(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】化学反応を実行するための反応器および方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022564632
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2021060601
(87)【国際公開番号】W WO2021214257
(87)【国際公開日】2021-10-28
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523112002
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ホフシュテッター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ツェルフーバー,マティウ
(72)【発明者】
【氏名】ライザー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】キーゼ,ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーゲマン,ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】エンゲンハイスター,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ファイグル,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレンホーファー,アントン
(72)【発明者】
【氏名】デルホム-ノイデッカー,クララ
(72)【発明者】
【氏名】シュストフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】イェンネ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】コッヘンデルファー,キアラ・エンネ
(72)【発明者】
【氏名】ライプ,ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】キューン,ハインツ-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ,ライナー
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075AA03
4G075AA62
4G075BA10
4G075CA02
4G075CA63
4G075CA65
4G075CA66
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA06
4G075EB23
4G075EC01
(57)【要約】
本発明は、反応容器(10)と、1つまたは複数の反応管(20)と、1つまたは複数の反応管(20)の電気的加熱のための手段(40)とを有し、化学反応を実行するための反応器(100,200)に関する。反応容器(10)は、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開く1つまたは複数の排出オリフィス(61,62)を有し、反応容器(10)の内部へ不活性ガスを供給するように設定されたガス供給手段(50)が設けられる。対応する方法も本発明の主題である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器(10)と、1つまたは複数の反応管(20)と、前記1つまたは複数の反応管(20)の電気的加熱のための手段(40)とを有し、化学反応を実行するための反応器(100,200)であって、前記反応容器(10)は、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定された1つまたは複数の排出オリフィス(61,62)を有し、不活性ガスを前記反応容器(10)の内部に供給するように設定されたガス供給手段(50)が設けられることを特徴とする、反応器(100,200)。
【請求項2】
前記化学反応を、500℃を超える、特に700℃から1000℃の温度レベルで実行するように設定される、請求項1に記載の反応器(100,200)。
【請求項3】
前記1つまたは複数の排出オリフィス(61)は、恒久的に開いている、請求項1または請求項2に記載の反応器(100,200)。
【請求項4】
前記1つまたは複数の排出オリフィス(62)は、設定圧力レベル未満で閉じられ、前記設定圧力レベルに達したときに一時的または恒久的に開くように設定される、請求項1または請求項2に記載の反応器(100,200)。
【請求項5】
前記ガス供給手段(50)は、前記反応容器(10)内に前記不活性ガスを連続的に供給するように設定される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項6】
前記ガス供給手段(50)は、前記不活性ガスを1回だけ、または周期的に前記反応容器(10)に供給するように設定される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項7】
前記反応容器(10)は、減圧レベルにおける動作のために設定され、前記反応容器(10)から出るガス流を形成するための手段を有する、請求項3に記載の反応器(100,200)。
【請求項8】
前記反応容器(10)は、超臨界圧力レベルにおける動作のために設定される、請求項4に記載の反応器(100,200)。
【請求項9】
前記ガス供給手段(50)は、前記不活性ガスとして、窒素、二酸化炭素、および/またはアルゴンをそれぞれ超大気圧含有量で有するガスまたはガス混合物を提供するように設定される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項10】
前記1つまたは複数の排出オリフィス(61,62)は、1つまたは複数の煙突(60)に接続される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項11】
前記ガス供給手段(50)は、前記煙突(60)の寸法決定に基づいて前記反応容器(10)内の最大酸素含有量を調整するように設定される、請求項10に記載の反応器(100,200)。
【請求項12】
前記ガス供給手段(50)は、酸素測定値に基づいて、不活性ガスの量を規制するように設定される、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項13】
測定された酸素含有量が、所望される酸素含有量を超えた場合、反応動作を回避するように設定される手段を備える、請求項12に記載の反応器(100,200)。
【請求項14】
圧力および/または炭化水素含有量が設定値を超えた場合、反応動作を回避するように設定される手段を備える、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項15】
化学反応を実行するための方法であって、反応容器(10)と、1つまたは複数の反応管(20)と、前記1つまたは複数の反応管(20)の電気的加熱のための手段(40)とを有する反応器(100,200)が使用され、前記方法は、使用される前記反応容器(10)が、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定された1つまたは複数の排出オリフィス(61,62)を有する反応容器(10)であり、ガス供給手段(50)を使用して、不活性ガスが、前記反応容器(10)の内部に供給されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルにしたがって、化学反応を実行するための反応器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業における多くのプロセスにおいて、1つまたは複数の反応物が、加熱された反応管を通過し、そこで、触媒的または非触媒的に反応する、反応器が使用される。加熱は特に、進行中の化学反応に必要な活性化エネルギに打ち勝つために役立つ。この反応は、全体として吸熱的に、または活性化エネルギに打ち勝った後、発熱的に進行する可能性がある。本発明は、特に、強い吸熱反応に関する。
【0003】
そのようなプロセスの例は、水蒸気分解、種々の改質プロセス、特に水蒸気改質、乾式改質(二酸化炭素改質)、混合改質プロセス、アルカンの脱水素プロセスなどである。水蒸気分解において、反応管は、反応器内に少なくとも1つのU字形屈曲部を有するコイルの形態で反応器を通過して案内されるが、U字形屈曲部なしで反応器を通過して延びる管は通常、水蒸気改質で使用される。
【0004】
本発明は、そのようなすべてのプロセスおよび反応管の設計に適している。ウルマン産業化学事典の、たとえば、2009年4月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、および2000年6月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a22_211の記事「エチレン」、「ガス生産」、および「プロペン」は、純粋に例示目的のためにここで参照される。
【0005】
対応する反応器の反応管は、従来、バーナを使用して加熱される。この場合、反応管は、バーナも配置されている燃焼チャンバを通過して送られる。
【0006】
しかしながら、たとえばDE 10 2015 004 121 A1(同様にEP 3 075 704 A1)に記載されているように、たとえば、低減された局所的な二酸化炭素排出の有無に関わらず製造される合成ガスおよび水素の需要は、現在増加している。しかしながら、この需要は、典型的には化石エネルギ担体の燃焼により、燃焼反応器が使用されるプロセスでは満たすことができない。たとえば、コストが高いなどの理由で、他のプロセスは除外される。同じことは、アルカンの水蒸気分解または脱水素によるオレフィンおよび/または他の炭化水素の提供に当てはまる。そのような場合でも、その場で、より少量の二酸化炭素しか放出しない方法が望まれる。
【0007】
この背景に対して、前述のDE 10 2015 004 121 A1は、燃焼に加えて、水蒸気改質のための反応器の電気的加熱を提案している。この場合、たとえば、3つの外部導体に三相交流電圧を提供する1つまたは複数の電圧源が使用される。各外部導体は反応管に接続されている。パイプラインが開口し、反応管が導電的に接続されたコレクタによって、スターポイントが実現されるスター回路が形成される。このようにして、コレクタは理想的には、無電位のままである。鉛直線に対して、コレクタは、燃焼チャンバの下方および外側に配置され、好ましくは反応管に対して横断方向に、すなわち水平に沿って延在する。WO 2015/197181 A1も同様に、反応管が、スターポイント回路に配置された反応器を開示している。
【0008】
電流が反応管を通過して流れる反応管の直接加熱に加えて、反応管の間接的な電気的加熱についても多種多様な概念がある。間接的な電気的加熱は、とりわけWO 2020/002326 A1に記載されているように、外部電気的加熱の形態で行うことができる。たとえばWO 2019/228798 A1に開示されているように、内部加熱も可能である。抵抗加熱またはインピーダンス加熱に加えて、WO 2017/072057 A1に記載されているように、反応管または触媒床の誘導電気的加熱を行うことができる。誘導加熱は、たとえば、内部または外部の加熱素子、または反応管自体を加熱することができる。反応管の直接(非誘導)加熱は、DE 10 2015 004 121 A1にも開示されている。加熱については、多相交流または単相交流または直流で基本的な概念を実現できる。直流による、または単相交流を用いた、反応器の直接加熱の場合、無電位のスターポイントを有するスター回路は実現できないが、電力入力は、原理としては、多相直流の場合と同様の方式で実現できる。本発明は、電気的加熱のすべての変形例に適している。
【0009】
WO 2004/091773 A1は、高温でガス反応を実行するための電気的加熱式反応器を記載している。反応器は、反応器ブロック、電気的加熱に適した材料の1つまたは複数のモノリシックモジュールで構成され、これらのモジュールはハウジングによって取り囲まれ、モジュールを通過して延在し、反応チャネルとして設計されたチャネルで、および反応器ブロックに電流を伝導または誘導するためのデバイスで構成される。そのような反応器の動作中の安全性は、反応器ブロックのハウジングが、前記反応器ブロックを気密方式で密閉する二重壁ジャケットと、不活性ガスを二重壁ジャケットに供給するための少なくとも1つのデバイスとを有するという点において高められる。
【0010】
以下でも説明されるように、電気的加熱式反応器の場合、特別な安全関連の態様を遵守する必要がある。本発明の目的は、これらの態様を考慮に入れ、このようにして電気的加熱式反応器の有利な動作を可能にする措置を特定することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE 10 2015 004 121 A1
【特許文献2】EP 3 075 704 A1
【特許文献3】WO 2015/197181 A1
【特許文献4】WO 2020/002326 A1
【特許文献5】WO 2019/228798 A1
【特許文献6】WO 2017/072057 A1
【特許文献7】WO 2004/091773 A1
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2009年4月15日
【非特許文献2】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、2006年12月15日
【非特許文献3】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a22_211、2000年6月15日
【発明の概要】
【0013】
この背景に対して、本発明は、独立請求項のプリアンブルにしたがって、化学反応を実行するための反応器および方法を提案する。実施形態は、従属請求項および以下の説明の主題である。
【0014】
本発明の基礎である、電化された炉の概念(「炉」という用語は、対応する反応器または少なくともその断熱された反応空間を示すと一般に理解される)において、たとえば反応管、またはその対応する管部分(以下、略して「管」とも呼ばれる)自体が、熱を発生させるための電気抵抗器として使用される。この直接的なアプローチは、外部の電気的加熱素子による間接加熱と比較して効率が高く、達成可能な熱流束密度も高いという利点がある。しかしながら、前述したように、前記加熱が有利であることが証明された場合、本発明の枠組み内で、任意の他のタイプの電気的加熱を(直接的または間接的に、抵抗、インピーダンス、または誘導加熱として、単相交流または多相交流の形態で、または直流によって)実行することも可能である。
【0015】
多相交流で加熱する場合、電力はM個の別々に接続された相を介して、直接加熱された反応管に供給される。M相に接続された導体性反応管は、他の端部においてスターポイントにも電気的に接続され得る。相数Mは特に3であり、従来の三相電流電源またはネットワークの相数に対応する。しかしながら、原則として、本発明は、3相の使用に限定されず、より多くの相数、たとえば4,5,6,7または8の相数でも使用できる。したがって、位相オフセットは、特に360°/M、すなわち三相電流に対して120°となる。
【0016】
多相交流を有する電気的加熱では、接続されたパイプラインの電気的絶縁を理想的に不要にするスター回路によって、スターポイントにおいて、相間の等電位化が達成される。特定の部分を断熱するための金属製反応管の破損は、特に高温が使用され、必要な材料費および建設費が高く、望ましくないため、これは、そのような炉概念の特別な利点を表している。
【0017】
しかしながら、本発明により提案され、以下に説明される措置は、単相交流電流および直流電流の使用に同様に適しており、本発明は、交流電流で加熱される反応器および直流で加熱される反応器の両方で、または対応する混合形態でも使用できる。前述のように、本発明は、間接加熱反応管での使用にも適している。直流構成の場合、たとえば、電流源のタイプ、および電力入力、または電流が供給される対応する部分に対向する反応管の領域のみが、交流構成と異なる。後者では、異なる管部分の電気的接続は、任意選択的にのみ実行される。無電位スターポイントは直流構成には存在しないので、電流の流れを外部に安全に戻す適切な電流放電要素を提供する必要がある。後者は、以下に説明する電力入力と同様に設計できる。
【0018】
本発明は、特に反応管が損傷(「コイルシュレッダ」)を受けた場合に必要である、説明したタイプの電気的に加熱された反応器の保護に関する。対応する損傷の場合、特に、1つまたは複数の反応管が完全に切断される可能性があるが、本発明は、漏れの程度がより少なく、有利である。対応する損傷の場合、断熱のために大部分が密閉された反応容器内への、可燃性ガスの突然の、または徐々に進行する漏れが発生する。
【0019】
そのような損傷は、特に本発明にしたがって使用される、純粋に電気的に加熱された反応器よりも、従来の燃焼反応器における安全性に関連する問題が少ない。なぜなら、たとえば炭化水素-蒸気の混合物の形態で、燃焼反応器内の反応管から生じる可燃性ガスは、反応容器または対応する燃焼チャンバで発生する燃焼を通じて、即時的かつ継続的に反応する可能性があるためであるか、または燃焼が行われることにより酸素含有量が大幅に減少し、反応管を取り囲むガス空間はすでに実質的に「不活性化」されているからである。対照的に、純粋な電気的加熱の場合、対応する可燃性ガスが、反応容器内に蓄積し、そこで、空気の通常の酸素含有量と、自然発火温度を超える温度とで、たとえば、爆発または爆裂の限界に達する可能性がある。爆発または爆裂を伴わない燃焼の場合でも、完全燃焼または不完全燃焼によってエネルギが投入され、過熱する可能性がある。反応管から流出するガスの体積とともに、完全燃焼または不完全燃焼自体が、特に著しい圧力上昇をもたらす可能性がある。本発明は、ガス混合物の燃焼が回避されるので、そのような圧力上昇を減少させる。
【0020】
特許請求の範囲の用語において、本発明は、化学反応を実行するための反応器に関し、反応器は、反応容器(すなわち、断熱された、または少なくとも部分的に断熱された領域)と、1つまたは複数の反応管と、1つまたは複数の反応管の電気的加熱のための手段とを有する。本発明により提案される反応器は、特に、高温反応について以下に説明する温度レベルで化学反応を実行するように設定される。電気的加熱のための手段は、上記で広範に説明したように設計することができる。一方では、この手段は、1つまたは複数の反応管に電力を供給するための手段であり得る。これは、1つまたは複数の反応管に電流の流れと、対応する加熱とをもたらすことを意味し、たとえば、反応器に案内される剛性の電流棒であるが、また、この手段は、熱を伝導的におよび/または熱放射によって1つまたは複数の反応管に伝達するか、または、たとえば、1つまたは複数の反応管または触媒床で渦電流を発生させ、このようにして熱を発生させる、抵抗および/または誘導加熱デバイスなどの間接加熱のための手段であり得る。
【0021】
本発明の枠組み内で、反応容器は、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定された1つまたは複数の排出オリフィスを有し、反応容器の内部へ不活性ガスを供給するように設定されたガス供給手段が設けられる。
【0022】
以下に、本発明にしたがって、または本発明の異なる実施形態にしたがって設計された反応器が主に説明される。対応する説明は、いずれの場合も、対応する方法にも適用され、対応する方法を用いて、対応して設定された手段が、いずれの場合も、指定された方法ステップを実行する。
【0023】
不活性ガスを供給するために、ガス供給手段は、たとえば、供給ノズル、または反応容器内に開口する開口部を、ライン、およびラインに接続されたガスリザーバとともに備え、それによって、不活性ガスを、反応容器の内部に供給することができる。反応容器は、特に、断熱壁によって大部分、すなわち少なくとも90,95,または99%が囲まれたチャンバである。反応容器の内部は、反応管が配置され、反応器の壁に囲まれた領域である。たとえば、二重壁設計の反応器の壁は、内部の一部ではない。
【0024】
本発明のすべての実施形態において、不活性ガスは、窒素、二酸化炭素、および/またはアルゴンをそれぞれ超大気圧含有量で有するガスまたはガス混合物であることができるか、またはガス供給手段は、たとえば、利用可能な対応する不活性ガスを保持することによって、または、純粋なガスを混ぜる、すなわち空気に純粋なガスを混合することによって不活性ガスを提供することによって、対応する不活性ガスを提供するように設定される。特に、不燃性ガスの含有量は、50%、60%、70%、80%、または90%を超えることができる。したがって、不活性ガスは、伝統的な意味での純粋な「不活性ガス」である必要はなく、むしろ、不活性ガスは、特に不燃性ガスの含有量により、混合物の可燃範囲を少なくとも部分的に減少させる、すなわち、発火、爆発、または爆裂のリスクを減少させるのであれば十分である。本発明の枠組み内で使用するための不活性ガスは、特に、減圧酸素含有量、たとえば、10%、5%、1%、0.5%、または0.1%未満の酸素含有量を有することができる。特に、不活性ガスはまた、(完全にまたは実質的に)酸素を含まなくてもよい。
【0025】
提案された措置によって、本発明は、電気的にエネルギが入力される高温反応器の断熱のために、および安全関連保護のために機能する、調整された雰囲気を有する閉じ込めを提供する。本発明の枠組み内で、特に、完全な電気的加熱を提供することができる。すなわち、反応管の加熱は、少なくとも反応容器内で、有利には熱的な加熱によって支配的にまたは排他的になされ、すなわち、特に、ここで導入される全熱量のうち、ここで導入される熱量の少なくとも90,95,または99%は、電気的加熱手段によって行われる。1つまたは複数の反応管を通って伝導されるガス混合物を介した熱入力は、ここでは無視されたままであるため、この割合は、特に、外部から、反応容器内の1つまたは複数の反応管の壁に伝達される、または、この壁または触媒床における反応容器内で生成される熱に関連する。
【0026】
したがって、その最も一般的な形態において、本発明は、電気的加熱を備え、炭化水素が供給される高温反応器用の閉じ込め(ここで「高温反応」という用語は、特に、500℃を超える温度、特に700から1000℃の温度で進行する反応を指す)を記載し、この閉じ込めは、1.管の周囲に不活性雰囲気を提供し、2.恒久的に密閉されない。プロセスガス温度が、プロセスガス中に含まれる炭化水素の自然発火温度に近いかまたはそれを超える、電気的に加熱される反応器への適用が特に好ましい。「プロセスガス」という用語は、1つまたは複数の反応管を通って流れるガスまたはガス混合物を指す。
【0027】
本発明の実施形態は、特に、1つまたは複数の排出オリフィスの実施形態によって異なり、排出オリフィスは、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定されている。しかしながら、対応して設計された排出オリフィスの組合せも、原則として可能である。
【0028】
以下で「第1のグループ」と呼ばれる実施形態のグループでは、1つまたは複数の排出オリフィスが、恒久的に開いている。これは、1つまたは複数の排出オリフィスが、流れ断面の既存の狭小化の可能性を除いて、反応容器に出入りする流体の流れに対して機械的抵抗を与えないことを意味する。したがって、1つまたは複数の開口部は閉じていない。
【0029】
対照的に、以下で「第2のグループ」と呼ばれる実施形態のグループでは、1つまたは複数の排出オリフィスが、設定圧力レベルより上で開くように設定される。1つまたは複数の排出オリフィスは、設定圧力レベル未満で閉じられるか、または設定圧力レベルに達したときに一時的または恒久的に開くように設定される。この点で、「恒久的に」開いているという用語は、特に不可逆的な開放を指し、この実施形態では、その後の設定圧力レベルのアンダーシュートの後、ガスの放出による再閉鎖は起こらない。対照的に、「一時的に」開くという用語は、再閉鎖が行われる開放を指す。
【0030】
所定の圧力レベルで開くために、1つまたは複数の排出オリフィスは、たとえば、ばねまたは負荷特性値によって定義される開放抵抗を有し、したがって、対応する圧力からのみ開く、1つまたは複数のばね負荷または重量負荷フラップを有し得る。第2のグループの実施形態のうちの1つの実施形態では、1つまたは複数の破裂ディスクまたは圧力逃がし弁も、それ自体既知の方式で使用され得る。たとえばセンサによって圧力値を検出し、設定しきい値を超えた場合に、たとえば点火機構または電気作動駆動などの任意のタイプの開放機構をトリガすることも可能である。これにより、必要に応じて短い応答時間内に、通常動作中に、説明した方式で、閉鎖状態に保たれる十分大きな断面を解放することが可能となる。
【0031】
特に第1のグループの実施形態において、また場合によっては第2のグループの実施形態においても、反応器は、不活性ガスで一定にパージするように設定することができる。言い換えれば、説明したガス供給手段は、反応容器内に不活性ガスを連続的に供給するように設定される。第1のグループの実施形態において、不活性ガスは、特に主に1つまたは複数の恒久的に開いている排出オリフィス、場合によってはさらなる排出オリフィス、特に、回避できないまたは意図的に作成されたガス漏れまたはバイパスを通って、たとえば既存の煙突へ流出することができる。1つまたは複数の恒久的に開いている排出オリフィスが、通常は閉じている第2のグループの実施形態では、不活性ガスの流出のためのさらなる開口部が、たとえば、煙突へのバイパスラインなどで提供されるか、または、たとえば反応容器の漏れによって、必然的に存在する。
【0032】
しかしながら、一定のパージの代わりに、1つまたは複数の所定の基準にしたがって、不活性ガスを1回だけ、または周期的に反応器に供給するようにも提供され得る。次いで、ガス供給手段は、そのような動作のために設定される。1つまたは複数の所定の基準は、たとえば、設定圧力値および/または設定濃度、たとえば最小および許容酸素含有量に到達することを含むことができる。しかしながら、1つの基準は、反応容器が初めて動作されることでもあり得る。特に、連続測定を実行することができ、対応する測定値が、設定基準がもはや満たされないことを示すときはいつでも、不活性ガスの供給を開始することができる。不活性ガスの1回または定期的な供給は、特に第2のグループの実施形態において、1つまたは複数の排出オリフィスの開口部の圧力値未満で提供することができる。なぜなら、ここでは、不活性ガスの自由な流出を防ぐことができ、不活性ガスを、反応容器内に長時間保持することができるからである。
【0033】
第1のグループの実施形態の特に好ましい実施形態では、反応器は、減圧レベルにおける反応容器の動作のために設定される。この場合、反応器から出るガス流を形成するための手段が設けられる。これに関連して、このグループの実施形態では、恒久的に開いている1つまたは複数の排出オリフィスを、十分な高さの煙突口を有する煙突に、恒久的に開いた状態で接続することができる。これにより、反応容器内の温度が高くなるため、反応容器内に静的な負圧が生じ、その結果、含まれるガス体積の密度が低下する。これに関連して、たとえば、対応する静的負圧の形成まで送風機の使用を提供することも可能である。
【0034】
対照的に、第2のグループの実施形態のうちの特に好ましい実施形態では、反応器は、過圧レベルにおける反応容器の動作のために設定される。これは、特に、排出オリフィスの開放圧力未満である過圧レベルまで、不活性ガスを供給することによって達成することができる。
【0035】
ある程度まで不活性化されており、環境に対して「開いている」(特に、煙突効果の結果として、反応容器内がわずかに負圧になっている)第1のグループの実施形態によるシステム、あるいは、(特に、反応容器内の特定の過圧で動作可能な)本発明の第2のグループの実施形態による「開くことが可能な」システムは、圧力上昇率、炭化水素の漏出時の反応管への損傷を、反応容器の設計限界を満たす許容量まで制限することができる。
【0036】
反応容器に不活性ガスが供給されるという概念の結果として、反応容器に存在する酸素含有量を、減少させることができる。損傷が発生した場合に漏出する炭化水素の反応速度と、(反応熱入力の結果としての)大幅な追加の体積増加とは、ボックス内の酸素分圧の第一近似でスケーリングされる。
【0037】
本発明の両グループの実施形態において、不活性ガスの供給の結果として、有利には、反応容器の壁は、完全に気密になるように設計される必要はなく、移動の可能性が必要な特定の場所における温度が高いため、たとえば、耐熱性ベローズ構造などの使用など、材料費が非常に高くなる。煙突と連携した減圧レベルでの動作の場合、対応する漏れによって空気が反応容器に引き込まれる可能性があるが、この空気は排出され、煙突によってもたらされる連続的な流れによって希釈される。呼吸を損なう可能性のある不活性ガスまたはその構成要素の使用における安全上の問題は、この手法で回避できる。対照的に、過圧レベルでの動作の場合には、圧力伝播が均一であるため、反応容器への空気の流入を確実に回避できる。漏れによって漏出する不活性ガスは、たとえば、反応容器の外側で十分な換気を行うことにより、排出または希釈できる。
【0038】
反応容器に不活性ガスが供給されるという提案された概念の結果として、反応容器における酸素含有量を、減少させることができる。本発明にしたがって利用できるように、漏出する炭化水素の反応速度、したがって(反応熱入力の結果としての)大幅な追加の体積増加率は、第一近似では、酸素分圧と相関する。この相関関係が以下の表1にまとめられる。ここで、γO2は、酸素分圧を表し、Vreakは、反応関連の体積増加率を表す。
【0039】
したがって、ガス供給手段は、1つまたは複数の煙突の寸法決定に基づいて、反応容器内の最大酸素含有量を調整するように有利に設定される。
【0040】
【0041】
最大許容圧力pmaxは、それぞれのチャンバまたは周囲の閉じ込めの機械的安定性に依存する。この圧力は、コイルシュレッダの場合、または対応する他の安全関連事象の場合、関連するチャンバの体積VBox、煙突の直径DChimneyおよび酸素分圧に依存する圧力pboxと少なくとも同じ大きさでなければならない。
pmax≧pbox=f(VBOX,DChimney,γO2)
【0042】
この要件は、煙突の寸法決定のための設計基準となる。すなわち、これは、1つまたは複数の排出オリフィスを介して恒久的にまたは一時的に存在する環境への連通であり、その逆でもある。この関係は、ここで、
図9を参照して再度説明される。たとえば、破線601,602によって例示されるように、ここで20ミリバールの最大許容圧力上昇が基準として使用される場合、直径500mmの煙突(破線601)を使用できるようにするために、反応に関連した体積増加率は、最大でも約10m
3/sとなり、これにより、最大酸素含有量は約1%になり、これは不活性化によって調整される。
【0043】
逆に、最大でも1%の酸素含有量への不活性化が実行される場合は、少なくとも500mmの煙突直径を使用する必要がある。直径900mmの煙突(破線602)を使用できるようにするために、体積増加率は、約42m3/sにしかならず、最大酸素含有量は約4%になり、これは不活性化によって調整される。逆に、また上記の説明と同様に、最大4%の酸素含有量への不活性化が行われる場合、ここでは少なくとも900mmの煙突直径を使用する必要がある。
【0044】
反応容器内の酸素含有量が少ないほど、体積増加は小さい。その結果、追加の体積の排出を要する非常用煙突の直径を、小さくすることもできる。酸素を含有したフォールスエアの侵入を可能な限り、または、十分に回避するために、酸素含有量の効率的な制限のために重要なことは、環境に対する常に十分に良好なシールである。しかしながら、説明したように、完全なシールは必要とされない。
【0045】
言い換えれば、本発明の枠組み内で、反応容器および/または接続チャンバ内の最大酸素含有量は、不活性ガスによって調整され、この最大酸素含有量は、1つまたは複数の煙突の寸法決定に基づいて、煙突の存在する実施形態の第1のグループにおいて選択されるか、または、ガス供給手段は、不活性ガスを供給するため、またはこれに基づいて酸素含有量を調整するために設定される。ガス供給手段は、特に、目標圧力を超えないように供給するように設定することもできる。第2のグループの実施形態では、同様に、酸素濃度または目標圧力および煙突の寸法決定に基づいて供給を行うことが可能である。
【0046】
供給される不活性ガスの量は、対応する規制手段によって、特に、反応容器における、または存在する場合には煙突における、酸素測定値に基づいて規制することができ、その結果、酸素含有量を、動作中、一定に保つことができる。対応する安全概念は、たとえば、測定された酸素含有量が目標酸素含有量を超える場合、反応器の動作が回避される、または回避を継続することも含み得る。たとえば、反応管への炭化水素の供給および/またはその加熱は、必要な酸素含有量を下回った場合にのみ解放することができる。障害が検出された場合、一般に、反応管への炭化水素の添加により反応動作を回避することができる。
【0047】
反応管からのガスの許容できない漏出は、たとえば、圧力測定センサを介して検出することができ、ガス漏出が検出された場合、炭化水素の合計漏出量を最小化するために、炭化水素の反応管への供給を回避することができる。
【0048】
非常に小さな損傷(急激な圧力上昇を伴わない漏出流)を検出するために、反応容器、または、存在する場合には煙突内の(たとえば、一酸化炭素当量の形態での)炭化水素含有量も、連続的に測定できる。同様に、許容できない値の結果、炭化水素の供給を回避できる。
【0049】
したがって、本発明は、より一般的に言えば、圧力および/または炭化水素の測定に基づいて、1つまたは複数の反応管からのガス漏出を特徴付ける値を決定すること、および、この値が、設定しきい値を超えた場合に、1つまたは複数の安全措置が開始されることを含み得る。
【0050】
化学反応を実行するために、本発明により提案される方法では、反応容器と、1つまたは複数の反応管と、1つまたは複数の反応管の電気的加熱のための手段とを有する反応器が使用される。本発明によれば、使用される反応容器は、1つまたは複数の排出オリフィスを有する反応容器であり、これらは、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定され、不活性ガスは、本発明にしたがって、ガス供給手段を用いて、反応容器の内部に供給される。
【0051】
すでに説明した本発明の展開のうちの1つの展開による反応器が有利に使用される、対応する方法のさらなる特徴および利点については、上記の説明を参照されたい。
【0052】
本発明は、従来技術を参照および比較して、本発明の展開を例示する添付の図面を参照して以下にさらに解明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、非発明的な展開による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態による、煙突の寸法決定の原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下の図では、機能的または構造的に互いに対応する要素は、同一の参照符号によって示され、明確のために繰り返し説明されない。デバイスの構成要素が以下で説明される場合、対応する説明は、いずれの場合も、それによって実行される方法にも関連し、その逆も同様である。図の説明は、交流加熱を繰り返し述べている。しかしながら、前述したように、本発明はまた、加熱のために、直流の使用にも同様に適している。ここでは、上記の説明が参照される。
【0055】
図1は、非発明的な展開による、化学反応を実行するための反応器を概略的に示す。
【0056】
ここで、300で示される反応器は、化学反応を実行するように設定される。この目的のために、反応器は、特に、断熱された反応容器10と、反応管20とを有し、ここでは2つの場合のみ21で示される反応管20の多数の管部分は、それぞれ反応容器10内の第1のゾーン11’と、第2のゾーン12’との間に延びている。
図2を参照して以下でより詳細に説明される反応管20は、適切なサスペンション13によって反応容器のシーリングまたは支持構造に取り付けられる。下部領域では、反応容器は、特に炉(図示せず)を有することができる。言うまでもなく、いずれの場合も、ここで、およびその後に、複数の反応管を提供できる。
【0057】
図2は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための、全体が100で示される反応器を概略的に示す。
【0058】
以前に11’および12’によって示されたゾーンは、ここでは領域11および領域12の形態をとり、第1の領域11内の管部分21を加熱するための管部分21は、いずれの場合も、反応管20を電気的に加熱するため、全体として40によって示される手段が形成された結果として、接続要素42を介して多相交流電源41の相接続部U,V,Wに電気的に接続することができる。スイッチなどの特定のタイプの接続部は例示されていない。ここに例示される本発明の実施形態では、管部分21は、1つまたは複数の反応管20に一体的に接続され、反応容器10内に配置された接続要素30によって、第2の領域12において互いに導電的に接続される。接続要素30には中性導体も接続され得る。
【0059】
したがって、ここに例示される例では、複数の交流電流相のスター回路が実現される。しかしながら、何度か述べたように、本発明は、単相交流加熱、直流加熱、または他の加熱手段、たとえば上記で説明した意味での誘導加熱または間接加熱を使用して提供することもできる。
【0060】
したがって、ここに例示される反応器100では、(複数のそのような反応管20が提供され得るが、)1つの反応管20の複数の管部分21が、反応容器10内に並んで配置される。管部分21は、(部分的にのみ指定されている)U字形屈曲部23を介して互いに交わり、供給部分24および抽出部分25に接続される。
【0061】
第1の領域11には、U字形屈曲部23の第1のグループ(図中下側)が並んで配置され、第2の領域12には、U字形屈曲部23の第2のグループ(図中上側)が並んで配置されている。第2のグループのU字形屈曲部23は、接続要素30に形成され、管部分21は、第2の領域12における接続要素30から第1の領域11まで延在する。電力入力要素52は、所望のように、たとえば剛性に設計され得、棒状部分を有し、反応容器10の壁を通過することができる。
【0062】
反応容器に不活性ガスを供給するための手段は、全体として50で示される。矢印53によって例示される(それに応じて部分的にのみ示される)ように、不活性ガスは、特に、反応容器10の1つまたは複数の壁における壁開口部、ノズルなどを介して、反応容器10に供給される。不活性ガスを提供し、供給するために、適切なガス供給手段が設けられ、これも非常に簡略化された方式でここに示され、たとえば、1つまたは複数のガスタンク51および対応するライン52を備える。
【0063】
図3は、本発明の展開による、化学反応を実行するための反応器を概略的に示しており、全体が200で示されている。
【0064】
反応器200において、ここでは対照的に22で示される管部分は、いずれの場合も、複数の反応管20からなる管部分22を備え、管部分22は、反応容器10内に、流体的に連通されない方式で並んで配置され、いずれの場合も、供給部分24および抽出部分25に接続される。残りの要素については、以前の図に関する上記の説明に、明示的に参照される。
【0065】
次に、本発明の枠組み内で接続要素30を使用することは任意選択的であるが、特に多相交流ヒータを使用する場合に有利である。ここでも、電力入力要素42は、非常に簡略化された方式で例示されている。不活性ガスの供給は、実質的に上記で説明したように矢印53によって行われる。電力入力要素42は、スリーブ状領域43を有することができ、スリーブ状領域43は、反応管20または管部分の周りの第1の領域11に配置される。
【0066】
図4から
図8は、本発明の実施形態による反応器の部分図をさらに簡略化して示しており、いずれの場合も、煙突60が例示されている。不活性ガスを供給するためのガス供給手段50は図示されておらず、電気的加熱のための手段40も図示されていない。反応管20は、
図2にしたがってU字形屈曲部で示されているが、たとえば
図3にしたがって、任意の他の形態で設計することもできる。不活性ガスの供給は、矢印53で一箇所だけ示されている。
【0067】
図4に矢印54で示されているように、フォールスエアは、1つまたは複数のフォールスエア入口を介して反応容器10に入ることができる。ここに例示した実施形態では、反応容器10は、煙突60に接続された恒久的に開いた排出オリフィス61を有する。煙突60の端部63に関連する反応容器10内の不活性ガスの供給および高い温度は、矢印64によって示される流れをもたらす。反応容器内では、不活性ガスの供給が適切な方式で実行される場合、高温によって静圧p
Boxが発生し、この静圧は、隣接環境の大気圧p
Atmよりも低い。言い換えれば、パージガスの量は、ここではあまり大きく選択されない。非常に大量のパージガスがあると、煙突60内の圧力損失により、反応容器10内の内圧が外圧に近づくか、または超えることさえある。
【0068】
反応容器内が負圧であるこの実施形態では、この量は、反応容器10への周囲空気の逆流の発生を回避し、不十分なシーリングによる低いフォールスエアの侵入も補償される。反応容器10への不活性ガスの供給は、特に煙突60内の酸素測定値65によって規制されるので、動作中、酸素含有量を一定に保つことができる。
【0069】
図4による実施形態とは対照的に、
図5による反応容器10は、過圧レベルで動作され、ここでは、不活性ガスが、反応容器10内に連続的に供給される。反応容器10は、たとえば破裂ディスクの形態で排出オリフィス62を有し、排出オリフィスは、設定圧力レベルより上で開くように設定される。
【0070】
加圧動作を伴うこの代替実施形態では、不活性ガスの供給は、ここでは矢印55によって示される、大気中への低いガス漏れを補償する。この場合、パージ量は、反応容器10内の圧力測定値によって調整できる。不活性ガスを連続的にパージするために、反応容器10からの流れ66が生じるように、対応して寸法決定された出口開口部を、安全な場所(煙突60の領域または別の容易にアクセスできない危険のない場所)に設けることができる。
【0071】
図5による実施形態と同様に、
図6による反応容器10は、過圧レベルで動作される。ここでも同様に、反応容器10は、たとえば破裂ディスクの形態の排出オリフィス62を有し、この排出オリフィスは、設定圧力レベルより上で開くように設定される。しかしながら、不活性ガスの連続貫流は提供されないので、この実施形態では流れ66は形成されない。
【0072】
加圧動作を伴うこの代替実施形態では、初期不活性化のためのパージは、たとえば、動作準備中にのみ実行される。その後の動作中、反応容器から大気への漏洩流に対する均等量の不活性ガスのみが、連続的にまたは間隔をおいて追加される。したがって、この実施形態では、通常の動作中に不活性ガスを大気に放出するための恒久的に開いた出口はない。
【0073】
図4~
図6による実施形態では、炭化水素を用いた反応器の動作は、必要な酸素含有量を下回った場合にのみ有利に解放される。
【0074】
連続パージを伴う
図4および
図5による実施形態では、酸素含有量は、好ましくは、反応容器10の下流のパージガスの排出において(たとえば、煙突60または別の排出ラインにおいて)測定される。それに加えて、または代替として、酸素含有量は、反応容器10の領域内の1つまたは複数の場所で、適切な測定方法(たとえば、チューナブルダイオードレーザ、酸化ジルコニウムプローブ、GC常磁石)によって測定することもできる。
図6による実施形態では、初期不活性化のために任意選択的に使用されるパージガス排出ラインおよび/または反応容器10自体で、酸素含有量を同様に測定することができる。それに加えて、
図5および
図6による実施形態によれば、許容できない不活性ガス損失を早期に検出するために、反応容器内の圧力を連続的に測定および監視することができる。
【0075】
以下のより詳細な図面に示すように、これまでに示したすべての実施形態の煙突60は、(たとえば、自由対流により)反応容器20に戻る空気の戻り流を回避するために、特に煙突壁の領域に、構造要素(いわゆる、速度シール/コンフューザ)を有することができる。
【0076】
図7は、本発明の実施形態による、化学反応を実施するための反応器を、前述した図面による説明に関する拡張において概略的に示し、上記で説明した要素は、部分的に再び図示されていない。さらなる説明については、特に上記の
図4を参照されたい。
【0077】
ここに示すように、煙突出口63の領域に、災害時に未燃焼の炭化水素が大気中に流出するのを少なくとも部分的に回避するために、点火デバイスまたはパイロットバーナ68をさらに設置することができる。さらに例示されるように、不活性ガスは、異なる側で反応容器10に供給される。反応容器10の壁、および締結具または電力入力デバイスの壁通路は、それぞれ気密になるように有利に設計することができ、15で示される。IおよびOは、プロセスガスの供給および反応管20からのプロセスガスの除去を表す。
【0078】
図8は、
図7による表現またはその変形例を拡張した本発明の実施形態により、化学反応を実行するための反応器を概略的に例示している。
図7に関して既に説明された構成要素は、ここでは、参照符号を用いて部分的に再度提供されていない。
【0079】
ここに例示されるように、煙突60は、反応容器10に隣接する領域に、適切な断熱材69を有することができる。煙突70は、たとえば地上20~50メートルの高さhを有することができる。煙突60には、いわゆる速度シール66が設けられ得る。
【0080】
図9は、本発明の実施形態による煙突の寸法決定の原理を図面の形態で概略的に示しており、ここでは、パーセントでの酸素含有量が横軸にプロットされ、反応に関連する体積増加率が、m
3/sで縦軸にプロットされている。グラフ601は、表を参照して既に説明した関係を表す。破線602は、煙突の直径が500mmの場合に、20ミリバールの最大圧力上昇に必要な値を示し、破線603は、煙突の直径が900mmの場合の、対応する値を示す。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルにしたがって、化学反応を実行するための反応器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学工業における多くのプロセスにおいて、1つまたは複数の反応物が、加熱された反応管を通過し、そこで、触媒的または非触媒的に反応する、反応器が使用される。加熱は特に、進行中の化学反応に必要な活性化エネルギに打ち勝つために役立つ。この反応は、全体として吸熱的に、または活性化エネルギに打ち勝った後、発熱的に進行する可能性がある。本発明は、特に、強い吸熱反応に関する。
【0003】
そのようなプロセスの例は、水蒸気分解、種々の改質プロセス、特に水蒸気改質、乾式改質(二酸化炭素改質)、混合改質プロセス、アルカンの脱水素プロセスなどである。水蒸気分解において、反応管は、反応器内に少なくとも1つのU字形屈曲部を有するコイルの形態で反応器を通過して案内されるが、U字形屈曲部なしで反応器を通過して延びる管は通常、水蒸気改質で使用される。
【0004】
本発明は、そのようなすべてのプロセスおよび反応管の設計に適している。ウルマン産業化学事典の、たとえば、2009年4月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2006年12月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、および2000年6月15日付の出版物、DOI:10.1002/14356007.a22_211の記事「エチレン」、「ガス生産」、および「プロペン」は、純粋に例示目的のためにここで参照される。
【0005】
対応する反応器の反応管は、従来、バーナを使用して加熱される。この場合、反応管は、バーナも配置されている燃焼チャンバを通過して送られる。
【0006】
しかしながら、たとえばDE 10 2015 004 121 A1(同様にEP 3 075 704 A1)に記載されているように、たとえば、低減された局所的な二酸化炭素排出の有無に関わらず製造される合成ガスおよび水素の需要は、現在増加している。しかしながら、この需要は、典型的には化石エネルギ担体の燃焼により、燃焼反応器が使用されるプロセスでは満たすことができない。たとえば、コストが高いなどの理由で、他のプロセスは除外される。同じことは、アルカンの水蒸気分解または脱水素によるオレフィンおよび/または他の炭化水素の提供に当てはまる。そのような場合でも、その場で、より少量の二酸化炭素しか放出しない方法が望まれる。
【0007】
この背景に対して、前述のDE 10 2015 004 121 A1は、燃焼に加えて、水蒸気改質のための反応器の電気的加熱を提案している。この場合、たとえば、3つの外部導体に三相交流電圧を提供する1つまたは複数の電圧源が使用される。各外部導体は反応管に接続されている。パイプラインが開口し、反応管が導電的に接続されたコレクタによって、スターポイントが実現されるスター回路が形成される。このようにして、コレクタは理想的には、無電位のままである。鉛直線に対して、コレクタは、燃焼チャンバの下方および外側に配置され、好ましくは反応管に対して横断方向に、すなわち水平に沿って延在する。WO 2015/197181 A1も同様に、反応管が、スターポイント回路に配置された反応器を開示している。
【0008】
電流が反応管を通過して流れる反応管の直接加熱に加えて、反応管の間接的な電気的加熱についても多種多様な概念がある。間接的な電気的加熱は、とりわけWO 2020/002326 A1に記載されているように、外部電気的加熱の形態で行うことができる。たとえばWO 2019/228798 A1に開示されているように、内部加熱も可能である。抵抗加熱またはインピーダンス加熱に加えて、WO 2017/072057 A1に記載されているように、反応管または触媒床の誘導電気的加熱を行うことができる。誘導加熱は、たとえば、内部または外部の加熱素子、または反応管自体を加熱することができる。反応管の直接(非誘導)加熱は、DE 10 2015 004 121 A1にも開示されている。加熱については、多相交流または単相交流または直流で基本的な概念を実現できる。直流による、または単相交流を用いた、反応器の直接加熱の場合、無電位のスターポイントを有するスター回路は実現できないが、電力入力は、原理としては、多相直流の場合と同様の方式で実現できる。本発明は、電気的加熱のすべての変形例に適している。
【0009】
WO 2004/091773 A1は、高温でガス反応を実行するための電気的加熱式反応器を記載している。反応器は、反応器ブロック、電気的加熱に適した材料の1つまたは複数のモノリシックモジュールで構成され、これらのモジュールはハウジングによって取り囲まれ、モジュールを通過して延在し、反応チャネルとして設計されたチャネルで、および反応器ブロックに電流を伝導または誘導するためのデバイスで構成される。そのような反応器の動作中の安全性は、反応器ブロックのハウジングが、前記反応器ブロックを気密方式で密閉する二重壁ジャケットと、不活性ガスを二重壁ジャケットに供給するための少なくとも1つのデバイスとを有するという点において高められる。
【0010】
以下でも説明されるように、電気的加熱式反応器の場合、特別な安全関連の態様を遵守する必要がある。本発明の目的は、これらの態様を考慮に入れ、このようにして電気的加熱式反応器の有利な動作を可能にする措置を特定することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】DE 10 2015 004 121 A1
【特許文献2】EP 3 075 704 A1
【特許文献3】WO 2015/197181 A1
【特許文献4】WO 2020/002326 A1
【特許文献5】WO 2019/228798 A1
【特許文献6】WO 2017/072057 A1
【特許文献7】WO 2004/091773 A1
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a10_045.pub2、2009年4月15日
【非特許文献2】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a12_169.pub2、2006年12月15日
【非特許文献3】ウルマン産業化学事典、DOI:10.1002/14356007.a22_211、2000年6月15日
【発明の概要】
【0013】
この背景に対して、本発明は、独立請求項のプリアンブルにしたがって、化学反応を実行するための反応器および方法を提案する。実施形態は、従属請求項および以下の説明の主題である。
【0014】
本発明の基礎である、電化された炉の概念(「炉」という用語は、対応する反応器または少なくともその断熱された反応空間を示すと一般に理解される)において、たとえば反応管、またはその対応する管部分(以下、略して「管」とも呼ばれる)自体が、熱を発生させるための電気抵抗器として使用される。この直接的なアプローチは、外部の電気的加熱素子による間接加熱と比較して効率が高く、達成可能な熱流束密度も高いという利点がある。しかしながら、前述したように、前記加熱が有利であることが証明された場合、本発明の枠組み内で、任意の他のタイプの電気的加熱を(直接的または間接的に、抵抗、インピーダンス、または誘導加熱として、単相交流または多相交流の形態で、または直流によって)実行することも可能である。
【0015】
多相交流で加熱する場合、電力はM個の別々に接続された相を介して、直接加熱された反応管に供給される。M相に接続された導体性反応管は、他の端部においてスターポイントにも電気的に接続され得る。相数Mは特に3であり、従来の三相電流電源またはネットワークの相数に対応する。しかしながら、原則として、本発明は、3相の使用に限定されず、より多くの相数、たとえば4,5,6,7または8の相数でも使用できる。したがって、位相オフセットは、特に360°/M、すなわち三相電流に対して120°となる。
【0016】
多相交流を有する電気的加熱では、接続されたパイプラインの電気的絶縁を理想的に不要にするスター回路によって、スターポイントにおいて、相間の等電位化が達成される。特定の部分を断熱するための金属製反応管の破損は、特に高温が使用され、必要な材料費および建設費が高く、望ましくないため、これは、そのような炉概念の特別な利点を表している。
【0017】
しかしながら、本発明により提案され、以下に説明される措置は、単相交流電流および直流電流の使用に同様に適しており、本発明は、交流電流で加熱される反応器および直流で加熱される反応器の両方で、または対応する混合形態でも使用できる。前述のように、本発明は、間接加熱反応管での使用にも適している。直流構成の場合、たとえば、電流源のタイプ、および電力入力、または電流が供給される対応する部分に対向する反応管の領域のみが、交流構成と異なる。後者では、異なる管部分の電気的接続は、任意選択的にのみ実行される。無電位スターポイントは直流構成には存在しないので、電流の流れを外部に安全に戻す適切な電流放電要素を提供する必要がある。後者は、以下に説明する電力入力と同様に設計できる。
【0018】
本発明は、特に反応管が損傷(「コイルシュレッダ」)を受けた場合に必要である、説明したタイプの電気的に加熱された反応器の保護に関する。対応する損傷の場合、特に、1つまたは複数の反応管が完全に切断される可能性があるが、本発明は、漏れの程度がより少なく、有利である。対応する損傷の場合、断熱のために大部分が密閉された反応容器内への、可燃性ガスの突然の、または徐々に進行する漏れが発生する。
【0019】
そのような損傷は、特に本発明にしたがって使用される、純粋に電気的に加熱された反応器よりも、従来の燃焼反応器における安全性に関連する問題が少ない。なぜなら、たとえば炭化水素-蒸気の混合物の形態で、燃焼反応器内の反応管から生じる可燃性ガスは、反応容器または対応する燃焼チャンバで発生する燃焼を通じて、即時的かつ継続的に反応する可能性があるためであるか、または燃焼が行われることにより酸素含有量が大幅に減少し、反応管を取り囲むガス空間はすでに実質的に「不活性化」されているからである。対照的に、純粋な電気的加熱の場合、対応する可燃性ガスが、反応容器内に蓄積し、そこで、空気の通常の酸素含有量と、自然発火温度を超える温度とで、たとえば、爆発または爆裂の限界に達する可能性がある。爆発または爆裂を伴わない燃焼の場合でも、完全燃焼または不完全燃焼によってエネルギが投入され、過熱する可能性がある。反応管から流出するガスの体積とともに、完全燃焼または不完全燃焼自体が、特に著しい圧力上昇をもたらす可能性がある。本発明は、ガス混合物の燃焼が回避されるので、そのような圧力上昇を減少させる。
【0020】
特許請求の範囲の用語において、本発明は、化学反応を実行するための反応器に関し、反応器は、反応容器(すなわち、断熱された、または少なくとも部分的に断熱された領域)と、1つまたは複数の反応管と、1つまたは複数の反応管の電気的加熱のための手段とを有する。本発明により提案される反応器は、特に、高温反応について以下に説明する温度レベルで化学反応を実行するように設定される。反応管は、少なくとも1つのU字形屈曲部で反応器を通過して案内されるか、またはいずれのU字形屈曲部もなしで反応器を通過して延びる、電気的加熱のための手段は、上記で広範に説明したように設計することができる。一方では、この手段は、1つまたは複数の反応管に電力を供給するための手段であり得る。これは、1つまたは複数の反応管に電流の流れと、対応する加熱とをもたらすことを意味し、たとえば、反応器に案内される剛性の電流棒であるが、また、この手段は、熱を伝導的におよび/または熱放射によって1つまたは複数の反応管に伝達するか、または、たとえば、1つまたは複数の反応管または触媒床で渦電流を発生させ、このようにして熱を発生させる、抵抗および/または誘導加熱デバイスなどの間接加熱のための手段であり得る。
【0021】
本発明の枠組み内で、反応容器は、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定された1つまたは複数の排出オリフィスを有し、反応容器の内部へ不活性ガスを供給するように設定されたガス供給手段が設けられる。
【0022】
以下に、本発明にしたがって、または本発明の異なる実施形態にしたがって設計された反応器が主に説明される。対応する説明は、いずれの場合も、対応する方法にも適用され、対応する方法を用いて、対応して設定された手段が、いずれの場合も、指定された方法ステップを実行する。
【0023】
不活性ガスを供給するために、ガス供給手段は、たとえば、供給ノズル、または反応容器内に開口する開口部を、ライン、およびラインに接続されたガスリザーバとともに備え、それによって、不活性ガスを、反応容器の内部に供給することができる。反応容器は、特に、断熱壁によって大部分、すなわち少なくとも90,95,または99%が囲まれたチャンバである。反応容器の内部は、反応管が配置され、反応器の壁に囲まれた領域である。たとえば、二重壁設計の反応器の壁は、内部の一部ではない。
【0024】
本発明のすべての実施形態において、不活性ガスは、窒素、二酸化炭素、および/またはアルゴンをそれぞれ超大気圧含有量で有するガスまたはガス混合物であることができるか、またはガス供給手段は、たとえば、利用可能な対応する不活性ガスを保持することによって、または、純粋なガスを混ぜる、すなわち空気に純粋なガスを混合することによって不活性ガスを提供することによって、対応する不活性ガスを提供するように設定される。特に、不燃性ガスの含有量は、50%、60%、70%、80%、または90%を超えることができる。したがって、不活性ガスは、伝統的な意味での純粋な「不活性ガス」である必要はなく、むしろ、不活性ガスは、特に不燃性ガスの含有量により、混合物の可燃範囲を少なくとも部分的に減少させる、すなわち、発火、爆発、または爆裂のリスクを減少させるのであれば十分である。本発明の枠組み内で使用するための不活性ガスは、特に、減圧酸素含有量、たとえば、10%、5%、1%、0.5%、または0.1%未満の酸素含有量を有することができる。特に、不活性ガスはまた、(完全にまたは実質的に)酸素を含まなくてもよい。
【0025】
提案された措置によって、本発明は、電気的にエネルギが入力される高温反応器の断熱のために、および安全関連保護のために機能する、調整された雰囲気を有する閉じ込めを提供する。本発明の枠組み内で、特に、完全な電気的加熱を提供することができる。すなわち、反応管の加熱は、少なくとも反応容器内で、有利には熱的な加熱によって支配的にまたは排他的になされ、すなわち、特に、ここで導入される全熱量のうち、ここで導入される熱量の少なくとも90,95,または99%は、電気的加熱手段によって行われる。1つまたは複数の反応管を通って伝導されるガス混合物を介した熱入力は、ここでは無視されたままであるため、この割合は、特に、外部から、反応容器内の1つまたは複数の反応管の壁に伝達される、または、この壁または触媒床における反応容器内で生成される熱に関連する。
【0026】
したがって、その最も一般的な形態において、本発明は、電気的加熱を備え、炭化水素が供給される高温反応器用の閉じ込め(ここで「高温反応」という用語は、特に、500℃を超える温度、特に700から1000℃の温度で進行する反応を指す)を記載し、この閉じ込めは、1.管の周囲に不活性雰囲気を提供し、2.恒久的に密閉されない。プロセスガス温度が、プロセスガス中に含まれる炭化水素の自然発火温度に近いかまたはそれを超える、電気的に加熱される反応器への適用が特に好ましい。「プロセスガス」という用語は、1つまたは複数の反応管を通って流れるガスまたはガス混合物を指す。
【0027】
本発明の実施形態は、特に、1つまたは複数の排出オリフィスの実施形態によって異なり、排出オリフィスは、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定されている。しかしながら、対応して設計された排出オリフィスの組合せも、原則として可能である。
【0028】
以下で「第1のグループ」と呼ばれる実施形態のグループでは、1つまたは複数の排出オリフィスが、恒久的に開いている。これは、1つまたは複数の排出オリフィスが、流れ断面の既存の狭小化の可能性を除いて、反応容器に出入りする流体の流れに対して機械的抵抗を与えないことを意味する。したがって、1つまたは複数の開口部は閉じていない。
【0029】
対照的に、以下で「第2のグループ」と呼ばれる実施形態のグループでは、1つまたは複数の排出オリフィスが、所定の圧力レベルより上で開くように設定される。1つまたは複数の排出オリフィスは、設定圧力レベル未満で閉じられるか、または設定圧力レベルに達したときに一時的または恒久的に開くように設定される。この点で、「恒久的に」開いているという用語は、特に不可逆的な開放を指し、この実施形態では、その後の設定圧力レベルのアンダーシュートの後、ガスの放出による再閉鎖は起こらない。対照的に、「一時的に」開くという用語は、再閉鎖が行われる開放を指す。
【0030】
設定圧力レベルで開くために、1つまたは複数の排出オリフィスは、たとえば、ばねまたは負荷特性値によって定義される開放抵抗を有し、したがって、対応する圧力からのみ開く、1つまたは複数のばね負荷または重量負荷フラップを有し得る。第2のグループの実施形態のうちの1つの実施形態では、1つまたは複数の破裂ディスクまたは圧力逃がし弁も、それ自体既知の方式で使用され得る。たとえばセンサによって圧力値を検出し、設定しきい値を超えた場合に、たとえば点火機構または電気作動駆動などの任意のタイプの開放機構をトリガすることも可能である。これにより、必要に応じて短い応答時間内に、通常動作中に、説明した方式で、閉鎖状態に保たれる十分大きな断面を解放することが可能となる。
【0031】
特に第1のグループの実施形態において、また場合によっては第2のグループの実施形態においても、反応器は、不活性ガスで一定にパージするように設定することができる。言い換えれば、説明したガス供給手段は、反応容器内に不活性ガスを連続的に供給するように設定される。第1のグループの実施形態において、不活性ガスは、特に主に1つまたは複数の恒久的に開いている排出オリフィス、場合によってはさらなる排出オリフィス、特に、回避できないまたは意図的に作成されたガス漏れまたはバイパスを通って、たとえば既存の煙突へ流出することができる。1つまたは複数の恒久的に開いている排出オリフィスが、通常は閉じている第2のグループの実施形態では、不活性ガスの流出のためのさらなる開口部が、たとえば、煙突へのバイパスラインなどで提供されるか、または、たとえば反応容器の漏れによって、必然的に存在する。
【0032】
しかしながら、一定のパージの代わりに、1つまたは複数の所定の基準にしたがって、不活性ガスを1回だけ、または周期的に反応器に供給するようにも提供され得る。次いで、ガス供給手段は、そのような動作のために設定される。1つまたは複数の所定の基準は、たとえば、設定圧力値および/または設定濃度、たとえば最小および許容酸素含有量に到達することを含むことができる。しかしながら、1つの基準は、反応容器が初めて動作されることでもあり得る。特に、連続測定を実行することができ、対応する測定値が、設定基準がもはや満たされないことを示すときはいつでも、不活性ガスの供給を開始することができる。不活性ガスの1回または定期的な供給は、特に第2のグループの実施形態において、1つまたは複数の排出オリフィスの開口部の圧力値未満で提供することができる。なぜなら、ここでは、不活性ガスの自由な流出を防ぐことができ、不活性ガスを、反応容器内に長時間保持することができるからである。
【0033】
第1のグループの実施形態の特に好ましい実施形態では、反応器は、減圧レベルにおける反応容器の動作のために設定される。この場合、反応器から出るガス流を形成するための手段が設けられる。これに関連して、このグループの実施形態では、恒久的に開いている1つまたは複数の排出オリフィスを、十分な高さの煙突口を有する煙突に、恒久的に開いた状態で接続することができる。これにより、反応容器内の温度が高くなるため、反応容器内に静的な負圧が生じ、その結果、含まれるガス体積の密度が低下する。これに関連して、たとえば、対応する静的負圧の形成まで送風機の使用を提供することも可能である。
【0034】
対照的に、第2のグループの実施形態のうちの特に好ましい実施形態では、反応器は、過圧レベルにおける反応容器の動作のために設定される。これは、特に、排出オリフィスの開放圧力未満である過圧レベルまで、不活性ガスを供給することによって達成することができる。
【0035】
ある程度まで不活性化されており、環境に対して「開いている」(特に、煙突効果の結果として、反応容器内がわずかに負圧になっている)第1のグループの実施形態によるシステム、あるいは、(特に、反応容器内の特定の過圧で動作可能な)本発明の第2のグループの実施形態による「開くことが可能な」システムは、圧力上昇率、炭化水素の漏出時の反応管への損傷を、反応容器の設計限界を満たす許容量まで制限することができる。
【0036】
反応容器に不活性ガスが供給されるという概念の結果として、反応容器に存在する酸素含有量を、減少させることができる。損傷が発生した場合に漏出する炭化水素の反応速度と、(反応熱入力の結果としての)大幅な追加の体積増加とは、ボックス内の酸素分圧またはモル酸素含有量の第一近似でスケーリングされる。
【0037】
本発明の両グループの実施形態において、不活性ガスの供給の結果として、有利には、反応容器の壁は、完全に気密になるように設計される必要はなく、移動の可能性が必要な特定の場所における温度が高いため、たとえば、耐熱性ベローズ構造などの使用など、材料費が非常に高くなる。煙突と連携した減圧レベルでの動作の場合、対応する漏れによって空気が反応容器に引き込まれる可能性があるが、この空気は排出され、煙突によってもたらされる連続的な流れによって希釈される。呼吸を損なう可能性のある不活性ガスまたはその構成要素の使用における安全上の問題は、この手法で回避できる。対照的に、過圧レベルでの動作の場合には、圧力伝播が均一であるため、反応容器への空気の流入を確実に回避できる。漏れによって漏出する不活性ガスは、たとえば、反応容器の外側で十分な換気を行うことにより、排出または希釈できる。
【0038】
反応容器に不活性ガスが供給されるという提案された概念の結果として、反応容器における酸素含有量を、減少させることができる。本発明にしたがって利用できるように、漏出する炭化水素の反応速度、したがって(反応熱入力の結果としての)大幅な追加の体積増加率は、第一近似では、酸素分圧または酸素モル分率と相関する。この相関関係が以下の表1にまとめられる。ここで、xO2は、モル酸素含有量を表し、Vreakは、反応関連の体積増加率を表す。
【0039】
したがって、ガス供給手段は、1つまたは複数の煙突の寸法決定に基づいて、反応容器内の最大酸素含有量を調整するように有利に設定される。
【0040】
【0041】
最大許容圧力pmaxは、それぞれのチャンバまたは周囲の閉じ込めの機械的安定性に依存する。この圧力は、コイルシュレッダの場合、または対応する他の安全関連事象の場合、関連するチャンバの体積VBox、煙突の直径DChimneyおよびモル酸素含有量に依存する圧力pboxと少なくとも同じ大きさでなければならない。
pmax≧pbox=f(VBOX,DChimney,xO2)
【0042】
この要件は、煙突の寸法決定のための設計基準となる。すなわち、これは、1つまたは複数の排出オリフィスを介して恒久的にまたは一時的に存在する環境への連通であり、その逆でもある。この関係は、ここで、
図9を参照して再度説明される。たとえば、破線601,602によって例示されるように、ここで20ミリバールの最大許容圧力上昇が基準として使用される場合、直径500mmの煙突(破線601)を使用できるようにするために、反応に関連した体積増加率は、最大でも約10m
3/sとなり、これにより、最大酸素含有量は約1%になり、これは不活性化によって調整される。
【0043】
逆に、最大でも1%の酸素含有量への不活性化が実行される場合は、少なくとも500mmの煙突直径を使用する必要がある。直径900mmの煙突(破線602)を使用できるようにするために、体積増加率は、約42m3/sにしかならず、最大酸素含有量は約4%になり、これは不活性化によって調整される。逆に、また上記の説明と同様に、最大4%の酸素含有量への不活性化が行われる場合、ここでは少なくとも900mmの煙突直径を使用する必要がある。
【0044】
反応容器内の酸素含有量が少ないほど、体積増加は小さい。その結果、追加の体積の排出を要する非常用煙突の直径を、小さくすることもできる。酸素を含有したフォールスエアの侵入を可能な限り、または、十分に回避するために、酸素含有量の効率的な制限のために重要なことは、環境に対する常に十分に良好なシールである。しかしながら、説明したように、完全なシールは必要とされない。
【0045】
言い換えれば、本発明の枠組み内で、反応容器内の最大酸素含有量は、不活性ガスによって調整され、この最大酸素含有量は、1つまたは複数の煙突の寸法決定に基づいて、煙突の存在する実施形態の第1のグループにおいて選択されるか、または、ガス供給手段は、不活性ガスを供給するため、またはこれに基づいて酸素含有量を調整するために設定される。ガス供給手段は、特に、目標圧力を超えないように供給するように設定することもできる。第2のグループの実施形態では、同様に、酸素濃度または目標圧力および煙突の寸法決定に基づいて供給を行うことが可能である。
【0046】
供給される不活性ガスの量は、対応する規制手段によって、特に、反応容器における、または存在する場合には煙突における、酸素測定値に基づいて規制することができ、その結果、酸素含有量を、動作中、一定に保つことができる。対応する安全概念は、測定された酸素含有量が目標酸素含有量を超える場合、本発明にしたがって、反応器の動作が回避される、または回避を継続することを含む。たとえば、反応管への炭化水素の供給および/またはその加熱は、必要な酸素含有量を下回った場合にのみ解放することができる。障害が検出された場合、一般に、反応管への炭化水素の添加により反応動作を回避することができる。
【0047】
反応管からのガスの許容できない漏出は、たとえば、圧力測定センサを介して検出することができ、ガス漏出が検出された場合、炭化水素の合計漏出量を最小化するために、炭化水素の反応管への供給を回避することができる。
【0048】
非常に小さな損傷(急激な圧力上昇を伴わない漏出流)を検出するために、反応容器、または、存在する場合には煙突内の(たとえば、一酸化炭素当量の形態での)炭化水素含有量も、連続的に測定できる。同様に、許容できない値の結果、炭化水素の供給を回避できる。
【0049】
したがって、本発明は、より一般的に言えば、圧力および/または炭化水素の測定に基づいて、1つまたは複数の反応管からのガス漏出を特徴付ける値を決定すること、および、この値が、設定しきい値を超えた場合に、1つまたは複数の安全措置が開始されることを包含する。
【0050】
化学反応を実行するために、本発明により提案される方法では、反応容器と、1つまたは複数の反応管と、1つまたは複数の反応管の電気的加熱のための手段とを有する反応器が使用される。本発明によれば、使用される反応容器は、1つまたは複数の排出オリフィスを有する反応容器であり、これらは、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定され、不活性ガスは、本発明にしたがって、ガス供給手段を用いて、反応容器の内部に供給される。
【0051】
すでに説明した本発明の展開のうちの1つの展開による反応器が有利に使用される、対応する方法のさらなる特徴および利点については、上記の説明を参照されたい。
【0052】
本発明は、従来技術を参照および比較して、本発明の展開を例示する添付の図面を参照して以下にさらに解明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、非発明的な展開による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための反応器を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態による、煙突の寸法決定の原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下の図では、機能的または構造的に互いに対応する要素は、同一の参照符号によって示され、明確のために繰り返し説明されない。デバイスの構成要素が以下で説明される場合、対応する説明は、いずれの場合も、それによって実行される方法にも関連し、その逆も同様である。図の説明は、交流加熱を繰り返し述べている。しかしながら、前述したように、本発明はまた、加熱のために、直流の使用にも同様に適している。ここでは、上記の説明が参照される。
【0055】
図1は、非発明的な展開による、化学反応を実行するための反応器を概略的に示す。
【0056】
ここで、300で示される反応器は、化学反応を実行するように設定される。この目的のために、反応器は、特に、断熱された反応容器10と、反応管20とを有し、ここでは2つの場合のみ21で示される反応管20の多数の管部分は、それぞれ反応容器10内の第1のゾーン11’と、第2のゾーン12’との間に延びている。
図2を参照して以下でより詳細に説明される反応管20は、適切なサスペンション13によって反応容器のシーリングまたは支持構造に取り付けられる。下部領域では、反応容器は、特に炉(図示せず)を有することができる。言うまでもなく、いずれの場合も、ここで、およびその後に、複数の反応管を提供できる。
【0057】
図2は、本発明の実施形態による、化学反応を実行するための、全体が100で示される反応器を概略的に示す。
【0058】
以前に11’および12’によって示されたゾーンは、ここでは領域11および領域12の形態をとり、第1の領域11内の管部分21を加熱するための管部分21は、いずれの場合も、反応管20を電気的に加熱するため、全体として40によって示される手段が形成された結果として、接続要素42を介して多相交流電源41の相接続部U,V,Wに電気的に接続することができる。スイッチなどの特定のタイプの接続部は例示されていない。ここに例示される本発明の実施形態では、管部分21は、1つまたは複数の反応管20に一体的に接続され、反応容器10内に配置された接続要素30によって、第2の領域12において互いに導電的に接続される。接続要素30には中性導体も接続され得る。
【0059】
したがって、ここに例示される例では、複数の交流電流相のスター回路が実現される。しかしながら、何度か述べたように、本発明は、単相交流加熱、直流加熱、または他の加熱手段、たとえば上記で説明した意味での誘導加熱または間接加熱を使用して提供することもできる。
【0060】
したがって、ここに例示される反応器100では、(複数のそのような反応管20が提供され得るが、)1つの反応管20の複数の管部分21が、反応容器10内に並んで配置される。管部分21は、(部分的にのみ指定されている)U字形屈曲部23を介して互いに交わり、供給部分24および抽出部分25に接続される。
【0061】
第1の領域11には、U字形屈曲部23の第1のグループ(図中下側)が並んで配置され、第2の領域12には、U字形屈曲部23の第2のグループ(図中上側)が並んで配置されている。第2のグループのU字形屈曲部23は、接続要素30に形成され、管部分21は、第2の領域12における接続要素30から第1の領域11まで延在する。電力入力要素52は、所望のように、たとえば剛性に設計され得、棒状部分を有し、反応容器10の壁を通過することができる。
【0062】
反応容器に不活性ガスを供給するための手段は、全体として50で示される。矢印53によって例示される(それに応じて部分的にのみ示される)ように、不活性ガスは、特に、反応容器10の1つまたは複数の壁における壁開口部、ノズルなどを介して、反応容器10に供給される。不活性ガスを提供し、供給するために、適切なガス供給手段が設けられ、これも非常に簡略化された方式でここに示され、たとえば、1つまたは複数のガスタンク51および対応するライン52を備える。
【0063】
図3は、本発明の展開による、化学反応を実行するための反応器を概略的に示しており、全体が200で示されている。
【0064】
反応器200において、ここでは対照的に22で示される管部分は、いずれの場合も、複数の反応管20からなる管部分22を備え、管部分22は、反応容器10内に、流体的に連通されない方式で並んで配置され、いずれの場合も、供給部分24および抽出部分25に接続される。残りの要素については、以前の図に関する上記の説明に、明示的に参照される。
【0065】
次に、本発明の枠組み内で接続要素30を使用することは任意選択的であるが、特に多相交流ヒータを使用する場合に有利である。ここでも、電力入力要素42は、非常に簡略化された方式で例示されている。不活性ガスの供給は、実質的に上記で説明したように矢印53によって行われる。電力入力要素42は、スリーブ状領域43を有することができ、スリーブ状領域43は、反応管20または管部分の周りの第1の領域11に配置される。
【0066】
図4から
図8は、本発明の実施形態による反応器の部分図をさらに簡略化して示しており、いずれの場合も、煙突60が例示されている。不活性ガスを供給するためのガス供給手段50は図示されておらず、電気的加熱のための手段40も図示されていない。反応管20は、
図2にしたがってU字形屈曲部で示されているが、たとえば
図3にしたがって、任意の他の形態で設計することもできる。不活性ガスの供給は、矢印53で一箇所だけ示されている。
【0067】
図4に矢印54で示されているように、フォールスエアは、1つまたは複数のフォールスエア入口を介して反応容器10に入ることができる。ここに例示した実施形態では、反応容器10は、煙突60に接続された恒久的に開いた排出オリフィス61を有する。煙突60の端部63に関連する反応容器10内の不活性ガスの供給および高い温度は、矢印64によって示される流れをもたらす。反応容器内では、不活性ガスの供給が適切な方式で実行される場合、高温によって静圧p
Boxが発生し、この静圧は、隣接環境の大気圧p
Atmよりも低い。言い換えれば、パージガスの量は、ここではあまり大きく選択されない。非常に大量のパージガスがあると、煙突60内の圧力損失により、反応容器10内の内圧が外圧に近づくか、または超えることさえある。
【0068】
反応容器内が負圧であるこの実施形態では、この量は、反応容器10への周囲空気の逆流の発生を回避し、不十分なシーリングによる低いフォールスエアの侵入も補償される。反応容器10への不活性ガスの供給は、特に煙突60内の酸素測定値65によって規制されるので、動作中、酸素含有量を一定に保つことができる。
【0069】
図4による実施形態とは対照的に、
図5による反応容器10は、過圧レベルで動作され、ここでは、不活性ガスが、反応容器10内に連続的に供給される。反応容器10は、たとえば破裂ディスクの形態で排出オリフィス62を有し、排出オリフィスは、設定圧力レベルより上で開くように設定される。
【0070】
加圧動作を伴うこの代替実施形態では、不活性ガスの供給は、ここでは矢印55によって示される、大気中への低いガス漏れを補償する。この場合、パージ量は、反応容器10内の圧力測定値によって調整できる。不活性ガスを連続的にパージするために、反応容器10からの流れ66が生じるように、対応して寸法決定された出口開口部を、安全な場所(煙突60の領域または別の容易にアクセスできない危険のない場所)に設けることができる。
【0071】
図5による実施形態と同様に、
図6による反応容器10は、過圧レベルで動作される。ここでも同様に、反応容器10は、たとえば破裂ディスクの形態の排出オリフィス62を有し、この排出オリフィスは、設定圧力レベルより上で開くように設定される。しかしながら、不活性ガスの連続貫流は提供されないので、この実施形態では流れ66は形成されない。
【0072】
加圧動作を伴うこの代替実施形態では、初期不活性化のためのパージは、たとえば、動作準備中にのみ実行される。その後の動作中、反応容器から大気への漏洩流に対する均等量の不活性ガスのみが、連続的にまたは間隔をおいて追加される。したがって、この実施形態では、通常の動作中に不活性ガスを大気に放出するための恒久的に開いた出口はない。
【0073】
図4~
図6による実施形態では、炭化水素を用いた反応器の動作は、必要な酸素含有量を下回った場合にのみ有利に解放される。
【0074】
連続パージを伴う
図4および
図5による実施形態では、酸素含有量は、好ましくは、反応容器10の下流のパージガスの排出において(たとえば、煙突60または別の排出ラインにおいて)測定される。それに加えて、または代替として、酸素含有量は、反応容器10の領域内の1つまたは複数の場所で、適切な測定方法(たとえば、チューナブルダイオードレーザ、酸化ジルコニウムプローブ、GC常磁石)によって測定することもできる。
図6による実施形態では、初期不活性化のために任意選択的に使用されるパージガス排出ラインおよび/または反応容器10自体で、酸素含有量を同様に測定することができる。それに加えて、
図5および
図6による実施形態によれば、許容できない不活性ガス損失を早期に検出するために、反応容器内の圧力を連続的に測定および監視することができる。
【0075】
以下のより詳細な図面に示すように、これまでに示したすべての実施形態の煙突60は、(たとえば、自由対流により)反応容器20に戻る空気の戻り流を回避するために、特に煙突壁の領域に、構造要素(いわゆる、速度シール/コンフューザ)を有することができる。
【0076】
図7は、本発明の実施形態による、化学反応を実施するための反応器を、前述した図面による説明に関する拡張において概略的に示し、上記で説明した要素は、部分的に再び図示されていない。さらなる説明については、特に上記の
図4を参照されたい。
【0077】
ここに示すように、煙突出口63の領域に、災害時に未燃焼の炭化水素が大気中に流出するのを少なくとも部分的に回避するために、点火デバイスまたはパイロットバーナ68をさらに設置することができる。さらに例示されるように、不活性ガスは、異なる側で反応容器10に供給される。反応容器10の壁、および締結具または電力入力デバイスの壁通路は、それぞれ気密になるように有利に設計することができ、15で示される。IおよびOは、プロセスガスの供給および反応管20からのプロセスガスの除去を表す。
【0078】
図8は、
図7による表現またはその変形例を拡張した本発明の実施形態により、化学反応を実行するための反応器を概略的に例示している。
図7に関して既に説明された構成要素は、ここでは、参照符号を用いて部分的に再度提供されていない。
【0079】
ここに例示されるように、煙突60は、反応容器10に隣接する領域に、適切な断熱材69を有することができる。煙突70は、たとえば地上20~50メートルの高さhを有することができる。煙突60には、いわゆる速度シール66が設けられ得る。
【0080】
図9は、本発明の実施形態による煙突の寸法決定の原理を図面の形態で概略的に示しており、ここでは、パーセントでの酸素含有量が横軸にプロットされ、反応に関連する体積増加率が、m
3/sで縦軸にプロットされている。グラフ601は、表を参照して既に説明した関係を表す。破線602は、煙突の直径が500mmの場合に、20ミリバールの最大圧力上昇に必要な値を示し、破線603は、煙突の直径が900mmの場合の、対応する値を示す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器(10)と、1つまたは複数の反応管(20)と、前記1つまたは複数の反応管(20)の電気的加熱のための手段(40)とを有し、前記反応管(20)は、少なくとも1つのU字形屈曲部で前記反応器(100,200)を通過して案内されるか、またはU字形屈曲部なしで前記反応器(100,200)を通過して延びる、化学反応を実行するための反応器(100,200)であって、前記反応容器(10)は、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定された1つまたは複数の排出オリフィス(61,62)を有し、不活性ガスを前記反応容器(10)に供給するように設定されたガス供給手段(50)が設けられ、前記反応容器(10)において、および/または、前記反応容器の下流の排出ラインにおいて、測定された酸素含有量および/または圧力および/または炭化水素含有量が、それぞれの設定値を超える場合、反応動作を回避するように設定される手段が設けられることを特徴とする、反応器(100,200)。
【請求項2】
前記化学反応を、500℃を超える、特に700℃から1000℃の温度レベルで実行するように設定される、請求項1に記載の反応器(100,200)。
【請求項3】
前記1つまたは複数の排出オリフィス(61)は、恒久的に開いている、請求項1または請求項2に記載の反応器(100,200)。
【請求項4】
前記1つまたは複数の排出オリフィス(62)は、設定圧力レベル未満で閉じられ、前記設定圧力レベルに達したときに一時的または恒久的に開くように設定される、請求項1または請求項2に記載の反応器(100,200)。
【請求項5】
前記ガス供給手段(50)は、前記反応容器(10)内に前記不活性ガスを連続的に供給するように設定される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項6】
前記ガス供給手段(50)は、前記不活性ガスを1回だけ、または周期的に前記反応容器(10)に供給するように設定される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項7】
前記反応容器(10)は、減圧レベルにおける動作のために設定され、前記反応容器(10)から出るガス流を形成するための手段を有する、請求項3に記載の反応器(100,200)。
【請求項8】
前記反応容器(10)は、超臨界圧力レベルにおける動作のために設定される、請求項4に記載の反応器(100,200)。
【請求項9】
前記ガス供給手段(50)は、前記不活性ガスとして、窒素、二酸化炭素、および/またはアルゴンをそれぞれ超大気圧含有量で有するガスまたはガス混合物を提供するように設定される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項10】
前記1つまたは複数の排出オリフィス(61,62)は、1つまたは複数の煙突(60)に接続される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項11】
前記ガス供給手段(50)は、前記煙突(60)の寸法決定に基づいて前記反応容器(10)内の最大酸素含有量を調整するように設定される、請求項10に記載の反応器(100,200)。
【請求項12】
前記ガス供給手段(50)は、酸素測定値に基づいて、不活性ガスの量を規制するように設定される、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の反応器(100,200)。
【請求項13】
化学反応を実行するための方法であって、反応容器(10)と、1つまたは複数の反応管(20)と、前記1つまたは複数の反応管(20)の電気的加熱のための手段(40)とを有する反応器(100,200)が使用され、前記反応管(20)は、少なくとも1つのU字形屈曲部で前記反応器(100,200)を通過して案内されるか、またはU字形屈曲部なしで前記反応器(100,200)を通過して延び、前記方法は、使用される前記反応容器(10)が、恒久的に開いているか、または設定圧力レベルより上で開くように設定された1つまたは複数の排出オリフィス(61,62)を有する反応容器(10)であり、ガス供給手段(50)を使用して、不活性ガスが、前記反応容器(10)に供給され、前記反応容器(10)において、および/または、前記反応容器の下流の排出ラインにおいて、測定された酸素含有量および/または圧力および/または炭化水素含有量が、それぞれの設定値を超える場合、反応動作を回避するように設定される手段が設けられることを特徴とする、方法。
【国際調査報告】