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特表2023-530014少なくとも2つの顕微鏡スライドスキャナを使用して顕微鏡スライドを走査する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】少なくとも2つの顕微鏡スライドスキャナを使用して顕微鏡スライドを走査する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
G01N35/04 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578591
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-02
(86)【国際出願番号】 DE2021100510
(87)【国際公開番号】W WO2021254564
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】102020116138.7
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521452234
【氏名又は名称】ゲービング・トーマス
(71)【出願人】
【識別番号】522489864
【氏名又は名称】ドイスター・ユルゲン
(71)【出願人】
【識別番号】521452245
【氏名又は名称】ドイスター・トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ゲービング・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ドイスター・ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ドイスター・トーマス
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB16
2G058GA02
2G058GA08
2G058GE02
2G058HA04
(57)【要約】
少なくとも二つの顕微鏡スライドスキャナを使用して顕微鏡スライドを走査する方法であって、
この方法は、以下のステップ、即ち、
a)それぞれが複数のサンプルセットの内の一つに属する複数の顕微鏡スライド(14)を顕微鏡スライド(14)用の供給ユニット(6)にロードするステップ、
b)供給ユニット(6)から、顕微鏡スライドがロードされていない各顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)に顕微鏡スライド(14)を一枚ずつ運ぶステップ、
c)ロードされた各顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)に走査プロセスを実施するステップ、
d)走査済の各顕微鏡スライド(14)を各々の顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)から中間保管部(16)に運ぶステップ、
e)評価するための各々の走査プロセスのデータレコードを提供するステップ、
f)サンプルセットの全ての顕微鏡スライド(14)を、中間保管部(16)から最終保管部(17)に運ぶステップ、
を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)を使用して顕微鏡スライドを走査する方法であって、
当該方法は、以下のステップ、即ち、
a)それぞれが複数のサンプルセットの内の一つに属する複数の顕微鏡スライド(14)を顕微鏡スライド(14)用の供給ユニット(6)にロードするステップ、
b)供給ユニット(6)から、顕微鏡スライドがロードされていない各顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)に顕微鏡スライド(14)を一枚ずつ運ぶステップ、
c)ロードされた各顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)に走査プロセスを実施するステップ、
d)走査済の各顕微鏡スライド(14)を各々の顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)から中間保管部(16)に運ぶステップ、
e)評価するために、各々の走査プロセスのデータレコードを提供するステップ、
f)サンプルセットの全ての顕微鏡スライド(14)を、中間保管部(16)から最終保管部(17)に運ぶステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
供給ユニット(6)の各々の顕微鏡スライドが、ステップb)、ステップc)、及びステップd)に従って、1つの顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)に運ばれ、そこで走査され、その後中間保管部(16)に運ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップf)は、ステップa)に従って供給ユニット(6)にロードされた顕微鏡スライド(14)が属する全サンプルセットに対して実施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
中間保管部(16)が識別可能な複数の保管位置を有し、かつ中間保管部(16)内の各々の顕微鏡スライド(14)の保管位置がデータバンク内に保存されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)において、顕微鏡スライド(14)は、サンプルセットに従わずに中間保管部(16)内にランダムに載置されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップf)において、各々のサンプルセットの全ての顕微鏡スライド(14)に対して、保存されている中間保管部(16)内の保管位置が読み取られ、かつ顕微鏡スライド(14)がサンプルセット毎に最終保管部(17)に載置されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法は、ステップe)の後及びステップf)の前に、更に以下のステップ、即ち
e`)顕微鏡スライド(14)を、中間保管部(16)からロードされていない顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、10、11、12)に運ぶステップ、
e``)顕微鏡スライド(14)の再走査プロセスを実施するステップ、
e```)再走査済の顕微鏡スライドを中間保管部(16)に運ぶステップ、
を含むことを特徴とする請求項1~6に記載の方法。
【請求項8】
ステップe)の後に、関連する顕微鏡スライド(14)が、ステップe`)~ステップe```)に従って再走査されるか否かが、各データレコードに対して決定されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップe)の後に、ステップe``)に従う走査プロセスのためのスキャンパラメータが決定されることを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)と、ステップd)と、ステップf)とに従う、及び/又はステップe`)とステップe``)とに従う顕微鏡スライド(14)の1つ、複数、若しくは全ての移動は、少なくとも1つの産業用ロボット(13)、好ましくは正確に1つの産業用ロボット(13)によって実行されることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一つの産業用ロボット(13)は、多関節ロボットであり、好ましくは6軸の多関節ロボット、7軸の多関節ロボット、又は8軸の多関節ロボットであり、この多関節ロボットは、好ましくは、顕微鏡スライド(14)をつかむためのグリッパを備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって顕微鏡スライド(14)を走査する装置(1)であって、
当該装置は、
A)顕微鏡スライド用の少なくとも一つの供給ユニット(6)、
B)少なくとも二つの顕微鏡スライドスキャナ(7、8、9、10、11、12)、
C)顕微鏡スライド用の少なくとも一つの中間保管部(16)、
D)顕微鏡スライド用の少なくとも一つの最終保管部(17)、
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、
当該装置は、少なくとも一つの産業用ロボット(13)、好ましくは、正確に一つの産業用ロボット(13)を含み、
この産業用ロボット(13)が、
ステップb)と、ステップd)と、ステップf)との内の1つのステップ、複数のステップ、若しくは全てのステップを請求項1に従って実行するように構成されている、及び/又は
ステップe`)とステップe```)を請求項6に従って実行するように構成されている、
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの顕微鏡スライドスキャナを使用して顕微鏡スライドを走査する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野とりわけ病理学の分野において、細胞サンプル又は組織サンプルを含む顕微鏡スライドを検査する必要がある。このため、試料を載せた顕微鏡スライドを顕微鏡の下に置き、病理学者が評価することができる。かなり以前より古典的な顕微鏡は、顕微鏡スライドを走査し、取得データを保存し、画面上のデジタル画像として病理学者へ提供する顕微鏡スライドスキャナに置き換えられるようになっている。
【0003】
走査すべき個別の顕微鏡スライドを複数ロードできるローディング装置を備える顕微鏡スライドスキャナが知られている。また、それぞれのスキャナ用に特別に構成され、顕微鏡スライドをロードできる補給ケースを有する顕微鏡スライドスキャナも知られている。従って、顕微鏡スライドスキャナは個々の顕微鏡スライドを連続して走査することができ、各走査工程の前に毎回顕微鏡スライドを顕微鏡スライドスキャナ内に装填する必要はない。
【0004】
この既知の顕微鏡スライドスキャナの短所として、ローディング装置又は補給ケースへの顕微鏡スライド装填を手動で行わねばならないことが挙げられ、その際顕微鏡スライドは、顕微鏡スライドが通常収納されている顕微鏡スライドホルダから個々に取り出してローディング装置又は補給ケース内へ移動させる必要があり、顕微鏡スライドスキャナに顕微鏡スライドを含む補給ケースを手動でロードするか、又は補給ケースを手動で取りだす必要がある。走査プロセス後、顕微鏡スライドは再び手動でローディング装置又は補給ケースから取り出す必要があり、かつ保管部に保管することができる。
【0005】
しばしば、複数のそのような顕微鏡スライドスキャナが使用され、それらの顕微鏡スライドスキャナが個別に、顕微鏡スライドを互いにロードされる必要がある。
【0006】
一般的に、患者一人につき、複数の細胞試料又は複数の組織試料が採取され、これらが別々の顕微鏡スライド上に個別に塗布され、かつ別々に評価される。一人の患者の細胞サンプル又は組織サンプルを備えたこのような複数の顕微鏡スライドは、サンプルセットを意味する。従って、サンプルセットは、一人の患者のサンプル又は互いに関連するサンプルがロードされている全ての顕微鏡スライドを含む。
【0007】
現在、1つのセットの個々の顕微鏡スライドを、(更に分類することなく顕微鏡スライドスキャナから取り出すことができ、かつ一緒に保管することができるように)一緒に保持するために、サンプルセットの全ての顕微鏡スライドは顕微鏡スライドスキャナで連続して走査することが一般的である。
【0008】
この場合、一つのセットの全てのサンプルを保管部内の1つの場所で見ることができるため、一緒に保持することは有利である。これはまた、評価するために、一つのセットの個別の顕微鏡スライド又は全ての顕微鏡スライドを保管部から再度取り出す必要がある場合、一つのセットの個別のサンプルが保管部に個別に保管されている場合に必要となる多数のプレースホルダの代わりに、保管部内の一つのプレースホルダだけが必要になるという利点がある。
【0009】
加えて、先行技術による方法での欠点は、一つのセットのサンプルがロードされていた顕微鏡スライドスキャナが故障した場合、顕微鏡スライドスキャナが修理されるか、又は異なる顕微鏡スライドスキャナがこの一つのセットのサンプルが手動でロードされるまでこのセットのサンプルをそれ以上走査、評価することがでないことである。
【0010】
顕微鏡スライドの走査が不良である、又は不十分であることがしばしば発生する。これは、例えば、不良な走査領域が把握されるか、又はオートフォーカスが不良であったか、又は不適切であったことによる。これは、通常、走査を評価する病理学者によって最初に発見される。従って、そのような場合には、対応する顕微鏡スライドを再度保管部から取りだし、かつ再度走査しなければならないことが欠点であり、その際、走査領域と焦点面を顕微鏡スライドスキャナで決定してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、従来技術から知られている欠点を克服する、顕微鏡スライドを走査する方法を提供することである。したがって、本発明の課題は、顕微鏡スライドスキャナのロード作業及びアンロード作業に手間がかからず、顕微鏡スライドスキャナが故障した場合でも、顕微鏡スライドを手動で再ロードすることなく、サンプルセットのサブセットが走査される、顕微鏡スライドを走査する方法を提供することにある。サンプルセットを、簡単な方法及び更なる選別なしにまとめて装置から取り出すことができ、かつ保管することが、本発明の課題であるとわかる。さらに、第1の走査パスでは不適切にしか走査されなかった試料の再走査を高い手間がかからずに可能にする方法を提供することが、本発明の課題であるとわかる。さらに、本発明の課題は、本発明による方法の実施を可能にする装置を提供することを含んでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
課題を解決するために、少なくとも二つの顕微鏡スライドスキャナを使用して顕微鏡スライドを走査する方法が企図されていて、当該方法は、以下のステップ、即ち、
a)それぞれが複数のサンプルセットの内の一つに属する複数の顕微鏡スライドを顕微鏡スライド用の供給ユニットにロードするステップ、
b)供給ユニットから、顕微鏡スライドがロードされていない各顕微鏡スライドスキャナに顕微鏡スライドを一枚ずつ運ぶステップ、
c)ロードされた各顕微鏡スライドスキャナに走査プロセスを実施するステップ、
d)走査済の各顕微鏡スライドを各々の顕微鏡スライドスキャナから中間保管部に運ぶステップ、
e)評価するための各々の走査プロセスのデータレコードを提供するステップ、
f)サンプルセットの全ての顕微鏡スライドを、中間保管部から最終保管部に運ぶステップ、
を含む。
【0013】
従って、この方法では、スライドスキャナのうちのどれが走査工程を実施するかには関係なく、走査されるべき試料を有する各顕微鏡スライドが走査プロセスまで中央に保管する供給ユニットが提供される。従って、個々の顕微鏡スライドスキャナは、連続的に走査される、複数の顕微鏡スライドを前もって手動でロードされない。むしろ、顕微鏡スライドスキャナには、走査されるべき各々の顕微鏡スライドが少なくとも1つの中央供給ユニットから個々に自動的にロードされる。顕微鏡スライドスキャナの内の1つが走査プロセスを完了するやいなや、顕微鏡スライドが取り出され、かつ中間保管部に載置される。次に、新しい顕微鏡スライドを供給ユニットから取り出すことができ、かつ直近に空にした顕微鏡スライドスキャナに収納することができる。こうすることにより全ての顕微鏡スライドスキャナが順序よく使用され、供給ユニット内に保管されている、これから走査されるべき顕微鏡スライドの走査は、顕微鏡スライドスキャナの一つが故障しても行われる。
【0014】
特に急ぐ場合には、供給ユニット内の個々の顕微鏡スライドを入れ替えることによりいつでも走査されるべきスライドの順番を変更することができ、その際、本発明の方法が中断されることはない。したがって、本発明の方法を中断することなく、個々の試料の優先度に応じて走査の順番を決定又は変更することができる。
【0015】
本発明において「顕微鏡スライド」とは、走査されるべき試料を含むスライドと理解される。そのために、サンプルは、大抵、顕微鏡スライドガラス板と、カバーガラス又は透明フィルムとの間に配置されている。顕微鏡スライドはまた、サンプル及び又はサンプルセットの推論を可能にするコードを有することができる。好ましくは、各顕微鏡スライドは、好ましくは機械読み取り可能なコードの形態の固有のコードを含む。
【0016】
本発明において「顕微鏡スライドの走査」とは、スライド上に配置されている試料の走査を指す。
【0017】
最も単純な実施形態では、供給ユニットは、複数の顕微鏡スライドのための収容装置である。好ましくは、供給ユニットが提供され、この供給ユニットは、顕微鏡スライドがある顕微鏡スライドホルダをロードすることができる。このような場合では、供給ユニットは顕微鏡スライドホルダを収容するように構成されている。好ましくは、供給ユニットは、異なる製造業者の顕微鏡スライドホルダと、異なる数のスロットを備えた顕微鏡スライドホルダを、ランダムに連続して収容することができるように構成されていて、その際、顕微鏡スライドは顕微鏡スライドホルダ内にある。有利な一実施形態では、供給ユニットは、少なくとも1つの基礎プレートと少なくとも1つの前壁を備える。また、本発明によれば、装置が2つ以上の供給ユニットを備え、異なる供給ユニットを異なるタイプの顕微鏡スライドホルダに使用することができるように企図されている。
【0018】
好ましくは、供給ユニット、特に基礎プレートは、基礎プレート上に載せられた顕微鏡スライドホルダが、重力に基づいて、供給ユニットの前壁に当接するように、又は供給ユニット内に既に存在する顕微鏡スライドホルダに当接するようにスライドするように、斜めに配置されている。従って、供給ユニットの基礎プレートは斜めの平面を形成する。このようにして、顕微鏡スライドホルダがロードされた供給ユニットの場合、顕微鏡スライドホルダが常に前壁に接していることが保障される。
【0019】
有利な一実施形態において、供給ユニットはU字形であり、少なくとも一つの端部が前壁により閉じられている。好ましくは、U字形は、そのU字形内に顕微鏡スライドホルダを上からセットできるように配置されている。好ましくは、供給ユニットの基礎プレートの平面が斜めになるように、前壁付きの端部はもう一方の端部より低く配置されている。
【0020】
顕微鏡スライドホルダはホルダであり、この顕微鏡スライドホルダ中に複数の顕微鏡スライドを互いにほぼ平行に配置することができる。好ましくは、顕微鏡スライドホルダは、それぞれ3~50枚の顕微鏡スライド用スロットを備える。好ましくは、顕微鏡スライドは、顕微鏡スライドの一方の短辺が上に、もう一方の短辺が下に向くようにスロット内に配置される。顕微鏡スライドは上の短辺で顕微鏡スライドホルダから引き出すことができる。
【0021】
好ましくは、一つの顕微鏡スライドスキャナ内の供給ユニットから顕微鏡スライドを運ぶステップは、振動ステップが含まれていて、この振動ステップでは、産業用ロボットがつかんだ顕微鏡スライドが、顕微鏡スライドからの取り出し前及び/又は取り出し中に振動させられる。そのような振動運動の実施は、顕微鏡スライドホルダ内でつかえてしまった顕微鏡スライド、及び/又は、カバープロセスにおける接着剤の残りによりくっついてしまったスライドを、損傷を与えずに取り出すことができる。
【0022】
顕微鏡スライドホルダと供給ユニットは、供給ユニットに所定の方向を向いて配置されている顕微鏡スライドホルダのみをロードすることができるように構成されている。つまり、各々の顕微鏡スライドホルダの所定の面が供給ユニットの前壁に向いているように顕微鏡スライドホルダが方向づけされている場合にのみ、顕微鏡スライドホルダを供給ユニットにロードすることができることを意味する。これは、顕微鏡スライドホルダの一つの面に盛り上がり部又は突起部を備え、これが供給ユニットのロード領域内の対応するくぼみ又は凹部と係合することができるようにすることにより達成できる。
【0023】
従って、供給ユニット内で、供給ユニットのU字形の両方の側面に対して平行に配置されている、顕微鏡スライドホルダの外側に向いた2つの面が互いに異なる。同様に、そのような実施形態においては供給ユニットのU字形の2つの側面が互いに異なる。通常、個々の顕微鏡スライドは、試料の染色の後及びカバープロセスの後に手動で又は自動的に顕微鏡スライドホルダ内に差し込まれ、その結果、顕微鏡スライドホルダの全ての顕微鏡スライドは同じ方向を向いている。供給ユニット内で顕微鏡スライドホルダの方向が決まっていることにより、供給ユニット内の全ての顕微鏡スライドが同じ方向を向いていることが保証され、その結果、走査されるべきスライドがどの方向を向いているかを点検する必要がなくなる。顕微鏡スライドホルダのどの面を所定の面とするかは、個別に、かつ染色プロセスとカバープロセスとの実施に応じて決定することができる。
【0024】
好ましくは、供給ユニットは押さえ装置を備え、この押さえ装置は、供給ユニットの前壁に対して先頭に配置されている顕微鏡スライドホルダが、供給ユニットから上に向かって取り出されないように配置されている。従って、まだ完全に空になっていない顕微鏡スライドホルダが、顕微鏡スライド取り出しの際に意図せずに持ち上げられてしまい、それによりまだ走査されていない顕微鏡スライドが落下して破損してしまう可能性を防止できる。
【0025】
好ましくは、押さえ装置が、供給ユニットに配置された突起部又は凸部である。顕微鏡スライドホルダを取り出すには、まず、顕微鏡スライドホルダを前壁から、それにより押さえ装置から、供給ユニットのもう一方の端部の方向に動かし、次に上に向かって給送ユニットから取り出す必要がある。
【0026】
好ましくは、顕微鏡スライドホルダが、前壁に接している先頭の顕微鏡スライドホルダから産業用ロボットによって取り出される。場合によっては顕微鏡スライドホルダの全てのスロットに顕微鏡スライドが入っているわけではないため、産業用ロボットは、空である可能性もある個々のスロットを次々につかんでみて、顕微鏡スライドが入っているスロットに到達すると、そこの顕微鏡スライドを取り出す。そうすることにより、顕微鏡スライドが、顕微鏡スライドホルダ内に顕微鏡スライドが存在する順番で顕微鏡スライドスキャナの一つに到達し、各顕微鏡スライドが走査されることが保障される。
【0027】
従って、本発明によれば、複数のシリーズに属する複数の顕微鏡スライドを供給ユニットにロードすることが企図されている。従って、複数のサンプルセットの顕微鏡スライドが供給ユニットにロードされる。一つのサンプルセットは、一人の患者の各々のサンプル又はそのほかの互いに関連するサンプルを含む二つ以上の顕微鏡スライドを備える。従って、2つ以上のこのようなサンプルセットは、供給ユニット内に配置される。
【0028】
供給ユニット内に配置されている顕微鏡スライドは、好ましくは存在する順に供給ユニットから取り出され、走査プロセスを実施する占有されていない顕微鏡スライドスキャナの一つに装填される。
【0029】
本発明による方法は、少なくとも2つの顕微鏡スライドスキャナの使用を企図する。従って、本発明によれば、少なくとも2個、ただし走査されるべき顕微鏡スライドの数に応じて3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の顕微鏡スライドスキャナが使用される。本発明によれば、顕微鏡スライドを保管するローディング装置や補給ケースを持たない、費用対効果が高くて故障の少ない自立型の顕微鏡スライドスキャナを使用することが可能である。
【0030】
好ましくは、顕微鏡スライドスキャナに運ばれる各顕微鏡スライドの個々のコードが把握され、データベースに保存される。同様に、顕微鏡スライドがどの顕微鏡スライドスキャナによって走査されたかという情報を保存することができる。
【0031】
従って、同様に、本発明による方法は、顕微鏡のスライドコードが走査される1つまたは複数のステップを含むことが企図されている。同様に、コードを把握した後、顕微鏡スライドがある場所についての情報が保存されることが企図されている。好ましくは、どの顕微鏡スライドスキャナに顕微鏡スライドが装填され、顕微鏡スライドが中間保管部のどの位置で載置され、及び/又は顕微鏡スライドが最終保管部のどの位置で載置されるかが保存される。そのため、好ましくは、顕微鏡スライド、特にその顕微鏡スライドのコードは、顕微鏡スライドスキャナに、中間保管部に、及び/又は最終保管部に載置する前に、個別のスキャナによって把握され、その結果、各々の顕微鏡スライドの位置又は現在の位置を常に読み取ることができる。
【0032】
好ましくは、各顕微鏡スライドのステップb)は、加えて前記顕微鏡スライドの顕微鏡スライドコードの走査を含む。好ましくは、このプロセスにおいて、顕微鏡スライドのコーディングを読み取るだけでなく、走査されるべきサンプル、例えば組織が位置する顕微鏡スライド上の領域も識別されることである。本発明によれば、同様に好ましくは、走査されるべきサンプルが配置されている顕微鏡スライドのこの領域のみが、顕微鏡スライドスキャナの一つで走査されることが企図されている。
【0033】
さらに、方法は、好ましくは、少なくとも一つの照明ユニットとカメラを含む概観スキャナによって、完全な顕微鏡スライドの概観画像の作成と保存を含んでもよい。
【0034】
顕微鏡スライドを顕微鏡スライドスキャナに移動した後、かつ走査処理が完了した後、走査済の走査顕微鏡スライドをスキャナから取り出し、中間保管部に載置する。
【0035】
従って、中間保管部は、顕微鏡スライドが走査プロセスの後に載置される装置である。好ましくは、顕微鏡スライドは、顕微鏡スライドが異なる順序で供給ユニット内に配置されたかどうかに関係なく、スキャナから取り出される順序で、従って、中間保管部に到達する順序で中間保管部内に載置される。好ましくは、中間保管部が複数のスロット又は複数のホルダを備え、このスロット又はホルダには、各々走査済の顕微鏡スライドを挿入することができる。中間保管部に100、1000又はそれ以上のスロット又はホルダを備えた実施形態もあり得る。従って、中間保管部は、任意の数のスロット又はホルダを備えてよい。
【0036】
顕微鏡スライドを中間保管部に保管する前に、顕微鏡スライドの個々のコードを把握することができる。これは、例えばスキャナの形態での一つのデータ取得装置又は複数のデータ取得装置によって行える。好ましくは、中間保管部は、複数の保管位置を含み、その際、各保管位置、すなわち各スロット又はホルダは、1つの顕微鏡スライドを収容できる。各保管位置は、個々の識別子又はコードによって識別することができる。好ましくは、ここに載置された各顕微鏡スライドの保管位置は、データベースに保存される。
【0037】
好ましくは、ステップb)に従って、利用可能な全ての顕微鏡スライドスキャナがロードされる。好ましくは、利用可能な全てのロードされた顕微鏡スライドスキャナがステップc)に従って走査プロセスを実施する。好ましくは、ステップd)に従って、利用可能な全てのロードされた顕微鏡スライドスキャナがアンロードされる。このようにして、本発明によるこの方法の装置の全ての顕微鏡スライドスキャナが使用され、かつ走査方法の促進に寄与する。
【0038】
評価するためのデータレコードは、顕微鏡スライドスキャナの1つによる走査プロセス毎に提供される。データレコードは、顕微鏡スライドスキャナで撮影された画像をコード化し、その画像は提供後に評価することができる。好ましくは、このような評価は、病理学者によって実行される。
【0039】
サンプルセットの評価終了後、このシリーズの全ての顕微鏡スライドは、中間保管部から最終保管部に運ばれる。このために、好ましくは、サンプルセットの全ての顕微鏡スライドを、中間保管部から最終保管部に個別に運ばれる。好ましくは、サンプルセットの顕微鏡スライドは、連続して最終保管部に載置される。好ましくは、各サンプルセットが、最終保管部に数値的に仕分けられて載置され、その結果、一つのシリーズの全ての顕微鏡スライドは、最終保管部に直接、数値的に連続して配置されている。
【0040】
一つのサンプルセットの評価が完了した情報は、本発明による装置に伝達ことができる。一つのサンプルセットの評価は、このシリーズの一つ又は複数の顕微鏡スライドの再走査を要求することなく、このシリーズの全てのサンプルが評価された場合も完了したとみなすことができる。
【0041】
ステップf)は、ステップa)に従って供給ユニットにロードされた顕微鏡スライドが、全サンプルセットに属する全サンプルセットに対して実施される。
【0042】
最終保管部は、中間保管部に配置されていた一つのサンプルセットの全ての顕微鏡スライドを、サンプルセットの評価が完了した時に載置することができる保管装置である。最終保管部は、複数の最終保管部又は部分的な最終保管部で構成してもよい。このような複数部材からなる最終保管部は、交換プロセス中に走査済の顕微鏡スライドを保管するために異なる部分的な最終保管部が利用可能であるため、進行している方法の間に、充填された部分的な最終保管部を新しい空の部分的最終保管部と交換することを可能にする。好ましくは、1つのサンプルセット又は複数のサンプルセットが、このような部分的な最終保管部に載置される。最終保管部に配置されている一つのセットの顕微鏡スライドの全ては、一緒に取り出して保管するか、又は1つ若しくは複数の完全なサンプルセット含む部分的な最終保管部を取り出して保管することができる。さらに、例えば、第三者のためのサンプルセットが装置によって走査される場合、複数部材からなる最終保管部が有利であり、その際、これらのサンプルセットは個別に保管されなければならない。このような場合、第三者のために捜査されているこれらのサンプルセットは、他のサンプルセットから切り離して、個別の部分的な最終保管部に載置することができる。
【0043】
好ましくは、最終保管部は、識別可能な複数の部分的な最終保管部を備える。好ましくは、最終保管部又は各部分的な最終保管部は、各々の一つの顕微鏡スライド用の複数の最終保管位置を備え、その際、各最終保管位置は個別の識別子によって識別可能である。好ましくは、ここに載置されている各顕微鏡スライド用の最終保管部内の保管位置は、データベースに保存される。
【0044】
最終保管部、又は部分的な最終保管部の1つが完全に満杯になるとすぐに、これに関連する情報又は警告を出すことができ、その結果、最終保管部/部分的な最終保管部を、空にすることができる又は交換することができる。
【0045】
好ましくは、空いている顕微鏡スライドスキャナが利用可能になるとすぐに、顕微鏡スライドが供給ユニットから取り出される。従って、好ましくは、全ての顕微鏡スライドは、供給ユニットから連続して取り出され、走査され、中間保管部に載置される。従って、好ましくは、供給ユニットの各々の顕微鏡スライドが、ステップb)、ステップc)、及びステップd)に従って、1つの顕微鏡スライドスキャナに運ばれ、そこで走査され、その後中間保管部に運ばれる。
【0046】
前述のように、顕微鏡スライドは、供給ユニット内の顕微鏡スライドホルダに配置することができる。本発明の有利な一実施形態では、供給ユニットは顕微鏡スライドホルダに配置されている顕微鏡スライドをロードし、方法は、さらに以下のステップ、即ち、
a`)顕微鏡スライドホルダを供給ユニットから取り出すステップ、
a``)顕微鏡スライドホルダを、好ましくは顕微鏡スライドホルダ保管装置に載置するステップ、
を含む。その際、ステップa`)とステップa``)は、好ましくは少なくとも一つの産業用ロボットによって実行される。好ましくは、ステップa`)とステップa``)は、顕微鏡スライドホルダの全ての顕微鏡スライドが取り外れている場合、ステップa)の後に実行される。したがって、空の顕微鏡スライドホルダは、供給ユニットから取り出すことができ、かつ供給ユニット内に配置されている別の顕微鏡スライドホルダの顕微鏡スライドを、走査するために取り出すことができる。完全に空にした顕微鏡スライドホルダを取り出した後、次の顕微鏡スライドホルダは前壁の方向に自動的にスライドできる。空になった顕微鏡スライドホルダを自動的に取り出すことによって、別の顕微鏡スライドホルダを供給ユニットにロードするための供給ユニット内の空間が確保される。
【0047】
好ましくは、顕微鏡スライドを顕微鏡スライドスキャナで走査した後、顕微鏡スライドを中間保管部で保管する前に、顕微鏡スライドに損傷があるかどうかが点検される。それにより、ロード又はアンロード中に破損した顕微鏡スライド部分がどの顕微鏡スライドスキャナに残っているかどうかを保障することができる。そのために好ましくはスライドの長さが点検される。好ましくは、長さの点検は機械的に実施される。特に好ましくは、長さの点検のために顕微鏡スライドはスイッチ、特にマイクロスイッチを通過させ、顕微鏡スライドが元の長さを有している場合のみ、スイッチを作動させる。顕微鏡スライドに損傷があると判断された場合、損傷のある顕微鏡スライドの走査を行った顕微鏡スライドスキャナに新しい顕微鏡スライドはロードされず、「ブロック中」として扱われ、かつ対応する警告が出力されることが企図されている。しかしブロックされていない顕微鏡スライドスキャナは引き続き使用できるため、本発明の方法を引き続き実施することができる。
【0048】
本発明の有利な一実施形態において、顕微鏡スライドスキャナにより走査できなかった顕微鏡スライド、及び/又は、顕微鏡スライドコードが読み取れなかった顕微鏡スライド、及び/又は、損傷があると判断された顕微鏡スライドは、保管装置ではなく不良な顕微鏡スライド用の別の収集装置に保管されることが企図されている。
【0049】
本発明の有利な一実施形態では、顕微鏡スライドは、ステップd)に従って中間保管部にサンプルセット毎ではなく、ランダムに載置される。このような実施形態では、顕微鏡スライドが中間保管部内に任意に載置される。好ましくは、隣接するスロットが空いているか、又は他のサンプルシリーズの顕微鏡スライドで占有されているかに関係なく、一つの顕微鏡スライドが、中間保管部の空いているスロットに押し込まれる。従って、中間保管部に配置されている顕微鏡スライドの順番は、供給ユニットに配置されている顕微鏡スライドの順番と異なってもよい。
【0050】
本発明の有利な一つ実施形態では、ステップf)において、各々のサンプルセットの全ての顕微鏡スライドに対して、保存されている中間保管部での保管位置が読み取られ、かつ顕微鏡スライドがサンプルセット毎に整理されて最終保管部に載置される。この場合、サンプルセットの全ての顕微鏡スライドは、最終保管部に直接連続して配置されている。
【0051】
顕微鏡スライドの走査の際、焦点面は、一般に、顕微鏡スライドスキャナのソフトウェアによって自動的に決定される。顕微鏡スライド上に配置されているサンプルは、例えば構造化の形態で表面トポグラフィーを有することもあるので、ソフトウェア側で決定された焦点面が最適に選択されていない場合がよくある。さらに、評価に重要な特定のサンプル領域が走査されないことがある。しかし、走査が不適切に実施されたことは、大抵は評価中(例えば、病理学者によって撮影された画像の観察中)に初めて確認され、その時点では、先行技術による装置を使用する場合、顕微鏡スライドがすでに装置から取り出され、かつ保管されている。
【0052】
本発明の有利な一実施形態では、方法が、ステップe)の後及びステップf)の前に、更に以下のステップ、即ち
e`)顕微鏡スライドを、中間保管部からロードされていない顕微鏡スライドスキャナに運ぶステップ、
e``)顕微鏡スライドの再走査プロセスを実施するステップ、
e```)再走査済の顕微鏡スライドを中間保管部に運ぶステップ、
を含む。
【0053】
追加のステップe`)~ステップe```)によって、不適切に走査された顕微鏡スライドを最終保管部に保管する前に、再度走査することができることが保証される。好ましくは、データレコードの提供直後、特に病理学者による評価中に、評価されるべき顕微鏡スライドを再走査すべきか否かが決定される。顕微鏡スライドの走査が不適切である場合、この情報を本発明による装置に送信することができ、その結果、その後、対応する顕微鏡スライドが再び中間保管部から取り出され、かつ占有されていない顕微鏡スライドスキャナに運ばれる。再走査の実施後、顕微鏡スライドは再び中間保管部に運ばれる。
【0054】
好ましくは、評価が、評価ソフトウェアがインストールされたモニタ付きコンピュータで実施される。コンピュータは、本発明による方法に従って顕微鏡スライドを走査する本発明に従った装置に接続でき、入力した情報又は制御コマンドを装置に送信できる。
【0055】
本発明の有利な一実施形態では、ステップe)の後に、ステップe``)に従う走査プロセスのためのスキャンパラメータが決定される。従って、顕微鏡スライドの表示されたスキャン画像の評価中に、ステップe``)に従う再走査においてどの焦点面を使用できるかを決定することが可能である。このため、好ましくは、焦点面を決定する3つの点を確定することによって、表示された画像の中に焦点面を定義することができる。同様に、顕微鏡スライドのどの領域が走査されるべきかを決定することができる。この情報は、本発明による装置に送信することができ、その結果、対応する顕微鏡スライドを中間保管部から取り出すことができ、走査を実施する顕微鏡スライドスキャナが、この平面又はこの走査領域に焦点を合わせることができる。
【0056】
従って、好ましくは、ステップe)の後に、関連する顕微鏡スライドが、ステップe`)~ステップe```)に従って再走査されるか否かが、各データレコードに対して決定される。ステップe`)~ステップe```)は、中間保管部に位置する顕微鏡スライドの一つ、複数又は全てに対して実施することができる。
【0057】
有利な一実施形態では、ステップe`)は、再走査されるべき顕微鏡スライドに対してステップb)の前に優先して実行され、このステップb)では、異なる顕微鏡スライドが供給ユニットから顕微鏡スライドスキャナのうちの1つに運ばれる。このようにして、再走査の新しいデータレコードを、評価するために迅速に提供することができる。
【0058】
本発明の有利な一実施形態では、少なくとも1つの顕微鏡スライドスキャナは、他の既存の顕微鏡スライドスキャナとは異なる。特に、例えば、倍率に関して異なる、異なる対物レンズを有するスキャナが使用される。好ましくは、他の顕微鏡スライドスキャナの大部分より高い倍率をもつ対物レンズを備える少なくとも1つの顕微鏡スライドスキャナがある。このようにして、各顕微鏡スライドを適切な顕微鏡スライドスキャナで走査することができることを、保証することができる。これは、例えば、顕微鏡スライドのステップe``)に従う再走査プロセスが実施され得る場合、例えば、顕微鏡スライドの特定の領域がより詳細な方法で走査され得る場合、特に重要である。この場合、最適な倍率レベルを有する顕微鏡スライドスキャナを選択することができる。
【0059】
本発明の有利な一実施形態では、ステップb)、ステップd)、ステップf)、ステップe`)、ステップe```)のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの産業用ロボットによって実行される。好ましくは、これらの複数のステップは、少なくとも1つの産業用ロボットによって実行される。好ましくは、ステップb)、ステップd)、ステップf)及び方法に存在する場合には、ステップe`)とステップe```)は、少なくとも1つの産業用ロボットによって実行される。特に好ましくは、ステップb)、ステップd)、ステップf)、ステップe`)、ステップe```)のうちの1つ、複数又は全てが、単一の産業用ロボットによって実施される。
【0060】
「少なくとも一つの産業用ロボット」とは、プログラム可能な一つ又は複数の機械であって、単独でもしくは協力しあって産業用ロボットが実行すべき方法ステップを実行できるものを指す。単一の産業用ロボットを1台だけ使用する場合、これは、産業用ロボットの使用の実行が企図されるすべての方法ステップを実行できるように形成されている。好ましくは、産業用ロボットは、ロボットアームと、制御装置と、グリッパとを備える。
【0061】
本発明の有利な一実施形態では、少なくとも一つの産業用ロボットが、多関節ロボットである。好ましくは、少なくとも一つの産業用ロボットが、6軸の多関節ロボット、7軸の多関節ロボット、又は8軸の多関節ロボットである。好ましくは、多関節ロボットは、顕微鏡スライドをつかむためのグリッパを備える。好ましくは、一つの顕微鏡スライドは、顕微鏡スライドを供給ユニットから取り出す同一の多関節ロボットによって、顕微鏡スライドスキャナに装填され、顕微鏡スライドスキャナから取り出され、中間保管部と最終保管部に運ばれる。
【0062】
好ましくは、顕微鏡スライドスキャナは、産業用ロボットが各顕微鏡スライドスキャナをロード及びアンロードできるように配置されている。顕微鏡スライドスキャナは同一平面内に配置され得る。また、特に7軸の多関節ロボット又は8軸の多関節ロボットを使用する場合には、顕微鏡スライドスキャナを互いに並んで配置することも、上下に配置することもでき、顕微鏡スライドスキャナから成る壁を形成することも可能である。顕微鏡スライドスキャナの複数の壁を産業用ロボットの周囲に配置することもできる。
【0063】
本発明による方法は、少なくともステップa)~ステップf)を含む。したがって、本発明による方法は、さらなる方法ステップを含んでもよい。本発明の有利な一実施形態では、各顕微鏡スライドスキャナが顕微鏡スライドでロードされるまで、ステップd)の実行前にステップb)が繰り返される。
【0064】
好ましくは、全ての顕微鏡スライドが供給ユニットから取り出されるまで、及び/又は中間保管部が完全に空になるまで、方法ステップb)から方法ステップf)までが繰り返される。
【0065】
さらに、本発明によれば、方法ステップa)は、方法ステップb)から方法ステップf)までの内の一つと同時に再び実行されることが企図されている。したがって、本発明による方法は、実施中の方法の間に、供給ユニットに顕微鏡スライドをさらにロードすることが企図される。
【0066】
有利な一実施形態では、方法は、ステップa)からステップf)からなり、選択的にはさらに、ステップe`)~ステップe```)、及び/又は、ステップa`)とステップa``)からなる。その際、各ステップを複数回実行することができる。
【0067】
本発明の有利な一実施形態では、本発明による装置の個々の構成要素、例えば顕微鏡スライドスキャナと少なくとも1つの工業用ロボットとの間、または個々の構成要素と中央制御装置との間で情報を送信することができ、その結果、個々の方法ステップを時間的に調整することができる。例えば、走査プロセスの完了後、顕微鏡スライドスキャナは、走査プロセスが完了した情報を含む情報信号を出力できる。この信号は産業用ロボット用の制御信号に変換することができ、制御信号は対応する顕微鏡スライドを顕微鏡スライドスキャナから取り出し、かつ中間保管部の空スロットに差し込むか又は中間保管部から最終保管部に運ぶように産業用ロボットに指示する。同様に、制御装置は、産業用ロボット自体の構成要素として構成してもよい。
【0068】
本発明の有利な一実施形態において産業用ロボットは、顕微鏡スライドスキャナのうちの一つから顕微鏡スライドを取り出し、この顕微鏡スライドを中間保管部に保管した後に直ちに、供給ユニットから顕微鏡スライドを取り出し、この顕微鏡スライドを、まだロードされていない顕微鏡スライドスキャナ又は直近に空になった顕微鏡スライドスキャナに装填し、その際これは、その間に別の顕微鏡スライドスキャナから走査工程完了という情報の伝達があったかどうかには関係なく行われる。そうすることにより顕微鏡スライドスキャナの休止時間が短縮される。
【0069】
本発明の有利な一実施形態では、顕微鏡スライドスキャナが、顕微鏡スライド用の回転可能な収容部を備え得る。特に好ましくは、収容部は、ロードするために垂直軸を中心として90°回転するターンテーブルとして構成されている。従来技術における顕微鏡スライドスキャナの多くは、顕微鏡スライドが顕微鏡スライドスキャナの正面から見て横から装填される顕微鏡スライド用の収容部を備える。産業用ロボットによる顕微鏡スライドの装填を容易にするために、顕微鏡スライドの収容部は、ロード時に、顕微鏡スライドが正面から収容部に装填されるように回転する。
【0070】
加えて、本発明の課題は、本発明による方法による、顕微鏡スライドを走査する装置を提供することであり、この装置は、従来技術から知られている欠点を克服する。
【0071】
課題を解決するために、本発明による方法によって顕微鏡スライドを走査する装置が企図されていて、当該装置は、
A)顕微鏡スライド用の少なくとも一つの供給ユニット、
B)少なくとも二つの顕微鏡スライドスキャナ、
C)顕微鏡スライド用の少なくとも一つの中間保管部、
D)顕微鏡スライド用の少なくとも一つの最終保管部、
を備える。
【0072】
本発明の有利な一実施形態では、装置は、少なくとも一つの産業用ロボットを含み、
この産業用ロボットは、
ステップb)と、ステップd)と、ステップf)との内の1つのステップ、複数のステップ、若しくはすべてのステップを実行するように構成されている、及び/又は
ステップe`)とステップe```)を実行するように構成されている。好ましくは、装置は、ステップb)と、ステップd)と、ステップf)の内の全て、及び/又は、ステップe`)とステップe```)を実行するように構成されている単一の産業用ロボットを備える。好ましくは、装置は、供給ユニットから顕微鏡スライドスキャナへ、顕微鏡スライドスキャナから中間保管部へ、中間保管部から最終保管部へ、そして選択的には中間保管部から顕微鏡スライドスキャナへ、顕微鏡スライドを運搬するために、単一の産業用ロボット、好ましくは単一の多関節ロボットのみを備える。
【0073】
本発明による装置は、本発明による方法を実施するように構成されている。従って、装置は、方法を自律的に、連続的に、また、手動介入なしに実施できることが可能であり、その際、検査評価するためにデータセットが提供される。
【0074】
好ましくは、装置の構成部品A)~D)は、基礎フレーム上に配置されていて、その結果、コンパクトな装置が提供され、この装置は、例えば、分解せずにドア開口部を通って運搬することができるように可動である。好ましくは、基礎フレームには、供給ユニットと、保管部と、顕微鏡スライドスキャナとを取り囲むケーシングが設けられている。さらに、装置を操作するための操作パネル及び/又は操作要素を設けてもよい。
【0075】
本発明の装置の説明と本発明の方法の説明とは互いに補完しあっているため、方法について本発明の装置と関連付けて説明されている記述があれば、それは個別に又は組み合わせて、方法の記述と理解すべきである。また、装置について本発明の方法と関連付けて説明されている特徴があれば、それも個別に又は互いに組み合わせて、本発明の装置の特徴と理解すべきである。
【0076】
以下に図を用いて本発明を再度説明する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】本発明による装置の例示的な実施形態を概略図で示す。
図2】本発明による装置の例示的な実施形態を概略図で示す。
図3】本発明による装置の例示的な実施形態を概略図で示す。
図4】本発明による装置の例示的な実施形態を概略図で示す。
図5】本発明による装置の例示的な実施形態を概略図で示す。
図6】本発明による装置の例示的な実施形態の一部分を概略図で示す。
図7】本発明による装置の例示的な実施形態の一部分を概略図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図1は、顕微鏡スライドを走査する装置1を斜視図で示し、この装置は、供給ユニット6、複数の顕微鏡スライドスキャナ7、8、多関節ロボットの形態の産業用ロボット13が配置されている基礎フレーム2を含む。装置は、基礎フレーム2に取り付けられているケーシング3が設けられている。装置は、操作パネル4を用いて、かつ操作要素5を使用して操作できる。装置は、ここでは開いた状態で示されているフラップを備え、このフラップは閉じることができ、その結果、産業用ロボット13の作業領域に外部からアクセスできない。供給ユニット6には、供給ユニット6の領域のケーシングの凹部を介して、顕微鏡スライドがロードされている顕微鏡スライドホルダを外部からロードすることができる。多関節ロボット13は、供給ユニット内に配置されている顕微鏡スライドを、グリッパ15を用いて、顕微鏡スライドスキャナ7、8と、ここで参照番号を付けていない別の顕微鏡スライドスキャナとに運べる。供給ユニット6に配置されている顕微鏡スライドホルダの全ての顕微鏡スライドが顕微鏡スライドスキャナに運ばれるとすぐに、多関節ロボット13は、グリッパ15を使用して空の顕微鏡スライドホルダを、ケーシング3の凹部を通って外部からアクセス可能な顕微鏡スライドホルダの保管部18に運ぶ。
【0079】
図2は、本発明による装置1を斜視図で示し、この装置1は、基礎フレームの側壁に取り付けられている6つの顕微鏡スライドスキャナ7、8、9、10、11、12を含む。対向する側壁には、顕微鏡スライドを中間保管するための中間保管部16が設けられていて、6つの顕微鏡スライドスキャナ7、8、9、10、11、12のうちの1つで走査を実施した後、スライドが再スキャンされるか、又は最終保管部に運ばれる前に、顕微鏡スライドを中間保管部で一時的に保管することができる。
【0080】
図3は、本発明による装置1を側面図で示し、顕微鏡スライドスキャナ7、9、10には、産業用ロボット13によって顕微鏡スライドをロードすることができる。その後、走査済の顕微鏡スライドは、中間保管部16に運ぶことができる。中間保管部16から、顕微鏡スライドを、顕微鏡スライドスキャナの内の一つで再走査するか、又は最終保管部17に運ぶかのいずれかとすることができる。
【0081】
図4は、本発明による装置1を上方から見た図を示す。装置1は顕微鏡スライドスキャナ7、8を備える。多関節ロボット13は、供給ユニット6から顕微鏡スライド14を取り出すことができ、かつ顕微鏡スライドスキャナ7、8に運ぶことができる。走査プロセスの後、走査済の顕微鏡スライド14は、多関節ロボット13によって中間保管部16に運ぶことができる。顕微鏡スライド14は、中間保管部16から最終保管部17に運ぶことができる。最終保管部17は、複数の部品、ここでは5つの部品で構成されている。中間保管部16は、各々1つの顕微鏡スライド14に対して複数の保管位置を有する。中間保管部では、顕微鏡スライド14は、サンプルセット後に、ランダムに保管することができる。中間保管部16内に任意に分散して配置されている一つのサンプルセットの全ての顕微鏡スライド14は、多関節ロボット13によって、中間保管部16から連続して取り出すことができ、最終保管部17内に連続して配置することができる。好ましくは、一つのサンプルセットの全ての顕微鏡スライド14は、部分的な最終保管部に配列することができ、一緒に取り出すことができ、例えば保管することができる。
【0082】
図5は、本発明による装置1を斜視図で示し、この図には、複数の顕微鏡スライドスキャナ7、8、9、10、11、12、産業用ロボット13、及び最終保管部17が図示されている。さらに、顕微鏡スライドホルダの保管部18を見ることができ、この保管部は空の顕微鏡スライドホルダを収容するように構成されている。装置はさらに、欠陥がある顕微鏡スライド19のための収集装置を備え、そこには、走査することができない顕微鏡スライド、不良な顕微鏡スライド、又はコードを読み取ることができない顕微鏡スライドが運ばれる。
【0083】
図6は、本発明による装置1の一部分の描写を示し、この図では、顕微鏡スライド14をロードした供給ユニット6、中間保管部16、及び最終保管部17が図示されている。供給ユニット6は、二つの部分から成る供給ユニット6として構成されていて、その際、各々の部分供給ユニット6が斜めに配置されている基礎プレートを備える。供給ユニット6は、個々の顕微鏡スライド14又は顕微鏡スライド14がロードされている顕微鏡スライドホルダを収容するように構成されている。供給ユニット6に引き渡される顕微鏡スライドホルダは、重量により前壁に向かってスライドできる。
【0084】
図7は、本発明による装置の一部分の描写を示す。供給ユニット6、中間保管部16、最終保管部17が図示されている。供給ユニット6は、顕微鏡スライドがロードされている顕微鏡スライドホルダを収容するように構成されている。中間保管部16は、複数の顕微鏡スライドを収容するように構成されていて、その際、中間保管部16の各保管位置は、個々の識別子を備える。同様に、最終保管部17は、複数の顕微鏡スライドを収容するように構成されている。一般的には、中間保管部16内の顕微鏡スライドがサンプルセットに従って順序通りに配置されていないが、最終保管部17内の顕微鏡スライドがサンプルセットに従って配置されている。
【符号の説明】
【0085】
1 装置
2 基礎フレーム
3 ケーシング
4 操作パネル
5 操作要素
6 供給ユニット
7 顕微鏡スライドスキャナ
8 顕微鏡スライドスキャナ
9 顕微鏡スライドスキャナ
10 顕微鏡スライドスキャナ
11 顕微鏡スライドスキャナ
12 顕微鏡スライドスキャナ
13 産業用ロボット
14 顕微鏡スライド
15 グリッパ
16 中間保管部
17 最終保管部
18 顕微鏡スライドホルダの保管部
19 不良な顕微鏡スライド用の収集装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】