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▶ ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・エディンバラの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-14
(54)【発明の名称】マクロファージの産生方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0786 20100101AFI20230707BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230707BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230707BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230707BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230707BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230707BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
C12N5/0786
A61K35/15
A61P1/16
A61P11/00
A61P13/12
A61P21/00
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022573206
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 GB2021051294
(87)【国際公開番号】W WO2021240162
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】2007903.4
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505066349
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・エディンバラ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】カンパーナ,ララ
(72)【発明者】
【氏名】ドワイヤー,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】フレイザー,アラスデア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BB19
4B065BD50
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB34
4C087DA32
4C087NA05
4C087ZA59
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA94
4C087ZB11
(57)【要約】
改善された4~5日、任意に3~5日のGMPに準拠したin vivo方法によって、ヒトマクロファージの所望の特性を維持しながら、より短い細胞培養時間、より少ない介入から利益を得る、単球からのマクロファージの産生が可能になる。本発明は、再生促進表現型を有するマクロファージを刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む培地中で単球が培養される方法を記載している。本明細書に記載される方法は、ゼノフリー、血清非含有であり、GMPに準拠している。また、本発明によって産生されたマクロファージおよび肝臓疾患、例えば肝硬変の処置における前記マクロファージの使用がさらに開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マクロファージを産生するin vitroのGMPに準拠した方法であって、
(a)単球を培地中で3~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程
を含み、工程(a)が完全に同じ培地中で行われる、方法。
【請求項2】
単球が5日間培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培地を再供給または交換する工程を含まない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
単球が1×10細胞/cm~最大1×10細胞/cmの間の密度で播種される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
培地が、X-Vivo 10、X-Vivo15、TexMACS、AIMv、RPMI、DMEMおよびDMEM/F12、好ましくはTexMACSから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
培地がCSFファミリー、好ましくはM-CSFから選択される1つまたは複数の因子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
培地が25~200ng/mLの間の濃度でM-CSFを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
単球がヒトであり、マクロファージがヒト単球由来マクロファージ(hMDM)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
単球がヒト血液、好ましくはヒト血液のバフィーコート、好ましくはヒト血液のPBMC画分に由来する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(a)で産生されたマクロファージを、好ましくはM1様またはM2様マクロファージに分極させる工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
マクロファージを分極させるさらなる工程が、分極因子、好ましくはM1またはM2分極因子を培地に添加する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
M1分極因子が、GM-CSF、IFNγ、およびLPSなどのTLRアゴニストから選択され;M2分極因子が、IL10、IL4、IL13、およびポリ(I:C)から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%の収率で成熟マクロファージを産生する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって産生されたマクロファージ。
【請求項15】
再生促進表現型を有する、任意に請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって産生されたex vivo生成マクロファージ。
【請求項16】
1つまたは複数の再生促進サイトカインの発現が増加している、請求項14または15に記載のマクロファージ。
【請求項17】
1つもしくは複数の抗炎症性サイトカインの発現の増加、および/または1つもしくは複数の炎症性サイトカインの発現の低下、および/または1つもしくは複数の抗線維化サイトカインの発現の増加、および/または1つもしくは複数の線維化サイトカインの発現の低下を有する、請求項14~16のいずれか一項に記載のマクロファージ。
【請求項18】
以下のサイトカイン:IL1、IL12、IL17(A、B、C、F)、IL18、TNFα、IFNγ、好ましくはIL17Fの1つまたは複数の発現が低下している、請求項14~17のいずれか一項に記載のマクロファージ。
【請求項19】
以下のサイトカイン:IL4、IL13、PDGF、TGFβ(1、2、3)、好ましくはTGFβ1の1つまたは複数の発現が低下している、請求項14~18のいずれか一項に記載のマクロファージ。
【請求項20】
成熟細胞表面マーカー、好ましくはCCR2-、CD14+、CD206+、CD163+、CD169+、25F9+、およびCD86+を発現する、請求項14~19のいずれか一項に記載のマクロファージ。
【請求項21】
請求項14~20のいずれか一項に記載のマクロファージの集団。
【請求項22】
請求項21に記載のマクロファージの集団を含む組成物。
【請求項23】
医薬として使用するための、請求項14~22のいずれか一項に記載のマクロファージ、集団または組成物。
【請求項24】
疾患または傷害の処置における使用のための、請求項14~22のいずれか一項に記載のマクロファージ、集団、または組成物であって、疾患が肝臓疾患、腎臓疾患、肺疾患または筋疾患を含むリストから選択される、マクロファージ、集団、または組成物。
【請求項25】
肝臓疾患、腎臓疾患、肺疾患または筋疾患が線維化疾患または炎症性疾患であり、任意に疾患が急性または慢性であり、任意に薬剤過剰摂取、好ましくはAPAP過剰摂取および肝硬変を含むリストから選択される、請求項24に記載の使用のためのマクロファージ、集団、または組成物。
【請求項26】
IFNγ、IL10、IL4、IL13、およびLPSの1つまたは複数などの炎症性刺激に応答する、請求項16~24のいずれかに記載のマクロファージ、集団または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成熟マクロファージ、特に単球由来マクロファージを産生する、4~5日、任意に3~5日のGMPに準拠した方法、および前記方法により産生されるマクロファージに関する。本発明はさらに、前記マクロファージの医学的用途、特に肝臓疾患または傷害の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
線維化は、毒性損傷、ウイルス感染、代謝および遺伝疾患、ならびに自己免疫性肝炎を含む、様々な病因の慢性肝臓疾患の最終的な共通経路である。急性であるが自己限定的な線維化が肝臓傷害に対する可逆的および保護的な応答として進化してきたと考えられる。自己限定的な線維化と過剰な線維化のバランスは、複数の経路およびシステムによって細かく制御されており、本質的に傷害の期間および反復に依存している。末期の慢性肝臓線維化は、肝硬変としても知られ、生命を脅かす状態である(1~3)。肝臓疾患による死亡率は、英国では1970年代から年々増加している唯一の主要な死因であり、世界的にも大きな健康上の負担のままである。唯一の治療アプローチは、傷害的な刺激の除去(例えば、有効な抗ウイルス療法の投与)および肝臓移植を伴う。したがって、有効な抗線維化療法を送達することは、慢性および急性両方の肝臓損傷に対する主要なアンメット臨床ニーズである(4~6)。
【0003】
マクロファージ(Mφ)は、傷害を受けた肝臓の炎症応答において重要な役割を果たす。肝臓には、2つの主要なMφ集団:(i)常在性のマクロファージ(KC)および(ii)浸潤マクロファージが存在する。KCは、恒常的な状態では、洞様毛細血管を経由して肝臓に到達する微生物の残骸を貪食するために、肝類洞でパトロール機能を発揮する。肝臓損傷の初期において、KCはCCL2およびCCL5などのケモカインを発現し、それによって循環から単球をリクルートすることに貢献する(2、7)。線維化の過程でKCの数は減少するが、自己限定的な線維化の回復期には肝臓で再増殖する(8)。浸潤性の単球由来Mφは、肝臓損傷に対する応答において主要な役割を果たす。浸潤性MφはCCR2/CCL2軸を介してリクルートされ、一度肝臓実質部内に入ると、肝臓線維化の初期には線維隔壁に沿って位置し、肝臓星細胞を活性化して炎症を悪化させるTGF-β、IL1、PDGFおよびCCL2などの因子を放出することによって線維化を促進し得る。このことは、進行性の線維化におけるMφの有害な役割を示唆している可能性がある。しかし、線維化のリモデリングの開始時にMφが枯渇すると、リモデリングプロセスが失敗し、肝臓線維化が持続する。現在では、マクロファージが線維化の確立および解消に二重の役割を果たしていることが広く受け入れられている(2、8~10)。
【0004】
線維化の治癒における役割から、マクロファージ細胞療法は慢性肝臓線維化の軽減に有益であり得ると考えられてきた。マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM)は、慢性肝臓線維化のマウスモデルに注入すると、肝臓線維化が改善することが示されている(11)。同様の結果は、慢性肝臓線維化の免疫不全マウスモデルにヒト単球由来マクロファージ(hMDM)を用いて再現されている(12)。さらに、現在、進行中の第II相試験(Macrophage therapy for liver disease、ISRCTN10368050)では、肝硬変患者への自家移植のためにGMP(優良製造基準)グレードの細胞培養プロトコル(13)を用いてhMDMを生成する。欧州医薬品庁(EMA)および米国食品医薬品局(FDA)の両方によって定義される優良製造基準(GMP)品質は、臨床グレードの細胞の要件であり、細胞療法の最適に定義された品質および安全性を示す。動物成分非含有培養培地および準拠した凍結保存手法を使用して、動物タンパク質に対する免疫反応および動物微生物によって引き起こされる感染リスクを避けることができる。細胞療法の開発において、それを必要とする患者に対する投与に先立って、細胞の安全な調製および保存を確実にするために準拠した手法を開発しなければならない。
【0005】
しかし、このhMDMを生成するために使用されるプロトコルは、時間および手間がかかる。現在、hMDMは、高用量のMCSF(単球コロニー刺激因子、別名CSF1、コロニー刺激因子1)中で、様々な時点で新鮮な培地およびMCSFを供給して7日間培養することによって、循環単球から分化する(13、14)。hMDMの培養にかかる時間および労力を軽減することが望まれる。しかし、これまでのところ、それは実現不可能であると考えられてきた。GMPガイドライン(Giancola,R.、Bonfini,T.、&Iacone,A.(2012).Cell therapy:cGMP facilities and manufacturing.Muscles,ligaments and tendons journal、2(3)、243~247.)に従って細胞を培養および産生する製造プロセスにおいて克服するべき障害が多数存在する。臨床応用に適したGMPに準拠した方法に実験室試験で通常使用される細胞培養プロトコルを変更することは、細胞のスケーラビリティ、収率、形態および機能に影響を与える課題を経験することがしばしばである。このような産生方法を短縮および単純化する試みは、GMPに準拠した治療に適し、治療用のhMDMの所望の特性を保持する成熟hMDMを再現することができなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、治療用のhMDMの必要な特性を維持しながら、細胞培養時間の短縮および中間供給工程の排除の両方から利益を得る第2世代の方法を提供することにより、上記問題を解決しようとした。この改善された方法は、ゼノフリー、血清非含有およびGMPに準拠しており、細胞を臨床用に適したものにするのが好都合である。
【0007】
本発明の1つまたは複数の態様は、上記の問題の1つまたは複数を解決することに関する。
本発明の第1の態様によれば、マクロファージを産生するin vitro方法であって、
(a)単球を培地中で4~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程
を含む方法が提供される。
【0008】
本発明の代替的な第1の態様によれば、マクロファージを産生するin vitro方法であって、
(a)単球を培地中で4~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程
を含み、工程(a)が、完全に同じ培地中で行われる、
方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、マクロファージを産生するin vitro方法であって、
(b)単球を培地中で3~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程
を含む方法が提供される。
【0010】
本発明の他の第1の態様によれば、マクロファージを産生するin vitro方法であって、
(b)単球を培地中で3~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程
を含み、工程(a)が、完全に同じ培地中で行われる、
方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様の方法によって産生されたマクロファージが提供される。
本発明の第3の態様によれば、再生促進表現型を有するex vivo生成マクロファージが提供される。
【0012】
一実施形態において、ex vivo生成マクロファージは、未分極である。一実施形態において、ex vivo生成マクロファージは、未分極の成熟マクロファージである。一実施形態において、ex vivo生成マクロファージは、抗炎症性表現型を有する。一実施形態において、ex vivo生成マクロファージは、抗線維化表現型を有する。一実施形態において、ex vivo生成マクロファージは、抗炎症性および抗線維化表現型を有する。
【0013】
本発明の第4の態様によれば、第2または第3の態様によるマクロファージの集団が提供される。
本発明の第5の態様によれば、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第4の態様による集団を含む組成物が提供される。
【0014】
一実施形態において、組成物は、医薬組成物である。
本発明の第6の態様によれば、第2もしくは第3の態様のマクロファージ、第5の態様の組成物、または第4の態様のマクロファージの集団を含む細胞培養バッグが提供される。
【0015】
本発明の第7の態様によれば、医薬として使用するための、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第5の態様による組成物が提供される。
本発明の代替的な第7の態様によれば、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第5の態様による組成物の有効量を、対象に投与することによる、疾患を有する対象の処置方法が提供される。
【0016】
本発明の第8の態様によれば、肝臓疾患または傷害の処置に使用するための、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第5の態様による組成物が提供される。
本発明の代替的な第8の態様によれば、肝臓疾患または傷害を有する対象の処置方法であって、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第5の態様による組成物の有効量を対象に投与する工程を含む、方法が提供される。
【0017】
第9の態様によれば、対象の疾患を処置するための医薬の製造における、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第5の態様による組成物の使用であって、
製造が以下の工程:
(a)単球を培地中で4~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程;
および
(b)前記マクロファージの一部または全部を、対象に投与するための医薬に製剤化する工程を含む、使用が提供される。
【0018】
代替的な第9の態様によれば、対象の疾患を処置するための医薬の製造における、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第5の態様による組成物の使用であって、製造が以下の工程:
(a)単球を培地中で4~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程;
および
(b)前記マクロファージの一部または全部を、対象に投与するための医薬に製剤化する工程を含み、
工程(a)が完全に同じ培地中で行われる、使用が提供される。
【0019】
異なる第9の態様によれば、対象の疾患を処置するための医薬の製造における、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第5の態様による組成物の使用であって、製造が以下の工程:
(c)単球を培地中で3~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程;
および
(d)前記マクロファージの一部または全部を、対象に投与するための医薬に製剤化する工程を含む、使用が提供される。
【0020】
他の第9の態様によれば、対象の疾患を処置するための医薬の製造における、第2もしくは第3の態様によるマクロファージ、または第5の態様による組成物の使用であって、製造が以下の工程:
(c)単球を培地中で3~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程;
および
(d)一部または全部の前記マクロファージを、対象に投与するための医薬に製剤化する工程を含み、
工程(a)が完全に同じ培地中で行われる、使用が提供される。
【0021】
好ましい実施形態において、疾患は、肝臓疾患または傷害である。
本発明者らは、好都合なことに、先行技術の方法よりも数日短く、かつ、培地の再供給を必要としない、単球からマクロファージを産生する新規なGMPに準拠した方法を発見した。文献で一般的に報告されていることとは反対に、本明細書の方法に従って産生されたマクロファージは、培養開始後3日という早さで成熟マクロファージの特徴を示し、培地の再供給を必要としない。好都合なことに、望ましいマクロファージの特徴である重要なマーカー、例えば25F9およびCD206は、培養3日という早さで上方制御される(図4Bおよび4C)。単球上で通常発現されるマーカー、例えばCCR2は、培養3日という早さで下方制御される(図4F)。これは、単球の培養の3日目におけるマクロファージの産生を示している。
【0022】
したがって、本発明の方法は、従来の方法よりも迅速であり、GMP(優良製造基準)に準拠している。さらに、本発明の方法は、先行技術の方法よりもマクロファージの収率が高いことが見出されている。
【0023】
また、本発明者らは、驚くべきことに、新規の方法により産生されたマクロファージは、他の方法により産生されたマクロファージとは異なるサイトカインプロファイルおよび発現マーカープロファイルを有することを見出した。前記マクロファージは、現在の技術水準のプロトコルで産生されたマクロファージと比較して、再生促進プロファイルを有する。さらに、これらのマクロファージは、LPS、IFNγ、IL4-IL13の組合せ、およびIL10などの分極刺激に応答する優れた能力を有する。また、プラスチック表面への接着レベルが低いため、輸送および送達がより容易である。
【0024】
最後に、本発明者らは、本明細書に記載のマクロファージが、マウスにおけるパラセタモール(アセトアミノフェン、APAP)過剰摂取およびCCl誘導性肝硬変のモデルにおけるin vivo試験により示されるように、急性および慢性状態を処置できることを示した。
【0025】
本発明のさらなる態様は、以下のように定義される:
さらなる態様において、以下の炎症性サイトカイン:IL1、IL12、IL17(A、B、C、F)、IL18、TNFα、IFNγの1つまたは複数の発現が低下したマクロファージの組成物または集団が提供される。
【0026】
さらなる態様において、200pg/mL未満のIL17F、好適には190pg/mL未満のIL17F、180pg/mL未満のIL17F、好適には170pg/mL未満のIL17F、160pg/mL未満のIL17F、好適には150pg/mL以下のIL17Fを発現するマクロファージの組成物または集団が提供される。
【0027】
さらなる態様において、45000pg/mL未満のTGFβ、好適には44000pg/mL未満、好適には43000pg/mL未満、好適には42000pg/mL未満、好適には41000pg/mL未満、好適には40000pg/mL以下のTGFβを発現するマクロファージの組成物または集団が提供される。
【0028】
さらなる態様において、50pg/mL超のVEGFR1、100pg/mL超のVEGFR1、120pg/mL超のVEGFR1、140pg/mL超のVEGFR1、160pg/mL超のVEGFR1、170pg/mL超のVEGFR1を発現するマクロファージの組成物または集団が提供される。
【0029】
さらなる態様において、500pg/mL未満のIL9、300pg/mL未満のIL9、200pg/mL未満のIL9、180pg/mL未満のIL9、160pg/mL未満のIL9、140pg/mL未満のIL9、130pg/mL未満のIL9を発現するマクロファージの組成物または集団が提供される。
【0030】
さらなる態様において、抗炎症性および抗線維化表現型を有するマクロファージの組成物または集団であって、マクロファージが200pg/mL未満のIL17Fおよび45000pg/mL未満のTGFβを発現する、組成物または集団が提供される。
【0031】
さらなる態様において、マクロファージが抗炎症性および抗線維化表現型を有するex vivo生成マクロファージの組成物または集団であって、マクロファージが約150pg/mLのIL17Fおよび約40000pg/mLのTGFβを発現する、組成物または集団が提供される。
【0032】
さらなる態様において、成熟マクロファージであるマクロファージの組成物または集団であって、成熟マクロファージが、CD14+、CD206+、CD163+、CD169+、25F9+、およびCD86+であり、成熟マクロファージがCCR2-である、組成物または集団が提供される。
【0033】
さらなる態様において、IFNγ、IL10、IL4、IL13、およびLPSの1つまたは複数などの炎症性刺激に応答するマクロファージの組成物または集団が提供される。
【0034】
さらなる態様において、第1の態様の方法によって産生された培養成熟マクロファージの収率が、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、最大40%、最大45%、最大50%である組成物または集団が提供される。
【0035】
上記態様のいずれかの実施形態において、マクロファージからのサイトカイン発現レベルは、実施例で説明するように、V-plex技術を使用して細胞培養上清を試験することによって測定される。
【0036】
ここで本発明のさらなる特徴および実施形態について説明する。特徴は、本発明の特定の態様または実施形態に限定されるものではなく、任意の適合する方法で組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の定義が提供される。
本発明で使用される「hMDM」は、ヒト単球由来マクロファージを指す。単球由来とは、単球から分化したマクロファージを意味する。単球は、マクロファージおよび樹状細胞の天然の前駆体であり、血液および骨髄に含まれる。
【0038】
本発明で使用される「未分極マクロファージ」は、特定の機能的能力を誘導するためのさらなる刺激を受けていない成熟マクロファージを指し、未分極マクロファージは、ナイーブまたは非活性化マクロファージを指すこともある。
【0039】
本発明で使用される「分極マクロファージ」は、M1様またはM2様表現型などの特定の表現型に活性化されるように環境刺激を受けたマクロファージを指す。M1様表現型およびM2様表現型については、後述する。
【0040】
「マクロファージ」は、病原体、損傷細胞およびアポトーシス細胞を検出し、貪食し、破壊する役割を担う、単球の分化によって産生される貪食細胞を指す。本明細書で使用される「マクロファージ」という用語は、一般的に、本明細書に記載のプロセスによって産生されるマクロファージを指す。それは、未分極であっても分極されていてもよい。
【0041】
「成熟マクロファージ」は、成熟細胞表面マーカー、好ましくはCCR2-、CD14+、CD206+、CD163+、CD169+、25F9+、およびCD86+を発現するマクロファージを指す。
【0042】
本発明で使用される「M1分極因子」は、未分極マクロファージをM1様表現型に刺激する因子を指し、例えばGM-CSF、IFNγ、およびLPSなどのTLRアゴニストの1つまたは複数を指していてもよい。
【0043】
本発明で使用される「M2分極因子」は、未分極マクロファージをM2様表現型に刺激する因子を指し、例えばIL10、IL4、IL13、およびポリ(I:C)の1つまたは複数を指していてもよい。
【0044】
本発明で使用される「GMPに準拠した」は、方法が優良製造基準に準拠することを意味する。例として、GMPに準拠した培地は、血清非含有、抗生物質非含有、およびゼノプロテインフリー(動物物質非含有)である必要がある。WHOは、優良製造基準に必要とされる事項に関するガイダンスを提供している:「Chapter 1:WHO good manufacturing practices:Main principles for pharmaceutical products」.Quality Assurance of Pharmaceuticals:A compendium of guidelines and related materials - Good manufacturing practices and inspection. 2(2nd updated ed.).WHO Press. pp.17~18.ISBN 9789241547086。
【0045】
本発明で使用される「処置」は、対象の所定の生理学的状態に関連する臨床症状を防止、軽減または除去する生理学的状態への介入を意味する。
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」とは、対象が「健常な対象」として定義される場合を除き、診断、予後、または治療が望まれる任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象としては、ヒト;家畜(domestic animal);家畜(farm animal);例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ(cattle)、ウシ(cow)などが挙げられる。
【0046】
方法/プロトコルに関して本発明で使用される「5日供給なし」または「5日」は、マクロファージを産生するための本発明の方法/プロトコルを指す。第1の態様で定義されるように、本発明の方法は、3~5日間、場合によって4~5日間持続する。3~5日とは、典型的には、約72~120時間の期間を指す。4~5日とは、典型的には、約96~120時間の期間を指す。この期間は、±10時間、好ましくは±5時間、好ましくは±2時間変動してもよい。したがって好適には、本発明の方法は、62~130時間、好適には86~130時間、好適には90~125時間、好適には96~120時間持続してもよい。
【0047】
方法/プロトコルに関連して本発明で使用される「7日+再供給」または「7日」は、マクロファージを産生するために当技術分野で現在使用される標準的なより長い方法/プロトコルを指す。これらの先行方法は、典型的には約168時間の期間を指す約7日間の期間持続する。この期間は、±10時間、好ましくは±5時間、好ましくは±2時間変動し得る。
【0048】
用語「a」または「an」を有する実体は、その実体の1つまたは複数を指すことに留意されたい。
「約」は、特に断らない限り、所与の値の±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%を意味する。
【0049】
「発現の増加」は、少なくとも2倍の発現の増加を指す。倍増は、マクロファージにおける所定のマーカーの平均蛍光強度(MFI)を、マクロファージが分化した単球における同じマーカーのMFIで割ることにより算出される。本明細書では、この2つの値の比率を「MFI比率」または「相対蛍光強度(RFI)」と定義する。これらの値は、フローサイトメトリーにより測定される。「発現の増加」はまた、1つの試料の培地中の所定のサイトカインの濃度が、他の試料と比較して増加することを指していてもよい。この増加は、2つの試料群を比較する統計検定が値<0.05を返した場合に、有意であると考える。
【0050】
「発現の低下」は、少なくともRFI<0.5であることを指す。低下は、マクロファージにおける所定のマーカーのMFIを、マクロファージが分化した単球における同じマーカーのMFIで割ることにより算出される。本明細書では、この2つの値の比率を「MFI比率」または「相対蛍光強度(RFI)」と定義する。これらの値は、フローサイトメトリーにより測定される。「発現の低下」はまた、1つの試料の培地中の所定のサイトカインの濃度が、他の試料と比較して増加することを指していてもよい。この低下は、2つの試料群を比較する統計検定が値<0.05を返した場合に、有意であると考える。
【0051】
細胞培養培地
本発明は、単球からマクロファージを産生する新規の方法に関し、単球は培地中で3~5日間培養され、この工程を通して同じ培地が使用される。
【0052】
好適には、培地は単球からマクロファージを生成するのに適している。好適には、培地は、T細胞培地である。好適には、培地は、X-Vivo 10、X-Vivo 15、TexMACS、AIMv、RPMI、DMEM、およびDMEM/F12から選択し得る。好適には、培地はTexMACS(Miltenyi)である。
【0053】
好適には、培地は血清非含有である。好適には、培地は、ゼノプロテインフリーである。好適には、培地はGMPに準拠している。
好適には、培地は、1つまたは複数の因子を含んでもよい。好適な因子としては、増殖因子、多糖、サイトカインおよびケモカインが挙げられる。好適な因子としては、MCSF、GM-CSFを挙げることができる。したがって好適には、因子は増殖因子である。好適には、1つまたは複数の因子はGMPに準拠している。一実施形態において、培地は、MCSFまたはGM-CSFを含んでいてもよい1つまたは複数の増殖因子を含んでいてもよい。単球はMCSFまたはGM-CSFのいずれかと共に培養されるのが最も一般的である。GM-CSFと共に単球を培養することによって「M1様表現型」へと偏向され、MCSFと共に単球を培養することによって「M2様表現型」へと偏向される。しかし、MCSFおよびGM-CSFの両方と共に単球を培養するのは一般的なアプローチではない。他の実施形態において、1つまたは複数の増殖因子はMCSFとGM-CSFの組合せを含まない。したがって、M-CSFが本発明の任意の方法においてマクロファージを生成するための増殖因子として使用される場合、単球からのマクロファージの生成にGM-CSFも使用することはない方が好ましい場合がある。これは、マクロファージが生成されるまで単球を培養する工程に当てはまる。
【0054】
好適には、培地は、別名CSF-1としても知られるMCSF(マクロファージコロニー刺激因子)を含む。好適には、MCSFは、組換えMCSF、好適には、組換えヒトMCSFであってもよい。
【0055】
好適には、培地は、25~200ng/mLの間の濃度、好適には50~125ng/mLの間の濃度、好適には75~110ng/mLの間の濃度、好適には100ng/mLの濃度でMCSFを含む(国際単位(IU)で同等:組換えヒトMCSF GMPグレードの100ng=1.6×10IU)。
【0056】
好適には、1つまたは複数の因子が培地に添加される。好適には、方法は、1つまたは複数の因子を培地に添加する工程を含んでいてもよい。好適には、1つまたは複数の因子を添加する工程は、工程(a)の前および/または工程(a)の間に行われてもよい。
【0057】
好適には、MCSFが培地に添加される。好適には、本発明の方法は、MCSFを培地に添加する工程を含む。好適には、MCSFは、培養工程(a)の前に培地に添加される。
【0058】
好適には、培地は、1つまたは複数のさらなる添加剤を含んでいてもよい。好適なさらなる添加剤としては、アルブミン、グルタミン、およびストレプトマイシンまたはペニシリンなどの抗生物質を挙げることができる。
【0059】
好適には、培地は、例えばpH指示薬などの1つまたは複数の指示薬を含んでいてもよい。
好適には、1つまたは複数のさらなる添加剤は培地に添加され、あるいは、培地は既に前記さらなる添加剤を含んでいてもよい。好適には、方法は、1つまたは複数のさらなる添加剤を培地に添加する工程を含んでいてもよい。好適には、1つまたは複数のさらなる添加剤を添加する工程は、工程(a)の前および/または工程(a)の間に行われてもよい。
【0060】
一実施形態において、培地は、添加剤を含まない。
好適には、少なくとも工程(a)は、全く同じ培地中で行われる。好適には、単球のマクロファージへの分化は、同じ培地中で行われる。好適には、方法全体が同じ培地中で行われる。好適には、「同じ培地」は、培地の添加、再供給または交換が行われないことを意味し、すなわち、これは単回供給方法である。文献で一般的に報告されている方法は、「複数回供給方法」であることがしばしばであり、すなわち、培地の添加、再供給または置換を伴う。「複数回供給方法」の欠点は、培養プレートの表面に付着していない細胞が培地交換のプロセスにおいて除かれることがしばしばであることである。他の場合において、成分の添加または再供給は、培養プレートで成長する細胞をしばしば損ない得る。プロセスが伴う介入が多くなる程、そのプロセス中の細胞の損失が多くなる。好都合なことに、本方法は、単回供給を伴い、そのため介入が少なくなっていることにより、細胞損失が低下している。好適には、工程(a)は、培地の再供給を含まない。好適には、工程(a)は、培地を交換することを含まない。好適には、方法は、培地を再供給する工程を含まない。好適には、方法は、培地を交換する工程を含まない。
【0061】
培養方法
本発明は、単球を培養してマクロファージを産生する新規の方法に関する。
好適には、方法は、単球を得る工程をさらに含んでいてもよい。好適には、単球は、末梢血または白血球アフェレーシス収集または動態化アフェレーシス収集から得てもよい(例えば、M-CSF、GM-CSFまたはG-CSF動態化血液前駆体)。好適には、ヒト血液から、好適にはヒト血液試料からである。好適には、単球は、ヒト血液の単核白血球画分から得られ、好適には、ヒト血液試料の単核白血球画分から得られる。
【0062】
好適には、方法は、血液から、好適には血液の単核白血球画分から、好適にはヒト血液試料の単核白血球画分から単球を精製する工程をさらに含んでいてもよい。かかる精製は、単核白血球画分の単離、および特異的(単球系列のマーカー)または非特異的(接着)方法を用いた画分からの精製単球の単離を含んでいてもよい。好適には、単核白血球画分の単離は、原料に応じた様々な方法により実施することができる。好適には、選択された精製単球の単離は、小規模(磁気ビーズカラムデバイスまたはプラスチック接着)またはCliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)などの関連デバイスを用いた製造のためにより大規模で実施してもよい。他の実施形態において、方法は、アフェレーシス収集に先立って患者に動態化薬剤を投与する工程をさらに含んでいてもよい。好適には、動態化薬剤は、前駆細胞の骨髄からの動態化を促す。
【0063】
好適には、方法は、マクロファージを産生するために単離単球を培地中で3~5日間培養する工程を含む。好適には、単球は、以下にさらに説明するように、プレート内または細胞培養バッグ内で培地中で培養され得る。
【0064】
好適には、単球は、1×10細胞/cm~最大1×10細胞/cmの密度で、好適には5×10細胞/cm~最大5×10細胞/cmの密度で、好適には7×10細胞/cmの密度で播種される。
【0065】
好適には、単球は、加湿された雰囲気中で培養される。
好適には、単球は、35℃~39℃の温度、好適には36℃~38℃の温度、好適には約37℃で培養される。
【0066】
好適には、単球は、二酸化炭素を含む雰囲気中で培養される。好適には、二酸化炭素は、1~20%、好適には2~15%、好適には3~10%、好適には4~8%、好適には約5%の濃度である。
【0067】
好適には、単球は、4~5日間、任意に3~5日間培養される。一実施形態において、単球は、5日間培養される。好適には、単球は、4~5日間、任意に3~5日間連続的に培養される。一実施形態において、単球は、5日間連続的に培養される。
【0068】
好適には、方法は、培地から成熟マクロファージを単離する工程、好適には、工程(a)の培地から成熟マクロファージを単離する工程をさらに含んでいてもよい。好適には、成熟マクロファージは、典型的な細胞解離技術、例えば細胞解離緩衝液(Gibco、ThermoFisher)およびパステットを用いて、または細胞培養バッグの自動もしくは手動操作を用いて単離される。
【0069】
好適には、方法は、成熟マクロファージを医薬として製剤化する工程をさらに含んでいてもよい。好適には、この工程は、賦形剤中に成熟マクロファージを再懸濁することを含んでいてもよい。好適には、賦形剤は、任意の薬学的に許容される賦形剤、例えば、本明細書の他の場所で議論されるような生理食塩水であってもよい。
【0070】
好適には、方法中の細胞生存率は、少なくとも70%の生存率、少なくとも75%の生存率、少なくとも80%の生存率、少なくとも85%の生存率、少なくとも90%の生存率、少なくとも95%の生存率である。
【0071】
好適には、本発明の方法は、マクロファージを高収率で産生する。好適には、本発明の方法は、先行技術の方法よりも高い収率のマクロファージを産生する。好適には、本発明の方法は、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%のマクロファージの収率を産生する。好適には、本発明の方法は、20%~70%のマクロファージの収率を産生する。好適には、本発明の方法は、最大40%、最大45%、最大50%、最大55%、最大60%、最大65%、最大70%の収率をもたらす。好適には、マクロファージの収率は、(回収時のマクロファージの数/培養したマクロファージの数)100として算出される。
好適には、方法はGMPに準拠している。
【0072】
分極
本発明のマクロファージの産生方法は、マクロファージを分極するさらなる工程を含んでいてもよい。好適には、マクロファージを分極する工程は、工程(a)の後であるが、マクロファージの単離または製剤化の前に行われる。好適には、本発明の方法または使用のいずれかが、かかる追加の工程を含んでいてもよい。
【0073】
好適には、マクロファージを分極する工程は、工程(a)のマクロファージをM1様またはM2様マクロファージに変換することを含んでいてもよい。
一実施形態において、
(a)単球を培地中で4~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程;および
(b)工程(a)で産生されたマクロファージを分極する工程
を含む、マクロファージを産生するin vitro方法が提供される。
【0074】
一実施形態において、マクロファージを産生するin vitro方法であって、
(a)単球を培地中で4~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程;および
(b)工程(a)で産生されたマクロファージを分極する工程を含み、
工程(a)が、完全に同じ培地中で行われる、
方法が提供される。
【0075】
他の実施形態において、
(c)単球を培地中で3~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程;および
(d)工程(a)で産生されたマクロファージを分極する工程を含む、
マクロファージを産生するin vitro方法が提供される。
【0076】
さらなる実施形態において、マクロファージを産生するin vitro方法であって、
(c)単球を培地中で3~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程;および
(d)工程(a)で産生されたマクロファージを分極する工程を含み、
工程(a)が、完全に同じ培地中で行われる、
方法が提供される。
【0077】
さらなる実施形態において、1つまたは複数の増殖因子はGMPグレードの増殖因子、例えばGMP GM-CSFおよびGMP MCSFである。
好適には、マクロファージを分極する工程は、培地に1つまたは複数の分極因子を添加することを含み得る。好適には、1つまたは複数の分極因子は、M1様またはM2様マクロファージを産生することができる。好適には、M1様表現型およびM2様表現型は、以下に説明するように、様々な因子による分極によって生成される。
【0078】
好適には、M1様表現型は、炎症促進性である。
好適には、M2様表現型は、回復促進性である。
好適には、M1様マクロファージを産生するために、1つまたは複数の分極因子としては、GM-CSF、IFNγ、およびLPSなどのTLRアゴニストが挙げられる。一実施形態において、M1分極増殖因子は、IFNγまたはIFNγ+LPSである。
【0079】
好適には、M2様マクロファージを産生するために、1つまたは複数の分極因子としては、IL10、IL4、IL13、およびポリ(I:C)が挙げられる。一実施形態において、M2分極因子は、IL4+IL13である。あるいは、M2分極因子は、IL10である。あるいは、M2分極因子は、ポリ(I:C)である。
【0080】
好適には、培地に添加される各分極因子の濃度は、10~150ng/mLの間、好適には25~125ng/mLの間、好適には50~100ng/mLの間である。
好適には、各M1分極因子の濃度は、10~100ng/mLの間、好適には20~80ng/mLの間、好適には30ng/mL~60ng/mLの間、好適には約50ng/mLである。一実施形態において、M1分極因子は、50ng/mL(0.1×10IU/mLと同等)の濃度で使用されるIFNγである。
【0081】
好適には、各M2分極因子の濃度は、1~20ng/mLの間、好適には5~15ng/mLの間、好適には8ng/mL~12ng/mLの間、好適には約10ng/mLである。一実施形態において、M2分極因子は、それぞれ10ng/mL(0.29×10IU/mLと同等)の濃度で使用されるIL4およびIL13である。代替的な実施形態において、M2分極因子は、10ng/mL(0.29×10IU/mLと同等)の濃度で使用されるIL10である。
【0082】
好適には、各M1分極因子の濃度は、約50ng/mLである。
好適には、各M2分極因子の濃度は、約10ng/mLである。
好適には、分極工程の間、さらなるMCSFが培地に添加される。
【0083】
好適には、さらなるMCSFは、10~150ng/mLの間の濃度で、好適には25~125ng/mLの間、好適には50~100ng/mLの間で培地に添加される。好適には、さらなるMCSFは、約50ng/mLの濃度で培地に添加される。好適には、100ngの組換えヒトMCSF GMPグレード=1.6×10IUである。
【0084】
好適には、マクロファージを分極する工程を含む方法は、分極マクロファージを産生する。好適には、マクロファージを分極する工程を含む方法は、分極したM1様またはM2様マクロファージを産生する。
【0085】
一実施形態において、そのような方法によって産生された分極マクロファージが提供される。
一実施形態において、抗炎症性および抗線維化表現型を有するex vivo生成分極マクロファージが提供される。
【0086】
一実施形態において、前記分極マクロファージの集団が提供される。
一実施形態において、前記分極マクロファージまたはその集団を含む細胞培養バッグが提供される。
【0087】
好適には、分極マクロファージは、M1様マクロファージまたはM2様マクロファージであってもよい。
【0088】
単球
本発明は、マクロファージを産生するために単球を培養する新規の方法に関する。
【0089】
したがって、好適には、本発明の方法は、単球を得る工程をさらに含んでいてもよい。
好適には、ヒト単球は、全血、単核細胞、白血球アフェレーシス、動態化アフェレーシスなどの任意の供給源から提供され、またはそれらはiPSC由来であってもよい。
【0090】
好適には、単球は、ヒト血液、好適にはヒト血液の単核白血球画分に由来する。好適には、単球は、ヒト末梢血または白血球アフェレーシス提供に由来し、好適には、ヒト末梢血もしくは白血球アフェレーシス提供または動態化アフェレーシス血液収集の単核白血球画分に由来する。好適には、血液もしくは白血球アフェレーシス提供または動態化アフェレーシス血液提供は、健常な対象または疾患対象由来であってもよい。
【0091】
好適には、方法は、血液から、好適には血液の単核白血球画分から、好適にはヒト血液試料の単核白血球画分から単球を精製する工程をさらに含んでいてもよい。かかる精製は、単核白血球画分の単離、および特異的(単球系列のマーカー)または非特異的(接着)方法を用いた画分からの精製単球の単離を含んでいてもよい。好適には、単核白血球画分の単離は、原料に応じた様々な方法によって実施することができる。好適には、選択された精製単球の単離は、小規模(磁気ビーズカラムデバイスまたはプラスチック付着)またはCliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)などの関連デバイスを用いた製造のためにより大規模で実施され得る。
【0092】
好適には、単球は、上記のように全血または他の細胞源から、好適には濃縮により単離される。好適には、単核細胞画分の単離は、原料の密度遠心分離またはマイクロ流体分離によって実施され得る。好適には精製単球の単離は、単核細胞画分の濾過、例えばカラム濾過による単球に特異的な表面マーカーへの磁気ビーズなどによって実施されてもよく、好適な濾過システムは、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を含む。好適には、精製単球の単離は、CD14マイクロビーズ選択によって実施されてもよい。
【0093】
好適には、単球は、健常な対象または疾患対象からの末梢血または白血球アフェレーシス提供から得られてもよい。したがって好適には、単球は、対象に対して同種異系であっても自己由来であってもよい。好適には、同種異系単球は、健常な対象の末梢血または白血球アフェレーシス提供から得られる。好適には、健常な対象は、処置される対象と血液型が一致している。好適には、健常な対象は、処置する対象と部分的にHLAが適合している。好適には、健常な対象は、処置される対象とHLAが適合している。
【0094】
好適には、処置中の免疫反応を最小化するために、単球は、得られたマクロファージ処置される疾患対象からの末梢血または白血球アフェレーシス提供に由来している。したがって、一実施形態において、単球は、処置される対象に対して自己由来である。好適には、単球は、肝臓疾患または傷害を有する疾患対象からの末梢血もしくは白血球アフェレーシス提供または動態化アフェレーシス提供から得られてもよい。好適な肝臓疾患は本明細書で以下に特定する。
【0095】
好適には、本発明の方法のための単球の供給を確保するために、単球は、健常な対象からの末梢血もしくは白血球アフェレーシス提供または動態化アフェレーシス提供に由来する。したがって、一実施形態において、単球は、処置される対象に対して同種異系である。
【0096】
好適には、単球は、以下の表面マーカー-CD14、CD45およびCD192(CCR2)の発現について陽性である。好適には、単離単球は、表面マーカー25F9(またはこの抗体によって認識される特定の分子)およびCD206の発現が低い。好適には、単球はCCR2の発現が高い。
【0097】
マクロファージ
本発明は、3~5日間の培養方法によって産生される新規のマクロファージ、および任意に本明細書の方法によって産生される、特定の再生促進特性を有するマクロファージに関する。
【0098】
上述のように、好適には、マクロファージは単球由来マクロファージであり、好適にはヒト単球由来マクロファージ(hMDM)である。
好適には、上述のように、本発明のマクロファージを産生するために使用される単球は、処置される対象に対して自己由来であってもよく、したがって、好適には、マクロファージは自己由来であってもよい。したがって、好適には、本発明の方法は、自己由来のマクロファージを産生する方法であってもよく、本発明の医学的方法において使用するためのマクロファージは、自己由来のマクロファージであってもよい。
【0099】
好適には、上述のように、本発明のマクロファージを産生するために使用される単球は、処置される対象に対して同種異系であってもよく、したがって好適には、マクロファージは同種異系であってもよい。したがって、好適には、本発明の方法は、同種異系マクロファージを産生する方法であってもよく、本発明の医学的方法において使用するためのマクロファージは、同種異系マクロファージであってもよい。
【0100】
好適には、ほとんどの実施形態において、マクロファージは未分極である。好適には、マクロファージは成熟している。しかしながら、分極工程が産生方法に含まれるいくつかの実施形態において、マクロファージは分極されていてもよく、好適には、M1様またはM2様に分極されていてもよい。
【0101】
一実施形態において、本発明の方法によって産生された自己由来の未分極hMDMが提供される。一実施形態において、抗炎症性および抗線維化表現型を有する、本発明の方法によって産生された自己由来の未分極hMDMが提供される。
【0102】
一実施形態において、本発明の方法によって産生された同種異系の未分極hMDMが提供される。一実施形態において、抗炎症性および抗線維化表現型を有する、本発明の方法によって産生された同種異系の未分極hMDMが提供される。
【0103】
好適には、マクロファージおよびマクロファージを含む任意の組成物は、GMPに準拠している。
好適には、本発明の方法によって産生されたマクロファージは、その方法によって新規である。好適には、さらに、本方法により産生されたマクロファージは、そのサイトカインプロファイルによりそれ自体が新規である。好適には、本発明のマクロファージは、再生促進表現型を有する。好適には、本発明のマクロファージは、抗炎症性表現型を有し得る。好適には、本発明のマクロファージは、抗線維化表現型を有し得る。好適には、マクロファージは、抗炎症性および抗線維化表現型を有し得る。
【0104】
好適には、マクロファージは、関連する表現型を提供する、または関連する表現型を示すサイトカインプロファイルを有していてもよい。好適には、本発明のマクロファージは、再生促進サイトカインプロファイルを有する。好適には、本発明のマクロファージは、成熟マクロファージであり、再生促進サイトカインプロファイルを有する。好適には、本発明のマクロファージは、成熟した未分極マクロファージであり、再生促進サイトカインプロファイルを有する。
【0105】
好適には、「サイトカインプロファイル」とは、マクロファージによって発現されるサイトカインの範囲を意味する。典型的には、マクロファージは、以下のサイトカイン:IL3、IL4、IL6、IL1RA、IL9、TNFa、IL13、IL10、IL17A/F、IL17B、IL17c、およびIL17Fのいずれかを発現することができる。これらのサイトカインのそれぞれの発現レベルは、変動してもよい。好適には、マクロファージは、in vivoでの再生および修復を促進するサイトカインプロファイルを有する。好適には、マクロファージは、in vivoで炎症を誘発しないおよび/または線維化を誘導しないサイトカインプロファイルを有していてもよい。好適には、マクロファージは、in vivoで炎症を低減するおよび/または線維化を低減するサイトカインプロファイルを有していてもよい。
【0106】
好適には、マクロファージは、1つまたは複数の再生促進サイトカインの発現が増加していてもよい。好適には、マクロファージは、1つまたは複数の抗再生サイトカインの発現が低下していてもよい。
【0107】
好適には、マクロファージは、1つもしくは複数の抗炎症性サイトカインの発現が増加していてもよく、および/または、1つもしくは複数の炎症促進性サイトカインの発現が低下していてもよい。好適には、マクロファージは、1つもしくは複数の抗線維化サイトカインの発現が増加していてもよく、および/または、1つもしくは複数の線維化促進サイトカインの発現が低下していてもよい。
【0108】
好適には、マクロファージは、以下のサイトカイン:IL1、IL12、IL17(A、B、C、F)、IL18、TNFα、IFNγ、IL4、IL13、PDGF、およびTGFβ(1、2、3)の1つまたは複数の発現が低下している。好適には、これらのサイトカインは、抗再生サイトカインと考えることができる。
【0109】
好適には、マクロファージは、以下の炎症性サイトカイン:IL1、IL12、IL17(A、B、C、F)、IL18、TNFα、IFNγの1つまたは複数の発現が低下している。一実施形態において、マクロファージは、IL17Fの発現が低下している。
【0110】
好適には、マクロファージは、以下の線維化サイトカイン:IL4、IL13、PDGF、TGFβ(1、2、3)の1つまたは複数の発現が低下している。一実施形態において、マクロファージは、TGFβ1の発現が低下している。
【0111】
好適には、抗再生サイトカインの発現は、先行技術の方法によって産生されたマクロファージにおける同じサイトカインの発現レベルと比較して低下している。好適には、炎症性サイトカインおよび線維化サイトカインの発現は、先行技術の方法によって産生されたマクロファージにおける同じサイトカインの発現レベルと比較して低下している。
【0112】
好適には、マクロファージは、7日法などの先行技術の方法によって産生されたマクロファージによるIL17Fの発現と比較して、IL17Fの発現が少なくとも25%低い。好適には、マクロファージは、7日法などの先行技術の方法によって産生されたマクロファージによるIL17Fの発現と比較して、IL17Fの発現が、30%、35%、40%、45%、50%低くてもよい。
【0113】
好適には、マクロファージは、200pg/mL未満のIL17F、好適には190pg/mL未満のIL17F、好適には180pg/mL未満のIL17F、好適には170pg/mL未満のIL17F、好適には160pg/mL未満のIL17F、好適には150pg/mL以下のIL17Fを発現する。
【0114】
好適には、マクロファージは、7日法などの先行技術の方法によって産生されたマクロファージによるTGFβの発現と比較して、TGFβの発現が少なくとも2%低い。好適には、マクロファージは、7日法などの先行技術の方法によって産生されたマクロファージによるTGFβの発現と比較して、TGFβの発現が、少なくとも4%、6%、8%、10%、15%、20%低くてもよい。
【0115】
好適には、マクロファージは、45000pg/mL未満のTGFβ、好適には44000pg/mL未満、好適には43000pg/mL未満、好適には42000pg/mL未満、好適には41000pg/mL未満、好適には40000pg/mL以下のTGFβを発現する。
【0116】
好適には、マクロファージは、7日法などの先行技術の方法によって産生されたマクロファージによるVEGFR1の発現と比較して、VEGFR1の発現が少なくとも20%低い。好適には、マクロファージは、7日法などの先行技術の方法によって産生されたマクロファージによるVEGFR1の発現と比較して、VEGFR1の発現が少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%低い。
【0117】
好適には、マクロファージは、50pg/mL超のVEGFR1、100pg/mL超のVEGFR1、120pg/mL超のVEGFR1、140pg/mL超のVEGFR1、160pg/mL超のVEGFR1、170pg/mL超のVEGFR1を発現している。
【0118】
好適には、マクロファージは、7日法などの先行技術の方法によって産生されたマクロファージによるIL9の発現と比較して、IL9の発現が少なくとも20%低い。好適には、マクロファージは、7日法などの先行技術の方法によって産生されたマクロファージによるIL9の発現と比較して、IL9の発現が少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%低い。
【0119】
好適には、マクロファージは、500pg/mL未満のIL9、300pg/mL未満のIL9、200pg/mL未満のIL9、180pg/mL未満のIL9、160pg/mL未満のIL9、140pg/mL未満のIL9、130pg/mL未満のIL9を発現する。
【0120】
好適には、マクロファージからのサイトカイン発現レベルは、実施例で説明するように、V-plex技術を使用して所定の分化方法の終了時に細胞培養上清を試験することにより測定される。
【0121】
一実施形態において、抗炎症性および抗繊維化表現型を有するex vivo生成マクロファージが提供され、マクロファージは、200pg/mL未満のIL17Fおよび45000pg/mL未満のTGFβを発現する。
【0122】
一実施形態において、抗炎症性および抗繊維化表現型を有するex vivo生成マクロファージが提供され、マクロファージは、約150pg/mLのIL17Fおよび約40000pg/mLのTGFβを発現する。
【0123】
好適には、これらのサイトカイン発現レベルは、マクロファージの集団の平均である。
好適には、本発明のマクロファージは、成熟マクロファージである。好適には、マクロファージは、予測される成熟マクロファージ細胞表面マーカーを発現する。好適には、本発明のマクロファージは、CD14+、CD206+、CD163+、CD169+、25F9+、およびCD86+である。好適には、マクロファージは、CCR2-である。
【0124】
好適には、本発明のマクロファージは、貪食能を有する。好適には、本発明のマクロファージは、成熟マクロファージについて予測される貪食能を有する。好適には、本発明のマクロファージは、140分の貪食後に20~65の間、140分の貪食後に30~55の間、140分の貪食後に35~50の間、140分の貪食後に約40の細胞質MFIを有する。好適には、細胞質MFIは、実施例で説明されるように、マクロファージをpH感受性蛍光ビーズと140分間インキュベートし、放出された蛍光を測定することによって測定される。
【0125】
好適には、本発明のマクロファージは、炎症性刺激に応答する。好適には、本発明のマクロファージは、炎症性刺激に対して予測される応答を示す。好適には、本発明のマクロファージは、IFNγ、IL10、IL4、IL13、およびLPSなどの炎症刺激に応答する。
【0126】
好適には、本発明のマクロファージは、表面への接着性が低い。好適には、本発明のマクロファージは、先行技術の方法によって産生されたマクロファージよりも、表面への接着性が低い。好適には、本方法によって産生された集団における接着マクロファージの割合は、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満、50%未満、45%未満である。好適には、接着細胞の割合は、(インキュベーションおよび洗浄前の播種細胞数/インキュベーションおよび洗浄後の回収細胞数)100によって算出される。好適には、これらの値は、37℃および5%COにおいて、2時間にわたってプラスチック表面に接着することができるマクロファージの数として算出される。例えば、接着70%は、プレートに播種したマクロファージの70%が2時間後に接着していることを意味する。
【0127】
細胞培養バッグ
本発明のマクロファージ、その集団、またはその組成物は、細胞培養バッグ内で産生、すなわち培養し得る。
【0128】
したがって、好適には、本発明の方法の工程(a)は、細胞培養バッグ内で行われてもよい。したがって、好適には、単球は、細胞培養バッグ内でマクロファージに分化し得る。したがって、好適には、マクロファージは、細胞培養バッグ内で単球を培養することによって、単球から産生されてもよい。
【0129】
好適には、細胞培養バッグは、GMPグレードである。
好適には、細胞培養バッグ内の単球の密度は、1×10/cm~最大4×10/cmの間、好適には1.5×10/cm~最大3.5×10/cmの間、好適には1.7×10/cm~最大3.2×10/cmの間、好適には2×10/cm~最大3×10/cmの間である。一実施形態において、細胞培養バッグ内の単球の密度は、3×10/cmである。
【0130】
好適には、単球は、上記の密度で細胞培養バッグ内で培養される。
製剤
本発明のマクロファージは、対象の任意の疾患、特に対象の肝臓疾患または傷害の処置に好適に使用される。
【0131】
好適には、マクロファージは、対象に投与するための医薬に製剤化される。好適には、医薬への製剤化は、組成物、好適には医薬組成物への製剤化を含んでいてもよい。
好適には、そのような製剤または組成物は液体である。
【0132】
好適には、そのような製剤または組成物は、賦形剤または希釈剤などの1つまたは複数の許容される担体を含んでいてもよい。好適には、マクロファージは、1つまたは複数の許容される担体と共に製剤化される。薬学的に許容される担体または希釈剤の形態および特性が、それが組み合わされる活性成分の量、投与経路および他の周知の変数によって規定されることは当業者には認識されるであろう。
【0133】
好適には、製剤または組成物は、例えば、水、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ロウ、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂などの薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。
【0134】
好適には、製剤または組成物は、滅菌水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンを含んでいてもよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、例えば、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば生理食塩水および緩衝化媒体が挙げられる。
【0135】
好適には、薬学的に許容される担体としては、0.01~0.1M、好ましくは0.05Mリン酸緩衝液または0.8%生理食塩水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の一般的な非経口担体としては、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内担体としては、流体および栄養補給剤、電解質補給剤、例えばリンゲルデキストロースベースのものなどが挙げられる。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在し得る。
【0136】
好適には、注射用の製剤または組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌注射用溶液または分散液の即時調製のための無菌粉末を含んでいてもよい。このような場合、組成物は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流体的であるべきである。それは、製造および保存の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されるであろう。好適には、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合の必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持し得る。
【0137】
本明細書に開示された治療方法における使用に適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.)16th ed.(1980)に記載されている。
【0138】
好適には、微生物の作用の防止は、無菌製造技術、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、医薬組成物中に等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含むことが好適であるだろう。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを製剤または組成物に含むことによってもたらされ得る。
【0139】
適切な賦形剤としては、緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/エチレンジアミン四酢酸(EDTA)緩衝液(PBS/EDTA緩衝液)または0.5%HAS(ヒトアルブミン血清)を含むPBS/EDTA緩衝液;生理食塩水、例えば0.9%生理食塩水または0.5%HASを含む0.9%生理食塩水を挙げることができる。
【0140】
好適には、賦形剤は0.5%HASを含む0.9%生理食塩水である。
好適には、製剤または組成物は、例えば、抗酸化剤、または防腐剤などの添加剤をさらに含んでいてもよい。好適には、製剤または組成物が凍結されることを意図している場合、製剤または組成物は、DMSOなどの凍結保存剤、好適には5~10%DMSOをさらに含んでいてもよい。
【0141】
好適には、本発明のマクロファージは、第2の治療剤と組み合わせてもよい。したがって、好適には、本発明のマクロファージは、第2の治療剤と共に医薬に製剤化されてもよい。
【0142】
好適には、第2の治療剤は、肝臓疾患または傷害の処置に有効な他の剤であってもよい。あるいは、第2の治療剤は、線維化の処置に有効な他の剤であってもよい。好適には、肝臓疾患を処置するための第2の治療剤は、例えば、副腎皮質ホルモン、インターフェロン、抗ウイルス剤、胆汁酸、利尿剤、アルブミン、ビタミンK、血液製剤、および抗生物質から選択されてもよい。好適には、線維化を処置するための第2の治療剤は、(15、16)または(17)に記載のものなどの抗線維化薬剤から選択し得る。
【0143】
好適には、本発明のマクロファージは、第2および第3の治療剤と組み合わせてもよい。好適には、本発明のマクロファージは、肝臓疾患または傷害の処置に有効な第2の剤、および線維化の治療に有効な第3の治療剤と組み合わせてもよい。
【0144】
好適には、第2の治療剤は、G-CSF、CCR2アンタゴニスト、CCR5アンタゴニスト、または二重アンタゴニストであってもよい(18、19)。
医学的使用
好適には、本発明のマクロファージは、疾患を処置するための医薬として使用するためのものである。肝臓疾患または傷害の好ましい処置は、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0145】
好適には、上記で説明するように、医学的使用のためのマクロファージは、自己由来または同種異系である。
一実施形態において、医薬として使用するための、本発明の方法によって産生された自己由来マクロファージが提供される。一実施形態において、医薬として使用するための、抗炎症性および抗線維化表現型を有するex vivo生成自己由来マクロファージが提供される。好適には、肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものである。
【0146】
一実施形態において、医薬として使用するための、本発明の方法によって産生された同種異系マクロファージが提供される。一実施形態において、医薬として使用するための、抗炎症性および抗線維化表現型を有するex vivo生成同種異系マクロファージが提供される。好適には、肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものである。
【0147】
一実施形態において、医学的使用のためのマクロファージは、分極マクロファージであってもよい。一実施形態において、医薬として使用するための、本発明の方法によって産生された分極マクロファージが提供される。一実施形態において、医薬として使用するための、抗炎症性および抗線維化表現型を有するex vivo生成分極マクロファージが提供される。好適には、肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものである。
【0148】
好適には、マクロファージは、未分極および自己由来であっても、または分極および自己由来であってもよい。好適には、マクロファージは、未分極および同種異系であっても、または分極および同種異系であってもよい。
【0149】
好適には、本発明のマクロファージの医学的使用に関連して本明細書に記載される任意の特徴は、本発明のマクロファージを含む製剤または医薬組成物にも同様に適用され得る。
【0150】
好適には、本発明のマクロファージは、対象における疾患の処置のための医薬として提供し得る。好適には、本発明のマクロファージは、対象における疾患の処置のための医薬として好適であるように製剤化されてもよい。
【0151】
好適な製剤は、本明細書の他の箇所に記載されている。
好適には、マクロファージは、対象に対して非経口的に、好適には静脈内投与するためのものである。好適には、マクロファージは、注射または注入による対象への投与のためのものである。好適には、マクロファージは、末梢静脈を介した対象への静脈内投与のためのものである。
【0152】
好適には、マクロファージは、約10~10細胞、好適には約10~10細胞、好適には約10細胞の用量で対象に投与するためのものである。好適には、適切な用量は、例えば、対象の体重、性別および年齢に基づいて、医学的専門家によって決定し得る。
【0153】
好適には、マクロファージは、単回用量または複数回用量で対象に投与するためのものである。好適には、用量は、間隔を空けて投与し得る。好適には、用量は、例えば、1日3回、1日1回、2日に1回、4日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、数ヶ月に1回、1年に1回投与し得る。
【0154】
一実施形態において、マクロファージは、1ヶ月に1回の間隔で対象に投与するためのものである。一実施形態において、マクロファージは、1ヶ月に1回の間隔で3回用量で対象に投与するためのものである。一実施形態において、マクロファージは、1ヶ月に1回の間隔で10個の細胞を3回用量で対象に投与するためのものである。
【0155】
好適には、本発明のマクロファージは、医薬として使用するためのものである。
好適には、本発明のマクロファージは、疾患または傷害の処置における使用のためのものである。
【0156】
好適には、本発明のマクロファージは、急性または慢性の疾患または傷害の処置における使用のためのものである。好適には、本発明のマクロファージは、急性傷害の処置における使用のためのものである。好適には、本発明のマクロファージは、慢性疾患の処置における使用のためのものである。
【0157】
好適には、本発明のマクロファージは、再生を改善することによる、好適には抗再生サイトカインの発現を低下させることによる、急性または慢性の疾患または傷害の処置における使用のためのものである。
【0158】
好適には、本発明のマクロファージは、線維化を低減することおよび/または炎症を低減することによる、好適には、線維化促進および/または炎症促進サイトカインの発現を低下させることによる、急性または慢性の疾患または傷害の処置における使用のためのものである。
【0159】
したがって、好適には、マクロファージは、線維化または炎症性疾患の処置における使用のため、好適には線維化および/または炎症を伴う疾患の処置における使用のためのものであり得る。好適には、トランスフェクトされたマクロファージは、線維化を低減することおよび/または炎症を低減することによる疾患の処置における使用のためのものであり得る。
【0160】
好適には、マクロファージは、任意の炎症性疾患、または任意の線維化疾患の処置における使用のためのものであってもよい。
好適には、マクロファージは、任意の肝臓疾患、腎臓疾患、肺疾患、または筋疾患の処置における使用のためのものであってもよい。好適には、マクロファージは、肝臓、腎臓、肺、または筋肉における任意の線維化疾患または炎症性疾患の処置における使用のためのものであってもよい。好適には、トランスフェクトされたマクロファージは、肝臓の任意の線維化疾患または炎症性疾患の処置における使用のためのものであってもよい。
【0161】
好適には、マクロファージは、線維化肝臓疾患、線維化腎臓疾患、線維化肺疾患、または線維化筋疾患の処置における使用のためのものであってもよい。好適には、マクロファージは、炎症性肝臓疾患、炎症性腎臓疾患、炎症性肺疾患、または炎症性筋疾患の処置における使用のためのものであってもよい。好適には、マクロファージは、線維化および/または炎症を低減することによる、肝臓疾患、腎臓疾患、肺疾患、または筋疾患の処置における使用のためのものであってもよい。好適には、マクロファージは、線維化肝臓疾患または炎症性肝臓疾患の処置における使用のためのものであってもよい。好適には、マクロファージは、線維化を低減することおよび/または炎症を低減することによる肝臓疾患の処置における使用のためのものであってもよい。
【0162】
好適な肝臓疾患としては、慢性肝臓疾患、急性肝臓疾患、急性増悪した慢性肝臓疾患、アラジール症候群、アルコール関連肝臓疾患、妊娠の急性脂肪肝、α1アンチトリプシン欠損、自己免疫性肝炎、良性肝臓腫瘍、胆道閉鎖症、バッドキアリ症候群、肝硬変、クリグラーナジャー症候群、嚢胞性線維化関連肝臓疾患、胆石症、ガラクトース血症、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、肝性脳症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎、肝腎症候群、妊娠性肝内胆汁うっ滞症(ICP)、リソソーム酸性リパーゼ欠損(LAL-D)、肝嚢、肝膿瘍、肝臓癌、新生児黄疸、非アルコール性脂肪性肝臓疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、ポルフィリン症、門脈圧亢進症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)、レイ症候群、I型グリコーゲン貯蔵病、ウィルソン病が挙げられる。
【0163】
好適には、肺疾患としては、慢性肺疾患、急性肺疾患、急性増悪した慢性肺疾患、喘息、COPD、肺炎、肺気腫、肺線維症、肺癌、中皮腫、嚢胞性線維症、結核、呼吸器感染症、肺浮腫、気管支炎、肺塞栓症、肺高血圧、サルコイドーシス、間質性肺疾患、ランゲルハンス細胞組織球症、閉塞性気管支炎、炎症後肺線維症、肺胞タンパク症、特発性肺ヘモシデローシス、肺胞微石症、特発性間質性肺炎、特発性肺線維症、急性間質性肺炎、隠蔽性組織化肺炎、落屑性間質性肺炎、リンパ脈管筋腫症、神経内分泌細胞過形成、肺間質性糖原病、肺胞形成不全、リウマチ性肺疾患、サイトカイン放出症候群(CRS)誘発性急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、および二次性血球貪食性リンパ組織球症(sHLH)が挙げられる。
【0164】
好適な腎臓疾患としては、慢性腎臓疾患、急性腎臓疾患、急性増悪した慢性腎臓疾患、アブデルハルデン-カウフマン-リグナック症候群(腎性シスチン症)、急性腎不全/急性腎臓傷害、急性葉状腎症、急性リン酸腎症、急性尿細管ネクローシス、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損、見かけのミネラロコルチコイド過剰症候群、泌尿器科管の動静脈奇形および瘻孔、常染色体優性低カルシウム血症、バルデー-ビードル症候群、バーター症候群、ビール心因性多飲症、ビート尿、β-サラセミア腎臓疾患、胆汁円柱腎症、バート-ホッグ-デュベ症候群、C1q腎症、C3糸球体症、モノクローン高ガンマグロブリン血症を伴うC3糸球体症、C4糸球体症、CAKUT(先天性腎尿路異常症)、毛細血管漏出症候群(Capillary Leak Syndrome)、心腎症候群、CFHR5腎症、糸球体症を伴うシャルコー-マリー-トゥース病、チャーグ-ストラウス症候群、チロ尿、繊毛症、寒冷利尿、コラーゲン線維性糸球体症、崩壊性糸球体症、先天性腎尿路異常症(CAKUT)、先天性ネフローゼ症候群、うっ血性腎不全、コノレナル症候群(メインザー-サルディノ症候群またはサルディノ-メインザー病)、造影剤腎症、皮質ネクローシス、クリオクリスタルグロブリン血症、クリオグロブリン血症、結晶貯蔵組織球症、シスチン尿症、緻密沈着症(MPGN2型)、象牙病(X連鎖劣性腎結石症)、透析平衡症候群、糖尿病および糖尿性腎臓疾患、利尿、薬剤および物質誘導性腎臓疾患、EAST症候群、異所性腎臓、エルドハイム-チェスター病、ファブリー病、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、ファンコニ症候群、フレーザー症候群、線維性糸球体腎炎および免疫タクト糸球体症、フレーリー症候群、高ボリューム血症、巣状分節性糸球体硬化症、巣状糸球体硬化症、ギャロウェイモワット症候群、高血圧症、ギテルマン症候群、糸球体疾患、糸球体管逆流症、糖尿、グッドパスチャー症候群、HANAC症候群、熱ストレス腎症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、血球貪食症候群、出血性膀胱炎、ネフロパティスエピデミカ(Nephropathis Epidemica)、ヘモジデリン尿症、発作性夜間血色素尿症および溶血性貧血に関連するヘモシデローシス、肝性糸球体症、肝性静脈閉塞疾患、類洞閉塞症候群、C型肝炎関連腎臓疾患、肝細胞核因子1β関連腎臓疾患、肝腎症候群、HNF1B関連常染色体優性遺伝性尿細管間質性腎臓疾患、馬蹄腎(腎融合症)、ハンナー潰瘍、親水性高分子塞栓症、高アルドステロン症、高カルシウム血症、高カリウム血症、高マグネシウム血症、高ナトリウム血症、高シュウ酸尿症、高リン酸血症、低カルシウム血症、低補体性じんま疹血管炎症候群、低カリウム血症誘導性腎機能障害、低マグネシウム血症、低ナトリウム血症、低リン酸血症、間質性腎炎、感染症誘導性腎臓疾患、イベマルク症候群、ジュベール症候群、腎結石、腎結石症、腎臓癌、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損(LCAT欠損)、リドル症候群、ライトウッド-アルブライト症候群、リポ蛋白糸球体症、狼瘡、全身性エリテマトーデス、リジン尿蛋白不耐症、リゾチーム腎症、悪性腫瘍関連腎臓疾患、マラコプラキア、マッキトリック-ウィーロック症候群、大動脈弁狭窄症、髄様嚢胞腎臓疾患、ウロロデュリン関連腎症、若年性高尿酸血症1型、髄様海綿状腎、MELAS症候群、膜性増殖性糸球体腎炎、膜性腎症、メソアメリカン腎症、代謝性アシドーシス、代謝性アルカローシス、顕微鏡的多発血管炎、ミルクアルカライ症候群、ディスプロテイン血症、MUC1腎症、多嚢胞性異形成腎、多発性骨髄腫、骨髄増殖性新生物および糸球体症、ネイルパテラ症候群、NARP症候群、ネフロカルシノーシス、ネフロシスチン-1遺伝子欠失およびESRD、腎性全身性線維症、ネフロシスチン-1遺伝子欠失によるネフロン癆、ネフロプトーシス(浮遊腎、腎臓下垂)、ネフローゼ症候群、結節性糸球体硬化症、くるみ割り人形症候群、オリゴメガネフロニア、オロチン酸尿症、シュウ酸腎症、ページ腎、乳頭ネクローシス、乳頭腎症候群(腎コロボマ症候群、孤立性腎低形成)、腹膜-腎臓症候群、POEMS症候群、ポドサイト陥入糸球体症、感染後糸球体腎炎、結節性多発動脈炎、多嚢胞性腎疾患、後尿道弁、閉塞後利尿症、モノクローンIgG沈着を伴う増殖性糸球体腎炎(ナスル病)、蛋白尿(尿中蛋白)、偽性高アルドステロン症、偽性低炭酸血症、偽性副甲状腺症、肺-腎症候群、腎盂腎炎(肝臓感染)、腎盂腎症、逆流性腎症、急速進行性糸球体腎炎、腎膿瘍、腎周囲膿瘍、腎欠損、腎弧状静脈微小血栓症関連急性腎臓傷害、腎動脈瘤、腎動脈狭窄症、腎細胞癌、腎嚢胞、腎梗塞、腎骨異栄養症、腎尿細管酸性化症、後腹膜線維症、横紋筋融解症、関節リウマチ関連腎臓疾患、サルコイドーシス腎臓疾患、塩分消耗症、強皮症腎臓危機、蛇行性腓骨-多嚢胞性腎臓症候群、エクスナー症候群、鎌状赤血球腎症、TAFRO症候群、紅茶トースト低ナトリウム血症、薄層基底膜疾患、家族性良性血尿、モノクローン高ガンマグロブリン血症を伴う血栓性微小血管障害、トレンチ腎炎、トリゴン炎、結核、泌尿器、結節性硬化症、尿細管異形成、近位尿細管ブラシボーダーに対する自己抗体による免疫複合体尿細管間質性腎炎、腫瘍溶解症候群、尿毒症、尿毒症性視神経症、膀胱尿管炎、尿管結節、尿道カルンクル、尿道狭窄、尿路感染症、尿路性器フィステル、ウロモジュリン関連腎臓疾患、血管運動性腎症、膀胱腸瘻、膀胱尿管逆流、VGEF阻害および腎血栓性微小血管症、ウイルス誘導性腎臓疾患、フォンヒッペル-リンドウ病、ワルデンシュトロームマクログロブリン血性糸球体腎炎、ウェゲナー肉芽腫症、多発血管炎性を伴う肉芽腫症、ヴンダーリッヒ症候群、ゼルヴェガー症候群、脳肝腎症候群が挙げられる。
【0165】
好適な筋疾患としては、慢性筋疾患、急性筋疾患、急性増悪した慢性筋疾患、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ筋ジストロフィー、四肢帯状筋ジストロフィー)、特発性炎症性筋疾患(例えば、皮膚筋炎、多発性筋炎)、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、ミトコンドリアミオパチー、横紋筋融解症、線維筋痛症、捻挫および挫傷、ならびに筋腫瘍、例えば平滑筋腫、横紋筋腫、および横紋筋肉腫が挙げられる。
【0166】
肝臓疾患または傷害
本発明のマクロファージは、好ましくは、肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものである。
【0167】
好適には、本発明のマクロファージは、肝臓疾患または傷害における肝硬変の処置における使用のためのものであってもよい。好適には、本発明のマクロファージは、肝臓疾患または傷害における炎症および/または線維化の処置における使用のためのものであってもよい。
【0168】
好適には、本発明のマクロファージは、線維化を低減すること、ネクローシスを低減すること、肝細胞増殖を増加すること、ビリルビン血症を低減すること、GLDHを低減すること、肝臓:重量比率を増加すること、ASTレベルを低減すること;および/または炎症を低減することによる(肝機能試験解釈の全詳細は材料および方法に示す)肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものであってもよい。
【0169】
好適には、肝臓疾患または傷害は、慢性、または急性、または急性増悪した慢性であり得る。好適には、急性肝臓疾患または傷害は、原因から24週間未満で発症した肝臓疾患または傷害として分類し得る。好適には、慢性肝臓疾患は、6ヶ月超持続している肝臓疾患または傷害として分類し得る。好適には、急性増悪した慢性肝臓疾患は、6ヶ月超持続している慢性肝臓疾患を既に有する患者において、原因から24週間未満で発症した肝臓疾患または傷害として分類し得る。
【0170】
好適には、慢性肝臓疾患/傷害は、以下:C型肝炎;B型肝炎;アルコール関連肝臓疾患;非アルコール性脂肪性肝臓疾患;特発性肝硬変;ウィルソン病;自己免疫肝炎;胆管炎;血色素症;およびα1-アンチトリプシン欠損から選択し得る。
【0171】
好適には、マクロファージは、慢性肝臓疾患における線維化および/または炎症を低減することによる肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものである。好適には、マクロファージは、線維化および/または炎症を低減することによる慢性肝臓疾患の処置における使用のためのものである。
【0172】
好適には、急性肝臓疾患/傷害は、以下:過度のアルコール消費;薬物に対する有害反応;例えば食物、化学物質、毒素による中毒;サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、黄熱などの微生物による感染;妊娠の急性脂肪肝;および薬剤の過剰摂取、例えばアセトアミノフェンの過剰摂取(APAP)によって引き起こされ得る。
【0173】
好適には、マクロファージは、急性肝臓疾患におけるネクローシスを低減することによる肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものである。好適には、マクロファージは、ネクローシスを低減することによる急性肝臓疾患の処置における使用のためのものである。
【0174】
好適には、急性肝臓疾患/傷害の処置のためのマクロファージは、分極している。
したがって、好適には、本発明の分極マクロファージは、急性肝臓疾患におけるネクローシスを低減することによる肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものであってもよい。好適には、本発明の分極マクロファージは、ネクローシスを低減することによる急性肝臓疾患の処置における使用のためのものである。
【0175】
好適には、慢性肝臓疾患/傷害の処置のためのマクロファージは、未分極である。
したがって、好適には、本発明の未分極マクロファージは、慢性肝臓疾患における線維化を低減することによる肝臓疾患または傷害の処置における使用のためのものである。好適には、本発明の未分極マクロファージは、線維化を低減することによる慢性肝臓疾患の処置における使用のためのものである。
【0176】
一実施形態において、本発明のマクロファージは、肝硬変の処置における使用のためのものである。
一実施形態において、本発明のマクロファージは、APAP過剰摂取の処置における使用のためのものである。
【0177】
好適には、肝硬変の処置における使用のためのマクロファージは、未分極マクロファージである。
好適には、薬剤過剰摂取の処置における使用のためのマクロファージは、分極マクロファージである。好適には、薬剤過剰摂取の処置における使用のためのマクロファージは、M2マクロファージである。
【0178】
一実施形態において、APAP過剰摂取の処置における使用のための、本発明の方法によって産生されたM2分極マクロファージが提供される。
【0179】
対象
本発明のマクロファージは、それを必要とする対象における疾患を処置するための医薬として使用するためのものである。
【0180】
好適には、対象はヒトまたは動物であってよく、好適には、対象はヒトである。好適には、対象は、子供または成人であってよく、好適には、対象は、成人である。
好適には、対象は、処置を必要としている場合がある。したがって、好適には、対象は、疾患を有していても、または疾患を発症するリスクがあってもよい。好適には、対象は、本明細書の上記で定義される肝臓疾患または傷害を有していても、または発症するリスクがあってもよい。
【0181】
好適には、対象は、肝臓疾患または傷害に関連する特定の危険因子、例えば、アルコール中毒、薬物乱用、肥満、自己免疫障害、メタボリック症候群、特定の薬物の服用、有毒化学物質/微生物への曝露を満たす場合がある。
【0182】
好適には、対象は、疾患の症状を有していてもよい。好適には、対象は、肝臓疾患または傷害に関連する症状を有していてもよい。
好適には、対象は、以下の症状:例えば、爪甲剥離、手掌紅斑、血管腫、女性化乳房、精巣萎縮、貧血、頭蓋中膜、眠気、過呼吸、アステリキシス、黄疸、腹水、白骨症、末梢水腫、打撲、呼吸アルカリ症、肝臓肥大、デュピュイトレン拘縮、耳下腺肥大、末梢神経障害およびカイザー-フライシャーリングの1つまたは複数を有していてもよい。
【0183】
好適には、対象は、対象の肝臓疾患または傷害の重症度をランク付けするMELDスコアを有していてもよい。好適には、対象は、10~16の間であるMELDスコアを有していてもよい。
【0184】
好適には、対象は、対象の肝臓疾患または傷害の重症度をランク付けするMELDスコアを有していてもよい。好適には、対象は、20未満であるMELDスコアを有していてもよく、任意に対象は、10~19の間のMELDスコアを有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0185】
図1】本発明のプロトコル(5日供給なし)vs.標準プロトコル(7日+再供給)の特徴付けを示す。A 2人の異なるドナーからの5日供給なしマクロファージ(5日)および7日+供給マクロファージ(7日)の代表的写真(明視野、20×、スケールバー=200mm);B 5日供給なしvs.7日+供給プロトコルの収率。収率の割合(%)は、(回収時のマクロファージ数/播種したマクロファージ数)100として算出される。ダゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性検定を実施した後、ノンパラメトリックマンホイットニー検定を適用した。p=0.0641;C 5日供給なしvs.7日+供給プロトコルの終了時の生存率。割合(%)は、単一細胞ゲートにおけるDRAQ-CD45+マクロファージの%として算出される。ダゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性検定を実施した後、ノンパラメトリックマンホイットニー検定を適用した。p=0.99;D~E 5つの5日供給なしおよび5つの7日+供給の細胞培養上清の上清のガスクロマトグラフィー結果。グルコース(D)および乳酸(E)を測定する。試料が少なすぎるため、ダゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性検定を実施できず:ノンパラメトリックマンホイットニー検定を適用した。p=0.99;F 5日供給なしマクロファージおよび7日+供給マクロファージの接着特性。接着性細胞の割合(%)は、(インキュベーションおよび洗浄前の播種細胞数/インキュベーションおよび洗浄後の回収細胞数)100として算出される。試料が少なすぎるため、ダゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性検定を実施できず;ノンパラメトリックなウィルコクソン符号付順位和検定を適用した。p=0.1875。
図2】本発明のプロトコル(5日供給なし)vs.標準プロトコル(7日+再供給)のさらなる特徴付けを示す。A V-Plex技術を用いた機能的関連サイトカインの投与量。データはpg/mLで示されている。5日および7日の濃度は、材料および方法で報告されているように算出される。同じドナーを5日および7日のサイトカイン分泌について試験する。データは対応のあるデータに対してt-検定を用いて解析される。**p<0.01;***p<0.001;B 細胞表面マーカーのフローサイトメトリー解析。各ドットはドナーを表す。MFI比率は、5日または7日のMFIを培養開始時のCD14+単球のMFIで割ることによって算出する。点線は、CD206および25F9の7日のマクロファージを処置のために放出するための最小標的比率と考えられている5の比率を表す。データは、対応のないデータに対してt-検定を用いて解析される;C ライブイメージングを用いた貪食アッセイ。AlexaFluor488チャンネルにおけるマクロファージの細胞質MFI(すなわち、摂取されたビーズの)の平均±SDを報告する。解析したいずれのデータポイントにおいても有意差はない。データは、二元配置分散分析を用いて解析される。
図3】本発明のプロトコル(5日供給なし)vs.標準プロトコル(7日+再供給)のさらなる特徴付けを示す。A 供給をした、および供給をしない5日および7日のプロトコルの収率。各記号は独立したドナーである;B ヒト血清AB型(h血清AB)を添加した、および添加しない、供給をした、および供給をしない5日および7日のプロトコルの収率;C AimV(AV)またはTexMacs(TM)中で培養した、供給をした、または供給をしない、血清を添加した、または添加しないhMDMの細胞培養上清中のグルコースのガスクロマトグラフィー分析。各記号は独立したドナーである;D AimV(AV)またはTexMacs(TM)中で培養した、供給をした、または供給をしない、血清を添加した、または添加しないhMDMの細胞培養上清中の乳酸のガスクロマトグラフィー分析。各記号は独立したドナーである;E 供給をした、および供給をしない、ヒト血清AB型(h血清AB)を添加した、および添加しない、5日プロトコルを使用した細胞の生存率;F 供給なしプロトコルおよび供給プロトコルを使用した2人のドナーにおけるフローサイトメトリーによる生存率の日ごとの解析。
図4】供給あり、または供給なしの単球のマクロファージへの分化の日ごとの特徴付けを示す。A~H 細胞表面マーカーのフローサイトメトリー解析。各時点において、各記号は、経時的な単一のドナーからの単球-マクロファージを表す。供給をした、および供給をしない単球-マクロファージは異なる記号()で表す。MFI比率は、X日目のMFIを培養開始時のCD14+単球のMFIで割ることにより算出する。解析する特定のマーカーは、Y軸のラベルに報告されている。
図5-1】本発明のプロトコル(5日供給なし)vs.標準プロトコル(7日+再供給)の特徴付けを示す。A V-Plex技術を用いた機能的関連サイトカインの投与量。データはpg/mLで表されている。5日および7日の分極マクロファージからのデータは、オンラインプラットフォームMorpheusを使用してクラスタリングされる。同じドナーを5日および7日のサイトカイン分泌について試験する。擬似カラースケールは淡い灰色から濃い灰色までの範囲であり、任意の所定のタンパク質の最小から最大までの発現を表す。灰色のボックスは、アッセイの検出限界を下回った試料を表す;B~D 代表的なサイトカインとケモカインを報告する(それぞれIL17A/F、MCP-1、およびIL10)。各記号は異なるドナーである。データは平均値±SDで示されている。同じ形のドットは、同じキューで分極させた試料を表す;E~H 細胞表面マーカーのフローサイトメトリー解析。各記号はドナーを表す。MFI比率は、5日または7日の分極hMDMのMFIを5日または7日の未分極hMDMのMFIで割ることによって算出される。点線は、1の比率を表す:1を超える比率は、分極hMDM vs未分極hMDMの間で上方制御されていることを意味する。1を下回る比率は、下方制御を意味する。
図5-2】本発明のプロトコル(5日供給なし)vs.標準プロトコル(7日+再供給)の特徴付けを示す。A V-Plex技術を用いた機能的関連サイトカインの投与量。データはpg/mLで表されている。5日および7日の分極マクロファージからのデータは、オンラインプラットフォームMorpheusを使用してクラスタリングされる。同じドナーを5日および7日のサイトカイン分泌について試験する。擬似カラースケールは淡い灰色から濃い灰色までの範囲であり、任意の所定のタンパク質の最小から最大までの発現を表す。灰色のボックスは、アッセイの検出限界を下回った試料を表す;B~D 代表的なサイトカインとケモカインを報告する(それぞれIL17A/F、MCP-1、およびIL10)。各記号は異なるドナーである。データは平均値±SDで示されている。同じ形のドットは、同じキューで分極させた試料を表す;E~H 細胞表面マーカーのフローサイトメトリー解析。各記号はドナーを表す。MFI比率は、5日または7日の分極hMDMのMFIを5日または7日の未分極hMDMのMFIで割ることによって算出される。点線は、1の比率を表す:1を超える比率は、分極hMDM vs未分極hMDMの間で上方制御されていることを意味する。1を下回る比率は、下方制御を意味する。
図6】様々な分化および分極プロトコルの特徴付けを示す。A rIL4およびrIL13(20ng/mL)の組合せを使用して分極させたhMDM D5およびD7の細胞表面マーカーのフローサイトメトリー解析。各記号は独立したドナーである。データはRFIとして報告され、分極MFI/未分極MFIとして算出される。したがって、グラフ上で1に設定された点線は、未分極細胞と比較して特定のマーカーのモジュレーションがないことを表す;B GMP細胞培養バッグ中で異なる密度で培養した5日のhMDMにおけるCD206のフローサイトメトリー解析。RFIは、5日のhMDMのMFIをCD14+単球のMFIで割ることによって算出される。線は、単一のドナーからのhMDMにおいて測定されたRFI値を結合する;C GMP細胞培養バッグ中で異なる密度で培養した5日のhMDMにおける25F9のフローサイトメトリー解析。RFIは、5日のhMDMのMFIをCD14+単球のMFIで割ることによって算出される。線は、単一のドナーからのhMDMにおいて測定されたRFI値を結合する。
図7】GMPバッグ中vs.標準プラスチック中の5日供給なしプロトコルの特徴付けを示す。A 3つの異なる細胞密度:10/cm、2×10/cm、および3×10/cmを使用したGMPバッグ中の5日供給なしプロトコルの収率。各線は、凡例に示すように、単一のドナーからのデータを結合する;B 3つの異なる細胞密度:10/cm、2×10/cm、および3×10/cmを使用したGMPバッグ中の5日供給なしプロトコルで産生されたhMDMの生存率。各線は、凡例に示すように、単一のドナーからのデータを結合する;C GMPバッグ中vs.標準プラスチック中の5日供給なしプロトコルの収率。収率の割合(%)は、(回収時のマクロファージ数/播種されたマクロファージ数)100として算出される。ダゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性検定を実施した後、ノンパラメトリックマンホイットニー検定を適用した;D GMPバッグ中vs.標準プラスチック中の5日供給なしプロトコルの終了時の生存率。割合(%)は、単一細胞ゲートにおけるDRAQ-CD45+マクロファージの%として算出される。ダゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性検定を実施した後、ノンパラメトリックマンホイットニー検定を適用した;E 細胞表面マーカーのフローサイトメトリー解析。各記号はドナーを表す。MFI比率は、5日のMFIを培養開始時のCD14+単球のMFIで割ることによって算出する。点線は、CD206および25F9の7日のマクロファージを処置のために放出するための最小標的比率と考えられている4の比率を表す。データは、対応のないデータに対してt-検定を使用して解析される。
図8】慢性および急性肝臓傷害のマウスモデルにおける5日のhMDMの注射を示す。A 実験デザイン:NOD/SCIDマウスにCClを週2回、12週間注射し、重度の肝臓線維化を誘導する。9週目、10週目、および11週目の開始時に5日のhMDMを注射する。マウスは、マクロファージ療法の最終用量の1週間後に選別する;B PSR染色を、5日のhMDMまたは生理食塩水で処理した肝臓で行い、染色面積を定量化する。各記号はマウスを表す。6~10の10×視野/マウスが定量化されている。ダゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性検定を実施した後、ノンパラメトリックマンホイットニー検定を適用した。p=0.12;C~D 選別時の循環血清ALT(C)およびビリルビン(D)の投与量。各ドットはマウスを表す。ダゴスティーノおよびピアソンオムニバス正規性検定を実施し、その後、不等分散を有する試料に対してウェルチの補正を行い、対応のないデータに対して片側t-検定を行った。pは血清ALTについては有意ではなかったが、5日のhMDMで処理したマウスで減少する傾向が報告されており(p=0.07);血清ビリルビンは選別時において、5日のhMDMで処理したマウスで有意に減少した:ビリルビンについてはp<0.05(p=0.02);E 5日のhMDMおよび生理食塩水で処理した肝臓の代表的な写真。(10×、明視野);F 実験デザイン:C57Bl/6 WTマウスは、パラセタモール(アセトアミノフェン、APAP)注射の前に14時間絶食させた。AAMに分極した5日のhMDMをAPAP注射後16時間で注射し、20時間後(AAP注射後36時間)にマウスを選別する;G H&E染色を5日のAAMまたは生理食塩水で処理した肝臓において行い、染色面積を定量化する。各ドットはマウスを表す。6~10の10×視野/マウスが定量化されている。シャピロ-ウィルク正規性検定を適用し、その後、対応のないデータについてt-検定を適用した。p=0.13;H~I 循環血清GLDHおよびASTの投与量。各ドットはマウスを表す。シャピロ-ウィルク正規性検定を実施し、その後、不等分散を有する試料に対してウェルチの補正を行って対応のないデータに対する片側t-検定を行った。GLDHについてはp<0.05(p=0.046)、ASTについてはpは有意ではない(p=0.263)。J ビヒクルまたは5日のAAMで処理した肝臓の代表的なヘマトキシリンおよびエオシン染色。
図9-1】図8で実施したin vivo実験の支持データを示す。A CCl処理中、週2回、12週間、重量をモニターした。マウスごとのデータをプロットしている。ビヒクル処理マウスおよびhMDM 5日処理マウスを報告する。B 肝臓:重量比率は、選別時点で、ビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスでは有意に異なっていない。C~E 選別時点の、ビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおけるALP(C)、ビリルビン(D)およびアルブミン(E)の血清レベル。F~H 選別時点の、ビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける白血球(WBC、F)、赤血球(RBC、G)、およびヘマトクリット(HCT、H)。5日のhMDMにおいて、ビヒクル処理マウスと比較して、RBCおよびHCTが減少する傾向があることが報告した。I~J 選別時点の、ビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける血清IL6(I)およびIL10(J)。差は報告されていない。A~J シャピロ-ウィルク正規性検定が実施され、その後、不等分散を有する試料に対してウェルチの補正を行い、対応のないデータに対して片側t-検定を行った。p<0.05を統計的に有意とした。K 選別時のビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおけるパラセタモール(APAP)過剰摂取の36時間後の選別時の肝臓:体重比率。L 選別時のビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける、選別時の重量減少。M~O 選別時のビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける、ALP(M)、ビリルビン(N)、およびアルブミン(O)の血清レベル。ビリルビンは、5日のhMDM処理した場合、ビヒクル処理マウスと比較して有意に低かった。P~R 選別時のビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける白血球(WBC、P)、赤血球(RBC、Q)およびヘマトクリット(HCT、R)。K~R 不等分散を有する試料についてウェルチの補正を行い、対応のないデータに対して片側t-検定を実施した。p<0.05を統計的に有意とした。B~R 全てのドットは異なるマウスを表す。
図9-2】図8で実施したin vivo実験の支持データを示す。A CCl処理中、週2回、12週間、重量をモニターした。マウスごとのデータをプロットしている。ビヒクル処理マウスおよびhMDM 5日処理マウスを報告する。B 肝臓:重量比率は、選別時点で、ビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスでは有意に異なっていない。C~E 選別時点の、ビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおけるALP(C)、ビリルビン(D)およびアルブミン(E)の血清レベル。F~H 選別時点の、ビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける白血球(WBC、F)、赤血球(RBC、G)、およびヘマトクリット(HCT、H)。5日のhMDMにおいて、ビヒクル処理マウスと比較して、RBCおよびHCTが減少する傾向があることが報告した。I~J 選別時点の、ビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける血清IL6(I)およびIL10(J)。差は報告されていない。A~J シャピロ-ウィルク正規性検定が実施され、その後、不等分散を有する試料に対してウェルチの補正を行い、対応のないデータに対して片側t-検定を行った。p<0.05を統計的に有意とした。K 選別時のビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおけるパラセタモール(APAP)過剰摂取の36時間後の選別時の肝臓:体重比率。L 選別時のビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける、選別時の重量減少。M~O 選別時のビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける、ALP(M)、ビリルビン(N)、およびアルブミン(O)の血清レベル。ビリルビンは、5日のhMDM処理した場合、ビヒクル処理マウスと比較して有意に低かった。P~R 選別時のビヒクルvs.5日のhMDM処理マウスにおける白血球(WBC、P)、赤血球(RBC、Q)およびヘマトクリット(HCT、R)。K~R 不等分散を有する試料についてウェルチの補正を行い、対応のないデータに対して片側t-検定を実施した。p<0.05を統計的に有意とした。B~R 全てのドットは異なるマウスを表す。
【実施例
【0186】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。実施例は、例示のみを目的とするものであり、いかなる方法においても本発明を限定するものとして意図されるものではなく、またそのように解釈されるべきものでもない。
【0187】
本発明の特定の実施形態は、ここで、以下の非限定的な実施例によって、および上記の図を参照することによって示される。
【0188】
材料および方法
GMPヒト単球由来マクロファージ(hMDM)の細胞培養
スコットランド国立輸血サービス(SNBTS)から供給された健常なボランティアからのバフィーコート産物から、Ficoll勾配(GE Healthcare)を使用して単球を単離した後、CliniMACS CD14試薬(Miltenyi Biotec)を用いた磁気カラム選択を行った。次に、フェノールレッド(Miltenyi Biotec)を含まないTexMACSで、100ng/mLのGMPグレードの組換えヒトマクロファージコロニー刺激因子(rhM-CSF)(R&D System、Biotechne)の存在下で1~7日間培養して単球を成熟させた。hMDM 5日および7日を、6ウェルマルチウェルプレート(Corning Costar)中で2×10/cmの密度で培養する。また、hMDM d5をGMP細胞培養バッグ(Miltenyi Biotec)中で濃度を1×10/cm、2×10/cm、および3×10/cmに上げながら培養する。hMDMは、7日間成熟させる場合、3日目に供給した:簡潔に言うと、培養培地体積の半分を各ウェル/バッグに添加し、最終濃度100ng/mLのrhM-CSFを補充する。5日および7日のhMDMを、自動カウンター(TC20、BioRad)を用いて計数した。
【0189】
フローサイトメトリー
hMDMを回収し、300×g、5分間、室温でスピンした。hMDMを10/mLの濃度でPBS+2.5mM EDTA+0.5%アルブミン(PEA)中に再懸濁した。ブロッキングは、PEA中のhMDMをFcRブロッキング試薬(Miltenyi Biotec)と共に1:100で、4℃で20分間インキュベートすることにより実施した。抗体を1:100の希釈度で細胞懸濁液に添加し、4℃で20分間インキュベートした(使用した抗体の詳細は、以下の表に報告する)。
【0190】
【表1】
【0191】
データは、Miltenyi Vybフローサイトメーターを用いて取得し、MACS Quantソフトウェア(Miltenyi Biotec)を用いて解析した。
【0192】
V-plexサイトカイン投与量
細胞培養上清中のサイトカイン:サイトカインは、MESO Quickplex SQ 120上でV-PLEX Human Biomarker 54-Plexキットを用いて、製造者(Meso Scale Discovery)の指示に従って解析した。TGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3は、製造者(Meso Scale Discovery)の指示に従ってMESO Quickplex SQ 120上でTGF-b V-plexキットを用いて解析した。IL17ファミリーに属するサイトカイン(IL17A/F、IL17B、IL17C、IL17F)を、製造者(Meso Scale Discovery)の指示に従って、MESO Quickplex SQ 120上でV-plexキットを用いて解析した。10μLの上清を試験した。結果はpg/mLで示す。培養時間の違い(hMDM 7日は2日間多く、サイトカインを分泌する)、hMDM 7日におけるサイトカインの高い希釈率(3日目の供給の結果、1/3多く培地を受け取る)、および平均収率(hMDM d5の収率はhMDM d7より高い)を考慮して数値を調整する。
【0193】
マウス実験
NOD CB17 Prkdc/SCIDマウスはCharles Riverから供給され、無菌動物施設内の個別換気ケージに収容し、10~14時間の暗/明周期で、食物および水に自由にアクセスできるようにした。全ての手法は、英国内務省ガイドライン(Animals[Scientific Procedures]Act 1986)に従って実施した。成体雄マウスに12週間の期間にわたって、滅菌オリーブ油に溶解した四塩化炭素(CCl)を、最初の1週間は0.2mL/kg、残りの11週間は0.4mL/kgまで濃度を上昇させながら週2回腹腔内注射して慢性肝臓線維化を誘導した。18回目のCCl注射の1日後(9週間)に、尾静脈を介して5日のhMDM(n=10)または生理食塩水(ビヒクル、n=9)のいずれかの注射を受けるようにマウスを無作為に割り当てた。脾臓内経路は、最大限の細胞送達を保証したが、第I相MATCH試験(慢性肝臓線維化患者における7日のhMDM)で用いられた投与経路のモデルとはなっていない(14)。5日のhMDMを5×10細胞/mLの密度で滅菌生理食塩水に懸濁し、30ゲージ針(Myjector 0.3mLシリンジ、Terumo)で0.1mLを注射した。5日のhMDMの静脈内注射は、10週目および11週目で繰り返した。CCl投与はさらに1週間継続した。
【0194】
野生型C57BL/6J雄マウス(8~10週齢)は、清潔な動物施設内で最低1週間馴化させた。パラセタモール(APAP)投与前に、マウスを少なくとも12時間絶食させた。20:00~22:00の間に、温めた生理食塩水に溶解したAPAP(350mg/kg)をマウスに単回注射(i.p.)した。マウスは、加熱キャビネット(27℃)で朝まで回復させ;APAP過剰投与から16時間後に、rhIL4+rhIL13(20ng/mL)およびrhM-CSF(100ng/mL)を用いて代替活性化表現型(AAM)へ24時間分極したhMDM 5日を投与した。
【0195】
全てのマウスは、確認方法として麻酔の過量摂取およびその後の頸椎脱臼を用いて、指示する時点で選別した。臓器および血液は、さらなる解析のために回収、処理および保存した:肝臓左葉は急速冷凍して-80℃で保存し;他の肝葉は10%ホルマリンで8時間固定した後、パラフィンブロックに入れ;腎臓、脾臓、心臓、および肺は10%ホルマリンで8時間固定した後、パラフィンブロックに入れ;血液はEppendorfに回収し、8時間沈降させた後、10000×gで10分間室温でスピンして血清を得、-80℃で保存し;EDTAコーティングチューブ(Microvette CB300、Sarstedt)に回収した血液を使用して全血30μLを回収し、CellTac機器(日本光電)を使用した血液学的パラメータの解析に使用した。
【0196】
血清の肝臓機能試験
血清化学検査は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、総ビリルビン、および血清アルブミンを測定することにより実施した。ALTは市販のキット(Alpha Laboratories Ltd)を用いて測定した。ASTおよびALPは市販のキット(Randox Laboratories)により測定した。総ビリルビンは、市販のキット(Alpha Laboratories Ltd)を用いて、Pearlman and Lee(20)記載の酸ジアゾ法により測定した。マウス血清アルブミン測定は、市販の血清アルブミンキット(Alpha Laboratories Ltd)を用いて測定した。全てのキットは、Cobas Fara遠心分離解析機(Roche Diagnostics Ltd)で使用するために適合させた。全てのアッセイについて、測定時間内精度はCV<4%であった。ALP活性を除き、一部の実験では、血漿試料上でアッセイを行った。
【0197】
以下に、急性および慢性モデルにおける肝臓損傷の評価に、どのパラメータがより有用であるかを強調する表を報告する(+++=極めて有用;++=非常に有用;+=有用;±=中程度に有用;-=有用ではない)。
【0198】
【表2】
【0199】
組織学的解析
ヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)染色およびピクロシリウスレッド(PSR)染色は、標準プロトコルに従って実施した。組織染色を定量化するための形態画素解析を実施した。ネクローシスおよび線維化をそれぞれ定量化するために、H&EおよびPSRで染色した切片をPolarisスライドスキャナー(Perkin Elmer)でスキャンして単一の画像を作成した。同じ機械で2回目のスキャンを行って、10×拡大で1スライドあたり10~15視野のマルチスペクトル画像を取得した。マルチスペクトル画像は、InFormソフトウェア(Perkin Elmer)を用いて、Trainable WEKA Segmentationモードで解析した。
【0200】
統計学的解析
全てのデータは、平均±標準偏差(SD)で表される。複製数は各図に示されており、各複製は実験的複製ではなく、生物学的複製を表す。データはGraphPad Prism version 8(GraphPad Software,Inc、USA)を用いて解析し、グラフを作成する。統計学的検定は、実験の背景にある生物学的疑問に応じて選択した。簡潔には、スチューデントt-検定、一元または二元配置分散分析、それに続く適切な事後検定を使用した。使用した検定は、各図面の凡例に記載されている。P<0.05は、統計的に有意とする。
【0201】
全てのin vitro実験では、両側検定が考慮される。全てのデータは、Prism v8を使用して統計学的解析を行う前に、正規分布および等分散性について検定を行った。
【0202】
CCl処理12週目のALT(肝臓損傷を示す)のレベルに関する過去の研究から利用可能なデータに基づいて、慢性CClモデルの研究で使用するマウス数に関する検出力の算出を行った。hMDMで処理した12週CClマウスについてmu1を100、ビヒクル(生理食塩水)で処理した12週CClマウスについてmu2を200とし、シグマは50と仮定した。閾値0.05で統計的に有意であると仮定し、所望する検出力を0.80とした。検出力の算出では、n=6が返された。これは、各実験で使用したマウスの最小限の数である。AAMに分極したhMDM 5日で24時間処理したAPAP過剰摂取マウスについては、実験時点で利用可能なデータがなかった。本実験はパイロットとして扱ったが、将来は処理したコホートを拡大することを計画している。
【0203】
ヒトマクロファージがAPAP過剰摂取およびCClモデルでそれぞれネクローシスおよび線維化を低減するという仮説を検証しているため、全てのin vivo実験について片側検定が考慮される。全てのデータは、Prism v8を使用して統計学的解析を行う前に、正規分布および等分散性について検定を行った。使用した特定の検定は、各図面の凡例に示されている。検出力の算出は、http://www.stat.ubc.caで利用可能な無料のオンラインツールを使用して実施した。
【0204】
結果
本発明の分化プロトコルは、現在のゴールドスタンダードの7日プロトコルと比較して、マクロファージの収率および生存率を増加させる
100ng/mLのTexMacs培地中で5日間培養した単球(本明細書中では5日と称する)は、明視野顕微鏡検査を用いて観察すると、3日目に再供給を行って7日間培養したもの(現在のゴールドスタンダードプロトコル、本明細書中では7日と称する)と同様の特性を示す(図1A)。5日プロトコルは、7日プロトコルと比較して、収率が高く(図1B、p=0.06)、生存率および代謝が同程度である(図1C~E)という強い傾向を示す。細胞療法をi.v.輸注で行う際の主な懸念事項の1つは、血流に乗ると細胞が凝集する可能性があることである。本発明者らは、5日プロトコルによって、hMDMのプラスチック表面への接着能が向上したかどうかを検討した。5日のhMDMは、7日のhMDMと比較して、接着が低下する傾向を示すことが観察された(図1F、p=0.1875)。
【0205】
本発明の分化プロトコルは、成熟した完全に機能的なGMPに準拠したマクロファージの産生をもたらす
プロトコルを短縮し、供給を排除する際の主な懸念事項は、部分的に成熟した、完全な機能を持たないマクロファージが生成されることである。本発明者らは、分化プロトコルの終了時に細胞培養上清を検査するために、高感度54-plexプラットフォームを使用して、5日vs.7日のhMDMの分泌プロファイルを比較した。本明細書では、急性および慢性肝臓疾患に関与するいくつかのサイトカイン、ケモカイン、および増殖因子の投与量結果を報告する(図2A)(培養時間および収率の差を考慮した補正係数が適用されている)。5日のhMDMは、以前から共に肝硬変時の有害な作用と関連付けられていた(21~24)IL17FおよびTGFβ1(トランスフォーミング増殖因子β1)のレベルが低下したことを示す。5日のhMDMは、IL6、IL8、およびTNFα(腫瘍壊死因子α)などのサイトカインを上方制御しないため、これらの細胞は、注射時にサイトカインストームを引き起こす可能性が低く、細胞療法として安全に使用できることが確認された(表5も参照のこと)。
【0206】
再供給を行わない、より短いプロトコルを使用する主な問題は、CD206(マンノース受容体)、CD163(ヘモグロビン-アプトグロビンスカベンジャー受容体)、およびCD169(シアロアドヘシン)などの成熟マクロファージの典型的な細胞表面受容体をいくつか欠くhMDMが生成されることであろう。より短いプロトコルで生成されたマクロファージは、抗原提示分子(例えば、CD86およびMHCクラスII)の発現が異常である可能性もあり、CCR2(C-C ケモカイン受容体2型、またはCD192)の下方制御に失敗する可能性もある。本発明者らは、5日のhMDMが7日のhMDMと同様の細胞表面マーカー発現を有することを本明細書に示す(図2Bおよび表1)。現在のところ、臨床用に生成された「成熟」マクロファージ(MHRAに準拠した臨床プロトコルによる)を定義する最小限の基準は、CD206および25F9(マクロファージの成熟に関連するマーカー)の発現が5倍上昇することである。本発明者らのプロトコルは共にこの条件を満たしている(図2Bの点線)。25F9は、現在使用されている臨床用の生成物と比較して本発明者らの調製物では強く上方制御されていないが、これは、本発明者らの出発材料が、健常なドナー血液提供から採取された末梢血単核細胞調製物の単球からなり、これが白血球アフェレーシス由来の単球(すなわち、臨床用の7日生成物の生成に用いられるもの)よりも高い25F9発現を有するためである。
【0207】
患者に一度移植されたマクロファージの所望の機能の1つは貪食である:貪食は、死細胞または瀕死細胞の除去、腸起源の細菌に対する肝臓のバリア機能の回復、およびマクロファージの表現型の炎症促進型から回復促進型への転換に寄与する。実際、細胞培養時間を短縮し、かつ供給を除去する際の主な懸念事項の1つは、得られたhMDMの貪食を行う効率が低下することであり得る。5日vs7日のhMDMによるザイモサンAコーティングビーズの貪食をライブイメージング手法を用いて測定したところ、2つのプロトコルで生成したhMDMは貪食能の点で同等であることが示された(図2Cおよび表4)。
【0208】
【表3】
【0209】
【表4】
【0210】
【表5】
【0211】
本発明者らは、低い割合のヒト血清AB型(0.5%)の存在および/または他の細胞培養培地(AimV)の使用により、5日のhMDMの収率および生存率がさらに向上するかどうかを検証した。図3に示すように、収率および生存率に差を特定することはできなかった(図3A~BおよびE)。また、AimV培養細胞は、一般的に細胞培養中に凝集を形成しやすいことが観察され、そのため、その使用には大きな安全性の懸念があった。ヒト血清の使用は、5日のhMDMの収率、生存率、または代謝(図3C~D)を向上させないと結論付けた。また、細胞の凝集が懸念されるため、さらなる実験ではAimVを使用しないことを決定した。
【0212】
本発明のプロトコルを用いたヒト単球のマクロファージへの日ごとの分化の特徴付け
マクロファージは約1週間培養する必要があるというのが文献上最も一般的な知見であるにもかかわらず、5日のhMDMが完全に成熟しており、かつ機能的であることが示された。本発明者らは培養5日目以前であっても、成熟マクロファージとのいくつかの特性が存在する可能性があるのではないかと推論した。そのため、2つの異なるドナーからの単球について、細胞表面マーカーの1日ごとのフローサイトメトリーを行った(図4)。本発明者らは、単球を5日間または7日間のいずれか、供給ありまたはなしで培養した。供給をしていない細胞は、5日目で解析を中止した。培養開始後1日目には早くもCCR2が下方制御され、2日目以降は成熟マクロファージと同等のレベルになることを示すことができた(図4F)。CD206、25F9およびCD169などのマーカーは時間と共に増加し、6日目にピークに達した後、7日目には減少する(図4B、C、E)。これらマーカーの上方制御は培養3日目には早くも見られる(図4B、C、E)。このことにより、7日のhMDMは、in vivoに移植された後、最適な治療機能を発揮するには「消費」され過ぎである可能性があるという本発明者らの仮説を補強される。本発明者らの解析により、100ng/mLのMCSFを補充したTexMacsで培養したhMDMは、供給の有無にかかわらず、4日目から成熟細胞と同等の細胞表面マーカー発現を示すことも明らかになった。しかし、CD163(図4D)の可変的なレベル、およびCD86(図4G)の変動レベルから示されるように、4日目において細胞表面マーカーの一部の発現はまだ安定化していない。本発明者らは、4日目の細胞は若年性の細胞であるため、冷凍保存およびトランスフェクションなどの処理の影響をより受けやすいことを特定した。細胞培養中の生存率の解析から、2日目および6日目に低下していることが明らかになる(図4E)。2日目の低下は、本発明者らの実験で日常的に観察される100%を下回る収率を説明するものである。6日目の低下は、図1Bで報告したように、7日vs.5日プロトコルで収率がより低下する傾向を正当化し得る。
【0213】
本発明のマクロファージは成熟しており、炎症性のキューに応答することができる
マクロファージの重要な特徴の1つは、炎症性のキューに応答する能力である。in vivoのマクロファージは非常に不均質な集団であり、微小環境に応じて異なる極性を獲得することが長い間報告されてきた。5日vs.7日のhMDM分化プロトコルを使用する場合、炎症性のキューへの過敏な応答は懸念事項の1つである。そのため、5日のhMDMが安全であり、急性または慢性肝炎が進行中の患者に注射した際にサイトカインストームを引き起こす可能性のある細胞を生成しないことを証明することに取り組んだ。
【0214】
この目的のために、5日のhMDMおよび7日のhMDMをIFNγ、IFNγ+LPS、IL4+IL13、およびIL10で24時間刺激した後の上清を回収した。図2で報告したのと同じ54-plex解析を行い、その後、オンラインツールであるMorpheusを用いたクラスタリング解析を実施した。データから、IFNγおよびIFNγ+LPS刺激マクロファージは、未分極マクロファージが5日または7日のどちらのプロトコルで分化したかにかかわらず、共にクラスター化したことが示される。興味深いことに、IL4+IL13およびIL10マクロファージは、より抗炎症性、回復促進性の特性を共有するはずだが、未分極マクロファージを得るための細胞培養プロトコルよりも、由来するドナーに基づいて共にクラスター化した(図5A)。急性および慢性肝臓疾患において重要なサイトカインおよびケモカイン(IL17A/F、MCP1およびIL10)をより詳しく検討することにより、5日の未分極マクロファージが炎症性刺激に対して反応する方法では有意差が検出されないことがさらに確認される(図5B~D)。これらの結果は、5日のhMDM分化プロトコルが、炎症性のキューに過剰反応せず、そのために急性または慢性肝臓疾患の患者に注射した際にサイトカインストームを引き起こす可能性が低い細胞の生成をもたらすことを示す。
【0215】
分極マクロファージは、多くの病態において有益であり、また他の細胞療法の成功も支持し得る。したがって、5日または7日の未分極のhMDMから分極マクロファージを産生することに関心があり得る。フローサイトメトリーにより、5日および7日のhMDMが、分極後に同様の細胞表面マーカーを発現しているかどうかを検証した。RFIは、分極hMDMのMFIを未分極hMDMのMFIで割ることにより算出した:RFI>1は上方制御を意味し;RFI<1は下方制御を意味する(図5E~H)。LPSで刺激されたマクロファージの主要な特徴は、MHC II分子(主要組織適合抗原クラスII)などの抗原提示分子の上方制御である。7日および5日の分極hMDMは、共にMHC II分子の増加を示した(図5F)。IFNγによる刺激後、7日の分極hMDMは、IL4/IL13刺激により誘導されるはずのスカベンジャー受容体であるCD206の異常な上方制御を示した。逆に、IFNγによる5日の分極hMDMはこの上方制御を示さなかった(図5E)。IL10刺激では、予測通り5日および7日のhMDMの両方でCD163の上方制御ならびにCD86およびMHCIIの下方制御をもたらした(図5G)。しかし、IL4/IL13の組合せを使用した場合、5日の分極hMDMではCD206の有意な上方制御を見ることができなかった(図7A)。本発明者らは、新鮮なMCSFを加えることで、分極をよりよく支持できるのではないかと推論した。そのため、5日および7日の分極hMDMを、MCSFの存在下または非存在下で比較した。MCSFの添加により、IL4/IL13の5日の分極hMDMでCD206の上方制御がもたらされた(図5H)。これらのデータは、5日のhMDMが炎症性刺激に正常に応答でき、細胞療法に使用する分極ヒトマクロファージを産生するための出発材料として使用できる成熟マクロファージであるという概念を補強する。
【0216】
本発明の分化プロトコルは、GMPグレードの細胞培養バッグを用いて成熟した完全に機能的なマクロファージの産生をもたらす
臨床用のhMDMは、細胞培養処理プラスチックでは増殖することができない。通常、臨床用のhMDMは、GMPに準拠した細胞培養バッグを用いて培養される。そのため、本発明者らは上記の細胞培養バッグを支持体として用いて、5日供給なしの分化プロトコルの検証を試みた。
【0217】
本発明者らは、GMPグレードの細胞培養バッグ中の増殖についての重要な要因は、おそらく細胞密度であると推論した:プラスチック中で使用する密度(2×10/cm)、それより低い密度(1×10/cm)、およびより高い密度(3×10/cm)で5日のhMDM分化プロトコルを検討した。本発明者らはまた、マクロファージが、分化プロセスの開始時にはより密集した環境で利益を得ることができ、その後は、より低密度の培養条件で利益を得ることができる可能性があると考えた。そのため、単球/マクロファージを3日目まで2×106/cmで培養した後、培養の最後の2日間は1×10/cmに希釈した。3×10/cmを用いた場合、収率の点で最良の結果が得られた(図7A)。1×10/cmでは、生存率が非常に変動性であった。2×10/cmおよび3×10/cmの細胞密度では、解析した全てのドナーで、90%以上の一貫した生存率が示された(図7B)。次に、異なる密度において細胞培養バッグ中で培養した5日のhMDMの成熟マクロファージマーカーの細胞表面発現を比較した。全てのドナー由来の5日のhMDMはCD206の高い発現を示し;1人のドナー(ドナーSP105)のみが、現在の放出基準(RFI≧4)に適合しない25F9のレベルを示した。プロトコル間のばらつきは最小限であった(図6B、C)。培養の最後の2日間にマクロファージを希釈しても、2×10/cmの細胞密度と比較して著しい利点はなかった(図示せず)。1×10/cmで得られた生存率に関するわずかに最悪の結果は、マクロファージがその分化および増殖にパラクリンシグナルを必要とすることを示している。本発明者らは、2×10/cmまたは3×10/cmの密度が、将来、臨床用の5日のhMDMの産生に使用することができると結論付けた。
【0218】
次に、プラスチック上で培養したhMDMを使用して得られた機能的な結果が、細胞培養バッグで培養したhMDMにも適用できることを確認する必要があった。この目的のために、2×10/cmの密度の、プラスチックまたはGMPグレードの細胞培養バッグ中の5日のhMDM培養物を、収率、生存率、および細胞表面マーカーについて比較を実施した。バッグ中で培養した細胞は、組織培養処理したプラスチックプレートを用いて培養した細胞と同様の収率および生存率を示す(図7C、D)。細胞表面マーカーの発現は、バッグ中およびプラスチック中で培養したd5 hMDMで同様である(図7Eおよび表6)。
【0219】
【表6】
【0220】
本発明のマクロファージは急性および慢性肝臓傷害のマウスモデルに注射しても安全である
本発明者らの5日のhMDMが急性および慢性肝臓傷害の細胞療法に好適な生成物であることを確実に証明するために、マウスモデルでその安全性を試験する必要があった。本発明者らはまた、この療法の有効性の兆候を示すことを目的とした。この目的のため、免疫不全マウスに四塩化炭素(CCl)を週2回、12週間注射することによって肝硬変を誘導した。9週目、10週目、および11週目の初めに、10個の5日のhMDMまたはビヒクル(生理食塩水)を注射した。1週間後にマウスを選別した(図8A)。細胞療法の注射時においても選別前の1週間時点においても、マウスは何の有害事象も示さなかった。処理群のマウスは重量が減少せず、経時的な重量推移および選別時の肝臓:体重比率は対照と同等であった(図9A、B)。白血球(WBC)、赤血球(RBC)、およびヘマトクリット(HCT)などの血液学的パラメータも2つのマウス群で同等であり(図9F、G、H)、それによって処理マウスの骨髄への重度の有害作用が排除される。処理マウスではHCTが有意に低下する傾向があり、この傾向は、本療法により成体雄NOD/SCIDマウス(図9Hのピンク色の点線)を正常なHCTレベルに回復させることと関連する可能性がある。IL6およびIL10などのサイトカインは、2つのマウス群の血漿中で同等のレベルであり(図9I、J)、このことから、5日のhMDMは注射しても安全であり、慢性炎症を起こしているマウスに注射した場合もサイトカインストームを引き起こさないことが確認される。
【0221】
さらに、本発明者らは、有効性の兆候を検出できるかどうかを評価した。この目的のために、処理マウスと対照マウスの血清について、肝機能検査(LFT)を実施した。ASTが低下する傾向を報告したが、ALTのレベルには差が検出されなかった(図8C図9D)。ALPとアルブミンのいずれのレベルにも差は検出されなかった(図9C、E)。注目すべきことに、hMDM 5日で処理したマウスの血清では、ビリルビンが有意に減少していた(図8D)。ALTおよびASTの循環レベルは、マクロファージの貪食を含む様々な要因によって影響を受ける可能性がある:実際、このプロセスを通じてマクロファージに取り込まれることがある。したがって、有効性を評価するためには、肝組織の線維化の解析が必要である。本発明者らは、処理群および対照群の肝臓切片においてピクロシリウスレッド(PSR)染色を行い、線維化を定量化した:処理マウスは、線維化が低減する強い傾向を示した(図8B、E)。免疫不全マウスは、肝臓再生の重要な要因となる免疫の適応アームを欠いている。そのため、マクロファージ細胞療法によるパラクリン効果の利用において部分的に欠損がある。さらに、損傷に対する免疫応答は野生型マウスと同じ規模ではないため、マクロファージの治療効果を媒介するのに重要なプロセスである微小環境とマクロファージのクロストークが部分的に損なわれている。したがって、循環ASTおよび肝臓線維化の両方が低減する傾向があり、循環ビリルビンが有意に低下することは、注目すべき結果である。結論として、データから慢性肝臓疾患のモデルにおいて5日のhMDMを注射することは安全であり、肝臓線維化の低減に部分的に有効であることが示される。
【0222】
研究室での以前の研究では、代替活性化マクロファージ(IL4/IL13分極、本明細書ではAAMと称する)が、パラセタモール(アセトアミノフェン、APAP)過剰摂取による急性肝臓傷害を包含し、マウスにおける肝臓再生を促進するのに有用であることが示唆された(Starkey Lewis PJ et al.、J Hep、2020)。本発明者らは、APAP過量摂取の細胞療法のための生成物として、図7に記載するように、IL4/IL13+MCSFを用いて分極させた本発明者らの5日のhMDMを用いて同じデータを反復することを試みた。C57Bl/6免疫適格マウスにおいてAPAP過剰摂取を誘導した(図8F)。本発明者らは以前、7日のhMDMを投与された健常な免疫適格マウスが、細胞注射後最長1週間まで拒絶反応または毒性の兆候を示さないことを実証した(図示せず)。このことによって、上記の免疫不全マウスの制限を克服するため、安全性および有効性試験には免疫適格マウスを用いることにした。処理マウスは、肝臓:体重比率の上昇および重量減少の増加の傾向を示し(図9K、L)、これは安全性の懸念事項となる可能性がある。しかし、WBC、RBC、およびHCTなどの血液学的パラメータは、2つのマウス群(AAM 5日処理vs.ビヒクル処理)で同等であり(図9P、Q、R)、それによって骨髄レベルでの毒性の進行の可能性が排除された。さらに、ALPおよびアルブミンは2つのマウス群で同程度であり(図9M、O)、AAM 5日療法による肝臓損傷の悪化が排除された。逆に、マウスは、壊死した組織の損傷の高感度マーカーである循環GLDHのレベルが有意に低下していたことを示した(図8H)。また、H&E切片の画像定量化により評価すると、AAM 5日で処理した場合、マウスは、未処理マウスの肝臓と比較して、壊死面積がより小さくなることが示された(図8G、J)。有効性のさらなる指標が処理マウスで観察される循環ビリルビンの減少によって示されている(図9N)。
【0223】
結論として、本発明者らのデータは、GMPグレードのhMDMを、現在の標準よりも安価かつ迅速に生成するプロトコルを確立したことを示している。この結果は、細胞培養時間の短縮および供給工程の排除という2つのアプローチを組み合わせることによって達成された。最適な細胞密度、血清非含有T細胞培地を、rMCSFの支持と共に使用することによって、本分野の現在のゴールドスタンダードである7日のhMDMより優れた品質の生成物が保証される。特に、5日のhMDMは、炎症促進性および線維化促進分泌プロファイルが低い(細胞培養上清中のIL17FおよびTGFβのレベルがそれぞれ低い)ことが示される。本分野の文献では、成熟hMDMを産生するためには7日が最適な培養期間であることが示されているにもかかわらず、本発明者らの5日のhMDM生成物は、7日のhMDM生成物と、細胞表面マーカー発現および貪食の点で同等であることが示された。さらに、5日のhMDM分化プロトコルは7日のhMDMプロトコルと比較して、より良い収率を示す。さらに、5日のhMDMは、APAP過剰摂取のマウスモデル(急性肝臓傷害)において安全性および有効性が証明され;肝硬変のマウスモデル(慢性肝臓傷害)においても安全性および部分的な有効性が証明された。
【0224】
上記を参照して、本開示は以下の項目にも関することは理解されるであろう:
項目1:マクロファージを産生するin vitro方法であって、
(a)単球を培地中で4~5日間培養してマクロファージを産生する工程であって、培地がマクロファージ産生を刺激する1つまたは複数の増殖因子を含む、工程
を含み、工程(a)が完全に同じ培地中で行われる、方法。
項目2:単球が5日間培養される、項目1に記載の方法。
項目3:培地を再供給または交換する工程を含まない、項目1~2のいずれか一項に記載の方法。
項目4:単球が1×10細胞/cm~最大1×10細胞/cmの間の密度で播種される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
項目5:培地が、X-Vivo 10、TexMACS、AIMv、RPMI、DMEMおよびDMEM/F12から選択される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
項目6:培地がT細胞培地、好ましくはTexMACSである、項目5に記載の方法。
項目7:培地がCSFファミリー、好ましくはM-CSFから選択される1つまたは複数の因子を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
項目8:培地が25~150ng/mLの間の濃度でM-CSFを含む、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
項目9:単球がヒトであり、マクロファージがヒト単球由来マクロファージ(hMDM)である、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
項目10:単球がヒト血液、好ましくはヒト血液のバフィーコート、好ましくはヒト血液のPBMC画分に由来する、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
項目11:工程(a)で産生されたマクロファージを、好ましくはM1様またはM2様マクロファージに分極させる工程をさらに含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
項目12:分極因子、好ましくはM1またはM2分極因子が培地に添加される、項目11に記載の方法。
項目13:M1分極因子が、GM-CSF、IFNγ、およびLPSなどのTLRアゴニストから選択され;M2分極因子が、IL10、IL4、IL13、およびポリ(I:C)から選択される、項目12に記載の方法。
項目14:GMPに準拠している、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
項目15:成熟マクロファージの収率が、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%である、項目1~14の一項に記載の方法。
項目16:項目1~15のいずれか一項に記載の方法によって産生されたマクロファージ。
項目17:再生促進表現型を有するex vivo生成マクロファージ。
項目18:1つまたは複数の再生促進サイトカインの発現が増加している、項目16または17のいずれか一項に記載のマクロファージ。
項目19:1つもしくは複数の抗炎症性サイトカインの発現の増加、および/または1つもしくは複数の炎症性サイトカインの発現の低下、および/または1つもしくは複数の抗線維化サイトカインの発現の増加、および/または1つもしくは複数の線維化サイトカインの発現の低下を有する、項目16~18のいずれか一項に記載のマクロファージ。
項目20:以下のサイトカイン:IL1、IL12、IL17(A、B、C、F)、IL18、TNFα、IFNγ、好ましくはIL17Fの1つまたは複数の発現が低下している、項目16~19のいずれか一項に記載のマクロファージ。
項目21:以下のサイトカイン:IL4、IL13、PDGF、TGFβ(1、2、3)、好ましくはTGFβ1の1つまたは複数の発現が低下している、項目16~20のいずれか一項に記載のマクロファージ。
項目22:成熟細胞表面マーカー、好ましくはCCR2-、CD14+、CD206+、CD163+、CD169+、25F9+、およびCD86+を発現する、項目16~21のいずれか一項に記載のマクロファージ。
項目23:項目16~22のいずれか一項に記載のマクロファージの集団。
項目24:項目23に記載のマクロファージの集団を含む組成物。
項目25:医薬として使用するための、項目16~24のいずれか一項に記載のマクロファージ、集団または組成物。
項目26:肝臓疾患または傷害の処置における使用のための、項目16~24のいずれか一項に記載のマクロファージ、集団、または組成物。
項目27:肝臓疾患が急性または慢性である、項目26に記載の使用のためのマクロファージ、集団、または組成物。
項目28:急性肝臓疾患が薬剤過剰摂取、好ましくはAPAP過剰摂取であり、慢性肝臓疾患が肝硬変である、項目27に記載の使用のためのマクロファージ、集団、または組成物。
項目29:マクロファージが、平均200pg/mL未満のIL17F、好ましくは190pg/mL未満のIL17F、好ましくは180pg/mL未満のIL17F、好ましくは170pg/mL未満のIL17F、好ましくは160pg/mL未満のIL17F、好ましくは150pg/mL以下のIL17Fを発現する、項目23または24に記載の集団または組成物。
項目30:マクロファージが、平均45000pg/mL未満のTGFβ、好ましくは44000pg/mL未満、好ましくは43000pg/mL未満、好ましくは42000pg/mL未満、好ましくは41000pg/mL未満、好ましくは40000pg/mL以下のTGFβを発現する、項目23、24または29に記載の集団または組成物。
項目31:マクロファージが、平均50pg/mL超のVEGFR1、好ましくは100pg/mL超のVEGFR1、好ましくは120pg/mL超のVEGFR1、好ましくは140pg/mL超のVEGFR1、好ましくは160pg/mL超のVEGFR1、好ましくは170pg/mL超のVEGFR1を発現する、項目23、24、29または30に記載の集団または組成物。
項目32:マクロファージが、平均500pg/mL未満のIL9、好ましくは300pg/mL未満のIL9、好ましくは200pg/mL未満のIL9、好ましくは180pg/mL未満のIL9、好ましくは160pg/mL未満のIL9、好ましくは140pg/mL未満のIL9、好ましくは130pg/mL未満のIL9を発現する、項目23、24および29~31のいずれかに記載の集団または組成物。
項目33:マクロファージが抗炎症性および抗線維化表現型を有し、平均200pg/mL未満のIL17Fおよび45000pg/mL未満のTGFβを発現する、項目23、24および29~32のいずれかに記載の集団または組成物。
項目34:マクロファージが抗炎症性および抗線維化表現型を有し、平均約150pg/mLのIL17Fおよび約40000pg/mLのTGFβを発現する、項目23、24および29~33のいずれか一項に記載の集団または組成物。
項目35:IFNγ、IL10、IL4、IL13、およびLPSの1つまたは複数などの炎症性刺激に応答する、項目16~24のいずれかに記載のマクロファージ、集団または組成物。
項目36:項目1~22のいずれかに記載のマクロファージ、項目23に記載の集団、または項目24に記載の組成物を含む細胞培養バッグ。
【0225】
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【0226】
等価物
当技術分野の当業者は、日常的な実験手法に過ぎないものを使用して、本明細書に記載の特定の実施形態の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。このような等価物は以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。任意の複数の従属請求項または実施例に開示される実施形態の組合せはいずれも本開示の範囲内にあることが意図される。
【0227】
参照による組込み
本明細書で参照する特許、特許出願公開および科学的出版物のそれぞれおよび全ての開示は参照によって、その全体が、その図面の内容と同様に本明細書に具体的に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9-1】
【図
図9-2】
【図
【国際調査報告】