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特表2023-530016自動車バッテリーの複数のバッテリーセルのそれぞれの温度を測定された温度の外挿によって求めるための方法、制御装置及び自動車バッテリー
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  • 特表-自動車バッテリーの複数のバッテリーセルのそれぞれの温度を測定された温度の外挿によって求めるための方法、制御装置及び自動車バッテリー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】自動車バッテリーの複数のバッテリーセルのそれぞれの温度を測定された温度の外挿によって求めるための方法、制御装置及び自動車バッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20230705BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230705BHJP
【FI】
H01M10/48 301
G01R31/389
H01M10/48 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578596
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2021065363
(87)【国際公開番号】W WO2022002539
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102020003887.5
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・フィル
(72)【発明者】
【氏名】アーバー・アヴディリ
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA51
5H030AA01
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
本発明は、自動車バッテリー(1)のそれぞれのバッテリーセル(2)の温度の監視を改善できるようにする方法であって、
少なくとも1つの第1のバッテリーセル(11)の第1の電圧、少なくとも1つの第2のバッテリーセル(12)の第2の電圧、及びバッテリーセル(11、12)を流れるそれぞれ少なくとも1つの電流を含む測定値を求めるステップ(S1)と、
測定値から第1のバッテリーセル(11)の第1の測定抵抗と第2のバッテリーセル(12)の第2の測定抵抗を求めるステップ(S2)と、
基準抵抗を求めるステップ(S4)と、
第1の測定抵抗と基準抵抗から第1の抵抗比を求め、第2の測定抵抗と基準抵抗から第2の抵抗比を求めるステップ(S5)と、
第1のバッテリーセル(11)の測定温度を求めるステップ(S6)と、
所定の規則にしたがって、測定温度、第1の抵抗比及び第2の抵抗比に基づいて、第2のバッテリーセル(12)の計算温度を求めるステップ(S7)と、
を備える方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車バッテリー(1)の複数のバッテリーセル(2)のそれぞれの温度を求めるための方法であって、
少なくとも1つの第1のバッテリーセル(11)の第1の電圧、少なくとも1つの第2のバッテリーセル(12)の第2の電圧、及び前記バッテリーセル(11、12)を流れるそれぞれ少なくとも1つの電流を含む測定値を求めるステップ(S1)と、
前記測定値から前記第1のバッテリーセル(11)の第1の測定抵抗と前記第2のバッテリーセル(12)の第2の測定抵抗を求めるステップ(S2)と、
基準抵抗を求めるステップ(S4)と、
前記第1の測定抵抗と前記基準抵抗から第1の抵抗比を求め、前記第2の測定抵抗と前記基準抵抗から第2の抵抗比を求めるステップ(S5)と、
前記第1のバッテリーセル(11)の測定温度を求めるステップ(S6)と、
所定の規則にしたがって、前記測定温度、前記第1の抵抗比及び前記第2の抵抗比に基づいて、前記第2のバッテリーセル(12)の計算温度を求めるステップ(S7)と、
を備える方法。
【請求項2】
前記基準抵抗が、前記複数のバッテリーセル(2)のすべての測定抵抗、例えば、前記第1の測定抵抗と前記第2の測定抵抗の平均値として求められることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定の規則が、前記測定温度及び前記第1の抵抗比に応じて、前記第2の抵抗比に関する複数の値に、前記温度に関するそれぞれの値、特に正確にそれぞれ1つの値を割り当てる分布関数(19)及び/又は数値表を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
まず、前記第1の抵抗比と前記測定温度に応じて、前記分布関数及び/又は数値表が正規化され、次に、前記正規化された分布関数及び/又は数値表から、前記第2の抵抗比に応じて、前記計算温度が導出されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
複数の第2のバッテリーセル(12)に対してそれぞれの第2の抵抗比が求められ、これらから、並びに、前記所定の規則、前記測定温度及び前記第1の抵抗比に基づいて、前記それぞれの第2のバッテリーセル(12)の前記計算温度のそれぞれの値が求められることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の第1のバッテリーセル(11)に対してそれぞれの測定温度及びそれぞれの第1の抵抗比が求められ、これらから、前記所定の規則及び前記第2の抵抗比に基づいて、前記第2のバッテリーセル(12)の前記計算温度のそれぞれの値が求められることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記自動車バッテリー(1)の端部に配置された、前記複数の第1のバッテリーセル(11)のうちの1つの少なくとも1つの測定温度、及び前記自動車バッテリーの中央部に配置された、前記複数の第1のバッテリーセル(11)のうちの1つの少なくとも1つの測定温度が求められることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
相関係数Gが所定の値より大きい、及び/又は複数の第1のバッテリーセルのそれぞれの測定温度が互いに対して所定の程度を超えない基準状態が存在するかどうかチェックされること(S3)を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
自動車バッテリー(1)の複数のバッテリーセル(2)のそれぞれの温度を求めるための制御装置(9)であって、前記制御装置(1)は、
少なくとも1つの第1のバッテリーセル(11)の第1の電圧、少なくとも1つの第2のバッテリーセル(12)の第2の電圧、及び前記バッテリーセルを流れるそれぞれ少なくとも1つの電流を含む測定値を受け取ること、
前記測定値から前記第1のバッテリーセル(11)の第1の測定抵抗と前記第2のバッテリーセル(12)の第2の測定抵抗を求めること、
基準抵抗を求めること、
前記第1の測定抵抗と前記基準抵抗から第1の抵抗比を求め、前記第2の測定抵抗と前記基準抵抗から第2の抵抗比を求めること、
前記第1のバッテリーセル(11)の測定温度を受け取ること、及び
所定の規則にしたがって、前記測定温度、前記第1の抵抗比及び前記第2の抵抗比に基づいて、前記第2のバッテリーセル(12)の計算温度を求めること、
を行うように設計されている、制御装置(9)。
【請求項10】
請求項9に記載の制御装置(9)、
少なくとも1つの第1のバッテリーセル(11)、及び各々の第1のバッテリーセル(11)のそれぞれの測定温度を求めるためのそれぞれの温度測定ユニット、
少なくとも1つの第2のバッテリーセル(12)、及び
第1のバッテリーセル(11)の第1の電圧、第2のバッテリーセル(12)の第2の電圧、及び前記バッテリーセル(11、12)を流れるそれぞれ少なくとも1つの電流を含む測定値を求めるための測定装置、
を備える自動車バッテリー(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車バッテリーの複数のバッテリーセルのそれぞれの温度を求めるための方法に関する。本発明の第2の側面は、対応する制御装置に関する。本発明の第3の側面は、上記制御装置等を備える自動車バッテリーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気で動くことのできる自動車の商品化を成功させるためには、これらの自動車は、従来の燃料で動く自動車が寿命、性能、航続距離、安全に関してすでに満たし、可能にしている高い期待と要求を満たさなければならない。電気で動くことのできる自動車の例として、1つの電気エネルギー貯蔵装置と1つ又は複数の電気モーターのみを備える純粋な電気自動車、1つの内燃機関と1つの電気エネルギー貯蔵装置と1つ又は複数の電気モーターを備えるハイブリッド自動車、例えば1つの燃料電池と1つの電気エネルギー貯蔵装置と1つ又は複数の電気モーターを備える水素自動車がある。自動車の電気エネルギー貯蔵装置は、自動車バッテリーやトラクションバッテリーとも呼ばれる。自動車バッテリーは、互いに直列及び/又は並列に接続された複数のバッテリーセルから成る。複数のバッテリーセルは、共同で電気エネルギーを蓄えたり、共同で電力を供給したりするように設計されている。自動車バッテリーのバッテリーセルは、すべて直列に接続することもできる。しかし、複数バッテリーセルが互いに直列に接続されて1つのグループを形成し、複数のそのようなグループが並列に接続されているようにするのが有利である。個々のバッテリーセルの公称電圧と、直列に接続されたバッテリーセルの数から算出されるのが、自動車バッテリーの公称電圧レベルである。好適には、公称電圧レベルは、少なくとも80ボルト、好ましくは少なくとも200ボルト、例えば、400ボルト又は800ボルトである。
【0003】
自動車バッテリーや自動車バッテリーを備えた自動車の効率的かつ安全な動作を保証するために、特に自動車バッテリーは継続的に監視されることになる。例えば、その一環として、それぞれの温度、電圧、電流、充電状態(state of charge、SoC)及び/又は損耗度若しくは劣化(state of health、SoH)がチェックされる。そこでは、例として挙げた変数の任意の組み合わせが可能である。動作時の各々のバッテリーセルのそれぞれの温度を継続的にチェックしたり、測定したり、監視したりすることが非常に有利である。損耗度若しくは劣化(SoH)にも同じことがいえる。
【0004】
ここで各バッテリーセルにそれぞれの温度センサーを配置するのは、非常に複雑で、費用が高額である。そのため、すでに挙げた変数とそれぞれのバッテリーセルの内部抵抗の間の相関関係がしばしば利用される。特に、内部抵抗からそれぞれのバッテリーセルの温度及び/又は劣化を判断することができる。
【0005】
例えば、それぞれのバッテリーセルの内部抵抗は、電流パルスに対する電圧応答の相関を利用する電流パルス測定法により、利用することができる。そのためには、少し計算が必要である。しかし、そのようにして求められた値はどうしても不規則に出てしまう。別の方法では、適応モデル、例えば、いわゆる電気回路モデル(Electric Circuit Model、ECM)を用いる。これは特にカルマンフィルターに基づいている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、自動車バッテリーのそれぞれのバッテリーセルの温度の監視を改善できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、この課題を独立請求項の主題によって解決する。目的に適った発展をもたらす有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
本発明の第1の側面は、自動車バッテリーの複数のバッテリーセルのそれぞれの温度を求めるための方法に関する。それぞれの温度の監視を改善できるようにするために、本方法は以下のステップ、
少なくともと1つの第1のバッテリーセルの第1の電圧、少なくとも1つの第2のバッテリーセルの第2の電圧、及びバッテリーセルを流れるそれぞれ少なくとも1つの電流を含む測定値を求めるステップと、
測定値から第1のバッテリーセルの第1の測定抵抗と第2のバッテリーセルの第2の測定抵抗を求めるステップと、
基準抵抗を求めるステップと、
第1の測定抵抗と基準抵抗から第1の抵抗比を求め、第2の測定抵抗と基準抵抗から第2の抵抗比を求めるステップと、
第1のバッテリーセルの測定温度を求めるステップと、
所定の規則にしたがって、測定温度、第1の抵抗比及び第2の抵抗比に基づいて、第2のバッテリーセルの計算温度を求めるステップと、
を備える。
【0009】
特に、測定値は測定装置による適切な測定によって求められる。測定装置は特に、第1の電圧及び/又は第2の電圧及び/又はそれぞれの電流を測定するように設計することができる。特に、第1のバッテリーセルと第2のバッテリーセルを流れるそれぞれの電流は、両バッテリーセルが直列に接続されているために、同じである。第1の測定抵抗と第2の測定抵抗は、測定値に基づいて求めることができる。第1の測定抵抗と第2の測定抵抗は、特に電圧と抵抗の間の数学的相関に基づいて求められる。例えば、第1のバッテリーセルの第1の測定抵抗と第2のバッテリーセルの第2の測定抵抗は、測定値からオームの法則によって求められる。本出願のさらなる過程で示すように、さらなる実施形態では、より複雑な数学的相関も利用することができる。
【0010】
基準抵抗は、例えば所定の値でもよい。この場合には、基準抵抗は、記憶装置から所定の値を読み出すことによって求められる。あるいは、基準抵抗は、複数のバッテリーセルのすべての測定抵抗、例えば、第1の測定抵抗と第2の測定抵抗の平均値として求めることもできる。
【0011】
特に、基準抵抗は、自動車バッテリーのすべてのバッテリーセルのすべての測定抵抗を平均すること、すなわちそれらの平均値を計算することによって求められる。それぞれの測定抵抗、すなわち第1の測定抵抗又は第2の測定抵抗を基準抵抗で割ることによって、第1の測定抵抗比と第2の測定抵抗比を求めることができる。あるいは、基準抵抗を第1の測定抵抗又は第2の測定抵抗で割ることによって、第1の抵抗比又は第2の抵抗比を求めることができる。
【0012】
第1のバッテリーセルの測定温度は、第1のバッテリーセルの温度を測定することによって求めることができる。特に、測定温度は、温度センサによって求められる又は測定される。温度センサーは、例えば、NTCセンサー又はPTCセンサーとして設計すること、又はそのようなセンサーを含むことができる。あるいは、赤外線放射温度計による測定も可能である。第1のバッテリーセルの温度の測定には、他の任意の測定方法も考えられる。一般に、第1のバッテリーセルの測定温度は、温度測定ユニットによって求めることができる。
【0013】
計算温度は、所定の規則にしたがって、第1の抵抗比、第2の抵抗比及び測定温度に基づいて求められる。そこでは、計算温度は第2のバッテリーセルの温度を示し、測定温度は第1のバッテリーセルの測定された温度を示す。計算温度がそのように呼ばれるのは、この温度が測定されるのではなく、所定の規則にしたがって上記変数から導出される又は求められるからである。
【0014】
本発明は、第1のバッテリーセルの温度から第2のバッテリーセルの温度を推定するという考えに基づいている。この推定では、測定温度は第1の抵抗比と第2の抵抗比と関係づけられる。そこでは、本発明は、それぞれのバッテリーセルの内部抵抗は当該バッテリーセルの温度が上昇するにつれて減少するという知識を利用している。したがって、第1のバッテリーセルと第2のバッテリーセルのそれぞれの内部抵抗、すなわち第1の測定抵抗と第2の測定抵抗に基づいて、第1のバッテリーセルの温度を第2のバッテリーセルに外挿することができる。そこでは特に、温度とそれぞれの内部抵抗の間に線形関係がないことが考慮される。それぞれの内部抵抗と温度の関係は、例えば、分布関数及び/又は対応する数値表によって得られる。そこでは、この関係、特に分布関数又は数値表は、事前に求めることができる。この関係、特に分布関数又は数値表は、とりわけ、そのような自動車バッテリー又は対応するバッテリーセルでの適切な試験から導き出される。そうして、数値表又は分布関数の数値が生成される。総じて、このようにして、自動車バッテリーのそれぞれのバッテリーセルの温度の監視を改善できるようにすることが可能である。特に、本発明の方法ですべてのバッテリーセルのそれぞれの温度を求めるには、少数の温度測定ユニット又は温度センサーだけで十分とすることができる。これによって、一方では自動車バッテリーの構造の複雑さを、他方ではコストを減らすことができる。
【0015】
本方法は、一般に、基準抵抗を求めるステップと、第1の抵抗比と第2の抵抗比を求めるステップがなくても、可能である。この場合には、計算温度は、対応する所定の規則にしたがって、測定温度、第1の測定抵抗及び第2の測定抵抗に基づいて、異なる可能性がある。しかしながら、そこでは、基準抵抗と関係づけること(正規化とも呼ばれる)によって、より信頼できる結果が得られることがわかっている。これは特に、内部抵抗が最も低いそれぞれのバッテリーセルは通常、バッテリーセルの中で最も温度が高く、内部抵抗が最も高いそれぞれのバッテリーセルは通常、バッテリーセルの中で最も温度が低いため、絶対抵抗は重要でないという知識に基づいている。計算温度も測定温度に依存して求められるため、基準抵抗によって正規化されたそれぞれの測定抵抗、すなわち第1の抵抗比又は第2の抵抗比を考慮すれば十分である。正規化によって、均質なデータベースが得られる。
【0016】
さらなる発展形態によれば、所定の規則は、測定温度及び第1の抵抗比に応じて、第2の抵抗比に関する複数の値に、温度、すなわち計算温度に関するそれぞれの値、特に正確にそれぞれ1つの値を割り当てる分布関数及び/又は数値表を含む。そこでは、分布関数及び/又は数値表は自動車バッテリーでの適切なテスト又は測定によって生成されるようにすることができる。数値表又は分布関数は、数学的関係、数式又は数値で提供することができる。さらに、数値表及び/又は分布関数は、自動車バッテリー及び/又はそれぞれのバッテリーセルの放電状態をパラメーターとして持つことができる。言い換えると、自動車バッテリー及び/又はそれぞれのバッテリーセルの充電状態の様々な値に対して、それぞれ有効な分布関数及び/又は数値表を用いることができる。この場合には、本方法は、追加のステップとして、自動車バッテリー及び/又はそれぞれのバッテリーセルの充電状態を求めることを含むことができる。このようにして、第2のバッテリーセルの温度、特に計算温度をさらに正確に求めることができる。
【0017】
さらなる発展形態によれば、まず、第1の抵抗比と測定温度に応じて、分布関数及び/又は数値表が正規化され、次に、正規化された分布関数及び/又は数値表から、第2の抵抗比に応じて、計算温度が導出される。言い換えると、まず、第1のバッテリーセルのデータ、すなわち第1の抵抗比と測定温度に基づいて、分布関数及び/又は数値表が選択又は生成され、次に、このようにして生成された分布関数及び/又は数値表から、第2の抵抗比に応じて、計算温度が選択される。そこでは、正規化された分布関数及び/又は数値表は、計算温度と第2の抵抗比の間の1対1の関係を示すことができる。このようにして、正規化された分布関数及び/又は数値表に基づいて、計算温度を簡単に導出することができる。正規化された分布関数及び/又は数値表の正規化、生成又は選択は、特に所定のデータに基づいて行うこともできる。
【0018】
さらなる発展形態によれば、複数の第2のバッテリーセルのそれぞれの第2の抵抗比が求められ、これらから、並びに、所定の規則、測定温度及び第1の抵抗比に基づいて、それぞれの第2のバッテリーセルの計算温度のそれぞれの値が求められる。言い換えると、複数の第2のバッテリーセルに対して同様に、並行して第2のバッテリーセルの計算温度が求められる。そこでは、各々の第2のバッテリーセルに対して、それぞれの第2の抵抗比を基礎とすることができ、これらは、それぞれの第2のバッテリーセルに対して求められるそれぞれの測定抵抗から導出される。それぞれの第2の測定抵抗を求めるためには、各々の第2のバッテリーセルに対して、それぞれの第2の電圧を求めることができる。各々の第2のバッテリーセルに対して、それぞれの電流を求めることができ、直列接続の場合には、それぞれの電流は、すべての第2のバッテリーセルに関して同じとすることができる。そこでは、それぞれの第2のバッテリーセルのそれぞれの計算温度は、それぞれ第1のバッテリーセルの第1の抵抗比と第1のバッテリーセルの測定温度に基づいて求められる。言い換えると、各々の第2のバッテリーセルの計算温度は、第1のバッテリーセルの測定温度及びその抵抗又は抵抗比に基づいて推定される。このようにして、各々の第2のバッテリーセルに対して温度センサーが必要ということはなくなり、複数の温度センサーを省くことができる。
【0019】
さらなる発展形態によれば、複数の第1のバッテリーセルに対してそれぞれの測定温度とそれぞれの第1の抵抗比が求められ、これらから、所定の規則及び第2の抵抗比に基づいて、第2のバッテリーセルの計算温度のそれぞれの値が求められる。言い換えると、複数の第1のバッテリーセルのそれぞれの測定温度とそれぞれの第1の抵抗比に基づいて、第2のバッテリーセルの計算温度が推定される。特に、異なるバッテリーセルに基づき、互いに独立して、計算温度が求められる又は推定される。このようにして、第2の又はの複数の計算温度が得られるさらなる実施形態では、第2のバッテリーセルの計算温度の複数の値が平均されるようにすることができる。この平均の前に、第2のバッテリーセルの計算温度の異常値、すなわち他の値から所定の程度を超えて逸脱している値を除外することができる。そのように著しく逸脱している値又は異常値は、測定エラー又は計算温度の計算エラーによるものである可能性が高いからである。このようにして、バッテリーセルのそれぞれの温度を求める際の正確さをさらに改善することができる。
【0020】
さらなる発展形態によれば、自動車バッテリーの端部に配置された、複数の第1のバッテリーセルのうちの1つの少なくとも1つの測定温度、及び自動車バッテリーの中央部に配置された、複数の第1のバッテリーセルのうちの1つの少なくとも1つの測定温度が求められる。言い換えると、自動車バッテリーの端部に配置された少なくとも1つの第1のバッテリーセルに、それぞれの温度センサー又はそれぞれの温度測定ユニットが配置され、自動車バッテリーの中央部に配置された1つの第1のバッテリーセルに、少なくとも1つの温度センサー又は1つの温度測定ユニットが配置されている。例えば、自動車バッテリーの端部に配置された第1のバッテリーセルは、1つの他のバッテリーセルと隣接しているだけである。例えば、自動車バッテリーの中央部に配置された第1のバッテリーセルは、複数の側でそれぞれ1つの他のバッテリーセルと隣接している。このようにして、異なる第1のバッテリーセルの異なる組み込み状況に対して、異なる温度測定値が得られる。これによって、測定温度を、ひいてはそれから導出される1つの計算温度又は複数の計算温度も、さらに正確に求めることが可能になる。
【0021】
さらなる発展形態によれば、相関係数Gが所定の値より大きい、及び/又は複数の第1のバッテリーセルのそれぞれの測定温度が互いに対して所定の程度を超えない基準状態が存在するかどうかチェックされる。相関係数Gは特に、それぞれの測定抵抗の測定の回帰の品質を示す。そこでは、相関係数Gは特に、測定値又はそれらから導出される抵抗値のデータの品質を特徴づける品質係数となる。そこでは、基準状態は特に、自動車バッテリーが静的状態にある静的状態とされる。基準状態では、又は正確に基準状態が存在する場合には、複数のバッテリーのそれぞれの温度を求める作業は省くことができる。それらは時間の経過とともに常に生じると考えられるからである。さらに、正確に基準状態が存在する場合には、他の評価を行うことができる。特に、自動車バッテリーの劣化又は劣化の変化は、以前の基準状態と比較して定量化される。これは、測定値のゆっくりとした又は長期的な挙動は、バッテリーセルの温度の変化ではなく、それらの劣化の変化によるものであるという知識に基づいている。したがって、この長期的な挙動から、自動車バッテリー若しくは個々のセルの状態の変化又はそれらの劣化を判断することができる。
【0022】
本発明の第2の側面は、自動車バッテリーの複数のバッテリーセルのそれぞれの温度を求めるための制御装置に関するものであり、そこでは、制御装置は、
少なくとも1つの第1のバッテリーセルの第1の電圧、少なくとも1つの第2のバッテリーセルの第2の電圧、及びバッテリーセルを流れるそれぞれ少なくとも1つの電流を含む測定値を受け取ること、
測定値から第1のバッテリーセルの第1の測定抵抗と第2のバッテリーセルの第2の測定抵抗を求めること、
基準抵抗を求めること、
第1の測定抵抗と基準抵抗から第1の抵抗比を求め、第2の測定抵抗と基準抵抗から第2の抵抗比を求めること、
第1のバッテリーセルの測定温度を受け取ること、及び
所定の規則にしたがって、測定温度、第1の抵抗比及び第2の抵抗比に基づいて、第2のバッテリーセルの計算温度を求めること、
を行うように設計されている。
【0023】
特に、制御装置は、本発明の方法をここに記された1つ又は複数の実施形態にしたがって実行するように設計されている。例として、制御装置は、例えばマイクロコントローラー、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA、Field Programmable Gate Array)又はデジタル信号プロセッサ(DSP、Digital Signal Processor)として設計された計算ユニットを含む。制御装置又は計算ユニットは、本発明の方法又は本発明の方法の個々のステップを実行するためのプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品が保存されている、例えばフラッシュメモリー、磁気記憶媒体、光学記憶媒体などの記憶ユニットを備えることができる。特に、プログラムコード手段は、制御装置又は計算装置で実行されて、本発明の方法が1つ又は複数の実施形態にしたがって実施されるようにする。
【0024】
本発明の第3の側面は、
上記制御装置、
少なくとも1つの第1のバッテリーセル、及び各々の第1のバッテリーセルのそれぞれの温度を求めるためのそれぞれの温度測定ユニット、
少なくとも1つの第2のバッテリーセル、及び
第1のバッテリーセルの第1の電圧、第2のバッテリーセルの第2の電圧、及びバッテリーセルを流れるそれぞれ少なくとも1つの電流を含む測定値を求めるための測定装置、
を備える自動車バッテリーに関する。
【0025】
例えば、自動車バッテリーはリチウムイオン電池として実施することができる。自動車バッテリーは、80ボルトを超える、好ましくは200ボルトを超える、例えば400ボルト又は800ボルトの電圧を有することができる。特に、自動車バッテリーは、例えば2つ、3つ、4つなど、複数の温度測定ユニットを有する。この場合には、自動車バッテリーの4つのバッテリーセルは、本出願の意味において第1のバッテリーセルとされる。自動車バッテリーのその他のバッテリーセル(本出願の意味において第2のバッテリーセルと呼ぶこともできる)のそれぞれの温度は、1つ又は複数の第1のバッテリーセルのそれぞれの測定温度に基づいて推定される。
【0026】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、以下の好ましい実施例の記述と図面によって明らかになる。上の記述に記された特徴及び特徴の組み合わせ、そして以下の図の説明に記される及び/又は図のみに示される特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれに示された組み合わせだけでなく、本発明の範囲を超えることなく、その他の組み合わせでも又は単独でも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】複数のバッテリーセルを有する自動車バッテリーの概略ブロック図であり、いくつかのバッテリーセルは、それぞれの温度センサを備え、その他のバッテリーセルの温度は、測定された温度とバッテリーセルのそれぞれの抵抗に基づいて推定される。
図2】フロー図に基づいてプロセスの流れの例を示す図である。
図3】実験的に決定された分布関数の例のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、あくまで1つの例としての実施形態によるものであるが、複数のバッテリーセル2を有する自動車バッテリー1が示されている。バッテリーセル2は2つのグループ3に分けられ、それぞれのグループ3のバッテリーセル2はそれぞれ直列に接続されている。そして、それらのグループ3は互いに並列に接続されている。当然のことながら、バッテリーセル2の他の各々の合理的な接続も可能である。特に、自動車バッテリー1は、自動車を駆動又は加速させるための電気エネルギーを自動車の電気駆動装置に供給する、いわゆるトラクションバッテリーとして設計されている。自動車バッテリー1又はそのバッテリーセル2は、特にリチウムイオン電池の技術に基づいている。
【0029】
自動車バッテリー1は、自動車バッテリー1の出力電圧が印加される電気接続部5を備える。特に、電気接続部5には、自動車の電気機械を作動させるためのインバーターや、自動車の電気システムに電気エネルギーを供給するための電圧変換器など、負荷をかけることができる。言い換えると、自動車バッテリー1は、電気接続部5を介して電気エネルギー又は電力を外部に供給することができる。電力を供給するための電気接続部5は、自動車バッテリー1のバッテリーケース6から導き出される唯一の電力要件である場合もある。電気接続部5は、計2つの極によって提供することができる。自動車の公称出力電圧は、特に80ボルトを超えて、好ましくは200ボルトを超えて、例えば400ボルト又は800ボルトである。リチウムイオン系のバッテリーセル2を使用する場合には、出力電圧の望まれる公称電圧レベルから、直列に接続されたバッテリーセル2の数も導出される。
【0030】
自動車バッテリー1の動作において高度な安全性を保証し、自動車バッテリー1の寿命を最大にできるようにするためには、自動車バッテリー1の可能な限り包括的な監視が必要である。監視は、例えば、出力電圧、電流フロー、温度、充電状態(state of charge、SOC)、劣化(state of health、SOH)などに関する監視が考えられる。この監視が自動車バッテリー1全体に対して行われるだけでなく、少なくとも部分的に各々のバッテリーセル2に対して個別に行われることもあれば、特に好ましい。そのようにして、個々のバッテリーセル2の損傷を認識又は防止することができる。
【0031】
自動車バッテリー1は、複数の温度測定ユニット4を備える。温度測定ユニット4は、それぞれのバッテリーセル2に割り当てられている。そこでは、温度測定ユニット4は、それぞれのバッテリーセル2の温度を測定するように設計されている。温度測定ユニット4が割り当てられたバッテリーセル2は、第1のバッテリーセル11とも呼ばれる。一部のバッテリーセル2にのみ、温度測定ユニット4が割り当てられていることは明らかである。温度測定ユニット4が割り当てられていないバッテリーセル2は、第2のバッテリーセル12とも呼ばれる。自動車バッテリー1の複雑さと製造コストを可能な限り低く抑えるために、少数の温度測定ユニット4のみが設けられている。その一方で、すべてのバッテリーセル2のそれぞれの温度を求めるのが望ましい。そのため、第1のバッテリーセル11の測定された温度が、自動車バッテリー1のバッテリーセルのそれぞれの温度を求めるための方法によって、第2のバッテリーセルに外挿される。この方法を実行するために、自動車バッテリー1は対応する制御装置9を備えることができる。
【0032】
現在、自動車バッテリー1は、個々のバッテリーセル2の電流と電圧を測定する又は求めるように設計された測定装置7を備える。ここでは特に、各々のバッテリーセル2に対してそれぞれの電圧が測定される又は求められるようにすることができる。各々のバッテリーセル2に対して電流が互いに独立して測定されるようにすることができる。ただし、好ましくは、複数のバッテリーセル2に対して電流はいっしょに測定される又は求められる。複数のバッテリーセル2の直列接続により、直列に接続されたバッテリーセル2、この場合には1つのグループ3のバッテリーセル2を流れるそれぞれの電流は、それぞれ同じである。このようにして、各々のグループ3に対して電流をそれぞれ1回だけ測定するようにすることができる。あるいは、すべてのグループ3の総電流を測定して、グループ3の数で割ることもでき、これは特に、総電流がすべてのグループ3に等しく分配されるという仮定の下で行われる。さらなる代替案によれば、1つのグループ3の電流を測定し、他のグループ3の電流がそれに対応すると考えることができる。図2のフロー図で言えば、上記測定値の測定はステップS1に対応する。代替案又は追加案では、ステップS1において測定値が制御装置9によって受け取られる。
【0033】
上記測定値、つまり電流と電圧のそれぞれの値から、各々のバッテリーセル2に対してそれぞれの抵抗、そして測定抵抗も求めることができる。これは、例えばオームの法則に基づいて行うことができる。他の実施例では、これは異なる形式的アプローチにしたがって行われ、これらについては、以下でさらに詳しく説明する。個々のバッテリーセル2のそれぞれの抵抗又は内部抵抗を求めるこの作業は、ステップS2に対応する。
【0034】
ステップS3では、基準状態又はいわゆる「steady state」が存在するか判断される。本実施形態では、この基準状態において、第1のバッテリーセル11のそれぞれの温度は、所定の程度を超えない範囲で互いに異なっている。さらに、本実施形態では、基準状態において、相関係数Gが所定の値より大きい。相関係数G(式(22)も参照)については、以下でさらに詳しく立ち入る。そのような基準状態が存在する場合には、それぞれの温度を求めるための方法は中止される、または別の方法で行われる。この場合には、第2のバッテリーセル12の温度が求められる(フロー図のパス「n」に対応)のではなく、バッテリーの劣化(「state of health」)が求められる(図2のパス「y」に対応)。
【0035】
さらなるステップS6では、温度測定ユニット4から温度値が読み出される又は受け取られる。これは、特に制御装置9によって行われる。代替案又は追加案として、ステップS6で温度測定ユニット4によって温度値の測定を行うこともできる。ステップS6は、ステップS3の温度値が常に最新の形で得られるように、繰り返し行うこと及び/又はステップS3の前に行うことができる。
【0036】
基準状態が存在しない場合には、本方法はステップS4から続けることができる。ステップS4では、基準抵抗を求める。この基準抵抗は、例えば、ステップ4の中で制御装置9の記憶ユニットから読み出される所定の値でもよい。本実施例では、基準抵抗はすべてのバッテリーセル2の内部抵抗又は測定抵抗から求められる。特に、基準抵抗はそれらを平均することによって求められる。つまり、基準抵抗は内部抵抗又は測定抵抗の平均とすることができる。
【0037】
ステップS5では、バッテリーセル2の各々の内部抵抗に対して、それぞれの抵抗比が求められる。このそれぞれの抵抗比は、それぞれの内部抵抗又は測定抵抗を基準抵抗で割ることによって計算される。あるいは、それぞれの抵抗比は、基準抵抗をそれぞれの内部抵抗又は測定抵抗で割ることによって計算することができる。
【0038】
ステップS7では、第1のバッテリーセル2に関する測定温度又は温度値の実際の外挿が行われる。ここでは、測定温度に基づき、それぞれの抵抗比を介して、すべての第2のバッテリーセル12のそれぞれの計算温度が求められる。これは、所定の規則に基づくことができる。特に、所定の規則は、バッテリーセル2のそれぞれの温度をそれぞれの抵抗比と関連づける。そこでは、所定の規則は数値表及び/又は分布関数15を含むことができる。特に、数値表及び/又は分布関数15は、適切な実験室試験から導出することができる。適切な実験室試験の結果は、数値表及び/又は分布関数に数値的に含めること、あるいは数学関数によって再現することができる。
【0039】
図3は、それぞれの第2のバッテリーセル12の温度Tを、当該第2のバッテリーセル12のそれぞれの抵抗比VR2と充電状態SOCに応じて示している例示的な分布関数15を示している。そこでは、例示的な分布関数15は、パラメーターとしてそれぞれの第1のバッテリーセル11の第1の抵抗比と測定温度に基づいて、生成されている。言い換えると、分布関数15は、それぞれの第1のバッテリーセル11の測定温度と第1の抵抗比に基づいて生成され、そこから、それぞれの第2のバッテリーセル12の温度Tを、それらの抵抗比VR2と充電状態SOCに応じて導出する。さらなる形態では、これが、各々の第2のバッテリーセル12に対して、各々の第1のバッテリーセル11に基づき、互いに独立して行われることが可能である。このようにして、第1のバッテリーセル11又は温度測定ユニット4の数だけ、各々のバッテリーセル12に対して計算温度が得られる。各々のバッテリーセル12のこれらの複数の計算温度は、平均することができる。さらなる形態では、この平均の前に、異常値又は著しく逸脱している値を除外することできる。このようにして、計算温度が特に正確に求められる。
【0040】
以下、本発明の数学的基礎をより詳細に記述する。
【0041】
A.抵抗を求めるためのアルゴリズム
それぞれの内部抵抗を求める又は計算するための基本は、測定変数(電流および電圧)の推移を即時システム応答I(t)・ROhm(t)と遅延システム応答F(t)に分けることである。
【0042】
【数1】
【0043】
即時システム応答は、電流I(t)にオーム抵抗ROhm(t)を乗じた電圧によって表される。その一方で、遅延応答F(t)は、確定的部分Fdeterと確率的ノイズ部分Fstochに分けられる。
【0044】
【数2】
【0045】
遅延確定的セル挙動は、2つの抵抗ペアを有する電気回路モデル(ECM)を用いて表すことができる。
【0046】
【数3】
【0047】
確率的ノイズは、独立ゼロ平均ガウスノイズ過程によって表すことができる。
【0048】
【数4】
【0049】
ECMパラメーターのROhm、RPol、RDiff、CPol、CDiff及びCの値は、動作条件及びセルの状態に応じて時間の経過とともに変化する。確率的手法を適用するための要件として、電圧信号と電流信号をサンプル値に離散化する必要がある。サンプルサイズnとサンプリングレートTは、2つの要件を満たさなければならない。一方では、サンプルサイズnが、確率的尺度が高い信頼水準で満たされるほど十分に大きくなければならず、他方では、オーム抵抗ROhm(t)と確定的システム挙動が、サンプリング間隔で不変でなければならない(Δt=n-T)。これらの要件に基づいて、サンプリング間隔Δtにおけるオーム抵抗の合計差
【0050】
【数5】
【0051】
が、無視できるほど小さくなければならない。遅延システム応答の合計差は、以下の式のようになる。
【0052】
【数6】
【0053】
ただし、短い間隔におけるOCVの変化
【0054】
【数7】
【0055】
は無視する。拡散過程の時定数が
【0056】
【数8】
【0057】
と大きいため、2番目のRCペア
【0058】
【数9】
【0059】
も無視できる。1番目のRCペアの総変化は、時定数が
【0060】
【数10】
【0061】
と広い温度範囲及びSoC(充電状態)範囲で小さいため、
【0062】
【数11】
【0063】
と無視できない。確率的測定ノイズの変化は無視できない。遅延システム応答の合計差は、以下のようになる。
【0064】
【数12】
【0065】
離散電圧信号の後方差分を代入すると、
【0066】
【数13】
【0067】
となる。よりよい概観のために、離散信号は、特にバッテリーセル2の数に対応するサンプルサイズnの長さを持つベクトル
【0068】
【数14】
【0069】
に結合される。これで、システム方程式はベクトル表記で書くことができるようになる。
【0070】
【数15】
【0071】
したがって、オーム抵抗を求める1つの方法は、実際の電流ベクトルが一定で、実際の電流ベクトルの分散がゼロに等しいという条件で、電圧ベクトルの共分散を電流ベクトルに適用することである。
【0072】
【数16】
【0073】
式(19)の第2項は、式(9)~(15)を用いて近似することができる。
【0074】
【数17】
【0075】
したがって、セル電圧とセル電流の共分散は、以下のように近似することができ、
【0076】
【数18】
【0077】
これは、それぞれのバッテリーセル2の内部抵抗R(t)として定義される。実際のデータに回帰法を適用するには、フィルタリング技術が必要である。これは、実際のプロファイルには電流が一定又はゼロであるフェーズが含まれるためである。最小二乗法を用い、推定を評価するための各サンプルのデータベースに基づいて、回帰の品質を評価するための相関係数
【0078】
【数19】
【0079】
を品質係数Gとして導入する。本出願には、回帰法の2つの異なる技術が含まれる。一方の方法では、共分散と相関係数を解析的に計算するために、それぞれのサンプルのデータ保存が必要である。他方のアルゴリズムでは、共分散と相関係数を近似し、中間保存の必要性を回避する。両アルゴリズムについては、使用するフィルター、初期値及び定義を含めて、以下に詳細に記述する。
【0080】
B.データ保存を伴う回帰法(RM)の概要
表記及び定義:
サンプルベクトル
【0081】
【数20】
【0082】
電流の場合
【0083】
【数21】
【0084】
電圧の場合
【0085】
【数22】
【0086】
最適化されたサンプルサイズで
【0087】
【数23】
【0088】
初期化:k=0
【0089】
【数24】
【0090】
計算:k>0
【0091】
【数25】
【0092】
C.再帰的回帰法(RRM)の概要
定義:
【0093】
【数26】
【0094】
初期化:k=0
【0095】
【数27】
【0096】
初期状態の計算:0≦k<nopt
【0097】
【数28】
【0098】
計算:k≧nopt
【0099】
【数29】
【0100】
D.劣化(SoH)及び温度の評価
データに基づく上記アルゴリズムの出力によって、自動車バッテリー1内のリチウムイオンセルの抵抗分布
【0101】
【数30】
【0102】
が得られる。この分布は、劣化(SoH)及び温度勾配、並びにセル製造及びモジュール設計での公差によって構成される。これらの起源を区別するために、基準分布
【0103】
【数31】
【0104】
を緩められた状態に置く。記号jはそれぞれのサイクルを表している。この基準分布の短期的な変化
【0105】
【数32】
【0106】
は、バッテリー内の温度勾配に帰すことができる。以下の基準分布の間の長期的な変化
【0107】
【数33】
【0108】
は、劣化又はSoHに影響を与える経年変化速度勾配を表している。
【符号の説明】
【0109】
1 自動車バッテリー
2 バッテリーセル
3 グループ
4 温度測定ユニット
5 接続部
6 バッテリーケース
7 測定装置
9 制御装置
11 第1のバッテリーセル
12 第2のバッテリーセル
15 分布関数


図1
図2
図3
【国際調査報告】