(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】非小細胞肺癌の治療に使用するためのEGFR TKI
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20230705BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230705BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230705BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230705BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20230705BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230705BHJP
C07D 403/04 20060101ALN20230705BHJP
C07D 401/14 20060101ALN20230705BHJP
C07D 403/12 20060101ALN20230705BHJP
C07D 487/04 20060101ALN20230705BHJP
C07D 405/12 20060101ALN20230705BHJP
C07D 239/94 20060101ALN20230705BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K45/00
A61P35/00
A61P11/00
A61K31/5377
A61K31/517
A61K31/519
C07D403/04
C07D401/14
C07D403/12
C07D487/04 140
C07D405/12
C07D239/94
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022572309
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021063992
(87)【国際公開番号】W WO2021239786
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300022641
【氏名又は名称】アストラゼネカ アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルカゼンコフ,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ギオルギュー,サーバン
(72)【発明者】
【氏名】ボレッリーニ,フラビア
(72)【発明者】
【氏名】マン,ヘレン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC08
4C050EE03
4C050FF01
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4C050GG04
4C050HH04
4C063AA01
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4C063BB01
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4C063CC29
4C063CC34
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4C063EE01
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB26
4C086AA01
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4C086BC42
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4C086BC50
4C086BC73
4C086CB05
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB26
(57)【要約】
本明細書は、上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者の腫瘍切除後のアジュバント治療で使用するための、上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者の腫瘍切除後のアジュバント治療で使用するための上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であって、前記EGFR TKIは、第2世代又は第3世代いずれかのEGFR TKIである、EGFR TKI。
【請求項2】
前記患者はII期又はIIIA期のEGFRm NSCLCと分類されている、請求項1に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項3】
前記患者はアジュバント化学療法を受けている、請求項1又は2に記載の使用のためのEGFR TKI。
【請求項4】
前記EGFRm NSCLCは、エクソン19の欠失又はエクソン21のL858R置換変異から選択されるEGFRにおける活性化変異を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項5】
前記アジュバントEGFR TKI治療は、改善された無病生存期間(DFS)を提供する、請求項1~4のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項6】
前記アジュバントEGFR TKI治療は、約24ヶ月目において約85%~約95%のDFSの確率を提供する、請求項1~5のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項7】
前記EGFR TKIは第3世代EGFR TKIである、請求項1~6のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項8】
前記EGFR TKIは、式(I)の第3世代EGFR TKI:
【化1】
(式中、
Gは、4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル、インドール-3-イル、インダゾール-1-イル、3,4-ジヒドロ-1H-[1,4]オキサジノ[4,3-a]インドール-10-イル、6,7,8,9-テトラヒドロピリド[1,2-a]インドール-10-イル、5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[3,2,1-ij]キノリン-1-イル、ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル、及びピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イルから選択され;
R
1は、水素、フルオロ、クロロ、メチル、及びシアノから選択され;
R
2は、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、及びメチルから選択され;
R
3は、(3R)-3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル、(3S)-3-(ジメチル-アミノ)ピロリジン-1-イル、3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル、[2-(ジメチルアミノ)エチル]-(メチル)アミノ、[2-(メチルアミノ)エチル](メチル)アミノ、2-(ジメチルアミノ)エトキシ、2-(メチルアミノ)エトキシ、5-メチル-2,5-ジアザスピロ[3.4]オクト-2-イル、(3aR,6aR)-5-メチルヘキサ-ヒドロ-ピロロ[3,4-b]ピロール-1(2H)-イル、1-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル、4-メチルピペリジン-1-イル、4-[2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル]ピペラジン-1-イル、メチル[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル]アミノ、メチル[2-(モルホリン-4-イル)エチル]アミノ、1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル、及び4-[(2S)-2-アミノプロパノイル]ピペラジン-1-イルから選択され;
R
4は、水素、1-ピペリジノメチル及びN,N-ジメチルアミノメチルから選択され;
R
5は、独立して、メチル、エチル、プロピル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、フルオロ、クロロ、及びシクロプロピルから選択され;
Xは、CH又はNであり;
nは、0、1、又は2である)
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~7のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項9】
前記第3世代EGFR TKIは、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩、AZD3759又はその薬学的に許容される塩、ラゼルチニブ又はその薬学的に許容される塩、アビベルチニブ又はその薬学的に許容される塩、アルフルチニブ又はその薬学的に許容される塩、CK-101又はその薬学的に許容される塩、HS-10296又はその薬学的に許容される塩、及びBPI-7711又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項10】
前記第3世代EGFR TKIは、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項11】
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が、1日1回投与される、請求項10に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項12】
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩が、錠剤形態で投与される、請求項10又は11に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項13】
前記オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、オシメルチニブメシル酸塩である、請求項10~12のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項14】
前記EGFR TKIは、アファチニブ及びダコミチニブから選択される第2世代EGFR TKIである、請求項1~6のいずれか一項に記載される使用のためのEGFR TKI。
【請求項15】
上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者の腫瘍切除後のアジュバント治療のための医薬の製造におけるEGFR TKIの使用であって、前記EGFR TKIは、第2世代又は第3世代いずれかのEGFR TKIである、使用。
【請求項16】
上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者を治療する方法であって、第2世代又は第3世代EGFR TKIを患う前記患者の腫瘍切除後のアジュバント治療を含む、方法。
【請求項17】
上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者における無病生存期間(DFS)を改善する方法であって、第2世代又は第3世代EGFR TKIを患う前記患者の腫瘍切除後のアジュバント治療を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者の腫瘍切除後のアジュバント治療で使用するための、上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)について記載する。具体的には、本明細書は、この設定におけるアジュバント療法としての第2世代又は第3世代いずれかのEGFR TKIの使用について記載する。
【背景技術】
【0002】
原発性肺癌は、全世界で最も一般的な癌の形態であり(2018年において全ての新規癌症例の約13.5%)、世界的に癌関連死の主な原因となっている(全癌死亡数の25.3%)。非小細胞肺癌(NSCLC)は、全肺癌の約80%~90%を占める(非特許文献1)。NSCLC患者全体の約30%が、外科手術が一次治療となる早期(I~IIIA)疾患を呈する。外科手術で治療された患者の予後は良好であるものの、外科手術のみで治療された患者の5年生存率は低く、57%(IB期)~23%(IIIA期)の範囲である。生存率を改善するための試みの中で、II期及びIII期のNSCLCを切除された患者、及びIB期疾患を切除された選ばれた患者においては、アジュバントの術後白金ベース化学療法が標準治療となった。非特許文献2は、外科手術及びアジュバント化学療法から5.4%の5年絶対利益を見出したが、これらの患者における再発又は死亡率は高く、5年全生存(OS)率は、60~74%(I期)~38%(IIIA期)の範囲である。したがって、より効果的な治療が必要とされる。
【0003】
2004年には、EGFRのエクソン18~21における活性化変異が、NSCLCにおけるEGFR-TKI療法に対する応答と相関することが報告された(非特許文献3;非特許文献4)。これらの変異は、米国及び欧州ではNSCLCのヒト患者のおよそ10~16%に、アジアではNSCLCのヒト患者のおよそ30~50%に発生していると推定される。最も重要なEGFR活性化変異のうちの2つは、エクソン19の欠失及びエクソン21のミスセンス変異である。エクソン19の欠失は、既知のEGFR変異のおよそ45%を占める。3~7個のアミノ酸の欠失をもたらす11の異なる変異は、全てが、アミノ酸747~749に対応する均一に欠失したコドンに集中している、エクソン19で検出されている。最も重要なエクソン19の欠失はE746~A750である。エクソン21のミスセンス変異は既知のEGFR変異のおよそ39~45%を占め、そのうち置換変異L858Rは、エクソン21の全変異のおよそ39%を占める(非特許文献5)。
【0004】
2種の第1世代(エルロチニブ及びゲフィチニブ)、2種の第2世代(アファチニブ及びダコミチニブ)、及び1種の第3世代(オシメルチニブ)上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が、進行性(転移性)EGFR変異陽性NSCLCの管理のために現在利用可能である。これらのTKIは全部が、その腫瘍がエクソン19におけるインフレーム欠失及びエクソン21におけるL858R点変異を有するNSCLCの患者に有効である。これら2つの変異は、全EGFR変異のおよそ90%を占める。患者のおよそ50%では、第1世代及び第2世代EGFR TKIに対する耐性は、「ゲートキーパー」変異であるT790Mの獲得によって媒介される。現在、オシメルチニブは、T790M変異の存在とは無関係に、エクソン19の欠失及びL858Rの変異に対して活性である唯一の登録済みEGFR TKIである。
【0005】
アジュバント設定における第1世代EGFR TKIの研究が実施されているが(非特許文献6;非特許文献7)、腫瘍の外科的完全切除に続くアジュバント療法におけるEGFR TKIの役割は、依然として研究中である。この設定における第2及び第3世代EGFR TKIの有用性は、未だに調査が終わっていない。
【0006】
オシメルチニブは、EGFRm進行性NSCLCにおいて第1世代EGFR TKIよりも優れた有効性を有する第3世代EGFR TKIである。進行性変異陽性EGFR(Ex19del又はL858R)NSCLCを患う患者に対する一次療法として投与されるオシメルチニブの有効性及び安全性をゲフィチニブ又はエルロチニブのいずれかと比較する第3相FLAURA試験(非特許文献8;非特許文献9)は、オシメルチニブ治療群における著しく改善された中央無進行生存期間(PFS)(18.9ヶ月[95%信頼区間[CI]:15.2,21.4])を、エルロチニブ又はゲフィチニブ(10.2ヶ月[95%CI:9.6,11.1])と比較して示した(ハザード比(HR)0.46(95%CI:0.37,0.57;p<0.0001))。全生存期間中央値は、オシメルチニブ群で38.6ヶ月(95%信頼区間[CI]、34.5~41.8)、コンパレーター群で31.8ヶ月(95%CI、26.6~36.0)であった(死亡のハザード比、0.80;95.05%CI、0.64~1.00;P=0.046)。FLAURA試験の結果に基づき、オシメルチニブはNCCNパネルによりこれらの患者における好ましい一次療法として推奨されている。中でも、FLAURA試験においては、治験組み入れ時における既知の又は治療済みの中枢神経系(CNS)転移に関する状態にかかわらず、CNS進行の事象は、オシメルチニブ群においては6%の患者で、また標準EGFR TKI群においては15%で観察された。更に、ベースライン脳スキャン上でCNS転移を有する患者においては、オシメルチニブは、標準EGFR-TKIを上回る、名目上統計的に有意且つ臨床的に重要なCNS PFSの改善を示し、CNS進行リスクが52%減少した(HR:0.48;95%CI:0.26~0.86 p=0.014;中央CNS PFSには達せず(95%CI:16.5、NC(すなわち、計算不可能))対13.9ヶ月(95%CI:8.3~NC);非特許文献10)。
【0007】
ADAURA(NCT02511106;非特許文献11)は、必要に応じた外科的完全切除及びアジュバント化学療法後にIB期-IIIA期EGFRm NSCLCと分類された患者における、プラセボと比較したオシメルチニブの有効性及び安全性を評価する、第3相、二重盲検、無作為化試験である。予期せぬことに、独立データモニタリング委員会(Independent Data Monitoring Committee)の勧告に従い、ADAURAは圧倒的な有効性のために早期に非盲検化された。本発明者らは、オシメルチニブが、アジュバント設定においてIB/II/IIIA期EGFRm NSCLCと分類された患者における無病生存期間(DFS)の統計的に有意且つ臨床的に有意義な改善を示すことを見出した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】National Comprehensive Cancer Network(NCCN)guidelines 2019 for NSCLC
【非特許文献2】Pignon et al.(J Clin Oncol 2008;26:3552-9)
【非特許文献3】Science[2004],vol.304,1497-1500
【非特許文献4】New England Journal of Medicine[2004],vol.350,2129-2139
【非特許文献5】J.Thorac.Oncol.[2010],1551-1558
【非特許文献6】Cheng et al.Lung Cancer 2019;137:7-13
【非特許文献7】Zhong et al.Lancet Oncol 2018
【非特許文献8】N.Engl.J Med.2018,378,113-25
【非特許文献9】N Engl J Med.2020,382(1):41-50
【非特許文献10】J Clin Oncol.[2018],vol.36(33),3290-7
【非特許文献11】Clinical Lung Cancer[2018],Vol.19,No.4,e533-36
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様では、本明細書は、上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者の腫瘍切除後のアジュバント治療で使用するためのEGFR TKIであって、EGFR TKIは、第2世代又は第3世代いずれかのEGFR TKIである、EGFR TKIを説明する。
【0010】
更なる態様では、本明細書は、完全な腫瘍切除後に、IB期、II期又はIIIA期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者のアジュバント治療で使用するためのEGFR TKIであって、EGFR TKIは、第2世代又は第3世代いずれかのEGFR TKIである、EGFR TKIを説明する。
【0011】
更なる態様では、上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者を治療する方法であって、第2世代又は第3世代EGFR TKIを患う患者の腫瘍切除後のアジュバント治療を含む、方法が提供される。
【0012】
更なる態様では、完全な腫瘍切除後に、IB期、II期又はIIIA期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者を治療する方法であって、第2世代又は第3世代EGFR TKIを患う患者のアジュバント治療を含む、方法が提供される。
【0013】
更なる態様では、上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者の腫瘍切除後のアジュバント治療のための医薬の製造におけるEGFR TKIの使用であって、EGFR TKIは、第2世代又は第3世代いずれかのEGFR TKIである、使用が提供される。
【0014】
更なる態様では、完全な腫瘍切除後に、IB期、II期又はIIIA期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者のアジュバント治療のための医薬の製造におけるEGFR TKIの使用であって、EGFR TKIは、第2世代又は第3世代いずれかのEGFR TKIである、使用が提供される。
【0015】
更なる態様では、上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者における無病生存期間(DFS)を改善する方法であって、第2世代又は第3世代EGFR TKIを患う患者の腫瘍切除後のアジュバント治療を含む、方法が提供される。
【0016】
更なる態様では、完全な腫瘍切除後に、IB期、II期又はIIIA期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者における無病生存期間(DFS)を改善する方法であって、第2世代又は第3世代EGFR TKIを患う患者のアジュバント治療を含む、方法が提供される。
【0017】
本明細書は、アジュバントEGFR TKI治療により、無病生存期間(DFS)の改善、初回後続治療までの時間の遅延(TFST)、又は全生存期間(OS)の改善のうち1つ以上がもたらされる治療を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】全ADAURA患者集団(IB/II/IIIA期)におけるDFSのカプラン・マイヤー(KM)プロットである。
【
図2】II期-IIIA期疾患を患うADAURA患者におけるDFSのKMプロットである。
【
図3】IB期疾患を患うADAURA患者におけるDFSのKMプロットである。
【
図4】II期疾患を患うADAURA患者におけるDFSのKMプロットである。
【
図5】IIIA期疾患を患うADAURA患者におけるDFSのKMプロットである。
【
図6】全ADAURA集団の亜群全体にわたるDFSである。
【
図7】以前にアジュバント化学療法を受けたことがあるADAURA患者におけるDFSのKMプロットである。
【
図8】以前にアジュバント化学療法を受けたことがないADAURA患者におけるDFSのKMプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用する場合、任意の所与の数値に言及する場合の用語「約」は、その値の±10%、±5%、又は±2%以内を意味する。
【0020】
EGFR変異陽性NSCLC及び診断方法
当業者はEGFR-TKI療法に対する改善された応答に相関するEGFRにおける変異を承知している。本明細書の態様では、EGFR変異陽性NSCLCは、単独で又はT790Mを含む他のEGFR変異との組み合わせでのいずれかで、EGFRにおける活性化変異を含む。更なる態様では、EGFRにおける活性化変異は、単独で又はT790Mを含む他のEGFR変異との組み合わせでのいずれかで、エクソン18~21における活性化変異を含む。更なる態様では、EGFRにおける活性化変異は、単独で又はT790Mを含む他のEGFR変異との組み合わせでのいずれかで、エクソン19の欠失又はエクソン21のミスセンス変異を含む。更なる態様では、EGFRにおける活性化変異は、単独で又はT790Mを含む他のEGFR変異との組み合わせでのいずれかで、エクソン19の欠失又はエクソン21のL858R置換変異を含む。更なる態様では、EGFRにおける活性化変異は、エクソン19の欠失又はL858R置換変異を含む。更なる態様では、EGFRにおける活性化変異は、エクソン19の欠失又はエクソン21のL858R置換変異を含む。
【0021】
当業者であれば、EGFR活性化変異を検出するための様々な方法を認識するであろう。これらの方法で用いるのに適した試験が、米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration、FDA)により承認されている。これらの方法は、腫瘍組織及び血漿の両方に基づく診断法を含む。一般に、EGFR変異状況は、患者に由来する腫瘍組織試料を使用して評価される。EGFR活性化変異を検出するため、特にエクソン19の欠失又はエクソン21のL858R置換変異を検出するために適した診断試験の特定の例は、Cobas(商標)EGFR Mutation Test v2(Roche Molecular Diagnostics)である。
【0022】
したがって、態様では、EGFR変異陽性NSCLCは、EGFRにおける活性化変異(エクソン18~21における活性化変異、例えばエクソン19の欠失又はエクソン21のミスセンス変異、例えばエクソン19の欠失又はエクソン21のL858R置換変異など)を含み、患者のEGFR変異状況は、適切な診断試験を使用して判断されている。更なる態様では、EGFR変異状況は、腫瘍組織試料を使用して判断されている。更なる態様では、EGFR変異状況は、血漿試料を使用して判断されている。更なる態様では、診断法は、FDAにより承認された試験を使用する。更なる態様では、診断法は、Cobas(商標)EGFR Mutation Test(v1又はv2)を使用する。
【0023】
EGFR TKI
EGFR TKIは、下記で説明する第1、第2、又は第3世代EGFR TKIのいずれかを特徴とする場合がある。
【0024】
第1世代EGFR TKIは、T790M変異を有するEGFRを有意には阻害しない、活性化変異を有するEGFRの可逆的阻害剤である。第1世代TKIの例としては、ゲフィチニブ及びエルロチニブが挙げられる。
【0025】
第2世代EGFR TKIは、T790M変異を有するEGFRを有意には阻害しない、活性化変異を有するEGFRの不可逆的阻害剤である。第2世代TKIの例としては、アファチニブ及びダコミチニブが挙げられる。
【0026】
第3世代EGFR TKIは、同様にT790M変異を有するEGFRを有意に阻害し、且つ野生型EGFRを有意に阻害しない活性化変異を有するEGFRの阻害剤である。第3世代TKIの例としては、式(I)の化合物、オシメルチニブ、AZD3759、ラゼルチニブ、ナザルチニブ、CO1686(ロシレチニブ)、HM61713、ASP8273、EGF816、PF-06747775(マベレルチニブ)、アビチニブ(アビベルチニブ)、アルフルチニブ(AST2818)及びCK-101(RX-518)、HS-10296、及びBPI-7711が挙げられる。更なる例としては、オリチニブ(oritinib)(SH-1028)、ベフォルチニブ(befortinib)(D-0316)、ASK-120067、ZN-e4、YZJ-0318、TL007 XZP(ケナイチニブ(kenaitinib))、YK-029A、SLC005-I、TY-9591、XZP-5809-TT1、ZSP0391、及びTQB3456が挙げられる。
【0027】
一態様では、EGFR TKIは、第2世代EGFR TKIである。更なる態様では、第2世代EGFR TKIは、ダコミチニブ又はその薬学的に許容される塩、及びアファチニブ又はその薬学的に許容される塩から選択される。
【0028】
一態様では、EGFR TKIは、第3世代EGFR TKIである。更なる態様では、第3世代EGFR TKIは、以下に規定するように、式(I)の化合物である。更なる態様では、第3世代EGFR TKIは、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩、AZD3759又はその薬学的に許容される塩、ラゼルチニブ又はその薬学的に許容される塩、アビベルチニブ又はその薬学的に許容される塩、アルフルチニブ又はその薬学的に許容される塩、CK-101又はその薬学的に許容される塩、HS-10296又はその薬学的に許容される塩、及びBPI-7711又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。更なる態様では、第3世代EGFR TKIは、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩である。
【0029】
式(I)の化合物
一態様では、EGFR TKIは、式(I):
【化1】
(式中、
Gは、4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル、インドール-3-イル、インダゾール-1-イル、3,4-ジヒドロ-1H-[1,4]オキサジノ[4,3-a]インドール-10-イル、6,7,8,9-テトラヒドロピリド[1,2-a]インドール-10-イル、5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[3,2,1-ij]キノリン-1-イル、ピロロ[3,2-b]ピリジン-3-イル、及びピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イルから選択され;
R
1は、水素、フルオロ、クロロ、メチル、及びシアノから選択され;
R
2は、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、及びメチルから選択され;
R
3は、(3R)-3-(ジメチルアミノ)ピロリジン-1-イル、(3S)-3-(ジメチル-アミノ)ピロリジン-1-イル、3-(ジメチルアミノ)アゼチジン-1-イル、[2-(ジメチルアミノ)エチル]-(メチル)アミノ、[2-(メチルアミノ)エチル](メチル)アミノ、2-(ジメチルアミノ)エトキシ、2-(メチルアミノ)エトキシ、5-メチル-2,5-ジアザスピロ[3.4]オクト-2-イル、(3aR,6aR)-5-メチルヘキサ-ヒドロ-ピロロ[3,4-b]ピロール-1(2H)-イル、1-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル、4-メチルピペリジン-1-イル、4-[2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエチル]ピペラジン-1-イル、メチル[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル]アミノ、メチル[2-(モルホリン-4-イル)エチル]アミノ、1-アミノ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン-4-イル、及び4-[(2S)-2-アミノプロパノイル]ピペラジン-1-イルから選択され;
R
4は、水素、1-ピペリジノメチル及びN,N-ジメチルアミノメチルから選択され;
R
5は、独立して、メチル、エチル、プロピル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、フルオロ、クロロ、及びシクロプロピルから選択され;
Xは、CH又はNであり;
nは、0、1、又は2である)
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。
【0030】
更なる態様では、上記に定義された式(I)(式中、Gは、インドール-3-イル及びインダゾール-1-イルから選択され;R1は、水素、フルオロ、クロロ、メチル及びシアノから選択され;R2は、メトキシ及び2,2,2-トリフルオロエトキシから選択され;R3は、[2-(ジメチルアミノ)エチル]-(メチル)アミノ、[2-(メチルアミノ)エチル](メチル)アミノ、2-(ジメチルアミノ)エトキシ及び2-(メチルアミノ)エトキシから選択され;R4は、水素であり;R5は、メチル、2,2,2-トリフルオロエチル及びシクロプロピルから選択され;XはCH又はNであり;nは0又は1である)の化合物、又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0031】
式(I)の化合物の例としては、国際公開第2013/014448号パンフレット、同第2015/175632号パンフレット、同第2016/054987号パンフレット、同第2016/015453号パンフレット、同第2016/094821号パンフレット、同第2016/070816号パンフレット、及び同第2016/173438号パンフレットに記載される化合物が挙げられる。
【0032】
オシメルチニブ及びその医薬組成物
オシメルチニブは、以下の化学構造を有する。
【化2】
【0033】
オシメルチニブの遊離塩基は、化学名:N-(2-{2-ジメチルアミノエチル-メチルアミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2-エナミドで知られる。オシメルチニブは、国際公開第2013/014448号パンフレットに記載されている。オシメルチニブは、別名AZD9291である。
【0034】
オシメルチニブは、メシル酸塩:N-(2-{2-ジメチルアミノエチル-メチルアミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2-エナミドメシル酸塩の形態で見出され得る。オシメルチニブメシル酸塩は、別名TAGRISSO(商標)である。
【0035】
オシメルチニブメシル酸塩は、経口1日1回錠剤製剤として、80mg(遊離塩基として表示、オシメルチニブメシル酸塩95.4mgに等しい)の用量で、転移性EGFR T790M変異陽性NSCLCの患者の治療用に、現在承認されている。用量変更が必要であれば、40mg経口1日1回錠剤製剤(遊離塩基として表示、オシメルチニブメシル酸塩47.7mgに等しい)が利用可能である。錠剤のコアは、医薬用希釈剤(マンニトール及び微結晶セルロースなど)、崩壊剤(低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど)及び滑沢剤(フマル酸ステアリルナトリウムなど)を含む。錠剤製剤は、国際公開第2015/101791号パンフレットに記載されている。
【0036】
したがって、一態様では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、メシル酸塩、即ち、N-(2-{2-ジメチルアミノエチル-メチルアミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2-エナミドメシル酸塩の形態である。
【0037】
一態様では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。更なる態様では、オシメルチニブメシル酸塩は1日1回投与される。
【0038】
一態様では、オシメルチニブの1日総量は約80mgである。更なる態様では、オシメルチニブメシル酸塩の1日総量は約95.4mgである。
【0039】
一態様では、オシメルチニブの1日総量は約40mgである。更なる態様では、オシメルチニブメシル酸塩の1日総量は約47.7mgである。
【0040】
一態様では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、錠剤形態である。
【0041】
一態様では、オシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される。更なる態様では、組成物は、1種以上の医薬用希釈剤(マンニトール及び微結晶セルロースなど)、1種以上の医薬用崩壊剤(低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなど)、又は1種以上の医薬用滑沢剤(フマル酸ステアリルナトリウムなど)を含む。
【0042】
一態様では、組成物は錠剤の形態であり、錠剤のコアは、(a)2~70部のオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩、(b)5~96部の2種以上の医薬用希釈剤、(c)2~15部の1種以上の医薬用崩壊剤、及び(d)0.5~3部の1種以上の医薬用滑沢剤を含み、全ての部は重量基準であり、部の合計は(a)+(b)+(c)+(d)=100である。
【0043】
一態様では、組成物は錠剤の形態であり、錠剤のコアは、(a)7~25部のオシメルチニブ又はその薬学的に許容される塩、(b)微結晶セルロース及びマンニトールを含む、55~85部の2種以上の医薬用希釈剤、(c)低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む、2~8部の医薬用崩壊剤、(d)フマル酸ステアリルナトリウムを含む1.5~2.5部の医薬用滑沢剤を含み、全ての部は重量基準であり、部の合計は(a)+(b)+(c)+(d)=100である。
【0044】
一態様では、組成物は錠剤の形態であり、錠剤のコアは、(a)約19部のオシメルチニブメシル酸塩、(b)約59部のマンニトール、(c)約15部の微結晶セルロース、(d)約5部の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及び(e)約2部のフマル酸ステアリルナトリウムを含み、全ての部は重量基準であり、部の合計は(a)+(b)+(c)+(d)+(e)=100である。
【0045】
AZD3759
AZD3759は以下の化学構造を有する。
【化3】
【0046】
AZD3759の遊離塩基は、化学名:4-[(3-クロロ-2-フルオロフェニル)アミノ]-7-メトキシ-6-キナゾリニル(2R)-2,4-ジメチル-1-ピペラジンカルボキシレートで知られる。AZD3759は、国際公開第2014/135876号パンフレットに記載されている。
【0047】
一態様では、AZD3759又はその薬学的に許容される塩は、1日2回投与される。更なる態様では、AZD3759は、1日2回投与される。
【0048】
一態様では、AZD3759の1日総量は約400mgである。更なる態様では、約200mgのAZD3759が1日2回投与される。
【0049】
ラゼルチニブ
ラゼルチニブは以下の化学構造を有する。
【化4】
【0050】
ラゼルチニブの遊離塩基は、化学名:N-{5-[(4-{4-[(ジメチルアミノ)メチル]-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル}-2-ピリミジニル)アミノ]-4-メトキシ-2-(4-モルホリニル)フェニル}アクリルアミドで知られる。ラゼルチニブは、国際公開第2016/060443号パンフレットに記載されている。ラゼルチニブは、別名YH25448及びGNS-1480である。
【0051】
一態様では、ラゼルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。更なる態様では、ラゼルチニブは1日1回投与される。
【0052】
一態様では、ラゼルチニブの1日総量は約20~320mgである。
【0053】
一態様では、ラゼルチニブの1日総量は約240mgである。
【0054】
アビチニブ(アビベルチニブ)
アビチニブは、以下の化学構造を有する。
【化5】
【0055】
アビチニブの遊離塩基は、化学名:N-(3-((2-((3-フルオロ-4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)-7H-ピロロ(2,3-d)ピリミジン-4-イル)オキシ)フェニル)プロパ-2-エナミドで知られる。アビチニブは、米国特許出願公開第2014038940号明細書に開示されている。アビチニブは、別名アビベルチニブである。
【0056】
一態様では、アビチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日2回投与される。更なる態様では、アビチニブマレイン酸塩は、1日2回投与される。
【0057】
一態様では、アビチニブマレイン酸塩の1日総量は約600mgである。
【0058】
アルフルチニブ(フルモネルチニブ)
アルフルチニブは、以下の化学構造を有する。
【化6】
【0059】
アルフルチニブの遊離塩基は、化学名:N-{2-{[2-(ジメチルアミノ)エチル](メチル)アミノ}-6-(2,2,2-トリフルエトキシ)-5-{[4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}ピリジン-3-イル}アクリルアミドで知られる。アルフルチニブは、国際公開第2016/15453号パンフレットに開示されている。アルフルチニブは、別名AST2818である。
【0060】
一態様では、アルフルチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。更なる態様では、メシル酸アルフルチニブは1日1回投与される。
【0061】
一態様では、メシル酸アルフルチニブの1日総量は約80mgである。
【0062】
一態様では、メシル酸アルフルチニブの1日総量は約40mgである。
【0063】
アファチニブ
アファチニブは、以下の化学構造を有する。
【化7】
【0064】
アファチニブの遊離塩基は、化学名:N-[4-(3-クロロ-4-フルオロアニリノ)-7-[(3S)-オキソラン-3-イル]オキシキナゾリン-6-イル]-4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エナミドで知られる。アファチニブは、国際公開第02/50043号パンフレットに開示されている。アファチニブは、Gilotrifとしても知られている。
【0065】
一態様では、アファチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。更なる態様では、アファチニブジマレイン酸塩は、1日1回投与される。
【0066】
一態様では、アファチニブジマレイン酸塩の1日総量は約40mgである。
【0067】
一態様では、アファチニブジマレイン酸塩の1日総量は約30mgである。
【0068】
CK-101
CK-101は、以下の化学構造を有する。
【化8】
【0069】
CK-101の遊離塩基は、化学名:N-(3-(2-((2,3-ジフルオロ-4-(4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)キナゾリン-8-イル)フェニル)アクリルアミドで知られる。CK-101は、国際公開第2015/027222号パンフレットに開示されている。CK-101は、別名RX-518である。
【0070】
HS-10296(アルモネルチニブ)
HS-10296(アルモネルチニブ)は、以下の化学構造を有する。
【化9】
【0071】
HS-10296の遊離塩基は、化学名:N-[5-[[4-(1-シクロプロピルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-[2-(ジメチルアミノ)エチル-メチル-アミノ]-4-メトキシ-フェニル]プロパ-2-エナミドで知られる。HS-10296は、国際公開第2016/054987号パンフレットに開示されている。
【0072】
一態様では、HS-10296の1日総量は約110mgである。
【0073】
BPI-7711
BPI-7711は、以下の化学構造を有する。
【化10】
【0074】
BPI-7711の遊離塩基は、化学名:N-[2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]-4-メトキシ-5-[[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ]フェニル]プロパ-2-エナミドで知られる。BPI-7711は、国際公開第2016/94821号パンフレットに開示されている。
【0075】
一態様では、BPI-7711の1日総量は約180mgである。
【0076】
ダコミチニブ
ダコミチニブは、以下の化学構造を有する。
【化11】
【0077】
ダコミチニブの遊離形態は、化学名:(2E)-N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-メトキシキナゾリン-6-イル}-4-(ピペリジン-1-イル)ブト-2-エナミドで知られる。ダコミチニブは、国際公開第2005/107758号パンフレットに記載されている。ダコミチニブは、別名PF-00299804である。
【0078】
ダコミチニブは、ダコミチニブ一水和物、即ち(2E)-N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-メトキシキナゾリン-6-イル}-4-(ピペリジン-1-イル)ブト-2-エナミド一水和物の形態で見出され得る。
【0079】
一態様では、ダコミチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日1回投与される。更なる態様では、ダコミチニブ一水和物は1日1回投与される。
【0080】
一態様では、ダコミチニブ一水和物の1日総量は約45mgである。
【0081】
一態様では、ダコミチニブ又はその薬学的に許容される塩は、錠剤形態である。
【0082】
一態様では、ダコミチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の形態で投与される。更なる態様では、1種以上の薬学的に許容される賦形剤は、ラクトース一水和物、微結晶セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0083】
ナザルチニブ
ナザルチニブは以下の化学構造を有する。
【化12】
【0084】
ナザルチニブの遊離塩基は、化学名:N-(7-クロロ-1-(1-(4-(ジメチルアミノ)ブト-2-エノール)アゼパン-3-イル)-1H-ベンゾルドルイミダゾール(benzordlimidazol)-2-イル)-2-メチルイソニコチンアミドで知られる。ナザルチニブは、国際公開第2013/184757号パンフレットに開示されている。
【0085】
一態様では、ナザルチニブの1日総量は約150mg、約225mg、又は約350mgである。
【0086】
患者及び臨床転帰
任意選択的に、本明細書に記載される方法に従う使用のために腫瘍切除後にEGFR TKIを投与される、IB、II、及びIIIA期疾患と分類され得る、上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者は、既存の標準治療、プラセボ、又は無治療と比較して、改善された予後の利益を受けることができる。特に、腫瘍切除後のアジュバントEGFR TKI治療は、無病生存期間(DFS)の改善、初回後続治療までの時間の遅延(TFST)、又は全生存期間(OS)の改善のうち1つ以上を提供し得る。
【0087】
DFSは、無作為化(又は治療の開始)から疾患の再発又は死亡日までの時間として定義される。DFSの改善は、既存の標準治療、プラセボ、又は無治療と比較して測定され得る。一態様では、DFSはプラセボ又は無治療と比較して測定され得る。
【0088】
一態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを、少なくとも約50%(例えば少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にIB期、II期又はIIIA期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約75%(例えば76%、77%、78、79%、80%、又は81%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にIB期、II期又はIIIA期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約75%~約90%(例えば77%~約88%、又は例えば77%~約82%、又は例えば78%~約80%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にII期又はIIIA期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約80%(例えば81%、82%、83%、84%、又は85%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にII期又はIIIA期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約80%~約90%(例えば約80%~約85%、又は例えば約82%~約84%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にIB期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約50%(例えば48%、49%、50、51%、又は52%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にIB期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約45%~約55%(例えば約48%~約52%、又は例えば約49%~約51%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にII期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約80%(例えば81%、82%、83、84%、又は85%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にII期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約80%~約90%(例えば約80%~約85%、又は例えば約82%~約84%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にIIIA期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約85%(例えば86%、87%、88%、89%、又は90%)低減させる。更なる態様では、患者は、任意選択的に、完全な腫瘍切除後にIIIA期のEGFRm NSCLCと分類されている場合があり、アジュバントEGFR TKI治療は、疾患の再発又は死のリスクを約85%~約95%(例えば約85%~約90%、又は例えば約87%~約89%)低減させる。
【0089】
一態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、少なくとも約12ヶ月、例えば少なくとも約24ヶ月、例えば少なくとも約36ヶ月、例えば少なくとも約48ヶ月、又は例えば少なくとも約60ヶ月のDFSを提供する。
【0090】
一態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約12ヶ月の時点で約97%(例えば95%、96%、97%、98%、又は99%)のDFSの確率を提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約12ヶ月の時点で約95%~約99%(例えば約95%~約98%、又は例えば約96%~98%)のDFSの確率を提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約24ヶ月の時点で約90%(例えば87%、88%、89%、90%、91%、又は92%)のDFSの確率を提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約24ヶ月の時点で約85%~約95%(例えば約86%~約92%、又は例えば約87%~約91%)のDFSの確率を提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約36ヶ月の時点で約80%(例えば77%、78%、79%、80%、81%、又は82%)のDFSの確率を提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約36ヶ月の時点で約75%~約85%(例えば約77%~約82%、又は例えば約78%~約80%)のDFSの確率を提供する。
【0091】
一態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約24ヶ月の時点で、DFSの確率を少なくとも約30%(例えば少なくとも約28%、29%、30%、31%、又は32%)増加させる。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約24ヶ月の時点で、DFSの確率を少なくとも約28%~約32%(例えば少なくとも約29%~約31%)増加させる。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約36ヶ月の時点で、DFSの確率を少なくとも約30%(例えば少なくとも約28%、29%、30%、31%、又は32%)増加させる。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、約36ヶ月の時点で、DFSの確率を少なくとも約28%~約32%(例えば少なくとも約29%~約31%)増加させる。
【0092】
一態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約48ヶ月の中央DFSを提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約54ヶ月の中央DFSを提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約60ヶ月の中央DFSを提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約66ヶ月の中央DFSを提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約72ヶ月の中央DFSを提供する。
【0093】
TFSTは、無作為化(又は治療の開始)の日から、アジュバントEGFR TKI治療を中断した後に抗癌療法を開始した日、又は死亡日のうちの早い方までの時間として定義される。
【0094】
一態様では、アジュバントEGFR TKI治療は、少なくとも約12ヶ月、例えば少なくとも約24ヶ月、例えば少なくとも約36ヶ月、例えば少なくとも約48ヶ月、又は例えば少なくとも約60ヶ月のTFSTを提供する。
【0095】
OSは、無作為化(又は治療の開始)から(任意の原因による)死亡日までの時間である。
【0096】
一態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約60ヶ月の中央OSを提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約72ヶ月の中央OSを提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約84ヶ月を超える中央OSを提供する。更なる態様では、アジュバントEGFR TKI治療は少なくとも約96ヶ月を超える中央OSを提供する。
【0097】
本明細書に記載される方法に従う使用のためにEGFR TKIを投与される、局所進行性又は転移性EGFR変異陽性NSCLCを患う患者は、術後に、病理学的基準に基づいてIB期、II期又はIIIA期疾患を有すると分類され得る。病期分類は、肺癌のTNM(腫瘍、節、転移)病期分類システム(AJCC Cancer Staging Manual,7th edition,Springer,New York)に従って決定され得る。
【0098】
一態様では、患者は、完全な腫瘍切除後に、IB期、II期又はIIIA期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者である。一態様では、患者は、完全な腫瘍切除後に、II期又はIIIA期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者である。一態様では、患者は、完全な腫瘍切除後に、IB期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者である。一態様では、患者は、完全な腫瘍切除後に、II期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者である。一態様では、患者は、完全な腫瘍切除後に、IIIA期の上皮増殖因子受容体変異陽性(EGFRm)非小細胞肺癌(NSCLC)と分類されている患者である。
一態様では、患者は、アジュバント化学療法を受けている。一態様では、患者は、アジュバント化学療法を受けていない。
【実施例】
【0099】
アジュバント化学療法の有無に関わらず完全な腫瘍切除後に上皮増殖因子受容体変異陽性IB期~IIIA期非小細胞肺癌を患う患者におけるプラセボと比較したAZD9291の有効性及び安全性を評価するための第3相、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、多施設研究(ADAURA)
ADAURA(NCT02511106;Clinical Lung Cancer[2018],Vol.19,No.4,e533-36)は、術後のアジュバント化学療法の有無にかかわらず、完全腫瘍切除を受けた、単独で、又は中央試験によって確認されたその他のEGFR変異との組み合わせでのいずれかで、中央検査室で確認された(centrally confirmed)最も一般的な感作性EGFR変異(Ex19Del及びL858R)を有する、IB期~IIIA期非小細胞肺癌(NSCLC)を患う患者におけるプラセボと比較したAZD9291の有効性及び安全性を評価するための、第3相、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験である。アジュバント化学療法は、最大で4サイクル投与される白金ベースの2剤併用療法(platinum based doublet)からなるべきである。
【0100】
試験設計の概要
患者を、AZD9291又はプラセボのいずれかを投与するために、1:1に無作為化した。患者は、無作為化に先立って、外科手術から十分に回復し、且つ任意の標準治療のアジュバント化学療法を完了していた。患者は、アジュバント化学療法が投与されていなかった場合は、外科的完全切除から10週間以内に無作為化され、アジュバント化学療法が投与されていた場合は外科手術から26週間以内に無作為化された。
【0101】
野生型EGFR、試料摩滅、及びその他の理由による10%のスクリーニング失敗率(screen fail rate)を有することが判明した患者を計上して、約3200人の患者がスクリーニングされ、約700人の患者が無作為化されたことが推定された。患者の約60%が、アジア国家から招集され、40%が非アジア国家から招集された。1B期の癌で無作為化された患者の割合は約30%であり、II期~IIIA期の癌で無作為化された患者の割合は約70%であった。患者を、無作為化時に、期(IB対II対IIIA)、組織に基づく試験を用いて中央検査室によって確認された変異タイプ(Ex19Del/L858R、単体で、又は他のEGFR変異との組み合わせでのいずれか)、及び人種(アジア人/非アジア人)ごとに階層化した。
【0102】
完全切除後に、疾患が存在しないことを確認するために、全ての患者は治療開始の28日前以内にベースラインCTスキャン(胸部、並びに肝臓及び副腎を含む腹部)を有することが求められた。
【0103】
患者は、ベースライン、2週間、4週間、12週間時点、及び治療が完了又は中断するまで、12週間毎に安全性評価を受ける。全ての研究患者は、治療が中断した後で28日間の追跡調査来院を行わなければならない。患者は、最大で3年間、又は疾患の再発まで、若しくは他の中断基準が満たされるまで治療を受けた。
【0104】
患者は通常のCTスキャン(胸部、並びに肝臓及び副腎を含む腹部)に加え、患者の徴候及び症状によって指示される疾患再発に関した追加の解剖学的構造の撮像を受ける。無病生存期間(DFS)は、無作為化の日から疾患の再発又は治験部位評価による再発のない死(任意の原因による)の日まで測定されるべきである。
【0105】
患者は、12週目、24週目、及び続いて5年目まで24週間毎(264週間と解釈される)、並びにその後は1年に1回、疾患再発に関して追跡調査を受ける。疾患の再発後、患者は、5年目まで24週間毎(264週間と解釈される)、その後は1年に1回全生存期間(OS)に関して追跡調査を受ける。
【0106】
疾患の再燃時は、患者は再ステージングされ、全てのNSCLC再発部位が記録されることになる。再燃後に患者が受ける治療は、医師が判断することになる。再発後の癌の治療及び手順は記録されることになる。
【0107】
独立データモニタリング委員会(Independent Data Monitoring Committee、IDMC)が招集され、患者が最初に無作為化されてから最初の2年間は約6ヶ月毎、続いてその後はほぼ1年に1回会合された。IDMCは、安全性評価を審査し、安全性所見に基づいて研究を継続、修正、又は中止するよう勧告する。重篤有害事象、有害事象、及びその他の安全性データが審査され、個々の及び集合の安全性データがIDMCにより評価される。
【0108】
患者は、最初に、研究プロトコルに従い、28ヶ月の招集期間に基づき、最初に対象が無作為化されてから68~70ヶ月後と推定される一次分析のためのデータカットオフまで追跡調査される。一次分析の時点でIB集団で70DFSよりも有意に少ない事象が存在する場合、「IB分析」まで同じ研究プランに従い全ての患者の更なる追跡調査を実施する。
【0109】
一次分析(又は、必要に応じて「IB分析」)に続いて、患者は縮小された研究プランに従い、一次分析のデータカットオフ日から約1年後に生じる延長OS分析のためのデータカットオフまで、生存期間に関する追跡調査を受ける(OS延長期間)。或いは(又は追加で)、一次分析のデータカットオフ日から約2年後に生じる、患者は、最後の被験者登録(last subject in、LSI)から5年間の生存期間に関して追跡調査を受ける。この延長OS分析は、事象の数によって決定されないため、結果は単に予備的なものとして取り扱われる。延長OS分析のためのデータカットオフ時点で研究薬を投与されている患者が残っている場合、患者は、完了、又は治療中断基準が満たされるまで研究治療を継続することができる。
【0110】
延長OS分析の後で、ADAURA研究は終了し、もはや研究治療を受けていない全世界で招集された患者の生存、癌療法、及び安全性データの収集は完全に中止される。研究薬をまだ投与されている患者は、研究の外部で管理される。
【0111】
標的患者集団
組織学的に確認された原発性非扁平上皮非小細胞肺癌の診断を受けており、原発性腫瘍が外科的完全切除を受けており、術後に病理学的基準に基づいてIB期、II期又はIIIA期と分類された18歳以上の男女の患者(少なくとも20歳の日本/台湾出身患者)が、本研究に適格であった(日本ではIB期患者は除外された)。IB期疾患患者の招集は、約210人(30%)が無作為化された時点で終了し、II期~IIIA期疾患患者の招集は、約470人(70%)が無作為化された時点で終了した。患者は、中央試験によって確認された、単独で又は他のEGFR変異との組合せでのいずれかで、EGFR-TKI感受性に関連することが分かっている最も一般的なEGFR変異の1つ(Ex19Del;L858R)を含む腫瘍を含むことが確認された。
【0112】
患者は、標準治療に従い、以前にアジュバントの白金2剤併用化学療法(platinum doublet chemotherapy)を最大4サイクルで受けていてもよいが、以前に放射線療法を受けていてはいけない。術前(ネオアジュバント)の白金ベース又は他の化学療法は許可されなかった。
【0113】
治療期間
AZD9291(80mg、1日1回)又はプラセボを用いた治療を、無作為化後に開始した。患者は、疾患の再発まで、治療中断基準が満たされるまで、又は治療が完了するまで無作為化治療を継続する。最大治療期間は3年間(156週間)である。
【0114】
治験薬、投与量及び投与方式
AZD9291は、野生型EGFRに対して有意な選択性マージンを有する、NSCLCにおけるEGFR-TKI感作性及び耐性変異の両方に効果的である、経口の、強力な、選択的、中枢神経系(CNS)活性、不可逆的上皮増殖因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。無作為化スケジュールに従って、AZD9291(80mg経口、1日1回)又は対応するプラセボが投与された。
【0115】
主な採用基準
a)主に非扁平上皮組織構造上における原発性非小細胞肺癌(NSCLC)の組織学的に確認された診断。
b)患者は術後に病理学的基準に基づいてIB期、II期又はIIIA期と分類されなければならない。病期分類は、肺癌のTNM(腫瘍、節、転移)病期分類システム(7th edition)に従う。
c)中央検査室による、腫瘍が、EGFR-TKI感受性と関連していることが既知の2種類の一般的なEGFR変異(Ex19Del、L858R)のうちの1つを、単独で又はT790Mを含む他のEGFR変異との組み合わせでのいずれかで含むことの確認。
d)原発性NSCLCの外科的完全切除は必須である。全ての肉眼的疾患(gross disease)が、外科手術の終了時に除去されていなければならない。外科的切除縁の全てが腫瘍に関して陰性でなければならない。切除は、開放術、又はビデオ連動下胸部手術(Video Associated Thoracic Surgery、VATS)技術によって達成され得る。
e)無作為化時に、外科手術からの完全な回復、及び標準の術後療法(該当する場合)。外科手術後4週間以内は治療を開始できない。アジュバント化学療法を受けていない患者の場合は、外科手術から無作為化まで10週間以下経過していてもよく、アジュバント化学療法を受けた患者の場合は、外科手術から無作為化まで26週間以下経過していてもよい。任意の外科手術後に完全な術後創傷治癒が起きていなくてはならない。術後にアジュバント白金ベース化学療法を受けた患者の場合、化学療法の最後の投与用量から無作為化の日まで最低で2週間(ただし10週間以下)が経過していなくてはならない。患者は、研究治療の開始時にCTCAEグレード1を超える過去の療法のあらゆる毒性から回復していなくてはならない(脱毛症及びグレード2の過去の白金療法に関連する神経障害は除外する)。
f)世界保健機関の一般状態が0~1であること。
【0116】
主な除外基準
a)以下のうちいずれかの治療:現在の肺癌に対する、術前若しくは術後の、又は予定された放射線療法:術前(ネオアジュバント)の白金ベース又は他の化学療法;標準の白金ベース2剤併用術後アジュバント化学療法以外のNSCLCの治療のための治験療法を含む任意の過去の抗癌療法;ネオアジュバント又はアジュバントEGFR-TKIによる過去の治療;研究薬の初回投与前4週間以内の大手術(原発性腫瘍の手術を含み、血管アクセスの留置を除く);CYP3A4の強力な誘導物質であることが既知の薬剤又はハーブサプリメントを現在投与している(又は研究治療の初回用量を投与する前に使用を中断することができない)(少なくとも3週間前に)患者:他の治験薬による治療(その化合物又はその関連する物質(既知の場合)の5半減期以内で)。
b)区域切除又は楔状切除のみを受けた患者。
c)他の悪性腫瘍の病歴。ただし以下を除く:適切に治療された非黒色腫皮膚癌;根治治療を受けた上皮内癌;又は根治治療を受け、治療終了から5年超疾患の証拠が存在せず、且つ、治療担当医師の意見により、過去の悪性腫瘍が再発する実質的なリスクを有さないその他の固形腫瘍。
d)研究治療の開始時においてCTCAEグレード1を超える過去の療法に由来するあらゆる未解決の毒性(脱毛症及びグレード2の過去の白金療法に関連する神経障害は除外する)。
e)調査者の意見においてそのために患者が治験に参加することが望ましくない、若しくはそのためにプロトコルの遵守が危険に晒される制御不良な高血圧症及び活動性出血性素因、又はB型肝炎、C型肝炎、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む活動性感染症を含む重篤又は制御不良な全身性疾患の任意の証拠。活性感染症は、感染症の静脈内治療を受ける任意の患者を含み、活性B型肝炎感染症は、最低でも、血清学評価に基づきB型肝炎表面抗原陽性(HbsAg陽性)である全ての患者を含む。
f)難治性の悪心及び嘔吐、慢性の消化器疾患、製剤の嚥下困難、又はAZD9291の適切な吸収を不可能にする過去の有意な腸切除。
g)以下の心臓判定基準のうちのいずれか:スクリーニング診療所のECG機械により得られたQTcF値を用いた3回のECGから得られた平均安静時補正QT間隔(QTc)が>470ミリ秒であること;安静時ECGのリズム、伝導、又は形態における任意の臨床的に重要な異常、例えば、完全な左脚ブロック、第3度心ブロック、第2度心ブロック;QTc延長のリスク又は不整脈事象のリスクを高める任意の要因、例えば、心不全、低カリウム血症、先天性の長QT症候群、長QT症候群の家族歴、若しくは一等親血縁者における40歳未満の原因不明の突然死、又はQT間隔を延長することが知られる任意の併用薬。
h)ILD、薬物性ILD、ステロイド治療を要する放射線性肺炎、又は臨床的に活性なILDの証拠の病歴。
i)以下の検査室値のいずれかで示される不適切な骨髄予備能又は臓器機能:<1.5×109/Lの絶対好中球数;<100×109/Lの血小板数;<90g/Lのヘモグロビン;正常上限(ULN)の>2.5倍のp-アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT);>2.5×ULNのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;文書化されたジルベール症候群(間接型高ビリルビン血症)の存在下での>1.5×ULN又は>3×ULNの総ビリルビン;<50mL/分のクレアチニンクリアランスを同時に伴う>1.5×ULNクレアチニン(コッククロフト・ゴールト式で測定又は計算して);クレアチニンクリアランスの確認は、クレアチニンが>1.5×ULNである場合にのみ必要とされる。
【0117】
有効性の評価
無病生存期間(DFS)
無病生存期間は、本研究の主要エンドポイントであり、無作為化の日から疾患の再発又は病気の再発のない任意の原因による死の日までの時間として定義される。疾患の再発は、CT若しくはMRIスキャン上での疾患再発の証拠、及び/又は治験部位評価による生検上の病理学的疾患として定義される。一次集団はII期/IIIA期患者である。
【0118】
2、3、4、及び5年におけるDFS率は、一次分析時点におけるDFSの主要エンドポイントのカプラン・マイヤープロットから推定される、それぞれ2、3、4、及び5年において生存し、且つ無病である患者の割合として定義される。
【0119】
II期~IIIA期癌患者のサブセットにおけるDFSは、p値を生成するために病期(II、IIIA)、変異タイプ(Ex19Del、L858R、単体で、又は他のEGFR変異との組み合わせでのいずれか)、及び人種(アジア人、非アジア人)によって階層化したログランク検定を使用し、且つタイを取り扱うBreslowアプローチを使用して分析される。全集団におけるDFSは、p値を生成するために病期(IB、II、IIIA)、変異状態(Ex19Del、L858R、中央試験によって確認して、単体で、又は他のEGFR変異との組み合わせでのいずれか)、及び人種(アジア人、非アジア人)によって階層化したログランク検定を使用し、且つ及びタイを取り扱うBreslowアプローチを使用して分析される。ハザード比及び信頼区間は、以下のU及びV統計から直接得られる(Berry et al 1991,Statistics in Medicine,Volume 10,pp.749-55;Selke and Siegmund 1983,Biometrika,Volume 70,pp.315-26):
HR=exp(U/V)
HRの95%CI=(exp{U/V-1.96/√V},exp{U/V+1.96√V})
式中、U=Σi(d1i-e1i)はログランク検定統計であり(d1i及びe1iは群1で観察され且つ予期された事象である)、√VはLIFETEST手順から得られたログランク検定統計の標準偏差であり、STRATAの項は階層化変数のためのものである。HRはハザード比であり、CIは信頼区間である。
【0120】
DFSのカプラン・マイヤー(KM)プロットは、治療群によって提示される。
【0121】
全生存期間(OS)
全生存期間は、無作為化から(任意の原因による)死亡日までの時間と定義される。
【0122】
無作為化に続き、患者は5年間(264週間)にわたり24週間毎、続いてその後は1年に1回研究が終了するまで、生存に関して追跡調査を受ける。
【0123】
2、3、4、及び5年におけるOS率は、一次分析時点におけるOSのカプラン・マイヤープロットから推定される、それぞれ2、3、4、及び5年において生存する患者の割合として定義される。
【0124】
OSデータは、p値を生成するために病期(IB、II、IIIA)、変異タイプ(Ex19Del、L858R、単体で、又は他のEGFR変異との組み合わせでのいずれか)、及び人種(アジア人、非アジア人)によって階層化したログランク検定を使用し、且つタイを取り扱うBreslowアプローチを使用して、一次分析の時点で分析される。ハザード比及び信頼区間は、上記のU及びV統計から直接得られる(但し、有意義な分析のために利用可能な十分な事象(>20の死亡)が存在し、さもなければ記述的な要約が提供されることを条件とする)。
【0125】
初回の後続療法又は死亡までの時間
初回の後続療法までの時間(TFST)又は死亡までの時間は、無作為化の日から、研究薬を中断してから抗癌療法を開始した日、又は死亡日のうち早い方までの時間として定義される。後続療法を受けたと知られていない、又は分析の時点で死亡したと知られていない任意の患者は、後続療法を受けていなかった最後の既知の時間、すなわち、これが確認された最終の追跡調査訪問で打ち切られた。
【0126】
結果
ADAURAは、その圧倒的な有効性の決定に基づく独立データモニタリング委員会(Independent Data Monitoring Committee)の勧告に従い早期に非盲検化された。本明細書に提示する結果は、2020年1月におけるデータカットオフ後に実施された分析に由来する。DCOは、元々は2022年2月に予期されていた。
【0127】
全患者群、II期~IIIA期疾患患者、IB期疾患患者、II期疾患患者、IIIA期疾患患者、並びにアジュバント化学療法を受けた患者及び受けていない患者のDFSのKMプロットを、
図1~5、7、及び8にそれぞれ示す。データを下記の表1及び2に要約する。
【0128】
重要な発見は以下の通りである:
・II期/IIIA期患者の一次集団において、プラセボと比較してオシメルチニブでは疾患の再発又は死のリスクが83%低下した(DFS HR=0.17(0.12,0.23);p<0.0001)
・全集団では、プラセボと比較してオシメルチニブでは疾患の再発又は死のリスクが79%低下した(DFS HR 0.21[95%CI:0.16,0.28];p<0.0001)
・全集団で、オシメルチニブ対プラセボでは、2年のDFS率がそれぞれ89%対53%であった
・患者が以前にアジュバント化学療法を受けたかどうかに関わらず、DFSの一貫した改善が見られた
・未成熟OS(5%成熟度)は、生存に有利なオシメルチニブの傾向を示した:
○II期/IIIA期患者集団:オシメルチニブ:死亡8(3%)、プラセボ:死亡17(7%)
【0129】
【0130】
【国際調査報告】