(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】重合体アミノアクリレート(メタクリレート)
(51)【国際特許分類】
C08G 73/02 20060101AFI20230705BHJP
C08F 2/48 20060101ALI20230705BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C08G73/02
C08F2/48
C09D133/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577305
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021066073
(87)【国際公開番号】W WO2021259701
(87)【国際公開日】2021-12-30
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505365965
【氏名又は名称】オルネクス ベルギー エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カッペル、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴェール、リュック
【テーマコード(参考)】
4J011
4J038
4J043
【Fターム(参考)】
4J011QA13
4J011QB14
4J011QB20
4J011SA61
4J011SA64
4J011SA84
4J011TA03
4J011TA06
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J011WA05
4J038CG141
4J038GA09
4J043PA04
4J043QC02
4J043RA02
4J043SA05
4J043SB01
4J043TA35
4J043TB03
4J043XA08
4J043XB33
4J043ZB03
(57)【要約】
放射線硬化性組成物への使用に適した重合体アミノアクリレート(メタクリレート)であって、前記重合体アミノアクリレート(メタクリレート)が、2級アミン末端コポリマー(A)と多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)との反応生成物であり、前記2級アミン末端コポリマーが、2官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)と2反応性アミン(Aii)との反応生成物であり;かつ、多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)が2官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)とは異なり、多官能性アクリレート(メタクリレート)が2以上のアクリレート(メタクリレート)基を含む、重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性組成物に好適に用いられる重合体アミノアクリレート(メタクリレート)であって、
前記重合体アミノアクリレート(メタクリレート)が、2級アミン末端コポリマー(A)と多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)との反応生成物であり;
前記2級アミン末端コポリマーが、二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)と二反応性アミン(Aii)との反応生成物であり;および
前記多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)は、二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)とは異なり、多官能性アクリレート(メタクリレート)が2個以上のアクリレート(メタクリレート)基を含む、前記の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項2】
多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)と2級アミン末端コポリマー(A)のモル比が、2:1以上である、請求項1に記載の放射線硬化性組成物に好適な重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項3】
二反応性アミン(Aii)に対する二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)のモル比が、1未満、好ましくは0.5~0.9である、請求項1又は2に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項4】
多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)が、2個以上、好ましくは3個以上、最も好ましくは4個以上のアクリレート(メタクリレート)基を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項5】
前記二反応性アミン(Aii)が、2つの2級アミン基を含むアミン、または1つの1級アミン基を含むアミン、またはそれらの混合物から選ばれる、前記請求項のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項6】
二反応性アミン(Aii)が脂肪族1級アミン、好ましくはC2-C8脂肪族1級アミン、アミンアルコールまたはピペラジンである、請求項1に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項7】
二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)が、好ましくはアクリル酸と二官能性ポリオールとのエステルであり、二官能性ポリオールが、好ましくはブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリシクロデカンジオール、イソソルビドジオールである、前記請求項のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項8】
重合体アミノアクリレート(メタクリレート)が、2個以上、好ましくは3個以上、最も好ましくは4個以上のアクリレート(メタクリレート)基を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項9】
重合体アミノアクリレート(メタクリレート)が、少なくとも1meq/g、より好ましくは少なくとも1.2meq/gのアミン含有量を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項10】
重合体アミノアクリレート(メタクリレート)が、少なくとも1meq/g、より好ましくは少なくとも1.5meq/g、さらに好ましくは2meq/gの二重結合含有量を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)。
【請求項11】
下記の工程を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を調製する方法:
(i)分子当たり2つのアクリレート(メタクリレート)基を含む少なくとも1つのジアクリレート(ジメタクリレート)化合物(Ai)を、少なくとも1つの二反応性アミン(Aii)と反応させて、2級アミン末端コポリマー(A)を形成する工程;および
(ii)少なくとも2個のアクリル酸(メタクリル酸)エステル基を有し、かつジアクリル化(メタクリル化)化合物(Ai)とは異なる少なくとも1種の多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)を、前記2級アミン末端コポリマー(A)と反応させて、重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を得る工程。
【請求項12】
請求項1~10に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含む、放射線硬化性組成物。
【請求項13】
放射線硬化性コーティングまたは放射線硬化性インクである、請求項12に記載の放射線硬化性組成物。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の放射線硬化性組成物のオフセット印刷への使用。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の放射線硬化性組成物が塗布された基材。
【請求項16】
以下の工程を含む、物品または基材をコーティングする方法:
(a)請求項1~10のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含有する放射線硬化性組成物を提供すること、
(b)前記組成物を表面上に塗布すること、及び
(c)前記表面または物品に光放射線を照射すること。
【請求項17】
光放射源がUV LEDランプである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
以下の工程を含む、コーティングおよびインクにおける表面硬化を改善する方法。
(a)請求項1~10のいずれか1項に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含有する放射線硬化性組成物を提供すること、
(b)前記組成物を表面上に塗布すること、及び
(c)前記表面または物品に光放射線を照射すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性組成物に使用するための重合体アミノアクリレートに関するものである。本発明はまた、重合体アミノアクリレート(メタクリレート)の調製方法;重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含む放射線硬化性組成物;そのような放射線硬化性組成物で基材の物品をコーティングする方法、およびコーティング(剤)およびインクにおける重合体アミノアクリレート(メタクリレート)の使用に関するものである。重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、特に、リソグラフィーまたはオフセットインクの用途に適している。重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、放射線硬化性組成物におけるUV相乗剤として使用することができる。本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、標準的なUV光および/またはUV LED光を用いたコーティングまたはインクの硬化を改善するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
UV LEDランプは、従来の水銀アークランプと比較して、より安全でエネルギー効率が高く、環境に優しいため、グラフィックインク用途にますます多く使用されている。UV LEDランプは、実質的に紫外線スペクトルのUV-Aゾーンで単色光を放射する。
【0003】
酸素阻害は、フリーラジカル重合によって硬化するコーティングにとって古くからの問題である。分子状酸素は光重合開始剤/増感剤の三重項状態を物理的にクエンチするか、フリーラジカルまたは活性ラジカル中心をスカベンジして反応しない過酸化物ラジカルを発生させることができる。その結果、塗膜の物性が低下したり、塗膜の表面が未硬化で液状になったりと、さまざまな問題が発生する。この問題は、UV-LEDやUVA硬化のような低強度の硬化プロセスでさらに顕著になり、粘着性のある未硬化の表面が頻繁に発生するようになる。酸素阻害を低減し、表面硬化を向上させる物理的、化学的な方法が知られている。
【0004】
UV硬化性コーティングまたはインクの架橋は、光重合開始剤種(PI)の吸光度と良好な重なりがある場合にのみ有効である。この特定の波長帯で効率的に吸収するPIは、選択されたセットのみであり、それらはすべてコーティングの良好なスルーキュアーを目指している。
【0005】
しかし、使用時に酸素阻害の大きな問題があり、不完全な表面硬化につながることは、より顕著である。
【0006】
酸素阻害を緩和し、表面の反応性を高めるのに役立つアミン相乗剤を使用することが可能である。アミン相乗剤は、電子供与体として作用し得る窒素原子の存在によって誘発される相乗効果により、放射線硬化性組成物において古くから使用されている。アミン相乗剤は、脂肪族または芳香族であることができる。アミノ基は、ベンゾフェノンなどの光重合開始剤(PI)の存在下で、二分子的なプライミング機構に関与することにより、紫外線架橋を促進することが知られている。この同じ電子供与システムにより、窒素原子のα位に効率よく水素供与炭素を生成し、高速で伝播するラジカル種の生成に伴い表面硬化反応性を向上させる。さらに、放射線硬化型配合物の酸素捕捉剤としても作用する。
【0007】
現在市販されているアミノ相乗剤は、UV LED硬化における使用が制限されるという欠点がある。既存の材料は、例えば、食品包装における移行の問題や、オフセットインクの油水バランスを阻害する原因となる部分的な水溶性のために、インクでの使用にはあまり適していないことが証明されている。これは、典型的には脂肪族アミンの場合である。さらに、既知のアミノ相乗剤は、しばしば黄変を引き起こす。
【0008】
芳香族アミン相乗剤は、通常、低い水溶性を示し、オフセットインキ用途に適している。頻繁に使用される芳香族アミン相乗剤には、4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチル(EDB)、および4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル(EHA)などが含まれる。しかし,これらのアミノ安息香酸エステルは硬化塗膜中に移行性の種も存在する。さらに、これらの化合物の毒性プロファイルは、必ずしもポジティブなものではない。
【0009】
WO 2007/017298に記載されているように、アミノベンゾエート部位間にポリエーテル鎖を有する高分子芳香族アミン相乗剤は、移行性種を少なくすることができる。しかし、ポリエーテル鎖の導入は、硬化塗膜の物性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0010】
US 2010/0048756は、プラスチック基材への接着性を向上させるために、二官能性アクリレートモノマーと(二価)1級アミンの反応によるアミノアクリレートの調製と使用について述べている。典型的には、これらのタイプのアミノアクリレートは、硬化したコーティングまたはインクから移行する可能性のある低分子量のジアクリレート(ジメタクリレート)化合物を相当量含んでいる。
【0011】
EP1731541は、硬化組成物から移行する傾向が低減された化合物を製造するために、アクリル化(メタクリル化)エトキシル化/プロポキシル化ポリオールと1級及び/又は2級アミンとからアミノアクリレートを調製することを記載する。EP1731541は、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)およびトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)などの低分子量モノマーは、エネルギー硬化性組成物の10%(w/w)未満、より好ましくは5%(w/w)未満で使用すべきことを教示している。
【0012】
WO06131259は、エトキシル化および/またはプロポキシル化トリ-またはテトラアクリレートに基づくアミノアクリレートを含む低抽出性放射線硬化性組成物について記載している。記載されているアミノアクリレートのアミン含有量は比較的低く、そのため低エネルギー硬化用途での使用にはあまり適していない。
【発明の概要】
【0013】
したがって、上記の欠点の少なくとも一部または全部を克服する新規なアミノアクリレート(メタクリレート)に対する明確なニーズが存在する。
【0014】
詳細な説明
本発明者らは、請求項1に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を提供することにより、完全ではないにしても、少なくとも部分的に、上記の問題を克服する化合物を、驚くべきことに見出した。従って、本発明の第1の側面は、放射線硬化性組成物における使用に適した重合体アミノアクリレート(メタクリレート)に関するものであり、前記重合体アミノアクリレート(メタクリレート)が、2級アミン末端コポリマー(A)と多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)との反応生成物であり、さらに前記2級アミン末端コポリマーが、2官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)と2官能アミン(Aii)との反応生成物であり、多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)が2官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)と異なり、多官能性アクリレート(メタクリレート)が2以上の(メタ)アクリル基を含むものである。
【0015】
これらの重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含むインクは、UV、EBまたはLED光で硬化させたときに優れた反応性を提供し、標準のアミノベンゾエート(EDBまたはEHAなど)と同等のインク水バランスを提供し、標準のアミノアクリレートと比較して改善した顔料適合性のインクを提供するという驚くべきことが判明している。さらに、この重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含むインクは、低分子量の2官能性または単官能性アクリレート(メタクリレート)モノマーが少ないため、臭気が少なく、低移行性インクとして好適である。また、重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、オフセットインキにおいて、アミノベンゾエートの代替が可能である。さらに、この重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含むインキは、一定期間高温で保存しても大きな粘度上昇を示すことがない。
【0016】
本発明において、二反応性アミン(Aii)とは、反応性NH官能基を2つ有するアミンである。二反応性アミンは、2つの2級アミン基(-NH)、または1つの1級アミン基(-NH2)を有する。また、2級アミン末端コポリマーの製造には、1級アミン化合物と2級アミン基を2つ有する化合物を混合して使用することも可能である。
【0017】
本発明において、2官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)とは、2つのアクリレート(メタクリレート)基を含んでなる化合物を意味する。多官能性アクリレート(メタクリレート)Bとは、2つ以上のアクリレート(メタクリレート)基を含んでなる化合物を意味する。好ましくは、多官能性アクリレート(メタクリレート)は、3個以上、より好ましくは5、6、7、8、9又は10個のアクリレート(メタクリレート)基等の4個以上のアクリレート(メタクリレート)基を含むものである。
【0018】
本発明において、用語「アクリレート(メタクリレート)」は、アクリル化およびメタクリル化化合物または誘導体ならびにそれらの混合物の両方を包含するものと理解される。「アクリレート(メタクリレート)」とは、より具体的には、少なくとも1つのアクリレート基(CH2=CHCOO-)および/または少なくとも1つのメタクリレート基(CH2=CCH3COO-)を含む化合物のことを意味する。アクリレート基とメタクリレート基の両方が存在する場合、それらは同じ化合物上に存在することも、異なる化合物上に存在することも可能である。また、「アクリル酸(メタクリル酸)エステル基」と呼ばれることもあり、これはアクリル基、メタクリル基、または両者の混合物が存在することを意味する。
【0019】
第二の側面は、以下の工程を含む、上述の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を調製する方法に関する:
(i)分子当たり2つのアクリレート(メタクリレート)基を含む少なくとも1つのジアクリレート(ジメタクリレート)化合物(Ai)を少なくとも1つの二反応性アミン(Aii)と反応させて2級アミン末端コポリマー(A)を形成する工程;および
(ii)少なくとも2個のアクリル酸(メタクリル酸)エステル基を有し、かつジアクリル化(メタクリル化)化合物(Ai)とは異なる少なくとも1種の多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)を、2級アミン末端コポリマー(A)と反応させて重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を得る工程。
【0020】
本発明の第3の側面は、重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含むコーティング(剤)またはインクなどの放射線硬化性組成物に関するものである。
【0021】
本発明の第4の側面は、このような放射線硬化性組成物のオフセット印刷における使用に関するものである
【0022】
第5の側面は、このような放射線硬化性組成物で被覆された基材に関するものである。
【0023】
本発明の第6の側面は、以下の工程を含む、物品または基材をコーティングする方法に関する:
(a)上記に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含む放射線硬化性組成物を提供すること、
(b)前記組成物を表面上に塗布すること、
(c)表面または物品に光放射線を照射すること。
【0024】
別の側面は、以下の工程を含む、コーティングおよびインクにおける表面硬化を改善する方法に関するものである:
(a)上記に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含む放射線硬化性組成物を提供すること、
(b)前記組成物を表面上に塗布すること、
(c)表面または物品に光放射線を照射すること。
【0025】
本発明の上記態様による一実施形態では、多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)と2級アミン末端コポリマー(A)のモル比は、少なくとも2:1である。また、アクリレート(メタクリレート)化合物(B)とアミノコポリマー(A)とのモル比は、10:1以下が好ましく、より好ましくは6:1以下である。
【0026】
典型的には、単一種類の多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物(B)をアミン末端コポリマー(A)と反応させる。また、異なる種類の多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物の混合物を使用することも可能である。
【0027】
別の実施形態では、2級アミンコポリマーAを調製するために、アミン対アクリレート(メタクリレート)機能のモル過剰を使用し、二反応性アミン化合物(Aii)に対するジアクリレート(ジメタクリレート)化合物(Ai)の量は、二反応性アミン化合物(Aii)に対するジアクリレート(ジメタクリレート)化合物(Ai)のモル比が1未満であるような量にする。好ましくは、二反応性アミン化合物(Aii)に対するジアクリル化(メタクリル化)化合物(Ai)のモル比は、0.5~0.9、より好ましくは0.6~0.8とされる。
【0028】
二反応性アミン(Aii)及び/又は二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、2種類以上使用することが可能である。好ましくは、2級アミンコポリマーAの調製において、一種類の二反応性アミン(Aii)および/または一種類の二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)を使用することである。
【0029】
別の実施形態では、アミン末端コポリマー(A)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される重量平均分子量(Mw)は、少なくとも250ダルトン、より好ましくは少なくとも300ダルトン、さらに好ましくは少なくとも500ダルトンである。分子量は、多くても10,000ダルトン、より好ましくは多くても7,000ダルトン、さらに好ましくは多くても5,000ダルトン、最も好ましくは多くても2,500ダルトンである。
【0030】
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、典型的には、サンプルをTHFに溶解し、3×PLgel 5μm Mixed-D LS 300×7.5 mmカラムで、40℃において、ポリスチレン標準物質で校正したMW範囲162~377400g/molをGPCにより測定する。
【0031】
本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、高いアクリレート(メタクリレート)官能性を有する。重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、2つのアクリレート(メタクリレート)基を含み得る。好ましくは、重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、3個以上、より好ましくは4個以上、例えば、5、6、7、8、9又は10個のアクリレート(メタクリレート)基を含んでなる。
【0032】
重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を調製する工程は、(i)1分子当たり2つのアクリレート(メタクリレート)基を含む少なくとも1つのジアクリレート(ジメタクリレート)化合物(Ai)を少なくとも1つの二反応性アミン(Aii)と反応させて2級アミン末端コポリマー(A)を形成させる工程と、(ii)少なくとも2つのアクリル酸(メタクリル酸)エステル基を含み、ジアクリル化(メタクリル化)化合物(Ai)とは異なる、少なくとも1つの多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)を、2級アミン末端コポリマー(A)と反応させる工程とを含む。なお、(i)および(ii)の反応は、いわゆるマイケル付加反応である。
【0033】
一実施形態では、反応(i)および/または(ii)は、溶媒および/または触媒の非存在下で進行させることができる。典型的には、反応は、-30℃~+150℃の温度で実施することができ、好ましい温度は、25℃~100℃である。最も好ましくは、反応は30℃から80℃の間で行われる。
【0034】
反応(i)および/または(ii)は、好ましくは不活性ガス雰囲気中、例えば、窒素またはアルゴン下で行われる。しかし、これは反応を成功させるために必要ではない。
【0035】
一部の実施形態では、重合禁止剤は、反応(i)および/または(ii)の反応混合物に添加される。これは、マイケル付加反応中に望ましくない重合が起こらないことを助け得る。好適な重合禁止剤は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールなどの置換フェノール、メチルヒドロキノンなどのヒドロキノン、チオジグリコールまたはフェノチアジンなどのチオエーテルなどの既知の生成物を含む。また、反応中または反応後に他のポリマー安定剤を添加してもよい。典型的には、芳香族または脂肪族ホスファイトを使用することができる。
【0036】
本発明において、二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、「ジアクリレート(ジメタクリレート)、又は、1分子に2個のアクリル酸(メタクリル酸)エステル基を含むアクリレート(メタクリレート)」である。
【0037】
二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、典型的には、アクリル酸(メタクリル酸)エステル(Ai1)、ポリエステルアクリレート(メタクリレート)(Ai2)、エポキシアクリレート(メタクリレート)(Ai3)及び/又は(ポリ)ウレタンアクリレート(メタクリレート)(Ai4)から選択される。このような化合物は、当技術分野でよく知られている。
【0038】
アクリル酸(メタクリル酸)エステル(Ai1)は、アクリル酸(メタクリル酸)とジオールとのエステル、すなわち本質的に2つのヒドロキシル基を含有する化合物とのエステルである。好適なアクリル酸(メタクリル酸)エステル(Ai1)の例は、アクリル酸(メタクリル酸)と2つの官能性ポリオールとのエステルである。「アクリル酸(メタクリル酸)」は、アクリル酸、メタクリル酸または両者の混合物を意味する。特にアクリル酸は、本発明の文脈で使用される。「2官能性ポリオール」は、2つのヒドロキシル基を含む化合物を意味する。多くの場合、使用されるポリオールは脂肪族ポリオールである。シクロ脂肪族ポリオールも同様に使用することができる。適切な脂肪族2官能性ポリオールの例は、(i)二価アルコール、例えば(ポリ)プロピレングリコール(例えばプロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールのような);1,3-プロパンジオール。(ポリ)エチレングリコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールのような);ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール);2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD);2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール;1-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール;2-メチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ブチレングリコール。1,4-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;2-ブチル-2-エチル-1,3プロパンジオール(BEPD);ペンタンジオール;2-メチル-2-エチル-1,3プロパンジオール;1,3ペンタンジオール;2,2,4-トリメチル-1,3ペンタンジオール;ヘキシレングリコール;1,6ヘキサンジオール;1,8-オクタンジオール;1,12-ドデカンジオール。3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパノエート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート(HPHP);ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート)および/または2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(TMPD);およびこれらのラクトンまたはラクチド変性体およびこれらのエトキシル化体またはプロポキシル化体を挙げることができる。シクロ脂肪族ポリオールも好適であり、例えば、1,4-シクロヘキサンジオール、3,5-ジメチルシクロヘキサノール(シス/トランス混合物)、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン1,3ジオール、1、3-および1,4-シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、ノルボルナンジオール、ピナンジオール、デカリンジオール、ジオキサングリコール、イソソルビド及び水添ビスフェノールA、(ib)アラリーファティックポリオール(1,3-キシリレンジオール等)及び/又は(ic)2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンビスフェノールA等のアロマティックポリオールの中から選択することができる。好ましくは、ジオールは、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール);2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD);ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオールである。1-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール;トリシクロデカンジメタノール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ブチレングリコール;1,4-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(BEPD);ペンタンジオール。2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ペンタンジオール;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール;ヘキシレングリコール;1,6-ヘキサンジオール;1,8-オクタンジオール1,12-ドデカンジオール。3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパノエート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート(HPHP);ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバレート)および/または2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(TMPD);1,4-シクロヘキサンジエタノール、ノルボルダンジオールおよびまたはアイソソルビドである。最も好ましくは、ジオールはネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール);2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPD);1,4-ブタンジオール;ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;トリシクロデカンジタノールまたはイソソルビドアニオールとすることである。また、ジオールの混合物を使用することもできる。
【0039】
他の好適な二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、「ポリエステルアクリレート(メタクリレート)」(Ai2)である。ここでは、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレートまたは両者の混合物を意味する。ポリエステルアクリレート(メタクリレート)は、ヒドロキシル基含有ポリエステル(ポリエステルポリオール)を用いて調製される。これらは、ポリカルボン酸とポリオールとのエステル化により、周知の方法で調製することができる(例えば、P. J. Flory, J. Am.Chem.Soc. 58, 1877 (1936)およびJ. Am.Chem.Soc. 63, 3083 (1953)、あるいはポリオールとカプロラクトン、ラクチド等のラクトンとの開環反応により行うことができる。ポリオールはジオールであり、ポリカルボン酸はジカルボン酸化合物であるため、ポリエステルジアクリレート(ジメタクリレート)が得られる。好適な化合物は、例えばEBECRYL(登録商標)5849である。
【0040】
他の好適な二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、エポキシアクリレート(メタクリレート)(Ai3)である。この場合、エポキシ樹脂は、エポキシ官能性に対して化学量論的な量のアクリル酸(メタクリル酸)と反応される。この点では、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルが特に好適である。エポキシ樹脂はまた、1つ以上のヒドロキシル基を含んでもよい。アクリル酸および/またはメタクリル酸との反応により、さらなるヒドロキシル基が形成される。このような多価アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルは、「エポキシアクリレート(メタクリレート)」(Ai3)と称される。ここでは、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレートおよび両者の混合物を意味する。好適な化合物としては、例えばEBECRYL(登録商標)600、EBECRYL(登録商標)3708、EBECRYL(登録商標)3701およびEBECRYL(登録商標)860が挙げられる。
【0041】
他の好適な二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、(ポリ)ウレタンアクリレート(メタクリレート)(Ai4)である。これらは、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルまたはヒドロキシブチルアクリレート(メタクリレート)などのヒドロキシル含有(メタ)アクリルエステル、およびそのアルコキシル化、ラクトンまたはラクチド変性バージョンをイソシアナト含有モノまたはオリゴマーに付加させて(ポリ)ウレタンアクリレート(メタクリレート)(Ai4)を与えることにより形成される。なお、「(ポリ)ウレタン」とは、ウレタンとポリウレタンの両方、および両者の混合物を指す。好ましいのは、「ポリウレタンジアクリレート(ジメタクリレート)」である。「(ポリ)ウレタンアクリレート(メタクリレート)は、ポリウレタンジアクリレート、ポリウレタンジメタクリレート又はそれらの混合物であることができる。好ましいのは、脂肪族ポリウレタンアクリレート(メタクリレート)であり、より詳細には脂肪族ポリウレタンジアクリレート(ジメタクリレート)である。好適な化合物としては、EBECRYL(登録商標)8402、EBECRYL(登録商標)4858およびEBECRYL(登録商標)4859がある。
【0042】
本発明に用いられる二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマー化合物であることができる。典型的には、150~2.000、より典型的には200~2,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有する化合物(Ai)が使用される。典型的には、化合物(Ai)のMnは、多くても2.000、好ましくは多くても1.000、より好ましくは多くても500、最も好ましくは300ダルトン、そして好ましくは少なくとも150および200ダルトンである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、アクリル酸(メタクリル酸)エステル(Ai1)、および/またはポリエステルアクリレート(メタクリレート)(Ai2)から選択される。本発明の文脈で特に好ましいのは、ジアクリル酸(メタクリル酸)エステル(Ai1)である。
【0044】
二反応性アミン Aii
上記のような二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)を二反応性アミン化合物(Aii)と反応させ、2級アミン末端コポリマー(A)を形成させる。
【0045】
二反応性アミン(Aii)は、アクリレート(メタクリレート)化合物に対して2つの反応性NH官能基を含む任意のアミンであり得る。例えばアミノ化合物(Aii)は、1つ(正確に1つ)の1級アミノ基を含むAii-1アミノ化合物および/または2つ(正確に2つ)の2級アミノ基を含む(Aii-2)アミノ化合物から選択される。本発明で用いられるアミノ化合物(Aii)は、好ましくは分子量が500ダルトン以下、より好ましくは300ダルトン以下、さらに好ましくは200ダルトン以下である。本発明において、分子量は、通常、アミンの化学式から算出される。
【0046】
1つの1級アミノ基を含むアミノ化合物(Aii-1)の例は、式R1-NH2(I)に対応するものであり、ここでR1はアルキルを表し、このアルキルは、場合により、ヒドロキシ、アルコキシ、および/またはアリール基によって置換されている。化合物(Aii-1)は、例えば、以下の1つまたは複数から選択される:メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、n-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-メチルブチルアミン、n-ペンチルアミン、iso-ペンチルアミン。n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、イソノニルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、2-メチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、5-アミノペンタノール、3.5-アミノペンタノール、3-アミノ-1-プロパノール、iso-プロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、1-メトキシイソプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-アイソプロポキシプロピルアミン、3-(2-メトキシエトキシ)プロピルアミン、3-(2-エチルヘキシロキシ)プロピルアミン、フルフリルアミン、4-(2-アミノエチル)モルホリンおよびこれらの混合物などがあげられる。1つの1級アミン化合物の次に、1つ以上の3級アミノ基を含んでいてもよい。例としては、好適なN,N-ジアルキル-ジアミノアルカンおよびN,N-ジアルカノール-ジアミノアルカンは、N,N-ジアルキルジアミノプロパンおよび/またはN,N-ジアルカノールジアミノプロパン、例えばN,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン(DMAPA)、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエタノール-1,3-ジアミノプロパンN,N-ジ-n-プロピル-1,3-ジアミノプロパン、4-モルフォリンプロピルアミン、3-(N-ピペリジノ)プロピルアミンおよび/またはN,N-ジフェニル-1,3-ジアミノプロパンなどが挙げられる。
【0047】
使用することができる好適な二反応性アミン化合物(Aii-2)は、例えば以下の通りである。式R2HNR4-NHR3(II)に対応するものであり、ここでR2およびR3は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、三級アミンおよび/またはアリールによって場合により置換されたアルキルを表し、R2およびR3は環を形成するために連結することができるという但し書きがあり、R4は50までの炭素原子(通常20までの炭素原子)および1~20までのエーテルブリッジ(通常1~8までのエーテルブリッジ)および/または1~3までの三級アミンブリッジを含むことがあるアルキレンおよびアラルキレン鎖の群から選ばれるものである。本明細書で使用される用語「アルキレン」は、二価の直鎖、分枝または環状炭化水素ラジカルを指定することを意味する。本明細書で使用される場合、用語「アラルキレン」は、1つ以上の水素基がアリール基で置換されているアルキレンを指定することを意味する。好ましくは、R4は、エチレン、1,2-プロピレン、トリメチレン、ヘキサメチレン、2,2-ジメチロールプロピレン、1-メチルトリメチレン、1,2,3-トリメチルテトラメチレン、2-メチルペンタメチレン、2,2,4-(または2,4,4-)トリメチルヘキサメチレン、メタキシリレン、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル-1-エン-3-メチレン、ビス(シクロヘキシル)-4-エンメタン。ビス(4-メチルシクロヘキシル-3-エン)メタン、シクロヘキシル-1,3-エン、シクロヘキシル-1,4-エン、1,4-ビス(プロポキシル-3-エン)ブタン、3,6-ジオキサオクチレン、3,8-ジオキサドデシレン、4,7,10-トリオキサトリデシレン、ポリ(オキシテトラメチレン)、1,2-プロピレンオキシド単位を2~15個有するポリ(オキシプロピレン)、プロピレンオキシド単位2~15個とエチレンオキシド単位2~15個を有するポリ(オキシプロピレン-コオキシエチレン)、2,2-ジメチロールプロピレンなどが挙げられる。アミノ化合物(Aii-2)の例としては、N,N-ジメチルエチレンジアミン、1,4,7-トリメチルジエチレントリアミン、ピペラジン、2,3,5,6-テトラメチルピペラジン、N,N’-ジtert-ブチルエチレンジアミンを挙げることができる。
【0048】
好ましいのは、アルキル基が1~30個の炭素原子、特に1~18個の炭素原子、より特に1~14個の炭素原子、さらに特に1~8個の炭素原子を含み、このアルキル基は、場合により、1つ以上のヒドロキシ基で置換されていてもよいアルキルアミン(Aii-1)である。本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖、分枝もしくは環状部分またはそれらの組み合わせを有する飽和一価炭化水素ラジカルを含むものとして定義される。
【0049】
特に好ましいのは、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、5-アミノペンタノール、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、イソ-プロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールおよびN,N-ジアルキルジアルカン、およびこれらの混合物である。特に好ましいのは、エチルアミン、n-プロピルアミン、iso-プロパノールアミン、n-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、iso-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-オクチルアミンおよびこれらの混合物である。最も好ましいのは、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、およびそれらの混合物である。
【0050】
2級アミン末端コポリマー(A)の調製において、好ましくは、二官能性アクリレート(メタクリレート)(Ai)は、反応時間を通して過剰のアミンが存在するように、二反応性アミン(Aii)に添加される。また、順序を逆にして、二官能性アクリレート(メタクリレート)に二反応性アミンを添加することも可能である。後者の場合、最終的にモル比で過剰の二反応性アミンを使用する。
【0051】
多官能性アクリレート(メタクリレート)(B)
本発明における2級アミン末端コポリマー(A)は、さらにアクリレート(メタクリレート)化合物(Ai)とは異なる多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物(B)と反応させて本発明のアミノアクリレート(メタクリレート)とすることができる。反応条件は、前述のアクリレート(メタクリレート)化合物(Ai)とアミノ化合物(Aii)の反応と同様であり、上記反応(ii)を参照されたい。
【0052】
好ましくは、多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物(B)と2級アミン末端コポリマー(A)のモル比は、少なくとも2:1である。好ましくは10:1以下、より好ましくは6:1以下である。
【0053】
通常、多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物(B)は1種類を用いるが、他の多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物を1種類以上混合して用いてもよい。本発明のアミノアクリレート(メタクリレート)は、高いアクリレート(メタクリレート)官能基を有する。好ましくは、官能性は2以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、例えば5、6、7、8、9または10である。
【0054】
多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物(B)は、二官能性アクリレート(メタクリレート)化合物(Ai)とは異なるものである。好ましくは、多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物(B)は、3官能以上のアクリレート(メタクリレート)化合物である。アクリル化(メタクリル化)化合物(B)は、アクリル酸(メタクリル酸)とポリオールとのエステル、すなわち3個以上の水酸基を有する化合物とのエステルである。メタ)アクリル化化合物Bの製造に適した3官能以上のポリオールの例としては、トリメチロールプロパン、グリセロール、これらのラクトンまたはラクチド変性体、これらのエトキシル化および/またはプロポキシル化体のような3水性アルコール(これらに限定されない)。ペンタエリスリトールまたはトリメチロールプロパン二量体、これらのラクトンまたはラクチド変性体およびこれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化体などの四水性アルコール;ジペンタエリスリトール、これらのラクトンまたはラクチド変性体およびこれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化体などのヘキサヒドロアルコール(ただしこれらに限らない)が挙げられる。
【0055】
重合体アミノアクリレート(メタクリレート)
本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、二重結合の含有量(meq C=C/gとして計算)が好ましくは0.5meq/g以上、より好ましくは0.75meq/g以上、最も好ましくは1meq/g以下である。本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)の窒素含有量は、好ましくは1および6meq N/g、より好ましくは1.2および5meq N/g、最も好ましくは1.4および4meq N/gの間である。典型的には、本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は室温で液体であり、25℃における粘度が200から200.000mPa・s、より好ましくは500から100.000mPa・s、最も好ましくは1.000から75.000mPa・sであり、粘度は典型的にはISO3219に従ってコーン及びプレート型レオメーターMCR100(Paar-Physica)を使用して測定することができる。本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を測定するための測定形状は、直径50mm、コーンの角度が1°のものであった。測定は、25℃でD=0 s-1(ゼロ粘度)、D=2.5 s-1 からD=2500 s-1の範囲で制御されたせん断速度でのフローカーブであった。
【0056】
本発明による重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、硬化後の臭気も低く、オフ臭が絶対に避けられるべき食品包装などの用途で使用可能である。
【0057】
さらに、これらのアミノアクリレート(メタクリレート)は、工業環境で使用可能なほど長いポットライフを示す。最終的に、これらのアミノアクリレート(メタクリレート)は、典型的に低色(1ガードナー以下)であり、透明なコーティング、接着剤またはワニスに使用できるようにする。
【0058】
重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、特に低エネルギー硬化用途に非常に有効である。また、グラフィックアート業界のような高い硬化速度を必要とする用途にも適している。
【0059】
本発明による重合体アミノアクリレート(メタクリレート)および/またはそれを含む放射線硬化性組成物は、表面硬化ブースターとしての使用に非常に適しており、したがって、紫外線用途、より詳細には紫外線LED用途のコーティングに使用した場合に表面硬化を増大させることが可能である。それらは有利にはアミノ相乗剤として作用する。
【0060】
重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、式(I)で表されるような重合体を用いることができる。
B’-Aii’-[Ai’-Aii’]n-Ai’-Aii’-B’ (I);
ここで
nは0から10までの整数、
Ai’は、ジアクリレート(ジメタクリレート)化合物Aiから誘導されるユニットである、
Aii’は、二反応性アミン化合物Aiiから誘導されるユニットである、
B’は、多官能性アクリレート(メタクリレート)化合物Bから誘導される単位である。
【0061】
2級アミン末端コポリマーは、式(II)で表すことができる:
Aii’’-[Ai’-Aii’]n-Ai’-Aii’’ (II);
ここで、nは0から10までの整数である、
Ai’は、ジアクリレート(ジメタクリレート)化合物Aiから誘導されるユニットである、
Aii’は、二価のアミン化合物Aiiから誘導されるユニットである、
Aii’’は、二反応性アミン化合物Aiiに由来する単位であり、1個の2級アミン基を含む。
【0062】
本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、コーティング(剤)、塗料(ペイント)、インク、ワニス(オーバープリントワニスを含む)および接着剤の製造に使用できるが、ゲルコート、複合材料、成形用組成物または3D物品の製造にも使用することができる。本発明の材料は、3D印刷に使用するのにさらに適している。
【0063】
放射線硬化性組成物
本発明で使用される放射線硬化性組成物は、好ましくは、上記のような1種以上の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を少なくとも0.5重量%(上記のいずれか)含むものである。より好ましくは、組成物は、本発明による1つまたは複数のアミノアクリレート(メタクリレート)を少なくとも2重量%含む。最も好ましくは、組成物は、本発明による1つまたは複数のアミノアクリレート(メタクリレート)を少なくとも5重量%含む。本発明による重合体アミノアクリレート(メタクリレート)の量は、通常、99重量%(wt%)を超えない。好ましくは、本発明による重合体アミノアクリレート(メタクリレート)の量は、通常、90重量%、より好ましくは75重量%、最も好ましくは50重量%(wt%)を超えない。
【0064】
本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、紫外線硬化およびEB(電子線)硬化において非常に有効であることが分かっており、単独または他の放射線硬化性ポリマー前駆体(C)と共に使用することが可能である。なお、「他の」とは、本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)とは異なるアクリレート(メタクリレート)を意味する。
【0065】
ポリマー前駆体という用語は、適切な重合性官能基を有するモノマーもしくはオリゴマーまたはそれらの混合物を示すために用いられ、好ましくは鎖末端にまたは鎖に沿って横方向に、1つまたは複数のアクリル、メタクリルまたはビニル基を含んでなるものである。この放射線硬化性ポリマー前駆体は、一般に、1つ以上のアクリル基、メタクリル基、またはビニル基を含むモノマーまたはオリゴマーである。好ましくは、本発明による重合体アミノアクリレート(メタクリレート)とは異なるアクリル化(メタクリル化)化合物(C)である。放射線硬化性組成物は、場合により、1種以上のアクリル化(メタクリル化)化合物(C)を1%含有していてもよい。
【0066】
好ましいオリゴマー(C1)としては、アクリル系(メタクリル系)オリゴマー、芳香族酸アクリレート(メタクリレート)、アクリル系(メタクリル系)ポリブタジエン、アクリル系(メタクリル系)ポリエステル、ウレタンアクリレート(メタクリレート)、エポキシアクリレート(メタクリレート)および高分岐ポリエステルポリオールアクリレート(メタクリレート)などの高分岐アクリレート(メタクリレート)が挙げられる。好ましいオリゴマー(C1)は、重量平均分子量が1.000以上、6,000ダルトン以下であるものである。
【0067】
使用される場合、放射線硬化性組成物中のオリゴマー(C1)の量は、一般に少なくとも1wt%であり、より好ましくは少なくとも5wt%であり、最も好ましくは少なくとも10wt%である。オリゴマーの量は、総重量に対して、通常95wt%を超えない、より好ましくは90wt%を超えない、最も好ましくは75wt%を超えない。
【0068】
また、放射線硬化性組成物は、下記のものなどの低分子量アクリル化(メタクリル化)モノマー(C2)を含むことができる:アクリル酸(メタクリル酸)、β-カルボキシエチルアクリレート(メタクリレート)、ブチルアクリレート(メタクリレート)、メチルアクリレート(メタクリレート)、イソブチルアクリレート(メタクリレート)2-エチルヘキシルアクリレート(メタクリレート)、シクロヘキシルアクリレート(メタクリレート)、n-ヘキシルアクリレート(メタクリレート)、イソボルニルアクリレート(メタクリレート)、イソオクチルアクリレート(メタクリレート)、n-ラウリルアクリレート(メタクリレート)、オクチル/デシルアクリレート(メタクリレート)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)、フェノキシエチルアクリレート(メタクリレート)。ノニルフェノールエトキシレートモノアクリレート(メタクリレート)、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(メタクリレート)、2-ブトキシエチルアクリレート(メタクリレート)、カードラアクリレート(メタクリレート)(カードラ(R)E-10Pとして知られているネオデカン酸のグリシジルエステルのアクリレート(メタクリレート))等、フェニルグリシジルエーテルアクリレート(メタクリレート)およびそのエトキシ化または/およびプロポキシ化誘導体、脂肪族グリシジルエーテルのアクリル酸(メタクリル酸)によるエステル化から得られるアクリレート(メタクリレート)、特にアルキル鎖が6~24の炭素原子を含むもの、より好ましくは8~18個の炭素原子、および/または飽和および不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、特にアルキル鎖が1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(ジメタクリレート)である長鎖アルキルカルボン酸のグリシジルエステルのエステル化。トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ジメタクリレート)、イソソルビドジアクリレート(ジメタクリレート)、ジまたはトリプロピレングリコールジアクリレート(ジメタクリレート)、エトキシル化および/またはプロポキシル化ネオペンチルグリコルジアクリレート(ジメタクリレート)、イソソルビドジアクリレート(ジメタクリレート)およびこれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化の誘導体、ビスフェノールAジアクリレート(ジメタクリレート)及びそのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体、トリメチロールプロパネトリアクリレート(メタクリレート)及びそのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体、ジトリメチロールプロパネトリアクリレート(メタクリレート)グリセロルトリアクリレート(メタクリレート)及びそのエトキシ化及び/又はプロポキシ化誘導体、ペンタエリスリトルトリアクリレート(PETIA)及びそのエトキシ化及び/又はプロポキシ化誘導体、ペンタ又はヘキサアクリレート及びそのエトキシ化及び/又はプロポキシ化誘導体、ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサアクリレート及びそのエトキシ化又はプロポキシ化誘導体。
【0069】
使用される場合、放射線硬化性組成物中のモノマー(C2)の量は、一般に少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%である。オリゴマーの量は、通常、全重量に対して99重量%を超えず、好ましくは95重量%を超えず、最も好ましくは80重量%を超えない。
【0070】
本発明の特定の実施形態において、化合物(C)は、本発明の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)とは異なるアミノアクリレート(メタクリレート)である。そのようなアミノアクリレート(メタクリレート)の例は、Allnexから入手可能なEBECRYL(R)80、81、83、85、LEO 10551、LEO 10552又はLEO 10553である。しかしながら、好ましくは、そのようなアミノアクリレート(メタクリレート)(C)は使用されない。
【0071】
本発明で使用される放射線硬化性組成物は、一般に、光、典型的にはUV光の吸収によってラジカルを生成することができる化合物である少なくとも1つの光開始剤を含んでいる。典型的な光開始剤は、“The Chemistry of Free Radical Polymerization”, edited by Graeme Moad and David H.Solomon; Pergamon (1995), pages 84 to 89に記載されている。本発明で使用される組成物において使用可能な光開始剤は、ヒドロキシケトン、アミノケトン、ベンジルジメチルケタール、アシルホシン、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントンおよびそれらの混合物から選択することが可能である。単量体よりも抽出されにくいことが知られている重合性または多官能性の光重合開始剤が好ましい。典型的には、組成物中の光開始剤の量は、0~15重量%、より好ましくは1~10重量%、最も好ましくは1~5重量%の間に構成される。
【0072】
あるいは、本発明の放射線硬化性組成物は、光重合開始剤を使用せずに、典型的には電子ビームによって硬化させることができるが、例えばエキシマランプを使用する場合には、光重合開始剤を使用せずに紫外線硬化させることも可能である。
【0073】
放射線硬化性組成物は、ワニス、コーティング、コーティング剤、接着剤およびインクに一般的に使用される添加剤、例えば基材湿潤剤、消泡剤、分散剤、流動性改良剤、滑り剤、可塑化希釈剤、難燃剤、紫外線保護剤、接着促進剤、アミン相乗剤、補強剤および安定剤を含むことも可能である。一般に使用される添加剤の総量は、通常、10重量%を超えない。好ましくは、組成物は、ここで上述したように、0.01から5重量パーセントの一般に使用される添加剤を含む。
【0074】
放射線硬化性組成物はまた、1つ以上の顔料、染料又は着色剤を含むことができる。本発明の組成物において使用可能な着色剤、染料及び顔料は、当技術分野において既知の全ての顔料である。そのような顔料の一覧は、カラーインデックスに記載されている。より詳細には、それらの顔料は、Process Yellow 13 (Diarylide Yellow - Irgalite BAW of Ciba, Permanent GR of Clariant), Process Magenta Pigment 57 (Bona Calcium - llobona 4BY of Sun, Irgalite SMA of IGM), Process Blue 15.3 (Copper Phthalocyanine - Irgalite GLO of IGM, Hostaperm Blue B2G of Clariant), Process Black 7 (Oxidised Carbon Black - Special Black 250; Special Black 350 of Degussa)など、挙げることができる。着色剤および/または顔料は、放射線硬化性組成物の全重量に対して、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~40重量%で使用される。
【0075】
放射線硬化性組成物はまた、0~20重量%の充填剤または非反応性希釈剤または溶媒を含んでいてもよい。本発明の放射線硬化性組成物は、その選択された化合物を従来公知の方法によって混合することによって製造することができる。混合を容易にするために、所望により、ブレンドを加熱することができる。
【0076】
ここに記載したような放射線硬化性組成物は、ワニス(オーバープリントワニスを含む)、コーティング剤、コーティング、接着剤およびインクの製造に使用される。インクによって、ペーストインクと同様に液体インクを理解することが意図される。特に、フレキソグラフィーインク、セリグラフィーインク、インクジェットインク、オフセットインクおよび/またはゼログラフィーインクは、本発明によるアミノアクリレート(メタクリレート)を用いて製造することができる。インクは、一般に、充填剤、湿潤および流動性改良剤、レベリング添加剤、粘度調節剤および分散添加剤のような他の可能な添加剤に加えて、顔料、染料および/または着色剤を含む。これらはさらに、複合材料およびゲルコートの製造、成形用組成物または3D物品の製造のために使用することができる。
【0077】
本発明による重合体アミノアクリレート(メタクリレート)は、コーティング組成物の製造および様々なタイプの基材のコーティングにも非常に適している。本発明の別の側面は、それゆえ、以下の工程を含む物品または基材をコーティングする方法に関するものである:
(a)上記に記載の重合体アミノアクリレート(メタクリレート)を含む放射線硬化性組成物を提供すること、
(b)前記組成物を表面上に塗布すること、
(c)表面にアクチニック放射線を照射すること。
【0078】
この方法は、特に表面硬化を向上させるのに適している。
【0079】
この方法では、有利には照射源としてUV LEDランプが使用され、より詳細には365、385、395または405nmで発光しているものが使用される。
【0080】
実施形態では、組成物は、スプレー、カーテン、ディップ、パッド及びロールコーティング技術、並びにリソグラフィー、セリグラフィー、フレキソグラフィー、グラビア及びインクジェット印刷などの任意の印刷技術を含む任意のコーティング技術によって表面に塗布することができる。
【0081】
塗布またはインク付けされる基材は、木材、金属、紙、プラスチック、布、繊維、セラミック、コンクリート、石膏、ガラスなど、どのような基材であってもよい。柔軟な基材、特に紙やプラスチック基材で良好な結果が得られている。本発明の材料は、例えばMDF、いくつかの金属合金等のような熱に敏感な材料に本発明のインク、コーティング、コーティングおよびワニス(オーバープリントワニスを含む)を塗布することを可能にする。
【0082】
コーティングは、透明なコーティングまたは顔料コーティングであることができる。顔料コーティングは、明るい顔料(白、水色など)をベースとするものであることができる。
【0083】
表面への照射は、高エネルギー電子(EB)またはUV照射によって行うことができる。紫外線照射のために、古典的な中圧Hgからメタルハライド紫外線ランプ、紫外線発光ダイオード(紫外線を発する他のランプ/LEDを除く)に至るまで、複数のタイプのランプを使用することができる。
【0084】
紫外線(UV)、ガンマ線、電子線など、様々な種類の光放射線を使用することができる。放射線硬化の好ましい手段は、紫外線である。放射線源としては、放射された光の一部が光開始剤(系)に吸収されるものであれば、いかなる紫外線源でもよく、例えば、高圧または低圧水銀灯、冷陰極管、ブラックライト、UV-Aランプ、キセノンランプ、紫外線LED、紫外線レーザー、フラッシュライト、さらには可視光源などが使用可能である。現在、365nm、385nm、395nm、405nmの紫外線LEDが販売されている。
【0085】
本発明による方法によって得られるコーティング、ワニス(オーバープリントワニスを含む)、コーティング、接着剤およびインクは、高いライン速度で、または低エネルギー放射線で硬化させることができるので、食品包装などの包装用途に非常に適しているが、化粧品や医薬品などの高級品に用いられる他の種類の包装にも適している。また、本発明では、本発明による放射線硬化性組成物(記載のいずれかのもの)を塗布または捺印した食品包装材料も提供される。
【0086】
したがって、本発明はまた、本発明の方法を用いて得られた、および/または本発明によるポリマー性アミノアクリレート(メタクリレート)から調製されたコーティング、ワニス(オーバープリントワニスを含む)、コーティング、接着剤およびインクに関するものである。
【0087】
一般的に、UV LED技術は、グラフィックアート市場、木材コーティング、エレクトロニクス、複合材料の製造、ゲルコート、成形用組成物、3D印刷などで使用されている。
【0088】
本発明は、以下の、非限定的な例によって説明される。
【0089】
例
以下の例により、本発明の側面および実施形態を説明する。
【0090】
例1
反応容器にn-ブチルアミン292g(4モル)(二反応性アミンAii)、およびn-ブチルアミンとHDDAの総量に対して200ppmの安定剤を仕込んだ。反応混合物を加熱し、温度を50℃に設定した。温度が75℃を超えないように、678gのHDDA(3モル)(二官能性アクリレート(メタクリレート)Ai)を滴下して加えた。添加が完了したら、混合物を60℃で16時間さらに反応させた。この後、反応混合物を40℃まで冷却し、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(2モル)(DiTMPTA)932g(アクリレート(メタクリレート)化合物B)を30分かけて攪拌下に添加した。添加が完了したら、反応温度を70℃に上げ、近赤外スペクトルにおいて1642cm-1の2級アミンピークが消失するまで、この温度で熟成させることにした。25℃でC&Pにより測定した粘度が41000mPa.sの、透明で低臭気の生成物が形成される。この生成物は、2.1meq/gの窒素含有量*と3.2meq/gの二重結合**含有量を有する。HPLC-UVで測定した残留する二官能性アクリレートHDDAの量は100ppm以下である。
【0091】
表1に、各化合物の使用量を示す。
【表1】
*
Nの含有量を算出
meq/gN=((重量二反応性アミンAii/Mw二反応性アミンAii×化合物Aii中に存在する窒素原子数)/(重量化合物B+重量化合物Ai+重量化合物Aii)
*1000
例1
例1のmeq/gN=((292g/ 73g/mole x 1) /(932g+678g+292g)*1000 = 2.1 meq/g)。
**
二重結合の含有量を算出
二重結合含有量(meq/g)=(化合物B
*アクリレート(メタクリレート)官能基の#モル+化合物Ai
*2-化合物Aii
*NH官能基の#モル)/(化合物B重量+化合物Ai重量+化合物Aii重量)×10000
アクリレート(メタクリレート)含有量(meq/g)=((2モル×4)+(3モル×2)-(4モル×2))/(932g+678g+292g)×1000=3.2meq/g
*** Radcure製品中のヘキサンジオール ジアクリレート(=HDDA)およびジプロピレングリコール ジアクリレート(DPGDA)含有量の定量は、逆相C18カラム上で、λ=210nmでの紫外線検出器付き高速液体クロマトグラフィー(HPLC-UV)を用いて行われる。
【0092】
比較例
比較例1および2は、過剰のアクリル化(メタクリル化)化合物(Ai)対アミノ化合物(Aii)を使用する一段階反応で作られるアミノアクリレートである。これらの化合物の欠点は、硬化したコーティングから移行する可能性のある低分子量の二官能性アクリレート化合物を多量に含むことである。
【0093】
比較例1では、反応容器に219gのn-ブチルアミン(3モル)、ならびにn-ブチルアミンおよびHDDAの総量に対して200ppmの安定剤を装入した。反応混合物を加熱し、温度を50℃に設定した。温度が75℃を超えないように、904gのHDDA(4モル)を滴下して添加した。添加が完了したら、滴定により測定した遊離アミノ濃度が0.02%未満になるまで、60℃で16時間さらに反応させた。25℃のC&Pで測定した粘度が1500mPa.sの透明な生成物が形成される。この生成物は、2.6meq/gのアミン含有量と1.78meq/gの二重結合含有量を有する。HPLC-UVで測定したHDDAの残留量は3.8%である。
【0094】
比較例2は、n-ブチルアミンをモノエタノールアミンで置き換える以外は、比較例1と同様の方法で製造される。25℃でC&Pにより測定した粘度が5900mPa.sの透明な生成物が形成される。この生成物は、2.7meq/gのアミン含有量と1.8meq/gの二重結合含有量を有する。HPLC-UVで測定されたHDDAの残留量は3.5%である。
【0095】
したがって、純粋に低分子量ジアクリレートの残留量に基づいて、本発明のアミノアクリレート(メタクリレート)を用いて製造された硬化コーティングまたはインクは、比較例1および2よりも低いレベルの抽出可能化合物を生成することが予想されるかもしれない。
【0096】
比較例3はallnexから市販されているEBECRYL 10553で、これは低移行性アミノアクリレートである。この例を調製するために、2級アミン末端コポリマーは形成されない。この製品は、25℃でC&Pにより測定した粘度が200mPa・sであり、0.5meq/gのアミン含有量と4.3meq/gの二重結合含有量を有する。EBECRYL 10553は、UV LEDランプのような低エネルギー硬化装置との組み合わせにはあまり適していませんが、これは2級アミンでないこと、またはアミン含有量が低いことが原因であると考えられる。
【0097】
比較例4は、allnexから市販されているEBECRYL LED 03である。この例を調製するために、2級アミン末端コポリマーは形成されない。EBECRYL LED 03は、25℃でC&Pにより測定した粘度が450mPa・sであり、3meq/gのアミン含有量と1.9meq/gの二重結合含有量とを有する。
【0098】
比較例5は、Lambson社から市販されているSpeedCure EDB(エチル-4-(ジメチルアミン)ベンゾエート)である。
【0099】
適用例
上記の組成物およびいくつかの比較組成物を用いて、以下のインク配合物(シアンインク)を調製した。各インク配合物の組成を表2に示す。EBECRYL 870は6官能性ポリエステルアクリレートオリゴマーであり、EBECRYL 1608はallnexからOTA-480で希釈したビスフェノールA型エポキシアクリレートである。Omnirad TPO-LおよびOmnirad ITXは、IGMから市販されている光重合開始剤である。
Stab 12/1:重合禁止剤(DPGDA DiPropyleneGlycolDiAcrylate中のNPALの5%溶液);NPAL=トリス(N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミン)アルミナトリウム塩
【0100】
【0101】
オフセットインキ配合物の粘度、反応性、耐溶剤性及びリソグラフィー挙動を試験した。結果は表3および4にまとめられている。
【0102】
インクを硬化させるのは、大気雰囲気下で、空冷式Phoseon Firejet.を用いたUV LEDで、波長365nmのピーク放射照度が8W/cm2(LED365)である。ランプと基材との距離は1cmである。
【0103】
硬化速度は、完全に硬化したフィルムを与える最大ベルト速度または最小紫外線量(所定のランプの下)で表される。BOPP C58フィルム(バイオリエントポリプロピレン)上に塗布した1.8μmのインクの表面硬化をグラファイトテストで試験する。これは、グラファイトカーボンブラック(鉛筆2号)を塗布面に付け、指でこすり、さらに綿棒でこすることにより行う。塗布面に黒い痕跡が残る限り、フィルムは完全に硬化していないため、再度LED365の下で通過させる。表面に黒い染みが残らなければ、硬化したと判断する。「10m/min」は、グラファイト試験に合格するために10m/minでの硬化が必要であったことを意味する。UVエネルギー量は、UV Power Puck(R) II放射計で測定した紫外線照度(W/cm2)から自動的に導き出し、UVA(320-390nm)ゾーンの値を記録する。フィルムのスルーキュアは,イソプロパノールに浸したワッドでダブルラビング(IPA)することで調べる。最適な性能で完全に硬化した塗膜を得るには、最低50回のイソプロパノールによる二重こすりが必要である。
【0104】
【0105】
*EP%:インクと水のバランス特性(吸水性)をハイドロスコープ装置で評価し、EP%で表示す。装置は3つのローラーで構成されている。小さなゴムローラーはインク膜のタックを測定し、大きな2つの温度制御された金属ローラーである。2つの金属製ローラーの上には、10gのインクを入れるスペース(インク槽)がある。インク槽の側面は密閉されており、インクと水はすべてこの中に入っている。インク槽の上方2カ所に設置された正確なポンプ装置により、1.3ml/minの速度で湿し水がインク槽に滴下される。インクと万年筆はローラー間の開口部から押し出され、共同せん断応力を受ける。インキ表面に過剰な水分が現れ始めたら、インキは水で「飽和」しており、エマルジョンポイント(単位:%)を示している。
【0106】
【0107】
表4は、本発明による組成物が、アミノアクリレートが添加されないCF1に対する改善された反応性を有するインクを得ることを可能にするが、より低いアミノ含量CF5を有する例えばEBECRYL 10553を用いる配合物に比べても、改善された反応性を有することを示す。さらに、本発明によるアミノアクリレート(メタクリレート)は、インクバランス特性に大きな影響を与えないので、オフセットインクに使用することができる。
【0108】
表5は、本発明による組成物が、ISTからの80W/cm水銀紫外線電球で硬化させた場合、アミノアクリレートが添加されていないCF1に対する改善された硬化速度も示すことを示している。市販のアミノベンゾエートを用いた場合と同様の反応性を得ることができる。
【0109】
【0110】
ほとんどの一般的なアミノアクリレートは、顔料との組み合わせでは安定しないことが多く、高温で一定期間保存すると粘度の上昇を示す。上記の組成物のいくつかは、以下のマゼンタインクでテストされている。
【0111】
【0112】
室温で24時間保存した後、初期粘度を測定した。その後、60℃の換気扇の中で保管し、28日後に再度インクの粘度を測定した。
【0113】
以下の表7は、本発明のアミノアクリレート(メタクリレート)に基づくインクが、比較合成例2と比較して、はるかに低い粘度上昇を示すことを示している。
【0114】
【0115】
本発明によるアミノアクリレート(メタクリレート)は、オーバープリントワニスに使用することも好適である。表8に示す結果から、F17およびF18は、アミノアクリレート(メタクリレート)を添加しない比較処方例CF9と比較して、365nmの8W LEDランプで硬化させた場合、本発明のアミノアクリレート(メタクリレート)は著しく高い反応性を示していることがわかる。また、硬化後の黄変が少ない塗膜を生成することが可能であることがわかる。
【0116】
【0117】
*オーバープリントワニスの表面硬化反応性と黄変を,無孔質基材(白紙,Silico Ultraflat)に塗布した10μm厚の膜で試験した。そして、サンプルの黄変は、様々な期間後に、L*a*b系のLAB値(Braive Supercolor Instrumentで測定)のb値を測定することによって評価された。b値は、コーティングされた基材で測定した値から、コーティングされていないSilico Ultraflat白紙で測定した値を差し引いた値である。サンプルは、その表面硬化反応性で硬化される。黄変度(b値)は、コーティングされた基材で測定されたb値からコーティングされていない基材の値を引いた値で表される。
【国際調査報告】