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特表2023-529934多機能触媒を備えた排ガス処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】多機能触媒を備えた排ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20230705BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230705BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20230705BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20230705BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20230705BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20230705BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20230705BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20230705BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230705BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20230705BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
F01N3/28 301E
B01J35/04 301L
B01J37/02 301C
B01J37/08 ZAB
B01J29/76 A
B01J23/42 A
B01J23/44 A
F01N3/08 B
F01N3/24 C
F01N3/28 301P
F01N3/36 C
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576449
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021065750
(87)【国際公開番号】W WO2021250229
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20179647.1
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ドルナー,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレ,アンスガール
(72)【発明者】
【氏名】パウル,トビアス
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB04
3G091BA01
3G091BA14
3G091CA17
3G091CA18
3G091GB06
3G091GB07
3G091HA10
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AC02
4D148AC04
4D148BA03X
4D148BA06Y
4D148BA07Y
4D148BA08X
4D148BA11X
4D148BA15Y
4D148BA18Y
4D148BA19Y
4D148BA30X
4D148BA31X
4D148BA33Y
4D148BA35X
4D148BA41X
4D148BA42Y
4D148BB02
4D148BB16
4D148BB17
4D148CC61
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC66A
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CA03
4G169CA07
4G169CA08
4G169CA09
4G169CA11
4G169CA13
4G169CA14
4G169CA15
4G169DA06
4G169EA18
4G169EB12Y
4G169EB15Y
4G169EB18Y
4G169EC28
4G169EC29
4G169ED08
4G169EE06
4G169EE09
4G169FA02
4G169FA06
4G169FB23
4G169FB30
4G169FB63
4G169FC08
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZD06
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
本発明は、希薄燃焼内燃機関からの排ガスを処理するための排ガス処理システムであって、前記排ガスが、炭化水素およびNOxを含み、排ガス処理システムが、
(i)炭化水素を排ガス流中に噴射する手段と、
(ii)基材、および該基材上に提供された触媒コーティングを含むディーゼル酸化触媒(DOC)であり、該触媒コーティングが1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が白金を含む、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、
(iii)窒素含有還元剤を排ガス流中に噴射する手段と、
(iv)酸化触媒、およびNOxの選択的触媒還元のための選択的触媒還元(SCR)触媒を含む多機能触媒(MFC)であり、MFCが基材および該基材上に提供された触媒コーティングを含み、触媒コーティングが酸化触媒およびSCR触媒を含み、酸化触媒が1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属がパラジウムおよび/または白金を含み、SCR触媒が銅および/または鉄が充填されているゼオライト材料を含む、多機能触媒(MFC)と
を備え、
炭化水素を噴射する手段、DOC、窒素含有還元剤を噴射する手段およびMFCが、その順序で、排ガス用の導管中に位置し、炭化水素を排ガス流中に噴射する手段がDOCの上流に位置し、DOCがMFCの上流に位置し、窒素含有還元剤を排ガス流中に噴射する手段がDOCとMFCとの間に位置する、
排ガス処理システムに関する。さらに、本発明は、本発明による排ガス処理システムを用いた排ガスの処理の方法に、ならびに本発明による排ガス処理システムの製造の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
希薄燃焼内燃機関からの排ガスを処理するための排ガス処理システムであって、前記排ガスが、炭化水素およびNOxを含み、排ガス処理システムが、
(i)炭化水素を排ガス流中に噴射する手段と、
(ii)基材、および基材上に提供された触媒コーティングを含むディーゼル酸化触媒(DOC)であり、触媒コーティングが1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が白金を含む、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、
(iii)窒素含有還元剤を排ガス流中に噴射する手段と、
(iv)酸化触媒、およびNOxの選択的触媒還元のための選択的触媒還元(SCR)触媒を含む多機能触媒(MFC)であり、MFCが基材および基材上に提供された触媒コーティングを含み、触媒コーティングが酸化触媒およびSCR触媒を含み、酸化触媒が1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属がパラジウムおよび/または白金を含み、SCR触媒が銅および/または鉄が充填されているゼオライト材料を含む、多機能触媒(MFC)と
を備え、
炭化水素を噴射する手段、DOC、窒素含有還元剤を噴射する手段およびMFCが、その順序で、排ガス用の導管中に位置し、
炭化水素を排ガス流中に噴射する手段がDOCの上流に位置し、DOCがMFCの上流に位置し、窒素含有還元剤を排ガス流中に噴射する手段がDOCとMFCとの間に位置する、
排ガス処理システム。
【請求項2】
さらなる成分が、(i)による炭化水素を噴射する手段と(ii)によるDOCとの間の排ガス処理システム中に位置しない、請求項1に記載の排ガス処理システム。
【請求項3】
(ii)によるDOCの上流に位置する希薄燃焼機関をさらに備える、請求項1または2に記載の排ガス処理システム。
【請求項4】
(ii)によるDOCが、希薄燃焼機関に近位連結されている、請求項3に記載の排ガス処理システム。
【請求項5】
(i)による炭化水素を排ガス流中に噴射する手段が、希薄燃焼機関と(ii)によるDOCとの間に位置する、請求項3または4に記載の排ガス処理システム。
【請求項6】
(ii)によって、触媒コーティングが、上流ゾーンを規定する触媒入口コーティングと、下流ゾーンを規定する触媒出口コーティングとに分けられ、
DOCの基材が、入口端部、出口端部、入口端部と出口端部との間に延びる基材軸長、および基材の内壁によって規定される複数の通路を有し、
複数の通路の内壁が、入口端部から入口コーティング端部へと延びてそれにより入口コーティング長を規定する触媒入口コーティングを備え、
入口コーティング長が、基材軸長のx%(式中、0<x<100である)であり、
複数の通路の内壁が、出口端部から出口コーティング端部へと延びてそれにより出口コーティング長を規定する出口コーティングを備え、
出口コーティング長が、基材軸長の(100-x)%であり、
入口コーティング長がDOCの上流ゾーンを規定し、出口コーティング長がDOCの下流ゾーンを規定し、
入口コーティングが、1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が、白金を含み、
出口コーティングが、1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が、白金を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項7】
(ii)によって、DOCの入口コーティング中に含有されている白金族金属の総量の充填量が、0.18~2.83g/L(5~80g/フィート)の範囲内にある、請求項6に記載の排ガス処理システム。
【請求項8】
(ii)によって、DOCの入口コーティングが、5:1~1:5の範囲内にあるPt/Pd質量比を有する、請求項6または7に記載の排ガス処理システム。
【請求項9】
(ii)によって、白金族金属の総量の充填量が、DOCの出口コーティング中に含有されている元素の白金族金属として算出して、0.035~2.47g/L(1~70g/フィート)の範囲内にある、請求項6から8のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項10】
(ii)によって、DOCの出口コーティングが、10:1~1:0の範囲内のPt/Pd質量比を有する、請求項6から9のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項11】
(ii)によって、DOCの入口コーティングおよび/または出口コーティングが、PtとPdとの総質量和の2質量%未満の汚染物質を超えるPtおよび/またはPd以外の白金族金属を含有しない、請求項6から10のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項12】
(iv)によるMFCの触媒コーティングが、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅を含み、1種または複数の白金族金属が、ジルコニア、アルミナおよびチタニアのうちの1種または複数を含む高融点金属酸化物上に担持され、触媒コーティングが、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅が含まれているオーバーコートと、高融点金属酸化物上に担持されている白金族金属が含まれているアンダーコートとからなり、アンダーコートが、(iv)によるMFCの基材の内壁の表面の少なくとも一部の上に配置され、オーバーコートが、アンダーコート上に配置されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の排ガス処理システム。
【請求項13】
NOxの同時選択的触媒還元、炭化水素の酸化、一酸化窒素の酸化、およびアンモニアの酸化のための方法であって、
(1)NOx、アンモニア、一酸化窒素および炭化水素のうちの1種または複数を含むディーゼルエンジンからの排ガス流を提供する工程と、
(2)(1)で提供された排ガス流を、請求項1から12のいずれか一項に記載の排ガスシステムを通して通過させる工程と
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の排ガス処理システムを製造する方法であって、
(a)白金族金属、高融点金属酸化物担体および水を含む第1のスラリーを製造する工程と、
(b)基材を用意する工程と、
(c)(a)において得られた第1のスラリーを、(b)による基材上に配置し、入口通路の内壁を、入口コーティングが入口端部から入口コーティング端部まで延びてそれにより入口コーティング長が規定されるようにコーティングし、入口コーティング長が、基材軸長のx%(式中、0<x<100である)である、スラリー処理済み基材を得る工程と、
(d)(c)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、入口コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(e)(c)において得られたスラリー処理済み基材を焼成して、入口コーティング済み基材を得る工程と、
(f)白金族金属、高融点金属酸化物担体および水を含む第2のスラリーを製造する工程と、
(g)(f)により得られた第2のスラリーを、(e)により得られた基材上に配置し、出口通路の内壁を、出口コーティングが出口端部から出口コーティング端部まで延びてそれにより出口コーティング長が規定されるようにコーティングし、出口コーティング長が、基材軸長の(100-x)%であり、入口コーティング済みかつ出口スラリー処理済み基材を得る工程と、
(h)(g)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、入口および出口コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(j)(g)において得られたスラリー処理済み基材を焼成して、DOCを得る工程と
を含むプロセスによるディーゼル酸化触媒(DOC)を製造する工程を含む、
方法。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の排ガス処理システムを製造する方法であって、
(a’)パラジウム;ジルコニウムおよびアルミナのうちの1種または複数を含む酸化物材料ならびに水を含むスラリーを製造する工程と、
(b’)(a’)において得られたスラリーを基材上に配置して、スラリー処理済み基材を得る工程と、
(c’)任意に、(b’)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(d’)MFC触媒を得るための、(b’)において得られたスラリー処理済み基材を焼成する工程と
を含むプロセスによる多機能触媒(MFC)を製造する工程を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、選択的触媒還元(SCR)触媒作用の分野に、詳細には自動車用途における選択的触媒還元(SCR)触媒作用の分野に関する。より詳細には、本発明は、ディーゼル酸化触媒、炭化水素の噴射のための手段および/または窒素還元体の噴射のための手段、ならびにSCR触媒およびさらなる酸化触媒を含む多機能触媒を備えた、希薄燃焼内燃機関からの排ガスを処理するためのシステムに関する。さらに、本発明は、本発明による排ガス処理システムを用いた排ガスの処理の方法に、かつ本発明による排ガス処理システムの製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NO)の有害な成分は大気汚染へと至らせる。NOは、例えば(例えば自動車およびトラックにおける)内部の内燃機関からの、内燃設備(例えば天然ガス、油または石炭により加熱される発電所)からの、および硝酸製造プラントからの、等の排ガス中に含有されている。多様な処理方法が、排ガス中のNOを低下させてそのため大気汚染を低減させるのに用いられている。処理のうちの1つのタイプは、窒素酸化物の触媒還元を包含する。2つの方法:(1)一酸化炭素、水素またはより低い炭化水素が還元剤として使用される、非選択的還元方法;および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される、選択的還元方法が存在する。選択的還元方法では、少量の還元剤で高程度の窒素酸化物除去が達成されうる。
【0003】
選択的還元方法は、SCR(選択的触媒還元)方法と称される。SCR方法は、大気の酸素の存在下、還元体(例えばアンモニアまたはアンモニア前駆体)での窒素酸化物の触媒還元を用い、主に窒素および蒸気の形成に帰着する:
4NO+4NH+O→4N+6HO(標準的なSCR反応)
2NO+4NH→3N+6HO(緩慢なSCR反応)
NO+NO+2NH→2N+3HO(迅速なSCR反応)
【0004】
この方法は、エンジンの排ガスから窒素酸化物を除去するための最も実行可能な技術のうちの1つであると考えられている。典型的な排ガス中、窒素酸化物はNOから主になり(>90%)、これは、SCR触媒によって、アンモニアの存在下、窒素および水へと変換される(標準的なSCR反応)。NHは最も効果的な還元体のうちの1つであるが、尿素もまたアンモニア前駆体として使用されうる。一般に、SCR方 法において利用される触媒は、例えば200℃未満~600℃以上の広範囲の温度にわたって良好な触媒活性を有するべきである。より高い温度が、一般に、すす捕集フィルタの再生の間に、かつSCR触媒の再生の間に遭遇される。すす捕集フィルタについて、再生は、フィルタ内の堆積したすすの除去の定期的な必要性を指す。500℃超の温度が、すすを効果的に燃焼させるために典型的に20分間以上必要とされる。このような温度は、通常のエンジン作動中には遭遇されない。
【0005】
経時的に、排ガスの微量成分は、SCR触媒を収集するまたは相互作用する、のいずれかであり、触媒の有効性を経時的に低減させる。高い効率を維持するために、これらの汚染物質を定期的に除去することが必要である。例えば、硫黄酸化物がアンモニアと反応して硫酸アンモニアを形成し、これが触媒上の活性部位をブロックして活性損失へと至らせるおそれがある。また、約300℃未満の温度におけるSCR触媒の延長した動作が、炭化水素の、触媒表面上への堆積へと至らせるおそれがある。結局、これらの炭化水素はまた、活性部位をブロックして、触媒活性における損失へと至らせる。
【0006】
SCR触媒の汚染物質の観点では、これらのおよび他の汚染物質を除去して高い触媒効率を維持するために、より高い温度が定期的に必要である。SCR触媒を再生させる温度を達成することは、触媒の脱硫酸化が起こりうるポイントまで排気温度を上昇させるための、SCR触媒の酸化触媒上流にわたる、炭化水素の添加およびその酸化を必要とする。そのようにするとき、炭化水素が酸化触媒から選択的触媒還元触媒上にスリップアウトすることは、コークス化へと、かつそのためSCR成分の脱活性化へと至らせるおそれがある。さらに、このようにして酸化触媒にわたり発熱を生むことはまた、NOxの減少のためのその活性が不十分であるとき、SCR触媒をヒートアップさせることにも使用されることがあり、前記工程は、SCR成分上で、炭化水素スリップおよびそれに続くそのコークス化へと等しく至らせうる。
【0007】
WO2018/224651 A2は排ガス処理システムに関し、前記文献は、何よりも、そのSCR触媒下流に追従されたパラジウムを含むDOCである第1の触媒を備えた排ガス処理システムを開示しており、前記SCR触媒は、銅および/または鉄を含むゼオライト材料を含む。WO2018/224651 A2の好ましい実施形態によれば、DOCは白金を含まず、その下流に位置するSCR触媒は、好ましくはパラジウムである白金族金属を含む。前記文献は、DOCを出るHCスリップがその下流に位置するSCR触媒によって処理され得、炭化水素の減少に関して、パラジウムを欠くSCR触媒はパラジウムを含有するSCR触媒よりもかなり良好に機能することを、さらに教示している。
【0008】
他方、WO2019/159151 A1は、近位連結(close-coupled)SCR触媒、およびその下流に位置するDOCを備えた排ガス処理システムに関する。
【0009】
WO2014/151677 A1は、ゾーン化DOC、および該DOCの下流に位置するSCRを備えたシステム中でのその使用を開示している。
【0010】
米国特許第2011/078997 A1号は、PdアルミナスラリーでコーティングされたSCR充填フィルタを開示している。WO2016/160953 A1は、白金族金属の第3のコーティングに追従されているSCR触媒の2つのコートを備えた触媒化微粒子フィルタを開示している。
【0011】
現在の技術の観点において、先行技術の欠点を緩和させうる排ガス処理システムへの必要性が残る。詳細には、その上流に位置する酸化触媒からの炭化水素スリップに起因するSCR触媒のコークス化を効果的に回避することができるが、NOxの選択的触媒還元について経時的に維持されうる高い効率を依然として提示する、排ガス処理システムへの必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2018/224651 A2
【特許文献2】WO2019/159151 A1
【特許文献3】WO2014/151677 A1
【特許文献4】米国特許第2011/078997 A1号
【特許文献5】WO2016/160953 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、改善された排ガス処理システム、詳細にはSCR触媒のコークス化抵抗性に関して改善された排ガス処理システムを提供することであった。そのため、その上流に位置する酸化触媒からの炭化水素スリップに起因する、SCR触媒からの炭化水素スリップとそのコークス化との両方が、多機能触媒(MFC)を得るためのSCR触媒中に、白金族金属、詳細にはパラジウムを含めることによってかなり低減されうることが、驚くべきことに見出された。詳細には、予想されなかった前記技術的効果が、そこで酸化触媒が内燃機関に対して近位連結位置に位置する事例において特に明白であり、その結果として、排気システム中のその位置におけるサイズの制約の点におけるその減少した体積に起因して、より大きい炭化水素スリップとなる傾向があることが、驚くべきことに見出された。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、希薄燃焼内燃機関からの排ガスを処理するための排ガス処理システムであって、前記排ガスが、炭化水素およびNOxを含み、排ガス処理システムが、
(i)炭化水素を排ガス流中に噴射する手段と、
(ii)基材、および該基材上に提供された触媒コーティングを含むディーゼル酸化触媒(DOC)であり、触媒コーティングが1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が白金、好ましくは白金およびパラジウムを含み、好ましくはそれらからなる、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、
(iii)窒素含有還元剤を排ガス流中に噴射する手段と、
(iv)酸化触媒、およびNOxの選択的触媒還元のための選択的触媒還元(SCR)触媒を含む、好ましくはそれらからなる、多機能触媒(MFC)であり、MFCが基材および該基材上に提供された触媒コーティングを含み、触媒コーティングが酸化触媒およびSCR触媒を含み、酸化触媒が1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属がパラジウムおよび/または白金、好ましくはパラジウムを含み、好ましくはそれらからなり、SCR触媒が銅および/または鉄で、好ましくは銅が充填されたゼオライト材料を含む、多機能触媒(MFC)と
を備え、
炭化水素を噴射する手段、DOC、窒素含有還元剤を噴射する手段およびMFCが、その順序で、排ガス用の導管中に位置し、
炭化水素を排ガス流中に噴射する手段がDOCの上流に位置し、DOCがMFCの上流に位置し、窒素含有還元剤を排ガス流中に噴射する手段がDOCとMFCとの間に位置する、
排ガス処理システムに関する。
【0015】
さらなる成分が、(i)による炭化水素を噴射する手段と(ii)によるDOCとの間の排ガス処理システム中に位置しないことが好ましく、好ましくは、さらなる成分は、(i)による炭化水素を噴射する手段と(ii)によるDOCとの間、および(ii)によるDOCと(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段との間、および(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段と(iv)によるMFCとの間の排ガス処理システム中に位置しない。
【0016】
排ガス処理システムが、(ii)によるDOCの上流に位置する希薄燃焼機関をさらに備えていることが好ましい。
【0017】
(ii)によるDOCが、希薄燃焼機関に近位連結していることが好ましく、好ましくは、希薄燃焼機関は、ディーゼルエンジンである。
【0018】
希薄燃焼機関は、制御量の炭化水素を含む排ガス流を生成することによって、好ましくは第2の燃料の噴射によって、(i)による炭化水素を排ガス流中に噴射する手段として作動することが好ましい。
【0019】
(i)による炭化水素を排ガス流中に噴射する手段が、希薄燃焼機関と(ii)によるDOCとの間に位置することが好ましい。
【0020】
さらなる成分が、希薄燃焼機関と(i)による炭化水素を噴射する手段との間の排ガス処理システム中に位置しないことが好ましく、好ましくは、さらなる成分は、希薄燃焼機関と(i)による炭化水素を噴射する手段との間、および(i)による炭化水素を噴射する手段と(ii)によるDOCとの間、および(ii)によるDOCと(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段との間、および(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段と(iv)によるMFCとの間の排ガス処理システム中に位置しない。
【0021】
さらなる成分が、希薄燃焼機関と(ii)によるDOCとの間の排ガス処理システム中に位置しないことが好ましく、好ましくは、さらなる成分は、希薄燃焼機関と(ii)によるDOCとの間、および(ii)によるDOCと(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段との間、および(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段と(iv)によるMFCとの間の排ガス処理システム中に位置しない。
【0022】
(ii)によって、DOCの基材が、セラミック物質を含む、好ましくはそれからなることが好ましく、セラミック物質は、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライトまたはムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、およびチタニアのうちの1種または複数、より好ましくはシリコンカーバイドおよびコーディエライトのうちの1種または複数、より好ましくはコーディエライトを好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる。
【0023】
(ii)によって、DOCの基材が、金属物質を含む、好ましくはそれからなることが好ましく、金属物質は、酸素、ならびに鉄、クロムおよびアルミナのうちの1種または複数を好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる。
【0024】
(ii)によって、DOCの基材が、モノリス、好ましくはハニカムモノリス、より好ましくはフロースルーハニカムモノリスであることが好ましい。
【0025】
(ii)によって、DOC中に存在する1種または複数の白金族金属が、擬似ベーマイト、アルミナ、γ-アルミナ、ランタナ、ランタナ安定化アルミナ、シリカ安定化アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ安定化チタニア、セリア、セリア-ジルコニア、アルミノシリケート、シリカおよび希土類金属三二酸化物、含めるのはこれらの混合物からなる群から、好ましくは擬似ベーマイト、アルミナ、γ-アルミナ、チタニア、シリカ安定化チタニアおよびシリカ安定化アルミナ、含めるのはこれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の高融点金属酸化物(refractory metal oxide)上に担持されていることが好ましく、より好ましくはDOC中に存在する1種または複数の白金族金属は、擬似ベーマイトおよび/またはシリカ安定化アルミナ上に、より好ましくは擬似ベーマイトと2~6質量%のシリカ安定化アルミナとの等質量混合物上に担持されている。
【0026】
(ii)によって、1種または複数の高融点金属酸化物担体の粒径分布のDV90値が、0.1~25ミクロンの範囲内、好ましくは1~20ミクロンの範囲内、より好ましくは2~18ミクロンの範囲内、より好ましくは3~17ミクロンの範囲内、より好ましくは4~16ミクロンの範囲内、より好ましくは5~15ミクロンの範囲内、より好ましくは7~12ミクロンの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは、(ii)によって、高融点金属酸化物担体の粒径分布のDV90値は、10~12ミクロンの範囲内であり、好ましくは、粒径分布は、光散乱によって測定され、より好ましくは参照例1によって測定される。
【0027】
(ii)によって、DOCの触媒コーティングが、高融点金属酸化物担体に加えて、結合剤を、個々の層中に存在する総乾燥質量成分に基づいて算出して、好ましくは2~7質量%の範囲内、より好ましくは3~6質量%の範囲内で含有することが好ましく、より好ましくは、結合剤は、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、より好ましくはジルコニア、アルミナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数を含み、好ましくはそれらからなり、より好ましくは、ジルコニアが、結合剤として触媒コーティング中に含有されている。
【0028】
(ii)によって、DOC中に存在する触媒コーティングの総装填量が、入口コーティングおよび出口コーティング中に存在する全ての成分の総乾燥質量ベースにおいて算出して、31g/L~183g/L(0.5g/インチ~3g/インチ)の範囲内、好ましくは46g/L~153g/L(0.75g/インチ~2.5g/インチ)の範囲内、より好ましくは61g/L~140g/L(1.0g/インチ~2.3g/インチ)の範囲内、より好ましくは67g/L~110g/L(1.1g/インチ~1.8g/インチ)の範囲内、より好ましくは73g/L~104g/L(1.2g/インチ~1.7g/インチ)の範囲内、より好ましくは79g/L~92g/L(1.3g/インチ~1.5g/インチ)の範囲内にあることが好ましい。
【0029】
(ii)によって、触媒コーティングが、上流ゾーンを規定する触媒入口コーティングと、下流ゾーンを規定する触媒出口コーティングとに分けられ、
DOCの基材が、入口端部、出口端部、入口端部と出口端部との間に延びる基材軸長、および基材の内壁によって規定される複数の通路を有し、
複数の通路の内壁が、入口端部から入口コーティング端部へと延びてそれにより入口コーティング長を規定する触媒入口コーティングを備え、
入口コーティング長が、基材軸長のx%(式中、0<x<100である)であり、
複数の通路の内壁が、出口端部から出口コーティング端部へと延びてそれにより出口コーティング長を規定する出口コーティングを備え、
出口コーティング長が、基材軸長の(100-x)%であり、
入口コーティング長がDOCの上流ゾーンを規定し、出口コーティング長がDOCの下流ゾーンを規定し、
入口コーティングが、1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が、白金、好ましくは白金およびパラジウムを含み、好ましくはそれらからなり、
出口コーティングが、1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が、白金、好ましくは白金およびパラジウムを含み、好ましくはそれらからなる
ことが好ましい。
【0030】
(ii)によって、DOCの入口コーティング中に含有されている白金族金属の総量の充填量が、0.18~2.83g/L(5~80g/フィート)の範囲内、好ましくは0.53~2.65g/L(15~75g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.71~2.47g/L(20~70g/フィート)の範囲内、より好ましくは1.06~2.30g/L(30~65g/フィート)の範囲内、より好ましくは1.41~2.12g/L(40~60g/フィート)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは、(ii)によって、入口コーティング中に含有されている白金族金属の総量の充填量は、1.77g/L(50g/フィート)超~2.12g/L(60g/フィート)未満の範囲内にある。
【0031】
(ii)によって、DOCの入口コーティングが、5:1~1:5の範囲内、好ましくは4:1~1:4の範囲内、より好ましくは2:1~1:3の範囲内、より好ましくは1:1~1:2の範囲内、より好ましくは1:1.4~1:1.8の範囲内のPt/Pd質量比を有することが好ましい。
【0032】
(ii)によって、白金族金属の総量の充填量が、DOCの出口コーティング中に含有されている元素の白金族金属として算出して、0.04~2.47g/L(1~70g/フィート)の範囲内、好ましくは0.04~1.77g/L(1~50g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.04~1.06g/L(1~30g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.04~0.71g/L(1~20g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.07~0.53g/L(2~15g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.11~0.28g/L(3~8g/フィート)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは、(ii)によって、白金族金属の総量の充填量は、出口コーティング中に含有されている元素の白金族金属として算出して、0.14g/L(4g/フィート)超~0.21g/L(6g/フィート)未満の範囲内にある。
【0033】
(ii)によって、DOCの出口コーティングが、10:1~1:0の範囲内、好ましくは5:1~1:1の範囲内、より好ましくは4:1~2:1の範囲内、より好ましくは3.5:1~2.5:1の範囲内にあるPt/Pd質量比を有することが好ましい。
【0034】
(ii)によって、DOCの基材の基材軸長の%としての入口コーティング長xが、5~80の範囲内、好ましくは10~70の範囲内、より好ましくは15~60の範囲内、より好ましくは20~60の範囲内、より好ましくは25~55の範囲内、より好ましくは30~50の範囲内、より好ましくは35~45の範囲内にあることが好ましい。
【0035】
(ii)によって、DOCの入口コーティングおよび/または出口コーティングが、PtとPdとの総質量和の2質量%未満、好ましくはPtとPdとの総質量和の1質量%未満、より好ましくはPtとPdとの総質量和の0.5質量%未満の汚染物質を超えるPtおよび/またはPd以外の白金族金属を含有しないことが好ましい。
【0036】
(ii)によって、DOCの入口および出口通路の内壁が、基材の入口端部コーティング長から出口端部コーティング長まで延びるアンダーコートを備えていることが好ましい。
【0037】
(ii)によって、DOCのアンダーコートが、擬似ベーマイト、γ-アルミナ、アルミナ、シリカ、ランタナ、ジルコニア、チタニア、セリア、バリア、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、好ましくは擬似ベーマイト、γ-アルミナ、アルミナ、シリカ、ランタナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数を含む、任意にそれらからなることが好ましく、より好ましくはアンダーコートは、擬似ベーマイトを含む、任意にそれからなる。
【0038】
(ii)によって、白金族金属が、DOCのアンダーコート中に意図的に存在していないことが好ましい。
【0039】
(ii)によって、DOCのアンダーコートが、0.1~25ミクロンの範囲内、好ましくは5~15ミクロンの範囲内、より好ましくは7~13ミクロンの範囲内、より好ましくは8~12ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有することが好ましく、より好ましくは、(ii)によって、アンダーコートは、9~11ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有し、好ましくは、粒径分布は、光散乱によって測定され、より好ましくは参照例1によって測定される。
【0040】
(ii)によって、DOCのアンダーコートが、アンダーコートの総乾燥質量に基づいて算出して、0.1質量%未満の白金族金属、好ましくは0.01質量%未満の白金族金属を含有することが好ましい。
【0041】
(ii)によって、DOCの基材が、15~92g/L(0.25~1.5g/インチ)の範囲内、好ましくは31~76g/L(0.5~1.25g/インチ)の範囲内、より好ましくは55~67g/L(0.9~1.1g/インチ)の範囲内のアンダーコート充填量を有することが好ましい。
【0042】
(ii)によって、層が、DOCのアンダーコートと基材との間にないことが好ましい。
【0043】
(ii)によって、層が、DOCの、アンダーコートと、白金族金属を含有する入口および/または出口コーティングとの間にないことが好ましい。
【0044】
(ii)によって、白金族金属の総充填量が、DOC中に存在する元素の白金族金属として算出して、0.35g/L~1.77g/L(10g/フィート~50g/フィート)の範囲内、好ましくは0.53g/L~1.59g/L(15g/フィート~45g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.71g/L~1.41g/L(20g/フィート~40g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.74g/L~1.02g/L(21g/フィート~29g/フィート)の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは、(ii)によって、白金族金属の総充填量は、DOC中に存在する元素の白金族金属として算出して、0.81g/L(23g/フィート)超~0.88g/L(25g/フィート)未満の範囲内にある。
【0045】
(ii)によって、DOCが、2.54~25.4cm(1~10インチ)の範囲内、好ましくは3.81~20.32cm(1.5~8インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~17.78cm(2~7インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~15.24cm(2~6インチ)の範囲内、より好ましくは7.62~12.7cm(3~5インチ)の範囲内の総計の長さ、好ましくは基材長を有することが好ましい。
【0046】
(ii)によって、DOCが、10.16~43.18cm(4~17インチ)の範囲内、好ましくは17.78~38.10cm(7~15インチ)の範囲内、より好ましくは20.32~35.56cm(8~14インチ)の範囲内、より好ましくは22.86~33.02cm(9~13インチ)の範囲内、より好ましくは22.86~27.94cm(9~11インチ)の範囲内の総計の幅、好ましくは基材幅を有することが好ましい。
【0047】
(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれているゼオライト材料が、AEI、GME、CHA、MFI、BEA、FAU、MORの各型、またはそれらの2種以上の混合物のフレームワーク構造体、好ましくはAEI、CHA、BEAの各型、またはそれらの2種以上の混合物のフレームワーク構造体、より好ましくはCHAまたはAEIの各型のフレームワーク構造体、より好ましくはCHA型のフレームワーク構造体を有することが好ましい。
【0048】
(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれているゼオライト材料が、銅を含み、ゼオライト材料中に含まれている銅の量が、CuOとして算出して、ゼオライト材料の総質量に対して、好ましくは0.1~10.0質量%の範囲内、より好ましくは2.0~7.0質量%の範囲内、より好ましくは2.5~5.5質量%の範囲内、より好ましくは2.5~3.5質量%の範囲内にあることが好ましく、ゼオライト材料中に含まれる鉄の量は、Feとして算出して、ゼオライト材料の総質量に対して、好ましくは0~0.01質量%の範囲内、より好ましくは0~0.001質量%の範囲内、より好ましくは0~0.0001質量%の範囲内にある。
【0049】
ゼオライト材料のフレームワーク構造体のうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%が、Si、Al、O、ならびに任意にHおよびPのうちの1種または複数からなることが好ましく、フレームワーク構造体中、SiのAlに対するモル比は、モルのSiO:Alとして算出して、好ましくは2:1~50:1の範囲内、より好ましくは4:1~45:1の範囲内、より好ましくは10:1~40:1の範囲内、より好ましくは15:1~30:1の範囲内にある。
【0050】
(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれているゼオライト材料が、鉄を含み、ゼオライト材料中に含まれる鉄の量が、Feとして算出して、ゼオライト材料の総質量に対して、好ましくは0.1~10.0質量%の範囲内、より好ましくは1.0~7.0質量%の範囲内、より好ましくは2.5~5.5質量%の範囲内にあり、ゼオライト材料のフレームワーク構造体のうちの好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%が、Si、Al、O、ならびに任意にHおよびPのうちの1種または複数からなることが好ましく、フレームワーク構造体中、SiのAlに対するモル比は、モルのSiO:Alとして算出して、好ましくは2:1~50:1の範囲内、より好ましくは4:1~45:1の範囲内、より好ましくは10:1~40:1の範囲内、より好ましくは15:1~30:1の範囲内にある。
【0051】
(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている、好ましくはフレームワークCHA型を有するゼオライト材料が、走査電子顕微鏡を介して決定して、少なくとも0.5マイクロメートル、好ましくは0.5~1.5マイクロメートルの範囲内、より好ましくは0.6~1.0マイクロメートルの範囲内、より好ましくは0.6~0.8マイクロメートルの範囲内の平均結晶子サイズを有することが好ましい。
【0052】
(iv)によるMFCの触媒コーティングが、金属酸化物結合剤をさらに含み、金属酸化物結合剤は、好ましくは、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、ならびにZr、Al、TiおよびSiのうちの2種以上を含む混合酸化物のうちの1種または複数を含む、より好ましくはアルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含む、より好ましくはジルコニアを含むことが好ましく、コーティングは、1.22~12g/L(0.02~0.2g/インチ)の範囲内、好ましくは4.88~11g/L(0.08~0.18g/インチ)の範囲内にある充填量を有する金属酸化物結合剤を含む。
【0053】
(iv)において、1種または複数の白金族金属が、高融点金属酸化物上に担持され、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている高融点金属酸化物が、ジルコニア、シリカ、アルミナおよびチタニアのうちの1種または複数、好ましくはジルコニアおよびアルミナのうちの1種または複数を含むことが好ましい。
【0054】
(iv)によって、1種または複数の白金族金属が、ジルコニア上に担持されていることが好ましい。
【0055】
(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている高融点金属酸化物のうちの90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%が、ジルコニアからなることが好ましい。
【0056】
(iv)によるMFCの触媒コーティングが、61~275g/L(1.0~4.5g/インチ)の範囲内、好ましくは92~244g/L(1.5~4.0g/インチ)の範囲内、より好ましくは122~214g/L(2.0~3.5g/インチ)の範囲内、より好ましくは128~183g/L(2.1~3g/インチ)の範囲内、より好ましくは128~159g/L(2.1~2.6g/インチ)の範囲内の充填量を有するゼオライト材料を含むことが好ましい。
【0057】
(iv)によるMFCの触媒コーティングが、1種または複数の白金族金属を、元素の白金族金属として算出して、0.04~2.83g/L(1~80g/フィート)の範囲内、好ましくは0.53~2.12g/L(15~60g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.71~1.77g/L(20~50g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.88~1.59g/L(25~45g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.88~1.24g/L(25~35g/フィート)の範囲内の充填量において含むことが好ましい。
【0058】
(iv)によるMFCの触媒コーティングのうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%が、高融点金属酸化物上に担持された1種または複数の白金族金属を含む、好ましくはそれらからなることが好ましく、前記高融点金属酸化物のうちの99~100質量%は、ジルコニウムおよび酸素、好ましくはジルコニア;CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅、好ましくは実施形態41に記載の金属酸化物結合剤からなる。
【0059】
白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムのうちの1種または複数のうちの0~0.0035g/l、好ましくは0~0.00035g/l、より好ましくは0~0.000035g/l、より好ましくは0~0.0000035g/lが、(iv)によるMFCのコーティング中に含まれていることが好ましく、より好ましくは、白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムのうちの0~0.0000035g/lは、(iv)によるMFCのコーティング中に含まれる。
【0060】
(iv)によるMFCの触媒コーティングが、白金を含まない、好ましくは白金およびロジウムを含まない、より好ましくは白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムを含まないことが好ましい。
【0061】
(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている1種または複数の白金族金属を担持する高融点金属酸化物のうちの0~2質量%、好ましくは0~1質量%、より好ましくは0~0.1質量%が、セリアおよびアルミナからなることが好ましく、より好ましくは、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている高融点金属酸化物のうちの0~0.1質量%は、セリア、アルミナ、チタニア、ランタナおよびバリアからなる。
【0062】
(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている1種または複数の白金族金属を担持している高融点金属酸化物が、セリアおよびアルミナを含まない、好ましくはセリア、アルミナおよびチタニアを含まない、より好ましくはセリア、アルミナ、チタニア、ランタナおよびバリアを含まないことが好ましい。
【0063】
(iv)によるMFCの触媒コーティングが、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅、および単一のコートとして含まれているジルコニア上に担持されたパラジウムを含むことが好ましく、単一のコートは、(iv)によるMFCの基材の内壁の少なくとも一部の上に配置されている。
【0064】
(iv)によるMFCの触媒コーティングが、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅を含み、1種または複数の白金族金属が、ジルコニア、アルミナおよびチタニアのうちの1種または複数、好ましくはアルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含む高融点金属酸化物上に担持されており、触媒コーティングが、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅が含まれているオーバーコートと、高融点金属酸化物上に担持されている白金族金属が含まれるアンダーコートとからなることが好ましく、アンダーコートは、(iv)によるMFCの基材の内壁の表面の少なくとも一部の上に配置され、オーバーコートはアンダーコート上に配置されている。
【0065】
(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれる白金族金属が、パラジウムであることが好ましい。
【0066】
(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれる高融点金属酸化物が、アルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含む、好ましくはそれらからなることが好ましい。
【0067】
(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれる高融点金属酸化物のうちの60~100質量%、好ましくは70~90質量%、より好ましくは75~85質量%が、アルミナからなることが好ましい。
【0068】
(iv)によるMFCのアンダーコートが、パラジウムを、元素のパラジウムとして算出して、0.04~1.77g/L(1~50g/フィート)の範囲内、好ましくは0.18~1.06g/L(5~30g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.35~0.88g/L(10~25g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.42~0.54g/L(12~18g/フィート)の範囲内の充填量において含むことが好ましい。
【0069】
(iv)によるMFCのアンダーコートのうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%が、高融点金属酸化物上に担持されたパラジウムを含む、好ましくはそれからなることが好ましく、前記高融点金属酸化物のうちの99.5~100質量%は、アルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含む、より好ましくはそれらからなる。
【0070】
(iv)によるMFCのオーバーコートが、ゼオライト材料を、61~275g/L(1~4.5g/インチ)の範囲内、好ましくは92~244g/L(1.5~4g/インチ)の範囲内、より好ましくは122~244g/L(2~4g/インチ)の範囲内、より好ましくは153~214g/L(2.5~3.5g/インチ)の範囲内の充填量において含むことが好ましい。
【0071】
(iv)によるMFCのアンダーコートのうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%が、高融点金属酸化物上に担持されたパラジウムを含み、好ましくはそれからなり、前記高融点金属酸化物のうちの99.5~100質量%が、アルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含むことが好ましく、より好ましくはそれらからなることが好ましく、(iv)によるMFCのオーバーコートのうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%は、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅、好ましくは請求項41に記載の金属酸化物結合剤を含み、好ましくはそれらからなる。
【0072】
白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムのうちの1種または複数のうちの0~0.0035g/l、好ましくは0~0.00035g/l、より好ましくは0~0.000035g/lが、(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれていることが好ましく、より好ましくは、白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムのうちの0~0.000035g/lは、(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれている。
【0073】
(iv)によるMFCのアンダーコートが、白金およびロジウムを含まない、好ましくは白金、ロジウム、イリジウムおよびオスミウムを含まないことが好ましい。
【0074】
(iv)によるMFCが、基材上に配置されたコーティングからなることが好ましい。
【0075】
(iv)によるMFCの基材が、セラミックまたは金属物質を含むことが好ましい。
【0076】
(iv)によるMFCの基材が、セラミック物質を含み、好ましくはそれからなり、セラミック物質が、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライトまたはムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、およびチタニアのうちの1種または複数、より好ましくはシリコンカーバイドおよびコーディエライトのうちの1種または複数、より好ましくはコーディエライトを好ましくは含む、より好ましくはそれらからなることが好ましく、(iv)によるMFCの基材は、金属物質を含み、より好ましくはそれからなり、金属物質は、酸素、ならびに鉄、クロムおよびアルミナのうちの1種または複数を好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる。
【0077】
(iv)によるMFCの基材が、モノリス、好ましくはハニカムモノリス、より好ましくはフロースルーハニカムモノリスであることが好ましい。
【0078】
(iv)によるMFCが、2.54~25.4cm(1~10インチ)の範囲内、好ましくは3.81~20.32cm(1.5~8インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~17.78cm(2~7インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~15.24cm(2~6インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~10.16cm(2~4インチ)の範囲内の長さ、好ましくは基材長を有することが好ましい。
【0079】
(iv)によるMFCが、10.16~43.18cm(4~17インチ)の範囲内、好ましくは17.78~38.10cm(7~15インチ)の範囲内、より好ましくは20.32~35.56cm(8~14インチ)の範囲内、より好ましくは22.86~33.02cm(9~13インチ)の範囲内、より好ましくは22.86~27.94cm(9~11インチ)の範囲内の幅、好ましくは基材幅を有することが好ましい。
【0080】
(iv)によるMFCの触媒コーティングが、(iv)によるMFCの基材の内壁上に、基材長の20~100%にわたり、好ましくは50~100%にわたり、より好ましくは75~100%にわたり、より好ましくは95~100%にわたり、より好ましくは99~100%にわたり配置されることが好ましい。
【0081】
本発明はまた、NOxの同時選択的触媒還元、炭化水素の酸化、一酸化窒素の酸化、およびアンモニアの酸化のための方法であって、
(1)NOx、アンモニア、一酸化窒素および炭化水素のうちの1種または複数を含むディーゼルエンジンからの排ガス流を提供する工程と、
(2)(1)において提供された排ガス流を、本出願中に記載されている本発明による排ガス処理システムの特定のかつ好ましい実施形態のうちのいずれか1つによる排ガスシステムを通して通過させる工程と
を含む、方法に関する。
【0082】
さらに、本発明は、本出願中に記載されている本発明による排ガス処理システムの特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによる排ガス処理システムを製造する方法であって、
(a)白金族金属、高融点金属酸化物担体および水を含む第1のスラリーを製造する工程と、
(b)基材を用意する工程と、
(c)(a)において得られた第1のスラリーを、(b)による基材上に配置し、入口通路の内壁を、入口コーティングが入口端部から入口コーティング端部まで延びてそれにより入口コーティング長が規定されるようにコーティングし、入口コーティング長が、基材軸長のx%(式中、0<x<100である)である、スラリー処理済み基材を得る工程と、
(d)(c)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、入口コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(e)(c)において得られたスラリー処理済み基材を焼成して、入口コーティング済み基材を得る工程と、
(f)白金族金属、高融点金属酸化物担体および水を含む第2のスラリーを製造する工程と、
(g)(f)により得られた第2のスラリーを、(e)により得られた基材上に配置し、出口通路の内壁を、出口コーティングが出口端部から出口コーティング端部まで延びてそれにより出口コーティング長が規定されるようにコーティングし、出口コーティング長が、基材軸長の(100-x)%であり、入口コーティング済みかつ出口スラリー処理済みの基材を得る工程と、
(h)(g)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、入口および出口コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(j)(g)において得られたスラリー処理済み基材を焼成して、DOC、好ましくは、本出願中に記載されている本発明による排ガス処理システムの特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによる排ガス処理システム中に含まれる(ii)によるDOCを得る工程と
を含むプロセスによるディーゼル酸化触媒(DOC)を製造する工程を含む、
方法に関する。
【0083】
工程(a)および/または工程(f)が、
(1.1)擬似ベーマイト、アルミナ、γ-アルミナ、シリカ安定化チタニア、ランタナ、ランタナ安定化アルミナ、シリカ安定化アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、セリア-ジルコニア、アルミノシリケート、シリカ、希土類金属三二酸化物、およびこれらの混合物、好ましくは擬似ベーマイト、アルミナ、γ-アルミナ、チタニア、シリカ安定化チタニア、シリカ安定化アルミナ、およびこれらの混合物、好ましくは擬似ベーマイトおよび/またはシリカ安定化アルミナ、好ましくは擬似ベーマイトと2~6質量%のシリカ安定化アルミナとの等質量混合物を含む、好ましくはそれらからなる高融点金属酸化物担体を用意する工程であって、好ましくは、高融点金属酸化物担体は、酸性であり、好ましくは2~7未満の範囲内のpHを有し、好ましくは、pHが、無機酸の硝酸および/または酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸およびクエン酸のうちの1種または複数、好ましくは酢酸からなる有機酸の添加によって調整される、工程と、
(1.2)白金族金属を初期湿潤法の手段によって添加する工程であって、好ましくは白金族金属が、白金、好ましくはパラジウムおよび白金を含み、好ましくはそれらからなり、高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、好ましくは高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属を得る工程と、
(1.3)任意に、(1.1)による同一の高融点金属酸化物担体で、かつ(1.2)による異なる白金族金属で、工程(1.1)と(1.2)とを繰り返して、高融点金属酸化物上に担持された第2の白金族金属を得、高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属とを混合して、高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属との機械的混合物を得る工程と、
(1.4)任意に、バリウム塩および/またはランタナム塩を、(1.2)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属に、または(1.3)からの高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属との機械的混合物に添加して、バリウムおよび/もしくはランタナムを含有する高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、またはバリウムおよび/もしくはランタナムを含有する高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属との機械的混合物を得る工程と、
(1.5)任意に、結合剤を、(1.2)もしくは(1.4)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、または(1.3)もしくは(1.4)からの高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属との機械的混合物に添加する工程であって、好ましくは、結合剤が、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、およびこれらの混合物、好ましくはジルコニア、アルミナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、好ましくはジルコニアを含む、好ましくはそれらからなる工程と、
(1.6)任意に、(1.2)、(1.4)もしくは(1.5)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、または(1.3)、(1.4)もしくは(1.5)から得られた高融点金属酸化物上に担持された機械的混合済み白金族金属をミリングして、0.1~25ミクロンの範囲内、好ましくは1~20ミクロンの範囲内、より好ましくは2~18ミクロンの範囲内、より好ましくは3~17ミクロンの範囲内、より好ましくは4~16ミクロンの範囲内、より好ましくは5~15ミクロンの範囲内、より好ましくは7~12ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有する高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、または高融点金属酸化物上に担持された白金族金属の機械的混合物を得る工程であって、より好ましくは、高融点金属酸化物担体、または高融点金属酸化物上に担持された機械的混合済み白金族金属の粒径分布のDV90値が、10~12ミクロンの範囲内にあり、好ましくは、粒径分布が、光散乱によって測定され、より好ましくは参照例1によって測定される、工程と、
(1.7)(1.2)、(1.4)、(1.5)もしくは(1.6)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、または(1.3)、(1.4)、(1.5)もしくは(1.6)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属の機械的混合物を水中に分散させて、それにより工程(a)による第1のスラリーおよび/または工程(f)による第2のスラリーを得る工程と
をさらに含む。
【0084】
工程(a)および/または工程(f)が、結合剤を、個々の層中に存在する総乾燥質量成分に対して算出して、好ましくは2~7質量%の範囲内、好ましくは3~6質量%の範囲内で添加する工程をさらに含むことが好ましく、好ましくは、結合剤は、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、およびこれらの混合物、好ましくはジルコニア、アルミナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、好ましくはジルコニアを含む、好ましくはそれらからなる。
【0085】
(b)による基材が、セラミック物質を含み、好ましくはそれからなることが好ましく、セラミック物質は、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライトまたはムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、およびチタニアのうちの1種または複数、より好ましくはシリコンカーバイドおよびコーディエライトのうちの1種または複数、より好ましくはコーディエライトを好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる。
【0086】
(b)による基材が、金属物質を含む、好ましくはそれらからなることが好ましく、金属物質は、酸素、ならびに鉄、クロムおよびアルミナのうちの1種または複数を好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる。
【0087】
(ii)によって、DOCの基材が、モノリス、好ましくはハニカムモノリス、より好ましくはフロースルーハニカムモノリスであることが好ましい。
【0088】
工程(b)において用意された基材が、アンダーコート、好ましくは
(b.1)擬似ベーマイト、γ-アルミナ、アルミナ、シリカ、ランタナ、ジルコニア、チタニア、セリア、バリア、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、好ましくは擬似ベーマイト、γ-アルミナ、アルミナ、シリカ、ランタナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数を含む高融点金属酸化物担体を用意する工程であって、より好ましくはアンダーコートが、擬似ベーマイトを含む、任意にそれからなる、工程と、
(b.2)任意に、(b.1)において用意された高融点金属酸化物担体をミリングして、好ましくは、0.1~25ミクロンの範囲内、好ましくは5~15ミクロンの範囲内、より好ましくは7~13ミクロンの範囲内、より好ましくは8~12ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有する高融点金属酸化物担体を得る工程、より好ましくは9~11ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有する高融点金属酸化物担体を得る工程であって、好ましくは粒径分布が、光散乱によって測定され、より好ましくは参照例1によって測定される、工程と、
(b.3)基材の入口および出口の全長を、(b.1)または(b.2)により得られた高融点金属酸化物担体でコーティングして、アンダーコーティング済み基材を得る工程と、
(b.4)任意に、(b.3)によるアンダーコーティング済み基材を乾燥させて、かつ/または焼成して、アンダーコーティング済みで乾燥済みおよび/または焼成済みの基材を得る工程と
を含む工程によって得られたアンダーコートを有することが好ましい。
【0089】
(b)において用意された基材が、15~92g/L(0.25~1.5g/インチ)の範囲内、好ましくは31~76g/L(0.5~1.25g/インチ)の範囲内、より好ましくは55~67g/L(0.9~1.1g/インチ)の範囲内のアンダーコート充填量を有することが好ましい。
【0090】
工程(b)によって、白金族金属が、DOCのアンダーコート中に意図的に存在しないことが好ましい。
【0091】
工程(b)によって、DOCのアンダーコートが、アンダーコートの総乾燥質量に基づいて算出して、0.1質量%未満の白金族金属、好ましくは0.01質量%未満の白金族金属を含有することが好ましい。
【0092】
工程(b)によって、層が、DOCのアンダーコートと基材との間にないことが好ましい。
【0093】
工程(c)において、入口通路の内壁が、入口コーティングが入口端部から入口コーティング端部まで延びてそれにより入口コーティング長が規定されるようにコーティングされ、入口コーティング長が、DOCの基材の基材軸長の%としてのxであり、5~80の範囲内、好ましくは10~70の範囲内、より好ましくは15~60の範囲内、より好ましくは20~60の範囲内、より好ましくは、25~55の範囲内、より好ましくは30~50の範囲内、より好ましくは35~45の範囲内にあることが好ましい。
【0094】
本発明はまた、本出願中に記載されている本発明による排ガス処理システムの特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによる排ガス処理システムを製造する方法であって、
(a’)パラジウム;ジルコニウムおよびアルミナのうちの1種または複数を含む酸化物材料ならびに水を含むスラリーを製造する工程と、
(b’)(a’)において得られたスラリーを基材上に配置して、スラリー処理済み基材を得る工程と、
(c’)任意に、(b’)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(d’)MFC触媒を得るための、好ましくは本出願中に記載されている本発明による排ガス処理システムの特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによる排ガス処理システム中に含まれる(iv)によるMFCを得るための、(b’)において得られたスラリー処理済み基材、好ましくは(c’)において得られたスラリー処理済み乾燥済み基材を焼成する工程と
を含むプロセスによる多機能触媒(MFC)を製造する工程を含む、
方法に関する。
【0095】
(a’)が、
(a’.1)パラジウム前駆体の水溶液、好ましくは硝酸パラジウム水溶液を、ジルコニウムおよびアルミナのうちの1種または複数を含む酸化物材料と混合して、酸化物材料上に担持されたパラジウムを得る工程と、
(a’.2)(a’.1)において得られた酸化物材料上に担持されたパラジウムを焼成する工程と、
(a’.3)(a’.2)において得られた酸化物材料上に担持された焼成済みパラジウムを、配置型アジュバントと、好ましくは酒石酸およびモノエタノールアミンのうちの1種または複数と、より好ましくは酒石酸およびモノエタノールアミンと混合する工程と
を含むことが好ましい。
【0096】
(a’)が、
(a’.4)(a’.3)において得られた混合物を、参照例1により決定して、1~20マイクロメートルの範囲内、好ましくは5~15マイクロメートルの範囲内、より好ましくは9~11マイクロメートルの範囲内の粒径Dv90へとミリングする工程
をさらに含むことが好ましい。
【0097】
(a’.1)によって、パラジウム前駆体の水溶液、好ましくは硝酸パラジウム水溶液が、酸化物材料に滴下添加されることが好ましい。
【0098】
(a’.2)によって、酸化物材料上に担持されたパラジウムが、490~690℃の範囲内、好ましくは540~640℃の範囲内、より好ましくは570~610℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で焼成されることが好ましい。
【0099】
(a’.2)によって、酸化物材料上に担持されたパラジウムが、2~6時間の範囲内、好ましくは3~5時間の範囲内の間、気体雰囲気中で焼成されることが好ましい。
【0100】
スラリーを、(b’)における基材(該基材は基材長を有する)上に配置する工程が、基材長のうちの20~100%の上に、好ましくは50~100%の上に、より好ましくは75~100%の上に、より好ましくは95~100%の上に、より好ましくは99~100%の上にスラリーを配置する工程を含むことが好ましい。
【0101】
(c’)によって、スラリー処理済み基材が、90~200℃の範囲内、好ましくは110~180℃の範囲内、より好ましくは120~160℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で乾燥されることが好ましく、より好ましくは、スラリー処理済み基材は、5~300分の範囲内、より好ましくは10~120分の範囲内、より好ましくは20~60分の範囲内の間、気体雰囲気中で乾燥される。
【0102】
(c’)によって、スラリー処理済み基材が、90~200℃の範囲内、好ましくは100~150℃の範囲内、より好ましくは110~130℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で、好ましくは5~300分の範囲内、より好ましくは5~60分の範囲内、より好ましくは7~20分の範囲内の間、乾燥されることが好ましく、90~200℃の範囲内、好ましくは140~180℃の範囲内、より好ましくは150~170℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で、好ましくは5~300分の範囲内、より好ましくは10~80分の範囲内、より好ましくは20~40分の範囲内の間、さらに乾燥される。
【0103】
(d’)によって、(b’)において得られたスラリー処理済み基材、好ましくは(c’)において得られたスラリー処理済み乾燥済み基材が、300~600℃の範囲内、好ましくは400~500℃の範囲内、より好ましくは425~475℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で焼成されることが好ましい。
【0104】
(d’)によって、(b’)において得られたスラリー処理済み基材、好ましくは(c’)において得られたスラリー処理済み乾燥済み基材が、5~120分の範囲内、好ましくは10~90分の範囲内、より好ましくは15~50分の範囲内、より好ましくは20~40分の範囲内の間、気体雰囲気中で焼成されることが好ましい。
【0105】
本出願中に記載されている本発明による排ガス処理システムの特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによる排ガス処理システムを製造する方法が、
(a’)パラジウム;ジルコニウムおよびアルミナのうちの1種または複数を含む酸化物材料ならびに水を含むスラリーを製造する工程と、
(b’)(a’)において得られたスラリーを基材上に配置して、スラリー処理済み基材を得る工程と、
(c’)(b’)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(d’)(c’)において得られたスラリー処理済み乾燥済み基材を焼成して、MFC触媒、好ましくは本出願中に記載されている本発明による排ガス処理システムの特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによる排ガス処理システム中に含まれる(iv)によるMFCを得る工程と
からなるプロセスによる多機能触媒(MFC)を製造する工程を含むことが、さらに好ましい。
【0106】
本発明はまた、本出願中に記載されている本発明による排ガス処理システムの特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによる排ガス処理システムを製造する方法であって、前記DOCを製造する方法に関して本出願中に記載されている本発明による特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによるディーゼル酸化触媒(DOC)を製造する工程を含み、かつ前記MFCを製造する方法に関して本出願中に記載されている本発明による特定のかつ好ましい実施形態のいずれか1つによる多機能触媒(MFC)を製造する工程をさらに含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本発明によれば、用語「白金族金属」は、Pt、Pd、Rh、Ru、OsおよびIrからなる金属の族、好ましくはPt、PdおよびRhからなる金属の族を指す。
【0108】
本発明の意味では、近位連結触媒は、それがMFCを備えた主な触媒ボックスの上流および外側に位置する点で、床下触媒とは区別される。詳細には、本発明の意味では、近位連結触媒、特定すると本発明の特定のかつ好ましい実施形態による近位連結DOCが、希薄燃焼機関の近くに位置する、好ましくは最も近くに位置することが好ましい。
【0109】
本発明は、以下の、示されているような依存関係および後方参照から得られた実施形態のセットおよび実施形態の組合せによってさらに例示される。詳細には、実施形態の範囲が挙げられている各事例において、例えば、「実施形態(1)から(4)のいずれか1つ」等の用語の文脈では、この範囲内の各実施形態が、当業者のために明示的に開示されていることが意味され、すなわち、この用語のワーディングが「実施形態(1)、(2)、(3)および(4)のいずれか1つ」と同義語であることが当業者によって理解されることになることが、留意されるべきである。
【0110】
さらに、実施形態の以下のセットが、保護率を決定する特許請求の範囲のセットではなく、本発明の一般のかつ好ましい態様を対象とした記載の好適に構造化された部分を表していることが、明示的に留意されるべきである。
【0111】
実施形態(1)によれば、本発明は、希薄燃焼内燃機関からの排ガスを処理するための排ガス処理システムであって、前記排ガスが、炭化水素およびNOxを含み、排ガス処理システムが、
(i)炭化水素を排ガス流中に噴射する手段と、
(ii)基材、および該基材上に提供された触媒コーティングを含むディーゼル酸化触媒(DOC)であり、触媒コーティングが1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が、白金、好ましくは白金およびパラジウムを含む、好ましくはそれらからなる、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、
(iii)窒素含有還元剤を排ガス流中に噴射する手段と、
(iv)酸化触媒、およびNOxの選択的触媒還元のための選択的触媒還元(SCR)触媒を含む、好ましくはそれらからなる多機能触媒(MFC)と
を備え、
MFCが、基材、および該基材上に提供された触媒コーティングを含み、
触媒コーティングが酸化触媒およびSCR触媒を含み、酸化触媒が1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属がパラジウムおよび/または白金、好ましくはパラジウムを含み、好ましくはそれらからなり、SCR触媒が銅および/または鉄で、好ましくは銅が充填されたゼオライト材料を含み、
炭化水素を噴射する手段、DOC、窒素含有還元剤を噴射する手段およびMFCが、その順序で、排ガス用の導管中に位置し、
炭化水素を排ガス流中に噴射する手段がDOCの上流に位置し、DOCがMFCの上流に位置し、窒素含有還元剤を排ガス流中に噴射する手段がDOCとMFCとの間に位置する、
排ガス処理システムに関する。
【0112】
実施形態(1)を具体化する好ましい実施形態(2)は、さらなる成分が、(i)による炭化水素を噴射する手段と(ii)によるDOCとの間の排ガス処理システム中に位置せず、好ましくは、さらなる成分が、(i)による炭化水素を噴射する手段と(ii)によるDOCとの間、および(ii)によるDOCと(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段との間、および(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段と(iv)によるMFCとの間の排ガス処理システム中に位置しない、前記システムに関する。
【0113】
実施形態(1)または(2)を具体化するさらに好ましい実施形態(3)は、排ガス処理システムが、(ii)によるDOCの上流に位置する希薄燃焼機関をさらに備えている、前記システムに関する。
【0114】
実施形態(3)を具体化するさらに好ましい実施形態(4)は、(ii)によるDOCが希薄燃焼機関に近位連結されており、好ましくは希薄燃焼機関がディーゼルエンジンである、前記システムに関する。
【0115】
実施形態(3)または(4)を具体化するさらに好ましい実施形態(5)は、希薄燃焼機関が、制御量の炭化水素を含む排ガス流を生成することによって、好ましくは第2の燃料噴射によって、炭化水素を、(i)による排ガス流中に噴射する手段として作動する、前記システムに関する。
【0116】
実施形態(3)から(5)のうちのいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(6)は、炭化水素を(i)による排ガス流中に噴射する手段が、希薄燃焼機関と(ii)によるDOCとの間に位置する、前記システムに関する。
【0117】
実施形態(3)から(6)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(7)は、さらなる成分が、希薄燃焼機関と(i)による炭化水素を噴射する手段との間の排ガス処理システム中に位置せず、好ましくは、さらなる成分が、希薄燃焼機関と(i)による炭化水素を噴射する手段との間、および(i)による炭化水素を噴射する手段と(ii)によるDOCとの間、および(ii)によるDOCと(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段との間、および(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段と(iv)によるMFCとの間の排ガス処理システム中に位置しない、前記システムに関する。
【0118】
実施形態(3)から(7)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(8)は、さらなる成分が、希薄燃焼機関と(ii)によるDOCとの間の排ガス処理システム中に位置せず、好ましくは、さらなる成分が、希薄燃焼機関と(ii)によるDOCとの間、および(ii)によるDOCと(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段との間、および(iii)による窒素含有還元剤を噴射する手段と(iv)によるMFCとの間の排ガス処理システム中に位置しない、前記システムに関する。
【0119】
実施形態(1)から(8)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(9)は、(ii)によって、DOCの基材が、セラミック物質を含み、好ましくはそれからなり、セラミック物質が、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライトまたはムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、およびチタニアのうちの1種または複数、より好ましくはシリコンカーバイドおよびコーディエライトのうちの1種または複数、より好ましくはコーディエライトを好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる、前記システムに関する。
【0120】
実施形態(1)から(9)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(10)は、(ii)によって、DOCの基材が、金属物質を含み、好ましくはそれからなり、金属物質が、酸素、ならびに鉄、クロムおよびアルミナのうちの1種または複数を好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる、前記システムに関する。
【0121】
実施形態(1)から(10)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(11)は、(ii)によって、DOCの基材が、モノリス、好ましくはハニカムモノリス、より好ましくはフロースルーハニカムモノリスである、前記システムに関する。
【0122】
実施形態(1)から(11)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(12)は、(ii)によって、DOC中に存在する1種または複数の白金族金属が、擬似ベーマイト、アルミナ、γ-アルミナ、ランタナ、ランタナ安定化アルミナ、シリカ安定化アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ安定化チタニア、セリア、セリア-ジルコニア、アルミノシリケート、シリカおよび希土類金属三二酸化物、含まれるのはこれらの混合物からなる群から選択される、好ましくは擬似ベーマイト、アルミナ、γ-アルミナ、チタニア、シリカ安定化チタニアおよびシリカ安定化アルミナ、含まれるのはこれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の高融点金属酸化物上に担持されており、より好ましくは、DOC中に存在する1種または複数の白金族金属が、擬似ベーマイトおよび/またはシリカ安定化アルミナ上に、より好ましくは擬似ベーマイトと2~6質量%のシリカ安定化アルミナとの等質量混合物上に担持されている、前記システムに関する。
【0123】
実施形態(11)から(12)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(13)は、(ii)によって、1種または複数の高融点金属酸化物担体の粒径分布のDV90値が、0.1~25ミクロンの範囲内、好ましくは1~20ミクロンの範囲内、より好ましくは2~18ミクロンの範囲内、より好ましくは3~17ミクロンの範囲内、より好ましくは4~16ミクロンの範囲内、より好ましくは5~15ミクロンの範囲内、より好ましくは7~12ミクロンの範囲内にあり、より好ましくは、(ii)によって、高融点金属酸化物担体の粒径分布のDV90値が、10~12ミクロンの範囲内にあり、好ましくは、粒径分布が、光散乱によって測定され、より好ましくは参照例1によって測定される、前記システムに関する。
【0124】
実施形態(11)から(13)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(14)は、(ii)によって、DOCの触媒コーティングが、高融点金属酸化物担体に加えて、結合剤を、個々の層中に存在する総乾燥質量成分に対して算出して、好ましくは2~7質量%の範囲内、より好ましくは3~6質量%の範囲内において含有し、より好ましくは、結合剤が、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、より好ましくは、ジルコニア、アルミナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数を含み、好ましくはそれらからなり、より好ましくは、ジルコニアが、結合剤として、触媒コーティング中に含有されている、前記システムに関する。
【0125】
実施形態(1)から(14)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(15)は、(ii)によって、DOC中に存在する触媒コーティングの総充填量が、入口コーティングおよび出口コーティング中に存在する全ての成分の総乾燥質量に対して算出して、31g/L~183g/L(0.5g/インチ~3g/インチ)の範囲内、好ましくは46g/L~153g/L(0.75g/インチ~2.5g/インチ)の範囲内、より好ましくは61g/L~140g/L(1.0g/インチ~2.3g/インチ)の範囲内、より好ましくは67g/L~110g/L(1.1g/インチ~1.8g/インチ)の範囲内、より好ましくは73g/L~104g/L(1.2g/インチ~1.7g/インチ)の範囲内、より好ましくは79g/L~92g/L(1.3g/インチ~1.5g/インチ)の範囲内にある、前記システムに関する。
【0126】
実施形態(1)から(15)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(16)は、(ii)によって、触媒コーティングが、上流ゾーンを規定する触媒入口コーティングと、下流ゾーンを規定する触媒出口コーティングとに分かれ、
DOCの基材が、入口端部、出口端部、入口端部と出口端部との間に延びる基材軸長、および基材の内壁によって規定される複数の通路を有し、
複数の通路の内壁が、入口端部から入口コーティング端部まで延びてそれにより入口コーティング長を規定する触媒入口コーティングを備え、
入口コーティング長が、基材軸長のx%(式中、0<x<100である)であり、
複数の通路の内壁が、出口端部から出口コーティング端部に延びてそれにより出口コーティング長を規定する出口コーティングを含み、
出口コーティング長が、基材軸長の(100-x)%であり、
入口コーティング長がDOCの上流ゾーンを規定し、出口コーティング長がDOCの下流ゾーンを規定し、
入口コーティングが、1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が、白金、好ましくは白金およびパラジウムを含み、好ましくはそれらからなり、
出口コーティングが、1種または複数の白金族金属を含み、1種または複数の白金族金属が、白金、好ましくは白金およびパラジウムを含み、好ましくはそれらからなる、
前記システムに関する。
【0127】
実施形態(16)を具体化するさらに好ましい実施形態(17)は、(ii)によって、DOCの入口コーティング中に含有されている白金族金属の総量の充填量が、0.18~2.83g/L(5~80g/フィート)の範囲内、好ましくは0.53~2.65g/L(15~75g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.71~2.47g/L(20~70g/フィート)の範囲内、より好ましくは1.06~2.30g/L(30~65g/フィート)の範囲内、より好ましくは1.41~2.12g/L(40~60g/フィート)の範囲内にあり、より好ましくは、(ii)によって、入口コーティング中に含有されている白金族金属の総量の充填量が、1.77g/L(50g/フィート)超~2.12g/L(60g/フィート)未満の範囲内にある、前記システムに関する。
【0128】
実施形態(16)または(17)を具体化するさらに好ましい実施形態(18)は、(ii)によって、DOCの入口コーティングが、5:1~1:5の範囲内、好ましくは4:1~1:4の範囲内、より好ましくは2:1~1:3の範囲内、より好ましくは1:1~1:2の範囲内、より好ましくは1:1.4~1:1.8の範囲内にあるPt/Pd質量比を有する、前記システムに関する。
【0129】
実施形態(16)から(18)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(19)は、(ii)によって、白金族金属の総量の充填量が、DOCの出口コーティング中に含有されている元素の白金族金属として算出して、0.04~2.47g/L(1~70g/フィート)の範囲内、好ましくは0.04~1.77g/L(1~50g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.04~1.05g/L(1~30g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.04~0.71g/L(1~20g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.07~0.53g/L(2~15g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.11~0.28g/L(3~8g/フィート)の範囲内にあり、より好ましくは、(ii)によって、白金族金属の総量の充填量が、出口コーティング中に含有されている元素の白金族金属として算出して、0.14g/L(4g/フィート)超~0.22g/L(6g/フィート)未満の範囲内にある、前記システムに関する。
【0130】
実施形態(16)から(19)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(20)は、(ii)によって、DOCの出口コーティングが、10:1~1:0の範囲内、好ましくは5:1~1:1の範囲内、より好ましくは4:1~2:1の範囲内、より好ましくは3.5:1~2.5:1の範囲内のPt/Pd質量比を有する、前記システムに関する。
【0131】
実施形態(16)から(20)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(21)は、(ii)によって、DOCの基材の基材軸長の%としての入口コーティング長xが、5~80の範囲内、好ましくは10~70の範囲内、より好ましくは15~60の範囲内、より好ましくは20~60の範囲内、より好ましくは25~55の範囲内、より好ましくは30~50の範囲内、より好ましくは35~45の範囲内にある、前記システムに関する。
【0132】
実施形態(16)から(21)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(22)は、(ii)によって、DOCの入口コーティングおよび/または出口コーティングが、PtとPdとの総質量和の2質量%未満、好ましくはPtとPdとの総質量和の1質量%未満、より好ましくはPtとPdとの総質量和の0.5質量%未満の汚染物質を超えるPtおよび/またはPd以外の白金族金属を含有しない、前記システムに関する。
【0133】
実施形態(16)から(22)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(23)は、(ii)によって、DOCの入口および出口通路の内壁が、基材の入口端部コーティング長から出口端部コーティング長まで延びるアンダーコートを備えている、前記システムに関する。
【0134】
実施形態(23)を具体化するさらに好ましい実施形態(24)は、(ii)によって、DOCのアンダーコートが、擬似ベーマイト、γ-アルミナ、アルミナ、シリカ、ランタナ、ジルコニア、チタニア、セリア、バリア、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、好ましくは擬似ベーマイト、γ-アルミナ、アルミナ、シリカ、ランタナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数を含み、任意にこれらからなり、より好ましくはアンダーコートが、擬似ベーマイトを含む、任意にそれからなる、前記システムに関する。
【0135】
実施形態(16)から(24)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(25)は、(ii)によって、白金族金属が、DOCのアンダーコート中に意図的に存在していない、前記システムに関する。
【0136】
実施形態(16)から(25)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(26)は、(ii)によって、DOCのアンダーコートが、0.1~25ミクロンの範囲内、好ましくは5~15ミクロンの範囲内、より好ましくは7~13ミクロンの範囲内、より好ましくは8~12ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有し、より好ましくは、(ii)によって、アンダーコートが、9~11ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有し、好ましくは、粒径分布が、光散乱によって測定され、より好ましくは参照例1によって測定される、前記システムに関する。
【0137】
実施形態(16)から(26)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(27)は、(ii)によって、DOCのアンダーコートが、アンダーコートの総乾燥質量に対して算出して、0.1質量%未満の白金族金属、好ましくは0.01質量%未満の白金族金属を含有する、前記システムに関する。
【0138】
実施形態(16)から(27)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(28)は、(ii)によって、DOCの基材が、15~92g/L(0.25~1.5g/インチ)の範囲内、好ましくは31~75g/L(0.5~1.25g/インチ)の範囲内、より好ましくは55~67g/L(0.9~1.1g/インチ)の範囲内にあるアンダーコート充填量を有する、前記システムに関する。
【0139】
実施形態(16)から(28)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(29)は、(ii)によって、層が、DOCのアンダーコートと基材との間にない、前記システムに関する。
【0140】
実施形態(16)から(29)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(30)は、(ii)によって、層が、DOCの、アンダーコートと、白金族金を含有する入口および/または出口コーティングとの間にない、前記システムに関する。
【0141】
実施形態(1)から(30)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(31)は、(ii)によって、白金族金属の総充填量が、DOC中に存在する元素の白金族金属として算出して、0.35g/L~1.77g/L(10g/フィート~50g/フィート)の範囲内、好ましくは0.53g/L~1.59g/L(15g/フィート~45g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.71g/L~1.41g/L(20g/フィート~40g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.74g/L~1.02g/L(21g/フィート~29g/フィート)の範囲内にあり、より好ましくは、(ii)によって、白金族金属の総充填量が、DOC中に存在する元素の白金族金属として算出して、0.81g/L(23g/フィート)超~0.88g/L(25g/フィート)未満の範囲内にある、前記システムに関する。
【0142】
実施形態(1)から(31)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(32)は、(ii)によって、DOCが、2.54~25.4cm(1~10インチ)の範囲内、好ましくは3.81~20.32cm(1.5~8インチ)の範囲内,より好ましくは5.08~17.78cm(2~7インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~15.24cm(2~6インチ)の範囲内、より好ましくは7.62~12.7cm(3~5インチ)の範囲内の総計の長さ、好ましくは基材長を有する、前記システムに関する。
【0143】
実施形態(1)から(32)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(33)は、(ii)によって、DOCが、10.16~43.18cm(4~17インチ)の範囲内、好ましくは17.78~38.10cm(7~15インチ)の範囲内、より好ましくは20.32~35.56cm(8~14インチ)の範囲内、より好ましくは22.86~33.02cm(9~13インチ)の範囲内、より好ましくは22.86~27.94cm(9~11インチ)の範囲内の総計の幅、好ましくは基材幅を有する、前記システムに関する。
【0144】
実施形態(2)から(33)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(34)は、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれているゼオライト材料が、AEI、GME、CHA、MFI、BEA、FAU、MORの各型、またはそれらの2種以上の混合物のフレームワーク構造体、好ましくはAEI、CHA、BEAの各型、またはそれらの2種以上の混合物のフレームワーク構造体、より好ましくはCHAまたはAEIの各型のフレームワーク構造体、より好ましくはCHA型のフレームワーク構造体を有する、前記システムに関する。
【0145】
実施形態(34)を具体化するさらに好ましい実施形態(35)は、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれているゼオライト材料が、銅を含み、ゼオライト材料中に含まれている銅の量が、CuOとして算出して、ゼオライト材料の総質量に対して、好ましくは0.1~10.0質量%の範囲内、より好ましくは2.0~7.0質量%の範囲内、より好ましくは2.5~5.5質量%の範囲内、より好ましくは2.5~3.5質量の範囲内にあり、ゼオライト材料中に含まれている鉄の量が、Feとして算出して、ゼオライト材料の総質量に対して、好ましくは0~0.01質量%の範囲内、より好ましくは0~0.001質量%の範囲内、より好ましくは0~0.0001質量%の範囲内にある、前記システムに関する。
【0146】
実施形態(34)または(35)を具体化するさらに好ましい実施形態(36)は、ゼオライト材料のフレームワーク構造体のうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%が、Si、Al、O、ならびに任意にHおよびPのうちの1種または複数からなり、フレームワーク構造体において、SiのAlに対するモル比が、モルのSiO:Alとして算出して、好ましくは2:1~50:1の範囲内、より好ましくは4:1~45:1の範囲内、より好ましくは10:1~40:1の範囲内、より好ましくは15:1~30:1の範囲内にある、前記システムに関する。
【0147】
実施形態(34)を具体化するさらに好ましい実施形態(37)は、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれているゼオライト材料が、鉄を含み、ゼオライト材料中に含まれている鉄の量が、Feとして算出して、ゼオライト材料の総質量に対して、好ましくは0.1~10.0質量%の範囲内、より好ましくは1.0~7.0質量%の範囲内、より好ましくは2.5~5.5質量%の範囲内にあり、かつ、ゼオライト材料のフレームワーク構造体のうちの好ましくは95~100質量%、より好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%が、Si、Al、O、ならびに任意にHおよびPのうちの1種または複数からなり、フレームワーク構造体において、SiのAlに対するモル比が、モルのSiO:Alとして算出して、好ましくは2:1~50:1の範囲内、より好ましくは4:1~45:1の範囲内、より好ましくは10:1~40:1の範囲内、より好ましくは15:1~30:1の範囲内にある、前記システムに関する。
【0148】
実施形態(1)から(37)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(38)は、好ましくはCHA型フレームワークを有する(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれているゼオライト材料が、走査電子顕微鏡を介して決定して、少なくとも0.5マイクロメートル、好ましくは0.5~1.5マイクロメートルの範囲内、より好ましくは0.6~1.0マイクロメートルの範囲内、より好ましくは0.6~0.8マイクロメートルの範囲内の平均結晶子サイズを有する、前記システムに関する。
【0149】
実施形態(1)から(38)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(39)は、(iv)によるMFCの触媒コーティングが、金属酸化物結合剤をさらに含み、金属酸化物結合剤が、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、ならびにZr、Al、TiおよびSiのうちの2種以上を含む混合済み酸化物のうちの1種または複数を好ましくは含み、より好ましくはアルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含み、より好ましくはジルコニアを含み、コーティングが、1.22~12g/L(0.02~0.2g/インチ)の範囲内、好ましくは4.88~72g/L(0.08~0.18g/インチ)の範囲内の充填量を有する金属酸化物結合剤を含む、前記システムに関する。
【0150】
実施形態(1)から(39)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(40)は、(iv)において、1種または複数の白金族金属が、高融点金属酸化物上に担持されており、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている高融点金属酸化物が、ジルコニア、シリカ、アルミナおよびチタニアのうちの1種または複数、好ましくはジルコニアおよびアルミナのうちの1種または複数を含む、前記システムに関する。
【0151】
実施形態(40)を具体化するさらに好ましい実施形態(41)は、1種または複数の白金族金属が、ジルコニア上に担持されている、前記システムに関する。
【0152】
実施形態(41)を具体化するさらに好ましい実施形態(42)は、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている高融点金属酸化物のうちの90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%が、ジルコニアからなる、前記システムに関する。
【0153】
実施形態(1)から(42)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(43)は、(iv)によるMFCの触媒コーティングが、ゼオライト材料を、61~275g/L(1.0~4.5g/インチ)の範囲内、好ましくは92~244g/L(1.5~4.0g/インチ)の範囲内、より好ましくは122~214g/L(2.0~3.5g/インチ)の範囲内、より好ましくは128~183g/L(2.1~3g/インチ)の範囲内、より好ましくは128~159g/L(2.1~2.6g/インチ)の範囲内の充填量において含む、前記システムに関する。
【0154】
実施形態(1)から(43)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(44)は、(iv)によるMFCの触媒コーティングが、1種または複数の白金族金属を、元素の白金族金属として算出して、0.04~2.83g/L(1~80g/フィート)の範囲内、好ましくは0.53~2.12g/L(15~60g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.71~1.77g/L(20~50g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.88~1.59g/L(25~45g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.88~1.24g/L(25~35g/フィート)の範囲内の充填量において含む、前記システムに関する。
【0155】
実施形態(1)から(44)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(45)は、(iv)によるMFCの触媒コーティングのうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%が、高融点金属酸化物上に担持された1種または複数の白金族金属を含み、好ましくはそれらからなり、前記高融点金属酸化物のうちの99~100質量%が、ジルコニウムおよび酸素からなる、好ましくはジルコニア;CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅、および好ましくは実施形態41に記載の金属酸化物結合剤からなる、前記システムに関する。
【0156】
実施形態(1)から(45)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(46)は、白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムのうちの1種または複数のうちの0~0.0035g/l、好ましくは0~0.00035g/l、より好ましくは0~0.000035g/l、より好ましくは0~0.0000035g/lが、(iv)によるMFCのコーティング中に含まれ、より好ましくは、白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムのうちの0~0.0000035g/lが、(iv)によるMFCのコーティング中に含まれる、前記システムに関する。
【0157】
実施形態(1)から(46)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(47)は、(iv)によるMFCの触媒コーティングが、白金を含まない、好ましくは白金およびロジウムを含まない、より好ましくは白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムを含まない、前記システムに関する。
【0158】
実施形態(40)から(42)および(45)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(48)は、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている1種または複数の白金族金属を担持している高融点金属酸化物のうちの0~2質量%、好ましくは0~1質量%、より好ましくは0~0.1質量%が、セリアおよびアルミナからなり、より好ましくは(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれる高融点金属酸化物のうちの0~0.1質量%が、セリア、アルミナ、チタニア、ランタナおよびバリアからなる、前記システムに関する。
【0159】
実施形態(40)から(42)および(45)を具体化するさらに好ましい実施形態(49)は、(iv)によるMFCの触媒コーティング中に含まれている1種または複数の白金族金属を担持している高融点金属酸化物が、セリアおよびアルミナを含まない、好ましくはセリア、アルミナおよびチタニアを含まない、より好ましくはセリア、アルミナ、チタニア、ランタナおよびバリアを含まない、前記システムに関する。
【0160】
実施形態(1)から(49)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(50)は、(iv)によるMFCの触媒コーティングが、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅、および単一のコートとして含まれているジルコニア上に担持されたパラジウムを含み、単一のコートが、(iv)によるMFCの基材の内壁の少なくとも一部の上に配置されている、前記システムに関する。
【0161】
実施形態(1)から(49)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(51)は、(iv)によるMFCの触媒コーティングが、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅を含み、1種または複数の白金族金属が、ジルコニア、アルミナおよびチタニアのうちの1種または複数、好ましくはアルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含む高融点金属酸化物上に担持されており、かつ、触媒コーティングが、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅が含まれているオーバーコートと、高融点金属酸化物上に担持された白金族金属が含まれているアンダーコートとからなり、アンダーコートが、(iv)によるMFCの基材の内壁の表面の少なくとも一部の上に配置され、オーバーコートがアンダーコート上に配置されている、前記システムに関する。
【0162】
実施形態(51)を具体化するさらに好ましい実施形態(52)は、(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれている白金族金属が、パラジウムである、前記システムに関する。
【0163】
実施形態(51)または(52)を具体化するさらに好ましい実施形態(53)は、(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれている高融点金属酸化物が、アルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含む、好ましくはそれらからなる、前記システムに関する。
【0164】
実施形態(51)から(53)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(54)は、(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれている高融点金属酸化物のうちの60~100質量%、好ましくは70~90質量%、より好ましくは75~85質量%が、アルミナからなる、前記システムに関する。
【0165】
実施形態(52)から(55)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(55)は、(iv)によるMFCのアンダーコートが、パラジウムを、元素のパラジウムとして算出して、0.04~1.77g/L(1~50g/フィート)の範囲内、好ましくは0.18~1.06g/L(5~30g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.35~0.88g/L(10~25g/フィート)の範囲内、より好ましくは0.42~0.64g/L(12~18g/フィート)の範囲内の充填量において含む、前記システムに関する。
【0166】
実施形態(51)から(55)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(56)は、(iv)によるMFCのアンダーコートのうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%が、高融点金属酸化物上に担持されたパラジウムを含み、好ましくはそれらからなり、前記高融点金属酸化物のうちの99.5~100質量%が、アルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含む、より好ましくはそれらからなる、前記システムに関する。
【0167】
実施形態(51)から(56)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(57)は、(iv)によるMFCのオーバーコートが、ゼオライト材料を、61~275g/L(1~4.5g/インチ)の範囲内、好ましくは92~244g/L(1.5~4g/インチ)の範囲内、より好ましくは122~244g/L(2~4g/インチ)の範囲内、より好ましくは153~214g/L(2.5~3.5g/インチ)の範囲内にある充填量において含む、前記システムに関する。
【0168】
実施形態(51)から(57)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(58)は、(iv)によるMFCのアンダーコートのうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%が、高融点金属酸化物上に担持されたパラジウムを含み、好ましくはそれからなり、前記高融点金属酸化物のうちの99.5~100質量%が、アルミナおよびジルコニアのうちの1種または複数を含み、より好ましくはそれらからなり、かつ、(iv)によるMFCのオーバーコートのうちの95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%、より好ましくは99.5~100質量%が、CHA型のフレームワーク構造体を有するゼオライト材料を含有する銅、好ましくは実施形態41に記載の金属酸化物結合剤を含む、好ましくはそれからなる、前記システムに関する。
【0169】
実施形態(51)から(58)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(59)は、白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムのうちの1種または複数のうちの0~0.0035g/l、好ましくは0~0.00035g/l、より好ましくは0~0.000035g/lが、(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれており、より好ましくは、白金、イリジウム、オスミウムおよびロジウムのうちの0~0.000035g/lが、(iv)によるMFCのアンダーコート中に含まれている、前記システムに関する。
【0170】
実施形態(51)から(59)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(60)は、(iv)によるMFCのアンダーコートが、白金およびロジウムを含まない、好ましくは白金、ロジウム、イリジウムおよびオスミウムを含まない、前記システムに関する。
【0171】
実施形態(1)から(60)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(61)は、(iv)によるMFCが、基材上に配置されたコーティングからなる、前記システムに関する。
【0172】
実施形態(1)から(61)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(62)は、(iv)によるMFCの基材が、セラミックまたは金属物質を含む、前記システムに関する。
【0173】
実施形態(1)から(62)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(63)は、(iv)によるMFCの基材が、セラミック物質を含み、好ましくはそれからなり、セラミック物質が、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライトまたはムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシアのうちの1種または複数、好ましくはスピネルおよびチタニア、より好ましくはシリコンカーバイドおよびコーディエライトのうちの1種または複数、より好ましくはコーディエライトを含み、より好ましくはそれからなり、または、(iv)によるMFCの基材が、金属物質を含み、好ましくはそれからなり、金属物質が、酸素、ならびに鉄、クロムおよびアルミナのうちの1種または複数を好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる、前記システムに関する。
【0174】
実施形態(1)から(63)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(64)は、(iv)によるMFCの基材が、モノリス、好ましくはハニカムモノリス、より好ましくはフロースルーハニカムモノリスである、前記システムに関する。
【0175】
実施形態(1)から(64)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(65)は、(iv)によるMFCが、2.54~25.4cm(1~10インチ)の範囲内、好ましくは3.81~20.32cm(1.5~8インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~17.78cm(2~7インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~15.24cm(2~6インチ)の範囲内、より好ましくは5.08~10.16cm(2~4インチ)の範囲内の長さ、好ましくは基材長を有する、前記システムに関する。
【0176】
実施形態(1)から(65)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(66)は、(iv)によるMFCが、10.16~43.18cm(4~17インチ)の範囲内、好ましくは17.78~38.10cm(7~15インチ)の範囲内、より好ましくは20.32~35.56cm(8~14インチ)の範囲内、より好ましくは22.86~33.02cm(9~13インチ)の範囲内、より好ましくは22.86~27.94cm(9~11インチ)の範囲内の幅、好ましくは基材幅を有する、前記システムに関する。
【0177】
実施形態(1)から(66)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(67)は、(iv)によるMFCの触媒コーティングが、基材長のうちの20~100%にわたり、好ましくは50~100%にわたり、より好ましくは75~100%にわたり、より好ましくは95~100%にわたり、より好ましくは99~100%にわたり、(iv)によるMFCの基材の内壁上に配置されている、前記システムに関する。
【0178】
実施形態(68)によれば、本発明は、NOxの同時選択的触媒還元、炭化水素の酸化、一酸化窒素の酸化およびアンモニアの酸化のための方法であって、
(1)NOx、アンモニア、一酸化窒素および炭化水素のうちの1種または複数を含むディーゼルエンジンからの排ガス流を提供する工程と、
(2)実施形態1から67のいずれか1つに記載の排ガスシステムを通して、(1)において提供された排ガス流を通過させる工程と
を含む、方法に関する。
【0179】
実施形態(69)によれば、本発明は、実施形態1から67のいずれか1つに記載の排ガス処理システムを製造する方法であって、
(a)白金族金属、高融点金属酸化物担体および水を含む第1のスラリーを製造する工程と、
(b)基材を用意する工程と、
(c)(a)により得られた第1のスラリーを、(b)による基材上に配置し、入口通路の内壁を、入口コーティングが入口端部から入口コーティング端部まで延びてこれにより入口コーティング長が規定されるようにコーティングし、入口コーティング長が基材軸長のx%(式中、0<x<100である)である、スラリー処理済み基材を得る工程と、
(d)(c)により得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、入口コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(e)(c)において得られたスラリー処理済み基材を焼成して、入口コーティング済み基材を得る工程と、
(f)白金族金属、高融点金属酸化物担体および水を含む第2のスラリーを製造する工程と、
(g)(f)により得られた第2のスラリーを、(e)により得られた基材上に配置し、出口通路の内壁を、出口コーティングが出口端部から出口コーティング端部まで延びてこれにより出口コーティング長が規定されるようにコーティングし、出口コーティング長が、基材軸長の(100-x)%であり、入口コーティング済みかつ出口スラリー処理済み基材を得る工程と、
(h)(g)で得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、入口および出口コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(j)DOCを得るために、好ましくは実施形態1から67のいずれか1つに記載の排ガス処理システム中に含まれている(ii)によるDOCを得るために、(g)で得られたスラリー処理済み基材を焼成する工程と
を含むプロセスによるディーゼル酸化触媒(DOC)を製造する工程を含む、
方法に関する。
【0180】
実施形態(69)を具体化する好ましい実施形態(70)は、工程(a)および/または工程(f)が、
(1.1)擬似ベーマイト、アルミナ、γ-アルミナ、シリカ安定化チタニア、ランタナ、ランタナ安定化アルミナ、シリカ安定化アルミナ、ジルコニア、チタニア、セリア、セリア-ジルコニア、アルミノシリケート、シリカ、希土類金属三二酸化物、およびこれらの混合物、好ましくは擬似ベーマイト、アルミナ、γ-アルミナ、チタニア、シリカ安定化チタニア、シリカ安定化アルミナ、およびこれらの混合物、好ましくは擬似ベーマイトおよび/またはシリカ安定化アルミナ、好ましくは擬似ベーマイトと2~6質量%のシリカ安定化アルミナとの等質量混合物を含む、好ましくはそれらからなる高融点金属酸化物担体を用意する工程であって、好ましくは、高融点金属酸化物担体が、酸性であり、好ましくは2~7未満の範囲内にあるpHを有し、好ましくはpHが、無機酸の硝酸および/または酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、酒石酸およびクエン酸のうちの1種または複数、好ましくは酢酸からなる有機酸の添加によって調整される、工程と、
(1.2)白金族金属を初期湿潤法の手段によって添加する工程であって、好ましくは白金族金属が、白金、好ましくはパラジウムおよび白金を含み、好ましくはそれらからなり、高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、好ましくは高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属を得る工程と、
(1.3)任意に、(1.1)による同一の高融点金属酸化物担体で、かつ(1.2)による異なる白金族金属で、工程(1.1)と(1.2)とを繰り返して、高融点金属酸化物上に担持された第2の白金族金属を得、高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属とを混合して、高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属との機械的混合物を得る工程と、
(1.4)任意に、バリウム塩および/またはランタナム塩を、(1.2)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属に、または(1.3)からの高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属との機械的混合物に添加して、バリウムおよび/もしくはランタナムを含有する高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、またはバリウムおよび/もしくはランタナムを含有する高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属との機械的混合物を含有する高融点金属酸化物上に担持された白金族金属を得る工程と、
(1.5)任意に、結合剤を、(1.2)もしくは(1.4)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属に、または(1.3)もしくは(1.4)からの高融点金属酸化物上に担持された第1の白金族金属と第2の白金族金属との機械的混合物に添加する工程であって、好ましくは、結合剤が、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、およびこれらの混合物、好ましくはジルコニア、アルミナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、好ましくはジルコニアを含む、好ましくはそれらからなる、工程と、
(1.6)任意に、(1.2)、(1.4)もしくは(1.5)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、または(1.3)、(1.4)もしくは(1.5)から得られた高融点金属酸化物上に担持された機械的混合済み白金族金属をミリングして、0.1~25ミクロンの範囲内、好ましくは1~20ミクロンの範囲内、より好ましくは2~18ミクロンの範囲内、より好ましくは3~17ミクロンの範囲内、より好ましくは4~16ミクロンの範囲内、より好ましくは5~15ミクロンの範囲内、より好ましくは7~12ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有する、高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、または高融点金属酸化物上に担持された白金族金属の機械的混合物を得る工程であって、より好ましくは、高融点金属酸化物担体、または高融点金属酸化物上に担持された機械的混合済み白金族金属の粒径分布のDV90値が、10~12ミクロンの範囲内にあり、好ましくは、粒径分布は、光散乱によって測定され、より好ましくは参照例1によって測定される、工程と、
(1.7)(1.2)、(1.4)、(1.5)もしくは(1.6)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属、または(1.3)、(1.4)、(1.5)もしくは(1.6)から得られた高融点金属酸化物上に担持された白金族金属の機械的混合物を水中に分散させて、それにより工程(a)による第1のスラリーおよび/または工程(f)による第2のスラリーを得る工程と
をさらに含む、前記方法に関する。
【0181】
実施形態(69)または(70)を具体化するさらに好ましい実施形態(71)は、工程(a)および/または工程(f)が、結合剤を、個々の層中に存在する総乾燥質量成分に対して算出して、好ましくは2~7質量%の範囲内、好ましくは3~6質量%の範囲内で添加する工程をさらに含み、好ましくは、結合剤が、ジルコニア、チタニア、アルミナ、シリカ、およびこれらの混合物、好ましくはジルコニア、アルミナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、好ましくはジルコニアを含む、好ましくはそれらからなる、前記方法に関する。
【0182】
実施形態(69)から(71)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(72)は、(b)による基材が、セラミック物質を含み、好ましくはそれからなり、セラミック物質が、アルミナ、シリカ、シリケート、アルミノシリケート、好ましくはコーディエライトまたはムライト、アルミノチタネート、シリコンカーバイド、ジルコニア、マグネシア、好ましくはスピネル、およびチタニアのうちの1種または複数、より好ましくはシリコンカーバイドおよびコーディエライトのうちの1種または複数、より好ましくはコーディエライトを好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる、前記方法に関する。
【0183】
実施形態(69)から(71)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(73)は、(b)による基材が、金属物質を含み、好ましくはそれからなり、金属物質が、酸素、ならびに鉄、クロムおよびアルミナのうちの1種または複数を好ましくは含む、より好ましくはそれらからなる、前記方法に関する。
【0184】
実施形態(69)から(73)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(74)は、(ii)によって、DOCの基材が、モノリス、好ましくはハニカムモノリス、より好ましくはフロースルーハニカムモノリスである、前記方法に関する。
【0185】
実施形態(69)から(74)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(75)は、工程(b)において用意された基材が、アンダーコート、好ましくは
(b.1)擬似ベーマイト、γ-アルミナ、アルミナ、シリカ、ランタナ、ジルコニア、チタニア、セリア、バリア、およびこれらの混合物のうちの1種または複数、好ましくは擬似ベーマイト、γ-アルミナ、アルミナ、シリカ、ランタナ、およびこれらの混合物のうちの1種または複数を含む、任意にそれからなる高融点金属酸化物担体を用意する工程であって、より好ましくはアンダーコートが、擬似ベーマイトを含む、任意にそれからなる、工程と、
(b.2)任意に、(b.1)において用意された高融点金属酸化物担体をミリングして、好ましくは、0.1~25ミクロンの範囲内、好ましくは5~15ミクロンの範囲内、より好ましくは7~13ミクロンの範囲内、より好ましくは8~12ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有する高融点金属酸化物担体を得る工程、より好ましくは、9~11ミクロンの範囲内の粒径分布のDV90値を有する高融点金属酸化物担体を得る工程であって、好ましくは、粒径分布が、光散乱によって測定され、より好ましくは参照例1によって測定される、工程と、
(b.3)基材の入口および出口の全長を、(b.1)または(b.2)によって得られた高融点金属酸化物担体でコーティングして、アンダーコーティング済み基材を得る工程と、
(b.4)任意に、(b.3)によるアンダーコーティング済み基材を乾燥させて、かつ/または焼成して、アンダーコーティング済みで乾燥済みおよび/または焼成済みの基材を得る工程と
を含む工程によって得られたアンダーコートを有する、前記方法に関する。
【0186】
実施形態(69)から(75)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(76)は、(b)において用意された基材が、15~92g/L(0.25~1.5g/インチ)の範囲内、好ましくは31~76g/L(0.5~1.25g/インチ)の範囲内、より好ましくは55~67g/L(0.9~1.1g/インチ)の範囲内のアンダーコート充填量を有する、前記方法に関する。
【0187】
実施形態(75)または(76)を具体化するさらに好ましい実施形態(77)は、工程(b)によって、白金族金属が、DOCのアンダーコート中に意図的に存在しない、前記方法に関する。
【0188】
実施形態(75)から(77)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(78)は、工程(b)によって、DOCのアンダーコートが、アンダーコートの総乾燥質量に対して算出して、0.1質量%未満の白金族金属、好ましくは0.01質量%未満の白金族金属を含有する、前記方法に関する。
【0189】
実施形態(75)から(78)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(79)は、工程(b)によって、層が、DOCのアンダーコートと基材との間にない、前記方法に関する。
【0190】
実施形態(75)から(79)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(80)は、工程(c)において、入口通路の内壁が、入口コーティングが入口端部から入口コーティング端部に延びてそれにより入口コーティング長が規定されるようにコーティングされ、入口コーティング長が、DOCの基材の基材軸長の%としてのxであり、5~80の範囲内、好ましくは10~70の範囲内、より好ましくは15~60の範囲内、より好ましくは20~60の範囲内、より好ましくは25~55の範囲内、より好ましくは30~50の範囲内、より好ましくは35~45の範囲内にある、前記方法に関する。
【0191】
実施形態(81)によれば、本発明は、実施形態1から67のいずれか1つに記載の排ガス処理システムを製造する方法であって、
(a’)パラジウム;ジルコニウムおよびアルミナのうちの1種または複数を含む酸化物材料ならびに水を含むスラリーを製造する工程と、
(b’)(a’)において得られたスラリーを基材上に配置して、スラリー処理済み基材を得る工程と、
(c’)任意に、(b’)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、配置されたコーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(d’)MFC触媒を得るための、好ましくは実施形態1から67のいずれか1つに記載の排ガス処理システム中に含まれる(iv)によるMFCを得るための、(b’)において得られたスラリー処理済み基材、好ましくは(c’)において得られたスラリー処理済み乾燥済み基材を焼成する工程と
を含むプロセスによる多機能触媒(MFC)を製造する工程を含む、
方法に関する。
【0192】
実施形態(81)を具体化する好ましい実施形態(82)は、(a’)が、
(a’.1)パラジウム前駆体の水溶液、好ましくは硝酸パラジウム水溶液を、ジルコニウムおよびアルミナのうちの1種または複数を含む酸化物材料と混合して、酸化物材料上に担持されたパラジウムを得る工程と、
(a’.2)(a’.1)において得られた酸化物材料上に担持されたパラジウムを焼成する工程と、
(a’.3)(a’.2)において得られた酸化物材料上に担持された焼成済みパラジウムを、配置型アジュバント、好ましくは酒石酸およびモノエタノールアミンのうちの1種または複数、より好ましくは酒石酸およびモノエタノールアミンと混合する工程と
を含む、前記方法に関する。
【0193】
実施形態(82)を具体化するさらに好ましい実施形態(83)は、(a’)が、
(a’.4)(a’.3)で得られた混合物を、参照例1によって決定して、1~20マイクロメートルの範囲内、好ましくは5~15マイクロメートルの範囲内、より好ましくは9~11マイクロメートルの範囲内の粒径Dv90へとミリングする工程
をさらに含む、前記方法に関する。
【0194】
実施形態(82)または(83)を具体化するさらに好ましい実施形態(84)は、(a’.1)によって、パラジウム前駆体の水溶液、好ましくは硝酸パラジウム水溶液が、酸化物材料に滴下添加される、前記方法に関する。
【0195】
実施形態(82)から(84)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(85)は、(a’.2)によって、酸化物材料上に担持されているパラジウムが、490~690℃の範囲内、好ましくは540~640℃の範囲内、より好ましくは570~610℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で焼成される、前記方法に関する。
【0196】
実施形態(82)から(85)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(86)は、(a’.2)によって、酸化物材料上に担持されたパラジウムが、2~6時間の範囲内、好ましくは3~5時間の範囲内の間、気体雰囲気中で焼成される、前記方法に関する。
【0197】
実施形態(81)から(86)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(87)は、スラリーを、(b’)における基材(該基材は基材長を有する)上に配置する工程が、スラリーを、基材長の20~100%の上に、好ましくは50~100%の上に、より好ましくは75~100%の上に、より好ましくは95~100%の上に、より好ましくは99~100%の上に配置することを含む、前記方法に関する。
【0198】
実施形態(81)から(87)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(88)は、(c’)によって、スラリー処理済み基材が、90~200℃の範囲内、好ましくは110~180℃の範囲内、より好ましくは120~160℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で乾燥され、より好ましくは、スラリー処理済み基材が、5~300分の範囲内、より好ましくは10~120分の範囲内、より好ましくは20~60分の範囲内の間、気体雰囲気中で乾燥される、前記方法に関する。
【0199】
実施形態(81)から(88)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(89)は、(c’)によって、スラリー処理済み基材が、90~200℃の範囲内、好ましくは100~150℃の範囲内、より好ましくは110~130℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で、好ましくは5~300分の範囲内、より好ましくは5~60分の範囲内、より好ましくは7~20分の範囲内の間乾燥され、かつ90~200℃の範囲内、好ましくは140~180℃の範囲内、より好ましくは150~170℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中、好ましくは5~300分の範囲内、より好ましくは10~80分の範囲内、より好ましくは20~40分の範囲内の間さらに乾燥される、前記方法に関する。
【0200】
実施形態(81)から(89)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(90)は、(d’)によって、(b’)において得られたスラリー処理済み基材、好ましくは(c’)において得られたスラリー処理済み乾燥済み基材が、300~600℃の範囲内、好ましくは400~500℃の範囲内、より好ましくは425~475℃の範囲内の温度を有する気体雰囲気中で焼成される、前記方法に関する。
【0201】
実施形態(81)から(90)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(91)は、(d’)によって、(b’)において得られたスラリー処理済み基材、好ましくは(c’)において得られたスラリー処理済み乾燥済み基材が、5~120分の範囲内、好ましくは10~90分の範囲内、より好ましくは15~50分の範囲内、より好ましくは20~40分の範囲内の間、気体雰囲気中で焼成される、前記方法に関する。
【0202】
実施形態(81)から(91)のいずれか1つを具体化するさらに好ましい実施形態(92)は、
(a’)パラジウム;ジルコニウムおよびアルミナのうちの1種または複数を含む酸化物材料ならびに水を含むスラリーを製造する工程と、
(b’)(a’)において得られたスラリーを基材上に配置して、スラリー処理済み基材を得る工程と、
(c’)(b’)において得られたスラリー処理済み基材を乾燥させて、コーティングが上に配置されている基材を得る工程と、
(d’)(c’)において得られたスラリー処理済み乾燥済み基材を焼成して、MFC触媒、好ましくは実施形態1から67のいずれか1つに記載の排ガス処理システム中に含まれた(iv)によるMFCを得る工程と
からなる、前記方法に関する。
【0203】
実施形態(93)によれば、本発明は、実施形態69から80のいずれか1つに記載のディーゼル酸化触媒(DOC)を製造する工程、および実施形態81から92のいずれか1つに記載の多機能触媒(MFC)を製造する工程を含む、実施形態1から67のいずれか1つに記載の排ガス処理システムを製造する方法に関する。
【0204】
実験のセクション
[参照例1]
DV90値の決定
粒径分布を、Sympatec HELOS機器を用いた静的光散乱法により決定し、サンプルの光学的濃度は5~10%の範囲内とした。
【0205】
[参照例2]
本発明によるゾーン化DOCの製造
ゾーン化DOCを、WO2014/151677 A1の実施例3に記載されている手順に基づいて製造した。具体的には、10.5×4’’、400/4(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ10.16cm(4インチ)の円筒形の基材、1平方センチメートル当たり400/(2.54)個のセルおよび0.1ミリメートル(4mil)壁厚を有する)のハニカム基材を、アンダーコートでコーティングし、続いて入口端部から1.5’’延びる第1のトップウォッシュコートでコーティングし、そのようにして入口ゾーンを形成し、前記第1のトップウォッシュコートは、Pt:Pd質量比1:1.6において55g/フィートのPtとPdとの総充填量を提示した。次いで、アウトレットゾーンをそのように形成する、出口端部から2.5’’延びる第2のトップウォッシュコートを形成し、前記第2のトップウォッシュコートは、Pt:Pd質量比3:1において5g/フィートのPtとPdとの総充填量を提示した。ゾーン化DOCは、このように、Pt:Pd質量比0.76:1において23.75g/フィートのPtとPdとの総充填量を提示した。
【0206】
[参照例3]
SCR触媒の製造
Cuを含むフレームワーク構造体CHA型を有するゼオライト材料を、米国特許第8293199 B2号の実施例2(15列、26~52行を参照されたい)の教示に従って製造した。次いで、Cu-CHAを含有するスラリーを製造し、未コーティングのハニカムコーディエライトモノリス基材(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ15.24cm(6インチ)の円筒形基材、1平方センチメートル当たり300個のセルおよび5mil壁厚を有する)の全長にわたって配置した。その後、コーティング済み基材を120℃にて10分間、かつ160℃にて30分間、乾燥させ、次いで450℃にて30分間焼成した。焼成後のウォッシュコート充填量は128.15g/l(2.1g/インチ)であった。
【0207】
[参照例4]
MFCの製造
酸化ジルコニウム(0.420ml/gの細孔容積を有する)へ、硝酸パラジウム溶液を添加する。590℃における焼成後、最終Pd/ジルコニアは、ZrOの質量に対して、3.5質量%のPd含有量を有していた。この材料を水に添加し、得られたスラリーを、参照例1に記載しているように、得られたDv90が10ミクロンになるまでミリングした。参照例2により製造したCu-CHAの水性スラリー(CuOとして算出して、Cuのうちの約3質量%、およびモル比SiO:Al比、約32を有する)へ、ジルコニル-アセテート溶液を添加して、焼成後の5質量%のZrOを達成した。この混合物を噴霧乾燥し、得られたDv90が5ミクロンになるまでミリングした。ミリング済みPd/ZrOスラリーを、Zr/Cu-CHAスラリーに添加し、混合した。次いで、最終スラリーを、未コーティングのハニカムフロースルーコーディエライトモノリス基材の全長(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ7.62cm(3インチ)の円筒形の基材、1平方センチメートル当たり400/(2.54)個のセルおよび0.1ミリメートル(4mil)壁厚を有する)にわたって配置した。その後、基材を乾燥させ、焼成した。触媒中の焼成後のコーティングの充填量は、約3.0g/インチであり、30.51g/l(0.5g/インチ)のZrO上の0.53g/l(15g/フィート)のPd、および144.02g/l(2.36g/インチ)のCu-CHAプラス7.32g/l(0.12g/インチ)のZrOの充填量を含む。
【0208】
[参照例5]
唯一のPGMとしてPtを含有するDOCの製造
第1のスラリーは、Al9000gを、希釈したHNO水溶液と混合して製造する。酢酸、水およびZr(OH)(3600g)の第2のスラリーを、別のタンク中で混合する。次いで、第2のスラリーを、酢酸ジルコニウム溶液(30%)900gとの組合せにおいて、アルミナを含む第1のスラリーに添加する。次いで、得られた第3のスラリーをミリングして、参照例1によって測定して10ミクロンのDv90を達成する。平行して、第4のスラリーを製造し、TiO18000gをPt溶液で湿潤含浸して、所望のPt充填量を達成し、酢酸および水を添加して、最終TiOスラリーを得る。次いで、第3のZr/Alスラリー、オクタノール、および第4のスラリーを含むTiO/Ptを互いに添加し、混合して、4.5のpHを有する最終スラリーを得る。次いで、得られた最終スラリーを、62g/Lの充填量で、コーディエライト基材の全長(直径26.67cm(10.5インチ)×長さ7.62cm(3インチ)の円筒形の基材、1平方センチメートル当たり400/(2.54)個のセルおよび0.1ミリメートル(4mil)壁厚を有する)にわたってコーティングし、120℃にて乾燥させ、次いで450℃にて焼成する。Pt-DOCの充填量は、0.354g/L(21.625g/インチ)であることを標的とした。
【0209】
[実施例1]
近位連結Pt/Pd DOCおよびMFCを備えた排ガス処理システムの製造
本発明による排ガス処理システムを、参照例2のDOCと参照例4のMFCとを合わせて製造し、MFCはDOCの下流に位置付けた。
【0210】
[実施例2]
DOCとMFCとの間に位置するアンモニアインジェクタを有する近位連結Pt DOCおよびMFCを備えた排ガス処理システムの製造
本発明による排ガス処理システムを、参照例5のDOCと参照例4のMFCとを合わせて製造し、MFCは、DOCの下流に位置付けた。アンモニアインジェクタを、DOCの下流およびMFCの上流に位置付け、DOCまたはMFCとアンモニアインジェクタとの間に、介在する触媒は存在させなかった。
【0211】
[比較例1]
近位連結DOCおよびSCR触媒を備えた排ガス処理システムの製造
排ガス処理システムを、参照例2のDOCと参照例3のSCR触媒とを合わせて製造し、SCR触媒は、DOCの下流に位置付けた。
【0212】
[比較例2]
DOCおよびMFCから上流に位置するアンモニアインジェクタを備えた近位連結Pt DOCおよびMFCを備えた排ガス処理システムの製造
排ガス処理システムを、参照例5のDOCと参照例4のMFCとを合わせて製造し、MFCは、DOCの下流に位置付けた。アンモニアインジェクタを、DOCとMFCとの両方の上流に位置付け、DOCまたはMFCの間に、介在する触媒は存在させなかった。
【0213】
[実施例3]
炭化水素スリップ試験
実施例1および比較例2の排ガス処理システムを、炭化水素を近位連結DOCの排ガス上流中に噴射するときに、それらの熱挙動の点で、および排ガス処理システムからの炭化水素スリップの点で試験した。
【0214】
全ての触媒システムを、500kg/時間の排気質量流量速度にて、かつ270℃の標的DOC入口温度にて、安定状態条件下で試験した。HC噴射事象の間の標的出口温度(MFC/Cu-SCR)は500℃とした。該試験は、エンジン試験セルベンチ中で行い、7.2L排気量のエンジンを利用した。
【0215】
図1および図2の結果から受け取れるように、試験の間の酸化触媒の炭化水素上流の噴射は、酸化触媒上のその燃焼へと初期に至らせ、その結果として、炭化水素スリップをほとんど観察しなかった。図3および図4から受け取れるように、前記初期フェーズの間、酸化触媒中で加熱されて次いでそれぞれの下流触媒中に入る排ガスの温度は徐々に上昇した。続くDOCライトアウトフェーズの間、酸化触媒を出る排ガスの温度は徐々に低下し(図3および図4を参照されたい)、その結果として、DOCからの炭化水素スリップにおける対応する鋭い増加を観察している(図1および図2を参照されたい)。
【0216】
しかしながら、本発明の排ガス処理システムからの炭化水素スリップが、DOCライトアウトフェーズの間にわずかに増加するだけであり(図1を参照されたい)、その一方で、同じ状況において、比較例の排ガス処理システムからの炭化水素スリップにおける鋭いスパイクを観察していること(図2を参照されたい)が、図1から明らかである。同時に、本発明による排ガス処理システムの多機能触媒中の温度が、依然としてライトアウトフェーズの間に継続的に上がることが図3から明らかであり、その一方で、比較例による排ガス処理システムにおけるライトアウトフェーズの間の温度上昇が、本発明のシステムと比べて最小のみであることが図4から受け取れる。
【0217】
そのため、図1および図2に提示した結果の分析は、入ってくる総炭化水素のうちの81%が、DOCライトアウトフェーズの間に、本発明のシステムの多機能触媒にわたって変換され、入ってくる総炭化水素のうちの36%のみが、本発明によらない排ガスシステムのSCR触媒にわたって変換されることを示している。したがって、本発明のシステムの多機能触媒が、ライトアウトフェーズの間に近位連結DOCから出てくる炭化水素スリップを変換することができ、その一方でSCR触媒にわたる変換がMFC変換の半分未満であることが、驚くべきことに見出された。
【0218】
[実施例4]
DeNOx触媒試験
実施例2および比較例2を、DeNOx試験条件下で評価して、アンモニアインジェクタの至適なプレースメントを評価し、その結果を、前記試験の間に観察したNO形成に沿って図5に示す。結果を、1100kg/hの排気質量流量速度、および290℃のMFC入口温度にて、200ppmのNOを有する安定状態条件下で得る。アンモニアを、比較例2においてDOCの前に、または実施例2においてDOCの後に、のいずれかで、提供したNOの1.05モル当量において噴射した。
【0219】
図5の結果から受け取れるように、尿素ドーザーがPt-DOCの上面にあるとき、DOCにわたって暴露されているNH(すなわち還元体)は、完全に酸化され、還元体がMFCに入るように残されていないことに帰着し、そのため、NHの非選択的酸化に起因して、0%のDeNOxではあるが高いNOが作製される。尿素ドーザーがDOCの下流へ動く場合、DeNOxは73%に達し、その一方でNOはごくわずかである。
【0220】
DeNOx試験もまた、実施例1および比較例1について行った。触媒システムを、330℃と370℃との両方のSCR/MFC入口温度にて安定状態条件下で試験し、SCRレベルが220ppm(330℃にて)、NOxレベルが712ppm(370℃にて)であった。SVは140k/時間とし、一方で、アンモニアのNOxに対する比(ANR)は、両方の試験ポイントについて1であった。試験はエンジン試験セルベンチ中で行い、7.2L排気量のエンジンを利用した。
【0221】
図6の結果から受け取れるように、これらは、実施例1の本発明のシステムにおけるMFC中にPdが存在するにもかかわらず、DeNOxの性能が、SCR触媒を備えた比較例1の比較のシステムの性能に匹敵することを明示している。より詳細には、SCRシステムでは330℃にて、MFCシステムでは370℃にて、比較例1のシステムについて51/97%のNOx低減、実施例1の本発明のシステムについて44/93%のNOx低減を観察した。したがって、実施例3に示すように、DOCのMFC下流を有する本発明のシステムは、DOCのSCR下流を有するシステムと比較して、炭化水素スリップが実質的に低減したことを驚くべきことに明示しており、本実施例において明示しているように、該システムは、それにもかかわらず、SCRを含有するシステムのDeNOx性能に匹敵するDeNOx性能を提示している。
【図面の簡単な説明】
【0222】
図1】本発明(実施例1)による排気システムについて実施例3で行った触媒試験からの結果を示すグラフである。秒での実験の時間を横座標に沿ってプロットし、ppmでの総炭化水素スリップを縦座標に沿ってプロットし、MFCに入る総炭化水素濃度を黒色で示し、MFCを出る総炭化水素濃度を濃灰色で示す。
図2】本発明(比較例1)による排気システムについて実施例3で行った触媒試験からの結果を示しグラフである。秒での実験の時間を横座標に沿ってプロットし、ppmでの総炭化水素スリップを縦座標に沿ってプロットし、SCR触媒に入る総炭化水素濃度を黒色で示し、SCR触媒を出る総炭化水素濃度を濃灰色で示す。
図3】本発明(実施例1)による排気システムにおいて実施例3で行った触媒試験からの結果を示すグラフである。秒での実験の時間を横座標に沿ってプロットし、℃での排ガスの温度を縦座標に沿ってプロットし、MFCに入る排ガスの温度を黒色で示し、MFCを出る排ガスの温度を濃灰色で示す。
図4】本発明(比較例1)による排気システムにおいて実施例3で行った触媒試験からの結果を示すグラフである。秒での実験の時間を横座標に沿ってプロットし、℃での排ガスの温度を縦座標に沿ってプロットし、SCR触媒に入る排ガスの温度を黒色で示し、SCR触媒を出る排ガスの温度を濃灰色で示す。
図5】本発明(実施例2)による、かつ比較例(比較例2)による、排気システムにおいて実施例4で行った触媒試験からの結果を示すヒストグラムである。ヒストグラム中、本発明のシステムについての結果を、黒一色(%でのNOx変換率)および黒色ストライプ(グラムでのNO生成量)で示し、比較システムについての結果を、灰一色(%でのNOx変換率)および灰色ストライプ(グラムでのNOの生成量)で示す。
図6】本発明(実施例1)による、かつ比較例(比較例1)による、排気システムにおいて実施例4で行った比較試験からの結果を示すヒストグラムである。ヒストグラム中、本発明のシステムでは330℃にて、比較のシステムでは370℃にて、%でのNOx変換率を提示し、本発明のシステムについての結果を灰色で示し、比較のシステムについての結果を黒色で示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】