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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-11
(54)【発明の名称】硫黄含有材料及びそれの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/00 20060101AFI20230704BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20230704BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C08G75/00
C08G59/40
C08J5/24 CFC
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576381
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2021037026
(87)【国際公開番号】W WO2021252906
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/038,291
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミーガン, ジョナサン エドワード
【テーマコード(参考)】
4F072
4J030
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD31
4F072AE01
4F072AF05
4F072AF28
4F072AG03
4F072AL01
4J030BA18
4J030BA22
4J030BA48
4J030BB18
4J030BC02
4J030BE02
4J030BF19
4J030BG26
4J036AD08
4J036FA01
4J036FA12
4J036GA14
4J036HA12
4J036JA11
(57)【要約】
元素状硫黄をアミン又は反応性官能基を含有するエポキシ化合物と反応させることによって形成される硫黄反応生成物。そのような反応生成物は、改質剤として熱硬化可能な樹脂組成物中へ組み入れることができる。そのような硫黄反応生成物を含有する熱硬化可能な組成物が硬化させられる場合、結果として生じた架橋熱硬化性樹脂は、ビトリマー様挙動に沿って改善された応力緩和特性を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元素状硫黄を、少なくとも1つの、好ましくは2つのアミン基を有する芳香族ジアミンから選択されるアミンと反応させることによって形成される硫黄反応生成物。
【請求項2】
元素状硫黄を4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジエチルアニリン)(MDEA)と反応させることによって形成される硫黄反応生成物。
【請求項3】
請求項2に記載の硫黄反応生成物であって、硫黄をMDEAと混合し、結果として生じた混合物を、好ましくは、1時間超の継続時間、100℃~200℃の範囲の温度に加熱することによって形成される硫黄反応生成物。
【請求項4】
硫黄対MDEAの質量比は、0.01:1~1:1、好ましくは、0.5:1又は1:1である、請求項2又は3に記載の硫黄反応生成物。
【請求項5】
元素状硫黄を、1分子当たり少なくとも1つの、好ましくは2つのエポキシ官能基を有するエポキシ化合物及び相溶化剤と反応させることによって形成される硫黄反応生成物。
【請求項6】
元素状硫黄を、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBF)及び相溶化剤と反応させることによって形成される硫黄反応生成物。
【請求項7】
前記相溶化剤はジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDC)である、請求項5又は6に記載の硫黄反応生成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の硫黄反応生成物であって、硫黄をDGEBF及び前記相溶化剤と混合し、結果として生じた混合物を、好ましくは、1時間超の継続時間、100℃~200℃の範囲の温度に加熱することによって形成される硫黄反応生成物。
【請求項9】
硫黄対DGEBFの質量比は、0.01:1~1:1、好ましくは、0.5:1又は1:1であり、相溶化剤の量は、組み合わせられた硫黄及びDGEBFの100重量部当たり、20重量部以下、好ましくは5重量部である、請求項6~8のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物。
【請求項10】
1種以上のエポキシ樹脂と、少なくとも1種のアミン硬化剤と、請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物とを含む硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
1種以上のエポキシ樹脂と請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物とを含む樹脂マトリックスに完全に又は部分的に埋め込まれている強化繊維を含む硬化性複合材料。
【請求項12】
強化繊維と請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物とを含む複合材料。
【請求項13】
1種以上の未硬化エポキシ樹脂と請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物とを含む硬化性樹脂マトリックスに埋め込まれた片側性の強化繊維の層を含む熱硬化性プリプレグ。
【請求項14】
複合材料の製造方法であって、
(a)請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物を、1種以上の熱硬化性樹脂を含む未硬化の熱硬化可能な樹脂組成物へ添加する工程と;
(b)工程(a)から形成された前記熱硬化可能な樹脂組成物を、繊維強化層に含浸させる又は繊維状予備成形物に注入する工程と;
(c)好ましくは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるような、硬化反応エンタルピー/未硬化反応エンタルピーの比が0.1未満、好ましくは0.05未満であるような期間、高温で含浸繊維強化材を硬化させる工程と
を含む方法。
【請求項15】
工程(a)での前記熱硬化可能な樹脂組成物は、1種以上のエポキシ樹脂と少なくとも1種のアミン硬化剤とを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
複合材料の製造方法であって、
(a)請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物を、繊維強化層に含浸させる又は繊維状予備成形物に注入する工程と;
(b)好ましくは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるような、硬化反応エンタルピー/未硬化反応エンタルピーの比が0.1未満、好ましくは0.05未満であるような期間、高温で含浸繊維強化材を硬化させる工程と
を含む方法。
【請求項17】
液体樹脂注入に好適な熱硬化可能な樹脂組成物での請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物の使用。
【請求項18】
繊維強化複合材料の製造での請求項1~9のいずれか一項に記載の硫黄反応生成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、硫黄含有材料及びそれらの用途に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】温度の関数としての異なる量のジアミノジフェニルスルフィドで改質された熱硬化性材料の相対緩和弾性率を示す。
図2】温度の関数としての異なる量の硫黄-MDEA反応生成物で改質された熱硬化性材料の相対緩和弾性率を示す。
図3】温度の関数としての異なる量の硫黄-DGEBF(硫黄-PY306)で改質された熱硬化性材料の相対緩和弾性率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0003】
熱硬化性樹脂マトリックスに埋め込まれた強化繊維から構成される複合材料は、輸送用途(航空宇宙ビークル、航空ビークル、航海船舶及び陸上車両など)での並びに建物/建築用途での使用に好適な耐荷重性構成要素の製造に使用されてきた。複合材料から構造部品を形成するために、材料は、造形され、硬化されなければならない。一旦硬化すると、熱硬化性複合材料は、不可逆的に硬くなり、再造形することができない。硬化熱硬化性複合材料のポリマー成分(又はマトリックス)のリサイクリングは課題である。従来のリサイクル方法は、繊維リサイクレートから分離することができるリサイクル可能な要素をもたらすためのポリマーマトリックスの熱又は化学分解を伴う。
【0004】
再処理可能なエポキシド複合材を提供するという1つの試みは、エポキシ樹脂を、式Ar-S-S-Ar(ここで、Arは、5~14個の炭素原子の環系である)の架橋剤と混合することである(国際公開第15181054 A1号パンフレットを参照されたい)。国際公開第15181054号パンフレットに開示されている具体的な架橋剤は、ビス(4-アミノフェニル)ジスルフィド(AFD)である。そのようなAFD架橋剤で架橋されたエポキシ樹脂を使用することから製造された結果として生じた複合材は、再処理可能である、リサイクル可能である及び修理可能である能力を示す。AFD架橋剤のそのような使用に関連した不利点は、それが非常に高価であり、それの使用を大規模適用には実用的でないものにすることである。
【0005】
元素状硫黄は、広く入手可能な、低コスト材料であり、及び元素状硫黄の重合挙動はよく知られている。室温で存在するS5~8硫黄構造は、約110℃~120℃で開環反応を受けてジラジカルを形成する。
【化1】
【0006】
そのようなジラジカルは、約150℃で重合してより高分子量(Mw)線状鎖を形成する;しかしながら、結果として生じた硫黄ポリマーは、安定ではなく、時間と共に着実に変換して環状S5~8単位に戻る。
【0007】
元素状硫黄がある種のアミン又はエポキシ化合物と反応性官能基で反応し、その反応生成物がエポキシベースの熱硬化性材料へ導入され、硬化させられる場合、硬化した改質熱硬化性樹脂は、ビトリマー様挙動を示す。ビトリマーは、共有結合適合性ネットワーク(CAN)による処理可能性を同時に保持しながら、永久架橋熱硬化性樹脂の特性を有するクラスのポリマーを意味する。熱的に誘発された場合、CANは、架橋の交換反応を受けることができ、それは、ポリマーネットワーク再配列を促進し、巨視的再造形を可能にする。応力が架橋に加えられる場合、架橋は、応力が緩和するまで再配列することができ、新しい形状が得られる。ビトリマー様挙動は、応力緩和実験の使用により証明することができ、その実験では、材料は等温温度で固定長さまでひずませられ、緩和弾性率が固定期間にわたって測定される。この実験においてt=0での初期緩和弾性率及びt=終了の相対比較を行うことによって、応力緩和挙動を定量化することができる。熱硬化性材料におけるビトリマー様挙動は、ビトリマー官能基を含有する熱硬化性ネットワークがビトリマー結合を解離することによってリサイクルされることを理論的には可能にするので、有利である。
【0008】
硫黄反応生成物は、元素状硫黄を、反応性官能基を有するアミン、特に、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは2つの、反応性アミン基を有する芳香族ジアミンと反反応させることによって形成することができる。硫黄反応生成物はまた、元素状硫黄を、エポキシ化合物、特に、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは2つの、エポキシ官能基を有するエポキシ化合物、及び相溶化剤と反応させることによって形成することができる。
【0009】
一実施形態では、硫黄反応生成物は、元素状硫黄を4,4’-メチレン-ビス-(2,6-ジエチルアニリン)(MDEA)と反応させることによって形成され、本明細書では以下、「硫黄-MDEA」反応生成物と言われる。
【0010】
別の実施形態では、硫黄反応生成物は、元素状硫黄をビスフェノールFのジグリシジルエーテル(DGEBF)と反応させることによって形成され、本明細書では以下、「硫黄-DGEBF」反応生成物と言われる。
【0011】
硫黄-MDEA反応生成物は、固体状態で均質な材料であり、硫黄-DGEBF反応生成物は、ペーストの形態で均質な材料であることが分かった。両反応生成物とも、高温でエポキシ樹脂に溶解可能である。「均質な」という用語は、前後関係で、いかなる目に見える不一致もなしに組成物での実質的に又はほとんど一様であることを意味する。
【0012】
硫黄反応生成物は、1種以上のエポキシ樹脂とアミン硬化剤とを含有する熱硬化可能な樹脂組成物中へ、改質剤として、組み込むことができる。そのような硫黄反応生成物を含有する熱硬化可能な組成物が硬化させられる場合、結果として生じた架橋熱硬性樹脂は、ビトリマー様挙動に沿って改善された応力緩和特性を示す。開発されたビトリマー様特性のために、硬化材料は、再処理可能な熱硬化性材料の特性を有する。
【0013】
反応生成物の調製
硫黄とアミンとの反応生成物は、硫黄(粉末形態での)をアミンと混合し、混合物を硫黄又はアミン(どちらがより高いにしても)の溶融温度超の温度まで加熱し、アミン上に存在する反応性官能基と元素状硫黄との反応を確実にするための期間、加熱混合物を保持することによって調製される。いくつかの実施形態では、反応温度は、120℃~200℃の範囲にあり、一実施形態では、140℃である。反応時間は、好ましくは1時間超である。
【0014】
硫黄-MDEA反応生成物に関して、硫黄対アミンの質量比は、0.01:1~1:1、好ましくは、0.5:1又は1:1であってもよい。
【0015】
硫黄とエポキシとの反応生成物は、硫黄(粉末形態での)をエポキシ樹脂及び相溶化剤と混合し、混合物を硫黄の溶融温度超の温度まで加熱し、エポキシ上に存在する反応性官能基と元素状硫黄との反応を確実にするための期間、加熱混合物を保持することによって調製される。いくつかの実施形態では、反応温度は、120℃~200℃の範囲にあり、一実施形態では、140℃である。反応時間は、好ましくは1時間超である。
【0016】
硫黄-DGEBF反応生成物に関して、硫黄対エポキシ樹脂の質量比は、0.01:1~1:1、好ましくは、0.5:1又は1:1であってもよい。相溶化剤は、加熱硫黄混合物への溶解性の証拠を示す化合物、例えば、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(DDC)から選択される。促進剤の量は、組み合わせられた硫黄とDGEBFとの100重量部当たり、20重量部以下、より好ましくは5重量部である。
【0017】
製品及び製造方法
本明細書で開示される硫黄反応生成物は、プリプレグなどの複合材料の製造に又は繊維強化材なしのポリマー物品を形成するために使用されてもよいし、或いは樹脂トランスファー成形又は他の液体樹脂射出若しくは注入プロセスに使用されてもよい。
【0018】
プリプレグは、本開示の一実施形態によれば、硫黄反応生成物を添加物として含有する樹脂又はポリマーマトリックスに完全に又は部分的に埋め込まれた強化繊維の層から構成される。別の実施形態では、プリプレグは、ポリマーマトリックスとしての硫黄反応生成物中に埋め込まれた強化繊維の層から構成される。
【0019】
本開示で用いるところでは、「埋め込まれた」という用語は、周囲の塊中にしっかりと固定されたことを意味し、「マトリックス」という用語は、材料、例えば、何かがその中に封入された又は埋め込まれた樹脂又はポリマーの塊を意味する。「樹脂」という用語は、本明細書で用いるところでは、硬化していない若しくは架橋されていないモノマー、オリゴマー、又はポリマーを意味する。
【0020】
熱硬化性プリプレグに関して、樹脂マトリックスは、1種以上の未硬化熱硬化性樹脂と添加物としての硫黄反応生成物とを含有する。任意選択的に、硬化剤は、樹脂と反応するために及び架橋を可能にするために樹脂マトリックス中に含まれてもよい。熱硬化性プリプレグにおける樹脂マトリックスは、部分硬化状態又は未硬化状態にあってもよい。未硬化又は部分硬化プリプレグは、すぐに積み重ね、三次元形態へ造形し、引き続き硬化させて硬化複合部品を形成できる柔軟な又は可撓性材料である。(熱を使って又は使わずに)圧力を加えることによる圧密は、積み重ね内のボイドの形成を防ぐために硬化の前に実施されてもよい。このタイプの熱硬化性プリプレグは、特に、航空機の翼及び機体などの、耐荷重性構造部品を製造するのに好適である。硬化熱硬化性プリプレグの重要な特性は、減量と共に高い強度及び剛性である。
【0021】
「硬化させる」又は「硬化」という用語は、高温で加熱することによってもたらされるプレポリマー材料、樹脂又はモノマーの硬化を意味する。「硬化性」という用語は、組成物に関して、組成物が硬化状態又は熱硬化状態へ硬化することができることを意味する。
【0022】
熱硬化性樹脂マトリックス用の好適な熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂、イミド(ポリイミド又はビスマレイミドなど)、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ベンゾオキサジン、ホルムアルデヒド縮合樹脂(尿素、メラミン又はフェノールとのなど)、ポリエステル、アクリル、それらのハイブリッド、ブレンド及び組み合わせが含まれるが、それらに限定されない。
【0023】
本開示はまた、熱硬化性複合材料の製造方法を指向する。一実施形態によれば、複合材料の製造方法は、
(a)硫黄反応生成物を未硬化熱硬化性樹脂組成物に添加する工程と;
(b)工程(a)の樹脂組成物を、繊維強化層に含浸させる又は繊維状予備成形物に注入する工程と;
(c)好ましくは、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるような、硬化反応エンタルピー/未硬化反応エンタルピーの比が0.05未満であるような期間、高温で含浸繊維強化材を硬化させる工程と
を含む。
【0024】
この実施形態では、硫黄反応生成物は、改質剤として機能する、添加物として使用される。
【0025】
代わりの実施形態では、硫黄反応生成物は、複合材料におけるポリマーマトリックスとして直接使用される。この実施形態では、複合材料の製造方法は、
(a)硫黄反応生成物を、繊維強化層に含浸させる又は繊維状予備成形物に注入する工程と;
(b)好ましくは、DSCによって測定されるような、硬化反応エンタルピー/未硬化反応エンタルピーの比が0.1未満、好ましくは0.05未満であるような期間、高温で含浸繊維強化材を硬化させる工程と
を含む。
【0026】
本開示の別の態様は、液体樹脂注入方法又は液体成形方法、特に、樹脂トランスファー成形(RTM)及び真空アシストRTM(VaRTM)を指向する。そのような樹脂注入方法では、硫黄反応生成物を含有する熱硬化性樹脂組成物又は硫黄反応生成物は、それ自体、繊維状予備成形物への注入/射出のための十分に低い粘度を有するように調合される。
【0027】
RTMにおいて、繊維状予備成形物は、密閉型内に置かれ、それは、初期温度温度、例えば、25℃超、いくつかの実施形態では、90℃~120℃に加熱され、これに、型への液体樹脂組成物の射出が続いて予備成形物中への液体樹脂の注入に影響を及ぼす。型は、繊維状予備成形物の注入の間ずっと20℃~220℃のドエル温度に維持されてもよい。注入後の型の温度が達成されて、樹脂注入予備成形物の硬化に影響を及ぼし、それにより、硬化複合物品を形成する。型の温度は、後で樹脂注入が完了した後に上げられて、樹脂注入予備成形物の硬化に影響を及ぼし、それにより、硬化複合物品を形成する。VaRTMにおいて、繊維状予備成形物は、可撓性真空バッグによって取り囲まれた片面型の上に置かれ、真空がかけられて、予備成形物中へ液体樹脂を引き込む。予備成形物は、強化繊維の1つ以上の層から構成され、それは、液体樹脂に透過性である。予備成形物が樹脂組成物を完全に注入されたとき、型温度は、所定の期間、例えば、160℃~200℃の範囲の硬化温度までランプされて、樹脂組成物の完全な硬化を可能にする。記載された方法によって生じる硬化生成物は、硬化複合物品である。
【0028】
本明細書で開示される目的のために有用である強化繊維には、炭素繊維又は黒鉛繊維、ガラス繊維及び炭化ケイ素、アルミナ、ホウ素、石英等で形成された繊維、並びに例えばポリオレフィン、ポリ(ベンゾチアゾール)、ポリ(ベンズイミダゾール)、ポリアリレート、ポリ(ベンゾオキサゾール)、芳香族ポリアミド、ポリアリールエーテル等の有機ポリマーから形成された繊維が含まれ、2つ以上のそのような繊維を有する混合物が含まれてもよい。好ましくは、繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、及び商品名KEVLARでDuPont Companyによって販売される繊維などの、芳香族ポリアミド繊維から選択される。強化繊維は、複数のフィラメントでできたトウとして、連続の一方向若しくは多方向テープとして、又は織布、不捲縮布、若しくは不織布として、短繊維又は連続繊維の形態で使用されてもよい。織形態は、平織、繻子織、又は綾織スタイルから選択されてもよい。不捲縮布は、多数の層及び繊維配向を有してもよい。
【実施例
【0029】
実施例1
硫黄とMDEAとの反応生成物
1gの元素状硫黄粉末及び1gのMDEA(架橋材料としての)を、小さいガラスバイアルにおいて室温で手動混合し、その後ホットプレート上で磁気撹拌しながら1時間120℃に加熱した。120℃で1時間後に、バイアルをオーブンに移し、そこで、それを140℃でさらなる14時間加熱した。結果として生じた硫黄-MDEA反応生成物(試料A)は均質な固体の赤色/茶色生成物であることが分かった。
【0030】
80℃でのHuntsman Advanced Materials製のMY0510(p-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル)へのその溶解性に関して0.1gの硫黄-MDEA反応生成物をアルミニウム皿中の5gのMY0510に添加し、混合物を加熱しながら手動で撹拌することによって反応生成物を試験した。硫黄-MDEA反応生成物はMY0510に完全に溶解することが分かった。
【0031】
実施例2
硫黄とDGEBFとの反応生成物
1gの元素状硫黄をHuntsman Advanced Materials製の1gのAraldite(登録商標)PY306(ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、つまりDGEBF)及び促進剤/相溶化剤としての0.1gのジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムと混合し、小さいガラスバイアルにおいて室温で手動混合し、その後ホットプレート上で磁気撹拌しながら1時間120℃に加熱した。120℃で1時間後に、バイアルをオーブンに移し、そこで、それを140℃でさらなる14時間加熱した。結果として生じた硫黄-DGEBF反応生成物(試料T)は均質な粘性のある黄色生成物であることが分かった。
【0032】
80℃でのMY0510(p-アミノフェノールのトリグリシジルエーテル)へのその溶解性に関して0.1gの硫黄-DGEBF反応生成物をアルミニウム皿中の5gのMY0510に添加し、混合物を加熱しながら手動で撹拌することによって反応生成物を試験した。硫黄-DGEBF反応生成物はMY0510に完全に溶解することが分かった。
【0033】
1gの元素状硫黄が上記の同じ条件下で1gのMY0510と反応させられた場合(試料G)、反応は、暗褐色/黒色2相(不非均質な)硬質材料をもたらした。より薄茶色の場所は、未反応硫黄が依然として残っていたことを示唆する。反応は不成功であると見なされた。0.1gのDDCを1gの硫黄と1gのMY0510との反応に添加した場合(試料Q)、反応は、材料が分解してしまったことを内部の泡が示す状態で不均質材料をもたらした。
【0034】
1gの元素状硫黄が、同じ反応条件下で、Huntsman Advanced Materials製の1gのMY721(N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンビスベンゼンアミン)と反応させられた場合(試料F)、反応は、試料の全体にわたって未反応硫黄の斑点ありで茶色っぽい不均質な固体をもたらした。反応は不成功であると見なされた。0.1gのDDCを1gの硫黄と1gのMY721との反応に添加した場合(試料O)、反応は、試料が分解してしまったことをその中の黒色固体が示す状態で不均質な材料をもたらした。反応生成物は80℃でMY0510に溶けないことが分かった。
【0035】
実施例3
MY721、MY0510及びMCDEA(4,4’-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン))を含有するエポキシ樹脂組成物を、表1に示される処方に従って調製した。量は、重量百分率(重量%)単位である。ジアミノジフェニルスルフィド(AFD)、硫黄-MDEA反応生成物(実施例1に従って調製された)、及び硫黄-DGEBF(つまり硫黄-PY306)反応生成物(実施例2に従って調製された)を、表1に示される量で未改質エポキシ樹脂組成物に添加物として添加して、樹脂試料を形成した。添加物の量(重量%)は、添加物と未改質樹脂との総合重量を基準としている。
【0036】
【表1】
【0037】
樹脂試料を、80℃で脱ガスし、その後硬化させるために180℃のターゲット温度に2℃/分でランプし、2時間保持した。ジアミノジフェニルスルフィド(AFD)を含有する試料に関する応力緩和試験の結果を図1に示す。図1のデータは、AFDの添加がより高い量(重量%)で応力緩和挙動の低下をもたらしたことを示す。
【0038】
硫黄-MDEA反応生成物(実施例1において調製された)を含有する樹脂試料に関する応力緩和試験の結果を図2に示す。図2のデータは、硫黄-MDEA反応生成物の添加が、図1に示されるよりも低い量(重量%)でAFDの添加よりも応力緩和弾性率のより迅速な低下をもたらしたことを示す。
【0039】
硫黄-PY306反応生成物(実施例2において調製された)を含有する樹脂試料に関する応力緩和試験の結果を図3に示す。図3のデータは、硫黄-PY306反応生成物の添加が、図1に示されるよりも低い量(重量%)でAFDの添加よりも応力緩和弾性率のより迅速な低下をもたらしたことを示す。
【0040】
硬化試料(表1からの実験No.1~8)をまた、硬化材料のリサイクル可能性への応力緩和の有効性を理解するために、還流(200℃)ベンジルアルコール中で8時間コンディショニング実験にかけた。結果を下の表2に示す。これらの結果は、硫黄反応生成物を含有する熱硬化性樹脂から調製された試料が、未改質熱硬化性樹脂から調製された試料よりも早く及びまたAFDを含有する熱硬化性樹脂から調製された試料よりも早く破砕したことを示す。
【0041】
【表2】
【0042】
RTは室温を意味する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】