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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】難燃性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/06 20060101AFI20230705BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230705BHJP
   C08K 3/18 20060101ALI20230705BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20230705BHJP
   H01B 3/44 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C08L51/06
C08K3/013
C08K3/18
H01B7/295
H01B3/44 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022567446
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 US2021036085
(87)【国際公開番号】W WO2021252312
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/036,177
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーチー
(72)【発明者】
【氏名】チャウダリー、バーラト アイ.
(72)【発明者】
【氏名】バウィスカル、サントッシュ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、シンティー
(72)【発明者】
【氏名】コウ、チエン
【テーマコード(参考)】
4J002
5G305
5G315
【Fターム(参考)】
4J002BP022
4J002CP171
4J002DE076
4J002DE146
4J002DE216
4J002DE266
4J002DJ006
4J002FD136
4J002GQ01
5G305AA02
5G305AB25
5G305BA22
5G305CA01
5G305CA53
5G305CC03
5G305CD13
5G305DA23
5G315CA03
5G315CB02
5G315CB06
5G315CC08
5G315CD13
5G315CD14
5G315CD15
(57)【要約】

ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、10重量%~80重量%のシラングラフト化エチレンポリマーを含む。シラングラフト化エチレンポリマーは、シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて0.40モル%~1.50モル%のシラン含有量を有し、シラングラフト化エチレンポリマーを作製するために使用されるエチレンポリマーは、エチレンポリマーの総重量に基づいて15重量%未満の極性コモノマー含有量を有する。また、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~80重量%の難燃性フィラーを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~80重量%のシラングラフト化エチレンポリマーであって、シラングラフト化エチレンポリマーは、前記シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて0.40モル%~1.50モル%のシラン含有量を有し、前記シラングラフト化エチレンポリマーを作製するために使用されるエチレンポリマーは、前記エチレンポリマーの総重量に基づいて15重量%未満の極性コモノマー含有量を有する、シラングラフト化エチレンポリマー、及び
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~80重量%の難燃性フィラー、を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて1重量%~5重量%のシリコーン、及び
前記ポリマー組成物の総重量に基づいて0.001重量%~10.0重量%のシラノール縮合触媒、
のうちの1つ以上を更に含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記シラングラフト化エチレンポリマーが、前記シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて0.40モル%~0.94モル%のシラン含有量を有する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記シラングラフト化エチレンポリマーが、ASTM D-792に従って測定した場合、0.860g/cc~0.930g/ccの密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記難燃性フィラーが、ハロゲンフリー難燃性フィラーである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記シラングラフト化エチレンポリマーのシラングラフトが、一般式:
【化1】
[式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、xは、0又は1であり、nは、1~4、又は6、又は8、又は10、又は12の整数であり、各Rは、独立して、加水分解性有機基、例えば、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラロキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノ基若しくは置換アミノ基(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ)、又は1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基であるが、ただし、3つのR基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする]の加水分解性シランモノマーから誘導される単位である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記加水分解性シランが、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランからなる群から選択される、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記難燃性フィラーが、水酸化マグネシウム、アルミニウム三水和物、炭酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、及び水和マグネシウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
導体と、
導体の周りに少なくとも部分的に位置付けられた請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物と、を含み、15cm*%未満のフィラー加重チャー長基準値を示す、被覆導体。
【請求項10】
前記フィラー加重チャー長基準値が、1cm*%~10cm*%である、請求項9に記載の被覆導体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
技術分野
本開示は、ポリマー組成物に関し、より具体的には、難燃性ポリマー組成物に関する。
【0002】
序論
ポリオレフィンと、難燃性材料、ハロゲン化難燃剤又はハロゲンフリー難燃剤(HFFR)を用いたポリマー組成物は、難燃性が重要である用途で用いられる被覆導体の絶縁体やジャケットを形成するのに有用である。ハロゲンフリーの難燃性は、通常、可燃性ポリオレフィン材料の濃度を希釈し、熱に曝されたときにポリマーの分解温度以下で分解する水和鉱物フィラーを製剤中に添加することで達成される。水和鉱物フィラーの分解により水が放出され、火災の主要因(その他は燃料と酸素)の1つである熱を奪う。従来のHFFR含有ポリマー組成物は、建物内、列車内、車内、又は人々が存在し得る場所であればどのような場所でも使用される。
【0003】
ポリマー組成物におけるHFFRの使用には、多くの欠点があり、その大部分は、難燃仕様を満たすために必要な比較的高水準のHFFRに起因する。ポリオレフィン中60重量パーセント又は65重量パーセントのHFFR充填量は珍しくない。このHFFR充填量は、ポリマー組成物を用いた被覆導体の密度、柔軟性、及び機械的特性に悪影響を及ぼす。
【0004】
高いHFFR充填量に関する問題に対処する1つのアプローチは、シラングラフト化ポリオレフィンエラストマーをHFFRのキャリアポリオレフィンとして使用することである。例えば、国際公開第2017218280(A1)号(「’280号公報」)は、シラングラフト化ポリオレフィンエラストマーとHFFRとを含み、エラストマーが広範囲のシラン濃度を有するポリマー組成物の使用を開示している。しかし、HFFRを有するシラングラフト化ポリオレフィンエラストマーの使用は、それ自体が複雑になる。例えば、シランとHFFRのヒドロキシル基/水分との化学反応は十分に解明されておらず、早期の架橋を回避することは困難である。更に、HFFRを含むポリマー組成物で作られたケーブルの燃焼性能に対するグラフト化シランの効果は不明であり、’280号公報は、ケーブル(被覆導体又は絶縁ワイヤ)の燃焼性能に関して言及していない。
【0005】
シラン濃度と高いHFFR充填量に基づくケーブル燃焼性能の不確実性を考えると、ポリマー組成物中のシラングラフト化エチレンポリマーについて、その組成物で作られた被覆導体の燃焼性能を最大化する臨界シラン濃度範囲を発見することは驚くべきことである。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ポリマー組成物で作製された被覆導体の燃焼性能を最大化するシラングラフト化エチレンポリマーの臨界シラン濃度範囲を有するポリマー組成物を提供する。
【0007】
本出願の発明者らは、シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて0.40モル%~1.50モル%のグラフト化シラン含有量を有するシラングラフト化エチレンポリマー、難燃性材料、任意にシリコーン、任意に酸化防止剤、及び任意にシラノール縮合触媒を含むポリマー組成物が、以下に更に詳細に記載する合格のフィラー加重チャー長(「FWCL」)値を呈する被覆導体を形成するのに使用できることを発見した。
【0008】
高い難燃剤充填量、特に高いHFFR充填量の被覆導体の燃焼性能を評価することは、高い難燃剤充填量の結果としてのポリマー組成物の機械的特性のいかなる損失も最小限に抑えながら、所望のケーブル燃焼性能を達成する観点から重要である。高い難燃剤充填量を有するポリマー組成物を用いた被覆導体の燃焼性能を特定する1つの方法は、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)試験60332-1-2:2004において、形成されるチャーの長さを減少させる難燃剤の有効性をFWCL基準を用いて測定することである。概して、FWCL基準で15cm*%未満の値が望ましいと見なされる。本発明の発明者らは、驚くべきことに、測定されたFWCL値が、高い難燃剤充填量を有するポリマー組成物を作製するために使用されるシラングラフト化エチレンポリマーのシラン濃度の関数であることを発見した。更に驚くべきことに、シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて0.40モル%~1.50モル%の臨界グラフト化シラン含有量によって、高い難燃剤充填量のポリマー組成物から形成された被覆導体がFWCL基準で15cm*%未満の値を示すことが可能になることが発見された。
【0009】
本発明のポリマー組成物は、被覆導体の作製に特に有用である。
【0010】
本開示の第1の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~80重量%のシラングラフト化エチレンポリマーであって、シラングラフト化エチレンポリマーは、シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて0.40モル%~1.50モル%のシラン含有量を有し、シラングラフト化エチレンポリマーを作製するために使用されるエチレンポリマーは、エチレンポリマーの総重量に基づいて15重量%未満の極性コモノマー含有量を有する、シラングラフト化エチレンポリマー、及びポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~80重量%の難燃性フィラー、を含む。
【0011】
本開示の第2の特徴によれば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて1重量%~5重量%のシリコーン、及びポリマー組成物の総重量に基づいて0.001重量%~10.0重量%のシラノール縮合触媒、のうちの1つ以上を更に含む。
【0012】
本開示の第3の特徴によれば、シラングラフト化エチレンポリマーは、シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて0.40モル%~0.94モル%のシラン含有量を有する。
【0013】
本開示の第4の特徴によれば、シラングラフト化エチレンポリマーは、ASTM D-792に従って測定した場合、0.860g/cc~0.930g/ccの密度を有する。
【0014】
本開示の第5の特徴によれば、難燃性フィラーは、ハロゲンフリー難燃性フィラーである。
【0015】
本開示の第6の特徴によれば、シラングラフト化エチレンポリマーのシラングラフトは、構造(I)の加水分解性シランモノマーから誘導される単位であり、式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、xは、0又は1であり、nは、1~4、又は6、又は8、又は10、又は12の整数であり、各Rは、独立して、加水分解性有機基、例えば、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラロキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノ基若しくは置換アミノ基(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ)、又は1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基であるが、ただし、3つのR基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする。
【0016】
本開示の第7の特徴によれば、加水分解性シランは、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシランからなる群から選択される。
【0017】
本開示の第8の特徴によれば、難燃性フィラーは、水酸化マグネシウム、アルミニウム三水和物、炭酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、及び水和マグネシウムのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
本開示の第9の特徴によれば、被覆導体は、導体と、導体の周りに少なくとも部分的に位置付けられた特徴1~8のいずれか1つに記載のポリマー組成物と、を含み、15cm*%未満のフィラー加重チャー長基準値を示す。
【0019】
本開示の第10の特徴によれば、被覆導体のフィラー加重チャー長基準値は、1cm*%~10cm*%である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ単独で用いることができること、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして記載されている場合、組成物はAを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0021】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0022】
試験方法は、試験方法番号と共にハイフンで区切った2桁の数字で日付が示されていない限り、この文書の優先日における最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。試験方法組織は、以下の略語のうちの1つによって参照され、ASTMは、ASTMインターナショナル(ASTM International)(旧称、米国材料試験協会、American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは国際標準化機構(International Organization for Standards)を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分が、ポリマー組成物の総重量に占める重量パーセンテージを示す。モルパーセント(「モル%」)という用語は、成分が存在する項目の総モルに対する、成分のモルの割合を示す。
【0024】
本明細書で別段の定めがない限り、密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、立方センチメートル当たりのグラム数(g)(g/cc)で記録される。
【0025】
本明細書で別段の定めがない限り、メルトインデックス(Melt index、MI)は、ASTM D1238、条件190℃/2.16キログラム(kg)重量に従って測定され、10分当たりに溶出されるグラム数(g/10分)で報告される。
【0026】
「ポリマー」は、同じであるか異なるタイプであるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製される高分子化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマー、インターポリマー、及びコポリマーという用語を包含する。
【0027】
「エチレンポリマー」は、エチレンから誘導された単位を含有するポリマーを意味する。エチレンポリマーは典型的には、エチレンから誘導される単位を少なくとも50モル%含む。ポリエチレンはエチレンポリマーである。
【0028】
ポリマー組成物
本開示は、ポリマー組成物に関する。ポリマー組成物は、シラングラフト化エチレンポリマー及び難燃性フィラーを含む。また、ポリマー組成物は、シリコーンを含み得る。以下により詳細に説明するように、ポリマー組成物は、被覆導体の製造に使用され得る。
【0029】
エチレンポリマー
「シラングラフト化エチレンポリマー」、「シラングラフト化ポリエチレン」、「Si-g-PE」などの用語は、例えば、米国特許第3,646,155号又は同第6,048,935号に記載されているように、シラン官能基をエチレンポリマーの骨格にグラフトするプロセスによって調製されるエチレンポリマーを意味する。
【0030】
(シラングラフト化エチレンポリマーが形成される)エチレンポリマーは、核磁気共鳴法(NMR)又はフーリエ変換赤外(FTIR)分光法で測定した場合、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、又は91モル%以上、又は92モル%以上、又は93モル%以上、又は94モル%以上、又は95モル%以上、又は96モル%以上、又は97モル%以上、又は97.5モル%以上、又は98モル%以上、又は99モル%以上、一方で同時に、100モル%以下、99.5モル%以下、又は99モル%以下、又は98モル%以下、又は97モル%以下、又は96モル%以下、又は95モル%以下、又は94モル%以下、又は93モル%以下、又は92モル%以下、又は91モル%以下、又は90モル%以下、又は85モル%以下、又は80モル%以下、又は70モル%以下、又は60モル%以下のエチレンを含み得る。エチレンポリマーの他の単位は、C~C、又はC、又はC、又はC10、又はC12、又はC16、又はC18、又はC20α-オレフィン、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、及び1-オクテンを含み得る。(シラングラフト化エチレンポリマーが形成される)エチレンポリマーの他の単位は、不飽和エステルなどの極性モノマーを含むがこれらに限定されない1つ以上の重合性モノマーから誘導され得る。不飽和エステルは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、又はカルボン酸ビニルであり得る。アルキル基は、1~8個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有することができる。カルボキシレート基は、2~8個の炭素原子又は2~5個の炭素原子を有することができる。アクリレート及びメタクリレートの例としては、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、及び2エチルヘキシルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。ビニルカルボキシレートの例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びビニルブタノアートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
シラングラフト化エチレンポリマーが形成されるエチレンポリマーは、超低密度ポリエチレン、又は直鎖状低密度ポリエチレン、又は高密度ポリエチレン、又はエチレンエチルアクリレートコポリマー、又はエチレンビニルアセテートコポリマーであり得る。エチレンポリマーの密度は、ASTM D792により測定された場合、0.860g/cc以上、0.870g/cc以上、又は0.880g/cc以上、又は0.890g/cc以上、又は0.900g/cc以上、又は0.904g/cc以上、又は0.910g/cc以上、又は0.915g/cc以上、又は0.920g/cc以上、又は0.921g/cc以上、又は0.922g/cc以上、又は0.925g/cc~0.930g/cc以上、又は0.935g/cc以上、一方で同時に、0.970g/cc以下、又は0.960g/cc以下、又は0.950g/cc以下、又は0.940g/cc以下、又は0.935g/cc以下、又は0.930g/cc以下、又は0.925g/cc以下、又は0.920g/cc以下、又は0.915g/cc以下、又は0.910g/cc以下、又は0.905g/cc以下、又は0.900g/cc以下であり得る。
【0032】
エチレンポリマーのメルトインデックスは、0.5g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.5g/10分以上、又は2.0g/10分以上、又は2.5g/10分以上、又は3.0g/10分以上、又は3.5g/10分以上、又は4.0g/10分以上、又は4.5g/10分以上、又は10.0g/10分以上、又は18g/10分以上、一方で同時に、30.0g/10分以下、又は25.0g/10分以下、又は20.0g/10分以下、又は18.0g/10分以下、又は15.0g/10分以下、又は10.0g/10分以下、又は5.0g/10分以下、又は4.5g/10分以下、又は4.0g/10分以下、又は3.5g/10分以下、又は3.0g/10分以下、又は2.5g/10分以下、又は2.0g/10分以下、又は1.5g/10分以下、又は1.0g/10分以下であり得る。
【0033】
エチレンポリマーは、均質ポリマー又はホモポリマーであり得る。均質なエチレンポリマーは、1.5~3.5の範囲の多分散指数(すなわち、分子量分布)及び実質的に均一なコモノマー分布を有し、示差走査熱量測定(DSC)によって測定された場合、単一の比較的低い融点を特徴とする。実質的に直鎖状エチレンコポリマー(SLEP)は、均質なエチレンポリマーである。
【0034】
本明細書で使用される場合、「実質的に直鎖状」とは、バルクポリマーが、平均して、約0.01個の長鎖分枝/1000個の総炭素(骨格及び分枝炭素の両方を含む)~約3個の長鎖分枝/1000個の総炭素、好ましくは約0.01個の長鎖分枝/1000個の総炭素~約1個の長鎖分枝/1000個の総炭素、より好ましくは約0.05個の長鎖分枝/1000個の総炭素~約1個の長鎖分枝/1000個の総炭素、特に約0.3個の長鎖分枝/1000個の総炭素~約1個の長鎖分枝/1000個の総炭素で置換されていることを意味する。
【0035】
「長鎖分枝」又は「長鎖分枝している」(LCB)は、コモノマー中の炭素の数より2個(2)少ない鎖長を意味する「短鎖分枝」又は「短鎖分枝している」(SCB)とは反対に、少なくともコモノマー中の炭素の数より1個(1)少ない炭素の鎖長を意味する。例えば、エチレン/1-オクテンの実質的に直鎖状のポリマーは、長さが少なくとも7個の(7)炭素の長鎖分枝を有する骨格を有するが、それはまた、長さがわずか6個の(6)炭素の短鎖分枝も有する一方で、エチレン/1-ヘキセンの実質的に直鎖状のポリマーは、長さが少なくとも5個の(5)炭素の長鎖分枝を有するが、長さがわずか4個の(4)の短鎖分枝も有する。LCBは、13C核磁気共鳴(NMR)分光法を用いてSCBと区別することができ、限られた範囲内で、例えば、エチレンホモポリマーの場合、Randallの方法(Rev.Macromol.Chem.Phys.,C29(2&3).p.285-297)を使用して定量化することができる。しかしながら、実際の問題として、現在の13C NMR分光法は、約6個の(6)炭素原子を超える長鎖分枝の長さを特定することができず、そのため、この分析技術は、7個(7)と70個(70)との炭素分枝を区別することができない。LCBは、ポリマー骨格の長さとほぼ同じ長さほどの長さであり得る。
【0036】
米国特許第4,500,648号は、LCB度数が方程式LCB=b/M(式中、bは1分子当たりのLCBの重量平均数であり、Mは重量平均分子量である)によって表され得ることを教示している。分子量平均及びLCB特性は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)及び固有粘度法によって特定される。
【0037】
エチレンコポリマーのSCBの1つの尺度は、メジアン総モルコモノマー含有量の50パーセントの範囲内のコモノマー含有量を有するポリマー分子の重量パーセントとして定義される、組成分布分枝指数(CDBI)としても知られているその短鎖分枝分布指数(SCBDI)である。ポリマーのSCBDI又はCDBIは、例えば、Wild et al..Journal of Polymer Science,Poly.Phys.Ed.,Vol.20,p.441(1982)に記載されているように、又は米国特許第4,798,081号に記載されているように、温度上昇溶離分画(TREF)などの当該技術分野で知られている技術から得られるデータから容易に計算される。本発明で有用な実質的に直鎖状のエチレンポリマーのSCBDI又はCDBIは、典型的には、約30重量%、又は50重量%、又は80重量%、又は90重量%を超える。
【0038】
「ポリマー骨格」又は単に「骨格」は、個別の分子を意味し、「バルクポリマー」又は単に「ポリマー」は、重合プロセスから生じる生成物を意味し、実質的に直鎖状のポリマーの場合には、その生成物は、LCBを有するポリマー骨格及びLCBを有しないポリマー骨格の両方を含み得る。それ故、「バルクポリマー」は、重合中に形成される全ての骨格を含む。実質的に直鎖状のポリマーについては、全ての骨格がLCBを有するわけではないが、バルクポリマーの平均LCB含量が溶融レオロジー(すなわち、メルト破砕特性)に正の影響を及ぼすように十分な数がLCBを有する。
【0039】
SLEP及びそれらの調製方法は、米国特許第5,741,858号及び米国特許第5,986,028号においてより十分に記載されている。
【0040】
多分散指数はMw/Mnとして計算される。Mwは、重量平均分子量と定義され、Mnは、数平均分子量と定義される。多分散性インデックスは、以下の技術に従って測定される。ポリマーは、140℃のシステム温度で操作される、3つの直線混合床カラム(Polymer Laboratories(10ミクロンの粒子サイズ))を装備したWaters 150℃高温クロマトグラフィーユニットでのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって分析される。溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、それから試料の約0.5重量%溶液が注入のために調製される。流速は1.0ミリリットル/分(mm/分)であり、注入サイズは100マイクロリットル(μL)である。分子量の特定は、狭い分子量分布のポリスチレン標準(Polymer Laboratoriesから)をそれらの溶出体積と組み合わせて使用することにより推測される。相当ポリエチレン分子量は、(参照により本明細書に組み込まれる、Journal of Polymer Science,Polymer Letters,Vol.6,(621)1968の中のWilliams及びWardによって記載される)ポリエチレン及びポリスチレンに対する適切なMark-Houwink係数を使用して次の式を誘導することによって特定される。
Mポリエチレン=(a)(Mポリスチレン)
【0041】
この式において、a=0.4316であり、b=1.0である。重量平均分子量Mwは、式:
【数1】
(式中、w及びMiは、それぞれ、GPCカラムから溶出するi番目の画分の重量分率及び分子量である)に従って通常の手法で計算される。一般に、エチレンポリマーのMwは、42,000~64,000、好ましくは44,000~61,000、より好ましくは46,000~55,000の範囲である。
【0042】
均質なエチレンポリマーを調製するための典型的な触媒系には、メタロセン及び幾何拘束型触媒(CGC)系が含まれる。CGC系はSLEPを調製するために使用される。
【0043】
エチレンポリマーは、エチレンと、3~12個の炭素原子又は3~8個の炭素原子を有する1つ以上のアルファ-オレフィン(α-オレフィン)とのコポリマーであり得る。α-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンのうちの1つ以上であり得る。エチレンポリマーは、3つ以上の異なるモノマーから誘導される単位を含み得る。例えば、第3のコモノマーは、別のα-オレフィン、又はエチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ブタジエン、1,4-ヘキサジエン若しくはジシクロペンタジエンなどのジエン、又は不飽和エステルなどの極性物質であり得る。シラングラフト化エチレンポリマーの製造に使用されるエチレンポリマーは、エチレンポリマーの総重量に基づいて、15重量%未満、又は10重量%、又は5重量%以下、又は3重量%以下、又は1重量%以下、又は0重量%の極性コモノマー含有量を有し得る。例示的な極性コモノマーは、アクリル酸エチルである。
【0044】
本発明で有用なエチレンポリマーの具体例としては、均質に分枝した直鎖状のエチレン/アルファ-オレフィンコポリマー(例えば、三井石油化学株式会社によるTAFMER(商標)及びExxon Chemical CompanyによるEXACT(商標))、及び均質に分枝した、実質的に直鎖状のエチレン/アルファ-オレフィンポリマー(例えば、Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(商標)プラストマー及びENGAGE(商標)エラストマー)が挙げられる。
【0045】
加水分解性シランモノマー
「加水分解性シランモノマー」をエチレンポリマーにグラフト化して、シラングラフト化エチレンポリマーを生成する。エチレンポリマーに効果的にグラフトする(したがって、シラングラフト化エチレンポリマーのその後の架橋を可能にする)任意の加水分解性シラン又はそのような加水分解性シランの混合物を使用することができる。加水分解性シランモノマーの代表的であるが限定されない例は、構造(I)を有し、
【化1】
式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、xは、0又は1であり、nは、1~4、又は6、又は8、又は10、又は12の整数であり、各Rは、独立して、加水分解性有機基、例えば、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラロキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノ基若しくは置換アミノ基(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ)、又は1~6個の炭素原子を有する低級アルキル基であるが、ただし、3つのR基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする。
【0046】
加水分解性シランモノマーは、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、又はガンマ(メタ)アクリロキシアリル基などのエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、及び例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、又はヒドロカルビルアミノ基などの加水分解性基を含むシランモノマーを含んでもよい。加水分解性基は、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、及びアルキル又はアリールアミノ基を含んでもよい。具体例では、加水分解性シランモノマーは不飽和アルコキシシランであり、エチレンポリマーにグラフトすることができる。加水分解性シランモノマーの例としては、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン(VTES)、ビニルトリアセトキシシラン、及びガンマ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。構造(I)に関連して、VTMSについては、x=0、R=水素、及びR=メトキシ、VTESについては、x=0、R=水素、及びR=エトキシ、並びにビニルトリアセトキシシランについては、x=0、R=H、及びR=アセトキシである。
【0047】
フリーラジカル開始剤
加水分解性シランモノマーは、フリーラジカル開始剤を用いてエチレンポリマーにグラフト化され、Si-g-PEを形成することができる。フリーラジカル開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物(すなわち、ジアジニル部分を有する化合物)、及び/又は電離放射線によるものが挙げられる。フリーラジカル開始剤は、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、t-ブチルベンゾイルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、及び過酢酸t-ブチルなどの有機過酸化物であり得る。アゾ化合物の例は、アゾビスイソブチロニトリルである。
【0048】
使用される開始剤の量は、エチレンポリマー、加水分解性シランモノマー及び開始剤を合わせた総重量に基づいて、0.04重量%以上、又は0.06重量%以上、一方で同時に、1.00重量%以下、0.50重量%以下、0.30重量%以下、0.15重量%以下、0.10重量%以下であり得る。加水分解性シランモノマー対開始剤の重量比は、5:1~70:1又は10:1~30:1であり得る。不飽和を有するある特定のポリマーでは、熱と剪断によって発生するラジカルを利用して、開始剤を全く使用せずにグラフト化することが可能な場合がある。
【0049】
エチレンポリマーのシラングラフト化
典型的には、シラングラフト化エチレンポリマー(Si-g-PE)と難燃性フィラーを混合する前に、エチレンポリマーは加水分解性シランモノマーでグラフト化される。あるいは、例えば米国特許第4,574,133号に記載されているように、ポリマー組成物の押出し中に加水分解性シランモノマーをエチレンポリマーの骨格にグラフトさせて被覆導体を形成するMONOSILプロセスなどのプロセスによって、in-situでSi-g-PEが形成される。エチレンポリマー、加水分解性シランモノマー及びフリーラジカル開始剤を、公知の機器及び技術を使用して混合し、120℃~270℃のグラフト化温度で処理する。典型的には、混合機器は、BANBURY(商標)ミキサー若しくは同様のミキサー、又は一軸若しくは二軸の押出機のいずれかである。また、異方向二軸押出機、混練機、遊星押出機、多軸押出機などの他の押出機も使用することができる。また、上記の混合機や押出機を2台以上タンデムに組み合わせて使用することもできる。
【0050】
シラングラフト化エチレンポリマー
シラングラフト化エチレンポリマーは、上記のプレグラフト化エチレンポリマーと同じ密度範囲を有する。シラングラフト化エチレンポリマーのメルトインデックスは、ASTM D1238に従って測定した場合、0.1g/10分以上、又は0.3g/10分以上、又は0.5g/10分以上、又は1.0g/10分以上、又は1.5g/10分以上、又は2.0g/10分以上、又は2.5g/10分以上、又は3.0g/10分以上、又は3.5g/10分以上、又は4.0g/10分以上、又は4.5g/10分以上、又は10.0g/10分以上、又は18g/10分以上、又は20g/10分以上、又は30g/10分以上、又は40g/10分以上、一方で同時に、50.0g/10分以下、40.0g/10分以下、30.0g/10分以下、又は25.0g/10分以下、又は20.0g/10分以下、又は18.0g/10分以下、又は15.0g/10分以下、又は10.0g/10分以下、又は5.0g/10分以下、又は4.5g/10分以下、又は4.0g/10分以下、又は3.5g/10分以下、又は3.0g/10分以下、又は2.5g/10分以下、又は2.0g/10分以下、又は1.5g/10分以下、又は1.0g/10分以下であり得る。
【0051】
シラングラフト化エチレンポリマーは、シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて、0.40モル%~1.50モル%のシラン含有量を有する。例えば、シラングラフト化エチレンポリマーは、シラングラフト化エチレンポリマーの総モルに基づいて、0.40モル%以上、又は0.41モル%以上、又は0.42モル%以上、又は0.43モル%以上、又は0.44モル%以上、又は0.45モル%以上、又は0.46モル%以上、又は0.47モル%以上、又は0.48モル%以上、又は0.49モル%以上、又は0.50モル%以上、又は0.52モル%以上、又は0.54モル%以上、又は0.56モル%以上、又は0.58モル%以上、又は0.60モル%以上、又は0.62モル%以上、又は0.64モル%以上、又は0.66モル%以上、又は0.68モル%以上、又は0.70モル%以上、又は0.72モル%以上、又は0.74モル%以上、又は0.76モル%以上、又は0.78モル%以上、又は0.80モル%以上、又は0.82モル%以上、又は0.84モル%以上、又は0.86モル%以上、又は0.88モル%以上、又は0.90モル%以上、又は0.92モル%以上、又は0.94モル%以上、又は0.96モル%以上、又は0.98モル%以上、又は1.00モル%以上、又は1.10モル%以上、又は1.20モル%以上、又は1.00モル%以上、又は1.30モル%以上、又は1.40モル%以上、一方で同時に、1.50モル%以下、又は1.40モル%以下、又は1.30モル%以下、又は1.20モル%以下、又は1.10モル%以下、又は1.00モル%以下、又は0.99モル%以下、又は0.98モル%以下、又は0.96モル%以下、又は0.94モル%以下、又は0.92モル%以下、又は0.90モル%以下、又は0.88モル%以下、又は0.86モル%以下、又は0.84モル%以下、又は0.82モル%以下、又は0.80モル%以下、又は0.78モル%以下、又は0.76モル%以下、又は0.74モル%以下、又は0.72モル%以下、又は0.70モル%以下、又は0.68モル%以下、又は0.66モル%以下、又は0.64モル%以下、又は0.62モル%以下、又は0.60モル%以下、又は0.58モル%以下、又は0.56モル%以下、又は0.54モル%以下、又は0.52モル%以下、又は0.50モル%以下、又は0.49モル%以下、又は0.48モル%以下、又は0.47モル%以下、又は0.46モル%以下、又は0.45モル%以下、又は0.44モル%以下、又は0.43モル%以下、又は0.42モル%以下、又は0.41モル%以下のシラン含有量を有し得る。
【0052】
シラングラフト化エチレンポリマーは、シラングラフト化エチレンポリマーの総重量に基づいて、1.8重量%~5.0重量%のシラン含有量を有し得る。例えば、シラン含有量は、1.8重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.2重量%以上、又は2.4重量%以上、又は2.6重量%以上、又は2.8重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.2重量%以上、又は3.4重量%以上、又は3.6重量%以上、又は3.8重量%以上、又は4.0重量%以上、又は4.2重量%以上、又は4.4重量%以上、又は4.6重量%以上、又は4.8重量%以上、一方で同時に、5.0重量%以下、又は4.8重量%以下、又は4.6重量%以下、又は4.4重量%以下、又は4.2重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.8重量%以下、又は3.6重量%以下、又は3.4重量%以下、又は3.2重量%以下、又は3.0重量%以下、又は2.8重量%以下、又は2.6重量%以下、又は2.4重量%以下、又は2.2重量%以下、又は2.0重量%以下であり得る。
【0053】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、10重量%~80重量%のシラングラフト化エチレンポリマーを含み得る。例えば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、10重量%以上、又は12重量%以上、又は14重量%以上、又は15重量%以上、又は16重量%以上、又は17重量%以上、又は18重量%以上、又は19重量%以上、又は20重量%以上、又は21重量%以上、又は22重量%以上、又は23重量%以上、又は24重量%以上、又は25重量%以上、又は26重量%以上、又は27重量%以上、又は28重量%以上、又は29重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、又は70重量%以上、又は75重量%以上、一方で同時に、80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下、又は30重量%以下、又は29重量%以下、又は28重量%以下、又は27重量%以下、又は26重量%以下、又は25重量%以下、又は24重量%以下、又は23重量%以下、又は22重量%以下、又は21重量%以下、又は20重量%以下、又は19重量%以下、又は18重量%以下、又は17重量%以下、又は16重量%以下、又は15重量%以下、又は14重量%以下、又は13重量%以下、又は12重量%以下、又は11重量%以下の濃度でシラングラフト化エチレンポリマーを含み得る。
【0054】
難燃性フィラー
難燃性フィラーは、炎の発生を阻害、抑制、又は遅延させることができる。いくつかの例では、難燃性フィラーは、ハロゲンフリーであり得る。本明細書で使用する「ハロゲンフリー」などの用語は、難燃性フィラーがハロゲン含有量を有しない、又は実質的に有しない、すなわち、イオンクロマトグラフィー(IC)または同様の分析方法によって測定した場合、10,000mg/kg未満のハロゲンを含有することを示す。この量未満のハロゲン含有量は、例えば被覆導体におけるような難燃性フィラーの有効性にとって重要ではないと考えられる。
【0055】
ポリマー組成物に使用するのに適した難燃性フィラーの例としては、ハロゲン化材料、金属水酸化物、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンナノチューブ、タルク、粘土、有機変性粘土、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、モリブデン酸亜鉛、硫化亜鉛、ホウ酸亜鉛、三酸化アンチモン、珪灰石、雲母、オクタモリブデン酸アンモニウム、フリット、中空ガラス微小球、膨張性化合物、膨張黒鉛、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。難燃性フィラーのハロゲンフリーの例は、水酸化マグネシウム、アルミニウム三水和物、炭酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び水和マグネシウムの少なくとも1つを含み得る。ポリマー組成物での使用に適した難燃性フィラーの市販の例としては、Nabaltec AG,Schwandorf,Germanyから入手可能なAPYRAL(商標)40CD、及びIsrael Chemicals Ltd.of Tel Aviv-Yafo,IsraelからのFR-20-100が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
難燃性フィラーは、任意で表面処理(コーティング)することができる。表面処理は、8~24個の炭素原子、又は12~18個の炭素原子を有する飽和又は不飽和カルボン酸、又はその酸の金属塩で行うことができる。あるいは、酸又は塩は、表面処理手順を使用するのではなく、単に同様の量でポリマー組成物に添加され得る。その他の表面処理には、シラン、チタネート、ホスフェート、及びジルコネートが含まれてもよく、利用することもできる。また、本明細書に開示されていない他の表面処理も使用可能である。
【0057】
ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて10重量%~80重量%の量の難燃性フィラーを含み得る。例えば、ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、10重量%以上、又は15重量%以上、又は20重量%以上、又は25重量%以上、又は30重量%以上、又は35重量%以上、又は40重量%以上、又は45重量%以上、又は50重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上、又は65重量%以上、又は70重量%以上、又は75重量%以上、一方で同時に、80重量%以下、又は75重量%以下、又は70重量%以下、又は65重量%以下、又は60重量%以下、又は55重量%以下、又は50重量%以下、又は45重量%以下、又は40重量%以下、又は35重量%以下の難燃性フィラーを含み得る。
【0058】
シリコーン
ポリマー組成物は、1重量%~5重量%のシリコーン(ポリシロキサンともいう)を含み得る。シリコーンは、直鎖状、分枝状、反応性及び/又は非反応性であり得る。シリコーンは、その自然の形態(ポリジメチルシロキサン及びシリコーンガムを含むがこれらに限定されない)、又はキャリアポリマー中のマスターバッチとして、又はいわゆる「粉末樹脂改質剤」(例えば、DOWSIL(商標)Si粉末樹脂改質剤)として、又はこれらの組み合わせとして使用することができる。例えば、ポリマー組成物は、1重量%以上、又は1.5重量%以上、又は2重量%以上、又は2.5重量%以上、又は3重量%以上、又は3.5重量%以上、又は4重量%以上、又は4.5重量%以上、一方で同時に、20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下、7重量%以下、又は5重量%以下、又は4.5重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.5重量%以下、又は3.0重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2.0重量%以下、又は1.5重量%以下の濃度でシリコーンを含み得る。
【0059】
添加剤
本ポリマー組成物は、1つ以上の添加剤を含み得る。適切な添加剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、着色剤、腐食防止剤、潤滑剤、シラノール縮合触媒、紫外線(ultraviolet、UV)吸収剤又は安定剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、カップリング剤、相溶化剤、可塑剤、フィラー、加工助剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
本ポリマー組成物は、酸化防止剤を含み得る。適切な酸化防止剤の非限定的な例としては、フェノール系酸化防止剤、チオ系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、及びヒドラジン系金属不活性化剤が挙げられる。適切なフェノール系酸化防止剤としては、高分子量ヒンダードフェノール、メチル置換フェノール、一級又は二級カルボニルを有する置換基を有するフェノール、並びに硫黄及びリン含有フェノールなどの多官能フェノールが挙げられる。代表的なヒンダードフェノールとしては、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチルテトラキス-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、n-オクタデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-メチレンビス(2,6-tert-ブチル-フェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール)、2,6-ジ-tertブチルフェノール、6-(4-ヒドロキシフェノキシ)-2,4-ビス(n-オクチル-チオ)-1,3,5トリアジン、ジ-n-オクチルチオ)エチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゾエート、及びソルビトールヘキサ[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオネート]が挙げられる。ポリマー組成物は、BASFからIrganox(商標)1010として市販されているペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)を含み得る。適切なメチル置換フェノールの非限定的な例は、イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)である。適切なヒドラジン系金属不活性化剤の非限定的な例は、オキサリルビス(ベンジリデンヒドラジド)である。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.05重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%から0.5重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%までの酸化防止剤を含有し得る。
【0061】
本ポリマー組成物は、ルイス酸及び塩基並びにブレンステッド酸及び塩基などのシラノール縮合触媒を含み得る。「シラノール縮合触媒」は、加水分解反応及び縮合反応を通してシラン官能化ポリオレフィンの架橋を促進する。ルイス酸は、ルイス塩基からの電子対を受け入れることができる化学種である。ルイス塩基は、電子対をルイス酸に供与することができる化学種である。適切なルイス酸の非限定的な例としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)、ジメチルヒドロキシスズオレエート、ジオクチルスズマレエート、ジ-n-ブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、並びに様々な他の有機金属化合物、例えばナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、及びナフテン酸コバルトが挙げられる。適切なルイス塩基の非限定的な例としては、一級、二級、及び三級アミンが挙げられる。適切なブレンステッド酸の非限定的な例は、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、又はアルキルナフタレンスルホン酸である。シラノール縮合触媒は、ブロックされたスルホン酸を含み得る。ブロックされたスルホン酸は、米国特許出願公開第2016/0251535(A1)号に定義されているとおりであり得、その加熱時に、任意選択で水分又はアルコールの存在下で、in-situでスルホン酸を生成する化合物であり得る。ブロックされたスルホン酸の例としては、アミン-スルホン酸塩及びスルホン酸アルキルエステルが挙げられる。ブロックされたスルホン酸は、炭素原子、水素原子、1つの硫黄原子、及び3つの酸素原子、及び任意選択で窒素原子からなり得る。これらの触媒は、典型的には湿気硬化用途に使用される。本ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.005重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.03重量%から0.05重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.5重量%、又は1.0重量%、又は3.0重量%、又は5.0重量%、又は10重量%までのシラノール縮合触媒を含む。シラノール縮合触媒は、典型的には、シラノール縮合触媒が最終溶融押出プロセス中に存在するように、物品製造押出機に(ケーブル製造中などに)添加される。このように、シラン官能化ポリオレフィンは、シラン官能化ポリオレフィンが押出機を出る前に、ある程度架橋され得、シラン官能化ポリオレフィンが押出機を出た後、典型的には水分(例えば、サウナ、湯浴、若しくは冷却浴)及び/又はシラン官能化ポリオレフィンが保管、輸送、若しくは使用される環境内に存在する湿気に曝されるときに、架橋が完了する。
【0062】
シラノール縮合触媒は、触媒マスターバッチが本組成物中に含まれた状態で、触媒マスターバッチブレンドに含まれ得る。適切なシラノール縮合触媒マスターバッチの非限定的な例としては、SI-LINK(商標)DFDB-5480 NT、SI-LINK(商標)DFDA-5481 NT及びSI-LINK(商標)AC DFDA-5488 NTを含む、The Dow Chemical CompanyからSI-LINK(商標)の商品名で販売されるものが挙げられる。一実施形態では、本組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.01重量%、又は0.5重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は3.0重量%、又は4.0重量%から5.0重量%、又は6.0重量%、又は7.0重量%、又は8.0重量%、又は9.0重量%、又は10.0重量%、又は15.0重量%、又は20.0重量%までのシラノール縮合触媒マスターバッチを含有する。
【0063】
本ポリマー組成物は、紫外線(UV)吸収剤又は安定剤を含み得る。適切なUV安定剤の非限定的な例は、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)である。適切なHALSの非限定的な例は、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、N,N-1,2-エタンジイルビス-N-3-4,6-ビスブチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノプロピル-N,N-ジブチル-N,N-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-1,5,8,12-テトラキス[4,6-ビス(n-ブチル-n-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカンである(これは、SABO S.p.A(Levate,Italy)からSABO(商標)STAB UV-119として市販されている)。一実施形態では、本組成物は、該組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.001重量%、又は0.002重量%、又は0.005重量%、又は0.006重量%から0.007重量%、又は0.008重量%、又は0.009重量%、又は0.01重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、又は0.4重量%、又は0.5重量%、1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%までのUV吸収剤又は安定剤を含有する。
【0064】
組成物は、加工助剤を含み得る。好適な加工助剤の非限定的な例は、油、有機酸(ステアリン酸など)、及び有機酸の金属塩(ステアリン酸亜鉛など)を含む。一実施形態では、本組成物は、組成物の総重量に基づいて、0重量%、又は0.01重量%、又は0.02重量%、又は0.05重量%、又は0.07重量%、又は0.1重量%、又は0.2重量%、又は0.3重量%、0.4重量%から0.5重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%、又は1.0重量%、又は2.0重量%、又は2.5重量%、又は3.0重量%、又は5.0重量%、又は10.0重量%、又は20.0重量%までの加工助剤を含有する。
【0065】
組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0重量%以上、又は0.001重量%以上、又は0.002重量%以上、又は0.005重量%以上、又は0.006重量%以上、又は0.008重量%以上、又は0.009重量%以上、又は0.01重量%以上、又は0.2重量%以上、又は0.3重量%以上、又は0.4重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1.0重量%以上、又は2.0重量%以上、又は3.0重量%以上、又は4.0重量%以上、又は5.0重量%以上、又は10.0重量%以上、又は15.0重量%以上、又は20.0重量%以上、又は30重量%以上、又は40重量%以上、又は50重量%以上の添加剤を含有し得る。
【0066】
マスターバッチ
シラングラフト化エチレンポリマー、難燃剤、及び添加剤のうちの1つ以上を、予備混合マスターバッチとして組み合わせることができる。このようなマスターバッチは、難燃剤と添加剤を不活性なプラスチック樹脂に分散させて形成されるのが一般的である。マスターバッチは、溶融配合法により好都合に形成される。
【0067】
フィラーを例とする成分中に存在する又は成分に付随する水分によって引き起こされ得るスコーチの可能性を低減又は排除するために、成分若しくはマスターバッチのうちの1つ以上が、配合又は押出前に乾燥され得る、又は成分若しくはマスターバッチの混合物が、配合又は押出後に乾燥される。本組成物は、長い貯蔵寿命のために、シラノール縮合触媒の非存在下で調製されてよく、シラノール縮合触媒は、押出プロセスによるケーブル構造体(被覆導体)の製造における最終ステップとして添加され得る。
【0068】
被覆導体
本開示はまた、被覆導体を提供する。被覆導体は、導体と、導体上の被覆とを含み、被覆は、本ポリマー組成物を含む。本ポリマー組成物は、導体の周囲に少なくとも部分的に配設されて、被覆導体が製造される。導体は、導電性金属を含み得る。
【0069】
被覆導体を製造する方法は、押出機内でポリマー組成物を混合し、シラングラフト化エチレンポリマーの少なくとも融点まで加熱して、ポリマー溶融ブレンドを形成し、次にポリマー溶融ブレンドを導体上にコーティングすることを含む。「上に」という用語は、ポリマー溶融ブレンドと導体との間の直接接触又は間接接触を含む。ポリマー溶融ブレンドは、押出可能な状態にある。
【0070】
本ポリマー組成物は、導体の上及び/又は周りに配設されて、被覆を形成する。被覆は、絶縁層などの1つ以上の内層であり得る。被覆は、導体を全体的に又は部分的に覆ってよく、又はそうでなければ囲む若しくは包んでよい。被覆は、導体を取り囲む唯一の構成要素であり得る。あるいは、被覆は、導体を包む多層ジャケット又はシースのうちの1層であってもよい。被覆は、導体と直接接触し得る。被覆は、導体を取り囲む絶縁層に直接接触し得る。
【0071】
被覆導体は、以下で特定される15cm*%未満のFWCL値を示し得る。例えば、被覆導体は、0.5cm*%以上、又は1cm*%以上、又は2cm*%以上、又は3cm*%以上、又は4cm*%以上、又は5cm*%以上、又は6cm*%以上、又は7cm*%以上、又は8cm*%以上、又は9cm*%以上、又は10cm*%以上、又は11cm*%以上、又は12cm*%以上、又は13cm*%以上、又は14cm*%以上、一方で同時に、15cm*%未満、又は14cm*%以下、又は13cm*%以下、又は12cm*%以下、又は11cm*%以下、又は10cm*%以下、又は9cm*%以下、又は8cm*%以下、又は7cm*%以下、又は6cm*%以下、又は5cm*%以下、又は4cm*%以下、又は3cm*%以下、又は2cm*%以下、又は1cm*%以下のフィラー加重チャー長の値を示し得る。
【実施例
【0072】
試験方法
Si-g-PEのVTMS含有量:中性子放射化分析(NAA)を用いて、Si-g-PEのVTMS含有量を測定した。試料を、55℃で24時間真空ストリッピングしたSi-g-PEの一部から調製した。Si標準を、NISTトレーサブル標準溶液から同様のバイアルに調製した。純水を使用して標準を試料と同様の体積に希釈した。また、ブランク試料の水も調製した。その後、試料、標準及びブランクを、Siに対する標準的なNAA手順「Global-SOP-01101.02」に従って分析した。具体的には、NAA中の照射を、原子炉出力250kWで3分間行った。HPGe検出器セットを使用して、待機時間は9分、計数時間は270秒であった。Canberraソフトウェア及び比較技術を使用して、Si濃度を重量パーセントで計算した。測定の典型的な不確かさは相対値で2%~5%の範囲であり、検出限界は90ppm未満である。NAAで測定されたSiが全て添加されたビニルトリメトキシシラン(C12Si)からのものであると仮定して、VTMS含有量(重量%)を化学量論を使用して逆算した。VTMSの重量%と、エチレン性ポリマーを作製するために使用したエチレン及び他のコモノマー(例えば、オクテン、アクリル酸エチル)の重量%が分かっているので、モル%VTMSを以下の式を使用して計算した:
【数2】
式中、
W=重量%
M=分子量
i=VTMS、エチレン、オクテン、アクリル酸エチル。
【0073】
FWCL値:被覆導体のFWCL値は、単一垂直被覆導体の垂直火炎伝播に対する耐性を試験する手順を規定した国際電気標準会議試験60332-1-2:2004を最初に実施することによって求められる。試験60332-1-2:2004は、試験中に被覆導体上に形成されるチャーの長さ(「チャー長」)を測定する。FWCL値は、センチメートル単位のチャー長に、被覆導体を形成するために使用されるポリマー組成物中に存在する難燃性フィラーの重量%を乗じ、100で割ることによって計算される。
【0074】
材料
実施例で使用された材料が、以下に提供される。
【0075】
POE1は、ASTM D792に従って測定した0.88g/ccの密度とASTM D1238に従って測定した190℃/2.16kgでの18g/10分のメルトインデックスとを有する、コモノマーとして1-オクテン(10.3モル%)で作製されたエチレンポリマーである。POE1は、0重量%の極性コモノマー含有量を有する。POE1は、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0076】
POE2は、ASTM D792に従って測定した0.902g/ccの密度とASTM D1238に従って測定した190℃/2.16kgでの30g/10分のメルトインデックスとを有する、コモノマーとして1-オクテン(5.6モル%)で作製されたエチレンポリマーである。POE2は、0重量%の極性コモノマー含有量を有する。POE2は、The Dow Chemical Company、Midland,MIから市販されている。
【0077】
極性PE1は、ASTM D1238に従って測定した190℃/2.16kgでの6g/10分のメルトインデックスを有する、コモノマーとしてアクリル酸エチル(18重量%のアクリル酸エチル)で作製されたエチレンポリマーである。極性PE1は、18重量%の極性コモノマー含有量を有する。極性PE1は、The Dow Chemical Company,Midland,MIから市販されている。
【0078】
極性PE2は、ASTM D1238に従って測定した190℃/2.16kgでの21g/10分のメルトインデックスを有する、コモノマーとしてアクリル酸エチル(21重量%のアクリル酸エチル)で作製されたエチレンポリマーである。極性PE2は、21重量%の極性コモノマー含有量を有する。極性PE2は、The Dow Chemical Company,Midland,MIから市販されている。
【0079】
LDPEは、ASTM D792に従って測定した0.918g/ccの密度とASTM D1238に従って測定した190℃/2.16kgでの8g/10分のメルトインデックスとを有する低密度ポリエチレン(エチレンポリマー)である。LDPEは、0重量%の極性コモノマー含有量を有する。LDPEは、The Dow Chemical Company,Midland,MIから市販されている。
【0080】
ビニルトリメトキシシラン(VTMS)CAS番号2768-02-7は、純度98%で、Sigma-Aldrich,St.Louis,MOから市販されている。
【0081】
2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(DBPH)CAS番号78-63-7は、Sigma-Aldrich,St.Louis,MOら市販されている過酸化物である。
【0082】
SCは、湿気硬化型エチレン-シランコポリマーと組み合わせて使用するために開発されたシラノール縮合触媒マスターバッチであり、SI-LINK(商標)DFDB-5480 NTとしてThe Dow Chemical Company,Midland,MIから市販されている。
【0083】
OBCは、ASTM D792に従って測定した0.877g/ccの密度及びASTM D1238に従って測定した190℃/2.16kgで15g/10分のメルトインデックスを有するオレフィンブロックコポリマーである。OBCは、The Dow Chemical Company,Midland,MIからINFUSE(商標)9817として市販されている。
【0084】
相溶化剤は、無水マレイン酸グラフト化エチレンビニルアセテートコポリマーであり、The Dow Chemical Company,Midland,MIからFUSABOND(商標)C250として市販されている。
【0085】
フィラーは水酸化マグネシウム(HFFR)であり、Israel Chemicals Ltd.of Tel Aviv-Yafo,IsraelからFR-20-100として市販されている。
【0086】
AO1は、BASF(Ludwigshafen,Germany)からIRGANOX(商標)1010として市販されている、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)という化学名を有する立体ヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
【0087】
AO2はジステアリルチオジプロピオネートであり、Addivant,Danbury,CTからNAUGARD(商標)DSTDPとして市販されている。
【0088】
OBHはオキサリルビス(ベンジリデン)ヒドラジドであり、Sigma-Aldrich,St.Louis,MOから市販されている。
【0089】
シリコーンはDOWSIL(商標)Si粉末樹脂調整剤4-7081であり、The Dow Chemical Company,Midland,MIから市販されている。
【0090】
OTSはオクチルトリエトキシシランであり、Milliken&CoのSiVance LLCからPROSIL(商標)9202として市販されている。
【0091】
試料調製
エチレンポリマーのシラン官能化は、26mm同方向回転二軸押出機(Coperion Corp.からのZSK-26)を用いて行った.押出機は15バレル(60L/D)で構成された。最大スクリュー速度は、毎分1200回転(rpm)で、最大モーター出力は40馬力であった押出機には、ベース樹脂を供給するための「ロスインウェイトフィーダー」が装備されていた。全ての試料について、シラン(VTMS)とDBPH(過酸化物)を重量比20:1で事前にブレンドし、バレル5でEldex計量器を用いて押出機に計量した。実行速度は4.54kg/時で、スクリュー速度は300rpmであった。バレル温度は、バレル2~4では150℃、バレル6~10では230℃、バレル11~12では190℃、バレル12~15及びアダプター/ダイでは160℃に設定した。不活性雰囲気を維持し、酸化を最小限に抑えるために、10~15標準立方フィート/時間の窒素を使用して、第1のバレルセクションをパージした。バレル13に真空引き(50795.8パスカル)を行った。2穴ダイを使用してストランドを生成し、ストランドカッターでペレットに切断した。その後、シラングラフト化した材料を、窒素を使用してフード内で約4~6時間乾燥させ、湿気に曝されないようにアルミホイルバッグに真空密封し、更なる試験のために保管した。真空ストリッピングした試料について、中性子放射化分析(NAA)を用いてグラフト値を測定した。表1に、実施例で用いたシラン官能化エチレンポリマーのシラン含有量を示す。
【表1】
【0092】
難燃性マスターバッチ(「FRMB」)は、表2の材料を組み合わせることによって形成される。40rpmのローター速度及び160℃のジャケット(混合ボウルセット)温度で、カムブレードを備えたBRABENDER(商標)ミキサー内で、水酸化マグネシウム及び他の原料成分をOBCと組み合わせることによって、FRMBを作製した。他の全ての原料成分が均一に混合された後に、FRMBの液体添加剤を添加した。FRMBをフラックス後の15分間混合し、プレスで平らにした後、冷却して小片に切断した。デュアル混合ヘッドを備えた25:1単軸押出機で、150℃/160℃/170℃/180℃プロファイル、20/40/60USメッシュ/インチのスクリーンパックで40rpmで小片を押出し、得られたストランドを小さなペレットに切断した。
【表2】
【0093】
ワイヤを製造する前に、全てのマスターバッチを真空オーブンで乾燥させた。FR MBペレットを60℃のオーブンに48時間放置して水分を除去した。次に、シラングラフト化エチレンポリマー、FRMB、及びシラノール縮合触媒を表3に示す特定の比率で物理的にブレンドした。次に、ブレンドを押出中に溶融混合し、公称1.524ミリメートルの壁厚で10AWGソリッド銅上にワイヤ構造を作製した。ワイヤ製造ユニットには、可変速駆動を備えたBRABENDER(商標)19.05mm押出機、混合ヘッドのない24:1ポリエチレンスクリュー、BRABENDER(商標)クロスヘッドワイヤダイ、エアワイプ付きのラボ用水冷トラフ、レーザーマイクロメーター、及び可変速ワイヤプラーが含まれていた。ワイヤ試料を、140℃/155℃/165℃/165℃の温度プロファイル(ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3及びヘッド/ダイ全体)及び40/40メッシュスクリーンパックを使用して、40rpmスクリュー速度及び約2.44m/分の巻き取り速度で押し出した。
【0094】
押し出された被覆導体を、90℃の水浴中で2日間硬化させた。23℃、相対湿度50%で72時間更に調整した後、硬化した被覆導体を、国際電気標準会議試験60332-1-2:2004に従って試験し、FWCL値を算出した。
【0095】
結果
表3は、比較例(「CE」)1~6及び本発明の実施例(「IE」)1~10の組成、並びに関連するFWCL値を示している。
【表3】
【0096】
表3から分かるように、驚くべきことに、測定されたFWCL値は、ポリマー組成物を作製するために使用されたSi-g-PEのシラン含有量(グラフト化VTMS)、及びSi-g-PEを作製するために使用したエチレンポリマーの種類の関数であることが発見された。驚くべきことに、極性PE1又は極性PE2を用いてSi-g-PEを作製した場合、被覆導体の実質的に劣った燃焼性能が得られる(FWCL値15cm*%以上に反映される)。更に驚くべきことに、シラン含有量が0.40モル%未満では、被覆導体は15cm*%以上のFWCL値を示すが、一方0.40モル%を超えるシラン含有量では、15cm*%未満のFWCL値(極性PE1又は極性PE2がSi-g-PEではない場合)が得られ、0.40モル%が臨界シラン含有量であることを示していることが発見された。15cm*%未満のFWCL値は、0.94モル%までのグラフト化VTMS(シラン含有量)値で得られ(極性PE1又は極性PE2がSi-g-PEではない場合)、1.50モル%までこの関係が及ぶと考えられる。
【国際調査報告】