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特表2023-529708耐水性及び洗浄性を有する固相の紫外線遮断用の化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】耐水性及び洗浄性を有する固相の紫外線遮断用の化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20230704BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20230704BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/36
A61Q17/04
A61K8/37
A61K8/40
A61K8/49
A61K8/41
A61K8/86
A61K8/81
A61K8/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576191
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2021000849
(87)【国際公開番号】W WO2021251581
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0069819
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0101070
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン-スン・チェ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC261
4C083AC262
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC511
4C083AC512
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD041
4C083AD051
4C083AD052
4C083AD152
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD11
4C083DD21
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
本発明は、紫外線遮断剤、脂肪酸及びワックスを含み、耐水性及び/または洗浄性が優秀であり、紫外線を効果的に遮断可能な固相化粧料組成物を提供する。より詳しくは、本発明の紫外線遮断用の化粧料組成物は、低いpHでは耐水性が優秀であるが、洗顔時などの高いpHでは洗浄性が優秀に変わるので、有用に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線遮断剤、脂肪酸、オイル及びワックスを含み、
前記脂肪酸が、組成物の総重量に対して5~40重量%である紫外線遮断用の化粧料組成物であって、
固相であることを特徴とする、紫外線遮断用の化粧料組成物。
【請求項2】
前記組成物が水を実質的に含まない、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記ワックスは、組成物の総重量に対して5~40重量%である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記化粧料組成物は、pH7では分散せず、pH9~14の水溶液で分散する、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸は、前記ワックス重量の1倍超過から5倍未満の重量で含まれる、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸が液相である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸またはこれらの混合物である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記脂肪酸は、イソステアリン酸である、請求項7に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸のうち液相脂肪酸は、固相脂肪酸の重量の1倍超過から100倍未満の重量で含まれる、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記紫外線遮断剤は、組成物の総重量に対して10~40重量%である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記オイルは、組成物の総重量に対して5~55重量%である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項12】
組成物の総重量に対して、
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、オクトクリレン、サリチル酸エチルヘキシル、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルまたはこれらの混合物である紫外線遮断剤10~40重量%と、
ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、べヘン酸またはこれらの混合物である脂肪酸5~40重量%と、
ポリエチレン、エチレン/プロピレンコポリマー、合成ワックスまたはこれらの混合物であるワックス5~40重量%と、
トリエチルヘキサノイン、ラウリン酸ヘキシルまたはこれらの混合物であるオイル5~55重量%と、を含み、
固相であり、組成物はpH7では分散せず、pH9~14の水溶液で分散することを特徴とする、紫外線遮断用の化粧料組成物。
【請求項13】
前記脂肪酸がイソステアリン酸である、請求項12に記載の化粧料組成物。
【請求項14】
組成物の総重量に対して5~30重量%のポリメチルシルセスキオキサンをさらに含む、請求項12に記載の化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線遮断用の化粧料組成物に関し、より詳しくは、耐水性と洗浄性が共に優秀な紫外線遮断用の化粧料組成物に関する。
【0002】
本出願は、2020年6月9日出願の韓国特許出願第10-2020-0069819号及び2020年8月12日出願の韓国特許出願第10-2020-0101070号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
汗や水によって流れやすい日焼け止めは、紫外線から皮膚を充分に保護しにくいため、紫外線遮断用の化粧品は耐水性が重要である。しかし、これと同時に洗浄性も重要である。落とされず皮膚に残っている紫外線遮断剤は皮膚に異物感を与え、さらには、トラブルを誘発し得るためである。したがって、理想的な紫外線遮断用の化粧品は、水と汗によっては流れにくいが、洗浄力は高くて落としやすい特性を有することが望ましい。
【0004】
最近、スティックタイプの紫外線遮断用化粧品が開発された。スティックタイプの日焼け止めの最大の長所は、化粧品を手につけることなく塗布可能であるという点である。通常のスティックタイプの化粧品は、油相ポリマーを使用するか、またはワックスを使用して製造する。ワックスを使用するときには、主にリップワックスまたはセレシンワックスを使用する。
【0005】
一方、脂肪酸は高い硬度と高い融点を付与しにくいため、スティックタイプの化粧品には実質的に使用していない。即ち、通常の固形化粧品を製造するためには、製品の安定性と品質の問題から、低い融点を有する物質は使用されにくい。例えば、高い温度の保管条件で製品の一部が溶けて品質が変わることがあり、長期的には硬度が低下して使用時に崩れるような問題点があり得る。このような面で、脂肪酸は、固形化粧品を製造するための原料として不適合であった。そこで、固形の化粧品を製造するために、より高い融点を有するワックスを使用しており、脂肪酸が含まれるとてもその含量は他のワックスに比べて低く処方された。
【0006】
前述したように、紫外線遮断剤において耐水性と洗浄の容易性は重要な要素であるが、この二つを同時に満たすことは難しい。さらには、固相の剤形が有する使用上の便利性という長所と共に、耐水性と洗浄の容易性を同時に満たすことは非常に難しい。このような三つの特性を共に満たす紫外線遮断剤の開発が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐水性が優秀でありながらも洗浄性が優秀な紫外線遮断用の化粧料組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、使用が便利であり、耐水性と洗浄性が共に優秀な固相の紫外線遮断用の化粧料組成物を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明の発明者は、特定の成分を含み、特に、脂肪酸を高含量で含む固相の紫外線遮断用化粧料は、安定しながらも、pHが低い水や汗では流れにくいが、pHが高い石鹸水ではよく落とされることを見出して本発明を完成した。
【0010】
脂肪酸を含む固相の紫外線遮断用の化粧料組成物を製造すると、皮膚に塗布されたときには疎水性の性質で耐水性を付与するようになる。しかし、石鹸水のようにpHが高い水に接触したときには、脂肪酸がけん化反応によって界面活性剤の性質を示し、皮膚に塗布された油性成分が洗われやすくする。このような目的を果たすためには、固相化粧料組成物における脂肪酸の含量が重要である。
【0011】
本発明の一態様は、紫外線遮断剤、脂肪酸、オイル及びワックスを含み、前記脂肪酸は、組成物の総重量に対して5~40重量%である紫外線遮断用の化粧料組成物であって、固相であることを特徴とする紫外線遮断用の化粧料組成物を提供する。
【0012】
水中油型の剤形の場合には乳化剤を含むため、乳化剤によって皮膚上の紫外線遮断膜が再乳化するので、剤形の特性上、本質的に耐水性を有しにくいという短所がある。
【0013】
また、油中水型の乳化剤形の場合には、耐水性を有するとしても脂肪酸の構造的な特性によって乳化剤と界面で競争的関係を形成することから、脂肪酸を安定化させにくいため、脂肪酸を高含量で含みにくいという短所がある。
【0014】
これに対し、固相(固形)の剤形の場合には、耐水性と洗浄の容易性を共に有し得るだけでなく、使用性が良くて化粧料組成物として多様な長所を有する。
【0015】
本発明では、固相という剤形的特性、脂肪酸の特性及び脂肪酸の含量を適切に採用することで本発明の目的を果たすのに役に立つ。
【0016】
本発明の望ましい一態様において、本発明による組成物は、水を実質的に含まない。
【0017】
本発明において、用語「実質的に含まない」とは、組成物の総重量に対して5 重量%未満、望ましくは3重量%未満、望ましくは1重量%未満、より望ましくは0.5重量%未満、より望ましくは0.1重量%未満、さらに望ましくは0.01重量%未満で含むことを意味するといえ、一切含まない場合(0重量%)も本発明の「実質的に含まない」範囲に含まれ得る。
【0018】
したがって、望ましくは、本開示による組成物は、水を含まないか、または組成物の総重量に対して5重量%未満、より望ましくは3重量%未満、さらに望ましくは1重量%未満で含み得る。
【0019】
本発明による化粧料組成物は、pH7の水では分散しないが、pH9~14の水溶液では分散し得る。
【0020】
本発明において、用語「分散」とは、一つの物質(分散媒)の中に他の物質が分散媒の下層部に沈殿するか、または上層部に浮かび上がらず、均一に分布していることを意味する。特に、本明細書における「分散」は、分散後に分離した相(phase)が観察されないことを意味し得る。
【0021】
本発明による化粧料組成物は、耐水性及び洗浄性が向上した固相の紫外線遮断用の化粧料組成物である。
【0022】
本発明の一態様において、前記ワックスは、組成物の総重量に対して5~40重量%、望ましくは6~30重量%、より望ましくは12~25重量%含まれる。
【0023】
前記ワックスは、固形の剤形を作るために含まれる。前記ワックスの含量が少なすぎる場合には、組成物の安定性を確保しにくく、ワックスの含量が多すぎる場合には、組成物が硬くて使用感が良くないか、または発明の効果が劣り得る。
【0024】
本発明において、前記ワックスは、カンデリラワックス、カルナウバワックスまたはライスワックスなどの植物系ワックス;ビーズワックスまたはラノリンなどの動物系ワックス;オゾケライトまたはセレシンワックスなどの鉱物系ワックス;パラフィンワックスまたはマイクロ結晶体ワックスなどの石油系ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン/プロピレンコポリマーなどのような合成ワックスなどが使用され得るが、これらに限定されない。
【0025】
本発明において、例えば、前記ポリエチレンワックスとしては、融点が50~120℃、望ましくは60~110℃、より望ましくは70~100℃であるポリエチレンワックスが使用され得る。本発明において、前記ポリエチレンワックスとしては、例えば、New Phase Technologies社のPERFORMALENE 400TM(商品名)が使用され得る。
【0026】
本発明において、前記合成ワックスとしては、例えば、JAPAN NATURAL PRODUCTS社のLIPWAX PZ80-20TM(商品名)が使用され得る。
【0027】
本発明において、前記紫外線遮断剤は、無機系紫外線遮断剤及び/または有機系紫外線遮断剤であり得る。
【0028】
本発明において、前記無機系紫外線遮断剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛などが使われ得るが、これに限定されない。但し、前記酸化亜鉛は、二価である亜鉛イオンを排出して脂肪酸のけん化反応を妨害することで洗浄性に否定的な影響を与えることがあり、望ましくない。
【0029】
本発明において、前記有機系紫外線遮断剤としては、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、サリチル酸エチルヘキシル、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オクトクリレン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン、オクチルトリアゾン、アントラニル酸メンチル、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンスルホン酸、3,4-メチルベンジリデンカンファー、パラメトキシケイヒ酸イソアミル、ホモサレート、ドロメトリゾールトリシロキサン、ベンゾフェノン-3、エチルヘキシルトリアゾン、DEA-メトキシシンナメート、フェニルジベンズイミダゾールテトラスルホン酸2Na、ベンフェノン-8、TEA-サリシレート、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジメチルPABAエチルヘキシルなどが単独または混合して使用され得るが、これらに限定されない。
【0030】
望ましくは、前記有機系紫外線遮断剤としては、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、オクトクリレン、サリチル酸エチルヘキシル、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどが単独または混合して使用され得る。
【0031】
本発明において、前記紫外線遮断剤は、組成物の総重量に対して10~40重量%、望ましくは15~35重量%、より望ましくは18~30重量%含まれ得る。
【0032】
本発明による固相の化粧料組成物は、脂肪酸を高含量で含む。本発明において、望ましくは、脂肪酸の含量は、組成物の総重量に対して5重量%以上、望ましくは10重量%以上の高含量であり得る。前記脂肪酸の含量が5重量%未満の場合、本発明の効果が劣り得る。即ち、本発明の固相の化粧料組成物は、脂肪酸を組成物の総重量に対して5~40重量%、望ましくは10~30重量%含む。
【0033】
本発明の望ましい一態様において、本発明による組成物は、前記脂肪酸を前記ワックス重量の1倍超過から5倍未満の重量で含む。
【0034】
前記脂肪酸の含量を決定するときには、ワックスの含量を共に考慮することが望ましい。ワックス成分は硬いフィルム膜を形成するため、洗浄の容易性がよくないことがあり、この場合には、脂肪酸の含量をワックスの含量以上に処方することが発明の効果を向上させるのに役に立つ。
【0035】
本発明において、前記脂肪酸は、常温で固相または液相、望ましくは常温で液相であり得る。前記脂肪酸が常温で液相である場合、剤形の硬度改善効果を奏し、安定性に及ぶ影響が少ないことから、脂肪酸を高含量処方可能である。但し、本発明の効果(紫外線遮断効果、耐水性及び洗浄力)は、液相脂肪酸、固相脂肪酸またはこれらの混合物を使用した場合、いずれも優秀である。
【0036】
本発明において、前記常温で固相である脂肪酸は、半固相の状態を含む広い意味で使用され得る。
【0037】
本発明の一態様において、本発明による組成物が固相脂肪酸と液相脂肪酸を共に含む場合、本発明による組成物は、前記脂肪酸のうち液相脂肪酸を固相脂肪酸の重量の1倍超過から100倍未満の重量で、望ましくは1倍超過から50倍未満の重量で、より望ましくは1倍超過から20倍未満の重量で、さらに望ましくは1倍超過から8倍未満の重量で含む。
【0038】
固相脂肪酸よりも液相脂肪酸を多く含有する場合、剤形の発汗(sweating)現象が改善されるなどの多様な長所を有する。
【0039】
本発明において、前記脂肪酸は、炭素数が12~22個である飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸であり得る。
【0040】
望ましくは、本発明において、前記脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸、べヘン酸またはこれらの混合物であり得る。より望ましくは、前記脂肪酸は、イソステアリン酸である。特に、前記脂肪酸がイソステアリン酸である場合、安定性に影響が少なく、効果が優秀であることから望ましく、使用感などで多くの長所を有する。
【0041】
本発明において、望ましくは、前記脂肪酸は中和度が5以下、より望ましくは1以下、最も望ましくは0(中和していない脂肪酸)であり得る。
【0042】
本発明において、本発明の化粧料組成物に含まれるオイルは、化粧料組成物に使用される通常のオイルが使われ得る。例えば、前記オイルとしては、シリコーンオイル、天然オイル、エステル油、ハイドロカーボンオイルなどが使用され得るが、これらに限定されない。
【0043】
本発明において、前記シリコーンオイルとしては、非揮発性シリコーンオイルと揮発性シリコーンオイルを共に使用し得る。前記非揮発性シリコーンオイルとしては、アモジメチコン、ビスフェニルヘキサメチコン、ジメチコン、ヘキサデシルメチコン、メチコン、フェニルトリメチコン、シメチコン、ジメチルハイドロゲンシロキサン、ステアロキシトリメチルシロキサン、ビニルジメチコンなどが使用され得るが、これらに限定されない。前記揮発性シリコーンオイルとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、シクロメチコンなどが使用され得るが、これらに限定されない。
【0044】
本発明において、前記天然オイルは、自然界に存在する植物から得たオイルであり得る。例えば、前記天然オイルとしては、ヒマワリ種子油、アボカド油、オレンジ油、マカデミア種子油、レモン油、松の実油、ホホバ種子油、オリーブ油、緑茶種子油、ココナツオイル、ローズヒップ果実油、ダマスクローズオイル、ブラジルナッツ種子油、ドラムスティック種子油、グレープフルーツ種子油、ダイズ油、バニラ果実油などが使用され得るが、これらに限定されない。
【0045】
本発明において、前記エステル油は、脂肪酸と脂肪アルコールのエステル化合物であり得る。例えば、前記エステル油としては、ヘキサ脂肪酸(C5-9)ジペンタエリスリチルエステルズ、オクタン酸アルキル(C12-15)、乳酸ミリスチル、エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、リンゴ酸ジアルキル(C12,13)、乳酸ミリスチル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルトリエチルヘキサノイン、ジグリセリルトリイソステアレートなどが使用され得るが、これらに限定されない。
【0046】
本発明において、前記ハイドロカーボン系オイルとしては、流動パラフィン、ワセリン、イソパラフィン類などの石油系オイル;水添ポリデセン、合成スクワラン、ポリブテンなどの合成系オイル;植物性スクワラン、水添スクワランなどの植物系オイルなどが使用され得るが、これらに限定されない。具体的に、例えば、イソヘキサデカン、イソドデカン、ウンデカン、スクワラン(植物性スクワラン)、合成スクワラン、水添ポリデセンα-オレフィンオリゴマ、水添ポリイソブテンなどが使用され得るが、これらに限定されない。
【0047】
望ましくは、前記オイルは、ラウリン酸ヘキシル、トリエチルヘキサノインまたはこれらの混合物であり得る。
【0048】
本発明において、前記オイルは、組成物の総重量に対して5~55重量%、望ましくは10~50重量%、より望ましくは15~40重量%、さらに望ましくは25~40重量%含まれ得る。
【0049】
本発明の一態様において、本発明による化粧料組成物は、中和剤を実質的に含まないことが望ましい。
【0050】
本発明において、本発明による化粧料組成物は、通常の化粧品に使用可能な全ての種類の添加剤、例えば、防腐剤、香料、顔料、粉体、増粘剤、不透明化剤、結合剤、粘度調節剤、着色剤、着香剤、被膜形成剤などをさらに含み得る。このような添加剤は、商業的に容易に購入して使用可能である。
【0051】
本発明において、本発明による固相の化粧料組成物は、使用感を改善するために、粉体(パウダー)を含み得る。前記粉体としては、シリカ、タルク、PMMA(polymethylmethacrylate;ポリメチルメタクリレート)パウダー、ポリメチルシルセスキオキサンなどが使用され得るが、これらに限定されない。望ましくは、前記粉体は、ポリメチルシルセスキオキサンである。
【0052】
本発明の他の態様において、本発明による組成物は、組成物の総重量に対して、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、オクトクリレン、サリチル酸エチルヘキシル、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、エチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、またはこれらの混合物である紫外線遮断剤10~40重量%(望ましくは、15~35重量%、より望ましくは18~30重量%);ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、べヘン酸またはこれらの混合物である脂肪酸5~40重量%(望ましくは、10~30重量%);ポリエチレン、エチレン/プロピレンコポリマー、合成ワックスまたはこれらの混合物であるワックス5~40重量%(望ましくは6~30重量%、より望ましくは12~25重量%);トリエチルヘキサノイン、ラウリン酸ヘキシル、またはこれらの混合物であるオイル5~55重量%(望ましくは10~50重量%、より望ましくは15~40重量%、さらに望ましくは25~40重量%)を含み、固相であり、組成物はpH7では分散せず、pH9~14の水溶液で分散することを特徴とする、紫外線遮断用の化粧料組成物を提供する。
【0053】
本発明において、本発明による組成物は、組成物の総重量に対して5~30重量%(望ましくは7~25重量%、より望ましくは9~22重量%)のポリメチルシルセスキオキサンをさらに含み得る。
【0054】
本発明に記載された全ての成分は、望ましくは、韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパ、日本などの関連法規、規範(例えば、化粧品安全基準などに関する規定(韓国)、化粧品安全技術規範(中国)、衛生規範(中国))などで規定した最大使用値を超過しない。即ち、望ましくは、本発明による化粧料組成物は、各国の関連法規、規範で許容される含量限度で本発明による成分を含む。
【発明の効果】
【0055】
本発明は、耐水性と洗浄性が共に優秀であり、紫外線を効果的に遮断可能な固相の化粧料組成物を提供する。より詳しくは、本発明の化粧料組成物は、低いpHでは耐水性が優秀であり、皮膚を洗浄するとき、高いpHでは洗浄性が優秀になるように転換される紫外線遮断用の組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】比較例1と実施例14の分散実験結果を示す。
図2】比較例1と実施例1~10の分散実験結果を示す。
図3】実施例11~15の切断硬度の測定結果を示したグラフである。
図4】実施例11~15の融点の測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は、多様な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されて解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0058】
実施例1.脂肪酸の含量による比較例及び実施例の製造
下記表1に示した処方のとおりにスティックタイプの日焼け止めを製造した。
表1に示した処方のとおりに全ての原料を混合して90℃まで加温し、完全に溶けるまでよく混合した後、スティック型容器に入れて常温まで冷却して製造した。
【0059】
【表1】
【0060】
前記表1でポリエチレンワックスとしては、New Phase Technologies社のPERFORMALENE 400TM(商品名)を使用し、合成ワックスとエチレン/プロピレンコポリマーとしては、特定のワックスとエチレン/プロピレンコポリマーが8:2の重量比で含まれるJAPAN NATURAL PRODUCTS社のLIPWAX PZ80-20TM (商品名)を使用し、ポリメチルシルセスキオキサンとしては、N&M TECH社のSESQ-101TM(商品名)を使用した。以下、他の実施例においても同じ原料を使用した。
【0061】
実施例2.脂肪酸の種類による実施例の製造
下記の表2に示した処方のとおりにスティックタイプの日焼け止めを製造した。表2に示した処方のとおり全ての原料を混合して90℃まで加温し、完全に溶けるまでよく混合した後、スティック型容器に入れて常温まで冷却して製造した。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例3.脂肪酸の含量(固相脂肪酸と液相脂肪酸を共に使用した場合を含む)による実施例の製造
下記の表3に示した処方のとおりにスティックタイプの日焼け止めを製造した。表3に示した処方のとおり全ての原料を混合して90℃まで加温し、完全に溶けるまでよく混合して後、スティック型容器に入れて常温まで冷却して製造した。
【0064】
【表3】
【0065】
実験例1.分散度評価(分散実験)
分散実験は、pHが7である通常の精製水とpH10であるトロメタミン水溶液に固形の日焼け止めスティックを分散させて分散程度を観察して行った(図1図2及び表4)。
【0066】
その結果、比較例1の場合には、pH7と10水溶液のいずれにも分散されなかったが、実施例の場合には、全てが分散することを確認することができた。ワックスに対して脂肪酸の含量が高い場合、特に分散度が優秀であった。
【0067】
【表4】
×:全然分散せず、透明な水が観察される。
△:少し分散して水が若干濁っている。
○:分散して水が濁っている。
◎:分散して水が濁っており、泡層ができた。
【0068】
実験例2.耐水性評価
前記表1の処方のとおりに製造した日焼け止めスティックに対して耐水性実験を行った。日焼け止めスティックを1.3mg/cmの厚さでPMMAプレートに塗布した後、15分以上乾燥した。乾燥したPMMAプレートの透過率(Transmittance)を分光光度計を用いて測定した。透過率は、PMMAプレートの位置が異なる3個所で290~400nm領域の波長に対して1nm毎に測定した。耐水性評価のために丸い形態のステンレススチール容器に水道水を適切に満たし、PMMAプレートが水に完全に浸漬されるように固定した。ディスパーを用いて3000rpmで撹拌しながら30分間放置した後、PMMAプレートを取り出して30分以上乾燥した。完全に乾燥されたPMMAプレートに対し、分光光度計を用いて290~400nm波長領域の透過率を測定した。浸水前/後に測定された透過率は、下記の式によってインビトロ(in-vitro)SPF数値に変換して比較した。耐水性比は、浸水後SPFを浸水前SPFで割って計算した。その結果を下記の表5に示した。
【0069】
【数1】
【0070】
Eλ:紅斑作用スペクトル
Sλ:分光放射照度(W/m/nm)
Tλ:透過率
【0071】
その結果、脂肪酸を含む実施例1~10までの日焼け止めスティックが脂肪酸を含まない日焼け止めスティック(比較例1)よりも耐水性比がさらに優秀であることを確認した。これは、脂肪酸がpHが中性である水には反応せず、疎水性を示すため、日焼け止めスティックの耐水性に影響を及ぼさず、かえって水中に含まれている微量の二街イオンと反応して不溶性沈殿物を生成して耐水性がより優秀になり、不溶性沈殿物の散乱効果によって浸水後のSPFがさらに高くなる効果を奏した。
【0072】
【表5】
【0073】
実験例3.洗浄力評価
前記表1の処方のとおりに製造した日焼け止めスティックに対して洗浄力評価を行った。各日焼け止めスティックをPMMAプレートに1.3mg/cmの厚さで塗布した後、分光光度計を用いて290~400nm領域の透過率を測定した。透過率はPMMAプレートの位置が異なる三ヶ所で測定された。その後、洗顔フォーム20%分散液0.2gをPMMAプレートに載せて電動クレンザーを用いて20秒間満遍なく洗浄した。ぬるま湯でよく濯いでから30分以上完全に乾燥した後、さらに分光光度計で透過率を測定した。洗浄率は、下記の式によって計算された。この際、対照群プレートよりも紫外線を多く透過する値は対照群プレートの値で代替し、洗浄率が100%であると仮定した。その結果を下記の表6に示した。
【0074】
【数2】
【0075】
実施例1~10は、比較例1よりも高い洗浄率を示した。これは、脂肪酸がpHの高い石鹸水と接触したとき、けん化反応が起こって両方の性質を有するためである。脂肪酸は、界面活性剤として作用するだけでなく、けん化反応によって日焼け止めの油膜から離脱しながら油膜が洗われやすくなるように手伝う役割を果たす。
【0076】
【表6】
【0077】
実験例4.硬度及び融点と高温における長期安定性実験
ワックスと共に固相脂肪酸を高含量処方する場合には、硬度低下及び融点低下のように安定性に影響を与え得る。したがって、高含量の脂肪酸を固形のための処方に使用する場合には注意が必要である。これは、固相の脂肪酸が結晶形成に共に参与することで結晶構造に影響を及ぼすためであると予想されるが、 本発明は、このような理論的機転に限定されない。
【0078】
実験例4-1.切断硬度測定
切断硬度を測定して図3に結果を示した。切断硬度を測定するために各見本を直径約2.5cmの円筒状に製造した。硬度計を用いて1.5cmの深さで2cm/分の速度でピアノ線が取り付けられたアップリケータ#30を用いて測定した。
【0079】
その結果、常温で液相であるイソステアリン酸を使用した実施例14の硬度が最も高かった。これは、固相の脂肪酸はワックスの結晶構造に影響を及ぼした一方、液相の脂肪酸は結晶構造に影響を及ぼさなかったためであると予想されるが、本発明は、このような理論的機転に限定されない。
【0080】
実験例4-2.融点測定
DSCを用いて脂肪酸の種類による融点を観察した。DSCは、30℃から95℃まで温度を分当たり10℃ずつ増加させながら観察した。図4に融点測定結果を示した。
【0081】
測定結果、固相の脂肪酸を使用する場合には、脂肪酸固有の融点の影響によって固形剤形の融点を低めることに示された。しかし、液相の脂肪酸を使用する場合には融点が低くなる現象が現れなかった。これは、固相の脂肪酸は結晶形成に参与して結晶構造に影響を及ぼす一方、液相の脂肪酸は、結晶形成に参与しないことから結晶構造に影響を及ぼさなかったためであると予想されるが、本発明は、このような理論的機転に限定されない。
【0082】
実験例4-3.高温における長期安定性実験
製造した日焼け止めスティックを用いて安定性テストを行った。下記の表7及び表8に実験結果を示した。
【0083】
実験結果、低い融点を有する実施例11、12は、高温で本来の硬度が維持できず、一ヶ月以上の長期間の高温条件下にあったとき、硬度が低下する傾向を示した。
【0084】
発汗(Sweating)現象は、固形のオイルワックスゲル剤形において重要な安定性の要素である。固相の脂肪酸を高含量使用した場合、発汗現象を示したが、液相の脂肪酸を使用した場合には、発汗現象が観察されなかった。
【0085】
【表7】
〇:安定性が優秀である。
△:中間程度の安定性を示す。
×:安定性が劣る。
【0086】
固相の脂肪酸と液相の脂肪酸を共に使用した場合には、実施例16~19のように液相の脂肪酸の含量が固相の脂肪酸の含量よりも低い場合には発汗現象が示されたが、実施例20~22のように液相の脂肪酸の含量がより多い場合には、発汗現象が改善されることを確認することができた。また、比較例2、3のように固相の脂肪酸を含むとしてもワックスを含まないか、またはワックスの含量が低い場合には、スティックタイプの日焼け止めとしては脆いため固相の化粧品として適合しておらず、高温における経時安定性がよくなかった。
【0087】
【表8】
〇:安定性が優秀である。
△:中間程度の安定性を示す。
×:安定性が劣る。
【0088】
実験例5.耐水性及び洗浄力の評価
前記表2に示した含量のとおりにスティックタイプの日焼け止めを前述した方法によって製造して評価した。これらの耐水性評価と洗浄性評価を下記の表9に示した。評価結果、全べての種類の脂肪酸に対して高い耐水性比と洗浄率を示した。
【0089】
【表9】
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】