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特表2023-529933無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/34 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
C23C18/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576217
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2021065564
(87)【国際公開番号】W WO2021250146
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20179312.2
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテック ドイチュラント ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D-10553 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カディーア トゥーナ
(72)【発明者】
【氏名】チアゴ プリエシ ガルシア
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA05
4K022AA31
4K022AA42
4K022BA06
4K022BA14
4K022DA01
4K022DB01
4K022DB08
(57)【要約】
無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液であって、ニッケルイオンまたはコバルトイオンと、上記ニッケルイオンおよびコバルトイオンを還元するための還元剤としてのTi3+イオンと、スルフィット、ジチオニット、チオスルファート、テトラチオナート、ポリチオナート、ジスルフィット、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、単体硫黄およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの促進剤と、1つ以上の錯化剤とを含み、めっき溶液のpH値は、5~10.5である、無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液であって、
- ニッケルイオンまたはコバルトイオンと、
- 前記ニッケルイオンおよびコバルトイオンを還元するための還元剤としてのTi3+イオンと、
- スルフィット、ジチオニット、チオスルファート、テトラチオナート、ポリチオナート、ジスルフィット、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、単体硫黄およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの促進剤と、
- 1つ以上の錯化剤と
を含み、
前記めっき溶液のpH値は、5~10.5である、
無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液。
【請求項2】
前記促進剤が、アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ金属亜硫酸水素塩、アルカリ土類金属亜硫酸塩、アルカリ土類金属亜硫酸水素塩、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、アルカリ金属亜二チオン酸塩、アルカリ金属亜二チオン酸水素塩、アルカリ土類金属亜二チオン酸塩、アルカリ土類金属亜二チオン酸水素塩、アルカリ金属チオ硫酸塩、アルカリ金属チオ硫酸水素塩、アルカリ土類金属チオ硫酸塩、アルカリ土類金属チオ硫酸水素塩、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸水素アンモニウム、アルカリ金属四チオン酸塩、アルカリ金属四チオン酸水素塩、アルカリ土類金属四チオン酸塩、アルカリ土類金属四チオン酸水素塩、四チオン酸アンモニウム、四チオン酸水素アンモニウム、アルカリ金属ポリチオン酸塩、アルカリ金属ポリチオン酸水素塩、アルカリ土類金属ポリチオン酸塩、アルカリ土類金属ポリチオン酸水素塩、ポリチオン酸アンモニウム、ポリチオン酸水素アンモニウム、アルカリ金属二亜硫酸塩、アルカリ金属二亜硫酸水素塩、アルカリ土類金属二亜硫酸塩、アルカリ土類金属二亜硫酸水素塩、二亜硫酸アンモニウム、二亜硫酸水素アンモニウム、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属二硫化物、アルカリ金属多硫化物、硫化アンモニウムおよびシクロ八硫黄(S)からなる群から選択される、請求項1記載のめっき溶液。
【請求項3】
前記めっき溶液中の前記促進剤の全質量は、0.01~300ppm、好ましくは0.1~200ppm、より好ましくは0.5~175ppmの範囲にある、請求項1または2記載のめっき溶液。
【請求項4】
前記1つ以上の錯化剤は、
- 有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 有機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 有機カルボン酸化合物、その塩およびそのエステルと
からなる群から無関係に選択される、請求項1から3までの1項以上記載のめっき溶液。
【請求項5】
- 前記めっき溶液は、有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される少なくとも1つ以上の錯化剤を含み、好ましくは、
- 有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される前記1つ以上の錯化剤は、前記めっき溶液中の唯一の錯化剤である
ことを条件とする、請求項1から4までの1項以上記載のめっき溶液。
【請求項6】
前記有機および/または無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルは、2~10の、好ましくは2~5の、より好ましくは2~3の互いに連結されたホスホ構築単位を含む、請求項1から5までの1項以上記載のめっき溶液。
【請求項7】
前記めっき溶液はピロホスファートを含まず、好ましくは、ピロホスファートを含まないが、有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される1つ以上の錯化剤を含むことを条件とする、請求項1から6までの1項以上記載のめっき溶液。
【請求項8】
前記錯化剤の前記Ti3+イオンに対するモル比は、1.5:1以上、好ましくは1.7:1以上であり、最も好ましくは1.9:1~3:1の範囲内にある、請求項1から7までの1項以上記載のめっき溶液。
【請求項9】
前記Ti3+イオンの濃度は、0.03~0.2mol/Lの範囲内、好ましくは0.03~0.1mol/Lの範囲内にある、請求項1から8までの1項以上記載のめっき溶液。
【請求項10】
前記1つ以上の錯化剤の濃度は、0.03~2.0mol/Lの範囲内、好ましくは0.05~1.5mol/Lの範囲内、より好ましくは0.08~1.1mol/Lの範囲内にある、請求項1から9までの1項以上記載のめっき溶液。
【請求項11】
4.0~9.5の範囲内、好ましくは5.0~9.0の範囲内、より好ましくは5.7~8.5の範囲内、さらにより好ましくは6.4~8.2の範囲内のpHを有する、請求項1から10までの1項以上記載のめっき溶液。
【請求項12】
基材(2,3)上にニッケル堆積物またはコバルト堆積物(4)を無電解めっきする方法であって、
前記基材(2,3)上に前記ニッケル堆積物またはコバルト堆積物(4)が無電解めっきされるように、前記基材と、請求項1から11までの1項以上記載の無電解めっき溶液とを接触させることを含む、方法。
【請求項13】
前記無電解めっき溶液は、30~80℃の範囲内、好ましくは50~75℃の範囲内、より好ましくは55~70℃の範囲内の温度を有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記基材(2,3)は銅層(3)を含み、前記ニッケル堆積物またはコバルト堆積物(4)を前記銅層(3)上にめっきし、好ましくは前記ニッケル堆積物またはコバルト堆積物(4)を前記銅層(3)上に直接めっきする、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
ニッケル層またはコバルト層(4)を含む電子物品(1)であって、前記ニッケル層または前記コバルト層(4)は、請求項12から14までの1項以上記載の方法により得られ、前記ニッケル層(4)または前記コバルト層(4)は、前記ニッケル層(4)または前記コバルト層(4)の全質量を基準として99質量%以上のニッケルまたはコバルトを含み、前記物品は銅層(3)を含み、前記ニッケル層または前記コバルト層(4)は、前記銅層上に堆積させられていて、前記ニッケル層(4)または前記コバルト層(4)上にそれぞれ金層(5)またはスズ層(5)をさらに含む、電子物品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液、基材上にニッケル堆積物またはコバルト堆積物、好ましくは層を無電解めっきする方法、ならびにこのような堆積物および層をそれぞれ含むそれぞれの電子物品に関する。
【0002】
背景技術
ニッケル層およびコバルト層は、電子デバイスにおいて広く使用されている。このような層およびそれらを製造する方法は、先行技術から公知である。ニッケル層およびコバルト層は、スズ層または金層から銅層を分離するためのバリア層として使用されることが多い。銅のスズ層または金層への移行は、これらの層の間に位置するバリア層により防止される。
【0003】
Sviridov et al., J. Phys. Chem 1996, 100, 19632-19635は、ニッケルおよびコバルトを還元するためのTi(III)錯体の使用を記載している。
【0004】
米国特許出願公開第2015/0307993号明細書は、Ti3+イオンおよびCo2+イオンの還元剤を含むコバルトの無電解堆積のための溶液を開示している。純粋なコバルト層が得られ、この溶液はリン含有化合物を含まない。
【0005】
Nakao et al., Surface and Coatings Technology, 169-170 (2003) 132-134は、無電解めっき溶液から得られた、リンを含まない純粋なニッケル膜を開示している。この溶液は、チタンイオン還元系を使用する。ニトリロ酢酸およびクエン酸の二種類の錯化剤が使用される。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0104331号明細書は、例えば電子デバイスを製造するための金属および金属合金を堆積させるための堆積溶液を開示している。一実施形態によると、この堆積溶液は、金属イオンおよびpH調整剤を含む。このpH調整剤は、一般式(RN)(RN)C-N-Rを有する官能基を有し、式中、Nは窒素であり;Cは炭素であり;R、R、R、RおよびRは、同じであるかまたは異なり、かつ水素、アルキル基、アリール基またはアルキルアリール基を表す。堆積させることができる金属は、ニッケルまたはコバルトである。
【0007】
通常では、従来のめっき溶液は、極めて高いめっき速度で開始し、その後、このめっき速度が使用時間にわたり明らかに低下するめっき挙動を示す。幾つかの場合には、めっき速度は、最初の数分内に急激なピークを示し、その後に急速に低下する。このような挙動は、スズ堆積物の均一性および厚みのようなめっき結果を制御することを極めて困難にするため、極めて望ましくない。
【0008】
発明の課題
本発明の課題は、高純度ニッケルまたはコバルト層を製造するために適した無電解めっき溶液ならびにそれぞれのめっき方法を提供することであった。さらに、課題は、コバルトとニッケルとをそれぞれ、非導電性材料上に同時に金属めっきすることなしに金属上に選択的に、特に上記銅をさらに活性化することなしに銅上に選択的に堆積させることであった。さらに、この無電解めっき溶液の増大された/高い堆積速度および増大された安定性が望まれる。
【0009】
本発明の更なる課題は、先行技術の欠点を克服することである。別の課題は、先行技術から公知の無電解めっき溶液と比較して改善されためっき速度を有するめっき溶液を提供することである。
【0010】
更なる課題は、経時的に一定のめっき速度を有するめっき溶液を提供することである。
【0011】
更なる課題は、沈着に対して(十分に)(例えば、作製後または使用の間に少なくとも4hの間)安定なめっき溶液を提供することである。
【0012】
更なる課題は、化合物数を減らすことおよび/またはめっき溶液中の化合物数を減らすことである。
【0013】
発明の概要
本発明は、独立請求項による無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液、無電解めっきする方法、ならびに電子物品を提供し、かつ上述の課題の少なくとも1つ、好ましくは全てを解決する。更なる実施形態は、従属請求項および本明細書の説明に開示されている。
【0014】
本発明は、無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液であって、
- ニッケルイオンまたはコバルトイオンと、
- 上記ニッケルイオンおよびコバルトイオンを還元するための還元剤としてのTi3+イオンと、
- スルフィット、ジチオニット、チオスルファート、テトラチオナート、ポリチオナート、ジスルフィット、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、単体硫黄およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの促進剤と、
- 1つ以上の錯化剤と
を含み、
めっき溶液のpH値は、5~10.5である、
無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液を提供する。
【0015】
本発明はまた、基材上にニッケル堆積物またはコバルト堆積物を無電解めっきする方法であって、基材上にニッケル堆積物またはコバルト堆積物が無電解めっきされるように、基材と、本発明による無電解めっき溶液とを接触させることを含む、方法を提供する。
【0016】
本発明はまた、ニッケル層またはコバルト層を含む電子物品であって、このニッケル層またはコバルト層は、本発明の無電解めっき溶液から得ることができるかもしくは得られるか、または本発明の方法により得られ、このニッケル層またはコバルト層は、ニッケル層またはコバルト層の全質量を基準として99質量%以上のニッケルまたはコバルトを含み、この電子物品は銅層を含み、このニッケル層またはコバルト層は、この銅層上に配置されている、電子物品を提供する。
【0017】
一般的な実施形態または特別な実施形態において、本発明により、以下の利点:
- 好ましくは99質量%以上、より好ましくは99.9質量%以上のコバルトまたはニッケルを含む高純度のコバルト堆積物またはニッケル堆積物を、本発明の無電解めっき溶液を用いて製造することができる、
- 本発明のめっき溶液は、高い堆積速度を可能にする。以下の実施例に示されているように、意外にも、本発明によるめっき溶液を用いて著しく高いめっき速度を達成することができることが見出された、
- 本発明のめっき溶液は、特に銅上に、選択的堆積を可能にする、
- 本発明のめっき溶液は、高い安定性を示す、
- このめっき溶液は、銅を活性化するためのあらゆる事前の活性化ステップなしで、銅上にニッケル堆積物またはコバルト堆積物を直接堆積させることを可能にする、
の1つ以上が達成される。
【0018】
更なる利点は、以下の説明で言及される。
【0019】
発明の詳細な説明
「含む(comprising)」という用語が本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、これは他の要素を排除するものではない。本発明の目的のために、「からなる(consisting of)」という用語は、「含む(comprising)」という用語の好ましい実施形態であると見なされる。以後、1つの群が、少なくとも特定の数の実施形態または特徴を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態または特徴だけからなる群も開示すると解釈されるべきである。
【0020】
単数名詞に関する際に使用される不定冠詞または定冠詞、例えば「a」、「an」または「the」は、何か特別に述べられていない限り、これは、その名詞の複数形を含む。本発明の文脈における「約(about)」または「ほぼ(approximately)」という用語は、当業者が論点における特徴の技術的効果を依然として保証すると解釈する精度のインターバルを示す。
【0021】
この説明において、金層、スズ層、ニッケル層またはコバルト層のように金属の名称の後に層と記されている場合、この用語は、他に言及されていない限り、主成分としてそれぞれの金属を含む合金も包含する。
【0022】
本発明のめっき溶液は、ニッケルめっき溶液またはコバルトめっき溶液である。最も好ましくは、本発明のめっき溶液が、ニッケルめっき溶液である場合、このめっき溶液はコバルトイオンを含まない。本発明のめっき溶液が、コバルトめっき溶液である場合、このめっき溶液は、最も好ましくは、ニッケルイオンを含まない。これは、本発明が、1つの態様においては、ニッケルめっき溶液だけを対象とし、他の態様においては、コバルトめっき溶液だけを対象とすることを意味する。
【0023】
本発明のめっき溶液は、ニッケルイオンがNi2+イオンを含む、好ましくはNi2+イオン(だけ)を含むのが好ましい。
【0024】
本発明のめっき溶液は、コバルトイオンがCo2+イオンを含む、好ましくはCo2+イオン(だけ)を含むのが好ましい。
【0025】
めっき溶液から堆積させられるべき金属:
まれな場合には、還元されかつ同時堆積させられる別の金属が本発明のニッケルめっき溶液またはコバルトめっき溶液中に存在するが、これはあまり好ましくない。好ましくは、ニッケルまたはコバルトが溶液中の主要な金属成分であり、最も好ましくは堆積させられる唯一のものである。還元されかつ同時堆積させられる1つ以上の別の金属が存在する場合、ニッケルまたはコバルトはそれぞれ、好ましくは、めっき溶液中の還元かつ堆積させられる全ての金属の95モル%以上を構成する。還元剤としてのチタンは、この考察から除外される。
【0026】
好ましい実施形態では、還元剤としてのチタンを除いて、コバルトまたはニッケル以外の遷移金属は存在せず、より好ましくは、還元剤としてのチタンを除いて、鉛を除いて、かつアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を除いて、コバルトまたはニッケル以外に金属は存在しない。
【0027】
鉛の存在は、めっき溶液がニッケルめっき溶液である場合に好ましい。したがって、このめっき溶液がコバルトめっき溶液である場合、この溶液は、好ましくは鉛を含まない。
【0028】
好ましくは、本発明のめっき溶液は、典型的にはタングステンを含まず、より好ましくは、本発明のめっき溶液は、典型的にはアンチモン、ヒ素、カドミウム、クロム、銅、金、インジウム、イリジウム、鉄、マンガン、モリブデン、オスミウム、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、銀、タングステン、亜鉛、またはこれらの混合物を含まない。
【0029】
特に、本発明のめっき溶液は、スズを含まない。
【0030】
結果として、本発明の主要な態様では、本発明のめっき溶液は、無電解ニッケル合金めっき溶液または無電解コバルト合金めっき溶液ではない。
【0031】
しかしながら、まれな用途では、本発明のめっき溶液は、このめっき溶液が、還元されかつニッケルおよびコバルトのそれぞれと同時堆積させられる鉄イオンおよび/またはモリブデンイオンを含むことが好ましい。
【0032】
還元剤:
Ti3+イオンは、コバルトイオンおよびニッケルイオンを還元するための還元剤として使用される。
【0033】
本発明のめっき溶液は、好ましくは、付加的にTi4+イオンを含み、このTi4+イオンは、Ti3+イオンよりも少ない量で存在する。好ましくは、このTi3+イオンは、国際公開第2013/182478号に開示された方法に従って製造され、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。国際公開第2013/182478号は、Ti4+イオンをTi3+イオンに還元するために有利に使用される再生装置を開示している。
【0034】
本発明のめっき溶液は、チタンイオンが、めっき溶液中のニッケルイオンまたはコバルトイオンのための全ての還元剤の95モル%以上、好ましくは97モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上、最も好ましくは99モル%以上を示す合計濃度で存在するのが好ましい。
【0035】
本発明のめっき溶液は、好ましくは、チタンイオン以外に他のいかなる還元剤も含まない。
【0036】
好ましくは、本発明のめっき溶液は、以下の化合物の群または化合物のクラスから選択されるいかなる還元剤も含まない:
- ボラン、好ましくは一般式:RNH3-nBHのアルキル、ジアルキルおよびトリアルキルアミンボラン[式中、Rにおいて、Rは同じまたは異なるアルキル基を表し、nは、アミンボラン中の窒素に結合するアルキル基の数であり、nは、0、1、2または3である]、より好ましくは、ジメチルアミンボランを含める、
- 次亜リン酸およびヒポホスフィット、好ましくはヒポホスフィットジメチルアミンボランを含める、
- ボロヒドリド、
- ヒドラジン、
- アルデヒド、
- アスコルビン酸およびアスコルバート、
- チオスルフィット
- マンガン(II)イオン、および
- 銅(I)イオン。
【0037】
促進剤:
したがって、本発明によるニッケルまたはコバルトめっき溶液は、スルフィット、ジチオニット、チオスルファート、テトラチオナート、ポリチオナート、ジスルフィット、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、単体硫黄およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの促進剤を含む。自身の調査によると、促進剤として提供されるa)スルフィットおよび/またはb)ジチオニット、c)チオスルファート、d)テトラチオナート、e)ポリチオナート、f)ジスルフィット、g)単体硫黄および/またはh)スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィドが、ニッケルまたはコバルトめっき速度を向上させることを示した。
【0038】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの促進剤は、無機である。2つ以上の促進剤が選択される場合、これらは好ましくは全て無機である。
【0039】
スルフィット、ジチオニット、チオスルファート、テトラチオナート、ポリチオナート、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィドおよびジスルフィットの好ましい供給源は、各々の塩、例えばアルカリ金属塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム)、アルカリ土類金属塩(例えば、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム)、アンモニウム塩および前述のものの混合物である。好ましくは、少なくとも1つの促進剤は、水溶性であり、ナトリウムまたはカリウムとして使用される対イオンは、同時堆積させられない。
【0040】
本発明にとって、ポリチオナートという用語は、式S(SO 2-のオキソアニオンを指し、ここで、n=0、1、3、4、5、6、7または≧8である。
【0041】
ジチオニット、チオスルファート、テトラチオナート、ポリチオナート、ジスルフィット、ジスルフィド、ポリスルフィド、および単体硫黄は、少なくとも1つのS-S基を含む化合物である。
【0042】
本発明によるニッケルまたはコバルトめっき溶液は、促進剤が、アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ金属亜硫酸水素塩、アルカリ土類金属亜硫酸塩、アルカリ土類金属亜硫酸水素塩、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、アルカリ金属亜二チオン酸塩、アルカリ金属亜二チオン酸水素塩、アルカリ土類金属亜二チオン酸塩、アルカリ土類金属亜二チオン酸水素塩、アルカリ金属チオ硫酸塩、アルカリ金属チオ硫酸水素塩、アルカリ土類金属チオ硫酸塩、アルカリ土類金属チオ硫酸水素塩、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸水素アンモニウム、アルカリ金属四チオン酸塩、アルカリ金属四チオン酸水素塩、アルカリ土類金属四チオン酸塩、アルカリ土類金属四チオン酸水素塩、四チオン酸アンモニウム、四チオン酸水素アンモニウム、アルカリ金属ポリチオン酸塩、アルカリ金属ポリチオン酸水素塩、アルカリ土類金属ポリチオン酸塩、アルカリ土類金属ポリチオン酸水素塩、ポリチオン酸アンモニウム、ポリチオン酸水素アンモニウム、アルカリ金属二亜硫酸塩、アルカリ金属二亜硫酸水素塩、アルカリ土類金属二亜硫酸塩、アルカリ土類金属二亜硫酸水素塩、二亜硫酸アンモニウム、二亜硫酸水素アンモニウム、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属二硫化物、アルカリ金属多硫化物、硫化アンモニウムおよびシクロ八硫黄(S)からなる群から選択されるのが好ましい。
【0043】
本発明によるニッケルまたはコバルトめっき溶液は、促進剤が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム(重亜硫酸ナトリウム)、亜硫酸水素カリウム(重亜硫酸カリウム)、二亜硫酸二水素カルシウム(重亜硫酸カルシウム)、二亜硫酸二水素マグネシウム(重亜硫酸マグネシウム)、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、亜二チオン酸カルシウム、亜二チオン酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸バリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸水素アンモニウム、四チオン酸ナトリウム、四チオン酸カリウム、四チオン酸アンモニウム、四チオン酸水素アンモニウム、四チオン酸バリウム、ポリチオン酸ナトリウム、ポリチオン酸カリウム、ポリチオン酸アンモニウム、ポリチオン酸水素アンモニウム、二亜硫酸ナトリウム、二亜硫酸カリウム、二亜硫酸アンモニウム、二亜硫酸水素アンモニウム、硫化ナトリウムもしくは硫化カリウム、二硫化ナトリウムもしくは二硫化カリウム、多硫化ナトリウムもしくは多硫化カリウム、硫化アンモニウムおよび粒状シクロ八硫黄(S)からなる群から選択されるのがさらに好ましい。
【0044】
一実施態様では、選択された促進剤が、アルカリ金属硫化物としての無機硫化物を含む場合、少なくとも1つのpH調整剤は、アンモニアまたは水酸化アンモニウム、塩化アンモニウムとしての無機アンモニア誘導体からなる群から選択される。
【0045】
本発明により、亜二チオン酸ナトリウムおよび/または亜硫酸ナトリウムおよび/またはチオ硫酸ナトリウムおよび/または四チオン酸ナトリウムおよび/またはポリチオン酸ナトリウムおよび/または二亜硫酸ナトリウムが、特に好ましく使用される。単体硫黄が本発明によるニッケルまたはコバルトめっき溶液中に使用される場合、シクロ-S配置の硫黄が使用されることが好ましい。硫黄は、硫黄粒子として、特に空気力学的粒径分析器(APS)により測定された空気動力学的直径が300nm未満、好ましくは200nm未満、より好ましくは100nm未満の硫黄粒子として存在することが特に好ましい。特別な理論に拘束されることは望まないが、硫黄は、2つの異なる化合物、すなわちスルフィットおよびスルフィドに変換されると考えられる。
【0046】
別の実施形態では、少なくとも1つの促進剤は有機である。
【0047】
好ましい有機促進剤は、チオアセトアミドである。
【0048】
好ましくは、本発明により使用される全ての促進剤の、ニッケルイオンまたはコバルトイオンに対するモル比は、少なくとも1~300である。より好ましくは、本発明により使用される全ての促進剤の、ニッケルイオンまたはコバルトイオンに対するモル比は、1:200~1:5,000、さらにより好ましくは1:300~1:4,000、さらにより好ましくは1:500~1:1,500、最も好ましくは1:550~1:1,000の範囲にある。
【0049】
本発明の無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液中のスルフィット、ジチオニット、チオスルファート、テトラチオナート、ポリチオナート、ジスルフィット、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィドおよび硫黄の合計濃度は、好ましくは0.0008~0.80mmol/L、より好ましくは0.008~0.40mmol/L、さらにより好ましくは0.04~0.16mmol/Lの範囲にある。
【0050】
好ましくは、ニッケルまたはコバルトめっき溶液中の促進剤の全質量は、0.01~300ppm、好ましくは0.1~200ppm、より好ましくは0.5~175ppmの範囲にある。
【0051】
好ましくは、本発明のニッケルまたはコバルトめっき溶液は、有機スルフィットを含まない。本発明者らは、これらの化合物が時折めっき速度に不利な影響を及ぼし、かつ経時的におよびこのような有機スルフィットを含むニッケルまたはコバルトめっき溶液の使用の間にめっき速度の低下を増大させることを見出した。
【0052】
本発明による無電解ニッケルまたはコバルトめっき溶液は、硫酸ニッケル(六水和物)(または塩化コバルト(II)(六水和物)のそれぞれ)と、塩化チタン(III)と、亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫化アンモニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの促進剤とを有することが好ましい。
【0053】
錯化剤:
本発明のめっき溶液は、
- 有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 有機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 有機カルボン酸化合物、その塩およびそのエステルと
からなる群から無関係に選択される1つ以上の錯化剤を含む。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明のめっき溶液は、
- 有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 有機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと
からなる群から無関係に選択される1つ以上の錯化剤を含む。
【0055】
有機ホスホン酸化合物は、少なくとも1つの(好ましくは1つより多くの、より好ましくは2つ以上の)~C-PO(OH)基を含む化合物である。その塩またはそのエステルは、「ホスホナート」とも言われる。例えば、エステルは、本発明の文脈において、構造~C-PO(OR)を含み、式中、Rは、好ましくは、有機残基であり、より好ましくは無関係にアルキルまたはアリールである。
【0056】
本発明のめっき溶液は、
- めっき溶液が、有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される少なくとも1つ以上の錯化剤を含み、好ましくは、
- 有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される1つ以上の錯化合物が、めっき溶液中の唯一の錯化剤である
ことを条件として、好ましい。
【0057】
本発明のめっき溶液は、有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルが、2、3、4、5以上の、好ましくは3、4、5以上のホスホナート基を有するのが好ましい。
【0058】
本発明の文脈におけるホスホナート基は、上述の~C-PO(OH)基、その塩およびそのエステルを含む。
【0059】
本発明のめっき溶液は、有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルが、1つ、2つ、3つ以上の第三級窒素原子および/またはリンに結合していない1つ以上のヒドロキシル基を含むのが好ましい。このような化合物は、本発明のめっき溶液中で特に有益である、というのも、これらは、比較的低い濃度で提供されても、アウトプレーティング(outplating)および沈殿を妨げる強い錯形成および安定化を提供するためである。これらの化合物は、熱安定性であり、例えば、上述の有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルよりも、最も好ましくは上述の有機ホスホン酸化合物およびその塩よりも速く熱分解するピロホスファートよりも大きな利点を有する。自身の実験によると、このような錯化剤が、それぞれのめっき溶液に極めて良好な効果を有することが示された。典型的には、コバルトとニッケルのそれぞれの濃度は、明らかに低減され、同様に錯化剤とTi3+イオンの濃度も明らかに低減され、同時に、例えば、無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステル、例えばピロホスファートと比較して、極めて高い堆積速度が維持される。本発明の文脈では、上述の「リンに結合していないヒドロキシル基」は、好ましくは、脱プロトンされた形(例えば、カルボキシラート基の形)を含む。
【0060】
本発明のめっき溶液は、有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルが、
1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP、CAS番号2809-21-4)、その塩およびそのエステル、
アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP、CAS番号6419-19-8)、その塩およびそのエステル、
ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP、ナトリウム塩のCAS番号:22042-96-2)、その塩およびそのエステル、
エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP、ナトリウム塩のCAS番号:15142-96-8)、その塩およびそのエステル、
ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC、CAS番号37971-36-1)、その塩およびそのエステル、
ヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(HDTMP、CAS番号23605-74-5)、その塩およびそのエステル、
ヒドロキシエチルアミノジ(メチレンホスホン酸)(HEMPA、CAS番号5995-42-6)、その塩およびそのエステル、ならびに
ビス(ヘキサメチレン)トリアミン-ペンタキス(メチルホスホン酸)(BHMTMP、CAS番号34690-00-1)、その塩およびそのエステル
からなる群から選択されるのが好ましい。
【0061】
幾つかの場合では、本発明のめっき溶液は、好ましくは、有機ポリリン酸化合物、その塩および/またはそのエステル、および/または無機ポリリン酸化合物、その塩および/またはそのエステルを含む。ポリリン酸化合物は、リン-酸素-リン配列を含む基を有し、各リン原子は、ホスホ構築単位に属することを特徴とする。
【0062】
本発明のめっき溶液は、有機および/または無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルが、2~10の、好ましくは2~5の、より好ましくは2~3の互いに連結されたホスホ構築単位を含むのが好ましい。
【0063】
無機ポリリン酸化合物は、好ましくは、二リン酸(ピロリン酸とも言われる)、三リン酸、四リン酸、またはさらにより高級なリン酸を含み、より好ましくはこれらである。無機ポリリン酸化合物の好ましい塩は、ジホスファート(ピロホスファートとも言われる)、トリホスファート、およびテトラホスファートであり、最も好ましくは、ピロホスファートである。ごくまれな場合には、高級なポリホスファートが、本発明のめっき溶液中で使用される。
【0064】
幾つかの場合には、本発明のめっき溶液は、このめっき溶液がピロホスファート(好ましくはピロホスファートおよびピロホスホン酸)を含まず、好ましくはピロホスファート(好ましくはピロホスファートおよびピロホスホン酸)を含まないが、有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される1つ以上の錯化剤を含むことを条件として、好ましい。これは、幾つかの場合には好ましい、というのもピロホスファートは、高めた温度下で時間の経過とともにいくらか不安定性を示すためである。これは、上述の有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルでは観察されず、好ましくは上述の有機ホスホン酸化合物およびその塩では観察されない。
【0065】
無機ポリリン酸化合物のエステルは、好ましくは、二リン酸エステルおよび三リン酸エステルからなる群から選択される。非限定的な好ましい例は、式
R-O-([(PO)-O-]PO(2+n)-で示される化合物であり、式中、nは、整数であり、Rは、有機基、好ましくはアルキルまたはアリールである。例えば、nが1の場合、式は、R-O-((PO)-O-PO3-である。
【0066】
幾つかの場合には、めっき溶液が、本発明のめっき溶液のために先に定義された錯化剤を含むリン含有錯化剤だけを含む、好ましくは、本発明のめっき溶液のために定義されたリン含有錯化剤だけを含む、本発明のめっき溶液が好ましい。
【0067】
本発明のめっき溶液は、より好ましくは、上述のもの以外にいかなる錯化剤も含まない。したがって、1つ以上の錯化剤は、
- 有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 有機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと
からなる群から、
好ましくは、
- 有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと
からなる群だけから無関係に選択される、本発明のめっき溶液が好ましい。
【0068】
本発明のめっき溶液は、めっき溶液が、以下の化合物の群または化合物のクラス:
- カルボン酸およびその塩、最も好ましくは酒石酸、および酒石酸塩、
- ヒドロキシカルボン酸およびその塩、
- エチレンジアミン四酢酸およびその塩、
- アミノ酸およびその塩、好ましくはグリシンおよびその塩、
- ホスホン酸(HPO)およびその塩、ならびに
- フィチン酸およびその塩
から選択される錯化剤を含まないのが好ましい。
【0069】
極めて好ましくは、本発明のめっき溶液は、ホスホン酸(HPO)を含まず、好ましくはホスホン酸(HPO)およびピロホスホン酸を含まない。
【0070】
めっき溶液中の成分のモル比:
本発明の好ましい実施形態では、錯化剤のTi3+イオンに対するモル比は、1.5:1以上、好ましくは1.7:1以上であり、最も好ましくは1.9:1~3:1の範囲内にある。
【0071】
これは、1つ以上の錯化剤が無関係に、
- 有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 有機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと、
- 無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルと
からなる群だけから選択される場合に特に当てはまる。
【0072】
別の好ましい上限は、20:1、より好ましくは16:1、最も好ましくは14:1であり、1つ以上の錯化剤が、無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群だけから無関係に選択される場合に最も好ましく、さらに最も好ましくは、ピロホスファートである。
【0073】
本発明のめっき溶液は、錯化剤のTi3+イオンに対するモル比が、1.5:1以上、好ましくは1.7:1以上であり、最も好ましくは1.9:1~3:1の範囲内にあり、かつ有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される1つ以上の錯化剤が、本発明のめっき溶液中の唯一の錯化剤であるのが最も好ましい。このようなモル比は、このモル比は比較的に低いが、このTi3+イオンは、例えば周囲空気による酸化に対して十分に安定化させるために特に好ましい。これはさらに、本発明のめっき溶液全体を安定化する。
【0074】
対照的に、錯化剤のTi3+イオンに対するモル比が、5:1以上、好ましくは8:1以上であり、最も好ましくは10:1~14:1の範囲内にあり、かつ無機ポリリン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される1つ以上の錯化剤が、本発明のめっき溶液中の唯一の錯化剤である、本発明のめっき溶液が好ましい。
【0075】
本発明のめっき溶液は、ニッケルイオンまたはコバルトイオンの、Ti3+イオンに対するモル比が、1:3~5:1の範囲内、好ましくは1:2.5~4:1の範囲内、より好ましくは1:2~3:1の範囲内、さらにより好ましくは1:2~2:1の範囲内にあるのが好ましい。
【0076】
本発明のめっき溶液は、錯化剤、好ましくは、先に好ましいと記載された錯化剤の、ニッケルイオンまたはコバルトイオンに対するモル比が、3:1以上、好ましくは4:1以上であり、より好ましくは4:1~7:1の範囲内、より好ましくは4:1~6:1の範囲内にあるのが好ましい。幾つかの場合には、好ましい上限は、10:1である。上述のモル比は、ニッケルイオンとコバルトイオンのそれぞれが、最も好ましくは、本発明の方法で好ましく使用される高めた温度で(下記のテキストを参照)、アウトプレーティング(outplating)を回避するために十分に錯生成することを保証する。さらに、これらのモル範囲は、本発明のめっき溶液の極めて良好な貯蔵安定性を提供する。
【0077】
幾つかの場合には、本発明のめっき溶液は、有機ホスホン酸化合物、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される1つ以上の錯化剤の、ニッケルイオンまたはコバルトイオンに対するモル比が、4:1~5:1の範囲内にあり、ただし、上述の錯化剤は、本発明のめっき溶液中で唯一の錯化剤であるものとするのが好ましい。
【0078】
成分の濃度:
本発明のめっき溶液の一実施形態では、ニッケルイオンまたはコバルトイオンの濃度は、0.01~0.3mol/Lの範囲内、好ましくは0.015~0.2mol/Lの範囲内、より好ましくは0.02~0.1mol/Lの範囲内、さらにより好ましくは0.025~0.05mol/Lの範囲内にあるのが好ましい。この濃度が、0.01~0.3mol/Lの範囲内である場合、アウトプレーティング(outplating)は、典型的には、高めた温度下であっても十分に回避される。この濃度が上述の好ましい範囲内にある場合、長いめっき時間にわたっても、めっき溶液の優れた安定性が達成される。
【0079】
本発明のめっき溶液の一実施形態では、Ti3+イオンの濃度は、0.03~0.2mol/Lの範囲内、好ましくは0.03~0.1mol/Lの範囲内にあるのが好ましい。この濃度が、0.03mol/Lを明らかに下回る場合、多くの場合において、不十分/不完全なめっきが観察される。しかしながら、この濃度が0.2mol/Lを明らかに上回る場合、幾つかの場合に、めっき溶液の不所望な不安定性が観察される。
【0080】
本発明のめっき溶液の一実施形態では、1つ以上の錯化剤の濃度は、0.03~2.0mol/Lの範囲内、好ましくは0.05~1.5mol/Lの範囲内、より好ましくは0.08~1.1mol/Lの範囲内にあるのが好ましい。この濃度は、好ましくは合計濃度である。本発明のめっき溶液の最適な安定性は、この濃度が上述の濃度範囲内にある場合、特に好ましい濃度範囲内にある場合に達成される。これにより、ニッケルイオンまたはコバルトイオンの錯生成ならびにTi3+イオンの安定化のために十分な量の錯化剤が提供される。これは、好都合にも、同じ錯化剤を用いて、めっきされるべき金属と還元剤とを安定化することができることを意味する。これは、本発明のめっき溶液の大きな利点である。さらにこれは、めっき溶液中の多様な化合物の数を減らし、錯化剤の補充を軽減する。これはまた、以下の好ましい濃度についても当てはまる。
【0081】
本発明のめっき溶液は、幾つかの場合に、錯化剤の濃度が、0.03~1.0mol/Lの範囲内、好ましくは0.05~0.8mol/Lの範囲内、より好ましくは0.08~0.5mol/Lの範囲内、さらにより好ましくは0.1~0.3mol/Lの範囲内、最も好ましくは0.1~0.2mol/Lの範囲内にあるのがさらにより好ましい。
【0082】
本発明のめっき溶液は、有機ホスホン酸化合物(好ましくは、先に好ましいと記載したもの)、その塩およびそのエステルからなる群から無関係に選択される全ての錯化剤の濃度が、0.03~1.0mol/Lの範囲内、好ましくは0.05~0.8mol/Lの範囲内、より好ましくは0.08~0.5mol/Lの範囲内、さらにより好ましくは0.1~0.3mol/Lの範囲内、最も好ましくは0.1~0.2mol/Lの範囲内にあるのが最も好ましい。さらに、最も好ましくは、他の錯化剤は、本発明のめっき溶液中に存在しない。
【0083】
めっき溶液の他の成分:
本発明のめっき溶液は、液体溶媒を含む。本発明の溶液は、好ましくは水を基礎とし、すなわち水性めっき溶液である。これは、液体溶媒の50体積%より多くが、好ましくは70体積%以上が、より好ましくは80体積%以上が、さらにより好ましくは90体積%以上が水であることを意味する。最も好ましくは、水が唯一の液体溶媒である。
【0084】
幾つかの場合に、本発明のめっき溶液は、好ましくは
- ニッケルイオンまたはコバルトイオンと、
- 上記ニッケルイオンおよびコバルトイオンを還元するための還元剤としてのTi3+イオンと、
- 任意に、Ti4+イオンと、
- 任意に、安定剤、好ましくは無機安定剤、最も好ましくは鉛イオンと、
- スルフィット、ジチオニット、チオスルファート、テトラチオナート、ポリチオナート、ジスルフィット、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、単体硫黄およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの促進剤と、
- 本発明のめっき溶液のために本明細書全体にわたって定義されるような、好ましくは、好ましいと記載されている1つ以上の錯化剤と、
- 液体溶媒、好ましくは水と、
- 1つ以上のpH調整剤、好ましくは
- 塩基、より好ましくは、水酸化物、炭酸塩、および/またはアンモニア;および/または
- 酸、好ましくはリン酸および/または硫酸と、
- 1つ以上の界面活性剤と、
- 上述の化合物の対イオン、好ましくはニッケルイオンもしくはコバルトイオンのアニオンと
からなる。
【0085】
上述のリスト内に列挙された化合物は、好ましくは、本発明のめっき溶液が、「含む(comprising)」または「からなる(consisting of)」により定義されているかにかかわらず、本発明のめっき溶液中に一般的に使用される。
【0086】
任意に、本発明のめっき溶液は、鉛イオンをさらに含み、このめっき溶液がニッケルイオンを含む場合、すなわちめっき溶液がニッケルめっき溶液である場合に、最も好ましい。鉛イオンは、典型的には、ニッケルめっき溶液中の安定剤として作用する。鉛イオンの濃度は、0.5~10μmol/Lの範囲内、好ましくは0.1~8μmol/Lの範囲内にあるのが好ましい。
【0087】
めっき溶液の他のパラメータ
本発明のめっき溶液は、5~10.5のpH値を有する。本発明のめっき溶液は、4.0~9.5の範囲内、好ましくは5.0~9.0の範囲内、より好ましくは5.7~8.5の範囲内、さらにより好ましくは6.4~8.2の範囲内のpHを有するのが好ましい。
【0088】
ニッケル層またはコバルト層を無電解めっきするための本発明の方法
本発明のめっき溶液に関する上述のことは、好ましくは、(適用可能である場合)本発明の方法にも同様に当てはまる。
【0089】
本発明の方法は、基材上にニッケル堆積物またはコバルト堆積物を無電解めっきするためのものである。本発明の方法では、本明細書で開示された本発明のあらゆるめっき溶液が有利に使用される。本発明の方法により得られたニッケル堆積物またはコバルト堆積物は、実質的にリン不含であり、好ましくはリンを含まない。
【0090】
本発明の方法で使用される好ましい基材は、電子物品、部材、またはそれらの前製品であるか、または最終的に電子物品、部材、またはそれらの製品になる基材である。より好ましい基材は、これらに限定されるものではないが、ウェハ、ダイスおよび/またはさらに処理されたウェハ、プリント回路ボード、集積回路パッケージ、部材、またはそれらの前製品である。幾つかの場合では、基材は、好ましくは、樹脂、プラスチック、セラミック、ガラス、および/または金属を含み、好ましくは少なくとも1つの金属を含み、より好ましくは少なくとも1つの金属と非導電性材料との組合せを含む。好ましい金属は、銅、チタン、チタン合金(好ましくは窒化チタン)、コバルト、およびコバルト合金であり、好ましくは、この金属は、パターン化された状態であり、最も好ましくは、この金属は、パターン化された層である。本発明の文脈において、「パターン化された」とは、構造化されたことを含み、すなわち、この金属は、好ましくは三次元の表面を有する。したがって、幾つかの場合では、金属がパターン化されていることが好ましく、他の場合では、金属は、均一な層であり;好ましくは、幾つかの場合では、パターン化された金属である。好ましい非導電性材料は、樹脂、プラスチック、セラミック、ガラス、および/またはケイ素含有材料である。
【0091】
幾つかの特別な場合には、本発明の方法は、コバルト堆積物とニッケル堆積物のそれぞれ(好ましくはコバルト堆積物)が、コバルトおよびその合金上に、好ましくは凹陥構造を部分的にまたは完全に埋めるために凹陥構造内のコバルトおよびその合金上に無電解めっきされるのが好ましい。幾つかの場合には、本発明の方法の前に、コバルトおよびその合金を、物理的方法、好ましくはスパッタリングにより堆積させられることが好ましい。極めて好ましい金属は、チタンまたはチタン合金(好ましくは窒化チタン)に続きコバルトおよびその合金(好ましくはコバルト)を含み、最も好ましくは凹陥構造内の金属のスタックである。本発明の方法を用いるコバルトのめっき、好ましくは充填は、特に、この凹陥構造が小さく、好ましくは20nm以下、好ましくは10nm以下の開口幅を有する場合に有益である。
【0092】
本発明の方法は、無電解めっき溶液が、30~80℃の範囲内、好ましくは50~75℃の範囲内、より好ましくは55~70℃の範囲内の温度を有するのが好ましい。この温度は、本発明のめっき溶液の温度であり、この温度は明らかに高い。この比較的高い温度は、めっき溶液の安定性を、例えばアウトプレーティング(outplating)および/または沈殿により損なうことなしに、高い堆積速度を可能にする。
【0093】
本発明の方法は、コバルト堆積物(好ましくはコバルト層)とニッケル堆積物(好ましくはニッケル層)のそれぞれが、100nm/h~400nm/hの範囲内、好ましくは150nm/h~380nm/hの範囲内、より好ましくは200nm/h~360nm/hの範囲内、さらにより好ましくは250nm/h~340nm/hの範囲内、最も好ましくは280nm/h~320nm/hの範囲内の堆積速度でめっきされるのが好ましい。
【0094】
好ましくは、ニッケル堆積物またはコバルト堆積物は、ニッケル層またはコバルト層である。したがって、基材上にニッケル層またはコバルト層を無電解めっきする本発明の方法は、この方法が、基材を本発明による無電解めっき溶液と接触させて、ニッケル層またはコバルト層を、基材上に無電解めっきするステップを含むのが好ましい。この好ましい場合には、ニッケル堆積物またはコバルト堆積物は層である。しかしながら、他の場合では、ニッケル堆積物またはコバルト堆積物は、好ましくは構造を充填するために使用される。
【0095】
幾つかの場合には、本発明の方法は、好ましくは、コバルトバリアまたはニッケルバリアを堆積させるために、好ましくは、金属上に、好ましくは銅上に、コバルト層またはニッケル層を堆積させるために使用される。よって、本発明の方法の特に好ましい実施形態では、基材は、銅層、好ましくはパターン化された銅層を含み、ニッケル堆積物、好ましくはニッケル層、またはコバルト堆積物、好ましくはコバルト層を銅層上にめっきし、好ましくは、ニッケル堆積物、好ましくはニッケル層またはコバルト堆積物、好ましくはコバルト層を、銅層上に直接めっきする。
【0096】
本発明の文脈において、「直接」とは、銅層の更なる活性化が行われないことを意味し、すなわち、コバルト堆積物/層またはニッケル堆積物/層を銅層上にめっきする前に、銅層は、コバルトまたはニッケルのめっきを促進する化合物と接触されていないことを示す。
【0097】
本発明の方法は、基材が金属、好ましくは銅を含み、この方法の間に、ニッケル堆積物またはコバルト堆積物、好ましくはニッケル層またはコバルト層が、金属上に、好ましくは銅上に選択的にめっきされ、同時に金属が露出していない基材領域、好ましくは銅が露出していない基材領域についてはめっきされないのがさらにより好ましい。これは、基材が銅および樹脂を含む場合が特に好ましい。
【0098】
本発明の方法の結果として、めっきされた基材が得られ、このめっきされた基材は、好ましくは次の層を含む:Cu層/NiまたはCo層、ここで、NiまたはCo層は、好ましくは外層であり、すなわち自由にアクセス可能な表面を有する。「/」の記号は、ここでは、各層が互いに接触している、すなわち隣接する層であることを意味する。
【0099】
バリア層は、典型的には、銅が更なる金属層内へ移行することを妨げる。ニッケル層は、好ましくは、スズ層内へ移行することを妨げるために用いられる。コバルト層は、好ましくは、銅が金層内へ移行することを妨げるために用いられる。
【0100】
したがって、本発明の方法は、好ましくはさらに、金層またはスズ層を、ニッケル層またはコバルト層上にめっきするステップ、より好ましくは金層をコバルト層上に、あるいはスズ層をニッケル層上にめっきするステップを含む。したがって、めっきされた基材は、好ましくは、以下の層を、Cu層/NiまたはCo層/SnまたはAu層の順序で含み、SnおよびAu層は、好ましくは、外層であり、すなわち自由にアクセス可能な表面を有する。このような層構造はまた、言及された層を言及された順序で含む層の「スタック」とも言われる。NiまたはCo層は、Cu層を、それぞれのSn層およびAu層から分離する。
【0101】
上述の層は、好ましくは表面全体にわたって延在しているか、または好ましくは表面の一部にわたって延在している。
【0102】
幾つかの場合では、銅層が、表面の一部だけにわたって延在している、すなわち構造化またはパターン化されていることが好ましい。他の場合では、銅層が、基材の表面全体にわたって延在することが好ましい。
【0103】
幾つかの場合には、ニッケル層またはコバルト層は、銅層の一部だけにわたって延在している、すなわち構造化またはパターン化されている、好ましくは、構造化/パターン化された銅層に少なくとも部分的に対応して構造化またはパターン化されていることが好ましい。他の場合では、ニッケル層またはコバルト層は、銅層全体にわたって延在しているのが好ましい。
【0104】
幾つかの場合では、SnまたはAu層は、好ましくはニッケル層またはコバルト層の一部にわたって延在していることが好ましい。他の場合では、ニッケル層またはコバルト層は、ニッケル層またはコバルト層全体にわたって延在していることが好ましい。
【0105】
本発明のめっき方法は、次のレドックス反応を含む:
Ni2+ + 2Ti3+ → Ni + 2Ti4+
および、それぞれ、
Co2+ + 2Ti3+ → Co + 2Ti4+
【0106】
結果として、めっきの間に、Ti3+イオンの濃度は低下する、それというのも、そのイオンはTi4+イオンに酸化するためである。さらに、ニッケルイオンおよびコバルトイオンの濃度は低下する、それというのも、それらは還元され、金属析出物として基材上にめっきされるためである。
【0107】
本発明の方法は、以下の付加的ステップ:
- 好ましくはTi4+イオンをTi3+イオンに再生することにより、最も好ましくは電流を用いてTi4+イオンをTi3+イオンに再生することにより、めっき溶液またはめっき溶液の少なくとも一部を再生するステップ
を含むのが好ましい。
【0108】
このような再生では、Ti3+イオンが再び取得され、ニッケルイオンおよびコバルトイオンは、それぞれ好ましくは補充される。再生は、好ましくは、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2013/182478号に記載されたような方法に従って行われる。
【0109】
本発明の電子物品
本明細書はさらに、ニッケル層またはコバルト層(4)を含む電子物品(1)に関し、このニッケル層またはコバルト層(4)は、本発明による無電解めっき溶液から得ることができるかあるいは得られるか、または本発明による方法により得られ、このニッケル層(4)またはコバルト層(4)は、ニッケル層(4)またはコバルト層(4)の全質量を基準として99質量%以上のニッケルまたはコバルトを含み、
この物品は、銅層(3)を含み、ニッケル層またはコバルト層(4)は、この銅層上に堆積させられている。
【0110】
本発明は、ニッケル層またはコバルト層(4)を含む電子物品(1)に関し、このニッケル層またはコバルト層(4)は、本発明による方法により得られ、このニッケル層(4)またはコバルト層(4)は、ニッケル層(4)またはコバルト層(4)の全質量を基準として99質量%以上のニッケルまたはコバルトを含み、
この物品は銅層(3)を含み、このニッケル層(4)またはコバルト層(4)は、銅層上に堆積させられていて、このニッケル層(4)またはコバルト層(4)上にそれぞれ金層(5)またはスズ層(5)をさらに含む。
【0111】
本発明のめっき溶液に関するおよび/または本発明の方法に関する上述のことは、好ましくは、(適用可能である場合)本発明の電子物品にも同様に当てはまる。
【0112】
本発明の電子物品は、電子デバイスまたは電子部品または電子部材とも言われる。本発明の物品は、好ましくは、本発明の方法の製品であり、例えばめっきされた基材である。これに関連して、上記開示全体が参照される。
【0113】
好ましくは、銅層(4)は、構造化されていて、より好ましくは回路を形成している。
【0114】
限定するものではないが、この電子物品は、好ましくは、ウェハ、ダイスおよび/または他の処理されたウェハ、微小電気機械システム、集積回路パッケージ、およびプリント回路ボードから選択される。
【0115】
好ましい電子物品はセンサーであり、例えば微小電気機械システム中に含まれる。
【0116】
本発明によると、電子物品は、金層またはスズ層をさらに含み、この金層またはスズ層は、ニッケル層またはコバルト層上に堆積させられているのが好ましい。
【0117】
好ましくは、本発明の電子物品において、ニッケル層またはコバルト層は、燐(phosphor)(本明細書内では「リン(phosphourus)」とも言われる)を含まない。
【0118】
以下に、本発明を実施例に関して説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1】本発明の電子物品を示す。
【0120】
実施例
実施例1-ニッケルのめっき
還元剤としてTi3+を用いかつ錯化剤としてピロホスファートを用いる自己触媒(無電解)ニッケルめっきを行う。硫酸ニッケル(六水和物)を、ニッケル塩として使用する。還元剤は、国際公開第2013/182478号に記載されているような再生セル内で合成される。
【0121】
Ti4+を含む溶液の調製:
ビーカー内で、1Mまたは330.34g/Lのピロリン酸ナトリウムと、0.4Mまたは39.17g/Lの85%オルトリン酸とを脱イオン水に溶かし、この溶液を85℃に加熱する。次いで、0.1Mまたは28.42g/Lのチタン(IV)イソプロポキシドをゆっくりと添加する。pHは、7.8~7.9である。溶液は濁り(白色析出物を含む)が生じ、この白色析出物が溶解しかつイソプロパノールが完全に蒸発されるまで加熱する。引き続き、溶液を濾過し、再生セル内へ移す。
【0122】
Ti3+を含む還元剤溶液の調製:
再生セル内で一定のカソード電流を供給し、(電流I=20A)、Ti4+イオンを含む溶液中で、Ti4+イオンをTi3+イオンに還元する。最終的に得られた還元剤溶液は、0.8MのTi3+および0.2MのTi4+を含む。
【0123】
無電解めっき溶液の調製:
無電解めっき溶液は、とりわけ上述のニッケル塩および還元剤溶液を含み、かつ以下の最終組成を有する:
Ni2+=0.05M
Ti3+=0.060M
Ti4+=0.011M
ピロホスファート=0.7M
硫化アンモニウム=表1参照
pH=8
T=65℃
Pb2+=1mg/L
【0124】
【表1】
【0125】
基材として、非導電性ベース材料(FR4、樹脂)とパターン化された銅を含むプリント回路ボードを使用する。めっきは、60分間行った。その後、銅上に選択的にほぼ300nmの厚さを有するニッケル層を得た(FR4は、影響を受けなかった)。
【0126】
ニッケル層の厚さは、全ての実施例を通して、XRFを用いて測定された。
【0127】
Ti3+イオンのピロホスファートに対する明らかに低いモル比を有するめっき溶液を用いた同様の試験は、不所望な不安定性および沈殿を生じた(データは示さず)。これは、Ti3+イオンを安定化するために、明らかに過剰のピロホスファートが必要であることを示す。
【0128】
さらに、ニッケルの明らかに低下された濃度を用いた試験は、40nm/hをはるかに下回る極めて低い堆積速度を生じた。幾つかの場合では、めっきが全く観察されなかった(データは示さず)。
【0129】
実施例2-コバルトのめっき
還元剤としてTi3+を用いかつ錯化剤としてピロホスファートを用いる自己触媒(無電解)コバルトめっきを行う。塩化コバルト(II)(六水和物)をコバルト塩として使用する。還元剤溶液は、実施例1に定義されたように調製される。
【0130】
無電解めっき溶液の調製:
無電解めっき溶液は、とりわけ上述のコバルト塩および還元剤溶液を含み、かつ以下の最終組成を有する:
Co2+=0.05M
Ti3+=0.06M
Ti4+=0.01M
ピロホスファート=0.7M
硫化アンモニウム=表2参照
pH=7.6
T=70℃
【0131】
【表2】
【0132】
実施例1で使用した基材を、実施例2でも使用した。めっきを30分間実施し、30分後に、ほぼ320nm/hのめっき速度に対応する、ほぼ160nm~180nmの厚さを有する選択的にめっきされたコバルト層が得られた。
【0133】
Ti3+イオンのピロホスファートに対する明らかに低いモル比を有するめっき溶液を用いた同様の試験は、再び不所望な不安定性および沈殿を生じた(データは示さず)。
【0134】
さらに、コバルトの明らかに低下された濃度を用いた試験もまた、50nm/hをはるかに下回る極めて低い堆積速度を生じた。再び、幾つかの場合では、めっきは全く観察されなかった(データは示さず)。
【0135】
実施例3-電子物品:
図1は、ニッケル層4またはコバルト層4を含む、電子物品1、例えばプリント回路ボードまたはウェハを示す(縮尺どおりではない)。ニッケル層4またはコバルト層4を、基材2,3を本発明のめっき溶液と接触させることにより製造した。基材2,3は、キャリアボディ2、例えばウェハと、このキャリアボディ2の表面上に配置されている銅層3とを含む。
【0136】
基材の銅層3と本発明のめっき溶液とが接触する場合、この銅層3の更なる活性化なしで、この銅層3上にコバルト層4またはニッケル層4がめっきされる。更なる方法ステップでは、このニッケル層4またはコバルト層4上に金層5またはスズ層5がめっきされる。
【0137】
これらの層の示されたスタックでは、コバルト層4またはニッケル層4が、銅層3と金層5またはスズ層5との間のバリア層として提供される。
図1
【図
【国際調査報告】