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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】水性酸洗い組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/36 20060101AFI20230705BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230705BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20230705BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230705BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230705BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20230705BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20230705BHJP
   C23G 1/08 20060101ALI20230705BHJP
   C23G 1/12 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C11D7/36
C09D5/02
C09D5/44 A
C09D7/61
C09D133/00
C09D163/00
C11D7/22
C23G1/08
C23G1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576452
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2021064968
(87)【国際公開番号】W WO2021249880
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20179332.0
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517284496
【氏名又は名称】ケメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】モール,アンナ,フェレナ
(72)【発明者】
【氏名】ジクス,マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ケールファラー,ナウェル,ソーアド
【テーマコード(参考)】
4H003
4J038
4K053
【Fターム(参考)】
4H003DA09
4H003DC02
4H003EB33
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA15
4H003FA28
4J038CG001
4J038DB001
4J038KA05
4J038KA08
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA03
4J038PA04
4J038PC02
4K053PA02
4K053PA08
4K053PA10
4K053PA12
4K053QA03
4K053RA51
(57)【要約】
本発明は、55℃で5~9の範囲のpH値を有し、式(I)
【化1】
(式中、残基Rは互いに独立してCH-PO(OR’’)であり、残基R’は互いに独立して2~4個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、残基R’’は互いに独立してH、Na、K、Li又はNHであり、そしてnは0~4の整数である)の少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体を含有する水性組成物に関するものであり、少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体はnの値が異なる。本発明はさらに、そのような組成物を製造するための濃縮物、その組成物を用いた金属基材を酸洗いするための酸洗い方法、酸洗い方法を含む金属基材をコーティングするためのコーティング方法及び金属基材を酸洗いするための該組成物の使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
55℃で5~9の範囲のpH値を有し、式(I)
【化1】
(式中、
残基Rは、互いに独立して、CH-PO(OR’’)であり、
残基R’は、互いに独立して、2~4個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、
残基R’’は、互いに独立して、H、Na、K、Li又はNHであり、そして
nは、0~4の整数である)
で表される少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体を含有する水性組成物であって、
前記少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体はnの値が異なり、且つ
前記組成物中に含有される式(I)で表されるあらゆるアミノ有機ホスホン酸誘導体の量は、前記組成物の総質量に基づいて且つ遊離酸として計算して、1.0~8.0質量%の範囲である、水性組成物。
【請求項2】
R’が、2個又は3個の炭素原子を有するアルキレンであり、R’’がH、K及びNaから選択され、そしてnが0~3の整数である、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
R’がCHCHであり、R’’がH、K及びNaから選択され、そしてnが0、1又は2である、請求項2に記載の水性組成物。
【請求項4】
6.0~8.0のpH値を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項5】
同じnの値を有する式(I)で表されるあらゆるアミノ有機ホスホン酸誘導体の量が、前記組成物の総質量に基づいて且つ遊離酸として計算して、0.5~4.0質量%の範囲である、請求項1から4のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記組成物中に含有される式(I)で表されるあらゆるアミノ有機ホスホン酸誘導体の量が、前記組成物の総質量に基づいて且つ遊離酸として計算して、1.5~6.0質量%の範囲である、請求項1から5のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項7】
特定のnの値を有する式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体の合計と、別の特定のnの値を有する式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体の合計との質量比が、2つの異なるnの値の任意の組み合わせについて、好ましくは1:4~4:1の範囲であり、この質量比は、式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体の遊離酸形態のために求められるものである、請求項1から6のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項8】
ビニルアセテート-ビニルピロリドンランダムコポリマーを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項9】
式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体とは異なるさらなる成分の総量が、さらなる成分及び式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体からなる成分の合わせた量の50質量%未満である、請求項1から8のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項10】
金属基材と、請求項1から9のいずれか1項に記載の水性組成物とを接触させる少なくとも1つの工程を含む、金属基材を酸洗いする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の金属基材を酸洗いする方法であって、以下の工程、
(i) 前記金属基材と洗浄組成物とを接触させる工程、
(i)工程から続く任意の工程である、(ii) 前記金属基材を第1のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(ii)工程から続く任意の工程である、(iii) 前記金属基材を第2のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(iii)工程から続く工程である、(iv) 前記金属基材と請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物とを接触させる工程、
(iv)工程から続く工程である、(v) 前記金属基材を第3のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(v)工程から続く任意の工程である、(vi) 前記金属基材を第4のすすぎ組成物ですすぐ工程、及び
(vi)工程から続く任意の工程である、(vii) 前記金属基材を第5のすすぎ組成物ですすぐ工程
を含む方法。
【請求項12】
前記金属基材が、鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム及びその合金からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の金属基材を酸洗いする方法。
【請求項13】
(a)請求項10から12のいずれか1項に記載の金属基材を酸洗いする方法、
(a)の方法から続く工程である、(b)このように酸洗いした金属基材を化成コーティング組成物でコーティングする工程、
(b)工程から続く任意の工程である、(c)電着コーティング組成物を適用する工程、及び
(c)工程から続く任意の工程である、(d)1つ以上のさらなるコーティング組成物(複数可)を適用する1つ以上の工程
を少なくとも含む、金属基材をコーティングする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の金属基材をコーティングする方法であって、工程(b)で使用される前記化成コーティング組成物が、
i. 亜鉛イオンとマンガンイオン及びニッケルイオンの少なくとも1つとを含有するリン酸塩化成コーティング組成物、
ii. 少なくとも1つの有機シラン及び/又はその加水分解生成物及び/又はその縮合生成物を含有する有機シランベースの化成コーティング組成物、及び
iii. ジルコニウム化合物、チタン化合物及びハフニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する不動態化化成コーティング組成物
からなる群から選択され、
リン酸塩化成コーティング組成物を使用する場合、工程(a)で得られた酸洗いした金属基材と、リン酸亜鉛結晶及び/又はリン酸チタン結晶を含む活性化組成物とを接触させた後に、工程(b)を行い、そして
リン酸塩化成コーティング組成物を使用する場合、工程(b)で得られた化成コーティングした金属基材と、ジルコニウム化合物、チタン化合物及びハフニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含む不動態化組成物とを接触させる、方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の金属基材をコーティングする方法であって、工程(c)で使用する前記電着コーティング組成物が、アノード及びカソード電着コーティング組成物からなる群から選択され、そしてカソード電着コーティング組成物を使用する場合、前記カソード電着コーティング組成物が、エポキシ型電着コーティング組成物及びポリ(メタ)アクリレート型電着コーティング組成物を含有する群から選択され、そして工程(c)の後、前記電着コーティング層を乾燥及び硬化させる、方法。
【請求項16】
工程(d)で使用する前記さらなるコーティング組成物が、フィラー組成物、ベースコート組成物及びクリアコートコーティング組成物から選択される、請求項13から15のいずれか1項に記載の金属基材をコーティングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材を酸洗いする方法における、さび及びスケールを除去するための、水性で中性の酸洗い組成物、及びその組成物を製造するための濃縮物に関するものである。本発明はさらに、その方法、及び金属表面を酸洗いするために組成物を使用する方法に関する。さらに、本発明は、特に防食を改善するために、金属基材をコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属基材の熱処理後に酸化物層及び他の残留物を除去しないと、典型的には、後続する化成コーティング(conversion coating)工程で問題が生じ、その結果、後続するコーティング層、特にカソード電着コーティングによって得られるコーティング層の付着性が低下し、これにより防食が低下する。
【0003】
従って、一般的に、及び特に自動車産業では、かなり極端なpH値を有する水性洗浄及び酸洗い溶液が、化成コーティングの前に使用される。強酸性酸洗い溶液に典型的に関連する問題は、表面のすすぎ後に、膜さび形成の傾向があることである。さらに、強酸性又は高アルカリ性の組成物を使用する場合は、労働安全性及び輸送上の安全性に対するより厳しい要求に従わなければならない。その上、このような酸洗い組成物は、酸洗い対象の金属基材及び装置に対してより攻撃性がある。
【0004】
このような問題を克服するため、鉄ベース及び非鉄ベースの金属及び合金に好適であり、そして浸漬法、流し法(フラッド法(flooding method))及びスプレー法で適用できる、流体性で中性のさび及びスケール除去組成物の開発が増加している。これら組成物は、熱ばり取り、レーザー切断及び溶接操作の後に発生する酸化物層を、金属基材から除去するのに好適である。このような中性の酸洗い組成物は、鉱酸ベースの酸洗い組成物又は強アルカリ性組成物と比較すると、多くの利点を有する。強酸及び塩基とは逆に、その取り扱いははるかに簡易であり、且つ1つのプロセス工程で表面の洗浄及び酸洗いが可能であることが多い。従って、追加的な洗浄工程を省略できることが多い。
【0005】
特に、ホスホン酸、例えば1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸又はアミノホスホン酸をベースとする中性の組成物は、本質的に中性の環境においても錯化剤であることが知られているので、上記の目的に使用される。ここで使用される「中性」という用語は、pH値が55℃で約5~約9である水性組成物を指し、それ故、弱酸性だけでなく、弱アルカリ性の水性組成物も包含する。
【0006】
一方で、異なる金属組成の金属表面を洗浄及び酸洗いする場合には、ホスホネートは典型的には第1の選択肢ではない。これは、異なる組成の金属基材を同じ洗浄及び酸洗い組成物で順次又は同時に洗浄し酸洗いする際に、特に鋼及び亜鉛めっき鋼などの異なる金属組成物のあらかじめ組み立てられた金属構成部品を酸洗いする場合に、特に役割を果たす。なぜなら、ホスホネートベースの洗浄及び酸洗い溶液は、異なる基材に対して酸洗い質量損失のバランスを欠くことが多く、そして金属又は合金の種類に応じて、洗浄及び酸洗い対象の表面に対する有効性が著しく異なるからである。
【0007】
WO2013/156396A1は、プロテアーゼ含有洗剤又は洗浄剤のプロテアーゼ感受性の汚れに関する洗浄性能の改善に関するものである。これらの洗浄剤は、活性又はプロテアーゼに依存する。WO2013/156396A1は、プロテアーゼ含有洗剤の洗浄性能が、負に帯電したポリマーが含有されている場合に改善を示すことが既知であることを開示している。しかし、界面活性剤を多く含有する洗剤では、負に帯電したポリマーとの組み合わせが問題となる。それに伴う問題を克服するために、特定のホスホネートが加えられた。ホスホネート混合物を使用できるとも述べられている。しかしながら、具体的な組み合わせは述べられていない。さらに、WO2013/156396A1の実施例1で開示されている洗剤濃縮物は比較的少量の水を含有するが、この洗剤は使用形態で99.8質量%を超える水を含有する。これら組成物のpH値は最適化されておらず、且つこれら組成物は、金属基材から金属酸化物を除去するようにも作られていない。これら組成物の目的が布をきれいにすることであり、金属表面の酸洗いではないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2013/156396A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
その結果、異なる基材に使用された際に、改善された、特にバランスのとれた酸洗い挙動を提供し、そしてその後の化成コーティングプロセスに悪影響を及ぼさない、改善された水性で中性の組成物が、引き続き要求されている。特に、後続するコーティング層、例えば電着コーティング層、フィラー、ベースコート及び/又はクリアコート層の付着性を悪化させてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この要求は、55℃で5~9の範囲のpH値を有し、式(I)
【化1】
(式中、
残基Rは、互いに独立して、CH-PO(OR’’)であり、
残基R’は、互いに独立して、2~4個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、
残基R’’は、互いに独立して、H、Na、K、Li又はNHであり、そして
nは、0~4の整数である)
で表される少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体を含有する水性組成物を提供することによって満たされ、
そして、少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体は、nの値が異なる。
【0011】
以下で、このような組成物を「本発明による組成物」又は「本発明による酸洗い組成物」と呼ぶ。
【0012】
本発明はさらに、本発明による組成物の成分をより高濃度で含有する濃縮物を提供するものであり、これによって、必要とされる場所において、水及び任意に有機溶媒を含む希釈剤で希釈し、且つ必要な場合はその後pH値を調整することにより、本発明による組成物を調製できる。
【0013】
本発明はさらに、金属基材と本発明による組成物とを接触させる少なくとも1つの工程を含む、金属基材を酸洗いする方法を提供する。
【0014】
以下で、この方法を「本発明による酸洗い方法」と呼ぶ。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、少なくとも
(a)本発明による酸洗い方法、
(a)の方法から続く工程である、(b)このように酸洗いした金属基材を化成コーティング組成物でコーティングする工程、
(b)工程から続く任意の工程である、(c)電着コーティング組成物を適用する工程、及び
(c)工程から続く任意の工程である、(d)1つ以上のさらなるコーティング組成物(複数可)を適用する1つ以上の工程
を含む、金属基材をコーティングする方法である。
【0016】
以下で、この方法を「本発明によるコーティング方法」と呼ぶ。
【0017】
本発明のさらなる目的は、本発明による組成物を金属基材の酸洗いに使用する方法である。
【0018】
以下で、この使用方法を「発明による使用方法」と呼ぶ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による組成物
本発明による組成物は水性組成物であるので、主成分は水である。好ましくは、水の含有量は、組成物の総質量に基づいて、70質量%~99質量%の範囲、より好ましくは80質量%~98質量%、さらにより好ましくは90質量%~97.5質量%及び最も好ましくは95~97.5質量%である。
【0020】
本発明による組成物は、好ましくは水と混和する又は水に溶解する1つ以上の有機溶媒を少量含有してもよい。好ましくは、その量は、本発明による組成物の総質量に基づいて10質量%以下、より好ましくは5質量%未満、及びさらにより好ましくは3質量%未満又は1質量%未満である。最も好ましくは、本発明による組成物中に使用される唯一の溶媒は、水である。
【0021】
本発明による組成物は、好ましくは水溶液又は水性分散体であり、最も好ましくは水溶液である。
【0022】
式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体
本発明の発明者は、驚くべきことに、非アミノ有機ホスホン酸の使用及び式(I)で表される有機ホスホン酸誘導体の1種類のみを酸洗い組成物において使用するのとは異なり、式(I)
【化2】
(式中、
残基Rは、互いに独立して、CH-PO(OR’’)であり、
残基R’は、互いに独立して、2~4個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、
残基R’’は、互いに独立して、H、Na、K、Li又はNHであり、そして
nは、0~4の整数である)
で表される少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体の混合物
(そして、その少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体は、nの値が異なる)
を、本発明による酸洗い組成物中に使用することが、非常に有利であるのを発見した。
【0023】
本発明による組成物は、一般に、異なる金属基材の酸洗いに使用する際に、よりバランスのとれた酸洗いを提供する。酸洗いの広がりは、酸洗い質量損失の決定により、異なる基材間で比較することができる。酸洗い質量損失は、酸洗いプロセスにおけるg/m単位の材料の損失である。この量は、低すぎ(酸洗いが不十分であることを示す)ても、高すぎ(表面処理が過酷すぎることで、基材表面の損傷のリスクを増大させ、不均一な表面をもたらすので、後続するコーティング層の付着の低下を引き起こすことを示す)てもならない。
【0024】
十分な酸洗い質量損失は、好ましくは約0.5g/mから始まり、そして好ましくは約2.5g/mを超えてはならないが、所望の用途に応じてこの範囲からの例外が許容される場合がある。バランスの取れた酸洗いは、典型的には、同じ酸洗い組成物で酸洗いした異なる金属基材を比較したときに、酸洗い質量損失差(Δpwl)が、好ましくは約0.6g/mより小さく、さらにより好ましくは0.4g/mより小さく、及び最も好ましくは0.3又は0.2g/mより小さい。酸洗い質量損失、特に前述の値及び(Δpwl)は、本出願の実験部分に記載のように決定される。上記の酸洗い質量損失値及びΔpwl値は、好ましくはCRS(冷間圧延鋼)及びHDG(溶融亜鉛めっき鋼)及び両者の比較に適用される。しかしながら、本発明による酸洗い組成物は、他の基材にも好適である。
【0025】
式(I)で表される有機ホスホン酸誘導体が、本発明による組成物に使用することができ、単独で使用すると許容できない高い酸洗い質量損失を引き起こす一方で、式(I)で表される少なくとも1つのさらなる有機ホスホン酸誘導体との混合物中に使用すると、よりバランスのとれた酸洗いが得られることは、特に驚くべきことであった。
【0026】
本発明による組成物に含まれるアミノ有機ホスホン酸誘導体は、式(I)
【化3】
(式中、
残基Rは、互いに独立して、CH-PO(OR’’)であり、
残基R’は、互いに独立して、2~4個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、
残基R’’は、互いに独立して、H、Na、K、Li又はNHであり、そして
nは、0~4の整数である)
で表されるものである。
【0027】
55℃で5~9の範囲のpH値を有する本発明による水性組成物を提供するために、遊離酸の残基CH-PO(OH)に存在する酸性水素原子の少なくとも一部を中和し(遊離酸を使用する場合)、このようにしてアミノ有機ホスホン酸のアルカリ塩又はアンモニウム塩を形成することが必要となる場合がある。これは好ましくはin situで、すなわちKOH、NaOH、LiOH及び/又はNHOHを用いた、特に好ましくはこれら塩基の水溶液を用いたpH調整によって、既に水性の組成物中で行われる。しかしながら、あらかじめ塩を調製し、塩を水性媒体に溶解させることも可能である。最も好ましくは、R’’は、H、K及びNaから独立して選択される。
【0028】
式(I)において、R’が2個又は3個の炭素原子を有するアルキレンであることがさらに好ましく、最も好ましくは、R’はCHCHである。
【0029】
さらに、nは、好ましくは0~3の整数であり、さらにより好ましくはn=0、1又は2であり、そして最も好ましくは0又は1である。後者の場合、少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体のうちの1つでは、n=0であり、一方でもう1つではn=1である。
【0030】
R、R’、R’’及びnのあらゆる定義は、独立して組み合わせることができる一方で、特に好ましくは、互いに独立した残基RがCH-PO(OR’’)であり、互いに独立した残基R’が2個又は3個の炭素原子を有するアルキレン残基であり、互いに独立した残基R’’がH、Na又はKであり、そしてnが0~3の整数である。
【0031】
最も好ましくは、互いに独立した残基RはCH-PO(OR’’)であり、残基R’はCHCHであり、互いに独立した残基R’’はH、Na又はKであり、そしてnは0、1又は2であり、さらにより好ましくはn=0又は1である。
【0032】
特に好ましいアミノホスホン酸及びその塩の例として、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(すなわち、R=CH-PO(OH)、R’=CHCH及びn=0)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(すなわち、R=CH-PO(OH)、R’=CHCH及びn=1)及びジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(すなわち、R=CH-PO(OH)、R’=CHCH及びn=2)及びLi、K、Na及びそれらのアンモニウム塩が挙げられる。これらの例示したアミノホスホン酸の塩のうち、ナトリウム塩及び/又はカリウム塩が好ましい。
【0033】
一般的に、式(I)で表される異なるアミノホスホン酸誘導体を使用する際、nの異なる値の差が2以下、より良いのは1以下の場合に、特にバランスのとれた酸洗いが観察されることが見出された。よって式(I)で表される異なる2つのアミノホスホン酸誘導体のみを用いる場合、Δn=1又は2、好ましくはΔn=1であることが好ましい。
【0034】
pH値
本発明による水性組成物は、pH値(55℃で決定)を5~9の範囲、好ましくは5.5~8.5、より好ましくは6.0~8.0、及び最も好ましくは6.5~7.5に有する。
【0035】
アミノ有機ホスホン酸誘導体の量
本発明による組成物は、式(I)で表される、nの値が異なる、少なくとも2つのアミノ有機ホスホン酸誘導体を含有する必要がある。換言すれば、少なくとも2つのアミノ有機ホスホン酸誘導体は、上記の定義の意味において、nの値が異なる場合にのみ、異なるとみなされる。nが2つのアミノ有機ホスホン酸塩について同じであり、そして両方のうちの一方がナトリウム塩で他方がカリウム塩である場合、上記の定義の要件が満たされない。nの値が同じでありながら残基R’が異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体についても同じことが言える。「アミノ有機ホスホン酸誘導体」における「誘導体」という用語には、遊離酸(すなわち、R’’=H)も含まれる。
【0036】
同じnの値を有する式(I)で表されるあらゆるアミノ有機ホスホン酸誘導体の量は、好ましくは、本発明による組成物の総質量に基づいて且つ遊離酸(すなわち、R=CH-PO(OH))として計算して、0.5~4.0質量%の範囲、より好ましくは1.0~3.0質量%、及び最も好ましくは1.2~2.5質量%である。
【0037】
本明細書全体の文脈で使用されるあらゆる質量%の範囲は、それぞれの成分(複数可)の最も広い定義に適用されるだけでなく、その成分(複数可)の任意のさらなる好ましい実施形態にも適用される。
【0038】
本発明による組成物中に含有される式(I)で表されるあらゆるアミノ有機ホスホン酸誘導体の量は、好ましくは、本発明の組成物の総質量に基づいて且つ遊離酸(すなわちR=CH-PO(OH))として計算して、1.0~8.0質量%の範囲、より好ましくは1.5~6.0質量%、及びさらにより好ましくは2.0~5.0質量%、例えば2.2~4.0質量%である。
【0039】
アミノ有機ホスホン酸誘導体の質量比
同じnの値を有する式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体の合計と、nの値が異なるが同一値の郡内に有する式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体の合計との質量比は、2つの異なるnの値の任意の組み合わせについて、好ましくは1:4~4:1の範囲、より好ましくは1:3~3:1、さらにより好ましくは1:2~2:1である。質量比は、式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体の遊離酸形態のために求められるものである。
【0040】
換言すれば、第1の化合物及び第2の化合物のみが存在し、第1の化合物は特定のnの値を有し、そして第2の化合物は別の特定のnの値を有する場合、上記の質量比に従うべきである。さらに第3の化合物が存在する場合、第1の化合物と第3の化合物の比、及び第2の化合物と第3の化合物の比も、上記の質量比に従うべきである。
【0041】
さらなる成分
本発明の組成物は、さらなる成分、例えば添加剤なども含有してよく、このような成分は、式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体とは必然的に異なる。さらなる成分は、水及び有機溶媒とも異なる。
【0042】
このような添加物は、存在する場合、典型的には、本発明の組成物が提供する酸洗い効果を妨げないが、さらなる特性、例えば強化された貯蔵可能期間(例えば防腐剤の添加により得られる)、又は統合された洗浄又は脱脂効果(例えば界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤の添加により得られる)を付与する。
【0043】
しかし、本発明による組成物に少量のビニルアセテート-ビニルピロリドンランダムコポリマーを使用して、酸洗い剤の量を変えずに酸洗いの程度を微調整できるのは、驚くべきことであった。ここで使用される「コポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるモノマー、好ましくは2つの異なるモノマー又は3つの異なるモノマー(ターポリマー)から構成されるポリマーを指す。このようなビニルアセテート-ビニルピロリドンランダムコポリマーは、好ましくは、ビニルアセテートとビニルピロリドンのモル比が30:70~70:30、より好ましくは30:70~60:40、及びさらにより好ましくは30:70~50:50、例えば40:60である。典型的には、これらのコポリマーはフリーラジカル重合によって調製される。モノマーは重合可能な基を1つしか持たないので、コポリマーは線状コポリマーである。好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で決定したコポリマーの質量平均分子量Mは、15,000~100,000の範囲、より好ましくは20,000~90,000、さらにより好ましくは30,000~80,000、例えば50,000~70,000g/モルである。GPCは、DIN55672-3:2016-03に準拠して行うことができる。コポリマーの多分散性M/Mは、好ましくは3~7の範囲、より好ましくは4~6である。
【0044】
コポリマーの使用も可能であるが、そのコポリマーと前述のビニルアセテート-ビニルピロリドンコポリマーとの違いは、ビニルアセテートとビニルピロリドンを合わせた量の好ましくは0~10モル%、より好ましくは1~8モル%、及び最も好ましくは1~5モル%が、ビニルモノマー、アクリレートモノマー及びメタクリレートモノマーから選択される第3のモノエチレン性不飽和モノマーで置き換えられるということのみである。上記の質量平均分子量の範囲は、これらのコポリマーにも適用される。
【0045】
好ましくは、本発明による組成物は、負に帯電した、すなわちアニオン性ポリマー、例えばポリマー又はポリカルボキシレートを含有するポリ(メタ)アクリル酸及び/又はマレイン酸の塩を含有しない。
【0046】
家庭用洗浄組成物、例えば洗剤、特に洗濯洗剤とは異なり、本発明による組成物は、プロテアーゼを含有せず、好ましくは酵素を全く含有しない。なぜなら、酸洗い作用は、酵素的切断反応、例えばタンパク質ベースの汚れ及び/又は汚染の切断とは明らかに異なるからである。
【0047】
好ましくは、式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体とは異なるさらなる成分の総量は、さらなる成分及び式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体からなる成分の合わせた量の50質量%未満、より好ましくは40質量%未満、さらにより好ましくは30質量%未満又は20質量%未満、例えば10質量%未満である。
【0048】
好ましくは、本発明による組成物は、式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体以外の他の酸洗い剤又は金属イオンキレート剤を含有しない。
【0049】
本発明による濃縮物
本発明はさらに、水及び/又は有機溶媒、式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体及び本発明による組成物の任意のさらなる成分から構成される液体媒体を含む濃縮物に関する。式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体と、任意に含有されるさらなる成分の量の合計は、好ましくは、濃縮物の総質量の10質量%~90質量%の範囲、より好ましくは20質量%~90質量%、さらにより好ましくは30質量%~90質量%又は40質量%~90質量%、及び最も好ましくは50質量%~90質量%である(濃縮物の総質量に基づく)。
【0050】
本発明による濃縮物は、好ましくはプロテアーゼを含有せず、そして好ましくは酵素を含まない。
【0051】
濃縮物により、本発明による組成物の調製は、これが必要となる場所で、水及び任意に有機溶媒を含む希釈剤で希釈し、そして必要な場合は、これに続きpH値を55℃で5~9の範囲、好ましくは5.5~8.5、より好ましくは6.0~8.0、及び最も好ましくは6.5~7.5に調整することによって、可能となる。濃縮物は、好ましくは水性濃縮物である。
【0052】
好ましくは、希釈比は1:1(濃縮物の体積:希釈剤の体積)~1:50、より好ましくは1:2~1:10、及び最も好ましくは1:3~1:5である。
【0053】
このような濃縮物を使用すると、大きな貯蔵能力の必要性が減り、使用場所への輸送が容易になる。
【0054】
本発明による酸洗い方法
本発明による酸洗い方法には、金属基材と本発明による組成物とを接触させる少なくとも1つの工程が含まれる。
【0055】
金属基材
ここで使用される「金属基材」という用語には、任意の形状の基材、例えば単純なパネル又はコイルのような平坦な金属基材が含まれるが、自動車の車体又はその部品のような複雑な形状の金属基材も含まれる。ここで使用される「金属」という用語は、純金属及び金属合金を含む。金属及び合金の特に好ましい例は、冷間圧延鋼、亜鉛めっき鋼、例えば溶融亜鉛めっき鋼又は電解亜鉛めっき鋼、アルミニウム及びその合金である。特に好ましい基材は、冷間圧延鋼及び亜鉛めっき鋼、例えば溶融亜鉛めっき鋼である。さらに、「基材」という用語は、事前に組み立てられた金属部品も含み、その金属部品は同じ金属又は合金のものであるか、又は金属部品は少なくとも2つの異なる金属又は合金のものである(方法のマルチメタル機能)。
【0056】
金属基材と本発明による組成物との接触
金属基材と本発明による組成物とを接触させる工程は、好ましくは、以下の工程
(a) 金属基材を本発明による組成物に浸漬する工程、
(b) 金属基材に本発明による組成物を流す工程、及び
(c) 金属基材に本発明による組成物をスプレーする工程
から選択される工程である。
【0057】
金属基材に接触させている間に、組成物を例えば撹拌などによって撹拌することができる。
【0058】
金属基材は、好ましくは、本発明による組成物と1~15分の範囲の期間、より3~12分の範囲の期間、及び最も好ましくは5~10分の範囲の期間、接触させる。
【0059】
本発明による組成物の温度は、金属基材に接触させる工程の間、好ましくは20~70℃の範囲、より好ましくは30~65℃、及び最も好ましくは40~60℃、例えば50~60℃である。
【0060】
本発明による組成物の温度を上記の範囲で維持し、接触中に基材の接触面積を最適化することを考慮すると、金属基材を浸漬によって本発明による組成物と接触させることが最も好ましい。
【0061】
本発明による酸洗い方法の任意のさらなる工程
本発明による酸洗い方法は、金属基材と本発明による組成物とを接触させる少なくとも1つの工程の前に、1つ以上の工程を含むことができる。
【0062】
以下に記載する任意のさらなる工程は、本発明による酸洗い方法において可能な唯一の任意の工程では必ずしもないことを強調する。特に、任意のさらなる洗浄、すすぎ及び/又は乾燥の工程は、所望される場合、好ましい任意の工程に加えて実施してもよい。
【0063】
特に、酸洗い方法は、金属基材と本発明による組成物とを接触させる少なくとも1つの工程(iv)の前に、少なくとも1つの洗浄工程(i)、好ましくはこれに続く少なくとも1つのすすぎ工程(ii)、さらにより好ましくはこれに続く2つのすすぎ工程(ii)及び(iii)を含んでよい。
【0064】
従って、本発明による好ましい酸洗い方法は、
(i) 金属基材と洗浄組成物とを接触させる工程、
(i)工程から続く任意の工程である、(ii) 金属基材を第1のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(ii)工程から続く任意の工程である、(iii) 金属基材を第2のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(iii)工程から続く工程である、(iv) 金属基材と本発明による組成物とを接触させる工程
を含む。
【0065】
金属基材と洗浄組成物とを接触させる工程(i)は、本発明の組成物の代わりに洗浄組成物を使用すること以外は、金属基材と本発明の組成物とを接触させる工程と同様に行うことができる。最も好ましくは、スプレー洗浄及び/又は浸漬洗浄である。工程(i)で使用される洗浄組成物の温度は、好ましくは20~70℃の範囲、より好ましくは30~65℃、及び最も好ましくは40~60℃、例えば45~60℃である。金属基材と洗浄組成物との接触時間は、好ましくは0.5分~15分の範囲、より好ましくは1分~10分、最も好ましくは3分~5分である。
【0066】
洗浄組成物は、好ましくは、8~12の範囲、より好ましくは9~11、例えば10~11のアルカリ性pH値を有し、そして好ましくは、腐食剤、ホスホネート、界面活性剤及び錯化剤の少なくとも1つを含有する。
【0067】
好適な洗浄剤は、例えば、Chemetall GmbH社(フランクフルト、ドイツ)から商品名Gardoclean(登録商標)で市販されている。
【0068】
すすぎ工程(ii)及び(iii)は、好ましくは、それぞれのすすぎ組成物をスプレー又は浸漬適用、好ましくは浸漬適用することにより行う。すすぎ組成物は、典型的には水、又は前の処理工程の希釈された成分を含有する水(浸漬適用が選択された場合に、前の浴からの不可避の残分(drag over)によるもの)である。
【0069】
第1のすすぎ組成物は、好ましくはpH値を9~12の範囲で有し、これは前の洗浄組成物からの残分によるものであり、そして好ましくは、洗浄組成物のあらゆる成分を含有するが、水で希釈されている。
【0070】
第2のすすぎ組成物は、好ましくはpH値を8~11の範囲で有し、これは第1のすすぎ組成物からの残分によるものであり、そして好ましくは、第1のすすぎ組成物のあらゆる成分を含有するが、水で希釈されている。
【0071】
すすぎ工程は、特に実験室規模の実験では、水のみで行うこともできる。
【0072】
上記の工程(i)~(iv)の一連は、本発明によるコーティング方法の工程(a)の好ましい実施形態でもある。
【0073】
本発明による酸洗い方法は、金属基材と本発明による組成物とを接触させる少なくとも1つの工程(iv)の後に続く1つ以上の工程、すなわち1つ以上のすすぎ工程(v)~(vii)を含むこともできる。
【0074】
従って、本発明による好ましい酸洗い方法は、
(iv) 金属基材と本発明による組成物とを接触させる工程、
(iv)工程から続く工程である、(v) 金属基材を第3のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(v)工程から続く任意の工程である、(vi) 金属基材を第4のすすぎ組成物ですすぐ工程、及び
(vi)工程から続く任意の工程である、(vii) 金属基材を第5のすすぎ組成物ですすぐ工程
も含んでよい。
【0075】
すすぎ工程(v)、(vi)及び(vii)は、好ましくは、それぞれのすすぎ組成物のスプレー又は浸漬適用によって行う。すすぎ組成物は、単に水で構成されたものとすることができるが、典型的には、それぞれの前の工程からの残分による、それぞれの前の工程からの水で希釈された組成物である。本発明による酸洗い方法を連続的に行う場合、すすぎ工程(v)~(vii)を行うことが特に好ましい。このような場合、鉄を含有する金属基材を酸洗いしたときは、酸洗い組成物に鉄化合物が蓄積する。このような鉄化合物は、それぞれのすすぎ工程(複数可)で洗い流すことができる。
【0076】
上記の工程(iv)~(vii)の一連は、本発明によるコーティング方法の工程(a)の好ましい実施形態でもある。
【0077】
このような鉄化合物を溶液中に保持するためには、第3のすすぎ組成物が、好ましくは、酸性pH値を1~3の範囲で有し、そして好ましくは、前の酸洗い組成物の成分をさらに含有するが、水で希釈されていることが好ましい。
【0078】
酸性すすぎ後のさび膜の形成を避けるために、第4のすすぎ組成物は、好ましくは、アルカリ性pH値を9~12の範囲で有し、そして好ましくは腐食剤及び錯化剤を含有する。酸洗い方法を連続プロセスとして行い、そしてこのプロセスを中断する及び/又は工程間の時間が長くなりすぎた場合、さび膜の形成が特に生じ得る。
【0079】
本発明による酸洗い方法に、特にリン酸塩化成コーティング工程が続く場合、第5のすすぎ組成物は、好ましくはpH値を9~10の範囲で有し、そして残分により第4のすすぎ組成物の成分を含有するが、水で希釈されていることが好ましい。
【0080】
典型的には、リン酸塩化成コーティング工程の前に活性化工程を行い、そしてこの化成コーティング工程の前に、すすぎ組成物のpH値が高すぎても低すぎても好ましくない。従って、第5のすすぎ溶液のpH値は、前述の弱アルカリ性又は中性の範囲であることが特に好ましい。工程(vii)で特に好ましいのは、水ですすぐことである。
【0081】
無論、本発明による酸洗い方法では、金属基材と本発明による組成物とを接触させる工程より前のあらゆる工程、及び金属基材と本発明による組成物とを接触させる工程より後の工程を、組み合わせて行うことができる。
【0082】
このような場合、本発明による酸洗い方法は、好ましくは、
(i) 金属基材と洗浄組成物とを接触させる工程、
(i)工程から続く任意の工程である、(ii) 金属基材を第1のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(ii)工程から続く任意の工程である、(iii) 金属基材を第2のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(iii)工程から続く工程である、(iv) 金属基材と本発明による組成物とを接触させる工程、
(iv)工程から続く工程である、(v) 金属基材を第3のすすぎ組成物ですすぐ工程、
(v)工程から続く任意の工程である、(vi) 金属基材を第4のすすぎ組成物ですすぐ工程、及び
(vi)工程から続く任意の工程である、(vii) 金属基材を第5のすすぎ組成物ですすぐ工程
を含む。
【0083】
洗浄組成物、すすぎ組成物及び本発明による組成物は、上記のように定義される。上記の工程(i)~(vii)の一連は、本発明によるコーティング方法の工程(a)の好ましい実施形態でもある。
【0084】
本発明によるコーティング方法
さらに、少なくとも以下の工程、
(a) 本発明による酸洗い方法、
(a)の方法から続く工程である、(b) このように処理した金属基材を、化成コーティング組成物でコーティングして化成コーティング層を得る工程、
(b)工程から続く任意の工程である、(c) 電着コーティング組成物を適用して電着コーティング層を得る工程、及び
(c)工程から続く任意の工程である、(d) 1つ以上のさらなるコーティング組成物(複数可)を適用して1つ以上のさらなるコーティング層(複数可)を得る1つ以上の工程
を含む、金属基材をコーティングする方法を提供する。
【0085】
上記の本発明によるコーティング方法の工程が、本発明によるコーティング方法において可能な唯一の工程では必ずしもないことを強調する。特に、所望される場合、任意のさらなるすすぎ、乾燥及び/又は硬化の工程(複数可)を、上記の工程に加えて実施してもよい。
【0086】
よって、少なくとも1つのすすぎ工程(b’’)が、工程(b)の後且つ工程(c)の前にあることが好ましい。工程(c)の後、少なくとも1つのすすぎ工程(c’)があり、これに硬化工程(c’’)が続くことも好ましい。
【0087】
好ましくは、本発明によるコーティング方法で得られたコーティングは、多層コーティングである。さらにより好ましくは、本発明によるコーティング方法で得られたコーティングは、化成コーティング層、電着コーティング層、及び好ましくは少なくとも1つのさらなるコーティング層を含むコーティングである。
【0088】
工程(a)
このように、本発明によるコーティング方法は、前処理工程として、少なくとも工程(a)、すなわち本発明による酸洗い方法、特に本発明による酸洗い方法の少なくとも工程(iv)を含む。
【0089】
より好ましくは、本発明によるコーティング方法に含まれる工程(a)は、本発明の酸洗い方法の工程(iv)、(v)、(vi)及び(vii)を含む。
【0090】
さらにより好ましくは、本発明のコーティング方法に含まれる工程(a)は、本発明による酸洗い方法の工程(i)~(vii)を含む。
【0091】
工程(b)
一般に、任意の既知の化成コーティング組成物を、本発明によるコーティング方法の工程(b)で使用することができる。
【0092】
本発明で使用される化成コーティング組成物は、好ましくは、酸性化成コーティング組成物である。
【0093】
好ましくは、本発明によるコーティング方法で使用される化成コーティング組成物は、
i. リン酸塩化成コーティング組成物、例えば、Ni含有及びNiフリーのリン酸亜鉛処理組成物及びトリカチオンリン酸塩処理組成物(そのリン酸塩化成コーティング組成物は、亜鉛イオンとマンガンイオン及びニッケルイオンの少なくとも1つとを含有する)、
ii. 少なくとも1つの有機シラン及び/又はその加水分解生成物及び/又はその縮合生成物を含有する有機シランベースの化成コーティング組成物、及び
iii. ジルコニウム化合物、チタン化合物及びハフニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する不動態化化成コーティング組成物
から選択される。
【0094】
リン酸塩化成工程、特にリン酸亜鉛処理工程又はトリカチオンリン酸塩処理工程を工程(b)として行う場合、工程(a)の後且つ工程(b)の前に、追加の活性化工程(a’)を実施することが好ましい。実施する場合、活性化工程(a’)は、工程(a)の後に続き、且つ工程(b)の前に、金属基材と活性化組成物とを接触させることによって実施する。接触は、好ましくは、金属基材と本発明による組成物との接触について記載したように、浸漬、流し又はスプレーによって行う。最も好ましいのは、浸漬適用による金属基材と活性化組成物との接触である。活性化組成物との接触工程の持続時間は、好ましくは5~300秒の範囲、より好ましくは10~200秒、及び最も好ましくは20~90秒、例えば30~60秒である。活性化組成物又は溶液は、例えば、Chemetall GmbH社(フランクフルト、ドイツ)から、商品名Gardolene(登録商標)V及びGardolene(登録商標)ZLで入手可能である。
【0095】
活性化工程を行う場合、そこで使用される活性化組成物は、好ましくは、リン酸塩化成層の堆積を容易にするリン酸亜鉛結晶及び/又はリン酸チタン結晶を含有する。
【0096】
リン酸塩化成工程、特にリン酸亜鉛処理工程又はトリカチオンリン酸塩処理工程を工程(b)として行う場合、工程(b)の後且つ工程(c)の前に、追加の不動態化工程(b’)を実施することが好ましい。不動態化組成物は、例えば、Chemetall GmbH社(フランクフルト、ドイツ)から商品名Gardolene(登録商標)Dで入手可能である。
【0097】
リン酸亜鉛処理組成物のうち、Ni含有組成物を用いてよい。しかしながら、環境上の理由から、Znイオン及びMnイオンを含有する、Niフリーのリン酸亜鉛処理化成コーティング組成物が好ましい。リン酸亜鉛処理化成コーティング組成物のさらなる変種は、Zn、Mn及びNiイオンを含有するいわゆるトリカチオンリン酸塩化成コーティング組成物である。リン酸塩化成コーティング組成物は、例えば、Chemetall GmbH社(フランクフルト、ドイツ)から商品名Gardobond(登録商標)で入手可能である。
【0098】
有機シランベースの化成コーティング組成物は、好ましくは、少なくとも1つの有機シランを含有する。用語「有機シラン」には、その加水分解生成物及び縮合生成物、及び任意にジルコニウム化合物、チタン化合物及びハフニウム化合物の群から選択される化合物が含まれる。このような組成物は、例えば、Chemetall GmbH社(フランクフルト、ドイツ)から商品名Oxsilan(登録商標)で、薄膜システムの製造用に入手可能である。
【0099】
不動態化化成コーティング組成物は、好ましくは、ジルコニウム化合物、チタン化合物及びハフニウム化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物、より好ましくはチタン、ジルコニウム及び/又はハフニウムのフルオロ錯体を含有する。このような化成コーティング組成物は、任意に、1つ以上の有機シランを含有し、用語「有機シラン」には、その加水分解生成物及び縮合生成物が含まれる。
【0100】
工程(c)
工程(c)では、電着コーティング組成物を、工程(b)で形成された化成コーティング層に適用する。電着コーティング組成物は水性コーティング組成物であり、浸漬コーティング、すなわち、酸洗いし、化成コーティングした金属基材を導電性の水性電着コーティング組成物に浸漬し、そして基材と対極の間に直接電圧を印加することによって適用される。
【0101】
電着コーティング組成物は、アノード又はカソード電着コーティング組成物、好ましくはカソード電着コーティング組成物である。
【0102】
カソード電着コーティング組成物は、好ましくは、エポキシ型及びポリ(メタ)アクリレート型電着コーティング組成物から選択される。これらはコーティング製造者の仕様に従って適用される。
【0103】
工程(c)の後、形成された電着コーティング層を、好ましくは、塗料製造者の仕様に従って、すすぎ(工程(c’))及び硬化(工程(c’’))させる。
【0104】
工程(d)又は複数の工程(d)
電着コーティング工程(c)に続いて、1つ以上のコーティング組成物をさらに適用することが好ましい。このようなさらなるコーティング組成物は、好ましくは、水ベースのコーティング組成物、溶媒系のコーティング組成物又はUV硬化性コーティング組成物から選択される。しかし、いわゆる粉末コーティング組成物を適用することもできる。
【0105】
特に好ましくは、フィラーコーティング組成物、ベースコート組成物及びクリアコート組成物の少なくとも1つを適用する。複数のコーティング層が適用される場合(すなわち、少なくとも2つのコーティング組成物)、ウェット・イン・ウェット適用を行うことが可能であり、そしてその後、コーティング層を同時に硬化させることができる。しかしながら、工程(d)(複数可)で使用される複数のコーティング組成物の少なくとも一部又はすべての適用の間に、乾燥工程及び/又は硬化工程を行うことも可能である。
【0106】
本発明による金属基材のコーティング方法は、付着性が良く、耐食性のあるコーティング、好ましくは多層コーティングを提供する。
【0107】
本発明による使用方法
本発明はさらに、金属基材の酸洗いのための、本発明による組成物の使用方法を提供するものであり、金属基材は上記の金属基材である。
【0108】
この組成物とその使用方法により、異なる金属基材に適用した場合に、バランスのとれた穏やかな、しかし十分に高い酸洗いがもたらされ、異なる金属基材を、又は所望の場合は、異なる金属基材を含むあらかじめ組み立てられた部品の形態で、同じ酸洗い組成物で順次酸洗いすることができる。
【0109】
以下で本発明について、実施例を挙げてさらに説明する。
【実施例
【0110】
試験手順
酸洗い質量損失の決定
CRS(冷間圧延鋼)及びHDG(溶融亜鉛めっき鋼)で作られた2つの試験パネルを、酸洗い溶液の1つで処理する前に、各場合とも計量した。
【0111】
酸洗い後、すべてのパネルを脱イオン水ですすぎ、乾燥させて計量した。酸洗い溶液を用いた処理により生じた質量損失(すなわち酸洗い質量損失)は、各場合とも材料の除去を表す。各場合とも、3つのパネルの平均を計算した。
【0112】
表面欠陥が生じて任意の後続のコーティング層の付着が不十分になる可能性があるので、酸洗い質量損失は、好ましくは、2.5g/mを超えてはならない。さらに、酸洗い質量損失は、好ましくは、0.5g/m未満であってはならない。なぜならそうでない場合、不十分な酸洗いの可能性があるからである。
【0113】
CRS及びHDGの酸洗い質量損失差が0.6g/m以下であり、そして両材料の酸洗い質量損失が0.5g/m~2.5g/mの範囲である場合、特定の酸洗い組成物についてバランスのとれた酸洗い質量損失が達成される。
【0114】
化成コーティング層質量の決定
酸洗いしたリン酸亜鉛処理金属基材の化成層の質量は、XRF分析によって決定し、g/mで表し、Pとして計算した。
【0115】
酸洗いしたリン酸亜鉛処理金属基材の場合、化成層の質量は、CRSで4.0g/mを超えず、そしてHDGで3.5g/mを超えない場合に、良好とみなした。
【0116】
酸洗いし、Oxsilan(登録商標)で処理した金属基材の化成層質量は、XRF分析によって決定し、mg/mで表し、Zrとして計算した。
【0117】
酸洗いし、Oxsilan(登録商標)9832で処理した金属基材の場合、化成層質量は、CRSで150g/mを超えず、そしてHDGで150g/mを超えない場合に、良好とみなした。そして、酸洗いし、Oxsilan(登録商標)9810/2で処理した金属基材の場合、化成層質量は、CRSで200g/mを超えず、そしてHDGで150g/mを超えない場合に、良好とみなした。
【0118】
クロスカット付着試験
酸洗いし、化成コーティングし且つ電着コーティングした金属基材を、DIN EN ISO2409に準拠したクロスカット付着試験に供した。
【0119】
剥離が観察されない場合、結果は「0」と評価し、完全な剥離は「5」と評価した。それ以外の剥離等級はすべて「0」と「5」の間であった。許容できる剥離は、「0」又は「1」と評価した。結果は、2つのパネルの平均結果である。
【0120】
電気化学的剥離試験
酸洗いし、化成コーティングし且つ電着コーティングした金属基材を、BMW社の現行のAA-0175規範に準拠した電気化学的剥離試験に供した。
【0121】
剥離はミリメートル[mm]で測定した。許容できる剥離は2mm未満である。結果は、2つのパネルの平均結果である。
【0122】
実施例の調製
金属基材の酸洗い
酸洗い質量損失決定のための酸洗い
CRS(冷間圧延鋼)及びHDG(溶融亜鉛めっき鋼)で作られた試験パネルを、Gardoclean(登録商標)S5411の水溶液(20g/L、pH値10.5)を用いて、55°Cの温度で3分間スプレー洗浄により、そして5分間浸漬洗浄により、洗浄した。その後、パネルを、前の組成物の残分の成分を含有する水ですすいだ(クリーナー浴)。
【0123】
2つのパネルを、各場合とも、本発明の酸洗い組成物I1又はI2の1つ、又は比較例の酸洗い組成物C1、C2又はC3の1つを含む浴に10分間浸した(表1参照)。組成物は、表1に示すように、化合物A、B又はCの水溶液(比較例)、又は化合物B及びC及び任意にDの本発明の混合物の水溶液であった。浴の温度は55°Cであった。パネルは250rpmの速度で回転させた。
【0124】
【表1】
【0125】
A: 1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸
B: R=CH-PO(OH)、R’=CHCH及びn=0である式(I)で表される化合物
C: R=CH-PO(OH)、R’=CHCH及びn=1である式(I)で表される化合物
D: ビニルアセテート-ビニルピロリドン(40:60)コポリマー(モル比)
【0126】
パネルを酸洗いした後、パネルを浴から取り出し、前の工程からのいくらかの残分を含有する水ですすいだ。このように酸洗いしたパネルを乾燥させ、そして上記の手順に従って酸洗い質量損失を決定するために使用した。
【0127】
コーティング工程を行う前の前処理としての酸洗い
CRS及びHDGでそれぞれ作られたさらなるパネルを、上記のように洗浄してすすぎ、その後、表2に示す酸洗い組成物の1つを含む浴に、それぞれ5分間及び10分間浸した。酸洗い組成物は、化合物BとC(I3)、及びBとE(I4)のそれぞれの量の混合物の本発明の水溶液であった。浴の温度は55°Cであった。浴液を250rpmの速度で撹拌した。
【0128】
【表2】
【0129】
B:R=CH-PO(OH)、R’=CHCH及びn=0である式(I)で表される化合物
C:R=CH-PO(OH)、R’=CHCH及びn=1である式(I)で表される化合物
E:R=CH-PO(OH)、R’=CHCH及びn=2である式(I)で表される化合物
【0130】
このように酸洗いしたパネルを、化成コーティングの前に最初に弱酸性の水ですすぎ、そして次に弱アルカリ性の水ですすぎ、このように酸洗いした金属基材を、化成コーティングを行う前に湿らせて使用した。
【0131】
酸洗いした金属基材の化成コーティング
酸洗いしたCRS及びHDGで作られた試験パネル(表2による酸洗い組成物で酸洗いした)を、各場合ともリン酸亜鉛ベースの化成コーティング組成物(Chemetall GmbH社、フランクフルト、ドイツから入手可能)か、又は2つの異なるシランベースの化成コーティング組成物(Oxsilan(登録商標)9832又はOxsilan(登録商標)9810/2、両方ともChemetall GmbH社、フランクフルト、ドイツから市販されている)の1つと接触させた。
【0132】
リン酸亜鉛処理化成コーティング
リン酸亜鉛化成コーティング組成物を用いたコーティング対象のパネルを、Gardolene(登録商標)V6559(Chemetall GmbH社、フランクフルト、ドイツから市販されている)を用いて、パネルをGardolene(登録商標)V6559の1g/L溶液に30~60秒間室温(約23℃)で浸漬することにより、活性化した。
【0133】
リン酸亜鉛処理は、活性化パネルをGardobond(登録商標)24T(Chemetall GmbH社、フランクフルト、ドイツから市販されている)に3分間55℃で浸漬コーティングすることにより行った。
【0134】
その後、リン酸亜鉛化成コーティング組成物でコーティングされたパネルを、Gardolene(登録商標)D6800/8(Chemetall GmbH社、フランクフルト、ドイツから市販されている)を用いて、パネルをGardolene(登録商標)D6800/8の2.1g/L溶液(pH4.3)に30秒間室温(約23℃)で浸漬することにより、不動態化した。
【0135】
シランベースの化成コーティング
シランベースの化成コーティング組成物を用いたコーティング対象のパネルは、化成コーティングの前の活性化も、化成コーティングの後の不動態化も行わなかった。
【0136】
化成コーティング層を生成するために、酸洗いしたパネルを、それぞれの化成コーティング組成物(Oxsilane(登録商標)9832又はOxsilane(登録商標)9810/2)を含む浴に3分間32℃の温度で浸漬した。
【0137】
化成コーティングの後且つ電着コーティングの前に、化成コーティングされた、酸洗いした金属基材を、脱イオン水ですすいだ。
【0138】
このように化成コーティングされたパネルを、上記のように化成層質量の決定に供した。
【0139】
化成コーティングし、酸洗いした金属基材の電着コーティング
化成コーティングし、酸洗いしたCRSパネルを、BASF Coatings GmbH社(Muenster-Hiltrup、ドイツ)から市販されているCathoGuard(登録商標)800電着コーティング組成物を用いた電着コーティングに供した。
【0140】
このように電着コーティングしたパネルをすすぎ、乾燥をオーブン中で175℃の温度で15分間行い、上記のクロスカット試験及び電気化学的剥離試験の前に、最終的には厚さが18~22μmであった。
【0141】
試験結果
下記の表3は、酸洗い損失決定の結果を示し、そして式(I)で表される少なくとも2つの異なるアミノ有機ホスホン酸誘導体の本発明の混合物が、穏やかであるが十分な酸洗いを示し、CRSとHDGの両方で、すべて0.8g/m~1.2g/mの範囲であり、そしてわずか0.1g/mと0.2g/mという酸洗い質量損失において優れたバランスを示すことが確認される。
【0142】
対照的に、1つの有機ホスホン酸(C1)又は式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体(C2)のみを含む酸洗い溶液を使用すると、どちらの場合でも、HDGに対して攻撃性のある酸洗いが、バランスの取れていない酸洗いを伴って示され、又はC3(1つの式(I)で表されるアミノ有機ホスホン酸誘導体のみ)の場合は、HDGに対する酸洗いが不十分であることがわかる。
【0143】
実施例I2では、ビニルアセテート-ビニルピロリドンコポリマーの添加が、Δpwlに影響を与えることなく、酸洗い質量損失をわずかに低い値に微調整する(いくつかの場合に所望される)のに好適であることが示される。
【0144】
【表3】
【0145】
以下の表4に示す結果は、5分間及び10分間それぞれ酸洗いしたCRS及びHDGパネルで得られた、Pとして計算したg/m単位のリン酸亜鉛化成層の質量を反映したものである。目標値は、好ましくは、CRSで4g/m未満、及びHDGで3.5g/m未満であり、これらはすべての場合において、酸洗いを5分間行ったときに観察されるものである。酸洗いを10分間行った場合、目標値をわずかに超えるので、組成物I4はやや好ましくなく、本発明による組成物では、Δn=2よりもΔn=1の方が好ましいことがわかる。
【0146】
【表4】
【0147】
以下の表5に示す結果は、5分間及び10分間それぞれ酸洗いしたCRS及びHDGパネルで得られた、Zrとして計算したg/m単位のOxsilane(登録商標)9832化成層の質量を反映したものである。目標値は、好ましくは、CRSで100g/m未満、及びHDGで150g/m未満であり、これらはすべての場合において、酸洗いを5分間及び10分間行ったときに観察されるものである。
【0148】
【表5】
【0149】
以下の表6に示す結果は、5分間及び10分間それぞれ酸洗いしたCRS及びHDGパネルで得られた、Zrとして計算したg/m単位のOxsilane(登録商標)9810/2化成層の質量を反映したものである。目標値は、好ましくは、CRSで200g/m未満、及びHDGで150g/m未満であり、これらはすべての場合において、酸洗いを5分間及び10分間行ったときに観察されるものである。
【0150】
【表6】
【0151】
表7は、5分間及び10分間それぞれ酸洗いし、Oxsilane(登録商標)9832及びOxsilane(登録商標)9810/2でそれぞれ化成コーティングし、その後CathoGuard(登録商標)800カソード電着コーティング層の適用、すすぎ、乾燥及び硬化したCRSパネルで得られた、クロスカット付着試験結果を示す。すべての実施例が示すように、いずれのサンプルにも付着不良は観察されなかった。
【0152】
【表7】
【0153】
表8は、CRS/Oxsilan(登録商標)9832でコーティングしたパネルの電気化学的剥離試験からの結果を示す。
【0154】
【表8】
【0155】
このように、表7及び表8は、本発明のとおり酸洗いした金属基材に適用されたコーティング層が、クロスカット付着試験だけでなく電気化学的剥離試験でも完全な付着性を有することを示している。良好な剥離値は、2.0mm未満の値である。どちらのサンプルも1mm未満の非常に良好な値を示した。
【国際調査報告】