(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム用の反応性難燃剤
(51)【国際特許分類】
C07F 9/32 20060101AFI20230704BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20230704BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20230704BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230704BHJP
【FI】
C07F9/32 CSP
C08G18/00 L
C09K21/12
C08G101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576189
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021032414
(87)【国際公開番号】W WO2021252134
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518168155
【氏名又は名称】アイシーエル‐アイピー・アメリカ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ICL‐IP AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】769 OLD SAW MILL RIVER ROAD, 4TH FLOOR, TARRYTOWN, NY 10591, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ストウェル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジハオ
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ,ジェラルド
【テーマコード(参考)】
4H028
4H050
4J034
【Fターム(参考)】
4H028AA35
4H028BA06
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB93
4J034CA03
4J034CD07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034QB01
4J034QB11
4J034QB14
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA12
(57)【要約】
本発明は、軟質ポリウレタンフォームにおいて高効率の反応性難燃剤として機能する、反応性多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を提供する。本発明はさらに、前記多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を含む難燃性ポリウレタン組成物、ならびにそれを含む用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物であって、
【化1】
式中、各R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐のアルキル、7~13個の炭素原子の二価のアラルキル基、または結合であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字のaおよびbは、それぞれ0または1であり、
下付き文字cは、1~5の整数であり、そして
下付き文字dは、1~26の整数であり、
ただし、
a+b=1であり
a=1のとき、bは0であり、Xは、前記アリール基に結合した水素原子の一つが下付き文字cの括弧で囲まれた基の一部ではないこと、を除いて定義された通りのアリール基であり、下付き文字cは1~5の整数であり、下付き文字dは1であり、そして
b=1のとき、aは0であり、cは1であり、dは1~26の整数である、多官能性ジアルキルホスフィネート化合物。
【請求項2】
R
1およびR
2が、それぞれエチル基である、請求項1に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物。
【請求項3】
XおよびYがそれぞれ二価のフェニル基であり、Rが二価のメチル基または二価のイソプロピル基である、請求項1に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物。
【請求項4】
一般式(II):
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐のアルキル、または結合であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12個の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字cは1~5の整数であり、下付き文字dは1である。)
を有する、請求項1に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物。
【請求項5】
一般式(III):
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐のアルキル、または結合であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字cは1であり、下付き文字dは1~26の整数である。)
を有する、請求項1に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物。
【請求項6】
ジアルキルホスフィン酸と芳香族エポキシドとを反応させるステップを含む、多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を作製するプロセス。
【請求項7】
前記芳香族エポキシドが、
【化4】
および、これらの組み合わせ、からなる群から選択され、
式中、Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐のアルキル、または結合であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12個の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字cは、1~5の整数であり、下付き文字eは、0または1~25の整数である、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ジアルキルホスフィン酸が芳香族エポキシドに対してモル過剰で存在し、その結果、ジアルキルホスフィン酸が過剰となり、このことにより、次にin situでエポキシ化合物と反応して、多官能性ジアルキルホスフィネート化合物と単官能性ジアルキルホスフィネートとのブレンド物を生成する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
ポリオールと、イソシアネートと、難燃有効量の、一般式(I)の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物との反応生成物を含む、難燃性ポリウレタンフォームであって、
【化5】
式中、各R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐のアルキル、7~13個の炭素原子の二価のアラルキル基、または結合であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字のaおよびbは、それぞれ0または1であり、
下付き文字cは、1~5の整数であり、そして
下付き文字dは、1~26の整数であり、
ただし、
a+b=1であり
a=1のとき、bは0であり、Xは、前記アリール基に結合した水素原子の一つが下付き文字cの括弧で囲まれた基の一部ではないこと、を除いて定義された通りのアリール基であり、下付き文字cは1~5の整数であり、下付き文字dは1であり、そして
b=1のとき、aは0であり、cは1であり、dは1~26の整数である、難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
R
1およびR
2が、それぞれエチル基であり、XおよびYがそれぞれ二価のフェニル基であり、Rが二価のメチル基または二価のイソプロピル基である、請求項9に記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
前記多官能性ジアルキルホスフィネート化合物が、一般式(II):
【化6】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐のアルキル、または結合であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12個の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字cは1~5の整数であり、下付き文字dは1である。)
を有する、請求項9に記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項12】
前記多官能性ジアルキルホスフィネート化合物が、一般式(III):
【化7】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐のアルキル、または結合であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字cは1であり、下付き文字dは1~26の整数である。)
を有する、請求項9に記載の難燃性ポリウレタンフォーム。
【請求項13】
請求項9に記載のポリウレタンフォームを含む、物品。
【請求項14】
請求項11に記載のポリウレタンフォームを含む、物品。
【請求項15】
請求項12に記載のポリウレタンフォームを含む、物品。
【請求項16】
用途が、家具用途、自動車用途、ボート用途、バス座席用途、列車座席用途、RV座席用途、オフィス家具座席用途、航空用途、トラクタ用途、自転車用途、エンジンマウント用途、圧縮機用途、寝具用途、遮断用途、スポーツ用品用途、靴用途、カーペットクッション用途、包装用途、織物用途、緩衝クッション用途、HVAC用途、テント用途、救命いかだ用途、手荷物用途、およびハンドバッグ用途、からなる群から選択され、請求項1の軟質ポリウレタンを含む、請求項13に記載の物品を含む用途。
【請求項17】
布張り家具である、請求項16に記載の家具用途。
【請求項18】
自動車シートクッション、ヘッドライニングおよびヘッドレスト、自動車およびトラック用の背もたれクッション、バスのシート、車両シートボトムおよびバックボルスタ、アームレスト、ランフラットタイヤ用のサポートリング、ならびに他の自動車内装部品からなる群から選択される、請求項16に記載の自動車用途。
【請求項19】
マットレス用途およびマットレストップ用途からなる群から選択される、請求項16に記載の寝具用途。
【請求項20】
遮音材料である、請求項16に記載の遮断用途。
【請求項21】
屋根断熱材料である、請求項16に記載の遮断用途。
【請求項22】
(a)一般式(I):
【化8】
(式中、各R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐のアルキル、7~13個の炭素原子の二価のアラルキル基、または結合であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字のaおよびbは、それぞれ0または1であり、
下付き文字cは、1~5の整数であり、そして
下付き文字dは、1~26の整数であり、
ただし、
a+b=1であり
a=1のとき、bは0であり、Xは、前記アリール基に結合した水素原子の一つが下付き文字cの括弧で囲まれた基の一部ではないこと、を除いて定義された通りのアリール基であり、下付き文字cは1~5の整数であり、下付き文字dは1であり、そして
b=1のとき、aは0であり、cは1であり、dは1~26の整数である。)
の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物;および
(b)モノヒドロキシルジアルキルホスフィネート化合物
を含む、組成物。
【請求項23】
請求項22の組成物を含む、ポリウレタンフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年7月10日に出願された米国仮特許出願第63/037,180号の利益を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書の開示は、反応性ジアルキルリン含有化合物、すなわち、ポリオールおよびイソシアネートと反応した場合に軟質ポリウレタンフォーム(foams)において高効率の反応性難燃剤として作用するジアルキルホスフィン酸のヒドロキシル官能性エステル、の使用を提供する。本発明はさらに、反応して軟質ポリウレタンフォームのポリマーマトリックスに組み込まれた前記ヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートを有する難燃性軟質ポリウレタンフォームを、提供する。「難燃剤(fire retardants)」および「難燃剤(flame retardants)」という表現は、本明細書では互換的に使用される。
【背景技術】
【0003】
臭素系またはリン系難燃剤は非常に有効であることが知られており、多くの場合、軟質ポリウレタンフォームなどの合成材料の火災リスクを低減するための唯一の選択肢である。しかし、化学物質、特に難燃剤の公衆および政府による検査は、何年にもわたって増加している。目標は、より持続可能で、反応性があり、ポリマーおよび/またはハロゲンを含まない新たな生成物に向けられる。難燃剤がポリマーマトリックス中に反応され、溶出することがなければ、検査は大幅に減少する。
【0004】
したがって、高いリン含量、透明な明るい色、およびポリウレタン工業で使用されるポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールとの良好な適合性、のような特徴を有する軟質ポリウレタン用の反応性リン含有難燃剤が、求められている。
【0005】
単官能性ジアルキルホスフィネートは、フォームに使用されてきたが、その使用により、例えば圧縮歪み特性などの物理的特性が劣るフォーム生成物が、生成される。さらに、単官能性ジアルキルホスフィネートは、しばしば、ポリウレタンフォームにおいて効果的に使用するために、他のリン酸エステルとブレンドされる必要がある。さらに、従来調製されてきた単官能性ジアルキルホスフィネートのいくつかは、効率の悪い複雑で多段階のプロセスを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、満足度の高い難燃特性を有し、軟質ポリウレタンフォーム形成系のポリオール成分と良好な適合性を有する、反応性ジアルキルリン含有多ヒドロキシル官能性芳香族化合物を提供する。本明細書に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、ポリウレタンフォームにおいて使用される場合、難燃剤が存在しないポリウレタンフォームと同様の物理的特性を有する。さらに、本明細書に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、効率的な一工程反応において調製され得る。最後に、本明細書に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、従来使用される単官能性ジアルキルホスフィネート化合物のものと同様の優れた難燃性を付与し、前記単官能性ジアルキルホスフィネートと同時に反応混合物において製造され得、粘度を下げる目的でかかる単官能性成分とさらにブレンドする必要がなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において、「多官能性ジアルキルホスフィネート化合物」という表現で使用される「多官能性」は、1分子あたり2つ以上のヒドロキシル基を含むものとして理解されるべきである。
【0008】
本明細書で使用される「軟質ポリウレタンフォーム形成系」という表現は、本明細書に記載されるポリオール、イソシアネート、および多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を含むと理解されるものとする。
【0009】
「多官能性ジアルキルホスフィネート化合物」および「多官能性芳香族ジアルキルホスフィネート化合物」という表現は、本明細書において交換可能に使用される。
【0010】
モノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、そのヒドロキシル官能基を介して完全に反応性である。本明細書の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、驚くべきことに、例えば、軟質ポリウレタンフォーム形成系のイソシアネート成分との反応によって、軟質ポリウレタンフォームの弾性特性を壊すことなく、反応し、軟質ポリウレタンフォームのポリマー構造に組み込まれ得ることが見出された。このことは、本発明の難燃剤は、軟質フォーム基材に一体化され、その結果、それらが環境に放出されず、生体組織の細胞膜を透過しにくく、したがって健康上の危険を引き起こさないことを意味する。本発明はさらに、本明細書に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を含むがこれに限定されない、上記の軟質ポリウレタンフォーム形成系を提供する。
【0011】
本明細書で使用される「フォーム」という用語は、軟質ポリウレタンフォームを指す。反応した多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を含む、本質的にから成る、または、から成る、本明細書記載の、またはクレームされた軟質ポリウレタンフォームは、いずれも、反応性材料として前記多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を含むと理解されており、すなわち、前記多官能性ジアルキルホスフィネート化合物が軟質ポリウレタン材料の構造中に反応され、この場合、前記多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、存在しなくてもよく、本明細書に記載のものと同じ構造式において存在しなくてもよく、しかし、ジオールおよび/またはポリオールと、イソシアネートと、本明細書に記載の構造式の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物との反応生成物として、前記軟質ポリウレタン材料中に存在していてもよい。
【0012】
本明細書で使用される「ポリオール」という用語は、ジオールおよび/またはポリオールとして定義され得るとして理解される。
【0013】
本発明は、一般式(I)の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を提供する。
【化1】
式中、各R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくは両方ともエチル、から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐アルキル、7~13個の炭素原子の二価アラルキル基、または結合、好ましくは1~約3個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分岐アルキル、より好ましくは二価のメチレン基または二価のイソプロピル基であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12の炭素原子、好ましくは6から8の炭素原子を含む二価のアリール基、より好ましくは二価のフェニル基であり、
下付き文字のaおよびbは、それぞれ0または1であり、
下付き文字cは、1~5の整数であり、そして
下付き文字dは、1~26の整数、好ましくは1~10、最も好ましくは1~3であり、
ただし、
a+b=1であり
a=1のとき、bは0であり、Xは、前記アリール基に結合した水素原子の一つが下付き文字cの括弧で囲まれた基の一部ではないこと、を除いて定義された通りのアリール基であり、下付き文字cは1~5の整数であり、下付き文字dは1であり、そして
b=1のとき、aは0であり、cは1であり、dは1~26の整数、好ましくは1~10、最も好ましくは1~3である。
【0014】
本明細書には、ジアルキルホスフィン酸と芳香族エポキシドとを反応させるステップを含む、本明細書に記載の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物の調製のためのプロセスも、提供されている。
【0015】
さらに、ポリオールと、イソシアネートと、難燃有効量の、一般式(I)の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物との反応生成物を含む難燃性ポリウレタンフォームが、本明細書に提供される。
【0016】
本発明の上記およびその他の特徴および利点はすべて、その好ましい実施形態に関する以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明によって、よりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1つの実施形態において、式(I)の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、より具体的な式(II)および/または(III)のものであり得、式(II)は、
【化2】
であり、式中、R
1およびR
2は、独立して、1~4個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくは両方ともエチル、から選択され、
Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分枝アルキル、または結合、好ましくは1~約3個の炭素原子であり、より好ましくは二価のメチレン基または二価のイソプロピレン基であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12個の炭素原子、好ましくは6~8個の炭素原子を含む二価のアリール基、より好ましくは二価のフェニル基であり、
下付き文字cは、1~5、好ましくは1~3の整数であり、下付き文字dは1であり、
ここで、式(III)は、
【化3】
であり、式中、R
1、R
2、R、XおよびYは、上記で定義された通りであり、そして
下付き文字cは1であり、下付き文字dは1~26、好ましくは1~10、最も好ましくは1~3の整数である。
【0018】
上記式(II)および(III)の具体例は、下記式(A)および(B)を含み得る。
【化4】
【0019】
式(I)、式(II)および式(III)、または式(A)および式(B)の新規化合物は、式(IV)のモノヒドロキシル-官能性-ジアルキルホスフィン酸と芳香族エポキシド化合物との反応により調製され得、ここで、式(IV)は、
【化5】
であり、式中、R
1およびR
2は定義された通りである。
【0020】
本発明のプロセスにおいて出発物質として使用されるジアルキルホスフィン酸(IV)は、大部分が当技術分野で周知である。式(IV)の化合物は、例えば、次亜リン酸ナトリウムとエチレンとの反応、次いで酸性化、または代替的に次亜リン酸とエチレンとの反応によって、またはあまり好ましくないが対応するジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物の加水分解によって得ることができる。
【0021】
前記芳香族エポキシド化合物は、好ましくは、エポキシ末端芳香族化合物であり得る。芳香族エポキシド化合物の芳香族部分は、XおよびYについて上記で定義した通りであり、好ましくは、前記芳香族部分は、上述の一般式(I)のX-R-Y部分を含み得る。より好ましくは、前記芳香族部分は、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、2,2’-ビフェノール、4,4’-ビフェノールなどの誘導体のようなビスフェノール化合物の誘導体であり得る。「ビスフェノール化合物の誘導体」という表現は、ビスフェノール化合物のO原子が、芳香族エポキシド化合物の他の部分(例えば、エポキシ基および/または芳香族エポキシド化合物の内部部分における開環エポキシド部分)に結合されるような、ビスフェノール化合物のヒドロキシル基2つの水素原子を取り除く際に残る芳香族部分であると、当業者により理解されるであろう。好ましくは、前記ビスフェノール化合物の誘導体は、ビスフェノール-Aの誘導体またはビスフェノール-Fの誘導体である。
【0022】
本発明の式(I)、より具体的には式(II)および式(III)、または式(A)もしくは式(B)の化合物を調製するためのプロセスにおいて使用され得る、具体的な芳香族エポキシドは、例えば、
【化6】
および、これらの組み合わせ、からなる群から選択されるが、これらに限定されず、
式中、Rは、最大約4個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分枝アルキル、7~13個の炭素原子を含む二価のアラルキル基、または結合、好ましくは1~約3個の炭素原子を含む二価の直鎖もしくは分枝アルキル、より好ましくは2価のメチレン基または2価のイソプロピル基であり、
XおよびYは、それぞれ独立して、6~12個の炭素原子を含む二価のアリール基であり、
下付き文字cは、1~5の整数であり、下付き文字eは、0または1~25、好ましくは1~10、より好ましくは1~3の整数である。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、モノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)と芳香族エポキシ化合物との反応は、過剰のモノヒドロキシル-官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)の媒体中で行われ、ここで残留するモノヒドロキシル-官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)は、プロピレンオキシドなどのエポキシ化合物(エチレンオキシド、エピクロロヒドリンなどの他のエポキシ化合物も考えられる)との反応によって消費される。
【0024】
このプロセスにおけるプロピレンオキシドの使用は、残留するモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)に対して過剰に、好ましくは約1~約200%のモル過剰で行われるべきである。
【0025】
これらの物質を生成するためのプロセス、およびプロピレンオキシド(PO)の最終付加によって反応を完了させる必要があるという事実に基づいて、使用する多官能性エポキシ樹脂に対して過剰のジエチルホスフィン酸を使用することにより、計算量のモノ官能性ジアルキルホスフィネートを含む本発明の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を合成することが、可能である。
【0026】
残留するモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)と、過剰のエポキシ化合物(プロピレンオキシドなど)との反応により、米国特許第10,208,187号に記載され、その内容全体が参照により本明細書に援用される単官能性ジアルキルホスフィネートが、生成される。酸化プロピレンなどの他のエポキシ化合物と反応させて所望の重量パーセント量の単官能性ジアルキルホスフィネートをin situで生成するのに十分な残存モノ官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)の量を生成するように、芳香族エポキシ化合物(単数または複数)に対する過剰なモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)のモル比を設定することにより、生成され得る単官能性ジアルキルホスフィネートの量は当業者により設定され得る。このようなステップにより、本発明の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物の全体的な粘度を低下させるために時折望まれる追加の単官能性ジアルキルホスフィネートを配合する必要がなくなる。
【0027】
上記のようにin situで生成され得る、および/または本発明の反応生成混合物に添加され得る単官能ジアルキルホスフィネートの量は、本発明の単官能ジアルキルホスフィネートおよび多官能ジアルキルホスフィネート化合物の合計重量に基づいて、約5重量%~約45重量%、好ましくは約10重量%~約40重量%、および最も好ましくは約15重量%~約35重量%である。
【0028】
本発明の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物とモノ官能性ジアルキルホスフィネートとの反応混合物(ブレンド物)の粘度は、好ましくは約500cps~約3,000cps、より好ましくは約1,000cps~約2,500cpsである。
【0029】
芳香族エポキシ化合物との反応に使用されるモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)の量は、モル当量であるか、あるいは、より多量の単官能性含有物が所望される場合は、モノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィン酸のモル過剰、例えば、5~100%モル過剰である。
【0030】
モノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィン酸(IV)と芳香族エポキシ化合物との反応を行うための温度範囲は、約50℃~約120℃、好ましくは約70℃~約90℃である。このような温度範囲は、プロピレンオキシドなどのエポキシ化合物のその後の反応に使用することができる。
【0031】
本発明の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、反応に供されるジアルキルホスフィン酸および芳香族エポキシ化合物に応じて、約8~15重量%のリン含有量および約150~300mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0032】
可能な限り高リン含有量を有する目的の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物を調製するためには、モノヒドロキシジアルキルホスフィン酸(IV)の中で最も高いリン含有量を有するモノヒドロキシジアルキルホスフィン酸を、本明細書に記載する芳香族エポキシ化合物と反応させることが、好ましい。
【0033】
前記反応は、40~120℃、好ましくは70~90℃の間の温度で実施される。40℃より低い温度では、反応は許容できないほど遅くなる。一方、120℃より高い温度を適用すると、望ましくない分解生成物が生成する可能性があるため、好ましくない。
【0034】
本発明の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、高いリン含有量を有し、良好な加水分解性および熱安定性を有し、軟質ポリウレタンフォーム形成系のジオールおよび/またはポリオール成分との良好な適合性を示し、軟質ポリウレタンフォームにおける高効率反応性難燃剤として有用である。
【0035】
本発明の化合物は、反応性難燃剤として有用である。前記難燃剤は、そのままで、またはハロゲン化もしくは非ハロゲン化生成物との混合物として、使用され得る。軟質ポリウレタンフォームに対して、本発明の、ハロゲンを含まないヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートを、純品として用いるか、または他の非ハロゲン化生成物とともに使用することが好ましい。
【0036】
本発明はさらに、軟質ポリウレタンフォーム形成系で反応させて軟質ポリウレタンフォームを形成した後の前記多官能性ジアルキルホスフィネートの反応性残基を含む難燃性軟質ポリウレタンを、提供する。本明細書の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、軟質ポリウレタンフォーム形成系において、単独でまたは互いに混和して、ならびに/またはハロゲン含有難燃剤およびリン含有難燃剤を含む他の難燃剤と共に、使用され得る。
【0037】
非限定的な1つの実施形態では、前記多官能性ジアルキルホスフィネートは、モノヒドロキシルジアルキルホスフィネートと組み合わされ得(例えば、本明細書で後述する異性体混合物など)、ここで、アルキル部分は、組成物を形成するために、1~4の炭素原子アルキル由来であり得、本明細書に記載するポリウレタンフォームの生成に使用され得る。前記多官能性ジアルキルホスフィネートの量は、多官能性ジアルキルホスフィネートと、使用される多官能性ジアルキルホスフィネートとの合計重量に基づいて、1~40重量%、好ましくは1~30重量%であり得る。
【0038】
本発明の化合物は、軟質ポリウレタンフォームに組み込まれる場合、非常に効率的な反応性難燃剤である。本発明の化合物は、広範なイソシアネート指数(本明細書ではMDIまたはTDIと略す。)にわたって有用であることに留意されたい。当該指数は、配合物中で実際に使用されるイソシアネートの、必要とされるイソシアネートの理論化学量論量に対する比率を指し、パーセンテージで表される。
【0039】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、典型的な難燃有効量の、本発明の組成物を含有する。典型的には、本発明の組成物は、ポリマー(すなわち、軟質ポリウレタンフォーム)中の全リン濃度がポリマーの全重量を基準にして0.01~10重量%になるような量で、適用される。好ましくは、ポリマー中の全リン濃度は、軟質ポリウレタンポリマーの全重量を基準にして0.1~5重量、より好ましくは、0.1~3重量%である。最も好ましくは、本発明の多官能性ジアルキルホスフィネート化合物の使用量が少なくとも、可燃性試験規格MVSS 302の現在の要件を満たすのに十分である。
【0040】
成分および条件の適切な選択により、柔軟性の程度に関して特性が変化しうる軟質ポリウレタンフォームが製造される。したがって、軟質フォームは一般に、水を主要な発泡剤として使用して、20~80のヒドロキシル価を有するポリマージオールまたはトリオールから製造される。
【0041】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは補助剤、たとえば、触媒、界面活性剤、フォーム安定剤などの適切な選択を含み得る。
【0042】
本明細書で使用される軟質ポリウレタンフォームは、本明細書に記載される、分子量3000~約6000のジオールおよび/またはポリオールを有するジオール、および/またはポリオール(例えば、グリセロールにプロピレンオキシドを添加することによって調製されるポリエーテルトリオール)を使用して、作製される。本明細書で使用される軟質ポリウレタンフォームは、最大30%のコア衝撃弾性および-80~-60℃のガラス転移点を有することを特徴とする。ここで、前記軟質ポリウレタンフォームは、好ましくは、最大40質量%のハードセグメント含有量を有する。従来の軟質ポリウレタンフォームは、1立方フィートあたり2.5ポンド以下の嵩フォーム密度を有し、50平方インチあたり10~90ポンドのフォーム硬度またはIFD(ASTM 3574-TestB1に準拠して測定)を有する。
【0043】
本発明の軟質ポリウレタンフォームを製造する方法は、ジオールおよび/またはポリオール成分および/またはイソシアネート成分または触媒と、本明細書に記載される式(I)~(III)または(A)または(B)の難燃性材料のうちの1つ以上とを組み合わせることを含み得、これらは計量され、共通の混合容器にポンプ輸送され得、次いで、得られた混合物は型、スラブストック操作などで使用するために重合部分に容易に移動され得る。
【0044】
本発明の反応性難燃剤は、イソシアネート反応体と組み合わせる前に、ジオールおよび/またはポリオール反応体と混合され得る。ジオールおよび/またはポリオール反応体と混合する前に、反応性難燃材料をイソシアネートと混合することも、本発明の範囲内である。しかし、イソシアネートと前述の難燃剤とを混合し、室温で一定時間放置すると、反応が起こることがある。本明細書の特許請求の範囲および明細書で使用される「反応生成物」は、1つの実施形態では、前述の方法のいずれか1つで軟質ポリウレタンフォーム形成系の内容物を反応させることを含み得、たとえば、過剰のイソシアネートをポリオールと反応させてイソシアネート末端プレポリマーを形成し、次いでプレポリマーを本明細書の反応性難燃剤とさらに反応させるなど、プレポリマー技術を介して反応性難燃剤を反応させることをさらに含み得る。
【0045】
本明細書に記載の式(I)~(III)または(A)または(B)の難燃性材料は、イソシアネート反応性(NCO反応性)材料として記載され得、すなわち、それらは、ヒドロキシル基を介してイソシアネートとの反応性を有する。
【0046】
本明細書に記載される軟質ポリウレタンフォームの製造に使用されるジオールおよび/またはポリオールは、ジオール、ポリオールを含む任意の有機ポリオールを含み得、イソシアネートとの反応性がある水素原子を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールが使用され得る。一般に、これらの材料は、約62~約5,000の分子量を有し、1分子当たり2~約10個以上のヒドロキシル基を有し、重量%のヒドロキシル基含有量は約0.5~約25%である。これらは一般に、約50~500、またはさらには700のヒドロキシル価を有する。
【0047】
ポリエステル-ポリオール型の反応体において、酸価は10未満であるべきであり、通常、可能な限り0に近い。これらの材料は、便宜上「ポリオール」反応体と呼ばれる。有用な活性水素含有ジオールおよび/またはポリオールには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシドおよび2,3-ブチレンオキシド、または他のアルキレンオキシドが、ジオール、グリコールおよびポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルグルコシド、スクロース、ソルビトール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ならびに種々のアルキルアミンおよびアルキレンジアミン、ならびにポリアルキレンポリアミンなどによって提示される。)などの活性水素化合物に添加される場合に生じる付加化合物の大きなファミリーが含まれる。これらのアルキレンオキシドの種々の量は、ポリウレタンの意図される用途に依存して、ベースとなる上記のジオール、ポリオールまたはアミン分子に添加され得る。
【0048】
たとえば、軟質フォームの作製に使用するためのジオールおよび/またはポリオールは、約1.7%の最終ヒドロキシル含量を与えるのに十分なプロピレンオキシドが添加されたグリセリンによってよく表され得る。このような材料は、約3000の分子量を有し、グリセリン約1に対してプロピレンオキシド50のグリセリン対プロピレンオキシドのモル比を有する。
【0049】
ジオールおよび/またはポリオール分子の選択およびその後の添加されるアルキレンオキシドの量によって柔軟性を制御するこの技術は、当業者に周知である。
【0050】
アルキレンオキシドの付加のためのベースポリオール分子として機能し、したがってイソシアネートとの反応のための「ポリオール」分子を生じることができるグリコール等に加えて、アルキレンオキシドに対して反応性の水素を有する第一級および/または第二級アミン基を含有する出発分子を使用できる。ここでも、添加されるアルキレンオキシドの量は、最終ポリウレタン生成物の意図される用途に依存する。本発明の軟質ポリウレタン生成物において、アルキレンオキシドは、より低いヒドロキシル含量(たとえば、約0.1~約5%または10%)を有するポリオールを製造するために使用される。
【0051】
エポキシドとの反応のための活性水素含有分子として機能し得る代表的なアミンは、1~約6個以上のアミノ窒素を有するものであり、その例は、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、および他の直鎖状飽和脂肪族アルキレンアミンであり、重要な要件は、アルキレンオキシドが添加されうる少なくとも2個、より好ましくは3~8個または10個の活性水素部分を有することである。
【0052】
ポリウレタン系を調製する際に使用される活性水素化合物として、多官能酸または無水物および多官能アルコールからエステル化型反応によって調製されたヒドロキシル含有分子を使用することも周知である。これらの化合物はしばしばポリエステルポリオールと呼ばれる。これらのポリエステルポリオールの製造に使用される典型的な酸は、マレイン酸、フタル酸、コハク酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、クロレンジ酸およびテトラクロロフタル酸である。典型的なジオールおよび/またはポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、およびジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール、ならびにグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリトリトール、ソルビトールなどである。利用可能な場合、上記の酸は所望であれば、無水物の形態で使用されうる。
【0053】
ポリエステル-ポリオールを作製する際に、種々の多価酸または無水物またはそれらの混合物のいずれかを、化学量論的過剰のヒドロキシル基を用いて、ジオール、グリコールまたはポリオールまたはそれらの混合物のいずれかと反応させ、最終ポリオール生成物が主としてヒドロキシル末端基を含有するようにする。ヒドロキシル官能性の程度およびヒドロキシルパーセントは、当業者に公知の技術(単数または複数)によって所望のポリオールを提供するために容易に変えられる。
【0054】
軟質ポリウレタンを製造する技法および技術において、いわゆるプレポリマー技術を使用することも知られている。これは、軟質ポリウレタンの製造に関与する反応の一部が行われて、分子量が増加したプレポリマーを生成し、このプレポリマーの作製に使用される化学量論に応じて、ヒドロキシルまたはイソシアネートの末端基が得られる技術である。次いで、このプレポリマーを使用して、上記のように、プレポリマーの末端基がそれぞれヒドロキシルであるかイソシアネートであるかに応じて、それをイソシアネートまたはポリオールのいずれかと反応させることによって、最終的な軟質ポリウレタン生成物を調製する。
【0055】
広くは、遊離反応性水素および特にヒドロキシル基を有する先行技術のポリエステル、イソシアネート変性ポリエステルプレポリマー、ポリエステルアミド、イソシアネート変性ポリエステルアミド、アルキレングリコール、イソシアネート変性アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、イソシアネート変性ポリオキシアルキレングリコールなどのいずれかが、本明細書に記載のポリウレタンの生成に使用され得る。
【0056】
使用され得るイソシアネートの例には、軟質ポリウレタンフォームを作製するためにこれまで使用されてきた2個以上のイソシアネート基を有するものが含まれる。このようなイソシアネート化合物の例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネート、このようなイソシアネートの2種以上の混合物、ならびにこのようなイソシアネートの修飾によって得られる修飾イソシアネート、が挙げられる。このようなイソシアネートの具体例は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネート、ならびにカルボジイミド修飾生成物、ビウレット修飾生成物、ダイマーおよびトリマーなどの上記イソシアネートの修飾生成物である。このようなイソシアネートおよび活性水素含有化合物から得られる末端イソシアネート基を有するプレポリマーも、使用され得る。
【0057】
1つの実施形態では、軟質ポリウレタンフォームのイソシアネート指数範囲は、約130~約80、より好ましくは約120~約90、最も好ましくは約115~約95であり得る。
【0058】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム形成組成物における発泡剤としては、フォーム生成に要求される特性に応じて、従来使用されている公知の発泡剤が適宜選択される。
【0059】
本発明では、必要に応じて架橋剤も使用される。
【0060】
前記架橋剤としては、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基などの活性水素を有する官能基を少なくとも2個有する化合物が好ましい。ただし、架橋剤としてポリオール化合物を用いる場合には、以下を考慮する。すなわち、ヒドロキシル基価が少なくとも50mgKOH/gであり、4個を超える官能基を有するポリオール化合物が架橋剤であると考えられ、これを満たさないポリオールは、上記ポリオール混合物(ポリオール(1)、(2)または他のポリオール)のいずれか1つと考えられる。また、2種以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、デキストロース、ソルビトール、スクロースなどの多価アルコール;多価アルコールにアルキレンオキシドを添加したポリオール;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、3,5-ジエチル-2,4(または2,6)-ジアミノトルエン(DETDA)、2-クロロ-p-フェニレンジアミン(CPA)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4(または2,6)-ジアミノトルエン、1-トリフルオロメチル-4-クロロ-3,5-ジアミノベンゼン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)メタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、m-キシレンジアミン、1,4-ジアミノヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、またはイソホロンジアミンなどのアミン化合物、および上記の化合物にアルキレンオキシドを添加することによって得られる化合物が挙げられる。
【0061】
上記架橋剤を用いると、たとえば発泡剤を多量に用いて低密度の軟質フォームを製造する場合であっても、発泡安定性が良好となり、このような軟質フォームを製造できる。特に、高分子量のジオールおよび/またはポリオールを用いる場合には、発泡しにくいと考えられていた低密度の軟質フォームを製造できる。また、架橋剤を用いた場合には、架橋剤を用いない場合に比べて耐久性が向上する。本発明のように、高分子量のジオールおよび/またはポリオールを用いる場合、特に、分子量が4000以上などの比較的高分子量の化合物を用いると、容易に発泡安定性を向上させることができる。
【0062】
水は、このような発泡剤の典型的な例であり、他の例としては、塩化メチレン、アセトン、二酸化炭素などが挙げられる。発泡ポリウレタンの所望の密度および他の特性に応じて、これらおよび他の発泡剤は、単独で、または当技術分野で知られている方法における2つ以上の組み合わせで、使用され得る。
【0063】
使用される発泡剤の量は特に限定されないが、通常、発泡形成組成物のジオールおよび/またはポリオール成分100重量部当たり0.1~20重量部である。好ましくは、発泡剤の量は、0.8~2.5ポンド/立方フィート、好ましくは0.9~2.0ポンド/立方フィート、のフォーム密度を提供するような量であろう。
【0064】
本明細書中のポリウレタンフォーム形成組成物は、好ましくは、ポリウレタンフォームの製造のためにこれまでに知られているかまたは使用されている触媒のいずれか、および触媒の組み合わせを含み得る。有用な触媒の例には、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、第三アミン、または、第三アミンを生成する材料(トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、およびN,N-ジメチルアミノエタノールなど)が含まれる。また、炭化水素スズアルキルカルボキシレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、およびオクトエート第一スズなどの金属化合物、ならびに、2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノ-メチル)フェノール、1,3,5-トリス(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)-S-ヘキサヒドロトリアジンなどのイソシアネートの三量体化を促進することを意図した他の化合物、オクト酸カリウム、酢酸カリウム、および、DABCO TMR(登録商標)およびPOLYCAT 43(登録商標)などの触媒も、適用可能である。
【0065】
所望であれば、多くの他の種類の触媒を上記に列挙したもの代わりに用いることができる。使用される触媒の量は、有利にはフォーム形成混合物中のジオールおよび/またはポリオールの総重量に基づいて0.05~5重量パーセント以上であり得る。
【0066】
本発明による軟質フォームを製造する際に適用されるイソシアネート(NCO)指数は、95~125、好ましくは100~120である。ポリウレタンフォームのNCO指数は約80~130であることが一般に理解される。
【0067】
ここでの軟質ポリウレタンフォームの密度は、14~80kg/m3、好ましくは16~55kg/m3、および最も好ましくは20~40kg/m3であり得る。
【0068】
有機界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤を含む界面活性剤を添加して、セル安定剤として機能させることができる。一部の代表的な材料は、SF-1109、L-520、L-521、およびDC-193の名称で販売されており、一般的には、ポリシロキサンポリオキシアルキレンブロックコポリマーである。ポリオキシ-エチレン-ポリオキシブチレンブロックコポリマーを含有する有機界面活性剤も含まれる。発泡反応混合物が硬化するまで安定化させるために、少量の界面活性剤を使用することが特に望ましい。本明細書において有用でありうる他の界面活性剤は、長鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテル、長鎖アリル酸硫酸エステルの第三級アミンまたはアルカノールアミン塩、アルキルスルホン酸エステル、アルキルアリールスルホン酸、およびそれらの組み合わせである。このような界面活性剤は、崩壊および大きな不均一な気泡の形成に対して発泡反応を安定化させるのに十分な量で使用される。典型的には、この目的のためには配合物全体を基準にして約0.2~約3重量%の界面活性剤総量で十分である。しかし、いくつかの実施形態では、いくつかの界面活性剤、たとえば、Air Products and Chemicals,Inc.から入手可能なDABCO DC-5598をより多量に含むことが望ましい場合がある。この観点から、界面活性剤は、ジオールおよび/またはポリオール成分に対して0~6重量%の任意の量で本発明の配合物中に含まれ得る。
【0069】
最後に、充填剤および顔料などの他の添加剤を、本明細書に記載のポリウレタンフォーム形成配合物に含めることができる。そのような添加剤には、非限定的な実施形態では、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄、微小球、アルミナ三水和物、珪灰石、調製されたガラス繊維(滴下または連続)、ポリエステル繊維、他のポリマー繊維、それらの組み合わせなどが含まれ得る。当業者は、本書に付属するクレームの範囲には該当するもの、所望の性質および/または加工改変から利益を得る軟質ポリウレタンフォームを製造するために発明的な配合を適応させる典型的かつ適当な手段および方法について、更なる指示なしに知ることができるであろう。
【0070】
本明細書に記載される軟質ポリウレタンフォームは、家具、寝具、および自動車シートクッションなどの様々な物品、より具体的には家具用途、自動車用途、ボート用途、バス座席用途、列車座席用途、RV座席用途、オフィス家具座席用途、航空用途、トラクタ用途、自転車用途、エンジンマウント用途、圧縮機用途、寝具用途、遮断用途、スポーツ用品用途、靴用途、カーペットクッション用途、包装用途、織物用途、緩衝クッション用途、HVAC用途、テント用途、救命いかだ用途、手荷物用途、およびハンドバッグ用途の構築および形成に利用され得る。
【0071】
軟質スラブストックポリウレタンフォームは、家具、例えば、クッション、背もたれおよびアームなどの布張り家具、自動車産業、例えば、自動車およびトラック用のシートおよび背もたれクッションおよびヘッドライニングおよびヘッドレスト、公共の輸送機関、例えば、バスおよび飛行機など、のシート、ならびに、車両シートボトムおよびバックボルスタおよびアームレストを含むがこれらに限定されないトラクタ、自転車、およびオートバイのシート、ならびにランフラットタイヤ用のサポートリング、および他の自動車内装部品、マットレスのような寝具、遮音材料、アームレストのような自動車内装部品、ステアリングホイールおよびシフトレバーノブ、靴底、およびスポーツ用品に使用され得る。
【実施例】
【0072】
エポキシドとジエチルホスフィン酸(DEPA)との7種の反応生成物を調製し、軟質ポリウレタンフォーム用難燃助剤として評価した。調製した分子の構造例を以下に示す。
【0073】
ビスフェノールAジグリシジルエーテルホスフィン酸エステル反応生成物(DER331、332および383から):
【化7】
【0074】
エポキシ樹脂DER331、DER332およびDER383のn値は、分子内の各エポキシ基に関連する重量である所定のエポキシ当量(EEW)に基づいて算出することができる。DER331、DER332、およびDER383の各分子は、2つのエポキシ基を有する。DER331のEEWは、182~192グラムの範囲である。ビスフェノールAの純粋なジグリシジルエーテルのEEWは170.2グラムであるため、DER 331の平均値を187とすれば、DER 331のn値は約1.10となる。DER 332のEEWは171~175なので、計算されたn値は約1.02、DER 383のEEWは176~183であるため、計算されたn値は~1.05となる。
【0075】
エポキシノボラック樹脂のホスフィン酸エステル反応生成物(DEN431から):
【化8】
【0076】
オリゴマーの長さに関係なく、ほぼすべてのフェニル基が1つのエポキシ基を有するため、DER331、DER332、DER383のnを決定するための上記の同じ計算方法を、DENオリゴマーに使用することはできない。すべてのフェニル基がエポキシ基を有する純粋なノボラック樹脂のEEWは150.17グラムであり、DEN431のEEWは172~179グラムである。したがって、すべてのフェニル部分がエポキシ基を有するわけではない。これらの製品ではn値を計算することができず、製造元のn値(DEN 431)は約1.8である。
【0077】
比較化合物1:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルホスフィネートエステル反応生成物(Araldite DY-Nから):
【化9】
【0078】
上記製品のn値は、DER製品について前述した方法と同様に計算することができる。DY-Nは125~145グラムのEEWを有し、純粋なジグリシジルエーテルは108.14グラムのEEWを有する。従って、DY-Nのn値は約1.25となる。
【0079】
比較化合物2:1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルホスフィン酸エステル反応生成物(Araldite DY-Dから):
【化10】
【0080】
DY-DのEEWは117~125グラムで、純粋なジグリシジルエーテルのEEWは101.12グラムである。従って、DY-Dのn値は約1.20である。
【0081】
比較化合物3:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルホスフィネートエステル反応生成物(Araldite DY-Tから):
【化11】
【0082】
DY-TのEEWは111~143gで、純粋なトリグリシジルエーテルのEEWは100.79gであり、DY-Tのn値は、約1.26である。
【0083】
この分子は、以下の一般的な合成スキームで調製した:
【化12】
【0084】
【0085】
手順:
水コンデンサー、J-Kem温度プローブ、添加漏斗、およびマグネチックスターラーを備えた0.5リットル4つ口丸底フラスコに、DER 383(139.4グラム)を入れた。このバッチを60℃に加熱し、この温度で攪拌した。次に、このバッチに添加漏斗を介してジエチルホスホン酸(100グラム;0.819モル)を添加した。66℃までわずかな発熱が観察された。バッチを80℃で撹拌し、この温度で3.0時間保持し、次いで90℃で4.0時間保持した。このバッチを、攪拌せずに一晩室温に冷却した。
【0086】
このバッチを40℃に加熱し、フラスコに水コンデンサーを取り付けて、プロピレンオキシド(32.0グラム、0.55モル)を一部ずつ添加した。POの添加後、バッチを80℃で8.0時間攪拌した。バッチとして酸価分析のための試料を採取し、酸価=0.53mg KOH/gを得た。このバッチを80℃で2時間、完全真空下で真空ストリップし(vacuum stripped)、透明なガラス化合物を得た。
【0087】
分析結果は以下の通りであった:
酸価=0.05mg KOH/g
水=990ppm
OH価=202mg KOH/g。
【0088】
【0089】
手順:
水コンデンサー、J-Kem温度プローブ、添加漏斗、およびマグネチックスターラーを備えた0.5リットル4つ口丸底フラスコに、DER 332(139.4グラム)を入れた。このバッチを60℃に加熱し、この温度で攪拌した。次に、このバッチに添加漏斗を介してジエチルホスフィン酸(100グラム;0.819モル)を添加した。63℃までわずかな発熱が観察された。バッチを80℃で撹拌し、この温度で3.0時間保持し、次いで90℃で7.0時間保持した。バッチを、攪拌せずに一晩室温に冷却した。
【0090】
このバッチを40℃に加熱し、フラスコに水コンデンサーを取り付けて、プロピレンオキシド(32.0グラム、0.55モル)を一部ずつ添加した。POの添加後、バッチを80℃で8.0時間攪拌した。酸価分析のための試料を採取し、酸価=0.44mg KOH/gを得た。このバッチを90℃で2時間、完全真空下で真空ストリップし、透明なガラス化合物を得た。
【0091】
分析結果は以下の通りであった:
酸価=0.03mg KOH/g
水=930ppm
OH価=197mg KOH/g。
【0092】
【0093】
手順:
水コンデンサー、J-Kem温度プローブ、添加漏斗、およびマグネチックスターラーを備えた0.5リットル4つ口丸底フラスコに、DER 383(139.4グラム)を入れた。このバッチを60℃に加熱し、この温度で攪拌した。次に、このバッチに添加漏斗を介してジエチルホスホン酸(100グラム;0.819モル)を添加した。61℃までわずかな発熱が観察された。バッチを80℃で撹拌し、この温度で3.0時間保持し、次いで90℃で9.0時間保持した。バッチを、攪拌せずに一晩室温に冷却した。
【0094】
このバッチを40℃に加熱し、フラスコに水コンデンサーを取り付けて、プロピレンオキシド(16.0グラム、0.275モル)を一部ずつ添加した。POの添加後、バッチを80℃で3時間、そして90℃で4時間攪拌した。酸価分析のための試料を採取し、酸価=0.48mg KOH/gを得た。このバッチを90℃で2時間、完全真空下で真空ストリップし、透明なガラス化合物を得た。
【0095】
分析結果は以下の通りであった:
酸価=0.02mg KOH/g
水=450ppm
OH価=192mg KOH/g。
【0096】
【0097】
手順:
水コンデンサー、J-Kem温度プローブ、添加漏斗、およびマグネチックスターラーを備えた0.5リットル4つ口丸底フラスコに、DEN 431(139.4グラム)を入れた。このバッチを60℃に加熱し、この温度で攪拌した。次に、このバッチに添加漏斗を介してジエチルホスフィン酸(100グラム;0.819モル)を添加した。62℃までわずかな発熱が観察された。バッチを80℃で撹拌し、この温度で3.0時間保持し、次いで90℃で9.0時間保持した。バッチを、一晩室温に冷却した。
【0098】
このバッチを40℃に加熱し、フラスコに水コンデンサーを取り付けて、プロピレンオキシド(16.0グラム、0.275モル)を一部ずつ添加した。POの添加後、バッチを80℃で3時間、そして90℃で4.0時間攪拌した。酸価分析のための試料を採取し、酸価=0.34mg KOH/gを得た。このバッチを90℃で2時間、完全真空下で真空ストリップし、透明なガラス化合物を得た。
【0099】
分析結果は以下の通りであった:
酸価=0.03mg KOH/g
水=2300ppm
OH価=205mg KOH/g。
【0100】
以下の表1は、4つの本発明の合成例と3つの比較構造についての分析結果をまとめたものである:
【表1】
【0101】
次に、上記の生成物を、ポリエステルポリオールポリウレタン軟質フォームの難燃性添加剤として評価した。芳香族エポキシ生成物(芳香族エポキシ樹脂-合成例1~4から作製)の粘度がより高いため、これらの材料は、以下に示す異性体の混合物である単官能低粘度ホスフィン酸エステル(MFPE)製品とのブレンドにおいて以下に評価された。
【化17】
表3の配合と同様の化学に基づくものである。脂肪族エポキシ生成物(比較化合物1~3)は、その低粘度により、ポリウレタン配合物での使用が容易であり、上述のMFPE異性体混合物による希釈の恩恵を受けないので、ニート(Neat)生成物としてのみ評価した。第1回目の評価結果を下記表2に示す。
【0102】
【0103】
密度は、ASTM D3574(2003)Test A,Density Testによって測定される。
【0104】
エアー流量は、ASTM D3574(2003)テストG、気流テストによって測定される。
【0105】
圧縮歪みは、標準的なASTM方法D 3574-03 Test Dによって測定され、圧縮後に回復するフォームの能力を測定するために使用される。出願人は、記載されている評価において、規格の41.3項に記載されている90%の圧縮を採用した。この試験方法は、発泡体試験片を特定の歪みまで歪め、時間と温度の特定条件にさらし、特定の回復期間後に試験片の厚さの変化を測定することから構成される。
【0106】
DG173RLFは、C.O.I.M.s,p,a - Chimica OrganicaIndustriale MilaneseからDIEXTER G 173 RLFとして入手可能なポリエステルポリオールである。
【0107】
Niax C131 NPFは、Momentive Performance Materials GmbHから入手可能なビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル;3-ジメチルアミノ-N,N-ジメチルプロピオンアミドである(CAS 3033-62-3 17268-47-2)。
【0108】
Niax DMPは、Momentive Performance Materials GmbHから入手可能なN,N’-ジメチルピペラジンである(CAS 106-58-1)。
【0109】
Niax Silicone L537LFは、Momentive Performance Materialsから入手可能なポリアルキレンオキシドメチルシロキサンコポリマーである。
【0110】
TDI 65は、Covestro,LLCからMONDUR TD-65として入手可能な芳香族イソシアネートである(CAS 584-84-9(65%)、91-08-7(35%))。
【0111】
TDI 80は、Everchem Specialty Chemicals社からTDI 80Type1ISOCYANATEとして入手可能な芳香族イソシアネートである(CAS 584-84-9(80%);91-08-7(20%))。
【0112】
ニート生成物(すなわち合成例1~4の生成物)は室温でガラス質の物質であり、比較生成物(比較化合物1~3)は中粘度の液体(Fyrol FR-2、すなわちリン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)(TDCP)と同様)であった。この第1回目の評価では、合成例1~4の製品を、注入するために、90℃まで加熱する必要があった。7種のホスフィネート試験化合物は、他のポリウレタン配合成分と共に、ポリオールにゆっくりと添加された。合成例1~4の生成物の場合、それらが低温のポリオールと接触すると増粘し、材料を配合混合物に取り込むことが困難になった。ポリオールや他の配合化学品への比較化合物1~3の添加は、問題なくスムーズに行われた。合成例1~4の生成物を用いたフォームのいくつかは良好な結果をもたらしたが、室温での材料の取り扱いが困難であるため、これらの高粘度生成物の使用は、商業的環境において課題があるという結論に至った。
【0113】
上記のように、合成例1~4のニート生成物を利用してフォームを調製することは困難であったが、配合物に混合して許容可能なフォームをもたらした材料については、燃焼性および物理的性質が有利であった。合成例2および3の生成物は、配合物中に6pph添加すると、MVSS302におけるSE評価、および非難燃性フォームと同等の圧縮歪み数が、もたらされた。ジエチルホスフィン酸の化学に基づくあらゆるホスフィン酸エステル生成物が、作製される軟質フォームの圧縮歪み特性に悪影響を及ぼすことが以前に判明していることを考えると、これらの結果は予想外であった。合成例2および合成例3の生成物を用いて製造したフォームの良好な難燃性の結果と良好な物理的特性の組み合わせは、これらの生成物の商業的利点を実証している。
【0114】
脂肪族生成物(比較化合物1~3)を用いたフォームの評価は、合成例1~4の芳香族系エポキシ生成物と比較して、良好な結果を得ることができなかった。比較化合物1~3を用いたフォームの調製は可能であったが、単官能性ジエチルホスフィン酸エステル製品と同様に、フォームの圧縮歪み特性に悪影響を及ぼした。90%圧縮歪み試験の際の70~80%の高さの損失は、市販のフォームにとって許容できないものと考えられる。比較化合物1~3の3つの生成物はすべて発泡反応を触媒し、非常に迅速な反応を引き起こし、立ち上がり終了時間を、異なる度合いまで短縮させた。比較化合物2および3は、比較化合物1よりもはるかに迅速であった。
【0115】
比較化合物1製品に関連するもう1つの問題は、フォーム製品に付与される不快な臭気であった。軟質フォームの最終用途は、限られたスペースで顧客に接触することがほとんどであることから(例えば、自動車、家具)、この生成物のそのような臭気が受け入れられる可能性は低い。最後に、3官能性(3つのOH基)である比較化合物の3つの生成物は、発泡プロセス中に不安定性が生じ、したがって、軟質フォームを作成するために使用できなかった。
【0116】
この生成物は、フォームを不安定にし、フォーム混合物が、通常の様式で膨張するのに対して、ボイルするようになった。生成物の高いOH官能性と、これらのホスフィネートが発泡プロセス中に有する固有の触媒作用との組み合わせが、この生成物が機能しなかった理由の一因となった可能性がある。要約すると、脂肪族エポキシベースの比較化合物1~3製品のいずれも、許容できる軟質フォーム生成物をもたらさなかった。
【0117】
【0118】
室温での取り扱いや注入により適したバージョンの生成物にするために、合成例1~4の生成物を使用して、2回目の適用試験を完了した。使用した手法は、合成例1~4の各生成物と、低粘度ホスフィン酸エステル生成物MFPEとを、生成物の粘度が妥当となるような十分な比率でブレンドすることであったが、MFPE生成物はフォーム生成物の物性を壊すことが知られているので、必要以上にはブレンドしないようにした。表3における以下のデータセットは、30%および40%添加のMFPEを使用して生成されたものである。
【0119】
30/70ブレンドに関する一般的な観察結果は、粘度が許容可能であり、ブレンド物を問題なく室温で注入および使用することができるというものであった。この比率でのすべてのブレンド物に対する5pphの添加により、MVSSS 302試験において強いSE評価が得られ、フォームの圧縮歪み特性にはほとんど影響を与えなかった。また、合成例2および合成例3は、最終的なフォーム品質の観点から、この比率で最も優れた性能を示したため、MFPEとの代替ブレンド比率での追加試験のために選択された。さらに粘度を下げるため、MFPEを、40/60の比率で合成例2および合成例3でブレンドした(ブレンド例5~8を参照)。この新たな比率では、両生成物とも、MVSS 302試験で、5pphで強いSE評価が得られ、さらにわずか3部でボーダーラインのSE評価が得られた。したがって、これらのブレンドについて、MVSS 302で信頼性の高いSE評価を得るためには、各ブレンドの4部の添加が理想的な添加であると結論付けられた。しかし、MFPEをより多くブレンドすることで、このブレンドで製造したフォームの圧縮歪みの値に負の影響を及ぼす証拠が示された。リカバリーにおけるパーセント損失は、30/70ブレンドからのいくらかの増加を示した。理論に束縛されることを望まないが、40%MFPEブレンド物が、フォーム生成物の物理的特性を犠牲にすることなく許容可能な取り扱い特性を達成するために、この低粘度希釈剤を合成例2および合成例3の生成物にどれだけ添加することができるかについての、実用的限界である可能性がある。
【0120】
要約すると、合成例生成物2および3は、最大40%のMFPE(好ましくは30%)とブレンドした場合に、優れたFR特性、良好な物理的発泡特性、ならびに多官能性芳香族ホスフィネートおよびMFPE生成物の反応性により前記フォームからのゼロVOC排出、を有する使用可能な粘度の反応性ホスフィネートエステルブレンド物を提供する、将来の開発に最も望ましい候補である。芳香族エポキシ系生成物は、発泡特性、および調製された最終フォームの性能の両方において、脂肪族エポキシ系生成物より優れた性能特性を示した。合成例1~4生成物の粘度に関連するネガティブな特性は、追加のMFPE(これは、生成物中に5~6重量%で既に存在し、プロピレンオキシドを用いる最終工程の仕上げ工程から生じる)とブレンドすることによって克服され得る。これらの材料を作製するために使用されるプロセス、および反応を酸化プロピレン(PO)の最終添加によって完了させる必要があるという事実に基づいて、使用されるジエポキシ樹脂と比較して過剰のジエチルホスフィン酸を使用することによって、計算上の量のMFPEを含む合成例1~4生成物を合成することが可能である。得られたブレンド物は、比較的低粘度で高効率の難燃剤を提供することができ、これはフェノールを含まず、ゼロエミッションを有し、最終フォーム生成物の圧縮歪み損失を最小にする完全反応性難燃剤である。
【0121】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに均等物を用いることができることが当業者には理解されよう。加えて、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に対して適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は本発明を実施するために企図される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲内にあるすべての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】