(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】ポリアルファ-1,6-グルカンエステルを含む洗濯ケア又は食器ケア組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/22 20060101AFI20230705BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20230705BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20230705BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20230705BHJP
C11D 3/386 20060101ALI20230705BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20230705BHJP
C11D 3/395 20060101ALI20230705BHJP
C11D 3/12 20060101ALI20230705BHJP
C11D 3/40 20060101ALI20230705BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20230705BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20230705BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20230705BHJP
C08B 37/00 20060101ALI20230705BHJP
C12N 9/26 20060101ALN20230705BHJP
C12N 9/48 20060101ALN20230705BHJP
C12N 9/42 20060101ALN20230705BHJP
【FI】
C11D3/22
C11D17/04
C11D17/06
C11D17/08
C11D3/386
C11D3/37
C11D3/395
C11D3/12
C11D3/40
C11D3/50
C11D3/48
C11D1/04
C08B37/00 J
C12N9/26 A
C12N9/48
C12N9/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575182
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 US2021036509
(87)【国際公開番号】W WO2021252559
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】シヴィク、マーク・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】フライター、クリスティン・リン
(72)【発明者】
【氏名】ブティーク、ジャン-ポル
(72)【発明者】
【氏名】フェアウェザー、ニール・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シ、ガン
(72)【発明者】
【氏名】チルトン、ルース
(72)【発明者】
【氏名】グッド、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ジェン-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】アデルマン、ダグラス
【テーマコード(参考)】
4C090
4H003
【Fターム(参考)】
4C090AA02
4C090AA08
4C090BA06
4C090BB03
4C090BB12
4C090BB32
4C090BB52
4C090BB65
4C090BB97
4C090BD03
4C090BD35
4C090BD36
4C090CA38
4C090CA42
4C090DA04
4C090DA11
4C090DA21
4H003AB03
4H003AB19
4H003AB31
4H003AC15
4H003BA09
4H003BA12
4H003BA17
4H003BA18
4H003DA01
4H003DA17
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4H003EA18
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4H003EA27
4H003EB04
4H003EB05
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4H003EB08
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4H003EB14
4H003EB22
4H003EB41
4H003EC01
4H003EC02
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA06
4H003FA07
4H003FA09
4H003FA12
4H003FA15
4H003FA18
4H003FA19
4H003FA26
4H003FA30
4H003FA34
(57)【要約】
本発明は、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、当該ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、
(i)ポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位がアルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介して結合しているグルコース分岐部分を更に含有する、ポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
(a)アリールエステル基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
から選択される1つ以上のエステル基と、
を含み、
当該ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の重合度(DPn)が、5~1400の範囲であり、
エステル基の置換度が、約0.001~約1.50である、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、前記ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、
(i)ポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、前記ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位がアルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介して結合しているグルコース分岐部分を更に含有する、ポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
(a)アリールエステル基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、前記第2のアシル基の前記-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
から選択される1つ以上のエステル基と、
を含み、
前記ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の重合度(DPn)が、5~1400の範囲であり、
エステル基の置換度が、約0.001~約1.50である、組成物。
【請求項2】
前記ポリアルファ-1,6-グルカン骨格のグルコース単位の少なくとも5%が、アルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介した分岐を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エステル基が、独立して、アリールエステル基又は第1のアシル基である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アリールエステル基が、ベンゾイル基、又は少なくとも1つのハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、エーテル、シアノ、若しくはアルデヒド基、又はそれらの組み合わせで置換されたベンゾイル基を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1のアシル基が、アセチル又はプロピオニル基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記アリールエステル基が、ベンゾイル基を含み、前記第1のアシル基が、アセチル又はプロピオニル基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記エステル基が、少なくとも1つの第1のアシル基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記エステル基が、少なくとも1つの第2のアシル基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第2のアシル基の前記-C
X-部分が、CH
2基のみを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2のアシル基の前記-C
X-部分が、
(i)炭素原子鎖における少なくとも1つの二重結合、及び/又は
(ii)少なくとも1つの分岐
を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記エステル基が、少なくとも1つの第1のアシル基及び少なくとも1つの第2のアシル基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
エステル基の置換度が、約0.01~約0.90、好ましくは約0.01~0.80、より好ましくは約0.01~0.70である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、約5~約1200、より好ましくは約10~1100、より好ましくは約15~1000の範囲の重合度を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、二酸化炭素発生試験法によって求めたときに、90日目において少なくとも10%の生分解性を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
液体、ゲル、粉末、ヒドロコロイド、水溶液、顆粒、錠剤、カプセル、単区画サッシェ、多区画サッシェ、単区画パウチ、又は多区画パウチの形態である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
界面活性剤、酵素、洗剤ビルダー、錯化剤、ポリマー、汚れ放出ポリマー、界面活性増強ポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、抑泡剤、防食剤、汚れ懸濁化剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、香料、飽和若しくは不飽和脂肪酸、移染防止剤、キレート剤、色相染料、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、視覚シグナル伝達成分、消泡剤、構造化剤、増粘剤、固化防止剤、デンプン、砂、ゲル化剤、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記酵素が、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、又はそれらの組み合わせである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
洗濯洗剤製品であり、洗浄性界面活性剤を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
洗浄性界面活性剤と、以下の構造によって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物と、を含む、食器ケア又は洗濯ケア組成物:
【化1】
(式中、各R’は、独立して、
(a)グルコース分岐部分、
(b)アリールエステル官能基、
(c)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(d)第2のアシル基であって、-CO-C
X-COOH(式中、前記第2のアシル基の前記-C
X-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上であり、
各Rは、独立して、
(a)アリールエステル官能基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-C
X-COOH(式中、前記第2のアシル基の前記-C
X-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上であり、
グルコースモノマー単位の40%以上が、アルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、nは少なくとも5であり、前記ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位が、アルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介したグルコース分岐部分を更に含有し、
各グリコース分岐部分は、独立して、
(a)アリールエステル官能基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-C
X-COOH(式中、前記第2のアシル基の前記-C
X-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上の基によって修飾され、
前記ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物のエステル基の置換度は、約0.001~約1.50である)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合するグルコースモノマー単位の骨格を有し、置換度が約0.001~約1.50であるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素合成又は微生物の遺伝子操作を使用して新規構造の多糖類を見つけたいという欲求によって駆り立てられて、研究者らは、生分解性であり、再生可能な原料から経済的に作製することができるオリゴ糖類及び多糖類を発見した。酵素合成又は微生物の遺伝子操作から得られた疎水変性多糖類は、洗濯、布地ケア、洗浄、及びパーソナルケア組成物などの液体製剤において粘度調整剤、乳化剤、皮膜形成剤として利用することができる。
【0003】
洗濯、布地、食器洗浄、又は他の洗浄組成物を含む最新の洗剤組成物は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性、双性イオン性、及び/又は半極性の界面活性剤などの一般的な洗剤成分に加えて、プロテアーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、及び/又はペルオキシダーゼなどの酵素も含む。洗濯洗剤及び/又は布地ケア組成物は、きれいで、フレッシュで、衛生的であるだけでなく、外観及び一体性も保持されている布地を得るための1つ以上の目的を持った様々な洗剤成分を更に含んでいてもよい。したがって、香料、衛生剤、昆虫防除剤、漂白剤、布地柔軟剤、染料固定剤、汚れ放出剤、及び布地増白剤などの有益剤が、洗濯洗剤及び/又は布地ケア組成物に組み込まれている。そのような洗剤成分を使用する際、これらの化合物の一部は、洗濯及び/又は布地ケアプロセス中又はその後に有効になるように布地に付着することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/002646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
布地ケアなどの水性用途において、例えば、洗濯洗剤において、並びに洗濯ケア及び食器ケア用途において、付着防止及び/若しくは灰色化防止剤並びに/又は白色度有益剤として使用することができる新規材料が継続的に必要とされている。再生可能資源から作製することができ、生分解性であるそのような材料が依然として必要とされている。
【0006】
米国特許出願公開第2020/002646号は、少なくとも1つの親水性基及び少なくとも1つの疎水性基で置換された多糖誘導体を含む組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、当該ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、
(i)ポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位がアルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介して結合しているグルコース分岐部分を更に含有する、ポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
(a)アリールエステル基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
から選択される1つ以上のエステル基と、
を含み、
当該ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の重合度(DPn)が、5~1400の範囲であり、
エステル基の置換度が、約0.001~約1.50である、組成物に関する。
【0008】
一実施形態では、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%は、α-1,2-又はα-1,3-グリコシド結合を介して結合しているグリコシド分岐部分を有する。
【0009】
一実施形態では、エステル基の置換度は、約0.01~約0.90であり得る。別の実施形態では、エステル基の置換度は、約0.01~約0.80である。更なる実施形態では、エステル基の置換度は、約0.01~約0.70である。
【0010】
ポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、約5~約1400の範囲の重量平均重合度を有する。
【0011】
一実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、二酸化炭素発生試験法によって求めたときに、90日目において少なくとも10%の生分解性を有する。
【0012】
一実施形態では、エステル基の修飾は、独立して、H、アリールエステル基、又は第1のアシル基である。一実施形態では、アリールエステル基は、ベンゾイル基、又は少なくとも1つのハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、エーテル、シアノ、若しくはアルデヒド基、又はそれらの組み合わせで置換されたベンゾイル基を含む。一実施形態では、第1のアシル基は、アセチル、エタノイル、又はプロピオニル基である。一実施形態では、エステル基の修飾は、独立して、H、アリールエステル基、又は第1のアシル基であり、当該アリールエステル基は、ベンゾイル基を含み、当該第1のアシル基は、アセチル、エタノイル、又はプロピオニル基である。一実施形態では、エステル基の修飾は、少なくとも1つの第1のアシル基を含む。一実施形態では、エステル基の修飾は、少なくとも1つの第2のアシル基を含む。一実施形態では、エステル基の修飾は、少なくとも1つの第1のアシル基及び少なくとも1つの第2のアシル基を含む。一実施形態では、エステル基の修飾は、少なくとも1つの第2のアシル基(式中、-Cx-部分は、CH2基のみを含む)を含む。一実施形態では、エステル基の修飾は、少なくとも1つの第2のアシル基を含み、当該第2のアシル基の-Cx-部分は、i)炭素原子鎖における少なくとも1つの二重結合及び/又はii)有機基を含む少なくとも1つの分岐を含む。一実施形態では、アシル基又はアリール基は、C1~C6アルキル基で分岐していてもよい。
【0013】
別の実施形態では、組成物は、液体、ゲル、粉末、ヒドロコロイド、水溶液、顆粒、錠剤、カプセル、単区画サッシェ、多区画サッシェ、パッド、単区画パウチ、又は多区画パウチの形態である。
【0014】
更に別の実施形態では、組成物は、界面活性剤、酵素、洗剤ビルダー、錯化剤、ポリマー、分散剤、汚れ放出ポリマー、界面活性増強ポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、抑泡剤、防食剤、汚れ懸濁化剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、香料、飽和若しくは不飽和脂肪酸、移染防止剤、キレート剤、色相染料、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、視覚シグナル伝達成分、消泡剤、構造化剤、増粘剤、固化防止剤、デンプン、砂、ゲル化剤、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含む。
【0015】
一実施形態では、酵素は、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、又はそれらの組み合わせである。一実施形態では、酵素は、セルラーゼである。別の実施形態では、酵素は、プロテアーゼである。更なる実施形態では、酵素は、アミラーゼである。
【0016】
本発明によるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、以下の構造によって表すこともできる:
【0017】
【化1】
(式中、各R’は、独立して、
(a)グルコース分岐部分、
(b)アリールエステル官能基、
(c)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(d)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上であり、
各Rは、独立して、
(a)アリールエステル官能基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上であり、
グルコースモノマー単位の40%以上が、アルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、nは少なくとも5であり、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位が、アルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介したグルコース分岐部分を更に含有し、
各グリコース分岐部分は、独立して、
(a)アリールエステル官能基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上の基によって修飾され、
ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物のエステル基の置換度は、約0.001~約1.50である)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
引用された全ての特許及び非特許文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書で使用するとき、用語「実施形態」又は「開示」は、限定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に定義される又は本明細書に記載される実施形態のいずれにも広く適用される。これらの用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0020】
本開示では、多数の用語及び略語が使用される。特に明記しない限り、以下の定義が適用される。
【0021】
要素又は構成要素の前に記載される冠詞「a」、「an」、及び「the」は、その要素又は構成要素の例(すなわち、存在)の数に関して非制限的であることを意図する。「a」、「an」、及び「the」は、1つ又は少なくとも1つを含むと読み取るべきであり、要素又は構成要素の単数形の語形はまた、その数が単数であることを自明に意味していない限り、複数形も含む。
【0022】
用語「含む(comprising)」は、請求項で言及されるような、記載された特徴、整数、ステップ/工程、又は構成要素の存在を意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ/工程、構成要素、又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではないことを意味する。用語「含む(comprising)」は、用語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」という用語によって包含される実施形態を含むことを意図する。同様に、用語「から本質的になる」は、用語「からなる」によって包含される実施形態を含むことを意図する。
【0023】
存在する場合、全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。例えば、「1~5」の範囲が列挙される場合、列挙される範囲は、範囲「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などを含むと解釈されるべきである。
【0024】
数値に関連して本明細書で使用するとき、用語「約」は、その用語が文脈において具体的に定義されない限り、数値の+/-0.5の範囲を指す。例えば、「約6のpH値」という語句は、pH値が具体的に定義されない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0025】
本明細書全体をとおして与えられる全ての最大数値限定は、それよりも小さい全ての数値限定を、このようなより小さい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に含むことを意図する。本明細書全体をとおして与えられる全ての最小数値限定は、それよりも高い全ての数値限定を、このようなより高い数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に含む。本明細書全体をとおして与えられる全ての数値範囲は、このようなより広い数値範囲内に含まれるより狭い全ての数値範囲を、このようなより狭い数値範囲があたかも本明細書に全て明確に記載されているのと同様に含む。
【0026】
本出願において指定される様々な範囲における数値の使用は、別途明示的に示されない限り、記載された範囲内の最小値及び最大値が両方とも「約」という語の後に続くのと同様に近似値として記載される。このようにして、規定の範囲を上回る及び下回るわずかなばらつきを使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を得ることができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間の各値及び全ての値を含む連続範囲として意図される。
【0027】
本開示の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことによって当業者により容易に理解されるであろう。明確にするために、別々の実施形態に関連して上及び下に記載されている本開示の特定の特徴は、単一の要素内で組み合わせて提供されてもよいことを理解されたい。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態に関連して記載される本開示の様々な特徴は、別々に又は任意の部分的組み合わせで提供されてもよい。加えて、単数への言及はまた、文脈上特に明記されない限り、複数を含んでもよい(例えば、「a」及び「an」は、1つ以上を指してもよい)。
【0028】
本明細書で使用するとき、
用語「多糖」は、グリコシド結合によって互いに結合している単糖単位の長鎖で構成される高分子炭水化物分子を意味し、加水分解により、構成要素である単糖又はオリゴ糖が生じる。
【0029】
用語「重量パーセント」、「重量パーセント(重量%)」、及び「重量-重量パーセント(%w/w)」は、本明細書において互換的に使用される。重量パーセントは、組成物、混合物、又は溶液に含まれるときの質量基準での材料の百分率を指す。
【0030】
「水不溶性」という語句は、23℃で1000ミリリットルの水に1グラム未満の多糖類又は多糖類誘導体しか溶解しないことを意味する。
【0031】
用語「水溶性」は、多糖又は多糖誘導体が、25℃でpH7の水に1重量%以上溶解できることを意味する。重量パーセントは、例えば、水100グラム中多糖1グラムなど、水溶性の多糖の総重量に基づく。
【0032】
「疎水性」という用語は、非極性であり、水に対してほとんど又は全く親和性を有しておらず、水をはじく傾向があるない分子又は置換基を指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、用語「モル置換」(M.S.)とは、多糖又はその誘導体のモノマー単位当たりの有機基のモル数を指す。例えば、ポリアルファ-1,6-グルカン誘導体のモル置換値は、例えば、数百又は更には数千単位の非常に高い上限を有し得ることに留意されたい。例えば、ポリアルファ-1,6-グルカンのヒドロキシル基のうちの1つへのエチレンオキシドの付加を介して、有機基がヒドロキシル含有アルキル基である場合、エチレンオキシドからそのように形成されたヒドロキシル基を、次いで、更にエーテル化してポリエーテルを形成することができる。
【0034】
多糖又は多糖誘導体の「分子量」は、数平均分子量(Mn)として、又は重量平均分子量(Mw)として表すことができる。あるいは、分子量は、ダルトン、グラム/モル、DPw(重量平均重合度)、又はDPn(数平均重合度)として表すこともできる。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの、これらの分子量測定値を計算するための様々な手段が当該技術分野において既知である。
【0035】
本明細書で使用するとき、「重量平均分子量」又は「Mw」は、
Mw=ΣNiMi
2/ΣNiMi;(式中、Miは、鎖の分子量であり、Niは、その分子量の鎖の数である)として計算される。重量平均分子量は、静的光散乱、ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)、小角中性子散乱、X線散乱、及び沈降速度などの技術によって決定することができる。
【0036】
本明細書で使用するとき、「数平均分子量」又は「Mn」は、サンプル中の全てのポリマー鎖の統計的平均分子量を指す。数平均分子量は、Mn=ΣNiMi/ΣNi(式中、Miは、鎖の分子量であり、Niは、その分子量の鎖の数である)として計算される。ポリマーの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー、(Mark-Houwink式)を介した粘度測定、及び蒸気圧オスモメトリー、末端基定量、又はプロトンNMRなどの衝突法などの技術によって求めることができる。
【0037】
本明細書で言及されるようなグルコース炭素位置1、2、3、4、5、及び6は、当該技術分野で既知であり、構造Iに示される。
【0038】
【0039】
用語「グリコシド結合」及び「グリコシド連結」は、本明細書では互換的に使用され、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物などの別の基に結合させる共有結合の種類を指す。本明細書で使用するとき、用語「α-1,6-グルコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環における炭素1及び6を介してα-D-グルコース分子を互いに結合させる共有結合を指す。本明細書で使用するとき、用語「α-1,3-グルコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環における炭素1及び3を介してα-D-グルコース分子を互いに結合させる共有結合を指す。本明細書で使用するとき、用語「α-1,2-グルコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環における炭素1及び2を介してα-D-グルコース分子を互いに結合させる共有結合を指す。本明細書で使用するとき、用語「α-1,4-グルコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環における炭素1及び4を介してα-D-グルコース分子を互いに結合させる共有結合を指す。本明細書では、「α-D-グルコース」は、「グルコース」と称される。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「グルコース分岐部分」は、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の分枝として存在するグルコース単位を指す。本発明では、グルコース分岐部分は、アルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介してポリアルファ-1,6グルカン骨格に結合する。
【0041】
グルカン、デキストラン、置換グルカン、又は置換デキストランのグリコシド結合プロファイルは、当該技術分野において既知の任意の方法を用いて求めることができる。例えば、結合プロファイルは、核磁気共鳴(NMR)スペクトル法(例えば、13C NMR又は1H NMR)を使用する方法を使用して求めることができる。使用できるこれら及び他の方法は、Food Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui,Ed.,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
多糖又は多糖誘導体の構造、分子量、及び置換度は、NMRスペクトル法及びサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)などの当該技術分野において既知の様々な生理化学的分析を使用して確認することができる。
【0043】
本開示は、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む洗濯又は食器用組成物であって、当該ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、
(i)ポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位がアルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介して結合しているグルコース分岐部分を更に含有する、ポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
(a)アリールエステル基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
から選択される1つ以上のエステル基と、
を含み、
当該ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の重合度(DPn)が、5~1400の範囲であり、
エステル基の置換度が、約0.001~約1.50である、組成物に関する。
【0044】
任意選択で、骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%は、α-1,2-又はα-1,3-グリコシド結合を介して結合しているグルコース分岐部分を有する。
【0045】
ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の混合物を使用することもできる。
【0046】
本明細書に開示されるポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、疎水性置換基を含有し、置換基の適切な選択及び置換度によって変化させることができる水及び界面活性剤を含有する溶液への溶解性特性によって対象となる。ポリα-1,6-グルカンエステル化合物を含む組成物は、洗濯、洗浄、食品、化粧品、工業、フィルム、及び紙の製造を含む広範囲にわたる用途において有用であり得る。本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含み、25℃でpH7の水に対して1重量%以上の溶解度を有する組成物は、洗濯、食器ケア、及び洗浄などの水系用途において有用であり得る。
【0047】
上述の用途のための生分解性材料の開発に対する関心が高まっている。ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む組成物は、上記の用途において持続可能な材料であり得る。更に、生分解性α-1,6-グルカン誘導体は、環境フットプリントの観点から非分解性材料よりも好ましい。材料の生分解性は、例えば、以下の本明細書における実施例のセクションに開示されているように、当該技術分野で既知の方法によって評価することができる。一実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、二酸化炭素発生試験法(OECD指針301B)によって求めたときに、90日後に少なくとも10%の生分解性を有する。別の実施形態では、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、二酸化炭素発生試験法によって求めたときに、90日目において少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、若しくは80%、又は5%~80%の任意の値の生分解性を有する。更に別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、二酸化炭素発生試験法によって求めたときに、60日目において少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、若しくは60%、又は5%~60%の任意の値の生分解性を有する。
【0048】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、所望の程度の以下の物理的特性のうちの1つ以上を製品にもたらす量で洗剤組成物に含まれ得る:例えば、増粘、凍結/解凍安定性、潤滑性、水分の保持及び放出、質感、稠度、形状保持、乳化、結合、懸濁、分散、及びゲル化。製品中の本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカン誘導体の濃度又は量の例は、重量基準で、例えば、約0.1~3重量%、1~2重量%、1.5~2.5重量%、2.0重量%、0.1~4重量%、0.1~5重量%、又は0.1~10重量%であり得る。
【0049】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、多糖骨格が非置換及び置換アルファ-D-グルコース環を含むように、多糖骨格に沿ってエステル官能基でランダムに置換されたポリアルファ-1,6-グルカンの骨格を含む。
【0050】
骨格グルコースモノマー単位の少なくとも5%がアルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介したグルコース分岐部分を有する実施形態では、分岐のアルファ-D-グルコース環もエステル基でランダムに置換され得る。本明細書で使用するとき、用語「ランダムに置換された」は、ランダムに置換された多糖におけるグルコース環上の置換基が非反復的に又はランダムに存在することを意味する。すなわち、置換グルコース環上の置換は、多糖における第2の置換グルコース環上の置換と同一であっても異なっていてもよく[すなわち、多糖におけるグルコース環の異なる原子上の置換基(同一であっても異なっていてもよい)]、その結果、ポリマー上の置換全体がパターンを有しなくなる。更に、置換グルコース環は、多糖内にランダムに存在する(すなわち、多糖内に置換及び非置換のグルコース環のパターンは存在しない)。
【0051】
反応条件に応じて、構造Iで言及したグルコース炭素位置1、2、3、4、及び6を不均一に置換することが可能である。例えば、炭素位置6における-OH基は、第一級ヒドロキシル基であり、立体障害が少ない環境に存在し得、炭素位置6におけるこのOH基は、特定の反応条件においてより高い反応性を有し得る。したがって、この位置ではより多くのエステル修飾置換が起こり得る。
【0052】
反応条件に応じて、エステル修飾を多糖内で「非ランダム」に生じさせることも可能である。例えば、エステル置換は、多糖のグルコース分岐部分として存在するグルコース単位において不均一に起こり得る。特定の反応条件では、エステル修飾が多糖内でブロック状に存在し得ることも可能である。
【0053】
用語「ポリα-1,6-グルカン」及び「デキストラン」は、本明細書において互換的に使用される。デキストランは、周期的側鎖(分岐)がα-1,3-結合(Ioan et al.,Macromolecules 33:5730-5739)又α-1,2-結合によって直鎖に結合している、概してα-1,6-結合グルコースモノマーの鎖を含む複雑な分岐αグルカンのファミリーを表す。デキストランの生成は、典型的には、スクロースを細菌(例えば、乳酸菌又は連鎖球菌種)で発酵させることによって行われ、スクロースは、デキストラン重合のためのグルコース源として機能する(Naessens et al.、J.Chem.Technol.Biotechnol.80:845~860;Sarwat et al.、Int.J.Biol.Sci.4:379~386;Onilude et al.、Int.Food Res.J.20:1645~1651)。ポリα-1,6-グルカンは、いずれも参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/183714号及び同第2017/091533号に記載されているように、GTF1729、GTF1428、GTF5604、GTF6831、GTF8845、GTF0088、及びGTF8117など(であるが、これらに限定されない)のグルコシルトランスフェラーゼを使用して調製することができる。
【0054】
本明細書に開示されるポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、5~1400の範囲の数平均重合度(DPn)を有し得る。他の実施形態では、DPnは、5~100、又は5~500、又は5~1000、又は5~1100、又は5~1200、又は5~1300、又は5~1400、又は40~500、又は50~400の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、約5~約1400、10~約400、10~約300、10~約200、10~約100、10~約50、400~約1400、約400~約1000、又は約500~約900の重量平均重合度(DPw)を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、グルコースモノマー単位の骨格を含み、当該グルコースモノマー単位の40%以上、例えば、当該グルコースモノマー単位の40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は90%以上が、α-1,6-グリコソジル結合を介して結合する。ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の骨格は、α-1,2、α-1,3、及び/又はα-1,4グリコシド結合を介して結合している、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%のグルコースモノマー単位を含み得る。
【0056】
本明細書におけるデキストラン「長鎖」は、「実質的に(又は大部分が)α-1,6-グルコシド結合」を含み得、これは、いくつかの態様では、少なくとも約98.0%のα-1,6-グルコシド結合を有し得ることを意味する。本明細書におけるデキストランは、いくつかの態様では、「分岐構造」(分岐した構造)を含み得る。この構造では、高い可能性で反復的に、長鎖が他の長鎖から分岐している(例えば、長鎖は、別の長鎖からの分岐であってよく、これ自体も別の長鎖からの分岐であってよいなど)と考えられる。この構造中の長鎖は、「類似の長さ」であり得ると考えられ、これは、分岐構造中の全ての長鎖の少なくとも70%の長さ(DP[重合度])が、分岐構造の全ての長鎖の平均長さプラスマイナス30%以内であることを意味する。
【0057】
いくつかの実施形態では、デキストランはまた、典型的には、1~3グルコースモノマー長であり、典型的には、デキストランポリマーの全てのグルコースモノマーの約10%未満を構成する、長鎖から分岐している「短鎖」も含み得る。このような短鎖は、典型的には、α-1,2-、α-1,3-、及び/又はα-1,4-グルコシド結合を含む(いくつかの態様では、長鎖中に低い百分率のこのような非α-1,6結合が存在し得ることが理解される)。特定の実施形態では、分岐しているポリ-1,6-グルカンは、国際公開第2015/183714号及び同第2017/091533号の手順に従って酵素的に生成され、この場合、例えば、「gtfJ18T1」又は「GTF9905」などのα-1,2-分枝酵素を、デキストランポリマー(多糖)の生成中又は生成後に添加してよい。他の実施形態では、α-1,2-分岐を生成することが知られている任意の他の酵素を添加してよい。α-1,3-分岐を有するポリ-1,6-グルカンは、参照により本明細書に組み込まれるVuillemin et al.(2016、J.Biol Chem.291:7687-7702)又は米国特許出願第62/871,796号に開示されるように調製することができる。そのような実施形態における分岐度のポリα-1,6-グルカン又はその誘導体は、50%、40%、30%、20%、10%、又は5%以下(又は5%~50%の任意の整数値)の短分岐、例えば、α-1,2-分岐又は1,3-分岐を有する。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン又はポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、50%未満のα-1,2-分岐度を有する。別の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン又はポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、少なくとも5%のアルファ-1,2-分岐度を有する。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の骨格グルコースモノマー単位の少なくとも約5%は、α-1,2-又はα-1,3-グリコシド結合を介した分岐を有する。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン又はポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合しているグルコースモノマー単位の骨格を含む。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカン又はポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の少なくとも5%がα-1,2-又はα-1,3グリコシド結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位の骨格を含む。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の少なくとも5%がα-1,2結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位の骨格を含む。一実施形態では、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物は、グルコースモノマー単位の40%以上がα-1,6-グリコシド結合を介して結合し、グルコースモノマー単位の少なくとも5%がα-1,3結合を介した分岐を有する、グルコースモノマー単位の骨格を含む。一実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカン又はポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、主に直鎖状である。α-1,2-分岐又はα-1,3-分岐の量は、実施例に開示されるように、NMR法によって求めることができる。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「置換度」(DoS)とは、存在し得る任意のα-1,2又はα-1,3分岐内のモノマー単位を含む、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の各モノマー単位(グルコース)における置換されたヒドロキシル基の平均数を指す。ポリα-1,6-グルカンポリマー又はポリα-1,6-グルカンエステル化合物におけるグルコースモノマー単位には最大3個のヒドロキシル基が存在するため、全体置換度は3以下であり得る。本明細書に開示されるポリα-1,6-グルカンエステル化合物は約0.001~約3.00の置換度を有し得るので、多糖における置換基は水素のみではあり得ないことが当業者には理解されるであろう。ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の置換度は、特定の置換基に関して、又は全体置換度、すなわち、本明細書で定義されるグルカンエステル化合物の各異なる置換基のDoSの合計に関して記述することができる。本明細書で使用するとき、置換度が特定の置換基の種類に関して記述されていない場合、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の全体置換度を意味する。本明細書で使用するとき、エステル基の置換度は、アリールエステル官能基、-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基を含む、全てのエステル基の全体置換度である。
【0059】
目標DoSは、対象となる特定の用途においてポリα-1,6-グルカンエステル化合物を含む組成物の所望の溶解度及び性能を提供するように選択することができる。
【0060】
本発明で定義されるエステル修飾に加えて、ポリアルファ-1,6グルカンエステル化合物は、他の種類の修飾、又は-O-、-OSO2-、-O-CO-O-、若しくは
【0061】
【化3】
などの他の種類の結合を介してポリアルファ-1,6骨格に接続された修飾を有し得る。他の種類の修飾、又は他の種類の結合を介した修飾は、1未満、より好ましくは0.5未満、より好ましくは0.1未満、最も好ましくは0.05未満の置換度を有することが好ましい。
【0062】
本発明によるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、以下の構造によって表すこともできる:
【0063】
【化4】
(式中、各R’は、独立して、
(a)グルコース分岐部分、
(b)アリールエステル官能基、
(c)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(d)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上であり、
各Rは、独立して、
(a)アリールエステル官能基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上であり、
グルコースモノマー単位の40%以上が、アルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、nは少なくとも5であり、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位が、アルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介したグルコース分岐部分を更に含有し、
各グリコース分岐部分は、独立して、
(a)アリールエステル官能基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上の基によって修飾され、
ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物のエステル基の置換度は、約0.001~約1.50である)。
【0064】
ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%、好ましくは5%超のグルコース単位は、アルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介して結合しているグルコース分岐部分を更に含有する。すなわち、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%、好ましくは5%超のグルコース単位がR’で置換され、R’はグルコース分岐部分である。
【0065】
グルコース分岐部分を含むポリアルファ-1,6グルカン骨格は、グルコースモノマーのヒドロキシル位置1、2、3、4、及び/又は6で更に誘導体化される。グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、少なくとも1つのR及び残りのR’は、本明細書で定義されるエステル基を表している。疎水性基は、独立して、非誘導体化ポリアルファ-1,6-グルカン中に元々存在するヒドロキシル基の代わりに、エステル化学結合(CO-O-、-O-CO-)をとおして多糖骨格に結合する。
【0066】
構造Aのポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、部分構造-CG-O-CO-R’’又は-CG-O-CO-Cx-(式中、「-CG-」は、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の炭素1、2、3、4、又は6を表し、「-CO-R’’」は、第1のアシル基に含まれ、「-CO-Cx-」は、第2のアシル基に含まれる)を含むことから、本明細書では「エステル」と呼ばれる。本明細書における「第1のアシル基」は、-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む。本明細書における「第2のアシル基」は、-CO-Cx-COOHを含む。用語「-Cx-」とは、典型的には2~24個の炭素原子の鎖を含み、各炭素原子が好ましくは4つの共有結合を有する、第2のアシル基の一部分を指す。
【0067】
同様に、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び残りのR’はアリールエステル基であり、構造Aのポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、部分構造-CG-O-CO-Ar(式中、「-CG-」は、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物のグルコースモノマー単位の炭素2、3、又は4を表し、「-CO-Ar」は、アリールエステル基に含まれる)を含むことから本明細書では「エステル」と呼ばれる。本明細書で使用するとき、用語「アリール」(本明細書では「Ar」と略される)は、単一の環(例えば、フェニル)、複数の環(例えば、ビフェニル)、又は少なくとも1つが芳香族である複数の縮合環(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、又はフェナントリル)を有する芳香族炭素環式基を意味し、これは、任意選択で、メチル、エチル、又はプロピル基などのアルキル基で一置換、二置換、又は三置換される。本明細書で使用するとき、用語「アリールエステル基」は、-CO-Arとして表される部分を形成するためにカルボニル基で置換されたアリール基を意味する。
【0068】
グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、ポリアルファ-1,6-グルカンエステルのR及び残りのR’は、同じであっても異なっていてもよい。ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の混合物を使用することもできる。
【0069】
ポリアルファ-1,6-グルカンエステルは、ポリアルファ-1,3-グルカンエステルについて開示されたものと同様の方法を使用して調製することができる。例えば、R’が-CO-R’’を含む第1のアシル基であるポリアルファ-1,6-グルカンエステルは、ポリアルファ-1,3-グルカンを少なくとも1つの酸触媒、少なくとも1つの酸無水物、及び少なくとも1つの有機酸と実質的に無水の反応で接触させる国際公開第2014/105698号に開示されているものと同様の方法を使用して調製することができる。R’が-CO-Cx-COOHを含む第2のアシル基であるポリアルファ-1,6-グルカンエステルは、ポリアルファ-1,3-グルカンを環状有機無水物と接触させる国際公開第2017/003808号に開示されているものと同様の方法を使用して調製することができる。R’がアリール基、又は-CO-R’’を含む第1のアシル基であるポリアルファ-1,6-グルカンエステルは、ポリアルファ-1,3-グルカンを実質的に無水の反応条件下で塩化アシル又は酸無水物と反応させる国際公開第2018/098065号に開示されているものと同様の方法を使用して調製することができる。多糖をエステル化するための他の方法は、Thomas Heinzeらによる「Esterification of Polysaccharides」、Springer Laboratories、2006年、ISBN 3-540-32103-9に開示されている。
【0070】
グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、ポリアルファ-1,6グルカンエステル化合物における各R及び残りのR’基は、独立して、H、アリールエステル基、-CO-R’’(式中、R’’は、本明細書で定義される1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、又は第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、第2のアシル基の-Cx-部分は、本明細書で定義される2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基であってよく、構造Aのポリアルファ-1,6-グルカンエステルは、約0.001~約1.5の範囲のDoSを有する。いくつかの実施形態では、DoSは、約0.01~約0.7、又は約0.01~約0.4、又は約0.01~約0.2、又は約0.05~約3、又は約0.001~約0.4であり得る。あるいは、Dosは、約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、又は0.001~3の任意の値であり得る。ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の置換度は、特定の置換基に関して、又は全体置換度、すなわち、本明細書で定義されるグルカンエステル化合物の各異なる置換基のDoSの合計に関して記述することができる。本明細書で使用するとき、置換度が特定の置換基の種類に関して記述されていない場合、ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の全体置換度を意味する。
【0071】
構造Aによって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物の一実施形態では、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び残りのR’は、アリールエステル基である。一実施形態では、アリールエステル基は、ベンゾエート基とも呼ばれるベンゾイル基(-CO-C6H5)を含む。更なる実施形態では、アリールエステル基は、以下の構造IV(a)~IV(I)によって表されるとおり、少なくとも1つのハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、エーテル、シアノ、若しくはアルデヒド基、又はそれらの組み合わせで置換されたベンゾイル基を含む:
【0072】
【0073】
多くの置換ベンゾイルハロゲン化物は市販されており、当該技術分野で既知の方法を使用してポリアルファ-1,6-グルカンの置換安息香酸エステルを調製するために使用することができる。
【0074】
構造Aによって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物の一実施形態では、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び残りのR’は、-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基である。第1のアシル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状であってよい。直鎖状である第1のアシル基の例としては、例えば、エタノイル基(-CO-CH3)、
プロパノイル基(-CO-CH2-CH3)、ブタノイル基(-CO-CH2-CH2-CH3)、
ペンタノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ヘキサノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ヘプタノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
オクタノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ノナノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
デカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ウンデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ドデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
トリデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
テトラデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ペンタデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ヘキサデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ヘプタデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
オクタデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ノナデカノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
エイコサノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ウンエイコサノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ドコサノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
トリコサノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
テトラコサノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、
ペンタコサノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)、及び
ヘキサコサノイル基(-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3)が挙げられる。
【0075】
上記の一般名は、アセチル(エタノイル基)、プロピオニル(プロパノイル基)、ブチリル(ブタノイル基)、バレリル(ペンタノイル基)、カプロイル(ヘキサノイル基)、エナンチル(ヘプタノイル基)、カプリリル(オクタノイル基)、ペラルゴニル(ノナノイル基)、カプリル(デカノイル基)、ラウロイル(ドデカノイル基)、ミリスチル(テトラデカノイル基)、パルミチル(ヘキサデカノイル基)、ステアリル(オクタデカノイル基)、アラキジル(エイコサノイル基)、ベヘニル(ドコサノイル基)、リグノセリル(テトラコサノイル基)、及びセロチル(ヘキサコセノイル基)である。
【0076】
分岐鎖状である第1のアシル基の例としては、2-メチルプロパノイル基、2-メチルブタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、3-メチルブタノイル基、2-メチルペンタノイル基、3-メチルペンタノイル基、4-メチルペンタノイル基、2,2-ジメチルブタノイル基、2,3-ジメチルブタノイル基、3,3-ジメチルブタノイル基、2-エチルブタノイル基、2-エチルヘキサノイル基、及び2-プロピルヘプタノイル基が挙げられる。
【0077】
一実施形態では、第1のアシル基は、-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含み、少なくとも1つの環式基を含有する)を含む環状アシル基を包含する。環状アシル基の例としては、シクロプロパノイル基、シクロブタノイル基、シクロペンタノイル基、シクロヘキサノイル基、及びシクロヘプタノイル基が挙げられる。
【0078】
構造Aによって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物の別の実施形態では、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び/又は残りのR’は、第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、第2のアシル基の-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基である。本明細書における特定の実施形態では、構造Aのポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、水性条件下でアニオン形態であり得る。このアニオン性挙動は、エステル化された第2のアシル基(-CO-Cx-COOH)におけるカルボキシル基(COOH)の存在によるものである。本明細書におけるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物のカルボキシル(COOH)基は、水性条件下でカルボキシレート(COO-)に変換することができる。これらのアニオン性基は、存在する場合、カリウム、ナトリウム、又はリチウムカチオンなどの塩カチオンと相互作用することがある。
【0079】
用語「反応」又は「エステル化反応」は、ポリアルファ-1,6-グルカン及び少なくとも1つの環状有機無水物を含むか又はそれからなる反応を指すために本明細書では互換的に使用される。ポリアルファ-1,6-グルカンのグルコース単位の1つ以上のヒドロキシル基の環状有機無水物によって提供されるアシル基とのエステル化に好適な条件下(例えば、時間、温度、pH)に反応物を置き、それによって、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び/又は残りのR’が本明細書に定義される-CO-Cx-COOHを含む第2のアシル基を含む、構造Aのポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を生成することができる。
【0080】
本明細書における環状有機無水物は、以下に示す構造IVによって表される式を有することができる:
【0081】
【0082】
構造IVの-Cx一部分は、典型的には、2~24個の炭素原子の鎖を含み、この鎖における各炭素原子は、好ましくは、4つの共有結合を有する。いくつかの実施形態では、-Cx-部分は、2~8、2~16、2~18、又は2~24個の炭素原子の鎖を含み得ることが企図される。エステル化反応中、環状有機無水物の無水物基(-CO-O-CO-)が分解され、その結果、分解された無水物の一端が-COOH基になり、他端がポリアルファ-1,6-グルカンのヒドロキシル基に対しエステル化され、それによって、エステル化された第2のアシル基(-CO-Cx-COOH)になる。使用される環状有機無水物に応じて、典型的には、そのようなエステル化反応の1つ又は2つの可能な生成物が存在し得る。
【0083】
概して、鎖内の各炭素は、鎖内の隣接する炭素原子又は隣接するC=O及びCOOH基の炭素原子と共有結合していることは別にして、水素、有機基などの置換基にも結合し得る、及び/又は炭素-炭素二重結合にも関与し得る。例えば、-Cx-鎖における炭素原子は、飽和していてよい(すなわち、-CH2-)、-Cx-鎖における隣接する炭素原子と二重結合してよい(例えば、-CH=CH-)、並びに/又は水素及び有機基に結合してよい(すなわち、1つの水素が有機基で置換される)。当業者であれば、炭素の原子価が4であることに鑑みて、-CO-Cx-COOHを含む第2のアシル基の-Cx-部分の炭素原子が典型的にはどのように結合できるかを理解するであろう。
【0084】
特定の実施形態では、第2のアシル基(-CO-Cx-COOH)の-Cx-部分は、CH2基のみを含む。-Cx-部分がCH2基のみを含む第2のアシル基の例は、-CO-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、
-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、
-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、
-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2- CH2-CH2-COOH、
-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、
-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、
-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、
-CO-(CH2)15-COOH、-CO-(CH2)16-COOH、-CO-(CH2)17-COOH、-CO-(CH2)18-COOH、-CO-(CH2)19-COOH、-CO-(CH2)20-COOH、-CO-(CH2)21-COOH、-CO-(CH2)22-COOH、-CO-(CH2)23-COOH、及び
-CO-(CH2)24-COOHである。これらの第2のアシル基は、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水ピメリン酸、無水スベリン酸、及び他の類似の無水物をポリアルファ-1,6-グルカンと反応させることによって誘導され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、第2のアシル基(-CO-Cx-COOH)の-Cx-部分は、(i)炭素原子鎖における少なくとも1つの二重結合及び/又は(ii)有機基を含む少なくとも1つの分岐を含み得る。例えば、第2のアシル基の-Cx-部分は、炭素原子鎖に少なくとも1つの二重結合を有し得る。-Cx-部分が炭素-炭素二重結合を含む第2のアシル基の例としては、-CO-CH=CH-COOH、-CO-CH=CH-CH2-COOH、-CO-CH=CH-CH2-CH2-COOH、-CO-CH=CH-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH=CH-COOH、-CO-CH2-CH=CH-CH2-COOH、-CO-CH2-CH=CH-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH=CH-COOH、-CO-CH2-CH2-CH=CH-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH=CH-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-COOH、及び-Cx-部分が7~24個の炭素原子を含有するこれらの例の類似体が挙げられる。これらの第2のアシル基の各々は、適切な環状有機無水物をポリアルファ-1,6-グルカンと反応させることによって誘導され得る。例えば、-CO-CH=CH-COOHを含む第2のアシル基を生成するためには、無水マレイン酸をポリアルファ-1,6-グルカンと反応させてよい。したがって、上に列記した第2のアシル基のいずれかに表される-Cx-部分を含む環状有機無水物(環状有機無水物の対応する-Cx-部分は、無水物基[-CO-O-CO-]の各側を互いに結合させて環を形成する部分である)を、ポリアルファ-1,6-グルカンと反応させて、対応する第2のアシル基(-CO-Cx-COOH)を有するそのエステルを生成することができる。
第2のアシル基(-CO-Cx-COOH)の-Cx-部分は、本明細書におけるいくつかの態様では、有機基を含む少なくとも1つの分岐を含み得る。-Cx-部分が少なくとも1つの有機基分岐を含む第2のアシル基の例としては、
-CO-CH2-CH-COOH
CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3
及び
-CO-CH-CH2-COOH
CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3が挙げられる。
【0086】
これらの2つの第2のアシル基は各々、無水2-ノネン-1-イルコハク酸をポリアルファ-1,6-グルカンと反応させることによって誘導され得る。両方のこれらの例における有機基分岐(本明細書では「Rb」と総称される)は、-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH3であることが分かる。また、Rb基が-Cx-炭素鎖における水素と置き換わることも分かる。
【0087】
したがって、例えば、本明細書における第2のアシル基(-CO-Cx-COOH)は、-CO-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、又は-Cx-部分が7~24個の炭素原子を含むが、その少なくとも1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上の水素がRbで置換されている類似の部分のいずれかであってよい。また、例えば、本明細書における第1の基(-CO-Cx-COOH)は、-CO-CH=CH-CH2-COOH、-CO-CH=CH-CH2-CH2-COOH、-CO-CH=CH-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH=CH-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH=CH-COOH、-CO-CH2-CH=CH-CH2-COOH、-CO-CH2-CH=CH-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH=CH-COOH、-CO-CH2-CH2-CH=CH-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH=CH-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH=CH-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH=CH-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH=CH-COOH、又は-Cx-部分が7~24個の炭素原子を含むが、その少なくとも1つ、2つ、3つ、若しくはそれ以上の水素がRbで置換されている類似の部分(このような第2のアシル基は、-Cx-部分が炭素原子鎖における少なくとも1つの二重結合と有機基を含む少なくとも1つの分岐とを含む例である)のいずれかであってよい。本明細書におけるRbの好適な例としては、アルキル基及びアルケニル基が挙げられる。本明細書におけるアルキル基は、例えば、1~18個の炭素を含み得る(直鎖又は分岐鎖)(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、又はデシル基)。本明細書におけるアルケニル基は、例えば、1~18個の炭素(直鎖又は分岐鎖)を含み得る(例えば、メチレン、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル[例えば、2-オクテニル]、ノネニル[例えば、2-ノネニル]、又はデセニル基)。当業者であれば、構造IVによって表される環状有機無水物の式、及び構造Aのポリアルファ-1,6-グルカンエステルを調製するためのエステル化プロセスにおけるその関与に基づいて、これらの第2のアシル基のいずれかを誘導するのに具体的にどの環状有機無水物が好適であるかを理解するであろう。
【0088】
グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び/又は残りのR’が-CO-Cx-COOHを含む第2のアシル基である、構造Aによって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を形成するためにポリアルファ-1,6-グルカンとの反応において使用することができる環状有機無水物の名指しの例としては、無水マレイン酸、無水メチルコハク酸、無水メチルマレイン酸、無水ジメチルマレイン酸、無水2-エチル-3-メチルマレイン酸、無水2-ヘキシル-3-メチルマレイン酸、無水2-エチル-3-メチル-2-ペンテン二酸、無水イタコン酸(無水2-メチレンコハク酸)、無水2-ノネン-1-イルコハク酸、及び無水2-オクテン-1-イルコハク酸が挙げられる。無水アルケニルコハク酸及びアルキルケテンダイマー、例えば、パルミチン酸又は他の長鎖カルボン酸に由来するものを使用することもできる。具体的には、例えば、無水マレイン酸を使用して、第2のアシル基-CO-CH=CH-COOHを提供することができ、無水メチルコハク酸を使用して、第2のアシル基-CO-CH2-CH(CH3)-COOH及び/又は-CO-CH(CH3)-CH2-COOHを提供することができ、無水メチルマレイン酸を使用して、第2のアシル基-CO-CH=C(CH3)-COOH及び/又は-CO-C(CH3)=CH-COOHを提供することができ、無水ジメチルマレイン酸を使用して、第2のアシル基-CO-C(CH3)=C(CH3)-COOHを提供することができ、無水2-エチル-3-メチルマレイン酸を使用して、第2のアシル基-CO-C(CH2CH3)=C(CH3)-COOH及び/又は-CO-C(CH3)=C(CH2CH3)-COOHを提供することができ、無水2-ヘキシル-3-メチルマレイン酸を使用して、第2のアシル基-CO-C(CH2CH2CH2CH2CH2CH3)=C(CH3)-COOH及び/又は-CO-C(CH3)=C(CH2CH2CH2CH2CH2CH3)-COOHを提供することができ、無水イタコン酸を使用して、第2のアシル基-CO-CH2-C(CH2)-COOH及び/又は-CO-C(CH2)-CH2-COOHを提供することができ、無水2-ノネン-1-イルコハク酸を使用して、第2のアシル基-CO-CH2-CH(CH2CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH3)-COOH及び/又は-CO-CH(CH2CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH3)-CH2-COOHを提供することができる。
【0089】
本明細書に開示される構造Aによって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む組成物の一実施形態では、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、各R及び残りのR’は、独立して、H、アリールエステル基、又は-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基である。更なる実施形態では、アリールエステル基は、ベンゾイル基、又は少なくとも1つのハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、エーテル、シアノ、若しくはアルデヒド基、又はそれらの組み合わせで置換されたベンゾイル基を含む。追加の実施形態では、各R’は、独立して、H、アリールエステル基、又は第1のアシル基であり、当該第1のアシル基は、アセチル、エタノイル、プロピオニル基、又はそれらの組み合わせである。更に別の実施形態では、各R’は、独立して、H、アリールエステル基、又は第1のアシル基であり、当該第1のアシル基は、アセチル、エタノイル、プロピオニル基であり、当該アリールエステル基は、ベンゾイル基、あるいは少なくとも1つのハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、エーテル、シアノ、若しくはアルデヒド基、又はそれらの組み合わせで置換されたベンゾイル基を含む。一実施形態では、各R’は、H、ベンゾイル基、アセチル基、又はそれらの組み合わせである。別の実施形態では、各R’は、H、ベンゾイル基、エタノイル基、又はそれらの組み合わせである。更に別の実施形態では、各R’は、H、ベンゾイル基、プロピオニル基、又はそれらの組み合わせである。
【0090】
構造Aによって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む組成物の一実施形態では、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び残りのR’は、-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む少なくとも1つの第1のアシル基を含む。一実施形態では、R’’は、1~12個の炭素原子の鎖を含む。別の実施形態では、R’は、少なくとも1つの第1のアシル基を含み、当該第1のアシル基は、アセチル基を含む。一実施形態では、R’は、少なくとも1つの第1のアシル基を含み、当該第1のアシル基は、エタノイル基を含む。追加の実施形態では、R’は、少なくとも1つの第1のアシル基を含み、当該第1のアシル基は、プロピオニル基を含む。
【0091】
別の実施形態では、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び/又は残りのR’は、少なくとも1つの第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、第2のアシル基の-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、少なくとも1つの第2のアシル基を含む。一実施形態では、R’は、少なくとも1つの第2のアシル基を含み、当該第2のアシル基の-Cx-部分は、2~12個の炭素原子の鎖を含む。一実施形態では、R’は、少なくとも1つの第2のアシル基を含み、当該第2のアシル基は、-CO-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOH、又は-CO-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-CH2-COOHを含む。追加の実施形態では、R’は、少なくとも1つの第2のアシル基を含み、当該第2のアシル基の-Cx-部分は、CH2のみを含む。更に別の実施形態では、R’は、少なくとも1つの第2のアシル基を含み、当該第2のアシル基の-Cx-部分は、炭素原子鎖における少なくとも1つの二重結合及び/又は有機基を含む少なくとも1つの分岐を含む。
【0092】
一実施形態では、グルコース分岐部分として既に定義されたR’に加えて、R及び残りのR’は、少なくとも1つの第1のアシル基及び少なくとも1つの第2のアシル基を含む。
【0093】
一実施形態では、本明細書に開示される構造Aによって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、ポリアルファ-1,6-グルカンスクシネート、ポリアルファ-1,6-グルカンメチルスクシネート、ポリアルファ-1,6-グルカン2-メチレンスクシネート、ポリアルファ-1,6-グルカンマレエート、ポリアルファ-1,6-グルカンメチルマレエート、ポリアルファ-1,6-グルカンジメチルマレエート、ポリアルファ-1,6-グルカン2-エチル-3-メチルマレエート、ポリアルファ-1,6-グルカン2-ヘキシル-3-メチルマレエート、ポリアルファ-1,6-グルカン2-エチル-3-メチルグルタコネート、ポリアルファ-1,6-グルカン2-ノネン-1-イル-スクシネート、ポリアルファ-1,6-グルカン2-オクテン-1-イルスクシネート、ポリアルファ-1,6-グルカンベンゾエート、ポリアルファ-1,6-グルカンアセチルベンゾエート、ポリアルファ-1,6-グルカングルタレート、ポリアルファ-1,6-グルカンラウレート、又はそれらの混合物を含む。
【0094】
所望の用途に応じて、本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む組成物に、様々な組成物、例えば、洗濯ケア、織物/布地ケア、及び/又はパーソナルケア製品で使用するための組成物で使用するのに好適な1つ以上の他の材料及び/又は活性成分を製剤する、例えば、ブレンドする、混合する、又は組み込むことができる。この文脈における「ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む組成物」という用語は、例えば、それぞれ本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む水性製剤、レオロジー調整組成物、布地処理/ケア組成物、洗濯ケア製剤/組成物、又は布地柔軟剤、食器ケア組成物を含み得る。
【0095】
本明細書で使用するとき、用語「有効量」は、所望の効果を達成するのに好適な、使用又は投与される物質の量を指す。物質の有効量は、用途に応じて変化し得る。当業者は、典型的には、取り消し(undo)実験を行うことなく、特定の用途又は対象ごとに有効量を求めることができるであろう。
【0096】
用語「酵素加水分解に対する耐性」は、多糖誘導体の酵素加水分解に対する相対的安定性を指す。加水分解に対する耐性を有することは、洗剤、布地ケア、及び/又は洗濯ケア用途などの酵素が存在する用途におけるこれらの物質の使用にとって重要である。いくつかの実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、セルラーゼに対して耐性である。他の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、プロテアーゼに対して耐性である。なお更なる実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、アミラーゼに対して耐性である。更に他の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカンエステルは、マンナナーゼに対して耐性である。他の実施形態では、ポリアルファ-1,6-グルカンエステルは、複数のクラスの酵素、例えば、2つ以上のセルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、マンナナーゼ、又はこれらの組み合わせに対して耐性である。任意の特定の酵素に対する耐性は、対応する酵素による処理後に、材料の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95又は100%が残存するものとして定義される。残存百分率は、SEC-HPLCを使用して酵素処理後の上清を測定することによって求めることができる。酵素耐性を測定するためのアッセイは、以下の手順を使用して決定することができる:ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物のサンプルをバイアル内の水に添加し、PTFE磁気撹拌子を使用して混合して、1重量パーセント水溶液を作製する。pH7.0及び20℃で水性混合物を生成する。そのポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が完全に溶解した後、1.0ミリリットル(mL)(酵素製剤の1重量パーセント)のセルラーゼ(Puradex(登録商標)EGL)、アミラーゼ(Purastar(登録商標)ST L)プロテアーゼ(Savinase(登録商標)16.0L)、又はリパーゼ(Lipex(登録商標)100L)を添加し、20℃で72時間(h)混合する。72時間撹拌した後、反応混合物を10分間で70℃に加熱して、添加した酵素を不活化し、得られた混合物を室温まで冷却し、遠心分離して任意の沈殿物を除去する。回収したポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物についてSEC-HPLCにより上清を分析し、反応混合物に酵素を添加しなかった対照と比較する。その対応するポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物の面積カウントの変化パーセントを使用して、対応する酵素処理に対する材料の相対的耐性を試験することができる。合計に対する面積の変化パーセントを使用して、特定の酵素で処理した後に残存する材料の相対量を評価する。少なくとも10%、好ましくは少なくとも50、60、70、80、90、95、又は100%の回収パーセントを有する材料は、対応する酵素処理に対して「耐性」であるとみなされる。
【0097】
本明細書における「水性組成物」という語句は、溶媒が少なくとも約1重量%の水であり、ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む、溶液又は混合物を指す。
【0098】
用語「ヒドロコロイド」及び「ヒドロゲル」は、本明細書において互換的に使用される。ヒドロコロイドとは、水が分散媒体であるコロイド系を指す。本明細書において、「コロイド」は、別の物質全体に微視的に分散している物質を指す。したがって、本明細書におけるヒドロコロイドはまた、水又は水溶液中のポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物の分散体、エマルジョン、混合物、又は溶液を指すこともある。
【0099】
本明細書における用語「水溶液」は、溶媒が水である溶液を指す。ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、水溶液中に分散、混合、及び/又は溶解することができる。水溶液は、本明細書のヒドロコロイドの分散媒体として機能することができる。
【0100】
用語「分散化剤」及び「分散剤」は、本明細書において互換的に使用され、ある物質の別の物質中の分散体の形成及び安定化を促進する材料を指す。本明細書における「分散体」とは、水性組成物全体にわたって散在又は均一に分布している1つ以上の粒子、例えば、家庭用製品の任意の成分を含む水性組成物を指す。ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、本明細書に開示される水性組成物中で分散剤として作用し得ると考えられる。
【0101】
本明細書で使用するとき、用語「粘度」は、流体又はヒドロコロイドなどの水性組成物が、それを流動させる傾向のある力に抵抗する程度の尺度を指す。本明細書で使用することができる粘度の様々な単位としては、センチポアズ(cPs)及びパスカル秒(Pa・s)が挙げられる。センチポアズは、ポアズの100分の1であり、1ポアズは、0.100kg・m-1・s-1に等しい。したがって、本明細書で使用するとき、用語「粘度調節剤」及び「粘度調整剤」は、流体又は水性組成物の粘度を変化させる/調整することができる全てを指す。
【0102】
用語「布地」、「織物」、及び「布」は、本明細書において互換的に使用され、天然及び/又は人工繊維のネットワークを有する織布又は不織布材料を指す。このような繊維は、例えば、糸又は毛糸であってもよい。
【0103】
本明細書における「布地ケア組成物」は、何らかの方法で布地を処理するのに好適な任意の組成物である。このような組成物の好適な例としては、洗濯ではない繊維処理(糊抜き、すり磨き、シルケット加工、漂白、着色、染色、印刷、バイオ研磨、抗菌処理、防しわ処理、染み耐性処理など)、洗濯ケア組成物(例えば、洗濯ケア洗剤)、及び布地柔軟剤が挙げられる。
【0104】
用語「洗剤組成物」、「ヘビーデューティー洗剤」、及び「多目的洗剤」は、本明細書において互換的に使用されて、任意の温度における基質、例えば、食器、カトラリー、布地、白色及び着色織物を定期的に洗浄するのに有用な組成物を指す。布地及び食器を処理するための洗剤組成物としては、洗濯洗剤、布地コンディショナー(柔軟剤を含む)、洗濯及びすすぎ用の添加剤及びケア組成物、布地フレッシュニング組成物、洗濯予洗い、洗濯前処理、食器洗浄用組成物(食器手洗い用及び自動食器洗浄用製品を含む)が挙げられる。組成物は、洗剤組成物であってよく、洗剤組成物は、典型的には、洗浄性界面活性剤を含む。
【0105】
用語「セルラーゼ」及び「セルラーゼ酵素」は、本明細書において互換的に使用され、セルロース中のβ-1,4-D-グルコシド結合を加水分解し、それによってセルロースを部分的又は完全に分解する酵素を指す。あるいは、セルラーゼは、例えば「β-1,4-グルカナーゼ」と称される場合もあり、エンドセルラーゼ活性(EC3.2.1.4)、エキソセルラーゼ活性(EC3.2.1.91)、又はセロビアーゼ活性(EC3.2.1.21)を有し得る。本明細書における特定の実施形態では、セルラーゼは、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体中のβ-1,4-D-グルコシド結合を加水分解することもできる。「セルロース」は、β-1,4-結合D-グルコースモノマー単位の直鎖を有する不溶性多糖を指す。
【0106】
本明細書で使用するとき、用語「布地の手触り(fabric hand)」又は「柄(handle)」は、物理的、生理学的、心理的、社会的、又はこれらの任意の組み合わせであり得る、布地に対する人々の触覚応答を意味する。いくつかの実施形態では、布地の手触りは、American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC test method「202-2012,Relative Hand Value of Textiles:Instrumental Method」)によって与えられているとおり、相対的な手触り値を測定するためのPhabrOmeter(登録商標)System(Nu Cybertek,Inc.(Davis,California)から入手可能)を使用して測定することができる。
【0107】
組成物は、液体、ゲル、粉末、ヒドロコロイド、水溶液、顆粒、錠剤、カプセル、単区画サッシェ、多区画サッシェ、単区画パウチ、又は多区画パウチの形態であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、液体、ゲル、粉末、単区画サッシェ、又は多区画サッシェの形態である。
【0108】
洗剤組成物は、手洗い、機械洗浄、及び/又は他の目的、例えば、布地の浸漬及び/又は前処理などに使用することができる。洗剤組成物は、例えば、洗濯洗剤、任意の洗浄、すすぎ、又は乾燥機に添加される製品、単位用量又はスプレーの形態をとることができる。液体形態の洗剤組成物は、水性組成物の形態であってよい。他の実施形態では、洗剤組成物は、顆粒状洗剤又は乾燥機に添加するシートなどの乾燥形態であってもよい。洗剤組成物の他の非限定的な例としては、顆粒又は粉末形態の多目的又はヘビーデューティー洗浄剤;液体、ゲル、又はペースト形態の多目的又はヘビーデューティー洗浄剤;液体又は乾燥細密布地(例えば、デリケート)洗剤;漂白添加剤、「染み用スティック(stain-stick)」、又は前処理などの洗浄助剤;乾燥及び湿潤拭き取り布、パッド、又はスポンジなどの基質付き製品;スプレー及びミスト;水溶性単位用量物品を挙げることができる。
【0109】
本明細書に記載のポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む製品製剤は、任意選択で、水、又は主に水で構成される溶液で希釈して、目的とする用途に望まれるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物濃度を有する製剤を生成することができる。明らかに、当業者は、選択された洗剤製品に望ましいポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物濃度を達成するために、反応成分及び/又は希釈量を調整することができる。
【0110】
組成物は、例えば、粉末、顆粒、ペースト、バー、単位用量、又は液体のような任意の有用な形態であってよい。
【0111】
単位用量形態は、水溶性であってもよく、例えば、水溶性フィルムと、パウチとも呼ばれる液体又は固体洗濯洗剤組成物と、を含む水溶性単位用量物品であってもよい。水溶性単位用量パウチは、少なくとも1つの区画に液体又は固体洗剤組成物を完全に封入する水溶性フィルムを含む。水溶性単位用量物品は、単一の区画又は複数の区画を含んでいてよい。水溶性単位用量物品は、少なくとも2つの区画又は少なくとも3つの区画を含み得る。区画は、重ねて配置されてもよく、又は並べて配置されてもよい。
【0112】
単位用量物品は、典型的には、液体又は固体洗濯洗剤組成物を含む内部体積を封入する水溶性フィルムで作製された閉鎖構造である。パウチは、例えば、パウチが水に接触する前にパウチから組成物を放出することなく、組成物を保持し、保護するために好適な、任意の形態及び形状であってよい。
【0113】
液体洗剤組成物は、水性であってよく、典型的には、最大約70重量%の水と、0重量%~約30重量%の有機溶媒とを含有する。また、30重量%以下の水を含有するコンパクトゲルタイプの形態であってもよい。
【0114】
本明細書に開示されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物は、所望の製品において成分として使用することもでき、又は1つ以上の追加の好適な成分とブレンドして、例えば、布地ケア用途及び/又は洗濯ケア用途として使用することもできる。開示される組成物のいずれか、例えば、布地ケア又は洗濯ケア組成物は、組成物の総乾燥重量に基づいて(乾燥固形分基準で)、0.01~99重量パーセントの範囲のポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含み得る。用語「総乾燥重量」は、任意の溶媒、例えば、存在し得る任意の水を除く組成物の重量を意味する。他の実施形態では、組成物は、0.1~10重量%、又は0.1~9重量%、又は0.5~8重量%、又は1~7重量%、又は1~6重量%、又は1~5重量%、又は1~4重量%、又は1~3重量%、又は5~10重量%、又は10~15重量%、又は15~20重量%、又は20~25重量%、又は25~30重量%、又は30~35重量%、又は35~40重量%、又は40~45重量%、又は45~50重量%、又は50~55重量%、又は55~60重量%、又は60~65重量%、又は65~70重量%、又は70~75重量%、又は75~80重量%、又は80~85重量%、又は85~90重量%、又は90~95重量%、又は95~99重量%のポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含み、重量パーセントは、当該組成物の総乾燥重量に基づく。
【0115】
組成物は、界面活性剤、酵素、洗剤ビルダー、錯化剤、ポリマー、汚れ放出ポリマー、界面活性増強ポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、抑泡剤、防食剤、汚れ懸濁化剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、香料、飽和若しくは不飽和脂肪酸、移染防止剤、キレート剤、色相染料、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、視覚シグナル伝達成分、消泡剤、構造化剤、増粘剤、固化防止剤、デンプン、砂、ゲル化剤、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含み得る。一実施形態では、酵素は、セルラーゼである。別の実施形態では、酵素は、プロテアーゼである。更に別の実施形態では、酵素は、アミラーゼである。
【0116】
組成物は、例えば、布地ケア、洗濯ケア、及び/又は食器ケアに有用な洗剤組成物であってよく、1つ以上の活性酵素を更に含有していてもよい。好適な酵素の非限定的な例としては、プロテアーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、脂肪分解酵素(例えば、メタロ脂肪分解酵素)、キシラナーゼ、ホスホリパーゼ、ペルヒドロラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、マンナナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ(例えば、コリンオキシダーゼ)、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、メタロプロテイナーゼ、アマドリアーゼ、グルコアミラーゼ、アラビノフラノシダーゼ、フィターゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、アミラーゼ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。酵素が含まれる場合、酵素は、組成物の総重量に基づいて約0.0001~0.1重量%の活性酵素で当該組成物中に存在し得る。他の実施形態では、酵素は、組成物の総重量に基づいて、約0.01~0.03重量%(例えば、純粋な酵素タンパク質として計算)の活性酵素で存在し得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の酵素の組み合わせを組成物中で使用してもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の酵素は、セルラーゼと、プロテアーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、脂肪分解酵素、キシラナーゼ、ホスホリパーゼ、ペルヒドロラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、マンナナーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、メタロプロテイナーゼ、アマドリアーゼ、グルコアミラーゼ、アラビノフラノシダーゼ、フィターゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼ、アミラーゼ、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上とである。
【0117】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の酵素を含んでいてよく、各酵素は、組成物の総重量に基づいて約0.00001重量%~約10重量%存在する。いくつかの実施形態では、組成物はまた、組成物の総重量に基づいて、約0.0001重量%~約10重量%、約0.001重量%~約5重量%、約0.001重量%~約2重量%、又は約0.005重量%~約0.5重量%の濃度で各酵素を含んでいてもよい。
【0118】
セルラーゼは、エンドセルラーゼ活性(EC3.2.1.4)、エキソセルラーゼ活性(EC3.2.1.91)、又はセロビアーゼ活性(EC3.2.1.21)を有し得る。セルラーゼは、セルラーゼ活性を維持するのに好適な条件下で活性を有する「活性セルラーゼ」であり、このような好適な条件を決定することは、当該技術分野の技能の範囲内である。セルロースを分解できることに加えて、セルラーゼは、特定の実施形態では、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル誘導体を分解することもできる。
【0119】
セルラーゼは、細菌又は真菌などの任意の微生物源に由来し得る。化学的に修飾されたセルラーゼ又はタンパク質が遺伝子操作された変異体セルラーゼが含まれる。好適なセルラーゼとしては、例えば、バチルス属、シュードモナス属、ストレプトマイセス属、トリコデルマ属、フミコーラ属、フザリウム属、チエラビア属、及びアクレモニウム属由来のセルラーゼが挙げられる。他の例として、セルラーゼは、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、ミセリオフィソーラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophile)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、又はそれらの組み合わせに由来し得る。上記のいずれかなどのセルラーゼは、N末端シグナルペプチドを欠く成熟形態であり得る。本明細書で有用な市販のセルラーゼとしては、CELLUSOFT(登録商標)、CELLUCLEAN(登録商標)、CELLUZYME(登録商標)、及びCAREZYME(登録商標)(Novozymes A/S);CLAZINASE(登録商標)及びPURADAX(登録商標)HA及びREVITALENZ(商標)(DuPont Industrial Biosciences)、BIOTOUCH(登録商標)(AB ENZYMES);並びにKAC-500(B)(登録商標)(花王)が挙げられる。
【0120】
あるいは、本明細書におけるセルラーゼは、当該技術分野において既知の任意の手段によって生成されてもよく、例えば、セルラーゼは、微生物又は真菌の異種発現系などの異種発現系において組み換えにより生成され得る。異種発現系の例としては、細菌(例えば、大腸菌、バチルス属種)及び真核生物系が挙げられる。真核生物系は、酵母(例えば、ピキア属種、サッカロマイセス属種)又は真菌(例えば、T.リーゼイ(T.reesei)などのトリコデルマ属種、アスペルギルス・ニガー(A.niger)などのアスペルギルス属種)の発現系を使用してよい。
【0121】
特定の実施形態では、セルラーゼは熱安定性であり得る。セルラーゼの熱安定性とは、一定時間(例えば、約30~60分)にわたって高温(例えば、約60~70℃)に曝露した後に活性を保持する酵素の能力を指す。セルラーゼの熱安定性は、その間に規定の条件下でセルラーゼ活性の半分が失われる分数、時間数、又は日数で与えられる半減期(t1/2)によって測定することができる。
【0122】
特定の実施形態では、セルラーゼは、広範囲のpH値(例えば、pH~7.0~約11.0などの中性又はアルカリ性pH)に対して安定であり得る。このような酵素は、このようなpH条件下で、所定の時間(例えば、少なくとも約15分、30分、又は1時間)安定したままであり得る。
【0123】
少なくとも1つ、2つ、又はそれ以上のセルラーゼが組成物中に含まれていてよい。本明細書における組成物中のセルラーゼの総量は、典型的には、組成物中のセルラーゼを使用する目的に好適な量である(「有効量」)。例えば、セルロース含有布地の感触及び/又は外観を改善することを目的とする組成物中のセルラーゼの有効量は、布地の感触の測定可能な改善(例えば、布地の滑らかさ及び/又は外観の改善、布地の外観の鮮明さを低減する傾向がある毛玉及び微小繊維の除去)を生じさせる量である。別の例として、本明細書における布地ストーンウォッシュ加工組成物中のセルラーゼの有効量は、所望の効果をもたらす(例えば、縫い目及び布地パネルを、着用され、色落ちしたように見せる)量である。本明細書における組成物中のセルラーゼの量はまた、例えば、組成物が使用されるプロセスパラメータ(例えば、機器、温度、時間など)及びセルラーゼ活性に依存し得る。布地が処理される水性組成物中のセルラーゼの有効濃度は、当業者であれば容易に決定することができる。布地ケアプロセスにおいて、セルラーゼは、例えば、最低で約0.01~0.1ppmの全セルラーゼタンパク質、又は約0.1~10ppbの全セルラーゼタンパク質(例えば、1ppm未満)から、最高で約100、200、500、1000、2000、3000、4000、又は5000ppmの全セルラーゼタンパク質の濃度で、布地が処理される水性組成物(例えば、洗浄液)中に存在し得る。
【0124】
好適な酵素は、当該技術分野において既知であり、例えば、MAXATASE(登録商標)、MAXACAL(商標)、MAXAPEM(商標)、OPTICLEAN(登録商標)、OPTIMASE(登録商標)、PROPERASE(登録商標)、PURAFECT(登録商標)、PURAFECT(登録商標)OXP、PURAMAX(商標)、EXCELLASE(商標)、PREFERENZ(商標)プロテアーゼ(例えば、P100、P110、P280)、EFFECTENZ(商標)プロテアーゼ(例えば、P1000、P1050、P2000)、EXCELLENZ(商標)プロテアーゼ(例えば、P1000)、ULTIMASE(登録商標)、及びPURAFAST(商標)(Genencor);ALCALASE(登録商標)、SAVINASE(登録商標)、PRIMASE(登録商標)、DURAZYM(商標)、POLARZYME(登録商標)、OVOZYME(登録商標)、KANNASE(登録商標)、LIQUANASE(登録商標)、NEUTRASE(登録商標)、RELASE(登録商標)、及びESPERASE(登録商標)(Novozymes);BLAP(商標)及びBLAP(商標)変異体(Henkel Kommanditgesellschaft auf Aktien(Duesseldorf,Germany))、並びにKAP(B.アルカロフィルス・スブチリシン(B.alkalophilus subtilisin);花王(東京)プロテアーゼ;MANNASTAR(登録商標)、PURABRITE(商標)、及びMANNAWAY(登録商標)マンナナーゼ;M1 LIPASE(商標)、LUMA FAST(商標)、及びLIPOMAX(商標)(Genencor);LIPEX(登録商標)、LIPOLASE(登録商標)、及びLIPOLASE(登録商標)ULTRA(Novozymes);並びにLIPASE P(商標)「Amano」(天野製薬)リパーゼ;STAINZYME(登録商標)、STAINZYME PLUS(登録商標)、NATALASE(登録商標)、DURAMYL(登録商標)、TERMAMYL(登録商標)、TERMAMYL ULTRA(登録商標)、FUNGAMYL(登録商標)、及びBAN(商標)(Novo Nordisk A/S及びNovozymes A/S);RAPIDASE(登録商標)、POWERASE(登録商標)、PURASTAR(登録商標)、及びPREFERENZ(商標)(DuPont Industrial Biosciences)アミラーゼ;GUARDZYME(商標)(Novo Nordisk A/S及びNovozymes A/S)ペルオキシダーゼ、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0125】
いくつかの実施形態では、組成物中の酵素は、従来の安定化剤、例えば、プロピレングリコール又はグリセロールなどのポリオール;糖又は糖アルコール;乳酸;ホウ酸又はホウ酸誘導体(例えば、芳香族ホウ酸エステル)を使用して安定化することができる。
【0126】
本明細書における洗剤組成物は、典型的には、1つ以上の界面活性剤を含み、当該界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、半極性非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物から選択される。界面活性剤は、石油由来(合成とも呼ばれる)であってもよく、又は非石油由来(天然とも呼ばれる)であってもよい。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、洗浄組成物の約0.1重量%~約60重量%の濃度で存在し、一方、別の実施形態では、濃度は、約1重量%~約50重量%であり、一方、また更なる実施形態では、濃度は、約5重量%~約40重量%である。洗剤は、通常、0重量%~約50重量%の、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、α-オレフィンスルホネート(AOS)、アルキルサルフェート(脂肪アルコールサルフェート)(AS)、アルコールエトキシサルフェート(AEOS又はAES)、二級アルカンスルホネート(SAS)、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アルキル-若しくはアルケニルコハク酸、又は石鹸などのアニオン性界面活性剤を含有する。
【0127】
洗剤組成物は、式R1-(OCH2CH2)x-O-SO3M(式中、R1は、約C8~約C20の偶数の炭素鎖長からなる非石油由来の直鎖状又は分枝鎖状の脂肪アルコールであり、xは、約0.5~約8であり、Mは、アルカリ金属又はアンモニウムカチオンである)のアルキルエトキシサルフェートを含み得る。アルキルエトキシサルフェートの脂肪アルコール部分(R1)は、地質由来(例えば、石油由来)ではなく、再生可能な資源由来(例えば、動物又は植物由来)である。再生可能な資源由来の脂肪アルコールは、天然脂肪アルコールと称される場合がある。天然脂肪アルコールは、炭素数が偶数であり、末端炭素に単一のアルコール(-OH)が結合している。界面活性剤の脂肪アルコール部分(R1)は、偶数の炭素鎖、例えば、C12、C14、C16、C18などの分布を含み得る。
【0128】
加えて、洗剤組成物は、任意選択で、アルコールエトキシレート(AEO又はAE)、カルボキシル化アルコールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート、アルキルポリグリコシド、アルキルジメチルアミンオキシド、エトキシル化脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸モノエタノールアミド、又はポリヒドロキシアルキル脂肪酸アミドなどの非イオン性界面活性剤を0重量%~約40重量%含有していてもよい。洗剤組成物は、式R2-(OCH2CH2)y-OH(式中、R2は、約C10~約C18の偶数の炭素鎖長からなる非石油由来の直鎖状又は分枝鎖状の脂肪アルコールであり、yは、約0.5~約15である)のアルキルエトキシレートを含み得る。アルキルエトキシレートの脂肪アルコール部分(R2)は、地質由来(例えば、石油由来)ではなく、再生可能な資源由来(例えば、動物又は植物由来)である。界面活性剤の脂肪アルコール部分(R2)は、偶数の炭素鎖、例えば、C12、C14、C16、C18などの分布を含み得る。
【0129】
組成物は、1つ以上の洗剤ビルダー又はビルダー系を更に含んでいてもよい。少なくとも1つのビルダーを組み込むいくつかの実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも約1重量%、約3重量%~約60重量%、又は約5重量%~約40重量%のビルダーを含む。ビルダーとしては、例えば、ポリリン酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩及び/又はアルカノールアンモニウム塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類及びアルカリ金属の炭酸塩、アルミノケイ酸塩、ポリカルボキシレート化合物、エーテルヒドロキシポリカルボキシレート、無水マレイン酸とエチレン又はビニルメチルエーテルとのコポリマー、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン-2,4,6-トリスルホン酸、及びカルボキシメチルオキシコハク酸、ポリ酢酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸及びニトリロ三酢酸など)の様々なアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び置換アンモニウム塩、並びにポリカルボキシレート(例えばメリト酸、コハク酸、クエン酸、オキシジコハク酸、ポリマレイン酸、ベンゼン1,3,5-トリカルボン酸、カルボキシメチルオキシコハク酸など)、並びにこれらの可溶性塩が挙げられる。洗剤ビルダー又は錯化剤の例としては、ゼオライト、二リン酸塩、三リン酸塩、ホスホン酸塩、クエン酸塩、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTMPA)、アルキル-若しくはアルケニルコハク酸、可溶性ケイ酸塩、又は層状ケイ酸塩(例えば、Hoechst製SKS-6)が挙げられる。洗剤はまた、ビルダーを含んでいなくてもよく(unbuilt)、すなわち、洗剤ビルダーを本質的に含んでいなくてもよい。
【0130】
組成物は、少なくとも1つのキレート剤を更に含んでいてもよい。好適なキレート剤としては、例えば、銅、鉄、及び/又はマンガンキレート剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。少なくとも1つのキレート剤が使用されるいくつかの実施形態では、組成物は、当該組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は更には約3.0重量%~約10重量%のキレート剤を含む。
【0131】
組成物は、少なくとも1つの付着助剤を更に含んでいてもよい。好適な付着助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカルボキシレート;ポリテレフタル酸などの汚れ放出ポリマー;カオリナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、イライト、ベントナイト、ハロイサイトなどの粘土、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0132】
当該組成物は、1つ以上の移染防止剤を更に含んでいてもよい。好適な移染防止剤としては、例えば、ポリビニルピロリドンポリマー、ポリアミンN-オキシドポリマー、N-ビニルピロリドンとN-ビニルイミダゾールとのコポリマー、ポリビニルオキサゾリドン、ポリビニルイミダゾール、マンガンフタロシアニン、ペルオキシダーゼ、ポリビニルピロリドンポリマー、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMP);ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP);エチレンジアミンN,N’-二コハク酸(EDDS);メチルグリシン二酢酸(MGDA);ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);プロピレンジアミン四酢酸(PDT A);2-ヒドロキシピリジン-N-オキシド(HPNO);又はメチルグリシン二酢酸(MGDA);グルタミン酸N,N-二酢酸(N,N-ジカルボキシメチルグルタミン酸四ナトリウム塩(GLDA);ニトリロ三酢酸(NTA);4,5-ジヒドロキシ-m-ベンゼンジスルホン酸;クエン酸及びその任意の塩;N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、N-ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HEIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、エチレンジアミン四プロピオン酸(EDTP)、及びこれらの誘導体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。少なくとも1つの移染防止剤が使用される実施形態では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.0001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、又は更には約0.1重量%~約3重量%の移染防止剤を含み得る。
【0133】
組成物は、ケイ酸塩を更に含んでいてもよい。好適なケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、結晶質フィロケイ酸塩、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。いくつかの実施形態では、ケイ酸塩は、組成物の総重量に基づいて、約1重量%~約20重量%の濃度で存在し得る。他の実施形態では、ケイ酸塩は、組成物の総重量に基づいて、約5重量%~約15重量%の濃度で存在し得る。
【0134】
組成物は、分散剤を更に含んでいてもよい。好適な水溶性有機材料としては、例えば、ホモポリマー又はコポリマーの酸又はその塩を挙げることができ、この場合、ポリカルボン酸は、互いに炭素原子2個以下分だけ離れている少なくとも2個のカルボキシルラジカルを含む。
【0135】
組成物は、本ポリα-1,6-グルカンエステル化合物に加えて、1つ以上の他の種類のポリマーを更に含んでいてもよい。本明細書において有用な他の種類のポリマーの例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリカルボキシレート、例えば、ポリアクリレート、マレイン酸/アクリル酸コポリマー、及びラウリルメタクリレート/アクリル酸コポリマーが挙げられる。
【0136】
組成物は、漂白系を更に含んでいてもよい。例えば、漂白系は、例えば、ドデカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシベンゼンスルホネート、デカノイルオキシ安息香酸若しくはその塩、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、又はノナノイルオキシベンゼンスルホネート(NOBS)などの過酸形成漂白活性化剤と組み合わせてもよい、H2O2源、例えば、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過水和物塩、過ホウ酸塩のナトリウム塩一水和物又は四水和物、過硫酸塩、過リン酸塩、過ケイ酸塩、過カルボン酸及び塩、過炭酸及び塩、過イミド酸及び塩、ペルオキシ一硫酸及び塩、スルホン化亜鉛フタロシアニン、スルホン化アルミニウムフタロシアニン、キサンテン染料を含んでいてもよい。あるいは、漂白系は、ペルオキシ酸(例えば、アミド、イミド、又はスルホン型のペルオキシ酸)を含んでいてもよい。他の実施形態では、漂白系は、ペルヒドロラーゼを含む酵素漂白系であり得る。上記のいずれかの組み合わせを使用してもよい。
【0137】
組成物は、布地コンディショナー、粘土、泡増進剤、泡抑制剤、防食剤、汚れ懸濁剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、又は香料などの従来の洗剤成分を更に含んでいてもよい。本明細書における洗剤組成物のpH(使用濃度の水溶液中で測定)は、中性又はアルカリ性(例えば、pH約7.0~約11.0)であり得る。
【0138】
組成物は、洗剤組成物であってよく、任意選択で、ヘビーデューティー(多目的)洗濯洗剤組成物であってもよい。いくつかの実施形態では、洗剤組成物は、アニオン性洗浄性界面活性剤(直鎖状又は分枝鎖状又はランダム鎖状の置換又は非置換アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコキシル化サルフェート、アルキルホスフェート、アルキルホスホネート、アルキルカルボキシレート、及び/又はこれらの混合物の群から選択される)と、任意選択で、非イオン性界面活性剤(直鎖状又は分枝鎖状又はランダム鎖状の置換又は非置換アルキルアルコキシル化アルコール、例えば、C8~C18アルキルエトキシル化アルコール及び/又はC6~C12アルキルフェノールアルコキシレートの群から選択される)とを含む洗浄性界面活性剤(10%~40%重量/重量)を含んでいてよく、この場合、アニオン性洗浄性界面活性剤(親水性指数(HIc)が6.0~9である)の非イオン性洗浄性界面活性剤に対する重量比は、1:1超である。また、好適な洗浄性界面活性剤としては、カチオン性洗浄性界面活性剤(アルキルピリジニウム化合物、アルキル四級アンモニウム化合物、アルキル四級ホスホニウム化合物、アルキル三級スルホニウム化合物、及び/又はこれらの混合物の群から選択される);双極性及び/又は両性洗浄性界面活性剤(アルカノールアミンスルホベタインの群から選択される);両性界面活性剤;半極性非イオン性界面活性剤、並びにこれらの混合物も挙げられる。
【0139】
組成物は、任意選択で、例えば、両親媒性アルコキシル化グリース洗浄ポリマーからなる界面活性増強ポリマーを含む洗剤組成物であってもよい。好適な両親媒性アルコキシル化グリース洗浄ポリマーとしては、例えばアルコキシル化ポリアルキレンイミンなどの分枝鎖状の親水性及び疎水性を有するアルコキシル化ポリマー;例えば不飽和C1~C6カルボン酸、エーテル、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、糖単位、アルコキシ単位、無水マレイン酸、グリセロールなどの飽和ポリアルコール、及びそれらの混合物といったモノマーを含む親水性骨格と、例えば1つ以上のC4~C25アルキル基、ポリプロピレン、ポリブチレン、飽和C1~C6モノカルボン酸のビニルエステル、アクリル酸又はメタクリル酸のC1~C6アルキルエステル、及びそれらの混合物といった疎水性側鎖と、含むランダムグラフトポリマーを挙げることができる。
【0140】
好適なヘビーデューティー洗濯洗剤組成物は、任意選択で、追加のポリマー、例えば、汚れ放出ポリマー(アニオン性末端保護ポリエステル、例えばSRP1;ランダム又はブロック構成の糖、ジカルボン酸、ポリオール、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのモノマー単位を含むポリマー;ランダム又はブロック構成のエチレンテレフタレート系ポリマー及びそのコポリマー、例えば、REPEL-O-TEX SF、SF-2及びSRP6、TEXCARE SRA100、SRA300、SRN100、SRN170、SRN240、SRN300及びSRN325、MARLOQUEST SLを含む)、アクリル酸、マレイン酸(又は無水マレイン酸)、フマル酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1つのモノマーを含むポリマーなどのカルボキシレートポリマーを含む再付着防止ポリマー;ビニルピロリドンホモポリマー、及び/又は500~100,000ダルトン(Da)の範囲の分子量のポリエチレングリコール;並びにポリマーカルボキシレート(マレエート/アクリレートランダムコポリマー又はポリアクリレートホモポリマーなど)を含んでいてもよい。存在する場合、汚れ放出ポリマーは、組成物の総重量に基づいて、0.1~10重量%で含まれ得る。
【0141】
ヘビーデューティー洗濯洗剤組成物は、任意選択で、飽和又は不飽和脂肪酸、好ましくは飽和又は不飽和C12~C24脂肪酸;付着助剤、例えば、多糖、セルロースポリマー、ポリジアリルジメチルアンモニウムハライド(DADMAC)、及びランダム又はブロック構成のDADMACとビニルピロリドン、アクリルアミド、イミダゾール、イミダゾリニウムハライド、及びこれらの混合物とのコポリマー、カチオン性グアーガム、カチオン性デンプン、カチオン性ポリアシルアミド、又はこれらの組み合わせを更に含んでいてもよい。存在する場合、脂肪酸及び/又は付着助剤は、それぞれ、組成物の総重量に基づいて0.1%~10%重量で存在し得る。
【0142】
洗剤組成物は、任意選択で、シリコーン又は脂肪酸系泡抑制剤;色相染料、カルシウム及びマグネシウムカチオン、視覚的シグナル伝達成分、消泡剤(組成物の総重量に基づいて0.001重量%~約4.0重量%)、並びに/又はジグリセリド及びトリグリセリド、エチレングリコールジステアレート、微結晶セルロース、マイクロファイバーセルロース、バイオポリマー、キサンタンガム、ジェランガム、及びこれらの混合物からなる群から選択される構造化剤/増粘剤(組成物の総重量に基づいて0.01重量%~5重量%)を含んでいてもよい。
【0143】
本明細書に開示される組成物は、食器洗浄洗剤組成物の形態であってもよい。食器洗浄洗剤の例としては、自動食器洗浄洗剤(典型的には、食器洗浄機で使用される)及び手洗い用食器洗剤が挙げられる。食器洗浄洗剤組成物は、例えば、本明細書に開示される任意の乾燥又は液体/水性形態であってよい。食器洗浄洗剤組成物の特定の実施形態に含まれ得る成分としては、例えば、リン酸塩;酸素若しくは塩素系漂白剤;非イオン性界面活性剤;アルカリ塩(例えば、メタケイ酸塩、アルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム);本明細書に開示される任意の活性酵素;腐食防止剤(例えば、ケイ酸ナトリウム);消泡剤;セラミックからの光沢(glaze)及びパターンの除去を減速させるための添加剤;香料;(粒状洗剤における)固化防止剤;(錠剤ベースの洗剤における)デンプン;(液体/ゲル系洗剤における)ゲル化剤;並びに/又は砂(粉末洗剤)のうちの1つ以上が挙げられる。
【0144】
多糖誘導体に加えて、食器洗浄洗剤組成物は、(i)0~10重量%の量で存在する、任意のエトキシル化非イオン性界面活性剤、アルコールアルコキシル化界面活性剤、エポキシ保護ポリ(オキシアルキル化)アルコール、又はアミンオキシド界面活性剤を含む非イオン性界面活性剤;(ii)約5~60重量%の範囲の、任意のリン酸塩ビルダー(例えば、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、他のオリゴマーポリリン酸塩、トリポリリン酸ナトリウム-STPP)、任意のリン酸塩を含まないビルダー(例えば、メチル-グリシン-二酢酸[MGDA]及びその塩又は誘導体、グルタミン-N,N-二酢酸[GLDA]及びその塩又は誘導体、イミノジコハク酸(IDS)及びその塩又は誘導体、カルボキシメチルイヌリン及びその塩又は誘導体、ニトリロ三酢酸[NTA]、ジエチレントリアミン五酢酸[DTPA]、B-アラニン二酢酸[B-ADA]及びその塩を含むアミノ酸系化合物)、ポリカルボン酸のホモポリマー及びコポリマー、並びにこれらの部分的又は完全に中和された塩、0.5~50重量%の範囲のモノマーポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸並びにこれらの塩、又は約0.1重量%~約50重量%の範囲のスルホン化/カルボキシル化ポリマーを含むビルダー;(iii)約0.1重量%~約10重量%の範囲の乾燥助剤(例えば、任意選択で3~6個の官能基、例えば、重縮合を促す酸、アルコール又はエステル官能基を有する更なるモノマーと共に、ポリエステル、特にアニオン性ポリエステル;ポリカーボネート-、ポリウレタン-及び/又はポリ尿素-ポリオルガノシロキサン化合物、又はこれらの前駆体化合物、特に反応性環状カーボネート及び尿素型の前駆体化合物);(iv)約1重量%~約20重量%の範囲のケイ酸塩(例えば、二ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、及び結晶性フィロケイ酸塩などのケイ酸ナトリウム又はカリウム);(v)無機漂白剤(例えば、過ホウ酸塩、過炭酸塩、過リン酸塩、過硫酸塩及び過ケイ酸塩などの過水和物塩)及び/又は有機漂白剤、例えば、ジアシル-及びテトラアシルペルオキシド、特にジペルオキシドデカン二酸、ジペルオキシテトラデカン二酸、及びジペルオキシヘキサデカン二酸などの有機ペルオキシ酸;(vi)漂白活性化剤、例えば、約0.1重量%~約10重量%の範囲の有機過酸前駆体、及び/又は漂白触媒(例えば、マンガントリアザシクロノナン及び関連する錯体;Co、Cu、Mn及びFeビスピリジルアミン並びに関連する錯体;並びにペンタミン酢酸コバルト(III)及び関連する錯体);(vii)約0.1重量%~5重量%の範囲の金属ケア剤、例えば、ベンザトリアゾール、金属塩及び錯体、並びに/又はケイ酸塩、並びに/又は(viii)自動食器洗浄洗剤組成物1グラム当たり活性酵素約0.01~5.0mgの範囲の本明細書に開示される任意の活性酵素、及び酵素安定剤成分を含み得る。重量パーセントは、組成物の総重量に基づく。
【0145】
一実施形態では、基質を処理する方法は、基質に灰色化防止特性を付与することができ、これは、布地の洗浄中に布地から分離した汚れが洗浄液中に懸濁するので、布地への再付着が防止されることを意味する。別の実施形態では、基質を処理する方法は、基質に再付着防止特性を付与することができる。例えば当該技術分野において既知の方法を使用して、再付着モニターとして作用する初期の清潔な布地の存在下で、ターゴトメーター及び予め汚しておいた布地の複数回洗浄を使用して、灰色化防止剤及び再付着防止剤の有効性を判定することができる。
【0146】
処理は、例えば、布地の手触りの改善、汚れ付着に対する耐性の改善、耐変色性の改善、耐摩耗性の改善、しわ耐性の改善、抗真菌活性の改善、染み耐性の改善、洗濯時の洗浄性能の改善、乾燥速度の改善、染料、顔料若しくはレーキの更新の改善、白色度保持の改善、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上の効果を基質に提供する。別の実施形態では、基質は、例えば、壁、床、ドア、又はパネル、又は紙であってもよく、あるいは基質は、テーブルなどの物体の表面であってもよい。処理は、例えば、汚れ付着に対する耐性の改善、染み耐性の改善、洗浄性能の改善、又はこれらの組み合わせの効果を基質に提供する。
【0147】
本明細書における布地は、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。半合成繊維は、化学的に誘導体化された天然材料を使用して作製され、その例はレーヨンである。本明細書における布地の種類の非限定的な例としては、(i)綿(例えば、ブロードクロス、キャンバス、シャンブレー、シェニール、インド更紗、コーデュロイ、クレトン、ダマスク、デニム、フランネル、ギンガム、ジャカード、ニット、マテラーセ、オックスフォード、パーケール、ポプリン、プリセ、綿繻子、シアサッカー、シアー、テリー織、綾織、ベルベット)、レーヨン(例えば、ビスコース、モーダル、リオセル)、リネン、及びTencel(登録商標)などのセルロース繊維;(ii)絹、羊毛及び関連する哺乳動物繊維などのタンパク質性繊維;(iii)ポリエステル、アクリル、ナイロンなどの合成繊維;(iv)黄麻、亜麻、ラミー、コイヤー、カポック、サイザル、ヘネッケン、アバカ、麻、及びインド麻由来の長植物繊維;並びに(v)(i)~(iv)の布地の任意の組み合わせで作製される布地が挙げられる。繊維の種類(例えば、天然及び合成)の組み合わせを含む布地としては、例えば、綿繊維及びポリエステルの両方を有するものが挙げられる。1つ以上の布地を含有する材料/物品としては、例えば、衣類、カーテン、ドレープ、室内装飾材料、カーペット、ベッドリネン、バスリネン、テーブルクロス、寝袋、テント、自動車内装品などが挙げられる。天然及び/又は合成繊維を含む他の材料としては、例えば、不織布、パッド、紙、及び発泡体が挙げられる。布地は、典型的には、織り又は編み構造体である。
【0148】
接触させるステップは、様々な条件、例えば、時間、温度、洗浄/すすぎ量で行うことができる。布地又は織物基質を接触させる方法、例えば、布地ケア方法又は洗濯方法は、概ね周知である。例えば、布地を含む材料を、(i)少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、又は120分間、(ii)少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90℃又は95℃の温度(例えば、洗濯洗浄又はすすぎの場合、約15~30℃の「低」温、約30~50℃の「中」温、約50~95℃の「高」温)で、(iii)約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12のpH(例えば、約2~12、又は約3~11のpH範囲)で、(iv)少なくとも約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、又は4.0重量%の塩(例えば、NaCl)濃度で、又はv)i)~iv)の任意の組み合わせで、開示された組成物と接触させてよい。布地ケア方法又は洗濯方法における接触させるステップは、例えば、洗浄ステップ、浸漬ステップ、及び/又はすすぎステップのいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、すすぎステップは、水ですすぐステップである。
【0149】
接触させることができる他の基質としては、例えば、食器用洗剤(例えば、自動食器洗浄洗剤又は食器手洗い用洗剤)で処理することができる表面が挙げられる。このような材料の例としては、セラミック材料、陶磁器、金属、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレン)、及び木材から作製された食器、グラス、ポット、フライパン、耐熱皿、台所用具、及び平皿(本明細書では「食卓用食器」と総称される)の表面が挙げられる。食器洗浄又は食卓用食器洗浄方法を実施するための条件(例えば、時間、温度、洗浄体積)の例は、当該技術分野において既知である。他の例では、布地を含む材料との接触に関して上に開示した条件のいずれかなどの好適な条件セットの下で、食卓用食器物品を本明細書の組成物と接触させることができる。
【0150】
基質を処理する方法の特定の実施形態は、組成物と接触させた後に材料を乾燥させる乾燥ステップを更に含む。乾燥ステップは、接触させるステップの直後に、又は接触させるステップの後に行ってよい1つ以上の追加のステップの後に実施してよく、例えば、例えば水性組成物中での洗浄に続いて水ですすいだ後に布地を乾燥させる。乾燥は、例えば、少なくとも約30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、170、175、180、又は200℃の温度での空気乾燥など、当該技術分野において既知のいくつかの手段のいずれによって行ってもよい。本明細書において乾燥された材料には、典型的には、3、2、1、0.5、又は0.1重量%未満の水がその中に含まれる。
【0151】
処理は、例えば、汚れ付着に対する耐性の改善、染み耐性の改善、洗浄性能の改善、又はこれらの組み合わせの効果を基質に提供する。接触させるステップは、基質を組成物で拭き取る又は基質に組成物を噴霧することを含み得る。
【0152】
本明細書に開示される実施形態の非限定的な例としては、以下が挙げられる:
1.ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物を含む洗濯ケア又は食器ケア組成物であって、当該ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、
(i)ポリアルファ-1,6-グルカン骨格であって、グルコースモノマー単位の40%以上がアルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位がアルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介して結合しているグルコース分岐部分を更に含有する、ポリアルファ-1,6-グルカン骨格と、
(ii)
(a)アリールエステル基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
から選択される1つ以上のエステル基と、
を含み、
当該ポリα-1,6-グルカンエステル化合物の重合度(DPn)が、5~1400の範囲であり、
エステル基の置換度が、約0.001~約1.50である、組成物。
2.当該ポリアルファ-1,6-グルカン骨格のグルコース単位の少なくとも5%が、アルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介した分岐を含有する、実施形態1に記載の組成物。
3.当該エステル基が、独立して、H、アリールエステル基、又は第1のアシル基である、実施形態1又は2に記載の組成物。
4.当該アリールエステル基が、ベンゾイル基、又は少なくとも1つのハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、エーテル、シアノ、若しくはアルデヒド基、又はそれらの組み合わせで置換されたベンゾイル基を含む、実施形態3に記載の組成物。
5.当該第1のアシル基が、アセチル、エタノイル、又はプロピオニル基である、実施形態3に記載の組成物。
6.当該アリールエステル基が、ベンゾイル基を含み、当該第1のアシル基が、アセチル、エタノイル、又はプロピオニル基である、実施形態3に記載の組成物。
7.当該エステル基が、少なくとも1つの第1のアシル基を含む、実施形態1に記載の組成物。
8.当該エステル基が、少なくとも1つの第2のアシル基を含む、実施形態1に記載の組成物。
9.当該第2のアシル基の-Cx-部分が、CH2基のみを含む、実施形態8に記載の組成物。
10.当該第2のアシル基の-Cx-部分が、
(i)炭素原子鎖における少なくとも1つの二重結合、及び/又は
(ii)少なくとも1つの分岐
を含む、実施形態8に記載の組成物。
11.当該エステル基が、少なくとも1つの第1のアシル基及び少なくとも1つの第2のアシル基を含む、実施形態1に記載の組成物。
12.当該エステル基の置換度が、約0.01~約0.90、好ましくは約0.01~0.80、より好ましくは約0.01~0.70である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
13.当該ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、約5~約1200、より好ましくは約10~1100、より好ましくは約15~1000の範囲の重合度を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物。
14.当該ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物が、二酸化炭素発生試験法によって求めたときに、90日目において少なくとも10%の生分解性を有する、実施形態1~13のいずれか1つに記載の組成物。
15.液体、ゲル、粉末、ヒドロコロイド、水溶液、顆粒、錠剤、カプセル、単区画サッシェ、多区画サッシェ、単区画パウチ、又は多区画パウチの形態である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物。
16.界面活性剤、酵素、洗剤ビルダー、錯化剤、ポリマー、汚れ放出ポリマー、界面活性増強ポリマー、漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、布地コンディショナー、粘土、起泡促進剤、抑泡剤、防食剤、汚れ懸濁化剤、汚れ再付着防止剤、染料、殺菌剤、曇り防止剤、蛍光増白剤、香料、飽和若しくは不飽和脂肪酸、移染防止剤、キレート剤、色相染料、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、視覚シグナル伝達成分、消泡剤、構造化剤、増粘剤、固化防止剤、デンプン、砂、ゲル化剤、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを更に含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
17.当該酵素が、セルラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、又はそれらの組み合わせである、実施形態16に記載の組成物。
18.洗濯洗剤組成物である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の組成物。
19.洗浄性界面活性剤と、以下の構造によって表されるポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物と、を含む、食器ケア又は洗濯ケア組成物:
【0153】
【化7】
(式中、各R’は、独立して、
(a)H、
(b)グルコース分岐部分、
(c)アリールエステル官能基、
(d)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(e)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上であり、
各Rは、独立して、
(a)H、
(b)アリールエステル官能基、
(c)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(d)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上であり、
グルコースモノマー単位の40%以上が、アルファ-1,6-グリコシド結合を介して結合し、nは少なくとも5であり、ポリアルファ-1,6グルカン骨格の0~50%のグルコース単位が、アルファ-1,2-又はアルファ-1,3-グリコシド結合を介したグルコース分岐部分を更に含有し、
各グリコース分岐部分は、独立して、
(a)アリールエステル官能基、
(b)-CO-R’’(式中、R’’は、1~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む第1のアシル基、及び
(c)第2のアシル基であって、-CO-Cx-COOH(式中、当該第2のアシル基の当該-Cx-部分は、2~24個の炭素原子の鎖を含む)を含む、第2のアシル基
を含むリストから選択される1つ以上の基によって修飾され、
ポリアルファ-1,6-グルカンエステル化合物のエステル基の置換度は、約0.001~約1.50である)。
【0154】
洗濯ケア及び食器ケア組成物は、典型的には、(a)仕上げた織物のケア、仕上げた織物の洗浄、仕上げた織物の衛処理、仕上げた織物の消毒、洗剤、染み除去剤、柔軟剤、布地強化剤、染み除去又は仕上げた織物の処理、予洗及び後洗処理、洗濯機の洗浄及びメンテナンス(仕上げた織物とは、衣類及び布製品を含むことを意図する)、(b)食器洗浄機、利用水の両方、及びその内容物のための洗剤、予備的後処理及び機器洗浄及びメンテナンス製品などの、自動食洗機における、皿、グラス、陶器、鍋、フライパン、台所用品、カトラリーなどのケア、又は、(c)食器手洗い用洗剤に好適である。
【0155】
以下の実施例の製剤は、本発明に好適である:
以下は、本開示に係る洗浄組成物の例示の実施例であり、限定を意図するものではない。
【0156】
実施例1~7:重質液体洗濯洗剤組成物。
【0157】
【表1】
洗浄及び/又は処理組成物の総重量に基づく。酵素濃度は、原材料として報告される。
【0158】
【0159】
以下は、好適な水溶性単位用量製剤である。組成物は、単一チャンバ水溶性単位用量物品の一部であってもよく、又は複数の区画にわたって分割されて、以下の「区画全体が平均化された」全物品組成物をもたらす。
【0160】
【0161】
固体自由流動性粒子状洗濯洗剤組成物の実施例:
【0162】
【実施例】
【0163】
特に明記しない限り、全ての成分は、Sigma-Aldrich(St.Louis,Missouri)から入手可能であり、入手したまま使用した。
【0164】
本明細書で使用するとき、「Comp.Ex.」は、比較例を意味し、「Ex.」は、「実施例」を意味し、「std dev」は、標準偏差を意味し、「g」は、グラムを意味し、「mL」は、ミリリットルを意味し、「uL」は、マイクロリットルを意味し、「wt」は、重量を意味し、「L」は、リットルを意味し、「min」は、分を意味し、「kDa」は、キロダルトンを意味し、「PES」は、ポリエーテルスルホンを意味する。
【0165】
NMRスペクトル法によるアノマー結合の決定方法
グルコシルトランスフェラーゼGTF8117及びα-1,2分枝酵素によって合成された水溶性オリゴ糖類及び多糖生成物中のグリコシド結合を、1H NMR(核磁気共鳴スペクトル法)によって決定した。乾燥オリゴ糖/多糖ポリマー(6mg~8mg)を、D2O中1mM DSS(4,4-ジメチル-4-シラペンタン-1-スルホン酸;NMR参照標準)溶液0.7mLに溶解させた。サンプルを周囲温度で一晩撹拌した。透明な均質溶液525uLを5mm NMR管に移した。2D 1H、13Cホモ/ヘテロ核型NMR実験を使用してAGU(無水グルコース単位)結合を同定した。データを20℃で収集し、500MHz又は600MHzのいずれかで動作するBruker Avance III NMRスペクトル計で処理した。このシステムは、プロトン最適化され、ヘリウム冷却された冷凍プローブを備える。1D 1HNMRスペクトルを使用して、グリコシド結合分布を定量化し、多糖骨格が主にアルファ-1,6であることを見出した。この結果は、個々の結合タイプを表すNMR共鳴の積分強度を、グルコース結合を表す全てのピークの合計の積分強度で除し、100を乗じた比を反映している。
【0166】
生分解性試験方法
多糖誘導体の生分解性を、OECD 301B易生分解性CO2発生試験指針に従って判定した。この試験では、試験物質が唯一の炭素及びエネルギー源であり、好気性条件下では、微生物が試験物質を代謝してCO2を生成し、又は炭素をバイオマスに組み込む。試験物質によって生成されるCO2の量(ブランク接種材料によって発生したCO2について補正)は、試験物質中の有機炭素が完全にCO2に変換された場合に生成され得たCO2の理論量(ThCO2)の百分率として表される。
【0167】
ポリマーの白色度効果を評価するための方法(方法A)
白色度保持とも呼ばれる白色度維持は、汚れの存在下で洗浄されたときに白色物品の白色度が失われるのを防ぐ洗剤の能力である。白い衣類は、汚れた衣類から汚れが除去され、洗浄水中に懸濁し、その後、これらの汚れが衣類に再付着し得るときに、経時的に汚れて/くすんで見える場合があるので、衣類は洗浄されるたびに白色が失われる。
【0168】
本開示のポリマーの白色度効果は、洗濯用製剤試験のために10個のポットを有する自動ターゴトメーターを使用して評価される。
【0169】
WFK Testgewebe GmbHによって供給されるSBL2004試験汚れストリップを使用して、消費者の汚れレベル(身体汚れ、食物、垢、草などの混合物)をシミュレートする。平均して、1つのSBL2004ストリップごとに8gの汚れをロードする。SBL2004試験汚れストリップを、試験で使用するために5×5cmの正方形に切断した。
【0170】
WFK Testgewebe GmbHから購入した以下の表1の白色布地見本を白色度トレーサーとして使用する。洗浄試験の前に、Konica Minolta CM-3610D分光光度計を使用して全ての白色度トレーサーのL、a、B値を測定する。
【0171】
【0172】
追加のバラスト(バックグラウンド布地見本)もまた、布の荷重をシミュレートし、実際の洗濯プロセス中の機械的エネルギーを提供するために使用される。バラスト負荷は、5×5cmのサイズで綿及びポリコットンニットの見本からなる。
試験を完了するためには、4回の洗浄サイクルが必要である。
サイクル1:各ターゴトメーターのポート内で1Lの水(規定の硬度)と混合することによって、所望の量のベース洗剤を完全に溶解させる。60グラムの白色度トレーサー(内部複製物、4種類を含む)、21個の5×5cmのSBL2004、及びバラストを、規定の条件下においてターゴトメーターのポット内で洗浄し、すすぎ、次いで、乾燥させる。
サイクル2:次いで、サイクル1のプロセスの後、各ポットの白色度トレーサー及びバラストを、新しいセットのSBL2004(5×5cm、21ピース)と共に再度洗浄し、すすぐ。全ての他の条件は、サイクル1と同じままである。
サイクル3:次いで、サイクル1のプロセスの後、各ポットの白色度トレーサー及びバラストを新しいセットのSBL2004(5×5cm、21片)と共に再度洗浄し、すすぐ。全ての他の条件は、サイクル1と同じままである。
サイクル4:次いで、サイクル1のプロセスの後、各ポートの白色度トレーサー及びバラストを、新しいセットのSBL2004(5×5cm、21ピース)と共に再度洗浄し、すすぐ。全ての他の条件は、サイクル1と同じままである。
【0173】
サイクル4の後、全ての白色度トレーサー及びバラストを乾燥させるまで60~65℃にてタンブル乾燥させ、次いで、トレーサーをKonica Minolta CM-3610D分光光度計を使用して再度測定する。洗浄前後のL、a、b測定値に基づいて、白色度指数(ΔWI(CIE))の変化を計算する。
ΔWI(CIE)=WI(CIE)(洗浄後)-WI(CIE)(洗浄前)。
【0174】
ポリマーの白色度性能を評価するための方法(方法B)
白色度保持とも呼ばれる白色度維持は、汚れの存在下で洗浄されたときに白色物品の白色度が失われるのを防ぐ洗剤の能力である。白い衣類は、汚れた衣類から汚れが除去され、洗浄水中に懸濁し、その後、これらの汚れが衣類に再付着し得るときに、経時的に汚れて/くすんで見える場合があるので、衣類は洗浄されるたびに白色が失われる。本明細書に開示されるポリマーの白色度効果を、5つのポットを有する自動ミニウォッシャーを使用して評価する。消費者の汚れレベル(身体汚れ、食物、垢、草などの混合物)をシミュレートするために、WFKTestgewebe GmbHによって供給されるSBL2004試験汚れスチップ(stips)を使用する。平均して、1つのSBL2004ストリップごとに8gの汚れをロードする。WFKから購入した以下の表2の白色布地見本を白色度トレーサーとして使用する。洗浄試験の前に、Konica Minolta CM-3610D分光光度計を使用して全ての白色度トレーサーのL、a、B値を測定する。
【0175】
【表6】
注記:
*WI(A)-光源A(屋内照明)
**WI(D65)-光源D65(屋外照明)
試験を完了するためには、3つの洗浄サイクルが必要である:
サイクル1:各ミニウォッシャーのチューブ内で7.57Lの水(規定の硬度)と混合することによって、所望の量のベース洗剤を完全に溶解させる。各布地タイプの3.5 SBL2004ストリップ(約28gの汚れ)及び3つの白色度トレーサー(内部複製物)を規定の条件下においてミニウォッシャーで洗浄し、すすぎ、次いで、乾燥させる。
サイクル2:上記白色度トレーサーを、新しいセットのSBL2004シートを用いて再度洗浄し、乾燥させる。全ての他の条件は、サイクル1と同じままである。
サイクル3:上記白色度トレーサーを、新しいセットのSBL2004シートを用いて再度洗浄し、乾燥させる。全ての他の条件は、サイクル1と同じままである。
サイクル3の後、全ての白色度トレーサーを乾燥させ、次いで、Konica Minolta CM-3610 D分光光度計を使用して再び測定する。洗浄前後のL、a、b測定値に基づいて、白色度指数(ΔWI(CIE))の変化を計算する。
ΔWI(CIE)=WI(CIE)(洗浄後)-WI(CIE)(洗浄前)。
ミニウォッシャーは5つのポットを有し、5つの製品を1回の試験で試験することができる。典型的なポリマー白色度性能試験では、比較ポリマーを含有するか又はポリマーを含まない1つの参照製品を、本発明のポリマーを含有する4つの製品と共に試験し、「対参照ΔWI」を報告する。
対参照ΔWI(CIE)=ΔWI(CIE)(製品)-ΔWI(CIE)(参照)
【0176】
ポリマーの洗浄効果を評価するための方法
ポリマーの洗浄効果は、ターゴトメーターを使用して評価される。この試験に好適な試験染みのいくつかの例は、以下のとおりである:
草標準(CFT製)
粘土標準(CFT製)
ASTM粉塵皮脂(CFT製)
ポリコットン上の高度に際立った皮脂(CFT製)
ニットコットン上の焦げたベーコン(Equest製の焦げたベーコンを使用して調製)
ニットコットン上の染色ベーコン(Equest製の染色ベーコンを使用して調製)
L、a、b値に関して、市販のDigiEyeソフトウェアを使用して生地を分析した。
【0177】
脱イオン水中の本発明のポリマー原液を、5mLのアリコートを介して所望の用量を送達するように調製した。1Lの試験溶液を作製するために、5ml分のポリマー原液、及び所望量の塩基洗剤を、ターゴトメーターポット内の水(定義された硬度)と混合することによって完全に溶解させた。洗浄温度は20℃である。
【0178】
各ターゴトメーターポットで洗浄される布は、2片の各試験染み(2つの内部複製物)、約3gのWfK SBL2004汚れシート、及び総布地重量を最大60gにするための追加のニットコットンバラストを含む。
【0179】
全ての布を、洗浄液を入れたターゴトメーターポットに投下してから、洗浄液を12分間撹拌した。次いで、洗浄液を排出し、布地を5分間のすすぎステップに2回供した後、排水し、脱水した。洗浄した染みを空気流キャビネット内で乾燥させ、次いで、市販のDigiEyeソフトウェアを使用してL、a、b値について分析した。
【0180】
この手順を更に3回繰り返して、合計4つの外部レプリカを得た。
【0181】
染み除去指数(SRI)は、以下に示される式を使用して、L、a、b値から計算される。SRIが高いほど、染み除去に優れている。
SRI=100×((ΔEb-ΔEa)/ΔEb)
ΔEb=√((Lc-Lb)2+(ac-ab)2+(bc-bb)2)
ΔEa=√((Lc-La)2+(ac-aa)2+(bc-ba)2)
下付き文字「b」は、洗浄前の染みのデータを示す
下付き文字「a」は、洗浄後の染みのデータを示す
下付き文字「c」は、染みのない布のデータを示す
【0182】
ポリアルファ-1,6-グルカンサンプルの調製
様々な量のアルファ-1,2分岐を含有するポリアルファ-1,6-グルカンを調製する方法は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2017/091533号に開示されている。スクロース濃度、温度、及びpHなどの反応パラメータを調整して、様々なレベルのアルファ-1,2-分岐及び分子量を有するポリアルファ-1,6-グルカンを提供することができる。アルファ-1,2-分岐ポリアルファ-1,6-グルカンを調製するための代表的な手順を以下に提供する(19%のアルファ-1,2-分岐及び81%のアルファ-1,6結合を含有する)。1D 1HNMRスペクトルを使用して、グリコシド結合分布を定量化した。アルファ-1,2-分岐を有するポリアルファ-1,6-グルカンの追加のサンプルを同様に調製した。例えば、あるサンプルは、32%のアルファ-1,2-分岐及び68%のアルファ-1,6結合を含有しており、別のサンプルは、10%のアルファ-1,2-分岐及び90%のアルファ-1,6結合を含有していた。
【0183】
19%のα-1,2分岐を有するポリα-1,6-グルカンの調製
以下の手順に従って、グルコシルトランスフェラーゼGTF8117及びα-1,2-分枝酵素GTFJ18T1の段階的組み合わせを使用して、可溶性α-1,2-分岐ポリα-1,6-グルカンを調製した。
【0184】
スクロース(450g/L)、GTF8117(9.4U/mL)、及び50mM酢酸ナトリウムで構成される反応混合物(2L)をpH5.5に調整し、47℃で撹拌した。アリコート(0.2~1mL)を所定の時点で回収し、90℃で15分間加熱することによりクエンチした。得られた熱処理されたアリコートを0.45μmフィルターに通した。フロースルーをHPLCにより分析して、スクロース、グルコース、フルクトース、ロイクロース、オリゴ糖、及び多糖の濃度を求めた。23.5時間後、反応混合物を30分間かけて90℃に加熱した。熱処理された反応混合物のアリコートを0.45μmフィルターに通し、可溶性単糖/二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類についてフロースルーを分析した。主な生成物は、DPwが93である直鎖状デキストランであった。
【0185】
238.2gのスクロース及び210mLのα-1,2-分枝酵素GTFJ18T1(5.0U/mL)を、直上に記載したGTF8117反応から得られた残りの熱処理された反応混合物に添加することによって、第2の反応混合物を調製した。混合物を、約2.2Lの体積で30℃において撹拌した。アリコート(0.2~1mL)を所定の時点で回収し、90℃で15分間加熱することによりクエンチした。得られた熱処理されたアリコートを0.45μmフィルターに通した。フロースルーをHPLCにより分析して、スクロース、グルコース、フルクトース、ロイクロース、オリゴ糖、及び多糖の濃度を求めた。95時間後、反応混合物を30分間かけて90℃に加熱した。熱処理された反応混合物のアリコートを0.45μmフィルターに通し、可溶性単糖/二糖類、オリゴ糖類、及び多糖類についてフロースルーを分析した。残りの熱処理された混合物を、1Lの遠心分離ボトルを使用して遠心分離した。上清を回収し、1又は5KDa MWCOカセット及び脱イオン水を用いた限外濾過システムを使用して、200倍超清浄化した。清浄化されたオリゴ/多糖生成物溶液を乾燥させた。次いで、乾燥サンプルを1H NMRスペクトル法により分析して、オリゴ糖類及び多糖類のアノマー結合を決定した。
【0186】
本発明のポリマー実施例1
無水2-オクテン-1-イルコハク酸によるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(15kDa、9%のアルファ-1,2-分岐及び91%のアルファ-1,6結合、10g)(本明細書に上記したとおり調製)を15mLの水に溶解させた。この撹拌溶液に、無水2-オクテン-1-イルコハク酸(3g)を添加した。2.5重量%NaOH溶液を用いて、混合物のpHをpH9~10に調整した。反応のpHを継続的に調整して、pH11を3時間維持した。次いで、混合物をpH6.5~7.5に中和した。溶液を100mLのイソプロパノールに注いで、ポリマーを沈殿させた。ポリマーを収集した。このプロセスを2回以上繰り返した。最終ポリマーを水に溶解させ、凍結乾燥して、白色の粉状物を得た。1H NMR分析によって置換度は0.15であると求められた。
【0187】
本発明のポリマー実施例2
無水安息香酸によるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
撹拌子、熱電対、滴下漏斗、及び上部にN2入口を有する凝縮器を備える4つ口の250mL丸底フラスコに、DMAc(100mL)、CaCl2
.2H2O(4g)、及びポリアルファ-1,6-グルカン(68kDa、33%のアルファ-1,2分岐及び67%のアルファ1,6結合)の混合物を仕込んだ。透明な溶液が形成されるまで、反応混合物を75℃で撹拌した。次いで、トルエン(25mL)を用いて共沸蒸留を行った。その後、K2CO3(6g)及び無水安息香酸(17g)を添加した。反応混合物を、88℃の油浴で4時間加熱した。反応が完了に到達してから、それを室温まで冷却した。所望の生成物をイソプロパノールによって沈殿させ、イソプロパノール/水(90/10)で洗浄し、粗生成物を、限外濾過(MWCO 3 KD)を通して更に精製して、16グラムの固形分を得た。1H NMR分析によって置換度は0.1であると求められた。
【0188】
本発明のポリマー実施例3
塩化ベンゾイル及び無水グルタル酸によるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(68kDa、33%のアルファ-1,2-分岐及び67%のアルファ-1,6結合、20グラム)を80℃でDMAc(100mL)に溶解させた。トルエン(25mL)を添加し、留出して、反応混合物を乾燥させた。その後、無水グルタル酸(2.5グラム)及び塩化ベンゾイル(14グラム)を添加した。反応混合物を80℃で4時間撹拌した。生成物を沈殿させ、イソプロパノールを使用して精製した。21グラムの所望の材料が生成された。1H NMR分析によって、この生成物は0.26のDos(ベンゾイル)及び0.12のDoS(グルタロイル)を有すると求められた。
【0189】
本発明のポリマー実施例4
塩化ベンゾイル及びDMAcによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(68kDa、33%のアルファ-1,2-分岐及び67%のアルファ-1,6結合、20グラム)を80℃でジメチルアセトアミド(DMAc、100mL)に溶解させた。次いで、トルエン(25mL)を用いて共沸蒸留を行った。その後、塩化ベンゾイル(17.5グラム)を添加した。反応混合物を80℃で4時間撹拌した。生成物を沈殿させ、イソプロパノールを使用して精製した。1H NMR分析によって、それは0.79のDos(ベンゾイル)及び0.17のDoS(アセチル)を有すると求められた。
【0190】
本発明のポリマー実施例5
塩化ベンゾイルによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(68kDa、33%のアルファ-1,2-分岐及び67%のアルファ-1,6結合、20グラム)及びCaCl2・2H2O(4グラム)を80℃でDMAc(100mL)に溶解させた。次いで、トルエン(25mL)を用いて共沸蒸留を行った。その後、K2CO3(6グラム)及び塩化ベンゾイル(17.5グラム)を添加した。反応混合物を、80℃で105分間撹拌した。生成物を沈殿させ、イソプロパノールを使用して精製した。1H NMR分析によって、それは0.25のDos(ベンゾイル)を有すると求められた。
【0191】
本発明のポリマー実施例6
塩化ベンゾイル及び塩化アセチルによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(68kDa、33%のアルファ-1,2-分岐及び67%のアルファ-1,6結合、30グラム)を90℃でDMAc(150mL)に溶解させた。次いで、トルエン(25mL)を用いて共沸蒸留を行った。その後、塩化ベンゾイル(16グラム)及び塩化アセチル(3グラム)を添加した。反応混合物を90℃で2時間撹拌した。生成物を沈殿させ、イソプロパノールを使用して精製した。28グラムの所望の材料が生成された。1H NMR分析によって、それは0.37のDos(ベンゾイル)及び0.36のDoS(アセチル)を有すると求められた。
【0192】
本発明のポリマー実施例7
塩化ベンゾイル及びDMAcによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、22%のアルファ-1,2-分岐及び78%のアルファ-1,6結合、20グラム)及びCaCl2・2H2O(2グラム)を90℃でDMAc(100mL)に溶解させた。次いで、トルエン(25mL)を用いて共沸蒸留を行った。その後、塩化ベンゾイル(17.5グラム)を添加した。反応混合物を90℃で1時間撹拌した。生成物を沈殿させ、イソプロパノールを使用して精製した。1H NMR分析によって、それは0.33のDos(ベンゾイル)及び0.14のDoS(アセチル)を有すると求められた。
【0193】
本発明のポリマー実施例8
塩化ベンゾイル及びDMAcによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(60kDa、10%のアルファ-1,2-分岐及び90%のアルファ-1,6結合、20グラム)及びCaCl2・2H2O(2グラム)を90℃でDMAc(120mL)に溶解させた。次いで、トルエン(25mL)を用いて共沸蒸留を行った。その後、塩化ベンゾイル(15グラム)を添加した。反応混合物を90℃で2時間撹拌した。生成物を沈殿させ、イソプロパノールを使用して精製した。23グラムの所望の材料が生成された。1H NMR分析によって、それは0.29のDos(ベンゾイル)及び0.09のDoS(アセチル)を有すると求められた。
【0194】
本発明のポリマー実施例9
塩化ベンゾイル及びDMAcによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、21%のアルファ-1,2-分岐及び79%のアルファ-1,6結合、200グラム)をDMAc(1L)に一晩浸漬した。混合物を88℃に加熱した。DMAcを真空下で留去した(約300mLが除去された)。ポット内に残っている混合物に、塩化ベンゾイル(102グラム)を10分間かけて添加した。反応混合物を5~10分間撹拌し、次いで、塩化アセチル(28グラム)を添加した(5~10分かけて)。反応混合物を88℃で1.5時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した。粗生成物をイソプロパノールに沈殿させ、イソプロパノールで洗浄し、乾燥させた。1H NMR分析によって、それは0.36のDos(ベンゾイル)及び0.44のDoS(アセチル)を有すると求められた。
【0195】
本発明のポリマー実施例10
塩化2-フロイルによるポリアルファ-1,6-グルカンの修飾
ポリアルファ-1,6-グルカン粉末(56kDa、21%のアルファ-1,2-分岐及び79%のアルファ-1,6結合、20.18g)をDMAc(100mL)に懸濁させ、室温で一晩撹拌した。DMAc(21.81g)を83℃及び20トルで留去し、続いて、ポット内に残っている材料に塩化2-フロイル(10.06g)を滴下した。反応混合物を85℃で5時間撹拌した。生成物が沈殿し、イソプロパノールを使用して精製し、真空乾燥後に24.75gの薄い黄褐色の粉状物を得た。DoS(2-フロイル):0.21。
【0196】
実施例11
生分解性試験の結果
実施例5、6、7、8、9の多糖誘導体の生分解性を、OECD 301B易生分解性CO2発生試験指針に従って判定した。この試験では、試験物質が唯一の炭素及びエネルギー源であり、好気性条件下では、微生物が試験物質を代謝してCO2を生成し、又は炭素をバイオマスに組み込む。試験物質によって生成されるCO2の量(ブランク接種材料によって発生したCO2について補正)は、試験物質中の有機炭素が完全にCO2に変換された場合に生成され得たCO2の理論量(ThCO2)の百分率として表される。
【0197】
【表7】
これらの結果(表3)は、多糖エステルが90日未満で少なくとも40%分解されたことを示す。
【0198】
実施例12
液体洗剤におけるポリマー性能
列挙する成分を混合することによって、当業者に既知の既存の手段により以下の液体洗剤I及びIIを調製する。
【0199】
【表8】
*1:プロテアーゼ、マンナーゼ、アミラーゼを含む
【0200】
製剤I及びIIの白色度を比較することによって、ポリマーの白色度性能を評価するための方法(方法A)に従って、本発明のポリマー実施例9の白色度維持を評価する。以下の表に示すように、本発明のポリマー実施例9は、特に合成布地に対して有意な白色度効果をもたらす。
【0201】
【0202】
列挙する成分を混合することによって、当業者に既知の既存の手段により以下の可溶性単位用量洗剤III及びIVを調製する。
【0203】
【0204】
製剤III及びIVの白色度性能を比較することによって、ポリマーの白色度性能を評価するための方法(方法A)に従って、本発明のポリマー実施例9の白色度維持を評価する。以下の表に示すように、本発明のポリマー実施例9は、特に合成布地に対して有意な白色度効果をもたらす。
【0205】
【0206】
列挙する成分を混合することによって、当業者に既知の既存の手段により以下の液体ベース洗剤V、VI-a、VI-b、VI-c、VI-dを調製する:
【0207】
【0208】
比較製剤V及び本発明の製剤V、VI-a、VI-b、VI-c、VI-dの白色度性能を比較することによって、ポリマーの白色度性能を評価するための方法(方法B)に従って、本発明のポリマー実施例5、7、9、10の白色度維持を評価する。結果に示すように、本発明のポリマー実施例5、7、9、10は、特に合成布地に対して有意な白色度効果をもたらす。
【0209】
列挙する成分を混合することによって、当業者に既知の既存の手段により以下の液体洗剤VII及びVIIIを調製する。
【0210】
【0211】
製剤VII及びVIIIの洗浄性能を比較することによって、ポリマーの洗浄効果を評価するための方法に従って、本発明のポリマー実施例9の洗浄効果を評価する。以下の表に示すように、本発明のポリマー実施例9は、特に焦げたベーコンなどの脂っぽい染みに対して有意な洗浄効果をもたらす。
【0212】
【表14】
注:試験の製品濃度:2260ppm;水硬度:22gpg;s:データが統計的に有意である。
【0213】
実施例13
以下のポリマーサンプルを生分解性試験法(上記)に供した。本発明のポリマーは、米国特許出願公開第2020/002646号からの例示的なポリマーと比較して、有意に高い生分解性を示す。
【0214】
【0215】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【国際調査報告】