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特表2023-530131微粒米糠ワックスに基づくバイオベース添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】微粒米糠ワックスに基づくバイオベース添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230706BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20230706BHJP
   C09D 191/06 20060101ALI20230706BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230706BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C08L101/00
C09D11/02
C09D191/06
C09D7/63
C08L91/06
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022577323
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021066663
(87)【国際公開番号】W WO2021259804
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】20181497.7
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100145333
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 弓子
(72)【発明者】
【氏名】ヴントレヒナ・ミリナ
(72)【発明者】
【氏名】ボーデンドルファー・ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】クラッツァー・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブレーマー・マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーライトナー・トビアス
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AE032
4J002BB021
4J002BB111
4J002BD151
4J002FD172
4J002GH00
4J002GH01
4J038BA211
4J038BA212
4J038KA06
4J038MA14
4J039AB12
4J039AE04
4J039BE12
4J039BE33
4J039GA09
(57)【要約】
本発明は、任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物、および、当該任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物を含む微粒ワックス添加剤(micronized wax additives:MWA)、ならびに、それらの製造方法、および、それらの印刷インク、コーティングおよび塗料における使用に関する。当該任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物、および、微粒ワックス添加剤は、1μm~50μmの間の体積平均粒径d50を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解、アルコール分解、エステル化、アミド化、ケン化、エトキシル化、無水物形成および脱カルボキシル化を含む群から選択される方法によって、任意で誘導体化された、ワックス添加剤用の米糠ワックス酸化物であって、ISO13320-1に従い測定した体積平均粒径d50が1~50μm、好ましくは5~15μm、より好ましくは7.0~13.0μm、最も好ましくは7.0~9.5μmであることを特徴とする、米糠ワックス酸化物。
【請求項2】
前記誘導体化がケン化であることを特徴とする、請求項1に記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項3】
ISO2114に従い測定した酸化が、1~140mgKOH/g、好ましくは15~80mgKOH/g、より好ましくは25~60mgKOH/gであることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項4】
ISO3681に従い測定したケン化価が、30~185mgKOH/g、好ましくは50~130mgKOH/g、より好ましくは60~110mgKOH/gであることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項5】
ISO2176に従い測定した滴点が、70~110℃であることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項6】
クロム硫酸を用いて、好ましくは三酸化クロムと硫酸との混合物を用いて製造されていることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項7】
請求項1~6に記載のいずれかに記載の任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物を1以上含む、印刷インクおよび塗料系のための微粒ワックス添加剤。
【請求項8】
前記任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、前記ワックス添加剤の総重量に基づいて、40~100重量%の量で存在することを特徴とする、請求項7に記載の微粒ワックス添加剤。
【請求項9】
前記微粒ワックス添加剤が、80~100%の再生可能炭素指数(RCI)を有することを特徴とする、請求項7または8に記載の微粒ワックス添加剤。
【請求項10】
存在する成分を、ISO13320-1に従い測定した体積平均粒径d50が、1~50μmになるように、まとめてミルで粉砕することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物または請求項7~9のいずれかに記載の微粒ワックス添加剤の製造方法。
【請求項11】
前記ミルが、インパクトプレートミルまたはエアジェットミル、好ましくはエアジェットミルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
印刷インク、コーティングおよび塗料のための、請求項7~9のいずれかに記載の微粒ワックス添加剤の使用。
【請求項13】
-前記印刷インクは、オフセット印刷インクまたはフレキソ印刷インク、好ましくは油性オフセット印刷インクまたは水性フレキソ印刷インクである、または、
-前記塗料は、粉末コーティング材料または木材塗料または1K-PUR塗料系または2K-PUR塗料系、好ましくは水性1K1K-PUR塗料系または水性2K-PUR塗料系、最も好ましくは水性2K-PUR塗料系である、
請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記微粒ワックス添加剤が、前記印刷インク、コーティングまたは塗料の全重量に基づいて、0.1~10.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%の量で用いられることを特徴とする請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
前記微粒ワックス添加剤は、前記印刷インク、コーティングまたは塗料に、直接又は分散物として添加されることを特徴とする、請求項12~14いずれかに記載の使用。
【請求項16】
分散剤と微粒ワックス添加剤または微粒米糠ワックス酸化物との分散物を製造し、印刷インク、コーティングまたは塗料に添加することを特徴とする、請求項12~15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
- プラスチック用の脱気剤、レベリング剤、潤滑材および/または分散助剤、または、
- 植物保護剤中の疎水化剤、
としての、請求項7~9のいずれかに記載の微粒ワックス添加剤の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒米糠ワックス酸化物、それに基づく特に印刷インク、塗料およびコーティング用の微粒ワックス添加剤、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒ワックス添加剤(MWA)は、例えば、印刷インク、塗料、およびコーティングに必要な特性を付与または改善するために、0.5重量%~5.0重量%の量で使用される。そのような特性は、例えば、光沢またはフラッティング、スクラッチ耐性、スクラブ耐性、滑り摩擦および触覚特性である。非微粒ワックス添加剤に対し、微粒ワックス添加剤は、直接、または低温製造の分散物の形で添加することができるという利点を有する。
【0003】
微粒ワックス添加剤は、ワックスを含有するかまたはワックスからなり、1~50μmの体積平均粒径(d50)を有する添加剤を指す。典型的には、微粒ワックス添加剤は、部分的または全化石原料ベースのワックス、例えば、モンタンワックス、ポリオレフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、アミドワックスまたはこれらの混合物を用いて製造される。微粒ワックス添加剤は、ワックスの他にさらなる成分を含有しうる。さらなる成分として、微粒ワックス添加剤は、例えば、合成ポリマー(例えば、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン)、バイオポリマー(例えば、糖)、無機化合物(例えば、ダイヤモンドダスト)および粉砕助剤(例えば、ポリオール)を含有し得る。
【0004】
微粒ワックスの製造には、主に2つの方法がある。第1の方法はホットワックス溶融物をノズルから押出すスプレー法で、このようにして得られたワックス粉末を、必要に応じて分級工程にかける。
【0005】
第2の方法は、粉砕方法であり、ペレット、フレークまたは粉末形態のワックスを、特定の粉砕装置、例えばジェットミルまたは機械ミルによって粉砕し、分類する。
【0006】
両方の方法による微粒ワックスは、印刷インク、塗料およびコーティングに使用される。印刷インクにおける使用では、異なる極性のワックス添加剤が利用可能である場合、印刷インクおよび塗料は、用途に応じて溶剤系または水性のいずれかであり得るので、有利である。
【0007】
これまで微粒ワックス添加剤の製造に使われてきたワックスは、主に化石由来であり、同様の化石モンタンワックスを除いて、あるとしても非常に低い生分解性しか示さない。様々な理由から、持続可能な代替案はほとんど存在しない。多くの天然ワックスは軟質であり、油または樹脂を多く含むため、微粒化することができない(例えば、蜜ろう)、または、微粒生成物にすると、熱または圧力のわずかな影響下で、容易に固着し、凝集物を形成してしまい、分散性が乏しくなってしまう。しかしながら、塗料または印刷インク中のワックス添加剤の安定的な分布のため、および、成分の沈降を低減するために、良好な分散性が必要とされる。加えて、凝集体は、塗装または印刷された基材上に表面欠陥をもたらす。
【0008】
再生可能な原料に基づく他のワックスと同様に、印刷インクおよび電子写真トナーにおける非微粒米糠ワックスの使用についてのいくつかの開示がある(特許文献1:JP-A2010-020304;2010)。米糠ワックスは、主に、長鎖飽和非分岐モノカルボン酸と長鎖非分岐脂肪族モノアルコールとのモノエステルからなる(以下、「純粋エステル」とも呼ばれる)。米糠ワックスエステルの酸成分は、主にベヘン酸およびリグノセリン酸であり、鎖長C22およびC24を有し、米糠ワックスエステルのアルコール成分は、主に鎖長C26、C28、C30、C32およびC34を有する。
【0009】
脱油、粗製、または追加精製された米糠ワックスでは、ワックスエステルの含有量が、一般に96重量%を超える。脱油されていない米糠ワックスでは、ワックスエステルの含有量は、米糠油の含有量に応じて50重量%のみであることがある。さらに、ワックスは、遊離脂肪酸を含み、さらなる成分としてリン脂質およびステリルエステルなどを含んでもよい。「微量成分」とみなされる米糠ワックスのさらなる可変成分は、別途記載されていない「暗色物質」、スクアレン、および「ガム含有量」と呼ばれるものである。これらの成分は通常、色および使用可能性の観点から多様で再現しにくい製品品質をもたらす。
【0010】
脱油された粗米糠ワックスを軽くするための従来の技術は、過酸化水素による古典的な漂白であると考えられる。過酸化水素で漂白された米糠ワックスは黄色を帯びており、エステル含有量および酸価の点で出発ワックスに大きく相応する。そのようなタイプは主に、脱油精製された米糠ワックスとして市販されているが、同様に、微量成分が生成物中に残存するので、様々な生成物品質を示す。
【0011】
米糠ワックスの酸化生成物およびその転化生成物は、2015年の特許文献2(EP-A2909273)により知られている。それらは、クロム硫酸で酸化して生成される。これは、70mgKOH/g~160mgKOH/gの非常に高い酸価の酸性ワックスを得ることができる。これらは、続いて、塩基性金属塩で部分的にまたは完全にケン化するか、または一価もしくは多価アルコールでエステル化することができる。
【0012】
米ワックスをクロム酸で酸化すると、ワックスエステルが本質的に開裂し、形成されたワックスアルコールがその場で酸化されてワックス酸が生じる。酸価レベルは、遊離ワックス酸の含有量の尺度である。そのような酸化における典型的な転化率は、エステル基に基づいて10~90%の範囲である。このように漂白された天然ワックスは、所望の明度に加えて、未漂白ワックスよりも高いケン化価および酸価を有する。
【0013】
これらのワックスは、今日まで、微粒された形態で提供されていない。記載されている製造方法は反応温度で液体米糠ワックスを与え、これは室温に冷却した後に固化し、次いでペレットまたは顆粒の形態で供給される。
【0014】
非酸化米糠ワックスに基づく微粒ワックスはPodaxから微粒米糠ワックスとして市販されており、MicropowdersからNatureFine R331およびNaturesoft 860Rという製品名で市販されている。これらの微粒製品は未漂白または過酸化水素漂白であるが非酸化米糠ワックスをベースとし、例えば、化粧品用途のためのフラット剤として、および、印刷インク、塗料および農薬コーティングにおける添加剤として、供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】JP-A2010-020304
【特許文献2】EP-A2909273
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これらの生成物は黄色がかった色を特徴とし、その程度は生成物に応じて多かれ少なかれ顕著であり、ヨウ素色数によって定量化して15を超える。このようなヨウ素色数は、色が重要な塗料、印刷インクおよびコーティングの色忠実度および明るさに、好ましくない影響を及ぼす。
【0017】
これらの生成物の水性分散物は、これまで市販されていない。非酸化米糠ワックスをベースとする製品に共通することは、漂白で官能基は酸化せず、したがって極性が著しく増加しないことから、低い極性を有することである。ワックスエステルの極性は、酸基およびOH基の両方に大きく影響を受ける。塩基性金属塩との加水分解によって形成される酸の塩も、極性に寄与する。
【0018】
物質の極性は、分散媒中でのその分散性に影響を及ぼす。塗料および印刷インクの場合、これは、水、様々な非極性溶媒、およびバインダー、およびさらなる成分からなり得る。分散媒に対するワックス添加剤の極性の適切な調整は、分散物の安定性を向上させ、乳化剤の使用の低減を可能にする。これは、塗料および印刷インクの安定性およびコーティング品質に有利な効果を有する。
【0019】
したがって、様々な分散媒中での安定した使用を可能にするために、容易に微粒することができ、凝集体を形成しづらく、極性が可変である、持続可能な印刷インク、塗料、およびコーティングのための、再生可能かつ生分解可能な成分が非常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
驚くべきことに、様々な極性を有する酸化米糠ワックスおよびその誘導体(以下、米糠ワックス酸化物、RWOと呼ぶ)を、粉砕または噴霧して、微粒米糠ワックス酸化物および米糠ワックス酸化物を含む微粒ワックス添加剤(MWA)を効率的に得ることができ、印刷インク、塗料およびコーティングに有利な特性をもたらすことが見出された。
【0021】
微粒米糠ワックス酸化物は、乳化剤をほとんどもしくはまったく使用せずに、水および様々な溶媒中で、安定した分散物を形成することができ、フレキソ印刷インクの光沢の調整、またはPUR塗料またはオフセット印刷インクのフラッティングに適している。さらに、塗料のスクラッチ耐性の改善、および印刷インクのスクラブ耐性(色磨耗の減少を特徴とする)の向上、ならびに印刷インク、塗料およびコーティングの滑り摩擦の減少、および触覚特性の改善が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】微粒子を用いたフレキソ印刷インク1の光沢試験結果を示す。
図2】MWAを用いたフレキソ印刷インク2の光沢試験結果を示す。
図3】MWAを用いたフレキソ印刷インク1の滑り摩擦試験結果を示す。
図4】MWAを用いたフレキソ印刷インク2の滑り摩擦試験結果を示す。
図5】様々なMWA添加後のオフセット印刷インクのスクラブ耐性試験結果を示す。
図6】様々なMWA添加後のオフセット印刷インクのスクラブ耐性試験結果を示す。
図7】粒径12μmのMWAを用いた水性1K-PUR塗料の滑り摩擦試験結果を示す。
図8】粒径8μmのMWAを用いた水性1K-PUR塗料の滑り摩擦試験結果を示す。
図9】水性1K-PUR塗料のフラッティング効果試験結果を示す。
図10】水性1K-PUR塗料のスクラッチ耐性試験結果を示す。
図11】溶剤系2K-PUR塗料のフラット効果試験結果を示す。
図12】溶剤系2K-PUR塗料の滑り摩擦試験結果を示す。
図13】溶剤系2K-PUR塗料のスクラッチ耐性試験結果を示す。
図14】微粒ワックス添加剤のヨウ素色数試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
当発明は、体積平均粒径d50(ISO13320-1に従って測定)が、1~50μm、好ましくは5~15μm、より好ましくは7.0~13.0μmである、任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物、ならびに、体積平均粒径d50が、1~50μm、好ましくは5~15μm、より好ましくは7.0~13.0μmである、米糠ワックス酸化物および/またはその誘導体化された米糠ワックス酸化物を含む微粒ワックス添加剤(MWA)を提供する。7.0~9.5μmの粒径が最も好ましい。10μmを超える粒径は、ここでは湿潤膜厚を超えるため、多くの標準的な印刷インクおよび薄膜塗料において使用できないからである。
【0024】
任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、酸化後に遊離酸ワックスの形態であるか、又は後続の工程において部分的にもしくは完全に誘導体化され、更に、50μm以下の体積平均粒径d50(ISO13320-1による)の微粒化米糠ワックス酸化物を意味すると理解される。
【0025】
誘導体化に適した方法は、加水分解、アルコール分解、エステル化、アミド化、ケン化、エトキシル化、無水物形成および脱カルボキシル化を含む群から選択される方法である。誘導体化の方法がケン化である場合、例えば、金属水酸化物(例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)およびZn(OH)など)、金属酸化物(例えば、CaOなど)、金属炭酸塩(例えば、NaCO、CaCOなど)、および水性アルカリ金属(例えば、NaOH、KOHなど)からなる群から選択される塩基性金属塩を用いたケン化である。
【0026】
好ましくは、NaOH、KOH、Ca(OH)およびZn(OH)からなる群から選択される金属水酸化物、またはCaO、またはNaCOおよびCaCOからなる群から選択される金属炭酸塩、またはNaOHおよびKOHからなる群から選択される水性アルカリを用いたケン化、より好ましくは、水酸化カルシウム、酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムを用いたケン化である。
【0027】
任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、好ましくは1~140mgKOH/g、好ましくは2~80mgKOH/g、より好ましくは3~60mgKOH/gの酸価(ISO2114による)を有する。
【0028】
本発明の別の実施形態において、当米糠ワックス酸化物は、極性系のために製造され、15~80mgKOH/g、より好ましくは25~60mgKOH/gの酸価(ISO2114による)を有するが、これは極性分散媒における最良の結果がこの酸価の範囲内で達成されるからである。
【0029】
任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、好ましくは30~185mgKOH/g、好ましくは50~130mgKOH/g、より好ましくは60~110mgKOH/gのケン化価(ISO3681による)を有する。
【0030】
任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、好ましくは70~110℃の滴点(ISO2176による)を有する。
【0031】
好ましい実施形態では、任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、0.960~1.020g/cm、好ましくは0.960~1.010g/cm、より好ましくは0.960~1.000g/cmの密度(density)を有する。任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、好ましくはクロム硫酸による米糠ワックスの酸化物、および/または、その誘導体化物、好ましくはそのケン化物であり、または、クロム硫酸による米糠ワックスの酸化物および/またはその誘導体化物、好ましくはそのケン化物、の混合物である。より好ましくは、任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、三酸化クロムと硫酸との混合物を用いて生成される。
【0032】
本発明は、さらに、印刷インク、コーティングおよび塗料のための微粒ワックス添加剤を包含し、当微粒ワックス添加剤は、任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物を1以上含む、または、1以上の任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物からなる。
【0033】
微粒ワックス添加剤は、任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物を1以上含有し、当米糠ワックス酸化物の含有量は、微粒ワックス添加剤の総重量に基づいて、好ましくは40~100重量%程度、より好ましくは95~100重量%程度、最も好ましくは100重量%程度である。
【0034】
当微粒ワックス添加剤は、好ましくは80%~100%、より好ましくは100%の再生可能炭素指数(RCI;一覧1参照)を有する。
【0035】
本発明は、さらに、ミル、好ましくはインパクトプレートミルまたはエアジェットミル、より好ましくはエアジェットミルで粉砕する、印刷インク、コーティングおよび塗料のための、任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物または微粒ワックス添加剤の製造方法を提供する。当該任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物または微粒ワックス添加剤は、1~50μm、好ましくは5~15μm、さらにより好ましくは7.0~13.0μm、最も好ましくは7.0~9.5μmの体積平均粒径d50を有する。
【0036】
別の実施形態では、当微粒ワックス添加剤は、未粉砕の任意で誘導体化された米糠酸化物を1以上含む未粉砕原料の混合物を、インパクトプレートミルまたはエアジェットミルで、より好ましくはエアジェットミルで粉砕することにより製造される。
【0037】
さらなる未粉砕原料は、例えば、合成ポリマー(例えば、PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン)、半合成ワックス(例えば、アミドワックス)、バイオポリマー(例えば、糖)、無機化合物(例えば、ダイヤモンドダスト)、粉砕助剤(例えば、ポリオール)および安定剤でもよい。
【0038】
当未粉砕原料の混合物は、当未粉砕原料の溶融混合物であってもよく、その場合、好ましくはペレット、フレークまたは粉末の形態をとる。
【0039】
当未粉砕原料の混合物は、当未粉砕原料の物理的混合物であってもよく、その場合、個々の成分は、好ましくはペレット、フレークまたは粉末の形態である。
【0040】
当未粉砕原料の物理的混合物は、当未粉砕原料の物理的混合物が粉砕スペースに存在するように、すでに予め混合された形態で粉砕スペースに導入されてもよく、または、別々に計量添加してもよい。
【0041】
さらなる実施形態では、当未粉砕原料は、まず互いに別々に粉砕される。任意でケン化された米糠ワックス酸化物を含む微粒原料は、その後、物理的混合によって組み合わされて、微粒ワックス添加剤を作る。
【0042】
本発明はさらに、印刷インク、コーティングまたは塗料における、任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物を1以上含む微粒ワックス添加剤の使用を提供する。
【0043】
それらは、好ましくはスクラッチングおよびスクラビングから保護するために使用され、そして、光沢剤またはフラッティング剤として、印刷インク、コーティングおよび塗料に使用される。
【0044】
印刷インクは、好ましくはレリーフ印刷(例えば、フレキソ印刷)、平版印刷(例えば、オフセット印刷)、凹版印刷、多孔質印刷(例えば、スクリーン印刷)、または電子印刷法(ノンインパクト印刷、例えば、インクジェット印刷またはレーザー印刷)用である。
【0045】
印刷インクは、好ましくは、水性、溶剤系、油性、またはいわゆる100%系(例えば、UV硬化系または粉末系)、例えばオフセット印刷インクまたはフレキソ印刷インクである。好ましくは、油性オフセット印刷インクまたは水性フレキソ印刷インクである。
【0046】
塗料は、好ましくは粉末コーティングまたは物理的乾燥(水性または溶剤系)および/または反応系(例えば、2K(2成分)系、熱架橋系、UV系)である。特に好ましいのは、水性1K(1成分)PUR塗料系および好ましくは木材塗料に使用される溶剤系2K-PUR塗料系である。
【0047】
微粒ワックス添加剤は、好ましくは印刷インク、コーティングまたは塗料の全重量に対して0.1~10.0重量%の量で、より好ましくは0.2~4.0重量%の量で使用される。
【0048】
一実施形態では、微粒ワックス添加剤は、印刷インク、コーティングまたは塗料に直接添加される。
【0049】
別の実施形態では、微粒ワックス添加剤の分散物が、印刷インク、コーティングまたは塗料に添加される。当分散剤は、好ましくは水である。
【0050】
さらなる別の使用では、当微粒ワックス添加剤は、プラスチック用の脱気剤、レベリング剤、潤滑材および/または分散助剤として、または植物保護剤中の疎水化剤として使用される。
【実施例
【0051】
物質の特性評価
天然および合成ワックスの指標、ならびに印刷インク、塗料およびコーティングの指標を測定するための標準的な方法を一覧にした。当該方法は、本発明の微粒米糠ワックス酸化物、その原材料および比較例の物質の特性を求めるために用いられる。
【0052】
一覧1:方法概要
粒径[μm]:ISO13320-1
密度[g/cm]:ISO1183-3
光沢60°:光沢度は、マイクロ-TRI-グロス-μ光沢計(BYK-Gardner GmbH)を用いて測定した。
【0053】
滑り摩擦:滑り摩擦係数は、ASTM法D2534に従って、摩擦剥離試験機(Thwing-Albert Instruments Company製)225-1モデルを用いて測定した。当目的のために、測定する塗料でガラス板上を被覆して分析機器においた。続いて、革張の金属スライド(349g)を、当被覆上においた。続いて、当スライドを、一定速度(15cm/分)で、被覆ガラス表面上を引っ張った。当スライドを引っ張るのに必要な力を測定した。動的滑り摩擦の係数を求めたため、当スライドを動かすための初期動力は無視することができた。
【0054】
最小限色摩耗としてのスクラブ耐性:スクラブ耐性は、クアドラント試験セットを用いて測定した。反対側の基材には、ペーパースタックでのスクラビングをシミュレートするために、印刷されていない紙を用いた。スクラビング試験は、スクラブ応力0.48N/cm2およびスクラブ速度で、50ストローク行った。スクラビングによって反対側の紙に転写された色の強度を評価した:DIN6174に従った色差ΔE。
【0055】
スクラッチ耐性:スクラッチ耐性を測定するために、測定する塗料をガラス表面に塗布し、エリクセンペンシル型引掻き硬度計(318型)で試験した。スクラッチ耐性は、DIN-ISO1518に従って、当ペンシル型引掻き硬度計および直径0.75mmのBoschチップを用いて測定した。スクラッチは、約10mmの長さで、塗装面に明確なマークとして残る。ばね張力を調整することによって、塗装表面に様々な力を加えることが可能である。塗装面に明確なマークを残さない最大力を、多種多様な異なる塗料配合物について測定した。力は0.1N単位で測定される。
【0056】
触覚特性:閉じた箱の中にある木材塗料表面に触れて、知覚特性によりグレードをA、BおよびCに分けた。Aは、ポジティブな知覚特性、Cは、ネガティブな知覚特性とした。
【0057】
酸価(AN)[mgKOH/g]:ISO2114
ケン化価(SN)[mgKOH/g]:ISO3681
滴点(DP)[℃]:ISO2176
針入度値(NPN)[mm-1]:DIN51579
【0058】
粘度(Vis)[mPas]:DIN53019、別段の記載がない限り100℃で測定
ヒドロキシル価(OHN)[mgKOH/g]:DGF-M-IV6
ヨウ素色数(ICN)[mg/100ml]:DIN6162
熱重量分析(TGA)[重量%]:DIN51006、5K/分で25から300℃へ上昇させ、それから300℃で30分。300℃到達時および300℃30分後の重量損失の測定。
【0059】
再生可能炭素指数:再生可能炭素指数(RCI)は、有機化合物または混合物中の再生可能原料からの炭素原子の割合を示し、以下の式によって計算される:
total=微粒ワックス添加剤の総量
=微粒ワックス添加剤のi番目の成分の重量(%)
BCC=微粒ワックス添加剤のi番目の成分中のバイオベースのC原子の個数
FCC=微粒ワックス添加剤のi番目の成分中の化石炭素原子数
MW=微粒ワックス添加剤のi番目の成分のモル重量
RCIの計算には、無機成分および水は考慮されない。
【0060】
スループット測定: 実験室のミルにおけるスループット測定として、一定条件下での原料のスループットは、30分という所定の時間内に測定された。当測定では、得られた微粒を計量添加し、スループットをグラム/時間で記録した。当スループットは、使用される原料/米糠ワックス酸化物の粉砕性の指標となる。
【0061】
米糠ワックス酸化物を、以下のエアジェットミルで粉砕した:
【0062】
一覧2:エアジェットミル
デバイス:Hosokawa Alpine 100, AFG/50ZPS/50, AFPマルチプロセスシステム
充填量:約0.8dm
粉砕空気速度:約80m/h
分級機器直径:50mm
分級機速度:最大22000/分
分級機の仕様:8つのパドルが螺旋状に配置されて挿入された分類器ホイール
【0063】
表3に記載された本発明の任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、一覧2のエアジェットミルで粉砕して製造された。
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
特性試験
実施例1a:フレキソ印刷インク1
成分:
A)Uni Q MB Blue 15.3 (12-111101-7.2260)(Siegwerk製) 20.0重量%
蒸留水 10.0重量%
B)Viacryl SC 175 W 40 WAIP (Cytec製) 35.0重量%
蒸留水 35.0重量%
合計 100.0重量%
MWAの添加:0.5重量%/0.8重量%
スクラブテスト50ストローク
【0066】
実施例1b:フレキソ印刷インク2
成分:
A)HYDRO-X GLOSS Cyan wax-free (Huber group製) 30.0重量%
B)Viacryl SC 175 W 40 WAIP (Cytec製) 20.0重量%
蒸留水50.0重量%
合計 100.0重量%
MWAの添加:0.5重量%/0.8重量%
【0067】
独自の特徴:
100ストロークのスクラブテスト
印刷インクの基本的なスクラブ耐性はより高い。したがって、相違を見るために、スクラブテストのストローク数を増加させた。残りの条件は、フレキソ印刷インク1の適用条件と同じである。
【0068】
製造:
成分AおよびBをそれぞれ蒸留水で希釈して製造した。続いて、まず、大型ビーカーに成分Aを入れ、プロペラ攪拌機で攪拌しながら成分Bを徐々に加えた。当混合物を、プロペラ撹拌機を用いて1200rpmで少なくとも30分間拡販して均質化した。
【0069】
このようにして製造された印刷インクベースに、微粒ワックス添加剤を0.5重量%または0.8重量%の濃度で添加した。当微粒ワックス添加剤は、溶解機中にて500rpmで徐々に計量添加し、次いで、2000rpmで20分間、印刷インクに組み込んだ。
【0070】
Algro Finess80g/m2品質の紙に、厚さ6μmの湿潤フィルムを全面塗布して、少なくとも24時間後(発泡なし)にプルーフィングを行った。48時間の乾燥後にプルーフストリップを試験した。
【0071】
水性フレキソ印刷インクにおける本発明の微粒ワックス添加剤の試験:
微粒ワックス添加剤の効果は、上述の配合物の光沢、滑り摩擦係数、およびスクラブ耐性によって定量化される。フレキソ印刷インクでは、光沢の高い値が望ましい。滑り摩擦係数および相対スクラブ耐性は、色磨耗として定義され、より低い値が、フレキソ印刷インクにおいて望ましい。
【0072】
【表5】
【0073】
表5における本発明の実施例(inv.1~4)は、Montan-MG1(comp.1)、Amid-MG1(comp.2)、およびPodax-MG1(comp.3)と比較して、より高い光沢を示し、比較例のワックスで製造したフレキソ印刷インクと比較して、同等または低い滑り摩擦係数を示す。
【0074】
図1~4から、本発明の米糠ワックス酸化物(表5、inv.1~8)の低極性から高極性の一連の極性の上昇は(inv.1、5<inv.2、6<inv.3、7~inv.4、8)、使用されるフレキソ印刷インクの滑り摩擦に好ましい影響を有することが推測することができる。
【0075】
さらに、フレキソ印刷インクにおいて望まれる光沢は、本発明の全ての米糠ワックス酸化物において、Podax-MG1(comp.3)の光沢よりも高い。Kerry-MG1(comp.4)はフレキソ印刷インクにおいていくらか高い光沢を示すが、滑り摩擦は明らかに低い値であり、その結果、本発明の米糠ワックス酸化物、特に高い極性を有するもの(inv.3、inv.4、inv.7、inv.8)はフレキソ印刷インクにおいて最良の特性を有する。
【0076】
実施例2:オフセット印刷インク
成分:
A)F&E-5004シアンワックスフリーエコインク(Siegwerk製) 100重量%
B)オフセットインクベースへのMWAの添加 1.5重量%/3.0重量%
【0077】
オフセットインクベースをMWAと混合し、Speedmixer中、3000rpmで5分間均質化した。
【0078】
プルーフィングは、10.0±0.5mg/m2の適用率でオフセット紙上のオフセット実験室印刷機で行った。試験は、23℃、湿度50%の気候制御室で48時間の乾燥時間後に行った。
【0079】
オフセット印刷インクにおける本発明の微粒ワックス添加剤の試験:
オフセット印刷インク中の微粒ワックス添加剤の効果は、上述の配合物の滑り摩擦係数およびスクラブ耐性を介して定量化される。滑り摩擦係数および色磨耗として定義される相対スクラブ耐性の場合、より低い値が望ましい。加えて、微粒ワックス添加剤は、光沢に影響を及ぼす。
【0080】
【表6】
【0081】
表6における本発明の実施例(inv.9/10/11)は、Montan-MG1(comp.5)またはAmid-MG1(comp.6)と比較して、オフセット印刷インクの低減された光沢、低減された滑り摩擦の相対係数、およびより良好なスクラブ耐性(より低い色磨耗)を同時に示す。
【0082】
図5から、本発明の米糠ワックスを使用すると、Montan-MG1またはAmid-MG1と比較して、色磨耗が明らかに低減され、したがって、紙表面の印刷インクはスクラブ保護が改善されると推測することができる。
【0083】
【表7】
【0084】
図6は、市販されている微粒米糠ワックス(comp.7および8)と本発明の米糠ワックスとの比較を示す。本発明の比較的低い極性の米糠ワックス酸化物(inv.12~13)は、1.5重量%のMWAという比較的少量の添加であっても、非常に良好なスクラブ耐性(低い色磨耗)を示し、Podax-MG1(comp.8)であれば3重量%を添加して得られる結果である。ここで、低極性範囲が、非極性オフセット印刷インクにおいて特に好適であることが見出される。
【0085】
したがって、比較的低い極性の米糠ワックス酸化物では、オフセット印刷インクの特定の重量およびコストに係る利点が生じる。
【0086】
さらに、本発明の米糠ワックス酸化物は、それらの特に明るい色について注目に値する(ICN、表3参照)。Kerry米糠ワックス(comp. 7)は、はるかに暗い。
【0087】
実施例3:水性1K-PUR塗料
成分:
a)Bayhydrol UH 2342 91.0重量%
b)脱塩水 3.1重量%
c)ジプロピレングリコールジメチルエーテル 3.1重量%
d)BYK028 0.8重量%
e)BYK347 0.5重量%
f)Schwego Pur 6750 5%水溶液 1.5重量%
合計 100.0重量%
MWAの添加 2.0重量%/4.0重量%
【0088】
塗料の製造のために、成分a)~f)を、指定された順序でプロペラ撹拌機を使用して混合した。撹拌時間は、約1000rpmで少なくとも20分であった。
【0089】
得られた塗料に、2%または4%の濃度の微粒ワックス添加剤を、500rpmにて、溶解機に添加した。微粒ワックス添加剤を、溶解機にて、2000rpmで20分間で組み込んだ。
【0090】
試料の製造のために、60μmの湿潤フィルムをガラスプレート上にナイフコーティングした。触覚特性を試験するため、未処理の固い木材パネル上に中間研磨を伴う3層(クロスコーティング)ブラシにより塗布して、試験片を準備した。
【0091】
試験は、23℃、湿度50%の気候制御室で48時間後に行った。
【0092】
水性1成分PUR塗料における本発明の微粒ワックス添加剤の試験:
微粒ワックス添加剤の効果は、2つの異なる粉砕グレードを用いて、上述の配合物の滑り摩擦係数およびスクラブ耐性によって定量化される。滑り摩擦係数については、1K-PUR塗料においてより低い値が望ましい。スクラッチ耐性は、1K-PUR塗料において高い値が望ましい。さらに、MWAは、1K-PUR塗料の光沢に影響を与える。
【0093】
実施例3a:1K-PUR塗料、約12μmのd50を有するMWA
【表8】
【0094】
表8における本発明の実施例(inv.16~19)は、比較例(com.9および10)と比較して、低い滑り摩擦係数および高いスクラッチ耐性を有する。さらに、本発明の実施例は、1K-PUR塗料の光沢に影響を及ぼす。
【0095】
さらに、本発明の実施例では、比較例と比べて、触覚が改善された。これは、感覚的により柔らかく乾燥した表面感触で示され、ブラインドテストにおいて心地よい滑らかさとして分類された。
【0096】
実施例3b:1K-PUR塗料、約8μmのd50を有するMWA
【表9】
【0097】
当特性を、グラフを用いてさらに評価した。図7および8は、異なる粉砕グレードを有する異なる微粒ワックス添加剤を添加した後の二つの1K-PUR塗料の滑り摩擦係数を示す。滑り摩擦は、二つの異なる粉砕グレードについて示されている。より極性の高い米糠ワックスは、水性1K-PUR塗料中のmSZ、hSZおよびseifSZを酸化し、Montan-MG2(com.9)、Amid-MG2(com.10)と比較して、Kerry-MG1(com.11)およびPodax-MG1(com.13)と比較して、滑り摩擦を低減することが見出された。
【0098】
図9および図10は、異なる粉砕グレードを有する異なる微粒ワックス添加剤を添加した後の、二つの1K-PUR塗料のフラット効果およびスクラッチ耐性を示す。図9は、本発明は、約8μmの粒径で使用されるならば、Podax-MG1よりもやや良好なフラッティングを与えることを示す。さらに、特に極性米糠ワックス酸化物は、1K-PUR塗料に高いスクラッチ耐性を与え、これはKerry-MG1(図10)のスクラッチ耐性には達しないが、Kerry-MG1よりもはっきりと明るい色(ICN、表3参照)の利点をもたらす。この利点は塗膜の変色を防止するために、無色塗料用途にとって極めて重要であり得る。
【0099】
実施された触覚ブラインドテストによって、本発明において、比較例と比べて、触覚特性がやや改善された。触覚は、感触としてやや滑らかで乾燥した感じだった。
【0100】
実施例4:溶剤系2K-PUR塗料
第1成分:
i)Desmophen 1300/キシレン中75% 32.0重量%
ii)20%ESO中のWalsroder Nitrocellulose E 510 1.5重量%
iii)酢酸エチル中の10%Acronal 4L 0.2重量%
iv)キシレン中の10%Baysilone OL 17 0.2重量%
v)酢酸エチル 10.4重量%
vi)酢酸n-ブチル 11.0重量%
vii)メトキシプロピルアセテート 10.8重量%
viii)キシレン 8.9重量%
合計 75.0重量%
【0101】
第2成分:
i)Desmodur IL BA 14.2重量%
ii)Desmodur L 75 9.4重量%
iii)キシレン 1.4重量%
合計 25.0重量%
塗料基材へのMWAの添加 2.0重量%/4.0重量%
【0102】
塗料は、プロペラ撹拌機を使用して特定の順序で製造した。第1成分の材料を、好適な容器中で、プロペラ撹拌機を用いて、ニトロセルロースが溶解するまで数時間、約1000rpmで均質化した。第2成分の材料は、別々に、好適な容器中で、手動で撹拌しながら均質化した。塗料を超音波浴中で脱気した。基材に塗布する直前に、第1成分および第2成分を手動で撹拌して塗料を製造した。
【0103】
微粒ワックス添加剤を予め第1成分に500rpmで加え、2000rpmで20分間、溶解機内で組み込んだ。
【0104】
試料の製造のために、60μmの湿潤フィルムをガラスプレート上にナイフコーティングした。触覚特性を試験するため、未処理の固い木材パネル上に中間研磨を伴う3層(クロスコーティング)ブラシで塗布して、試験片を準備した。
【0105】
試験は、23℃、湿度50%の気候制御室で48時間の乾燥時間後に行った。
【0106】
溶剤系2成分PUR塗料の試験:
MWAの効果は、上述の配合物の光沢、滑り摩擦係数、およびスクラブ耐性によって定量化される。光沢および滑り摩擦係数は、2K-PUR塗料では、比較的低い値が望ましい。スクラッチ耐性は、2K-PUR塗料では、高い値が望ましい。
【0107】
【表10】
【0108】
表10において、本発明の実施例(inv.24~31)は、比較例(com.14~18)と比べて、より低い光沢またはフラット効果を示し、同時に、低い滑り摩擦係数、高いスクラッチ耐性、および心地よい触覚特性を示す、これらは木材塗料にとって重要である。
【0109】
さらに、特性試験を、グラフを用いて評価した。
【0110】
図11は、本発明の米糠ワックス酸化物を添加した2K-PUR塗料がPodax-MG1を添加した塗料よりも光沢が低く、Podax-MG1は他のMWAよりもフラット効果が小さいことを示す。
【0111】
図11~13は、異なるワックス添加剤を含む2K-PUR塗料の光沢性、滑り摩擦およびスクラッチ耐性を示しており、Kerry-MG1およびKerry-MG2は、本発明の米糠ワックス酸化物よりも幾分強いフラット効果を有し、また、スクラッチ耐性は、より極性の低い米糠ワックスnSZ-MG1またはnSZ-MG2に匹敵することが分かる(図12および13)。しかし、図12は、それらはより高い滑り摩擦係数を示すため、滑り摩擦が劣ることを示す。
【0112】
さらに、Kerry-MG1およびKerry-MG2ははっきりと暗く、明らかに高いヨウ素色数を特徴とし(図14参照)、非極性溶剤系2K-PUR塗料中の非極性米糠ワックス酸化物は、望ましい特性の最良の組合せを有する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解、アルコール分解、エステル化、アミド化、ケン化、エトキシル化、無水物形成および脱カルボキシル化を含む群から選択される方法によって、任意で誘導体化された、ワックス添加剤用の米糠ワックス酸化物であって、ISO13320-1に従い測定した体積平均粒径d50が1~50μmであることを特徴とする、および、ISO2114に従い測定した酸化が、15~140mgKOH/gであることを特徴とする、米糠ワックス酸化物。
【請求項2】
ISO13320-1に従い測定した体積平均粒径d50が5~15μm、好ましくは7.0~13.0μm、より好ましくは7.0~9.5μmであることを特徴とする、請求項1に記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項3】
前記誘導体化がケン化であることを特徴とする、請求項1または2に記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項4】
ISO2114に従い測定した酸化が15~80mgKOH/g、より好ましくは25~60mgKOH/gであることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項5】
ISO3681に従い測定したケン化価が、30~185mgKOH/g、好ましくは50~130mgKOH/g、より好ましくは60~110mgKOH/gであることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項6】
ISO2176に従い測定した滴点が、70~110℃であることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項7】
クロム硫酸を用いて、好ましくは三酸化クロムと硫酸との混合物を用いて製造されていることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物。
【請求項8】
請求項1~7に記載のいずれかに記載の任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物を1以上含む、印刷インクおよび塗料系のための微粒ワックス添加剤。
【請求項9】
前記任意で誘導体化された米糠ワックス酸化物は、前記ワックス添加剤の総重量に基づいて、40~100重量%の量で存在することを特徴とする、請求項8に記載の微粒ワックス添加剤。
【請求項10】
前記微粒ワックス添加剤が、80~100%の再生可能炭素指数(RCI)を有することを特徴とする、請求項8または9に記載の微粒ワックス添加剤。
【請求項11】
存在する成分を、ISO13320-1に従い測定した体積平均粒径d50が、1~50μmになるように、まとめてミルで粉砕することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の米糠ワックス酸化物または請求項8~10のいずれかに記載の微粒ワックス添加剤の製造方法。
【請求項12】
前記ミルが、インパクトプレートミルまたはエアジェットミル、好ましくはエアジェットミルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
印刷インク、コーティングおよび塗料のための、請求項8~10のいずれかに記載の微粒ワックス添加剤の使用。
【請求項14】
-前記印刷インクは、オフセット印刷インクまたはフレキソ印刷インク、好ましくは油性オフセット印刷インクまたは水性フレキソ印刷インクである、または、
-前記塗料は、粉末コーティング材料または木材塗料または1K- PUR塗料系または2K-PUR塗料系、好ましくは水性1K1K-PUR塗料系または水性2K-PUR塗料系、最も好ましくは水性2K-PUR塗料系である、
請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記微粒ワックス添加剤が、前記印刷インク、コーティングまたは塗料の全重量に基づいて、0.1~10.0重量%、好ましくは0.2~4.0重量%の量で用いられることを特徴とする請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
前記微粒ワックス添加剤は、前記印刷インク、コーティングまたは塗料に、直接又は分散物として添加されることを特徴とする、請求項13~15いずれかに記載の使用。
【請求項17】
分散剤と微粒ワックス添加剤または微粒米糠ワックス酸化物との分散物を製造し、印刷インク、コーティングまたは塗料に添加することを特徴とする、請求項13~16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
- プラスチック用の脱気剤、レベリング剤、潤滑材および/または分散助剤、または、
- 植物保護剤中の疎水化剤、
としての、請求項8~10のいずれかに記載の微粒ワックス添加剤の使用。
【国際調査報告】