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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】光学レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20230706BHJP
   G02C 7/06 20060101ALN20230706BHJP
【FI】
G02C7/02
G02C7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022576509
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2021064437
(87)【国際公開番号】W WO2021249796
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20305650.2
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ガコワン
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ギヨー
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・フェルミジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジル・ル・ソー
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD01
2H006BD03
(57)【要約】
少なくとも1つの所定の屈折力Pxを有する装着者の眼の前方での装着を意図された光学レンズであって、光学レンズが、2つの対向する光学面、及び複数の隣接する光学要素を含み、光学要素の少なくとも一部は、眼の屈折異常の進行を遅延させるために、装着者の眼の網膜に画像を結像させない光学関数を有し、 - 少なくとも4mmの直径を有する瞳孔上で、少なくとも1つの方向に沿った少なくとも1つの所定の屈折力に対応する平面内における、光学レンズを通る変調伝達関数の測定値が、0~20cyc/度において0.1を超え、 - 瞳孔上で光学レンズを通過する光線の大部分が、複数の光学要素のうちの少なくとも1つを通過し、 - 隣接する光学要素の各々が、d=K/√(|P|)であることが確認され、dは、mm単位の光学要素の輪郭の特性寸法であり、|P|は、ジオプタで表される光学要素の特性屈折力の絶対値であり、Kは、0.9以上且つ1.7以下の数である、光学レンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの所定の屈折力Pxを有する装着者の眼の前方での装着を意図された光学レンズであって、前記光学レンズが、2つの対向する光学面、及び、隣接する複数の光学要素を含み、前記光学要素の少なくとも一部が、前記眼の屈折異常の進行を遅延させるために、前記装着者の前記眼の網膜に画像を結像させない光学関数を有し、
少なくとも4mmの直径を有する瞳孔上で、少なくとも1つの方向に沿った前記少なくとも1つの所定の屈折力に対応する平面内における、前記光学レンズを通る変調伝達関数の測定値が、0~20cyc/度において0.1を超え、
前記瞳孔上で前記光学レンズを通過する光線の大部分が、前記複数の光学要素のうちの少なくとも1つを通過し、
前記隣接する光学要素の各々が、
【数1】
であることが確認され、dは、mm単位の前記光学要素の輪郭の特性寸法であり、
|P|は、ジオプタで表される前記光学要素の特性屈折力の絶対値であり、
Kは、0.9以上且つ1.7以下の数である、光学レンズ。
【請求項2】
前記瞳孔上で、前記光学レンズが、第1の光路差(OPD1)を生成し、最良の球面フィッティング光学レンズが、第2の光路差(OPD2)を生成し、差分光路(DOP)マップが、前記第1の光路差(OPD1)と前記第2の光路差(OPD2)との間の差として構成され、前記差分光路(DOP)がゼロではない、請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項3】
前記瞳孔上で、範囲[DOPの最小レベル、DOPの最小レベル+振幅の10%]内の前記差分光路(DOP)の部分が、前記瞳孔上の前記差分光路(DOP)の30%未満を表し、前記振幅が前記瞳孔上の前記差分光路(DOP)の最大レベルである、請求項2に記載の光学レンズ。
【請求項4】
各光学要素の前記特性寸法が、前記差分光路(DOP)のレベルによって規定される等高線図の内接円の最大直径に対応し、前記レベルは、前記瞳孔上で一定であり、且つ範囲[DOPの最小レベル、DOPの最小レベル+振幅の10%]内にあり、前記振幅が前記瞳孔上の前記差分光路(DOP)の最大レベルである、請求項2に記載の光学レンズ。
【請求項5】
前記光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、絶対値が20D以下の特性屈折力を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項6】
直径4mmの前記瞳孔が、前記光学レンズの基準点、例えばフィッティングクロス又は光学中心を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項7】
前記光学要素が、正方形メッシュ又は六角形メッシュ又は三角形メッシュ又は八角形メッシュ又はランダムメッシュである構造化されたメッシュ上に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項8】
前記光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、標準装着条件下で前記網膜以外の位置に画像を結像させる光学関数を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項9】
前記光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、標準装着条件下で前記網膜以外の位置に画像を結像させない光学関数を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項10】
前記瞳孔上で前記光学レンズを通過する前記光線の少なくとも50%が、前記複数の光学要素のうちの少なくとも1つを通過する、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項11】
前記光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、前記光学レンズの前面に配置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項12】
前記光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、前記光学レンズの背面に配置されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項13】
前記光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、前記光学レンズの前面と背面との間に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の光学レンズ。
【請求項14】
曲率を有する主表面を含み、且つ複数の隣接する表面要素を含む、複数の隣接する光学要素を含むレンズ要素用の成形要素であって、各表面要素が、前記主表面の前記曲率とは異なる曲率を有し、
少なくとも直径4mmのディスク上で、
前記隣接する表面要素は、前記主表面の大部分を覆っており、且つ
前記隣接する表面要素の各々が、
【数2】
であることが確認され、
dは、mm単位の前記表面要素の輪郭の特性寸法であり、
|C|は、ジオプタで表される前記表面要素の特性曲率の絶対値であり、
Lは、1以上且つ7.6以下の数である、成形要素。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の光学レンズを成形するために適合された成形要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つの所定の屈折力Pxを有する装着者の眼の前方での装着を意図された光学レンズに関し、光学レンズは、2つの対向する光学面、及び複数の隣接する光学要素を備える。
【0002】
本開示は更に、人の眼の前方での装着を意図されたレンズ要素の金型に関する。
【背景技術】
【0003】
眼の近視は、眼が遠方の物体を網膜の前方で結像させる事実により特徴付けられる。近視は通常凹レンズを用いて矯正され、遠視は通常凸レンズを用いて矯正される。
【0004】
従来型の単焦点光学レンズを用いて視力が矯正されている人々、特に児童が近距離に位置する対象を見ている、すなわち近方視状態にある場合に不正確に結像されることが観察されている。遠方視が矯正された近視児童についても、この結像不良に起因して近くにある対象の画像も網膜の後方に、極端な場合は中心窩領域に形成されてしまう。
【0005】
上述のような結像不良は上述のような個人の近視の進行に影響を及ぼし得る。個人の大多数で近視欠陥が時間の経過に伴い増加する傾向があることが見て取れる。
【0006】
中心視は、注視している物体の画像が、中心窩領域と呼ばれる網膜の中心領域で眼により形成される注視条件に対応している。
【0007】
周辺視は、注視している物体から横方向にずれているシーンの要素の認識に対応し、要素の画像は中心窩領域から離れた網膜の周縁部分に形成される。
【0008】
屈折異常症の患者に施される眼科的矯正は、通常当人の中心視に適合される。しかしながら、公知のように、周辺視の矯正は中心視に対して決定された矯正に比べて弱める必要がある。特に、サルについて行われた研究により、中心窩領域から離れた位置で生じる網膜の後方での光の強い焦点ずれにより眼球が伸長し、従って近視欠陥が増加し得ることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2016/146590号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,318,859号明細書
【特許文献3】国際公開第2020/079105号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】B.Bourdoncleらによる論文“Ray tracing through progressive ophthalmic lenses”,1990 International Lens Design Conference,D.T.Moore ed.,Proc.Soc.Photo.Opt.Instrum.Eng.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、近視又は遠視等、眼の屈折異常の進行を抑制又は少なくとも遅延させるレンズ要素に対するニーズがあることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本開示は、少なくとも1つの所定の屈折力Pxを有する装着者の眼の前方での装着を意図された光学レンズを提案し、光学レンズは、2つの対向する光学面、及び複数の隣接する光学要素を含み、光学要素の少なくとも一部は、眼の屈折異常の進行を遅延させるように、装着者の眼の網膜に画像を結像させない光学関数を有し、
- 少なくとも4mmの直径を有する瞳孔上で、少なくとも1つの方向に沿った少なくとも1つの所定の屈折力に対応する平面内で測定した、光学レンズを通る変調伝達関数が、0~20cyc/度において0.1を超え、
- 瞳孔上で光学レンズを通過する光線の大部分が、複数の光学要素のうちの少なくとも1つを通過し、
- 隣接する光学要素の各々が、
【数1】
であることが確認され、
dは、mm単位の光学要素の輪郭の特性寸法であり、
|P|は、ジオプタで表される光学要素の特性屈折力の絶対値であり、
Kは、0.9以上且つ1.7以下の数である。
【0013】
有利な特徴として、光学要素の寸法と屈折力との間の特定の関係を確認する光学要素を有することにより、光学レンズを装着する際に装着者に所定の屈折力を提供することを可能にしながら、光学レンズの表面の大部分の部分を覆う隣接する光学要素を有することを可能にする。
【0014】
有利な特徴として、本開示による光学レンズは、装着者に所定の屈折力を提供しながら、隣接する光学要素を使用して眼の屈折異常の進行を遅延させることを可能にする。
【0015】
単独又は組み合わせとして想到可能な更なる実施形態によれば、
- 瞳孔上で、光学レンズは、第1の光路差OPD1を生成し、最良の球面フィッティング光学レンズは、第2の光路差OPD2を生成し、差分光路マップDOPは、第1の光路差OPD1と第2の光路差OPD2との間の差として構成され、差分光路DOPはゼロではなく、及び/又は
- 範囲[DOPの最小レベル、DOPの最小レベル+振幅の10%]内の差分光路DOPの一部が、瞳孔上での差分光路(DOP)の30%未満、例えば少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%を表すときに、光学要素は瞳孔上で隣接しており、振幅は瞳孔上の差分光路(DOP)の最大レベルであり、及び/又は
- 各光学要素の特性寸法が、差分光路(DOP)のレベルによって規定される等高線図の内接円の最大直径に対応し、そのレベルは、瞳孔上で一定であり、且つ範囲[DOPの最小レベル、DOPの最小レベル+振幅の10%]内にあり、その振幅は瞳孔上の差分光路(DOP)の最大レベルであり、及び/又は
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、20D以下、例えば10D以下、例えば6D以下の特性屈折力を有し、及び/又は
- 直径5mmの瞳孔は、光学レンズの基準点、例えばフィッティングクロス若しくは光学中心を含み、及び/又は
- 光学要素は、正方形メッシュ又は六角形メッシュ又は三角形メッシュ又は八角形メッシュ又はランダムメッシュなどの、構造化されたメッシュ上に配置され、及び/又は
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、標準装着条件下で網膜以外の位置に画像を結像させる光学関数を有し、及び/又は
- 光学要素の少なくとも50%、例えば全部が、光軸を有し、光学要素の光軸が単一の点で交差し、及び/又は
- 光学要素の少なくとも50%、例えば全部が、少なくとも1つの焦点を有し、各光学要素の少なくとも1つの焦点が一致し、及び/又は
- 光学要素の少なくとも50%、例えば全部が、共通の位置に画像を結像させるように構成され、及び/又は
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、標準装着条件下で画像を結像させない光学関数を有し、及び/又は
- 瞳孔上で光学レンズを通過する光線の少なくとも50%、例えば少なくとも80%が、複数の光学要素のうちの少なくとも1つを通過し、及び/又は
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、光学レンズの前面に配置されていて、及び/又は
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、光学レンズの背面に配置されていて、及び/又は
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、光学レンズの前面と背面との間に配置されていて、及び/又は
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、例えば屈折領域の周囲に環状形状を有し、及び/又は
- 光学要素が、0.2mm以上、例えば0.4mm以上、例えば0.6mm以上、且つ2.0mm以下、例えば、1.0mm未満の直径を有する円に内接可能な輪郭形状を有し、及び/又は
- 光学要素が、複数の同心リングに沿って配置され、及び/又は
- 光学要素が、構造化されたメッシュ上に配置され、及び/又は
- メッシュ構造が、ランダムなメッシュ、例えばボロノイメッシュであり、及び/又は
- 光学要素が、各光学要素を通過する光線の平均焦点が、網膜に対して同じ距離にあり、許容誤差が2mm以下、好ましくは1mm以下であるように構成され、及び/又は
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、標準装着条件下で非球面光学関数を有し、及び/又は
- 光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、円柱度数を有し、及び/又は
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、2個の隣接する光学要素間で一定の屈折力及び不連続な一次導関数を有し、及び/又は
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、2個の隣接する光学要素間で変動する屈折力及び度数符号変化を有し、及び/又は
- 光学要素が、レンズの少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数が断面の一点から断面の周縁部に向かって変動するように構成され、及び/又は
- 光学要素が、レンズの少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の円柱度数が断面の一点から断面の周縁部に向かって変動するように構成され、及び/又は
- 光学要素が、レンズの少なくとも1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が断面の中心から断面の周縁部に向かって変動する、例えば増加してから減少する、例えば減少する、例えば増加する、ように構成され、及び/又は
- 光学レンズが、光学要素を含まず、所定の屈折力Pxに対応する光学関数を有する屈折領域を含み、及び/又は
- 光学レンズが光学要素によって完全に覆われ、少なくとも1つの方向に沿った少なくとも1つの所定の屈折力に対応する平面内における、20cy/度における変調伝達関数の値が、レンズの周辺ゾーン上よりも中央ゾーン上で大きく、及び/又は
- 屈折領域が、複数の光学要素として形成された領域以外の領域として形成され、及び/又は
- 屈折領域が光学中心を含み、光学要素が、レンズの光学中心を通過する任意の断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が光学中心からレンズの周縁部に向かって変動する、例えば増加してから減少する、例えば減少する、例えば増加する、ように構成され、及び/又は
- 屈折領域が、遠方視基準点、近方視基準点、及び遠方と近方視基準点を接合する経線を含み、光学要素が、標準装着条件下でレンズの任意の水平方向断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が水平方向断面と経線の交線からレンズの周縁部に向かって変動する、例えば増加してから減少する、例えば減少する、例えば増加する、ように構成され、及び/又は
- 断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数が、経線に沿って断面の位置に応じて異なり、及び/又は
- 断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数が非対称的であり、及び/又は
- 光学要素が、標準装着条件下で少なくとも1つの断面が水平方向断面であるように構成され、及び/又は
- 光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が、断面の第1の点から断面の周縁部に向かって変動、例えば増加し、断面の第2の点から断面の周縁部に向かって変動、例えば減少し、第2の点が第1の点よりも断面の周縁部に近く、及び/又は
- 少なくとも1つの断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数がガウス関数であり、及び/又は
- 少なくとも1つの断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数が二次関数であり、及び/又は
- 光学要素の少なくとも一部、例えば全部の平均球面度数が、光学要素内で偏心を伴って変化、例えば増加又は減少し、及び/又は
- 光学要素が、隣接する光学要素の少なくとも2つのグループに編成され、及び/又は
- 隣接する光学要素の各グループが、同じ中心を有する少なくとも2個の同心リングに編成され、隣接する光学要素の各グループの同心リングが、グループの少なくとも1つの光学要素に接する最小円に対応する内径、及びグループの少なくとも1つの光学要素に接する最大円に対応する外径により規定され、
- 光学要素の同心リングの少なくとも一部、例えば全部が、光学要素が配置されたレンズ要素の表面の光学中心に中心を有し、及び/又は
- 光学要素の同心リングが、9.0mm~60mmの直径を有し、及び/又は
- 光学要素が、2個の同心リング間に放射状に配置された光学要素を更に備え、及び/又は
- 光学要素の少なくとも1つが、多焦点屈折マイクロレンズであり、及び/又は
- 少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズが、円柱度数を含み、及び/又は
- 少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズが、回転対称性の有無にかかわらず非球面表面を含み、及び/又は
- 光学要素の少なくとも1つがトーリック屈折マイクロレンズであり、及び/又は
- 少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズがトーリック面を含む。
【0016】
本開示は更に、本開示による光学レンズを成形するように適合された成形要素に関する。
【0017】
例えば、本開示は、曲率を有する主表面を含み、且つ複数の隣接する表面要素を含む、複数の隣接する光学要素を含むレンズ要素用の成形要素に関し、各表面要素は、主表面の曲率とは異なる曲率を有し、
少なくとも直径4mmのディスク上で、
- 隣接する表面要素が主表面の大部分を覆っており、且つ
- 隣接する表面要素の各々が、
【数2】
であることが確認され、
dは、mm単位の表面要素の輪郭の特性寸法であり、
|C|は、ジオプタで表される表面要素の特性曲率の絶対値であり、
Lは、1以上且つ7.6以下の数である。
【0018】
本開示の非限定的な実施形態について、以下に添付図面を参照しながら記述する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態による光学レンズの概略側面図である。
図2】本開示の一実施形態による光学レンズの平面図である。
図3a】本開示による光学要素の位置の例を示す図である。
図3b】本開示による光学要素の位置の例を示す図である。
図3c】本開示による光学要素の位置の例を示す図である。
図4】TABO規定におけるレンズの非点収差軸γを示す図である。
図5】非球面表面を特徴付けるために用いられる規定における円柱軸γAXを示す図である。
図6】眼及びレンズの光学システムを図式的に示す図である。
図7】眼及びレンズの光学システムを図式的に示す図である。
図8】本開示の一実施形態によるレンズ要素の金型の分解図である。
【0020】
図面内の要素は、簡潔及び明快に示されており、必ずしも一定の縮尺で描かれている訳ではない。例えば、本開示の実施形態に対する理解を深めるべく図面内のいくつかの要素の大きさが他の要素に対して誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、装着者の眼の前方での装着を意図された光学レンズに関する。
【0022】
本説明において、「上」、「下」、「水平」、「垂直」、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」等の用語、又は相対位置を示す他の単語を用いる場合がある。これらの用語はレンズ要素の装着条件に関するものと理解されたい。
【0023】
本開示の文脈において、用語「光学レンズ」は未切断の光学レンズ、又は特定の眼鏡フレームに合わせて削られた眼鏡レンズ、或いは眼科レンズ及び眼科レンズに配置されるべく適合された光学デバイスを指す場合がある。光学デバイスは、眼科レンズの前面又は背面に配置されていてもよい。光学デバイスは光学パッチであってもよい。光学デバイスは、例えば眼科レンズを含む眼鏡フレームにクリップ留めするように構成されたクリップオンサングラス等、眼科レンズに着脱自在に配置すべく適合されていてもよい。
【0024】
本開示による光学レンズは、装着者に適合され、且つ装着者の眼の前方での装着を意図されている。
【0025】
図1に表されるように、本開示による光学レンズ10は、2つの対向する光学面F1及びF2と、複数の隣接する光学要素12とを備える。
【0026】
図1に示される本開示によるレンズ要素10は、物体側に向かって図1上で凸状に湾曲した面として形成された物体側の面F1、及び物体側の面F1の曲率とは異なる曲率を有する図1上で凹面として形成された眼側の面F2を含む。
【0027】
本開示の一実施形態によれば、複数の光学要素の少なくとも一部、例えば全部がレンズ要素の前面に配置されている。
【0028】
複数の光学要素の少なくとも一部、例えば全部がレンズ要素の背面に配置されていてもよい。
【0029】
複数の光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、レンズ要素の前面と背面との間に配置されていてもよい。例えば、レンズ要素は光学要素を形成している異なる屈折率の領域を備えてもよい。
【0030】
本開示による光学レンズは、少なくとも所定の屈折力Pxを有する装着者の眼の前方での装着を意図されている。所定の屈折力は、球面屈折力及び/又は円柱屈折力に対応し得る。
【0031】
光学レンズ10の光学要素12の少なくとも一部、例えば全部が、眼の屈折異常の進行を遅延させるように、装着者の眼の網膜に画像を結像させない光学関数を有する。
【0032】
好ましくは、光学要素の少なくとも50%、例えば少なくとも80%、例えば全部が、眼の屈折異常の進行を遅延させるように、装着者の眼の網膜に画像を結像させない光学関数を有する。
【0033】
本開示での意味において、「結像」とは、焦点面内の一点又は回折スポットの大きさまで縮小可能な円形部分を有する結像スポットを生成するものと理解されたい。
【0034】
有利な特徴として、光学要素のこのような光学関数は、周辺視において装着者の眼の網膜の変形を減らすことにより、レンズ要素を装着している人の眼の屈折異常の進行を遅延させることができる。
【0035】
本開示の一実施形態によれば、複数の光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、網膜以外の位置に画像を結像させる光学関数を有している。
【0036】
好ましくは、光学要素の少なくとも50%、例えば少なくとも80%、例えば全部が、網膜以外の位置に像の焦点を合わせる光学関数を有する。
【0037】
本開示の好ましい実施形態によれば、光学要素の全部が、少なくとも周縁視に対して、各光学要素を通過する光線の平均焦点が装着者の網膜から等距離にあるように構成されている。
【0038】
図2に示されるように、複数の隣接する光学要素は、複数の独立した隣接する光学要素12を含む。
【0039】
本開示での意味において、独立画像を生成する場合2個の光学要素は独立していると考えられる。
【0040】
具体的には、平行なビームにより「中心視で」照射された場合、各々の「独立した隣接光学要素」は自身に関連付けられたスポットを画像空間内の平面に形成する。言い換えると、「光学要素」の1つが隠された場合、たとえこの光学要素が別の光学要素に隣接していてもスポットは消失する。
【0041】
本開示の複数の実施形態によれば、光学要素はメッシュ上に配置されている。
【0042】
図2には正確に表されていないが、光学要素が配置されるメッシュは、図3a及び図3cに示されるように構造化されていてもよい。
【0043】
本開示の一実施形態によれば、光学要素は、正方形メッシュ又は六角形メッシュ又は三角形メッシュ又は八角形メッシュ又はランダムメッシュなどの、構造化されたメッシュ上に配置することができる。
【0044】
図3aは、六角形メッシュに従って配置された光学要素を示している。
【0045】
図3bは、正方形メッシュに従って配置された光学要素を示している。
【0046】
光学要素はまた、複数の同心リングに沿って配置することもできる。
【0047】
光学要素の同心リングは環状リングであってよい。
【0048】
本開示の一実施形態によれば、レンズ要素は、少なくとも2個の同心リング、好ましくは5個より多くの、より好ましくは10個より多くの同心リングに配置された光学要素を含む。例えば、光学要素は、レンズの光学中心に中心を有する11個の同心リングに配置されていてもよい。
【0049】
代替的に、光学要素は図3cに示すようにボロノイメッシュなどのランダム構造メッシュ上に配置されていてもよい。
【0050】
有利な特徴として、ランダムな構造に配置された光学要素を有することにより光の散乱又は回折のリスクが限定される。
【0051】
装着条件とは、例えば装着時前傾角、角膜-レンズ間距離、瞳孔-角膜間距離、眼の回転中心(CRE)-瞳孔間離、CRE-レンズ間距離、及び巻き角により規定される、装着者の眼に対する光学レンズの位置として理解されるべきである。
【0052】
角膜-レンズ間距離は、角膜とレンズの背面との間の第1眼位(通常は水平方向にとられる)における眼の視軸に沿った距離であり、例えば12mmに等しい。
【0053】
瞳孔-角膜間距離は、眼の瞳孔と角膜の間の視軸に沿った距離であり、通常2mmに等しい。
【0054】
CRE-瞳孔間距離は、眼の回転中心(CRE)と角膜の視軸に沿った距離であり、例えば11.5mmに等しい。
【0055】
CRE-レンズ間距離は、眼のCREとレンズの背面との間の第1眼位(通常は水平方向にとられる)における眼の視軸に沿った距離であり、例えば25.5mmに等しい。
【0056】
装着時前傾角は、レンズの背面と第1眼位(通常は水平方向にとられる)における眼の視軸との交線における、レンズの背面に対する法線と第1眼位における眼の視軸の間の垂直面内の角度であり、例えば-8°に等しい。
【0057】
巻き角は、レンズの背面と第1眼位(通常は水平方向にとられる)における眼の視軸との交線における、レンズの背面に対する法線と第1眼位における眼の視軸との間の水平面内の角度であり、例えば0°に等しい。
【0058】
標準的な装着者の状態の例は、装用時前傾角-8°、角膜からレンズまでの距離12mm、瞳孔角膜間距離2mm、CREから瞳孔までの距離11.5mm、CREからレンズまでの距離25.5mm、及びラップ角度0°によって定義されてもよい。
【0059】
用語「処方」は、眼科医又は検眼士により、例えば眼の前方に配置されたレンズにより眼の視力欠陥を矯正すべく判定された屈折力、非点収差、プリズム偏差の光学特徴の組を意味するものと理解されたい。例えば、近視眼に対する処方は、屈折力及び遠方視軸との非点収差の値を含む。
【0060】
本開示は累進レンズを目的としないが、本明細書で用いる用語は累進レンズを対象とする特許文献1の図1図10に示されている。当業者はこれらの規定を単焦点レンズに適合させることができる。
【0061】
光学レンズ又は光学要素は、非回転対称非球面表面、例えば累進面、後退面、トーリック又は非トーリック面を含み得るが、これらに限定されない。
【0062】
公知のように、最小曲率CURVminは次式により非球面表面上の任意の点で規定される。
【数3】
式中、Rmaxはメートル単位で表される局所最大曲率半径であり、CURVminはジオプタ単位で表される。
【0063】
同様に、最大曲率CURVmaxは次式により非球面表面上の任意の点で規定することができる。
【数4】
式中、Rminはメートル単位で表される局所最小曲率半径であり、CURVmaxはジオプタ単位で表される。
【0064】
表面が局所的に球面である場合、局所最小曲率半径Rminと局所最大曲率半径Rmaxは等しく、従って最小及び最大曲率CURVminとCURVmaxも同一であることに留意されたい。表面が非球面の場合、局所最小曲率半径Rminと局所最大曲率半径Rmaxは異なる。
【0065】
最小及び最大曲率CURVmin、CURVmaxのこれらの式から、SPHmin及びSPHmaxとラベル付けされた最小及び最大球面は考慮する表面の種類から推論できる。
【0066】
考慮する面が物体側の面(前面とも称する)である場合、式は以下の通りである。
【数5】
式中、nはレンズの組成材料の屈折率である。
【0067】
考慮する面が眼球側の面(背面とも称する)である場合、式は以下の通りである。
【数6】
式中、nはレンズの組成材料の屈折率である。
【0068】
公知のように、非球面表面上の任意の点における平均球面度数SPHmeanも次式により規定することができる。
【数7】
【0069】
したがって、平均球面度数の式は、考慮する表面に依存し、
表面が物体側の面であれば、
【数8】
表面が眼球側の面であれば、
【数9】
円柱CYLも、式CYL=|SPHmax-SPHmin|により規定される。
【0070】
レンズの任意の非球面表面の特徴を局所平均球面度数及び円柱度数により表すことができる。円柱度数が少なくとも0.25ジオプタである場合、表面は局所的に非球面であると考えることができる。
【0071】
非球面表面に対して、局所円柱軸γAXを更に規定することができる。図4は、TABO規定において定義されているような非点収差軸γを示し、図5は、非球面表面として特徴付けるように定義される規定における円柱軸γAXを示す。
【0072】
円柱軸γAXは、回転の選択された意味での、且つ基準軸に対する最大曲率CURVmaxの向きの角度である。上で定義した規定において、基準軸は水平(この基準軸の角度は0°)であり、装着者を注視しているとき(0°≦γAX≦180°)、回転の意味は各々の眼に対して反時計回りである。したがって、円柱軸γAXの軸値+45°は斜めに向けられた軸を表し、装着者を注視しているとき、右上の象限から左下の象限まで延びている。
【0073】
更に、累進多焦点レンズは、レンズを装着している人の条件を考慮に入れて、光学特徴により規定されてもよい。
【0074】
図6及び図7は、眼及びレンズの光学系の模式図であり、したがって、本明細書で使用される定義を示す。より正確には、図6は、注視方向を定義するために使用されるパラメータα、βを示す、そのようなシステムの斜視図を表す。図7は、パラメータβが0に等しい場合に、装着者の頭部の前後軸と平行であって眼の回転中心を通過する垂直面を示す。
【0075】
眼の回転中心はQ’とラベル付けされている。図8に一点鎖線で示す軸Q’F’は、眼の回転中心を通過して装着者の前方へ延びる水平軸、すなわち一次注視ビューに対応する軸Q’F’である。この軸は、検眼士によるレンズのフレームでの位置合わせを可能にすべくレンズに存在するフィッティングクロスと呼ばれる点でレンズの非球面表面を切断する。レンズの背面と軸Q’F’の交点がOである。Oは、背面に位置する場合はフィッティングクロスであり得る。中心がQ’、半径がq’の頂点球面は水平軸の一点でレンズの背面に接する。例として、半径q’の値25.5mmは通常値に対応し、レンズを装着する際に満足すべき結果を与える。
【0076】
図6の実線により示される所与の注視方向は、Q’の回りの回転方向での眼の位置、及び頂点球面の一点Jに対応し、角度βは、軸Q’F’と、軸Q’F’を含む水平面上への、直線Q’Jの射影との間で形成される角度であり、この角度は図6のスキームに現れている。角度αは、軸Q’Jと、軸Q’F’を含む水平面上への、直線Q’Jの射影との間で形成される角度であり、この角度は図6、7のスキームに現れている。したがって、所与の注視ビューは、頂点球面の一点J、又はペア(α,β)に対応する。下向き注視角度の値が正方向に大きいほど注視は下向きになり、値が負方向に大きいほど注視は上向きになる。
【0077】
所与の注視方向において、所与の物体距離に位置する、物体空間内の点Mの画像が、最小距離JSと最大距離JTに対応する2つの点、SとTとの間に形成され、これらの距離は、矢状方向及び接線方向の局所焦点距離となる。物体空間内の無限遠点の画像が点F’で形成される。距離Dは、レンズの背平面及び前平面に対応する。
【0078】
エルゴラマは、物体点の通常の距離を各注視方向に関連付ける関数である。典型的に、主注視方向に続く遠方視において、物体点は無限遠にある。近方視において、鼻側に向かう絶対値が35°のオーダーの角度α及び5°のオーダーの角度βに基本的に対応する注視方向に続いて、物体との距離は30~50cmのオーダーである。エルゴラマの可能な定義に関する更なる詳細事項について特許文献2を参照されたい。この文献は、エルゴラマ、その定義、及びそのモデリング方法を記述している。本開示の方法の場合、複数の点が無限遠にあっても又はなくてもよい。エルゴラマは、装着者の屈折異常又は装着者の加入度数の関数であってもよい。
【0079】
これらの要素を用いて、各々の注視方向での装着者の屈折力及び非点収差を規定することが可能である。注視方向(α,β)に関して、エルゴラマにより与えられる物体との距離において物体点Mを想定する。物体空間内において対応する光線上の点Mに対して、物体近接度ProxOが、点Mと頂点球面の点Jとの間の距離MJの逆数として規定される。
【数10】
【0080】
これにより、頂点球面の全ての点で近似した薄型レンズ内での物体近接度を計算して、エルゴラマの決定のために用いることが可能になる。実際のレンズの場合、物体近接度は、物体点と対応する光線上でのレンズの前面の距離の逆数と見なすことができる。
【0081】
同一注視方向(α,β)に対して、所与の物体近接度を有する点Mの画像が、各々が最小及び最大焦点距離(矢状方向及び接線方法の焦点距離となる)に対応する2つの点、SとTとの間で形成される。量ProxIは点Mの画像近接度と呼ばれる。
【数11】
【0082】
したがって、薄型レンズの場合から類推して、所与の注視方向に対して、及び所与の物体近接度に対して、すなわち対応する光線上の物体空間の一点に対して、画像近接度及び物体近接度の和としての屈折力Puiを規定することができる。
Pui=ProxO+ProxI
【0083】
同じ表記法により、非点収差Astが、全ての注視方向及び所与の物体近接度に対して以下のように定義される。
【数12】
【0084】
上の規定は、レンズにより生じる光線ビームの非点収差に対応する。上の規定が、主注視方向において、非点収差の古典的値を与えることに留意されたい。通常は軸と呼ばれる非点収差角度が角度γである。角度γは、眼に紐付けられたフレーム{Q’,xm,ym,zm}内で測定される。これは、平面{Q’,zm,ym}内での方向zmとの関連で用いられる表記法に応じて、画像S又はTiが形成される角度に対応する。
【0085】
したがって、装着条件におけるレンズの屈折力及び非点収差の可能な規定は、非特許文献1で説明されているように計算できる。
【0086】
図2に示されるように、少なくとも4mm、例えば10mmの直径を有する瞳孔16を規定することができ、その瞳孔上で少なくとも1つの方向に沿った少なくとも1つの所定の屈折力に対応する平面内における、光学レンズを通る変調伝達関数の測定値が、0~20cyc/度において0.1を超え、例えば0.2以上である。
【0087】
隣接する光学要素の密度は、瞳孔16上で、瞳孔16上の光学レンズを通過する光線の大部分、例えば、少なくとも50%又は少なくとも80%が、複数の光学要素のうちの少なくとも1つを通過するようなものである。
【0088】
本開示の意味において、光線は、差分光路(DOP)のレベルによって規定される等高線図に対応する光学要素の最大内接円を通過する場合、光学要素を通過すると考えられ、そのレベルは、瞳孔上で一定であり、且つ範囲[DOPの最小レベル、DOPの最小レベル+振幅の10%]内にあり、その振幅は瞳孔上の差分光路(DOP)の最大レベルである。
【0089】
瞳孔16上で、光学レンズ10は、第1の光路差OPD1を生成する。光路は、光学系を通過する光がたどる経路の幾何学的長さと、光学系の屈折率との積である。2つの経路間の光路長の差は、光路差OPDと呼ばれる。本開示の意味において、第1の光路差は、光学レンズを通過する光線と空気を通過する光線との間の光路長の差である。本開示の意味において、以下の規定が適用され、正の屈折力を有する球面レンズの場合、OPDは縁部よりも中心で高くなる。
【0090】
OPDは、3D空間の表面と見なして測定され、(x,y,f(x,y))と書くことができる。最良の球面は、文献、http://www.sci.utah.edu/~balling/FEtools/doc_files/LeastSquaresFitting.pdfの第6章で開示されているように、そのパラメータ(その中心及びその半径)が最適化された球面である。
【0091】
最適化プロセスの場合、コスト関数は、合計によって、例えば、各点と球面との間の差の二乗の全ての点にわたって規定することができる。この距離は、少なくとも以下の2つの異なる方法で規定することができる。
- Z差
- 法線方向の距離(前の論文と同様)。
【0092】
最良の球面フィッティング光学レンズに対応する第2の光路差OPD2を判定することができる。
【0093】
第1の光路差OPD1と第2の光路差OPD2との間の差として構成される差分光路DOPを判定することができる。本開示による光学レンズの差分光路DOPは、瞳孔上でゼロではない。言い換えると、第1の光路差OPD1は、球面光学レンズの光路差とは一致しない。
【0094】
範囲[DOPの最小レベル、DOPの最小レベル+振幅の10%]内の差分光路DOPの一部が、瞳孔上での差分光路(DOP)の30%未満、例えば少なくとも20%、少なくとも10%、少なくとも5%を表すときに、光学要素は瞳孔上で隣接しており、振幅は瞳孔上の差分光路(DOP)の最大レベルである。
【0095】
好ましくは、そのような測定は、コーティングされていない光学レンズで実現される。コーティングされていない光学レンズに必ずしも限定される訳ではないが、そのような測定は、コーティングされていない光学レンズ上でより正確に現れる。しかしながら、コーティングされた光学レンズを測定し、伝達関数を使用して、光学レンズがコーティングされていない場合の測定値を判定することができる。このような伝達関数の例は、特許文献3で論じられている。
【0096】
有利な特徴として、隣接する光学要素を有することは、レンズ要素の美観を向上させるのに役立ち、且つ製造がより容易である。
【0097】
少なくとも瞳孔16上で、例えば光学レンズの全表面にわたって、隣接する光学要素の各々の各光学要素が、
【数13】
であることが確認され、
dは、mm単位の光学要素の輪郭の特性寸法であり、
|P|は、ジオプタで表される光学要素の特性屈折力の絶対値であり、
Kは、0.9以上、例えば1.2超、且つ1.7以下、例えば1.4未満の数である。
【0098】
各光学要素の輪郭の特性寸法dは、各光学要素の特定のサイズに対応し得る。
【0099】
各光学要素の特性寸法dを規定するために、前述のように決定された差分光路DOPを使用することができる。
【0100】
各光学要素の特性寸法は、差分光路(DOP)のレベルによって規定される等高線図の内接円の最大直径に対応し、そのレベルは、瞳孔上で一定であり、且つ範囲[DOPの最小レベル、DOPの最小レベル+振幅の10%]内にあり、その振幅は瞳孔上の差分光路(DOP)の最大レベルである。
【0101】
特に、光学要素は、0.2mm以上、例えば0.4mm以上、例えば0.6mm以上、且つ2.0mm以下、例えば1.0mm未満の直径を有する円に内接する輪郭形状を有してもよい。
【0102】
光学要素の特性屈折力は、光学要素が球面である場合は球面屈折力であってもよく、又は光学要素が球面でない場合は最良の球面屈折力であってもよい。例えば、非球面光学要素の場合、特性屈折力は、光学要素の非球面光学関数の平均屈折力である。
【0103】
本開示の一実施形態によれば、光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、20D以下、例えば10D以下、例えば6D以下の特性屈折力を有する。
【0104】
本開示の複数の実施形態によれば、複数の光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、2個の隣接する光学要素間で一定の屈折力及び不連続な一次導関数を有する。
【0105】
代替的に、複数の光学要素の少なくとも一部、例えば全部が、2個の隣接する光学要素の間で変動する屈折力及び度数符号変化を有する。
【0106】
各光学要素の光学関数、特に光屈折関数が、特に周縁視において、装着者の眼の網膜から一定の距離に焦点画像を提供すべく最適化されていてもよい。このような最適化は、レンズ要素上での位置に応じて各光学要素の屈折光学の関数を適合させることを必要とする。
【0107】
特に、発明者らは、球面3D状のマイクロレンズを通過する光のビームの周縁視(瞳孔中心から30°)で解析されたスポット図が点ではないと結論付けた。
【0108】
点を得るために、発明者らは、光学要素が円柱度数を有するべき、例えばトーリック形状を有するべきと結論付けた。
【0109】
本開示の一実施形態によれば、複数の光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が標準装着条件下で非球面光学関数を有する。
【0110】
本開示の別の実施形態によれば、複数の光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が円柱度数を有する。
【0111】
本開示の一実施形態によれば、光学要素は、少なくともレンズの1つの断面に沿って、光学要素の平均球面度数が断面の一点から断面の周縁に向かって変化するように構成されている。
【0112】
光学要素は更に、少なくともレンズの1つの断面、例えば少なくとも光学要素の平均球面度数が変化する断面と同じ断面に沿って、円柱度数が、断面点、例えば平均球面度数の場合と同じ点から断面の周縁部に向かって変化するように構成されていてもよい。
【0113】
有利な特徴として、レンズの少なくとも1つの断面に沿って光学要素の平均球面度数及び/又は平均円柱度数が断面の一点から断面の周縁部に向かって変化するように構成された光学要素を有することにより、近視の場合は網膜の前方に、又は遠視の場合は網膜の後方に光線の焦点ずれを変化させることができる。
【0114】
言い換えると、発明者らは、レンズの少なくとも1つの断面に沿って光学要素の平均球面度数が断面の一点から断面の周縁部に向かって変化するように構成された光学要素を有することにより、眼の屈折異常、例えば近視又は遠視の進行を遅延させるのに役立つことを見出した。
【0115】
光学要素は、レンズの少なくとも1つの断面に沿って光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が断面の中心から断面の周縁部に向かって変化する、例えば増加してから減少する、例えば減少する、例えば増加する、ように構成されていてもよい。
【0116】
本開示の一実施形態によれば、光学要素は、標準装着条件下で少なくとも1つの断面が水平方向断面であるように構成されている。
【0117】
光学レンズは光学中心を含んでいてよく、光学要素は、レンズの光学中心を通過する任意の断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が変化する、例えばレンズの光学中心から周縁部に向かって増加するように構成されていてもよい。
【0118】
光学レンズは、遠方視基準点、近方視基準点、及び遠方と近方視基準点をつなぐ経線を含んでいてよい。このような実施形態では、光学要素は、標準装着条件下で、レンズの任意の水平方向断面に沿って、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が水平方向断面と経線の交線からレンズの周縁部に向かって変化する、例えば増加するように構成されていてもよい。
【0119】
好ましくは、このような実施形態によれば、光学要素は、レンズの任意の水平方向断面に沿って、標準装着条件下で、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数が、水平方向断面と経線の交線からレンズの周縁部に向かって変化する、例えば増加するように構成されている。
【0120】
経線は、主注視方向とレンズの表面の交線の軸跡に対応する。
【0121】
断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数を変化させる関数、例えば増加関数は、経線に沿った断面の位置に応じて異なっていてよい。
【0122】
特に、断面に沿った平均球面度数及び/又は円柱度数を変化させる関数、例えば増加関数は非対称であってよい。例えば、平均球面度数及び/又は円柱度数増加関数は標準装着条件下で垂直及び/又は水平方向断面に沿って非対称である。
【0123】
平均球面度数及び/又は円柱度数は、少なくとも1つの水平方向断面に沿った増加関数に従い増加することができ、増加関数はガウス関数である。ガウス関数は、人の網膜の非対称性を考慮すべくレンズの鼻と側頭部の間で異なっていてよい。
【0124】
代替的に、平均球面度数及び/又は円柱度数は、少なくとも1つの水平方向断面に沿った増加関数に従って変化してもよく、増加関数は二次関数である。二次関数は、人の網膜の非対称性を考慮すべくレンズの鼻と側頭部の間で異なっていてよい。
【0125】
本開示の一実施形態によれば、光学要素の平均球面度数及び/又は円柱度数は、断面の第1の点から断面の周縁部に向かって変化し、例えば増加し、断面の第2の点から断面の周縁部に向かって変化し、例えば減少し、第2の点が第1の点よりも断面の周縁部に近い。
【0126】
このような実施形態を、レンズ要素の光学中心への半径方向距離に応じて光学要素の平均球面度数を提供する表1に示す。
【0127】
例えば、光学要素は、光学レンズの光学中心に中心を有する円に沿って等間隔に分布していてよい。
【0128】
光学レンズの光学中心に中心を有する直径10mmの円上の光学要素は、平均球面度数が2.75Dのマイクロレンズであってよい。
【0129】
屈折領域の光学中心に中心を有する直径20mmの円上の光学要素は平均球面度数が4.75Dのマイクロレンズであってよい。
【0130】
屈折領域の光学中心に中心を有する直径30mmの円上の光学要素は平均球面度数が5.5Dのマイクロレンズであってよい。
【0131】
屈折領域の光学中心に中心を有する直径40mmの円上の光学要素は平均球面度数が5.75Dのマイクロレンズであってよい。
【0132】
異なる光学要素の円柱度数は、人の網膜の形状に基づいて調整することができる。
【0133】
本開示の一実施形態によれば、光学要素は透明であり、好ましくは少なくとも50%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも95%、例えば光学要素の全てが透明である。
【0134】
有利な特徴として、光学要素はレンズ要素上では視認できず、レンズ要素の美観に影響を及ぼさない。
【0135】
光学要素は、中心又は他の任意の領域と同様に、レンズ要素の特定の領域に対応することができる。
【0136】
光学要素は、レンズ要素の表面全体に配置されていてもよい。
【0137】
各光学要素の光学要素密度又は屈折力は、レンズ要素の領域に応じて調整することができる。通常、近視制御への光学要素の効果を改善するように、光学要素密度又は屈折力を調整して、例えば、網膜の周縁形状に起因した周縁焦点ボケを補償することができる。
【0138】
本開示の一実施形態によれば、複数の光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、人の眼の網膜の前方に焦線を形成すべく構成された形状を有している。言い換えると、このような光学要素は、光束があれば集束される全ての断面平面が人の眼の網膜の前に配置されるように構成されている。
【0139】
本開示の一実施形態によれば、非球面光学関数を有する光学要素の少なくとも1つ、例えば全部が、多焦点マイクロレンズである。
【0140】
本開示の意味において、「多焦点マイクロレンズ」は、(2つの焦点屈折力を有する)2焦点、(3つの焦点屈折力を有する)3焦点、連続的に変化する焦点屈折力を有し、回転対称の、軸の周りで連続的に変化する表面屈折力、例えば回転対称の、例えば非球面形状のマイクロレンズを含む。
【0141】
本開示の一実施形態によれば、複数の光学要素の少なくとも1つ、好ましくは複数の光学要素の50%よりも多く、より好ましくは80%よりも多くが非球面マイクロレンズである。本開示での意味において、非球面マイクロレンズは自身の表面にわたり屈折力が連続的に変化する。
【0142】
非球面マイクロレンズは0.1D~10Dの非球面性を有していてよい。非球面マイクロレンズの非球面性は、光学要素の第1の点で測定された屈折力とマイクロレンズ要素の第2の点で測定された屈折力の差に対応し、第1及び第2の点は光学要素の幾何中心から異なる半径方向距離に配置されている。
【0143】
幾何学的中心は、差分光路(DOP)のレベルによって規定される等高線図の最大の内接円の中心に対応し、そのレベルは、瞳孔上で一定であり、且つ範囲[DOPの最小レベル、DOPの最小レベル+振幅の10%]内にあり、その振幅は瞳孔上の差分光路(DOP)の最大レベルである。
【0144】
本開示の一実施形態によれば、非球面マイクロレンズは、第1の点で絶対値が2.0D~7.0Dの屈折力、及び第2の点で絶対値が1.5D~6.0Dの屈折力を有する。
【0145】
光学要素が配置されたレンズ要素の表面のコーティング前の非球面マイクロレンズの非球面性は、レンズ要素の光学中心からの半径方向距離に応じて変化し得る。
【0146】
加えて、光学要素が配置されたレンズ要素の表面のコーティング後の非球面マイクロレンズの非球面性は更に、レンズ要素の幾何中心からの半径方向距離に応じて変化し得る。
【0147】
本開示の一実施形態によれば、少なくとも1つの多焦点屈折マイクロレンズはトーリック面を有する。トーリック面は、その曲率中心を通過しない回転軸の回りに円又は弧を回転させることにより形成可能な(最終的に無限遠に配置される)回転面である。
【0148】
トーリック面レンズは互いに直交する2つの異なる半径方向プロファイルを有しているため、2つの異なる焦点屈折力を生成する。
【0149】
トーリックレンズのトーリック及び球面表面素子は、単一点焦点とは逆に、非点収差光ビームを生成する。
【0150】
本開示の一実施形態によれば、非球面光学関数を有する光学要素の少なくとも1つ、例えば光学要素の全部がトーリック屈折マイクロレンズである。例えば、球面度数値が0ジオプタ(δ)以上且つ+5のジオプタ(δ)以下、円柱度数値は0.25ジオプタ(δ)以上のトーリック屈折マイクロレンズである。
【0151】
具体的な実施形態として、トーリック屈折マイクロレンズは純粋な円柱、すなわち最小経線屈折力がゼロである一方、最大経線屈折力は厳密に正、例えば5ジオプタ未満であり得る。
【0152】
光学要素及び/又は光学レンズは、直接肉盛、金型成形、注型又は射出成形、型押し、成膜、又はフォトリソグラフィ等の様々な技術を使用して製造可能である。
【0153】
本開示は更に、本開示による光学レンズを成形するように適合された成形要素に関する。
【0154】
例えば、本開示は、曲率を有する主表面を含み、且つ複数の隣接する表面要素を含む、複数の隣接する光学要素を含むレンズ要素用の成形要素に関し、各表面要素は、主表面の曲率とは異なる曲率を有し、
少なくとも直径4mmのディスク上で、
- 隣接する表面要素が主表面の大部分を覆っており、且つ
- 隣接する表面要素の各々が、
【数14】
であることが確認され、
dは、mm単位の表面要素の輪郭の特性寸法であり、
|C|は、ジオプタで表される表面要素の特性曲率の絶対値であり、
Lは、1以上且つ7.6以下の数である。
【0155】
そのような金型により、本発明による光学レンズを得ることを可能にする。
【0156】
屈折力は、ジオプタの両側の屈折率の差をdnとして、P=dn×Cによる曲率に関連する。このような関係に基づいて、0.1~0.5のKを有する本開示による光学レンズを得るためは、1~7.6のLを有する金型が必要とされる。
【0157】
実際、d=K/√(|P|)=K/(√dn√(|C|))であるため、Lは、K/√dnの価値がある。
【0158】
dn=0.05の場合、Lは、4~7.6である必要があり、dn=0.8の場合、Lは、1~1.9である必要がある。
【0159】
図8に示されるように、本開示による光学レンズの金型20は、第1の成形要素21と、第2の成形要素22と、ガスケット23とを含んでもよい。
【0160】
第1の成形要素21は、第1の表面曲率を有する第1の表面24を有する。例えば、第1の表面24は、球面表面曲率を有する。代わりに、第1の表面24は、非球面表面曲率及び/又は円柱形表面曲率及び/又はトーリック表面曲率を有してもよい。
【0161】
第1の表面24は、曲率を有する主表面と、複数の隣接する表面要素26とを含み、各表面要素は、主表面の曲率とは異なる曲率を有する。
【0162】
例えば、第1の成形要素21の第1の表面24の表面要素26は、製造される光学レンズの光学要素に対応することができる。
【0163】
表面要素26は、本開示による光学レンズの光学要素に関して開示された全ての特徴に対応する表面特徴を有することができる。
【0164】
特に、少なくとも直径4mmのディスク上で、
- 隣接する表面要素が主表面の大部分を覆っており、且つ
- 隣接する表面要素の各々が、
【数15】
であることが確認され、
dは、mm単位の表面要素の輪郭の特性寸法であり、
|C|は、ジオプタで表される表面要素の特性曲率の絶対値であり、
Lが、1以上且つ7.6以下の数である。
【0165】
本開示の一実施形態によると、複数の表面要素26の少なくとも2つは隣接している。本開示の意味において、2つの表面要素を連結する少なくとも1つの経路について、少なくとも1つの経路に沿って第1の成形要素21の第1の表面24の第1の表面曲率が測定され得ない場合、2つの表面要素は隣接している。
【0166】
複数の表面要素26の少なくとも一部、例えば全部が、構造化されたネットワーク上に配置されてもよい。
【0167】
本開示の一実施形態によると、第1の成形要素の第1の表面上での複数の表面要素26の少なくとも一部、例えば全部の配列は、軸に対する回転の対称性を示し、例えば、第1の成形要素21の第1の表面24の幾何学的中心を中心とする。言い換えると、複数の表面要素16の少なくとも一部は、第1の成形要素21の第1の表面24の幾何学的中心を中心とする少なくとも1つの円に沿って、規則的に分布し得る。
【0168】
本開示の一実施形態によると、複数の表面要素26の少なくとも一部、例えば全部が、第1の成形要素21の第1の表面24上で少なくともリング上に配置される。
【0169】
複数の表面要素は、第1の成形要素の第1の表面上で同心リング上に更に組織化されてもよい。例えば、複数の表面要素26は、第1の成形要素21の全ての第1の表面24上で、11個の同心リングの組み合わせに沿って配置される。表面要素の同心リングは、第1の成形要素21の第1の表面24の幾何中心に中心を有していてよい。
【0170】
複数の表面要素26の平均表面曲率は、同一同心リングの全ての表面要素に関して同一であり得る。特に、同一同心リングの表面要素26の中央ゾーンの平均表面曲率は、同一である。
【0171】
本開示の他の実施形態によると、複数の表面要素26は、例えば正方形のパターンなどの異なるパターンで組織化されてもよい。
【0172】
光学レンズのための金型20は、第2の成形要素22を更に含んでもよい。第2の成形要素22は、第2の表面25を有する。図3では、第2の成形要素22の第2の表面25は示されないが、それは、第2の表面25が第1の成形要素の第1の表面24に面するからである。
【0173】
光学レンズのための金型20は、ガスケット23を更に含む。ガスケット23は、内面23a及び外面23bを含む環状形を有する。ガスケット23は更に開口部27を含む。
【0174】
ガスケット23は、第1及び第2の金型成形要素21、22を共に密閉して金型成形キャビティ28を形成する。金型成形キャビティ28は、第1の成形要素21の表面要素26、第2の成形要素22の第2の表面25、及びガスケット23の内面23aを含む第1の表面24、によって規定される。
【0175】
レンズ要素2用の金型20の金型成形キャビティ28は開口部27を介して金型成形材料で満たされる。ガスケット23中に示されているが、開口部27は、代わりに第1の成形要素又は第2の成形要素上に配置されてもよい。
【0176】
例えば、金型成形材料は、ガスケット23の開口部27を通して金型成形キャビティ内に注入される注型材料であってよい。金型成形キャビティ内の注型材料は、更に重合化されてレンズ材料になり、それによりレンズ要素2が形成される。
【0177】
代替的に、金型成形材料は熱可塑性材料であってよい。第1の温度で第1の液相にある熱可塑性材料は、開口部27を通して金型成形キャビティ28内に注入される。冷却工程中に、熱可塑性材料は第1の液相からレンズ要素2のレンズ材料に対応する第2の固相に変化する。
【0178】
上述の例示的実施形態を参照することで当業者には多くの更なる変更及び変形が明らかになるが、これらは例示目的で提供されるに過ぎず、添付の請求項によってのみ決定される本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0179】
請求項において、単語「含む」は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。互いに異なる従属請求項で異なる特徴が引用されていたとしても、これらの特徴の組み合わせが有利に使用できないことを意味しない。請求項におけるいかなる参照符号も本開示の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0180】
10 光学レンズ、レンズ要素
12 光学要素
16 表面要素
16 瞳孔
20 金型
21 第1の金型成形要素
22 第2の金型成形要素
23 ガスケット
24 第1の表面
25 第2の表面
26 表面要素
27 開口部
28 金型成形キャビティ
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】