(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】複合材剥離方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20230705BHJP
C08J 3/16 20060101ALI20230705BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
H01M10/54
C08J3/16 CEY
B09B5/00 A ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578586
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2021076466
(87)【国際公開番号】W WO2021253849
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/096672
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/110065
(32)【優先日】2020-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/117789
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/139555
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518234977
【氏名又は名称】ジーアールエスティー・インターナショナル・リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 9-10,12/F Technology Park,18 On Lai Street,Shatin,New Territories,Hong Kong,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホ、カム・ピウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、インカイ
(72)【発明者】
【氏名】ドン、ヤンチャン
【テーマコード(参考)】
4D004
4F070
5H031
【Fターム(参考)】
4D004AA23
4D004BA05
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4F070AA29
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4F070DA38
4F070DB01
5H031EE01
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH03
5H031HH06
5H031RR02
(57)【要約】
沈殿剤を第1の懸濁液中に添加して第2の懸濁液を形成することによりポリマーを沈殿させる方法であって、第1の懸濁液がポリマー及び水性溶媒を含み、前記ポリマーが酸基含有モノマーから誘導される構造単位及び疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含む方法が開示される。本明細書に開示されたポリマーの沈殿の方法は、第2の懸濁液内のポリマーと水性溶媒との間の結合破壊及び/又は破断を開始するために開発された。これはポリマーの沈殿をもたらすポリマー鎖の分子間及び分子内相互作用によって駆動されるポリマーの構造転移を伴うものである。この方法によって、複雑な分離プロセスとポリマーの汚染の両方が回避され、優れた材料回収が可能になり、ポリマーの沈殿を短時間で達成することが可能になる。電池電極においてポリマーバインダーを沈殿させるための方法の適用が、本明細書に開示される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿剤を第1の懸濁液中に添加して第2の懸濁液を形成することによりポリマーを沈殿させる方法であって、前記第1の懸濁液がポリマー及び水性溶媒を含み、前記ポリマーが酸基含有モノマーから誘導される構造単位及び疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含む方法。
【請求項2】
前記コポリマーがアミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー又はそれらの組み合わせからなる群から選択される親水性基含有モノマーをさらに含み、前記疎水性基含有モノマーがニトリル基含有モノマー、エステル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、フッ素基含有モノマー又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コポリマー中の前記酸基含有モノマーから誘導される構造単位の前記疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位に対するモル比が約0.1~約3であり、前記疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合が、ポリマー中のコポリマーのモノマー単位のモルの総数に基づいて、約15モル%~約85モル%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記酸基含有モノマーがカルボン酸基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、ホスホン酸基含有モノマー又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記酸基含有モノマーのpK
aが約2.5~約7である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸基含有モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-ブチルクロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、テトラコン酸(tetraconic acid)、2-エチルアクリル酸、イソクロトン酸、cis-2-ペンテン酸、trans-2-ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、3,3-ジメチルアクリル酸、3-プロピルアクリル酸、trans-2-メチル-3-エチルアクリル酸、cis-2-メチル-3-エチルアクリル酸、3-イソプロピルアクリル酸、trans-3-メチル-3-エチルアクリル酸、cis-3-メチル-3-エチルアクリル酸、2-イソプロピルアクリル酸、トリメチルアクリル酸、2-メチル-3,3-ジエチルアクリル酸、3-ブチルアクリル酸、2-ブチルアクリル酸、2-ペンチルアクリル酸、2-メチル-2-ヘキセン酸、trans-3-メチル-2-ヘキセン酸、3-メチル-3-プロピルアクリル酸、2-エチル-3-プロピルアクリル酸、2,3-ジエチルアクリル酸、3,3-ジエチルアクリル酸、3-メチル-3-へキシルアクリル酸、3-メチル-3-tert-ブチルアクリル酸、2-メチル-3-ペンチルアクリル酸、3-メチル-3-ペンチルアクリル酸、4-メチル-2-ヘキセン酸、4-エチル-2-ヘキセン酸、3-メチル-2-エチル-2-ヘキセン酸、3-tert-ブチルアクリル酸、2,3-ジメチル-3-エチルアクリル酸、3,3-ジメチル-2-エチルアクリル酸、3-メチル-3-イソプロピルアクリル酸、2-メチル-3-イソプロピルアクリル酸、trans-2-オクテン酸、cis-2-オクテン酸、trans-2-デセン酸、α-アセトキシアクリル酸、β-trans-アリールオキシアクリル酸、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、ブロモマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、ジフルオロマレイン酸、ノニル水素マレアート、デシル水素マレアート、ドデシル水素マレアート、オクタデシル水素マレアート、フルオロアルキル水素マレアート、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、メタクロレイン、塩化メタクリロイル、フッ化メタクリロイル、臭化メタクリロイルおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スルホン酸基含有モノマーが、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、アリルビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-スルホエチルメタクリル酸、2-メチルプロパ-2-エン-1-スルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ホスホン酸基含有モノマーが、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、ビニルベンジルホスホン酸、アクリルアミドアルキルホスホン酸、メタクリルアミドアルキルホスホン酸、アクリルアミドアルキルジホスホン酸、アクリロイルホスホン酸、2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホン酸、エチレン2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、エチル-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
酸基含有モノマーから誘導される構造単位の割合が、前記ポリマー中の前記コポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約15モル%~約85モル%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ニトリル基含有モノマーが、アクリロニトリル、α-ハロゲノアクリロニトリル、α-アルキルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリル、α-フルオロアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-イソプロピルアクリロニトリル、α-n-ヘキシルアクリロニトリル、α-メトキシアクリロニトリル、3-メトキシアクリロニトリル、3-エトキシアクリロニトリル、α-アセトキシアクリロニトリル、α-フェニルアクリロニトリル、α-トリルアクリロニトリル、α-(メトキシフェニル)アクリロニトリル、α-(クロロフェニル)アクリロニトリル、α-(シアノフェニル)アクリロニトリル、ビニリデンシアニドおよびそれらの組合せからなる群から選択され;前記ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位の割合が、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約15モル%~約85モル%である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記アミド基含有モノマーが、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-イソブチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-(メトキシメチル)メタクリルアミド、N-(エトキシメチル)メタクリルアミド、N-(プロポキシメチル)メタクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチロールメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N-ヒドロキシルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N,N’-メチレン-ビス-アクリルアミド(MBA)、N-ヒドロキシメチルアクリルアミドおよびそれらの組合せからなる群から選択され;前記アミド基含有モノマーから誘導される構造単位の割合が、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約0モル%~約35モル%である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記水性溶媒は水又は主成分としての水と微量成分とを含む溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記水性溶媒中の水の割合は、約51重量%~約100重量%であり、前記微量成分はメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記沈殿剤は強酸、弱酸又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記強酸は硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、ジチオン酸、亜ジチオン酸、スルファミン酸、トリチオン酸、テトラチオン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、プロピオル酸、メソシュウ酸、メリット酸又はそれらの組合せからなる群から選択され、前記強酸のpK
aは約-10~約2である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記弱酸はギ酸、酢酸、グリコール酸、グリオキシル酸、シュウ酸、プロピオン酸、アクリル酸、プロピオル酸、乳酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、グリセリン酸、ピルビン酸、3-オキソプロピオン酸、2,3-ジオキソプロピオン酸、マロン酸、タルトロン酸、ジヒドロキシマロン酸、メソシュウ酸、グリシド酸、酪酸、イソ酪酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、テトロル酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-オキソブタン酸、アセト酢酸、4-オキソブタン酸、ブタン二酸、メチルマロン酸、フマル酸、マレイン酸、2-ヒドロキシブタン二酸、酒石酸、オキサロ酢酸、ジオキソコハク酸、吉草酸、イソ吉草酸、2-メチル酪酸、ピバル酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシイソ吉草酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、2-フロ酸、テトラヒドロフロ酸、ヘキサン酸、ヘキサン二酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、ソルビン酸、ピメリン酸、安息香酸、サリチル酸、4-カルボキシ安息香酸、トリメシン酸、メリット酸、リンゴ酸、亜ジチオン酸、リン酸、亜硝酸、オルトケイ酸又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記弱酸のpK
aは約2~約7である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の懸濁液のpHが約0.2~約4.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の懸濁液のpHが酸基含有モノマーのpK
aより少なくとも0.2pH単位低い、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の懸濁液を約1分~180分の時間撹拌し、前記沈殿剤を約20℃~約95℃の温度で第1の懸濁液中に添加する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料のリサイクル方法の分野に関するものである。特に、本発明はポリマーの沈殿方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急激な都市化、技術革新の急速な進展およびこれらに伴う製品の頻繁な置き換えまたは消耗品の廃棄によって、製品の寿命が短くなり、および/または廃棄物が過剰に発生するようになってきた。廃棄物の過剰発生に伴い、人体への悪影響、環境への悪影響、資源の枯渇などの問題が深刻化し、様々な廃棄物処理の手段を用いて、これらの問題を解決することが世界的に急がれている。
【0003】
リサイクルは廃棄物削減の階層構造における重要な構成要素であり、廃棄物から貴重な材料を回収して再利用することを目的としている。材料のリサイクルは、天然資源の保護や、原材料の採取に伴うエネルギー消費量の削減(ひいては生産コストの削減)や、温室効果ガスやSOx排出量の削減による環境負荷の軽減をもたらす。このように、材料リサイクルには大きなメリットがあるため、高効果及び高効率な材料をリサイクルするための方法を開発することはサーキュラーエコノミーを実現する上で最も重要なことである。
【0004】
重合は、非常に複雑な構造と多様な機能を持つ高分子の生成において、強力かつモジュール式の戦略である。従って、ポリマーはさまざまな用途に有用である。触媒、塗料、ワニス、保護コーティング、分散剤、乳化剤、界面活性剤、潤滑剤、凝集剤、増粘剤、送達剤、接着剤、絶縁体、包装材料、生体材料、建築材料、感光材料などとして利用されてきた。このようにポリマーは様々な分野で使用されているため、製品内に含まれるポリマーを分離することは材料リサイクルに大きく関わる技術である。
【0005】
しかしながら、製品がその寿命に達し、または製造工程で不合格品が発生して、すぐにリサイクルできるようになった場合、リサイクル中に製品に含まれるポリマーを分離する工程を経ることにはいくつかの困難が伴う。
【0006】
ポリマーの抽出を達成することにおいて、様々な手段が提案されている。例えば、ポリマーの回収を可能にするために、ポリマーを含む混合物に薬剤を配合することができる。しかしながら、ポリマーと反応し、またはポリマーに変化を引き起こして、混合物からのポリマーの分離を引き起こす役割を果たす薬剤は、混合物内の他の構成要素とも望ましくない化学反応を起こす可能性があり、これは他の構成要素に不可逆的な化学変化を引き起こすか、または他の構成要素が同様に混合物から抽出されることを可能にする可能性がある。前者は混合物中の他の構成要素の回収を不可能にし、後者はポリマーの効果的でない分離を引き起こし混合物中の他の構成要素の望ましくない回収損失をもたらすだけでなく、その後の精製プロセスを必要とする高いレベルの不純物を有する再生されたポリマーをもたらすであろう。さらに、残りの混合物からのポリマーの分離は非常に非効率的であり数時間かかる可能性がある。
【0007】
さらなる態様において、本発明の方法は水性溶媒からの水性ポリマーの分離を達成するためのものである。水溶性ポリマーは水溶性であることが知られており水性媒体中で処理することができるが、水中では優れた分散性と安定性を示す。ポリマーが水中に均一に分散できることはポリマーの特異的な機能性能を大きく向上させる。しかしながら、水溶性ポリマーが水性媒体中に十分分散していることは、その後のリサイクル段階において水溶性ポリマーをそれぞれの水性溶媒から分離する際に、さらなる課題を提起する。
【0008】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような一般的に用いられる有機ポリマーは、独自の欠点を有し、水に対して不溶性であり、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)のようないくつかの特定の有機溶媒にしか溶解できない。NMPは可燃性及び毒性であるので特定の取り扱いを必要とする。NMPの蒸気を回収するためのNMP回収装置を乾燥工程に設置する必要がある。このような回収装置は大きな設備投資を必要とするので、製造工程に大きなコストを発生させることになる。したがって、製造工程で水分にさらされることがあまり懸念されない用途では、より安価で環境に優しい水性溶媒、最も一般的には水、などを利用した水性ポリマーの使用が好ましい。水性ポリマーの使用は回収システムの大きな資本コストを削減できるためである。この観点から、本発明は水溶性ポリマーの沈殿方法について詳述する。
【0009】
混合物からのポリマーの分離は、ポリマーと混合物に含まれる溶媒との間の結合破壊及び/又は破断によって開始される。しかしながら、様々な特異的特性を示す異なる組成のポリマーが多数開発されているため、中に含まれるポリマーの組成にかかわらず、混合物からのポリマーの分離において単一の分離方法を適用することは非常に非現実的であろう。このため、混合物中に添加する方法や薬剤の選択は、混合物内の他の成分に望ましくない化学的および物理的変化を与えることなく、標的ポリマーの分離を達成することにおいて、非常に特異であることが望ましい。
【0010】
上記の観点から、混合物からのポリマーの完全な分離を達成する方法の開発が試みられてきた。
【0011】
KR特許出願公開No.20130099568Aには、ポリマー溶液に二酸化炭素(CO2)などの超臨界流体を導入して、超臨界条件下でポリマー溶液からポリマーを分離する方法が開示されており、ここで、ポリマー溶液はオレフィンモノマー、オレフィンモノマーおよびアルキル又はベンジル系溶媒から誘導されるポリマーを含む。ポリマー溶液は、まず、均一な溶液を形成する際に、ポリマー溶液に二酸化炭素を導入して、20~70℃の定温で昇圧(500bar以上、CO2の臨界圧力をはるかに超える)される。ポリマー溶液内の液体CO2は貧溶媒(anti-solvent)として作用しポリマーを沈殿させることができる。その後、残りの溶液の圧力を下げて、CO2、溶媒及び、モノマーを蒸発させることで、沈殿したポリマーを残りのポリマー溶液から除去することができる。超臨界状態を作り出しCO2が優れた貧溶媒効果を発揮するためには、ポリマーの沈殿を開始させるために、大気圧をはるかに超える非常に高い圧力が関連するプロセスに必要となる。この方法では分離工程に(大きい消費エネルギーから起こる)多大なエネルギーコストがかかる。また、高圧処理による安全性の問題もある。
【0012】
上記の課題に鑑み、混合物からのポリマーの高効率かつ完全な分離を達成する統一的かつ簡便な方法を開発する必要性が常に存在し、混合物はポリマー及び水性溶媒を含んでいる。本発明は沈殿剤を使用して混合物からのポリマーの完全な分離を達成する際の、ポリマーの沈殿方法を示すものである。さらに、本明細書に開示された方法は、特にポリマー製剤の最適化のために開発されたものである。本明細書に開示されたポリマーの沈殿方法は、混合物内のポリマーと水性溶媒との間の結合破壊及び/又は破断を開始するために開発されている。これはポリマーの沈殿をもたらすポリマー鎖の分子間及び分子内相互作用によって駆動されるポリマーの構造転移を伴うものである。したがって、この沈殿現象は液相にあるポリマーが急激に固相に変換される相変換反応に関するものである。本発明のポリマーは、酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含む。このようにポリマーと水性溶媒との相互作用の変化を促進する性質を満たす本発明の沈殿方法は、混合物からのポリマーの回収に適用性が高い。これによって複雑な分離プロセスとポリマーの汚染の両方が回避され、優れた材料回収が可能になり、ポリマーの沈殿を短時間で達成することが可能になるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】KR特許出願公開No.20130099568A
【発明の概要】
【0014】
前述のニーズは本明細書に開示される様々な態様及び実施形態によって満たされる。一つの態様において、本明細書で提供されるのは、沈殿剤を第1の懸濁液に添加して第2の懸濁液を形成することによりポリマーを沈殿させる方法であって、第1の懸濁液はポリマーと水性溶媒とを含み、ポリマーは酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は酸である。いくつかの実施形態では、酸は強酸、弱酸、又はそれらの組み合わせである。
【0016】
いくつかの実施形態では、強酸は、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、ジチオン酸、亜ジチオン酸、スルファミン酸、トリチオン酸、テトラチオン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、プロピオル酸、メソシュウ酸、メリット酸又はそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、強酸のpKaは約-10~約2である。いくつかの実施形態では、強酸のpKaは-10と2との間である。
【0017】
いくつかの実施形態では、弱酸は、ギ酸、酢酸、グリコール酸、グリオキシル酸、シュウ酸、プロピオン酸、アクリル酸、乳酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、グリセリン酸、ピルビン酸、3-オキソプロピオン酸、2,3-ジオキソプロピオン酸、マロン酸、タルトロン酸、ジヒドロキシマロン酸、メソシュウ酸、グリシド酸、酪酸、イソ酪酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、テトロル酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-オキソブタン酸、アセト酢酸、4-オキソブタン酸、ブタン二酸、メチルマロン酸、フマル酸、マレイン酸、2-ヒドロキシブタン二酸、酒石酸、オキサロ酢酸、ジオキソコハク酸、吉草酸、イソ吉草酸、2-メチル酪酸、ピバル酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシイソ吉草酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、2-フロ酸、テトラヒドロフロ酸、ヘキサン酸、ヘキサン二酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、ソルビン酸、ピメリン酸、安息香酸、サリチル酸、4-カルボキシ安息香酸、トリメシン酸、メリット酸、リンゴ酸、亜ジチオン酸、リン酸、亜硝酸、オルトケイ酸又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、弱酸のpKaは約2~約7である。いくつかの実施形態では、弱酸のpKaは2と7との間である。
【0018】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液のpHは、約0.2~約4.5である。
【0019】
本明細書で提供された方法を用いて達成されるポリマーの沈殿は単純明快であり、短時間で起こり、第1の懸濁液中のポリマー及び他の構成要素の回収損失や、回収されたポリマーへのダメージや、不純物の導入という点で不利益を被らない。
【0020】
別の態様では、本発明の用途の1つとして、前述の方法は電池電極のリサイクルプロセスの一部として採用され、第2の懸濁液の残りからポリマーバインダーの分離を達成し、ここでポリマーバインダーはポリマーである。第1の懸濁液に沈殿剤を添加して第2の懸濁液を形成し、第1の懸濁液が電極層と水性溶媒を含み、電極層がポリマーバインダーを含み、ポリマーバインダーが酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含む、ポリマーバインダーの沈殿方法が提供される。
【0021】
第2の懸濁液からポリマーを沈殿するために本発明において沈殿剤を単純に利用することは、第2の懸濁液の残りからポリマーを完全に分離すること、ポリマーの沈殿にかかる時間を短縮すること、貴重な材料の回収を最大化すること、第2の懸濁液中のポリマー及び/又は他の構成要素の汚染を排除すること、及びその後の処理の必要性を防止することを達成することに役立つことができる。さらに、本明細書で開示された方法は第2の懸濁液内の電極活物質などの他の構成要素に望ましくない化学変化及び相転移を誘発することなく、電池電極内のポリマーバインダーを沈殿させるために適用可能であることがわかっている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1の懸濁液中のポリマーと水性溶媒との間の提案された相互作用の一実施形態の概略図を示す。
【
図2】
図2は、十分な濃度の沈殿剤が第1の懸濁液に添加されたときの、ポリマーと水性溶媒との間の相互作用における提案された変化の実施形態の概略図を示す。
【
図3】
図3A及び3Bは、それぞれ第1の懸濁液中への沈殿剤の添加前及び添加後のポリマーの構造コンフォメーションの一実施形態を示す。
【
図4】
図4は、不十分な濃度の沈殿剤が第1の懸濁液に添加されたときの、ポリマーと水性溶媒との間の相互作用における提案された変化の実施形態の概略図を示す。
【
図5】
図5は、十分な濃度の沈殿剤が第1の懸濁液に添加されるときの、1つ以上のカルボン酸基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含むポリマーと水性溶媒との間の相互作用における提案された変化の実施形態の概略図を示す。
【
図6】
図6A及び6Bは、第2の懸濁液を形成する際に第1の懸濁液に沈殿剤を添加した後の、pHがそれぞれ6及び3の比較例1及び例2の第2の懸濁液の物理的状態を示す。
【
図7】
図7A及び7Bは、それぞれ例38の沈殿したポリマー及び第2の懸濁液の残りの赤外分光法を示す。
【
図8】
図8A及び8Bはそれぞれ例37の沈殿したポリマー及び第2の懸濁液の残りの赤外分光法を示す。
【
図9】
図9は、本明細書に開示されたポリマーを沈殿させるためのステップと、沈殿したポリマーを抽出するためのその後のさらなる処理とを示す一実施形態のフローチャートである。
【
図10】
図10は、本明細書に開示されたポリマーバインダーを沈殿させるためのステップと、沈殿したポリマーを抽出するためのその後のさらなる処理とを示す一実施形態のフローチャートである。
【0023】
(発明の詳細な説明)
【0024】
一態様において本明細書で提供されるのは、第1の懸濁液に沈殿剤を添加して第2の懸濁液を形成することによりポリマーを沈殿させる方法であって;第1の懸濁液がポリマー及び水性溶媒を含み;ポリマーが酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを含む方法である。
【0025】
別の態様では、本発明の方法は電池電極のリサイクル体制の一部として使用される。ここで提供されるのは、第1の懸濁液に沈殿剤を添加して第2の懸濁液を形成することによりポリマーバインダーを沈殿させる方法であって;第1の懸濁液は電極層と水性溶媒とを含み;電極層はポリマーバインダーを含み;ポリマーバインダーは酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを含む方法である。
【0026】
用語「電極」は、「カソード」または「アノード」を指す。
【0027】
用語「正極」は、カソードと互換的に使用される。同様に、用語「負極」は、アノードと互換的に使用される。
【0028】
用語「ポリマーバインダー」、「バインダー」又は「バインダー材」は、材料を所定の位置に保持するために使用される化学化合物、化合物の混合物、又はポリマーを指す。いくつかの実施形態では、ポリマーバインダーは材料を基材上に付着させて複合材料を形成するために使用される。いくつかの実施形態では、基材は導電性金属である。いくつかの実施形態では、基材は非導電性金属である。いくつかの実施形態では、ポリマーバインダーは電極材料及び/又は導電剤を所定の位置に保持し、導電性金属部分上に付着させて電極を形成するために使用される化学化合物、化合物の混合物、又はポリマーを指す。いくつかの実施形態では、電極はいかなる導電剤も含んでいない。いくつかの実施形態では、ポリマーバインダーは水などの水性溶媒中でコロイド、溶液又は分散液を形成する。
【0029】
用語「導電剤」は良好な電気伝導性を有する材料を意味する。したがって、導電剤は電極の導電性を向上させるために、電極の形成時に電極活物質と混合されることが多い。いくつかの実施形態では導電剤は化学的に活性である。また、いくつかでは導電剤は化学的に不活性である。
【0030】
用語「ポリマー」は、同じ種類または異なる種類のモノマーを重合することによって調製される化合物を指す。総称「ポリマー」は、用語「ホモポリマー」および用語「コポリマー」を包含する。
【0031】
用語「ホモポリマー」は、同じ種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。
【0032】
用語「コイル」はポリマー鎖の直線状又はほぼ直線状の構成を意味する。いくつかの実施形態では、コイル状ポリマー鎖は互いに反発する鎖に沿った同種の電荷を含む。
【0033】
用語「コポリマー」は、2以上の異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。
【0034】
本明細書で使用される用語「不飽和」は、1つ以上の不飽和の単位を有する部分を指す。
【0035】
用語「アルキル」または「アルキル基」は、飽和、非分枝または分枝脂肪族炭化水素から水素原子を除去することで誘導される一般式CnH2n+1を有する一価の基を指し、nは整数、または1~20の整数、または1~8の整数を意味する。アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチル等の(C1-C8)アルキル基が挙げられるが、限定されない。長鎖のアルキル基としては、ノニル基およびデシル基が挙げられる。アルキル基は、無置換、または1つ以上の適切な置換基で置換されていてもよい。さらに、アルキル基は、分枝または非分枝でもよい。いくつかの実施形態において、アルキル基は、少なくとも2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を含む。
【0036】
用語「シクロアルキル」または「シクロアルキル基」は、単環または複数の縮合環を有する飽和または不飽和環状非芳香族炭化水素ラジカルを指す。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチル等の(C3-C7)シクロアルキル基、並びに飽和環式および二環式テルペン、並びにシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、およびシクロヘプテニル等の(C3-C7)シクロアルケニル基、並びに不飽和環式および二環式テルペンが挙げられるが、限定されない。シクロアルキル基は、非置換でも、1つまたは2つの適切な置換基で置換されていてもよい。さらに、シクロアルキル基は、単環または多環でもよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は、少なくとも5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む。
【0037】
用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して主要な炭素鎖に結合した、先に定義したようなアルキル基を指す。アルコキシ基のいくつかの非限定的な例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。上記で定義されたアルコキシは、置換または非置換でもよく、置換基は、重水素、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、シアノ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、メルカプト、ニトロ等であってもよいが、限定されない。
【0038】
用語「アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む不飽和の直鎖、分枝鎖、または環状炭化水素ラジカルを指す。アルケニル基の例として、エテニル、1-プロペニル、または2-プロペニルが挙げられるが、限定されず、ラジカルの炭素原子の1つ以上は任意に置換されていてもよい。
【0039】
用語「アリール」または「アリール基」は、水素原子を除去することによって単環または多環芳香族炭化水素から誘導される有機ラジカルを指す。アリール基の非限定的な例としては、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、またはトラニル(tolanyl)基、セキシフェニレン、フェナントレニル、アントラセニル、コロネニル(coronenyl)、およびトラニルフェニル(tolanylphenyl)が挙げられる。アリール基は、非置換、または1つ以上の適切な置換基で置換されてもよい。さらに、アリール基は、単環または多環でもよい。いくつかの実施形態において、アリール基は、少なくとも6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む。
【0040】
用語「脂肪族」は、C1~C30アルキル基、C2~C30アルケニル基、C2~C30アルキニル基、C1~C30アルキレン基、C2~C30アルケニレン基、またはC2~C30アルキニレン基を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、少なくとも2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を含む。
【0041】
用語「芳香族」は、任意でヘテロ原子または置換基を含む芳香族炭化水素環を含む基を指す。このような基の例としては、フェニル、トリル、ビフェニル、o-テルフェニル、m-テルフェニル、p-テルフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニル、トリフェニレニル、およびそれらの誘導体が挙げられるが、限定されない。
【0042】
化合物または化学部位を説明するために使用される用語「置換」は、化合物または化学部位の少なくとも1つの水素原子が第2の化学部位で置き換えられていることを意味する。置換基の例としては、ハロゲン;アルキル;ヘテロアルキル;アルケニル;アルキニル;アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシル;アルコキシル;アミノ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナート;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;アシル;ホルミル;アシロキシ;アルコキシカルボニル;オキソ;ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル);単環または縮合もしくは非縮合多環であり得る炭素環シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)または単環または縮合もしくは非縮合多環であり得るヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルまたはチアジニル);炭素環または複素環、単環または縮合若しくは非縮合の多環アリール(例えば、フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニルまたはベンゾフラニル);アミノ(一級、二級または三級);o-低級アルキル;o-アリール、アリール;アリール-低級アルキル;-CO2CH3;-CONH2;-OCH2CONH2;-NH2;-SO2NH2;-OCHF2;-CF3;-OCF3;-NH(アルキル);-N(アルキル)2;-NH(アリール);-N(アルキル)(アリール);-N(アリール)2;-CHO;-CO(アルキル);-CO(アリール);-CO2(アルキル);および-CO2(アリール);が挙げられるが、限定されず、さらに、このような部分は、縮合環構造または架橋、例えば-OCH2O-によって任意に置換されてもよい。これらの置換基は、任意に、このような基から選択される置換基でさらに置換されてもよい。本明細書に開示されるすべての化学基は、他に規定されない限り、置換され得る。
【0043】
用語「オレフィン」は少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和炭化水素系化合物を指す。
【0044】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、F、Cl、BrまたはIを指す。
【0045】
用語「モノマー単位」は、単一モノマーによってポリマーの構造に与えられる構成単位を指す。
【0046】
用語「構造単位」は、ポリマー中の同じモノマー種によって与えられる全モノマー単位を指す。
【0047】
用語「酸塩基」は酸が塩基と反応した時又は酸が水などの水性溶媒中で解離する時に形成される酸性塩を指す。いくつかの実施形態では、酸のプロトンは金属カチオンで置換される。いくつかの実施形態では、酸のプロトンはアンモニウムイオンで置換される。
【0048】
用語「多原子」は共有結合によって一緒に保持された3つ以上の原子の電気的に中性の基を指す。
【0049】
用語「多塩基酸」とは分子あたり2個以上のイオン化可能な水素イオン(すなわちプロトン)を有する酸を指す。
【0050】
用語「親水性」とは極性溶媒、特に水、又は極性官能基に溶解する傾向又は相互作用する傾向を指す。親水性基は通常それ自体が極性であり、多くの場合、そのような親水性基は水分子と水素結合を形成することが可能である。いくつかの非限定的な親水性基には、酸、ヒドロキシル、及びアミドが含まれる。
【0051】
用語「疎水性基」は極性溶媒、特に水、又は極性官能基と溶解又は相互作用しない傾向のある官能基を指す。疎水性基は通常非極性である。
【0052】
ポリマーの「数平均分子量(Mn)」という用語は数学的に次のように定義される。
【0053】
【0054】
ここで、Niは特定の分子量Miを有するポリマー分子の数である。
【0055】
ポリマーの「重量平均分子量(Mw)」という用語は数学的に以下のように定義される。
【0056】
【0057】
ここで、Niは特定の分子量Miを持つポリマー分子の数である。
【0058】
用語「多分散性指数」又は「PDI」は数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比を意味する。これは与えられたポリマーサンプル内の分子量の分布の尺度である。
【0059】
用語「プラネタリーミキサー」は、均質な混合物を生成するために異なる材料を混合または撹拌するために使用できる装置を指し、容器内で遊星運動を行うブレードからなる。いくつかの実施形態において、プラネタリーミキサーは、少なくとも1つのプラネタリーブレードおよび少なくとも1つの高速分散ブレードを含む。プラネタリーブレードおよび高速分散ブレードは、それぞれの軸で回転し、連続的に容器の周りをも回転する。回転速度は、分あたりの回転の単位(rpm)で表すことができ、回転体が1分間に完了する回転数を指す。
【0060】
用語「超音波発生装置(ultrasonicator)」は超音波エネルギーを与えて試料中の粒子を撹拌することができる装置を指す。ここに開示される混合物、懸濁液、溶液又はスラリーを分散させることができる任意の超音波発生装置を本明細書で使用することができる。超音波発生装置のいくつかの非限定的な例としては、超音波浴、プローブ型超音波発生装置、及び超音波フローセルが挙げられる。
【0061】
用語「超音波浴」は、超音波エネルギーが超音波浴の容器の壁を介して液体試料に伝達される器具を指す。
【0062】
用語「プローブ型超音波発生装置」は、直接超音波処理を行うために媒体中に浸漬される超音波プローブを指す。用語「直接超音波処理」は、超音波が処理液に直接結合されることを意味する。
【0063】
用語「超音波フローセル」または「超音波リアクターチャンバー」は、フロースルーモードで超音波処理を実施することができる器具を指す。いくつかの実施形態において、超音波フローセルは、シングルパス、マルチパス、または再循環構成である。
【0064】
用語「塗布」は、表面上に物質を敷くまたは広げる行為を指す。
【0065】
用語「集電体」は、電極層と接触し、二次電池の放電または充電中に電極に流れる電流を伝導することができる、任意の導電性基材を指す。集電体のいくつかの非限定的な例としては、単一の導電性金属層または基材、およびカーボンブラック系コーティング層等の導電性コーティング層を上に有する単一の導電性金属層または基材を挙げることができる。導電性金属層または基材は、三次元ネットワーク構造を有する箔または多孔質体の形態であってよく、ポリマー材料または金属材料または金属化ポリマーであってよい。いくつかの実施形態において、三次元多孔質集電体は、コンフォーマルカーボン層で被覆されている。
【0066】
用語「電極層」は、集電体と接触している、電気化学的に活性な材料を含む層を指す。いくつかの実施形態において、電極層は、集電体上にコーティングを塗布することによって作製される。いくつかの実施形態において、電極層は、集電体の片面または両面に位置する。他の実施形態において、三次元多孔質集電体は、電極層でコンフォーマルに被覆される。
【0067】
用語「室温」は、約18℃~約30℃、例えば、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30℃の室内温度を指す。いくつかの実施形態において、室温は、約20℃±1℃または±2℃または±3℃の温度を指す。他の実施形態において、室温は、約22℃または約25℃の温度を指す。
【0068】
用語「固形分」は、蒸発後に残る不揮発性材料の量を指す。
【0069】
用語「剥離強度」は互いに結合している集電体と電極層とを分離するために必要な力の量を指す。これはこのような2つの物質間の結合強度を示す指標であり、通常N/cmで表される。
【0070】
用語「接着強度」とは、互いに結合している集電体とポリマーバインダーコーティングとを分離するために必要な力の量を指す。これは、このような2つの物質間の結合強さの指標であり、通常、N/cmで表される。
【0071】
用語「水溶性」とは、微量の物質が水に溶けるか、水に溶けずに残る物質がまったくない物質の能力を指す。用語「水溶性」は用語「完全に水溶性」、「ほとんど水溶性」及び「わずかに不水溶性」を包含する。
【0072】
以下の説明において、本明細書に開示されるすべての数値は、「約」又は「おおよそ」という言葉がそれに関連して使用されているかどうかにかかわらず、近似値である。これらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、又は、場合によっては10~20パーセント変動し得る。下限値RL、及び上限値RUを有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内に入る任意の数値が具体的に開示される。特に、以下の範囲内の数値が具体的に開示される:R=RL+k*(RU-RL)、kは0パーセント~100パーセントの範囲の変数である。さらに、上記で定義された2つのR数によって定義される任意の数値範囲も具体的に開示される。
【0073】
本明細書において、単数形のすべての語句は複数形の語句を含み、その逆もまた同様である。
【0074】
本発明の方法は第1の懸濁液からポリマーを抽出するという特定の必要性に対して独自に調整され開発されたものであり、第1の懸濁液はポリマーと水性溶媒とを含む。ポリマーは水溶性であり、水性溶媒、最も一般的には水、を利用し、これは水系溶液を作るための基礎を形成する。ポリマーは水中での良好な分散性と安定性を達成することができ、ポリマーの機能的性能をかなり高めることができる。例えば、ポリマーがポリマーバインダーである場合、水中に良好に分散したポリマーバインダーの接着力はかなり増大し、ポリマーバインダーの結合能力の向上をもたらす。
【0075】
第1の懸濁液からのポリマーの分離方法を開発するにあたっては、そもそも第1の懸濁液を形成する際に、本発明のポリマーがどのように水性溶媒に溶解及び/又は分散することができるのかを理解する必要がある。
【0076】
第1の懸濁液を形成する際の水性溶媒へのポリマーの溶解は、(1)ポリマーと水性溶媒との間、より具体的には、ポリマーの構成に寄与するモノマー中のイオン化種及び/又は非荷電種と水性溶媒内に含まれる分子との間の分子間相互作用(例えば水素結合及びイオン-双極子相互作用);及び(2)特にポリマーに近接する領域で生じる、水性溶媒中の水分子の間の相互作用の一部の脱共役によって促進される。これらの相互作用は、ポリマー中のコポリマー鎖間の分子間相互作用及びコポリマー鎖内の分子内相互作用よりも支配的になり、第1の懸濁液を形成する際の水性溶媒へのポリマーの溶解を生じさせる。溶解又は溶媒和の過程で、ポリマーと水性溶媒とは溶媒和複合体に再構成され、ポリマーは水性溶媒内の極性分子の同心円状のシェルに囲まれ、第1の懸濁液中のポリマーの安定化につながる。
【0077】
ポリマーと水性溶媒との間の水素結合はそれぞれが水素結合を形成する(すなわち、水素結合を受容及び/又は供与する)能力に依存する。
【0078】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、コポリマーを含む。いくつかの実施形態において、コポリマーは、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)、およびニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位(b)を含む。いくつかの実施形態において、コポリマーは、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)、ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位(b)、アミド基含有モノマーから誘導される構造単位(c)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ヒドロキシル基含有モノマーから誘導される構造単位(d)、エステル基含有モノマーから誘導される構造単位(e)、エポキシ基含有モノマーから誘導される構造単位(f)、フッ素含有モノマーから誘導される構造単位(g)またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0079】
コポリマーの構成を潜在的に構成し得る上述のモノマーの各々は、独立して、水素(H)原子又は原子の最外電子殻の孤立電子対を有する他の電気陰性原子(水素結合アクセプター、Acとして知られている)に共有結合している強電気陰性原子、特に窒素(N)、酸素(O)又はフッ素(F)原子(水素結合ドナー、Dnとして知られている)のいずれかからなる。これにより、同じ特徴を有する別の分子(例えば、水性溶媒中に存在する水分子)と水素結合を形成する可能性がある。したがって、上記の各モノマーは、独立して、少なくとも1つの水素結合形成基を含む。水素結合形成系は一般に下記式(1)で示される。
【0080】
【0081】
ここで、Dnは水素結合ドナーであり;Acは水素結合アクセプターであり;実線は極性共有結合を示し、点線は水素結合を示す。
【0082】
いくつかの実施形態では、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は酸塩基を含む。いくつかの実施形態では、酸塩基は酸基の塩である。酸塩基のアニオンは部分的に正に荷電した種(例えば、水分子中の電子密度の一様でない分布に由来する水分子の水素原子付近の部分的な正電荷)とイオン-双極子相互作用を形成することが可能である。いくつかの実施形態では、構造単位(a)はアルカリ金属酸塩基を含む。アルカリ金属酸塩を形成するアルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、及びカリウムが挙げられる。いくつかの実施形態では、構造単位(a)はアンモニウム酸塩基を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、水性溶媒は水を主成分とし、水に加えて微量成分としてアルコール、低級脂肪族ケトン、低級アルキルアセタート等の揮発性溶媒を含む溶液である。いくつかの実施形態では、水性溶媒は水のみからなる。
【0084】
水の水酸基はより電気陰性なO原子に共有結合したH原子と最外電子殻に孤立電子対を有する電気陰性なO原子とからなり、そのいずれもが水素結合を介して相互作用できる他の種(例えば、ポリマー構造を補助するモノマー)(すなわち、(i)水素結合ドナーと共有結合しているH原子及び/または(ii)水素結合アクセプターと含む分子)と水素結合を形成できる。水素結合を受容および供与する水の能力は、ポリマーを溶媒和する際の優れた候補となる。
【0085】
水性溶媒が水に加えて水素結合形成能を有する微量成分を含む場合、微量成分と別の水素結合形成性分子(例えば、ポリマーの構成に寄与するモノマーの水素結合形成基)との間に水素結合相互作用が成立することもあり得る。
【0086】
水性溶媒中の水素結合形成性成分がポリマーの近傍にある領域(例えば、ポリマーの周囲の溶媒和殻の内側)では、ポリマーと水性溶媒との間に比較的強い相互作用が生じるため、水性溶媒中の水素結合形成性分子間に形成された水素結合が分断される。逆に、水性溶媒中の分子間の水素結合相互作用はこれらの分子がポリマーから離れた領域(例えば、ポリマーの周りの外側の溶媒和殻)で残存する。
【0087】
水性溶媒の極性は水性溶媒がポリマーをいかによく溶媒和するかを決定するもう一つの最も重要な要因である。極性分子は、結合した原子間の電気陰性度の差によって形成される少なくとも1つの極性結合を含む。結合した原子間で共有される電子対は電気陰性度の高い原子に引き寄せられる傾向があり、結合電子対の偏在が起こる。より電気陰性な原子は部分的に負電荷を得、一方、より電気陰性でない原子は部分的に正電荷を有する。この正および負の電荷の分離により結合双極子モーメントが発生する。多原子分子の場合、分子の双極子モーメントは分子内に存在するすべての結合双極子モーメントのベクトル和となる。2つ以上の極性結合を持つ極性分子は、少なくとも1つの方向に非対称に配置された極性結合からの反対の電荷による正味の双極子を持ち、結合双極子モーメントが互いに相殺されない。水分子は、例えば、分子内に存在する結合双極子モーメントが相殺されず正味の双極子をもたらすので、極性分子である。
【0088】
水性溶媒中の極性分子(例えば、水分子)は静電引力によって分子の適切な部分荷電部分を荷電種に向けることによって、ポリマー中の荷電種(例えば、ポリマーの構築を助けるモノマーの酸塩基のアニオン)を溶媒和する。これにより、ポリマーと水性溶媒との間のイオン-双極子相互作用を介して各荷電種の周りに溶媒和殻(水の場合は水和殻)が形成され、第1の懸濁液の形成においてポリマーが水性溶媒に溶解することが可能となる。
【0089】
水素結合及び/又はイオン-双極子引力は、溶媒和複合体の形成をもたらすポリマーと水系溶媒との間で主に形成される2種類の相互作用である。両者はポリマーおよび水性溶媒の分子構造、組成、性質によって、それぞれ独立してポリマーの溶解に異なる程度寄与する。水性溶媒中におけるポリマーの溶媒和は、分子間相互作用の他の手段、例えばイオン相互作用、ロンドン分散力、双極子-双極子相互作用、双極子-誘発双極子相互作用、およびイオン-誘発双極子相互作用を介して進行し得る。しかしながら、ポリマーの分子構造を考慮すると、水性溶媒によるポリマーの溶媒和をもたらす主要な静電相互作用は、水素結合及び/又はイオン-双極子相互作用を介して生じる。ポリマーと水性溶媒との間でより少ない程度に生じ得る上述の他の相互作用も、ポリマーの沈殿を可能にする沈殿剤の導入を介して、提案されたメカニズムに基づいて破壊される可能性がある。これらの相互作用は解釈を容易にするために示されていない。
【0090】
図1は第1の懸濁液中のポリマーと水性溶媒との間の提案された相互作用の一実施形態の概略図を示す。太字のポリマー化合物はカルボン酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含むポリマーの実施形態を表す。この場合のカルボン酸基含有モノマーから誘導される構造単位はカルボン酸塩基を含み、カルボン酸塩基はカルボン酸基の塩である。この場合の水性溶媒は水を含む。
【0091】
ポリマーのコポリマー中に存在する酸素(O)、窒素(N)及び水素(H)原子は、水性溶媒中の水分子のO及び/又はH原子と水素結合形成によって相互作用しやすい。また、ポリマー中に含まれるカルボン酸塩基、この場合COO-、のアニオンと、水性溶媒中の水分子の水素原子近傍の部分正電荷との間でイオン-双極子相互作用が働く。水素結合及び/又はイオン-双極子引力は第1の懸濁液中のポリマーと水性溶媒との間で主に形成される2種類の相互作用であり、第1の懸濁液の形成において水性溶媒によるポリマーの溶媒和及び溶解に独立して大きく寄与している。また、ポリマーに近接する水性溶媒中の水分子の間に最初に形成された水素結合(すなわち、ポリマーの周囲の内側の溶媒和殻)は、ポリマーと水性溶媒との間の比較的強い相互作用の発現に伴って崩壊することになるであろう。一方、ポリマーから離れた位置にある水分子間の水素結合(すなわち、ポリマーの周囲の外側の溶媒和殻)は、これらの分子に対するポリマーと水性溶媒との相互作用による破壊がかなり少ないため持続する。
【0092】
ポリマーが水に溶解し水分子の間に均一に分布する能力は、ポリマーの特定の機能的性能を実質的に改善することがわかる。本明細書で開示されたポリマーは、ポリマーと水性溶媒との間の水素結合及び/又はイオン-双極子相互作用を通して、水性溶媒中でのその溶解及び卓越した分散においてそのような能力を有するように工夫されている。本明細書で開示されたポリマーの設計は、様々な用途に格別に強い結合能力を提供するためのポリマーバインダーとして利用され得る。いくつかの実施形態では、ポリマーのコポリマーは酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリマーバインダーとして以外の他の目的にも使用され得る。
【0093】
しかしながら、第1の懸濁液内に溶解してよく分散したポリマーは、ポリマー含有製品がその寿命の終わりに達したとき、又は生産中に製品の不合格品が発生したとき、その後のリサイクル段階におけるそれぞれの第1の懸濁液からの水溶性ポリマーの分離においてさらなる課題を提起する。
【0094】
様々な特定の特性を示す異なる組成のポリマー中のコポリマーは水性溶媒からのコポリマーの剥離を可能にするために、最初に形成された溶媒和複合体を破壊することによって、抽出において異なるアプローチを必要とするであろう。従って、本発明の方法は第1の懸濁液からポリマーを沈殿させるために特に開発されたものである。より具体的には、本発明の方法は酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを、第1の懸濁液から沈殿させるために開発されたものである。必要に応じて、コポリマーは水素結合形成基含有モノマーから誘導される構造単位をさらに含む。水素結合形成基含有モノマーはアミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、エステル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、フッ素含有モノマー又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0095】
本明細書で開示されたポリマーの沈殿は2つの主要な事象によって促進され、2つの主要な事象とは(1)水性溶媒からのポリマーの分離をもたらす様々なタイプの相互作用、及び(2)その後のポリマーの構造転移、である。
【0096】
沈殿剤を添加すると、ポリマーは(i)ポリマーのコポリマーと水性溶媒との間の結合破壊及び/又は切断、(ii)溶媒和複合体の形成における、水性溶媒中の分子間の分子間引力の弱化、(iii)ポリマーの構成に寄与する酸基含有モノマーの共役塩基のプロトン化、(iv)コポリマー鎖内の種々の官能基間の分子内相互作用の形成、及び(v)コポリマー鎖間の分子間相互作用の発現、を介して第1の懸濁液中の水性溶媒から分離される。ポリマーのコポリマーと水性溶媒との間の結合破壊の開始に続いて、水性溶媒からのポリマーの分離を生じさせる上記の他のタイプの相互作用が順不同で起こる。本明細書で開示されるポリマーは、次にコイルからグロビュールへの構造転移を受ける。
【0097】
本発明は第1の懸濁液に沈殿剤を添加して第2の懸濁液を形成することによりポリマーを沈殿する方法であって;第1の懸濁液がポリマー及び水性溶媒を含み;ポリマーが酸基含有モノマーから誘導される構造単位及び疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含む方法を提供する。
【0098】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は酸である。いくつかの実施形態では、沈殿剤は強酸である。
【0099】
酸の強さは溶媒(最も一般的には水)中でプロトンと酸の共役塩基とに解離する酸の傾向を指す。酸のイオン化の程度は、通常、酸解離定数(Ka)で定量化される。強酸はより大きいKaを有するため、弱酸よりも小さい酸解離定数の負の対数(pKa、-logKaに等しい)に相当する。酸が強いほど、プロトン(すなわち、水素イオンH+)をより失いやすく、逆もまた同様である。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される第1の懸濁液は水を含む水性溶媒を含む。第2の懸濁液の形成において、本明細書で開示された第1の懸濁液に強酸を添加すると、水中での強酸の解離は、酸がプロトンを失い、水分子がヒドロキソニウムイオン(H3O+)を生成する際にプロトンを取り込んむことで効率的に完了する。前述の強酸の解離反応は一般に次のように表される。
【0101】
【0102】
ここで、HA1は沈殿剤として利用される強酸であり、H2Oは水分子であり、H3O+はヒドロキソニウムイオンであり、A1
-は酸HA1の共役塩基である。
【0103】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は弱酸である。
【0104】
第2の懸濁液を形成する際の第1の懸濁液への弱酸の組み込みにより、弱酸は第2の懸濁液中に存在する未解離の弱酸及びその解離生成物の両方と部分的にのみ解離する。前記弱酸の解離は以下の反応式で表される。
【0105】
【0106】
ここで、HA2は沈殿剤として利用される弱酸であり、A2
-は酸HA2の共役塩基である。
【0107】
第2の懸濁液中の弱酸の解離は、ヒドロキソニウムイオン生成における水分子と酸からのプロトンとの反応を伴う。
【0108】
第2の懸濁液中のヒドロキソニウムイオンの存在は、強酸又は弱酸の解離から生成されたものにかかわらず、水分子に元々存在する水素結合形成部位及びイオン-双極子相互作用部位を除去し、水性溶媒中のポリマーと水分子との間に最初に生じた静電引力(すなわち、水素結合及び/又はイオン-双極子相互作用)を破壊して分解させる。その結果、ポリマーの周囲に形成されていた溶媒和殻が崩壊し、ポリマーの水性溶媒への溶解性が低下する。
【0109】
さらに、第2の懸濁液中のポリマーの周辺領域における水分子の顕著な減少を伴うヒドロキソニウムイオンの形成に伴い、ポリマーの周囲の溶媒和殻における水分子間の水素結合が鋭敏に減少し、ポリマーの周囲に発達した溶媒和殻をさらに崩壊させる。
【0110】
一方、形成されたヒドロキソニウムイオンはポリマーの構成に寄与するモノマー中のイオン化種(例えば、酸塩基含有モノマーのアニオン)をプロトン化する可能性がある。これは、以下の反応式に示すように、負に荷電した種をそれらのプロトン化された非荷電形態に変換することを潜在的に促進する可能性がある。
【0111】
【0112】
ここで、HA3はポリマーの構築を補助するモノマーであり、A3
-はモノマーHA3の共役塩基である。
【0113】
ヒドロキソニウムイオンがポリマーの構成要素を構成する酸塩基含有モノマーのアニオンをプロトン化する場合、酸塩基は酸基に変換される。
【0114】
沈殿剤として利用される酸の優先的な解離と、ポリマーの構築に寄与するモノマー中のイオン化種による第2の懸濁液中のプロトンの取り込みを促進するために、(1)沈殿剤として利用する酸のpKa値はポリマーを構成する酸基含有モノマーのpKa値よりも低いことが望ましく、(2)沈殿剤を第1の懸濁液に添加して第2の懸濁液を形成する際に、第2の懸濁液のpH値がポリマーを構成する酸基含有モノマーのpKa値よりも十分に低いことが望ましい。
【0115】
pKa値は、水などの溶媒中における酸の解離の程度を定量化する。沈殿剤として利用する酸のpKa値が、ポリマーの構成に寄与する酸基含有モノマーのpKa値よりも低い場合、沈殿剤として利用する酸は解離する傾向が強く、反応式2の反応の平衡位置が右側にシフトし、酸が第1の懸濁液と接触して前述の酸がイオン化することにより、ヒドロキソニウムイオンが生成する可能性が高くなる。一方、酸基含有モノマーは、沈殿剤として利用される酸よりもpKa値が比較的高いため、酸基含有モノマーの共役塩基はプロトン化しやすく、反応式3の反応の平衡位置は右側に位置し、沈殿剤として利用される酸が解離して生成するヒドロキソニウムイオンを一部取り込む。
【0116】
第1の懸濁液に沈殿剤として利用される酸を添加すると、酸は解離を受けてヒドロキソニウムイオンを生成し第2の懸濁液が形成される。本発明では、より強い酸の使用及び/又は第1の懸濁液に添加される沈殿剤としての酸の量によって、第2の懸濁液中のヒドロキソニウムイオンの濃度を高くすることが非常に好ましいであろう。第2の懸濁液中の高濃度のヒドロキソニウムイオンの存在は、結合破壊プロセスを助けることによって水性溶媒からのポリマーの分離を助けるだけでなく、反応式3の反応の平衡位置をさらに右にシフトし、ポリマーの構築に寄与する酸基含有モノマーの共役塩基をプロトン化する。
【0117】
pH値は、溶液中のヒドロキソニウムイオン(水素イオンに相当)の濃度を示し、pH=log[H3O+]の式で算出できる。溶液の酸性やアルカリ性を明記するために使われる。ヒドロキソニウムイオンの濃度が高い溶液はpH値が低く、その逆もまた同様であろう。したがって、高濃度のヒドロキソニウムイオンを達成するために、第2の懸濁液のpHは、酸基含有モノマーの共役塩基の大部分のプロトン化を可能にするために十分に低いことが望ましい。これは、潜在的に酸基含有モノマーの電荷を有する共役塩基(例えば、酸塩基含有モノマー)の存在を一掃し、第1の懸濁液に元々存在するポリマーと水性溶媒との間のさらなるイオン-双極子相互作用を排除し得る。
【0118】
沈殿剤の添加により生じるポリマーと水性溶媒との間の静電引力が破壊されることにより、ポリマー内に含まれる官能基は互いに相互作用するより高い親和性を有する。例えば、ポリマー中のカルボキシル基のH原子は、同じポリマーに含まれるニトリル基のN原子と水素結合相互作用を介して相互作用しやすい。また、ポリマー中のカルボキシル基のO原子と同じポリマー中のニトリル基のC原子との間にも双極子-双極子相互作用が見られる可能性がある。
【0119】
さらに、ポリマーと水系溶媒との分子間相互作用が弱くなると、ポリマー内のコポリマー鎖が互いに相互作用するようになる傾向がある。例えば、コポリマー鎖のニトリル(C≡N)基と別のコポリマー鎖のカルボキシル(COOH)基との間の相互作用ペアの配置は、水素結合の形成を介して進行する可能性がある。また、異なるコポリマー鎖のニトリル(C≡N)基の間には、双極子-双極子相互作用が見られ得る。水素結合は異なるコポリマー鎖のカルボキシル(COOH)基におけるヒドロキシル(O-H)基の間にも形成され得る。
【0120】
本明細書で開示されたポリマーの水性溶媒からの分離は、沈殿剤の添加に際して、上記の様々な種類の相互作用の関与によって達成される。本発明のポリマーの特定の製法と組み合わされたその効果は、ポリマーのコイルからグロビュールへの構造コンフォメーションを可能にする。その後、ポリマーは沈殿されることができる。
【0121】
第2の懸濁液のpHを十分に低く抑制することにより、ポリマーの構成に寄与する酸基含有モノマーの共役塩基のプロトン化が非常に良好となる。このプロトン化反応により、本明細書で開示されたポリマーのコイルからグロビュールへの構造転移が促進される。
【0122】
沈殿剤の添加前は、同様の電荷を有するポリマーの構成に寄与するモノマー中の負に荷電した種(例えば、酸塩基含有モノマーのアニオン)により、負に荷電した種は互いに効果的に反発し合う。イオン化した基の静電的な反発により、荷電したポリマーは完全に溶媒和したオープンコイルのコンフォメーションに膨張する。
【0123】
十分に低いpHの第2の懸濁液を生成する沈殿剤を添加すると、ポリマーの構成に寄与する酸基含有モノマーの共役塩基の大部分のプロトン化が、元は荷電していたポリマーを、静電反発がもはや発揮されない非荷電形態に変換する。これにより、酸基含有モノマーから誘導される構造単位と水性溶媒との間の分子間相互作用(特にイオン-双極子相互作用)が著しく弱まり、ポリマーの凝集が開始される。
【0124】
さらに、コポリマー鎖内の官能基間の見かけ上の分子内相互作用及びコポリマー鎖間の分子間相互作用は、ポリマーのワインディング(winding)をさらに促進し、ポリマーのコンパクトな球状コンフォメーションへの転移を助ける。
【0125】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されたポリマーは酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを含む。
【0126】
酸基(例えばカルボン酸基)は、カルボニル基中の炭素(C)原子と酸素(O)原子との電気陰性度の違い、及びヒドロキシル基中の酸素(O)原子と水素(H)原子との電気陰性度の違いにより、事実上極性であるポリマー中に存在する重要な官能基の1つである。これらの原子は不均等な電荷分布を持つため、正味の双極子モーメントを持ち、酸基を極性にする。このため、酸基は水素結合の形成及び/又は双極子-双極子相互作用に関与することができる。酸基は親水性が高く、酸基は水性溶媒(例えば、水)にきわめて溶けやすい。
【0127】
疎水性基含有モノマーの例として、ニトリル基含有モノマーが挙げられる。ニトリル基は炭素(C)原子に比べて内に含まれる窒素(N)原子の電気陰性度が強いため、事実上極性である。共有結合しているCとNとの間で共有している電子は、C原子よりもN原子の方に強く引き寄せられる。従って、δ+C≡Nδ-の形で示されるように、N原子は部分的に負の電荷を帯び、C原子は部分的に正の電荷を帯びる。
【0128】
多くの文献では、極性基や化合物を親水性に分類し、非極性基や化合物を疎水性に分類している。この明確な分類はアルコールやアミドなどの極性化合物のほとんどには有効であるが、ニトリルを除くいくつかの他の極性化合物には有効ではない。
【0129】
ニトリル基(-C≡N)の窒素(N)原子は、一つの孤立電子対軌道の存在のため、水性溶媒中の水分子と水素結合を形成するためのプロトン(すなわち、水素イオン)アクセプターとして働く可能性を持っている。しかしながら、ニトリル基ごとに水素アクセプターしか存在しないため、ニトリル基と水分子との間に生じる相互作用は、基あたり水素結合ドナー及び水素結合アクセプターのそれぞれの少なくとも一方を含む他の極性基(例えば、酸基やアミド基)と水分子との間の相互作用よりも著しく弱い。これは、ポリアクリロニトリル(PAN)のようなニトリルの水溶性が極めて低いことの説明を提供し、疎水性のアルキル骨格の動作が支配的であることを説明する。このため、ニトリル基は疎水性である。
【0130】
本明細書に開示されたポリマー中の構造単位(例えば、ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位)に疎水性官能基が存在することにより、ポリマーのコポリマー全体に対して疎水性傾向を発揮する。ポリマー内に含まれる疎水性基の割合に応じて、ポリマーの疎水性の程度が決定され得る。ポリマー内に含まれる疎水性基の割合が高いほど、ポリマーはより疎水性であり、したがって、ポリマーは水に対してより不溶性である。ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位を含む、本明細書に開示されたポリマーが疎水性を示すことにより、ポリマーと水性溶媒中の水分子との間の接触表面積が最小化され、ポリマーはさらに高密度の球状構造へと崩壊する。
【0131】
その結果、(1)水性溶媒からのポリマーの分離をもたらす種々のタイプの相互作用、(2)ポリマー中の疎水性構造単位の存在、および(3)その後のポリマーの構造転移、の複合効果により、ポリマーがコンパクトな固体グロビュールへのポリマーの相転移を引き起こし、ポリマーの沈殿をもたらす。このポリマーのpH誘起コンフォメーション転移は、ポリマーと水性溶媒中の水分子との間の接触を最小化し、水分子の流れに対するポリマーの透過性の低下を引き起こす。
【0132】
図2は十分な濃度の沈殿剤が第1の懸濁液に添加されるときの、
図1で概説されたポリマーと水性溶媒との間の相互作用における提案された変化の一実施形態の概略図を示す。太字のポリマー化合物は、カルボン酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含むポリマーの実施形態を示す。この場合の沈殿剤は、強酸の一種である塩酸を含み、この場合の水性溶媒はを含む。
【0133】
塩酸が第1の懸濁液に添加されると、水中での塩酸の完全な解離が生じる。以下に示すように、酸はプロトンを失い、水分子はプロトンを取り込んでヒドロキソニウムイオンを形成する。
【0134】
【0135】
塩酸がイオン化して生成したヒドロキソニウムイオンは、水分子に組み込まれている水素結合形成部位やイオン-双極子相互作用部位のほとんどを排除する。これにより、
図1に示すように、本来ポリマーと水分子の間に成立していた分子間相互作用が著しく阻害される。このため、第2の懸濁液中の水分子によるポリマーの溶媒和の程度が低下する。
【0136】
ヒドロキソニウムイオンの形成により第2の懸濁液中のポリマーの周辺領域における水分子が大幅に減少すると、ポリマー周辺の溶媒和殻における水分子間の水素結合の強さが著しく弱くなる。その結果、ポリマーの周囲に形成された溶媒和殻が破壊され、静電引力を発生させる際に、別のポリマー鎖にポリマーがより接近又は露出することが可能になる。
【0137】
塩酸の解離から形成されたヒドロキソニウムイオンは、
図1で説明したポリマーの構成に寄与するカルボン酸塩基含有モノマー(この場合、
図2に示されるアクリル酸とメタクリル酸の塩)のアニオンをプロトン化する傾向がある。カルボン酸塩基含有モノマーのプロトン化反応は、以下の反応式5で示される。
【0138】
【0139】
ここで、R1COOHはポリマーの構築を補助するカルボン酸基含有モノマーであり、R1COO-はモノマーR1COOHの共役塩基(すなわちカルボン酸塩基含有モノマー)である。
【0140】
第1の懸濁液に塩酸を取り込む前に、ポリマーの構築に寄与するカルボン酸塩基含有モノマーのアニオンは互いに静電反発を発揮し、これにより完全に溶媒和したコイル構造を有する荷電したポリマーが得られる。荷電したポリマーのコイル状構造は、
図3Aに可視化されうる。しかし、カルボン酸塩基含有モノマーがプロトン化されると、負に荷電した酸塩基はモノマー中の非荷電の酸基に変化し、ポリマーの構成単位となる。ポリマー内に反発力がないため、ポリマーのワインディングモーション(winding motion)が開始される。
【0141】
図2に示すように、ポリマーの構成を補助する酸基含有モノマーはアクリル酸とメタクリル酸を含む。アクリル酸はpK
a値が4.3であり、メタクリル酸はpK
a値が4.7である。また、塩酸のpK
aは-6.3である。塩酸(HCI)のpK
a値はアクリル酸とメタクリル酸両方のpK
a値よりも大幅に小さく(すなわち、-6.3(HCIのpK
a)<<4.3(アクリル酸のpK
a)及び4.7(メタクリル酸のpK
a))、塩酸はヒドロキソニウムイオン生成の解離傾向がはるかに強い。塩酸の強度は反応式4で示されるように、完全に解離することが確認されているほど極めて高い。逆に、アクリル酸やメタクリル酸の塩はプロトン化しやすく、反応式5の反応平衡は右側にシフトする。アクリル酸とメタクリル酸の塩のプロトン化は、アクリル酸とメタクリル酸を生成する際に塩酸が解離して発生したプロトンの一部を取り込む。
【0142】
図2において、第1の懸濁液に塩酸を添加すると、酸はイオン化を起こしヒドロキソニウムイオンを生成し第2の懸濁液の生成に至る。この場合の第2の懸濁液のpHは2であり、第2の懸濁液に高濃度のヒドロキソニウムイオンが存在することを意味する。これは、反応式5の反応の平衡位置をさらに右に移動させ、アクリル酸及びメタクリル酸の塩の大部分をそれらの非荷電酸形態に変換し、第1の懸濁液に元々存在していたカルボン酸塩基含有モノマーと水分子との間のさらなるイオン-双極子相互作用を絶つ。
【0143】
塩酸の添加から生じるポリマーと水性溶媒中の水分子との間の静電的相互作用の破壊に続いて、コポリマー鎖101中のニトリル基のN原子は、水素結合相互作用を介して同じコポリマー鎖中のカルボキシル基のH原子に相互作用することが見出される。さらに、コポリマー鎖101内のアミド基のH原子とカルボキシル基のカルボニル基のO原子との間には水素結合が形成されていることがわかる。一方、コポリマー鎖201内のカルボキシル基のH原子とアミド基のO原子との間にも水素結合が生じる。
【0144】
相互作用は、同じコポリマー鎖内の様々な官能基の間だけでなく、異なるコポリマー鎖の間でも生じる。コポリマー鎖101のカルボキシル基中の水酸(O-H)基とコポリマー鎖201のカルボキシル基中のカルボニル(C=O)基との間に水素結合が形成される。また、コポリマー鎖101のアミド基のN-H基は、コポリマー鎖201のニトリル(C≡N)基と水素結合相互作用によって相互作用している。
【0145】
コポリマー鎖101及びコポリマー鎖201内の官能基間の独立した分子内相互作用及びコポリマー鎖間の分子間相互作用は、ポリマーの緻密な球状コンフォメーションへのコイリング(coiling)をさらに促進し、ポリマーの沈殿を誘起する。非荷電ポリマーのこの球状構造は第1の懸濁液への沈殿剤の添加後のポリマーの構造コンフォメーションの実施形態を表示する
図3Bに視覚化され得る。
【0146】
図4は第1の懸濁液への不十分な量又は不十分な濃度の沈殿剤の添加により、
図1で概説したポリマーと水性溶媒との間の相互作用における提案された変化の一実施形態の概略を示し、より高いpHの第2の懸濁液を形成している。太字のポリマー化合物は、カルボン酸基含有モノマー及びニトリル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含むポリマーの一実施形態を示す。この場合の沈殿剤は強酸の一種である塩酸を含み、この場合における水性溶媒は水を含む。
【0147】
塩酸は、第2の懸濁液を形成する際に第1の懸濁液に酸を添加すると、解離してヒドロキソニウムイオンを生成する。沈殿剤として強酸を使用しているにもかかわらず、使用した酸はかなり希釈されているため、この場合の第2の懸濁液のpHは5であり、これは第2の懸濁液中のヒドロキソニウムイオン濃度が
図2のものよりもかなり低いことを意味する。
【0148】
第2の懸濁液中の低濃度のヒドロキソニウムイオンは、
図1に示すように、ポリマーと水分子との間に以前生じた分子間引力を破壊するには不十分である。水分子によってまだ溶媒和されているポリマーの部分がある。さらに、コポリマー鎖の周囲の溶媒和殻に水分子の間に形成された水素結合の一部が残り、相互作用の発生において、コポリマー鎖が他のコポリマー鎖へアクセスすることを阻害する。
図4に示すようなポリマーの構成を助ける酸基含有モノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸を含む。第2の懸濁液の少量のヒドロキソニウムイオンは、アクリル酸とメタクリル酸の塩の一部をそれらの非荷電の酸形態に変化させることができるだけである。このため、酸塩基含有モノマーと水分子との間のいくつかのイオン-双極子相互作用の一部が、第1の懸濁液中で持続する。さらに、ポリマーと水分子の間の結合破壊が不十分なため、同じコポリマー鎖内の官能基間の分子内引力があまり発生しない。このような状況により、ポリマーのコイルからグロビュールへの構造コンフォメーションが特に困難となり、ポリマーの沈殿を達成することができなかった。
【0149】
図5は十分な濃度の沈殿剤を第1の懸濁液中に添加した時の、1つ以上のカルボン酸基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含むポリマーと水性溶媒との間の相互作用において、提案された変化の一実施形態の概略を示す。太字のポリマー化合物はポリマーを表す。この場合における沈殿剤は強酸の一種である塩酸を含み、この場合における水性溶媒は水を含む。
図5中の記号R
1、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立した一般式C
nH
2nを有し、nは0より大きい整数である。上記一般式中のH原子は非置換でも1以上の適切な置換基で置換されていてもよく、ポリマー全体の官能性に影響を与えない。R
1、R
2、R
3及びR
4の各々は、独立して互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0150】
第1の懸濁液に塩酸を添加すると、酸が解離してヒドロキソニウムイオンが生成され第2の懸濁液の形成につながる。しかしながら、コポリマー鎖全体が酸基含有モノマーのみから誘導される構造単位を含む場合、ポリマーの酸塩基を酸基へプロトン化するために大量のプロトンが取り込まれる。そのため、ポリマー近傍の領域では相当量のヒドロキソニウムイオンが水分子に戻り、ポリマーの構築を助ける酸基含有モノマーと水分子との間に水素結合が形成される。また、コポリマー鎖全体が酸基含有モノマーのみから誘導される構造単位を含むため、平衡の性質、関係するものの配向、およびプロトン化における比較的高い要求のために、プロトン化を受けないポリマーの酸塩基の部分も存在する可能性がある。このため、酸塩基含有モノマーはイオン-双極子相互作用を介して水分子と依然として相互作用することが可能である。ポリマーと水分子との間の静電引力を完全に破壊することができないため、ポリマーの沈殿を達成することができない。これは、ポリアクリル酸(PAA)が第1の懸濁液中で沈殿することができないことを正当化する理由を示すものである。
【0151】
本発明の方法はポリマーを沈殿すために特に開発されたものであり、ポリマーは酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを含む。我々の研究によると、ポリマー中に酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーのいずれか一方が存在しない場合、ポリマーの沈殿は起こらないであろう。疎水性基含有モノマーの例としてはニトリル基含有モノマーが挙げられる。ポリマー中に酸基含有モノマーから誘導される構造単位が存在しない場合、ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位のみを含むポリマーは、ポリマー鎖全体が本質的に疎水性であるため、そもそも水と混和しないであろう。このポリマーの種類は非水性ポリマーとして知られている。本発明の方法は非水性ポリマーの沈殿には適用できない。また、ニトリル基含有モノマーなどの疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位をポリマーから離脱させる別の場合、第1の懸濁液中に沈殿剤を添加すると、酸基含有モノマーから誘導される構造単位のみを含むポリマーは水性溶媒から分離できず、コイルからグロビュールへの構造転移を受けられない可能性があり、したがってポリマーの沈殿が観察されない。このように、沈殿剤を第1の懸濁液に添加してもポリマーと水分子との分子間引力が持続するため、酸基含有モノマーと水性溶媒との分離を達成することができなかった。構造コンフォメーションを受けられないことは、ポリマー構造転移の引き金となり、相転移プロセスを開始し、ポリマーの沈殿をもたらすのに必要な疎水性官能基がポリマー中の構造単位に存在しないことに起因している。そのため、ポリマーの沈殿が成功するために、ポリマーのコポリマー中に、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)及び疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位の両方が存在することが推奨される。
【0152】
いくつかの実施形態では、第1の懸濁液はポリマー及び水性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーはコポリマーを含む。ポリマーは水及びいくつかの他の水性溶媒に可溶である。
【0153】
いくつかの実施形態では、コポリマーは極性基含有モノマーから誘導される少なくとも1つの構造単位を含む。少なくとも1つの極性基を含むモノマーから誘導される構造単位はポリマーと水性溶媒との間に発現する分子間相互作用(例えば、双極子-双極子相互作用及び水素結合)の種類及び強度を決定し、第1の懸濁液を形成する際に水性溶媒へのポリマーの溶解を場合により促進し得る。
【0154】
ポリマー中のコポリマー内に含まれる、酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、エステル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、フッ素含有モノマー又はそれらの組み合わせから得られる構造単位は、水性溶媒の構成要素と分子間相互作用(例えば、水素結合)を形成し得る官能基のいくつかの非制限の一例を構成する。
【0155】
いくつかの実施形態では、極性基含有モノマーは酸基含有モノマー及びニトリル基含有モノマーからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、極性基含有モノマーは酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、極性基含有モノマーは酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、エステル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、フッ素含有モノマー、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、極性基含有モノマーはアミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、エステル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、フッ素含有モノマー、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、コポリマーはアミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、エステル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、フッ素含有モノマー、又はそれらの組み合わせから得られる構造単位を含まない。
【0156】
いくつかの実施形態では、極性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合は、ポリマー内のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約40モル%~約100モル%、約45モル%~約100モル%、約50モル%~約100モル%、約55モル%~約100モル%、約60モル%~約100モル%、約65モル%~約100モル%、約70モル%~約100モル%、約40モル%~約95モル%、約45モル%~約95モル%、約50モル%~約95モル%、約55モル%~約95モル%、約60モル%~約95モル%、約65モル%~約95モル%、約40モル%~約90モル%、約45モル%~約90モル%、約50モル%~約90モル%、約55モル%~約90モル%、約60モル%~約90モル%、約40モル%~約85モル%、約45モル%~約85モル%、約50モル%~約85モル%、約55モル%~約85モル%、約40モル%~約80モル%、約45モル%~約80モル%、約50モル%~約80モル%、約40モル%~約75モル%、約40モル%~約70モル%、又は約45モル%~約75モル%である。
【0157】
いくつかの実施形態では、極性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合は、ポリマー内のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、100モル%未満、95モル%未満、90モル%未満、85モル%未満、80モル%未満、75モル%未満、70モル%未満、65モル%未満、60モル%未満、55モル%未満、50モル%未満、又は45モル%未満である。いくつかの実施形態では、極性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合は、ポリマー内のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、40モル%より大きく、45モル%より大きく、50モル%より大きく、55モル%より大きく、60モル%より大きく、65モル%より大きく、70モル%より大きく、75モル%より大きく、80モル%より大きく、85モル%より大きく、90モル%より大きく、又は95モル%より大きい。
【0158】
いくつかの実施形態では、ポリマーは親水性基含有モノマーから誘導される少なくとも1つの構造単位と、疎水性基含有モノマーから誘導される少なくとも1つの構造単位とを含むコポリマーを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、親水性基含有モノマーは酸基含有モノマーからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、親水性基含有モノマーは酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、親水性基含有モノマーはアミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疎水性基含有モノマーはニトリル基含有モノマー、エステル基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、フッ素基含有モノマー、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0160】
親水性官能基は水に極めて溶解しやすい。ポリマー中の構造単位における親水性官能基の存在は、ポリマーのコポリマー鎖全体の全体的な特性に親水性の特徴の程度をもたらし、潜在的にポリマーの水への溶解性を向上させることができる。したがって、コポリマー中の親水性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合は水性溶媒中のポリマーの溶解を調節する上で重要である。ポリマーの構成に寄与する親水性基含有モノマーの割合が不十分な場合、ポリマーの溶媒和が起こらず、ポリマーは水性溶媒に未溶解のまま残り得る。このポリマータイプを非水性ポリマーと呼ぶ。したがって、非水性ポリマーを沈殿させるために、本発明の方法を適用する必要はない。しかしながら、コポリマー中の親水性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合が過剰に高い場合、過剰量の親水性基含有モノマーと水性溶媒との分離が不可能なため、第1の懸濁液に沈殿剤を添加してもポリマーは水性溶媒中に溶解したままであろう。
【0161】
一方、ポリマー中の疎水性官能基はポリマーに疎水性効果の程度を与え、ポリマーのセグメントが凝集して水分子や水性溶媒との接触を回避することが可能である。疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位は、ポリマーの球状構造コンフォメーションへの屈曲のを引き起こす。コポリマー内の疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位が不足すると、ポリマーのコンフォメーションの変化を引き起こし、ポリマーの相転移を開始するために必要な疎水性官能基が不足し、ポリマーがコイルからグロビュールへの構造転移を受けることができないであろう。一方、コポリマー中の疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位の比率が過剰に高いと、ポリマーは水に極めて不溶性となり、非水性ポリマーとみなされるであろう。そのようなポリマーは、本発明の範囲に含まれないであろう。
【0162】
いくつかの実施形態では、親水性基含有モノマーから誘導される構造単位及び疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位のそれぞれの割合は、独立して、ポリマー内のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約0モル%~約85モル%、約0モル%~約80モル%、約0モル%~約75モル%、約0モル%~約70モル%、約0モル%~約65モル%、約0モル%~約60モル%、約0モル%~約55モル%、約0モル%~約50モル%、約0モル%~約45モル%、約0モル%~約40モル%、約0モル%~約35モル%、約5モル%~約85モル%、約5モル%~約80モル%、約5モル%~約75モル%、約5モル%~約70モル%、約5モル%~約65モル%、約5モル%~約60モル%、約5モル%~約55モル%、約5モル%~約50モル%、約5モル%~約45モル%、約5モル%~約40モル%、約5モル%~約35モル%、約10モル%~約85モル%、約10モル%~約80モル%、約10モル%~約75モル%、約10モル%~約70モル%、約10モル%~約65モル%、約10モル%~約60モル%、約10モル%~約55モル%、約10モル%~約50モル%、約10モル%~約45モル%、約10モル%~約40モル%、約10モル%~約35モル%、約15モル%~約85モル%、約15モル%~約80モル%、約15モル%~約75モル%、約15モル%~約70モル%、約15モル%~約65モル%、約15モル%~約60モル%、約15モル%~約55モル%、約15モル%~約50モル%、約15モル%~約45モル%、約15モル%~約40モル%、約15モル%~約35モル%、約20モル%~約85モル%、約20モル%~約80モル%、約20モル%~約75モル%、約20モル%~約70モル%、約20モル%~約65モル%、約20モル%~約60モル%、約20モル%~約55モル%、約20モル%~約50モル%、約25モル%~約85モル%、約25モル%~約80モル%、約25モル%~約75モル%、約25モル%~約70モル%、約25モル%~約65モル%、約25モル%~約60モル%、約25モル%~約55モル%、約25モル%~約50モル%、約30モル%~約85モル%、約30モル%~約80モル%、約30モル%~約75モル%、約30モル%~約70モル%、約30モル%~約65モル%、約30モル%~約60モル%、約30モル%~約55モル%、約30モル%~約50モル%、約35モル%~約85モル%、約35モル%~約80モル%、約35モル%~約75モル%、約35モル%~約70モル%、約35モル%~約65モル%、約35モル%~約60モル%、約35モル%~約55モル%、約40モル%~約85モル%、約40モル%~約80モル%、約40モル%~約75モル%、約40モル%~約70モル%、約40モル%~約65モル%、約40モル%~約60モル%、約45モル%~約85モル%、約45モル%~約80モル%、約45モル%~約75モル%、約45モル%~約70モル%、約45モル%~約65モル%、約50モル%~約85モル%、約50モル%~約80モル%、約50モル%~約75モル%、約50モル%~約70モル%、約55モル%~約85モル%、約55モル%~約80モル%、約55モル%~約75モル%、約60モル%~約85モル%、約60モル%~約80モル%、約65モル%~約85モル%、又は約70モル%~約85モル%である。
【0163】
いくつかの実施形態では、親水性基含有モノマーから誘導される構造単位及び疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位のそれぞれの割合は、独立して、ポリマー内のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、85モル%未満、80モル%未満、75モル%未満、70モル%未満、65モル%未満、60モル%未満、55モル%未満、50モル%未満、45モル%未満、40モル%未満、35モル%未満、30モル%未満、25モル%未満、20モル%未満、15モル%未満、10モル%未満、又は5モル%未満である。いくつかの実施形態では、親水性基含有モノマーから誘導される構造単位及び疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位のそれぞれの割合は、独立して、ポリマー内のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、0モル%より大きく、5モル%より大きく、10モル%より大きく、15モル%より大きく、20モル%より大きく、25モル%より大きく、30モル%より大きく、35モル%より大きく、40モル%より大きく、45モル%より大きく、50モル%より大きく、55モル%より大きく、60モル%より大きく、65モル%より大きく、70モル%より大きく、75モル%より大きく、又は80モル%より大きい。
【0164】
いくつかの実施形態では、親水性基含有モノマーは酸基含有モノマー、アミド基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。コポリマー中の親水性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合における比率は繊細であり、第1の懸濁液への沈殿剤の添加によるコンフォメーションの変化を受ける際のポリマーの可能性に不可欠である。いくつかの実施形態では、コポリマー中の疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位に対する親水性基含有モノマーから誘導される構造単位のモル比は、約0.1~約6.5、約0.1~約6.4、約0.1~約6.2、約0.1~約6、約0.1~約5.8、約0.1~約5.6、約0.1~約5.4、約0.1~約5.2、約0.1~約5、約0.1~約4.8、約0.1~約4.6、約0.1~約4.4、約0.1~約4.2、約0.1~約4、約0.1~約3.8、約0.1~約3.6、約0.1~約3.4、約0.1~約3.2、約0.1~約3、約0.1~約2.8、約0.1~約2.6、約0.1~約2.4、約0.1~約2.2、約0.1~約2、約0.2~約6.5、約0.2~約6.4、約0.2~約6.2、約0.2~約6、約0.2~約5.8、約0.2~約5.6、約0.2~約5.4、約0.2~約5.2、約0.2~約5、約0.2~約4.8、約0.2~約4.6、約0.2~約4.4、約0.2~約4.2、約0.2~約4、約0.2~約3.8、約0.2~約3.6、約0.2~約3.4、約0.2~約3.2、約0.2~約3、約0.2~約2.8、約0.2~約2.6、約0.2~約2.4、約0.2~約2.2、約0.2~約2、約0.3~約6.5、約0.3~約6.4、約0.3~約6.2、約0.3~約6、約0.3~約5.8、約0.3~約5.6、約0.3~約5.4、約0.3~約5.2、約0.3~約5、約0.3~約4.8、約0.3~約4.6、約0.3~約4.4、約0.3~約4.2、約0.3~約4、約0.3~約3.8、約0.3~約3.6、約0.3~約3.4、約0.3~約3.2、約0.3~約3、約0.3~約2.8、約0.3~約2.6、約0.3~約2.4、約0.3~約2.2、約0.3~約2、約0.4~約6.5、約0.4~約6.4、約0.4~約6.2、約0.4~約6、約0.4~約5.8、約0.4~約5.6、約0.4~約5.4、約0.4~約5.2、約0.4~約5、約0.4~約4.8、約0.4~約4.6、約0.4~約4.4、約0.4~約4.2、約0.4~約4、約0.4~約3.8、約0.4~約3.6、約0.4~約3.4、約0.4~約3.2、約0.4~約3、約0.4~約2.8、約0.4~約2.6、約0.4~約2.4、約0.4~約2.2、約0.4~約2、約0.5~約6.5、約0.5~約6.4、約0.5~約6.2、約0.5~約6、約0.5~約4.8、約0.5~約4.6、約0.5~約4.4、約0.5~約4.2、約0.5~約4、約0.5~約3.8、約0.5~約3.6、約0.5~約3.4、約0.5~約3.2、約0.5~約3、約0.5~約2.8、約0.5~約2.6、約0.5~約2.4、約0.5~約2.2、約0.5~約2、約0.7~約6、約0.7~約5.5、約0.7~約5、約0.7~約4.5、約0.7~約4、約0.7~約3.5、約1~約6、約1~約5.5、約1~約5、約1~約4.5、約1~約4、又は約1~約3.5である。
【0165】
いくつかの実施形態では、コポリマー中の疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位に対する親水性基含有モノマーから誘導される構造単位のモル比は、6.5未満、6.4未満、6.3未満、6.2未満、6.1未満、6未満、5.9未満、5.8未満、5.7未満、5.6未満、5.5未満、5.4未満、5.3未満、5.2未満、5.1未満、5未満、4.9未満、4.8未満、4.7未満、4.6未満、4.5未満、4.4未満、4.3未満、4.2未満、4.1未満、4未満、3.9未満、3.8未満、3.7未満、3.6未満、3.5未満、3.4未満、3.3未満、3.2未満、3.1未満、3未満、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、又は0.2未満である。いくつかの実施形態では、コポリマー中の疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位に対する親水性基含有モノマーから誘導される構造単位のモル比は、0.1より大きく、0.2より大きく、0.3より大きく、0.4より大きく、0.5より大きく、0.6より大きく、0.7より大きく、0.8より大きく、0.9より大きく、1より大きく、1.1より大きく、1.2より大きく、1.3より大きく、1.4より大きく、1.5より大きく、1.6より大きく、1.7より大きく、1.8より大きく、1.9より大きく、2より大きく、2.1より大きく、2.2より大きく、2.3より大きく、2.4より大きく、2.5より大きく、2.6より大きく、2.7より大きく、2.8より大きく、2.9より大きく、3より大きく、3.1より大きく、3.2より大きく、3.3より大きく、3.4より大きく、3.5より大きく、3.6より大きく、3.7より大きく、3.8より大きく、3.9より大きく、4より大きく、4.1より大きく、4.2より大きく、4.3より大きく、4.4より大きく、4.5より大きく、4.6より大きく、4.7より大きく、4.8より大きく、4.9より大きく、5より大きく、5.1より大きく、5.2より大きく、5.3より大きく、5.4より大きく、5.5より大きく、5.6より大きく、5.7より大きく、5.8より大きく、5.9より大きく、6より大きく、6.1より大きく、6.2より大きく、6.3より大きく、又は6.4より大きい。
【0166】
いくつかの実施形態では、コポリマー中の疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位に対する酸基含有モノマーから誘導される構造単位のモル比は、約0.1~約3、約0.1~約2.9、約0.1~約2.8、約0.1~約2.7、約0.1~約2.6、約0.1~約2.5、約0.1~約2.4、約0.1~約2.3、約0.1~約2.2、約0.15~約3、約0.15~約2.9、約0.15~約2.8、約0.15~約2.7、約0.15~約2.6、約0.15~約2.5、約0.15~約2.4、約0.15~約2.3、約0.15~約2.2、約0.2~約3、約0.2~約2.9、約0.2~約2.8、約0.2~約2.7、約0.2~約2.6、約0.2~約2.5、約0.2~約2.4、約0.2~約2.3、約0.2~約2.2、約0.25~約3、約0.25~約2.9、約0.25~約2.8、約0.25~約2.7、約0.25~約2.6、約0.25~約2.5、約0.25~約2.4、約0.25~約2.3、又は約0.25~約2.2である。
【0167】
いくつかの実施形態では、コポリマー中の疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位に対する酸基含有モノマーから誘導される構造単位のモル比は、3未満、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、又は0.2未満である。いくつかの実施形態では、コポリマー中の疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位に対する酸基含有モノマーから誘導される構造単位のモル比は、0.1より大きく、0.2より大きく、0.3より大きく、0.4より大きく、0.5より大きく、0.6より大きく、0.7より大きく、0.8より大きく、0.9より大きく、1より大きく、1.1より大きく、1.2より大きく、1.3より大きく、1.4より大きく、1.5より大きく、1.6より大きく、1.7より大きく、1.8より大きく、又は1.9より大きい。
【0168】
いくつかの実施形態において、コポリマーは、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)およびニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位(b)を含む。いくつかの実施形態において、コポリマーは、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)、ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位(b)、アミド基含有モノマーから誘導される構造単位(c)またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ヒドロキシル基含有モノマーから誘導される構造単位(d)、エステル基含有モノマーから誘導される構造単位(e)、エポキシ基含有モノマーから誘導される構造単位(f)、フッ素含有モノマーから誘導される構造単位(g)またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0169】
構造単位(a)は、酸基含有モノマーから誘導される。少なくとも1つの酸基を有する任意のモノマーを、特に制限なく、酸基含有モノマーとして使用することができる。
【0170】
いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーは、カルボン酸基含有モノマーである。いくつかの実施形態において、カルボン酸基含有モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-ブチルクロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、テトラコン酸(tetraconic acid)またはそれらの組合せである。特定の実施形態において、カルボン酸基含有モノマーは、2-エチルアクリル酸、イソクロトン酸、cis-2-ペンテン酸、trans-2-ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、3,3-ジメチルアクリル酸、3-プロピルアクリル酸、trans-2-メチル-3-エチルアクリル酸、cis-2-メチル-3-エチルアクリル酸、3-イソプロピルアクリル酸、trans-3-メチル-3-エチルアクリル酸、cis-3-メチル-3-エチルアクリル酸、2-イソプロピルアクリル酸、トリメチルアクリル酸、2-メチル-3,3-ジエチルアクリル酸、3-ブチルアクリル酸、2-ブチルアクリル酸、2-ペンチルアクリル酸、2-メチル-2-ヘキセン酸、trans-3-メチル-2-ヘキセン酸、3-メチル-3-プロピルアクリル酸、2-エチル-3-プロピルアクリル酸、2,3-ジエチルアクリル酸、3,3-ジエチルアクリル酸、3-メチル-3-ヘキシルアクリル酸、3-メチル-3-tert-ブチルアクリル酸、2-メチル-3-ペンチルアクリル酸、3-メチル-3-ペンチルアクリル酸、4-メチル-2-ヘキセン酸、4-エチル-2-ヘキセン酸、3-メチル-2-エチル-2-ヘキセン酸、3-tert-ブチルアクリル酸、2,3-ジメチル-3-エチルアクリル酸、3,3-ジメチル-2-エチルアクリル酸、3-メチル-3-イソプロピルアクリル酸、2-メチル-3-イソプロピルアクリル酸、trans-2-オクテン酸、cis-2-オクテン酸、trans-2-デセン酸、α-アセトキシアクリル酸、β-trans-アリールオキシアクリル酸、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、カルボン酸基含有モノマーは、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、ブロモマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、ジフルオロマレイン酸、ノニル水素マレアート、デシル水素マレアート、ドデシル水素マレアート、オクタデシル水素マレアート、フルオロアルキル水素マレアートまたはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、カルボン酸基含有モノマーは、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、メタクロレイン、塩化メタクリロイル、フッ化メタクリロイル、臭化メタクリロイル、またはそれらの組み合わせである。
【0171】
いくつかの実施形態において、カルボン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、カルボン酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、カルボン酸塩基は、カルボン酸基の塩である。いくつかの実施形態において、カルボン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、アルカリ金属カルボン酸塩基を含む。アルカリ金属カルボン酸塩を形成するアルカリ金属の例として、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。いくつかの実施形態において、カルボン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、アンモニウムカルボン酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、カルボン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、カルボン酸塩基とカルボン酸基との組み合わせを含む。
【0172】
カルボン酸塩基含有モノマーとして、少なくとも1つのカルボン酸塩基を有する任意のモノマーを、特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、カルボン酸塩基含有モノマーは、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、クロトン酸塩、2-ブチルクロトン酸塩、ケイ皮酸塩、マレイン酸塩、無水マレイン酸塩、フマル酸塩、イタコン酸塩、イタコン酸無水物塩、テトラコン酸塩またはそれらの組合せである。特定の実施形態において、カルボン酸塩基含有モノマーは、2-エチルアクリル酸塩、イソクロトン酸塩、cis-2-ペンテン酸塩、trans-2-ペンテン酸塩、アンゲリカ酸塩、チグリン酸塩、3,3-ジメチルアクリル酸塩、3-プロピルアクリル酸塩、trans-2-メチル-3-エチルアクリル酸塩、cis-2-メチル-3-エチルアクリル酸塩、3-イソプロピルアクリル酸塩、trans-3-メチル-3-エチルアクリル酸塩、cis-3-メチル-3-エチルアクリル酸塩、2-イソプロピルアクリル酸塩、トリメチルアクリル酸塩、2-メチル-3,3-ジエチルアクリル酸塩、3-ブチルアクリル酸塩、2-ブチルアクリル酸塩、2-ペンチルアクリル酸塩、2-メチル-2-ヘキセン酸塩、trans-3-メチル-2-ヘキセン酸塩、3-メチル-3-プロピルアクリル酸塩、2-エチル-3-プロピルアクリル酸塩、2,3-ジエチルアクリル酸塩、3,3-ジエチルアクリル酸塩、3-メチル-3-ヘキシルアクリル酸塩、3-メチル-3-tert-ブチルアクリル酸塩、2-メチル-3-ペンチルアクリル酸塩、3-メチル-3-ペンチルアクリル酸塩、4-メチル-2-ヘキセン酸塩、4-エチル-2-ヘキセン酸塩、3-メチル-2-エチル-2-ヘキセン酸塩、3-tert-ブチルアクリル酸塩、2,3-ジメチル-3-エチルアクリル酸塩、3,3-ジメチル-2-エチルアクリル酸塩、3-メチル-3-イソプロピルアクリル酸塩、2-メチル-3-イソプロピルアクリル酸塩、trans-2-オクテン酸塩、cis-2-オクテン酸塩、trans-2-デセン酸塩、α-アセトキシアクリル酸塩、β-trans-アリールオキシアクリル酸塩、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸塩またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、カルボン酸塩基含有モノマーは、メチルマレイン酸塩、ジメチルマレイン酸塩、フェニルマレイン酸塩、ブロモマレイン酸塩、クロロマレイン酸塩、ジクロロマレイン酸塩、フルオロマレイン酸塩、ジフルオロマレイン酸塩またはそれらの組み合わせである。
【0173】
いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーは、スルホン酸基含有モノマーである。いくつかの実施形態において、スルホン酸基含有モノマーは、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、アリルビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-スルホエチルメタクリル酸、2-メチルプロパ-2-エン-1-スルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸またはそれらの組合せである。
【0174】
いくつかの実施形態において、スルホン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、スルホン酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、スルホン酸塩基は、スルホン酸基の塩である。いくつかの実施形態において、スルホン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、アルカリ金属スルホン酸塩基を含む。アルカリ金属スルホン酸塩を形成するアルカリ金属の例として、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。いくつかの実施形態において、スルホン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、アンモニウムスルホン酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、スルホン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、スルホン酸塩基とスルホン酸基との組み合わせを含む。
【0175】
スルホン酸塩基含有モノマーとして、少なくとも1つのスルホン酸塩基を有する任意のモノマーを特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、スルホン酸塩基含有モノマーは、ビニルスルホン酸塩、メチルビニルスルホン酸塩、アリルビニルスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩、2-スルホエチルメタクリル酸塩、2-メチルプロパ-2-エン-1-スルホン酸塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸塩、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩またはそれらの組合せである。
【0176】
いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーは、ホスホン酸基含有モノマーである。いくつかの実施形態において、ホスホン酸基含有モノマーは、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、ビニルベンジルホスホン酸、アクリルアミドアルキルホスホン酸、メタクリルアミドアルキルホスホン酸、アクリルアミドアルキルジホスホン酸、アクリロイルホスホン酸、2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホン酸、エチレン2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、エチル-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸またはそれらの組み合わせである。
【0177】
いくつかの実施形態において、ホスホン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、ホスホン酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、ホスホン酸塩基は、ホスホン酸基の塩である。いくつかの実施形態において、ホスホン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、アルカリ金属ホスホン酸塩基を含む。アルカリ金属ホスホン酸塩を形成するアルカリ金属の例として、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。いくつかの実施形態において、ホスホン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、アンモニウムホスホン酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、ホスホン酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、ホスホン酸塩基とホスホン酸基との組合せを含む。
【0178】
ホスホン酸塩基含有モノマーとして、少なくとも1つのホスホン酸塩基を有する任意のモノマーを特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、ホスホン酸塩基含有モノマーは、ビニルホスホン酸の塩、アリルホスホン酸の塩、ビニルベンジルホスホン酸の塩、ホスホン酸のアクリルアミドアルキル塩の塩、メタクリルアミドアルキルホスホン酸の塩、アクリルアミドアルキルジホスホン酸の塩、アクリロイルホスホン酸の塩、2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸の塩、ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスホン酸の塩、エチレン2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸の塩、エチル-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸の塩またはそれらの組合せである。
【0179】
いくつかの実施形態において、構造単位(a)は、カルボン酸基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、ホスホン酸基含有モノマーまたはそれらの組み合わせから誘導される。
【0180】
いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、酸塩基は、酸基の塩である。酸塩基含有モノマーとして、少なくとも1つの酸塩基を有する任意のモノマーを、特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、酸塩基含有モノマーは、カルボン酸塩基含有モノマー、スルホン酸塩基含有モノマー、ホスホン酸塩基含有モノマーまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、アルカリ金属酸塩基を含む。アルカリ金属酸塩を形成するアルカリ金属の例として、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、アンモニウム酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、酸塩基および酸基の組み合わせを含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、水素結合を形成することができる原子を含む。いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)は、イオン-双極子相互作用を誘発するおよび/またはイオン結合を形成することができる荷電種をさらに含む。例えば、酸基は、水と接触すると部分解離を受け、荷電種を含む酸塩基を生成し、イオン-双極子相互作用および/またはイオン結合の形成を生じさせる。
【0182】
いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)の割合は、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約15モル%~約85モル%、約15モル%~約84モル%、約15モル%~約83モル%、約15モル%~約82モル%、約15モル%~約81モル%、約15モル%~約80モル%、約15モル%~約79モル%、約15モル%~約78モル%、約15モル%~約77モル%、約15モル%~約76モル%、約15モル%~約75モル%、約15モル%~約74モル%、約15モル%~約73モル%、約15モル%~約72モル%、約15モル%~約71モル%、約15モル%~約70モル%、約15モル%~約65モル%、約15モル%~約60モル%、約15モル%~約55モル%、約15モル%~約50モル%、約16モル%~約85モル%、約17モル%~約85モル%、約18モル%~約85モル%、約19モル%~約85モル%、約20モル%~約85モル%、約21モル%~約85モル%、約22モル%~約85モル%、約25モル%~約85モル%、約30モル%~約85モル%、約35モル%~約85モル%、約40モル%~約85モル%、約45モル%~約85モル%、約50モル%~約85モル%、約55モル%~約85モル%、約16モル%~約80モル%、約16モル%~約75モル%、約16モル%~約70モル%、約16モル%~約65モル%、約16モル%~約60モル%、約18モル%~約80モル%、約18モル%~約75モル%、約18モル%~約70モル%、約18モル%~約65モル%、約18モル%~約60モル%、約20モル%~約80モル%、約20モル%~約75モル%、約20モル%~約70モル%、約20モル%~約65モル%、約20モル%~約60モル%、約22モル%~約80モル%、約22モル%~約75モル%、約22モル%~約70モル%、約22モル%~約65モル%または約22モル%~約60モル%である。
【0183】
いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)の割合は、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、85モル%未満、84モル%未満、82モル%未満、80モル%未満、78モル%未満、76モル%未満、74モル%未満、72モル%未満、70モル%未満、68モル%未満、66モル%未満、64モル%未満、62モル%未満、60モル%未満、58モル%未満、56モル%未満、54モル%未満、52モル%未満、50モル%未満、48モル%未満、46モル%未満、44モル%未満、42モル%未満、40モル%未満、38モル%未満、36モル%未満、34モル%未満、32モル%未満、30モル%未満、28モル%未満、26モル%未満、24モル%未満、22モル%未満、20モル%未満または18モル%未満である。いくつかの実施形態において、酸基含有モノマーから誘導される構造単位(a)の割合は、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、15モル%より大きく、16モル%より大きく、18モル%より大きく、20モル%より大きく、22モル%より大きく、24モル%より大きく、26モル%より大きく、28モル%より大きく、30モル%より大きく、32モル%より大きく、34モル%より大きく、36モル%より大きく、38モル%より大きく、40モル%より大きく、42モル%より大きく、44モル%より大きく、46モル%より大きく、48モル%より大きく、50モル%より大きく、52モル%より大きく、54モル%より大きく、56モル%より大きく、58モル%より大きく、60モル%より大きく、62モル%より大きく、64モル%より大きく、66モル%より大きく、68モル%より大きく、70モル%より大きく、72モル%より大きく、74モル%より大きく、76モル%より大きく、78モル%より大きく、80モル%より大きくまたは82モル%より大きい。
【0184】
pKaは酸の強さを規定する。pKaの値が低いほど強い酸、すなわち、水などの水性溶媒中でより完全に解離する酸を示す。ポリマーの構成に寄与する酸基含有モノマーの強度は、沈殿剤として利用される酸の強度よりも低いことが、沈殿剤の脱プロトン化と酸基含有モノマーの共役塩基のプロトン化を促進するために望ましい。このため、酸基含有モノマーのpKa値は沈殿剤として利用される酸のpKa値よりも高いことが望ましい。いくつかの実施形態では、酸基含有モノマーのpKaは約2.5~約7、約2.5~約6.8、約2.5~約6.6、約2.5~約6.4、約2.5~約6.2、約2.5~約6、約2.5~約5.8、約2.5~約5.6、約2.5~約5.4、約2.5~約5.2、約2.5~約5、約2.5~約4.8、約2.5~約4.6、約2.5~約4.4、約2.5~約4.2、約2.5~約4、約2.6~約7、約2.6~約6.8、約2.6~約6.6、約2.6~約6.4、約2.6~約6.2、約2.6~約6、約2.6~約5.8、約2.6~約5.6、約2.6~約5.4、約2.6~約5.2、約2.6~約5、約2.6~約4.8、約2.6~約4.6、約2.6~約4.4、約2.6~約4.2、約2.6~約4、約2.8~約7、約2.8~約6.8、約2.8~約6.6、約2.8~約6.4、約2.8~約6.2、約2.8~約6、約2.8~約5.8、約2.8~約5.6、約2.8~約5.4、約2.8~約5.2、約2.8~約5、約2.8~約4.8、約2.8~約4.6、約2.8~約4.4、約2.8~約4.2、約2.8~約4、約3~約7、約3~約6.8、約3~約6.6、約3~約6.4、約3~約6.2、約3~約6、約3~約5.8、約3~約5.6、約3~約5.4、約3~約5.2、約3~約5、約3~約4.8、約3~約4.6、約3~約4.4、約3~約4.2、約3~約4、約3.2~約7、約3.2~約6.8、約3.2~約6.6、約3.2~約6.4、約3.2~約6.2、約3.2~約6、約3.2~約5.8、約3.2~約5.6、約3.2~約5.4、約3.2~約5.2、約3.2~約5、約3.4~約7、約3.4~約6.8、約3.4~約6.6、約3.4~約6.4、約3.4~約6.2、約3.4~約6、約3.4~約5.8、約3.4~約5.6、約3.4~約5.4、約3.4~約5.2、約3.4~約5、約3.6~約7、約3.6~約6.8、約3.6~約6.6、約3.6~約6.4、約3.6~約6.2、約3.6~約6、約3.6~約5.8、約3.6~約5.6、約3.6~約5.4、約3.6~約5.2、約3.6~約5、約3.8~約7、約3.8~約6.8、約3.8~約6.6、約3.8~約6.4、約3.8~約6.2、約3.8~約6、約3.8~約5.8、約3.8~約5.6、約3.8~約5.4、約3.8~約5.2、約3.8~約5、約4~約7、約4~約6.8、約4~約6.6、約4~約6.4、約4~約6.2、約4~約6、約4~約5.8、約4~約5.6、約4~約5.4、約4~約5.2、又は約4~約5である。
【0185】
いくつかの実施形態では、酸基含有モノマーのpKaは7未満、6.8未満、6.6未満、6.4未満、6.2未満、6未満、5.8未満、5.6未満、5.4未満、5.2未満、5未満、4.8未満、4.6未満、4.4未満、4.2未満、4未満、3.8未満、3.6未満、3.4未満、3.2未満、3未満、2.8未満、又は2.6未満である。いくつかの実施形態では、酸基含有モノマーのpKaは2.5より大きく、2.6より大きく、2.8より大きく、3より大きく、3.2より大きく、3.4より大きく、3.6より大きく、3.8より大きく、4より大きく、4.2より大きく、4.4より大きく、4.6より大きく、4.8より大きく、5より大きく、5.2より大きく、5.4より大きく、5.6より大きく、5.8より大きく、6より大きく、6.2より大きく、6.4より大きく、6.6より大きく、又は6.8より大きい。
【0186】
構造単位(b)は、ニトリル基含有モノマーから誘導される。ニトリル基含有モノマーとして、少なくとも1つのニトリル基を有する任意のモノマーを、特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、ニトリル基含有モノマーは、α,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマーを含む。いくつかの実施形態において、ニトリル基含有モノマーは、アクリロニトリル、α-ハロゲノアクリロニトリル、α-アルキルアクリロニトリルまたはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、ニトリル基含有モノマーは、α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリル、α-フルオロアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-エチルアクリロニトリル、α-イソプロピルアクリロニトリル、α-n-ヘキシルアクリロニトリル、α-メトキシアクリロニトリル、3-メトキシアクリロニトリル、3-エトキシアクリロニトリル、α-アセトキシアクリロニトリル、α-フェニルアクリロニトリル、α-トリルアクリロニトリル、α-(メトキシフェニル)アクリロニトリル、α-(クロロフェニル)アクリロニトリル、α-(シアノフェニル)アクリロニトリル、ビニリデンシアニド、またはそれらの組み合わせである。
【0187】
いくつかの実施形態では、ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位(b)の割合は、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約15モル%~約85モル%、約15モル%~約84モル%、約15モル%~約83モル%、約15モル%~約82モル%、約15モル%~約81モル%、約15モル%~約80モル%、約15モル%~約79モル%、約15モル%~約78モル%、約15モル%~約77モル%、約15モル%~約76モル%、約15モル%~約75モル%、約15モル%~約74モル%、約15モル%~約73モル%、約15モル%~約72モル%、約15モル%~約71モル%、約15モル%~約70モル%、約15モル%~約65モル%、約15モル%~約60モル%、約15モル%~約55モル%、約15モル%~約50モル%、約16モル%~約85モル%、約17モル%~約85モル%、約18モル%~約85モル%、約19モル%~約85モル%、約20モル%~約85モル%、約21モル%~約85モル%、約22モル%~約85モル%、約25モル%~約85モル%、約30モル%~約85モル%、約35モル%~約85モル%、約40モル%~約85モル%、約45モル%~約85モル%、約50モル%~約85モル%、約55モル%~約85モル%、約16モル%~約80モル%、約16モル%~約75モル%、約16モル%~約70モル%、約16モル%~65モル%、約16モル%~約60モル%、約18モル%~80モル%、約18モル%~約75モル%、約18モル%~約70モル%、約18モル%~約65モル%、約18モル%~約60モル%、約20モル%~約80モル%、約20モル%~約75モル%、約20モル%~約70モル%、約20モル%~約65モル%、約20モル%~約60モル%、約22モル%~約80モル%、約22モル%~約75モル%、約22モル%~約70モル%、約22モル%~約65モル%、又は約22モル%~約60モル%である。
【0188】
いくつかの実施形態では、ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位(b)の割合は、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、85モル%未満、84モル%未満、82モル%未満、80モル%未満、78モル%未満、76モル%未満、74モル%未満、72モル%未満、70モル%未満、68モル%未満、66モル%未満、64モル%未満、62モル%未満、60モル%未満、58モル%未満、56モル%未満、54モル%未満、52モル%未満、50モル%未満、48モル%未満、46モル%未満、44モル%未満、42モル%未満、40モル%未満、38モル%未満、36モル%未満、34モル%未満、32モル%未満、30モル%未満、28モル%未満、26モル%未満、24モル%未満、22モル%未満、20モル%未満、18モル%未満、又は16モル%未満である。いくつかの実施形態では、ニトリル基含有モノマーから誘導される構造単位(b)の割合は、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、15モル%より大きく、16モル%より大きく、18モル%より大きく、20モル%より大きく、22モル%より大きく、24モル%より大きく、26モル%より大きく、28モル%より大きく、30モル%より大きく、32モル%より大きく、34モル%より大きく、36モル%より大きく、38モル%より大きく、40モル%より大きく、42モル%より大きく、44モル%より大きく、46モル%より大きく、48モル%より大きく、50モル%より大きく、52モル%より大きく、54モル%より大きく、56モル%より大きく、58モル%より大きく、60モル%より大きく、62モル%より大きく、64モル%より大きく、66モル%より大きく、68モル%より大きく、70モル%より大きく、72モル%より大きく、74モル%より大きく、76モル%より大きく、78モル%より大きく、80モル%より大きく、又は82モル%より大きい。
【0189】
構造単位(c)は、アミド基含有モノマーから誘導される。アミド基含有モノマーとして、少なくとも1つのアミド基を有する任意のモノマーを、特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、アミド基含有モノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-n-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-イソブチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-(メトキシメチル)メタクリルアミド、N-(エトキシメチル)メタクリルアミド、N-(プロポキシメチル)メタクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチロールメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N-ヒドロキシルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N,N’-メチレン-ビス-アクリルアミド(MBA)、N-ヒドロキシメチルアクリルアミドまたはそれらの組合せである。
【0190】
いくつかの実施形態において、アミド基含有モノマーから誘導される構造単位(c)の割合は、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約0モル%~約35モル%、約1モル%~約35モル%、約2モル%~約35モル%、約3モル%~約35モル%、約4モル%~約35モル%、約5モル%~約35モル%、約6モル%~約35モル%、約7モル%~約35モル%、約8モル%~約35モル%、約9モル%~約35モル%、約10モル%~約35モル%、約11モル%~約35モル%、約12%モル~約35モル%、約13モル%~約35モル%、約14モル%~約35モル%、約15モル%~約35モル%、約16モル%~約35モル%、約17モル%~約35モル%、約18モル%~約35モル%、約19モル%~約35モル%、約20モル%~約35モル%、約20モル%~約34モル%、約20モル%~約33モル%、約20モル%~約32モル%、約20モル%~約31モル%、約20モル%~約30モル%、約0モル%~約34モル%、約0モル%~約33モル%、約0モル%~約32モル%、約0モル%~約31モル%、約0モル%~約30モル%、約1モル%~約29モル%、約1モル%~約28モル%、約1モル%~約27モル%、約1モル%~約26モル%、約1モル%~約25モル%、約1モル%~約24モル%、約1モル%~約23モル%、約1モル%~約22モル%、約1モル%~約21モル%または約1モル%~約20モル%である。
【0191】
いくつかの実施形態において、アミド基含有モノマーから誘導される構造単位(c)の割合は、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、35モル%未満、34モル%未満、33モル%未満、32モル%未満、31モル%未満、30モル%未満、29モル%未満、28モル%未満、27モル%未満、26モル%未満、25モル%未満、24モル%未満、23モル%未満、22モル%未満、21モル%未満、20モル%未満、19モル%未満、18モル%未満、17モル%未満、16モル%未満、15モル%未満、14モル%未満、13モル%未満、12モル%未満、11モル%未満または10モル%未満である。いくつかの実施形態において、アミド基含有モノマーから誘導される構造単位(c)の割合は、ポリマー中のコポリマーのモノマー単位のモルの総数に基づいて、0モル%より大きく、1モル%より大きく、2モル%より大きく、3モル%より大きく、4モル%より大きく、5モル%より大きく、6モル%より大きく、7モル%より大きく、8モル%より大きく、9モル%より大きく、10モル%より大きく、11モル%より大きく、12モル%より大きく、13モル%より大きく、14モル%より大きく、15モル%より大きく、16モル%より大きく、17モル%より大きく、18モル%より大きく、19モル%より大きく、20モル%より大きく、21モル%より大きく、22モル%より大きく、23モル%より大きく、24モル%より大きくまたは25モル%より大きい。
【0192】
構造単位(d)は、ヒドロキシル基含有モノマーから誘導される。ヒドロキシル基含有モノマーとして、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する任意のモノマーを、特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル基含有モノマーは、ヒドロキシル基を有するC1~C20アルキル基またはC5~C20シクロアルキル基含有メタクリラートである。いくつかの実施形態において、ヒドロキシル基含有モノマーは、2-ヒドロキシエチルアクリラート、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、2-ヒドロキシプロピルアクリラート、2-ヒドロキシプロピルメタクリラート、2-ヒドロキシブチルメタクリラート、3-ヒドロキシプロピルアクリラート、3-ヒドロキシプロピルメタクリラート、4-ヒドロキシブチルメタクリラート、5-ヒドロキシペンチルアクリラート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリラート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリラート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリラート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリラート、アリルアルコールまたはそれらの組み合わせである。
【0193】
構造単位(e)は、エステル基含有モノマーから誘導される。エステル基含有モノマーとして、少なくとも1つのエステル基を有する任意のモノマーを、特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、エステル基含有モノマーは、C1~C20アルキルアクリラート、C1~C20アルキル(メタ)アクリラート、シクロアルキルアクリラートまたはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、エステル基含有モノマーは、メチルアクリラート、エチルアクリラート、n-プロピルアクリラート、イソプロピルアクリラート、n-ブチルアクリラート、sec-ブチルアクリラート、tert-ブチルアクリラート、ペンチルアクリラート、ヘキシルアクリラート、ヘプチルアクリラート、オクチルアクリラート、3,3,5-トリメチルヘキシルアクリラート、2-エチルヘキシルアクリラート、ノニルアクリラート、デシルアクリラート、ラウリルアクリラート、n-テトラデシルアクリラート、オクタデシルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、フェニルアクリラート、メトキシメチルアクリラート、メトキシエチルアクリラート、エトキシメチルアクリラート、エトキシエチルアクリラート、ペルフルオロオクチルアクリラート、ステアリルアクリラートまたはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、エステル基含有モノマーは、シクロヘキシルアクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、イソボルニルアクリラート、イソボルニルメタクリラート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリラート、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、エステル基含有モノマーは、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、n-プロピルメタクリラート、イソプロピルメタクリラート、n-ブチルメタクリラート、sec-ブチルメタクリラート、tert-ブチルメタクリラート、イソブチルメタクリラート、n-ペンチルメタクリラート、イソペンチルメタクリラート、ヘキシルメタクリラート、へプチルメタクリラート、オクチルメタクリラート、2-エチルヘキシルメタクリラート、ノニルメタクリラート、デシルメタクリラート、ラウリルメタクリラート、n-テトラデシルメタクリラート、ステアリルメタクリラート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリラート、フェニルメタクリラート、ベンジルメタクリラート、またはそれらの組み合わせである。
【0194】
構造単位(f)は、エポキシ基含有モノマーから誘導される。エポキシ基含有モノマーとして、少なくとも1つのエポキシ基を有する任意のモノマーを、特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、エポキシ基含有モノマーは、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリル2,3-エポキシプロピルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、3,4-エポキシ-1-ブテン、4,5-エポキシ-2-ペンテン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキサン、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチレン、エポキシ-4-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエンまたはそれらの組み合わせである。
【0195】
いくつかの実施形態において、エポキシ基含有モノマーは、3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシ-9-デセン、グリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート、グリシジルクロトナート、グリシジル2,4-ジメチルペンテノアート、グリシジル4-ヘキセノアート、グリシジル4-ヘプテノアート、グリシジル5-メチル-4-ヘプテノアート、グリシジルソルバート、グリシジルリノレアート、グリシジルオレアート、グリシジル3-ブテノアート、グリシジル3-ペンテノアート、グリシジル-4-メチル-3-ペンテノアートまたはそれらの組合せが挙げられる。
【0196】
構造単位(g)は、フッ素含有モノマーから誘導される。フッ素含有モノマーとして、少なくとも1つのフッ素原子を有する任意のモノマーを、特に制限なく使用することができる。いくつかの実施形態において、フッ素含有モノマーは、少なくとも1つのフッ素原子を有するC1~C20アルキル基含有アクリラート、メタクリラートまたはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、フッ素含有モノマーは、ペルフルオロドデシルアクリラート、ペルフルオロn-オクチルアクリラート、ペルフルオロn-ブチルアクリラート、ペルフルオロヘキシルエチルアクリラートおよびペルフルオロオクチルエチルアクリラート等のペルフルオロアルキルアクリラートであり;ペルフルオロドデシルメタクリラート、ペルフルオロn-オクチルメタクリラート、ペルフルオロn-ブチルメタクリラート、ペルフルオロヘキシルエチルメタクリラートおよびペルフルオロオクチルエチルメタクリラート等のペルフルオロアルキルメタクリラートであり;ペルフルオロドデシルオキシエチルアクリラートおよびペルフルオロデシルオキシエチルアクリラート等のペルフルオロオキシアルキルアクリラートであり;ペルフルオロドデシルオキシエチルメタクリラートおよびペルフルオロデシルオキシエチルメタクリラート等のペルフルオロオキシアルキルメタクリラート並びにそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、フッ素含有モノマーは、少なくとも1つのC1~C20アルキル基および少なくとも1つのフッ素原子を含むカルボキシラートであり;ここで、カルボキシラートは、クロトナート、マラート、フマラート、イタコナートまたはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、フッ素含有モノマーは、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、フルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ビニリデンフルオリド、テトラフルオロエチレン、2-フルオロアクリラートおよびそれらの組合せである。
【0197】
いくつかの実施形態において、ヒドロキシル基含有モノマーから誘導される構造単位(d)、エステル基含有モノマーから誘導される構造単位(e)、エポキシ基含有モノマーから誘導される構造単位(f)およびフッ素含有モノマーから誘導される構造単位(g)の各々の割合は、独立して、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、約0モル%~約50モル%、約1モル%~約50モル%、約2モル%~約50モル%、約3モル%~約50モル%、約4モル%~約50モル%、約5モル%~約50モル%、約6モル%~約50モル%、約7モル%~約50モル%、約8モル%~約50モル%、約9モル%~約50モル%、約10モル%~約50モル%、約11モル%~約50モル%、約12モル%~約50モル%、約13モル%~約50モル%、約14モル%~約50モル%、約15モル%~約50モル%、約16モル%~約50モル%、約17モル%~約50モル%、約18モル%~約50モル%、約19モル%~約50モル%、約20モル%~約50モル%、約20モル%~約49モル%、約20モル%~約48モル%、約20モル%~約47モル%、約20モル%~約46モル%、約20モル%~約45モル%、約20モル%~約44モル%、約20モル%~約43モル%、約20モル%~約42モル%、約20モル%~約41モル%、約20モル%~約40モル%、約0モル%~約45モル%、約0モル%~約44モル%、約0モル%~約43モル%、約0モル%~約42モル%、約0モル%~約41モル%、約0モル%~約40モル%、約0モル%~約39モル%、約0モル%~約38モル%、約0モル%~約37モル%、約0モル%~約36モル%、約0モル%~約35モル%、約0モル%~約34モル%、約0モル%~約33モル%、約0モル%~約32モル%、約0モル%~約31モル%、約0モル%~約30モル%、約2モル%~約50モル%、約2モル%~約45モル%、約2モル%~約40モル%、約2モル%~約35モル%、約2モル%~約30モル%、約2モル%~約25モル%、約5モル%~約50モル%、約5モル%~約45モル%、約5モル%~約40モル%、約5モル%~約35モル%、約5モル%~約30モル%、約5モル%~約25モル%、約10モル%~約50モル%、約10モル%~約45モル%、約10モル%~約40モル%、約10モル%~約35モル%または約10モル%~約30モル%である。
【0198】
いくつかの実施形態において、ヒドロキシル基含有モノマーから誘導される構造単位(d)、エステル基含有モノマーから誘導される構造単位(e)、エポキシ基含有モノマーから誘導される構造単位(f)およびフッ素含有モノマーから誘導される構造単位(g)の各々の割合は、独立して、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、50モル%未満、49モル%未満、48モル%未満、47モル%未満、46モル%未満、45モル%未満、44モル%未満、43モル%未満、42モル%未満、41モル%未満、40モル%未満、39モル%未満、38モル%未満、37モル%未満、36モル%未満、35モル%未満、34モル%未満、33モル%未満、32モル%未満、31モル%未満、30モル%未満、29モル%未満、28モル%未満、27モル%未満、26モル%未満、25モル%未満、24モル%未満、23モル%未満、22モル%未満、21モル%未満、20モル%未満、19モル%未満、18モル%未満、17モル%未満、16モル%未満、15モル%未満、14モル%未満、13モル%未満、12モル%未満、11モル%未満、10モル%未満、8モル%未満、6モル%未満、4モル%未満または2モル%未満である。
【0199】
いくつかの実施形態において、ヒドロキシル基含有モノマーから誘導される構造単位(d)、エステル基含有モノマーから誘導される構造単位(e)、エポキシ基含有モノマーから誘導される構造単位(f)およびフッ素含有モノマーから誘導される構造単位(g)の各々の割合は、独立して、ポリマー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、0モル%より大きく、1モル%より大きく、2モル%より大きく、3モル%より大きく、4モル%より大きく、5モル%より大きく、6モル%より大きく、7モル%より大きく、8モル%より大きく、9モル%より大きく、10モル%より大きく、11モル%より大きく、12モル%より大きく、13モル%より大きく、14モル%より大きく、15モル%より大きく、16モル%より大きく、17モル%より大きく、18モル%より大きく、19モル%より大きく、20モル%より大きく、21モル%より大きく、22モル%より大きく、23モル%より大きく、24モル%より大きく、25モル%より大きく、26モル%より大きく、27モル%より大きく、28モル%より大きく、29モル%より大きく、30モル%より大きく、31モル%より大きく、32モル%より大きく、33モル%より大きく、34モル%より大きく、35モル%より大きく、36モル%より大きく、37モル%より大きく、38モル%より大きく、39モル%より大きく、40モル%より大きく、41モル%より大きく、42モル%より大きく、43モル%より大きく、44モル%より大きく、45モル%より大きく、46モル%より大きく、47モル%より大きくまたは48モル%より大きい。
【0200】
他の実施形態において、コポリマーは、オレフィンから誘導される構造単位をさらに含んでもよい。オレフィンとして、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する任意の炭化水素を、特定の制限なく使用できる。いくつかの実施形態において、オレフィンは、C2~C20脂肪族化合物、C8~C20芳香族化合物またはビニル不飽和を含む環状化合物、C4~C40ジエンまたはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、オレフィンは、スチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、シクロブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテン、4-ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテンまたはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、コポリマーは、オレフィンから誘導される構造単位を含まない。いくつかの実施形態において、コポリマーは、スチレン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、シクロブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテン、4-ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエンまたはシクロオクテンを含まない。
【0201】
共役ジエン基含有モノマーは、オレフィンとして構成する。いくつかの実施形態において、共役ジエン基含有モノマーは、C4~C40ジエン、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、イソプレン、ミルセン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン、置換側鎖共役ヘキサジエン等の脂肪族共役ジエンモノマーまたはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、コポリマーは、C4~C40ジエン、1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン、イソプレン、ミルセン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエンまたは置換側鎖共役ヘキサジエン等の脂肪族共役ジエンモノマーを含まない。
【0202】
他の実施形態において、コポリマーは、芳香族ビニル基含有モノマーから誘導される構造単位をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、芳香族ビニル基含有モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンまたはそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、コポリマーは、芳香族ビニル基含有モノマーから誘導される構造単位を含まない。いくつかの実施形態において、コポリマーは、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンまたはジビニルベンゼンを含まない。
【0203】
いくつかの実施形態では、ポリマーの重量平均分子量は約50,000g/mol~約200,000g/mol、約55,000g/mol~約200,000g/mol、約60,000g/mol~約200,000g/mol、約65,000g/mol~約200,000g/mol、約70,000g/mol~約200,000g/mol、約75,000g/mol~約200,000g/mol、約80,000g/mol~約200,000g/mol、約85,000g/mol~約200,000g/mol、約90,000g/mol~約200,000g/mol、約90,000g/mol~約190,000g/mol、約90,000g/mol~約180,000g/mol、約90,000g/mol~約170,000g/mol、約90,000g/mol~約160,000g/mol、約95,000g/mol~約160,000g/mol、約100,000g/mol~約160,000g/mol、約100,000g/mol~約155,000g/mol、約100,000g/mol~約15,000g/mol、約100,000g/mol~約145,000g/mol、又は約100,000g/mol~約140,000g/molである。
【0204】
いくつかの実施形態では、ポリマーの重量平均分子量は200,000g/mol未満、195,000g/mol未満、190,000g/mol未満、185,000g/mol未満、180,000g/mol未満、175,000g/mol未満、170,000g/mol未満、165,000g/mol未満、160,000g/mol未満、155,000g/mol未満、150,000g/mol未満、145,000g/mol未満、140,000g/mol未満、135,000g/mol未満、130,000g/mol未満、125,000g/mol未満、120,000g/mol未満、115,000g/mol未満、110,000g/mol未満、105,000g/mol未満、100,000g/mol未満、95,000g/mol未満、90,000g/mol未満、85,000g/mol未満、80,000g/mol未満、75,000g/mol未満、70,000g/mol未満、65,000g/mol未満、又は60,000g/mol未満である。いくつかの実施形態では、ポリマーの重量平均分子量は50,000g/molより大きく、55,000g/molより大きく、60,000g/molより大きく、65,000g/molより大きく、70,000g/molより大きく、75,000g/molより大きく、80,000g/molより大きく、85,000g/molより大きく、90,000g/molより大きく、95,000g/molより大きく、100,000g/molより大きく、105,000g/molより大きく、110,000g/molより大きく、115,000g/molより大きく、120,000g/molより大きく、125,000g/molより大きく、130,000g/molより大きく、135,000g/molより大きく、140,000g/molより大きく、145,000g/molより大きく、150,000g/molより大きく、155,000g/molより大きく、160,000g/molより大きく、165,000g/molより大きく、170,000g/molより大きく、175,000g/molより大きく、180,000g/molより大きく、185,000g/molより大きく、190,000g/molより大きく、又は195,000g/molより大きい。
【0205】
いくつかの実施形態では、ポリマーの数平均分子量は約10,000g/mol~約100,000g/mol、約15,000g/mol~約100,000g/mol、約20,000g/mol~約100,000g/mol、約25,000g/mol~約100,000g/mol、約30,000g/mol~約100,000g/mol、約35,000g/mol~約100,000g/mol、約40,000g/mol~約100,000g/mol、約45,000g/mol~約100,000g/mol、約50,000g/mol~約100,000g/mol、約50,000g/mol~約95,000g/mol、約50,000g/mol~約90,000g/mol、約50,000g/mol~約85,000g/mol、約50,000g/mol~約80,000g/mol、約55,000g/mol~約80,000g/mol、約60,000g/mol~約80,000g/mol、約65,000g/mol~約75,000g/mol、又は約60,000g/mol~約90,000g/molである。
【0206】
いくつかの実施形態では、ポリマーの数平均分子量は100,000g/mol未満、95,000g/mol未満、90,000g/mol未満、85,000g/mol未満、80,000g/mol未満、75,000g/mol未満、70,000g/mol未満、65,000g/mol未満、60,000g/mol未満、55,000g/mol未満、50,000g/mol未満、45,000g/mol未満、40,000g/mol未満、35,000g/mol未満、30,000g/mol未満、25,000g/mol未満、20,000g/mol未満、又は15,000g/mol未満である。いくつかの実施形態では、ポリマーの数平均分子量は10,000g/molより大きく、15,000g/molより大きく、20,000g/molより大きく、25,000g/molより大きく、30,000g/molより大きく、35,000g/molより大きく、40,000g/molより大きく、45,000g/molより大きく、50,000g/molより大きく、55,000g/molより大きく、60,000g/molより大きく、65,000g/molより大きく、70,000g/molより大きく、75,000g/molより大きく、80,000g/molより大きく、85,000g/molより大きく、90,000g/molより大きく、又は95,000g/molより大きい。
【0207】
いくつかの実施形態では、ポリマーの多分散性指数(PDI)は約1~約5、約1~約4.8、約1~約4.6、約1~約4.4、約1~約4.2、約1~約4、約1~約3.8、約1~約3.6、約1~約3.4、約1~約3.2、約1~約3、約1.1~約3、約1.2~約3、約1.3~約3、約1.4~約3、約1.5~約3、約1.6~約3、約1.6~約2.8、約1.6~約2.6、約1.8~約2.6、又は約1.8~約2.8である。
【0208】
いくつかの実施形態では、ポリマーの多分散性指数は5未満、4.8未満、4.6未満、4.4未満、4.2未満、4未満、3.8未満、3.6未満、3.4未満、3.2未満、3未満、2.8未満、2.6未満、2.4未満、2.2未満、2未満、1.8未満、1.6未満、1.4未満又は1.2未満である。いくつかの実施形態では、ポリマーの多分散性指数は1より大きく、1.2より大きく、1.4より大きく、1.6より大きく、1.8より大きく、2より大きく、2.2より大きく、2.4より大きく、2.6より大きく、2.8より大きく、3より大きく、3.2より大きく、3.4より大きく、3.6より大きく、3.8より大きく、4より大きく、4.2より大きく、4.4より大きく、4.6より大きく、又は4.8より大きい。
【0209】
いくつかの実施形態では、水性溶媒は水を主成分とし、水に加えてアルコール、低級脂肪族ケトン、低級アルキルアセタート等の揮発性溶媒を微量成分として含む溶液である。いくつかの実施形態では、水性溶媒中の水の割合は、約51重量%~約100重量%、約51重量%~約95重量%、約51重量%~約90重量%、約51重量%~約85重量%、約51重量%~約80重量%、約51重量%~約75重量%、約51重量%~約70重量%、約55重量%~約100重量%、約55重量%~約95重量%、約55重量%~約90重量%、約55重量%~約85重量%、約55重量%~約80重量%、約60重量%~約100重量%、約60重量%~約95重量%、約60重量%~約90重量%、約60重量%~約85重量%、約60重量%~約80重量%、約65重量%~約100重量%、約65重量%~約95重量%、約65重量%~約90重量%、約65重量%~約85重量%、約70重量%~約100重量%、約70重量%~約95重量%、約70重量%~約90重量%、約70重量%~約85重量%、約75重量%~約100重量%、約75重量%~約95重量%、又は約80重量%~約100重量%である。
【0210】
いくつかの実施形態では、水性溶媒中の水の割合は、50重量%より大きく、55重量%より大きく、60重量%より大きく、65重量%より大きく、70重量%より大きく、75重量%より大きく、80重量%より大きく、85重量%より大きく、90重量%より大きく、又は95重量%より大きい。いくつかの実施形態では、水性溶媒中の水の割合は、55重量%未満、60重量%未満、65重量%未満、70重量%未満、75重量%未満、80重量%未満、85重量%未満、90重量%未満、又は95重量%未満である。いくつかの実施形態では、水性溶媒は水のみからなり、すなわち、水性溶媒中の水の割合は100重量%である。
【0211】
水のいくつかの非限定的な例としては、水道水、ボトル入り水、精製水、純水、蒸留水、脱イオン水、D2O、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、水性溶媒は脱イオン水である。水はポリマー中に存在する様々な荷電、部分荷電、又は極性種の周りに溶媒和シェルを形成し、その結果、第1の懸濁液中のポリマーの溶解を促進する。
【0212】
水性溶媒の微量成分(すなわち水以外の溶媒)としては、任意の水混和性溶媒又は揮発性溶媒を使用することができる。水混和性溶媒又は揮発性溶媒のいくつかの非限定的な例としては、アルコール、低級脂肪族ケトン、低級アルキルアセタート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。アルコールの添加はポリマーの溶解性を向上させ、水の凝固点を低下させることができる。アルコールのいくつかの非限定的な例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール及びそれらの組み合わせ等のC1-C4アルコールが挙げられる。低級脂肪族ケトンのいくつかの非限定的な例として、アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン(MEK)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。低級アルキルアセタートのいくつかの非限定的な例として、酢酸エチル(EA)、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル(BA)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、水性溶媒はアルコール、低級脂肪族ケトン、低級アルキルアセタート又はそれらの組み合わせを含まない。
【0213】
本発明の方法は(1)沈殿剤を使用してポリマーと水性溶媒との間の分子間引力(例えば、水素結合及び/又はイオン-双極子相互作用)を破壊及び/又は破断し、(2)結果としてポリマーのコイルからグロビュールへの構造転移を誘導することによってポリマーの沈殿を達成するために行われる。
【0214】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は第1の懸濁液中に添加されて第2の懸濁液を形成する。
【0215】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は酸である。いくつかの実施形態では、沈殿剤は強酸、弱酸、又はそれらの組み合わせである。
【0216】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は強酸である。強酸は反応式1に記載されるように、水素イオンを生成する際に、水中で完全に又はほぼ完全に解離するものである。いくつかの実施形態では、強酸は無機酸である。いくつかの実施形態では、無機酸は硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、ジチオン酸、亜ジチオン酸、スルファミン酸、トリチオン酸、テトラチオン酸、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0217】
いくつかの実施形態では、強酸はメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、プロピオル酸、メソシュウ酸、メリット酸、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0218】
沈殿剤として利用される酸の強度は、沈殿剤の優先的解離及び酸基含有モノマーの共役塩基のプロトン化を促進するために、ポリマーの構築を補助する酸基含有モノマーの強度よりも高いことが強く推奨される。したがって、沈殿剤としての酸のpKa値は酸基含有モノマーのpKa値より低いことが望ましい。
【0219】
いくつかの実施形態では、強酸のpKaは約-10~約2、約-9.5~約2、約-9~約2、約-8.5~約2、約-8~約2、約-7.5~約2、約-7~約2、約-6.5~約2、約-6~約2、約-5.5~約2、約-5~約2、約-4.8~約2、約-4.6~約2、約-4.4~約2、約-4.2~約2、約-4~約2、約-3.8~約2、約-3.6~約2、約-3.4~約2、約-3.2~約2、約-3~約2、約-3~約2、約-2.8~約2、約-2.6~約2、約-2.4~約2、約-2.2~約2、約-2~約2、約-1.8~約2、約-1.6~約2、約-1.4~約2、約-1.2~約2、約-1~約2、約-0.8~約2、約-0.6~約2、約-0.4~約2、約-0.2~約2、約0~約2、-10~約1.5、約-9.5~約1.5、約-9~約1.5、約-8.5~約1.5、約-8~約1.5、約-7.5~約1.5、約-7~約1.5、約-6.5~約1.5、約-6~約1.5、約-5.5~約1.5、約-5~約1.5、約-4.8~約1.5、約-4.6~約1.5、約-4.4~約1.5、約-4.2~約1.5、約-4~約1.5、約-3.8~約1.5、約-3.6~約1.5、約-3.4~約1.5、約-3.2~約1.5、約-3~約1.5、約-3~約1.5、約-2.8~約1.5、約-2.6~約1.5、約-2.4~約1.5、約-2.2~約1.5、約-2~約1.5、約-1.8~約1.5、約-1.6~約1.5、約-1.4~約1.5、約-1.2~約1.5、約-1~約1.5、約-0.8~約1.5、約-0.6~約1.5、約-0.4~約1.5、約-0.2~約1.5、約0~約1.5、約-10~約1、約-9.5~約1、約-9~約1、約-8.5~約1、約-8~約1、約-7.5~約1、約-7~約1、約-6.5~約1、約-6~約1、約-5.5~約1、約-5~約1、約-4.8~約1、約-4.6~約1、約-4.4~約1、約-4.2~約1、約-4~約1、約-3.8~約1、約-3.6~約1、約-3.4~約1、約-3.2~約1、約-3~約1、約-3~約1、約-2.8~約1、約-2.6~約1、約-2.4~約1、約-2.2~約1、約-2~約1、約-1.8~約1、約-1.6~約1、約-1.4~約1、約-1.2~約1、約-1~約1、約-0.8~約1、約-0.6~約1、約-0.4~約1、約-0.2~約1、又は約0~約1である。
【0220】
いくつかの実施形態では、強酸のpKaは2未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、0.2未満、0.1未満、0未満、-0.5未満、-1未満、-1.5未満、-2未満、-2.5未満、-3未満、-3.5未満、-4未満、-4.5未満、-5未満、-5.5未満、-6未満、-6.5未満、-7未満、-8未満、-8.5未満、-9未満、又は-9.5未満である。いくつかの実施形態では、強酸のpKaは-10より大きく、-9.5より大きく、-9より大きく、-8.5より大きく、-8より大きく、-7.5より大きく、-7より大きく、-6.5より大きく、-6より大きく、-5.5より大きく、-5より大きく、-4.5より大きく、-4より大きく、-3.5より大きく、-3より大きく、-2.5より大きく、-2より大きく、-1.5より大きく、-1より大きく、-0.5より大きく、0より大きく、0.1より大きく、0.2より大きく、0.3より大きく、0.4より大きく、0.5より大きく、0.6より大きく、0.7より大きく、0.8より大きく、0.9より大きく、1より大きく、1.1より大きく、1.2より大きく、1.3より大きく、1.4より大きく、1.5より大きく、1.6より大きく、1.7より大きく、1.8より大きく、又は1.9より大きい。
【0221】
いくつかの実施形態では、強酸のpKaは-10と2の間、9.5と2の間、-9と2の間、-8.5と2の間、-8と2の間、-7.5と2の間、-7と2の間、-6.5と2の間、-6と2の間、-5.5と2の間、-5と2の間、-4.5と2の間、-4と2の間、-3.5と2の間、-3と2の間、-2.5と2との間、又は-2と2の間である。
【0222】
いくつかの実施形態では、多塩基酸は沈殿剤として利用される。多塩基酸は1分子あたり2つ以上のイオン化可能な水素イオン(すなわちプロトン)を有する酸を指す。多塩基酸のいくつかの非限定的な例は、硫酸、ジチオン酸、亜ジチオン酸、トリチオン酸、テトラチオン酸、シュウ酸、マロン酸、タルトロン酸、ジヒドロキシマロン酸、メソシュウ酸、ブタン二酸、メチルマロン酸、フマル酸、マレイン酸、2-ヒドロキシブタン二酸、酒石酸、オキサロ酢酸、ジオキソコハク酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、ヘキサン二酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、ピメリン酸、トリメシン酸、メリット酸、リンゴ酸、及びオルトケイ酸である。多塩基強酸のいくつかの非限定的な例は、硫酸、シュウ酸、メリット酸、メソシュウ酸、ジチオン酸、亜ジチオン酸、トリチオン酸、及びテトラチオン酸である。
【0223】
硫酸では、1分子あたり解離し得るプロトンは2つである。硫酸は第1のプロトンが解離する際のpKaが-2.80であり、硫酸は強酸とみなされる。硫酸の第2のプロトンはpKaが1.99で解離するため、第1のプロトンが解離した後の硫酸も強酸であり、第2のプロトンの解離を考慮する必要がある。したがって、硫酸からの解離を前提としたプロトン濃度は、硫酸1分子から両プロトンが解離することに基づいて算出される。本発明において、強酸は、具体的には、pKaが-10~2又は-10と2との間の酸を指す。いくつかの実施形態では、多塩基強酸は第1のプロトン、第2のプロトン、第3のプロトン、又はそれらの組み合わせの解離について約-10~約2のpKaを有する酸である。いくつかの実施形態では、多塩基強酸は第1のプロトン、第2のプロトン、第3のプロトン、又はそれらの組み合わせの解離について-10と2の間のpKaを有する酸である。
【0224】
第2の懸濁液のpH値は、中に含まれるヒドロキソニウムイオンの濃度を規定する。第2の懸濁液のpH値は、第2の懸濁液に入れたときに種々の酸が主に存在する状態(すなわち、プロトン化形態又は脱プロトン化形態)を支配する。例えば、第2の懸濁液のpHが酸AのpKaよりも低いが、酸BのpKaよりも高い場合、酸Aは主にそのプロトン化形態で第2の懸濁液中に存在し、酸Bは主にその脱プロトン化形態で存在するであろう。
【0225】
沈殿剤として利用される酸のpKa及び第2の懸濁液のpHが、ポリマーの構成に寄与する酸基含有モノマーのpKa値よりも低いことは、非常に好ましいであろう。これにより、沈殿剤の解離と、酸基含有モノマーの共役塩基(プロトン化した形で第2の懸濁液中に存在する)の優先的なプロトン化が可能となり、その結果、水性溶媒からのポリマーの分離とポリマーの構造転移を促進する。
【0226】
第2の懸濁液のpHの変化に対する個々のモノマー単位の応答の強さは、単独では弱い可能性がある。しかしながら、これらの弱い応答がポリマーの集合体で百、千と積み重なることで、ポリマー全体の構造転移を促進するかなりの力を与える。このため、ポリマーのコンフォメーションの大きな変化が、第2の懸濁液のpHのわずかな変化により誘発される可能性がある。いくつかの実施形態では、沈殿剤として利用されている強酸が、第1の懸濁液中に添加されて第2の懸濁液を形成する時、第2の懸濁液のpHは約0.2~約4.5、約0.2~約4.4、約0.2~約4.3、約0.2~約4.1、約0.2~約4、約0.2~約3.8、約0.2~約3.6、約0.2~約3.4、約0.2~約3.2、約0.2~約3、約0.2~約2.8、約0.2~約2.6、約0.2~約2.4、約0.2~約2.2、約0.2~約2、約0.2~約1.8、約0.2~約1.6、約0.2~約1.4、約0.2~約1.2、約0.4~約4.5、約0.4~約4.5、約0.4~約4.3、約0.4~約4.1、約0.4~約4、約0.4~約3.8、約0.4~約3.6、約0.4~約3.4、約0.4~約3.2、約0.4~約3、約0.4~約2.8、約0.4~約2.6、約0.4~約2.4、約0.4~約2.2、約0.4~約2、約0.4~約1.8、約0.4~約1.6、約0.4~約1.4、約0.6~約4.5、約0.6~約4.5、約0.6~約4.3、約0.6~約4.1、約0.6~約4、約0.6~約3.8、約0.6~約3.6、約0.6~約3.4、約0.6~約3.2、約0.6~約3、約0.6~約2.8、約0.6~約2.6、約0.6~約2.4、約0.6~約2.2、約0.6~約2、約0.6~約1.8、約0.6~約1.6、約0.8~約4.5、約0.8~約4.5、約0.8~約4.3、約0.8~約4.1、約0.8~約4、約0.8~約3.8、約0.8~約3.6、約0.8~約3.4、約0.8~約3.2、約0.8~約3、約0.8~約2.8、約0.8~約2.6、約0.8~約2.4、約0.8~約2.2、約0.8~約2、約0.8~約1.8、約1~約4.5、約1~約4.3、約1~約4.1、約1~約4、約1~約3.8、約1~約3.6、約1~約3.4、約1~約3.2、約1~約3、約1~約2.8、約1~約2.6、約1~約2.4、約1~約2.2、約1~約2、約1.2~約4.5、約1.2~約4、約1.2~約3.8、約1.2~約3.6、約1.2~約3.4、約1.2~約3.2、約1.2~約3、約1.2~約2.8、約1.4~約4.5、約1.2~約4、約1.4~約3.8、約1.4~約3.6、約1.4~約3.4、約1.4~約3.2、約1.4~約3、約1.4~約2.8、約1.6~約4.5、約1.6~約4、約1.6~約3.8、約1.6~約3.6、約1.6~約3.4、約1.6~約3.2、約1.6~約3、約1.8~約4.5、約1.8~約4、約1.8~約3.8、約1.8~約3.6、約1.8~約3.4、約1.8~約3.2、約2~約4.5、約2~約4、約2~約3.8、約2~約3.6、又は約2~約3.4である。
【0227】
いくつかの実施形態では、沈殿剤として利用されている強酸が第1の懸濁液中に添加されて第2の懸濁液を形成する時、第2の懸濁液のpHは4.5未満、4.4未満、4.3未満、4.2未満、4.1未満、4未満、3.9未満、3.8未満、3.7未満、3.6未満、3.5未満、3.4未満、3.3未満、3.2未満、3.1未満、3未満、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、又は0.3未満である。いくつかの実施形態では、沈殿剤として利用されている強酸が第1の懸濁液中に添加されて第2の懸濁液を形成する時、第2の懸濁液のpHは0.2より大きく、0.3より大きく、0.4より大きく、0.5より大きく、0.6より大きく、0.7より大きく、0.8より大きく、0.9より大きく、1より大きく、1.1より大きく、1.2より大きく、1.3より大きく、1.4より大きく、1.5より大きく、1.6より大きく、1.7より大きく、1.8より大きく、1.9より大きく、2より大きく、2.1より大きく、2.2より大きく、2.3より大きく、2.4より大きく、2.5より大きく、2.6より大きく、2.7より大きく、2.8より大きく、2.9より大きく、3より大きく、3.1より大きく、3.2より大きく、3.3より大きく、3.4より大きく、3.5より大きく、3.6より大きく、3.7より大きく、3.8より大きく、3.9より大きく、4より大きく、4.1より大きく、4.2より大きく、4.3より大きく、又は4.4より大きい。
【0228】
図6A及び
図6Bは、第2の懸濁液を形成する際、沈殿剤を第1の懸濁液に添加した後に6および3のpHをそれぞれ有する比較例1及び例2の第2の懸濁液の物理状態を示す。
図6A及び
図6Bにおいて、硫酸はpK
a値が-2.8である沈殿剤として利用されている。ポリマーはカルボン酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーから誘導される構造単位を含むコポリマーを含む。カルボン酸基含有モノマーから誘導される構造単位はアクリル酸塩を含む。アクリル酸はpK
a値が4.3である。
【0229】
図6Aでは、硫酸が第1の懸濁液に添加されpH6の第2の懸濁液を形成する。比較的透明な第2の懸濁液が観察され沈殿の目に見える兆候は見られない。これはアクリル酸のpK
a値(すなわち4.3)が、第2の懸濁液のpH(すなわち6)よりも低いことに起因する。したがって、アクリル酸は脱プロトン化された形態で(すなわち、アクリル酸塩として)第2の懸濁液中に主に残留することになるであろう。硫酸も同様である。しかし、ポリマーの構成に寄与する電荷を有するアクリル酸塩の存在は、ポリマーと水性溶媒との間のイオン-双極子相互作用の持続を可能にすると同時に、コポリマー鎖全体に静電反発を与え、ポリマーのコイルからグロビュールへの構造転移を阻害している。そのため、第2の懸濁液からポリマーを沈殿させることができなかった。
【0230】
一方、
図6Bでは、硫酸が第1の懸濁液に添加されpH3の第二懸濁液を形成する。沈殿によって形成された沈殿物の明らかな兆候があり、これはポリマーと水性溶媒の分離とポリマーのコンフォメーション変化が成功したとみなされることを示す。この例では、アクリル酸のpK
a値(すなわち4.3)は第2の懸濁液のpH(すなわち3)よりも高い。したがって、アクリル酸はそのプロトン化された形態で(すなわち、アクリル酸として)第2の懸濁液中に主に存在するであろう。一方、硫酸のpK
a値(すなわち-2.8)が第2の懸濁液のpHのそれ(すなわち3)よりも低いため、硫酸はその脱プロトン化された形態で第2の懸濁液中に存在するであろう。ポリマーの構築を助ける非荷電アクリル酸の存在は、ポリマーと水性溶媒との間のイオン-双極子相互作用を排除又は著しく低減することを助け、同時にポリマーの凝集を開始させる。その結果、ポリマーの沈殿が生じる。
【0231】
図7A及び
図7Bは、それぞれ、例38の沈殿したポリマー及び残存する第2の懸濁液の赤外分光法を示す。ポリマーはカルボン酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、及びアミド基含有モノマーから誘導される構造単位を含む。
【0232】
図7Aは、内部に存在する様々な官能基を検出することにより、沈殿した化学物質の同定に使用される。図は透過率で観察される2242cm
-1(C≡N)、3400cm
-1(N-H)、1600cm
-1(C=O)、1500cm
-1(COOH)及び1403cm
-1(COOH)のピークを示し、これらは第1の懸濁液に元々存在したポリマー内に含まれるニトリル基、アミド基及びカルボキシル基と一致する。これにより、沈殿した化学物質が、実際に、本発明で開示されたポリマーであることが立証された。
【0233】
一方、
図7Bは第2の懸濁液からのポリマーの沈殿の有効性と質を明らかにするため、すなわち、第2の懸濁液の残りにポリマーがまだ存在するかどうかを調べるために使用される。
図7Bの赤外線スペクトルには、ポリマーに対応するニトリル基、アミド基、およびカルボキシル基に関連する特徴的なピークはいずれも見い出されない。これは、第2の懸濁液の残りには、観察可能なポリマーが存在しないことの証拠である。これは、本発明の方法は、ポリマーの沈殿効果が高く、ポリマーの混入を回避し、優れた材料回収が可能であることの証拠を提供する。同時に、
図8A及び8Bは、それぞれ、
図7A及び7Bと同様の結果を示す例37の沈殿したポリマー及び第2の懸濁液の残りの赤外分光法を示しており、これは、ポリマーを沈殿させる際の本明細書に開示される方法の適用性及び有効性をさらに確証するものである。
【0234】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は弱酸である。弱酸は水に溶解した時に完全にイオン化しないか、又は解離して水素イオンを生成しないものである。いくつかの実施形態では、弱酸は有機酸である。いくつかの実施形態では有機酸は、ギ酸、酢酸、グリコール酸、グリオキシル酸、シュウ酸、プロピオン酸、アクリル酸、乳酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、グリセリン酸、ピルビン酸、3-オキソプロピオン酸、2,3-ジオキソプロピオン酸、マロン酸、タルトロン酸、ジヒドロキシマロン酸、メソシュウ酸、グリシド酸、酪酸、イソ酪酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、テトロル酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-オキソブタン酸、アセト酢酸、4-オキソブタン酸、ブタン二酸、メチルマロン酸、フマル酸、マレイン酸、2-ヒドロキシブタン二酸、酒石酸、オキサロ酢酸、ジオキソコハク酸、吉草酸、イソ吉草酸、2-メチル酪酸、ピバル酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシイソ吉草酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、2-フロ酸、テトラヒドロフロ酸、ヘキサン酸、ヘキサン二酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、ソルビン酸、ピメリン酸、安息香酸、サリチル酸、4-カルボキシ安息香酸、トリメシン酸、メリト酸、リンゴ酸、亜ジチオン酸、又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0235】
いくつかの実施形態では、弱酸はリン酸、亜硝酸、オルトケイ酸、又はそれらの組み合わせである。
【0236】
いくつかの実施形態では、弱酸のpKaは約2~約7、約2.2~約7、約2.4~約7、約2.6~約7、約2.8~約7、約3~約7、約3.2~約7、約3.4~約7、約3.6~約7、約3.8~約7、約4~約7、約2~約6.5、約2.2~約6.5、約2.4~約6.5、約2.6~約6.5、約2.8~約6.5、約3~約6.5、約3.2~約6.5、約3.4~約6.5、約3.6~約6.5、約3.8~約6.5、約4~約6.5、約2~約6、約2.2~約6、約2.4~約6、約2.6~約6、約2.8~約6、約3~約6、約3.2~約6、約3.4~約6、約3.6~約6、約3.8~約6、約4~約6、約2~約5.5、約2.1~約5.5、約2.2~約5.5、約2.3~約5.5、約2.4~約5.5、約2.5~約5.5、約2.6~約5.5、約2.7~約5.5、約2.8~約5.5、約2.9~約5.5、約3~約5.5、約3.1~約5.5、約3.2~約5.5、約3.3~約5.5、約3.4~約5.5、約3.5~約5.5、約3.6~約5.5、約3.7~約5.5、約3.8~約5.5、約3.9~約5.5、約4~約5.5、約2~約5.4、約2.1~約5.4、約2.2~約5.4、約2.3~約5.4、約2.4~約5.4、約2.5~約5.4、約2.6~約5.4、約2.7~約5.4、約2.8~約5.4、約2.9~約5.4、約3~約5.4、約3.1~約5.4、約3.2~約5.4、約3.3~約5.4、約3.4~約5.4、約3.5~約5.4、約3.6~約5.4、約3.7~約5.4、約3.8~約5.4、約3.9~約5.4、約4~約5.4、約2~約5.2、約2.1~約5.2、約2.2~約5.2、約2.3~約5.2、約2.4~約5.2、約2.5~約5.2、約2.6~約5.2、約2.7~約5.2、約2.8~約5.2、約2.9~約5.2、約3~約5.2、約3.1~約5.2、約3.2~約5.2、約3.3~約5.2、約3.4~約5.2、約3.5~約5.2、約3.6~約5.2、約3.7~約5.2、約3.8~約5.2、約3.9~約5.2、約4~約5.2、約2~約5、約2.1~約5、約2.2~約5、約2.3~約5、約2.4~約5、約2.5~約5、約2.6~約5、約2.7~約5、約2.8~約5、約2.9~約5、約3~約5、約3.1~約5、約3.2~約5、約3.3~約5、約3.4~約5、約3.5~約5、約3.6~約5、約3.7~約5、約3.8~約5、約3.9~約5、約4~約5、約2~約4.9、約2~約4.8、約2~約4.7、約2~約4.6、約2~約4.5、約2~約4.4、約2~約4.3、約2~約4.2、約2~約4.1、約2~約4、約2~約3.9、約2~約3.8、約2~約3.7、約2~約3.6、約2~約3.5、約2~約3.4、約2~約3.3、約2~約3.2、約2~約3.1、約2~約3、約2.2~約4.8、約2.2~約4.6、約2.2~約4.4、約2.2~約4.2、約2.5~約4.8、約2.5~約4.6、約2.5~約4.4、約2.5~約4.2、約2.5~約4、約2.5~約3.8、又は約2.5~約3.6である。
【0237】
いくつかの実施形態では、弱酸のpKaは7未満、6.5未満、6未満、5.5未満、5.4未満、5.3未満、5.2未満、5.1未満、5未満、4.9未満、4.8未満、4.7未満、4.6未満、4.5未満、4.4未満、4.3未満、4.2未満、4.1未満、4未満、3.9未満、3.8未満、3.7未満、3.6未満、3.5未満、3.4未満、3.3未満、3.2未満、3.1未満、3未満、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、又は2.1未満である。いくつかの実施形態では、弱酸のpKaは2より大きく、2.1より大きく、2.2より大きく、2.3より大きく、2.4より大きく、2.5より大きく、2.6より大きく、2.7より大きく、2.8より大きく、2.9より大きく、3より大きく、3.1より大きく、3.2より大きく、3.3より大きく、3.4より大きく、3.5より大きく、3.6より大きく、3.7より大きく、3.8より大きく、3.9より大きく、4より大きく、4.1より大きく、4.2より大きく、4.3より大きく、4.4より大きく、4.5より大きく、4.6より大きく、4.7より大きく、4.8より大きく、4.9より大きく、5より大きく、5.1より大きく、5.2より大きく、5.3より大きく、5.4より大きく、5.5より大きく、6より大きく、又は6.5より大きい。
【0238】
いくつかの実施形態では、弱酸のpKaは2と7との間、2と6.5との間、2と6との間、2と5.5との間、2と5.4との間、2と5.2との間、2と5との間、2と4.8との間、2と4.6との間、2と4.4との間、2と4.2との間、又は2と4との間である。
【0239】
多塩基弱酸のいくつかの非限定的な例としては、シュウ酸、マロン酸、タルトロン酸、ジヒドロキシマロン酸、メソシュウ酸、ブタン二酸、メチルマロン酸、フマル酸、マレイン酸、2-ヒドロキシブタン二酸、酒石酸、オキサロ酢酸、ジオキソコハク酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、3-オキソグルタル酸、ヘキサン二酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、ピメリン酸、トリメシン酸、メリット酸、リンゴ酸、亜ジチオン酸、及びオルトケイ酸である。
【0240】
リン酸では、1分子あたり解離しうるプロトンが3つある。リン酸は、第1のプロトンの解離の達成において2.12のpKaを有するため、弱酸とみなされる。一方、リン酸の第2のプロトンは7.21のpKa、第3のプロトンは12.32のpKaで解離するため、第1のプロトンが解離した後のリン酸はもはや弱酸ではなく、第2以降のプロトンの解離を考慮する必要はない。したがって、リン酸から解離することを前提としたプロトン濃度は、リン酸1分子から1個のプロトンしか解離しないと仮定して算出されるものである。
【0241】
本発明において、弱酸とは、具体的には、pKaが2~7又は2と7との間の酸を指す。いくつかの実施形態では、多塩基弱酸は第1のプロトン、第2のプロトン、第3のプロトン、又はそれらの組み合わせの解離に対して、約2~約7のpKaを有する酸である。いくつかの実施形態では、多塩基弱酸は第1のプロトン、第2のプロトン、第3のプロトン、又はそれらの組み合わせの解離に対するpKaが2と7との間の酸である。
【0242】
シュウ酸の場合、1分子あたり解離しうるプロトンは2つである。シュウ酸は第1のプロトンの解離の達成において1.25のpKaを有するため、シュウ酸は強酸とみなされる。シュウ酸の第2のプロトンは3.81のpKaで解離するため、第1のプロトンが解離した後のシュウ酸は弱酸である。したがって、シュウ酸からの解離を前提としたプロトン濃度は、シュウ酸1分子からの第1のプロトンの解離と第2のプロトンの部分解離を基に算出される。したがって、シュウ酸は(第1のプロトンの解離に関連する)多塩基強酸と(第2のプロトンの解離に関連する)多塩基弱酸の両方として見なされ得る。
【0243】
いくつかの実施形態では、沈殿剤として利用されている弱酸が第1の懸濁液中に添加されて第2の懸濁液を形成する時、第2の懸濁液のpHは約0.5~約3、約0.5~約2.9、約0.5~約2.8、約0.5~約2.7、約0.5~約2.6、約0.5~約2.5、約0.5~約2.4、約0.5~約2.3、約0.5~約2.2、約0.5~約2.1、約0.5~約2、約0.5~約1.9、約0.5~約1.8、約0.5~約1.7、約0.5~約1.6、約0.5~約1.5、約0.6~約3、約0.6~約2.9、約0.6~約2.8、約0.6~約2.7、約0.6~約2.6、約0.6~約2.5、約0.6~約2.4、約0.6~約2.3、約0.6~約2.2、約0.6~約2.1、約0.6~約2、約0.6~約1.9、約0.6~約1.8、約0.6~約1.7、約0.6~約1.6、約0.7~約3、約0.7~約2.9、約0.7~約2.8、約0.7~約2.7、約0.7~約2.6、約0.7~約2.5、約0.7~約2.4、約0.7~約2.3、約0.7~約2.2、約0.7~約2.1、約0.7~約2、約0.7~約1.9、約0.7~約1.8、約0.7~約1.7、約0.8~約3、約0.8~約2.9、約0.8~約2.8、約0.8~約2.7、約0.8~約2.6、約0.8~約2.5、約0.8~約2.4、約0.8~約2.3、約0.8~約2.2、約0.8~約2.1、約0.8~約2、約0.8~約1.9、約0.8~約1.8、約0.9~約3、約0.9~約2.9、約0.9~約2.8、約0.9~約2.7、約0.9~約2.6、約0.9~約2.5、約0.9~約2.4、約0.9~約2.3、約0.9~約2.2、約0.9~約2.1、約0.9~約2、約0.9~約1.9、約1~約3、約1~約2.9、約1~約2.8、約1~約2.7、約1~約2.6、約1~約2.5、約1~約2.4、約1~約2.3、約1~約2.2、約1~約2.1、約1~約2、約1.2~約3、約1.2~約2.8、約1.2~約2.6、約1.2~約2.4、約1.2~約2.2、約1.5~約3、約1.5~約2.8、又は約1.5~約2.6である。
【0244】
いくつかの実施形態では、沈殿剤として利用されている弱酸が第1の懸濁液中に添加されて第2の懸濁液を形成する時、第2の懸濁液のpHは3未満、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、又は0.6未満である。いくつかの実施形態では、沈殿剤として利用されている弱酸が第1の懸濁液中に添加されて第2の懸濁液を形成する時、第2の懸濁液のpHは0.5より大きく、0.6より大きく、0.7より大きく、0.8より大きく、0.9より大きく、1より大きく、1.1より大きく、1.2より大きく、1.3より大きく、1.4より大きく、1.5より大きく、1.6より大きく、1.7より大きく、1.8より大きく、1.9より大きく、2より大きく、2.1より大きく、2.2より大きく、2.3より大きく、2.4より大きく、2.5より大きく、2.6より大きく、2.7より大きく、2.8より大きく、又は2.9より大きい。
【0245】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液のpHは約0.2~約4.5、約0.2~約4.4、約0.2~約4.3、約0.2~約4.1、約0.2~約4、約0.2~約3.8、約0.2~約3.6、約0.2~約3.4、約0.2~約3.2、約0.2~約3、約0.2~約2.8、約0.2~約2.6、約0.2~約2.4、約0.2~約2.2、約0.2~約2、約0.2~約1.8、約0.2~約1.6、約0.2~約1.4、約0.2~約1.2、約0.4~約4.5、約0.4~約4.5、約0.4~約4.3、約0.4~約4.1、約0.4~約4、約0.4~約3.8、約0.4~約3.6、約0.4~約3.4、約0.4~約3.2、約0.4~約3、約0.4~約2.8、約0.4~約2.6、約0.4~約2.4、約0.4~約2.2、約0.4~約2、約0.4~約1.8、約0.4~約1.6、約0.4~約1.4、約0.6~約4.5、約0.6~約4.5、約0.6~約4.3、約0.6~約4.1、約0.6~約4、約0.6~約3.8、約0.6~約3.6、約0.6~約3.4、約0.6~約3.2、約0.6~約3、約0.6~約2.8、約0.6~約2.6、約0.6~約2.4、約0.6~約2.2、約0.6~約2、約0.6~約1.8、約0.6~約1.6、約0.8~約4.5、約0.8~約4.5、約0.8~約4.3、約0.8~約4.1、約0.8~約4、約0.8~約3.8、約0.8~約3.6、約0.8~約3.4、約0.8~約3.2、約0.8~約3、約0.8~約2.8、約0.8~約2.6、約0.8~約2.4、約0.8~約2.2、約0.8~約2、約0.8~約1.8、約1~約4.5、約1~約4.3、約1~約4.1、約1~約4、約1~約3.8、約1~約3.6、約1~約3.4、約1~約3.2、約1~約3、約1~約2.8、約1~約2.6、約1~約2.4、約1~約2.2、約1~約2、約1.2~約4.5、約1.2~約4、約1.2~約3.8、約1.2~約3.6、約1.2~約3.4、約1.2~約3.2、約1.2~約3、約1.2~約2.8、約1.4~約4.5、約1.2~約4、約1.4~約3.8、約1.4~約3.6、約1.4~約3.4、約1.4~約3.2、約1.4~約3、約1.4~約2.8、約1.6~約4.5、約1.6~約4、約1.6~約3.8、約1.6~約3.6、約1.6~約3.4、約1.6~約3.2、約1.6~約3、約1.8~約4.5、約1.8~約4、約1.8~約3.8、約1.8~約3.6、約1.8~約3.4、約1.8~約3.2、約2~約4.5、約2~約4、約2~約3.8、約2~約3.6、又は約2~約3.4である。
【0246】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液のpHは4.5未満、4.4未満、4.3未満、4.2未満、4.1未満、4未満、3.9未満、3.8未満、3.7未満、3.6未満、3.5未満、3.4未満、3.3未満、3.2未満、3.1未満、3未満、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満、1未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、又は0.3未満である。いくつかの実施形態では、第2の懸濁液のpHは0.2より大きく、0.3より大きく、0.4より大きく、0.5より大きく、0.6より大きく、0.7より大きく、0.8より大きく、0.9より大きく、1より大きく、1.1より大きく、1.2より大きく、1.3より大きく、1.4より大きく、1.5より大きく、1.6より大きく、1.7より大きく、1.8より大きく、1.9より大きく、2より大きく、2.1より大きく、2.2より大きく、2.3より大きく、2.4より大きく、2.5より大きく、2.6より大きく、2.7より大きく、2.8より大きく、2.9より大きく、3より大きく、3.1より大きく、3.2より大きく、3.3より大きく、3.4より大きく、3.5より大きく、3.6より大きく、3.7より大きく、3.8より大きく、3.9より大きく、4より大きく、4.1より大きく、4.2より大きく、4.3より大きく、又は4.4より大きい。
【0247】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液のpHは、約0.2pH単位~約6.8pH単位、約0.2pH単位~約6.5pH単位、約0.2pH単位~約6pH単位、約0.2pH単位~約5.5pH単位、約0.2pH単位~約5pH単位、約0.2pH単位~約4.5pH単位、約0.2pH単位~約4pH単位、約0.2pH単位~約3.5pH単位、約0.2pH単位~約3pH単位、約0.2pH単位~約2.5pH単位、約0.2pH単位~約2pH単位、約0.5pH単位~約6.8pH単位、約0.5pH単位~約6.5pH単位、約0.5pH単位~約6pH単位、約0.5pH単位~約5.5pH単位、約0.5pH単位~約5pH単位、約0.5pH単位~約4.5pH単位、約0.5pH単位~約4pH単位、約0.5pH単位~約3.5pH単位、約0.5pH単位~約3pH単位、約0.5pH単位~約2.5pH単位、約1pH単位~約6.8pH単位、約1pH単位~約6.5pH単位、約1pH単位~約6pH単位、約1pH単位~約5.5pH単位、約1pH単位~約5pH単位、約1pH単位~4.5pH単位、約1pH単位~約4pH単位、約1pH単位~約3.5pH単位、約1pH単位~約3pH単位、約1.5pH単位~約6.8pH単位、約1.5pH単位~約6.5pH単位、約1.5pH単位~約6pH単位、約1.5pH単位~約5.5pH単位、約1.5pH単位~約5pH単位、約1.5pH単位~約4.5pH単位、約1.5pH単位~約4pH単位、又は約1.5pH単位~約3.5pH単位であり、酸基含有モノマーのpKaより小さい。
【0248】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液のpHは、少なくとも0.2pH単位、少なくとも0.5pH単位、少なくとも1pH単位、少なくとも1.5pH単位、少なくとも2pH単位、少なくとも2.5pH単位、少なくとも3pH単位、少なくとも3.5pH単位、少なくとも4pH単位、少なくとも4.5pH単位、少なくとも5pH単位、少なくとも5.5pH単位、少なくとも6pH単位、又は少なくとも6.5pH単位であり、酸基含有モノマーのpKaより小さい。いくつかの実施形態では、第2の懸濁液のpHは、最大6.8pH単位、最大6.5pH単位、最大6pH単位、最大5.5pH単位、最大5pH単位、最大4.5pH単位、最大4pH単位、最大3.5pH単位、最大3pH単位、最大2.5pH単位、最大2pH単位、最大1.5pH単位、最大1pH単位、又は最大0.5pH単位であり、酸基含有モノマーのpKaより小さい。
【0249】
いくつかの実施形態では、沈殿剤の濃度は約1M~約8M、約1M~約7.5M、約1M~約7M、約1M~約6.5M、約1M~約6M、約1M~約5.5M、約1M~約5M、約1M~約4.5M、約1M~約4M、約1.5M~約8M、約1.5M~約7.5M、約1.5M~約7M、約1.5M~約6.5M、約1.5M~約6M、約1.5M~約5.5M、約1.5M~約5M、約1.5M~約4.5M、約2M~約8M、約2M~約7.5M、約2M~約7M、約2M~約7M、約2M~約6.5M、約2M~約6M、約2M~約5.5M、約2M~約5M、約2.5M~約8M、約2.5M~約7.5M、約2.5M~約7M、約2.5M~約6.5M、約2.5M~約6M、約2.5M~約5.5M、約3M~約8M、約3M~約7.5M、約3M~約7M、約3M~約6.5M、約3M~約6M、又は約4M~約8Mである。
【0250】
いくつかの実施形態では、沈殿剤の濃度は8M未満、7.5M未満、7M未満、6.5M未満、6M未満、5.5M未満、5M未満、4.5M未満、4M未満、3.5M未満、3M未満、2.5M未満、2M未満、又は1.5M未満である。いくつかの実施形態では、沈殿剤の濃度は1Mより大きく、1.5Mより大きく、2Mより大きく、2.5Mより大きく、3Mより大きく、3.5Mより大きく、4Mより大きく、4.5Mより大きく、5Mより大きく、5.5Mより大きく、6Mより大きく、6.5Mより大きく、7Mより大きく、又は7.5Mより大きい。
【0251】
第2の懸濁液を形成する際に第1の懸濁液に沈殿剤を添加した後、沈殿剤がポリマーの沈殿を誘発するために許容される時間は、第2の懸濁液中のポリマーの沈殿を達成するために重要である。沈殿剤と第1の懸濁液の構成要素との間の接触時間が不十分である場合、沈殿剤はポリマーの沈殿が可能となる程度にポリマーと水性溶媒との間に最初に形成される結合を不安定化、破壊及び破断するのに十分な時間を有さない可能性がある。いくつかの実施形態では、第2の懸濁液を形成する際の第1の懸濁液への沈殿剤の添加後、沈殿剤は、約1分~約180分、約1分~約160分、約1分~約140分、約1分~約120分、約1分~約110分、約1分~約100分、約1分~約90分、約1分~約80分、約1分~約70分、約1分~約60分、約3分~約120分、約3分~約110分、約3分~約100分、約3分~約90分、約3分~約80分、約3分~約70分、約3分~約60分、約5分~約120分、約5分~約110分、約5分~約100分、約5分~約90分、約5分~約80分、約5分~約70分、約5分~約60分、約10分~約120分、約10分~約110分、約10分~約100分、約10分~約90分、約10分~約80分、約10分~約80分、約10分~約70分、約10分~約60分、約15分~約120分、約15分~約110分、約15分~約100分、約15分~約90分、約15分~約80分、約15分~約70分、約15分~約60分、約20分~約120分、約20分~約110分、約20分~約100分、約20分~約90分、約20分~約80分、約20分~約70分、約20分~約60分、約25分~約120分、約25分~約110分、約25分~約100分、約25分~約90分、約25分~約80分、約25分~約70分、約25分~約60分、約30分~約120分、約30分~約110分、約30分~約100分、約30分~約90分、約30分~約80分、約30分~約70分、又は約30分~約60分の時間、第2の懸濁液中に撹拌せずに置かれている。
【0252】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液を形成する際の第1の懸濁液への沈殿剤の添加後、沈殿剤は180分未満、160分未満、140分未満、120分未満、110分未満、100分未満、90分未満、80分未満、70分未満、60分未満、50分未満、40分未満、30分未満、20分未満、15分未満、10分未満、又は5分の時間、撹拌せずに第2の懸濁液中に置かれている。いくつかの実施形態では、第2の懸濁液を形成する際の第1の懸濁液への沈殿剤の添加後、沈殿剤は1分を超え、3分を超え、5分を超え、10分を超え、15分を超え、20分を超え、30分を超え、40分を超え、50分を超え、60分を超え、70分を超え、80分を超え、90分を超え、100分を超え、110分を超え、120分を超え、140分を超え、又は160分を超える時間、撹拌せずに第2の懸濁液中に置かれている。
【0253】
ポリマーの沈殿を支配する最も重要な要因の1つは、第2の懸濁液の温度である。水素結合は主に比較的低い温度で形成され、温度の上昇に伴い弱くなる。また、疎水性相互作用は高温で強化される。したがって、わずかな温度上昇を伴う第2の懸濁液は、ポリマーと水性溶媒との間の水素結合相互作用の弱化、及びポリマーの構成に寄与する疎水性基含有モノマーの疎水性相互作用の強化を介してポリマーの沈殿を促進するのを助けることができる。
【0254】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は、約20℃~約95℃、約20℃~約90℃、約20℃~約85℃、約20℃~約80℃、約20℃~約75℃、約20℃~約70℃、約20℃~約65℃、約20℃~約60℃、約20℃~約55℃、約20℃~約50℃、約25℃~約95℃、約25℃~約90℃、約25℃~約85℃、約25℃~約80℃、約25℃~約75℃、約25℃~約70℃、約25℃~約65℃、約25℃~約60℃、約25℃~約55℃、約25℃~約50℃、約30℃~約95℃、約30℃~約90℃、約30℃~約85℃、約30℃~約80℃、約30℃~約75℃、約30℃~約70℃、約30℃~約65℃、約30℃~約60℃、約30℃~約55℃、約30℃~約50℃、約35℃~約95℃、約35℃~約90℃、約35℃~約85℃、約35℃~約80℃、約35℃~約75℃、約35℃~約70℃、約35℃~約65℃、約35℃~約60℃、約35℃~約55℃、約40℃~約95℃、約40℃~約90℃、約40℃~約85℃、約40℃~約80℃、約40℃~約75℃、約40℃~約70℃、約40℃~約65℃、約40℃~約60℃、約45℃~約95℃、約45℃~約90℃、約45℃~約85℃、約45℃~約80℃、約45℃~約75℃、約45℃~約70℃、約45℃~約65℃、約50℃~約90℃、約50℃~約85℃、約50℃~約80℃、又は約50℃~約70℃の温度で第1の懸濁液に添加される。
【0255】
いくつかの実施形態では、沈殿剤は95℃未満、90℃未満、85℃未満、80℃未満、75℃未満、70℃未満、65℃未満、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、40℃未満、35℃未満、30℃未満、又は25℃未満の温度で第1の懸濁液中に添加される。いくつかの実施形態では、沈殿剤は20℃を超え、25℃を超え、30℃を超え、35℃を超え、40℃を超え、45℃を超え、50℃を超え、55℃を超え、60℃を超え、65℃を超え、70℃を超え、75℃を超え、80℃を超え、85℃を超え、又は90℃を超える温度で第1の懸濁液中に添加される。
【0256】
水性溶媒中の水分子とイオン-双極子相互作用を起こすことができるコポリマー中の荷電官能基(例えば酸塩基)の割合が高いと、本発明で規定する望ましいpH範囲を有する第2の懸濁液を形成するために、比較的高い濃度又は量の沈殿剤を第1の懸濁液に添加する必要がある可能性がある。これは、(1)イオン-双極子相互作用の強さは水素結合のそれよりも強いため、より高い濃度のヒドロキソニウムイオンの形成は、より強いイオン-双極子相互作用を壊す可能性を高めることによって水性溶媒からのポリマーの分離プロセスを潜在的に平滑化する可能性がある、(2)荷電官能基の高い割合は、プロトン化のためにより高い濃度のヒドロキソニウムイオン(又は水素イオン)を必要とするであろう、という事実に起因し、故に、その結果生じるポリマーの電荷の変化(すなわち、負に荷電したものから荷電していないものへの)は構造転移を誘発するのに十分であり得る。
【0257】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液を形成する際の第1の懸濁液への沈殿剤の添加の後、第2の懸濁液はポリマーの沈殿を達成するために攪拌されている。いくつかの実施形態では、プラネタリー攪拌ミキサー、攪拌機、ブレンダー、超音波発生器、又はそれらの組み合わせが、第2の懸濁液を攪拌するために使用される。
【0258】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液を形成する際に沈殿剤を第1の懸濁液に添加する前に、水性溶媒中へのポリマーの溶解を最大化し、第1の懸濁液内によりよく分散されたポリマーを可能にするために、第1の懸濁液は撹拌されている。いくつかの実施形態では、プラネタリー攪拌ミキサー、攪拌機、ブレンダー、超音波発生器、またはそれらの組み合わせが、第1の懸濁液を攪拌するために使用される。
【0259】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液は、約150rpm~約600rpm、約150rpm~約550rpm、約150rpm~約500rpm、約150rpm~約450rpm、約150rpm~約400rpm、約150rpm~約350rpm、約200rpm~約600rpm、約200rpm~約550rpm、約200rpm~約500rpm、約200rpm~約450rpm、約200rpm~約400rpm、約250rpm~約600rpm、約250rpm~約550rpm、約250rpm~約500rpm、約250rpm~約450rpm、約300rpm~約600rpm、約300rpm~約550rpm、約300rpm~約500rpm、約350rpm~約600rpm、約350rpm~約550rpm、又は約400rpm~約600rpmの速度で撹拌される。
【0260】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液は600rpm未満、580rpm未満、560rpm未満、540rpm未満、520rpm未満、500rpm未満、480rpm未満、460rpm未満、440rpm未満、420rpm未満、400rpm未満、380rpm未満、360rpm未満、340rpm未満、320rpm未満、300rpm未満、280rpm未満、260rpm未満、240rpm未満、220rpm未満、200rpm未満、又は180rpm未満の速度で撹拌される。いくつかの実施形態では、第2の懸濁液は150rpmを超え、170rpmを超え、200rpmを超え、220rpmを超え、240rpmを超え、260rpmを超え、280rpmを超え、300rpmを超え、320rpmを超え、340rpmを超え、360rpmを超え、380rpmを超え、400rpmを超え、420rpmを超え、440rpmを超え、460rpmを超え、480rpm、500rpmを超え、520rpmを超え、540rpmを超え、560rpmを超え、又は580rpmを超える速度で撹拌される。
【0261】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液は、約1分~約180分、約1分~約150分、約1分~約120分、約1分~約100分、約1分~約80分、約1分~約60分、約3分~約180分、約3分~約150分、約3分~約120分、約3分~100分、約3分~約80分、約3分~約60分、約5分~約180分、約5分~約150分、約5分~約120分、約5分~約100分、約5分~約80分、約5分~約60分、約10分~約180分、約10分~約150分、約10分~約120分、約10分~約100分、約10分~約80分、約10分~約60分、約15分~約180分、約15分~約150分、約15分~約120分、約15分~約100分、約15分~約80分、約15分~約60分、約20分~約150分、約20分~約120分、約20分~約100分、約20分~約80分、約20分~約60分、約25分~約150分、約25分~約120分、約25分~約100分、約25分~約80分、約25分~約60分、約30分~約150分、約30分~約120分、約30分~約100分、約30分~約80分、又は約30分~約60分の時間撹拌される。
【0262】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液は180分未満、160分未満、140分未満、120分未満、110分未満、100分未満、90分未満、80分未満、70分未満、60分未満、50分未満、40分未満、30分未満、20分未満、15分未満、10分未満、又は5分未満の時間撹拌される。いくつかの実施形態では、第2の懸濁液は1分を超え、3分を超え、5分を超え、10分を超え、15分を超え、20分を超え、30分を超え、40分を超え、50分を超え、60分を超え、70分を超え、80分を超え、90分を超え、100分を超え、110分を超え、120分を超え、140分を超え、又は160分を超える時間撹拌される。
【0263】
いくつかの実施形態において、プラネタリー攪拌ミキサーは、少なくとも1つのプラネタリーブレードと少なくとも1つの高速分散ブレードとを含む。特定の実施形態において、プラネタリーブレードの回転速度は、約20rpm~約200rpm、約20rpm~約150rpm、約30rpm~約150rpm、または約50rpm~約100rpmである。特定の実施形態において、分散ブレードの回転速度は、約1,000rpm~約4,000rpm、約1,000rpm~約3,500rpm、約1,000rpm~約3,000rpm、約1,000rpm~約2,000rpm、約1,500rpm~約3,000rpm、または約1,500rpm~約2,500rpmである。
【0264】
特定の実施形態において、超音波発生装置は、超音波浴、プローブ型超音波発生装置、または超音波フローセルである。いくつかの実施形態において、超音波発生装置は、約10W/L~約100W/L、約20W/L~約100W/L、約30W/L~約100W/L、約40W/L~約80W/L、約40W/L~約70W/L、約40W/L~約60W/L、約40W/L~約50W/L、約50W/L~約60W/L、約20W/L~約80W/L、約20W/L~約60W/L、または約20W/L~約40W/Lの電力密度で操作される。特定の実施形態において、超音波発生装置は、10W/Lを超え、20W/Lを超え、30W/Lを超え、40W/Lを超え、50W/Lを超え、60W/Lを超え、70W/Lを超え、80W/Lを超えまたは90W/Lを超える電力密度で操作される。
【0265】
いくつかの実施形態において、超音波発生装置は、約100W~約1000W、約200W~約1000W、約300W~約1000W、約400W~約1000W、約500W~約1000W、約500W~約900W、約500W~約800W、約500W~約700W、または約500W~約600Wの電力で動作する。いくつかの実施形態において、超音波発生装置は、1000W未満、900W未満、800W未満、700W未満、600W未満、500W未満、400W未満、または300W未満の電力で動作する。いくつかの実施形態において、超音波発生装置は、100Wを超え、200Wを超え、300Wを超え、400Wを超え、500Wを超え、600Wを超え、700Wを超え、または800Wを超える電力で動作する。
【0266】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液を形成する際の第1の懸濁液への沈殿剤の添加後、ポリマーが沈殿される。いくつかの実施形態では、第2の懸濁液を形成する際に第1の懸濁液に沈殿剤を添加した後、沈殿剤を第2の懸濁液中に攪拌せずに一定時間置いた状態で、ポリマーを沈殿させる。いくつかの実施形態では、第2の懸濁液を形成する際に第1の懸濁液に沈殿剤を添加した後、第2の懸濁液を一定時間攪拌した後、ポリマーは沈殿する。
【0267】
いくつかの実施形態では、第2の懸濁液は、沈殿したポリマーを第2の懸濁液の残り(水性溶媒及び溶解した沈殿剤を含む)から分離するためにふるい分けされる。いくつかの実施形態では、濾過、ふるい分け、デカンテーション、又はそれらの組み合わせが第2の懸濁液のふるい分けに使用されてもよい。
【0268】
図9は本明細書に開示されるようなポリマーを沈殿させるための方法900のステップ、及びポリマーの抽出のためのその後のさらなる処理を示す一実施形態のフローチャートである。水性溶媒及び溶解した沈殿剤を含む第2の懸濁液の残りは、水性溶媒を除去するために乾燥又は濃縮に供され得る。回収された沈殿剤はさらに他のポリマーの沈殿に再利用することができる。これは、材料が繰り返し再生および再利用されるクローズドループ回収プロセスの形成を可能にし、継続的にループ構成に関与し、サーキュラーエコノミーの形成を助ける。
【0269】
本明細書に開示された方法は、特にポリマー配合の最適化のために開発されたものであり、すなわち、本発明のポリマーの組成は沈殿剤の添加により沈殿するポリマーの能力によって支配される。ポリマーの沈殿における本発明の方法の利用であって、ポリマーが酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを含む利用は、高いポリマー回収率(>98%)をもたらす。
【0270】
ポリマー回収率とは、沈殿剤を添加する前の第1の懸濁液に存在するポリマーの初期重量を基準とした、回収されたポリマーの重量の割合を意味する。これは、回収されたポリマーの割合の反映、及びポリマーの沈殿において本明細書に開示される方法の有効性の尺度として役立つ。本明細書に開示される方法が高いポリマー回収率をもたらすことは、ポリマーの大部分が沈殿し、回収され、第2の懸濁液中に残存するポリマーの量が無視できることを示す。
【0271】
本発明の方法は、ポリマーバインダーの沈殿を達成するための電池電極リサイクルシステムの一部として特に適用可能である。
【0272】
いくつかの実施形態において、電池は、一次電池または二次電池であってよい。電池のいくつかの非限定的な例として、アルカリ電池、アルミニウム空気電池、リチウム電池、リチウム空気電池、マグネシウム電池、固体電池、酸化銀電池、亜鉛空気電池、アルミニウムイオン電池、鉛畜電池、リチウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、カリウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、リチウム空気電池、アルミニウム空気電池、亜鉛空気電池、ナトリウム空気電池、ケイ素空気電池、亜鉛イオン電池およびナトリウム硫黄電池が挙げられる。
【0273】
リチウムイオン電池(LIB)は、その優れたエネルギー密度、長サイクル寿命および高い放電性能のため、過去数十年にわたり様々な用途で、特に家電製品において広く利用されるようになった。電気自動車(EV)およびグリッドエネルギー貯蔵の急速な市場の発展により、高性能で低コストのLIBは、現在、大規模エネルギー貯蔵デバイスの最も有望な選択肢の1つとなっている。
【0274】
リチウムイオン電池の流通が大幅に増加すると、使用済み(EoL)電池が市場に溢れることが懸念される。今後、膨大な量のリチウムイオン電池が寿命を迎えることが予想されるため、使用済みのパックおよびセルを管理するための、使用済みリチウムイオン電池の経済的なリサイクルプロセスの開発が急務となっている。また、使用済み電池以外にも、電池の製造プロセスで生じる電極の廃棄物またはスクラップが大量にあり、これらをリサイクルすることが必要である。
【0275】
乾式冶金プロセスは、使用済み電池のリサイクルのために提案または採用されているリサイクル戦略の1つであり、特にカソード材料は生産において主要な高付加価値を構成するため、カソード構成要素の回収に適している。
【0276】
乾式冶金プロセスでは、ポリマーバインダーの分解温度を超える高温で電極を加熱することを含むが、他の電極構成要素、例えば集電体および電極活物質等の融解温度よりも低くすることが理想的である。このプロセスは、ポリマーバインダーのリサイクルおよび/または再生が実行不可能なポリマーバインダーの炭化をもたらす。その上、燃焼プロセスでは、ポリマーバインダーの分解によって生じる有害化合物および/または汚染物質が発生する可能性がある。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダー材料を含む電極が乾式冶金される場合、フッ化水素のような長期的な健康リスクを与える可能性のある毒性化合物が生成されるであろう。また、乾式冶金プロセスは高エネルギー集約型であるため、莫大な関連エネルギーコストがかかる。
【0277】
電極の電極層の構成要素(例えば、ポリマーバインダーおよび電極活物質)を回収する現在の方法は、それ自身の欠点があり、水系スラリーから誘導される電極層の構成要素の回収には効果的でない。そこで、水系スラリーから誘導される電極層の構成要素を高効率かつ効果的に回収する方法の開発が求められている。
【0278】
したがって、本発明の方法はポリマーバインダーの沈殿を実現する電池電極リサイクルシステムの一部として特に適用可能であり、ここで、ポリマーバインダーは本明細書に開示されるポリマーを指す。ポリマーバインダーの沈殿は第1の懸濁液に沈殿剤を添加して第2の懸濁液を形成することによって達成され、ここで、第1の懸濁液は電極層および水性溶媒を含み、電極層はポリマーバインダーを含み、そしてポリマーバインダーは、酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを含む。
【0279】
本明細書に開示される方法は電極の剥離に続いて使用されてもよく、ここで、電極は集電体と、集電体の片面又は両面上に被覆された、ポリマーバインダーを含む電極層とを備える。
【0280】
いくつかの実施形態では、電極はカソード又はアノードであってもよい。いくつかの実施形態では、電極層は金属含有物質、電極活物質又はそれらの組合せをさらに含む。
【0281】
いくつかの実施形態では、電極の剥離に続いて、回収された電極層は、第1の懸濁液を形成する際に、水性溶媒に浸漬され撹拌される。第1の懸濁液の撹拌により、回収された電極層が小さなチャック(chuck)又は断片に分解され、後の段階で沈殿剤が作用する表面積を増大させることにより、ポリマーバインダーの沈殿を促進することができる。
【0282】
いくつかの実施形態では、第1の懸濁液はポリマーバインダーを含む。いくつかの実施形態では、第1の懸濁液は金属含有物質、電極活物質、又はそれらの組合せをさらに含む。
【0283】
いくつかの実施形態では、電極の剥離に続いて、回収された電極層は、第1の懸濁液を形成する際に、約0.25分~約20分、約0.25分~約15分、約0.25分~約10分、約0.5分~約20分、約0.5分~約15分、約0.5分~約10分、約0.75分~約20分、約0.75分~約15分、約0.75分~約10分、約1分~約20分、約1分~約15分、約1分~約10分、約2分~約20分、約2分~約15分、約2分~約10分、約4分~約20分、約4分~約15分、約4分~約10分、約5分~約20分、約5分~約15分、約5分~約10分、約7分~約18分、又は約7分~約12分の時間、水性溶媒中に浸漬され攪拌される。
【0284】
いくつかの実施形態では、電極の剥離に続いて、回収された電極層は、第1の懸濁液を形成する際に、20分未満、19分未満、18分未満、17分未満、16分未満、15分未満、14分未満、13分未満、12分未満、11分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、又は3分未満の時間、水性溶媒中に浸漬され攪拌される。いくつかの実施形態では、電極の剥離に続いて、回収された電極層は、第1の懸濁液を形成する際に、0.25分より長く、0.5分より長く、0.75分より長く、1分より長く、2分より長く、3分より長く、4分より長く、5分より長く、6分より長く、7分より長く、8分より長く、9分より長く、10分より長く、11分より長く、12分より長く、13分より長く、14分より長く、15分より長く、16分より長く、17分より長く、又は18分より長い時間、水性溶媒中に浸漬され攪拌される。
【0285】
電極層がポリマーバインダーと電極活物質との組み合わせ、ポリマーバインダーと金属含有物質との組み合わせ、又はポリマーバインダーと電極活物質と金属含有物質との組み合わせを含む場合、水系溶媒中での撹拌によって小さなチャック(本発明では集合体とも呼び得る)に分解されている電極層が、電極活物質又は金属含有物質のクラスター内に未溶解ポリマーバインダーの一部を有する部分溶解複合体として第1の懸濁液中に現れ得る。第1の懸濁液中の未溶解のポリマーバインダーの部分の根拠は、電極活物質または金属含有物質のクラスター内のポリマーバインダーの水性溶媒への制限されたアクセス、ひいてはポリマーバインダーの溶解の妨げに起因すると考えられる。
【0286】
本発明の方法は水系スラリーによって製造された電極層中のポリマーバインダーを沈殿させるために特に適用可能である。水性スラリーは、活物質粒子と導電剤とを集電体とともに付着させて連続的な電気伝導パスを形成するために、ポリマーバインダーを利用する。本明細書に開示されたポリマーバインダーは、電極層内の様々な成分間の導電ネットワークを強くする、強化された接着能力を示すため、電子およびイオン輸送を促進して集電体と電極材料との間のインピーダンスを低減することができ、充放電時の体積膨張および収縮によって電極が膨張することを防ぐ十分な弾性を有している。
【0287】
本明細書に開示される沈殿方法は、電極層の構成要素、例えばポリマーバインダーおよび電極活物質を沈殿剤の簡単な使用によって効果的に分離することを可能にする。
【0288】
いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーは、酸基含有モノマーから誘導される構造単位と疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位とを含むコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーバインダー中に存在する酸基含有モノマーから誘導される構造単位及び疎水性基含有モノマーから誘導される構造単位の割合は、ポリマーバインダー中のコポリマー中のモノマー単位のモルの総数に基づいて、独立して、少なくとも15モル%であり、これによって、本明細書に開示されるポリマーバインダーが水中で優れた分散性及び安定性を示し、ポリマーバインダーの結合能力を向上させることができる。
【0289】
いくつかの実施形態において、電池電極活物質はカソード活物質であり、カソード活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyO2、LiCoxNiyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、Li2MnO3、LiFeO2、LiFePO4、およびそれらの組合せからなる群から選択され、各xは独立して0.1~0.9であり;各yは独立して0~0.9であり;各zは独立して0~0.4である。特定の実施形態において、上記一般式中の各xは、独立して0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875および0.9から選択され;上記一般式中の各yは、独立して0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875および0.9から選択され;上記一般式中の各zは、独立して0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375および0.4から選択される。いくつかの実施形態において、上記一般式中の各x、yおよびzは、独立して、0.01の間隔を有する。
【0290】
特定の実施形態において、カソード活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2(NMC)、LiNixCoyAlzO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、LiFePO4、LiCoxNiyO2、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、各xは独立して0.4~0.6であり;各yは独立して0.2~0.4であり;各zは独立して0~0.1である。他の実施形態において、カソード活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiMnO2、LiCrO2、LiMn2O4、LiFeO2、またはLiFePO4ではない。さらなる実施形態において、カソード活物質は、LiNixMnyO2、Li1+zNixMnyCo1-x-yO2、LiNixCoyAlzO2またはLiCoxNiyO2ではなく、ここで、各xは独立して0.1~0.9であり;各yは独立して0~0.45であり;各zは独立して0~0.2である。特定の実施形態において、カソード活物質は、Li1+xNiaMnbCocAl(1-a-b-c)O2であり;-0.2≦x≦0.2、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、およびa+b+c≦1である。いくつかの実施形態において、カソード活物質は、一般式Li1+xNiaMnbCocAl(1-a-b-c)O2を有し、0.33≦a≦0.92、0.33≦a≦0.9、0.33≦a≦0.8、0.4≦a≦0.92、0.4≦a≦0.9、0.4≦a≦0.8、0.5≦a≦0.92、0.5≦a≦0.9、0.5≦a≦0.8、0.6≦a≦0.92または0.6≦a≦0.9;0≦b≦0.5、0≦b≦0.4、0≦b≦0.3、0≦b≦0.2、0.1≦b≦0.5、0.1≦b≦0.4、0.1≦b≦0.3、0.1≦b≦0.2、0.2≦b≦0.5、0.2≦b≦0.4、または0.2≦b≦0.3;0≦c≦0.5、0≦c≦0.4、0≦c≦0.3、0.1≦c≦0.5、0.1≦c≦0.4、0.1≦c≦0.3、0.1≦c≦0.2、0.2≦c≦0.5、0.2≦c≦0.4、または0.2≦c≦0.3である。いくつかの実施形態において、カソード活物質は、一般式LiMPO4を有し、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Al、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Sn、Zr、Ru、Si、Geおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、カソード活物質は、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4、LiMnFePO4、LiMnxFe(1-x)PO4およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;0<x<1である。いくつかの実施形態において、カソード活物質は、LiNixMnyO4であり;0.1≦x≦0.9および0≦y≦2である。特定の実施形態において、カソード活物質は、xLi2MnO3・(1-x)LiMO2であり、Mは、Ni、Co、Mnおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され;0<x<1である。いくつかの実施形態において、カソード活物質は、Li3V2(PO4)3、LiVPO4Fである。特定の実施形態において、カソード活物質は、一般式Li2MSiO4を有し、Mは、Fe、Co、Mn、Ni、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0291】
特定の実施形態において、カソード活物質は、Co、Cr、V、Mo、Nb、Pd、F、Na、Fe、Ni、Mn、Al、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Sn、Zr、Ru、Si、Ge、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるドーパントでドープされる。いくつかの実施形態において、ドーパントは、Co、Cr、V、Mo、Nb、Pd、F、Na、Fe、Ni、Mn、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Ru、Si、またはGeではない。特定の実施形態において、ドーパントは、Al、Sn、またはZrではない。
【0292】
いくつかの実施形態において、カソード活物質は、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2(NMC333)、LiNi0.4Mn0.4Co0.2O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2(NMC532)、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2(NMC622)、LiNi0.7Mn0.15Co0.15O2、LiNi0.7Mn0.1Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2(NMC811)、LiNi0.92Mn0.04Co0.04O2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)、LiNiO2(LNO)、およびそれらの組み合わせである。
【0293】
他の実施形態において、カソード活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、またはLi2MnO3ではない。さらなる実施形態において、カソード活物質は、LiNi0.33Mn0.33Co0.33O2、LiNi0.4Mn0.4Co0.2O2、LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.7Mn0.15Co0.15O2、LiNi0.7Mn0.1Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、LiNi0.92Mn0.04Co0.04O2、またはLiNi0.8Co0.15Al0.05O2ではない。
【0294】
特定の実施形態において、カソード活物質は、コアおよびシェル構造を有するコア-シェル複合材料を含む、またはコア-シェル複合材料であり、コアおよびシェルは、それぞれ独立して、Li1+xNiaMnbCocAl(1-a-b-c)O2、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO3、LiCrO2、Li4Ti5O12、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiCoaNibO2、LiMnaNibO2、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるリチウム遷移金属酸化物を含み;ここで、-0.2≦x≦0.2、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、およびa+b+c≦1である。特定の実施形態において、上記一般式中の各xは、独立して、-0.2、-0.175、-0.15、-0.125、-0.1、-0.075、-0.05、-0.025、0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175および0.2から選択され;上記一般式中の各aは、独立して、0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95および0.975から選択され;上記一般式中の各bは、独立して、0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95および0.975から選択され;上記一般式中の各cは、独立して、0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95、および0.975から選択される。いくつかの実施形態において、上記一般式中の各x、a、bおよびcは、独立して、0.01の間隔を有する。他の実施形態において、コアおよびシェルは、それぞれ独立して、2つ以上のリチウム遷移金属酸化物を含む。いくつかの実施形態において、コアまたはシェルの一方は、1つのリチウム遷移金属酸化物のみを含み、他方は、2つ以上のリチウム遷移金属酸化物を含む。コアおよびシェル中のリチウム遷移金属酸化物または酸化物は、同じであってもよく、またはそれらは異なっても、または部分的に異なってもよい。いくつかの実施形態において、2つ以上のリチウム遷移金属酸化物は、コアに均一に分布している。特定の実施形態において、2つ以上のリチウム遷移金属酸化物は、コアに均一に分布していない。いくつかの実施形態において、カソード活物質は、コア-シェル複合材料ではない。
【0295】
いくつかの実施形態において、コアおよびシェル中のリチウム遷移金属酸化物の各々は、独立して、Co、Cr、V、Mo、Nb、Pd、F、Na、Fe、Ni、Mn、Al、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Sn、Zr、Ru、Si、Ge、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるドーパントでドープされる。特定の実施形態において、コアおよびシェルはそれぞれ独立して、2つ以上のドープされたリチウム遷移金属酸化物を含む。いくつかの実施形態において、2つ以上のドープされたリチウム遷移金属酸化物は、コアおよび/またはシェルに均一に分布している。特定の実施形態において、2つ以上のドープされたリチウム遷移金属酸化物は、コアおよび/またはシェルに均一に分布していない。
【0296】
いくつかの実施形態において、カソード活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含むコアおよび遷移金属酸化物を含むシェルを含むコア-シェル複合材料を含む、またはコア-シェル複合材料である。特定の実施形態において、リチウム遷移金属酸化物は、Li1+xNiaMnbCocAl(1-a-b-c)O2、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO3、LiCrO2、Li4Ti5O12、LiV2O5、LiTiS2、LiMoS2、LiCoaNibO2、LiMnaNibO2、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され;-0.2≦x≦0.2、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、およびa+b+c≦1である。特定の実施形態において、上記一般式中のxは、独立して、-0.2、-0.175、-0.15、-0.125、-0.1、-0.075、-0.05、-0.025、0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175および0.2から選択され;上記一般式の各aは、独立して、0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95および0.975から選択され;上記一般式中の各bは、独立して、0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95および0.975から選択され;上記一般式中の各cは、独立して、0、0.025、0.05、0.075、0.1、0.125、0.15、0.175、0.2、0.225、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95、および0.975から選択される。いくつかの実施形態において、上記一般式中の各x、a、bおよびcは、独立して、0.01の間隔を有する。いくつかの実施形態において、遷移金属酸化物は、Fe2O3、MnO2、Al2O3、MgO、ZnO、TiO2、La2O3、CeO2、SnO2、ZrO2、RuO2、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、シェルは、リチウム遷移金属酸化物および遷移金属酸化物を含む。
【0297】
いくつかの実施形態において、コアの直径は、約1μm~約15μm、約3μm~約15μm、約3μm~約10μm、約5μm~約10μm、約5μm~約45μm、約5μm~約35μm、約5μm~約25μm、約10μm~約45μm、約10μm~約40μm、または約10μm~約35μm、約10μm~約25μm、約15μm~約45μm、約15μm~約30μm、約15μm~約25μm、約20μm~約35μm、または約20μm~約30μmである。特定の実施形態において、シェルの厚さは、約1μm~約45μm、約1μm~約35μm、約1μm~約25μm、約1μm~約15μm、約1μm~約10μm、約1μm~約5μm、約3μm~約15μm、約3μm~約10μm、約5μm~約10μm、約10μm~約35μm、約10μm~約20μm、約15μm~約30μm、約15μm~約25μm、または約20μm~約35μmである。特定の実施形態において、コアおよびシェルの直径または厚さの比は、15:85~85:15、25:75~75:25、30:70~70:30、または40:60~60:40の範囲内である。特定の実施形態において、コアおよびシェルの体積または重量比は、95:5、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、または30:70である。
【0298】
いくつかの実施形態において、電極活物質はアノード活物質であり、アノード活物質は、天然黒鉛微粒子、合成黒鉛微粒子、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、Sn微粒子、SnO2、SnO、Li4Ti5O12微粒子、Si微粒子、Si-C複合微粒子、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0299】
特定の実施形態において、アノード活物質は、金属元素または非金属元素でドープされる。いくつかの実施形態において、金属元素は、Fe、Ni、Mn、Al、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Sn、Zr、Ruおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、非金属元素は、B、Si、Ge、N、P、F、S、Cl、I、Se、およびそれらの組み合わせである。
【0300】
いくつかの実施形態において、アノード活物質は、コアおよびシェル構造を有するコア-シェル複合材料を含む、またはコア-シェル複合材料であり、コアおよびシェルは、それぞれ独立して、天然黒鉛微粒子、合成黒鉛微粒子、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、Sn微粒子、SnO2、SnO、Li4Ti5O12微粒子、Si微粒子、Si-C複合微粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0301】
特定の実施形態において、コア-シェル複合材料は、炭素質材料を含むコアおよび炭素質材料コアを被覆するシェルを含む。いくつかの実施形態において、炭素質材料は、ソフトカーボン、ハードカーボン、天然黒鉛微粒子、合成黒鉛微粒子、メソカーボンマイクロビーズ、キッシュ黒鉛、熱分解カーボン、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系のカーボンファイバー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態において、シェルは、天然黒鉛微粒子、合成黒鉛微粒子、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、Sn微粒子、SnO2、SnO、Li4Ti5O12微粒子、Si微粒子、Si-C複合微粒子、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0302】
特定の実施形態において、アノード活物質は、金属元素または非金属元素でドープされない。いくつかの実施形態において、アノード活物質は、Fe、Ni、Mn、Al、Mg、Zn、Ti、La、Ce、Sn、Zr、Ru、B、Si、Ge、N、P、F、S、Cl、I、またはSeをドープされない。
【0303】
いくつかの実施形態では、金属含有物質はセラミック、金属、ミッシュメタル、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0304】
いくつかの実施形態では、セラミックはAlCeO3、LiAlO2、MgAl2O4、Ce0.63Tb0.37MgAl11O19、Sr0.95Eu0.02Dy0.03Al2O4、Sr3.84Eu0.06Dy0.10Al14O25、BaFe12O19、CuFe2O4、CuZnFe2O4、LiFeO2、NiZnFe4O4、SrFe12O19、Y3Fe5O12、LiNbO3、KNbO3、Zn(NbO3)2、Cu2Cr2O5、LiTaO3、NiCoO2、YBaCuO、BaZrO3、CaZrO3、PbZrO3、Li2ZrO3、Al2TiO5、Al2O3、BaTiO3、CaTiO3、FeTiO3、PbTiO3、Li2TiO3、Li4Ti5O12、SrTiO3、ZnTiO3、Al2CoO4、CoFe2O4、Fe2NiO4、ZnFe2O4、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0305】
いくつかの実施形態では、金属はアルミニウム、ビスマス、クロム、コバルト、銅、金、鉄、鉛、マグネシウム、マンガン、水銀、ニッケル、銀、チタン、スズ、亜鉛、ホウ素、リン、硫黄、スカンジウム、カドミウム、モリブデン、タングステン、ヒ素、ベリリウム、ケイ素、バナジウム、セリウム、ジルコニウム、アンチモン、又はそれらの合金からなる群から選択される。
【0306】
いくつかの実施形態では、ミッシュメタルはスカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、又はそれらの合金からなる群から選択される。
【0307】
いくつかの実施形態において、電極活物質及び金属含有物質は本明細書に開示された第2の懸濁液に溶解され得る。第1の懸濁液が、ポリマーバインダーと電極活物質と水性溶媒との組み合わせ、ポリマーバインダーと金属含有物質と水性溶媒との組み合わせ、又はポリマーバインダーと電極活物質と金属含有物質と水性溶媒との組み合わせを含む場合、第2の懸濁液を形成するにあたって第1の懸濁液に沈殿剤を添加すると、ポリマーバインダーが沈殿するのに対し、電極活物質及び/又は金属含有物質が溶解を開始する。さらに、第2の懸濁液中の電極活物質及び/又は金属含有物質の溶解に伴い、電極活物質または金属含有物質のクラスター内の任意のそれまで溶解していなかったポリマーバインダーが露出し、したがって第2の懸濁液中に沈殿し得る。これにより、第2の懸濁液の残りからポリマーバインダーを分離することができる。
【0308】
いくつかの実施形態では、電極層は電極特性を向上させるための他の添加剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、添加剤は導電剤、界面活性剤、分散剤、及び柔軟性向上添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、添加剤は水性溶媒及び/又は本明細書に開示された第2の懸濁液に溶解しない。
【0309】
いくつかの実施形態では、第1の懸濁液は導電剤、界面活性剤、分散剤、柔軟性向上添加剤、又はそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0310】
他の実施形態では、電極層は導電剤をさらに含む。他の実施形態では、第1の懸濁液は導電剤をさらに含む。導電剤は電極の電気伝導性を向上させるためのものである。任意の適切な材料が導電剤として作用し得る。いくつかの実施形態では、導電剤は炭素質材料である。いくつかの非限定的な例として、炭素、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛、グラフェン、グラフェンナノプレートレット、炭素繊維、炭素ナノファイバー、黒鉛化炭素フレーク、炭素チューブ、活性炭、Super P(登録商標)、0次元KS6、1次元蒸気成長炭素繊維(VGCF)、メソポーラスカーボン、及びそれらの組合せがある。
【0311】
いくつかの実施形態において、導電剤は水性溶媒及び/又は本明細書に開示された第2の懸濁液に溶解しない。第1の懸濁液がポリマーバインダーと電極活物質と導電剤と水性溶媒との組み合わせ、又はポリマーバインダーと金属含有物質と導電剤と水性溶媒との組み合わせ、又はポリマーバインダーと電極活物質と金属含有物質と導電剤と水性溶媒との組み合わせを含む場合、第2の懸濁液を形成する時に、第1の懸濁液に沈殿剤を添加すると、電極活物質及び/又は金属含有物質が第2の懸濁液に溶解し始め、導電剤が固体のまま残り、ポリマーバインダーは沈澱する。これにより、電極活物質及び/又は金属含有物質を含む第2の懸濁液の残部から、ポリマーバインダーと導電剤とを分離することができる。したがって、溶解した電極活物質及び金属含有物質は、第2の懸濁液から抽出され、その後の電池製造工程でさらに再利用され得る。
【0312】
いくつかの実施形態において、ポリマー、電極層及び水性溶媒が系に関与する場合、沈殿剤は水性溶媒と混合されて第1の懸濁液を形成することができる。その後、第1の懸濁液に電極層を添加することによって、第2の懸濁液を形成することができる。他の実施形態では、ポリマー、電極層及び水性溶媒が系に関与する場合、電極層及び沈殿剤は、水性溶媒中に直接添加されて、第1の懸濁液を形成することができる。
【0313】
本発明の方法で開示される沈殿剤、電極層および水性溶媒の添加の順序は、ポリマー回収率の変動にほとんど影響を及ぼさない、すなわち、本明細書に開示される方法において沈殿剤、電極層および水性溶媒の添加の順序にかかわらず、98%を超える高いポリマー回収率で依然としてポリマーを効果的に沈殿させることが可能である。
【0314】
本発明で適用されるポリマーバインダーは極めて強い結合力を示す。ポリマーバインダーの接着性の強さを評価する一つの方法として、ポリマーバインダーと集電体との接着強度によるものがある。ポリマーバインダーが集電体に対して良好な接着強度を有することは、電池電極の作製において電極層の集電体への結合力を促進し、分離を防止し、電極の機械的安定性を高めるため、重要である。いくつかの実施形態では、ポリマーバインダーと集電体との間の接着強度は、約2N/cm~約6N/cm、約2N/cm~約5.8N/cm、約2N/cm~約5.6N/cm、約2N/cm~約5.4N/cm、約2N/cm~約5.2N/cm、約2N/cm~約5N/cm、約2N/cm~約4.8N/cm、約2N/cm~約4.6N/cm、約2N/cm~約4.4N/cm、約2N/cm~約4.2N/cm、約2N/cm~約4N/cm、約2N/cm~約3.9N/cm、約2N/cm~約3.8N/cm、約2N/cm~約3.7N/cm、約2N/cm~約3.6N/cm、約2N/cm~約3.5N/cm、約2N/cm~約3.4N/cm、約2N/cm~約3.3N/cm、約2N/cm~約3.2N/cm、約2N/cm~約3.1N/cm、約2N/cm~約3N/cm、約2.1N/cm~約6N/cm、約2.2N/cm~約6N/cm、約2.3N/cm~約6N/cm、約2.4N/cm~約6N/cm、約2.5N/cm~約6N/cm、約2.6N/cm~約6N/cm、約2.7N/cm~約6N/cm、約2.8N/cm~約6N/cm、約2.9N/cm~約6N/cm、約3N/cm~約6N/cm、約3.1N/cm~約6N/cm、約3.2N/cm~約6N/cm、約3.3N/cm~約6N/cm、約3.4N/cm~約6N/cm、約3.5N/cm~約6N/cm、約3.6N/cm~約6N/cm、約3.7N/cm~約6N/cm、約3.8N/cm~約6N/cm、約3.9N/cm~約6N/cm、約4N/cm~約6N/cm、約2.5N/cm~約5.5N/cm、約2.5N/cm~約5N/cm、約2.5N/cm~約4.5N/cm、約2.5N/cm~約4N/cm、約2.5N/cm~約3.5N/cm、約3N/cm~約5N/cm、約2.2N/cm~約4.2N/cm、又は約2.2N/cm~約5.2N/cmである。
【0315】
いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーと集電体との間の接着強度は、6N/cm未満、5.8N/cm未満、5.6N/cm未満、5.4N/cm未満、5.2N/cm未満、5N/cm未満、4.8N/cm未満、4.6N/cm未満、4.4N/cm未満、4.2N/cm未満、4N/cm未満未満、3.9N/cm未満、3.8N/cm未満、3.7N/cm未満、3.6N/cm未満、3.5N/cm未満、3.4N/cm未満、3.3N/cm未満、3.2N/cm未満、3.1N/cm未満、3N/cm未満、2.9N/cm未満、2.8N/cm未満、2.7N/cm未満、2.6N/cm未満、2.5N/cm未満、2.4N/cm未満、2.3N/cm未満または2.2N/cm未満である。いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーと集電体との間の接着強度は、2N/cmより大きく、2.1N/cmより大きく、2.2N/cmより大きく、2.3N/cmより大きく、2.4N/cmより大きく、2.5N/cmより大きく、2.6N/cmより大きく、2.7N/cmより大きく、2.8N/cmより大きく、2.9N/cmより大きく、3N/cmより大きく、3.1N/cmより大きく、3.2N/cmより大きく、3.3N/cmより大きく、3.4N/cmより大きく、3.5N/cmより大きく、3.6N/cmより大きく、3.7N/cmより大きく、3.8N/cmより大きく、3.9N/cmより大きく、4N/cmより大きく、4.2N/cmより大きく、4.4N/cmより大きく、4.6N/cmより大きく、4.8N/cmより大きく、5N/cmより大きく、5.2N/cmより大きく、5.4N/cmより大きく、5.6N/cmより大きくまたは5.8N/cmより大きい。
【0316】
また、本発明で適用されるポリマーバインダーは、電極において、電極層の集電体への強い接着力を発現させることができる。電極層が集電体に対して良好な剥離強度を有することは、電極の機械的安定性および電池のサイクル性に大きく影響するため、重要である。したがって、電極は、電池製造の厳しさに耐えるために十分な剥離強度を有することが望ましい。
【0317】
いくつかの実施形態において、集電体と電極層との間の剥離強度は、約1.0N/cm~約8.0N/cm、約1.0N/cm~約6.0N/cm、約1.0N/cm~約5.0N/cm、約1.0N/cm~約4.0N/cm、約1.0N/cm~約3.0N/cm、約1.0N/cm~約2.5N/cm、約1.0N/cm~約2.0N/cm、約1.2N/cm~約3.0N/cm、約1.2N/cm~約2.5N/cm、約1.2N/cm~約2.0N/cm、約1.5N/cm~約3.0N/cm、約1.5N/cm~約2.5N/cm、約1.5N/cm~約2.0N/cm、約1.8N/cm~約3.0N/cm、約1.8N/cm~約2.5N/cm、約2.0N/cm~約6.0N/cm、約2.0N/cm~約5.0N/cm、約2.0N/cm~約3.0N/cm、約2.0N/cm~約2.5N/cm、約2.2N/cm~約3.0N/cm、約2.5N/cm~約3.0N/cm、約3.0N/cm~約8.0N/cm、約3.0N/cm~約6.0N/cm、または約4.0N/cm~約6.0N/cmの範囲である。
【0318】
いくつかの実施形態において、集電体と電極層との間の剥離強度は、1.0N/cm以上、1.2N/cm以上、1.5N/cm以上、2.0N/cm以上、2.2N/cm以上、2.5N/cm以上、3.0N/cm以上、3.5N/cm以上、4.5N/cm以上、5.0N/cm以上、5.5N/cm以上、6.0N/cm以上、6.5N/cm以上、7.0N/cm以上または7.5N/cm以上である。いくつかの実施形態において、集電体と電極層との間の剥離強度は、8.0N/cm未満、7.5N/cm未満、7.0N/cm未満、6.5N/cm未満、6.0N/cm未満、5.5N/cm未満、5.0N/cm未満、4.5N/cm未満、4.0N/cm未満、3.5N/cm未満、3.0N/cm未満、2.8N/cm未満、2.5N/cm未満、2.2N/cm未満、2.0N/cm未満、1.8N/cm未満、または1.5N/cm未満である。
【0319】
図10は本明細書に開示されたようなポリマーバインダーを沈殿させるための方法1000のステップと、ポリマーの抽出のためのその後のさらなる処理とを示す一実施形態のフローチャートである。水性溶媒、溶解した沈殿剤、及び溶解した電極活物質を含む第2の懸濁液の残りは、中に含まれる電極活物質及び沈殿剤をさらに抽出するために、追加の分離及び/又は抽出処理に供されてもよい。いくつかの実施形態では、回収されたポリマーバインダーは、その後の電池製造工程でさらに再利用するために中和に供され得る。これにより、材料が繰り返し再生および再利用され、クローズドループ回収プロセスの形成が可能となり、継続的にループ構成に関与でき、サーキュラーエコノミーの形成を助ける。
【0320】
本発明は異なる組成のポリマーバインダーを沈殿させるために使用することができる簡便な方法を提供する。ポリマーバインダーと他の電極層構成要素の分離は、電池のリサイクルにおける重要なステップを構成するため、本明細書に開示された方法は、電池のリサイクルにおける需要を満たす上で技術的な解決策を提供するものである。本発明の方法は、複雑な分離工程とポリマーバインダーの汚染の両方を回避し、優れた材料回収(すなわち、高いポリマー回収率)を可能にし、ポリマーバインダーを沈殿させるのに必要な時間を大幅に減少させることができる。
【0321】
以下の例は本発明の実施形態を例示するために提示されるが、本発明を提示された特定の実施形態に限定することを意図するものではない。反対に示されない限り、全ての部分およびパーセンテージは重量である。すべての数値は概算である。数値範囲が与えられている場合、記載された範囲外の実施形態が依然として本発明の範囲内に入る可能性があることを理解されたい。各例に記載された特定の詳細は、本発明の必要な特徴として解釈されない。
【0322】
(例)
第2の懸濁液のpH値を電極式pH計(ION2700、Eutech Instruments)で測定した。
【0323】
ポリマー回収率とは、沈殿剤を添加する前の第1の懸濁液に存在するポリマーの初期重量に基づく回収したポリマーの重量比を指す。
【0324】
乾燥したポリマーバインダー層の接着強度を、引張試験機(DZ-106A、Dongguan Zonhow Test Equipment Co.Ltd.、中国から入手)で測定した。この試験は、集電体からポリマーバインダー層を180°の角度で剥離するために必要な平均の力をニュートンで測定する。集電体の平均粗さ深さ(Rz)は2μmである。集電体にポリマーバインダーを塗布し、乾燥させて、厚さ10μm~12μmのポリマーバインダー層を得た。次に、塗布した集電体を25℃、湿度50~60%の定温環境に30分間置いた。ポリマーバインダー層の表面に、幅18mm、長さ20mmの粘着テープの片(3M;米国、モデル番号810)を貼り付けた。ポリマーバインダー片を試験機にはさみ、テープをそれ自体の上に180度で折り返し、可動ジョーに入れ、室温で、毎分300mmの剥離速度で引っ張った。測定した最大剥離力を接着強度とした。測定を3回繰り返し、平均値を求めた。
【0325】
乾燥した電極層の剥離強度を、引張試験機(DZ-106A、Dongguan Zonhow Test Equipment Co.Ltd.、中国から入手)で測定した。この試験は、集電体から電極層を180°の角度で剥離するのに必要な平均の力をニュートンで測定する。集電体の平均粗さ深さ(Rz)は2μmである。カソード電極層の表面に、幅18mm、長さ20mmの帯状の粘着テープ片(3M;米国;モデル番号810)を貼り付けた。このカソード片を試験機にはさみ、テープをそれ自体の上に180度で折り返し、可動式ジョーに入れ、室温で、毎分200mmの剥離速度で引っ張った。測定した最大剥離力を剥離強度とした。測定を3回繰り返し、平均値を求めた。
(例1)
第1の懸濁液の調製
A)ポリマーの調製
【0326】
16gの水酸化ナトリウム(NaOH)を蒸留水380gを含む丸底フラスコに添加した。材料の組み合わせを80rpmで30分間撹拌し第1の混合物を得た。
【0327】
36.04gのアクリル酸(AA)を第1の混合物に添加した。材料の組み合わせをさらに80rpmで30分間攪拌し第2の混合物を得た。
【0328】
19.04gのアクリルアミド(AM)を10gのDI水に溶解し、AM溶液を形成した。その後、29.04gのAM溶液を第2の混合物に添加した。材料の組み合わせをさらに55℃に加熱し80rpmで45分間撹拌し第3の混合物を得た。
【0329】
12.92gのアクリロニトリル(AN)を第3の混合物に添加した。材料の組み合わせをさらに80rpmで10分間攪拌し第4の混合物を得た。
【0330】
さらに、0.015gの水溶性フリーラジカル開始剤(過硫酸アンモニウム、APS;Aladdin Industries Corporation、中国から入手)を3gのDI水に溶解し、0.0075gの還元剤(亜硫酸水素ナトリウム;Tianjin Damao Chemical Reagent Factory、中国から入手)を1.5gのDI水に溶解した。3.015gのAPS溶液、および1.5075gの亜硫酸水素ナトリウム溶液を第4の混合物に添加した。材料の組み合わせを200rpm、55℃で、24時間撹拌し、第5の混合物を得た。
【0331】
完全に反応した後、第5の混合物の温度を25℃に下げた。3.72gのNaOHを400gのDI水に溶解した。その後、403.72gの水酸化ナトリウム溶液を第5の混合物に1時間かけて滴下し、pHを7.31に調整し、第6の混合物を形成した。200μmのナイロンメッシュを用いた濾過により、ポリマーを調製した。ポリマーの固形分は9.00重量%であった。ポリマーと集電体との間の接着強度は3.27N/cmであった。例1のポリマーの成分及びそれらの各割合を以下の表1に示す。
B)第1の懸濁液の形成
【0332】
5.56gのポリマーを水性溶媒(蒸留水)44.55gを含む丸底フラスコに添加した。この混合物を80rpmで10分間撹拌し50.11gの第1の懸濁液を得た。第1の懸濁液の固形分は0.99重量%であった。
ポリマーのリサイクル
A)沈殿剤の調製
【0333】
98gの硫酸を1Lの蒸留水に溶解し1M硫酸水溶液とした。
B)ポリマーの沈殿
【0334】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH4.24の第2の懸濁液を形成した。この第2の懸濁液を200rpmで10分間、25℃で撹拌した。その後、ポリマーを沈殿させた。ポリマーの沈殿後、処理した第2の懸濁液を濾紙に通して除去し、沈殿したポリマーを回収した。回収したポリマーを大気圧下、80℃で5時間オーブンで乾燥し、98.58%のポリマー回収率を得た。その後、乾燥したポリマーをさらに再利用することができた。ポリマー回収率および第2の懸濁液のpHを測定し、以下の表1に示す。
例2の第1の懸濁液の調製
【0335】
5.56gのポリマーを蒸留水45.04gに添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.60gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例2のポリマーのリサイクル
【0336】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH2.96の第2の懸濁液を形成した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを実施した。
例3の第1の懸濁液の調製
【0337】
5.56gのポリマーを蒸留水44.52gに添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.08gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例3のポリマーのリサイクル
【0338】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH2.07の第2の懸濁液を形成した以外は、例1と同様の方法でポリマーのリサイクルを実施した。
【0339】
例3のポリマーのリサイクルは第2の懸濁液を25℃及び200rpmで60分間と120分間それぞれ攪拌しながら繰り返した。60分間攪拌した第2の懸濁液は99.42%のポリマー回収率を得たのに対し、120分間攪拌した第2の懸濁液は99.43%のポリマー回収率を得た。第2の懸濁液の攪拌時間を長くしても、ポリマー回収率が大きく上昇する兆しはない。
例4の第1の懸濁液の調製
【0340】
5.56gのポリマーを44.68gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.24gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行った。
例4のポリマーのリサイクル
【0341】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.01の第2の懸濁液を形成した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを実施した。
例5の第1の懸濁液の調製
【0342】
5.56gのポリマーを44.53gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.09gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行った。
例5のポリマーのリサイクル
【0343】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH2.05の第2の懸濁液を形成し、第2の懸濁液を200rpm、50℃で10分間撹拌した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを実施した。
例6の第1の懸濁液の調製
【0344】
5.56gのポリマーを44.59gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.15gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行った。
例6のポリマーのリサイクル
【0345】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.95の第2の懸濁液を形成し、第2の懸濁液を200rpm、90℃で10分間撹拌した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを実施した。
例7
第1の懸濁液の調製
A)ポリマーの調製
【0346】
5.13gの水酸化リチウムを3.85gのDI水に溶解させた。その後、8.98gの水酸化リチウム溶液を、289.17gの蒸留水を含む500mL丸底フラスコに添加した。この材料の組み合わせを200rpmで30分間攪拌し第1の混合物を得た。
【0347】
さらに、31.54gのAAを第1の混合物に添加した。材料の組み合わせを200rpmで30分間さらに攪拌し、第2の混合物を得た。
【0348】
13.52gのAMを51.67gのDI水に溶解させた。その後、65.19gのAM溶液を第2の混合物に添加した。この材料の組み合わせをさらに200rpmで30分間撹拌し第3の混合物を得た。
【0349】
その後、67.60gのANを第3の混合物に添加した。材料の組み合わせを200rpmで40分間撹拌し第4の混合物を得た。
【0350】
第4の混合物を60℃まで加熱し、60rpmで45分間攪拌した。0.23gのAPSを82.68gのDI水に溶解し、0.04gの亜硫酸水素ナトリウムを17.22gのDI水に溶解させた。17.26gの亜硫酸水素ナトリウム溶液を第4の混合物に添加し、材料の組み合わせを10分間攪拌した。82.91gのAPS溶液を3時間かけて混合物に滴下し、第5の混合物を形成した。第5の混合物をさらに200rpmで65℃、20時間攪拌した。
【0351】
反応終了後、第5の混合物の温度を40℃に下げ、5.62gの水酸化リチウム(116.64gのDI水に溶解)を第5の混合物に添加し、pHを7.44に調整し、第6の混合物を形成した。第6の混合物の温度を30℃に下げ、200μmのナイロンメッシュを用いた濾過によりポリマーを調製した。ポリマーの固形分は14.93重量%であった。また、ポリマーと集電体との接着強度は3.41N/cmであった。例7のポリマーの成分及びそれぞれの比率を下記表1に示す。
B)第1の懸濁液の形成
【0352】
3.35gのポリマーを46.20gの水性溶媒(蒸留水)を含む丸底フラスコに添加した。この混合物を80rpmで10分間撹拌し、49.55gの第1の懸濁液を得た。第1の懸濁液の固形分は1.01重量%であった。
ポリマーのリサイクル
A)沈殿剤の調製
【0353】
98gの硫酸を1Lの蒸留水に溶解し、1M硫酸水溶液とした。
B)ポリマーの沈殿
【0354】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH3.99の第2の懸濁液を形成した。この第2の懸濁液を200rpmで10分間、25℃で撹拌した。その後、ポリマーを沈殿させた。ポリマーの沈殿後、処理した第2の懸濁液を濾紙に通して除去し、沈殿したポリマーを回収した。回収したポリマーを大気圧下、80℃で5時間オーブンで乾燥し、98.73%のポリマー回収率を得た。その後、乾燥したポリマーをさらに再利用することができた。ポリマー回収率および第2の懸濁液のpHを測定し、以下の表1に示す。
例8の第1の懸濁液の調製
【0355】
3.35gのポリマー46.10gを蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.45gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例8のポリマーのリサイクル
【0356】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH3.00の第2の懸濁液を形成した以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを実施した。
例9の第1の懸濁液の調製
【0357】
3.35gのポリマーを47.07gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.42gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例9のポリマーのリサイクル
【0358】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH2.12の第2の懸濁液を形成した以外は、例7と同様の方法でポリマーのリサイクルを実施した。
例10の第1の懸濁液の調製
【0359】
3.35gのポリマーを46.22gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.57gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例10のポリマーのリサイクル
【0360】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.07の第2の懸濁液を形成した以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを実施した。
例11の第1の懸濁液の調製
【0361】
3.35gのポリマーを46.46gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.81gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例11のポリマーのリサイクル
【0362】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.13の第2の懸濁液を形成し、第2の懸濁液を200rpm、50℃で10分間撹拌した以外は、例7と同様の方法でポリマーのリサイクルを実施した。
例12の第1の懸濁液の調製
【0363】
3.35gのポリマーを46.78gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.13gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例12のポリマーのリサイクル
【0364】
1M硫酸水溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.15の第2の懸濁液を形成し、第2の懸濁液を200rpm、90℃で10分間撹拌した以外は、例7と同様の方法でポリマーのリサイクルを実施した。
例13の第1の懸濁液の調製
【0365】
5.56gのポリマーを44.63gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.19gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例13のポリマーのリサイクル
【0366】
沈殿剤の調製において、37gの塩酸を1Lの蒸留水に溶解して1M塩酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、1M塩酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.22の第2の懸濁液を形成した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例14の第1の懸濁液の調製
【0367】
3.35gのポリマーを46.32gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.67gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例14のポリマーのリサイクル
【0368】
沈殿剤の調製において、37gの塩酸を1Lの蒸留水に溶解して1M塩酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、1M塩酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.18の第2の懸濁液を形成した以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例15の第1の懸濁液の調製
【0369】
5.56gのポリマーを44.76gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.32gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例15のポリマーのリサイクル
【0370】
沈殿剤の調製において、139gのギ酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mギ酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、3Mギ酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.07の第2の懸濁液を形成した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例16の第1の懸濁液の調製
【0371】
3.35gのポリマーを46.36gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.71gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例16のポリマーのリサイクル
【0372】
沈殿剤の調製において、139gのギ酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mギ酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、3Mギ酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH0.83の第2の懸濁液を形成した以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例17の第1の懸濁液の調製
【0373】
5.56gのポリマーを44.69gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.25gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例17のポリマーのリサイクル
【0374】
沈殿剤の調製において、139gのギ酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mギ酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、3Mギ酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH2.92の第2の懸濁液を形成した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例18の第1の懸濁液の調製
【0375】
3.35gのポリマーを46.49gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.84gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例18のポリマーのリサイクル
【0376】
沈殿剤の調製において、139gのギ酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mギ酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、3Mギ酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH2.97の第2の懸濁液を形成した以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例19の第1の懸濁液の調製
【0377】
5.56gのポリマーを44.73gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.29gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例19のポリマーのリサイクル
【0378】
沈殿剤の調製において、577gのクエン酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mクエン酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、3Mクエン酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH0.90の第2の懸濁液を形成した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例20の第1の懸濁液の調製
【0379】
3.35gのポリマーを46.25gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.60gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
例20のポリマーのリサイクル
【0380】
沈殿剤の調製において、577gのクエン酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mクエン酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、3Mクエン酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.09の第2の懸濁液を形成した以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例21の第1の懸濁液の調製
【0381】
ポリマーの調製において、36.04gのAAを第2の混合物の調製時に同じ重量の2-エチルアクリル酸に置き換え、第1の懸濁液の形成において、5.56gのポリマーを44.58gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して、50.14gの第1の懸濁液を得たこと以外は、例1と同様にして第1の懸濁液を調製した。
例21のポリマーのリサイクル
【0382】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.14の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例22の第1の懸濁液の調製
【0383】
ポリマーの調製において、36.04gのAAを第2の混合物の調製時に同じ重量のクロトン酸に置き換え、第1の懸濁液の形成において、5.56gのポリマーを44.67gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して、50.23gの第1の懸濁液を得たこと以外は、例1と同様にして第1の懸濁液を調製した。
例22のポリマーのリサイクル
【0384】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.21の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例23の第1の懸濁液の調製
【0385】
ポリマーの調製において、31.54gのAAを第2の混合物の調製時に同じ重量の2-エチルアクリル酸に置き換え、第1の懸濁液の形成において、3.35gのポリマーを46.48gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して、49.83gの第1の懸濁液を得たこと以外は、例7と同様にして第1の懸濁液を調製した。
例23のポリマーのリサイクル
【0386】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.04の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例24の第1の懸濁液の調製
【0387】
ポリマーの調製において、31.54gのAAを第2の混合物の調製時に同じ重量のクロトン酸に置き換え、第1の懸濁液の形成において、3.35gのポリマーを46.44gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して、49.79gの第1の懸濁液を得たこと以外は、例7と同様にして第1の懸濁液を調製した。
例24のポリマーのリサイクル
【0388】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.17の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例1の第1の懸濁液の調製
【0389】
5.56gのポリマーを44.63gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.19gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
比較例1のポリマーのリサイクル
【0390】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH5.93の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例2の第1の懸濁液の調製
【0391】
5.56gのポリマーを44.56gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.12gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
比較例2のポリマーのリサイクル
【0392】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH4.92の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例3の第1の懸濁液の調製
【0393】
3.35gのポリマーを46.47gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.82gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
比較例3のポリマーのリサイクル
【0394】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH6.01の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例4の第1の懸濁液の調製
【0395】
3.35gのポリマーを46.40gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.75gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
比較例4のポリマーのリサイクル
【0396】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH4.96の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例5の第1の懸濁液の調製
【0397】
5.56gのポリマーを44.68gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.24gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
比較例5のポリマーのリサイクル
【0398】
沈殿剤の調製において、139gのギ酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mギ酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、3Mギ酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH3.46の第2の懸濁液を形成した以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例6の第1の懸濁液の調製
【0399】
3.35gのポリマーを46.53gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して49.88gの第1の懸濁液を得た以外は、例7と同様にして第1の懸濁液の調製を行なった。
比較例6のポリマーのリサイクル
【0400】
沈殿剤の調製において、139gのギ酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mギ酸溶液とし、ポリマーの沈殿において、3Mギ酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH3.39の第2の懸濁液を形成した以外は、例7と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例7の第1の懸濁液の調製
【0401】
ポリマーの調製において、ポリマーとしてポリアクリル酸(PAA)を用い、第1の懸濁液の形成において、5.56gのPAAを44.97gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.53gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行った。第1の懸濁液の固形分は1.00重量%であった。
比較例7のポリマーのリサイクル
【0402】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加し、pH1.24の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例8の第1の懸濁液の調製
【0403】
ポリマーの調製において、第2の混合物の調製では61.20gのAAを添加し、第3の混合物の調製ではAMを添加せず、第4の混合物の調製では6.80gのANを添加し、第1の懸濁液の形成において、ポリマー5.56gを蒸留水44.88gに添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.44gの第1の懸濁液を得た以外は例1と同じ方法で第1の懸濁液の調製を行なった。
比較例8のポリマーのリサイクル
【0404】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加しpH1.18の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例9の第1の懸濁液の調製
【0405】
ポリマーの調製において、ポリマーとしてポリアクリルアミド(PAM)を用い、第1の懸濁液の形成において、5.56gのPAMを44.47gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.03gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行った。第1の懸濁液の固形分は1.00重量%であった。
比較例9のポリマーのリサイクル
【0406】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加しpH1.15の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例10の第1の懸濁液の調製
【0407】
ポリマーの調製において、ポリマーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC;BSH-12、DKS Co.Ltd.、日本)を用い、第1の懸濁液の形成において、0.50gのCMCを49.50gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.00gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行った。第1の懸濁液の固形分は1.00重量%であった。
比較例10のポリマーのリサイクル
【0408】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加しpH1.02の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
比較例11の第1の懸濁液の調製
【0409】
ポリマーの調製において、ポリマーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR、水中で45重量%;AL-2001、NIPPON A&L INC.、日本)を用い、第1の懸濁液の形成において、1.11gのSBRを48.89gの蒸留水に添加し、混合物を80rpmで10分間撹拌して50.00gの第1の懸濁液を得た以外は、例1と同様にして第1の懸濁液の調製を行った。第1の懸濁液の固形分は1.00重量%であった。
比較例11のポリマーのリサイクル
【0410】
1M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加しpH1.06の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例1と同様にしてポリマーのリサイクルを行った。
例25
第1の懸濁液の調製
A)ポリマーバインダーの調製
【0411】
ポリマーバインダーの調製を例7と同様の方法で行った。例25のポリマーバインダーの成分及びそれぞれの割合を以下の表2に示す。
B)集合体の調製
【0412】
ポリマーバインダー9.32g(固形分14.93重量%)とカソード活物質(NMC532;Shandong Tianjiao New Energy Co.,Ltd、中国より入手)19.70gとを25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して、第1の混和物を調製した。次に、70℃の電熱式オーブンにより、第1の混和物を乾燥して集合体を形成した。乾燥時間は約45分であった。
C)第1の懸濁液の形成
【0413】
水性溶媒(蒸留水)60gを含む丸底フラスコに集合体5gを添加した。この混合物を80rpmで10分間攪拌し65gの第1の懸濁液を得た。
ポリマーバインダーのリサイクル
A)沈殿剤の調製
【0414】
295gの硫酸を1Lの蒸留水に溶解し、3M硫酸水溶液を形成した。
B)ポリマーバインダーの沈殿
【0415】
3M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH0.89の第2の懸濁液を形成した。この第2の懸濁液を200rpmで90℃、2時間撹拌した。攪拌時間の延長と昇温は、NMC532をより効率的に溶解させるためのものである。その後、ポリマーバインダーを沈殿させ、NMC532を第2の懸濁液に溶解させた。ポリマーバインダーの沈殿とNMC532の溶解の後、処理した第2の懸濁液を濾紙に通して除去し、沈殿したポリマーバインダーを回収した。回収したポリマーバインダーを大気圧下、80℃で5時間オーブンで乾燥し、99.10%のポリマー回収率を得た。この乾燥したポリマーバインダーはさらに再利用することができる。第2の懸濁液のポリマー回収率およびpHを測定し、以下の表2に示す。
例26の第1の懸濁液の調製
【0416】
第1の懸濁液の調製は、集合体の調製において、9.24gのポリマーバインダー(固形分14.93重量%)と22.7gのAl2O3を25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して第1の混和物を調製した以外は例25と同様の方法で実施した。
例26のポリマーバインダーのリサイクル
【0417】
沈殿剤の調製において、110gの塩酸を1Lの蒸留水に溶解して3M塩酸溶液を形成し、ポリマーバインダーの沈殿において、3M塩酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.23の第2の懸濁液を形成した以外は、例25と同様にして、ポリマーバインダーのリサイクルを実施した。
例27の第1の懸濁液の調製
【0418】
第1の懸濁液の調製は、集合体の調製において、ポリマーバインダー6.59g(固形分14.93重量%)と17.99gのAlを25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して第1の混和物を調製した以外は例25と同様の方法で実施した。
例27のポリマーバインダーのリサイクル
【0419】
第1の懸濁液に3M硫酸水溶液を添加してpH1.41の第2の懸濁液を形成した以外は、例25と同様にしてポリマーバインダーのリサイクルを行った。
例28の第1の懸濁液の調製
【0420】
第1の懸濁液の調製を例25と同様の方法で行った。
例28のポリマーバインダーのリサイクル
【0421】
沈殿剤の調製において、577gのクエン酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mクエン酸溶液を形成し、そしてポリマーバインダーの沈殿において、その3Mクエン酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.58の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例25と同様の方法でポリマーバインダーのリサイクルを行なった。
例29の第1の懸濁液の調製
【0422】
第1の懸濁液の調製は、集合体の調製において、ポリマーバインダー9.32g(固形分14.93重量%)と19.70gのLCOを25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して第1の混和物を調製した以外は例25と同様の方法で実施した。
例29のポリマーバインダーのリサイクル
【0423】
第1の懸濁液に3M硫酸水溶液を添加してpH1.10の第2の懸濁液を形成した以外は、例25と同様にしてポリマーバインダーのリサイクルを行った。
例30の第1の懸濁液の調製
【0424】
第1の懸濁液の調製は、集合体の調製において、ポリマーバインダー9.32g(固形分14.93重量%)と19.70gのLFPを25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して第1の混和物を調製した以外は例25と同様の方法で実施した。
例30のポリマーバインダーのリサイクル
【0425】
第1の懸濁液に3M硫酸水溶液を添加してpH1.06の第2の懸濁液を形成した以外は、例25と同様にしてポリマーバインダーのリサイクルを行った。
例31
第1の懸濁液の調製
A)ポリマーバインダーの調製
【0426】
ポリマーバインダーの調製を例1と同様の方法で行った。例31のポリマーバインダーの成分及びそれぞれの割合を以下の表2に示す。
B)集合体の調製
【0427】
ポリマーバインダー11.23g(固形分9.00重量%)とカソード活物質(NMC532;Shandong Tianjiao New Energy Co.,Ltd、中国より入手)19.20gとを25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して、第1の混和物を調製した。次に、70℃の電熱式オーブンにより、第1の混和物を乾燥して集合体を形成した。乾燥時間は約45分であった。
C)第1の懸濁液の形成
【0428】
水性溶媒(蒸留水)60gを含む丸底フラスコに集合体5gを添加した。この混合物を80rpmで10分間攪拌し65gの第1の懸濁液を得た。
ポリマーバインダーのリサイクル
A)沈殿剤の調製
【0429】
295gの硫酸を1Lの蒸留水に溶解し、3M硫酸水溶液を形成した。
B)ポリマーバインダーの沈殿
【0430】
3M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.13の第2の懸濁液を形成した。この第2の懸濁液を200rpmで90℃、2時間撹拌した。その後、ポリマーバインダーを沈殿させ、NMC532を第2の懸濁液に溶解させた。ポリマーバインダーの沈殿とNMC532の溶解の後、処理した第2の懸濁液を濾紙に通して除去し、沈殿したポリマーバインダーを回収した。回収したポリマーバインダーを大気圧下、80℃で5時間オーブンで乾燥し、99.21%のポリマー回収率を得た。この乾燥したポリマーバインダーはさらに再利用することができる。第2の懸濁液のポリマー回収率およびpHを測定し、以下の表2に示す。
例32の第1の懸濁液の調製
【0431】
第1の懸濁液の調製は、集合体の調製において、11.23gのポリマーバインダー(固形分9.00重量%)と22.7gのAl2O3を25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して第1の混和物を調製した以外は例31と同様の方法で実施した。
例32のポリマーバインダーのリサイクル
【0432】
沈殿剤の調製において、110gの塩酸を1Lの蒸留水に溶解して3M塩酸溶液を形成し、ポリマーバインダーの沈殿において、3M塩酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH0.97の第2の懸濁液を形成した以外は、例31と同様にして、ポリマーバインダーのリサイクルを実施した。
例33の第1の懸濁液の調製
【0433】
第1の懸濁液の調製は、集合体の調製において、ポリマーバインダー11.23g(固形分9.00重量%)と17.99gのAlを25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して第1の混和物を調製した以外は例31と同様の方法で実施した。
例33のポリマーバインダーのリサイクル
【0434】
第1の懸濁液に3M硫酸水溶液を加えてpH1.24の第2の懸濁液を形成した以外は、例31と同様にしてポリマーバインダーのリサイクルを行った。
例34の第1の懸濁液の調製
【0435】
第1の懸濁液の調製を例31と同様の方法で行った。
例34のポリマーバインダーのリサイクル
【0436】
沈殿剤の調製において、577gのクエン酸を1Lの蒸留水に溶解して3Mクエン酸溶液を形成し、そしてポリマーバインダーの沈殿において、その3Mクエン酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.19の第2の懸濁液を形成したこと以外は、例31と同様の方法でポリマーバインダーのリサイクルを行なった。
例35の第1の懸濁液の調製
【0437】
第1の懸濁液の調製は、集合体の調製において、ポリマーバインダー11.23g(固形分9.00重量%)と19.20gのLCOを25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して第1の混和物を調製した以外は例31と同様の方法で実施した。
例35のポリマーバインダーのリサイクル
【0438】
第1の懸濁液に3M硫酸水溶液を加えてpH1.02の第2の懸濁液を形成した以外は、例31と同様にしてポリマーバインダーのリサイクルを行った。
例36の第1の懸濁液の調製
【0439】
第1の懸濁液の調製は、集合体の調製において、ポリマーバインダー11.23g(固形分9.00重量%)と19.20gのLFPを25℃でオーバーヘッドスターラーで約15分間撹拌しながら混合して第1の混和物を調製した以外は例31と同様の方法で実施した。
例36のポリマーバインダーのリサイクル
【0440】
第1の懸濁液に3M硫酸水溶液を加えてpH0.99の第2の懸濁液を形成した以外は、例31と同様にしてポリマーバインダーのリサイクルを行った。
例37
第1の懸濁液の調製
【0441】
使用済みのリチウムイオン電池からカソード層を得た。カソード層内のポリマーバインダーは例25と同じ方法で調製した。水性溶媒(蒸留水)60gを含む丸底フラスコに、粉砕カソード層4.48gを添加した。混合物を80rpmで10分間攪拌し、64.48gの第1の懸濁液を得た。
ポリマーバインダーのリサイクル
A)沈殿剤の調製
【0442】
295gの硫酸を1Lの蒸留水に溶解し、3M硫酸水溶液を形成した。
B)ポリマーバインダーの沈殿
【0443】
3M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.22の第2の懸濁液を形成した。この第2の懸濁液を200rpmで90℃、2時間撹拌した。攪拌時間の延長と昇温は、NMC532をより効率的に溶解させるためのものである。その後、ポリマーバインダーを沈殿させ、NMC532を第2の懸濁液に溶解させた。ポリマーバインダーの沈殿とNMC532の溶解の後、処理した第2の懸濁液を濾紙に通し、導電剤および沈殿したポリマーバインダーを回収した。残った処理済みの第2の懸濁液は、さらに抽出処理を行い、中に含まれる電極活物質および沈殿剤をさらに抽出することができる。回収したポリマーバインダーを大気圧下、80℃で5時間オーブンで乾燥し、ポリマー回収率99.32%を得た。
例38
第1の懸濁液の調製
A)ポリマーバインダーの調製
【0444】
使用済みのリチウムイオン電池からカソード層を得た。カソード層内のポリマーバインダーは例31と同じ方法で調製した。水性溶媒(蒸留水)60gを含む丸底フラスコに、粉砕カソード層4.38gを添加した。混合物を80rpmで10分間攪拌し、64.38gの第1の懸濁液を得た。
ポリマーバインダーのリサイクル
A)沈殿剤の調製
【0445】
295gの硫酸を1Lの蒸留水に溶解し、3M硫酸水溶液を形成した。
B)ポリマーバインダーの沈殿
【0446】
3M硫酸溶液を第1の懸濁液に添加してpH1.36の第2の懸濁液を形成した。この第2の懸濁液を200rpmで90℃、2時間撹拌した。攪拌時間の延長と昇温は、NMC532をより効率的に溶解させるためのものである。その後、ポリマーバインダーを沈殿させ、NMC532を第2の懸濁液に溶解させた。ポリマーバインダーの沈殿とNMC532の溶解の後、処理した第2の懸濁液を濾紙に通し、導電剤および沈殿したポリマーバインダーを回収した。残った処理済みの第2の懸濁液は、さらに抽出処理を行い、中に含まれる電極活物質および沈殿剤をさらに抽出することができる。回収したポリマーバインダーを大気圧下、80℃で5時間オーブンで乾燥し、ポリマー回収率99.01%を得た。
【0447】
【0448】
【0449】
【0450】
本発明は限られた数の実施形態に関して説明されてきたが、ある実施形態の具体的な特徴は本発明の他の実施形態に帰すべきでない。いくつかの実施形態の方法は、本明細書で言及されていない多数のステップを含み得る。他の実施形態の方法は、本明細書に列挙されていない任意のステップを含まないか、実質的に含まない。記載された実施形態からの変更および変形が存在する。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲において、これらの変更および変形を全て含むものとする。
【国際調査報告】