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特表2023-530198自在プロペラ、操作方法、及びその好適な利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(54)【発明の名称】自在プロペラ、操作方法、及びその好適な利用
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20230706BHJP
   B64C 11/06 20060101ALI20230706BHJP
   F03B 3/12 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
F03D3/06
B64C11/06
F03B3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504733
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 DE2020100671
(87)【国際公開番号】W WO2021018353
(87)【国際公開日】2021-02-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025229
【氏名又は名称】チェンヌパティ,シヴァ ラグラム プラサード
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】チェンヌパティ,シヴァ ラグラム プラサード
【テーマコード(参考)】
3H072
3H178
【Fターム(参考)】
3H072AA02
3H072BB07
3H072BB31
3H072CC43
3H178AA12
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB31
3H178BB90
3H178CC02
3H178DD70X
(57)【要約】
本発明は、新規の自在プロペラ(1)に関する。回転翼(30)のそれぞれには、タイミングギア(50)の基準歯車(51)と直接動作的に接続された歯車(52)があり、タイミングギア(50)は、ハブギア(12)と動作的に接続され、ハブギア(12)は、ハブ(10)の回転運動の角速度ωを検知及び処理するよう構成され、Srotが回転翼(30)の歯車(52)の大きさであり、Sが基準歯車(51)の大きさとしたとき、基準歯車(51)の角速度ωの、ハブ(10)の回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1±(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、タイミングギア(50)における回転翼(30)の基準歯車(51)及び歯車(52)を設計する。以上の点において、自在プロペラ(1)は、従来のプロペラ(1)とは一線を画すものである。本発明は、特に、風力装置、水力装置、船舶又は航空機の動力部等での利用に適している。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(20)に回転可能に取り付けられるハブ(10)を備える自在プロペラ(1)であって、
前記ハブ(10)は、互いに対向して配置された2枚の回転翼(30)、又は、互いに星形を形成するよう配置された少なくとも3枚の回転翼(30)を備え、
前記ハブ(10)には、前記回転翼(30)のそれぞれの縦軸(31)が360度回転した際に直円錐(70)の周面(71)を描くよう、前記回転翼(30)が、前記縦軸(31)の端部において、前記シャフト(20)の中心軸(21)に対して、角度αをなして配置されており、
前記ハブ(10)は、前記回転翼(30)をその前記縦軸(31)周りに回転させるタイミングギア(50)を備え、
前記回転翼(30)のそれぞれには、前記タイミングギア(50)の基準歯車(51)と直接動作的に接続された歯車(52)があり、
前記タイミングギア(50)は、ハブギア(12)と動作的に接続され、
前記ハブギア(12)は、前記ハブ(10)の回転運動の角速度ωを検知及び処理するよう構成され、
rotが前記回転翼(30)の前記歯車(52)の大きさであり、Sが前記基準歯車(51)の大きさとしたとき、前記基準歯車(51)の角速度ωの、前記ハブ(10)の回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1±(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、前記タイミングギア(50)における前記回転翼(30)の前記基準歯車(51)及び前記歯車(52)を設計する、
ことを特徴とする、自在プロペラ(1)。
【請求項2】
前記基準歯車(51)は、前記タイミングギア(50)の中心に配置され、前記回転翼(30)の前記歯車(52)に囲まれており、
rotが前記回転翼(30)の前記歯車(52)の大きさであり、Sが前記基準歯車(51)の大きさとしたとき、前記基準歯車(51)の角速度ωの、前記ハブ(10)の回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1+(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、前記回転翼(30)の前記基準歯車(51)及び前記歯車(52)を設計する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項3】
前記基準歯車(51)は、遊星歯車、リングギア、又は冠歯車として実現することが好ましく、前記タイミングギア(50)の中央から外れて配置される一方、前記回転翼(30)の前記歯車(52)を囲んでおり、
rotが前記回転翼(30)の前記歯車(52)の大きさであり、Sが前記基準歯車(51)の大きさとしたとき、前記基準歯車(51)の角速度ωの、前記ハブ(10)の回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1-(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、前記回転翼(30)の前記基準歯車(51)及び前記歯車(52)を設計する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項4】
前記シャフト(20)の前記中心軸(21)に対して、各回転翼の前記縦軸(31)がなす角度αは、30度~60度、35度~55度、40度~50度、又は、45度である、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項5】
前記ハブ(10)が前記シャフト(20)周りに回転すると、第1中継点(T1)において、前記回転翼(30)のそれぞれは、前記自在プロペラ(1)に関する3次元座標系(x,y,z)の垂直平面(x,z)に沿う、
ことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項6】
前記第1中継点(T1)において、前記回転翼(30)のそれぞれの前記縦軸(31)は、前記垂直平面(x,z)から最大+/-15度まで垂直ずれが許容される、
ことを特徴とする、請求項5に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項7】
前記ハブ(10)が前記シャフト(20)周りに回転すると、第3中継点(T3)において、前記回転翼のそれぞれは、前記自在プロペラ(1)に関する3次元座標系(x,y,z)の水平面(x,y)に沿う、
ことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項8】
前記第3中継点(T3)において、前記回転翼(30)のそれぞれの前記縦軸(31)は、前記水平面(x,y)から最大+/-15度まで水平ずれが許容される、
ことを特徴とする、請求項7に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項9】
前記回転翼(30)のそれぞれは、少なくともその一部が、2つの略平面上部(32)を有し、
前記回転翼(30)のそれぞれの前記平面上部(32)に、好ましくは、太陽電池が配置される、
ことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項10】
前記回転翼(30)のそれぞれの横縁部(33)は、円形又は円錐形である、
ことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項11】
互いに隣接する、及び/又は、互いに対向する回転翼(30)は、ケーブル(40)によって互いに接続され、該ケーブル(40)は、中央位置及び端部位置の間、好ましくは、回転翼先端(34)の領域又はそれに隣接した領域で、前記回転翼(30)に取り付けられていることが好ましい、
ことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項12】
前記シャフト(20)の前記中心軸(21)は、前記自在プロペラ(1)に関する取付座標系(X,Y,Z)の水平方向(X)に対して、0度~360度、好ましくは45度の角度で配置される、
ことを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)を操作する方法であって、
タイミングギア(50)によって、縦軸(31)周りの回転翼(30)の回転が、円錐(70)の周面(71)に沿った前記回転翼(30)の360度回転に同期して実行される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記回転翼(30)の、前記縦軸(31)周りの回転速度は、前記円錐(70)の前記周面(71)に沿った前記回転翼(30)の360度回転の速度の半分である、
ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
風力装置、水力装置、船舶又は航空機の動力部等における、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の自在プロペラ(1)の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトに回転可能に取り付けられるハブを備える、新規の自在プロペラに関する。ハブは、互いに対向して配置された2枚の回転翼、又は、互いに星形を形成するよう配置された少なくとも3枚の回転翼を備える。ハブには、回転翼のそれぞれの縦軸が360度回転した際に直円錐の周面を描くよう、回転翼が、縦軸の端部において、シャフトの中心軸に対して、角度αをなして配置されている。ハブは、回転翼をその縦軸周りに回転させるタイミングギアを備える。
【0002】
本発明はさらに、こうした自在プロペラの操作方法及びその好適な利用に関する。
【背景技術】
【0003】
プロペラ(「推進する」を意味するラテン語「propellere」に由来)は、一般的には、シャフト周りに放射状に(星形に)配置される羽根(以下では回転翼と称される)を有する動力源としての機械要素である。
【0004】
流体力学又は空気力学において、流体中に運動を生成するためにプロペラを利用する、あるいは、移動する流体を利用してプロペラを駆動する。流体中の運動への、典型的な適用例としては、船舶のスクリュープロペラとして利用されるプロペラが挙げられる。航空機の場合、プロペラは、エアスクリュープロペラと称されることがある。ヘリコプターの場合、上昇動作によって推進力を得るが、ここでは、ロータという用語が使用される。移動する流体によって駆動されるプロペラの、典型的な適用例としては、風力装置又は水力装置が挙げられる。これらは、推進力や揚力(A)を得るために動力を生成するのではなく、空気の流れや水流から動力を得るという点が異なるものの、同様の原理で機能する。このように利用されるプロペラは、リペラーとも呼ばれる。
【0005】
風力装置における初期のプロペラは、11世紀にまで遡るため、約1,000年の歴史がある。水平軸を有する現代の風力装置(HAWT)においても、風力エネルギーの抗力成分(W)を消失させ、揚力成分(A)のみを利用して、空気の流れからエネルギーを生み出している。特に、回転翼が2倍になればロータ面積が4倍になるという円の公式からも分かるように、より大きな電力を生み出すため、ロータ直径が次第に巨大化してきた。1990年代の終わりごろに新設された施設では、一般的な直径は50メートル未満であったが、2003年以降においては、60メートル~90メートルのものが主流となった。2018年には、平均ロータ直径は118メートル、平均ハブ高さは132メートルまで巨大化した。しかし、こうした発展に伴い、突風や暴風によって風力装置の損傷事例が増加するというデメリットが生じている。
【0006】
一方、いわゆるサボニウス型ロータ、つまり、垂直軸風力装置(VAWT)は、HAWT風力装置と比較すると、高さを必要としない設計である分、抗力成分(W)のみを利用し、揚力成分(A)の全てを無駄にしてしまう。
【0007】
稼働時、VAWT装置の多くは、特定の風速、例えば、立ち上がり速度又はカットイン速度を上回らないと、費用対効果を発揮できないという問題に直面する。立ち上がり速度を下回ると、VAWT装置は、アイドリング状態になるものの、制御電子機器及びアクチュエータは、例えば、回転翼のピッチングのため、依然として電力を供給する必要があり、装置は継続して電力を消費する。こうした問題に対処するため、特許文献1の風力装置が知られている。該風力装置は、サボニウス型ロータに類似しているが、ソーラーコンバータが回転翼に対して垂直に設けられている。このソーラーコンバータによって、太陽エネルギーが太陽エネルギーとは異なるエネルギー形態に、好ましくは、電気エネルギーに変換される。低風速時、ソーラーコンバータによって生成されたエネルギーを、装置に供給する点において有利である。このため、起動速度を下回っても、電力網から独立したかたちで、上記装置設備を稼働することができる。
【0008】
VAWT装置における、立ち上がり速度の問題に対する他の解決策として、風や流体の流れに対して、回転翼の整列を最適化することが検討される。こうした目的において、特許文献2では、複数の回転翼を備えるVAWT装置が開示されている。一方の回転翼は、回転垂直主軸に対して、30度~60度の角度をなしており、また他方の回転翼は、上記装置の空力効率を有利に増加させる、いわゆる「二次誘起流」を生成することを意図した、特別な空気力学的外形を有している。ここでの回転翼は、それ自体が、開示のVAWT装置のハブにしっかりと接続されている。一方、特許文献3に開示のVAWT装置も知られている。該VAWT装置は、垂直面から角度をつけて形成される回転翼を同様に備えているが、特別な外形ではなく、その材料組成に特徴がある。この回転翼は、柔軟性を有する素材からなり、ある程度の自己調整力を有する。つまり、風圧及びそれ自体の復元力に応じて、ある程度、独立して方向転換ができる。ここでもまた、回転翼は、上述のVAWT装置のハブに、しっかりと接続されている。
【0009】
さらに、特許文献4及び特許文献5に開示されるように、風や流体の流れそれぞれに対して、回転翼の機械的アラインメントを調節するタービン、プロペラ、あるいは装置が知られている。最後に、特許文献6及び特許文献7には、回転垂直軸に対して角度が付けられた回転翼を備えるVAWT装置が開示されている。ここで、回転翼の迎角は、風の流れに対し、ある程度、機械的に整列し得る。特許文献6は、独立型の駆動装置、特に、電動モータや空気圧駆動装置を提供するものであり、これにより、回転翼の迎角を変化させる。最後の特許文献7は、同様の目的において、遊星ギアを提供するものである。該遊星ギアは、ハブに配置した回転翼とともに、ハブが360度回転する間、回転翼をハブに対して縦軸周りにそれぞれ180度回転させるよう構成されている。しかしながら、ここに記載のギア構成では、中央の固定歯車、いわゆる太陽ギアに対する、回転翼に接続された歯車のサイズ比が、2~1に限定されるため、ギア展開が早い段階で巨大化してしまい、さらには、回転翼数が増加すると、ハブのサイズに大きく影響してしまう。場合によっては、ハブ上に回転翼が3枚しかない配置であっても、従来技術におけるギア設計では問題になりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1626176号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/187229号
【特許文献3】米国特許第4355956号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0076144号明細書
【特許文献5】国際公開第2014/188289号
【特許文献6】中国特許出願公開第105863957号明細書
【特許文献7】英国特許出願公開第2495745号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
こうした状況に鑑みて、本発明は、従来技術から改善したプロペラを提供することを目的としている。該プロペラは、特に、従来のプロペラと比較して、コンパクトでありながら、同時に、できるだけ多数の回転翼を配置でき、好ましくは、揚力(A)及び抗力(W)成分の両方を利用し、特に好ましくは、風力又は水力によるエネルギー生成と、船舶又は航空機の駆動との両方に対し、汎用的に好適に利用されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、請求項1の特徴を備えた自在プロペラによって実現される。さらなる有利な改良及び発展は、個別に、又は、互いに組み合わせて適用され得るが、従属項において示される。
【0013】
本発明に係る自在プロペラにおいて、回転翼のそれぞれには、タイミングギアの基準歯車と直接動作的に接続された歯車があり、タイミングギアは、ハブギアと動作的に接続され、ハブギアは、ハブの回転運動の角速度ωを検知及び処理するよう構成され、Srotが回転翼の歯車の大きさであり、Sが基準歯車の大きさとしたとき、基準歯車の角速度ωの、ハブの回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1±(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、タイミングギアにおける回転翼の基準歯車及び歯車を設計する。以上の点において、自在プロペラは、従来のプロペラとは一線を画すものである。
【0014】
特に、この場合、歯車の半径、直径、及び/又は、歯数は、それぞれの歯車の大きさを決定するパラメータとして利用され得る。
【0015】
さらに、本発明の文脈において、「歯車」という用語は、非常に幅広い種類の形状や素材からなる、目視可能な歯を有する従来の歯車だけでなく、いわゆる「フリクションギア」、つまり、互いに接触する非摺動歯車であって、摩擦によって互いを駆動可能なものを含む、と理解されるべきである。
【0016】
タイミングギアにおける回転翼の基準歯車及び歯車を上述の式に当てはめて設計することにより、従来技術と異なり、タイミングギアにおける回転翼の基準歯車及び歯車の間に、方向歯車を設ける必要性がなくなるため、回転翼の基準歯車及び歯車間の直接動作接続が実現できるという点で有利であり、これにより、さらにコンパクト設計のハブを提供することができる。次に、従来技術と比較すると、上述の式に応じたタイミングギア及びハブギアの相互作用により、タイミングギア歯車で使用される歯車、つまり、回転翼の基準歯車及び歯車に対するサイズ制限を取り除くことができるため、有利である。これによりハブ上に回転翼を3枚以上配置できるだけでなく、ハブの設計を、小型、堅牢、かつフレキシブルなものにできる。したがって、本発明に従って構築した自在プロペラのハブ上に実際に配置される回転翼数は、特に、風力装置、水力装置、船舶又は航空機の動力部等に有利に適用され得る。
【0017】
さらに、各回転翼の縦軸が360度回転すると、直円錐の周面を画定するため、コンパクト設計のプロペラが実現する。これは、各回転翼が、直円錐の周面に沿って回転する際、揚力成分(A)及び抗力成分(W)の両方を交互に利用できるためである。
【0018】
本発明の第1改良例では、基準歯車は、タイミングギアの中央に配置され、回転翼の歯車に囲まれていてもよい。こうした「内側構成」の場合、Srotが回転翼の歯車の大きさであり、Sが基準歯車の大きさとしたとき、基準歯車の角速度ωの、ハブの回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1+(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、回転翼の基準歯車及び歯車を設計することが好ましいとされ得る。「内側構成」により、回転翼の基準歯車及び歯車を、異なる大きさのもので、種々に組み合わせながら、歯車を選択することができ、複数の回転翼をハブ上に配置することができるため、有利である。また、選択される、回転翼の歯車に対する基準歯車の特定のサイズ比は、本発明に係る式を変形し、選択した回転翼数に合わせて、決定され得る。こうした「内側構成」では、基準歯車は、ハブよりも速く回転する。
【0019】
また、本発明の改良例では、基準歯車は、遊星歯車、リングギア、又は冠歯車として実現することが好ましく、タイミングギアの中央から外れて配置される一方、回転翼の歯車を囲んでいてもよい。こうした「外側構成」の場合、Srotが回転翼の歯車の大きさであり、Sが基準歯車の大きさとしたとき、基準歯車の角速度ωの、ハブの回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1-(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、回転翼の基準歯車及び歯車を設計することが好ましいとされ得る。「外側構成」も、「内側構成」と同様、回転翼数や可能とされる歯車組合わせに関して、柔軟であるが、さらに歯車の摩耗摩擦を低減することができる。上述した、本発明に係る式を変形してものを用いると、「外側構成」の基準歯車は、ハブよりも回転が遅くなる。
【0020】
本発明のさらなる改良例では、シャフトの中心軸に対して、各回転翼の縦軸がなす角度αは、30度~60度、35度~55度、又は、40度~50度であってもよい。本発明によれば、45度とすることで、揚力成分(A)及び抗力成分(W)の両方を最大限利用できる利点があるため、好ましいとされている。
【0021】
この点において、ハブがシャフト周りに回転した際、第1中継点(T1)において、各回転翼が自在プロペラに関する3次元座標系(x,y,z)の垂直平面(x,z)に沿っている場合、有用であることが証明されている。回転翼を、好ましくは、空気流又は水流に対して垂直な垂直平面に整列させると、(理論上の)最大値で抗力成分(W)を利用できるため、有利である。
【0022】
この場合、第1中継点(T1)では、各回転翼の縦軸は、垂直平面(x,z)から最大+/-15度の垂直ずれが許容され得る。
【0023】
さらに、ハブがシャフト周りに回転した際、第3中継点(T3)において、各回転翼が、自在プロペラに関する3次元座標系(x,y,z)の水平面(x,y)に沿っている場合、有用であることが証明されている。回転翼を、好ましくは、空気流又は水流に対して平行な水平面に整列させると、(理論上の)最大値で揚力成分(A)を利用できるため、有利である。
【0024】
この場合、第3中継点(T3)では、各回転翼の縦軸は、水平面(x,y)から最大+/-15度まで水平ずれが許容され得る。
【0025】
本発明のさらなる好ましい改良例では、各回転翼は、少なくともその一部が、2つの略平面上部を有している場合、有用であることが証明されている。
【0026】
略平面上部上に、太陽電池を配置することで、太陽エネルギーからさらに発電ができるため、有利である。
【0027】
本発明のさらなる好ましい改良例では、各回転翼の横縁部が円形又は円錐形である場合、有用であることが証明されている。円形又は円錐形の横縁部は、抗力係数を減少又は最小化するうえで有利である。
【0028】
回転翼の振動による性能低下を防ぐ目的において、互いに隣接する、及び/又は、互いに対向する回転翼が、ケーブルによって互いに接続されていると有用であることが証明されている。ここで、ケーブルは、中央位置及び端部位置の間、好ましくは、回転翼先端の領域又はそれに隣接した領域で、回転翼に取り付けられ得る。こうしたケーブルにより、回転翼に対してさらなる安定性、支持、そして強度を持たせることができるため、有利である。
【0029】
本発明は、シャフトの中心軸が、自在プロペラに関する取付座標系(x,y,z)の水平方向(X)に対して、0度~360度、好ましくは、45度の角度βをなす取付配置において、特に適している。角度β=45度で配置することによって、高台の上、傾斜屋根や平屋根の上、建築物の壁やほぼ垂直な面上であっても、本発明に係る自在プロペラを設置できるため、有利である。従来のマストの取付配置の場合であっても、シャフトの中心軸を、角度β=45度で配置することによって、本発明に係る自在プロペラを、マストから離して取り付けることができるため、有利である。これにより、突風や暴風時、既知のHAWT装置で普段発生するような、マスト上の回転翼の損傷や破損を防ぐことができるため、特に有利である。
【0030】
本発明は、さらに、上述の自在プロペラを操作する方法に関する。該方法において、ギア機構によって、縦軸周りの回転翼の回転が、円錐の周面に沿った回転翼の360度回転に同期して実行される。
【0031】
この方法の改良例において、回転翼の、縦軸周りの回転速度が、円錐の周面に沿った回転翼の360度回転の速度の半分であると有用であることが、証明されている。したがって、円錐の周面に沿った回転翼の回転速度は、ハブの回転速度、又は、自在プロペラ全体の回転速度と同期している。それに対し、回転翼は、縦軸周りに、好ましくは、円錐の周面に沿った回転翼の360度回転の方向とは逆方向に、回転する。これは、回転翼が円錐の周面に沿って360度回転する際、常時、揚力成分(A)又は抗力成分(W)を最大限利用できる整列となるため、有利である。
【0032】
本発明は、特に、好適な利用として、風力装置、水力装置、船舶又は航空機の動力部等での利用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の追加の詳細とさらなる利点については、添付の図面と組み合わせて、好ましい実施形態をもとにした説明において、明らかにするものとするが、本発明はこれに限定されるものではない。
概略図は、以下の通りである。
図1図1は、自在プロペラの斜視図を示す。
図2図2は、図1の自在プロペラの側面図を示す。
図3図3は、例として選択した4つの中継点T1、T2、T3、及びT4とともに、各回転翼の回転によって形成された円錐を示す。
図4図4は、丸みを帯びた回転翼先端とともに、自在プロペラの側面図を示す。
図5図5は、想定される回転翼外形の概要を示す。
図6図6は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図7図7は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図8図8は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図9図9は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図10図10は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図11図11は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図12図12は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図13図13は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図14図14は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図15図15は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図16図16は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図17図17は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図18図18は、本発明に係る自在プロペラの、種々の取付状況及び特定の用途を示す。
図19図19は、従来技術のタイミングギアの一例を示す。
図20図20は、「内側構成」としてタイミングギアを備える、本発明のプロペラの改良例を、断面図で示す。
図21図21は、「外側構成」としてタイミングギアを備える、本発明のプロペラの改良例を、断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の説明において、同一又は同等とみなされる構成要素については、同一の符号を付す。
【0035】
図1は、自在プロペラ1の斜視図を示す。該自在プロペラ1は、シャフト20に回転可能に取り付けられるハブ10を備える。ハブ10は、互いに対向して配置された2枚の回転翼30、又は、互いに星形を形成するように配置された少なくとも3枚の回転翼30を備える。星形に配置された4枚の回転翼30が設けられたものが、特に好ましい実施形態として、示されている。本発明によれば、ハブ10には、回転翼30のそれぞれの縦軸31が360度回転した際に直円錐70の周面71を描くよう、回転翼30が、縦軸31の端部において、シャフト20の中心軸21に対して、角度αをなして配置されている。
【0036】
図2は、図1の自在プロペラ1の側面図を示す。各回転翼30の縦軸31が360度回転した際、直円錐70の周面71を画定するため、コンパクト設計のプロペラ1が実現することが、この図から理解される。これは、各回転翼30が、直円錐の周面に沿って回転する際、揚力成分A及び抗力成分W(太矢印で表示)の両方を交互に利用できるためである。
【0037】
本発明の改良例において、シャフト20の中心軸21に対して、各回転翼30の縦軸31がなす角度αは、30度~60度、35度~55度、又は、40度~50度であってもよい。本発明によれば、図示のように、45度で配置することによって、揚力成分A及び抗力成分Wの両方を最大限利用できるため、有利であり、好ましいと証明されている。
【0038】
この点において、ハブ10がシャフト20周りに回転した際、第1中継点T1において、各回転翼30が自在プロペラ1に関する3次元座標系(x,y,z)の垂直平面(x,z)に沿っている場合、有用であることが証明されている。回転翼30を、好ましくは、空気流又は水流に対して垂直な垂直平面に整列させると、(理論上の)最大値で抗力成分Wを利用できるため、有利である。
【0039】
この場合、第1中継点T1では、各回転翼30の縦軸31は、垂直平面(x,z)(図示せず)から最大+/-15度の垂直ずれが許容され得る。
【0040】
さらに、ハブ10がシャフト20周りに回転した際、第3中継点T3において、各回転翼30が、自在プロペラ1に関する3次元座標系(x,y,z)の水平面(x,y)に沿っている場合、有用であることが証明されている。回転翼30を、好ましくは、空気流又は水流に足して平行な水平面に整列させると、(理論上の)最大値で揚力成分Aを利用できるため、有利である。
【0041】
この場合、第3中継点T3では、各回転翼30の縦軸31は、水平面(x,y)(図示せず)から最大+/-15度まで水平ずれが許容され得る。
【0042】
回転翼30の振動による性能低下を防ぐ目的において、互いに隣接する、及び/又は、互いに対向する回転翼30が、ケーブル40によって互いに接続されていると有用であることが証明されている。ここで、ケーブル40は、中央位置及び端部位置の間、好ましくは、回転翼先端34の領域又はそれに隣接した領域で、回転翼30に取り付けられ得る。こうしたケーブル40により、回転翼30に対してさらなる安定性、支持、そして強度を持たせることができるため、有利である。
【0043】
図3は、例として選択した4つの中継点T1、T2、T3、及びT4とともに、各回転翼30の回転によって形成された円錐70を示す。一般に知られているように、円錐とは、平面内にある限られた連続した表面部のすべての点が、平面外の頂点72に直線で接続されたときに形成される、幾何学的体である。表面部が、例示のように、円板73である場合、本体部は円錐70と称される。頂点72が、例示のように、円板73に対して垂直である場合、本体部は直円錐70と称される。本発明に係る自在プロペラ1の場合、頂点72は、ハブ10によって形成される。
【0044】
自在プロペラ1の改良例では、回転翼30が選択された中継点T1乃至T4を通過すると、(限定はされないが、少なくとも理論上は)以下の抗力W及び揚力Aの値を得るため、有利である。
【0045】
【表1】
【0046】
図4は、丸みを帯びた回転翼先端34とともに、自在プロペラ1の側面図を示す。各回転翼30は、少なくともその一部が、2つの略平面上部32を有している場合、有用であることが証明されている。略平面上部32上に、太陽電池を配置することで、太陽エネルギーからさらに発電ができるため、有利である(図示せず)。また、タイミングギア50(ここでは、機能的に正確に、又は、実際の縮尺で示されていない)が設けられていることで、回転翼30を縦軸31周りに回転可能にしている。本発明に係るタイミングギア50のより詳細の説明については、2つの改良例をもとに、図19乃至図21の参照して説明する。
【0047】
上述の自在プロペラ1を操作する方法は、タイミングギア50(図4及び図8では、機能的に正確に、又は、実際の縮尺で示されていない)によって、縦軸31周りの回転翼30の回転が、円錐70の周面71に沿った回転翼30の360度回転に同期して実行される、という点に特徴がある。
【0048】
該方法の改良例において、回転翼30の、縦軸31周りの回転速度が、円錐70の周面71に沿った、回転翼の360度回転の速度の半分である場合、有用であることが証明されている。したがって、円錐70の周面71に沿った回転翼30の回転速度は、ハブ10の回転速度、又は、自在プロペラ1全体の回転速度と同期している。それに対し、回転翼30は、縦軸31周りに、好ましくは、円錐70の周面71に沿った回転翼30の360度回転の方向とは逆方向に、回転する(回転翼30の回転方向及びハブ10の回転方向は、それぞれ、図2に矢印で示されている。これは、回転翼30が円錐70の周面71に沿って360度回転する際、常時、揚力成分A又は抗力成分Wを最大限利用できる整列となるため、有利である。
【0049】
図5は、好ましい回転翼外形の概要を示す。ここで、図5aは、略長方形の回転翼30を示す。図5bに示す回転翼は、丸みを帯びた横縁部33を備えている点で、異なっている。それに対して、図5cは、同様に丸みを帯びた横縁部33を備える、略菱形の回転翼30を示す。最後に、図5dは、円錐形の横縁部33を有する、略楕円の回転翼30を示す。円形又は円錐形の横縁部33は、抗力係数を減少又は最小化するうえで有利である。さらに、超平坦回転翼30を使用してもよい。図5e乃至図5hは、種々の実施形態を示しており、ここにおいて、安定化のため、回転翼30の中央及び/又は端部に補剛材35を設けてもよい。図5a乃至図5hに示す回転翼30は、既知の複合繊維材料から構成されていてもよい。また、特に、図5e乃至図5hに示す回転翼30の場合、補剛材35によって引っ張られる繊維材料も適している。
【0050】
本発明は、特に、好適な利用として、風力装置(図6乃至図9)、水力装置(図10乃至図14)、船舶(図15)又は航空機(図16乃至図18)の動力源等に適している。この場合の好適な取付配置として、シャフト20の中心軸21が、水平面に対して、0度~360度、好ましくは45度の角度をなす場合が挙げられる。
【0051】
図6は、タンデム風力装置の一部としての、2枚の自在プロペラ1の好ましい取付配置を示す。同図から、マスト81が自在プロペラ1に関する取付座標系(X,Y,Z)の垂直面Zに沿って地面80から立設する様子、そして、本発明に係る自在プロペラ1のハブ10によってそれぞれ駆動される、発電するよう構成された2基の発電機60が支持されている様子が見て取れる。この場合、シャフト20の中心軸21(図示せず)は、水平面Xに対して好ましい角度β=45度をなして、マスト81から離間して配置している。回転翼30の縦軸31周りの回転、円錐70の周面71に沿った回転翼30の360度回転、及び/又は、発電機60の駆動を同期させるため、例えば、ハブ10自体に(図4参照)、又は、ハブ10及び発電機60の間に、1つ以上のタイミングギア50(図4及び図8では、機能的に正確に、又は、実際の縮尺で示されていない)を設けてもよい。
【0052】
図7は、クアトロ風力装置の一部としての、4枚の自在プロペラ1の好ましい取付配置を示す。明らかなように、自在プロペラ1は、揚力成分A及び抗力成分Wによってマスト81にかかる力のバランスが可能な限り取れるよう、星形にグループ化されている。さらなる詳細は、図6に説明する通りである。
【0053】
図8は、タンデム風力装置の一部としての、2枚の自在プロペラ1の好ましい取付配置を示す。本例では、マスト81上ではなく地面80上に配置された一般的な発電機60が、タイミングギア50(ここでは、機能的に正確に、又は、実際の縮尺で示されていない)を介して、駆動されている。
【0054】
無論、本発明に係る自在プロペラ1を1枚、マスト81の端部、特に、移動電話機マストの端部に、配置してもよい(図9)。この場合、シャフト20の中心軸21(図示せず)は、マスト81の端部において、水平面Xに対して、好ましい角度β=90度で配置される。
【0055】
図9a乃至図9cは、種々の建築物82における個々の自在プロペラ1の好ましい取付配置をさらに示す。
【0056】
図9aから分かるように、本発明に係る自在プロペラ1は、建築物82の正面821に対して横方向に配置され得る。この場合、シャフト20の中心軸21(図示せず)は、建築物82の正面821から離間して、水平面Xに対して、好ましい角度β=45度で配置される。
【0057】
代替的に、又は、追加的に、本発明に係る自在プロペラ1はまた、建築物82の傾斜屋根822(図9b)又は平屋根823(図9c)上に配置される風力装置の一部であってもよい。この場合、シャフト20の中心軸21(図示せず)は、建築物82の屋根822又は823上に、水平面Xに対して、45度~90度の好ましい角度βで配置される。
【0058】
図10は、水力装置の一部としての自在プロペラ1の好ましい取付配置を示す。同図から、本発明に係る自在プロペラ1が、水域83の底面831に固定された軸受84上に配置される様子が分かる。こうした配置は、図示される中継点T1において、水流に対する抗力成分Wが最も大きい回転翼30が完全に水域83内に浸り、残りの回転翼30が、少なくとも部分的に、又は、好ましくは全体的に、水位832よりも上で回転するよう、構成されることが好ましいとされ得る。水域83は、河川、海峡、あるいは、ダムの放水口や水力発電所の水圧管といった、その他の流水域であってもよい。
【0059】
図11は、各自在プロペラ1に対して別個の軸受84を備えるタンデム水力装置の一部としの、2枚の自在プロペラ1の好ましい好ましい取付配置を示す。さらなる詳細は、図10に説明する通りである。
【0060】
図12は、水底831に固定された一般的な軸受マスト85を備えるタンデム水力装置の一部としての、2枚の自在プロペラ1の好ましい取付配置を示す。さらなる詳細はまた、図10に説明する通りである。
【0061】
図13は、図11のタンデム水力装置が橋梁86下に好ましく配置される様子、及び、軸受84が橋梁脚861の一部である様子を示す。さらなる詳細はまた、図10に説明する通りである。
【0062】
図14は、橋梁要素862の下に配置される軸受84を備える、別のタンデム水力装置を示す。さらなる詳細は、図10に説明する通りである。
【0063】
図15は、船舶87の動力源として自在プロペラ1を2枚使用する、好ましい使用例を示す。発電用途の場合と異なり、各自在プロペラ1のシャフト20は、ここでは、モータ90(ここでは示されない)又は同等の駆動源によって、駆動される。船舶がまっすぐ前進する場合、自在プロペラ1によって船舶87にかかる力の全てのバランスが取れるよう、駆動源によって自在プロペラ1が回転することが理解される。
【0064】
図16は、動力付き凧88の一部として自在プロペラ1を4枚使用する、好ましい使用例を示す。図7に係る実施形態と同様に、ここでも、自在プロペラ1は、揚力成分A及び抗力成分Wによって動力付き凧88にかかる力のバランスが可能な限り取れるよう、星形にグループ化されている。各自在プロペラ1のハブ10によって、それぞれの発電機60が駆動される様子が見て取れる。ここで、自在プロペラ1は、自在プロペラ1の力のバランスが取れるよう、中央軸受84周りに、星形にグループ化されている。その他の点においては、上記の説明と同様に参照され得る。
【0065】
図17及び図18は、航空機89(輸送用ドローン)の動力源として自在プロペラ1を2枚使用する、好ましい使用例を示す。発電用途の場合と異なり、各自在プロペラ1のシャフト20は、ここでは、モータ90又は同等の駆動源によって、駆動される。航空機がまっすぐ前進する場合、自在プロペラ1によって航空機89にかかる力の全てのバランスが取れるよう、駆動源によって自在プロペラ1が回転することが理解される。この場合、図17に示す航空機89は、追加の翼を必要としないため、有利である。むしろ、航空機の外側ハウジング上に自在プロペラ1を直接配置してもよい。これにより、航空機89の機動性を限りなく高めることがきるため、有利である。必要に応じて、図18に示す航空機89の場合においては、自在プロペラ1の、航空機89の外側ハウジングへの境界として、短翼を設けてもよい。これにより、航空機89の飛行安定性が向上するため、有利である。
【0066】
以下の図19乃至図21には、種々の改良例及び構成例をもとに、本発明に係る自在プロペラ1の基本的な操作、特に、タイミングギア50及びハブギア12の相互作用について、示されている。
【0067】
そのため、図19では、従来技術のタイミングギア50の例を示す。
【0068】
ここで、5枚の回転翼30を制御するタイミングギア50が例示されている。ここでは、回転翼30の基準歯車51及び5つの歯車52に加えて、基準歯車51及び歯車52に位置する5つの方向歯車53をさらに設ける必要がある。方向歯車53は、特に、力を伝達し、回転翼30の歯車52の回転方向を調節するためのものである。また、Srotが回転翼30の歯車52の大きさであり、Sが基準歯車51の大きさとしたとき、回転翼30の基準歯車51及び歯車52の間において、Srot/S=2/1のサイズ関係が保たれる必要がある。これにより、縦軸31周りの回転翼30の回転が、円錐70の周面71に沿った回転翼30の360度回転に同期して確実に実行される。従来技術の場合、前述の設計要件を満たすと、同様のタイミングギア50を備えるハブ10の構造が比較的大きなものになってしまう。さらに、複数の大型歯車51、52、及び53を、比較的小型のハブ10に配置しようとすると、多くの場合、経済的に実現不可能かつ技術的に困難であり、構成によっては、技術的に不可能である。
【0069】
それに対して、図20は、いわゆる「内側構成」としてタイミングギア50を備える、本発明に係るプロペラ1の改良例を、断面図で示す。
【0070】
明らかなように、ハブ10は、回転翼30を縦軸31周りに回転可能にするタイミングギア50を備える。各回転翼30上には、タイミングギア50の基準歯車51に直接動作的に接続された歯車52が配置される。従来技術とは対照的に、方向歯車53を必要としないという利点がある。タイミングギア50は、ハブギア12に動作的に接続され、ハブギア12は、ハブ10の回転運動の角速度ωを検知して処理するよう、構成されている。タイミングギア50及びハブギア12の間の動作接続は、種々の方法により実現され得るが、本例では、タイミングギア50の基準歯車51が、接続要素511を介して、ハブギア12、特に、ハブギア12の歯車のうち1つと動作的に接続される。ハブギア12は、遊星ギア又は簡易的な歯車ギアとして設計されることが好ましいとされ得る。
【0071】
ここで示すタイミングギア50の「内側構成」では、基準歯車51がタイミングギア50の中央に配置され、回転翼30の歯車52に囲まれる。本発明によれば、Srotが回転翼30の歯車52の大きさであり、Sが基準歯車51の大きさとしたとき、基準歯車51の角速度ωの、ハブ10の回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1±(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、回転翼30の基準歯車51及び歯車52を設計する。
【0072】
ここで示すタイミングギア50の「内側構成」の場合、Srotが回転翼30の歯車52の大きさであり、Sが基準歯車51の大きさとしたとき、基準歯車51の角速度ωの、ハブ10の回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1+(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、回転翼30の基準歯車51及び歯車52を設計することが好ましい。
【0073】
以下の表では、種々の歯車サイズ組合わせと、前述した、本発明に係る式を利用して計算した基準歯車51の角速度ωと、それぞれの組合わせでハブ10上に配置され得る回転翼30の最大可能個数と、の例が示されている。ここで、ハブ10の回転運動の角速度ωは、1に設定されている(したがって、ωの値は、ωに対する相対速度である)。
【0074】
【表2】
【0075】
この表を参照すると、例えば、サイズ比Srot/Sが1:1の場合、ハブ10の回転運動の角速度ωに対する、基準歯車51の角速度ωは、1.5となり、対応して設計・選択されたハブギア12に、技術的に収容可能となる。例えば、上述した「内側構成」におけるタイミングギア50の設計、ハブギア12の設計、そして本発明に係る式によって計算された両者間の相互作用を鑑みると、最終的に、最大4~5枚の回転翼30をハブ10上に配置できる。
【0076】
この場合の上記表は、理論上可能とされる組合わせの一部のみを示しており、タイミングギア50の設計が用途に応じて任意に選択可能であるという利点が得られる。
【0077】
最後に、図21は、「外側構成」としてタイミングギア50を備える、本発明に係るプロペラ1の改良例を、断面図で示す。
【0078】
ここで、図20に示す「内側構成」との違いは、遊星歯車、リングギア、又は冠歯車として実現されることが好ましい基準歯車51が、タイミングギア50の中央から外れて配置される一方、回転翼30の歯車52を囲んでいる点にある。こうした構造に関しても、図20で説明した事項が本改良例に適用される。この場合、Srotが回転翼30の歯車52の大きさであり、Sが基準歯車51の大きさとしたとき、基準歯車51の角速度ωの、ハブ10の回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1-(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、回転翼30の基準歯車51及び歯車52を設計することが好ましい。
【0079】
以下の表では、種々の歯車サイズ組合わせと、前述した、本発明に係る式を利用して計算した基準歯車51の角速度ωと、それぞれの組合わせでハブ10上に配置され得る回転翼30の最大可能個数と、の例が示されている。ここで、ハブ10の回転運動の角速度ωは、1に設定されている(したがって、ωの値は、ωに対する相対速度である)。
【0080】
【表3】
【0081】
この表を参照すると、例えば、サイズ比Srot/Sが1:4の場合、ハブ10の回転運動の角速度ωに対する、基準歯車51の角速度ωは、0.875となり、対応して設計・選択されたハブギア12に、技術的に収容可能となる。例えば、上述した「外側構成」におけるタイミングギア50の設計、ハブギア12の設計、そして本発明に係る式によって計算された両者間の相互作用を鑑みると、最終的に、最大4~6枚の回転翼30をハブ10上に配置できる。
【0082】
上記表の最後の行に示された組合わせは、回転翼30の歯車52が、基準歯車51の大きさSの2倍になっているものだが、従来技術(図19参照)のタイミングギア50においては、物理的に(技術的に)まったく実現可能性のないものであり、仮に実現できたとしても、チェーンドライブ又は歯付きベルトドライブを用いる必要がある。
【0083】
ここでもまた、上記の表は、理論上可能とされる組合わせの一部のみを示しており、「外側構成」の場合もまた、タイミングギア50の設計が用途に応じて任意に選択可能であるという利点が得られる。
【0084】
本発明は、新規の自在プロペラ1に関する。回転翼30のそれぞれには、タイミングギア50の基準歯車51と直接動作的に接続された歯車52があり、タイミングギア50は、ハブギア12と動作的に接続され、ハブギア12は、ハブ10の回転運動の角速度ωを検知及び処理するよう構成され、Srotが回転翼30の歯車52の大きさであり、Sが基準歯車51の大きさとしたとき、基準歯車51の角速度ωの、ハブ10の回転運動の角速度ωに対する比が、ω/ω=1±(1/2)×(Srot/S)を満たすよう、タイミングギア50における回転翼30の基準歯車51及び歯車52を設計する。以上の点において、自在プロペラ1は、従来のプロペラ1とは一線を画すものである。
【0085】
本発明は、特に、風力装置、水力装置、船舶又は航空機の動力部等での利用に適している。
【符号の説明】
【0086】
1 自在プロペラ
10 ハブ
11 ハブ10の中心軸
12 ハブギア
20 シャフト
21 シャフト20の中心軸
30 回転翼
31 回転翼30の縦軸
32 回転翼30の上部
33 回転翼30の側部
34 回転翼先端
35 補剛材
40 ケーブル
50 タイミングギア
51 基準歯車
511 接続要素
52 回転翼(30)の歯車
53 方向歯車(従来技術のみ)
60 発電機
70 円錐
71 円錐70の周面
72 円錐70の頂点
73 円錐70の円板
80 土台
81 マスト
82 建築物
821 正面
822 傾斜屋根
823 平屋根
83 水域
831 水域底
832 水面
84 軸受
85 軸受マスト
86 橋梁
861 橋梁脚
862 橋梁要素
87 船舶
88 動力付き凧
89 航空機
90 モータ
A 揚力成分
W 抗力成分
T1,T2,T3,T4 中継点
α 自在プロペラ1の3次元座標における、縦軸31及び中心軸21間の角度
β 自在プロペラ1の取付座標系における、シャフト20の中心軸21と水平面Xとの間の角度
x,y,z 自在プロペラ1の3次元座標系
x 水平面の第1方向
y 水平面又は垂直面の第2方向
z 垂直面の第1方向
X,Y,Z 自在プロペラ1の取付座標
X 水平面
Y 水平面(Xに垂直)
Z 垂直面
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図5c)】
図5d)】
図5e)】
図5f)】
図5g)】
図5h)】
図6
図7
図8
図9-9c】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】