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特表2023-529718高純度の直鎖メルカプタンおよび硫化物組成物の連続光化学生産
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】高純度の直鎖メルカプタンおよび硫化物組成物の連続光化学生産
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/04 20060101AFI20230704BHJP
   C07C 319/28 20060101ALI20230704BHJP
   C07C 321/04 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C07C319/04
C07C319/28
C07C321/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576223
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 US2021035814
(87)【国際公開番号】W WO2021252273
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】16/897,387
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フィリップ・アール・ショーヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・イー・ローダン
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア・ウィン-キー・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ビジャイ・アール・スリニヴァス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ポッリ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC63
4H006AD11
4H006AD17
4H006BD51
4H006BD82
4H006BD84
4H006TA04
(57)【要約】
高純度の直鎖メルカプタンおよび硫化物含有組成物の連続光化学生産。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化水素とオレフィンから高純度の生成物チオールを生成する方法であって、前記方法は:
前記硫化水素と前記オレフィンを反応器システムに供給する工程であって、前記反応器システムは:
前記生成物チオール、未反応の前記硫化水素、未反応の前記オレフィンおよび他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成される、工程と;
前記反応器流出流の第1部分を前記反応器システムに再循環させる工程と;
前記反応器流出流の第2部分をフラッシュ気化器に供給する工程であって、前記フラッシュ気化器は:
未反応の前記硫化水素の少なくとも一部を含む硫化水素再循環流と、前記生成物チオール、未反応の前記オレフィンおよび前記他の成分を含む粗チオール流とを生成するように構成される、工程と;
前記硫化水素再循環流を前記反応器システムに供給する工程と;
前記粗チオール流を粗チオール分離システムに供給する工程であって、前記粗チオール分離システムは:
未反応の前記オレフィンの少なくとも一部を前記粗チオール流から分離して:
未反応の前記オレフィンを含むオレフィン再循環流と、前記他の成分の第1部分を含む第1副生成物流と、前記生成物チオールおよび前記他の成分の第2部分を含む粗チオール生成物流と、を生成するように構成される、工程と;
前記オレフィン再循環流を前記反応器システムに供給する工程と;
前記粗チオール生成物流を生成物チオール精製ユニットに供給する工程であって、前記生成物チオール精製ユニットは:
少なくとも90重量パーセントの前記生成物チオールを含む精製生成物チオールを含むチオール生成物流と、前記他の成分の前記第2部分を含む第2副生成物流とを生成するように構成される、工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記オレフィンが、C4~C18の直鎖アルファオレフィンの直鎖炭化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オレフィンがC12の直鎖アルファオレフィンの直鎖炭化水素を含み、前記生成物チオールがn-ドデシルメルカプタンと、1000ppm重量未満のテトラデシルメルカプタンと、1000ppm未満の硫化物とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応器システムに再循環される前記反応器流出流の前記第1部分の量が、前記反応器システム中の前記生成物チオールの20重量%~60重量%の量を維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粗チオール分離システムは、オレフィン分離ユニットと2次分離ユニットとを含み、
前記粗チオール流が前記オレフィン分離ユニットに供給され、
前記オレフィン分離ユニットは:
前記オレフィン再循環流と2次流とを生成し;
前記2次流を前記2次分離ユニットに供給するように構成され、
前記2次分離ユニットは:
前記2次流を分離して、前記第1副生成物流と前記粗チオール生成物流とを生成するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記他の成分の前記第2部分を含む前記第2副生成物流が硫化物を含み、前記第2副生成物流が硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットに供給され、前記硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは:
前記硫化物をオレフィンとチオールとに変換し;
前記硫化物を含む第3副生成物流を生成し;
当該オレフィンとチオールとを前記粗チオール分離システムに供給するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粗チオール分離システムが、オレフィン分離ユニットと粗チオール分離ユニットとを含み、
前記粗チオール流は、前記粗チオール分離ユニットに供給され、前記粗チオール分離ユニットは:
前記粗チオール生成物流とオレフィン流とを生成し;
前記オレフィン流を前記オレフィン分離ユニットに供給するように構成され;
前記オレフィン分離ユニットは:
前記オレフィン流を分離して、前記第1副生成物流と前記オレフィン再循環流とを生成するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応器システムが、反応器バンクと連通する吸収ユニットを含み、前記吸収ユニットは:
前記硫化水素と前記オレフィンと前記反応器流出流の前記第1再循環部分とを受け入れ、
前記オレフィン中に溶解した前記硫化水素の少なくとも一部を含む液体反応器バンク供給流と、前記反応器流出流の前記第1再循環部分とを形成し、
前記液体反応器バンク供給流を前記反応器バンクに供給するように構成され;
前記反応器バンクは:
前記反応器流出流の前記第1再循環部分と前記液体反応器バンク供給流とを受け入れ、
前記生成物チオールと未反応の硫化水素と未反応のオレフィンと他の成分とを含む前記反応器流出流を形成するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記反応器流出流が20重量%~70重量%の前記生成物チオールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器流出流の前記第1部分が、全反応器流出流の少なくとも70重量パーセントを構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器システム中での直鎖アルファオレフィンの前記生成物チオールへの転化が50重量パーセント以下であり、前記反応器中の硫化物の量が10重量パーセント未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記反応器システムは、さらに波長が100nm~600nmである電磁放射を使用して、前記硫化水素と前記オレフィンとから前記生成物チオールを形成するように構成され、前記反応器流出流は、アルキルボラン、ホスファイト、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾフェノンおよびその誘導体、チオベンゾフェノン、キサンテン化合物、並びに、それらの混合物、からなる群より選択される5重量パーセント未満の促進剤化合物、および/または5重量パーセント未満の開始剤化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記精製生成物チオールが5重量ppm未満のリンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記生成物チオール精製ユニットが、構造化充填物を含む少なくとも1つの蒸留塔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
硫化水素とオレフィンから高純度の生成物チオールを生成するための装置であって、前記装置は:
前記硫化水素と前記オレフィンを受け入れ、前記生成物チオールと未反応の硫化水素と未反応のオレフィンと他の成分とを含む反応器流出流を生成するように構成された反応器システムであって、前記反応器流出流の第1部分を前記反応器システムに戻り再循環するようにさらに構成される反応器システムと;
前記反応器システムと連通するフラッシュ気化器であって、前記フラッシュ気化器は、前記反応器流出流の第2部分を受け入れ、未反応の前記硫化水素の少なくとも一部を含む硫化水素再循環流と、前記生成物チオール、未反応の前記オレフィンおよび前記他の成分を含む粗チオール流とを生成するように構成され、前記フラッシュ気化器は、前記硫化水素再循環流を前記反応器システムに供給するように構成される、フラッシュ気化器と;
前記フラッシュ気化器および前記反応器システムと連通する粗チオール分離システムであって、前記粗チオール分離システムは:前記粗チオール流を受け入れるように構成され、前記粗チオール分離システムは:
前記粗チオール流から未反応の前記オレフィンの少なくとも一部を分離して、未反応の前記オレフィンを含むオレフィン再循環流と、前記他の成分の第1部分を含む第1副生成物流と、前記生成物チオールおよび前記他の成分の第2部分を含む粗チオール生成物流とを生成し;前記オレフィン再循環流を前記反応器システムに供給するように構成される粗チオール分離システムと;
前記粗チオール分離システムと連通する生成物チオール精製ユニットであって、前記生成物チオール精製ユニットは:
前記粗チオール生成物流を受け入れ;
少なくとも98.5重量パーセントの前記生成物チオールを含む精製生成物チオールを含む生成物チオール流と、前記他の成分の前記第2部分を含む第2副生成物流とを生成するように構成される生成物チオール精製ユニットと、
を含む、装置。
【請求項16】
前記粗チオール分離システムが、2次分離ユニットと連通するオレフィン分離ユニットを含み、前記オレフィン分離ユニットは、前記フラッシュ気化器と連通し、且つ、
前記粗チオール流を受け入れ;
前記オレフィン再循環流と2次流を生成し;
前記2次流を前記2次分離ユニットに供給するように構成され;
前記2次分離ユニットは、前記生成物チオール精製ユニットと連通し、且つ:
前記2次流を受け入れ;
前記2次流を分離して、前記第1副生成物流と前記粗チオール生成物流とを生成するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記チオール生成物精製ユニットおよび前記粗チオール分離ユニットと連通する硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットをさらに含み、
前記硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは:
硫化物を含む前記他の成分の前記第2部分を含む前記第2副生成物流を受け入れ;
前記硫化物をオレフィンとチオールに変換し;
前記硫化物を含む第3副生成物流を生成し;
前記オレフィンとチオールを前記粗チオール分離システムに供給するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記粗チオール分離システムが、粗チオール分離ユニットと連通するオレフィン分離ユニットを含み、前記粗チオール分離ユニットが、前記フラッシュ気化器および前記生成物チオール精製ユニットと連通し、
前記粗チオール分離ユニットは:
前記粗流を受け入れ;
前記粗生成物チオール流およびオレフィン流を生成し;
前記オレフィン流を前記オレフィン分離ユニットに供給するように構成され;
前記オレフィン分離ユニットは:
前記オレフィン流を分離し;
前記第1副生成物流と前記オレフィン再循環流とを生成するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記反応器システムが、反応器バンクと連通する吸収ユニットを備え、前記吸収ユニットは:
前記硫化水素と前記オレフィンとを受け入れ、
前記オレフィン中に溶解した前記硫化水素の少なくとも一部と、前記反応器流出流の前記第1再循環部分とを含む液体反応器バンク供給流を形成し、
前記液体反応器バンク供給流を前記反応器バンクに供給するように構成され;
前記反応器バンクは:
前記反応器流出流の前記第1再循環部分と前記液体反応器バンク供給流とを受け入れ、
前記生成物チオール、未反応の硫化水素、未反応のオレフィンおよび他の成分を含む前記反応器流出流を形成するように構成される、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
前記生成物チオール精製ユニットが、構造化充填物を含む少なくとも1つの蒸留塔を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項21】
硫化水素またはR1SH、および式Cx(2x)のオレフィンから高純度の生成物硫化物を生成する方法であって、前記方法は:
前記硫化水素または前記R1SH、および前記式Cx(2x)のオレフィンを反応器システムに供給する工程であって、前記反応器システムは:
前記生成物硫化物、未反応の硫化水素または未反応の式Cx(2x)のオレフィン、未反応のR1SH、および他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成される、工程と;
前記反応器流出流の第1部分を前記反応器システムに再循環させる工程と;
前記反応器流出流の第2部分を硫化物分離システムに供給する工程であって、前記硫化物分離システムは:
未反応の前記硫化水素、未反応の前記式Cx(2x)のオレフィン、未反応の前記R1SH、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流と、高純度の前記生成物硫化物を含む生成物流とを生成するように構成される、工程と、
を含む方法。
【請求項22】
前記硫化物分離システムが、前記反応器システムと連通する第1分離ユニットと、前記第1分離ユニットと連通する生成物硫化物精製システムとを含み、
前記第1分離ユニットは:
前記反応器システムからの前記反応器流出流を受け入れ;
未反応の前記硫化水素または未反応の前記R1SH若しくは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの少なくとも一部と、他の成分とを含む少なくとも1つの前記再循環流の第1部分、および、前記生成物硫化物を含む粗硫化物流を生成し;
前記生成物硫化物を含む前記粗硫化物流を前記生成物硫化物精製システムに供給するように構成され、
前記生成物硫化物精製システムは:
未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンまたは未反応の前記R1SHの他方の少なくとも一部を含む少なくとも1つの前記再循環流の第2部分と、前記精製生成物硫化物を含む硫化物生成物流とを生成するように構成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記反応器システムおよび前記硫化物分離システムと連通するフラッシュ気化器を含み、前記フラッシュ気化器は:
前記反応器流出物の前記第2部分を受け入れ;
未反応の前記硫化水素または未反応のR1SH若しくは未反応の式Cx(2x)のオレフィンの少なくとも一部を含む軽質再循環流、および、前記生成物硫化物と、未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの他方と、前記他の成分とを含む粗硫化物流を生成し;
前記粗硫化物流を前記硫化物分離システムに供給するように構成される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
硫化水素が前記反応器システムに供給され、高純度の前記硫化物がS(Cx(2x+1)2を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
1SHが前記反応器システムに供給され、高純度の前記硫化物がS(Cx(2x+1))(R1)を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
1-SHチオールのR1が、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキシルデシル、n-ヘプタデシルまたはn-オクタデシルである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記式Cx(2x)のオレフィンについて、xが2~18の整数である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
硫化水素またはR1SH、および式Cx(2x)のオレフィンから高純度の生成物硫化物を生成するための装置であって、前記装置は:
反応器システムであって、前記反応器システムは:
前記硫化水素または前記R1SH、および前記式Cx(2x)のオレフィンを受け入れ、前記生成物硫化物、未反応の前記硫化水素または未反応の前記式Cx(2x)のオレフィン、未反応の前記R1SH、および他の成分を含む反応器流出流を形成し;
前記反応器流出流の第1部分を前記反応器システムに再循環させるように構成される、反応器システムと;
硫化物分離システムであって、前記硫化物分離システムが前記反応器システムと連通し、前記硫化物分離システムは:
前記反応器システムからの前記反応器流出流の第2部分を受け入れ;
未反応の前記硫化水素、未反応の前記式Cx(2x)のオレフィン、未反応の前記R1SH、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流と、高純度の前記生成物硫化物を含む生成物流とを生成する、ように構成される、硫化物分離システムと、
を含む、装置。
【請求項29】
前記硫化物分離システムが、前記反応器システムと連通する第1分離ユニットと、前記第1分離ユニットと連通する生成物硫化物精製システムとを含み、
前記第1分離ユニットは:
前記反応器システムからの前記反応器流出流を受け入れ;
未反応の前記硫化水素と、未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンと、前記他の成分との少なくとも一部を含む少なくとも1つの前記再循環流の第1部分、および、前記生成物硫化物と、未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの他方とを含む粗硫化物流を生成し;
前記生成物硫化物を含む前記粗硫化物流を前記生成物硫化物精製システムに供給するように構成され;
前記生成物硫化物精製システムは:
未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの他方の少なくとも一部を含む少なくとも1つの前記再循環流の第2部分と、前記精製生成物硫化物を含む硫化物生成物流とを生成するように構成される、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記反応器システムおよび前記硫化物分離システムと連通するフラッシュ気化器を含み、前記フラッシュ気化器が:
前記反応器流出物の前記第2部分を受け入れ;
未反応の前記硫化水素または未反応の前記R1SHもしくは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの少なくとも一部を含む軽質再循環流、および、前記生成物硫化物と、未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの他方と、前記他の成分とを含む粗硫化物流を生成し;
前記粗硫化物流を前記硫化物分離システムに供給するように構成される、請求項28に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度の直鎖メルカプタンおよび硫化物含有組成物の連続光化学生産に関する。
【背景技術】
【0002】
メルカプタンは、生物腐食防止剤、抗真菌剤、重合における連鎖移動剤、金属表面のコーティング剤、ゴムの加硫促進剤など、幅広い技術分野で有用である。硫化物は有機合成における重要な中間体であり、香水や化粧品などの多くのファインケミカルの重要な成分である。これらの用途のいくつかでは、メルカプタンまたは硫化物が高純度であることが重要である。
【0003】
高純度のメルカプタンおよび硫化物の大規模な調製を、特に様々な反応促進剤または光開始剤の存在に頼ることなく、改善する必要性が常にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、本明細書に記載の高純度のメルカプタンおよび硫化物を提供するというこれらの目的を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特に、本発明は、硫化水素とオレフィンから高純度の生成物チオールを生成する方法を提供する。高純度のチオールを生成する方法は、以下の工程を含む。硫化水素とオレフィンを反応器システムに供給する工程。反応器システムは、生成物チオール、未反応の硫化水素、未反応のオレフィンおよび他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成されている。反応器流出流の第1部分を反応器システムに再循環する工程。反応器流出流の第2部分をフラッシュ気化器に供給する工程。フラッシュ気化器は、未反応の硫化水素の少なくとも一部を含む硫化水素再循環流、ならびに生成物チオール、未反応のオレフィンおよび他の成分を含む粗チオール流を生成するように構成される。硫化水素再循環流を反応器システムに供給する工程。粗チオール流を粗チオール分離システムに供給する工程。粗チオール分離システムは、未反応のオレフィンの少なくとも一部を粗チオール流から分離するように構成されている。分離工程は、未反応のオレフィンを含むオレフィン再循環流、他の成分の第1部分を含む第1副生成物流、および生成物チオールと他の成分の第2部分とを含む粗チオール生成物流を生成する。オレフィン再循環流を反応器システムに戻し供給する工程。粗チオール生成物流を生成物チオール精製ユニットに供給する工程。生成物チオール精製ユニットは、少なくとも90重量パーセントの生成物チオールを含む精製生成物チオールを含むチオール生成物流と、他の成分の第2部分を含む第2副生成物流とを生成するように構成される。
【0006】
硫化水素とオレフィンから高純度の生成物チオールを生成するための装置が提供される。本装置は、硫化水素とオレフィンを受け入れ、反応器流出流を生成するように構成された反応器システムを含む。反応器流出流は、生成物チオールと未反応の硫化水素と未反応のオレフィンと他の成分とを含む。反応器システムは、さらに、反応器流出流の第1部分を反応器システムに戻り再循環するように構成されている。本装置は、また、反応器システムと連通するフラッシュ気化器を含む。フラッシュ気化器は、反応器流出流の第2部分を受け入れ、未反応の硫化水素の少なくとも一部を含む硫化水素再循環流を生成するように構成されている。フラッシュ気化器は、また、生成物チオール、未反応のオレフィンおよび他の成分を含む粗チオール流を生成する。フラッシュ気化器は、硫化水素再循環流を反応器システムへ戻し供給するように構成されている。精製チオールを生成するための本装置は、また、フラッシュ気化器および反応器システムと連通する粗チオール分離システムを含む。粗チオール分離システムは、粗チオール流を受け入れるように構成されている。粗チオール分離システムは、粗チオール流から未反応のオレフィンの少なくとも一部を分離して、未反応のオレフィンを含むオレフィン再循環流と、他の成分の第1部分を含む第1副生成物流と、生成物チオールおよび他の成分の第2部分を含む粗チオール生成物流とを生成するように構成されている。粗チオール分離システムは、また、オレフィン再循環流を反応器システムに供給するように構成されている。精製チオールを生成するための本装置は、粗チオール分離システムと連通する生成物チオール精製ユニットを含む。生成物チオール精製ユニットは、粗チオール生成物流を受け入れ、精製生成物チオールを含む生成物チオール流と、他の成分の第2部分を含む第2副生成物流とを生成するように構成される。精製生成物チオール流は、少なくとも98.5重量パーセントの生成物チオールを含む。
【0007】
硫化水素またはR1SH、および式Cx(2x)のオレフィンから高純度の生成物硫化物を生成する方法が提供される。高純度の生成物硫化物を生成する本方法は以下の工程を含む。硫化水素またはR1SH、および式Cx(2x)のオレフィンを反応器システムに供給する工程。反応器システムは、生成物硫化物、未反応の硫化水素または未反応の式Cx(2x)のオレフィン、未反応のR1SH、および他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成されている。反応器流出流の第1部分を反応器システムに再循環させる工程。反応器流出流の第2部分を硫化物分離システムに供給する工程。硫化物分離システムは、未反応の硫化水素、未反応の式Cx(2x)のオレフィン、未反応のR1SH、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流を生成し、また、高純度の生成物硫化物を含む生成物流を生成するように構成される。
【0008】
硫化水素またはR1SH、および式Cx(2x)のオレフィンから高純度の生成物硫化物を生成するための装置が提供される。高純度の硫化物を生成するための本装置は反応器システムを含む。本反応器システムは、硫化水素またはR1SH、および式Cx(2x)のオレフィンを受け入れ、反応器流出流を形成するように構成されている。反応器流出流は、生成物硫化物、未反応の硫化水素または未反応の式Cx(2x)のオレフィン、未反応のR1SH、および他の成分を含む。反応器システムは、また、反応器流出流の第1部分を反応器システムに戻し再循環させるように構成されている。精製硫化物を生成するための本装置は、反応器システムと連通する硫化物分離システムを含む。本硫化物分離システムは、反応器システムからの反応器流出流の第2部分を受け入れ、また、未反応の硫化水素、未反応の式Cx(2x)のオレフィン、未反応のR1SH、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流と、高純度の生成物硫化物を含む生成物流とを生成する、ように構成されている。
【0009】
以下の図は、本発明の様々な特定の実施形態を単に例示するものであり、本明細書に記載される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態による、高純度の直鎖チオールを生成するための例示的な方法を示す。
図2図2は、本発明の別の実施形態による、高純度の直鎖チオールを生成するための例示的な方法を示す。
図3図3は、本発明のさらに別の実施形態による、高純度の直鎖チオールを生成するための例示的な方法を示す。
図4図4は、本発明のさらに別の実施形態による、高純度の直鎖チオールを生成するための例示的な方法を示す。
図5図5は、本発明の一実施形態による、高純度の硫化物を生成するための例示的な方法を示す。
図6図6は、本発明の別の実施形態による、高純度の硫化物を生成するための例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、高純度の第1級チオールを生成する方法の第1実施形態を示す。図1に示すように、硫化水素とアルファオレフィンを反応システムに供給する。オレフィンは好ましくは直鎖アルファC4-C18オレフィンであり、すなわち、二重結合は直鎖炭化水素の末端にあり、好ましくはn-ドデカ-1-エンである。反応システムは、吸収器および少なくとも1つの反応器を含むことができる。吸収器は、ガス状硫化水素を液体オレフィンに溶解し、次にオレフィンに溶解した硫化水素を、図1に示すように反応器、又はバンク若しくは複数の反応器に供給するように構成されている。反応器システムは、生成物チオール、未反応の硫化水素、未反応のオレフィンおよび他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成されている。他の成分の非限定的な例は、第2級チオール、未反応のオレフィン、および入ってくるオレフィン供給流からの不純物、ならびに硫化物である。不純物には、例えば、分岐第1級チオール(ビニリデンメルカプタン、2-エチル1-デシルメルカプタン、2-ブチル1-オクチルメルカプタン)、硫化物(例えば、(C1225)S(C1225)、(C817)S(C817));二硫化物(例:(C1225)SS(C1225)、(C817)SS(C817))、第2級チオール(例:2-オクタンチオール、2-ドデカンチオール)、飽和炭化水素またはパラフィン(例:オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン)および内部オレフィンが含まれ得る。
【0012】
反応器流出流の一部は、すぐに反応器システムに再循環される。一実施形態では、反応器再循環流は、吸収器と連通する再循環タンクを介して吸収器に戻される。次いで、反応器流出物の残りの部分をフラッシュ蒸発器に供給する。フラッシュ蒸発器は、反応器流出物から硫化水素をフラッシュオフして、硫化水素再循環流および粗チオール流を生成するように構成されている。硫化水素再循環流は、反応器システムに再循環される。一実施形態において、硫化水素再循環流は吸収器に供給されてオレフィンに溶解される。次いで粗チオール流は粗チオール分離システムに供給される。図1に示すように、粗分離システムは、一連の分離ユニットを含むことができ、それらは図1のオレフィン分離ユニットおよび2次分離ユニットである。これらの分離ユニットは蒸留塔であり、図1にラベルを付けられるように「タワー」とも呼ばれる。オレフィン分離ユニットは、塔からオーバーヘッドとしてオレフィン再循環流を生成し、塔底から2次流を生成するように構成されている。2次流は、第2級チオール、すなわち、-SH基が炭化水素基の末端位置にない望ましくないチオール成分を含むことがある。オレフィン再循環流は未反応のオレフィンを含み、反応器システムに戻される。図1に示すように、パージ流をオレフィン再循環流から取り出すことができる。パージ流は、例えば、不活性物質および望ましくない重質オレフィンを除去することを目的としている。2次流は2次分離ユニットに供給される。この実施形態における2次流は、所望の生成物チオールおよび第2級チオール、すなわち-SH基が末端ではないものを含む。2次分離ユニットは、2次流を分離して、望ましくない第2級チオールを含む第1副生成物流をオーバーヘッドとして生成し、粗チオール生成物流を底部として生成するように構成される。この粗生成物チオール流は、生成物チオール精製ユニットに供給される。生成物チオール精製ユニットは、蒸留塔(図1では「生成物タワー」と表示)であり、精製された生成物チオールであるチオール生成物流をオーバーヘッドとして生成するように構成されている。生成物チオール精製ユニットは、硫化物などの他の副生成物成分を含む第2副生成物流も塔底として生成する。この第2副生成物流は、硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットに供給され得る。硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは、第2副生成物流中のチオールを回収し、硫化物の少なくとも一部をオレフィンおよびチオールに変換し、さらに残りの硫化物および他の不純物を含む第3副生成物流を生成するように構成されている。メルカプタン(チオール)およびオレフィンへの硫化物のスルホ加水分解(Sulfhydrolysis)はよく知られており、高温で酸触媒(例えば、ゼオライト)によって行うことができる。完全な詳細は、米国特許第4313006号および米国特許第4396778号に記載されており、すべての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。このようにして回収されたオレフィンおよびチオールは、次に、粗チオール分離システムに戻される。
【0013】
図2は、図1に示したのと同じ方法を示しているが、この実施形態では、硫化物クラッキングおよびストリッピング装置は使用されない。
【0014】
図3は、高純度のチオールを生成する方法の別の例示的な実施形態を示す。この実施形態において、反応器システムおよび生成物チオール精製システムは、図1に示されるものと同じである。しかしながら、粗チオール分離システムは、図1に示されるものとは異なる配置を有する。この実施形態では、粗チオール分離システムは、オレフィン分離ユニットおよび粗チオール分離ユニットを含む。これら2つの分離ユニットは、本実施形態では蒸留塔(図3ではタワーとも呼ばれる)である。この実施形態に示されるように、フラッシュ気化器から出てくる粗チオール流は、粗チオール分離ユニットに供給される。粗チオール分離ユニットは、塔底から粗チオール生成物流を生成し、オレフィンおよび第1副生成物流を上部からオーバーヘッドとして生成するように構成されている。粗チオール分離ユニットから出るオーバーヘッドオレフィンおよび第1副生成物流は、オレフィン分離ユニットの塔底に供給される。オレフィン分離ユニットは、オレフィン流を分離して副生成物流を塔底として生成し、オレフィン再循環流をオーバーヘッドとして生成するように構成されている。オレフィン再循環流は、反応器システムに戻される。この実施形態に示されるように、粗チオール分離ユニットの塔底から出てくる粗チオール生成物流は、図1と同じ配置である生成物チオール精製ユニット(蒸留塔、図3では「タワー」とも呼ばれる)の塔底に供給される。生成物チオール精製ユニットは、純粋な生成物チオールをオーバーヘッドとして分離し、第2副生成物を塔底で分離するように構成されている。この実施形態では、生成物精製ユニットから塔底をさらに分離するための硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは使用されないが、別の実施形態では利用され得る。
【0015】
図4は、図3に示した実施形態と同様の実施形態を示すが、この実施形態では、図1の実施形態で説明した硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットが利用される。
【0016】
図5は、式Cx(2x)(式中、xは2~18の整数である)のオレフィンと一緒に、硫化水素または構造R1SHを有するチオールの何れから高純度の生成物硫化物を生成するための方法の例示的な実施形態を示す。図5から分かるように、この実施形態の方法は、所望の生成物としてチオールを生成し不純物または副生成物として不要な硫化物を除去するのではないことを除き、図1~4の方法に類似する。反応器システムは、所望の生成物としての硫化物を生成する条件を使用して操作され、反応器システム内で生成される副生成物としてのチオールは除去されるか、または所望の硫化物を生成する更なる反応のために再循環される。硫化水素が式Cx(2x)のオレフィンと共に反応器システムに供給される場合、構造S(Cx(2x+1)2を有する硫化物が生成され、R1SHが式Cx(2x)のオレフィンと共に反応器システムに供給される場合、S(Cx(2x+1))(R1)硫化物が生成される。図5の実施形態に示すように、硫化水素またはR1SHは、式Cx(2x)のオレフィンと共に反応器システムに供給される。前述の実施形態のように、反応器システムは、吸収器と、反応器バンクと呼ばれる少なくとも1つの反応器、または複数の反応器とを含むことができる。本明細書に開示される他の実施形態で説明されるように、吸収器は、ガス状硫化水素または液体R1SHを式Cx(2x)の液体オレフィンに溶解し、次いで式Cx(2x)のオレフィンに溶解した硫化水素またはR1SHを反応器に供給するように構成されている。
【0017】
図5に示されるこの実施形態では、反応器は、生成物硫化物[S(Cx(2x+1)2またはS(Cx(2x+1))(R1)]、未反応の硫化水素または未反応のR1SH、未反応の式Cx(2x)のオレフィン、および他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成されている。これらの他の成分には、未反応のチオールR1SH若しくは未反応の硫化水素、および反応器内で副反応として生成される他の成分、並びに/または供給流中に不純物として含まれるより重いまたはより軽い成分などの他の不純物が含まれ得る。
【0018】
図5に示すように、この反応器流出流の第1部分は、反応器システムに戻り再循環され、また図5に示される実施形態では、吸収器と連通する反応器循環タンクに戻り再循環される。反応器流出流の第2部分は、硫化物分離システムに供給される。硫化物分離システムは、未反応の硫化水素または未反応のR1SH、未反応の式Cx(2x)のオレフィン、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流を生成するように構成されている。硫化物分離システムはまた、高純度の生成物硫化物、[S(Cx(2x+1)2またはS(Cx(2x+1))(R1)]を含む生成物流を生成する。図5に示すように、硫化物分離システムは、図5において「タワー」と呼ばれる蒸留塔であり得る2つの分離ユニットを含む。第1分離ユニットは、反応器システムからの反応器流出流を塔底内に受け入れるように構成された蒸留塔、「タワー」である。第1分離ユニットはまた、オーバーヘッドとして、未反応の硫化水素または未反応のR1SH(どちらが反応器システムに供給されたかによる)および他の軽質沸点成分の少なくとも一部を含む再循環流を生成するように構成されている。第1分離ユニットは、塔底から、生成物硫化物精製システムに供給される生成物硫化物を含む粗硫化物流を生成する。生成物硫化物精製システムは、蒸留塔であってもよく、図5では「生成物タワー」と表示されている。生成物硫化物精製システムの蒸留塔は、未反応の式Cx(2x)のオレフィンおよび第1分離ユニットの塔底にあったより高沸点成分の少なくとも一部を含むオーバーヘッドとしての第2再循環流と、精製された生成物硫化物を含む塔底としての硫化物生成物流と、を生成する。前述のように、精製された生成物硫化物は、硫化水素またはR1SHのどちらが式Cx(2x)のオレフィンとともに反応器システムに供給されるかによって、S(Cx(2x+1)2またはS(Cx(2x+1))(R1)のいずれかとなる。図5の実施形態では、R1SHが反応器システムに供給され、したがって、生成物流はS(Cx(2x+1))(R1)硫化物である。
【0019】
図6は、硫化物を所望の生成物として生成する方法の別の実施形態を示す。この例示的な実施形態では、硫化水素および式Cx(2x)のオレフィンが反応器システムに供給され、したがって、所望の生成物硫化物はS(Cx(2x+1)2である。もちろん、当業者は、R1SHが反応器システムに供給されてもよく、したがって、生成物流が図5のようにR1SR2硫化物であることを理解するであろう。図6に示されるこの例示的な実施形態では、フラッシュ気化器が硫化物分離システムおよび反応器システムと連通している。フラッシュ気化器は、反応器流出物の第2部分、すなわち、反応器システムにすぐに戻り再循環されなかった反応器流出流の部分を受け入れるように構成されている。フラッシュ気化器は、当技術分野で知られているように、反応器流出流の一部の圧力を低下させるおよび/または温度を上げることによって、反応器流出流中の軽質をフラッシュオフし、したがって、未反応のR1SHおよび未反応の式Cx(2x)のオレフィンの相対的な沸点に応じて、未反応の硫化水素または未反応のR1SH若しくは未反応の式Cx(2x)のオレフィンの少なくとも一部を含む軽質再循環流を生成するように構成されている。また、フラッシュ気化器から出てくるものは粗硫化物流である。この粗硫化物流には、未反応のR1SHおよび未反応の式Cx(2x)のオレフィン並びに他の成分(例えば、反応の副生成物などの不純物)の相対的な沸点に応じて、生成物硫化物、未反応の式Cx(2x)のオレフィン、または未反応のR1SHを含む、フラッシュ気化器で除去されなかったより重質(高沸点の)成分がある。この粗硫化物流は、硫化物分離システムに供給される。図6に示すように、硫化物分離は、反応器システムと連通する第1分離ユニット(図6では「タワー」と表示され、蒸留塔である)と、第1分離ユニットと連通する生成物硫化物精製システムとを含む。
【0020】
第1分離ユニットは、反応器システムからの反応器流出流を受け入れるように構成されている。次いで、第1分離ユニットは、再循環流の第1部分をオーバーヘッドとして生成する。再循環流のこの第1部分は、未反応の硫化水素または未反応のR1SH(どちらが反応器システムに供給されたかによる)および他の成分の少なくとも一部を含む。第1分離ユニットの塔底は、生成物硫化物と、第1分離ユニットに供給され、その塔でオーバーヘッドとして除去されなかったより高沸点の成分とを含む粗硫化物流である。生成物硫化物を含むこの粗硫化物流は、生成物硫化物精製システムに供給される。図6に示すように、生成物硫化物精製システムは、蒸留塔(「生成物硫化物タワー」と表示)である。生成物硫化物精製システムは、再循環流の第2部分をオーバーヘッドとして生成するように構成されている。再循環のこの第2部分は、第1分離ユニットからのより高沸点の成分を含むが、その成分は、生成物硫化物精製システムの塔底から除去される生成物硫化物よりも低沸点である。図6に示すように、式Cx(2x)のオレフィンと硫化水素が反応器システムに供給されたので、生成物硫化物はS(Cx(2x+1)2となる。しかしながら、当業者は、代わりにR1SHおよび式Cx(2x)のオレフィンが反応器システムに供給される場合、このプロセススキームを用いてS(Cx(2x+1))(R1)を生成できることを理解するであろう。
【0021】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示またはその適用または使用を限定することを決して意図するものではない。
【0022】
末端オレフィンへの硫化水素の触媒付加による直鎖メルカプタンの合成は、式(1)で表される。
【0023】
【化1】
【0024】
本発明の目的は、2%までの1-テトラデセンおよび他のC14のオレフィンを含む1-ドデセン原料から出発して、不純物として、1000ppm未満のテトラデシルメルカプタンおよび1000ppm未満の硫化物を有する、n-ドデシルメルカプタンを再現可能な基準で生成することである。
【0025】
本発明の例示的な実施形態では、H2Sおよび直鎖アルファオレフィン(新しいおよび再循環流からの両方)は、反応器システムに供給される前に混合される。この混合物は、反応器システムの反応器内にポンプで送り込まれ、UV光に曝される。反応器を通る供給流は、任意の数のバンクまたは管の数の組み合わせを直列または並列のいずれかで通過するように変化させて、方法(プロセス)における転化率を変化させることができる。各管の光は、個別にオンまたはオフにすることができる。
【0026】
ホスフィンベースまたはホスファイトベースの光開始剤または促進剤は、本明細書に開示されている方法では好ましくは使用されない。含まれないホスファイト化合物の非限定的な例は、トリアリールホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトおよびトリブチルホスファイトである。本発明によるチオールを調製するための方法の重要な特徴は、精製されたチオールが、誘導結合プラズマ分析により測定して、15重量ppm未満、例えば10重量ppm未満または5重量ppm未満などのリンを有し得ることである。
【0027】
いくつかの例示的な実施形態によれば、チオール生成物の収率は、反応器に戻り再循環される反応器流出物の量を変更することによって調整することができる。特定の実施形態では、反応器ループに存在する生成物チオール(例えば、n-オクチルメルカプタンまたはn-ドデシルメルカプタン)の全重量を30~40重量パーセントに維持するために、反応器再循環量を調整することができる。生成物チオールの濃度を下げると、式(2)によって方法で生成される不要な硫化物副生成物の量が減少するため、連続プロセスの全体的な選択性に影響する。
【0028】
【化2】
【0029】
所望のチオールを生成する際に、反応器温度またはUV光にあてる滞留時間を増加させるなどの他の手段によって変換を増加させると、望ましくないことに、反応器内での望ましくない硫化物生成の増加につながり得る。
【0030】
本発明の別の目的は、下流の精留(分離)装置が過負荷にならないように、反応器再循環流を利用し蒸留系列内に入る流出物を制限することである。さらなる目的は、大量のH2Sを再圧縮する必要なく反応器再循環流を使用して、反応ゾーン内で高いH2S/アルファオレフィン比(すなわち、3:1、5:1、7:1、10:1より高く、20:1までのモル比)を維持することである。特定の実施形態では、反応器システムを通るシングルパスオレフィン変換は、約40~50%に維持されて、反応器内での硫化物副生成物の形成を制限する。いくつかの実施形態によれば、反応器流出物の大部分(80~90%)は、反応器再循環流を介して吸収器再循環タンクに戻り再循環される。反応器システムの出口における再循環ラインは、反応器流出物の約65重量%または70重量%または75重量%または80重量%または85重量%または90重量%または95重量%が、吸収器と連通している再循環タンクに戻り再循環されることを可能にし、そこで、反応器システムに再び入る前に、新しいオレフィンと再循環されたオレフィンとが混合される。H2Sも反応器流出物再循環流とは別の流れで再循環されるため、新たなH2Sと再循環されたH2Sの両方も吸収器に導入される。
【0031】
例示的な実施形態では、吸収器はそれと連通する再循環タンクを有し、いくつかの実施形態によれば、新たな反応物質および再循環された反応物質は、吸収器、次いで反応器システムに供給される前に、再循環タンクに導入される。通常、吸収器と再循環タンクは高圧に維持される。H2Sは液相(通常、主にオレフィンとチオールの混合物)に吸収される。再循環タンクは、反応器再循環液体、気化器再循環ガス(および一部の液体)、およびオレフィン分離ユニットからの再循環オレフィンを収集し、それを反応器に再循環させる。
【0032】
本発明の一実施形態は、硫化水素と直鎖アルファオレフィンから高純度の直鎖生成物チオールを生成する方法であって、
方法は:
硫化水素とオレフィンを反応器システムに供給する工程であって、反応器システムは:生成物チオール、未反応の硫化水素、未反応のオレフィンおよび他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成される、工程と;
反応器流出流の第1部分を反応器システムに再循環させる工程と;
反応器流出流の第2部分をフラッシュ気化器に供給する工程であって、フラッシュ気化器は:
未反応の硫化水素の少なくとも一部を含む硫化水素再循環流と、生成物チオール、未反応のオレフィンおよび他の成分を含む粗チオール流とを生成するように構成される、工程と;
硫化水素再循環流を反応器システムに供給する工程と;
粗チオール流を粗チオール分離システムに供給する工程であって、粗チオール分離システムは:
未反応のオレフィンの少なくとも一部を粗チオール流から分離して:
未反応のオレフィンを含むオレフィン再循環流と、他の成分の第1部分を含む第1副生成物流と、生成物チオールおよび他の成分の第2部分を含む粗チオール生成物流と、を生成するように構成される、工程と;
オレフィン再循環流を反応器システムに供給する工程と;
粗チオール生成物流を生成物チオール精製ユニットに供給する工程であって、生成物チオール精製ユニットは:
少なくとも98.2重量パーセントの生成物チオールを含む精製生成物チオールを含むチオール生成物流と、他の成分の第2部分の残留生成物チオールを含む第2副生成物流とを生成するように構成される、工程と、
を含む。
【0033】
本方法の一実施形態では、直鎖アルファオレフィンは、C4~C18の直鎖アルファオレフィンを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0034】
本方法の一実施形態では、アルファオレフィンは、C12の直鎖アルファオレフィンを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
【0035】
本方法の一実施形態では、生成物チオールは、n-ドデシルメルカプタンと、1000重量ppm未満のテトラデシルメルカプタンと、1000ppm未満の硫化物とを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。
【0036】
本方法の一実施形態では、反応器システムに再循環される反応器流出流の第1部分の量が、反応器システム中の生成物チオールの20重量%~70重量%の量を維持する。
【0037】
本方法の一実施形態では、粗チオール分離システムは、オレフィン分離ユニットと2次分離ユニットとを含み、
粗チオール流がオレフィン分離ユニットに供給され、
オレフィン分離ユニットは:
オレフィン再循環流と2次流とを生成し;
2次流を2次分離ユニットに供給するように構成され、
2次分離ユニットは:
2次流を分離して、第1副生成物流と粗チオール生成物流とを生成するように構成される。
【0038】
2次流は、粗生成物チオールおよび反応の副生成物を含む。
【0039】
本方法の一実施形態では、他の成分の第2部分を含む第2副生成物流が硫化物を含み、第2副生成物流が硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットに供給され、硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは:
硫化物をオレフィンとチオールとに変換し;
硫化物を含む第3副生成物流を生成し;
当該オレフィンとチオールとを粗チオール分離システムに供給するように構成される。
【0040】
本方法の一実施形態では、粗チオール分離システムが、オレフィン分離ユニットと粗チオール分離ユニットとを含み、ここで、
粗チオール流は、粗チオール分離ユニットに供給され、粗チオール分離ユニットは:
粗チオール生成物流と第1副生成物を含むオレフィン流とを生成し;
第1副生成物を含むオレフィン流をオレフィン分離ユニットに供給するように構成され;
オレフィン分離ユニットは:
第1副生成物を含むオレフィン流を分離して、第1副生成物流とオレフィン再循環流とを生成するように構成される。
【0041】
本方法の一実施形態では、反応器システムが、反応器バンクと連通する吸収ユニットを含み、吸収ユニットは:
硫化水素とオレフィンとを受け入れ、
オレフィン中に溶解した硫化水素の少なくとも一部を含む液体反応器バンク供給流を形成し、
液体反応器バンク供給流を反応器バンクに供給するように構成され;
反応器バンクは:
反応器流出流の第1再循環部分と液体反応器バンク供給流とを受け入れ、
生成物チオールと未反応の硫化水素と未反応のオレフィンと他の成分とを含む反応器流出流を形成するように構成される。
【0042】
オレフィン流は、オレフィン分離ユニットから第1副生成物流として除去され得る反応の副生成物を含有し得る。
【0043】
本方法の一実施形態では、反応器流出流は、20重量%~60重量%の生成物チオールを含む。
【0044】
本方法の一実施形態では、反応器流出流は、20重量%~55重量%の生成物チオールを含む。
【0045】
本方法の一実施形態では、反応器流出流は、20重量%~45重量%の生成物チオールを含む。
【0046】
本方法の一実施形態では、反応器システムはさらに:
電磁放射を使用して硫化水素とオレフィンから生成物チオールを形成するように構成され、反応器流出流は、オレフィンの重量に基づいて5重量%未満の促進剤化合物、および/または5重量%未満の開始剤化合物を含む。
【0047】
本方法の一実施形態では、電磁放射の波長は、100nm~400nmなど、100nm~400nmである。
【0048】
本方法の一実施形態では、促進剤化合物および/または開始剤化合物は、アルキルおよびアリールホスファイト、ホスフィン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾフェノンおよびその誘導体、チオベンゾフェノン、キサンテン化合物、アルキルボラン、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
本方法の一実施形態では、精製生成物チオールは、10ppm未満のリンを含む。様々な実施形態において、リンの量は、例えば、9ppm未満、8ppm未満、7ppm未満、6ppm未満、5ppm未満、4ppm未満、3ppm未満、2ppm未満、1ppm未満、0ppm~10ppm未満、1~9ppmの間、1~7ppmの間、2~8ppmの間、4~7ppmの間、1~5ppmの間、2~6ppmの間、1~4ppmの間、1~3ppmの間、2~4ppmの間、などである。リンの量は、誘導結合プラズマ(ICP)質量分析法によって決定された。サンプルは、Milestone UltraWAVEマイクロ波分解装置で硫酸と硝酸で分解された。分解したサンプルを重量測定法で希釈した。試薬ブランクをサンプルと一緒に運び、サンプルの結果をブランクで補正した。サンプルは、Agilent 7700xICP-MSを使用して、検量線に対する微量金属について分析された。装置はバックグラウンド補正を行った。その後の希釈を行って、目的の元素を校正範囲に入れることができる。
【0050】
本方法の一実施形態では、生成物チオール精製ユニットは、構造化充填物を含む少なくとも1つの蒸留塔を含む。
【0051】
本発明の一実施形態は、本明細書に開示される精製チオールを生成するための方法の一実施形態に従って生成される精製生成物チオールの組成物である。
【0052】
精製チオールの生成のための本方法の一実施形態に従って生成される精製生成物チオールのいくつかの実施形態によれば、精製生成物チオールは、10ppm未満のリンを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。精製生成物チオールの組成物の様々な実施形態において、リンの量は、9ppm未満、例えば、8ppm未満、7ppm未満、6ppm未満、5ppm未満、4ppm未満、3ppm未満、2ppm未満、1ppm未満、0ppm~10ppm未満、1~9ppmの間、1~7ppmの間、2~8ppmの間、4~7ppmの間、1~5ppmの間、2~6ppmの間、1~4ppmの間、1~3ppmの間、2~4ppmの間などである。リンの量は、誘導結合プラズマ(ICP)質量分析法によって決定された。サンプルは、Milestone UltraWAVEマイクロ波分解装置で硫酸と硝酸で分解された。分解したサンプルを重量測定法で希釈した。試薬ブランクをサンプルと一緒に運び、サンプルの結果をブランクで補正した。サンプルは、Agilent 7700xICP-MSを使用して、検量線に対する微量金属について分析された。装置はバックグラウンド補正を行った。その後の希釈を行って、所望の元素を校正範囲にすることができる。精製生成物チオールの組成物のいくつかの実施形態によれば、生成物チオールは、n-ドデシルメルカプタン(NDM)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。精製生成物チオールのいくつかの実施形態によれば、生成物チオールは、n-オクチルメルカプタンを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。精製生成物チオールの組成物のいくつかの例示的な実施形態によれば、精製生成物チオールは、n-ドデシルメルカプタンおよび1000重量ppm未満のテトラデシルメルカプタンおよび1000ppm未満の硫化物を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。
【0053】
本発明の一実施形態は、硫化水素と直鎖アルファオレフィンから高純度の直鎖生成物チオールを生成するための装置であって、装置は:
硫化水素と直鎖アルファオレフィンを受け入れ、生成物直鎖チオールと未反応の硫化水素と未反応の直鎖アルファオレフィンと他の成分とを含む反応器流出流を生成するように構成された反応器システムであって、反応器流出流の第1部分を反応器システムに戻り再循環するようにさらに構成される反応器システムと;
反応器システムと連通するフラッシュ気化器であって、フラッシュ気化器は、反応器流出流の第2部分を受け入れ、未反応の硫化水素の少なくとも一部を含む硫化水素再循環流と、生成物直鎖チオール、未反応の直鎖アルファオレフィンおよび他の成分を含む粗チオール流とを生成するように構成され、フラッシュ気化器は、硫化水素再循環流を反応器に供給するように構成される、フラッシュ気化器と;
フラッシュ気化器および反応器システムと連通する粗チオール分離システムであって、粗チオール分離システムは、粗チオール流を受け入れるように構成され、粗チオール分離システムは:
粗チオール流から未反応の直鎖アルファオレフィンの少なくとも一部を分離して、未反応の直鎖アルファオレフィンを含むオレフィン再循環流と、他の成分の第1部分を含む第1副生成物流と、生成物直鎖チオールおよび他の成分の第2部分を含む粗チオール生成物流とを生成し;オレフィン再循環流を反応器システムに供給するように構成される粗チオール分離システムと;
粗チオール分離システムと連通する生成物チオール精製ユニットであって、生成物チオール精製ユニットは:
粗チオール生成物流を受け入れ;
少なくとも90重量パーセントの生成物直鎖チオールを含む精製生成物チオールを含む生成物チオール流と、他の成分の第2部分を含む第2副生成物流とを生成するように構成される生成物チオール精製ユニットと、
を含む。精製チオール組成物を生成するための装置の一実施形態では、精製生成物チオール流は、少なくとも95重量パーセントの生成物チオール、少なくとも96重量パーセント、少なくとも97重量パーセント、少なくとも98重量パーセント、少なくとも98.5重量パーセント、少なくとも99.0重量パーセント、少なくとも99.5重量パーセントの生成物チオールを含み得る。
【0054】
本装置の一実施形態では、粗チオール分離システムは、2次分離ユニットと連通するオレフィン分離ユニットを含み、ここで、
オレフィン分離ユニットは、フラッシュ気化器と連通しており、且つ:
粗チオール流を受け入れ;
オレフィン再循環流および2次流を生成し;
2次流を2次分離ユニットに供給するように構成され;
ここで、2次分離ユニットは生成物チオール精製ユニットと連通しており、且つ:
2次流を受け入れ;
2次流を分離して、第1副生成物流と粗チオール生成物流とを生成するように構成される。
【0055】
本装置の一実施形態では、チオール生成物精製ユニットは粗チオール分離ユニットと連通しており、且つ:
2次分離ユニットから粗生成物チオールを受け入れ;
純粋な生成物チオールと、いくつかの残留生成物チオールを含む第2副生成物流を生成するように構成される。
【0056】
本装置の一実施形態では、装置は、チオール生成物精製ユニットおよび粗チオール分離ユニットと連通する硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットをさらに含み、硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは:
硫化物を含む他の成分の第2部分を含む第2副生成物流を受け入れ;
硫化物の少なくとも一部をオレフィンおよびチオールに変換し;
未変換硫化物を含む第3副生成物流を生成し;
オレフィンと未変換チオールを粗チオール分離ユニットに供給するように構成される。
【0057】
硫化物のオレフィンおよびチオールへの変換は、クラッキングを含み得る。
【0058】
本装置の一実施形態は、粗チオール分離システムが、粗チオール分離ユニットと連通するオレフィン分離ユニットを含み、粗チオール分離ユニットが、フラッシュ気化器および生成物チオール精製ユニットと連通し、
粗チオール分離ユニットは:
粗チオール流を受け入れ;
粗生成物チオール流および第1副生成物を含むオレフィン流を生成し;
第1副生成物を含むオレフィン流をオレフィン分離ユニットに供給するように構成され;
オレフィン分離ユニットは:
第1副生成物を含むオレフィン流を分離し;
第1副生成物流とオレフィン再循環流とを生成するように構成される。
【0059】
本装置の一実施形態は、反応器システムが、反応器バンクと連通する吸収ユニットを備え、吸収ユニットは:
硫化水素と直鎖アルファオレフィンとを受け入れ、
直鎖アルファオレフィン中に溶解した硫化水素の少なくとも一部を含む液体反応器バンク供給流を形成し、
液体反応器バンク供給流を反応器バンクに供給するように構成され;
反応器バンクは:
反応器流出流の第1再循環部分と液体反応器バンク供給流とを受け入れ、
生成物チオール、未反応の硫化水素、未反応の直鎖アルファオレフィンおよび他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成される。
【0060】
本装置の一実施形態では、生成物精製ユニットは、構造化充填物を含む少なくとも1つの蒸留塔を含む。
【0061】
本発明の一実施形態は、硫化水素または式R1-SHのチオール、および式Cx(2x)のアルファオレフィンから高純度の生成物硫化物を生成する方法であって、方法は:
硫化水素またはチオール、およびアルファオレフィンを反応器システムに供給する工程であって、反応器システムは:
生成物硫化物、未反応の硫化水素または未反応のアルファオレフィン、未反応の直鎖チオール、および他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成される工程と;
反応器流出流の第1部分を反応器システムに再循環させる工程と;
反応器流出流の第2部分を硫化物分離システムに供給する工程であって、硫化物分離システムは:
未反応の硫化水素、未反応のアルファオレフィン、未反応の直鎖チオール、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流と、高純度の生成物硫化物を含む生成物流とを生成するように構成される工程と、
を含む。
【0062】
様々な実施形態において、チオールは直鎖チオールであり、および/またはアルファオレフィンは直鎖アルファオレフィンである。
【0063】
硫化物プロセスの一実施形態では、硫化物分離システムは、反応器システムと連通する第1分離ユニットと、第1分離ユニットと連通する生成物硫化物精製システムとを含み、ここで、
第1分離ユニットは:
反応器システムからの反応器流出流を受け入れ、
未反応の硫化水素、未反応のチオール、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流の第1部分と、生成物硫化物を含む粗硫化物流とを生成し;
生成物硫化物を含む粗硫化物流を生成物硫化物精製システムに供給するように構成され、生成物硫化物精製システムは:
未反応のアルファオレフィンの少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流の第2部分と、精製された生成物硫化物を含む硫化物生成物流とを生成するように構成される。
【0064】
硫化物プロセスの一実施形態では、方法は、反応器システムおよび硫化物分離システムと連通するフラッシュ気化器を含み、フラッシュ気化器は:
反応器流出物の第2部分を受け入れ;
未反応の硫化水素または未反応のチオールまたは未反応のアルファオレフィンの少なくとも一部を含む軽質再循環流と、生成物硫化物、未反応のアルファオレフィンまたは未反応のチオール、および他の成分を含む粗硫化物流とを生成し;
粗硫化物流を硫化物分離システムに供給するように構成される。
【0065】
硫化物プロセスの一実施形態では、硫化水素が反応器システムに供給され、高純度の硫化物は式S(Cx(2x+1)2である。
【0066】
硫化物プロセスの一実施形態では、直鎖チオールが反応器システムに供給され、高純度の硫化物は式S(Cx(2x+1)2、S(R12およびS(Cx(2x)+1))(R1)の一つ以上である。
【0067】
硫化物プロセスの一実施形態において、R1-SHチオールのR1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、その他分岐ヘキシル、n-オクチル、sec-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、分岐ノニル、n-デシル、分岐デシル、n-ウンデシル、分岐ウンデシル、n-ドデシル、分岐ドデシル、n-トリデシル、分岐トリデシル、n-テトラデシル、分岐テトラデシル、n-ペンタデシル、分岐ペンタデシル、n-ヘキシルデシル、分岐ヘキシルデシル、n-ヘプタデシル、分岐ヘプタデシル、n-オクタデシル、または分岐オクタデシルである。硫化物プロセスの一実施形態では、チオールのR1は、カルボキシル官能基、カルボキシレート官能基、アミド官能基またはエポキシド官能基を含み得る。
【0068】
硫化物プロセスの一実施形態において、式Cx(2x)のアルファオレフィンにおけるxの値は2~18である。オレフィンはアルファオレフィンであるが、必ずしも直鎖であるとは限らず、例えば、2-エチルヘキセン-1、2-ブチルオクテン-1、2-エチルデセン-1、またはビニリデンオレフィンと呼ばれるクラスである。硫化物プロセスの一実施形態では、アルファオレフィンは、カルボキシル官能基、カルボキシレート官能基、アミド官能基またはエポキシド官能基を含み得る。硫化物プロセスの一実施形態では、カルボキシル、カルボキシレート、およびアミド官能基は、好ましくはアルファオレフィンの二重結合と共役していない。
【0069】
本発明の一実施形態は、硫化水素または式R1-SHのチオール、および式Cx(2x)のアルファオレフィンから高純度の生成物硫化物を生成するための装置であって、装置は:
反応器システムであって、反応器システムは:
硫化水素または直鎖チオール、およびアルファオレフィンを受け入れ;
生成物硫化物、未反応の硫化水素または未反応のアルファオレフィン、未反応のチオール、および他の成分を含む反応器流出流を形成し;
反応器流出流の第1部分を反応器システムに再循環させるように構成される、反応器システムと;
硫化物分離システムであって、硫化物分離システムは反応器システムと連通し、且つ、
反応器システムからの反応器流出流の第2部分を受け入れ;
未反応の硫化水素、未反応のアルファオレフィン、未反応のチオール、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流と、高純度の生成物硫化物を含む生成物流とを生成するように構成される、硫化物分離システムと
を含む。装置は、硫化水素または直鎖チオールから高純度の直鎖硫化物を、直鎖アルファオレフィンと一緒に生成するように構成され得る。
【0070】
硫化物装置の一実施形態では、硫化物分離システムは、反応器システムと連通する第1分離ユニットと、第1分離ユニットと連通する生成物硫化物精製システムとを含み、
ここで、第1分離ユニットは:
反応器システムからの反応器流出流を受け入れ;
未反応の硫化水素、未反応のチオールまたは未反応のアルファオレフィン、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流の第1部分と、生成物硫化物を含む粗硫化物流とを生成し;
生成物硫化物を含む粗硫化物流を生成物硫化物精製システムに供給するように構成され、
ここで、生成物硫化物精製システムは:
未反応のアルファオレフィンまたは未反応のチオールの少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流の第2部分と、精製された生成物硫化物を含む硫化物生成物流とを生成するように構成される。
【0071】
硫化物装置の一実施形態では、装置は、反応器システムおよび硫化物分離システムと連通するフラッシュ気化器を含み、フラッシュ気化器は:
反応器流出物の第2部分を受け入れ;
未反応の硫化水素または未反応のチオール;或いは未反応のアルファオレフィンの少なくとも一部を含む軽質再循環流と、生成物硫化物、未反応のアルファオレフィンまたは未反応のチオール、および他の成分を含む粗硫化物流とを生成し;
粗硫化物流を硫化物分離システムに供給するように構成される。
【0072】
様々な実施形態において、高純度の直鎖生成物チオールは、少なくとも98.2%、例えば、少なくとも98.4%、少なくとも98.6%、少なくとも98.8%、少なくとも99.0%、少なくとも99.2%、少なくとも99.4%、少なくとも99.6%、少なくとも99.8%、98.2%~99.8%、98.2%~99.6%、98.2%~99.4%、98.2%~99.2%、98.4%~99.6%、98.4%~99.2%、98.6%~99.6%、98.8%~99.6%、99.0%~99.6%などの純度(wt%)で単離される。例えば、重量%でのチオール純度は、90%より高くてもよく、好ましくは95%より高く、最も好ましくは98%より高い。純度は、91%より高く、92%より高く、93%より高く、94%より高く、95%より高く、96%より高く、96%より高く、または98%より高くてもよい。
【0073】
様々な実施形態において、高純度の直鎖生成物チオール(「メルカプタン」とも呼ばれる)は、n-オクチルメルカプタン、n-ノニルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、n-ウンデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、n-トリデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-ペンタデシルメルカプタン、n-ヘキシルデシルメルカプタン、n-ヘプタデシルメルカプタン、またはn-オクタデシルメルカプタンである。
【0074】
様々な実施形態において、直鎖アルファオレフィンは、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、または1-オクタデセンである。
【0075】
様々な実施形態において、テトラデシルメルカプタン不純物の量は、1000ppm未満、例えば、800ppm未満、600ppm未満、400ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、80ppm未満、50ppm未満、1000ppm未満50ppm超、500ppm未満50ppm超、200ppm未満50ppm超などである。
【0076】
様々な実施形態において、硫化物不純物の量は、1000ppm未満、例えば、800ppm未満、600ppm未満、400ppm未満、200ppm未満、100ppm未満、80ppm未満、50ppm未満、1000ppm未満50ppm超、500ppm未満50ppm超、200ppm未満50ppm超などである。
【0077】
様々な実施形態において、硫化物不純物は、n-オクチルスルフィド、n-ノニルスルフィド、n-デシルスルフィド、n-ウンデシルスルフィド、n-ドデシルスルフィド、n-トリデシルスルフィド、n-テトラデシルスルフィド、n-ペンタデシルスルフィド、n-ヘキシルデシルスルフィド、n-ヘプタデシルスルフィドまたはn-オクタデシルスルフィドである。いくつかの実施形態では、硫化物不純物は、例えば供給アルファオレフィン中のビニリデンオレフィンから生成される2-アルキルメルカプタンなど、プロセス中の反応の副生成物として生成される第2級メルカプタンから生成されるいくつかの硫化物のいずれかであり得る。
【0078】
様々な実施形態において、反応器流出流の第1部分に存在する直鎖生成物チオールの量は、20~70重量%、例えば、20~60重量%、20~55重量%、20~45重量%、20~40重量%などである。
【0079】
様々な実施形態において、促進剤化合物は、直鎖アルファオレフィンまたはアルファオレフィンの重量に基づいて5%未満、例えば、3%未満、1%未満などの量で存在する。特定の実施形態では、本明細書に記載の本発明の方法には促進剤化合物は存在しない。
【0080】
様々な実施形態において、電磁放射は紫外線放射であり、放射源は特に限定されず、紫外線放射を生成する水銀アークランプおよび発光ダイオードなどの従来の放射源を含み得る。さらに、放射源は反応器内または反応器の外側に配置することができ、放射源が反応器の外側に配置される場合、反応器は全体または一部が透明であり、パイレックス(登録商標)、バイコール、石英、または他の適切な材料で形成することができる。
【0081】
様々な実施形態において、電磁放射波長は、10~600nm、例えば、50~600nm、50~400nm、100~400nm、10~300nm、50~300nm、100~300nmなどである。
【0082】
様々な実施形態において、直鎖アルファオレフィン出発物質に対するH2Sのモル比は、20:1~3:1、例えば10:1、7:1、5:1、4:1、3:1などである。
【0083】
様々な実施形態において、反応器システムは、-10~120℃の温度範囲および10~1,000psigの圧力範囲で作動する。様々な実施形態において、温度は、-10~100℃、例えば、-10~80℃、-5~60℃、0~100℃、0~80℃、0~60℃、10~100℃、10~80℃、10~60℃、20~100℃、20~80℃、20~60℃、30~100℃、30~80℃、30~60℃などの範囲である。様々な実施形態において、圧力は、10~800psig、例えば、10~600psig、10~400psig、50~800psig、50~600psig、50~400psig、100~800psig、100~600psig、100~400psig、200~1,000psig、200~800psig、200~600psig、200~500psig、300~800psig、300~600psig、400~800psig、500~800psigなどの範囲である。
【0084】
様々な実施形態において、粗チオール分離ユニットは、50~260℃の温度範囲および-14.7~0.psigの圧力範囲で作動する。
【0085】
様々な実施形態において、チオール精製ユニットは、0~500℃の温度範囲および-14.7~100psigの圧力範囲で作動する。様々な実施形態において、温度は、0~400℃、例えば、0~300℃、0~200℃、50~400℃、50~300℃、50~200℃、75~400℃、75~300℃、75~200℃、100~400℃、100~300℃などの範囲である。様々な実施形態において、圧力は、-14.7~15psig、例えば、-14.7~10psig、-14.7~0psig、-14.7~-10psig、-14.7~15psig、-14.7~10psig、-14.7~0psig、-14.7~10psig、-10~15psig、-10~10psig、-10~0psig、0~15psig、0~10psigなどの範囲である。
【0086】
様々な実施形態において、オレフィン分離ユニットは、0~500℃の温度範囲および-50~15psigの圧力範囲で作動する。様々な実施形態において、温度は、0~400℃、例えば、0~300℃、0~200℃、50~400℃、50~300℃、50~200℃、75~400℃、75~300℃、75~200℃、100~400℃、100~300℃などの範囲である。様々な実施形態において、圧力は、-14.7~15psig、例えば、-14.7~10psig、-14.7~0psig、-14.7~-10psig、-14.7~15psig、-14.7~10psig、-14.7~0psig、-14.7~-10psig、-10~15psig、-10~10psig、-10~0psig、-10~10psig、0~15psig、0~10psigなどの範囲である。
【0087】
様々な実施形態において、2次分離ユニットは、0~500℃の温度範囲および-14.7~15psigの圧力範囲で作動する。様々な実施形態において、温度は、0~400℃、例えば、0~300℃、0~200℃、50~400℃、50~300℃、50~200℃、75~400℃、75~300℃、75~200℃、100~400℃、100~300℃などの範囲である。様々な実施形態において、圧力は、-14.7~15psig、例えば、-14.7~10psig、-14.7~0psig、-14.7~-10psig、-14.7~15psig、-14.7~10psig、-14.7~0psig、-14.7~-10psig、-10~15psig、-10~10psig、-10~0psig、-10~-10psig、0~15psig、0~10psigなどの範囲である。
【0088】
様々な実施形態において、硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは、50~500℃の温度範囲および-50~15psigの圧力範囲で作動する。様々な実施形態において、温度は、50~400℃、例えば、50~300℃、50~200℃、100~400℃、100~300℃、150~400℃、150~300℃、200~500℃、200~400℃、300~500℃などの範囲である。様々な実施形態において、圧力は、-14.7~15psig、-14.7~10psig、-14.7~0psig、-14.7~-10psig、-14.7~15psig、-14.7~10psig、-14.7~0psig、-14.7~-10psig、-10~15psig、-10~10psig、-10~0psig、-10~-10psig、0~15psig、0~10psigなどの範囲である。
【0089】
様々な実施形態において、チオール分離ユニット、チオール精製ユニット、オレフィン分離ユニット、および2次分離ユニットのうちの1つ以上は、構造化充填物を含む少なくとも1つの蒸留塔を含む。適当な充填材料には、限定されないが、金属充填(例えば、グリッド充填、プレート充填、ガーゼ充填)、セラミック充填、およびプラスチック充填が含まれる。蒸留塔の例としては、限定されないが、連続塔、バッチ塔、およびハイジー(HiGee、回転充填床)塔が含まれる。
【0090】
様々な実施形態において、反応器システムに供給される硫化水素および直鎖アルファオレフィン反応体の流体流は、限定されないが、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、エーテル溶媒またはそれらの組み合わせなどの1以上の有機溶媒を含む。飽和炭化水素、および、上記の特定範囲の波長のUV光を吸収しない、または反応を妨げない溶媒が適している。
【0091】
本発明の例示的な態様は、以下のように要約することができる:
態様1:硫化水素とオレフィンから高純度の生成物チオールを生成する方法であって、前記方法は:
前記硫化水素と前記オレフィンを反応器システムに供給する工程であって、前記反応器システムは:
前記生成物チオール、未反応の前記硫化水素、未反応の前記オレフィンおよび他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成される、工程と;
前記反応器流出流の第1部分を前記反応器システムに再循環させる工程と;
前記反応器流出流の第2部分をフラッシュ気化器に供給する工程であって、前記フラッシュ気化器は:
未反応の前記硫化水素の少なくとも一部を含む硫化水素再循環流と、前記生成物チオール、未反応の前記オレフィンおよび前記他の成分を含む粗チオール流とを生成するように構成される、工程と;
前記硫化水素再循環流を前記反応器システムに供給する工程と;
前記粗チオール流を粗チオール分離システムに供給する工程であって、前記粗チオール分離システムは:
未反応の前記オレフィンの少なくとも一部を前記粗チオール流から分離して:
未反応の前記オレフィンを含むオレフィン再循環流と、前記他の成分の第1部分を含む第1副生成物流と、前記生成物チオールおよび前記他の成分の第2部分を含む粗チオール生成物流と、を生成するように構成される、工程と;
前記オレフィン再循環流を前記反応器システムに供給する工程と;
前記粗チオール生成物流を生成物チオール精製ユニットに供給する工程であって、前記生成物チオール精製ユニットは:
少なくとも90重量パーセントの前記生成物チオールを含む精製生成物チオールを含むチオール生成物流と、前記他の成分の前記第2部分を含む第2副生成物流とを生成するように構成される、工程と、
を含む方法。
【0092】
態様2:前記オレフィンが、C4~C18の直鎖アルファオレフィンの直鎖炭化水素を含む、態様1の方法。
【0093】
態様3:前記オレフィンがC12の直鎖アルファオレフィンの直鎖炭化水素を含み、前記生成物チオールがn-ドデシルメルカプタンと、1000重量ppm未満のテトラデシルメルカプタンと、1000ppm未満の硫化物とを含む、態様1または2の方法。
【0094】
態様4:前記反応器システムに再循環される前記反応器流出流の前記第1部分の量が、前記反応器システム中の前記生成物チオールの20重量%~60重量%の量を維持する、態様1~3のいずれかの方法。
【0095】
態様5:前記粗チオール分離システムは、オレフィン分離ユニットと2次分離ユニットとを含み、
前記粗チオール流が前記オレフィン分離ユニットに供給され、
前記オレフィン分離ユニットは:
前記オレフィン再循環流と2次流とを生成し;
前記2次流を前記2次分離ユニットに供給するように構成され、
前記2次分離ユニットは:
前記2次流を分離して、前記第1副生成物流と前記粗チオール生成物流とを生成するように構成される、態様1~4のいずれかの方法。
【0096】
態様6:前記他の成分の前記第2部分を含む前記第2副生成物流が硫化物を含み、前記第2副生成物流が硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットに供給され、前記硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは:
前記硫化物をオレフィンとチオールとに変換し;前記硫化物を含む第3副生成物流を生成し;
当該オレフィンとチオールとを前記粗チオール分離システムに供給するように構成される、態様1~5のいずれかの方法。
【0097】
態様7:前記粗チオール分離システムが、オレフィン分離ユニットと粗チオール分離ユニットとを含み、
前記粗チオール流は、前記粗チオール分離ユニットに供給され、前記粗チオール分離ユニットは:
前記粗チオール生成物流とオレフィン流とを生成し;
前記オレフィン流を前記オレフィン分離ユニットに供給するように構成され;
前記オレフィン分離ユニットは:
前記オレフィン流(第1副生成物を含む?)を分離して、前記第1副生成物流と前記オレフィン再循環流とを生成するように構成される、態様1~6のいずれかの方法。
【0098】
態様8:前記反応器システムが、反応器バンクと連通する吸収ユニットを含み、前記吸収ユニットは:
前記硫化水素と前記オレフィンと前記反応器流出流の前記第1再循環部分とを受け入れ、
前記オレフィン中に溶解した前記硫化水素の少なくとも一部を含む液体反応器バンク供給流と、前記反応器流出流の前記第1再循環部分とを形成し、
前記液体反応器バンク供給流を前記反応器バンクに供給するように構成され;
前記反応器バンクは:
前記反応器流出流の前記第1再循環部分と前記液体反応器バンク供給流とを受け入れ、
前記生成物チオールと未反応の硫化水素と未反応のオレフィンと他の成分とを含む前記反応器流出流を形成するように構成される、態様1~7のいずれかの方法。
【0099】
態様9:前記反応器流出流が20重量%~70重量%の前記生成物チオールを含む、態様1~8のいずれかの方法。
【0100】
態様10:前記反応器流出流の前記第1部分が、全反応器流出流の少なくとも70重量パーセントを構成する、態様1~9のいずれかの方法。
【0101】
態様11:前記反応器システム中での直鎖アルファオレフィンの前記生成物チオールへの転化が50重量パーセント以下であり、前記反応器中の硫化物の量が10重量パーセント未満である、態様1~10のいずれかの方法。
【0102】
態様12:前記反応器システムは、さらに波長が100nm~600nmである電磁放射を使用して、前記硫化水素と前記オレフィンとから前記生成物チオールを形成するように構成され、前記反応器流出流は、アルキルボラン、ホスファイト、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾフェノンおよびその誘導体、チオベンゾフェノン、キサンテン化合物、並びに、それらの混合物、からなる群より選択される5重量パーセント未満の促進剤化合物、および/または5重量パーセント未満の開始剤化合物を含む、態様1~11のいずれかの方法。
【0103】
態様13:前記精製生成物チオールが10重量ppm未満のリンを含む、態様1~12のいずれかの方法。
【0104】
態様14:前記生成物チオール精製ユニットが、構造化充填物を含む少なくとも1つの蒸留塔を含む、態様1~13のいずれかの方法。
【0105】
態様15:硫化水素とオレフィンから高純度の生成物チオールを生成するための装置であって、前記装置は:
前記硫化水素と前記オレフィンを受け入れ、前記生成物チオールと未反応の硫化水素と未反応のオレフィンと他の成分とを含む反応器流出流を生成するように構成された反応器システムであって、前記反応器流出流の第1部分を前記反応器システムに戻り再循環するようにさらに構成される反応器システムと;
前記反応器システムと連通するフラッシュ気化器であって、前記フラッシュ気化器は、前記反応器流出流の第2部分を受け入れ、未反応の前記硫化水素の少なくとも一部を含む硫化水素再循環流と、前記生成物チオール、未反応の前記オレフィンおよび前記他の成分を含む粗チオール流とを生成するように構成され、前記フラッシュ気化器は、前記硫化水素再循環流を前記反応器システムに供給するように構成される、フラッシュ気化器と;
前記フラッシュ気化器および前記反応器システムと連通する粗チオール分離システムであって、前記粗チオール分離システムは:前記粗チオール流を受け入れるように構成され、前記粗チオール分離システムは:
前記粗チオール流から未反応の前記オレフィンの少なくとも一部を分離して、未反応の前記オレフィンを含むオレフィン再循環流と、前記他の成分の第1部分を含む第1副生成物流と、前記生成物チオールおよび前記他の成分の第2部分を含む粗チオール生成物流とを生成し;前記オレフィン再循環流を前記反応器システムに供給するように構成される粗チオール分離システムと;
前記粗チオール分離システムと連通する生成物チオール精製ユニットであって、前記生成物チオール精製ユニットは:
前記粗チオール生成物流を受け入れ;
少なくとも98.5重量パーセントの前記生成物チオールを含む精製生成物チオールを含む生成物チオール流と、前記他の成分の前記第2部分を含む第2副生成物流とを生成するように構成される生成物チオール精製ユニットと、
を含む、装置。
【0106】
態様16:前記粗チオール分離システムが、2次分離ユニットと連通するオレフィン分離ユニットを含み、前記オレフィン分離ユニットは、前記フラッシュ気化器と連通し、且つ、前記粗チオール流を受け入れ;前記オレフィン再循環流と2次流を生成し;前記2次流を前記2次分離ユニットに供給するように構成され;
前記2次分離ユニットは、前記生成物チオール精製ユニットと連通し、且つ:前記2次流を受け入れ;前記2次流を分離して、前記第1副生成物流と前記粗チオール生成物流とを生成するように構成される、態様15の装置。
【0107】
態様17:前記チオール生成物精製ユニットおよび前記粗チオール分離ユニットと連通する硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットをさらに含み、
前記硫化物クラッキングおよびストリッピングユニットは:
硫化物を含む前記他の成分の前記第2部分を含む前記第2副生成物流を受け入れ;
前記硫化物をオレフィンとチオールに変換し;前記硫化物を含む第3副生成物流を生成し;前記オレフィンとチオールを前記粗チオール分離システムに供給するように構成される、態様15または16の装置。
【0108】
態様18:前記粗チオール分離システムが、粗チオール分離ユニットと連通するオレフィン分離ユニットを含み、前記粗チオール分離ユニットが、前記フラッシュ気化器および前記生成物チオール精製ユニットと連通し、
前記粗チオール分離ユニットは:
前記粗流を受け入れ;
前記粗生成物チオール流およびオレフィン流を生成し;
前記オレフィン流を前記オレフィン分離ユニットに供給するように構成され;
前記オレフィン分離ユニットは:
前記オレフィン流を分離し;
前記第1副生成物流と前記オレフィン再循環流とを生成するように構成される、態様15~17のいずれかの装置。
【0109】
態様19:前記反応器システムが、反応器バンクと連通する吸収ユニットを備え、前記吸収ユニットは:
前記硫化水素と前記オレフィンと前記反応器流出流の前記第1再循環部分とを受け入れ、
前記オレフィン中に溶解した前記硫化水素の少なくとも一部と、前記反応器流出流の前記第1再循環部分とを含む液体反応器バンク供給流を形成し、
前記液体反応器バンク供給流を前記反応器バンクに供給するように構成され;
前記反応器バンクは:
前記反応器流出流の前記第1再循環部分と前記液体反応器バンク供給流とを受け入れ、
前記生成物チオール、未反応の硫化水素、未反応のオレフィンおよび他の成分を含む前記反応器流出流を形成するように構成される、態様15~18のいずれかの装置。
【0110】
態様20:前記生成物チオール精製ユニットが、構造化充填物を含む少なくとも1つの蒸留塔を含む、態様15~19のいずれかの装置。
【0111】
態様21:硫化水素またはR1SH、および式Cx(2x)のオレフィンから高純度の生成物硫化物を生成する方法であって、前記方法は:
前記硫化水素または前記R1SH、および前記式Cx(2x)のオレフィンを反応器システムに供給する工程であって、前記反応器システムは:
前記生成物硫化物、未反応の硫化水素または未反応の式Cx(2x)のオレフィン、未反応のR1SH、および他の成分を含む反応器流出流を形成するように構成される、工程と;
前記反応器流出流の第1部分を前記反応器システムに再循環させる工程と;
前記反応器流出流の第2部分を硫化物分離システムに供給する工程であって、前記硫化物分離システムは:
未反応の前記硫化水素、未反応の前記式Cx(2x)のオレフィン、未反応の前記R1SH、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流と、高純度の前記生成物硫化物を含む生成物流とを生成するように構成される、工程と、
を含む方法。
【0112】
態様22:前記硫化物分離システムが、前記反応器システムと連通する第1分離ユニットと、前記第1分離ユニットと連通する生成物硫化物精製システムとを含み、
前記第1分離ユニットは:
前記反応器システムからの前記反応器流出流を受け入れ;
未反応の前記硫化水素または未反応の前記R1SH若しくは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの少なくとも一部と、他の成分とを含む少なくとも1つの前記再循環流の第1部分、および、前記生成物硫化物を含む粗硫化物流を生成し;
前記生成物硫化物を含む前記粗硫化物流を前記生成物硫化物精製システムに供給するように構成され、
前記生成物硫化物精製システムは:
未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンまたは未反応の前記R1SHの他方の少なくとも一部を含む少なくとも1つの前記再循環流の第2部分と、前記精製生成物硫化物を含む硫化物生成物流とを生成するように構成される、態様21の方法。
【0113】
態様23:前記反応器システムおよび前記硫化物分離システムと連通するフラッシュ気化器を含み、前記フラッシュ気化器は:
前記反応器流出物の前記第2部分を受け入れ;
未反応の前記硫化水素または未反応のR1SH若しくは未反応の式Cx(2x)のオレフィンの少なくとも一部を含む軽質再循環流、および、前記生成物硫化物と、未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの他方と、前記他の成分とを含む粗硫化物流を生成し;
前記粗硫化物流を前記硫化物分離システムに供給するように構成される、態様21または22の方法。
【0114】
態様24:硫化水素が前記反応器システムに供給され、高純度の前記硫化物がS(Cx(2x+1)2を含む、態様21~23のいずれかの方法。
【0115】
態様25:R1SHが前記反応器システムに供給され、高純度の前記硫化物がS(Cx(2x+1))(R1)を含む、態様21~24のいずれかの方法。
【0116】
態様26:R1-SHチオールのR1が、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキシルデシル、n-ヘプタデシルまたはn-オクタデシルである、態様21~25のいずれかの方法。
【0117】
態様27:前記式Cx(2x)のオレフィンについて、xが2~18の整数である、態様21~26のいずれかの方法。
【0118】
態様28:硫化水素またはR1SH、および式Cx(2x)のオレフィンから高純度の生成物硫化物を生成するための装置であって、前記装置は:
反応器システムであって、前記反応器システムは:
前記硫化水素または前記R1SH、および前記式Cx(2x)のオレフィンを受け入れ、
前記生成物硫化物、未反応の前記硫化水素または未反応の前記式Cx(2x)のR1SH、および他の成分を含む反応器流出流を形成し;
前記反応器流出流の第1部分を前記反応器システムに再循環させるように構成される、反応器システムと;
硫化物分離システムであって、前記硫化物分離システムが前記反応器システムと連通し、前記硫化物分離システムは:
前記反応器システムからの前記反応器流出流の第2部分を受け入れ;
未反応の前記硫化水素、未反応の前記式Cx(2x)のオレフィン、未反応の前記R1SH、および他の成分の少なくとも一部を含む少なくとも1つの再循環流と、高純度の前記生成物硫化物を含む生成物流とを生成する、ように構成される、硫化物分離システムと、
を含む、装置。
【0119】
態様29:前記硫化物分離システムが、前記反応器システムと連通する第1分離ユニットと、前記第1分離ユニットと連通する生成物硫化物精製システムとを含み、
前記第1分離ユニットは:
前記反応器システムからの前記反応器流出流を受け入れ;
未反応の前記硫化水素と、未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンと、前記他の成分との少なくとも一部を含む少なくとも1つの前記再循環流の第1部分、および、前記生成物硫化物と、未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの他方とを含む粗硫化物流を生成し;
前記生成物硫化物を含む前記粗硫化物流を前記生成物硫化物精製システムに供給するように構成され;
前記生成物硫化物精製システムは:
未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの他方の少なくとも一部を含む少なくとも1つの前記再循環流の第2部分と、前記精製生成物硫化物を含む硫化物生成物流とを生成するように構成される、態様28の装置。
【0120】
態様30:前記反応器システムおよび前記硫化物分離システムと連通するフラッシュ気化器を含み、前記フラッシュ気化器が:
前記反応器流出物の前記第2部分を受け入れ;
未反応の前記硫化水素または未反応の前記R1SHもしくは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの少なくとも一部を含む軽質再循環流、および、前記生成物硫化物と、未反応の前記R1SHまたは未反応の前記式Cx(2x)のオレフィンの他方と、前記他の成分とを含む粗硫化物流を生成し;
前記粗硫化物流を前記硫化物分離システムに供給するように構成される、態様28または29の装置。
【0121】
本明細書において、実施形態は、明確かつ簡潔な明細書を記述できるように記載されているが、本発明から逸脱することなく、実施形態を様々に組み合わせたり、分離したりできることが意図されており、理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されたすべての好ましい特徴は、本明細書に記載された本発明のすべての態様に適用可能であることを理解されたい。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書の発明は、硬化性組成物、材料、生成物、およびそれから調製される物品、ならびに本明細書に記載されるかかる硬化性組成物を製造および使用する方法の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない要素またはプロセスステップを除外すると解釈することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で指定されていない要素または方法の工程を除外すると解釈することができる。
【0123】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に例示および説明されているが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の均等の範囲および範囲内で、かつ本発明から逸脱することなく、細部にさまざまな変更を加えることができる。
【実施例
【0124】
実施例1:
安定した流れが確立されるまで、ドデセン-1と液体H2Sの1:10モル混合物を反応器の管に送り込む。次に、UV光をオンにし、NDMへの変換が20~60%に達するまで混合物を再循環させる。次に、混合物の一部が気化器に供給され、H2Sオーバーヘッドのほとんどではないにしてもすべてを取り出され、反応器ループに戻される。次に、液体はオレフィンタワーに押し出され、そこで未反応のオレフィンがオーバーヘッドから取り出され、反応器に戻され再循環する。オレフィンタワーの塔底は2次タワーに押し出され、そこで第2級メルカプタンと残留炭化水素がオーバーヘッドから取り出され、粗生成物流が2次タワーの塔底から取り出され、生成物タワーに押し出される。ここでは、生成物NDMがオーバーヘッドから取り出され、残留NDMを含む硫化物副生成物が生成物タワーの塔底から取り出され、残留物ストリッパーに押し込まれる。残留物ストリッパーは、存在するすべてのNDMではないにしても大部分をストリッピングし、硫化物を部分的にオレフィンとNDMに分解し、オレフィンタワーに戻され再循環する。生成物NDMは、純度についてはガスクロマトグラフィーによって分析され、硫黄含有量についてはメルカプタン硫黄滴定によって分析され、生成物タワーの条件は仕様通りのNDM生成物純度を得るために修正される。
【0125】
以下の表1は、本発明の方法がどのようにして高純度のメルカプタンの調製をもたらすかを示している。n-ドデシルメルカプタンの場合、望ましくないテトラデシルメルカプタンと硫化物不純物のレベルは0.1%を大幅に下回った。
【0126】
【表1】
【0127】
実施例2:
360psigおよび37℃の硫化水素と360psigおよび周囲温度のオレフィンを、吸収器再循環タンクに導入し、40℃および450psigで作動する光化学反応器に送る。光反応器では、硫化水素の末端オレフィンへの触媒的付加がUV光触媒を介して行われる。反応器流出物の大部分(65~90%)は、反応器再循環ラインを介して吸収器再循環タンクに戻され再循環する。反応器流出物の残りは、150℃および370psigで作動するフラッシュ気化器に送られる。次に、本質的にH2Sを含まない残りの液体を、100mmHgaの圧力、204~230℃の塔底温度、および0.2~0.5の還流比で作動するオレフィン蒸留タワー(OT)に導入する。オレフィンタワーは未反応のオレフィンをメルカプタンおよび生成物硫化物から分離する。このタワーの塔頂から取り出されたオレフィンは、新たなオレフィン供給ラインを介して吸収器再循環タンクに戻される。オレフィンタワーの塔底からの流出物は、圧力50mmHga、塔底温度221~232℃、還流比15~60で作動する2次メルカプタン蒸留タワーに導入される。2次タワーは、UV触媒反応の副生成物として生成された第2級メルカプタンを除去する。このタワーのタワー底流出物を生成物蒸留タワー(PT)に導入する。生成物蒸留タワーは、構造化充填物をインターナルとして装備され、圧力25mmHga、塔底温度182~232℃、還流比0.2~1で作動する。最終生成物であるn-ドデシルメルカプタンはオーバーヘッド生成物として取り出される。
【0128】
この実施例では、硫化水素とオレフィンとしての1-ドデセンを図1に示す反応器システムに供給した。n-ドデシルメルカプタン(NDM)とも呼ばれるn-ドデシルチオールが生成物チオールであった。さまざまな流れをガスクロマトグラフィーで分析した。流れの組成は、炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフィー(GC)によって監視され、表2に示す組成を有することがわかった。
【0129】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】