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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】局所抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20230706BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230706BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20230706BHJP
   A61K 31/4412 20060101ALI20230706BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20230706BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20230706BHJP
   A61K 31/166 20060101ALI20230706BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q17/00
A61Q5/00
A61K8/42
A61P43/00 121
A61P17/00 101
A61P17/08
A61K31/4412
A61K31/517
A61K31/16
A61K31/166
A61K36/185
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577356
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2021065328
(87)【国際公開番号】W WO2021254835
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】20186862.7
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/097236
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】プ,ミンミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジョンシウ
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,チャン-チン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AB051
4C083AC641
4C083AC642
4C083AC851
4C083AC852
4C083BB01
4C083CC02
4C083CC31
4C083EE12
4C083EE23
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC46
4C086GA07
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZA90
4C086ZA92
4C086ZC75
4C088AB12
4C088BA08
4C088BA33
4C088MA02
4C088MA16
4C088MA63
4C088NA05
4C088ZA89
4C088ZA90
4C088ZA92
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA16
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA83
4C206NA05
4C206ZA89
4C206ZA90
4C206ZA92
4C206ZC75
(57)【要約】
(i)ピロクトン、カプリルヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、又はピロクトンオラミンのうちの少なくとも1つである抗菌活性物質と、(ii)フェブリフギンと、を含む、局所組成物が開示される。安全かつ有効な量の局所組成物を適用する工程を含む、ヒト又は動物の身体の局所表面上に局所抗菌の利点を提供する非治療的方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ピロクトン、カプリルヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、又はピロクトンオラミンのうちの少なくとも1つである抗菌活性物質と、
(ii)フェブリフギンと、
を含む、局所組成物。
【請求項2】
フェブリフギンの量と前記抗菌活性物質の量の重量比が1:10~100:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ジョウザン(Dichroa febrifuga)の抽出物、あるいはセイヨウアジサイ(Hydrangea macrophylla)の抽出物を含み、これが前記フェブリフギンを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗菌活性物質が、カプリルヒドロキサム酸又はピロクトンオラミンのうちの少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記フェブリフギンの量が、0.01~10重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗菌活性物質の量が、0.01~10重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、水を含む化粧品として許容される担体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記担体が、界面活性剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物がウォッシュオフ又はリーブオンヘアケア組成物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の局所組成物の安全かつ有効な量を適用する工程を含む、ヒト又は動物の身体の局所表面上に局所抗菌の利点を提供する非治療的方法。
【請求項11】
ヒト又は動物の身体の局所表面上への抗菌の利点の提供に使用するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ヒト又は動物の身体の局所表面上の少なくとも一部のマラセチア菌種に対して使用するための、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所抗菌組成物、特に化粧品組成物に関し、より詳細には、相乗的な抗菌効果を提供するように相互作用し、少なくともフケ及びざ瘡などの化粧品関連性の症状に関連するいくつかの微生物に対して有用な活性物質を含む化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、任意の身体部分の洗浄及び/又はケアに有用であるが、特に毛髪及び頭皮のケア、手指衛生又は顔のケア及びクレンジングに適した抗菌組成物に関する。
【0003】
フケは、世界中の多くの人々に影響を及ぼす問題である。この症状は、頭皮から死んだ皮膚細胞の塊が脱落することによって現れる。これらは白色であり、容易に視認可能であるため、審美的に不快な外見を呈する。フケに寄与する要因は、マラセチア酵母の特定のメンバーである。それらに対抗するために、シャンプーなどの様々なフケ防止組成物が入手可能である。通常、このようなシャンプーは、界面活性剤及び1つ以上のフケ防止剤を含有する。典型的なフケ防止剤は、金属ピリチオン、例えば亜鉛ピリチオン(ZPTO)、オクトピロックス(ピロクトンオラミン)、アゾール抗菌剤(例えばクリンバゾール)、硫化セレン及びそれらの組み合わせである。
【0004】
フケの問題は、そのようなシャンプーにおいて上記活性成分を使用することによって大幅に軽減されるが、より効果的な組成物が必要とされている。
【0005】
尋常性ざ瘡としても知られているざ瘡は、ほぼすべての青年及び成人が罹患する一般的な皮膚症状である。これは、異常な角質化及び過剰な皮脂産生を含む複雑な病因を有する。ざ瘡は、通常、顔、首及び背中のような皮脂腺が豊富な領域に生じる。細菌キューティバクテリウムアクネス(Cutibacterium acnes)(C.アクネス(C.acnes)、以前はプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)又はP.アクネス(P.acnes)として知られていた)も、ざ瘡の発生に関与している。ざ瘡は、多くの方法で処置されてきた。ほとんどの処置は、顕著な変化が見られるまでに数週間から数ヶ月を要する。抗菌効果を有する過酸化ベンゾイルは、軽度のざ瘡の場合に使用されており、また、さらなるざ瘡の形成を防止すると考えられている。非常に重篤なざ瘡の場合、テトラサイクリン、エリスロマイシン及びクリンダマイシンのような抗生物質が使用されてきた。
【0006】
したがって、本発明の目的は、個々の成分と比較して相乗的な抗菌活性を示す局所組成物を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、天然植物に通常見られる特定の活性物質が、ピロクトン、カプリルヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、又はピロクトンオラミンのうちの少なくとも1つである典型的な抗菌活性物質と共に製剤化される場合、その組み合わせがフケ及びざ瘡のような症状に関連するいくつかの微生物に対して非常に有効であることを見出した。これにより、上記の組み合わせを含む組成物は、フケ防止、ざ瘡防止及び一般的な抗菌活性を有することができ、例えばシャンプー、ボディ及びフェイスケアでの使用に適し得るという推論が導かれた。上記で言及した特定の活性物質はフェブリフギンである。
【0008】
したがって、第1の態様によれば、
(i)ピロクトン、カプリルヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、又はピロクトンオラミンのうちの少なくとも1つである抗菌活性物質と、
(ii)フェブリフギンと、
を含む、局所組成物を開示する。
【0009】
第2の態様によれば、安全かつ有効な量の第1の態様の局所抗菌組成物を適用する工程を含む、局所抗菌の利点を提供する非治療的方法が開示される。
【0010】
第3の態様によれば、ヒト又は動物の身体の局所表面上の抗菌の利点の提供に使用するための第1の態様の組成物が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による組成物は、様々な異なる形態を有することができる局所的に許容される担体、ビヒクル又は希釈剤を含む。局所的に許容される担体は、好ましくは非刺激性であるべきである。したがって、「局所的に許容される」は、担体が、いかなる不都合な安全性又は毒性の懸念も引き起こすことなく皮膚への局所適用に適していることを意味する。換言すれば、これらの担体は哺乳動物の皮膚での使用に適している。典型的な担体は、水-アルコール系(例えば、液体及びゲル)、無水油若しくはシリコーン系、又は水中油型、油中水型、水中油中水型及びシリコーン中水中油型エマルジョンを含むが、これらに限定されないエマルジョン系の形態であり得る。エマルジョンは、薄いローション(スプレー又はエアロゾル送達にも適し得る)、クリーム状ローション、軽いクリーム及び重いクリームを含む広範囲の稠度をカバーすることができる。エマルジョンはまた、マイクロエマルジョン系を含むことができる。他の適切な局所用担体としては、無水固体及び半固体(ゲル及びスティックなど)及び水性ベースのムース系が挙げられる。本発明において有用な局所用担体系の非限定的な例を以下に記載する。
【0012】
これら及び他の態様、特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を読むことによって当業者には明らかになるであろう。誤解を避けるために、本発明の一態様の任意の特徴は、本発明の任意の他の態様で利用することができる。「含む(comprising)」という単語は、「含む(including)」を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる(consisting of)」又は「から構成される(composed of)」を意味するものではない。言い換えれば、列挙された工程又は選択肢は網羅的である必要はない。以下の説明で与えられる実施例は、本発明を明確にすることを意図しており、本発明をそれらの実施例自体に限定することを意図していないことに留意されたい。同様に、本明細書に含まれるすべてのパーセンテージ及び比は、特に指示しない限り、重量/重量パーセンテージである。
【0013】
操作例及び比較例、又は他に明示的に示されている場合を除いて、材料の量又は反応の条件、材料の物理的特性及び/又は使用を示す本明細書のすべての数字は、「約」という単語によって修飾されると理解されるべきである。特に明記しない限り、「xからy」の形式で表される数値範囲は、x及びyを含むと理解される。特定の特徴について、複数の好ましい範囲が「xからy」の形式で記載されている場合、異なる終点を組み合わせたすべての範囲も企図されることが理解される。上記の個々のセクションで言及された本発明の様々な特徴は、必要に応じて、必要な変更を加えて他のセクションに適用される。したがって、1つのセクションで指定された特徴は、必要に応じて他のセクションで指定された特徴と組み合わせることができる。任意のセクションの見出しは、便宜上追加されているにすぎず、決して本開示を限定することを意図するものではない。
【0014】
局所組成物とは、哺乳動物、特にヒトの局所領域、例えば皮膚及び/又は毛髪及び/又は口腔を洗浄又は消毒することを意図したリーブオン又はウォッシュオフ形式の形態の外用組成物を意味する。そのような組成物は、外見、クレンジング、臭気制御又は一般的な審美性も改善するために人体に適用される任意の製品を含む。一態様によれば、本発明による組成物は、リンスオフ組成物である。あるいは、それらはリーブオン組成物である。本発明の組成物は、液体、ローション、クリーム、フォーム若しくはゲル、又はトナーの形態であり得るか、又は器具を用いて若しくはフェイスマスク、パッド若しくはパッチを介して適用され得る。本明細書で使用される「皮膚」は、顔及び身体の皮膚(例えば、首、胸、背中、腕、脇の下、手、脚、臀部及び頭皮)を含むことを意味する。本発明の組成物はまた、皮膚以外の人体の任意の他の外部基材、例えば毛髪への適用にも関連する。
【0015】
本明細書で使用される「抗菌組成物」とは、哺乳動物、特にヒトの皮膚、毛髪及び/又は頭皮に局所適用するための組成物を含むことを意味する。そのような組成物は、一般に、数秒から24時間までの間、身体の所望の局所表面に塗布される。塗布時間が例えば数秒から数分程度と短い場合、その後に組成物を水でリンスオフするか、又は拭き取るとき、そのような組成物は、クレンジング組成物又はリンスオフ組成物として知られている。組成物が、例えば数分から24時間までのより長い時間適用され、通常のパーソナルクリーニングのプロセス中に通常洗い流される場合、そのような組成物はリーブオン組成物として知られている。より好ましくは、頭皮及び/又は毛髪上のフケの症候を予防又は緩和するため、ざ瘡防止利点のため、又は手若しくは人体の他の部分を消毒するために使用される。
【0016】
本明細書で使用される「ヘアケア組成物」は、毛髪への局所適用のための組成物を含むことを意味する。そのような組成物の非限定的な例としては、リーブオンヘアローション、クリーム、乾燥ウォッシュオフシャンプー、コンディショナー、シャワージェル、又はトイレットバーが挙げられる。本発明の組成物がヘアケア組成物である場合、それは好ましくはウォッシュオフ組成物、特にシャンプー又はコンディショナーである。
【0017】
本発明は、
(i)ピロクトン、カプリルヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、又はピロクトンオラミンのうちの少なくとも1つである抗菌活性物質と、
(ii)フェブリフギンと、
を含む、局所組成物に関する。
【0018】
ヒドロキサム酸類及びヒドロキサム酸誘導体
ヒドロキサム酸は、官能基RC(O)N(OH)R’を有する有機化合物のクラスであり、R及びR’は有機残基であり、COはカルボニル基である。
【0019】
本発明による抗菌活性物質は、ヒドロキサム酸又はヒドロキサム酸誘導体の少なくとも1つである。ヒドロキサム酸は、ピロクトン、カプリルヒドロキサム酸又はベンゾヒドロキサム酸であり、より好ましくはカプリルヒドロキサム酸である。ヒドロキサム酸誘導体は、ピロクトンオラミンである。
【0020】
したがって、本発明による抗菌活性物質は、ピロクトン、カプリルヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸又はピロクトンオラミンのうちの少なくとも1つである。本発明の抗菌活性物質は、カプリルヒドロキサム酸及びピロクトンオラミンの少なくとも一方であることがより好ましい。抗菌活性物質は、ピロクトンオラミンであることが最も好ましい。
【0021】
ピロクトンは、それぞれ4位及び6位にメチル及び2,4,4-トリメチルペンチル置換基を有する1-ヒドロキシピリジン-2-オンからなる環状ヒドロキサム酸である。CAS番号は50650-76-5であり、化合物は以下の一般式(a)を有する。
【化1】
【0022】
カプリルヒドロキサム酸は、ヤシ油由来のアミノ酸である。それは防腐剤及び広域スペクトル抗真菌剤である。CAS番号は7377-03-9であり、化合物は以下の一般式(b)を有する。
【化2】
【0023】
ベンゾヒドロキサム酸はヒドロキサム酸の1つである。CAS番号は495-18-1であり、化合物は以下の一般式(c)を有する。
【化3】
【0024】
ピロクトンオラミンは、代表的な抗菌活性物質であるヒドロキサム酸誘導体ピロクトンのオラミン塩である。これは、一般に、商品名Octopirox(登録商標)のピロクトンエタノールアミンとして知られている。
【0025】
本発明によるピロクトンオラミンは、1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4トリメチルペンチル)-2(1H)-ピリジノンと2-アミノエタノールとの1:1化合物であり、1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4トリメチルペンチル)-2(1H)ピリジノンモノエタノールアミン塩とも呼ばれる。CAS番号は68890-66-4であり、化合物は以下の一般式(d)を有する。
【化4】
【0026】
本発明の組成物中のヒドロキサム酸又はヒドロキサム酸誘導体の少なくとも1つである抗菌活性物質の量は、局所組成物の種類及び使用される他の抗菌活性物質の正確な性質に依存する。組成物は、組成物の0.01~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、さらに好ましくは0.5~3重量%の前記抗菌活性物質を含むことが好ましい。
【0027】
フェブリフギン
本発明によるフェブリフギンはキナゾリノンアルカロイドである。CAS番号は24159-07-7であり、化合物は以下の一般式(e)を有する。
【化5】
【0028】
このようなフェブリフギンは、植物-ジョウザン(Dichroa febrifuga)又はセイヨウアジサイ(Hydrangea macrophylla)にも見出すことができる。
【0029】
本発明の組成物中のフェブリフギンの量は、0.01~10重量%であることが好ましい。より好ましくは、その量は、組成物の重量の0.01~5%、最も好ましくは0.1~2%である。
【0030】
好ましくは、本発明の組成物は、ジョウザン(Dichroa febrifuga)の抽出物、あるいはセイヨウアジサイ(Hydrangea macrophylla)の抽出物を含み、これは前記フェブリフギンを含む。抽出物の測定量は、その中に含まれる必要量のフェブリフギンが組成物に含まれるように選択される。
【0031】
フェブリフギンを含有する植物抽出物は、様々な異なる供給源から市販されている。例えば、ジョウザン(Dichroa febrifuga)の根の抽出物は、Dalian Institute of Chemical Physics,Chinese Academy of Sciencesから入手可能である。あるいは、当業者は、当技術分野で公知の任意の適切な単離及び精製方法を使用することによってフェブリフギンを単離することができるであろう。いくつかの実施形態では、フェブリフギンの抽出物は、乾燥したジョウザン(Dichroa febrifuga)植物から得ることができ、当技術分野で公知の又は開発される任意の手段によって調製することができる。
【0032】
通常、植物抽出物は、水及びアルコールを含む水性溶媒を使用して、又は有益な植物成分を引き出すように働く超臨界二酸化炭素を使用して調製することができる。例えば、薬草原料を小片に砕き、10倍体積の脱イオン水に30分間浸漬し、次いで、30分間の還流抽出を2回行う。濾過後、液体を乾燥させて抽出物粉末を得ることができる。あるいは、薬草原料を小片に砕き、10倍体積の95%エタノールに24時間浸漬する。2つの濾過溶液を合わせ、濾過した。上清中の溶媒を蒸発により除去し、抽出物粉末を得た。
【0033】
組成物は、抗菌活性物質及びフェブリフギンを含むので、最適な有効性を得るために活性成分の量の間の比が維持されることが好ましい。好ましくは、前記フェブリフギンの量と前記抗菌活性物質の重量比は、1:10~100:1、より好ましくは1:2~50:1、さらに好ましくは1:1~20:1、特に好ましくは3:1~10:1、最も好ましくは5:1~10:1である。
【0034】
分画阻害濃度の合計(ΣFIC)は、抗菌成分の組み合わせの状況で広く使用されている。抗菌成分(組み合わせて使用される場合)が相乗効果若しくは拮抗効果を有するか、又はこれら2つのいずれも、すなわち相加効果を有さないかを決定するためのツールである。本発明者らは、ΣFIC試験に依拠して、マラセチア・フルフル(M.furfur)に対するフェブリフギンとの抗菌活性物質の併用効果を評価した。
【0035】
本発明による抗菌活性物質及びフェブリフギンは本発明の組成物中に存在するが、フェブリフギンは抗菌活性物質と相乗的に相互作用して、さらに効果的になると考えられる。
【0036】
本発明の局所組成物は、ピロクトンオラミン及びフェブリフギンを含むことが好ましい。この場合、フェブリフギンの量とピロクトンオラミンの量の重量比は、1:10~100:1、あるいは1:2~50:1、さらには1:1~10:1であることが好ましい。
【0037】
本発明の局所組成物は、カプリルヒドロキサム酸及びフェブリフギンを含むことが好ましい。この場合、フェブリフギンの量とカプリルヒドロキサム酸の量の重量比は、1:10~100:1、あるいは1:2~50:1、さらには1:1~10:1であることが好ましい。
【0038】
その他の成分
本発明の組成物は、好ましくは化粧品として許容されるビヒクルを含む。化粧品として許容されるビヒクルは、組成物が、例えばシャンプー、コンディショナー、ボディウォッシュ、手洗い又は洗顔製品、クリーム、ローション、ゲル、粉末、軟膏、手指消毒剤又は石鹸バーとして調製されてよく、残りの成分がそれに応じて変化するようなものである。
【0039】
一態様では、本発明による局所組成物はヘアケア組成物である。好ましくは、そのような組成物は、シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアセラム又はヘアオイルである。最も好ましくは、局所組成物は、少なくとも一部のマラセチア(Malessezia)菌種に対して有効なフケ防止組成物である。
【0040】
本発明の組成物がシャンプーである場合、それは好ましくは、そのような組成物に一般的に含まれる他の成分を含む。
【0041】
シャンプーは、好ましくは1~20重量%、より好ましくは2~16重量%、さらに好ましくは3~16重量%のアニオン性界面活性剤、例えばアルキル硫酸塩及び/又はエトキシ化アルキル硫酸塩界面活性剤を含む。好ましいアルキル硫酸塩は、C8-18アルキル硫酸塩、より好ましくはC12-18アルキル硫酸塩であり、好ましくはナトリウム、カリウム、アンモニウム又は置換アンモニウムなどの可溶化カチオンとの塩の形態である。
【0042】
特に好ましいアルキルエーテル硫酸塩は、式:RO(CHCHO)SO-3M(式中、Rは、8~18個(好ましくは12~18個)の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、nは、少なくとも0.5より大きい、好ましくは1~3の間、より好ましくは2~3の間の平均値を有する数であり、Mは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム又は置換アンモニウムなどの可溶化カチオンである)を有するものである。一例は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。0.5~3、好ましくは1~3の平均エトキシル化度を有するSLESが、特に好ましい。
【0043】
本発明によるシャンプー組成物は、化粧品として許容される、毛髪への局所適用に適した1つ以上のさらなるアニオン性クレンジング界面活性剤を含んでもよい。例としては、アルカリールスルホネート、アルキルスクシネート、アルキルスルホスクシネート、アルキルエーテルスルホスクシネート、N-アルキルサルコシネート、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、並びにアルキルエーテルカルボン酸及びその塩、特にそれらのナトリウム、マグネシウム、アンモニウム並びにモノ-、ジ-及びトリエタノールアミン塩が挙げられる。アルキル及びアシル基は、一般に、8~18個、好ましくは10~16個の炭素原子を含み、不飽和であってもよい。アルキルエーテルスルホスクシネート、アルキルエーテルホスフェート及びアルキルエーテルカルボン酸並びにそれらの塩は、1分子当たり1~20個のエチレンオキシド又はプロピレンオキシド単位を含有し得る。
【0044】
典型的には、適切なアニオン性界面活性剤としては、オレイルコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸アンモニウム、ラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ラウリルエーテルカルボン酸及びN-ラウリルサルコシン酸ナトリウムが挙げられる。適切な好ましい追加のアニオン性クレンジング界面活性剤は、ラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム(n)EO(nは1~3である)、ラウリルエーテルカルボン酸(n)EO(nは10~20である)である。
【0045】
前述のアニオン性クレンジング界面活性剤のいずれかの混合物も適切であり得る。
【0046】
本発明のシャンプー組成物は、好ましくは、0.1重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~8重量%の両性界面活性剤、好ましくはアルキルアミドプロピルベタイン界面活性剤などのベタイン界面活性剤、例えばココアミドプロピルベタインをさらに含む。
【0047】
組成物のpHは、好ましくは4.0以上、より好ましくは5.0~10.0の範囲である。
【0048】
シャンプー組成物は、0.1~3重量%、より好ましくは0.1~1.5重量%の亜鉛化合物をさらに含むことが好ましい。組成物中の亜鉛の存在は、フケ防止有効性を改善すると考えられている。適切な亜鉛化合物は、ZPTO、酸化亜鉛、クエン酸亜鉛、マロン酸亜鉛、炭酸亜鉛又はそれらの組み合わせである。
【0049】
好ましくは、シャンプー組成物は、0.01~2重量%、より好ましくは0.025~0.75重量%のコナゾール殺真菌剤をさらに含む。好ましくは、コナゾール殺真菌剤は、ケトコナゾール若しくはクリンバゾール又はそれらの混合物である。コナゾール殺真菌剤の存在は、亜鉛ピリチオン(ZPTO)の沈着を改善すると考えられている。
【0050】
シャンプー組成物は、さらに好ましくは懸濁化剤を含む。適切な懸濁化剤は、ポリアクリル酸、アクリル酸の架橋ポリマー、アクリル酸と疎水性モノマーとのコポリマー、カルボン酸含有モノマーとアクリル酸エステルとのコポリマー、アクリル酸とアクリル酸エステルとの架橋コポリマー、ヘテロ多糖ガム及び結晶性長鎖アシル誘導体である。長鎖アシル誘導体は、望ましくは、エチレングリコールステアレート、16~22個の炭素原子を有する脂肪酸のアルカノールアミド及びそれらの混合物から選択される。エチレングリコールジステアレート及びポリエチレングリコールジステアレートは、組成物に真珠光沢を付与するので、好ましい長鎖アシル誘導体である。ポリアクリル酸は、Carbopol(登録商標)420、Carbopol(登録商標)488又はCarbopol(登録商標)493として市販されている。多官能剤で架橋されたアクリル酸のポリマーも使用され得る。これらは、Carbopol(登録商標)910、Carbopol(登録商標)934、Carbopol(登録商標)941及びCarbopol(登録商標)980として市販されている。カルボン酸含有モノマーとアクリル酸エステルとの適切なコポリマーの例は、Carbopol(登録商標)1342である。すべてのCarbopol(商標)材料は、Goodrichから入手可能である。
【0051】
アクリル酸及びアクリレートエステルの適切な架橋ポリマーは、Pemulen(登録商標)TR1及びPemulen(登録商標)TR2である。適切なヘテロ多糖ガムは、キサンタンガム、例えばKelzanとして入手可能なものである。
【0052】
上記懸濁化剤のいずれかの混合物を使用してもよい。好ましくは、アクリル酸と結晶性長鎖アシル誘導体との架橋ポリマーの混合物である。
【0053】
懸濁化剤は、含まれる場合、一般に0.1~10重量%、好ましくは0.5~6重量%で存在する。
【0054】
本発明の組成物は、性能及び/又は消費者の受容性を高めるための他の成分を含有し得る。そのような成分としては、芳香剤、染料及び顔料、pH調整剤、真珠光沢剤又は乳白剤、粘度調整剤、防腐剤、並びに植物、果実抽出物、糖誘導体及びアミノ酸などの天然毛髪栄養素が挙げられる。
【0055】
シャンプー組成物は水性ベースであることが好ましい。これは、好ましくは70~95重量%の水を含む。
【0056】
ヘアコンディショナー
代替として、本発明の局所組成物はヘアコンディショナーである。
【0057】
コンディショニングの利点が本発明の組成物を介してもたらされる場合、組成物はヘアコンディショナーと呼ばれる。典型的には、ヘアケア組成物に使用される最も一般的なコンディショニング剤は、鉱油などの水不溶性油性材料、トリグリセリド及びシリコーンポリマーなどの天然に生じる油である。コンディショニングの利点は、油性材料が毛髪上に堆積されてフィルムを形成することによって達成され、これにより、濡れたときに毛髪を梳きやすくし、乾燥したときに毛髪をより扱いやすくする。特に有用なコンディショニング剤は、シリコーン、好ましくは不揮発性シリコーンである。有利には、本明細書の組成物は、1つ以上のシリコーンを含み得る。シリコーンは、分散又は懸濁した粒子形態で見られるコンディショニング剤である。それらは、水で毛髪をすすいだ後に残った毛髪に堆積することを意図している。適切なシリコーン油としては、ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、ポリエーテルシロキサンコポリマー及びそれらの混合物が挙げられ得る。アミノシリコーンは、しばしばシャンプー組成物と配合される。アミノシリコーンは、少なくとも1つの第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン又は第四級アンモニウム基を含有するシリコーンである。高分子量シリコーンガムも利用することができる。別の有用な種類は、ジメチコン/ビニル/ジメチコンクロスポリマー(例えば、Dow Corning 9040及び9041)などの架橋シリコーンエラストマーである。
【0058】
本発明のヘアコンディショナー組成物は、0.1~10重量%、より好ましくは約0.1~約8重量%のシリコーンを含むことが好ましい。あるいは、ヘアコンディショナーはシリコーンを含まず、1重量%以下のシリコーンを含有する。組成物のpHは、好ましくは4.0を超え、より好ましくは5.0~7.0である。
【0059】
本発明のヘアコンディショナー組成物はまた、好ましくは、0.5重量%~10重量%の脂肪アルコールを含んでもよい。コンディショニング組成物における脂肪アルコール及びカチオン性界面活性剤の併用は、カチオン性界面活性剤が分散されたラメラ相の形成をもたらすので、特に有利であると考えられる。
【0060】
代表的な脂肪アルコールは、8~22個の炭素原子、より好ましくは16~22個の炭素原子を含む。脂肪アルコールは、典型的には、直鎖アルキル基を含有する化合物である。適切な脂肪アルコールの例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びそれらの混合物が挙げられる。これらの材料の使用はまた、本発明の組成物の全体的なコンディショニング特性に寄与するという点で有利である。
【0061】
スキンクレンジング
本発明の組成物は、スキンケア、例えば身体又は顔の洗浄に使用され得る。局所組成物は、界面活性剤をさらに含み得る。好ましい界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。
【0062】
したがって、非常に好ましい態様では、局所組成物は、アニオン性界面活性剤の群から選択される界面活性剤を含む。
【0063】
界面活性剤が存在する場合、局所組成物は、好ましくは、組成物の重量で1~90%の界面活性剤を含む。
【0064】
界面活性剤を使用する場合、特に好ましい界面活性剤は石鹸である。石鹸は、本発明の局所組成物の個人用洗浄用途に適した界面活性剤である。
【0065】
存在する場合、本発明の石鹸は、好ましくは組成物の重量の1~90%、好ましくは10~85%、より好ましくは25~75%の量で存在する。
【0066】
好ましい組成物は、香料、顔料、防腐剤、皮膚軟化剤、日焼け止め剤、乳化剤、ゲル化剤及び増粘剤などの他の既知の成分を含み得る。これらの成分の選択は、組成物の形式に大きく依存する。
【0067】
水は、好ましい担体である。水が存在する場合、水は、好ましくは組成物の重量の少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、さらに好ましくは少なくとも5%で存在する。水が担体である場合、好ましい液体組成物は、10~99.8重量%の水を含む。液体局所組成物は、皮膚消毒液として、皮膚クレンジング用、特に手洗い又は洗顔に有用である。水が担体である場合、好ましい固体組成物は5~30重量%の水を含む。
【0068】
固体局所組成物は、好ましくは成形された固体、より好ましくは棒状の形態である。固体局所組成物は、スキンクレンジング、特に手洗い又は洗顔に特に有用である。
【0069】
別の態様によれば、無機粒状材料も適切な担体である。無機粒状材料が担体である場合、局所組成物は固体形態である。好ましくは、無機粒状材料はタルクである。無機粒状材料がタルクである場合、固体抗菌組成物は、顔又は身体に適用するためのタルク粉末として特に有用である。
【0070】
本発明の別の態様では、本発明の組成物は、個人衛生のための拭き取り繊維での使用に適している。
【0071】
本発明による使用及び方法
第2の態様によれば、ヒト又は動物の身体の局所表面上に抗菌の利点を提供するのに使用するための第1の態様の局所組成物が開示される。本発明はまた、ヒト又は動物の身体の局所表面上の少なくとも一部のマラセチア(Malessezia)菌種に対して使用するための局所組成物を開示する。好ましくは、局所組成物は、ヒト又は動物の身体の局所表面上の少なくとも一部のマラセチア(Malessezia)菌種に対して有効なフケ防止組成物である。あるいは、局所組成物は、少なくともC.アクネス(C.acnes)に対して有効なざ瘡防止組成物である。さらにあるいは、局所組成物は、少なくとも黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して有効なリンスオフ又はリーブオン組成物である。本発明による使用は、非治療的目的であることが好ましい。好ましくは、非治療的目的は、美容的目的を意味する。あるいは、本発明による組成物の使用は、治療的目的のためのものである。当業者は、組成物の治療的使用と非治療的使用との間の違いを理解する。
【0072】
別の態様によれば、安全かつ有効な量の第1の態様の局所組成物を適用する工程を含む、ヒト又は動物の身体の局所表面上に局所抗菌の利点を提供する非治療的方法も開示される。安全な有効量という用語は、当業者に周知であり、そのような量は、製品形態に応じて変化してよく、例えば、リーブオン組成物の場合の前記量は、各用途について1~2mlであってよく、一方、シャンプーの場合、同じ量は各用途について5~10mlであり得る。この方法は、ざ瘡、フケを予防若しくは処置するため、又は一般的な衛生状態を維持するために利用され得る。
【0073】
好ましくは、局所組成物は、少なくとも一部のマラセチア(Malessezia)菌種に対して有効なフケ防止組成物である。あるいは、局所組成物は、少なくともC.アクネス(C.acnes)に対して有効なざ瘡防止組成物である。さらにあるいは、局所組成物は、少なくとも黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して有効なリンスオフ又はリーブオン組成物である。
【0074】
本方法は、フェブリフギンとマラセチア・フルフル細胞上の抗菌活性物質の重量比が1:10~100:1の範囲にある場合により効果的であり、3:1~100:1の範囲にある場合さらに効果的である。
【0075】
別の態様によれば、ヒト又は動物の身体の局所表面上に抗菌の利点を提供するのに使用するための組成物が開示される。
【0076】
別の態様によれば、少なくとも一部のマラセチア(Malessezia)菌種に対して有効なフケ防止組成物として使用するための局所組成物が開示される。さらに別の態様によれば、少なくともC.アクネス(C.acnes)に対して有効なざ瘡防止組成物として使用するための局所組成物が開示される。さらに別の態様によれば、少なくとも黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して有効なリンスオフ又はリーブオン組成物が開示される。
【0077】
以下の非限定的な例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【0078】
[実施例]
[実施例1]
本発明による例示的な組成物の抗菌有効性を、M.furfurに対して決定した。
【0079】
ここで、関連する手順を簡単に説明する。
【0080】
方法1:M.furfurに対するΣFICアッセイ。
工程1:微生物の培養及び調製
M.furfur(CBS1878)をMD寒天プレート(溶液A)上に維持し、20mlの増殖培地ピチロスポルムブロス(PB、溶液B)中で培養した。次いで、それらを振盪しながら32℃で48時間インキュベートする。次いで、1mlの第1のブロス培養物を9mlの新鮮なPBに移し、振盪しながら32℃で48時間インキュベートする。最終培養物は、2~6×10細胞/mlを含有するはずである。これは、PBを使用して5×10細胞/mlに希釈することによって達成される。
【0081】
溶液Aの調製:
改質ディクソン寒天(MD)
36g 麦芽抽出物(Oxoid)
6g 真菌用ペプトン(Oxoid)
10 精製寒天(Oxoid)
20g オックスバイル(Oxoid)
2ml オレイン酸(Sigma)
2ml グリセロール(Sigma)
10ml Tween40(Sigma)
脱イオン水 1000mlまで
50mg(1バイアル)を2mlの95%エタノールに溶解したクロラムフェニコール(Oxoid SR078E)
(オートクレーブ後も含めて十分に撹拌する)
【0082】
溶液Bの調製:
ピチロスポルムブロス(PB)
10g 細菌用ペプトン
0.1g 酵母抽出物
10g オックスバイル
2.5g タウロコール酸
10g グルコース
1L 脱イオン水
0.5ml Tween60
1ml グリセリン
pHを6.2に調整した
滅菌後
0.5ml UHTミルク
【0083】
工程2:インビトロ感受性試験
Octopirox(登録商標)を段階希釈(2倍)して、増殖培地中60~1000ppmの範囲で調製した。試験フェブリフギン(ストック:10mg/ml)をDMSOで2倍段階希釈して5000~5ppmの範囲で調製した。10μlのOctopirox(登録商標)溶液を10μlの試験化合物と混合することによって、Octopirox(登録商標)と試験化合物の二成分の組み合わせを96ウェルプレート中で調製した。各ウェル中の溶液をPB中のM.furfur菌株懸濁液180μlとさらに混合した。
【0084】
試験プレート中の最終細胞密度は約5×10細胞/mlである。(20倍希釈)後の各成分の最終濃度(ppm)は、以下の通りであった。これらの濃度のそれぞれを、フェブリフギンと組み合わせた(いずれかの)Octopirox(登録商標)のFIC値を決定するために試みた。ブロス培地及び溶媒対照は、結果を比較するための陰性対照とした。
【0085】
Octopirox(登録商標)-6.25、3.125及び0ppm。
【0086】
フェブリフギン-500、250、125、62.5、31.25、15.63、7.8、3.9、2.0、1.0、0.5及び0ppm。
【0087】
マルチチャンネルピペットを使用して化合物及び菌株懸濁液を混合した。その後、96ウェルプレートをインキュベーター内でインキュベートした。OD600(スタート)が読み取られる。M.furfurについて、2日間のインキュベーション後、OD600(終了)を読み取られるであろう。その後、アラマーブルー(10%)を添加し、8時間インキュベートした。最後に、指標の色の変化を監視して、微生物の増殖又は増殖の阻害の目に見える兆候を確認した。色が赤色に変化した場合、それは(微生物の)増殖を示し、青色は増殖又は増殖の阻害を示さなかった。
【0088】
工程3:計算:ΣFIC試験
(1)最小阻害濃度(MIC):
MICは、試験条件下でアラマーブルーの青色によって示される完全な微生物増殖阻害を提供する活性物質の絶対最低濃度として定義される。
【0089】
(2)分画阻害濃度(FIC):
ΣFIC試験は、Hall MJ,Middleton RF,&Westmacott D(1983)、The fractional inhibitory concentration(FIC)index as a measure of synergyに以前記載された原理に基づいて行った。Journal of Antimicrobial Chemotherapy 11(5):427-433。手順は以下の通りである。
【0090】
単独及び混合物中の阻害性抗菌剤の異なる挙動は、分画濃度(FC)及び分画阻害濃度(FIC)の概念を使用して広く研究されてきた。パラメータは、以下のように定義することができる。
【0091】
FIC(成分a)= MIC(混合物中で試験した成分a)
MIC(単一活性物質として試験した成分a)
(3)相乗作用及び相加性
抗菌剤間の相互作用は、組み合わせの有効性が、単独で試験した場合の個々の成分の同じ総濃度に対して得られるものと同等であるか、それより大きいか、又はそれより小さいかに応じて、相加的、相乗的又は拮抗的であり得る。
【0092】
すべての観察結果を記録し、集計した後、分画阻害濃度(FIC)を計算した。
【0093】
阻害性抗菌剤の組み合わせ効果は、部分濃度(FC)及び分画阻害濃度(FIC)の概念を使用して広く研究されている。このパラメータは、以下のように定義される。
【0094】
ΣFIC=FIC(成分1)+FIC(成分2)
さらに、ΣFICの値から導き出すことができる推論を以下の表に要約する。相乗作用を相加性又は拮抗作用と区別する正確な限界ΣFIC値を定義するという一貫したアプローチは、学術文献又は特許文献にはない。本研究では、本発明者らは、相乗的挙動の証拠を示すものとして、ΣFIC<0.9の任意の二成分混合物を定義する自由なアプローチを採用した。
【0095】
【表1】
【0096】
(10倍希釈)後の各成分の最終濃度(ppm)は、以下の通りであった。これらの濃度のそれぞれを、フェブリフギンと組み合わせた(いずれかの)Octopirox(登録商標)のFIC値を決定するために試みた。
【0097】
結果:
M.furfurに対するフェブリフギンとのOctopirox(登録商標)の相乗効果があることが観察された(表1)。
【0098】
【表2】
【0099】
表1に集計された観察結果は、フェブリフギンがOctopirox(登録商標)(本発明による抗菌活性物質)と相乗的に相互作用することを明確に示している。相乗的相互作用は、ΣFICが0.9未満であるという事実から明らかであった。
【0100】
Octopirox(登録商標)と陰性対照としての他の公知の抗菌活性物質ZPTOとの組み合わせ
上記で使用したものと同様のM.furfurに対するインビトロΣFICアッセイを使用して、Octopirox(登録商標)と亜鉛ピリチオンのような他の周知の抗菌活性物質との間の相互作用が、相乗的な抗菌活性をもたらすかどうかを決定する実験を行った。実験は、以下のような成分の濃度範囲にわたって実施した:
Octopirox(登録商標)-50、25、12.5、6、3及び0ppm。
【0101】
ZnPT:50、25、12.5、6.25、3.13、1.56、0.78、0.39、0.2、0.1、0.05及び0ppm。
【0102】
ΣFICアッセイを実施し、データは、Octopirox(登録商標)が、ZPTOと相乗的に相互作用して相乗的な抗菌活性をもたらすことができないことを示している。したがって、ピロクトンオラミンと任意の既知の抗菌活性物質との組み合わせが常に相乗効果をもたらすと結論付けることはできない。驚くべきことに、本発明において特許請求されるフェブリフギンと抗菌活性物質との組み合わせは、相乗的な挙動を示す。
【0103】
[実施例2]
本発明による例示的な組成物の抗菌有効性を、M.furfurに対して決定した。
【0104】
微生物の調製:
M.furfur(CBS1878)をMD寒天プレート(溶液A)上に維持し、20mlの増殖培地ピチロスポルムブロス(PB、溶液B)中で培養した。
【0105】
次いで、それらを振盪しながら32℃で48時間インキュベートする。次いで、1mlの第1のブロス培養物を9mlの新鮮なPBに移し、振盪しながら32℃で48時間インキュベートする。
【0106】
最終培養物は、2~6×10細胞/mlを含有するはずである。これは、PBを使用して5×10細胞/mlに希釈することによって達成される。
【0107】
インビトロ感受性試験:
カプリルヒドロキサム酸(0.5%)をDMSO中で調製し、増殖培地で2倍段階希釈して5000~78ppmの範囲で調製した。20μlの段階希釈液を96ウェルプレート(corning-3788)の各カラムに添加した。
【0108】
試験フェブリフギン化合物(ストック:DMSO中10mg/ml)を増殖培地で2倍段階希釈して10000~10ppmの範囲で調製した。20ulの段階希釈液を96-作業プレート(corning-3788)の各行に添加して、カプリルヒドロキサム酸との二成分組合せを作製する。
【0109】
試験プレート中の最終細胞密度は約5×10^4細胞/mlであり、96ウェルプレートの各ウェル中の活性物質の最終濃度を以下に示す:
フェブリフギン:1000、500、250、125、62.5、31.25、15.63、7.8、3.9、2.0、1.0、0ppm。
【0110】
カプリルヒドロキサム酸:500、250、125、62.5、31.25、15.63、7.8、0ppm
M.furfurについて、2日間のインキュベーション後、OD600(終了)を読み取られるであろう。次いで、アラマーブルー(10%)を添加し、8時間インキュベートした。青色から赤色への色の変化を記録し、蛍光(530EXnm/590EMnm)を読み取った。
【0111】
M.furfurに対するカプリルヒドロキサム酸とフェブリフギンの相乗効果があることが観察された(表3)。
【0112】
【表3】
【0113】
表2にまとめた観察結果は、フェブリフギンがカプリルヒドロキサム酸(本発明による抗菌活性物質)と相乗的に相互作用することを示している。
【0114】
上記で開示されたすべての実験をインビトロ条件下で実施して、特定の抗菌活性物質であるピロクトンオラミンとフェブリフギンとの組み合わせが、関連する微生物に対するそれらの個々の活性に対して相乗的、相加的又は拮抗的であるかどうかを確認した。実験に関する限り、成分の濃度は、関連する試験によって許容される許容限界内に収まるように選択され、技術的効果を記録することが可能であった。したがって、試験を実施した濃度は、そのような成分が一般に化粧品組成物に使用される範囲(通常は重量%)内にないように思われるかもしれない。
【0115】
本発明の組成物は、油相及び水相中の所望の活性物質の濃度に影響を及ぼし得る他の通常の成分を含むエマルジョン又はゲルとして製剤化され得る。このような組成物はまた、分配係数、拡散速度、対流輸送速度及びレオロジー特性のような物理的及び流体力学的特性の異なるセットを有し得る。したがって、組成物として製剤化されるときに使用される濃度は、実験が行われた細胞レベルでの濃度とは異なってよく、通常、使用中の濃度は数桁高いと予想される。
【国際調査報告】