(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】静電帯電多孔質不織布ウェブ、それに由来する膜及びマスク並びに製造及び洗浄のための方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20230706BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20230706BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/08 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/42 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/54 20060101ALI20230706BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20230706BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20230706BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D39/16 C
B01D39/16 E
B01D65/02 500
B01D69/00
B01D71/08
B01D71/26
B01D71/32
B01D71/34
B01D71/40
B01D71/42
B01D71/48
B01D71/54
B01D71/56
D04H1/728
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577589
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 FR2021051088
(87)【国際公開番号】W WO2021255390
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス・ドス・サントス,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ボネ,アンソニー
【テーマコード(参考)】
4D006
4D019
4L047
【Fターム(参考)】
4D006GA44
4D006KC21
4D006KC22
4D006KC23
4D006KC24
4D006KD22
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA31
4D006MA40
4D006MB17
4D006MC10
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC28
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC32
4D006MC37
4D006MC39
4D006MC47
4D006MC48
4D006MC53
4D006MC55
4D006PA01
4D006PB17
4D006PC41
4D006PC80
4D019AA01
4D019BA12
4D019BA13
4D019BB02
4D019BB03
4D019BB08
4D019BB10
4D019BC01
4D019BC06
4D019BD01
4D019CA10
4D019CB06
4D019CB07
4D019CB09
4D019DA02
4D019DA03
4L047AA13
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA23
4L047AB02
4L047AB08
4L047CA05
4L047CC12
(57)【要約】
本発明は、ナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過に好適な電界紡糸によって得られる不織布ウェブであって、多数の組成物C1の繊維を含み、組成物C1が、少なくとも50重量%の、フッ化ビニリデン(VDF)から生じる繰り返し単位に基づく、少なくとも1つのポリマーP1を含み、前記組成物C1の繊維が、極性相、優先的にはベータ相のみにおいて、それらの総重量に対して少なくとも65重量%の結晶化度を有する、不織布ウェブに関する。
本発明はまた、ウェブの製造方法、ウェブを備える膜及びさらにウェブ又は膜の洗浄/滅菌方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物C1の多数の繊維を含む、ナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過に好適な、電界紡糸によって得られる不織布ウェブであって、
前記組成物C1が、少なくとも50重量%の、フッ化ビニリデン(VDF)から生じる繰り返し単位に基づく少なくとも1つのポリマーP1を含み、
前記組成物C1の繊維が、極性相、優先的にはベータ相のみにおいて、それらの総重量に対して少なくとも65重量%の結晶化度を有する、
不織布ウェブ。
【請求項2】
前記組成物C1の繊維が、極性相、優先的にはベータ相のみにおいて、それらの総重量に対して、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも96重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%の結晶化度を有する、請求項1に記載のウェブ。
【請求項3】
前記ポリマーP1が、VDFのホモポリマー、VDFから生じる繰り返し単位とVDF以外のモノマーから生じる少なくとも1つの繰り返し単位とを有するコポリマーであって、当該他のモノマーが、フッ化ビニル(VF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロフルオロエチレン(CFE)、クロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ジクロロジフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン、ペンタフルオロプロペン、パーフルオロエーテル、特にパーフルオロアルキルビニルエーテル、エチレン、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びそれらの混合物からなるリストから選択されるコポリマー、並びにホモポリマーとコポリマーとの混合物からなる群から選択される、請求項1及び2のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項4】
前記ポリマーP1が、PVDF、P(VDF-HFP)、P(VDF-TFE)、P(VDF-TrFE)又はそれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリマーP1が、
PVDF、
P(VDF-HFP)、P(VDF-TFE)及びP(VDF-TrFE)から選択されるコポリマー
からなる混合物であり、
前記コポリマーの重量に対するPVDFの重量割合が、1:99~99:1、優先的には10:90~90:10、極めて優先的には25:75~75:25の範囲である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項6】
前記ポリマーP1が、前記組成物C1の少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも97.5重量%、又は少なくとも99.0重量%を構成する、請求項1~5のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項7】
前記組成物C1が、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(エチルアクリレート)(PEA)、ポリ(ビニルアセテート)(PVAc)、ポリ(ビニルメチルケトン)(PVMK)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性デンプン、それら由来のコポリマー及びそれらの混合物からなるリストから選択される少なくとも1つのポリマーP1’をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項8】
前記ポリマーP1がPVDFからなり、前記ポリマーP1’がPMMAからなり、前記ポリマーP1及びP1’の重量の合計に対するP1’の重量割合が、15%~40%、優先的には16%~30%、極めて優先的には17%~23%である、請求項7に記載のウェブ。
【請求項9】
組成物C1の繊維からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項10】
0.01g/m
2~3g/m
2、優先的には0.02g/m
2~1g/m
2、極めて優先的には0.03g/m
2~0.5g/m
2の単位面積当たりの重量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項11】
厳密に100nm未満の直径を有する繊維の数で1%未満、優先的には0.5%未満、より好ましくは0.1%未満含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項12】
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチル尿素、トリメチルホスフェート及びN-メチル-2-ピロリドンからなるリストからの溶媒のいずれも含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載のウェブ。
【請求項13】
ナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過に好適な膜であって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのウェブ、
前記ウェブを支持する支持層
を備える、膜。
【請求項14】
前記支持層が、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)又はポリ(エチレンナフタレート)(PEN)などのポリエステル、PA11、PA12、PA6、PA6.6又はPA6.10などのポリアミド若しくはコポリアミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマー、及びそれらの混合物から選択される繊維の不織布セットである、請求項13に記載の膜。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載のウェブ又は請求項13及び14のいずれか一項に記載の膜の洗浄/滅菌のための方法であって、40℃~90℃、優先的には55℃~85℃、極めて優先的には65℃~80℃の温度で実施される熱処理の段階を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーをベースとする繊維及びそれに由来する膜の多孔質ウェブの分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、フルオロポリマーをベースとする繊維のセットを含むナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過のためのそのようなウェブに関する。
【0003】
本発明はまた、空気濾過装置、特に呼吸保護フィルタリング装置における、そのようなウェブ又はそれに由来する膜の使用に関する。
【0004】
本発明はまた、これらのウェブ及び/又はこれらの膜を実装するための方法に関する。
【0005】
最後に、本発明は、これらのウェブ及び/又はこれらの膜を洗浄するための方法に関する。
【背景技術】
【0006】
コロナウイルスCOVID-19に関連する健康危機の状況では、空気濾過装置、特に呼吸保護フィルタリング装置(医療用マスク、FFP型マスク、補助換気あり若しくはなしのカートリッジマスク)又は空気濾過を目的とした他の装置を開発及び製造することが特に重要であることが証明されており、これらはより効率的、効果的、耐久性があり、ユーザの良好な安全性及び良好な健康を保証する。呼吸保護フィルタリング装置に関しては、それがユーザにとって十分に快適であり(「良好な通気性」)、再使用可能であることも重要であることが証明されている。
【0007】
空気濾過装置、特に呼吸保護フィルタリング装置の重要な要素は、不織繊維から構成される1つ以上の多孔質膜の存在である。これらの膜は、細菌又はウイルスなどの小型粒子を含む潜在的に有害なエアロゾルの遮断を確実にする。
【0008】
そのような膜を製造するためのいくつかの方法が公知であり、不織繊維が多孔質基材上に堆積されるか、又は堆積されない。特に、ポリマーフィルム(例えば、フィルム研削又はカーディング)から、吹き込みによって溶融されたポリマー(例えば、メルトブローン)から、又は溶液中のポリマー(例えば、溶液電界紡糸)から開始する方法が公知である(参照:Irwin M.Hutten,in Handbook of Nonwoven Filter Media(Second Edition))。
【0009】
これらの方法は、プラズマ処理によって、特に直流コロナ処理によって、摩擦(摩擦電気効果)によって、湿潤蒸気によって、又は乾燥蒸気によっても不織布を静電的に帯電させることを可能にする方法と組み合わせることができる。
【0010】
表面が静電的に帯電した繊維を有する膜は、静電効果によって汚染又は感染要素を遮断する能力を有し、したがって、帯電していない膜と比較して改善された濾過効率を有する。
【0011】
膜は、一般に、合成繊維から、又は網羅的ではないが熱可塑性ポリマー、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリビニル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン又はフルオロポリマー、特にポリフッ化ビニリデンから得られる合成繊維の組み合わせから構成される。今日まで最も広く使用されているポリマーは、ポリオレフィン、特にポリプロピレンである。
【0012】
通常、フィルタ要素がガス流によって運ばれるエアロゾルの通過を制限することを可能にする3つの主な物理的機構が選び出される。2つは、機械的効果に関連し、3つ目は、静電的効果に関連する。第1の効果「衝撃」は、粒子が細孔のサイズに近い寸法を有し、したがって繊維との衝撃によって遮断されるときに観察される効果である。
【0013】
第2の効果「拡散」は、散乱粒子がそれらの運動中にブラウン成分を有し、したがって繊維と接触し、繊維に付着しやすいという事実に関連する。この機構により、細孔の寸法よりも小さいサイズの粒子の通過を防止することが可能になる。
【0014】
第3の効果「誘導」は、静電現象に関係する。濾過される粒子が帯電又は分極性である場合、それらは、電荷又は双極子を有する繊維自体によって引き付けられやすい。この第3の効果は、その寸法が細孔のサイズよりも著しく小さい粒子の通過を制限することを可能にする。それは、繊維の直径が小さくなるにつれて、より顕著になる。
【0015】
加えて、膜の性能品質を評価するために、いくつかの基準、特に効率、圧力降下及びさらに品質係数が一般的に使用される。
【0016】
効率η(t)は、膜が有害なエアロゾルを遮断する能力である。それは、以下の式:
【0017】
【数1】
に従ってフィルタ要素の上流及び下流の汚染物質の濃度の差によって評価され、式中、C
in及びC
outは、フィルタ要素の上流又は下流で濾過しなければならないと具体的に特定される汚染物質の濃度である。
【0018】
具体的に研究される汚染物質の特性は、一般に、除去することが望ましい粒子のサイズの上限によって定義される。
【0019】
目的は、一般に、時間、温度、湿度の関数として、多かれ少なかれ攻撃的な環境で、又は膜の処理、除染及び/又は再生の段階の間に可能な限り劣化しない最大効率を有することである。
【0020】
効率η(t)は、以下の式:
【0021】
【数2】
に従って2つの成分によって表すことができ、式中、m(t)は、機械的効果に関連する成分であり、e(t)は、静電的効果に関連する成分である。
【0022】
細孔の特性寸法が減少すると、効率の機械的成分が増加し、したがってフィルタ要素の効率も増加することが容易に理解される。
【0023】
圧力降下ΔPは、汚染要素を含む又は含まないガス流が通過するフィルタ要素の上流と下流との間の圧力差である。したがって、空気などのガスがフィルタ要素を通過する能力を特徴付ける。一般に、目的は、過度に大きな圧力降下は、マスクを介して補助なしで呼吸することが困難になるため、特に補助換気なしで呼吸保護フィルタリング装置に入るフィルタ要素に対して可能な限り低い圧力降下を有することである。
【0024】
したがって、フィルタ要素の圧力降下を過度に増加させないために、細孔の特性寸法及び/又は多孔性を過度に減少させることは一般に望ましくない。
【0025】
品質係数Qf(t)は、以下の式:
【0026】
【数3】
によって定義され、式中、η(t)及びΔPは、それぞれ、上で定義した効率及び圧力降下である。
【0027】
品質係数は、所与の寸法の粒子を濾過する際のその有効性と、その圧力降下、したがってガス流を循環させる能力、特に吸入空気又は吐き出された二酸化炭素とのバランスをとることによって、性能品質及びフィルタの使用の可能性を全体的に評価することを可能にする。
【0028】
品質係数は、細孔の特徴的なサイズ、多孔性(繊維によって充填されていないフィルタ要素の体積)及び静電効率の最適化に依存することがよく理解されている。目的は、汚染粒子又は感染性粒子を遮断するのに十分小さいが、低い圧力降下を可能にするのに十分大きい細孔を有することによって効率を高めることである。同様に、目的は、高効率を可能にしながら細孔のサイズを大きくすることを可能にする静電効果を最大にすることであり、目的は、高い多孔性を保持しながら小さな細孔の形成を可能にするために繊維の直径を最小にすることである。この妥協は、濾過することが望まれる粒子が小さいサイズである場合に達成することがより困難である。これは、100nm又は数百ナノメートル程度の特徴的なサイズを有するウイルスの濾過の場合に特に当てはまる。
【0029】
ウイルスから保護するための多孔質不織布膜の製造に特に適した方法は、溶液中のポリマーの電界紡糸のための方法である。この方法では、好適な溶媒の配合物中のポリマー及び添加剤の配合物を含有する溶液を、細い針状のダイ又はノズルに押し通す。このダイは、一般に数キロボルト、又は数十キロボルト程度の高電位(正又は負)にされる。溶液が十分に極性及び/又は導電性である場合、電界によって溶液中に発生した静電荷は、表面張力を打ち消し、流体の液滴を伸張させる。溶媒が実質的に完全に、実際にはさらに完全に蒸発すると、固体繊維が形成され、電気グランドに接続された収集器上に堆積する。したがって、繊維のセットは、多孔質不織膜を形成することができる。この方法は、可変寸法の繊維、特に直径が十又は百ナノメートル程度の大きさの繊維を生成することを可能にし、それは従来の溶融法などの方法では不可能である。
【0030】
電界紡糸法によって空気濾過に好適な多孔質不織布PVDFウェブを得ることは、先行技術、例えば米国特許出願公開第2019/0314746号で公知である。より具体的には、米国特許出願公開第2019/0314746号は、PVDFの溶液の電界紡糸のための方法を記載しており、使用されるPVDFは、20kVの電圧で、8/2(v/v)の割合のDMF/アセトン溶媒の混合物中、20%w/v(体積当たりの重量)で、530000の分子量を有する。ナノファイバーは、不織布ポリプロピレン(PP)基材で覆われたドラムの表面に電界紡糸される。ナノファイバーの電界紡糸が完了すると、そのPP基材上のPVDFのウェブによって形成された膜は、可能な限り多くの残留溶媒を除去するために真空オーブン内で40℃で乾燥される。その後、乾燥した膜は、エレクトレットを完全に充電するためにコロナによって分極される。膜中のPVDF繊維のセットは、450nmのメジアン径を有する直径の分布を有する。
【0031】
溶液電界紡糸は、特定の条件下で、空気濾過のための膜の良好な通気性及び良好な機械的濾過効率のために十分に小さい直径を有する繊維を得ることを可能にする。PVDFとしてより一般的に公知であるポリ(フッ化ビニリデン)は、疎水性で化学的に耐性のある膜を得ることを可能にする。PVDFは、多形性を示す、すなわちα、β、γ及びδの異なる結晶相の下で結晶化することができる、半結晶性熱可塑性ポリマーである。鎖に沿ったトランス(T)又はゴーシュ(G)の立体配座の配列、及びさらに結晶中のそれらの間の鎖の配置(対称性)は、相及びさらにその極性又は非極性の性質も定義する。
【0032】
アルファ相は、TGTG(トランス ゴーシュ+トランス ゴーシュ-)立体配座の配列によって説明することができる。これは、唯一の非極性相である。
【0033】
ベータ相は、鎖に沿った「トランス」(T)立体配座のみの配列によって説明することができ、それら自体は、非中心対称斜方晶単位格子に配置されている。ベータ相は、最も極性の高い相である。
【0034】
アルファ相とベータ相との間、特にガンマ相には中間体が存在し、これはT3GT3G立体配座の配列によって説明することができる。それは極性であるが、ベータ相よりもはるかに少ない。デルタ相も極性であるが、研究されているのはごくわずかである。
【0035】
極性相、特に最も極性の高いベータ相は、重要な強誘電特性を示す。これは、抗電界(Ec)と呼ばれる特性電界よりも大きい値の電界を材料に印加することにより、C-F結合によって形成される双極子を同じ方向に配向させることが可能になることを意味する。強誘電特性の結果として経時的に十分に安定な双極子のこの配向は、材料にゼロ電界で残留分極を与える。したがって、PVDF繊維中のベータ相の存在は、材料に結合した電荷を発生させ、したがって静電効率(非強誘電性誘電材料の繊維と比較してより高い静電効率)を高めることを可能にするので、空気濾過用途に特に有利である。
【0036】
ジメチルホルムアミド(DMF)中のPVDFの溶液の電界紡糸は、Andrew et al.(参照:Effect of electrospinning on the ferroelectric phase content of polyvinylidene difluoride fibers,Langmuir,2008,Vol.24,No.3,pp.670-672)から公知である。方法の特定のパラメータを変動させることによって、溶液中のPVDFの濃度及び電界紡糸中に印加される電圧の適例では、著者らは、49%~58%の結晶性を有するPVDF繊維のウェブを得ることに成功し、結晶相中のベータ相の百分率は、最大75%である。したがって、得られた繊維は、繊維の重量に対して37重量%~47重量%のベータ相含有量を有する。
【0037】
DMF中20重量%濃度のPVDFの溶液の電界紡糸は、Baqueri et al.(参照:Influence of processing conditions on polymorphic behavior,crystallinity,and morphology of electrospun poly(vinylidene fluoride)nanofibers,Journal of Applied Polymer Science,2015,Vol.132,No.30)から公知である。著者らは、0.5ml/hの電界紡糸流量及び13kVの電界紡糸中の印加電圧で、53%の結晶性を有し、結晶相中のベータ相の百分率が最大83%であるPVDF繊維のウェブを得ることに成功した。したがって、得られた繊維は、繊維の重量に対して44重量%のベータ相の含有量を有する。また、そのメジアン径は、55nmである。
【0038】
ウェブの強誘電特性を改善するために、繊維の重量に対してベータ相の割合がより大きい繊維のウェブを提供する必要がある。
【0039】
さらに、DMFなどの少数の一般的に非常に毒性の高い溶媒へのPVDFの溶解度が限られているため、溶液中でのPVDF繊維の電界紡糸のための方法の実装は、これらの溶媒の大量の取り扱いのために非常に面倒であり得る。さらに、特定の場合には、これらの溶媒がPVDF繊維に含浸されたままであり得ることを少なくともある程度まで無視すべきではない。これは、特に膜が呼吸保護フィルタリング装置を製造するために使用される場合、ユーザの健康及び安全性の潜在的な問題を引き起こす。したがって、フルオロポリマーのウェブ及び/又はそれに由来する膜を製造するために、毒性溶媒の使用から解放される、又は少なくともより毒性の低い溶媒を使用する必要がある。
【0040】
加えて、ナノ物体のヒトに対する毒性の危険性のために、ウェブ及び/又はそれに由来する膜は、0.1μm以下の直径を有する繊維を含有しないか、又はごくわずかしか含有しないことが好ましい。したがって、ウェブ及び/又はそれに由来する膜を開発することが望ましく、その効率は、0.1μmを超える直径を有する繊維の使用による機械的効率の損失をおそらく補償するようにその効率の静電成分が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0314746号明細書
【非特許文献】
【0042】
【非特許文献1】Irwin M.Hutten,in Handbook of Nonwoven Filter Media(Second Edition)
【非特許文献2】Effect of electrospinning on the ferroelectric phase content of polyvinylidene difluoride fibers,Langmuir,2008,Vol.24,No.3,pp.670-672
【非特許文献3】Influence of processing conditions on polymorphic behavior,crystallinity,and morphology of electrospun poly(vinylidene fluoride)nanofibers,Journal of Applied Polymer Science,2015,Vol.132,No.30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0043】
本発明の目的は、上記の必要性のうちの少なくとも1つを満たすナノメートル及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過のためのウェブ及び/又は膜を提供することである。
【0044】
本発明の1つの目的は、少なくとも特定の実施形態によれば、その繊維が改善された強誘電特性を有する、空気濾過に好適なウェブ及び/又は膜を提供することである。
【0045】
本発明の別の目的は、少なくとも特定の実施形態によれば、呼吸するように意図された空気の濾過に好適なウェブ及び/又は膜を提供し、したがって人間の健康にいかなる毒物学的危険性も示さないことである。
【0046】
本発明の別の目的は、少なくとも特定の実施形態によれば、呼吸保護フィルタリング装置のフィルタリング部分として使用されるように意図されたウェブ及び/又は膜を提案することである。
【0047】
本発明の別の目的は、少なくとも特定の実施形態によれば、所与の圧力降下に対して改善された効率を有する空気の濾過のためのウェブ及び/又は膜を提供することである。
【0048】
本発明の別の目的は、少なくとも特定の実施形態によれば、所与の効率で圧力降下が低減された空気の濾過用のウェブ及び/又は膜を提供することである。
【0049】
本発明の別の目的は、少なくとも特定の実施形態によれば、空気の濾過のためのウェブ及び/又は膜を提供することであり、その静電効率は、特に湿度及び温度の様々な条件下で経時的に安定している。
【0050】
本発明の別の目的は、少なくとも特定の実施形態によれば、「耐久性」、すなわち環境への影響が低いウェブ及び/又は膜を提供することである。特に、1つの目的は、洗浄及び/又は滅菌後に再使用することができる空気濾過用のウェブ及び/又は膜を提供することである。
【0051】
上記の目的から直接生じる他の目的は、特に、
ウェブ及び/又は膜の製造のための方法を提供すること、
ウェブ及び/又は膜、並びにさらにフィルタを取り外し可能又は取り外し不能に取り付けることができる任意のアセンブリを備えるフィルタを提供すること、
ウェブ及び/又は膜、それに由来するフィルタを洗浄及び/又は滅菌するための方法、実際にはフィルタが取り外し可能又は取り外し不能に取り付けられるアセンブリを提供すること
である。
【課題を解決するための手段】
【0052】
本発明は、ナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過に好適な不織布、多孔質及び静電帯電ウェブに関する。それは、組成物C1の多数の繊維を含む。組成物C1は、少なくとも50重量%の、フッ化ビニリデン(VDF)から生じる繰り返し単位に基づく、少なくとも1つのポリマーP1を含む。組成物C1の繊維は、極性相、優先的にはベータ相のみにおいて、それらの総重量に対して少なくとも65重量%の結晶化度を有する。
【0053】
したがって、本発明によるウェブは、特により良好な強誘電特性の結果として、改善された静電効率を有する。
【0054】
特定の実施形態によれば、組成物C1の繊維は、極性相、優先的にはベータ相のみにおいて、それらの総重量に対して、少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の結晶化度を有する。
【0055】
特定の実施形態によれば、ポリマーP1は、VDFのホモポリマー、VDFから生じる繰り返し単位とVDF以外のモノマーから生じる少なくとも1つの繰り返し単位とを有するコポリマーであって、他のモノマーが、フッ化ビニル(VF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロフルオロエチレン(CFE)、クロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ジクロロジフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン、ペンタフルオロプロペン、パーフルオロエーテル、特にパーフルオロアルキルビニルエーテル、エチレン、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びそれらの混合物からなるリストから選択されるコポリマー、並びにホモポリマーとコポリマーとの混合物からなる群から選択される。
【0056】
特定の実施形態によれば、ポリマーP1は、PVDF、P(VDF-HFP)、P(VDF-TFE)、P(VDF-TrFE)又はそれらの混合物である。
【0057】
特定の実施形態によれば、前記少なくとも1つのポリマーP1は、
PVDF、
P(VDF-HFP)、P(VDF-TFE)及びP(VDF-TrFE)から選択されるコポリマー
からなる混合物であり、
コポリマーの重量に対するPVDFの重量割合は、1:99~99:1、優先的には10:90~90:10、極めて優先的には25:75~75:25の範囲である。
【0058】
特定の実施形態によれば、ポリマーP1は、組成物C1の少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%、又は少なくとも97.5重量%、又は少なくとも99.0重量%を構成する。
【0059】
特定の実施形態によれば、組成物C1は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(エチルアクリレート)(PEA)、ポリ(ビニルアセテート)(PVAc)、ポリ(ビニルメチルケトン)(PVMK)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性デンプン、それに由来するコポリマー及びそれらの混合物からなるリストから選択される少なくとも1つのポリマーP1’をさらに含む。
【0060】
特定の実施形態によれば、ポリマーP1はPVDFからなり、ポリマーP1’はPMMAからなり、ポリマーP1及びP1’の重量の合計に対するP1’の重量割合は、15%~40%、優先的には16%~30%、極めて優先的には17%~23%である。
【0061】
特定の実施形態によれば、本発明によるウェブは、組成物C1の繊維からなる。
【0062】
特定の実施形態によれば、ウェブは、0.01g/m2~3g/m2、優先的には0.02g/m2~1g/m2、極めて優先的には0.03g/m2~0.5g/m2の単位面積当たりの重量を有する。
【0063】
特定の実施形態によれば、ウェブは、厳密に100nm未満の直径を有する繊維の数で1%未満、優先的には0.5%未満、より好ましくは0.1%未満を含む。
【0064】
本発明はまた、ナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過に好適な不織布、多孔質及び静電帯電ウェブの製造方法に関し、ウェブは、上記の実施形態によるものである。本方法は、
少なくとも1つの組成物C1の提供であって、前記組成物C1が、VDFから生じる繰り返し単位に基づいて少なくとも50重量%の少なくとも1つのポリマーP1を含む、提供、
組成物C1を電界紡糸することによるウェブの形成の段階
を含む。
【0065】
本発明はさらに、
上記の実施形態による少なくとも1つのウェブ、及び
前記ウェブを支持する支持層
を備えるナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過に好適な膜に関する。
【0066】
特定の実施形態によれば、膜内のウェブは、0.01g/m2~3g/m2、優先的には0.02g/m2~1g/m2、極めて優先的には0.03g/m2~0.5g/m2の単位面積当たりの重量を有する。
【0067】
特定の実施形態によれば、支持層は、特に、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)又はポリ(エチレンナフタレート)(PEN)などのポリエステル、PA11、PA12、PA6、PA6.6又はPA6.10などのポリアミド若しくはコポリアミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマー及びそれらの混合物から選択される繊維の不織布セットであり得る。
【0068】
最後に、本発明は、40℃~90℃、優先的には55℃~85℃、極めて優先的には65℃~80℃の温度で実施される熱処理の段階を含む、上記の実施形態によるウェブ又は上記の実施形態による膜の洗浄/滅菌のための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】電界紡糸用の第1の装置「針付き」を模式的に表す図である。
【
図2】電界紡糸用の第2の装置「針なし」を模式的に表す図である。
【
図3】第1の実施形態による膜を模式的に表す図である。
【
図4】第2の実施形態による膜を模式的に表す図である。
【
図5】第3の実施形態による膜を模式的に表す図である。
【
図6】本発明による膜を備えるフィルタリングハーフマスクを模式的に表す図である。
【
図7】
図6によるハーフマスクに使用されるフィルタの可能なアーキテクチャを模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
ウェブ
本発明は、組成物C1の多数の繊維を含む、ナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過に好適な不織布、多孔質及び静電帯電ウェブに関する。組成物C1は、少なくとも50重量%の、VDFから生じる繰り返し単位に基づく、少なくとも1つのポリマーP1を含む。組成物C1の繊維は、繊維の総重量に対して、少なくとも65重量%の極性相の結晶化度を有する。
【0071】
有利には、ベータ相は、主な極性相であり、すなわち、それは極性相の50重量%超に相当する。好ましくは、ベータ相は、極性相の80%超又はさらに95%超に相当する。多くの場合、ガンマ及び/又はデルタ相は、検出されず、繊維は、極性結晶相としてベータ相のみからなると考えられる。
【0072】
ベータ相は、ポリマーP1鎖に沿った全トランス(T)立体配座の配列によって説明することができる。ベータ相は、ポリマーP1が採用することができる異なる可能な相の中で最も極性の相である。ベータ相形態中の結晶の存在により、ポリマーP1は、強誘電性である。それは、電気変位印加電界曲線のヒステリシスサイクルによって特徴付けることができる。25℃におけるその抗電界は、典型的には40V/μm以上である。25℃での残留分極は、非常に高く、典型的には40mC/m2を超える値に達することができる。
【0073】
したがって、本発明によるウェブの繊維、特に組成物C1の繊維は、比較的低い抗電界で分極可能であり、比較的高い残留分極を示す。分極繊維は、経時的及び湿度に対して安定な永久双極子を形成する(疎水性)。分極繊維も温度安定性である。これにより、ウェブ及び/又はそれに由来する膜を洗浄/滅菌するための方法、及び濾過効率を著しく損なうことのないこれらの再利用を想定することが可能になる。
【0074】
「多孔質」という用語は、ウェブが細孔と呼ばれる一連の空の空間を示すことを意味すると理解される。細孔は、有利には主に開放細孔であり、すなわち、それらは互いに接続されて非常に微細なチャネルを形成することができる。これにより、ウェブ、したがってそれに由来する任意の膜を空気に対して透過性にすることが可能になる。
【0075】
「静電帯電」という表現は、ウェブが双極子電荷、及び適切な場合には空間電荷を有することを意味すると理解される。
【0076】
「エアロゾル」という用語は、無視できる落下速度を示す固体及び/又は液体粒子の気体、特に空気中の懸濁体を示すと理解される。空気中、25℃及び1015hPaでは、これは一般に、サイズが約100μmより小さい粒子に相当する。1マイクロメートル未満の3つの外形寸法を有するエアロゾル粒子(PM1とも呼ばれる)は、サブミクロン粒子として記載される。100ナノメートル未満の3つの外形寸法を有するエアロゾル粒子は、ナノメートル粒子として記載される。
【0077】
サブミクロン又はナノメートルのエアロゾルは、粉塵、ミスト及び霧、並びにさらにバイオエアロゾルを包含する。
【0078】
粉塵、ミスト及び霧は、自動車交通(不完全燃焼)又は特定の産業活動(物質の状態の変化中、化学反応中又はガスの凝縮若しくは液体の凝固の段階中に形成される、化学的及び/又は熱的起源の粒子、又は二次粒子)によって放出することができる。
【0079】
バイオエアロゾルは、生きている微生物(ウイルス、細菌、カビ及び原虫)又はこれらの生物を起源とする物質若しくは生成物(例えば、毒素、死んだ微生物又は微生物の断片)を含有するエアロゾルである。バイオエアロゾルは、環境及び職場に遍在している。それらは、例えば、人、動物、植物及び取り扱われる材料を起源とし得るか、又は工程によって発生し得る。COVID19ウイルスの場合、ウイルスは、くしゃみ、咳若しくは唾によって吐き出される液滴の形態で空気中に存在し得るか、又は単純な呼気によって放出され得る。
【0080】
エアロゾル中の粒子の濃度及びそれらの粒径分布を評価するために、当業者に周知の間接的(例えば、サンプリング、濃度の測定及び顕微鏡観察によって)又は直接的(例えば電気的方法によって)の様々な測定方法が存在する。
【0081】
50nm~500nmの範囲のサイズを有するNaCl粒子を含むエアロゾルを有利に使用して、バイオエアロゾルタイプの電荷に対して、ウェブ又はそれに由来する膜の効率を試験することができる。
【0082】
「繊維」という用語は、一般に直径及び長さによって説明することができる糸状要素を示すと理解される。
【0083】
「繊維の不織布ウェブ」という用語は、特に織り又は編みを行わずに繊維を組み立てることによって得られる繊維のセットを示すと理解される。直接又はランダムに配向され、摩擦、凝集又は接着によって結合された個々の繊維のシートで作製されたことを意味する、EN ISO9092によるEDANA(欧州不織布協会)による追加の定義が提案されている。
【0084】
「極性相の結晶化度」という表現は、繊維の総重量に対する、極性相にある結晶の重量割合を意味すると理解される。それは、繊維の結晶化度に結晶相内の極性結晶相の相対含有量を掛けることによって得ることができる。
【0085】
「結晶化度」は、広角X線散乱(WAXS)により測定することができる。したがって、回折角の関数としての散乱強度のスペクトルが得られる。このスペクトルは、非晶質ハローに加えてピークがスペクトル上に見える場合、結晶の存在を識別することを可能にする。このスペクトルにおいて、結晶性ピークの面積(CAと示す)及び非晶質ハローの面積(HAと示す)を測定することが可能になる。次いで、繊維中の結晶相の重量割合は、(CA)/(CA+HA)の比によって計算される。
【0086】
又は、結晶化度を迅速に推定するための方法は、最初に10℃/分の温度勾配で加熱しながら、示差走査熱量測定(DSC)によって繊維の融解エンタルピー(ΔH)を測定することである。次いで、繊維中の結晶相の重量割合は、(ΔHm+ΔHc)/ΔH100%の比によって推定され、式中、ΔHmは、融解エンタルピーであり、ΔHcは、キュリー転移に関連するエンタルピーであり、ΔH100%は、100%結晶性サンプルの理論エンタルピーである。
【0087】
結晶相中の極性結晶相の相対含有量は、特に結晶相中のベータ相、ガンマ相及びデルタ相の重量割合に対応する。それは、示差走査熱量測定(DSC)、X線分光法又はフーリエ変換赤外分光法(FTIR)などの様々な技術によって決定することができる。ベータ相は、最も極性相であり、並びに/又はガンマ相及びデルタ相が少量であるか又は全く存在しない可能性があるため、結晶相中の極性結晶相の相対含有量は、一般に、結晶相中のベータ相の含有量として、多かれ少なかれ近似的に、単純化することができる。
【0088】
加えて、最新技術は、PVDFの電界紡糸によって得られる繊維の結晶相が事実上排他的にアルファ及びベータであることを示している。サンプル中の結晶相に対するベータ相の相対比率F(β)をその赤外スペクトルから推定するために、2つの相に特徴的なバンドの相対強度及び吸収係数が使用される。F(β)は、関係:
【0089】
【数4】
で与えられ、式中:
x
α及びx
βは、結晶相中のアルファ相及びベータ相の相対分率であり、
A
αは、例えば766cm
-1におけるアルファ相のバンド特性の吸光度であり、
A
βは、例えば840cm
-1におけるベータ相のバンド特性の吸光度であり、
K
αは、アルファ相の波長特性に対応する吸収係数(766cm
-1では、K
αは6.1×10
4と推定される)であり、
K
βは、ベータ相の波長特性に対応する吸収係数(840cm
-1の場合、K
βは7.7×10
4と推定される)である。
【0090】
「コポリマー」という用語は、広義には、コモノマーと呼ばれる少なくとも2種類の化学的に異なるモノマーの共重合から生じるポリマーを示すと理解される。したがって、コポリマーは、広義には、少なくとも2つの繰り返し単位から形成される。それは、例えば、2つ、3つ又は4つの繰り返し単位から形成することができる。コポリマーは、厳密な意味では、例えばP(VDF-TrFE)などの正確に2つの繰り返し単位から形成される。
【0091】
「ポリマーの混合物」という用語は、ポリマーの巨視的に均質な組成物を示すと理解される。この用語は、相溶性ポリマー、すなわち混和性ポリマーの混合物を包含し、この混合物は、個々に考慮されるこれらのポリマーのガラス転移温度の中間のガラス転移温度を示す。この用語はまた、マイクロメートルスケールで分散された相互に不混和性の相から構成されるそのような組成物を包含する。
【0092】
「融点」という用語は、少なくとも部分的に結晶化したポリマーが粘性液体状態に変化する温度を示すと理解される。融点は、2回目の加熱において、10℃/分の加熱速度を使用して、規格NF EN ISO11357-3:2018に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。
【0093】
本特許出願において、単数形「a(n)」、「the」それぞれは、特に明記しない限り、デフォルトで「少なくとも1つ」及びそれぞれ「前記少なくとも1つ」を意味する(後者の様式は、特定の表現を簡略化ために、常に使用されるとは限らない)。
【0094】
本特許出願に記載されたすべての範囲において、特に明記しない限り、限界値が含まれる。
【0095】
特定の実施形態によれば、組成物C1の繊維は、極性相で、それらの総重量に対して、少なくとも65%、優先的には少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の結晶化度を有する。
【0096】
優先的には、組成物C1の繊維は、ベータ相で、それらの総重量に対して、少なくとも65%、優先的には少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%の結晶化度を有する。
【0097】
有利には、組成物C1の繊維は、少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも99%の結晶化度を有する。
【0098】
有利には、組成物C1の繊維は、少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも99%の極性結晶相、特にベータ相の相対含有量を有する。
【0099】
結晶化度及び/又は極性結晶相の相対含有量は、以下の実施形態で提示されるように、様々な方法で増加させることができる。
【0100】
特定の実施形態によれば、ポリマーP1は、VDFのホモポリマー、VDFから生じる繰り返し単位とVDF以外のモノマーから生じる少なくとも1つの繰り返し単位とを有するコポリマーであって、他のモノマーが、フッ化ビニル(VF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、クロロフルオロエチレン(CFE)、クロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ジクロロジフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン、ペンタフルオロプロペン、パーフルオロエーテル、特にパーフルオロアルキルビニルエーテル、エチレン、アクリルモノマー、メタクリルモノマー及びそれらの混合物からなるリストから選択されるコポリマー、並びに上記のホモポリマーとコポリマーとの混合物からなる群から選択される。
【0101】
上記のフッ素化化合物のすべての幾何異性体が、1,1-クロロフルオロエチレン(1,1-CFE)、1,2-クロロフルオロエチレン(1,2-CFE)、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン及び1,1,2-トリクロロ-2-フルオロエチレン、3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(若しくは1234yf)、3-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(若しくは1233yf)、3-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペンなどの上記の用語に含まれることは明確に理解される。
【0102】
パーフルオロアルキルビニルエーテルの中でも、一般式:Rf-O-CF=CF2のものが挙げられ得、Rfは、アルキル基、好ましくはC1~C4アルキル基であり、例えばメチルビニルエーテル(MVE)又はイソプロピルビニルエーテル(PVE)である。
【0103】
アクリル又はメタクリル型のモノマーのうち、アクリル酸、メタクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルヘキシルメタクリレート及びそれらの混合物が挙げられ得る。
【0104】
P1がコポリマーを含む実施形態では、後者は、有利にはランダムコポリマーである。
【0105】
好ましい実施形態では、ポリマーP1は、PVDF、P(VDF-HFP)、P(VDF-TFE)、P(VDF-TrFE)又はそれらの混合物である。
【0106】
特定の実施形態によれば、前記少なくとも1つのポリマーP1は、PVDFからなる。これには、PVDF、特に異なる重量平均分子量を有するPVDFの混合物が含まれる。
【0107】
特定の実施形態によれば、前記少なくとも1つのポリマーP1は、P(VDF-HFP)、又はP(VDF-TFE)、又はP(VDF-TrFE)からなる。これには、異なるモノマー比及び/又は異なる重量平均分子量を有するコポリマー、例えばP(VDF-TrFE)の混合物が含まれる。
【0108】
特定の実施形態によれば、前記少なくとも1つのポリマーP1は、
PVDF、
P(VDF-HFP)、P(VDF-TFE)及びP(VDF-TrFE)、
から選択されるコポリマーからなる混合物であり、
コポリマーの重量に対するPVDFの重量割合は、1:99~99:1の範囲である。
【0109】
好ましくは、コポリマーの重量に対するPVDFの重量割合は、10:90~90:10である。より好ましくは、コポリマーの重量に対するPVDFの重量割合は、25:75~75:25である。
【0110】
P(VDF-HFP)は、有利には、15%~35%のHFPから生じる繰り返し単位のモル割合を有する。
【0111】
P(VDF-TFE)は、有利には、VDF及びTFEから生じる単位の総モル数に対して、8%~30%、優先的には15%~28%、より優先的には18%~25%、極めて好ましくは20%~22%のTFEから生じる繰り返し単位のモル割合を有する。
【0112】
P(VDF-TrFE)は、有利には、VDF及びTrFEから生じる単位の総モル数に対して、15%~50%、優先的には16%~35%、より優先的には17%~32%、極めて好ましくは18%~28%のTrFEから生じる繰り返し単位のモル割合を有する。
【0113】
特定の実施形態によれば、ポリマーP1は、規格ASTMD1238-13に従って測定した際に、230℃、12.5kgの荷重下で0.1~15g/10分、優先的には1~10g/10分、より好ましくは3~8g/10分のメルトフローインデックスを有する。
【0114】
組成物C1は、C1の総重量に対して、少なくとも50重量%のポリマーP1を含む。C1中のポリマーP1の十分に高い割合は、主に強誘電形態のC1の良好な結晶化を保証することを可能にする。特定の実施形態によれば、組成物C1は、少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97.5%、又は少なくとも99.0%のポリマーP1を含む。
【0115】
特定の実施形態によれば、組成物C1は、ポリマーP1以外の少なくとも1つのポリマーP1’をさらに含むことができる。ポリマーP1’は、特に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(エチルアクリレート)(PEA)、ポリ(ビニルアセテート)(PVAc)、ポリ(ビニルメチルケトン)(PVMK)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性デンプン、それら由来のコポリマー及びそれらの混合物からなるリストから選択することができる。
【0116】
特定の実施形態によれば、組成物C1は、ポリマーP1及びポリマーP1’を含み、P1はPVDFからなり、P1’はPMMAからなる。有利には、PMMA及びPVDFの重量の合計に対するPMMAの重量割合は、有利には15%~40%、優先的には16%~30%、より優先的にはさらに17%~23%である。これらの割合でのPVDFへのPMMAの添加は、ベータ相の結晶化度を有意に増加させることを可能にし、結晶化度にあまり影響しない。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、組成物C1は、特定の数の添加剤をさらに含むことができる。添加剤の例は、例えば、殺菌又は殺真菌効果を有する添加剤である。組成物C1は、優先的には、5重量%未満、又は4重量%未満、又は3重量%未満、又は2重量%未満、又は1重量%未満の添加剤を含む。
【0118】
有利には、組成物C1は、カーボンナノチューブ、グラフェン又はオルガノシリケートなどの電気及び/又は熱伝導性添加剤を含まない。これは、そのような導電性添加剤が、膜の誘導(静電効率)によって効率に関与し得る空間電荷の安定性に悪影響を及ぼし得るからである。特に、それらは、経時的な繊維の早期排出又は特定の環境(例えば、洗浄及び/若しくは滅菌)での早期排出を引き起こしやすい。
【0119】
同様に、有利には、組成物C1は、フェライト粒子又はBaTiO3粒子などの無機強誘電粒子を含まない。
【0120】
同様に、有利には、組成物C1は、ナノフィラー、すなわち100nm以下の少なくとも1つの寸法を有するフィラーを含まない。これは、そのようなフィラーが、吸入によるヒトの健康へのリスクを示しやすいからである。
【0121】
これらの実施形態の代わりに、組成物C1は、ポリマーP1のみからなることができる。
【0122】
ウェブは、一般に、ウェブの総重量に対して、少なくとも50重量%の組成物C1の繊維を含む。特定の実施形態によれば、ウェブは、少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97.5%、又は少なくとも99.0%の組成物C1の繊維を含む。
【0123】
特定の実施形態によれば、ウェブは、組成物C1とは異なる少なくとも1つの組成物C1’をさらに含むことができる。この他の組成物は、少なくとも50重量%のP1以外の少なくとも1つの他のポリマーからなる組成物であり得る。この他の組成物は、特に、少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%のP1以外の別のポリマーからなる組成物であり得る。P1以外のポリマーは、上記のポリマーP1’のうちの1つであり得る。P1以外のポリマーはまた、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド(PA11;PA12;PA6;PA6.6;PA6.10)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリスチレン(PS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリル酸(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカプロラクトン、ポリイミド、PVDF、P(VDF-HFP)、P(VDF-TFE)、P(VDF-CFE)、P(VDF-TrFE-CFE)、P(VDF-TrFE-CTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロプロペン)(ETFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-パーフルオロプロピルエーテル)(PFA)、ポリ(エチレン-co-クロロトリフルオロエチレン)(E-CTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-パーフルオロプロペン)(E-CPFP)などのフルオロポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(メチルメタクリレート-co-エチルアクリレート)又はPMMA-PSブロックコポリマーなどのPMMAコポリマー、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、ポリ(メチルアクリレート)(PMA)、ポリ(エチルアクリレート)(PEA)、ポリ(ビニルアセテート)(PVAc)、ポリ(ビニルメチルケトン)(PVMK)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性デンプン、それらに由来するコポリマー及びそれらの混合物からなるリストから選択されるポリマーであり得る。
【0124】
これらの実施形態の代わりに、ウェブは、組成物C1の繊維のみからなることができる。
【0125】
ウェブ繊維は、有利には、厳密に100nmを超えるメジアン径を有する。繊維の直径及びそれらの分布は、走査型電子顕微鏡法(SEM)、専用ソフトウェアによる計数及び分析によって推定することができる。
【0126】
特定の実施形態によれば、ウェブの繊維のメジアン径は、150nm以上、又は200nm以上、又は250nm以上である。
【0127】
特定の実施形態によれば、ウェブの繊維のメジアン径は、1600nm以下、又は1400nm以下、又は1200nm以下、又は1000nm以下、又は800nm以下、又は600nm以下、又は550nm以下、又は500nm以下、又は450nm以下である。
【0128】
特定の実施形態によれば、ウェブは、厳密に100nm未満の直径を有する繊維の数で1%未満、優先的には0.5%未満、より好ましくは0.1%未満を含む。これらの実施形態は、ナノメートル物体、すなわち100nm未満の少なくとも1つのサイズ寸法を有する物体の呼吸によって生じる潜在的なリスクの結果として、ウェブが呼吸保護フィルタリング装置で使用されることが意図されている場合に特に有利である。
【0129】
特定の実施形態によれば、ウェブの繊維のメジアン径は、特に150nm~600nm、優先的には200nm~500nm、より優先的には250nm~450nmであり得る。
【0130】
特定の実施形態によれば、ウェブは、0.01g/m2~3g/m2の単位面積当たりの重量(表面密度)を有する。単位面積当たりの重量は、好ましくは残留溶媒が存在しないことを確実にするためにオーブンに入れた後に、所与の表面積、例えば200mm×250mmを単に秤量することによって推定することができる。ウェブは、優先的には、0.02g/m2~1g/m2の単位面積当たりの重量を有し、より好ましくは、0.03g/m2~0.5g/m2の単位面積当たりの重量を有する。
【0131】
特定の実施形態によれば、ウェブは、0.1μm~100μmの平均厚さを有する。平均厚さは、例えば、機械的マイクロメーター、光学センサ若しくはレーザセンサを使用して、又は光学顕微鏡若しくは走査型電子顕微鏡(SEM)によって推定することができる。ウェブは、優先的には0.2μm~10μm、より優先的には0.3μm~0.8μmの平均厚さを有する。
【0132】
特定の実施形態によれば、ウェブは、95l/分の公称空気流に対して500Pa以下の圧力降下及び/又は30l/分の公称空気流に対して100Pa以下の圧力降下を有する(規格EN149:2001+A1:2009を参照)。ウェブは、優先的には、95l/分の空気流に対して350Pa以下、優先的には250Pa以下、優先的には100Pa以下、極めて好ましくは50Pa以下の圧力降下を有する。ウェブは、優先的には、30l/分の空気流に対して75Pa以下、優先的には50Pa以下、極めて好ましくは25Pa以下の圧力降下を有する。
【0133】
特定の実施形態によれば、膜は、噴霧NaCl溶液(50nm~500nmの範囲の粒径)のエアロゾルに対して少なくとも75%の効率を有する。膜は、特に、少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.90%、又は少なくとも99.95%の効率を有することができる。
【0134】
特定の実施形態によれば、ポリマーP1中のVDFから生じる単位は、少なくとも部分的に、バイオベースのVDFから生じる。「バイオベース」という用語は、「バイオマスから生じる」を意味する。これにより、膜のエコロジカルフットプリントを改善することが可能になる。バイオベースVDFは、規格NF EN 16640に従って14Cの含有量によって決定される際に、再生可能炭素、すなわち、少なくとも1原子%の、生体材料又はバイオマスを起源とする天然起源の炭素の含有量によって特徴付けることができる。「再生可能炭素」という用語は、以下に示すように、炭素が天然起源であり、生体材料を起源とする(又はバイオマスに由来する)ことを示す。特定の実施形態によれば、バイオカーボン含有量は、5%超、好ましくは10%超、好ましくは25%超、好ましくは33%以上、好ましくは50%超、好ましくは66%以上、好ましくは75%超、好ましくは90%超、好ましくは95%超、好ましくは98%超、好ましくは99%超、有利には100%に等しい。
【0135】
工程
本発明によるウェブを製造するための方法は、少なくとも1つの組成物C1を電界紡糸することによるウェブの形成の段階を含む。
【0136】
電界紡糸は、小型ポリマー繊維、特に数十ナノメートル~数百ナノメートルの範囲の直径を有する繊維を製造することを可能にする周知の電気流体力学的方法である。溶融状態又は溶液中のポリマーの液滴に十分に高い電圧が印加されると、液滴は、帯電する。次いで、静電反発力が液滴の表面張力に対抗し、「テイラーコーン」と呼ばれる円錐を形成するまで液滴を伸張させる。テイラーコーンの先端からは、帯電したジェットが放出し、次いで電界によって加速される。ジェットは、電界の方向に伸長し、接地された集電極に向かって進むにつれて薄くなる。ジェットの伸長及びその薄化は、ポリマーの繊維の固化を伴う。ジェットから生じる繊維は、それらの行程の終わりに、集電極上に直接回収されるか、又は有利には集電極の前に置かれた基材上に回収される。
【0137】
電界紡糸は、以下の
図1及び
図2によって概略的に説明するように、特に「針付き」又は「針なし」であり得る。説明をより容易にするために、純粋に教育的な目的のために、限定することなく、ウェブは、続いて、それ自体がポリマーP1からなる単一の組成物C1からなると考えられる。
【0138】
図1は、実験室で一般的に使用される「針付き」電界紡糸設備の図を示す。設備10は、ポリマーP1の溶液12を含むシリンジ11を備える。シリンジには、一般に、そこから出る溶液の流量を制御することを可能にするポンプ(図示せず)が取り付けられている。シリンジに面するのは、グランドに接続された集電極14である。シリンジと集電極14との間の高電圧発生器13は、電界を発生させることを可能にする。電界を受けたフィラメント15は、シリンジ11から放出され、好ましくは集電極14とは異なる基材16上に堆積される。
【0139】
図2は、より大きな表面積にわたってより大きな生産性(所与の時間に堆積される量)を可能にするために一般に有利な「針なし」電界紡糸設備の図を示す。設備20は、流体状態(溶液中、溶融状態など)のポリマーP1を含む開放槽21及び槽21中に浸漬する回転電極22を備える。電極の回転速度は、槽から放出される組成物C1の流れを適合させることを可能にする。槽21及び回転電極22に面するのは、グランドに接続された集電極24である。槽21/回転電極22と集電極24との間の高電圧発生器23は、電界を発生させることを可能にする。電界を受けたフィラメント25は、槽21から放出される。それらは、好ましくは、集電極24とは異なる基材26上に堆積される。基材26は、特に、転動ベルトであってもよい。
【0140】
工程のいくつかのパラメータは、特に良好な濾過効率及び/又は低い圧力降下及び/又は100nm未満のサイズを有する少数の繊維を有する有利な特性を有するウェブを得るように調節することができる。パラメータは、特に、実質的に均質な外観を有し、ビーズの存在を最小限にする所望のサイズの繊維を得るように調節される。
【0141】
ポリマーP1は、異なる溶媒又は溶媒の混合物(「液体ビヒクル」)に溶解することができる。
【0142】
第1の実施形態によれば、液体ビヒクルは、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含まず、ハンセン溶解度パラメータδpが7MPa1/2~20MPa1/2であり、沸点が100℃を超える(第1の)液体を少なくとも50重量%含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0143】
特定の代替形態によれば、(第1の)液体は、15MPa1/2~20MPa1/2、優先的には15MPa1/2~18MPa1/2のハンセン溶解度パラメータδpを有する。第1の液体は、特に、ガンマ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート又はそれらの混合物からなることができる。この代替形態は、フルオロポリマーがPVDFを含むか又はPVDFからなる場合に特に好適である。
【0144】
他の代替形態によれば、(第1の)液体は、8MPa1/2~15MPa1/2、優先的には10MPa1/2~15MPa1/2のハンセン溶解度パラメータδpを有する。第1の液体は、特に、シクロペンタノン、ジメチルフタレート、エチルアセトアセテート、トリエチルホスフェート、エチルラクテート及びそれらの混合物からなることができる。第1の実施形態によれば、(第1の)液体は、シクロペンタノン、ジメチルフタレート、エチルアセトアセテート、トリエチルホスフェート、エチルラクテート、ガンマ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン及びそれらの混合物からなるリストから選択される。好ましくは、(第1の)液体は、シクロペンタノン、ジメチルフタレート、エチルアセトアセテート、トリエチルホスフェート、エチルラクテート及びそれらの混合物からなるリストから選択することができる。
【0145】
特定の実施形態によれば、(第1の)液体は、シクロペンタノンからなる。
【0146】
この第1の実施形態の液体ビヒクルは、少なくとも1つの第2の液体を含むことができ、第2の液体は、100℃以下の沸点を有する。第2の液体は、特に、アセトン、エチルアセテート、2-ブタノン、水及びそれらの混合物からなるリストから選択することができる。有利には、第2の液体は、エチルアセテート又はエチルアセテートと水との混合物からなる。
【0147】
特定の実施形態によれば、液体ビヒクルは、水を含み、水は、液体ビヒクルの最大5重量%、優先的には最大3重量%を構成する。
【0148】
特定の実施形態によれば、液体ビヒクルは、前記少なくとも1つの第1の液体及び前記少なくとも1つの第2の液体からなる。
【0149】
特定の実施形態によれば、第1の液体と第2の液体との重量割合は、20:80~80:20、優先的には50:50~75:25である。
【0150】
第2の実施形態によれば、ビヒクルは、液体ビヒクルの総重量に対して少なくとも15%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び少なくとも1つの第2の液体を含み、第2の液体は、7MPa1/2~15MPa1/2のハンセン溶解度パラメータδp及び厳密に100℃を超える沸点を有する。
【0151】
特定の実施形態によれば、DMSOは、液体ビヒクルの総重量の少なくとも20%、優先的には少なくとも25%、より優先的には少なくとも30重量%に相当する。
【0152】
特定の実施形態によれば、第2の液体は、液体ビヒクルの総重量の少なくとも10重量%に相当する。
【0153】
特定の実施形態によれば、第2の液体は、8MPa1/2以上、優先的には9MPa1/2以上、極めて好ましくは10MPa1/2以上のハンセン溶解度パラメータδpを有する。
【0154】
特定の実施形態によれば、第2の液体は、シクロペンタノン、ジメチルフタレート、エチルアセトアセテート、トリエチルホスフェート、エチルラクテート及びそれらの混合物からなるリストから選択される。
【0155】
特定の実施形態によれば、第2の液体は、シクロペンタノンからなる。
【0156】
特定の実施形態によれば、第2の液体に対するDMSOの重量比は、有利には40:60~60:40である。
【0157】
特定の実施形態によれば、液体ビヒクルは、DMSO及び前記少なくとも1つの第2の液体からなる。次いで、第2の液体に対するDMSOの重量比は、有利には40:60~60:40である。
【0158】
特定の実施形態によれば、液体ビヒクルは、少なくとも1つの第3の液体を含み、第3の液体は、100℃以下の沸点を有する。第3の液体は、有利には、液体ビヒクルの総重量に対して、5%~60重量%に相当する。
【0159】
特定の実施形態によれば、第3の液体は、アセトン、エチルアセテート、2-ブタノン、水及びそれらの混合物からなるリストから選択される。
【0160】
特定の実施形態によれば、第3の液体は、エチルアセテート又は水とエチルアセテートとの混合物からなる。
【0161】
特定の実施形態によれば、第3の液体は、水を含み、水は、液体ビヒクルの最大5重量%、優先的には最大3重量%を構成する。
【0162】
特定の実施形態によれば、第3の液体の重量に対するDMSO及び第2の液体の重量の合計の重量比は、有利には20:80~80:20、優先的には40:60~60:40である。
【0163】
特定の実施形態によれば、液体ビヒクルは、DMSO、前記少なくとも1つの第2の液体及び前記少なくとも1つの第3の液体からなる。第3の液体の重量に対するDMSO及び第2の液体の重量の合計の重量比は、有利には20:80~80:20、優先的には40:60~60:40である。
【0164】
有利には、CMR(発癌性、変異原性又は生殖毒性)リスクの結果として、ポリマーP1を溶解するために液体ビヒクルの組成物に以下の溶媒のいずれも使用されない:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチル尿素、トリメチルホスフェート及びN-メチル-2-ピロリドン。
【0165】
特定の実施形態によれば、ポリマーP1は、DMSO/シクロペンタノン/エチルアセテート液体ビヒクルに溶解される。アセトン及びエチルアセテートは、特に混合物をより揮発性にすることを可能にし、それらは繊維の良好な結晶化を確実にする。
【0166】
上記の溶媒のうちの1つ又はそれらの混合物中のポリマーP1の濃度は、最小値と最大値との間であり、それを下回るか又は超えると、電界紡糸は、もはやフィラメントを実質的に形成せず、ビーズも形成しない。一般に、上記の溶媒のうちの1つ又はそれらの混合物中のポリマーP1の量は、溶液の総重量の3重量%~30重量%、優先的には6重量%~20重量%、極めて好ましくは9重量%~12重量%に相当する。
【0167】
ポリマーP1は、一般に、最小値と最大値との間で選択される重量平均分子量を有する。これは、過度に低い分子量が電界紡糸中に望ましくないビーズの存在をもたらすためである。過度に高い分子量は、直径が大きすぎる繊維を生成する傾向がある。ポリマーP1は、一般に、100000g/mol~2000000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。好ましくは、それは、300000g/mol~1500000g/mol、極めて好ましくは400000g/mol~700000g/molの重量平均分子量を有する。
【0168】
所与の分子量のポリマーP1の場合、所与の溶媒又は溶媒の混合物中で、P1の濃度は、必然的に臨界エンタングルメント濃度よりも高い。
【0169】
25℃でブルックフィールド粘度計によって測定されるポリマーP1の溶液の粘度は、一般に50~300cPである。好ましくは、溶液の粘度は、75~265cP、極めて好ましくは80~150cPである。
【0170】
特定の実施形態によれば、溶液は、電界紡糸されるフィラメントの加工性を改善することを可能にする添加剤を含むことができる。添加剤は、特に、溶液の特定の電気流体力学的特性を調整することを可能にする添加剤であり得る。添加剤の重量割合は、一般に、溶液の総重量の5%を超えない。
【0171】
添加剤は、特に水であり得る。水は、溶液の導電性を高め、電界紡糸段階中に蒸発するという利点を有する。
【0172】
添加剤は、塩であってもよい。例えば、NaCl及びLiCl、又はTBAC(塩化テトラブチルアンモニウム)、TEAC(塩化テトラエチルアンモニウム)又はTEAB(臭化テトラエチルアンモニウム)などのアンモニウム塩も挙げられ得る。これらの塩は、電界紡糸による繊維の形成後に、少なくとも部分的に、洗浄、特に水による洗浄によって有利に除去することができる。
【0173】
図1及び
図2に表す設備で使用される装置などの設備パラメータも調節することができる:
電極間電圧:後者は、一般に、5kV~40kVの値に調節することができ、好ましくは、電極間電圧は、方法のエネルギー消費を制限し、9kV~25kV、極めて好ましくは10kV~20kVの起こり得るあらゆるリスクを可能な限り防止するように、可能な限り低くなるように選択され、
ポリマーを放出するためのゾーンと基材との間の距離:この距離は、一般に、5cm~30cm、好ましくは10cm~20cmに調節され、
ポリマーP1を放出するための流速:この流速は、機器の種類(シリンジ11又は槽21に浸漬する回転電極22)に応じて可能な限り高くなるように有利に選択され、
形成されているポリマーP1のフィラメントが移動しようとする媒体の温度:これは、溶液からの溶媒の蒸発温度に直接影響し、優先的にはこの温度は、周囲温度に近い。それは、特に10℃~80℃、優先的には20℃~60℃、より好ましくは25℃~45℃であり得る。
形成されているポリマーP1のフィラメントが移動しようとする相対湿度;優先的にはこの湿度は、媒体の温度で20%~60%である。
又は他の特定の条件、例えば溶媒の蒸発を促進する強制空気対流。
【0174】
電界紡糸によって形成されたウェブは、強い電界が作用した結果として、繊維が一般に電界紡糸後に十分に分極された状態にあるため、必ずしも分極の追加の段階を必要としない。
【0175】
電界紡糸によって形成されたウェブは、その形成後、ポリマーの融点よりも低い温度でアニーリングの段階を受け、次いで周囲温度(25℃)に冷却することができる。このアニーリング段階は、任意選択的に、残留溶媒を蒸発させ、任意選択的に、P1の結晶性を高め、したがって強誘電特性を高めることを可能にする。アニーリング段階の後には、通常、分極段階、接触又はコロナが続く。
【0176】
膜
本発明によるウェブは、単独で十分に厚く、ナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過に好適な膜を形成することができる。
【0177】
逆に、本発明によるナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過のための膜は、
本発明による少なくとも1つのウェブ、及び
前記少なくとも1つのウェブを支持する多孔性支持層
を備えることができる。
【0178】
特定の実施形態によれば、ウェブは、0.01g/m2~3g/m2の単位面積当たりの重量を有する。ウェブは、優先的には、0.02g/m2~1g/m2の単位面積当たりの重量を有し、より好ましくは、0.03g/m2~0.5g/m2の単位面積当たりの重量を有する。
【0179】
特定の実施形態によれば、ウェブは、0.1μm~100μmの平均厚さを有する。ウェブは、優先的には0.2μm~10μm、より優先的には0.3μm~0.8μmの平均厚さを有する。
【0180】
支持層は、特に、膜の良好な機械的強度を提供することを可能にする。支持層は、繊維の織布又は不織布のセットであり得る。
【0181】
有利には、支持層は、低い圧力降下を有する。
【0182】
特定の実施形態によれば、特にウェブが電界紡糸によって実装される場合、支持層は、その上にウェブが電界紡糸された基材であり得る。
【0183】
特定の実施形態によれば、支持層は、熱可塑性繊維の不織布セットであり得る。支持層は、特に、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)又はポリ(エチレンナフタレート)(PEN)などのポリエステル、PA11、PA12、PA6、PA6.6又はPA6.10などのポリアミド若しくはコポリアミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマー及びそれらの混合物から選択される繊維の不織布セットであり得る。
【0184】
特定の実施形態によれば、支持層は、メルトブローン法又はスパンボンド法によって得られやすい。メルトブローン法は、一般に、0.5μm~10μmの範囲の直径を有する繊維を得ることを可能にする。スパンボンド法は、一般に、10μm~50μmの範囲の直径を有する繊維を得ることを可能にし、一般に、メルトブローン法よりも安価に実施することができる。
【0185】
特定の実施形態によれば、支持層は、5g/m2~100g/m2、優先的には10g/m2~50g/m2、極めて好ましくは15g/m2~40g/m2の単位面積当たりの重量を有する。
【0186】
特定の実施形態によれば、膜は、本発明による1つ以上のウェブ、例えば、PVDF繊維、又はPVDFとP(VDF-HFP)若しくはP(VDF-TFE)若しくはP(VDF-TrFE)との混合物からなる繊維、又はPVDFとPMMAとの混合物からなる繊維から本質的になるか、又はそれからなるウェブを含む。ウェブは、電界紡糸によって得られ、0.02g/m2~1g/m2の単位面積当たりの重量を有する。基材は、特に、メルトブローによって得られ、10g/m2~50g/m2の単位面積当たりの重量を有するPVDF、PP、又はPETであってもよい。
【0187】
図3は、支持層31及び単一のウェブ32からなる多層膜30を示す。
【0188】
図4は、ウェブ42及びウェブ43でそれぞれ各側が覆われた(「挟まれた」)支持層41からなる多層膜40を示す。ウェブ42及び43は、同一であってもよく、又は逆に異なっていてもよく、特に異なる組成及び/又は単位面積当たりの異なる重量及び/又は異なる厚さを示す。例えば、ウェブ42は、ウェブ43と同じ化学組成を有することができるが、単位面積当たりの異なる重量及び/又は異なる厚さを示すことができる。
【0189】
図5は、本発明による3つのウェブ52、53及び54で連続的に覆われた支持層51からなる多層膜50を示す。ウェブ52、53及び54は、同一であってもよく、又は逆に異なっていてもよく、特に異なる組成及び/又は単位面積当たりの異なる重量及び/又は異なる厚さを示す。
【0190】
空気からナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルを濾過するための装置
本発明によるウェブ及び/若しくは膜は、フィルタを構成することができ、並びに/又はフィルタを構成する多層アセンブリの一部を形成することができ、空気からナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルを濾過するための装置の一部を構成又は形成することができる。
【0191】
特定の実施形態によれば、空気からナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルを濾過するための装置は、呼吸保護フィルタリング装置である。
【0192】
当業者に周知の多くの異なる設計の呼吸保護装置が存在する(INERIS出版、ED6106,Respiratory protection apparatuses,August2019-ISBN978-2-7389-2503-9)。
【0193】
呼吸保護装置は、特に、フィルタリングハーフマスク、フィルタを備えるハーフマスク、又はフィルタを備えるマスクであり得る。呼吸保護装置は、自由換気又は補助換気であり得る。
【0194】
本発明の好ましい実施形態によれば、呼吸保護装置は、自由換気である。呼吸保護装置は、特に、以下に提示されるようなフィルタリングハーフマスクであり得る。呼吸装置は、特に医療用マスク(規格EN 14683を参照)又はFFPタイプのマスク(規格EN 149を参照)であり得る。
【0195】
特定の実施形態によれば、ウェブ及び/又は膜を備えるフィルタは、空気からのナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過のみを可能にする。
【0196】
特定の実施形態によれば、ウェブ及び/又は膜を備えるフィルタは、ナノ及び/又はサブミクロンエアロゾルの濾過及びアンチガス濾過を可能にする複合フィルタである。
【0197】
図6は、フィルタ61、フィルタを顔に固定するための手段、特にノーズバー62、弾性ストラップ63及びさらに呼気弁64(特定の構成では任意選択的)を備えるフィルタリングハーフマスク60を表す。
【0198】
図7を参照すると、フィルタ61は、3つの層:ユーザの顔と接触するのに好適であり、接触するように意図された一方の2つの外層72及び73、外部環境と接触するのに好適であり、接触するように意図された他方の外層並びにさらに膜30からなる中間層からなる。
【0199】
洗浄/滅菌法
本発明によるウェブ及び/又は膜は、有利には、再使用できるように洗浄及び/又は滅菌することができる。それらは、優先的には少なくとも5回、優先的には少なくとも10回、より優先的には少なくとも20回、より優先的には少なくとも30回、極めて好ましくは少なくとも50回洗浄/滅菌することができる。
【0200】
洗浄は、特に水、優先的には熱水で実施することができる。
【0201】
滅菌方法は、
液体状態又は蒸気状態の化学物質を用いた化学処理、
UV-C処理、
熱処理、及び
処理の組み合わせ
を含む。
【0202】
化学的処理の例は、過酸化水素(HPV/HPVP)、VHP、HPGP、iHP及びaHPによる処理である。
【0203】
UV-C処理は、100~280nmの範囲の波長を有する放射線による処理である。これにより、ウェブ及び/又は膜を滅菌することが可能になる。有利には、UV-C処理は、230nm~270nmの間、特に254nm付近に放射ピークを有するランプによって実施される。処理は、一般に、1J/cm~120J/cm、優先的には1J/cm~50J/cmの用量で適用される。
【0204】
熱処理は、一般に40℃以上の温度で十分な時間、優先的には30分以下、より好ましくは15分以下の時間で実施することができる。それは特に、50℃以上、又は60℃以上、又は70℃以上、又は80℃以上の温度で実施することができる。
【0205】
熱は、「乾」熱又は「湿」熱(50%を超える湿度)であり得る。
【0206】
そのような処理を実施することを可能にする装置は、特に、加熱キャビネット、水槽、オートクレーブ又はオーブンである。
【0207】
処理は、様々な制約:処理を受けなければならないウェブ以外の他の材料の性質及び強度、病院又は家庭環境での使用などに従って選択され適合されるべきである。したがって、洗浄可能及び/又は滅菌可能な呼吸保護装置のユーザは、製造業者の説明書、並びにさらに公的な基準及び/又は健康機関の推奨事項を注意深く読むことによって十分に情報を得ることが推奨され、これらの推奨事項を経時的に変更しなければならない可能性がある。本発明者の知る限りでは、家庭で使用するための家庭用オーブン及び電子レンジは、本特許出願の執筆時では、特に、既存のデータ不足及びオーブンの生物学的/化学的汚染の潜在的リスクの結果として、主な公的基準及び/又は健康機関によって家庭で使用するためのマスクに推奨される洗浄/滅菌方法の一部ではない。ANSM[フランス国立医薬品・健康製品安全庁]は、2020年4月21日に改訂された2020年3月25日のその勧告において、例えば、COVIDの流行の状況で提供される、家庭での治療のための非衛生的使用のためのファブリックマスクについて、i)サイクルが60℃で少なくとも30分間のプラトーを含むであろう、ファブリックに好適な洗剤を用いた機械洗浄、及びii)機械的乾燥又は従来の乾燥、その後両方の場合において、マスクの組成物と適合する温度でスチームアイロンがけを行うことを推奨している。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】