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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-12
(54)【発明の名称】キャビテーション活動のマッピング
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20230705BHJP
   A61N 7/02 20060101ALN20230705BHJP
【FI】
A61B8/14
A61N7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520557
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 GB2021051492
(87)【国際公開番号】W WO2021255433
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】2009079.1
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522486036
【氏名又は名称】オックスソニックス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】コビエロ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】コーシオス,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】フィン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,エドワード
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C160JJ33
4C160JJ35
4C160JJ38
4C160MM32
4C601BB03
4C601EE09
4C601FF11
4C601FF16
4C601GA18
4C601GA21
4C601GB03
(57)【要約】
被験者の被験者空間域においてキャビテーションを撮像する装置は、複数の変換器エレメントと、制御手段とを備える。制御手段は、焦点領域を有する超音波を生成するように、変換器エレメントの中の少なくとも1つの第1変換器エレメントを制御し、第1グループの変換器エレメントから受動検出信号を受信し、この受動検出信号から、焦点領域におけるキャビテーションのキャビテーション画像を生成し、反射撮像超音波を生成するように、変換器エレメントの中の少なくとも1つの第2変換器エレメントを制御し、第2グループの変換器エレメントから反射撮像検出信号を受信し、反射撮像検出信号から反射画像を生成し、反射画像を被験者空間域の3D画像と位置合わせして、第1グループの変換器エレメントの座標系と3D画像の座標系との間で変換を行い、キャビテーション画像を3D画像と整合するために、この変換をキャビテーション画像に適用するように構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の被験者空間域においてキャビテーションを撮像する装置であって、
複数の変換器エレメントと、制御手段とを備え、
前記制御手段が、
焦点領域を有する超音波を生成するように、前記変換器エレメントの中の少なくとも1つの第1変換器エレメントを制御し、
前記第1グループの変換器エレメントから受動検出信号を受信し、前記受動検出信号から、前記焦点領域におけるキャビテーションのキャビテーション画像を生成し、
反射撮像超音波を生成するように、前記変換器エレメントの内少なくとも1つの第2変換器エレメントを制御し、
前記第2グループの変換器エレメントから反射撮像検出信号を受信し、前記反射撮像検出信号から反射画像を生成し、
前記反射画像を前記被験者空間域の3D画像と位置合わせし、前記第1グループの変換器エレメントの座標系と、前記3D画像の座標系との間で変換を行い、
前記キャビテーション画像を前記3D画像と整合するために、前記変換を前記キャビテーション画像に適用する、
ように構成される、装置。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記第1グループの変換器エレメントが、前記第2グループの変換器エレメントに対して固定位置にある、システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のシステムであって、更に、プローブを備え、前記第1グループの変換器エレメントおよび前記第2グループの変換器エレメントが、前記プローブ上に実装される、システム。
【請求項4】
前出の請求項のいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第1グループの変換器エレメントが、変換器エレメントの直線状または凸状線形アレイである、システム。
【請求項5】
前出の請求項のいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第2グループの変換器エレメントが、変換器エレメントの直線状または凸状線形アレイである、システム。
【請求項6】
前出の請求項のいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第1グループの変換器エレメントの中の少なくとも1つが、前記第2グループの変換器エレメントの中の1つでもある、システム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、前記第1グループの変換器エレメントが、第2グループの変換器エレメントでもある、システム。
【請求項8】
被験者の被験者空間域においてキャビテーションを撮像する方法であって、
焦点領域を有する集束超音波を生成するステップと、
第1グループの変換器エレメントから受動検出信号を受信し、前記受動検出信号から、前記焦点領域におけるキャビテーションのキャビテーション画像を生成するステップと、
反射撮像超音波を生成するステップと、
第2グループの変換器エレメントから反射撮像検出信号を受信し、前記反射撮像検出信号から反射画像を生成するステップと、
前記反射画像を前記被験者空間域の3D画像と位置合わせし、前記第1グループの変換器エレメントの座標系と、前記3D画像の座標系との間で変換を行うステップと、
前記キャビテーション画像を前記3D画像と整合するために、前記変換を前記キャビテーション画像に適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
被験者の被験者空間域においてキャビテーションを撮像する装置であって、複数の変換器エレメントと、制御手段とを備え、
前記制御手段が、
焦点領域を有する超音波を生成するように、前記変換器エレメントの中の少なくとも1つの第1変換器エレメントを制御し、
前記変換器の第1グループから受動検出信号を受信し、前記受動検出信号から、前記焦点領域におけるキャビテーションのキャビテーション画像を生成し、
反射撮像超音波を生成するように、前記変換器エレメントの中の少なくとも1つの第2変換器エレメントを制御し、
前記第2グループの変換器エレメントから反射撮像検出信号を受信し、前記反射撮像検出信号から、反射身体構造画像を生成し、
前記キャビテーション画像と前記反射身体構造画像とを組み合わせて、前記被験者空間域におけるキャビテーションの3D画像を生成する、
ように構成される、装置。
【請求項10】
請求項9記載のシステムにおいて、前記第1グループの変換器エレメントが、前記第2グループの変換器エレメントに対して、固定位置にある、システム。
【請求項11】
請求項9または請求項10記載のシステムであって、更に、プローブを備え、前記第1グループの変換器エレメントおよび前記第2グループの変換器エレメントが、前記プローブ上に実装される、システム。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第1グループの変換器エレメントが、変換器エレメントの直線状または凸状線形アレイである、システム。
【請求項13】
請求項9から12までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第2グループの変換器エレメントが、変換器エレメントの直線状または凸状線形アレイである、システム。
【請求項14】
請求項9から13までのいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第1グループの変換器エレメントの中の少なくとも1つが、前記第2グループの変換器エレメントの中の1つでもある、システム。
【請求項15】
請求項14記載のシステムにおいて、前記第1グループの変換器エレメントが、前記第2グループの変換器エレメントでもある、システム。
【請求項16】
被験者の被験者空間域においてキャビテーションを撮像する方法であって、
焦点領域を有する超音波を生成するステップと、
第1グループの変換器エレメントから受動検出信号を受信し、前記受動検出信号から、前記焦点領域におけるキャビテーションのキャビテーション画像を生成するステップと、
反射撮像超音波を生成するステップと、
第2グループの変換器エレメントから反射撮像検出信号を受信し、前記反射撮像検出信号から反射身体構造画像を生成するステップと、
前記キャビテーション画像と前記反射身体構造画像とを組み合わせて、前記被験者空間域におけるキャビテーションの3D画像を生成するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用超音波システムに関し、特に、音響(超音波によって誘発される)キャビテーションを使用する処置(treatments)のマッピングおよび監視に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療のための集束超音波(FUS:focused ultrasound)の使用は、これよりも定着している他の治療法に対して、様々な大きな利点がある。これは、安価であり、非侵襲的であり、最小限の副作用で済む。しかしながら、FUSは、信頼性のあるリアル・タイム監視システムがないことから、その幅広い受け入れが阻まれている。
【0003】
特定の圧力閾値よりも上では、伝搬する高振幅音響波が組織を通過すると、自発的に核形成し、小さなナノ・サイズまたはミクロン・サイズの気泡を励起することができる。この現象は、音響キャビテーションとして知られている。キャビテーション核として作用する外生的気泡の追加または注入により、これらが固体粒子の表面上で有核(shell)気泡になっても、または安定気泡になっても[Stride, E. P., & Coussios, C. C. (2010). Cavitation and contrast: The use of bubbles in ultrasound imaging and therapy. Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part H: Journal of Engineering in Medicine, 224(2), 171-191]、より小さい振幅の音響波で、核における音響キャビテーションを発生させることができ、圧力閾値を低くすることが可能になる。所望の用途によっては、所望の生物効果を生じさせるために、キャビテーション気泡(cavitating bubbles)を使用することができる。組織切除の場合、これらの生物効果は、組織の熱壊死または物理的な原因による分割(mechanical fractionation)を生じる可能性がある。薬物送達では、これは、キャビテーションによって誘発されるマイクロストリーミングまたはマイクロポンピング、血管系の浸透、および細胞の穿孔となる可能性があり、これらは全て、組織メンブレンを通過する(across)原薬の移送を補助または強化するか、あるいは標的化薬物送達のための薬物送達担体を破壊する(rupture)ように直接作用する。
【0004】
また、気泡はFUS励起周波数とは異なる周波数範囲にわたる入射超音波の一部を再放出することができるが、これは2つの理由から有用である。第1に、この音響キャビテーションに関連する広帯域音響放出が、切除および薬物送達についての処置効率の指標またはサロゲート・マーカとして役割を果たすことができる。第2に、元のFUS源よりも高い周波数成分を有する放出は、容易に周囲の組織に吸収され易くなり、熱切除における熱の蓄積を増大させる[Coussios CC, Farny CH, Haar GT, Roy RA. “Role of acoustic cavitation in the delivery and monitoring of cancer treatment by high-intensity focused ultrasound (HIFU)”, International Journal of Hyperthermia vol. 23, pp 105-120, 2007]。FUSの分野は広く、集束超音波が関わる全ての生物医療用途およびシステム構成に及ぶが、入射超音波の振幅または密度(intensity)が、診断用超音波撮像システムによって達成されるものよりも高いときには、更に具体的な高密度焦点式超音波(HIFU)という用語が一般に使用される。
【0005】
WO20100052494は、FUS処置中に音響キャビテーションの領域を撮像するシステムを開示する。しかしながら、このシステムはキャビテーションをリアル・タイムで効果的に撮像することはできるが、患者の基準フレームにおける、即ち、患者の身体構造に対するキャビテーションの位置を判定する方法については全く記載していない。キャビテーション活動は、薬物送達における効率、および機械的切除または熱切除の場合における安全性の予測因子(predictor)となるので、3Dにおいてキャビテーションを撮像し可視化することができると、処置の判断および処置後の評価の改良において潜在的な利点が得られ、特に、X線またはMR画像のような、患者の3D立体画像は、一般に、超音波撮像よりも解像度が高くコントラストも高いので、高画質3D画像においてキャビテーションを表示することが可能になる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、被験者の撮像空間域(imaging volume)においてキャビテーションを撮像する装置を提供する。この装置は、複数の変換器エレメントと、制御手段とを備える。制御手段は、焦点領域を有する超音波を生成するように、変換器エレメントの中の少なくとも1つの第1エレメントを制御し、超音波が治療用超音波であってもよく、第1グループの変換器エレメントから受動検出信号を受信し、受動検出信号から、焦点領域におけるキャビテーションのキャビテーション画像を生成し、反射撮像超音波を生成するように、変換器エレメントの中の少なくとも1つの第2エレメントを制御し、第2グループの変換器エレメントから反射撮像検出信号を受信し、反射撮像検出信号から反射画像を生成し、第1グループの変換器エレメントの座標系と3D画像の座標系との間で変換(transformation)を得るために、反射画像を被験者空間域の3D画像と位置合わせし、キャビテーション画像を3D画像と整合するために、変換をキャビテーション画像に適用するように構成される。
【0007】
反射撮像(reflective imaging)は、パルス・エコー撮像、例えば、B-モード超音波撮像、コントラスト強調超音波、パルス反転超音波、または高調波超音波撮像でもよい。
変換器エレメントの中の少なくとも1つの第1エレメントは、集束超音波を生成するように構成され、例えば、固定焦点を有する幾何学的集束変換器(geometrically focused transducer)、電子的に移動させるまたは操作する(steer)ことができる静止焦点を有する幾何学的集束変換器アレイ、あるいは線形または平面変換器アレイでもよい。線形または平面変換器アレイは、完全に直線状でなくてもまたは完全に平坦状でなくてもよい。しかしながら、集束(focusing)は全てまたは実質的に全て電子式である。したがって、集束は、幾何学的にまたは電子的に、あるいはこれら2つの組み合わせによって、行うことができる。
【0008】
変換器エレメントの中の第1エレメントは、第1グループの変換器エレメントの中の1つであっても、または第2グループの変換器エレメントの中の1つであってもよく、あるいはいずれのグループの中の1つでなくてもよい。同様に、変換器エレメントの中の第2エレメントも、第1グループの変換器エレメントの中の1つであっても、または第2グループの変換器エレメントの中の1つであってもよく、あるいはいずれのグループの中の1つでなくてもよい。
【0009】
第1グループの変換器エレメントは、第2グループの変換器エレメントに対して、固定位置にあってもよい。
このシステムは、更に、プローブを備えてもよく、プローブは可搬型でも、またはロボットによって操作するのでもよい。第1グループの変換器エレメントおよび第2グループの変換器エレメントは、プローブの一部を構成してもよく、例えば、プローブ内またはプローブ上に実装されてもよい。
【0010】
第1グループおよび/または第2グループの変換器エレメントは、線形、具体的には、直線状または凸線形の変換器エレメント・アレイでもよい。第1グループおよび/または第2グループの変換器エレメントは、平面状(planar)、具体的には、平坦(flat)または凸平面状の変換器エレメント・アレイでもよい。凹線形または凹平面状の変換器アレイ、あるいは環状アレイのような他の構成も使用することができる。
【0011】
第1グループの変換器エレメントの内少なくとも1つは、第2グループの変換器エレメントの中の1つであってもよい。実際、第1グループの変換器エレメントは、第2グループの変換器エレメントと同じ変換器エレメントでもよい、即ち、同じ変換器エレメントを含んでもよい。
【0012】
例えば、変換器の第1および第2グループの相対的位置が分かっている場合、または変換器の第1および第2グループが同じである場合、位置合わせプロセスから直接変換することもできる。あるいは、変換器の第1および第2グループが互いに対して移動可能である場合、この場合も変換器エレメントの2つのグループの相対的位置の測定値に基づいて、位置合わせプロセスから間接的に変換することができる。
【0013】
本発明は、更に、被験者の撮像空間域においてキャビテーションを撮像する方法も含む。この方法は、焦点領域を有する超音波を生成するステップと、第1グループの変換器エレメントから受動検出信号を受信し、受動検出信号から、焦点領域におけるキャビテーションのキャビテーション画像を生成するステップと、反射撮像超音波を生成するステップと、第2グループの変換器エレメントから反射撮像検出信号を受信し、反射撮像検出信号から反射画像を生成するステップと、第1グループの変換器エレメントの座標系と3D画像の座標系との間で変換を行うために、反射画像を撮像空間域の3D画像と位置合わせするステップと、キャビテーション画像を3D画像と整合するために、変換をキャビテーション画像に適用するステップとを含む。
【0014】
本発明は、更に、被験者の撮像空間域においてキャビテーションを撮像する装置を提供する。この装置は、複数の変換器エレメントと、制御手段とを備える。制御手段は、焦点領域を有する集束超音波を生成するように、変換器エレメントの中の少なくとも1つの第1エレメントを制御し、第1グループの変換器エレメントから受動検出信号を受信し、受動検出信号から、焦点領域におけるキャビテーションのキャビテーション画像を生成し、反射撮像超音波を生成するように、変換器エレメントの中の少なくとも1つの第2エレメントを制御し、第2グループの変換器エレメントから反射撮像検出信号を受信し、反射撮像検出信号から反射身体構造画像を生成し、キャビテーション画像と反射身体構造画像とを組み合わせて、撮像空間域におけるキャビテーションの3D画像を生成するように構成される。
【0015】
更に、このシステムは、任意の作用可能な組み合わせで、添付図面に示す本発明の実施形態の任意の1つ以上の特徴を含むことができる。添付図面について、ここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による超音波システムの模式図である。
図2】身体構造撮像のために超音波を送信する図1のシステムの模式図である。
図3】治療処置のために超音波を送信する図1のシステムの模式図である。
図4図1の超音波システムの模式機能ブロック図である。
図5】本発明の実施形態によるシステムの動作を示すタイミング図である。
図6図1のシステム上で実行する撮像方法を示す流れ図である。
図7】本発明の他の実施形態による超音波システムの模式図である。
図8】本発明の他の実施形態による外部超音波プローブの模式図である。
図9】本発明の他の実施形態による内部超音波プローブの模式図である。
図10】本発明の他の実施形態にしたがって、超音波撮像のための超音波を送信および受信し、治療用超音波のための超音波を送信し、キャビテーション撮像のための受動検出信号を受信するために、別個のアレイを備える超音波システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照すると、超音波システム200は、幾何学的集束超音波変換器201を備えることができ、変換器201の中心にあるアパーチャ203内に、超音波変換器エレメント202のアレイが配置されている。変換器エレメント202の各々は、超音波を生成し、更に超音波を検出するようにも動作可能な場合もある。したがって、これらは反射(例えば、B-モード)超音波画像を生成するために超音波を生成および検出する能動モード、またはこれらが超音波を検出するだけの受動モードで使用可能な場合もある。アレイは、図2に示すように、以後x方向と呼ぶ方向に主に延びる、線形または凸線形アレイとしてもよい。変換器の軸に沿って、x方向に垂直な方向をz方向と呼ぶ。したがって、アレイの撮像平面はx-z平面となる。xおよびz方向双方に垂直な方向を、y方向と呼ぶ。
【0018】
制御ユニット204は、変換器エレメント202の各々による超音波信号の生成を制御し、変換器エレメント202の各々からの検出信号を受信するように構成されている。制御ユニット204は、プリアンプおよびフィルタ・ブロック206と、発振器208とを備えることができる。また、制御ユニット204は、例えば、超音波の周波数を制御するための発振器208からの信号を使用して、変換器201によって生成される超音波のパワーおよび周波数を制御するために、変換器201を制御するように構成されている。尚、制御ユニット204について機能的に説明しているが、1つのプロセッサで構成することもでき、またはシステム内部において、異なる機能、例えば、制御および分析機能を実行する2つ以上の別個のプロセッサでも構成できることは認められよう。制御ユニットは表示画面210に接続され、検出信号から派生されるデータを、適したフォーマットで表示画面210上に表示することができる。この場合、治療用変換器201は、それが最高密度(highest intensity)の超音波を生成する焦点領域214内に、焦点を有する。
【0019】
図1の構成は、種々のコンポーネントおよびシステムを使用して実現することができるが、一実施形態では、超音波データ取得システムを使用してもよく、広い超音波帯域幅(例えば1~15MHz)にわたって、複数の個々のエレメント202から同時に生無線周波数(RF)データ、またはRFに復調することができる同相直交(I/Q)データの取得を可能にする。アレイを受動モードで使用しようとする場合、アレイが受信のみに動作するように、パルス送信をオフに切り替えればよい。あるモードでは、能動および受動検出を同時に使用できるように、変換器エレメント202の1つのグループを能動モードで使用し、他のグループを受動モードで使用する。このシステムを臨床的に応用可能にするために、治療用超音波変換器変換器(therapeutic ultrasound transducer transducer)201を使用してもよく、変換器201は、線形(直線状または凸状)検出器アレイ202のために中央アパーチャ203を有する。
【0020】
受動音響マッピングの動作の背後にある理論について、これより端的に説明するが、WO2010/052494に更に詳しく記載されている。能動検出は、パルス-エコー(例えば、B-モード)撮像を含み、 通例パルス状で超音波を発生するように構成された超音波発生器と、キャビテーション領域から反射された超音波または再放出された超音波を検出する検出器または受信器と、検出されたキャビテーションの位置を判定するときに、超音波の発生と超音波の検出との間の時間間隔を使用する処理システムとを必要とする。対照的に、受動的な位置同定(localization)およびマッピングでは、発信元から受信器までの伝搬時間についての直接的な情報はない。代わりに、1対の受信器からの検出信号の相互相関によって、到達時間差(DTOF:differential time of arrival)、即ち、発信元からの信号の受信器における到達時刻の差の推定値を得ることができる。これによって、受信器と発信元との間における距離の差を推定することが可能になる。1組の相互相関対を使用することによって、個々の発信元の位置同定およびソース・マッピングの拡大(extended source mapping)が可能になる。尚、このことから、センサ信号に対して実行される処理に応じて、能動および受動検出双方が1つの検出器で処理可能であることが認められよう。以下に、受動位置同定および撮像について、更に詳しい説明を続ける。
【0021】
通例では、広いキャビテーション領域がある場合、キャビテーションの空間マップが必要となる。通例採用される手法は、受動ビーム形成の1つであり、Coviello, et al. “Passive acoustic mapping utilizing optimal beamforming in ultrasound therapy monitoring”, J. Acoust. Soc. Am. 137 (5), May 2015に、1つの方法が記載されている。正規の画素格子が、空間マップを作成する撮像平面内に定義される場合、各画素は、3D座標 x = [x, y, z]Tによって定義される中心と、[dx, dy, dz]Tによって示される各次元における空間とによって定義される。画素位置xから位置xにある受信器jまでの距離を、次のように定義する。
【0022】
【数1】
【0023】
画素毎に、各受信器信号に適用される時間遅延を用いて、受信器におけるデータを予め操作しておき(pre-steer)、撮像する画素から受信器までの伝搬時間を補償する。合計N台の受信器があると仮定すると、その画素位置における音場の強度は、
【0024】
【数2】
【0025】
となる。ここで、sj(t)は受信器(センサ)jにおいて記録された信号であり、τj(x) = dj(x)/cは、位置xからセンサjまでの伝搬時間であり、aは各受信器(センサ)エレメントの特性である圧電係数であり、cは伝搬速度である。先のdj(x)と乗算すると、波面の球状拡散によるソース信号強度の低下が補償される。ある画素におけるソース・エネルギの画像は、均一な検出器重みを仮定して、収集期間長Tにわたってソース強度の二乗を積分することによって生成され、次のように表される。
【0026】
【数3】
【0027】
ここで、ρは媒体の密度であり、cは伝搬速度である。次いで、画像内において望まれる画素位置毎に、このエネルギを計算する。
図2および図3を参照すると、制御ユニット204は、変換器エレメント202をフェーズド・アレイとして制御するように構成することができる。例えば、 制御ユニットは、振動の周波数およびタイミング、即ち、相対的位相を制御し、したがって各変換器エレメントが生成する超音波の周波数およびタイミングを制御するために、変換器エレメント202の各々に送信信号を生成するように構成することができる。通例、変換器エレメントの各々の振動の周波数は、同じになるように制御され、アレイによって生成される超音波を全体として操作するように、これらのエレメントの各々の位相またはタイミングを変化させる。変換器エレメントは、互いに同相で振動するように構成することができ、こうすることによって、図2に示すように、全てが同じ方向に進行する直線平行波面220を有する超音波を生成する。これは、身体構造超音波(B-モードまたは他の反射)撮像に適している。エレメント202の振動の位相をずらして、図3に示すように、アレイの外端にあるものが互いに同相となり、遅延がアレイの中心に向かって増加するようにすると、これによって、焦点領域224において収束する湾曲波面222を有する超音波が生成される。
【0028】
尚、集束超音波送信のために別個の変換器201を有するのではなく、超音波エレメント204のアレイを使用すれば、2つの異なる位相構成間で迅速に切り替えることによって、身体構造撮像および治療用FUSの双方のために超音波を発生できることは認められよう。更に、以上で説明した身体構造超音波撮像および受動音響マッピングは、双方共、撮像される組織によって反射または生成される超音波の検出を必要とするので、この検出は、本発明のある実施形態では、超音波を送信するために使用される同じ変換器エレメント202によって行うこともできる。しかしながら、そのためには、更なる時分割が必要となり、多くの場合、超音波の検出または受信のためには別個の変換器アレイを有することが好ましい。したがって、以下の説明において送信および受信アレイに言及するとき、これらは通例別個のアレイであるが、代わりに同じアレイにしてもよい。
【0029】
図4を参照すると、図1のシステムの実用的な実施態様では、変換器エレメント202は、2つのグループに分けられ、変換器エレメントの各グループは、アレイ状に、送信アレイ202aおよび受信アレイ202bに配列され、これらは双方共プローブ230内に実装されている。プローブ230は位置センサ232も備えている。これらのアレイ202a、202bの各々は、先に説明したように、線形アレイにしてもよい。したがって、図1の別個の幾何学的FUS変換器201を省略する。この構成に対する修正では、変換器エレメントは治療グループおよび撮像グループとして設けられる。すると、治療グループの変換器エレメントは、集束超音波を生成するように構成することができ、撮像グループの変換器エレメントは、反射撮像超音波の送信および受信の双方を行い、更に受動キャビテーション・マッピング信号も受信するように構成される。撮像グループは、平らな平面超音波(flat planar ultrasound waves)、または集束超音波を送信するように構成することができ、例えば、変換器エレメントのサブグループは、共通の焦点深度において異なるそれぞれの焦点を結び(provide)、この深度において良質の画像を提供するように制御される。
【0030】
位置センサは、複数の既知の位置および方向検知システムのいずれにも適合することができる。例えば、これは、電磁動き追跡システムのセンサでもよく、立体視光学カメラ、および赤外線カメラ、またはレーザ・トラッカ(laser tracker)によってプローブの位置を追跡可能にする1つ以上のマーカを含むこともできる。
【0031】
制御ユニット204は、主プロセッサ204aと超音波フロント・エンド・プロセッサ204bとを備えている。超音波フロント・エンド204bは、送信側と受信側とを備えている。送信側では、送信アレイ202aによって送信される超音波信号の各々を発生するように構成された発生器を備えている。例えば、これらは、治療信号発生器240と、撮像信号発生器242とを備えるのでもよい。これらの信号発生器240、242は、送信アレイ202aの個々の変換器エレメントが、例えば、図2および図3に示すように、治療用FUSおよびB-モード超音波撮像に要求される形態で、それぞれ、超音波信号を送信するように、各発生器が送信信号を出力し、その送信信号を送信アレイ202aの個々の変換器エレメントに入力するように構成されている。超音波フロント・エンド204bは、更に、各々信号発生器240、242のそれぞれからの送信信号を増幅するように構成された2つの増幅器244、246と、増幅された送信信号の双方を受け取り、これらの各々を正しい送信アレイ202aにしかるべき時点において時分割多元式に送るように構成されたマルチプレクサ248とを備えている。タイミング・コントローラ264は、信号発生器およびマルチプレクサのタイミングを調整する(arrange)ために、トリガまたは同期信号を送出する。これについては以下で更に詳しく説明する。
【0032】
超音波フロント・エンド204bの受信側は、マルチプレクサ250を備えている。マルチプレクサ250は、受信アレイ202bからの検出信号の全てを受信し、受動音響マッピング信号からの身体構造超音波撮像信号(例えば、B-モード)を、身体構造超音波撮像チャネルとPAMチャネルとに分離するように構成されている。この分離は、タイミングに基づいて行われる。何故なら、受信される身体構造撮像信号は、送信される身体構造撮像信号の反射であり、受信されるPAM信号は、送信されるFUS信号によって生じるキャビテーションによって生成されるからである。身体構造撮像信号は、TGCモジュール252によって時間利得補償され、ADC254によってデジタル化され、デジタル・フィルタ256によって濾波される。PAM信号は、アナログ・フィルタ258によって、PAMに使用される高周波数広帯域信号を分離するために濾波され、低ノイズ増幅器260によって増幅された後に、ADC262によってデジタル化される。
【0033】
主プロセッサ204aは、タイミング・コントローラ264を備えている。タイミング・コントローラ264は、タイミング入力を超音波信号発生器240、242、マルチプレクサ248、250、およびADC254、262に供給するように構成されている。超音波信号発生器240、242へのタイミング入力は、治療用FUS信号および身体構造超音波撮像信号の生成を交互に、各々、それぞれの系列の短い時間期間の間に、誘起する(trigger)ように構成されている。マルチプレクサ248は、タイミング・コントローラ264から受け取ったタイミング信号を使用して、2種類の超音波生成信号を、送信器アレイ202aへの制御入力上に多重化するので、送信器アレイ202aは、治療用FUSおよび集束または非集束撮像超音波の交互パルスを生成する。受信マルチプレクサ250は、受信アレイ202bからの信号を、B-モード・チャネルとPAMチャネルとの間で、2つの異なる種類の超音波の送信時刻と、関連する超音波信号の送信および受信間における既知の遅延または想定される遅延とに基づいて切り替えるように、タイミング・コントローラ264によって制御される。また、タイミング・コントローラ264は、ADCによるアナログ信号のサンプリング・レートを制御するために、タイミング入力もADC254、262に供給する。
【0034】
図5を参照すると、異なる送信および受信超音波信号のタイミングの一例として、周波数が1MHz、長さが毎秒1000サイクルの治療用FUSパルスを送信することが望ましいとしてもよい。また、深度d=20cmまで十分な撮像フレーム・レート(>30フレーム/秒)を維持することも望ましいが、撮像信号対ノイズ比を高めるために(50パルス/フレームを想定する)、1つの画像フレームを構成するのに様々なパルス-エコー撮像パルスを送信することも望ましい場合がある。1秒の治療パルス・レートを仮定すると、全てのパルス送信時間、伝搬時間、および処理時間をこの1秒に納めなければならない。
【0035】
例:
治療用超音波周波数=1MHz
治療用パルスPRF=1Hzまたは1秒周期(1s period)
治療用パルス当たりのサイクル数N=1000サイクル
パルス当たりの治療用送信時間Ttrans=1ms
治療用送信時間+伝搬時間Ttrans+prop~2ms
各パルスの後に、受動音響マッピング(PAM)処理時間を算入するTtrans+prop+PAMproc=502ms
したがって、1つの治療用パルスを送信し、キャビテーションによって生成されたUSを検出し、処理してPAMを求めには、1秒期間の半分の時間を要する。
【0036】
残りの時間=498ms。
システムが同期型(synchronous)である場合、この残り時間は、B-モード撮像のために使用することができるものである。システムが非同期型である場合、B-モード撮像パルス送信は、Ttrans+propの直後に行うことができる。この例は、簡略化のために、同期の場合だけに該当する(cover)ものとする。
伝搬速度c=1500m/sと仮定し、更に全ての撮像パルスを画像に再現するには10msを要すると仮定し、更に、
撮像US周波数=5MHz、
各撮像パルス内にあるサイクル数N=2サイクル、
撮像送信時間Ttrans=0.4μs、
算入伝搬時間Ttrans+Prop=26.4μs
画像フレーム当たり50パルスの場合、Tframe=50×26.4μs=1.3ms
画像フレーム再現および処理時間を算入する。
【0037】
frame+Trecon=1.3ms+10ms=11.3ms
フレーム・レート=498ms/11.3ms=44フレーム/秒
主プロセッサ204aは、更に、アポダイゼーション・ユニット266および画像再現ユニット268も備えている。これらのユニット266、268は、超音波フロント・エンド204bのB-モード・チャネルからの盧波デジタル信号を受け取り、これらから身体構造超音波画像を、例えば、2DB-モード超音波撮像ストリームの形態で生成するように構成されており、2DB-モード超音波撮像ストリームは、タイム・スタンプが付された2D画像フレームのシーケンスを構成する(comprise)ことができる。主プロセッサ204aは、更に、PAM撮像ユニット270も備えている。PAM撮像ユニット270は、超音波フロント・エンド204bのPAMチャネルからデジタル信号を受け取り、これらからPAM画像を、例えば、2D PAM撮像ストリームの形態で生成するように構成され、2D PAM撮像ストリームも、タイム・スタンプを付されたPAM画像フレームのシーケンスを構成することができる。
【0038】
主プロセッサ204aは、更に、位置決めユニット272も備えている。位置決めユニット272は、プローブ230上にある位置センサ232からの位置および方位データ(並進および回転のような)を受信し、画像ストリームの各形態と関連するプローブの位置および方位を判定できるように、このデータにタイム・スタンプを付して、位置/方位データ・ストリームを出力するように構成されている。これによって、プローブを移動させて、撮像空間域をスキャンすること、そしてプローブの受信アレイから生成される2D画像の位置を3D座標系において特定することが可能になる。
【0039】
主プロセッサ204aは、更に、ローカル・メモリ274とデータ・プロセッサ276とを備えている。ローカル・メモリ274は、身体構造およびPAM撮像チャネルからの画像ストリームと、位置決めユニット272からの位置/方位データ・ストリームとを受け取り、格納するように構成されている。また、患者の以前のスキャンから得られた3D身体構造画像データを、例えば、CTまたはMRIスキャニングによって得られる1組の2D画像スライスの形態で受け取り、格納するように構成され、2D画像スライスは、例えば、DICOMフォーマットにすることができる。データ・プロセッサ276は、ローカル・メモリに格納されているデータを処理して、複合画像または画像ストリームを生成するように構成されている。この複合画像または画像ストリームの中には、FUS-誘発キャビテーションのPAM画像が、患者の3D身体構造画像上に重畳される。患者の3D身体構造画像は、予めスキャンした3D画像でもよく、または合成2DB-モード超音波画像スライスから生成される3D超音波画像でもよい。複合画像を得ることができる処理方法について、これより説明する。
【0040】
図6を参照すると、ローカル・メモリ274は、位置系(position system)較正データも格納するように構成されている。位置系較正データは、受信器アレイ信号から生成されるB-モード画像の2D超音波撮像平面の位置および方位を、位置センサ232によって判定されたプローブの位置および方位に対して、定める。この較正データは、プローブ230に対して、既知の位置および方位にある既知の3D構造を撮像し、得られた2D超音波画像を、既知の構造の画像データと位置合わせすることによって、プローブに対する撮像平面の位置および方位を判定するために、得ることができる。プロセッサ276は、ステップ300において、較正データによって定められた較正を、位置/方位データ・ストリームに適用し、3D座標系における画像フレーム毎に、撮像平面の位置および方位を定める画像位置/方位データを生成するように構成されている。この3D座標系は、プローブ座標系と呼んでもよい。
【0041】
PAM画像は、2D身体構造撮像と同じ変換器エレメントの受信アレイ202bから生成されるので、2D PAM画像および2D身体構造画像の撮像平面は、一致すると想定することができ、撮像平面内における位置は、2つの撮像方法に同じ座標系を使用して、判定することができる。したがって、PAM画像および2D身体構造画像において撮像される特徴の相対的な位置がわかり、各形式の画像の位置は、共通のプローブ座標系において定められ、記録される。しかしながら、別の較正ステップを含んでもよく、キャビテーションが既知の位置で発生する構造を、PAMおよび2D反射(例えば、2DB-モード)超音波撮像によって撮像し、2つの撮像方法の撮像平面の相対的な位置、およびこれらの平面内における位置を較正する。
【0042】
ステップ302において、2DB-モード画像ストリームのフレーム、および2D PAM画像ストリームのフレームを、互いに時間整合する。これが一般に必要なのは、2つの異なる撮像方法のフレーム・レートが異なるのはもっともであるからであり、更に、個々のフレームの時間は同じではなく、これらの撮像方法を多重化する必要があるためである。この時間整合および位置較正を併せることにより、双方の画像ストリームにおける各フレームの位置および方位ならびに時間が、同じ4D座標系、即ち、3D空間座標系および時間において定められる結果になる。
【0043】
ステップ304において、3D身体構造データの2Dスライスを合成して、患者の身体構造の全3D空間域についての3D画像データ集合を得る。勿論、身体構造データを予め3Dフォーマットで格納してもよく、その場合、この合成ステップは不要になる。次いで、ステップ306において、2D超音波身体構造画像スライスの各々を、3D(通例、高コントラスト)身体構造画像と位置合わせする。例えば、Wein, et al “Automatic CT-ultrasound registration for diagnostic imaging and image-guided intervention”, Medical Image Analysis, Vol. 12, pp. 577-585, 2008に記載されているように、種々の画像位置合わせ方法が知られている。これによって、2D身体構造超音波画像(およびPAM画像)の座標に適用できる空間補正または変換を決定し、3D身体構造画像の座標系において、これらを正しく位置付ける(locate)。ステップ308において、3D身体構造画像の座標系におけるそれらの位置および方位を決定するように、この空間補正または変換をPAM画像の座標に適用する。この画像位置合わせおよび座標変換の結果、したがって、2D身体構造超音波画像ストリームが、3D身体構造画像の座標系において定められ、2D PAM画像ストリームが、3D身体構造画像の座標系において定められる。これによって、3D高コントラスト身体構造画像ならびに2D身体構造超音波画像およびPAM画像を種々の方法で重ね合わせることが可能になる。
【0044】
例えば、ステップ310において、2D PAM画像を3D高コントラスト身体構造画像上に重ね合わせることができ、次いでステップ312において、キャビテーションの最大点、最少点、または中間点というような、活動の鍵となる位置(key loci)、または基準点を識別するために、画像に閾値を設定することもできる。これによって、3D高コントラスト身体構造画像内に位置するキャビテーション基準点の画像が得られる。随意に、ステップ313において、この画像を2D US画像ストリームと組み合わせて、3D身体構造画像上に重畳された3D PAM基準点を含み、随意に2D反射US画像とも組み合わせた画像を生成することができる。
【0045】
あるいは、ステップ314において、重ね合わせステップ310の後に、2D PAM画像を合成して、3D身体構造画像内に位置するキャビテーション活動の3D PAM画像を生成することもできる。この合成3D画像も、次にステップ316において、閾値レベル以上のキャビテーション活動を有する画素のみが、合成画像のPAMコンポーネントにおいて示されるように、閾値を設定することもできる。随意に、ステップ317において、この画像を2D US画像ストリームと組み合わせて、3D身体構造画像上に重畳された3D PAM画像を含み、随意に2D反射(2D Reflective)とも組み合わされた画像を生成することもできる。
【0046】
加えて、ステップ306において3D身体構造画像と位置合わせした2D超音波画像を、ステップ319において、その3D画像と重ね合わせ、複合2D超音波およびCTまたはMRI画像として表示することもできる。
【0047】
他の代替実施形態では、例えば、患者の3D高コントラスト身体構造画像が入手できない場合、2D PAM画像ストリームからの時間整合され更に空間的に整合された画像を、ステップ318において、2D超音波画像ストリーム上に重ね合わせ、ステップ320において、閾値を設定し、2D超音波画像上に重畳された3DにおけるPAMの鍵となる位置を示す複合画像として表示することができるが、この複合画像は、2D US画像平面内に一緒に配置された(co-locate)ときにのみ表示される。
【0048】
あるいは、ステップ318において得られた重ね合わせ2D画像を、ステップ322において合成し、3D身体構造超音波画像上に重畳されたPAM画像内に撮像されたキャビテーションの3D画像を生成することもできる。PAM画像は、完全な3D画像でも、または先に説明した基準点だけでもよい。
【0049】
理論的には、3種類の画像全てを組み合わせて、強調(enhanced)3D身体構造画像を生成することができる。これは、3D身体構造画像および複数の身体構造超音波2D画像を合成して3D反射超音波画像を形成することによって得られ、3D PAM画像がその上に重畳される。しかしながら、このような画像は解釈が難くなる可能性が高い。
【0050】
勿論、図1から図5に示す実施形態に対する種々の修正も可能であることは認められよう。例えば、送信および受信アレイ202a、202bは双方共ID線形または凸状アレイであるが、これらのいずれかまたは両方が2D平面アレイであってもよい。これが意味するのは、身体構造超音波撮像において送信および受信のために全2Dアレイが使用される場合、身体構造超音波画像、または超音波画像ストリームの各画像フレームは、三次元身体構造画像であってもよいということである。また、これが意味するのは、PAM撮像のために全2D受信アレイが使用される場合、PAM画像は、FUSによって生成されたキャビテーション活動の全3D画像であってもよいということである。また、これが意味するのは、FUSを生成するために、全2D送信アレイを使用してもよいということである。
【0051】
図7から図9を参照すると、図2から図6のシステムは、種々の異なるプローブ構成に組み込むことができる。例えば、図6を参照すると、プローブ230を、ロボット・アームまたは多軸移動システムのような、電子または手動制御式の移動制御システム600に接続することができる。移動制御システム600は、プローブを支持し、電子制御システムからの入力または手作業による入力に応答して、その動きを6度の自由度で(移動の直交並進方向に沿って3度、そして直交回転軸を中心として3度)制御するように構成されている。この場合、プローブ230の位置および方位は、先に説明したように、プローブに実装された位置センサから判定することができ、または移動制御システムの動作から判定することもできる。
【0052】
図8を参照すると、プローブを可搬型外部プローブ730にすることもできる。可搬型外部プローブ730は、患者の皮膚に接触して配置されるように構成された接触面700を有し、送信および受信アレイ702a、702bが接触面700内に、またはこれに隣接して実装されている。この場合、先に説明したように、プローブの全ての手作業による移動を記録することができるように、位置センサ732がプローブ730の本体内に実装されているか、または本体上に固定されている。
【0053】
図9を参照すると、プローブは、可搬型内部プローブまたは術中プローブ(intra-operative probe)830であってもよい。プローブ830は、患者の内部に接触して配置されるように構成された接触面800を有し、送信および受信アレイ802a、802bが接触面800内に、またはこれに隣接して実装されている。この場合も、先に説明したように、プローブの手作業による移動の全てを記録できるように、位置センサ832がプローブ830の本体内に実装されている。
【0054】
図10を参照すると、共通プローブ上に全てを実装する代わりに、システムは、別個のプローブを備えることもでき、各々異なるグループの変換器エレメントがその上に支持されている。例えば、 このシステムは、変換器エレメントのアレイ902が支持された身体構造撮像プローブ900を備えることもできる。このアレイ902は、線形または凸状アレイでもよく、例えば、図2に示した反射撮像超音波を送信し、アレイ902内にある同じグループの変換器エレメントを使用して、またはアレイ902内にある異なるグループの変換器エレメントを使用して、または別の変換器エレメントのアレイを使用して、反射した超音波を受信するように構成することができる。このシステムは、例えば、図3に示したような治療用FUSを生成するように構成された変換器エレメントのアレイ906を有するFUSプローブ904を備えることもできる。このシステムは、更に、受信するように構成された変換器エレメントのアレイ910を有するPAMプローブ908も備えることができる。プローブ900、904、908の各々は、更に、そのプローブの位置、したがってそれに実装された変換器アレイを監視できるように、位置センサ912、914、916も備えている。したがって、このシステムは、PAM画像を身体構造超音波画像と空間的に整合させるために使用される較正ステップ300が、変換と置き換えられることを除いて、先に説明したシステムと同じように動作することができる。この変換は、時間と共に変化し、2つのプローブ900、908の相対的位置に基づいて、PAM画像ストリームの画像フレーム毎に決定される。
【0055】
更に他の実施形態では、このシステムは、プローブまたはロボット・アーム上に実装されたFUS超音波送信器と、可動プローブとを備え、可動プローブは、PAM撮像受信変換器エレメントと、身体構造超音波撮像システムの送信および受信エレメントとの双方を、別個のアレイとして、または1つの共通アレイとして、あるいは身体構造超音波撮像用の送信アレイならびにPAM撮像および身体構造超音波撮像双方のための受信アレイとして、有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】