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特表2023-530003抗Claudin18.2抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】抗Claudin18.2抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230705BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230705BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230705BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230705BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230705BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61K38/19
G01N33/53 D
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577518
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2021100870
(87)【国際公開番号】W WO2021254481
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】202010570517.X
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519274183
【氏名又は名称】イノベント バイオロジクス(スーチョウ)カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ショアイシアン
(72)【発明者】
【氏名】リー リー
(72)【発明者】
【氏名】コアン チョー
(72)【発明者】
【氏名】ワン チエ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE06
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB21
4C076BB24
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA44
4C084CA53
4C084DA01
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA21
4C084MA23
4C084MA24
4C084MA31
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB17
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、Claudin18.2と特異的に結合する新規の抗体と抗体断片、および前記抗体または抗体断片を含有する組成物に関する。また、本発明は、前記抗体またはその抗体断片をコードする核酸とそれを含む宿主細胞、および関連の使用に関する。さらに、本発明は、これらの抗体および抗体断片の治療・診断的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片であって、
(i) 配列番号4に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号9に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(ii) 配列番号15または21に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号19または22に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(iii) 配列番号26または27に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号31または32に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(iv) 配列番号36または37に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号40または41に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(v) 配列番号45または48に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号47または49に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(vi) 配列番号53または56に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号55または57に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(vii) 配列番号61または66に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号65または68に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(viii) 配列番号72または73に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号75または76に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(ix) 配列番号80または85に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号83または86に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
を含む抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片であって、
(i) それぞれアミノ酸配列の配列番号1、2および3に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号6、7および8に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(ii) それぞれアミノ酸配列の配列番号12、13および14に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号16、17および18に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(iii) それぞれアミノ酸配列の配列番号12、20および14に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号16、17および18に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(iv) それぞれアミノ酸配列の配列番号12、93および14に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号16、17および18に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(v) それぞれアミノ酸配列の配列番号23、24および25に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、29および30に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(vi) それぞれアミノ酸配列の配列番号33、34および35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号38、17および39に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(vii) それぞれアミノ酸配列の配列番号42、43および44に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号38、17および46に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(viii) それぞれアミノ酸配列の配列番号50、51および52に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、17および54に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(ix) それぞれアミノ酸配列の配列番号58、59および60に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号62、63および64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(x) それぞれアミノ酸配列の配列番号58、59および60に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号67、63および64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xi) それぞれアミノ酸配列の配列番号58、59および60に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号11、63および64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xii) それぞれアミノ酸配列の配列番号69、70および71に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号38、17および74に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xiii) それぞれアミノ酸配列の配列番号77、78および79に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、81および82に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xiv) それぞれアミノ酸配列の配列番号77、84および79に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、81および82に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xv) それぞれアミノ酸配列の配列番号77、94および79に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、81および82に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
を含む抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含み、ここで、前記重鎖可変領域は、
(i)配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80もしくは85から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(ii)配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80もしくは85から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(iii)配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80もしくは85から選択されるアミノ酸配列と比べて、1つもしくは複数(好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、好ましくは、前記アミノ酸変異がCDR領域に生じず、かつ/または、
前記軽鎖可変領域は、
(i)配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83、86から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(ii)配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83、86から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(iii)配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83、86から選択されるアミノ酸配列と比べて、1つもしくは複数(好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、好ましくは、前記アミノ酸変異がCDR領域に生じない、
抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
請求項1または2に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、
(i)配列番号4に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号9に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(ii)配列番号15もしくは21に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号19もしくは22に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(iii)配列番号15に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号19に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(iv)配列番号21に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号22に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(v)配列番号26もしくは27に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号31もしくは32に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(vi)配列番号26に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号31に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(vii)配列番号27に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号32に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(viii)配列番号36もしくは37に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号40もしくは41に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(ix)配列番号36に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号40に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(x)配列番号37に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号41に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xi)配列番号45もしくは48に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号47もしくは49に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xii)配列番号45に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号47に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xiii)配列番号48に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号49に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xiv)配列番号53もしくは56に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号55もしくは57に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xv)配列番号53に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号55に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xvi)配列番号56に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号57に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xvii)配列番号61もしくは66に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号65もしくは68に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xviii)配列番号61に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号65に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xix)配列番号66に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号68に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xx)配列番号72もしくは73に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号75もしくは76に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxi)配列番号72に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号75に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxii)配列番号73に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号76に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxiii)配列番号80もしくは85に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号83もしくは86に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxiv)配列番号80に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号83に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxv)配列番号85に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号86に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
を含む抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
請求項5に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、
前記重鎖定常領域HCは、
(i)配列番号5から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、
(ii)配列番号5から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(iii)配列番号5から選択されるアミノ酸配列と比べて、1つもしくは複数(好ましくは20個以下または10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、かつ/または、
前記軽鎖定常領域LCは、
(i)配列番号10から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、
(ii)配列番号10から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(iii)配列番号10から選択されるアミノ酸配列と比べて、1つもしくは複数(好ましくは20個以下または10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなる、
抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記アミノ酸変異は、前記重鎖定常領域のFc領域に生じる、請求項5または6に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体は、IgG1形態、IgG2形態、IgG3形態もしくはIgG4形態の抗体または抗原結合断片であり、好ましくは、前記抗体は、IgG1形態の抗体または抗原結合断片である、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体は、モノクローナル抗体である、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体は、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体である、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体(例えば、scFv)、(Fab’)、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、dAb(domain antibody)または線状抗体という抗体断片から選択される、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片であって、前記抗体またはその抗原結合断片は、
(i)高い親和性でCLDN18.2(例えば、ヒトCLDN18.2)と結合するが、CLDN18.1(例えば、ヒトCLDN18.1)と結合しないこと、
(ii)約15nMよりも小さく、好ましくは、約10nM、9.5nM、9nM、8.5nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4.5nM、4nM、3.5nM、3nM以下である平衡解離定数(K)でヒトCLDN18.2と結合すること、
(iii)細胞表面のCLDN18.2と結合するが、細胞表面のCLDN18.1と結合しないこと、
(iv)ADCC活性またはCDC活性、例えば、既知の抗体(例えば、Zmab)に相当するADCC活性またはCDC活性、或いは、それ以上のADCC活性またはCDC活性を有すること、
(v)腫瘍細胞、例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞を抑制すること、
(vi)腫瘍増殖を効果的に抑制することができ、腫瘍抑制率が約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%以上であること、
という性質の1つまたは複数を有する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片における、軽鎖可変領域または重鎖可変領域、或いは軽鎖または重鎖をコードする、単離された核酸。
【請求項14】
好ましくは発現ベクターである、請求項13に記載の核酸を含むベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の核酸または請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、前記宿主細胞は、原核または真核細胞であり、より好ましくは、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、293細胞やCHO細胞、例えば、CHO-S細胞やHEK293細胞)、或いは、前記抗体またはその抗原結合断片の調製に適用される他の細胞から選択される、宿主細胞。
【請求項16】
CLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片を調製する方法であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸の発現に適する条件下で、請求項15に記載の宿主細胞を培養し、場合により、前記抗体またはその抗原結合断片を単離することを含み、場合により、前記宿主細胞から前記CLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片を回収することさらに含む、方法。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片と、細胞傷害剤などの他の物質を含む、免疫複合体。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片或いは請求項17に記載の免疫複合体と、場合により、1種または複数種の他の治療剤、例えば、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤と、場合により、薬用補助材料と、を含む、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~12のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片或いは請求項17に記載の免疫複合体と、1種または複数種の他の治療剤、例えば、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤と、を含む、医薬組合せ。
【請求項20】
被験者における腫瘍を予防または治療する方法であって、前記被験者に有効量の請求項1~12のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片、或いは請求項17に記載の免疫複合体、或いは請求項18に記載の医薬組成物、或いは請求項19に記載の医薬組合せを投与することを含む、方法。
【請求項21】
被験者においてADCCおよび/またはCDCを誘導する方法であって、前記被験者に有効量の請求項1~12のいずれか一項に記載のCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片、或いは請求項17に記載の免疫複合体、或いは請求項18に記載の医薬組成物、或いは請求項19に記載の医薬組合せを投与することを含み、好ましくは、前記被験者は腫瘍に罹患している、方法。
【請求項22】
前記腫瘍は癌であり、好ましくは、前記癌は、レベル(例えば、核酸またはタンパク質レベル)が上昇したCLDN18.2を有し、例えば、前記癌は、膵臓癌または胃癌である、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
請求項20~22のいずれか一項に記載の方法であって、患者に1種または複数種の療法、例えば、治療方式および/または他の治療剤を投与することをさらに含み、好ましくは、前記治療方式は、手術治療および/または放射線治療を含み、前記他の治療剤は、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤から選択される、方法。
【請求項24】
試料におけるClaudin18.2を検出する方法であって、前記方法は、
(a)試料を請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合断片或いは請求項17に記載の免疫複合体と接触することと、
(b)前記抗体またはその抗原結合断片とCLDN18.2との複合物の形成を検出することと、
を含み、場合により、前記抗体は検出可能に標識される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、CN出願番号が202010570517.X、出願日が2020年6月19日である出願に基づくとともに、その優先権を主張するものであり、当該CN出願に開示された内容は、全体として本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、Claudin18.2と特異的に結合する新規の抗体と抗体断片、および前記抗体または抗体断片を含有する組成物に関する。また、本発明は、前記抗体またはその抗体断片をコードする核酸とそれを含む宿主細胞、および関連の使用に関する。さらに、本発明は、これらの抗体および抗体断片の治療・診断的使用に関する。
【0003】
Claudinsは、タンパク質ファミリーの一つであり、細胞のタイトジャンクションを構成する重要な組成部分である。それらは、細胞間の分子運動を制御する細胞間バリアを確立し、細胞間の分子の運動を制御することができる。Claudinsファミリータンパク質は、4回膜貫通ドメインを有し、そのN末端とC末端は、いずれも細胞質に含まれる。異なるClaudinsタンパク質は、異なる組織において発現され、その機能の変更がそれぞれの組織の癌形成に関連し、例えば、Claudinー1は大腸癌に発現されるとともに、予後的価値を有し、Claudinー18は胃癌に発現され、Claudinー10は肝細胞癌に発現される。Claudinsは、細胞膜表面タンパク質として、各種の治療戦略の有用な標的である。
【0004】
Claudinー18のアイソタイプ2(Claudin 18.2またはCLDN18.2)は、高選択的細胞系マーカーであり、その正常組織での発現は、胃粘膜が分化した上皮細胞に厳密に限られるが、胃幹細胞領域に発現されない。CLDN18.2は、かなり多くの原発性胃癌に発現されているとともに、胃転移の癌組織にその発現レベルを保っている。胃癌以外、膵臓癌にもCLDN18.2の発現が見られ、これらの癌を治療する理想的な標的分子である(Singh, P., Toom, S. & Huang, Y. Anti-CLDN18.2 antibody as new targeted therapy for advanced gastric cancer. J Hematol Oncol 10, 105 (2017). https://doi.org/10.1186/s13045-017-0473-4)。
【0005】
満足されない臨床腫瘍治療の要求が大量存在しているため、Claudin18.2を標的とする薬物が非常に必要である。従来技術には、Claudin18.2を対象とするモノクローナル抗体が既にいくつか開発されたが、これらの抗体は、キメラ抗体が多く、潜在的に比較的高い免疫原性リスクを有し、且つ親和性が比較的低く、特異性が悪く、ADCC活性が一般的である。
【0006】
従って、比較的低い免疫原性を有し、Claudin18.2との結合親和性がより強く、特異性が良く、ADCCとCDC活性が強く、且つより良い抗腫瘍活性を有する、Claudin18.2を対象とする新たな抗体をさらに開発する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの態様において、本発明は、本発明に記載の3つの重鎖可変領域CDRと3つの軽鎖可変領域CDRを含む、CLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片に関する。
【0008】
いくつかの態様において、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片は、本発明に記載の重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を含む。
【0009】
いくつかの態様において、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片は、本発明に記載の重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域をさらに含む。
【0010】
いくつかの態様において、本発明、さらに以下の実施形態に関する。
【0011】
1、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、ここで、前記抗体は、IgG1形態、IgG2形態、IgG3形態もしくはIgG4形態の抗体または抗原結合断片であり、好ましくは、IgG1形態の抗体または抗原結合断片である。
【0012】
2、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、ここで、前記抗体はモノクローナル抗体である。
【0013】
3、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、ここで、前記抗体は、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはキメラ抗体である。
【0014】
4、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、ここで、前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体(例えば、scFv)、(Fab’)、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、dAb(domain antibody)または線状抗体という抗体断片から選択される。
【0015】
5、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片であって、ここで、前記抗体またはその抗原結合断片は、
(i)高い親和性でCLDN18.2(例えば、ヒトCLDN18.2)と結合するが、CLDN18.1(例えば、ヒトCLDN18.1)と結合しないこと、
(ii)約15nMよりも小さく、好ましくは、約10nM、9.5nM、9nM、8.5nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4.5nM、4nM、3.5nM、3nM以下である平衡解離定数(K)でヒトCLDN18.2と結合すること、
(iii)細胞表面のCLDN18.2と結合するが、細胞表面のCLDN18.1と結合しないこと、
(iv)ADCC活性またはCDC活性、例えば、既知の抗体(例えば、Zmab)に相当するADCC活性またはCDC活性、或いは、それ以上のADCC活性またはCDC活性を有すること、
(v)腫瘍細胞、例えば、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞を抑制すること、
(vi)腫瘍増殖を効果的に抑制することができ、腫瘍抑制率が約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%以上であること、
という性質の1つまたは複数を有する。
【0016】
6、単離された核酸であって、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片における軽鎖可変領域または重鎖可変領域、或いは軽鎖または重鎖をコードする、核酸。
【0017】
7、本発明に係る核酸を含むベクターであって、好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターである。
【0018】
8、本発明に係る核酸またはベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、前記宿主細胞は、原核または真核細胞であり、より好ましくは、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、293細胞やCHO細胞、例えば、CHO-SやHEK293細胞)、或いは、抗体またはその抗原結合断片の調製に適用される他の細胞から選択される。
【0019】
9、CLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片を調製する方法であって、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸の発現に適する条件下で、本発明の宿主細胞を培養し、場合により、前記抗体またはその抗原結合断片を単離することを含み、場合により、前記宿主細胞から、前記CLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片を回収することさらに含む、方法。
【0020】
10、免疫複合体であって、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片と、細胞傷害剤などの他の物質とを含む、免疫複合体。
【0021】
11、医薬組成物であって、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片または本発明の免疫複合体と、場合により、1種または複数種の他の治療剤、例えば、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物や免疫調節剤と、場合により、薬用補助材料と、を含む医薬組成物。
【0022】
12、医薬組合せであって、本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片または本発明の免疫複合体と、1種または複数種の他の治療剤、例えば、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物や免疫調節剤と、を含む医薬組合せ。
【0023】
13、被験者における腫瘍を予防または治療する方法であって、前記被験者に有効量の本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片、或いは本発明に係る免疫複合体、医薬組成物または医薬組合せを投与することを含む、方法。
【0024】
14、被験者においてADCCおよび/またはCDCを誘導する方法であって、前記被験者に有効量の本発明に係るCLDN18.2と結合する抗体またはその抗原結合断片、或いは本発明に係る免疫複合体、医薬組成物または医薬組合せを投与することを含む、方法。
【0025】
15、腫瘍を予防または治療し、および/または、ADCCおよび/またはCDCを誘導するための医薬組成物または医薬組合せの調製における、本発明の抗体または免疫複合体の使用。
【0026】
16、本発明の方法または使用であって、ここで、前記腫瘍は癌であり、好ましくは、前記癌は、レベル(例えば、核酸またはタンパク質レベル)が上昇したCLDN18.2を有する。
【0027】
17、本発明の方法であって、患者に、1種または複数種の療法、例えば、治療方式および/または他の治療剤を投与することをさらに含み、好ましくは、治療方式は、手術治療および/または放射線治療を含み、他の治療剤は、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤から選択される、方法。
【0028】
18、本発明の使用であって、ここで、前記医薬または医薬組合せは、1種または複数種の療法、例えば、治療方式および/または他の治療剤と併用して被験者に投与することができ、好ましくは、治療方式は、手術治療および/または放射線治療を含み、他の治療剤は、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤から選択される。
【0029】
19、試料におけるCLDN18.2を検出する方法であって、
(a)試料を本発明に係る抗体またはその抗原結合断片と接触することと、
(b)前記抗体またはその抗原結合断片とCLDN18.2との複合物の形成を検出することと、を含み、場合により、前記抗体は検出可能に標識される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】抗CLDN18.2抗体が細胞表面のCLDN18.2と特異的に結合することを示す。
図2】抗CLDN18.2抗体が細胞表面のCLDN18.1と結合していないことを示す。
図3】抗CLDN18.2抗体のCHO-hCLDN18.2に対するレポーター遺伝子によるADCC活性を示す。
図4】ヒト化抗CLDN18.2抗体のCHO-hCLDN18.2に対するレポーター遺伝子によるADCC活性を示す。
図5】抗CLDN18.2抗体と、胃癌細胞株NUGC-4、胃癌細胞株KATO III-hCLDN18.2および膵臓癌細胞株DAN-G-hCLDN18.2との結合を示す。
図6】抗CLDN18.2抗体のCDC活性検出を示す。
図7】抗CLDN18.2抗体のADCC活性検出を示す。
図8】抗CLDN18.2抗体の膵臓癌マウスモデルにおける抗腫瘍効果を示す。
図9】抗CLDN18.2抗体の胃癌マウスモデルにおける抗腫瘍効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
I.定義
以下、本発明を詳細に説明するに先立ち、本明細書に記載される特定の方法学、形態または試薬が変更され得るため、本発明はそれらに限定されるものではないことが理解すべきである。また、本発明に使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとは意図せず、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されると理解すべきである。特に定義のない限り、本明細書に使用される技術・科学用語は、当業者による通常の理解と同じ意味を有する。
【0032】
本明細書を解釈するために次の定義が使用され、また、適切であるならば、単数形で使用される用語には複数の場合が含まれてもよく、その逆も同様である。本明細書に使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定するためのものではないと理解しなければならない。
【0033】
用語「約」は、数値と共に使用される場合、下限として指定数値より5%小さく、上限として指定数値より5%大きい範囲における数値を含むことを意味する。
【0034】
本明細書に使用されるように、用語「および/または」は、選択可能なオプションのうちのいずれか1つ、または選択可能なオプションの2つまたは複数を指す。
【0035】
本明細書に使用されるように、用語「含有する」または「含む」とは、前記要素、整数またはステップを含むが、任意の他の要素、整数またはステップを排除しないことを意味する。本明細書において、用語「含有する」または「含む」が使用される場合、特に断りのない限り、前記他の要素、整数またはステップの組合せの場合も含む。例えば、ある具体的な配列の抗体可変領域を「含む」ことが言及される場合、当該具体的な配列からなる抗体可変領域を含むことも意図する。
【0036】
本明細書に使用される用語「CLAUDIN」または「CLDN」は、細胞間のタイトジャンクション構造を決定する最も重要な骨格タンパク質であり、接着接合に関与するとともに、腫瘍細胞の転移と侵襲に重要な役割を果たす。Claudinタンパク質は、哺乳動物上皮と内皮細胞に広く存在しており、主に上皮細胞側面および基底細胞質膜上に分布している。異なるClaudinタンパク質は、異なる組織においてそれぞれ特異的発現を有し、そのうち、Claudin18(CLDN18)遺伝子は、3q22.3に位置づけられ、分子量が24kDaであり、261個のアミノ酸残基を有し、Claudinsスーパーファミリーメンバーに属し、そのタンパク質構成が、2つの細胞外ループと4つの膜透過領域を有する。ヒトCLDN18またはClaudin18タンパク質の2つのサブタイプは、それぞれClaudin18.1またはCLDN18.1(UniProt ID:P56856-1)およびClaudin18.2またはCLDN18.2(UniProt ID:P56856-2)であり、両方のタンパク質の一次構造配列において、N末端シグナルペプチドから細胞外ループ1(Loop1)構造までのある位置でのアミノ酸残基のみが異なり、特に細胞外ループ1上に、CLDN18.1とCLDN18.2は、8つのアミノ酸のみが異なる。CLDN18の2種類のサブタイプタンパク質の種間配列相同性も非常に高い。そのうち、CLDN18.2の細胞外ループ1は、ヒト、マウス、アカゲザルなどの異なる生物に配列が完全に一致し、ヒトとマウスのCLDN18.2タンパク質の相同性が84%に達することで、CLDN18.2タンパク質配列は極めて保存性の高いことが明らかになった(O.Tureci.ら.,Gene 481:83-92,2011)。CLDN18.2またはその任意の変異体とアイソタイプは、それらを天然的に発現する細胞または組織から単離し、或いは、この分野でよく知られている技術および/または本明細書に記載の技術により組換えて産生することができる。一実施形態において、本明細書に記載のCLDN18.2は、ヒトCLDN18.2である。
【0037】
本明細書に使用される用語「抗CLDN18.2抗体」、「抗CLDN18.2」、「CLDN18.2抗体」、または「CLDN18.2と結合する抗体」とは、十分な親和性で(ヒト)CLDN18.2と結合することにより、(ヒト)CLDN18.2を標的とする治療剤として用いることができる抗体である。一実施形態において、前記(ヒト)CLDN18.2抗体は、体外または体内で高い親和性で(ヒト)CLDN18.2と結合する。一実施形態において、前記(ヒト)CLDN18.2抗体は、CLDN18.1と結合しない。一実施形態において、前記(ヒト)CLDN18.2抗体は、CLDN18.2を発現する細胞と結合するが、CLDN18.1を発現する細胞と結合しない。いくつかの実施形態において、前記結合は、例えば、放射免疫測定(RIA)、バイオレイヤー干渉測定法(BLI)、MSD測定法または表面プラズモン共鳴法(SPR)またはフローサイトメトリーで測定される。
【0038】
用語「抗体断片」は、完全な抗体の一部を含む。好ましい実施形態において、抗体断片は抗原結合断片である。
【0039】
「抗原結合断片」とは、完全な抗体の一部を含むとともに、完全な抗体の結合する抗原と結合する、完全な抗体とは異なる分子を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、dAb(domain antibody)、線状抗体、単鎖抗体(例えば、scFv)、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、二価抗体またはその断片、或いはラクダ科抗体を含むが、これらに限定されない。
【0040】
用語「抗原」は、免疫応答を引き起こす分子を指す。このような免疫応答は、抗体の産生または特異性免疫細胞の活性化に関係し、或いは両方に関係する可能性がある。当業者であれば、ほぼ全てのタンパク質またはペプチドを含む大分子は、いずれも抗原として利用できると理解される。また、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAから誘導されてもよい。本明細書に使用されるように、用語「エピトープ」とは、抗原(例えば、CLDN18.2)における抗体分子と特異的に相互作用する部分を指す。
【0041】
参照抗体と「同一のまたは重複するエピトープと結合する抗体」とは、競合測定において50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の前記参照抗体とその抗原との結合を阻害する抗体であり、逆に言えば、参照抗体は、競合測定において50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の当該抗体とその抗原との結合を阻害する。
【0042】
参照抗体と競合的にその抗原に結合する抗体とは、競合測定において50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の前記参照抗体とその抗原との結合を阻害する抗体である。逆に言えば、参照抗体は、競合測定において50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の当該抗体とその抗原との結合を阻害する。1種の抗体が他種の抗体と競合するか否かを確定するために、種々の競合的結合測定が利用可能であり、これらの測定は、例えば、固相直接または間接放射免疫測定(RIA)、固相直接または間接酵素免疫測定(EIA)、サンドイッチ競合測定である。
【0043】
参照抗体とその抗原との結合を抑制(例えば、競合的抑制)する抗体とは、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の前記参照抗体とその抗原との結合を抑制する抗体である。逆に言えば、参照抗体は、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の当該抗体とその抗原との結合を抑制する。抗体とその抗原との結合は、親和性(例えば、平衡解離定数)で計測することができる。親和性の測定方法は、この分野で既知の内容である。
【0044】
参照抗体と同様または類似の結合親和性および/または特異性を示す抗体とは、参照抗体の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%以上の結合親和性および/または特異性を有する抗体である。これは、この分野での既知の任意の結合親和性および/または特異性の測定方法で測定することができる。
【0045】
「相補性決定領域」または「CDR領域」または「CDR」は、抗体可変ドメインにおける、配列において超可変であるとともに構造上に形成された所定のループ(「超可変ループ」)および/または抗原接触残基(「抗原接触点」)を含む領域である。CDRは、主に抗原エピトープに結合する役割を果たす。重鎖と軽鎖のCDRは通常、CDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれ、N末端から順に番号付けられる。抗体の重鎖可変ドメイン内に位置するCDRはHCDR1、HCDR2およびHCDR3と呼ばれ、抗体の軽鎖可変ドメイン内に位置するCDRはLCDR1、LCDR2およびLCDR3と呼ばれる。1つの所定の軽鎖可変領域または重鎖可変領域のアミノ酸配列において、各CDRの正確なアミノ酸配列の境界は、多くの公知の抗体CDR割り当てシステムのいずれか1つまたはその組合せにより正確に決定することができ、前記割り当てシステムは、例えば、抗体の三次元構造とCDRループのトポロジーに基づくChothia(Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883,Al-Lazikani et al.,「Standard conformations for the canonical structures of immunoglobulins」,Journal of Molecular Biology,273,927-948(1997))、抗体配列の可変性に基づくKabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th edition,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))、AbM(University of Bath)、Contact(University College London)、国際的ImMunoGeneTics database(IMGT)(www.imgt.cines.fr/で)、大量の結晶構造が利用されるアフィニティ伝播クラスタリング(affinity propagation clustering)に基づくNorth CDR定義を含む。
【0046】
例えば、CDRの決定方案によって、それぞれのCDRの残基は、以下の通りである。
【0047】
【表1】
【0048】
CDRは、参照CDRの配列(例えば、本発明の例示的なCDRのいずれか1つ)と同じKabat番号付け位置を有することで決定されてもよい。
【0049】
特に断りのない限り、本発明において、用語「CDR」または「CDR配列」は、上記のいずれか1つの方法で決定されるCDR配列を含む。
【0050】
特に断りのない限り、本発明において、抗体可変領域における残基位置(重鎖可変領域残基と軽鎖可変領域残基を含む)に言及する場合、Kabat番号付けシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))に基づく番号付け位置を指す。
【0051】
一実施形態において、本発明に係る抗体の重鎖可変領域CDRは、以下のルールで決定される。
【0052】
VH CDR1は、AbMルールで決定され、また、VH CDR2と3は、いずれもKabatルールで決定される。
【0053】
一実施形態において、本発明に係る抗体の軽鎖可変領域CDRは、Kabatルールで決定される。
【0054】
一実施形態において、本発明に係る抗体の重鎖可変領域CDRは、VH CDR1がAbMルールで、VH CDR2と3がいずれもKabatルールで、且つ、軽鎖可変領域CDRがKabatルールでそれぞれ確定される。
【0055】
異なる割り当てシステムによって得られた同一抗体の可変領域のCDRの境界は、差異があり得ると注意すべきである。即ち、異なる割り当てシステムで定義された同一抗体の可変領域のCDR配列には、違いがある。従って、本発明で定義された具体的なCDR配列により抗体が限定される場合、前記抗体の範囲には、可変領域配列が前記具体的なCDR配列を含むが、異なる方案(例えば、異なる割り当てシステムのルールまたは組合せ)が使用されるので、かかるCDR境界が本発明に定義された具体的なCDR境界と異なるような抗体も含まれる。
【0056】
異なる特異性を有する(即ち、異なる抗原の異なる結合部位を対象とする)抗体は、(同一の割り当てシステムにおいて)異なるCDRを有する。しかし、抗体によってCDRが異なるにもかかわらず、CDRにおいては、抗原との結合に直接関与するアミノ酸位置の数が限られている。Kabat、Chothia、AbM、ContactおよびNorth方法のうちの少なくとも2つにより、最小重複領域を決定して抗原結合用の「最小結合単位」を提供することができる。最小結合単位は、CDRの1つのサブ部分であってもよい。当業者に知られているように、抗体の構造とタンパク質のフォールディングによって、CDR配列の残り部分の残基を決定することができる。従って、本発明は、本明細書に提供されるいずれのCDRの変異体についても考慮する。例えば、1つのCDRの変異体において、最小結合単位のアミノ酸残基はそのままにしてもよいが、KabatまたはChothiaに基づいて定義された残りのCDR残基は、保存的なアミノ酸残基で置換されてもよい。
【0057】
用語「Fc領域」は、本明細書において免疫グロブリン重鎖のCH2とCH3の定常領域を定義するためであり、当該用語は、天然配列Fc領域と変異体Fc領域を含む。Fc領域は、免疫細胞表面の異なるFc受容体と結合することができ、CDC/ADCC/ADCP効果機能を引き起こすことができる。このようなエフェクター機能は一般的に、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)の関連が求められ、それに、例えば、本発明に開示される複数種の測定方法で評価することができる。
【0058】
「IgG形態の抗体」は、抗体の重鎖定常領域の属するIgG形態を指す。全ての同じタイプの抗体は、その重鎖定常領域がいずれも同じであり、異なるタイプの抗体は、その重鎖定常領域が異なる。例えば、IgG4形態の抗体は、その重鎖定常領域がIgG4からのものであることを指し、またはIgG1形式の抗体は、その重鎖定常領域がIgG1からのものであることを指す。
【0059】
「ヒト化」抗体は、非ヒトCDRからのアミノ酸残基とヒトFRからのアミノ酸残基を含む抗体を指す。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ほぼ全ての可変ドメインの少なくとも1つ、一般的に2つを含み、そのうち、全てまたはほぼ全てのCDR(例えば、CDR)は、非ヒト抗体に由来する部分に対応し、全てまたはほぼ全てのFRは、ヒト抗体に由来する部分に対応する。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含む。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化形態」は、ヒト化が行われた抗体を指す。
【0060】
「ヒト抗体」または「全ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」は、交換して使用されてもよく、ヒトまたはヒト細胞から生成され、または非ヒト由来のものから由来し、ヒト抗体ライブラリーや他のヒト抗体で配列がコードされた抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体についての当該定義には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体が明確に除外されている。
【0061】
本明細書に使用されるように、用語「結合」または「特異的に結合」は、結合作用が抗原に対して選択的であり、かつ好ましくないまたは非特異的な相互作用と区別できることを意味する。抗原結合部位の特定の抗原との結合能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)またはこの分野における既知の通常の結合測定法、例えば、放射免疫測定(RIA)やバイオレイヤー干渉測定法やMSD測定法や表面プラズモン共鳴法(SPR)で測定することができる。
【0062】
「免疫複合体」は、1つまたは複数の他の物質(細胞傷害剤または標識を含むが、これらに限定されない)と複合した抗体である。
【0063】
本明細書に記載の用語「治療剤」は、癌などの腫瘍の治療または予防に有効ないずれの物質も含み、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤(例えば、免疫抑制剤)を含む。
【0064】
用語「細胞傷害剤」は、本発明において細胞機能を抑制または阻止し、および/または細胞死または破壊を引き起こす物質を指す。
【0065】
「化学療法剤」は、免疫系疾患の治療に有用な化学化合物を含む。
【0066】
用語「小分子薬物」とは、生物学的プロセスを調節できる低分子量の有機化合物を指す。「小分子」は、10kD未満、一般的に2kD未満、好ましくは1kD未満の分子量を有する分子として定義される。小分子は、無機分子、有機分子、無機成分含有有機分子、放射性原子含有分子、合成分子、ペプチド模倣体、および抗体模倣体を含むが、これらに限定されない。治療剤として、小分子は、大分子よりも細胞透過性が高く、分解に対して感受性が高く、免疫応答を誘発しにくい。
【0067】
本明細書に使用される用語「免疫調節剤」は、免疫応答を抑制または調節する天然または合成の活性薬剤または薬剤を指す。免疫応答は、体液応答または細胞応答であってもよい。免疫調節剤は、免疫抑制剤を含む。
【0068】
本明細書に使用される「免疫抑制剤」、「免疫抑制薬」または「免疫抑制物」は、免疫抑制治療において免疫系の活性を抑制または阻止するために使用される治療剤である。
【0069】
用語「有効量」は、本発明の抗体または断片または複合体または組成物または組合せの、1回分または複数回分の用量で患者に投与した後、治療または予防が必要な患者に所望の効果が得られるという量または用量を指す。
【0070】
「治療有効量」とは、必要な期間にわたって必要な用量で所望の治療結果を効果的に実現するための量を指す。治療有効量は、抗体若しくは抗体断片またはその複合体または組成物または組合せのいずれの毒性または有害作用も治療による有益な作用に及ばないという量でもある。未治療の対象に対して、「治療有効量」は、計測可能なパラメータ(例えば、腫瘍体積)の少なくとも約20%を抑制することが好ましく、少なくとも約40%を抑制することがより好ましく、ひいては少なくとも約50%、60%または70%を抑制することがさらに好ましい。
【0071】
「予防有効量」とは、必要な期間にわたって必要な用量で所望の予防結果を効果的に実現するための量を指す。一般的に、予防目的の用量が対象における疾患の初期段階より前にまたは疾患の初期段階に適用されるため、予防有効量は治療有効量を下回る。
【0072】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」と「宿主細胞培養物」は、交換して使用されてもよく、外因性核酸が導入された細胞を指し、この細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」と「形質転換細胞」を含み、初代形質転換細胞および継代数に関係なくそれに由来する子孫を含む。子孫は、核酸の内容において親細胞と全く同じではない可能性があり、変異を含んでもよい。本明細書では、初代形質転換細胞からスクリーニングまたは選択された同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。
【0073】
本明細書に使用される用語「標識」は、試薬(例えば、ポリヌクレオチドプローブ若しくは抗体)に直接的または間接的に複合または融合され、かつ、その複合または融合の対象試薬による検出を促進する化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)であるか、または、酵素触媒によって標識される場合に、検出可能な基質化合物または組成物の化学的改変に触媒作用を及ぼすことができる。当該用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(即ち、物理的連結)することによってプローブ若しくは抗体を直接標識すること、および、直接標識されている別の試薬との反応によりプローブ若しくは抗体を間接的に標識することを含もうとする。
【0074】
「個体」または「被験者」は、哺乳動物を含む。哺乳動物は、家畜(例えば、ウシ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類動物(例えば、ヒト、サルなどの非ヒト霊長類動物)、ウサギ、および齧歯動物(例えば、マウスとラット)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、個体または被験者はヒトである。
【0075】
「単離された」抗体とは、その存在する自然環境の成分と単離されている抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、純度が95%または99%を超えるように精製され、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)によって決定される。
【0076】
「抗CLDN18.2抗体またはその断片をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖または軽鎖(またはその断片、例えば、重鎖可変領域や軽鎖可変領域)をコードする1つまたは複数の核酸分子を指し、単一のベクターまたは分けられたベクターにおけるこのような核酸分子と、宿主細胞における1つまたは複数の位置でのこのような核酸分子を含む。
【0077】
以下の通りに配列間の配列同一性を算出する。
【0078】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列における同一性パーセンテージを決定するために、前記配列を最適比較のためにアラインメントを行う(例えば、最適アラインメントのために第1アミノ酸配列と第2アミノ酸配列または核酸配列の一方若しくは両方にギャップを導入してもよく、または比較のために、非相同配列を捨ててもよい)。一好ましい実施形態において、比較のために、アラインメントされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらに好ましくは少なくとも70%、80%、90%、100%である。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1配列における位置が、第2配列における対応の位置での同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、前記分子はこの位置において同一である。
【0079】
数学アルゴリズムにより、2つの配列間の配列比較および同一性パーセンテージの計算を実現することができる。一好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセンテージは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに統合されたNeedlemaおよびWunsch ((1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)アルゴリズム(http://www.gcg.comにて取得可能)により、Blossum 62行列若しくはPAM250行列、およびギャップ重み16、14、12、10、8、6若しくは4と長さ重み1、2、3、4、5若しくは6を用いて決定される。別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセンテージは、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラム(http://www.gcg.comにて取得可能)により、NWSgapdna.CMP行列、ギャップ重み40、50、60、70若しくは80と長さ重み1、2、3、4、5若しくは6を用いて決定される。特に好ましいパラメータセット(および特に断りのない限り使用すべき1つのパラメータセット)は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、およびフレームシフトギャップペナルティ5のBlossum 62スコアリング行列を採用する。また、PAM120加重余り表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を利用して、ALIGNプログラム(2.0版)に統合されたE. MeyersとW. Millerアルゴリズム ((1989) CABIOS, 4:11-17)により、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間の同一性パーセンテージを決定してもよい。追加的にまたは選択的に、本明細書に記載の核酸配列とタンパク質配列を「問い合わせ配列」として利用してパブリックデータベースに対して検索を実行することにより、例えば、他のファミリーメンバーの配列または関連配列を同定することもできる。
【0080】
本明細書に使用されるように、用語「ストリンジェンシー条件において(例えば低ストリンジェンシー、中等度ストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは極高ストリンジェンシー条件において)ハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションと洗浄の条件を説明する。ハイブリダイゼーション反応の実行についての手引きは、援用により組み込まれたCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見つけることができる。参考文献には、含水の方法と非含水の方法が説明されており、いずれの方法も利用することができる。本明細書に言及される好ましいハイブリダイゼーションの条件として、1)低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、約45℃で6Xの塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)において、次に少なくとも50℃(低ストリンジェンシー条件では、洗浄温度を55℃に上げることができる)で0.2XのSSC、0.1%のSDSにおいて2回洗浄することであり、2)中等度ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、約45℃で6XのSSCにおいて、次に60℃で0.2XのSSC、0.1%のSDSにおいて1回または複数回洗浄することであり、3)高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、約45℃で6XのSSCにおいて、次に65℃で0.2XのSSC、0.1%のSDSにおいて1回または複数回洗浄することであり、好ましくは、4)極高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件は、65℃で0.5のMのリン酸ナトリウム、7%のSDSにおいて、次に65℃で0.2XのSSC、0.1%のSDSにおいて1回または複数回洗浄することである。極高ストリンジェンシー条件(4)は好ましい条件であり、特に断りのない限り、利用すべき条件である。
【0081】
用語「抗腫瘍作用」は、さまざまな手段により表示できる生物学的効果であり、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の低減または腫瘍細胞の生存率の減少を含むが、これらに限定されない。
【0082】
用語「腫瘍」および「癌」は、本明細書において交換して使用され、固形腫瘍と液性腫瘍を含む。
【0083】
用語「癌」および「癌性」は、一般的に細胞の成長が調節されないことを特徴とする哺乳動物の生理障害を指し、または説明する。ある実施形態において、本発明の抗体による治療に適する癌は、胃癌または膵臓癌を含み、これらの癌の転移性形態を含む。
【0084】
用語「腫瘍」は、悪性か良性かを問わず、全ての腫瘍性(neoplastic)の細胞の成長と増殖、および全ての前癌(pre-cancerous)と癌性の細胞と組織を含む。用語「癌」、「癌性」および「腫瘍」は、本明細書で言及される時に、互いに排他的ではない。
【0085】
用語「薬用補助材料」とは、活性物質と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全若しくは不完全))、賦形剤、ベクターや安定剤などを指す。
【0086】
用語「医薬組成物」は、それに含まれる活性成分の生物学的活性を有効にする形態で存在するとともに、前記組成物が投与された対象に許容されない毒性がある別の成分を含まない組成物を指す。
【0087】
用語「医薬組合せ」は、非固定組合せの製品または固定組合せの製品であり、薬物キット、医薬組成物を含むが、これらに限定されない。用語「非固定組合せ」とは、活性成分(例えば、(i)抗CLDN18.2抗体またはその断片、および(ii)他の治療剤)が、別個の実体で同時に、特定の時間制限なしに、または同じまたは異なる時間間隔で、患者に順に投与されるものを指し、ここで、このような投与は、患者の体内において予防的または治療的に有效なレベルの2つ以上の活性剤を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組合せに使用された抗CLDN18.2抗体またはその断片および他の治療剤は、単独で使用される時のレベルを超えないように投与される。用語「固定組合せ」は、2つ以上の活性剤が単一実体の形態で同時に患者に投与されるものを指す。好ましくは、2種以上の活性剤の用量および/または時間間隔を選択することにより、各成分の併用が疾患または病症の治療において、いずれか1つの成分を単独で使用する場合よりもよい効果を達成することができる。各成分はそれぞれ、単独の製剤形態であってもよく、その製剤形態は同じであってもよく、異なってもよい。
【0088】
用語「組合せ療法」は、2種以上の治療剤または治療形態(例えば、放射線治療や手術)を投与することにより、本明細書に記載の疾患を治療するものを指す。そのような投与は、ほぼ同時に、例えば、一定の割合の活性成分を有する単一のカプセルで、これらの治療剤を共投与することを含む。または、このような投与は、複数または別個の容器(例えば、錠剤、カプセル、粉末と液体)での各有効成分の共投与を含む。粉末および/または液体は、投与前に所望の用量に再構成または希釈することができる。さらに、このような投与は、各タイプの治療剤を実質的に同じ時間、または異なる時間で順番によって使用することを含む。いずれの場合においても、治療プログラムは、本明細書に記載の病症または病状の治療における医薬組み合わせの有益な効果を提供する。
【0089】
本明細書に使用される場合、「治療」は、存在している症状、病症、病状または疾患の進行または重症度を軽減、中断、遅延、寛解、停止、低減、または逆転することを指す。
【0090】
本明細書に使用される場合、「予防」は、疾患、病症、または特定の疾患若しくは病症に係る症状の発生または進行に対する阻害を含む。いくつかの実施形態において、癌家族歴がある被験者は、予防プログラムの候補である。一般的に、癌の背景では、用語「予防」は、癌に係る病徴または症状が生じる前に、特に、癌に罹患するリスクのある被験者に癌が生じる前の医薬投与を指す。
【0091】
用語「ベクター」は、本明細書に使用される場合、それに連結された別の核酸を増殖可能な核酸分子を指す。当該用語は、自己複製の核酸構造としてのベクター、およびそれが導入された宿主細胞のゲノムに結合されたベクターを含む。一部のベクターは、それに操作可能に連結された核酸の発現をガイドすることができる。かかるベクターは本明細書において、「発現ベクター」と呼ばれる。
【0092】
「被験者/患者/個体試料」は、患者または被験者から得た細胞または流体の集まりを指す。組織または細胞試料の由来としては、新鮮な、冷凍されたおよび/または保存された器官や組織試料や生検試料や穿刺試料などの固形組織、血液若しくは任意の血液成分、脳脊髄液、羊膜液(羊水)、腹膜液(腹水)や間質液などの体液、被験者における妊娠若しくは発育の任意段階に由来する細胞であってもよい。組織試料は、自然界において天然に組織と混ぜ合わせない化合物、例えば、防腐剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養素、抗生物質などを含んでもよい。

II.抗体
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、高い親和性でCLDN18.2(例えば、ヒトCLDN18.2)と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体は、CLDN18.2(例えば、ヒトCLDN18.2)と特異的に結合するが、CLDN18.1(例えば、ヒトCLDN18.1)と結合しない。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、ヒトCLDN18.2との結合親和性が、既知のCLDN18.2抗体、例えば、Zolbetuximab(Zmabと略称)抗体よりも高い。いくつかの実施形態において、バイオレイヤー干渉測定技術または表面プラズモン共鳴法により抗体の親和性を測定する。
【0094】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体は、以下の平衡解離定数(K)でヒトCLDN18.2と結合し、前記Kは約15nMよりも小さく、好ましくは、約10nM、9.5nM、9nM、8.5nM、8nM、7.5nM、7nM、6.5nM、6nM、5.5nM、5nM、4.5nM、4nM、3.5nM、3nM以下であり、いくつかの実施形態において、前記Kは、上記数値の間(端点を含む)にある。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、細胞表面のCLDN18.2と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、細胞表面のCLDN18.1と結合しない。いくつかの実施形態において、CLDN18.2は細胞表面に発現され、または過剰発現される。いくつかの実施形態において、細胞は、CLDN18.2を発現するCHO細胞または293細胞であり、例えば、CHOーS細胞またはHEK293細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は、CLDN18.2を発現した癌細胞であり、例えば、CLDN18.2を天然に発現した、またはCLDN18.2を人工トランスフェクションで発現した、または人工トランスフェクションで発現レベルが増加されたCLDN18.2を有する細胞、例えば、CLDN18.2を発現した胃癌細胞または膵臓癌細胞株、例えば、NUGC-4、KATO IIIおよびDAN-G細胞株、例えば、CLDN18.2を過剰発現したKATO IIIおよびDAN-G細胞株である。
【0096】
いくつかの実施形態において、フローサイトメトリーで前記結合を検出する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、約15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5.5nM以下のEC50でCHO細胞に過剰発現されるCLDN18.2と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、約4nM、3.7nM、3.5nM、3nM、2.5nM、2nM、1.5nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM以下のEC50でCLDN18.2を発現した癌細胞、例えば、CLDN18.2を発現した胃癌細胞株または膵臓癌細胞株、例えば、NUGC-4、KATO IIIおよびDAN-G細胞株、例えば、CLDN18.2を過剰発現したKATO IIIおよびDAN-G細胞株と結合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体がCLDN18.2を発現した細胞と結合するEC50は、既知の抗体、例えば、Zmabに相当し、または、既知の抗体ZmabのEC50よりも小さく、または既知の抗体ZmabのEC50の75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%よりも小さい。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、ADCC活性またはCDC活性、例えば、既知の抗体(例えば、Zmab)に相当するADCC活性またはCDC活性、或いはそれ以上のADCC活性またはCDC活性を有する。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、腫瘍細胞、例えば、CLDN18.2を発現した腫瘍細胞を抑制することができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、癌の治療に用いることができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、腫瘍の成長を効果的に抑制することができ、腫瘍抑制率が約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%または70%以上である。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域からの3つの相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖可変領域からの3つの相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域からの3つの相補性決定領域(HCDR)と、軽鎖可変領域からの3つの相補性決定領域(LCDR)とを含む。
【0103】
いくつかの態様において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの態様において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの態様において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施形態において、前記重鎖可変領域は、重鎖可変領域からの3つの相補性決定領域(CDR)であるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含む。いくつかの実施形態において、前記軽鎖可変領域は、軽鎖可変領域からの3つの相補性決定領域(CDR)であるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、抗体重鎖定常領域HCをさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、抗体軽鎖定常領域LCをさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、重鎖定常領域HCと軽鎖定常領域LCをさらに含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、本発明の重鎖可変領域は、
(i)配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80もしくは85から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(ii)配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80もしくは85から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(iii)配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80もしくは85から選択されるアミノ酸配列と比べて、1つもしくは複数(好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、好ましくは、前記アミノ酸変異がCDR領域に生じない。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明の軽鎖可変領域は、
(i)配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83もしくは86から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、または
(ii)配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83もしくは86から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、または
(iii)配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83もしくは86から選択されるアミノ酸配列と比べて、1つもしくは複数(好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、好ましくは、前記アミノ酸変異がCDR領域に生じない。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明の重鎖可変領域からの3つの相補性決定領域(HCDR)であるHCDR1、HCDR2およびHCDR3は、
(i)配列番号4に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、
(ii)配列番号15または21に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、
(iii)配列番号26または27に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、
(iv)配列番号36または37に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、
(v)配列番号45または48に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、
(vi)配列番号53または56に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、
(vii)配列番号61または66に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、
(viii)配列番号72または73に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、
(ix)配列番号80または85に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、または
(x)(i)~(ix)のいずれか一項に記載の配列に対して、前記3つのHCDR領域に合計で少なくとも1個かつ5個以下、4個以下、3個以下、2個以下若しくは1個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)が含まれる配列、
から選択される。
【0108】
いくつかの実施形態において、本発明の軽鎖可変領域からの3つの相補性決定領域(LCDR)であるLCDR1、LCDR2およびLCDR3は、
(i)配列番号9に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、
(ii)配列番号19または22に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、
(iii)配列番号31または32に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、
(iv)配列番号40または41に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、
(v)配列番号47または49に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、
(vi)配列番号55または57に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、
(vii)配列番号65または68に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、
(viii)配列番号75または76に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、
(ix)配列番号83または86に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3、または
(x)(i)~(ix)のいずれか一項に記載の配列に対して、前記3つのLCDR領域に合計で少なくとも1個かつ5個以下、4個以下、3個以下、2個以下若しくは1個以下のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)が含まれる配列、
から選択される。
【0109】
いくつかの実施形態において、HCDR1は、配列番号1、12、23、33、42、50、58、69または77のアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、HCDR1は、配列番号1、12、23、33、42、50、58、69または77のアミノ酸配列と比べて1個、2個、または3個の改変(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、HCDR2は、配列番号2、13、20、24、34、43、51、59、70、78、84、93または94のアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、HCDR2は、配列番号2、13、20、24、34、43、51、59、70、78、84、93または94のアミノ酸配列と比べて1個、2個、または3個の改変(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、そのうち、
配列番号93はYIAPFXGDSRYNQKFKGであり、そのうち、Xは任意のアミノ酸であり、好ましくはNまたはQまたはその保存的なアミノ酸置換であり、または
配列番号94はVIWGDXSTNYHSVLISであり、そのうち、Xは任意のアミノ酸であり、好ましくはGまたはNまたはその保存的なアミノ酸置換である。
【0111】
いくつかの実施形態において、HCDR3は、配列番号3、14、25、35、44、52、60、71または79のアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、HCDR3は、配列番号3、14、25、35、44、52、60、71または79のアミノ酸配列と比べて1個、2個、または3個の改変(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含む。
【0112】
いくつかの実施形態において、LCDR1は、配列番号6、16、28、38、62、67または11のアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、LCDR1は、配列番号6、16、28、38、62、67または11のアミノ酸配列と比べて1個、2個、または3個の改変(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、
ここで、配列番号11はKSSQSLLXGGNQKNYLTであり、そのうち、Xは任意のアミノ酸であり、好ましくはNまたはQまたはその保存的アミノ酸置換である。
【0113】
いくつかの実施形態において、LCDR2は、配列番号7、17、29、63または81のアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、LCDR2は、配列番号7、17、29、63または81のアミノ酸配列と比べて1個、2個、または3個の改変(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、LCDR3は、配列番号8、18、30、39、46、54、64、74または82のアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、LCDR3は、配列番号8、18、30、39、46、54、64、74または82のアミノ酸配列と比べて1個、2個、または3個の改変(好ましくはアミノ酸置換、好ましくは保存的置換)を有するアミノ酸配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体重鎖定常領域HCは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の重鎖定常領域であり、好ましくはIgG1の重鎖定常領域である。いくつかの実施形態において、本発明の抗体軽鎖定常領域LCは、lambdaまたはKappa軽鎖定常領域であり、好ましくはKappa軽鎖定常領域である。
【0116】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体重鎖定常領域HCは、
(i)配列番号5から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、
(ii)配列番号5から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(iii)配列番号5から選択されるアミノ酸配列と比べて、1個もしくは複数個(好ましくは20個以下または10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなる。
【0117】
いくつかの実施形態において、前記アミノ酸変異は、Fc領域に生じる。いくつかの実施形態において、前記Fc領域のアミノ酸変異により、抗体のCDCまたはADCC活性が向上する。
【0118】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体軽鎖定常領域LCは、
(i)配列番号10から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、
(ii)配列番号10から選択されるアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなり、或いは、
(iii)配列番号10から選択されるアミノ酸配列と比べて、1つもしくは複数(好ましくは20個以下または10個以下、より好ましくは5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下)のアミノ酸変異(好ましくはアミノ酸置換、より好ましくはアミノ酸保存的置換)を有するアミノ酸配列を含み、または前記アミノ酸配列からなる。
【0119】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、
(i) 配列番号4に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号9に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(ii) 配列番号15または21に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号19または22に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(iii) 配列番号26または27に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号31または32に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(iv) 配列番号36または37に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号40または41に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(v) 配列番号45または48に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号47または49に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(vi) 配列番号53または56に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号55または57に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(vii) 配列番号61または66に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号65または68に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(viii) 配列番号72または73に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号75または76に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(ix) 配列番号80または85に示されるVHに含まれた3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびに配列番号83または86に示されるVLに含まれた3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
を含む。
【0120】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、
(i) それぞれアミノ酸配列の配列番号1、2および3に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号6、7および8に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(ii) それぞれアミノ酸配列の配列番号12、13および14に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号16、17および18に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(iii) それぞれアミノ酸配列の配列番号12、20および14に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号16、17および18に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(iv) それぞれアミノ酸配列の配列番号12、93および14に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号16、17および18に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(v) それぞれアミノ酸配列の配列番号23、24および25に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、29および30に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(vi) それぞれアミノ酸配列の配列番号33、34および35に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号38、17および39に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(vii) それぞれアミノ酸配列の配列番号42、43および44に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号38、17および46に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(viii) それぞれアミノ酸配列の配列番号50、51および52に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、17および54に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(ix) それぞれアミノ酸配列の配列番号58、59および60に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号62、63および64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(x) それぞれアミノ酸配列の配列番号58、59および60に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号67、63および64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xi) それぞれアミノ酸配列の配列番号58、59および60に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号11、63および64に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xii) それぞれアミノ酸配列の配列番号69、70および71に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号38、17および74に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xiii) それぞれアミノ酸配列の配列番号77、78および79に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、81および82に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xiv) それぞれアミノ酸配列の配列番号77、84および79に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、81および82に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
(xv) それぞれアミノ酸配列の配列番号77、94および79に示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3、ならびにそれぞれアミノ酸配列の配列番号28、81および82に示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3と、
を含む。
【0121】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、
(i) 配列番号4に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号9に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(ii) 配列番号15もしくは21に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号19もしくは22に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(iii) 配列番号15に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号19に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(iv) 配列番号21に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号22に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(v) 配列番号26もしくは27に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号31もしくは32に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(vi) 配列番号26に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号31に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(vii) 配列番号27に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号32に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(viii) 配列番号36もしくは37に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号40もしくは41に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(ix) 配列番号36に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号40に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(x) 配列番号37に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号41に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xi) 配列番号45もしくは48に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号47もしくは49に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xii) 配列番号45に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号47に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xiii) 配列番号48に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号49に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xiv) 配列番号53もしくは56に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号55もしくは57に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xv) 配列番号53に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号55に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xvi) 配列番号56に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号57に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xvii) 配列番号61もしくは66に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号65もしくは68に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xviii) 配列番号61に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号65に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xix) 配列番号66に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号68に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xx) 配列番号72もしくは73に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号75もしくは76に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxi) 配列番号72に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号75に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxii) 配列番号73に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号76に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxiii) 配列番号80もしくは85に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号83もしくは86に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxiv) 配列番号80に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号83に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
(xxv) 配列番号85に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVH、および配列番号86に示されるアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む或いは前記アミノ酸配列からなるVLと、
を含む。
【0122】
本発明の1つの実施形態において、本明細書に記載のアミノ酸変異は、アミノ酸の置換、挿入または欠失を含む。好ましくは、本明細書に記載のアミノ酸変異はアミノ酸置換であり、好ましくは保存的置換である。
【0123】
好ましい実施形態において、本発明に記載のアミノ酸変異は、CDR外の領域(例えば、FR)に生じる。より好ましくは、本発明に記載のアミノ酸変異は、重鎖可変領域外および/または軽鎖可変領域外の領域に生じる。いくつかの実施形態において、本発明に記載のアミノ酸変異は、抗体重鎖定常領域のFc領域に生じ、好ましい実施形態において、前記Fc領域でのアミノ酸変異により、抗体のADCCおよび/またはCDC作用が向上する。
【0124】
いくつかの実施形態において、置換は保存的置換である。保存的置換は、1つのアミノ酸が同種の別のアミノ酸によって置換され、例えば、1つの酸性アミノ酸が別の酸性アミノ酸によって置換され、1つの塩基性アミノ酸が別の塩基性アミノ酸によって置換され、または1つの中性アミノ酸が別の中性アミノ酸によって置換されたことを指す。例示的な置換は、下記の表に示される通りである。
【0125】
【表2】
【0126】
ある実施形態において、置換は、抗体のCDR領域に生じる。一般的に、得られた変異体は、親抗体に対してある生物学的特性(例えば、向上した親和性)において修飾(例えば、改善)を有し、および/または親抗体の実質的に保持されたある生物学的特性を有する。例示的な置換変異体は、親和性成熟抗体である。
【0127】
ある実施形態において、本明細書に提供される抗体は、抗体のグリコシル化の程度が増大または低減されるように改変される。抗体のグリコシル化部位の追加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が産生または除去されるように、アミノ酸配列を改変することによって容易に実現することができる。抗体はFc領域を含む場合、それに付着する糖類を改変することができる。いくつかの応用において、不要なグリコシル化部位を除去する修飾は有用である可能性があり、例えば、フコースモチーフを除去することにより、抗体依存性細胞毒性(ADCC)機能が向上する(Shield et al.(2002)JBC277:26733参照)。他の応用において、ガラクトシド化修飾を行うことにより、補体依存性細胞毒性(CDC)を修飾することができる。
【0128】
ある実施形態において、本明細書に提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入することにより、Fc領域変異体を産生し、抗体の1つまたは複数の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、補体依存性細胞毒性、Fc受容体結合および/または抗体依存性細胞毒性を変化させることができる。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸位置においてアミノ酸変異(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3やIgG4Fc領域)を含んでもよい。
【0129】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の抗体は、Fc領域において改変を導入することにより、抗体のADCC活性またはCDC活性を向上させる。
【0130】
ある実施形態において、システイン工学で改変された抗体、例えば、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された「チオMAb」を産生する必要があり得る。
【0131】
ある実施形態において、本明細書に提供される抗体は、この分野における既知で容易に得られる他の非タンパク質部分が含まれるようにさらに修飾することができる。抗体の誘導作用に適した部分は、水溶性ポリマーを含むが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な実例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキサン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダム共重合体)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセリン)、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその抗原結合断片は、
(i)CLDN18.2に対して本発明の抗体と同様または類似の結合親和性および/または特異性を示し、
(ii)本発明の抗体とCLDN18.2との結合を抑制(例えば、競合的抑制)し、
(iii)本発明の抗体と同様または重複のエピトープを結合し、
(iv)本発明の抗体と競合的にCLDN18.2に結合し、
(v)本発明の抗体の1つのまたは複数の生物学的特性を有する、
という特性の1つまたは複数を有する。
【0133】
いくつかの実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体は、IgG1形態の抗体、IgG2形態の抗体、IgG3形態の抗体もしくはIgG4形態の抗体であり、好ましくは、IgG1形態の抗体である。
【0134】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2抗体は、モノクローナル抗体である。
【0135】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2抗体は、ヒト化のものである。
【0136】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2抗体は、ヒト抗体である。
【0137】
いくつかの実施形態において、抗CLDN18.2抗体は、キメラ抗体である。
【0138】
いくつかの実施形態において、少なくとも一部の抗CLDN18.2抗体のフレーム配列は、ヒトに共有するフレーム配列である。
【0139】
一実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体は、その抗体断片(例えば抗原結合断片)をさらに含み、好ましくは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、単鎖抗体(例えば、scFv)、(Fab’)、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、dAb(domain antibody)または線状抗体という抗体断片から選択される。

III.本発明の核酸とそれを含む宿主細胞
【0140】
一態様において、本発明は、上記のいずれかの抗CLDN18.2抗体またはその断片をコードする核酸を提供する。一実施形態において、前記核酸を含むベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは発現ベクターであり、例えば、pcDNA3.1である。一実施形態において、前記核酸または前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。一実施形態において、宿主細胞は真核のものである。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞(例えばCHO-S)または293細胞(例えば、293FやHEK293細胞))、或いは抗体またはその断片の調製に適用される他の細胞から選択される。別の実施形態において、宿主細胞は原核のものである。
【0141】
一態様において、本発明は、本明細書に記載のいずれかの抗CLDN18.2抗体またはその断片をコードする核酸を提供する。前記核酸は、抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸、または抗体の軽鎖および/または重鎖のアミノ酸配列をコードする核酸を含むことができる。
【0142】
例えば、本発明の核酸は、配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80または85、または配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83または86から選択されるいずれか1つに示されるアミノ酸配列をコードする核酸、或いは配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80または85、または配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83または86から選択されるいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む。
【0143】
本発明は、下記の核酸とストリンジェンシー条件でハイブリッドした核酸、または下記の核酸に対して1つまたは複数の置換(例えば、保存的置換)、欠失若しくは挿入を有する核酸をさらに含む:配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80または85、または配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83または86から選択されるいずれか1つに示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸、或いは配列番号4、15、21、26、27、36、37、45、48、53、56、61、66、72、73、80または85、または配列番号9、19、22、31、32、40、41、47、49、55、57、65、68、75、76、83または86から選択されるいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む核酸。
【0144】
一実施形態において、前記核酸を含む1つまたは複数のベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは発現ベクター、例えば、真核発現ベクターである。ベクターは、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファージまたは酵母人工染色体(YAC)を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、ベクターはpcDNA3.1である。
【0145】
一実施形態において、前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。抗体をコードするベクターをクローニングまたは発現するための適切な宿主細胞は、本明細書に記載される原核または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特に、グリコシル化とFcエフェクター機能が不要な場合に、細菌において産生することができる。発現された後、抗体は、可溶性画分における細菌細胞のペースト状物から単離することができるとともに、さらに精製することができる。
【0146】
一実施形態において、宿主細胞は真核のものである。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞、または抗体若しくはその断片の調製に適用される他の細胞から選択される。例えば、糸状菌や酵母のような真核微生物は、抗体をコードするベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。例えば、グリコシル化経路が既に「ヒト化」された真菌と酵母菌株により、一部または完全のヒトグリコシル化の形態を有する抗体が産生される。グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物、脊椎動物)からも誘導される。脊椎動物の細胞を宿主として用いてもよい。例えば、懸濁成長に適されるように改変された哺乳動物細胞株を使用することができる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の実例は、SV40で転換されたザル腎CV1細胞株(COS-7)、ヒト胎児腎臓細胞株(HEK293、293Fまたは293T)などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含み、DHFR-CHO細胞、CHO-S細胞、ExpiCHOなど、およびY0、NS0とSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。この分野では、抗体の産生に適する哺乳動物宿主細胞株が知られている。

IV.本発明の抗体分子の産生および精製
【0147】
一実施形態において、本発明は、本発明の抗体分子またはその断片(好ましくは抗原結合断片)を調製する方法を提供し、そのうち、前記方法は、本発明の抗体分子またはその断片(好ましくは抗原結合断片)をコードする核酸の発現に適した条件において前記宿主細胞を培養することと、場合により、前記抗体またはその断片(好ましくは抗原結合断片)を単離することとを含む。ある実施形態において、前記方法は、宿主細胞から本発明の抗体分子またはその断片(好ましくは抗原結合断片)を回収することをさらに含む。
【0148】
一実施形態において、本発明の抗体分子を調製する方法を提供し、そのうち、前記方法は、上述したように、抗体の発現に適した条件において、前記抗体(例えば、いずれか1本のポリペプチド鎖、および/または複数本のポリペプチド鎖)をコードする核酸または前記核酸の発現ベクターを含む宿主細胞を培養することと、場合により、前記宿主細胞(または宿主細胞培地)から前記抗体を回収することとを含む。
【0149】
組換えにより本発明の抗体分子を産生するために、抗体(例えば、上記の抗体、例えば、いずれか1本のポリペプチド鎖、および/または複数本のポリペプチド鎖)をコードする核酸を単離し、それを1つまたは複数のベクターに挿入し、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現に用いる。このような核酸は、通常のプロセスにより単離してシークエンシングすることが容易である(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって行われる)。
【0150】
本明細書に記載の通り調製された抗体分子は、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどの既知の従来技術により精製することができる。特定のタンパク質を精製するための実際の条件は、正味電荷、疎水性、親水性などの要因にも依存し、これは当業者にとって自明である。本発明の抗体分子の純度は、さまざまな周知の解析方法のいずれか1つにより決定することができ、前記周知の解析方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィーなどを含む。

V.測定法
【0151】
この分野での既知の様々な測定法により、本明細書に提供される抗CLDN18.2抗体を同定し、スクリーニングし、またはその物理的/化学的特性および/または生物学的活性を表現することができる。一態様において、本発明の抗体に対して、その抗原結合活性をテストし、例えば、ELISA、Westernブロッティングなどの既知の方法で行う。CLDN18.2への結合は、この分野における既知の方法により測定可能であり、本明細書に例示的な方法が開示されている。いくつかの実施形態において、放射免疫測定(RIA)またはバイオレイヤー干渉測定法またはMSD測定法または表面プラズモン共鳴法(SPR)またはフローサイトメトリーにより測定される。
【0152】
一方、競合測定法により本明細書に開示されるいずれかの抗CLDN18.2抗体と競合的にCLDN18.2に結合する抗体を同定することができる。ある実施形態において、かかる競合的抗体は、本明細書に開示されるいずれかの抗CLDN18.2抗体が結合するエピトープと同様または重複のエピトープ(例えば、線状または立体配座エピトープ)と結合する。
【0153】
本発明は、生物学的活性を有する抗CLDN18.2抗体を同定するための測定法をさらに提供する。生物学的活性は、例えば、CLDN18.2との結合(例えば、ヒトCLDN18.2との結合)、CLDN18.2を発現した細胞への結合、細胞へのCDCまたはADCCの活性、腫瘍細胞への抑制作用などを含むことができる。インビボおよび/またはインビトロにおいて、このような生物学的活性を有する抗体をさらに提供する。
【0154】
ある実施形態において、本発明の抗体に対してこの生物学的活性をテストする。
【0155】
上記いずれかのインビトロ測定法に使用される細胞は、CLDN18.2を天然に発現し、或いは改変によりCLDN18.2を発現または過剰発現した細胞株を含む。このような細胞は、CLDN18.2を発現した、および非通常時にCLDN18.2を発現したコードCLDN18.2のDNAトランスフェクションされた細胞株をさらに含む。いくつかの実施形態において、このような細胞は、胃癌細胞または膵臓癌細胞である。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、CLDN18.2を発現したCHO細胞である。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、NUGC-4、KATO IIIおよびDAN-G細胞株であり、例えば、CLDN18.2を過剰発現したKATO IIIとDAN-G細胞株である。
【0156】
なお、本発明の免疫複合体で抗CLDN18.2抗体を置き換えまたは補足して、任意の上記測定法を行うことができる。
【0157】
なお、抗CLDN18.2抗体と別の活性剤との組合せで任意の上記測定法を行うことができる。

VI.免疫複合体
【0158】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に提供されるいずれかの抗CLDN18.2抗体と、他の物質、例えば、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物や免疫調節剤(例えば、抗炎症剤または免疫抑制剤)を含む治療剤とを含む免疫複合体を提供する。一実施形態において、前記他の物質は、例えば、細胞に対して傷害性を有する任意の薬剤を含む細胞傷害剤である。
【0159】
いくつかの実施形態において、前記免疫複合体は、癌の予防と治療に用いられる。

VII.医薬組成物と医薬製剤
【0160】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載のいずれかの抗CLDN18.2抗体またはその断片(好ましくはその抗原結合断片)またはその免疫複合体を含む組成物を提供し、好ましくは、組成物は医薬組成物である。一実施形態において、前記組成物は、薬用補助材料をさらに含む。一実施形態において、組成物、例えば、医薬組成物は、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその断片またはその免疫複合体と、1種または複数種の他の治療剤との組み合わせを含む。
【0161】
本発明は、抗CLDN18.2抗体またはその免疫複合体を含む組成物(医薬組成物または医薬製剤を含む)、または抗CLDN18.2抗体をコードするポリヌクレオチドを含む組成物(医薬組成物または医薬製剤を含む)をさらに含む。ある実施形態において、組成物は、CLDN18.2と結合する1種または複数種の抗体またはその断片、或いは1種または複数種の抗CLDN18.2抗体またはその断片をコードする1種または複数種のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物はまた、適切な薬用補助材料、例えば、この分野での既知の薬用ベクター、緩衝剤を含む薬用賦形剤を含んでもよい。
【0162】
本明細書に使用されるように、「薬用ベクター」は、生理学的に適合する溶剤、分散媒体、等張剤、吸収遅延剤などのいずれかまたは全てを含む。
【0163】
薬用補助材料の使用およびその使用については、『Handbook of Pharmaceutical Excipients』、第八版、R.C.Rowe、P.J.SeskeyおよびS.C.Owen、Pharmaceutical Press、London、Chicagoも参照される。
【0164】
本発明の組成物は、さまざまな形態で存在することができる。これらの形態は、例えば、液体、半固体および固体の剤型、例えば、液体溶液剤(例えば、注射用溶液剤と輸注用溶液剤)、分散剤若しくは懸濁剤、リポソーム剤および坐剤を含む。好ましい形態は、所望の投与モードと治療的使用によって決定する。
【0165】
所望の純度を有する本発明の抗体を1種または複数種の任意の薬用補助材料と混合することにより、本明細書に記載の抗体の医薬製剤を調製することができ、好ましくは、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で行われる。
【0166】
本発明の医薬組成物または製剤は、1種以上の活性成分をさらに含んでもよく、前記活性成分は、治療される特定の適応症に必要なものであり、好ましくは、互いに悪影響を与えない相補的な活性を有する活性成分である。例えば、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、ワクチン、他の抗体、小分子薬物または免疫調節剤などの他の治療剤をさらに提供することが望ましい。前記活性成分は、目的とする使用に有効な量で適切に組合せたて存在する。
【0167】
持続放出製剤として調製することができる。持続放出製剤の適切な例は、抗体を含有する疎水性固体ポリマーによる半透性マトリックスを含み、前記マトリックスは、フィルムまたはマイクロカプセルなどのように一定の形態を有する。

VIII.医薬組合せと薬物キット
【0168】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の抗CLDN18.2抗体またはその断片(好ましくは抗原結合断片)、またはその免疫複合体、および1種または複数種の他の治療剤(例えば、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、他の抗体、小分子薬物または免疫調節剤など)を含む医薬組合せまたは医薬組合せ製品をさらに提供する。
【0169】
本発明の別の目的は、本発明の医薬組合せを含む薬物キットを提供することであり、好ましくは、前記薬物キットは、医薬用量単位の形態である。これにより、投与プログラムまたは医薬投与間隔によって用量単位を提供することができる。
【0170】
一実施形態において、本発明の薬物キットは、同一のパッケージにおいて、
- 抗CLDN18.2抗体またはその断片を含む医薬組成物を含有する第1容器と、
- 他の治療剤を含む医薬組成物を含有する第2容器と、
を含む。

IX.使用と方法
【0171】
本発明の一態様は、被験者において腫瘍(例えば、癌)を予防や治療する方法であって、被験者に有効量の本発明の抗CLDN18.2抗体またはその断片(好ましくは抗原結合断片)、免疫複合体、医薬組成物、医薬組合せまたは薬物キットを投与することを含む方法を提供する。
【0172】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍(例えば、癌)患者は、(例えば、核酸やタンパク質レベルなどのレベルが上昇した)CLDN18.2を有する。
【0173】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍、例えば癌は、固形腫瘍と血液腫瘍および転移性病巣を含む。一実施形態において、固形腫瘍の例は、悪性腫瘍を含む。癌は、早期、中期または末期にある癌または転移性癌であってもよい。
【0174】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍の治療は、核酸またはタンパク質レベルが抑制されたCLDN18.2から利益を受ける。いくつかの実施形態において、前記腫瘍の治療は、本発明の抗体によるADCCまたはCDC作用から利益を受ける。
【0175】
一実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体は、腫瘍細胞、例えば、CLDN18.2を発現した腫瘍細胞、例えば、胃癌細胞や膵臓癌細胞の増殖を抑制することがきる。
【0176】
一具体的な実施形態において、本発明の抗CLDN18.2抗体は、強いADCCまたはCDC活性を有する。
【0177】
いくつかの実施形態において、腫瘍は腫瘍の免疫回避である。
【0178】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は、胃癌や膵臓癌のような癌である。
【0179】
被験者は、霊長類などの哺乳動物であってもよく、好ましくは、高等霊長類、例えば、ヒト(例えば、本明細書に記載の疾患に罹患しているかまたは本明細書に記載の疾患に罹患するリスクのある個体)である。一実施形態において、被験者は、本明細書に記載の疾患(例えば、癌)に罹患しているかまたは本明細書に記載の疾患に罹患するリスクがある。ある実施形態において、被験者は、化学療法治療および/または放射線治療のような他の治療を受けるか、または既に受けた。いくつかの実施形態において、被験者は、その前に既に免疫療法を受けたか、または受けている。
【0180】
他の態様において、本発明は、抗体分子またはその断片またはその免疫複合体または医薬組成物または医薬組合せまたは薬物キットの医薬の製造または調製における使用を提供し、前記医薬は、本明細書に記載の使用に用いられ、例えば、本明細書にかかる関連疾患または病症の予防または治療に用いられる。
【0181】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体分子またはその断片またはその免疫複合体または医薬組成物または医薬組合せまたは薬物キットにより、病症および/または病症に関連する症状の発症が遅延される。
【0182】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体分子またはその断片またはその免疫複合体または医薬組成物は、さらに1種または複数種の他の療法、例えば、治療方式および/または他の治療剤と組み合わせて投与され、本明細書に記載の使用に用いられ、例えば、本明細書にかかる関連疾患または病症の予防または治療に用いられることができる。
【0183】
いくつかの実施形態において、治療方式は、外科手術、放射線治療、局所照射または集中的照射などを含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、治療剤は、化学療法剤、サイトカイン、細胞傷害剤、ワクチン、他の抗体、小分子薬物、または免疫調節剤から選択される。
【0185】
例示的な免疫調節剤は、免疫抑制剤または抗炎症剤を含む。
【0186】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗体組合せは、個別に投与することができ、例えば、別個の抗体として個別に投与することができる。
【0187】
このような療法の組合せは、併用投与(例えば、2種または複数種の治療剤が同一の製剤または別個の製剤に含まれる)、個別投与を含み、後者の場合は、本発明の抗体の投与は、別の治療剤および/または薬剤の投与の前に、同時に、および/または後に行われてもよい。
【0188】
医薬組成物の投与経路は、既知の方法、例えば、経口、静脈内注射、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内、または病巣内経路により、持続放出系により、またはインプラント装置によるものである。ある実施形態において、組成物は、ボーラス注射または連続輸注またはインプラント装置によって投与することができる。
【0189】
組成物は、インプラント膜、スポンジ、または所望の分子を吸収またはカプセル化する別の適切な材料を介して局所的に投与されてもよい。ある実施形態において、インプラント装置が使用される場合、前記装置は、任意の適切な組織または器官にインプラントすることができ、拡散、持続放出ボーラス、または連続投与によって所望の分子を送達することができる。

X.診断と検出のための方法と組成物
【0190】
ある実施形態において、本明細書に提供されるいずれの抗CLDN18.2抗体またはその断片(好ましくは抗原結合断片)も、CLDN18.2の生体試料における存在の検出に用いることができる。用語「検出」は本明細書に使用される時に、定量的または定性的検出を含み、例示的な検出方法としては、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、抗体分子複合磁気ビーズ、ELISA測定手法、PCR-技術(例えば、RT-PCR)が挙げられる。ある実施形態において、生体試料は、血、血清または生物に由来する他の液体試料である。ある実施形態において、生体試料は、細胞または組織を含む。いくつかの実施形態において、生体試料は、過剰増殖性または癌性の病巣に関連する病巣に由来する。
【0191】
一実施形態において、診断または検出方法に用いられる抗CLDN18.2抗体またはその断片を提供する。他の態様において、CLDN18.2の生体試料における存在を検出する方法を提供する。ある実施形態において、方法は、CLDN18.2タンパク質の生体試料における存在を検出することを含む。ある実施形態において、CLDN18.2は、ヒトCLDN18.2である。ある実施形態において、前記方法は、抗CLDN18.2抗体またはその断片とCLDN18.2との結合が許容された条件で、生体試料を本明細書に記載の抗CLDN18.2抗体またはその断片と接触し、抗CLDN18.2抗体またはその断片とCLDN18.2との間に複合物が形成されたか否かを検出することを含む。複合物が形成されると、CLDN18.2の存在が示される。当該方法は、インビトロまたはインビボで行われてもよい。一実施形態において、抗CLDN18.2抗体またはその断片は、抗CLDN18.2抗体またはその断片による治療に適する被験者の選択に用いられ、例えば、その中のCLDN18.2は、前記被験者を選択するためのバイオマーカーである。
【0192】
一実施形態において、本発明の抗体で癌などの腫瘍を診断し、例えば、個体における本明細書に記載の疾患の治療や進展、その診断および/または病期分類を評価(例えば、監視)することができる。ある実施形態において、標識された抗CLDN18.2抗体またはその断片を提供する。標識は、直接的に検出される標識または部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識と放射性標識)、および例えば、酵素触媒反応や分子間の相互作用により間接的に検出される部分、例えば、酵素やリガンドを含むが、これらに限定されない。
【0193】
本明細書に提供されるいくつかの実施形態において、試料は、抗CLDN18.2抗体またはその断片で治療する前に得られる。いくつかの実施形態において、試料は、他の療法を使用する前に得られる。いくつかの実施形態において、試料は、他の療法による治療中または他の療法による治療後に得られる。
【0194】
いくつかの実施形態において、試料はホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)である。いくつかの実施形態において、試料は、生検(例えば、コア生検)検体、手術標本(例えば、手術切除による標本)、または細い針による吸引物である。
【0195】
いくつかの実施形態において、治療前に、例えば、治療開始前または治療間隔後のある治療前にCLDN18.2を検出する。
【0196】
いくつかの実施形態において、本発明の疾患を治療する方法を提供し、前記方法は、被験者(例えば、試料)(例えば、被験者試料)に対してCLDN18.2の存在を検定するため、CLDN18.2の値を確定し、CLDN18.2の値を対照値と比較し、CLDN18.2値が対照値よりも大きいと、被験者に治療有効量の、場合によって1種または複数種の他の療法と組み合わせる抗CLDN18.2抗体またはその断片(例えば、本明細書に記載の抗CLDN18.2抗体またはその断片)を投与することにより、前記疾患を治療することを含む。
【0197】
本発明に係る上記と他の態様および実施形態は、図面(図面の簡単な説明がその後に続く)と以下の発明の詳細な説明において記載され、以下の実施例に例示されている。上記および本願に亘って説明された特徴のいずれかまたは全ては、本発明の各実施形態において組み合わせることができる。以下の実施例を用いて本発明をさらに説明するが、実施例は、限定ではなく、説明することで記載され、当業者は、様々な変更を行うことができると理解すべきである。
実施例
【0198】
【表3】

実施例1、安定発現細胞株の構築
【0199】
ヒトCLDN18.2の過剰発現細胞株の調製
メーカーの取扱説明書によって、Freedom(登録商標) CHO-S(登録商標)試薬キット(Invitrogen、A1369601)を使用して、ヒトClaudin18.2(CLDN18.2と略称し、以下同様である)を安定発現する細胞株を構築した。まず、ヒトCLDN18.2(UniProt ID:P56856-2)の全長遺伝子を、ベクターpCHO1.0に構築し、化学的トランスフェクション法と電気的トランスフェクション法により、構築されたプラスミドをそれぞれCHO-S細胞(Invitrogen、A1369601)とHEK293細胞(Invitrogen、A14527)へ導入し、トランスフェクションした細胞は、2ラウンドのプレススクリーニングを経て、CLDN18.2をそれぞれ発現した細胞プール(pool)を得た。次に、フローサイトメトリー(MoFlo XDP、Beckman Coulter)によりCLDN18.2を高発現した細胞をソーティングし、希釈法によりCLDN18.2を安定発現したモノクローナル細胞株CHO-hCLDN18.2およびHEK293-hCLDN18.2を得た。
【0200】
ヒトCLDN18.1の過剰発現細胞株の調製
メーカーの取扱説明書によって、Freedom(登録商標) CHO-S(登録商標)試薬キット(Invitrogen、A1369601)を使用して、ヒトClaudin18.1(CLDN18.1と称する。以下は、同じである)を安定発現する細胞株を構築した。まず、ヒトCLDN18.1(UniProt ID:P56856-1)の全長遺伝子を、ベクターpCHO1.0(Invitrogen、A1369601)に構築し、化学的トランスフェクション法により構築されたプラスミドをCHO-S細胞(Invitrogen、A1369601)へ導入し、トランスフェクションした細胞は、2回のプレススクリーニングを経て、CLDN18.1をそれぞれ発現する細胞プール(pool)を得た。次に、フローサイトメトリー(MoFlo XDP, Beckman Coulter)によりCLDN18.1を高発現する細胞をソーティングし、希釈法によりCLDN18.1を安定発現したモノクローナル細胞株CHO-hCLDN18.1を得た。
【0201】
CLDN18.2を過剰発現する腫瘍細胞株の構築
ヒトCLDN18.2(UniProt ID:P56856-2)の全長遺伝子をベクターpWPT-GFP(Addgene、12255)に構築し、その中のGFP配列を置き換え、レンチウイルスのパッケージングベクターpsPAX2(Addgene、12260)とpMD2.G(Addgene、12259)と共にHEK293T(ATCC、CRL-3216)細胞にトランスフェクションし、ウイルスのパッケージングを行った。48時間および72時間後の培養上清をそれぞれ収集し、PEG8000を用いてレンチウイルスの濃縮を行った。濃縮されたウイルスで膵臓癌DAN-G細胞と胃癌KATO IIIをトランスフェクションし、次に、フローサイトメトリー(MoFlo XDP、Beckman Coulter)により、CLDN18.2を発現した細胞をソーティングし、CLDN18.2を安定トランスフェクションした腫瘍細胞株DAN-G-CLDN18.2とKATO III-CLDN18.2を得た。

実施例2、ハイブリドーマによる抗hCLDN18.2のモノクローナル抗体のスクリーニング
【0202】
本発明は、ハイブリドーマ技術を採用し、実施例1により得られた細胞(CHO-huClaudin18.2)をマウス(方法とプロセスについては、表1を参照)に免疫し、次にマウスの脾細胞を得て骨髄腫細胞と融合し、CLDN18.2の抗体を分泌可能なハイブリドーマ細胞を得た。

マウスの免疫
【0203】
【表4】

ハイブリドーマ融合
【0204】
マルスを殺し、無菌で開腹して脾臓を取り出し、その周りに付着した結合組織を除去した。ピンヘッドで押出して脾細胞を十分に放出し、脾細胞懸濁液を作製した。細胞懸濁液を、70μmの細胞ストレーナーでろ過した後、RPMI-1640培地で一回洗い、1200rpmで6min遠心分離した。上清を捨てた後、RBC溶解緩衝液(GIBCO)で細胞を再懸濁した後、赤血球を溶解し、上清を遠心分離して捨てた後、RPMI-1640培地に再懸濁してカウントした。SP2/0と赤血球溶解後の脾細胞を1:2~1:1の割合で混合し、1000rpmで6min遠心分離した。上清を捨てた後、混合された細胞を融合緩衝液に再懸濁した。さらに、融合緩衝液15mlを加え、1000rpmで5min遠心分離して上清を捨てた。上記工程を1回繰り返した後、適当な体積の融合緩衝液を加入して細胞を再懸濁し、混合細胞の密度を1×10細胞/mlに調整した。電気融合装置で融合した後、細胞を電気融合皿で5min室温静置した。細胞を遠心管に移し、細胞を1~2×10個細胞/mlに希釈した。96ウェルプレートに1ウェル当たり100μlの細胞懸濁液を加入した。融合の5日後に、培地を交換した。10日間(または細胞生長状態によって、それ以上である)培養した後、上清を収集してフローサイトメトリー(FACS)で検出し、陽性クローンをスクリーニングした。

ハイブリドーマ細胞によるハイスループットスクリーニング
【0205】
フローサイトメトリー(FACS)により抗CLDN18.2抗体を特異的に発現したハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、且つ分泌された抗体は、CLDN18.1と結合しなかった。
【0206】
実施例1により得られた検出すべき細胞(HEK293-hCLDN18.2)をカウントし、1×10個細胞/mlに希釈し、U形底を有する96ウェルプレートに100μl/ウェルで加入した。500gを5min遠心分離し、細胞培地を除去した。ハイブリドーマの96ウェルプレートで培養された上清をU形プレートに加入し、細胞を再懸濁し、1ウェル当たり100μl加入し、氷上で30min静置した。500gに対して5minして上清を捨て、PBSで細胞を1回洗った。1ウェル当たり100μlの抗マウスFabのFITCで標識された二次抗体(1:500でPBSに希釈した)を加入し、陽性対照抗体に100μlの抗ヒトFabのFITCで標識された二次抗体を加入した。氷上で30min遮光してインキュベートした。500gに対して5minして上清を捨て、PBSで細胞を1回洗った。50μl 1×PBSで細胞を再懸濁し、FACSで机上検出を行った。
【0207】
陽性クローンに対して、さらに上記と同じ方法でCHO-hCLDN18.1の二次スクリーニングを行い、ヒトCLDN18.2と結合するとともにヒトCLDN18.1と結合しないハイブリドーマ細胞を合計で9株得た。そのうち、8株は、Bal b/cマウスに由来し、1株は、H2L2全ヒト遺伝子導入マウスに由来し、具体的には、表2に示されている。
【0208】
【表5】

実施例3、抗体遺伝子の取得
【0209】
分子生物学的技術により、実施例2から得られた9株のハイブリドーマ細胞(3G3、14A5、25C7、38F8、69H9、46F6、59C1、51H10およびHB37A6)に対して抗体軽重鎖遺伝子配列の抽出を行った。RNA抽出用試薬キット(Biomiga、R6311-02)により9個のハイブリドーマ細胞の全RNAを抽出し、次にPrimeScript II 1st Strand cDNA Synthesis Kit(Takara、6110A)で全RNAを逆転写してcDNAを得て、それぞれ縮重プライマーで抗体の重鎖と軽鎖可変領域配列を増幅し、pMD20-Tベクター(Takara、6028)を挿入し、接続して形質転換した後、クローンを選択してシークエンシングした。
【0210】
抗体の配列は、表Aが参照される。

実施例4、組換えCLDN18.2抗体の調製
【0211】
実施例2によりスクリーニングされて得られた9つの抗体(3G3、14A5、25C7、38F8、69H9、46F6、59C1、51H10およびHB37A6)および対照抗体zolbetuximab(Zmabと略称し、配列はINN117に由来した)を、全長モノクローナル抗体の形態でHEK293細胞(Invitrogen、A14527)に発現した。まず、発現ベクターの構築であり、9つの対を成す重鎖可変領域と軽鎖可変領域を、それぞれヒトIgG1重鎖定常領域(配列番号5)と軽鎖Kappa定常領域(配列番号10)のN末端に置き、N末端シグナルペプチド付きのpcDNA3.1発現ベクターに構築し、軽重鎖発現ベクターを得た。得られた軽重鎖発現ベクターをPEI(Polysciences Inc、23966)共トランスフェクト対HEK293細胞により瞬時トランスフェクションし、7日培養した後、培地上清を収集した。上清をProtein Aカラム(Hitrap Mabselect Sure、GE 11-0034-95)により精製した後、限外濾過してPBS(Gibco,70011-044)に液交換し、A280法で濃度を検出し、SEC-HPLC法で純度を測定し、純度が95%超の抗体溶液を得た。

実施例5、BLI法による組換えCLDN18.2抗体と抗原との親和性の測定
【0212】
バイオレイヤー干渉法(Biolayer Interferometry、BLI)で本発明の抗体のヒトCLDN18.2と結合する平衡解離定数(K)を測定した。BLI法による親和性の測定は、従来の方法(Estep,P et al.,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p270-8)で行われた。AHC(18-5060、Fortebio)センサをSD緩衝液(1xPBS、BSA 0.1%、Tween(登録商標)-20 0.05%)に浸漬した。100μlのSD緩衝液、各抗体、ヒトClaudin18.2タンパク質(P50251802、GenScript)を取り、それぞれ96ウェルの黒いポリスチレン半量マイクロプレート(Greiner、675076)に加入した。Fortebio Octet Red96で検出し、ForteBio Octet解析ソフトウェアでK値を解析した。抗体の親和性データは、表3に示されるように、9つの抗体は高い親和性を有し、そのうち、3G3が対照抗体Zmabの親和性と相当する以外、他のものがいずれも対照抗体Zmabよりも優れている。
【0213】
【表6】

実施例6、CLDN18.2抗体のCLDN18細胞との結合特異性
【0214】
フローサイトメトリー(FACS)により、上記9つの抗体のそれぞれの、実施例1で得られたヒトCLDN18.2とヒトCLDN18.1を安定的にトランスフェクションしたCHO-S細胞株(即ち、実施例に記載の通り調製されたCHO-hCLDN18.2とCHO-hCLDN18.1)との結合を測定した。実験方法については、実施例2が参照され、GraphPad Prismソフトウェアで実験データを解析し、図1図2を得た。図1図2に示されるように、前記9つの抗体は、いずれもヒトCLDN18.2と特異的に結合するが、ヒトCLDN18.1と結合しない。

実施例7、CLDN18.2抗体の、レポーター遺伝子によるADCC活性の検出
【0215】
ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するADCCエフェクター細胞(Promega、G7102)で上記9つの抗体のADCC活性を検出した。対数増殖期の標的細胞CHO-hCLDN18.2とADCCエフェクター細胞を取り、それぞれカウントし、1:6の割合で、合計50uLを白い96ウェルベースプレートに加入し、1ウェル当たり合計で1.75×10個の細胞を有し、次に各ウェルにそれぞれ上記抗体を加入し、37℃、5%COで8~10時間インキュベートし、前記抗体のそれぞれの濃度は、濃度の初期点を3nMとし、そして3倍希釈し、合計9つの濃度点になり、即ち、各抗体の使用する濃度は、3nM、1nM、0.333nM、0.111nM、0.037nM、0.123nM、0.0041nM、0.0014nM、0.00046nMである。メーカーの取扱説明書によって、Bio-GloTM Luciferase reagent(Promega、G7940)で蛍光の検出を行った。図3の結果に示されるように、9つの抗体は、いずれも対照抗体Zmabに相当するADCC活性を有する。

実施例8、マウス抗体のヒト化改変
【0216】
実施例3における8つのマウス抗体(3G3、14A5、25C7、38F8、69H9、46F6、59C1および51H10)を選択してヒト化改変を行った。抗体のCDR領域を確定し、重鎖CDR1は、Abm命名規則を採用し、残りのCDRは、Kabat命名規則を採用した。配列の類似性のアラインメントによって、マウス抗体の可変領域配列と類似度が最も高いヒト胎児系(germline)遺伝子配列をヒト化抗体のフレーム領域のテンプレートとして選択し、その後CDR領域を各テンプレートに移植した。Discovery Studioソフトウェアで各抗体の三次元構造を構築し、CDR領域に影響を与えるフレーム領域のアミノ酸を復帰変異して、ヒト化抗体配列を得た。ヒト化抗体であるHz3G3、Hz14A5、Hz25C7、Hz38F8、Hz69H9、Hz46F6、Hz59C1およびHz51H10の配列は、表Aが参照される。
【0217】
実施例4に記載の方法により、これらのヒト化組換え抗体に対して調製と精製を行い、95%超の純度を有する、PBSに溶けた抗体溶液を得た。

実施例9、SPR法によるCLDN18.2抗体の親和性の測定
【0218】
表面プラズモン共鳴法(Surface plasmon resonance、SPR)によって、8つのヒト化抗体(Hz3G3、Hz14A5、Hz25C7、Hz38F8、Hz69H9、Hz46F6、Hz59C1およびHz51H10)と1つの全ヒト抗体(HB37A6)の、ヒトCLDN18.2と結合する平衡解離定数(K)を測定した。メーカーの取扱説明書によって、アミノカップリング試薬キット(GE Healthcare、BR-1006-33)を用いて、ヒトClaudin18.2(GenScrip、P50251802)をCM5チップ(GE Healthcare、29-1496-03)の表面にカップリングし、カップリングした後、1Mのエタノールアミンを注入し、残りの活性化部位を封止した。メーカーの取扱説明書によって、Biacore(GE Healthcare、T200)でチップ表面抗原と移動相での抗体との結合と解離を検出して、親和性および動態定数を取得した。勾配希釈された抗体(0nM~100nM)を、濃度の低い順でチップ表面を流れ、結合時間が180s、解離時間が600sである。最後に、10mMのGlycine pH 1.5(GE Healthcare、BR-1003-54)を用いてチップを再生した。データ結果を、Biacore T200解析ソフトウェアを用いて1:1の結合モデルで動態解析を行った。表4に示されるように、Hz25C7とHz3G3以外、他の抗体の親和性は、いずれも対照抗体Zmabよりも優れている。
【0219】
【表7】

実施例10、ヒト化抗体の、レポーター遺伝子によるADCC活性検出
【0220】
SPR親和性データに基づき、Hz14A5、Hz38F8、Hz69H9、Hz46F6、Hz59C1およびHz51H10を選択し、レポーター遺伝子によるADCC活性の検出を行った。実験過程については、実施例7が参照される。図4に示されるように、ヒト化抗体Hz14A5、Hz38F8、Hz69H9、Hz46F6、Hz59C1およびHz51H10は、いずれも対照抗体に相当するADCC活性を示している。

実施例11、CLDN18.2抗体と腫瘍細胞株との結合
【0221】
以上の結果に基づき、1つのヒト化抗体Hz69H9と1つの全ヒト抗体HB37A6を選択して次の検出を行った。実施例4を参照し、FACSにより2つの抗体のそれぞれの、胃癌細胞株NUGC-4、胃癌細胞株KATO III-hCLDN18.2および膵臓癌細胞株DAN-G-hCLDN18.2との結合を測定した。図5は、ヒト化抗体Hz69H9と全ヒト抗体HB37A6がいずれも良い腫瘍細胞特異的結合を有し、対照抗体Zmabよりも優れていることを示している。

実施例12、CLDN18.2抗体のCDC活性の検出
【0222】
KATO III-CLDN18.2細胞株を用いて抗体分子のCDC活性を検出した。96ウェルプレートに1×10個の標的細胞KATO III-hCLDN18.2を加入し、次に、適切な濃度の抗体分子を加入し、37℃で30分間培養した後、調製されたばかりのヒト血清補体(Sigma、S1764)を加入し、前記抗体のそれぞれの濃度は、濃度を段階希釈し、初期濃度を150ug/mlとし、3倍希釈し、合計で9つの濃度点がある。反応系を、37℃のインキュベーターに再度置いて3時間インキュベートし、次に、CCK-8試薬キット(同仁化学、CK04)を用いてプレートリーダー(ThermoFisher、MULTISKAN FC)でデータを読み取り、その結果、図6に示されるように、Hz69H9とHB37A6は、対照抗体Zmabに相当するCDCを有する。

実施例13、CLDN18.2抗体のADCC活性の検出
【0223】
完全培地RPMI-1640(Hyclone、SH30809.01)+10%牛胎児血清(FBS、Hyclone、SH30084.03)を用いてヒト末梢血単一核細胞(PBMC、Allcells or Saily)を再懸濁し、PBMCを1×10個/mlに調整した。NUGC-4、またはClaudin18.2を過剰発現したDAN-G腫瘍標的細胞DAN-G-CLDN18.2をFar-Red(Invitrogen)で10min標識し、二回洗浄した後、完全培地RPMI-1640(Hyclone、SH30809.01)+10%牛胎児血清(FBS、Hyclone、SH30084.03)に再懸濁し、細胞濃度を2×10個/mlに調整した。PBMCを抗claudin18.2モノクローナル抗体Hz69H9、HB37A6および対照抗体Zmabと混合し(各抗体の初期濃度は30nMであり、3倍段階希釈し、合計で12個の濃度点がある)、37℃で30minインキュベートし、次に50:1のエフェクター細胞/標的細胞比で50ulの腫瘍標的細胞(1×10個)を50μlのPBMCエフェクター細胞に加入した。37℃で8時間インキュベートし、遠心分離し、最終濃度が10μg/mlのヨウ化プロピジウム(propidium iodide、PI、Invitrogen)で細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー(BD、FACSCELESTA)でFar-RedとPI二重陽性の細胞を検出した。FACSDiva software(BD、Celestsa)で腫瘍標的細胞の殺傷比を算出した。
【0224】
抗Claudin18.2モノクローナル抗体依存性の細胞介在性のNUGC-4腫瘍細胞毒性の結果は、図7AとBに示されるように、Hz69H9とHB37A6および対照抗体Zmabが、いずれもNK細胞によるNUGC-4への細胞毒性殺傷を用量依存的に媒介することができ、Hz69H9とHB37A6は、腫瘍細胞への最大殺傷が対照抗体Zmabよりも強い。Hz69H9とHB37A6のほうが、より強い細胞介在性の腫瘍細胞毒性作用を有することが示されている。抗Claudin18.2モノクローナル抗体依存性の細胞介在性のDAN-G腫瘍細胞毒性の結果は、図7CとDに示されるように、Hz69H9とHB37A6および対照抗体Zmabが、いずれもNK細胞による腫瘍細胞への細胞毒性殺傷を用量依存的に媒介することができる。そのうち、HB37A6とHz69H9は、2つの異なる提供者のPBMCにおいて、媒介した最大殺傷がいずれも対照抗体Zmabよりも強い。以上の結果から明らかなように、対照抗体Zmabと比べて、Hz69H9およびHB37A6は、細胞介在性の腫瘍細胞毒性作用がより強い。

実施例14、CLDN18.2抗体の体内での抗腫瘍効果
【0225】
1、DAN-G-CLDN18.2担腫瘍マウスモデルに対する抗体の活性
HZ69H9とHB37A6抗体を選択して、ヒト膵臓癌に罹患したNOD-SCIDマウス(雌のNOD-SCIDマウス(15g~18g)で、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入され、数が60匹である)における抗腫瘍効果をテストした。実施例1で構築されたヒト膵臓癌細胞DAN-G-CLDN18.2に対して通常の継代培養を行い、後続の体内実験に用いた。細胞を遠心分離して収集し、PBS(1×)でDAN-G-CLDN18.2を分散し、細胞密度が12×10個/mlの懸濁液を得た。細胞懸濁液とmatrigelゲルを1:1で混合し、細胞濃度が6×10個/mlの細胞懸濁液を調製した。0日目に細胞懸濁液0.2mlを取ってNOD-SCIDマウスの右側腹部領域に皮下接種し、DAN-G-CLDN18.2担腫瘍マウスモデルを作成した。
【0226】
腫瘍細胞を5日間接種した後、各マウスの腫瘍体積を検出し、腫瘍体積が43.36mm~89.47mmの範囲にあるマウスを、腫瘍体積の大きさによってS形群分けた(1群あたり8匹)。
【0227】
各マウスにhIgG(Equitech-Bio、ロット番号:160308-02)、Hz69H9、HB37A6および対照抗体Zmabを投与し、投与量は、1回あたり10mg/kgであり、それぞれ接種後の5日目、9日目、12日目、16日目に投与し、マウスの腫瘍体積を週に2~3回検出した。腫瘍体積の測定:ノギスで腫瘍の最大長軸(L)と最大短軸(W)を測定し、腫瘍体積を下記の式V=L×W/2により算出した。電子天びんを用いて体重を測定した。
【0228】
2、NUCG-4担腫瘍マウスモデルに対する抗体の活性
HZ69H9とHB37A6抗体を選択して、ヒト胃癌に罹患したNOGマウス(雌のNOGマウス(15g~18g)で、北京維通利華実験動物技術有限公司から購入され、数が100匹である)における抗腫瘍効果をテストした。PBMC細胞(Allcells)を蘇生し、細胞を遠心分離して収集し、細胞密度が2.5×10個/mlの細胞懸濁液になるように、PBS(1×)でPBMC細胞を分散し、0日目に0.2mlの細胞懸濁液を取ってNOGマウスの眼静脈注射に用いて、NOGヒト化マウスモデルを作成した。
【0229】
NUGC-4細胞に対して通常の蘇生継代培養を行い、後続の体内実験に用いた。細胞を遠心分離して収集し、細胞密度が12×10個/mlになるように、PBS(1×)でNUGC-4細胞を分散し、matrigelゲルと1:1で混合し、細胞濃度が6×10個/mlの細胞懸濁液を調製した。5日目に細胞懸濁液0.2mlを取ってNOGヒト化マウスの右側腹部領域に皮下接種し、NUCG-4担腫瘍マウスモデルを作成した。
【0230】
腫瘍細胞を接種した後の1日目にランダムに群分け、1群あたり7匹で、各マウスにhIgG(Equitech-Bio、ロット番号:160308-02)、Hz69H9とHB37A6および対照抗体Zmabを投与し、投与量は、1回あたり10mg/kgであり、それぞれ接種後の1日目、5日目、8日目、12日目に投与し、マウス腫瘍体積と体重を週に2~3回検出した。腫瘍体積の測定:ノギスで腫瘍の最大長軸(L)と最大短軸(W)を測定し、腫瘍体積を下記の式V=L×W/2により算出した。電子天びんを用いて体重を測定した。
【0231】
3、結果
その結果、図8に示されるように、Hz69H9とHB37A6および対照抗体Zmabは、いずれもヒト膵臓癌DAN-G-CLDN18.2マウスモデルにおいて腫瘍増殖を抑制することができる。図9に示されるように、Hz69H9とHB37A6は、ヒト胃癌NUGC-4マウスモデルにおいて、対照抗体Zmabよりも良い抗腫瘍効果を示している。
【0232】
接種後の26日目に、相対腫瘍抑制率(TGI%)を算出し、計算公式は、
TGI%=100%*(対照群腫瘍体積ー治療群腫瘍体積)/(対照群腫瘍体積ー対照群投与前腫瘍体積)である。
【0233】
ここで、DAN-G-CLDN18.2担腫瘍マウスモデルには、Hz69H9とHB37A6のTGIがそれぞれ70%、28%であり、ZmabのTGIが24%であり、
NUCG-4担腫瘍マウスモデルには、Hz69H9とHB37A6のTGIがそれぞれ46%、31%であり、ZmabのTGIが0%である。
【0234】
【表8-1】
【0235】
【表8-2】
【0236】
【表8-3】
【0237】
【表8-4】
【0238】
【表8-5】
【0239】
【表8-6】
【0240】
【表8-7】
【0241】
【表8-8】
【0242】
【表8-9】
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2023530003000001.app
【国際調査報告】