(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】ポリオレフィン/(メタ)アクリル複合ポリマー組成物及びそれを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 255/02 20060101AFI20230706BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230706BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C08F255/02
C08L101/00
C08L51/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571115
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2021037729
(87)【国際公開番号】W WO2021257768
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、プー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、スティーブン シー.
(72)【発明者】
【氏名】カーター、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン、リャン
(72)【発明者】
【氏名】イーヴン、ラルフ シー.
(72)【発明者】
【氏名】クー、チュンスー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンコ、ミロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】モグリア、ロバート エス.
(72)【発明者】
【氏名】ングンジリ、ジョンピーター エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ラタニ、タンヴィ エス.
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BC021
4J002BC031
4J002BC061
4J002BD031
4J002BN052
4J002BN151
4J002CB001
4J002CF061
4J002CF071
4J002CG001
4J002CL001
4J002EA047
4J002EF066
4J002EG016
4J002EH107
4J002EH147
4J002EU187
4J002EU197
4J002FD147
4J002FD316
4J026AA11
4J026AA12
4J026AA14
4J026AC01
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA29
4J026CA08
4J026DA03
4J026DA07
4J026DA09
4J026DA11
(57)【要約】
(i)1つ以上のポリオレフィンの溶融混練生成物と、0.5~25重量%の1つ以上の分散安定化剤と、水とを含む、水性ポリオレフィン分散体、及び(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーのエマルション重合生成物を含む、複合ポリマー組成物であって、1つ以上のポリオレフィンは、50℃以下のTgを有し、溶融混練生成物(i)は、水に分散された50nm~2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、1つ以上の分散安定化剤は、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーは、ポリマー粒子上にグラフト化して、複合ポリマー粒子を形成する、複合ポリマー組成物が提供される。本組成物及び本組成物を含む衝撃改良剤を作製する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ポリマー組成物であって、
(i)1つ以上のポリオレフィンの溶融混練生成物と、0.5~25重量%の1つ以上の分散安定化剤と、水と、任意選択的に中和剤とを含む、水性ポリオレフィン分散体、及び
(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーのエマルション重合生成物を含み、
前記1つ以上のポリオレフィンが、50℃以下のTgを有し、
前記溶融混練生成物(i)が、前記水に分散された50nm~2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、
前記1つ以上の分散安定化剤が、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含み、
前記1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、前記ポリマー粒子上にグラフト化して、複合ポリマー粒子を形成する、複合ポリマー組成物。
【請求項2】
前記脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤が、8~28個の炭素原子を含む、請求項1に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤が、12~24個の炭素原子を含む、請求項2に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤が、16、18、又は20個の炭素原子を含む、請求項3に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤が、ステアリン酸、オレイン酸、若しくはリノール酸、又はそれらの塩を含む、請求項4に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項6】
前記1つ以上の分散安定化剤が、少なくとも2つの分散安定化剤の混合物を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項7】
前記複合ポリマー粒子が、少なくとも80%のグラフト効率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物ポリマー組成物。
【請求項8】
ポリオレフィン対ポリ(メタ)アクリルの比が、60:40~95:5である、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項9】
前記1つ以上のポリオレフィンが、エチレンホモポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー、エチレン/α-オレフィンマルチブロックインターポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、及びプロピレン/α-オレフィンマルチブロックインターポリマーからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項10】
前記1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが、官能化(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項11】
前記複合ポリマー粒子が、コア/シェル又はコア/部分シェル構造を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項12】
前記(メタ)アクリルシェルが、部分的に架橋され、50℃以上のTgを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合ポリマー組成物。
【請求項13】
衝撃改良剤組成物であって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の複合ポリマー組成物の乾燥生成物を含む、衝撃改良剤組成物。
【請求項14】
衝撃改良樹脂であって、
マトリックスポリマー樹脂と、
請求項10に記載の衝撃改良剤組成物と、を含む、衝撃改良樹脂。
【請求項15】
衝撃改良剤組成物を形成するための方法であって、
1つ以上のポリオレフィン、1つ以上の分散安定化剤、水、及び任意選択的に中和剤を溶融混練することであって、前記1つ以上のポリオレフィンが、50℃以下のTgを有し、前記1つ以上の分散安定化剤が、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含む、溶融混練することと、
前記溶融混練生成物に、エマルション重合条件下で1つ以上の(メタ)アクリルモノマーを添加して、複合ポリマー組成物を形成することと、
前記エマルションから水を除去することによって前記複合ポリマー粒子を単離することであって、
噴霧乾燥、凝固、及び凍結乾燥からなる群から選択される、単離することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン/(メタ)アクリル複合ポリマー組成物及びそれを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートなどの多くの広く使用されているポリマー樹脂は、周囲条件下で良好な衝撃性能特性を示すが、この特性は、室温を下回ると著しく劣化し、樹脂の望ましくない亀裂又は物理的破損をもたらす。いわゆる衝撃改良剤添加剤の使用は、より低い温度でポリマー樹脂の望ましい衝撃特性を維持するのを助ける。
【0003】
自動車、電子、及び耐久性のある物品に使用されるポリマー樹脂の衝撃改良などの特定の用途については、ポリマー樹脂の風化作用に悪影響を及ぼすことなく、低温衝撃性能などのポリマー樹脂特性を改善する市場の必要性が存在する。
【0004】
1つの有効なタイプの衝撃改良剤は、エマルション重合プロセスによって調製された直径約50~500nmであるコロイド安定性ポリマー粒子である。これらのポリマー粒子は、コア-シェル形態を示し、コアは、最大約95重量%のより低いガラス転移温度(Tg)の(コ)ポリマーから構成され、シェルは、より高いTgの(コ)ポリマーから構成される。より高いTgのシェルの存在は、粒子が粉末に乾燥されるときに、粒子のより低いTgのコアが実質的に凝集するのを防止し、ラテックスの粉末化は、典型的には、更なるポリマー粒子加工(すなわち、ポリマー樹脂への分散のため)を可能にするために行われる。加えて、より高いTgのシェルは、ポリマー粒子コアを所望のホストポリマー樹脂又はマトリックス材料で相溶化することを補助する。シェルがない場合、衝撃改良剤の効果は著しく限定される。
【0005】
低Tgポリ(ブタジエン)コアで調製された衝撃改良剤組成物は、一般に、これらのポリマー粒子が様々な樹脂中に分散されたときに優れた低温衝撃性能を生み出す。しかしながら、これらの複合材料の耐候性は、ポリマー樹脂中に配合された衝撃改良剤粒子中に存在するオレフィン含有基が架橋するか、又は他の反応を受けて、劣化を引き起こし、複合材料が脆くなり得るため、典型的には不十分である。低Tgポリ(ブチルアクリレート)含有コアで調製された衝撃改良剤組成物を含有するポリマー樹脂については、耐候性は一般に優れているが、低温衝撃性能は一般に平均的である。結果として、低温度での優れた衝撃性能及びホスト樹脂中での望ましい耐候性の両方を同時に提供する新しいクラスの衝撃改良剤の開発は、当分野における著しい進歩を表し、当技術分野において未対処である必要性を満たす。
【0006】
したがって、直径50~500nmの望ましいサイズ範囲でコア-シェル衝撃改良剤を調製するのに入手可能なプロセスは、エマルション重合によって重合され得るモノマーに限定された。他の化学物質を使用して衝撃改良剤粒子を製造することは、以前は可能ではなかった。例えば、オレフィン及びオレフィンコポリマーは、それらの低いTg、エラストマー特性、及び良好な耐候性に起因して、これらの組成物が有効な衝撃改良剤であることが知られているため、コアとしての役割を果たし得る。しかしながら、オレフィンコポリマー単独は、一般に、ホスト樹脂中で十分に分散しない。更に、直径50~200nmの必要なサイズ範囲内であり、また、マルチドメイン構造(例えば、コア-シェル又は複合形態)内に相溶化相を含む、分散コア-シェル粒子(オレフィンコポリマーコアを有する)を作製するための経路は存在しない。
【0007】
低Tgポリオレフィン系コア及び高Tg PMMA系相を含むハイブリッドポリオレフィン-アクリル(polyolefin-acrylic、POA)粒子は、Carter et al.,”Design and Fabrication of Polyolefin-Acrylic Hybrid Latex Particles”ACS Appl.Polym.Mater.2019,1,3185-3195によって開示されているように調製されている。しかしながら、これらのハイブリッドPOA粒子は、アクリルポリマーがポリオレフィンコアと強く関連する程度の尺度である、低いグラフト効率を示す。プロセスの最適化をもっても、Carterらが観察した最高のグラフト効率は、<60%であった。
【0008】
より高いグラフト効率を有する複合ポリオレフィン-アクリル組成物の必要が存在する。ホストポリマー樹脂又はマトリックス内で使用される場合、耐候性及び低温衝撃性能などの良好な性能特性を示す複合ポリオレフィン-アクリル組成物を提供することも望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、ポリオレフィン/(メタ)アクリル複合ポリマー組成物、複合ポリマー組成物を含む衝撃改良剤、及びそれを調製する方法に関する。
【0010】
本発明の一態様は、(i)1つ以上のポリオレフィンの溶融混練生成物と、0.5~25重量%の1つ以上の分散安定化剤と、水と、任意選択的に中和剤とを含む、水性ポリオレフィン分散体、及び(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーのエマルション重合生成物を含む、複合ポリマー組成物を提供し、1つ以上のポリオレフィンは、50℃以下のTgを有し、溶融混練生成物(i)は、水に分散された50nm~2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、1つ以上の分散安定化剤は、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーは、ポリマー粒子上にグラフト化して、複合ポリマー粒子を形成する。
【0011】
本発明の別の態様は、(i)1つ以上のポリオレフィンの溶融混練生成物と、0.5~25重量%の1つ以上の分散安定化剤と、水と、任意選択的に中和剤とを含む、水性ポリオレフィン分散体、及び(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーのエマルション重合生成物を含む、ポリマー組成物の乾燥生成物を含む衝撃改良剤組成物を提供し、1つ以上のポリオレフィンは、50℃以下のTgを有し、溶融混練生成物(i)は、水に分散された50nm~2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、1つ以上の分散安定化剤は、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーは、ポリマー粒子上にグラフト化して、複合ポリマー粒子を形成する。
【0012】
本発明の更に別の態様は、マトリックスポリマー樹脂と、(i)1つ以上のポリオレフィンの溶融混練生成物と、0.5~25重量%の1つ以上の分散安定化剤と、水と、任意選択的に中和剤とを含む、水性ポリオレフィン分散体、及び(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーのエマルション重合生成物を含む、ポリマー組成物の乾燥生成物を含む衝撃改良剤組成物と、を含む、以下では衝撃改良樹脂と称される、衝撃改良剤含有樹脂を提供し、1つ以上のポリオレフィンは、50℃以下のTgを有し、溶融混練生成物(i)は、水に分散された50nm~2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、1つ以上の分散安定化剤は、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーは、ポリマー粒子上にグラフト化して、複合ポリマー粒子を形成する。
【0013】
本発明の更なる態様は、以下:1つ以上のポリオレフィン、1つ以上の分散安定化剤、水、及び任意選択的に中和剤を溶融混練することであって、1つ以上のポリオレフィンが、50℃以下のTgを有し、1つ以上の分散安定化剤が、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含む、溶融混練することと、溶融混練生成物に、エマルション重合条件下で1つ以上の(メタ)アクリルモノマーを添加して、複合ポリマー組成物を形成することと、ポリマー粒子分散体から水を除去することによって複合ポリマー粒子を単離することであって、噴霧乾燥、凝固、及び凍結乾燥からなる群から選択される、単離することと、を含む、衝撃改良剤組成物を製造するための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤で調製されたポリオレフィン/(メタ)アクリル複合ポリマー組成物、それを調製する方法に関する。
【0015】
本発明による複合ポリマー組成物は、(i)1つ以上のポリオレフィンの溶融混練生成物と、0.5~25重量%の1つ以上の分散安定化剤と、水とを含む、水性ポリオレフィン分散体、及び(ii)1つ以上の(メタ)アクリルモノマーのエマルション重合生成物を含み、1つ以上のポリオレフィンは、50℃以下のTgを有し、溶融混練生成物(i)は、水に分散された50nm~2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含み、1つ以上の分散安定化剤は、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含み、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーは、ポリマー粒子上にグラフト化して、複合ポリマー粒子を形成する。
【0016】
本発明は、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかによる複合ポリマー組成物の乾燥生成物を含む、衝撃改良剤組成物を更に提供する。
【0017】
本発明はまた、マトリックスポリマー樹脂と、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかによる衝撃改良剤組成物と、を含む、衝撃改良樹脂を提供する。
【0018】
本発明はなおも、1つ以上のポリオレフィン、1つ以下又は1つ以上の分散安定化剤、及び水を溶融混練することであって、1つ以上のポリオレフィンが、50℃以下のTgを有し、1つ以上の分散安定化剤が、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含む、溶融混練することと、溶融混練生成物に、エマルション重合条件下で1つ以上の(メタ)アクリルモノマーを添加して、複合ポリマー組成物を形成することと、エマルションから水を除去することによって複合ポリマー粒子を単離することであって、噴霧乾燥、凝固、及び凍結乾燥からなる群から選択される、単離することと、を含む、衝撃改良剤組成物を形成するための方法を更に提供する。
【0019】
水性ポリオレフィン分散体
ポリオレフィン
水性分散体は、水性分散体の固形含有量の総重量に基づいて、5~99重量%の1つ以上のポリオレフィンを含む。5~99重量%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、重量パーセントは、5、8、10、15、20、25重量%の下限~40、50、60、70、80、90、95、又は99重量%の上限であり得る。例えば、水性分散体は、水性分散体の固形含有量の総重量に基づいて、15~99、又は15~90、又は15~80、又は15~75、又は30~70、又は35~65重量%の1つ以上のポリオレフィンを含み得る。水性分散体は、少なくとも1つ以上のポリオレフィンを含む。
【0020】
本発明で使用されるポリオレフィンは、50℃以下のTgを有する。2つ以上のポリオレフィンが使用される場合、好ましくは、各ポリオレフィンは、50℃以下のTgを有する。50℃以下の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、Tgは、50℃以下であり得るか、又は代替例では、Tgは、40℃以下であり得るか、又は代替例では、Tgは、30℃以下であり得るか、又は代替例では、Tgは、15℃以下であり得るか、又は代替例では、Tgは、0℃以下であり得るか、又は代替例では、Tgは、-15℃以下であり得る。好ましくは、ポリオレフィンは、-50℃以下のTgを有する。
【0021】
ポリオレフィンの例としては、典型的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリ-3-メチル-1-ブテン、ポリ-3-メチル-1-ペンテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-l-ブテンコポリマー、及びプロピレン-1-ブテンコポリマーによって表される、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、及び1-ドデセンなどの1つ以上のアルファ-オレフィンのホモポリマー及びコポリマー;典型的には、エチレン-ブタジエンコポリマー及びエチレン-エチリデンノルボルネンコポリマーによって表される、共役又は非共役ジエンとのアルファ-オレフィンのコポリマー(エラストマーを含む);並びに典型的には、エチレンープロピレン-ブタジエンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジシクロペンタジエンコポリマー、エチレン-プロピレン-1,5-ヘキサジエンコポリマー、及びエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンコポリマーによって表される、共役又は非共役ジエンとの2つ以上のアルファ-オレフィンのコポリマーなどのポリオレフィン(エラストマーを含む);エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、エチレン-塩化ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸又はエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマー、及びエチレン-(メタ)アクリレートコポリマーなどのエチレン-ビニル化合物コポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。これらの樹脂は、単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0022】
ポリオレフィンは、例えば、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマー、及びオレフィンブロックコポリマーからなる群から選択される、1つ以上のポリオレフィンを含み得る。特に、ポリオレフィンは、1つ以上の非極性ポリオレフィンを含み得る。
【0023】
ポリプロピレン、ポリエチレン、それらのコポリマー、及びそれらのブレンド、並びにエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーなどのポリオレフィンが使用され得る。例示的なオレフィン系ポリマーとしては、米国特許第3,645,992号に記載されているような均質なポリマー、米国特許第4,076,698号に記載されているような高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、不均一に分岐した線状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)、不均一に分岐した超低線状密度ポリエチレン(ultra low linear density polyethylene、ULDPE)、均一に分岐した線状エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,272,236号及び同第5,278,272号に開示されているプロセスによって調製され得る、均一に分岐した実質的に線状のエチレン/アルファ-オレフィンポリマー、並びに高圧のフリーラジカル重合エチレンポリマー及びコポリマー、例えば、低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)又はエチレン酢酸ビニルポリマー(ethylene vinyl acetate polymers、EVA)が挙げられる。ポリオレフィンは、例えば、エチレン-メチルアクリレート(ethylene-methyl acrylate、EMA)系ポリマーであり得る。
【0024】
好ましくは、ポリオレフィンは、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマーであり得る。ポリエチレン-アルファオレフィンコポリマーは、エチレン由来の単位、及び1つ以上のアルファ-オレフィン由来のポリマー単位を含む。1つ以上のアルファ-オレフィン由来の例示的なポリマー単位としては、例えば、C2及びC4~C10アルファ-オレフィン、好ましくは、C2、C4、C6、及びC8-アルファオレフィンが挙げられる。ポリエチレン/アルファ-オレフィンコポリマーの例としては、例えば、エチレン-ブテン、エチレン-ヘキセン、又はエチレン-オクテンコポリマー若しくはインターポリマーが挙げられる。
【0025】
ポリオレフィンは、プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーを含み得る。プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーは、プロピレン由来の単位、及び1つ以上のアルファ-オレフィンコモノマー由来のポリマー単位を含む。プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーを製作するために利用される例示的なコモノマーは、C2及びC4~C10アルファ-オレフィン、例えば、C2、C4、C6、及びC8アルファ-オレフィンである。プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーとしては、例えば、プロピレン-エチレン、又はプロピレン-エチレン-ブテンコポリマー若しくはインターポリマーが挙げられる。プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーは、実質的にアイソタクチックなプロピレン配列を有することを特徴とし得る。「実質的にアイソタクチックなプロピレン配列」は、配列が、13C NMRで測定される、約0.85超、代替例では、約0.90超、別の代替例では、約0.92超、別の代替例では、約0.93超のアイソタクチックトライアド(mm)を有することを意味する。アイソタクチックトライアドは、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第5,504,172号及び国際公開第WO00/01745号に記載されており、これらは、13C NMRスペクトルによって決定されるコポリマー分子鎖中のトライアド単位に関するアイソタクチック配列に言及する。
【0026】
ポリオレフィンは、ASTM D-1238(190℃/2.16Kg)に従って測定される、1~1500g/10分の範囲のメルトフローレートを有し得る。1~1500g/10分の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、メルトフローレートは、1g/10分、2g/10分、3g/10分、4g/10分、5g/10分、100g/10分、200g/10分、500g/10分、800g/10分、1000g/10分、1300g/10分、又は1400g/10分の下限~1500g/10分、1250g/10分、1000g/10分、800g/10分、500g/10分、100g/10分、50g/10分、40g/10分、及び30g/10分の上限であり得る。例えば、プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマーは、1~1500g/10分、又は1~500g/10分、又は500~1500g/10分、又は500~1250g/10分、又は300~1300g/10分、又は5~30g/10分の範囲のメルトフローレートを有し得る。
【0027】
ポリオレフィンは、重量平均分子量を数平均分子量で割ったもの(Mw/Mn)として定義される、3.5以下、代替例では、3.0以下、又は別の代替例では、1.8~3.0の分子量分布(molecular weight distribution、MWD)を有し得る。
【0028】
そのようなポリオレフィンは、VERSIFY(商標)プラストマー及びエラストマー、並びにENGAGE(商標)ポリオレフィンエラストマーの商品名でThe Dow Chemical Companyから、又はVISTAMAXX(商標)及びEXACT(商標)の商品名でExxonMobil Chemical Companyから市販されている。
【0029】
ポリオレフィンはまた、オレフィンブロックコポリマーを含み得、例えば、国際公開第WO2005/090427号及び米国特許出願公開第US2006/0199930号(参照により、そのようなオレフィンブロックコポリマーを記載する範囲までが本明細書に組み込まれる)に記載されているものなどのエチレンマルチ-ブロックコポリマーが、ポリオレフィンとして使用され得る。そのようなオレフィンブロックコポリマーは、エチレン/α-オレフィンインターポリマーであり得、
(a)約1.7~約3.5のMw/Mn、摂氏温度での少なくとも1つの融点Tm、及びグラム/立方センチメートルでの密度dを有し、Tm及びdの数値が、以下の関係:
Tm>-2002.9+4538.5(d)-2422.2(d)2に対応するか、又は
(b)約1.7~約3.5のMw/Mnを有し、かつJ/gでの融解熱ΔH、及び最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの間の温度差として定義される摂氏温度でのデルタ量ΔTを特徴とし、ΔT及びΔHの数値が、以下の関係:
ゼロ超、かつ最大130J/gであるΔHについて、ΔT>-0.1299(ΔH)+62.81、
130J/g超のΔHについて、ΔT≧48℃を有し、
CRYSTAFピークが、累積ポリマーの少なくとも5パーセントを使用して決定され、ポリマーの5パーセント未満が識別可能なCRYSTAFピークを有する場合、CRYSTAF温度が、30℃であるか、又は
(c)エチレン/α-オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムで測定される、300パーセントの歪み及び1サイクルにおけるパーセントでの弾性回復率Reを特徴とし、かつグラム/立方センチメートルでの密度dを有し、エチレン/α-オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まない場合、Re及びdの数値が、以下の関係:
Re>1481~1629(d)を満たすか、又は
(d)TREFを使用して分画される場合、40℃~130℃で溶出する分子画分を有し、画分が、同じ温度間で溶出する同程度のランダムエチレンインターポリマー画分よりも少なくとも5パーセント高いモルコモノマー含有量を有することを特徴とし、該同等のランダムエチレンインターポリマーが、エチレン/α-オレフィンインターポリマーと同じコモノマーを有し、かつエチレン/α-オレフィンインターポリマーのものの10パーセント以内の(ポリマー全体に基づく)メルトインデックス、密度、及びモルコモノマー含有量を有するか、又は
(e)25℃、G’(25℃)での貯蔵弾性率、及び
100℃、G’(100℃)での貯蔵弾性率を有し、G’(25℃)対G’(100℃)の比が、約1:1~約9:1の範囲である。
【0030】
そのようなオレフィンブロックコポリマー、例えば、エチレン/α-オレフィンインターポリマーはまた、
(a)TREFを使用して分画される場合、40℃~130℃で溶出する分子画分を有し得、画分が、少なくとも0.5、かつ最大約1のブロックインデックス及び約1.3超の分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とするか、又は
(b)ゼロ超、かつ最大約1.0の平均ブロックインデックス及び約1.3超の分子量分布Mw/Mnを有し得る。
【0031】
ポリオレフィンは、例えば、コモノマー又はグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する、1つ以上の極性ポリオレフィンを含み得る。例示的な極性ポリオレフィンとしては、エチレン-アクリル酸(ethylene-acrylic acid、EAA)及びエチレン-メタクリル酸コポリマー、例えば、The Dow Chemical Companyから市販されているPRIMACOR(商標)、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL(商標)、及びExxonMobil Chemical Companyから市販されているESCOR(商標)という商品名で入手可能なもの、並びに各々が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号、同第4,988,781号、及び同第5,938,437号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的なベースポリマーとしては、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリレート(EBA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
極性ポリオレフィンは、エチレン-アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得、安定化剤は、例えば、エチレン-アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される極性ポリオレフィンを含み得るが、但し、塩基ポリマーは、例えば、ASTMD-974に従って測定される、安定化剤よりも低い酸価を有し得ることを条件とする。
【0033】
安定化剤
水性分散体は、本明細書では分散剤とも呼ばれる少なくとも1つ以上の安定化剤を更に含み、安定した分散体の形成を促進する。安定化剤は、好ましくは、外部安定化剤であり得る。水性分散体は、分散体の固形含有量の総重量に基づいて、0.5~25重量%の1つ以上の安定化剤を含む。0.5重量%~25重量%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、重量パーセントは、0.5、1、2、5、7、9、11、14、19、又は24重量%の下限~4、6、8、10、15、20、又は25重量%の上限であり得る。例えば、分散体は、分散体の固形含有量の総重量に基づいて、0.5~25重量%、又は代替例では1~5重量%、又は代替例では3~10重量%、又は代替例では2~8重量%、又は代替例では5~20重量%、又は代替例では10~20重量%の1つ以上の安定化剤を含み得る。
【0034】
1つ以上の安定化剤は、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含む。本明細書で使用される場合、「脂肪酸」という用語は、飽和又は不飽和炭化水素鎖及び末端カルボキシル基を有するカルボン酸を意味する。脂肪酸が不飽和である場合、脂肪酸は、任意のエナンチオマーであり得る。好ましくは、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤は、分散体の固形含有量の総重量に基づいて、1~6重量%、より好ましくは1.5~5重量%の範囲の量で存在する。脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤がより大量に存在する場合、(メタ)アクリルポリマーがポリオレフィン上でグラフト化することがより困難になり得る。脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤がより少量で存在する場合、粒径が大きくなりすぎる場合があり、かつ/又はグラフト効率が低下し得る。
【0035】
脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤は、4~60個の炭素原子を含む。好ましくは、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤は、少なくとも8個の炭素原子、より好ましくは少なくとも10個の炭素原子、更により好ましくは少なくとも12個の炭素原子、更により好ましくは少なくとも14個の炭素原子を含む。好ましくは、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤は、最大40個の炭素原子、より好ましくは最大30個の炭素原子、更により好ましくは最大24個の炭素原子を含む。
【0036】
好ましくは、脂肪酸又は脂肪酸塩は、16、18、又は20個の炭素原子を含む。より好ましくは、脂肪酸又は脂肪酸塩は、18個の炭素原子を含み、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸、並びにそれらの塩から選択され得る。
【0037】
使用され得るオレイン酸の塩の例としては、オレイン酸のカリウム塩(例えば、RTD Hallstarから入手可能なOPK-181)、オレイン酸のナトリウム塩、又はオレイン酸のアンモニウム塩が挙げられる。
【0038】
脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を使用することは、ポリオレフィンコアへのアクリルポリマーのグラフト効率を著しく増加させることが、驚くべきことに発見されている。以下に記載のプロセスに従って測定される場合、本発明の複合ポリマー中のオレフィンコア上へのアクリルシェルのグラフト効率は、75%以上である。好ましくは、複合ポリマー組成物のグラフト効率は、80%以上、より好ましくは少なくとも85%である。複合ポリマー組成物のグラフト効率は、90%超であり得る。グラフト効率に加えて、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤は、小さな粒径、すなわち、2000nm以下の粒径を有するポリオレフィン分散体中に複合ポリマー粒子を提供し得る。
【0039】
1つ以上の安定化剤は、2つ以上の安定化剤の混合物を含み得る。例えば、1つ以上の安定化剤は、オレイン酸界面活性剤に加えて、非脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤を含み得る。
【0040】
追加の安定化剤は、界面活性剤、ポリマー、又はそれらの混合物であり得る。追加の安定化剤は、コモノマー又はグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する極性ポリマーであり得る。例えば、追加の安定化剤は、コモノマー又はグラフト化モノマーのいずれかとして極性基を有する、1つ以上の極性ポリオレフィンを含み得る。例示的なポリマー安定化剤としては、エチレン-アクリル酸(EAA)及びエチレン-メタクリル酸コポリマー、例えば、The Dow Chemical Companyから市販されているPRIMACOR、E.I.DuPont de Nemoursから市販されているNUCREL、及びExxonMobil Chemical Companyから市販されているESCORという商品名で入手可能なもの、並びに各々が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号、同第4,988,781号、及び同第5,938,437号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。他の例示的なポリマー安定化剤としては、エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレンメチルメタクリレート(EMMA)、及びエチレンブチルアクリレート(EBA)が挙げられるが、これらに限定されない。他のエチレン-カルボン酸コポリマーも使用され得る。当業者は、いくつかの他の有用なポリマーも使用され得ることを認識するであろう。
【0041】
使用され得る追加の安定化剤としては、長鎖脂肪酸、脂肪酸塩、又は12~60個の炭素原子を有する脂肪酸アルキルエステルが挙げられ得るが、これらに限定されない。好ましくは、長鎖脂肪酸又は脂肪酸塩は、12~40個の炭素原子を有し得る。
【0042】
本発明の実践において有用であり得る追加の安定化剤の他の例としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤の例としては、スルホネート、カルボキシレート、及びホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。カチオン性界面活性剤の例としては、四級アミンが挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシドを含有するブロックコポリマー、及びシリコーン界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
追加の安定化剤は、外部界面活性剤又は内部界面活性剤のいずれかであり得る。外部界面活性剤は、分散体の調製中にポリオレフィンに化学的に反応しない界面活性剤である。本明細書で有用な外部界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩及びラウリルスルホン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。内部界面活性剤は、分散体の調製中にポリオレフィンに化学的にグラフト化される界面活性剤である。本明細書で有用な内部界面活性剤の例としては、2,2-ジメチロールプロピオン酸及びその塩が挙げられる。RTD Hallstarから各々入手可能なOP-100(ステアリン酸ナトリウム)及びOPK-1000(ステアリン酸カリウム)、Baker Petroliteから入手可能なUNICID350、Cognisから各々入手可能なDISPONIL FES77-IS及びDISPONIL TA-430、Rhodiaから各々入手可能なRHODAPEX CO-436、SOPROPHOR4D384、3D-33、及び796/P、RHODACAL BX-78及びLDS-22、RHODAFAC RE-610及びRM-710、並びにSUPRAGIL MNS/90、並びにThe Dow Chemical Companyから各々入手可能なTRITON QS-15、TRITON W-30、DOWFAX2A1、DOWFAX3B2、DOWFAX8390、DOWFAX C6L、TRITON X-200、TRITON XN-45S、TRITON H-55、TRITON GR-5M、TRITON BG-10、及びTRITON CG-110を含む、様々な市販の界面活性剤が使用され得る。
【0044】
1つ以上の安定化剤は、脂肪酸若しくは脂肪酸塩安定化剤を含み得るか、それからなり得るか、又は本質的にそれからなり得る。本明細書で使用される場合、「脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤から本質的になる」という語句は、1つ以上の安定化剤が、安定化剤の総重量に基づいて、5重量%未満の脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤以外の任意の安定化剤を含むことを意味する。
【0045】
1つ以上の安定化剤は、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤、及び少なくとも1つの追加の安定化剤を含み得る。複合ポリマー組成物が、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤、及び追加の安定化剤を含む場合、脂肪酸又は脂肪酸塩安定化剤、及び追加の安定化剤は、例えば、10:1~1:10、5:1~1:5、3:1~1:3、2:1~1:2、又は1:1などの、20:1~1:20の重量比で存在し得る。好ましくは、1つ以上の安定化剤は、オレイン酸塩及びラウリルエーテル硫酸、例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを含む。
【0046】
1つ以上の安定化剤は、任意選択的に、中和剤で部分的又は完全に中和され得る。1つ以上の安定化剤の中和は、例えば、モル基準で25~200パーセントであり得、好ましくは、それは、モル基準で50~175パーセントであり得る。例えば、安定化剤がオレイン酸、オレイン酸の塩、又はEAAを含む場合、中和剤は、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの塩基であり得る。他の中和剤は、例えば、水酸化リチウム又は水酸化アンモニウムを含み得る。別の代替例では、中和剤は、例えば、炭酸塩又は重炭酸塩であり得る。別の代替例では、中和剤は、例えば、モノエタノールアミン、又は2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)などの任意のアミンであり得る。本明細書に開示される実施形態において有用なアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びTRIS AMINO(各々、Angusから入手可能)、NEUTROL TE(BASFから入手可能)、並びにトリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びN,N-ジメチルエタノールアミン(各々、The Dow Chemical Companyから入手可能)が挙げられ得る。他の有用なアミンとしては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ-n-プロピルアミン、ジメチル-nプロピルアミン、N-メタノールアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、N,Ν-ジメチルプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、N,N,N’N’-テトラキス(2-ヒドロキシルプロピル)エチレンジアミン、1.2-ジアミノプロパンが挙げられ得る。アミンの混合物又はアミンと界面活性剤との混合物が使用され得る。当業者であれば、適切な中和剤の選択が、配合される特定の組成物に依存し得ること、及びそのような選択が当業者の知識の範囲内であることを認識するであろう。
【0047】
流体媒体
分散体は、流体媒体を更に含む。流体媒体は、任意の媒体であり得、例えば、流体媒体は、水であり得る。本発明の分散体は、分散体の総体積に基づいて、35~80体積パーセントの流体媒体を含む。例えば、水含有量は、分散体の総体積に基づいて、35~75、又は代替例では35~70、又は代替例では45~60体積パーセントの範囲であり得る。分散体の水含有量は、好ましくは、固形含有量(ポリオレフィンプラス安定化剤)が約1体積パーセント~約74体積パーセントであるように制御され得る。固形範囲は、例えば、約10体積パーセント~約70体積パーセント、例えば、約20体積パーセント~約65体積パーセント、又は約25体積パーセント~約55体積パーセントであり得る。
【0048】
追加の成分
水性分散体は、任意選択的に、1つ以上の追加の成分を更に含み得る。追加の成分の例としては、架橋剤、グラフト連結剤、結合剤組成物、充填剤、顔料、共溶媒、分散剤、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、及び中和剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
例示的な架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン;トリアリル(イソ)シアヌレート(triallyl(iso)cyanurate、TAIC)、及びトリアリルトリメリテートを含む、ビニル基含有モノマー;エチレングリコールジメタクリレート(ethylene glycol dimethacrylate、EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びグリセロールトリ(メタ)アクリレートを含む、(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、並びにそれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0050】
例示的なグラフト連結剤としては、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、及びアリルアクリルオキシプロピオネートが挙げられる。
【0051】
例示的な結合剤組成物としては、アクリルラテックス、ビニルアクリルラテックス、スチレンアクリルラテックス、酢酸ビニルエチレンラテックス、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
例示的な顔料としては、二酸化チタン、雲母、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、粉砕ガラス、アルミニウム三水和物、タルク、三酸化アンチモン、フライアッシュ、及び粘土が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
例示的な共溶媒としては、グリコール、グリコールエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、アルコール、ミネラルスピリット、及び安息香酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
例示的な分散体としては、アミノアルコール及びポリカルボキシレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
例示的な防腐剤としては、殺生物剤、防かび剤、殺真菌剤、殺藻剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
例示的な増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系増粘剤、疎水変性アルカリ可溶性エマルション(UCAR POLYPHOBE TR-116などのHASE(hydrophobically modified alkali soluble emulsion)増粘剤)、及び疎水変性エトキシル化ウレタン増粘剤(hydrophobically modified ethoxylated urethane thickener、HEUR)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
例示的な中和剤としては、水酸化物、アミン、アンモニア、及びカーボネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
水性分散体の形成
水性分散体は、当業者によって認識されている任意の数の方法によって形成され得る。例えば、1つ以上のポリオレフィン、任意選択的に1つ以上の添加剤、及び任意選択的に1つ以上の安定化剤は、水及び中和剤、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、又はそれらの2つの組み合わせと共に押出機で溶融混練されて、分散体を形成する。別の例では、1つ以上のポリオレフィン及び1つ以上の添加剤が配合され、次いで、ポリオレフィン/サブ粒子化合物は、任意選択の安定化剤、水、及び1つ以上の中和剤の存在下で、押出機で溶融混練され、それによって分散体を形成する。分散体は、最初に約1~約3重量%の水を含有するように希釈され、次いで、約25重量%超の水を含むように更に希釈される。
【0059】
当技術分野で知られている任意の溶融混練手段を使用することができる。例えば、混練器、BANBURY(登録商標)混合機、一軸スクリュー押出機、又は多軸スクリュー押出機、例えば、二軸スクリュー押出機が使用され得る。本発明による分散体を生成するためのプロセスは、特に限定されていない。例えば、二軸スクリュー押出機などの押出機は、背圧調整器、溶融ポンプ、又はギヤポンプに連結される。塩基リザーバ及び初期水リザーバも提供され得、それらの各々がポンプを含む。所望の量の塩基及び初期水は、それぞれ、塩基リザーバ及び初期水リザーバから提供される。任意の好適なポンプが使用され得、例えば、240バールの圧力で約150cc/分の流量を提供するポンプが、200バールで300cc/分又は133バールで600cc/分の流量などの塩基及び初期水を押出機に提供するように使用される。塩基及び初期水は、予熱器において予熱され得る。
【0060】
ペレット、粉末、又はフレークの形態の1つ以上のポリオレフィンは、供給機から押出機の入口に供給され、そこで樹脂が溶融又は配合される。1つ以上の添加剤は、1つ以上のポリオレフィンと同時に供給機を介して押出機に供給され得るか、又は代替例では、1つ以上の添加剤が1つ以上のポリオレフィンに配合され、次いで供給機を介して押出機に供給され得る。代替例では、追加の1つ以上の添加剤は、乳化ゾーンの前に、入口を介して更に計量されて、1つ以上のポリオレフィン及び任意選択的に1つ以上の添加剤を含む溶融化合物に入れられ得る。分散剤は、樹脂を通して、かつそれと共に1つ以上のポリオレフィンに添加され得、他の例では、分散剤は、二軸スクリュー押出機に別個に提供される。次いで、樹脂溶融物は、押出機の混合及び搬送ゾーンから乳化ゾーンに送達され、そこで、水及び塩基リザーバからの初期量の水及び塩基が入口を通して添加される。追加の分散剤は、水流に添加され得る。分散剤は、独占的に水流に添加され得る。更なる希釈水が、水リザーバから水の入口を介して押出機の希釈及び/又は冷却ゾーンのいずれかに添加され得る。典型的には、分散体は、冷却ゾーンで約40重量%の固形量に希釈される。更に、希釈混合物は、所望の希釈レベルが達成されるまで、何回でも希釈され得る。代替的に、水は、押出機に添加されるのではなく、溶融物が押出機から出た後に樹脂溶融物含有流に添加される。このようにして、押出機内の蒸気圧蓄積が排除され、分散体が動静翼混合機などの二次混合デバイス内で形成される。
【0061】
好ましくは、水性分散体のpHは、少なくとも9である。
【0062】
溶融混練生成物は、水に分散された50nm~2000nmの体積平均粒径を有するポリマー粒子を含む。50nm~2000nmの全ての値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、粒径は、150、350、550、750、950、1150、1350、1550、1750、又は1950nmの下限~200、400、600、800、1000、1200、1400、1600、1800、又は2000nmの上限の範囲であり得る。好ましくは、ポリマー粒子は、50nm以上及び1000nm以下、より好ましくは100nm以上及び800nm以下、更により好ましくは150nm以上及び600nm以下の体積平均粒径を有する。
【0063】
(メタ)アクリルモノマー
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0064】
本明細書で使用される(メタ)アクリルモノマーとしては、例として、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、メチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びジシクロペンタジエニルメタクリレート、並びにそれらのブレンドなどのC1~C8(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
(メタ)アクリルモノマーは、官能化、非官能化、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0066】
例示的な官能化(メタ)アクリルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、アリルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びアクリルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
エマルション重合
エマルション重合条件は、当技術分野において周知されている。エマルション重合プロセスは、典型的には、1つ以上の界面活性剤を利用する。任意選択的に、例示的な界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0068】
1つ以上の架橋剤及び/又はグラフト連結剤は、任意選択的に、エマルション重合に添加され得る。例示的な架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン;トリアリル(イソ)シアヌレート(TAIC)、及びトリアリルトリメリテートを含む、ビニル基含有モノマー;エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びグリセロールトリ(メタ)アクリレートを含む(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート化合物、並びにそれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0069】
例示的なグラフト連結剤としては、例えば、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、及びアリルアクリルオキシプロピオネートが挙げられる。
【0070】
本発明はまた、1つ以上のポリオレフィンがエチレンホモポリマー、エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー、エチレン/アルファ-オレフィンマルチブロックインターポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/アルファ-オレフィンコポリマー、及びプロピレン/アルファ-オレフィンマルチブロックインターポリマーからなる群から選択されることを除いて、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかによる、複合ポリマー組成物、衝撃改良剤、衝撃改良樹脂、及び衝撃改良剤を作製する方法も提供する。
【0071】
本発明は、代替的に、1つ以上の(メタ)アクリルモノマーが官能化及び非官能化(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択されることを除いて、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかによる、複合ポリマー組成物、衝撃改良剤、衝撃改良樹脂、及び衝撃改良剤を作製する方法を提供する。
【0072】
本発明はまた、(メタ)アクリレート、アルキル/アリール(メタ)アクリレート、官能化アルキル(メタ)アクリレート、官能化及び非官能化スチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、クロロプレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のビニルモノマーを除いて、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかによる、コア/シェルポリマー組成物、衝撃改良剤、衝撃改良樹脂、及び衝撃改良剤を作製する方法も提供する。
【0073】
本発明は、エマルション重合が1つ以上の架橋剤及び/又はグラフト連結剤の存在下で実施されることを除いて、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかによる、複合ポリマー組成物、衝撃改良剤、衝撃改良樹脂、及び衝撃改良剤を作製する方法を更に提供する。
【0074】
本発明はまた、マトリックスポリマー樹脂が、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)及びPCブレンド、ポリエステル[例えば、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PBT/polyethylene terephthalate、PET)及びポリ乳酸]、ポリスチレン(polystyrene、PS)、スチレンコポリマー[例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrenes、ABS)及びスチレン-アクリロニトリル樹脂(styrene-acrylonitrile resin、SAN)]、ポリ塩化ビニル(polyvinylchloride、PVC)、ポリアミド(polyamide、PA)(例えば、ポリアミド6及びポリアミド66)、並びにアセタール樹脂[例えば、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene、POM)コポリマー]からなる群から選択されることを除いて、本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかによる、衝撃改良樹脂も提供する。
【0075】
複合ポリマー粒子
複合ポリマー粒子は、ポリオレフィン相又は成分、及びアクリル相又は成分を含む、多ドメイン又は複合構造を示し得、その後者は、ホストポリマー樹脂又はマトリックス中の相溶化相としての役割を果たすことができる。本発明による多ドメイン又は複合構造の例は、多層構造、コア/シェル構造若しくはコア/シェル/シェル構造、又はマルチローブ構造などの、コア及びコアの周囲に少なくとも1つのシェル又は相を含む、構造を含む。
【0076】
好ましくは、複合構造は、コア/シェル構造である。コア/シェル構造では、コアは、好ましくは、1つ以上のポリオレフィン、及びポリオレフィンコアの周囲に少なくとも部分的なシェルを形成するようにポリオレフィン上に重合された(メタ)アクリルモノマーを含む。
【0077】
複合ポリマー粒子は、50~95重量%のオレフィン由来の単位及び5~50重量%の(メタ)アクリル由来の単位を含有し得る。50~95重量%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、オレフィン由来の単位は、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95重量%の上限~50、55、60、65、70、75、80、85、又は90重量%の下限であり得る。例えば、オレフィン由来の単位は、50~95重量%の範囲であり得るか、又は代替例では、オレフィン由来の単位は、60~95重量%の範囲であり得るか、又は代替例では、オレフィン由来の単位は、70~90重量%の範囲であり得るか、又は代替例では、オレフィン由来の単位は、85~95重量%の範囲であり得るか、又は代替例では、オレフィン由来の単位は、65~85重量%の範囲であり得る。5~50重量%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示され、例えば、(メタ)アクリル由来の単位は、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50重量%の上限~5、10、15、20、25、30、35、40、又は45重量%の下限の範囲であり得る。例えば、(メタ)アクリル由来の単位は、5~50重量%の範囲であり得るか、又は代替例では、(メタ)アクリル由来の単位は、10~50重量%の範囲であり得るか、又は代替例では、(メタ)アクリル由来の単位は、5~40重量%の範囲であり得るか、又は代替例では、(メタ)アクリル由来の単位は、5~30重量%の範囲であり得るか、又は代替例では、(メタ)アクリル由来の単位は、15~35重量%の範囲であり得る。
【0078】
(メタ)アクリル成分は、少なくとも50℃のTgを有し得る。少なくとも50℃の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、(メタ)アクリル成分のTgは、少なくとも50℃であり得るか、又は代替例では、(メタ)アクリル成分のTgは、少なくとも50℃であり得るか、又は代替例では、(メタ)アクリル成分のTgは、少なくとも60℃であり得るか、又は代替例では、(メタ)アクリル成分のTgは、少なくとも70℃であり得るか、又は代替例では、(メタ)アクリル成分のTgは、少なくとも80℃であり得る。(メタ)アクリル成分は、120℃以下のTgを有し得る。メタ(アクリル)相は、部分的に架橋され得る。
【0079】
衝撃改良剤は、例えば、複合ポリマー粒子を単離又は乾燥することによって調製され得る。本明細書で使用される場合、「単離」又は「乾燥」は、水性組成物から水を除去するプロセスを指す。単離及び乾燥方法としては、噴霧乾燥、凝固、及び凍結乾燥が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0081】
水性ポリオレフィン分散体(polyolefin dispersion、POD)試料を、機械的分散プロセスを使用して生成した。実施例2で使用されるPODの製造は、代表的な例として供される。PODを、25mmのスクリュー直径、60の長さ対直径の比(length to diameter、L/D)、及び450RPMの回転速度を有するKWP ZSK25二軸スクリュー押出機(Krupp Werner&Pfleiderer Corp.(Ramsey,New Jersey))を使用して調製した。ENGAGE(商標)8137ポリオレフィンエラストマー(60.5/分)及びRETAIN(商標)3000ポリマー改良剤(7.6/分)(両方ともThe Dow Chemical Company(Midland,MI)から入手)を、それぞれSchenck MechaTronロス・イン・ウェイト供給機及びSchenck体積供給機を介して押出機の供給口に供給した。液体架橋助剤、トリアリル(イソ)シアヌレート(TAIC、1.5mL/分)を、Isco二重シリンジポンプ(Teledyne Isco,Inc.(Lincoln,NE)を使用してポリマー溶融ゾーンに注入した。混合物を、2.6gの水中でラウリルエーテル硫酸ナトリウム(EMPICOL(登録商標)ESB70、1.1g/分、Huntsmanから入手)、及びオレイン酸ナトリウム溶液(Na-オレエート、2.5g/分)を含有する初期水性流の存在下で溶融ブレンド及び乳化した。Na-オレエート溶液を、50重量%のNaOH水溶液をオレイン酸(純度90%、Fisher Chemicalから入手)に添加することによって別個に調製した。オレイン酸のモル数に対して、過剰の175mol%のNaOHを添加した。溶融ブレンド及び乳化後、エマルション相を押出機の希釈及び冷却ゾーンに通し進め、ここで、追加の水(100g/分)を添加して、希釈水性分散体を形成した。初期水性流及び希釈水の両方をIsco二重シリンジポンプによって送達し、押出機のバレル温度を140~150℃に設定した。押出機を出ると、分散体を室温まで冷却させ、200μmのナイロンメッシュ濾過バッグを通して濾過した。合計3LのPODを収集した。体積平均粒径を、Beckman Coulter LS13320レーザー光散乱粒子測定器(Fullerton,California)を使用して決定した。この方法は、実際の流体屈折率=1.332、実際の試料屈折率=1.5、及び仮想の試料屈折率=0を想定した。特に明記しない限り、全ての値を重量パーセントとして供する、POD組成物を表1に示す。実施例4を、上記のプロセスに対する変形例によって調製した2つの別個のPODを冷却ブレンドすることによって調製し、それによって、EMPICOL(登録商標)ESBを使用して一方のPODを作製し、K-オレエートを使用して他方のPODを作製したことに留意されたい。
【0082】
エマルション重合プロセスを使用して、POA試料を生成した。実施例2で使用されるPOAの製造は、代表的な例として供される。表1に記載するようなPOD(1500g)の試料を、凝縮器、温度プローブ、及び機械的撹拌機を備える3Lの4口丸底フラスコで脱イオン水を用いて約40重量%の固形量に希釈した。フラスコを窒素下に置き、撹拌速度を250RPMに設定し、分散体の温度を加熱マントルで65℃に制御した。EDTAの溶液を反応器に添加し(3.2mL、水中1.0重量%)、続いてFeSO4・7H2O(14.7mL、水中0.15重量%)の溶液を添加した。別個に調製した70重量%のtert-ブチルヒドロペルオキシド(tert-butyl hydroperoxide、t-BHP、50.7gの水中の2.7g)及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(sodium formaldehydesulfoxylate、SFS、50.7gの水中の1.9g)の溶液を、60分かけて反応器に添加した。次いで、反応器の内容物を65℃で30分間保持した。別個のガラス容器では、脱イオン水(66.5g)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(1.3g、水中22.0重量%溶液)、ブチルアクリレート(butyl acrylate、BA、3.2g)、及びメチルメタクリレート(methyl methacrylate、MM、155.2g)を含有するモノマーエマルション(monomer emulsion、M.E.)を調製した。POD対モノマーの質量比は、80:20であった。t-BHP(15.4gの水中の0.5g)及びSFS(15.4gの水中の0.3g)の溶液を調製し、プラスチックシリンジに装填した。M.E.及びレドックス対t-BHP/SFSの溶液の供給を同時に開始した。M.E.を60分かけて反応器に供給し、レドックス開始剤パッケージを合計90分かけて供給した(すなわち、M.E.供給が完了した後、レドックスの共供給を30分間続けた)。次いで、反応器を65℃で20分間保持した後、室温に冷却した。得られた試料を、100メッシュステンレス鋼フィルターを通して濾過した。
【0083】
所与の試料のグラフト効率(すなわち、PODコアとアクリル相との間の会合の程度)を測定するために、Carter et al.,Design and Fabrication of Polyolefin-Acrylic Hybrid Latex Particles,ACS Appl.Polym.Mater.2019,1,3185-3195によって開示されているように、溶媒抽出法を行った。簡単に説明すると、POA試料をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)に添加し、室温(約1:25重量:重量のPOA:THF)で一晩かき混ぜた。次いで、試料を等量のアセトニトリル(acetonitrile、ACN)でスパイクし、遠心分離して、液相を単離した。別個に、GPC較正曲線を、未架橋PMMAラテックスの既知の質量の連続希釈及び屈折率検出器面積積分応答から構築した。所与のPOA試料について、未グラフト化アクリルポリマーに対応するGPCクロマトグラムのピークの面積を較正曲線と比較し、システム内のアクリルの既知の総質量から差し引いて、グラフト効率を得た。実施例のこの方法を使用して決定したグラフト効率を表1に供する。
【0084】
乾燥した粉末POA試料を得るために、以下の一般的な凝固手順を使用した。1800gの脱イオン水に溶解した7.4gのCaCl2及び2.2gの濃縮HCl(aq)の溶液を、4Lのガラスビーカーに添加し、撹拌しながら75℃に加熱した。別個に、表1に記載されるPOA試料を、脱イオン水で約30重量%の固形量に希釈した。希釈したPOA試料(900g)の一部を撹拌しながら70℃に加熱し、次いで、水中のCaCl2/HCl(aq)の予熱した溶液に一度に全て添加した。得られた混合物を5分間撹拌しながら75℃に保持し、次いで、ホスフェートの水溶液(855gの脱イオン水中の8.3gのリン酸一ナトリウム及び36.7gのリン酸二ナトリウム)を使用してpH約7に中和した。次いで、中和した混合物を90℃に急速に加熱し、90℃で30分間保持し、次いで、60℃に冷却した。60℃で、反応混合物をブフナー漏斗及びワットマン濾紙を通して真空濾過した。得られた湿潤濾過ケーキを脱イオン水で念入りに洗浄し、次いで、60℃の真空オーブンで24時間乾燥させて、白色の粉末を得た。
【0085】
【0086】
配合及び射出成形手順
グラフト化ポリオレフィン-アクリルコア-シェル粒子を、ポリカーボネート樹脂中の衝撃改良剤として使用した(Covestroから入手可能なCALIBRE200)。結果を、市販のメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(methyl methacrylate-butadiene-styrene、MBS)衝撃改良剤(The Dow Chemical Companyから入手可能なPARALOID(商標)EXL2690)の性能と比較した。
【0087】
配合前に、PC樹脂の試料をオーブン内で、110℃で2~4時間乾燥させた。PC樹脂及び所定の質量の乾燥衝撃改良剤(総質量に基づいて、3又は5重量%の衝撃改良剤)を組み合わせ、手動で混合し、JSW28共回転二軸スクリュー押出機(L/D=40)を使用して配合した。樹脂及び衝撃改良剤を、重量K-Tron供給機を介して押出機の供給口に供給し、次いで、溶融ブレンドした。次いで、押出した試料ストランドを水トラフ内で冷却し、エアナイフに通過させて、ストランドの表面上の水を除去し、粒度計でペレット化した。260-270-280-285-290℃(ホッパーからダイへの方向で)に押出機の温度プロファイルを設定し、150rpmのスクリュー速度及び10kg/時の出力で配合を行った。
【0088】
得られた配合PCペレットを、低圧乾燥機で110℃で4時間乾燥させ、続いて、ダイに射出成形して、以下の温度プロファイル:280-280-285-290℃(ホッパーからダイへ)を使用して、衝撃試験のためのドッグボーン形状又は長方形のバーを得た。
【0089】
以下に示す試験方法は、ISO1133に従って測定されるメルトフローレート(melt flow rate、MFR)及びASTM D256に従って測定されるノッチ付きアイゾット衝撃強度を含む。各方法について、少なくとも5つの試料を試験した。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
試験方法
試験方法は、以下を含む:
ISO1183に従って測定したエチレン系ポリマーの密度。
【0094】
ASTM D792に従って測定したプロピレン系ポリマーの密度。
【0095】
ISO 1133に従って測定したMFR。
【0096】
ASTM D256に従って測定したノッチ付きアイゾット衝撃強度。
【0097】
本発明は、その精神及び本質的な属性から逸脱することなく他の形態で具現化され得、したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書ではなく添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。
【国際調査報告】