(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】構造体の特定の表面にのみ層を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/50 20060101AFI20230706BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20230706BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20230706BHJP
C23C 16/30 20060101ALI20230706BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230706BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230706BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C23C16/50
C23C16/40
C23C16/34
C23C16/30
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577714
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2021066714
(87)【国際公開番号】W WO2021255286
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(71)【出願人】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルスリーヌ・ボンバロット
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ヴァリー
(72)【発明者】
【氏名】タグヒ・イェグホヤン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ポッセメ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA11
4K030BA02
4K030BA10
4K030BA17
4K030BA18
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4K030FA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA16
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB31
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5F045AC11
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5F058BF07
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5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
(57)【要約】
本発明は特に、構造体100の第1の表面110を覆い、第2の表面120を覆わずに残す層の製造方法に基づき、本方法は少なくとも:PEALDによる堆積によって初期層200を形成し、サイクル1を含む、1つの手順を含み、各サイクル1は少なくとも:反応チャンバ内に第1の前駆体を1回注入すること10;反応チャンバ内に第2の前駆体を1回注入すること30および反応チャンバ内にプラズマを形成することを含む。サイクルは、Tcycle≦(Tmin-20℃)である温度Tcycleで実施され、TminはPEALD堆積の公称温度ウィンドウFTの最低温度である。本方法は、初期層200を高密度化プラズマと呼ばれるプラズマに露出する少なくとも1つのステップを含み、高密度化プラズマのイオン流33への露出が、第1の表面110上にある材料を、第2の表面120上にある材料よりもエッチングに対して耐性にするように構成される。本方法はまた、第2の表面120を覆わずに残すことによって、初期層200が構造体100の前面101の第1の表面110を覆うように選択的エッチングステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体(100)の前面(101)の第1の表面(110)を覆い、この前面(101)の第2の表面(120)を覆わずに残し、第1の表面(110)および第2の表面(120)は異なる傾斜を有する層を製造する方法であって、
前記方法は、少なくとも:
・構造体(100)の前面(101)上にプラズマ強化原子層堆積(PEALD)によって初期層(200)を形成する1つの手順であって、この手順は複数のサイクル(1)を含む、1つの手順を含み、
各サイクル(1)は、少なくとも:
・構造体(100)を含むリアクタの反応チャンバ内に第1の前駆体を1回注入すること(10)、
・反応チャンバ内に第2の前駆体を1回注入すること(30)、および、前記初期層(200)の一部を形成する膜を、構造体(100)の前記第1の表面(110)および前記第2の表面(120)上に、各サイクル(1)で形成するために、反応チャンバ内に堆積プラズマ(32、32A、32B)と呼ばれるプラズマを形成すること、
を含み、
以下の特徴を有する、製造方法:
・サイクルは、T
cycle≦(T
min-20℃)であるような温度T
cycleで実施され、T
minは、第1の前駆体および第2の前駆体からのPEALD堆積の公称温度ウィンドウ(F
T)の最低温度であり、公称ウィンドウ(F
T)は、これらのPEALD堆積温度を公称ウィンドウ内で定めることによって、PEALD堆積温度を変動させても各PEALDサイクルで堆積される膜の厚さが一定のままであるものであり、
・前記方法は、PEALDによって形成された、または形成中の初期層(200)を高密度化プラズマ(32、32B、60)と呼ばれるプラズマに露出する少なくとも1つのステップを含み、その間に非ゼロの分極が、高密度化プラズマ(32、32B、60)によって生成されるイオン流(33)に有利な方向を与えるように構造体(100)に適用され、この有利な方向は、PEALDによって堆積された、または形成中の初期層(200)の少なくとも1つの表面部分が、
・構造体(100)の第1の表面(110)を覆い、高密度化プラズマ(32、32B、60)のイオン流(33)に露出される、第1の領域(210、210A)、
・構造体(100)の第2の表面(120)を覆い、高密度化プラズマのイオン流(33)に露出されない第2の領域(220)、
を有するように方向付けられ、
・高密度化プラズマ(32、32B、60)、少なくとも分極は、高密度化プラズマ(32、32B、60)のイオン流(33)への露出により、第1の領域(210、210A)の材料が、第2の領域(220)の材料よりもエッチングに対して耐性があるものとなるように構成され、
・前記方法はまた、PEALDによって形成された、または形成中の初期層(200)を高密度化プラズマ(32、32B、60)に露出する少なくとも1つのステップからの、第1の領域(210、210)に対する第2の領域(220)の少なくとも1つの選択的エッチングステップを含み、エッチング後、第2の表面(120)を覆わずに残すことにより、初期層(200)は構造体(100)の前面(101)の第1の表面(110)を覆っている。
【請求項2】
初期層(200)を高密度化プラズマ(32)に露出するステップが、PEALDによって初期層(200)を形成する手順の各サイクル(1)で実施され、堆積プラズマ(32)が高密度化プラズマ(32)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
初期層(200)を高密度化プラズマ(32)に露出する少なくとも1つのステップが、PEALDによって初期層(200)を形成する手順の最後のN
Bサイクル中にのみ実施され、これらの最後のN
Bサイクル(1B)の間、堆積プラズマは高密度化プラズマ(32B)であり、手順のサイクルの全数は、N
A+N
Bに等しく、ここでN
AおよびN
Bはゼロ以外の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
N
Bが1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
初期層(200)を高密度化プラズマ(60)に露出する少なくとも1つのステップが、PEALDによって初期層(200)を形成する手順の後にのみ実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の手順を含み、各手順は、初期層(200)を高密度化プラズマ(32)に露出するN
Bステップを含み、N
Bはゼロでない整数である、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
サイクルが、100℃未満、好ましくは80℃未満、好ましくは50℃未満の温度T
cycleで実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
サイクルが、周囲温度と等しい温度T
cycleで実施される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
サイクルが、T
cycle≦(T
min-50℃)であるような温度T
cycleで実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
T
cycle≦(T
min-100℃)である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
公称ウィンドウF
Tの幅L=T
max-T
minが、10℃以上、好ましくは20℃以上である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
公称ウィンドウF
Tの幅L=T
max-T
minが、100℃以上、好ましくは200℃以上である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
高密度化プラズマ(32、32B、60)の形成中、圧力は80mTorr以下、好ましくは約10mTorrである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
分極が、150ワット以下の分極電力P
bias、好ましくは10Wから120Wの間のP
bias、好ましくは10Wから90Wの間のP
biasで適用される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
高密度化プラズマ(32、32B、60)に露出された第1の領域(210)と、高密度化プラズマ(32、32B、60)に露出されていない第2の領域(220)とは、以下のパラメータ:膜の密度および不純物率の少なくとも1つが異なる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
初期層(200)が、好ましくは金属有機物、有機ケイ素またはハロゲン化前駆体から得られる、窒化物系または酸化物系のもので作られるか、または窒化物系または酸化物系のものである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
初期層(200)が、硫化物系のもので作られるか、または硫化物系のものである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
第1の前駆体が、以下の材料:アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ケイ素(Si)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、のうち1つを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも特定の第1の表面(110)および第2の表面(120)が一緒に直角を形成する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも特定の第1の表面(110)および第2の表面(120)が一緒に直角を形成せず、構造体(100)の後面(102)は、平面内に延在し、この平面に対する垂線は、イオン流(33)の有利な方向に対して、好ましくは10°を超えて傾斜している、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記手順のサイクル(1、1A、1B)の総数Nが、好ましくは15以上であり、好ましくは20以上である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の特定の表面にのみ層を製造するためのマイクロ電子工学の方法に関する。本発明は、マイクロ電子工学の分野において多くの用途を有する。この方法は、例えば、エッチングマスクを製造するために実施することができる。また、犠牲ゲートを使用する製造方法(通常はゲートラスト方式として適する)を実施することにより、トランジスタを製造するのにも有利である。
【背景技術】
【0002】
多くの用途に関して、表面トポロジーを有する基板の特定の表面のみに層を形成することが有用である。
図1Aは、基板100の例を示し、そのトポロジーは溝101またはトレンチを形成する。したがって、この基板100は、溝101の上部111および底部112に位置する水平面110を有する。それはまた、溝101の壁に垂直面120を有する。
図2に示すように、水平面110のみに層200を形成し、垂直面120を覆わないままにすることは有用であり得る。
【0003】
これを実現するための既知の手法は、以下のステップを実施することからなる:
・すなわち、基板の前面のすべての表面上に固体プレート層を堆積するステップ、
・水平面上の層を保持しながら、垂直面上に堆積された層を除去するための従来のリソグラフィステップを実施するステップ。
【0004】
固体プレート堆積ステップの結果を
図1Bに示す。コンフォーマルに堆積された層200は、水平面110、111、112の上にある領域210、211、212および垂直面120の上にある領域220を有する。この堆積ステップは、例えば、原子層堆積(ALD)、場合によりプラズマ強化原子層堆積(PEALD)によって実施することができる。ALD技術は、材料が層ごとに堆積される自己制限成長法に基づいている。したがって、良好な共形性を備えたナノメートルスケールの膜を設計することが可能である。一般に、ALD技術は、リアクタの反応チャンバ内に、第1の試薬の第1の前駆体、次いで第2の試薬の第2の前駆体を順次注入することからなる。第1の気体前駆体は、それ自体と反応しない金属、メタロイドまたはランタニドである。第2の気体試薬は、吸着された第1の試薬と反応して、次の交代の間に第1の前駆体の吸着の再活性化を可能にする。
【0005】
図3は、ALD堆積サイクル1の例示の様々なステップを説明する。第1のステップ10は、化学吸着によって基板の覆われていない表面と反応する第1の試薬を注入することからなる。次に、パージステップ20を実施して、第1の試薬の未反応の部分並びに反応生成物を除去する。ステップ30では、第2の試薬が注入され、第2の試薬は吸着された第1の試薬と化学吸着により反応する。次に、パージステップ40を実施して、未反応の第2の試薬並びに反応生成物を除去する。
【0006】
PEALD法では、第2の試薬がプラズマによって生成される。したがって、ステップ30は、第2の試薬を注入し、存在下で化学種を安定化するステップ31、次いでプラズマを形成するステップ32を含む。所望の厚さの層を得るために、このサイクル1は必要な回数まで繰り返される。
図3において、点線の矢印および数字Nは、この反復する特徴および実施されるサイクル数を示す。
【0007】
堆積を進めた後、リソグラフィ技術は、1つまたは複数のマスクを形成するための多数のステップを含み、最終的に水平面を隠し、垂直面を露出することを可能にする。次に、製造される層をマスクを通してエッチングして、基板の垂直面120上に位置する領域220を除去する一方で、水平面110、111、112を覆う層200の領域210、211、212を維持する。その結果、
図2に示される結果が得られる。
【0008】
これらの既知の手法は、特に様々なマスクを製造および位置決めするために、多くのステップを必要とするという欠点を有する。さらに、避けられない誤差と様々なマスクの位置合わせ公差に起因して、精度が制限される。結果的に、これらの手法は、実装に時間を要し、費用がかかる。
【0009】
したがって、既知の手法の欠点を軽減する手法を提案する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、これらの必要性の少なくとも1つに応えることにある。特に、本発明の目的は、既知の手法の精度を改善するための手法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、一実施形態によれば、構造体の前面の第1の表面を覆い、この前面の第2の表面を覆わずに残し、第1の表面と第2の表面とが異なる傾斜を有する層を製造する方法が提供され、本方法は、少なくとも以下を含む:
・構造体の前面にプラズマ強化原子層堆積(PEALD)によって初期層を形成する手順であって、この手順は複数のサイクルを含み、各サイクルは少なくとも以下を含む:
・構造体を含むリアクタの反応チャンバ内に第1の前駆体を注入すること、
・反応チャンバ内に第2の前駆体を注入し、堆積プラズマと呼ばれるプラズマを反応チャンバ内に形成して、各サイクルで、構造体の前記第1および第2の表面上に、前記初期層の一部を形成する膜を形成すること。
【0012】
サイクルは、Tcycle≦(Tmin-20℃)となるような温度Tcycleで実施され、ここでTminは、第1の前駆体と第2の前駆体からのPEALD堆積の温度の公称ウィンドウ(FT)の最低温度である。
【0013】
この方法は、PEALDによって形成された、または形成中の初期層を高密度化プラズマと呼ばれるプラズマに露出する少なくとも1つのステップを含み、その間に非ゼロ(ゼロではない)分極が構造体に適用され、高密度化プラズマによって生成されたイオン流に有利な方向を与える。この有利な方向は、PEALDによって堆積されまたは形成中の初期層の少なくとも1つの表面部分が以下を有するように方向付けられる:
・構造体の第1の表面を覆い、高密度化プラズマのイオン流に露出される第1の領域、
・構造体の第2の表面を覆い、高密度化プラズマのイオン流に露出されない第2の領域。
【0014】
好ましくは、高密度化プラズマ、少なくとも分極は、高密度化プラズマのイオン流に露出されることにより、第1の領域の材料がその材料よりもエッチングに対してより耐性になるように構成される。典型的には、分極は、高密度化プラズマのイオン流への露出が、第1の領域の材料に、第2の領域の材料の密度よりも高い密度、および/または第2の領域の材料の不純物率よりも少ない不純物率を与えるように構成される。基板の分極のこの制御により、基板の露出面に到達するイオンのエネルギーが部分的に制御され、基板の高密度化が可能となる。
【0015】
基板に分極電圧Vbias_substratを印加することにより、プラズマのイオンのエネルギーを、制御された方法で、かつ窒素系プラズマを生成するために使用されるソースによって誘導される電圧Vplasmaから独立して、増加させることが可能になる。その結果、プラズマ処理の有効性を制御された方法で調節して、得られる界面の特性をさらに改善することができる。結果的に、構成要素の電気的性能が向上する。
【0016】
この方法はまた、PEALDによって形成された、または形成中の初期層を高密度化プラズマに露出するステップからの、第1の領域に対して第2の領域を選択的にエッチングする少なくとも1つのステップを含む。その結果、エッチング後、第2の表面を覆わずに残すことにより、初期層は構造体の前面の第1の表面を覆っている。
【0017】
このように、提案された方法は、公称ウィンドウの温度よりも低い温度でPEALDサイクルを実施するステップを提供する。したがって、これらのサイクルの結果として生じる堆積は、公称ウィンドウで実施される堆積に対して低い品質を有する。
【0018】
さらに、基板の分極によって強化された高密度化プラズマは、基板の第1の表面のみが露出されるように方向付けられ、これにより、非常に良好な品質を有する薄層部分によって基板を覆うことが可能になる。分極を伴うプラズマに露出されたこれらの領域に堆積された層の化学的純度、化学量論および密度の大幅な改善が、予想外に観察された。このように、PEALDによって堆積された層は、以下を有する:
・構造体の第1の表面を覆う非常に高品質の表面膜、
・構造体の第2の表面を覆う低品質の表面膜。
【0019】
その結果、第2の表面はエッチングに対してより敏感であり、それらの除去を可能にし、一方で、第1の表面の高品質の表面膜が維持される。
【0020】
このように、提案された方法は、マスクの連続的な位置決めを含む従来のリソグラフィ技術に頼る必要なしに、基板の特定の表面のみに選択的な堆積を可能にする。
【0021】
その結果、提案された方法は、基板の特定の表面のみに選択的に堆積されたこの層のパターンの精度を大幅に改善することを可能にする。さらに、その後のリソグラフィ工程を必要とする方法に関して、期間およびコストを削減することが可能になる。この方法は、例えば、エッチングマスクを非常に良好な精度で実現することを可能にする。
【0022】
前駆体の性質の関数である推奨ウィンドウの低温よりも低い温度でPEALD堆積を実施することは、PEALD技術のすべての優れた実践に完全に反するプロセスである。
【0023】
さらに、この低温PEALD堆積と、分極を伴うプラズマを適用する1つまたは複数のステップとを組み合わせることで、最終的に以下を観察することが可能となった:
・完全に予想外な程度での、低温で堆積した材料の密度の低下、
・同じ低温条件下で、ただし分極を追加して堆積されるときの、完全に予想外の程度での、堆積された材料の密度の向上。
【0024】
最終的に、特定の表面(典型的には水平面)のみに選択的堆積を得ることを可能にするのは、異なる方向性を有する表面上の材料の密度におけるこの非常に大きな差である。
【0025】
さらに、提案された方法は、窒化酸化物系、硫黄酸化物系の層を形成するために非常に多様な材料を堆積することを可能にする。既知のPEALD法では、様々な材料を特定の表面上に選択的に堆積させ、得られる層の質を満足のいくものとすることはできない。これは、例えば、HFO2堆積の場合である。
【0026】
本発明の狙い、目的、並びに特徴および利点は、以下の添付図面によって示される後者の実施形態の詳細な説明から最もよく明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】
図1Aおよび1Bは、3D基板タイプの開始構造、および
図2に示される所望の構造を得ることを可能にする中間構造を示す。
【
図1B】3D開始構造で得られたコンフォーマル堆積を示す。
【
図2】本発明による方法の実施後に得られる最終構造の一例を示す。水平面のみが覆われている一方で、垂直面は覆われていない。
【
図3】PEALD堆積の従来のサイクルを概略的に表す。
【
図4】得られる層の品質(化学量論、密度および化学的純度)の観点から満足のいく成長を得るためにPEALDサイクルに適用される公称温度ウィンドウを示すグラフである。このグラフはまた、PEALDサイクルに適用される温度がこの公称ウィンドウの外にある場合の成長への悪影響も示す。
【
図5】本発明の実施形態の一例による方法を概略的に表す。
【
図6】
図5に示されたいくつかのサイクルを繰り返した後、選択的エッチングステップの前に得られた構造を概略的に示す。
【
図7】本発明の実施形態の第2の例による方法を概略的に示す。この図は、この方法が、堆積層の表面部分を高密度化するために、基板に分極電圧を印加しない第1の手順のPEALDサイクルと、次いで基板に分極電圧を印加する第2の手順のPEALDサイクルとを含むことを示す。
【
図8】
図7に示されたサイクルの実行後、選択的エッチングステップの前に得られた構造体を概略的に示す。
【
図9】本発明の実施形態の第3の例による方法を概略的に表す。
【
図10】構造体がプラズマによって生成されるイオン流に対して傾斜している実施形態の変形例を概略的に表す。
【
図11】本発明を実施するために使用することができるプラズマリアクタの一例を示す図である。
【0028】
図面は例示として与えられており、本発明を限定するものではない。図面は、本発明の理解を容易にすることを意図した原理の概略図を構成し、必ずしも実際の用途でのスケールではない。特に、様々な層および膜の厚さは実際のものを表すわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態の詳細なレビューを開始する前に、任意に、関連して、または代替的に使用することができる任意の特徴を以下に述べる:
一例によれば、初期層を高密度化プラズマに露出するステップは、PEALDによって初期層を形成する手順の各サイクルで実施され、堆積プラズマは高密度化プラズマである。
【0030】
したがって、プラズマによって高密度化された部分は、初期層の厚さ全体に及ぶ。この実施形態は、第1の表面上に非常に高品質の層を形成し、一方で、第2の表面上に堆積された層の除去を容易にするという利点を有する。その結果、この層が一体化されるデバイスの性能が向上する。
【0031】
一例によれば、初期層を高密度化プラズマに露出するステップは、PEALDによって初期層を形成する手順の最後のNBサイクル中にのみ実施され、これらの最後のNBサイクルの間堆積プラズマは高密度化プラズマであり、手順のサイクルの全数は、NA+NBに等しく、ここでNAおよびNBはゼロ以外の整数である。一例によれば、NB=1である。
【0032】
その結果、プラズマによって高密度化された膜は、初期層の厚さの一部にのみ広がる。この高密度化された膜は、層の自由面から広がり、結果的にそれを覆う。高密度化された膜は、PEALDによって堆積された層の厚さ全体には及ばない。この実施形態は、第1の表面上に高品質の層を形成する一方で、第2の表面上に堆積された層の除去を容易にするという利点を有する。
【0033】
一例によれば、この方法は、複数の手順を含み、各手順は、初期層を高密度化プラズマに露出するNBステップを含む。したがって、この実施形態によれば、PEALDサイクルは、分極なしおよび分極ありのNBサイクルを交互に実施する。好ましくは、各手順において、高密度化プラズマに露出するステップが1つだけ(NB=1)実施される。
【0034】
一例によれば、初期層を高密度化プラズマに露出するステップは、PEALDによって初期層を形成する手順の後にのみ実施される。
【0035】
高密度化プラズマは、分極なしでPEALDサイクルを実施するために使用されるものとは異なるリアクタに適用することができる。したがって、高密度化プラズマは、PEALDによってすでに形成された初期層上への膜の形成をもたらす。この実施形態は、例えばCCPエッチングリアクタ(容量結合プラズマリアクタ)において、エクスサイチュ(ex situ)で実現できるという利点を有する。したがって、この実施形態は、分極キットがPEALDリアクタに内在されていないときに実施することができる。結果的に、この実施形態は、必要な機器に対する制約が少ない。
【0036】
別の例によれば、使用されるリアクタはICP(誘導結合プラズマリアクタ)タイプのものである。この方法のすべてのステップは、このリアクタで行うことができる。分極電圧を基板に印加するステップ(Vbias_substrat≠0)は同じリアクタ内で実施することができ、基板に分極電圧を印加しない他のステップ(Vbias_substrat=0)を実施することができる。したがって、PEALD堆積のすべてのステップを同じリアクタ内で実施することができ、生産性、再現性、および品質の点でかなりの利点がある。
【0037】
一例によれば、この方法は、複数の手順を含み、各手順は、好ましくは分極を伴わない、NA PEALD堆積ステップを含み、次いで、これらの手順の後に、初期層を高密度化プラズマに露出するステップが続く。したがって、この実施形態によれば、分極を伴わないPEALDサイクルと、分極を伴うプラズマに露出する少なくとも1つのステップとが交互に繰り返される。
【0038】
一例によれば、サイクルは100℃未満、好ましくは80℃未満、好ましくは50℃未満の温度Tcycleで実施される。一例によれば、サイクルは、周囲温度に等しい温度Tcycleで実施される。したがって、リアクタは、本方法の実施中に加熱デバイスによって加熱されることはない。これらの温度は、構造体の前面の第2の表面を覆う層の除去を容易にすることによって、方法の有効性をさらに強化することを可能にする。低い温度を使用することは、当業者にとって完全に直観に反するものである。
【0039】
一例によれば、サイクルは、Tcycle≦(Tmin-50℃)、好ましくはTcycle≦(Tmin-100℃)であるような温度Tcycleで実施される。例えば、Tcycleは、80℃以下、好ましくは70℃以下、好ましくは50℃以下であり得る。これは、本方法のステップが実施されるリアクタが加熱手段によって加熱されないことを意味する。一例によれば、Tcycleは周囲温度に等しい。TcycleおよびTminの単位は摂氏(℃)である。
【0040】
TminはALDまたはPEALDウィンドウの最低温度であり、この温度から、前駆体(典型的には第1の前駆体)と基板との間の反応が十分に熱的に活性化され、吸着反応が自己制限的に(かつ、したがって一定のGPCで)発生し得るようにする。
【0041】
公称温度ウィンドウFTは、第1の前駆体および第2の前駆体からPEALD堆積を実施するために推奨される温度ウィンドウに対応する。このウィンドウは、典型的には、第1の前駆体の製造元によって推奨される。この公称温度ウィンドウは、当業者に知られている完全に通常のパラメータである。公称温度ウィンドウでは、各PEALDサイクルで堆積される膜の厚さは、温度によって変動しないか、または実質的に変動しない。したがって、公称ウィンドウは、公称ウィンドウで得られるPEALD堆積温度を変動させることによって、PEALDサイクルによって堆積される膜の厚さが一定に保たれるようなものである。より具体的には、ほぼ一定に保たれる。これは、公称ウィンドウ内で、堆積温度Tcycleを10℃変化させた場合、堆積される膜の厚さの変動が2%以下、さらには1%以下であることを意味する。
【0042】
温度が公称ウィンドウの限界Tmin(それぞれTmax)よりも低い(それぞれ高い)ままであるとき、PEALDサイクルによって堆積される膜の厚さは、温度に応じて大幅に変化する。
【0043】
例えば、公称ウィンドウの外側では、温度が数度、例えば10℃変動すると、各サイクルで堆積される厚さに5%を超える変化をもたらす。例えば、公称ウィンドウの外側では、少なくとも10℃の温度変化は、各サイクルで堆積される厚さに5%を超える変化をもたらす。
【0044】
公称ウィンドウFTは、温度間隔として定義することもでき、この範囲内では、自己制限反応条件下で成長が実現される。したがって、公称ウィンドウFTは、温度間隔に対応するものとして定義することもでき、この場合、前駆体は、自己制限反応によって層ごとに使用される。この公称ウィンドウの外では、この自己制限的特徴は確認されない。
【0045】
公称ウィンドウの最小幅(Tmax-Tmin)は、好ましくは10℃より大きく、好ましくは20℃より大きい。殆どの場合、このウィンドウの幅は100℃を超え、さらには200℃である。ただし、このウィンドウの幅は、使用する前駆体によって異なる。当業者は、所定の前駆体について、公称ウィンドウ並びにその限界を識別する方法を完全に知っている。
【0046】
公称ウィンドウの最小幅は、好ましくは10℃より大きく、好ましくは20℃より大きい。殆どの場合、このウィンドウの幅は100℃を超え、さらには200℃である。ただし、このウィンドウの幅は、使用する前駆体によって異なる。当業者は、所定の前駆体について、公称ウィンドウ並びにその限界を識別する方法を完全に知っている。
【0047】
一例によれば、公称ウィンドウFTの幅L=Tmax-Tminは、10℃以上、好ましくは20℃以上である。
【0048】
一例によれば、公称ウィンドウFTの幅L=Tmax-Tminは、100℃以上であり、好ましくは200℃以上である。
【0049】
一例によれば、高密度化プラズマの形成中、反応チャンバの圧力は、80mTorr(ミリトール)以下、好ましくは約10mTorrである。これにより、基板の近くに非衝突シースを確保することが可能になり、したがって、表面膜の高密度化に異方性の特徴を与えることが可能になる。
【0050】
一例によれば、分極は、150ワット以下の分極電力Pbias_substratで、好ましくは10Wから120Wの間のPbiasで適用される。好ましくは、Pbias_substratは10W(ワット)から90Wの間である。これにより、(線量および/またはエネルギーにおいて)急激すぎるイオン衝撃によって引き起こされる欠陥の生成を回避することが可能になる。一例によれば、分極電圧Vbias_substratは、150W未満、好ましくは10から120W(ワット)の分極電力で印加され、これは300ボルト以下、好ましくは10ボルトから150ボルトの間の分極電圧|Vbias_substrat|に対応する。
【0051】
例えば、HfO2(酸化ハフニウム)の堆積では、そのスプレーイングを回避するために低い電力を必要とする。典型的には、Pbias-substratは80W以下である必要がある。好ましくは、HfO2に関してPbias-substrat=20Wである。VsubstratおよびVplasmaの独立した制御は、基板100に低電圧を印加することを可能にし、その結果、高密度化される層に到達するイオンからのエネルギーを正確に制御することを可能にする。この層を生成するために、例えばモリブデン(IV)-アミド前駆体を使用することができる。
【0052】
このように、一般的に、提案された方法は、非常に多様な材料の堆積に適用することができる。したがって、本発明は、非常に多様な材料から窒化物層、酸化物層または硫化物層を得るための手法を提案する。したがって、本発明は、材料の選択に基づく多数の制約を取り除くことを可能にする。
【0053】
一例によれば、サイクルの総数Nは、好ましくは15以上であり、好ましくは20以上である。
【0054】
一例によれば、高密度化プラズマに露出される第1の領域と高密度化プラズマに露出されない第2の領域は、膜の密度および不純物率のうち少なくとも1つのパラメータによって異なる。
【0055】
一例によれば、少なくともいくつかの、好ましくはすべての第1および第2の表面が一緒に直角を形成する。
【0056】
一例によれば、少なくともいくつかの、好ましくはすべての第1および第2の表面が一緒に直角を形成しない。一例によれば、構造体の後面は、平面内に延在し、この平面に対する垂線は、イオン流の有利な方向に対して、好ましくは10°を超えて傾斜している。
【0057】
一例によれば、層は、(PEALD)によって堆積することができる少なくとも1つの材料に基づいている。
【0058】
一例によれば、初期層は、窒化物、酸化物、または硫化物で作られているか、またはこれらに基づいている。
【0059】
一例によれば、初期層は、有機金属または有機ケイ素またはハロゲン化前駆体から得られる窒化物または酸化物で作られているか、またはこれらに基づいている。
【0060】
一例によれば、第1の前駆体は、以下の材料:アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ケイ素(Si)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、のうち1つを含む。
【0061】
本発明の範囲内で、用語「上に(on)」、「越える(surmounts)」、「覆う(covers)」、「下に(underlying)」、「相対して(vis-a-vis)」およびそれらの等価物は、必ずしも「と接触して(in contact with)」を意味しないことが明記される。したがって、例えば、堆積、表面上への層または膜の形成は、層または膜が表面と直接接触していることを強制的に意味するのではなく、表面と直接接触することによって、またはそれから分離されることによって、例えば、少なくとも1つの他の層または1つの他の膜によって分離されることによって、それらが表面を少なくとも部分的に覆うこと、を意味する。
【0062】
化学種A「に基づく」基板、膜、層、気体混合物、プラズマは、基板、膜、層、気体混合物、プラズマが、この化学種Aのみ、またはこの化学種Aおよび任意に他の化学種を含むことを意味する。
【0063】
基板は少なくとも1つの構造体を含み、その前面はリアクタの反応チャンバ内に存在する化学種に露出される。したがって、構造体は、基板によって支持されるか、または基板上に形成される。構造体が基板である構成も提供することができる。その結果、これら2つの用語は同じ意味を有する。
【0064】
製造方法の連続するステップを実施する本発明のいくつかの実施形態を以下に説明する。明示的に述べられている場合を除き、形容詞の「連続する(successive)」は、一般的にそれが好まれているとしても、ステップがお互いにすぐに続くことを必ずしも意味するものではなく、中間ステップがそれらを分離することもできる。
【0065】
さらに、「ステップ」という用語は、方法の一部の実施形態を意味し、一組のサブステップを意味することができる。
【0066】
さらに、「ステップ」という用語は、ステップ中に実施される動作が同時またはすぐに連続することを強制的に意味するものではない。特に、第1のステップの特定の動作の後に、異なるステップに関連付けられた動作が続き、次いで第1のステップの他の動作を再開することができる。このように、「ステップ」という用語は、経時的な、また方法の段階の手順における、単一の不可分な動作を必ずしも意味するわけではない。
【0067】
「誘電体」という用語は、所定の用途において、導電率が十分に低く、絶縁体として機能する材料を意味する。本発明において、誘電体材料は、好ましくは、4より大きい誘電率を有する。スペーサは、典型的には誘電材料で形成される。
【0068】
本特許出願において、気体混合物がパーセンテージで表されるとき、これらのパーセンテージは、リアクタに注入される気体の総流量の分率に対応する。したがって、例えばプラズマを形成することを目的とする気体混合物が気体Aをx%含む場合、これは、気体Aの注入流量が、プラズマを形成するためにリアクタ内に注入される気体の全流量のx%に相当することを意味する。
【0069】
マイクロ電子デバイスとは、マイクロ電子手段で製造されたあらゆるタイプのデバイスを意味する。これらのデバイスは、特に、純粋に電子的な目的のデバイスに加えて、マイクロメカニカルまたは電気機械デバイス(MEMS、NEMSなど)、並びに光学または光電子デバイス(MOEMSなど)を含む。
【0070】
これは、電子的、光学的、機械的機能などを保証することを目的としたデバイスであってよい。また、他のマイクロ電子デバイスの製造のみを目的とした中間製品であってもよい。
【0071】
本発明の範囲内で、層または基板の厚さは、この層またはこの基板がその最大の広がりを有する表面に対して垂直な方向で測定されることは明らかである。したがって、厚さは、異なる層が配置される基板の主面に垂直な方向に取られる。
【0072】
「実質的に(substantially)」、「約(about)」、「約(around)」という用語は、「10%に近い」ことを意味する。
【0073】
本発明の様々な実施形態を説明する前に、PEALDサイクル中の温度の影響を、
図4を参照して示す。
【0074】
各PEALD堆積のパラメータは、特に使用する前駆体の性質に応じて調整する必要がある。
【0075】
これらのパラメータは、調整可能な実験パラメータ:チャンバ内の前駆体の流れ(不活性ガスの流れによって引き起こされる)、前駆体の注入の開始時間、パージ時間、プラズマステップの持続時間、動作圧力、リアクタのチャンバへの注入前の前駆体の温度(その温度は、気体状態の安定領域にある必要がある)および堆積温度、に従って調整される。
【0076】
後者のパラメータである堆積温度は、良好な物理的および化学的品質の層を得るために特に重要である。これは、PEALDサイクル中に基板が維持される温度に対応する。
【0077】
所定の前駆体について、公称温度ウィンドウは、第1の前駆体の供給者から入手できる。この公称ウィンドウは、その中で自己制限反応条件下で成長が実現される温度間隔に対応する。より具体的には、堆積物は、非常に良好な共形性を示し、成長する薄層の厚さは非常に良好に制御される。
【0078】
この公称ウィンドウは、例えば、前駆体の製造業者によって与えられる。この公称ウィンドウは、当業者、典型的には、決定されたALDまたはPEALDリアクタでの実験パラメータの開発を担当するプロセスエンジニアによって検証され得る。
【0079】
この公称ウィンドウF
Tは
図4に示される。このウィンドウF
Tの下限及び上限は、横軸のT
min及びT
maxで参照される。縦軸は、堆積速度に対応し、より具体的には、ALDまたはPEALDサイクルあたりの成長厚さに対応する。サイクルあたりのこの成長厚さは、通常、GPC(growth per cycle(サイクルあたりの成長))と呼ばれる。
図4に明確に示されるように、サイクルの温度T
cycleを変動させ、一方でウィンドウF
T内でこれらの温度を維持することによって、GPCは完全に安定したままとなる。
【0080】
対照的に、堆積温度がウィンドウF
Tの下限T
min未満の場合、前駆体は(自己限定的な方法で)化学吸着される代わりに、基板の表面に濃縮される(GPCの人為的な増加をもたらす)。前駆体分子のいくつかの層は、互いの上に積み重なることによって、基板上に物理吸着され得る。物理吸着は実際には自己制限的ではないため、より大きな堆積速度が観察される。この状況は、
図4の領域41に対応する。
【0081】
或いは、ウィンドウF
Tの下限T
min未満の堆積温度の場合は常に、熱エネルギーが十分でない場合、物理吸着は起こり得ない。この最小の熱エネルギーは、前駆体及び基板の性質の関数である。この温度が低すぎて表面反応が起こる場合、膜の成長は観察されない。この状況は、
図4の領域42に対応する。
【0082】
このように、公称ウィンドウFTは、PEALD堆積温度を変動させることによって、公称ウィンドウFTより低い温度に対して、各PEALDサイクルで堆積される膜の厚さが変動するようなものである。例えば、温度TcycleをTminより10℃以上低く変動させることにより、各PEALDサイクルで堆積した膜の厚さは、5%を超えて、さらには10%を超えて変動する。温度Tcycleは、公称ウィンドウFT内で10℃を超えて変動させられ、一方で、各PEALDサイクルで堆積される膜の厚さは変動しないか、または2%を超えて、さらには1%を超えて変動しない。
【0083】
領域43および44は、堆積温度がウィンドウF
Tの最大温度T
maxよりも高い状況に対応する。この場合、前駆体は分解され得、堆積方法は化学気相成長(CVDまたはpseudo-CVD)タイプになり、膜の成長ははるかに速くなり、これは反応の自己制限的性質の喪失によって引き起こされる。この状況は、
図4の領域43に対応する。
【0084】
高温はまた、化学吸着された前駆体の脱着を活性化することができ、GPCの低下につながる(
図4の領域44)。殆どの場合、これらの2つの現象(前駆体の分解43および脱着の活性化44)は競合し、同時に発生する。
【0085】
したがって、公称ウィンドウFTは、PEALD堆積温度を変動させ得るようなものであり、公称ウィンドウFTを超える温度では、各PEALDサイクルで堆積される膜の厚さが変動する。例えば、温度TcycleをTmaxよりも少なくとも10℃高く変動させることによって、各PEALDサイクルで堆積される膜の厚さは、5%を超えて、さらには10%を超えて、さらには20%を超えて変動する。
【0086】
公称ウィンドウの最小幅は、好ましくは10℃よりも大きく、好ましくは20℃よりも大きい。殆どの場合、このウィンドウの幅は100℃を超え、さらには200℃である。ただし、このウィンドウの幅は、使用する前駆体によって異なる。当業者は、所定の前駆体について、公称ウィンドウ並びにその限界を識別する方法を十分に知っている。
【0087】
PEALDモードでは、温度ウィンドウはALDモードよりも広く、殆どの場合、ALDよりも低温に向かって拡張される。実験パラメータの開発を担当するプロセスエンジニアは、ALDまたはPEALDモードでこのウィンドウを決定する方法を知っている。
【0088】
堆積層は、(PEALD)によって堆積することができる少なくとも1つの材料に基づいている。典型的には、これは、窒化物系、酸化物系、または硫化物系のもので作られた層であるか、または窒化物系、酸化物系、または硫化物系の層である。
【0089】
ここで、
図5から10に示されるいくつかの実施形態を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0090】
図5および6に示す実施形態
次に、本発明による方法の第1の実施例を、
図5および6を参照して説明する。
図5は、この実施形態の主要なステップを概略的に示す。
【0091】
上記の
図1Aおよび2は、それぞれ開始基板の例および最終的に得られることが求められる構造体に対応する。
図6は、選択的エッチングステップの前に得られた中間結果を示す。
【0092】
図5に示されるように、この方法は、サイクル1のN回の反復を含む手順を含む。
【0093】
各サイクル1は、少なくとも以下のステップを含む:
第1のステップは、第1の前駆体のリアクタの反応チャンバへの注入10を含む。この第1の前駆体は、金属、半金属、またはランタニドの前駆体の中から選択される。この前駆体は、以下の材料:アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ケイ素(Si)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ランタン(La)、イットリウム(Y)のうち1つの材料に基づくことができる。
【0094】
第2のステップは、パージステップ20である。このパージ20は、過剰の第1の前駆体を除去するために、すなわち、反応していない第1の前駆体から試薬を排出するために、並びに反応生成物を排出するために行われる。このパージの間、好ましくは、アルゴン(Ar)または二窒素(N2)などの中性排出ガスが反応チャンバ内に注入される。
【0095】
第3のステップ30は、第2の前駆体の反応チャンバへの注入31と、圧力安定化ステップ並びにプラズマ形成ステップ32とを含む。この第2の前駆体は、例えば、酸化物の成長のための酸素系の雰囲気中で生成されるプラズマ、窒化物、または硫化物の成長のための窒素および/または水素またはアンモニア(NH3)であり得る。硫化物の場合、第1の前駆体1にはすでに硫化物原子が含まれており、第2の前駆体は還元剤(ALDまたはPEALDではH2またはNH3)である。
【0096】
第4のステップは、パージステップ40である。このパージ40は、過剰な第2の前駆体並びに反応生成物を除去するために実施される。
【0097】
実線の矢印は、例としてのみ、サイクルおよびこれらの各ステップ10から40の相対的な持続時間を示している。
【0098】
第1のステップおよび第3のステップは、それぞれがパージステップを伴うことによって逆にすることができることに留意されたい。したがって、
図5に示す別の方法では、30、40、10、20という順にこの方法を実施することができる。この特定の場合、第1のプラズマステップ30は、金属前駆体パルス10の付着を促進するために基板の表面を活性化するのに役立つ。この入れ替えは、選択的な固体プレートの成長(2D)にとって特に重要である。
【0099】
各サイクル1は、単層の形成を可能にする。プラズマステップ30が開始される場合、単層は1.5サイクルの終わりに作られる。
【0100】
サイクル中に基板に課せられる温度Tcycleは、公称温度ウィンドウFTの下限Tmin未満であることに留意されたい。
【0101】
有利な例によれば、サイクルは、Tcycle≦(Tmin-20℃)であるような温度Tcycleで実施され、Tcycle、Tminは摂氏温度(℃)である。好ましくは、Tcycle≦(Tmin-50℃)である。Tcycleは、周囲温度以上であってよい。
【0102】
この実施形態では、プラズマの形成32の間に、分極が基板100に加えられる(通常バイアスと呼ばれる)ことにも留意されたい。実際には、反応チャンバは、構造体100を受け入れるためのサンプルキャリアを含む。サンプルキャリアは導電性であり、分極電圧がこのサンプルキャリアに印加されて、基板100並びにその前面に伝達される。
【0103】
この分極電圧Vbias_substratは、例えば高周波発電機などの電圧調整デバイスを介して基板100に印加される。分極電圧Vbias-substratは、例えば、厳密に0未満(<0V)とすることができる。非ゼロの分極電圧Vbias-substratは、正または負にすることができる。
【0104】
基板に印加されるこの分極電圧V
bias-substratは、プラズマの電位V
plasmaとは異なる。イオンおよびラジカルを生成し、その結果誘電体堆積を開始するために、分極電圧V
bias-substratは、完全に従来通りプラズマ源によって誘導されるプラズマの電位V
plasmaと実際に区別される。分極電圧V
bias-substratは、ソースによって誘起されるプラズマの電位V
plasmaとは独立して制御される。分極電圧V
bias-substratは、より具体的には、基板の受けプレートに印加される。「基板に印加される」とは、分極電圧V
bias-substratが、基板100を支持する、好ましくは基板100と接触しているプレートに印加され、基板100が導電性であるかまたはそうではないことを意味する。実際には、例えば
図11に示されるように、リアクタ300、この場合はICPリアクタの反応チャンバ310は、基板100の受けプレート320を含む。このプレートは、サンプルキャリアとしても適し得る。一例によれば、分極電圧V
bias-substratがプレート320に印加される。好ましくは、分極電圧V
bias-substratはプレート320のみに印加される。この例によれば、プレート320は導電性であり、分極電圧V
bias-substratは、電圧調整デバイス370によってこのプレート320に印加されて、基板100に伝達される。
【0105】
この分極電圧V
bias-substratの印加は、かなりの利点を提供する。特に、この分極は、調整デバイス370のおかげで、制御された方法でプラズマからのイオンのエネルギーを調節することを可能にする。非衝突シースでは、イオンのエネルギーは実際に、次の関係に従って、プラズマの電位と基板の分極電圧に依存する。
【数1】
ここで、qはイオン電荷である。
【0106】
分極電圧Vbias-substratを印加することにより、表面へのイオン衝撃の有効性を高めることができ、一方で基板100の露出面101を維持する。その再現性は、現在の手法、特に、再現可能な結果を得るために実際には制御することが困難なイオン衝撃を調節するためにプラズマ源によって誘導されるプラズマの電位Vplasmaを使用する手法に関してさらに改善される。
【0107】
プラズマおよび分極Vbias_substratは、プラズマによって生成されたイオンの流れ33に有利な方向を与えるように調整される。この有利な方向は、基板100の第1の表面110がイオン流33に露出し、基板100の第2の表面120がイオン流33に露出しないように向けられる。
【0108】
図6における基板100の非限定的な例では、プラズマによって生成されるイオン流33の有利な方向は、基板100の後面102に対して垂直であり、したがって、
・第1の表面110は、水平面、すなわちトレンチ101の上部111および底部112に対応する。
・第2の表面120は、垂直表面、すなわちトレンチ101の側面112に対応する。
【0109】
印加される分極電圧Vbias_substratは、300ボルト未満、好ましくは150ボルト未満である。通常、この分極はその電力の調整によって制御される。したがって、この分極は通常、ワット(W)で表される。本発明の範囲において、この分極電力Pbias_substratは、絶対値(|Vbias-substrat|)で、好ましくは150W未満、好ましくは100W以下である。この値を超えると、露出面でのスプレーイング、または露出面にイオンが注入される危険性がある。
【0110】
図11は、本方法を実施するために使用できるプラズマリアクタ300の図を示す。
好ましくは、この方法は、PEALD堆積プラズマリアクタで実施される。
【0111】
一例によれば、リアクタ300は、反応チャンバ310に対して離れたプラズマ源360を備える。したがって、Vplasmaの電位は、基板100から離れている。分極電圧Vbias-substratの効果は、基板におけるプラズマのイオンのエネルギーを増加させる。Vbias-substratが存在せず、電圧がゼロの場合、イオンのエネルギーは、イオン電荷とプラズマの電位Vplasmaの積に等しい。したがって、表面101へのイオン衝撃の有効性は、分極電圧Vbias-substratの印加に関連しない非遠隔源または遠隔源に関係して最もよく制御することができる。このために、例えば、これは、基板の電圧を調整するための第2のデバイスによって提供される。その結果、露出面101の高密度化の再現性が改善される。さらに、遠隔源を使用することにより、基板に損傷を与える可能性がある、プラズマの形成ゾーン内のプラズマと基板100との間の直接的な接触を回避することが可能になる。遠隔プラズマ源を使用すると、プラズマ処理の指向性がさらに最小限に抑えられる。三次元構造、特にナノ構造の処理が容易になる。
【0112】
より具体的には、この方法は、通常、ICP(誘導結合プラズマ)に適する誘導結合プラズマリアクタで実施される。好ましくは、ソースは高周波誘導源であり、これにより、他のソース、例えばマイクロ波源よりも少ない電力Pplasmaで安定したプラズマを有することが可能になる。一例によれば、誘導高周波源の電力Pplasmaは、100Wから300Wの間、好ましくは200Wである。誘導性高周波源の出力が大きくなるほど、基板100に到達できるイオン流が増加する。
【0113】
リアクタ300は、内部にプレート320が配置される反応チャンバ310を含む。このプレート320は、構造体100を含む基板を受けるように構成される。基板は、後面でプレート320上に置かれる。構造体100の前面101は、反応チャンバ310内に存在する化学種に露出される。この非限定的な例では、基板は、互いに傾斜した第1の表面110および第2の表面120を支持する構造体100を形成する。プレート320は導電性である。比較的従来通り、リアクタはガス入口330を含み、チャンバ310内に、プラズマの化学物質を形成することを目的とするガス、並びにパージ段階20、40を目的とするガスを注入することを可能にする。プラズマ源360は、一例によれば、誘導結合デバイスであり、そのコイルが
図11に示され、プラズマの形成を可能にする。リアクタ300はまた、反応チャンバ310の絶縁弁340を含む。リアクタ300はまた、注入されたガスの流量と相乗的に反応チャンバ310内の圧力を制御し、反応チャンバ310内に存在する化学種を抽出するためのポンプ350を含む。
【0114】
有利には、このリアクタ300は、例えば高周波数発電機を介してプレート320に分極電圧Vbias-substratを印加できるように構成された分極デバイス370を含む。この電圧は、最終的に基板100に、少なくともプレート320に面するその回転面で、この面が導電性であるかどうかにかかわらず、印加することができる。この分極デバイス370は、プラズマ源360とは別個であることが好ましい。この分極デバイス370は、制御デバイス371を含み、プレート320に交流電圧を印加することを可能にする。好ましくは、この制御デバイス371は、チャンバおよびイオン源内のインピーダンスを高周波数発電機のインピーダンスに適合させる自動適合ユニット(自動整合ユニットが適する)を含む。この分極デバイス370は、分極電圧Vbias-substratのプレート320への印加を可能にするように構成され、その振幅は低く、典型的には電力Pbias-substratが150ワット以下、好ましくは10Wから120Wの間であるようなものである。
【0115】
分極装置370およびプラズマ源360は、プレート320に印加される分極電圧Vbias-substratを、プラズマの電位Vplasmaとは独立して調整できるように構成されている。Vbias-substratとVplasmaとは独立している。Vbias-substratとVplasmaとは独立して制御される。
【0116】
誘導高周波源の電力Pplasmaは、100Wから300Wの間、好ましくは200Wである。ICPリアクタでは、100W未満の電力Pplasmaでプラズマを得ることは不可能であり、非常に困難である。逆に、Pbias-substratは完全に100ワット未満にすることができる。
【0117】
したがって、Pbias-substratおよびPplasmaの電力は、異なる機能および振幅を有し、したがって異なる可能性があることが明確に分かる。
【0118】
一例によれば、Pbias-substrat<Pplasmaである。一例によれば、Pbias-substrat<0.8*Pplasmaである。一例によれば、Pbias-substrat<0.65*Pplasmaである。
【0119】
これら2つのパラメータ(Tcycleおよび分極Vbias_substrat)の組み合わせは、以下に示すようにかなりの利点をもたらす。
【0120】
本方法の温度がPEALDウィンドウの最低温度より低く調整されると、濃縮(物理吸着)プロセスが成長の原因となる。これらのプロセスは自己制限的ではなく、(基板での)活性化温度が低すぎることに起因して、得られた堆積において、形成された材料の密度が低下し、前駆体1の不十分な分解によるかなりの量の炭素汚染が含まれていることが示される。
【0121】
プラズマの形成を伴う前駆体2の注入ステップ中のサンプルキャリアでの追加の高周波数(RF)分極V
bias_substratの適用により、プラズマからのイオンの抽出が可能になり、成長中の膜の近傍にイオンを垂直に提供することができる。基板100の分極の振幅によって入射エネルギーを調節することができるこのイオン流33は、プラズマのラジカルとの堆積中に生じる相乗効果から利益を得ることができる。基板100の分極によってプラズマから抽出されたエネルギーイオン流に露出された表面(
図6の非限定的な例における水平面110)のみが、PEALD成長中にこれらのイオンによって引き起こされる効果から利益を得ることができる。これらの効果は、活性化されたラジカルとプラズマのイオンとの間の相乗メカニズムによって、基板のRF分極によって強化されたPEALDによって成長した薄層の物理化学的特性が変更されるという事実によって特徴付けられる。実際、PEALDによって堆積されたこの膜の材料の化学的純度、化学量論、および密度の大幅な改善が、イオン流33に露出された膜で観察され、これは、微結晶化または形態学的変更、並びに堆積速度の向上を伴い得る。
【0122】
したがって、PEALD法をイオン衝撃下でTcycle<Tminと組み合わせるとき、イオン流に露出された表面(この場合、水平面110)のみが、良質の薄層(イオン衝撃によって純度、化学量論、密度が改善された)によって覆われ、一方で、イオン流に露出されていない表面(この場合、垂直面120)は同じ材料で覆われているが、品質は劣っている。
【0123】
図6は、これらの動作条件下で得られた結果を概略的に示す。
結果的に、層200は、以下を含む:
・良好な品質を有する第1の領域210(トレンチ101の上部の211および底部の212)および
・より低い品質を有する第2の領域220(トレンチ101の側面112上)。
【0124】
特に、この低下した品質は、これらの第2の領域220における材料の密度の低下によって現れる。この低下した品質は、これらの第2の領域220における欠陥率および/または不純物率の増大によっても現れる。
【0125】
この実施形態では、分極(Vbias_substrat≠0)は、各PEALDサイクルのプラズマ32の形成ステップ中に適用される。したがって、プラズマ32は、前駆体1の配位子を再活性化して前駆体1に対してそれらを反応性にする役割と、特定の領域のみを選択的に形成する過程で層を高密度化する役割との両方を有する。
【0126】
このことから、分極下のプラズマは、PEALDによって形成された層200の厚さ全体にわたって有利な効果を提供する。したがって、イオン流33に露出される領域210、211、212は、厚さ全体にわたってより密になる。したがって、
図6に示されるように、水平面111を覆う層200の領域211において密にされた厚さe211は、層200の総厚さe200に等しい。逆に、垂直面120を覆う層200の領域220では、高密度化された層の厚さはゼロである。
【0127】
本方法は、高品質の第1の領域210に対して低品質の第2の領域220を選択的に除去するように構成された、
図5の50で参照される、選択的エッチングステップをさらに含む。このエッチングの選択性は、分極下でプラズマのイオン流33に露出されていない領域220の材料の密度が低いこと、および/または不純物率が高いことから恩恵を受ける。
【0128】
エッチング50は、湿式または乾式で行うことができる。エッチングに対する選択性は、少なくとも2倍である。
【0129】
その結果、
図1Bに示すように、所望の構造が得られる。イオン流33に対する基板の表面110、120の方向付けに従ったこの選択的堆積は、時間がかかり、多くの不正確さを生み出す通常のリソグラフィ工程からの移行を可能にする。
【0130】
実施形態の特定の例
以下の段落は、本発明の非限定的な例を説明する。この例は、
図5および
図6を参照して説明した実施形態に特によく適用され、堆積プラズマは高密度化プラズマの役割を果たす。しかし、以下に提案する特徴は、上記および下記の実施形態のそれぞれに適用可能であり、組み合わせることができる。
【0131】
以下に示す例は、10nmのTa2O5の堆積に関する。ただし、この方法および以下で説明する特徴は、数ナノメートルから数十ナノメートル(3~100nm)の厚さ、およびPEALDによって堆積されるあらゆる種類の材料(酸化物、窒化物および硫化物)に適用することができる。
【0132】
1.PEALDによる層の形成手順:
PEALDによってTa
2O
5層を形成するために、
図5に示され、上述されたように、複数のサイクル1が実施される。この手順のサイクル中に、次の条件を適用することができる。
【0133】
・前駆体:Ta2O5層を形成するために、使用される前駆体は、典型的には、ステップ10の間に注入され、TBTDMT、すなわちトリス(ジメチルアミン)tert-ブチルアミノ)タンタル、Ta(N(C4H9))(N(CH3)2)3である。
【0134】
・堆積温度:堆積温度Tcycle、すなわち構造体100の温度は、100℃に等しい。この温度は、この前駆体のPEALD温度ウィンドウFT未満の限界温度Tminまで100℃未満である。この低い温度から少なくとも100度外れることが好ましく、これにより、イオン増強なしで堆積の質が著しく低下し、これにより後続のエッチング工程の選択性が高まる。このようにして、その後のウェットエッチングまたはプラズマエッチングによるこの材料の除去が容易になるが、これは、堆積中に存在する炭素不純物の比率が高いことに起因し、PEALD法に従来から使用されている有機金属前駆体(前駆体1)の不完全な分解に関連する。厳密に100℃未満の温度Tcycleを用いることができる。例えば、Tcycleは、80℃以下、好ましくは50℃以下とすることができる。一例によれば、Tcycleは周囲温度に等しい。これは、方法のステップが実施されるリアクタが加熱手段によって加熱され得ないことを意味する。
【0135】
・基板でのRF分極のエネルギー:基板に適用されるRF分極の電力Pbias_substratは、イオンとプラズマのラジカルとの間の効果的な相乗効果を誘発する、すなわち、堆積の高密度化および炭素不純物の除去につながるように最適化する必要がある。ただし、表面の粗面化、スプレーイング、または露出面の注入など、プラズマからのイオンによる衝撃によって引き起こされる欠陥の出現を回避するために、この電力が高すぎないようにする必要がある。このため、低RF電力Pbiasが推奨され、これは典型的には10W≦Pbias≦120Wである。
【0136】
100℃での堆積速度は0.115nm/サイクルである。サイクル数は、この手順のサイクル1から得られる所望の厚さを実現するために調整される。典型的には、この手順から、層は、数ナノメートルから数十ナノメートルまで異なる厚さe200を有する。
【0137】
2.PECVDによって堆積された層の密度の低い領域の除去:
PEALDによって層200を形成した後、この層200を選択的に画定することにより、すなわち、一方では特定の表面110を覆う高品質の領域210(高密度、低不純物率)、他方では他の表面120を覆う低品質の領域220(低密度、高不純物率)を画定することにより、選択的エッチングステップ50が進められる。
【0138】
PEALD有機金属前駆体の使用に起因して、イオン流33に露出されていない表面120上に堆積された層に存在する不純物は、殆ど主に炭素起源のものである。さらに、堆積物はここでは非常にわずかに高密度であり、好ましくは、この層の選択的な湿式除去が使用される。例えば、1%から5%(好ましくは5%)に希釈されたHF溶液は、高密度の金属酸化物と、炭素不純物を含むごくわずかに高密度の同じ酸化物との間で完全に選択的であることが示されている。
【0139】
例えば、5%HFに50秒間浸すと、イオン流への露出によって高密度化されたTa2O5層をエッチングすることなく、100℃のPEALDで成長させた高密度化されていないTa2O5を10nm除去することができる。
【0140】
図7および8に示す実施形態
次に、本発明による方法の第2の実施例を、
図7および8を参照して説明する。
図7は、この実施形態の主要なステップを概略的に示している。この方法は、基板の分極が最後のサイクル中にのみ適用されるという事実によって、前述の実施形態とは異なる。
【0141】
より詳細には、PEALDによる層200の形成の手順は、以下を含む。
・1Aで参照される、サイクルの第1の組。これらのサイクル1Aは、プラズマ32A中に基板の分極が適用されないことを除いて、
図5に示されるPEALDサイクルと殆ど同じである。少なくとも、このプラズマ32Aの間、基板の分極は適用されず、未露出面120に衝突することなく、露出面110に選択的に衝突するイオン流33を生成することを可能にする調整が行われる。これらのサイクル1Aの間、堆積温度T
cycleは、
図5および6に示される実施形態のように、公称ウィンドウF
Tの下限T
min未満である。サイクル1Aのこの第1の組は、層200の部分200Aの形成をもたらす。
図8に示されるように、部分200Aは、構造体100から、好ましくはその前面101から、広がる。それは、好ましくは構造体100全体を覆う。それはコンフォーマルである。それは、構造体100のすべての表面110、120上で同一の一定の厚さを有する。この層200Aは、低温T
cycleおよびイオン流33への露出がないことに起因して、低品質である。
【0142】
・1Bで参照される、サイクルの第2の組。これらのサイクル1Bは、
図5に示すPEALDサイクルと同じである。分極V
bias_substratは、プラズマ32Bの間に適用され、未露出面120に衝突することなく、露出面110に選択的に衝突するイオン流33を生成することを可能にする調整を伴う。これらのサイクル1Bの間も、堆積温度T
cycleは、
図5および6に示される実施形態のように、公称ウィンドウF
Tの下限T
min未満である。
図8に示すように、最終的に得られる層200は、以下を有する。
・イオン流33に露出された領域において(この場合、流れ33に対して垂直に延びる領域):結果的に非常に良好な品質を有する部分211Bおよび212B。これらの部分211Bおよび212Bは、サイクル1Aの間に形成された、それら自体は低品質である部分211A、212Aの上にある。したがって、これらの水平領域211、212では、層の厚さe200は、部分211Aの厚さe211Aと部分211Bの厚さe211Bとの和に等しい。
・イオン流33に露出されていない領域220(この場合、流れ33と平行に延びる領域)。これらの領域220は低品質である。これらの領域220は、サイクル1Aおよび1Bの連続堆積によって形成された。
【0143】
選択的エッチングステップ50の間、層200の領域220の厚さ全体がエッチングされる。しかしながら、領域211、212では、表面部分211B、212Bはエッチングに抵抗し、それらに隣接する部分211Aおよび212Aも保護する。
【0144】
選択的エッチングステップ50の間、リフトオフによる層211Bの除去につながる層211Aの消費が回避される。この目的のために、ステップ50にはドライエッチングが有利であり得る。
【0145】
したがって、この実施形態では、PEALDによって初期層200を形成するための最後のNBサイクルの間に、プラズマ32Bは、この層のPEALD堆積に関与することに加えて、堆積層を高密度化する役割を有する。したがって、プラズマ32Bは、高密度化プラズマとしておよび堆積プラズマとして適するものであり得る。対照的に、第1のNAサイクルの間、プラズマステップ32Aは、堆積層を高密度化する役割を持たない。したがって、プラズマ32Aは、堆積プラズマとして適し得るが、高密度化プラズマとして適し得ない。サイクルの総数がNA+NBに等しい場合、NAおよびNBはゼロ以外の整数であり、好ましくはNB≦10であり、好ましくはNB≦3であり、好ましくはNB=1である。
【0146】
当然、サイクル1Aおよび1Bは、同じリアクタ内で実施されることが好ましい。好ましくは、サイクル1Bは、サイクル1Aの直後に、好ましくはサイクル1Aに連続して、その唯一の変化として、分極を適用して実施される。
【0147】
一実施形態によれば、本方法は、分極なしの堆積サイクル1A、分極Vbias_substratを伴う堆積サイクル1Bを交互に含む。好ましくは、各手順について、分極を伴う堆積サイクルの数NBは1に等しい。
【0148】
図9に示す実施形態
次に、本発明による方法の第3の例を、
図9を参照して説明する。
図9は、この実施形態の主要なステップを概略的に示している。この方法は、主に、層200の選択的な高密度化がPEALDサイクルのみから実現されるという事実によって、
図5および6に示される実施形態の方法とは異なる。
【0149】
より詳細には:
・PEALDサイクル1のそれぞれの間、プラズマ32は分極を適用せずに形成される(Vbias_substrat=0)。したがって、プラズマ32は、堆積プラズマとして適し得る。このプラズマは、堆積層200を高密度化することを可能にしない。したがって、この堆積層は、公称ウィンドウFTより低い堆積温度Tcycleに起因して、低品質である。
【0150】
・PEALDサイクル1からの、堆積層200の表面は、プラズマ60によって生成されたイオン衝撃に露出される。このプラズマ60に分極が適用され、有利な方向にイオン流が生成される。この有利な方向により、イオン衝撃が表面220に到達することなく、層の特定の領域210、211、212をイオン衝撃に露出することが可能になる。分極を有するプラズマ60を使用するこの露出は、露出領域を高密度化することを可能にする。したがって、このプラズマ60は、高密度化プラズマとして適し得る。
【0151】
一実施形態によれば、この高密度化プラズマ60は、1回の露出で実現することができる。
【0152】
したがって、流れ33に露出される表面の表面部分のみが高密度化される。その結果、この表面部分は、領域210、211、212においてのみ層200を保護し、層200の他の領域220を覆わないままにする。この表面部分は、領域210、211、212のエッチングを防止するのに十分である。保護されていない領域220は、エッチング中にそれ自体が除去される。
【0153】
高密度化プラズマ60は、例えば、アルゴン(Ar)系、二酸素(O2)系、または二窒素(N2)系のプラズマとすることができる。
【0154】
高密度化プラズマステップ60は、好ましくは、異方性高密度化のために低圧力で実施される。好ましくは、圧力は80mTorr未満である。特に有利な例によれば、この圧力は10mTorrである。分極電力は、前述の条件および堆積材料に応じて、10Wから120Wの間、好ましくは10Wから90Wの間である。この高密度化は、好ましくはインサイチュ(in situ)で、すなわちPEALDサイクル1を行ったリアクタ内で行われる。好ましくは、この高密度化ステップは、PEALDの手順の直後に実施される。あるいは、このプラズマ高密度化ステップは、エクスサイチュ(ex-situ)で、すなわちPEALDの手順を行ったリアクタから構造体100を取り出した後に実施することもできる。
【0155】
前述の実施形態に関して、この実施形態は、イオン衝撃によって基板100を損傷しないという利点を有する。この手段はまた、第1のサイクルで吸着される前駆体の量が少ないことに起因して、基板上に堆積した材料の付着を容易にすることができ、低密度の材料をもたらす。
【0156】
さらに、この実施形態は、分極なしでPEALD堆積サイクル1Aを行ったもの以外のリアクタで実施できるという利点を有する。したがって、この実施形態は、PEALDリアクタが分極の適用を可能にしないときに実施することができる。結果的に、この実施形態は、必要な機器に課す制約が少ない。
【0157】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態に及ぶ。
【0158】
以下の段落は、変形例を説明することを目的とする。以下に提案する変形例の特徴は、上述の各実施例と組み合わせることができる。
【0159】
上記の実施形態では、分極を伴うプラズマ(高密度化プラズマ)に露出される表面は、イオン流33の有利な方向に対して水平であり垂直である。しかしながら、イオン流33の有利な方向と露出面との間の角度が90度ではないことは十分に示され得る。これは、例えば、
図10に示される実施形態の場合である。この図では、構造体100は、水平方向に対して角度αだけ傾斜している。この角度は、構造体100のサンプルキャリアを傾けることによって得ることができる。この
図10に見られるように、構造体100の隆起部分の形状、すなわち、表面110、120の寸法および傾斜、並びにイオン流33の方向は、以下を可能にすることで十分である:
・第1の表面110にイオン流が到達するようにする、
・イオン流が第2の表面120に到達しないようにする。これらの第2の表面120は、例えば、第1の表面110によって遮られ得る。
【0160】
したがって、本発明は、第1の表面110と直角を形成しない第2の表面120を影響を受けないままにすることによって、第1の表面110上に層200を選択的に堆積させることを完全に可能にする。
【0161】
構造体100の第1の表面110、すなわち、高密度化プラズマの間にイオン流に面している表面は、
図6および8に示されるように、同じ傾斜を有することができる。しかしながら、本発明は、第1の表面110が少なくとも2つの異なる傾斜を有する構造体100に及ぶ。例えば、特定の第1の表面110は、構造100の後面102と角度φ1を形成し、他の第1の表面110は、この同じ後面102と角度φ2を形成する。同様に、第2の面120も少なくとも2つの傾斜を有することができる。
【0162】
構造体100の第1の表面110および第2の表面120は、
図6および8に示されるように実質的に平坦であり得る。しかしながら、本発明は、これらの第1の表面110および/またはこれらの第2の表面120が平坦でない構造体100に及ぶ。
【0163】
上述の例では、構造体は基板100であり、その構造物は溝101またはトレンチによって形成され、その側面120は溝101の上部111および底部112と直角を形成する。上述のすべての例、特徴、ステップ、および技術的利点は、他のタイプのパターンを有する基板に完全に適用可能であり、組み合わせることができる。これらは、例えば、溝101であってもよく、その側面120は、溝101の上部111および底部112と直角を形成しない。さらに、端子、穴、階段状のパターンなど、様々なものであり得る他の形状にすることができる。
【0164】
さらに、上述の例では、基板の構造物は、基板の前面全体にわたって分布している。しかしながら、基板を形成する構造体に関して上述したすべての例、特徴、ステップ、および技術的利点は、基板または層を形成しないが、点状構造、例えば三次元隆起部分を形成する構造体に適用可能である。構造体は、ナノ構造であるか、または複数のナノ構造を含むことができる。
【0165】
さらに、上述の例では、基板の構造物は基板によって支持されている。この構造物は、基板によって支持される層によって完全に支持または形成され得る。
【符号の説明】
【0166】
33 イオン流
100 基板、構造体
101 溝
110 水平面、第1の表面
111 上部
112 底部
120 垂直面、第2の表面
200 初期層
300 リアクタ
310 反応チャンバ
320 プレート
340 絶縁弁
350 ポンプ
360 プラズマ源
370 電圧調整デバイス
【国際調査報告】