(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】ナノポアを通って移動するポリヌクレオチドを特徴付ける方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20230706BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577510
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 GB2021051556
(87)【国際公開番号】W WO2021255476
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ボーエン,レベッカ ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クライブ ガビン
(72)【発明者】
【氏名】ブルース,マーク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガラルド,ダニエル ライアン
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,ジェームズ エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン,アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】レモンド,エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ユード,クリストファー ピーター
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR48
4B063QR81
4B063QX04
(57)【要約】
本明細書では、標的ポリペプチドがモータータンパク質を使用してナノポアに対して移動するときに、標的ポリペプチドを特徴付ける方法が提供される。ポリヌクレオチドアダプター及びかかるアダプターを含むキットも提供される。本方法、キット、及びアダプターは、ポリヌクレオチドの特徴付け、例えば配列決定に用途を見出される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法であって、
(i)第1の開口部及び第2の開口部を有する膜貫通ナノポアの前記第1の開口部を、前記標的ポリヌクレオチドと接触させることであって、前記標的ポリヌクレオチドが、その上に失速したモータータンパク質を有し、前記モータータンパク質が、失速部分で失速している、接触させることと、
(ii)前記失速部分を前記ナノポアと接触させることであって、それによって前記モータータンパク質を脱失速させる、接触させることと、
(iii)前記モータータンパク質が、前記ナノポアの前記第2の開口部から前記ナノポアの前記第1の開口部への方向の、前記ナノポアを通る前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御するときに、前記標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することであって、それによって前記標的ポリヌクレオチドを特徴付ける、取得することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ナノポアが、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、前記ナノポアの前記第1の開口部が、前記膜の前記シス側にあり、前記ナノポアの前記第2の開口部が、前記トランス側にあり、前記モータータンパク質が、前記膜の前記トランス側から前記シス側への、前記ナノポアを通る前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノポアが、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、前記ナノポアの前記第1の開口部が、前記膜の前記トランス側にあり、前記ナノポアの前記第2の開口部が、前記シス側にあり、前記モータータンパク質が、前記膜の前記シス側から前記トランス側への、前記ナノポアを通る前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノポアにわたって力を適用することを含み、前記モータータンパク質が、適用された前記力とは反対の方向の、前記ナノポアを通る前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御し、
前記力が、好ましくは、前記ナノポアにわたって適用される電位を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記モータータンパク質が、ヘリカーゼである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記モータータンパク質が、DNA依存性ATPアーゼ(Dda)ヘリカーゼである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アダプターが、前記標的ポリヌクレオチドの一端又は両端に付着している、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記モータータンパク質が、前記アダプター上で失速している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノポアが、前記標的ポリヌクレオチドの第1の末端でリーダー配列を捕捉し、前記モータータンパク質が、前記標的ポリヌクレオチドの第2の末端で、又は前記標的ポリヌクレオチドの前記第2の末端に付着したアダプター上で失速している、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
-前記標的ポリヌクレオチドが、一本鎖であり、
-前記標的ポリヌクレオチドが、リーダー配列を含み、前記リーダー配列が、前記標的ポリヌクレオチドの第1の末端に位置するか、又は前記標的ポリヌクレオチドの前記第1の末端に付着したアダプターに含まれ、かつ、
-前記モータータンパク質が、前記標的ポリヌクレオチドの前記第2の末端で失速しているか、又は前記標的ポリヌクレオチドの前記第2の末端のアダプター上で失速している、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記標的ポリヌクレオチドが、二本鎖である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
-前記標的ポリヌクレオチドが、二本鎖であり、第1の鎖及び第2の鎖を含み、
-前記標的ポリヌクレオチドが、リーダー配列を含み、前記リーダー配列が、前記ポリヌクレオチドの第1の末端に位置し、前記第1の鎖に含まれるか、又は前記第1の鎖に付着したアダプターに含まれ、かつ、
-前記モータータンパク質が、前記標的ポリヌクレオチドの第2の末端で失速している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記モータータンパク質が、前記標的ポリヌクレオチドの前記第1の鎖の第2の末端で失速しているか、又は前記標的ポリヌクレオチドの前記第1の鎖の第2の末端のアダプター上で失速している、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の鎖及び前記第2の鎖が、前記第1の鎖の前記第2の末端でヘアピンアダプターによって一緒に付着し、前記モータータンパク質が、前記ヘアピンアダプターで失速している、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の鎖及び前記第2の鎖が、(i)前記第1の鎖の前記第2の末端及び(ii)前記第2の鎖の第1の末端に付着したヘアピンアダプターによって一緒に付着し、前記モータータンパク質が、前記二本鎖ポリヌクレオチドの前記第2の鎖の第2の末端で失速しているか、又は前記第2の鎖の前記第2の末端のアダプター上で失速している、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記標的ポリヌクレオチドが、タグ配列に相補的である部分を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的ポリヌクレオチドが、それにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを有する部分を含み、前記オリゴヌクレオチドが、(a)前記標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするためのハイブリダイズ部分と、(b)(i)タグ配列に相補的な部分又は(ii)タグに結合することができる親和性分子と、を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記標的ポリヌクレオチドが、二本鎖であり、前記タグ配列に相補的である部分が、前記ポリヌクレオチドの前記第1の鎖の部分であり、かつ/又は前記それにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを有する部分が、前記ポリヌクレオチドの前記第1の鎖の部分である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記モータータンパク質が、以下から独立して選択される1つ以上の失速単位:
-ポリヌクレオチド二次構造、好ましくはヘアピン又はG-四重鎖(TBA)、
-好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)及び脱塩基ヌクレオチドから選択される核酸類似体、
-ニトロインドール、イノシン、アクリジン、2-アミノプリン、2-6-ジアミノプリン、5-ブロモ-デオキシウリジン、反転チミジン(反転dTs)、反転ジデオキシ-チミジン(ddTs)、ジデオキシ-シチジン(ddCs)、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、2’-O-メチルRNA塩基、イソデオキシシチジン(Iso-dCs)、イソデオキシグアノシン(Iso-dGs)、C3(OC
3H
6OPO
3)基、光切断可能(PC)[OC
3H
6-C(O)NHCH
2-C
6H
3NO
2-CH(CH
3)OPO
3]基、ヘキサンジオール基、スペーサー9(iSp9)[(OCH
2CH
2)
3OPO
3]基、スペーサー18(iSp18)[(OCH
2CH
2)
6OPO
3]基、及びチオール連結から選択されるスペーサー単位、並びに
-フルオロフォア、トラプタビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンなどのアビジン、及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン及びジベンジルシクロオクチン基を含む失速部位で失速している、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記モータータンパク質を脱失速させることが、前記ポリヌクレオチドに脱失速力を適用することを含み、前記脱失速力が、読み取り力よりも小さい、かつ/又は反対方向であり、前記読み取り力が、前記モータータンパク質が前記標的ポリヌクレオチドの動きを制御し、前記ポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を決定するための測定が行われている間に適用される力である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記モータータンパク質を脱失速させることが、前記適用される力を前記脱失速力と前記読み取り力との間で1回以上ステッピングすることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モータータンパク質が、1つ以上の失速単位及び1つ以上の停止部分を含む失速部位で失速し、前記1つ以上の停止部分を前記ナノポアと接触させることが、前記ナノポアを通る前記ポリヌクレオチドの移動を遅延させ、それによって前記モータータンパク質が前記1つ以上の失速単位から脱失速する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記停止部分が、以下から独立して選択される1つ以上の停止部分:
-ポリヌクレオチド二次構造、好ましくはヘアピン又はG-四重鎖(TBA)、
-好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)及び脱塩基ヌクレオチドから選択される核酸類似体、
-フルオロフォア、トラプタビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンなどのアビジン、及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン及びジベンジルシクロオクチン基、並びに
-ポリヌクレオチド結合タンパク質、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標的ポリヌクレオチドは、前記モータータンパク質が前記ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止するためのブロッキング部分を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記標的ポリヌクレオチドが、前記標的ポリヌクレオチドの第1の末端にリーダー配列を含み、前記モータータンパク質が、前記標的ポリヌクレオチドの第2の末端又は前記標的ポリヌクレオチドの前記第2の末端に付着したアダプター上で失速し、前記ブロッキング部分が、前記モータータンパク質と前記ポリヌクレオチドの前記第2の末端との間に位置し、それによって前記モータータンパク質が前記標的ポリヌクレオチドの前記第2の末端で前記標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
二本鎖ポリヌクレオチド分析物に付着するための付着点を含む第1の末端と、第2の末端と、を有する、ポリヌクレオチドアダプターであって、
(i)前記付着点の方向に前記アダプターをプロセシングするための向きでその上に失速したモータータンパク質と、(ii)前記モータータンパク質と前記アダプターの前記第2の末端との間に位置するブロッキング部分と、を含む、ポリヌクレオチドアダプター。
【請求項27】
請求項26に記載の第1のアダプターと、第1の末端に一本鎖リーダー配列を含み、第2の末端に二本鎖ポリヌクレオチド分析物に付着するための付着点を含む第2のアダプターと、を含む、キット。
【請求項28】
前記ポリヌクレオチドアダプター、前記モータータンパク質、及び/又は前記ブロッキング部分が、先行請求項のいずれか一項に定義される通りである、請求項26又は請求項27に記載のポリヌクレオチドアダプター又はキット。
【請求項29】
標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法であって、
(i)検出器を、モータータンパク質が結合した標的ポリヌクレオチドに接触させることであって、前記標的ポリヌクレオチドが、前記モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位で前記モータータンパク質に結合している、接触させることと、
(ii)前記モータータンパク質が前記検出器に対して第1の方向に前記標的ポリヌクレオチドの動きを制御するときに、前記標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、
(iii)前記標的ポリヌクレオチドが前記検出器に対して第2の方向に移動するように、前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位から前記標的ポリヌクレオチドを脱結合することと、
(iv)前記標的ポリヌクレオチドを前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位に再結合させ、前記モータータンパク質が前記検出器に対して前記第1の方向に前記標的ポリヌクレオチドの動きを制御するとき、前記標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得し、
それによって前記標的ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む、方法。
【請求項30】
ステップ(iii)及び(iv)を複数回繰り返すことを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ステップ(ii)において、前記モータータンパク質が、前記検出器に対する前記第1の方向への前記標的ポリヌクレオチドの第1の部分の動きを制御し、ステップ(iv)において、前記モータータンパク質が、前記標的ポリヌクレオチドの第2の部分の、前記検出器に対する前記第1の方向への移動を制御し、前記第1の部分が、少なくとも部分的に前記第2の部分と重なる、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の部分が、前記第2の部分と同じである、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(iii)において、前記標的ポリヌクレオチドが前記検出器に対して移動する距離が、少なくとも100ヌクレオチド長である、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記検出器が、第1の開口部及び第2の開口部を有する構造に含まれるか、又は第1の開口部及び第2の開口部を有する膜貫通ナノポアを含み、ステップ(i)が、前記第1の開口部を前記標的ポリヌクレオチドで収縮させることを含む、請求項29~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
(i)前記モータータンパク質が、前記第2の開口部から前記第1の開口部への方向への前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御し、(ii)前記標的ポリヌクレオチドが前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位から脱結合するとき、前記標的ポリヌクレオチドが、前記第1の開口部から前記第2の開口部の方向に移動する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記検出器に力を適用することを含み、前記モータータンパク質が、前記適用された力と反対の方向に、前記検出器に対する前記標的ポリヌクレオチドの動きを制御する、請求項29~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記検出器が、シス側及びトランス側を有する膜にまたがる膜貫通ナノポアを含み、
(i)前記ナノポアの前記第1の開口部が、前記膜のシス側にあり、前記ナノポアの前記第2の開口部が、トランス側にあり、前記モータータンパク質が、前記膜の前記トランス側から前記シス側への前記ナノポアを通る前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御し、前記標的ポリヌクレオチドが前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位から脱結合するとき、前記標的ポリヌクレオチドが、前記膜の前記シス側から前記トランス側へ前記ナノポアを通って移動し、
(ii)前記ナノポアの前記第1の開口部が、前記膜の前記トランス側にあり、前記ナノポアの前記第2の開口部が、前記シス側にあり、前記モータータンパク質が、前記膜の前記シス側から前記トランス側への前記ナノポアを通る前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御し、前記標的ポリヌクレオチドが前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位から脱結合するとき、前記標的ポリヌクレオチドが、前記膜の前記トランス側から前記シス側へ前記ナノポアを通って移動する、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記標的ポリヌクレオチドが、リーダーの近傍で前記標的ポリヌクレオチドからの前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位の脱結合を促進するように構成された前記リーダーに付着するか、又は前記リーダーを含む、請求項29~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記標的ポリヌクレオチドは、前記モータータンパク質が前記リーダーと接触したときに、前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位から脱結合する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記モータータンパク質が、前記標的ポリヌクレオチドの前記ヌクレオチドに対するよりも、前記リーダーに対して低い親和性を有する、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記リーダーが、前記標的ポリヌクレオチドとは異なるタイプのヌクレオチドを含む、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
(i)前記標的ポリヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチド(DNA)を含み、前記リーダーが、1つ以上の、核酸塩基及び糖部分(スペーサー部分)の両方を欠くヌクレオチド、リボヌクレオチド(RNA)、ペプチドヌクレオチド(PNA)、グリセロールヌクレオチド(GNA)、トレオースヌクレオチド(TNA)、ロックドヌクレオチド(LNA)、架橋ヌクレオチド(BNA)、脱塩基ヌクレオチド若しくは修飾リン酸結合を有するヌクレオチド、の1つ以上を含むか、又は、(ii)前記標的ポリヌクレオチドが、リボヌクレオチド(RNA)を含み、前記リーダーが、核酸塩基及び糖部分(スペーサー部分)の両方を欠くヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、ペプチドヌクレオチド(PNA)、グリセロールヌクレオチド(GNA)、トレオースヌクレオチドを含む(TNA)、ロックされたヌクレオチド(LNA)、架橋ヌクレオチド(BNA)、脱塩基ヌクレオチド若しくは修飾されたリン酸結合を有するヌクレオチドを含む、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記標的ポリヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチド(DNA)を含み、前記リーダーが、1つ以上のスペーサー部分及び/又は1つ以上のリボヌクレオチドを含む、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記標的ポリヌクレオチドが、前記モータータンパク質から脱会合しない、請求項29~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記モータータンパク質が修飾されて、前記標的ポリヌクレオチドが前記標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止する、請求項29~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記モータータンパク質が修飾されて、前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位からの前記標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進し、かつ/又は前記標的ポリヌクレオチドの前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位への再結合を遅延させる、請求項29~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記モータータンパク質が、(i)前記標的ポリヌクレオチドの周囲の前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位をトポロジー的に閉鎖するための、及び(ii)前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位からの前記標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進し、かつ/又は前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位への前記標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させるための、閉鎖部分で修飾される、請求項29~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記モータータンパク質が修飾されて、前記モータータンパク質への前記閉鎖部分の結合が容易になる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記モータータンパク質が、前記モータータンパク質中の少なくとも1つのアミノ酸をシステイン又は非天然アミノ酸に置換することによって修飾される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記閉鎖部分が、二官能性架橋剤を含む、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記閉鎖部分が、前記モータータンパク質の2つのアミノ酸残基を架橋し、前記閉鎖部分によって架橋される少なくとも1つのアミノ酸が、システイン又は非天然アミノ酸である、請求項47~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記閉鎖部分が、約1Å~約100Åの長さを有する、請求項47~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記閉鎖部分が、結合、好ましくはジスルフィド結合を含む、請求項47~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記閉鎖部分が、式[A-B-C]の構造を含み、式中、A及びCが、前記モータータンパク質中のアミノ酸残基と反応するための各々独立した反応性官能基であり、Bが、連結部分である、請求項47~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
A及びCが、各々独立してシステイン反応性官能基である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
連結部分Bが、直鎖状若しくは分岐状の、非置換若しくは置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、カルボシクリレン又はヘテロシクリレン部分を含み、前記部分が、1つ以上の、O、N(R)、S、C(O)、C(O)NR、C(O)O、非置換若しくは置換アリーレン、アリーレン-アルキレン、ヘテロアリーレン、ヘテロアリーレン-アルキレン、カルボシクリレン、カルボシクリレン-アルキレン、ヘテロシクリレン及びヘテロシクリレン-アルキレンから選択される原子又は基で、任意選択的に中断されるか又は終了し、式中、Rが、H、非置換若しくは置換アルキル、及び非置換若しくは置換アリールから選択される、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
連結部分Bが、アルキレン、オキシアルキレン若しくはポリオキシアルキレン基を含み、かつ/又はA及びCが、各々マレイミド基である、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記閉鎖部分が、約5Å~約50Åの長さを有する、請求項47~53又は54~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位からの前記標的ポリヌクレオチドの前記脱結合を促進するための条件、及び/又は前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位への前記標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させるための条件を提供することを含む、請求項29~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記条件を提供することが、前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位から前記標的ポリヌクレオチドが解離する速度を増加させるように温度を上昇させることを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記条件を提供することが、前記モータータンパク質の前記ポリヌクレオチド結合部位への前記標的ポリヌクレオチドの再結合の速度を低下させるように前記温度を上昇させることを含む、請求項59又は60に記載の方法。
【請求項62】
前記モータータンパク質が、ヘリカーゼである、請求項29~61のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膜貫通ナノポアなどの検出器に対して移動するときに標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法を提供する。本開示はまた、かかる方法に使用するための新規なポリヌクレオチドアダプター及びキットも提供する。本開示はまた、ポリヌクレオチドを再読み取りする方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
ナノポアセンシングは、分析物分子とイオン伝導チャネルとの間の個々の結合又は相互作用事象の観察に依存する分析物の検出及び特徴付けへのアプローチである。ナノポアセンサーは、ナノメートル寸法の単一ポアを絶縁膜内に置き、分析物分子の存在下でポアを通る電圧駆動イオン電流を測定することによって作製することができる。ナノポアの内部又は近くに分析物が存在する場合、ポアを通るイオン流が変化し、チャネルにわたって測定されるイオン電流又は電流の変化がもたらされるであろう。分析物の同一性は、その固有の電流シグネチャ、とりわけ電流ブロックの期間及び程度、並びにポアとの相互作用時間中の電流レベルの変動を通して明らかになる。
【0003】
ポリヌクレオチドは、この様式で感知するための重要な分析物である。ポリヌクレオチド分析物のナノポアセンシングは、アイデンティティを明らかにし、感知された分析物の単一分子計数を行うことができるが、それらのヌクレオチド配列などのそれらの組成、並びに塩基修飾、酸化、還元、脱炭酸、脱アミノ化などの特徴の存在に関する情報を提供することもできる。ナノポアセンシングは、迅速かつ安価なポリヌクレオチド配列決定を可能にする可能性があり、何十~何万塩基長ものポリヌクレオチドの単一分子配列リードを提供する。
【0004】
ナノポアセンシングを使用したポリマー特徴付けの重要な構成要素のうちの2つは、(1)ポアを通るポリマーの移動の制御、及び(2)ポリマーがポアを通って移動したときの部材ビルディングブロックの識別である。ポリヌクレオチドなどの分析物のナノポアセンシング中に、ポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することが重要である。移動を制御しなければ、ポリヌクレオチドの正確な特徴付けが阻止される又は妨げられる可能性がある。例えば、ポアに対するポリヌクレオチドの移動が制御されていない場合、ホモポリマーポリヌクレオチド中の各ヌクレオチドを正確に区別することが厄介になる。
【0005】
ポリヌクレオチドの動きを制御するモータータンパク質を使用することにより、ナノポアなどの検出器に対するポリヌクレオチドの動きを制御することが知られている。好適なモータータンパク質には、ヘリカーゼ、エキソヌクレアーゼ、トポイソメラーゼなどのポリヌクレオチドハンドリング酵素が含まれる。モータータンパク質は、ポリヌクレオチドを制御された様式で処理する。したがって、モータータンパク質を使用して、ナノポアなどの検出器に対するポリヌクレオチドなどのポリマーの移動を制御することができる。
【0006】
検出器がナノポアである場合、開示される方法は、典型的には、モータータンパク質を使用してポリヌクレオチドをナノポアに供給することを含む。この動作は、本明細書により詳細に記載される。ポリヌクレオチドをナノポアに供給する方法が広く開発されており、ポリヌクレオチドの特徴付けに非常に有用であることが証明されている。
【0007】
しかしながら、ポリペプチドを特徴付けるための更なる方法に対するニーズが依然として存在する。1つの問題は、ナノポアなどの検出器にポリヌクレオチドを供給することを含む方法から得られるデータとは異なるデータを得ることが望ましい場合があることである。例えば、ポリヌクレオチドを検出器に供給することを含む方法におけるポリヌクレオチドの特徴付けから生じるデータのエラープロファイルは、状況によっては、ポリヌクレオチドの正確な特徴付けには最適ではない可能性がある。別の問題は、モータータンパク質を使用してポリヌクレオチドをナノポアなどの検出器に供給する場合、モータータンパク質がポリヌクレオチド鎖上を制御されない様式で前方にスキップする可能性があることである。この現象は、スリッページ(slippage)としても既知である。スリッページは、例えば、ポリヌクレオチド内の1つ以上のヌクレオチドが正確に特徴付けられない可能性があるため、ポリヌクレオチドを特徴付ける際に問題となる可能性がある。これは、ポリヌクレオチドの特徴付けがその配列を決定することである場合に、特に問題となる。スリッページを減少させるためのストラテジーとして、従来は、モータータンパク質を改変して、ポリヌクレオチド鎖上でスリップする傾向を最小限にすることに焦点が当てられてきた。しかしながら、スリッページを減少させることができるナノポアなどの検出器に対してポリヌクレオチドを移動させる別の方法もまた有用であろう。
【0008】
ポリヌクレオチドを特徴付ける際に得られるデータを改善する方式に対するニーズも存在する。1つの問題は、場合によっては、ポリヌクレオチドを特徴付けるときに得られる特徴付けデータの精度を改善することが望ましいということである。いくつかの既知の方法では、ポリヌクレオチドのサンプルから複数のポリヌクレオチドが特徴付けられ、得られたデータが集計されて、それにより全体的な精度が向上する。ただし、これにより発生し得る問題がある。例えば、サンプル中の異質性は、複数のポリヌクレオチド鎖の特徴付けから得られたデータを集約する場合、鎖間の違いに関する有用な情報が失われる可能性があることを意味する可能性がある。更に、第1の鎖が処理された後、特徴付けのために新しい鎖を捕捉する必要があるため、非効率が生じる可能性がある。したがって、ポリヌクレオチドを特徴付ける代替的及び/又は改善された方法が必要とされている。
【0009】
これらの、及び他の理由により、ナノポアなどの検出器に対してポリヌクレオチドを移動させる新規及び/又は改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、モータータンパク質を使用することにより、検出器に対して移動する標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法に関する。より具体的には、本開示は、モータータンパク質がポリヌクレオチドを検出器の外に移動させる方法に関する。したがって、ポリヌクレオチドの移動方向は、ポリヌクレオチドがナノポア内に移動する既知の方法とは反対である。これは、本明細書により詳細に記載される。
【0011】
開示される方法では、モータータンパク質は、ポリヌクレオチド上の失速(stalling)部分で最初に失速して(stalled)おり、また本明細書で提供される方法は、モータータンパク質が、検出器(例えば、ナノポア)から出るポリヌクレオチドの移動を制御することができるように、モータータンパク質を脱失速させることを含む。モータータンパク質を失速及び脱失速する方法は、本明細書により詳細に記載されている。
【0012】
本開示は、例示的な検出器としてナノポアを提供するが、本明細書で提供される方法は、(i)ゼロモード導波路、(ii)電界効果トランジスタ、任意選択的にノワイヤ電界効果トランジスタ、(iii)AFMチップ、(iv)ナノチューブ、任意選択的にカーボンナノチューブ、及び(v)ナノポア、などの検出器に適している。開示される方法は、ポリヌクレオチドが検出器を通って、又は検出器チップ内のウェルなどの検出器を含む構造体を通って移動する方法に特に適している。
【0013】
したがって、本明細書では、標的ポリペプチドを特徴付ける方法が提供され、本方法は、
(i)(i)第1の開口部及び第2の開口部を有する検出器、又は(ii)検出器を含む構造であって、第1の開口及び第2の開口を有する構造を、標的ポリヌクレオチドと接触させることであって、標的ポリヌクレオチドが、その上に失速したモータータンパク質を有し、モータータンパク質が、失速部分で失速している、接触させることと、
(ii)失速部分をナノポアと接触させ、それによってモータータンパク質を脱失速させる、接触させることと、
(iii)モータータンパク質が検出器又は構造を通って第2の開口部から第1の開口部への方向に移動するのを制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を測定することであって、それによって標的ポリヌクレオチドを特徴付ける、測定することと、を含む。
【0014】
また、本明細書では、標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法が提供され、本方法は、
(i)検出器を、モータータンパク質が結合した標的ポリヌクレオチドに接触させることであって、標的ポリヌクレオチドが、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位でモータータンパク質に結合している、接触させることと、
(ii)モータータンパク質が検出器に対して第1の方向の標的ポリヌクレオチドの動きを制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、
(iii)標的ポリヌクレオチドが検出器に対して第2の方向に移動するように、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドを脱結合することと、
(iv)標的ポリヌクレオチドをモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位に再結合させ、モータータンパク質が検出器に対して第1の方向に標的ポリヌクレオチドの動きを制御するとき、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得し、
それによって標的ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。
【0015】
また、本明細書では、標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法が提供され、本方法は、
(i)第1の開口部及び第2の開口部を有する膜貫通ナノポアの第1の開口部を、標的ポリヌクレオチドと接触させることであって、標的ポリヌクレオチドが、その上に失速したモータータンパク質を有し、モータータンパク質が、失速部分で失速している、接触させることと、
(ii)失速部分をナノポアと接触させ、それによってモータータンパク質を脱失速させる、接触させることと、
(iii)モータータンパク質が、ナノポアの第2の開口部からナノポアの第1の開口部への方向の、ナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することであって、それによって標的ポリヌクレオチドを特徴付ける、取得することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部が、膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部が、トランス側にあり、モータータンパク質が、膜のトランス側からシス側への、ナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。いくつかの実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部が、膜のトランス側にあり、ナノポアの第2の開口部が、シス側にあり、モータータンパク質が、膜のシス側からトランス側への、ナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、ナノポアにわたって力を適用することを含み、モータータンパク質は、適用された力と反対の方向にナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの動きを制御し、該力は、好ましくは、ナノポアにわたって適用される電位を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、ヘリカーゼである。いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、DNA依存性ATPase(Dda)ヘリカーゼである。
【0019】
いくつかの実施形態では、アダプターは、標的ポリヌクレオチドの一方又は両方の末端に付着している。いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、アダプター上で失速している。
【0020】
いくつかの実施形態では、ナノポアは、標的ポリヌクレオチドの第1の末端でリーダー配列を捕捉し、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の末端で、又は標的ポリヌクレオチドの第2の末端に付着したアダプター上で失速している。
【0021】
いくつかの実施形態では、
-標的ポリヌクレオチドは、一本鎖であり、
-標的ポリヌクレオチドは、リーダー配列を含み、リーダー配列は、標的ポリヌクレオチドの第1の末端に位置するか、又は標的ポリヌクレオチドの第1の末端に付着したアダプターに含まれ、かつ、
-モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の末端で失速しているか、又は標的ポリヌクレオチドの第2の末端でアダプター上で失速している。
【0022】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、二本鎖である。
【0023】
いくつかの実施形態では、
-標的ポリヌクレオチドは、二本鎖であり、第1の鎖及び第2の鎖を含み、
-標的ポリヌクレオチドは、リーダー配列を含み、リーダー配列は、ポリヌクレオチドの第1の末端に位置し、第1の鎖に含まれるか、又は第1の鎖に付着したアダプターに含まれ、かつ、
-モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の末端で失速する。
【0024】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端で失速するか、又は標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端のアダプター上で失速する。いくつかの実施形態では、第1の鎖及び第2の鎖は、第1の鎖の第2の末端でヘアピンアダプターによって一緒に付着し、モータータンパク質は、ヘアピンアダプターで失速する。いくつかの実施形態では、第1の鎖及び第2の鎖は、(i)第1の鎖の第2の末端及び(ii)第2の鎖の第1の末端に結合されたヘアピンアダプターによって一緒に付着し、モータータンパク質は、二本鎖ポリヌクレオチドの第2の鎖の第2の末端で失速するか、又はアダプター上で第2の鎖の第2の末端で失速する。
【0025】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、タグ配列に相補的な部分を含む。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、それにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを有する部分を含み、オリゴヌクレオチドは、(a)標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするためのハイブリダイズ部分と、(b)(i)タグ配列に相補的な部分、又は(ii)タグに結合することができる親和性分子と、を含む。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、二本鎖であり、タグ配列に相補的な部分は、ポリヌクレオチドの第1の鎖の部分であり、かつ/又は、それにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを有する部分は、ポリヌクレオチドの第1の鎖の部分である。
【0026】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、以下から独立して選択される1つ以上の失速単位を含む失速部位で失速する:
-ポリヌクレオチド二次構造、好ましくはヘアピン又はG-四重鎖(TBA)、
-好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)及び脱塩基ヌクレオチドから選択される核酸類似体、
-ニトロインドール、イノシン、アクリジン、2-アミノプリン、2-6-ジアミノプリン、5-ブロモ-デオキシウリジン、反転チミジン(反転dTs)、反転ジデオキシ-チミジン(ddTs)、ジデオキシ-シチジン(ddCs)、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、2’-O-メチルRNA塩基、イソデオキシシチジン(Iso-dCs)、イソデオキシグアノシン(Iso-dGs)、C3(OC3H6OPO3)基、光切断可能(PC)[OC3H6-C(O)NHCH2-C6H3NO2-CH(CH3)OPO3]基、ヘキサンジオール基、スペーサー9(iSp9)[(OCH2CH2)3OPO3]基、スペーサー18(iSp18)[(OCH2CH2)6OPO3]基、及びチオール連結、から選択されるスペーサー単位、並びに
-フルオロフォア、トラプタビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンなどのアビジン、及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン及びジベンジルシクロオクチン基。
【0027】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質を脱失速させることは、ポリヌクレオチドに脱失速力を適用することを含み、脱失速力は、読み取り力よりも小さい、かつ/又は反対方向であり、読み取り力は、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドの動きを制御し、ポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を決定するための測定が行われている間に適用される力である。いくつかの実施形態では、モータータンパク質を脱失速させることは、適用される力を脱失速力と読み取り力との間で1回以上ステッピングすることを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、1つ以上の失速単位及び1つ以上の停止(pausing)部分を含む失速部位で失速し、1つ以上の停止部分をナノポアと接触させることが、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を遅延させ、それによってモータータンパク質が1つ以上の失速単位から脱失速する。いくつかの実施形態では、停止部分は、以下から独立して選択される1つ以上の停止単位を含む:
-ポリヌクレオチド二次構造、好ましくはヘアピン又はG-四重鎖(TBA)、
-好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)及び脱塩基ヌクレオチドから選択される核酸類似体、
-フルオロフォア、トラプタビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンなどのアビジン、及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン及びジベンジルシクロオクチン基、並びに
-ポリヌクレオチド結合タンパク質。
【0029】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、モータータンパク質がポリヌクレオチドから脱会合するのを防止するブロッキング部分を含む。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの第1の末端にリーダー配列を含み、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の末端で、又は標的ポリヌクレオチドの第2の末端に付着したアダプター上で失速し、ブロッキング部分は、モータータンパク質とポリヌクレオチドの第2の末端との間に位置し、それによってモータータンパク質が標的ポリヌクレオチドの第2の末端で標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止する。
【0030】
二本鎖ポリヌクレオチド分析物に付着するための付着点を含む第1の末端及び第2の末端を有するポリヌクレオチドアダプターも提供され、該ポリヌクレオチドアダプターは、(i)付着点の方向にアダプターをプロセシングするための向きでその上に失速したモータータンパク質と、(ii)モータータンパク質とアダプターの第2の末端との間に位置するブロッキング部分と、を含む。
【0031】
また、本明細書に記載の第1のアダプターと、第1の末端に一本鎖リーダー配列を含み、第2の末端に二本鎖ポリヌクレオチド分析物に付着するための付着点を含む第2のアダプターと、を含むキットも提供される。
【0032】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドアダプター又はキットのいくつかの実施形態では、該ポリヌクレオチドアダプター、該モータータンパク質、及び/又は該ブロッキング部分は、本明細書で定義される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】(A)本明細書で提供される方法による、モータータンパク質の制御下でのナノポアからのポリヌクレオチド(PN)の移動の方向と、(B)対照的な方法でのポアへのポリヌクレオチドの移動の方向と、の区別を示す概略図。白抜きの矢印は、モータータンパク質(MP)及びPNの転位の方向を示す。どちらの場合も、MPは、例えば5’-3’ヘリカーゼである。
【
図2】標的ポリヌクレオチドが一本鎖である、本明細書で提供される方法の一実施形態の概略図であり、標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの第1の末端に位置するリーダー配列を含み、モータータンパク質は、失速部分(x)によって標的ポリヌクレオチドの第2の末端で失速している。リーダー配列はナノポアによって捕捉され、一本鎖ポリヌクレオチドは失速モータータンパク質に到達するまでナノポアを通って移動する。一旦脱失速すると、モータータンパク質はポアからのポリヌクレオチドの移動を制御する。
【
図3】標的ポリヌクレオチドが二本鎖である、本明細書で提供される方法の一実施形態の概略図であり、標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第1の末端に位置するリーダー配列(波線)を含み、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端の失速部分(x)で失速している。リーダー配列はナノポアによって捕捉され、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖は、失速したモータータンパク質に到達するまでナノポアを通って移動する。脱失速の後、モータータンパク質(MP)は、標的ポリヌクレオチド(PN)の第1の鎖のポアからの移動を制御する。
【
図4】標的ポリヌクレオチドが二本鎖である、本明細書で提供される方法の一実施形態の概略図であり、標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第1の末端に位置するリーダー配列(波線)を含み、モータータンパク質(MP)は、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端と標的ポリヌクレオチドの第2鎖の第1の末端とを連結するヘアピンアダプターの失速部分(x)で失速している。リーダー配列はナノポアによって捕捉され、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖は、失速したモータータンパク質に到達するまでナノポアを通って移動する。脱失速の後、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチド(PN)の第1の鎖のポアからの移動を制御する。
【
図5】標的ポリヌクレオチドが二本鎖である、本明細書で提供される方法の一実施形態の概略図であり、標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第1の末端に位置するリーダー配列を含み、ヘアピンアダプターは、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端と標的ポリヌクレオチドの第2鎖の第1の末端とを連結する。モータータンパク質(MP)は、標的ポリヌクレオチドの第2の鎖の第2の末端にある失速部分(x)で失速する。リーダー配列(波線)はナノポアによって捕捉され、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖、ヘアピンアダプター、及び標的ポリヌクレオチドの第2鎖は、失速したモータータンパク質に到達するまでナノポアを通過する。脱失速の後、モータータンパク質は、ポアから出る標的ポリヌクレオチド(PN)の第2鎖、ヘアピンアダプター、及び第1の鎖の動きを制御する。
【
図6】5’から3’に移動するDNAヘリカーゼを持つナノポアシーケンスアダプターであり、3’鎖が優先的にナノポアに捕捉される。アダプターは、トップ鎖(A)とボトム鎖(B)として知られる2つのオリゴヌクレオチドを含む。上の鎖は、一価のトラプタビジン(D)と複合体を形成した5’ビオチン部分(C)を含み、DNAモーター(方向5’-3’)は、閉じたポリ(dT)結合部位(E)にロードされ、内部スペーサー18部分(F)によって失速し、3’dT塩基はdA-テールを有する二本鎖(G)へのライゲーションに供される。下の鎖は、5’リン酸部分(H)、失速化学基としてBNA塩基を含む二本鎖領域(I)、リーダーとしての20個の連続した3’末端チミジン塩基(波線、J)、疎水性テザーをハイブリダイズするための部位(K)、を含む。実施例1を参照されたい。
【
図7】
図6の配列決定アダプター(A)をdAテール付き二本鎖DNAポリヌクレオチド(B)の両端にライゲーションして、連続した二本鎖を生成する様子を示す概念図である。
【
図8】ポリヌクレオチド分析物の捕捉、「脱失速」及び配列決定を示す、実施例1の実験概略図である。V
s:配列決定電位、V
u:脱ブロック電位。適用した電位の極性を矢印で示す。適用した力の方向は、矢印の方向と同じである。 (A)配列決定電位を適用する(120mV)。開いたポア、3’リーダーを介したポリヌクレオチド分析物の捕捉(
図7より)。ナノポアによる二本鎖の分離、相補鎖が除去される。 (B)ポリヌクレオチドは、スペーサー部分で失速した酵素に到達する。酵素はスペーサー部分の上を移動することができない。 (C)酵素がナノポアから離れて移動し、スペーサー部分を自由に移動するように、脱ブロック電位を適用する(0mV)。 (D)配列決定電位が適用される(120mV)。酵素がナノポアに到達するまで、ナノポアによってポリヌクレオチドが移動し、その後、ナノポアからのポリヌクレオチドの移動を酵素が制御する。 (E)DNAモーターがリーダーに到達し、アイドル状態になる。 (F)脱ブロック電位が適用され、DNAモーター及び分析物がナノポアから排出される。サイクルを(A)から繰り返す。
【
図9】上:実施例1の代表的な電流対時間のトレース。状態A~Fは、
図8で説明した状態に対応する。下:上のトレースに示される四角で囲まれた領域の拡大図(1秒)であり、ナノポアからのポリヌクレオチドの制御された移動を示す。適用電位は次のとおりである:A及びB:120mV、C:0mV、D、E及びF:120mV、サイクルを繰り返す。
【
図10】実施例2に記載される実験の構成要素であり、最初にポリヌクレオチド分析物の両方の鎖が酵素なしでナノポアを通って転位し、次いで、酵素は「脱失速」し、次いで、酵素はナノポアからのポリヌクレオチド分析物の両鎖の移動を制御する。 A.ヘアピン部分と、ポリヌクレオチド分析物の一端に特異的に結合する3’-TCCTオーバーハングとを含むアダプター。 B.実施例1及び
図6で説明したものと同一の配列決定アダプター。 C.非対称末端を有するポリヌクレオチド分析物であり、1つは3’dAテールを有し、もう1つは3’-AGGAオーバーハングを有する。鋳型鎖と相補鎖を、それぞれ破線と実線で示す。 D.A、B、及びCのライゲーションにより、ライブラリー分子Dが得られる。
【
図11】ポリヌクレオチド分析物の両鎖の捕捉、「脱失速」及び配列決定を示す、実施例2の実験概略図である。V
s:配列決定電位、V
u:脱ブロック電位。適用された電位の極性(ゼロでない場合)を矢印で示す。適用した力の方向は、矢印の方向と同じである。 (A)配列決定電位を適用する(120mV)。開いたポア、3’リーダーを介したポリヌクレオチド分析物の捕捉(
図7より)。ナノポアによる二本鎖の分離、鋳型と相補鎖はトランスコンパートメントに移動する。 (B)ポリヌクレオチドは、スペーサー部分で失速した酵素に到達する。酵素はスペーサー部分の上を移動することができない。 (C)酵素がナノポアから離れ、スペーサー部分を自由に移動するように、脱ブロック電位を適用する(可変、0mV~-120mV)。 (D)配列決定電位が適用される(120mV)。酵素がナノポアに到達するまで、ナノポアによってポリヌクレオチドが移動し、その後、ナノポアからのポリヌクレオチドの移動を酵素が制御する。 (E)DNAモーターが鋳型部分を移動し、ヘアピンに到達する。 (F)DNAモーターが相補部分を移動し、鋳型鎖と相補鎖がシスコンパートメントでリフォールディングする。モーターがリーダーセクションに到達し、ナノポアでアイドリングする。脱ブロック電位が適用され、DNAモーター及び分析物がナノポアから排出される。
【
図12】(a)実施例2のデータの代表的な電流-時間のトレースであり、脱失速電圧が、0~-120mVの間で変化する。放出電位が-60mVを超えて増加した場合、イベントが見られず、これは、トランスで形成されたヘアピンが、この電圧までの鎖の放出に対する抵抗性を与えることを示唆する。移動が制御された部分を、破線で囲まれたボックスとして表示する。(b)実施例2で説明されるイベントの代表的な電流-時間のトレースである。状態A~Gは、
図11で説明したものに対応する。
【
図13】実施例3の代表的な電流-時間のトレースであり、ナノポアへのポリヌクレオチド分析物の捕捉及びナノポアからの制御された移動を示す。DNAモーターは、実施例3に記載されている「活性脱失速」プロセスを使用して「脱失速」された。アスタリスクは、アクティブな失速電位が適用された場所を示し、最初は5秒で5回まで、次に25秒で5回まで、脱失速の試みの間に3秒の休止状態を有する。5秒での最初の試行の後、実施例1及び2のように、酵素は脱失速し、鋳型(Temp.)及び相補物(Comp.)セクションが、続いてリーダー状態が見られた状態で、ナノポアの外へのポリヌクレオチドの移動を制御する。A:実施例1で説明したものと同様の「1D DNAライブラリー」の挙動を示す電流-時間のトレースであり、最初の試行後に脱失速される。B:ヘアピン部分によって結合された実施例2に記載されているものと同様の、4回の試み後に脱失速している結合された鋳型-相補鎖ポリヌクレオチド(「2D DNAライブラリー」)の挙動を示す電流-時間のトレースである。
【
図14】実施例4に記載の実験のヘアピン部分であり、最初にポリヌクレオチド分析物の両方の鎖が酵素なしでナノポアを通って転位し、次いで、酵素は「脱失速」し、次いで、酵素はナノポアからのポリヌクレオチド分析物の両鎖の移動を制御する。ヘアピンの追加の部分は、初期の酵素なし捕捉段階中に追加のシグナルを導入する。これらの部分は、次のように図示する: (A)コントロールとして、ヘアピンに部分はなし。 (B)ヘアピンループにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドiを有するヘアピン (C)星印で示すヘアピンループ内の3つの連続したフルオレセインdT塩基ii (D)(C)によるが、ヘアピンループにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを用いる
【
図15】ヘアピン部分を有する二本鎖ポリヌクレオチド分析物の捕捉及び無酵素転位を示す模式図であり、ヘアピン部分が、任意に大きなフルオロフォア、及び任意にヘアピンループにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを有する。概略図は、2つの追加の検出可能な中間体、A1とA2を示し、これらは、ナノポアのルーメン内のフルオロフォアを使用して、ナノポアの上部のヘアピンループにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドと、ナノポアのルーメン内のフルオロフォアのみ、に対応する。追加の状態D1は、ナノポアのルーメン内のフルオロフォアと、フルオロフォア上を移動する酵素、に対応する。
【
図16(a)】(a)鋳型鎖と相補鎖がヘアピン部分を介して結合しているポリヌクレオチドの無酵素的移動の同定を示すデータである。ポリヌクレオチドは、酵素により制御される移動ステップの前に、適用された電位を介してナノポアを通ってガイドされる。実験の概略図は、実施例2及び
図11で説明したものと同様である。ヘアピンは、
図14Aに示されるものである。(i)DNAのみを含む配列決定アダプター及びヘアピンアダプターに連結されたポリヌクレオチドライブラリー。(ii)(i)に示す分子の代表的な電流-時間トレース。構成要素A~Gの割り当ては、
図11で説明される状態A~Gに基づく。(iii)(ii)に示す四角で囲まれた領域の拡大図であり、開いたポアのレベルAと失速のレベルBの識別を示す。アスタリスクで囲まれた領域は、Bとは異なる形状及びノイズを有し、本実施例に記載される他の代表的な分子との関係によっても異なり、無酵素転位部分から生じると推定される。(b)ヘアピン部分を介して鋳型鎖と相補鎖が結合しているポリヌクレオチドの無酵素的移動の同定を示すデータであり、そこではオリゴヌクレオチドがヘアピンにハイブリダイズしている。ポリヌクレオチドは、酵素により制御される移動ステップの前に、適用された電位を介してナノポアを通ってガイドされる。実験の概略図は、実施例2及び
図11で説明したものと同様である。ヘアピンは、
図14Bに示されるものである。(i)オリゴヌクレオチド(ON)がハイブリダイズしたDNAを含有する配列決定アダプター及びヘアピンアダプターに連結されたポリヌクレオチドライブラリー。(ii)(i)に示す分子の代表的な電流-時間トレース。構成要素A~Gの割り当ては、
図11で説明される状態A~Gに基づく。(iii)(ii)に示す四角で囲まれた領域の拡大図であり、開いたポアのレベルAと失速のレベルBの識別を示す。
図16aに示される実施例と比較すると、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドから追加のレベルA2(
図15に記載)が生じる。したがって、アスタリスクを付けた領域は、無酵素的な転位に対応する。(c)鋳型鎖と相補鎖がヘアピン部分を介して結合しているポリヌクレオチドの無酵素的移動の同定を示すデータであり、ヘアピンには3つのかさ高い基(3つの連続したフルオレセインdT塩基、FAM)が存在する。ポリヌクレオチドは、酵素により制御される移動ステップの前に、適用された電位を介してナノポアを通ってガイドされる。実験の概略図は、実施例2及び
図11で説明したものと同様である。ヘアピンは、
図14Cに示されるものである。(i)フルオレセイン塩基を含む配列決定アダプター及びヘアピンアダプターに連結されたポリヌクレオチドライブラリー。(ii)(i)に示す分子の代表的な電流-時間トレース。構成要素A~Gの割り当ては、
図11で説明される状態A~Gに基づく。追加のレベルD1は、かさばるFAM領域で酵素がゆっくりと移動することによって生じると推定される。(相補領域Eは、排出段階Gのために縮小されるため、本実施例では状態Fは見られない)。(iii)(ii)に示す四角で囲まれた領域の拡大図であり、開いたポアのレベルAと失速のレベルBの識別を示す。
図16aに示す実施例と比較すると、FAM基から、約20pAの追加のダウンティック電流レベルA1(
図15を参照)が発生する。したがって、アスタリスクを付けた領域は、無酵素的な転位に対応する。(d)鋳型鎖と相補鎖がヘアピン部分を介して結合しているポリヌクレオチドの無酵素的移動の同定を示すデータであり、3つのかさ高い基(3つの連続したフルオレセイン-dT塩基、FAM)が、ヘアピンに存在し、オリゴヌクレオチド(ON)がそこにハイブリダイズしている。ポリヌクレオチドは、酵素により制御される移動ステップの前に、適用された電位を介してナノポアを通ってガイドされる。実験の概略図は、実施例2及び
図11で説明したものと同様である。ヘアピンは、
図14Dに示されるものである。(i)フルオレセイン塩基(FAM)を含む配列決定アダプター及びヘアピンアダプターにライゲーションされたポリヌクレオチドライブラリーに、オリゴヌクレオチド(ON)がハイブリダイズ。(ii)(i)に示す分子の代表的な電流-時間トレース。構成要素A~Gの割り当ては、
図11で説明される状態A~Gに基づく。電流レベルのダウンティックを伴う追加のレベルD1は、かさばるFAM領域での酵素のゆっくりとした動きによって生じると推定される。(iii)(ii)に示す四角で囲まれた領域の拡大図であり、開いたポアのレベルAと失速のレベルBの識別を示す。
図16a及び
図16cに示す実施例と比較すると、FAM基から、約20pAの追加のダウンティック電流レベルA1(
図15を参照)が発生する。
図16bとの比較により、ハイブリダイズしたONによる追加のレベルA2も見られる。したがって、アスタリスクを付けた領域は、無酵素的な転位に対応する。(e)E.coli試験ライブラリーの無酵素的転位の期間の測定である。(i)実施例4に記載のランダムE.coli試験ライブラリーからの4つの代表的な例であり、二本鎖ポリヌクレオチドが一端で配列決定アダプターに連結され、他端でヘアピン部分に連結されている。ヘアピン部分にはオリゴヌクレオチドがハイブリダイズしている。したがって、得られたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドがランダムな長さであることを除いて、
図16bのものと似ている。示される4つの実施例は、生データを単純化するイベントフィッティングされた電流-時間のトレースである。レベルA2及び無酵素部分(アスタリスクで示す)を各実施例に示す。60pA(点線)の閾値を使用して、酵素を含まない部分A2を区別した。したがって、アスタリスクを付けた部分の期間は、電流が開いたポアのレベルAとオリゴヌクレオチドレベルA2との間の60pAの閾値を超える時間で測定した。(ii)酵素により制御される鎖の期間(
図16b、iiに示す期間DとEの合計として測定)と無酵素による捕捉期間(本図のパートiに記載のように測定)との関係を、30の実施例について測定し、散布図として示す。R
2値が0.414の線形回帰直線を示すが、正の相関関係が示されている。
【
図17(a)】(a)5’から3’に移動するDNAヘリカーゼを持つナノポアシーケンスアダプターであり、3’鎖が優先的にナノポアに捕捉される。酵素は、BNA領域を含む別のブロッカー鎖を介して失速し、ヘリカーゼがロードされた鎖上のスペーサー部分によって失速する。アダプターは、トップ鎖(A)、ボトム鎖(B)、ブロッカー鎖(C)、及びバックブロッカー(D)として知られるオリゴヌクレオチドを含む。ブロッカー鎖とバックブロッカーは両方とも、二本鎖のトップ鎖形成領域にハイブリダイズする。DNAモーター(方向性5’-3’)は、CとDの間の一本鎖領域の閉じたポリ(dT)結合部位(E)にロードされ、内部スペーサー18部分(F)によって失速する。トップ鎖は、dAテール付き二本鎖にライゲーションするための3’dT塩基を有する。ボトム鎖は、5’リン酸部分(丸で囲んだP)、リーダーとしての20の連続したチミジン塩基(波線、G)、疎水性テザーをハイブリダイズするための部位(H)、を含む。(b)両端で二本鎖ポリヌクレオチド分析物(B)に連結された、
図17aに記載の配列決定アダプター(A)を示す概略図である。(c)ポリヌクレオチド分析物の捕捉、「脱失速」及び配列決定を示す、実施例5の実験概略図である。V
s:配列決定電位、V
u:脱ブロック電位。適用した電位の極性を矢印で示す。適用した力の方向は、矢印の方向と同じである。 (A)配列決定電位を適用する(120mV)。開いたポア、3’リーダーを介したポリヌクレオチド分析物の捕捉(
図7より)。ナノポアによる二本鎖の分離、相補鎖が除去される。 (B)ナノポアは、ブロッカー鎖部分で一時的に失速する。 (C)ポリヌクレオチドは、スペーサー部分で失速した酵素に到達する。酵素はスペーサー部分の上を移動することができない。 (D)酵素がナノポアから離れて移動し、スペーサー部分を自由に移動するように、脱ブロック電位を適用する(0mV)。 (E)配列決定電位が適用される(120mV)。酵素がナノポアに到達するまで、ナノポアによってポリヌクレオチドが移動し、その後、ナノポアからのポリヌクレオチドの移動を酵素が制御する。 (F)DNAモーターがリーダーに到達し、アイドル状態になる。 (G)脱ブロック電位が適用され、DNAモーター及び分析物がナノポアから排出される。サイクルを(A)から繰り返す。(d)i、実施例5の代表的な電流-時間トレースであり、
図17a及び17bで説明されるように、ビオチン-トラプタビジンバックブロッカーが別のバックブロッカーオリゴヌクレオチドに置き換えられたアダプターを使用して、ナノポア内へのポリヌクレオチド分析物の捕捉及びナノポアからの制御された移動を示す。DNAモーターは、実施例5及び先の実施例3に記載された「活性脱失速」プロセスを使用して「脱失速」された。レベルA~G(
図17cで説明)を、前の実施例に関連して割り当てる。四角で囲まれた領域ii(無酵素転位)及びiii(酵素制御転位)を拡大して示す。
【
図18(a)】(a)実施例6の実験概略図であり、ポリヌクレオチド分析物の両方の鎖の捕捉、「脱失速」及び配列決定を示し、時折鎖を再読み取りする。V
s:配列決定電位、V
u:脱ブロック電位。適用した電位の極性を矢印で示す。適用した力の方向は、矢印の方向と同じである。 (A)配列決定電位を適用する(120mV)。開いたポア、3’リーダーを介したポリヌクレオチド分析物の捕捉(
図7より)。ナノポアによる二本鎖の分離、鋳型と相補鎖はトランスコンパートメントに移動する。 (B)ポリヌクレオチドは、スペーサー部分で失速した酵素に到達する。酵素はスペーサー部分の上を移動することができない。 (C)酵素がナノポアから離れ、スペーサー部分を自由に移動するよう、脱ブロック電位を適用する(可変、0mV~-120mV)。 (D)配列決定電位が適用される(120mV)。酵素がナノポアに到達するまで、ナノポアによってポリヌクレオチドが移動し、その後、ナノポアからのポリヌクレオチドの移動を酵素が制御する。 (E)DNAモーターが鋳型部分を移動し、ヘアピンに到達する。 (F)DNAモーターが相補部分を移動し、鋳型鎖と相補鎖がシスコンパートメントでリフォールディングする。モーターがリーダーセクションに到達し、ナノポアでアイドリングする。状態(F)は、酵素が3’-5’から押されて状態(E)に戻り、鎖の再読み取り(RR)が可能になる。(G)脱ブロック電位が適用され、DNAモーター及び分析物がナノポアから排出される。(b)実施例6からの代表的な電流-時間トレースであり、適用電位下でC3リーダーから後方に押し出される酵素を介してポリヌクレオチド酵素が2回読み取られる例を示す。酵素制御部分(i)及び(ii)を拡大表示し、C3レベルも特定する。(c)実施例6で説明した実験からの6つの代表的な再読み取りの例である。酵素制御部分を、使用したポアと酵素の組み合わせのデータを使用してトレーニングされたHMMモデルを使用してマッピングした。示される実施例の読み取りにより、バクテリオファージのラムダDNAの7つの制限酵素断片の混合物の同じ鎖に少なくとも2回マッピングする。
【
図19(a)】(a)120mVの配列決定電位で収集されたデータを使用して、実施例7に記載されるデータの代表的なHMMマッピングの例である。(b)140mVの配列決定電位で収集されたデータを使用した、実施例7に記載されるデータの代表的なHMMマッピングの例である。(c)160mVの配列決定電位で収集されたデータを使用して、実施例7に記載されるデータの代表的なHMMマッピングの例である。(d)
図19a、19b及び19cのデータから抽出された単一分子の酵素速度のヒストグラムである。各集団の分子数を示す。各集団のメジアンは、次のとおりである:120mV、319bp/秒、140mV、259bp/秒、160mV、196bp/秒。
【
図20(a)】(a)実験図であり、
図18a/実施例6と同一である。加えて、酵素を含まない転位(ステップAとCの間)を測定するために使用される「エントリー」段階には、アスタリスクを付す。(b)実施例8に示す3つのライブラリーの実施例の代表的な電流-時間トレースであり、10kbのPCR断片(上)、バクテリオファージラムダDNA(中央)、及びT4DNA(下)である。T4DNAの全長読み取りは記録せず、部分断片の例を示す。各実施例では、「エントリー」段階をアスタリスクでマークし、酵素制御段階をEでマークする。各部分の期間は、手作業で測定し、トレースにマークする。T4の実施例のエントリー段階の拡大図を示す。
図20aでBとマークされた部分(ブロッカーオリゴヌクレオチドがポアの上部)を確実に検出することはできない。(c)実施例8に記載される31の実施例のトレースから測定された、測定された捕捉時間の両対数散布図である。マーカーを、由来元のライブラリーに従ってグレースケールで色付けする。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、特定の実施形態に関して、かつある特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲内のいずれの参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。言うまでもなく、必ずしも全ての態様又は利点が本発明のいずれかの特定の実施形態に従って達成され得るとは限らないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者であれば、本明細書で教示又は示唆され得る他の態様又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点又は一群の利点を達成又は最適化する様式で本発明が具体化又は実行され得ることを認識するであろう。
【0035】
本発明は、編成及び動作方法の両方に関して、その特徴及び利点と共に、添付の図面と併せて読まれたときに以下の発明を実施するための形態を参照することにより最もよく理解され得る。本発明の態様及び利点は、以下に記載の実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。本明細書を通して「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所での「一実施形態では」又は「ある実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本開示を簡素化し、かつ様々な発明態様のうちの1つ以上の理解を支援するために、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図、又はそれらの説明にまとめられることもあることを理解されたい。しかしながら、本開示の方法は、特許請求される発明が各特許請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明態様は、単一の前述の開示される実施形態の全ての特徴に満たない。
【0036】
文脈が別途指示しない限り、本開示の「実施形態」が具体的に一緒に組み合わせられ得ることを理解されたい。全ての開示される実施形態の特定の組み合わせは(文脈により別途暗示されない限り)、特許請求される本発明の更に開示された実施形態である。
【0037】
加えて、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」への言及は2つ以上のポリヌクレオチドを含み、「モータータンパク質」への言及は2つ以上のかかるタンパク質を含み、「ヘリカーゼ」への言及は2つ以上のヘリカーゼを含み、「モノマー」への言及は2つ以上のモノマーを指し、「ポア」への言及は2つ以上のポアを含む。
【0038】
上記又は下記の本明細書に引用される全ての出版物、特許、及び特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
定義
単数名詞を指すときに不定冠詞又は定冠詞、例えば、「a」又は「an」、「the」が使用される場合、他のことが明記されない限り、これは、その名詞の複数形を含む。「含む」という用語が本説明及び特許請求の範囲で使用される場合、これは、他の要素又はステップを除外しない。更に、本説明及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも起こった順序又は経時的順序を説明するために使用されるとは限らない。そのように使用されるそれらの用語が適切な状況下で交換可能であり、かつ本明細書に記載される本発明の実施形態が本明細書に記載又は例証される順序以外の順序で動作可能であることを理解されたい。以下の用語又は定義は、本発明の理解を助けるためのみに提供される。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、本発明の当業者が理解する意味と同じ意味を有する。熟練者は、定義及び技術用語について、特にSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainsview,New York(2012)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 114),John Wiley&Sons,New York(2016)を参照する。本明細書で提供される定義は、当業者によって理解されるよりも範囲が狭いと解釈されるべきではない。
【0040】
量、時間的持続時間などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」は、指定された値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、なおもより好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味し、かかる変動は開示された方法を実施するのに適切である。
【0041】
本明細書で使用される「ヌクレオチド配列」、「DNA配列」、又は「核酸分子」は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語は、その分子の一次構造のみを指す。したがって、この用語には、二本鎖及び一本鎖DNA及びRNAが含まれる。本明細書で使用される「核酸」という用語は、各ヌクレオチドの3’末端及び5’末端がホスホジエステル結合によって連結されている、一本鎖又は二本鎖の共有結合したヌクレオチド配列である。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基又はリボヌクレオチド塩基で構成され得る。核酸は、インビトロで合成的に製造され得るか、又は天然源から単離され得る。核酸には、修飾されたDNA若しくはRNA、例えば、メチル化されているDNA若しくはRNA、又は翻訳後修飾、例えば、7-メチルグアノシンでの5’-キャッピング、切断及びポリアデニル化などの3’-プロセシング、並びにスプライシングに供されているRNAが更に含まれ得る。核酸には、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トレオース核酸(TNA)、グリセロール核酸(GNA)、ロックド核酸(LNA)、及びペプチド核酸(PNA)などの合成核酸(XNA)も含まれ得る。本明細書で「ポリヌクレオチド」とも称される核酸のサイズは、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチドの塩基対(bp)の数で、又は一本鎖ポリヌクレオチドの場合にはヌクレオチド(nt)の数で表される。1000bp又はntは、キロベース(kb)に相当する。長さが約40ヌクレオチド未満のポリヌクレオチドは、典型的には「オリゴヌクレオチド」と呼ばれ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介するなどのDNAの操作に使用するためのプライマーを含み得る。
【0042】
本開示との関連での「アミノ酸」という用語は、その最も広い意味で使用され、各アミノ酸に特異的な側鎖(例えば、R基)と共に、アミン(NH2)及びカルボキシル(COOH)官能基を含む有機化合物を含むよう意図されている。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するL α-アミノ酸又は残基を指す。天然に存在するアミノ酸について一般に使用される1文字及び3文字略語:A=Ala、C=Cys、D=Asp、E=Glu、F=Phe、G=Gly、H=His、I=Ile、K=Lys、L=Leu、M=Met、N=Asn、P=Pro、Q=Gln、R=Arg、S=Ser、T=Thr、V=Val、W=Trp、及びY=Tyrが本明細書で使用される(Lehninger,A.L.,(1975)Biochemistry,2d ed.,pp.71-92,Worth Publishers,New York)。「アミノ酸」という一般用語は、D-アミノ酸、レトロ-インベルソアミノ酸、並びにアミノ酸類似体などの化学的に修飾されたアミノ酸、ノルロイシンなどのタンパク質に通常組み込まれない天然に存在するアミノ酸、及びβ-アミノ酸などのアミノ酸の特徴を示す当該技術分野で既知の特性を有する化学的に合成された化合物を更に含む。例えば、天然Phe又はProと同じペプチド化合物の立体構造上の制限を可能にするフェニルアラニン又はプロリンの類似体又は模倣物は、アミノ酸の定義内に含まれる。かかる類似体及び模倣物は、本明細書でそれぞれのアミノ酸の「機能的等価物」と称される。アミノ酸の他の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Roberts and Vellaccio,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Gross and Meiehofer,eds.,Vol.5 p.341,Academic Press,Inc.,N.Y.1983によって列記されている。
【0043】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、アミノ酸残基のポリマー、並びにその変異形及び合成類似体を指すために、本明細書で互換的に使用される。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の化学類似体などの天然に存在しない合成アミノ酸であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。ポリペプチドは、グリコシル化、タンパク質分解的切断、脂質化、シグナルペプチド切断、プロペプチド切断、リン酸化などを含み得るが、これらに限定されない、成熟又は翻訳後修飾プロセスも受け得る。ペプチドは、組換え技法を使用して、例えば、組換え又は合成ポリヌクレオチドの発現により作製され得る。組換えにより産生されたペプチドは、典型的には、培養培地を実質的に含まず、例えば、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満に相当する。
【0044】
「タンパク質」という用語は、二次又は三次構造を有する折り畳まれたポリペプチドを説明するために使用される。タンパク質は、単一のポリペプチドで構成され得るか、又は集合してマルチマーを形成する複数のポリペプチドを含み得る。マルチマーは、ホモオリゴマーであってもヘテロオリゴマーであってもよい。タンパク質は、天然に存在するタンパク質又は野生型タンパク質であってもよく、又は修飾されたタンパク質若しくは天然に存在しないタンパク質であってもよい。タンパク質は、例えば、1つ以上のアミノ酸の付加、置換、又は欠失が野生型タンパク質とは異なり得る。
【0045】
タンパク質の「変異形」は、問題となっている未修飾又は野生型タンパク質と比較してアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入を有し、かつそれらが由来する未修飾タンパク質と類似の生物学的及び機能的活性を有する、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及び酵素を包含する。本明細書で使用される「アミノ酸同一性」という用語は、配列が比較ウィンドウにわたってアミノ酸ごとに同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインされた配列を比較し、同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が両方の配列に生じる位置の数を決定して一致した位置の数を算出し、一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを算出することによって計算される。
【0046】
本発明の全ての態様及び実施形態について、「変異形」は、対応する野生型タンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%完全な配列同一性を有する。配列同一性は、完全長ポリヌクレオチド又はポリペプチドの断片又は部分に対するものである場合もある。したがって、配列は、完全長参照配列と全体的に50%のみの配列同一性を有し得るが、特定の領域、ドメイン、又はサブユニットの配列は、参照配列と80%、90%、又は99%もの配列同一性を共有し得る。
【0047】
「野生型」という用語は、天然に存在する源から単離された遺伝子又は遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、ある集団で最も頻繁に観察され、したがって、その遺伝子の任意に設計された「正常」又は「野生型」形態である。対照的に、「修飾された」、「変異体」、又は「変異形」という用語は、野生型遺伝子又は遺伝子産物と比較して、配列の修飾(例えば、置換、切断、若しくは挿入)、翻訳後修飾、及び/又は機能的特性(例えば、改変された特徴)を呈する遺伝子又は遺伝子産物を指す。天然に存在する変異体を単離することができることに留意されたく、これらは、野生型遺伝子又は遺伝子産物と比較して改変された特徴を有するという事実によって特定される。天然に存在するアミノ酸を導入又は置換するための方法が当該技術分野で周知である。例えば、メチオニン(M)は、変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド中の関連する位置でメチオニンのコドン(ATG)をアルギニンのコドン(CGT)に置き換えることにより、アルギニン(R)で置換され得る。天然に存在しないアミノ酸を導入又は置換するための方法も当該技術分野で周知である。例えば、天然に存在しないアミノ酸は、変異体モノマーを発現させるために使用されるIVTT系中に合成アミノアシル-tRNAを含めることによって導入され得る。代替的に、それらは、特定のアミノ酸の合成(すなわち、天然に存在しない)類似体の存在下で、それらの特定のアミノ酸に対して栄養要求性であるE.coli中で変異体モノマーを発現させることによって導入され得る。それらは、変異体モノマーが部分的ペプチド合成を使用して産生される場合、ネイキッドライゲーション(naked ligation)によって生成される場合もある。保存的置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学的特性、又は類似の側鎖体積の他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性、又は荷電性を有し得る。代替的に、保存的置換は、既存の芳香族又は脂肪族アミノ酸の代わりに芳香族又は脂肪族である別のアミノ酸を導入し得る。保存的アミノ酸変化は、当該技術分野で周知であり、以下の表1に定義される20個の主なアミノ酸の特性に従って選択され得る。アミノ酸が類似の極性を有する場合、これはまた表2におけるアミノ酸側鎖の疎水性スケールを参照して決定し得る。
【表1】
【表2】
【0048】
変異体又は修飾タンパク質、モノマー、又はペプチドは、任意の方式及び任意の部位で化学的に修飾することもできる。変異体又は修飾モノマー又はペプチドは、好ましくは、1つ以上のシステインへの分子の付着(システイン結合)、1つ以上のリジンへの分子の付着、1つ以上の非天然アミノ酸への分子の付着、エピトープの酵素修飾、又は末端の修飾によって化学的に修飾される。かかる修飾を実施するための好適な方法は当該技術分野で周知である。修飾タンパク質、モノマー、又はペプチドの変異体は、任意の分子の付着によって化学的に修飾され得る。例えば、修飾タンパク質、モノマー、又はペプチドの変異体は、色素又はフルオロフォアの付着によって化学的に修飾され得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、アルキレン基は、脂肪族又は脂環式であり得る炭化水素化合物の、同じ炭素原子から2つの水素原子、又は2つの異なる炭素原子の各々から1つのいずれかの2つの水素原子を除去することによって得られる、非置換若しくは置換された、飽和している二座部分である。炭化水素化合物は、1~20個の炭素原子を有し得、その場合、アルキレン基はC1-20アルキレンである。アルキレン基がC1-10アルキレンである場合、それは例えば1~10個の炭素原子を有し得る。典型的には、C1-6アルキレン、又はC1-4アルキレン、例えばメチレン、エチレン、i-プロピレン、n-プロピレン、t-ブチレン、s-ブチレン又はn-ブチレンである。
【0050】
アルケニレン基は、脂肪族又は脂環式であってもよい炭化水素化合物の同じ炭素原子から2つの水素原子を除去するか、2つの異なる炭素原子の各々から1つの水素原子を除去することによって得られる、非置換若しくは置換された二座部分であり、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む。炭化水素化合物は、2~20個の炭素原子を有し得、その場合、アルケニレン基はC2-20アルケニレンである。アルケニレン基がC2-10アルケニレンである場合、それは例えば2~10個の炭素原子を有し得る。通常、それはC2-6アルケニレン、又はC2-4アルケニレンである。
【0051】
アルキニレン基は、脂肪族又は脂環式であってもよい炭化水素化合物の同じ炭素原子から2つの水素原子を除去するか、2つの異なる炭素原子の各々から1つの水素原子を除去することによって得られる非置換若しくは置換された二座部分であり、1つ以上の炭素-炭素三重結合を含む。炭化水素化合物は、2~20個の炭素原子を有し得、その場合、アルキニレン基はC2-20アルキニレンである。アルキニレン基がC2-10アルキニレンである場合、それは例えば2~10個の炭素原子を有し得る。通常、それはC2-6アルキニレン、又はC2-4アルキニレンである。
【0052】
アリーレン基は、芳香族化合物の2つの異なる芳香族環原子の各々から1つずつ、2つの水素原子を除去することによって得られる非置換若しくは置換された単環式又は縮合多環式の二座部分であり、その部分は(特に明記しない限り)5~14個の環原子を有する。典型的には、各環は5~7個又は5~6個の環原子を有する。アリーレン基は、非置換であっても置換されていてもよい。
【0053】
ヘテロアリーレン基は、ヘテロアリール基の2つの異なる環原子の各々から1つずつ、2つの水素原子を除去することによって得られる二座部分である。ヘテロアリール基は、置換又は非置換の単環式又は縮合多環式(例えば、二環式又は三環式)の芳香族基であり、典型的には、環部分に少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、O、S、N、P、Se及びSi、より典型的にはO、S及びNから選択される、1、2又は3個のヘテロ原子を含む、5~14個の環原子を含む。例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、インダゾリル、カルバゾリル、アクリジニル、ウリニル、シンノリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノリニル、キナゾリニル及びイソキノリニルが挙げられる。
【0054】
シクロアルキレン基としても知られるカルボシクリレン基は、非置換若しくは置換された環状アルキル基の2つの炭素原子の各々から1つずつ、2つの水素原子を除去することによって得られる二座部分である。典型的には、この部分は、(別段の指定がない限り)3個~10個の環原子を含み、3個~10個の炭素原子を有する。例としては、シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)、メチルシクロヘキサン(C7)、ジメチルシクロヘキサン(C8)、メンタン(C10)が挙げられる。
【0055】
ヘテロシクリレン部分は、ヘテロシクリル基の2つの異なる環原子から2つの水素原子を除去することによって得られる二座部分である。ヘテロシクリル基は、非置換若しくは置換された環状基であり、典型的には、環部分に少なくとも1個のヘテロ原子、例えば、O、S、N、P、Se及びSiから、より典型的にはO、S、及びNから選択される1個、2個又は3個のヘテロ原子を含む、5個~14個の原子を含む。例としては、ピペラジン、ピペリジン、モルフォリン、1,3-オキサジナン、ピロリジン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、テトラヒドロピラジン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロ-1,4-オキサジン、テトラヒドロピリミジン、ジヒドロ-1,3-オキサジン、ジヒドロピロール、ジヒドロイミダゾール及びジヒドロオキサゾール基が挙げられる。
【0056】
アリーレン-アルキレン基は、本明細書で定義されるアリーレン基とアルキレン基との間で結合を形成することによって形成される基である。ヘテロアリーレン-アルキレン基は、本明細書で定義されるヘテロアリーレン基とアルキレン基との間で結合を形成することによって形成される基である。カルボシクリレン-アルキレン基は、本明細書で定義されるカルボシクリレン基とアルキレン基との間で結合を形成することによって形成される基である。ヘテロシクリレン-アルキレン基は、本明細書で定義されるヘテロシクリレン基とアルキレン基との間の結合を形成することによって形成される基である。
【0057】
基が置換されていると記載されている場合、それは典型的には、1、2又は3個などの1個以上、典型的には1又は2個、通常は1個の置換基によって置換されている。好適な置換基は、ハロゲン、-OR’及び-NR’2から独立して選択され得る(式中、R’は典型的にはH又は非置換C1-2アルキル、及び非置換C1~C2アルキルである)。
【0058】
分析物を特徴付ける方法
本開示は、モータータンパク質を使用することによって、ナノポアなどの検出器に対して移動する標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法に関する。任意の好適なモータータンパク質が本明細書に提供される方法で使用され得る。例示的なモータータンパク質は、本明細書でより詳細に記載されている。
【0059】
本開示はまた、検出器をポリヌクレオチドと接触させ、ポリヌクレオチドが検出器に対して前後に移動するなど、ポリヌクレオチドを再読み取りすることを含む、標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法に関する。これは、本明細書により詳細に記載される。
【0060】
より具体的には、いくつかの実施形態では、本開示は、モータータンパク質がポリヌクレオチドを検出器の外へ(例えば、ナノポアの外へ)移動させる方法に関する。したがって、かかる実施形態におけるポリヌクレオチドの移動方向は、ポリヌクレオチドがナノポア内に移動する既知の方法と反対である。これは、本明細書により詳細に記載される。
【0061】
本開示は、例示的な検出器としてナノポアを提供するが、本明細書で提供される方法は、(i)ゼロモード導波路、(ii)電界効果トランジスタ、任意選択的にノワイヤ電界効果トランジスタ、(iii)AFMチップ、(iv)ナノチューブ、任意選択的にカーボンナノチューブ、及び(v)ナノポア、などの検出器に適している。開示される方法は、ポリヌクレオチドが検出器を通って、又は検出器チップ内のウェルなどの検出器を含む構造体を通って移動する方法に特に適している。
【0062】
開示される方法において、モータータンパク質は、典型的には、失速部分でポリヌクレオチド上で最初に失速される。好適な失速部分は、本明細書により詳細に記載される。ポリヌクレオチド上のモータータンパク質の失速には、様々な利点がある。例えば、失速している間、モータータンパク質は典型的には、失速していないとき、例えばポリヌクレオチドに関して自由に動くときよりも、少ない燃料を消費する。この非生産的な燃料使用量の削減は、有利であり得る。
【0063】
本明細書で提供される方法は、典型的には、モータータンパク質が検出器(例えば、ナノポア)からのポリヌクレオチドの移動を制御することができるように、モータータンパク質を脱失速させることを含む。モータータンパク質を脱失速する方法は、本明細書により詳細に記載されている。モータータンパク質の制御された脱失速は、モータータンパク質がポリヌクレオチドのプロセシングを開始する点を正確に決定することができることを含む様々な利点を有する。これは、例えば、データ記録の開始前にポリヌクレオチド上のモータータンパク質の望ましくない動きの結果としてデータが失われないように、ポリヌクレオチドを特徴付けるのに有用であり得る。
【0064】
開示される方法は、ポリヌクレオチドがナノポアなどの検出器から移動されるときに得られるデータが、同じポリヌクレオチドが検出器(例えば、ナノポア)内に移動されるときに得られるデータとは異なり得るという認識に少なくとも部分的に基づく。シグナルプロファイル、ノイズプロファイル、及びエラープロファイルを含むデータ特性は、いくつかの実施形態では、同じポリヌクレオチドがナノポアなどの検出器に移動される対照的な方法とは全て異なり得る。いくつかの実施形態では、開示される方法で得られたデータは、他の既知の方法で得られたデータと比較して利点を有する。したがって、開示される方法は、ポリヌクレオチドの特徴付けが必要な場合に利用可能な選択肢を増やすものである。したがって、ポリヌクレオチドの特徴付けを希望するユーザーは、問題となる特定の用途に最適な方法を選択することができる。
【0065】
上で説明したように、開示される方法は、いくつかの実施形態では、ナノポアなどの検出器から標的ポリヌクレオチドを移動させることに関する。本明細書では、例示的な検出器としてナノポアを考察するが、本方法はこれに限定されない。
【0066】
ナノポアは通常、2つの開口部、つまり第1の開口部及び第2の開口部を有する。かかる開口部は、ナノポアのシス及びトランス開口部と称されることが多い。多くの場合、第1の開口部はシス開口部であり、第2の開口部はトランス開口部であるが、いくつかの実施形態では、第1の開口部はトランス開口部であり、第2の開口部はシス開口部である。ナノポアの「シス」及び「トランス」開口部の表記は、当該技術分野ではルーチン的である。例えば、ナノポアのシス開口部は、通常、シス及びトランスチャンバを有する本明細書に記載の装置などのナノポアデバイスのシスチャンバに面し、トランス開口部は、通常、トランスチャンバに面する。
【0067】
本明細書で提供される特定の方法では、ナノポアの第1の開口部は、失速したモータータンパク質を上に有するポリヌクレオチドと接触する。この方法は、モータータンパク質を使用して、ナノポアの第2の開口部からナノポアの第1の開口部への方向でナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御することを含む。
【0068】
したがって、モータータンパク質の観点からは、標的ポリヌクレオチドは、ナノポアの外に移動する。「外へ」という表記は、モータータンパク質に向かうポリヌクレオチドの全体的な動きに関する。この移動方向は、標的ポリヌクレオチドがモータータンパク質によってナノポアの「中へ」移動する別のモードとは対照的であり得る。
【0069】
これらの運動スキームの違いは深刻である。ポリヌクレオチドがポアから「外へ」出る、本明細書で提供される方法では、移動の方向は、モータータンパク質から最も遠いナノポアの入口(すなわち、遠位入口)から、モータータンパク質から最も近いナノポアの入口(近位入口)に向かう方向である。ポリヌクレオチドがポアの「中へ」移動する対照的な方法では、移動の方向は、モータータンパク質に最も近いナノポアの入り口(近位の入り口)から、モータータンパク質から最も離れたナノポアの入り口(遠位入口)に向かう方向である。
【0070】
したがって、提供される方法のいくつかの実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部は膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部はトランス側にある。かかる実施形態では、モータータンパク質は、膜のシス側に位置し、膜のトランス側からシス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0071】
提供される方法の他の実施形態では、ナノポアはシス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部は膜のトランス側にあり、ナノポアの第2の開口部はシス側にある。かかる実施形態では、モータータンパク質は、膜のトランス側に位置し、膜のシス側からトランス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0072】
対照的な方法におけるポリヌクレオチドのポアへの移動とは対照的に、本明細書で提供される方法におけるポアからのポリヌクレオチドの移動の方向の違いを、
図1に概略的に示す。
【0073】
再読み取り
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、ポリヌクレオチドを特徴付けるためにポリヌクレオチドを再読み取りすることを含む。ポリヌクレオチドの再読み取りは、ポリヌクレオチドが検出器に対して前後に移動するときに、ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することを含む。
【0074】
一実施形態では、本明細書では、標的ポリペプチドを特徴付ける方法が提供され、本方法は、
(i)検出器を、モータータンパク質が結合した標的ポリヌクレオチドに接触させることであって、標的ポリヌクレオチドが、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位でモータータンパク質に結合している、接触させることと、
(ii)モータータンパク質が検出器に対して第1の方向の標的ポリヌクレオチドの動きを制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、
(iii)標的ポリヌクレオチドが検出器に対して第2の方向に移動するように、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドを脱結合することと、
(iv)標的ポリヌクレオチドをモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位に再結合させ、モータータンパク質が検出器に対して第1の方向に標的ポリヌクレオチドの動きを制御するとき、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得し、
それによって標的ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。
【0075】
関連する実施形態では、本明細書では、標的ポリペプチドを特徴付ける方法が提供され、本方法は、
(i)検出器を、モータータンパク質が結合した標的ポリヌクレオチドに接触させることであって、標的ポリヌクレオチドが、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位でモータータンパク質に結合している、接触させることと、
(ii)モータータンパク質が検出器に対して第1の方向の標的ポリヌクレオチドの動きを制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、
(iii)標的ポリヌクレオチドが検出器に対して第2の方向に移動するように、標的ポリヌクレオチドがモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から解離することを可能にすることと、
(iv)標的ポリヌクレオチドをモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位に再結合させ、モータータンパク質が検出器に対して第1の方向に標的ポリヌクレオチドの動きを制御するとき、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得し、
それによって標的ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。
【0076】
開示される方法は、従来既知の方法と比較して多くの利点を有する。例えば、標的ポリヌクレオチドの各読み取りは、同じ鎖及び同じ検出部分が使用されるため、同等の精度であるべきである。これにより、各読み取りに同じベースコーリングモデルを使用することが可能になる。また、複数の読み取りからのデータの結合も容易になる。更に、天然の配列が複数回再読み取りされるため、(例えば)エピジェネティックな情報を保持することが可能になる。この方法は適応的でもあり、必要な精度のデータが得られるまで、再読み取りを複数回繰り返すことができる。
【0077】
より詳細には、本方法は、モータータンパク質が検出器に対して第1の方向に標的ポリヌクレオチドの動きを制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することを含み得る。第1の方向は、モータータンパク質がポリヌクレオチドの動きを駆動する方向であり得る。第1の方向は、検出器に適用される力の方向であり得る。第1の方向は、検出器にわたって適用される力の方向と反対の方向であり得る。
【0078】
多くの場合、検出器は、第1の開口部及び第2の開口部を有する構造に含まれるか、又は第1の開口部及び第2の開口部を有する膜貫通ナノポアを含み、ステップ(i)は、第1の開口部を標的ポリヌクレオチドで収縮させることを含む。典型的には、モータータンパク質は、第2の開口部から第1の開口部への方向における標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。典型的には、標的ポリヌクレオチドがモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から脱結合する場合、標的ポリヌクレオチドは、第1の開口部から第2の開口部への方向に移動する。
【0079】
したがって、検出器がナノポアであるか、又はナノポアを含む場合、第1の方向は、本明細書に記載のナノポアの「中へ」であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の測定が行われている間のポリヌクレオチドの移動は、ナノポアの外に向かってなされる。いくつかの実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜ににわたり、ナノポアの第1の開口部は、膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部は、トランス側にあり、モータータンパク質は、膜のシス側に位置し、膜のシス側からトランス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。他の実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部は、膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部は、トランス側にあり、モータータンパク質は、膜のトランス側に位置し、膜のトランス側からシス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0080】
より多くの場合、検出器がナノポアであるか、又はナノポアを含む場合、第1の方向は、本明細書に記載のナノポアの「外へ」向かう方向である。したがって、いくつかの実施形態では、1つ以上の測定が行われている間のポリヌクレオチドの移動は、ナノポアの外に向かってなされる。いくつかの実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部は、膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部は、トランス側にあり、モータータンパク質は、膜のシス側に位置し、膜のトランス側からシス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。他の実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部は、膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部は、トランス側にあり、モータータンパク質は、膜のトランス側に位置し、膜のシス側からトランス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0081】
提供される方法は、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドを脱結合することを含み得る。これは、本明細書により以下に詳細に記載される。標的ポリヌクレオチドがモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から脱結合すると、標的ポリヌクレオチドは、検出器に対して第2の方向に移動する。第2の方向は通常、第1の方向と反対である。
【0082】
したがって、検出器がナノポアであるか、又はナノポアを含む方法のいくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する第1の方向は、ナノポア内へであり、標的ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する第2の方向は、ナノポア外である。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する第1の方向は、ナノポアの外向きであり、標的ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する第2の方向は、ナノポアの内向きである。
【0083】
次いで、提供される方法は、標的ポリヌクレオチドをモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位に再結合させることを含み得る。次いで、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定が行われる際に、標的ポリヌクレオチドの第1の方向への移動を制御する。第1の方向は、上述した第1の方向と同じである。
【0084】
したがって、一実施形態では、本明細書では、標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法が提供され、本方法は、
(i)第1の開口部及び第2の開口部を有する膜貫通ナノポアの第1の開口部を、それに結合したモータータンパク質を有する標的ポリヌクレオチドと接触させることであって、該標的ポリヌクレオチドが、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位でモータータンパク質に結合している、接触させることと、
(ii)モータータンパク質がナノポアの第1の開口部からナノポアの第2の開口部への方向の標的ポリヌクレオチドの移動を制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、
(iii)標的ポリヌクレオチドがナノポアの第2の開口部からナノポアの第1の開口部への方向に移動するように、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドを脱結合することと、
(iv)標的ポリヌクレオチドをモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位に再結合させて、モータータンパク質がナノポアの第1の開口部からナノポアの第2の開口部への方向における標的ポリヌクレオチドの移動を制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得し、
それによって標的ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。標的ポリヌクレオチドを特徴付けることは、例えば、標的ポリヌクレオチドの配列を決定することを含み得る。
【0085】
例えば、いくつかの実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部は、膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部は、トランス側にあり、モータータンパク質は、膜のシス側からトランス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。他の実施形態では、ナノポアの第1の開口部は、膜のトランス側にあり、ナノポアの第2の開口部は、シス側にあり、モータータンパク質は、ナノポアを通って膜のトランス側からシス側への標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。いくつかの実施形態では、本方法は、ナノポア全体に力(例えば電位)を適用することを含み、モータータンパク質は、適用された力と同じ方向にナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0086】
別の実施形態では、本明細書では、標的ポリペプチドを特徴付ける方法が提供され、本方法は、
(i)第1の開口部及び第2の開口部を有する膜貫通ナノポアの第1の開口部を、それに結合したモータータンパク質を有する標的ポリヌクレオチドと接触させることであって、該標的ポリヌクレオチドが、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位でモータータンパク質に結合している、接触させることと、
(ii)モータータンパク質がナノポアの第2の開口部からナノポアの第1の開口部への方向の標的ポリヌクレオチドの移動を制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、
(iii)標的ポリヌクレオチドがナノポアの第2の開口部からナノポアの第1の開口部への方向に移動するように、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドを脱結合することと、
(iv)標的ポリヌクレオチドをモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位に再結合させて、モータータンパク質がナノポアの第2の開口部からナノポアの第1の開口部への方向における標的ポリヌクレオチドの移動を制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得し、
それによって標的ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。標的ポリヌクレオチドを特徴付けることは、例えば、標的ポリヌクレオチドの配列を決定することを含み得る。
【0087】
例えば、いくつかの実施形態では、ナノポアは、シス側及びトランス側を有する膜にわたり、ナノポアの第1の開口部は、膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部は、トランス側にあり、モータータンパク質は、膜のトランス側からシス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。他の実施形態では、ナノポアの第1の開口部は、膜のトランス側にあり、ナノポアの第2の開口部は、シス側にあり、モータータンパク質は、ナノポアを通って膜のシス側からトランス側への標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。いくつかの実施形態では、本方法は、ナノポア全体に力(例えば電位)を適用することを含み、モータータンパク質は、適用された力と反対の方向にナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0088】
検出器に対する第2の方向へのポリヌクレオチドの動きを、発生する可能性のある自発的なスリッピングと区別することが重要である。例えば、1塩基又は2塩基のスリップは、本明細書に記載の再読み取りの例ではない。典型的には、ステップ(iii)において、標的ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する距離は、少なくとも10ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する距離は、少なくとも20ヌクレオチド長、例えば少なくとも30ヌクレオチド長、例えば少なくとも40ヌクレオチド長、例えば少なくとも50ヌクレオチド長、例えば少なくとも100ヌクレオチド長である。より長い距離を使用してもよい。いくつかの実施形態では、ステップ(iii)における標的ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する距離は、少なくとも1000ヌクレオチド(1kb)長、例えば、少なくとも2kb長、例えば少なくとも5kb又は少なくとも10kb長であり、例えば、少なくとも100kb又は少なくとも1000kb長である。
【0089】
本方法のステップ(iii)及び(iv)は、標的ポリヌクレオチドを複数回再読み取りするために、複数回繰り返され得る。ステップ(iii)及び(iv)は、少なくとも1回、例えば少なくとも2回、例えば少なくとも3回、例えば少なくとも4回、例えば少なくとも5回、例えば少なくとも10回、例えば少なくとも20回、例えば少なくとも50回、例えば少なくとも100回、例えば少なくとも1000回、例えば少なくとも10,000回、例えば少なくとも100,000回以上、繰り返され得る。したがって、本方法は、検出器に対して前後にポリヌクレオチドを「フロッシング」することを含み得る。
【0090】
したがって、ステップ(iii)及び(iv)が1回(及び1回だけ)繰り返され、その結果、方法がステップ(iii)及び(iv)を2回及び2回だけ含む場合、本方法は、ステップ(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(iii1)、及び(iv1)を含むこととなり、ポリヌクレオチドの3つの部分、すなわち、ステップ(ii)における第1の部分、ステップ(iii)及び(iv)における第2の部分、並びにステップ(iii1)及び(iv1)における第3の部分、に特徴的な測定が行われる。ステップ(iii)及び(iv)を2回(及び2回だけ)繰り返して、方法がステップ(iii)及び(iv)を3回及び3回だけ含むようにする場合、本方法はステップ(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(iii1)、(iv1)、(iii2)及び(iv2)を含むこととなり、ポリヌクレオチドの4つの部分、すなわち、ステップ(ii)における第1の部分、ステップ(iii)及び(iv)における第2の部分、ステップ(iii1)及び(iv1)における第3の部分、並びにステップ(iii2)及び(iv2)における第4の部分、に特徴的な測定が行われる。換言すれば、ステップ(iii)及び(iv)がn回繰り返される場合、各繰り返しにより、ポリヌクレオチドの(n+2)部分に特徴的な測定値が得られる。ステップ(iii)及び(iv)を複数回繰り返すことは、ナノポアによって解析されるポリヌクレオチドの部分が複数回サンプリングされるため、特徴付けの改善につながる可能性があり、分析で記録される可能性のある確率的エラーは統計的有意性がなくなる。したがって、このようにして得られる特性データの精度を向上させることができる。これらの方法により、例えば少なくとも99%の精度、少なくとも99.9%の精度、又は少なくとも99.99%の精度など、非常に高い精度レベルに到達することが可能になる。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(iii)及び(iv)は、少なくとも99.9%、又は少なくとも99.99%の精度など、少なくとも99%の精度レベルに達するまで繰り返される。
【0091】
本方法のステップ(ii)で読み取られるポリヌクレオチドの部分とステップ(iv)で読み取られるポリヌクレオチドの部分は、典型的には重複する。換言すれば、本方法は、ポリヌクレオチドの少なくとも一部を複数回再読み取りすることを含む。したがって、いくつかの実施形態では、ステップ(ii)において、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第1の部分の、検出器に対する第1の方向への移動を制御し、ステップ(iv)において、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の部分の、検出器に対する第1の方向への移動を制御し、第1の部分は、少なくとも部分的に第2の部分と重なる。いくつかの実施毛定では、第2の部分は、第1の部分の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%と重なる。いくつかの実施形態では、第1の部分は第2の部分と同じである。したがって、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの一部分は、提供される方法で繰り返し特徴付けられる。各反復において、ポリヌクレオチドの第2の部分が、前の反復のポリヌクレオチドの第1の部分と部分的ではあるが完全には重複しない場合、ポリヌクレオチドは、検出器に対してジグザグ様式でラチェットされる。各反復において、ポリヌクレオチドの第2の部分が前の反復のポリヌクレオチドの第1の部分と完全に重複する場合、ポリヌクレオチドの同じ部分が検出器に対して前後にフロスされる。
【0092】
移動中に適用される力
開示される方法のいくつかの実施形態では、検出器全体、例えばナノポア全体に力を適用し得る。本方法を制御するために、力を制御することができる。例えば、力を増加させることにより、検出器(例えば、ナノポア)を通過するポリヌクレオチドの移動を増加又は減少させることができ、例えばポリヌクレオチドがポアを通過する速度を制御することができる。
【0093】
本明細書で提供される方法では、任意の好適な力を適用することができる。力は、検出器全体、例えばナノポア全体に適用される電位であり得る。いくつかの実施形態では、ナノポア全体に外力が適用されない。例えば、いくつかの実施形態では、電位は適用されない。かかる実施形態は、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動するときに光学的測定が行われる方法に特に適している。
【0094】
他の実施形態では、力は、ナノポア全体に適用される電圧力であり得る。電圧は、本明細書に記載の装置などの任意の好適な装置を使用して適用され得る。好適な電位は、本明細書により詳細に記載される。
【0095】
いくつかの実施形態では、ナノポアが埋め込まれている膜にわたって力が適用される。力は通常、膜のシス側からトランス側に、すなわち、ナノポアのシス側からトランス側へ、適用される。力は、ナノポアに適用される正の電圧、又はナノポアに適用される負の電圧であり得る。
【0096】
典型的には、力は、ポアのトランス側がポアのシス側に対して正であるよう、ナノポアにわたり適用される正の電圧である。かかる実施形態では、このように、力は、負に荷電したポリヌクレオチドを引き付けて、ポアのシス側からトランス側に移動する。かかる実施形態では、本明細書で提供される方法は、典型的には、ポアのシス側でモータータンパク質を使用して、適用された力に抗してポアのトランス側からポアのシス側への方向へ、つまり、適用された力と反対の方向に、ポリヌクレオチドの移動を制御することを含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法(例えば、ポリヌクレオチドを再読み取りする方法)は、ポアのシス側でモータータンパク質を使用して、ポアのシス側からポアのトランス側へ、適用された力と同じ方向に、ポリヌクレオチドの移動を制御することを含み得る。
【0097】
他の実施形態では、力は、ポアのトランス側がポアのシス側に対して負になるように、ナノポアにわたり適用される負の電圧である。かかる実施形態では、力は負に荷電したポリヌクレオチドを引き付けて、ポアのトランス側からシス側に移動する。かかる実施形態では、本明細書で提供される方法は、典型的には、ポアのトランス側でモータータンパク質を使用して、適用された力に抗してポアのシス側からポアのトランス側への方向へ、つまり、適用された力と反対の方向に、ポリヌクレオチドの移動を制御することを含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法(例えば、ポリヌクレオチドを再読み取りする方法)は、ポアのトランス側でモータータンパク質を使用して、ポアのトランス側からポアのシス側へ、適用された力と同じ方向に、ポリヌクレオチドの移動を制御することを含み得る。
【0098】
しかしながら、以下に説明するように、本明細書で提供される方法は、適用された力と反対の方向にポリヌクレオチドを移動させることに依存しない。いくつかの実施形態では、移動の方向は、適用された力と同じ方向であり得るが、依然としてポアから出る方向である。かかる実施形態では、モータータンパク質は、典型的には、適用された力のみから生じる速度よりも速い速度で、ポアからのポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0099】
したがって、いくつかの実施形態では、力は、ポアのトランス側がポアのシス側に対して正であるように、ナノポアにわたり適用される正の電圧であり、本方法は、適用された力によってポアのシス側からポアのトランス側への方向のポリヌクレオチドの移動を制御するために、ポアのトランス側でモータータンパク質を使用することを含み得る。他の実施形態では、力は、ポアのトランス側がポアのシス側に対して負であるように、ナノポアにわたり適用される負の電圧であり、本方法は、適用された力によってポアのトランス側からポアのシス側への方向にポリヌクレオチドの移動を制御するために、ポアのシス側でモータータンパク質を使用することを含み得る。
【0100】
設定
提供される方法のいくつかの実施形態では、リーダー配列は、標的ポリヌクレオチドに含まれるか、又はポリヌクレオチドに付着される。リーダー配列は、本明細書で提供される方法において検出器(例えば、ナノポア)によって捕捉され得る。
【0101】
リーダー配列は、本明細書でより詳細に記載されている。典型的には、リーダー配列は、顕著な二次構造を持たない一本鎖ポリヌクレオチド領域である。例えば、リーダー配列は、典型的には、ヘアピン又はG-四重鎖を形成せず、したがってナノポアによって捕捉されやすい。
【0102】
リーダー配列は、典型的には、ポリヌクレオチドの第1の末端に提供されるか、又はポリヌクレオチドの第1の末端に付着したアダプターに含まれる。アダプターは、本明細書でより詳細に記載されている。
【0103】
典型的には、リーダー配列はポリヌクレオチドの第1の末端に(例えば、標的ポリヌクレオチドの第1の末端に含まれることにより、又は標的ポリヌクレオチドの第1の末端に付着したポリヌクレオチドアダプターに含まれることにより)提供され、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の末端で、又は標的ポリヌクレオチドの第2の末端に結合したアダプター上で、失速する。例えば、リーダー配列は、一本鎖ポリヌクレオチドの3’末端に存在し得、モータータンパク質は、一本鎖ポリヌクレオチドの5’末端に位置し得る。代替的に、リーダー配列は、一本鎖ポリヌクレオチドの5’末端に存在し得、モータータンパク質は、一本鎖ポリヌクレオチドの3’末端に位置し得る。この設定により、ポリヌクレオチドの第1の末端がナノポアによって捕捉され、ナノポアを通り抜け、例えば第1の末端から第2の末端まで通り抜けることが可能になる。ポリヌクレオチドの第2の末端のモータータンパク質は、典型的には、ポリヌクレオチドがナノポアを完全に移動するのを防止する。本明細書で提供される方法では、ポリヌクレオチドの第2の末端のモータータンパク質は、典型的には、ポリヌクレオチドを第2の末端から第1の末端の方向にプロセシングすることにより、ナノポアからモータータンパク質に向かうポリヌクレオチドの移動を制御することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは一本鎖であり、標的ポリヌクレオチドはリーダー配列を含み、リーダー配列は、標的ポリヌクレオチドの第1の末端に位置するか、又は標的ポリヌクレオチドの第1の末端に結合したアダプターに含まれ、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の末端で失速するか、又は標的ポリヌクレオチドの第2の末端でアダプター上で失速する。かかる実施形態では、リーダー配列は、典型的にはナノポアによって捕捉され、一本鎖ポリヌクレオチドは、失速モータータンパク質に到達するまでナノポアを通って移動する。一旦脱失速すると、モータータンパク質はポアからのポリヌクレオチドの移動を制御する。これについて、
図2に示す。
【0105】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは二本鎖である。
【0106】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは二本鎖であり、第1の鎖及び第2の鎖を含み、標的ポリヌクレオチドは、リーダー配列を含み、リーダー配列は、ポリヌクレオチドの第1の末端に位置し、第1の鎖に含まれるか、又は第1の鎖に付着したアダプターに含まれ、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の末端で失速する。この構成により、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の第1の末端がナノポアによって捕捉され、第1の末端から第2の末端までナノポアを通り抜けることが可能になる。ポリヌクレオチドの第2の末端のモータータンパク質は、典型的には、ポリヌクレオチドがナノポアを完全に移動するのを防止する。二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖は、鋳型鎖であり得る。二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖は、相補鎖であり得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端で失速するか、又は標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端のアダプター上で失速する。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは二本鎖であり、第1の鎖及び第2の鎖を含み、標的ポリヌクレオチドは、リーダー配列を含み、リーダー配列は、ポリヌクレオチドの第1の末端に位置し、第1の鎖に含まれるか、又は第1の鎖に付着したアダプターに含まれ、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端で失速するか、又は標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端でアダプター上で失速する。例えば、リーダー配列は、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の3’末端に存在し得、モータータンパク質は、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の5’末端に位置し得る。代替的に、リーダー配列は、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の5’末端に存在し得、モータータンパク質は、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の3’末端に位置し得る。かかる実施形態では、リーダー配列は、典型的にはナノポアによって捕捉され、一本鎖ポリヌクレオチドは、失速モータータンパク質に到達するまでナノポアを通って移動する。脱失速の後、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドの第1の鎖のポアからの移動を制御する。これについて、
図3に示す。
【0108】
いくつかの実施形態では、第1の鎖及び第2の鎖は、第1の鎖の第2の末端でヘアピンアダプターによって一緒に付着し、モータータンパク質は、ヘアピンアダプターで失速している。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、その5’末端で第1の鎖の3’末端に結合し、その3’末端で標的二本鎖ポリヌクレオチドの第2鎖の5’末端に付着する。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、その3’末端で第1の鎖の5’末端に結合し、その5’末端で標的二本鎖ポリヌクレオチドの第2鎖の3’末端に付着する。したがって、ヘアピンアダプターは、第1の鎖を第2の鎖に連結する。ヘアピンアダプターは、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の第2の末端を二本鎖ポリヌクレオチドの第2の鎖の第1の末端に連結する。
【0109】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは二本鎖であり、第1の鎖及び第2の鎖を含み、標的ポリヌクレオチドは、リーダー配列を含み、リーダー配列は、ポリヌクレオチドの第1の末端に位置し、第1の鎖に含まれるか、又は第1の鎖に付着したアダプターに含まれ、第1の鎖及び第2の鎖は、第1の鎖の第2の末端でヘアピンアダプターによって一緒に付着され、モータータンパク質は、ヘアピンアダプターで失速する。かかる実施形態では、リーダー配列は、典型的にはナノポアによって捕捉され、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖は、失速したモータータンパク質に到達するまでナノポアを通って移動する。脱失速の後、モータータンパク質は、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖のポアからの移動を制御する。これについて、
図4に示す。
【0110】
いくつかの実施形態では、第1の鎖及び第2の鎖は、(i)第1の鎖の第2の末端、及び(ii)第2の鎖の第1の末端、に結合されたヘアピンアダプターによって一緒に付着し、モータータンパク質は、二本鎖ポリヌクレオチドの第2の鎖の第2の末端で失速するか、又はアダプター上で第2の鎖の第2の末端で失速する。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、その5’末端で標的二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の3’末端に付着し、その3’末端で標的二本鎖ポリヌクレオチドの第2鎖の5’末端に付着し、モータータンパク質は、第2の鎖の3’末端で失速する。いくつかの実施形態では、ヘアピンアダプターは、その3’末端で標的二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の5’末端に付着し、その5’末端で標的二本鎖ポリヌクレオチドの第2の鎖の3’末端に付着し、モータータンパク質は、第2の鎖の5’末端で失速する。したがって、ヘアピンアダプターは、第1の鎖を第2の鎖に連結する。
【0111】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは二本鎖であり、第1の鎖及び第2の鎖を含み、標的ポリヌクレオチドは、リーダー配列を含み、リーダー配列は、ポリヌクレオチドの第1の末端に位置し、第1の鎖に含まれるか、又は第1の鎖に付着したアダプターに含まれ、第1の鎖及び第2の鎖は、(i)第1の鎖の第2の末端及び(ii)第2の鎖の第1の末端、に付着されたヘアピンアダプターによって一緒に付着され、モータータンパク質は、二本鎖ポリヌクレオチドの第2の鎖の第2の末端で失速するか、又はアダプター上で第2の鎖の第2の末端で失速する。かかる実施形態では、リーダー配列は典型的にはナノポアによって捕捉され、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖、ヘアピンアダプター、及び二本鎖ポリヌクレオチドの第2鎖は、失速したモータータンパク質に到達するまでナノポアを通って移動する。脱失速の後、モータータンパク質は、第2の鎖の移動を制御し、場合によってはヘアピンアダプターも、更に場合によっては二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖も、ポアから出るのを制御する。これについて、
図5に示す。
【0112】
モータータンパク質がポリヌクレオチドの末端で失速するのではなく、ポリヌクレオチドに沿って途中で失速し得ることは明らかであろう。本明細書で使用される場合、モータータンパク質は、かかる実施形態では、本明細書で提供される方法で特徴付けられるポリヌクレオチドの部分の末端で失速する。当業者は、本明細書で提供される方法において、特徴付けられるポリヌクレオチドの部分が、ポリヌクレオチド上のモータータンパク質の配置によって決定され得、本方法のユーザーにより制御され得るパラメータであることを理解するであろう。
【0113】
標的ポリヌクレオチドを再読み取りすることを含む開示される方法の実施形態(例えば、モータータンパク質が検出器に対して第1の方向への標的ポリヌクレオチドの動きを制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、標的ポリヌクレオチドが検出器に対して第2の方向に移動するよう、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドを脱結合することと、標的ポリヌクレオチドをモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位に再結合することと、モータータンパク質が検出器に対する第1の方向への標的ポリヌクレオチドの動きを制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、を含む方法)では、モータータンパク質がリーダー配列の近くにあるとき(モータータンパク質がリーダー配列と接触するとき)に、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進するために、リーダー配列を構成又は設計することができる。
【0114】
かかる実施形態では、モータータンパク質は、典型的には、標的ポリヌクレオチドに対するよりもリーダー配列に対する、すなわち特徴付けられる標的ポリヌクレオチドの部分に対する親和性よりも低い親和性を有する。いくつかの実施形態では、リーダーは、標的ポリヌクレオチドとは異なる構造を有する。いくつかの実施形態では、リーダーは、標的ポリヌクレオチドとは異なるタイプのヌクレオチドを含む。
【0115】
例えば、いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)を含む。かかる実施形態では、リーダーは、核酸塩基及び糖部分(例えば、スペーサー部分)の両方を欠く1つ以上のヌクレオチドを含み得る。好適なスペーサー部分は、本明細書により詳細に記載されており、C2スペーサー、C3スペーサー、C6スペーサー、iSp9スペーサー、iSp18スペーサーなどを含む。代替的に又は追加的に、リーダーは、リボヌクレオチド(RNA)、ペプチドヌクレオチド(PNA)、グリセロールヌクレオチド(GNA)、トレオースヌクレオチド(TNA)、ロックドヌクレオチド(LNA)、架橋ヌクレオチド(BNA)、又は無塩基ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、リーダーは、修飾されたリン酸結合(例えば、メチルホスホネート又はホスホチオレート結合を含む)を有する1つ以上のヌクレオチドを含み得る。
【0116】
いくつかの他の実施形態では、標的ポリヌクレオチドはリボヌクレオチド(RNA)を含む。かかる実施形態では、リーダーは、上記で定義した1つ以上のスペーサー、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、ペプチドヌクレオチド(PNA)、グリセロールヌクレオチド(GNA)、トレオースヌクレオチド(TNA)、ロックドヌクレオチド(LNA)、架橋ヌクレオチド(BNA)、脱塩基ヌクレオチド又は修飾リン酸結合を含むヌクレオチドを含み得る。
【0117】
典型的には、標的ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド(DNA)を含み、リーダーは、1つ以上のスペーサー部分(例えばC3スペーサー)及び/又は1つ以上のリボヌクレオチドを含む。
【0118】
リーダーは、標的ポリヌクレオチドとは異なる1つのタイプのポリヌクレオチドのみを含み得る。例えば、標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、リーダーは、スペーサー部分又はRNAを含み得る。リーダーは、標的ポリヌクレオチドとは異なる複数のタイプのポリヌクレオチドを含み得る。例えば、標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、リーダーは、スペーサー部分及びRNAを含み得る。リーダーは、標的ポリヌクレオチドと同じタイプのポリヌクレオチドである部分を含み得る。例えば、標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、リーダーは、スペーサーポリヌクレオチド又はRNAに加えて、DNAの部分を含み得る。かかる部分は「トラップ」と称され得、すなわち、スペーサー(例えば、C3スペーサー)及び/又はRNA(例えば、2’-メトキシウリジン)ポリヌクレオチドに基づくリーダーは、1つ以上のDNAトラップを含み得る。トラップは、典型的には、1~6個のヌクレオチド、例えば1、2、3、4又は5個のヌクレオチド、例えば1~3個のヌクレオチドなどの、1~10個のヌクレオチドを含む。したがって、標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、リーダーは、1つ以上のRNA(例えば、2’-メトキシウリジン)及び/又はスペーサー(例えば、C3スペーサー)部分と、1~10ヌクレオチド長の1つ以上のDNA(例えばチミジン)トラップとを含み得る。
【0119】
当業者であれば、リーダーがポリヌクレオチド鎖を含む場合、リーダーの配列が典型的には決定的ではなく、モータータンパク質及び特徴付けられるべき任意のポリヌクレオチドなどの他の実験条件に従って制御又は選択され得ることも理解するであろう。例示的な配列は、実施例、特に実施例10においては例証としてのみ提供する。例えば、リーダーは、配列番号70、71又は72の1つ以上などの配列、又は配列番号70、71又は72の1つ以上と少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列類似性又は同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。リーダーの配列は、典型的には、本明細書で提供される方法の有効性に悪影響を与えることなく変更することができる。
【0120】
モータータンパク質の失速
上で説明したように、本明細書で提供される方法は、失速部分で失速したモータータンパク質を上に有する標的ポリヌクレオチドの特徴付けを含む。
【0121】
任意の好適な失速部分が本明細書に提供される方法で使用され得る。いくつかの実施形態では、失速部分は、本明細書に記載の失速部位を含む。いくつかの実施形態では、失速部位は、1つ以上の失速単位を含む。
【0122】
任意の好適な失速単位を使用することができる。失速単位は、通常、モータータンパク質の動きを妨げるエネルギー障壁を提供する。例えば、失速単位は、ポリヌクレオチド上でモータータンパク質の牽引力を低下させることによってモータータンパク質を失速させ得る。これは、例えば、脱塩基スペーサー、すなわち、塩基がポリヌクレオチドアダプター中の1つ以上のヌクレオチドから除去されたスペーサーを使用することによって達成され得る。スペーサーは、例えば、大きい化学基を導入してポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の移動を物理的に妨げることによって、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の移動を物理的にブロックし得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、失速単位は、ポリマーなどの直鎖状分子を含み得る。典型的には、かかる失速単位は、標的ポリヌクレオチドとは異なる構造を有する。例えば、標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、当該又は各失速単位は、典型的には、DNAを含まない。具体的には、標的ポリヌクレオチドがデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)である場合、当該又は各失速単位は、好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)、又はヌクレオチド側鎖を有する合成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、失速単位は、1つ以上のニトロインドール、1つ以上のイノシン、1つ以上のアクリジン、1つ以上の2-アミノプリン、1つ以上の2-6-ジアミノプリン、1つ以上の5-ブロモ-デオキシウリジン、1つ以上の逆位チミジン(逆位dT)、1つ以上の逆位ジデオキシ-チミジン(ddT)、1つ以上のジデオキシ-シチジン(ddC)、1つ以上の5-メチルシチジン、1つ以上の5-ヒドロキシメチルシチジン、1つ以上の2’-O-メチルRNA塩基、1つ以上のイソ-デオキシシチジン(Iso-dC)、1つ以上のイソ-デオキシグアノシン(Iso-dG)、1つ以上のC3(OC3H6OPO3)基、1つ以上の光切断可能な(PC)[OC3H6-C(O)NHCH2-C6H3NO2-CH(CH3)OPO3]基、1つ以上のヘキサンジオール基、1つ以上のスペーサー9(iSp9)[(OCH2CH2)3OPO3]基、若しくは1つ以上のスペーサー18(iSp18)[(OCH2CH2)6OPO3]基、又は1つ以上のチオール結合を含み得る。失速部位は、これらの基の任意の組み合わせを含み得る。これらの基のうちの多くは、IDT(登録商標)(Integrated DNA Technologies(登録商標))から市販されている。例えば、C3、iSp9、及びiSp18スペーサーは全てIDT(登録商標)から入手可能である。失速部位は、失速単位として任意の数の上記の基を含み得る。例えば、失速部位は、1~約12個以上(例えば、約1~約8個、例えば1~約4個などの1~約6個)のかかる失速単位を含み得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、失速単位は、モータータンパク質を失速させる1つ以上の化学基を含み得る。いくつかの実施形態では、好適な化学基は、1つ以上のペンダント化学基である。1つ以上の化学基は、ポリヌクレオチド中の1つ以上の核酸塩基に結合し得る。1つ以上の化学基は、ポリヌクレオチドの骨格に付着し得る。2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個以上などの任意の数の適切な化学基が存在し得る。好適な基には、フルオロフォア、ストレプトアビジン及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン、並びにジベンジルシクロオクチン基が含まれるが、これらに限定されない。
【0125】
いくつかの実施形態では、失速単位はポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、失速単位は、ポリペプチド又はポリエチレングリコール(PEG)であるポリマーを含み得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、失速単位は、1つ以上の脱塩基ヌクレオチド(すなわち、核酸塩基を欠くヌクレオチド)、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個以上の脱塩基ヌクレオチドを含み得る。核酸塩基は、脱塩基ヌクレオチドにおける-H(idSp)又は-OHによって置き換えられ得る。脱塩基残基は、1つ以上の隣接するヌクレオチドから核酸塩基を除去することによって、標的ポリヌクレオチド中に挿入され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、3-メチルアデニン、7-メチルグアニン、1,N6-エテノアデニンイノシン、又はヒポキサンチンを含むように修飾され得、核酸塩基は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(hAAG)を使用してこれらのヌクレオチドから除去され得る。代替的には、ポリヌクレオチドは、ウラシルを含むように修飾され得、核酸塩基は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)によって除去され得る。一実施形態では、1つ以上の失速単位は、いずれの脱塩基ヌクレオチドも含まない。
【0127】
好適な失速単位は、ポリヌクレオチド/ポリヌクレオチドアダプターの性質、モータータンパク質、及び本方法が実行されるべき条件に応じて設計又は選択することができる。例えば、多くのポリヌクレオチドプロセシングタンパク質がDNAをインビボでプロセシングし、かかるタンパク質が、典型的には、DNAではないいずれかのものを使用して失速し得る。
【0128】
したがって、提供される方法のいくつかの実施形態では、モータータンパク質は、以下から独立して選択される1つ以上の失速単位を含む失速部位で失速する:
-ポリヌクレオチド二次構造、好ましくはヘアピン又はG-四重鎖(TBA)、
-好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)及び脱塩基ヌクレオチドから選択される核酸類似体、
-ニトロインドール、イノシン、アクリジン、2-アミノプリン、2-6-ジアミノプリン、5-ブロモ-デオキシウリジン、反転チミジン(反転dTs)、反転ジデオキシ-チミジン(ddTs)、ジデオキシ-シチジン(ddCs)、5-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、2’-O-メチルRNA塩基、イソデオキシシチジン(Iso-dCs)、イソデオキシグアノシン(Iso-dGs)、C3(OC3H6OPO3)基、光切断可能(PC)[OC3H6-C(O)NHCH2-C6H3NO2-CH(CH3)OPO3]基、ヘキサンジオール基、スペーサー9(iSp9)[(OCH2CH2)3OPO3]基、スペーサー18(iSp18)[(OCH2CH2)6OPO3]基、及びチオール連結、から選択されるスペーサー単位、並びに
-フルオロフォア、トラプタビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンなどのアビジン、及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン及びジベンジルシクロオクチン基。
【0129】
本明細書に記載の失速部分を使用して、開示される再読み取り方法での使用に好適なリーダーを構成することもできる。上記で説明したように、かかる方法のいくつかの実施形態では、モータータンパク質がリーダーの近くにあるとき(例えば、モータータンパク質がリーダー配列と接触するとき)に、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドの解離を促進するために、本明細書に記載のリーダー配列を構成又は設計する。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、上記のスペーサー部分のいずれかを含み得る。
【0130】
モータータンパク質の脱失速
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、失速部分を検出器(例えば、ナノポア)と接触させ、それによってモータータンパク質を脱失速させることを含む。脱失速の後、モータータンパク質は、本明細書でより詳細に説明するように、検出器から出る(例えば、ナノポアから出る)ポリヌクレオチドの移動を制御することができる。
【0131】
その最も単純な形態では、失速部分を検出器、例えばナノポアと接触させることで、失速部分からモータータンパク質を脱失速せることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書に記載のようにモータータンパク質を能動的に脱失速させることを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質を脱失速させることは、ポリヌクレオチドに脱失速力を適用することを含み、脱失速力は、読み取り力よりも小さい、かつ/又は反対方向であり、読み取り力は、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドの動きを制御し、ポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を決定するための測定が行われている間に適用される力である。
【0133】
例えば、読み取り力は通常、+2V~-2V、通常-400mV~+400mVの電位として提供され得る。使用される電圧は、好ましくは、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-100mV、-50mV、-20mV、及び0mVから選択される下限と、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、及び+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲内である。使用される電圧は、より好ましくは100mV~240mVの範囲内、最も好ましくは120mV~220mVの範囲内である。通常、脱失速力は読み取り力よりも小さい。例えば、脱失速力は、約-100mV~+100mV、例えば約-50mV~約+50mV、例えば約-25mV~約+25mVであり得る。
【0134】
例えば、いくつかの実施形態では、読み取り力は、+50mV~+300mV、より好ましくは+120mV~+150mVなどの+100mV~+200mVの範囲の電位であり、脱失速力は、-40mV~+40mVなどの-50~+50mV、例えば0mVなどの-20mV~+20mVの電位である。
【0135】
いくつかの実施形態では、脱失速力は、読み取り力と反対方向である。例えば、いくつかの実施形態では、読み取り力は正の電位として適用され、脱失速力は負の電位として適用される。他の実施形態では、読み取り力は負の電位として適用され、脱失速力は正の電位として適用される。脱失速力が読み取り力と反対方向である場合、それは読み取り力と同じ大きさであってもよく又は、読み取り力よりも小さい大きさであってもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、脱失速力はゼロ電位で適用される。例えば、いくつかの実施形態では、読み取り力は正の電位として適用され、脱失速力はゼロの適用電位で適用される。他の実施形態では、読み取り力は負の電位として適用され、脱失速力はゼロ適用電位で適用される。
【0137】
いくつかの実施形態では、脱失速力は、モータータンパク質が失速部分から脱失速するのに十分な時間適用される。いくつかの実施形態では、脱失速力は、約10ms~約1sなどの1ms~約10s、例えば、約300ms~約500msなどの約100ms~約700ms、適用される。
【0138】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質を脱失速させることは、脱失速力と読み取り力との間で適用される力を1回以上変更することを含む。いくつかの実施形態では、このように適用された力を変更することは、適用される電位を脱失速力と読み取り力との間でステッピング又は傾斜させることを含む。傾斜させる場合、任意の好適な波形を使用することができ、例えば、傾斜は、線形傾斜、指数傾斜、又はシグモイド傾斜であり得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、適用される力は、単一の脱失速力と読み取り力との間で変化する。いくつかの実施形態では、適用される力は、一連の異なる脱失速力と読み取り力との間で変化する。いくつかの実施形態では、適用される力は、一連の増加する脱失速力と読み取り力との間で段階的に変化する。各ステップにおける脱失速力は、任意の好適な脱失速力、例えば、本明細書に記載の脱失速力のいずれであってもよく、各ステップは、任意の好適な期間、例えば本明細書に記載の任意の期間にわたって適用し得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、脱失速力は読み取り力と同じである。これは、「フリーランニング」設定での脱失速とも称される。
【0141】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、1つ以上の失速単位及び1つ以上の停止部分を含む失速部位で失速し、1つ以上の停止部分をナノポアと接触させると、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動が遅延し、それによって、モータータンパク質が1つ以上の失速単位から脱失速する。かかる実施形態は、自走設定での使用に好適である。
【0142】
いくつかの実施形態では、停止部分は、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を妨げるエネルギー障壁を提供する。例えば、停止部分は、ポリヌクレオチドがナノポアを通過することができるようになる前に除去する必要がある物理的ブロックを提供することによって、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を妨げ得る。
【0143】
理論に縛られるものではないが、本発明者らは、停止部分が、モータータンパク質が失速単位を克服して失速するのに十分な時間、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を遅延させると考える。
【0144】
いくつかの実施形態では、停止部分は、ポリヌクレオチド二次構造、好ましくはヘアピン又はG四重鎖(TBA)を含む1つ以上の停止単位を含む。かかる二次構造は、ポリヌクレオチドがナノポアを自由に通過するのを妨げる。停止部分をナノポアと接触させると、二次構造が解離する(例えば、ほどける)。二次構造が解離するのにかかる時間により、モータータンパク質が失速単位から脱失速することが可能になる。
【0145】
いくつかの実施形態では、停止部分は、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを含む1つ以上の停止単位を含む。オリゴヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、ナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を防止し得る。停止部分をナノポアと接触させると、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドから解離する。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドから解離するのにかかる時間により、モータータンパク質が失速単位から脱失速することが可能になる。
【0146】
いくつかの実施形態では、停止部分は、好ましくはペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)から選択される核酸類似体、架橋された核酸(BNA)及び脱塩基ヌクレオチドを含む1つ以上の停止ユニットを含む。核酸類似体は、標的ポリヌクレオチドと共に提供されてもよく、又は標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするか、そうでなければ結合されてもよい。核酸類似体が標的ポリヌクレオチドと共に提供されるとき、停止部分をナノポアと接触させると、核酸類似体がナノポアを通過する。核酸類似体がポアを通過するのにかかる時間により、モータータンパク質が失速単位から脱失速することが可能になる。核酸類似体が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズするとき、停止部分をナノポアと接触させると、典型的には、標的ポリヌクレオチドがナノポアを通過することができるように、核酸類似体が標的ポリヌクレオチドから解離する。核酸類似体がポリヌクレオチドから解離するのにかかる時間により、モータータンパク質が失速単位から脱失速することが可能になる。
【0147】
いくつかの実施形態では、停止部分は、フルオロフォア、トラプタアビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンなどのアビジン、及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン及びジベンジルシクロオクチン基などの化学基を含む1つ以上の停止単位を含む。化学基は、標的ポリヌクレオチドに付着し、標的ポリヌクレオチドがナノポアを通過するのを防止し得る。いくつかの実施形態では、停止部分をナノポアと接触させると、標的ポリヌクレオチドから化学基が除去される。いくつかの実施形態では、停止部分をナノポアと接触させると、化学基がナノポアを通過する。化学基が標的ポリヌクレオチドから除去される、及び/又はナノポアを通過するのにかかる時間により、モータータンパク質が失速単位から脱失速することが可能になる。
【0148】
いくつかの実施形態では、停止部分は、ポリヌクレオチド結合タンパク質を含む1つ以上の停止単位を含む。好適なポリヌクレオチド結合タンパク質は、本明細書でより詳細に記載されている。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドに結合し、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を防止し得る。停止部分をナノポアと接触させると、例えば、ポリヌクレオチド結合タンパク質が移動してモータータンパク質と接触するときに、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動が遅延する。実行にかかる時間により、モータータンパク質が失速単位から脱失速することが可能になる。
【0149】
理論に束縛されるものではないが、本発明者らはまた、停止部分が停止単位におけるポリヌクレオチドの立体構造をしばしば決定すると考えている。これは、失速部分が1つ以上のスペーサー18(iSp18)[(OCH2CH2)6OPO3]などの直鎖基を含む場合に特に該当する。理論に束縛されるものではないが、かかる失速単位がナノポアと接触している場合、ポアにわたって適用された力(例えば、適用された電圧場)は、失速部分をほぼ直線的に伸ばすことができると考えられる。この立体構造では、モータータンパク質は通常、失速部分を通過して脱失速することができない。しかしながら、標的ポリヌクレオチドが停止部分で停止している場合、失速単位の環境は溶液中の環境と同様であると考えられ、失速単位はよりコンパクトな疑似ランダムコイル構成を採用し得る。この構成では、モータータンパク質が失速単位を克服して脱失速するのがより簡単になり得る。
【0150】
したがって、いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、以下から独立して選択される1つ以上の失速単位及び1つ以上の停止単位を含む失速部位で失速し:
-ポリヌクレオチド二次構造、好ましくはヘアピン又はG-四重鎖(TBA)、
-好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)及び脱塩基ヌクレオチドから選択される核酸類似体、
-フルオロフォア、トラプタビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンなどのアビジン、及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン及びジベンジルシクロオクチン基、並びに
-ポリヌクレオチド結合タンパク質、
かつ1つ以上の停止部分をナノポアと接触させると、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動が遅延し、それによってモータータンパク質が1つ以上の失速単位から脱失速する。
【0151】
モータータンパク質
当業者が理解するであろうように、任意の好適なモータータンパク質を本明細書に提供される方法及び製品に使用することができる。
【0152】
モータータンパク質は、ポリヌクレオチドに結合することができ、かつ検出器、例えばナノポア、に対する、例えばポアを通るその移動を制御することができる任意のタンパク質であり得る。
【0153】
より詳細には、ヘリカーゼなどのモータータンパク質は、典型的には、少なくとも2つの活性作動モード(移動を促進するために必要な全ての成分、例えばATP及びMg2+が提供されている場合)と1つの不活性作動モード(移動を容易にするために必要な成分が提供されていない場合、又はアクティブモードを防ぐようにモータータンパク質が修飾されている場合)においてDNAの移動を制御することができる。
【0154】
移動を促進するために必要な全ての成分が提供されると、モータータンパク質は、DNAなどのポリヌクレオチドに沿って5’-3’方向又は3’-5’方向のいずれかに移動することができる。多くのモータータンパク質は、DNAなどのポリヌクレオチドを5’-3’方向にプロセシングする。このようにポリヌクレオチドの動きを制御するモータータンパク質は、典型的には、本明細書で提供される方法での使用に好適である。
【0155】
しかしながら、モータータンパク質が、移動を促進するために必要な成分を備えていない場合、又はナノポアに対するポリヌクレオチドの運動を能動的に制御することを妨げるために修飾されている場合、それは依然としてナノポアに対するポリヌクレオチドの運動を受動的に制御することができる。例えば、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドに結合し、ポリヌクレオチドが適用された場によって(例えば、本明細書で提供される方法における第1の力によって)ポア内に引き込まれると、ポリヌクレオチドの動きを遅くするブレーキとして作用することができる。「不活性」モードでは、適用された力が、ナノポアを通してポリヌクレオチドを移動させる推進力を提供するため、通常、DNAが3’又は5’のどちらで捕捉されるか(つまり、ナノポアを5’-3’方向又は3’-5’方向で移動するか)は問題ではない。しかしながら、かかる実施形態では、モータータンパク質は、例えばブレーキとして作用することにより、ナノポアに対するポリヌクレオチドの動きを依然として制御し得る。不活性モードの場合、モータータンパク質によるポリヌクレオチドの移動の制御は、ラチェッティング、スライディング、及びブレーキングを含むいくつかの方式で説明することができる。通常、本明細書で提供される方法は、受動モードで作動するモータータンパク質の使用を含まない。しかしながら、ポリヌクレオチド結合タンパク質を使用する本明細書で提供される方法の実施形態では、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、受動モードで作動するモータータンパク質であり得る。
【0156】
上記で説明したように、本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態は、ナノポアを通るポリヌクレオチド鎖の移動を妨げる停止部分としてのポリヌクレオチド結合タンパク質の使用も含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、本明細書に記載のモータータンパク質であり得る。他の実施形態では、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドに結合するが、ポリヌクレオチド処理能力を持たないタンパク質であり得、すなわち、いくつかの実施形態では、それはモータータンパク質ではない。
【0157】
ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドと相互作用することができるポリペプチドである。酵素は、個々のヌクレオチド又はヌクレオチドのより短い鎖、例えばジ-又はトリヌクレオチドを形成するために、ポリヌクレオチドを切断することによってポリヌクレオチドを修飾してもよい。酵素は、それを配向するか、又はそれを特定の位置に移動させることによって、ポリヌクレオチドを修飾してもよい。本明細書で使用されるモータータンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリング酵素であっても、それに由来してもよい。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリング酵素であっても、それに由来してもよい。
【0158】
一実施形態では、モータータンパク質は、より好ましくは、酵素分類(EC)グループ3.1.11、3.1.13、3.1.14、3.1.15、3.1.16、3.1.21、3.1.22、3.1.25、3.1.26、3.1.27、3.1.30、及び3.1.31のうちのいずれかのメンバーに由来する。
【0159】
典型的には、モータータンパク質は、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、トポイソメラーゼ、又はそれらの変異形である。
【0160】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、修飾されることで、モータータンパク質がポリヌクレオチドから脱会合するのが防止され得る。これは、標的ポリヌクレオチドを再読み取りすることを含む、本明細書に開示される方法において特に有用である。したがって、かかる方法のいくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドはモータータンパク質から脱会合しない。
【0161】
本明細書で使用される用語「脱会合」は、標的ポリヌクレオチドからのモータータンパク質の解離を指す。ゆえに、モータータンパク質は、それが標的ポリヌクレオチドから例えば反応媒体へと解離するのを防ぐために改変され得る。モータータンパク質の潜在的な「離脱」を、標的ポリヌクレオチドからのモータータンパク質の「脱結合」と区別することが重要である。本明細書で使用される「脱結合」は、標的ポリヌクレオチドのモータータンパク質の活性部位(本明細書でより詳細に記載)の一時的な放出を指すが、離脱を意味するものではない。したがって、例えば、モータータンパク質は、モータータンパク質がポリヌクレオチドから脱会合するのを防止するが、モータータンパク質がポリヌクレオチドから脱結合するのを防止しないように、修飾され得る。結合していない場合、モータータンパク質は標的ポリヌクレオチドと結合したままである。例えば、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドとの結合を維持し得る(すなわち、標的ポリヌクレオチドからの脱会合を防止し得る)が、それは、標的ポリヌクレオチドの周りでトポロジー的に閉じているためである。ポリヌクレオチド結合部位は、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドと結合したままである間、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドに結合又は脱結合し得るよう、標的ポリヌクレオチドに対して自由に結合又は脱結合のままであり得る。モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドから脱結合するとき、適用された力の下で標的ポリヌクレオチド上を(例えば、それに沿って)移動することができ、標的ポリヌクレオチドに再結合し得る。標的ポリヌクレオチドに会合しているが、標的ポリヌクレオチドから脱結合しているとき、モータータンパク質は標的ポリヌクレオチドから解離することができない。
【0162】
モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、任意の好適な方式で離脱を防止するように適合させることができる。例えば、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質がポリヌクレオチドにロードされ、その後、それがポリヌクレオチドから脱会合するのを防止するために修飾され得る。代替的に、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質がポリヌクレオチドにロードされる前に、それがポリヌクレオチドから脱会合するのを防止するように修飾され得る。モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質がポリヌクレオチドから脱会合するのを防止するためのモータータンパク質の修飾は、当該技術分野で既知の方法、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2014/013260で考察されている方法を使用して、かつモータータンパク質がポリヌクレオチド鎖から脱会合するのを防止するためのヘリカーゼなどのモータータンパク質の修飾について記載する一節を特に参照して達成することができる。例えば、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、テトラメチルアゾジカルボキサミド(TMAD)で処理することによって修飾することができる。様々な他の閉鎖部分は、本明細書により詳細に記載される。
【0163】
例えば、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質が鎖から脱会合したときにその鎖が通過することができるポリヌクレオチド脱結合開口部、例えば、空洞、溝、又は空隙を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド脱結合開口部は、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質がヌクレオチドから脱会合したときにヌクレオチドが通過することができる開口部である。いくつかの実施形態では、所与のモータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質のポリヌクレオチド脱結合開口部は、その構造を参照することにより、例えば、そのX線結晶構造を参照することにより決定することができる。X線結晶構造は、ポリヌクレオチド基質の存在下及び/又は不在下で得ることができる。いくつかの実施形態では、所与のモータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質におけるポリヌクレオチド脱結合開口部の位置は、当該技術分野で既知の標準パッケージを使用して分子モデリングによって推定又は確認され得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド脱結合開口部は、モータータンパク質の1つ以上の部分、例えば、1つ以上のドメインの移動によって過渡的に生成され得る。
【0164】
モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチド脱結合開口部を閉鎖することによって修飾され得る。ポリヌクレオチド脱結合開口部は、閉鎖部分で閉鎖され得る。したがって、ポリヌクレオチド脱結合開口部を閉鎖することにより、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質がポリヌクレオチドから脱会合するのが防止され得る。例えば、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチド脱結合開口部を共有結合的に閉鎖することによって修飾され得る。しかしながら、上で説明したように、ポリヌクレオチド脱結合開口部を閉じることは、標的ポリヌクレオチドがモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から脱結合することを必ずしも妨げない。いくつかの実施形態では、このように対処するのに好ましいタンパク質は、ヘリカーゼである。
【0165】
いくつかの実施形態では、特に標的ポリヌクレオチドを再読み取りすることを含む開示される方法の実施形態では、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドからの標的ポリヌクレオチドの脱会合を防ぐために修飾され得る。モータータンパク質は、任意の好適な様式で修飾され得る。
【0166】
理論に拘束されるわけではないが、本発明者らは、脱結合を促進し、再結合を遅延させることが再読み取りを促進する可能性があると考えている。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、これは、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドに対して行う各ステップが、モータータンパク質がポリヌクレオチドから脱結合する確率と関連しているからであると考えている。かかる脱結合の可能性は、いわゆるオフ(off)速度で識別され得る。オフ速度の増加は、ポリヌクレオチド鎖に対するモータータンパク質のドロップバックを促進すると考えられる。同様に、再び理論に拘束されるわけではないが、本発明者らは、標的ポリヌクレオチドから脱結合されると、モータータンパク質が再結合する前に標的ポリヌクレオチドに沿って移動することができる距離がオン(on)速度と関連すると考える。したがって、再読み取りは、標的ポリヌクレオチドに関してモータータンパク質のオフ速度を増加させ、オン速度を減少させることによって促進され得る。所与のタイプのポリヌクレオチドについてモータータンパク質のオフ速度及びオン速度を調整することは、本明細書の開示を考慮して当業者の能力の範囲内である。したがって、モータータンパク質は、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進するため、及び/又はモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させるために、修飾され得る。いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進すること、及びモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させること、の両方を促進するよう修飾される。
【0167】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質は、(i)標的ポリヌクレオチドの周りのモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位をトポロジー的に閉鎖し、(ii)モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進する、及び/又はモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させるための、閉鎖部分で修飾され得る。モータータンパク質は、かかる閉鎖部分の付着を促進するために、任意の好適な様式で修飾され得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、閉鎖部分は、二官能性架橋部分を含み得る。閉鎖部分は、二官能性架橋剤を含み得る。二官能性架橋剤は、モータータンパク質上の2つの点で付着し、モータータンパク質のポリヌクレオチド脱結合開口部を閉鎖し、それによってモータータンパク質からのポリヌクレオチドの離脱を防止する一方で、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からのポリヌクレオチドの脱結合を可能にする。
【0169】
閉鎖部分は、モータータンパク質上の任意の好適な位置に付着し得る。例えば、閉鎖部分は、モータータンパク質の2つのアミノ酸残基を架橋し得る。典型的には、閉鎖部分によって架橋される少なくとも1つのアミノ酸は、システイン又は非天然アミノ酸である。システイン又は非天然アミノ酸は、モータータンパク質の天然に存在するアミノ酸残基の置換又は修飾によってモータータンパク質に導入され得る。非天然アミノ酸を導入する方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、かかる非天然アミノ酸を含む合成ポリペプチド鎖との天然化学ライゲーションが含まれる。システインをモータータンパク質に導入するための方法も、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainsview,New York(2012)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 114),John Wiley&Sons,New York(2016)などの参照文献に記載される技術を使用して、同様に当業者の技量の範囲内である。
【0170】
いくつかの実施形態では、閉鎖部分は、約1Å~約100Åの長さを有する。閉鎖部分の長さは、静的結合長に従って、又はより好ましくは分子動力学シミュレーションを使用して計算することができる。長さは、例えば、約2Å~約80Å、例えば約5Å~約50Å、例えば約8~約30Å、例えば約10~約25Å又は約20Å、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19Åであり得る。
【0171】
決して理論に縛られるわけではないが、本発明者らは、一般に、より長い閉鎖部分がポリヌクレオチドからのモータータンパク質のオフ速度を増加させ、したがって再読み取りを促進し得ると考える。
【0172】
いくつかの実施形態では、閉鎖部分は結合を含む。いくつかの実施形態では、閉鎖部分はジスルフィド結合を含む。ジスルフィド結合は、モータータンパク質をTMADなどの任意の好適な試薬で処理することによって形成され得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、閉鎖部分は、モータータンパク質上の2つのクリックケミストリー基の間に結合を形成する試薬を含む。クリックケミストリー試薬の例は、本明細書に提供される。
【0174】
いくつかの実施形態では、閉鎖部分はタンパク質を含む。例えば、ビオチン基がモータータンパク質上に存在し、閉鎖部分がストレプトアビジンを含んでいてもよい。snoopタグ又はspyタグなどのタグは、モータータンパク質上に存在し得、閉鎖部分は、それぞれsnoopキャッチャー又はspyキャッチャーなどのタンパク質を含み得る。
【0175】
いくつかの実施形態では、閉鎖部分は、式[A-B-C]の構造を含み、式中、A及びCが、モータータンパク質中のアミノ酸残基と反応するための各々独立した反応性官能基であり、Bが、連結部分である。いくつかの実施形態では、閉鎖部分は、チオ基、例えばシステイン残基上のチオール基の間の結合を含む。したがって、いくつかの実施形態では、A及びCはシステイン反応性官能基である。いくつかの実施形態では、連結部分Bは、直鎖状若しくは分岐状の、非置換若しくは置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、カルボシクリレン又はヘテロシクリレン部分を含み、該部分が、1つ以上の、O、N(R)、S、C(O)、C(O)NR、C(O)O、非置換若しくは置換アリーレン、アリーレン-アルキレン、ヘテロアリーレン、ヘテロアリーレン-アルキレン、カルボシクリレン、カルボシクリレン-アルキレン、ヘテロシクリレン及びヘテロシクリレン-アルキレンから選択される原子又は基で、任意選択的に中断されるか又は終了し、式中、Rが、H、非置換若しくは置換アルキル、及び非置換若しくは置換アリールから選択される。典型的には、RはH又はメチルであり、より典型的にはHである。
【0176】
典型的には、アルキレン基はC1-20アルキレン基である。典型的には、アルケニレン基はC2-20アルケニレン基である。典型的には、アルキニレン基はC2-20アルキニレン基である。典型的には、アリーレン基はC6-12アリーレン基である。典型的には、ヘテロアリーレン基は、5~12員のヘテロアリーレン基である。典型的には、カルボシクリレン基はC5-12カルボシクリレン基である。典型的には、ヘテロシクリレン基は、5~12員のヘテロシクリレン基である。
【0177】
典型的には、アルキレン、アルケニレン、又はアルキニレン部分は、O、N(R)、S、C(O)、C(O)NR、及びC(O)O及び非置換若しくは置換アリーレンから選択される原子又は基で中断されるか又は終了し得る。通常、アルキレン、アルケニレン、又はアルキニレン部分は、O及びN(R)及び非置換若しくは置換アリーレンから選択される1つ以上の原子又は基によって中断されていないか、中断されているか、又はそれらで終了し得る。より多くの場合、アルキレン、アルケニレン、又はアルキニレン部分は、1つ以上のO原子によって中断されていないか、中断されているか、又は1つ以上のO原子で終了し得る。
【0178】
例えば、結合部分はしばしば、非置換若しくは置換C1-10アルキレン、C2-10アルケニレン、又はC2-10アルキニレン部分であり、1つ以上のO原子によって中断されないか、中断されるか、又はO原子で終了する。
【0179】
いくつかの実施形態では、連結部分Bはアルキレン、オキシアルキレン又はポリオキシアルキレン基を含み、及び/又はA及びCは、各々マレイミド基である。アルキレン、オキシアルキレン又はポリオキシアルキレン基は、例えば、約5Å~約50Å、例えば、約10~約25Åなどの約8~約30Åの長さを有し得る。
【0180】
例えば、連結部分は、(CH2CH2O)xなどのPEG部分を含んでもよく、式中、xは1~10、例えば1~5、例えば1、2又は3である。例示的な連結部分は実施例9に記載されており、例えば、BMOE(1,2-ビスマレイミドエタン)、BMOP(1,3-ビスマレイミドプロパン)、BMB(1,4-ビスマレイミドブタン)、BM(PEG)2(1,8-ビスマレイミド-ジエチレングリコール)及びBM(PEG)3(1,11-ビスマレイミド-トリエチレングリコール)が挙げられる。
【0181】
上記のような閉鎖部分を使用して閉鎖されるのに好適なモータータンパク質は、本明細書でより詳細に考察される。いくつかの好ましい実施形態では、モータータンパク質はヘリカーゼ、例えば本明細書に記載のDdaヘリカーゼである。
【0182】
一実施形態では、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、エキソヌクレアーゼであるか、又はエキソヌクレアーゼに由来する。好適な酵素には、E.coli由来のエキソヌクレアーゼI(配列番号1)、E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素(配列番号2)、T.thermophilus由来のRecJ(配列番号3)及びバクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号4)、TatDエキソヌクレアーゼ、並びにそれらの変異形が含まれるが、これらに限定されない。配列番号3に示される配列又はその変異形を含む3つのサブユニットが相互作用して、トリマーエキソヌクレアーゼを形成する。
【0183】
一実施形態では、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリメラーゼに由来する。ポリメラーゼは、PyroPhage(登録商標)3173 DNAポリメラーゼ(Lucigen(登録商標)Corporationから市販されている)、SDポリメラーゼ(Bioron(登録商標)から市販されている)、NEB製のKlenow、又はそれらの変異形であり得る。一実施形態では、酵素は、Phi29 DNAポリメラーゼ(配列番号5)又はその変異形である。本発明に使用され得るPhi29ポリメラーゼの修飾されたバージョンが米国特許第5,576,204号に開示されている。
【0184】
一実施形態では、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、トポイソメラーゼに由来する。一実施形態では、トポイソメラーゼは、好ましくは、部分分類(EC)群5.99.1.2及び5.99.1.3のうちのいずれかのメンバーである。トポイソメラーゼは、RNA鋳型からのcDNAの形成を触媒することができる酵素である逆転写酵素であり得る。それらは、例えば、New England Biolabs(登録商標)及びInvitrogen(登録商標)から市販されている。
【0185】
一実施形態では、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、ヘリカーゼに由来する。任意の好適なヘリカーゼを本明細書に提供される方法に従って使用することができる。例えば、本開示に従って使用される当該又は各酵素は独立して、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、TraIヘリカーゼ、TrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼ、及びDdaヘリカーゼ、又はそれらの変異形から選択され得る。モノマーヘリカーゼは、一緒に付着したいくつかのドメインを含み得る。例えば、TraIヘリカーゼ及びTraIサブグループヘリカーゼは、2つのRecDヘリカーゼドメイン、リラクゼースドメイン、及びC末端ドメインを含み得る。これらのドメインは、典型的には、オリゴマーを形成することなく機能することができるモノマーヘリカーゼを形成する。好適なヘリカーゼの具体的な例には、Hel308、NS3、Dda、UvrD、Rep、PcrA、Pif1、及びTraIが挙げられる。これらのヘリカーゼは、典型的には、一本鎖DNAに作用する。二本鎖DNAの両方の鎖に沿って移動することができるヘリカーゼの例には、FtfK及びヘキサマー酵素複合体、又はRecBCDなどのマルチサブユニット複合体が挙げられる。一実施形態では、モータータンパク質は、Dda(DNA依存性ATPase)ヘリカーゼである。
【0186】
Hel308ヘリカーゼは、その全容が参照により組み込まれるWO2013/057495などの出版物に記載されている。RecDヘリカーゼは、その全容が参照により組み込まれるWO2013/098562などの出版物に記載されている。XPDヘリカーゼは、その全容が参照により組み込まれるWO2013/098561などの出版物に記載されている。Ddaヘリカーゼは、その各々の全容が参照により組み込まれるWO2015/055981及びWO2016/055777などの出版物に記載されている。
【0187】
一実施形態では、ヘリカーゼは、配列番号6に示される配列(TrwcCba)若しくはその変異形、配列番号7に示される配列(Hel308Mbu)若しくはその変異形、又は配列番号8に示される配列(Dda)若しくはその変異形を含み得る。変異形は、本明細書で考察される方式のうちのいずれかで天然配列とは異なり得る。配列番号8の例示的な変異形は、E94C/A360Cを含む。配列番号8の更なる例示的な変異形は、E94C/A360C、次いで(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いでG1及びG2の付加)を含む。
【0188】
典型的には、モータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、燃料結合部位を有し得る。DNAの活性的な巻き戻しは、例えばモータータンパク質における加水分解の促進と共役し得る。
【0189】
燃料は、典型的には、遊離ヌクレオチド又は遊離ヌクレオチド類似体である。遊離ヌクレオチドは、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、及びデオキシシチジン三リン酸(dCTP)のうちの1つ以上であり得るが、これらに限定されない。遊離ヌクレオチドは、通常、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、又はdCMPから選択される。遊離ヌクレオチドは、典型的には、アデノシン三リン酸(ATP)である。
【0190】
モータータンパク質の補因子は、モータータンパク質が機能することを可能にする因子である。補因子は、好ましくは、二価金属カチオンである。二価金属カチオンは、好ましくは、Mg2+、Mn2+、Ca2+、又はCo2+である。補因子は、最も好ましくは、Mg2+である。
【0191】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、本明細書で使用されるモータータンパク質以外のものである。本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチド結合タンパク質及びポリヌクレオチド結合部分という用語は、交換可能に使用することができる。
【0192】
例えば、ポリヌクレオチド結合タンパク質又はポリヌクレオチド結合部分は、ヘリックス-ヘアピン-ヘリックス(HhH)ドメイン、真核一本鎖結合タンパク質(SSB)、細菌SSB、古細菌SSB、ウイルスSSB、二本鎖結合タンパク質、スライディングクランプ、進行因子、DNA結合ループ、複製開始タンパク質、テロメア結合タンパク質、リプレッサー、ジンクフィンガー及び増殖細胞核抗原(PCNA)から独立して選択される1つ以上のドメインを含み得る。
【0193】
ヘリックス-ヘアピン-ヘリックス(HhH)ドメインは、配列非特異的な様式でDNAに結合するポリペプチドモチーフである。好適なドメインとしては、メタノピルス・カンドレリ由来のトポイソメラーゼV由来のドメインH(残基696~751)及びドメインH1(残基696~802)(配列番号54)が挙げられる。ポリヌクレオチド結合部分は、配列番号55に示される配列番号54のドメインH-L又はそのポリヌクレオチド結合変異体であり得る。HhHドメインは、配列番号40又は48又は49に示される配列、又はそのポリヌクレオチド結合改変体を含み得る。
【0194】
SSBは、配列非特異的な様式で高い親和性で一本鎖DNAに結合する。SSBは、以下の系列に分類される:クラス:全てのベータタンパク質、フォールド:OBフォールド、スーパーファミリー:核酸結合タンパク質、ファミリー:一本鎖DNA結合ドメイン、SSB。SSBは、ヒト、マウス、ラット、真菌、原生動物又は植物などの真核生物、細菌及び古細菌などの原核生物、又はウイルスに由来し得る。真核生物のSSBは、複製タンパク質A(RPA)としても知られている。ほとんどの場合、それらは異なるサイズのユニットで形成されたヘテロトリマーである。より大きな単位の一部(例えば、Saccharomyces cerevisiaeのRPA70)は安定しており、モノマー形態でssDNAに結合する。細菌のSSBは、安定なホモテトラマー(例えば、E.coli、Mycobacterium smegmatis及びHelicobacter pylori)又はホモダイマー(例えば、Deinococcus radiodurans及びThermotoga maritima)としてDNAに結合する。クレン古細菌であるSulfolobus solfataricusによってコードされるSSBなどのいくつかは、ホモテトラマーである。他の種からのいくつかのSSBは、モノマーであることが示されている(Methanococcus jannaschii及びMethanothermobacter thermoautotrophicum)。Archaeoglobus fulgidus及びMethanococcoides burtoniiを含む古細菌の更に他の種は、RPAと配列が類似している2つのオープンリーディングフレームを含む。ウイルスSSBはDNAとモノマーとして結合する。
【0195】
SSBは、典型的には、野生型タンパク質と比較して正味の負電荷がないか、正味の負電荷が減少したカルボキシ末端(C末端)領域を有するように選択又は修飾される。かかるSSBは、通常、膜貫通孔をブロックしない。SSBのC末端領域は、典型的には、C末端におけるSSBの最後の約3分の1、4分の1、5分の1又は8分の1である。C末端領域は、典型的には、SSBのC末端の最後の約10アミノ酸から最後の約60アミノ酸まで、例えば、SSBのC末端の最後の約30アミノ酸などの、SSBの最後の約20アミノ酸から最後の40アミノ酸までである。
【0196】
正味の負電荷を持たないC末端領域を含むSSBの例としては、ヒトミトコンドリアSSB(HsmtSSB;配列番号50、ヒト複製タンパク質A70kDaサブユニット、ヒト複製タンパク質A14kDaサブユニット、テロメア末端、Oxytrichanova由来の結合タンパク質αサブユニット、Oxytrichanova由来のテロメア末端結合タンパク質βサブユニットのコアドメイン、Schizosaccharomyces pombe由来のテロメアタンパク質1の保護(Pot1)、ヒトPot1、マウス又はラット由来のBRCA2のOBフォールドドメイン、phi29由来のp5タンパク質(配列番号51)、並びにそれらのポリヌクレオチド結合変異形が挙げられる。C末端領域を修飾して正味の負電荷を減少させることができるSSBの例としては、E.coliのSSB(EcoSSB;配列番号52、Mycobacterium tuberculosisのSSB、Deinococcus radioduransのSSB、Thermus thermophiles由来のSSB、Sulfolobus solfataricus由来のSSB、ヒト複製タンパク質A32kDaサブユニット(RPA32)断片、Saccharomyces cerevisiae由来のCDC13SSB、E.coli由来のPrimosomal複製タンパク質N(PriB)、Arabidopsis thaliana由来のPriB、仮想タンパク質At4g28440、T4由来のSSB(gp32;配列番号53)、RB69由来のSSB(gp32;配列番号41)、T7由来のSSB(gp2.5;配列番号42)、及びポリヌクレオチド結合その変異形が挙げられる。正味の負電荷を減少させるための好適な修飾は、WO2014/013259に開示されている。
【0197】
二本鎖結合タンパク質は、高い親和性で二本鎖DNAに結合する。好適な二本鎖結合タンパク質には、ミューテーターS(MutS;NCBI参照配列:NP_417213.1;配列番号56)、Sso7d(Sufolobus solfataricus P2;NCBI参照配列:NP_343889.1;配列番号57;Nucleic Acids Research,2004,Vol 32,No.3,1197-1207)、Sso10b1(NCBI参照配列:NP_342446.1;配列番号58)、Sso10b2(NCBI参照配列:NP_342448.1;配列番号59)、トリプトファンリプレッサー(Trpリプレッサー;NCBI参照配列:NP_291006.1;配列番号60)、ラムダリプレッサー(NCBI参照配列:NP_040628.1;配列番号61)、Cren7(NCBI参照配列:NP_342459.1;配列番号62)、主要なヒストンクラスH1/H5、H2A、H2B、H3、及びH4(NCBI参照配列:NP_066403.2、配列番号63)、dsbA(NCBI参照配列:NP_049858.1;配列番号64)、Rad51(NCBI参照配列:NP_002866.2;配列番号65)、スライディングクランプ及びトポイソメラーゼVMka(配列番号54)又はこれらのタンパク質のいずれかのポリヌクレオチド結合変異形、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0198】
他のポリヌクレオチド結合タンパク質としては、スライディングクランプが挙げられる。スライディングクランプは、通常、dsDNAを取り囲むマルチマータンパク質(ホモダイマー又はホモトリマー)である。スライディングクランプは通常、ATP依存的プロセスでDNAヘリックスの周りにそれらを組み立てるために、アクセサリータンパク質(クランプローダー)を必要とする。また、DNAに直接接触せず、トポロジーテザーとして機能する。DNAスライディングクランプに関連するのは、プロセシビティ因子であり、これは、同種のポリメラーゼをDNAに固定するウイルスタンパク質であり、生成される断片の長さが劇的に増加する。それらは、モノマー(単純ヘルペスウイルス1由来のUL42の場合)又は(サイトメガロウイルスのUL44はマルチマーダイマーである)であることができる。UL42は、典型的には、配列番号43又は配列番号47に示される配列又はそのポリヌクレオチド結合変異形を含む。
【0199】
別のポリヌクレオチド結合タンパク質は、バクテリオファージT7DNAポリメラーゼのチオレドキシン結合ドメイン(TBD)(残基258~333)である。TBDのチオレドキシン(例えば、E.coli由来)への結合は、ポリペプチドを、DNAに結合するそれへの立体構造の変化を引き起こす。他のポリヌクレオチド結合タンパク質としては、ファージΦx174由来のアクセサリータンパク質cisA及びファージM13由来のgeneIIタンパク質が挙げられる。これらのタンパク質には固有のDNA結合能力があり、それらの一部は特定のDNA配列を認識する。他のポリヌクレオチド結合タンパク質としては、テロメア結合タンパク質が挙げられる。
【0200】
小さなDNA結合モチーフ(ヘリックス-ターン-ヘリックスなど)は、特定のDNA配列を認識する。バクテリオファージ434リプレッサーの場合、62残基の断片が操作され、DNA結合能力と特異性を保持することが示された。ジンクフィンガーは、特異的な様式でDNAに結合する約30のアミノ酸で構成されている。通常、各ジンクフィンガーは、3つのDNA塩基のみを認識するが、複数のフィンガーを連結してより長い配列を認識することができる。
【0201】
増殖細胞核抗原(PCNA)は、dsDNA又はssDNAを上下にスライドする非常にタイトなクランプを形成する。クレン古細菌由来のPCNAは、配列番号44、45及び46のヘテロトリマーである。したがって、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、配列番号44、45及び46に示される配列を含むトリマー又はそのポリヌクレオチド結合変異形であり得る。別のPCNAスライディングクランプ(NCBI参照配列:ZP_06863050.1;配列番号66)は、ダイマーを形成する。したがって、ポリヌクレオチド結合タンパク質は、配列番号66を含むダイマー又はそのポリヌクレオチド結合変異形であり得る。
【0202】
ポリヌクレオチド結合モチーフは、以下のいずれかから選択され得る:
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0203】
ポリヌクレオチド
本発明の方法は、標的ポリヌクレオチドがナノポアなどの検出器に対して移動する際の標的ポリヌクレオチドの特徴付けを含む。
【0204】
核酸等のポリヌクレオチドは、2つ以上のヌクレオチドを含む高分子である。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖とすることができる。二本鎖ポリヌクレオチドは、一緒にハイブリダイズした2つの一本鎖ポリヌクレオチドで作製される。標的ポリヌクレオチドは、一本鎖ポリヌクレオチド又は二本鎖ポリヌクレオチドとすることができる。
【0205】
ポリヌクレオチドは、任意のヌクレオチドの任意の組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、天然に存在しても人工であってもよい。
【0206】
ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖、及び少なくとも1つのリン酸基を含む。核酸塩基及び糖がヌクレオシドを形成する。
【0207】
核酸塩基は、典型的には、複素環である。核酸塩基には、プリン及びピリミジン、より具体的には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、及びシトシン(C)が含まれるが、これらに限定されない。
【0208】
糖は、典型的には、五炭糖である。ヌクレオチド糖には、リボース及びデオキシリボースが含まれるが、これらに限定されない。糖は、好ましくは、デオキシリボースである。ポリヌクレオチドは、好ましくは、以下のヌクレオシド:デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)及び/又はチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)、並びにデオキシシチジン(dC)を含む。
【0209】
ヌクレオチドは、典型的には、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典型的には、一リン酸、二リン酸、又は三リン酸を含む。ヌクレオチドは、3個より多くのリン酸、例えば、4個又は5個のリン酸を含み得る。リン酸は、ヌクレオチドの5’又は3’側に結合し得る。ヌクレオチドには、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、チミジン一リン酸(TMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、5-メチルシチジン一リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン一リン酸、シチジン一リン酸(CMP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、及びデオキシメチルシチジン一リン酸が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMP、及びdUMPから選択される。
【0210】
ヌクレオチドは、脱塩基であり得る(すなわち、核酸塩基を欠く)。ヌクレオチドは、核酸塩基及び糖も欠き得る(すなわち、C3スペーサーである)。
【0211】
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、任意の様式で互いに付着し得る。ヌクレオチドは、典型的には、核酸と同様に、それらの糖及びリン酸基によって付着する。ヌクレオチドは、ピリミジンダイマーと同様に、それらの核酸塩基を介して接続され得る。
【0212】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)などの核酸であり得る。ポリヌクレオチドは、DNAの1本の鎖にハイブリダイズされたRNAの1本の鎖を含むことができる。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の合成核酸、例えば、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、架橋ヌクレオチド(BNA)、ロックド核酸(LNA)、又はヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーであり得る。PNA骨格は、ペプチド結合によって連結した繰り返しN-(2-アミノエチル)-グリシン単位で構成される。GNA骨格は、ホスホジエステル結合によって連結した繰り返しグリコール単位で構成される。TNA骨格は、ホスホジエステル結合によって共に連結した繰り返しトレオース糖で構成される。LNAは、上で考察されたように、リボース部分における2’酸素及び4’炭素を接続する余分な架橋を有するリボヌクレオチドから形成される。
【0213】
ポリヌクレオチドは、好ましくはDNA、RNA、又はDNA若しくはRNAハイブリッド、最も好ましくはDNAである。DNA/RNAハイブリッドは、同じ鎖上にDNAとRNAとを含み得る。好ましくは、DNA/RNAハイブリッドはRNA鎖にハイブリダイズした一本のDNA鎖を含む。
【0214】
ポリヌクレオチドの主鎖を変更して、鎖切断の可能性を減らすことができる。例えば、DNAは多くの条件下でRNAよりも安定であることが知られている。ポリヌクレオチド鎖の主鎖は、フリーラジカルなどの過激な化学物質によって引き起こされる損傷を避けるために修飾することができる。
【0215】
非天然又は修飾塩基を含むDNA又はRNAは、適切なポリメラーゼを使用して修飾NTPの存在下で天然のDNA又はRNAポリヌクレオチドを増幅することによって生成され得る。
【0216】
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、修飾され得る。ヌクレオチドは、酸化又はメチル化され得る。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、損傷している場合がある。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジンダイマーを含み得る。かかるダイマーは、典型的には、紫外線による損傷と関連しており、皮膚メラノーマの主な原因である。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、例えば標識又はタグによって修飾され得る。
【0217】
一本鎖ポリヌクレオチドは、ヘアピン、四重鎖、又は三重鎖DNAなどの強力な二次構造を持つ領域を含み得る。これらのタイプの構造は、ナノポアに対するポリヌクレオチドの動きを制御するために使用することができる。例えば、二次構造を使用して、本明細書でより詳細に説明するように、ナノポアを通るポリヌクレオチドの移動を停止させることができる。鎖に沿った各連続する二次構造は、ナノポアに対する鎖の動きを停止させる。ポリヌクレオチドは、ナノポアを通って移動した後、二次構造を再形成し得る。かかる二次構造を使用して、負電圧が低いか又は適用されていない状態(ナノポアのトランス側に適用)でポリヌクレオチドがナノポアを通って戻るのを防ぐことができ、したがって、ポリヌクレオチドの移動を制御するのに役立つため、本明細書で提供される方法の関連するステップにおいて、それは制御された様式でのみ発生する。
【0218】
本明細書で使用するとき、二本鎖ポリペプチドは、一本鎖領域並びに他の構造、例えばヘアピンループ、三重鎖、及び/又は四重鎖を有する領域を含み得る。かかる二次構造は、一本鎖ポリヌクレオチドの文脈で上述したように有用であり得る。
【0219】
二本鎖分子の2つの鎖は、例えば分子の末端で一方の鎖の5’末端を他方の鎖の3’末端にヘアピン構造で連結することにより、共有結合させることができる。
【0220】
標的ポリヌクレオチドは、任意の長さであり得る。例えば、標的ポリヌクレオチドは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400、又は少なくとも500ヌクレオチド又はヌクレオチド対の長さであり得る。標的ポリヌクレオチドは、1000以上のヌクレオチド若しくはヌクレオチド対、又は5000以上のヌクレオチド若しくはヌクレオチド対の長さ、又は100000以上のヌクレオチド若しくはヌクレオチド対の長さ、又は500,000以上のヌクレオチド若しくはヌクレオチド対の長さ、又は1,000,000以上のヌクレオチド又はヌクレオチド対の長さ、又は10,000,000以上のヌクレオチド若しくはヌクレオチド対の長さ、又は100,000,000以上のヌクレオチド若しくはヌクレオチド対の長さ、又は200,000,000以上のヌクレオチド若しくはヌクレオチド対の長さ、又は染色体の全長であり得る。
【0221】
標的ポリヌクレオチドはオリゴヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドは、通常は、50以下のヌクレオチド、例えば40以下、30以下、20以下、10以下、又は5以下のヌクレオチドを有する短いヌクレオチドポリマーである。標的オリゴヌクレオチドは、好ましくは、約15~約30ヌクレオチド長、例えば約20~約25ヌクレオチド長である。例えば、オリゴヌクレオチドは、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、又は約30ヌクレオチド長であり得る。
【0222】
標的ポリヌクレオチドは、長いポリヌクレオチドの断片であり得る。この実施形態では、長い標的ポリヌクレオチドは、典型的には、複数のより短い標的ポリヌクレオチドなど、複数に断片化される。
【0223】
標的ポリヌクレオチドは、PCR反応の産物、ゲノムDNA、エンドヌクレアーゼ消化の産物、及び/又はDNAライブラリーを含み得る。
【0224】
標的ポリヌクレオチドは、天然に生じ得る。標的ポリヌクレオチドは、細胞から分泌され得る。代替的に、標的分析物は、細胞内に存在する分析物であり得、したがって、方法が実行され得る前に分析物が細胞から抽出されなければならない。
【0225】
標的ポリヌクレオチドは、ウイルス、細菌、古細菌、植物又は動物などの一般的な生物に由来し得る。かかる生物は、標的ポリヌクレオチドの配列を調整するために、例えば、塩基組成を調整すること、望ましくない配列エレメントを除去することなどによって、選択又は変更され得る。所望のポリヌクレオチド特性に到達するための生物の選択及び変更は、当業者にとってルーチン的である。
【0226】
標的ポリヌクレオチドの給源生物は、配列の所望の特徴に基づいて選択することができる。望ましい特性には、生物によって産生される一本鎖ポリヌクレオチドと二本鎖ポリヌクレオチドの比率、生物によって産生されるポリヌクレオチドの配列の複雑さ、生物によって産生されるポリヌクレオチドの組成(GC組成など)、又は生物によって産生される連続するポリヌクレオチド鎖の長さ、が挙げられる。例えば、約50kbの連続したポリヌクレオチド鎖が必要な場合、ラムダファージDNAを使用することができる。より長い連続鎖が必要な場合は、他の生物を使用してポリヌクレオチドを生成することができ、例えば、E.coliは、約4.5Mbの連続したdsDNAを生成する。
【0227】
標的ポリヌクレオチドは、多くの場合、ヒト又は動物から、例えば、尿、リンパ液、唾液、粘液、精液、若しくは羊水から、又は全血、血漿、若しくは血清から得られる。標的ポリヌクレオチドは、植物、例えば、穀草類、マメ科植物、果物、又は野菜から得られ得る。標的ポリヌクレオチドは、ゲノムDNAを含み得る。ゲノムDNAは断片化され得る。DNAは任意の好適な方法によって断片化され得る。例えば、DNAを断片化する方法は当該技術分野で既知であり、かかる方法は、MuAトランスポザーゼなどのトランスポザーゼを使用することができる。ゲノムDNAは断片化されないことが多い。
【0228】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは合成物又は半合成物である。例えば、DNA又はRNAは、ホスホラミダイトに基づく化学反応などの従来のDNA合成法によって合成された純粋な合成物であり得る。合成ポリヌクレオチドサブユニットは、ライゲーション又は化学結合などの既知の手段によって一緒に連結されて、より長い鎖を生成し得る。いくつかの実施形態では、内部自己形成構造(例えば、ヘアピン、四重鎖)を、例えば、適切な配列をライゲーションすることによって、基質内に設計することができる。合成ポリヌクレオチドは、PCR、細菌工場への組み込みなどを含む、当該技術分野で知られている手段による生産のために、複製及びスケールアップすることができる。
【0229】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、単純化されたヌクレオチド組成を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、同じサブユニットの反復パターンを有する。例えば、反復単位は(AmGn)qであり得、式中、m、n及びqは正の整数である。例えば、mは多くの場合、1~20、例えば1~10、例えば1~5、例えば1、2、3、4又は5である。nは多くの場合、1~20、例えば1~10、例えば1~5、例えば、1、2、3、4又は5である。m及びnは、同じであっても異なっていてもよい。多くの場合、qは1~約100,000である。典型的な繰り返し単位は、例えば(AAAAAAGGGGGG)qであり得る。反復ポリヌクレオチドは、当該技術分野で知られている多くの手段によって、例えば、ライゲーションを可能にする粘着末端を有する合成サブユニットを一緒に連結することによって作製することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、連結されたポリヌクレオチドであり得る。ポリヌクレオチドを連結する方法はPCT/GB2017/051493に記載されている。
【0230】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、反応性側鎖を含む塩基を含むことができる。必要に応じて、任意の好適な反応性官能基を側鎖に組み込むことができる。反応性官能基の好適な例としては、クリックケミストリー試薬が挙げられる。クリックケミストリーの好適な例には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
(a)アジドが、例えばシクロオクタン環に、歪みを受けているアルキンと反応する、1,3双極性環化付加反応の銅不含変異形、
(b)一方のリンカー上の酸素求核試薬と、他方のエポキシド又はアジリジン反応性部分との反応、及び
(c)アルキン部分をアリールホスフィンで置換して、アジドとの特異的反応をもたらして、アミド結合を付与することができる、Staudinger連結。
【0231】
ポリヌクレオチドアダプター
いくつかの実施形態では、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、存在する場合、ポリヌクレオチドアダプター上に提供され得る。WO2015/110813は、モータータンパク質のアダプターなどの標的ポリヌクレオチドへのローディングについて記載しており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0232】
アダプターは、典型的には、標的ポリヌクレオチドの末端に結合することができるポリヌクレオチド鎖を含む。標的ポリヌクレオチドは、典型的には、本明細書に開示される方法による特徴付けを目的としている。
【0233】
ポリヌクレオチドアダプターは、標的ポリヌクレオチドの両末端に付加され得る。代替的に、異なるアダプターが標的ポリヌクレオチドのそれらの2つの末端に付加され得る。アダプターは、標的ポリヌクレオチドの1つの末端のみに付加され得る。アダプターをポリヌクレオチドに付加する方法は、当該技術分野で既知である。アダプターは、例えば、ライゲーションによって、クリックケミストリーによって、タグメンテーションによって、トポイソメラーゼ変換によって、又は任意の他の好適な方法によってポリヌクレオチドに付着し得る。
【0234】
アダプターは、合成物又は人工物であり得る。典型的には、アダプターは、本明細書に記載のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、アダプターは、ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、アダプターは、一本鎖ポリヌクレオチド鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、アダプターは、二本鎖ポリヌクレオチドを含み得る。ポリヌクレオチドアダプターは、DNA、RNA、修飾DNA(塩基性DNAなど)、RNA、PNA、LNA、BNA、及び/又はPEGを含み得る。通常、アダプターは、一本鎖及び/又は二本鎖DNA又はRNAを含む。
【0235】
アダプターは、本明細書に記載されるような失速部分を含み得る。アダプターは、モータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質のローディング部位を含み得る。アダプターは、タグを含み得る。
【0236】
アダプターは、Yアダプターであり得る。Yアダプターは、典型的には二本鎖であり、(a)一方の末端に2つの鎖が一緒にハイブリダイズされる領域と、(b)他方の末端に2つの鎖が相補的ではない領域とを含む。それらの鎖の非相補的部分がオーバーハングを形成する。アダプターのハイブリダイズしたステムは、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の5’末端及び二本鎖ポリヌクレオチドの第2の鎖の3’末端に付着するか、又は、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の3’末端及び二本鎖ポリヌクレオチドの第2の鎖の5’末端に付着する。Yアダプター中の非相補領域の存在は、二本鎖部分とは異なり2本の鎖が典型的には互いにハイブリダイズしないため、アダプターにY形状を与える。モータータンパク質又はポリヌクレオチドは、Yアダプターなどのアダプターのオーバーハングに結合し得る。別の実施形態では、モータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、二本鎖領域に結合し得る。他の実施形態では、モータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質は、アダプターの一本鎖領域及び/又は二本鎖領域に結合し得る。他の実施形態では、第1のモータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質がかかるアダプターの一本鎖領域に結合し得、第2のモータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質がそのアダプターの二本鎖領域に結合し得る。
【0237】
一実施形態では、アダプターは、膜アンカー又はポアアンカーを含む。いくつかの実施形態では、アンカーは、モータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質が結合するオーバーハングに相補的であり、したがって、それにハイブリダイズされるポリヌクレオチドに結合し得る。
【0238】
いくつかの実施形態では、Yアダプターなどのポリヌクレオチドアダプターの非相補的鎖のうちの1つは、膜貫通ポアと接触したときにナノポアを通ることができるリーダー配列を含み得る。
【0239】
リーダー配列は、典型的には、ポリヌクレオチド、例えば、DNA又はRNA、修飾ポリヌクレオチド(脱塩基DNAなど)、PNA、LNA、ポリエチレングリコール(PEG)、又はポリペプチドなどのポリマーを含む。いくつかの実施形態では、リーダー配列は、ポリdTセクションなどの一本鎖DNAを含む。リーダー配列は、任意の長さであり得るが、典型的には、10~150ヌクレオチド長、例えば、20~120、30~100、40~80、又は50~70ヌクレオチド長である。
【0240】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、ヘアピンループアダプターである。ヘアピンループアダプターは、単一のポリヌクレオチド鎖を含むアダプターであり、ポリヌクレオチド鎖の末端は互いにハイブリダイズすることができるか、又は互いにハイブリダイズされ、ポリヌクレオチドの中央セクションがループを形成する。好適なヘアピンループアダプターは、当該技術分野で既知の方法を使用して設計することができる。典型的には、ヘアピンループアダプターの3’末端は、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の5’末端に結合し、ヘアピンループアダプターの5’末端は、二本鎖ポリヌクレオチドの第2鎖の3’末端に結合するか、又は、ヘアピンループアダプターの5’末端は、二本鎖ポリヌクレオチドの第1の鎖の3’末端に結合し、ヘアピンループアダプターの3’末端は、二本鎖ポリヌクレオチドの第2鎖の5’末端に結合する。以下でより詳細に説明されるように、ポリヌクレオチドアダプターは、標的ポリヌクレオチドを特徴付けるために、標的ポリヌクレオチドに結合することができる。
【0241】
当業者であれば、アダプターがポリヌクレオチド鎖を含む場合、アダプターの配列が典型的には決定的ではなく、モータータンパク質及び特徴付けられるべき任意のポリヌクレオチドなどの他の実験条件に従って制御又は選択され得ることも理解するであろう。例示的な配列は、実施例に例証としてのみ提供される。例えば、アダプターは、配列番号21~26又は28~33の1つ以上などの配列、又は配列番号21~26又は28~33の1つ以上と少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列類似性又は同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。アダプターの配列は、典型的には、本明細書で提供される方法の有効性に悪影響を与えることなく変更することができる。
【0242】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、モータータンパク質及び/又はポリヌクレオチド結合タンパク質をロードするためのローディング部位を含み得る。ローディング部位は、例えば、モータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質によって標的とすることができる一本鎖領域であり得る。ローディング部位は、本明細書で提供される方法で評価されるポリヌクレオチドにモータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質を転位するために、モータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質を含む外因性ポリヌクレオチド鎖が結合することができるポリヌクレオチドアダプターの領域であり得る。
【0243】
したがって、本明細書で提供される方法で使用されるモータータンパク質は、ポリヌクレオチドアダプター上で失速し得る。他の実施形態では、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチド上で失速するが、ポリヌクレオチドアダプター上では失速しない。
【0244】
ブロッキング部分
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分を使用して、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止することができる。
【0245】
いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は標的ポリヌクレオチドに含まれる。いくつかの実施形態では、ブロッキング部分は、標的ポリヌクレオチドに付着したポリヌクレオチドアダプターに含まれる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプター、例えば、本明細書に記載のポリヌクレオチドアダプターは、ブロッキング部分を含む。
【0246】
ブロッキング部分は、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止するために使用され得る。例えば、モータータンパク質が標的ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアダプター中のポリヌクレオチド鎖の3’末端に存在する場合、ブロッキング部分は、典型的にはモータータンパク質と鎖の3’末端との間に位置する。モータータンパク質が標的ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアダプターのポリヌクレオチド鎖の5’末端に存在する場合、ブロッキング部分は、典型的にはモータータンパク質と鎖の5’末端との間に位置する。
【0247】
例えば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、標的ポリヌクレオチド分析物に付着するための付着点を含む第1の末端、及び第2の末端を含み得、モータータンパク質は、付着点の方向にアダプターをプロセシングするための配向で、ポリヌクレオチドアダプター上で失速し得る。かかる実施形態では、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターの第2の末端から脱会合するのを防ぐために、モータータンパク質とアダプターの第2の末端との間にブロッキング部分を配置し得る。
【0248】
例えば、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、標的ポリヌクレオチド分析物の5’末端に結合するための付着点を含む3’末端、及び5’末端を含み得、モータータンパク質は、アダプターを3’末端の方向、すなわち5’→3’方向にプロセシングするための配向で、ポリヌクレオチドアダプター上で失速し得る。かかる実施形態では、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターの5’末端から脱会合するのを防止するために、モータータンパク質とアダプターの5’末端との間にブロッキング部分を配置し得る。他の実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、標的ポリヌクレオチド分析物の3’末端に結合するための付着点を含む5’末端と、3’末端とを含み得、モータータンパク質は、アダプターを5’末端の方向、すなわち3’→5’方向にプロセシングするための配向で、ポリヌクレオチドアダプター上で失速し得る。かかる実施形態では、モータータンパク質がポリヌクレオチドアダプターの3’末端から脱会合するのを防ぐために、モータータンパク質とアダプターの3’末端との間にブロッキング部分を配置し得る。
【0249】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、標的ポリヌクレオチドの第1の末端にリーダー配列を含み、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第2の末端又は標的ポリヌクレオチドの第2の末端に結合したアダプター上で失速し、ブロッキング部分は、モータータンパク質とポリヌクレオチドの第2の末端(すなわち、ポリヌクレオチドの第2の末端にあるポリヌクレオチドの末端)との間に位置し、それによってモータータンパク質が標的ポリヌクレオチドの第2の末端にある標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止する。
【0250】
例えば、いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、第1の鎖の5’末端にリーダー配列を含み、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の3’末端に付着したアダプター上の第1の鎖の3’末端で失速し、ブロッキング部分は、モータータンパク質とポリヌクレオチドの第1の鎖の3’末端との間に位置し、それによってモータータンパク質が標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の3’末端で標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止する。他の実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、第1の鎖の3’末端にリーダー配列を含み、モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の5’末端に結合したアダプター上の第1の鎖の5’末端で失速し、ブロッキング部分は、モータータンパク質とポリヌクレオチドの第1の鎖の5’末端との間に位置し、それによってモータータンパク質が標的ポリヌクレオチドの第1の鎖の5’末端で標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止する。もちろん、ポリヌクレオチドアダプターは、二本鎖ポリヌクレオチド又は一本鎖ポリヌクレオチドに結合され得る。標的ポリヌクレオチドが二本鎖ポリヌクレオチドである場合、ブロッキング部分は典型的にはモータータンパク質と同じ鎖上に位置する。二本鎖ポリヌクレオチドの各鎖にモータータンパク質が存在する場合(例えば、二本鎖ポリヌクレオチドが回転対称であるとき)、ポリヌクレオチドの各鎖にブロッキング部分が典型的に存在する。
【0251】
任意の好適なブロッキング部分を、提供される方法において使用することができる。好適なブロッキング部分には、本明細書に記載の停止部分として使用され得る同じ基の多くが含まれる。例えば、ブロッキング部分は、以下のうちの1つ以上を含み得る:
-ポリヌクレオチド二次構造、好ましくはヘアピン又はG-四重鎖(TBA)、
-好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、架橋核酸(BNA)及び脱塩基ヌクレオチドから選択される核酸類似体、
-フルオロフォア、トラプタビジン、ストレプトアビジン及びニュートラアビジンなどのアビジン、及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン及びジベンジルシクロオクチン基、並びに
-ポリヌクレオチド結合タンパク質。
これらのエレメントは、停止部分の文脈において、本明細書においてより詳細に記載されている。
【0252】
スペーサー
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアダプターは、例えば、1~約10個のスペーサー、例えば、1~約5個のスペーサー、例えば、1、2、3、4、又は5個のスペーサーを含み得る。スペーサーは、任意の好適な数のスペーサー単位を含み得る。スペーサーは、典型的には、ポリヌクレオチド結合タンパク質の移動を妨げるエネルギー障壁を提供する。例えば、スペーサーは、例えば脱塩基スペーサーを使用して、タンパク質の牽引力を低下させることにより、モータータンパク質又はポリヌクレオチド結合タンパク質の移動を妨げ得る。スペーサーは、例えば、かさ高い化学基を導入してタンパク質の移動を物理的に妨げることによって、ポリヌクレオチド結合タンパク質の移動を物理的にブロッキングし得る。
【0253】
いくつかの実施形態では、1つ以上のスペーサーがポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアダプターに含まれて、それらがナノポアを通過するときに特有のシグナルを提供する。1つ以上のスペーサーを使用して、ポリヌクレオチドの1つ以上の領域を画定又は分離し得、例えば、アダプターを標的ポリヌクレオチドから分離し得る。
【0254】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、例えばポリペプチド又はポリエチレングリコール(PEG)であるポリマーなどの直鎖状分子を含み得る。典型的には、かかるスペーサーは、標的ポリヌクレオチドとは異なる構造を有する。例えば、標的ポリヌクレオチドがDNAである場合、当該又は各スペーサーは、典型的には、DNAを含まない。とりわけ、標的ポリヌクレオチドがデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)である場合、当該又は各スペーサーは、好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、又はヌクレオチド側鎖を有する合成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上のニトロインドール、1つ以上のイノシン、1つ以上のアクリジン、1つ以上の2-アミノプリン、1つ以上の2-6-ジアミノプリン、1つ以上の5-ブロモ-デオキシウリジン、1つ以上の逆位チミジン(逆位dT)、1つ以上の逆位ジデオキシ-チミジン(ddT)、1つ以上のジデオキシ-シチジン(ddC)、1つ以上の5-メチルシチジン、1つ以上の5-ヒドロキシメチルシチジン、1つ以上の2’-O-メチルRNA塩基、1つ以上のイソ-デオキシシチジン(Iso-dC)、1つ以上のイソ-デオキシグアノシン(Iso-dG)、1つ以上のC3(OC3H6OPO3)基、1つ以上の光切断可能な(PC)[OC3H6-C(O)NHCH2-C6H3NO2-CH(CH3)OPO3]基、1つ以上のヘキサンジオール基、1つ以上のスペーサー9(iSp9)[(OCH2CH2)3OPO3]基、若しくは1つ以上のスペーサー18(iSp18)[(OCH2CH2)6OPO3]基、又は1つ以上のチオール結合を含み得る。スペーサーは、これらの基の任意の組み合わせを含み得る。これらの基のうちの多くは、IDT(登録商標)(Integrated DNA Technologies(登録商標))から市販されている。例えば、C3、iSp9、及びiSp18スペーサーは全てIDT(登録商標)から入手可能である。スペーサーは、スペーサー単位として任意の数の上記の基を含み得る。
【0255】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上の化学基、例えば、1つ以上のペンダント化学基を含み得る。1つ以上の化学基は、ポリヌクレオチドアダプター中の1つ以上の核酸塩基に付着し得る。1つ以上の化学基は、ポリヌクレオチドアダプターの骨格に付着し得る。2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個以上などの任意の数の適切な化学基が存在し得る。好適な基には、フルオロフォア、ストレプトアビジン及び/又はビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン及び/又は抗ジゴキシゲニン、並びにジベンジルシクロオクチン基が含まれるが、これらに限定されない。
【0256】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上の脱塩基ヌクレオチド(すなわち、核酸塩基を欠くヌクレオチド)、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個以上の脱塩基ヌクレオチドを含み得る。核酸塩基は、脱塩基ヌクレオチドにおける-H(idSp)又は-OHによって置き換えられ得る。脱塩基スペーサーは、1つ以上の隣接するヌクレオチドから核酸塩基を除去することによって、標的ポリヌクレオチド中に挿入され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、3-メチルアデニン、7-メチルグアニン、1,N6-エテノアデニンイノシン、又はヒポキサンチンを含むように修飾され得、核酸塩基は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(hAAG)を使用してこれらのヌクレオチドから除去され得る。代替的には、ポリヌクレオチドは、ウラシルを含むように修飾され得、核酸塩基は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)によって除去され得る。一実施形態では、1つ以上のスペーサーは、いずれの脱塩基ヌクレオチドも含まない。
【0257】
好適なスペーサーは、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアダプターの性質、モータータンパク質、及び本方法が実行されるべき条件に応じて設計又は選択することができる。
【0258】
タグ
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアダプターは、タグ又はテザーを含み得る。例えば、ポリヌクレオチドは、例えばそのアダプターを介してナノポア上のタグに結合し、例えばナノポアによるポリヌクレオチドの特徴付け中のある時点で、放出されることができる。強い非共有結合(例えば、ビオチン/アビジン)は依然として可逆的であり、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において有用である。
【0259】
ポアタグとポリヌクレオチドアダプターのペアは、ナノポア上のタグへのポリヌクレオチド上の結合部位(例えば、アダプターのアンカー若しくはリーダー配列によって、又はアダプターの二本鎖ステム内の捕捉配列によって提供される結合部位)の結合強度又はアフィニティが、適用された力がかかり、結合したポリヌクレオチドをナノポアから放出するまで、ナノポアとポリヌクレオチドの間のカップリングを維持するのに十分であるように、構成され得る。
【0260】
いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは荷電されていない。これにより、電位差の影響下でタグ又はテザーがナノポア内に引き込まれないことを確実にすることができる。
【0261】
ポリヌクレオチド又はアダプターを、引き付ける又は結合する1つ以上の分子を、ポアに連結させ得る。アダプター及び/又は標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする任意の分子を使用してもよい。ポアに付着した分子は、PNAタグ、PEGリンカー、短いオリゴヌクレオチド、正荷電アミノ酸及びアプタマーから選択してもよい。かかる分子がポアに結合していることは当該分野において既知である。例えば、短いオリゴヌクレオチドが付着したポアは、Howarka et al(2001)Nature Biotech.19:636-639及びWO2010/086620に開示されており、ポアのルーメン内に付着したPEGを含むポアは、Howarka et al (2000)J.Am.Chem.Soc.122(11):2411-2416に開示されている。
【0262】
検出器(例えば膜貫通ポア)に付着した短いオリゴヌクレオチドであって、リーダー配列の配列又はアダプターの別の一本鎖配列に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを使用して、本明細書に記載の方法において標的ポリヌクレオチドの捕捉を増強してもよい。
【0263】
いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは、オリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、LNA、BNA、PNA、又はモルフォリノ)を含んでも、又はそれであってもよい。オリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、LNA、BNA、PNA、又はモルフォリノ)は、約10~30ヌクレオチド長又は約10~20ヌクレオチド長を有することができる。いくつかの実施形態では、タグ又はテザーに使用するためのオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、LNA、BNA、PNA、又はモルフォリノ)は、他の修飾箇所又は例えばビーズを含む固体基材表面への接合のために修飾された少なくとも1つの末端(例えば、3´-又は5´-末端)を有することができる。末端修飾剤は、結合に使用することができる反応性官能基を付加してもよい。付加することができる官能基の例としては、アミノ、カルボキシル、チオール、マレイミド、アミノオキシ、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。官能基は、オリゴヌクレオチド配列の末端から官能基の物理的距離を加えるために、異なる長さのスペーサー(例えば、C3、C9、C12、スペーサー9及び18)と組み合わせることができる。
【0264】
いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは、モルフォリノオリゴヌクレオチドを含んでもよく、又はモルフォリノオリゴヌクレオチドであってもよい。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、約10~30ヌクレオチド長又は約10~20ヌクレオチド長を有することができる。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、修飾されていても修飾されていなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、モルフォリノオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3´及び/又は5´末端で修飾されてもよい。モルフォリノオリゴヌクレオチドの3´及び/又は5´末端修飾の例としては、化学結合のための3´アフィニティタグ及び官能基(例えば、3´-ビオチン、3´-一級アミン、3´-ジスルフィドアミド、3´-ピリジルジチオ、及びそれらの任意の組み合わせを含む);5´末端修飾(例えば、5´-一級アンミン、及び/又は5´-ダブシルを含む);クリックケミストリーのための修飾(例えば、3´-アジド、3´-アルキン、5´-アジド、5´-アルキンを含む)、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0265】
いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは、例えば、検出器、例えばナノポアへの結合を容易にするために、ポリマーリンカーを更に含んでもよい。例示的なポリマーリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これに限定されない。ポリマーリンカーは、約500Da~約10kDa(両端を含む)、又は約1kDa~約5kDa(両端を含む)の分子量を有してもよい。ポリマーリンカー(例えば、PEG)は、例えば、これらに限定されないが、マレイミド、NHSエステル、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、アジド、ビオチン、アミン、アルキン、アルデヒド、及びそれらの任意の組み合わせを含む異なる官能基で官能化することができる。いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは、5´-マレイミド基及び3´-DBCO基を有する1kDaのPEGも含んでもよい。いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは、5´-マレイミド基及び3´-DBCO基を有する2kDaのPEGを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは、5´-マレイミド基及び3´-DBCO基を有する3kDaのPEGを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは、5´-マレイミド基及び3´-DBCO基を有する5kDaのPEGを更に含んでもよい。
【0266】
タグ又はテザーの他の例には、Hisタグ、ビオチン又はストレプトアビジン、検体に結合する抗体、検体に結合するアプタマー、DNA結合ドメインなどの検体結合ドメイン(例えば、ロイシンジッパーのようなペプチドジッパー、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を含む)、及びそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0267】
当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、タグ又はテザーをナノポアの外面、例えば、膜のシス側上に付着させてもよい。例えば、1つ以上のタグ又はテザーは、1つ以上のシステイン(システイン結合)、1つ以上のリジンなどの一級アミン、1つ以上の非天然アミノ酸、1つ以上のヒスチジン(Hisタグ)、1つ以上のビオチン又はストレプトアビジン、1つ以上の抗体に基づいたタグ、エピトープの1つ以上の酵素修飾(例えば、アセチルトランスフェラーゼを含む)、及びそれらの任意の組み合わせを介してナノ細孔に付着することができる。かかる修飾を実施するための好適な方法は、当該技術分野で周知である。好適な非天然アミノ酸には、4-アジド-L-フェニルアラニン(Faz)、及びLiu C.C.and Schultz P.G.,Annu.Rev.Biochem.,2010,79,413-444の
図1中の1~71が付番されたいずれかのアミノ酸を含むが、これらに限定されない。
【0268】
1つ以上のタグ又はテザーがシステイン結合を介してナノポアに付着しているいくつかの実施形態では、1つ以上のシステインを、ナノポアを形成する1つ以上のモノマーに、置換により、導入することができる。いくつかの実施形態では、ナノポアは、以下の付着によって化学的に修飾され得る:(i)4-フェニルアゾマレイナニル、1.N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、1.3-マレイミドプロピオン酸、1.1-4-アミノフェニル-1H-ピロール,2,5,ジオン、1.1-4-ヒドロキシフェニル-1H-ピロール,2,5,ジオン、N-エチルマレイミド、N-メトキシカルボニルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-(2-アミノエチル)マレイミド、3-マレイミド-プロキシル、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、1-[4-(ジメチルアミノ)-3,5-ジニトロフェニル]-1H-ピロール-2,5-ジオン、N-[4-(2-ベンズイミダゾリル)フェニル]マレイミド、N-[4-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル]マレイミド、N-(1-ナフチル)-マレイミド、N-(2,4-キシリル)マレイミド、N-(2,4-ジフルオロフェニル)マレイミド、N-(3-クロロ-パラ-トリル)-マレイミド、1-(2-アミノ-エチル)-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、1-シクロペンチル-3-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-(3-アミノプロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、3-メチル-1-[2-オキソ-2-(ピペラジン-1-イル)エチル]-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、1-ベンジル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、3-メチル-1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-[4-(メチルアミノ)シクロヘキシル]-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオントリフルオロ酢酸、SMILES O=C1C=CC(=O)N1CC=2C=CN=CC2、SMILES O=C1C=CC(=O)N1CN2CCNCC2、1-ベンジル-3-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-(2-フルオロフェニル)-3-メチル-2,5-ジヒドロ1H-ピロール-2,5-ジオン、N-(4-フェノキシフェニル)マレイミド、N-(4-ニトロフェニル)マレイミドなどのジアブロモマレイミドを含むマレイミド、(ii)3-(2-ヨードアセトアミド)-プロキシル、N-(シクロプロピルメチル)-2-ヨードアセトアミド、2-ヨード-N-(2-フェニルエチル)アセトアミド、2-ヨード-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)アセトアミド、N-(4-アセチルフェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(4-(アミノスルホニル)フェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-2-ヨードアセトアミド、N-(2、6-(ジエチルフェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(2-ベンゾイル-4-クロロフェニル)-2-ヨードアセトアミドなどのヨードアセトアミド、(iii)N-(4-(アセチルアミノ)フェニル)-2-ブロモアセトアミド、N-(2-アセチルフェニル)-2-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-n-(2-シアノフェニル)アセトアミド、2-ブロモ-N-(3-((トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド、N-(2-ベンゾイルフェニル)-2-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-N-(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタンアミド、N-ベンジル-2-ブロモ-N-フェニルプロピオンアミド、N-(2-ブロモ-ブチル)-4-クロロ-ベンゼンスルホンアミド、2-ブロモ-N-メチル-N-フェニルアセトアミド、2-ブロモ-N-フェネチル-アセトアミド、2-アダマンタン-1-イル-2-ブロモ-N-シクロヘキシル-アセトアミド、2-ブロモ-N-(2-メチルフェニル)ブタンアミド、モノブロモアセトアニリドなどのブロモアセトアミド、(iv)アルドリチオール-2、アルドリチオール-4、イソプロピルジスルフィド、1-(イソブチルジスルファニル)-2-メチルプロパン、ジベンジルジスルフィド、4-アミノフェニルジスルフィド、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸ヒドラジド、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジルエステル、am6amPDP1-βCDなどのジスルフィド、及び(v)4-フェニルチアゾール-2-チオール、パーパルド、5,6,7,8-テトラヒドロ-キナゾリン-2-チオールなどのチオール。
【0269】
いくつかの実施形態では、タグ又はテザーは、ナノポアに直接又は1つ以上のリンカーを介して付着してもよい。タグ又はテザーは、WO2010/086602に記載のハイブリリンカーを使用してナノ細孔に付着してもよい。代替的に、ペプチドリンカーを使用してもよい。ペプチドリンカーはアミノ酸配列である。ペプチドリンカーの長さ、可撓性、及び親水性は、典型的には、モノマー及び細孔の機能を妨げないように設計される。好ましい可撓性ペプチドリンカーは2~20個、例えば、4、6、8、10、又は16個のセリン、及び/又はグリシンアミノ酸のストレッチである。より好ましい可撓性リンカーは、(SG)1、(SG)2、(SG)3、(SG)4、(SG)5、及び(SG)8を含み、Sはセリンであり、Gはグリシンである。好ましい剛性リンカーは、2~30個、例えば4、6、8、16、又は24個のプロリンアミノ酸のストレッチである。より好ましい剛性リンカーは、Pがプロリンである、(P)12を含む。
【0270】
アンカー
一実施形態では、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアダプターは、膜アンカー又は膜貫通ポアアンカーを含み得る。一実施形態では、アンカーは、本明細書に開示される方法に従う標的ポリヌクレオチドの特徴付けにおいてアシストを行う。例えば、膜アンカー又は膜貫通ポアアンカーは、ナノポアの周りの選択されたポリヌクレオチドの局在化を促進し得る。
【0271】
アンカーは、膜に挿入することができるポリペプチドアンカー及び/又は疎水性アンカーであり得る。一実施形態では、疎水性アンカーは、脂質、脂肪酸、ステロール、カーボンナノチューブ、ポリペプチド、タンパク質、又はアミノ酸であり、例えば、コレステロール、パルミチン酸塩、又はトコフェロールである。アンカーは、チオール、ビオチン、又は界面活性剤を含み得る。一態様では、アンカーは、(ストレプトアビジンへの結合のための)ビオチン、(マルトース結合タンパク質又は融合タンパク質への結合のための)アミロース、(ポリ-ヒスチジン又はポリ-ヒスチジンタグ付きタンパク質への結合のための)Ni-NTA、又は(抗原などの)ペプチドであり得る。
【0272】
一実施形態では、アンカーは、1つのリンカー、又は2、3、4つ以上のリンカーを含み得る。好ましいリンカーには、ポリマー、例えば、ポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖、及びポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。これらのリンカーは直鎖状、分岐状、又は環状であってもよい。例えば、リンカーは環状ポリヌクレオチドであってもよい。アダプターは、環状ポリヌクレオチドリンカー上の相補的配列にハイブリダイズし得る。1つ以上のアンカー又は1つ以上のリンカーは、切断又は分解することができる成分、例えば制限部位又は光解離性基を含み得る。リンカーは、マレイミド基で官能化されて、タンパク質のシステイン残基に付着する。好適なリンカーは、WO2010/086602に記載されている。
【0273】
一実施形態では、アンカーは、コレステロール又は脂肪アシル鎖である。例えば、ヘキサデカン酸などの6~30の炭素原子長を有する任意の脂肪アシル鎖が使用され得る。好適なアンカー及びアンカーをアダプターに付着させる方法の例は、WO2012/164270及びWO2015/150786に開示されている。
【0274】
別の実施形態では、アンカーは、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアダプターに対する疎水性修飾からなるか、又はそれを含み得る。疎水性修飾は、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドアンカー内に含まれる修飾リン酸基を含み得る。疎水性修飾は、例えば、電荷が中和されたアルキルホスホロチオエート(PPT)などのホスホロチオエートを含み得、それらはJones et al,J.Am.Chem.Soc.2021,143,22,8305に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。好適なアルキル基としては、例えば、C2~C6アルキル基などのC1~C10アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基が挙げられる。電荷中和されたアルキル-ホスホロチオエートのポリヌクレオチドへの組み込みは、ポリヌクレオチドが脂質二重層などの疎水性領域に係合されることを可能にする。
【0275】
検出器
本明細書で提供される方法では、ポリヌクレオチドは、ナノポアなどの検出器に対して移動する。検出器は、(i)ゼロモード導波路、(ii)電界効果トランジスタ、任意選択的にノワイヤ電界効果トランジスタ、(iii)AFMチップ、(iv)ナノチューブ、任意選択的にカーボンナノチューブ、及び(v)ナノポアから選択され得る。好ましくは、検出器はナノポアである。
【0276】
ポリヌクレオチドは、本明細書で提供される方法において、任意の好適な様式で特徴付けられ得る。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動する際のイオン流又は光信号を検出することを特徴とする。これは、本明細書により詳細に記載される。この方法は、ポリヌクレオチドを検出するこれら及び他の方法に適している。
【0277】
別の非限定的な例では、一実施形態では、ポリヌクレオチドは、合成反応による配列決定などのポリヌクレオチドプロセシング反応の副産物を検出することによって特徴付けられる。したがって、この方法は、核酸鎖へのポリメラーゼなどの酵素による(ポリ)ヌクレオチドの連続付加の生成物を検出することを含み得る。生成物は、酵素の立体構造など、酵素の1つ以上の特性の変化であり得る。したがって、かかる方法は、ポリメラーゼ又は逆転写酵素などの酵素を、伸長するオリゴヌクレオチド鎖へのヌクレオチド塩基の鋳型依存的な組み込みが、逐次的に遭遇する鋳型に応答して酵素の立体構造変化を引き起こすような条件下で、二本鎖ポリヌクレオチドに供すること、鎖核酸塩基の取り込み及び/又は鋳型特異的天然若しくは類似塩基の取り込み(すなわち、取り込みイベント)、かかる取り込みイベントに応答した酵素の立体構造変化の検出、及びそれによる鋳型鎖の配列の検出、を含み得る。かかる方法では、ポリヌクレオチド鎖は、本明細書で提供される方法に従って移動され得る。かかる方法は、US2017/0044605に記載されている方法など、当業者に知られている方法を使用して取り込みイベントを検出及び/又は測定することを含み得る。
【0278】
別の実施形態では、鋳型鎖に相補的な合成核酸鎖にヌクレオチドが付加されるとリン酸標識種が放出され、本明細書に記載の検出器を使用してリン酸標識種が検出されるように、副産物を標識し得る。このように特徴付けられるポリヌクレオチドは、本明細書の方法に従って移動され得る。好適な標識は、ナノポア又はゼロモード導波管を使用して、又はラマン分光法又は他の検出器によって検出される光学標識であり得る。好適な標識は、ナノポア又は他の検出器を使用して検出される非光学標識であり得る。
【0279】
別のアプローチでは、ヌクレオシドリン酸(ヌクレオチド)は標識されず、鋳型鎖に相補的な合成核酸鎖にヌクレオチドが付加されると、天然の副産物種が検出される。好適な検出器は、イオン感受性電界効果トランジスタ、又は他の検出器であり得る。
【0280】
これら及び他の検出方法は、本明細書に記載の方法での使用に好適である。ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する際に、検出器を使用して任意の好適な測定を行うことができる。
【0281】
ナノポア
検出器がナノポアである本発明の実施形態では、任意の好適なナノポアを使用することができる。一実施形態では、ナノポアは、膜貫通ポアである。
【0282】
膜貫通ポアは、膜をある程度横断する構造である。それにより、印加電位によって駆動される水和イオンが膜を横切って流れる又は膜内に流れることが可能になる。膜貫通ポアは、典型的には、膜全体を横断し、これにより、水和イオンが膜の片側から膜の反対側に流れることができるようになる。しかしながら、膜貫通ポアは膜を横断する必要はない。一方の末端が閉鎖していてもよい。例えば、ポアは、膜中のウェル、間隙、チャネル、溝、又はスリットであり得、それに沿って又はその中に水和イオンが流れることができる。
【0283】
本明細書で提供される方法では、ナノポアは典型的には、第1の開口部及び第2の開口部を有する。第1の開口部は、典型的にシス開口部であり、第2の開口部は、典型的にトランス開口部である。しかしながら、いくつかの実施形態では、第1の開口部はトランス開口部であり、第2の開口部はシス開口部である。本明細書で提供される方法で使用されるモータータンパク質は、典型的には、ナノポアの第1の開口部に提供され、したがって、ナノポアの第2の開口部からナノポアの第1の開口部に向かう方向の標的ポリヌクレオチドの移動を制御する。
【0284】
任意の膜貫通ポアが本明細書に提供される方法で使用され得る。ポアは、生物学的であっても人工であってもよい。好適なポアには、タンパク質ポア、ポリヌクレオチドポア、及び固体ポアが含まれるが、これらに限定されない。ポアは、DNA折り紙ポアであり得る(Langecker et al.,Science,2012;338:932-936)。好適なDNA折り紙ポアは、WO2013/083983に開示されている。
【0285】
一実施形態では、ナノポアは、膜貫通タンパク質ポアである。膜貫通タンパク質ポアは、ポリヌクレオチドなどの水和イオンが膜の片側から膜の反対側へ流れることを可能にするポリペプチド又はポリペプチドの集合体である。本明細書に提供される方法では、膜貫通タンパク質ポアは、印加電位によって駆動される水和イオンが膜の片側から反対側に流れることを可能にするポアを形成することができる。膜貫通タンパク質ポアは、好ましくは、ポリヌクレオチドがトリブロックコポリマー膜などの膜の片側から反対側に流れることを可能にする。膜貫通タンパク質ポアは、ポリヌクレオチドをポアを通して移動させることを可能にする。
【0286】
一実施形態では、ナノポアは、モノマー又はオリゴマーである膜貫通タンパク質ポアである。ポアは、好ましくは、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、又は少なくとも16のサブユニットなどのいくつかの繰り返しサブユニットから構成されている。ポアは、好ましくは、ヘキサマー、ヘプタマー、オクタマ-、又はナノマーポアである。ポアは、ホモオリゴマーであってもヘテロオリゴマーであってもよい。
【0287】
一実施形態では、膜貫通タンパク質ポアは、イオンが通って流れることができるバレル又はチャネルを含む。ポアのサブユニットは、典型的には、中心軸を取り囲み、鎖を膜貫通βバレル若しくはチャネル又は膜貫通α-ヘリックスバンドル若しくはチャネルに寄与する。
【0288】
典型的には、膜貫通タンパク質ポアのバレル又はチャネルは、標的ポリヌクレオチド(本明細書に記載のもの)などの分析物との相互作用を促進するアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、好ましくは、バレル又はチャネルの狭窄の近くに位置する。膜貫通タンパク質ポアは、典型的には、アルギニン、リジン、若しくはヒスチジンなどの1つ以上の正電荷アミノ酸、又はチロシン若しくはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、典型的には、ポアと、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又は核酸との間の相互作用を促進する。
【0289】
一実施形態では、ナノポアは、βバレルポア又はαヘリックスバンドルポアに由来する膜貫通タンパク質ポアである。β-バレルポアは、β鎖から形成されるバレル又はチャネルを含む。好適なβ-バレルポアには、β-毒素、例えば、α-溶血毒、炭疽毒素、及びロイコシジン、並びに細菌の外膜タンパク質/ポリン、例えば、Mycobacterium smegmatisポリン(Msp)、例えば、MspA、MspB、MspC、又はMspD、CsgG、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼA、及びNeisseriaオートトランスポーターリポタンパク質(NalP)、並びに他のポア、例えば、リセニンが含まれるが、これらに限定されない。α-ヘリックスバンドルポアは、α-ヘリックスから形成されるバレル又はチャネルを含む。好適なα-ヘリックスバンドル細孔は、内膜タンパク質及びα外膜タンパク質、例えばWZA及びClyA毒素を含むが、これらに限定されない。
【0290】
一実施形態では、ナノポアは、Msp、α-溶血素(α-HL)、リセニン、CsgG、ClyA、Sp1、若しくは溶血性タンパク質フラガセアトキシンC(FraC)に由来するか、又はそれらに基づく膜貫通ポアである。
【0291】
一実施形態では、ナノポアは、CsgG、例えば、E.coli株K-12亜株MC4100由来のCsgGに由来する。かかるポアはオリゴマーであり、典型的には、CsgGに由来する7、8、9、又は10個のモノマーを含む。ポアは、同一のモノマーを含むCsgGに由来するホモオリゴマーポアであり得る。代替的に、ポアは、他とは異なる少なくとも1つのモノマーを含むCsgGに由来するヘテロオリゴマーポアであり得る。CsgGに由来する好適なポアの例は、WO2016/034591に開示されている。
【0292】
一実施形態では、ナノポアは、リセニンに由来する膜貫通ポアである。リセニンに由来する好適なポアの例は、WO2013/153359に開示されている。
【0293】
一実施形態では、ナノポアは、α-溶血素(α-HL)に由来するか、又はそれに基づく膜貫通ポアである。野生型α-溶血毒ポアは、7つの同一のモノマー又はサブユニットから形成される(すなわち、それはナノマーである)。α-溶血素ポアは、α-溶血素-NN又はその変異形であり得る。変異形は、好ましくは、E111位及びK147位にN残基を含む。
【0294】
一実施形態では、ナノポアは、Mspに由来する、例えば、MspAに由来する膜貫通タンパク質ポアである。MspAに由来する好適なポアの例は、WO2012/107778に開示されている。
【0295】
一実施形態では、ナノポアは、ClyAに由来するか、又はそれに基づく膜貫通ポアである。
【0296】
膜
開示される方法において、検出器は、典型的には、膜に存在するナノポアである。任意の好適な膜が使用され得る。
【0297】
膜は、好ましくは、両親媒性層である。両親媒性層は、親水特性及び親油特性の両方を有するリン脂質などの両親媒性分子から形成された層である。両親媒性分子は、合成ま又は天然に存在するものであり得る。天然に存在しない両親媒性物質及び単分子層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野で既知であり、それらには、例えば、ブロックコポリマー(Gonzalez-Perez et al.,Langmuir,2009,25,10447-10450)が含まれる。ブロックコポリマーは、2つ以上のモノマーサブユニットが一緒に重合されて単一ポリマー鎖を作製するポリマー材料である。ブロックコポリマーは、典型的には、各モノマーサブユニットによって寄与される特性を有する。しかしながら、ブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成されたポリマーが有しない固有の特性を有し得る。ブロックコポリマーは、モノマーサブユニットのうちの1つが疎水性(すなわち、親油性)である一方で、他のサブユニットが水性媒体中で親水性であるように操作され得る。この場合、ブロックコポリマーは、両親媒特性を有し得、生体膜を模倣する構造を形成し得る。ブロックコポリマーは、ジブロック(2つのモノマーサブユニットからなる)であり得るが、3つ以上のモノマーサブユニットから構築されて両親媒性物質として挙動するより複雑な配置を形成し得る。コポリマーは、トリブロック、テトラブロック、又はペンタブロックコポリマーであり得る。膜は、好ましくは、トリブロックコポリマー膜である。
【0298】
古細菌二極性テトラエーテル脂質は、脂質が単分子層膜を形成するように構築される天然に存在する脂質である。これらの脂質は、一般に、厳しい生物環境下で生き残る好極限性細菌、好熱菌、好塩菌、及び好酸菌で見つけられる。それらの安定性は、最終二分子層の融合性質から得られると考えられている。一般モチーフ親水性-疎水性-親水性を有するトリブロックポリマーを作製することによってこれらの生物学的実体を模倣するブロックコポリマーを構築することは簡単である。この材料は、脂質二分子層と同様に挙動するモノマー膜を形成し、ベシクルから層状膜に至るまでの幅広い相挙動を包含し得る。これらのトリブロックコポリマーから形成された膜は、生体脂質膜に優るいくつかの利点を有する。トリブロックコポリマーが合成されたものであるため、その正確な構造を慎重に制御して、膜を形成し、かつポア及び他のタンパク質と相互作用するのに必要な正しい鎖長及び特性を提供することができる。
【0299】
ブロックコポリマーは、脂質サブ材料として分類されないサブユニットから構築される場合もあり、例えば、疎水性ポリマーは、シロキサン又は他の非炭化水素系モノマーから作製され得る。ブロックコポリマーの親水性サブセクションは低いタンパク質結合特性も有し得、これは、生の生体サンプルに曝露されたときに高度に耐性である膜の作製を可能にする。このヘッド基単位は、非分類脂質ヘッド基に由来する場合もある。
【0300】
トリブロックコポリマー膜は、生体脂質膜と比較して増加した機械的及び環境的安定性、例えば、はるかに高い動作温度又はpH範囲も有する。ブロックコポリマーの合成性質は、ポリマー系膜を幅広い用途のためにカスタマイズする基盤を提供する。
【0301】
いくつかの実施形態では、膜は、国際出願第WO2014/064443号又は同第WO2014/064444号に開示される膜のうちの1つである。
【0302】
両親媒性分子は、ポリヌクレオチドのカップリングを容易にするように化学的に修飾されても官能化されてもよい。両親媒性層は、単分子層であっても二分子層であってもよい。両親媒性層は、典型的には、平面である。両親媒性層は、湾曲していてもよい。両親媒性層は、支持されていてもよい。
【0303】
両親媒性膜は、典型的には、およそ10-8cm s-1の脂質拡散速度を有する二次元流体として本質的に作用する天然に移動性である。これは、ポア及びカップリングされたポリヌクレオチドが典型的には両親媒性膜内で移動することができることを意味する。
【0304】
膜は、脂質二分子層であり得る。脂質二分子層は、細胞膜のモデルであり、幅広い実験研究のための優れた基盤として機能する。例えば、脂質二分子層は、単一チャネル記録による膜タンパク質のインビトロ調査のために使用することができる。代替的に、脂質二分子層は、幅広い物質の存在を検出するためのバイオセンサーとして使用することができる。脂質二分子層は、任意の脂質二分子層であり得る。好適な脂質二分子層には、平面脂質二分子層、支持二分子層、又はリポソームが含まれるが、これらに限定されない。脂質二分子層は、好ましくは、平面脂質二分子層である。好適な脂質二分子層は、WO2008/102121、WO2009/077734、及びWO2006/100484に開示されている。
【0305】
脂質二分子層を形成するための方法は、当該技術分野で既知である。脂質二分子層は、一般にMontal and Mueller(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1972;69:3561-3566)の方法によって形成され、この方法では、脂質単分子層が、水溶液/空気界面上で、その界面に対して垂直な開口の両側を越えて担持される。脂質は、通常、最初にそれを有機溶媒中に溶解させ、その後、少量の溶媒を開口の両側にある水溶液の界面上で蒸発させることによって、電解質水溶液の表面に添加される。有機溶媒が蒸発すると、開口の両側の溶液/空気界面は、二分子層が形成されるまで開口を越えて物理的に上下に移動する。平面脂質二分子層は、開口を横切って膜内に又は開口部を横切って陥凹部内に形成され得る。
【0306】
Montal&Muellerの方法は、タンパク質ポア挿入に好適な良質の脂質二分子層を形成するための費用対効果の高い、比較的簡単な方法であるため、好評である。二分子層形成の他の一般的な方法には、先端浸漬(tip-dipping)、二分子層の塗装(painting bilayers)、及びリポソーム二分子層のパッチクランプが含まれる。
【0307】
先端浸漬二分子層形成は、脂質の単分子層を担持する試験溶液の表面上に開口面(例えば、ピペットチップ)を接触させることを伴う。この場合もやはり、脂質単分子層は、最初に有機溶媒中に溶解した少量の脂質を溶液表面で蒸発させることによって溶液/空気界面で生成される。その後、二分子層はラングミュア-シェーファー法によって形成され、溶液表面に対して開口を移動させるための機械的自動化を必要とする。
【0308】
二分子層の塗装の場合、有機溶媒中に溶解した少量の脂質が試験水溶液中に浸した開口に直接塗布される。脂質溶液は、塗装用刷毛又は同等のものを使用して開口にわたって薄く広げられる。溶媒を薄くすることにより、脂質二分子層の形成がもたらされる。しかしながら、二分子層から溶媒を完全に除去することは困難であり、その結果として、この方法によって形成された二分子層は安定性が低く、電気化学的測定中にノイズを生じやすい。
【0309】
パッチクランプは、生体細胞膜の研究で一般に使用されている。細胞膜は吸引によりピペットの端部に留められ、膜のパッチが開口にわたって付着するようになる。この方法は、リポソームを留めてから破裂させて脂質二分子層をピペットの開口にわたって密封することによって脂質二分子層を産生するように適合されている。この方法は、安定した巨大な単分子層リポソーム、及びガラス表面を有する材料に小さい開口を製造することを必要とする。
【0310】
リポソームは、超音波処理、押出、又はMozafari法(Colas et al.(2007)Micron 38:841-847)によって形成することができる。
【0311】
いくつかの実施形態では、脂質二分子層は、国際出願第WO2009/077734号に記載されるように形成される。この方法では有利に、脂質二分子層は乾燥脂質から形成される。最も好ましい実施形態では、脂質二分子層は、WO2009/077734に記載されるように、開口を横切って形成される。
【0312】
脂質二分子層は、脂質の2つの対向する層から形成される。これらの2つの脂質層は、それらの疎水性テール基が互いに向き合って疎水性内部を形成するように配置される。脂質の親水性ヘッド基は、二分子層の両側で水性環境に向かって外側に向いている。二分子層は、液体無秩序相(流体層状)、液体秩序相、固体秩序相(層状ゲル相、櫛型ゲル相)、及び平面二分子層結晶(層状サブゲル相、ラメラ結晶相)を含むが、これらに限定されない、いくつかの脂質相に存在し得る。
【0313】
脂質二分子層を形成するいずれの脂質組成物も使用することができる。脂質組成物は、必要な特性、例えば、表面荷電、膜タンパク質を支持する能力、充填密度、又は機械的特性を有する脂質二分子層が形成されるように選択される。脂質組成物は、1つ以上の異なる脂質を含むことができる。例えば、脂質組成物は、最大100個の脂質を含むことができる。脂質組成物は、好ましくは、1~10個の脂質を含む。脂質組成物は、天然に存在する脂質及び/又は人工脂質を含み得る。
【0314】
脂質は、典型的には、ヘッド基、界面部分、及び同じであっても異なってもよい2つの疎水性テール基を含む。好適なヘッド基には、中性ヘッド基、例えば、ジアシルグリセリド(DG)及びセラミド(CM)、双性イオンヘッド基、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、及びスフィンゴミエリン(SM)、負に帯電したヘッド基、例えば、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、及びカルジオリピン(CA)、並びに正に帯電したヘッド基、例えば、トリメチルアンモニウム-プロパン(TAP)が含まれるが、これらに限定されない。好適な界面部分には、天然に存在する界面部分、例えば、グリセロール系部分又はセラミド系部分が含まれるが、これらに限定されない。好適な疎水性テール基には、飽和炭化水素鎖、例えば、ラウリン酸(n-ドデカノール酸(n-Dodecanolic acid))、ミリスチン酸(n-テトラデコノニン酸(n-Tetradecononic acid))、パルミチン酸(n-ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n-オクタデカン酸)、及びアラキジン酸(n-エイコサン酸)、不飽和炭化水素鎖、例えば、オレイン酸(シス-9-オクタデカン酸)、並びに分岐炭化水素鎖、例えば、フィタノイルが含まれるが、これらに限定されない。不飽和炭化水素鎖中の鎖の長さ並びに二重結合の位置及び数は異なり得る。分岐炭化水素鎖中のメチル基などの鎖の長さ並びに分岐の位置及び数は異なり得る。疎水性テール基は、エーテル又はエステルとして界面部分に連結され得る。脂質は、ミコール酸であり得る。
【0315】
脂質は、化学的に修飾することもできる。脂質のヘッド基又はテール基は化学的に修飾され得る。ヘッド基が化学的に修飾されている好適な脂質には、PEG修飾脂質、例えば、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]、官能化PEG脂質、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3ホスホエタノールアミン-N-[ビオチニル(ポリエチレングリコール)2000]、並びにコンジュゲーションのために修飾された脂質、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(スクシニル)及び1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(ビオチニル)が含まれるが、これらに限定されない。テール基が化学的に修飾されている好適な脂質には、重合性脂質、例えば、1,2-ビス(10,12-トリコサジイノイル(tricosadiynoyl))-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、フッ化脂質、例えば、1-パルミトイル-2-(16-フルオロパルミトイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、重水素化脂質、例えば、1,2-ジパルミトイル-D62-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、及びエーテル結合脂質、例えば、1,2-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンが含まれるが、これらに限定されない。脂質は、ポリヌクレオチドのカップリングを容易にするように化学的に修飾されても官能化されてもよい。
【0316】
両親媒性層、例えば、脂質組成物は、典型的には、層の特性に影響を及ぼすであろう1つ以上の添加剤を含む。好適な添加剤には、脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸、及びオレイン酸、脂肪アルコール、例えば、パルミチンアルコール、ミリスチンアルコール、及びオレインアルコール、ステロール、例えば、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、シトステロール、及びスチグマステロール、リゾリン脂質、例えば、1-アシル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、及びセラミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0317】
別の実施形態では、膜は、固体層を含む。固体層は、マイクロ電子材料、絶縁材料、例えば、Si3N4、A12O3、及びSiO、有機及び無機ポリマー、例えば、ポリアミド、プラスチック、例えば、Teflon(登録商標)、又はエラストマー、例えば、二成分付加硬化シリコンゴム、及びガラスを含むが、これらに限定されない、有機材料及び無機材料の両方から形成することができる。固体層は、グラフェンから形成され得る。好適なグラフェン層は、WO2009/035647に開示されている。膜が固体層を含む場合、ポアは、典型的には、固体層内、例えば、固体層内の穴、ウェル、間隙、チャネル、溝、又はスリット内に含まれる両親媒性膜又は層に存在する。当業者であれば、好適な固体/両親媒性ハイブリッド系を調製することができる。好適な系は、WO2009/020682及びWO2012/005857に開示されている。上で考察される両親媒性膜又は層のうちのいずれかを使用することができる。
【0318】
本明細書に開示される方法は、典型的には、(i)ポアを含む人工両親媒性層、(ii)ポアを含む単離された天然に存在する脂質二分子層、又は(iii)ポアが内部に挿入された細胞を使用して実行される。この方法は、典型的には、人工トリブロックコポリマー層などの人工両親媒性層を使用して実行される。層は、ポアに加えて、他の膜貫通タンパク質及び/又は膜内タンパク質、並びに他の分子を含み得る。好適な装置及び条件は、以下で考察される。本発明の方法は、典型的には、インビトロで実施される。
【0319】
一般的方法
上述のように、本明細書で提供される方法は、任意の好適な検出器を使用して操作され得、したがって、ポリヌクレオチドを検出するための任意の好適な装置を使用し得る。
【0320】
本方法は、いくつかの実施形態では、膜貫通ポアのセンシングに好適である任意の装置を使用して実施し得る。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバと、チャンバを2つのセクションに分離する障壁とを備え得る。障壁は、膜貫通ポアを含む膜が形成される開口を有し得る。膜貫通ポアは、本明細書に記載されている。
【0321】
本方法は、WO2008/102120、WO2010/122293、又はWO00/28312に記載の装置を使用して実施され得る。簡潔には、ポアのチャネル内での分子(例えば、標的ポリヌクレオチド)の結合が、ポアを通るオープンチャネルイオン流に影響を及ぼすというもので、これはポアチャネルの「分子センシング」の本質である。開いたチャネルイオン流の変動は、電流の変化による好適な測定技術を使用して測定することができる。電流の減少によって測定されるイオン流の減少度は、ポア内又はポアの近くの障害物のサイズに関連している。したがって、ポア内又はポアの近くでの目的とする分子(例えば、標的ポリヌクレオチド)の結合により、検出可能かつ測定可能な事象が提供され、それにより、「生物学的センサ」の基礎が形成される。生体分子の存在を検出することにより、個別化された薬剤開発、医学、診断、ライフサイエンス研究、環境モニタリング、並びに警備及び/又は防衛産業での用途が見出される。
【0322】
ポリヌクレオチドの特徴付けに使用するとき、標的ポリヌクレオチドの存在、不在、又は1つ以上の特徴が決定される。本方法は、少なくとも1つの標的ポリヌクレオチドの存在、不在、又は1つ以上の特徴を決定するためのものであり得る。本方法は、2つ以上の標的ポリヌクレオチドの存在、不在、又は1つ以上の特徴を決定することに関し得る。本方法は、任意の数の標的ポリヌクレオチド、例えば、2、5、10、15、20、30、40、50、100以上の標的ポリヌクレオチドの存在、不在、又は1つ以上の特徴を決定することを含み得る。1つ以上の標的ポリヌクレオチドの任意の数の特徴、例えば、1、2、3、4、5、10以上の特徴が決定され得る。本明細書で提供される方法で検出し得る特徴としては、ポリヌクレオチドの同一性又は配列、ポリヌクレオチドの長さ、ポリヌクレオチドが修飾されているか否かなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、標的ポリヌクレオチドを配列決定する方法である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、既知の参照に対してリアルタイムシグナル又はベースコーリングを整列させることによって、リアルタイムで決定され得る。ポリヌクレオチド配列を決定する例示的な方法は、参照により本明細書に組み込まれるWO2016/059427に記載されている。
【0323】
ポリヌクレオチドの特徴付けに使用するとき、本方法は、典型的には電流の測定によって、ポアを通るイオン電流の流れを測定することを含み得る。代替的に、ポアを通るイオンの流れは、Heron et al:J.Am.Chem.Soc.9 Vol.131,No.5,2009によって開示されるように、光学的に測定され得る。したがって、装置は、電位を印加し、かつ膜及びポアにわたって電気信号を測定することができる電気回路も備え得る。特徴付け方法は、パッチクランプ又は電圧クランプを使用して実行され得る。特徴付け方法は、好ましくは、電圧クランプの使用を伴う。
【0324】
この方法は、Chenら、Nature Communications(2018)9:1733に記載されているように、光信号を測定することを含むことができ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、光学的に設計されたナノポア構造(プラズモニックナノスリットなど)などのナノポアを使用して、単一分子表面増強ラマン分光法(SERS)を局所的に有効にし、直接的なラマン分光検出によるポリヌクレオチドの特徴付けを行い得る。
【0325】
本方法は、各アレイが128、256、512、1024、2000、3000、4000、6000、10000、12000、15000以上のウェルを備えるシリコンベースのウェルアレイで実施され得る。
【0326】
本方法は、ポアを流れる電流を測定することを含み得る。この方法は、典型的には、電圧が膜及びポアを横切って印加された状態で実行される。使用される電圧は、典型的には+2V~-2V、典型的には-400mV~+400mVである。使用される電圧は、好ましくは、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-100mV、-50mV、-20mV、及び0mVから選択される下限と、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、及び+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲内である。使用される電圧は、より好ましくは100mV~240mVの範囲内、最も好ましくは120mV~220mVの範囲内である。増加した印加電位を使用することによって、ポアごとに異なるヌクレオチド間の識別を増加させることが可能である。
【0327】
開示される方法、特に本明細書に記載の標的ポリヌクレオチドの再読み取りを含む方法のいくつかの実施形態では、方法は、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進するための条件を提供すること、及び/又はモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させること、を含む。
【0328】
本方法は、典型的には、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン塩、例えば塩化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩などの任意の電荷担体の存在下で実施される。電荷担体には、イオン性液体又は有機塩、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、又は1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドが含まれ得る。上で考察される例示的な装置では、塩は、チャンバ内の水溶液に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、又は塩化セシウム(CsCl)が典型的に使用される。KClが好ましい。塩は、塩化カルシウム(CaCl2)などのアルカリ土類金属塩であり得る。塩濃度は、飽和時のものであり得る。塩濃度は、3M以下であり得、典型的には、0.1~2.5M、0.3~1.9M、0.5~1.8M、0.7~1.7M、0.9~1.6M、又は1M~1.4Mである。塩濃度は、好ましくは、150mM~1Mである。特徴付け方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、又は少なくとも3.0Mの塩濃度を使用して実行される。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比を提供し、正常な電流変動のバックグラウンドに対する結合/結合なしを示す電流の特定を可能にする。
【0329】
いくつかの実施形態では、該件を提供することは、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドが解離する速度を増加させるように塩濃度を提供することを含む。いくつかの実施形態では、該条件を提供することは、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合の速度を低下させるように塩濃度を提供することを含む。モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進するため、及び/又は再結合を遅延させるための、好適な塩濃度を決定することは、本明細書の開示を考慮して当業者の技量の範囲内である。
【0330】
いくつかの実施形態では、該条件を提供することは、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドが解離する速度を増加させるように浸透圧を提供することを含む。いくつかの実施形態では、該条件を提供することは、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合の速度を低下させるように浸透圧を提供することを含む。モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進するため、及び/又は再結合を遅延させるための、好適な浸透圧を決定することは、本明細書の開示を考慮して当業者の能力の範囲内である。
【0331】
該方法は、通常は、緩衝液の存在下で実施される。上で考察される例示的な装置では、緩衝液は、チャンバ内の水溶液に存在する。任意の好適な緩衝液が使用され得る。典型的には、緩衝液は、HEPESである。別の好適な緩衝液は、Tris-HCl緩衝液である。本方法は、典型的には、4.0~12.0、4.5~10.0、5.0~9.0、5.5~8.8、6.0~8.7、又は7.0~8.8、又は7.5~8.5のpHで実行される。使用されるpHは、好ましくは、約7.5である。
【0332】
方法は、0℃~100℃、15℃~95℃、16℃~90℃、17℃~85℃、18℃~80℃、19℃~70℃、又は20℃~60℃で実施され得る。方法は、典型的には、室温で実施される。本方法は、任意選択で、酵素機能を支持する温度、例えば約37℃で実施される。
【0333】
いくつかの実施形態では、該条件を提供することは、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドが解離する速度を増加させるように温度を上昇させることを含む。いくつかの実施形態では、該条件を提供することは、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合の速度を低下させるように温度を上昇させることを含む。決して理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、温度を上げると、例えばポリヌクレオチドからのモータータンパク質の解離速度を高めることにより、再読み取りが促進され得ると考えている。モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進するため、及び/又は再結合を遅延させるための、好適な温度を決定することは、本明細書の開示を考慮して当業者の技量の範囲内である。
【0334】
再読み取りを促進するための温度を提供することによって再読み取りを促進するための条件を提供する例は、本明細書に提供されており、例えば、実施例11を参照されたい。いくつかの実施形態では、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進するための、及び/又はモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させるための、条件を提供することは、約20℃~約50℃、例えば約30℃~約45℃、例えば約34℃~約40℃、例えば約31、32、33、34、35、36、37、38、又は39℃の温度を提供することを含み得る。
【0335】
開示される方法の更なる態様
以下は、開示される方法の更なる態様である:
1.標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法であって、
(i)検出器を、モータータンパク質が結合した標的ポリヌクレオチドに接触させることであって、標的ポリヌクレオチドが、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位でモータータンパク質に結合している、接触させることと、
(ii)モータータンパク質が検出器に対して第1の方向の標的ポリヌクレオチドの動きを制御するときに、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得することと、
(iii)標的ポリヌクレオチドが検出器に対して第2の方向に移動するように、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドを脱結合することと、
(iv)標的ポリヌクレオチドをモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位に再結合させ、モータータンパク質が検出器に対して第1の方向に標的ポリヌクレオチドの動きを制御するとき、標的ポリヌクレオチドに特徴的な1つ以上の測定値を取得し、
それによって標的ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む方法。
【0336】
2.ステップ(iii)及び(iv)を複数回繰り返すことを含む、態様1に記載の方法。
【0337】
3.ステップ(ii)において、モータータンパク質が、検出器に対する第1の方向への標的ポリヌクレオチドの第1の部分の動きを制御し、ステップ(iv)において、モータータンパク質が、標的ポリヌクレオチドの第2の部分の、検出器に対する第1の方向への移動を制御し、第1の部分が、少なくとも部分的に第2の部分と重なる、態様1又は2に記載の方法。
【0338】
4.第1の部分が、第2の部分と同じである、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0339】
5.ステップ(iii)において、標的ポリヌクレオチドが検出器に対して移動する距離が、少なくとも100ヌクレオチド長である、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0340】
6.検出器が、第1の開口部及び第2の開口部を有する構造に含まれるか、又は第1の開口部及び第2の開口部を有する膜貫通ナノポアを含み、ステップ(i)が、第1の開口部を標的ポリヌクレオチドで収縮させることを含む、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0341】
7.(i)モータータンパク質が、第2の開口部から第1の開口部への方向への標的ポリヌクレオチドの移動を制御し、(ii)標的ポリヌクレオチドがモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から脱結合するとき、標的ポリヌクレオチドが、第1の開口部から第2の開口部の方向に移動する、態様6に記載の方法。
【0342】
8.検出器に力を適用することを含み、モータータンパク質が、適用された力と反対の方向に、検出器に対する標的ポリヌクレオチドの動きを制御する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0343】
9.検出器が、シス側及びトランス側を有する膜にまたがる膜貫通ナノポアを含み、
(i)ナノポアの第1の開口部が、膜のシス側にあり、ナノポアの第2の開口部が、トランス側にあり、モータータンパク質が、膜のトランス側からシス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御し、標的ポリヌクレオチドがモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から脱結合するとき、標的ポリヌクレオチドが、膜のシス側からトランス側へナノポアを通って移動し、かつ、
(ii)ナノポアの第1の開口部が、膜のトランス側にあり、ナノポアの第2の開口部が、シス側にあり、モータータンパク質が、膜のシス側からトランス側へのナノポアを通る標的ポリヌクレオチドの移動を制御し、標的ポリヌクレオチドがモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から脱結合するとき、標的ポリヌクレオチドが、膜のトランス側からシス側へナノポアを通って移動する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0344】
10.標的ポリヌクレオチドが、リーダーの近傍で標的ポリヌクレオチドからのモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位の脱結合を促進するよう構成されたリーダーに付着するか、又はリーダーを含む、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0345】
11.標的ポリヌクレオチドが、モータータンパク質がリーダーと接触したときに、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から脱結合する、態様10に記載の方法。
【0346】
12.モータータンパク質が、標的ポリヌクレオチドのヌクレオチドよりもリーダーに対して低い親和性を有する、態様10又は態様11に記載の方法。
【0347】
13.リーダーが、標的ポリヌクレオチドとは異なるタイプのヌクレオチドを含む、態様10~12のいずれか1つに記載の方法。
【0348】
14.(i)標的ポリヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチド(DNA)を含み、リーダーが、1つ以上の、核酸塩基及び糖部分(スペーサー部分)の両方を欠くヌクレオチド、リボヌクレオチド(RNA)、ペプチドヌクレオチド(PNA)、グリセロールヌクレオチド(GNA)、トレオースヌクレオチド(TNA)、ロックドヌクレオチド(LNA)、架橋ヌクレオチド(BNA)、脱塩基ヌクレオチド若しくは修飾リン酸結合を有するヌクレオチド、の1つ以上を含むか、又は、(ii)標的ポリヌクレオチドが、リボヌクレオチド(RNA)を含み、リーダーが、核酸塩基及び糖部分(スペーサー部分)の両方を欠くヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、ペプチドヌクレオチド(PNA)、グリセロールヌクレオチド(GNA)、トレオースヌクレオチドを含む(TNA)、ロックされたヌクレオチド(LNA)、架橋ヌクレオチド(BNA)、脱塩基ヌクレオチド若しくは修飾されたリン酸結合を有するヌクレオチドを含む、態様10~13のいずれか1つに記載の方法。
【0349】
15.標的ポリヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチド(DNA)を含み、リーダーが、1つ以上のスペーサー部分及び/又は1つ以上のリボヌクレオチドを含む、態様10~14のいずれか1つに記載の方法。
【0350】
16.標的ポリヌクレオチドが、モータータンパク質から脱会合しない、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0351】
17.モータータンパク質が修飾されて、標的ポリヌクレオチドが標的ポリヌクレオチドから脱会合するのを防止する、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0352】
18.モータータンパク質が修飾されて、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進し、及び/又は、標的ポリヌクレオチドのモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への再結合を遅延させる、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0353】
19.モータータンパク質が、(i)標的ポリヌクレオチドの周囲のモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位をトポロジー的に閉鎖するための、及び(ii)モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進し、かつ/又はモータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させるための、閉鎖部分で修飾される、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0354】
20.モータータンパク質が修飾されて、モータータンパク質への閉鎖部分の結合が容易になる、態様19に記載の方法。
【0355】
21.モータータンパク質が、モータータンパク質中の少なくとも1つのアミノ酸をシステイン又は非天然アミノ酸に置換することによって修飾される、態様20に記載の方法。
【0356】
22.閉鎖部分が、二官能性架橋剤を含む、態様19~21のいずれか1つに記載の方法。
【0357】
23閉鎖部分がモータータンパク質の2つのアミノ酸残基を架橋し、閉鎖部分によって架橋された少なくとも1つのアミノ酸が、システイン又は非天然アミノ酸である、態様19~22のいずれか1つに記載の方法。
【0358】
24.閉鎖部分が、約1Å~約100Åの長さを有する、態様19~23のいずれか1つに記載の方法。
【0359】
25.閉鎖部分が、結合、好ましくはジスルフィド結合を含む、態様19~21のいずれか1つに記載の方法。
【0360】
26.閉鎖部分が、式[A-B-C]の構造を含み、式中、A及びCが、モータータンパク質中のアミノ酸残基と反応するための各々独立した反応性官能基であり、Bが、連結部分である、態様19~24のいずれか1つに記載の方法。
【0361】
27.A及びCが、各々独立してシステイン反応性官能基である、態様26に記載の方法。
【0362】
28.連結部分Bが、直鎖状若しくは分岐状の、非置換若しくは置換アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、ヘテロアリーレン、カルボシクリレン又はヘテロシクリレン部分を含み、部分が、1つ以上の、O、N(R)、S、C(O)、C(O)NR、C(O)O、非置換若しくは置換アリーレン、アリーレン-アルキレン、ヘテロアリーレン、ヘテロアリーレン-アルキレン、カルボシクリレン、カルボシクリレン-アルキレン、ヘテロシクリレン及びヘテロシクリレン-アルキレンから選択される原子又は基で、任意選択的に中断されるか又は終了し、式中、Rが、H、非置換若しくは置換アルキル、及び非置換若しくは置換アリールから選択される、態様26又は27に記載の方法。
【0363】
29.連結部分Bが、アルキレン、オキシアルキレン又はポリオキシアルキレン基を含み、かつ/又は、A及びCが、各々マレイミド基である、態様26~28のいずれか1つに記載の方法。
【0364】
30.閉鎖部分が、約5Å~約50Åの長さを有する、態様19~25又は26~29のいずれか1つに記載の方法。
【0365】
31.モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位からの標的ポリヌクレオチドの脱結合を促進するための条件、及び/又は、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合を遅延させるための条件を提供することを含む、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0366】
32.該条件を提供することが、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位から標的ポリヌクレオチドが解離する速度を増加させるように温度を上昇させることを含む、態様31に記載の方法。
【0367】
33.該条件を提供することが、モータータンパク質のポリヌクレオチド結合部位への標的ポリヌクレオチドの再結合の速度を低下させるよう温度を上昇させることを含む、態様31又は32に記載の方法。
【0368】
34.モータータンパク質が、ヘリカーゼである、先行態様のいずれか1つに記載の方法。
【0369】
これらの態様は、本明細書でより詳細に説明する特徴に関連する。
【0370】
ポリヌクレオチドアダプター
モータータンパク質を含むポリヌクレオチドアダプター及も提供される。本明細書に開示されるポリヌクレオチドアダプターのいずれも本明細書及び上で考察される方法の実施形態に適用することができることが理解されるであろう。
【0371】
一実施形態では、二本鎖ポリヌクレオチド分析物に付着するための付着点を含む第1の末端及び第2の末端を有するポリヌクレオチドアダプターも提供され、該ポリヌクレオチドアダプターは、(i)付着点の方向にアダプターをプロセシングするための向きでその上に失速したモータータンパク質と、(ii)モータータンパク質とアダプターの第2の末端との間に位置するブロッキング部分と、を含む。
【0372】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、本明細書により詳細に記載されるポリヌクレオチドアダプターである。一実施形態では、モータータンパク質は、本明細書に記載のモータータンパク質である。一実施形態では、ブロッキング部分は、本明細書に記載のブロッキング部分である。
【0373】
モータータンパク質は、二本鎖ポリヌクレオチドに結合するためのアダプター上の付着点に向かう方向にポリヌクレオチドアダプターをプロセシングするよう配向される。モータータンパク質は、標的ポリヌクレオチドの移動をトランスからシス方向に制御するために、ポリヌクレオチドアダプター上で配向され得る。
【0374】
モータータンパク質は、モータータンパク質に向かう方向の、ナノポアなどの検出器に対する標的ポリヌクレオチドの動きを制御するために、ポリヌクレオチドアダプター上で配向され、すなわち、本明細書でより詳細に説明するように、検出器から出、例えばナノポアから出る。
【0375】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、本明細書に記載の失速部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、本明細書に記載の停止部分を含む。
【0376】
キット
ポリヌクレオチドアダプター及びモータータンパク質を含むキットも提供される。本明細書に開示されるポリヌクレオチドアダプターのいずれも本明細書及び上で考察されるキットの実施形態に適用することができることが理解されるであろう。
【0377】
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドを改変するためのキットが提供され、該キットは、本発明で提供される第1のアダプターと、第1の末端に一本鎖リーダー配列を含み、第2の末端に二本鎖ポリヌクレオチド分析物に付着するための付着点を含む第2のアダプターと、を含む。
【0378】
一実施形態では、第2のアダプターは、本明細書により詳細に記載されるアダプターである。
【0379】
システム
ポリヌクレオチドアダプター、モータータンパク質、及びナノポアを含むシステムも提供される。本明細書に開示されるポリヌクレオチドアダプターのいずれも本明細書及び上で考察される系の実施形態に適用することができることが理解されるであろう。
【0380】
一実施形態では、標的二本鎖ポリヌクレオチドを特徴付けるための系が提供され、該系は、
-停止部分及び任意選択的に停止部分を含むポリヌクレオチドアダプターと、
-標的ポリヌクレオチドがナノポアに対して移動したときに標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのナノポアと、
-二本鎖ポリヌクレオチドをナノポアに対して第1の方向に移動させるためのモータータンパク質と、を含む。
【0381】
一実施形態では、ポリヌクレオチドアダプターは、本明細書により詳細に記載されるポリヌクレオチドアダプターである。一実施形態では、モータータンパク質は、本明細書に記載のモータータンパク質である。一実施形態では、ナノポアは、本明細書に記載されるナノポアである。系は、膜、制御装置、その他、を更に含み得る。
【0382】
特定の実施形態、特定の構成、並びに材料及び/又は分子が、本発明による方法について本明細書で考察されているが、形態及び詳細の様々な変更又は修正が本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく行われてもよいことを理解されたい。以下の実施例は、特定の実施形態をよりよく例証するために提供されており、本出願を制限するものとみなされるべきではない。本出願は、特許請求の範囲のみによって制限される。
【実施例】
【0383】
実施例1
本実施例は、ssDNAの5’-3’を転移しながらdsDNAを巻き戻すDNAモーターを使用して、ナノポアを通るDNAポリヌクレオチド鎖の制御された移動を示す。DNAモーターは、ポリヌクレオチドに連結されたYアダプター上で最初に失速した。ポリヌクレオチドは、以下の異なる段階でナノポアを通って移動した:(1)ポリヌクレオチドの3’末端がナノポアによって捕捉され、ナノポアが転位し、5’末端で失速したDNAモーターに到達するまで、正の適用電位下で二本鎖を分離した、無酵素段階、(2)DNAモーターが最初に正のバイアス下で失速を超えることができなかったが、逆電位を適用することによって活性化(「脱失速」)された、「脱失速」段階、(3)モーターが、適用された電位に逆らってDNAをナノポアから5’-3’移動させ始めた、DNAモーター制御段階、(4)ポリヌクレオチドの末端に到達した後、鎖を排出する電位を逆転させることによって除去することができる一定のブロックレベルが見られたこと。
【0384】
非対称の3.6キロベースの二本鎖DNA分析物(バクテリオファージラムダDNAの断片;配列番号20)をPCRによって取得し、NEBNext末端修復及びNEBNext dA-tailingモジュール(New England Biolabs(NEB))及びUSERダイジェストを使用して、一方の末端に3’dAオーバーハングを生成し、反対側の末端に3’AGGAオーバーハングを生成させる。
【0385】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号21、配列番号22)をアニーリングすることによって調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードした。モノマートラプタビジンをアダプターに追加してブロッカーとして5’ビオチン部分に結合させ、(1)DNAモーターが5’末端から逆方向に拡散するのを防ぎ、(2)ライブラリーの5’末端が意図せずにナノポアにより捕捉されるのを防いだ。
【0386】
Oxford Nanopore Technologies配列決定キットSKQ-LSK109(本明細書ではLSK-SQK109とも称される、https://community.nanoporetech.com/protocols/gDNA-sqk-lsk109/v/gde_9063_v109_revt_14aug2019詳細を参照)からのLNB及びT4DNAリガーゼ(NEB)を使用して、二本鎖DNA分析物をYアダプターのdA末端にライゲーションした。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲート化された基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「DNAライブラリー」を得た。
【0387】
Oxford Nanopore TechnologiesのFLO-MIN106 MinIONフローセルとMinION Mk1bで電気的測定値を取得した。1200μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、50nMのDNAテザーを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLのSQB、15μLのDNAライブラリー、0.7μLの過剰モノマートラプタビジン(約100nMテトラマー)、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0388】
カスタム配列決定スクリプトは、適用される電位を次のように制御するよう準備した:0.5秒の脱失速段階(0mV)、85.5秒の配列決定(+120mV)、排出段階(0mV~-120mV、1秒の間で変動、-120mV、3秒)。この一連の適用電位を複数回繰り返した。
【0389】
生データは、MinKNOWソフトウェア(Oxford Nanopore Technologies)を使用してバルクFAST5ファイルに収集された。
【0390】
図6は、本実施例で使用されるアダプターを示す。
図7は、二本鎖ポリヌクレオチド分析物に連結されたアダプターを示す。
図8は、ポリヌクレオチド分析物を捕捉し、脱離し、特徴付けるために必要な適用電位のパターンを示す、本実施例における実験の概略図を示す。
図9は、本実施例の電流対時間のトレースの例を示す。データは、ナノポアによるポリヌクレオチド分析物の捕捉、続いて適用電位を0~-120mVに下げることによってDNAが「脱失速」された後、ナノポアからDNAが制御され、段階的に移動することを示す。-40mVの脱失速電位を超える酵素媒介イベントはほとんど記録されず、これは、0~-40mVの間で、一本鎖が脱失速段階でナノポアに保持されることを示唆している。
【0391】
実施例2
本実施例は、ssDNAの5’-3’を転移しながらdsDNAを巻き戻すDNAモーターを使用して、ナノポアを通るDNAポリヌクレオチド二本鎖の両方の鎖の制御された移動を示す。DNAモーターは、ポリヌクレオチドに連結されたYアダプター上で最初に失速した。鋳型鎖と相補鎖は、ヘアピン部分を介して結合していた。ポリヌクレオチドは、以下の異なる段階でナノポアを通って移動した:(1)ポリヌクレオチドの3’末端がナノポアによって捕捉され、ナノポアが転位し、5’末端で失速したDNAモーターに到達するまで、正の適用電位下で二本鎖を分離し、最初に相補鎖、次に鋳型鎖が通過する、無酵素段階、(2)DNAモーターが最初に正のバイアス下で失速を超えることができなかったが、逆電位を適用することによって活性化(「脱失速」)された、「脱失速」段階、(3)モーターが、適用された電位に逆らってDNAをナノポアから5’-3’移動させ始め、DNAモーターが、最初に鋳型鎖上を移動し、ヘアピン上を通過して、相補鎖上を移動した、DNAモーター制御段階、(4)ポリヌクレオチドの末端に到達した後、鎖を排出する電位を逆転させることによって除去することができる一定のブロックレベルが見られたこと。
【0392】
非対称の3.6キロベースの二本鎖DNA分析物(バクテリオファージラムダDNAの断片;配列番号20)をPCRによって取得し、NEBNext末端修復及びNEBNext dA-tailingモジュール(New England Biolabs(NEB))及びUSERダイジェストを使用して、一方の末端に3’dAオーバーハングを生成し、反対側の末端に3’AGGAオーバーハングを生成させる。
【0393】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号21、配列番号22)をアニーリングすることによって調製された。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードした。モノマートラプタビジンをアダプターに追加してブロッカーとして5’ビオチン部分に結合させ、(1)DNAモーターが5’末端から逆方向に拡散するのを防ぎ、(2)ライブラリーの5’末端が意図せずにナノポアにより捕捉されるのを防いだ。
【0394】
3’-TCCTオーバーハングを有するヘアピンは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号23)を二本鎖アニーリング緩衝液(Integrated DNA Technologies,Inc.)中で1μM~95℃で2分間加熱し、次いでウェットアイスで冷却することによって調製した。
【0395】
Oxford Nanopore Technologiesの配列決定キット(LSK-SQK109)からのLNB及びT4DNAリガーゼ(NEB)を使用して、二本鎖DNA分析物及びヘアピンをYアダプターに連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲート化された基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「DNAライブラリー」を得た。
【0396】
Oxford Nanopore TechnologiesのFLO-MIN106 MinIONフローセルとMinION Mk1bで電気的測定値を取得した。1200μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、50nMのDNAテザーを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLのSQB、15μLのDNAライブラリー、0.7μLの過剰モノマートラプタビジン(約100nMテトラマー)、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0397】
カスタムシーケンススクリプトは、適用される電位を次のように制御するために準備した、0.5秒の脱失速段階(0mV~-120mVの範囲で、実験に応じて可変)、85.5秒の配列決定(+120mV)、排出段階(0mV、1秒、-120mV、3秒)。この一連の適用電位を複数回繰り返した。
生データは、MinKNOWソフトウェア(Oxford Nanopore Technologies)を使用してバルクFAST5ファイルに収集された。
【0398】
図10は、本実施例で使用されるコンポーネントを示す:ヘアピン(A)、アダプター(B)及びポリヌクレオチド分析物(C)、(D)一緒にライゲーションされた全てのコンポーネント。
図11は、ヘアピン誘導体化ポリヌクレオチド分析物を捕捉し、脱失速させ、特徴付けるために必要な適用電位のパターンを示す、この実施例における実験概略図を示す。
図12aは、本実施例の電流対時間トレースの例をいくつか示す。データは、ナノポアによるポリヌクレオチド分析物の捕捉と、それに続く「脱失速」された後のナノポアからのDNAの制御された段階的な移動を示す。脱失速電位を、0mV~-120mVの間で変化させたが、-60mVを超える酵素媒介イベントは見られず、これは、トランスコンパートメントで折り畳まれたヘアピンが、-60mVの電位までの脱失速中の排出に対する抵抗、及び一本鎖DNA単独と比較した追加の抵抗に会うことを示唆する(実施例1より)。
図12bは、状態A~Gを
図11の電流トレースの例に割り当てたものである。実施例1と比較すると、追加の状態Eが
図12bで観察され、これは、鋳型部分Dの直後に続く、ナノポアからのポリヌクレオチドの相補部分の酵素媒介移動に起因し得る。
【0399】
実施例3
本実施例は、「活性脱失速」プロセスによるDNAモーターの制御された脱失速を示す。DNAポリヌクレオチド二本鎖の一方又は両方の鎖を、dsDNAをほどくDNAモーターを使用してナノポアに通した。DNAモーターは、ポリヌクレオチドに連結されたYアダプター上で最初に失速した。任意選択的に、ポリヌクレオチドの遠位端で、鋳型鎖と相補鎖をヘアピン部分を介して連結させたが、それ以外の場合は、鋳型と補体の鎖は、ヘアピンを省略して連結させなかった。ポリヌクレオチドは、以下の異なる段階でナノポアを通って移動した:(1)ポリヌクレオチドの3’末端がナノポアによって捕捉され、ナノポアが転位し、5’末端で失速したDNAモーターに到達するまで、二本鎖を分離した、無酵素段階、(2)DNAモーターが最初に正のバイアス下で失速を超えることができなかったが、排出電位を繰り返し適用、続いて配列決定電位に戻すことによって活性化(「脱失速」)された、活性的「脱失速」段階、(3)モーターが、適用された電位に逆らってDNAをナノポアから5’-3’移動させ始めた、DNAモーター制御段階、及び(4)ポリヌクレオチドの末端に到達した後、鎖を排出する電位を逆転させることによって除去することができる一定のブロックレベルが見られたこと。
【0400】
非対称の3.6キロベースの二本鎖DNA分析物(バクテリオファージラムダDNAの断片;配列番号20)をPCRによって取得し、NEBNext末端修復及びNEBNext dA-tailingモジュール(New England Biolabs(NEB))及びUSERダイジェストを使用して、一方の末端に3’dAオーバーハングを生成し、反対側の末端に3’AGGAオーバーハングを生成させる。
【0401】
対称的な3.6キロベースの二本鎖DNA分析物(バクテリオファージラムダDNAの断片;配列番号20)をPCRによって取得し、NEBNext末端修復及びNEBNext dA-tailingモジュール(New England Biolabs(NEB))を使用して、両方の末端に3’dAオーバーハングを生成させる。
【0402】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号21、配列番号22)をアニーリングすることによって調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードした。モノマートラプタビジンをアダプターに追加してブロッカーとして5’ビオチン部分に結合させ、(1)DNAモーターが5’末端から逆方向に拡散するのを防ぎ、(2)ライブラリーの5’末端が意図せずにナノポアにより捕捉されるのを防いだ。
【0403】
3’-TCCTオーバーハングを有するヘアピンは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号23)を二本鎖アニーリング緩衝液(Integrated DNA Technologies,Inc.)中で1μM~95℃で2分間加熱し、次いでウェットアイスで冷却することによって調製した。
【0404】
Oxford Nanopore Technologiesの配列決定キット(LSK-SQK109)からのLNB及びT4DNAリガーゼ(NEB)を使用して、二本鎖DNA分析物をYアダプターに連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲートされた基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「1D DNAライブラリー」を得た。
【0405】
Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(LSK-SQK109)及びT4DNAリガーゼ(NEB)のLNBを使用して、非対称二本鎖DNA分析物をYアダプター及びヘアピンに連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲート化された基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「2D DNAライブラリー」を得た。
【0406】
Oxford Nanopore TechnologiesのFLO-MIN106 MinIONフローセルとMinION Mk1bで電気的測定値を取得した。1200μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、50nMのDNAテザーを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLのSQB、15μLの1Dライブラリー又は2D DNAライブラリー、0.7μLの過剰モノマートラプタビジン(約100nMテトラマー)、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0407】
MinIONの活性なブロック解除回路を使用して適用電位を制御するために、カスタムシーケンススクリプトを準備した。配列決定電圧を120mVに設定し、活性ブロック解除電位(「活性脱失速」段階、前述の段階(2))を、1Dライブラリーでは-12mV、2Dライブラリーでは-48mVに設定した。失速レベルと鎖(配列決定)レベルの分類を、MinKNOW機器制御ソフトウェアの構成ファイルにプログラムし、失速した種の検出を可能にし、また実施例1及び2からの静的ブロック解除電位の知識を用いて、鎖の完全な放出を引き起こさないブロック解除電位を適用した。スクリプトを次のように機能させた:MinKNOWが鎖が失速レベルにあることを検出した場合、ブロック解除電位を最初に5秒間適用し、次に120mVの配列決定電位に戻って、活性的に配列決定鎖を5回チェックする。失速レベルがまだ存在する場合は、ブロック解除の可能性を更に25秒間適用し、5回繰り返す。各ブロック解除の試行の間に3秒の休憩時間を組み込んだ。MinKNOWが配列決定電位を返したときにアクティブな配列決定鎖を検出した場合、ブロック解除の試行を停止し、配列決定電位のみを適用する。このプロセス全体で活性的な配列決定鎖が生成されない場合、MinKNOWはチャネルをオフにする。15分ごとに「mux scan」を適用してシステムをリセットし、フローセルの全てのチャネルのブロックを全体的に解除し、120mVでアクティブなナノポアをチェックした。
【0408】
生データは、MinKNOWソフトウェア(Oxford Nanopore Technologies)を使用してバルクFAST5ファイルに収集された。
【0409】
図7及び10、Dは、本実施例で使用されるポリヌクレオチド分析物を示す。これらの調製は、実施例1及び2に記載されている。
図13は、1D DNAライブラリー(A)と2D DNAライブラリー(B)の電流トレースの例を示す。脱失速が試行された部分を、アスタリスクでマークする。データは、これらの方法を使用して1Dライブラリーと2Dライブラリーの両方を脱失速させることができること、及び酵素を脱失速してナノポアからのポリヌクレオチドの酵素制御移動を確認するためにいくつかの試みを繰り返し行うことができることを示す。
【0410】
実施例4
本実施例では、ナノポアを介したDNA転位の最初の酵素を含まない部分(3’-5’)からのシグナルの期間を使用して、鋳型鎖と相補鎖が末端の5’-3’DNAモーターがDNA鎖をナノポアから反対方向に積極的に移動させる前に、ヘアピン部分によって連結したときの二本鎖DNA分子のサイズの推定を行う方法を示す。加えて、本実施例は、ヘアピンに追加されたマーカーを使用してシグナルを区別する方法を示す。
【0411】
DNAモーターは、ポリヌクレオチドに連結されたYアダプター上で最初に失速した。鋳型鎖及び相補鎖は、実施例2に従ってヘアピン部分を介して一緒に連結させた。任意選択的に、ヘアピン部分はかさ高いフルオロフォア基又は脱塩基基を含み、かつ/又は追加のオリゴヌクレオチドをヘアピンにハイブリダイズさせた。
【0412】
非対称の3.6キロベースの二本鎖DNA分析物(バクテリオファージラムダDNAの断片;配列番号20)を、プライマーを使用したPCRによって得、その1つには複数のdUTP塩基が含まれており、NEBNext末端修復及びNEBNext dAテーリングモジュール(New England Biolabs(NEB))、続いてNEBUSERダイジェストによって末端修復及びdAテール化を行い、一方の末端に3’dAオーバーハングを生成させ、反対側の末端に3’AGGAオーバーハングを生成させる。
【0413】
Covaris gTubeを使用して約20kbの剪断サイズに剪断したE.coli SCS110 DNAにジェネリックアダプターを連結し、PCRで増幅することにより、Escherichia coli二本鎖DNAのランダムライブラリーを生成させた。断片は、両端に3’dAオーバーハングを生成させるために、NEBNext末端修復及びNEBNext dAテーリングモジュール(New England Biolabs(NEB))によって末端修復及びdAテール化した。
【0414】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号21、配列番号22)をアニーリングすることによって調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードした。モノマートラプタビジンをアダプターに追加してブロッカーとして5’ビオチン部分に結合させ、(1)DNAモーターが5’末端から逆方向に拡散するのを防ぎ、(2)ライブラリーの5’末端が意図せずにナノポアにより捕捉されるのを防いだ。
【0415】
3’-TCCT又は3’-Tオーバーハングを有するヘアピンは、配列番号24、配列番号25又は配列番号26のDNAを1μMで、デュプレックスアニーリング緩衝液(Integrated DNA Technologies,Inc.)中で95℃で2分間加熱し、続いて湿った氷上で急冷することによって調製した。
【0416】
Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(LSK-SQK109)からのLNB及びT4DNAリガーゼ(NEB)を使用して、非対称3.6キロベース二本鎖DNA分析物及びヘアピン(配列番号24又は配列番号26)をYアダプターに連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲートされた基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「3.6kb DNAライブラリー」を得た。
【0417】
Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(LSK-SQK109)からのLNB及びT4DNAリガーゼ(NEB)を使用して、Escherichia coli二本鎖DNA及びヘアピン(配列番号25)をYアダプターに連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲーションされた基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「ランダムE.coli試験ライブラリー」を得た。
【0418】
Oxford Nanopore TechnologiesのFLO-MIN106 MinIONフローセルとMinION Mk1bで電気的測定値を取得した。1200μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、50nMのDNAテザーを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLのSQB、15μLの3.6kbライブラリー又はランダムE.coli試験ライブラリーのいずれか、0.7μLの過剰モノマートラプタビジン(約100nMテトラマー)、Oxford Nanopore Technologiess配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。反応液の一部分に、配列番号27のオリゴヌクレオチドも50nMで添加した。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0419】
2つのライブラリーを、異なる実行スクリプトで試験した。3.6kbライブラリーは、次のように適用される電位を制御するためにカスタム配列決定スクリプトを使用して実行した:0.5秒の脱失速段階(-40mV)、85.5秒の配列決定(+120mV)、排出段階(0mV、1秒、-120mV、3秒)。この一連の適用電位を複数回繰り返した。ランダムE.coli試験ライブラリーは、実施例3に記載のカスタム活性脱失速スクリプトを用いて、捕捉/配列決定電圧120mV及び排出電圧-48mVで実行した。
【0420】
生データは、MinKNOWソフトウェア(Oxford Nanopore Technologies)を使用してバルクFAST5ファイルに収集された。
【0421】
図14は、本実施例で使用されたヘアピンとオリゴヌクレオチドとの組み合わせを示す。3.6kbのDNAライブラリーを使用して、最初に捕捉段階のシグナルを特徴付けを行った。
図15は、無酵素及び酵素媒介転位の電気的測定で検出されると予想される中間体の概略図を示す。
図11と比較すると、ナノポア内のかさばる基とナノポア上のブロッカーオリゴヌクレオチドにそれぞれ対応する2つの追加の状態A1及びA2(
図15を参照)が、最初の無酵素捕捉中に予想される。追加の状態D1は、ヘアピン部分のかさ高い基を介して移動する酵素に対応し、酵素媒介移動の鋳型(D)段階と相補鎖(E)段階の間に予想される。
図16a~16dは、各ヘアピン-オリゴヌクレオチドの組み合わせについてのトレースの例を示す。ヘアピンのみの部分(
図16a)は、比較的平坦であるが検出可能な捕捉段階(アスタリスクでマーク)を示した。ヘアピン部分にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの付加により、追加のアップティック(uptick)中間体が導入され(
図16bでA2と表示ク)、3つのかさ高いフルオレセイン-dT塩基がダウンティック(downtick)を導入した(
図16cでA1と表示)。ヘアピンにハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドとフルオレセイン-dT塩基の組み合わせは、両方のタイプのシグナルを導入した(
図16dに示す)。追加のシグナルの導入により、ポリヌクレオチドの無酵素捕捉/エントリー段階の期間を測定することが可能になった(
図16a~dにおいてアスタリスクによって示す)。
【0422】
図16b(ヘアピンとハイブリダイズしたオリゴヌクレオチド)に示すスキームを使用した例を使用して、ランダムE.coli試験ライブラリーの無酵素捕捉段階を測定した(
図16e)。
図16e、iは、4つの例の単純化された(イベントフィッティングされた)生データを示す。60pAの閾値を使用して、アスタリスクで示される状態AとA2の間の無酵素捕捉期間を測定した。
図16e、iiは、30個の分子の捕捉期間に対してプロットされた酵素媒介転位の期間を示す。線形回帰分析は、無酵素の捕捉期間が酵素を介した鎖の期間と相関していることを示しており、配列を解読する前にこの方法を使用して鎖のサイズを推定できることを確認するものである。
【0423】
実施例5
本実施例は、ssDNAの5’-3’を転移しながらdsDNAを巻き戻すDNAモーターを使用して、ナノポアを通るDNAポリヌクレオチド鎖の制御された移動を示す。本実施例では、前の実施例で説明したものに代わるアダプター構成について説明する。DNAモーターは、ポリヌクレオチドに連結されたYアダプター上で最初に失速した。ポリヌクレオチドは、以下の異なる段階でナノポアを通って移動した:(1)ポリヌクレオチドの3’末端がナノポアによって捕捉され、ナノポアが転位し、5’末端で失速したDNAモーターに到達するまで、正の適用電位下で二本鎖を分離した、無酵素段階、(2)DNAモーターが最初に正のバイアス下で失速を超えることができなかったが、逆電位を適用することによって活性化(「脱失速」)された、「脱失速」段階、(3)モーターが、適用された電位に逆らってDNAをナノポアから5’-3’移動させ始めた、DNAモーター制御段階、(4)ポリヌクレオチドの末端に到達した後、鎖を排出する電位を逆転させることによって除去することができる一定のブロックレベルが見られたこと。
【0424】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31)をアニーリングすることによって調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードした。前の実施例と比較して、オリゴヌクレオチドの配列番号31は、ビオチン-ストレプトアビジン複合体の機能を置き換え、すなわち、オリゴヌクレオチドは、酵素の後ろに二本鎖領域を形成し、酵素がロードされた鎖の5’末端から逆方向への酵素の拡散を防止し、またナノポアによる5’末端鎖の捕捉を防止した。オリゴヌクレオチドの配列番号30は、溶液中の酵素を失速させるフォワードブロッカーとして作用した。このアダプターの概略図を
図17aに示す。
【0425】
対称的な3.6キロベースの二本鎖DNA分析物(バクテリオファージラムダDNAの断片;配列番号20)をPCRによって取得し、NEBNext末端修復及びNEBNext dA-tailingモジュール(New England Biolabs(NEB))を使用して、両方の末端に3’dAオーバーハングを生成させる。
【0426】
Oxford Nanopore Technologiesの配列決定キット(LSK-SQK109)からのLNB及びT4DNALigase(NEB)を使用して、二本鎖DNA分析物をYアダプターのdA末端に連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲート化された基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「DNAライブラリー」を得た。ライブラリーの概略図を
図17bに示す。
【0427】
Oxford Nanopore TechnologiesのFLO-MIN106 MinIONフローセルとMinION Mk1bで電気的測定値を取得した。1170μLのFBに、30μLのFLT(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)を添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLSQB、15μLのDNAライブラリー、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0428】
実施例3に記載のカスタム配列決定スクリプトを使用して、配列決定電圧120mV及び排出電圧12mVで、酵素の脱失速を制御した。生データは、MinKNOWソフトウェア(Oxford Nanopore Technologies)を使用してバルクFAST5ファイルに収集された。
【0429】
図17cは、ポリヌクレオチドの捕捉及び酵素の脱失速の間に見られると予想される中間ステップの概略図を示す。実施例1と比較して、追加の中間体(ナノポアの上のブロッカー鎖、その後のナノポアによるブロッカーの除去;
図17cの状態B)が予想される。
図17dは、代表的な電流-時間トレース(i)を示す。四角で囲まれた部分(ii)は、捕捉/エントリー段階に対応する。示される例では、酵素は2回目の5秒間の脱失速試行(D)で脱失速され、酵素はEの間にナノポアからのポリヌクレオチドの移動を制御した(iiiで拡大)。データは、(a)実施例1に記載されたビオチン-トラプトアビジン結合の機能をオリゴヌクレオチド「バックブロッカー」で置き換えることが可能であり、(b)酵素ブロッカーオリゴヌクレオチドが、ナノポアによって除去される別々の断片として存在することが可能であることを示す。
【0430】
実施例6
本実施例は、ssDNAの5’-3’を転移しながらdsDNAを巻き戻すDNAモーターを使用して、ナノポアを通るDNAポリヌクレオチド鎖の制御された移動を示す。DNAモーターは、ポリヌクレオチドに連結されたYアダプター上で最初に失速した。前の実施例と比較して、Yアダプターには、30の3’末端C3スペーサー残基を有するリーダーを有するオリゴヌクレオチドが含まれていた。ポリヌクレオチドは、以下の異なる段階でナノポアを通って移動した:(1)ポリヌクレオチドの3’末端がナノポアによって捕捉され、ナノポアが転位し、5’末端で失速したDNAモーターに到達するまで、正の適用電位下で二本鎖を分離した、無酵素段階、(2)DNAモーターが最初に正のバイアス下で失速を超えることができなかったが、逆電位を適用することによって活性化(「脱失速」)された、「脱失速」段階、(3)モーターが、適用された電位に逆らってDNAをナノポアから5’-3’移動させ始めた、DNAモーター制御段階、(4)ポリヌクレオチドの末端に到達すると、前の実施例のポリ(dT)レベルとは明らかに異なる一定のブロックレベルが見られ、これは、鎖を排出する可能性を逆にすることによって除去することができたこと、並びに時折、(5)適用された配列決定電位による力の下で、酵素は自発的に後方にスリップし、上流のDNAに再結合し、ステップ(3)から繰り返すこと。
【0431】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号28、配列番号33、配列番号30及び配列番号32)をアニーリングすることによって調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードした。配列番号33のオリゴヌクレオチドは、上記のC3スペーサー残基を含んでいた。
【0432】
7つの断片のDNAライブラリーを、SnaBI及びBamHI制限酵素を使用したバクテリオファージラムダDNAの消化によって得、NEBNext末端修復及びNEBNextdAテーリングモジュール(NewEnglandBiolabs(NEB))によって末端修復及びdAテール化し、各断片の両端に3’dAオーバーハングを生成させた。
【0433】
Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(LSK-SQK109)のLNB及びT4DNAリガーゼ(NEB)を使用して、7つの断片のDNAライブラリーをYアダプターのdA末端に連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲート化された基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「DNAライブラリー」を得た。
【0434】
Oxford Nanopore TechnologiesのFLO-MIN106 MinIONフローセルとMinION Mk1bで電気的測定値を取得した。1170μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、30μLのFLTを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLSQB、15μLのDNAライブラリー、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0435】
DNAライブラリーは、次のように適用電位を制御するカスタム配列決定スクリプトを使用して実行した:5秒の脱失速段階(-20mV)、55秒の配列決定(+120mV)、排出段階(0mV、1秒、-120mV、3秒)。この一連の適用電位を複数回繰り返した。生データは、MinKNOWソフトウェア(Oxford Nanopore Technologies)を使用してバルクFAST5ファイルに収集された。
【0436】
図18aは、実験の概略図を示す。
図17cと比較すると、この実験では追加の「再読み取り」ステップ(RR)が導入されており、そこでは酵素が脱結合し、3’C3(非DNA)リーダーからDNA鎖の前の位置に戻り(E)、5’から3’にもう一度転位し、同じDNA鎖の複数の読み取りが発生する。再読み取りの間に開いたポアレベルは見られず、すなわち分子がナノポアから排出された可能性は低い。
図18bは、2回(i及びii)読み取られた分子の電流-時間トレースの例を示す。隠れマルコフモデルを訓練して、各制限酵素処理断片の参照に対して酵素制御部分をマッピングした(
図18c)。データは、読み取りが参照内の同じ断片にマップされていることを示しており、一部が2回又は3回マップされた例が記録され、鎖が複数回読み取られたことを確認するものであった。
【0437】
実施例7
本実施例は、電界によってDNAに適用される力と反対方向にssDNA上を5’-3’方向に転位しながらdsDNAを巻き戻すDNAモーターを使用してナノポアを通るDNAポリヌクレオチド鎖の転位の速度を、適用電圧をどのように用いて制御し得るかについて例示する。
【0438】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号28、配列番号33、配列番号30及び配列番号32)をアニーリングすることによって調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードした。
【0439】
実施例6に従って、バクテリオファージラムダの7つの断片ライブラリーを調製した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(LSK-SQK109)のLNB及びT4DNAリガーゼ(NEB)を使用して、ライブラリーをYアダプターのdA末端に連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄された。ライゲート化された基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出させ、「DNAライブラリー」を得た。
【0440】
Oxford Nanopore TechnologiesのFLO-MIN106 MinIONフローセルとMinION Mk1bで電気的測定値を取得した。1170μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、30μLのFLTを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLSQB、15μLのDNAライブラリー、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0441】
DNAライブラリーは、次のように適用電位を制御するカスタム配列決定スクリプトを使用して実行した:55秒の捕捉段階(+120~+200mV)、5秒の脱失速段階(-20mV)、55秒の配列決定(+120mV)、排出段階(0mV、1秒、-120mV、3秒)。この一連の適用電位を複数回繰り返した。生データは、MinKNOWソフトウェア(Oxford Nanopore Technologies)を使用してバルクFAST5ファイルに収集された。
【0442】
実験スキームは
図17cに記載するが、本実施例では、捕捉/配列決定電圧を120mV~200mVの間で変化させた。データは、実施例6で説明したHMMモデルを使用してマッピングした。
図19a~dは、120mV、140mV、及び160mVで収集されたデータに対する16の読み取り例のデータに対するHMMマッピングを示す。マッピングを使用して、酵素制御転位段階中の酵素の速度を推定した。120mVでは、酵素の速度のメジアンは319bp/秒であり、140mVでは259bp/秒であり、160mVでは196bp/秒であった。データは、適用電位の増加を使用して、理論的には酵素の速度をゼロに下げることができることを示す。
【0443】
実施例8
本実施例は、ナノポアを通るDNA転位の最初の、酵素を含まない部分(3’-5’)からのシグナルの期間を使用して、捕捉/エントリー段階の期間のみに基づいて、完全に特徴付ける前に、二本鎖DNA分子の1本の鎖のサイズを推定する方法を示す。
【0444】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号28、配列番号33、配列番号30及び配列番号32)をアニーリングすることによって調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードした。
【0445】
PCRによりバクテリオファージラムダから10kbの断片を得た。市販のバクテリオファージラムダDNA(約48kb)及びT4DNA(約169kb)を入手した。これらの二本鎖分析物を、NEBNext末端修復及びNEBNext dAテーリングモジュール(New England Biolabs(NEB))によって末端修復及びdAテール化し、各断片の両端に3’dAオーバーハングを生成させた。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(LSK-SQK109)からのLNB及びT4DNAリガーゼ(NEB)を使用して、各サンプルをYアダプターのdA末端に(別々に)連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製し、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄した。ライゲーションされた基質を、10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)で溶出させ、「10kbライブラリー」、「ラムダライブラリー」、及び「T4ライブラリー」を得た。
【0446】
Oxford Nanopore TechnologiesのFLO-MIN106 MinIONフローセルとMinION Mk1bで電気的測定値を取得した。1170μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、30μLのFLTを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLSQB、15μLのDNAライブラリー、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0447】
データは、実施例3に記載のものと同様のカスタムスクリプトを使用して、捕捉/配列決定電圧120mVで収集した。
【0448】
図20aは、上記の実施例5(
図17c)と同様の実験図を示す。酵素を含まない捕捉段階は、開孔レベル(A)と失速レベル(C)の間のアスタリスク付きの期間として手動で測定し、
図20bの下のパネルに詳細を示す。捕捉段階は、その明確なノイズとメジアン電流レベルの特性によって識別され得る。酵素媒介転位時間(E)も測定した。
図20bは、上記の3つのライブラリーの各々について、個別のフローセルで取得した代表的な電流-時間のトレースを示す。例えば、10kbライブラリーは、1.6秒の無酵素捕捉時間と35.3秒の酵素媒介転位時間を有していた。T4ライブラリーでは長い捕捉が得られたが、完全な長さの例は記録されず、おそらく鎖中にニックが入る可能性の増加によるものと考えられた。
図20cは、捕捉期間(A~C)の対数対酵素媒介転位期間の対数プロットを示す。31の例から線形相関(R
2=0.74)が得られ、配列を解読する前にこの方法を使用して鎖のサイズを推定すること可能であることが確認された。
【0449】
実施例9
本実施例は、ジスルフィド閉鎖のリンカー長が異なるモータータンパク質を使用して、天然のDNA分析物を複数回再読み取りする方法を示す。
【0450】
配列番号67、配列番号68、配列番号69、及び配列番号70の配列を有する4つのDNAオリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって、30個のC3スペーサーユニットを含むリーダーアームを有するYアダプターを調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)を各アダプターにロードし、ジアミド(TMAD)、BMOE(1,2-ビスマレイミドエタン)、BMOP(1,3-ビスマレイミドプロパン)、BMB(1,4-ビスマレイミドブタン)、BM(PEG)2(1,8-ビスマレイミド-ジエチレングリコール)又はBM(PEG)3(1,11-ビスマレイミド-トリエチレングリコール)のリンカーの内の1つとの反応を経てジスルフィド結合を閉鎖した。
【0451】
E.coli K12 PCR DNAは、Qiagenゲノムチップキットを使用してE.coli細胞から抽出することによって得、Covaris gTubeを使用して約10kbカットオフに剪断し、Ultra II末端修復及びdA-テーリングキット(New England Biolabs)を使用して末端修復及びdAテールを付加し、PCRアダプター(PCA;Oxford Nanopore Technologies)にライゲーションし、LongAmp Taqを使用してPCR増幅した。得られた二本鎖分析物を、NEBNext末端修復及びNEBNext dAテーリングモジュール(New England Biolabs(NEB))によって末端修復及びdAテール化し、各断片の両端に3’dAオーバーハングを生成させた。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(LSK-SQK109)からのLNB及びT4DNAリガーゼを使用して、サンプルをYアダプターのTオーバーハングに連結した。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製し、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(LSK-SQK109)のLFBで2回洗浄した。ライゲーションされた基質を、同じキットの溶出緩衝液(EB)に溶出させ、「DNAライブラリー」を得た。上記のように、ジスルフィドリンカーで閉じたDdaヘリカーゼを運ぶアダプターを使用して、DNAライブラリーを別々に調製した。
【0452】
CsgGナノポアが挿入されたOxford Nanopore TechnologiesのカスタムMinIONフローセルとMinION Mk1bで電気測定値を取得した。1170μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、30μLのFLTを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLSQB、15μLのDNAライブラリー、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0453】
実施例3に記載のものと同様のカスタムスクリプトを使用して、180mVの捕捉/配列決定電圧でデータを収集したが、ただし、酵素失速レベルが検出されたときにチャネルを5秒間切断することによって電圧をゼロに切り替えてモータータンパク質を脱失速させた。活性的な脱ブロックは、末端C3レベル、鎖、開いたポア、又は酵素失速レベルに関連しないブロックレベルを認識するとトリガーされるよう設定した。
【0454】
C3レベル(
図18bでマークされている「C3」)の直後に発生した単一チャネルデータからの鎖レベルイベントを、潜在的な再読み取りとして記録した(例えば、
図18bで「ii」と表示)。これらの再読み取りは、実施例6に記載されるように、開いたポア及び脱失速イベントの後に発生するベースコーリング及び再読み取りの配列を元の読み取り(例えば、
図18bでマークされている「i」)と比較することによって確認した。同じ読み取り方向で、元の読み取りの範囲内にあるイベントを、再読み取りとして分類した。再読み取り効率は、(i)C3リーダーに到達してから30秒以内にドロップバックして再読み取りする読み取りの割合、及び(ii)再読み取りの長さであるドロップバック距離、すなわち、酵素がC3リーダーから押し戻された距離、の2つの方式で定量化した。
【0455】
以下の表は、この実験の結果を示す。結果は、試験された全てのリンカーでの再読み取りを示しており、リンカーの長さの増加により、C3リーダーに到達してから30秒以内に再読み取りを伴う読み取りの割合が増加したことを示す。
【表4】
【0456】
実施例10
本実施例は、配列決定された鎖の3’末端でDdaヘリカーゼが遭遇するリーダーの異なる配列を持つアダプターを使用して、天然のDNA分析物を複数回読み取る方法を示す。
【0457】
RNA又はC3リーダーケミストリーを有するリーダーアームを有するYアダプターは、配列番号67、配列番号68、及び配列番号69の配列と、配列番号70、配列番号71及び配列番号72から選択されるリーダーオリゴヌクレオチドと、を有する4つのDNAオリゴヌクレオチドをアニーリングすることによって調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)を各アダプターにロードし、1,2-ビスマレイミドエタン(BMOE)との反応を介してジスルフィドを閉じた。
【0458】
DNAライブラリーは、上記のYアダプターを、実施例9に記載のように調製したE.coli DNAに連結することによって調製した。
【0459】
CsgGナノポアが挿入されたOxford Nanopore TechnologiesのカスタムMinIONフローセルとMinION Mk1bで電気測定値を取得した。1170μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、30μLのFLTを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLSQB、15μLのDNAライブラリー、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0460】
実施例3に記載のものと同様のカスタムスクリプトを使用して、180mVの捕捉/配列決定電圧でデータを収集したが、ただし、酵素失速レベルが検出されたときにチャネルを5秒間切断することによって電圧をゼロに切り替えてモータータンパク質を脱失速させた。活性的な脱ブロックは、末端C3レベル、鎖、開いたポア、又は酵素失速レベルに関連しないブロックレベルを認識するとトリガーされるように設定した。
【0461】
再読み取りイベントは、いくつかの例外を除いて、実施例9に従ってスコア化し、リーダーがRNAを含む場合、再読み取りは鎖レベルから発生した。
【0462】
以下の表は、この実験の結果を示す。結果は、試験した全てのリーダーオリゴヌクレオチドでの再読み取りを示しており、再読み取り間のメジアン時間の減少によって判断されるように、リーダーオリゴヌクレオチド配列番号72を使用した場合に最適な再読み取り効率が得られたことを示す。
【表5】
【0463】
実施例11
本実施例は、天然のDNA分析物が、様々なシーケンス実行温度で複数回再読み取りされる方法を示す。
【0464】
配列番号67、配列番号68、配列番号69及び配列番号70の配列を有する4つのDNAオリゴヌクレオチドをアニーリングすることにより、C3リーダー化学を有するリーダーアームを有するYアダプターを調製した。DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターにロードし、1,2-ビスマレイミドエタン(BMOE)との反応を介してジスルフィドを閉じた。
【0465】
DNAライブラリーは、上記のYアダプターを、実施例9に記載のように調製したE.coli DNAに連結することによって調製した。
【0466】
CsgGナノポアが挿入されたOxford Nanopore TechnologiesのカスタムMinIONフローセルとMinION Mk1bで電気測定値を取得した。1170μL FB(Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)から)に、30μLのFLTを添加し、テザーミックスを得た。800μLのテザーミックスをシステムに流した後、5分間待機し、SpotONポートを開いた状態で更に200μLのテザーミックスをシステムに流した。Oxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの37.5μLSQB、15μLのDNAライブラリー、及びOxford Nanopore Technologies配列決定キット(SQK-LSK109)からの22.5μLのLBを混合し、「シーケンシングミックス」を得た。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。
【0467】
実施例3に記載のものと同様のカスタムスクリプトを使用して、180mVの捕捉/配列決定電圧でデータを収集したが、ただし、酵素失速レベルが検出されたときにチャネルを5秒間切断することによって電圧をゼロに切り替えてモータータンパク質を脱失速させた。活性的な脱ブロックは、末端C3レベル、鎖、開いたポア、又は酵素失速レベルに関連しないブロックレベルを認識するとトリガーされるよう設定した。再読み取りイベントは、実施例9に従ってスコア化した。
【0468】
以下の表は、この実験の結果を示す。結果は、試験した全ての温度で再読み取りを示しており、C3リーダーに到達してから30秒以内に再読み取りした読み取りの割合の増加とメジアンドロップバック距離によって判断されるように、温度が上昇するにつれて再読み取り効率が向上したことを示す。
【表6】
【0469】
配列表の説明
配列番号1は、E.coli由来の(ヘキサヒスチジンタグ付き)エキソヌクレアーゼI(EcoExo I)のアミノ酸配列を示す。
【0470】
配列番号2は、E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素のアミノ酸配列を示す。
【0471】
配列番号3は、T.thermophilus由来のRecJ酵素(TthRecJ-cd)のアミノ酸配列を示す。
【0472】
配列番号4は、バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。この配列は、トリマーを構築する3つの同一のサブユニットのうちの1つである。(http://www.neb.com/nebecomm/products/productM0262.asp)。
【0473】
配列番号5は、Bacillus subtilisファージPhi29由来のPhi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。
【0474】
配列番号6は、Trwc Cba(Citromicrobium bathyomarinum)ヘリカーゼのアミノ酸配列を示す。
【0475】
配列番号7は、Hel308 Mbu(Methanococcoides burtonii)ヘリカーゼのアミノ酸配列を示す。
【0476】
配列番号8は、腸内細菌ファージT4由来のDdaヘリカーゼ1993のアミノ酸配列を示す。
【0477】
配列番号20~33は、実施例1で考察されたポリヌクレオチド鎖のヌクレオチド配列を示す。
【0478】
配列番号40は、好ましいHhHドメインのアミノ酸配列を示す。
【0479】
配列番号41は、gp32遺伝子によってコードされるバクテリオファージRB69由来のssbのアミノ酸配列を示す。
【0480】
配列番号42は、gp2.5遺伝子によってコードされるバクテリオファージT7由来のssbのアミノ酸配列を示す。
【0481】
配列番号43は、ヘルペスウイルス由来のUL42のアミノ酸配列を示す。
【0482】
配列番号44は、PCNAのサブユニット1のアミノ酸配列を示す。
【0483】
配列番号45は、PCNAのサブユニット2のアミノ酸配列を示す。
【0484】
配列番号46は、PCNAのサブユニット3のアミノ酸配列を示す。
【0485】
配列番号47は、ヘルペスウイルス1型からのUL42プロセシビティ因子のアミノ酸配列(1~319まで)を示す。
【0486】
配列番号48は、(HhH)2ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0487】
配列番号49は、(HhH)2-(HhH)2ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0488】
配列番号50は、ヒトミトコンドリアSSB(HsmtSSB)のアミノ酸配列を示す。
【0489】
配列番号51は、Phi29 DNAポリメラーゼからのp5タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0490】
配列番号52は、E.coli由来の野生型SSBのアミノ酸配列を示す。
【0491】
配列番号53は、gp32遺伝子によってコードされるバクテリオファージT4由来のssbのアミノ酸配列を示す。
【0492】
配列番号54は、トポイソメラーゼV Mka(Methanopyrus Kandleri)のアミノ酸配列を示す。
【0493】
配列番号55は、トポイソメラーゼV Mka(Methanopyrus Kandleri)のドメインH-Lのアミノ酸配列を示す。
【0494】
配列番号56は、Mutant S(Escherichia coli)のアミノ酸配列を示す。
【0495】
配列番号57は、Sso7d(Sufolobus solfataricus)のアミノ酸配列を示す。
【0496】
配列番号58は、Sso10b1(Sulfolobus solfataricus P2)のアミノ酸配列を示す。
【0497】
配列番号59は、Sso10b2(Sulfolobus solfataricus P2)のアミノ酸配列を示す。
【0498】
配列番号60は、トリプトファンリプレッサー(Escherichia coli)のアミノ酸配列を示す。
【0499】
配列番号61はラムダリプレッサー(腸内細菌ファージラムダ)のアミノ酸配列を示す。
【0500】
配列番号62は、Cren7(Histone crenarchaea Cren7 Sso)のアミノ酸配列を示す。
【0501】
配列番号63は、ヒトヒストン(ホモ・サピエンス)のアミノ酸配列を示す。
【0502】
配列番号64は、dsbA(腸内細菌ファージT4)のアミノ酸配列を示す。
【0503】
配列番号65は、Rad51(ホモ・サピエンス)のアミノ酸配列を示す。
【0504】
配列番号66は、PCNAスライディングクランプ(Citromicrobium bathyomarinum JL354)のアミノ酸配列を示す。
【0505】
配列番号67~72は、実施例9~11に記載のオリゴヌクレオチドのポリヌクレオチド配列を示す。
【0506】
配列表
配列番号1-E.coli由来のエキソヌクレアーゼI
MMNDGKQQSTFLFHDYETFGTHPALDRPAQFAAIRTDSEFNVIGEPEVFYCKPADDYLPQPGAVLITGITPQEARAKGENEAAFAARIHSLFTVPKTCILGYNNVRFDDEVTRNIFYRNFYDPYAWSWQHDNSRWDLLDVMRACYALRPEGINWPENDDGLPSFRLEHLTKANGIEHSNAHDAMADVYATIAMAKLVKTRQPRLFDYLFTHRNKHKLMALIDVPQMKPLVHVSGMFGAWRGNTSWVAPLAWHPENRNAVIMVDLAGDISPLLELDSDTLRERLYTAKTDLGDNAAVPVKLVHINKCPVLAQANTLRPEDADRLGINRQHCLDNLKILRENPQVREKVVAIFAEAEPFTPSDNVDAQLYNGFFSDADRAAMKIVLETEPRNLPALDITFVDKRIEKLLFNYRARNFPGTLDYAEQQRWLEHRRQVFTPEFLQGYADELQMLVQQYADDKEKVALLKALWQYAEEIVSGSGHHHHHH
【0507】
配列番号2-E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素
MKFVSFNINGLRARPHQLEAIVEKHQPDVIGLQETKVHDDMFPLEEVAKLGYNVFYHGQKGHYGVALLTKETPIAVRRGFPGDDEEAQRRIIMAEIPSLLGNVTVINGYFPQGESRDHPIKFPAKAQFYQNLQNYLETELKRDNPVLIMGDMNISPTDLDIGIGEENRKRWLRTGKCSFLPEEREWMDRLMSWGLVDTFRHANPQTADRFSWFDYRSKGFDDNRGLRIDLLLASQPLAECCVETGIDYEIRSMEKPSDHAPVWATFRR
【0508】
配列番号3-T.thermophilus由来のRecJ酵素
MFRRKEDLDPPLALLPLKGLREAAALLEEALRQGKRIRVHGDYDADGLTGTAILVRGLAALGADVHPFIPHRLEEGYGVLMERVPEHLEASDLFLTVDCGITNHAELRELLENGVEVIVTDHHTPGKTPPPGLVVHPALTPDLKEKPTGAGVAFLLLWALHERLGLPPPLEYADLAAVGTIADVAPLWGWNRALVKEGLARIPASSWVGLRLLAEAVGYTGKAVEVAFRIAPRINAASRLGEAEKALRLLLTDDAAEAQALVGELHRLNARRQTLEEAMLRKLLPQADPEAKAIVLLDPEGHPGVMGIVASRILEATLRPVFLVAQGKGTVRSLAPISAVEALRSAEDLLLRYGGHKEAAGFAMDEALFPAFKARVEAYAARFPDPVREVALLDLLPEPGLLPQVFRELALLEPYGEGNPEPLFL
【0509】
配列番号4-バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ
MTPDIILQRTGIDVRAVEQGDDAWHKLRLGVITASEVHNVIAKPRSGKKWPDMKMSYFHTLLAEVCTGVAPEVNAKALAWGKQYENDARTLFEFTSGVNVTESPIIYRDESMRTACSPDGLCSDGNGLELKCPFTSRDFMKFRLGGFEAIKSAYMAQVQYSMWVTRKNAWYFANYDPRMKREGLHYVVIERDEKYMASFDEIVPEFIEKMDEALAEIGFVFGEQWR
【0510】
配列番号5-Phi29 DNAポリメラーゼ
MKHMPRKMYSCAFETTTKVEDCRVWAYGYMNIEDHSEYKIGNSLDEFMAWVLKVQADLYFHNLKFDGAFIINWLERNGFKWSADGLPNTYNTIISRMGQWYMIDICLGYKGKRKIHTVIYDSLKKLPFPVKKIAKDFKLTVLKGDIDYHKERPVGYKITPEEYAYIKNDIQIIAEALLIQFKQGLDRMTAGSDSLKGFKDIITTKKFKKVFPTLSLGLDKEVRYAYRGGFTWLNDRFKEKEIGEGMVFDVNSLYPAQMYSRLLPYGEPIVFEGKYVWDEDYPLHIQHIRCEFELKEGYIPTIQIKRSRFYKGNEYLKSSGGEIADLWLSNVDLELMKEHYDLYNVEYISGLKFKATTGLFKDFIDKWTYIKTTSEGAIKQLAKLMLNSLYGKFASNPDVTGKVPYLKENGALGFRLGEEETKDPVYTPMGVFITAWARYTTITAAQACYDRIIYCDTDSIHLTGTEIPDVIKDIVDPKKLGYWAHESTFKRAKYLRQKTYIQDIYMKEVDGKLVEGSPDDYTDIKFSVKCAGMTDKIKKEVTFENFKVGFSRKMKPKPVQVPGGVVLVDDTFTIKSGGSAWSHPQFEKGGGSGGGSGGSAWSHPQFEK
【0511】
配列番号6-Trwc Cbaヘリカーゼ
MLSVANVRSPSAAASYFASDNYYASADADRSGQWIGDGAKRLGLEGKVEARAFDALLRGELPDGSSVGNPGQAHRPGTDLTFSVPKSWSLLALVGKDERIIAAYREAVVEALHWAEKNAAETRVVEKGMVVTQATGNLAIGLFQHDTNRNQEPNLHFHAVIANVTQGKDGKWRTLKNDRLWQLNTTLNSIAMARFRVAVEKLGYEPGPVLKHGNFEARGISREQVMAFSTRRKEVLEARRGPGLDAGRIAALDTRASKEGIEDRATLSKQWSEAAQSIGLDLKPLVDRARTKALGQGMEATRIGSLVERGRAWLSRFAAHVRGDPADPLVPPSVLKQDRQTIAAAQAVASAVRHLSQREAAFERTALYKAALDFGLPTTIADVEKRTRALVRSGDLIAGKGEHKGWLASRDAVVTEQRILSEVAAGKGDSSPAITPQKAAASVQAAALTGQGFRLNEGQLAAARLILISKDRTIAVQGIAGAGKSSVLKPVAEVLRDEGHPVIGLAIQNTLVQMLERDTGIGSQTLARFLGGWNKLLDDPGNVALRAEAQASLKDHVLVLDEASMVSNEDKEKLVRLANLAGVHRLVLIGDRKQLGAVDAGKPFALLQRAGIARAEMATNLRARDPVVREAQAAAQAGDVRKALRHLKSHTVEARGDGAQVAAETWLALDKETRARTSIYASGRAIRSAVNAAVQQGLLASREIGPAKMKLEVLDRVNTTREELRHLPAYRAGRVLEVSRKQQALGLFIGEYRVIGQDRKGKLVEVEDKRGKRFRFDPARIRAGKGDDNLTLLEPRKLEIHEGDRIRWTRNDHRRGLFNADQARVVEIANGKVTFETSKGDLVELKKDDPMLKRIDLAYALNVHMAQGLTSDRGIAVMDSRERNLSNQKTFLVTVTRLRDHLTLVVDSADKLGAAVARNKGEKASAIEVTGSVKPTATKGSGVDQPKSVEANKAEKELTRSKSKTLDFGI
【0512】
配列番号7-Hel308 Mbuヘリカーゼ
MMIRELDIPRDIIGFYEDSGIKELYPPQAEAIEMGLLEKKNLLAAIPTASGKTLLAELAMIKAIREGGKALYIVPLRALASEKFERFKELAPFGIKVGISTGDLDSRADWLGVNDIIVATSEKTDSLLRNGTSWMDEITTVVVDEIHLLDSKNRGPTLEVTITKLMRLNPDVQVVALSATVGNAREMADWLGAALVLSEWRPTDLHEGVLFGDAINFPGSQKKIDRLEKDDAVNLVLDTIKAEGQCLVFESSRRNCAGFAKTASSKVAKILDNDIMIKLAGIAEEVESTGETDTAIVLANCIRKGVAFHHAGLNSNHRKLVENGFRQNLIKVISSTPTLAAGLNLPARRVIIRSYRRFDSNFGMQPIPVLEYKQMAGRAGRPHLDPYGESVLLAKTYDEFAQLMENYVEADAEDIWSKLGTENALRTHVLSTIVNGFASTRQELFDFFGATFFAYQQDKWMLEEVINDCLEFLIDKAMVSETEDIEDASKLFLRGTRLGSLVSMLYIDPLSGSKIVDGFKDIGKSTGGNMGSLEDDKGDDITVTDMTLLHLVCSTPDMRQLYLRNTDYTIVNEYIVAHSDEFHEIPDKLKETDYEWFMGEVKTAMLLEEWVTEVSAEDITRHFNVGEGDIHALADTSEWLMHAAAKLAELLGVEYSSHAYSLEKRIRYGSGLDLMELVGIRGVGRVRARKLYNAGFVSVAKLKGADISVLSKLVGPKVAYNILSGIGVRVNDKHFNSAPISSNTLDTLLDKNQKTFNDFQ
【0513】
配列番号8-Ddaヘリカーゼ
MTFDDLTEGQKNAFNIVMKAIKEKKHHVTINGPAGTGKTTLTKFIIEALISTGETGIILAAPTHAAKKILSKLSGKEASTIHSILKINPVTYEENVLFEQKEVPDLAKCRVLICDEVSMYDRKLFKILLSTIPPWCTIIGIGDNKQIRPVDPGENTAYISPFFTHKDFYQCELTEVKRSNAPIIDVATDVRNGKWIYDKVVDGHGVRGFTGDTALRDFMVNYFSIVKSLDDLFENRVMAFTNKSVDKLNSIIRKKIFETDKDFIVGEIIVMQEPLFKTYKIDGKPVSEIIFNNGQLVRIIEAEYTSTFVKARGVPGEYLIRHWDLTVETYGDDEYYREKIKIISSDEELYKFNLFLGKTAETYKNWNKGGKAPWSDFWDAKSQFSKVKALPASTFHKAQGMSVDRAFIYTPCIHYADVELAQQLLYVGVTRGRYDVFYV
【0514】
配列番号20
GCCATCAGATTGTGTTTGTTAGTCGCTGCCATCAGATTGTGTTTGTTAGTCGCTTTTTTTTTTTGGAATTTTTTTTTTGGAATTTTTTTTTTGCGCTAACAACCTCCTGCCGTTTTGCCCGTGCATATCGGTCACGAACAAATCTGATTACTAAACACAGTAGCCTGGATTTGTTCTATCAGTAATCGACCTTATTCCTAATTAAATAGAGCAAATCCCCTTATTGGGGGTAAGACATGAAGATGCCAGAAAAACATGACCTGTTGGCCGCCATTCTCGCGGCAAAGGAACAAGGCATCGGGGCAATCCTTGCGTTTGCAATGGCGTACCTTCGCGGCAGATATAATGGCGGTGCGTTTACAAAAACAGTAATCGACGCAACGATGTGCGCCATTATCGCCTAGTTCATTCGTGACCTTCTCGACTTCGCCGGACTAAGTAGCAATCTCGCTTATATAACGAGCGTGTTTATCGGCTACATCGGTACTGACTCGATTGGTTCGCTTATCAAACGCTTCGCTGCTAAAAAAGCCGGAGTAGAAGATGGTAGAAATCAATAATCAACGTAAGGCGTTCCTCGATATGCTGGCGTGGTCGGAGGGAACTGATAACGGACGTCAGAAAACCAGAAATCATGGTTATGACGTCATTGTAGGCGGAGAGCTATTTACTGATTACTCCGATCACCCTCGCAAACTTGTCACGCTAAACCCAAAACTCAAATCAACAGGCGCCGGACGCTACCAGCTTCTTTCCCGTTGGTGGGATGCCTACCGCAAGCAGCTTGGCCTGAAAGACTTCTCTCCGAAAAGTCAGGACGCTGTGGCATTGCAGCAGATTAAGGAGCGTGGCGCTTTACCTATGATTGATCGTGGTGATATCCGTCAGGCAATCGACCGTTGCAGCAATATCTGGGCTTCACTGCCGGGCGCTGGTTATGGTCAGTTCGAGCATAAGGCTGACAGCCTGATTGCAAAATTCAAAGAAGCGGGCGGAACGGTCAGAGAGATTGATGTATGAGCAGAGTCACCGCGATTATCTCCGCTCTGGTTATCTGCATCATCGTCTGCCTGTCATGGGCTGTTAATCATTACCGTGATAACGCCATTACCTACAAAGCCCAGCGCGACAAAAATGCCAGAGAACTGAAGCTGGCGAACGCGGCAATTACTGACATGCAGATGCGTCAGCGTGATGTTGCTGCGCTCGATGCAAAATACACGAAGGAGTTAGCTGATGCTAAAGCTGAAAATGATGCTCTGCGTGATGATGTTGCCGCTGGTCGTCGTCGGTTGCACATCAAAGCAGTCTGTCAGTCAGTGCGTGAAGCCACCACCGCCTCCGGCGTGGATAATGCAGCCTCCCCCCGACTGGCAGACACCGCTGAACGGGATTATTTCACCCTCAGAGAGAGGCTGATCACTATGCAAAAACAACTGGAAGGAACCCAGAAGTATATTAATGAGCAGTGCAGATAGAGTTGCCCATATCGATGGGCAACTCATGCAATTATTGTGAGCAATACACACGCGCTTCCAGCGGAGTATAAATGCCTAAAGTAATAAAACCGAGCAATCCATTTACGAATGTTTGCTGGGTTTCTGTTTTAACAACATTTTCTGCGCCGCCACAAATTTTGGCTGCATCGACAGTTTTCTTCTGCCCAATTCCAGAAACGAAGAAATGATGGGTGATGGTTTCCTTTGGTGCTACTGCTGCCGGTTTGTTTTGAACAGTAAACGTCTGTTGAGCACATCCTGTAATAAGCAGGGCCAGCGCAGTAGCGAGTAGCATTTTTTTCATGGTGTTATTCCCGATGCTTTTTGAAGTTCGCAGAATCGTATGTGTAGAAAATTAAACAAACCCTAAACAATGAGTTGAAATTTCATATTGTTAATATTTATTAATGTATGTCAGGTGCGATGAATCGTCATTGTATTCCCGGATTAACTATGTCCACAGCCCTGACGGGGAACTTCTCTGCGGGAGTGTCCGGGAATAATTAAAACGATGCACACAGGGTTTAGCGCGTACACGTATTGCATTATGCCAACGCCCCGGTGCTGACACGGAAGAAACCGGACGTTATGATTTAGCGTGGAAAGATTTGTGTAGTGTTCTGAATGCTCTCAGTAAATAGTAATGAATTATCAAAGGTATAGTAATATCTTTTATGTTCATGGATATTTGTAACCCATCGGAAAACTCCTGCTTTAGCAAGATTTTCCCTGTATTGCTGAAATGTGATTTCTCTTGATTTCAACCTATCATAGGACGTTTCTATAAGATGCGTGTTTCTTGAGAATTTAACATTTACAACCTTTTTAAGTCCTTTTATTAACACGGTGTTATCGTTTTCTAACACGATGTGAATATTATCTGTGGCTAGATAGTAAATATAATGTGAGACGTTGTGACGTTTTAGTTCAGAATAAAACAATTCACAGTCTAAATCTTTTCGCACTTGATCGAATATTTCTTTAAAAATGGCAACCTGAGCCATTGGTAAAACCTTCCATGTGATACGAGGGCGCGTAGTTTGCATTATCGTTTTTATCGTTTCAATCTGGTCTGACCTCCTTGTGTTTTGTTGATGATTTATGTCAAATATTAGGAATGTTTTCACTTAATAGTATTGGTTGCGTAACAAAGTGCGGTCCTGCTGGCATTCTGGAGGGAAATACAACCGACAGATGTATGTAAGGCCAACGTGCTCAAATCTTCATACAGAAAGATTTGAAGTAATATTTTAACCGCTAGATGAAGAGCAAGCGCATGGAGCGACAAAATGAATAAAGAACAATCTGCTGATGATCCCTCCGTGGATCTGATTCGTGTAAAAAATATGCTTAATAGCACCATTTCTATGAGTTACCCTGATGTTGTAATTGCATGTATAGAACATAAGGTGTCTCTGGAAGCATTCAGAGCAATTGAGGCAGCGTTGGTGAAGCACGATAATAATATGAAGGATTATTCCCTGGTGGTTGACTGATCACCATAACTGCTAATCATTCAAACTATTTAGTCTGTGACAGAGCCAACACGCAGTCTGTCACTGTCAGGAAAGTGGTAAAACTGCAACTCAATTACTGCAATGCCCTCGTAATTAAGTGAATTTACAATATCGTCCTGTTCGGAGGGAAGAACGCGGGATGTTCATTCTTCATCACTTTTAATTGATGTATATGCTCTCTTTTCTGACGTTAGTCTCCGACGGCAGGCTTCAATGACCCAGGCTGAGAAATTCCCGGACCCTTTTTGCTCAAGAGCGATGTTAATTTGTTCAATCATTTGGTTAGGAAAGCGGATGTTGCGGGTTGTTGTTCTGCGGGTTCTGTTCTTCGTTGACATGAGGTTGCCCCGTATTCAGTGTCGCTGATTTGTATTGTCTGAAGTTGTTTTTACGTTAAGTTGATGCAGATCAATTAATACGATACCTGCGTCATAATTGATTATTTGACGTGGTTTGATGGCCTCCACGCACGTTGTGATATGTAGATGATAATCATTATCACTTTACGGGTCCTTTCCGGTGAAAAAAAAGGTACCAAAAAAAACATCGTCGTGAGTAGTGAACCGTAAGCATGTAGGA
【0515】
配列番号21
/5BiotinTEG/TTTTTTTTTT/iSp18/AATGTACTTCGTTCAGTTACGTATTGCT
【0516】
配列番号22
/5Phos/GCAATACGTAACTGAACGAAGT/iBNA-A//iBNA-MeC//iBNA-A//iBNA-T//iBNA-T/TTTGAGGCGAGCGGTCAATTTTTTTTTTTTTTTTTTTT
【0517】
配列番号23
/5Phos/TGCAATACGTAACTGAACGAAGTACATTAATGTACTTCGTTCAGTTACGTATTGCATCCT
【0518】
配列番号24
/5Phos/TGCAATACGTAACTGAACGAAGTACATTTTTTTGAAGATAGAGCGATTTTTTTTTTTTTTTTGTACTTCGTTCAGTTACGTATTGCATCCT
【0519】
配列番号25
/5Phos/TGCAATACGTAACTGAACGAAGTACATTTTTTTGAAGATAGAGCGATTTTTTTTTTTTTTTTGTACTTCGTTCAGTTACGTATTGCAT
【0520】
配列番号26
/5Phos/TGCAATACGTAACTGAACGAAGTACATTTTTTTGAAGATAGAGCGATTTTT/iFluorT//iFluorT//iFluorT/TTTTTTTTTGTACTTCGTTCAGTTACGTATTGCATCCT
【0521】
配列番号27
/5BNA-T//iBNA-MeC//iBNA-G//iBNA-MeC//iBNA-T/CTATCTTC
【0522】
配列番号28
GTTATTCAAGACTTCTTTAATACACTTTTTTTTTT/iSp18/AATGTACTTCGTTCAGTTACGTATTGCTTTGGCGTCTGCTTGGGTGTTTAACCT
【0523】
配列番号29
/5Phos/GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCTTTGAGGCGAGCGGTCAATTTTTTTTTTTTTTTTTTTT
【0524】
配列番号30
GCAATACGTAACTGAACGAAGT/iBNA-A//iBNA-MeC//iBNA-A//iBNA-T//3BNA-T/
【0525】
配列番号31
/5BNA-G//iBNA-T//iBNA-G//iBNA-T//iBNA-A/TTAAAGAAGTCTTGAAT/iBNA-A//iBNA-A//3BNA-meC/
【0526】
配列番号32
GTGTATTAAAGAAGTCTTGAATAAC
【0527】
配列番号33
/5Phos/GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCTTTGAGGCGAGCGGTCAA/iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//3SpC3/
【0528】
配列番号40
GTGSGAWKEWLERKVGEGRARRLIEYFGSAGEVGKLVENAEVSKLLEVPGIGDEAVARLVPGGSS
【0529】
配列番号41
MFKRKSTADLAAQMAKLNGNKGFSSEDKGEWKLKLDASGNGQAVIRFLPAKTDDALPFAILVNHGFKKNGKWYIETCSSTHGDYDSCPVCQYISKNDLYNTNKTEYSQLKRKTSYWANILVVKDPQAPDNEGKVFKYRFGKKIWDKINAMIAVDTEMGETPVDVTCPWEGANFVLKVKQVSGFSNYDESKFLNQSAIPNIDDESFQKELFEQMVDLSEMTSKDKFKSFEELNTKFNQVLGTAALGGAAAAAASVADKVASDLDDFDKDMEAFSSAKTEDDFMSSSSSDDGDLDDLLAGL
【0530】
配列番号42
MAKKIFTSALGTAEPYAYIAKPDYGNEERGFGNPRGVYKVDLTIPNKDPRCQRMVDEIVKCHEEAYAAAVEEYEANPPAVARGKKPLKPYEGDMPFFDNGDGTTTFKFKCYASFQDKKTKETKHINLVVVDSKGKKMEDVPIIGGGSKLKVKYSLVPYKWNTAVGASVKLQLESVMLVELATFGGGEDDWADEVEENGYVASGSAKASKPRDEESWDEDDEESEEADEDGDF
【0531】
配列番号43
MDSPGGVAPASPVEDASDASLGQPEEGAPCQVVLQGAELNGILQAFAPLRTSLLDSLLVMGDRGILIHNTIFGEQVFLPLEHSQFSRYRWRGPTAAFLSLVDQKRSLLSVFRANQYPDLRRVELAITGQAPFRTLVQRIWTTTSDGEAVELASETLMKRELTSFVVLVPQGTPDVQLRLTRPQLTKVLNATGADSATPTTFELGVNGKFSVFTTSTCVTFAAREEGVSSSTSTQVQILSNALTKAGQAAANAKTVYGENTHRTFSVVVDDCSMRAVLRRLQVGGGTLKFFLTTPVPSLCVTATGPNAVSAVFLLKPQKHHHHHH
【0532】
配列番号44
MFKIVYPNAKDFFSFINSITNVTDSIILNFTEDGIFSRHLTEDKVLMAIMRIPKDVLSEYSIDSPTSVKLDVSSVKKILSKASSKKATIELTETDSGLKIIIRDEKSGAKSTIYIKAEKGQVEQLTEPKVNLAVNFTTDESVLNVIAADVTLVGEEMRISTEEDKIKIEAGEEGKRYVAFLMKDKPLKELSIDTSASSSYSAEMFKDAVKGLRGFSAPTMVSFGENLPMKIDVEAVSGGHMIFWIAPRLLE
【0533】
配列番号45
MKAKVIDAVSFSYILRTVGDFLSEANFIVTKEGIRVSGIDPSRVVFLDIFLPSSYFEGFEVSQEKEIIGFKLEDVNDILKRVLKDDTLILSSNESKLTLTFDGEFTRSFELPLIQVESTQPPSVNLEFPFKAQLLTITFADIIDELSDLGEVLNIHSKENKLYFEVIGDLSTAKVELSTDNGTLLEASGADVSSSYGMEYVANTTKMRRASDSMELYFGSQIPLKLRFKLPQEGYGDFYIAPRAD
【0534】
配列番号46
MKVVYDDVRVLKDIIQALARLVDEAVLKFKQDSVELVALDRAHISLISVNLPREMFKEYDVNDEFKFGFNTQYLMKILKVAKRKEAIEIASESPDSVIINIIGSTNREFNVRNLEVSEQEIPEINLQFDISATISSDGFKSAISEVSTVTDNVVVEGHEDRILIKAEGESEVEVEFSKDTGGLQDLEFSKESKNSYSAEYLDDVLSLTKLSDYVKISFGNQKPLQLFFNMEGGGKVTYLLAPKVLE
【0535】
配列番号47
TDSPGGVAPASPVEDASDASLGQPEEGAPCQVVLQGAELNGILQAFAPLRTSLLDSLLVMGDRGILIHNTIFGEQVFLPLEHSQFSRYRWRGPTAAFLSLVDQKRSLLSVFRANQYPDLRRVELAITGQAPFRTLVQRIWTTTSDGEAVELASETLMKRELTSFVVLVPQGTPDVQLRLTRPQLTKVLNATGADSATPTTFELGVNGKFSVFTTSTCVTFAAREEGVSSSTSTQVQILSNALTKAGQAAANAKTVYGENTHRTFSVVVDDCSMRAVLRRLQVGGGTLKFFLTTPVPSLCVTATGPNAVSAVFLLKPQK
【0536】
配列番号48
WKEWLERKVGEGRARRLIEYFGSAGEVGKLVENAEVSKLLEVPGIGDEAVARLVP
【0537】
配列番号49
WKEWLERKVGEGRARRLIEYFGSAGEVGKLVENAEVSKLLEVPGIGDEAVARLVPGYKTLRDAGLTPAEAERVLKRYGSVSKVQEGATPDELRELGLGDAKIARILG
【0538】
配列番号50
ESETTTSLVLERSLNRVHLLGRVGQDPVLRQVEGKNPVTIFSLATNEMWRSGDSEVYQLGDVSQKTTWHRISVFRPGLRDVAYQYVKKGSRIYLEGKIDYGEYMDKNNVRRQATTIIADNIIFLSDQTKEKE
【0539】
配列番号51
ENTNIVKATFDTETLEGQIKIFNAQTGGGQSFKNLPDGTIIEANAIAQYKQVSDTYGDAKEETVTTIFAADGSLYSAISKTVAEAASDLIDLVTRHKLETFKVKVVQGTSSKGNVFFSLQLSL
【0540】
配列番号52
ASRGVNKVILVGNLGQDPEVRYMPNGGAVANITLATSESWRDKATGEMKEQTEWHRVVLFGKLAEVASEYLRKGSQVYIEGQLRTRKWTDQSGQDRYTTEVVVNVGGTMQMLGGRQGGGAPAGGNIGGGQPQGGWGQPQQPQGGNQFSGGAQSRPQQSAPAAPSNEPPMDFDDDIPF
【0541】
配列番号53
MFKRKSTAELAAQMAKLNGNKGFSSEDKGEWKLKLDNAGNGQAVIRFLPSKNDEQAPFAILVNHGFKKNGKWYIETCSSTHGDYDSCPVCQYISKNDLYNTDNKEYSLVKRKTSYWANILVVKDPAAPENEGKVFKYRFGKKIWDKINAMIAVDVEMGETPVDVTCPWEGANFVLKVKQVSGFSNYDESKFLNQSAIPNIDDESFQKELFEQMVDLSEMTSKDKFKSFEELNTKFGQVMGTAVMGGAAATAAKKADKVADDLDAFNVDDFNTKTEDDFMSSSSGSSSSADDTDLDDLLNDL
【0542】
配列番号54
MALVYDAEFVGSEREFEEERETFLKGVKAYDGVLATRYLMERSSSAKNDEELLELHQNFILLTGSYACSIDPTEDRYQNVIVRGVNFDERVQRLSTGGSPARYAIVYRRGWRAIAKALDIDEEDVPAIEVRAVKRNPLQPALYRILVRYGRVDLMPVTVDEVPPEMAGEFERLIERYDVPIDEKEERILEILRENPWTPHDEIARRLGLSVSEVEGEKDPESSGIYSLWSRVVVNIEYDERTAKRHVKRRDRLLEELYEHLEELSERYLRHPLTRRWIVEHKRDIMRRYLEQRIVECALKLQDRYGIREDVALCLARAFDGSISMIATTPYRTLKDVCPDLTLEEAKSVNRTLATLIDEHGLSPDAADELIEHFESIAGILATDLEEIERMYEEGRLSEEAYRAAVEIQLAELTKKEGVGRKTAERLLRAFGNPERVKQLAREFEIEKLASVEGVGERVLRSLVPGYASLISIRGIDRERAERLLKKYGGYSKVREAGVEELREDGLTDAQIRELKGLKTLESIVGDLEKADELKRKYGSASAVRRLPVEELRELGFSDDEIAEIKGIPKKLREAFDLETAAELYERYGSLKEIGRRLSYDDLLELGATPKAAAEIKGPEFKFLLNIEGVGPKLAERILEAVDYDLERLASLNPEELAEKVEGLGEELAERVVYAARERVESRRKSGRQERSEEEWKEWLERKVGEGRARRLIEYFGSAGEVGKLVENAEVSKLLEVPGIGDEAVARLVPGYKTLRDAGLTPAEAERVLKRYGSVSKVQEGATPDELRELGLGDAKIARILGLRSLVNKRLDVDTAYELKRRYGSVSAVRKAPVKELRELGLSDRKIARIKGIPETMLQVRGMSVEKAERLLERFDTWTKVKEAPVSELVRVPGVGLSLVKEIKAQVDPAWKALLDVKGVSPELADRLVEELGSPYRVLTAKKSDLMRVERVGPKLAERIRAAGKRYVEERRSRRERIRRKLRG
【0543】
配列番号55
SGRQERSEEEWKEWLERKVGEGRARRLIEYFGSAGEVGKLVENAEVSKLLEVPGIGDEAVARLVPGYKTLRDAGLTPAEAERVLKRYGSVSKVQEGATPDELRELGLGDAKIARILGLRSLVNKRLDVDTAYELKRRYGSVSAVRKAPVKELRELGLSDRKIARIKGIPETMLQVRGMSVEKAERLLERFDTWTKVKEAPVSELVRVPGVGLSLVKEIKAQVDPAWKALLDVKGVSPELADRLVEELGSPYRVLTAKKSDLMRVERVGPKLAERIRAAGKRYVEERRSRRERIRRKLRG
【0544】
配列番号56
MSAIENFDAHTPMMQQYLRLKAQHPEILLFYRMGDFYELFYDDAKRASQLLDISLTKRGASAGEPIPMAGIPYHAVENYLAKLVNQGESVAICEQIGDPATSKGPVERKVVRIVTPGTISDEALLQERQDNLLAAIWQDSKGFGYATLDISSGRFRLSEPADRETMAAELQRTNPAELLYAEDFAEMSLIEGRRGLRRRPLWEFEIDTARQQLNLQFGTRDLVGFGVENAPRGLCAAGCLLQYAKDTQRTTLPHIRSITMEREQDSIIMDAATRRNLEITQNLAGGAENTLASVLDCTVTPMGSRMLKRWLHMPVRDTRVLLERQQTIGALQDFTAGLQPVLRQVGDLERILARLALRTARPRDLARMRHAFQQLPELRAQLETVDSAPVQALREKMGEFAELRDLLERAIIDTPPVLVRDGGVIASGYNEELDEWRALADGATDYLERLEVRERERTGLDTLKVGFNAVHGYYIQISRGQSHLAPINYMRRQTLKNAERYIIPELKEYEDKVLTSKGKALALEKQLYEELFDLLLPHLEALQQSASALAELDVLVNLAERAYTLNYTCPTFIDKPGIRITEGRHPVVEQVLNEPFIANPLNLSPQRRMLIITGPNMGGKSTYMRQTALIALMAYIGSYVPAQKVEIGPIDRIFTRVGAADDLASGRSTFMVEMTETANILHNATEYSLVLMDEIGRGTSTYDGLSLAWACAENLANKIKALTLFATHYFELTQLPEKMEGVANVHLDALEHGDTIAFMHSVQDGAASKSYGLAVAALAGVPKEVIKRARQKLRELESISPNAAATQVDGTQMSLLSVPEETSPAVEALENLDPDSLTPRQALEWIYRLKSLV
【0545】
配列番号57
MATVKFKYKGEEKEVDISKIKKVWRVGKMISFTYDEGGGKTGRGAVSEKDAPKELLQMLEKQKK
【0546】
配列番号58
EKMSSGTPTPSNVVLIGKKPVMNYVLAALTLLNQGVSEIVIKARGRAISKAVDTVEIVRNRFLPDKIEIKEIRVGSQVVTSQDGRQSRVSTIEIAIRKK
【0547】
配列番号59
TEKLNEIVVRKTKNVEDHVLDVIVLFNQGIDEVILKGTGREISKAVDVYNSLKDRLGDGVQLVNVQTGSEVRDRRRISYILLRLKRVY
【0548】
配列番号60
AQQSPYSAAMAEQRHQEWLRFVDLLKNAYQNDLHLPLLNLMLTPDEREALGTRVRIVEELLRGEMSQRELKNELGAGIATITRGSNSLKAAPVELRQWLEEVLLKSD
【0549】
配列番号61
MSTKKKPLTQEQLEDARRLKAIYEKKKNELGLSQESVADKMGMGQSGVGALFNGINALNAYNAALLAKILKVSVEEFSPSIAREIYEMYEAVSMQPSLRSEYEYPVFSHVQAGMFSPELRTFTKGDAERWVSTTKKASDSAFWLEVEGNSMTAPTGSKPSFPDGMLILVDPEQAVEPGDFCIARLGGDEFTFKKLIRDSGQVFLQPLNPQYPMIPCNESCSVVGKVIASQWPEETFG
【0550】
配列番号62
MSSGKKPVKVKTPAGKEAELVPEKVWALAPKGRKGVKIGLFKDPETGKYFRHKLPDDYPI
【0551】
配列番号63
MARTKQTARKSTGGKAPRKQLATKAARKSAPATGGVKKPHRYRPGTVALREIRRYQKSTELLIRKLPFQRLVREIAQDFKTDLRFQSSAVMALQEASEAYLVGLFEDTNLCAIHAKRVTIMPKDIQLARRIRGERA
【0552】
配列番号64
MAKKEMVEFDEAIHGEDLAKFIKEASDHKLKISGYNELIKDIRIRAKDELGVDGKMFNRLLALYHKDNRDVFEAETEEVVELYDTVFSK
【0553】
配列番号65
MAMQMQLEANADTSVEEESFGPQPISRLEQCGINANDVKKLEEAGFHTVEAVAYAPKKELINIKGISEAKADKILAEAAKLVPMGFTTATEFHQRRSEIIQITTGSKELDKLLQGGIETGSITEMFGEFRTGKTQICHTLAVTCQLPIDRGGGEGKAMYIDTEGTFRPERLLAVAERYGLSGSDVLDNVAYARAFNTDHQTQLLYQASAMMVESRYALLIVDSATALYRTDYSGRGELSARQMHLARFLRMLLRLADEFGVAVVITNQVVAQVDGAAMFAADPKKPIGGNIIAHASTTRLYLRKGRGETRICKIYDSPCLPEAEAMFAINADGVGDAKD
【0554】
配列番号66
MKATIERATLLRCLSHVQSVVERRNTIPILSNVLIDADAGGGVKVMATDLDLQVVETMTAASVESAGAITVSAHLLFDIARKLPDGSQVSLETADNRMVVKAGRSRFQLPTLPRDDFPVIVEGELPTSFELPARELAEMIDRTRFAISTEETRYYLNGIFLHVSDEARPVLKAAATDGHRLARYTLDRPEGAEGMPDVIVPRKAVGELRKLLEEALDSNVQIDLSASKIRFALGGEGGVVLTSKLIDGTFPDYSRVIPTGNDKLLRLDPKAFFQGVDRVATIATEKTRAVKMGLDEDKVTLSVTSPDNGTAAEEIAAEYKAEGFEIGFNANYLKDILGQIDSDTVELHLADAGAPTLIRRDENSPALYVLMPMRV
【0555】
配列番号67
GTTATTCAAGACTTCTTTAATACACTTTTTTTTTT/iSp9/AATGTACTTCGTTCAGTTACGTATTGCTTTGGCGTCTGCTTGGGTGTTTAACCT
【0556】
配列番号68
GTGTATTAAAGAAGTCTTGAATAACTTTGAGGCGAGCGGTCAA
【0557】
配列番号69
TTTGCAATACGTAACTGAACGAAGT/iBNA-A//iBNA-MeC//iBNA-A//iBNA-T//3BNA-T/
【0558】
配列番号70
/5Phos/GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCTTT/iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//3SpC3/
【0559】
配列番号71
/5Phos/GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCTTTmUmUmUmUmUmU/iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//3SpC3/
【0560】
配列番号72
/5Phos/GGTTAAACACCCAAGCAGACGCCmUmU/iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//iSpC3//3SpC3/
【配列表】
【国際調査報告】