(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(54)【発明の名称】多関節システムによって保持されたツールを用いて対象物に対する操作を自動で行うための方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022555706
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 FR2021050380
(87)【国際公開番号】W WO2021181035
(87)【国際公開日】2021-09-16
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519453320
【氏名又は名称】オラノ・デエス-デマンテレメ・エ・セルヴィス
(71)【出願人】
【識別番号】518194350
【氏名又は名称】シレアーヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ルイ・ドパリ
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ・アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ・トロ
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS27
3C707BS10
3C707JS01
3C707JU03
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS12
3C707KS16
3C707KS20
3C707KS33
3C707KT03
3C707KT05
3C707KT06
3C707KT15
3C707KW03
3C707KX05
3C707LS20
3C707LU01
3C707LV04
3C707LV05
3C707LV15
3C707MS07
3C707MS08
(57)【要約】
本発明は、対象物(2)および作業環境(3)が可変的であるか、または操作を行うには不十分にしか定義されていない状況下で、作業環境(3)内で動作可能な多関節システム(5)によって保持されたツール(4)を用いて対象物(2)に対する操作を自動的に行うための方法および装置に関する。本発明によれば、その方法は、- 少なくとも1つの3Dセンサ(6)を用いて対象物(2)および作業環境(3)の画像を散布図の形でキャプチャし、その画像を多関節システムのCADモデルおよび環境の可能なCADモデルとマージしてワーク画像とし、衝突防止パラメータを定義するステップAと、- 対象物(2)を表すワーク画像の部位にツール(4)の経路を定義し、作業画像で多関節システム(5)およびツールの対応する動作のシミュレーションを行って操作が実行可能であることを担保するステップBと、- ステップBで操作が実行可能であるとされたならば、対象物(2)に対する操作を行うために定義された経路(10)に従ってツール(4)を保持する多関節システム(5)の動作を実際に行うステップCとを少なくとも含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業環境(3)内で可動な多関節システム(5)によって保持されたツール(4)を用いて対象物(2)に対する操作を自動で行うための方法において、
- 前記対象物(2)および前記作業環境(3)のすべてまたは一部の画像を少なくとも1つの3Dセンサ(6A、6B、6C)を用いて全体点群(7)の形でキャプチャし、前記画像(7)を前記多関節システム(5)の既存のCADモデルおよび出来形の前記作業環境(3)のすべてまたは一部の可能な既存のCADモデルとマージし、このマージによってワーク画像(17)がもたらされ、さらに衝突防止パラメータを定義するステップAと、
- 前記対象物(2)を表す前記ワーク画像の部分に対して前記ツール(4)の軌道を定義し、前記ワーク画像(17)で前記多関節システム(5)および前記ツールの対応する動作のシミュレーションを行って前記操作が実行可能であることを担保するステップBと、
- ステップBで前記操作が実行可能であるとされたならば、前記対象物(2)に対する前記操作を行うために定義された前記軌道(10)に従って前記ツール(4)を保持する前記多関節システム(5)の動作を実際に行うステップCと
を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記多関節システム(5)によって保持された3Dセンサ(16)を用いて前記対象物(2)のゾーンの詳細画像(9)を前記全体点群よりも高密度で、より高精度の点群の形でキャプチャするように前記多関節システム(5)の動作を制御し、前記対象物(2)の対応するゾーンの前記キャプチャ画像(9)を前記全体点群(7)による対応部分の代わりに前記ワーク画像(17)に組み込むステップA’をステップAとステップBの間に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多関節システム(5)を自動で動作させて、近傍に保管された前記3Dセンサ(16)を把持して接続するステップA”をステップAとステップA’の間に含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多関節システム(5)を自動で動作させて、任意に3Dセンサ(16)を取り外して降ろし、近傍に保管された前記ツール(4)に接続するステップC’をステップBとステップCの間に含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記操作を行うためのツール(4)をステップBのシミュレーションで、またシミュレーションのためにツールデータベースの中から選ぶステップB’をステップBの前に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップCで、前記対象物(2)に直接接する前記ツール(4)を保持する前記多関節システム(5)の動作速度が、前記ツール(4)にかかる力の直接的または間接的な計測に基づいてリアルタイムで調節されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップA’で、前記3Dセンサ(16)または前記多関節システム(5)の一部が前記対象物(2)または前記作業環境(3)の要素に接近すると前記多関節システムの動作が自動的に減速し、前記3Dセンサ(16)または前記多関節システム(5)の一部が対象物(2)または前記作業環境(3)の要素に対してステップAで定義された衝突防止パラメータによる安全距離まで来たところで動作は自動的に停止することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップBにおける前記対象物(2)を表す前記ワーク画像の部分に対する前記ツール(4)の軌道が、少なくとも1つの始点-終点ペアか、またはあらかじめ定義された少なくとも1つの幾何学形、とりわけ平面(11)、少なくとも1つの線、もしくはマスクのいずれかを前記ワーク画像(17)内に位置決めすることによって定義されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法を実装するための設備(1)において、多関節システム(5)と、コンピュータ処理システムおよびディスプレイに接続された少なくとも1つの3Dセンサ(6、16)とを備え、前記コンピュータ処理システムが、
- 少なくとも1つの3Dセンサ(6、16)によってキャプチャした画像をもとに、前記対象物(2)および前記作業環境(3)のすべてまたは一部の全体点群(7)をディスプレイ上に表し、
- 前記多関節システム(5)の既存のCADモデル、および前記作業環境(3)のすべてまたは一部の可能な既存のCADモデルの前記全体点群(7)をマージして得られるワーク画像(17)を表し、
- 前記対象物(2)を表す前記ワーク画像(17)の部分に対する前記ツール(4)の軌道(10)の定義を可能にし、
- 前記ワーク画像(17)で前記多関節システム(5)および前記ツール(4)の対応する動作のシミュレーションを行って前記操作が実行可能であることを担保し、
- 前記操作が実行可能であるとされたならば、前記対象物(2)に対して前記操作を行うために定義された前記軌道(10)に従って前記ツール(4)を保持する前記多関節システム(5)を実際に動作させるように設計されることを特徴とする設備。
【請求項10】
ステップCで前記対象物(2)に直接接する前記ツール(4)を保持する前記多関節システム(5)の動作速度を、前記ツール(4)にかかる力の直接的または間接的な計測に基づいてリアルタイムで調節する手段を備えることを特徴とする、請求項9に記載の設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物およびその作業環境の位置および幾何学形状が変化する可能性があり、かつ/または対象物に対する操作を行うにはそれらの定義が不十分な状況下で、作業環境内にある対象物に対して切削、溶接、マーキング、はがし、塗装、表面処理、センサその他あらゆるタイプの分析ツール等の位置決めなどの操作を行う技術分野に関する。
【0002】
たとえば、本発明は、放射能関連のリスクを有する可能性のある対象物の計測、切削、把持の操作が行われる解体技術部門に適用されるが、それに限定されるものではない。
【0003】
本発明は、より詳細には、対象物および作業環境の位置および幾何学形状が変化しつつあり、かつ/または自動モードでその操作を行うにはそれらの定義が不十分な状況下で、多関節システムによって保持されて作業環境内で可動なツールを用いて対象物に対する操作を自動で行うための方法および設備に関する。操作は、いかなるタイプの環境のもとで、いかなるタイプのツールを用いて、いかなるタイプの対象物に対して行われるあらゆる種類のものであってもよい。
【0004】
本発明は、たとえば、作業者がアクセスできないか、またはその中では身体を自由に動かすことのできない、危険で閉鎖された環境の中で対象物に対して何らかの操作を行う場合などに有利に適用することができる。
【背景技術】
【0005】
本発明の分野、たとえば放射性の対象物の解体分野では、解体操作は閉鎖された環境の中で作業者により手動で行われることができる。
【0006】
解体操作には、対象物の計測、切削および把持の操作が含まれる。とりわけ、切削操作の目的は、より小さな要素を生成することによって、それを収める廃棄物コンテナの充填などを最適化することにある。したがって、こうしたより小さな部品はシステムによって扱われてコンテナに収められる必要がある。
【0007】
こうしたそれぞれの操作は、たとえばアングルグラインダや、関係する操作の実施を可能にするあらゆるタイプのツールのほか、特に作業を行う現場の放射線環境および実施する操作の性質を考慮した抑制的な防護装備(通気つなぎ服、安全手袋など)を備えた作業者によって行われる。
【0008】
そのため、こうした操作の実施は、作業者の安全という意味においても、その難度および所要時間という意味においても、最適なものではない。
【0009】
それ以外の場合、操作は作業者が接触状態で行うことはできず、(計測、切削、把持のための)ツールはその操作を行う多関節システムによって保持されることになる。作業者は、制御ホーン(control horn)を用いて、カメラおよびスクリーンによる間接画像を見ながら遠隔でシステムを駆動する。そうしたシステムの欠点として、高価であることのほか、速度、作用力および位置決めに関してその制御の精度が低く、完了までの時間が長いこと、ツールの消耗品(刃、ディスク)の損耗が早いことが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、作業環境内における対象物に対する操作実施の方法および設備を提供することで、安全性、正確性および速度に関する最適条件を担保できるようにして、従来技術の欠点を補うことを目的とする。
【0011】
この目的のため、作業環境内において可動な多関節システムによって保持されたツールを用いて対象物に対する操作を自動的に行うための方法が開発された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、その方法は
○ 対象物および作業環境のすべてまたは一部の画像を少なくとも1つの3Dセンサを用いて全体点群(overall point cloud)の形でキャプチャし、
○ その画像を多関節システムの既存のCADモデルおよび出来形の環境のすべてまたは一部の可能な既存のCADモデルとマージし、それによってワーク画像がもたらされ、
○ 衝突防止パラメータを定義する
ステップAと、
- 対象物を表すワーク画像の部分に対してツールの軌道を(好ましくは作業者が)定義し、それに対応する多関節システムおよびツールの動作のシミュレーションをワーク画像で行って操作が実行可能であることを担保するステップBと、
- ステップBで操作が実行可能であるとされたならば、対象物に対する操作を行うために定義された軌道に従ってツールを保持する多関節システムの動作を実際に行うステップCと
を少なくとも含む。
【0013】
本発明において、3Dセンサとは、対象物または対象物の一部を三次元画像の形にデジタル化するあらゆる手段を意味し、これには、とりわけ3Dカメラ、レーザースキャナ、ビデオ手段、ウェブカメラなどが含まれる。
【0014】
衝突防止パラメータとしては、たとえば、それを過ぎると、多関節システムおよびツールの一切の運動の全面停止または動作の減速などの安全機能が自動的に働くという閾値距離があり、たとえばそれによって衝突防止パラメータとなる閾値速度までである。
【0015】
このようにすることで、本発明は、当初は不確実もしくは未知またはアクセス不能な環境にあった各種操作を、それが正しく実行されることを保証しつつ、遠隔から自動モードで行うことを可能にする。
【0016】
本発明は、多関節システムの一切の動作に先立って作業環境が全体点群の形でデジタル化されるという点で有利である。そうすることで、多関節システムの動作に対する様々な障害物の位置が、すなわち作業環境内にある各種要素およびこれから行われる操作の対象物の位置がわかる。そのため、多関節システムまたはそのツールと環境内の各種要素との衝突は衝突防止パラメータによって回避することができる。
【0017】
このことは、実施される方法を制御する作業者が作業環境を直接見ることができない場合には特に有利である。作業者は、作業環境および対象物をディスプレイ上に点群として可視化し、所望の操作、たとえば切削操作を行うためのツールの動作軌道を定義する。
【0018】
本発明は、その方法をとることによって多関節システムおよびそのツールの対応する動作のシミュレーション、特にCADでのシミュレーションを行うことが可能になり、衝突を起こすことなく、動作を行えるようにするという点でも有利である。
【0019】
そのため、シミュレーションによって動作の実行可能性が確認されれば、ツールを保持する多関節システムの動作を実際に行って対象物に対してそのとおりの操作を実施することができる。
【0020】
この方法は少なくとも3つのステップで実施することができる。すなわち、
- 全体点群の形でデジタル化することによって環境および対象物を確定するステップA、
- 軌道を定義し、シミュレーションするステップB、および
- 実行するステップC。
【0021】
好ましくは、この方法は、多関節システムによって保持された3Dセンサを用いて対象物のゾーンの詳細画像を全体点群よりも高密度で、より高精度の点群の形でキャプチャするように多関節システムの動作を制御し、対象物の対応するゾーンのそのキャプチャ画像を全体点群による対応部分の代わりにワーク画像に組み込むステップA’をステップAとステップBの間にさらに含む。
【0022】
この追加のステップは、実施する操作の様々な軌道を定義するための一段と高精度の改良されたワーク画像を提供する。さらに、この追加のステップは、ステップAで使用したセンサでは視認できないゾーンの画像のキャプチャを多関節システムの動作によって可能にするもので、それによってワーク画像を完全なものにする。
【0023】
多関節システムによって保持される3Dセンサは、多関節システムに常時取り付けられたままであることも、その近傍に保管されることもできる。後者の構成では、方法は、多関節システムを自動で動作させて、近傍に保管された3Dセンサを把持し、3Dセンサに接続するステップA’’をステップAとステップA’の間に含む。
【0024】
ある具体的な実施形態によれば、方法は、多関節システムを自動で動作させて、任意に3Dセンサを取り外して降ろし、近傍に保管されたツールに接続するステップC’をステップBとステップCの間に含む。
【0025】
この特徴は、多関節システムに接続できるように複数のツールを近傍に保管しておくことを可能にする。
【0026】
幾つかの異なるツールが利用可能とされる場合、方法は、操作を行うためのツールをステップBのシミュレーションで、またシミュレーションのためにツールデータベースの中から選ぶステップB’をステップBの前にさらに含む。
【0027】
有利には、またツールの損傷を防ぐため、方法は、ステップCで対象物に直接接するツールを保持する多関節システムの動作速度を、ツールにかかる力の直接的または間接的な計測に基づいて必要に応じてリアルタイムで調節できるという点でも優れている。
【0028】
ステップA’で3Dセンサを保持する多関節システムの動作を安全なものとするため、3Dセンサまたは多関節システムの一部が対象物または作業環境の要素に接近すると多関節システムの動作が自動的に減速し、3Dセンサまたは多関節システムの一部が対象物または作業環境の要素に対してステップAで定義された衝突防止パラメータによる安全距離まで来たところで動作は自動的に停止する。
【0029】
ステップBによる対象物を表すワーク画像の部分に対するツールの軌道の定義は、少なくとも1つの始点-終点ペアか、またはあらかじめ定義された少なくとも1つの幾何学形であって、少なくとも1つの線、平面、マスクなどからなるライブラリの中から選ばれた幾何学形のいずれかをワーク画像内に位置決めすることからなる。
【0030】
本発明は、上に説明した方法を実装するための設備において、多関節システムと、コンピュータ処理システムおよびディスプレイに接続された少なくとも1つの3Dセンサであって、
- 少なくとも1つの3Dセンサでキャプチャした画像をもとに、対象物および作業環境のすべてまたは一部の全体点群をディスプレイ上に表し、
- 全体点群、多関節システムの既存のCADモデル、および出来形の環境のすべてまたは一部の可能な既存のCADモデルをマージして得られるワーク画像を表すように
設計された3Dセンサとを備える設備にも関し、
そのコンピュータ処理システムはまた、対象物を表すワーク画像の部分に対するツールの軌道の定義を可能にし、ワーク画像で多関節システムおよびツールの対応する動作のシミュレーションを行って操作が実行可能であることを担保し、操作が実行可能であるとされたならば、対象物に対してその操作を行うために定義された軌道に従ってツールを保持する多関節システムを実際に動作させるように構成される。
【0031】
有利には、設備は、ステップCで対象物に直接接するツールを保持する多関節システムの動作速度を、ツールにかかる力の直接的または間接的な計測に基づいてリアルタイムで調節する手段を備える。
【0032】
本発明のその他の特徴や利点については、限定的な意図なく、表明として、添付の図面を参照しながら行う以下の説明によってより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による設備の概略斜視図であって、ツールを保持した多関節システムがその作業環境の中で対象物に対する操作を行おうとしている図である。
【
図2】
図1と同様の概略図であって、多関節システムが3Dカメラを保持している図である。
【
図3】一方の3Dカメラでキャプチャした画像から得られた対象物および作業環境の部分の全体点群と、他方の多関節システムのCADモデルとをマージしてワーク画像とされたものがディスプレイ上に表現された斜視図である。
【
図4】
図3と同様の図であって、多関節システムが対象物の詳細の画像をキャプチャするための3Dカメラを保持しており、その対象物の詳細が全体点群の対応する部分に代えてワーク画像に組み込まれた図である。
【
図5】
図4と同様の図であって、対象物を表すワーク画像の部分にツールの軌道が定義されている図である。
【
図6】
図5と同様の概略図であって、ワーク画像における多関節システムおよびツールの動作のシミュレーションを示した図である。
【
図7】対象物を表すワーク画像の部分と交わる平面の位置決めを詳細に示した図である。
【
図8】
図7と同様の図であって、位置決めされた平面と対象物を表すワーク画像の部分との交点によって得られる軌道が自動的に計算されることで、多関節システムの動作軌道が自動的に計算される図である。
【
図9】多関節システムの動作のシミュレーション段階を示した図である。
【
図10】本発明による方法の簡易フローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、作業環境(3)内に置かれた対象物(2)に対する操作を自動で行う方法および設備(1)に関する。
【0035】
本発明は何らかの1つの操作に限られるものではなく、計測、切削、把持、溶接、書込み、マーキング、はがし、塗装、表面処理、センサその他あらゆるタイプの分析ツール等の位置決めなどの操作に関係したものであることができる。そうした操作は、作業環境(3)内で可動な多関節システム(5)によって保持されたツール(4)によって行われる。
【0036】
本発明の方法による操作が行われる対象物(2)は、放射能を有する物体やそれ以外のあらゆる解体の対象物、または修理や溶接などのあらゆる種類のものであることができる。
【0037】
対象物(2)に関係する作業環境(3)は、たとえば危険で閉鎖された作業環境や、放射性環境、高所作業のように、作業者がアクセスできない、作業者が自由に動くことができないといった環境など、あらゆる種類のものであってよい。
【0038】
図1を見ると、設備(1)は、多関節システム(5)を、とりわけ作業環境(3)内で全方向に可動なロボットアームの形で備える。設備(1)は、対象物(2)および作業環境(3)のすべてまたは一部の画像をキャプチャしてデジタル化し、既知のコンピュータ処理システムとディスプレイによって対象物(2)および作業環境(3)のすべてまたは一部の全体点群(7)の三次元表現を描き出すために、少なくとも1つの3Dセンサ、たとえば3Dカメラ(6A、6B、6C)を備える。
【0039】
図示された例では、設備(1)は、多関節システム(5)の周りからその上を取り囲むアーチ(8)に配置されて固定された3つの3Dカメラ(6A、6B、6C)を備える。
【0040】
図3に沿って説明すると、対象物(2)に対する操作を安全に行うため、設備(1)は、対象物(2)および作業環境(3)のすべてまたは一部の画像をアーチ(8)に取り付けられた3Dカメラ(6A、6B、6C)を用いて全体点群(7)の形でキャプチャし、その全体点群(7)を、多関節システム(5)の既存のCADモデルおよび、アーチ(8)のCADモデルなどのような出来形の環境の既存のCADモデルとマージして、それによって得られるワーク画像(17)をディスプレイ(
図3のアセンブリ)に表示する少なくとも1つのステップAを含む方法を実装する。
【0041】
それにより、作業環境(3)で障害となり得るものを特定し、多関節システム(5)の動作を安全なものにすることができる。アーチ(8)、3Dカメラ(6A、6B、6C)のほか、多関節システム(5)それ自体やそのツール(4)など、作業環境(3)の標準要素のすべてまたは一部が既知で、CAD内にすでにモデル化されている可能性もあることは留意されてよい。
【0042】
このように、多関節システム(5)およびそのツール(4)の動作を作業環境(3)の各種要素と関連づけて知ることができ、あらかじめ定義された衝突防止パラメータによって自動的に衝突を回避することができる。
【0043】
対象物(2)に対する所望の操作を行うため、設備(1)は、様々なタイプの複数のツール(4)や、3Dカメラ(16)のような3Dセンサを専用の収納箱内に入れるなどして、近傍に保管する形で備えることが好ましい。
【0044】
この3Dカメラ(16)は3Dカメラ(6A、6B、6C)と同タイプであることも、それとは異なるものであることもできるが、後者の場合、有利には3Dカメラ(6A、6B、6C)よりも精度の高いものとされる。
【0045】
そのため、本発明による方法は、多関節システム(5)を自動で、したがって安全に、動作させて、近傍に保管された3Dカメラ(16)のもとに送り、3Dカメラ(16)を把持してそれに接続するステップA”をステップAの後に含むことが有利である。
【0046】
多関節システム(5)が3Dカメラ(16)を把持した後、方法は、多関節システム(5)の動作を制御して、3Dカメラ(6A、6B、6C)よりも高精度の3Dカメラ(16)を用いて対象物(2)の様々なゾーンの詳細画像を、全体点群(7)よりも高密度かつ高精度の点群の形でキャプチャし、対象物(2)の対応ゾーンのそのキャプチャ画像(9)を全体点群(7)の対応部分の代わりにワーク画像(17)(
図4参照)内に組み込むステップA’(
図2参照)を含む。
【0047】
様々な画像をキャプチャする多関節システム(5)の動作は、自動的に制御されるか、または作業環境(3)の遠隔から作業者によって、たとえば制御レバーで制御されることによって、アクセス不能なゾーンの画像のキャプチャを可能とするか、またはたとえば全体点群(7)から特定のゾーンが直接選択され、その選択によって多関節システムの自動的な動作が引き起こされることで制御される。この構成では、実際の作業者は自分が対象物のモデル化の精度を上げたいと望むゾーンを選択する。すると、最善の視点から画像をキャプチャするために必要とされる多関節システム(5)の位置をソフトウェアが計算する。ここで留意されるべきは、多関節システム(5)の動作は、CADによって、または全体点群(7)を通して、または細部の画像(9)を通して、ワーク画像(17)ですべてがモデル化されているために、多関節システム(5)、3Dカメラ(16)、対象物(2)および作業環境(3)の各種要素の間で衝突を起こさずに行われるという点である。
【0048】
また、設備(1)の操作安全性を高めるため、ステップA’では、CADモデル化の結果が既知のツール(4)または多関節システム(5)の一部が対象物(2)または作業環境(3)の要素に接近すると、多関節システム(5)の動作が自動的に減速し、ツール(4)または多関節システム(5)の一部が障害物に対して安全距離まで来たところで動作は停止する。
【0049】
上記により、多関節システム(5)の動作、とりわけ保持された3Dカメラ(16)の動作を制御する作業者は、自ら操作を行おうとする対象ゾーンの細部の画像(9)をキャプチャする。対象物(2)のその詳細画像(9)は自動的にワーク画像(17)に組み込まれ、それによって部分的により高い精度で対象物(2)を再構成し、操作が行われる場所におけるその幾何学形状の詳細を知ることができる。
【0050】
幾つかの異なるタイプのツール(4)が利用可能であるという前提に立つ場合、方法は、操作を行うためのツール(4)をシミュレーションで、またシミュレーションのためにツールデータベースの中から選ぶステップB’を含む。
【0051】
その場合、
図5を参照すると、方法は、対象物(2)を表すワーク画像(17)の部分に対してツール(4)の軌道(10)を定義し、それに対応する多関節システム(5)およびツール(4)の動作をワーク画像(17)でシミュレーションして、方向、アクセス可能性、衝突のないことなどに関して操作が実行可能であることを担保するステップBを含む(
図6参照)。
【0052】
作業者は、対象物(2)の詳細の画像(9)をキャプチャして、それをワーク画像(17)に組み込むことにより、ツール(4)の軌道(10)の定義および位置決めに関してより高い精度の支援を得ることができる。
【0053】
作業者は、軌道(10)を定義するため、ディスプレイ上に表示されたワーク画像(17)に始点-終点ペアまたは線、平面、マスク等々からなるライブラリから選んだ幾何学形を位置決めすることができ、コンピュータ処理システムは対象物(2)上に軌道(10)を自動的に計算するように設計される。必要な場合には、処理システムは軌道(10)の手動調整を行うことが可能であり、または対象物(2)の表現の上に作業者が軌道(10)の線を直接引くことができる。
【0054】
たとえば、
図5を見ると、切削を行う対象物(2)の表面の表現に対して平面(11)が位置決めされており、コンピュータ処理システムは平面(11)とその表面の交点によって軌道(10)を定義している。この手法は、平面(11)の位置決めを見てとることができる
図7にも示されているほか、
図8でも、軌道(10)が計算され、平面(11)と対象物(2)の表現の交点によってプロットされている様子がわかる。
【0055】
軌道(10)が計算されると、コンピュータ処理システムはそれに対応する多関節システム(5)およびツール(4)の動作をワーク画像(17)内でシミュレーションできるようにして、操作が可能となるようにするが、それがテストされた軌道(10)、ツール(4)および多関節システム(5)の動作可能性に応じたものであることは言うまでもない。動作テストのステップはたとえば
図6および
図9に示されている。シミュレーションの結果、動作が可能であること、すなわち、方向およびアクセスの面で可能であり、さらに動作によって設備(1)および作業環境(3)の各種要素間の衝突が起こらないことが示されれば、実際に動作を行うことができる。ステップBは実施可能な動作を得るために必要な限り何度でも実施される。
【0056】
この場合、方法は、3Dカメラ(16)を取り外して専用の収納箱などに収め、あらかじめ選ばれて同じく近傍に保管されていたツール(4)に接続するように多関節システム(5)を自動で動作させるステップC’を含むことが有利である。
【0057】
ツール(4)の接続後、方法は、操作が実行可能であることがシミュレーションによって示されたならば、定義され、その妥当性が確認された軌道に従ってツール(4)を保持する多関節システム(5)を実際に動作させて、対象物(2)に対してその操作を行うステップCを含む。
【0058】
好ましくは、設備は、ステップCでは、ツール(4)の破損を防ぐため、ステップCで対象物(2)に直接接するツール(4)を保持する多関節システム(5)の動作速度を、ツールにかかる力の直接的または間接的な計測に基づいてリアルタイムで調節する手段を備える。たとえば、この計測は、多関節システム(5)を動かすためにツール(4)またはモータによって消費される電流を計測することによって得るか、または多関節システム(5)とツール(4)の間に配設された力センサによって得ることができる。
【0059】
簡単に理解できるように、
図10に方法のステップの順序を簡易フローチャートの形で示す。
【0060】
有利には、複数の切削操作など、対象物(2)に対して複数の操作を連続的に行う必要がある場合、後続の切削軌道(10)は前の切削操作の間にマスク時間に定義されるか、または複数の軌道(10)が、作業者による変更が可能な順序で逐次行われるようにシミュレーションされ、記録される。
【0061】
本発明はまた、たとえば対象物(2)の切削に関連するケースで、対象物が追加されたり、スペースが空いたりすることによる新たな要素または潜在的な障害物のために変化する環境のもとでは特に有利であり、その場合、本発明の方法のステップAからCまでを繰り返すことにより、対象物(2)に対する操作を継続するための最新の画像およびシミュレーションを容易に衝突のリスクもなく得ることができる。
【0062】
ディスプレイは、設備(1)、対象物(2)および環境の各種要素をCADモードで表示する。好ましくは、多関節システム(5)はインタラクティブな色で表される。すなわち、多関節システム(5)はたとえば緑で表され、その1つの部分が障害物に接近していくと、多関節システム(5)および/またはツール(4)が衝突管理パラメータで定義された衝突リスクゾーンに入ったときにその部分の色がオレンジに変わり、さらに多関節システム(5)および/またはツール(4)が衝突管理パラメータで定義された閾値距離に到達して動作が停止すると赤へと順次変化する。
【0063】
以上のことから、本発明は、対象物(2)および作業環境の位置や幾何学形状が変化し、かつ/または操作を行うには十分に定義されていない作業環境(3)内にある対象物(2)に対して自動的かつ安全に操作を行うための方法および設備(1)を提供するものであることは明瞭である。
【0064】
この方法は、対象物(2)のいかなるタイプの幾何学形状または性質に対しても適合させることができる。環境および対象物(2)をデジタル化によって全体点群の形で確定する第1のステップは3Dカメラによって行われ、それによって対象物(2)および環境の各種要素のあらゆるタイプの位置および幾何学形状に対する適合化も可能となる。処理時間は短く、1秒間に500,000個の計測ポイントをこなす。環境から得られる詳細は重要で、情報は連続的である。そのため、リアルなレンダリングおよびモデリングをリアルタイムで行うことができ、作業者は点群(7)で再構成されたものが正しいかどうかを視覚的に容易にチェックすることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 設備
2 対象物
3 作業環境
4 ツール
5 多関節システム
6 3Dカメラ、3Dセンサ
7 点群
8 アーチ
9 画像
10 軌道
11 平面
16 3Dカメラ、3Dセンサ
17 ワーク画像
【手続補正書】
【提出日】2022-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業環境(3)内で可動な多関節システム(5)によって保持されたツール(4)を用いて対象物(2)に対する操作を自動で行うための方法において、
- 前記対象物(2)および前記作業環境(3)のすべてまたは一部の画像を少なくとも1つの3Dセンサ(6A、6B、6C)を用いて全体点群(7)の形でキャプチャし、前記画像(7)を前記多関節システム(5)の既存のCADモデルおよび出来形の前記作業環境(3)のすべてまたは一部の可能な既存のCADモデルとマージし、このマージによってワーク画像(17)がもたらされ、さらに衝突防止パラメータを定義するステップAと、
- 前記対象物(2)を表す前記ワーク画像の部分に対して前記ツール(4)の軌道を定義し、前記ワーク画像(17)で前記多関節システム(5)および前記ツールの対応する動作のシミュレーションを行って前記操作が実行可能であることを担保するステップBと、
- ステップBで前記操作が実行可能であるとされたならば、前記対象物(2)に対する前記操作を行うために定義された前記軌道(10)に従って前記ツール(4)を保持する前記多関節システム(5)の動作を実際に行うステップCと
を少なくとも含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記多関節システム(5)によって保持された3Dセンサ(16)を用いて前記対象物(2)のゾーンの詳細画像(9)を前記全体点群よりも高密度で、より高精度の点群の形でキャプチャするように前記多関節システム(5)の動作を制御し、前記対象物(2)の対応するゾーンの前記キャプチャ画像(9)を前記全体点群(7)による対応部分の代わりに前記ワーク画像(17)に組み込むステップA’をステップAとステップBの間に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多関節システム(5)を自動で動作させて、近傍に保管された前記3Dセンサ(16)を把持して接続するステップA”をステップAとステップA’の間に含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多関節システム(5)を自動で動作させて、任意に3Dセンサ(16)を取り外して降ろし、近傍に保管された前記ツール(4)に接続するステップC’をステップBとステップCの間に含むことを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記操作を行うためのツール(4)をステップBのシミュレーションで、またシミュレーションのためにツールデータベースの中から選ぶステップB’をステップBの前に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップCで、前記対象物(2)に直接接する前記ツール(4)を保持する前記多関節システム(5)の動作速度が、前記ツール(4)にかかる力の直接的または間接的な計測に基づいてリアルタイムで調節されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップA’で、前記3Dセンサ(16)または前記多関節システム(5)の一部が前記対象物(2)または前記作業環境(3)の要素に接近すると前記多関節システムの動作が自動的に減速し、前記3Dセンサ(16)または前記多関節システム(5)の一部が対象物(2)または前記作業環境(3)の要素に対してステップAで定義された衝突防止パラメータによる安全距離まで来たところで動作は自動的に停止することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップBにおける前記対象物(2)を表す前記ワーク画像の部分に対する前記ツール(4)の軌道が、少なくとも1つの始点-終点ペアか、またはあらかじめ定義された少なくとも1つの幾何学形、とりわけ平面(11)、少なくとも1つの線、もしくはマスクのいずれかを前記ワーク画像(17)内に位置決めすることによって定義されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法を実装するための設備(1)において、多関節システム(5)と、コンピュータ処理システムおよびディスプレイに接続された少なくとも1つの3Dセンサ(6、16)とを備え、前記コンピュータ処理システムが、
- 少なくとも1つの3Dセンサ(6、16)によってキャプチャした画像をもとに、前記対象物(2)および前記作業環境(3)のすべてまたは一部の全体点群(7)をディスプレイ上に表し、
- 前記多関節システム(5)の既存のCADモデル、および前記作業環境(3)のすべてまたは一部の可能な既存のCADモデルの前記全体点群(7)をマージして得られるワーク画像(17)を表し、
- 前記対象物(2)を表す前記ワーク画像(17)の部分に対する前記ツール(4)の軌道(10)の定義を可能にし、
- 前記ワーク画像(17)で前記多関節システム(5)および前記ツール(4)の対応する動作のシミュレーションを行って前記操作が実行可能であることを担保し、
- 前記操作が実行可能であるとされたならば、前記対象物(2)に対して前記操作を行うために定義された前記軌道(10)に従って前記ツール(4)を保持する前記多関節システム(5)を実際に動作させるように設計されることを特徴とする設備。
【請求項10】
ステップCで前記対象物(2)に直接接する前記ツール(4)を保持する前記多関節システム(5)の動作速度を、前記ツール(4)にかかる力の直接的または間接的な計測に基づいてリアルタイムで調節する手段を備えることを特徴とする、請求項9に記載の設備。
【国際調査報告】