(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】複数の医療用中空体を収容するためのトレー
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20230705BHJP
B65D 25/10 20060101ALI20230705BHJP
B65D 1/36 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
A61M5/00 516
B65D25/10
B65D1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577491
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021065868
(87)【国際公開番号】W WO2021254918
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】102020207588.3
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513220920
【氏名又は名称】フェッター ファルマ-フェルティグング ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベウレント,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ププケ,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】モーラー,カロリーネ
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
4C066
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA16
3E033BA26
3E033DE11
3E033EA07
3E033FA02
3E033GA03
3E062AA03
3E062AC02
3E062FA02
3E062FB01
3E062FC02
3E062FC05
3E062FC07
4C066LL30
(57)【要約】
本発明は、複数の医療用中空体を収容するためのトレー(1)であって、上面(5)と下面(7)とを有する底板(3)を備え、上面(5)には、トレー(1)の外側の縁部(9)に沿って全周囲に延在する壁(11)が配置されており、底板(3)と壁(11)とは、医療用中空体を収容するための収容容積(13)を画定しており、トレー(1)は、長手方向(L)に沿った有限長さと、長手方向(L)に対して垂直に延びる幅方向(B)に沿った有限幅とを有し、トレー(1)は、医療用中空体を保持するための少なくとも1つの保持構造部(15)を有し、この少なくとも1つの保持構造部(15)は、第1の保持壁(17)と、第2の保持壁(19)と、複数のスペーサ(33)の1つの列とを有する、トレー(1)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の医療用中空体(49)を収容するためのトレー(1)であって、
- 上面(5)と下面(7)とを有する底板(3)を備え、
- 前記上面(5)には、前記トレー(1)の外側の縁部(9)に沿って全周囲に延在する壁(11)が配置されており、
- 前記底板(3)と前記壁(11)とは、前記医療用中空体(49)を収容するための収容容積(13)を画定しており、
- 前記トレー(1)は、長手方向(L)に沿った有限長さと、前記長手方向(L)に対して垂直に延びる幅方向(B)に沿った有限幅とを有し、
- 前記トレー(1)は、医療用中空体(49)を保持するための少なくとも1つの保持構造部(15)を有し、少なくとも1つの該保持構造部(15)は、
・ 第1の保持壁(17)を有し、該第1の保持壁(17)は、前記壁(11)の第1の幅区分(21)から出発して、前記壁(11)の対向した第2の幅区分(23)にまで長手方向(L)に延在しており、前記第1の保持壁(17)には、離間させられた第1の貫通部(25)が形成されており、
・ 前記第1の保持壁(17)から第1の幅間隔(ΔB1)により離間させられていて、前記第1の保持壁(17)に対して平行に前記第1の幅区分(21)から前記第2の幅区分(23)にまで延在する第2の保持壁(19)を有し、該第2の保持壁(19)には、離間させられた第2の貫通部(27)が形成されており、該第2の貫通部(27)の各々は、それぞれ1つの割り当てられた第1の貫通部(25)に位置合わせされており、
・ 前記保持壁(17,19)に対して第2の幅間隔(ΔB2)により離間させられていて、前記保持壁(17,19)に対して平行に延在し、互いに離間して複数の空隙(31)を形成するスペーサ(33)の列(29)を有し、前記スペーサ(33)は、各々の前記空隙(31)が、それぞれ1つの前記第1の貫通部(25)および前記第2の貫通部(27)と位置合わせされるように、前記貫通部(25,27)に対してずらされて配置されており、これによって、
・ それぞれ1つの前記空隙(31)と、1つの割り当てられた第1の貫通部(25)と、1つの割り当てられた第2の貫通部(27)とにより、1つの医療用中空体(49)に対する、幅方向(B)に延在する1つの保持位置(35)が規定されており、
・ 前記第1の幅間隔(ΔB1)は、前記第2の幅間隔(ΔB2)よりも短い、
トレー(1)。
【請求項2】
前記トレー(1)は、少なくとも1つの前記保持構造部(15)として2つの保持構造部(15,15’)を有し、該2つの保持構造部(15,15’)は、幅方向(B)に相並んで配置されており、長手方向(L)で前記第1の幅区分(21)から前記第2の幅区分(23)に延在する分離壁(37)によって互いに分離されている、請求項1に記載のトレー(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの前記保持構造部(15)の前記第1の保持壁(17)は、前記壁(11)の長手方向区分(41)および前記分離壁(37)から選択された端壁(39)から第3の幅間隔(ΔB3)によって離間させられている、請求項1または請求項2に記載のトレー(1)。
【請求項4】
前記壁(11)の前記幅区分(21,23)は、それぞれ前記第2の保持壁(19)と前記スペーサ(33)の列(29)との間に空所(43)を有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のトレー(1)。
【請求項5】
前記底板(3)は、前記スペーサ(33)の列(29)の領域に凸設部(45)を有し、該凸設部(45)に前記スペーサ(33)が配置されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のトレー(1)。
【請求項6】
前記スペーサ(33)は、平面図で見て細長くまたは十字形に形成されている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のトレー(1)。
【請求項7】
前記底板(3)は、前記下面(7)に脚要素(47)を有し、該脚要素(47)は、前記下面(7)から突出していて、好ましくは、前記底板(3)の前記外側の縁部(9)から前記壁(11)の壁厚さのうちの少なくとも一部の分だけ、好ましくは前記壁厚さの分だけ内方にずらされて配置されている、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のトレー(1)。
【請求項8】
前記トレー(1)は、一体形にかつ一貫した材料で、好ましくはプラスチックから形成されており、該プラスチックは、好ましくは、オートクレーブ処理可能なプラスチック、機械洗浄可能なプラスチック、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネートおよびポリプロピレンから成る群から選択されている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のトレー(1)。
【請求項9】
前記医療用中空体(49)は、筒区分(51)とフランジ領域(53)とを有し、該フランジ領域(53)は、前記第1の保持壁(17)と前記第2の保持壁(19)との間に配置されていて、好ましくは、前記第2の貫通部(27)のうちの、前記医療用中空体(49)に割り当てられた第2の貫通部(27)の後ろ側に係合しており、前記筒区分(51)は、前記トレー(1)の幅方向(B)で前記第2の貫通部(27)を通して、前記医療用中空体(49)に割り当てられた前記第2の貫通部(27)に割り当てられた前記空隙(31)内に延在している、所定の医療用中空体(49)と組み合わせた請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のトレー(1)。
【請求項10】
前記医療用中空体(49)のピストンロッド(55)が、前記第1の貫通部(25)を通して前記端壁(39)の方向に延在している、前記医療用中空体(49)と組み合わせた請求項9に記載のトレー(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の医療用中空体を収容するためのトレーに関する。
【0002】
米国特許第6216885号明細書に基づき、熱成形されるプラスチック材料から製作された、特に深絞り加工された、複数のシリンジを収容するためのトレーが公知である。この公知のトレーは、極めて低い剛性を有しているため、取り扱いにくい。トレーを取り扱うことができるようにするために、規則的な間隔を置いて複数の保持片が設けられており、例えば真空グリッパーがグリップすることでトレーを保持することができる。トレーは、規定のシリンジ形式に適合するように設計されており、規定の形式のシリンジを安定して安全に保持するためのしっかりとしたクランプ要素を備えている。したがって、トレーは、異なるシリンジ形式に臨機応変に使用することができず、シリンジを安定して固定するクランプ要素のために、トレーにシリンジを備付けたり、トレーからシリンジを取出したりするのに手間がかかってしまう。
【0003】
また、医療用中空体が緩く挿入されるトレーも知られている。このことは、医療用中空体がガラスを含んでいるかまたはガラスから成っている場合に特に欠点となる。この場合、ガラス同士の接触が生じ、これによって、特に搬送時に損傷が生じてしまうことがある。また、この場合には、特に医療用中空体に配置されたラベルの損傷またはラベルの可読性も損なわれるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の根底にある課題は、上記の欠点が少なくとも部分的に排除されている、好ましくは上記の欠点を有していない、医療用中空体を収容するためのトレーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本明細書の技術的な教示、特に独立請求項の教示ならびに従属請求項および明細書に開示した実施形態の教示が提供されることによって解決される。
【0006】
この課題は、特に、複数の医療用中空体を収容するためのトレーが提供されることによって解決される。このトレーは底板を有している。この底板は、上面と下面とを有している。上面には、トレーの外側の縁部に沿って全周囲に延在する壁が配置されている。底板と壁とは、医療用中空体を収容するための収容容積を画定している。トレーは、長手方向に沿った有限長さと、長手方向に対して垂直に延びる幅方向に沿った有限幅とを有している。トレーは、医療用中空体を保持するための少なくとも1つの保持構造部を有している。そして、この保持構造部は第1の保持壁を有している。この第1の保持壁は、壁の第1の幅区分から出発して、壁の対向した第2の幅区分にまで長手方向に延在している。第1の保持壁には、互いに離間させられた第1の貫通部が形成されている。保持構造部は、さらに、第1の保持壁から第1の幅間隔により離間させられた、第1の保持壁に対して平行に第1の幅区分から第2の幅区分にまで延在する第2の保持壁を有している。この第2の保持壁には、互いに離間させられた第2の貫通部が形成されている。これらの第2の貫通部の各々は、この各々に割り当てられたそれぞれ1つの第1の貫通部に位置合わせされている。特に、第2の貫通部と第1の貫通部とは、互いに対を成すように割り当てられており、互いに対を成すように割り当てられた第1の貫通部と第2の貫通部とは、互いに位置合わせされている。保持構造部は、さらに、保持壁に対して第2の幅間隔により離間させられていて、保持壁に対して平行に延在し、互いに離間して複数の空隙を形成するスペーサの列を有する。スペーサは、各々の空隙が、それぞれ1つの第1の貫通部および第2の貫通部と位置合わせされるように、貫通部に対してずらされて配置されている。したがって、1つの第1の貫通部と1つの第2の貫通部とから成る各対に1つの空隙が割り当てられている。この場合、対応する空隙は、対応して割り当てられる複数の第1および第2の貫通部の対のうちの各々の第1の貫通部と各々の第2の貫通部とに位置合わせされている。それぞれ1つの空隙と、この空隙に割り当てられた第1の貫通部と、この空隙および第1の貫通部に割り当てられた第2の貫通部とによって、1つの医療用中空体に対する1つの保持位置が規定されている。この保持位置は、トレーの幅方向に延在している。第1の幅間隔は第2の幅間隔よりも短い。
【0007】
一緒に収容容積を画定する底板と全周囲に延在する壁とを備えた幾何学的な構造によって、トレーが高い剛性を有するようになり、したがって、同時に簡単かつ安定した状態で取扱い可能となる。特にこのために固有に設ける必要があった保持片が不要となるので、このために設ける必要があった容積を節約することができ、医療用中空体を収容するために使用することができる。保持構造部は、貫通部と空隙とにより形成された保持位置によって、フィンガーグリップ、ピストンロッドおよび/または注射針が前もって組み付けられているか否かにかかわらず、それぞれ異なる形式の多数の医療用中空体、特に多種のシリンジ形式を使用することが極めて柔軟に可能となっている。同時に、保持構造部は、しっかりとしたクランプ要素を省略し、これによって、医療用中空体を簡単かつ迅速に、特に手でまたは機械、特にロボットを用いてトレー内に挿入することができ、また、トレーから取り出すことができる。つまり、このトレーは、医療用中空体の容易な備付けも、医療用中空体の容易な取出しも可能にする。同時に、保持位置は、医療用中空体を後続処理するための一義的な挿入パターンを提供する。さらに、保持位置は、個々の医療用中空体に対する互いに離間させられた一義的な領域を規定しているため、特にガラス同士の接触が回避される。これによって、医療用中空体および/または医療用中空体に場合により配置されているラベルへの損害のリスクも排除される。特に本明細書において提案したトレーの使用時には、ラベルの可読性が損なわれない。
【0008】
特に本明細書において提案したトレーでは、挿入済みの医療用中空体の正確な個数を適正に把握することができる。それぞれ異なる形式およびバリエーションの多数の医療用中空体をただ1つのトレーによって担うことができる。特に本明細書において提案したトレーの使用時には、ピストンロッドおよび/またはフィンガーグリップを備えたそれぞれ異なるシリンジ形式と、ピストンロッドおよび/またはフィンガーグリップを備えていないそれぞれ異なるシリンジ形式とを個別化することができる。保持位置により提供される正確な座り(passgenauen)によって、搬送時の医療用中空体の横滑りが排除されている。
【0009】
底板は、好ましくは平らで水平に形成されている。底板は、特に外向きの突起および/または膨出を有していない。
【0010】
トレーは、特に深絞り加工されていない。
【0011】
好ましくは、トレーは射出成形によって製作されている。特に射出成形材料の頑強さによって、トレーは複数回使用することができ、特に深絞り加工された材料よりも高い頻度で使用することができる。トレーは、特に再生材料として使用することができる。
【0012】
一方では、保持壁を配置し、他方では、空隙を形成するスペーサを配置することによって、医療用中空体を誤った姿勢で置くことが排除されている。
【0013】
壁は、好ましくは、底板に対して90°を成して延在している。壁は、特に底板から出発して高さ方向に延在している。この高さ方向は、一方では、長手方向に対して垂直に延びており、他方では、幅方向に対して垂直に延びている。
【0014】
長手方向は、好ましくは、トレーの最も長い延在方向である。幅方向は、好ましくは、トレーが、長手方向に沿って延在する長さよりも短い幅にわたって延在する方向に相当している。高さ方向は、特にトレーを規定通りに配置した場合に鉛直方向、つまり、測地的な高さ方向に延びる方向である。これに対して、長手方向と幅方向とは、トレーを規定通りに配置した場合に高さ方向、つまり、鉛直線が空間内で垂直に延びている平面内で延びている。
【0015】
壁は、好ましくは、収容容積内に挿入可能な最大の医療用中空体が収容容積内に挿入されている場合に、この最大の医療用中空体の少なくとも上縁部にまで高さ方向に延在している。好ましくは、壁は、収容容積内に挿入するべき最大の中空体が収容容積内に挿入されている場合に、この最大の中空体の上縁部よりも上側まで延在している。
【0016】
保持壁は、好ましくは、高さ方向で壁と同じ高さであり、つまり、特に底板から出発して高さ方向で壁の上縁部にまで延在している。
【0017】
貫通部は、好ましくは上向きに開放されており、つまり、底板と反対側を向いている開放端部を有している。
【0018】
トレーは、特に以下の先端サイズ、つまり、
1ml、直径8.15mm、ピストンロッド/フィンガーグリップ有りおよび無し、Vetter RNS(リジッドニードルシールド)を備えたガラス本体長さは81.2mmであり、Vetter OVSを備えたガラス本体長さは73.9mmである、
1.5ml、直径10.85mm、ピストンロッド/フィンガーグリップ有りおよび無し、RNSを備えたガラス本体長さは73.3mmであり、Vetter OVSを備えたガラス本体長さは63.5mmである、
2.25mm、直径10.85mm、ピストンロッド/フィンガーグリップ有りおよび無し、Vetter RNSを備えたガラス本体長さは82.8mmであり、Vetter OVSを備えたガラス本体長さは75mmである、
先端サイズによって使用可能である。クロージャ部材として、Vetter OVS、Vetter TipCap、Vetter NS(ニードルシールド)およびVetter RNSが使用されてよい。
【0019】
長手方向で測定したトレーの長さは、好ましくは、最短300mm~最長400mm、好ましくは最短325mm~最長375mm、好ましくは350mmである。
【0020】
幅方向で測定したトレーの幅は、好ましくは、最短200mm~最長300mm、好ましくは最短225mm~最長295mm、好ましくは最短250mm~最長280mm、好ましくは最短265mm~最長275mm、好ましくは270mmである。
【0021】
トレーは、好ましくは、より大きな搬送容器内に挿入するかまたは嵌め込むための容器内挿入物として形成されている。搬送容器内には、複数のこのようなトレーを挿入することができるかまたは嵌め込むことができる。トレーの寸法、特にトレーの長さおよびトレーの幅は、好ましくは、2つのこのようなトレーを相並べて搬送容器内に挿入することができるように寸法設定されている。トレーの高さは、特に、複数のトレー、特に2つよりも多くのトレー、好ましくは4つ以上のトレーを重ね合わせて1つのこのような搬送容器内に挿入することができるように寸法設定されている。
【0022】
高さ方向で測定したトレーの高さは、底板の下縁部から壁の上縁部にまで最短15mm~最長30mm、好ましくは最短17.5mm~最長25mm、好ましくは最短20mm~最長23mm、好ましくは22mmである。トレーが付加的に脚要素を有している場合、この脚要素を含むトレーの高さは、好ましくは、最短23mm~最長30mm、好ましくは最短24mm~最長28mm、好ましくは26mmである。
【0023】
第1の幅間隔は、好ましくは、最短6mm~最長12mm、好ましくは9mmである。第2の幅間隔は、好ましくは、最短26mm~最長30mm、好ましくは28mmである。第3の幅間隔は、好ましくは、最短36mm~最長42mm、好ましくは39mmである。複数の空隙のうちのただ1つの空隙は、好ましくは、トレーの長手方向で測定した最短6mm~最長12mm、好ましくは9mmの延在長さ、つまり、内法の幅を有している。好ましくは、全ての空隙が同一に形成されている。
【0024】
本発明の一改良形態によれば、トレーは、少なくとも1つの保持構造部として2つの保持構造部を有しており、これら2つの保持構造部は、幅方向に相並んで配置されており、長手方向で第1の幅区分から第2の幅区分に延在する分離壁によって互いに分離されていることが特定されている。つまり、トレーは、全部で2つの保持構造部を有している。この場合、特にそれぞれ2つの保持位置も幅方向に相並んで配置されている。したがって、トレーは、2列の医療用中空体を幅方向に相並べて収容することができる。このことは、両方の列の中空体がそれぞれ対を成して、中空体の長手方向で見て相前後してトレー内に配置されていることを意味している。こうして、トレーは、多数の医療用中空体を極めて機能的に整然と収容することができる。
【0025】
分離壁は、好ましくは、高さ方向で壁の上縁部にまで延在しており、つまり、壁と同じ高さに形成されている。
【0026】
本発明の一改良形態によれば、少なくとも1つの保持構造部の第1の保持壁は、壁の長手方向区分および分離壁から選択された端壁から第3の幅間隔によって離間させられていることが特定されている。このことは、好ましくは、トレーが2つの保持構造部を有しているとき、トレーの両方の保持構造部に対して云える。この場合、両方の保持構造部のうちの一方の保持構造部では、端壁が、壁の長手方向区分であり、両方の保持構造部のうちの他方の保持構造部では、端壁が、両方の保持構造部を互いに分離する分離壁である。有利には、医療用中空体がそのピストンロッドを有していると、第1の保持壁と端壁との間に配置された領域にこのようなピストンロッドを収容することができる。
【0027】
本発明の一改良形態によれば、壁の幅区分は、それぞれ第2の保持壁とスペーサの列との間に空所を有していることが特定されている。この空所によって、有利には、グリッパーとの簡単な係合または手を使う場合には手、例えば指との簡単な係合が可能となり、これによって、特に縁側に配置される医療用中空体も確実かつ容易にトレー内に挿入することができ、また、再び取り出すことができる。
【0028】
空所は、好ましくは上向きに開放しており、つまり、底板と反対側の開放した端部を有している。
【0029】
本発明の一改良形態によれば、底板は、スペーサの列の領域に凸設部を有していることが特定されている。特に、底板は、スペーサの領域に平面と異なる形状、特に上向きの湾出部を有していてよい。スペーサは凸設部に配置されている。この凸設部は、空隙の領域に、トレーの残りの底面から段付けられた医療用中空体用の載置領域を提供しているため、医療用中空体は、特に第2の保持壁とスペーサの列との間の領域で底面に載置されないようになっている。この場合、中空体をそこで特に簡単に捕捉する、特に掴むことができる。さらに、凸設部によって、トレーが構造的に補強され、これによって、このトレーが特に高い安定性を有するようになる。底板の下面では、上側の凸設部が凹設部を成しており、そして、この凹設部によって、手を使うにせよ、機械を使うにせよ、トレー自体の特に簡単な掴みおよび取扱いが可能となる。特に上側に形成された凸設部は、下側に係合溝を形成しており、この係合溝によって、特に搬送容器からのトレーの容易な取出しが可能となる。
【0030】
本発明の一改良形態によれば、スペーサは、平面図で見て細長く形成されていることが特定されている。これは、スペーサの特に単純で簡単に製作することができる構成を成している。
【0031】
代替的に、好ましくは、スペーサは、平面図で見て十字形に形成されていることが特定されている。これによって、スペーサは、その十字形の構造に基づきトレーの補強ひいては安定性に貢献することにより、医療用中空体を離間させることに対して付加的な付加機能を満たしている。特にこの構造補強に基づき、多数のトレー相互の高い積重ねが可能となる。
【0032】
本発明の一改良形態によれば、底板はその下面に脚要素を有していることが特定されている。好適な構成では、トレーは、底板の下面に4つの脚要素、特に各々の角隅に1つの脚要素を有していてよい。脚要素は、下面から(測地的に下向きに)突出している。したがって、脚要素は、トレーを起立させることができる起立要素を形成している。この場合、底板の下面は、トレーが起立している起立平面から離間させられている。好ましくは、脚要素は、底板の外側の縁部から壁の壁厚さのうちの少なくとも一部の分だけ、内方にずらされて配置されている。特に好ましくは、脚要素は、正確に壁の壁厚さの分だけ内方にずらされて配置されている。特にこれによって、複数のトレー相互の安定した積重ねが可能となる。この場合、それぞれ上側に位置するトレーの脚要素が、その下側に位置するトレーの収容容積内に係合していて、その際、好ましくは、安定した状態で壁の内面に接触している。脚要素のこの特に正確な座りによって、好ましくは、積み重ねられたトレー同士が互いに相対的に横滑りしてしまうことが有効に阻止されている。
【0033】
本発明の一改良形態によれば、トレーは、一体形にかつ一貫した材料で形成されていることが特定されている。こうして、トレーは、特に簡単かつ廉価に、特に射出成形によって製作することができる。
【0034】
好ましくは、トレーは、一体形にかつ一貫した材料で、好ましくはプラスチックから形成されている。したがって、トレーは、特に簡単かつ廉価に、特に射出成形によって製作することができる。プラスチックは、好ましくは、オートクレーブ処理可能なプラスチック、機械洗浄可能なプラスチック、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネートおよびポリプロピレンから成る群から選択されている。特に、これらのプラスチックは、特に洗浄機械によるトレーの簡単な清浄化を可能にする。この場合、トレーは、好ましくはオートクレーブ処理可能でもある。特に、これによって、トレーの再利用、特に再生プロセスでのトレーの使用が可能となる。
【0035】
また、本発明には、本発明に係るトレーが属しているか、または前述した複数の実施例のうちの1つの実施例に記載したトレーであって、所定の医療用中空体、特にトレーと共に好ましく使用することができる上述した複数の医療用中空体のうちの所定の医療用中空体と組み合わせたトレーが属している。医療用中空体は、筒区分とフランジ領域とを有している。医療用中空体がトレー内に配置されている場合、フランジ領域は、第1の保持壁と第2の保持壁との間に配置されている。この場合、フランジ領域は、好ましくは、第2の貫通部のうちの、医療用中空体に割り当てられた第2の貫通部の後ろ側に係合している。筒区分は、トレーの幅方向で第2の貫通部を通して、医療用中空体に割り当てられた第2の貫通部に割り当てられた空隙内に延在している。こうして、医療用中空体は、トレー内に安定して安全に保持されている。特に、医療用中空体は、トレー内で横滑りすることもないし、トレー内に収容された別の医療用中空体に接触することもない。こうして、特にトレー内に配置された医療用中空体同士の間でのガラス同士の接触が回避される。
【0036】
医療用中空体のフランジは、特にフィンガーグリップまたはバックストップ(Backstop)であってよい。医療用中空体は、(特にその外径に応じて)少なくとも空隙内、場合によっては少なくとも第2の貫通部内に遊びを伴って配置されている。トレーの寸法は、好ましくは、トレー内に配置すべき最大の医療用中空体に適合されており、こうして、この最大の医療用中空体を、まさにしっかりとしたクランプなしで、好ましくは僅かな遊びを伴って保持位置に配置することができる。医療用中空体がシリンジとして形成されている場合には、シリンジの注射端部が、好ましくは、スペーサの列と後方の端壁との間に配置されている。なお、この場合、後方の端壁は、スペーサの列がどの保持構造部に割り当てられているかに応じて、壁の長手方向区分および分離壁から選択されている。したがって、分離壁が、特に両方の保持構造部のうちの第1の保持構造部に対しては後方の端壁となり、両方の保持構造部のうちの第2の保持構造部に対しては前方の端壁となる。
【0037】
本発明の一改良形態によれば、医療用中空体のピストンロッドが、第1の貫通部を通して端壁の方向に延在していることが特定されている。したがって、第3の幅間隔は、特にピストンロッドを配置するために提供されている。
【0038】
以下に、本発明を図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】
図1に示したA-A線に沿ったトレーの第1の実施例の横断面図。
【
図3】医療用中空体と組み合わせた、互いに積み重ねられた第2の実施例による複数のトレーを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、複数の医療用中空体を収容するように構成されたトレー1の第1の実施例が示してある。このトレー1は、上面5と下面7とを有する底板3を有している。上面5には、トレー1の外側の縁部9に沿って全周囲に延在する壁11が配置されている。底板3と壁11とは、医療用中空体を収容するための収容容積13を画定している。トレー1は、長手方向Lに沿った有限長さと、長手方向Lに対して垂直に延びる幅方向Bに沿った有限幅とを有している。トレー1は、さらに、医療用中空体を保持するための保持構造部15を有している。
【0041】
トレー1は、図示の構成では、特に第1の保持構造部15と第2の保持構造部15’とを有している。これら両方の保持構造部15,15’は同一に形成されているため、以下、これについては、第1の保持構造部15の構成のみを詳しく説明することにする。第2の保持構造部15’の対応する要素は、それぞれアポストロフィを付した符号で図示してある。
【0042】
保持構造部15は第1の保持壁17を有している。この第1の保持壁17は、壁11の第1の幅区分21から出発して、壁11の対向した第2の幅区分23にまで長手方向Lに延在している。第1の保持壁17には、互いに離間させられた第1の貫通部25が形成されている。保持構造部17は、さらに、第1の保持壁17から第1の幅間隔ΔB1により離間させられた第2の保持壁19を有している。この第2の保持壁19は、第1の保持壁17に対して平行に第1の幅区分21から第2の幅区分23にまで延在している。第2の保持壁19には、互いに離間させられた第2の貫通部27が形成されている。第2の貫通部27の各々は、この各々に割り当てられたそれぞれ1つの第1の貫通部25に位置合わせされている。保持構造部15は、さらに、保持壁17,19に対して第2の幅間隔ΔB2により離間させられた、複数のスペーサ33の列29を有している。この列29は、保持壁17,19に対して平行に延在しており、スペーサ33は互いに離間させられていて、複数の空隙31を形成している。スペーサ33は、各々の空隙31が、それぞれ1つの第1の貫通部25および第2の貫通部27と位置合わせされるように、貫通部25,27に対してずらされて配置されている。こうして、それぞれ1つの空隙31と、この空隙31に割り当てられた第1の貫通部25と、この空隙31に割り当てられた第2の貫通部27とによって、1つの医療用中空体に対する1つの保持位置35が規定されている。この保持位置35は幅方向Bに延在している。
【0043】
第1の幅間隔ΔB1は第2の幅間隔ΔB2よりも短い。
【0044】
第1の保持構造部15と第2の保持構造部15’とは、幅方向Bに相並んで配置されていて、長手方向Lで第1の幅区分21から第2の幅区分23に延在する分離壁37によって互いに分離されている。
【0045】
第1の保持壁17は、端壁39から第3の幅間隔ΔB3によって離間させられている。この場合、端壁39は壁11の長手方向区分41である。第2の保持構造部15’の第1の保持壁17’も同じく、別の端壁39’から第3の幅間隔ΔB3によって離間させられている。この場合、別の端壁39’は分離壁37である。
【0046】
壁11の幅区分21,23は、それぞれ第2の保持壁19とスペーサ33の列29との間に空所43を有している。
【0047】
底板3は、スペーサ33の列29の領域に凸設部45を有している。この場合、この凸設部45にスペーサ33が配置されている。
【0048】
図1に示した第1の実施例では、スペーサ33は、平面図で見て十字形に形成されている。
【0049】
底板3はその下面7に、この下面7から突出した脚要素47を有している。この脚要素47は、好ましくは、底板3の外側の縁部9から壁11の壁厚さのうちの少なくとも一部の分だけ、好ましくは壁厚さの分だけ内方にずらされて配置されている。
【0050】
トレー1は、特に一体形にかつ一貫した材料で、好ましくはプラスチックから形成されている。このプラスチックは、好ましくは、オートクレーブ処理可能なプラスチック、機械洗浄可能なプラスチック、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリカーボネートおよびポリプロピレンから成る群から選択されている。
【0051】
図2には、
図1に示したA-A線に沿った第1の実施例によるトレー1の横断面図が示してある。
図2には、特に第1の幅間隔ΔB1、第2の幅間隔ΔB2および第3の幅間隔ΔB3が記入してある。さらに、
図2には、高さ方向に測定した、脚要素47を含むトレー1の高さが26mmであることが記入してある。なお、脚要素47を差し引いた高さは22mmである。
【0052】
図3には、複数の医療用中空体49と組み合わせた、互いに積み重ねられた第2の実施例による複数のトレー1が示してある。同一の要素および機能が同一の要素には、同一の符号が付してあるため、これについては、前述した記載を参照されたい。ただし、解りやすくするため、ただ1つの中空体49にのみ相応の符号が付してあり、この中空体49に関係する別の符号も付してある。
【0053】
特に脚要素47によって、個々のトレー1が互いに相対的に横滑りしてしまうリスクをはらむことなく、複数のトレー1相互の安定した積重ねが可能となる。このためには、特にそれぞれ上側に位置するトレー1の脚要素47が、それぞれその下側に位置するトレー1の収容容積13内に係合していて、好ましくは、各々の壁11の内面に接触している。
【0054】
トレー1のこの第2の実施例では、スペーサ33,33’が、平面図で見て細長く形成されている。
【0055】
医療用中空体49は、本明細書では、特にシリンジとして形成されている。以下では、ただ1つの医療用中空体49を詳しく説明する。医療用中空体49は、好ましくは、本明細書では互いに同一に形成されているかまたは少なくとも類似して形成されている。本明細書において詳しく考察する医療用中空体49は、筒区分51とフランジ領域53とを有している。このフランジ領域53は、第1の保持壁17と第2の保持壁19との間に配置されている。この場合、フランジ領域53は、医療用中空体49に割り当てられた第2の貫通部27の後ろ側に係合している。筒区分51は、トレー1の幅方向Bで第2の貫通部27を通して空隙31内に延在している。この空隙31は第2の貫通部27に割り当てられており、そして、この第2の貫通部27自体は医療用中空体49に割り当てられている。
【0056】
医療用中空体49のピストンロッド55は、第1の貫通部25を通して端壁39の方向に延在している。
【0057】
フランジ領域53は、好ましくはフィンガーグリップまたはバックストップとして形成されている。
【0058】
しかしながら、本明細書において選択した図面と異なり、まだ組み付けられていない、つまり、特にまだフランジ領域53および/またはピストンロッド55を有していない医療用中空体49が、トレー1内に収容されてもよい。
【国際調査報告】