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  • 特表-ブチレート生成物を製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】ブチレート生成物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/52 20060101AFI20230706BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20230706BHJP
   A23K 20/189 20160101ALI20230706BHJP
   A23K 10/10 20160101ALI20230706BHJP
   A23K 20/20 20160101ALI20230706BHJP
【FI】
C12P7/52
A23K20/158
A23K20/189
A23K10/10
A23K20/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577643
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 IB2021055253
(87)【国際公開番号】W WO2021255631
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】63/039,566
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522489082
【氏名又は名称】スーパーブリュード フード、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】エイヤル、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー、ブライアン ピー.
【テーマコード(参考)】
2B150
4B064
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AA05
2B150AB01
2B150AC24
2B150AD14
2B150AE02
2B150BB01
2B150DA54
2B150DD12
2B150DF11
2B150DH02
2B150DH03
2B150DH04
2B150DH14
4B064AD06
4B064CA02
4B064CA21
4B064CD09
4B064CD24
4B064DA11
4B064DA20
(57)【要約】
炭素源含有発酵原料の、酪酸を天然に産生するクロストリジウム綱細菌を用いての、約5から7のpHを維持しながらの発酵であって、ここで、アンモニアは、当該pHを維持することのために使用され、それにより、アンモニウムブチレート、バイオマス、および任意に発酵副産物を含む発酵ブロスが形成される、発酵;分離したバイオマスおよび清澄化した発酵ブロスを形成するために、当該バイオマスを当該発酵ブロスから分離することであって、ここで、当該清澄化した発酵ブロスは、当該アンモニウムブチレートおよび任意に発酵副産物を含む、分離すること;並びに当該清澄化したブロスに、鉱酸、鉱塩基、可溶性カルシウム塩およびそれらの組合せからなる群から選択される添加物を添加し、それにより、当該ブチレート生成物が、当該清澄化したブロス中で形成されることによる、ブチレート生成物の製造のための方法が、提供される。さらに、組成物を含む、飼料成分、動物飼料および防氷剤、並びにそれらの使用が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブチレート生成物を製造する方法であって、
(i)炭素源を含む発酵原料を提供すること;
(ii)前記原料を、酪酸を天然に産生するクロストリジウム綱細菌を用いて、約5から7のpHを維持しながら発酵させることであって、ここで、アンモニアは、前記pHを維持することのために使用され、それにより、アンモニウムブチレート、バイオマスおよび任意に発酵副産物を含む発酵ブロスが形成される、発酵させること;
(iii)分離したバイオマスおよび清澄化した発酵ブロスを形成するために、前記バイオマスを前記発酵ブロスから分離することであって、ここで、前記清澄化した発酵ブロスは、前記アンモニウムブチレートおよび任意に前記発酵副産物を含む、分離すること;並びに
(iv)前記清澄化したブロスに、鉱酸、鉱塩基、可溶性カルシウム塩およびそれらの組合せからなる群から選択される添加物を添加し、それにより、前記ブチレート生成物が、前記清澄化したブロス中で形成されること
を含む、方法。
【請求項2】
前記添加物が鉱酸を含み、前記清澄化したブロス中で形成される前記ブチレート生成物が、遊離酸形態の酪酸であって、該方法がさらに、前記酪酸の蒸留および液液抽出からなる群から選択される方法によって、前記酪酸を遊離酸形態で前記清澄化したブロスから分離することを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記添加物が鉱酸を含み、遊離酸形態の酪酸および前記鉱酸のアンモニウム塩が、前記清澄化したブロス中で形成され、該方法がさらに、アルカノールを提供すること、酪酸エステルを形成するために遊離酸形態の前記酪酸を前記アルカノールと反応させること、並びに前記酪酸エステルの蒸留および液液抽出からなる群から選択される方法によって、前記酪酸エステルを前記清澄化したブロスから分離することを含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記添加物が鉱塩基を含み、アンモニアが前記清澄化したブロス中で遊離しており、前記清澄化したブロス中で形成される前記ブチレート生成物が、前記鉱塩基の酪酸塩であり、前記該方法がさらに、前記遊離したアンモニアを蒸発させることによって、前記ブチレート生成物を前記遊離したアンモニアから分離することを含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記清澄化した発酵ブロス、前記炭素源および前記炭素源含有発酵原料からなる群から選択される少なくとも1つがさらに、ホスフェート、フィテートおよびそれらの組合せからなる群から選択されるリンアニオンを含み、前記添加物が可溶性カルシウム塩を含み、前記リンアニオンの水不溶性カルシウム塩が形成され、該方法がさらに、前記ブチレート生成物を前記不溶性塩から分離することを含む、請求項1の方法。
【請求項6】
前記炭素源および/または前記炭素源含有発酵原料がフィテートを含み、該方法がさらに、前記炭素源および/または前記炭素源含有発酵原料をフィターゼ酵素と接触させることを含み、それにより、フィターゼが、ホスフェートを形成するように加水分解され、前記フィターゼ酵素と接触させることが、前記発酵させることの前にまたはそれと同時に行われる、請求項5の方法。
【請求項7】
前記鉱酸が、硫酸、リン酸および硝酸並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項8】
前記鉱塩基が、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1の方法。
【請求項9】
前記可溶性カルシウム塩が、1重量%よりも大きい水溶性を有する、請求項5の方法。
【請求項10】
前記発酵ブロスがさらに、酢酸アンモニウムを含む、請求項1の方法。
【請求項11】
前記ブチレート生成物が、飼料成分である、請求項1の方法。
【請求項12】
前記ブチレート生成物が、防氷剤である、請求項1の方法。
【請求項13】
前記防氷剤のリン含有量が、0.1重量%未満である、請求項12の方法。
【請求項14】
前記添加物が鉱塩基を含み、前記鉱塩基の酪酸塩が前記清澄化したブロス中で形成され、該方法がさらに、前記鉱塩基の前記酪酸塩を、塩の結晶化および電気透析からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、前記清澄化したブロスから分離することを含む、請求項1の方法。
【請求項15】
前記アンモニウム塩を前記清澄化したブロスから結晶化することをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項16】
前記アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項3の方法。
【請求項17】
前記アンモニウム塩をカルシウム塩基と反応させ、それにより、アンモニアが遊離し、沈殿物が形成されることをさらに含み、ここで、前記沈殿物は、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはそれらの組合せを含む、請求項3の方法。
【請求項18】
リン酸カルシウムが形成される、請求項17の方法。
【請求項19】
前記遊離したアンモニアおよび/または前記蒸発したアンモニアを、前記発酵中のpH制御のために再利用することをさらに含む、請求項4または請求項17の方法。
【請求項20】
前記添加物がカリウム塩基を含み、酪酸カリウムがブチレート生成物である、請求項12の方法。
【請求項21】
前記清澄化した発酵ブロス中でまたはその生成物中でブチレート飼料成分の少なくとも一画分を保護することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項22】
水を前記発酵ブロスからおよび/または前記清澄化した発酵ブロスから少なくとも部分的に除去することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項23】
選択された栄養素、請求項11の前記ブチレート飼料成分またはその生成物、および任意にバイオマスを含む、動物飼料。
【請求項24】
ミネラル微量栄養素をさらに含む、請求項23の動物飼料。
【請求項25】
請求項16の前記アンモニウム塩または請求項18の前記リン酸カルシウムを含む、肥料。
【請求項26】
請求項189の前記リン酸カルシウムを含む、動物飼料。
【請求項27】
動物に請求項23、請求項24または請求項26の飼料を与えることを含む、前記動物を治療する方法。
【請求項28】
前記飼料が、10ppmと20,000ppmとの間の濃度でブチレートを含む、請求項27の方法。
【請求項29】
前記動物が、鳥類、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、魚類、ヤギ、イヌ、ネコおよびラピーヌの動物群からなる群から選択される、請求項27の方法。
【請求項30】
前記飼料成分のない同じ前記選択された栄養素を与えることと比較して改善された結果を提供することを特徴とする、請求項27の方法。
【請求項31】
前記改善された結果が、増加した飼料摂取、改善した飼料転換率、より速い1日の体重増加、より大きな回腸表面積、および性別間の一致した結果からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項30の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年6月16日付で出願された米国仮出願第63/039,566号からの優先権を獲得し、それは、参照により、完全に本明細書において説明されているかのように組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ブチレート生成物を製造する方法に、より具体的には、炭素源含有原料の、酪酸を天然に産生するクロストリジウム綱細菌を用いた発酵、および該ブチレート生成物を製造するための発酵生成物のさらなる加工を含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
動物に餌を与えるときの、増加した飼料摂取、改善した飼料転換率、より速い1日の体重増加、より大きな回腸表面積および性別間の一致した結果などの改善をより良く達成する飼料成分などの、改善されたブチレート生成物についての継続中の必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明のいくつかの実施態様の一面によると、ブチレート生成物を製造する方法であって、該方法が、
(i)炭素源を含む発酵原料を提供すること;
(ii)当該原料を、酪酸を天然に生成するクロストリジウム綱細菌を用いて、約5から7のpHを維持しながら発酵させることであって、ここで、アンモニアは、当該pHを維持することのために使用され、それにより、アンモニウムブチレート、バイオマス、および任意に発酵副産物を含む発酵ブロスが形成される、発酵させること;
(iii)分離したバイオマスおよび清澄化した発酵ブロスを形成するために、当該バイオマスを当該発酵ブロスから分離することであって、ここで、当該清澄化した発酵ブロスは、当該アンモニウムブチレートとおよび任意に当該発酵副産物を含む、分離すること;並びに
(iv)当該清澄化したブロスに、鉱酸、鉱塩基、可溶性カルシウム塩およびそれらの組合せからなる群から選択される添加物を添加し、それにより、当該ブチレート生成物が、当該清澄化したブロス中で形成されること
を含む方法が、提供される。
【0005】
本発明のいくつかの実施態様のさらなる態様によると、本明細書において開示するブチレート生成物を含む動物飼料成分が提供される。
【0006】
本発明のいくつかの実施態様のさらなる態様によると、本明細書において開示するブチレート生成物を含む防氷剤が提供される。
【0007】
本発明のいくつかの実施態様のさらなる態様によると、動物に、本明細書において開示する飼料成分を含む飼料を与えることを含む、当該動物を治療する方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明のいくつかの実施態様を、添付の図面を参照して本明細書において説明する。本明細書は、図面と一緒に、当業者に対して、本発明のいくつかの実施態様をいかに実行し得るかを明らかにする。図面は、例示的な論議の目的のためであり、実施態様の構造的な詳細を、本発明の基本的な理解にとって必要であるより詳細に示す試みは、何らなされていない。明確にするために、図面に描くいくつかの対象は、縮尺どおりではない。
【0009】
図1図1は、原料としてグルコースを用いたクロストリジウム・チロブチリカムバッチ発酵についての発酵時間の関数としての、代謝物および細胞産生および消費されたグルコースを示す線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、炭素源含有原料の、酪酸を天然に産生するクロストリジウム綱細菌を用いた発酵、およびブチレート生成物を製造するための発酵生成物のさらなる加工を含む、ブチレート生成物を製造する方法に関する。
【0011】
さらなる加工は、発酵プロセス単独によって得られるものと比較して改善されたブチレート生成物をもたらす。
【0012】
改善されたブチレート生成物は、飼料成分における使用にとって有利である、精製されたブチレート生成物および/または固体形態のブチレート生成物(例えば、カルシウムまたはナトリウムの塩であり得る、酪酸塩などの)であり得る。カルシウムおよびナトリウムの酪酸塩は、飼料成分としてアンモニウムの酪酸塩より好ましいことが見出された。
【0013】
改善されたブチレート生成物は、低いリン含有量を有し得、ここで、該方法は、清澄化した発酵ブロスからのリンの除去を含む。そのような低リン生成物は、防氷剤としての使用にとって有利である。さらに、アセテートまたはブチレートのカリウム塩は、対応するアンモニウム塩によって得られるものより(that)良好な防氷効果を有することが見出された。
【0014】
改善されたブチレート生成物は、そのような生成物を得るための当該技術分野において既知のプロセスと比較して、より低いコストのプロセスによって得られ得る。低下したコストは、アンモニウムブチレートのブチレート生成物への転換時におよび/またはリンアニオンなどの不純物を含むより精練されていない炭素源の使用から遊離する、アンモニアを再利用することのためであり得、並びに、リン酸カルシウムなどの加工副産物の、飼料成分としてのおよび肥料としての使用のためであり得る。
【0015】
さらなる加工工程は、ブチレート生成物を発酵ブロスから蒸留すること、発酵の副産物を発酵ブロスから蒸留する若しくは蒸発させること、または従来技術の発酵法において不純物として見出される、フィテート若しくはホスフェートなどのリンアニオンの不溶性塩を形成し、該不溶性塩を発酵ブロスから除去することによってなどの、ブチレート生成物を発酵の副産物から分離することを含み得る。
【0016】
本明細書において示す詳細は、例としてであり、本発明のさまざまな実施態様の例示的な論議の目的のみのためであり、本発明の原理および概念的な態様の最も有用で容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示する。この点について、本発明の詳細を、本発明の基本的な理解について必要であるより詳細に示す試みは、何らなされておらず、該説明は、当業者に、本発明のいくつかの形態を実際にいかに具現化し得るかを明らかにする。
【0017】
本発明を、次に、より詳細な実施態様を参照して説明する。本発明は、しかしながら、異なる形態で具現化し得、本明細書において説明する実施態様に限定されるとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は、本開示が、徹底的で完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0018】
他に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において本発明の説明中で使用する専門用語は、特定の実施態様を説明することのみのためであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0019】
本明細書において使用する用語「ブチレート生成物」は、酪酸塩、酪酸、酪酸エステルなどの、ブチレートを含有するまたはブチレートに由来する化合物を指す。
【0020】
本明細書において使用する用語「飼料成分」は、動物の食物に対する成分、部分、構成要素または任意の組合せ/混合物を指す。
【0021】
本明細書において使用する用語「発酵原料」は、発酵に添加する1つまたは複数の成分を指す。
【0022】
本明細書において使用する用語「動物飼料」は、家畜、家禽、コンパニオン動物などの、非ヒト動物による消費向けの製品を指す。
【0023】
本明細書において使用する用語「防氷剤」は、氷を表面から除去し得るおよび/または表面上での氷の形成を防止し若しくは低下させ得る材料を指し、氷結防止剤を包含する。
【0024】
ブチレートに関して本明細書において使用する用語「保護された」は、ブチレート分子が上部胃腸管を通過するのを可能にするために、結合したまたは可逆的に反応した形態で提供される該分子を指す。
【0025】
本明細書において使用する用語「治療すること」は、疾患若しくは状態の実態、または疾患若しくは状態の症状を改善すること、軽減すること、および低下させることを含む。
【0026】
本明細書において使用する用語「蒸発させること」および「蒸留すること」は両方とも、液相から気相への転移を意味し、交換可能に使用される。
【0027】
本明細書において使用する単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他に示さない限り、複数形を同様に含むことを意図する。
【0028】
他に示していない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用する成分の量、反応条件等を表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」によって修飾されているとして理解されるべきである。従って、それとは反対に示していない限り、後に続く明細書および添付の特許請求の範囲において説明する数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に依存して変化し得る近似値である。最低でも、および特許請求の範囲の範囲への均等論の適用を限定しようとする試みとしてではなく、各数値パラメータは、有意な桁の数および通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
【0029】
本発明の広い範囲を説明する数的範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体例において説明する数値は、できるだけ正確に報告している。どの数値も、しかしながら、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含有する。本明細書全体を通して与えれるあらゆる数的範囲は、あらゆるより狭い数的範囲が本明細書において全て明示的に記載されているかのように、そのようなより広い数的範囲内に入る、そのような狭い数的範囲を含むであろう。本発明の追加の利点は、後に続く明細書において一部説明し、一部は、明細書から明らかであるか、または本発明の実施によって学び得る。上述の一般的な説明および後に続く詳細な説明の両方が、主張されるように、例示的で説明のためのみであり、本発明を限定するものではないことが、理解されるべきである。数値が、用語「約」という用語によって先行されるとき、本明細書において使用する用語「約」は、その値の±10%を示すことを意図している。
【0030】
本明細書において使用する用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」、およびそれらの文法的な変形は、述べる特徴、整数、工程または成分を指定するとして捉えられるべきであるが、1つまたは複数の追加の特徴、整数、工程、成分またはそれらの群の追加を排除しない。これらの用語は、用語「からなる」および「実質的にからなる」を包含する。
【0031】
本発明のいくつかの実施態様の一面によると、ブチレート生成物を製造する方法であって、該方法が、(i)炭素源を含む発酵原料を提供すること;(ii)当該原料を、酪酸を天然に産生するクロストリジウム綱細菌を用いて、約5から7のpHを維持しながら発酵させることであって、ここで、アンモニアまたは水酸化アンモニウムは、当該pHを維持することのために使用され、それにより、アンモニウムブチレート、バイオマス、および任意に発酵副産物を含む発酵ブロスが形成される、発酵させること(iii)分離したバイオマスおよび清澄化した発酵ブロスを形成するために、当該バイオマスを当該発酵ブロスから分離することであって、ここで、当該清澄化した発酵ブロスは、当該アンモニウムブチレートおよび任意に当該発酵副産物を含む、分離すること;並びに(iv)当該清澄化したブロスに、鉱酸、鉱塩基、可溶性カルシウム塩およびそれらの組合せからなる群から選択される添加物を添加し、それにより、当該ブチレート生成物が、当該清澄化したブロス中で形成されることを含む方法が、提供される。
【0032】
一実施態様によると、当該バイオマスを分離することは、濾過することおよび遠心分離することの少なくとも1つを含む。
【0033】
一実施態様によると、炭素源は、でん粉、デキストロース、マルトデキストリン、グルコース、液化コーンマッシュ、フルクトース、キシロース、グリセロール、スクロース、ヘミセルロース、セルロースおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0034】
一実施態様によると、当該添加物は、鉱酸を含み、当該清澄化したブロス中で形成される当該ブチレート生成物は、遊離酸形態の酪酸であり、該方法はさらに、遊離酸形態の当該酪酸を当該清澄化したブロスから、当該酪酸の蒸留および液液抽出からなる群から選択される方法によって分離することを含む。
【0035】
一実施態様によると、当該添加物は、鉱酸を含み、遊離酸形態の酪酸および当該鉱酸のアンモニウム塩は、当該清澄化したブロス中で形成され、該方法はさらに、アルカノールを提供すること、遊離酸形態の当該酪酸を当該アルカノールと反応させて酪酸エステルを形成すること、および当該酪酸エステルを当該清澄化したブロスから、当該酪酸エステルの蒸留および液液抽出からなる群から選択される方法によって分離することを含む。
【0036】
一実施態様によると、当該アルカノールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0037】
一実施態様によると、当該清澄化したブロスのpHは、当該反応させることの前にまたはそれと同時に2~5に調整する。
【0038】
一実施態様によると、当該鉱酸は、硫酸、リン酸および硝酸並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0039】
一実施態様によると、当該添加物は、鉱塩基を含み、アンモニアは、当該清澄化したブロス中で遊離し、当該清澄化したブロス中で形成される当該ブチレート生成物は、当該鉱塩基の酪酸塩であり、該方法はさらに、当該ブチレート生成物を当該遊離したアンモニアから、当該遊離したアンモニアを蒸発させることによって分離することを含む。一実施態様によると、当該蒸発させることは、少なくとも部分的に、大気圧でまたは大気圧よりも低い圧力(例えば0.2~1気圧)で、その圧力での水の沸点より低い温度で行う。一実施態様によると、当該蒸発させることは、蒸気蒸留を含む。
【0040】
一実施態様によると、当該鉱塩基は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩並びにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0041】
一実施態様によると、当該清澄化した発酵ブロス、当該炭素源および当該炭素源含有発酵原料からなる群から選択される少なくとも1つはさらに、ホスフェート、フィテートおよびそれらの組合せからなる群から選択されるリンアニオンを含み、当該添加物は、可溶性カルシウム塩を含み、ここで、当該リンアニオンの水不溶性カルシウム塩が形成され、該方法はさらに、当該ブチレート生成物を当該不溶性塩から分離することを含む。いくつかのそのような実施態様によると、当該ブチレート生成物を当該不溶性塩から分離することは、当該不溶性塩を、例えば当該不溶性塩の濾過または遠心分離によって除去することを含む。一実施態様によると、清澄化したブロスのpHは、当該添加物を添加することの前にまたはそれと同時に7.5から9.5に調整するが、当該除去することの前ではない。
【0042】
一実施態様によると、当該炭素源および/または当該炭素源含有発酵原料は、フィテートを含み、該方法はさらに、当該炭素源および/または当該炭素源含有発酵原料をフィターゼ酵素と接触させることを含み、それにより、フィターゼを加水分解して、ホスフェートを形成し、ここで、当該フィターゼ酵素と接触させることは、当該発酵させることの前にまたはそれと同時に行う。
【0043】
一実施態様によると、当該可溶性カルシウム塩は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%さえもなどの、1重量%よりも大きな水溶性を有する。
【0044】
一実施態様によると、当該可溶性カルシウム塩は、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸カルシウム、塩化カルシウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0045】
一実施態様によると、当該発酵ブロスはさらに、酢酸アンモニウムを含む。
【0046】
一実施態様によると、当該ブチレート生成物は、飼料成分である。
【0047】
一実施態様によると、当該ブチレート生成物は、防氷剤である。
【0048】
一実施態様によると、当該防氷剤のリン含有量は、0.1重量%未満、0.08重量%未満、0.06重量%未満、0.04重量%未満、0.02重量%未満または0.01重量%未満である。
【0049】
一実施態様によると、当該添加物は、鉱塩基を含み、当該鉱塩基の酪酸塩は、当該清澄化したブロス中で形成され、該方法はさらに、当該鉱塩基の当該酪酸塩を当該清澄化したブロスから、塩結晶化および電気透析からなる群から選択される少なくとも1つの方法によって分離することを含む。
【0050】
一実施態様によると、当該添加物は、鉱酸を含み、当該鉱酸のアンモニウム塩は、当該清澄化したブロス中で形成され、該方法はさらに、当該鉱酸の当該アンモニウム塩を当該清澄化したブロスから結晶化することを含む。
【0051】
一実施態様によると、当該鉱酸の当該アンモニウム塩は、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される。一実施態様によると、本明細書に開示するアンモニウム塩を含む肥料が、提供される。
【0052】
一実施態様によると、該方法はさらに、当該鉱酸の当該アンモニウム塩をカルシウム塩基と反応させ、それにより、アンモニアが遊離し、沈殿物が形成されることを含み、ここで、当該沈殿物は、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはそれらの組合せを含む。いくつかのそのような実施態様によると、リン酸カルシウムが、形成される。一実施態様によると、本明細書において開示するリン酸カルシウムを含む動物飼料が、提供される。
【0053】
別の実施態様によると、本明細書において開示するリン酸カルシウムを含む肥料が、提供される。
【0054】
アンモニアが遊離している一実施態様によると、該方法はさらに、当該遊離したアンモニアおよび/または当該蒸発したアンモニアを、当該発酵中のpH制御のために再利用することを含む。
【0055】
一実施態様によると、添加物は、カルシウム塩基を含み、酪酸カリウムが、ブチレート生成物である。
【0056】
一実施態様によると、該方法はさらに、当該清澄化した発酵ブロス中でまたはその生成物中で、ブチレートの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%さえもなどの、ブチレートの少なくとも一画分を保護することを含む。
【0057】
一実施態様によると、該方法はさらに、水を当該発酵ブロスからおよび/または当該清澄化した発酵ブロスから、少なくとも部分的に除去することを含む。
【0058】
いくつかのそのような実施態様によると、バイオマスを、まず発酵ブロスから分離し、清澄化した発酵ブロスを濃縮して、最大約60重量%の溶質を含む、濃縮した、清澄化した発酵ブロスを生成する。いくつかのそのような実施態様によると、添加物を、該濃縮した、清澄化した発酵ブロスに添加する。代替の実施態様によると、添加物を、濃縮することの前に清澄化した発酵ブロスに添加する。さらなる代替の実施態様によると、清澄化したブロスを部分的に濃縮し、添加物を次いで添加し、清澄化したブロスを、さらに濃縮する。
【0059】
本発明のいくつかの実施態様の一面によると、選択された栄養素、本明細書に開するブチレート飼料成分またはその生成物、および任意にバイオマスを含む動物飼料が、提供される。
【0060】
一実施態様によると、動物飼料はさらに、少なくとも1つのミネラル微量栄養素を含む。いくつかのそのような実施態様によると、ミネラル微量栄養素は、鉄のイオン、亜鉛のイオンおよびそれらの組合せからなる群から選択される金属イオンである。どの1つの理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、そのような金属イオンが、それらの生物学的利用能を増加させるブチレート(存在するときは、および/またはアセテート)との複合体を形成すると仮説を立てている。
【0061】
本発明のいくつかの実施態様の一面によると、動物に本明細書において開示する飼料を与えることを含む、当該動物を治療する方法が、提供される。
【0062】
本発明のいくつかの実施態様の一面によると、動物を治療することにおける使用のための、本明細書において開示する飼料が、提供される。
【0063】
一実施態様によると、当該飼料は、少なくとも10ppm、少なくとも50ppm、少なくとも100ppm、少なくとも500ppm、少なくとも1,000ppm、少なくとも5,000ppm、少なくとも10,000ppm、20,000ppm未満、10,000ppm未満、5,000ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満または50ppm未満などの、10ppmと20,000ppmとの間の濃度でブチレートを含む。
【0064】
一実施態様によると、当該飼料中のブチレートの、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%などの、少なくとも50重量%は、当該飼料成分から生じる。
【0065】
一実施態様によると、当該動物は、鳥類、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、魚類、ヤギ、イヌ、ネコおよびラピーヌの動物群からなる群から選択される。
【0066】
一実施態様によると、該方法は、当該飼料成分のない同じ選択された栄養素を与えることと比較して改善された結果を提供する。
【0067】
一実施態様によると、当該改善された結果は、増加した飼料摂取、改善した飼料転換率、より速い1日の体重増加、より大きな回腸表面積、および性別間の一致した結果の少なくとも1つを含む。
【0068】
一実施態様によると、当該改善された結果は、増加した飼料摂取、改善した飼料転換率、より速い1日の体重増加、より大きな回腸表面積、性別間の一致した結果およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つを含む。
【0069】
一実施態様によると、当該方法は、当該飼料成分のない同じ選択された栄養素を与えることと比較して改善された結果を提供する。一実施態様によると、当該改善された結果は、増加した飼料摂取を含む。一実施態様によると、飼料摂取は、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、または少なくとも4%増加する。一実施態様によると、当該改善された結果は、改善した飼料転換率(FCR)を含む。一実施態様によると、FCRは、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%改善する。
【0070】
一実施態様によると、当該改善された結果は、より速い1日の体重増加を含む。一実施態様によると、1日の体重増加は、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、または少なくとも0.4%増加する。
【実施例
【0071】
実施例1:グルコース発酵
60~160g/Lのグルコースを含有するグルコースベースの発酵培地を、クロストリジウム・チロブチリクムを用いるバッチ発酵において発酵させた。追加の培地成分は、表1、2、および3にリストするものを含む。温度は、35℃で維持し、pHは、8M NHOHを用いて最低5~7で制御した。30時間の発酵中のグルコース消費、細胞産生および代謝物産生の結果を、図1に示す。ブチレート濃度および細胞濃度は、それぞれ約60g/Lおよび20g/Lに達した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
実施例2:濃縮した、清澄化したブロスの製造
発酵を、実施例1と同様に行った。バイオマスを、濾別した。清澄化した発酵ブロスを、52.6重量%の総固形物濃度に達するように水分蒸発によって濃縮して、清澄化したブロスを形成した。その密度は、1.076Kg/Lであった。形成した清澄化したブロスを、分析した。結果を、表4にまとめる。
【0076】
【表4】
【0077】
実施例3:コーンマッシュ発酵
グルコースの代わりに、コーンマッシュを原料として使用する以外は、実施例1と同様の発酵を行った。コーンマッシュを、60~160g/L想定グルコースの濃度まで希釈して濾過し、アミラーゼ酵素を、発酵中に添加した。微量元素(表2)およびビタミン(表3)のみを、発酵に添加した。他の操作条件は同じであり、同様の製造プロファイルを、実施例2と類似の生成物とともに達成した。
【0078】
実施例4:リンイオンの除去
濃縮した、清澄化したブロスを、実施例3と同様に製造した。その主な成分を、表5に示す。総リン含有量が約1800mg/Kgであり、その半分がホスフェート形態であったことに留意されたい。残りは、見かけ上、フィテート形態である。
【0079】
【表5】
【0080】
濃縮した、清澄化したブロスの試料を、pH8または9に達するように、NaOH溶液を用いたpH調整によって処理した。pH9で、強いアンモニア臭が、感じられた。該試料のいくらかに、酢酸カルシウム溶液を添加した。次いで、該試料を遠心分離し、上清を分析した。清澄化したブロスの試料は、50グラムであった。添加した溶液中の酢酸カルシウムの濃度は、20重量%であった。結果を、表5にまとめる。
【0081】
【表6】
【0082】
これらの結果は、リン酸態リンが、そのような濃縮した、清澄化したブロスを処理することにおいて非常に効率的に低下することを実証する。そのような低下は、道路用防氷剤における該生成物の使用について必要とされる。
図1
【国際調査報告】