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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】下気道障害の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230705BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230705BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230705BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P11/00
A61P39/02
A61P29/00
A61K45/00
A61K31/506
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/10
A61K9/19
A61P43/00 121
A61K9/107
A61K9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533398
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 US2020062853
(87)【国際公開番号】W WO2021113334
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/985,167
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/106,097
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/942,424
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519165489
【氏名又は名称】アルタバント・サイエンシズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ALTAVANT SCIENCES GmbH
【住所又は居所原語表記】VIADUKTSTRASSE 8,4051 BASEL,SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バラノフスキ、リン、エー.
(72)【発明者】
【氏名】ロルティ、ブライアン、エー.
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ、ジェームズ、ピー.
(72)【発明者】
【氏名】キルゴア、ケネス、エス.
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ、ウィリアム、ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リング、スティーヴン、エー.
(72)【発明者】
【氏名】ハシュテット、ジェイン、イー.
(72)【発明者】
【氏名】クライザー、ケイトリン、アール.
(72)【発明者】
【氏名】パラシオス、ミッシェル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076BB22
4C076BB27
4C076CC04
4C076CC15
4C076DD09F
4C076DD23
4C076DD26Z
4C076DD41
4C076DD42Z
4C076DD43Z
4C076DD49
4C076DD51Z
4C076DD55
4C076DD57Z
4C076DD67
4C076FF16
4C076FF61
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA44
4C084DA59
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA44
4C084MA57
4C084NA10
4C084ZB112
4C084ZB332
4C084ZB352
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZC37
4C086ZC75
(57)【要約】
下気道の炎症性疾患の処置を必要とするヒト対象における、前記処置のための方法であって、有効量のアナキンラを前記ヒト対象において下気道に直接投与することを含み、前記のアナキンラの有効量が、約0.1mg~約200mg/日であり;前記炎症性疾患が、毒吸入肺損傷、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、及び肺炎からなる群より選択される、方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下気道の炎症性疾患の処置を必要とするヒト対象における、前記処置のための方法であって、有効量のアナキンラを前記ヒト対象において下気道に直接投与することを含み、
前記のアナキンラの有効量が、約0.1mg~約200mg/日であり;
前記炎症性疾患が、毒吸入肺損傷、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、及び肺炎からなる群より選択される、前記方法。
【請求項2】
前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学兵器剤が、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の環境毒性物質及び/又は工業毒性物質の吸入によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記環境毒性物質及び工業毒性物質が、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化錫、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム、及び金属ヒュームからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記毒吸入肺損傷が、塵肺又は閉塞性細気管支炎である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記毒吸入肺損傷が、ベーピング関連肺損傷である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ベーピング関連肺損傷が、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル類、ベンゼン、トルエン、金属、細菌性エンドトキシン、及び真菌グルカンからなる群より選択される一つ又は複数の剤の吸入によって引き起こされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記炎症性疾患が、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、及び肺炎からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ARDSが、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、229E、NL63、OC43、及びHKU1からなる群より選択されるウイルスによって引き起こされるウイルス感染から生じる合併症に関連する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アナキンラが、吸入を介して又は下気道内への直接点滴注入を介して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
アナキンラが、ネブライザ、吸入器、及び超小型エアロライザからなる群より選択される送達デバイスによって投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記送達デバイスが、メッシュネブライザである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記送達デバイスが、エアロゾル化ネブライザである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
アナキンラが、アナキンラ及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬的に許容可能な担体が、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物が、スプレー、エアロゾル、ゲル、溶液、エマルジョン、又は懸濁液である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記のアナキンラの有効量が、約0.1mg~約100mg/日、約0.1mg~約50mg/日、又は約0.1mg~約10mg/日である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記のアナキンラの有効量が、約0.125mg~5.0mg/日である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記の下気道の炎症性疾患に罹患している前記ヒト対象に第二の治療剤をアナキンラと組み合わせて投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第二の治療剤が、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤、抗生物質、抗真菌化合物、及び粘液調節薬からなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第二の治療剤が、ロダトリスタットエチルである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アナキンラが、アナキンラ、並びに、緩衝剤、安定剤、及び浸透張力調節剤からなる群よりそれぞれ選択される一つ又は複数の追加成分を含む医薬組成物で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、並びに、緩衝剤、安定剤、及び浸透張力調節剤からなる群よりそれぞれ選択される一つ又は複数の追加成分を含む医薬組成物。
【請求項26】
前記インターロイキン-1受容体アンタゴニストが、アナキンラである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記緩衝剤が、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
約0.5mM~20mMの濃度のクエン酸塩を含む液体組成物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記のクエン酸塩の濃度が、約20mMである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
リン酸塩を約1mM~50mMの濃度で含む液体組成物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記のリン酸塩の濃度が、約10mMである、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
ヒスチジンを約5mM~50mMの濃度で含む液体組成物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記のヒスチジンの濃度が、約10mMである、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
グルタミン酸塩を約1mM~50mMの濃度で含む液体組成物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項35】
ピロリン酸塩を約1mM~50mMの濃度で含む液体組成物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項36】
4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)を約10mM~50mMの濃度で含む液体組成物である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記の4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)の濃度が、約10mMである、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記安定剤が、界面活性剤、キレート剤、糖、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(BrijTM35)、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
ポリソルベート80を約0.01%~1%(w/v)の濃度で含む液体組成物である、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記のポリソルベート80の濃度が、約0.1%(w/v)である、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
ポリソルベート20を約0.00001%~1%(w/v)、約0.00001%~0.01%(w/v)、約0.00001%(w/v)、約0.0001%(w/v)、又は約0.001%(w/v)の濃度で含む液体組成物である、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項43】
ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(BrijTM35)を約0.00001%~0.01%(w/v)の濃度で含む液体組成物である、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項44】
ソルビタントリオレエート(SpanTM85)を約0.1%~5.0%(w/v)、約0.8(w/v)、0.85(w/v)、又は0.86%(w/v)の濃度で含む液体組成物である、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムである、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項46】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを約0.05mM~1mMの濃度で含む液体組成物である、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の濃度が、約0.5mMである、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記糖が、トレハロース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記医薬組成物が、液体組成物であり、前記糖の濃度が約40%(w/v)超である、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記浸透張力調節剤が、塩化ナトリウム、マンニトール、タウリン、ヒドロキシプロリン、プロリン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項51】
塩化ナトリウムを約120mM~180mMの濃度で含む液体組成物である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記の塩化ナトリウムの濃度が、約140mMである、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
マンニトールを約5mg/mL~50mg/mLの濃度で含む液体組成物である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記のマンニトールの濃度が、約10mg/mLである、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
タウリンを約15mg/mL~50mg/mLの濃度で含む液体組成物である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記のタウリンの濃度が、約30mg/mLである、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
ヒドロキシプロリンを約15mg/mL~50mg/mLの濃度で含む液体組成物である、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記のヒドロキシプロリンの濃度が、約26mg/mLである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記追加成分が、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記追加成分が、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート20、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記追加成分が、リン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記追加成分が、リン酸塩、スクロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記追加成分が、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項68】
前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項69】
前記追加成分が、リン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート20、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項70】
前記追加成分が、リン酸塩、スクロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項71】
前記追加成分が、リン酸塩、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項72】
前記浸透張力調節剤が、タウリン、ヒドロキシプロリン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項67~請求項71のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項73】
前記追加成分が、クエン酸塩、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項74】
前記追加成分が、クエン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項75】
前記追加成分が、グルタミン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項76】
前記追加成分が、グルタミン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項77】
前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、及び塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項78】
液体組成物である、請求項25~請求項27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項79】
固体組成物である、請求項25~請求項27のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項80】
前記固体組成物が、凍結乾燥物である、請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項81】
凍結乾燥物から再構成される、請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項82】
請求項24~請求項81のいずれか一項に記載の医薬組成物、及び、患者の呼吸器への前記医薬組成物の直接投与に適した送達デバイスを含む、キット。
【請求項83】
前記呼吸器が、下気道を含む、請求項82に記載のキット。
【請求項84】
前記呼吸器が、上気道を含む、請求項82に記載のキット。
【請求項85】
前記送達デバイスが、有効量の前記医薬組成物を、吸入を介して送達するように構成されている、請求項82に記載のキット。
【請求項86】
前記送達デバイスが、有効量の前記医薬組成物を、直接点滴注入を介して送達するように構成されている、請求項82に記載のキット。
【請求項87】
前記送達デバイスが、ネブライザ、吸入器、及びエアロライザからなる群より選択される、請求項82に記載のキット。
【請求項88】
前記送達デバイスが、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、定量吸入器、及び乾燥粉末吸入器からなる群より選択される、請求項82に記載のキット。
【請求項89】
前記ネブライザが、Philips InnoSpire Goネブライザ、AeroEclipse IIジェットネブライザ、及びAerogen Solo VMネブライザからなる群より選択される、請求項88に記載のキット。
【請求項90】
前記医薬組成物が液体組成物であり、前記送達デバイスが前記液体組成物を送達するように構成されている、請求項82に記載のキット。
【請求項91】
前記液体組成物のpHが、約5~8である、請求項90に記載のキット。
【請求項92】
前記液体組成物の浸透圧が、約200mOsm/kg~400mOsm/kgである、請求項90に記載のキット。
【請求項93】
前記浸透圧が、約300mOsm/kgである、請求項92に記載のキット。
【請求項94】
前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、直径約0.5μm~10μmである、請求項90に記載のキット。
【請求項95】
前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、下気道を優先的に標的とするのに適している、請求項94に記載のキット。
【請求項96】
前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、直径約5μm~50μmである、請求項90に記載のキット。
【請求項97】
前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、上気道を優先的に標的とするのに適している、請求項96に記載のキット。
【請求項98】
前記液体組成物の導電率が、2.5μS/cm未満である、請求項90に記載のキット。
【請求項99】
前記医薬組成物が固体組成物であり、前記送達デバイスが前記固体組成物を送達するように構成されている、請求項90に記載のキット。
【請求項100】
前記固体組成物が、約0.1μm~20μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する粒子を含む、請求項99に記載のキット。
【請求項101】
前記粒子のMMADが、約5μm未満である、請求項100に記載のキット。
【請求項102】
前記粒子のMMADが、約3.5μm未満である、請求項101に記載のキット。
【請求項103】
前記固体組成物が、約0.1μm~20μmの質量中央径(MMD)を有する粒子を含む、請求項100に記載のキット。
【請求項104】
前記固体組成物が、約1μm~5μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)及び約5μm~30μmの質量中央径(MMD)を有する粒子を含む、請求項90~請求項103のいずれか一項に記載のキット。
【請求項105】
MMADに対するMMDの比が、約2~30である、請求項104に記載のキット。
【請求項106】
前記のMMADに対するMMDの比が、約5~30である、請求項105に記載のキット。
【請求項107】
前記固体組成物が、約1g/cm未満のタップ密度を有する、請求項99に記載のキット。
【請求項108】
前記固体組成物が、約1~6のシワ度(ルゴシティ(rugosity))を有する、請求項99に記載のキット。
【請求項109】
前記固体組成物が、多孔質粒子を含む、請求項99に記載のキット。
【請求項110】
前記固体組成物が、膨潤性粒子を含む、請求項99に記載のキット。
【請求項111】
前記多孔質粒子が、生分解性ポリマーを含む、請求項109に記載のキット。
【請求項112】
前記固体組成物が、脂肪酸塩又はその誘導体をさらに含む、請求項99に記載のキット。
【請求項113】
前記塩が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリル乳酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項112に記載のキット。
【請求項114】
前記固体組成物が、均一な粒度分布を有する粒子を含む、請求項99に記載のキット。
【請求項115】
前記固体組成物が、不均一な粒度分布を有する粒子を含む、請求項99に記載のキット。
【請求項116】
前記固体組成物が、バイモーダルな粒度分布を有する粒子を含む、請求項99に記載のキット。
【請求項117】
前記固体組成物中のインターロイキン-1アンタゴニストのパーセント質量が、約1%~40%、40%~70%、又は70%超である、請求項99に記載のキット。
【請求項118】
前記固体組成物が、複数の容器に封入された複数の粒子を含む、請求項99に記載のキット。
【請求項119】
前記容器が、カプセル、ブリスター、及びフィルム被覆容器からなる群より選択される、請求項118に記載のキット。
【請求項120】
前記送達デバイスが、細気管支への前記医薬組成物の直接投与に適している、請求項82に記載のキット。
【請求項121】
前記送達デバイスが、肺胞組織への前記医薬組成物の直接投与に適している、請求項82に記載のキット。
【請求項122】
呼吸器の炎症性疾患の処置を必要とする患者に、請求項25~81のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、呼吸器の炎症性疾患の処置方法。
【請求項123】
前記の呼吸器の炎症性疾患が、上気道の炎症性疾患である、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記炎症性疾患が、毒吸入肺損傷、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、特発性肺線維症(IPF)、肺炎、一次移植片機能不全(PGD)、及び再かん流損傷からなる群より選択される、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記化学兵器剤が、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群より選択される、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記毒吸入肺損傷が、塩素誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)及び硫黄マスタード誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)である、請求項124に記載の方法。
【請求項128】
前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の環境毒性物質及び/又は工業毒性物質の吸入によって引き起こされる、請求項124に記載の方法。
【請求項129】
前記環境毒性物質及び工業毒性物質が、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化錫、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム、及び金属ヒュームからなる群より選択される、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記毒吸入肺損傷が、塵肺又は閉塞性細気管支炎である、請求項128に記載の方法。
【請求項131】
前記毒吸入肺損傷が、ベーピング関連肺損傷である、請求項124に記載の方法。
【請求項132】
前記ベーピング関連肺損傷が、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル類、ベンゼン、トルエン、金属、細菌性エンドトキシン、及び真菌グルカンからなる群より選択される一つ又は複数の剤の吸入によって引き起こされる、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である、請求項124に記載の方法。
【請求項134】
前記の呼吸器の炎症性疾患が、下気道の炎症性疾患である、請求項122に記載の方法。
【請求項135】
肺上皮被覆液における前記医薬組成物の持続的曝露が約15時間~約100時間である、請求項122に記載の方法。
【請求項136】
前記肺上皮被覆液における前記医薬組成物の前記持続的曝露が少なくとも24時間である、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記医薬組成物が約週1回/日~約3回/日投与される、請求項122に記載の方法。
【請求項138】
前記医薬組成物が1日約1回又は2回投与される、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
前記医薬組成物が約3分~約20分の吸入を介して投与される、請求項122に記載の方法。
【請求項140】
前記医薬組成物が約0.5mg/kg~約2mg/kgの用量で投与される、請求項122に記載の方法。
【請求項141】
前記医薬組成物が、内因性IL-1βリガンドと実質的に同様の親和性でIL-1 I型受容体に結合する、請求項122に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づく2019年12月2日に出願された米国仮出願第62/942,424号;2020年3月4日に出願された米国仮出願第62/985,167号;及び2020年10月27日に出願された米国仮出願第63/106,097号の優先権の恩恵を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
本明細書に記載された全ての特許、特許出願、及び文献技術規格は、本明細書に参照により取り込まれる。これらの文献の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0003】
本特許開示は、著作権保護の対象となる材料を含む。著作権所有者は、米国特許商標庁の特許ファイルまたは記録に現れる本特許書類又は本特許開示のファクシミリ複製に対して異議を有するものではないが、それ以外についてはあらゆる全ての著作権権を留保する。
【0004】
本発明は、医薬の分野に概して関する。より詳細には、本発明は、様々な下気道障害を処置するための薬剤として有用な化合物及び組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
閉塞性細気管支炎症候群
閉塞性細気管支炎症候群(BOS)は、空気の流れを妨げる末梢気道の閉塞を特徴とする非可逆性肺疾患である。BOSは、肺又は造血幹細胞移植後の最も一般的な合併症の1つであり、吸入毒素及びガスへの曝露後にも起こり得る。BOS患者は、息切れ、日常活動に参加する能力の減少、疲労、及び咳を経験する。BOSは、肺機能検査(FEV1)での低下として診断され、画像化(例えば、CT、X線)によって確認される。BOS疾患の進行は、同種免疫反応の活性化及び免疫細胞の浸潤を含む。さらに、肺修復経路が異常に活性化されて、線維芽細胞増殖、気道を囲む平滑筋の活性化、並びに、終末及び末端細気管支内の内腔の狭窄を引き起こす。BOSについて現在承認されているFDA療法は無い。後期臨床開発におけるものである他の薬物(例えば、吸入シクロスポリン)は、多くの欠点、失敗の歴史があり、最適な機構を有していないことがある(例えば、患者は、典型的には、カルシニューリン阻害剤を既に投与されている)。
【0006】
毒吸入肺損傷
毒吸入肺損傷は、下気道内に運ばれる毒物、例えば、化学物質及び刺激物によって引き起こされる肺へのダメージを含む。毒吸入肺損傷は、紅斑、炭素質堆積、気管支漏、重篤な炎症、多量の炭素質堆積、及び/又は気管支閉塞の程度の変動を結果として生じ得る。最も重篤なケースでは、粘膜の腐肉形成、壊死、及び腔内閉塞のエビデンスがある。毒吸入肺損傷は、吸入毒物に応じて広範囲の呼吸障害と関連し得る。
【0007】
溶解性及び粒度が異なる毒物は、呼吸器系の異なる部分に異なった影響を及ぼす。水溶性の高い吸入毒素は上気道に局在し得るが、水溶性の低いものは下気道により頻繁に局在する傾向がある。粒度のより大きい毒素は上気道に局在する傾向があるが、粒度のより小さいものは下気道に浸透する。
【0008】
毒吸入肺損傷の現在の処置ストラテジーは、関与する毒物の具体的なタイプ、曝露の継続期間、及び結果として生じる損傷の程度に応じて変動する。処置選択肢には、焼けた組織の切除とそれに続く皮膚移植片移植、常圧酸素の投与、機械的換気、蘇生、及び/又は様々な医薬品の投与が含まれ得る。Dries et al.,J.Trauma.Resuscitation.Emerg.Med.,2013,21,31-45を参照されたい。
【0009】
ジアセチル(Kreiss,K.,et al.,N.Engl.J.Med.,2002,347,330-338;Akpinar-Elci,M.,et al.,European Respiratory Journal,2004,24,298-302)、アセトアルデヒド及びホルムアルデヒド、並びに、他の揮発性化合物の吸入は、閉塞性細気管支炎(BO)の原因として実証されている。より最近における米国でのこれらの化合物への吸入曝露は、商業規模の工場、例えば、コーヒー加工施設及びポップコーン生産工場において発生しており、加工作業者は、BOに関係付けられている化合物である、浮遊するジアセチル(2,3-ブタンジオン)、2,3-ペンタンジオン、及び/又は2,3-ヘキサンジオンへの曝露の危険があり得る。
【0010】
ベーピング関連肺損傷
ベーピング関連肺損傷(vaping-associated lung injury)は、毒吸入肺損傷の一般のカテゴリー下で新たに認識されている特定の症候群グループである。既存のケーススタディにより、急性好酸球性肺炎、器質化肺炎、リポイド肺炎、びまん性肺胞障害、びまん性肺胞出血、過敏性肺炎、及び/又は巨細胞性間質性肺炎を含めた不均一な肺炎パターンの事例の集積(collection)が示されている。特定の肺炎パターンにかかわらず、ベーピング関連肺損傷の病態生理学は、炎症、気道の浮腫、及び急性肺傷害を一般的に含む。Butt et al.,N.Engl.J.Med.,2019,318,1780-1781を参照されたい。
【0011】
いくつかの毒性化合物がベーピングの生成物において同定されている:風味材料(例えば、ジアセチル)、ニコチン、カルボニル類、揮発性有機化合物(例えば、ベンゼン及びトルエン)、微量の金属元素、α-トコフェリルアセテート、並びに細菌性エンドトキシン及び真菌グルカン。Christiani,D.,N.Engl.J.Med.,Online Editorial,September 6,2019;available at https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1912032#article_citing_articlesを参照されたい。現在のところ、ベーピング関連肺損傷の処置に関する標準ガイドラインは無い。病院に入院している患者は、典型的には、抗生物質又はステロイドによって処置されるが、多くが、短期のフォローアップ期間で異常を示し続けている。Blagev et al.,The Lancet.,November 08,2019を参照されたい;https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(19)32679-0/fulltextにおいてオンラインで利用可能。
【0012】
肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)
肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)は、主に喫煙者を襲う希少疾患である。PLCHは、末梢気道における、ランゲルハンス(抗原提示細胞)及び他の炎症細胞の蓄積により、結節性炎症性病変の形成を結果として生じることを特徴とする、特定のタイプの組織球性症候群である。より進行した段階は、嚢胞性肺破壊、気道の瘢痕性傷、及び肺血管リモデリングを特徴とする。PLCHは、多くの場合、呼吸不全又は悪性腫瘍に起因して数年の期間で死に至る。現在の処置はコルチコステロイドを含むが、これが有効な処置選択肢であるか否かは不明なままである。Murakami et al.,Cell Communication and Signaling,2015,13,1-15を参照されたい。
【0013】
非嚢胞性線維症気管支拡張症
気管支拡張症は、反復性咳、痰の産生、及び反復性呼吸器感染を特徴とする不均一な慢性肺障害である。気管支拡張症の95%超が非嚢胞性線維症タイプである。死亡率は有意であり、およそ4年の観察期間で10~16%の範囲である。この疾患の病状は、気道炎症及び慢性細菌定着に至る気管支の拡張を含む。処置は、典型的には、気道洗浄、抗炎症剤、及び吸入抗生物質を含むマルチモーダルアプローチを含む。一部の患者は、いずれの現在承認されている治療アプローチにも適切に応答できず、肺葉切除又は区域切除を必要とする場合がある。Chalmers et al.,Molecular Immunology,2013,55,27-34を参照されたい。
【0014】
びまん性汎細気管支炎
びまん性汎細気管支炎は、慢性副鼻腔気管支感染、気管支周囲炎、及び空気流量の大幅な低減を特徴とする。症状には、クラックル、喘鳴、喀痰を伴う咳、及び慢性副鼻腔炎が含まれる。びまん性汎細気管支炎は、大部分が気管支拡張剤に耐性である。第一選択処置は、細菌成長を有効に阻害して炎症を低減するマクロライドの投与を含むが、いくつかの有害な副作用につながる可能性がある。Scambler et al.,Immunology,2018,154,563-573を参照されたい。
【0015】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、進行性の動脈低酸素血症、呼吸困難、及び/又は息切れによる急性呼吸不全の症候群である。ARDSの発病は、かなりの炎症を伴っている肺における富タンパク質且つ好中球性の肺浮腫の蓄積を含む。ARDSは、致死的であり、肺不全を防止するために即刻の気管内挿管及び陽圧換気を必要とする。換気と組み合わされる薬理学的処置の潜在的役割として、グルココルチコイド、界面活性剤、吸入窒素酸化物、抗酸化剤、プロテアーゼ阻害剤、及び様々な他の抗炎症剤の使用などがある。しかし、ARDSのための現在利用可能な処置選択肢は、充分に有効であることが示されていない。Park et al.,Am.J.Respir.Crit.Care.Med.,2001,164,1896-1903を参照されたい。
【0016】
反応性気道機能不全症候群(RADS)
反応性気道機能不全症候群(RADS)は、吸入刺激物への単独の急性曝露の後に突然発症する持続型ぜんそく様障害である。RADSに関連する化学性刺激物として、塩素、トルエンジイソシアネート(TDI)、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、及びホスゲンが挙げられる。RADSにおいてはコルチコステロイド及び気管支拡張剤を含めた従来のぜんそく処置が使用され得る。しかし、現在のところ、持続型RADSを有する患者への有効な処置選択肢は無い。Shakeri et al.,Occupational Med.,2008,58,205-211を参照されたい。
【0017】
閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)
閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)は、亜急性又は慢性の呼吸器系の病気を症状的に特徴とする症候群である。BOOPを有する患者は、持続型の喀痰を伴わない咳、労作時呼吸困難、軽度の発熱、及び/又は倦怠感を示すことがある。病理上、BOOPを有する患者は、炎症の程度は変動し得るが、気管支内腔、肺胞管及び肺胞に肉芽組織を有することがある。BOOPのための現在の処置選択肢は限られており、典型的には、経口コルチコステロイド治療を含む。標準の処置に応答しない少数の患者は、肺移植を必要とすることがある。Al-Ghanem et al.,Ann.Thorac.Med.,2008,3,67-75を参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
ある態様において、下気道の炎症性疾患を処置するための方法が記載される。ある一定の実施形態において、前記方法は、有効量のアナキンラをヒト対象における下気道に直接投与して、下気道(例えば、肺)の炎症を処置し、炎症性疾患を有効に処置することを含む。
【0019】
ある態様では、下気道の炎症性疾患の処置を必要とするヒト対象における、前記処置のための方法であって、有効量のアナキンラを前記ヒト対象において下気道に直接投与することを含み、
前記のアナキンラの有効量が、約0.1mg~約200mg/日であり;
前記炎症性疾患が、毒吸入肺損傷、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、及び肺炎からなる群より選択される、前記方法が記載される。
【0020】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる。
【0021】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記化学兵器剤が、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群より選択される。
【0022】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の環境毒性物質及び/又は工業毒性物質の吸入によって引き起こされる。
【0023】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記環境毒性物質及び工業毒性物質が、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化錫、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム、及び金属ヒュームからなる群より選択される。
【0024】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、塵肺又は閉塞性細気管支炎である。
【0025】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、ベーピング関連肺損傷である。
【0026】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記ベーピング関連肺損傷が、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル類、ベンゼン、トルエン、金属、細菌性エンドトキシン、及び真菌グルカンからなる群より選択される一つ又は複数の剤の吸入によって引き起こされる。
【0027】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記炎症性疾患が、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、及び肺炎からなる群より選択される。本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記ARDSが、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、229E、NL63、OC43、及びHKU1からなる群より選択されるウイルスによって引き起こされるウイルス感染から生じる合併症に関連する。
【0028】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である。
【0029】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、アナキンラが、吸入を介して又は下気道内への直接点滴注入を介して投与される。
【0030】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、アナキンラが、ネブライザ、吸入器、及び超小型エアロライザからなる群より選択される送達デバイスによって投与される。
【0031】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスが、メッシュネブライザである。
【0032】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスが、エアロゾル化ネブライザである。
【0033】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、アナキンラが、アナキンラ及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物で投与される。
【0034】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬的に許容可能な担体が、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0035】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が、スプレー、エアロゾル、ゲル、溶液、エマルジョン、又は懸濁液である。
【0036】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のアナキンラの有効量が、約0.1mg~約100mg/日、約0.1mg~約50mg/日、又は約0.1mg~約10mg/日である。
【0037】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のアナキンラの有効量が、約0.125mg~5.0mg/日である。
【0038】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記方法は、前記の下気道の炎症性疾患に罹患している前記ヒト対象に第二の治療剤をアナキンラと組み合わせて投与することをさらに含む。
【0039】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記第二の治療剤が、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤、抗生物質、抗真菌化合物、及び粘液調節薬からなる群より選択される。
【0040】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記第二の治療剤が、ロダトリスタットエチルである。
【0041】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、アナキンラが、アナキンラ、並びに、緩衝剤、安定剤、及び浸透張力調節剤からなる群よりそれぞれ選択される一つ又は複数の追加成分を含む医薬組成物で投与される。
【0042】
別の態様では、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(例えばアナキンラ)、並びに、緩衝剤、安定剤、及び浸透張力調節剤からなる群よりそれぞれ選択される一つ又は複数の追加成分を含む医薬組成物が記載される。
【0043】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記インターロイキン-1受容体アンタゴニストが、アナキンラである。
【0044】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記緩衝剤が、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0045】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、約0.5mM~20mMの濃度のクエン酸塩を含む液体組成物である。
【0046】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のクエン酸塩の濃度が、約20mMである。
【0047】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、リン酸塩を約1mM~50mMの濃度で含む液体組成物である。
【0048】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のリン酸塩の濃度が、約10mMである。
【0049】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、ヒスチジンを約5mM~50mMの濃度で含む液体組成物である。
【0050】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のヒスチジンの濃度が、約10mMである。
【0051】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、グルタミン酸塩を約1mM~50mMの濃度で含む液体組成物である。
【0052】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、ピロリン酸塩を約1mM~50mMの濃度で含む液体組成物である。
【0053】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)を約10mM~50mMの濃度で含む液体組成物である。
【0054】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記の4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)の濃度が、約10mMである。
【0055】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記安定剤が、界面活性剤、キレート剤、糖、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0056】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(BrijTM35)、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0057】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、ポリソルベート80を約0.01%~1%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。
【0058】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のポリソルベート80の濃度が、約0.1%(w/v)である。
【0059】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、ポリソルベート20を約0.00001%~1%(w/v)、約0.00001%~0.01%(w/v)、又は約0.00001%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、ポリソルベート20を約0.0001%(w/v)、又は約0.001%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。
【0060】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(BrijTM35)を約0.00001%~0.01%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。
【0061】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)を約0.1%~5.0%(w/v)、約0.8(w/v)、0.85(w/v)、又は0.86%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。
【0062】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムである。
【0063】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを約0.05mM~1mMの濃度で含む液体組成物である。
【0064】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の濃度が、約0.5mMである。
【0065】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記糖が、トレハロース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0066】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が、液体組成物であり、前記糖の濃度が約40%(w/v)超である。
【0067】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記浸透張力調節剤が、塩化ナトリウム、マンニトール、タウリン、ヒドロキシプロリン、プロリン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0068】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、塩化ナトリウムを約120mM~180mMの濃度で含む液体組成物である。
【0069】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記の塩化ナトリウムの濃度が、約140mMである。
【0070】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、マンニトールを約5mg/mL~50mg/mLの濃度で含む液体組成物である。
【0071】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のマンニトールの濃度が、約10mg/mLである。
【0072】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、タウリンを約15mg/mL~50mg/mLの濃度で含む液体組成物である。
【0073】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のタウリンの濃度が、約30mg/mLである。
【0074】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、ヒドロキシプロリンを約15mg/mL~50mg/mLの濃度で含む液体組成物である。
【0075】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のヒドロキシプロリンの濃度が、約26mg/mLである。
【0076】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0077】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0078】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、及び塩化ナトリウムを含む。
【0079】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0080】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート20、及び塩化ナトリウムを含む。
【0081】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、及び塩化ナトリウムを含む。
【0082】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0083】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、スクロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0084】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0085】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0086】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート20、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0087】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、スクロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0088】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0089】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記浸透張力調節剤が、タウリン、ヒドロキシプロリン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0090】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、クエン酸塩、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0091】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、クエン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0092】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、グルタミン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0093】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、グルタミン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0094】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、及び塩化ナトリウムを含む。
【0095】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、液体組成物である。
【0096】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、固体組成物である。
【0097】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、凍結乾燥物である。
【0098】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物は、凍結乾燥物から再構成される。
【0099】
別の態様では、本明細書に記載される実施形態のいずれか一つの医薬組成物、及び、患者の呼吸器への前記医薬組成物の直接投与に適した送達デバイスを含む、キットが記載される。
【0100】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記呼吸器が、下気道を含む。
【0101】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記呼吸器が、上気道を含む。
【0102】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスが、有効量の前記医薬組成物を、吸入を介して送達するように構成されている。
【0103】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスが、有効量の前記医薬組成物を、直接点滴注入を介して送達するように構成されている。
【0104】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスが、ネブライザ、吸入器、及びエアロライザからなる群より選択される。
【0105】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスが、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、定量吸入器、及び乾燥粉末吸入器からなる群より選択される。
【0106】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記ネブライザが、Philips InnoSpire Goネブライザ及びAerogen Solo VMネブライザからなる群より選択される。
【0107】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が液体組成物であり、前記送達デバイスが前記液体組成物を送達するように構成されている。
【0108】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記液体組成物のpHが、約5~8である。
【0109】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記液体組成物の浸透圧が、約200mOsm/kg~400mOsm/kgである。
【0110】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記浸透圧が、約300mOsm/kgである。
【0111】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、直径約0.5μm~10μmである。
【0112】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、下気道を優先的に標的とするのに適している。
【0113】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、直径約5μm~50μmである。
【0114】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、上気道を優先的に標的とするのに適している。
【0115】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記液体組成物の導電率が、2.5μS/cm未満である。
【0116】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が固体組成物であり、前記送達デバイスが前記固体組成物を送達するように構成されている。
【0117】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、約0.1μm~20μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する粒子を含む。
【0118】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記粒子のMMADが、約5μm未満である。
【0119】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記粒子のMMADが、約3.5μm未満である。
【0120】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、約0.1μm~20μmの質量中央径(MMD)を有する粒子を含む。
【0121】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、約1μm~5μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)及び約5μm~30μmの質量中央径(MMD)を有する粒子を含む。
【0122】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、MMADに対するMMDの比が、約2~30である。
【0123】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記のMMADに対するMMDの比が、約5~30である。
【0124】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、約1g/cm未満のタップ密度を有する。
【0125】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、約1~6のシワ度(ルゴシティ(rugosity))を有する。
【0126】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、多孔質粒子を含む。
【0127】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、膨潤性粒子を含む。
【0128】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記多孔質粒子が、生分解性ポリマーを含む。
【0129】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、脂肪酸塩又はその誘導体をさらに含む。
【0130】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記塩が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリル乳酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0131】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、均一な粒度分布を有する粒子を含む。
【0132】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、不均一な粒度分布を有する粒子を含む。
【0133】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、バイモーダルな粒度分布を有する粒子を含む。
【0134】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物中の前記インターロイキン-1アンタゴニストのパーセント質量が、約1%~40%、40%~70%、又は70%超である。
【0135】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記固体組成物が、複数の容器に封入された複数の粒子を含む。
【0136】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記容器が、カプセル、ブリスター、及びフィルム被覆容器からなる群より選択される。
【0137】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスが、細気管支への前記医薬組成物の直接投与に適している。
【0138】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記送達デバイスが、肺胞組織への前記医薬組成物の直接投与に適している。
【0139】
さらに別の態様では、呼吸器の炎症性疾患の処置を必要とする患者に、本明細書に記載される実施形態のいずれか一つの医薬組成物を投与することを含む、呼吸器の炎症性疾患の処置方法が開示される。
【0140】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記の呼吸器の炎症性疾患が、上気道の炎症性疾患である。
【0141】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記炎症性疾患が、毒吸入肺損傷、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、特発性肺線維症(IPF)、肺炎、一次移植片機能不全(PGD)、及び再かん流損傷からなる群より選択される。
【0142】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる。
【0143】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記化学兵器剤が、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群より選択される。
【0144】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、塩素誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)及び硫黄マスタード誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)である。
【0145】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の環境毒性物質及び/又は工業毒性物質の吸入によって引き起こされる。
【0146】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記環境毒性物質及び工業毒性物質が、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化錫、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム、及び金属ヒュームからなる群より選択される。
【0147】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、塵肺又は閉塞性細気管支炎である。
【0148】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記毒吸入肺損傷が、ベーピング関連肺損傷である。
【0149】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記ベーピング関連肺損傷が、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル類、ベンゼン、トルエン、金属、細菌性エンドトキシン、及び真菌グルカンからなる群より選択される一つ又は複数の剤の吸入によって引き起こされる。
【0150】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である。
【0151】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記の呼吸器の炎症性疾患が、下気道の炎症性疾患である。
【0152】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、肺上皮被覆液における前記医薬組成物の持続的曝露が約15時間~約100時間である。本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記肺上皮被覆液における前記医薬組成物の前記持続的曝露が少なくとも24時間である。
【0153】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が約週1回/日~約3回/日投与される。本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が1日約1回又は2回投与される。
【0154】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が約3分~約20分の吸入を介して投与される。
【0155】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が約0.5mg/kg~約2mg/kgの用量で投与される。
【0156】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つでは、前記医薬組成物が、内因性IL-1βリガンドと実質的に同様の親和性でIL-1 I型受容体に結合する。
【0157】
以下の図は、本発明の例示的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0158】
図1図1は、IL-1シグナリングによって媒介される自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を標的とするrhIL-1Raの作用機構を示す。
図2図2は、ALTA-2530製剤の様々な実施形態に関するチェッカーボード表を示す。
図3図3は、ALTA-2530の前製剤試験のための段階的アプローチを示す。
図4図4は、健康なボランティア及びBOS患者においてALTA-2530の単回投薬/複数回漸増投薬(single and/or multiple ascending doses(SAD/MAD))を使用するフェーズ1試験プロトコルを示す。
図5図5は、12週でPOC暫定措置を施すBOS患者におけるALTA-2530のフェーズ2b/3試験を示す。
図6図6は、ラットへの単回投与後のELF及び血清におけるrhIL-1Raの濃度対時間プロファイルを示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0159】
定義
以下は、本明細書において使用されている用語の定義である。本明細書における群又は用語について付与されている冒頭の定義は、別途示されない限り、個々に又は別の群の部分として、本明細書全体にわたるかかる群又は用語に適用される。別途定義されていない限り、本明細書において使用されている全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0160】
用語「上気道」又は「上部呼吸器」は、本明細書において使用されているとき、フレア又は鼻孔から軟口蓋までの経路を含めた解剖学的部位を指す又は記載するものであり、サイナスを含む。
【0161】
用語「下気道」又は「下部呼吸器」は、本明細書において使用されているとき、気管及び肺を含む、喉頭より下方の解剖学的部位を指す又は記載するものである。
【0162】
用語「処置すること」、「処置」、及び「治療」は、本明細書において使用されているとき、障害の進行、重篤度及び/又は継続期間の企図された低減又は改善、或いは、1又は複数のモダリティ(例えば、本発明の化合物若しくは組成物などの1若しくは複数の治療剤)の投与から生じるそれらの1又は複数の症状の企図された改善を指す。
【0163】
本明細書において使用されているとき、用語「防止する」、「防止すること」及び「防止」は、医薬(例えば、予防剤若しくは治療剤)の投与、又は治療の組み合わせ(例えば、予防剤若しくは治療剤の組み合わせ)の投与から生じる、対象における障害又は症状の再発、発症、又は進展の防止又は阻害を指す。
【0164】
本明細書において使用されているとき、「治療有効量」又は「有効量」は、所望の成果を達成する又は促進するのに必要又は充分であるあらゆる量を指す。いくつかの場合において、有効量は、治療有効量である。治療有効量は、対象において所望の生物学的応答を促進する又は達成するのに必要又は充分であるあらゆる量を指す。いずれの特定の用途のための有効量も、処置中である疾患又は状態、投与中である特定の剤、対象のサイズ、又は疾患若しくは状態の重篤度などの因子に応じて変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく特定の剤の有効量を経験的に決定し得る。
【0165】
本明細書において使用されているとき、用語「対象」及び「患者」は、本明細書において互換可能に使用されている。用語「対象(単数)」及び「対象(複数)」は、動物、好ましくは、非霊長類及び霊長類(例えば、カニクイザルなどのサル、チンパンジー、及びヒト)を含めた哺乳類、より好ましくは、ヒトを指す。用語「動物」はまた、限定されないが、ネコ及びイヌなどのコンパニオンアニマル;動物園動物;野生動物;反すう動物、非反すう動物、家畜及び家禽(例えば、ウマ、畜牛、ヒツジ、ブタ、シチメンチョウ、アヒル、及びニワトリ)などの農場又は運動競技用動物;並びに実験動物、例えば、齧歯動物(例えば、マウス、ラット)、ウサギ;及びモルモット、並びに、遺伝子的に又は他のもののいずれかでクローン化又は操作されている動物(例えば、トランスジェニック動物)も含む。
【0166】
本明細書において使用されているとき、「1つ(a)」又は「1つ(an)」は、別途明確に示されていない限り、少なくとも1を意味する。用語「約」は、別途示されない限り、当該用語によって修飾されている値の上下10%以下である値を指す。例えば、用語「約5%(w/w)」は、4.5%(w/w)~5.5%(w/w)の範囲を意味する。
【0167】
本明細書において使用されているとき、別途示されない限り、用語「組成物」及び「本発明の組成物」は、互換可能に使用されている。別途記述されない限り、上記用語は、薬物物質(例えば、アナキンラ)を含有する医薬組成物及び栄養組成物を包含することが意図されており、これらに限定されない。前記組成物は、薬理学的活性を欠いている、又は、疾患の診断、治癒、緩和、処置、若しくは防止に対する他の直接的影響を欠いている、又は、ヒトの構造若しくは任意の機能に影響することを欠いている不活性な成分又は化合物である1又は複数の「添加剤(excipients)」を含有していてもよい。
【0168】
本明細書において使用されているとき、用語「ビヒクル」は、本発明の化合物又は組成物と共に貯蔵され、輸送され、及び/又は投与される希釈剤、アジュバント、添加剤、担体、又はフィラーを指す。
【0169】
本明細書において使用されているとき、句「医薬的に許容可能な塩」は、本発明の化合物の医薬的に許容可能な有機又は無機塩を指す。
【0170】
本明細書において使用されているとき、用語「医薬的に許容可能な溶媒和物」は、1又は複数の溶媒分子及び本発明の化合物の会合を指す。医薬的に許容可能な溶媒和物を形成する溶媒の例として、限定されないが、水、生理食塩水、水-塩混合物、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、ポリエチレングリコール及びエタノールアミンが挙げられる。
【0171】
本明細書において使用されているとき、用語「医薬的に許容可能な」は、連邦若しくは州政府の規制機関によって承認されていること、又は、動物における、より詳細にはヒトにおける使用に関する米国薬局方若しくは他の概して認識されている薬局方において列挙されていることを意味する。
【0172】
炎症性疾患を処置する方法
一態様において、炎症性疾患を処置するための方法を記載する。ある一定の実施形態において、前記方法は、有効量のアナキンラを前記ヒト対象において下気道に直接投与することを含む。アナキンラは、ヒトインターロイキン-1受容体アンタゴニストタンパク質(rhIL-1ra)の組み換え及び操作バージョンである。いくつかの実施形態において、前記方法は、有効量の、本明細書に記載されているアナキンラの新規の製剤であるALTA-2530を投与することを含む。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、アナキンラの吸入製剤である。
【0173】
IL-1受容体活性は、プロスタグランジン、サイトカイン、及びケモカインを含めた多数の二次炎症性メディエータを誘導する。アナキンラは、インターロイキン-1ファミリー(「IL-1」)の部分である内因性IL-1α及びIL-1βサイトカインの生物活性を、インターロイキン-1 I型受容体(IL-1RI)に結合するIL-1α及びIL-1βを競合的に阻害することによって遮断する。
【0174】
アナキンラは、本明細書に開示されている炎症性疾患を有するヒト対象において、下気道、例えば、肺に直接投与されることにより、前記炎症性疾患を有効に処置し得ることが驚くべきことに見出された。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されている炎症性疾患は、下気道に関連する又は少なくとも部分的に関連する。いずれの特定の理論によって拘束されることも望まないが、本明細書に開示されている炎症性疾患を有するヒト対象において、IL-1α及びIL-1βが、炎症を誘発するインターロイキン-1 I型受容体に結合するとされており、また、アナキンラがこれらのIL-1サイトカインの活性を下気道に局所に遮断することにより炎症及び炎症性疾患を有効に処置するとされている。
【0175】
そのため、一態様において、処置を必要とするヒト対象において下気道の炎症性疾患を処置するための方法であって、有効量のアナキンラを前記ヒト対象において下気道に直接投与すること;を含み、前記炎症性疾患が、毒吸入肺損傷、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、及び肺炎からなる群より選択される、前記方法を記載する。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、肺の炎症性疾患である。いくつかの実施形態において、前記炎症性疾患は、肺炎または塵肺である。いくつかの実施形態において、前記のアナキンラの有効量は、約0.1mg~約200mg/日である。
【0176】
本明細書において使用されているとき、毒吸入肺損傷は、1又は複数の異物及び/又は毒物の吸入の結果としての肺へのあらゆる損傷(例えば、炎症又はダメージ)を含む。いくつかの実施形態において、毒吸入肺損傷を有する対象は、IL-1α及びIL-1βによって媒介される炎症に罹患しており、アナキンラは、これらのサイトカインの活性を下気道に局所的に遮断することにより、炎症及び毒吸入肺損傷を有効に処置する。
【0177】
いくつかの実施形態において、前記毒吸入肺損傷は、一つ又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる。化学兵器剤の非限定例として、塩素ガス及び硫黄マスタードが挙げられる。硫黄マスタード吸入損傷のための承認されている処置は無い。マスタードガスは、肺における出血/水疱形成、粘膜へのダメージ、及び肺浮腫などの急性効果、並びに実質線維化及びBOSなどの慢性効果を引き起こす。当該分野において公知の化学兵器剤の他の例も予期されている。塩素ガスは、急性肺浮腫、気道過敏性、及びインフラマソーム活性化などの急性効果、並びに気道過敏性及びBOSなどの慢性効果を引き起こす。いくつかの実施形態において、前記毒吸入肺損傷は、塩素誘発性BOSである。いくつかの実施形態において、前記毒吸入肺損傷は、硫黄マスタード誘発性BOSである。
【0178】
他の実施形態において、前記毒吸入肺損傷は、1又は複数の環境毒性物質及び/又は工業毒性物質の吸入によって引き起こされる。様々な毒物が、環境(天然又は人工)及び工業環境において存在する。ヒト対象は、(例えば、作業の間に)これらの因子と接触して吸入して、炎症に至る肺損傷に罹患し得る。環境毒性物質及び工業毒性物質の非限定例として、イソシアネート(例えば、トルエンジイソシアネート)、窒素酸化物、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化錫、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム、及び金属ヒューム(例えば、銅、マグネシウム、ニッケル、銀又は亜鉛によって発生するヒューム)が挙げられる。いくつかの具体的な実施形態において、前記毒吸入肺損傷は、塵肺である。本明細書において使用されているとき、塵肺は、様々な固体粒子の吸入によって引き起こされる間質性肺疾患のクラスを指す。いくつかの具体的な実施形態において、前記毒吸入肺損傷は、「ポップコーン肺」と一般的に称されている閉塞性細気管支炎である。いくつかの具体的な実施形態において、前記閉塞性細気管支炎は、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、及び2,3-ヘキサンジオンからなる群より選択される1又は複数の工業毒性物質の吸入によって引き起こされる。
【0179】
さらに他の実施形態において、前記毒吸入肺損傷は、ベーピング関連肺損傷である。ベーピング、又は、電子たばこを使用することにより、ユーザーに有害な化学物質を吸入させ、結果として、肺損傷を生じさせ得る。近年、米国において報告されているベーピング関連肺損傷のケースにおいて大きな成長がある。いくつかの実施形態において、電子たばこユーザーは、電子たばこ液体中に見られる有害な化学物質、例えば、肺への損傷、例えば、熱傷、炎症を引き起こす、ジアセチルを吸入する。ベーピング関連肺損傷を引き起こす電子たばこ中の有害な化学物質の他の非限定例として、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル類、揮発性有機化合物(例えば、ベンゼン及びトルエン)、微量の金属元素、α-トコフェリルアセテート、並びに細菌性エンドトキシン及び真菌グルカンが挙げられる。いくつかの実施形態において、前記ベーピング関連肺損傷は、肺炎である。いくつかの具体的な実施形態において、前記ベーピング関連肺損傷は、「ポップコーン肺」と一般的に称されている閉塞性細気管支炎である。
【0180】
なお他の実施形態において、前記炎症性疾患は、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、及び肺炎からなる群より選択される。
【0181】
肺ランゲルハンス細胞組織球症は、喫煙者において、より一般的に生じる肺疾患である。いくつかの実施形態において、肺ランゲルハンス細胞組織球症を有する対象は、IL-1によって媒介される炎症に罹患しており、アナキンラは、IL-1α及びIL-1βの活性を下気道に局所的に遮断することにより、肺ランゲルハンス細胞組織球症を有効に処置する。
【0182】
非嚢胞性線維症気管支拡張症及びびまん性汎細気管支炎疾患において、肺の炎症を誘発する様々な生物学的経路が活性化される。いくつかの実施形態において、下気道の非嚢胞性線維症気管支拡張症を有する対象は、IL-1によって媒介される炎症に罹患しており、アナキンラが、IL-1α、IL-1βの活性を下気道に局所的に遮断することにより、非嚢胞性線維症気管支拡張症を有効に処置する。他の実施形態において、下気道のびまん性汎細気管支炎を有する対象は、IL-1によって媒介される炎症に罹患しており、アナキンラが、IL-1α、IL-1βの活性を下気道に局所的に遮断することにより、びまん性汎細気管支炎を有効に処置する。
【0183】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、肺不全を防止するために即刻の機械的換気を必要とする致死的な疾患である。いくつかの実施形態において、ARDSは、SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV、229E、NL63、OC43、及びHKU1によって引き起こされるウイルス感染から生じる合併症に関連する。いくつかの実施形態において、ARDSを有する対象は、IL-1によって媒介される炎症に罹患しており、アナキンラが、IL-1α、IL-1βの活性を下気道に局所的に遮断することにより、ARDSを有効に処置する。
【0184】
いくつかの実施形態において、処置対象となるヒト対象は、吸入刺激物への単一の急性曝露によって助長される持続型ぜんそく様障害を指す反応性気道機能不全症候群(RADS)に罹患している。いくつかの実施形態において、RADSを有する前記対象は、IL-1によって媒介される炎症に罹患しており、アナキンラが、IL-1α、IL-1βの活性を下気道に局所的に遮断することにより、RADSを有効に処置する。
【0185】
いくつかの実施形態において、処置対象となるヒト対象は、肺の細気管支(肺を通しての末梢気道)及び肺胞(小さな空気嚢)を侵襲する器質化肺炎から生じる肺疾患のタイプである、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)に罹患している。BOOPは、肺の細気管支及び肺胞の炎症を引き起こす。いくつかの実施形態において、BOOPを有する前記対象は、IL-1によって媒介される炎症に罹患しており、アナキンラが、IL-1α、IL-1βの活性を下気道に局所的に遮断することにより、BOOPを有効に処置する。
【0186】
いくつかの実施形態において、処置対象となるヒト対象は、BOSに罹患している。BOSでは、宿主T細胞が外来抗原を認識し、肺に浸潤して急性拒絶を誘発する。BOSは、T細胞、B細胞及び自然免疫細胞の慢性拒絶及び浸潤の後に起こる。免疫細胞は、線維症及び気道閉塞を促進する。損傷は、インフラマソーム活性化及びIL-1放出を誘発するDAMP/PAMPを活性化する。IL-1は、マクロファージ、樹状細胞、及びマスト細胞によって炎症サイトカイン産生を増加させる自然免疫応答を駆動する。IL-1はまた、好中球動員及びエフェクター機能も増加させ、NK細胞からのIFN-yの放出を刺激する。IL-1はまた、CD8+T細胞の発生及び細胞毒性グランザイムBの放出を促進することを含む適応免疫を刺激する。適応免疫におけるIL-1の役割はまた、Th17ヘルパーT細胞へのCD4+T細胞集団及び分化を向上させ、メモリーT細胞の機能及びT細胞のプライミングを支援し、細胞毒性サイトカイン放出を促進する。
【0187】
いくつかの実施形態において、BOSに罹患しているヒト対象は、rhIL-1Ra、例えば、アナキンラが下気道に投与される。いくつかの実施形態において、アナキンラの製剤はALTA-2530である。いくつかの実施形態において、前記rhIL-1Raは、IL-1シグナリングを阻害して、IL-α及びIL-1βの両方のシグナリングを遮断する。図1は、rhIL-1Ra、例えば、ALTA-2530の作用機構を示し、自然免疫反応及び適応免疫反応の両方が、IL-1シグナリング(IL-α及びIL-1βの両方のシグナリング)によって媒介される。
【0188】
いくつかの実施形態において、アナキンラは、吸入を介して又は下気道内への直接点滴注入を介して投与される。ある一定の実施形態において、下気道にアナキンラを直接投与するために送達デバイスが使用される。前記送達デバイスの非限定例として、ネブライザ、吸入器、及び超小型エアロライザが挙げられる。いくつかの具体的な実施形態において、前記送達デバイスは、乾燥粉末吸入器である。いくつかの具体的な実施形態において、前記送達デバイスは、メッシュネブライザである。
【0189】
第二の治療剤
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法は、下気道の炎症性疾患に罹患しているヒト対象に、第二の治療剤をアナキンラと組み合わせて投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記第二の治療剤は、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤、抗生物質、抗真菌化合物、アミロリド、抗ヒスタミン剤、抗コリン作用薬、粘液溶解薬、及びステロイドからなる群より選択される。いくつかの具体的な実施形態において、前記第二の治療剤は、ロダトリスタットエチルである。
【0190】
一実施形態において、前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)は、他の活性又は薬理剤、例えば、UTP、アミロリド、抗生物質、抗ヒスタミン剤、抗コリン作用薬、抗炎症剤、及び粘液溶解薬(例えば、n-アセチル-システイン)と併せて投与されてもよい。前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)を、限定されないが、セリン及び他のプロテアーゼ阻害剤、ガンマ-インターフェロン、エンケファリナーゼ、ヌクレアーゼ、コロニー刺激因子、アルブミン、並びに抗体を含めた他の治療用ヒトタンパク質と併せて投与することが有用でもあり得る。前記前炎症性サイトカイン阻害剤は、1又は複数の他の薬理剤と逐次的に又は同時に投与されてよい。前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)及び薬理剤の量は、例えば、どのタイプの薬剤が使用されるか、処置中の下気道炎症性疾患のタイプ、並びに投与のスケジューリング及び経路に依る。哺乳類(例えば、ヒト)への前炎症性サイトカイン阻害剤の投与後、当該哺乳類の生理学的状態は、当業者に周知の様々な方法でモニタリングされ得る。
【0191】
別の実施形態において、下気道の障害を処置するのに使用される組成物は、前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ又はALTA-2530)、並びに、限定されないが、粘液調節薬化合物、コルチコステロイド、界面活性剤、抗コリン作用薬化合物、気管支拡張剤、ヌクレアーゼ、抗生物質、抗ウイルス剤、及び血管新生阻害剤を含めた他の化合物を含んでいてよい。前記第二の治療剤の追加の例は、米国特許第8,940,683号、cols.23-32及び47-51に開示されており、その内容は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0192】
インターロイキン-1受容体アンタゴニストの組成物
ある一定の実施形態において、本明細書においてALTA-2530と称される、IL1-raを含む新規の医薬組成物を記載する。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、LT後患者における障害されたかん流を解決して全身性副作用を制限する吸入を介して標的組織に直接送達される。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、BOSにおける自然免疫応答を標的とする新規の作用機構を有する。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、成功した初期の臨床経験に基づく強い安全プロファイルを示す。
【0193】
ある一定の実施形態において、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、並びに、緩衝剤、安定剤、及び浸透張力調節剤からなる群よりそれぞれ選択される1又は複数の追加成分を含む医薬組成物を記載する。
【0194】
いくつかの実施形態において、前記インターロイキン-1受容体アンタゴニストは、アナキンラである。他のインターロイキン-1受容体アンタゴニストも予期されている。ある一定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、ネブライザ送達のためのアナキンラの製剤の例である。
【0195】
いくつかの実施形態では、前記緩衝剤が、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、グルタミン酸塩、ピロリン酸塩、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、約0.5mM~20mMの濃度のクエン酸塩を含む液体組成物である。
【0196】
いくつかの実施形態では、前記のクエン酸塩の濃度が、約20mMである。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、リン酸塩を約1mM~50mM、又は約10mMの濃度で含む液体組成物である。
【0197】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、ヒスチジンを約5mM~50mM、又は約10mMの濃度で含む液体組成物である。
【0198】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、グルタミン酸塩を約1mM~50mMの濃度で含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、ピロリン酸塩を約1mM~50mMの濃度で含む液体組成物である。
【0199】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)を約10mM~50mM、又は約10mMの濃度で含む液体組成物である。
【0200】
いくつかの実施形態では、前記安定剤が、界面活性剤、キレート剤、糖、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記界面活性剤が、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(BrijTM35)、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0201】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、ポリソルベート80を約0.01%~1%(w/v)、又は約0.1%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。
【0202】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、ポリソルベート20を約0.00001%~1%(w/v)、又は約0.00001%~0.01%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、ポリソルベート20を約0.0001%(w/v)、又は約0.001%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。
【0203】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(BrijTM35)を約0.00001%~0.01%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)を約0.1%~5.0%(w/v)、約0.8(w/v)、0.85(w/v)、又は0.86%(w/v)の濃度で含む液体組成物である。
【0204】
いくつかの実施形態では、前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムである。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウムを約0.05mM~1mM又は約0.5mMの濃度で含む液体組成物である。
【0205】
いくつかの実施形態では、前記糖が、トレハロース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が、液体組成物であり、前記糖の濃度が約40%(w/v)超である。
【0206】
いくつかの実施形態では、前記浸透張力調節剤が、塩化ナトリウム、マンニトール、タウリン、ヒドロキシプロリン、プロリン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、塩化ナトリウムを約120mM~180mM又は約140mMの濃度で含む液体組成物である。
【0207】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、マンニトールを約5mg/mL~50mg/mL又は約10mg/mLの濃度で含む液体組成物である。
【0208】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、タウリンを約15mg/mL~50mg/mL又は約30mg/mLの濃度で含む液体組成物である。
【0209】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、ヒドロキシプロリンを約15mg/mL~50mg/mL又は約26mg/mLの濃度で含む液体組成物である。
【0210】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0211】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0212】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート20、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、及び塩化ナトリウムを含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、スクロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート20、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、スクロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ソルビタントリオレエート(SpanTM85)、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。
【0216】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、浸透張力調節剤、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、前記浸透張力調節剤が、タウリン、ヒドロキシプロリン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0217】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、クエン酸塩、リン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、前記追加成分が、グルタミン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、クエン酸塩、トレハロース、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、前記追加成分が、グルタミン酸塩、マンニトール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、前記追加成分が、リン酸塩、マンニトール、及び塩化ナトリウムを含む。
【0220】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、液体組成物である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、固体組成物である。
【0221】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、凍結乾燥物である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、凍結乾燥物から再構成される。
【0222】
別の態様では、本明細書に記載される実施形態のいずれか一つの医薬組成物、及び、患者の呼吸器への前記医薬組成物の直接投与に適した送達デバイスを含む、キットが開示される。
【0223】
いくつかの実施形態では、前記呼吸器が、下気道又は上気道を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、前記送達デバイスが、有効量の前記医薬組成物を、吸入を介して送達するように構成されている。いくつかの実施形態では、前記送達デバイスが、有効量の前記医薬組成物を、直接点滴注入を介して送達するように構成されている。
【0225】
いくつかの実施形態では、前記送達デバイスが、ネブライザ、吸入器、及びエアロライザからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記送達デバイスが、ジェットネブライザ、超音波ネブライザ、定量吸入器、及び乾燥粉末吸入器からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記ネブライザが、Philips InnoSpire Goネブライザ、AeroEclipse IIジェットネブライザ、及びAerogen Solo VMネブライザからなる群より選択される。
【0226】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、Philips InnoSpire Go振動メッシュ(VM)ネブライザを使用して送達される噴霧用溶液である。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前臨床ネブライザ(Aerogen Solo VMネブライザ)を使用して送達され得る噴霧用溶液である。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前臨床及び臨床試験現場で製造され得る噴霧用の臨時的調製溶液製剤であり、投薬期間及び24時間の最小の使用期間にわたって安定である。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、冷蔵温度で貯蔵された噴霧用溶液である。いくつかの実施形態において、GLP毒物学及びGMP臨床試験について開発された前記医薬組成物は、いずれのブリッジング試験も回避するために好ましくは同じ又は同等であり得る(例えば、添加剤は変えられず、比はGLP認定レベルを超えない)。いくつかの実施形態において、噴霧されたGMP臨床製剤の医薬組成物の不純物プロファイルは、GLP前臨床試験において認定された不純物限界と同様であり且つこれを超えない。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、Philips InnoSpire Goネブライザを使用して5分未満、理想的には2~3分以内に前記VMネブライザ(ネブライザへの薬物投入として表される)から10~40mgを送達するのに適した濃度(複数可)を有する臨床製剤溶液である。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、再現可能に送達され、肺用量(pulmonary lung dose)は、使用期間及び予測される投薬継続期間にわたっての化学物質及びエアロゾルの性能安定性によって実証される臨床プログラムをサポートする。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前臨床凍結/解凍試験において認定された閾値と同様又はそれを超える忍容性を有する。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前臨床ストレス安定性試験に基づく安定性を有する。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、前臨床フィルタ適合性試験に基づく純度基準を満たす。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、フィルタ適合性前臨床試験に基づく含量損失閾値を超えない。いくつかの実施形態において、噴霧されたGMP臨床製剤の前記医薬組成物の安定性は、前臨床試験において認定された安定性閾値と同様であるか又はこれを超える。いくつかの実施形態において、噴霧されたGMP臨床製剤の前記医薬組成物の使用期間は、前臨床試験において認定された使用期間と同様である。いくつかの実施形態において、噴霧されたGMP臨床製剤の前記医薬組成物の貯蔵条件は、前臨床試験において認定された貯蔵条件と同様である。いくつかの実施形態において、医薬組成物のpH、浸透圧、及び外観は、前臨床試験において認定された尺度と同様である。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物のタンパク質濃度は、前臨床試験において認定された濃度と同様である。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物の純度は、RPHPLC、SE-HPLC、還元及び非還元CE-SDS、並びにIEX-HPLC前臨床試験において認定された尺度と同様である。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物における異物及び粒子状物、並びにサブ可視粒子のレベルは、前臨床試験において認定されたレベルと同様である。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物における異物及び粒子状物、並びにサブ可視粒子のレベルは、前臨床試験において認定されたレベルと同様である。いくつかの実施形態において、噴霧されたGMP臨床製剤の前記医薬組成物のNGIによるエアロゾル粒度分布は、USP601において列挙されている粒度分布と同様であり得る。いくつかの実施形態において、呼吸模擬装置を使用した、前記医薬組成物の送達用量は、投薬の全継続期間にわたっての、USP1601及びUSP601において列挙されている用量と同様であり得る。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物の効能は、前臨床細胞ベースバイオアッセイ試験において認定された効能と同様であり得る。いくつかの実施形態において、円偏光二色性、粘度、表面張力、製剤密度、液滴サイズ及び分布(例えば、Malvern Spraytec又は同等のものによって測定される)、動的光散乱(DLS)、及び濁度の前記医薬組成物の尺度は、前臨床試験において認定された尺度と同様であり得る。
【0227】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が液体組成物であり、前記送達デバイスが前記液体組成物を送達するように構成されている。いくつかの実施形態では、前記液体組成物のpHが、約5~8である。
【0228】
いくつかの実施形態では、前記液体組成物の浸透圧が、約200mOsm/kg~400mOsm/kgである。いくつかの実施形態では、前記浸透圧が、約300mOsm/kgである。
【0229】
いくつかの実施形態では、前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、直径約0.5μm~10μmである。いくつかの実施形態では、前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、下気道を優先的に標的とするのに適している。
【0230】
いくつかの実施形態では、前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、直径約5μm~50μmである。いくつかの実施形態では、前記送達デバイスによって生成される前記液体組成物の液滴サイズが、上気道を優先的に標的とするのに適している。いくつかの実施形態では、前記液体組成物の導電率が、2.5μS/cm未満である。
【0231】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が固体組成物であり、前記送達デバイスが前記固体組成物を送達するように構成されている。いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、約0.1μm~20μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、前記粒子のMMADが、約5μm未満である。いくつかの実施形態では、前記粒子のMMADが、約3.5μm未満である。
【0232】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、約0.1μm~20μmの質量中央径(MMD)を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、約1μm~5μmの空気動力学的中央粒子径(MMAD)及び約5μm~30μmの質量中央径(MMD)を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、MMADに対するMMDの比が、約2~30である。いくつかの実施形態では、前記のMMADに対するMMDの比が、約5~30である。
【0233】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、約1g/cm未満のタップ密度を有する。いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、約1~6のシワ度(ルゴシティ(rugosity))を有する。
【0234】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、多孔質粒子を含む。いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、膨潤性粒子を含む。
【0235】
いくつかの実施形態では、前記多孔質粒子が、生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、脂肪酸塩又はその誘導体をさらに含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、前記塩が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリル乳酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、均一な粒度分布を有する粒子を含む。
【0237】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、不均一な粒度分布を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、バイモーダルな粒度分布を有する粒子を含む。
【0238】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物中の前記インターロイキン-1アンタゴニストのパーセント質量が、約1%~40%、40%~70%、又は70%超である。
【0239】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物が、複数の容器に封入された複数の粒子を含む。いくつかの実施形態では、前記容器が、カプセル、ブリスター、及びフィルム被覆容器からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記送達デバイスが、細気管支への前記医薬組成物の直接投与に適している。いくつかの実施形態では、前記送達デバイスが、肺胞組織への前記医薬組成物の直接投与に適している。
【0240】
さらに別の態様では、呼吸器の炎症性疾患の処置を必要とする患者に、本明細書に記載される実施形態のいずれか一つの医薬組成物を投与することを含む、呼吸器の炎症性疾患の処置方法が開示される。
【0241】
いくつかの実施形態では、前記の呼吸器の炎症性疾患が、上気道の炎症性疾患である。いくつかの実施形態では、前記炎症性疾患が、毒吸入肺損傷、肺ランゲルハンス細胞組織球症、非嚢胞性線維症気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、反応性気道機能不全症候群(RADS)、閉塞性細気管支炎器質化肺炎(BOOP)、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)、特発性肺線維症(IPF)、肺炎、一次移植片機能不全(PGD)、及び再かん流損傷からなる群より選択される。
【0242】
いくつかの実施形態では、前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の化学兵器剤の吸入によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、前記化学兵器剤が、塩素ガス及び硫黄マスタードからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、前記毒吸入肺損傷が、塩素誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)及び硫黄マスタード誘発性閉塞性細気管支炎症候群(BOS)である。
【0243】
いくつかの実施形態では、前記毒吸入肺損傷が、一つ又は複数の環境毒性物質及び/又は工業毒性物質の吸入によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、前記環境毒性物質及び工業毒性物質が、イソシアネート、窒素酸化物、モルホリン、硫酸、アンモニア、ホスゲン、ジアセチル、2,3-ペンタンジオン、2,3-ヘキサンジオン、フライアッシュ、繊維ガラス、シリカ、炭塵、アスベスト、シアン化水素、カドミウム、アクロレイン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ベリリウム、鉄、綿、酸化錫、ボーキサイト、水銀、二酸化硫黄、塩化亜鉛、ポリマーヒューム、及び金属ヒュームからなる群より選択される。
【0244】
いくつかの実施形態では、前記毒吸入肺損傷が、塵肺又は閉塞性細気管支炎である。いくつかの実施形態では、前記毒吸入肺損傷が、ベーピング関連肺損傷である。いくつかの実施形態では、前記ベーピング関連肺損傷が、ジアセチル、α-トコフェリルアセテート、2,3-ペンタンジオン、ニコチン、カルボニル類、ベンゼン、トルエン、金属、細菌性エンドトキシン、及び真菌グルカンからなる群より選択される一つ又は複数の剤の吸入によって引き起こされる。
【0245】
いくつかの実施形態では、前記炎症性疾患が、肺の炎症性疾患である。いくつかの実施形態では、前記の呼吸器の炎症性疾患が、下気道の炎症性疾患である。
【0246】
いくつかの実施形態では、肺上皮被覆液における前記医薬組成物の持続的曝露が約15時間~約100時間である。いくつかの実施形態では、前記肺上皮被覆液における前記医薬組成物の前記持続的曝露が少なくとも24時間である。
【0247】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が約週1回/日~約3回/日投与される。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が1日約1回又は2回投与される。
【0248】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が約3分~約20分の吸入を介して投与される。
【0249】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が約0.5mg/kg~約2mg/kgの用量で投与される。
【0250】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物が、内因性IL-1βリガンドと実質的に同様の親和性でIL-1 I型受容体に結合する。
【0251】
医薬組成物
本開示はまた、前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物も提供する。
【0252】
いくつかの実施形態において、アナキンラは、アナキンラ及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物で投与される。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、スプレー、エアロゾル、ゲル、溶液、エマルジョン、又は懸濁液である。
【0253】
前記組成物は、好ましくは、医薬的に許容可能な担体で哺乳類に投与される。典型的には、いくつかの実施形態において、適切な量の医薬的に許容可能な塩が製剤において使用され、製剤を等張にする。
【0254】
いくつかの実施形態において、前記医薬的に許容可能な担体は、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。当業者に公知の他の好適な医薬的に許容可能な担体が予期される。好適な担体及びこれらの製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、2005、Mack Publishing Coに記載されている。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、及びより好ましくは約7~約7.5である。前記の製剤はまた、凍結乾燥粉末を含んでいてもよい。さらなる担体として、固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどの持続放出調製物が挙げられ、これらのマトリックスは、成型物、例えば、フィルム、リポソーム又は微粒子の形態である。ある一定の担体が、例えば、投与中であるアナキンラの投与経路及び濃度に応じて、より好ましい場合があることが当業者に明らかであろう。
【0255】
句「医薬的に許容可能な担体」は、本明細書において使用されているとき、医薬的に許容可能な材料、組成物又はビヒクル、例えば、1の器官、又は体の一部から、別の器官、又は体の一部に、対象の薬剤剤を運ぶ又は輸送するのに関与する、液体又は固体のフィラー、希釈剤、添加剤、溶媒又はカプセル化材を意味する。かかる担体は、前記の製剤の他の成分に適合し且つ患者を損傷しないという意味で「許容可能」である。医薬的に許容可能な担体として機能し得る材料のいくつかの例として:糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えば、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース、並びにその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末状トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;添加剤、例えば、ココアバター及び坐剤ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;グリコール、例えば、ブチレングリコール;ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;ピロゲン不含水; 等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;並びに医薬製剤において用いられる他の非毒性の適合する物質が挙げられる。用語「担体」は、活性成分が適用を容易にするように組み合わされる天然又は合成の有機又は無機成分を示す。前記の医薬組成物の成分はまた、所望の医薬的効率を実質的に損ね得る相互作用が無いように、本発明の化合物と、また、互いに混じり合うことも可能である。前記組成物は、等張剤、防腐剤、界面活性剤、及び、二価カチオン、好ましくは、亜鉛などの追加の剤を含んでいてもよい。
【0256】
前記組成物は、添加剤、又は、少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)組成物の安定化のための剤、例えば、緩衝剤、還元剤、バルクタンパク質、アミノ酸(例えば、グリシン若しくはプラリンなど)又は炭水化物も含み得る。少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤組成物タンパク質を製剤化するのに有用なバルクタンパク質として、アルブミンが挙げられる。アナキンラを製剤化するのに有用な典型的な炭水化物として、限定されないが、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、又はグルコースが挙げられる。
【0257】
界面活性剤はまた、前記組成物に含まれるタンパク質の可溶性及び不溶性の凝集及び/又は析出を防止するために使用されてもよい。好適な界面活性剤として、限定されないが、ソルビタントリオレエート、大豆レシチン、及びオレイン酸が挙げられる。ある一定の場合において、エタノールなどの溶媒を使用した溶液エアロゾルが好ましい。そのため、アナキンラを含む製剤はまた、エアロゾルを形成する際に溶液の微粒化によって引き起こされるアナキンラの表面誘起凝集を低減又は防止し得る界面活性剤も含み得る。様々な従来の界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール、並びにポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルが用いられ得る。量は、概して、前記製剤の、重量で0.001%~4%の範囲内である。本発明の目的で特に好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレン ソルビタンモノオレエート、ポリソルベート80、ポリソルベート20である。当該分野において公知の追加の剤が前記組成物に含まれていてもよい。
【0258】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物及び剤形は、活性成分が崩壊する、又は当該組成物の特性が変化する速度を低減する1又は複数の化合物をさらに含む。いわゆる「安定剤」又は「防腐剤」として、限定されないが、アミノ酸、抗酸化剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤を挙げることができる。抗酸化剤の非限定例として、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸及びその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール並びにシステインが挙げられる。防腐剤の非限定例として、パラベン、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル、及び塩化ベンザルコニウムが挙げられる。アミノ酸の追加の非限定例として、グリシン又はプロリンが挙げられる。
【0259】
本発明はまた、室温で安定である又は薬剤投与に好ましい透明又は略透明溶液を結果として生じさせる二価カチオンを用いる又は用いない、プロリン又はグリシンを含むアミノ酸の使用による、中性pH又は中性pH未満での前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)を含有する液体溶液の安定化(阻害剤タンパク質の熱的又は機械的に誘発される可溶性又は不溶性凝集及び/又は析出を防止又は最小化する)も教示する。
【0260】
一実施形態において、前記組成物は、単回単位又は複数回単位剤形の医薬組成物である。本発明の単回単位又は複数回単位剤形の医薬組成物は、予防又は治療有効量の1又は複数の組成物(例えば、本発明の化合物、又は他の予防剤若しくは治療剤)、典型的には、1又は複数のビヒクル、担体、又は添加剤、安定化剤、及び/又は防腐剤を含む。好ましくは、前記ビヒクル、担体、添加剤、安定化剤及び防腐剤は、医薬的に許容可能である。
【0261】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物及び剤形は、無水医薬組成物及び剤形を含む。本発明の無水医薬組成物及び剤形は、無水又は水分含有量の低い成分と低水分又は低湿の条件とを使用して調製され得る。ラクトース、及び第1級又は第2級アミンを含む少なくとも1種類の活性成分を含む医薬組成物及び剤形は、製造、パッケージング、及び/又は貯蔵の間の水分及び/又は湿気との実質的な接触が期待されるとき、好ましくは無水である。無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製及び貯蔵されるべきである。したがって、無水組成物は、これらが好適な処方キットに含まれ得るように水への曝露を防止することが知られている材料を使用して好ましくはパッケージングされる。好適なパッケージングの例として、限定されないが、密封箔、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられる。
【0262】
好適なビヒクルは、薬学の当業者に周知であり、好適なビヒクルの非限定例として、グルコース、スクロース、デンプン、ラクトース、ゼラチン、米、シリカゲル、グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、プロピレングリコール、水、ステアリン酸ナトリウム、エタノール、及び当該分野において公知の同様の物質が挙げられる。生理食塩水溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液はまた、液体ビヒクルとしても用いられ得る。特定のビヒクルが医薬組成物又は剤形への組み込みに好適であるか否かは、限定されないが、当該剤形が患者に投与される方法、及び当該剤形における具体的な活性成分を含めた、当該分野において周知の様々な因子に依る。医薬的ビヒクルは、滅菌液体、例えば、石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などを含めた水及び油であってよい。
【0263】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。下気道内への投与経路として、限定されないが、経口又は経鼻吸入(例えば、下気道内に明確に堆積する充分に小さな粒子の吸入)が挙げられる。様々な実施形態において、前記医薬組成物又は単一の単位剤形は、滅菌されており、対象、好ましくは、動物対象、より好ましくは、哺乳類対象、及び最も好ましくは、ヒト対象への投与に好適な形態である。
【0264】
本発明の剤形の組成、形状及びタイプは、これらの用途に応じて典型的には変動する。剤形の非限定例として、粉末;溶液;エアロゾル(例えば、スプレー、定量又は非定量アトマイザ、定量吸入器(MDI)を含めた経口又は経鼻吸入器);懸濁液(例えば、水性若しくは非水性液体懸濁液、水中油エマルジョン、又は油中水液体エマルジョン)、溶液、及び、下気道投与に好適な液体剤形を提供するのに再構成されてもよい滅菌固体(例えば、結晶性又は非晶質固体)を含めた、患者への粘膜投与に好適な液体剤形が挙げられる。粉末又は顆粒の形態の製剤は、例えば、ミキサー、流動床装置又はスプレー乾燥機器を使用して従来の方法で上述の成分を使用して調製されうる。
【0265】
本発明はまた、医薬組成物が、量を示すアンプル又は小袋(sachette)などの密封容器にパッケージングされ得ることも規定している。一実施形態において、前記医薬組成物は、患者の下気道への投与に好適な送達デバイスにおいて乾燥滅菌凍結乾燥粉末として供給され得る。前記医薬組成物は、活性成分を含有する1又は複数の単位剤形を含有し得るパック又は分注デバイスにおいて所望により提示され得る。前記パックは、金属又はプラスチック箔、例えば、ブリスターパックを含み得る。前記パック又は分注デバイスには、投与に関する指示書が添付されうる。
【0266】
これらの製剤又は組成物を調製する方法は、本発明の化合物を担体及び所望により1又は複数の副成分と会合させる工程を含む。概して、前記製剤は、本発明の化合物を、液体担体、若しくは微細化された固体担体、又は両方と均一及び密に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を成型することによって調製される。
【0267】
投与に好適な本発明の製剤は、所定量の本発明の化合物(例えば、アナキンラ)を活性成分としてそれぞれ含有する、粉末、顆粒の形態であっても、水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液としてであっても、水中油又は油中水液体エマルジョンとしてであっても、エリキシル又はシロップとしてであっても、トローチ(不活性塩基を使用する、例えば、ゼラチン及びグリセリン、若しくはスクロース及びアカシア)としてであっても、及び/又は洗口液などとしてであってもよい。
【0268】
本明細書における液体組成物は、それ自体が送達デバイスとして使用され得、又は、スプレー乾燥の方法によって例えば調製されるアナキンラを含む医薬的に許容可能な製剤の調製に使用され得る。Maa et al.,Curr.Pharm.Biotechnol.,2001,1,283-302に開示されている薬剤投与のためのタンパク質をスプレー凍結乾燥する方法が、本明細書に組み込まれる。別の実施形態において、本明細書における液体溶液は、凍結スプレー乾燥され、スプレー乾燥した生成物は、個体の下気道内に投与されるときに治療的に有効である分散性のアナキンラ含有粉末として回収される。
【0269】
本発明の化合物及び医薬組成物は、併用療法で用いられ得、すなわち、当該化合物及び医薬組成物は、1又は複数の他の所望の治療法又は医学的手技と同時に、その前に、又はその後に投与され得る。組み合わせレジメンにおいて用いる療法(治療法又は手技)の特定の組み合わせは、所望の治療法及び/又は手技並びに達成される所望の治療効果の適合性を考慮する。用いられる療法は、同じ障害について所望の効果を達成し得ることも認識されよう(例えば、本発明の化合物は、別の抗がん剤と同時に投与されてよい)。
【0270】
本発明は、本発明の医薬組成物の1又は複数の成分を充填した1又は複数の容器を含む医薬的パック又はキットも提供する。そのような容器に、薬剤又は生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態での注意書きを所望により付随することができ、かかる注意書きは、当該機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の許可を反映したものである。
【0271】
剤形
本発明は、下気道内の炎症性疾患を処置するのに好適な前炎症性阻害剤(例えば、アナキンラ)を含む剤形を提供する。当該剤形は、例えば、スプレー、エアロゾル、ナノ粒子、リポソーム、又は当業者に公知の他の形態として製剤化され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences;Remington:The Science and Practice of Pharmacy supra;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems by Howard C.,Ansel et al.,Lippincott Williams & Wilkins;7th edition(1999年10月1日)を参照されたい。
【0272】
概して、障害の急性処置において使用される剤形は、同じ疾患の慢性処置において使用される剤形が含んでいるよりも多量の1又は複数の活性成分を含有し得る。また、予防上及び治療上で有効な剤形は、種類の異なる障害間で変化し得る。例えば、治療上有効な剤形は、細菌感染に関連する下気道障害を処置することを意図しているときに適切な抗菌作用を有する化合物を含有し得る。特定の剤形がこの発明によって包含されている、これら及び他の方法は、互いに変化し得、当業者に容易に明らかであり得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,2005,Mack Publishing Co.;Remington:The Science and Practice of Pharmacy by Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins;20th edition(2003);Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems by Howard C.Ansel et al.,Lippincott Williams & Wilkins;7th edition(1999年10月1日);及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology、Swarbrick,J.& J.C.Boylan著,Marcel Dekker,Inc.,New York,1988を参照されたい、これらは、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0273】
この発明によって包含される剤形を提供するのに使用され得る好適な添加剤(例えば、担体及び希釈剤)並びに他の材料は、医薬科学における当業者に周知であり、所与の医薬組成物又は剤形が適用される特定の組織に依る。その点を考慮して、典型的な添加剤として、限定されないが、非毒性かつ医薬的に許容可能なローション、チンキ剤、クリーム、エマルジョン、ゲル又は軟膏を形成するための、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱物油、及びこれらの混合物が挙げられる。乳化剤、防腐剤、抗酸化剤、ゲル形成剤、キレート剤、保湿クリーム又は保湿剤もまた、所望により医薬組成物及び剤形に添加されてもよい。かかる追加成分の例は当該分野において周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences;Remington:The Science and Practice of Pharmacy;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、上記、を参照されたい。
【0274】
粉末及びスプレーは、この発明の化合物(例えば、アナキンラ)に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物などの添加剤を含有し得る。スプレーは、慣習的なプロペラント、例えば、クロロフルオロ炭化水素及び揮発性非置換炭化水素、例えば、ブタン及びブタンをさらに含有し得る。
【0275】
具体的な実施形態において、本発明は、下気道への投与のための製剤を提供する。典型的には、前記組成物は、ビヒクルと組み合わせて活性化合物(複数可)を含み、当該化合物は、好適な担体系に組み込まれる。前記組成物の調製のための医薬的に不活性なビヒクル及び/又は添加剤は、例えば、ホウ酸又はボレートなどの緩衝剤、前記活性化合物の最適な安定性又は溶解性を得るためのpH調整剤、担体としてのラクトース、塩化ナトリウム又はボレートなどの浸透張力調整剤、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又はポリアクリルアミドなどの粘度調整剤、落花生油、ヒマシ油及び/又は鉱物油を含むビヒクルなどの油性ビヒクルを含む。活性薬物物質のエマルジョン及び懸濁液もまた、前記組成物において提示されてもよい。これらの場合において、前記組成物は、安定剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤及び/又は懸濁剤をさらに含んでいてよい。
【0276】
追加成分は、本発明の活性成分(例えば、アナキンラ)による処置の前に、これと同時に、又はこれの後に使用され得る。例えば、浸透促進剤は、前記活性成分を組織に送達するのを助けるのに使用され得る。好適な浸透促進剤として、アセトン;エタノール、オレイル、及びテトラヒドロフリルなどの様々なアルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;Kollidonグレード(ポビドン、ポリビドン);並びに尿素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0277】
医薬組成物又は剤形のpHはまた、1又は複数の活性成分の送達及び/又は安定性を改良するのに調整されてもよい。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又は浸透張力は、送達を改良するのに調整され得る。ステアレートなどの化合物もまた、医薬組成物又は剤形に添加されて、1又は複数の活性成分の親水性又は親油性を有利に改変して、送達を改良することもできる。これに関連して、ステアレートはまた、前記製剤用の液体ビヒクルとして、乳化剤又は界面活性剤として、及び送達促進又は浸透促進剤としても機能し得る。前記活性成分の異なる塩、水和物、又は溶媒和物が、得られる組成物の特性をさらに調整するために使用され得る。
【0278】
対象への投与
特定の方法と併せて有効であり得る本発明の化合物又は組成物の量は、例えば、障害の性質及び重篤度並びに前記活性成分(複数可)が投与されるデバイスによって変化し得る。頻度及び投薬量はまた、各対象に特異的な因子、例えば、対象の年齢、身体、重量、応答、及び過去の病歴に応じても変化し得る。有効な用量は、インビトロ又は動物モデル試験システムから誘導される用量-応答曲線から外挿され得る。好適なレジメンは、かかる因子を考慮することによって、及び、例えば、文献において報告され且つPhysician’s Desk Reference(60th ed.,2006)において推奨されている投薬量に従うことによって、当業者によって選択され得る。
【0279】
概して、本明細書に記載されている条件についての本発明の化合物の推奨される1日用量範囲は、好ましくは単一の1日1回用量として、又は1日を通しての分割用量とした場合、約0.01mg~約200mg/日の範囲内にある。一実施形態において、前記1日用量は、等しく分割された用量で1日2回投与される。具体的には、1日用量範囲は、約100マイクログラム~約50ミリグラム/日、より詳細には、約500マイクログラム~約5ミリグラム/日であろう。患者を管理する際、治療は、より低い用量、恐らくは、約500マイクログラムで開始され、患者の全体的な応答に応じて、単回投与又は分割投与のいずれかで必要に応じて最大約5.0ミリグラム/日まで増加されるべきである。当業者に明らかであるように、いくつかの場合において本明細書に開示されている範囲外の活性成分の投薬量を使用する必要があり得る。さらに、なお、臨床医又は処置する医師が関与している場合には、かかる者は、個体対象の応答と併せて、治療をどのようにいつ中断する、調整する又は停止するかを知るであろう。
【0280】
いくつかの実施形態において、アナキンラの有効量は、約0.1mg~約100mg/日、約0.1mg~約50mg/日、又は約0.1mg~約10mg/日である。前記組成物を投与するのに有効な投薬量及びスケジュールは、経験的に決定されてよく、かかる決定をなすことは、当該分野における能力の範囲内である。当業者は、投与されなければならない任意の組成物の投薬量が、例えば、当該組成物が投与される哺乳類、投与経路、他の薬物の共投与を含めて使用される特定の組成物、及び当該哺乳類に投与中である他の薬物に応じて変化し得ることを理解するであろう。単独で使用される当該組成物の典型的な1日投薬量は、例えば、経口又は経鼻吸入あたり約0.25mg~最大5.0mg、又は経口又は経鼻吸入0.125mg~2.5mgの範囲であり得るが、症状及び体重に応じて、より高い又は低い投薬量が適切であり得る。
【0281】
代替的には、投与される投薬量は、既知の因子、例えば、特定の剤の薬力学的特徴、並びにその形態及び投与経路;受容者の年齢及び健康;症状の性質及び程度、現在の処置の種類、処置の頻度、並びに所望される効果に応じて変化し得る。例として、哺乳類の処置は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、若しくは40日目のうちの少なくとも1において、又は代替的若しくは付加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、若しくは52週目のうちの少なくとも1において、又は代替的若しくは付加的に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20年のうちの少なくとも1において、或いはこれらのいずれかの組み合わせにおいて、1日あたり0.01~200mg、又は0.01~100mg、例えば、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.25、0.50、0.75、1.0、1.125、1.25、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200mgの1回投薬量又は定期的投薬量のアナキンラとして、単一、点滴又は繰り返し用量を使用して提供され得る。特定の組成物の治療有効量は、対象に関連する因子を充分に考慮した上で当業者によって決定され得ることがさらに認識されよう。いくつかの具体的な実施形態において、前記のアナキンラの有効量は、約0.125mg~5.0mg/日である。
【0282】
具体的な組成物の異なる治療有効量は、当業者によって容易に知られ得るように、異なる疾患について適用可能であり得る。同様に、異なる治療有効化合物が、対象の疾患に応じて特定の組成物に含まれていてよい。同様に、かかる障害を防止、管理、処置又は改善するには充分であるが、本発明の化合物に関連する副作用を引き起こすには不充分である又はこれを低減するのに充分である量もまた、上記の投薬量及び投薬頻度スケジュールによって包含される。さらに、複数の投薬量の本発明の化合物又は組成物が対象に投与されるとき、当該投薬量の全てが同じである必要はない。例えば、当該対象に投与される投薬量は、前記化合物の予防又は治療効果を改良するために増加されてよく、又は、特定の対象が経験する1又は複数の副作用を低減するために減少されてよい。
【0283】
様々な実施形態において、前記医薬(例えば、予防剤若しくは治療剤)は、5分未満おいて、30分未満おいて、1時間おいて、約1時間おいて、約1~約2時間おいて、約2時間~約3時間おいて、約3時間~約4時間おいて、約4時間~約5時間おいて、約5時間~約6時間おいて、約6時間~約7時間おいて、約7時間~約8時間おいて、約8時間~約9時間おいて、約9時間~約10時間おいて、約10時間~約11時間おいて、約11時間~約12時間おいて、約12時間~18時間おいて、18時間~24時間おいて、24時間~36時間おいて、36時間~48時間おいて、48時間~52時間おいて、52時間~60時間おいて、60時間~72時間おいて、72時間~84時間おいて、84時間~96時間おいて、又は96時間~120時間おいて投与される。ある一定の実施形態において、医師又は臨床訪問が関与する場合、2種類以上の医薬(例えば、予防剤若しくは治療剤)が同じ対象訪問内で投与される。当該医薬は同時に投与され得る。
【0284】
ある一定の実施形態において、本発明の1又は複数の化合物及び1又は複数の他の前記の医薬(例えば、予防剤若しくは治療剤)は、周期的に投与される。周期的医薬投与(Cycling therapy)は、ある期間にわたる第1の医薬(例えば、第1の予防剤若しくは治療剤)の投与、続いてのある期間にわたる第2の医薬(例えば、第2の予防剤若しくは治療剤)の投与、続いてのある期間にわたる第3の医薬(例えば、第3の予防剤若しくは治療剤)の投与など、及びこの逐次的投与の繰り返し、すなわち、サイクルを、当該剤のうちの1つへの耐性発現を低減する、当該剤のうちの1つの副作用を回避若しくは低減する、及び/又は処置の効能を改良するために含む。
【0285】
ある一定の実施形態において、本発明の同じ化合物の投与は、繰り返されてよく、当該投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヶ月、75日、3ヶ月、又は6ヶ月だけ離されていてよい。他の実施形態において、同じ予防又は治療剤の投与は、繰り返されてよく、当該投与は、少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヶ月、75日、3ヶ月、又は6ヶ月だけ離されていてよい。
【0286】
具体的な実施形態において、本発明は、障害(例えば、下気道炎症性疾患、又はその症状)を防止又は処置する方法であって、少なくとも100マイクログラム、好ましくは少なくとも250マイクログラム、少なくとも500マイクログラム、少なくとも1000マイクログラム、少なくとも5000マイクログラム又はそれを超える用量の本発明の1又は複数の化合物を、3日に1回、好ましくは、4日に1回、5日に1回、6日に1回、7日に1回、8日に1回、10日に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は1ヶ月に1回、これを必要とする対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0287】
製品
本発明は、製品を包含する。本発明の典型的な製品は、単位剤形の本発明の組成物又は化合物を含む。一実施形態において、前記単位剤形は、有効量の本発明の組成物又は化合物及び医薬的に許容可能な担体又は添加剤を含有する容器、好ましくは、滅菌容器である。前記製品は、組成物若しくは化合物の使用、又は、問題となっている障害をどのように防止する、処置する、若しくは当該障害に関連する有益な結果を導き出すかについて、医師、技術者、消費者、対象若しくは患者にアドバイスする他の情報材料に関連するラベル又は印刷された指示書をさらに含み得る。前記製品は、限定されないが、実際の用量、モニタリング手順、及び他のモニタリング情報を含めた投薬レジメンを示す又は示唆する指示書を含み得る。前記製品はまた、別の予防又は治療剤の単位剤形、例えば、有効量の別の予防又は治療剤を含有する容器をさらに含むこともできる。具体的な実施形態において、前記製品は、有効量の本発明の組成物又は化合物及び医薬的に許容可能な担体又は添加剤を含有する容器並びに有効量の別の予防又は治療剤及び医薬的に許容可能な担体又は添加剤を含有する容器を含む。他の予防又は治療剤の例として、限定されないが、上記に列挙されているものが挙げられる。好ましくは、前記製品に含まれているパッケージング材料及び容器は、貯蔵及び出荷の際の前記製品の安定性を保護するように設計される。
【0288】
本発明の製品は、前記単位剤形を投与するのに有用であるデバイスをさらに含み得る。かかるデバイスの例として、限定されないが、シリンジ、乾燥粉末吸入器、定量及び非定量吸入器、並びにネブライザが挙げられる。
【0289】
本発明の製品は、医薬的に許容可能なビヒクル又は1若しくは複数の活性成分(例えば、本発明の化合物)を投与するのに使用され得る消耗ビヒクルをさらに含み得る。例えば、活性成分が、下気道投与用に再構成される固体形態で提供されるとき、前記製品は、前記活性成分が溶解され得る好適なビヒクルの密閉容器を含み得る。下気道投与には、粒子状物不含の滅菌溶液が好ましい。医薬的に許容可能なビヒクルの例として、限定されないが:注射USP用の水;限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、並びに乳酸化リンゲル注射液などの水性ビヒクル;限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの水混和性ビヒクル;並びに、限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの非水性ビヒクルが挙げられる。
【0290】
本発明の別の実施形態において、本明細書に記載されている病的状態、及び関連する問題を処置するのに有用な材料を含有する製品及びキットが提供される。前記製品は、ラベル付き容器を含む。好適な容器として、例えば、ボトル、バイアル、及び試験管が挙げられる。当該容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されていてよい。当該容器は、例えば、炎症性疾患を処置するのに有効である少なくとも1種類の活性化合物を有する組成物を保持する。前記組成物中の前記活性剤は、前炎症性サイトカイン阻害剤であり、前記組成物は、1又は複数の活性剤を含有していてよい。前記容器における前記ラベルは、前記組成物が、例えば、下気道炎症性疾患を処置するのに使用されることを示しており、インビボ使用のための指示、例えば、上記に記載されているものを示し得る。
【0291】
いくつかの実施形態において、吸入器を具体的に組み込んでいる製品及びキットが提供される。前記吸入器は、好ましくは、咽頭及び上気道への薬物分布を最小限にしながら下気道内の特定の部位に本発明の化合物又は組成物を送達するときに有効である。送達デバイスには、限定されないが、フィルタ、ニードル、シリンジ、バルブ、アトマイザ、経鼻アダプタ、電子ネブライザ、計測器、加熱素子、リザーバ、電源(複数可);並びに使用のための指示書付きパッケージングインサートを含むある一定の部品が組み込まれていてよい。
【0292】
本発明のキットは、上記の容器を含み、医薬的に許容可能な担体若しくは緩衝剤、投薬リザーバ、又は界面活性剤を含む、第2又は第3の容器を含んでいてもよい。当該キットは、他の緩衝剤、希釈剤を含めた、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料、及び、フィルタ、ニードル、シリンジ、バルブ、アトマイザを組み込んだ、下気道に明確に送達するためのデバイス;並びに使用のための指示書付きパッケージングインサートをさらに含んでいてよい。
【0293】
送達デバイス
本発明の一般の態様は、前記組成物及び前記投薬を達成する前記送達デバイスを下気道に明確に局所送達することである。本発明の送達デバイスは、前記組成物の局所送達のための方法を提供することであり、これにより、前記組成物の1又は複数の薬理学的活性剤又は局所処置が、下気道の粘膜の近傍に明確に局所的な影響を及ぼし得る。局所性疾患のための局所療法の利点は、前記の活性成分の全身性曝露に起因する副作用の欠失を含む。
【0294】
経肺投与では、好ましくは少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)が、下気道に到達するのに有効な粒度で送達される。本発明の前炎症性サイトカイン阻害剤及び組成物を投与するための吸入デバイスのいくつかの望ましい特徴がある。前記吸入デバイスによる送達は、特異的であるためには、概して信頼性があり、再生可能であり、正確である。前記吸入デバイスは、良好な呼吸が可能となるために、例えば、約10ミクロン未満、好ましくは約3~5ミクロンの小さい乾燥粒子、又はストークス半径が小さい乾燥粒子を所望により送達し得る。
【0295】
本発明によると、少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)は、吸入による治療剤の投与に関する分野において公知の様々な吸入デバイスのいずれによって送達されてもよい。患者の下気道にエアロゾル化製剤を堆積させることが可能であるこれらのデバイスとして、限定されないが、定量吸入器、噴霧器、ネブライザ、及び乾燥粉末発生器が挙げられる。前炎症性サイトカイン阻害剤を含めた、タンパク質及び小分子の経肺投与に好適な他のデバイスもまた、当該分野において公知である。かかるデバイスは、全てが、エアロゾルでの前炎症性サイトカイン阻害剤の分注に好適な製剤を使用することができる。かかるエアロゾルは、ナノ粒子、微粒子、溶液(水性及び非水性の両方)、又は固体粒子を含み得る。
【0296】
AERx Aradigm、Ultraventネブライザ(Mallinckrodt)、及びAcorn IIネブライザ(Marquest Medical Products)(米国特許第5,404,871号、WO97/22376、全体が参照により本明細書に組み込まれる)のようなネブライザは、溶液からエアロゾルを生じさせる。いくつかの実施形態において、前記ネブライザは、Monaghan Aeroeclipse II Breath Activated Jet Nebulizer、又はPhilips Innospire Go振動メッシュネブライザである。いくつかの実施形態において、前記ネブライザは、同じメッシュを使用する次世代のPhilipsデバイス、例えば、iNeb AAD及びiNeb Advanceである。iNeb AADは、いずれもが表示の範囲内で独占的でありラベル内にある、米国ではVentavis(Actelion)、欧州にではPromixin(CF用のコリスチン)のラベル付きで使用されている。
【0297】
Ventolin定量吸入器などの定量吸入器は、典型的にはプロペラントガスを使用しており、吸気の際に作動を必要とする(例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO94/16970、WO98/35888を参照されたい)。
【0298】
Turbuhaler(Astra)、Rotahaler(Glaxo)、Diskus(Glaxo)、Spiros吸入器(Dura/Elan)デバイス、Spinhaler粉末吸入器(Fisons)、InnoSpire Goメッシュネブライザ(Philips)、iNeb AADシステム(Philips)、iNeb Advanceネブライザ(Philips)、及びPARIネブライザ(PARI)のような好適な乾燥粉末吸入器は、混合粉末の呼気作動を使用する(米国特許第4,668,218号、EP237507、WO97/25086、WO94/08552、米国特許第5,458,135号、WO94/06498、これらの全てが、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。定量吸入器、乾燥粉末吸入器などは、小さい粒子エアロゾルを発生させる。
【0299】
市販の吸入デバイスのこれらの具体例は、本発明の実用に好適な具体的デバイスの代表であることが意図されており、本発明の範囲を限定するとして意図されてはいない。いくつかの実施形態において、少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)を含む組成物は、乾燥粉末吸入器又は噴霧器によって送達される。他の実施形態において、少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)を含む組成物は、エアロゾル化ネブライザによって送達されるエアロゾル化製剤である。
【0300】
本発明の組成物は、もう一度、送達デバイス(例えば、経口又は経鼻吸入器、エアロゾル発生器、経口乾燥粉末吸入器、光ファイバスコープを通して、又は外科的介入の際にシリンジを介して)によって哺乳類の下気道に局所スプレー又は粉末として投与され得る。下気道への薬物分布が可能であるこれらの多くの薬物送達デバイスは、液体、半固体、及び固体組成物を使用することができる。研究者らは、下気道における堆積の部位及び堆積領域が、前記送達デバイスに関係するいくつかのパラメータ、例えば、投与形態、製剤の粒度及び送達粒子の速度に依ることを見出した。研究者らは、下気道に送達される治療薬の分布及びクリアランスを研究するために当業者によって使用され得るいくつかのインビトロ及びインビボ方法を記載しており、これらの全てが、全体が本明細書に組み込まれる。そのため、これらのデバイスのいずれかが、特定の表示、技術、及び対象の1又は複数の利点を考慮して、本発明における使用のために選択されてよい。これらの送達デバイスとして、限定されないが、エアロゾルを生じるデバイス(定量吸入器(MDI))、ネブライザ並びに他の定量及び非定量吸入器が挙げられる。
【0301】
概して、吸入スプレー薬物製品の現在の容器-栓システム設計は、スプレープルームの生成のために、機械的若しくは動力支援及び/又は患者吸気からのエネルギーを使用する、前定量及びデバイス定量の両方の提示を含む。前定量提示は、製造の間に又は使用の前に患者によって、デバイス内に後に挿入される、いくつかのタイプのユニット(例えば、単一、複数のブリスター、又は他のキャビティ)において先に測定された用量又は用量画分を含有し得る。典型的なデバイス定量ユニットは、患者によって駆動されるときに当該デバイスによって定量スプレーとして送達される複数回投与に充分な製剤を含有するリザーバを有する。
【0302】
本発明の実施形態の一つは、かかる処置を必要とする対象における下気道の粘膜に前記組成物を明確に分布させることができる送達デバイスの使用である。いくつかの実施形態において、前記送達デバイスは、かかる処置を必要とする対象における下気道の粘膜に前記組成物を明確に分布させることができ、少量の組成物が咽頭及び上気道に到達する。いくつかの実施形態において、前記送達デバイスは、かかる処置を必要とする対象における下気道の粘膜に前記組成物を明確に分布させることができ、後咽頭及び上気道に分布するのは最少量である。いくつかの実施形態において、前記送達デバイスは、かかる処置を必要とする対象における下気道の粘膜に前記組成物を明確に分布させることができ、後咽頭及び上気道に分布するのは極少量である。
【0303】
本発明はまた、繰り返し投与に特に適しており、安定剤及び防腐剤を伴う又は伴わない多数回の投薬(典型的には60~最大約130投薬以上)を提供しうる複数回投与定量吸入器又は非定量吸入器も包含する。
【0304】
スプレーとしての前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)から構成される組成物の投与は、加圧下でノズルを通して少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤の懸濁液又は溶液を強制的に送ることによって生成され得る。ノズルサイズ及び構成、印加圧力、並びに液体供給速度は、下気道への堆積を明確に最適化するのに所望される出力及び粒度を達成するように選択され得る。電気スプレーは、例えば、キャピラリー又はノズル供給と併せて電界によって生成され得る。有利には、噴霧器によって送達される少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤組成物の粒子は、 約20ミクロン未満、好ましくは10ミクロン未満、及び最も好ましくは、約3~5ミクロンの範囲内の粒度を有するが、デバイス、組成物、及び対象の要件に応じて他の粒度も適切であり得る。
【0305】
ジェットネブライザ及び超音波ネブライザを含めた、液体製剤用の市販のネブライザもまた、下気道への投与にも有用であり得る。液体製剤は、直接噴霧化されてよく、凍結乾燥粉末が再構成後に噴霧化されてよい。代替的には、前記組成物は、定量吸入器を使用してエアロゾル化されてよく、又は、凍結乾燥及び破砕粉末として吸入されてよい。また、前記の組成物の液体製剤は、気管支鏡を通して設置されて、病変部位に直接配置されてよい。
【0306】
本発明の一実施形態において、前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)は、定量吸入器によって投与されてよい。前記定量吸入器は、小型加圧式エアロゾルディスペンサにおいて、プロペラント、プロペラントの混合物、又は溶媒、プロペラント、及び/若しくは他の添加剤の混合物に溶解又は懸濁された治療活性成分を含有し得る。前記のMDIは、最大数百の定量投薬を排出し得る。前記組成物に応じて、各作動が、典型的には25~100マイクロリットルの体積で送達される数マイクログラム(μg)~最大でミリグラム(mg)の活性成分を含有し得る。定量吸入器(MDI)には、プロペラント、少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)、及び様々な添加剤又は他の化合物が、液化圧縮ガス(プロペラント)を含む混合物としてキャニスタに含有される。定量バルブの作動により、約20ミクロン未満のサイズ範囲内の粒子を好ましくは含有するエアロゾルとしての混合物が放出される。いくつかの実施形態において、前記粒度は、約10ミクロン未満である。いくつかの実施形態において、前記粒度は、5ミクロン未満である。所望のエアロゾル粒度は、ジェットミリング、スプレー乾燥、臨界点濃縮、又は当業者に周知の他の方法を含めた、当業者に公知の様々な方法によって生成される抗体組成物タンパク質の製剤を用いることによって得られ得る。
【0307】
定量吸入器デバイスと共に使用される少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)の組成物は、例えば、界面活性剤又は可溶化剤の助けによりプロペラントに懸濁された、非水性媒体中の懸濁液として少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤を含有する微細化粉末を含み得る。前記プロペラントは、限定されないが、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール及び1、1,1,2-テトラフルオロエタン、HFA-134a(ハイドロフルオロアルカン-134a)、HFA-227(ハイドロフルオロアルカン-227)を含めた、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、又は炭化水素を含めたいずれの従来の材料であってもよい。ハイドロフルオロカーボンは、好ましいプロペラントである。界面活性剤は、前記プロペラントにおいて懸濁液として少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤を安定化させるように選択され得、前記の活性剤を化学分解から保護する。いくつかの場合において、より水可溶性の活性剤のためにエタノールなどの溶媒を使用する溶液エアロゾルが好ましい。タンパク質を含む追加の剤も前記組成物に含まれ得る。
【0308】
当業者は、本発明の方法が、本明細書に記載されていないデバイスを介して少なくとも1種類の前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)組成物の下気道投与によって達成され得ることを認識するであろう。本発明はまた、単一の投与に特に適している単位用量定量及び非定量スプレーデバイスも組み込んでいる。これらのデバイスは、急性の短期の処置(すなわち、急性憎悪)及び単回用量送達(すなわち、長期間作用型組成物)に典型的には使用され、前記組成物の両方の製剤の液体、粉末、又は混合物を収容し得る。しかし、ある一定の状況において、これらの単位用量デバイスは、特定の方法で繰り返し使用されるときに、複数回投与デバイスよりも好ましい場合がある。かかる使用として、限定されないが、滅菌デバイスが好まれる繰り返し手順を挙げることができる。
【0309】
本発明の別の実施形態は、対象の下気道炎症疾患を処置するのに適切な前記組成物を予め充填した単回用量シリンジを提供する。上記の予め充填されたシリンジは、滅菌されていても、滅菌されていなくてもよく、下気道治療を必要とする対象に手技の際に用量投与において使用されてよい。シリンジが好ましい用途の例として、限定されないが、内視鏡を通しての組成物の分布が挙げられる。これらの例は、限定的であることは意図されておらず、当業者は、下気道に前記組成物を明確に送達するために他の選択肢が存在すること、及びこれらが本明細書に組み込まれることを認識するであろう。
【0310】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されている1又は複数の治療剤を含有する組成物は、下気道に直接投与される。かかる投与は、前記組成物を含有するエアロゾルを作り出し且つ下気道内に直接設置されてよい、肺内用のエアロライザの使用を介して実施されてよい。例示的なエアロライザは、米国特許第5,579,578号;同第6,041,775号;同第6,029,657号;同第6,016,800号及び同第5,594,987号に記載されており、全て全体が参照により本明細書に組み込まれる。かかるエアロライザは、下気道内に、例えば気管内チューブ内に又はさらには気管内にさえも直接挿入され得るのに充分に小さいサイズである。一実施形態において、前記エアロライザは、肺の竜骨又は第1分岐点付近に位置付けられてよい。別の実施形態において、前記エアロライザは、肺の特定の領域、例えば個々の気管支、細気管支、又は葉気管支を標的とするように位置付けられる。前記のデバイスのスプレーは肺内に直接導入されるため、鼻の通り道、口腔、喉、及び気管の壁への堆積に起因する前記エアロゾルの堆積に起因する損失が回避される。最適には、かかる好適なエアロライザによって生成される液滴サイズは、超音波ネブライザによって生成されるものよりもいくぶん大きい。そのため、当該液滴は、吐き出されにくくなり、そのため、事実上100%の送達効率につながる。また、前記組成物の送達は、高度に均一な分布パターンを有する。
【0311】
一実施形態において、かかる肺内用のエアロゾライザは、エアロゾルとしての液体の送達のために圧力発生器に取り付けられたエアロゾライザを含んでおり、気管内に直接、又は気管内に位置付けられている気管内チューブ若しくは気管支鏡内に挿入されることによって肺に極接近して位置付けられ得る。かかるエアロライザは、最大約2000psiの圧力で稼働してよく、12μmの媒体粒度を有する粒子を生成する。
【0312】
代替の実施形態において、かかる肺内用のエアロゾライザは、実質的に伸長されたスリーブ部材、実質的に伸長されたインサート、及び実質的に伸長された本体部材を含む。前記スリーブ部材は、対応してネジ式の部材である前記インサートを収容するように適合されているネジ式内面を含む。前記ネジ式インサートは、実質的に螺旋状のチャネルを提供する。本体部材は、その第1端部においてキャビティを含み、これは、その第2端部において端部壁によって終端している。前記端部壁は、これを通して延在しているオリフィスを含む。本体部材は、前記スリーブ部材と接続されて、本発明のエアロゾライザを提供する。前記エアロゾライザは、アナキンラを含有する組成物の投与のために対象の期間内への挿入に順応するようにサイジングされている。前記のデバイスの操作のために、前記エアロゾライザは、好適なチューブによって液圧駆動装置と接続されている。前記液圧駆動装置は、前記エアロゾライザからスプレーされる液体材料(例えば、1種類又は複数種類の前炎症性サイトカイン阻害剤を含有する組成物)を通すように適合されている。前記のデバイスが気管内に深く位置していることにより、前記液体材料が、肺に極接近してスプレーされて、その結果、肺におけるスプレーされた材料の浸透及び分布が改良される。
【0313】
代替の実施形態において、かかるエアロゾライザは、気管内挿入用にサイジングされて、アナキンラを含有する組成物を下気道内に直接(例えば、肺に極接近して)スプレーするように適合されている。前記エアロゾライザは、液体組成物の送達のために液圧駆動装置と接続して配置されている。前記エアロゾライザは、概して伸長されたスリーブ部材を含み、当該スリーブ部材は、第1端部及び第2端部を画定し、当該スリーブ部材を通して長手方向に延在する開口部を含む。前記スリーブ部材の前記第1端部は、前記液圧駆動装置と接続して配置されている。概して伸長されたインサートも提供される。前記の概して伸長されたインサートは、第1端部及び第2端部を画定し、前記のスリーブ部材の長手方向に延在する開口部の少なくとも一部内に収容される。前記インサートは、外面を含み、当該外面は、前記第1端部から前記第2端部に延在するその外面を包囲して配置される少なくとも1つの実質的に螺旋状のチャネルを有する。前記インサートの前記の実質的に螺旋状のチャネルは、前記液体材料を通すように適合されており、前記スリーブ部材によって収容されている。概して伸長された本体部材はまた、前記スリーブ部材と接続して含まれている。前記本体部材は、その第1端部に設けられたキャビティを含み、これは、その第2端部に隣接している端部壁において終端している。前記端部壁は、前記インサートから受け取られる前記液体材料をスプレーするためのオリフィスを有するものとして提供される。組み合わされた前記スリーブ部材、インサート及び本体部材の部分は、気管内挿入を可能にする充分なサイズを有する。かかるエアロゾライザを使用する方法は、エアロゾライザを中空チューブ部材の第1端部と接続する工程及び前記中空チューブ部材の第2端部を前記液圧駆動装置と接続する工程を含む。前記方法は、気管に又は気管に設けられている部材内に前記エアロゾライザを配置する工程、及び次いで前記液圧駆動装置を稼働させてこれから1種類又は複数種類の前炎症性サイトカイン阻害剤を含有する組成物をスプレーする工程をさらに含む。
【0314】
代替の実施形態において、1種類又は複数種類の前炎症性サイトカイン阻害剤を含有する、粉末用量の組成物が、粉末ディスペンサの使用を介して下気道に直接投与される。例示的な粉末ディスペンサは、米国特許第5,513,630号、同第5,570,686号及び同第5,542,412号に開示されており、これらの全てが、全体が本明細書に組み込まれる。かかる粉末ディスペンサは、前記粉末用量を分注するための量のガスを導入する、アクチュエータと接続されるように適合されている。前記ディスペンサは、前記アクチュエータが前記ガスを前記ディスペンサに導入したときに、前記粉末用量を収容して前記粉末用量のみの通過を許容するためのチャンバを含む。前記粉末用量は、前記ディスペンサからチューブを介して対象の下気道に通される。前記粉末用量は、竜骨付近で気管内送達されてよく、これにより、例えば、口腔、喉、及び気管への前記粉末用量の大きな損失の可能性が回避される。また、操作時に、前記アクチュエータから通される前記ガスが肺に僅かに吹き込む役割をして、粉末の浸透を増加させる。前記気管内挿入では、前記チューブが、動物又はヒト患者を含めた、麻酔され、人工呼吸器を付けた対象において、又は意識のある対象において、気管内チューブを通して到達され得、前記チューブは、「ガス」応答を最小にするために、好ましくは喉への低用量の局所麻酔及び/又は前記チューブの先端における少量の麻酔を使用して、気管内に直接挿入され得る。
【0315】
一実施形態において、本明細書に記載されている1又は複数の治療剤を含有する組成物は、下気道に直接投与される。かかる投与は、前記組成物を含有するエアロゾルを作り出し且つ及び下気道内に直接設置されてよいエアロライザの使用を介して実施され得る。例示的なエアロライザは、米国特許第5,579,758号;同第6,041,775号;同第6,029,657号;同第6,016,800号;同第5,606,789号;及び同第5,594,987号に開示されており、全て全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、そのため、1種類又は複数種類の前炎症性サイトカイン阻害剤を含有する組成物をエアロライザによって下気道に直接投与する方法を提供する。
【0316】
特に、本発明の実施形態は、「気管内エアロゾライザ」デバイスのための新規の使用であり、その方法は、気管内への挿入に好適である長く比較的薄いチューブの先端で微細なエアロゾルの発生を引き起こすことを含む。そのため、本発明は、下気道障害の防止、処置、及びケアにおいて下気道で使用するための、本明細書において適合されるマイクロカテーテルにおいてこのエアロゾライザ技術を使用する新規の方法を提供する。
【0317】
本発明の別の実施形態において、エアロゾル化マイクロカテーテルは、前炎症性サイトカイン阻害剤を含有する組成物を投与するのに使用される。かかるカテーテル及びその使用は、気管内への挿入に好適である長く比較的薄いチューブの先端で微細なエアロゾルの発生を引き起こす「気管内エアロゾル化」と呼ばれ、その例は、米国特許第5,579,758号;同第5,594,987号;同第5,606,789号;同第6,016,800号;及び同第6,041,775号に開示されている。
【0318】
さらなる実施形態においては、マイクロカテーテルエアロゾライザデバイス(米国特許第6,016,800号及び同第6,029,657号)のための新規の使用が、経鼻及び副鼻腔送達、並びに下気道障害の処置、防止、及び診断において生物活性剤(例えば、アナキンラ)を送達するための使用に適合させられる。このマイクロカテーテルエアロゾライザの1つの利点は、小サイズ(直径0.014インチ)とすることが可能であるため、ヒト用の可撓性(直径1~2mm)又は硬性の内視鏡のワーキングチャネル内に容易に挿入されて副鼻腔口内に部分的又は完全に入れ得ることである。
【0319】
当業者は、本発明の方法が、本明細書に記載されていないデバイスを介したアナキンラ組成物の下気道投与によって達成され得ることを認識するであろう。
【0320】
本発明の組成物及び化合物の使用
本発明は、本発明の化合物(例えば、アナキンラ)又は組成物を、障害の防止、処置、管理若しくは改善又は障害に関連する不快感若しくは疼痛の緩和に有用である又は使用されてきた又は現在使用されていることが知られている別のモダリティ、例えば、予防又は治療剤と組み合わせて使用して、障害(例えば、下気道の炎症性疾患)を防止、管理、処置又は改善するための方法を提供する。前記組成物又は化合物の使用の方法に応じて、本発明は、別のモダリティと共投与され得、又は本発明の組成物若しくは化合物は、混合されて、次いで、対象に単一の組成物として投与され得る。当然ながら、本発明の方法は、外科的切除及び肺移植などのさらに他の治療と組み合わせて用いられ得ることが予期される。
【0321】
前記方法において、組成物が、下気道の炎症性疾患(複数可)を有すると診断された哺乳類に投与される。当然ながら、本発明の方法は、内視鏡モニタリング及び処置技術、外科的切除及び肺移植などのさらに他の治療技術と組み合わせて使用され得ることが予期される。
【0322】
下気道炎症性疾患に関連する有益な効果を達成し、かかる障害、又はその1若しくは複数の症状に関連する有益な効果を提供するための、本発明の化合物及び組成物の使用を本明細書に記載する。前記の方法は、予防又は治療有効量の、本発明の1若しくは複数の化合物又は組成物(複数可)を必要とされる対象に投与することを含む。例えば、かかる化合物の投与は、本発明の医薬組成物の1又は複数を介するものであり得る。当然ながら、本発明の方法は、経口又は経鼻吸入デバイスと組み合わせて用いられ得ることが予期される。重要なことには、本発明の方法は、前炎症性サイトカイン阻害剤(例えば、アナキンラ)の皮下若しくは静脈内注射、又は他の全身性投与経路と組み合わせて用いられ得ることが予期される。しかし、内視鏡手術及び処置技術、外科的切除及び肺移植などのさらに他の治療技術は、全て、本明細書に含まれる。
【0323】
一実施形態において、障害又はその症状の防止、処置、管理、又は改善を必要とする対象は、当該障害を有する、当該障害のリスクがあることが知られている、当該障害を有すると診断されている、当該障害から以前に回復している、又は現在の治療に耐性がある対象である。特定の実施形態において、前記対象は、前記障害を発症させる遺伝因子(複数可)、環境因子(複数可)、又はこれらの組み合わせに起因して、罹患し易い及び/又はリスクがある動物、好ましくは、哺乳類、及びより好ましくは、ヒトである。なお別の実施形態において、前記対象は、障害に難治性である、又は、1若しくは複数の他の処置に応答しない。なお別の実施形態において、前記対象は、免疫不全又は免疫抑制哺乳類、例えば、ヒトである。
【0324】
等価物
以下に続く代表例は、本発明を例示することを助けることが意図されており、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、限定すると解釈されるべきではない。実際に、本発明の様々な変更及びその多くのさらなる実施形態は、本明細書に示され記載されているものに加えて、以下に続く例並びに本明細書において列挙されている科学及び特許文献への言及を含めてこの文書の全内容から当業者に明らかになるであろう。これらの列挙されている参照文献の内容は、最先端を例示することを助けるために参照により本明細書に組み込まれることがさらに理解されるべきである。以下の例は、本発明のその様々な実施形態及びその等価物における実用に適合され得る重要な追加情報、例示及びガイダンスを含んでいる。
【実施例
【0325】
本発明のより完全な理解を容易にするために例を以下に提供する。以下の例は、本発明を作製及び実行する例示的な形態を示す。しかし、本発明の範囲は、同様の結果を得るために代替の方法が利用され得るため、例示目的のみであるこれらの実施例に開示されている具体的な実施形態に限定されない。
【0326】
実施例1-ALTA-2530が目標とする製品特質(GLP/GMP)
いくつかの実施形態において、ALTA-2530製剤は、本明細書に記載される製品特質を有する。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、Philips InnoSpire Go振動メッシュ(VM)ネブライザを使用して送達される噴霧用溶液である。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、前臨床ネブライザ(Aerogen Solo VMネブライザ)を使用して送達され得る噴霧用溶液である。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、前臨床及び臨床試験現場で製造され得る噴霧用の臨時的調製溶液製剤であり、投薬期間及び24時間の最小の使用期間にわたって安定している。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、冷蔵を必要とする噴霧貯蔵条件を有する。いくつかの実施形態において、GLP毒物学及びGMP臨床試験について開発されたALTA-2530は、いずれのブリッジング試験も回避するために好ましくは同じ又は同等であり得る(例えば、添加剤は変えられず、比はGLP認定レベルを超えない)。いくつかの実施形態において、噴霧されたGMP臨床製剤の不純物プロファイルは、GLP前臨床試験において認定された不純物限界と同様であり且つこれを超えない。いくつかの実施形態において、臨床製剤溶液濃度(複数可)は、Philips InnoSpire Goネブライザを使用して5分未満、理想的には2~3分以内に前記VMネブライザ(ネブライザへの薬物投入として表される)から10~40mgを送達するのに好適である。いくつかの実施形態において、ALTA-2530は、使用期間及び予測される投薬継続期間にわたっての化学物質及びエアロゾルの性能安定性によって実証される臨床プログラムをサポートする、再現可能に送達される肺用量を有する。
【0327】
表1は、重要なCMC活動及び成果物の概要を示す。
【0328】
【表1】
【0329】
実施例2-ALTA-2530製剤
表2は、ALTA-2530製剤について様々な可能な実施形態を示す。
【0330】
【表2】
【0331】
表3は、ALTA-2530製剤の多様な実施形態のための様々な可能な添加剤を示す。
【0332】
【表3】
【0333】
図2は、ALTA-2530製剤の様々な実施形態に関するチェッカーボード表を示す。
【0334】
実施例3-分析的開発
いくつかの実施形態において、重要な成果物としては、フェーズの適切な分析方法を開発/最適化し、認定/検証して、噴射用ALTA-2530溶液のGLP前臨床及びGMPフェーズ1臨床プログラムを支援することが挙げられる。全ての認定/検証試験はICHガイドラインに従って行う。
【0335】
いくつかの実施形態において、製品の仕様/安定性に関する属性及び方法としては、外観、pH、浸透圧;ペプチドマッピングによる同定;A280によるタンパク質濃度;RPHPLC、SE-HPLC、還元及び非還元CE-SDS、並びにIEX-HPLCによる純度;異物及び粒子状物及びサブ可視粒子;適切な試験継続期間を用いての、USP601で列挙される噴霧化溶液のNGIによるエアロゾル粒度分布;投薬の全継続期間にわたっての、USP1601及びUSP601において列挙される呼吸模擬装置を使用した送達用量;生物汚染度(bioburden)及び内毒素;効能に関する細胞ベースのバイオアッセイが挙げられる。
【0336】
いくつかの実施形態において、製剤開発を支援するための情報のみの試験方法としては、円偏光二色性、粘度、表面張力、製剤密度、Malvern Spraytec又は同等のものによる液滴サイズ及び分布、動的光散乱(DLS)、及び濁度が挙げられる。いくつかの実施形態において、活性及びプラセボの臨時的製品につての支援の仕様が得られる。いくつかの実施形態において、全ての検証された方法活動に関する検証の概略報告が提出される。
【0337】
実施例4-吸入製剤スクリーニング
吸入製剤をスクリーニングするために、経肺投与経路に許容可能な目標とする溶液製剤pHは、pH5~8である。溶液浸透圧は生理学的範囲内である(約300mOsm/kg)。使用される添加剤は、肺の経路によって、且つ、承認されている肺用の製品についてのFDA不活性成分リスト内に列挙されている濃度範囲/用量内で「許容可能である」又は「充分に特性決定されている」。米国、欧州、及び日本を含めた主な市場において吸入用に市販されている製品において現在使用されている非経口グレード添加剤(利用可能な場合)及び/又は吸入グレード添加剤のいずれかであることが好ましい。段階的アプローチは、物理的安定性スクリーニング試験、ストレス安定性スクリーニング試験、及び製剤濾過試験を含めた前製剤を評価するのに使用される。前製剤スクリーニングでは、検査が、エアロゾル特性決定試験において使用される製剤マトリックス及び安定な噴霧用ALTA-2530溶液を同定するために行われる。対照製剤(Kineret)は、これらの試験を通して参照として使用される。
【0338】
前製剤試験を、図3に示されている段階的アプローチに従って行う。前製剤試験を行う際に、エアロゾル特性決定試験において使用される製剤マトリックス及び安定な噴霧用ALTA-2530溶液を同定するため、スクリーニング試験を行う。ALTA-2530は、ヒト組み換えIL-1受容体阻害剤(rhIL-1Ra)である。いくつかの実施形態において、ALTA-2530(以前、OSP-101)は、承認されているPhilipsネブライザを介して送達されるrhIL-1Raの新規の吸入製剤である。対照製剤(Kineret)を参照として使用する。Kineretは、関節リウマチ(米国、欧州、カナダ、オーストラリアなど)及びクリオピリン関連周期熱症候群(最大100mg/日、皮下注射)用に承認されている。製剤成分として、緩衝剤、安定剤、及び浸透張力調節剤(図2を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。前記緩衝剤として、ヒスチジン、リン酸塩、コハク酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、PBS、及びピロリン酸塩が挙げられる。前記安定剤として、ポリソルベート20及び80、並びに他の適合する非イオン性界面活性剤、EDTA二ナトリウム、グリセリン、マンニトール、及びトレハロースが挙げられる。前記浸透張力調節剤として、塩化ナトリウム及びデキストロースが挙げられる。
【0339】
物理的安定性スクリーニング試験を行う際に、ストレス状態(例えば、凍結/解凍、撹拌)を使用して、およそ10種の製剤(様々なマトリックス+ALTA-2530プラスKineret対照)をスクリーニングし、前臨床忍容性試験において使用される可能性のあるタンパク質製剤マトリックスを同定する。特性決定及びアウトプットには、1~2回の凍結/解凍曝露(複数可)及び撹拌サイクルを経たおよそ10種の製剤(ALTA-2530を含む)の物理的及び化学的特性決定(すなわち、外観、関係物質、SEC、DSC、濁度、DLS)分析が含まれる。
【0340】
ストレス安定性スクリーニング試験を行う際に、GLP試験で使用する溶液製剤を、短期の温度/時間ストレスをベースとした安定性を使用して評価する。
【0341】
製剤濾過試験を行う際に、リード製剤及びバックアップ製剤を、ストレス下の試験スクリーニング試験において同定する(最大4の組成物;2マトリックス×2の濃度)。最大2×0.2μmのフィルタタイプを使用するフィルタ適合性試験(すなわち、不純物及び含量の損失)を行う。結果を、単一及び二重濾過を使用して生じさせる。
【0342】
物理的安定性のスクリーニング試験では、重要な成果物は、ストレス状態(例えば、凍結/解凍、撹拌)を使用しておよそ10種の製剤(様々なマトリックス+ALTA-2530、Kineret対照)をスクリーニングして、Kineretマトリックスを対照として用いる前臨床忍容性試験において使用される可能性のあるタンパク質製剤マトリックスを同定することを含む。
【0343】
いくつかの実施形態において、特性決定及びアウトプットは、1~2回の凍結/解凍曝露(複数可)及び撹拌サイクルの後の、およそ10種の製剤(ALTA-2530を含む)の物理的及び化学的特性決定(すなわち、外観、関係物質、SEC、DSC、濁度、DLS)分析を含む。いくつかの実施形態において、データは、前臨床忍容性試験において使用される及び/又は短期安定性試験において使用される4~6つのマトリックス(ALTA-2530なし)を同定するのに使用される。同定されたマトリックス組成物(ALTA-2530なし)に関する調製指示書及び製剤成分を、前臨床試験現場に提供する。
【0344】
ストレス安定性スクリーニング試験では、重要な成果物を、前臨床忍容性試験からの結果、並びに、短期の温度/時間ストレスベースの安定性を評価することによるGLP試験での使用のための溶液製剤の同定と組み合わせる。フェーズ1臨床試験においてこの製剤の希釈物が用いられることが期待される。いくつかの実施形態において、4~6種の製剤(例えば、2~3種の製剤について濃度2種類ずつ)が2~3回の貯蔵状態及び凍結/解凍(先に行われていないとき)に供され、またプルポイントが初期時及び3度(例えば、T=0、24時間、48時間、7日)あることが含まれる。いくつかの実施形態において、ストレス試験条件は、既存のデータ(文献及び物理的安定性スクリーニング試験結果)に基づいて決定される。
【0345】
製剤濾過試験では、重要な成果物は、ストレス下の試験スクリーニング試験において同定されるリード製剤及びバックアップ製剤(最大4種類の組成物;2マトリックス×濃度2種類)を使用することを含み、最大2×0.2μmのフィルタタイプを使用するフィルタ適合性試験(すなわち、不純物及び含量の損失)を行う。一重濾過及び二重濾過を使用して結果を生じさせる。
【0346】
実施例5-エアロゾル特性決定
実施例4からの前製剤スクリーニング試験において同定された製剤を使用して、使用期間(T=0及びT=24時間)、及びInnoSpire Goネブライザを使用して臨床投与をシミュレーションする投与継続期間にわたっての噴霧に対する安定性を求める。これらの検査のための単一のネブライザ充填体積も求める。サンプルを、前臨床試験現場のエンジニアリングランから評価して、前臨床ネブライザ(Aerogen Solo)を使用して予測される投薬継続期間(すなわち、前臨床試験での投薬継続期間(例えば、0、1、3時間))にわたる噴霧に対する安定性をアセスメントする。
【0347】
噴霧に対する安定性の試験を行うために、最少で2種類、最大で4種類の噴霧用溶液(製剤スクリーニング試験で同定されたもの)を、臨床ネブライザ及び前臨床ネブライザの両方を(両者が異なる場合には)使用して特性決定する。意図される投与継続期間及び使用期間にわたって前臨床ネブライザから生じる不純物のプロファイル(サンプルは、前臨床試験現場において行われるエンジニアリングランから提供される)を決定する。意図される投与継続期間にわたる、及び使用期間における、臨床ネブライザ(Philips InnoSpire Go)から生じる不純物プロファイルも決定する。溶液粘度、密度、濁度、及び表面張力データの噴霧前アセスメントを収集及び分析する。データはまた、各製剤について、両方のネブライザについて、T=0及びT=24時間(冷蔵条件で貯蔵された溶液);アッセイ及び不純物(SEC及びRP-HPLCにより、噴霧の前及び後);物理的特性決定(回収された噴霧化溶液及びネブライザに残存する溶液の外観並びに噴霧の前及び後の濁度);SpraytecTMによるVMD及びGSD;液体出力速度(LOR);並びに、ネブライザが空になる、音が出る、又は閉塞する時間の報告、並びに、この時点でネブライザに残存するおおよその残余体積、を決定する。
【0348】
最大で2種類の製剤(低溶液濃度及び高溶液濃度、同じマトリックス)について、ネブライザ充填体積2つ分で(at 2 nebulizer charge volumes)、最少で3つのPhilips InnoSpire Goネブライザユニットを使用する場合の使用期間にわたっての肺用量及び用量可変性を、ネブライザ3個からAPSD及びGSDを生じさせること;USP1601を使用して、固定された継続期間(音が出る所定の時間)でDDデータ(n=10)を生じさせること;肺用量(DD及びカットオフ5μm及び3.5μmAPSDを使用する)及び用量可変性を推定すること;並びに、固定されたネブライザ投入体積の各々について複数回のネブライザ充填の関数として肺用量を推定すること、によって推定する。
【0349】
実施例6-提案されるBOSにおけるALTA-2530の臨床試験
図4は、健康なボランティア及びBOS患者におけるALTA-2530の単回投薬/複数回漸増投薬(SAD/MAD)を使用するフェーズ1試験を示す。提案される試験は、健康なボランティア及びBOS患者においてMAD限界値を7日として、単一試験として行われ得る。
【0350】
図5は、12週でPOC暫定措置を施すBOS患者におけるALTA-2530のフェーズ2b/3のピボタル試験を示す。
【0351】
実施例7-ALTA-2530の吸入送達は、ボーラスIV注入に続く低レベル且つ一時的な曝露と比較してより広範囲及び長期の肺のrhIL-1raへの曝露を達成する
ALTA-2530は、閉塞性細気管支炎症候群(BOS)に対して開発中である、組み換えヒトIL-1受容体アンタゴニスト(rhIL-1Ra)の新規な吸入製剤である。BOSにおけるIL-1過剰発現は、慢性炎症及び線維芽細胞の活性化を駆動して、気道リモデリング及び酸素移動低下につながる。内因性IL-1Raは、IL-1に応答して上方制御されサイトカインシグナリングを制限するが、発現は、BOSを防止するのに適切でない。薬理学的なIL-1封鎖は、生理学的免疫調節の回復と似たものであると考えられる。
【0352】
目的:
ALTA-2530が、噴霧の間に安定であるか、末梢気道への分布にふさわしいエアロゾル粒子径を達成するか、及び肺の曝露がBOSの処置に相応するかを決定する。
【0353】
方法:
噴霧化及びインビボ試験をAerogen Soloネブライザ又はPhillips InnospireGo振動メッシュネブライザによって実施した。ラット(n=4/群/時点)に、鼻部吸入によってALTA-2530を投与した(0.63、1.3、及び2.1mg/g(肺))。血清及び気管支肺胞洗浄(BAL)サンプルを、LC-MSMSによる分析用に回収した。肺上皮被覆液(ELF)におけるALTA-2530を、BALF希釈の因子(BALF dilution factor)を使用して算出した。
【0354】
ALTA-2530の吸入送達は、一時的で20分未満であるボーラスIV後曝露とは対照的に、齧歯動物において24時間を著しく超えるという、広範囲で安定であり且つ持続性である曝露を、肺上皮被覆液において達成する。肺は、BOS、一次移植片機能不全(PGD)、再かん流損傷、感染関連ARDS、又は化学的肺損傷を含むがこれらに限定されない肺移植後の状態を含む状態の処置の、標的器官である。肺組織においてrhIL-1Raの薬理学的に関連するレベルを達成することは、rhIL-1Raによる高用量のSC処置又はIV処置を必要とし、一部の患者において結果として腎臓機能障害及び好中球減少症を生じさせる。IV送達で肺組織に与えられる曝露は低レベル且つ一時的である。吸入送達では、臨床的有意性のある器官が標的とされ、長続きする高度の曝露レベルが達成される。
【0355】
ALTA-2530の吸入送達は、ラットにおいて24時間を超えるrhIL-1Raへの肺の曝露を達成し、これはボーラスIV注射後の一時的な20分未満の曝露と比較すると長期である。肺の病状の処置に必要とされるIV投薬が1日複数回であるのと比べ、ALTA-2530の吸入送達では臨床的に投薬の頻度は1日1回又は2回、又はそれ未満になると予測される。さらに、ラットにおける血漿曝露に対する肺上皮被覆液の比は、肺組織についての0.44倍:5時間のIV点滴後の血漿;と比較して2500倍超であった(Kim et al,Kidney as a major clearance organ for recombinant human interleukin-1 receptor antagonist,Journal of Pharmaceutical Sciences,1995)。
【0356】
Sprague Dawleyラットのオス及びメスへの組み換えヒトIL-1受容体アンタゴニスト(rhIL-1Ra)の吸入送達後に、肺気管支肺胞洗浄流体(BALF)におけるrhIL-1Ra曝露を測定した。
【0357】
Sprague Dawleyラットのオス(M)及びメス(F)を計量し、試験群にランダム化した(表4)。1つの群をナイーブで維持し、他の全ての動物を、ビヒクル(生理食塩水、0.9%塩化ナトリウム)、又は鼻部吸入を介してのALTA-2530試験物質(TA)組み換えヒトIL-1受容体アンタゴニスト(rhIL-1Ra)のいずれかの単回投与に曝した。rhIL-1Raの目標用量レベルを、1.5ミリグラム(mg)/リットル(L)の目標エアロゾル濃度における曝露継続期間によって調節した。
【0358】
【表4】
【0359】
スケジューリングされた曝露後検視の間、全てのTK動物から血液(血清)及びBALFをトキシコキネティクス(TK)分析用に回収した。
【0360】
rhIL-1Raの血清及びBALFレベルを、LC-MSMSによって測定した。抗ヒトIL-1RA抗体によってコーティングされたストレプトアビジン磁気ビーズを使用して血清及びBALFサンプルからrhIL-1RAを捕捉し、トリプシンを用いてビーズ上でのタンパク質分解(“on-bead” proteolysis)に供し、変性、精製、アルキル化して、結果としてrhIL-1RAに由来する特徴的なペプチド断片を生じさせた。選択された特徴的なペプチドを、サンプルにおけるALTA-2530濃度の代わりとして定量した。
【0361】
BALF中のrhIL-1Raの濃度を、Rennard et al,J Applied Physiol,1986によって記載されているBALF及び血漿尿素の正規化を用いて、肺上皮被覆液(ELF)の回収の間に導入された希釈の因子について補正した。BALF中の尿素のレベルは、定量下限(LLOQ)未満であったため、正規化係数を、LLOQ値(1mg/dL)を使用して算出した。そのため、ELF中のrhIL-1Raについて報告される値は、恐らくは、真の濃度の下方推定値である。使用した平均血漿尿素濃度は、血漿尿素についての性別混合群の平均値に基づく。
【0362】
結果:
噴霧化されたALTA-2530は、細気管支への送達にふさわしい、空気動力学的中央粒子径約2.5~4μmのrhIL-1Ra粒子を、送達した。HPLC-UV法及びHPLC-SEC法による不純物プロファイル並びにインビトロ効能アッセイは、rhIL-1Raタンパク質が噴霧の間に安定であり完全な効能を保持したことを実証した。
【0363】
血清及びELFにおけるrhIL-1Raについての記述薬物動態パラメータを表5に提示する。図6は、ラットへの単回投与後のELF及び血清におけるrhIL-1Raについての濃度対時間プロファイルを示すプロットである。
【0364】
【表5】
【0365】
考察:
ALTA-2530の吸入送達は、ラットにおいて24時間を超えるrhIL-1Raへの肺の曝露を達成し、これはボーラスIV注射後の一時的な20分未満の曝露と比較すると長期である。
【0366】
肺の病状の処置に必要とされるIV投薬が1日複数回であるのと比べ、ALTA-2530の吸入送達では、送達後の肺におけるrhIL-1Raの長期の曝露からすると、臨床的に投薬の頻度は1日1回又は2回、又はそれ未満になると予測される。
【0367】
AUCで、肺組織について5時間のIV点滴後における血漿に対しての肺組織の曝露の比が、0.44倍であるところ、血漿に対しての肺上皮被覆液の曝露の比は、全ての吸入用量にわたって2500倍超であった(Kim et al,1995)。
【0368】
IL-1Raは、IL-1bと匹敵する親和性でIL-1RI受容体と結合する;そのため、肺組織における薬理学的レベルには、約100倍レベルのrhIL-1Raレベルが必要とされる。ヒト等価用量(mg/g(肺)基準)では、ラットBALF rhIL-1Ra濃度は、BOS患者のBALにおいて報告されているIL-1bの該濃度の1000倍を超えた。
【0369】
噴霧されたALTA-2530は、安定且つ活性なrhIL-1Raタンパク質を、BOSにおける1日1回の治療投薬に予測される肺の末梢気道への送達のための粒度及び曝露継続期間で送達する。
【0370】
インビボ試験からの有効な動物用量(例えば、上記表2を参照されたい)は、当該分野において公知の変換方法を使用して適切なヒト用量に変換され得る(例えば、Tepper et al,Breathe in,breath out,it’s easy:What you need to know about developing inhaled drugs”,Int J of Tox,2016 35(4) 376-392を参照されたい)。いくつかの実施形態において、ラット用量は、肺重量1gあたりのALTA-2530のmgを基準にしてヒト用量に変換され得る。いくつかの実施形態において、ヒト患者に、約0.5mg/kg~約2mg/kgの用量で吸入ALTA-2530を投与する。
【0371】
実施例8-健康な喫煙者における噴霧化アナキンラの安全性、薬理学的効果及び生物学的効果をアセスメントする
探索的な、単回用量の、用量漸増フェーズ1試験を、健康な喫煙者18人で実施した。18人の被験者全てが、噴霧化されたアナキンラの吸入を受けた。前記被験者を三つの投薬群に分け、アナキンラの剤形を以下のように投与した:投薬量レベル0.75mgを6人の被験者が受け、投薬量レベル3.75mgを6人の被験者が受け、投薬量レベル7mgを投薬量レベルを6人の被験者が受けた。連続投薬群それぞれの間で14日の間隔があり、これにより、先の投薬群における4人の被験者の安全性をアセスメントした。安全性アセスメントは、診察、バイタルサイン測定、臨床実験室評価、AEの文書化、心電図(ECG)アセスメント、並びに、肺機能(FEV)、25~75%の努力呼気流量(FEF)、及び強制肺活量(FVC)を含んだ。各投薬群内の4人の被験者を安全性について分析した後に、薬理学的及び生化学的終点における気管支鏡検査を各投薬群内の2人の被験者において実施した。気管支鏡分析を安全性分析とは独立して実施した。試験の合計継続期間は2.5ヶ月であった。
【0372】
実施例9-含量均一性
この試験は、バッチからの適切な容器数(初めからn=約10及び終わりからn=約10)の、ラベル要求と一致する、アクチュエータ又はマウスピースから射出されるスプレー(又は最小用量)あたりの薬剤の均一性を実証するように設計される。主な目的は、同じ容器内及びバッチの複数の容器間でのスプレー含量均一性を確保することである。薬物物質含量について、前記アクチュエータ又はマウスピースから排出されるスプレーを全面的に分析する技術は、容器間、及び薬物製品のバッチ間で、個々の容器からの初めから終わりまでの複数のスプレーを含む。この試験では、製剤、製造プロセス、及びポンプがアセスメントされて、バッチの全体性能評価が提供される。製品ラベル表示において特定されている最小用量あたりのスプレーの数が1回である場合を除いて、一測定あたり最大で2回分のスプレーを使用する。再現可能なインビトロ用量回収を確実にするために、手技には、作動パラメータ(例えば、ストローク長さ、作動力)の制御が備わる。前記ラベル表示における指示書に従って準備された部材を用いて前記試験を実施する。前記アクチュエータ又はマウスピースから送達される薬物物質の量を、実際の量と、ラベル要求に対しての百分率との両方で表記する。
【0373】
以下の許容基準を使用する。しかし、スプレー含量均一性が同等又はそれを超える確実さとなるように、代替的アプローチ(例えば、統計的アプローチ)を使用してもよい。概して、バッチが許容可能であるには(1)測定あたりの活性成分の量が、20回の測定のうちの2回(最初から10回目及び最後から10回目)より多くについて、ラベル要求の80~120パーセントの範囲から外れない、(2)前記測定のうちいずれも、ラベル要求の75~125パーセントの範囲から外れない、及び(3)最初及び最後の測定のそれぞれの平均が、ラベル要求の85~115パーセントの範囲から外れない、ことである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】