(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】マイクロニードルアプリケータ
(51)【国際特許分類】
A61M 37/00 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
A61M37/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022574507
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 FR2021050988
(87)【国際公開番号】W WO2021245346
(87)【国際公開日】2021-12-09
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダビオット, ステファン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA71
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB05
4C267BB19
4C267BB23
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB42
4C267CC01
4C267CC05
4C267HH08
(57)【要約】
流体製品を皮膚に塗布して、皮膚に浸透させるためのマイクロニードルアプリケータであって、少なくとも一つの流体製品出口(O)が設けられた塗布面(A0)と、複数のマイクロニードル(N0)と、前記流体製品出口(O)に接続された流体製品容器(R)と、マイクロニードル(N0)を振動させ、前記流体製品容器(R)から流体製品を前記流体製品出口(O)に送るためのモーター(M2)と、を備え、さらに、相互に取り外し可能に軸方向に接続された第1のモジュール(M)と第2のモジュール(C)とを含み、前記第1のモジュール(M´)は、前記モーター(M2)および当該モーター(M2)を作動させるための部品を収容し、前記第2のモジュール(C)は、前記流体製品容器(R)を収容し、塗布面(A0)を形成し、前記マイクロニードル(N0)を支持することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体製品を皮膚に塗布して、皮膚に浸透させるためのマイクロニードルアプリケータであって、
少なくとも一つの流体製品出口(O)が設けられた塗布面(A0)と、
複数のマイクロニードル(N0)と、
前記流体製品出口(O)に接続された流体製品容器(R)と、
前記マイクロニードル(N0)を振動させ、前記流体製品容器(R)から流体製品を前記流体製品出口(O)に送るためのモーター(M2)と、
を備え、
さらに、当該マイクロニードルアプリケータの縦軸Xの軸方向に相互に取り外し可能に接続された第1のモジュール(M;M´)と第2のモジュール(C)とを含み、
前記第1のモジュール(M;M´)は、前記モーター(M2)および当該モーター(M2)を作動させるための部品を収容し、
前記第2のモジュール(C)は、前記流体製品容器(R)を収容し、前記塗布面(A0)を形成し、前記マイクロニードル(N0)を支持する
ことを特徴とするマイクロニードルアプリケータ。
【請求項2】
前記流体製品容器(R)は、可変容積のものであり、機械的な伝達を行うことなく前記流体製品容器(R)に作用する前記モーター(M2)の作動により、前記流体製品容器(R)の容積の減少をもたらし、当該容器の内容物の一部が前記流体製品出口(O)に送られる
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項3】
前記第1のモジュール(M;M´)が空気ポンプ(P)を含む
ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項4】
前記流体製品容器(R)は、前記空気ポンプ(P)から加圧空気が供給されるエアチャンバ(Ca)の一部も形成する可動壁(R4)を備える
ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項5】
前記エアチャンバ(Ca)は、密封状態で接続された前記第1のモジュール(M;M´)と前記第2のモジュール(C)とによって共同で形成される
ことを特徴とする請求項4に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項6】
前記空気ポンプ(P)は、空気入口弁(Vi;Vi´)と、前記エアチャンバ(Ca)に接続された空気出口弁(Vo)とを備えたポンプチャンバ(Cp)を含み、前記ポンプチャンバ(Cp)の容積の変化は、ベローズ(B)によって有利にもたらされる
ことを特徴とする請求項5に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項7】
前記空気入口弁(Vi;Vi´)は、前記モーター(M2)によって軸方向に往復駆動される
ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項8】
前記モーター(M2)は、回転駆動されるシャフト(M21)を含み、前記シャフト(M21)には、回転を軸方向の動きに変換するシステム(M3)が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項9】
前記第1のモジュール(M´)は、前記空気ポンプ(P)を無効化して前記エアチャンバ(Ca)に加圧空気を供給することを防止するための手段(M64)を含み、有利には、前記空気入口弁(Vi´)を開位置にして留める
ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項10】
前記第1のモジュール(M)は、前記マイクロニードル(N0)の貫入深さを調整するための手段(M6,M7)を含み、有利には前記第1のモジュール(M)内の前記モーター(M2)の軸方向位置に作用する
ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項11】
前記第1のモジュール(M´)は、前記モーター(M2)によって生成された振動の前記マイクロニードル(N0)への伝達とこれの解除を行うための係合/解除手段(M6´;M7´)を備える
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項12】
前記マイクロニードル(N0)が前記モーター(M2)と係合しているときに、前記空気ポンプ(P)が無効化される
ことを特徴とする請求項9または11に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項13】
前記マイクロニードル(N0)が前記モーター(M2)から係合解除されたときに、前記空気ポンプ(P)が加圧空気を前記空気チャンバ(Ca)に供給する
ことを特徴とする請求項9または11に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項14】
前記塗布面(A0)が取り付けられ、前記マイクロニードル(N0)がニードルホルダー(N)に取り付けられ、前記ニードルホルダー(N)が前記モーター(M2)によって往復駆動される
ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項15】
前記マイクロニードル(N0)は、前記流体製品容器(R)の周りに延在するニードルホルダー(N)に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【請求項16】
前記第1のモジュール(M;M´)は、前記モーター(M2)の作用下で軸方向に往復移動することができるピストン(M4;M4´)を含み、
前記ピストン(M4;M4´)は、前記空気入口弁(Vi;Vi´)のための弁座(M42)と、前記ベローズ(B)のための支持体(M43)と、前記第2のモジュール(C)の前記マイクロニードル(N0)を振動駆動させるための伝達手段(M44)とを備える
ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロニードルアプリケータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体製品を皮膚に塗布し、塗布した流体製品を表皮に浸透させるためのマイクロニードルアプリケータに関する。本発明の適用分野は化粧品の分野であり、刺青の分野ではない。その目的は、化粧品を皮膚に浸透させることであり、皮膚を着色することではない。
【背景技術】
【0002】
従来、このタイプの化粧品アプリケータは、少なくとも1つの流体製品出口と複数のマイクロニードルが設けられた塗布面を備えている。マイクロニードルを個別に、または塗布面と一緒に振動させるのに、電気モーターが使用される。流体製品出口には流体製品容器が接続される。流体製品容器は、アプリケータと一体であっても、一体でなくても良い。一体化されると、その充填または交換の問題が生じる。アプリケータは、容器を取り外し可能にしたり、容器にアクセスするための窓または栓を備えたりすることができる。
【0003】
一方、流体製品容器から流体製品出口まで流体製品を搬送するための作動部材も設けられている。この作動部材は、多くの場合、モーターをも制御する構成要素になり、従って、モーターは、マイクロニードルを振動させることと、流体製品を容器から塗布面に送るという二つの機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、二つの機能をもつモーターを有し、モーターと流体製品容器との間のシンプルで効果的かつ強固な接続を提供しながら、その流体製品容器を容易に交換可能であるアプリケータを提案することを目的とする。アプリケータの使用、特に流体製品容器の交換によって、モーターと流体製品容器との接続の偶発的な劣化をもたらしてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明に係るマイクロニードルアプリケータは、流体製品を皮膚に塗布して、皮膚に浸透させるためのマイクロニードルアプリケータであって、少なくとも一つの流体製品出口が設けられた塗布面と、複数のマイクロニードルと、前記流体製品出口に接続された流体製品容器と、マイクロニードルを振動させ、前記流体製品容器から流体製品を前記流体製品出口に送るためのモーターと、を備え、さらに、当該マイクロニードルアプリケータの縦軸の軸方向に相互に取り外し可能に接続された2つの異なる第1のモジュールと第2のモジュールとを含み、前記第1のモジュールは、前記モーターおよび当該モーターを機能させるための部品を収容し、前記第2のモジュールは、前記流体製品容器を収容し、前記塗布面を形成し、前記マイクロニードルを支持することを特徴とする。
【0007】
これにより、前記第2のモジュールは、交換されるカートリッジまたは再補充品と見なすことができ、一方で、前記モーターを備えた前記第1のモジュールは使い続けることができる。
【0008】
有利には、前記流体製品容器は、可変容積のものであり、機械的な力の伝達なしに前記モーターの力が前記流体製品容器に作用して、前記流体製品容器の容積の減少をもたらし、当該容器の内容物の一部が前記流体製品出口に送られるとしても良い。
【0009】
言い換えると、モーターによって生成された力を伝達するために、モーターを前記容器に接続する部品または部分を有しない。このように伝達機構が有形ではないことから、その伝達機構に損傷を生じさせる危険性がない。
【0010】
有利には、前記第1のモジュールが空気ポンプを含むとしても良い。
【0011】
また、前記流体製品容器は、前記空気ポンプから加圧空気が供給されるエアチャンバの一部も形成する可動壁を備えるとしても良い。
【0012】
好ましくは、前記エアチャンバは、密封状態で接続された前記第1のモジュールと前記第2のモジュールとによって共同で形成されるとしても良い。
【0013】
したがって、その伝達機構は、機械式ではなく液圧式にすることができる。エアチャンバ内の加圧空気が流体製品容器の可動壁を押して動かす。この可動壁は、例えばプッシャーピストンまたは可撓性パウチの形態であり得る。この技術は、2つのモジュール間にそのエアチャンバを形成することであり、2つのモジュールが互いに分離されているときに、アクセス可能なために容易に損傷する機械的な伝達部品または部分が存在することがない。エアチャンバを構成するには、2つのモジュールの間にシールを作り出すだけで十分である。
【0014】
実際的な実施形態によれば、前記空気ポンプは、空気入口弁と、前記エアチャンバに接続された空気出口弁とを備えたポンプチャンバ(Cp)を含み、前記ポンプチャンバの容積の変化は、ベローズによって有利にもたらされるとしても良い。ベローズの代わりにシリンダ内をスライドするピストンを使用することもできる。
【0015】
有利には、前記空気入口弁は、前記モーターによって軸方向に往復駆動されるとしても良い。実際の実施では、モーターは、回転駆動される軸方向シャフトを備えることができ、回転運動を軸方向運動に変換するためのシステムが当該シャフトに取り付けられる。
【0016】
有利には、前記空気ポンプは、前記モーターの作用下で軸方向に往復移動することができるピストンを含み、このピストンは、前記空気入口弁のための弁座と、前記ベローズのための支持体と、前記第2のモジュールの前記マイクロニードルを振動駆動させるための伝達手段とを備えるとしても良い。
【0017】
したがって、純粋な回転運動が往復振動運動に変換されて2つのモジュールに共通のエアチャンバに加圧空気を送り込む空気ポンプを作動させ、可変容積である容器の一部がその可動壁を形成する。
【0018】
本発明に係る別の特徴によれば、前記第1のモジュールは、前記空気ポンプを無効化して前記エアチャンバに加圧空気を供給することを防止するための手段を備えることができ、有利には、開位置で前記空気入口弁を留めておく構成としても良い。
【0019】
本発明に係る別の態様によれば、前記第1のモジュールは、前記マイクロニードルの貫入深さを調整するための手段を含み、有利には前記第1のモジュール内の前記モーターの軸方向位置に作用する構成としても良い。
【0020】
本発明に係る別の態様によれば、前記第1のモジュールは、前記モーターによって生成された振動の前記マイクロニードルへの伝達とこれの解除を行うための係合/解除手段を備えるとしても良い。
【0021】
有利には、前記マイクロニードルが前記モーターと係合しているときに、前記空気ポンプが無効化されるとしても良い。対称的に、前記マイクロニードルが前記モーターから係合解除されたときに、前記空気ポンプが加圧空気を前記空気チャンバに供給するとしても良い。
【0022】
別の特徴によれば、前記塗布面が取り付けられ、前記マイクロニードルがニードルホルダーに取り付けられ、前記ニードルホルダーが前記モーターによって往復駆動される。
【0023】
有利には、前記マイクロニードルは、前記流体製品容器の周りに延在するニードルホルダーに取り付けられている。
【0024】
本発明の意図は、2つの分離可能なモジュールの形態のアプリケータを設計することにある。これにより、流体製品容器に作用するのは加圧空気であるので、いかなる機械的または物理的部材を使用することなく、力伝達手段として機能するエアチャンバを、2つのモジュール内に作成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
以下、非限定的な例として、本発明に係る複数の実施形態を示す添付の図面を参照して、本発明を十分に説明する。
【
図1】本発明に係るマイクロニードルアプリケータが組み立てられて休止状態にある場合における垂直断面図である。
【
図2】
図1に示すアプリケータの部分拡大図である。
【
図3】当該アプリケータが分離された状態にある場合における部分拡大垂直断面図である。
【
図4】(a)、(b)および(c)は、当該アプリケータが相互に異なる状態にある場合における、
図1と同様の図である。
【
図5】本発明に係る変形例におけるマイクロニードルアプリケータの、
図3と同様の部分拡大垂直断面図である。
【
図6】(a)、(b)、および(c)は、
図5に示すアプリケータが相互に異なる状態にある場合における、
図4(a)、(b)、および(c)と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るアプリケータは、純粋に化粧用であり、皮膚科用でさえもある。しかし、入れ墨は除かれる。アプリケータは、2つの処置手段、すなわちクリーム、バーム、ローション、血清などであり得る化粧品の吐出と、皮下組織に触れることなく、マイクロニードルによって行う表皮あるいは真皮の穿刺とを組み合わせたものである。
【0027】
化粧品は、穿刺の前、穿刺と同時、および/または場合によっては穿刺の後に塗布される。本発明に係るアプリケータは、アプリケータのユーザーが単独で使用するという点で、どちらかというと家庭用である。しかし、それは専門的に使用することもできる。
【0028】
最初に
図1と
図2を参照して、本発明に係る第1の実施形態を詳細に説明する。本発明に係るアプリケータは、2つの別個のモジュール、すなわち第1のモジュールMおよび第2のモジュールCを含む。2つのモジュールは、ユーザー自身で簡単かつ迅速に、例えばユーザーが両手を使用して、2つのモジュール間にトルクおよび/または押したり引いたりする力を加えることによって、接続したり切り離したりすることができる。
【0029】
2つのモジュールが組み立てられると、アプリケータは縦軸Xを持つ一般的なペン型の構成になる。さらに、アプリケータは、ペンと同じように保持することができ、すなわち親指と中指の間で把持され、人差し指がアプリケータ上に載置される。
【0030】
第1のモジュールMは、実質的に円筒形状の外側シェルM8を備える。外側シェルM8は、上端が開放されており、下端が閉じられている。外側シェルM8は、以下に説明するように側面窓M86を備え、側面窓M86は、垂直に延在して、スタッドM67を受け入れることができる。外側シェルM8は、その側面窓M86の存する部分が、セレクターM7によって取り囲まれている。セレクターM7は、以下に説明するようにユーザーが回転させることができる回転リングの形態をしている。
【0031】
第1のモジュールMは、モーターM2、好ましくは電気モーターを含む。モーターM2は、そのシャフトM21を回転させる小型の回転モーターとすることができる。電磁モーター、リニアモーターまたは圧電モーターを設ける構成とすることもできる。モーターM2は、バッテリー(不図示)によって電力供給され、電子機器(不図示)によって制御される。電子機器は、シャフトの回転速度、モーターの起動シーケンスと動作時間などを管理する。外側の起動ボタンにより、ユーザーはアプリケータをオンに切り替えることができる。シャフトM21の自由端には、傾斜ヘッドM31を形成する揺動キャップM3が被せられている。シャフトM21の回転により、傾斜ヘッドM31がその軸を中心に回転して、回転揺動運動が現れる。
【0032】
有利には、モーターM2と揺動キャップM3は、縦軸Xに沿って移動可能な可動キャリッジM6に取り付けられている。可動キャリッジM6は、モーターM2を収容するバスケットM62と、外側シェルM8の側面窓M86を通過し、セレクターM7によって形成されるカム経路M76の中に入るスタッドM67とを備える。カム経路M76が傾斜しており、軸方向に延長された側面窓M86内にスタッドM67が閉じ込められているので、外側シェルM8の周りをセレクターM7が回転すると、スタッドM67が側面窓M86内を軸方向に移動する効果が生じる。
【0033】
その結果、可動キャリッジM6は、モーターM2と揺動キャップM3とともに、外側シェルM8の内側で軸方向に移動する。この軸方向の動きの機能については後述する。但し、可動キャリッジM6はオプションである。
【0034】
第1のモジュールMは、軸方向に往復移動する伝達ピストンM4も備える。ピストンM4は、揺動キャップM3の傾斜ヘッドM31と係合する傾斜下面M41を形成する。ピストンM4は、その回転が阻止される構成になっており、そのため傾斜下面M41も回転方向に動かないが、傾斜ヘッドM31は、モーターM2によって回転駆動される。
【0035】
その結果、傾斜ヘッドM31と傾斜下面M41との間に生じる振動接触により、ピストンM4は、軸方向に駆動される。ピストンM4は、空気入口弁Vi用の入口ダクトM40と弁座M42を形成している。この入口弁は、ベローズ支持体M43によって取り囲まれている。
【0036】
また、ピストンM4は、伝達手段M44を含み、伝達手段M44は、自由接触端M45を規定する複数(2個から6個の間のいずれか)の軸方向タブまたはロッドの形態であっても良い。伝達手段M44は、外側シェルM8の内壁に接してスライドできる。
【0037】
第1のモジュールMはまた、エアチャンバCaの一部を画定するフェルールM5を備える。フェルールM5は、シーリングシースM52によって内面が被覆され得るシリンダM51を備えている。フェルールM5は、空気出口弁Vo用の出口ダクトM53と弁座M54を形成している。フェルールM5は、ベローズ支持体M55も備えている。
【0038】
フェルールM5は、カフM56によって外側シェルM8内にしっかりと保持されている。フェルールM5は、伝達ピストンM4が回転するのを防止するために使用することができる。ピストンM4の伝達手段M44の接触端M45は、例えば、シリンダM51の周りに存するフェルールM5の窓を通過することができる。
【0039】
本発明では、第1のモジュールMには、伝達ピストンM4とフェルールM5との間に空気ポンプPが組み込まれている。より正確には、空気ポンプPは、2つのベローズ支持体M43とM55上に密封状態で取り付けられたベローズBを備える。これにより、ポンプチャンバCpが規定される。空気入口ダクトM40を通過する空気がポンプチャンバCpの上流側に供給され、その空気の供給が空気入口弁Viによって制御される。
【0040】
ベローズBの圧搾中にポンプチャンバCp内で圧縮された空気は、出口弁Voによって制御される空気出口ダクトM53を通って押し出される。ベローズBの圧搾は、静止したままのフェルールM5に対するピストンM4の軸方向の動きから生じる。このように、ベローズBは、モーターM2のシャフトM21によって駆動されるキャップM3の揺動回転を受けるピストンM4の往復運動によって、圧縮と伸張が連続的に繰り返される。加圧空気が空気ポンプPによってエアチャンバCa内に供給されることが容易に理解され得る。
【0041】
セレクターM7の作動は、モーターM2、その揺動キャップM3およびピストンM4を強制的に軸方向に動かし、ポンプチャンバCpの容積を変化させ、接触端M45を前進または後退させる効果を有する。
【0042】
第2のモジュールつまりカートリッジCは、電気的または電子的な部材または構成要素を含まない。このことは受動的であり、したがって安価であるといることができる。この第2のモジュールCは、流体製品、好ましくは化粧品を収容する流体容器Rを組み込んでおり、この流体製品は有利には高粘度を有する、ゲル、クリーム、軟膏、油などであっても良い。
【0043】
その容器は、可変容積のものが用いられている。その容器から流体製品が抽出されるにつれて、その分、容器の有効容積が減少するようになっている。したがって、流体製品は空気と接触しないままである。その容器は、収容されている流体製品を加圧し、その一部を外側に押し出すための力を作用させることができる可動壁を備える。それゆえ、この可動壁は、容器を加圧するための手段として使用され、容器内に真空状態が生じたことに反応して動く可動壁とは異なっている。本発明によれば、その容器の可動壁もまた、上記で定義されたエアチャンバCaの一部を形成する。
【0044】
本実施形態では、可動壁は、スライドシリンダR1内を密封状態でスライドするプッシャーピストンR4である。スライドシリンダR1の下端には、エアチャンバCaを構成するように、フェルールM5のシーリングシースM52と密封状態で係合することが意図されているシールブッシングR2が設けられている。
【0045】
有利なことに、スライドシリンダR1は、その上端に複数の通気リブR3を備え、プッシャーピストンR4がその上端の高さに達したときに漏れ経路を形成する。これにより、エアチャンバCa内に過度な過圧が生じることが回避される。
【0046】
各図から分かるように、スライドシリンダR1は本体C1によって形成され、本体C1は、スライドシリンダR1を取り囲む外側フェアリングC2も形成し、スライドシリンダR1と外側フェアリングC2との間には収容空間が形成されている。その下部空間には、戻しバネSが収容されている。戻しバネSの上端は、本体C1にしっかりと接続され、戻しバネSの下端は、自由になっており、そのため戻しバネSの圧縮によって軸方向に動くことができる。
【0047】
その戻しバネSの下端は、伝達手段N2に接続されている。伝達手段N2は、スライドシリンダR1と外側フェアリングC2との間をスライドできる複数(2~6個)の軸方向タブまたはロッドの形態であり得る。これらの伝達手段N2は、複数のマイクロニードルN0が設けられた支持面N1も形成するニードルホルダーNの一体部分を形成する。
【0048】
マイクロニードルの数は、5~100までの範囲内でさまざまな値に変更し得る。それらの幅は、0.05mm~0.5mmまでの範囲内でさまざまな値に変更し得る。それらの長さは、0.1mm~0.7mmまでの範囲内でさまざまな値に変更し得る。これらの値は、情報提供のみを目的としている。
【0049】
支持面N1は、容器Rよりも軸方向上方であり、各図において右側に位置する。マイクロニードルN0は、戻しバネSによって発揮される弾性力に抗して軸方向上方に移動し得ることが理解される。休止位置では、支持面N1が容器Rの上部に当接する。
【0050】
容器Rは、軸に沿って本体の中央に存し、伝達手段N2は、容器Rの周りおよびそれに沿って延在していることに留意されたい。
【0051】
第2のモジュールつまりカートリッジCは、塗布用エンドピースAを備える。塗布用エンドピースAは、スライドシリンダR1の頂部にしっかりと取り付けられており、スライドシリンダR1の頂部には、この取り付けのための漏斗状部R5が形成されている。
【0052】
塗布用エンドピースAは、塗布面A0で開口する流体製品出口Oを画定する出口チャネルA1を形成している。したがって、容器Rに収容されている流体製品は、エアチャンバCa内の過圧空気の圧力を受けるプッシャーピストンR4の動きによって加圧される。この加圧により、容器R内の流体製品の一部が容器Rから出口チャネルA1と流体製品出口Oを通って押し出され、塗布面A0に到る。
【0053】
図3において、2つのモジュールMとCが2つの別個の実体であり、図示されている矢印によって示されるように2つのモジュールMとCが軸方向に相対移動して接続され得ることが分かる。この接続の際、シールブッシングR2がシーリングシースM52内に嵌入して、シールブッシングR2とシーリングシースM52間に密封接触が生じ、これによりエアチャンバCaが形成される。同時に、外側フェアリングC2の下端がフェルールM5と当接またはスナップ留めされた状態になり、これにより安定した接続が確立される。
【0054】
図1と
図2では、セレクターM7が低位置にあり、アプリケータが休止状態になっている様子を示している。揺動キャップM3は、伝達ピストンM4のストロークの下死点に対応する角度位置にある。このとき、マイクロニードルN0を有する支持面N1は、最も低い位置にある。
図1と
図2では、支持面N1が塗布面A0に対して軸方向下側にオフセットされていることが分かる。ポンプチャンバCpは、最大容積状態にある。一方、ピストンM4の伝達手段M44の接触端M45は、ニードルホルダーNの伝達手段N2に接続されている戻しバネSの下端と接触していることが分かる。
【0055】
図4(a)では、
図1と
図2に示すアプリケータが作動したときの様子が示されており、
図1と
図2に対してモーターM2が半回転し、これにより振動キャップM3が回転して、伝達ピストンM4が最も高い位置まで押し上げられる。伝達ピストンM4の軸方向の動きは、2つの異なる効果を同時に発生させる。
【0056】
第1の効果は、モーターM2から発せられる力を、回転を軸方向の動きに変換する揺動キャップM3を通じてニードルホルダーNに直接伝達することであり、これによりマイクロニードルN0が軸方向に振動し始めるようになる。
【0057】
第2の効果は、加圧空気をエアチャンバCaに送り込む空気ポンプPを作動させることであり、これによりプッシャーピストンR4がシリンダR1内に押し込まれ、流体製品が塗布面A0に供給される。
【0058】
図4(a)は、支持面N1がそのストロークの範囲で最も上に上がった位置にあり、ポンプチャンバが最小容積状態にあるときのアプリケータを示している。
【0059】
図4(b)は、セレクターM7に回転により、可動キャリッジM6のスタッドM67がカム経路M76の応力を受けて上方の位置まで駆動されている様子を示している。モーターM2、その揺動キャップM3、および伝達ピストンM4は、軸方向上向きに移動している。ベローズBは、わずかに圧潰されており、ポンプチャンバCpの最大有効容積がわずかに減少している。さらに、伝達ピストンM4がニードホルダーNを動かして、支持面N1が
図1と
図2に示す位置よりも高い位置になっており、その支持面N1の位置は、塗布面A0と実質的にまたは正確に同じ高さ位置である。一方で、伝達ピストンM4は、そのストロークの範囲内において低い位置にある。
【0060】
図4(c)は、
図4(b)に示すアプリケータに対してモーターM2が半回転だけ作動している様子を示している。ポンプチャンバCpが最小容積状態にあり、支持面N1がそのストロークの範囲で最大に上がった位置にある。
図4(a)で示す位置よりも高いことが分かる。エアチャンバCaの加圧とプッシャーピストンR4の動きにより、流体製品が塗布面A0に吐出される。一方で、マイクロニードルN0は、それらの前進位置または上に上がった位置にあるため、皮膚の奥深くまで浸透することができる。
【0061】
このようにセレクターM7は、マイクロニードルN0の貫入深さに作用する。ユーザーは、皮膚の性質、そのしなやかさ、流体製品の性質、望む結果などのさまざまなパラメータに応じて、この貫入深さをユーザー自身で調整することができる。
【0062】
特に、第1のモジュールから突き出て第2のモジュール内に入り、容器の可動壁を押すことができるといったロッドまたはチューブなどの機械的接続を行うことなく、2つのモジュール間の力の伝達が保証されることに留意されたい。このような機械的接続は、2つのモジュールが分離されると損傷が生じる可能性がある。
【0063】
さらに、この機械的接続は、カートリッジを交換するたびに、引き離しと元の位置への戻し操作が必要になる。非機械的な伝達機構を提供する本発明では、これらの欠点がすべて解消される。加圧空気が力を伝達する手段であり、この手段は、上記のような損傷が生じたり元の位置に戻したりする必要が生じない。
【0064】
ここで、
図5を参照して、本発明に係るアプリケータの変形例を説明する。アプリケータは、常に2つの別個の分離可能なモジュールの形態で作られている。第2のモジュールつまりカートリッジCは、第1の実施形態のものと類似または同一であっても良い。それゆえ、説明を省略する。
【0065】
第1のモジュールM´に関して、モーターM2、揺動キャップM3、フェルールM5、空気出口弁Voおよび外側シェルM8は、第1の実施形態のものと類似または同一であっても良い。セレクターM7´も同じであっても良いが、異なる機能を有する。第1の実施形態における伝達ピストンM4が、本例では、2つの部分、すなわち下部M4aと上部M4bを含む伝達ピストンM4´に置き換えられている。同様に、第1の実施形態における可動キャリッジM6が、2つの部分、すなわちバスケットM6aとバルブアクチュエータM6bを含む可動キャリッジM6´に置き換えられている。
【0066】
より詳細には、伝達ピストンM4´の下部M4aは、揺動キャップM3の傾斜ヘッドと係合する傾斜面M41を形成している。上部M4bは、下部M4aにしっかりと取り付けられ、第1の実施形態と同様に、入口ダクトM40、空気入口弁Vi´用の弁座M42、ベローズ支持体M43、および自由接触端M45を画定する伝達手段M44を形成している。
【0067】
可動キャリッジM6´のバスケットM6aは、モーターM2と、その揺動キャップM3と、伝達ピストンM4´の下部M4aとその上部M4bの下側部分をも収容するためのハウジングM62を形成している。バルブアクチュエータM6bは、バスケットM6a内でのスライドが制限された状態で取り付けられている。バルブアクチュエータM6bは、セレクターM7´のカム経路M76に係合しているスタッドM67と、空気入口弁Vi´よりも下の空間に延出しているスラストフィンガーM64とを備える。
【0068】
入口弁Vi´は、以下に説明するようにスラストフィンガーM64と接触して、当該入口弁を弁座M42から離隔させることを意図して設けられた下部スタブV6を備える。バスケットM6aは、拡張開口部M68を形成しており、バルブアクチュエータM6bは、拡張開口部M68に係合するピンM69を備え、制限されたストロークに亘って軸方向に移動することができる。
【0069】
図6(a)は、
図4(a)に類似する図であり、セレクターM7´が低い位置にあり、モーターM2が
図5に対して半回転しているので、ピストンM4´がそのストロークの範囲内において最大の高い位置に存する様子を示している。ポンプPが作動され、加圧空気がエアチャンバCaに注入されると、プッシャーピストンR4を押し上げて、流体製品を塗布面A0に供給させる。
【0070】
しかし、ピストンM4´が高い位置まで上がっても、接触端M45がニードルホルダーNと接触していなければ、ニードルホルダーNは静止したままである。実際、
図6(a)では、接触端M45と戻しバネSとの間に小さな隙間が残っていることに留意すべきである。また、戻しバネSがフェルールM5に接していることにも留意すべきである。
【0071】
このようにアプリケータは、
図6(a)に示す状態では、流体製品のみを吐出する構成であり、空気ポンプは正常に動作し、一方でマイクロニードルN0は静止または非アクティブのままである。したがって、ユーザーは、マイクロニードルの穿刺なしでアプリケータを使用することができる。
【0072】
図6(b)では、セレクターM7´が作動しており、キャリッジM6´のスタッドM67がカム経路M76の応力を受けて上方の位置まで駆動されている様子が示されている。モーターM2、その揺動キャップM3および伝達ピストンM4´が、軸方向に上向きに移動している。これにより、伝達ピストンM4の接触端M45が戻しバネSの下端に接触する。ニードルホルダーNが上方に動かされており、支持面N1が塗布面A0と実質的または正確に同じ高さ位置にあるが、伝達ピストンM4´は、揺動キャップM3に対して低い位置になっている。
【0073】
同時に、スラストフィンガーM64が空気入口弁Vi´をその弁座から離隔させているので、ポンプチャンバCp内の空気の加圧フェーズ中に、当該入口弁によるシール機能が作用しなくなる。バルブアクチュエータM6bがバスケットM6aに対してわずかに制限された軸方向ストロークに亘って移動するので、ピストンM4´に対するスラストフィンガーM64の移動が可能である。
【0074】
図6(c)は、
図6(b)に示すアプリケータに対して半回転だけ作動した様子を示している。揺動キャップM3とピストンM4´が上方に動き、戻しバネSが圧縮され、ニードルホルダーNが移動している。支持面N1が
図6(b)に示す位置よりも高い位置に上がり、マイクロニードルN0が塗布面A0に対して上に突き出ていることが分かる。しかし、空気ポンプPは、エアチャンバCaに加圧空気を送り込んでいない。実際、ポンプチャンバCpが加圧されないように、その入口弁Vi´がその弁座M42から離隔されている。入口弁Vi´を通ってポンプチャンバCpに入った空気は、ベローズBが圧潰されると、すぐに再び出てくる。
【0075】
したがって、アプリケータは、
図6(c)に示す状態では、流体製品を吐出しない構成になり、マイクロニードルN0のみがアクティブのままになる。ユーザーは、流体の用量を吐出することなく、アプリケータを使用することができる。
【0076】
セレクターM7´は、流体製品の吐出からマイクロニードルの穿刺への切り替えを可能にするスイッチング手段として機能し、流体製品の吐出と穿刺の両方を同時に実施することはできない。
【0077】
変形例では、スラストフィンガーM64を単純に取り除くことによって、吐出(個別)のみと、吐出/穿刺との間の切り替えが可能である。
【0078】
本発明の範囲を逸脱することなく、スイッチング手段に貫入深さの調整を組み合わせることが可能である。セレクターM7´の第3の位置を想定することは非常に容易であり、この第3の位置では、第1の実施形態のようにニードルホルダーNが上に上がるまたは前進される。その場合、次の構成を有する3つの位置があるとすることができる。
【0079】
休止:吐出のみ、または吐出/穿刺
中間:吐出/穿刺、または穿刺のみ
高い: 吐出/深い穿刺、または深い穿刺のみ
上述の実施形態では、モーターに電力を供給し制御するための部品は示されていない。ただし、モーター制御を用いて、吐出と穿刺の各フェーズを順序付けることの想定は可能であり、その時間と進行は、専用のマイクロプロセッサによって制御することができる。
【符号の説明】
【0080】
M; M´ 第1のモジュール
M2 モーター
M21 シャフト
M3 揺動キャップ
M31 傾斜ヘッド
M4;M4´ 伝達ピストン
M4a 下部
M4b 上部
M40 入口ダクト
M41 傾斜下面
M42 弁座
M43 ベローズ支持体
M44 伝達手段
M45 自由接触端
P 空気ポンプ:
Cp ポンプチャンバ
Vi;Vi´ 入口弁
Vo 出口弁
B ベローズ
M5 フェルール
M51 シリンダ
M52 シーリングシース
M53 出口ダクト
M54 弁座
M55 ベローズ支持体
Ca エアチャンバ
M6;M6´ 可動キャリッジ
M6a バスケット
M6b バルブアクチュエータ
M62 ハウジング
M67 スタッド
M64 スラストフィンガー
M7;M7´ セレクター
M76 カム経路
M8 外側シェル
M86 側面窓
C 第2のモジュール(カートリッジ)
R 流体製品容器
R1 スライドシリンダ
R2 シールブッシング
R3 通気リブ
R4 プッシャーピストン
C1 本体
C2 外側フェアリング
A 塗布用エンドピース
A1 出口チャネル
A0 塗布面
O 流体製品出口
N ニードルホルダー
N0 マイクロニードル
N1 支持面
N2 伝達手段
S 戻しバネ
【国際調査報告】