(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20230705BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230705BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230705BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20230705BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/485
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578878
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2021097741
(87)【国際公開番号】W WO2021254142
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】202010563797.1
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492602
【氏名又は名称】ランシー ジーダ アドバンスド マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LANXI ZHIDE ADVANCED MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チンフア
(72)【発明者】
【氏名】フー,パン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ビン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB11
5H050FA16
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA16
5H050GA22
5H050GA24
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料及びその製造方法を開示し、前記リチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料は、シリコン系材料を含むコアと、第1の被覆層と第2の被覆層とを含み、前記第1の被覆層は、導電層であり、前記第2の被覆層は、イオン伝導層であり、前記第1の被覆層と前記第2の被覆層は、順序が限定されない。本発明にて提供されるシリコン炭素複合材料は、被覆層が複合材料であり、マトリックス材料による導電(又はイオン伝導)能力と、強化相による強化、靭化の性能と組み合わせ、材料が非常に強い耐膨張能力を備えるようにする。二次電池において、割れにくい被覆層は、新生表面がより少ないことを意味し、電解液の消耗を低減し、電池サイクル特性を向上させる。また、本発明の製造方法は、簡単で実施しやすく、大規模産業化生産に適している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系材料を含むコアと、コア表面における第1の被覆層と第2の被覆層とを含むリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料において、前記第1の被覆層は、導電層であり、前記第2の被覆層は、イオン伝導層であり、前記第1の被覆層と前記第2の被覆層は、順序が限定されない、
リチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項2】
前記第1の被覆層は、炭素複合材料、又は炭素複合材料とイオン伝導体複合材料との組み合わせを含み、前記第1の被覆層の総質量を100%とすると、前記炭素複合材料の質量百分率は90~100%である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項3】
前記第2の被覆層は、イオン伝導体複合材料、又はイオン伝導体複合材料と炭素複合材料との組み合わせを含み、前記第2の被覆層の総質量を100%とすると、前記イオン伝導体複合材料の質量百分率は90~100%である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項4】
前記シリコン炭素複合材料の総質量を100%として計算すると、前記シリコン系材料のコアの質量百分率は80~99%である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項5】
前記第1の被覆層の炭素複合材料と前記第2の被覆層の炭素複合材料は、それぞれ独立して、炭素強化相と炭マトリックスとを含み、前記炭素強化相は、前記炭マトリックスと複合化されて鉄筋コンクリート様構造を形成し、好ましくは、前記炭素強化相と炭マトリックスとの質量比は、0.1~1:1であり、好ましくは、前記炭素強化相は、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、多孔質炭素のうちの1つ又は複数の組み合わせを含み、好ましくは、前記炭マトリックスは、瀝青炭、樹脂炭、気相分解炭のうちの1つ又は複数の組み合わせを含む、
請求項2又は3に記載のリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項6】
前記第1の被覆層のイオン伝導体複合材料と前記第2の被覆層のイオン伝導体複合材料は、それぞれ独立して、イオン強化相とイオンマトリックスとを含み、前記イオン強化相は、前記イオンマトリックスと有機的に複合化されて鉄筋コンクリート様構造を形成し、好ましくは、前記イオン強化相と前記イオンマトリックスとの質量比は、0.1~1:1であり、好ましくは、前記イオン強化相は、繊維、ウィスカー、粒子のうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、前記イオンマトリックスは、高速イオン伝導体材料を含み、好ましくは、前記イオンマトリックスは、LISICON型固体電解質、NASICION型固体電解質、ペロブスカイト型固体電解質、ガーネット型固体電解質、硫化物固体電解質、PEO系ポリマー電解質からなる群から選ばれる1つ又は複数の組み合わせである、
請求項2又は3に記載のリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項7】
前記繊維は、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、Al
2O
3繊維、SiC繊維、BN繊維、Si
3N
4繊維、TiC繊維、TiN繊維、B
4C繊維、セラミック繊維からなる群から選ばれる1つ又は複数を含み、前記ウィスカーは、SiCウィスカー、K
2TiO
3ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、CaSO
4ウィスカー、CaCO
3ウィスカー、Al
2O
3ウィスカー、ZnOウィスカー、MgOウィスカーからなる群から選ばれる1つ又は複数であり、前記粒子は、SiC粒子、Al
2O
3粒子、BN粒子、Si
3N
4粒子、TiC粒子、B
4C粒子からなる群から選ばれる1つ又は複数である、
請求項6に記載のリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項8】
前記コアは、リチウム化合物をさらに含み、好ましくは、リチウム化合物は、Li
2Si
2O
5、Li
2SiO
3、Li
4SiO
4のうちのいずれか1つ又は複数を含み、好ましくは、Cu-Kα線のX線回折において2θ=26.9±0.2°に帰属されるLi
2SiO
3のピーク強度が最も強い、
請求項1又は4に記載のリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項9】
前記第1の被覆層の厚さは、2~1000nmで、好ましくは5~200nmであり、前記第2の被覆層の厚さは、1~100nmで、好ましくは2~20nmである、
請求項1に記載のリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料。
【請求項10】
前駆体工程と、第1の被覆層の被覆工程と、プレリチウム化工程と、第2の被覆層の被覆工程とを含み、
前記前駆体工程は、シリコン原料で化学気相堆積又は高温真空堆積を行ってSiO
x(0<x<2)前駆体を得ることであり、
前記第1の被覆層の被覆工程は、SiO
x前駆体に対して化学気相堆積法で導電層被覆することであり、
前記プレリチウム化工程は、前記被覆された材料にリチウムを挿入することで、ケイ酸リチウムをケイ素酸化物の内部で生成して、リチウムドープされた活性粒子を得ることであり、
前記第2の被覆層の被覆工程は、リチウムドープされた活性粒子をイオン強化相及びイオンマトリックスと混合し、純水に分散させて混合スラリーを獲得し、続いて混合スラリーを濾過し、乾燥してイオン伝導層の被覆を行うことであり、
又は、
前記前駆体工程は、シリコン原料で化学気相堆積又は高温真空堆積を行ってSiO
x(0<x<2)前駆体を得ることであり、
前記第1の被覆層の被覆工程は、SiO
x前駆体をイオン強化相及びイオンマトリックスと混合し、純水に分散させて混合スラリーを形成し、続いて混合スラリーを濾過し、乾燥してイオン伝導層の被覆を行うことであり、
前記プレリチウム化工程は、前記被覆された材料にリチウムを挿入することで、ケイ酸リチウムをケイ素酸化物の内部で生成して、リチウムドープされた活性粒子を得ることであり、
前記第2の被覆層の被覆工程は、リチウムドープされた活性粒子に対して化学気相堆積法で導電層被覆することである、
リチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料の製造方法。
【請求項11】
前駆体工程と、第1の被覆層の被覆工程と、第2の被覆層の被覆工程とを含み、
前記前駆体工程は、シリコン原料で化学気相堆積又は高温真空堆積を行ってSiO
x(0<x<2)前駆体を得ることであり、
前記第1の被覆層の被覆工程は、SiO
x前駆体に対して化学気相堆積法で導電層被覆することであり、
前記第2の被覆層の被覆工程は、導電層被覆されたSiO
x前駆体をイオン強化相及びイオンマトリックスと混合し、純水に分散させて混合スラリーを獲得し、続いて混合スラリーを濾過し、乾燥してイオン伝導層の被覆を行うことであり、
又は、
前記前駆体工程は、シリコン原料で化学気相堆積又は高温真空堆積を行ってSiO
x(0<x<2)前駆体を得ることであり、
前記第1の被覆層の被覆工程は、SiO
x前駆体をイオン強化相及びイオンマトリックスと混合し、純水に分散させて混合スラリーを形成し、続いて混合スラリーを濾過し、乾燥してイオン伝導層の被覆を行うことであり、
前記第2の被覆層の被覆工程は、イオン伝導層により被覆されたSiO
x前駆体に対して化学気相堆積法で導電層被覆することである、
リチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池材料の分野に関し、具体的には、リチウム二次電池用のシリコン炭素負極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の負極材料として炭素材料に代わるシリコン系材料が学術界や産業界の研究のホットスポットになっているが、リチウム合金化過程におけるシリコンの体積膨張効果が特に深刻であり、電極材料の深刻な白亜化、電極構造の崩壊、及び活性材料と集電体との電気的接触が失われることになり、それにより電池サイクル特性が悪くなる。
【0003】
体積膨張の問題を解決するためには、炭素材料におけるシリコンの含有量を制御し、シリコンの体積をナノオーダーに減少させるか、又は炭素とシリコンとの最適なマッチングを達成するために、黒鉛の素地、形態を変化させるか、又は他の物質でシリコンを被覆して、膨張後の復元を促進するか、また、シリコンと金属又は非金属とを複合して複合材料を構成し、体積変化により生じる応力をよりよく解放し、体積が膨張する空間を提供することにより達成することができる。
【0004】
実践によると、理想的な電気化学的特性を達成するために、複合材料におけるシリコン粒子の粒子径は200~300nmを超えることができないことが明らかであるが、比表面積、粒子径分布、不純物、及び表面不動態化層の厚さなどの肝要な指標は、技術的障壁がいずれも非常に高く、現在、いずれも実現されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する強度が低く、倍率が低く、サイクルが悪いという欠点を解消するために、本発明は、強度が高く、倍率が高く、サイクルが長いリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料及びこの材料の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施例では、本願は、シリコン系材料を含むコアと、コア表面における第1の被覆層と第2の被覆層とを含み、第1の被覆層は、導電層であり、第2の被覆層は、イオン伝導層であり、第1の被覆層と第2の被覆層は、順序が限定されないシリコン炭素複合材料を提供する。
【0007】
別の実施例では、本願は、前駆体工程と、第1の被覆層の被覆工程と、プレリチウム化工程と、第2の被覆層の被覆工程とを含む上記シリコン炭素複合材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
従来技術に比べて、本発明にて提供されるリチウム二次電池用のシリコン炭素負極材料及びその製造方法は、下記の有益な効果を有する。
【0009】
(1)材料構造の面で、被覆層が複合材料であるため、マトリックス材料による導電(又はイオン伝導)能力と、強化相の強化、靭化の性能と組み合わせ、被覆層がシリコン系コアの膨張後に割れにくくなり、二次電池において、割れにくい被覆層は、新生表面がより少ないことを意味し、電解液の消耗を低減し、電池サイクル特性を向上させる。
【0010】
(2)炭素複合材料の被覆層は、コアの体積膨張を効果的に緩和し、かつ電子導電性を向上させることができ、一方、イオン伝導体複合材料の被覆層は、イオン伝導チャネルを提供し、材料のイオン伝導能力を強化でき、それにより負極材料は、長耐用年数、高倍率のリチウムイオン電池を製造することができる。
【0011】
(3)製造プロセスの面で、導電層のみを被覆すると、材料の加工性能が悪く、スラリーが不安定であるが、初回効率が高く、イオン伝導層のみを被覆すると、シリコン系コアの体積膨張を緩和することができず、サイクル安定性が非常に悪いが、材料の加工性能がよく、スラリーが最も安定する。二重被覆することで、両者の利点を組み合わせて材料性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本願の一部を構成する明細書の図面は、本発明に対する更なる理解を提供するために用いられ、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するために用いられ、本発明を不当に限定するものではない。
【
図1】本発明の実施例1により製造されたシリコン炭素複合材料のXRDクロマトグラムである。
【
図2】本発明の実施例2により製造されたシリコン炭素複合材料のXRDクロマトグラムである。
【
図3】本発明の実施例11により製造されたシリコン炭素複合材料のXRDクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、本願における実施例及び実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。以下、本願の実施例について詳細に記述する。本願の実施例は、本願を限定するものと解釈されるべきではない。
【0014】
本願では、量、比率、及び他の数値を範囲形式で表し、理解されるように、この範囲形式は、便宜及び簡潔にするために使用され、柔軟に理解すべきであり、範囲の制限として明示的に指定された数値を包含するだけでなく、前記範囲内に含まれる全ての個々の数値又はサブ範囲も包含し、各数値及びサブ範囲が明示的に指定されることと同様である。
【0015】
本願では、D50は、材料の累積体積パーセントが50%に達した時に対応する粒子径であり、単位がμmである。
【0016】
特許請求の範囲及び具体的な実施形態では、「のうちの1つ又は複数の組み合わせ」、「のうちの少なくとも1つ」という用語、又は他の類似の用語により連なれたアイテムのリストは、列挙されたアイテムの任意の組み合わせを意味することができる。
【0017】
例えば、アイテムA及びBが列挙される場合、「A及びBのうちの1つ又は複数の組み合わせ」という句は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBを意味し、アイテムA及びBが列挙される場合、「A及びBのうちの少なくとも1つ」という句は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBを意味する。アイテムAは、単一の要素又は複数の要素を含んでもよく、アイテムBは、単一の要素又は複数の要素を含んでもよい。
【0018】
一、シリコン炭素複合材料
本願の実施例は、シリコン系材料を含むコアと、コア表面における第1の被覆層と第2の被覆層とを含み、第1の被覆層は、導電層であり、第2の被覆層は、イオン伝導層であり、第1の被覆層と第2の被覆層は、順序が限定されず、具体的には、前記第1の被覆層は、コア表面に被覆され、第2の被覆層は、第1の被覆層の表面に被覆され、又は、第2の被覆層は、コア表面に被覆され、第1の被覆層は、第2の被覆層の表面に被覆されるリチウム二次電池用のシリコン炭素複合材料を提供する。
【0019】
いくつかの実施例では、第1の被覆層は、炭素複合材料、又は炭素複合材料とイオン伝導体複合材料との組み合わせを含み、第1の被覆層の総質量を100%とすると、炭素複合材料の質量百分率は90~100%で、好ましくは97~100%であり、第1の被覆層の導電及び耐膨張能力を保証する。
【0020】
いくつかの実施例では、第2の被覆層は、イオン伝導体複合材料、又はイオン伝導体複合材料と炭素複合材料との組み合わせを含み、第2の被覆層の総質量を100%とすると、イオン伝導体複合材料の質量百分率は90~100%で、好ましくは97~100%であり、第2の被覆層のイオン伝導能力及びSEI膜を安定化する能力を保証する。
【0021】
いくつかの実施例では、シリコン炭素複合材料の総質量を100%として計算すると、シリコン系材料のコアの質量百分率は80~99%で、好ましくは92~96%であり、この範囲内で、負極材料は、高い比容量及び優れたサイクル特性を示す。
【0022】
いくつかの実施例では、炭素複合材料は、炭素強化相と炭マトリックスとを含み、炭素強化相は、炭マトリックスと複合化されて鉄筋コンクリート様構造を形成し、シリコン系材料のコアの膨張応力は、炭素複合材料に伝達される時、連続相炭マトリックスにより炭素強化相に伝送され、炭素強化相は、応力を吸収又は二等分することで材料粒子が割れないようにし、いくつかの実施例では、炭素強化相と炭マトリックスとの質量比は、0.1~1:1で、好ましくは0.15~0.5:1である。
【0023】
質量比が0.1:1未満である場合に、炭素強化相が少なすぎるため、炭素複合材料の強化効果が悪く、材料構造が崩れやすくなり、質量比が1:1よりも大きい場合に、炭マトリックスが少なすぎるため、材料の導電性が悪く、かつ炭マトリックスが強化相を固定及び接着することができない。
【0024】
いくつかの実施例では、炭素強化相は、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、多孔質炭素のうちの1つ又は複数の組み合わせを含み、炭マトリックスは、瀝青炭、樹脂炭、気相分解炭のうちの1つ又は複数の組み合わせを含む。
【0025】
いくつかの実施例では、イオン伝導体複合材料は、イオン強化相と、イオンマトリックスとを含む。イオン強化相は、イオンマトリックスと有機的に複合化されて鉄筋コンクリート様構造を形成する。イオン伝導体複合材料は、イオンマトリックスの高強度及びイオン強化相の高靭性の利点と組み合わせ、応力拡散を効果的に阻止し、体積膨張をよりよく緩和し、構造強度を補強する。高強度イオンマトリックスは、被覆層の基本構造を維持し、かつ主なイオン伝導チャネルを提供する。
【0026】
いくつかの実施例では、イオン強化相とイオンマトリックスとの質量比は、0.1~1:1で、好ましくは0.15~0.5:1である。質量比が0.1:1よりも小さい場合に、イオン強化相が少なすぎるため、イオン複合材料の強化効果が悪く、イオン伝導体複合材料層の強度が高くすぎ、脆性が大きく、割れやすくなり、質量比が1:1よりも大きい場合に、イオン伝導体マトリックスが少なすぎ、提供されるイオン伝導チャネルが減少し、材料の倍率性能の向上が顕著でなくなる。
【0027】
いくつかの実施例では、イオン強化相は、繊維、ウィスカー、粒子のうちの少なくとも1つを含み、好ましくはアラミド繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、Al2O3繊維、SiC繊維、BN繊維、Si3N4繊維、TiC繊維、TiN繊維、B4C繊維、セラミック繊維からなる群のうちの1つ又は複数であり、前記ウィスカーは、SiCウィスカー、K2TiO3ウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、CaSO4ウィスカー、CaCO3ウィスカー、Al2O3ウィスカー、ZnOウィスカー、MgOウィスカーからなる群から選ばれる1つ又は複数であり、前記粒子は、SiC粒子、Al2O3粒子、BN粒子、Si3N4粒子、TiC粒子、B4C粒子からなる群から選ばれる1つ又は複数である。
【0028】
いくつかの実施例では、イオンマトリックスは、高速イオン伝導体材料を含み、LISICON型固体電解質、NASICION型固体電解質、ペロブスカイト型固体電解質、ガーネット型固体電解質、硫化物固体電解質、PEO系ポリマー電解質のうちの1つ又は複数の組み合わせを含むが、これらに限定されず、好ましくはAl2O3、TiO2、ZrO2、V2O5、ZnO、CoO、P2O5、B2O3、SiO2、AlPO4、Co3(PO4)3、Al(PO3)3、LiPO3、Co(PO3)2、LiF、AlF3、FeF2、Li3PO4、LiM2(PO4)3(M=Ge、Ti、Zr、Sn)、Li3xLa2/3-xTiO3(x>0)、Li5La3A2O12(A=Nb、Ta、Sb、Bi)、Li7La3B2O12(B=Zr、Sn)、Li2ZnGeS4、Li10GeP2O12のうちの1つ又は複数の組み合わせである。
【0029】
いくつかの実施例では、コアは、リチウム化合物をさらに含み、Cu-Kα線のX線回折において2θ=26.9±0.2°に帰属されるLi2SiO3のピーク強度が最も強く、リチウム化合物ドープの目的は、初回のクーロン効率を向上させることであり、主にケイ酸リチウム塩の形態でシリコン系材料に存在し、ケイ酸リチウムは、Liドープ量の増加に伴い、Li2Si2O5、Li2SiO3、Li4SiO4に順に変化し、過剰なLiドープは、スラリーの不安定をもたらし、発明者らが意外に見出したことは、Li2SiO3含有量が最も高い場合、材料の初回のクーロン効率が最も高く、かつ材料の加工可能性が最もよいということである。
【0030】
いくつかの実施例では、第1の被覆層の厚さは、2~1000nmで、好ましくは5~200nmであり、第2の被覆層の厚さは、1~100nmで、好ましくは2~20nmであり、被覆層の厚さが所定の範囲にあると、シリコン炭素複合材料の高容量及び高倍率性能がさらに改善される。
【0031】
二、製造方法
本発明にて提供される製造方法は、前駆体工程と、第1の被覆層の被覆工程と、プレリチウム化工程と、第2の被覆層の被覆工程とを含み、
前駆体工程は、シリコン原料で化学気相堆積又は高温真空堆積を行ってSiOx(0<x<2)前駆体を得ることであり、
第1の被覆層の被覆工程は、SiOx前駆体又はリチウムドープ活性粒子に対して化学気相堆積法で導電層被覆することであり、
(任意に)プレリチウム化工程は、前記被覆された材料にリチウムを挿入することで、ケイ酸リチウムをケイ素酸化物の内部で生成して、リチウムドープされた活性粒子を得ることであり、
第2の被覆層の被覆工程は、SiOx前駆体又はリチウムドープされた活性粒子をイオン強化相及びイオンマトリックスと混合し、純水に均一に分散させ、続いて混合溶液を濾過し、乾燥してイオン伝導層の被覆を行うことであり、
第1の被覆層の被覆工程と第2の被覆層の被覆工程の順序は、入れ替えてもよく、具体的には、製造方法の工程の順序は、前駆体工程、第1の被覆層の被覆工程、プレリチウム化工程、第2の被覆層の被覆工程、又は前駆体工程、第2の被覆層の被覆工程、プレリチウム化工程、第1の被覆層の被覆工程である。
【0032】
いくつかの実施例では、前駆体工程は、シリコン原料を化学気相堆積(CVD)炉又は真空炉に置き、温度900~1300℃、気圧0~5000Paの条件で2~28(例えば、2~8時間)時間加熱してSiOガスを生成し、続いてSiOガスを所定温度でブロックに冷却し、破砕し、篩分けして、粒子径D50が1~10umであるSiOx(0<x<2)前駆体を得ることであり、そのうち、シリコン原料は、二酸化ケイ素粉末と単体ケイ素粉末との混合物を用いることが好ましく、シリコン原料の物性を限定しない。
【0033】
いくつかの実施例では、第1の被覆層の被覆工程は、炭素強化体を溶媒に溶解し、濾過、乾燥方式により、炭素強化体をSiOx前駆体又はリチウムドープされた活性粒子表面に担持し、続いて気相堆積により炭マトリックスを被覆し、そのうち、気相堆積温度は、500~1000℃であり、溶媒は、純水、エタノール、トルエン、キシレン又はこれらの組み合わせを含む。
【0034】
いくつかの実施例では、プレリチウム化工程は、気相CVD法、熱ドーピング法、酸化還元法、又は電気化学法のうちの1つ又は複数の方法により、リチウムシリケートをドープするという目的を達成する。
【0035】
いくつかの実施例では、二次被覆工程は、SiOx前駆体又はリチウムドープされた活性粒子を溶媒に分散させ、所定量のイオン強化体及びイオンマトリックスを加え、均一に撹拌した後、濾過し、乾燥することであり、そのうち、溶媒は、純水、エタノール、トルエン、キシレン又はこれらの組み合わせを含む。
【0036】
本発明により提案されたこの材料の製造過程及び性能特性をよりよく理解するために、以下、具体的な実施例と組み合わせて説明する。下記の実施例における実験方法は、特に説明しない限り、いずれも通常の方法であり、試薬及び材料は、特に説明しない限り、いずれも商業的に入手可能である。
【0037】
三、実施例
(実施例1)
所定量のSi粉末をSiO2粉末と均一に混合し、真空炉に加えて熱処理し、500Paの真空度の条件で1200℃に加熱し、熱処理時間を1hとし、上記粉末を、高温及び真空条件で昇華し、蒸気凝縮し、破砕し、篩分けして、粒子径が1~10μmの一酸化ケイ素前駆体粒子を得た。
【0038】
以上で得られた粒子を純水に均一に分散させ、さらに1%質量分率のCNT(カーボンナノチューブ)を加え、均一に撹拌し続けた後に濾過し、乾燥して、表面にCNTが付着された一酸化ケイ素粒子を獲得し、さらに、前のステップで得られた粒子をCVD炉に入れ、950℃に加熱し、かつ流量が9L/minのアセチレン、流量が9L/minの水素ガス、及び流量が18L/minのアルゴンを流し、堆積時間を1hとした。アセチレンが高温で分解して熱分解炭素を形成してCNT及び粒子の表面に被覆し、第1の被覆層を得た。
【0039】
この第1の被覆層は、炭素複合材料であり、そのうち、CNTが強化相であり、熱分解炭素がマトリックスであり、かつCNTと熱分解炭素との質量比が0.3:1であり、第1の被覆層の厚さが60nmであった。
【0040】
以上で得られた複合粉末を、所定量のLi3N粉末と均一に混合しながら高温炉に加えて熱処理し、Li3Nが700~900℃の高温で1~3h熱分解処理し、活性リチウムを一酸化ケイ素の内部に挿入してプレリチウム化を完了し、リチウムドープされた負極活物質粒子を得た。
【0041】
この負極活物質粒子をX線回折分析装置(D8 ADVANCE型)で分析し、
図1は、実施例1により製造されたXRD回折クロマトグラムであり、X線回折により得られた回折ピークで、回折角2θが26.9°付近に有するLi
2SiO
3の回折ピークが最も大きな強度を示すことが分かった。
【0042】
以上で得られたLiドープ粒子を純水に均一に分散させ、さらに3%質量分率のリン酸リチウムウィスカーとリン酸リチウム粒子(リン酸リチウムウィスカーとリン酸リチウム粒子との質量比は0.2:1である)を加え、均一に撹拌し続けた後に濾過し、乾燥し、リン酸リチウムウィスカーとリン酸リチウム粒子が粒子表面に付着され、第2の被覆層を得た。この第2の被覆層は、イオン複合材料であり、そのうち、ウィスカーが強化相であり、リン酸リチウム(高速イオン伝導体材料)がマトリックスであり、かつ第2の被覆層の厚さが6nmであった。誘導結合プラズマ分光分析装置(ICP、Optima2100DV)で測定したところ、シリコン系材料コアの質量比は95%であった。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同様の製造方法で操作し、イオン伝導層(第2の被覆層)を先に被覆し、導電層(第1の被覆層)をその後に被覆することで違った。
【0044】
具体的な過程は、以下のとおりである。
【0045】
所定量のSi粉末をSiO2粉末と均一に混合し、真空炉に加えて熱処理し、500Paの真空度の条件で1200℃に加熱し、熱処理時間を1hとし、上記粉末を、高温及び真空条件で昇華し、蒸気凝縮し、破砕し、篩分けして、粒子径が1~10μmの一酸化ケイ素前駆体粒子を得た。
【0046】
以上で得られた一酸化ケイ素前駆体粒子を純水に均一に分散させ、さらに3%質量分率のリン酸リチウムウィスカーとリン酸リチウム粒子(リン酸リチウムウィスカーとリン酸リチウム粒子との質量比は0.2:1である)を加え、均一に撹拌し続けた後に濾過し、乾燥し、リン酸リチウムウィスカーとリン酸リチウム粒子が粒子表面に付着され、第2の被覆層を得た。この第2の被覆層は、イオン複合材料であり、そのうち、ウィスカーが強化相であり、リン酸リチウムがマトリックスであり、かつ第2の被覆層の厚さが6nmであった。
【0047】
以上の第2の被覆層が被覆された粒子を、所定量のLi
3N粉末と均一に混合しながら高温炉に加えて700~900℃で1~3h熱処理し、Li
3Nが高温で熱分解し、活性リチウムを一酸化ケイ素の内部に挿入してプレリチウム化を完了し、リチウムドープされた負極活物質粒子を得た。この負極活物質粒子をX線回折分析装置(D8 ADVANCE型)で分析し、
図2は、実施例2により製造されたXRD回折クロマトグラムであり、X線回折により得られた回折ピークで、回折角2θが26.9°付近に有するLi
2SiO
3の回折ピークで最も大きな強度を示すことが分かった。
【0048】
以上で得られたLiドープ粒子を純水に均一に分散させ、さらに1%質量分率のCNT(カーボンナノチューブ)を加え、均一に撹拌し続けた後に濾過し、乾燥して、表面にCNTが付着された一酸化ケイ素粒子を得、さらに、前のステップで得られた粒子をCVD炉に入れ、950℃に加熱し、かつ流量が9L/minのアセチレン、流量が9L/minの水素ガス、及び流量が18L/minのアルゴンを流し、堆積時間を1hとした。アセチレンが高温で分解して熱分解炭素を形成してCNT及び粒子の表面に被覆し、第1の被覆層を得た。
【0049】
この第1の被覆層は、炭素複合材料であり、そのうち、CNTが強化相であり、熱分解炭素がマトリックスであり、かつCNTと熱分解炭素との質量比が0.3:1であり、第1の被覆層の厚さが60nmであった。
【0050】
(実施例3~6)
実施例1と同様の製造方法で操作し、被覆層の強化相、マトリックス及び強化相とマトリックスとの質量比が異なることで違った。
【0051】
(実施例7)
実施例1と同様の製造方法で操作し、第1の被覆層にリン酸リチウムウィスカーとリン酸リチウム粒子からなるイオン伝導体複合材料をさらに含有することで違った。
【0052】
(実施例8)
実施例1と同様の製造方法で操作し、第2の被覆層にCNTと熱分解炭素からなる導電性複合材料をさらに含有することで違った。
【0053】
(実施例9~10)
実施例1と同様の製造方法で操作し、第1の被覆層に0.2:1の質量比でリン酸リチウムウィスカーとリン酸リチウム粒子からなるイオン伝導体複合材料をさらに含有し、第2の被覆層に0.3:1の質量比でCNTと熱分解炭素からなる導電性複合材料をさらに含有することで違った。
【0054】
(比較例1)
所定量のSi粉末をSiO2粉末と均一に混合し、真空炉に加えて熱処理し、500Paの真空度の条件で1200℃に加熱し、熱処理時間を1hとし、上記粉末を、高温及び真空条件で昇華し、蒸気凝縮し、破砕し、篩分けして、粒子径が1~10μmの一酸化ケイ素前駆体粒子を得た。前駆体粒子をCVD炉で950℃に加熱し、炉内真空度を300Paに制御し、かつ流量が9L/minのアセチレン及び流量が18L/minのアルゴンを流し、堆積時間を1hとし、炭素被覆シリコン粒子を獲得し、かつ炭素被覆層の厚さが60nmであった。
【0055】
炭素被覆シリコン粒子を所定量のLi3N粉末と均一に混合しながら高温炉に加えて熱処理し、Li3Nが高温で熱分解し、活性リチウムを一酸化ケイ素の内部に挿入してプレリチウム化を完了し、リチウムドープされた負極活性粒子を得た。リチウムドープされた負極活性粒子を1.5wt%のLiPO3と混合し、純水を加え、均一に撹拌した後に濾過し、乾燥して、所望のSiO/C/LiPO3複合粉末を獲得し、そのうち、LiPO3被覆層の厚さが6nmであった。
【0056】
比較例1と実施例1との違いは、比較例1の被覆層がいずれも連続相であることである。
【0057】
(実施例11)
その他のステップと工程パラメータは、実施例1と同じであるが、炭素被覆シリコン粒子に対する窒化リチウムの重量比を変更することで、Liのドープ程度を変更することで違った。実施例11の負極活物質粒子をX線回折分析装置(D8 ADVANCE型)で分析し、
図3は、実施例11により製造されたXRD回折クロマトグラムであり、X線回折により得られた回折ピークで、回折角2θが24.5°付近に有するLi
2Si
2O
5の回折ピークで最も大きな強度を示すことが分かった。
【0058】
試験方法
1、初回のクーロン効率試験。製造された負極材料粉末:SP(カーボンブラック):CNT(カーボンナノチューブ):PAA(ポリアクリル酸)を、質量比80:9:1:10で混合し、溶媒として脱イオン水を適量加え、マグネチックスターラーでペースト状になるまで8h連続して撹拌した。撹拌したスラリーを厚さ9μmの銅箔上に注ぎ、実験型コーティング機で塗布した後に85℃真空(-0.1MPa)条件で6h乾燥し、負極電極シートを得た。
【0059】
電極シートを手動ペアロール機で100μmに圧延し、さらにパンチャーで直径12mmの円シートを作製し、85℃真空(-0.1MPa)条件で8h乾燥し、秤量して活物質重量を計算した。グローブボックス内でCR2032型ボタン電池を組み立て、金属リチウム片を対極とし、ポリプロピレン微孔質膜をセパレータとし、1mol/LのLiPF6 in EC:DEC=1:1 Vol% with 5.0% FECを電解液とした。作製したボタン電池を室温にて12h静置し、さらに藍電(LAND)電池試験システムにて定電流充放電試験を行い、0.1C電流で充放電を行い、脱リチウムカットオフ電圧を1.5Vとし、負極材料の初回効率を得た。
【0060】
2、膨張率試験。CR2032型ボタン電池を上記方法で製造し、藍電(LAND)電池試験システムで電池に対して充放電試験を行い、6h静置した後、0.05Cで0.005Vまで放電し、さらに0.01Cで0.005Vまで放電し、5min静置した後、0.05C定電流で1.5Vまで充電し、5min静置した後、上記ステップを2回重複して行い、続いて0.25Cで0.005Vまで放電し、5min静置した後、0.25Cで1.5Vまで定電流充電し、20回サイクルした後、グローブボックス内でボタン電池を取り外し、続いて電極シートの厚みを測定した。膨張率計算方式は、(サイクル後電極シート厚さ-新鮮な電極シート厚さ)/新鮮な電極シート厚さ×100%である。
【0061】
3、電子導電率試験。4線2端子法で、測定対象の抵抗の両端電圧と流れる電流を測定することで抵抗を決定し、測定対象の抵抗の高さ及び底面積と組み合わせて導電率を計算した。所定量の粉末を試験用金型に加え、軽く振り平いた後、さらに金型における当て物を試料に置き、試料をセットした後に金型を電子プレス試験機の作業台面に置き、5mm/minの速度で500kg(159MPa)まで上げ、圧力を60s保持し、さらに0まで放圧し、試料を5000±2kg(5000kgに昇圧した後に約15~25sである。)に定圧力で保持した時に試料の圧力を記録し、かつ試料の変形高さを読み取り、その時の抵抗測定装置による表示値を記録し、電子導電率を式(I)で計算することができる。
C=1/p=L/S*R (I)
【0062】
4、リチウムイオン導電率試験。CR2032型ボタン電池を上記方法で製造し、藍電(LAND)電池試験システムで電池に対して充放電試験を行い、6h静置した後、0.05Cで0.005Vまで放電し、さらに0.01Cで0.005Vまで放電し、5min静置した後、0.05Cで1.5Vまで定電流充電し、5min静置した後、上記ステップを2回重複して行い、続いて電気化学ワークステーションでボタン電池に対して電気化学インピーダンス分光試験を行った。
【0063】
周波数範囲は、0.01~105Hzであり、電圧振幅は、0.005Vであり、試験により得られたデータポイントから最後の5つのデータポイントを取り、低周波数における回転速度w^-0.5に対するZ’の線形勾配を獲得し、この勾配値は、warburgパラメータであり、同等の試験条件でwarburgパラメータが小さいほどリチウムイオン導電率が高いことを示した。
【0064】
5、容量保持率試験。製造された負極材料粉末を黒鉛負極と混合し(質量比20:80)、混合負極粉末を獲得し、さらに混合負極粉末、SP、CNT、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)を、質量比95.2:0.85:0.15:1.2:2.6で混合し、マグネチックスターラーでペースト状になるまで8h連続して撹拌した。
【0065】
撹拌した負極スラリーを厚さ9μmの銅箔上に注ぎ、実験型コーティング機で塗布した後に85℃真空(-0.1MPa)条件で6h乾燥し、負極電極シートを得た。次に、811正極材料、SP、CNT、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を質量比90:2:1:7で混合し、溶媒としてNMP(N-メチルピロリドン)を適量加え、マグネチックスターラーでペースト状になるまで8h連続して撹拌した。
【0066】
撹拌したスラリーを厚さ16μmのアルミニウム箔上に注ぎ、実験型コーティング機で塗布した後に85℃真空(-0.1MPa)条件で6h乾燥し、正極電極シートを得た。正電極シート、負電極シートを手動ペアロール機で100μmに順次圧延し、さらにパンチャーで直径12mmの円シートを作製し、85℃真空(-0.1MPa)条件で8h乾燥し、秤量して活物質重量を計算した。グローブボックス内でCR2032型ボタン電池を組み立て、ポリプロピレン微孔質膜をセパレータとし、1mol/LのLiPF6 in EC:DEC=1:1 Vol% with 5.0% FECを電解液とした。
【0067】
作製したボタン電池全体を室温にて12h静置し、さらに藍電試験システムにて定電流充放電試験を行い、0.25C電流で充放電を行い、充放電カットオフ電圧を3.0~4.25Vとした。100周目の放電容量/1周目の放電容量を×100%にし、容量保持率を算出した。
【0068】
6、倍率性能試験。作製したボタン型電池全体を室温で12h静置し、さらに藍電試験システムにて定電流充放電試験を行い、充放電カットオフ電圧を3.0~4.25Vとし、まず0.25C電流で充放電を行い、3回サイクルした。次に0.5C電流で充放電を行い、3回サイクルした。最後に1Cの電流で充放電を行い、3回サイクルした。9周目の放電容量/1周目の放電容量を×100%にし、容量保持率を算出し、数値が高いほどレート性能がよいと考えられる。
【0069】
各実施例及び比較例の試験結果を表1及び表2に示す。
【0070】
【表1】
表1中の炭素繊維は、直径が0.1~1μmで、長さが1~5μmであり、樹脂炭は、フェノール樹脂炭又はエポキシ樹脂炭であり、両者の対応する実施例で適用した結果は、明らかな差がなく、多孔質炭素は、活性炭である。
【0071】
表1から分かるように、被覆層が鉄筋コンクリート様構造を有する複合材料である場合に、材料は、低い膨張率及び優れた電気化学的特性を示し、かつ強化相及びマトリックス質量比を制御することで、材料の総合性能を最も良好にすることができる。実施例11及び実施例1から分かるように、適切なLiドープ量でよりよい初回のクーロン効率が得られる。
【0072】
【表2】
表2から分かるように、被覆層が導電性複合材料とイオン伝導体複合材料とを同時に有する場合、材料は、高い電子導電率、イオン導電率及び優れた倍率性能を示し、かつ被覆層中の導電性複合材料とイオン伝導体複合材料との質量比を調節することで、良好な性能を有する負極材料が得られる。
【0073】
上記の実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではなく、前記実施例を参照して本発明について詳細に説明したが、当業者であれば理解されるように、それは依然として前記各実施例に記載の技術的解決手段を修正し、又はそのうちの一部の技術的特徴を均等置換することができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の精神及び範囲から逸脱させることはない。
【国際調査報告】