瞭に描写した。対照的に、Gd(HP-DO3A)は、有意な腫瘍造影増強を示さず、腫瘍を明確に同定できなかった(図24B)。比較後の画像から比較前の画像を減算した画像は、MT218の腫瘍における有意なシグナル増強を明らかにし、Gd(HP-DO3A)投与後にはほとんど変化が認められなかった(図24B)。
【0231】
ZD2 MRMIの定量分析
MT218のMRMI腫瘍シグナル増強と臨床薬の比較を分析した。肝臓のシグナル増強も分析され、正常組織におけるMT218の潜在的な非特異的増強が同定された。MT218は、注射後15分後にCapan-1側腹腫瘍異種移植片に4.84倍のコントラスト-ノイズ比(CNR)を発生し、少なくとも35分間維持した(図25A)。臨床医薬Gd(HP-DO3A)は、実験中に腫瘍内のCNRを1.77倍増加させ、MT218>(p<0.01)を有意に下回った。2種の造影剤は、すべての被験者の肝臓(図25A)、腎臓及び膵臓においてCNRに有意差は、認められなかった(p>0.05)。
【0232】
注射後10分後、MT218は、BxPC3-GFP-Luc膵臓内腫瘍のCNRを最大5.3倍に増加させ、Gd(HP-DO3A)は、10分で約2.5倍の腫瘍CNRを産生し、MT218(p<0.01)を有意に下回った(図24B)。2種の薬剤の腫瘍CNRは、その後減衰し、MT218は、PANC-1-GFP-Luc膵臓内腫瘍異種移植片で約3.85倍の腫瘍内CNRを産生し、Gd(HP-DO3A)は、2.35倍の腫瘍内CNRを産生した。2種の造影剤は、すべての被験者の肝臓(図25B、C)及び腎臓においてCNRの差は認められなかった(p>0.05)。
【0233】
また、過剰の遊離のZD2ペプチドをMT218で共注入したことにより、BxPC3-GFP-Luc内膵島モデルでは、CNRが2.5倍で上昇し、Gd(HP-DO3A)と同様にCNRが上昇した(図25B)。また、5倍遊離ペプチドの存在下でのMT218のCNRの増加は、遊離ペプチドを含まないMT218のCNR(約4.5倍、p<0.05)よりも有意に低かった。遊離ZD2ペプチドの共注射は、MT218の結合を阻害し、腫瘍CNRをGd(HP-DO3A)と同様の薬物非特異的蓄積レベルまで低下させた。結果は、MT218がPaCa腫瘍と特異的に結合することを示している。
【0234】
議論
磁気共鳴分子イメージング(MRMI)の臨床応用は、MRIの高軟部組織コントラストと良好な空間分解能を組み合わせ、腫瘍内の分子変化をイメージングし、特徴付ける能力を備えているため、正確な癌イメージングに最適である。臨床MRMIの主な課題は、標的造影剤を十分に組み合わせて検出可能な造影増強を生成する間質バリアを克服することである。膵臓癌(PaCa)は、高度に線維化しており、腫瘍の内部組織への造影剤の侵入を制限する密集したECMを有する。多くの分子イメージング剤は、巨大で到達が困難な細胞表面ターゲットと結合した。腫瘍ECMにおけるドメイン外Bフィブロネクチン(EDB-FN)の腫瘍特異的発現をMRMIの標的として利用することにより、PaCaのイメージングを大幅に改善できることを見出した。
【0235】
また、ヒトPaCa及び癌前組織におけるEDB-FNの発現は、EDB-FN特異的蛍光プローブZD2-Cy5.5で検出され、MT218 MRMIが初癌及び悪性腫瘍の特徴付けにも使用できることを示している。PaCa及び初癌におけるEDB-FNの発現は、他の群の観察と一致している。Jailkhaniら,Proceedings of the National Academy of Sciences,116,14181(2019)。分子イメージング剤ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)(MT218)を用いたPaCaマウスモデルにおけるEDB-FN MRMIによるPaCaの検出の有効性を実証した。MT218は、ETB-FNをマイクロモル親和性で結合し、以前の報告と一致している。Hanら,Bioconjugate Chemistry 28,1031-1040,(2017)。また、MT218は、Gd(HP-DO3A)よりも緩和性が高い。MT218は、臨床薬Gd(HP-DO3A)と比較して、Capan-1側腹(対照群273%CNR、p<0.05)、BxPC3-GFP-Luc(対照群212%CNR、p<0.01)及びPANC-1-GFP-Luc膵臓内(対照164%CNR,p<0.05)でPaCaマウスモデルでは、特異的腫瘍結合と高いT1緩和性により、画像コントラスト-ノイズ比(CNR)が有意に大きかった。EDB-FNが豊富なPaCaとのMT218の特異的結合は、膵内モデルにおける過剰な遊離ZD2ペプチドによるMT218結合の破壊によって低下する腫瘍CNRによって検証される。時間プロセスMRMI画像は、MT218が腫瘍コアの奥深くでEDB-FNと結合できることを示しており、これは非標的臨床造影剤Gd(HP-DO3A)を用いたイメージング研究では観察されなかった。更に、MT218の小型(1442Da)、中結合親和性及び親水性は、バックグラウンドノイズを低く保ちながら、腫瘍コア内で拡散及び結合する遊走性に寄与する。MT218は、6.13mmの面積を持つ腫瘍結節をよりよく示すことができ、MT218がPaCaの正確な早期検出の可能性を有し、早期発見を改善し、タイムリーな治療を開始し、患者の生存率を向上させることができることを示している。これは、MRMI28を使用して小さな転移を検出することができる他のZD2標的イメージング剤の性能と一致している。これは、治療を開始し、時間内に治療の結果を改善するために不可欠である。10mm未満のPaCa腫瘍の検出と外科的除去は、PaCa患者の長期生存率と生活の質を大幅に改善することが報告されている。Tsunodaら,Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery 5,128-132,(1998)。
【0236】
癌におけるEDB-FNの分子イメージングは、PET撮影用の放射性同位体で標識された抗体を用いて予め調べた。抗EEDN-FN抗体BC-1を125Iで標識し、U87脳腫瘍及びSKMel28メラノーマ異種移植片を運ぶマウスで試験した。 Marianiら,Cancer 80,2378-2384(1997). 抗体はEDB-FNに特異的であり、EDB-FNが豊富な腫瘍に結合することが見出されているが、その大きさのために循環中の長期滞留は、顕著なバックグラウンドノイズを生成し、特定の腫瘍イメージングの品質に影響を与える。近年、様々なタイプの腫瘍モデルにおけるEDB-FNの分子イメージング用の小型ナノボディが開発されている。64Cu標識ナノボディプローブ(64Cu-NJB2)は、PET/CT26を用いたマウスモデルにおけるPaCa及び癌前病変の特異的摂取及び効果的な検出を示した。また、ZD2ペプチドは、EDB-FN分子イメージングのためのPETプローブとして68Gaで標識されている。ZD2標的プローブは、PaCaにおけるEDB-FNの感度と特異的分子イメージングを提供する。Gaoら,Am J Nucl Med Mol Imaging 9,216-229(2019)。MRMIは、PETと比較して、治療計画に価値がある高解像度及び軟部組織対比で小さなPaCaを描くのに有利である。PET/MRIの臨床実装は、PaCaの分子イメージングのためのPETプローブとMRI造影剤でEDB-FNを標的とするユニークな方法を提供する。
【0237】
EDB-FN MRMIの他の方法も検討されている。グルカンの化学交換飽和転移(CEST)に基づいて、MRIは、ZD2ペプチドを用いてPaCaをイメージングする。Hanら,Bioconjugate Chemistry 30,1425-1433(2019)。グルカン-ZD2コンジュゲートは、EDB-FNのMRMIが診断値を提供するという仮定をサポートするPaCaの側腹モデルで45分以内に検出可能な腫瘍内シグナルを生成した。しかし、CESTは、臨床現場での信号対雑音の低さ、低感度、高用量など、トランス翻訳に関するいくつかの課題に直面している。現在までに、キセノン系造影剤、特に大環造影剤は、臨床癌MRIの安全かつ有効な造影剤であると考えられている。
【0238】
なお、PaCaイメージングにおけるEDB-FNのMRMIの展望を示したが、本研究には限界がある。多数のヒトPaCa集団におけるEDB-FN発現の包括的な研究は、PaCaのバイオマーカーとしての使用を検証するために必要である。ヒトPaCaにおけるEDB-FNの発現は、大きく異なる可能性がある。しかし、我々の結果と別のヒトPaCaにおけるEDB-FN発現の小規模研究との相関が高いことは、そうはいきないことを示唆している。nu/nuマウスの免疫機能障害により、本研究所で用いたモデルはヒトPaCaの腫瘍微小環境を完全に再現できない可能性がある。また、MT218のさらなる研究は、現在PaCaの免疫適応及び自発的モデルにおいて行われている。関連するリスク要因のさらなる疫学的調査とMRMIとのスクリーニングツールは、早期膵臓癌を検出するために必要とされる。MRMIは、特にリスクの高い集団では、早期PaCaの検出を改善することができるが、一般集団のための理想的なスクリーニングツールではない。ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)によるMRMIの臨床転換は、早期PaCa MRMI検査の恩恵を受ける可能性のある高リスク患者を特定する一般的な集団スクリーニングツールの迅速な開発に役立つことを確信したものである。
【0239】
要するには、本研究では、ヒトPanIN,PaCa標本及びPaCaマウスモデルにおけるEDB-FNの過剰発現を検討し、小分子標的MRI造影剤MT218を用いたEDB-FNのMRMIの有効性を実証した。MT218を用いたMRMIは良好な造影増強を生み出し,小さなPaCa腫瘍を鮮明に描いた。肝組織において最小の非特異的シグナル増強が観察された。MT218を用いたMRMIは、膵臓癌前病変の監視と、小膵臓癌の正確な検出と描写の可能性を有する。MT218を用いたMRMIの臨床トランス翻訳は、早期膵臓癌の検出のための高度に特異的なイメージング技術の満たされていない臨床ニーズに対処し、高リスク集団のスクリーニング、診断、治療決定、治療後のモニタリングなど、膵臓癌の臨床管理のあらゆる側面に影響を与えることが期待されている。
【0240】
実施例5:MT218を用いたEDB-FNの造影増強MRMIの、前立腺癌の非侵襲的なモニタリング及びアクティブサーベイランスに対する促進
EDB-FNは、MT218を用いたMRMIの分子マーカーとしての潜在的な作用は、浸潤性の程度が異なる複数の前立腺癌モデルにおいて同定された。
【0241】
低リスク、低EDB-FN発現前立腺癌LNCAP細胞株を改変して、より低浸潤の前立腺癌細胞を生成した。例えば、LNCAP-CXCR2細胞は、安定して炎症を過剰発現させるように設計されており、初抗腫瘍化されたIL8受容体CXCR2を安定して過剰発現させることができた。C4-2細胞は、カストマウスのLNCAP細胞皮下組織から分離した。そして、20μMエンチルアミン(Enzalutamide,アンドロゲン受容体アンタゴニスト)の獲得耐性によりC4-2-DR細胞を作製した。
【0242】
標準transwellアッセイでは、LNCaP-CXCR2、C4-2及びC4-2-DR細胞は、低リスクの不活性LNCaP細胞と比較して、マトリゲルでコーティングされた小室への浸潤の増加を示した(図26A)及びEMTマーカーN-カドリンの増加(図26B)。3D培養では,LNCaP球体と比較して浸潤性前立腺細胞が増殖性腫瘍スフェロイドを示し、EDB-FN分泌が有意に増加し、ZD2-Cy5.5染色によってこれを示した(図26C)。これらの結果は、EDB-FNが浸潤性腫瘍として発症する低リスク腫瘍において強く上昇することを示している。
【0243】
胸腺のないnu/nuマウスに4種類の前立腺癌細胞を皮下注射して異種移植モデルを構築し、0.04mmol Gd/kgのMT218を用いてMRMI試験を行った。腫瘍の差分造影増強MRMIは、MT218が低レベルのLNCaP腫瘍と比較して浸潤的なLNCaP-CXCR2、C4-2及びC4-2-DR腫瘍でより強いシグナル増強を引き起こすことを示している(図27A)。これは、注射後20分後に、LNCaP-CXCR2及びC4-2腫瘍のCNRがほぼ3倍増加し、C4-2-DR腫瘍が6倍増加し、低レベルLNCaP腫瘍のCNC増加は、無視できる(図27B)。
【0244】
興味深いところ、別のモデルPC3とその薬剤耐性対応PC3-DRは、異なる傾向を示している。PC3細胞と比較して、200nMパクリタキセルの獲得耐性によりPC3細胞から産生されるPC3-DR細胞は、Matrigelによってコーティングされた小室への浸潤の減少を示し(図28A)、及びZD2-Cy5.5染色による低強度で観察された3D培養におけるEDB-FN分泌の減少を示した(図28B)。
【0245】
これらの結果もMT218のMRMIで再現した。図28C-Dに示すように、PC3腫瘍は強いシグナル増強を示し、CNRは造影前より5倍高かったが、PC3-DR腫瘍は、造影前の1.6倍に比べて中等度増強のシグナル増強とCNR(p=0.07)のみを示した。重要なことに、浸潤性PC3腫瘍は、浸潤性の小さいPC3-DR腫瘍よりも有意に高いCNRを示し(図28D)、EDB-FNの上昇は、浸潤性薬剤耐性前立腺癌にのみ関連していることを示している。
【0246】
また、前立腺癌の能動的な監視についても、2ヶ月間にわたって予備研究を行った。MT218を用いたMRMIは、21日目及び60日目に行われ、浸潤的C4-2腫瘍の進行をモニタリングした。0.04mmol Gd/kg MT218の注射の20分前と後に、2匹のマウスをイメージングし、T1強調軸位断像を得た。図29に示すように、第2月におけるC4-2腫瘍の進行は、シグナル増強の増加を伴い(図29A-B)、21日目から60日目までのCNRの着実な増加を反映している(図29C-D)。
【0247】
実施例6:MR分子イメージングで非侵襲的に測定した、標的ECO/miR-200cナノ粒子治療による腫瘍微小環境の調節及び三陰性乳癌の治療への有効性
本実施例では、標的とするmiR-200c療法に対する腫瘍反応の非侵襲的な評価のためのMRMIの有効性と、マウスTNBCモデルにおけるRGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の治療効果の検討について説明する。標的RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子は、MIR-200c二本鎖体と多官能アミノ脂質担体ECOとPEGスペーサーを有する環状RGDペプチドとの自己組織化により開発され、TNBC細胞におけるmiR-200cの特異的送達及びアセンションに用いられる。本発明者らは、ECO、すなわち(1-アミノエチル)イミノビス[N-オレイルシステイン-1-アミノエチル)プロピルアミド]を先に用いて行った研究において、治療siRNAの生体内系送達が優れた効率を有し、TNBCで治療された種々の発癌性mRNA及び長い非コードRNAを効果的に調節することを示した。Parvaniら,Bioconjugate Chem.,30,907(2019)。miR-200cは、フィブロネクチン発現を直接調節するため、まずRGD-PEG-ECO/miR-200c治療後のTNBC癌細胞における癌胚サブタイプEDB-FN及びZEB1、BMI1及びFN1を含む他の下流遺伝子標的の下方修正を検討した。TNBC癌細胞のスフェロイド形成、浸潤性及び遊走に対するRGD-PEG-ECO/miR-200cのインビトロ評価の影響。2人の原住民TNBCマウスモデルにおいて、MT218のMRMIのEDB-FNの非侵襲的なイメージングを用いて、GRD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子系投与の治療効果と腫瘍反応を研究し、死後の免疫組織化学によって更に検証した。
【0248】
結果
標的RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子
上述したように、環状RGDペプチド標的RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子は、未修飾のmiR-200c二本鎖体(N/P=8)との自己組織化により調製される。Parvaniら,Bioconjugate Chem.,30,907(2019).miR-200c二本鎖体を用いたのは、天然一本鎖miR-200c配列の安定性が悪く、ECOと安定なナノ粒子を形成することができないからである。非特異的siRNA二本鎖のRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子を対照として同様に調製した。RGD-PEG-ECO/miR-200c及びRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子は、それぞれ174.0±25.4nm及び149.6±5.4nmの流体力学的直径を有し、動的光散乱によって測定される場合、ζ電位は、それぞれ25.3±4.4mV及び17.7±2.4mVであった(図30A)。標準的なゲル遅延アッセイは、2つのナノ粒子の有効なRNAエンベロープと無視可能な遊離RNAバンドを示し、高いRNAローディング効率とエンベロープを示した(図30B)。
【0249】
miR-200cの細胞内構造は、侵入性間プライミングmiR-200c-低MDA-MB-231 TNBC細胞にCy5.5で標識されたmiR-200c二本鎖を有するRGD-PEG-ECO/miR-Cy5.5ナノ粒子を用いて評価した。図30Cに示すように、共焦点蛍光顕微鏡は、トランスフェクション後4時間以内の細胞核周りのCy5.5蛍光強度が強いことを示し、ナノ粒子の細胞スラリー送達効率が高いことを示している。フローサイトメトリーは、GRGD-PEG-ECO/miR-Cy5.5nm粒子トランスフェクションの効率を更に確認し、トランスフェクション後4時間の蛍光強度を未トランスフェクション細胞と比較して360倍に増加させた(図30D)。これらの結果から、標的のRGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子は、TNBC細胞におけるmiR-200cの効率的な細胞内送達を効果的に抑制できることが示唆された。
【0250】
RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子は、TNBC細胞における延長されたmiR-200cアップレギュレーションと下流遺伝子標的の効果的な調節に寄与する。
MDA-MB-231及びHS78TヒトTNBC細胞において、RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の細胞内過剰発現に対する有効性を調べた。RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子媒介MDA-MB-231細胞におけるmiR-200cは、qRT-PCRで測定したようなトランスフェクション後最大14日間の延長アディションで、図31Aに示す。RGD-PEG-ECO/siNSと比較して、RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子は、トランスフェクション後最初の24時間以内にmiR-200c発現を1000倍近く増加させ、7日目に80倍に大幅に減少する前に4日間高いレベルを維持した。14日目まで、miR-200cの30倍の大幅な増加が観察された。miR-200cは、MDA-MB-231細胞におけるZEB1のmRNA発現の有意な低下を誘導し、ZEB1は、EMTマーカーであり、miR-200cの直接標的である。図31Bに示すように、RGD-PEG-ECO/siNSと比較して、RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子が1週間までトランスフェクションされた後、ZBI1が20~40%下方修正された。同様に、MDA-MB-231及びHs578T細胞をRGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子で処理し、トランスフェクション後48時間のそれぞれの対照SINS対応物と比較して、miR-200cを50倍及び100倍に引き上げた。図31C、Iに示す。miR-200c発現の違いは、トランスフェクション中の細胞数及び増殖速度に起因することができる。したがって、MDA-MB-231及びHs578Tでは、ZEB1、BMI1及びサバイビンを含む直接下流標的は、それぞれmRNAレベルで発現が有意に低下し、ZEB1の場合は57%及び40%(図31D、J)、BMI1の場合は15%及び35%(図31E、K)及びサバイビンのために25%及び64%(図31F、L)。タンパク質ブロットにより、これらの遺伝子標的の有意な低下もタンパク質レベルで観察された(図31O、P)。
【0251】
次に、細胞外マトリックスタンパク質フィブロネクチン(FN1)発現に対するRGD-PEG-ECO/miR-200c処理の影響について検討し、EMTにも関与するフィブロネクチンは、miR-200cの3’-UTR結合による遺伝子発現抑制の直接標的である。RGD-PEG-ECO/miR-200c処理により、MDA-MB-231及びHs578T細胞におけるFN1 mRNAレベルが約20%低下した(図31G、M)。また、MIR-200cの腫瘍反応を治療するための非侵襲的なイメージングマーカーとしてEDB-FNを使用する可能性を評価するために、FN1癌胚同種EDB-FN発現に対するmiR-200cの増加の影響も検討した。2種の細胞株は、強い内因性EDB-FN発現を示したが、Hs578T細胞ではMDA-MB-231細胞よりもはるかに高かった(図31O、P)。MDA-MB-231及びHs578T細胞においてそれぞれEDB-FN mRNAレベルが約80%及び40%低下することが観察された(図31H、N)、タンパク質ブロットを介して、RGD-PEG-ECO/miR-200cと比較して、RGD-PEG-ECO/miR200c処理後のタンパク質発現低下が確認された(図31O、P)、EDB-FNは、miR-200cの下流標的であることを示している。要約すると、これらの結果は、GRGD-PEG-ECO/miR-200cの強力で拡張された細胞内送達miR-200cがTNBC細胞におけるmiR-200cの複数の下流標的遺伝子を効果的に調節できることを示している。
【0252】
RGBD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子は、TNBC細胞の浸潤及び3D成長を抑制する。
RGD-PEG-ECO/miR-200cを介したmiR-200cのアディショナーションによるTNBC細胞浸潤性の影響の抑制は、遊走、浸潤及び腫瘍スフェロイド形成の標準機能アッセイを用いて決定される。MDA-MB-231及びHs578T細胞をRGD-PEG-ECO/siNSと比較して、GRGD-PEG-ECO/miR-200cでトランスフェクションすると、2つの細胞株の遊走が減少した(図32A)。RGD-PEG-ECO/siNSと比較して、RGD-PEG-ECO/miR-200cで24時間処理すると、マトリゲルで被覆された多孔質膜を介して侵入する能力が著しく低下し、図32Bは、侵入した細胞が結晶性紫で紫色に染まる。RGD-PEG-ECO/siNSコントロールと比較して、RGD-PEG-ECO/miR-200cは、3Dマトリゲル培養におけるTNBC細胞が腫瘍スフェロイドを形成する傾向を有意に低下させた(図32C)。これらの結果は、TNBC細胞の遊走、浸潤及び3Dスフェロイド形成を抑制するためにRGD-PEG-ECO/miR-200c処理を使用することを示している。
【0253】
RGD-PEG-Eco/miR-200cは、インビボでのTNBC増殖を抑制する。
RTD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の生体内治療におけるTNBCの効力は、インプレースGFPルシフェラーゼ標識MDA-MB-231及びHs578T異種移植片を運ぶ胸腺裸マウスで評価した。RGD-PEG-ECO/miR-200c及びRGD-PEG-ECO/siNS(N/P=8)ナノ粒子を5%ショ糖水溶液に水溶液中で配合し、1.0mg/kg RNAの線量で6週間以内に静脈内投与した(図33A)。腫瘍の成長は、治療の前後に毎週キャリパー測定と全身生物発光イメージング(BLI)及びMRMIによってモニタリングされた。両方の腫瘍モデルにおいて、RTD-PEG-ECO/siNSと比較して、GRGD-PEG-ECO/miR-200cによる治療は腫瘍の進行の有意な阻害をもたらす。RGD-PEG-ECO/siNS処理マウスは、第6週目に処理前(第1週)と比較して、生体発光強度の有意な増加を示し、対照群における腫瘍の急速な成長を示した。これに対し、miR-200cで処理した腫瘍は、第6週におけるシグナル強度の有意な増加が対照群より有意に低いことを示した(図33B-E)。GDA-PEG-ECO/miR-200cで処理したMDA-MB-231腫瘍は、腫瘍の進行を抑制し、第1週から第6週にかけて腫瘍体積は有意に増加しなかった(76.1±15.2~111.4±22.1mm,p>0.05)が、対照処理された腫瘍体積は3倍近く増加した(57.7±32.0~172.2±17.8mm,p<0.005)、図33F。Hs578T腫瘍の場合、RGD-PEG-ECO/miR-200c処理は、51.48±3.37から10.54±5.45mm(p<0.005)まで、腫瘍体積の大幅な減少を示した。 RGD-PEG-ECO/siNS処理Hs578T腫瘍の腫瘍体積が2.2倍(49.5±4.7~111.1±11.3mm、p<0.005)、図33Gと一方、週次で約79%減少した。しかし、GRGD-PEG-ECO/miR-200cで治療されたマウスは、治療や腫瘍の負担とは関係のない未知の症例で死亡した。結果は、動物モデル媒介における腫瘍標的RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子系によるmiR-200cの送達がTNBCの効果的な治療につながる結果であることを示している。
【0254】
MRMIにより、RGD-PEG-ECO/miR-200cで治療した後にTMEにおけるEDB-FN発現が変化したことが示される。
miR-200cの上昇は、インビトロTNBC細胞におけるEDB-FNの発現を著しく低下させ、インビボ腫瘍の増殖を抑制することを考慮すると、MT218の高解像度MRMIを用いて、EDB-FN発現に基づくRGD-PEG-ECO/miR-200c処理による腫瘍への反応を評価した。図34は、RRD-PEG-ECO/miR-200c及びRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子で処理した前後のTNBC腫瘍のT1強調軸位断MR像を示す。比較前腫瘍画像と比較して、MT218の用量が0.1mmol/kgのMT218を注射したの最初の30分間で、すべての前処理MDA-MB-231及びHs578T腫瘍において強いシグナル増強が観察され、EDB-FNが2種の腫瘍モデルのECMにおいて高い発現を示し、MT218は、細胞外造影剤であるため。処理6週間後、GRD-PEG-ECO/siNSと対照したMDA-MB-231及びHs578T腫瘍の比較後、MR画像に強いシグナル増強が残った。MT218のMRMIを用いて対照群の2種の腫瘍異種移植片の顕著な成長を明瞭に示した。これに対し、前処理腫瘍と対照処理腫瘍と比較して、RGD-PEG-ECO/miR-200cで処理した2つの腫瘍モデルの比較後のMR画像では有意なシグナル増強は認められず、miR-200c処理によるTNBC腫瘍におけるEDB-FNの有意な減少を示した。図34の観察結果と同様に、MRMIは、RGD-PEG-ECO/miR-200cで処理した後のMDA-MB-231腫瘍の増殖抑制とHs578T腫瘍の退治を、それぞれの対照で処理した腫瘍と比較して明らかにした。これらの結果から、RGD-PEG-ECO/miR-200c処理により、腫瘍ECMでは、EDB-FN発現が低減され、MTBC腫瘍のTMEは、非侵襲的なMRMIで示されるように、MT218で変更されていることが示された。
【0255】
腫瘍のMR画像におけるコントラスト対ノイズ比(CNR)を定量分析したところ、MT218の静脈注射後のナノ粒子(ベースライン)の2種両方のナノ粒子で処理する前(ベースライン)、MDA-MB-231及びHs578T腫瘍におけるCNRは高く、EDB-FN発現が高いことを示している、図34A。Hs578T腫瘍の対比後のCNRはMDA-MB-231腫瘍よりも有意に高く、前者のEDB-FNは細胞内のEDB-FNのタンパク質ブロットと一致するより高い発現を示した(図31O、P)。GSD-PEG-ECO/miR-200cで処理すると、MDA-MB-231及びHs578T腫瘍におけるCNRが有意に低下し、EDB-FN発現が低下し、GSD-PEG-ECO/siNSで処理された腫瘍は、同じ群のマウスの前処理腫瘍と同じ高CNRを有することが示された。miR-200cで処理したMDA-MB-231腫瘍の対比後CNRは、対照前背景レベルより有意に増加せず、処理されたHs578T腫瘍のCNRは、背景レベルよりやや高かった(図34B)。この観察結果は、miR-200c処理後、Hs578T腫瘍中のEDB-FN残基がMDA-MB-231腫瘍よりも高く、miR-200cで処理した細胞におけるEDB-FNのタンパク質ブロット結果と一致することを示している(図31O、P)。要約すると、これらの結果から、MT218のMRMIによるEDB-FN発現は、GRD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子治療の腫瘍反応を非侵襲的かつ正確に可視化し、miR-200c治療の有効性を効果的に評価できることが示唆された。
【0256】
RGD-PEG-ECO/miR-200c治療法により、TNBC腫瘍におけるmiR-200cレベルが向上され、下流ターゲット遺伝子が抑制される。
RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の全身投与は、外科的に切除された原発腫瘍のqRT-PCR分析に示されるように、TNBC腫瘍におけるmiR-200cの強い上昇をもたらす。RTD-PEG-ECO/siNSで処理した腫瘍と比較して、GRGD-PEG-ECO/miR-200cで処理したMDA-MB-231及びHs578T腫瘍のmiR-200cレベルは、それぞれ約7.6倍及び3.4倍に増加した、図35A、Dである。重要なことに、このmiR-200cの上方修正は、ZB1及びEDB-FNをmRNAレベルで有意に低下させ、図35B、C、E、F。免疫組織化学は、GRGD-PEG-ECO/miR-200cによって処理された腫瘍におけるEBF-FNのダウングレードも確認した。GRD-PEG-ECO/siNS処理したMDA-MB-231及びHs578T腫瘍の組織切片には、抗-EDB-FN抗体染色などの強いEDB-FN染色が観察されたが、GRD-PEG-ECO/miR-200cで処理した腫瘍は、EDB-FN染色の有意な減少を示した(図35G)。要約すると、これらの結果は、TNBC腫瘍をRGD-PEG-ECO/miR-200cシステムで処理することで、miR-200c発現を効果的に増加させ、下流発癌遺伝子ZEB1及びEDB-FNを体内でダウングレードできることを示している。動物モデル腫瘍において、miR-200c及びその関連下流遺伝子レベルの変化は、イントロ実験で得られたデータと一致し、RGD-PEG-ECO/miR-200c処理における腫瘍反応を強く確認した。
【0257】
RGD-PEG-ECO/miR-200cは、マウスにおける顕著な毒性のある副作用を引き起こさない。
RGD-PEG-ECO/miR-200c和RGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子の繰り返し全身投与の安全性は、治療中のマウスの体重をモニターして評価した。また、ナノ粒子の繰り返し注入の6週間の間、いずれのマウスキューにおいても体重の有意な変化は認められなかった、図36A。ナノ粒子除去に関与する肝臓、膵臓及び腎臓のH&E染色組織病理学的分析は、2種のナノ粒子で処理されたマウスにおいて、組織学的に正常であり、顕著な組織損傷がないことを示した。これらの結果は、TNBCの標的治療のための全身投与RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子の安全性が優れていることを示している。
【0258】
議論
この作業は、1回目にTNBC TMEにおけるEDB-FNのMR分子イメージングで標的とするmiR-200c治療に対する腫瘍応答を非侵襲的に撮像することを示す。フィブロネクチン(FN1)は、EMTマーカーの1つとして考えられ、癌部組織における重要なECMタンパク質である。しかし、正常組織のECMにも存在するため、その適切な腫瘍マーカーとしての臨床的価値を妨げる。具体的には、その癌胚同種EDB-FNは、浸潤性腫瘍において特異的に過剰発現し、正常組織では発現しないため、癌のイメージング及び治療のための理想的な標的となる。Kumra, D. P. Reinhardt, Advanced Drug Delivery Reviews, 97, 101 (2016)。MDA-MB-231及びHs578T TNBC細胞は、いずれも低miR-200c発現及び高EDB-FN発現を有する。RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子媒介miR-200cのアディションは、両細胞株におけるEDB-FNの著しい低下をもたらし、インビトロでの浸潤抑制と関連している。同様に、マウスの体内にRGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子を毎週系統的に注入すると、非特異的コントロールRGD-PEG-ECO/siNSと比較して、インビボMDA-MB-231及びHs578T TNBC腫瘍の増殖が有意に抑制された。MT218を用いた処理前のMRMIスキャンでは、2種の腫瘍モデルに強いシグナル増強が示され、miR-200c処理腫瘍のスキャンでは有意に減少したが、対照処理の腫瘍画像では減少しなかった。これらの観察は、miR-200cがEDB-FN発現に直接的又は間接的に影響し、MRMIの誘導EDB-FNレベル変化の治療がRGD-PEG-ECO/miR-200c処理腫瘍反応の非侵襲的な評価を効果的に提供できることを示している。
【0259】
また、MT218を用いたMRMIは、GRD-PEG-ECO/miR-200c標的送達miR-200cによるTNBCの腫瘍微小環境の効果的な変化を初めて実証した。FN1及びEDB-FNは、癌細胞の遊走及び浸潤を促進し、基質との相互作用を媒介することによって重要な役割を果たすECMタンパク質である。Vaidyaら,Cells,9,1826(2020)。MRMIは、miR-200c処理前後の腫瘍EDB-FN発現レベル全体の3次元、高解像度画像を非侵襲的に提供する。また、RRD-PEG-ECO/miR-200cで処理した腫瘍画像におけるMRMIシグナルの低下は、EDB-FNのダウングレードを示し、腫瘍切片の死後免疫組織化学的に確認した。これらの結果は、miR-200cの上昇が癌タンパク質EDB-FN及びその後の腫瘍ECMリモデリングを調節することによって、2つのTNBC腫瘍モデルにおけるTMEを変更することができることを示している。miR-200c発現がTMEの他のいくつかの構成要素(コラーゲン、層接着タンパク質及び免疫回路を含む)間の相互作用及び治療結果の調節に及ぼす影響は、さらなる詳細な研究を必要とする。
【0260】
また、miR-200c治療に関しては、2種のTNBC腫瘍モデルは、MRMIによって明らかにされたEDB-FN発現に類似した生物学的反応を示したが、RRD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子とのモデル特異的な違いも示した。MDA-MB-231腫瘍は、治療中に静止し、有意な大きさ変化は見られず、治療6週間後にはHs578T腫瘍で有意な退治が認められた。治療後の分析は、miR-200cが2種の治療腫瘍モデルで有意に上昇し、ZEB1及びEDB-FNが有意に下方修正されたことを示した。miR-200cは、Notch、Hedgehog、Wntを含む他の多くの癌性経路調節発癌遺伝子を標的としているため、2種の処理された腫瘍モデル間の腫瘍サイズの違いは、miR-200cの上昇によって直接影響を受ける分子経路によって部分的に説明することができる。複数のTNBCモデルにおける腫瘍サイズに基づく生物学的反応と治療結果の違いを理解するには、さらなる包括的な調査が必要である。それにもかかわらず、RGD-PEG-ECO/miR-200cが複数の発癌性遺伝子を直接調節する能力は、miR-200cが不均一性TNBC腫瘍を効果的に治療するための有望な治療法であることを示している。この研究は、miR-200cがRGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子を標的とするシステム配信を介して攻撃性TNBC腫瘍の安全な治療のための有望な治療標的であるかもしれないという強い証拠を提供する。MT218のMRMIとRGD-PEG-ECO/miR-200cによる治療の組み合わせにより、がん患者の正確な医療のための非侵襲的で垂直的な評価が可能になる。
【0261】
以上をまとめると、RGD-PEG-ECO/miR-200cナノ粒子療法に対する腫瘍応答の非侵襲的な評価のためのEDB-FNのMRNAの有効性が実証された。RGD-PEG-ECO/miR-200cを比較的低用量で週毎に投与すると、無毒な副作用がなく、マウスモデルにおけるTNBC腫瘍の阻害及び回帰が阻害された。MT218のMRMIを用いて、miR-200cの腫瘍特異的EDB-FNレベルの低下と腫瘍微小環境の変化が、癌治療における腫瘍反応の分子イメージングパターンの有望かつ非侵襲的な評価であることを証明した。この研究は、分子イメージングとmiRNAレベルのシステム調節を組み合わせて、TNBC患者の個別化のための新しい精密医学的アプローチを開いた。
【0262】
実験セクション
細胞及び細胞培養
三陰性乳癌系MDA-MB-231及びHs578T ATCC(Manassas,VA)から購入された。MDA-MB-231は、10%のウシ血清(FBS、Gibco)と1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDulbecco改良Eagle培地(DMEM、Gibco)に保持された。Hs578T細胞は、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトアビジン及びSigma-Aldrich(St. Louis,MO)由来の0.01mg/mL組換えヒトインスリンを補充したDMEMで培養した。すべての細胞を37℃及び5%COの加湿インキュベーターで培養した。細胞株は、アメシオ(Cambridge,MA)由来のレンチウイルスCMVルシフェラーゼ(ホタル)-2A-GFP(Neo)を用いて、ホタルルシフェラーゼ及びGFPを発現するように工法を行い、フローサイトメトリーを用いて選別した。
【0263】
ナノ粒子製剤
アミノ脂質ECO(MW=1023)と標的リガンドRGD-PEG-MAL(PEG,3.4k,Creative PEGworks,Durham,NC)を合成した。miR-200c二本鎖及び陰性対照siRNA(siNS)をヌクレアーゼフリーの水に溶解し、濃度25μmol/Lとした。新鮮なRGD-PEG-MALをNF水に溶解し、材料濃度0.625mmol/Lにした。ECOを100%エタノールに溶解し、材料濃度5mMと50mMに溶解し、インビトロ及びインビボ実験に使用した。標的ナノ粒子製剤は、まずRGD-PEG-MAL(2.5mol%)とECOをヌクレアーゼフリーの水に30分間混合し、竜胆攪拌することにより調製した。続いてmiR-200c又はSINS二本鎖体と錯化し、対応する標的ECO/miR-200c又はECO/siNSナノ粒子を形成し、N/P=8。生体内実験では、ナノ粒子製剤を5%スクロースと混合し、急速凍結し、-80°Cで保存した。
【0264】
ナノ粒子同定
ナノ粒子径及びζ電位の測定は、Anton Paar GmbH(Graz,Austria)のLitesizer 500を用いて25℃でNF水(1:20)中で希釈した。ナノ粒子(20μL)を薄い炭素膜(20nm)で被覆した銅格子に装填し、3μLの2%酢酸ウリル溶液で染色することで電子顕微鏡(TEM)を透過させた。乾燥後、TEMを用いてサンプルを撮影した。RNAのカプセルのカプセル化は、アガロースゲル電気泳動を用いて評価し、20μLのナノ粒子にロシュRoche(Basel,Switzerland)由来の4μLの泳動色素を混合し、エチジウムブロマイドを含む1%アガロースゲルにロードした。電気泳動は、100Vで30分間行った後、ChemiDocTM XRS+イメージャー(BioRad、Hercules、CA)を用いて可視化した。
【0265】
ECO/miRNAナノ粒子の細胞取り込み
RGD-PEG-ECO/miRNAのナノ粒子の細胞取り込みの定性評価を、生細胞蛍光顕微鏡を用いて評価した。MDA-MB-231細胞(100000個細胞)をガラス下のマイクロウェルプレートに接種し、一晩静置した後、RGD-PEG-ECO/miRNA-Cy5.5(Dharmacon,Lafayette,CO)を用いて、N/P=8、[miRNA]=40nmで処理した。4時間後、トランスフェクション培地を5μg/mL Hoechst 33342(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)で30分間置換した。その後、細胞をDPBSで洗浄し、Olempus FV1000共焦点顕微鏡を用いてイメージングした。同様に、細胞摂取はフローサイトメトリーを用いて定量的に評価される。トランスフェクション細胞を0.26mmol/L EDTAを含む0.25%トリプシン(Invitrogen, Carlsbad,CA)で採取し、12000rpmで5分間遠心分離し、5%ポリアセタールDPBS(500μL)に固定した。35μm細胞フィルター(BD Biosciences、San Jose、CA)で濾過した後、BD FACSCaliburフローサイトメトリーを用いてCy5.5の蛍光強度を測定し、細胞取り込みを定量した。
半定量的RT-PCR解析
半定量リアルタイムPCRを行った。簡潔に説明すると、メーカーの指示に従い、RNeasy Plus Mini Kitは、Qiagen(Germantown,MD)を使用して、細胞及び組織からmiRNAを含む全RNAを抽出した。ヒトRNU6B(RNU6-2)miScriptプライマーアッセイ及びmiScript汎用プライマーを含むmiScript II RTキット(Qiagen,Hilden,Germany)を用いて逆転写を行い、その後、ヒトRNU6B(RNU6-2)miScriptプライマーアッセイ及びmiScript汎用プライマーを含むmiScript SYBR Green PCRキット(Qagen)を用いてqPCRを行った。miRNA及びmRNAの発現レベルは、それぞれU6(Qiagen)及び18S対照に基づき正規化された。
【0266】
免疫ブロット解析
全タンパク質は、細胞塊(PBSにおけるプロテアーゼ阻害剤及びLaemmli緩衝液の1:1)を溶解することによって抽出される。溶解物を100°Cで10分間インキュベートし、4°Cで13200rpmで15分間遠心分離した。タンパク質濃度は、測定者のプロトコール(Bio-Rad)に従って、Lowryのアッセイキットを用いて求めた。等量のタンパク質抽出物(40・μg)をSDS-PAGEで分離した後、ニトロセルロース膜に転写した。TBSTで5%BSAで1時間ブロッキングした。抗-ZEB1、抗-BMI1、抗-サバイビン、抗-波形タンパク質及び抗β-アクチンモノクローナル抗体(Cell Signaling Technology,Danvers,MA)及び抗-EDB-FN G4クローニング(Absolute Antibody,UK)の抗体(1:1000希釈、4°Cで一晩インキュベート)を使用した。二次抗体インキュベーション(1:2000希釈1時間)の後、Signal Fire Plus ECLキット(セルシグナリングテクノローヤ)で膜を現像し、ChemiDocTM XRS+イメージャー(バイオラッド)にイメージングした。
【0267】
スクラッチ試験
スクラッチを行った。簡単に言えば、1×10の乳癌細胞を6ウェルプレートに24時間置いた。10μLピペットの先端を使用して、プレートの中央に傷を作成した。細胞をDPBSで洗浄し、[RNA]=100nMのRGD-PEG-ECO/miR-200c又はRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子で細胞をトランスフェクションし、傷が閉じるまで24時間モニタリングした。Motiram T2カメラ(Motic,Xiamen,China)で画像を撮影した。
【0268】
Transwell遊走アッセイ
Transwell遊走試験を行った。TNBC細胞を標的とするECO/miR-200c及びECO/siNSナノ粒子を[RNA]=100nmで48時間トランスフェクトした。Transwell inserts(50000個細胞/小室)(VWR、Radnor、PA)に血清空腹細胞を接種し、0.28mg/mL Corning基底膜マトリックス(Corning Matrigel Membrane Matrix、Corning,NY)でコーティングした。24時間後、細胞を遊走しない限り、小室を拭き取た。Transwell insertsの底の遊走細胞を10%ホルマリン(10分)に固定し、0.1%結晶性紫で染色した(20分)。Moticam T2カメラで画像を取得した。
【0269】
3D腫瘍スフェロイド形成成長の測定
マトリゲル成長試験を行った。TNBC細胞を100 nM RNAのREG-PEG-ECO/miR-200c又はRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子で48時間処理した。次いで、細胞を100000個の細胞/ウェルの密度でコルニング基底膜マトリックスコーティングされたμスライド(8ウェル、Ibidi,Grafelfing,Germany)に接種した。腫瘍スフェロイドの評価は、最大48時間行い、Moticam T2カメラを用いて撮像した。
【0270】
動物モデル
Jackson研究所(Bar Harbor,Maine)から4~6週の雌裸マウス(胸腺nu/nu背景なし)を購入し,Case Western Reserve University(Cleveland,OH)の動物コア施設(Animal Core Facility)でケアを行った。すべての動物実験は、CWRU IACUCによって承認されたスキームに従って実施した。マウスの乳房脂肪パッドは、マトリゲルPBS混合物に懸濁された2×10個GFP-Lucで標識されたMDA-MB-231又は4×10個Hs578T細胞で注入された。腫瘍の体積は、定規とバイオルミネッセンスイメージング(BLI)を使用して毎週モニタリングされた。平均腫瘍体積が50mmに達したマウスを無作為に対照群と処理群(MDA-MB-231のn=5/キュー,Hs578Tのn=4/キュー,2匹のマウスに腫瘍を認めなかった)に分けた。
【0271】
インビボでのナノ粒子治療法
RTD-PEG-ECO/miR-200c又はRGD-PEG-ECO/siNSナノ粒子(1mg/kg、5%w/vスクロース)を含む生体内製剤を、インプレースMDA-MB-231及びHs578T腫瘍を有するマウスに静脈内投与し、週1回、6週間(1mg/kg、5%w/vスクロース)で注射した。原発性腫瘍の増殖は、キャリパ測定及びBLIを介して1週間に亘ってモニタリングした。6週間後、原発性腫瘍を外科的切除し、組織学、RNA発現及びiHcの解析を行った。また、組織学的に脾臓、肝臓、腎臓を抽出した。腫瘍の一部を10%中性緩衝ホルマリン(Sigma-Aldrich)に固定し、パラフィン包埋、区分、H&E染色を行った。IHCは、抗EDB-FN G4抗体を用いて行った。CWRUの組織資源コア施設により染色サービスを提供した。1つのRGD-PEG-Eco/miR-200c処理したH578T腫瘍ベアリングマウスを屠殺しなければならなかったが、腫瘍転移前の死因と治療毒性を組織学的に分析しても検出されなかった。
【0272】
治療応答のmRNAを介したモニタリング
標的MRI造影剤ZD2-N3-Gd(HP-DO3A)(MT218)は、Molecular Theranotics(Cleveland,OH)によって供給され、合成される。MDA-MB-231又はHs578T腫瘍を運ぶマウスのMR画像は、3T MRS 3000スキャナ(MRS Solutions,Surrey,UK)上のマウス短い4コイルで採取した。MT218の0.1mmol/kgの静脈内投与後、高速スピンエコー(FSE)軸位断シーケンスと呼吸ゲーティング(TR=305ms、TE=11ms、FA=90°、FOV=40×40mm、スライス厚さ=1mm、スライス数=15、Nav=2、行列=256×256)を用いてT1強調画像を取得した。MT218の射出後、10、20、30分前後で画像を取得した。MDMIは、治療前に行った後、MDA-MB-231及びHS78T腫瘍の6週間後ナノ粒子治療を行った。MRIデータ及び画像処理は、FIJI(ImageJ)ソフトウェアを用いて行った。腫瘍のコントラスト対ノイズ比(CntR)は、平均腫瘍強度とノイズの標準偏差で割った平均筋強度との差として算出した。
【0273】
統計解析
全ての実験を独立して3回(n=3)行った。統計解析は、GraphPadソフトウェア(v8.4.3)を用いて行い、P<0.05は、統計的に有意であると考えた。2つのグループ間のデータをペアT検定を用いて比較した。2組以上のグループを超えるデータは、単一因子分散分析と比較した。データは、平均値±S.E.Mで表される。ドットは、個々のマウスや図形凡例に記載されている技術的複製を表す。
【0274】
また、本明細書で引用されている特許請求の範囲、特許出願、及び出版物、並びに、電子的に入手可能な材料の開示は、参考として援用されている。以上の詳細な説明及び実施例は、理解を容易にするために説明したものである。もちろん、これに限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

図1A-1H】
図2A-2F】
図3A-3J】
図4A-4C】
図5A-5E】
図6A-6E】
図7A-7F】
図8A-8H】
図9A-9E】
図10A-10F】
図11A-11H】
図12A-12G】
図13A-13D】
図14A-14B】
図15A-15E】
図16A-16C】
図17A-17I】
図18
図19A-19C】
図20A-20C】
図21A-21C】
図22
図23A-23B】
図24A-24B】
図25A-25C】
図26A-26C】
図27A-27B】
図28A-28D】
図29A-29D】
図30A-30D】
図31A-31P】
図32A-32C】
図33A-33G】
図34A-34D】
図35A-35G】
図36A-36D】
【配列表】
2023529660000001.app
【国際調査報告】