(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】小児腫瘍の診断、分類及び/又はモニタリングの為の手段及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20230704BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20230704BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230704BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
G01N33/543 597
G01N33/543 575
G01N33/574 A
C12Q1/02
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575754
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 NL2021050367
(87)【国際公開番号】W WO2021251824
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522179747
【氏名又は名称】スティヒティング ユーロフロー
(71)【出願人】
【識別番号】522179758
【氏名又は名称】アカデミッシュ ゼィークンホイス ライデン エイチ.オー.ディー.エヌ.エルユーエムシー
(71)【出願人】
【識別番号】522179769
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サラマンカ
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】デ サ フェレイラ ファシオ,クリスチアーニ
(72)【発明者】
【氏名】デッサンティ ボタフォゴ ゴンサウヴェス,ヴィトル
(72)【発明者】
【氏名】ソブラル ダ コスタ,エライニ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドンフェン,ヤコブス ヨハネス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】オルファオ デ マトス コレイア エ ヴァレ,ジョゼ アルベルト
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QR56
4B063QS33
4B063QX02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA70
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、医療診断の分野に、特に、単一のチューブを用いたマルチパラメーターフローサイトメトリー(MFC:multiparameter flow cytometry)による小児腫瘍の検出及びモニタリングの為の方法及び試薬に関する。小児腫瘍細胞の該フローサイトメトリー検出の為のパーツキットが提供され、ここで、該キットは、であり、細胞表面マーカーであるCD45、CD56、GD2、CD99、CD8、EpCAM、CD4、smCD3、CD19及びCD271、細胞質マーカーであるcyCD3、並びに1以上の核マーカーであるnuMyogenin及び/又はnuMyoD1に対して向けられた蛍光色素結合済抗体を備えており、ここで、
(i)マーカーCD99/CD8に対する抗体は、同じ蛍光色素に結合されており、並びに第1のマーカー対であるCD99/CD8を表し;
(ii)マーカーEpCAM/CD4に対する抗体は、同じ蛍光色素に結合されており、並びに第2のマーカー対であるEpCAM/CD4を表し;
(iii)CD271に対する抗体は、cyCD3又はsmCD3のいずれかに対する抗体と同じ蛍光色素と結合されており、並びに第3のマーカー対であるCD271/cyCD3又はCD271/smCD3を表す;
ここで、前記第1、第2及び第3のマーカー対の間で、当該蛍光色素は区別可能であり;並びに、ここで、前記細胞質マーカー及び前記核マーカーに対する抗体が、前記細胞表面マーカーに対する前記抗体から物理的に離れている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小児腫瘍細胞のフローサイトメトリー検出の為のパーツキットであって、該キットは、細胞表面マーカーであるCD45、CD56、GD2、CD99、CD8、EpCAM、CD4、smCD3、CD19及びCD271、細胞質マーカーであるcyCD3、並びに1以上の核マーカーであるnuMyogenin及び/又はnuMyoD1に対して向けられた蛍光色素結合済抗体を備えており、ここで、
(i)マーカーCD99/CD8に対する抗体は、同じ蛍光色素に結合されており、並びに第1のマーカー対であるCD99/CD8を表し;
(ii)マーカーEpCAM/CD4に対する抗体は、同じ蛍光色素に結合されており、並びに第2のマーカー対であるEpCAM/CD4を表し;
(iii)CD271に対する抗体は、cyCD3又はsmCD3のいずれかに対する抗体と同じ蛍光色素と結合されており、並びに第3のマーカー対であるCD271/cyCD3又はCD271/smCD3を表す;
ここで、該キットは、8以上の区別可能な蛍光色素に結合された抗体を備えており;ここで、前記第1、第2及び第3のマーカー対の間で、当該蛍光色素は区別可能であり;並びに、ここで、前記細胞質マーカー及び前記核マーカーに対する抗体が、前記細胞表面マーカーに対する前記抗体から物理的に離れている、前記パーツキット。
【請求項2】
前記細胞表面マーカーであるCD45、CD56、GD2、CD99、CD8、EpCAM、CD4、smCD3、CD19及びCD271に対する前記結合済抗体を含む、第1の容器中に収容された第1の試薬組成物と、前記細胞質マーカーであるcyCD3及び前記1以上の核マーカーであるnuMyogenin及び/又はnuMyoD1に対する前記結合済抗体を含む、第2の容器中に収容された第2の試薬組成物とを備えている、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項3】
前記パーツキットが、第3のマーカー対であるCD271/cyCD3を更に備えており、ここで、前記マーカーであるsmCD3/CD19に対する前記抗体が、同じ蛍光色素に結合されて、第4のマーカー対であるsmCD3/CD19を形成し、並びに、ここで、異なるペアの間で、当該蛍光色素は区別可能である、請求項1又は2に記載のパーツキット。
【請求項4】
前記パーツキットが、第3のマーカー対であるCD271/smC3を更に備えており、ここで、前記マーカーであるCD19及びcyCD3に対する前記抗体が、異なる蛍光色素にそれぞれ結合されている、請求項1又は2に記載のパーツキット。
【請求項5】
前記パーツキットが、前記マーカーであるnuMyogenin及びnuMyoD1に対する抗体を更に備えており、ここで、前記マーカーであるnuMyogenin/nuMyoD1に対する前記抗体が、同じ蛍光色素に結合されて、第5のマーカー対であるnuMyogenin/nuMyoD1を形成し、並びに、ここで、異なるペアの間で、当該蛍光色素は区別可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載のパーツキット。
【請求項6】
前記第1の試薬組成物が、ホジキンリンパ腫細胞表面マーカーであるHLA-DR、CD30、CD71、CD40及びCD95のうちの1以上に対する蛍光色素結合済抗体を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のパーツキット。
【請求項7】
生殖細胞腫瘍細胞表面マーカーであるOCT-3/4、BAP及びPLAPのうちの1以上に対する蛍光色素結合済抗体を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のパーツキット。
【請求項8】
前記パーツキットが、前記マーカーであるOCT-3/4及びPLAPに対する抗体を備えており、並びに、ここで、前記マーカーであるOCT-3/4/PLAPに対する前記抗体が、同じ蛍光色素に結合されて、マーカー対であるOCT-3/4/PLAPを形成し、並びに、ここで、異なるペアの間で、当該蛍光色素は区別可能である、請求項7に記載のパーツキット。
【請求項9】
骨腫瘍細胞表面マーカーであるオステオポンチン及び骨アルカリホスファターゼの1以上に対する蛍光色素結合済抗体を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のパーツキット。
【請求項10】
前記パーツキットが、前記マーカーであるオステオポンチン及びBAPに対する抗体を備えており、並びに、ここで、前記マーカーであるオステオポンチン/BAPに対する前記抗体は、同じ蛍光色素に結合されて、マーカー対であるオステオポンチン/BAPを形成し、並びに、ここで、異なるペアの間で、当該蛍光色素は区別可能である、請求項9に記載のパーツキット。
【請求項11】
表1の1~30の抗体組み合わせから選択される1以上の抗体組み合わせを備えている、請求項1~10のいずれか1項に記載のパーツキット。
【請求項12】
有核細胞完全性色素を更に含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のパーツキット。
【請求項13】
細胞を固定し及び透過させる為の試薬を更に含み、任意的に、取扱説明書、バッファー及び/又は対照サンプルを伴っていてもよい、請求項1~12のいずれか1項に記載のパーツキット。
【請求項14】
小児腫瘍の同定及び分類の為のマルチカラーフローサイトメトリー方法であって、
(a)小児腫瘍細胞を含むか又はそれを含むと疑われる生体試料のアリコートを、請求項1~13のいずれか1項に記載のパーツキット中に含まれている細胞表面マーカーに対する蛍光色素結合済抗体で染色すること;次に、
(b)前記染色された細胞を固定化液に接触されること;次に、
(c)前記固定化された且つ染色された細胞を透過液で透過処理すること:次に、
(d)前記透過処理された細胞を、請求項1~13のいずれか1項に記載のパーツキット中に含まれている細胞質マーカー及び核マーカーに対する蛍光色素結合済抗体で染色すること;
(e)前記アリコート中の前記染色された細胞をフローサイトメーターにおいて解析すること;及び、
(f)得られたデータを保存し且つ評価すること
の工程を含む、前記方法。
【請求項15】
前記生体試料が、原発腫瘍組織サンプル、末梢血、骨髄、組織サンプル、例えば、リンパ節、アデノイド、脾臓若しくは肝臓、又は他の種類の体液、例えば、脳脊髄液、硝子体液、滑液、最終針穿刺吸引物、胸水若しくは腹水であり、ここで、前記サンプルが小児患者から得られたものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
適切な標的療法を選択することを更に含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
1以上の小児腫瘍、好ましくは、i)神経外胚葉性新生物、例えば、神経芽腫、神経節芽細胞腫、神経節腫、骨外ユーイング肉腫及び古典的なユーイング肉腫、ii)筋線維芽細胞分化を有する腫瘍;iii)複数の細胞系統へのコミットメントの同定;並びに、iv)T及びBリンパ芽球性リンパ腫/白血病から選択される1以上の小児腫瘍、の診断及び分類において、請求項1~13のいずれか1項に記載のパーツキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断の分野に関する。特に、フローサイトメトリーを用いて小児腫瘍を診断することに関する。本発明は、単一のチューブ(single tube)を用いたマルチパラメーターフローサイトメトリー(MFC:multiparameter flow cytometry)による小児腫瘍の検出及びモニタリングの為の方法及び試薬を提供する。また、腫瘍組織に浸潤するところの腫瘍浸潤性リンパ球(TILs:tumor infiltrating lymphocytes)及び腫瘍浸潤性単球/樹状細胞(TIM:tumor infiltrating monocytes/dendritic cells)を同時に特徴付けする為のツールがまた提供される。また、本発明の試薬組成物は、原発腫瘍部位における腫瘍細胞の検出及び特徴付けに加えて、患者からの末梢血、骨髄、脳脊髄液、転移性腫瘍組織及び他の任意の組織サンプルの分析を通じて、該原発腫瘍以外の組織における腫瘍細胞を検出すること、並びに治療効果を評価することを可能にする。本試薬組成物に関連するキット及び方法がまた提供される。
【背景技術】
【0002】
小児固形腫瘍は、0歳~15歳の年齢層において主に発生する異種な疾病群を構成する。世界的には、年間175,000人以上の患者が発生し、年間96,000人の小児が死亡していると推定されている。固形腫瘍は小児癌全体のおよそ75%を占め、並びに該固形腫瘍は、リンパ腫、中枢神経系(CNS:central nervous system)腫瘍、神経芽腫、軟部組織肉腫、腎芽腫、骨腫瘍、網膜芽腫、肝芽腫、胚細胞腫瘍、及び癌腫(Ward E,CA Cancer J CLIN 2014;64:83)を包含する(Ward E,CA Cancer J CLIN 2014;64:83)。
【0003】
小児癌の正しい診断は、複雑であり且つ困難であることが知られている。古典的な組織学的特徴は一般的に、特定の腫瘍の種類を強く示唆するけれども、ほとんどの小児腫瘍は、光学顕微鏡及び免疫組織化学的検査だけでは区別がつかないことがありうる。異なる診断エンティティには異なる高度に特異的な治療法を必要とする為に、早期の正確な診断、分類及びリスク層別化が、特に小児癌患者において極めて重要である。
【0004】
現在、小児固形腫瘍の診断スクリーニング及び分類の為に用いられている慣用的な方法は、ホルマリンで固定化されたパラフィン包埋固形腫瘍標本の形態学的及び免疫組織化学的解析に依存している。小児固形腫瘍の大部分は、「小円形細胞腫瘍」(small round cell tumors)という記述的なカテゴリー下に分類される。小児固形腫瘍は、細胞質が乏しく、丸い多色性核を持つ未分化で小型の細胞によって形成される腫瘍を含む。これらの腫瘍は、光学顕微鏡によって類似した形態的特徴を示すという事実の為に、更なる解析がない場合に、誤診の可能性もあり、小児固形腫瘍の正確な診断はしばしば困難である(Magro G,Acta Histochem.2015;117:397)。従って、更なる免疫組織化学的な研究が必須である。それにもかかわらず、小児癌の大多数のサブタイプの高感度且つ特異的な診断及び分類の為に、そのような免疫組織化学的分析に適用されることができる統一的に推奨される抗体パネルが存在しない。さらに、腫瘍の直接診断及び分類の為に、全ての有用なマーカーを同時に評価する為の技術的解決策は、免疫組織化学的検査又はフローサイトメトリーに基づいて、現在利用可能でないか又は記述されていない。
【0005】
それ故に、MFC免疫表現型検査(immunophenotyping)が疾病の迅速な診断、分類及びモニタリングに不可欠であるところの小児白血病の診断ワークアップとは対照的に、MFC免疫表現型検査が小児固形腫瘍の診断ワークアップの為に日常的に使用されているわけではない。事実、MFC免疫表現型検査はこれまで、特異的な診断実体(specific diagnostic entities)を同定する為の限られたマーカーの評価に限定されてきており、該特異的な診断エンティティは、高度に特徴的な表現型を発現するもの、例えば、神経内分泌腫瘍におけるCD45-CD56+の表現型プロファイル(Bryson GJ,J Clin Pathol.2002;55:535)、神経芽腫のCD45-CD56+GD2+の免疫表現型(Bozzi F,Anticancer Res.2006;26:3281)、原始神経外胚葉性腫瘍におけるCD57+CD56+CD99+CD45-特徴(Dubois SG,Pediatr Blood Cancer.2010;54:13)、及び横紋筋肉腫におけるCD45-CD56+ nuMyogenin+のプロファイル(Almazán-Moga A,.Cytometry A.2014;85:1020)、を包含する。
【0006】
しかしながら、これらの表現型プロファイルは、小児癌の中でも特異的な診断実体に特徴的であると言われているにもかかわらず、異なる腫瘍型を正確に区別することができない為に、4~6色の抗体組み合わせのパネルに基づく慣用的な診断手順に対して、臨床の場で前向きに試験された場合に、上記の表現型プロファイルは、相対的に低い効率を体系的に示してきた。加えて、小児固形腫瘍組織の診断用MFC解析は、同一サンプル内の腫瘍内に共存する腫瘍浸潤性炎症細胞及び免疫細胞の種類及び数に関する情報を同時に提供しなかった。
【0007】
2013年、Ferreira-Facio等(Ferreira-Facio,PLoS One.2013;8:e55534)は、最大8色の複数のチューブにおいて33種類の異なる抗体特異性を含むところのより多くの抗体組み合わせのパネルを用いて、52個の小児固形腫瘍からの腫瘍細胞の染色パターンをMFC免疫表現型検査によって検討した。上記の研究において、慣用的な病理組織学的基準によって反応性/炎症性と分類された全てのサンプルがまた、MFC単独によって正しく診断された。同様に、珍しいリンパ腫の2角サンプルを除く全てのサンプルにおいて、腫瘍細胞がMFCによって検出された。この研究に基づいて、他の特異的なB細胞マーカー及びT細胞マーカーに加えて、CD45、CD56、CD81、CD99、EpCAM、GD2、核nuMyoD1、nuMyogenin及びCD271の組み合わされた評価が、腫瘍診断と分類との両方の為の有用な抗体パネルであることができると結論付けされた。しかしながら、本著者らは、i)小児癌腫瘍細胞の同定;ii)それらの診断分類、及びiii)同一サンプル中に共存する腫瘍浸潤免疫細胞の詳細解析のいずれをも可能にするであろう全ての有用なマーカーを単一の抗体の組み合わせにする為の方法を提供することに失敗した。加えて、幾つかの腫瘍のサブタイプ、例えばホジキンリンパ腫、の同定には系統的に失敗した。
【0008】
これと並行して、国際公開公報WO2010/140885号において、van Dongen等は、正常、反応性、再生及び腫瘍性の白血球細胞集団の免疫表現型特徴付けの為に使用されるべき蛍光化合物を結合した抗体試薬のパネルを報告した。しかしながら、抗体の組み合わせのそのようなパネルは、白血病患者及びリンパ腫患者に完全に限定されており、非造血性固形腫瘍と血液系腫瘍(例えば、小児リンパ腫)との診断、分類及びモニタリングに関して、小児癌において同様の試みは行われてきていない。
【0009】
従って、本発明者等は、小児固形腫瘍サンプル中の腫瘍細胞を系統的な同定及び分類を可能にし並びに同一サンプル中に共存する浸潤性免疫細胞の詳細な特性付けを同時に提供することを可能にするところ複数の抗体試薬の単一の組み合わせを設計することに着手した。その上、本発明者等は、小児患者における固形腫瘍の診断的スクリーニング及び分類、並びに腫瘍の免疫細胞の微小環境の同時詳細解析の為の、抗体試薬の単一且つユニークな組み合わせを含むMFCプロトコルを提供することを目指した。
【0010】
これらの目標は、小児固形腫瘍サンプルにおいて存在する個々の腫瘍細胞において、多様ではあるが特徴的な発現プロファイルを示すところの12以上の異なるタンパク質の同時検出の為の8色以上の新規な蛍光色素抗体の組み合わせの開発によって驚くほど満たされ、そして、小児癌を異なる診断実体内に同定及び分類するとともに腫瘍浸潤性免疫細胞を同時に評価することを可能にする。より特には、このことは、(i)細胞表面マーカーであるCD45、CD56、GD2、CD99、CD8、EpCAM、CD4、smCD3、CD19及びCD271;(ii)細胞質マーカーであるcyCD3;並びに(iii)1以上の核マーカーであるnuMyogenin及び/又はnuMyoD1の為の染色によって達成されること、ここで、マーカーCD99/CD8に対する抗体が、第1の蛍光色素に結合され及び第1のマーカー対であるCD99/CD8を表し;マーカーEpCAM/CD4に対する抗体が、第2の蛍光色素に結合され及び第2のマーカー対であるEpCAM/CD4を表し、並びにCD271に対する抗体は、cyCD3又はsmCD3のいずれかに対する抗体として第3の蛍光色素に結合され及び第3のマーカー対であるCD271/cyCD3又はCD271/smCD3を表す、ことが見つけられている。試験サンプルのアリコート中の無傷の細胞上の細胞表面マーカーを段階的に染色し、次に同じアリコートを透過処理し、細胞内及び核マーカーを染色することを可能にする為に、細胞質及び核マーカーの為の抗体が、細胞表面マーカーに対する抗体から物理的に離されている(すなわち、細胞表面マーカーに対する抗体混合されていない)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故に、本発明は、小児腫瘍細胞のフローサイトメトリー検出の為のパーツキットであって、該キットは、細胞表面マーカーであるCD45、CD56、GD2、CD99、CD8、EpCAM、CD4、smCD3、CD19及びCD271、細胞質マーカーであるcyCD3、並びに1以上の核マーカーであるnuMyogenin及び/又はnuMyoD1に対して向けられた蛍光色素結合済抗体を備えており、ここで、
(i)マーカーCD99/CD8に対する抗体は、同じ蛍光色素に結合されており、並びに第1のマーカー対であるCD99/CD8を表し;
(ii)マーカーEpCAM/CD4に対する抗体は、同じ蛍光色素に結合されており、並びに第2のマーカー対であるEpCAM/CD4を表し;
(iii)CD271に対する抗体は、cyCD3又はsmCD3のいずれかに対する抗体と同じ蛍光色素と結合されており、並びに第3のマーカー対であるCD271/cyCD3又はCD271/smCD3を表す;
ここで、該キットは、8以上の区別可能な蛍光色素に結合された抗体を備えており(少なくとも8色の抗体の組み合わせ);並びに
ここで、前記第1、第2及び第3のマーカー対の間で、当該蛍光色素は区別可能であり;並びに、ここで、前記細胞質マーカー及び前記核マーカーに対する抗体が、前記細胞表面マーカーに対する前記抗体から物理的に離れている。
【0012】
単一細胞懸濁液のアリコートを染色する為のこのキットは、12種類の「バックボーンマーカー」の1組に対する蛍光色素結合済抗体の組み合わせのユニークなパネルを含み、ここで、或る選択されたマーカーに対する抗体は、ユニークで異なる蛍光色素にそれぞれ結合されており、一方、他の選択されたマーカーに対する抗体は「対化された」(paired)、すなわち、異なるマーカーに対する抗体は同じ蛍光色素に結合されている。
【0013】
例えば、本発明のキットにおいて、4つの選択されたマーカーであるCD45、CD56、GD2及びnuMyogeninに対する抗体は、異なる蛍光色素にそれぞれ結合されており(すなわち、それぞれ蛍光色素1~4)、一方で、マーカー対であるCD99/CD8、EpCAM/CD4、CD271/cy/smCD3のそれぞれに対する抗体は、別の、しかし異なる蛍光色素(すなわち、それぞれ蛍光色素5~8)と組み合わせられている(すなわち、表1における抗体組み合わせ1)。
【0014】
少なくとも2つの容器(試薬チューブ)を備えている様々なキット設計が包含される。例えば、該キットは2以上の容器を含んでいてもよく、容器の総数は、本明細書において提供されているような固有の抗体パネルを構成する。1つの実施態様において、該細胞表面マーカーに対する結合済抗体は、2つ以上の容器にわたって分割される。同様に、該細胞質マーカーであるcyCD3及び該1以上の核マーカーであるnuMyogenin及び/又はnuMyoD1に対する結合済抗体は、別々の容器内に存在してもよい。便宜上、該キットは好ましくは、細胞表面マーカーであるCD45、CD56、GD2、CD99、CD8、EpCAM、CD4、smCD3、CD19及びCD271に対する結合済抗体の混合物を含む、第1の容器中に収容された第1の試薬組成物と、該細胞質マーカーであるcyCD3及び前記1以上の核マーカーであるnuMyogenin及び/又はnuMyoD1に対する結合抗体を含む、第2の容器中に収容された第2の試薬組成物とを備えている。
【0015】
本発明に従うと、CD3の細胞質(cytoplasmic)バージョン(cy)と表面膜(surface membrane)バージョン(sm)の両方がマーカーとして用いられ、並びに、マーカーCD271は常にcyCD又はsmCD3のいずれかとペア付けされる。マーカーcyCD3は、固有のマーカーであるか、又はCD271とマーカー対を形成することができ、一方、マーカーsmCD3は、CD271又はCD19のいずれかとマーカー対を形成することができる。
【0016】
1つの実施態様において、前記パーツキットが、第3のマーカー対であるCD271/cyCD3に対する抗体を含み、マーカーsmCD3/CD19に対する抗体が同じ蛍光色素に結合されて、第4のマーカー対であるsmCD3/CD19を形成し、並びに、ここで、異なるペアの間で、当該蛍光色素は区別可能である。例えば、表1における組み合わせ1~3、7~16及び18~29のうちのいずれか1つを参照されたい。別の実施態様において、該パーツキットは、第3のマーカー対であるCD271/smCD3を備えており、並びに、マーカーであるCD19及びcyCD3に対する抗体は、異なる蛍光色素にそれぞれ結合されている。例えば表1における組み合わせ4~6、17及び30のいずれか1つを参照されたい。
【0017】
本発明のキットは、1以上の核マーカーであるnuMyogenin及びnuMyoD1のいずれか一方又は両方に対する抗体の存在によって更に特徴付けられる。1つの実施態様において、マーカーnuMyogeninのみが使用される。例えば、表1における組み合わせ1、4、7、9、11、13、15、18、23~26のうちのいずれか1つを参照されたい。従って、該12個のマーカーは、合計9個の蛍光色素と結合されることができる:6つのマーカー(CD45、CD56、GD2、nuMyogenin、CD19及びcyCD3)は異なる蛍光色素にそれぞれ結合され、並びに、他の6つのマーカーは抗体の複数の対(CD99/CD8、EpCAM/CD4及びsmCD3/CD271)中に配置され、並びに、各ペアは異なる蛍光色素と組み合わされる。更に他の実施態様において、マーカーnuMyoD1のみが使用される。例えば、表1における組み合わせ2、5、8、10、16、17、19、21、27、29~30のうちのいずれか1つを参照されたい。更に別の実施態様において、本発明は、前記マーカーであるnuMyogenin及びnuMyoD1に対する抗体を含むパーツキットを提供し、ここで、前記マーカーであるnuMyogenin/nuMyoD1に対する前記抗体は、同じ蛍光色素に結合されて、更なるマーカー対であるnuMyogenin/nuMyoD1を形成し、並びに異なるペアの間(すなわち、CD99/CD8対、EpCAM/CD4対、CD271/(cy/sm)CD3対及びnuMyogenin/nuMyoD1対)で、当該蛍光色素は区別可能である。マーカーnuMyogenin/nuMyoD1に対する抗体は、同じ蛍光色素に結合されて更なるマーカー対nuMyogenin/nuMyoD1を形成し、並びに、異なるペアの間で、(i.CD99/CD8ペア、EpCAM/CD4ペア、CD271/(cy/sm)CD3及びnuMyogenin/nuMyoD1ペア)の間で、蛍光色素が区別可能である。例えば表1における組み合わせ3、6、12、14、20、22、28のうちのいずれか1つを参照されたい。
【0018】
本発明の更なる実施態様は、ホジキンリンパ腫細胞、胚細胞腫瘍及び/又は骨腫瘍の更なる同定及び特徴付けの為に、合計12~14色までの、最大5つの異なる、追加の蛍光色素と結合された追加のマーカーを含むように拡張されているところの上記の抗体の組み合わせのうちの任意の組み合わせに関する。ホジキンリンパ腫細胞については、1以上のマーカーが、下記のタンパク質、すなわち、HLADR、CD30、CD71、CD40及びCD95から選択されうる。胚細胞腫瘍の更なる特徴付けの為に、OCT-3/4マーカー、BAPマーカー及び/又はPLAPマーカーが使用されてもよく、一方、骨腫瘍については、オステオポンチン及び/又は骨アルカリホスファターゼが、先の12個のバックボーンマーカーに加えて使用されてもよい。
【0019】
それ故に、幾つかの実施態様において、本発明に従うパーツキットは、ホジキンリンパ腫細胞表面マーカーであるHLA-DR、CD30、CD71、CD40及びCD95のうちの1以上に対する蛍光色素結合済抗体を更に含む。表1の例示的な抗体組み合わせ11~14、17~30によって示されているように、固有のフルオロフォア(fluorophore)が1以上の更なる抗体の各々の為に使用される。該キットにおいて、それらは、細胞表面マーカーであるCD45、CD56、GD2、CD99、CD8、EpCAM、CD4、smCD3、CD19及びCD271に対する抗体と混和して好適に組み合わせられうる。
【0020】
代替的には又は追加的に、本発明に従うパーツキットは、生殖細胞腫瘍細胞表面マーカーであるOCT-3/4、BAP及びPLAPのうちの1以上に対する蛍光色素結合済抗体を更に含みうる。1つの観点において、該キットは、前記マーカーであるOCT-3/4及びPLAPに対する抗体を含み、ここで、前記マーカーであるOCT-3/4/PLAPに対する前記抗体は、同じ蛍光色素に結合されて、マーカー対であるOCT-3/4/PLAPを形成し、並びにここで、異なるペアの間で、当該蛍光色素は区別可能である。
【0021】
表1の例示的な抗体の組み合わせ7、8、25~29を参照されたい。
【0022】
代替的には又は追加的に、パーツキットは、骨腫瘍細胞表面マーカーであるオステオポンチン及び骨アルカリホスファターゼ(BAP:bone alkaline phosphatase)の一方又は両方に対する蛍光色素結合済抗体を更に含みうる。
【0023】
1つの観点において、該キットは、前記マーカーであるオステオポンチン及びBAPに対する抗体を含み、並びにここで、前記マーカーであるオステオポンチン/BAPに対する前記抗体が、同じ蛍光色素に結合されて、マーカー対であるオステオポンチン/BAPを形成し、並びにここで、異なるペアの間で、当該蛍光色素は区別可能である。表1の例示的な抗体の組み合わせ7、8、21、22、24、26~29を参照されたい。
【0024】
特定の実施態様において、4つのホジキンリンパ腫マーカー(すなわち、HLADR、CD30、CD40及びCD95)と、2つ又は3つの上記胚細胞腫瘍マーカー(例えば、OCT-3/4、BAP及び/又はPLAP)のうちの1つ又は混合物と、骨腫瘍マーカーのうちの1つ又は両方とが、組み合わせ1、3及び5(例えば、表1における抗体組み合わせ18~29)において記載されたバックボーンマーカーとを6つの追加の蛍光色素位置において結合される。
【0025】
本発明の好ましい観点は、表1の抗体組み合わせ1~30から選択される1以上の抗体組み合わせを含むパーツキットに関する。
【0026】
上記の抗体の組み合わせのいずれかのものは、破片及び/又は非溶解細胞を除くための試薬、例えば、有核細胞を検出することができる色素、と組み合わされることができる。従って、有核細胞完全性色素を更に含むパーツキットがまた提供される。
【0027】
本発明において使用する為の抗体が結合されるところの特異的な蛍光色素は、当該技術分野において知られている多種多様な蛍光色素から、及び/又はまだ開発されていない蛍光色素から選択されることが可能である。1つの実施態様において、8色超のフローサイトメーターにおいて同時に測定されることができる以下の(群の)蛍光色素又は、蛍光色素及び/又は蛍光色素タンデムの他の任意の組み合わせが使用される:
i)パシフィックブルー(Pacific Blue)(PacB)、ブリリアントバイオレット(brilliant violet)(BV)421、カスケードブルー(Cascade blue)、アレキサ蛍光(Alexa fluor)(AF)405、eFluor(EF)450、ホライゾン(Horizon) V450(HV450)、ヴァイオ・ブルー(Vio-Blue)、ディライト(Dylight) 405、スーパー ブライト(Super Bright) 436、BV480;
ii)パシフィックオレンジ(Pacific Orange)(PacO)、OC515、BV510、BV480、カスケード・イエロー(Cascade yellow)、BV570、ヴァイオ・グリーン(VioGreen)、AF430、アムシアン(Amcyan)、HV500、クロム・オレンジ(khrome orange)(KO)、BUV496、EF506、Qdot 525、Qdot 545、BUV563、Qdot 565;
iii)スーパー・ブライト(Super Bright) 600、BV605、eVolve 605 Qdot 585、Qdot 605;
iv)BV650、EF625NC、EF700NC、スーパー・ブライト(Super Bright) 645eVolve 655、Qdot 655;
v)Qdot 700、スーパー・ブライト(Super Bright) 702;
vi)BV711、Qdot 705;
vii)BV750、BV785、BV786、Qdot 800;
viii)フルオレセイン・イソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)、AF488、BB515、ヴァイオ・ブライト(VioBright) FITC、ヴァイオ・ブライト(VioBright) 515、Cy2、オレゴン・グリーン(Oregon Green) 488、ディライト(Dylight) 488、AF500、EF 525NC、AF514、AF532;
ix)フィコエリトリン(phycoerythrin)(PE);
x)Cy3、AF555、AF546、ディライト(Dylght) 550;
xi)PE-CF594、PE-EF610、PE-Vio615、PE/Dazzle 594、AF568、PE-alexa 594;
xii)EF585NC、EF605NC、PE-Texas red(ECD)、PE-AF610;
xiii)ペリディニン・クロロフィルタンパク質(peridinin chlorophyll protein)(PerCP)、PerCP-EF710、PERCP-Vio700、PerCPCy5.5、ペリジニン・
シアニン(peridinin cyanin) 5(PE-cy5)、BB660、BB700;
xiv)PEcy7、PE-Vio770、PE-AF750、PE-AF700、PERCP-EF710、BB790;
xv)アロフィコシアニン(allophycocyanin)(APC)、AF647、Cy5、EF660、AF660、AF633、EF625NC、APC-Cy5.5、EF700NC;APC-R700;
xvi)AF680、APC-A680、AF700、APC-A700;
xvii)APC-hilite7(APCH7)、APC-R700、APC/Fire 750、APC-Vio 770、AF680、APC-A750、APC-C750、AF700、APC-EF780、APC-cy7、Cy7、AF750、AF790。
【0028】
本明細書において提供されているパーツキットは、細胞を固定し及び透過化する為の試薬又は溶液を、任意的に取扱説明書、バッファー及び/又は対照サンプルと共に、更に含みうる。1つの実施態様において、固定試薬は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH=7.4)中の約0.3~1.5%w/v、例えば0.5%又は1%w/v、のパラホルムアルデヒド(PFA:paraformaldehyde)を含む。例示的な透過化試薬は、PBS中で希釈された約0.1%~約0.5%のサポニンw/vを含む。
【0029】
本発明の更なる観点は、小児(固形)腫瘍の同定及び分類の為のマルチカラーフローサイトメトリー方法であって、
(a)小児腫瘍細胞を含むか又はそれを含むと疑われる生体試料のアリコートを、本発明に従うパーツキット中に含まれている細胞表面マーカーに対する蛍光色素結合済抗体で染色すること;次に、
(b)前記染色された細胞を固定化液に接触されること;次に、
(c)前記固定化された且つ染色された細胞を透過液で透過処理すること:次に、
(d)前記透過処理された細胞を、本発明に従うパーツキット中に含まれている細胞内マーカー(細胞質マーカー及び核マーカー)に対する蛍光色素結合済抗体で染色すること;
(e)前記アリコート中の前記染色された細胞をフローサイトメーターにおいて解析すること;及び、
(f)得られたデータを保存し且つ評価すること
の工程を含む上記の方法に関する。
【0030】
該キット及び提案された抗体の組み合わせは、原発性腫瘍組織の研究によって本明細書において以下に例示されているが、該キットはまた、骨髄、末梢血、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液、硝子体液、滑液、気管支肺胞洗浄、尿、並びに、小児腫瘍、例えば、非ホジキンリンパ腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、胚細胞腫瘍、軟部組織肉腫(例えば、横紋筋肉腫、腫瘍のユーイング肉腫ファミリー、軟骨肉腫、骨肉腫)及び上皮細胞腫瘍、について調査中の小児患者から得られた生体試料の他の任意の種類、の分析によって施与されることができる。
【0031】
1つの実施態様において、該生体サンプルは、原発腫瘍組織サンプル;末梢血;骨髄;組織サンプル、例えば、リンパ節、アデノイド、脾臓、若しくは肝臓;又は、他の種類の体液、例えば、脳脊髄液、硝子体液、滑液、最終針穿刺吸引物、胸水若しくは腹水、であり、ここで、該サンプルは小児患者から取得されたものである。
【0032】
例えば、組織のアリコートがリン酸緩衝生理食塩水(PBS:phosphate buffered saline)中に入れられ、そして、機械的な離解に付され、最大の細胞生存率及び細胞回収を目的とした更なるフローサイトメトリー解析の為に適した単一細胞懸濁液を調製する。この目的の為に、組織が好適には、0.5%w/vウシ血清アルブミンを含むPBS中に置かれ(例えば、ペトリ皿内に)、次に小片に細かく刻まれ(2~4mm)、そして、滅菌針で機械的に解離される。結果として得られた腫瘍細胞懸濁物が順次ろ過されて(例えば、孔径120mmの滅菌注射器を用いて)細胞の塊及び破片を除去し、遠心分離し、そして、PBS/0.5w/v%BSA中に再懸濁され、最終濃度が5x105個以上の細胞/チューブにされうる。50μL(すなわち、50,000個)の単一の細胞懸濁物のアリコートが別のチューブ内に入れることができる。
【0033】
他の実施例として、例えば、転移部位中に存在する悪性細胞のイムノフェノタイプを調べる為に、腹水サンプル、胸水サンプル及び/又は尿サンプルが採取される。該サンプル(細胞懸濁物)が滅菌シリンジを通じて順次ろ過されて、細胞の塊及び破片を除去し;遠心分離し、そして、最終濃度が5x105個以上の細胞/チューブで再懸濁される。
【0034】
次に、単一の細胞懸濁物のアリコートが、本明細書において上記で定義されているようなキットで構成される細胞表面マーカーに対する蛍光色素結合済抗体のそれぞれと接触させる。細胞及び抗体試薬は十分に混合され、そして、細胞上に存在する場合、抗体が1以上の細胞表面マーカーに結合することを可能にする為に、光から保護された状態で、例えば、常温で30分間インキュベートされる。このインキュベーションの後、細胞が洗われ、そして遠心分離されて、未結合の抗体を除去し、そして、約50μLの残留量を各チューブに残して、本発明に従う細胞内マーカー(すなわち、細胞質マーカー及び核マーカー)の更なる染色を行う。
【0035】
そのために、細胞ペレットは、固定試薬、例えばFix&Perm商標試薬キット(An der Grub,Vienna,Austria)の試薬A(PFAを含有する固定剤)、と穏やかに混合することによって再懸濁され、その後、遮光されて、室温で、15分間、更にインキュベーションされる。引き続き、細胞が洗浄され、そして、細胞ペレットが透過液(例えば、透過剤、例えばサポニン、を含むFix&Perm商標キットの試薬B)中で穏やかに混合されることによって、再懸濁される。穏やかに混合された後、本発明のキット中に含まれている細胞内マーカーに対する各抗体の適切な量が加えられ、混合され、そして、遮光されて、室温で、15分間インキュベーションされる。
【0036】
結合していない抗体は、例えば、0.09%のNaN3と0.5%w/vのBSAとを含むPBSを用いた洗浄によって除去され、およそ50μLの残留容量が各チューブ内に残される。十分に混合された後、細胞ペレットの残留容量は、0.09%のNaN3及び0.5%w/vのBSAを含む200μLのPBSに適当に再懸濁され、そして、マルチカラーフローサイトメーター、例えば4本のレーザーと13個の蛍光検出器を装備されたフローサイトメーター、例えばBD LSRFortessa X-20フローサイトメーター、において直ちに測定された。
【0037】
データ解析の為に、ソフトウェアデータベースとの直接比較を組み合わせて又は組み合わせずに慣用的な手動ブーリアンゲーティング戦略(Boolean gating strategies)又は自動化されたクラスタリング解析が、FCSファイルの手動及び/又は自動のゲーティング及び解析を可能にするところのフローサイトメトリーソフトウェアプログラムを介して使用されることができる。
【0038】
例えば、最初に、SSClo/FSClo/CD45hi細胞におけるゲート(G1)がリンパ球を同定する為に実行される。次に、このG1細胞集団は、下記の様式でリンパ球サブセットを同定する為に4つの追加のゲートを描くことによって、更にサブセット化されうる:T細胞についてCD45hi/smCD3+/cyCD3+ (G1A)、B細胞についてCD45hi/CD19+ (G1B)、形質細胞についてCD45+lo/CD19+ (G1C)及びNK細胞についてCD45+/smCD3-/cyCD3-/CD56+ (G1D)である。T細胞は、CD4+/CD8-、CD4-/CD8+、CD4+/CD8+及びCD4-/CD8-のT細胞サブセットへと更に細分化されることができる。
【0039】
SSCint/hi/FSCint/hi/CD45+細胞を含む為の第2のゲート(G2)は、骨髄系細胞を同定する為に描かれることができる。CD45+/CD4+骨髄系細胞におけるゲートを確立して、単球及び樹状細胞と好中球及び好酸球(SSChi/CD45+)とを同定することによって、骨髄系細胞集団の更なるサブセットが達成されることができる。
【0040】
最後に、ゲート(G3)は、腫瘍細胞、赤芽球、内皮細胞及び間葉系間質細胞を選択する為に、CD45
-細胞において行われることができ、ここで、ウィルムス腫瘍細胞(
図1)は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
+/GD2
-/EpCAM
-/
+/CD99
-/
nuMyogenin
-表現型(
図1)によって特徴付けられ、横紋筋肉腫細胞は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
+hi/GD2
-/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyogenin
+のプロファイル(
図2)によって特徴付けられ、神経芽腫細胞は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
-/+/GD2
+hi/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyogenin
-(
図3)によって特徴付けられ、及び、PNET細胞は、CD45
-/CD56
+/CD271
+hi/GD2
+lo/EpCAM
-/CD99
+/
nuMyogenin
-によって特徴付けられる。
図1は、ウィルムス腫瘍サンプルにおける全ての例示的なデータ解析工程を図示する。表2は、解析された種々の小児固形腫瘍サンプルにおける新生細胞及び免疫細胞のパーセンテージを示す。
【0041】
当業者には理解されるであろう通り、本発明に従う抗体パネル、1つのキット又は複数のキットは、小児癌診断の分野において有利に使用される;例えば、原発腫瘍組織部位で及び転移部位(例えば、他の腫瘍検体のうち、腹水、胸水、尿、骨髄、脳脊髄液、リンパ節及び気管支肺胞洗浄)及び末梢血での両方における小児癌の早期診断、診断サブ分類、病期診断及び/又はモニタリングにおいてである。それは、サンプル中の腫瘍細胞と他の残存細胞とを正確に区別すること、及び同じサンプル中に腫瘍細胞と共存する免疫細胞の異なるサブセットを特徴付けることを可能にする。加えて、それは、小児固形腫瘍を高感度で迅速に分類する為のツール(サンプル中の他の細胞の中から10-1~10-5の腫瘍細胞を検出)を提供し、並びに、浸潤している又は浸潤していない患者サンプル中の主要なリンパ球、好中球、単球/マクロファージ、樹状細胞集団、間葉系細胞を同定し且つ列挙することを可能にする故に、それは更に、腫瘍に関連付けられたミクロ環境に関する数値及び表現型の情報を提供する。
【0042】
該手順には、下記の連続的な工程を含む:i)小児癌を患っていると疑われる患者から生体試料を採取すること;ii)そのような生体試料に共存する腫瘍細胞の同定及び分類並びに浸潤性免疫細胞の同定及び分類を目的として、そのような生体試料を、8色の抗体染色において8個の個々の蛍光色素と結合され12個以上の抗体のパネル(例えば、表1に従う組み合わせ)で染色すること;iii)該染色された細胞を慣用的な8色超のフローサイトメトリー装置において測定すること、及び;iv)得られたフローサイトメトリーデータを、専用ソフトウェアツールを使用して解析し、該サンプル中に共存する腫瘍細胞と正常細胞とを明確に同定し、そのような腫瘍細胞を更に列挙し、その上で発現している各マーカーの細胞当たりの発現レベルを定義し、該腫瘍細胞をそれらの免疫表現型プロファイルに従ってWHO診断エンティティに分類し、そして、該サンプル中の腫瘍細胞と共存する免疫細胞の異なる集団とそれらの主要サブセットを同定し、そして列挙すること。
【0043】
本明細書において記載された手順は、下記を包含する小児腫瘍の最も一般的な種類の診断及び分類の為に使用されることができる:i)神経外胚葉性新生物、例えば、神経芽腫、神経節芽細胞腫、神経節腫、骨外ユーイング肉腫及び古典的なユーイング肉腫、で、それらの最も有用な抗原は、CD45-、CD56++、CD99-or+、GD2++及びCD271+である;ii)CD45-、CD56+、抗nuMyogenin+、抗nuMyoD1+及びCD271+表現型によって評価される、筋線維芽細胞分化を有する腫瘍;iii)ウィルムス腫瘍における、例えばCD45-、CD56++、CD271+及びEpCAM+の発現パターンによって定義される複数の細胞系統へのコミットメントの同定;並びに、iv)cyCD3+及びCD45++CD19-腫瘍細胞とCD19+CD45-/+cyCD3-腫瘍細胞との発現を特徴的に示すところのT及びBリンパ芽球性リンパ腫/白血病。
【0044】
その上、本発明はまた、リンパ球(CD45++/SSClo細胞)、例えば、cyCD3+/CD3+ T細胞、CD19+ B-細胞、並びにCD19-/CD3-/CD56+ NK細胞、CD19+/CD45lo形質細胞、並びにCD4+/SSCint単球及び樹状細胞、更にCD271++間葉系細胞及び内皮細胞を包含する上記のリンパ球、のフローサイトメトリーによる同時同定を可能にする。
【0045】
CD56、CD4及びCD8の発現に基づき、T細胞はCD4+/CD8-、CD4-/CD8+、CD4+/CD8+、CD4-/CD8-のT細胞へと更に分けられることができる;これらのT細胞サブセットの各々は、CD56を発現するサブセットとD56を発現しないサブセットとに更に分けられることができる。同時に、CD56+ NK細胞は、CD56+hi、CD56+lo/CD8-、CD56+lo/CD8+のNKサブセットへと更に細分化されることができる。
【0046】
注目すべきは、腫瘍細胞集団を同定及び分類する為に本明細書において提供されるキット及び抗体の組み合わせの各々はまた、腫瘍細胞当たりのタンパク質発現レベルを定量化する為の手段を提供する。それ故に、それは、小児固形腫瘍の診断、分類及びモニタリングの為のみならず、標的化された適切な療法(例えば、GD2+神経芽腫及び他のGD2+腫瘍における抗GD2)を選択する為にもまた重要な情報を提供する。本発明はまた、自家幹細胞移植の前の骨髄サンプル及び末梢血サンプル中の腫瘍細胞を検出し、そして計数する為に、又は、患者に何らかの種類の治療が施された後のモニタリング目的に為に使用されうる。その上、本発明はまた、病期診断目的、疾病再発の診断、又は残存疾病レベルでの患者モニタリングの為に、小サンプル及び/又は非粘液性サンプル、例えば、硝子体液、脳脊髄液及び微細針吸引組織サンプル、中の腫瘍性細胞及び非腫瘍性細胞を同定する為に使用されることが可能である。
【0047】
本発明のフローサイトメトリー法の診断結果は有利には、適切な(標的化された)療法、例えば、抗GD2抗体に基づく又はキメラ抗原受容体(CAR:chimeric antigen receptor)T細胞療法、を選択する際の支援の為に使用される。
【0048】
本発明はまた、1以上の小児腫瘍の診断及び分類における、本明細書において開示されているパーツキットの使用を提供する。例えば、該小児腫瘍は、i)神経外胚葉性新生物、例えば神経芽腫、神経節芽細胞腫、神経節腫、骨外ユーイング肉腫及び古典的なユーイング肉腫;ii)筋線維芽細胞分化を有する腫瘍;iii)複数の細胞系列へのコミットメントの同定;及びiv)T及びB-リンパ芽細胞リンパ腫/白血病から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、2次元ドットプロットを用いて腫瘍塊サンプルにおける主要なサブセット集団を同定する為のシーケンシャルゲーティング戦略解析(Sequential gating strategy analysis)を示す。パネルAは、細胞集団の下記の3つのグループの同定を示す:G1(SSC
lo/CD45
+hi)はリンパ球を表し、G2(SSC
int/hi/CD45
+)は骨髄系細胞を表し、並びに、G3(SSC
int-hi/CD45
-)は腫瘍細胞を表す。G1細胞ゲート(パネルB)において、4つの追加のゲートは、下記の主要なリンパ球集団の同定を可能にした:C)CD45
+hi/CD19
+のB細胞(G1B)、及びD)CD45
+lo/CD19
+の形質細胞(G1C);並びに、F)CD45
+/
smCD3
-/
cyCD3
-/CD56
+のNK細胞(G1D)。更に、T細胞(CD45
+hi/
smCD3
+/
cyCD3
+ T細胞G1A)は、パネルE)において次のように細分化された:(CD45
+hi/
smCD3
+/
cyCD3
+のT細胞G1A)、ここで、下記の通り、パネルEにおいて細分化された:CD4
+/CD8
-、CD4
-/CD8
+、CD4
+/CD8
+及びCD4
-/CD8
-のT細胞サブセット。G2細胞ゲート(パネルG)において、1つの2変量ドットプロット(SSC/CD45)に基づく3つの追加ゲートは、好酸球(SSC
hi/CD45
+)、好中球(SSC
int/CD45
+lo)及び単球(SSC
int/CD45
+)を同定することを可能にした;更に、パネルHにおいて、2変量ドットプロット(SSC/CD4)は、G2細胞ゲートにおける好中球/好酸球(SSC
int/CD4
-)及び単球/マクロファージ/樹状細胞(SSC
int/CD4
+)とをより良く同定することができることを可能にした。最後に、G3細胞ゲートにおいて、腫瘍細胞が、CD45
-/CD56
+hi/CD271
+/GD2
-/EpCAM
-/+/CD99
-/
nuMyogeninの表現型(ウィルムス腫瘍)として特徴付けられた。
【
図2】
図2は、2次元ドットプロットを用いて胸水サンプルにおける主要なサブセット集団を同定する為のシーケンシャルゲーティング戦略を示す。パネルAは、細胞集団の下記の3つのグループの同定を示す:G1(SSC
lo/CD45
+hi)はリンパ球を表し、G2(SSC
int/hi/CD45
+)は骨髄系細胞を表し、並びに、G3(SSC
hi/CD45
-)は腫瘍細胞を表す。G1細胞ゲート(パネルB)において、4つの追加のゲートは、下記の主要なリンパ球集団の同定を可能にした:C)CD45
+hi/CD19
+のB細胞(G1B)及びCD45
+lo/CD19
+の形質細胞(G1C);並びに、D)CD45
+/
smCD3
-/
cyCD3
-/CD56
+のNK細胞(G1D)。更に、T細胞(CD45
+hi/
smCD3
+/
cyCD3
+のT細胞G1A)は、パネルE)において次のように細分化された:CD4
+/CD8
-、CD4
-/CD8
+、CD4
+/CD8
+及びCD4
-/CD8
-のT細胞サブセット。G)G2細胞の選択後、1つの2変量ドットプロット(SSC/CD45)に基づく3つの追加ゲートは、好酸球(SSC
hi/CD45
+)、好中球(SSC
int/CD45
+lo)及び単球(SSC
int/CD45
+)を同定することを可能にした;H)G2集団の更なる2変量ドットプロット(SSC/CD4)解析は、好中球(SSC
int/CD4
-)と単球/樹状細胞(SSC
int/CD4
+)とをより良く同定することができることを可能にした。最後に、選択されたG3集団が、CD45
-/CD56
+hi/CD271
+hi/GD2
-/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyoD1
+の表現型(横紋筋肉腫)によって特徴付けられている腫瘍細胞を分類する為に最も関連する細胞マーカーの選択及び同定の為に解析された。
【
図3】
図3は、2次元ドットプロットを用いて骨髄における主要なサブセット集団を同定する為のシーケンシャルゲーティング戦略を示す。パネルAは、細胞集団の下記の3つのグループの同定を示す:G1(SSC
lo/CD45
+hi)はリンパ球を表し、G2(SSC
int/hi/CD45
+)は骨髄系細胞を表し、並びに、G3(SSC
hi/CD45
-)は腫瘍細胞を表す。G1細胞ゲート(パネルB)において、4つの追加のゲートは、下記の主要なリンパ球集団の同定を可能にした:C)CD45
+hi/CD19
+のB細胞(G1B)及びCD45
+lo/CD19
+の形質細胞(G1C);並びに、D)CD45
+/
smCD3
-/
cyCD3
-/CD56
+のNK細胞(G1D)。更に、T細胞(CD45
+hi/
smCD3
+/
cyCD3
+のT細胞G1A)、ここで、下記の通り、パネルE)において次のように細分化された:CD4
+/CD8
-、CD4
-/CD8
+、CD4
+/CD8
+及びCD4
-/CD8
-の細胞サブセット。G)G2細胞の選択後、1つの2変量ドットプロット(SSC/CD45)に基づく3つの追加ゲートは、好酸球(SSC
hi/CD45
+)、好中球(SSC
int/CD45
+lo)及び単球(SSC
int/CD45
+)を同定することを可能にした;H)G2集団の更なる2変量ドットプロット(SSC/CD4)解析は、好中球(SSC
int/CD4
-)と単球/樹状細胞(SSC
int/CD4
+)とをより良く同定することができることを可能にした。最後に、G3細胞ゲートにおいて、腫瘍細胞が、CD45
-/CD56
+hi/CD271
-/+/GD2
++/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyoD1の表現型(神経芽腫)として特徴付けられ、一方、有核赤血球はSSC
lo/CD45
-/CD56
-として、間葉系細胞はSSC
hi/CD45
-/CD56
-/+lo/CD271
+hiとして提示された。
【発明を実施するための形態】
【0050】
実験の部
【0051】
本発明は、以下の実施例によって例示されるが、それらは説明の為に提供されるものであり、範囲を決して限定するものではない。
【0052】
実施例1:腫瘍塊サンプルの解析
サンプルの収集。固形腫瘍標本が、55人の小児患者から外科手術室で採取された;腫瘍サンプルは病理に送られ、そして該腫瘍サンプルは経験豊富な病理医によって2つのアリコートに分けられた:1つは慣用的な病理検査に、並びにもう1つはフローサイトメトリーの為に使用された。フローサイトメトリーの為に使用された組織のアリコートは、氷(wet ice)中のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に直ちに入れられ、そして、フローサイトメトリー研究室に輸送された。該標本が到着すると、その重量が秤量され、物理的特徴が記録され、そして、該サンプルは2つの小片に更に分割された:1つは-80℃で新鮮凍結保存用であり、並びにもう1つは即時の機械的な離解用であった。
【0053】
腫瘍標本の機械的な離解。55個の腫瘍組織標本が、最大の細胞生存率と細胞回収とを目的とした更なるフローサイトメトリー分析の為に適した単一細胞懸濁物へと即座に離解された。この目的の為に、該組織が0.5%のウシ血清アルブミン(BSA;Calbiochem,La Jolla,CA)を含む2ml PBS中のペトリ皿内に入れられた。次に、腫瘍標本がメスの刃で小片(2~4mm)にミンチされ、そして、滅菌針で機械的に離解された。その後、腫瘍細胞懸濁物が滅菌フィルコン(Filcon)シリンジ(孔径120mm)で順次ろ過されて、細胞の塊及び破片を除去し、遠心分離(540xgで10分間)し、そして、0.5%のBSAを含む500μlのPBSに再懸濁され、最終濃度が5x105個以上の細胞/チューブになるようにされた。次に、単一の細胞懸濁物の50μL(すなわち、50,000細胞)のアリコートが別のチューブに入れられた。合計4つの異なるアリコート/1サンプルが、取得されるべきチューブ毎に染色された。
【0054】
サンプルの染色。50μlのサンプル(離解された組織の単一の細胞懸濁物)が4つのチューブアリコートのそれぞれに加えられ、次に、この単一チューブパネルの為に推奨される細胞表面マーカーに対して向けられた抗体を含む対応する試薬組成物のそれぞれを適切な量(飽和濃度)加えた。
i)CyCD3 BV421+CD271 BV421/CD45 BV510 CD99 FITC+CD8 FITC/nuMyogenin PE/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/GD2 AF647/csmD3 APC-H7+CD19 APC-H7(すなわち、表1における抗体組み合わせ1);
ii)CyCD3 BV421+CD271 BV421/CD45 PO/CD99 FITC+ CD8 FITC/nuMyoD1 PE/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/GD2 AF647/cyCD3 APC-H7+CD19 APC-H7(表1における抗体組み合わせ2);
iii)CyCD3 BV786+CD271 BV786/HLADR APC/CD45 AF700/CD30 APCH7/CD71 BV650/CD95 BV421/CD99 FITC+CD8 FITC/nuMyoD PE/CD40 BV711/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/GD2 BV510/smCD3 APC-H7+CD19 APC-H7(表1における抗体組み合わせ17);
iv) CyCD3 BV786+CD271 BV786/HLADR PECF594/CD45 AF700/CD30 BV650/CD99 FITC+CD8 FITC/GD2 BV510/オステオポンチン APC/numyogenin PE/CD40 BV711/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/OCT3 APCH7/CD95 BV421/smCD3 BV605+CD19 BV605(表1における抗体組み合わせ18)。
【0055】
引き続き、該細胞と抗体試薬とが十分に混合され、そして、それらは遮光されて、室温で、30分間インキュベーションされた。このインキュベーションの後、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む2mLのPBSが細胞ペレットに加えられ、十分に混合され、そして、540xgで5分間遠心分離された。次に、上清が、パスツールピペット又は真空装置を用いて、細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、およそ50μLの残留容量が各チューブ内に残された。細胞ペレットが穏やかに攪拌されることによって再懸濁され、Fix&Perm商標試薬キット(An der Grub,Vienna,Austria)の試薬A(PFAを含む固定剤)の100μLが加えられ、遮光されて、15分間、室温で更にインキュベーションされた。引き続き、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む2mLのPBSが細胞ペレットに加えられ、そして十分に混合され、そして、540xgで5分間遠心分離された。
【0056】
次に、上清が、パスツールピペット又は真空システムを用いて、該細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、およそ50μLの残留容量が各チューブ内に残され、該細胞ペレットが穏やかに混合されることによって再懸濁され、そして、Fix&Perm商標キットの試薬B(サポニンを含む透過液)の100μLが加えられた。穏やかに混合された後、細胞内マーカーに対する抗体(nuMyoD1、nuMyogenin、OCT3及びcyCD3)のそれぞれの適量が加えられ、混合され、そして、遮光されて、15分間、室温でインキュベーションされた。その後、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む2mLのPBSが加えられ、十分に混合され、そして、540xgで5分間遠心され、上清が、パスツールピペット又は真空システムを用いて、細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、各チューブ内に約50μL残存させた。十分に混合されることに応じて、該細胞ペレットは、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む200μLのPBS中に再懸濁され、そして、4本のレーザーと13個の蛍光検出器を装備されたBD LSRFortessa X-20フローサイトメーターにおいて直ちに測定された。
【0057】
データ解析。最初に、SSC
lo/FSC
lo/CD45
hi細胞におけるゲート(G1)が、リンパ球を同定する為に実行され、そして選択された;次に、このG1細胞は、下記の様式でリンパ球のサブセットを同定する為に4つの追加のゲートを描くことによって更にサブセット化された:T細胞についてCD45
hi/smCD3
+/cyCD3
+ (G1A)、B細胞についてCD45
hi/CD19
+ (G1B)、形質細胞についてCD45
+lo/CD19
+ (G1C)、及びNK細胞についてCD45
+/smCD3
-/cyCD3
-/CD56
+ (G1D)。T細胞は、CD4
+/CD8
-、CD4
-/CD8
+、CD4
+/CD8
+及びCD4
-/CD8
-のT細胞サブセットへと更に細分化された(
図1におけるパネルE)。SSC
int/hi/FSC
int/hi/CD45
+細胞を含む為の第2のゲート(G2)は、骨髄系細胞を同定する為に描かれた。CD45
+/CD4
+におけるゲートを確立して、単球及び樹状細胞と好中球及び好酸球(SSC
hi/CD45
+)とを同定することによって、骨髄系細胞集団の更なるサブセットが達成された。最後に、ゲート(G3)が、腫瘍細胞、赤芽球、内皮細胞及び間葉系間質細胞を選択する為にCD45
-細胞において行われ、ここで、ウィルムス腫瘍細胞(
図1)は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
+/GD2
-/EpCAM
-/+/CD99
-/
nuMyogenin
-の表現型(
図1)によって特徴付けられ、横紋筋肉腫細胞は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
+hi/GD2
-/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyogenin
+のプロファイル(
図2)によって特徴付けられ、神経芽腫細胞は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
-/+/GD2
+hi/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyogenin
-(
図3)によって特徴付けられ、及びPNET細胞は、CD45
-/CD56
+/CD271
+hi/GD2
+lo/EpCAM
-/CD99
+/
nuMyogenin
-によって特徴付けられる。
図1は、ウィルムス腫瘍サンプルにおける全てのデータ解析工程を図示し、並びに表2は、解析された種々の小児固形腫瘍サンプルにおける新生細胞及び免疫細胞のパーセンテージを示す。
【0058】
実施例2:腹水、胸水及び尿サンプルの解析
サンプルの収集。転移部位において存在する悪性細胞のイムノフェノタイプを調べる為に、小児癌であると過去に診断された5人の小児からのサンプルが調査された:1つの腹水サンプル、3つの胸水サンプル、1つの尿サンプル。これらのサンプルは手術室で又は集中治療室で採取され、そして、診断時又は再発時に、下記に示す順序で処理された。最初に、サンプル(細胞懸濁液)が滅菌済みフィルコンシリンジ(孔径120mm)で順次ろ過されて、細胞の塊及び破片を除去した;次に、それは、遠心分離され(540xgで10分間)、0.5%のBSAを含む500μlのPBS中に再懸濁され、最終濃度が5x105個以上の細胞/チューブになるようにされた。次に、単一の細胞懸濁物の50μL(すなわち50,000細胞)の4つアリコートが作られ、そして、異なるチューブに入れられた。
【0059】
サンプルの染色。50μlのサンプル(異なる体液の単一の細胞懸濁物)が4つのチューブアリコートのそれぞれに加えられ、次に、以下の単一チューブ蛍光色素共役抗体の組み合わせについて推奨されるように、細胞表面マーカーに対して向けられた対応する抗体のそれぞれを適切な量(飽和濃度)加えた:i)CyCD3 BV421+CD271 BV421/CD45 BV510/CD99 FITC+CD8 FITC/nuMyogenin PE/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/GD2 APC/smCD3 APCH7/CD19 APC-H7(表1における抗体組み合わせ1);ii)smCD3 BV421+CD271 BV421/CD45 BV510/CD99 FITC+CD8 FITC/nuMyoD1 PE/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/GD2 APC/cyCD3 APCH7/CD19 BV786(すなわち、表1における抗体組み合わせ4) iii) CyCD3 BV421+CD271 BV421/HLADR APC/CD45 AF700/CD30 APCH7/CD71 BV650/CD99 FITC+CD8 FITC/numyogenin PE/CD40 BV711/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/GD2 AF647/smCD3 APC-H7+CD19 APC-H7(すなわち、表1における抗体組み合わせ13)、並びに、iv) CyCD3 BV786+CD271 BV786/HLADR PECF594/CD45 AF700/CD30 BV650/CD99 FITC+CD8 FITC/GD2 BV510/オステオポンチン APC+BAP APC/nuMyogenin PE+nuMyoD1 PE/CD40 BV711/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/PLAP APCH7/CD95 BV421/smCD3 BV605+CD19 BV605(すなわち、表1における抗体組み合わせ22)。その後、該細胞と抗体試薬とが十分に混合され、そして、それらは遮光されて、室温で、30分間インキュベーションされた。このインキュベーションの後、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む2mLのPBSが細胞ペレットに加えられ、十分に混合され、そして、540xgで5分間遠心分離された。次に、上清が、パスツールピペット又は真空装置を用いて、細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、およそ50μLの残留容量が各チューブ内に残された。細胞ペレットが穏やかに攪拌されることによって再懸濁され、Fix&Perm商標試薬キット(An der Grub,Vienna,Austria)の試薬A(PFAを含む固定剤)の100μLが加えられ、遮光されて、15分間、室温で更にインキュベーションされた。引き続き、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む2mLのPBSが細胞ペレットに加えられ、そして十分に混合され、そして、540xgで5分間遠心分離された。次に、上清が、パスツールピペット又は真空システムを用いて、該細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、およそ50μLの残留容量が各チューブ内に残され、該細胞ペレットが穏やかに混合されることによって再懸濁され、そして、Fix&Perm商標キットの試薬B(サポニンを含む透過液)の100μLが加えられた。穏やかに混合された後、細胞内抗体(nuMyoD1、nuMyogenin、オステオポンチン、BAP、PLAP及びcyCD3 APC-H7)のそれぞれの適量が加えられ、混合され、そして、遮光されて、15分間、室温でインキュベーションされた。その後、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む2mLのPBSが加えられ、混合され、そして、540xgで5分間遠心され、上清が、パスツールピペット又は真空システムを用いて、細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、各チューブ内に約50μL残存させた。十分に混合されることに応じて、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む200μLのPBS中に、残留容量、該細胞ペレットが再懸濁され、そして、5本のレーザーと48個の蛍光検出器を装備されたBD Symphony X-20フローサイトメーターにおいて直ちに測定された。
【0060】
データ解析。最初に、SSC
lo/FSC
lo/CD45
+hi細胞におけるゲート(G1)がリンパ球を同定する為に実行され、そして選択され;次に、このG1細胞は、下記の様式でリンパ球のサブセットを同定する為に4つの追加のゲートを描くことによって更にサブセット化された:T細胞についてCD45
+hi/smCD3
+/cyCD3
+ (G1A)、B細胞についてCD45
+hi/CD19
+ (G1B)、形質細胞についてCD45
+lo/CD19
+ (G1C)、及びNK細胞について CD45
+/smCD3
-/cyCD3
-/CD56
+ (G1D)。T細胞は、CD4
+/CD8
-、CD4
-/CD8
+、CD4
+/CD8
+及びCD4
-/CD8
-のT細胞サブセットへと更に細分化された(
図2におけるパネルE)。第2に、SSC
int/hi/FSC
int/hi/CD45
+細胞を含むゲート(G2)は、骨髄系細胞を同定する為に行われることができる。骨髄細胞集団の更なるサブセットは、CD45
+/CD4
+骨髄系細胞におけるゲートを確立して、球及び樹状細胞と好中球及び好酸球とを識別することによって達成された。最後に、ゲート(G3)が、CD45
-/CD56
+/CD271
+/GD2
-/EpCAM
-/+/CD99
-/
nuMyogenin
-の表現型を示す腫瘍細胞及びウィルムス腫瘍細胞を選択する為にCD45
-細胞において実行され、ここで、横紋筋肉腫細胞は、CD45
-/CD56
+/CD271
+/GD2
-/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyogenin
+(
図2)であり、神経芽腫細胞は、CD45
-/CD56
+/CD271
-/GD2
+hi/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyogenin
-であり、及びPNET細胞は、CD45
-/CD56
+/CD271
+hi/GD2
+lo/EpCAM
-/CD99
+/
nuMyogenin
-である。
図2は、横紋筋肉腫の細胞により浸潤した胸水サンプルにおいて、腫瘍細胞及び残存する正常な反応性免疫細胞の両方を同定する為にデータ解析中に実行された全てのゲーティング工程を図示する;次に、表3は、解析された5つの体液サンプルにおいて特定された新生細胞のパーセンテージを示す。
【0061】
実施例3:骨髄サンプルの解析
サンプルの収集。23人の癌患者から採取された23個の骨髄サンプル及び10個の末梢血サンプルが、病期診断の手順中に転移播種の存在の為に調査された。各サンプルから少なくとも10x106の有核細胞が、以前に記載されているように、EUROFLOWバルク溶解プロトコルを使用して、5x106個超の細胞/チューブの取得の為に、末梢血及び骨髄サンプルごとに4つの異なるチューブ/アリコート中で染色された(Flores-Montero et al.,白血病.2017 Oct;31(10):2094-2103)。簡単に説明すると、2mlの各サンプルと50mLの塩化アンモニウム溶解液とが50mlファルコンチューブ内で混合され、そしてローラー又はサンプルシェイカー装置において15分間インキュベーションされた。その後、該サンプルは、800xgで10分間遠心分離され、そして、上清が、パスツールピペットを用いて、細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄された。上清が廃棄されたことに応じて、0.09%のNaN3と0.5%のBSAを含むPBSが該チューブに最終容量50mlまで補充され、そして、再び800xg(5分間)で遠心分離された。細胞ペレットを乱すこと無しに、上清が廃棄され、そして、細胞ペレットが、0.09%のNaN3及び0.5%のBSAを含む2mLのPBS中に再懸濁された。次に、該細胞が5mLのポリスチレン製丸底ファルコンチューブ(「FACSチューブ」)に300μl/チューブの容量で移された。0.09%のNaN3と0.5%のBSAを含むPBSを用いて2ml(最終容量)になるように穏やかに混合され、そして、540xgで5分間遠心分離された;次に、上清が、パスツールピペットを用いて細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄された。この手順が2回繰り返された。最終細胞濃度が5x105細胞/μLになるように0.09%のNaN3及び0.5%のBSAを含むPBSで調整され、そして、1チューブ当たり約100μL(すなわち、1000万細胞)の最終細胞懸濁液/サンプルが染色され、そして、フローサイトメーターにおいて測定された。
【0062】
サンプルの染色。上記処理された細胞懸濁物の100μlが、サンプルごとに調製された4本のチューブアリコートのそれぞれに加えられ、次に、下記の単一のチューブ蛍光色素に結合された抗体組み合わせの為に推奨される細胞表面マーカーに対して向けられた対応する抗体のそれぞれを適量(飽和濃度)加えた:i)CyCD3 BV421+CD271 BV421/CD45 BV510/CD99 FITC+CD8 FITC/nuMyogenin PE+nuMyoD1 PE/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/GD2 APC/smCD3 APC-H7+CD19 APC-H7(すなわち、表1における抗体組み合わせ3);ii)CyCD3 BV421+CD271 BV421/CD45 AF700/CD99 FITC+CD8 FITC/GD2 BV510/オステオポンチン APC+BAP APC/nuMyogenin PE/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/OCT-3/4/APCH7+PLAP APCH7/smCD3 BV786+CD19 BV786(すなわち、抗体組み合わせ 7 in 表1) iii)CyCD3 BV421+CD271 BV421/HLADR APC/CD45 AF700/CD30 APCH7/GD2 BV510/CD99 FITC+CD8 FITC/nuMyogenin PE/CD40 BV711/EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/CD56 PEcy7/smCD3 APC-H7+CD19 APC-H7(すなわち、表1における抗体組み合わせ13)、並びに、iv)CyCD3 BV786+CD271 BV786/CD45 AF700/PLAP APCH7/CD99 FITC+CD8 FITC/GD2 BV510/オステオポンチン APC+BAP APC/nuMyogenin PE/CD95 BV421/CD30 BV650/CD40 BV711//EpCAM PERCPcy5.5+CD4 PERCPcy5.5/HLADR PECF594/CD56 PEcy7/smCD3 BV605+CD19 BV605(すなわち、表1における抗体組み合わせ24)。細胞と細胞表面マーカーに向けられた抗体試薬とが十分に混合された後、それらは遮光されて、室温で、30分間インキュベーションされた。このインキュベーションの後、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む2mLのPBSが細胞ペレットに加えられ、十分に混合され、そして。540xgで5分間遠心分離された。次に、上清が、パスツールピペット又は真空装置を用いて、細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、およそ50μLの残留容量が各チューブ内に残された。
【0063】
細胞ペレットが、穏やかに混合されることによって再懸濁され、そして引き続き、Fix&Perm商標試薬キット(An der Grub,Vienna,Austria)の試薬A(PFAを含む固定剤)100μLが加えられ、遮光されて、15分間、室温で更にインキュベーションされ、そして、遮光されて、15分間、室温で更にインキュベーションされた。引き続き、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む2mLのPBSが細胞ペレットに加えられ、十分に混合され、そして540xgで5分間遠心分離された。次に、上清が、パスツールピペット又は真空システムを用いて、細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、およそ50μLの残留容量が各チューブ内に残された;該細胞ペレットは、穏やかに混合されることによって再懸濁され、引き続き、Fix&Perm商標キットの試薬B(サポニンを含む透過液)の100μLが加えられた。穏やかに混合された後、細胞内抗体(nuMyoD1、nuMyogenin PE、オステオポンチン、BAP、OCT-3/4、PLAP及びcyCD3)のそれぞれの適量が加えられ、混合され、そして、遮光されて、室温で15分インキュベーションされた。その後、0.09%のNaN3と0.5%のBSAを含む2mLのPBSが該細胞ペレットに加えられ、十分に混合され、そして、540xgで5分間遠心分離され、上清が、パスツールピペット又は真空システムを用いて該細胞ペレットを乱すこと無しに廃棄され、そして、およそ50μLの残留容量が各チューブ内に残された。該残留容量を十分に混合することに応じて、0.09%のNaN3と0.5%のBSAとを含む200μLのPBS中に再懸濁され、4本のレーザーと13個の蛍光検出器を装備されたBD LSRFortessa X-20フローサイトメーターにおいて直ちに測定された。
【0064】
データ解析。最初に、SSC
lo/FSC
lo/CD45
+hi細胞におけるゲート(G1)が、リンパ球を同定する為に実行され、そして選択された;次に、このG1細胞は、下記の様式でリンパ球のサブセットを同定する為に4つの追加のゲートを描くことによって更にサブセット化された:T細胞についてCD45
+hi/smCD3
+/cyCD3
+ (G1A)、B細胞についてCD45
+hi/CD19
+ (G1B)、形質細胞についてCD45
+lo/CD19
+ (G1C)、及びNK細胞についてCD45
+/smCD3
-/cyCD3
-/CD56
+ (G1D)。T細胞は、CD4
+/CD8
-、CD4
-/CD8
+、CD4
+/CD8
+及びCD4
-/CD8
-のT細胞のサブセットへと更に細分化された(
図3におけるパネルE)。SSC
int/hi/FSC
int/hi/CD45
+細胞含む為の第2のゲート(G2)は、骨髄系細胞を同定する為に描かれた。更に、CD45
+/CD4
+骨髄系細胞におけるゲートを確立して、単球及び樹状細胞と好中球及び好酸球とを同定することによって、骨髄細胞集団のサブセットが達成された。最後に、ゲート(G3)が、腫瘍細胞、赤芽球、内皮細胞及び間葉系間質細胞を選択する為にCD45
-細胞において行われ、ここで、腫瘍細胞(
図1)は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
+/GD2
-/EpCAM
-/+/CD99
-/
nuMyogenin
-の表現型(
図1)によって特徴付けられ、横紋筋肉腫細胞は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
+hi/GD2
-/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyogenin
+のプロファイル(
図2)によって特徴付けられ、神経芽腫細胞は、CD45
-/CD56
+hi/CD271
-/+/GD2
+hi/EpCAM
-/CD99
-/
nuMyogenin
-(
図3)によって特徴付けられ、及びPNET細胞は、CD45
-/CD56
+/CD271
+hi/GD2
+lo/EpCAM
-/CD99
+/
nuMyogenin
-によって特徴付けられる。
図3は、神経芽腫細胞により浸潤した骨髄サンプルにおいてデータ解析中に適用された全てのゲーティング工程を図示する。表4は、本発明に従って解析された、種々の小児固形腫瘍を用いて診断された全ての患者の骨髄サンプル及び末梢血サンプルにおける新生細胞及び免疫細胞のパーセンテージを示す。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【国際調査報告】