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特表2023-529793細長い物体を持ち上げるための吊り上げシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】細長い物体を持ち上げるための吊り上げシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 27/00 20060101AFI20230705BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20230705BHJP
   B63B 27/10 20060101ALI20230705BHJP
   B63B 27/08 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
B63B27/00 D
B63B35/00 B
B63B27/10 A
B63B27/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022567163
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2021053713
(87)【国際公開番号】W WO2021224779
(87)【国際公開日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】2020/5290
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520282638
【氏名又は名称】ディーム・オフショア・ベーエー・エヌ・ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・マリア・クーン・ミッシェルセン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・バニュウヴェンヌウイズ
(72)【発明者】
【氏名】フランキー・エクラン
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ヴィム・ヤン・ラバウト
(57)【要約】
船の甲板から細長い物体を持ち上げるための吊り上げシステムが記載されている。吊り上げシステムは、甲板に接続されたクレーンアームを有し、そこから細長い物体を取り付けることができる巻取りフレームが吊り下げられている。また、ウィンチ機構とそれに接続された制御ラインがあり、細長い物体が甲板から持ち上げられたときにこの物体の動きを制御するように構成されている。制御ラインは、巻取りフレームからウィンチ機構まで延びる。ウィンチの機構は、甲板からある高さまで伸びる支持構造の一部を形成し、物体が甲板から持ち上げられている間に物体に作用する力を吸収できるようにすることを目的としている。また、船の甲板から細長い物体を持ち上げる方法も記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の甲板から細長い物体を持ち上げるための吊り上げシステムであって、前記吊り上げシステムは、前記甲板に接続され、かつ前記細長い物体を取り付けることができる巻取りフレームが吊り下げられたクレーンアームと、ウィンチ機構および前記ウィンチ機構に接続された制御ラインとを備え、前記制御ラインは、前記細長い物体が前記甲板から持ち上げられる場合に前記細長い物体の動きを制御するよう構成され、前記制御ラインは、前記巻取りフレームから前記ウィンチ機構まで延び、前記クレーンアームと異なる支持構造が、前記甲板からある高さまで延在し、前記物体が前記甲板から持ち上げられる間に前記物体に作用する力を吸収するよう構成され、前記ウィンチ機構を備える、吊り上げシステム。
【請求項2】
前記支持構造がブリッジなどの前記船舶の既存の構造を備える、請求項1に記載の吊り上げシステム。
【請求項3】
前記ウィンチ機構が前記支持構造の上側に位置する、請求項1または2に記載の吊り上げシステム。
【請求項4】
前記制御ラインが前記巻取りフレームからプーリー機構へ延び、前記プーリー機構から前記ウィンチ機構へ延びる、請求項1~3のいずれか一項に記載の吊り上げシステム。
【請求項5】
前記プーリー機構が前記支持構造の上側に位置し、かつ前記ウィンチ機構が低い高さにある、請求項4に記載の吊り上げシステム。
【請求項6】
前記ウィンチ機構が前記支持構造の下側に位置する、請求項5に記載の吊り上げシステム。
【請求項7】
前記プーリー機構が前記支持構造に対して移動可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載の吊り上げシステム。
【請求項8】
前記プーリー機構が前記支持構造に対して高さ方向に移動可能である、請求項7に記載の吊り上げシステム。
【請求項9】
前記ウィンチ機構が少なくとも2つの制御ラインのための少なくとも2つの独立して制御可能なウィンチを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の吊り上げシステム。
【請求項10】
前記プーリー機構は、少なくとも2つの制御ラインのための少なくとも2つの独立したプーリーを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の吊り上げシステム。
【請求項11】
前記細長い物体が持ち上げられている間前記制御ラインを張力下に保持するために、前記ウィンチ装置または前記制御ラインに作用する張力装置をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の吊り上げシステム。
【請求項12】
船舶の甲板から細長い物体を持ち上げるための方法であって、前記方法は、
前記甲板に接続されたクレーンアームから吊り下げられた巻取りフレームに前記細長い物体を取り付けるステップと、
前記クレーンアームを用いて前記甲板から前記物体を持ち上げステップ、およびウィンチ機構と、前記ウィンチ機構に接続され、前記巻取りフレームから前記ウィンチ機構に延びる制御ラインとによって前記細長い物体の動きを制御するステップと、
を備え、
前記クレーンアームと異なる支持構造が、前記甲板からある高さまで延在し、前記物体が前記甲板から持ち上げられる間に前記物体に作用する力を吸収するよう構成され、前記ウィンチ機構を備える、方法。
【請求項13】
前記支持構造がブリッジなどの前記船舶の既存の構造を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ウィンチ機構が前記支持構造の上側に位置する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記制御ラインが前記巻取りフレームからプーリー機構へ延び、前記プーリー機構から前記ウィンチ機構へ延びる、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記プーリー機構が前記支持構造の上側に位置し、かつ前記ウィンチ機構が低い高さにある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ウィンチ機構が前記支持構造の下側に位置する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記プーリー機構が前記支持構造に対して移動する、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記プーリー機構が前記支持構造に対して高さ方向に移動する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウィンチ機構が少なくとも2つの制御ラインのための少なくとも2つの独立して制御可能なウィンチを備え、前記2つのウィンチが独立して制御される、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プーリー機構は、少なくとも2つの制御ラインのための少なくとも2つの独立したプーリーを備える、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
張力装置が前記ウィンチ装置または前記制御ラインに作用し、前記細長い物体が持ち上げられている間、前記制御ラインを張力下に保持する、請求項12~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の甲板からモノパイルなどの細長い物体、例えば風力タービンブレードなどの風力タービンの構成要素、上面および他の細長い物体を持ち上げるための吊り上げシステムに関する。このような物体は、通常、船の甲板上でほぼ水平な状態で輸送される。本発明は、同様に、吊り上げシステムを使用して細長い物体を取り上げる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、洋上風力タービンを参照して説明される。しかし、この参照は、本発明がそれに限定されることを意味するものではなく、吊り上げシステムおよび対応する方法は、任意の地面に他の細長い物体を配置するために同様にうまく適用できる。したがって、例えば、他の洋上基礎構造物、桟橋、レーダーおよび他の塔の配置、および陸上用途にも本発明を適用することが可能である。
【0003】
洋上風力タービンの基礎には、パイル基礎やジャケット基礎など、さまざまなバリエーションがある。パイル基礎は、一般的に水深が比較的浅い場合に適用され、ジャケット基礎は水深が深い場合に適している。モノパイル基礎は多くの場合、長さ80m以上、直径8m以上、重さ1000トン以上の鋼製中空管状物で構成されている。ジャケット基礎は、さらに大きな寸法であることがよくある。風力タービンは大型化が進んでいるため、風力タービンの基礎はますます重くなっている。基礎も大型化が進んでいるため、ますます扱いにくくなっている。
【0004】
水底に基礎パイルまたは基礎ジャケットを配置するための既知の方法は、基礎パイルまたは基礎ジャケットを船から吊り上げクレーンで持ち上げ、基礎パイルまたはジャケットを水中の底の上または水中に、場合によっては反転装置を介して降ろすことを含む。そして基礎は、吊り上げクレーンから切り離される。
【0005】
基礎パイルのような細長い物体を船の甲板から持ち上げ、物体を略水平な位置で移動させることは、物体が容易に損傷を受ける可能性があるため、とりわけデリケートな操作である。吊り上げクレーンから吊り下げられ、基礎の寸法を有する物体は、波の作用、風、および、たとえば甲板から垂直に延びる軸の周りを回転する場合、吊り上げクレーン自体に加えられる他の力の結果として揺れ動く。このような揺れは、船の甲板上にいる人員に危険をもたらす可能性があり、そうでなくとも損傷を引き起こす可能性があるため、望ましくない。
【0006】
揺動運動を防止するために、従来技術では様々な手段を講じることができる。そのため、穏やかな状態でのみ操作を行うことができる。ただし、作業できる稼働時間は短くなる。
【0007】
別のオプションは、船ができるだけ動かないように、入ってくる波とその方向に対して船を向けることに関する。しかし、この措置は常に可能であるとは限らない。たとえばジャケット基礎などの海底に置かれる物体は、通常、北に対して固定された向きである。波が北に対して任意の方向または向きを有することは明らかであろう。そのため、比較的穏やかな状態での作業に頼らざるを得ない場合が多い。
【0008】
さらに別のオプションは、いわゆるタガーラインを使用して吊り上げクレーンに吊り下げられた物体の制御を維持することに関する。このようなタガーラインは、例えば甲板上にいる人員の介入により、外側端で物体に接続され、別の外側端で船の甲板に接続されるケーブルを含む。タガーラインを使用すると、物体の揺れ動きを多かれ少なかれ減衰させることができるが、少なくとも比較的穏やかな条件に依存しない場合、この操作は損傷や人員への危険をもたらすことが多い。
したがって、上述の従来技術の欠点を少なくとも部分的に取り除くことができる吊り上げシステムおよび対応する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、吊り上げシステム、および吊り上げシステムで実行される方法を提供することであり、この方法は、穏やかな状態よりも荒い状態で適用することができる。このような吊り上げシステムと方法は、作業時間を大幅に増加させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらおよび他の目的は、請求項1に記載の吊り上げシステム、および請求項6に記載の方法を提供することによって達成される。船舶の甲板から細長い物体を持ち上げるための発明された吊り上げシステムは、甲板に接続され、細長い物体を取り付けることができる巻取りフレームが吊り下げられたクレーンアームと、さらにウィンチ機構および制御ラインを備え、制御ラインは、細長い物体に接続され、細長い物体が甲板から持ち上げられた場合に細長い物体の動きを制御するよう構成され、制御ラインは、巻取りフレームからウィンチ機構まで延び、クレーンとは異なる支持構造は、甲板からある高さまで延び、物体が甲板から持ち上げられている間に物体に作用する力を吸収できるように構成されており、ウィンチ機構を備える。
【0011】
制御には、物体の動きの管理と減衰も含まれる。
【0012】
巻取りフレームを介して細長い物体を支持構造上にあるウィンチ機構に接続する制御ラインを使用して、クレーンアームで持ち上げている間、物体の向きが実質的に水平に保たれるように物体の動きを制御することができる。物体の揺れも抑えることができる。巻取りフレームは、物体の重量を支持するための少なくとも1つの運搬ホイストケーブルから吊り下げられる。ホイストケーブルは、クレーンアームに可動式に接続されている。
【0013】
制御ラインは、好ましくは、垂直方向には延びず、垂直方向に対してゼロ以外の角度で延びる。これにより、細長い物体の動きを縦方向と横方向の両方で制御することができる。
【0014】
本発明の別の利点は、物体の動きを減衰させるための吊り上げシステムの使用に関する。これにより、とりわけ、吊り上げ中に発生する可能性のある物体の揺動動作をより適切に制御することができる。
【0015】
支持構造を介して物体をウィンチ機構に接続すると、クレーンアームおよび船舶の甲板に対する物体の動きを制御することができる。対照的に、従来技術では、ケーブルは甲板上で人員によって保持され、物体の向き、および任意に甲板上の決定された点に対する揺動運動が制御される。クレーンアームが動いても、物体の向きは、クレーンアームに自動的に追従しない。クレーンアームと支持構造が異なり、クレーンアームは、動かなければならないため、支持構造は、必然的にクレーンアームから離れた位置にある。制御ラインを使用した物体の水平方向の向きが単純化され、移動する物体をより適切に制御することができる。また、甲板上に制御ラインを取り扱う人員を配置する必要がないため、物体の取り扱いに必要な人員を削減することができる。
【0016】
本出願の文脈において、細長い物体は、長さおよび横方向寸法を有する物体を意味すると理解され、長さは、横方向寸法の少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも6倍、さらにより好ましくは少なくとも7倍、さらにより好ましくは少なくとも8倍、さらにより好ましくは少なくとも9倍、最も好ましくは少なくとも10倍であるに。
【0017】
本発明によれば、支持構造は、甲板からある高さまで延在し、その高さは、船の甲板から少なくとも5m、より好ましくは少なくとも8m、さらに好ましくは少なくとも10m、さらにより好ましくは少なくとも12m、さらにより好ましくは少なくとも15m、さらにより好ましくは少なくとも18m、さらにより好ましくは少なくとも20m、さらにより好ましくは少なくとも25m、最も好ましくは少なくとも30mである。支持構造は、船の甲板上にある吊り上げクレーンとは異なるものである。
【0018】
本発明による支持構造は、物体が甲板から持ち上げられている間に物体に作用する力を吸収できるように構成され、好ましい実施形態では、ブリッジなどの船舶の既存の構造を含む。このような支持構造は、上記の要件を満たすのに十分な強度があり、既存の船舶構造を利用するものである。
【0019】
本発明の利点は、ウィンチ機構が支持構造の上側に位置し、したがって船の甲板の上の高さに位置する実施形態で特に明らかになる。これにより、巻取りフレームを有する制御ラインと巻取りフレームに巻き取られる物体とがなす角度が最適化される。これにより、巻き取られる物体の動きを最適に制御し、荒れた海域での作業を可能にする。
【0020】
同じ結果は、制御ラインが巻取りフレームからプーリー機構まで延び、そこからウィンチ機構まで延びている実施形態で達成することができ、プーリー機構はより好ましくは支持構造の上側に位置し、ウィンチ機構は低い高さにある。プーリーが比較的高い位置に設置されているため、物体を持ち上げる際に制御ラインがより水平になり、物体の制御がさらに向上する。
【0021】
有用な実施形態では、ウィンチ機構は、支持構造の下側に位置する。これにより、ウィンチの機構などのメンテナンスがより簡単に実現できる。この実施形態では、比較的重いウィンチも使用することができる。ウィンチの機構を下側に配置することで、支持構造の別の場所にある場合に比べて、ウィンチの機構へのアクセスがさらに向上する。
【0022】
制御ラインは、巻取りフレームから支持構造上にあるプーリー機構まで延び、そこから支持構造のウィンチ機構まで延びる。本発明の一実施形態は、ウィンチ構成が、少なくとも2つの制御ライン用の少なくとも2つの独立制御可能なウィンチを備える吊り上げシステムに関する。それと相乗的に協働する別の実施形態は、プーリー機構が、少なくとも2つの制御ライン用の少なくとも2つの独立したプーリーを備える吊り上げシステムである。
【0023】
プーリーを使用すると、制御ラインの方向転換が容易になる。さらに改良された実施形態は、プーリー機構が支持構造に対して可動であり、好ましくは支持構造に対して高さ方向に可動であることをさらに特徴とする。
【0024】
支持構造の高さに沿ったプーリーの位置の適切な選択により、巻取りフレームの安定化効果の適切な調整が可能になる。プーリーが例えば、支持構造の下端に比較的近い位置にある場合、巻取りフレームに作用する制御ラインの安定化力は、物体が吊り上げられた後、吊り上げクレーンに接続されたホイストケーブルの張力とは反対の方向に作用する。一方、プーリーが支持構造の上端近くにある場合、プーリーと巻取りフレームの間の距離、つまりプーリーと物体との間の距離は、物体を完全に持ち上げた位置で最小限に抑えることができる。これは、物体が完全に持ち上げられた状態での制御ラインの制御性能の向上に役立つ。したがって、プーリーが支持構造の高さ方向に移動可能に配置されることが特に有利である。これにより、プーリーは吊り上げプロセスに従うことができ、巻取りフレームに対する、つまり物体に対するプーリーの位置は、継続的に最適化される。
【0025】
別の実施形態によれば、本発明の吊り上げシステムは、細長い物体が持ち上げられている間、制御ラインを張力下に保持するためにウィンチ装置または制御ラインに作用する張力装置をさらに備えることができる。制御ラインの張力または付勢により、吊り上げプロセス中、物体を特に安定に保つことができる。張力装置は、ウィンチ機構または制御ラインに作用する制御機構をさらに備えることができ、制御ラインの張力の程度によって物体の水平方向を制御することができる。
【0026】
本発明の別の態様は、船の甲板から細長い物体を持ち上げるための方法に関し、
- 甲板に接続されたクレーンアームから吊り下げられた巻取りフレームに細長い物体を取り付けるステップ
- クレーンアームを使用して甲板から物体を持ち上げ、ウィンチ機構と、それに接続され、巻取りフレームからウィンチ機構まで延びる制御ラインとを使用して、細長い物体の方向を制御するステップ
を含み、
- 甲板からある高さまで延在し、甲板から持ち上げられている間に物体に作用する力を吸収するように構成された支持構造が、ウィンチ機構を備える。
【0027】
持ち上げられた物体は、好ましくは、制御ラインを使用して持ち上げている間、実質的に水平な位置に保持される。
【0028】
本発明の方法の一実施形態は、支持構造が、ブリッジなどの船舶の既存の構造を含むという特徴を有する。
【0029】
他の実施形態では、ウィンチ機構が支持構造の上側に配置される、および/または制御ラインが巻取りフレームからプーリー機構までおよびそこからウィンチ機構まで延びる、および/またはプーリー機構が支持構造の上側に配置され、ウィンチ機構はより低い高さに配置される、および/またはウィンチ機構は支持構造の下側に配置される方法が提供される。
【0030】
別の実施形態による方法は、プーリー機構が支持構造に対して移動されるという特徴を有し、好ましくは、支持構造に対して支持構造の高さ方向に移動される。
【0031】
ウィンチ機構は、少なくとも2つの制御ライン用の少なくとも2つのウィンチを備えることができ、2つのウィンチは、必要に応じて独立して制御される。プーリー機構は、少なくとも2つの制御ラインに対して、少なくとも2つの独立したプーリーを備えることができる。
【0032】
本発明の方法の別の実施形態で使用される制御ラインは、さらに、細長い物体が持ち上げられるときに付勢下に保持することができる。制御ラインを付勢することにより、吊り上げプロセス中に物体を特に安定に保つことができる。制御ラインが支持構造に到達する点よりも高く物体を持ち上げるとすぐに、ホイストケーブルおよび制御ライン(巻取りフレームを介在して)が多かれ少なかれ反対方向に物体を引っ張るため、特に物体の向きを安全に固定することができる。この状況で、一方の巻き上げケーブルと他方の制御ラインによって物体に作用する力が十分に大きい場合、物体は、物体が取り付けられた巻取りフレームの3つの異なる接触点(ホイストケーブル用の1つの接触点と、制御ライン用の少なくとも2つの接触点)に作用するこれらの力によって安定に保たれる。
【0033】
張力装置は、物体の動きを減衰させる。物体がウィンチから遠ざかると制御ラインの張力が増加し、物体がウィンチに近づくと制御ラインの張力が減少する。エネルギーはこのように散逸する。
【0034】
この特許出願に記載された本発明の実施形態は、これらの実施形態の任意の可能な組み合わせで組み合わせることができ、各実施形態は個々に分割特許出願の主題を形成することができる。
【0035】
以下の図を参照して本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施形態による吊り上げシステムを備えた船舶の概略側面図である。
図2】本発明の一実施形態による吊り上げシステムを備えた図1に示す船舶の概略上面図である。
図3】本発明の一実施形態による支持構造の概略側面図である。
図4】本発明による支持構造の図3に示される実施形態の概略斜視図である。
図5】ウィンチ装置に作用する、本発明の一実施形態による張力装置の出力の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による吊り上げシステム(2、3、4)を備えた船舶1が示されている。船舶1には、多数のモノパイル6用の収納ラック11、直立位置で収納された多数のトランジションピース9、および必要に応じてヘリポート12を設けることができる。モノパイル6やトランジションピース9などの細長い物体を垂直位置にして、水中の底(モノパイル)またはこの位置に既に配置されているモノパイル(トランジションピース)に下げるために、船舶1の側縁に把持装置13を設けることができ、これは必要に応じて運動補償される。
【0038】
吊り上げシステム(2、3、4)は、自律的に駆動される船舶1の甲板10上に配置された吊り上げクレーン2の形態の吊り上げ手段を備える。吊り上げクレーン2は、甲板10に連結された基台20と、船舶1の甲板10に垂直に延びる回転軸22を中心に回転可能なクレーンアーム21とを備える。吊り上げクレーン2のクレーンアーム21には、ホイストブロック24が取り付けられた多数のホイストケーブル23が延びている。
【0039】
巻取りフレーム5は、クレーンアーム21から吊るされており、モノパイル6のような細長い物体を、巻取りフレームから吊るされたスリング50によって取り付けることができる。吊り上げシステム(2、3、4)は、甲板10から高さ30まで延びる支持構造3をさらに備える。図示の実施形態では、支持構造3は、船舶の既存の構造物、すなわちブリッジによって形成される。しかし、支持構造3は、目的のために別に建てられた構造、例えば甲板10に建てられた格子構造を含むこともできる。支持構造3は、モノパイル6または他の物体が甲板10から持ち上げられている間にこれらに作用する力を吸収できるように構成されている。
【0040】
支持構造3の下側に配置されているのは、ウィンチ機構7である。ウィンチ機構7は、甲板10上の所定の高さに設置することもできる。図示の実施形態では、ウィンチ機構7は、2つの制御ライン4を操作する2つの独立制御可能なウィンチ(70、71)を備える。支持構造3の上側に配置されているのは、2本の制御ライン4用の2つの独立したプーリー(80、81)を備えるプーリー機構8である。図3図4に明確に示されているウィンチ機構7から、制御ライン4が、より高い位置に配置されたプーリー機構8を通り、そこから巻取りフレーム5まで延びている。図2に示すように、制御ライン4は、巻取りフレーム5の外端だけでなく、その中間部分にも取り付けることができる。ウィンチ(70、71)をそれぞれ独立して操作することにより、巻取りフレーム5とそれに収納されたモノパイル6の向きを操作することができる。制御ライン4は、モノパイル6が甲板10の収納ラック11から持ち上げられるときにモノパイル6の方向を制御することを目的としており、制御ライン4は、巻取りフレーム5からウィンチ機構7まで延びている。
【0041】
プーリー機構8、および必要に応じてウィンチ機構7も、例えば当該機構(7、8)をレールガイド10上で走らせることによって、支持構造3に対して高さ方向31に移動可能に具現化することができる。本出願の文脈において可動とは、当該機構(7、8)が、高さ方向31に移動でき、可変高位置に固定できることを意味する。
【0042】
一実施形態によれば、吊り上げシステム(2、3、4)は、モノパイル6または他の細長い物体を持ち上げる間、張力下で制御ライン4を保持するためにウィンチ装置7に作用する張力装置73をさらに備えることができる。
【0043】
張力装置73によって通常生成される張力/速度図の例を図5に示す。減衰モードでは、タガーウィンチ(70、71)によって加えられる張力15は、たとえば図示の線形進行に従って、制御ライン4の引き込みおよび繰り出しの速度16で変化する可能性がある。付勢は、タガーウィンチ(70、71)で設定するのが一般的で、例えば15トンである。この張力は、制御ライン4が繰り出されると、たとえば25トンの上限まで増加し、制御ライン4が引き込まれると、たとえば5トンの下限まで再び減少する。張力装置73をこのように設定すると、制御ライン4は、常に張力がかかったままになり、巻取りフレーム5の制御が強化される。
【0044】
モノパイル10の揺動運動は、張力装置73で減衰することができる。モノパイル10がタガーウィンチ(70、71)から離れると、制御ライン4の張力は、図5の直線に従って増加する。モノパイル10がタガーウィンチ(70、71)に向かって移動すると、制御ライン4の張力は、図5の直線に従って減少する。エネルギーはこのように消費される。
【0045】
本発明の吊り上げシステム(2、3、4)により、モノパイル6または他の細長い物体を船舶1の甲板10から有利に持ち上げることができる。典型的な方法は、甲板10に接続されたクレーンアーム21から吊り下げられた巻取りフレーム5にモノパイル6または他の細長い物体を取り付けることからなる。モノパイル6は、クレーンアーム21によって甲板10から持ち上げられ、モノパイル6の向きは、ウィンチ機構7と、それに接続され、巻取りフレーム5からウィンチ機構7まで延びる制御ライン4によって制御される。制御ラインは、巻取りフレーム5からプーリー機構8を経由してウィンチ機構7に至ることが望ましい。吊り上げ中、ウィンチ装置7または制御ライン4に作用する張力装置73は、モノパイル6を持ち上げている間、制御ライン4に張力がかかったままであることを保証する。
【0046】
吊り上げシステムにより、甲板10に対して最適な制御ライン角度が得られる。持ち上げられたモノパイル6の動きを減衰させるために従来技術で時々適用されるクレーンウィンチは、このようなことをしない。さらに、減衰制御の設定を既知のクレーンウィンチに統合することは困難な場合がある。
【0047】
上で詳細に説明した本発明の吊り上げシステム(2、3、4)の実施形態により、細長い物体、特に風力タービンのモノパイル6を制御された方法で収納ラック11から持ち上げることができ、次に、必要な場合、把持装置13を介して物体を地面、特に水中の底に置くことができる。これは既知の方法で可能な場合よりも悪い気象条件である。細長い物体の破損リスクを軽減することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 船舶
2 吊り上げクレーン
3 支持構造
4 制御ライン
5 巻取りフレーム
6 モノパイル
7 ウィンチ機構
8 プーリー機構
9 トランジションピース
10 船舶の甲板
11 収納ラック
12 ヘリポート
13 把持装置
20 クレーン基台
21 クレーンアーム
22 垂直回転軸
23 吊り上げクレーンのホイストケーブル
24 吊り上げクレーンのホイストブロック
30 支持構造の高さ
31 高さ方向
50 巻取りフレームのスリング
70 第1の独立制御ウィンチ
71 第2の独立制御ウィンチ
73 張力装置
80 第1の独立プーリー
81 第2の独立プーリー
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の甲板から細長い物体を持ち上げるための吊り上げシステムを備える船舶であって、前記吊り上げシステムは、前記甲板に接続され、かつ前記細長い物体を取り付けることができる巻取りフレームが吊り下げられたクレーンアームと、ウィンチ機構および前記ウィンチ機構に接続された制御ラインとを備え、前記制御ラインは、前記細長い物体が前記甲板から持ち上げられる場合に前記細長い物体の動きを制御するよう構成され、前記制御ラインは、前記巻取りフレームからプーリー機構へ延び、前記プーリー機構から前記ウィンチ機構へ延び、前記プーリー機構および前記ウィンチ機構は支持構造に設けられ、前記支持構造は、前記クレーンアームと異なるものであり、前記船舶の前記甲板からある高さまで延在し、前記物体が前記甲板から持ち上げられる間に前記物体に作用する力を吸収するのに十分強く、前記プーリー機構は、前記支持構造に対して高さ方向に移動可能である、船舶
【請求項2】
前記支持構造がブリッジなどの前記船舶の既存の構造を備える、請求項1に記載の船舶
【請求項3】
前記ウィンチ機構が前記支持構造の上側に位置する、請求項1または2に記載の船舶
【請求項4】
前記プーリー機構が前記支持構造の上側に位置し、かつ前記ウィンチ機構が低い高さにある、請求項3に記載の船舶
【請求項5】
前記ウィンチ機構が前記支持構造の下側に位置する、請求項に記載の船舶
【請求項6】
前記ウィンチ機構が少なくとも2つの制御ラインのための少なくとも2つの独立して制御可能なウィンチを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の船舶
【請求項7】
前記プーリー機構は、少なくとも2つの制御ラインのための少なくとも2つの独立したプーリーを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の船舶
【請求項8】
前記細長い物体が持ち上げられている間前記制御ラインを張力下に保持するために、前記ウィンチ装置または前記制御ラインに作用する張力装置をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の船舶
【請求項9】
船舶の甲板から細長い物体を持ち上げるための方法であって、前記方法は、
請求項1~8のいずれか一項に記載の船舶を提供するステップと、
前記船舶の前記甲板に接続された前記クレーンアームから吊り下げられた前記巻取りフレームに前記細長い物体を取り付けるステップと、
前記クレーンアームを用いて前記甲板から前記物体を持ち上げ、前記ウィンチ機構と、前記ウィンチ機構に接続され、前記巻取りフレームから前記プーリー機構へ、および前記プーリー機構から前記ウィンチ機構に延びる制御ラインとによって前記細長い物体の動きを制御するステップと、
を備え、
前記プーリー機構および前記ウィンチ機構は、前記支持構造に設けられ、前記支持構造は、前記クレーンアームと異なるものであり、前記甲板からある高さまで延在し、前記物体が前記甲板から持ち上げられる間に前記物体に作用する力を吸収す、方法。
【請求項10】
前記支持構造がブリッジなどの前記船舶の既存の構造を備える、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ウィンチ機構が前記支持構造の上側に位置する、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
前記プーリー機構が前記支持構造の上側に位置し、かつ前記ウィンチ機構が低い高さにある、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
前記ウィンチ機構が前記支持構造の下側に位置する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ウィンチ機構が少なくとも2つの制御ラインのための少なくとも2つの独立して制御可能なウィンチを備え、前記2つのウィンチが独立して制御される、請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プーリー機構は、少なくとも2つの制御ラインのための少なくとも2つの独立したプーリーを備える、請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
張力装置が前記ウィンチ装置または前記制御ラインに作用し、前記細長い物体が持ち上げられている間、前記制御ラインを張力下に保持する、請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】