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特表2023-529865規定の比率の様々なジオールからなるポリエステルカーボネート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】規定の比率の様々なジオールからなるポリエステルカーボネート
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/64 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
C08G63/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022574639
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2021065745
(87)【国際公開番号】W WO2021254894
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】20181052.0
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20181051.2
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20181053.8
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】フィングスト トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ルーカス ファビアン
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA08
4J029BA01
4J029BA02
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA10
4J029BB10A
4J029BB12A
4J029BB12B
4J029BB13A
4J029BB13B
4J029BD02
4J029BD03A
4J029BD04A
4J029BD05A
4J029BD06A
4J029BD07A
4J029BD09A
4J029BD10
4J029BF08
4J029BF13
4J029BF30
4J029BH01
4J029CA06
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC06A
4J029CD03
4J029CD07
4J029CF19
4J029DA14
4J029HC05A
4J029HC05B
4J029JA061
4J029JA091
4J029JA121
4J029JA261
4J029JB131
4J029JB171
4J029JC021
4J029JC091
4J029JC141
4J029JC231
4J029JC261
4J029JC291
4J029JC301
4J029JC621
4J029JC731
4J029JF021
4J029JF031
4J029JF041
4J029JF051
4J029JF131
4J029JF141
4J029JF161
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
本発明は、脂環式二酸及び少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール並びに少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物を基礎としてポリエステルカーボネートを調製する方法、ポリエステルカーボネート、並びに該ポリエステルカーボネートを含む成形コンパウンド及び成形製品に関する。本発明によるポリエステルカーボネートは、良好な機械的特性及び分子量を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(1)
【化1】
を含むポリエステルカーボネートであって、式中、
Aは、繰返単位ごとに独立して、少なくとも構造単位(A)又は構造単位(B)のいずれかを表し、ここで、
(A)は、化学式(2)
【化2】
を表し、かつ、
(B)は、化学式(3)
【化3】
(式中、xは、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有する分岐状アルキレン基、又は少なくとも1個の分岐を含むシクロアルキレン基を表し、ここで、前記シクロアルキレン基は、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得て、かつ前記シクロアルキレン基は、任意に複数の環を含み得る)を表し、
yは、それぞれ独立して、化学式(IIIa)又は化学式(IIIb)
【化4】
(式中、
Bは、それぞれ独立して、CH基、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子、好ましくはCH基又は酸素原子を表し、
は、それぞれ独立して、単結合、又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合、又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、
nは、0から3の間の数、好ましくは0又は1である)を表し、かつ、
0<x<1であり、
それぞれの場合におけるは、前記化学式が前記ポリエステルカーボネート中に組み込まれる位置を示し、
前記ポリエステルカーボネートは、それぞれの場合に前記構造単位(A)及び前記構造単位(B)の合計に対して、
98mol%~75mol%、好ましくは97mol%~80mol%、特に好ましくは96mol%~82mol%の構造単位(A)と、
2mol%~25mol%、好ましくは3mol%~20mol%、特に好ましくは4mol%~18mol%の構造単位(B)と、
を含むこと、及び、
前記ポリエステルカーボネートは、ウベローデ粘度計を用いてジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃にて測定された、1.20~1.70、好ましくは1.23~1.67、特に好ましくは1.25~1.65の相対溶液粘度を有すること、
を特徴とする、ポリエステルカーボネート。
【請求項2】
前記ポリエステルカーボネートは、前記ポリエステルカーボネートの総重量に対して、少なくとも80重量%、好ましくは85重量%、特に好ましくは90重量%の程度が構造式(1)からなることを特徴とする、請求項1に記載のポリエステルカーボネート。
【請求項3】
前記ポリエステルカーボネートは、以下の繰返単位(i)~繰返単位(iv)
【化5】
(式中、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、それぞれの場合の繰返単位の平均数を示す自然数を表す)を任意の順序で含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリエステルカーボネート。
【請求項4】
以下の構造モチーフ
【化6】
の総合計に対して、1mol%~20mol%、好ましくは2mol%~18mol%、特に好ましくは3mol%~15mol%の前記ポリエステルカーボネートは、構造モチーフ
【化7】
からなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネート。
【請求項5】
【化8】
は、2,2-ビス(4-シクロヘキシレン)プロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピレン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブチレン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンチレン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-イレン、8-(メチレン)-3-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル]メチレン、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネート。
【請求項6】
yは、1,4-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,2-シクロヘキシレン、テトラジヒドロ-2,5-フラニレン、テトラジヒドロ-2,5-ジメチルフラニレン、デカヒドロ-2,4-ナフタレニレン、デカヒドロ-2,5-ナフタレニレン、デカヒドロ-2,6-ナフタレニレン、及びデカヒドロ-2,7-ナフタレニレンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネート。
【請求項7】
前記構造モチーフ
【化9】
の合計と前記構造モチーフ
【化10】
とのモル比は、6:4~9:1であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネート。
【請求項8】
以下の構造モチーフ
【化11】
の総合計に対して、少なくとも45mol%、好ましくは少なくとも50mol%の前記ポリエステルカーボネートは、前記構造モチーフ
【化12】
からなることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネートを含む成形コンパウンド。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネートを含む成形品。
【請求項11】
溶融エステル交換により請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエステルカーボネートを調製する方法であって、
(i)少なくとも、化学式(IIa)又は化学式(IIb)
【化13】
(式中、
Bは、それぞれ独立して、CH基、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子、好ましくはCH基又は酸素原子を表し、
は、それぞれ独立して、単結合、又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合、又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
nは、0から3の間の数、好ましくは0又は1である)の少なくとも1つのジカルボン酸と、
少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの触媒を使用して、(A)少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び(B)化学式(I)
HO-X-OH (I)
(式中、Xは、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有する分岐状アルキレン基、又は少なくとも1個の分岐を含むシクロアルキレン基を表し、ここで、前記シクロアルキレン基は、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得て、かつ前記シクロアルキレン基は、任意に複数の環を含み得る)の少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物の混合物の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しつつ、更に縮合させる工程と、
を含み、
前記ジヒドロキシ化合物の混合物は、それぞれの場合に成分(A)及び成分(B)の合計に対して、
98mol%~75mol%、好ましくは97mol%~80mol%、特に好ましくは96mol%~82mol%の成分(A)と、
2mol%~25mol%、好ましくは3mol%~20mol%、特に好ましくは4mol%~18mol%の成分(B)と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
方法工程(i)における前記反応前の、方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物と、方法工程(i)において存在する全ての脂環式ジカルボン酸とのモル比は、1:0.6~1:0.05、好ましくは1:0.55~1:0.1、特に好ましくは1:0.5~1:0.15であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記化学式(I)の少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、8-(ヒドロキシメチル)-3-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル]メタノール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラジヒドロ-2,5-フランジカルボン酸、テトラジヒドロ-2,5-ジメチルフランジカルボン酸、デカヒドロ-2,4-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロ-2,5-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボン酸、及びデカヒドロ-2,7-ナフタレンジカルボン酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのジアリールカーボネートは、式(2)
【化14】
(式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC~C34アルキル、C~C34アルキルアリール、C~C34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、カルボキシル含有基、又はハロゲン基を表す)の化合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定の比率のジオールから得られる様々な構造単位を有する構造式(1)のコポリエステルカーボネート、成形コンパウンド、成形品、及び対応するポリエステルカーボネートの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリエステルカーボネートは、機械的特性、熱変形安定性、及び耐候性等の点で優れた特性を有することが知られている。使用されるモノマーに応じて、各ポリマー群は、そのような材料を特徴付ける或る特定の主要な特徴を有する。例えば、特にポリカーボネートは優れた機械的特性を有する一方で、ポリエステルはより優れた化学的安定性を示すことが多い。選択されたモノマーに応じて、ポリエステルカーボネートは、上述の両方の群からの特性プロファイルを示す。
【0003】
芳香族ポリカーボネート又はポリエステルはしばしば優れた特性プロファイルを示すが、これらは、耐老化性及び耐候性に関しては不利点を示す。例えば、紫外光の吸収により黄変し、場合によってはこれらの熱可塑性材料は脆化する。この点において、脂肪族ポリカーボネート及びポリエステルカーボネートは、より優れた特性、特により優れた耐老化性及び/又は耐候性並びにより優れた光学的特性(例えば、透過性)を有する。
【0004】
脂肪族ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートの不利点は、しばしば、それらの低いガラス転移温度である。したがって、脂環式アルコールを(コ)モノマーとして使用することが有利である。このような脂環式アルコールの例としては、TCDアルコール(トリシクロデカンジメタノール;8-(ヒドロキシメチル)-3-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル]メタノール)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、並びにイソソルビド及び異性体のイソマンニド及びイソイジド等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールに基づくバイオベースのジオールが挙げられる。ガラス転移温度を更に上昇させるのに、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、若しくは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、又は対応するナフタレン誘導体等の脂環式酸を(コ)モノマーとして使用することもできる。その際、反応物の選択に応じて、ポリエステル又はポリエステルカーボネートが得られる。本出願は、イソソルビド及び異性体等の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、更には、特定量の更なるジオールを含む脂環式二酸とを基礎として、改善された特性が達成されたコポリエステルカーボネートに関する。本発明は更に、原材料の直接反応を特徴とし、かつホスゲン等の取り扱いが困難な原材料を一切必要としない、これらのコポリエステルカーボネートを調製する方法に関する。
【0005】
シクロヘキサンジカルボン酸とイソソルビドとのポリエステルは、非特許文献1に記載されている。しかしながら、本発明は、好ましくは、ポリエステルカーボネートに関する。
【0006】
ポリエステルは、例えば、対応するエステル含有モノマーとジオールとのエステル交換により工業スケールで調製される。例えば、二酸のジメチルエステルから出発して、1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,4-シクロヘキサンジカルボン酸とのポリエステルが製造される(このポリエステルとポリカーボネートとのブレンド:DuPontのXyrex(商標))。
【0007】
しかしながら、エステル交換反応に関して、フェニルエステルはその脂肪族類似体よりもはるかに反応性が高い。特許文献1及び特許文献2には、中間工程としてのフェニルエステルを有するポリエステルカーボネートの調製方法が記載されている。
【0008】
特許文献1の実施例1は、二酸とフェノールとの直接反応により対応するエステルを得ることを記載している。特許文献1の実施例2においては、ジメチルエステルとフェノールとを反応させている。しかしながら、フェニルエステルの調製の両方の変法については、依然として収率に関して改善の余地がある。次に、これに続いてポリエステルカーボネートの調製が行われる。このポリエステルカーボネートは、1つのジオールのみから調製される。
【0009】
特許文献2は、ホスゲンを使用して溶媒中でジフェニルエステルを調製することを記載している。脂肪族ポリエステルカーボネートを得る後続の反応はホスゲンを必要としないので、単一のプラント部分においてホスゲンプロセスとエステル交換プロセスとを組み合わせることは非常に不利である。したがって、特許文献2において記載された方法も最適ではなく、ここでもポリマーを調製するために1つのジオールのみが使用される。特許文献3においては、ポリエステルカーボネートは、イソソルビドと、シクロヘキサンジカルボン酸と、例えばシクロヘキサンジメタノールであり得る更なるジオールとから調製される。しかしながら、ここでは非常に多量のシクロヘキサンジメタノールが使用されている。そして、過剰量のシクロヘキサンジメタノールは、しばしばポリマーの熱的特性に悪影響を及ぼす。特に、ガラス転移温度が大幅に低下する。
【0010】
特許文献4は、テレフタル酸等の追加の酸が使用される2段階法を開示している。特許文献5は、イソソルビド単位と、脂肪族C14~C44二酸、脂肪族C14~C44ジオール、又はそれらの組合せから誘導される脂肪族単位と、任意にイソソルビド単位及び脂肪族単位とは異なる追加の単位とを含み、イソソルビド単位、脂肪族単位、及び追加の単位が、それぞれカーボネート又はカーボネート単位及びエステル単位の組合せである、イソソルビドを基礎とするポリカーボネートを開示している。脂肪族ポリカーボネート又はポリエステルカーボネートのよくある不利点は、既に上記で論じられている。実施例において、イソソルビドと、脂環式二酸と、追加的に脂肪族ジオールとの組合せから誘導されるポリマーは調製されない。さらに、エステル交換に活性化カーボネートが使用される。
【0011】
例えば、特許文献6は、芳香族ポリエステルカーボネートの簡単な調製を記載している。この文献は、直接合成又はワンポット合成、すなわち、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既に合成の開始時にモノマーとして存在している合成を明らかにしている。ここで使用されるモノマーは、例えばビスフェノールA等の芳香族ジヒドロキシ化合物、カルボン酸ジエステル、及び芳香族二酸又は線状脂肪族二酸である。この文献では芳香族ポリエステルカーボネートのみが調製されているという事実の結果として、形成されるフェノールを除去しながら、縮合反応において300℃の温度が使用され得る。脂肪族ポリエステルカーボネートの調製においては、そのような温度の使用は不可能である。それというのも、そのような熱応力下では、脂肪族ジオールは脱離を受け、及び/又は熱分解する傾向があるからである。しかしながら、同時に、所望の高分子量に至るには高い温度が必要である。ここでは、脂肪族ジオールと芳香族ジオールとの反応性の違いが特に明らかになる。例えば、イソソルビドがポリマーに完全に組み込まれることはめったになく、それよりも、選択される反応条件に応じて重合反応の間に最大25%のイソソルビドが失われることが文献から知られている。したがって、芳香族ジオールについての反応条件を脂肪族ジオールへと引き継ぐことは直ちに可能ではない。これは特に、特許文献6における重縮合(方法工程(ii)に対応する)についての反応時間が、高められた温度では、本発明に従って観察される反応時間よりも顕著に長いという事実から明らかである。
【0012】
同様に、特許文献7及び特許文献8では、芳香族単位及び相応して高温が使用される。上述の理由から、上記文献での教示を脂肪族単位に引き継ぐことはできない。
【0013】
まだ未公開の出願である特許文献9は、脂環式ジカルボン酸と、ジアリールカーボネートと、脂肪族ジヒドロキシ化合物とを含むポリエステルカーボネートのワンポット合成を開示している。
【0014】
特許文献1及び特許文献2に記載されるポリエステルカーボネートは、高いガラス転移温度を有する。しかしながら、これらのポリエステルカーボネートの構造は非常に剛直である。これは、特にイソソルビド構造が縮合によりポリマー鎖中に組み込まれた結果である。剛直な性質のため、二環式部分構造はガラス転移温度を高めるが、ポリマー鎖はあまり柔軟ではなくなり、これは、原則として不利点につながる可能性がある。Parkらは、ポリマー中のイソソルビドの量が多いほど分子量の低下がもたらされると記載している(非特許文献2)。著者らは、分子量の増加が高い溶融粘度によって妨げられると記載している。臨界分子量に達しないと、これにより不十分な機械的特性がもたらされる可能性がある。これは、特に柔軟でないポリマー鎖にとって重要である。剛直な鎖は、絡み合うことができるように比較的高い分子量を必要とする。これを達成することができないと脆性挙動が生ずる(臨界絡み合い分子量)。
【0015】
シクロヘキサンジカルボン酸は柔軟性を幾らか高めるが、ポリマー鎖の全体的な構造は依然として非常に剛直なままである。これは、ポリマーの調製中に不利点をもたらす可能性がある。柔軟でない性質により、分子量が増加するにつれて、反応相手(鎖端)が互いにより見つかりづらくなる。上記のように、これにより分子量が制限される。さらに、剛直な性質により、ポリマー合成中に粘度の急激な上昇が引き起こされる。これを補償するために、ポリマー調製中に重縮合の最終段階で温度を高めて、より良好な流動性を達成することが多い。しかしながら、これは、脂肪族ポリマーの場合に限られた程度でしか可能ではない。それというのも、例えば芳香族ポリエステル又はポリカーボネートと比較して熱安定性が大幅に低いからである。温度を高めることによって粘度の上昇を補償することができないため、混合不良及び低い表面更新がもたらされる。したがって、縮合生成物(例えば、フェノール)をもはや除去することができず、重縮合が中断される。
【0016】
より良好な表面更新をもたらすために、特許文献4は、ポリマー混練機等の水平型ポリマー反応器の使用を記載している。これらはポリマーに高い剪断力を及ぼすため、表面更新を高め、重縮合を継続させることができる。しかしながら、高い剪断力は、柔軟でないポリマーに対して多大な負荷をかける。
【0017】
高い剪断応力は損傷を引き起こす可能性があり、これは、光学的特性及び機械的特性の悪化で現れる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3026074号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3248999号
【特許文献3】国際公開第2020/085686号
【特許文献4】国際公開第2019/147051号
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/105393号
【特許文献6】国際公開第01/32742号
【特許文献7】特開平04-345616号
【特許文献8】独国特許出願公開第2438053号
【特許文献9】国際出願PCT/EP2019/084847号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Oh et al., in Macromolecules 2013, 46, 2930-2940
【非特許文献2】S. A. Park et al. Polymer 2017, 116, 153 - 159; pp. 155/156
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、この従来技術から出発して、本発明の課題は、十分に高い分子量を特徴とする、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、少なくとも1つの特定の脂環式ジカルボン酸とを含むポリエステルカーボネートを提供することであった。「十分に高い分子量」という用語は、好ましくは、それぞれの場合にウベローデ粘度計を用いてジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃にて測定された1.20超、好ましくは1.20~1.70、より好ましくは1.22~1.65、特に好ましくは1.30~1.62の相対溶液粘度を有するポリマーを意味すると理解される。さらに、本発明によるポリエステルカーボネートは、より良好な加工特性及び良好な機械的特性を有するはずである。これらは、特に十分に高いモル質量に起因するはずである。高い分子量は、例えば、調製方法におけるより良好な表面更新から得られる。更なる課題は、溶融エステル交換によってポリエステルカーボネートを調製する可能な限り簡単な方法を提供することであった。この場合に、「簡単」とは特に、装置の観点での要求が少なく、少ない段階、特に少ない精製段階しか含まず、及び/又は、したがって経済的に、そしてまた環境的に有利である方法を意味すると理解される。特に、本発明による方法は、取り扱いが困難な出発材料、特にホスゲンを必要としないはずである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の課題のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てが本発明によって解決された。驚くべきことに、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既に合成の開始時にモノマーとして存在している直接合成又はワンポット合成において、溶融エステル交換により少なくとも1つの脂環式二酸と、少なくとも1つのジアリールカーボネートと、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物とからポリエステルカーボネートを合成することが可能であることが判明した。しかしながら、特定量の少なくとも1つの更なるジオールHO-x-OHを使用した場合にのみ、適切なモル質量を有する、したがって適切な機械的特性も有するポリマーが得られることが判明した。さらに、この少なくとも1つの更なるジオールは、好ましくは、少なくとも1個の分岐を有さねばならない。第一に、従来技術において記載された先入観にもかかわらず、脂環式ジカルボン酸と、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物HO-x-OH(本発明によれば「脂肪族ジオール」とも呼ばれる)と、ジアリールカーボネートとの反応についても直接合成が機能することは驚くべきことであった。良好な分子量の増加を得るのに、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物HO-x-OHの量が重要であることも全く驚くべきことであった。これにより、特に簡単である、すなわち、装置の観点での要求が少なく、少ない段階、特に少ない精製段階しか含まず、したがって経済的に、そして環境的にも有利である、脂環式二酸と、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールと、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物HO-x-OHとからポリエステルカーボネートを得ることを可能にする方法を見出すことができた。
【0022】
さらに、少量の追加の脂肪族ジヒドロキシ化合物HO-x-OHの組み込み、特に分岐状脂肪族ジヒドロキシ化合物の組み込みが、合成中の表面更新を高めることが判明した。ここで、特定の少量の特定のジオールだけで良好な特性がもたらされる一方で、より多くの量が驚くほど不利であることは特に驚くべきことであった。少量の追加のジオールの組み込みでさえも、表面更新が大幅に高まり、したがって分子量が増加することは驚くべきことであった。立体障害にもかかわらず、分岐状ジオールが縮合によりポリマー鎖中に容易に組み込まれることは特に驚くべきことであった。当業者であれば、立体障害が分子量の増加を妨げると予測したはずである。したがって、全体として、構成する構造要素が一方でポリマー鎖の剛直性と柔軟性との間の良好なバランスの要因となるが、他方で全体として、相応して良好な機械的特性をもたらす十分に高い分子量も示すポリエステルカーボネートを提供することが可能であった。
【0023】
同様に驚くべきことに、分岐を有する追加の脂肪族ジヒドロキシ化合物HO-X-OHを組み込むと、より低い剪断粘度を有するポリマーがもたらされることが判明した。これは、好ましくは、比較的高い溶液粘度が見られる場合でさえも当てはまる。これは、同様に好ましくは、同等のTgが見られる場合でさえも当てはまる。
【0024】
本発明によるポリエステルカーボネートを調製する方法を、以下のように、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸と、イソソルビドと、追加のジオールHO-R-OHと、ジフェニルカーボネートとの反応によって概略的に記載することができる:
【化1】
(これらの特定の3つの出発物質を挙げたのは、単に本発明を解説する目的のためであり、限定するものと理解されるべきではない)。
【0025】
本発明による直接合成においては、最初に、ガスの発生(二酸化炭素の漏れ)が観察された。ガスの発生が本質的に収まった後に混合物の試料を採取すると、既にオリゴマーが形成されていることを分析により実証することができる。これらのオリゴマーは、更なる工程において縮合されて、本発明によるポリエステルカーボネートを得る。したがって、本発明は、構造式(1)
【化2】
を含むポリエステルカーボネートであって、式中、
Aは、繰返単位ごとに独立して、少なくとも構造単位(A)又は構造単位(B)のいずれかを表し、ここで、
(A)は、化学式(2)
【化3】
を表し、かつ、
(B)は、化学式(3)
【化4】
(式中、xは、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有する分岐状アルキレン基、又は少なくとも1個の分岐を含むシクロアルキレン基を表し、ここで、シクロアルキレン基は、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得て、かつシクロアルキレン基は、任意に複数の環を含み得る)を表し、
yは、それぞれ独立して、化学式(IIIa)又は化学式(IIIb)
【化5】
(式中、
Bは、それぞれ独立して、CH基、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子、好ましくはCH基又は酸素原子を表し、
は、それぞれ独立して、単結合、又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合、又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、
nは、0から3の間の数、好ましくは0又は1である)を表し、かつ、
0<x<1であり、
それぞれの場合におけるは、化学式がポリエステルカーボネート中に組み込まれる位置を示し、
ポリエステルカーボネートは、それぞれの場合に構造単位(A)及び構造単位(B)の合計に対して、
98mol%~75mol%、好ましくは97mol%~80mol%、特に好ましくは96mol%~82mol%の構造単位(A)と、
2mol%~25mol%、好ましくは3mol%~20mol%、特に好ましくは4mol%~18mol%の構造単位(B)と、
を含むこと、及び、
ポリエステルカーボネートは、ウベローデ粘度計を用いてジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃にて測定された、1.20~1.70、好ましくは1.23~1.67、特に好ましくは1.25~1.65の相対溶液粘度を有すること、
を特徴とする、ポリエステルカーボネートを提供する。
【0026】
構造式(1)において、構成要素「A」をより詳細に定義する。Aは、少なくとも(A)又は(B)のいずれかを表し得る。これは、繰返単位ごとに独立して自由に選択され得る。本発明によれば、「繰返単位」という用語は、好ましくは、「[…]1-x」又は「[…]」のいずれかによって囲まれた構造を指す。したがって、構造式(1)は、Aに加えてカーボネート構造又はエステル構造のいずれかを有する2個の異なる繰返単位を既に含んでいる。Aは、構造式(1)の繰返単位ごとに独立して、少なくとも構造単位(A)又は構造単位(B)のいずれかを表す。この場合に、「少なくとも」という用語の使用は、Aが更なる構造単位(C)も表し得ることを意味する。しかしながら、本発明によるポリエステルカーボネートは、互いに関する規定されたモル比において、構造単位(A)及び構造単位(B)を必ず常に含んでいる。好ましくは、Aは、構造単位(A)及び構造単位(B)のみからなり、更なる構造単位(C)を一切含まない。この場合に、Aは、構造式(1)の繰返単位ごとに独立して、構造単位(A)又は構造単位(B)のいずれかを表す。さらに、(A)が式(2)の2つ以上の異なる構造を含み得ることは、当業者には明らかである。同様に、(B)は、式(3)の2つ以上の異なる構造を含み得る。しかしながら、(A)は、好ましくは、式(2)の構造を1つだけ含む。しかしながら、同様に好ましくは、(B)は、式(3)の構造を1つだけ含む。特に好ましくは、(A)及び(B)は、式(2)及び式(3)の構造をそれぞれ1つだけ含む。
【0027】
驚くべきことに、成分(B)の量が特許請求の範囲において規定された範囲内にある場合に、分子量の増加が特に良好に機能するため、1.20~1.70の相対溶液粘度を有するポリエステルカーボネートを得ることができることが判明した。驚くべきことに、(B)の量が多いほど、分子量の僅かな増加しか見られない。この場合に、(B)が2個~11個、好ましくは3個~10個の炭素原子を有することが有利であった。良好な機械的特性、特に良好な破断点伸び及び良好な弾性率を有するポリエステルカーボネートが得られた。さらに、本発明によるポリエステルカーボネートは、良好な衝撃強さを示す。
【0028】
本発明によれば、繰返単位と、構造単位と、構造モチーフとの間では区別がなされる。好ましくは、既に上記したように、繰返単位は、式(1)において括弧[…]1-x又は括弧[…]によって囲まれる構造を意味すると理解される。したがって、構造式(1)は、既に2個の繰返単位を含んでいる。Aの結果として、これはまた、少なくとも構造単位(A)及び構造単位(B)を更に有する。構造単位(A)及び構造単位(B)(場合によっては(C)も)は、繰返単位においてそれぞれ1回存在する。これらは、繰返単位ごとに異なる場合がある。本発明によれば、構造単位という用語は、好ましくは、カーボネート構造もエステル構造も有しないため、それ自体が繰返単位ではない構造に使用される。さらに、これは構造モチーフではない。したがって、この用語は、繰返単位及び構造モチーフよりも小さい構造に使用される。本発明によれば、構造モチーフは、好ましくは、ポリマーを形成する反応によって使用されるモノマーから誘導され得る構造を意味すると理解される。したがって、本発明によれば、構造モチーフは、少なくとも以下の構造:
【化6】
を意味すると理解される。第1の構造モチーフは、反応によって構造式(1)のポリマーへと組み込まれるジオールから誘導される。したがって、酸素は、構造式(1)におけるカーボネート単位又はエステル単位のいずれかの部分である。第2の構造モチーフは、類似のようにジカルボン酸から誘導される。第3の構造モチーフは、同様に類似のように1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールから誘導される。
【0029】
したがって、これとは対照的に、本発明による構造単位は酸素を含まないため、モノマーに直接的に割り当てることはできない。したがって、構造単位(A)は、酸素原子を除く構造モチーフ
【化7】
に対応する。構造単位(B)は、酸素原子を除く構造モチーフ
【化8】
に対応する。
【0030】
特に、本発明によるポリエステルカーボネートは、ポリエステルカーボネートが、以下の繰返単位(i)~繰返単位(iv)
【化9】
(式中、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、それぞれの場合の繰返単位の平均数を示す自然数を表す)を任意の順序で含むことを特徴とすることが好ましい。ここでも、繰返単位は括弧によって囲まれている。a、b、c、及びdの指数は、好ましくは、本発明による溶液粘度をもたらすように設定される。本発明によれば、a、b、c、及びdの数が非常に高いため、十分に高い分子量が得られたことは驚くべきことであった。
【0031】
本発明によれば、ポリエステルカーボネートは、ポリエステルカーボネートの総重量に対して、少なくとも80重量%、好ましくは85重量%、特に好ましくは90重量%の程度が構造式(1)からなることが好ましい。したがって、本発明によるポリエステルカーボネートは、好ましくは、構造式(1)において定義された構造以外の構造を少量しか有しない。さらに、本発明によるポリエステルカーボネートは、カーボネート構造及び/又はエステル構造以外の機能的構造を一切含まないことが好ましい。これは、構造式(1)からなるものでない20重量%以下、好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下が、好ましくは、他のジオール又はジカルボン酸から誘導され得ることを意味し、これらは更に、ポリエステルカーボネートへの組み込みの結果として、カーボネート構造又はエステル構造をもたらす。
【0032】
本発明によるポリエステルカーボネートは、以下の構造モチーフ
【化10】
の総合計に対して、1mol%~20mol%、好ましくは2mol%~18mol%、特に好ましくは3mol%~15mol%のポリエステルカーボネートが、構造モチーフ
【化11】
からなることを特徴とすることが好ましい。
【0033】
本発明によれば、ヒドロキシ官能価を有する使用されるモノマーとジカルボン酸との比率は、ポリエステルカーボネートにおいて自由に調整され得る。ジヒドロキシ化合物を多く使用するほど、カーボネート構造が多く得られる。ジカルボン酸が多いほど、エステル構造が多くなる。したがって、結果として、カーボネート構造とエステル構造との比率は、同様に自由に選択可能である。これは、特に、ポリエステルカーボネートを形成する全てのモノマーが合成の開始時に既に存在する本発明による方法に落ち着くことが分かっている。したがって、これにより、制御された様式で調整することができる特性を有するポリエステルカーボネートがもたらされる。しかしながら、このために、構造単位(A)及び構造単位(B)をもたらす2つのジヒドロキシ化合物の比率を、本発明による範囲内に保たなければならない。酸素原子を含まずに構造単位(B)を構成する構造モチーフ
【化12】
の量が多すぎない場合に有利であることが判明した。これが少なすぎると、分子量の増加が全体的により劣る。これが多すぎると、ポリエステルカーボネートのガラス転移温度が最適ではなくなる。この場合に、カーボネート構造の合計は常に、使用されるジヒドロキシ化合物とジカルボン酸との合計から得られる。
【0034】
好ましくは、(A)は、構造
【化13】
の少なくとも1つから選択される。(A)は、非常に特に好ましくは、
【化14】
である。
【0035】
好ましくは、xは、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子、特に好ましくは5個~11個の炭素原子、非常に特に好ましくは5個~10個の炭素原子を有する分岐状アルキレン基を表す。分岐状アルキレン基を任意に中断し得るヘテロ原子は、好ましくは酸素又は硫黄、特に好ましくは酸素である。特に好ましくは、分岐状アルキレン基は、1個だけのヘテロ原子を含むか、又はヘテロ原子を含まない。特に好ましくは、分岐状アルキレン基はヘテロ原子を一切有しない。アルキレン基中に存在する少なくとも1個のヘテロ原子がある場合に、示された炭素原子数は、アルキレン基中の炭素原子の総数を指す。例えば、基-CH-CH-O-CH-CH-は、4個の炭素原子を含む。「分岐状」という用語は、当業者に知られる脂肪族炭素鎖における分岐を指すものと理解される。これは、分岐状アルキレン基が、好ましくは少なくとも1個の第三級炭素原子及び/又は少なくとも1個の第四級炭素原子を含むことを意味する。分岐状アルキレン基中に2個以上の分岐が存在し得る。分岐は、好ましくは1個~5個の炭素原子、特に好ましくは1個~4個、非常に特に好ましくは1個~3個の炭素原子の鎖長を有する。分岐のこれらの炭素原子は、分岐状アルキレン基の総炭素数に考慮される。これは、例えば、分岐状アルキレン基-CH-C(CH-CH-が5個の炭素原子を有することを意味する。
【0036】
本発明によれば、xが、少なくとも一個の分岐を有するシクロアルキレン基であり、シクロアルキレン基が、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、かつシクロアルキレン基が、任意に複数の環を含み得る場合に、上記の記述はヘテロ原子に適用される。シクロアルキレン基を任意に中断し得るヘテロ原子は、好ましくは酸素又は硫黄、特に好ましくは酸素である。特に好ましくは、シクロアルキレン基は、1個だけのヘテロ原子を含むか、又はヘテロ原子を含まない。特に好ましくは、シクロアルキレン基はヘテロ原子を一切有しない。好ましくは、シクロアルキレン基は、4個~6個の炭素原子を有する少なくとも1個、好ましくは1個の環を有する。特に、シクロアルキレン基は、合計4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、かつ4個~5個の炭素原子を有する環を有することが好ましい。この場合に、環の炭素原子は、シクロアルキレン基中の炭素原子の総数に考慮される。これは、テトラメチルシクロブテニル基が、合計8個の炭素原子を有し、4個の炭素原子を有する環を含むことを意味する。さらに、シクロアルキレン基は少なくとも1個の分岐を有する。これらの分岐は、場合により存在する脂環式鎖中及び/又は環中に存在し得る。好ましくは、分岐は環中に存在する。シクロアルキレン基に関する「分岐」という用語は、当業者に知られる分岐を指すものと理解される。これは、分岐状シクロアルキレン基が、好ましくは少なくとも1個の第三級炭素原子及び/又は少なくとも1個の第四級炭素原子を含むことを意味する。この場合に、環とポリマー鎖とをつなぐ2個の第三級炭素原子は、本発明による分岐であるとは理解されないことが分かる。これは、好ましくは、シクロアルキレン基が少なくとも環上に少なくとも1個の分岐を有する場合に、この環が、環とポリマー鎖とをつなぐ2個の第三級炭素原子に加えて、少なくとも1個の第三級炭素原子及び/又は第四級炭素原子を有することを意味する(式(3)における「」も参照)。同様に、分岐が、環上に存在するアルキル基中に存在することも可能である(xが、例えば2,2-ビス(4-シクロヘキシレン)プロパンである場合)。特に好ましくは、シクロアルキレン基に関する「分岐状」とは、この基が少なくとも1個の第四級炭素原子を有することを意味するものと理解される。好ましくは、xは、環を含む5個~15個の炭素原子を有するシクロアルキレン基であり、これは、任意に少なくとも1個の分岐を有し、好ましくは少なくとも1個の分岐を有し、かつ少なくとも1個の環、好ましくは4個~6個の炭素原子、特に好ましくは4個~5個の炭素原子を有する環を有する。
【0037】
全体として、本発明によれば、xが2個~10個の炭素原子を有することが好ましい。
【0038】
特に好ましくは、
【化15】
は、2,2-ビス(4-シクロヘキシレン)プロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピレン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブチレン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンチレン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-イレン、8-(メチレン)-3-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル]メチレン及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択される。特に、
【化16】
におけるxは、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピレン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブチレン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンチレン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-イレン、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることが好ましい。同様に、
【化17】
におけるxは、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピレン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブチレン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンチレン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-イレン、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることが好ましい。非常に特に、
【化18】
におけるxは、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピレン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブチレン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンチレン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-イレン、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることが好ましい。既に上記で説明したように、xは上述の構造の混合物であり得る。しかしながら、xは、好ましくは、1つだけの構造を表す。
【0039】
本発明によれば、yは、それぞれ独立して、化学式(IIIa)又は化学式(IIIb)
【化19】
(式中、
Bは、それぞれ独立して、炭素原子、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子、好ましくは炭素原子又は酸素原子を表し、
は、それぞれ独立して、単結合、又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合、又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、
nは、0から3の間の数、好ましくは0又は1である)を表す。
【0040】
が単結合を表す場合に、Rは、こうして炭素原子を含まないことが理解されるであろう。
【0041】
特に、yは、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、1,2-シクロヘキサンジメチレン、1,3-シクロヘキサンジメチレン、1,4-シクロヘキサンジメチレン、2,2-ビス(4-シクロヘキシレン)プロパン、テトラヒドロ-2,5-フランジメチレン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピレン、2-(2-エチルオキシ)エチレン、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブチレン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンチレン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-イレン、シクロブタン-1,1-ジイルジメチレン、8-(メチレン)-3-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル]メチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロパニレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、1,6-ヘキシレン、1,8-オクチレン、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることが好ましい。特に好ましくは、yは、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、及び1,4-シクロヘキシレンからなる群より選択される。
【0042】
さらに、yについて上述した構造と一緒に、少量の更なる酸を使用することもできる。したがって、特に好ましくは、yは、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の構造式y1及び/又は構造式y2を更に含む。好ましくは、y1は、環を含まない。特に好ましくは、y1は、2,2,4-トリメチルブチレン、2,4,4-トリメチルブチレン、2,2,5-トリメチルブチレン、及び3,3-ジメチルプロピレンからなる群より選択される。同様に、y2を、以下のジカルボン酸:イソフタル酸、テレフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸から誘導される構造からなる群より選択することが好ましい。この場合に、形成されたエステル基は構造単位y2に属しないことが分かる。これらの場合に、本発明によれば、依然として好ましくは、脂肪族ポリエステルカーボネートについて言及される。しかしながら、特に好ましくは、本発明によるポリエステルカーボネートは、芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族構造を一切含まない。
【0043】
本発明によるポリエステルカーボネートは、構造モチーフ
【化20】
の合計と構造モチーフ
【化21】
とのモル比が6:4~9:1、好ましくは7:3~8:2であることを特徴とすることが好ましい。既に上記で説明したように、この比率は、本発明によるポリエステルカーボネートにおいて自由に選択可能である。これにより、ポリマー鎖の剛直性と柔軟性との間の良好なバランスが実現され、相応して良好な機械的特性がもたらされる。
【0044】
同様に、本発明によるポリエステルカーボネートは、以下の構造モチーフ
【化22】
の総合計に対して、少なくとも45mol%、好ましくは少なくとも50mol%のポリエステルカーボネートが、構造モチーフ
【化23】
からなることを特徴とすることが好ましい。この量は、高いガラス転移温度を達成するのに特に有利である。
【0045】
さらに、本発明によれば、Aが更に構造単位(C)を表すことも除外されない。(C)は芳香族構造を含む。しかしながら、これらは、好ましくは少ない割合でのみ存在する。好ましくは、(C)は、構造単位(A)、構造単位(B)、及び構造単位(C)の総合計に対して、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の程度で追加的に存在する。この場合に、特許請求の範囲において規定される(A)と(B)との比率は同じままである。これらの場合に、本発明によれば、依然として好ましくは、脂肪族ポリエステルカーボネートについて言及される。しかしながら、本発明によるポリエステルカーボネートは、特に好ましくは、構造単位(C)を一切有しない。同様に、本発明によるポリエステルカーボネートは、構造単位(C)も芳香族構造単位y2も含まないことが好ましい。一般に、ポリエステルカーボネート中の芳香族化合物は、ポリエステルカーボネートのUV安定性及び耐候性を低下させる。これは、屋外用途には特に不利である。さらに、ポリエステルカーボネート中の芳香族成分は、それから製造された成形品の表面硬度を低下させるため、コーティングの必要性をもたらす場合がある。さらに、中間体として生じ得る芳香族酸のジフェニルエステルは、例えば、重縮合を減速させ得る安定な中間体である。結果として、更なる特定の触媒を場合により使用することが必要とされ得る。したがって、Aは、(A)及び(B)からなることが好ましい。
【0046】
これらの追加の構造単位(C)は、好ましくは、以下のジオールから誘導される構造単位の群から選択される:ビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル(DOD)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(DODエーテル)、ビスフェノールB、ビスフェノールM、ビスフェノール(I)~(III)
【化24】
(これらの式(I)~式(III)において、R’は、それぞれの場合にC~Cアルキル、アラルキル、又はアリール、好ましくはメチル又はフェニル、非常に特に好ましくはメチルを表す)。本発明によれば、「~から誘導される」という表現は、好ましくは、対応するモノマーが、ヒドロキシル基又は更には酸基を介して、エステル基の形成又はカーボネート基の形成のいずれかによって、形成されるポリエステルカーボネートへと導入されることを意味する。
【0047】
本発明によれば、構造式(1)について又は構造式(1)において更なる単位が存在する場合に、上記規定のmol%及び比率が保持されることが好ましい。その際、それぞれの新たに定義された単位のモル量はそこに含まれる。
【0048】
同様に、本発明によるポリエステルカーボネートにおける規定のmol%を、H NMRによって決定することが好ましい。この方法は当業者に知られている。ポリエステルカーボネートは、例えばCDCl中に溶解される場合があり、構造単位の対応するピークが特定される場合がある。比率及び割合は、積分を介して決定され得る。一方で、本発明によるmol%は、モノマーの使用されるモル量及び比率を介しても決定され得る。この場合に、全てのモノマーが同じ比率でポリエステルカーボネートへと完全に組み込まれると仮定する必要がある。したがって、当業者は比率を前もって設定することもできる。
【0049】
本発明によるポリエステルカーボネートは、1.20~1.70、好ましくは1.23~1.67、特に好ましくは1.25~1.65の相対溶液粘度を有する。相対溶液粘度(ηrel;相対ηとも呼ばれる)を、ウベローデ粘度計を用いてジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃にて決定した。当業者は、ウベローデ粘度計を使用した相対溶液粘度の決定に精通している。本発明によれば、この決定は、好ましくはDIN51562-3;1985-05に従って行われる。この方法は、測定されるポリエステルカーボネートのフロータイムをウベローデ粘度計により測定した後に、ポリマー溶液とその溶媒との間の粘度の差を確かめることを含む。このために、純粋な溶媒であるジクロロメタン、トリクロロエチレン、及びテトラクロロエチレンを測定することによってウベローデ粘度計を初期較正する(常に少なくとも3回であるが、多くても9回の測定を行う)。これに続いて、溶媒であるジクロロメタンを使用して実際の較正を行う。次に、ポリマー試料を秤量し、ジクロロメタン中に溶解した後に、この溶液についてフロータイムを3回決定する。ハーゲンバッハ補正を介してフロータイムの平均値を補正して、相対溶液粘度を算出する。
【0050】
ここで、相対ηを決定する方法。
【0051】
本発明の更なる態様において、溶融エステル交換により本発明によるポリエステルカーボネートを調製する方法であって、
(i)少なくとも、化学式(IIa)又は化学式(IIb)
【化25】
(式中、
Bは、それぞれ独立して、CH基、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子、好ましくはCH基又は酸素原子を表し、
は、それぞれ独立して、単結合、又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合、又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
nは、0から3の間の数、好ましくは0又は1である)の少なくとも1つのジカルボン酸と、
少なくとも1つのジアリールカーボネートとを、少なくとも1つの触媒を使用して、成分(A)少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール及び成分(B)化学式(I)
HO-X-OH (I)
(式中、Xは、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有する分岐状アルキレン基、又は少なくとも1個の分岐を含むシクロアルキレン基を表し、ここで、シクロアルキレン基は、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得て、かつシクロアルキレン基は、任意に複数の環を含み得る)の少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物の混合物の存在下で反応させる工程と、
(ii)方法工程(i)から得られた混合物を、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しつつ、更に縮合させる工程と、
を含み、
ジヒドロキシ化合物の混合物は、それぞれの場合に成分(A)及び成分(B)の合計に対して、
98mol%~75mol%、好ましくは97mol%~80mol%、特に好ましくは96mol%~82mol%の成分(A)と、
2mol%~25mol%、好ましくは3mol%~20mol%、特に好ましくは4mol%~18mol%の成分(B)と、
を含むことを特徴とする、方法が提供される。本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と、少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応がある。しかしながら、本発明によれば、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール(以降、成分(A)とも)及び少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物(以降、成分(B)とも)の存在の結果として、更なる反応は除外され得ない(ここで、成分(A)及び成分(B)はその後に、本発明によるポリエステルカーボネートにおいて構造単位(A)及び構造単位(B)につながることが留意されたい)。実際、方法工程(i)において早くも、成分(A)及び/又は成分(B)と、カーボネート(2個のヒドロキシ基が失われる)とから形成される単位に対応するMALDI-ToF質量分析計において質量間隔を有するオリゴマーが形成されることが、実施例により実証された。これは、方法工程(i)において、ジエステルの形成以外に更なる反応が起こる可能性があることを意味する。しかしながら、本発明によれば、これはまた、存在する全ての脂環式ジカルボン酸と、化学量論的当量のジアリールカーボネートとの反応が、方法工程(ii)の開始前に起こって完了している必要はないことも意味する。しかしながら、本発明によれば、ガス形成の本質的な減少が観察され得るまで方法工程(i)を実施した後に初めて、方法工程(ii)を、例えば、真空を適用して縮合時に脱離した化学的化合物を除去することによって開始することが好ましい。しかしながら、既に上述したように、任意に、方法工程(i)及び方法工程(ii)は、本発明によれば互いに明確に区別され得ない。
【0052】
方法工程(i)
本発明による方法は、直接合成又は更にはワンポット合成と呼ばれる。それというのも、方法工程(i)において、後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が既にモノマーとして存在しているからである。これは、好ましくは、本発明によれば、成分(A)及び成分(B)のジヒドロキシ化合物、脂環式ジカルボン酸及び/又はジアリールカーボネートだけよりも多くが含まれる場合であっても、全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物(それぞれの場合に、成分(A)及び成分(B))、全ての脂環式ジカルボン酸、そしてまた全てのジアリールカーボネートがこの工程において存在することを意味する。したがって、本発明によれば、方法工程(ii)において縮合されてポリエステルカーボネートとなる全てのモノマーが、方法工程(i)の間に既に存在していることが好ましい。本発明はまた、少ない割合の少なくとも1つのジアリールカーボネートが方法工程(ii)において追加的に添加される実施形態を含み得る。これを選択的に使用して、得られるポリエステルカーボネートのOH末端基含有量を低下させることができる。このようなアプローチは、例えば、特開2010-077398号において記載されている。しかしながら、この場合に、依然として後続のポリエステルカーボネートを形成する全ての構造要素が方法工程(i)においてモノマーとして存在し、更なる構造要素を添加しない場合であるには、方法工程(ii)において少量で添加される少なくとも1つのジアリールカーボネートは、方法工程(i)において存在する少なくとも1つのジアリールカーボネートに対応することが必要である。したがって、こういった意味で、この方法は、依然として直接合成又はワンポット合成と呼ばれ得る。
【0053】
さらに、本発明によれば、方法工程(i)における芳香族ジヒドロキシ化合物及び/又は芳香族ジカルボン酸の存在は除外されない。しかしながら、これらは、好ましくは少ない割合でのみ存在する。方法工程(i)において、使用されるジヒドロキシ化合物の総モル量に対して、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の芳香族ジヒドロキシ化合物(成分(C))が更に存在することが特に好ましい。ここで、特許請求の範囲において規定される成分(A)と成分(B)との比率は同じままである。方法工程(i)においては、場合によりまた芳香族ジヒドロキシ化合物に加えて、使用されるジカルボン酸の総モル量に対して、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の芳香族ジカルボン酸が更に存在することが同様に特に好ましい。これらの場合に、本発明によれば、依然として好ましくは、脂肪族ポリエステルカーボネートについて言及される。しかしながら、方法工程(i)において芳香族ジヒドロキシ化合物を使用しないことが特に好ましい。同様に、方法工程(i)において芳香族ジカルボン酸を使用しないことも好ましい。同様に、方法工程(i)において芳香族ジヒドロキシ化合物も芳香族ジカルボン酸も使用しないことが好ましい。一般に、ポリエステルカーボネート中の芳香族化合物は、ポリエステルカーボネートのUV安定性及び耐候性を低下させる。これは、屋外用途には特に不利である。さらに、ポリエステルカーボネート中の芳香族成分は、それから製造された成形品の表面硬度を低下させるため、コーティングの必要性をもたらす場合がある。さらに、中間体として生じ得る芳香族酸のジフェニルエステルは、例えば、重縮合を減速させ得る安定な中間体である。結果として、更なる特定の触媒を場合により使用することが必要とされ得る。
【0054】
これらの追加の芳香族ジヒドロキシ化合物(成分(C))は、好ましくは、ビスフェノールA、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル(DOD)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(DODエーテル)、ビスフェノールB、ビスフェノールM、ビスフェノール(I)~ビスフェノール(III)
【化26】
(これらの式(I)~式(III)において、R’は、それぞれの場合に、C~Cアルキル、アラルキル、又はアリール、好ましくはメチル又はフェニル、非常に特に好ましくはメチルを表す)からなる群より選択される。
【0055】
これらの追加の芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、2,5-フランジカルボン酸、及び2,6-ナフタレンジカルボン酸からなる群より選択される。僅かな割合のこれらの芳香族二酸が、脂肪族ポリエステルカーボネートの吸水を減少させ得ることが知られている。
【0056】
本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールが成分(A)として使用される。当業者に知られるように、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールは一般に、イソマンニド、イソイジド、及びイソソルビドからなる群より選択される。これは、バイオベースのモノマー及び得られるポリマーの全ての利点を伴うバイオベースの構造要素を含み得る(例えば、再生可能な原材料から得ることができるため、より持続可能性に優れている)。本発明による方法は、特に好ましくは、少なくとも1つの1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールがイソソルビドであることを特徴とする。成分(A)がイソソルビドからなることが好ましい。
【0057】
本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物(成分(B))が使用される。成分(B)が2つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物からなることが好ましい。同様に、成分(B)が1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物からなることが好ましい。したがって、成分(A)がイソソルビドからなり、かつ成分(B)が更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物からなることが特に好ましい。ジヒドロキシ化合物の混合物中に、芳香族ジヒドロキシ化合物(上記参照)を含む成分(C)が、任意に存在する場合もある。
【0058】
ここで、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、化学式(I):
HO-X-OH (I)
(式中、Xは、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、2個~22個、好ましくは2個~15個の炭素原子、特に好ましくは2個~10個の炭素原子を有する線状アルキレン基、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有する分岐状アルキレン基、又は少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を表し、ここで、シクロアルキレン基は、複数の環を任意に含み得て、それぞれの場合に任意に分岐状であり得る)を有することが好ましい。
【0059】
式(I)において、Xは、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有する分岐状アルキレン基、又は少なくとも1個の分岐を含むシクロアルキレン基を表し、ここで、シクロアルキレン基は、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得て、かつシクロアルキレン基は、任意に複数の環を含み得ることが特に好ましい。
【0060】
本発明によれば、Xが、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る線状アルキレン基である場合に、これは、好ましくは2個~15個、特に好ましくは2個~12個、非常に特に好ましくは2個~11個、特に好ましくは2個~10個、より好ましくは2個~6個、より好ましくは3個~4個の炭素原子を有する。アルキレン基を任意に中断し得るヘテロ原子は、好ましくは酸素又は硫黄、特に好ましくは酸素である。特に好ましくは、アルキレン基は、1個だけのヘテロ原子を含むか、又はヘテロ原子を含まない。アルキレン基中に存在する少なくとも1個のヘテロ原子がある場合に、示された炭素原子数は、アルキレン基中の炭素原子の総数を指す。例えば、基-CH-CH-O-CH-CH-は、4個の炭素原子を含む。本発明によれば、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る線状アルキレン基は、12個未満、特に好ましくは10個未満の炭素原子を有することが好ましい。特に好ましくは、アルキレン基はヘテロ原子を一切有しない。
【0061】
好ましくは、Xは、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子、特に好ましくは5個~11個の炭素原子、非常に特に好ましくは5個~10個の炭素原子を有する分岐状アルキレン基を表す。分岐状アルキレン基を任意に中断し得るヘテロ原子は、好ましくは酸素又は硫黄、特に好ましくは酸素である。特に好ましくは、分岐状アルキレン基は、1個だけのヘテロ原子を含むか、又はヘテロ原子を含まない。特に好ましくは、分岐状アルキレン基はヘテロ原子を一切有しない。アルキレン基中に存在する少なくとも1個のヘテロ原子がある場合に、示された炭素原子数は、アルキレン基中の炭素原子の総数を指す。例えば、基-CH-CH-O-CH-CH-は、4個の炭素原子を含む。「分岐状」という用語は、当業者に知られる脂肪族炭素鎖における分岐を指すものと理解される。これは、分岐状アルキレン基が、好ましくは少なくとも1個の第三級炭素原子及び/又は少なくとも1個の第四級炭素原子を含むことを意味する。分岐状アルキレン基中に2個以上の分岐が存在し得る。分岐は、好ましくは1個~5個の炭素原子、特に好ましくは1個~4個、非常に特に好ましくは1個~3個の炭素原子の鎖長を有する。分岐のこれらの炭素原子は、分岐状アルキレン基の総炭素数に考慮される。これは、例えば、分岐状アルキレン基-CH-C(CH-CH-が5個の炭素原子を有することを意味する。
【0062】
本発明によれば、Xが、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有するシクロアルキレン基であり、かつシクロアルキレン基が、任意に複数の環を含み得て、それぞれの場合に任意に分岐状であり得る場合に、上記の記述はヘテロ原子に適用される。シクロアルキレン基を任意に中断し得るヘテロ原子は、好ましくは酸素又は硫黄、特に好ましくは酸素である。特に好ましくは、シクロアルキレン基は、1個だけのヘテロ原子を含むか、又はヘテロ原子を含まない。特に好ましくは、シクロアルキレン基はヘテロ原子を一切有しない。好ましくは、シクロアルキレン基は、4個~6個の炭素原子を有する少なくとも1個、好ましくは1個の環を有する。特に、シクロアルキレン基は、合計4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、かつ4個~5個の炭素原子を有する環を有することが好ましい。この場合に、環の炭素原子は、シクロアルキレン基中の炭素原子の総数に考慮される。これは、テトラメチルシクロブテニル基が、合計8個の炭素原子を有し、4個の炭素原子を有する環を含むことを意味する。シクロアルキレン基は、少なくとも1個の分岐を更に有し得る。これが特に好ましい。分岐が存在する場合に、これらは、場合により存在する脂環式鎖中及び/又は環中に存在し得る。好ましくは、分岐は環中に存在する。好ましくは、Xは、環を含む5個~15個の炭素原子を有するシクロアルキレン基であり、これは、任意に少なくとも1個の分岐を有し、好ましくは少なくとも1個の分岐を有し、かつ少なくとも1個の環、好ましくは4個~6個の炭素原子、特に好ましくは4個~5個の炭素原子を有する環を有する。
【0063】
本発明によれば、Xが、少なくとも1個のヘテロ原子によって任意に中断され得る、4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有する分岐状シクロアルキレン基であり、かつシクロアルキレン基が、任意に複数の環を含み得る場合に、上記の記述はヘテロ原子に適用される。シクロアルキレン基を任意に中断し得るヘテロ原子は、好ましくは酸素又は硫黄、特に好ましくは酸素である。特に好ましくは、シクロアルキレン基は、1個だけのヘテロ原子を含むか、又はヘテロ原子を含まない。特に好ましくは、シクロアルキレン基はヘテロ原子を一切有しない。好ましくは、シクロアルキレン基は、4個~6個の炭素原子を有する少なくとも1個、好ましくは1個の環を有する。特に、シクロアルキレン基は、合計4個~20個、好ましくは5個~15個の炭素原子を有し、かつ4個~5個の炭素原子を有する環を有することが好ましい。この場合に、環の炭素原子は、シクロアルキレン基中の炭素原子の総数に考慮される。これは、テトラメチルシクロブテニル基が、合計8個の炭素原子を有し、4個の炭素原子を有する環を含むことを意味する。さらに、シクロアルキレン基は少なくとも1個の分岐を有する。これらの分岐は、場合により存在する脂環式鎖中及び/又は環中に存在し得る。好ましくは、分岐は環中に存在する。シクロアルキレン基に関する「分岐」という用語は、当業者に知られる分岐を指すものと理解される。これは、分岐状シクロアルキレン基が、好ましくは少なくとも1個の第三級炭素原子及び/又は少なくとも1個の第四級炭素原子を含むことを意味する。この場合に、環とポリマー鎖とをつなぐ2個の第三級炭素原子は、本発明による分岐であるとは理解されないことが分かる。これは、好ましくは、シクロアルキレン基が少なくとも環上に少なくとも1個の分岐を有する場合に、この環が、環とポリマー鎖とをつなぐ2個の第三級炭素原子に加えて、少なくとも1個の第三級炭素原子及び/又は第四級炭素原子を有することを意味する(式(3)における「」も参照)。同様に、分岐が、環上に存在するアルキル基中に存在することも可能である(xが、例えば2,2-ビス(4-シクロヘキシレン)プロパンである場合)。特に好ましくは、シクロアルキレン基に関する「分岐状」とは、この基が少なくとも1個の第四級炭素原子を有することを意味するものと理解される。好ましくは、Xは、環を含む5個~15個の炭素原子を有するシクロアルキレン基であり、これは、任意に少なくとも1個の分岐を有し、好ましくは少なくとも1個の分岐を有し、かつ少なくとも1個の環、好ましくは4個~6個の炭素原子、特に好ましくは4個~5個の炭素原子を有する環を有する。
【0064】
全体として、本発明によれば、少なくとも1個の更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物が2個~10個の炭素原子を有することが好ましい。
【0065】
特に好ましくは、本発明による方法は、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物が、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、テトラヒドロ-2,5-フランジメタノール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、シクロブタン-1,1-ジイルジメタノール、8-(ヒドロキシメチル)-3-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル]メタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることを特徴とする。特に、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、シクロブタン-1,1-ジイルジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることが好ましい。同様に、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、シクロブタン-1,1-ジイルジメタノール、1,4-ブタンジオール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることが好ましい。非常に特に好ましくは、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物は、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、シクロブタン-1,1-ジイルジメタノール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0066】
同様に、本発明による方法は、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物が、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、8-(ヒドロキシメチル)-3-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル]メタノール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択されることを特徴とすることが好ましい。特に、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物を、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択することが好ましい。同様に、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物を、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択することが好ましい。非常に特に好ましくは、少なくとも1つの更なる脂肪族ジヒドロキシ化合物を、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、及びそれらのあらゆる所望の混合物からなる群より選択することが好ましい。
【0067】
同様に、本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸が使用される。ここで、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、化学式(IIa)、(IIb)
【化27】
(式中、
Bは、それぞれ独立して、CH基、又はO及びSからなる群より選択されるヘテロ原子、好ましくはCH基又は酸素原子を表し、
は、それぞれ独立して、単結合、又は1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基、好ましくは単結合、又は1個~5個の炭素原子を有するアルキレン基、特に好ましくは単結合を表し、かつ、
nは、0から3の間の数、好ましくは0又は1である)の化合物、又はそれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0068】
が単結合を表す場合に、Rは、こうして炭素原子を含まないことが理解されるであろう。
【0069】
少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、テトラジヒドロ-2,5-フランジカルボン酸、テトラジヒドロ-2,5-ジメチルフランジカルボン酸、デカヒドロ-2,4-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロ-2,5-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロ-2,6-ナフタレンジカルボン酸、及びデカヒドロ-2,7-ナフタレンジカルボン酸からなる群より選択されることが特に好ましい。あらゆる所望の混合物を使用することも可能である。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸が非常に特に好ましい。
【0070】
脂環式酸に加えて、少量の更なる脂肪族酸を使用することもできる。方法工程(i)において、最大20mol%、より好ましくは最大10mol%、非常に特に好ましくは最大5mol%の更なる脂肪族酸が更に存在し、ここで、この酸は脂環式酸ではないことが特に好ましい。更なる脂肪族酸は、好ましくは、2,2,4-トリメチルアジピン酸、2,4,4-トリメチルアジピン酸、2,2,5-トリメチルアジピン酸、及び3,3-ジメチルグルタル酸からなる群より選択される。
【0071】
同様に、本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つのジアリールカーボネートが使用される。ここで、少なくとも1つのジアリールカーボネートは、式(2)
【化28】
(式中、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC~C34アルキル、C~C34アルキルアリール、C~C34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、カルボキシル含有基、又はハロゲン基を表す)の化合物からなる群より選択されることが好ましい。好ましくは、R、R’、及びR’’は、それぞれ独立して、同一又は異なる場合があり、水素、任意に分岐したC~C34アルキル、C~C34アルキルアリール、C~C34アリール、ニトロ基、カルボニル含有基、又はハロゲン基を表す。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、好ましくは、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネート、ビス(メチルサリチル)カーボネート、ビス(エチルサリチル)カーボネート、ビス(プロピルサリチル)カーボネート、ビス(2-ベンゾイルフェニル)カーボネート、ビス(フェニルサリチル)カーボネート、及び/又はビス(ベンジルサリチル)カーボネートである。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、好ましくは、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、ジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネート、ビス(2-ベンゾイルフェニル)カーボネート、ビス(フェニルサリチル)カーボネート、及び/又はビス(ベンジルサリチル)カーボネートである。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、特に好ましくは、ジフェニルカーボネート、4-tert-ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)カーボネート、ビフェニル-4-イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル-4-イル)カーボネート、4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニルフェニルカーボネート、及び/又はジ[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル]カーボネートである。少なくとも1つのジアリールカーボネートは、特に好ましくは、ジフェニルカーボネートである。
【0072】
さらに、本発明によれば、方法工程(i)において、少なくとも1つの触媒が存在する。これは、好ましくは、無機塩基及び/又は有機触媒である。少なくとも1つの触媒は、特に好ましくは、5以下のpKを有する無機塩基又は有機塩基である。
【0073】
少なくとも1つの無機塩基又は少なくとも1つの有機触媒が、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、及びマグネシウムの水酸化物、炭酸塩、ハロゲン化物、フェノキシド、ジフェノキシド、フッ化物、酢酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、及びホウ酸塩(boranates)、水酸化テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルホウ酸テトラフェニルホスホニウム、水酸化ジメチルジフェニルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムフェノキシド、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-フェニル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7,7’-ヘキシリデンジ-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7,7’-デシリデンジ-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7,7’-ドデシリデンジ-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、ホスファゼン塩基P1-t-oct(tert-オクチルイミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン)、ホスファゼン塩基P1-t-butyl(tert-ブチル-イミノトリス(ジメチルアミノ)ホスホラン)、並びに2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザ-2-ホスホラン(BEMP)からなる群より選択されることも好ましい。あらゆる所望の混合物を使用することも可能である。
【0074】
少なくとも1つの触媒は、特に好ましくは有機塩基、好ましくは上記の有機塩基、非常に特に好ましくはアルキルアミン、イミダゾール(誘導体)、トリアザビシクロデセン等のグアニジン塩基、DMAP及び対応する誘導体、DBN、並びにDBU、最も好ましくはDMAPである。これらの触媒は、本発明による方法工程(ii)において、これらが、例えば減圧によって、縮合時に脱離した化学的化合物とともに分離除去され得るという特定の利点をもたらす。これは、得られるポリエステルカーボネートが僅かな含有量の触媒しか含まないか、又は更には全く含まないことを意味する。これは、ポリマーが、例えばホスゲンが使用される経路において常に形成される無機塩を含まないという特定の利点をもたらす。そのような塩は、ポリエステルカーボネートの安定性に悪影響を及ぼし得ることが知られている。それというのも、対応する分解に関してイオンが触媒作用を有し得るからである。
【0075】
少なくとも1つの触媒を、1molの脂環式ジカルボン酸に対して、1ppm~5000ppm、好ましくは5ppm~1000ppm、特に好ましくは20ppm~200ppmの量で使用することが好ましい。
【0076】
別の実施形態においては、本発明による方法は、方法工程(i)における反応を、少なくとも1つの第1の触媒及び/又は第2の触媒の存在下で行い、かつ方法工程(ii)における縮合を、少なくとも第1の触媒及び第2の触媒の存在下で行い、ここで、第1の触媒が、少なくとも1つの第三級窒素塩基であり、第2の触媒が、少なくとも1つの塩基性化合物、好ましくは塩基性アルカリ金属塩であり、かつ方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合が、方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、0.0008重量%~0.0050重量%であることを特徴とする。
【0077】
したがって、この実施形態においては、方法工程(i)において、第1の触媒及び/又は第2の触媒が存在する。
【0078】
第1の触媒は、第三級窒素塩基である。この第1の触媒は、好ましくは、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、ヘキサメチルホスホルイミド(hexamethylphosphorimide)トリアミド、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロデカ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、DBN、エチルイミダゾール、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、ピリジン、TMG、及びこれらの物質の混合物から選択される。より好ましくは、第1の触媒は、グアニジンから誘導される塩基、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、及び1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンから選択される。4-ジメチルアミノピリジンを使用することが特に好ましい。
【0079】
第1の触媒は、好ましくは、それぞれの場合に方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、0.002重量%~0.10重量%の量で、より好ましくは、0.005重量%~0.050重量%の量で、特に好ましくは、0.008重量%~0.030重量%の量で使用される。
【0080】
第2の触媒は、無機又は有機のアルカリ金属塩及び無機又は有機のアルカリ土類金属塩からなる群より選択されることが好ましい。より好ましくは、方法工程(ii)において存在するアルカリ金属カチオンは、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン、及びそれらの混合物である。
【0081】
使用される第2の触媒は、好ましくは弱酸(25℃で3から7の間のpKa)の有機又は無機のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である。適切な弱酸は、例えば、カルボン酸、好ましくはC~C22カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、安息香酸、4-メトキシ安息香酸、3-メチル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、p-トルエン酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ポリカルボン酸の部分エステル、例えばコハク酸のモノエステル、分岐状脂肪族カルボン酸、例えば、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、2,2-ジメチブタン酸、及び2-エチルヘキサン酸である。しかしながら、同様に、例えば塩酸等の強酸の有機又は無機のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を使用することも可能である。
【0082】
適切な有機塩及び無機塩は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸リチウム、オレイン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、並びにBPAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、及び二リチウム塩である、又はそれらから誘導される。炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、及び対応するオレイン酸塩を使用することも可能である。フェノール類、特にフェノールの対応する塩も使用することができる。これらの塩を、個別に又は混合物にて使用することができる。
【0083】
第2の触媒は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、塩化リチウム、リチウムアセチルアセトナート、及び炭酸セシウム、並びにこれらの物質の混合物からなる群より選択される。ナトリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、塩化リチウム、及び/又はリチウムアセチルアセトナートを使用することが特に好ましい。塩化リチウムは、好ましくは、水溶液として、例えば15%の溶液の形で使用される。
【0084】
方法工程(i)における反応前の、方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物と、方法工程(i)において存在する全ての脂環式ジカルボン酸とのモル比は、好ましくは1:0.6~1:0.05、より好ましくは1:0.5~1:0.15、非常に特に好ましくは1:0.4~1:0.2であることが判明した。
【0085】
特に有利な機械的特性、良好な耐化学薬品性、及び良好な加工特性を達成するために、後続のポリエステルカーボネートにおける脂肪族ジヒドロキシ化合物と脂環式ジカルボン酸との比が高すぎない(すなわち、組み込まれる脂環式ジカルボン酸の含有量が低すぎない)ことが好ましい。イソソルビド等のジヒドロキシ化合物から誘導される単位を高い含有量で有するポリマーは、通常、非常に剛直であるため、不十分な機械的特性を有する。脂環式ジカルボン酸から誘導される単位の含有量が低すぎると、得られるポリマーの加工性も同様により不十分となる。さらに、ポリエステル単位は一般に、ポリエステルカーボネートに良好な耐化学薬品性をもたらすため、脂環式ジカルボン酸から誘導される単位の含有量が、同様に低くなりすぎるべきではない。
【0086】
本発明によれば、方法工程(i)における反応前の、方法工程(i)において存在する全ての脂肪族ジヒドロキシ化合物と、方法工程(i)において存在する全ての脂環式ジカルボン酸とのモル比が、1:0.6~1:0.05、好ましくは1:0.55~1:0.1、特に好ましくは1:0.5~1:0.15であることが特に好ましい。本発明によれば、分子量の増加、したがって表面更新が、特にこの範囲内で特に良好であることが判明した。
【0087】
本発明によれば、本発明による方法において、
60部~90部のイソソルビド、好ましくは65部~85部のイソソルビド又はイソソルビド異性体、
40部~10部の脂環式ジカルボン酸、好ましくは35部~15部の脂環式ジカルボン酸、好ましくは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、
の場合に特に有利である。
【0088】
2mol%~25mol%、好ましくは3mol%~20mol%、特に好ましくは4mol%~18mol%のイソソルビドが、少なくとも1つの更なる脂肪族ジオール、特に2個~10個の炭素原子を有する線状、非常に好ましくは分岐状ジオールによって置き換えられる。ここで、全組成物中の少なくとも1つの脂肪族ジオールの総量は、好ましくは20mol%未満、特に15mol%未満である。
【0089】
本発明による方法は、この方法の間に二酸化炭素が放出されることを特徴とする。本発明によれば、二酸化炭素は、好ましくは方法工程(i)において脱離される(上記の反応スキームを参照)。この手順により、低い熱応力で迅速な反応が可能となる。
【0090】
さらに、本発明の方法工程(i)は、好ましくは、以下の工程(ia)~工程(ic)の少なくとも1つ、特に好ましくは全てを含む:
【0091】
(ia)方法工程(i)において存在する全ての成分、すなわち、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸、少なくとも1つのジアリールカーボネート、並びに少なくとも成分(A)及び成分(B)を少なくとも、少なくとも1つの触媒の存在下で溶融する工程。これは、好ましくは、保護ガス雰囲気下、好ましくは窒素下及び/又はアルゴン下で行われる。工程(ia)は、好ましくは、溶媒の不存在下で行われる。「溶媒」という用語は、この文脈において、当業者に知られている。本発明によれば、「溶媒」という用語は、好ましくは、方法工程(i)及び方法工程(ii)のいずれにおいても化学反応を起こさない化合物を意味すると理解される。反応によって形成される化合物(例えば、ジフェニルカーボネートが少なくとも1つのジアリールカーボネートとして使用される場合のフェノール)は除外される。当然ながら、出発化合物における微量の溶媒の存在は排除され得ない。この場合は、本発明により含まれることが好ましい。しかしながら、本発明によれば、そのような溶媒を添加する能動的な工程を避けることが好ましい。
【0092】
(ib)混合物、好ましくは工程(ia)から得られた溶融物を加熱する工程。工程(ia)と工程(ib)とは重複する場合もある。それというのも、工程(ia)において溶融物を生ずるには同様に加熱が必要となり得るからである。加熱は、好ましくは、最初は150℃~180℃の温度で行われる。
【0093】
(ic)混合物、好ましくは工程(ib)から得られた混合物を、好ましくは撹拌により、混合エネルギーを導入しながら反応させる工程。この場合にも、工程(ic)は工程(ib)と重複する場合がある。それというのも、加熱により既に混合物の反応が開始している場合があるからである。この場合に、溶融物は、好ましくは、標準圧力下で、工程(ib)の結果として150℃から180℃の間の温度に既に加熱されている。選択される触媒に応じて、温度を160℃~200℃の範囲内に留めることができる。一方で、工程(ic)における温度は、観察される反応性に応じて、200℃~300℃、好ましくは210℃~260℃、特に好ましくは215℃~240℃に段階的に高められる。反応性は、当業者に既知のように、ガスの発生から推定され得る。この工程においては、原則的により高い温度も可能であるが、より高い温度では二次反応(例えば、変色)が発生する可能性がある。したがって、より高い温度はあまり好ましくはない。ガスの発生が殆ど止むまで、混合物を標準圧力下で撹拌する。本発明によれば、これらの条件下で、少なくとも1つのカルボン酸と、少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応により形成されるアリールアルコール(例えば、ジフェニルカーボネートを使用する場合にはフェノール)を、既に部分的に除去することも可能である。
【0094】
本発明によれば、ジヒドロキシ化合物(A)及び/又は(B)の少なくとも1つが同様にこの時点までに既に反応し始めていることも観察された。例えば、ジヒドロキシ化合物(A)及び/又は(B)の少なくとも1つと少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応からのカーボネート単位及び/又はジヒドロキシ化合物(A)及び/又は(B)の少なくとも1つと少なくとも1つのジカルボン酸との反応からのエステル単位を含むオリゴマーを検出することができた。
【0095】
したがって、本発明によれば、方法工程(ii)を実施する前に、方法工程(i)から得られる混合物が、ジヒドロキシ化合物(成分(A)及び/又は成分(B))の少なくとも1つと少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応からのカーボネート単位及び/又はジヒドロキシ化合物(成分(A)及び/又は成分(B))の少なくとも1つの反応からのエステル単位を含むオリゴマーを含むことが好ましい。
【0096】
工程(ic)における反応時間は、出発材料の量に依存する。好ましくは、工程(ic)における反応時間は、0.5時間から24時間の間、好ましくは0.75時間から5時間の間、特に好ましくは1時間から3時間の間である。この場合に、ガスの発生が殆ど収まるような反応時間を選択することが好ましい(上記の反応スキームを参照)。
【0097】
本発明によれば、方法工程(i)における反応前の、方法工程(i)において存在する全てのジヒドロキシ化合物及び方法工程(i)において存在する全ての脂環式ジカルボン酸の合計と、方法工程(i)において存在する全てのジアリールカーボネートとのモル比が、1:0.4~1:1.6、好ましくは1:0.5~1:1.5、更に好ましくは1:0.6~1:1.4、特に好ましくは1:0.7~1:1.3、殊に好ましくは1:0.8~1:1.2、非常に特に好ましくは1:0.9~1:1.1であることが好ましい。当業者は、出発物質の純度に従って対応する最適な比率を選択することができる。
【0098】
方法工程(ii)
方法工程(ii)において、方法工程(i)から得られた混合物を、少なくとも縮合時に脱離した化学的化合物を除去しながら、更なる縮合に供する。本発明によれば、「更なる」縮合という表現は、少なくとも幾らかの縮合が方法工程(i)において既に起こっていることを意味すると理解されるべきである。これは、好ましくは、アリールアルコールの脱離を伴う、少なくとも1つの脂環式ジカルボン酸と少なくとも1つのジアリールカーボネートとの反応である。しかしながら、オリゴマーを形成するために更なる縮合も既に起こっていることが好ましい(これに関しては方法工程(i)を参照)。
【0099】
方法工程(i)において第1の触媒のみ又は第2の触媒のみを使用した場合に、方法工程(i)において使用されなかった触媒を方法工程(ii)において添加する。
【0100】
方法工程(ii)におけるアルカリ金属カチオンの割合は、それぞれの場合に方法工程(i)において使用される全ての成分に対して、好ましくは0.0009重量%~0.0005重量%、特に好ましくは0.0010重量%~0.0045重量%である。
【0101】
好ましい実施形態においては、方法工程(i)において、第1の触媒及び第2の触媒が存在する。
【0102】
第1の触媒の一部及び/又は第2の触媒の一部を方法工程(i)において使用した後に、それぞれの残りを方法工程(ii)において使用することも可能である。
【0103】
しかしながら、第1の触媒及び/又は第2の触媒の総量を方法工程(i)において使用することが好ましい。両方の触媒の総量を方法工程(i)において使用することが最も好ましい。
【0104】
「縮合」という用語は当業者に知られている。これは、好ましくは、(同じ物質又は異なる物質の)2つの分子が化合してより大きな分子が形成されるとともに、化学的に単純な物質の分子が脱離する反応を意味すると理解される。縮合時に脱離したこの化合物は方法工程(ii)において除去される。ここで、縮合時に脱離した化学的化合物を方法工程(ii)において減圧によって除去することが好ましい。したがって、本発明による方法が、方法工程(i)において形成された脂環式ジエステルを下回る、ジヒドロキシ化合物の混合物を下回る、及び少なくとも1つのジアリールカーボネートを下回る沸点を有する揮発性成分を、方法工程(i)での反応の間に、任意に段階的な減圧によって除去することを特徴とすることが好ましい。種々の揮発性成分を除去する場合には、段階的な除去を選択することが好ましい。揮発性成分(複数の場合もある)を可能な限り完全に除去するためにも、段階的な除去を選ぶことが好ましい。揮発性成分は、縮合時に脱離した化学的化合物(複数の場合もある)である。
【0105】
段階的な減圧は、例えば、塔頂温度(overhead temperature)が下がったらすぐに圧力を下げることによって行うことができ、こうして、縮合時に脱離した化学的化合物の連続的な除去が保証される。1mbar、好ましくは1mbar未満の圧力に達したら、所望の粘度に至るまで縮合を続ける。これは、例えば、トルクを監視することによって行うことができる。つまり、所望の撹拌器のトルクに達したら重縮合を止める。
【0106】
縮合生成物は、好ましくは、方法工程(ii)において、200℃~280℃、特に好ましくは210℃~260℃、殊に好ましくは220℃~250℃の温度で取り出される。取り出す間の真空は、更に好ましくは500mbar~0.01mbarである。真空を下げることにより段階的に取り出しを行うことが特に好ましい。最終段階における真空は、非常に特に好ましくは10mbar~0.01mbarである。
【0107】
本発明によるポリエステルカーボネートは、全ての種類の成形品にそのまま加工することができる。これを他の熱可塑性物質及び/又はポリマー添加剤とともに加工して、熱可塑性成形コンパウンドを得ることもできる。成形コンパウンド及び成形品は、本発明の更なる主題である。
【0108】
ポリマー添加剤は、好ましくは、難燃剤、ドリップ防止剤、難燃助剤、煙抑制剤、潤滑及び離型剤、核剤、帯電防止剤、導電性添加剤、安定剤(例えば、加水分解安定剤、熱老化安定剤及び紫外線安定剤、及び更にエステル交換防止剤)、流動促進剤、相溶化剤、染料及び顔料、耐衝撃性改良剤及び更に充填剤及び補強剤からなる群より選択される。
【0109】
熱可塑性成形コンパウンドを、例えば、ポリエステルカーボネート及び更なる成分を混合し、これらを慣用のユニット、例えば、内部混練機、押出機、及び二軸スクリューシステムにおいて、好ましくは200℃~320℃の温度で溶融コンパウンド化(melt-compounding)及び溶融押出しを行うことにより既知の方法で調製することができる。本発明の文脈においては、この方法は、概してコンパウンド化という。
【0110】
したがって、「成形コンパウンド」という用語は、組成物の成分が溶融コンパウンド化され、溶融押出しされたときに得られる生成物を意味すると理解される。
【0111】
本発明によるポリエステルカーボネートから、又は該ポリエステルカーボネートを含む熱可塑性成形コンパウンドから形成される成形品は、例えば、射出成形、押出し及びブロー成形法により製造することができる。別の加工の形態は、予め製造されたシート又はフィルムからの熱成形による成形品の製造である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0112】
使用される材料:
シクロヘキサンジカルボン酸:1,4-シクロヘキサンジカルボン酸;CAS 1076-97-7 99%;東京化成工業株式会社(日本)、略してCHDA。元素分析によれば、CHDAには1ppm未満のナトリウムが含まれていた。
ジフェニルカーボネート:ジフェニルカーボネート、99.5%、CAS 102-09-0;Acros Organics(ベルギー、ヘール)、略してDPC。
4-ジメチルアミノピリジン:4-ジメチルアミノピリジン;98.0%以上;purum;CAS 1122-58-3;Sigma-Aldrich(ドイツ、ミュンヘン)、略してDMAP。
イソソルビド:イソソルビド(CAS:652-67-5)、99.8%、Polysorb PS A;Roquette Freres(フランス、レストロン62136);略してISB。
水酸化リチウム一水和物(CAS:1310-66-3);99.0%超;Sigma-Aldrich。
2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール:CAS番号115-84-4;Aldrich(略してBEPD)。
2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール:98%(CAS:3010-96-6);ABCR(略してTMCBD)。
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール;CAS番号:144-19-4;Aldrich(略してTMPD)。
ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール);CAS:126-30-7;Aldrich(略してNPG)。
1,4-ブタンジオール:CAS:110-63-4;Merck 99%;(略してBDO)。
1,4-シクロヘキサンジメタノール:CAS:105-08-8、Aldrich 99%(略してCHDM)。
1,12-ドデカンジオール:CAS:5675-51-4、Aldrich 99%(略してDDD)。
【0113】
分析法:
溶液粘度
相対溶液粘度(ηrel;相対ηとも呼ばれる)を、ウベローデ粘度計を使用してジクロロメタン中で5g/lの濃度において25℃にて決定した。この決定はDIN51562-3;1985-05に従って実施された。この方法は、測定されるポリエステルカーボネートのフロータイムをウベローデ粘度計により測定した後に、ポリマー溶液とその溶媒との間の粘度の差を確かめることを含む。このために、純粋な溶媒であるジクロロメタン、トリクロロエチレン、及びテトラクロロエチレンを測定することによってウベローデ粘度計を初期較正する(常に少なくとも3回であるが、多くても9回の測定を行う)。これに続いて、溶媒であるジクロロメタンを使用して実際の較正を行う。次に、ポリマー試料を秤量し、ジクロロメタン中に溶解した後に、この溶液についてフロータイムを3回決定する。ハーゲンバッハ補正を介してフロータイムの平均値を補正して、相対溶液粘度を算出する。
【0114】
ガラス転移温度の決定
ガラス転移温度を、規格DIN EN ISO 11357-1:2009-10及びISO 11357-2:2013-05に従って、窒素下で10K/分の昇温速度において示差走査熱量測定(DSC)によって決定した。ここで、ガラス転移温度(Tg)の決定は、2回目の昇温過程における変曲点として測定された。
【0115】
引張試験
生成物をジクロロメタン中に溶解し、およそ50mgのホスホン酸(水中)で中和した。均質化した後に、ジクロロメタンを周囲空気下で蒸発させ、残りを真空乾燥キャビネット内で可能な限り最高の真空下でおよそ60℃にて除去した。ハンドレバー装置(hand lever machine)及び1.5mmの篩いサイズを有するRetschのミルを使用して、次の機械的粉砕を行った。真空乾燥キャビネット内における70℃及び50mbar未満での予備乾燥をおよそ16時間行った。次に、温度を110℃に上昇させ、乾燥を5時間継続した。
【0116】
引張試験のために、溶融プレスにおいて製造されたフィルムを、少なくとも50mmの長さを有する5mm幅のストリップに切断した。引張試験をASTM D 638規格に従って実施した。ストリップを、およそ25℃の室温及びおよそ20%の相対湿度で引き伸ばした。100mm/分の試験速度で0.01MPaの予引張により引張弾性率を確認した。連続測定の試験速度は50mm/分であった。100mm/分から50mm/分への伸び速度の切り替えを、クロスヘッド変位を介して位置制御した。クランプ長さは20mmであった。クランプの破損は見られなかった。引張試験の結果を、それぞれの場合に5回の個々の測定からの平均値としてまとめる。
【0117】
流動挙動を、1999年からのISO 6721-10に従ってプレート-プレート型粘度計を使用して溶融粘度を測定することによって確認する。この場合に、1ヘルツ及び10ヘルツでの粘度の値を使用する。
【0118】
溶融粘度を、TA Instruments(米国デラウェア州(19720)、ニューキャッスル)製のAres G-2回転式レオメーターを使用して決定した。プレート-プレート型の形状を使用した(25mmの直径)。プレートの直径は25mm(PP25)になる。蒸発残留物が含まれる試料を最初に真空乾燥キャビネット内でおよそ80℃にて乾燥させ、次に、ホットプレスを使用して240℃でプレスして薄いフィルムにする。ガラス転移温度を上回る様々な温度で試料を測定した。測定が線形弾性範囲内で行われるように測定中の変形を選択した。その後、様々な温度での測定結果を、時間・温度重ね合わせを使用して基準温度200℃でのマスターカーブにシフトさせた。
【0119】
比較例1(追加のジオールを用いない実験)
まず、17.20g(0.10mol)の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及び29.83g(0.204mol)のイソソルビド、及び64.30g(0.3mol)のジフェニルカーボネート、0.0111gのDMAP(4-ジメチルアミノピリジン;出発材料CHDA、DPC、及びISBに対して100ppm)、及びおよそ30ppmのLiに相当する115μlの水酸化リチウムの水溶液(100g/l)を、短行程分離機を備えたフラスコに入れた。脱気及び窒素による通気を4回行うことにより、混合物から酸素を除去した。混合物を溶融し、撹拌しながら標準圧力で160℃に加熱した。混合物を160℃で40分間、175℃で60分間、190℃で30分間、205℃で10分間撹拌した。この操作の間に、二酸化炭素が継続的に発生した。COの発生が止んだら、浴温度を220℃に調整した。更に20分後に、真空を適用した。30分間かけて圧力を10mbarに下げた。この工程の間に、フェノールを連続的に除去した。混合物を10mbarで約10分間撹拌した。次に、圧力を1mbar未満(およそ0.7mbar)に下げ、更に10分間縮合を続けた。その後、混合物の処理を止めた。
【0120】
1.33の相対ηの溶液粘度を有する淡黄色のポリマーが得られた。
【0121】
比較例1について記載されるようにして、その他の実施例(Ex.)及び比較例(Comp.)を実施した。まず、実施例1とは異なり、更に表1においてそれぞれ指定された脂肪族ジオールを、ポリマーを形成する全ての他のモノマー及び触媒と一緒に、短行程分離機を備えたフラスコに入れた。
【0122】
【表1】
【0123】
本発明による実施例1~実施例9は、本発明による追加ジオールの量が遵守される限り、本発明の方法により所望のポリエステルカーボネートが高い粘度で得られたことを示している。ここで、更なる脂肪族、分岐状ジオールの添加により、更なる脂肪族ジオールが存在しない例と比較して分子量の大幅な上昇が引き起こされることが分かる(比較例1を参照)。温度が高いほど良好な混和性が観察されたことから、これは、分子量の更なる増加が起こった可能性があることを意味している。過剰量の追加のジオールを使用すると(比較例5~比較例7を参照)、分子量の増加が明らかにより低い。さらに、ポリエステルカーボネートにおいて構造単位(B)が存在すると、最初に弾性率及び破断点伸び等の機械的特性が低下するが、全体としてより高い分子量が達成され得ることが分かる。構造単位(B)の割合が高いほど、弾性率及び破断点伸び等の機械的特性が優れる。しかしながら、構造単位(B)の割合が過剰であると今度は低い分子量がもたらされるため、またもや機械的特性が悪化する。したがって、本発明による構造単位(B)の量範囲において、機械的特性と分子量との間の良好なバランスが達成される。さらに、高い分子量はより低い末端基含有量につながる。分子量の減少は通常鎖末端に由来するため、これは原理的に有利である。
【0124】
弾性率及び破断点伸びについての誤差値は比較的高いことに留意すべきである。これは、比較的少量の試料が使用され、場合によっては気泡の形成が見られたという事実によるものである。しかしながら、当業者は、これらの誤差にもかかわらず得られた値が意義深いことを理解する。
【0125】
同様に、分岐(分岐状アルキレン基及び分岐状シクロアルキレン基の両方)を含む追加のジオールを使用すると、より高い溶液粘度にもかかわらず、同等のTg値でより低い剪断粘度がもたらされることが分かる。
【国際調査報告】