(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】コーヒー生豆の脱カフェイン処理に由来するサイドストリーム生成物によるLC-PUFAの安定化
(51)【国際特許分類】
A23L 33/12 20160101AFI20230706BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20230706BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230706BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20230706BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230706BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20230706BHJP
A23K 20/158 20160101ALI20230706BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20230706BHJP
【FI】
A23L33/12
A23D9/007
A23L5/00 L
A61K31/19
A61K8/36
A23K10/30
A23K20/158
A23K50/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571866
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2021066173
(87)【国際公開番号】W WO2021255061
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ローフリッチュ, ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ベル-リリッド, ラシッド
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B018
4B026
4B035
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
2B005AA05
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2B150AB20
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(57)【要約】
本発明は概して、LC-PUFA含有組成物の分野に関する。例えば、本発明は、組成物中のLC-PUFAの酸化を少なくとも部分的に防止、阻害、低減、及び/又は抑制することに関する。本発明の実施形態は、少なくとも1種のLC-PUFA含有油と、コーヒー生豆抽出物と、を含む組成物に関する。組成物は少なくとも0.01重量%のLC-PUFAを含有し得る。本発明の別の実施形態は、組成物中のLC-PUFAの酸化を少なくとも部分的に防止、低減、阻害、及び/又は抑制するための、LC-PUFA含有油を含む組成物におけるコーヒー抽出物の使用に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のLC-PUFAを含有する油と、コーヒー生豆抽出物と、を含む、食品組成物であって、
前記組成物が少なくとも0.01重量%のLC-PUFAを含有し、前記コーヒー生豆抽出物が、
a)粗カフェインであって、前記コーヒー生豆抽出物の40重量%~60重量%のカフェインと、前記コーヒー生豆抽出物の20重量%~40重量%のクロロゲン酸とを含有し、前記粗カフェインのLC-PUFAに対する重量比が、少なくとも1:100、好ましくは少なくとも1:80、より好ましくは1:8~1:4である粗カフェイン、又は
b)脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物(DGCE)であって、前記コーヒー生豆抽出物の1重量%~10重量%のカフェインと、前記コーヒー生豆抽出物の30重量%~60重量%のクロロゲン酸とを含有し、DGCEのLC-PUFAに対する重量比が、少なくとも1:200、好ましくは少なくとも1:80、より好ましくは1:10~1:8であるDGCE、又は
c)加水分解DGCEであって、前記コーヒー生豆抽出物の1重量%~10重量%のカフェインと、前記コーヒー生豆抽出物の1重量%~10重量%のクロロゲン酸抽出物と、前記コーヒー生豆抽出物の5%~15重量%のコーヒー酸と、前記コーヒー生豆抽出物の0.5重量%~5重量%のフェルラ酸とを含有し、加水分解DGCEのLC-PUFAに対する重量比が、少なくとも1:20、好ましくは少なくとも1:10、より好ましくは1:8~1:4である加水分解DGCE、から選択される、食品組成物。
【請求項2】
前記コーヒー生豆抽出物が、
a.コーヒー生豆と水を約1:5~1:3の範囲の重量比で合わせる工程、
b.混合物を約50~100℃の範囲の温度に約200~400分間加熱する工程、及び
c.抽出物を回収する工程、を含む方法によってコーヒー生豆から得られる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記LC-PUFA含有油が、海産物油、微生物によって生成された油、単細胞植物によって生成された油、多細胞植物によって生成された油又は動物由来の油、又はそれらの混合物から選択され、好ましくは魚油である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が食品組成物であり、任意で炭水化物源、及びタンパク質源を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が多価不飽和脂肪酸、好ましくは長鎖多価不飽和脂肪酸、更により好ましくはC
18、C
20及び/又はC
22ω-6多価不飽和脂肪酸に富む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記多価不飽和脂肪酸の少なくとも一部が、モノグリセリド、ジグリセリド、及び/又はトリグリセリドの形態で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
例えば、アスコルビン酸、
グルタチオン;
リポ酸;
尿酸;
カロテノイド類、例えば、リコピン、カロテン;
トコフェロール類;
ユビキノン;
ヒドロキノン;
ポリフェノール系酸化防止剤、例えば、レスベラトロール、フラボノイド類;
アスコルビルパルミテート;
ガレート類;
BHA;
BHT;
TBHQ;
サルファイト類;
レチノール類;
カロテノイド類;
フラボノイド類;
茶抽出物;
ローズマリー抽出物;
亜硝酸塩類;
EDTA、クエン酸、フィチン酸;
それらの誘導体及び/又は混合物からなる群から選択される少なくとも1種の他の酸化防止剤を更に含み、及び/又は前記酸化防止剤が前記組成物中に約0.001重量%~1重量%、好ましくは約0.01重量%~0.5重量%の量で添加される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記長鎖多価不飽和脂肪酸が、前記組成物の約1~75重量%、好ましくは前記組成物の約3~50重量%、最も好ましくは前記組成物の約5~35重量%を占める、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含む製品であって、好ましくはLC-PUFAを含有する原料、特に海産物油、微生物によって生成された油、単細胞植物によって生成された油、多細胞植物によって生成された油又は動物由来の油、完全栄養フォーミュラ、乳製品、冷蔵又は保存に安定な飲料、ミネラル水又は精製水、液体飲料、スープ、ダイエタリー・サプリメント、代替食、栄養バー、菓子、乳又は発酵乳製品、ヨーグルト、乳ベースの粉末、経腸栄養製品、乳児用フォーミュラ、乳児用栄養製品、シリアル製品又は発酵シリアルベースの製品、アイスクリーム、チョコレート、コーヒー、調味料製品、例えば、マヨネーズ、トマトピューレ又はサラダドレッシング、ヘルスケア製品、美容製品、医薬製品又はペットフードである、製品。
【請求項10】
組成物中のLC-PUFAの酸化を少なくとも部分的に防止、低減、阻害、及び/又は抑制するための、LC-PUFA含有油を含む組成物におけるコーヒー生豆抽出物の使用。
【請求項11】
魚臭の生成を少なくとも部分的に防止、阻害、及び/又は抑制するための、請求項10に記載のコーヒー生豆抽出物の使用。
【請求項12】
コーヒー生豆抽出物が、少なくとも約1:200、少なくとも約1:150、又は少なくとも約1:100、より好ましくは約1:10~1:4の、コーヒー生豆抽出物のLC-PUFAに対する重量比で組成物に使用される、請求項10又は11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、LC-PUFA含有組成物の分野に関する。例えば、本発明は、組成物中のLC-PUFAの酸化を少なくとも部分的に防止、阻害、低減、及び/又は抑制することに関する。本発明の実施形態は、少なくとも1種のLC-PUFAを含有する油と、コーヒー生豆抽出物と、を含む組成物に関する。組成物は少なくとも0.01重量%のLC-PUFAを含有し得る。本発明の別の実施形態は、組成物中のLC-PUFAの酸化を少なくとも部分的に防止、低減、阻害、及び/又は抑制するためのLC-PUFA含有油を含む組成物におけるコーヒー生豆抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト、特に乳児の食事における長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)の重要性は、現在十分に立証されている(例えば、国際公開第96/40106号を参照)。LC-PUFAの典型的な摂取源は、内臓肉、魚、卵、及びヒトの母乳である。しかしながら、現代の食事ではLC-PUFAが不足していることが多く、LC-PUFAの供給源で食事を補う必要がある。
【0003】
LC-PUFAサプリメントの供給源としては、卵黄リン脂質、並びに魚及び海洋微生物から抽出されたトリグリセリド油が挙げられる。乳児用フォーミュラにLC-PUFAを補うための卵黄リン脂質及び/又は海洋性トリグリセリド油の使用は、例えば、米国特許第4,670,285号及び国際公開第96/10922号に教示されている。乳児用フォーミュラにLC-PUFAを補うための微生物トリグリセリド油の使用は、米国特許第5,374,657号、同第5,397,591号及び同第5,550,156号に教示されている。乳児用フォーミュラにLC-PUFAを補うための別の供給源は、ヒト胎盤に由来する脂質抽出物であり、欧州特許第0140805号に教示されている。
【0004】
その不飽和の程度から、LC-PUFAは酸化分解を起こしやすい。加工及び保存の間にLC-PUFAの二重結合を維持することは、乳児用フォーミュラ、乳児用食品、並びにそのような材料を含有する他の食品及び栄養補助食品などの、LC-PUFA含有食品組成物の調製及び流通における重要な課題である。
【0005】
欧州特許第0404058号には、酸化分解を低減させるために、LC-PUFA含有混合物の調製中に酸化防止剤としてα-トコフェロール及び/又はアスコルビルパルミテートを添加することが記載されている。含有する酸化防止剤の最終濃度が150~300ppmの量になるよう、LC-PUFA含有材料を混合物に添加する。ここで混合物は、一般的にはモノグリセリド乳化剤及びジグリセリド乳化剤を含有する。米国特許第5,855,944号には、油をシリカで処理すること、油を蒸気脱臭すること、次いで、食品用のレシチン、α-トコフェロール、及びアスコルビルパルミテートの混合物を、合計でその混合物の1000~4000ppmの量で油に添加することにより、LC-PUFA含有海産物油を安定化させる方法が記載されている。欧州特許第2025237号には、LC-PUFA含有油とレシチンとを含む組成物の使用が記載されており、該刊行物では、レシチン対LC-PUFAの重量比は、LC-PUFA含有油の魚臭の生成を防止、阻害、及び/又は抑制するために、少なくとも約25:75である。
【0006】
LC-PUFA含有油の酸化によって生じる魚臭の生成を低減することは、未解決のままの重要な技術的課題である。最終的な食品製品において非常に不快な魚臭い異臭を阻害することは、消費者にとって非常に重要である。前駆体であるLC-PUFAの濃度が実質的は減少していなくても、魚臭い異臭を示す化合物がppb量で生成されていれば、強く魚臭い異臭が生成されるには十分なのである。
【0007】
LC-PUFAの酸化の防止、阻害、低減、及び/又は抑制が、天然の手段により、特に健康的であるという評価及び伝統を有する植物由来の材料を使用することにより実現されることが望ましい。
【0008】
したがって、LC-PUFA含有組成物における魚臭い異臭の生成を阻害するための、代替的な、天然の、消費者に優しい、安価で効果的な方法が依然として必要とされている。
【0009】
国際公開第2004/026287号には、皮膚の質を改善し、ヒト又は動物の皮膚の加齢に関連する変化を防止又は回復するための、経口投与可能な組成物が開示され、該組成物は、オメガ-3脂肪酸などの脂肪酸とコーヒー抽出物を含んでいる。組成物は食品製品に使用される。ポリフェノール系酸化防止剤(銀杏抽出物)、ビタミンC、ビタミンE、並びに更なるタンパク質源及び炭水化物源などのその他の酸化防止剤及び成分が示されている。しかしながら、この文献は、開示された効果がヒト又は動物の栄養に応用可能であることを示唆してはいない。
【0010】
出願公開第2002142673(A)号は、植物油又は魚油から選択される油と、ビタミンC、クエン酸、クロロゲン酸、プロアントシアニジン、フラボン誘導体、茶抽出物、ブドウ種子抽出物及びルチン及び生コーヒー豆抽出物から選択される酸化防止剤とを含む食品組成物に関する。一実施例では、生コーヒー豆抽出物とクロロゲン酸が記載され、酸化防止剤として使用されている。
【0011】
国際公開第2011/002805(A2)号には、主にレシチンを使用したPUFAを安定化する組成物が示され、該刊行物では、生コーヒー豆抽出物及びクロロゲン酸の酸化防止特性も開示されている。
【0012】
上に引用した3報の先行技術文献は、長鎖多価不飽和脂肪酸に対する抗酸化効果において、生コーヒー豆抽出物の有望な効果を言及している。しかしながら、本発明者らは、それらの効果は尚も限定的であり、ヒト又は動物の栄養のための食用組成物におけるPUFAの安定性を改善することが依然として必要とされていることを見出した。更に、上掲の刊行物は生コーヒー豆抽出物に言及しているが、この抽出物は、複雑で高価なプロセスによって特別に得られる酸化防止材料を必要とする。
【0013】
本明細書における先行技術文献のいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当分野で共通の全般的な認識の一部を形成していることを認めるものとみなされるべきではない。
【0014】
したがって、本発明の目的は、技術水準を改善及び/又は充実させることであり、特に、評判の良い植物由来の原材料を使用して、LC-PUFAを含む組成物における魚臭い異臭の生成を効果的かつ安価に防止、阻害、低減、又は抑制する方法を当該技術に提供すること、又は少なくとも有用な代替方法を提供することである。
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の目的が独立請求項の主題によって達成され得ることを見出した。従属請求項は、本発明の着想を更に展開させるものである。
【0016】
それにより、本発明は、少なくとも1種のLC-PUFAを含有する油と、コーヒー生豆抽出物と、を含む組成物を提供する。
【0017】
更に、本発明は、少なくとも1種のLC-PUFAを含有する油と、コーヒー生豆抽出物と、を含む製品を提供する。
【0018】
更にまた、本発明は、組成物中のLC-PUFAの酸化を少なくとも部分的に防止、低減、阻害、及び/又は抑制するための、LC-PUFA含有油を含む組成物におけるコーヒー生豆抽出物の使用を提供する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「含む/備える(comprises)」、「含んでいる/備えている(comprising)」という単語、及び類似の単語は、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきではない。換言すれば、これらは「含むが、これらに限定されない」ことを意味することを意図している。
【0020】
本発明者らは、LC-PUFAを含む組成物における魚臭い異臭の生成を効果的に防止、阻害、低減、又は抑制するために、コーヒー生豆抽出物を使用できることを示した。コーヒー生豆抽出物が、LC-PUFAの酸化を効果的に防止、阻害、低減、又は抑制することが示された。
【0021】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは現在、コーヒー生豆抽出物がLC-PUFAからの魚臭の生成を防止する効果は、コーヒー生豆抽出物の酸化防止特性によるものと考えている。
【0022】
コーヒー生豆抽出物は、コーヒー生豆又は生コーヒー豆、言い換えれば、焙煎されていないコーヒー豆から調製される。コーヒー生豆抽出物は、一方で、減量用サプリメント、正常な血圧を保つためのサプリメント及び正常なコレステロールレベルを保つためのサプリメントにしばしば使用されている、公知の栄養サプリメントである。
【0023】
コーヒー生豆抽出物は多くの供給業者から市販されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の追加の特徴及び利点は、図面を参照して以下に記載の現在好ましい実施形態の説明において記載されており、この説明から明らかになる。
【
図1】精製済みの高濃度DHAのLC-PUFA油2gと、様々な量の粗カフェインとを含有する混合物において、粗カフェインが魚油の酸化を防止する抗酸化能力を、RapidOxy100で測定した誘導時間(IP)で示す。精製魚油は追加の酸化防止剤を含まない陰性対照であり、NAD油及びNIF油は化学的酸化防止剤を含む市販の陽性対照である。エラーバーに測定値(n=2)のSDを示した。
【
図2】精製済みの高濃度DHAのLC-PUFA油2gと、様々な量の粗カフェインとを含有する混合物において、脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物(DCGE)が魚油の酸化を防止する抗酸化能力を、RapidOxy100で測定した誘導時間(IP)で示す。エラーバーに測定値(n=2)のSDを示した。
【
図3】精製済みの高濃度DHAのLC-PUFA油2gと、様々な量の、加水分解された脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物(DCGE)とを含有する混合物において、加水分解されたDCGEが魚油の酸化を防止する抗酸化能力を、RapidOxy100で測定した誘導時間(IP)で示す。エラーバーに測定値(n=2)のSDを示した。
【
図4】精製済みの高濃度DHAのLC-PUFA油2gと、様々な量の、コーヒー生豆抽出物中の活性成分とを含有する混合物において、活性成分が魚油の酸化を防止する抗酸化能力を、RapidOxy100で測定した誘導時間(IP)で示す。エラーバーに測定値(n=2)のSDを示した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
したがって、本発明は、少なくとも1種のLC-PUFAを含有する油と、コーヒー生豆抽出物と、を含む組成物に部分的に関する。組成物はLC-PUFAを含有する任意の組成物であってよい。組成物は、LC-PUFAを天然に含有していてもよく、又はLC-PUFAが富化されていてもよい。例えば、組成物は少なくとも0.01重量%のLC-PUFAを含有する。
【0026】
任意のコーヒー生豆抽出物を使用することができる。コーヒー生豆抽出物は任意の品種のコーヒーから得ることができる。例えば、コーヒーの品種は、アラビカ種、ロブスタ種又はそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0027】
本発明の目的に使用されるコーヒー生豆抽出物は、約1~60重量%の範囲のカフェイン及び約1~40重量%の範囲のクロロゲン酸を含有することができる。
【0028】
コーヒー生豆抽出物は、当技術分野において既知の方法によって調製することができる。例えば、コーヒー生豆抽出物は、コーヒー生豆と水を合わせる工程、混合物を加熱する工程及び抽出物を回収する工程、を含む方法によって、コーヒー生豆から得ることができる。
【0029】
例えば、コーヒー生豆抽出物は、
例えば約1:4.5~1:3.5、例えば約1:4のような、約1:5~1:3の範囲の重量比でコーヒー生豆と水を合わせる工程、
約200~400分、又は約250~350分、約280~330分の間、例えば約60~90℃、又は例えば約70~85℃のような、約50~100℃の範囲の温度に混合物を加熱する工程、及び
抽出物を回収する工程、を含む方法によって、コーヒー生豆から得ることができる。
【0030】
任意で、コーヒー生豆抽出物を調製後に少なくとも部分的に乾燥させて、含水量を低減させてもよい。本発明の一実施形態では、コーヒー生豆抽出物は粉末形態で提供される。
【0031】
抽出速度を速くするために、コーヒー生豆を少なくとも部分的に挽いてもよい。
【0032】
例えば、本発明の目的に使用されるコーヒー生豆抽出物は、約40~60重量%の範囲のカフェイン及び約20~40重量%の範囲のクロロゲン酸を含有する。本発明者らはそのようなコーヒー生豆抽出物を粗カフェインと呼称する。
【0033】
特定の好ましい粗カフェインは以下のように調製することができる。
【0034】
コーヒー生豆(1kg)を85℃の熱水(4kg)に浸して混合物を5時間撹拌した。濾過した後、水相の水を凍結乾燥、噴霧乾燥、又は回転蒸発によって乾燥させて、粗カフェインを得た。
【0035】
本発明の目的に使用されるコーヒー生豆抽出物はまた、約1~10重量%の範囲のカフェイン及び約30~60重量%の範囲のクロロゲン酸を含有してもよい。本発明者らは、そのようなコーヒー生豆抽出物を脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物(DGCE)と呼称する。
【0036】
特定の好ましいDGCEは以下のように調製することができる。
【0037】
粗カフェインの脱カフェイン処理はCH2Cl2で抽出することによって行うことができる。この脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物は、Chemical Resources(インド)又はTesta(イタリア)から市販されている。脱カフェイン処理は、他の有機溶媒(例えば、酢酸エチル)で、又は固体担体(例えば、樹脂、シリカ、木炭)上へのカフェインの捕捉によって行うことができる。
【0038】
生豆の脱カフェイン処理はまた、生豆から超臨界CO2で抽出することによっても行うことができる。この脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物は、Martin Bauer(ドイツ)から購入した。
【0039】
本発明の目的に使用されるコーヒー生豆抽出物はまた、約1~10重量%の範囲のカフェイン、約1~10重量%の範囲のクロロゲン酸、約5~15%の範囲のコーヒー酸、及び約0.5~5%の範囲のフェルラ酸を含有する。本発明者らは、そのようなコーヒー生豆抽出物を、加水分解された脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物(加水分解DGCE)と呼称する。
【0040】
コーヒー生豆抽出物の加水分解は、エステラーゼ及びリパーゼなどの加水分解酵素、又はそのような酵素活性を有する任意の酵素調製物によって行うことができる。ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)由来のエステラーゼを単離して特性評価し、大腸菌で過剰発現させた。市販のエステラーゼには、例えば、いずれもシグマ・アルドリッチ製である成豚肝臓エステラーゼ(HLE)若しくはブタ肝臓エステラーゼ(PLE)、又はキッコーマン(日本)製のクロロゲン酸エステラーゼがある。加水分解酵素活性を有する市販の酵素調製物には、例えば、アロマーゼ(天野)及びラピダーゼ(DSM)がある。
【0041】
特定の好ましい加水分解DGCEは以下のように調製することができる。
【0042】
脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物(1.76Kg)を、撹拌下で水(8.8Kg)に溶解した。次いで、HCl(0.36Kg)を添加してpH4.5に調整した。この溶液に、T=0時間に16g、及び反応の3時間後に8gの2回に分けて、24gの酵素(ラクトバチルス・ジョンソニ由来のエステラーゼ、2.0U/mg)を添加した。反応を37℃で6時間行った。次に、混合物を98℃で10分間加熱して、酵素を失活させた。遠心分離(2分、5000g)及び濾過(0.45μm)の後、混合物を凍結乾燥して、加水分解されたコーヒー生豆抽出物(HDGCE)を得た。
【0043】
興味深いことに、本発明者らは、上述の「粗カフェイン」、DGCE、又は加水分解DGCEが、コーヒー生豆の脱カフェイン処理のサイドストリーム生成物(すなわち、脱カフェイン処理画分)として得られることを見出した。言い換えれば、そのような酸化防止物質は、例えば、脱カフェイン処理済みコーヒーを得るために使用される工業プロセスのサイドストリームとして得られる。そのため、このような材料は商業的に「目的物」として製造する必要がないことから、自然保護及び経済的な観点で魅力がある。
【0044】
LC-PUFAの供給源は、本発明の主題にとって重要ではない。当該技術分野で既知の任意の供給源を使用することができる。
【0045】
概して、当業者には、不飽和脂肪酸の供給源は周知である。例えば、DHAの典型的な供給源は、例えば、魚油又はクリプテコディニウム・コニー(Cryptecodinum cohnii)などの微生物由来の油である。例えば、欧州特許第0515460号には、DHAに富む油を得る方法が開示されており、DHAは培養された渦鞭毛藻類のバイオマス中に存在する。国際公開第02/072742号には、DHA、ARA、DHGLA、及びEPAに富む油が開示されている。例えば、ARAの典型的な供給源は、卵レシチン又は発酵プロセスのバイオマス(モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina))であり、後者は欧州特許第0568608号に開示されているプロセスに従って得ることができる。非常に純粋な調製物が望まれる場合は、LC-PUFAを含有する脂肪又は油を合成しての調製が有利であり得る。しかしながら、概して、LC-PUFA含有油は、海産物油、微生物によって生成された油、単細胞植物によって生成された油、多細胞植物によって生成された油、若しくは動物由来の油、又はそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態では、LC-PUFA含有油は、海産物油、微生物によって生成された油、単細胞植物によって生成された油、多細胞植物によって生成された油、若しくは動物由来の油、又はそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは魚油であり得る。
【0047】
組成物は、LC-PUFAの酸化及び/又は魚臭の発生を回避又は抑制することが望ましい全ての組成物である。例えば、組成物は、局所塗布のための薬剤又はクリームであってもよい。しかしながら、好ましくは、組成物は食品組成物である。
【0048】
国際食品規格によると、「食品」という用語は、加工、半加工、又は未加工に関わらず、飲料、チューインガムを含むヒトの消費を意図した全ての物質、及び「食品」の製造、調製、又は処理に使用されている全ての物質を意味するが、化粧品又はタバコ又は薬剤としてのみ使用される物質を含まない。
【0049】
本発明の組成物は、不飽和脂肪酸、好ましくは多価不飽和脂肪酸に富む。多価不飽和脂肪酸(PUFA)としては、オメガ-3脂肪酸及びオメガ-6脂肪酸が挙げられる。本発明の枠組みで使用されるLC-PUFAの典型的な例としては、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸(ARA)、リノール酸、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸、及び/又はエルカ酸が挙げられる。
【0050】
本発明の特定の好ましい実施形態では、組成物は長鎖多価不飽和脂肪酸に富む。炭素鎖がC原子を18個以上含む場合、PUFAはLC-PUFAとみなされる。
【0051】
本発明の組成物は多価不飽和脂肪酸、好ましくは長鎖多価不飽和脂肪酸、更により好ましくはC18、C20及び/又はC22ω-6多価不飽和脂肪酸に富む。したがって、本発明の組成物は、C18、C20、及び/又はC22オメガ-6多価不飽和脂肪酸に富む。本発明の組成物中のオメガ-6脂肪酸とオメガ-3脂肪酸との重量比は、好ましくは1:2~8:1、より好ましくは4:1~8:1である。
【0052】
多価不飽和脂肪酸は、少なくとも部分的に遊離脂肪酸の形態で存在してもよい。多価不飽和脂肪酸はまた、少なくとも部分的にモノグリセリド、ジグリセリド、及び/又はトリグリセリドの形態で存在してもよい。このグリセリドの形態はPUFAの安定性に寄与し、したがって、魚臭の発生の回避に役立つ。
【0053】
本発明の組成物が少なくとも1種の他の酸化防止剤を更に含む場合もまた、有益であり得る。酸化防止剤の種類は重要ではないが、しかしながら、組成物が食品製品又は薬剤である場合、食品用の酸化防止剤が必要とされる。組成物が局所投与用の製品である場合、少なくとも食品用の酸化防止剤が強く好まれる。酸化防止剤はコーヒー生豆抽出物と協調して、製品価値を損なわせかねないLC-PUFA酸化を回避するために役立つ。魚臭の発生を回避する点で特に有益な特性を有する酸化防止剤としては、柑橘類、特にレモンの抽出物を挙げることができる。好適な酸化防止剤の更なる例は、アスコルビン酸;グルタチオン;リポ酸;尿酸;カロテノイド類、例えば、リコピン、カロテン;トコフェロール類;ユビキノン;ヒドロキノン;ポリフェノール系酸化防止剤、例えば、レスベラトロール、フラボノイド類;アスコルビルパルミテート;ガレート類;BHA;BHT;TBHQ;サルファイト類;レチノール類;カロテノイド類;フラボノイド類;茶抽出物;ローズマリー抽出物;亜硝酸塩類;EDTA、クエン酸、フィチン酸;それらの誘導体及び/又は混合物からなる群から選択することができる。
【0054】
本発明の枠組みで使用することができる追加の酸化防止剤の量は特には限定されず、例えば、使用する酸化防止剤の種類及び組成物中に存在するコーヒー生豆抽出物及びLC-PUFAの量に応じて異なる。当業者は適切な量を決定することができる。しかしながら、概して、少なくとも1つの他の酸化防止剤を、組成物全体に対して約0.001重量%~1重量%、好ましくは約0.01重量%~0.5重量%の量で組成物に添加することが好ましい。
【0055】
したがって、本発明の組成物は、例えば、アスコルビン酸;グルタチオン;リポ酸;尿酸;カロテノイド類、例えば、リコピン、カロテン;トコフェロール類;ユビキノン;ヒドロキノン;ポリフェノール系酸化防止剤、例えば、レスベラトロール、フラボノイド類;アスコルビルパルミテート;ガレート類;BHA;BHT;TBHQ;サルファイト類;レチノール類;カロテノイド類;フラボノイド類;茶抽出物;ローズマリー抽出物;亜硝酸塩類;EDTA、クエン酸、フィチン酸;それらの誘導体及び/又は混合物からなる群から選択される酸化防止剤を更に含むことができる。酸化防止剤は約0.001重量%~1重量%、好ましくは約0.01重量%~0.5重量%の量で組成物に添加される。
【0056】
組成物が原料ではなく、すぐに消費できるプレミックス又は製品である場合、組成物はしばしば、炭水化物源、タンパク質源、及び/又は更なる脂肪源も更にまた含み得る。
【0057】
したがって、本発明の組成物は、任意で炭水化物源及びタンパク質源を更に含む食品組成物であってもよい。
【0058】
最終製品は、製品に意図された目的に応じた量のLC-PUFAを含み得る。しかしながら、典型的な食品組成物は、重量パーセントで、0.01~0.5%、好ましくは0.015~0.4%、最も好ましくは0.02~0.2%、例えば、0.06%のLC-PUFAを含む。
【0059】
当業者は、LC-PUFAを酸化から所望の程度保護するために、コーヒー生豆抽出物の量を適切に調整することができる。
【0060】
例えば、コーヒー生豆抽出物のLC-PUFAに対する重量比は、少なくとも約1:200、少なくとも約1:150、又は少なくとも約1:100であってもよい。例えば、コーヒー生豆抽出物のLC-PUFAに対する重量比が約1:10~1:4である場合に、優れた結果が得られる。
【0061】
コーヒー生豆抽出物が粗カフェインである場合、コーヒー生豆抽出物のLC-PUFAに対する重量比は少なくとも約1:100、好ましくは少なくとも約1:80、より好ましくは約1:8~1:4である。
【0062】
コーヒー生豆抽出物がDGCEである場合、コーヒー生豆抽出物のLC-PUFAに対する重量比は少なくとも約1:200、好ましくは少なくとも約1:80、より好ましくは約1:10~1:8である。
【0063】
コーヒー生豆抽出物が加水分解DGCEである場合、コーヒー生豆抽出物のLC-PUFAに対する重量比は少なくとも約1:20、好ましくは少なくとも約1:10、より好ましくは約1:8~1:4である。
【0064】
製品が栄養組成物である場合、製品は、例えば、主要栄養素及び微量栄養素、機能性食品成分などの他の原材料を含んでもよい。製品は更に脂質を含んでもよい。使用される典型的な脂質源としては、乳脂肪、サフラワー油、卵黄脂質、キャノーラ油、オリーブ油、ココナツ油、パーム油、パーム核油、パームオレイン、大豆油、ヒマワリ油が挙げられる。炭素原子6~12個(C6~C12)のアシル鎖を有する脂肪酸を含むトリグリセリドとして本明細書で定義される、中鎖トリグリセリド(MCT)もまた含まれる。
【0065】
概して、脂肪酸は、好ましくはトリグリセリドの形態で存在する。しかしながら、それらはまた、遊離脂肪酸、グリセロール以外の他のアルコールのエステルの形態、又はリン脂質の形態で存在してもよい。したがって、本発明の組成物において、多価不飽和脂肪酸は、少なくとも部分的にモノグリセリド、ジグリセリド、及び/又はトリグリセリドの形態で存在する。
【0066】
最終栄養組成物では、脂質は、栄養組成物の総エネルギーの30~50%、好ましくは35~45%を提供する。
【0067】
タンパク質源又は炭水化物源として、概して、栄養組成物中の原材料として好適な任意のタンパク質源及び/又は炭水化物源を使用することができる。
【0068】
使用できる食品タンパク質は、任意の好適な食品タンパク質であり、例えば、動物性タンパク質(乳タンパク質、肉タンパク質、及び卵タンパク質など);植物性タンパク質(大豆タンパク質、小麦タンパク質、米タンパク質、及びエンドウ豆タンパク質など);遊離アミノ酸の混合物;又はこれらの組み合わせが挙げられる。カゼイン及びホエイタンパク質などの乳タンパク質が特に好ましい。タンパク質は、未加工のもの、加水分解されたタンパク質、部分的に加水分解されたタンパク質、遊離アミノ酸、又はこれらの混合物であってもよい。タンパク質源は、好ましくは、組成物のエネルギーの約7~25%、より好ましくは7~15%、最も好ましくは8~13%を提供する。
【0069】
栄養組成物が炭水化物源を含む場合、栄養組成物における使用に好適な任意の炭水化物、例えば、マルトデキストリン、マルトース、スクロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ、コーンシロップ固体、ライスシロップ固体などの消化しやすい炭水化物、及び例えば、穀物デンプン、米デンプン、トウモロコシデンプンなどのデンプン、及びそれらの混合物を使用することができる。炭水化物源は、例えば、完全栄養組成物である場合、好ましくは、栄養組成物のエネルギーの約30%~約70%、好ましくは40~60%を提供する。
【0070】
食物繊維(難消化性炭水化物)もまた、必要に応じて、本発明の栄養組成物中に存在してもよい。多くのタイプの食物繊維を利用することができる。いくつかの例を挙げると、例えばフラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、フコオリゴ糖、マンノオリゴ糖などのオリゴ糖を挙げることができる。
【0071】
組成物は、特定の人の栄養必要量を満たすように、又は更なる利益又は機能を提供するように意図された更なる原材料を含んでもよい。例えば、組成物は、好ましくは「完全栄養」であり、すなわち、人間の健康な生活を長期間にわたり維持するために適切な栄養素を含有する。好ましくは、組成物はビタミン及びミネラルを含む。微量元素もまた提供される。
【0072】
必要に応じて、製品はモノグリセリド及びジグリセリドのクエン酸エステルなどの乳化剤及び安定剤を含有してもよい。乳化剤は、モノグリセリド及びジグリセリド、モノ/ジグリセリドの酢酸エステル、モノ/ジグリセリドの乳酸エステル、モノ/ジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリドのコハク酸エステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、ポリグリセロールエステル、ステアロイル乳酸カルシウム及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0073】
製品は、任意で、ラクトフェリン、ヌクレオチド及び/又はヌクレオシドなどの有益な効果を有する他の物質を含有してもよい。
【0074】
栄養組成物は、好ましくは、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ラクトバチラス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Strepotococcus)、及びこれらの混合物から選択されるプロバイオティクス微生物を更に含んでもよい。
【0075】
組成物中のLC-PUFAの含有量が高いほど、望ましくない魚臭の生成からの保護がより必要となる。当然ながら、組成物が、原料、プレミックス、栄養補助食品、一般的な食品組成物の特殊用途のための食品組成物、であるかによって、LC-PUFAの含有量は大きく異なるが、本発明の主題はこれら全ての目的に使用することができる。しかしながら、一般的には、本発明の組成物において、長鎖多価不飽和脂肪酸は、組成物の約1~75重量%、好ましくは組成物の約3~50重量%、最も好ましくは組成物の約5~35重量%を占める。
【0076】
本発明の主題はまた、本発明の組成物を含む製品を含む。製品は、例えば、食品である。製品はLC-PUFAを含有する原料、特に海産物油、微生物によって生成された油、単細胞植物によって生成された油、多細胞植物によって生成された油又は動物由来の油、完全栄養フォーミュラ、乳製品、冷蔵又は保存に安定な飲料、ミネラル水又は精製水、液体飲料、スープ、ダイエタリー・サプリメント、代替食、栄養バー、菓子、乳又は発酵乳製品、ヨーグルト、乳ベースの粉末、経腸栄養製品、乳児用フォーミュラ、乳児用栄養製品、シリアル製品又は発酵シリアルベースの製品、アイスクリーム、チョコレート、コーヒー、調味料製品、例えば、マヨネーズ、トマトピューレ又はサラダドレッシング、ヘルスケア製品、美容製品、医薬製品又はペットフードであってもよい。
【0077】
本発明の主題はまた、LC-PUFA含有油を含む組成物にコーヒー生豆抽出物を使用して、組成物中のLC-PUFAの酸化を少なくとも部分的に防止、低減、阻害、及び/又は抑制することに発展する。
【0078】
本発明の主題は更に、コーヒー生豆抽出物を使用して、魚臭の生成を少なくとも部分的に防止、阻害、及び/又は抑制すること、例えば、組成物中のLC-PUFAの酸化を少なくとも部分的に防止、低減、阻害、及び/又は抑制して、魚臭の生成を少なくとも部分的に防止、阻害、及び/又は抑制することに発展する。
【0079】
本発明のこれらの使用において、コーヒー生豆抽出物は、少なくとも約1:200、少なくとも約1:150、又は少なくとも約1:100、より好ましくは約1:10~1:4の、コーヒー生豆抽出物のLC-PUFAに対する重量比で、組成物に使用される。
【0080】
この組成物は本発明に記載の組成物であってもよい。同様に、本発明の組成物について説明したようにコーヒー生豆抽出物を使用することができる。
【0081】
当業者は、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。特に、本発明の組成物又は製品について記載された特徴は本発明の使用と組み合わせることができ、逆もまた同様である。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を組み合わせてもよい。
【0082】
本発明を実施例によって説明してきたが、特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、変更及び改変を加えることができることが理解されるべきである。
【0083】
更に、既知の均等物が特定の特徴に対して存在する場合、かかる均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。本発明の更なる利点及び特徴は、図及び非限定的な実施例から明らかである。
【実施例】
【0084】
1)材料:
粗カフェインはTrian(ベトナム)のNestle Factoryによって製造された。
【0085】
抽出する脱カフェイン処理済みコーヒー生豆は、Chemical Ressorces(インド)又はTESTA(イタリア)から購入した。脱カフェイン処理はジクロロメタン(CH2Cl2)での抽出によって行なった。別の脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物をMartin Bauer(ドイツ)から購入した。こちらの脱カフェイン処理は超臨界CO2で行なわれた。
【0086】
酵素(ラクトバチラス・ジョンソニ由来のエステラーゼ)は食品用の大腸菌で過剰発現させて社内で製造した。
【0087】
酸化防止剤を無添加の、精製済みの高DHAのツナ魚油(Sofinol S.A.、マンノ、ティチーノ、スイス)を魚油基質として使用して、様々な酸化防止剤と混合して、酸化防止剤の能力を検討した。
【0088】
1500ppmのδ型リッチなトコフェロール濃縮物によって安定化された高DHAのLC-PUFAタイプのNIF(ツナ)魚油(Sofinol S.A.、マンノ、ティチーノ,スイス)を陽性対照1として使用した(
図1)。
【0089】
1500ppmの混合トコフェロール濃縮物(d-δ-トコフェロール70%)及び200ppmアスコルビルパルミテートによって安定化させた高EPAのLC-PUFAタイプのNAD魚油(イワシ、アンチョビ及び他の青魚(Sofinol S.A.、マンノ、ティチーノ、スイス))を陽性対照2として使用した(
図1)。
【0090】
2)方法:
上昇させた温度及び過剰な純酸素の加速酸化条件下で、RapidOxy100(Anton Paar Switzerland AG、ブフス、スイス)によって、試料の誘導時間(IP)を測定する。
【0091】
2gの魚油と様々な量のコーヒー生豆抽出物とを含有する試料をガラス皿中で調製し、手で混合して均質化した。次いで、ガラス皿をステンレス鋼製の試験チャンバに入れて、このチャンバに25℃の開始温度で所定の圧力(700kPa)まで酸素を充填した。予め決められた目標温度(120℃)に試験チャンバを加熱して測定を開始し、停止点(break point)に達するまで測定を続けた。停止点は、試験の最大圧力を予め決められた割合(例えば、10%)で下回る圧力降下である。
【0092】
酸化安定性の尺度として使用することができる誘導時間(IP)は、試験チャンバの加熱手順の開始と停止点(Pmax-規定された割合)との間で経過した時間として特定され、これは分単位で測定された。IPが長いほど酸素の取り込みが遅く、したがって、抗酸化能力が強く、逆もまた同様である。
【0093】
3)結果
粗カフェインは、精製魚油と粗カフェインとを含有する混合物中の魚油の酸化防止において、濃度依存性の酸化防止能力を示した(
図1)。25mgの粗カフェイン(魚油中1:80w/w)と2gの魚油とを含有する混合物は、高DHA/EPA LC-PUFAと酸化防止剤とを含有する陽性対照である市販のNIF油及びNAD油(それぞれ40分及び41分)と比較して同様の誘導時間(41分)を示した。追加の酸化防止剤を含まない精製済みの高DHAのLC-PUFA油である陰性対照のIP(32分)もまた
図1に示した。脱カフェイン処理に使用される溶媒及びプロセスによっては、脱カフェイン処理後のコーヒー生豆抽出物(DCGE)の、精製魚油と脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物とを含有する混合物中の魚油の酸化防止における抗酸化能力は、減弱された又は完全に失われた(
図2)。脱カフェイン処理の溶媒としてジクロロメタンを用いたChemical Resource製のDCGEは、二酸化炭素(CO2)を用いた超臨界抽出を脱カフェイン処理に使用したMartin Bauer製のDCGEよりも強い抗酸化能力を示した。Chemical Resource製の0.25gのDCGE(魚油中1:4w/w)と2gの魚油とを含有する混合物は、市販のNIF油及びNAD油(それぞれ40分及び41分)と比較して同様の誘導時間(44分)を示した。ジクロロメタンは極性(polarity index)が3.1の極性溶媒であり、非極性の植物性活性成分がDCGEに保持されて酸化防止剤として反応することができる。一方、これらの酸化防止剤は、二酸化炭素(CO2)を用いた超臨界抽出による脱カフェイン処理の間に除去される。
【0094】
加水分解された脱カフェイン処理済みコーヒー生豆抽出物(DCGE)もまた、精製魚油と加水分解されたDCGEとを含有する混合物中の魚油の酸化防止において、強い抗酸化能力を示した(
図3)。加水分解されたDCGE25mg(魚油中1:80w/w)と魚油2gとを含有する混合物は、市販のNIF油及びNAD油(それぞれ40分及び41分)と比較して同様の誘導時間(39分)を示した。
【0095】
粗カフェインは、カフェインと、クロロゲン酸などのコーヒーポリフェノールとに富む。DCGEは主にクロロゲン酸(すなわち、カフェオイルキナ酸)などのコーヒーポリフェノールで構成される。加水分解されたDCGEは、クロロゲン酸の加水分解によって生成された高濃度のフェノール酸(すなわち、カフェイン酸、フェルラ酸、キナ酸)を含有する。フェノール酸のものと思われる酸化防止効果が、精製魚油とフェノール酸とを含有する混合物中の魚油の酸化防止において示されている(
図4)。陰性対照及び陽性対照と比較して、コーヒー酸(37mg)及びフェルラ酸(35mg)は、陽性対照のNIF油及びNAD油よりも強い酸化防止効果を示した。フェルラ酸は濃度依存性の抗酸化効果を示し、2gの魚油中7.5mgの濃度では弱い抗酸化作用が見られた。フェルラ酸(7.7mg)、コーヒー酸(37.8mg)及びキナ酸(78.8mg)の組み合わせでは、コーヒー酸単独と比較して抗酸化能力が改善されず、このことから、LC-PUFAの酸化防止においてコーヒー酸が最も重要な役割を果たしている可能性が示された。検討した濃度では、カフェイン、キナ酸、及び5-カフェオイルキナ酸に抗酸化効果は観察されなかった。
【国際調査報告】