(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】出血、流体漏れ及び空気漏れを制御するために器官の切除表面を封止するための、合成マトリックス及び生合成接着剤を含む二成分封止剤系
(51)【国際特許分類】
A61L 31/06 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
A61L31/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576046
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 IB2021054988
(87)【国際公開番号】W WO2021250548
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ネイティブ・ニール
(72)【発明者】
【氏名】ダーナラジ・スリデビ
(72)【発明者】
【氏名】デアングリス・アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴドベイン・サリム
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC01
4C081BA11
4C081BA16
4C081BB04
4C081CA171
4C081CA182
4C081CC01
4C081CC04
4C081CD112
4C081DA05
4C081DA11
4C081DA15
4C081DB03
(57)【要約】
器官の切除表面を封止する方法は、合成マトリックスを器官の切除表面に適用し、接着剤が合成マトリックスの隙間を通過して浸透し、合成マトリックスと器官の切除表面との間の界面と接触するように合成マトリックス上に接着剤を適用することを含む。本方法は、合成マトリックスを器官の切除表面と接合させるために接着剤を硬化させることを含む。合成マトリックスは、ポリグラクチン910又は同様の多孔度又は密度を有する任意のその他の合成生地又は非合成生地で作製された、不織布メッシュである。接着剤は、生合成接着剤又は合成接着剤である。合成マトリックスの細孔に浸透させて硬化させた後、硬化した生合成接着剤又は合成接着剤は、封止バリアを作成するために合成マトリックスを組織に接着させるために、合成マトリックスと機械的に連結する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器官の切除表面を封止するためのキットであって、
ポリグラクチン910で作製された不織布メッシュを含む合成マトリックスと、
生体適合性の反応性求電子試薬及び求核試薬を含む接着剤と、を含む、キット。
【請求項2】
前記接着剤が、部分加水分解タンパク質及びPEG-SGを含む生合成接着剤である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
第1のシリンジバレル及び第2のシリンジバレルを含む、前記生合成接着剤を分配するためのデュアルシリンジを更に含み、
前記第1のシリンジバレルが20%のアルブミン溶液を収容し、
前記第2のシリンジバレルが150mg/mlのPEG-SG溶液を収容する、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記合成マトリックスが多孔質であり、102.7~190.7mg/cm
3の密度範囲を有する、請求項1に記載のキット。
【請求項5】
前記合成マトリックスが多孔質であり、128.7~190.7mg/cm
3の密度範囲を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接着剤が、液体形態又は粉末形態である、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
器官の切除表面を封止する方法であって、
合成マトリックスを器官の切除表面に適用することと、
接着剤が前記合成マトリックスの隙間を通過して浸透し、前記合成マトリックスと前記器官の前記切除表面との間の界面と接触するように、前記合成マトリックス上に前記接着剤を適用することと、
前記合成マトリックスを前記器官の前記切除表面と接合させるために前記接着剤を硬化させることと、を含む、方法。
【請求項8】
前記合成マトリックスが、生分解性で多孔質の可撓性基材である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記合成マトリックスが、ポリグラクチン910で作製された不織布メッシュを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記合成マトリックス及び前記接着剤が、少なくとも部分的に透明である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記合成マトリックスが、繊維を含み、102.7~190.7mg/cm
3の密度範囲を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記合成マトリックスが、繊維を含み、128.7~190.7mg/cm
3の密度範囲を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記接着剤が、生合成接着剤又は合成接着剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記接着剤が、生体適合性の反応性求電子試薬及び求核試薬を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記求電子試薬が、ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートエステル(PEG-SG)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記求核試薬が、アミン(NH
2)基の任意の供給源、任意の適切なタンパク質又はタンパク質混合物、アルブミン、ポリエチレングリコールアミン(PEG-NH
2)、及びアルブミンとPEG-NH
2との組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生合成接着剤が、部分加水分解タンパク質及びPEG-SGを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記部分加水分解タンパク質が、アルブミンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生合成接着剤が、10%のアルブミン溶液と75mg/mlのPEG-SG溶液との混合物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記接着剤が、液体形態又は粉末形態であり、前記合成マトリックスの繊維と架橋される、請求項7に記載の方法。
【請求項21】
器官の切除表面を封止する方法であって、
ポリグラクチン910で作製された多孔質の生体吸収性合成マトリックスを、器官の切除表面に適用することと、
接着剤が前記合成マトリックスの細孔を通過して浸透し、前記合成マトリックスと前記器官の前記切除表面との間の界面と接触するように、前記合成マトリックス上に前記接着剤を適用することと、
前記合成マトリックスを前記器官の前記切除表面と接合させるために前記接着剤を硬化させることと、を含む、方法。
【請求項22】
前記接着剤が、生合成接着剤又は合成接着剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記合成マトリックスが、繊維を含み、102.7~190.7mg/cm
3の密度範囲を有し、前記硬化した接着剤が、前記合成マトリックスの前記繊維と架橋される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記合成マトリックスが、繊維を含み、128.7~190.7mg/cm
3の密度範囲を有し、前記硬化した接着剤が、前記合成マトリックスの前記繊維と架橋される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
多孔質の生体吸収性合成マトリックスを適用する工程の前に、前記器官の前記切除表面上に前記接着剤を事前に適用することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、一般に、外科手術処置に関連し、より具体的には、出血、流体漏れ及び空気漏れを管理するために組織及び器官の切除表面を封止するための系、デバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切除は、組織又は器官の一部を切断することを伴う外科手術処置である。肝臓、肺及び胃腸系を含む多種多様な器官に対して実施される切除は、術後出血、流体漏れ及び空気漏れの効果的な管理に関する多くの独自の問題を外科医に示す。
【0003】
器官切除手術処置の間、外科医は、止血帯、広範囲の縫合などを使用することによって、切除表面における主要な出血を管理する。相当数の外科医は、粘着性流体(例えば、合成接着剤、フィブリン糊ゲル)を使用するが、これは、完全に硬化する前に切除表面から流れ落ち得るために、又はそれらが下にある組織への適切な粘着性を欠いているため、若しくは適切な弾性特性を欠いているために、硬化後に容易に剥離し得る故に制限される。
【0004】
肝臓切除。肝臓の全部又は一部を除去することを伴う外科手術処置は、一般に、肝切除術と称される。部分的肝切除術は、肝臓から固体腫瘍を除去するための好ましいアプローチである。肝臓の切除中、切除された領域内の組織周辺部が破壊され、内部実質組織及び流動系が露出される。適切な周辺部の再確立はすぐに発生しないが、数日から数週間続き得る継続した組織治癒プロセスを必要とする。組織治癒プロセスの間、切除された組織は、術後合併症を引き起こす可能性のある、血液を浸出させ得る、及び/又は器官特異的液体(例えば、胆汁)を漏出させ得る。1つの研究では、肝切除術処置後、胆汁の漏れ率が約5%であり、患者の術後合併症の可能性が劇的に増大したことが見出された。
【0005】
肺切除。肺切除手術処置は、典型的には、相当量の組織操作及び取り扱いを必要とし、これにより、術後の空気漏れの発生率が高い。空気漏れに対処するために使用される標準化された技術は、肺組織を縫合又はステープル留めすることを必要とする。しかしながら、これらの技術は、特に気腫患者における肺実質組織の固有の脆砕性に起因して、気密封止を作成する際には効果的ではない。場合によっては、局所用接着剤は、胸膜剥離上又はステープルライン上のいずれかに直接適用されるが、これらの技術は、多くの場合、空気漏れを防止するのに不十分である。
【0006】
GI切除。消化管系(GI)手術処置は、疾患を効果的に治療するために、患者の腸の解剖学的構造の大きなセグメントを切除することを伴う場合が多い。GI組織を除去した後、外科医は、患者の消化器系を再構築することを必要とされる。GI再構成は、腸の繊細な構造、下部結腸への血液供給の制限、複雑な解剖学的構造への限定された外科医アクセス、及び典型的に周囲の組織に影響を及ぼす病理のために、複雑である。しかしながら、外科医がGI再構成手術処置中に十分に注意を配っている場合であっても、特定の割合で、外科的に作成された吻合部位での漏れから生じる合併症を有する患者が存在する。GI漏れは、破壊的な結果をもたらす可能性があり、漏れの管理において多くの場合不成功に終わる追加の手術及び治療を必要とする。
【0007】
上記の合併症を考慮して、術中及び術後の出血、並びに流体漏れ及び空気漏れを効果的に管理することに対する、多くの努力がなされている。例えば、固体器官を切除する場合、外科医は、典型的には、切除表面での主要な出血を止血帯及び広範な縫合を使用することによって管理する。軽度の出血及び流体漏れは、接着剤流体(例えば、合成接着剤、フィブリン糊)を使用し切除表面を覆うことによって多くの場合管理されるが、これらの方法論では、硬化する前に粘着性流体が切除表面から流れ落ちる傾向があるために、又は硬化した接着剤が下にある組織への適切な粘着性を欠いているため、若しくは適切な弾性特性を欠いているために硬化後に剥離する傾向があることから、成功が限定されてきた。
【0008】
Covidienは、切除された組織表面を封止するためのVERISET(登録商標)止血パッチを販売する。VERISET(登録商標)止血パッチは、酸化再生セルロース(ORC)層と、反応性ポリエチレングリコール(PEG)層と、からなる。パッチは、表面に圧力を印加することによって、組織表面に適用される。ORCマトリックスが不透明であるという事実により、切除表面に圧力を印加する際に、外科医は、VERISET(登録商標)止血パッチを通して切除表面の状態を評価することができない。パッチはまた、可撓性が低く、したがって、良好な組織適合性を達成し得ない、又は組織の動きに準拠したままであり得る。
【0009】
上記の欠陥を考慮して、外科医が器官及び組織の切除表面を効果的に封止し、組織及び器官の切除表面からの術中出血及び術後出血、流体漏れ及び/若しくは空気漏れを防止並びに/又は首尾よく管理することを可能にする改善された系、デバイス及び方法に対する、継続的な必要性が存在する。
【0010】
今日、器官の切除表面を封止して、術中出血、術後出血、流体漏れ及び空気漏れを管理することに対する、多くの努力がなされている。これらの努力のいくつかは、メッシュを切除表面に適用し、続いて、フィブリン糊を適用して、切除表面を封止することを伴う。しかしながら、動物モデル実験では、フィブリン糊が、メッシュを器官の切除表面に接着するための組織結合強度を有しないことが示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本特許出願は、上記で特定された欠陥を克服し、出血、流体漏れ及び空気漏れを制御するために切除表面を効果的に封止するための好ましい系、デバイス及び方法を開示する。
【0012】
一実施形態では、本系、デバイス及び方法は、術中出血及び術後出血、流体漏れ(例えば、胆汁漏れ)並びに/又は空気漏れを制御するために、軟器官(例えば、肝臓、肺、GI系、膵臓)の切除表面に適用され得る二成分封止剤を使用することを含む。
【0013】
一実施形態では、二成分封止剤の第1の構成成分は、器官の切除表面上に配置された合成マトリックス(例えば、メッシュ又は不織布)であってもよい。一実施形態では、合成マトリックスは不織布マトリックスである。一実施形態では、合成マトリックスは生分解性合成マトリックスである。
【0014】
一実施形態では、合成マトリックスは、Somerville、New JerseyのEthicon,Inc.によって、商標VICRYL(登録商標)ポリグラクチン910材料として製造及び販売されている、ポリグラクチン910(PG910)材料で作製された吸収性合成基材などの合成基材又はパッチであってもよい。一実施形態では、ポリグラクチン910材料は、90%のグリコリド及び10%のL-ラクチドを含んでもよい。
【0015】
一実施形態では、二成分封止剤の第2の構成成分と一緒に器官の切除表面上に配置され得る合成マトリックスは、液体形態又は粉末形態の生合成接着剤(例えば、アルブミン及びPEG-SG混合物)であってもよい。
【0016】
一実施形態では、合成マトリックスは、器官の切除表面上に配置され、切除表面及び/又は器官の形状に整合するように適合された可撓性又は適合性の不織布マトリックスであってもよい。一実施形態では、合成マトリックスは生体吸収性である。
【0017】
一実施形態では、合成マトリックスの密度は、封止剤の接着性及び凝集性を最大化して、非浸透性の機械的バリアを形成するように調整されてもよい。接着性及び凝集性は、好ましくは、合成マトリックスの表面に適用される標準圧力に耐える系の能力を分析することによって、一緒に評価される。
【0018】
一実施形態では、二成分封止剤の第2の構成成分は、生合成接着剤又は合成接着剤などの接着剤であってもよい。接着剤は、液体形態又は粉末形態であってもよい。
【0019】
一実施形態では、接着剤は、生体適合性の反応性求電子試薬及び求核試薬を含んでもよい。一実施形態では、求電子試薬は、PEG-SGを含んでもよい。一実施形態では、求核試薬は、アミン(NH2)基(例えば、第一級アミン部分)の任意の供給源、任意の適切なタンパク質又はタンパク質混合物、アルブミン、ポリエチレングリコールアミン(PEG-NH2)、及びアルブミンとPEG-NH2との組み合わせから選択されてもよい。
【0020】
一実施形態では、生合成接着剤は、タンパク質(例えば、アルブミン)又は部分加水分解タンパク質(例えば、ペプトン)及びポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(すなわち、PEG-SG)の溶液であってもよい。
【0021】
本特許出願では、接着剤という用語は、合成マトリックス(すなわち、ポリグラクチン910から作製された吸収性合成基材)を組織(例えば、器官の切除表面)に接着するために使用される、液体形態又は粉末形態の生合成接着剤又は合成接着剤を意味する。
【0022】
本特許出願では、封止剤又は封止デバイスという用語は、合成マトリックスと合成マトリックスを組織に接着するために使用される液体形態又は粉末形態の生合成接着剤又は合成接着剤との組み合わせを意味する。
【0023】
本明細書でより詳細に記載されるように、不織布PG910マトリックスの固有の繊維構造は、流体封止及び/又は気密封止を形成するための優れたレベルの接着を形成する方法で硬化させるために、生合成接着剤又は合成接着剤の適切な支持を提供することが決定されている。
【0024】
本明細書でより詳細に開示されるように、第1の構成成分及び第2の構成成分が切除表面に適用される順序、並びに生合成接着剤の特定の組成物は、封止剤の有効性に影響を及ぼす場合があり、したがって、特定の器官若しくは特定の用途に対する効果的な使用のために、変更及び/又は調整され得る。
【0025】
一実施形態では、合成マトリックス又は不織布マトリックス及び生合成接着剤又は合成接着剤は、切除された器官(例えば、肝臓、GI系)からの出血及び流体漏れ並びに/又は切除された肺からの空気漏れを含むがこれらに限定されない漏れを制御するために、異なる形態で異なる方法を使用して適用されてもよい。
【0026】
一実施形態では、生合成接着剤又は合成接着剤は、器官の切除表面上に配置された生分解性合成マトリックス(例えば、VICRYL(登録商標)不織布PG910)に適用される。生合成接着剤は、使用直前に予備混合される、タンパク質又は部分加水分解タンパク質(例えば、アルブミン)及びポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)の溶液であってもよい。
【0027】
一実施形態では、合成マトリックスの密度は、生合成接着剤が合成マトリックスによって保持されることを確実にするために制御(すなわち、最適化)される。
【0028】
一実施形態では、合成マトリックスの密度は、生合成接着剤が合成マトリックスの厚さを通過して完全に浸透し、切除表面に接触して切除表面上に液体封止及び/又は気密封止を形成することを確実にするように、制御(すなわち、最適化)される。
【0029】
一実施形態では、二成分封止剤は、切除された組織に接着するための一定期間(例えば、30秒~5分)を許容されるが、その後すぐ、合成マトリックス及び生合成接着剤又は合成接着剤の組み合わせは、好ましくは、出血、流体漏れ(例えば、胆汁)及び/又は空気漏れを防止するために、切除表面に封止を形成する。
【0030】
一実施形態では、生合成接着剤は、組織の切除表面から離れて面する合成マトリックスの表面に適用されてもよい。
【0031】
一実施形態では、マトリックスの密度は、合成マトリックスと生合成接着剤との組み合わせから生じる凝集性を最大化するために、変更及び/又は最適化されてもよい。一実施形態では、生合成接着剤が合成マトリックスを通過して浸透し、下にある組織への接着を達成するために、マトリックスの密度が最適化され(例えば、十分に確実に低くなる)、生合成接着剤又は合成接着剤がマトリックスを通過して組織表面に到達することを可能にし、それ故に、生合成接着剤は、組織の表面分子と架橋し得る。一実施形態では、マトリックスの隙間内への生合成接着剤の完全な浸透は、望ましくは、補強足場として機能するマトリックス繊維を組み込んだ凝集性の架橋ヒドロゲルを形成する。
【0032】
一実施形態では、合成マトリックスの密度は、接着剤が架橋されて凝集特性を最適化するまで、合成マトリックスが生合成接着剤を保持する能力を高めるように最適化されることが好ましい。本明細書に記載されるように、合成マトリックスが生化学接着剤を保持する能力は、マトリックス密度の臨界点までの増加とともに増大する。この臨界点を超えると、合成マトリックス密度は過剰に高くなり、生合成接着剤による合成マトリックスへの十分な浸透及び合成マトリックスによる生体合成マトリックスの保持が不可能となる。
【0033】
一実施形態では、本明細書に開示される系、デバイス及び方法は、合成マトリックスの最適なマトリックス密度範囲を提供し、それによって、光学マトリックス密度範囲は、1)マトリックスを通過する生合成接着剤浸透を最大化し、2)マトリックスによって、生合成接着剤の保持を最大化し、3)マトリックスに印加される圧力に耐える系の能力を最大化し、(4)出血を止めて流体漏れ及び空気漏れを封止するための、二成分封止剤の機能を最大化し、5)組織に対するデバイスの適合性を最大化するために、利用される。
【0034】
一実施形態では、器官又は創傷に対して封止する又は止血を提供する方法は、好ましくは、多孔質で可撓性の合成マトリックスを器官又は創傷に適用し、合成マトリックスの上部に接着剤を適用すること(例えば、噴霧などによる、生合成接着剤又は合成接着剤)を含み、それによって、接着剤が合成マトリックスを通過して浸透し、基材と器官、創傷又は切除表面との間の界面に到達することを可能にする。
【0035】
一実施形態では、本方法は、合成マトリックスを器官又は創傷と接合させるために接着剤を硬化させることを含む。
【0036】
一実施形態では、軟部組織切除のために、合成マトリックスの多孔度は、好ましくは約102~191mg/cm3、より好ましくは約102.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有するが、これは、軟部組織切除を封止するのに好適である。
【0037】
一実施形態では、高圧出血に関して、合成マトリックスの多孔質は、好ましくは、約128~191mg/cm3、より好ましくは約128.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有するが、これは、高圧出血を封止するのに好適である。
【0038】
一実施形態では、出血、流体漏れ及び/又は空気漏れを防止するために器官の切除表面を封止する方法は、好ましくは、合成マトリックスを器官の切除表面に適用することと、接着剤が合成マトリックスの隙間を通過して浸透し、合成マトリックスと器官の切除表面との間の界面と接触するように、合成マトリックス上に生合成接着剤又は合成接着剤などの接着剤を適用することと、合成マトリックスを器官の切除表面と接合させるために、接着剤を硬化させることと、を含む。
【0039】
一実施形態では、合成マトリックスは、生分解性で多孔質の可撓性基材である。
【0040】
一実施形態では、合成マトリックスは、ポリグラクチン910で作製された不織布メッシュである。
【0041】
一実施形態では、合成マトリックス及び接着剤は、好ましくは、器官の切除表面上の合成マトリックスの配置中及び/又は再配置中に、外科医が合成マトリックスを通して見ることを可能にするために、少なくとも部分的に透明である。
【0042】
一実施形態では、軟部組織切除を封止するために使用される場合、合成マトリックスは、好ましくは、102~191mg/cm3、より好ましくは102.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有する。
【0043】
一実施形態では、生合成接着剤は、望ましくは、部分加水分解タンパク質(例えば、アルブミン)及びポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)を含む。
【0044】
一実施形態では、生合成接着剤は、10%のアルブミン溶液と、75mg/mlのPEG-SG溶液と、の混合物であってもよい。
【0045】
一実施形態では、生合成接着剤は、液体形態又は粉末形態であってもよい。
【0046】
一実施形態では、生合成接着剤又は合成接着剤が合成マトリックスに適用され、硬化された後、接着剤は、合成マトリックスの繊維と機械的に連結し、好ましくは、合成マトリックスの繊維と化学的に架橋する。
【0047】
一実施形態では、器官の切除表面を封止する方法は、好ましくは、ポリグラクチン910で作製された多孔質の生体吸収性合成マトリックスを器官の切除表面に適用することと、接着剤が合成マトリックスの細孔を通過して浸透し、合成マトリックスと器官の切除表面との間の界面に接触するように、合成マトリックス上に接着剤(例えば、アルブミン及びポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)を含む、生合成接着剤)を適用することと、器官の切除表面に合成マトリックスを接合させるために、接着剤を硬化させることと、を含む。
【0048】
一実施形態では、多孔質の生体吸収性合成マトリックスを器官の切除表面に適用する前に、本方法は、器官の切除表面上に接着剤を事前に適用する予備工程を含んでもよく、次に、事前に適用された接着剤上に合成マトリックスを適用することを含んでもよい。
【0049】
一実施形態では、器官の切除表面を封止するためのキットは、好ましくは、ポリグラクチン910で作製された不織布メッシュを含む合成マトリックスと、生体適合性の反応性求電子試薬及び求核試薬を含む接着剤と、を含む。
【0050】
一実施形態では、接着剤は、アルブミンなどの部分加水分解タンパク質及びポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)を含む、生合成接着剤であってもよい。
【0051】
一実施形態では、キットは、生合成接着剤を分配するためのデュアルシリンジを含んでもよい。デュアルシリンジは、20%アルブミン溶液を含有する第1のシリンジバレルと、150mg/mlのPEG-SG溶液を含有する第2のシリンジバレルと、を含んでもよい。二成分は、好ましくは、硬化性の生合成接着剤を形成するためにデュアルシリンジから分配される際に一緒に混合される、又は組織に適用されるマトリックス上でその場で混合される。
【0052】
一実施形態では、器官又は創傷を封止するため又は止血を提供するためのキットは、好ましくは、VICRYL(登録商標)不織布PG910基材並びにアルブミン及びPEG-SGを含む2元接着剤などの、吸収性合成多孔質マトリックス(例えば、不織布マトリックス又はパッチ)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本特許出願の一実施形態による、生合成接着剤の一部であるポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)の化学式を示す。
【
図2】本特許出願の一実施形態による、生合成接着剤の一部であるタンパク質(アルブミン)の概略的実施例を示す。
【
図3】本特許出願の一実施形態による、合成マトリックスの平面図である。
【
図4】本特許出願の一実施形態による、生合成接着剤と合成マトリックスとの組み合わせの概略的実施例を示す。
【
図5】本特許出願の一実施形態による、文字Tで表される組織の切除表面を封止するための、合成マトリックスと架橋された生合成接着剤の概略的実施例を示す。
【
図6】本特許出願の一実施形態による、組織の切除表面を封止するために使用される二成分封止剤の合成マトリックスである。
【
図7】本特許出願の一実施形態による、10%のアルブミン、75mg/mlの4アームPEG-SG-10K、50mMの炭酸塩(pH=8.0)生物学的接着剤の適用後に45度傾斜平面に固定された、
図6の合成マトリックスを示す。
【
図8】本特許出願の一実施形態による、異なる密度レベルを有する合成マトリックスへの生合成接着剤の保持及び浸透をプロットする、グラフである。
【
図9】本特許出願の一実施形態による、異なる密度レベルを有する合成マトリックスを通過する生合成接着剤浸透をプロットする、グラフである。
【
図10】本特許出願の一実施形態による、93.0mg/cm
3の密度を有する第1の合成マトリックス(マトリックス1)を通過する生合成接着剤浸透の深さを示す、2つの矢印を有する。
【
図11】本特許出願の一実施形態による、120.5mg/cm
3の密度を有する第2の合成マトリックス(マトリックス2)を通過する生合成接着剤浸透の深さを示す、2つの矢印を有する。
【
図12】本特許出願の一実施形態による、131.2mg/cm
3の密度を有する第3の合成マトリックス(マトリックス3)を通過する生合成接着剤浸透の深さを示す、2つの矢印を有する。
【
図13】本特許出願の一実施形態による、178.2mg/cm
3の密度を有する第4の合成マトリックス(マトリックス4)を通過する生合成接着剤浸透の深さを示す、2つの矢印を有する。
【
図14】本特許出願の一実施形態による、247.0mg/cm
3の密度を有する第5の合成マトリックス(マトリックス5)を通過する生合成接着剤浸透の深さを示す、2つの矢印を有する。
【
図15】本特許出願の一実施形態による、異なる密度レベルを有する合成マトリックスの破裂圧力レベルをプロットする、グラフである。
【
図16】本特許出願の一実施形態による、軟部組織切除及び高圧出血について異なる密度レベルを有する合成マトリックスの破裂圧力レベルをプロットする、グラフである。
【
図17】本特許出願の一実施形態による、異なる密度レベルを有する合成マトリックスの破裂圧力レベルをプロットする、グラフである。
【
図18A】本特許出願の一実施形態による、肝臓を切除する方法を示す。
【
図18B】本特許出願の一実施形態による、
図18Aに示される肝臓の切除表面上に合成マトリックスを配置する方法を示す。
【
図18C】本特許出願の一実施形態による、
図18Aに示される肝臓の切除表面を封止するために、生合成接着剤が合成マトリックスに適用された後の、
図18Bの合成マトリックスを示す。
【
図19A】本特許出願の一実施形態による、肝臓葉を切除することを含む、外科手術方法の第1の段階を示す。
【
図19B】本特許出願の一実施形態による、肝臓葉の切除表面上に生合成接着剤を噴霧することを含む、外科手術方法の第2の段階を示す。
【
図19C】本特許出願の一実施形態による、肝臓葉の噴霧された切除表面上に合成マトリックスを配置することを含む、外科手術方法の第3の段階を示す。
【
図19D】生合成接着剤封止剤で噴霧された後の、
図19Cの合成マトリックスを示す。
【
図19F】本特許出願の一実施形態による、クランプを除去し、切除された肝臓葉への血流を再確立することを含む、外科手術方法の別の段階を示す。
【
図19G】合成マトリックスが肝臓葉の切除表面から除去された場合に出血が再度発生することを示すために、合成マトリックスが剥離された後の肝臓葉の切除表面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
一実施形態では、二成分封止剤は、好ましくは、軟器官の切除表面に適用されて、切除表面からの術中出血及び術後出血、流体漏れ(例えば、胆汁)、並びに/又は空気漏れ(例えば、肺)を防止する。
【0055】
図1及び
図2を参照すると、一実施形態では、軟器官の切除表面のための二成分封止剤は、好ましくは、合成マトリックス上に液体形態又は粉末形態で適用され得る、生合成接着剤などの接着剤100を含む。一実施形態では、生合成接着剤は、PEG-SGとしても知られるポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートと、タンパク質(例えば、アルブミン)と、の混合物を含む、溶液であってもよい。
【0056】
ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(PEG-SG)は、医療デバイスにおいて十分に確立された安全性特性を有し、Duraseal及びCosealなどの封止剤製品に使用されている。スクシンイミジルグルタレートは、アミド結合を形成する軽度アルカリ性条件下で、タンパク質、例えばコラーゲン上のアミン基と反応する。PEGへと設計された離層可能なエステル架橋剤により、ポリマーはインビボで分解可能である。本形態のPEGはまた、分子間架橋を可能にするその長いスペーサー領域に起因して、複数のコラーゲン繊維を横切って架橋する能力を提供する。
【0057】
図1は、ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレート(すなわち、PEG-SG)の化学構造を示す。
【0058】
図2は、タンパク質(すなわち、アルブミン)の簡略化された概略図を示す。
【0059】
図3を参照すると、一実施形態では、二成分封止剤は、好ましくは、軟器官の切除表面上に配置されるように適合された合成マトリックス102を含む。一実施形態では、合成マトリックス102は、生合成接着剤100(
図1及び
図2)とともに切除面上に配置されたメッシュマトリックス又は不織布マトリックスであってもよい。一実施形態では、不織布マトリックスは、可撓性及び/又は適合性があり、切除された組織表面上に配置されるように適合され、生合成接着剤100が合成マトリックス102に適用される。
【0060】
一実施形態では、合成マトリックス102は、好ましくは、繊維104と、繊維104どうしの間に配置された隙間106と、を含む。
【0061】
一実施形態では、生合成接着剤は、不織布マトリックス102に適用される架橋性液体接着剤である。生合成接着剤は、合成マトリックス102が生合成接着剤を保持するように、合成マトリックスの隙間106を通過して浸透するように適合され、それ故に、接着剤は硬化して、合成マトリックス102の繊維104と機械的に連結する及び/又は化学的に架橋する。
【0062】
一実施形態では、合成マトリックス102の密度は、接着剤が組織に付着する能力及び封止剤の凝集性を最大化して、器官の切除表面を覆う非浸透性の機械的バリアを形成するように、調整(すなわち、最適化)されてもよい。一実施形態では、接着性及び凝集性は、合成マトリックス102の主表面に適用される標準圧力に耐える系の能力を評価することによって、一緒に評価されてもよい。
【0063】
図4及び
図5を参照すると、一実施形態では、合成マトリックス102が組織の切除表面Tにわたって適用された後、生合成接着剤100は、組織の切除表面Tから離れた方向に面する合成マトリックス102の表面に適用されてもよい。一実施形態では、合成マトリックス102の密度は、生合成接着剤100が合成マトリックス102の厚さを通過して完全に浸透し、組織の切除表面に到達することを可能にするのに十分に確実に低くなるように選択され、それ故に、生合成接着剤100が硬化して表面分子と架橋し、下にある組織への接着を達成し得る。一実施形態では、生合成接着剤100は、好ましくは、合成マトリックス102の隙間を通過して完全に浸透して、合成マトリックスの繊維を組み込んで組織の切除表面Tを封止する補強足場として機能する凝集性架橋ヒドロゲルを作成するように配合される。
【0064】
一実施形態では、架橋ヒドロゲル補強材から生じる凝集性は、合成マトリックス102の密度を制御することによって増大させてもよい。
【0065】
一実施形態では、合成マトリックス102の設計パラメータは、合成マトリックスが生合成接着剤100を十分な期間保持し、接着剤が硬化して合成マトリックス102の繊維104と機械的に連結する及び/又は化学的に架橋することを可能にし、次に、二成分封止剤の凝集特性を最適化する能力を最適化するように選択される。合成マトリックスが生合成接着剤を保持する能力は、好ましくは、マトリックス密度を所定の密度レベル(すなわち、臨界点、最適化密度レベル)まで増加させることによって増大する。所定の密度レベルを超えると、合成マトリックスの厚さを通過する生合成接着剤の十分な浸透及び合成マトリックスによる生合成接着剤の保持を可能にするため、合成マトリックスの密度が高くなる。
【0066】
一実施形態では、生合成接着剤100及び合成マトリックス102の規格及び設計パラメータは、合成マトリックスの厚さを通過する生合成接着剤(例えば、液体)の浸透、合成マトリックスによる生合成接着剤の保持、並びに出血、流体漏れ及び空気漏れから生じる圧力に耐える系の能力を最大化する最適なマトリックス密度範囲を特定することによって確立され、それによって、出血を止めて流体漏れ及び空気漏れを封止するための二成分封止剤の機能性を最大化する。
【0067】
一実施形態では、合成マトリックス(例えば、VICRYL(登録商標)PG910メッシュ)は、合成マトリックスとPEG分子(すなわち、PEG-SG)との間の共有結合の形成を可能にするためにアミン基で官能化されてもよいが、これは、最終的に合成マトリックス分子を組織に共有結合させる。タンパク質溶液又は部分的タンパク質消化物を、本明細書に開示されるように、PEG-SG基材として合成マトリックス及び切除された領域に適用して、封止剤を形成してもよい。
【0068】
図4及び
図5は、PEG-SG4(4-アームバージョン)とアルブミンとの反応を示す。
図4及び
図5に示されるタンパク質のアミン(NH
2)基(例えば、第一級アミン部分)は、PEGのスクシンイミジルグルタレートと反応し、共有(アミド)結合を形成する。PEG-SG4はまた、組織表面(例えば、コラーゲン)上のタンパク質と反応することができ、組織表面への架橋ポリマーの接着を提供する。
【0069】
一実施形態では、合成マトリックスの最適な密度レベルを決定するための実験が行われた。一実施形態では、各マトリックスが同等の体積を有するが異なる密度を有する、5つのマトリックスを評価した。一実施形態では、第1の合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス1)は、約93.0mg/cm3の密度を有し、第2の合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス2)は、約120.5mg/cm3の密度を有し、第3の合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス3)は、約131.2mg/cm3の密度を有し、第4の合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス4)は、約178.2mg/cm3の密度を有し、第5の合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス5)は、約247.0mg/cm3の密度を有した。5つの異なる試験片の異なる密度を示すチャートを、以下に示す。
【0070】
【0071】
図6及び
図7を参照すると、一実施形態では、異なるマトリックス102が生合成接着剤を吸収及び保持する能力を評価するために、各マトリックスは6×6cmの正方形マトリックスであるようにサイズ決定された。一実施形態では、各マトリックスは、試験基板108上に約45度の角度で保持された。一実施形態では、生合成接着剤(すなわち、10%のアルブミン、75mg/mLの4アームPEG-SG-10k、pH=8.0での50mMの炭酸塩)を、Evicel(登録商標)無気噴霧アクセサリなどの噴霧デバイスを使用して、各6×6cmの正方形マトリックス上に噴霧した。合成マトリックス102に適用された後、生合成接着剤を2分間硬化させた。各マトリックスを評価して、合成マトリックスによる生合成接着剤の保持及び合成マトリックスの厚さを通過する生合成接着剤浸透を測定した。
【0072】
一実施形態では、5つの合成マトリックス試料(すなわち、マトリックス1、マトリックス2、マトリックス3、マトリックス4及びマトリックス5)のそれぞれによる生合成接着剤の保持を、重量測定的に測定した。言い換えれば、異なる密度を有する合成マトリックス試料を研究して、生合成接着剤の保持を評価した。一元配置分散分析試験を使用して、異なる密度での浸透及び保持に有意差があった(P<0.05)ことを実証した。93.0mg/cm3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス1)及び247mg/cm3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス5)を試験する場合に、最小の生合成接着剤保持が観察された一方で、178.2mg/cm3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス4)が、最大の生合成接着剤保持をもたらすことが観察された。178.2mg/cm3の密度を有する第4のマトリックス試験片(すなわち、マトリックス4)は、それぞれ、93.0mg/cm3、120.5mg/cm3、131.2mg/cm3及び247mg/cm3での状況におけるその他の試験片と比較して、生合成接着剤保持の75%、25%、23%、及び80%の増大を表す。
【0073】
一実施形態では、異なる密度を有する合成マトリックス試験片を浸透する又は通過する生合成接着剤の能力を、共焦点顕微鏡検査法によって評価した。一実施形態では、各合成マトリックスの断面を画像化し、画像処理方法を介して測定した。
【0074】
生合成接着剤保持データ及び生合成接着剤浸透データを、
図8に一緒に示す。低いマトリックス密度では、生合成接着剤は、合成マトリックスを通過して完全に浸透し得る。マトリックスの密度が増加するにつれて、マトリックスが生合成接着剤を吸収する能力が増大する。マトリックス密度は過剰に大きくなってマトリックスの深さを通過し完全に浸透することが不可能となり、生合成接着剤は、低いマトリックス密度の場合のように完全に通過することがもはや不可能となる。封止剤がマトリックスを通過して浸透する能力がないことは、マトリックスが封止剤を保持する能力を減少させ、これにより封止剤がマトリックスの露出表面から簡単に流れてしまう。マトリックスの完全な封止剤浸透がない場合、封止剤は、下にある組織とインビボで接合させることができない。
【0075】
図8に示すグラフに記載されているように、Kruskal-Wallis試験は、178.2mg/cm
3のマトリックス密度を有する第4の合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス4)を通過して生合成接着剤の完全な浸透があり、その後、より密度の高い合成マトリックスを通過する浸透中に有意な73%の低下があったことを実証した。
図8に示すグラフでは、エラーバーは、1つの(1)標準偏差を表す。
【0076】
図9は、異なるマトリックス密度でのマトリックス試験片の厚さを通過する生合成接着剤浸透を示すグラフである。PG910マトリックスの性質故に、マトリックスの密度が増加するにつれて、マトリックス自体の厚さにおける応答する増加がある。178.2mg/cm
3のマトリックス密度まで、封止剤はマトリックスを通過して完全に浸透し、生合成接着剤の厚さもまた増加する。178.2mg/cm
3のマトリックス密度を超えると、マトリックスの厚さが増加し続けるが、生合成接着剤の厚さは劇的に減少するであろう。これには、マトリックスを通過する生合成接着剤の不十分な浸透によるものである。例えば、247mg/cm
3のマトリックス密度では、マトリックスを通過する生合成接着剤浸透の距離は、178.2mg/cm
3の密度を有するマトリックス試験片を通過する浸透よりも、52%低い。
図9に示すグラフでは、エラーバーは、1つの(1)標準偏差を表す。
【0077】
図10~
図14は、異なる密度を有する5つの合成マトリックス試験片の厚さを通る生合成接着剤浸透の、代表的な共焦点顕微鏡画像を示す。
図10~
図14では、2つの赤い矢印間の距離は、それぞれのマトリックスを通過する封止剤浸透を示す。
【0078】
図10は、93.0mg/cm
3の密度を有する第1のマトリックス試験片(マトリックス1)を示す。
図11は、120.5mg/cm
3の密度を有する第2のマトリックス試験片(マトリックス2)を示す。
図12は、131.2mg/cm
3の密度を有する第3のマトリックス試験片(マトリックス3)を示す。
図13は、178.2mg/cm
3の密度を有する第4のマトリックス試験片(マトリックス4)を示す。
図14は、247.0mg/cm
3の密度を有する第5のマトリックス試験片(マトリックス5)を示す。
【0079】
93.0~178.2mg/cm
3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、マトリックス試験片1~4)は、生合成接着剤によって完全に浸透された。247.0mg/cm
3の密度を有する合成マトリックス試験片(
図14に示す、マトリックス試験片5)を通過する生合成接着剤浸透は、178.2mg/cm
3の密度を有する合成マトリックス試験片(
図13に示す、マトリックス試験片4)の52%未満であった。
【0080】
一実施形態では、生合成接着剤の保持及び浸透における観察された差分の機能的重要性を、卓上型水圧破裂圧力試験を介して評価した。一実施形態では、以前に硬化した生合成接着剤を有する合成マトリックス試験片を、試験固定具に取り付けた。マトリックス試験片の下で、2mL/分の速度で、破断するまで生理食塩水をポンプで汲み上げた。破断時の最大圧力を記録した。本明細書に開示される、5つの異なる密度レベルを有する合成マトリックス試験片を評価した。
図15を参照すると、178mg/cm
3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、
図13のマトリックス4)は、317mmHgの破裂圧力を達成したが、これは、93.0cm/mg
3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、
図10のマトリックス1)よりも73倍良好であり、120.5cm/mg
3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、
図11のマトリックス2)よりも6倍良好であり、131.2cm/mg
3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、
図12のマトリックス3)よりも1.78倍良好であり、247mg/cm
3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、
図14のマトリックス5)よりも5倍良好である。
図15に示すグラフでは、エラーバーは、1つの(1)標準偏差を表す。Welch ANOVA試験を使用した試験の結果として、178mg/cm
3の密度を有する合成マトリックス試験片(すなわち、
図13のマトリックス4)が、異なる密度を有するその他の合成マトリックス試験片よりも器官の切除表面を封止する際に有意に良好であったことが測定された。
【0081】
軟部組織切除では、9mmHgの圧力が予想され得るが、一実施形態では、好ましくは、所望の性能を確保するために3の安全係数が適用される。高圧出血では、臨床圧力の上限は160mmHgに達し得る。
【0082】
図16を参照すると、適切な封止のための最小必要マトリックス密度を決定するために、破裂圧力データ対マトリックス密度についての二次回帰モデルがマイクロソフトのエクセルで生成された(R
2=83.65%)。Minitab18(MINITAB社が提供している統計解析ソフトウェア)における応答最適化系アルゴリズムを用いて、27mmHg及び160mmHgの破裂圧力をもたらす最小マトリックス密度を測定した。最小マトリックス密度は、それぞれ、102.7mg/cm
3及び128.7mg/cm
3であると計算された。
図16に示すグラフでは、エラーバーは、1つの(1)標準偏差を表す。
【0083】
図17を参照すると、適切な封止のための最大マトリックス密度は、合成マトリックスの厚さを通過する生合成接着剤の完全な浸透を可能にする密度へと制限される。封止剤の厚さデータのために、二次回帰モデルをマイクロソフトのエクセルで計算した(R
2=97.35%)。最大マトリックス密度は、試験されたマトリックスの平均厚さ(すなわち、430μm)よりも高い封止剤浸透をもたらしたマトリックス密度として定義された。Minitab18における応答最適化系アルゴリズムを用いて、430μmの生合成接着剤浸透をもたらす最大マトリックス密度が190.7mg/cm
3のマトリックス密度値に応答したことを測定した。
図17に示すグラフでは、エラーバーは、1つの(1)標準偏差を表す。
【0084】
したがって、一実施形態では、軟部組織切除を封止するために用いられる最適なマトリックス密度は、約102~191mg/cm3、より好ましくは102.7~190.7mg/cm3であり、高圧出血を封止するために用いられる最適なマトリックス密度は、約128~191mg/cm3、より好ましくは128.7~190.7mg/cm3である。
【0085】
選択された密度での合成マトリックスが、切除表面を封止するために適切に機能することを実証するために、107.9mg/cm3の密度を有する合成マトリックス試験片を肝臓部分葉の切除に使用して、止血を達成するのに有効であることを示した。
【0086】
図18Aを参照すると、一実施形態では、肝臓は部分葉切除を受ける。
図18B及び
図18Cを参照すると、107.9mg/cm
3の密度を有する合成マトリックス102及び生合成接着剤は、本明細書に開示される系、デバイス及び方法を使用して、肝臓部分葉切除に適用される。合成マトリックスと生合成接着剤との組み合わせは、切除表面を封止し、出血及び流体漏れを防止し、止血に及んだ。
【0087】
一実施形態では、合成メッシュ及び生合成接着剤を含む封止剤は、軟器官の切除表面上に一緒に適用される。合成メッシュ及び生合成接着剤は、出血、流体漏れ及び空気漏れを制御するために、以下に記載されるような異なる形態及び方法で適用されてもよい。
【0088】
一実施形態では、生分解性合成マトリックス(例えば、VICRYL(登録商標)不織布PG910)を、切除表面上に配置し、続いて、合成PG910メッシュの上部に生合成接着剤(例えば、アルブミン溶液及びPEG-SG接着剤溶液)を適用する。1~5分後、合成マトリックス及び生合成接着剤の組み合わせは、好ましくは、切除表面に封止剤を形成する。
【0089】
一実施形態では、生合成接着剤(例えば、液体形態)を合成マトリックスに適用し、次に、合成マトリックスを切除された組織に適用してもよい。
【0090】
一実施形態では、生合成接着剤(例えば、液体形態)を切除された組織に適用し、次に、合成マトリックスを切除された組織に適用して、事前に適用された生合成接着剤に接触させてもよい。
【0091】
一実施形態では、合成マトリックスが切除表面上に配置された後に、追加の生合成接着剤が、配置された合成マトリックス上に適用されてもよい。
【0092】
一実施形態では、PEG-SG(及び場合によってはアルブミン)は、合成マトリックス(例えば、VICRYL(登録商標)PG910メッシュ)上に事前にコーティングされ、合成マトリックスは、湿式切除された組織上で乾燥して封止を達成する。
【0093】
一実施形態では、生合成接着剤のPEG-SG及びアルブミン構成成分は、粉末混合物として切除された組織に適用され、続いて、湿式切除された組織上に乾燥合成マトリックス(例えば、VICRYL(登録商標)PG910メッシュ)を配置して封止を達成する。乾燥保管は、好ましくは、室温での製品の長期保管を可能にする。特定の好ましい実施形態では、粉末混合物は、それぞれ、PEG-SG対タンパク質(アルブミン)の次の比である、0/100%、20/80%、40/60%、50/50%、60/40%、80/20%及び100/0%の、アルブミンに対するPEG-SGの比を有してもよい。
【0094】
一実施形態では、PEG-SGは、合成基材(例えば、VICRYL(登録商標)PG910メッシュ)上に事前にコーティングされてもよく、アルブミン溶液は、合成マトリックス及び/又は切除された組織に適用されてもよく、合成マトリックスは、封止を達成するために切除された組織に直ちに適用されてもよい。
【0095】
別の実施形態では、メッシュは、広い縁部(線形アンビルよりも広く、#153034に開示されているように、アンビルの幅よりも広いバットレス材料を送達するためのステープラアンビルの設計)を有する、線形ステープルのバットレス材料として使用され、続いて、メッシュ上に流体接着剤を適用することによって、(例えば、線形ステープラを使用した軟器官切除中に)露出した組織の封止を提供し得る。
【0096】
実施例1.肝臓切除のブタモデルにおける、封止剤としての合成マトリックス及び生合成接着剤の使用。本明細書に開示される系、デバイス、及び方法は、以下のように肝臓切除のブタモデルにおける封止剤として使用された。外科用メスを使用して肝臓葉を切除し、肝臓をクランプして、切除された葉への血流を最小限に抑えた。生合成接着剤溶液を、以下のように、1)20%のアルブミン溶液、及び2150mg/mlのPEG-SG溶液の各シリンジに5mlを保持するデュアルシリンジ系(例えば、Evicelデバイス)で調製した。切除された肝臓表面上に(例えば、約5ml)噴霧する際に、2つのシリンジの含有量をデバイスの噴霧チップ内で混合した。次に、合成メッシュ(例えば、不織布VICRYL(登録商標)PG910メッシュ)を切除表面上に配置した。合成マトリックスは、好ましくは、切除された組織の幾何学的形状に適合する。合成マトリックスに圧力が印加されていない合成マトリックス上に、追加の生合成接着剤(例えば、約5mL)を噴霧した。2分後、クランプを取り外して、切除された葉への通常の血流を回復させた。切除表面からの出血又は流体漏れは、視覚的に観察されなかった。接着剤が硬化した後、硬化した封止剤デバイス(すなわち、合成メッシュと硬化した接着剤との組み合わせ)に縫合糸を通過させて、封止剤デバイスを切除された器官に固定するのを手助けしてもよい。硬化した封止剤デバイスは、縫合穴の周囲の応力を低減するためのバットレスとして機能し得る。数分後、封止剤を除去したが、合成マトリックスと生合成接着剤とが切除された組織に強く接着しているために著しく強い力を必要とし、再出血が観察された。実施例1の研究は、本明細書に開示される封止剤系、デバイス及び方法の効率、並びに同じ接着剤を有するその他の試験されたマトリックスに対する優位性を実証する。
【0097】
図19A~
図19Gは、肝臓切除のブタモデルにおいて封止剤として使用される、PG910メッシュと液体アルブミン/PEG-SG接着剤との組み合わせを含む、実施例1の実施を示す。
図19Aは、切除表面及びクランプされた肝臓葉を示す。
図19Bは、切除表面上に噴霧された接着剤封止剤を示す。
図19Cは、噴霧された切除表面上に配置されている合成マトリックス102(例えば、VICRYL(登録商標)PG910メッシュ)を示す。
図19Dは、生合成接着剤封止剤で噴霧された後の合成マトリックス102を示す。
図19Eは、生合成接着剤を硬化させることを可能にするための、2分間の待機期間を示す。
図19Fは、クランプ取り外し及び切除された葉への血流の再確立を示すが、それによって、処置領域において出血が観察されない。封止剤の重合に続いて、アルブミン/PEG-SGと組み合わされたVICRYL(登録商標)メッシュは、封止剤として十分な有効性を示した。
図19Gは、封止剤が剥離された後の切除表面を示すが、これは、切除表面からの追加の出血をもたらす。
【0098】
実施例2.固体腫瘍切除手術処置中の封止剤系の使用。肺腫瘍切除手術処置では、封止剤系は、肺切除を受けている患者に使用される。手術室での腫瘍切除の直後に、合成マトリックス及び生合成接着剤を含む封止剤系を、漏れのリスクのある領域(例えば、ステープルライン、生で露出した胸膜表面)に配置して、切除された領域(複数可)において封止を達成した。封止剤系は、腹腔鏡法及び非腹腔鏡法を使用して、切除された器官に適用された。研究は、フィブリン糊とともに使用されるその他のマトリックスと比較して、肺の空気漏れを封止する際の合成マトリックスと生合成接着剤との組み合わせの有効性を、実証した。
【0099】
一実施形態では、本明細書に開示される封止剤系、デバイス及び方法は、合成マトリックス及び生合成接着剤を含む二成分封止剤を利用する。二成分封止剤は、合成マトリックスを切除された組織上に配置する前に、外科医が、合成マトリックス及び/又は切除された組織の両方に生合成接着剤を適用することを可能にすることによって、切除された組織を封止する際のより多くの柔軟性を外科医に提供する。一実施形態では、合成マトリックスが切除された組織にわたって位置付けられた後、必要に応じて、補助的な生合成接着剤を特定の位置に適用してもよい。
【0100】
一実施形態では、二成分封止剤系の合成マトリックスは、器官の不均一な切除表面などの不均一な表面に適合するために可撓性である。
【0101】
一実施形態では、合成マトリックスは、液体封止剤を単独で使用することによって達成され得るよりも実質的に大きい、強化された構造支持体(すなわち、足場)を提供する。
【0102】
一実施形態では、二成分封止剤系は、出血、流体漏れ及び空気漏れを防止及び/又は制御するために切除表面を封止するように、設計されている。
【0103】
本明細書に開示される封止剤系は、患者の凝固系に依存しない。したがって、外科医は、肝臓において最も凝固タンパク質が生成されるために、切除を受けている患者に障害が生じ得る、患者の凝固状態とは無関係に、止血及び封止を達成し得る。封止剤系はまた、抗血小板療法及び抗凝固療法の患者について、例えば、アスピリン、ヘパリン又はワルファリンで使用されてもよい。
【0104】
一実施形態では、二成分封止剤系は、透明であり、外科医が、封止後に切除表面を目視検査することを可能にする。治療が有効である外科医の視認性及び確認は重要であり、不透明な液体封止剤及び/又は不透明なパッチでは達成し得ない。一実施形態では、封止剤の透明度は、切除部位における不十分な視覚化に起因する、誘発性損傷の可能性を低減し得る。
【0105】
一実施形態では、本明細書に開示される二成分処置系は、好ましくは、切除された組織に対して強力な接着を提供するが、合成マトリックスは、必要に応じて、適切な封止を形成するために、手動で除去され、再配置されてもよい。一実施形態では、合成マトリックスと生合成接着剤との組み合わせは、組織表面上のタンパク質との直接の共有結合を介して、切除された組織に強い接着力を提供する。
【0106】
一実施形態では、二成分封止剤系は、系のそれぞれの構成要素の特性を変化させ、合成マトリックスによる生合成接着剤の保持、及び合成マトリックスの厚さを通過する生合成接着剤浸透を最適化することを可能にする。結果として、生合成接着剤及び合成マトリックスの特定の配合物は、特定の特性(例えば、分解速度、強度)を可能にするために変更されてもよい。
【0107】
一実施形態では、接着剤は、合成接着剤を含んでもよい。一実施形態では、接着剤は、生体適合性の反応性求電子試薬及び求核試薬を含んでもよい。一実施形態では、求電子試薬は、PEG-SGを含んでもよい。一実施形態では、求核試薬は、NH2基の任意の供給源、任意の適切なタンパク質又はタンパク質混合物、アルブミン、ポリエチレングリコールアミン(PEG-NH2)、及びアルブミンとPEG-NH2との組み合わせから選択されてもよい。
【0108】
上記の説明は本発明の実施形態に関するものであるが、本発明のその他の実施形態及び更なる実施形態を本発明の基本的な範囲から逸脱することなく行うことが可能であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。例えば、本発明では、本明細書で説明される又は本明細書に参照により組み込まれる任意の実施形態に示される任意の特徴は、本明細書で説明される又は本明細書に参照により組み込まれる任意の実施形態に示される任意の特徴とともに組み込まれ得、かつ本発明の範囲内に依然として含まれることが意図されている。
【0109】
〔実施の態様〕
(1) 器官の切除表面を封止する方法であって、
合成マトリックスを器官の切除表面に適用することと、
接着剤が前記合成マトリックスの隙間を通過して浸透し、前記合成マトリックスと前記器官の前記切除表面との間の界面と接触するように、前記合成マトリックス上に前記接着剤を適用することと、
前記合成マトリックスを前記器官の前記切除表面と接合させるために前記接着剤を硬化させることと、を含む、方法。
(2) 前記合成マトリックスが、生分解性で多孔質の可撓性基材である、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記合成マトリックスが、ポリグラクチン910で作製された不織布メッシュを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記合成マトリックス及び前記接着剤が、少なくとも部分的に透明である、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記合成マトリックスが、繊維を含み、102.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有する、実施態様1に記載の方法。
【0110】
(6) 前記合成マトリックスが、繊維を含み、128.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有する、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記接着剤が、生合成接着剤又は合成接着剤を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記接着剤が、生体適合性の反応性求電子試薬及び求核試薬を含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記求電子試薬が、ポリエチレングリコールスクシンイミジルグルタレートエステル(PEG-SG)を含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記求核試薬が、アミン(NH2)基の任意の供給源、任意の適切なタンパク質又はタンパク質混合物、アルブミン、ポリエチレングリコールアミン(PEG-NH2)、及びアルブミンとPEG-NH2との組み合わせからなる群から選択される、実施態様9に記載の方法。
【0111】
(11) 前記生合成接着剤が、部分加水分解タンパク質及びPEG-SGを含む、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記部分加水分解タンパク質が、アルブミンを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記生合成接着剤が、10%のアルブミン溶液と75mg/mlのPEG-SG溶液との混合物を含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記接着剤が、液体形態又は粉末形態であり、前記合成マトリックスの繊維と架橋される、実施態様1に記載の方法。
(15) 器官の切除表面を封止する方法であって、
ポリグラクチン910で作製された多孔質の生体吸収性合成マトリックスを、器官の切除表面に適用することと、
接着剤が前記合成マトリックスの細孔を通過して浸透し、前記合成マトリックスと前記器官の前記切除表面との間の界面と接触するように、前記合成マトリックス上に前記接着剤を適用することと、
前記合成マトリックスを前記器官の前記切除表面と接合させるために前記接着剤を硬化させることと、を含む、方法。
【0112】
(16) 前記接着剤が、生合成接着剤又は合成接着剤である、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記合成マトリックスが、繊維を含み、102.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有し、前記硬化した接着剤が、前記合成マトリックスの前記繊維と架橋される、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記合成マトリックスが、繊維を含み、128.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有し、前記硬化した接着剤が、前記合成マトリックスの前記繊維と架橋される、実施態様15に記載の方法。
(19) 多孔質の生体吸収性合成マトリックスを適用する工程の前に、前記器官の前記切除表面上に前記接着剤を事前に適用することを更に含む、実施態様15に記載の方法。
(20) 器官の切除表面を封止するためのキットであって、
ポリグラクチン910で作製された不織布メッシュを含む合成マトリックスと、
生体適合性の反応性求電子試薬及び求核試薬を含む接着剤と、を含む、キット。
【0113】
(21) 前記接着剤が、部分加水分解タンパク質及びPEG-SGを含む生合成接着剤である、実施態様20に記載のキット。
(22) 第1のシリンジバレル及び第2のシリンジバレルを含む、前記生合成接着剤を分配するためのデュアルシリンジを更に含み、
前記第1のシリンジバレルが20%のアルブミン溶液を収容し、
前記第2のシリンジバレルが150mg/mlのPEG-SG溶液を収容する、実施態様21に記載のキット。
(23) 前記合成マトリックスが多孔質であり、102.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有する、実施態様20に記載のキット。
(24) 前記合成マトリックスが多孔質であり、128.7~190.7mg/cm3の密度範囲を有する、実施態様20に記載の方法。
(25) 前記接着剤が、液体形態又は粉末形態である、実施態様20に記載のキット。
【国際調査報告】